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政府委員(
天城勲君) お
手元にお配りいたしました
文部省所管昭和三十一年度
予算要求額事項別表、これに即しまして
概略御
説明いたします。なお
事項別表に添えまして二枚ほどのおもなものの
事項の
内容をお
手元にお配りしてございますので、
事項によってはこちうもあおせてごらんいただきたいと思っております。
順序に従いまして一番
最初は
義務教育の充実の問題でございますが、その中で
最初に
義務教育費国庫負担制度の実施、これは三十一年度七百六十九億五千万円を要求いたしております。前年度に比べまして三十二億五千万、この中身は
負担金と
教材費でございますが、
給与費の
負担金の方は
明年度概略五十一万
児童増が見込まれておりますので、これに伴います
教員増大体
小学校で六千、
中学で一千五百、合せて七千五百の
人員増を見込んでおります。その他
昇給財源は
国家公務員の例にならいまして
昇給率四%、それから昨年制定されました産前産後の休暇に伴う
補助教員の
給与費等を見込んで
給与費で七百五十六億三千四百万、
教材費は
児童の
自然増に伴います増加を見込んでおります。
第二番目の
義務教育関係の
教科書無償給与でございますが、これは別途
法律案を具して御
審議を願うことになっておりますが、いわゆる準要
保護児童に対しまして
教科書の
無償給与を行う、このために必要な
経費一億三千万を新たに計上いたしたわけでございます。御存じの
通り従来新たに入学する
児童に対しまして、一年生だけ国語と算数の
教科書を配付しておりましたけれ
ども、二年ほど
中止の状態になっておりましたが、それにかえて新しい
立法措置で準要
保護児童に
給与をいたしたい、こう
考えております。
明年度は取りあえず
小学校の
児童だけを
対象にいたしまして、大体
対象人員は二十一万ほどでございます。
第三番目に
特殊教育の
振興でございますが、いろいろございますが、
備考欄にございますように、
盲ろう児童の
就学奨励費、これは
法律もございまして、
義務制の分につきまして
就学奨励の
補助金を出しておりましたが、一応
中学三年までの
義務制が完成いたしましたので、
明年度は
高等部にこれを及ぼしたい、こう
考えて
予算を要求いたしております。特に盲
学校における
点字教科書の問題が
印刷あるいは入手の面でいろいろ問題がございましたので、
明年度高等部の
生徒に対しまして
教科書の
購入費を補助するという金額を約二百万ほど
就学奨励費に加えて要求いたしておりますし、
備考欄の(5)にございますように、
点字印刷機をさらに一台購入いたしまして
点字教科書の
印刷を促進したい、こう
考えております。
その次の
へき地教育の
振興の
経費でございますが、
明年度は主として
教育内容の面に力を注ぎたい、こう
考えまして、
備考といたしましては
備考欄の(3)にございます
単級複式学校の
教育課程作成というこの
経費を新たに計上いたしたい。
それかう四番目にございます
へき地勤務の
小学校教員の臨時養成、これは従来からございましたけれ
ども、金額が不十分でございましたので、それの増額をはかりまして十三カ所の臨時養成
機関を
設置していく、こういう点に主として力を注いだわけでございます。
その他の点につきましては大体前年度と同様の金額でございます。
その次に
学校給食の助成の項でございますが、
最初に
教科書におけるいわゆる準要
保護児童対策と同じように、給食につきましても同様の措置をとりたい、こう
考えまして五千万を要求いたしております。
それから
学校給食の施設設備の
関係では前年度五千万に対しまして本年度一億五千万要求しておりますが、念願の中
学校にまで
学校給食を及ぼすという
考えでこれも別途
改正案を出して御
審議を願う予定でおります。
その次に
教科書制度の
改正でございますが、これは昨年来
教科書の検定、発行された点についていろいろな議論もございまして、ただいま
教科書の
制度につきまして全面的な
改正案を検討中でございますが、それに伴う新しい
予算措置でございます。
内容といたしましては、
教科書の検定
関係では新しく検定の
審議会を設ける、それから発行の
審議会を設けるということと、検定事務の強化ということで金額を計上いたしました。特に従来非常勤の
調査員でやっておりました検定を改善するためにその一部を常勤の
調査官に置きかえることにいたしまして、別途人件費として
調査官四十五人分の人件費を計上いたしております。
それから採択面につきましては、従来の短期間の展示会
制度を改めまして、いわゆる常時
教科書の
研究と展覧に供する
意味の常設展示会場、あるいは
教科書のセンターというような構想を
考えまして、それに要しまする
最初の設備費の補助三千万を計上いたしております。
予算的には大体六百カ所を予定して三千万を計上いたしておるわけでございます。
その次に
教育内容の改善充実の項でございますが、
最初に
文部省におきまずる
地方教育に対する指導機能を充実するという前提で、現在二名おります視学官を六名に増員いたしましてその人件費を別途に計上いたしますとともに指導に伴う
経費を計上いたしております。
それから
教育内容の刷新改善は従来に続きまして指導要領の改訂、これに伴う手引書等の
予算を計上いたしておりますが、
事項欄にあります指導行政
学校管理担当者連絡
協議会、それから学習指導要領等趣旨徹底、教員の資質向上、この三つの
事項につきましては
地方に対する国の
教育内容の指導あるいは趣旨の徹底、教員の講習会というようなものを充実していくという
意味で、それぞれ金額は少額でございますけれ
ども増額して要求いたしておるわけであります。
次のぺ-ジに入りまして産業
教育、それから理科
教育、
学校図書館、これの
補助金でございますが、それぞれ
法律の保護費がございまして、高等
学校に対する
教育の
振興を援助してきているわけでございますが、これらの
経費は
補助金でございますので、
地方財政との関連が深い
経費でございまして、特に三十年度の後半から三十一年度にかけましての
予算を通じて
地方財政の再建という大きな課題がございました。
補助金をある程度自粛するという基本線がございましたために、全体として前年度に比べて金額が落ちたわけでございます。しかしこの落ちた中でできるだけ従来の実績から重点的なものは確保していくという
考え方をとって参りましたが、この中で
変りました点は、理科
教育振興では
明年度三億六千百万の
予算の中で、新たに私立
学校を
対象といたしまして一千万を私学に向ける
考えでおります。
学校図書館の方におきましては従来図書の一冊当りの単価が低くて、実際に副わないという御批判が多かったので、単価をそれぞれ改訂いたしまして、実績に近付けたわけでございます。
その次の文教施設整備でございますが、
最初の国立文教施設の整備、これは前年度に対しまして約一億三千万増で要求いたしておりますが、中身におきましては昨年から立てております緊急の整備計画に暴きます第二年度といたしまして病院施設の緊急を要するものの整備及び戦災復旧の整備というようなものに重点をおきまして、計画に従って
予算を計上いたしております。
それかう公立文教施設の方は前年度に比べてこれは一億ほど金額が減じておりますが、これも先ほど申しました
地方財政に対する再建という面での
補助金の、
政府全体の
補助金に対する政策から出たために金額が一億ばかり落ちて参りましたけれ
ども、
内容的には従来からいろいろ問題のありました補助単価の是正を第一に取り上げております。それかう第二番目に木造、鉄筋あるいは鉄骨の構造比率を引き上げまして、公立文教施設の質的充実をはかろう、こういう
考え方を
内容にいたしております。
備考で若干補足いたしますと中
学校屋内運動場の
補助金でございますが、これは従来積雪寒冷湿潤地帯を
対象といたしておりますのを、
明年度から必ずしもこの地帯に限らず一般に及ぼしていきたいという
考え方をもっておりますし、老朽危険校舎の改築におきましても前年度より一億五千万減でありますが、高等
学校分につきましては若干ながら金額を伸ばしております。
それから新たにこの表で申しますと、一番下に公立小中
学校の統合特別助成
補助金、これを新しく起したわけでございます。金額は三億でございますが、町村合併の
振興して参るに従いまして
学校統合という問題が起ってきております。これは町村合併の実を上げるという点で非常に必要なことでございます。と同時に、小規模
学校を適当な所に統合いたしますことは、
教育水準の向上にも、あるいは
経費からみた
学校経営の合理化のためにも役立つと、こう
考えまして、新しく
学校統合特別助成
補助金を三億計上いたしたわけであります。
その次の。ぺ-ジに入りまして、
学術の
振興という項でありますが、前年度十四億に対しまして二十四億五千万、約十億弱の増でございますが、中身で主な点を申し上げますと、
最初に国際地球観測年
事業、この
経費が八億八千七百万円増になっております。
備考にもございますように、新たに南極地域の観測
経費をこれに含めておりますが、
明年度の計画といたしまして、南極地域の観測に七億五千万、それからその他の国際地球観測年
事業といたしまして二億二千五百万円、合せて九億七千五百万円を計上いたしておるわけであります。なお、補足いたしますが、南極地域の観測につきましては、砕氷船の建造費を必要といたしますが、すでに三十年度からその改装の
事業を進めておりますので、それに伴う
経費を三十年度の補正
予算として別途五千三百万円計上いたす予定でおります。科学
研究費の
事項は、前年度と同じ方法で組んでおります。四番目に新たに私立大学理科特別助成
補助金というのを五千万円計上いたしておりますが、これは
文部省の中央
教育審議会におきまして、私学
振興の方策として特に理科系大学の助成という御
意見もございまして、
経費のかかる理科系の私立大学について特別助成をいたそうと、こう
考えて五千万円計上いたしましたが、主として初年度は設備
関係を
中心に助成をはかりたいと、こう
考えております。
七番目の国際文化の交流の
事業といたしまして、
備考欄にございます四番目の
外国人留学生宿舎建設費補助、これを
明年度新しい
事項として要求しておりますが、御存じの
通り、現在
日本の国費によって
外国人の学生を招聘しておりますが、この学生たちのために宿舎を建設しようという
考えで、新たに二千八百万を要求いたしておるわけであります。その他は従来の
事業の継続でございます。
六番目の勤労青少年
教育の
振興の面では、定時制高校及通信
教育の整備、それから青年学級の
振興でありますが、これも先ほど来申し上げましたように、
補助金の
関係でございますので、減額をやむなくされておるわけでございますが、中身においてはそれぞれ
法律に基いて従来
通り施行いたして参る
考えでおります。
その次の育英
事業等の拡充でございますが、そのうちの育英会の
経費でございますが、
明年度四十二億を要求いたしておりまして、金額的には前年度と大した伸びを示しておりません。しかし、育英会自身におきまして、返還金の額が次第に増加して参りまして、これを学生に対する貸与金に使えることになっておりますので、その償還額が
明年度三億四千万円ほどございますので、国の貸付金は四十億でございますが、貸付は大体四十四億ぐらいできる見当でございまして、中身において、大学生において従来三千円口と二千円口がございましたのを、三千円口を拡大することと、それから高等
学校の貸与金が一律に七百円でございましたのを、継続分について千円口を新たに設けるということで単価の増を図っていく
考え方でおります。学徒援護会は、新たに第二
相談所を
設置して学生アルバイトの斡旋をいたそう。それから学生寮の建設は、前年度と同じように一千人分を目途にいたしまして三千万円を要求いたしております。
私学
振興は、特に顕著なものは変更はございません。
社会
教育でございますが、社会
教育の一般の社会
教育助成、この費目では、
備考欄にございますように、(5)、(6)、明年メルボルンで第十六回のオリンピック大会が行われますので、その選手
派遣費を二千万円計上いたしております。それから続いて東京でアジア・オリンピック大会の開催が予定されておりますので、それに必要な体育施設を整えるための準備費、設計費等を含めまして千五百万円、これが新しい
事項でございます。社会
教育特別助成金でございますが、これは前年度七千万円に対しまして同額でございまして、前年度ございましたいろいろな
事業の中から重要なものを続けていくという
考え方で計上いたしております。この助成金の中で次のぺ-ジでごらんいただきたいのですが、
明年度、ことに重点をおきましたのが婦人
教育の
振興、通信
教育の
振興という項目でございます。婦人
教育の
振興につきましては、新たに四百四十九万八千円を計上いたしまして、各府県における婦人学級の
振興を図っていこう。それから通信
教育の
振興、これは現在勤労青年約
文部省認定分で十三人万人ほどの受講生がございますが、その通信
教育の普及
事業に二百五十万円を増して計上いたしております。それから現在学士院と並んで芸術院というのがありますが、芸術院は自分自身の会館を持っておりませんので、新しく芸術院の会館を購入するために二千万円を計上いたしました。
ユネスコそれから文化財保護
事業、これら等については、だいたい従来の線を継続いたしておりますが、特に文化財保護
事業におきましては、
備考欄にございますように、三番の国立劇場を作るという案がございまして、
明年度はそれの設立準備費、これも設計費等が
中心でございますが、これを新たに計上いたしましたことと、
日本の古美術展覧会を海外で開催するのと、それから奈良の飛鳥朝の遺跡を
調査する、これらの
事項が新たなものとして計上されております。
その他のものを一括いたしまして
最後に計上いたしておりますが、三角が合計で三億六千九百万円ついておりますが、これは三十一年度においては三十年度災害が前年度において減っておりますので、災害減のために三角がついております。
特に文部本省の人件費でございますが、
備考にございますように、
教科書関係の
調査官四十五名、それから指導機構充実のための視学官六名、計五十一名の
人員増を含んでおります。
最後のページに国立
学校の、総括費用が載っておりますが、国立
学校の総
経費前年度三百八億に対しまして三百三十三億八千万、約二十五億の増になっておりますが、これの内訳はお
手元に別の
資料がございますと思いますが、そちらの裏の三枚目にございますのでごらんいただきたいと思いますが、国立
学校の
経費といたしましては基準
経費では教官
研究費、講座
研究費でございますが、講座
研究費約一〇%、それから学生
経費約二五%の増を
考えまして、基準
経費の増を見込んだわけでございます。
新規の
経費といたしましては、それぞれ従来の不完全講座の充実等をはかっておりますが、学科におきましては名古屋大学と九州大学に航空工学科を新設いたす
考えでおります。病院は診療室その他の増がございまして、前年度と比べて六億ほど伸びておりますが、
研究所、いろいろございますが、ここで新たに
京都大学にウィルスの
研究部門を
設置いたしまして、これは先ほど
提案理由がございました
法律改正を要する問題でございますが、そのほか
研究部門の増設といたしましてここに書いてございますが、おもなるものは東大の田無の原子核
研究所を新たに六部門増加いたしまして、従来の四部門と合せて十部門に
明年度からなります。それから上から四番目の化学
研究所、工学
研究所の二部門の増は、これは
京都大学の化学
研究所及び工学
研究所の二部門をそれぞれ原子力基礎
研究に振りかえて、ここで原子力基礎
研究を始めたいという構想でございます。前に戻りますが、大学としては大学の新規
経費の四番目に原子か基礎
研究施設の新設、東京工業大学において原子力の基礎
研究をいたしますし、
京都大学でこの化学
研究所、工学
研究所、これらの部門で原子力の
研究をいたそう、こういう
考えであります。総計二十五億ほど国立
学校関係で
経費を増加いたしております。前に戻って恐縮でございますが、総締めで
文部省経費明年度千三百五億三千四百万、前年度の千二百三十八億に対しまして大体六十七億の増でございまして、
明年度一兆三百五十億の一般会計
予算に対しまして、大体二二%を占めておるかと思っております。
以上
明年度の要求
事項別に従いまして
概略御
説明申し上げました。