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1956-04-12 第24回国会 参議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十二日(木曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————   委員の異動 本日委員東隆君辞任につき、その補欠 として小林孝平君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    理事            青山 正一君            重政 庸徳君            戸叶  武君            三浦 辰雄君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            横川 信夫君            江田 三郎君            河合 義一君            清澤 俊英君            小林 孝平君            溝口 三郎君            森 八三一君            千田  正君   政府委員    自治庁行政部長 小林與三次君    外務参事官   法眼 晋作君    農林政務次官  大石 武一君    農林省農業改良    局長      大坪 藤市君    水産庁次長   岡井 正男君    通商産業省通商    局長      板垣  修君    通商産業省通商    局次長     樋詰 誠明君   事務局側    常任委員会専門    員       安樂城敏男君   説明員    農林省農業改良    局総務課長   庄野五一郎君   参考人    大日本水産会副    会長      藤田  巌君    日魯漁業株式会    社副社長    小林小一郎君    北洋漁業協同組    合組合長    青木 貞治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件(北  洋漁業に関する件)(韓国海苔に関  する件) ○農業改良資金助成法案内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 戸叶武

    理事戸叶武君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  北洋漁業に関する件を議題にいたします。  御承知のように、去る三月二十一日、ソ連閣僚会議極東水域におけるサケマス制限措置発表され、出漁期を目前に控えて関係者に重大な衝撃を与え、わが国としてまことに遺憾とするところであります。その後当委員会は常に事態の推移を注視し、その間関係団体の陳情を聞き、事件のすみやかな解決を推進して参っておったのであります。ところが、一昨日四月十日の報道によりますと、ソ連漁業交渉に応ずる旨を伝えておりますが、この機会事件早期かつ完全な解決に善処しなければならないと存じます。そこで、きょう北洋漁業関係代表者から参考人として、この問題に関して、ソ連発表による制限措置影響及びその対策、並びに今後の交渉に関する問題点及びその対策等について御意見を伺うことにいたしましたところ、参考人各位におかれましては、時節柄きわめて御多忙中にもかかわらず、お差し繰り御出席いただき、ありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  ただいまから参考人の御意見を伺うわけでありますが、議事順序といたしまして、まず参考人三君から御意見を伺い、これが一通り終ってから各委員参考人に対する御質疑を願い、続いて各委員から政府当局に対して御質疑を願い、午前中にこの問題に関する審議を終りたいと存じておりますから、そのように御了承いただき、議事に御協力をお願いいたします。  では、ただいまからお配りしてあります参考人の氏名の順序に従って、参考人の御意見の御開陳を願います。大日本水産会会長藤田巖君。
  3. 藤田巌

    参考人藤田巌君) 大日本水産会の副会長藤田でございます。本日北洋漁業に関する参考人として意見を陳述する機会をお与え下さいましたことを、厚く、感謝を申し上げます。  三月の二十一日にソ連から発表いたされました極東水域におけるサケマス制限措置、これは日本北洋漁業にきわめて重大な影響を及ぼすものとして、私ども非常にこの成り行きについて懸念をいたしておりますわけであります。われわれとして常にこの問題について意見を申し上げております点は、一つは、こういうふうな措置がたとえ暫定的のものであっても、いやしくも公海における保存措置が一国の一方的な制限的措置によって行なわれてくる、これは困るので、やはり公海漁業における保存措置については、関係国間の話し合いによる国際協力、こういう形で推し進めることを希望をいたしております点でございます。  それから内容に関係いたしまして、われわれは、ソ連側が言っておりますサケマス資源の非常に枯渇しておる原因というものが、日本の沖どり漁業による乱獲にもっぱら基くものである、こういうふうなことを断定をいたします点について、私どもといたしましては容易に納得をいたしがたいと考えておりますわけでございます。しかしながら、その後四月の十日になりまして、ソ連日ソ漁業交渉に応ずるというふうな態度を見せて、それがロンドン西大使から通報がもたらされて参りましたことにつきましては、私どもといたしましては、一応話し会いをするきっかけの場所を得たという意味で非常に喜ばしいと考えております。これはかすかな期待をこの交渉にかけ、そうしていろいろな問題を全部解決していただきたいと、こう考えておりますわけでございます。  私どもはやはり当面の問題といたしまして、この切迫しておる漁期を控えて、何とかして準備もすでに万端終っております日本漁船出漁について、これが支障なく行われますように、あくまでも従来の御方針に従って準備をしておりますことが出漁できるように、それが解決するようにということの強い希望をまず切迫して持っておるものでございます。この点が実はソ連回答によりますと、若干不安の点があるように感ぜられるのであります。ソ連回答を新聞の発表で私ども承知するわけでありますが、ソ連は一般的な魚族資源保護及び海難船舶救助に関する協定を締結しょう、そうしてこういう協定が成立し実施された後に、現在ソ連政府がとっておるこの制限措置の問題について検討する用意がある、こういうふうな発表に聞いておるのでありますが、これについては、私ども若干ソ連の真意を把握するのに苦しんでおる点でございます。御承知のようにソ連制限措置というものは、これはあくまでも漁業協定が締結するまで暫定的におくものであるということは、三月の二十一日の発表に明らかなんであります。従って、一般の漁業協定ができますれば、そうしてそれが実施に移されますれば、この暫定措置というものは、ソ連発表によりますと、当然消えてしまうものでございます。その後またさらにこの問題についての話し合いということが起らないのじゃないだろうかと、どうも想像されるのであります。つまり、一般的な協定ができれば、そのあとはその一般的な協定に従ってやるというふうな筋道になるのじゃないかというふうに考えるのでございます。従って、私どもはむしろこの意味は、ソ連はむしろ交渉中であればわれわれの漁船は自由に従来通りやれるんだというふうな、そういうふうな甘い考え方について警告を発しておる、そういうふうに私どもは一応考えられるのであります。やはりわれわれといたしましては、この当面の問題でありますことしの問題についても、あらゆる機会をとらえて話し合いにやはり移していただきたいと考えております。もちろんこの魚族資源保持のためのこの問題を討議いたします場合に、一般的な漁業協定の問題といたしましても、暫定的な制限措置の問題といたしましても、おのずから関連性のある問題であるまいかと考えております。資源保持の問題を取り上げます場合に、おのずからソ連資源保持に関する基本的な考え方というものが明らかにされるでありましょうし、当然その基本方針に立つところの具体的の制限措置の現われとしての今回ソ連のとられました措置についての説明も当然あることでありましょうし、それに関連しての話し合い機会というのも当然あることであろうと考えております。従いまして、私どもはその点について若干の疑点を持つわけでありますが、ともかく話し合いがここに始まるわけでございますからして、交渉に当って政府会談のあらゆる機会を通じて、もちろんこの一般的な問題を話し合うこともけっこうでありますが、当面するこの問題についてもやはり安全操業が確保されるように、それが間に合いますように交渉話し合いをおつけいただきたいということが、私どもの現在漁業者の持っております気持でございます。  それから、なおもう一点申し上げておきたいと思いますのは、このソ連のとってきております措置についての意図の問題でございますが、私はこれはこのたびの措置についてのソ連意図は二つの点を含んでおる。一つの点はやはり日ソ国交交渉早期妥結ということを推進しようとするところの政治的の意図を持っておる。同時にまた資源保持についてのソ連考え方、将来漁業協定を結ぶ場合の資源保持に対するソ連考え方についてのまず当初案、第一回の意思表示をしてきておる、こういうふうに私は解釈をいたしております。従ってこのたびの問題の取り上げ方が、全体の問題を離れて単にこの資源的な問題としての話し合いというふうに出てきておりますが、私はソ連基本的な考え方というものに変更はないと考えております。従ってそういうふうな考え方からいたしまして、やはり日ソ交渉の全般についても関連をいたしておりますので、われわれはできるだけすみやかにこれを妥結する方向最大限の考慮を早くお払いいただきたいということを特に熱望いたしておりますわけでございます。会談が始まりましても、交渉前途は必ずしも楽観を許さないものがたくさんあろうと思います。甘く見てはならぬと考えておりますので、どうぞ一つこの会談によりまして、われわれの考えております安全操業解決し、また北洋漁業両国平和共存というものが確立をし、そうしてこの会談きっかけにして、全局的に日ソ交渉というものが望ましい方向に早く解決するように行きます契機になりますようにお願いをいたしたいと考えております次第でございます。詳細の数字的な説明については、ほかに参考人の方もおられますので、私といたしましてはそれは省略をいたしまして、以上簡単に意見を述べさせていただきました次第でございます。
  4. 戸叶武

  5. 小林小一郎

    参考人小林小一郎君) ただいま御指名をいただきました母船事業を経営しております日魯漁業株式会社小林でございます。本日は本委員会参考人としてお呼び出し下さまして、われわれの意見をお聞き下さることは、まことに幸甚の至りにたえません。母船業者としてのこの北洋サケマス漁業に関しての希望並びに実情を皆様にお話申し上げて参考に供し、今後のサケマス漁業の達成に御助力を願いたいと存じておる次第でございます。  この一両日中にソ連からの回答及び国内におきまする政府代表の決定などのことがありまして、私どもやや前途に明るさを感じておるわけでありまするが、藤田参考人の言われた通り、なかなか交渉が開けましても前途はそう楽観できるものではないと存じております。これに対しまするわれわれ漁業者希望は、藤田参考人の申し上げましたのと私ども全く同感であるのでありまするが、北洋サケマス資源保存維持の必要なことにつきましては、サケマス漁業を本業としておりますわれわれにとりましては、その必要性を深く認識しておるところでありまして、その繁殖保護及び漁獲に対する規制などにつきましては万全の策を講じて、その資源永久維持を考える必要があることはもちろんのことと考えておるわけであります。それと同時にわれわれ業者といたしましては、この資源維持し得る範囲において最大限漁獲を上げ、これを多くの人々のために利用し得るような形に変えることがわれわれ業者の任務だと考えておるのであります。資源維持の最後の目的は、われわれがその資源利用する点にあるのだということをわれわれ漁業者としては痛感し、またそれをわれわれの職務と感じておるわけであります。  現在日本ソ連は相隣接する海域でともにサケマス漁業を営んでおるものでありまして、その資源利用並びに維持につきましては共通の関係を持っておりますから、両国は十分にこの資源維持のことについては協力協議しまして、納得のいく、また科学的にも根拠のある合理的な方途を立てる必要があるものと考えておるわけであります。今回のようなソ連の一方的な、われわれの了解し得ないような制限規則を一方的に公表してそれを行おうとすることは、いたずらに漁場あるいは国際間に紛争を起しまして、円満に資源維持あるいは利用目的を達成することはむずかしいものと考えます。この意味におきまして、われわれは進んでソ連資源維持、あるいは漁獲規制について協議をし、その遂行に向って努力しなければならぬものと考えておる次第でございます。  本年度の私ども母船業者計画アリューシャン海域及びオホーツク海域で十九の船団をもってサケマスを約一億尾漁獲しようということであります。この漁獲数量は、ソ連公表いたしました資源壊滅の脅威になるような漁獲量だとは私どもは考えておらないのであります。それは戦前日本側母船漁業北千島根拠漁業、それに日ソ漁業条約に基く条約漁業、この三つを合せまして毎年一億五、六千万尾のサケ漁獲しておりましたけれども、その間何ら資源の消耗を来たすような現象を見なかったのでありますから、ソ連が沿岸で膨大な漁獲をしない限りは、一億尾日本側漁獲いたしましても、資源の枯渇を来たすようなことはないものだろうと私どもは考えておるのであります。ソ連太平洋及びオホーツク海のあの広大な海域で、漁獲制限量を二千五百万尾、五十万ツエントネルというような小さな規制を行おうとすることに、私どは首肯しがたい点があるのであります。またソ連公表の中に、ソ連のみがサケマス資源保護維持に努力しているかのごとくに公表されておりまするけれども日本におきましても、多額の巨費を投じて本州及び北海道に合せて約百三十数カ所のサケマス人工孵化場がございまして、昭和二十八年、二十九年、三十年の三カ年間の平均でも一カ年に平均約三億二千万尾のサケマスの稚魚を放流しているのであります。また漁撈方面につきましても、許可漁船の定数を政府において決定したり、遡河漁類保護培養、あるいは水産資源調査などにつきましては、いろいろの法令が設けられて、これは実施されておるのでありまして、日本サケマス資源維持には多大な努力をしておられるのでありまして、このようなことにつきましては、制限の具体的な方法資源維持方法、あるいは調査方法などは、これは一方的な公表のみによって行おうとしても、真の目的は達せられないのでありまして、関係両国あるいは関係国間で十分協議検討をして万全の措置を講ずるのが最もよろしい方法であり、また円満な解決の道が見出せるものと私どもは考えておるわけであります。  御存じの通り北洋サケマス漁業日本水産業に対する比重は非常に大きなものでありまして、本年の計画からみましても、先ほど申しました通り漁獲量を約一億尾と計算しまして、われわれは母船におきましてこれを製品化し、カン詰におきましては約二百九十三万箱、金額にしましておよそ二百五億円、冷凍、塩蔵その他の副産物製品約五万三千トン、金額にいたしまして九十五億円、合せて金額にいたしまして約三百億円の生産を上げようと計画しているのであります。この製品のうちカン詰は約二百五十万箱、金額にいたしまして百七十五億円を輸出に向ける計画をしております。残りカン詰約四十三万箱と塩魚その他の製品五万三千トンは、蛋白食糧として国内消費に当てられる予定をしておるわけであります、このことから考えますと。北洋サケマス漁業国際収支の面からもまた国民健康保持の面からも、日本にとってまことに重要な産業であるばかりでなく、他面におきまして、またこの生産に、産業に直接従事して家計を立てておる従業員の数は約二万四千人でございます。それとさらに本事業関連する資材その他の諸産業に従業する人たち、これにこれら従業員たちの家族を合せまするならば、この事業によって生計の道を立てておられる方々の数は数十万をもって数えることができると思うのであります。このような重要産業の盛衰は、わが国の経済及び民生に非常に大きな影響があるものと考えるのであります。かような観点から本事業日本産業として重視されてよい価値のものだと信じておるわけであります。  なお本年度計画に基きまして、現在整備しておりまする十九船団固定設備として、主としてこれは船舶でありまするが、どのくらいの資金を投じておるかを御説明申し上げたいと思います。母船は十九隻でありまして、この総トン数が約十三万九千トンでございます。価格にいたしまして約百三十一億円以上に相なると考えます。これはなおそのほかに調査船八十八隻、総トン数にいたしまして約九千四百トン、価格にいたしまして二十八億四千万円くらいに考えられると思います。母船側ではありませんが、このほかに独航船五百隻ございまして、この総トン数は約三万五千五百トンと相なります。それを金額にしてみますと、これには底びきの権利放棄をもその船価を考えまするならば、約百十六億三千万円くらいに相なりまして、直接この事業に参加する母船及び漁船の総数は六百七隻、その総トン数は十八万三千九百トン、金額にいたしまして二百七十五億九千万円くらいに上る巨額な投資をしているわけであります。  以上のほかに漁網、漁具、室カンその他所要資材は本年すでに全部注文済みでございまして、また従業員二万四千人の雇用契約も全部完了しており、契約金前渡し金の支払い、あるいはこれら資材のすでに支払った金額ども非常に多額に上っておるのでありまして、すでに準備はでき上りまして、われわれ業者としては何としても本年は事業計画通り遂行しなければならぬ段階に立ち至っている状態であるのであります。  このような状態にあって、このたび先日のソ連公表があったのでありまして、われわれも深刻に困惑を感じたのでありまするが、幸いにいたしまして、ソ連からロンドン国交回復交渉と切り離して、新しい両国代表によってモスクワ漁業協定締結交渉が開かれることに相なり、日本代表団も明日中には決定されるようでありまして、この点われわれ前途にやや明るい希望を持ち始めたわけでありまするが、何分にも北洋サケマス漁期は切迫しておるのでありまして、今月の二十八日にはアリューシャン海域に十二船団母船隊出漁させる計画をしており、準備はすでに完了しております。引き続きまして五月の十五日には七船団の船隊をオホーツク海域出漁させることにいたしまして、この準備も八、九分通りは完了しているのであります。もしこのモスクワ交渉がその漁期までにわれわれが安心して出漁ができないようなことになりまするならば、その影響はわれわれ業者のみならず、あらゆる関連の部門に大きな悪い影響を与えることとなるのでありますので、私どもは一日も早くモスクワ交渉を始められ、われわれの出漁までには安全感を持って出漁し得るように日本政府及び代表にお願いしたいと考えておる次第でございます。もちろん交渉前途はそう簡単に参らぬということは覚悟しておりまするけれども、できるならば基本漁業協定とともに本年度出漁を安全にするための取りきめも急いでまとめていただきたいという念願をしておるわけでございます。  以上をもって母船側考え方を申し上げた次第でございます。ありがとうございました。
  6. 戸叶武

  7. 青木貞治

    参考人青木貞治君) 私は青木と申します。北海道独航船船主であり、独航船の固まりの団体である北海道漁業協同組合組合長であります。  北洋サケマス漁業につきましては、当国会におかれまして非常なる御関心を持たれ、累次重要なる御会議を催されまして、私どもこの漁業の一端に携わる者としましては、常に感謝を申し上げておるのであります。ただいま藤田さん、小林さんの両参考人からお話がありましたので、ほとんど言い尽されておりまするが、いささか私ども独航船の立場におきます見方というものを補足的に申し上げて御参考に供したいと考えます。  この北洋漁業につきまして御認識を深めていただきたいことは、日本水産業においてこの北洋漁業水産業中一番大事な事業であるということなのであります。下関、長崎等におきまする以西底びき網漁業一つ遠洋漁業、その次に三崎、清水、焼津等根拠とするところの太平洋、インド洋の  マグロ漁業、これが第二の遠洋漁業、第三には南極の捕鯨漁業とこうなっておりまするが、この四番目の北洋漁業なるもものはこの四つの中の第一に位するものと考えております。ただいま母船側からお話がありましたので、その母船式漁業の形態なるものの全貌を御承知でありまするが、独航船側から申しまする一つの特質とでも申しまするか、これについて申し上げますが、まず分布状態母船調査船等約六百隻のこの船主経営者従業員この分布がどうなっておるかと申しますと、この漁業家は石川県から始まりまして富山県、新潟県、山形、秋田等、それから太平洋面は千葉、茨城、福島、宮城、岩手、青森に至り北海道を含めまして、実に関東以北の全日本の半分の地域にわたりまして、経営者船主従業員がこの北洋漁船生計を営んでおることなのであります。これがいよいよ四月二十八日を期しまして函館に集まりまして、函館から一斉に十二船団、その付属するところの三百十五隻というものが出帆する準備を着々整えて、私どもは勇躍出帆することになっておったのでありまするが、はからずも三月二十一日のあのソ連声明がありまして、われわれ一同全く暗やみに突き落されたごとく感じまして、それぞれの各県の漁民大会、また北海道各地漁民大会、ひいては東京における漁民大会というものを催しまして、昨日も総理大臣閣下に陳情申し上げた次第であります。ソ連の言うごとく、かの東経百七十度二十五分の線から西の方においては外国の漁師は二千五百万尾以上とってはならぬ、とることを制限するという声明通りわれわれが守らなければならぬものとしまするならば、一体いかなる影響があるかということが重大な事柄でありまするが、昨年東アリューシャン沖合いにおきまして独航船一そうの漁獲数量は、平均しまして約十五万尾となっております。その十五万尾でもって二千五百万を割りますると百六十六そうという数が出て参りますので、本年予定出漁船五百隻からそれを引きますと、残り三百三十四そうというものが余って、結局着漁できない、全休もしくは全廃ということにならざるを得ないのであります。かりに全船五百そうが出漁しまして、途中で二千五百万尾になったからお前たち帰れと、こういうようなことになりますというと、予定の収獲の二割か二割五分でもって切り上げて、独航船もまた母船も大きな赤字をしょって泣く泣く帰らざるを得ないというような事態に当面することになりましょう。私どもあの声明を聞いて非常に憂慮にたえず、あらゆる運動を起しましたわけですが、幸いに昨日来河野大臣が全権として、代表として行かれるということでまず一応の胸をなでおろしました。いかようなることに進みますか知りませんが、切にこの日ソ漁業交渉の成立することを期待して念願してやみません。この際私一個と申しますか、組合全体の考えではありませんが、資源愛護ということについて一体何らかの考え、あるいはまたソ連のこの制限措置について何かいい論議の根拠はないのかということが大事なことと考えますが、ソ連の言うところの、自分の国に上ってきて産卵する大事な資源は愛護しなければならぬ、沖でとるところの日本人も協力せよということは、これは藤田さんまた小林さんのお話通り、私どもも愛護のことについての協力については実に何らの協力を惜しむものではありません。現に私ども北海道におけるサケマス養殖事業に大いに協力すべしとして、われわれの組合費の実に一割に及ぶ金額を寄付してその事業を助けておるようなわけでありまして、全くこの資源愛護については全面的な協力を惜しまないものであります。ただソビエトなるものが自分の川に上るのであるから、自分のところはまずなんぼとってもよろしいのだ、沖でとることはまかりならぬのだ。なんぼとってもよろしいということではないでしょうが、とにかく領海内においての漁獲制限しない、沖合の方だけ制限するということについては大なる不満を抱くものであります。私はこの太平洋オホーツク海におけるサケの回遊は、一つの大きな牧場であると考えるものであります。サケは五カ年でもって成魚となって川に上って産卵するのでありますが、最初の半年、一年はいわゆるソビエトの領海、あるいは千島列島、あるいは北海道の川等で育ちまするが、あとの四年は海洋で遊泳して索餌をして成長するのであります。その牧場の管理者はわれわれ日本人であるといって過言でないと考えますので、もし資源を、育て上げた魚をお互いに分けようではないかというならば、ソビエトはむしろその五年間の中の一年分をとって満足すべきでないかと考えるのであります。少々勝手な議論かもしれませんが、一説としてお聞き取りを願いたいのであります。  それからソビエトはわれわれ日本の漁師がむやみにとり過ぎるということばかり言っておりますが、このサケマスの外敵を取り除くということについては、知ってか知らずか、知らぬ顔をしておる点があるのであります。それはアリューシャン列島、コマンドルスキー諸島、それから千島列島、樺太の海豹島にオットセイ、アザラシ、海馬というようなものが最近は四百万頭もの大群が生息しておる、繁殖しておるということでありますが、これは一体サケマスについて何らの外敵ではないという観察をしておるのでありましょうかどうか。よく私は動物学者でありませんから、一体海獣が一年にサケマス類を何匹食うかということは私はこれをきわめておりません。しかしながら、その四百万頭がかりに一日に半匹のサケマス類を食い殺すのでありまするならば、一日に二百万尾、十日で二千万尾、百日で実に二億尾というものを食い殺すということになるのであります。もとより一年中サケマスばかり食っておるわけではありません。が、日本人にわずか二千五百万尾しかとることを許さぬ、そういう海獣の大群には二億尾も食ってよろしいということはあり得ないと考えるのでありまして、この日ソ漁業交渉に当りましては、切にそういうことも大いに論拠の種にしていただきたいと考えるのであります。  先ほど北陸、東北、北海道の一万数千名の漁師がこの独航船経営者であり乗組員であると申しましたが、すでに御案内のごとく、日本内地、北海道もそうでありますが、漁業者は実に生活上の苦難の境地に陥っております。そのところに、このたよりにしておりまするところの北洋漁業に大制限を受けて、ソビエトのいうごとく、北洋の利益に均霑できぬというようなことが万一にも起りまするならば、いわゆる関東以北の漁民の生計はまことに哀れな事態に陥ると考えまする。どうか諸先生におかれましてはこの点をよく深刻にお考え下さいまして、われわれ独航船北洋漁民のために御協力あらむことを切にお願い申し上げます。
  8. 戸叶武

    理事戸叶武君) 以上で一通り参考人の御意見を伺ったのでありまするが、これに対して御質疑の向きは順次御質疑を願います。
  9. 千田正

    ○千田正君 この問題は御三人からいろいろ伺いましたが、すでに当委員会としましても、当初からお互いに慎重に研究しておったところであります。それですでに新聞紙や何かにおいて発表もされておりますから大体のことはわれわれも知っておるのですが、ただ私はこの際、漁業を実際に営む方々の心がまえをはっきり聞いておきたい。ことにきのうから立場がだいぶ変ってきておる。たとえて言えば、今度は河野農林大臣が全権かあるいは特使か知らぬけれども日本政府代表してソ連側交渉する、ただいま非常に希望が明るいようになったというお話でありまするが、確かに窓はあけられるでありましょうが、そう簡単な問題ではない。そこで藤田さんにお伺いしますが、かってわれわれは四年前、あなたは当時の水産庁長官として日米カナダの条約に関しまして大いに御奮闘なされた。私も当参議院の方からオブザーヴァーとして出席した一人であります。その当時マッカーサー・ラインが撤去されて、その後にアメリカ及びカナダからあのような制限を受けなければならなかった。もちろん駐留軍その他がおった当時の一つの強力なる外国の勢力のもとにわれわれとしては屈服しなければならない状況のもとに日米カナダ条約というものは結ばれたけれども、あれは、日米条約及び日米協定のいわゆるはしりとして、一番最初の条約として日米カナダ条約が結ばれたのでありまするが、今度も非常にわれわれの危惧することは、日ソ条約がこの漁業協定一つの前提として結ばれるかどうかというところに大きな観点があると思うのであります。そこで私はソ連側の考えはそう簡単じゃない。われわれは甘く考えてはならないと思うのは、新聞紙上にも発表しております通り、この制限措置協定締結後でなければやらない、こういうことをソ連側は言うておるのであります。各新聞で御承知通り、魚族保護と海難船舶の処理についての交渉ソ連側が同意しておる。そうしてこの問題はモスクワか東京においてやろう、ただし北洋海域における漁業制限措置などについてはこの協定締結後においてでなければその措置を講じない、ここに私は重大なポイントがあると思うのであります。協定後でなければ制限措置を講じないとするならば、協定そのものが数カ月われわれは要すると思う。これはあなたも一私もかってアメリカ、カナダを向うに回して、お互いに日本の水産のために働いた当時から考えましても、相当日本側に了解を持っておったアメリカ、カナダさえも二カ月もわれわれは要してようやくとにかく妥協点に到達したという過去のことから考えまして、ソ連側はこの漁業条約を切り離してかりにやるとしましても、そう簡単には私はこの協約はできないのじゃないか、私はそう考えるのです。ところが、一方においては漁船は明日からでも出航しなければならない実情にある。そこで一体これは今後河野さんや、藤田さんもいらっしゃるようでありますが、日ソ交渉とは切り離して、その事前の処置としての漁業協定をやられるのだという御意思でありますか、お考えでありますかどうですか。その点はどういうふうにお考えになりますか。その点を藤田さんにお伺いしたいと思います。
  10. 藤田巌

    参考人藤田巌君) 今の千田先生の御質問は、会談に臨む政府の御方針関係するように思いまするので、私どもはその会談に顧問として行くとか行かぬという問題もございましょう、まだこれも正式に決定されたわけでもございませんので、やはりどういう方針で臨むかというような御質問に対しては、ちょっと私からは意見をこの際は申し述べることは差し控えておきたいと思います。
  11. 千田正

    ○千田正君 それでは藤田さんにお伺いしますが、おそらく何らかの制限を伺う側は待ち出してくる。で、日本漁業界としましては、かりにそういう制限はのみ込めないとするならば、このまま出漁を続行するというようにお考えになっておるかどうか。それは制限にもよるでしょうが、納得のいかない制限であったならば、われわれはもう出るのだと、こういうお考えでしょうか。これは藤田さんからもそれから小林さんからもお伺いしたいと思うのです。青木さんにもお伺いしたいと思います。
  12. 藤田巌

    参考人藤田巌君) われわれ業界といたしましては、政府を御信頼して既定方針通り、せっかくもう準備の整っておりますこの計画を、本年の漁期もやはり平和裡に操業さしていただきたいと、こういうことを念願しておるわけなんです。でありますからして、政府が行っちゃいかぬと、こういうふうな特別の御指示があれば、これはまたそのときの問題でございますけれども、そういうふうな御指示のない限り、われわれとしてはあくまでも政府を信頼して既定方針によって出漁をしたい、こういうふうに考えております。ただ交渉のことでございますから、おそらく話し合いがつかないで漁場に行ったときには、これはいろいろのトラブルが起るでろう、こういうふうに思います。ですから、一方交渉が開けておるわけでございますからして、やはり話し合いということによっていろいろと相互に理解を深め、そうして相互に納得する形で話し合いがまとまって、そうして無事に出るというふうなことを期待しておるわけであります。
  13. 千田正

    ○千田正君 その無事に出るというのは、私は無事には絶対出られないという観点のもとに立っておる。これは理論の相違としましてもですよ。一つ制限は必ず加えられる。その加えられた場合に、それをいわゆる政府がかりに今度は河野さんが行って、ある程度の妥協点が出てきて、その妥協点そのものが、皆さんが十九隻の船団を組んで五百艘の独航船が行くと、これにある程度の制限が加えられる。おそらく加えられますよ、これは。加えられた場合に、先ほど小林さんがおっしゃった、いわゆるすでに準備をしておるところのそうした損害その他に対しては、あなた方はこれはもうやむを得ないと、国はそういう方針できめたのだから、この損害はわれわれが負担するのだという心がまえができているかどうか、その点はどうなんです。
  14. 小林小一郎

    参考人小林小一郎君) そういう点につきましては、私ども現在の考え方は、これは根本的に政府の許可を得ての漁業でありまするので、政府が許可されて許可証をいただいて、出航をしてもよろしいというときには、モスクワ交渉の進展いかんにかかわらず出漁するつもりでおります。政府が出航しては相ならぬと差しとめられる、あるいは出漁中の状態によって事業の中止を命ぜられるとかというような場合が起きました場合には、われわれはこの損害について別途に考えていかなければならぬというふうな気持を持っておるのでありまするけれども、今はまだその段階に立ち至っていないというふうに考えておるわけであります。
  15. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 関連して……。ただいまの千田委員の質問に関連しておるのですが、先日新聞で拝見したのでございますけれども、この出漁に対して業界としては自粛の方法をとっても出漁したい、こういうふうなことが新聞紙上に見えておりましたが、業界といたしましてその自粛のやり方というものはどういうことでありますか。その自粛によって、この事業がかりに相当の制限を受けてもその自粛方針によっていけばある程度の仕事ができる、こういったようなお見込でありますか。これは私は新聞で拝見したのであって真偽はよくわかりませんが、たしか藤田さんの御発表じゃなかったかと新聞紙上では拝見したのですが、その点はいかがですか。
  16. 藤田巌

    参考人藤田巌君) 私はこれまでにそういうふうなことは発表をいたしておりません。もちろん話し合いでございますから、交渉に応じるということは、双方とも自分の言うことを一方的に言うだけであればそれは議論をしに行くだけであってまとめる態度でない。ですから話し合いをしようということは、お互いに話し合いによって双方の理解を深め、また納得し合うところは双方が納得し合う、こういうふうな態度でわれわれは考えておるわけでございます。またその話し合いの結果、いろいろの日本北洋漁業出漁についての制限的な問題に触れることも出てこようかと考えております。われわれといたしましてもいろいろの場合を想定して考えてはおりまするけれども、これは正式にまだ業界としては決定をいたしておりません。具体的にどうするこうするということは決定をいたしておりませんし、それからまたそういうふうなことについてはやはり交渉上に関係をいたすことでございますからして、これから始まる交渉を控えて、私どもといたしましてはあまり具体的に意見発表いたしますことは控えさせていただきたいと考えます。
  17. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 私もさように考えておるのでありますが、今これから交渉が始まろうというときに、自分の方はこういうふうな自粛の方針で行くんだということをあまり先ばしって発表することは、果して得策であるかどうかということに多分の私どもも懸念を持っておったわけでありまして、たまたまその新聞を見たときに私はある程度の驚きを感じたわけでありますが、そういう御趣旨でもって御発表になったわけでもなく、まあどういう方面からそういうことが出たかわかりませんが、業界において今後もいろいろと御相談がしばしば繰り返されると思いますけれども、この点は交渉を始める前、あるいは交渉中においてもよほど慎重にお取扱いにならないというと、交渉する立場の者も非常にお困りになりましようし、それが必ずしも日本側の利益になるとも思えない節がありますので、私はその点を伺ったわけでありますが、そういう御趣旨であるならば、今後かような御相談は発表しておもしろくないというものは十分警戒をして御相談をしていただきたいと考えます。
  18. 青木貞治

    参考人青木貞治君) 独航船側の意気込みについてお聞き取りを願いたいと思っております。三月二十一日のソ連発表後、非常に母船側もわれわれ独航船側も気分としましては大いに動揺しました。しかしながら先ほど来申し上げました通り日本の第一番のこの水産業北洋サケマス漁業というものを守るためには、われわれ独航船は断固としていかなる障害をも排して出漁すべきであるという決心を固めまして、よしんば母船側が非常な損害が予想されるのでしり込みされるというようなことであるとしても、独航船は出ようじゃないかと奮起して、万難を排して出漁しようじゃないかというような決意を固めまして、それを母船側に通じました。今日なおその意思は強固として保持しております。でありまするので、この二十八日にはもう断々固として出漁しようという意気込みに燃えておりますから、一応御参考までに申し上げます。
  19. 千田正

    ○千田正君 なぜこの問題を私質問するかといいまするというと、単なる漁業の問題じゃないですよ、これは。北洋漁業の問題であるならば、切り離して話し合いも進めるだろうし、損害も何ら考えることなく堂々とやってもいいのでしょうが、この背後には必ず領土問題、あるいは戦犯の釈放問題、その他次に来たる日ソ交渉という一つ基本的な国と国との条約というものを背景に持った一つの問題として、今度河野さんが行かれてもその背景を前提として問題が出てくると思うから、私どもは皆さんの覚悟のほどを聞いておかなければならないと思うのであります。そこで私は本会議において質問したときも、相当の準備をしたのを、いざというときにはあくまで業者出漁する、出漁した場合にソ連納得がいかない場合においては拿捕あるいは抑留という問題が起きてくる。それに続いて今のあなた方の準備した資金資材も一切壊滅する、この補償をだれがやるのだ、これを私は日本政府にただしたけれども、答えがなかった。河野君も答えなければ重光君も答えないし、鳩山総理大臣も答えない。それだけに私どもはあなた方の決意のほどを聞かなければならない。というのはいかなる損害を受けてもわれわれ断固として行くのだという考えを持っておるかどうか。拿捕された場合においては、これは政府がやれなかったのだから、政府がこれを補償すべきだという考えでも、とにかくやるというのか、その辺のところが、ただ行きたい行きたい、行くんだということでは問題は解決しないと思う。抑留されても、拿捕されても、損害を受けてもわれわれは断固として行くのだという御決心であるかどうか。その点はぜひ伺っておきたいということと、それから今船団独航船だけを皆さんから伺いましたが、このほかに四十トン未満のいわゆる今までの許可漁業としての延べなわ、流し網の零細漁民の行くところの船が三千トンある。かりに拿捕されたり何かすると、これまた膨大な損害になってくる。そうしまして、この北洋問題は先ほど青木さんもおっしゃった通り、大きな日本漁業資源確保の問題からも慎重にかまえていかなければならぬ問題であるだけに、農林水産委員会としては、政府に対してはあくまでこれに対していかなる方針でいくかということをたださなければならぬ。同時に国内における皆さんの業者の覚悟のほどをわれわれ伺っておかなければならぬと思うので、特に皆さんから今日は御意見を伺うわけであります。一体損失があっても、あるいはその船団側の方は、たとえば小林さんたちの方は何とかして抑留されたり拿捕されてもその家族の生活ぐらいは保護するのだ、保証してやるのだ、こういうお考えであるかどうか。これは日魯を代表しておいでになっておりますから小林さんに伺いたいのですが、どうなんです、あなた方の船団人たちはそういう問題が起きたならば、自分らの方で漁民の生活の保護をある程度やるのだ、こういうお覚悟ができておられるかどうか、その点伺っておきたいと思います。
  20. 小林小一郎

    参考人小林小一郎君) ただいまの千田先生の御質問、まことにごもっともな質問としてありがたく拝聴する次第でございますが、かような例は少数の点におきましては当社は経験を持っております。シナ東海におきして、これは私どもの会社だけではございませんが、中共、韓国に拿捕、船員は抑留ということがありました。この場合私ども組合保険によりまする、われわれ戦時保険と申しておりますが、拿捕保険、それから給与保険をもって抑留者の生活の一部を政府に依存して、国家に依存してやる。組合保険の給付金でまかなう、しかしそれでは足りませんので、私ども自分の資金をそちらに流しまして、生活をでき得る限り補助をした例を持っております。もしもさような場合が起きましたときには、先ほど千田先生がおっしゃった、ある程度という言葉がございました。まことに含蓄のある御言葉だと感じておりまするが、われわれ従業員に対しまして、会社の力の及ぶ限りの程度のことはしてやるのが義務だと現在考えておるわけでございます。
  21. 清澤俊英

    清澤俊英君 あまりしろうとくさい質問になりますが、一方的な制限というのですか、という話を聞きまして、同時に一応これだけの船団を組んで出て行くというからには、政府としては何かはっきりした根拠があってこれだけのものを組ましたのだろうと思うのですが、その点……。
  22. 戸叶武

    理事戸叶武君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  23. 戸叶武

    理事戸叶武君) 速記をつけて下さい。  まだ参考人に対する質疑もあると思いますが、政府当局に対しての御質疑もあるので、両方ともにするようにしたいと思いますが、どうでしょうか。
  24. 千田正

    ○千田正君 私は実は参考人にもう少し聞きたいのですよ。そうして政府に聞きたいのです。
  25. 戸叶武

    理事戸叶武君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  26. 戸叶武

    理事戸叶武君) 速記をつけて下さい。  もう少し参考人に対する質疑を継続いたします。
  27. 千田正

    ○千田正君 藤田さんにお伺いしますが、今までの御論議は大体船団独航船で、あなたは大日本水産会の立場でやはりこれは零細漁民のことも考えなければならない。そこで今のいわゆる流し網だとか、あるいははえなわ等に対する、いわける四十トン未満の船が相当行きます。これに対してはどういうふうにお考えですか。やはり断固として出漁するのだという態度でまあこの人たちが行くとすれば、それを大いに応援してやる、こういう立場ですか、大日本水産会の立場は。
  28. 藤田巌

    参考人藤田巌君) ソ連がどういうふうな手を打ってくるか、これはわからぬわけでありますが、私どもの想像するところではやはり日本の最も何と言いますか、急所のところへもしもあちらが手を打ってくるとすれば、打ってくるであろうと思います、順序といたしまして。そういうことを考えますと、やはりソ連のカムチャッカに接近するような母船式漁業、これがやはりまずソ連がもし打ってくるとすれば、そういう方面から手をつけてくるのであろうと思います。もちろんそのほかの零細の漁業もこれは出てはおりますけれども制限区域内には操業いたしますけれども、まあわれわれの観測といたしましては、すべてのものにそういうふうにソ連がやってくるかどうか、これは若干いろいろ疑問があるわけであります。でありますから、われわれといたしましてはとりあえず最も懸念されるところの母船式漁業形態、これをどうするかということに主眼を置いて現在研究しておるわけであります。もちろんほかの方も忘れておるわけではございませんけれども、そういうような問題についても、やはりわれわれといたしましては、あくまで正しいと考えておる方向については、これはあくまでもそれが実行できるように安全操業を確保してもらいたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  29. 青木貞治

    参考人青木貞治君) 独航船側の立場から、ただいまの千田先生のお話関連しまして、結局万々一独航船が拿捕される、あるいは母船が拿捕されたような場合には莫大な損害が起るのだが、一体それらに対する会社もしくは船主経営者等はいかなる覚悟を持っているかということでありまして、まずわれわれはこの出漁する決心をしますにつきまして、その損害に対する覚悟が定まらんで出ることはできないのでありますが、幸いにも漁船の拿捕保険というのがありまして、一応北洋もその恩典に浴することに、少くともわれわれ独航船に対しましてはただいまのところ有効と考えておりますので、これは過日岡井水産庁次長殿にもお伺いしましたが、独航船が少々拿捕されてもその損害に対する船体の保険、また従業員に対する給与——ある最低保障ですね、最低給与の点は保険制度がある、こういうような御答弁でありまして、私ども独航船としては第一番にたよっておりまする点はそれであります。ただし母船のような大きなあの数十億の資産が拿捕されたような場合の損害の補償が果して現在の拿捕保険に適用されるかどうか、それは私ども理解が参っておりませんので、実は過日大日本水産会委員会においてまことに差し出がましいと思いましたが、実は私ども独航船のことでなくて母船の方が心配でたまりませんでしたから、えらい社長さん方がずらっと並んでおられた席上で、皆さんこれは母船が万一の場合には非常に損害がありまするが、これは今から一つ政府に対して損害の補償を要望されてはいかがですかというようなことも実は差し出がましくも申し出ました。というのは、とにかく母船はわれわれの母親みたいなものですから、何とか母船事業の安泰ということをこいねがうあまりにその発言となりましたが、しかしそれはわれわれ独航船主の手の届くところではありませんので、どうか諸先生方におかれましては、その点安んじて出漁できるような点に御協力願うことを希望いたします。
  30. 戸叶武

    理事戸叶武君) 以上で参考人に対する質疑は終ったのでありますが、次いで政府当局に対する御質疑の向きは順次御質疑を願います。  なお、ただいま政府からの出席者水産庁次長の岡井正男君、外務参事官法眼晋作君であります。
  31. 千田正

    ○千田正君 この問題はさっきも申し上げました通り、われわれ委員会で何回も当初北洋船団を組んで行く場合においても政府にただし、漸次増強してきた今日においても、この面に対して心配はないかということを幾たびもわれわれは農林大臣及び水産庁長官にただしているのであります。ということは、いろいろな制限がいわゆる公海の上に加えられてきている、各国から。そうして日本のいわゆる領土でもない。日本人がもう土地という土地はわずか四つの島に閉じ込められてしまった。海以外に日本民族が活躍するところがないのだ。その海さえも李承晩ラインであるとか、あるいは日米カナダ条約であるとか、あるいはビキニの爆弾の実験のための制限であるとか、こういうふうにだんだん狭められてくる。これに対して将来の日本の原始産業であり、また生産の大宗であるところの水産業というものの育成ということを考えた場合には、簡単においそれと、それだからいいというわけにはいかぬだろうというわけで、私たちは何回もこれに対して忠告もしたし、政府側の慎重な態度を要請したのだが、ついに今日に至ったわけです。  そこで今度は、大きな問題は二つあると思います。さっき私が言いました通り、必ずこれは漁業問題だけを切り離してそれのみを考えておるのではない。外務当局の法眼さんに伺いますが、一つ日ソ交渉としての問題が必ずこの背後にある、これと見合いのもとに漁業交渉というものが今度あなた方が行った場合に行われるとき、日本側が不利だと思えば断固これを拒否しなければならぬ場合もあるかもしれぬ。そういう場合においては拿捕を覚悟で各船団が参ります。そうすると今のような損害が起きる。それからかりに何らかの形において妥結したとしましても、私は今日本が考えておるように全部の船団が行けるような立場にはそう簡単には相なるまいと思う。しかも出漁が明日に迫っている今日ですから、モスコーで話し合いを始めたときから、もう出漁をしていかなければならない立場にあるのだが、その途中において、話がついたのだからこの程度でストップするのだという場合における損害等に対しては一体政府がそれに対する補償等のことを考えておるのかどうか。これは岡井さんにお伺いしたい。  それから法眼さんには、日ソ交渉漁業協定というものは切り離して行うのだという向う側の意図であるのかどうか、私はその背後には必ず日ソ交渉というものが本交渉というものはくっついてくる。そういう場合においてかりに今度のが妥結されたといたしましても、これは本交渉に持っていかれると思います。その観点を伺っておきたいということと、水産庁に対しては、かりに話し合いがつかなかった場合に強硬に出漁するかどうか、出漁したときの損害はどうなるのだ、あるいは妥結してもある制限は受けて、それに対して出漁制限をしなくちゃならなかった場合においては、その制限せられた部門に対するところの補償は一体政府がやるのか、それとも準備した上でやむなくそれは損害なのだということであれするのか、考えはしないのか、この点について外務当局と水産当局から所信のほどを承わっておきたいと思います。
  32. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 私に対する御質問の分についてお答えいたします。  この問題は御承知のごとく、ロンドンにおきまして日ソ交渉が継続中であり、それが御承知のごとく三月二十日に一応領土問題、その他の問題を残して他の問題について話がきまった。がしかし、領土問題についてはなかなか話がきまらなかったので、一応今日のようなことになったのは御承知通りであります。ところがソ連側はそれに次いで三月の二十一日にあのような一方的決定を発表したということも御承知通りであります。そこで日本政府は松本全権に訓令をいたしまして、このソ連の決定は一方的な行為であって、日本としては主義上承服できないのである、しかしながら日本としては実際的解決方法を考えるにはやぶさかではないのだ、そこで魚族資源を保護する措置その他については話をしてよろしい、こういうことを申し入れたのでございます。それは二十二日、二十三日の両日にわたって松本全権から先方に日本の主張を申し入れました。これに対しまして、この九日にソ連側からマリク全権が、西大使に対しまして日本側の申し出を了承した、そこで日本側の申し出ておるように、魚族資源の保護と保持とそれから海難救助の場合に関する協定を結ぶ話し合いをすることに同意をする、右の協定話し合いをしようじゃないか、ということを申してきたわけであります。  そこで問題は、この漁業の問題の魚族資源の保護と海難救助に関する協定を作るというのが今回やがて開始さるべき話し合いの実は内容でございまして、それについて話を始めるということに御了解を願いたいと思うのでございます。  そこで、それが全般の問題といかなる関係を持つかということは、これは今いろいろと場合を予定して議論をするということは、私はここでは避けさしていただきたいと思います。これは当面の問題といたしまして漁業の問題に関する話をするという場合でございまするから、それがそれ以外に何かあるのじゃないかということを質問されましても、これは私としては、今回の話し合い魚族資源保持と海難救助に関する協定であるという日ソ間の合意が成立したことをそのままここで話をするという以外にはないわけでございます。
  33. 千田正

    ○千田正君 そうならば、今の法眼さんからのお話は、日ソ交渉の本格的な問題は触れたくない、その点もよくわかります。それならば向うが言うてきておるところの魚族資源の保護、かりに魚族資源の保護ということだけをとらえて言いましても、今までのような状態出漁可能であるかどうか、私は制限は必ずくると思う。魚族資源保護という名前を彼らは打ち出してきている以上は、魚族資源保護というものに関しての条項を打ち出してくると思いますが、そうなると私は制限というものは必ずついてくると思いますが、そういう考えは起きませんか。
  34. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) お答えいたします。今回のモスコーで開始されるべき話し合いにおきましては、今まで申し上げました通り魚族資源の保護とそれから海難救助の協定ということに目的がはっきりいたしておるわけでございます。さて、しからば魚族資源保持するということはいかなることかという点でございます。これはいろいろなことが考えられるわけでございまして、それらのことにつきましてもいろいろな準備をいたしておるわけでございますけれども、これも先方と話し合いをしてみなければわからぬわけでございます。日本の案はございますけれども、先方と話し合いを始めて具体的に進んでいく前に、この際その内容の範囲はこうであるということは、日本としては一方的には申せないことでございますので、この点も今後の交渉と相待ってだんだん判明いたす問題であろうと御了解を願いたいと思います。
  35. 千田正

    ○千田正君 この問題につきましては、昨年イタリアのローマにおいて、国際漁業資源保護会議において各国の学者が参会してお互いに議論を戦わしたときに、ソ連と、日本の水産庁から朝永君が行きましたが、その間に対立があったわけです。これは御承知だろうと思うのです。ソ連の主張はあくまでも日本サケマス漁業に対しては制限を加えよう、これはソ連が一致した意見をもって今でも堅持している。だからこそわれわれに対して侮辱的な言葉ですでに北洋サケマス公海において略奪する漁業をやっているのは日本だ、こういうことをこの間向うの政府発表しているじゃありませんか。だから資源の保護という名前を打ち出してきた以上は、必ずこの問題は出てくる。だから資源保護に対する制限というものを向うから打ち出された場合は、け倒してでもこっちがやるという覚悟であれば、その損害をどこが背負うのだということを、これは水産庁に承わっておきたい。必ず出てくる。これはローマの論説を見ても、今ワシントンにおいてやられておるところのラッコ、オットセイの会議においてさえもこの問題は起きてきているのですから、だから当然ソ連側としては資源保護という名をかりて日本漁業制限というものを必ず出す、私はそういう観点に立っている。そういう場合において妥結するかしないか、これは皆さんが行っての問題であるが、かりに何らかの制限を受諾して妥結しなければならない場合、あるいは受諾しなくて帰って、日本日本の独自の立場でやるのだという場合における損害はだれが背負うのだということをわれわれは考えたい。それはわれわれとしては真剣に考えなければならぬのです。この問題はだれでもないのだから、被害者というものは漁民なのだから、漁業者であるのだから、同時に日国の産業というものに一体打撃をこうむることを考えた場合には、われわれは簡単においそれと行ってこい、勝手に行ってこいと言うわけにはいかぬのですよ。いやしくも国民の代表として水産委員会がある以上は、われわれは真剣にこれは考えなければならない。そこで水産庁の立場をはっきりしておいてもらいたいというのは、そういう損害をこうむった場合には、これは政府がそれを補償するんだ、だからお前たちは断固として行けと、こういう元気でやっているのか、その辺の水産庁の、政府としての心がまえを聞きたいのですが、どうですか。
  36. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) まことに悪い時期でございまして、政府代表がやがて二十日前後にはお立ちになろうと思いますし、ソ連の情報はわれわれとしても入手するのに非常に困難でございます。一方日本の方では、いろいろ新聞などでもまたこの問題を大きく取り上げられて論議されておる。それは逐一ソ連の方ではキャッチしていることと思われます。従いまして、おしかりをこうむるかもしれませんが、具体的にお答えしにくい分はお許しをいただきたいと存じます。  ただ、簡単に申し上げますならば、操業当初における従来の各船団及び独航船の主たる漁場は、ソ連において関心をあまり持たない漁場で操業することに相なります。従って、漁場の後期において最悪の場合には操業する必要はない、かように思っております。また時期が進みましても、ちょうどそのころはおそらくわれわれの信頼する代表がモスコーでいろいろ話し合っている段階とマッチいたしますので、そちらの情報を見ながら最善の措置をするようにはいたしたいと思いますが、小型の独航船の方の分につきましては、あに今日のこの事態に処するというのではございませんが、対中共関係、あるいは対韓国関係というような漁場紛争の際にとりました特殊保険制度が今もなおかつこれにも適用されますので、船並びに乗組員はある程度その方でまあカバーできるというように考えております。その他の問題につきましては、一つ何とぞお許しのほどをいただきたいと思います。
  37. 千田正

    ○千田正君 これはまあ非常に私はその点において心配しておるのは、ソ連のプラウダ紙の発表や、あるいはチモシェンコ漁業次官がソ連側で勝手なことを言っていますが、その内情を調査してみても、去年のローマの学会においての論争からしましても、向うはあくまでこれを貫こうとする考えを持っています。しかし、日本側が去年は朝永君ががんばって、ベニザケだけはとにかくある程度の制限をせざるを得ないというところまで話し合いが、一応学会としての論点がその結論まできているんだけれども、今度の問題だってあるいはその辺くらいまで突き進んでくるでしょう。だから私は全然制限なしで野放しで、漁業は今考えているように十九船団が堂々とやっていけるという段階は、私は杞憂かもしれないけれども、非常に心配しているんです。とにかくそうした場合には漁業者人たちの損害というものは膨大なものである、これを漁業者の自己負担にさせるわけにはいかない。政府はそれだけの覚悟を持って今度のまあ代表が行くにしましても、いざという場合は全部丸がかえでも考えてやるんだという覚悟を持って行っていただきたいということを要望して、私の質問は打ち切ります。
  38. 青山正一

    ○青山正一君 これはお答えになられなければ、そのままけっこうでございますが、お答えになることができるならば一つその点お答えを願いたいと思いますが、現状においてはソ連なりカナダに非常にたたかれつばなしの状態であります。で、政府として、今度のような場合、かりにソ連の言い分がそのまま通り日本の船がソ連の許可を受けるとなると、つまり許可の主権というものは日本政府ではなくソ連政府であると解釈できるんじゃないかと、そういうふうにも考えられるわけなんですが、それに対するお答えはいかがですか。
  39. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) お答えいたします。ソ連が今回ああいう決定を発表したことは、あくまでも一方的でございます。公海の部分に一方的に線を引いて、そこの中に出漁するためには特定国の許可を受けるということは、これはとうてい私どもとしては容認できないところでございます。従いまして、さような観点からこの問題を見ていかなければならぬと、かように考えるのでございます。
  40. 青山正一

    ○青山正一君 これは水産庁の次長にお伺いしたいと思いますが、これは専門的になるかもしれませんが、この魚族資源保護について私どもの解釈は、はるか洋上においてその漁獲したものを完全に処理することによって、これは資源の保護ができるのではないかと、こういうふうに解釈しておるわけなんです。ところが、カナダでもソ連でも洋上は絶対に反対だと、こういうふうにおっしゃっておりますが、卵を産むために遡河する、たとえばカナダのフレーザー河などに遡河する魚類などを自分の国で十分にとっておって、そういうふうな卵を産むために遡河する魚をむしろ資源保護をすべきがほんとうであって、洋上において完全に処理するためにとる魚は、これはむしろ資源保護ではないかと、こういうふうに逆に考えておるのでありますが、こういったことを日本政府としてはっきり反駁すべきだと、私はそういうふうに考えておりますが、その点水産庁の考えはいかがですか。
  41. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) ただいまの青山先生のお説は、われわれも同感でございます。ただこの場合に、相手国の方が常に言っておるのは量の問題でございますので、その点は、たとえば海上で捕獲される尾数が、最も集約されたいわゆる産卵のために河口へ集まっておる魚をとったその魚の尾数との比例がどうかと、資源保護上の……。たとえば海上でとるもの二尾が河口でとる、あるいは川へ上るはなをとるという場合には一尾に相当するかというような比例問題までは解決できておりません。しかし、抽象的に言うならば、青山先生のおっしゃった通りと存じております。
  42. 青山正一

    ○青山正一君 それで、もう一、二点専門的なことをお聞きしたいと思いますが、ソ連の言い分は、ソ連声明なすったこのラインの中で、禁止するのではなく制限するというふうな言葉で使ってあるようにも見受けられるのでありますが、そのラインの中にあって操業しても制限数をこえなければよいのではないかと、こういうふうに考えますが、これに対する政府の見解はどうですか。  もう一点は、ソ連制限魚種の中にサケマス類とこういうふうになっておりますが、これはソ連の統計を見ましても、今まで非常にベニザケばかりを対象にしておって、白も多少は対象にしておりますが、マスなどはほとんどその対象にもしていないように考えておるのでありますが、ソ連の言い分ではサケマス類とこういうふうになっておりますが、たとえば西カムでとるマスなどは、これはらち外と考えてもよいのではないかと、こういうふうな気がしてしようがないのですが、その点に対する御解釈はいかがですか。
  43. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) 最初の点についてお答えいたします。元来公海の一定の地域に特定国が一方的に線を引いて、その中における各国国民の自由な漁撈を制限するということ、そのことが——その一方的措置そのことが非常に間違ったことでございます。かような観点からこの問題を把握していくべきでありまして、その制限が何尾であるかということは、それ以外の問題であるというふうに、本件は把握しなければならぬというふうに考えております。
  44. 千田正

    ○千田正君 関連して……。ただいまソ連の問題に対してはそういうお答えですが、僕はこれは外務大臣でないから、あなたに対してはなはだ失礼であるかもしれないが、心がまえを聞かしてもらいたい。私もいささかしろうとでありますけれども国際法だけは多少研究しておるつもりであります。だから公海自由の原則からいえば、あくまでも日本のいわゆる独立自主権を主張して、そうしてやらなければならぬ。しかしながら今まで過去の日本政府は、一体公海自由の原則を果して独立国家として貫いておるかどうか、その主権の主張を。李承晩ラインしかりです、あなたの今おっしゃった一方的な制限である。さらに今度の原子爆弾、一昨年のビキニにおけるところのアメリカ側の制限も、これも一方的に公海に引いたラインである。また今度もやられる。それに対して堂々と今までのことを貫くだけの御意思が政府にあるとするならば、現在制限を加えられつつある問題も、これは早期解決されなければならない問題であると思いますが、この際でありますから、あなたの御主張がその通りであるならば、公海自由の原則を独立自主の外交のもとにあくまでも貫くという信念を持ってやってもらいたいのですが、今までの分はどういうふうに考えるのですか。
  45. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) お答えいたします。公海自由の原則は日本の主義として終始一貫して主張して参ったところであります。御指摘の李承晩ラインの問題、並びにビキニの水爆実験に関する問題につきましは、当委員会を含めて、あらゆる当国会の委員会において外務大臣その他関係官から御説明した通りでございます。何分にも公海自由の原則ということにきましては、国連の国際法等の法典編纂委員会においてその部分的なことにつきまして、いろいろな案が出ておることは御承知通りでございます。その中に日本としては承認できない幾多の問題を含んでおることは御承知通りであります。公海自由の原則は終始一貫して主張しなければならないということは、これが日本の立場である、こういうことになっております。
  46. 千田正

    ○千田正君 だから、非常にりっぱな御答弁であるが今までのような李承晩のような一韓国を相手とするような問題ではない。今度の問題は、かって日本との——現在もそうだが、日本の現政府が親善的な立場にあるアメリカとの交渉のような立場でもない。今度の場合はよほど腹をきめてかかっていただかないと、今までそういう立場である際も、どこまで主張したってさっぱり実績が一つも現われていないのですから、私はそれを心配するのですよ。ほんとうに腰を入れていくのだったならば、今いわゆる妥結をするのか、あるいは決裂かというところまでいくのでしょうが、変なところでひょろひょろ話し合いをつけてこられると、こちらの参考人人たちが心配しておるところの問題も出てくるし、国際紛争も出てくるでしょう。ですから今までのような弱腰でなく、真劔になってやってきていただきたい。そうしてまた今までの懸案になっているものを解決してもらいたい。そういうことを解決されなければ、あなた方幾ら公海自由の原則だとか、国際法はこうだと言ったって、実際にさっぱり押えられているのでは話にならんじゃないか。これはわれわれは、あなたじゃなく、僕はもう大臣に言いたいのですが、幸いか不幸か知らぬが、大臣の代理に今日法眼さんが来たから、しかも今度ソ連にいらっしゃるというのだから、この際もう大いに日本をしょって立つつもりで、自主独立の態度で現在の公海自由の原則をあくまでも貫くように、またそこに何らかの妥協点があるとするならば、考えてこなきやならない立場におかれるでありましょうが、今までのような韓国に侮辱されたりアメリカからろくな賠償金も取れないような格好じゃだめだと、もう今から僕は苦言を呈しておきますから、どうぞしっかりしてやってきてもらいたい。
  47. 青山正一

    ○青山正一君 ただいまのこの千田さんの意見があるからして、私は先ほどの二点のことをお聞きしたわけなんです。そこでもうあすに迫っておる母船ですね、独航船が一団行く、西カムへも行く、東カムヘも行くという場合において、その解釈がライン内であっても——一応はそのあすに迫っておる考え方として、ライン内であっても制限する以上を越えなければ、操業しても差しつかえないというふうに私どもは解釈しておるわけなんですがね。それに対する政府側の解釈はどうか、その点を一つ
  48. 法眼晋作

    政府委員(法眼晋作君) お答えいたします。誤解のないようにもう一度あらためて同じことを繰り返すわけでございまするが、この一方的なる特定国の措置というものは、国際法上承服できないことである。しかしながら他方、公海その他において魚族資源を保護するということは、万国共通の関心事でありまするから、その観点からある話し合いに達して、双方合意の上で一定の魚族資源保護措置をとる、そして漁業の遂行を支障なからしめるということは、きわめて至当なことであり、またこれは万人の認めなきゃならぬところであろう、かような問題のように解釈するわけでございます。
  49. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) 青山先生の後段の御質問でございますが、ソ連の言うサケマス類というのは、今のところはニュアンスとしては、たとえば向うが重点的にあるいはベニザケを重点的に考えているのかもしれないし、あるいは総体的にやはり重さを等しくして考えているかもわからないし、その点はあれだけの発表ではこちらの方が推測するのに不十分でございますので、今度の代表団にも専門家がついて行きますから、おそらく向うの意向は折衝の間に欄に十分に打診して、遺憾のないような一つ折衝をしていただくものと考えております。
  50. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっきちょっと質問しかけましたが、これだけの船団を許可していかれるには、相当の自信を持っておられるとこう思うが、それとともに、ソ連側が一方的な制限を加えてきた、こういうので、ただいま外務省側の御意見だと、公海の自由、漁業に対して一方的な問題であったのだと、こういうようなことになっておるのでありますが、何かこの間新聞を見ますと、新聞では、昨年からみると今年の船団の編成が非常にふえておる、それらに非常に一つの脅威を得てこういう処置をとったのじゃないかというようなことも考えられるというような、他にそういう新聞も見たような気がしますが、ただいまこう言って今も千田君がいろいろ言われていることを聞きますと、もうすでに何かの制限が要求しられている、具体的にそういう問題が起きているうわさも、うすうすわかるのじゃないか。そういうものに対して何ら考慮するところなく、十五船団を十九船団に増してしまう、これじゃよほどの水産庁にしてみましても、外務省にしてみても、日本政府として何か確信のあるものがなければ、これだけの船団を私は組めないのだと思うのだ。よほどのこれがやり通せる——何かの紛争の種がそこに見えるにかかわらず、そういうものをぐんぐんと押し切って、今度は話がついたからと話し合いするのでもなしというのじゃ、これはどうもおかしな話じゃないかと思うのだが、それに対してどういうお考えを持っておられるのか。私は結局すれば、向うが一方的だということが、何かそういうような問題の、そういう紛争の起きるような予想もほぼついた上でものをやっておって、そこで勝手なことを言うから、お前たち勝手な一方的なことを言うと、こういうようなふうに解釈してもいいのだと思いますが、十九船団を出してやらせるのだという腹がまえはどこにあったのか。ただ公海の自由だけできまっておったのですか、あるいは国際的に見てそういう紛争のあるということは問題にするに足らぬと、こうお考えになってそういうことをきめていかれたのであるか、私は非常に重要な問題だと思うのです。
  51. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) 先ほど外務省からお答えしたように、まず公海自由の原則は、日本としては従来からその意見通り突き出してきておるのであります。公海自由の原則に基きまして、公海において日本船団をいかほど許可するかという問題になりますると、漁業調整上さしっかえがないこと、資源上もその魚種について心配がないこと、それから物理的な方面からいいますと、かりにあの場合はのべなわでございまするが、そののべなわの操業において相互の許可された船数において満足に操業ができるというような諸条件を勘案いたしまして、私の方は許可方針といたしまして逐次試験操業から始めまして、年次漁場の新漁場をその間に調査船をして確めた上で、この程度が最も妥当であるという判断のもとに許可したのでございます。あらかじめ公海の操業につきまして、ただいま先生の御指摘は、紛争が起るかもしれぬようなところは遠慮して許可した方がほんとうじゃないかというふうに解釈いたしましたが、ローマの方でそういうふうなのは公開の席での論議があったわけではなく、日本から行きました代表団と別の非公式な会合においてソ連から出席された人たちの間で話があったわけでございまして、公開の問題ではございません。
  52. 清澤俊英

    清澤俊英君 公開の問題でないとしても、そういう何かがあることはわかっている。ほかの漁業でもやっぱり鯨なんかは南方漁場での捕獲に対して国際協定か何かあるように聞いております。こういうものは逐次こういう大量な何といいますか、機械漁業とでもいいますか、進歩した漁獲法をやっていくということになれば、公海だといえどもそのとり方によっては非常に各国の間に利害の得失か大きくなってくれば、こういう問題を当然国際的に考えていくことが私は正当な考え方だと思う。これは公海の自由があるのだから、公海で自由漁獲の権限があるのだからといって、そういうものがある程度公海であろうと何であろうと想像せられるとき、何らの考慮なく船団をどんどんふやしていく、来年は二十五船団にする、再来年は三十船団にするということになると、これは問題の起きることはあらじめわかっているのじゃないかと思う。それとも起きないとお考えですか。処置だけをして、そうして問題ないとすれば、そんなことは幾らしてもかまわないのだと、こういうふうにお考えになっておりますか。将来すべてのものに対して。
  53. 岡井正男

    政府委員(岡井正男君) お言葉を返すようでございますが、四面海で四つの島に閉じ込められた日本としては、合法的に許される範囲におきまして、日本が正しい国際法上に違背しない、しかも許可船団の操業調整並びに資源的に見て妥当だと思われる範囲におきましては、漁業としては伸ばしていかなければ、日本の宿命的な産業として非常に他国に前もって遠慮して許可方針を縮めていくということでございましたら、日本漁業というものは将来が非常に暗いことに相なりまするので、その点は今回のソ連措置は当然予期はいたしておりませんでしたが、他国にもマグロその他も将来そういうことはあり得るかもしれませんが、われわれとしてはできる限り日本漁業を進展せしむると、合法的に進展せしむるという方針でいくのでございまして、たまたまこういう問題が惹起せられたことは遺憾ではございまするが、なるべく日本漁業が阻止せられないような方向話し合いをつけるということに最善の努力をいたすということが妥当であろうと、さように考えております。
  54. 戸叶武

    理事戸叶武君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  55. 戸叶武

    理事戸叶武君) では速記をつけて下さい。  以上で政府に対する質疑は終ったのでありまして、本件に対する審議は本日は以上をもって終りたいと存じます。  参考人各位におかれましては、長時間お差し操りいただき、ありがとうございました。重ねて御礼を申し上げます。  また政府当局におかれましては、本問題の重要性にかんがみ、本日の委員会の経過に照して本問題の所期する解決に対して一段のお骨折りをお願いいたします。  しばらく休憩して、午後一時三十分から再開いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時五十七分開会
  56. 戸叶武

    理事戸叶武君) ただいまから委員会を開催いたします。  まず委員の変更について御報告いたします。東隆君にかわって小林孝平君。     —————————————
  57. 戸叶武

    理事戸叶武君) 韓国ノリの件を議題にいたします。  この件につきましては、去る三月二十六日の委員会の議題となり、その際さしあたっては輸入停止期間中にかかわらず、政府において特定業者に対してのみ一部これを解除せられたその責任、並びにその結果ノリの価格の暴落を誘発するに至ったその損失補償、ひいては目下保税倉庫において未通関のノリの措置、並びに今後における韓国ノリの輸入措置等が問題になって政府当局の善処が求められ、できるだけ近い機会にその回答を伺うことになっており、委員各位からのお申し出もありましたので、本日重ねて本件を議題にいたした次第であります。まず政府当局からの回答を求めます。通産省の板垣通商局長
  58. 板垣修

    政府委員(板垣修君) その後通商局の方におきまして、私どもの無為替輸入の許可に基いた結果通関をされましたノリの行方につきまして、調査をしておったのでございますが、まだ全般的に調査は完了しておりませんが、私ども調査に関する限り一部のノリにつきましては、やはり私どもが提出させました念書に違反をいたしまして、市中に売却されたことがほぼ確実であるという調査の結果に相なりました。それは神戸に通関されました分、すなわち百八十一箱分につきまして、十二月二十三日に神戸の田中商店を通じて売却をされたことがほぼ確実であるというようなことに調査の結果なりました。もっとも当事者であります東和商事は売っておらぬと言っておりますが、大阪通産局の調査によりますれば、売ったのじゃないかということがほぼ確実と思われます。しかしながら、その後に通関されました、二月二十七日と三月九日に小倉で通関されました合計二百五十四箱につきましては、通関されたものは現物がそのままあることは確認しております。従って現在わかっておりますのは、百八十一箱分が市販されておるということでございます。  それから第二の点、すなわちこういうような市中に流れたものがあるのでありますが、これが市況に及ぼした影響につきましては、その後私どもの方といたしまして、いろいろ専門家等の意見も徴しましたが、果して東和商事分の、数量から言えばそう大きくはないのでありますが、このノリが流れたことによってどの程度国内のノリの市況に影響を及ぼしたかという点につきましては、実は遺憾ながら客観的な判断の資料もございませんし、専門家の意見も徴しましたけれども、これはわからないということでございます。実害及び心理的影響というような点もございましょうが、ことに心理的な影響につきましては、果してこの一部のノリによってどれだけの因果関係を持って市価に影響したかどうかという点は、ただいまのところ私どもといたしましては調査方法もなく、また専門家の意見も徴しましたが、ちょっとわからないという結果に相なりました。  それから第三点につきましては、こういうような違反事実があったのであるが、三十年度の既割当分のノリの輸入はどうするかという点でございますが、私ども希望といたしましては、この行政措置によりまして、こういう違反事実ができましたことはまことに遺憾でございますが、これは一応この既割当分のノリの輸入問題とは別の問題と私どもは考えておりまして、できますればこれを切り離しまして、善意無過失の既割当分につきましては、すでに生産期も過ぎたことでありますし、できるならばこの三千二百万枚分につきましては、通関をできるだけ早くさした方がいいのじゃないかという意見を私どもは持っております。  それから今後の三十一年度の輸入の問題でございますが、これにつきましても、東和商事の問題は問題といたしまして、別途措置することにいたしまして、韓国側の強い要求もございますし、でき得る限り新しい年度の輸入方針を決定いたしまして、今後は生産業者との間に問題を起さないような厳重な措置を講じまして、きまりました数量を輸入する方向一つ方針をきめていきたいというふうに考えます。以上、一応前の委員会で問題になりました点を簡単に御報告申し上げます。
  59. 戸叶武

    理事戸叶武君) ただいまの発言に対して御質疑の向きは順次御質疑を願います。
  60. 森八三一

    ○森八三一君 先回の委員会で申し上げましたように、通産当局としては通関の措置を講じましても、倉荷証券の持っている性格からして、その管理をすれば市販されることはないという、まあこれは当然な一つの形式的なことでありますが、感覚に基いて措置をされたいというその結果がただいま局長から御報告のように、遺憾な結果を生んでおるということでありますが、その東和商事に対しまして、今度もそういうようなことがあった場合に同様な遺憾な結果が起るわけでありますが、さような役所の方針に反したもの等につきましては、将来取扱い上どういうような措置をされるお気持であるのか、その点が一つであります。  それから第二の点は、お話のように百八十一箱の市販が行われたそのことが実際市況にどういうような影響を与えたかということにつきましては、これは実際問題としてお話のように、ものさしではかってどうだというようなことは、これはだれでも正確にはかることはできないと思いますが、しかし、たまたま生産期中であったということからいたしまして、たとえ数量は少数量であったといたしましても、影響がなかったということは言い切れないというふうに思う。ただ、影響がどの程度にあったかということのはかりはこれはできませんが、無影響であったということはこれは考えられないと思うのであります。そこでそういうようなことが今後にも起きましたのでは非常に遺憾と思うのでありますが、つきましては、今年度輸入すべき数量と確認されておる未通関のものを、今後通関の手続を進めていくという場合に、かねがね通産省で御指導願った需給協議会に全員参加しなければ、そういう方面に対しては割当があるものといえども手続を進めないということまでお考えになるのかどうかということが第二点であります。  それから第三点は、将来こういう問題を未然に防止いたしまするために、需給協議会の制度はもちろん法的根拠は持っておりませんが、こういうものをどういうように取り扱っていかれるのか、その気持であります。その点をお伺いいたします。
  61. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 第一の東和商事の件につきましては、私どもこの債権回収のための無為替輸入を許可するに当りましては、まず倉荷証券を銀行に寄託させるとか、後ほどこれは通商局で扱うことになりましたが、その上にさらに市販をしないという念書を入れさせましたので、まあこれで倉荷証券が流通されて金融の道が講ぜられても、物そのものは市中には流れない、従って生産期には入れないという約束を果されるものという確信を持って私どもは許可いたしたのでございますが、今調査の結果そうでなかったことを発見いたしまして、まことにこの点は遺憾に存ずる次第でございます。従いまして、こういうような役所の念書に違反しました行為に対していかなる措置をとるかという点が問題になるのでございますが、この点につきまして、実は大臣がまだ御病気中なので指揮を仰ぐいとまがないわけでございますが、至急いかなる程度の処罰をなし得るか、即刻検討いたしたいというふうに考えております。  それから第二の今後の割当の仕方につきましては、こういうような弊害などにかんがみまして、今後はできますれば外割条件にこの需給協議会への、調整協議会への参加を条件とする、それから従来の協力費を払わなかったものに対しては、これを払わせるということを条件にして今後外割をやっていきたいというふうに考えております。従いまして、これに関連しまして第三の御質問の需給調整協議会につきましても、これを一種の役所の公認輸入団体にいたしまして、これに参加を受諾する者、それから協力費を完全に払って、生産業者との間を円滑にやるという意思のある者には割当をしてゆくと、こういう方針で、まだ確定はいたしておりませんが、そういうような方向で進めてゆきたいと考えております。
  62. 青山正一

    ○青山正一君 ただいまの局長お話を聞いて非常に意を強うするわけなのであります。ここにかっては委員長をやっておりましたところの小林さん、それから江田さん、この両委員長の時代にこういった問題は決議をされ、それから参議院全部の、委員会全員の名においてその決議を尊重してくれるように今まで皆さんにお願いしておったわけなのですが、まあただいまの局長の気持によって非常に意を強うしておるわけなのですが、これがこの次またこういうふうな轍を踏まないように十分に一つ心していただきたい、こういうふうに考えております。以上簡単に……。
  63. 江田三郎

    ○江田三郎君 今のお話でわかりましたが、東和商事の方が間違ったやり方をしておる。ところがそれをどうするかということについては、大臣が病気中なので指揮を仰ぐことができないということなのであります。一体大臣でなければそういうことができないのですか。通産省には政務次官もおられれば、事務次官もおられるわけですが、こういうはっきりした問題は、大臣が寝ておられたらその指揮が仰げなくて処置がつかぬというのはちょっと私変に思うのでして、その点あるいは東和商事というものの背景に事務次官等では手のつけられないような何か背景でもあるというならば別ですけれども、そうでなかったらちょっと私は今の説明はふに落ちないと思いますが、何かありますか。
  64. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 私がそう申しましたのは、そういうような理由ではなくて、実は事務当局自身としても確信を持ってこの念書違反にいかなる行政処分をなし得るか、まだ最終的な結論が出ておらない意味と、これが出ました場合に、やはりこれだけ両院の委員会で問題になりました事件について、一応大臣の耳に入れて了承を得てから最終的に決定したい、こういう意味でございまして、もちろん主導権はあくまでわれわれできめる、こういうことであります。
  65. 小林孝平

    小林孝平君 その念書に違反した場合どういう措置が講ぜられるかということは、今御研究中だということですが、いろいろの場合があると思うのですが、一体常識的にどの程度のことがやれるのですか。いろいろお考え中でございましょうからあれですけれども、そのいろいろの場合を一つ……。
  66. 板垣修

    政府委員(板垣修君) これは貿易管理令等の法令違反でなくて、念書の違反でございますので、限度があると思いますが、私どもで考えられまするのは、やはり今後受け得るべき外割の全部または一部の停止ということがやはり考えられる最大の点ではないかというふうに考えます。
  67. 千田正

    ○千田正君 私はおくれて来たからよくわからなかったが、この間から通産に省お願いしたあれは御報告いただいたのですか。
  68. 戸叶武

    理事戸叶武君) いただきました。
  69. 千田正

    ○千田正君 その方針としてのことを伺っておるわけですか。通産省としてとるべき方針についてですね。
  70. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 三点申し上げまして、違反の事実があったかどうか、一部について違反の事実があったのはほぼ確実であるという結果が出ました。市況に及ぼした影響につきましては、相当専門家にも依頼して調査しましたが、ちょっと具体的には因果関係をもって証明するだけの結果が出ないということでございます。それから既割当分の三千二百万枚につきましては、私ども希望といたしましては、一応東和商事とは切り離して、生産期も過ぎたからできるだけ早く解除してやりたいという気持がある。今後の新しい分につきましては、厳格な外割方法を講じまして、生産業者との協調の方法をみつけて、数量を早くきめて外割を、輸入をやりたいという考えを持っておるという、この四点を先ほど御報告申し上げました。
  71. 千田正

    ○千田正君 保税倉庫に入れたものに対する国内におけるところの証券の流通及び物品の流通に関してはどういう観点を持っておられますか。
  72. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 私ども最初無為替輸入を許可する場合に倉庫証券も取り上げ、かつ市販しないという念書をとったものですから、大丈夫市販されないということで考えておったわけであります。その後事実違反事件ができたのをあとから聞いてみますと、一流倉庫ではそういうことはないのだが、二流、三流では倉庫証券がなくても十分貨物の出し入れができるということを聞いて、私どもの無知に対してまことに遺憾に存ずる次第でございます。
  73. 千田正

    ○千田正君 現実においてはそういう問題が起きるのでありまして、やはり保税倉庫などもそういうのを未然に防ぐという立場からいえば、ある程度一流の倉庫などを指定すべきじゃないですか、外貨割当に対しましては……。そういう方針をとっていただかないと、あとからかういう問題になって、結局あなた方の方へ責任がかかり、われわれも言いやないことを言ってみたりしなければならないのですから、今後の方針についてはそういうことを調査されて善処していただきたいと思います。
  74. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 承知いたしました。
  75. 戸叶武

    理事戸叶武君) 保税倉庫に現在入っておるのはどのくらいの数量ですか。
  76. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 保税倉庫に今入っておりますのは三千二百万枚でございます。
  77. 戸叶武

    理事戸叶武君) 東和商事の方は。
  78. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 東和商事の方は税関をこえまして、普通の倉庫に入っております。これが現在確認されて現物のままありまするのが箱数にしまして二百五十四箱、数にいたしますと二百七十七万枚ちょっとございます。
  79. 戸叶武

    理事戸叶武君) 大阪の百八十一箱が神戸の田中商店で売られたというふうにみられておるにもかかわらず、これに該当するような数量がほかの倉庫に入っておるようなのは、これはどういうことですか。
  80. 板垣修

    政府委員(板垣修君) これに該当するところの数量が広島にあることになるわけでございます。この品物がどう来たかということが非常に問題になるわけでありますが、この点が普通のノリでありますれば問題ありません。しかし、もしかりに何が密輸のものであるというようなことになりますれば、やはり税関の方で調べるという問題が起って参ると思います。
  81. 戸叶武

    理事戸叶武君) この前の答弁によると、ノリをかわかさなくちゃならないという理由のもとに、名のもとにほかへ持ち出して乾燥するという方法がとられて、その間にすりかえ作業、ほかへ流してみたり、また密輸で来てやみに流れておるものを買入れて入れるというようなことが自由にできたような印象を受けるのですが、その関係はどうですか。
  82. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) われわれが念書をとりましたとき、そのときの考えでは、もちろん通関いたしましたならば、すぐそれを税関からまっすぐ倉荷証券を発行する倉庫に持って参りまして、そうしてそれを役所に持ってくるというつもりで役所はおったわけであります。ところが実際にその品物が、私この前申し上げましたことは、火入れ加工をするためというふうに申し上げたのでございますが、その後さらによくこれを調べてみますと、火入れ加工と申しますか、味つけをしたいということで加工工場に持って行って、味つけすればあと全部倉荷証券を発行する倉庫に入れて、その倉庫は銀行に寄託する、そういうふうにしたいからぜひそれを認めてくれということを役所に言ってきた。役所といたしましては、そういうふうに加工だとか何だとかいうことでやっておりますと、それこそわけがわからなくなるということで、加工は一切認めないから、すぐそれを密封して倉荷証券にして銀行に寄託するようにというふうに話したのでございます。その結果加工はいたしませんで、ただ来たノリが非常に乱雑である、そこで非常に乱雑なのを一応整理して、くずとそれから一応商品価値のあるものと区別して、くずはくず、商品は商品というふうに整理したい、そういう整理のために若干日にちがかかるから、その期間だけ待っていただきたいというて、そのときにはすでに現物は和歌山に持って行ったと、こういふうに称しておったわけでございます。そこでその後できるだけ早くそれじゃ加工はまかりならぬのだから、そんなに時間がかかるはずはないということで整理さして、そうして品物が入ったというところで銀行から寄託証明書の送付を受けたと、そういうふうに考えております。
  83. 戸叶武

    理事戸叶武君) そこで和歌山に持って行ってやったとか何とかいう、そういう非常にこのことは寛大にルーズにされているようですが、その間の出来事に関する監督の責任は一体だれが持っているのですか。
  84. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 監督の責任は私ないし——私たまたま実際問題としましては海外に出張中であったのでありますが、次長が持つおるわけであります。しかしこれは主管課長が一応これを先決をしたという形になっております。しかし最終の責任者は通商局長であります。
  85. 千田正

    ○千田正君 今のに関連して伺いますが、たとえば外国から商品を入れた場合に、たとえば今のようなノリのような場合、すでに日本の港へ入って通関する場合は、これは原形がかりにノリの一等とか二等とか三等とか、そういうふうにクラスファイしてくるものと思うが、クラスファイしないで、朝鮮なら朝鮮ノリというふうに一括して輸入した場合に、その梱包を解いてそれを整理するとか、そういうことは勝手にできますか、そんなことはできるはずはないと思いますが、通関手続の立場からいえばそんなことはあり得ないはずですよ。
  86. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) これは一応通関さしたこと自体が、今非常に御指摘もありましたように、役所としては軽卒な措置だったということがいろいろ御批判の種になっておるわけでありますが、一応通関さしてしまったというあとでございますので、形式的には国内貨物になったと、ですからこれはもちろん信義上から申しますならば、そのままの格好で倉庫に入れて、そうして倉荷証券を出すという約束だったのでございますから、当然そうすべきだった。ところがたまたま誓約書まで出し、絶対違反しないという約束をしながら、実は包装が不十分だったと、このままでは乾燥の商品の保存に耐えないという名目をつけて、実は先に既成事実を作った上で、倉庫証券を持って来いというこっちの催促に対して、包装を詰めかえる必要があるので、こうやっておりますというようなことをやられたわけでございます。その点品物について全部通関後営業倉庫に入るまでの間、役所の人間でも全部つき添って、そうして現物の行方と倉荷証券というものとをきっちり確めた上で、特例措置に対する行政行為の百パーセントの確保をはかるという点を怠りました点は、確かにわれわれといたしまして少し誓約書その他を過信し過ぎたということではなかったかと、こう考えております。
  87. 千田正

    ○千田正君 もう少し関税法を読んで下さい。通関手続はそんなあなた方が左右するようなものじゃないはずであります。少くとも外国商品が国内に入る場合の通関手続に対しては、それはクラスファイされておるか、あるいは一つの銘柄のもとに入って来た場合それはそれとして入って来る。そうして引き受けた国内貨物となってからの責任はあなた方の責任だろうと私は思う。その責任を持つべきときに実際それをやらなかったと、われわれはそう思わざるを得ないのですがね。今後それは注意していただかぬというと、これはどれが密輸入の品であってどれがいわゆるあなた方の監督下に入ってきたところの、通関手続を正式に踏んで保税倉庫に入るべき品であるかということは区別がつかなくなる。この点を幾ら追及してもできたことは仕方がないのですから、この問題に対しては、将来再びこういう問題が起きないような厳重な監督をやっていただかないというと、同じような問題が続々と起きると思うのです。で、その点は特に私から要望しておきます。
  88. 板垣修

    政府委員(板垣修君) 今後十分に留意いたしたいと思います。
  89. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま千田委員からお話がありましたように、今後の取扱いについてはこういうような間違いがいやしくも起きないように、十分当局の細心の注意を望むものでありますが、元来の本件の取扱い上先刻局長からお話のありました東和商事に対する処置、これをまだ大臣と打ち合せておりませんので打ち合せをした上で厳重な処分をするということ、それから三千二百万枚の現に保税倉庫にありまするものの通関については、時期も時期であるので急速にはからなきゃならぬと思うが、その場合の取り運びとしてかくのごとき問題が発生しないと同時に、非違な行為のあるものについては一切行わぬ。さらにその場合における役所の指導に基いてできておる協議会の機能を十分に活用する。将来についても同様に生産団体納得のある方法でなければ一切の輸入を認めないという局長お話、一応われわれは理解するのでありますが、そのことが単に局長の私見ということでは将来また問題が残りますので、この際お話のありましたようなことが通商当局としての今後に対する一致した見解であるというふうなことにならなきゃならぬと思います。つきましては、さような東和商事に対する処置の問題、それから現に入っておる三千二百万枚の通関に対する取扱い上の方針、それから今後に臨む役所の態度というものを明確にして将来疑義を生じないようなことにいたしたいと思いますので、文書で一応委員会に御提示をいただきたいと思います。
  90. 板垣修

    政府委員(板垣修君) ただいま御指摘の点は、大体私がそういう方向で今後活用する点でございますが、なお細部につきまして未決定の分もございまするので、至急検討をいたしまして、文書によって御通知申し上げる措置をとりたいと思います。
  91. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま局長の至急手続をするということでありますが、問題が問題でありますので、いたずらに日を送るということは策を得たものでないと思いますので、少くとも次回と申しますると明日になりますが、その次の委員会あたりまでには、定例日あたりまでには御提出を願うと、その文書を拝見した上でさらにわれわれの態度をきめるようにいたしたいと思います。そういうようにお運びをいただきたいと思います。
  92. 板垣修

    政府委員(板垣修君) ちょっとまあお尋ねかたがた申し上げたいのですが、先に正式に文書を差し上げて、この委員会で討議をしてまた変るということになると非常にまずいことになると思いますので、その辺の措置を御検討願いまして、あるいは事前に非公式にわれわれの意向を差し上げて、事前に協議ということにしたらどうかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  93. 戸叶武

    理事戸叶武君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  94. 戸叶武

    理事戸叶武君) それでは速記をつけて下さい。  この問題につきましては、本日はこの程度にいたします。政府当局においては懇談中の話し合い通りお骨折りを願います。     —————————————
  95. 戸叶武

    理事戸叶武君) 引き続いて、農業改良資金助成法案内閣提出衆議院送付)を議題にいたします。  本法律案につきまして、さらに御質疑の向きは続いて御質疑を願います。なお前回の委員会における森委員の御要求により、ただいま自治庁行政部長が間もなく出席される予定でありますから御了承願います。
  96. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 農林省に御質問いたします。これから質問することは、前回森委員が御質問いたしたことと重複するかもしれませんが、その節どうも農林省の答弁が明確を欠いておるので重ねて御質問いたしたいと思います。  政府の提出資料によりますると、技術導入資金の対象となる事業の中で西南暖地稲作普及率、これはまあわずかに二一%普及しておる、こういう資料が出ておる。それからまた秋落ち水田改良は一四%、保温折衷苗しろは五〇%、こういうことが出ております。一方提案理由の説明によれば、「ある程度の普及度を示し、補助金の対象とする理由は逐次稀薄となりつつある」、こういうように申されておりますが、そういうことになると、政府は普及度の段階をどの程度でこれはこの資金にするとか、あるいは補助金にとどめておくとかいうその限界をどういうようにお考えになっておるか、まず第一にその点お尋ねします。
  97. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 前回局長から御答弁申し上げた次第でございますが、この普及の割合というところで保温折衷苗しろで五〇%、西南暖地で二一%等々と書いてあるわけであります。これが普及目標というものをきめてそれに対する割合、こういうふうになっておるわけであります。この数字がどのくらいになったところで移行したら適当かというような御質問のようでございますが、まあわれわれとしまして、この事業が大体どれくらい継続していくかというような点、それから補助金をつけますときにどういうふうにこれを考えて何年くらいでやったらどうだろうか、こういったような点等も補助金を初めて計上いたしましたときにいろいろ検討をした次第でございます。特に今御質問になりました西南暖地といったような事業につきましては、昭和二十八年から補助金になっておるわけであります。その前にいろいろ準備して二十八年から二十九、三十年度と補助金をつけて事業を継続してこの程度まで普及いたした、われわれといたしまして三年の実績に照らしてみて今の伸展の工合、あるいはその事業の内容となっている技術の問題という点から三十一年度からは改良資金に切りかえて適当であろう、こういう判断をした次第であります。特に何%になってから、そういったはっきりした限界はないのであります。
  98. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 私はその点をはっきりしておかねば、何年から何年間やっておるからというようなことは私はこれは理由にならぬ。と申しますのは、おそらく農林省が要求した半分以下のものを認められて毎年きておるのだろうと思うのです。そういって前の計画通りに予算をとってそうしてどんどん普及していっておるならば、これは最初の五年間なら五年間、八年間なら八年間やっておるということで相当普及しておるということが言えるけれども、私はそういう予算的に考えてみると、農林省が連年要求するのをおそらく半分以下というような予算で押えられてきているのが普通と考えざるを得ない。そういうことになるとやはり何%くらいが、これははっきり一%と二%という問題ではないのだけれども、大体において普及率が何%くらいいっておるというような考え方でいかねば、ただここに対する答弁に過ぎぬというふうに考えるのだが、もっと誠意を持ってそういう考えでおやりになっていただきたいと思うのです。私の考えでは少くとも五〇%以下、二〇くらいしか普及しておらぬだろうというようなものをすぐ資金に落すということはこれは賛成しかねるのです。どうお考えになりますか。総体的な将来のこれはしっかり考えていただかねばならぬ。私は将来この制度があるからといって補助金でやっておるものをどんどんこれを落す傾向になって来やしないかというのが心配で、それでこういうことを御質問するのですがね。
  99. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 御指摘の点まことにごもっともだと存ずる次第でございまして、将来の問題につきましては十分検討してやらなくちゃならんと、こう思っております。ただいまこれを改良資金の対象にいたしました点については、今申し上げたような点もございますし、また技術の内容をこういうふうに申しましたことは、技術の内容が習熟するまである程度のリスクがあるかないか、あるいはこれはリスクを伴わなくてもやった方がいいのだ、やればやるだけそれだけよいというような技術、それからやることについて習熟するまでは非常なある程度までのリスクがある、そういったような技術の内容によりましても、その普及の割合というものは五〇%がいいか、あるいは現在程度のものでももう移してもいいというようなことは、その技術の内容いかんによっても相当考えられる、こう思っておるわけでございます。そういう点からも検討いたしまして、ただいま御指摘になったような点はわれわれといたしましては、改良資金の方に移して妥当と、こう考えて判断した次第でございます。
  100. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 この資金制度につきましては、この農林委員会でも昨年の十二月十六日の委員会で決議をして、そうして政府に再考を求めているのですが、このたびの法律案で政府はその昨年の十二月十六日の決議に対してどういうような考慮を払って今度の法律案を御決定になりましたか。
  101. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 十分御意見の点は、決議がありまして、こちらの方に御送付になりましたそういう点からもいろいろ検討いたしまして、当時いろいろほかにも技術導入資金として考えられておったものもございましたが、そういう点も再検討して落すものはまた落した次第でございまして、その結果この程度のものを改良資金として出してきた次第でございます。
  102. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 この日本の零細な農業が、これは合理化せねばならぬ。この合理化をはかるのにはどうしてもこの資金ということが最も大きな問題になるのである。この不足が零細農の合理化を妨げておるのですが、補助金の今までやっている制度は、この資金の不足の一助となってそうして今までやってきておるのでありますが、今度設けられたこの資金制度も、ほんとうの零細農の信用のない農民の救済には私はならぬと思う。この点いわゆるいろいろな評判がありますが、農政の後退とか評判があるが、私もさように考えられるのでありますが、どうお考えになっておりますか、その点。
  103. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) この零細農を育成して参るためにはどうしても資金が必要だ、こういう御意見に対しましては全くその通りどもも考える次でございます。農政の後退ということが、御意見通りわれわれといたしまして最もおそれるところでございまして、それをおそれるが故に今回農業改良資金助成法というものを創設いたしたつもりであるのでございます。御意見の点のいわゆる零細なる農家にこの資金が行かないで、主として富農に行くのではないかという御意見がございましたが、実はその点につきましては、従来のような個人々々を貸付の対象としませんで、いわゆる4Hクラブでありますとか、あるいは小さな実行組合とか、あるいは農事研究会でありますとか、そういう団体を主として対象として貸し付けて参りたい。従いまして、ある特定の農民にこれが片寄るというようなことがないような措置をとって参りたい。もちろんそういう団体のない場合におきましては、個人を貸付対象といたすのでございますが、原則といたしましてはそういうような研究団体あるいは改良組合、こういうようなものを貸付の対象として参りまして、貸付がある特定の対象に片寄ることのないような十全の措置をとって参りたいと、かように考えております。
  104. 森八三一

    ○森八三一君 関連……。今の重政委員の質問に対しまして、4Hクラブとか、農事改良実行組合とかいう団体を対象にしてやるとおっしゃいましたが、そういうような団体は、これは任意な自然発生的な組織ですが、そういうものを一体金融の相手方として取り上げることができるとお考えでございますか。かって産業組合法には単位法人として農事実行組合というものを認めてやったことはあります。そのときは法人格を持たしたのですから、そのものを法律上の当然の相手方として取り上げていった。これは適法の存在として私は認める。しかし今お話のように根拠を持たない団体を対象とすることは、おそらく法律行為としてはおかしいじゃないかと思うのです。その場合にもしそういう団体団体的な扱いはしないが、その組織をしておるメンバーの連帯的な行動にするということでありますれば、これは理解できるし、その場合に今重政委員お話のように、これは相互の連帯になるのですから、経済的に弱者である連中はそのグループへ入れてもらうことができない、こういうことになって結論的には重政委員のおっしゃるように、零細農にはこの資金というものの恩典にあずかるというチャンスが薄くなってしまう、こういうことになる危険がある。やっぱり補助金であれば、それは零細農であろうが何だろうが、その対象にはなるのですが、そこで問題が起きると思うのですが、それはどうお考えですか。
  105. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 法律の中にも農業者またはその団体という文句をはっきり使っておるのでございまして、いわゆる人格なき社団というふうに解釈いたしておるのでございます。従いまして法律上の形式といたしましては、代表者が借り受け主体というような格好に相なるわけでございまするが、この点につきましては、いろいろ法制局で検討もいたしていただいたのでございますが、それで差しつかえないという御意見でございます。
  106. 森八三一

    ○森八三一君 代表者の個人が法律的には対象にはなりはしませんですか。その場合にメンバーが何々組合代表者何がしという場合には、何がしがあくまでも融資機関との間において全的な責任を持つということになるのであって、その組織メンバーというものは法律的には何らの関係が持たれておらぬということになるのだと思うのですが、私もそういう法律的のことはよく知りません。知りませんが、そういうことになると理解していいかどうか、もしそういうことになるとすれば、かって産業組合法当時に議論したのですが、単位法人なんというあんな厄介なことをやる必要はなかった、なかったのですが、その当時の法制局では人格を与えなければいかぬということで、組合法の中にああいう規定をしたことを私は記憶しておるのですが、それはお話通りでいいという解釈ができますかどうか、明確にしていただきたい。   〔理事戸叶武君退席、理事三浦辰雄   君着席〕
  107. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) ただいまの御指摘の点につきましては、法制局とも十分打ち合せいたしておりまして、その後法人格なき社団として団体性が認められておりまして、団体として代表者が借りれるようになっております。この点については農協法の十二条の四号の「当該農業協同組合の地区内に住所を有する農民の組織する団体」として、農協法上もやはり法人格なき団体が準会員として構成員になれるようになっておるわけです。それと同じような形でこの改良資金助成法上の農業者の組織する団体も、法人格なき団体として借り受けられるように、これは判例もそういうふうな何が出ておりまして、御心配ないと思います。
  108. 江田三郎

    ○江田三郎君 関連しますが、今の差しつかえないということですけれどもね、かりに団体代表者が自分の名前で借りて、これは悪意があってそれを個人だけで使った場合に、これはそういうことをやってはいかぬという追及ができますか。
  109. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 団体として借りるのでありますから、当然これは追及できる、こういふうに考えております。
  110. 江田三郎

    ○江田三郎君 団体として借りると言っても、法律的には団体代表者個人ですから、団体で借りるという建前はとっても、その借りた金を団体代表者個人が個人の目的だけに使ったところでそれは法律的には追及できませんでしょう。これは判例によるとそういう追及もできるのですか。
  111. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) その点につきましては、なお深く研究いたしておるわけではございませんが、結局何の太郎兵衛か名前を書きまして、二十名の団体代表者の何の何がし、こういうことに相なるかと思うわけでございます。従いまして、その内部の関係といたしましては、貸付の条件といたしましていろいろありますからして、その条件に従いまして追及ができると、かように考えております。
  112. 江田三郎

    ○江田三郎君 そういうふうに解釈すればどういう解釈でもそれはできぬことはないんですけれども、しかし従来の補助金等でもなかなか役所が考えておるようにいかぬということからこういう問題も出てくるわけで、しかも農村において一つのボス勢力というような者の力というものもこれは決して侮りがたいものなんで、そういうことで農政が順調に進まぬという悩みを持っておるわけです。そこでこういう今のやり方でも、もっとやり方をずるく考えればどんなことだってできぬことはないということなんで、それはまあ判例がそうなっているというんだから、私たちもしろうとだからあえてむずかしく言いませんけれども、しかしやろうと思えばそんなやり方だって、どんなでたらめでもできるということだけは言えると思うのです。よく研究していただきたいと思う。
  113. 千田正

    ○千田正君 今のに関連して。これは局長こういうことがあった。参議院の決算委員会で二重煙突事件で時の法務総裁を呼んだことがあるんですよ、あれは大橋君。大橋君はまあ犯罪を犯したものという判定を決算委員会はしたわけなんです。ところがそれに対して逮捕できるかという問題に対して議論が相当沸騰して、最後に検事総長を呼び出してやった場合にですよ、大橋武夫君は犯罪の事実ありと認めた場合においても、検事総長はそれを法務総裁の許可を得なければならない、法務総裁は大橋武夫だというんだね、自分が押えられるものを自分が許可をするわけにはいかない、だからこういう事件はとかくうやむやになるおそれがあるということを検事総長みずから言っておりますが、私は今のような問題は相当法律的に抜け穴を考えてずるく立ち回れば、いろんな問題ができるおそれがあるんだが、それを未然に防ぐことをやはり内容に盛らなければいかんじゃないかと私は思うんですが、どうなんです。大丈夫それで実行できるという確信は持っておるようだけれども、実際は法律の、サギをカラスと言いくるめるような者がたくさんいるんだから。自信がありますか。
  114. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) ただいまの御意見でありまするが、技術導入資金を貸付いたしまする場合には、いわゆる貸付の金銭の出し入れば協同組合を使うわけでありまするが、その貸付対象の決定につきましては、市町村長並びに改良普及員が審査をしてということにいたしておるのでございます。従いまして、市町村長なり普及員なりが団体の性格を明確に調査いたしまして、これならば貸し付けて十分よそに流れるおそれがない、こういうふうな判定をいたしました場合に貸付をいたすことにいたしたい、かように考えておるでございまして、そういうふうな予備的な審査を十分に尽しまして、貸付の目的に違反するような金の使い方をするようなことのないようにやって参りたい、かように考えております。
  115. 小林孝平

    小林孝平君 関連して。今局長は改良普及員を使ってこれをやる、十分やるからそういうようなことのないようにやり得るというお話ですけれども、このために仕事が非常にふえているのに現実に改良普及員は今度二・五%ですか減員になるわけですね。むしろこれをやるために相当増員しなければならぬのに減員になって、しかもさっきから問題になっていることを十分やり得るということは、それはどういうふうにお考えになっているんですか。
  116. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 改良普及員につきましては、ただいまお話がありましたように二・五%程度減員になったのでございまするが、これは現にありまする欠員見合いの一部が減員になったということでございまして、現実の人間自体につきましては今後も従前通り変動は来たさない、こういうような格好に相なっておるのでございます。  改良普及員の増員の問題でございまするが、これは御意見通りこういうような大きな仕事を、改良普及員に一部の仕事をやらせるわけでございますから、今後とも増員の問題につきましては、私どもといたしましは努力すべきものとそうふうに考えておるわけでございますが、さしありの問題といたしまして、今回は増員ということは困難でありますので、機動力を増すためにオートバイを普及員に助成をする。なおこの普及員の素質をよくいたしまして事務能率を上げますために、いわゆる研修というようなものを徹底的にやって参りたい、かように考えておるわけであります。
  117. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 私は補助事業とこのたびの資金制度とこれを併用して初めていわゆる農業の振興になるので、あるいは補助事業の手の届かない部分をこの資金制度で補っていくというような方法、たとえて言えば土地改良に適用されておる、そういう場合にはきわめてこれは有効な制度だけれども、今までやっておった補助事業を全廃して、そうしてこの資金制度によるということはこれはほんとうに私は不当である、農業のいわゆる農政の後退である、かように考えるが、その点どうお考えになりますか。
  118. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 新農村でありますが、そういう特定の町村につきまして補助事業資金制度を併用して参るということは、これは適当かと思いまして、私どもといたしましても、従来の事業につきましても新農村に指定されたところにつきましては補助をして参りたい、かように考えたわけでございますが、一般的にあらゆる事業につきまして補助金改良資金の二本建といいますのは、これはいわゆる財政上の問題もございまするが、それにもましまして、農家にいろいろその点につきましての取扱い方について迷いと申しますか、どちらにしようかというようなことに相なって参りまして、実行上これは工合悪いのじゃなかろうか、かように考えたわけであります。なお補助を本制度は打ち切るという意味じゃないのでございまして、新技術が参りますような場合、今後これを普及して参るというような場合には従前通りどもといたしまして補助事業としてこれを育てて参りたい、かように考えておるわけでございます。
  119. 重政庸徳

    ○重政庸徳君 私の考えのように、衆議院においては原案の付則を削除して補助金の道を開いた修正をなしておるんですが、この点に関して政府はどのように受け入れておられますか。
  120. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 衆議院の修正でありまするが、これにつきましては、政務次官より御趣旨に従って努力する、こういうような格好になっておりますので、三十一年度にはこれは困雑かと思いまするが、三十二年度の予算の編成の場合におきましては、その趣旨をわれわれといたしましては体しまして、補助金につきましても、これはある程度できるように大蔵省に要求する必要があるとかように考えておるわけであります。ただそのやり方をどうするかという点につきましては、完全に併用というような格好になっておりますというと、そこに今申し上げましたような弊害も出てくるかと思いますので、これらの点につきましては衆議院の修正の趣旨も体しまして、今後検討して参りたい、かように考えるわけであります。
  121. 森八三一

    ○森八三一君 地方自治庁から御出席だというのですが、地方自治庁に質問をいたしたいと思います。  最初にお伺いしますのは、従来府県の財務扱いにつきまして県金庫の制度は単数でなければならぬという指導が行われておったと思いますが、これは法律上の根拠はないと思いますが、どういう趣旨に基いてそういうような指導が行われておるのか、その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  122. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは都道府県の金庫のお尋ねでございますが、これは金庫が御承知通り団体の出納事務を扱っておりまして、本金庫と支金庫の制度があるのでございますが、出納事務は当然一元的に処理すべき建前から申しまして、自治法の施行令で本金庫と支金庫を設けましたのは、本金庫は当然一金庫であるべきものだ、こういう解釈で従来運用して参っておるわけであります。
  123. 森八三一

    ○森八三一君 その本金庫が一つでなければならぬという必要の趣旨ですね、それはどういうところに根拠を求められておるのか、もしそれが絶対のものであれば、何か法律にそう明示してしかるべきだと思うのです。そういう明示はないのです。ただ自治庁の指導の心がまえとしてそういうことを強行されておるのですが、その趣旨はどこにあるのだ、こういうことをお伺いしているのです。
  124. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 法律には特に一つと明示がないのは今仰せられた通りでございます。しかしながらこれは金庫業務というものは団体の出納事務全般を扱う建前になっております。その金庫業務を、出納事務を幾つにも分けちゃ出納行政の一元化ができませんので、それで本金庫と支金庫という建前、あるいは支金庫からさらに事務委託という建前で出納行政を総合的に処理するというのがこの制度の趣旨だと考えておるのでございまして、それで本金庫は一つであるべしというのがわれわれの見解で、そういうふうに考えておるのでございます。
  125. 森八三一

    ○森八三一君 どうも私の質問に十分にお答えできないと思うのです。本金庫というものが一つでなければならぬという必要はどういうところに出発しておるのだ。一元的でなければならぬというだけです。  その次にお伺いしますが、その趣旨と同時に、絶対に全国数十の都道府県は一つであるということであるのかどうか。二つの所もあるのではないかという点をお伺いしたいと思います。
  126. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今申しました通り、金庫の出納事務は、これは団体全体の出納事務を金庫を設けて処理するということができるようにしてありまして、これは総括的にやるべき趣旨で自治法の施行令が書いておるのでございまして、それで本金庫と支金庫を設け、そして支金庫につきましては、本金庫がこれを総括するという建前をこれは明らかにいたしておるのでございます。それでわれわれといたしましては、当然この制度の趣旨はそこにあると、こういうふうに解釈して参っておるのでございます。  それから全府県並びに市町村に金庫が二つ以上ある所はないかというお尋ねでございますが、私は全部現実に調べたわけじゃありませんが、大体法律の趣旨に従って運用しておるものと存じておるのでございます。
  127. 森八三一

    ○森八三一君 厳重に調べたわけではないが、そうやっていると思うというきわめてあいまいな答弁ですが、市町村は別にして、都道府県だけはどうなっておりますか、それくらいのことはわかるでしょう。少くとも都道府県は一つであると断言できますか。
  128. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 私の方でいかなる金融機関を本金庫に指定しておるかという実は資料を集めておりませんので、四十幾つの府県全部のことは私具体的に承知しておるわけじゃないからそういうふうに申し上げたのでございます。ただこういう事例があるように聞いております。その金庫業務を二つの金融機関共同にあわせて委託しておる、こういうことがあるということを聞いたことがありますが、どこの県か今ちょっと承知いたしておりません。それは要するに両方の銀行が共同的に本金庫の事務を処理するという建前でやっておる例があるように聞いております。
  129. 森八三一

    ○森八三一君 そうすると、二つの金融機関が共同してやるという場合、それは認めるということになりますると前段御説明になった一元でなければならぬということとどうなりますか。これは非常にあいまいな結果ができてくる。しかも御説明のようなことであれば、私は都道府県の財務のことでありますので、都道府県の県議会が認めたものは本省としてそういうように差し出がましいことをかれこれ言わぬでもいいのじゃないか、こう思うのです。それをおっしゃっておるそのおっしゃっておる趣旨は、前段の方と食い違いを生じておると思いますが、そう思われませんかどうか。
  130. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 私の方といたしましては、これは金庫の設置は、今仰せの通り団体がそれぞれ議会の議決を経て自主的にきめるわけでありますから、具体的な指定等についてとやかく申す考えもなければ、申したこともございません。ただこの本金庫の設置の趣旨を尋ねて参ったことがある場合に、本金庫というものは当然一つであるべし、こういう解釈を下しまして、その趣旨を流したことはあるのでございます。その点を申し上げておるわけでございまして、それで四十幾つの府県が具体的にどうこうしておるかということは私は具体的には調べてもおりませんし、承知いたしてもおらぬのでございます。
  131. 森八三一

    ○森八三一君 そうすると、府県によって二つの機関を必要とするということであれば、地方自治庁はそれに介入がましいことは言わない、こういうように理解してよろしいのでございますか。
  132. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 私が申し上げましたのは、本金庫の趣旨はこれはあくまでも一つであるべし、全然独立の本金庫を二つも三つも作るべきものだとはわれわれは考えておりません。ただ先ほどちょっと、それも具体的にくわしく説明を聞いておるわけではありませんが、二つの金融機関が共同して一つの金庫業務を処理するという趣旨で本金庫を設けておる事例があるということをちょっと聞いたことがありますので、それで申し上げたわけです。金庫はあくまでも一つでありまして、それを共同して処理する形でやっておる例があるということでございます。
  133. 森八三一

    ○森八三一君 そこで、今問題になっておるような特別の会計を府県に設定して行うというような特殊の例が起きてきた場合に、これはむしろ区分することの方が県府の金庫の事務内容を明確にするためにはふさわしいと私は思いますが、そういうようにはお考えになりませんかどうか。
  134. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは府県でも市でも特別会計の事例は御承知通りどれだけでもございます。しかしながら、特別会計ごとに金庫業務が別だということはわれわれは適当だと考えておらぬのでございまして、会計経理は、それぞれ経理の面において分けることは一向にかまわぬと思いますが、しかしながら、これは現金出納をしていく、これはあくまでも一本で、金庫業務も一つであるべきものだと、こういうふうに考えております。
  135. 森八三一

    ○森八三一君 一般的なことでなくて、こういうような特殊な一つの制度が設けられて、その活用する資金についても特殊のひもがついておるといったようなきわめて異例なものに対してどうお考えになりますか。もう少し改良資金制度というものの本質をよく考えて御答弁をいただきたい。
  136. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 農業改良資金制度の問題に関連してのお尋ねでございますが、これと類似の制度はほかにも実はあるはずでございます。従いまして、その制度運用上会計を別にして経理することは、これはもうわれわれといたしましてもそれはしごく当然だと思うのでございます。しかしながら、現金の出納保管という問題はそれと必ずしもかかわりがあるわけではないのでございまして、今も申しました通り、特別会計その他の運用はほかにも類例が多いのでございますけれども、現金の接受出納というものはむしろ一元的に処理すべし、別に金に色がついておるわけではありませんし、ひもがついておるわけでもございませんので、出納業務というものは普通の会計経理の一般の原則に従って行われるのが筋であろう、こういうふうにわれわれは考えておるのでございます。
  137. 森八三一

    ○森八三一君 制度の本質について十分御理解がないように私は考えますので、これ以上のことはやめますが、先刻御答弁がありましたように、指導方針としては一本たるべしという考えを持っておるが、あくまでも地方自治体のことであるので、地方自治体がいかような措置をしようとも、それは地方自治体の意思によることが本筋であるということを確認願ったと理解してよろしいかどうか、さらにお伺いいたします。
  138. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 現実の金庫の設置とか金融機関の指定は、今仰せの通り、これは自治体が自主的にきめるわけでございます。ただわれわれが申しますのは、法律、制度の趣旨だけは、これは明らかにすべきでありまして、その制度の趣旨に従って地方団体がそれぞれ自主的に運用することを期待いたしておるわけでございます。
  139. 森八三一

    ○森八三一君 期待されましても、都道府県がその都道府県の意思に基いて行なった場合に、それを監督上指導方針のように強制的に一元化するというような指導はされぬということに理解してよろしいかどうか。
  140. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) それは自治庁は現在自治体がやる行為に対しまして、取り消し権とか命令権とか、そういう権限は今日持っておりません。かりに法律違反、明白に違反だといたしましても、今の建前ではそれを取り消したり規制する権利がないのでございます。そういう意味で自治体がやったものに対しましては、これを追っかけてどうこうということはできません。しかしながら、自治庁といたしましては、法律の趣旨あるいは精神だけは守られることを地方に要望もするし期待もするし、その点だけは明らかにしておきたいと思うのでございまます。
  141. 小林孝平

    小林孝平君 改良局長一つお尋ねしますが、今度農林省の機構改革の結果、改良局というものは振興局というふうになるようですが、そういうようになりますと、これに伴なって地方庁にある普及課、改良課、そういうものは非常に縮小されたり、その事業が縮小されたりするおそれが相当あると思いまますが、この点どういうようにお考えになりますか。
  142. 大坪藤市

    政府委員(大坪藤市君) 改良局が振興局に変るというのは、お説の通りその関係の法律案が衆議院に提出されておると、かように思っております。その結果地方の主管課と申しますか、これが縮小されるのじゃないかというような御意見でございますが、私どもといたしましてはさようには考えておりません。御承知のように地方の行政といたしましては、これは地方自治体に本来はまかすべきものでありまして、それにつきましてもちろん指導は加えて参りまするが、本体といたしましては地方にまかすべきものかと、かように考えるわけでございます。現在はいわゆる農産課でありますとかあるいは改良課というようないろいろな名前を使っておるようでございまして、仕事の内容はふえましても、これが縮小されるというふうにはわれわれといたしましては考えておりません。今度の法律の関係によりますというと、新農村関係の仕事なんかも振興局の方に移ってくるような関係でございまして、分量はふえましても減るというようなことは考えておりません。
  143. 関根久藏

    ○関根久藏君 森さんの御質問に関連して自治庁にお伺いしたいのですが、この制度のいわゆる信連が扱う場合の金庫としての何で、県の方でさようなことがきまった場合には、自治庁は具体的にはどういうふうな御指示をなさるのですか、先ほどのお話は何だかわかったようなわからないような、よくわからぬのですが、一つはっきり御答弁願いたいのですが。
  144. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 私先ほど申しましたのは、現在自治庁は地方自治の建前から、自治団体が自主的にきめたことに対しまして、これを権力的に取り消したり改正を命じたりする権限は実は持っておらない。たとえそれは法律に明白に違反しておっても、そういう権限がないことを申し上げたのであります。まあしかしながら、法律の趣旨、制度というものは間違いのないように行われることの事前の指導とか監督というようなことは、これはあり得るということを申し上げたのでございます。
  145. 関根久藏

    ○関根久藏君 それではどうですか、この問題について、具体的にもうはっきりわかっているのですから、かりに県の方で信連をこの改良資金の金庫に指定してきた場合に、自治庁はどういうふうな——どうもないですか。
  146. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) それは異存がないかというお尋ねでございますが、われわれはそういう本金庫を二つ以上指定すべきじゃない、そういう考え方はこれは変えるわけにはいきません。またそういう趣旨だけは明らかにいたしたいと思うのでございます。それで信連を利用なさることはこれは一向にかまわないので、それなら支金庫にする、あるいは事務の取扱い機関にするなりしてやるようにすべきであるという意味意見だけは表示することは、これはあり得ると思うのでございます。
  147. 森八三一

    ○森八三一君 私はこの問題に関連して付帯決議をいたしたいと思いますが、速記を中止願って懇談を願いたいと思います。
  148. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) それではお諮りいたしますが、今森君の御提案のように速記をとめて懇談に入って差しつかえありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) それでは懇談に入ります。速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  150. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 速記をつけて。
  151. 江田三郎

    ○江田三郎君 ここの今度の制度でも、これによって零細農というものがどうなるかということがみんなの心配になると思うのです。で、懇談中の付帯決議もそういう点を心配しておられるわけですが、しかしこの零細農の問題というものは資金制度と並行して補助金制度があったところで、なかなかそれによって零細農の問題というのは片づかぬので、従来の補助金制度でもそれなら零細農の経営を高めていくんだ、そういうことになっていないと思うのです。補助金でもやはりどちらかといえば一定以上の規模を持ったものが補助されて、一番下積みになっている農家というものはこれはなかなか救いの手は伸びていない、そういう点について一体政府は根本的に平均経営面積に及ばない零細農というものをどこへ持っていこうとするのか、たとえば新しい耕地なり、これは耕地と言ったって田畑でなくてもよろしい、草地でもよろしい、そういうような新しい働き場所を設定してそこへ持っていくという基本方針を持っているのか、それとも現在の経営面積の中でそれらの人々がひとり立ちの農家としてできるようなところへ持っていこうとするのか、あるいは全然構想を変えて、そういうものは都市のほかの工業その他の産業の方へ転換させるというのか、この零細農というものをどういうふうにしようとするのか、その根本方針を幸いに政務次官見えておりますから、お尋ねしておきたいと思います。
  152. 大石武一

    政府委員(大石武一君) ただいまの御質問は非常にむずかしい大きな御質問と思うのでございまして、答弁が当っておりますかどうかわかりませんが、一応の考えを申し上げます。おっしゃる通り零細農をどう持っていくかということにつきましては、ただいまお説のようないろいろの考え方があるのであります。しかし、この零細農というものは簡単に耕地面積、耕作面積を広げると申しましても、現在のような日本状態ではそう全部の零細農に行き渡るような耕作面積を与えるということは不可能だろうと思うのであります。もちろんでき得る限り国内でも開墾なりあるいは土地改良、あるいは干拓を行いまして利用し得る土地を広げて参りたいと思いますけれども、それが必ずしも全部に行き渡るとは考えられない状態であります。それからまたこの零細農に耕作をやめさして大都市の工業に吸収しようといたしましても、当面の間は工業方面への吸収というものは容易でないと考えるのであります。どうするかと申しますと、結局いろいろなことを考えなければならぬと思うのでありますが、一番根本的なことは自立できるような、たとえ耕作面積が少くとも、小さくとも自立していけるような多角経営農業に持っていくことが私は一番大きな問題じゃなかろうかと思うのであります。それにはいろいろな問題がございます。酪農であるとかいろいろな問題がございますが、結局は適地通産と申しますか、そういうことを中心として多角経営な、たとえ耕地面積が小さくてもこれを十分に利用できるような、あるいはその他農村に小規模ないろいろな工業を取り入れるとか、いろいろな方面から持ってきまして、そうしてこれを幾らかでも収入を多くしてやるということが私は当面のいき方ではなかろうかと考える次第であります。
  153. 江田三郎

    ○江田三郎君 新しい耕地を作るというようなことは非常に困難なことです。それはもうよくわかっておりますが、昨年来私たちは草地という問題をこの委員会で相当やかましく言ったわけです。草地とは何ぞやということがまたいろいろ問題になりますけれども、しかしその中には今たとえば林野として、それもりっぱな林野でなしにきわめて粗放な経営がされておる所がある。それを草地におきかえることをほんとうに考えればおきかえ得るのじゃないか、そういうものがあるならば、ここに大きな働く場所というものができるのじゃないか、そういうようなことも考えたわけですがね。しかし今の政策を見ているというと、なかなか政府の方もこれに同意したかのごとき答えはしましたけれども、現実の上では一向にそれに同意した政策が行われていない。さらにそういうようないき方でなしに、今あなたのおっしゃっるような多角経営というものもありましょう。極端に言えばきわめて狭い面積でもこの新しいやり方でいけば、たくさんの鶏を飼って卵を生むというやり方もありましょう。そういうことでも一つの道はあると思いますが、しかし私は近ごろの改良事業のやり方を見ていると、ほんとうにそんなことを考えているのかどうかわからぬと思うのです。改良普及員の研さんをやっていかれると言うけれども、改良普及員というものがそういうようなことを、零細農のほんとうに自立できる経営をどうしたらいいかということでなしに、何だかただ既存の農家というものを平均的に何%か生産力を上げるというような、そういう指導ばかりやっておられるのじゃないかと思うのです。それもけっこうなんですけれども、何といってもこれからの都会に新しい雇用というものがなかなか見出せぬ段階において、日本のこの零細農というものをどうするかということは、これは深刻な問題になってきたと思うのです。農業政策、一番大きな問題になればすぐ米価問題ですが、この人たちは米価問題には関係ない、この米価が高いことに迷惑する諸君かもわからぬのです。そういうところに改良普及員の仕事でも中経営以上の農業経営者の諸君の技術の改良だけに行って、中から下の諸君をどうして自立さすかということについてはどうもぴったりいっていないように思うので、その点今後農林省の機構改革をされるならば、そういう点を私は十分お考え願いたいということをちょっとこの機会にお願いしておきます。
  154. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) ほかに御質疑ございませんか。——他に御質疑もないようですから、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  156. 森八三一

    ○森八三一君 私はただいま議題となっております農業改良資金助成法案に対しまして、原案に賛成をするものであります。質疑を通じまして、各委員からもきわめて強く述べられておりまするごとく、本制度はややもいたしますと農政の後退を憂慮されるようにも思われまするし、当面きわめて考えなければなりません零細農の将来にも影響する面があると思いますので、さような点につきましては、基本的に農林当局の善処を要望いたしますと同時に、以下申し上げますような付帯決議をいたしたいと思います。    農業改良資金助成法案に関する附帯決議案   一、本法によるような資金制度にかかわらず、わが国農業の後進性且つ零細性にかんがみ、補助金制度は益々これを拡充強化すべきである。なお、右に関連して、政府が、今回補助対象事業から資金対策事業に切り替えようとしている事業の中には、その普及が未だ甚だ微々たるものがある状況に徴し、且つ本法律案修正の趣意に照らし、政府は今回の措置を再検討して之を是正すべきである。   二、政府は新しい技術の確立に不断の努力を払い、且つ技術改良普及のため、先づ以つて農業改良普及制度の拡充強化をはかるべきである。   三、政府は、本法の運用に関する行政事務が機械的に単なる金融的事務に陥ることを厳に警め、飽くまで技術の改良普及と密着してこれが推進に役立つよう中央及び地方を通じてその行政機構を明確にして且つこれを整備すべきである。   四、本法律案第三条第三項の規定により、政府が利子補給の財源措置を講ずる場合は、資金の貸付を行う農業協同組合並びに融資を受ける農業者等の意見をきき、農林漁業金融公庫資金の条件等とも勘案して極力低利ならしめると共に、資金の貸付を行う系統農業協同組合の手数料の適正を講ずべきである。  五、本法律案第二十条による事務の委託については、信連に対して県金庫(本庫)若くは県との直接契約によることとし、系統農業協同組合の活用を講ずべきである。  右決議する。  以上であります。
  157. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 他に御発言もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。農業改良資金助成法案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  159. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました森君提出の付帯決議案を議題といたします。森君提出の付帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  160. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 全会一致と認めます。よって森君提出の付帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお本会議における口頭報告の内容、議長を提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。  なお本案を可とされた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     青山 正一  重政 庸徳     戸叶  武  秋山俊一郎     関根 久藏  佐藤清一郎     横川 信夫  江田 三郎     河合 義一  小林 孝平     森 八三一  千田  正
  162. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) ただいまの付帯決議に関し、この際政府当局の御意見を伺っておきたいと存じます。
  163. 大石武一

    政府委員(大石武一君) 御決議の御趣旨を十分に尊重いたしまして、一生懸命努力いたす所存でございます。
  164. 三浦辰雄

    理事(三浦辰雄君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会      —————・—————