○
政府委員(
安田善一郎君) 大へんたくさんな御
質問をいただきまして、また疑問となるべき点としては重要な点ばかりでございますので、それぞれについて私
どもの
意見またはお答えを申し上げます。
類似市場の問題にからんだ諸事項でございますが、現在
中央卸売市場の制度があるにかかわらず、指定区域内に
類似市場が存続する原因はどういうわけだということが第一点だったと思いますが、私はまず第一にこれを
法律制度の上から見まするというと、
中央卸売市場は保護育成を
政府等において行いまして、同時にその監督も模範
市場となるがごとくいたしまして、
市場みずからがその模範的な
取引が行われる
ような取締り法規である
業務規程を設け得る
ようにできておる
法律だと思います。そこでそれによって運営されていきました場合には、やはり
中央卸売市場を通ずる
取引、あるいは
中央卸売市場内の
取引について必要な監督命令を出し得るということが、さらに追加して
規定してあるものでございまして、根本的にはやはりこの
取引行為そのものは自由を建前にしておりまして、
中央卸売市場というものを育成、監督、取締りを通じていたしまする場合に、それの活動に期待しまして、いろいろな品目、いろいろな産地、いろいろな
取引形態、いろいろな業者が、ないしはそれに伴いまする施設が発生した場合におきましても、全体の
取引に少くともその地区内の
取引に対しましては、
指導的な役割を持ち得る
ようなこと言いかえますると、他に
市場ないしは業者
取引が発生しましても、
中央卸売市場の
機能によりまする影響力によりまして流通
取引の適正、円滑化をはかるものだとして制度ができておるのであると理解をしておるのであります。
改正案に当りましても、基本的態度はそういう態度でいって必要な事項を
改正点として追加するのがいいではないかという
考えを持っておる次第であります。特に注目すべき点は、中央
卸売といいましても、長く保管がききましたり、計画的生産ができましたりするものを必ずしも予定しておりませんで、魚類でありますとか、蔬菜、果実類でありますとか、肉類でありますとか、その他の問題で主として腐敗性の、貯蔵性の少いものを
考えて、
取扱い物品として
考えておるのが
中央卸売市場だと思うのであります。この
法律制度の問題と
取扱い品目の問題、その
取扱い物品の生産と消費との
関係、言いかえますと、蔬菜でいえば荷口が必ずしもまとまらずに生産され、販売され、消費されることもあることが自然の姿であるということも
考えてあると思います。漁村なんかで魚がとれた場合に、中央
市場を通らなくちゃならぬとは
考えていないと思うのであります。そこでいわゆる野菜などにいう野市でありますとか、近在の引荷を荷車だけでやらないで、多少まとまってやる
市場ができる。
生産者ないしはそれに準ずるものから消費者に直接または小売商人にゆく形態の
取引もあることが自然の姿であると
考えておると思うのであります。それと中央
市場との間におきまして、いわゆる
類似市場ができておるわけであります。
法律の文章では現行法の第六条に掲げてあるのでありますが、
類似市場というものがあるというのは、
中央卸売市場があって初めてあるのでありまして、類似の仕方もいろいろあると思うのであります。規模においても
取引方法においても、
関係業者においても、
市場の
開設者においても、また
段階が
卸売であるかどうかということについても、形がいろいろあるかと思うのでありますが、終戦後日本の経済形態が守られなかったり、食糧不足で、全国的な安定した流通に伴いまする安定的な価格が出てくる、こういう
ようなことも非常に行われがたい、いわゆる食糧危機の時代もあったと思うのであります。かたがた日本経済及び特に財政金融
事情からいたしまして、公益的な人が
開設者になる場合には、特にまた税とか、
予算とか、財政とか、
政府金融とか、高金利の民間金融とか、こういう
ようなものからしまして、なかなか思う
ように
中央卸売市場の設備の充実をはかることができない
事情があった。実態的には食糧不足であり、危機である、あわせて自由放任的な感じからしまして、不当な利益をむさぼる
ような傾向の気風も従前よりは増した。こんなこともいろいろありまして、野市とか陸揚げ地の漁村の小さい
市場とかいうところに中央
市場が
整備されねば、そうでなかったものが消費者のために案外便宜であって、
生産者もそこへ売らないと都合が悪い、荷が完全にはけないなどという場合もありまして、
弊害を伴いながら
類似市場が存続しておる
ように
考えておるのであります。
なお、別に
法律的見地から申し上げますというと、単に
法律文で類似の
業務を行う
市場といいますが、このものは何かと言いますれば、
中央卸売市場を育成し、取締り監督をするという立場で
法律制度ができておる。これ以外の点については自由を基礎にした
営業が行われておる、自由のものである、こういうことからしまして、自然にもまた発生しておると思われます。従いまして原因と申しますれば、
中央卸売市場法による
法律制度及び新憲法による
営業の自由の観点、経済的には特に食糧危機を招来した
ような終戦後の事態、またそれは
生産者、消費者の一部の要望を満たしておる、しかし
弊害もある、こういう
ようなところに加えまして、公的団体の財政
事情とか、注意の仕方が十分でなかった点にあるかと思っておるわけであります。
その次に第二点でございますが、
類似市場の功罪及びこれを育成する方針か、調節するかという方針でありますが、本
改正案を
提案しました方針としましては、結論を端的に申し上げますと、これは抑制か調整の方針でございます。
類似市場を育成して、しかるべくりっぱな
市場にする方針を持った
改正案ではございません。そういう育成強化して
取引上に力を、相当他に対する影響力を持たせるためには、あくまで現行法が大正十二年からできております
中央卸売市場を対象にいたしまして、直接
類似市場の発生を法的に
禁止ないしは抑制はいたしませんが、
中央卸売市場の
整備強化と相待ちまして、
類似市場の
業務を制限規制いたしまして、
取引の公正とか、
中央卸売市場が相当
整備強化される場合、あるいはされたあと、そういうときに
弊害がある
類似市場には、これの抑制もかなり極端にするという
法案にいたしたいつもりであるわけでございます。
第三点の、六条の過日の私の
説明として、いろいろ問題があるという御
意見でございますが、第二の問題についてお答えを申し上げました
通りの
趣旨を今でも持っておるわけでございますが、しかし指定区域内の
類似市場で、特に私は
中央卸売市場がさらに
整備強化して
類似市場を必要としないし、抑圧してもよろしいという立場になる
ように念願いたしておりますが、そういう場合にはその分場でもいいと思いますが、間違いのない
ように本場という意味の単独
市場を市町村、都道府県に設けてもらいたい、これは
政府も援助すべきであろうと、こういうふうに思いますが、今まで自由を基礎にしまして、財産権も自由放任という意味でありますが、財産権を持っておるものを既設の団体が、
市場がある場合に閉鎖せしむるのでありまするから、旧法においてすら正当な補償を出すべきという
規定がございますけれ
ども、正当な補償である限りは補償をするのがほんとうである。これは最後的に
業務をやめさせる閉鎖でございますので、特にそうでございますが、しかし閉鎖をし得る
規定がありまするというと、そこには法外な値段を生じ得ない、補償価格を生じ得ることをチェックできる、またその施設を賃借して自分の
市場の施設として
運用し得る道もある、交渉に応じやすくする、こういう伝家の宝刀を持っておると、
市場整備費も安いし、閉鎖買収する場合にも買収価格を適切にし得るというためにぜひ必要であると思っておるのであります。そういうふうに万一閉鎖をいたしました場合にも、また届出だけで
類似市場ができるのではないかということは、観念的にはできると思いますが、
——申し忘れましたが、第一点の
類似市場の発生原因は、やはり終戦後の急速な人口の増加、特に消費人口の増加と都市集中の傾向、こういうものが原因だと思いますが、それに応じまして、この第三点の
類似市場の問題にもなりますが、ただいま
類似市場がある場合には、その
類似市場があれば小さな野市的なものとか、その他の振売り等があっても供給と需要とがマッチしておるのでありますので、それを閉鎖し、ないしは買収して、賃借りして自分のものにしてしまうということが中央
市場に行われますれば、よほど不当な
取引と過当な利益が発生しない限りは、規制すべき
類似市場は発生しない経済条件を作り得る、そういうふうに
考えておるのであります。その場合には不当な
取引は抑制し得るし、過当な利益ならばこれは是正し得る。そうして中央
市場を助けてこの制度をだんだん立てていけたり、
取引の公正化の阻害要件を排除したりできるので、そこまで全く
禁止しなくても目的が達せるから、現行法より一歩進めて、
類似市場の規制追加法規を設ければ適当ではないかと思ったわけであります。
第四点の
類似市場の届出
事務は、
大臣事務であるか、他に委任するかという点につきましては、
類似市場というのは
中央卸売市場の開設から
業務規程の認可に至りますまで、あるいは定期的な
業務の報告をいただきますまで
規定してあり、
運用されておるのと違いまして、初めてこれによる
措置を行うわけでございます。その実態をまずよく理解する必要があると思っておるのであります。それを理解した上、その性質もいろいろ分析して
考えてみて、御
質問にもありました
ように、社会経済的な存在性とか、
中央卸売市場ないしは一般の
取引公正化の一般問題からみてどう
考えるかということも、なお
研究を続ける要もありますので、将来のことをも
考えて、まず当初は少くとも直接
大臣に届出を願うのが適当ではないか、また
大臣に届出を願うということは、その現場の付近の行政庁に届出するよりは困難さも増すので、自然にその目的を達する場合も間接的にはあろうと
考えております。しかし一旦
状況がほぼ、ほとんど全部に近くわかりました暁には、必ずしも
中央卸売市場とは同列でございませんので、これに対する態度も違うわけでございまするから、これは本省で行いませんでも、あるいは県知事等に委任し得ることもあり得ないと
考えましたので、これに知事に委任し得る
規定を置いておるわけであります。これは従来から
規定を
運用すればできると
考えておるわけであります。
市場開設者に委任することも
考えますが、これは普通地方公共団体にやっていただこうという案でございますが、それにしてもその
開設者は、どちらかというと行政行為を行う立場よりは、現実にありまする機構をみましても行政局の本体である、たとえば東京都の経済局からはある意味では重要視し、ある意味では事業的に
考えて
市場監督の行政機構ができておるわけです。私
どももよその都市は一そうそうである
ように思いますが、私
どもはこの
開設者の場合は、事業を開設するある意味の私法的な
中央卸売市場法に基きますから、私法とは言えないかもしれませんが、事業主体という
ような感じのものである。特に現行法において民法の公益法人が開設する場合の
開設者は私法行為であると思いますが、それに反しまして届出
事務は公法的行為でございますので、これは都道府県知事の方が適任であろうと思うのであります。
運用面においても
開設者と違った第三者の方がいいかという点も
考えます。しかし運営によりましてそうでない場合もあるかと思いますので、少くとも当分は委任しないでやってみたらどうであろうと
考えておるわけであります。
第五点の
類似市場というのは、今一定規模以上のものを
考えておりますが、これに対する施設、
業務の変更命令、ないしは
業務の停止等の行政処分、そういうものが命令的に行えるかどうかということでありますが、これは
法案を
提出した以上必要な場合は、
取引の公正化の上に必要であり、また
中央卸売市場は
取引の公正化の主導的地位とその
機能を持ってもらうという建前でおりますから、その
両者のために必要な場合は、時の行
政府の力と意思によろうと思いますが、
国会の行政監査、あるいは行政調査その他のあれもありましょうし、消費者その他の
意見もありましょうし、端的には
開設者の
意見も当然出てくるでありましょうから、それに応じまして必要な場合は必ず命令をする
ような
法律であり、
運用命令も出し得る
ような
政府でなければ、
政府という資格はないと思うのであります。
農林省はもちろんそういうことで
運用するつもりであります。それには資金が要るかどうかということでありますが、
類似市場に対しましては臨検検査から、調査報告から、設備変更から、
業務停止から、閉鎖命令まで逐次順を追うて強く
適用を抑制しなければならない、あるいは適正な
措置をとろうとしている態度を御
提案申し上げておるわけでございまするから、
中央卸売市場の
ように改善的な
整備強化の建前からそういうふうな命令をしなくても、これからし
ようという態度とは違いまして、これは資金を要するがゆえに制限、規制、適正化の命令が実行できないとなれば、だんだん深く強い命令を出すべきだと思っておるわけであります。たとえば設備改造ができない場合は、いかにも品いたみが多くて消費者のためでもない、
公正取引が行われる
ような場所がない、こういう
ような場合でありましたならば、それは一たん設備変更命令を出したあとに、直ちに間もなく
業務停止命令が出るべきものと
考えておるのであります。またそれらの命令等については当然知事と
開設者には
意見を聞いてやるのが至当であり、また
類似市場開設者当事者についても、出かけて行って無理にも検査できる
規定をおいております
ように、よく
意見を聞き調査をしてやるつもりでございます。
類似市場の一定規模の問題でありますが、これはこの
法律が
運用されまする担当局としての私の局で目下
検討中でございまするが、なお
法案の審議の過程においての
意見を尊重して、省としての
意見をまとめまして、そして各地ごとに
開設者の
意見、知事の
意見というものをよく聞いて定めたいと思っております。しかし
考え方の基準としましては、全国的に見まして、いわゆる十三あるわけですが、今後札幌その他で開設すれば、開設あるいは改造するわけでありますので数もふえると思いますが、全国的にも、地方的にも、その
両者で見まして、
中央卸売市場の設備、言いかえまするというと、敷地と申しますか、敷地とその
市場行為をする利用建坪、それから建坪の中における売り場とか、せり場とかという
ようなもの、冷蔵庫ないしはそういう施設でありますが、それらのうち少くとも現状におきまする一番最低のもののところは必ずこれに
適用がある
ように思っておるのであります。調べておりますところによりますと、建坪が、売り場面積と申しますか、売り場面積が百坪、敷地としましては、用地面積としましては三百坪前後、もう一度申しますが、建坪百坪前後、用地面積三百坪前後、売り場面積八十坪前後がいいのじゃないかと思っておりまするけれ
ども、なお御審議及び
関係者の
意見を聞いてきめたいと思っておるわけであります。
もう
一つの
考え方は、全国的に見て一番小さいところ以上のものということでありますが、それより二、三割下げたその規模で押える方が適当でいいという場合と、根本的な制度の
趣旨から見まして、
類似市場と
中央卸売市場の
取引上における
機能から見まして、その指定区域の中にほぼどれだけの消費量があって
取引があるか、消費以外に中継ぎ場所になっておるところもありましょうが、そういうことも
考えまして、東京などでは
類似市場は大きく、鹿児島などでは小さく、高知などでは小さくという
ように、その地区その地区の比率でもちまして、ただいま申し上げました基準をさらにこなしまして、実情に合う
ようにしましてやったらどうだろうという、そういう
考えのもとに成案を得
ようといたしておるわけでございます。
第六点の一定基準以下のものは県条例の規則によるのではないかという点が愛知県の農林部長等から出た
ように思いますが、そのことに触れての御
意見だと思いますが、私はまた
農林省は、
類似市場であったものを県条例でいわゆる公認をして
許可制をしいても、許可したあとは
中央卸売市場とほぼ対等な、私的ではあるが対等な公認法定の
卸売市場とする
意見を持っていないので、むしろそれは中央
市場の育成によりまして、また育成のために、
類似市場は
許可制による公認などにしないで、単に勝手にやろうとするものを届出を義務づけまして、制限規制命令だけを置く、そうして随時これを抑制排除の方向の法制化をする、こういうことでありますが、今は愛知県にすでに例があり、京都でも例があり、横浜その他四、五県がすでにそういう県条例も置きたいといっておるほどでありまして、私
どもの注意等もありまして、指定地区を除く
ようなふうに案を
考えておるところもある
ようでありますが、いまだに成案を得ておらないと思っております。しかし各地で早く何とかしたいということも思っておる
ようでありますが、なるべく
——なるべくというよりは、案が通れば、その県条例の重複する分は国の
法律が出たのであるから条例の
規定事項ではないという
方法によりまして、条例を廃止せしめたいと思っておるのであります。従いまして、抑制すべき
類似市場なり自由
市場がまだ残る
ような
改正法案による規模の指定をするのは適当でないので、抑制する要があるならば、
類似市場の一定規模の限界を引き下げるべきでありまして、引き下げれば条例は無効になりますので、新たに制定もできなくなるわけでありますが、しかし産地でありますとか、農村地帯のあるまとまった小規模の消費地などについてのものは、
生産者からいっても消費者からいっても、
市場がかりにできましても、しいて抑制をする必要がない。特にこの
取扱い基準から見ますると、それで当分の間はもっと事態がはっきりして抑制しなければならぬとでもなる
ようになれば別でございますが、それは愛知県農林部長の言われる
ように、一部は本法でひっかかるが、他方は県条例で規制しなければならぬというのは、表現はそうでありましても、現在の大きな
類似市場を放任し
ようとする方に重点を置いた規則であるのが間違いでありまして、しいて規制をしないでもいいという
部分を残せばいいと、こういう
考えでおるわけでございます。ちょっと問題の番号を間違いましたが、
内容は以上じゃなかったかと思います。