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参考人(岡尊信君) この
法律は、大正十二年
制定以来そのままになっておりまして、終戦後連合軍の最高司令部の勧告等にもよりまして、いわゆる荷受人と申しますか、
卸売人、
仲買人等が無制限、自由でありましたために、荷受機関の経営が成り立たず、これがために一日も早くこの
法律の
改正を要望しておったのでありますが、今回の
改正は一部
改正ではあるが、また
部分的には遺憾の点もありまするが、これらは一部修正なり、運用面を改善するというようなことにおいてできるといたしまするならば、概括的にはこの
原案に対しまして、私どもは賛意を表するものであります。
まず第一に、
中央卸売市場のあり方について
考えてみますると、むずかしいことを申さないで平たく申しますと、公正かつ安全の
取引を確立して、
生産者、出荷者が安んじて無条件委託による販売ができる場所でなければなりません。また
消費者に豊富、新鮮な食料を供給して、食生活を安定し、公共の福祉を増進するということを目標として
考えていかなければならないと思います。まず第一に、私は水産物の
生産者としての
立場から申し述べてみたいと思います。
第一は、
開設者の条項について申し述べます。
開設者は法第一条で「
地方公共団体」と限定してありまするが、これは「国又ハ
地方公共団体」とすべきであると思います。
東京都の
中央卸売市場の現状をみますると、二十九年度において水産物の集荷は十億六千万貫、三百二十一億円であります。この出荷地は北海道をはじめとして四十六
府県からであります。このうち
東京都の
消費は五七%で、
東京都外の
府県への流通は四三%となっております。六
大都市は大体
東京都の場合と同様でありまして、区域外への流通は大阪の四八%、
名古屋の五五%、神戸の五五%、京都の四六%、横浜の二三%で、平均して四八%というものは区域外へ流出しているのであります。この
実情からみますると、一
地方公共団体の住民の食生活の安定というようなことだけではなく、まさに日本国民全体の食生活の安定に貢献しているといってもいいのであります。ことに最近では輸出水産物もこの
中央卸売市場を通じて買われて輸出されているのであります。従って、国の
責任において六
大都市の
中央卸売市場を
開設すべきであり、もしくは
地方公共団体に限るとするならば、少くとも法第八条の国庫補助は一律に三分の一以内とせないで、六
大都市については特例を設けて、全額または五分の四程度とすべきであります。ことに六
大都市の
卸売市場はその構造、
施設が戦災以来欠けた点が多く、またこの
中央卸売市場を作った当時からみると、
東京都などの人口はまさに倍以上になっているというような現状からみましても、この際国の経営または国庫補助の増額等によって、国の
責任において整備すべきであると思います。よって法第一条の「
地方公共団体」とあるのを「国又ハ
地方公共団体」とするか、あるいは法第八条の「三分ノ一」とあるのを「五分ノ四」というように
改正をして、国が十分これに
責任を持つことが必要であると思います。
次に
卸売人について申し述べます。
卸売人は
市場の
運営に当ってその枢軸をなすものであります。これを徹底的に改革することなくして
市場の改善はできません。法第十条で
卸売人の
許可を
農林大臣としたことはきわめて適切であると思います。願わくは
農林大臣の職権を法第二十四条で都道
府県知事に委任するようなことをせないように希望いたします。そうして私はこの
卸売人を非常な強力なものにしてもらうことを、これは法の運用でもできまするから、願いたいと思います。
卸売人は公共的性格を持つ法人とすること、
地方公共団体が資本の一部を持つこと、財政資金の融資をすること、あるいは課税を緩和すること、あるいは不当な荷引競争を禁止すること、手数料を制限すること、増資をすること、こういうようなことによって強化する必要があると思います。なお、
卸売人はその
市場の取扱い数量を勘案して、単数でなく最小限度の少数にすることが必要であると思います。ここに
東京卸売市場の扱い量をみますると、現在水産物では十社あります。その中でA、B、C、Dという四社はいずれも二三%、二三%、二二%、一八%というような数量を扱って、合計して四社で八六%やっております。あとの残りの六社がこの一四%をやります。これを従業員一人当りをみますると、最高では年一人当り四千六百万円やっている、四社のうちの最低でも三千三百万円やっておる、平均して三千八百万円というものをこの四つの会社というものはやっている。しからばその次のいわゆる六社というものはどのくらいかといいますと、最高で二千五百万円、最低が千五百万円、平均で二千百万円というような扱い量であります。こういう一人当りの扱い量が半分以下であるというようなことになりますと、経費その他において相当の無理が出てくると思います。
また法第十条ノ二の
卸売人の欠格条項であるとか、あるいは
卸売を
許可しない条項であるとかというような、今度
改正になったこのすべての点については適切であると思います。
次に
卸売人に関して法第十条で保証金納付の
規定があります。同十一条、十二条、十三条で保証金の優先弁済に関する
規定がありますが、これを
改正されておりません。この保証金というものは
行政措置でもとれるかもしれませんが、大体現在の規則でいいますると、
一つのもの当り一万円から五十万円程度であります。そうしてその保証金の一番優先権は、いわゆる
市場開設者の
市場使用料の滞納債務が第一優先であります。こういうようにして無条件委託をいたした
生産者などの債権というものは一番最後に回されている。また最後でなくても、五十万円ばかりの保証金では、一日に二千万円以上も扱う大きな会社に対して要求することはできないと思います。従って保証金に関しましてはこれを増額をして、少くとも一日二千万円扱うものならば五日分一億円、あるいは三日分とするならば六千万円くらいの保証金をここに
考えることが必要であると思われます。
法律では単に保証金をとると書いてあるだけでありますが、実際上の
運営においてこの保証金を増額してもらう、こういうことが必要であると思います。
次は資本の増大、法第十条ノ三に資力信用ということを書いてある、これが
卸売の
許可をせざる条件にも、また資力信用が欠ける点があることが条件にもなる。こういうようなことを、資力信用ということをこの
法律に書いたことは非常にけっこうでありまするが、ここにおきまして、どうしてもこのこの資力は、法人などの資力というものは必ずしも資本金だけでは
考えられないのでありまするが、この資本金がいかにも小さいのであります。
東京都の例をとりますると、七十億年間取り扱う会社が一億二千万円、あるいは八千万円、あるいは六千万円、五十五億取り扱うなにが二千万円、大阪その他もこれと同様であります。こういう資本金をもってやることで資力があるということは、他にも相当いろいろな
事情があると思いますが、はなはだしく少いと思います。これは
卸売人についての要望事項であります。
次に
仲買人についてであります。
仲買人は法第十五条の六で、一条だけ条文を入れました。必要な場合は参加せしめることができる、そうしてあとは大体命令と
業務規程でできるようになっておりますが、これはもう
一つ、私は
仲買人の
中央卸売市場における
地位は
卸売人と同様いわゆる車の両輪であります。
価格形成上重要な役割をなすものでありまするから、単に十五条の六だけにとどめないで、あるいは設置あるいは
許可、あるいは資格及び欠格事項、あるいは保証金、代金支払いの
関係、あるいは
市場外の売買禁止とか、あるいは罰則とかいうようなことを事こまかに書くか、あるいは
卸売人の条項を準用するかして、もう少し
仲買人の
地位というものをある程度上げる必要があるのじゃないか、こう思います。
次には
類似市場の問題であります。この
類似市場の問題は非常に困難な問題で、もちろん賛否両論がありましょうけれども、まずこの賛否を論ずる前に
類似市場が発生した
原因について探究する必要があります。これは
政府も
開設者も
卸売人も必ずしも
責任がないとは言えないと思います。
中央卸売市場に対する
政府の補助、起債のあっせん、監督指導等々の欠陥、または
中央卸売市場の地理的条件の悪いこと、構造
施設について欠けた点が多いこと、
開設者の
使用料あるいは手数料の問題、
卸売人の手数料の問題、サービスの問題等々が
原因となったことを十分
考えなければならないと思います。従って本法の
改正と、
政府の強力なる援助と監督指導によって
中央卸売市場の構造、
施設の完備、分場の
開設等による
中央卸売市場の地理的条件の緩和等があれば、自然にこの問題は解決するのではないかと思います。しかしこの
類似市場は現存しております。これに対して単に禁止令を出したりすることはできない。またこれも法的にも
行政的にも放任しておくことはできない。この
改正のいわゆる
届出は
類似市場を公認するもので不
都合であるという論もあるが、この場合は法第二十一条で
届出をさせ、二十二条で十分監督し、二十三条でその
施設または
業務の方法の変更を命じて、これに従わざる場合は停止を命ずるというようなことを書くことによって、これはある程度牽制することができるのじゃないか。たとえば
許可を整理する場合でも、厳選する場合でも無
許可船は対象にならない、
許可船だけが対象になるというようなことで、無
許可船を一応
許可船の線に乗せて、これを整理の対象に乗せてやるというようなことは
法律でもやっておりまするので、これはこういうような条項を
法律の中に入れるということについては私は賛成いたします。
その他監督、命令、処分あるいは罰則については適当と認めます。
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