○
政府委員(石谷憲男君) それでは先ほど
提案理由の
説明を申し上げたのでありまするが、この
説明に対しまして一、二補足をいたしまして、
改正法案の趣旨及び内容を一そう明らかにいたしたいと存ずる次第でございます。
第一は、
官行造林事業の方法についてでありますが、本
事業は
提案理由の中にも簡単に
説明のありましたように、国が相手方の希望によりまして
契約を締結し、国の経費をもちまして
公共団体の所有する
林野に
造林を行い、その収益を分収するのでありまして、国は
植栽から補植、保育、管理、保護、そういった成林に至るまでの一切の育林
事業をその
責任において行うのであります。そして
契約期間中はこれに必要な地上権を持ち、
造林いたしました樹木は国と相手方との共有といたしております。相手方はこの共有の持ち分と、これはすなわち収益分収の割合と同じでありまするが、収益分収権を持ちますほかに、付随的に
造林地の保護の一部を行う義務と、落ち枝あるいは落ち葉等の簡易なる林産物を採取する権利を持っておるわけでございます。収益分収の割合は国が五分、相手方が五分を標準といたしまして、各
造林地について相手方の
出資分としての地代と、国の
出資分としての
造林費とを参酌して定める、こういうことにいたしております。
第二に、この
事業の特徴について申し上げますと、おおむね次のようになっております。国が営林同署の組織と技術能力を動員いたしまして、その負担において
責任を持って
造林地の管理、
経営を行うのでありまするからして、
造林を政策的に推進する方法といたしましては、最も適切確実な方法であろうかと考えるのであります。そして相手方は
土地を提供し、その管理、
経営に協力するだけで、そのほかに何らの
資金、労力を要することもなく、伐期には収益の半分を取得することができます。さらには簡易な林産物をも取得することもできまするので、
造林についての知識、経験に乏しく、かつ
資金に事欠くといったようなものでありましても、この方法によりますれば、林業による収益を期待することができるのであります。そして国もまたその収益を期待しながら森林資源の培養並びに国土保全の
目的を達することができると、かようなふうに申し上げて差しつかえないかと思うのであります。
第三に、
官行造林事業の
造林施策としての意義について申し上げてみます。現在の
造林政策の中核となりまするものは、申し上げるまでもなく、
所有者がみずから
造林する場合におきまして、国がその
植栽費の一部を補助する方式であります。国はこの方法によりまして、民有林における林業
経営の自主的な発展と振興とを期待しておるわけであります。しかしながら林地の自然的
条件、あるいは
所有者の主体的な
条件によりましては、むしろ国が管理、
経営する方が好ましいものもありまするし、さらには補助金を交付するだけではなかなか
造林が進まないような場合もあるのでありまして、かかる
土地やあるいは
所有者に対しまして行います
造林の方式といたしましては、
官行造林事業が最も適当であると考えられるのであります。従いまして、補助金の交付によって自力
造林の期待できまする所はあくまでもこの方式によって
造林を推し進めていくべきでありまして、
官行造林は、大
面積の無立木地で
造林に取りかかるのにむずかしいような事情の所でありまするとか、あるいは
所有者の
資金、能力等の関係によりまして、みずから
造林地の管理、
経営を行うことの困難なようなものを主として
対象とすることになるのであります。今回のこの
改正案におきましても、かかる
見地から
対象地を、法案第一条第二号の
部落有林、及び同条第三号の
水源林地帯の
私有林で、
公有林野とあわせて
造林する必要のあるものに限定して拡大したのであります。ただこの場合におきましても、
官行造林事業は民有林業の自主的な発展と振興をはかる方向と背馳しはしないかという問題があるのでありまするが、これにつきましては、
公有林野を中心といたしまする
官行造林におきましては、決してそのような心配はないと、私どもはかように考えるのであります。すなわち
官行造林事業は、
造林木を国と相手方の共有とし、林地の管理、
経営の一部はともに協力してこれを行い、その結果の収益はこれを分ち合い、
損失はともに負担し合う、いわば一種の共同
経営的な要素を持っておるものでありまして、ことに
公有林野の場合におきましては、
所有者はすなわち地元民でありまするからして、
官行造林地を自分たちの山として、国に協力しながらこれを育成して参りまするので、その結果は
森林経営に対する熱意と知識が深められ、民有林業に対する普及的な効果はすこぶる大きいものがあると、かように確信をいたすものであります。
第四は、
部落有林への
官行造林を行うことについてでありまするが、法案の第一条第二号の、「旧来ノ慣行ニ依リ
共同利用ニ供スル森林又ハ原野」というのがいわゆる
部落有林であります。
部落有林は沿革的に申し上げますると、旧藩時代のいわゆる村持ち山でありまして、これは当時
法律上の所有形態といたしましては、公私未分化の
状態にあり、また
利用の形態といたしましては、個人の占有の事実がなく、すべて
部落単位で
利用し収益していたものが、その後の官民有区分や、市制町村制の施行、民法による私的所有権の
確立、
部落有財産の整理統一政策といったようなものによりまして、所有形態は公有または私有へと漸次整理されて参り、また経済事情の変化、なかんずく農業
生産の推移と形態とに対応いたしまして、その
利用の形も、右のような典型的な総有的な
利用の形態から、一方
部落の直営
利用が生じまするとともに、他方割りかえ、割り山、持ち分
利用等の私的
利用へと分解してきておるのが実情であります。しかしその所有や
利用の形態は決して近代的なものではなく、依然として、
部落共同体による規制が強く働いており、従いましてその採草、放牧、薪炭
利用等の
利用の形態もきわめて略奪的なものが多いのであります。すなわちこれらの村持ち山林は、昔からわが国の農業
生産と農家生活の自給的な部分をささえておる
基盤でもありまして、そこからはただ採取と
利用が行われておるにすぎず、資本投下による
改良もなく、
利用の高度化もないからであります。従いましてこのような
土地は概して
利用度が低く、かつかなり荒廃しておりまして、もしその
利用を一そう集約化し、さらに合理化するといたしまするならば、
造林地になし得る所が多い
状態にありまするにもかかわらず、
部落共同体による規制や略奪的な
利用によりまして、なかなか自力で
造林を行うに至らないのでありまして、かかる
土地に対する
造林施策といたしましては、けだし
官行造林事業が最も適当であるかに考えるのであります。また実質は
部落有林でも、市町村の
所有名義になっておりまするものは、従来でも
官行造林することができたのでありますが、それ以外の記名共有名義のようなものも、この趣旨からいたしますならば
官行造林することが適当であると、かようにも思われるわけでありますが、旧来の慣行ということでありますが、この言葉につきましては、格別にいついつからという確定的な時期を画することはできないのでありまするけれども、右の
部落有林の性格からみまして、
相当古い慣行であることが必要ではないかと、かように考えたわけであります。また共同の
利用ということの内容につきましては、前にも申しました
通り、主として採草、放牧あるいは薪炭
利用でありまして、その
利用形態としては、典型的な総有的
利用はもちろんのこと、割りかえ、割り山等の
利用形態から、さらに所有と
利用が形式的には分離した持分
利用のものまでも入ってくるのであります。しかしながら典型的な総有的
利用と、またこれと反対なほとんど私有地化したものにつきましては、これらはともに
官行造林の
対象となる契機は非常に少く、大体はその中間的なもの、従いまして、過渡的な
利用形態のものが主としてこの
事業の
対象となるものと思われるのであります。なお農業における
利用との関係についてでありますが、これはあくまでも
契約による
造林でありまするからして、
共同利用の集約化、あるいは合理化によります林地に提供できる
土地だけが希望として上って参るということに相なるわけでありますからして、これによりまして圧迫をいたしたり、あるいはこれと衝突するというふうな懸念は万々ないものと考えるのであります。
次に
水源林造成
対象となる
私有林への
官行造林の問題でありますが、法案の第一条第三号の「
水源涵養ノ為森林ノ造成ヲ行フ必要ノアル
土地」というのは、森林法第二十五条第一項第一号の
目的「水源のかん養」の
目的でございますが、この
目的を達成するために
水源林造成
事業を行う予定地でありまして、
保安林整備臨時措置法の
規定による
保安林整備
計画の中で、
昭和二十九
年度現在
昭和三十
年度以降の
計画といたしまして、約四十三万町歩を計上しておる要
造林地であります。このうち約八万町歩は同法によりまするところの買い上げが予定されており、残り三十五万町歩を右の
水源林造成
事業と、
本法による
官行造林事業の両者によりまして、
造林していく予定であるわけであります。元来かかる
土地は普通林よりも
造林事業としての公共性が高く、かつ
造林も
一般にむずかしいところでありますので、前に申し上げましたような特徴からみまして、
官行造林事業によることがむしろ適当なのであります。このような
水源林でも、市町村有林や
部落有林であるものにつきましては、一号または二号の適用が考えられまするので、この三号はこれ以外の
私有林について適用されるということに相なるのであります。
しかしながら一挙にこのような
私有林全部に対しまして
官行造林を行いますることは、これを担当する営林局署の組織、人員あるいは予算等の制約からいたしまして不可能でありまするので、まず市町村有林や
部落有林の
官行造林地に介在しておるか、あるいは近接しているもので、これらの
公有林野とともに
造林をし、
管理経営する方が両者にとって便宜でもあり、また
水源涵養機能の発揮の上からいたしましても必要であるような
私有林につきましてだけ、これを
官行造林事業で行うことといたしたものであります。
次に
改正法によりますところの
造林の
目標量でございまするが、
官行造林の
対象と相なりまする
土地は、無立木地、散生地あるいは疎悪林相地でありまして、このような
土地につきまして、最近都道府県に
照会をいたしまして、得られました
資料を基にして推計いたしてみまするというと、約百七十万町歩ばかりあることになります。このうち三十
年度以降約三十万町歩を
目標にいたしまして、
官行造林計画を進めて参りたい、かように考えるのであります。このうち
水源林造成
事業の予定地と相なるものが約十一万町歩、それ以外の普通林が約十九万町歩と相なるわけであります。
最後に、この
官行造林事業のための経費は、
国有林野事業特別会計の
事業費の中に、
官行造林費という名称で計上されておりまして、大正九年以来の経費の推移につきましては、別紙
資料の
通りでございます。
昭和三十
年度は八億四千三百九十三万四千円の予算によりまして、既
契約のもの六千町歩と、三十
年度から拡大いたしました新規の
契約によりまするもの七千五百町歩の新値を実施いたしているのでありまするが、明三十一
年度は、これより若干増額に相なっておりまする八億七千四百四十一万五千円の要求でありまして、これによりまして既
契約分といたしまして最終
年度の六千町歩と、新規のものといたしまして、七千五百町歩のものを新値の予定にいたしております。
以上が本
改正案につきましての補足
説明でありまするが、この機会に若干時間をいただきまして、民有林に対する施策の大要につきまして、あわせて御
説明を申し上げたいと存ずる次第でございます。
最初に森林の現況について申し上げまするというと、初めその
面積は国土の六七%に当る約二千五百万町歩を占めておりまして、そこにありまする立木蓄積は約六十億石、年間の
生産量約一億七千万石の林力を有しているのでありますが、毎年木材及び薪炭用として伐採される数量は、平均二億三千万石ばかりに達するのが実情であります。
これを国有林と民有林とに分けてみますと、国有林は全森林の
面積におきまして約三割、立木蓄積におきましてはその半数以上に当るのでありまするが、その多くは奥地山岳地帯に偏在いたしておりまして、しかも現況は天然林が多く、毎年の
生産量はおよそ五千万石にすぎない現状であります。従いまして
利用せられないままに、比較的豊富に蓄積が維持されているという現状であります。これに反しまして、民有林は
面積約一千七百万町歩、その立木蓄積二十九億石ばかりでありますが、比較的経済的並びに自然的な
条件に恵まれた里山の地帯に多く分布し、早くから開発されて参りました関係で、国有林に比べまするというと、その三倍量の伐採が行われ、毎年はなはだしく切り過ぎているという現状であります。その結果は単位
面積当りの森林蓄積は、国有林におきまして四百七十六石ありますのに対しまして、民有林はわずか百八十石、その半数にも達しないといったような現況であります。一部の先進林業地帯を除きましては、
一般にきわめて粗放な
森林経営しか行われていないというのが、いわば民有林の実態であろうかと存ずるのであります。もとより民有林の約半分は薪炭林として
経営されております。二、三十年の短い伐期で繰り返し伐採されていることが、
一般に
生産力の低下のおもなる原因でありますけれども、これとともにごく一部の大規模な
所有者を除き、おおむね五百万に達するところの農業者の零細所有にとりましては、森林は農業収入の補足をはかる程度の場にすぎない現状にありますことも、決してこれを見のがし得ない点であると考えられるのであります。
しからば戦前の林業事情はどのようであったかと申しまするというと、
昭和十四年の当時におけるわが国の森林は約四千六百万町歩、約九十億石の立木蓄積を持っておったのでありまするけれども、このうち一部の地帯を除きます朝鮮、台湾の森林はおおむね
利用価値の低いものでありましたのに対しまして、南樺太一帯の森林はその九割というものが針葉樹林でありまして、当時急激に勃興いたして参りました紙パルプ産業の原料の半分以上をこれらの森林から供給していたような
状況であったのであります。
昭和五年から九年に至ります五年間の伐採量は、年間一億七千ないし一億八千万石でありまして、これが日華事変の前後になりまするというと、約五割の増伐と相なり、今次の大戦争中にはほぼ倍量に達したのであります。なおこの
期間の木材需要量は平均年間約六、七千万石でありまして、一千七百万ないし二千万石を南樺太、北米、台湾その他の地域から輸入あるいは移入いたしておりました関係で、内地の
生産量は四、五千万石で足りるという
状況であったのであります。従いまして、いわゆる現今見られるごとき過伐の現象はほとんどなかったと言っても過言ではない
状況であったのであります。
戦前の民有林行政はこれを簡単に表現いたしますると、大正から
昭和の初期にかけましては、治山治水と公有林対策とが中心をなしておりまして、次いで
昭和十四年の森林法の
改正を転機といたしまして、
私有林地を含めた
森林経営の全面的な規整と、この仕事のにない手として森林組合を育成強化することに重点が向けられていたのであります。治山治水対策につきましては、明治四十三年以降
昭和十年に至る間第一期森林治水
事業によりまして約六万町歩の荒廃林地が復旧され、引き続き
昭和十二年から第二期森林治水
事業が進められたのでありますけれども、不幸にいたしまして、戦争に際会して中絶いたしたのであります。公有林対策につきましては、民有林の中でも特にその荒廃がはなはだしいという現状認識に立ちまして、入会権の整理を行い、管理区分を決定し、施業案の編成等が行われ、ことに大正九年には公有林
官行造林事業が三十万町歩の
造林目標を掲げて発足したような次第であったのであります。林産物の需要が加速度的に増大するとともに、国力の増進を
目的とする海外発展に備えまして、国の資源政策上林政の一大転換が要望されるに至りまして、
昭和十四年には森林法の大
改正が行われ、民有林における画期的な施業案制度が創設されたのであります。この制度によりまして、民有林の営林監督は一そう強化せられ、五十町歩以上の森林
所有者は単独に、それ以下のものはそれらを構成員とする森林組合に組織され、これらに対し施業案編成の義務が課されたのでありましたが、戦争の発展に伴いまして、
昭和十八年にはついに不急
事業としてこれを中止するのやむなきに至ったのであります。
以上のような経過で終戦を迎えました以後の民有林関係の施策は、狭められた国内森林資源にのみ依存して、戦災復旧、産業用等国民経済の維持発展に不可欠な木材を供給するとともに、国土の荒廃を防止し、さらにはこの
状態からすみやかに脱却いたしまして、森林復興への道を歩み出しますために必要な
造林、治山及び林道の諸
事業を強力に進め、
森林経営の合理化をはかりまして、森林
所有者の経済力を養うということに置かれたのは当然であります。すなわち法制の面について申し上げますならば、
造林臨時措置法、
保安林整備臨時措置法の制定及び森林法の
改正がそのおもなものであります。
昭和二十五年に施行いたしました
造林臨時措置法は、戦中戦後にかけまして累積いたしました要
造林地の早期解消を目途といたしまして、治山治水上重要な要
造林地に対して知事が特に指定して森林
所有者等に
造林をさせることを定めたものであります。これらのことによりまして、
昭和二十三
年度末には百十六万町歩にも達しておりました戦時中以来放置されていたいわゆる要
造林地も、本三十一
年度中には完全にこれを植え終る
状態にまで立ち至ったのであります。
昭和二十六年の森林法
改正は、戦後の社会経済的諸
条件と
一般国民思潮を背景といたしまして、森林資源の保続培養と国民経済の発展に資するための基本的な森林施策を目途として行われたものでありまして、これによりまして、
昭和十四年
改正法にも定められた施業案制度によります民有林
経営の事前監督的な行き方を廃しまして、国の
責任のもとに編成する森林
計画の制度を始めて、
保安林と一定年令以下の
一般民有林の伐採を許可制といたしまして、これとかたがた
造林の義務づけをするといったような措置をとり行いますると同時に、従来強制品加入方式をとっておりました森林組合を、加入脱退の自由な協同組合組織に改組いたしたのであります。これにより全国を二千九十六の森林区という単位に区画いたしまして、これらにおのおの一名の林業
経営指導員を設置して民有林
経営の指導、監督に当らせていたのでありますが、来
年度以降におきましては、あとに述べまするように林業技術普及員とあわせまして、林業技術の普及、
経営の発展指導にも当らせる方針をとっておるのであります。森林組合の改組は当初若干の懸念が持たれたのでありますが、五千八百余の組合が改組されて現在五千三百八十四の組合と、全国連合会一、都道府県連合会四十六が設立され、組合員は百七十万人にも達しておる
状況であります。しかしながら農業協同組合の例にも見られますように、
農林漁業組合再建整備法の適用を受けております組合が六百十五組合にも達しておる現状でありまして、一組合平均二十万円弱の資本しか有せず、森林組合の経済力の強化による活動力の培養につきましては、今後なお多大な努力を要請されている現状であります。
保安林整備臨時措置法は、
昭和二十八年にきめられた治山治水基本対策要綱に呼応したものでありまして、森林の持つ保安的機能を最高度に発揮させるため、治山
事業の
計画的実行と
保安林配備の適正化のほかに、特に国土保全上重要な
保安林を十カ年
計画で国が
買い入れることを定めたものであります。この民有
保安林の
買い入れは全体で五十万町歩を予定しておりますが、二十九
年度中には五万三千町歩を
買い入れております。
以上
法律の概要を
説明いたしたのでありますが、次に現在実施しておりまするおもな民有林施策を簡単に御
説明いたします。
まず、林業施策の基本であります森林資源の増強策について申し上げますと、森林
生産の保続とその
生産力の増大を確保するために極力
造林の推進をはかって参りました結果、二十五年ごろから毎年の
造林面積がほぼ三十五万町歩以上にも達しまして、伐採
面積を上回るようになり、先にも申し述べました
通り、一時百万町歩をこえておりましたいわゆる戦争中以来の
造林未済地も三十一
年度末でようやく解消する見通しを得たような次第であります。なお
土地生産力の
高度利用を促進して、今後さらに増大する木材需要に対応いたしますために、経済自立五カ年
計画の策定を機会に集約的な人工林を
昭和三十五
年度までに百六十一万町歩増加いたしまして、六百万町歩にいたすべく、天然喬林、薪炭林、原野等の一部に対しまして重点的に
造林をとり進めて参りたい所存でございます。しかし、いかに人工
造林地の拡大に努力いたすといたしましても、その効果は少くとも四十年ないし五十年のあとにしか期待されないのでありますから、当面の木材
需給を確保し、あわせて伐り過ぎによる国土の荒廃を防いで参りますのには、林道網の急速な整備をはかることがいかにしても必要であります。このために
昭和二十六
年度に林道十カ年
計画を定めまして、十二万キロの林道開設を進めて参ったのでありますけれども、二十九
年度まで四カ年の実績を見ますると、一万一千キロに過ぎず、十カ年
計画の一年分にも及ばぬ結果しか得られておらないのであります。もとよりこれらの開発
資金の多くを財政に依存することは不可能事でありますので、限りある
資金を極力投資効果の大きいものから重点的に使用して、この
不足を補うべく努力いたしております。
次に山林関係公共
事業費の半ばを占める治山
事業について申し上げますと、申すまでもなく、直接の
被害ばかりでなく、国民経済に与える莫大な
損失を通じて、直接間接に国民生活の安定を脅威している荒廃林地の存在は、極力早期に解消させるべきものでありますが、何分にも多額の経費を要する
事業でありますため、先ほどの
保安林整備臨時措置法の施行とともに主要な
流域ごとに
保安林整備、
電源開発、あるいは河川
事業等の進行
状況に均衡した治山
事業の重点実施の
計画を策定して実施して参っているのであります。このうち
保安林については、約二百四十万町歩の現有
保安林をおおむね四百万町歩とすることを
目標として指定を急いでおります。
なおこの際、
林野庁において
計画した治山関係の諸
事業について申し上げますと、荒廃林地は二十九
年度末現在で二十三万余町歩、この他に九万八千町歩の荒廃移行林が存しているのでありますが、三十五
年度までにこのうち特に重要なものから崩壊地十一万町歩、はげ山二万一千町歩、地すべり地一万一千町歩の復旧と、九万七千町歩の荒廃防止
事業の実行を
計画いたし、その他重要河川の上流水源地帯にある無立木地や散生地十八万町歩に対する
水源林造成とともに、防風林や防潮林等六万七千町歩の防災林の造成をあわせて推進すべく努力いたしております。
ここで戦後の民有林行政に新しく登場した林業技術普及
事業について申し上げます。この
事業は、
昭和二十四年から始められたもので、農山村の自然的並びに社会経済的な各分野にわたる諸
条件を検討しつつ、林業
経営の合理化を進めることにより、森林
所有者の私経済の向上を促すことを
目的として行うものでありまして、森林
計画による公的制約と相待って、民有林
経営に対する行政施策がようやく整って参るものと考えるのであります。このために府県に設置していた千百六十名の林業技術普及員に、さらに来
年度からは林業
経営指導員を合せて、民有林に対する技術援助の効果をますます高めるよう努力いたしたいと考えているのであります。
以上御
説明いたしました各種の施策をとり行います林業関係予算の中では公共
事業費が最も大きな比重を持っておりまして、この額は年により多少の変動がありますが、ここ数年は年額百億円前後となっております。
林業金融について申し上げますと、わが国の林業は国民経済上重要な地位を占めているにもかかわりませず、収益性が低く、自己資本の蓄積も少い等のために
一般金融の
対象にはなりがたいとされておりましたが、
昭和二十六年
農林漁業金融公庫の設置によって、最も金融ベースに乗りにくかった林業にもようやく融資の糸口が開け、二十六
年度以降百七十六億円余の
資金貸し出しが行われております。
以上民有林行政の概要をごくかいつまんで御
説明いたしましたが、地方財政の窮乏を反映して、補助金交付による民有林施策の推進には決して問題が少くない現状にあります折柄、予算執行に当っては一段とこれが重点的かつ効率的な
運用に努めるとともに、
林野行政の各分野にわたって国有林、民有林の協調体制をさらに強化して、名実ともにわが国林業のにない手として、これにふさわしい内容の民有林を育て上げることを念願して努力をいたしたいと考える次第であります。今回
公有林野官行造林法の一部
改正を御
審議いただきますのも、かかる意味に発するものでありますことを申し上げまして、私の
説明を終らせていただきます。