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1956-05-18 第24回国会 参議院 内閣委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十八日(金曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————   委員の異動 五月十八日委員泉山三六君、青柳秀夫 君及び千葉信君辞任につき、その補欠 として井上清一君、館哲二君及び吉田 法晴君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            島村 軍次君    委員            井上 知治君            井上 清一君            木村篤太郎君            木島 虎藏君            館  哲二君            江田 三郎君            菊川 孝夫君            田畑 金光君            松浦 清一君            吉田 法晴君            廣瀬 久忠君            堀  眞琴君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    内閣官房長官 田中 榮一君    法制局長官   林  修三君    内閣総理大臣    官房審議室長  賀屋 正雄君    防衛政務次官  永山 忠則君    防衛庁次長   増原 恵吉君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁経理局長 北島 武雄君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国防会議構成等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより内閣委員会を開きます。  委員変更についてお知らせいたします。五月十八日、千葉信君、泉山三六君、青柳秀夫君が辞任されまして、その補欠として吉田法晴君、井上清一君、館哲二君が選任されました。   —————————————
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 国防会議構成等に関する法律案を議題として質疑を行います。
  4. 松浦清一

    松浦清一君 総理質問をします前に、この法律案審議に際しての委員長の心がまえについて若干確めておきたいと思います。  この国防会議構成等に関する法律案は昨年の第二十二回の特別国会以来いわく因縁つき法律案でありまして、考えてみると、七月三十日の午後九時ごろであったと思いますが、やはりこの部屋最後に私の質問続行中にちょうど憲法調査会法律案質疑打ち切り、討論打ち切りの連続的な動議の提出のために押し切られて、非常に混乱された状態のままで議運に回りまして、議運衆議院から回ってきてこちらの委員会に回った法律案の本会議に上程される順序等についての話し合いをしている最中に、御了承の通り状況になって、ついに流れてしまった法律案なのであります。しかも二十二国会で問題を起したこの部屋でまた憲法調査会法律案の問題についていろいろああいうことがありましたこの部屋で、いわく因縁つき部屋でいわく因縁つき法律案審議されるようなことになったのであります。最終段階に至ってやはりこの部屋でやるかどうかしりませんが、ともかく再び第二十二回の特別国会の一番最後のときに起ったような現象憲法調査会法案最後のときに起ったような現象が再び繰り返されないように、私ども協力をいたしますから、委員長もその心構えで十分質疑のあるところは質疑をさせて、得心のいくような形において結末をつけられることを希望いたします。私のこの希望に対して委員長の見解を先に承わってから総理大臣質問をいたしたい。
  5. 青木一男

    委員長青木一男君) 松浦君の委員長に対するお尋ねに対してお答えいたします。  ただいまこの部屋のことがお話がありましたが、部屋関係ないと思います。前の国会におきまして、この同じ法案審議が時間不足のためにああいう混乱状態になったということは、私どもも非常に残念に思います。今回はそれほど審議の日取りも窮迫しておりませんので、できるだけ質疑のある方は議を尽していただいて、そうしてこの問題を議了したいと思います。それについては先般来二、三回理事打合会を開きまして、円滑なる質疑進行について、ある了解にも達しておりますので、私はその線に沿って極力円滑に、かつできるだけ十分なる審議に基いて本問題を処理して参りたい、そういう腹案でありますから、御協力をお願いいたします。
  6. 松浦清一

    松浦清一君 鳩山総理に対しても、前にこの法案内容は少し変っておりまするけれども、二十二回の特別国会提案をされましたときも、たびたび法案内容、それから防衛の将来の計画、そういうようなことについてたびたび御質問申し上げて、いろいろ御答弁をいただいたのですが、結局最終段階に至ってまだ質問が済んでおらないままに打ち切られてしまったような状況になったので、まだその当時からこの法案関係を持っていた私としてもお尋ねを申し上げたいことがあるし、また前の機会内閣委員会におられなかった方々については初めからいろいろ御質問があろうかと思います。私は前の二十二回国会審議されたときにお尋ねをして得心のいけるような御答弁をいただけなかった部分についてのみ御質問申し上げたいと思います。  第一番に前に出た法案と、今度出ておりまする内容の中で変っているのは、前の案では、内閣総理大臣議長として、そのほか大蔵大臣外務大臣防衛庁長官経済企画庁長官、五人の閣僚と五人の学識経験者によって構成される十人の会議であるということで、もしも民間の方から五人のいわゆる学識経験ある者を入れるということになっても、その人選が誤まって旧軍人の中からまた再軍備を強行したいというようなことを考えておるような人がこの構成メンバーに入ってくると、日本経済力、世界の平和、そういう問題が無視されて、ひたおしに軍備強化がはかられる計画が、この会議において立てられていくのじゃないかということを御質問申し上げたのであります。ところが、それに対しては特に旧軍人委員に入れるとか、あるいは平和をおかすような軍備が強行されるというようなことのないように、委員人選については配慮をするつもりであるという御答弁をいただいたと記憶いたしておるのであります。ところがこれが回り回って最後には衆議院修正となって、民間人は入れないということで回ってきて、そうしてその質疑過程において打ち切られておる。今度出てきておるのは民間人は入れないということになっておる。だから前には衆議院議員の方から修正されたのでありますが、今度出ておるのは、民間人を入れない五人の閣僚によって構成される国防会議であるということが内閣提出になって出ておるわけですね。これは、衆議院提出じゃないのですね、内閣の方で民間人を入れないことにしたというのは、結局前に修正案として出された与党の方との話合いの結果、こういうことになったのでございましょうか。
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院においても民間人を入れないというように決議をされましたもので、それを尊重いたしまして民間人を入れないことにいたしました。
  8. 松浦清一

    松浦清一君 この国防会議目的国防基本方針防衛計画大綱防衛計画に関連する産業等調整計画大綱防衛出動可否等について、内閣総理大臣諮問機関としてこの会議は構成される、こういうことなんですが、この法律案全体に対して賛成をするとか反対するとかということは別問題として、日本の国にとってこれまた憲法違反であるとかないとかいうようなことは別問題としても、国防基本方針防衛計画大綱、それらの五項目はきわめて重大な問題だと思うのです。その中でこれもまた前回その五つの問題についてそれぞれお尋ねしたときに、政府としては別に恒久性のある防御計画というものを持っているんじゃない、あるいは防衛計画に関連する産業調整計画等についても、政府としては案を持っているんじゃない、白紙でこの会議意見を求めるという立場で臨むのである、こういうことをおっしゃられた。今日もこの法案提案するに当って政府としては方針が変っておりませんか。
  9. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 変っておりません。
  10. 松浦清一

    松浦清一君 憲法調査会法案提案をされ審議されました際に、最初質疑過程においては憲法調査会を設置するということは、憲法を改正するという目的のために調査会を設置するんじゃなくて、現行憲法の中に改正する点があるかないかということを調べるために調査会を設置するのだと、ちょうど国防会議に対して今総理が御答弁になっておられるような御答弁をしておられた。ところがこの審議に併行して、与党たる自由民主党の中に憲法調査会が設置され、山崎君が会長となって、憲法改正基本方針から始まって十一項目にわたる改正要点というものができたわけです。四月の二十七日にこれは資料としてわれわれにも配布された。自来この内閣委員会において、最初は、今申し上げたような答弁であったけれども調査会を設置することに併行して、与党たる自由民主党憲法改正の案を立てつつあるが、これが調査会に持ち込まれるではないかという質問に対して、最後には、内閣としてこれを持ち込むということはないけれども議員の中から選ばれる三十名のうちに自由民主党のものが入れば、委員に入ったそのものを通して与党改正案が持ち込まれることはあり得ると、こういうことであった。また総理がこの委員会で、内閣憲法改正の案を作って国民にこれを示すことは内閣義務であるということを答えたこともございます。そこで突き詰めたところ、憲法調査会に臨むに当っては、政府ないしは政府を代弁する形において改正案を持ってこの調査会に臨むんだということが明瞭になったわけです。これは提案者たる山崎君、吉野国務大臣が何回かの質問に対して結論的にそう答えられた。従って私は前回この法案審議されたときには、一応総理の、白紙で臨むんだという、その御答弁を肯定しておったわけです。ところが憲法調査会審議に当って、そういう形が出て参りましたので、この国防会議に対しても何らかの考え方を一応、内閣といいますか、政府といいますか、きめておいて、そうしてそれを審議の問題としてここに提供されるというような気がしてならぬのですが、そんなことはございませんと突っぱねるのでなしに、私はまだこれに賛成するか、反対するか態度をきめておるわけじゃないのですから、懇談するつもりで、親切にお答えを願いたいと思います。
  11. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) この国防会議総理大臣諮問にこたえて国防基本方針防衛計画大綱防御出動可否等国防に関する重要事項について広い視野から総合的に慎重な審議を行いまして、わが国の国防施策について万全を期せんとするものでありまするから、政府としてはこの国防施策についての万全を期するために、相当の案を用意するということは当然だと考えております。
  12. 松浦清一

    松浦清一君 前には案を持たないとおっしゃって、適当な案をもって臨むんだというふうに答弁をされましたが、別に私はあげ足を拾いませんけれども、このうちの国防基本方針防衛計画大綱をきめていかなければならぬということは、日米安全保障条約前文の中に、アメリカ合衆国は日本が「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自から責任を負うことを期待する」という、日米安全保障条約前文の中で、このようなことがうたってあります。ですから日米安全保障条約を肯定する現内閣としては、この条約に基いて国防基本方針なり防衛計画大綱をきめていかなければならんことが、この条約の中に義務づけられておると私は判断をしておる。そこでおそらく今日までの自衛隊が毎年のように増強をなされてきたということも、この日米安全保障条約前文に基いてその義務としてこれが増強されてきたものと私は判断をしております。そこでこれから先にどのような計画を持って増強されていこうというお考えであるかということを伺いたいことが一点。  それから前回のときもいろいろ議論になりましたが、防衛六カ年、経済六カ年計画というものが策定をされておる。この前のときには経済企画庁に変える前の高碕経審長官が、経済六カ年計画というものは、閣議にあいて正式に決定をしたものではないので、まだ未確定のものであるということであった。ちょっと話が横にそれまするけれども質問の必要上伺いますが、今政府が立てられておる経済六カ年計画というものは、もう閣議決定をされて、政府方針としてきまったのでございましょうか。
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 長期防衛計画については、目下関係当局で慎重に検討を進めておりますけれども国防会議の成立を待って、これに諮問の上作成したいと考えております。  それから先刻の、この質問の前の御質問の、この設置は結局日米共同防衛義務上、日米との共同防衛約束の結果作っているのではないかという御質問でしたね。私は日米共同防衛の名の下にこういう会議を起す必要があると私は考えております。
  14. 松浦清一

    松浦清一君 そうじゃないのです。国防会議構成等に関する法案のこの国防会議を作るということは、日米安全保障条約に基いて作ったのかという問いでは私はないんです。今自衛隊増強されていっておるということは、この日米安全保障条約前文に示されてあるこの義務に従って日本がやっているのであろうと思われる。従って長期防衛計画が立っておるのかと、こういうことと、それから経済六カ年計画政府方針として決定をしておるのなら、それと防衛力増強計画との関係はどうか。つづめて言えばその二点を伺ったわけです。
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その最後の点につきましては、国力に相当する防衛力を作るという考え方政府としては持っておる。まだできてはおりません。  それからやはり最初の方の、国力に相応する防衛力を作る必要があると思っておる。(「もう少し大きな声で一つ」「聞こえないのです」と呼ぶ者あり)ああそうですか、この部屋は少し作り方が悪いんだな。(笑声、田畑金光君「原稿を読まんでお話しになればよくわかるのですけれども原稿をお読みになるから話が通らないのですよ」と述ぶ)
  16. 青木一男

    委員長青木一男君) なるべく高声に願います。
  17. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本防衛力を作るということは、日米共同防衛の納米作るということは約束はされておりますけれども、どの程度においての防衛力を作るかということは、国力に応じて作るというより仕方がないと思います。
  18. 松浦清一

    松浦清一君 そのあと経済六カ年計画防衛計画関連性についてはどうですか。
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国力に相当する防衛力を作るように努力をするというより仕方がないと思います。
  20. 松浦清一

    松浦清一君 長官がそこからささやいて、長官のおっしゃった通りに答えておられるけれども、私は別に荒だたしい言葉では聞きませんが、そういう答弁をなさっておられるということがいつまでもひっかかりになって、同じことを繰り返し繰り返し尋ねたり答弁をされたりしなければならぬということになるのですよ。われわれが尋ねたいと考えておることは、一体日本経済建設をするための経済六カ年計画というものは、決定をしたのか、ほんとうに日本の国の方針としてきめたのか、それから防衛力増強していくということは、国力に応じてやっていくということを、しばしば今まで答えておられるのですよ。その国力判断の基礎というものを一体どこに置いているのか、こういうところにわれわれの解けがたい問題があるので、防衛六カ年計画が、経済六カ年計画がきまっておるなら、きまっておる、それは来年はどれだけ日本経済力増強するから、それに適応した防衛力増強は大体どれくらいの程度ならできるのだというようなことが、具体的に判断をされなければならぬと思うのです。毎年毎年、今年もまた一万九千自衛隊がふえるわけですが、予算編成の時期になって、今年の経済力はだいぶ去年より上昇してきておるから、二万ふやそうか、一万五千にしようかというようなことを話し合っているのではないと思うのですよ。その辺のところは、これはいわゆる自衛隊という防衛力を持つことの可否については、いろいろ議論がありましょうけれども、それは質疑過程ですから意見は述べませんが、とにかく五里霧中で、予算編成のときにだけ、思いつきの増強考えているのではない一そう思いまするので、国力に応じてという簡単な投げやりな答弁をなさらずに、その辺のところは真剣にやはり懇談するつもりでお答えになることの方が、問題の審議上いいのではないか、こう私は思います。総理としては、やはりそれは国力に応じてやっていくのだと、こういえば一番楽な答弁で、これは一番無難でしょう。ところが内閣総理大臣たる職責は、議員質問に対して、その場だけうまく逃げればよいという、あなたの性格からいって、そういうお考えではなかろうと思うのでありますけれども、そういうことでは、いつまでたっても、これは平行線をたどって審議は進まないと考えまするので、もう一ぺん私は伺います。経済六カ年計画というものが、たとえ閣議において決定をされ国の方針として決定されていないまでも、しばしばこれは書き物にもなって出ておりますし、新聞でも報道されております。国民全体は、今の鳩山内閣経済六カ年計画を立てたものと了解をしているわけです。全然秘密事項であるなら、それは刷り物になってわれわれの手に渡ったり、あるいは新聞に報道されたりするはずはないので、おそらくきまっておるのではないかと思うのですね。国力とは、いわゆる経済六カ年計画の中で策定をされておる段階的な国力相応の方途を示しておるものと思うのです、経済六カ年計画は。それならば、国力に対応して自衛隊増強していくということは、経済六カ年計画とあわせていくという方向がとられなければならぬはずだと思う。それは一体何でありますかと、こういうことなんです。
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 経済六カ年計画というより、今年からいえば五カ年計画。これは最終目標として一応きまっておりますし、年次計画はまだきまっておるわけではないのであります。長期防衛計画経済五カ年計画と見合いましてきめることであって、大体において国民所得の二%を国防費、二%強を国防費の方に回そうという考え方をしております。
  22. 松浦清一

    松浦清一君 何の二%ですか、予算の二%……。
  23. 鳩山一郎

  24. 松浦清一

    松浦清一君 ああ、そうですか。総予算の何%ですか。
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 年次計画がきまっていませんものですから、はっきりした御答弁はできません。国民所得の二%強の程度において国防計画をやっていきたいという考え方をしております。
  26. 江田三郎

    江田三郎君 議事進行。本会議ベルが鳴っておるのです。一つ休憩願います。
  27. 青木一男

    委員長青木一男君) なるべく………。
  28. 江田三郎

    江田三郎君 なるべくじゃなしに、本会議鳩山総理出席するでしょう。われわれの委員会法案もかかっておるでしょう。
  29. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと申し上げます。もちろん本会議中でも委員会を開くことは、許可を得ています。しかし、この委員会法案のかかるときは、委員長においてしかるべく処理します。
  30. 江田三郎

    江田三郎君 ちょっとお尋ねをしますが、許可を得ておるといって、日比交渉というような大きな問題で、鳩山総理もそれに御出席なさるという本会議でも、委員会は勝手に開いてもいいということになるのですか。それは委員長良識としておかしいじゃないですか。
  31. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっとお答えします。日比賠償の問題は、本会議から総理出席は要求ありません。外務大臣だけで処理されるように、議運の方できまっておりますから、委員長はさように取り計らっております。
  32. 江田三郎

    江田三郎君 日比賠償という問題は、普通の問題と違うと思うのです。何か普通の質問とか緊急質問とかいう問題でなしに、これはちょっと、けたがはずれた大きな問題ですから、そういうことは委員長として、少し良識を持って取り扱われぬと困るのです。
  33. 青木一男

    委員長青木一男君) 議運がそうきめてありますから、よくわかりませんが、きょうは説明だけで、質疑もないそうで、外務大臣だけでよいことになっておるそうであります。
  34. 江田三郎

    江田三郎君 説明をわれわれ開かなければならぬのです。
  35. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと申し上げますが……。
  36. 松浦清一

    松浦清一君 今の議事進行についてですが、私はまだ十分ほど残っておりますが、本会議に出て、あとでもいいです。
  37. 青木一男

    委員長青木一男君) 江田君のお話、この委員会の問題のかかるときは、委員長休憩するつもりでありますから、さよう御了承願います。
  38. 田畑金光

    田畑金光君 松浦君からの今のような発言がありまして、あと十分ぐらい残っておるが、この次の機会に継続したいというようなお話があるわけですが、先ほど委員会の始まる前のお互いの相談では、松浦君の質問できょうは、総理大臣に対する質問は午後に回そう、こういうことになっております。特に日比賠償協定の問題が本会議に上程されるといたしますと、これは全体の委員出席が必要となって参りますので、そういうような関係もあって、松浦君の質問で一応午前の審議を終ろうということになっておりますから、本人からそういった要望があったら、この際、わずか十分でありますから、あと機会に譲って、ベルが鳴っておりますから、この辺で午前の審議を終っていただきたいと思います。
  39. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩いたします。  再開の時刻は追ってお知らせいたします。    午前十一時十九分休憩    ————————    午後一時四分開会
  40. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
  41. 江田三郎

    江田三郎君 ちょっと今、午後の質問が始まる前に議事進行立場から一言総理にお伺いするのですが、総理も御承知のように小選挙区法案の問題をめぐりまして今当院の、参議院地方行教委員会できのう以来大へんな混乱が起っておるわけであります。この状態につきましては、もう総理もお聞きになっていると思うのでありますが、私はこういう混乱というものはあまり聞いたことも見たこともないわけであります。これがただ参議院内の混乱というよりも、衆議院参議院とまるでごっちゃになったような混乱でありまして、とてもこういうような混乱が一方において行われましておったのでは私は本法案のような重要問題を落ちついて審議する気持にならないわけです。そこでその混乱がどっちがいいとか悪いとかいうことは、私には私の考え方がありますし、また総理には総理考え方がございましょうが、いずれにいたしましても、衆議院であれだけ問題を起したものをこっちにもってこられて、そうして衆議院混乱がそのままこちらに移ってきておる状況は、これは何とかすみやかに事態収拾をはからなければ院の運営も円滑に行きませんし、また私たち国民の信託に報いるゆえんでもないと考えますので、こういうような問題につきましてもうこれ以上事態を放置しておったのではまことに憂慮すべき問題だと思うのですが、こういう事態につきまして総理自由民主党の総裁という立場で、たとえば社会党委員長、両党首の会談というような形ででも、あるいはその他の方法ででも、この事態収拾をはかられるという御意思はございませんでしょうか、そういうようなことがはかっていただけるということになりますれば、私どもも安心してこの重要法案審議を進めていくことができるのじゃないかと思いますので、議事進行立場から一言ちょっと総理にお伺いするわけです。
  42. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も全くこの混乱に対しては遺憾に存じております。もしも鈴木君との会談によってこの混乱が解けるというような見込みがあるのならば、私はあえて鈴木君と協議することを避けるものではございません。ただ衆議院におきまして議長のあっせんによって社会党とは妥協のできたものと思っておったものでありまして、そして中正公正なる委員によって区画制がきまるということになれば、社会党においても御心配がないものというように解釈をしておったのにかかわらず、それによってまだ問題が解消していなかったということを知りまして非常に遺憾に思っておる次第であります。
  43. 江田三郎

    江田三郎君 ちょっともう一言だけ。これは総理御承知かどうかわかりませんが、今参議院での混乱はあの法案内容をめぐっての混乱ではなくて、衆議院で地方自治法とどちらを先議にするかということで、衆議院では地方自治法の方を先議したところが、こちらではそうではなくて、依然として小選挙区法案の方を先議に回そうということのために起きている混乱でございますから、私は衆議院事態が円満に収拾したあの精神をもって、両党首でお話し下されば、これはもう簡単に問題が片づくのじゃないか。それが第一線の人ばかりではどちらも面目に捉われ、感情に走って、みずからこの議会制度を国民の非難の的にするような方向にもっていっておると考えますので、一つこの問題についてはただいまの総理のお気持を伺いまして、私どもも非常に感謝にたえませんが、どうぞ一つそういうようなお気持で、一つすみやかに事態収拾をはかっていただきたいということを重ねてお願いします。よろしゅうございますか。
  44. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたの御説にはむろん賛成であります。こういう混乱を永続させるということは、日本の恥辱でもありまするから、どうにかして早く解決する道があれば、その道の方に進みたいと思います。
  45. 青木一男

    委員長青木一男君) その程度で一つ。
  46. 江田三郎

    江田三郎君 私は今の総理のお言葉を直ちに鈴木委員長にお伝えしたいと思います。
  47. 青木一男

    委員長青木一男君) 質疑を継続します。
  48. 松浦清一

    松浦清一君 午前中の質疑に対する御答弁、きわめて短時間でありましたけれども、大体前からの行きがわりもございまするし、鳩山総理としての見解はある程度わかっておるので、日本国防防衛方針大綱をきめていくということについては、国力に対応してそれを漸増していくのだという、そういうことが今日までしばしば述べられてきた。そこで一体その国力とは何ぞやという問題が起ってくるわけです。先ほど防衛六カ年計画の有無について御質問申し上げましたが、結局あるやら、ないやらわからぬようなことになって午前の質疑が打ち切られたわけですが、総理考え防衛力増強していくことに適当なる日本国力の増進の状況というものはどういう程度であるかということを一つお教えを願いたい。
  49. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛力増進の程度ですか。
  50. 松浦清一

    松浦清一君 いや違うのです。に応じて防衛力増強していくのだということを今までしばしば総理は述べられておる。国力判断の基礎は日本の現在の生産力、貿易の状況、そういうものから判断をして総合的な経済力を意味するものと判断するのです。その総合的な経済力というものはどの程度のものであるかということをお教え願いたい、こういうのです。
  51. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻申しました通りに、経済五カ年計画と見合いまして国民所得がだんだん増進する、その増進に比例いたしまして国防計画もやっていきたい、そうしてその程度国民所得の二%強というのを見合いとしてやっていきたいつもりだ、先刻そういうように答弁いたしました。
  52. 松浦清一

    松浦清一君 具体的に申して、この国力の現状というものはどういう状態にございますか。
  53. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国防長官から答弁をしてもらいます。
  54. 松浦清一

    松浦清一君 ちょっと答弁の前に、重複したらいけませんからもう一ぺん繰り返しますけれども国力に対応して防衛力増強していくのだと、こういうのですね。それが総理が今まで答えられたことなんです。その国力とは現在の日本の生産力、貿易の状況、そういうものを総合した経済力を意味するものだと私は判断するのです。ですから今の自衛隊増強程度というものを国力に適当した漸増の状態であるかどうかということを判断するためには、今の国力の現状というものを知りたい、日本の今の経済力の現状というものを私は知りたいのです。それを尋ねているわけです。
  55. 船田中

    国務大臣(船田中君) この問題につきましては予算委員会等におきまして経済企画庁長官から詳細御説明申し上げておるのでございまして、大体それを基準として、そしてそれと見合った防衛力増強ということを私どもとしては考えておるわけでありまして、結論的に申しますると、先ほど来総理から答弁がありましたように、大体国民所得の二%強というところを目標にいたしておるわけでございます。またその前提となります国力ということにつきましては、ただいま松浦委員もおっしゃったように、国民全体の生産力、貿易の状況、民生の状態、そういうあらゆる要素を総合的に判断して、国力の基準というものを考えていくということでございまして、その点におきましては、ただいま松浦委員の御指摘になりましたようなことを前提といたしまして、日本国力というものを判断いたして参ることが適当であると存じます。
  56. 松浦清一

    松浦清一君 そういう抽象的なことを聞いているのではないんですよ。予算委員会等で大蔵大臣だとか、あるいは経企長官だとか、そういう人たちが答えたとあなたはおっしゃるけれども、今の国防会議構成等に関する法律案審議するに当っては、予算委員会でだれがこう言ったとか、ああ言ったとかいうようなことでおしまいになるのなら、衆議院審議をされたその状況の速記録を調べてみれば、ここで尋ねることはきわめて少くなる。この委員会は、この委員会独自の立場において、国力に適当したその防衛増強がなされておるかどうかということを調べるのが目的ですから、国力々々とおっしゃるから、その国力の現状とはどのように判断をしておられるかということを私は尋ねておるわけです。抽象的なことなら私も知っているのです。
  57. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは先ほど私から御説明申し上げましたように、国民の生産力、あるいは国民生活の状況、貿易の状態、そういうようなものを総合判断して、大体の基準を見出すという以外に、私はそれ以上のことは、数字的にこれをはっきり出すということはむずかしいかと思います。しかし大体基準となりますものは、国民所得というものがやはり一番正確な基準になるのではないかと考えます。
  58. 松浦清一

    松浦清一君 それはまあ尋ねても今のは日本経済力の現状というものを数字的にあなたは説明できないかもしれませんから、それはその辺で保留しておいて、また大蔵大臣なり経企長官なり来てもらってそのことについては一つ尋ねることにします。  もう一つ、これは総理に伺いたいのです。最近の防衛庁予算の、私はあえて申しますけれども、乱費ぶり、これは日本自衛隊というものを考える、日本防衛力というものを考える上において、今の防衛庁の中に行われておる、いろいろな流布されておる予算の乱費問題というのは、これはきわめて重要な問題だと思うのです。たとえば衆議院の決算委員会で問題になっておる中古エンジンの問題であるとか、数えていけば、これは真疑のほどはわかりませんよ、だから私は聞いているんで、昭和二十六年の二千五百万円という手術用器械、それから歯科用器械等を買い入れたということが非常に必要のないものであって、いまだにこれが倉庫の中にあくびをしておるという問題、それから昭和二十七年に野戦病院用の折り畳み式ベッドを二千八百八十八台買えば十分であったのに七千三百八十八台買ってしまった。これはどうもうかつなことに、事務官が数字の書き間違いをやっておったのだと、こういうようなことらしい。それから昭和二十七年にくつの補修用の皮を一万四百五十足分買ったが、当時補給廠では二万七千三百五十五足分がストックになっておった。つまり買う必要がなかったものを買った。それから昭和二十八年の鉄かぶとの中に入れる合金材料の問題、それから天下に有名な二十九年の陸上自衛隊における軍服の問題、こういうまあいろいろな問題が、乱費の状況というものがうわさをされて、そうして会計検査院からもこれが指摘されて、衆議院の決算委員会では今、中古エンジンの問題が問題になっておる。一体こういう状況はまことに慨歎おくあたわざる不祥な問題だと私思いますが、総理はどう思いますか。
  59. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうようなもしも国費の乱費というものがあればまことに遺憾と思いますが、それらの点については私はそれをつまびらかにしておりませんから、船田長官から答弁いたさせます。
  60. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま松浦委員のおっしゃられた前段におあげになりました問題については、ここに正確な資料を持っておりませんから、いずれ別の機会政府委員から事実について答弁してもらうことにいたしますが、特におあげになりました冬服の問題と中古エンジンの問題につきましては、私も詳細承知しておりますので、ここに一言説明を申し上げておきます。冬服の問題につきましては、これは会計検査院の批難事項のうちにあげられておりますが、しかし検査院の批難事項として批難された前提になっておりますのは、米軍側が自衛隊に対して七十万着の冬服を無償供与するということをあらかじめ通知しておったと、こういうことが前提になっておりますが、その卒実は全くそういうことはございません。従いまして責任者といたしましては、それをあてにして年次計画による買い入れをしないわけには参りませんので、七万着の買い入れをいたしたところが、買い入れをした後に七十万着の冬服が米軍から供与された、こういう事実でございまして、この点につきましては予算委員会あるいは決算委員会その他の機会に詳細答弁を申し上げておる通りでございます。またパッカード・マリン・エンジンの問題につきましては、これは昭和二十六年の四月、五月に米極東空軍からQM物資として放出されましたものが、当時東京通産局を通じて購入されて、払い下げられ、一台十万五百円で払い下げられた。それが昭和二十九年度の予算に快速救命艇のエンジンとして採用することになりまして、昭和三十年、三十一年におきましてこれを買い上げ、そうして一台千二百五十万円で買い上げた、こういう問題でございます。しかし払い下げられましたときには全くスクラップとして払い下げられ、そしてしかもその当時は四十ノット以上も出す高性能のマリン・エンジンというものの使い道は全くなかった。従って全くこれは鉄くずとしての値段しかなかった、ところが昭和二十九年度の予算において初めて快速救命艇二隻が計上されまして、そのエンジンに何を使うかといということで研究いたし、また米軍側に対しましてもパッカード・マリン・エンジンをぜひ供与をお願いしたいということで努力をいたしましたが、しかしそれがついに供与が受けられませんので、そこで当時間組が持っておりましたパッカードマリン・エンジン、そうしてしかもそれは払い下げられた当時とは違いまして、部品もそろい、またアフター・ケアにつきましても十分責任を持ってやるということで、富士重工が間組の委託を受けまして、そうして富士重工がその販売の掌に当る、こういうことになりましたので、そこで間組の持っておりましたパッカード・マリン・エンジンを買い入れたわけでございますが、その買い入れの価格につきましては原価計策その他十分にこれを調査をいたし、かつ関東財務局の専門家の評価も受けまして、そうして千二百五十万円という価格を出したわけでございます。現にこれを取りつけました快速救命艇は四十ノットの、当方から所望いたしました速力より以上の性能を発揮いたしまして、現に四十一ノット以上の快速で走ることができるということでございまして、いろいろ世間の誤解を受けるようなことがあったということはまことに遺憾でございますけれども、その間におきまして、防衛庁がこのパッカード・マリン・エンジンを買い入れるにつきましては、何ら不当不正の事実は全くないのでございます。ただこういうことが、払い下げたときに十万五百円、買い上げたときには千二百五十万円、そうしてしかもその間の時間の差というものが短いということになりますれば、非常に世間に誤解を投げかけたようでございますが、その間にただいま申し上げた通り何ら買入れについての不正不当のことはないのでございまして、従ってただいま御指摘になりましたように防衛庁が国費を乱費しているという事実も全くないわけでございますから、その点はどうぞ御了承いただきたいと思います。
  61. 松浦清一

    松浦清一君 衆議院の決算委員会でもいろいろな資料を出されてそういう答弁をしておられるようですが、いずれにしましても、一番最初から防衛庁が買い取るまでのうちに数人のブローカーが入って、あっちからこっちに売りつけるための工作が行われたことはまぎれもない事実であるようです。ただ最初防衛庁が買い取った値段が適当であったか、なかったかということは判断の違いによっていろいろ違ってくるでしょうけれども、もしもかりに不正なブローカー的な、またリベート的な取り引があったとすれば、これは責任は追及せらるべき性質のものだと思います。衆議院の状勢委員会がいつ終るか、結論がどうなるかわかりませんが、もしもそれがたとえ一点でも防衛庁の方に不正な事実があったということになれば、あなたは責任をおとりになりますか。
  62. 船田中

    国務大臣(船田中君) 私はその点につきましては、衆議院の決算委員会の諸君にもはっきり申し上げておったわけでございますが、防衛庁側において不正不当のことがあり、また公務員の間に汚職のようなことがもし万々一あるといたしまするならば、すなわち私のただいままで申し上げておることに間違いがあった、事実が全く違っておったということでございまするならば、私は十分それに対して責任を負うつもりでおります。
  63. 松浦清一

    松浦清一君 総理に伺いますが、ただいま船田長官は非常にきっぱりした決意のほどを示されましたが、もしも世間で伝えられるがごとく、また衆議院の決算委員会で追及しているがごとき事実が明瞭になってきた場合、事実であるかないか、最後にならなければわかりませんが、それが不正であるということが事実であった場合に、船田長官は責任を負うとおっしゃるが、もし負わなかった場合には船田長官を罷免されますか。
  64. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいまお聞きの通りに船田長官みずから責任をとると言っていらっしゃるのですから、罷免する機会はないと思います。
  65. 松浦清一

    松浦清一君 いやいや、そういうことなら尋ねなくてもいいのですよ。もしもおやめにならなくなった場合には、あなたは罷免されますかというのです。
  66. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは仮定のことですから、仮定のことについては答弁はできません。
  67. 松浦清一

    松浦清一君 まだいろいろあるけれども、こんにゃく問答をしても仕方がないし、四十分時間が経過したからあとは他に譲りましょう。
  68. 吉田法晴

    吉田法晴君 鳩山総理に、これは総理だけではございませんけれども国防会議構成等に関する法律案鳩山内閣重要法案としておられる。そしてこれは私ども巷間伝え聞くところでありますけれども国防会議構成等に関する法律案がふたたび流れるようなことがあれば、船田防衛庁長官はこれはやめるんだ、責任をとってやめるんだと、こういううわさが飛んでおりますが、今この防衛庁経費の不当乱費問題に関連をして松浦君から質問がございましたけれども法案についてもそういう防衛庁長官の地任といいますか、辞職がかかっておるほど重要視しておられるのか、その点を巻間伝え聞くうわさがたとえば私どもに多少の何と申しますか、圧力を加えるがごとくにして伝えられますだけに、まず御意見を聞いておきたいと思います。
  69. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ただいま吉田君の申されたようなことについては考えておりません。
  70. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ船田長官に伺いますが、船田長官の口からそういう意味のことが漏れたように聞いておりますから、船田長官自身のあるいは心境かもしれません。総理国防会議の構成に関する法律案が流れても、内閣の責任をとるようなことはしないという今答弁でしたが、どういう工合に考えておられますか。
  71. 船田中

    国務大臣(船田中君) (「慎重に答えなさいよ」と呼ぶ者あり)この国防会議法はきわめて重要であり、しかも第二十二国会においてもなかなかこの問題につきましては多くの問題が起っておった、きわめて重要な法案でありまして、わが国の防衛体制を整備する上においてはぜひこの国防会議法がすみやかに本院を通過することを私は熱望いたし、またそれをお願い申し上げます。なお、これが万一通過しなかったらどうするかということにつきましては、そのときになりまして十分考慮いたしまして、私の責任に属することは十分責任は果して参りたいと思っております。
  72. 吉田法晴

    吉田法晴君 意味がよくわかりませんけれども、先ほど船田長官の真意といいますか、あるいは心情か決意かしりませんけれども、そういうものとして伝えられて参りましただけに、その真意をお尋ねしたわけであります。辞職をする云々というお話がございましたから、もう少しその点を、通るように努力をしたいというようなことでなしに、通らなかったらおやめになる、また今総理が否定されたようにおやめにならないでやっていかれるか、もう少し具体的に承わりたい。
  73. 船田中

    国務大臣(船田中君) 私はこの法案につきましては、すでにずいぶん長いこと御審議を願って、もう内容についても十分皆さん御了承になっておるんじゃないかと思いますので、私は通らないというふうには考えておりません。(「今日から初めて審議に入ったんだ」と呼ぶ者あり)
  74. 吉田法晴

    吉田法晴君 皆さんずいぶん御審議を願ってよく御存じということでありますが、それは衆議院はしりません。衆議院は通ってきたんでありますから衆議院審議が尽されただろうと思います。参議院は今日からこれは審議をいたしております。けしからぬ御発言だと思うのでありますが、どういう意味でそういうことを言われるのですか。
  75. 船田中

    国務大臣(船田中君) なるほど今日から御審議を願っておるのでございますが、しかしもうすでにずいぶんこの問題については、第二十二国会においても御論議になっておることでございますので、そのことを申しただけでありまして、決して皆さんがこれについて御審議になることについて私はそれを妨げるような意味で申し上げたんじゃございませんから、どうかその点は悪しからず御了承を願います。
  76. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは二十二国会審議をされた、流れるまで審議されたことは、これは事実です。しかし今国会においては本日から審議を始めるのであって、十分審議をされ、御存じであろう云々という意味は、国会参議院審議権についてとやかく申し上げるわけではない、——ということで、いわばお取り消しになっておるのだと思うが、正規に御発言になる意味から言うならば、これから審議をしようという参議院に対して、あるいは審議に臨んで防衛庁長官として出られた船田長官としては不謹慎だと私は思うのでありますが、お取り消しになったと了解してよろしゅうございますか。
  77. 船田中

    国務大臣(船田中君) いや今吉田委員のおっしゃった通り、決して私は皆さんの御審議を妨げる意味で申したのではございませんから、前の発言が不穏当であるということでございますれば私は喜んで取り消します。
  78. 吉田法晴

    吉田法晴君 鳩山総理に総括的にお尋ねをしておるのでございますから、総理に御答弁を願いたいと思いますが、この国防会議の問題もそうでございます。いわゆる防衛という問題について、あるいは防衛計画という問題について、これをめぐりますアメリカからの要請、それから日本の態度等について、鳩山内閣の、鳩山総理の確固たる方針というものが感ぜられない。鳩山総理は大体どういう工合に考えておられるかということがわかりません。そうしてたとえば防衛計画という問題についても、従来は、吉田内閣の当時においては憲法九条があるから日本は戦力を打つことはできない、アメリカから安全保障条約を理由にしてと申しますか、防衛努力の要請があったとしても、私どもこれは吉田内閣憲法を無視して実力軍隊を作ってこられた態度については批判をして参りました、批判をして参りましたが、また吉田内閣としても戦力に至るような再軍備をしてはいかんのだと、こういうことで、何と申しますか若干の抵抗はしてこられたと思うのでございますが、鳩山内閣になって、そういう点についてはこれは何も感ぜられない。まあ自衛のためには軍隊を持ち得るのだと、それから自衛のためには外国の基地をたたくこともできると、こういうまあ発言に見られますように、何でもやってゆくのだと、これは憲法の解釈についても限度がありませんから、防衛という問題についても、方針とそれから節度と申しますか、大体何を考えておるのかということがわからない、正直に申し上げて。そこで総理大臣に明確に一つ鳩山内閣方針を言明願いたいと思うのでございます。
  79. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は日本が独立国家として自衛力を持つことはかえって世界の平和のためにもなり、自衛力を持たないと世界の平和というものは脅かされるというような考え方を持っておるのであります。自衛力を持つということによって、世界の平和の維持がかえってできると思う、そのために自衛力を持つことは必要だ、そうして自衛力を持つということは、憲法九条は決して禁止をしてはいないという考え方をしております。
  80. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、言われますように、今ダレス国務長官なり、あるいはアメリカで申しておりますように、平和は力を基礎にして保たれるのだ、力の均衡によって平和は保たれるのだ、その力の均衡によって平和む保つ一環として日本が自衛力を打つのだ、こういう方針だというわけですか。
  81. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その力の平均という、力の平衡ということ、これも言い方によったらば間違いではないかもしれませんが、私の言いましたのは、一つの国が自分の国を無防備にしておくということが、かえって世界の平和を乱すゆえんになるから、日本の国は他国からの侵略を防ぐに足るだけの自衛の力を持つことが、かえって世界の平和に寄与するゆえんになるというような考え方をしているということを申したのであります。
  82. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、無防備であることが平和を守るゆえんではない、侵略を防ぐことが平和を守るゆえんだ、そうするならば、その自衛力というものは外国からの侵略を完全に防ぎ得る力と、こういうことになるでしょう。そうなりますね。外国からの侵略を防ぎ得る、だから……。
  83. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは事実はあなたがおっしゃる通りに、外国の侵略を防ぐに足る自衛力を持つということは、実は必要なことだと思いますけれども、それは事実上はできない世の中だと思っております。集団防衛あるいは共同防衛というような形において、やはり今日の防衛は成立するものだと考えております。
  84. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると集団防衛、先ほど松浦君が質問したときには、日米との共同防衛ということを言われました。共同防衛というのは、アメリカと日本とで日本を守る、こういうことになりますね。それから集団防衛という場合には、集団安全保障機構と申しますか、あるいはそのSEATO等がございますが、あるいはNEATOもございます。あるいはNEATOに日本なりあるいは韓国なり台湾なり入って、西太平洋における共同防衛機構ということがございます。いずれにしても共同防衛ということと、集団防衛ということは必ずしも一つではない、ある意味においては共同防衛も集団防衛も一つと言えばそれまででありますが、その点については午前中、共同防衛という言葉が総理の言葉から出ました。今集団防衛という言葉が出たのですが、その点についてはどういうことをお考えになっているのでしょう。
  85. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私の今申しましたのは、SEATOやNEATOに入って、そうして集団の防衛をするという意味で申したのではないのです。そのときには共同防御なり国際連合に加入いたしまして、国際連合に加入して、世界の平和を一緒になって保ちたいという意味で申し上げたのであります。
  86. 吉田法晴

    吉田法晴君 国際連合によって平和を保つ、これも一つの考え方、現在そういう議論はあると思います。日本憲法ができたときにも、これはそういう国際主義によれば、これはございます。その場合に国連に加入するにしても、まる腰で加入することができる、たとえばアイスランドのごときところが、そういうまる腰で、日本の自衛力を持たないで、国際連合に加入し、国際平和を保つという態度を、あなたがおとりになるならば別問題です。しかし先ほど自衛力を持つべきだということですから、日本が自衛力を持つということは、先ほどの御答弁で出た、そうすると、その自衛力と国際的な集団防衛の機構との関係が問題なのであります。国際連合だけならばそれはまる腰でも参加できるわけであります。その点もう少しアメリカとの共同防衛という形だけを考えておられるのか、もっとそれはNEATO、SEATOということは別問題として、国際連合以外の共同防衛ということを、集団防衛ということを考えておられるのか、その辺もう少し明確に御答弁願いたい。
  87. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はただ今は日本が持ちたいと思っているのは、自衛力を持ちたいということだけを言っているのでありまして、国際連合に加入して、警察軍をこしらえて、それによって世界の平和を維持するという点にまで、日本はそこまでいけるかどうかということは、そのときに考えるべきものだと思っております。ただ幾度も申しますがごとく、日本防衛国力に応じて自主的な態勢を整えたいという程度のところでとどめるべきだと思っております。
  88. 吉田法晴

    吉田法晴君 問題がまたこう回り出したのですが、自衛力を持ちたいということを答弁されたことは、私ども了解している。ところが日本だけで自衛をしていけば、これは今の国際的な何と申しますか、ソ連にしましてもあるいはアメリカにしても、水爆を持っているような状態ですから、もしそれを守るということになれば、それは十八万人あるいは十何万トンとかいったような今の六カ年計画等では、これはとても守れんでしょう。そうすると自衛隊の数もふやしていく、あるいはトン数、機数もふやしていく、あるいは原水爆も持つべきだ、こういうことにこれはなっていくでしょう。日本だけで力で守るということになれば、力に期待しないで、まる腰で、国際的な信義とそれから秩序に期待するという憲法の建前に立てば、それは力は要りません。しかし力で国を守ろう、こういう決意をしていると、こういうことですから、日本の国だけで守ろうとすればそれは限度があります。それはお話のように、そういうことは考えておらんと、こういうことですから、それではどうなさるのかというと、集団防衛でいくとも言われる。集団防衛で、形としてはどういうことをお考えになっているか、こういうお尋ねをしているわけです。わかりましょう、これは、総理
  89. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本防衛を、いかなる場合においても完全に防衛する方法というような問題になりますと、私は事実においてはこれはなかなか不可能なことだろうと思うのです。とにかく自衛力を持って、多く起るべき侵略に対して防ぐということが、まず第一であります。次には共同防衛によって次に起る可能性のある侵略に対して備えるということが必要だと思うのです。
  90. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその多く起る侵略に対して一応日本を守るだけの力、それから先は共同防衛共同防衛ということを、アメリカとの共同防衛ということ、そのときにはその多く起るであろう侵略に対して、日本を守る力というものはふえているわけではありませんね、あなたのお考えでは。
  91. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 今、私はとにかく防衛力が一つもありませんと、李ラインの問題などが起きても、なかなかまとまらないというような形が自然に起るべきものだと思うのです。相当の自衛力を持つということは、独立国家としては古今古来にきまっておるのですから、自衛力を全くなくしてその国の平和は保たれる、侵略を免れているというのは歴史的にないのですから、そこは考えなくてはならないと思います。
  92. 吉田法晴

    吉田法晴君 李ラインの問題は、これはまあ失言だと思うのですが、李ラインの問題の起るのは自衛力がないからだというわけですか。
  93. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いやそういうわけではありませんけれども、直ちに説明するわけには参りませんけれども、自衛力が一つもない、侵略は従って起る機会は多いと思うのです。
  94. 吉田法晴

    吉田法晴君 それはその李ラインの問題をお取り消しになったら……、李ラインの問題は外交交渉で……。
  95. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 李ラインの問題は外交問題でありますから、これを引例しない方がいいと思いますから取り消します。
  96. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、その多く起るであろう侵略に対して、一応国を守る力というのと、それから共同防衛というお話がございましたが、その共同で防衛をするときのその共同防衛の力、日本の持っておる力、こういうものとはこれは違うのですか一緒ですか。ちょっとわかりませんか。
  97. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ちょっとどういう意味でしょうか。
  98. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど全然自衛力のない国というものは、自衛力がないと侵略が起る、こういう御説明でした。それから私はまああなたの言葉——一応言葉で言われた、これに関連してどの程度のことを考えておられるかということを聞くわけですから、その多く起るであろう侵略に対して国を守るだけの力というお話ですから、それはどの程度のことを考えておられるのか。それからさらに共同で守らなければならんような外敵の侵入云々というお話でしたから、それは先ほど聞きましたように、いわば総理の頭の中で本格的な戦争という、こういう工合に考えておられるのかしりませんが、その際に共同で守らなければ、侵略あるいはそれに対する力、こういうものは、これは力あるいは防衛力というものと違うのですか、ということをお尋ねしておるわけです。
  99. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はとにかく現在において自主的に日本国力に沿うだけの自衛力をもって満足すべきものであると思っております。
  100. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは従来言われておったところです。それから先ほど松浦君にも御答弁がありました抽象的に国民所得の二%程度ということと同じ意味だろうと思うのですが、それが別な言葉で言えば、多く起るであろう侵略に対して一応まあ対抗する力、こういうお話でした。それは、それではどういうものか、どういう程度の力かということをまずお尋ねをして、それと、それから共同防衛考えておられるわけです。その共同防衛の場合の力ということとは、これは同じですか、こうお尋ねしておる。
  101. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) いずれの場合におきましても、国力に沿うところの自衛力を持つというので満足をしなくてはならないと思っております。
  102. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは総理に申し上げますが、国力に相応する力、これだけの言い方では、先ほど松浦君がお尋ねをいたしましたが、国民所得の二%とあなたは言われる、国民所得がだんだんふえていくというと、これは限度がありません。そうでしょう。国民所得というか、日本経済力というものが上らんということはお考えにならないでしょう、これは上げたい。そうすると、国力相応の力、国民所得の二%というものは、今はかりに十八万あるいは七万五千ですか、千三百機と言われておりますけれども、それがだんだんふえて参る、もう一つ差しあたりの国を守る力、こういうのと、必ずしもこれは一致をしません。だから、たとえばその差しあたり、とにかく国を守る力というものが、それが国の経済力からいうならば、国の力からいうならば限度かもしれないけれども、それでは先ほどあなたの言われたような、共同防衛を必要とするような事態考えるならば・日本の力だけでは——国を守る力は互いに共同防衛なら共同防衛、集団防衛なら集団防衛、こういうことをあなたたちはお考えになるだろうと思うのです。そうすると、集団防衛の形が、それはNEATOとか、SEATOとかいうものについては考えておらぬというお話になりますけれども、そういう共同防衛というかあるいは集団防衛、よその国と一緒に国を守る、こういうことにこれはなってくるのではありませんか。その辺をどういう防衛の姿を考え、あるいは日本としてはどの程度のことを考えておられるのか。
  103. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 将来の長い先にわたって、長い将来にわたって、私は防衛力がどの程度でもって満足すべきかということを言うわけには参りません。ただいまは国力に応じたるその限度において、日本の自衛力を強化していきたいという考えを持っておる、遠い将来にわたってどういう世の中が変化するかもわかりませんで、そういうことを言うわけにも参りません。もしも世の中が一変いたしまして、戦争は絶対にない、あるいは国際連合の力が強化されて、個々の戦争はなくなるような政治情勢ができたというような場合において、日本の自衛力というものはそう過大に持つ必要はなくなるわけでありますから、現在においては国力に沿うところの自衛力を持っていきたいということを言うよりほかに道はないと思います。
  104. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、まあ国際情勢の認識、それから国を守る方式というものは意見が違います。私どもは遠い将来の話ではなくて、現在においても中国あるいはソ連から攻撃があるとは考えない。これはまあ山口喜久一郎さんにしてもそう言っておられる。それからソ連のいわゆる微笑外交というものに対して、アメリカのダレス長官自身さえ、やはりこれに対してその平和的な努力を認めざるを得ない、あるいは軍縮提案について考えざるを得ないということですから、まして日本が今までまる腰できたものが、ここで力でなければ国を守れない、こういう方向に変るべき理由は私はないと思います。ないと思いますが、その根本議論は時間がございませんから、しないとしても、総理は将来の問題と言われますけれども、しかし現実にこういうことがあります。この防衛六カ年計画というものが防衛庁試案であると言われる、ところが実際を総理は御存じないかもしれませんが、あるいはここで正式に聞くと、船田さんもあるいは否定されるかもしれませんが、長期計画ということですでに各幕なり統幕もそうではないかと思いますが、長期情勢見積りということで言われております十八万、七万五千、千三百機以上のもっと大きなこの計画を作りつつある、そういう情勢分析をして、そうして六年計画、五年計画以上のものを作りつつある。それから集団防衛云々といわれますが、SEATOに参加をし、そうして日本自衛隊日本から出ていけるようになるというふうに要請が、この間のダレス長官が二十六時間ですか滞日の際にも要請された。あるいはこれは明白な言葉で言われたかどうかしれませんが、そういう判断を私どもはしておるわけです。それからこの間から憲法調査会法に関連をして聞きますと、今の陸上自衛隊、その他もそうだろうと思いますが、言われるような万一の場合には国を守るといいますか、あるいは防衛出動をするというようなことになると、これは戦時国際公法は適用せられる、従って交戦権はないと言われますけれども、あるいは俘虜に関します条約、あるいは占領地域その他についてのこれはそれぞれ条約がございますが、これは適用をせられるであろう、交戦権がないという説明は、宣戦の布告をしない、あるいはできないのだということだけだというこれは実態、そうして国防会議なら国防会議を作って、あるいは防衛出動ができるようにする、あるいは防衛計画を立案され、防衛計画諮問に応ぜられるということになりますと、以上のような今の六カ年計画を越して防衛計画を立てるということが防衛計画にかかってくる、こういう今の現状はそうでございますから、鳩山総理の将来の問題云々ということは、これはそんなのんきなことを言ってはおられぬ、現実に問題がある。それについては総理はどういう工合にそれをお考えになりますか。前提の事実が、現状が総理の言われるような将来の仮定の問題じゃなくして現在要望がある、あるいは防衛庁の中の実情が以上の通りであります。
  105. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻申しました通りに、国力に応じて自主的に防衛体制を整えていく、この原則はどこまでも維持していくものと思います。将来国力に応じての防衛体制を、国力のいかんを問わず防衛計画を整えるということは、それ自体に矛盾があると思います。国力に応じた防衛体制を確立してこそ、初めて日本を守ることになるわけでありますから、私は国力に応じて自主的に防衛体制を整えるのだというこの原則はくずれるはずはないと思います。アメリカの要請等は決して日本自衛隊についてはございません。詳細のことは船田長官からお答えいたします。
  106. 船田中

    国務大臣(船田中君) 防衛庁試案として六カ年計画を持っておるということは、吉田委員の御指摘の通りでございますが、それから先のことについて各幕僚部において計画をしておるじゃないかというお話でございますが、さようなものは今何も持っておりません。従いまして昭和三十六年度以降の計画については、何ら具体的なものを防衛庁の試案としても持っておらないというのが事実でございます。
  107. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは総理及び船田長官お尋ねをいたしますが、十八万、七万五千あるいは千三百機という以上の計画を増大するつもりは全くないということは断言できますかどうか。  それからもう一つ集団防衛云々という話が出ておりましたけれども、この東南アジアの防衛機構等に参加を要請された事実もないし、また参加をするつもりもない、こういう工合に鳩山総理としてはっきり御言明になれますか。
  108. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) その通りであります。先刻申しました通りであります。SEATO、NEATOに加入するというような考えをただいま持っておりません。
  109. 船田中

    国務大臣(船田中君) 長期防衛計画につきましては、先ほど来申し上げておりますように昭和三十五年度において最終目標としてたびたびこの委員会においても申し上げたような数字を持っております。しかしそれ以上のことは今日何ら考えておりません。
  110. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど交戦権の問題についてお尋ねをいたしましたが、これは林さんはおられませんでしたが、高辻さんのときにお尋ねをして、その点は高辻さんは陸戦に関する条約が適用せられる云々という点はお認めになったのであります。先ほど交戦権を放棄した、交戦権を認めない、こう憲法に規定してあるけれども、陸戦に関する条約その他が適用せられるということになるならば、宣戦の布告をしないという以外に何があるかと、こういうことをお尋ねしたわけでありますが、法制局長の所見を伺っておきたいと思います。
  111. 林修三

    政府委員(林修三君) 今吉田先生のおっしゃいました問答は私も実は速記録で見ております。これはむしろ今の交戦権ということではなくて、たとえば自衛隊が国際法上どういうふうに扱われるかという問題についての御質問であり、お答えだったと存じます。それで国際法上、自衛隊というものは果して軍隊として扱われるかどうかというような問題についての質疑応答でございました。これは国際法上、軍隊というようなものについてはいろいろなメルクマールと申しますか、特徴がある。そういうものを備えたものとすれば、国際法上はあるいは軍隊として取り扱われるという場合があるだろうということをお答えしたはずでございます。交戦権という問題はそういういわゆる国際法上どう扱われるかという問題とは私は別問題だと思うのでありまして、これは毎々お答えいたしております通りに、つまり戦時国際法のもとにおいて交戦国が、交戦者が持つ国際法上の権利である、そういう内容といたしましては、たとえば中立国船舶の拿捕であるとか、あるいは占領地行政というようなものが特色だと思うわけであります。こういうことが、憲法のいっている内容で、これはまさに憲法では認めていないわけでございます。そういうものは自衛隊にないわけでございます。これは国際法上、たとえば自衛隊についてあるいは俘虜の条約が適用されるというような問題とはこれは私は別問題だと思うわけでありまして、国際法上そういう条約上の取扱いをされるということと今の交戦権がないということとは別問題でありまして、かりに国際法上そういう取扱いがなされても交戦権があるということにはならないと、私はかように考えております。
  112. 吉田法晴

    吉田法晴君 それの点はこれはあとでも質疑あるいは論議ができますから、またの機会に譲りまして、総理にもう一度お尋ねをしたい点でありますが、この今の自衛隊防衛庁法あるいは自衛隊法によって防衛出動国会の承認を経て総理がきめられ、それでまあ出動する、こういうことになっております。緊急を要して国会の承認を得ないで出動した場合にはあと国会の承認を得ればよろしい、こういう建前になっておること、これはまあ私が申し上げるまでもありません。ところがですね、これは過去の実例を考えてもわかることですが、あの大東亜戦争の事実上の始まりをどこからとるかということはいろいろ議論もありましょう。しかし私ども考えますのに、支那事変というものもやっぱりこれは大東亜戦争、太平洋戦争の始まりで、あの支那事変の始まりは満州事変、満州事変の蘆溝橋事件というものが起りました。今では蘆溝橋事件が日本の陸軍からしかけたということはこれは大体争いがないだろうと思うのですが、それはともかくとして蘆溝橋事件が起った。ところが当時私ども覚えておりますが、近衛内閣で不拡大方針を何べんもこれは中外に宣明をされました。ところが不拡大じゃなくて事実はどんどん拡大をしていった。一ぺんああいう問題が起りますと、それは出動いたしましたものを引っこめるということはなかなか困難だと思う。それは前に船田長官は、それは呼び戻します、だから呼び戻すことのないように出動に当っては慎重を期しますという答弁がございましたけれども、過去の歴史はこれはなかなか一ぺん出動をしてしまったら、そして出動をしたらこれはまあ撃ち合いをやると言いますか、戦闘行為は事実上始まるでしょう。そこで国際法規がどういうように適用されますかという問題は、今多少論議しかかりましたが、これは別の機会にいたします。機会にいたしますが、あるいは国防会議に諮りましょうとも、総理があるいは国会の承認を事後ということで出動を命ずることができるということになると、これはやはり行政権で、行政府の責任者としての総理防衛自衛隊の出動を命ずると、こういうことになりますが、それでは過去の失敗を私は防ぐわけには参らぬと思うのです。  そこでこれらの問題について憲法というか制度上の点を論議をしております者は、自衛隊の出動その他についてはこれはこれが国会の先決事項と申しますか、国会できめる以外には防衛出動をすべきではないというこれは有力なる意見がございますが、総理はまあすでにできておる法律だから云々とおっしゃるかもしれませんが、総理ですから総理に危険のあるようなそういう条文を直して、防衛出動国会の承認がなければ絶対に出ないと、こういうことに改むべきではないかと思うのですが、前の方の議論は省略をいたしまして、総理の所見を承わりたいと思うのであります。
  113. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国会を召集して間に合うような場合においてはもちろん召集をして国会の承認を得た上で防衛出動を命じます。けれどもそういうようないとまのない場合も想像し得るのでありまするから、そういう場合においては事後に直ちに国会の承認を得るというだけで十分だ。決して以前のような国民の同意なくして出動ができるというようなことはあり得ないと思います。現在は統帥権の独立というようなことはないのでありまするから、軍事が政治に優先するというようなことはもうあり得ないと私は思っております。
  114. 吉田法晴

    吉田法晴君 大へんまあその辺楽観ですまれども、実際に自衛隊の中で旧政府軍人と申しますか、士官と申しますか、それがだんだん成長をして、このシヴィル・コントロールという点が、文民優先、最近は文民優先とは言わないで政治優先と言いますけれども、そういう点が崩れつつあることを私どもは心配をするのであります。  それから出動等の場合について心配をするような私は指摘をしましたようなやっぱり危険性が残っておる。あるいはこの防衛力の漸増についても何の、とにかく限度もないのです。初めもない。そこで総理にそれらの点について全然構想はございませんかと、まあ総理は今のままで、制度のままで、あるいは法律のままで、現状でまあいいと、こういうお話でございますが、こまかい規定を指摘をする時間がなくなりましたが、私はあるいは心ある者はこれはやっぱりそういう心配をしておる。あるいはたとえば憲法改正の中に天皇の国事行為として一方は宣戦の布告という文字が入ったり、あるいは戒厳とか非常事態ということが考えられたりするのは、これは国会の監督を受ける総理じゃなくて、天皇の名において一方的にあるいは宣戦が布告される云々ということを心配させる大きな、これは要素ですが、総理の言われるほど事態は、これはのんきにかまえておるわけには参らぬように私は思うのです。あるいは防衛庁あるいは国防会議等について総理が過去の失敗にかんがみて、何と申しますか、十分なる検討と、それから反省、今の御構想を根本的に何と言いますか変え、この失敗を繰り返さない点について御決意がおありになるかどうか、御構想がおありになるかどうか、重ねてお尋ねをしておきたいと思います。
  115. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本は今あなたのおっしゃったような考え方を持つことについてはずいぶん多大な犠牲を払っておるのでありまするから、現在の憲法、現在の国防会議法等によりまして政治の優先はできるだけ確保するような規定になっておりまするから、いわんや統帥権の独立というようなことはない時代でありますから、十分にやっぱり政治優先というようなことは確保できるものと思います。
  116. 田畑金光

    田畑金光君 総理お尋ねいたしますが、すでに去る十五日、河野全権は日ソ間の漁業条約あるいは海難救助協定の締結をはかったわけでありますが、それによりますと、七月末までに日ソ国交の正常化のために交渉を再開する、こういう義務負担を約束しておるわけであります。当然鳩山内閣といたしましはこの条約協定上の義務に基いて日ソ国交正常化の交渉再開をはかられるものとわれわれは、ことに国民は期待しておりますが、この点総理からお考えを承わりたいと思います。
  117. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田畑君の御承知の通りに、私は日ソの間の国交の正常化ということは必ずやりたいと、よほど前から考えておるのであります。河野君が帰ってきまして事情をよく聞きまして、日ソ間の国交関係の正常化の一日もすみやかにできるように努力をいたしたいと思っております。
  118. 田畑金光

    田畑金光君 総理が国交正常化に努力をしたいということは、私たちも本会議において、あるいはこの委員会等においても再々承わっておるわけであります。しかしながら日ソ国交調整のロンドンの会議を振り返ってみましても、昨年の六月一日から今年にわたりまして二十数回開かれているわけであります。あるいはアデナウアー方式によるか、平和条約方式によるか、方式の違いはありましても、今日まで幾たびかの会議が失敗に終ったということは、要するにこれは外交問題が党内問題によって支配されたという結果だと、こう見るわけです。しかしながらもうすでに日ソの漁業条約あるいはその他の協定を通じて七月末までには再開をしなければならぬ、こういう約束を全権がかわしてきたとするならば、もうすでにこれは抽象的な言葉でのがれるわけには参らぬ、こう考えるわけであります。この点に関しまして総理は七月末までに、この期限について党内を調整されて約束を履行される、こういう御決意を持っておられるかどうか、これを承わります。
  119. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 河野君は今月の二十五日に帰って参ります。帰って参りましたならば、いろいろの事情を聞きまして、国交正常化についてできるだけよき方法をとってすみやかに解決したいと思っております。御心配の党内の調整も私はできるものと思っております。
  120. 田畑金光

    田畑金光君 ソ連との問題がこのような形ですでに現内閣といたしましても絶対絶命の立場に追い込まれたと、こうなって参りますると、総理の今のお話のように当然国交正常化のための交渉が再開されるものとわれわれは期待いたしております。同時に問題として出てくることは、中共との関係をどうはかるか、どう調整するか、国交回復について現内閣はどのような方針をとるかということも国民の深く関心を持っておる点であります。たまたまこの問題に関しましても総理は誠意をもって善処したい、あるいは周恩来の呼びかけについても、もし必要とあれば出かけて行ってもよろしい、こういうような決意のほども披瀝をされていたわけであります。しかし中共との関係は今日までの経緯を見ましても、あるいはまた台湾政権との関係考えても、日ソ国交正常化の次にくる問題であろうとわれわれは見ているわけであります。すでに幸いにいたしまして、日ソ国交調整がこのように既定の手順を蹈まなければならぬ、こうなって参りますると、中国との関係も具体的な方向を打ち出す段階にきておるのではなかろうか、こう考えるわけですか、この点について総理の見解を承わりたいと思います。
  121. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田畑君のおっしゃる通りに近隣の大国と国交が正常化されないということは、まことに遺憾な話であります。でありまするから、中共ともソ連と同じように国交を正常化いたしたいことはやまやまでありますけれども、この点については台湾の国民政権がありまして、この間の関係を刺激するということも考えなくちゃなりませんので、両国の争いの起きないように、そうして東洋の平和が維持せられるように、最善の努力をしたいと考えております。それですから両国の関係の国際貿易などについても政府としてはできるだけの努力をしたいという考え方で進んできておるわけであります。   〔委員長退席、理事宮田重文君着席〕
  122. 田畑金光

    田畑金光君 五月十六日付の朝日新聞でありますが、今中共を訪問している日本機関誌報道代表団の桜井俊夫君、これは国鉄労働組合の情宣部長でありますが、北京放送として次のようなことを報道しておるわけであります。それは周恩来中共首相と懇談した際に次のようなことを周恩来が話していた。すなわち重光外相は古い中国しか知らないから新しい中国を訪問しよく見てもらいたい。鳩山首相はときどき中国やソ連を訪問する用意があると言明しておるから、ぜひ実現させてもらいたいとよく言っておるわけであります。今日の外交はすでに鳩山総理も御承知のように、一国の首脳が直接出かけて行って相手方と話し合いを進める、平和的な話し合いの外交を進めていこう、こういう段階にきておるわけであります。昨年の末ごろソ連のブルガーニンあるいはフルシチョフ、こういう二巨頭がインドやビルマ、ネパールの国々を訪問して経済的な提携を呼びかけた。あるいは平和的な共存という気持を強く植えつけていった、まあこういうようなことを私たちは昨年の末に見たわけですが、たとえばことしの四月の中旬から下旬にかけて同じくソ連の二巨頭がイギリスに渡っておる。あるいはまたイギリスから近くソ連の方にイーデン首相が旅行する、こういうことも聞いておるわけであります。現在またフランスのモレ首相あるいはピノー外相がソ連を訪問している。こういう工合にすでに今日の国際的な外交を見ますると、巨頭対巨頭、直接行って話し合って、そうして国際的ないろいろな紛議を話し合いによって解決していこう、このような段階にきておるわけであります。私は、不幸にして鳩山総理にもう少し健康がこれを許せばという気持は持っておりますが、しかし大丈夫だと思うのです。こうして国会の忙しいところも熱心にお勤めになっておられるところを見ますと、健康も大丈夫だと思うのです。こういうことを私たちは考えたとき、総理としても今度の河野全権が、ソ連のブルガーニン等との話し合いの中にも出たように、新聞で見ておりまするが、とにかく総理等があるいは中共、あるいはソ連へみずから出かけて行って話し合いを進める、これくらいの気魄がなければ、今後の日本の外交というものは立ちおくれるであろう、こう見ておりますが、総理はそういうような質問に対しまして、健康の点もありましょうが、しかし私は健康も自信を持っていいと、こう考えますが、どうお考えになりますか、承わりたいと思います。
  123. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 河野君が帰ってこられましてよく事情を聞きまして、その工合によりましてソ連に行ってくることも辞するわけではございません。中共に対してはまだ国民政府関係があるものですから、中共に行くようなことについてはまだ決意はしておりませんけれども、場合によりましては、予算委員会において私が言明した通り、周恩来に会うということをあえて逃げるわけは一つもないと私は思っております。
  124. 田畑金光

    田畑金光君 河野さんの報告、あるいは話し合の経過いかんによっては、総理みずからソ連に出かけて行くだけの気魄を持っておるわけですね。先ほど総理お話を、御答弁を承わりますと、中共との関係も台湾政権との関係があって制約もあるが、しかしできるだけ国交の正常化の方向に努力を進めていきたいという総理の言明でありますが、一つの例を申し上げますと、最近政府におかれては中共への渡航制限を決定されているわけであります。次官会議において、あるいはまた閣議においてもそうだと思いますが、要するに政治目的で行くようなことは認めない。政治目的とは何か、まことにこれはぼうばくとしておると考えるわけです。おそらく政府の認定によるものと思いまするが、その認定も政治的な立場に立つ認定でありますると、勢い中共への渡航を大きく制限されるであろうと考えるわけです。御承知のように、今日の外交というものは単に一国の大使公使と相手方の大使公使の話し合いではないと思うのであります。むしろ国民外交の時代であろう、こう見ておるのです。たとえば中共抑留者の引き揚げの問題にいたしましても、結局は赤十字社がお互いに話し合うて促進して解決して今日に至っておる、こういうことを見て参りましたとき、これは国交の正常化、あるいは仲よくしていくということはむしろ民間人が、あるいは各種の団体の代表が中国のそれぞれの団体あるいは経済界あるいは経済の代表者、こういう人方と話し合いを進めていくところに国交正常化の具体的な努力があろうと考えるわけです。この点に関しまして最近政府のとられておりまする中共への渡航制限等は、総理の先ほどお話になりました中共との関係を緊密にしていこうとするこの方針と食い違いを示しておると考えますが、総理、どういうようにお考えになられましょうか。
  125. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は中共との政治的の関係、つまり中共を承認するか、国交を正常化するかということは、国民政府との関係上非常にめんどうだから、とにかく中共とは貿易関係からだんだんと親善関係を結ぶようにしたい、こういうことを申したのであります。貿易関係については政府としてはできるだけの努力をしております。今日も閣議において石橋君からその話がありまして、できるだけ見本市に対して政府としても援助をしてもらいたいというような話があったのであります。  それから渡航の問題は、今、田畑君がおっしゃいました渡航の問題は、閣議の問題になったことはないのでありますけれども、渡航の問題については外務大臣、法務大臣とが協議をいたしまして、そして旅券法の規定においてやっておるのであります。あなたから外務大臣あるいは法務大臣にお聞きになれば、この問題はもっと詳細に知っておると思います。
  126. 田畑金光

    田畑金光君 閣議決定でなくても、外務大臣や法務大臣が旅券法に基いて政治的な目的で渡ることについては制限を加える、こうなって参りますと、鳩山さんのお話になりましたように、中共との国交正常化という、これからの私たちの目的から見ますると、相反するのではなかろうか。いやしくも総理閣僚の外交交渉の中に、あるいは旅券法をたてにして法務大臣がそういうような制限を加えるということは、もう少し高い立場から見てどうあなたはお考えなさるか。この点を私は総理としての見解を承わりたいわけです。それからもう一つ今の御答弁の中で貿易関係経済関係の交流を進める、こうお話しになっておりましたが、たしか五月三日と思いますが、昨年中共と日本との間に協定された第三次貿易協定でありますか、第三次貿易協定は五月三日にたしか期限が切れることになっているはずです。あの第三次貿易協定を結ぶ際にも、総理はできるだけの援助をはかりましょうと昨年約束されておるのですね。通商代表部の設置等についても実現できておるわけですか。どの程度総理はあの協定について、あの協定が実行できるように関係閣僚を督励し促進されたかどうかというこの問題です、どうでしょうか。
  127. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 見本市をお互いに開くことについて政府としてはできるだけ努力したつもりでございます。
  128. 田畑金光

    田畑金光君 通商代表部の設置ですよ、どうですか。
  129. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政府としてはできるだけのことをいたしたつもりでございます。
  130. 田畑金光

    田畑金光君 実現していないじゃないですか。
  131. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 何が実現しませんでしたか。
  132. 田畑金光

    田畑金光君 通商代表部を設置するというようなことが、昨年総理はあの日中の貿易協定締結の際に約束をされておる。国会においてもそれを尊重するということを言明されておる。それは実現を見ていないわけであります。   〔理事宮田重文君退席、委員長着席〕  ことにまた日中の貿易を促進するためにはいわゆる禁輸制限品目の解除等をアメリカに強く要求しなければならぬ。もうすでに、とうにそれはできなければならぬ段階に来ておるのだが、やはり禁輸品目の下に鉄鋼品とか、あるいは船舶とかこういうような向うで最も欲するようなものは輸出ができぬ。そこに協定はできても予定された半分も目標が達成されていない、こういう結果になっていると思うのです。この点について総理はどうお考えであるか。ことにまた今御答弁がなかったわけですが、渡航制限について、これは一外務大臣や一法務大臣の問題ではない、政府の問題としてどう考えられるか、これを承わっておるわけです。
  133. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 禁輸品目について、アメリカに対しても国連に対しても、できるだけの努力をいたしまして、多少緩和せられることと思っております。旅券法の問題は外務大臣、法務大臣は旅券法を適正に運用しておるものと私は考えております。
  134. 田畑金光

    田畑金光君 私はまあ総理にこの点を追求しても具体的な答弁を期待できないと思いますからやめますけれども、もう少し総理がほんとうにソ連との国交の調整あるいは中共との国交関係をより緊密化して行こう、こういう熱意をもっておるならば、もう少し関係閣僚を督励されて、具体的に話が進んで行く成果が上るような努力を望みたいと思います。そこで私はこういうような国際的な動きを見て参りましたとき、日本の外交あるいは貿易問題等についても当然もう少し反省を加えてもよろしいのではなかろうか、こう考えるわけです。たとえてみますると、今日の第二次世界大戦後にできました、あるいは独立を獲得いたしました西南アジアの動きを見ました場合に、独自の立場で植民地主義に反対し、民族独立運動という旗じるしのもとに進んでいるわけです。たとえば、四月十日にセイロンに選挙が行われましたが、総理御自身よく御承知のように、従来の西欧的な政府が、与党が破れて、統一野党が勝利を占めた、この統一野党の旗じるしは、植民地主義反対、あるいは外国資本についてこれを国家が管理をする、あるいは従来の西欧的な行き方に対して独自の中立的な外交を進めていこう、こういうような野党の旗じるしが、四月の十日のセイロンの選挙で圧倒的な勝利を占めて内閣がかわっております。こういうような動きを見たとき、私は、日本の今までとって参りました外交についても、防衛の点についても、当然何らかの反応があってしかるべきだと考えるものであります。今、国防会議の構成法案の問題について審議が進められておりますが、この法律の性格を見ましても、あるいはつい十六日に参議院通りました憲法調査会法案を見ましても、この憲法改正のねらい等を見ましても、いずれも本格的な再軍備を目ざしていることは周知の事実であります。防衛六カ年計画によって、昭和三十五年度の日本の自衛力の目標というものはすでに明らかにされております。そのような昭和三十五年度の目標を見ましても、すでに、日本の今日の国民経済から見ますると必要以上のものを持っておる。あなたのお話のように国力相応ではない、不相応の力を備えようとしておる。防衛費は国民所得の二%強と言われておりまするが、昭和三十五年度には二千百五十億を予定しておりまして、二・二%じゃありません、三%をもうこえております。防衛六カ年計画を拝見いたしますると。そういうように考えてみましたとき、私は鳩山総理に伺いたいが、すでにソ連との国交調整も目の前に迫ってきておる。これについて中共との関係も是正しなくちゃならぬ。そうして日本のいわゆる仮想敵国としての大陸における共産主義諸国とも世界の大勢に応じて日本も国交関係を樹立しなければならぬ。こういう情勢を目の前にいたしましたとき、私は当然日本国防の問題、防衛の問題等についても新たな角度で検討を加えなければならぬ、こういう段階にきておると考えますが、この点、総理はどう判断、あるいは認識されておりますか、伺いたいと思います。
  135. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私も世界の情勢については常に注意をしております。世界の情勢を見ましても、自衛力を持つということは今日においてはますます必要だということを痛感しております。今あなたがおっしゃいました数字は、実際においてはほんとうの数字とはかけ離れていると思います。先刻申しましたように、日本国力に沿うところの自衛力以上に日本軍備をする気持は少しもございません。海外派兵などは増えておらず、侵略の軍隊を作るというようなことは全然考えておるわけではないのです。
  136. 田畑金光

    田畑金光君 私は侵略を考えておるとか、あるいは海外派兵をゆくゆくはやるであろう、そういうことを総理と論争しようとは考えておりません。そのような問題は一応保留いたしましても、憲法改正をやり、国防会議を設けて本格的な軍備をやろうという政府の御方針でありまするが、このことは、私は国内的な諸般の条件からいたしましても、ましてや、今日の国際的な動きをわれわれが見ましたときに、当然何らかの反省と申しますか、修正を加えてしかるべきであろうと信ずるわけですが、この点は総理はそのようにお考えにならないかどうか、これを承わっておるわけです。
  137. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたのような見解を持っておりません。
  138. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと関連。大事な鳩山首相の方針について田畑君から御質問を申し上げておると思いますので、多少違った表現をもって鳩山首相にお尋ねをする。私どもは、憲法改正国防会議の構成あるいは教育委員会の公選制の廃止、あるいは教科書法案、その他反動化の方向を鳩山内閣が出しておられる。ところが、他面において、あるいは選挙の際言われました国交調整あるいは平和外交といった進歩的なと申しますか、あるいは国際情勢に応じました方向もおとりになっておる。この二つの方向は、鳩山内閣における大きな矛盾した方向だと思う。しかもその反動化の点について、これは別な機会でありますけれども、あるいは矢内原東大総長、別の機会に南原前東大総長も言われておりましたが、反革命だということもお話しになりました。あるいはやみ軍隊をだんだん公然たる軍隊にしてくる、あるいは防衛出動ができるようにする云々という点で、第一次欧洲大戦後のドイツの二の舞を踏むのではないか、こういう心配を、これは国民良識がいたしております。これはどのようにだれがおっしゃろうとも、国民の良心、国民良識がその点を心配しておることは、これはいなむことができない事実でありますが、鳩山首相は、あるいは民衆政治家と言いますか、そういう点は、親しまれる政治家としておられることは私どもも否定をいたしません。あるいは時機を見るに敏であるということも私どもも信じます。ところが、私最近日本の失敗の過去の歴史を若干ひもといております間に、国会において国体明徴決議がなされました当時のことを読みました。残念でありますけれども、当時鳩山総理も——そのときは総理ではございませんけれども、満洲事変後のあの美濃部先生の天皇機関説に対して、国体を明徴にしなければならぬということで、わずかな民主主義をじゅうりんして戦争体制を整えて参りました時期に、やっぱり鳩山首相もそのとき、個人としてでありますけれども、押し流されておる。あるいはやっぱり賛成をしておられる。そこで鳩山総理が、この重大な段階に日本の失敗を再び繰り返さないために、その持っておられます時代を察する能力を反動化への道に、あるいは日本が再び失敗を繰り返す道に力をいたされるのでなくて、日本が再び失敗を繰り返さないために、あるいは憲法その他で決意をいたしました平和外交の方針に従って、あるいは国際的な共存の方向に従って、国の政治を推進して下さることを期待しておる。少くとも選挙において期待をしておるのでありますが、当面をいたしております憲法改正あるいは国防会議、あるいは防衛出動、本格的な再軍備、そして戦争への危険しかもその戦争は、これは原水爆の使用を伴います戦争の危険性に国を押しやられるか、それともそれをむしろ阻止して平和共存の方向に推し進めになりますか重大な段階でありますと思いますだけに、田畑君の質問に関連してではございますけれども鳩山総理の決意を一つ伺いたいと思います。
  139. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は外交方針としては、平和外交を第一義の基本政策と考えております。どうにかして戦争を避けたい。戦争を避けるための第一目的として外交政策をやっておるつもりであります。従って日本憲法改正あるいは国防会議法の制定あるいは教育の改正等も、これは決して、再軍備という大きな名前をつけられてお話しがありましたが、再軍備目的を達するためというような復古主義の考え方でやっておる次第ではございません。どうにかして国際平和、世界の第三次大戦のないようにするように、すべての政策をそこに集中してやっていきたいと思っておるのであります。つまり平和主義としての外交、中立の外交政策と同時に、自衛隊を作るのもまた平和主義の外交政策を支持する一助ともなると思ってやっておるのでありまして、これが侵略のためとか、あるいは戦争によって不当なる目的の達成をはかるというようなことは、全然私の頭には去来しておらないのであります。
  140. 田畑金光

    田畑金光君 総理に重ねてお尋ねいたしますが、国防会議諮問事項の第一にあげられているものが国防基本方針、こういうことであります。これに関連して私お尋ねしたいことは、現在の日本国防というものが、要するにサンフランシスコ講和条約体制の中に置かれておる。日米安保条約日米行政協定によって日米共同防衛の名において日本防衛問題が取り扱われておる。すなわち地域的な集団的な安全保障体制の中にあるものとみるわけであります。先ほどの吉田君の質問に対するお答えの中には、日本政府としては今後ともSEATOに加盟しようとは考えない、あるいはまたNEATOの結成等に参加する気持もない、こういうお話しがありましたが、そういたしますと、今後とも日本国防基本的な方針というものは、日米共同防衛基本的な線をどこまでも維持していこうとする考えであるのか。ことにわれわれとして考えられることは、あの大陸における一九五一年の中ソ友好同盟条約、これが日本あるいは日本と結ぶ国を仮想敵国にしておるわけであります。中ソ友好同盟条約あるいは日ソの国交調整が実を結び、中共との友好関係も確立をする、そうなって中ソ友好同盟条約が破棄された、これが解消された、こういうような新しいアジアの情勢が生まれた場合、一体その節日本政府としてはなお日米安保条約のワクの中で防衛問題を考える、あるいは国防基本方針を維持していこうとする考えであるのか、これについて鳩山総理の見解を承わりたいと思います。
  141. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) どうもあなた方の御質問を伺っていますと、私と理想においては少しも変っていないようなのです。平和主義を尊重して隣国と平和関係を強化していきたい、私もそう思っておるのです。日ソの関係も調整し、中共との関係も調整して、できるだけ親密なる度を増していきたいという考え方は持っておるのです。ただそれにはやはり日ソの問題は大体だんだんとこう国交の正常化が近づいてきたような気分になりましたけれども、中共とは国民政府があるものですからして、なかなか順を追ってやっていかなければむずかしい。かえってそれによって東洋の平和を害するようになっては大へんだと思っておるわけであります。中ソの友好同盟ではなくて、日中の友好同盟などできる方が余ほどありがたいので、まだそこまでいかないわけですから、もう少し時日をかしていただきたい。
  142. 田畑金光

    田畑金光君 平和主義とかそういうような点に、平和外交等については、総理はわれわれと今同じ考え方だ、まことにこれはわれわれもけっこうなことだと思うのです。ただしかし平和主義という言葉の上の平和外交であっては無意味だと思うのです。御承知のように、今日の世界的な危機を、あるいは危機的な寒気を、雰囲気をかもしておるのは、これは軍事ブロックの問題だと思うのです。たとえば中東地域が非常に今日の世界において険悪な空気をはらんでおる、こう言われておりますが、あの中東の険悪な空気の一つの源はバグダッド条約だと思うのです。あるいはまた東南アジアのこのSEATOの条約、これが東南アジアの中立的な国々を刺激し、ましてやソ連や中共を刺激しておることも総理御承知の通りであります。そこで私たちといたしましては、このように世界が平和の方向に苦悶しながらも一歩一歩進んでおるという現実を見たとき、また日本を中心とするアジアの共産圏の国々とも国交回復が次々に打開されて参りました場合には、当然その場合には、これは中ソ友好同盟条約のような一つの——これも軍事的なブロックと思うのです。こういう軍事的なブロックがもし海のかなたで解消された、こういうことになって参りますると、当然今度は日本日米安保条約というこのような軍事ブロックの中にいつまでも立てこもっておるのか。そういうアジアや中東の動きを私たちは教訓とみたときに、平和外交を進め、話し合いの外交を求めるというならば、軍事的なブロック等は努めて避けていくというのが日本の今後の外交の方向だと思うのですが、この点について鳩山総理は将来の御方針はどう考えておるか、それを私は承わっておるのです。
  143. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 将来の方針としては平和外交政策の貫徹にあります。常にそうなのです。平和主義なのであります。けれども世界の平和を維持するのに独立国をなす国はどの国でも自衛のための軍隊は持っておるのでありまして、それがかえって世界の平和を助成するゆえんになるのでありまするから、世界平和政策遂行のためにも、自衛軍を持ってきて、そこに波瀾のないようにあらかじめ備えていくという必要があると私は考えております。
  144. 田畑金光

    田畑金光君 私のお尋ねしていることはあるいは総理としては答えにくいものかもしれんが、もし新しい情勢が出てきて、中ソ友好同盟条約等が破棄された、なくなった、こういうことになってきますと、日本の外交等についても、防衛問題等についても、新たな見地に立って再検討すべきであると考えますが、これだけのゆとりのある考え方総理はお持ちであるかどうか、これだけでよろしい、この点についてどう考えられますか。
  145. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国際関係が変更いたしまして、戦争の危倶のない、侵略の危倶というものが一つもない時代になりましたならば、日本の政情も変ってこなければならないと私は思います。
  146. 田畑金光

    田畑金光君 その当然変ってくるということは、日本国防方針基本的な進め方であり根底である日米安保条約体制等についても検討すべきものであると、こういうお考えでありますかどうか。
  147. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 戦争の危倶が絶対にないという状態に立ったならば、日本はほんとうに最小限度の自衛軍を持ちさえすれば十分だと私は思います。
  148. 田畑金光

    田畑金光君 だから、そういうふうな事態がきた場合には、日本は最小限の自衛軍を持って、国際的な情勢も平和的な空気が高まってきた、そうなった場合には、日本国防方針防衛あるいは外交、この進め方は、日米安保条約体制からさらに一歩前進した形をとるべきである、これだけのお考えをお持ちなさるかどうか、このことです。
  149. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国際情勢が全く変化した場合に、現状通りで進まねばならぬというような考え方はしておりません。
  150. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連。田畑君が聞いておるのは、そういう先の先じゃなくって、日ソ国交が回復するのは時期の問題でしょうが、そうすると対ソ関係というものは変るじゃないか、従って中ソ友好同盟条約について変更があれば、安保条約というものについても廃棄なり検討をする考えがあるかどうか、こういうことを聞いておるのです。
  151. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 簡単に世の中のことを考えるわけに参りません。原爆の製造も禁止し、水爆の製造も禁止する、ほんとうの意味の軍縮に着手したというような世の中ができた場合において、日本ひとりが軍備増強に熱中するということはあり得ないと思います。軍縮問題というものは、今や世界の問題になっておるのであります。ところが、軍縮問題は世界の問題となっておるけれども、軍縮を実行している国はまだ一つもないのでありまするから、日ソ国交調整ができたからといって、すぐ戦争が世界の上から消え去ったという認定を早急にするわけには参らないと私は思うのです。よく国際情勢をきわめて、絶対に戦争がないというような情勢が形成いたされたならば、日本としても考えなければならない、こう思うのです。
  152. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単に願います。
  153. 吉田法晴

    吉田法晴君 安保条約の再検討ということについてもまだ考えはないわけですか。これは日本防衛とか何とかいうことじゃなくて、安保条約というものについて考えらるべきじゃないかという点をお尋ねしたわけなんです。
  154. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 安保条約や行政協定については、検討すべき点があると思っております。
  155. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 鳩山総理もお疲れでありましょうが、私はこの国防会議構成等に関する法律案について、若干の点について質問いたしたいと思うのです。  まず第一には憲法上からの問題であります。その一つは、先ほど吉田委員からも質問がありましたが、自衛権と交戦権との関係に関する問題であります。日本憲法第九条の規定は、御承知のように日本が侵略戦争をやる、それに対する反省から、もちろん侵略戦争はやらない、またそのための手段として陸海空軍を持たない、自衛の名前においても戦争はやらない、そのために第二項のおしまいの方に交戦権を持たないという規定を私はこの憲法が設けたものと見なければならぬと思います。先ほどの吉田委員質問に対して、これは法制局長官であったかと思いますが、自衛権と交戦権との関係に関しまして、自衛隊がどういう性格を持つか、どういう行動をとるかということは交戦権とは関係がない。交戦権は、戦時国際法上の交戦団体なりあるいは国家なりとして持つ権利あるいはその義務をいう。その例として、中立国に対する交戦国としての、あるいは交戦団体も含めての、たとえば船舶の拿捕等の問題がつまり交戦権の問題として扱われるべきである。こういう説明法制局長官からあったのです。これに対して鳩山首相からは別に御答弁がなかった。われわれも独立をした国家であるからには自衛をすべきだと思います。ただし、その自衛の手段はいわゆる軍隊ということに限るものではないと思います。鳩山首相は、かねがね平和主義を主張されておる。今までの各委員質問に対しても、その外交方針はあくまでも平和主義をもって通される、こういう御答弁を繰り返し述べられている。ところが、またこれも吉田委員だったか、ほかの委員だったか、ちょっと忘れましたが、自衛力を持つことが国際平和に寄与するゆえんである、自衛の軍隊を持つことが、国際平和をもたらすものである、こういう答弁をされた。それに対して委員の方から重ねて質問がありましたが、それは力の外交ではないか、こういう質問に対しまして、あなたは、表現は違うかもしれない、しかし、侵略国に対してこれに対応するだけの力を持つということが、平和に貢献するものである、こういう御答弁をされているわけです。これはいずれも自衛権と交戦権との問題に関連するし、またただいま田畑委員並びに吉田委員から、現在の国際情勢の認識の問題にも私は関連するものだと思う。そこで私は、自衛権と交戦権との関係の問題、自衛権の行使の範囲、その内容、それから交戦権を放棄した日本の戦時国際法上の地位、こういうものについて鳩山さんの御意見と、それからそれに続いて法制局長官のもっと詳しい御説明をお願いしたいと思う。
  156. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は自衛権を認めるということは、憲法九条には違反はしない、しかし交戦権を認めないと明瞭に書いてある、放棄すると書いてあるのですから、交戦権を認めるわけにはいかないと思います。ですからして自衛の範囲においてのみ、日本日本の国を守り得るというような説明をする以外に道はないと考えているのでありますが、詳細のことは法制局長官から法理的に説明をいたします。
  157. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの御質問でございますが、自衛権は、これはもう御説明するまでもないことと思いますが、日本の今の憲法の解釈としての自衛権、これは急迫あるいは不正な侵害に対して自国を守る、そういう権利だと思うわけでありまして、自衛権という権利の内容といたしまして、外国から急迫あるいは不正な侵害があった、それを守るにほかに方法がない、またそれを守るに必要な限度において行われる、かように考えるわけでございます。しかしその方法といたしましては、その侵害のやり方いかんによっては、こちらとしてもその侵害を食いとめるという方法において武力を使うということも、これは私自衛権の内容として認められる、かように考えるわけであります。  それから交戦権は、先ほども説明したわけでございますが、憲法第九条第二項において交戦権は認めないといっております場合の交戦権、これは一切の武力を使ってはいけない、そういう意味であるとは普通には解釈されておらない。(「違う違う」と呼ぶ者あり)先ほどから申し上げました通りに、交戦国か持つ国際法上の権利の集積である、かように解釈しておるわけであります。その内容といたしまして代表的なものをあげれば、中立国の船舶に対する拿捕あるいは占領地行政、こういうものがその中に含まれる、かように考えるわけであります。従いまして、この憲法が交戦権を認めないといっておるからといって、自衛権の行使の方法として、自衛権の内容として含まれる範囲において自衛力を行使する、これは私は交戦権を放棄したこととは関係ない、かように考えるわけであります。
  158. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 ただいまの法制局長官の御答弁でありますが、戦時国際法上の交戦国が持つべき権利、それはたとえば中立国の船舶の拿捕等であり、自衛のために行動するものはそれには含まれないというお話でありますが、私はそうではないと思う。交戦権としてやはり交戦国なり交戦団体なりが戦闘行為を行う、その戦闘行為に、たとえばすべての軍人軍属に対して殲滅的な打撃を与えることもできるわけです。ただし軍人軍属以外の良民に対しては、市民に対してはこれを行なってはいかぬという義務も当然伴ってくるわけです。あるいはまた戦闘行為を行う武器にもいろいろ今までの、たとえばジュネーヴ議定書等によってその制限があるわけです。そういうものを含めて戦時国際法上の権利と義務が構成されてくる。つまり戦闘行為そのものに伴う権利と義務とが当然あるわけだ。単に中立国の船舶に対して拿捕する、拿捕するといっても、これもたとえば武器を積んでおる、敵国の軍人をその中に乗船せしめているというような事実のない場合、これを拿捕することは戦時国際法が禁止しているわけです。もちろん戦時国際法は中立船に対して審検をする権利は与えております。そういう権利を与えておりますが、同時にまたこれに対して義務も与えておる。要するに私は交戦権というのは、戦闘行為を行うについて交戦国があるいは交戦団体が、国家でなくてもいい、交戦団体が戦時国際法にのっとってやらなければならぬ、それにのっとることによって権利なり義務なりというものがそれによって規定されておるものだと思う。先ほど捕虜の問題等について、これは交戦権に含まれていない、こういうお話でありましたが、捕虜に対する待遇あるいは処置等の問題もやはり陸戦法規その他によって規定されている範囲があると思うのです。そういう戦時行為あるいは敵対行為を行うについて正当とされ、あるいは不当とされることについてはこれを禁止するということが集中的に表現されて、ここに交戦権という名前になったんだろうと思う。単にただその文字通りに解釈すべきものではない。従って戦時国際法を構成するジュネーヴの陸戦法規の規定なりあるいはその他の諸戦時法規というものがその中に含められているものだと、こう解釈すべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  159. 林修三

    政府委員(林修三君) これは先ほどから説明しております通りに、交戦権というのは私どもが理解する範囲においては、個々の戦闘をする行為自身を押えたものではなくて、交戦国が国際法上戦時において認められている権利それを総合していうものだと思うわけでありまして、その内容といたしましては、敵国を城下の盟をさせるということまで追い詰める、そのところまで含む、国際法上禁止されておらない範囲においてあらゆる力を行使する権利を含むものと思います。その内容といたしまして、先ほど特徴のあるものとして申し上げましたのは、第三国の船舶を拿捕する権利あるいは占領地行政を行う権利というものも(「そればかりじゃない」と呼ぶ者あり)適例として含まれるわけであります。一方自衛権という問題があります。自衛権というのは、先ほどから御説明いたしました通りに、不正なる侵害に対して自国を守る権利、それを守るに必要なる範囲においてこの行使が認められておる権利だと思います。その守る範囲においては武力を行使することは、憲法第九条二項により交戦権を認めないということは私は別問題だ、かように言っておるわけでありまして、(「三百代言」と呼ぶ者あり)個々の武力を行使するということも、自衛権の範囲内においてはこれは私は認められることだと、かように解釈すべきものと考えておるわけでございます。それからジュネーヴ条約の適用問題でございますが、これは国際法の関係でございまして、むしろ国際法上の、おのおの交戦を、あるいは戦闘行為を行う場合においてのお互いの当事者が国際法上守るべき義務でありまして、私は交戦権の内容とはならない、かように先ほど申したわけでございます。
  160. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は自衛権の問題についても実は質問したいんですが、時間がありませんから、ただ自衛権というものが結局フランス革命の中から生まれてきたんだということと、それからその自衛権というものは——自衛権といえるかどうか、国家がみずからを守るということは、これは後の法理的な解釈では、個人の正当防衛などと対比してこれは解釈されるようになっているが、そうではないんだということについて、交戦権との関係でもう少し質問したいんですが、きょうは時間がありませんから、これはあと法制局長官ともう少し論争ではない、質問をいたしてみたいと思います。  それから現在の憲法は自衛のことをおっしゃる通り少しも規定していない。不正急迫の侵害があった場合にはあらゆる手段を尽してやるでありましゃうが、交戦権との関連で私はそれは制限がある、こう思う。戦力を持たない、こう規定した部分が、私は交戦権との関連においてこれは重要な規定だと思う。すべての戦力という言葉の中には、陸軍、海軍、空軍だけでなくて、その他たとえば防衛産業等の問題も含められるというのが私は一般的な解釈だと見ることができると思うのですが、国防会議法の方では防衛計画であるとか、あるいは防衛計画に関連する産業等も規制するのであるというような任務をここにうたっております。防衛計画ももちろんでありますが、特に防衛産業の、防衛に関する産業の規制ということになりますというと、自由な産業の発達ということがここで阻害されてくる。そういう面からも私は憲法国防会議を設けるということは違憲ではないかという疑問が起ってくるわけであります。それらの問題に関してこれは鳩山首相に御所見を伺っておきたいと思う。
  161. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 防衛庁設置法四十三条によりまして国防会議を設けることになったんでありますが、この法案は同法第四十三条に基きましてその構成等を定めんとするものであります。防衛庁設置法は、(「聞えんですな」と呼ぶ者あり)防衛庁設置法は、一昨年の国会において慎重審議の上制定されたものでありまして、違憲とは考えておりません。
  162. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 これも何度も鳩山さんの御答弁は繰り返されているわけでありまして、その点の問題の究明は非常に重要でありますが、時間がありませんから、これも後の質問に譲りたいと思います。  一体国防会議が設けられ、そうしてそこで防衛計画が作られる。ところがその防衛計画は一体日本の独自のものがそこで作られるだろうかということが私の疑問にたえないところです。日本の現在の地上軍十八万といわれる防衛計画の最終年度における兵力も、日本の独自の立場においてこれが決定されているのでないことは、たとえば一昨年の池田・ローバートソンの会談の模様から見ても明らかです。昨年の重光・ダレス会談に見ましても、この日本防衛計画の具体的な内容に関しましては、日本の独自の立場においてこれが作られているものではないという工合に考えられるのでありますが、あなたは国力に相応した日本防衛計画を作るのだといって今までお答えになってきているが、その国力に相応した防衛計画というものは日本の独自の防衛計画であるのかどうか。今日までの経過から見ればむしろそうではなくて、アメリカの要請に基く、あるいはアメリカの極東防衛の一環としての防衛計画ではないかという点でありますが、この点に関して首相の御答弁をお願いしたい。
  163. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日米安保条約がありまして、その結果生まれてきたものでありまするから、アメリカと協議はいたします。アメリカとは協議はいたしますけれども、自主的のものであるということには間違いはないと思います。つまり日本独力でやるわけではありませんが、協議をしてやる、しかし自主的のものではあるというわけであります。
  164. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 大体わかったのですが、もう一、二点質問をすることを許していただきたい。
  165. 青木一男

    委員長青木一男君) 簡単にどうぞ。
  166. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 日本防衛計画がどの程度に達成された場合にアメリカ軍が撤退するか、その時期、あるいは撤退後の日米関係等について鳩山さんの御答弁をお願いしたいと思います。
  167. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) まあ自衛力が相当程度に充実して参りましたならば、アメリカとの協力というものは減っては参りましょうが、けれども、そのアメリカ軍の要請する協力の範囲というものは減りましても、いつアメリカ軍の撤退ができるかということは、そのときの問題で、その時その時に決定するより道がない、かように考えております。船田長官からその点間違いのないように……。
  168. 船田中

    国務大臣(船田中君) これもたびたび申し上げておることでございますが、防衛庁の試案として持っております長期防衛計画、すなわち昭和三十五年度において陸上十八万云々というこの自衛体制が整備されますれば、米軍撤退の基礎はできることになります。しかし現実に米軍が撤退するということは国際情勢にもよることでございますが、日米の両国政府の合意によって米軍が撤退するということになりますが、その時期は今日明言するわけにはいきません。
  169. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一点、安保条約の改訂の問題が昨年も重光・ダレス会談で話題に上っております。その具体的な内容についてはわれわれは新聞の記事によってこれを知るだけで、どの程度に話し合いが行われたかは存じませんが、しかし日米安保条約のような条約が外国にはないわけです。アメリカでは今日世界に百幾つの飛行場を持っております。また軍隊もそれぞれそこに駐留させている。一番多い飛行場があるのはイギリスであります。日本と西ドイツがその次であり、フランスがその次であるという順序になっておりますが、イギリスでもフランスでも日本のような安保条約ができておらないわけであります。で、あの安保条約によれば、日本にアメリカが欲するならば、あるいは極東防衛上必要であると考えるならば、いつまででも軍隊を駅留することができるし、日本の飛行場を利用することができることになっておる。またその飛行場をどこに作られるも、アメリカとしては自由になし得る、こういうことになっておるわけです。ところが外国の場合を見ますと、軍事協定が結ばれても、イギリスにしましてもフランスにしましても、あるいはスペインにしましても、そういうような任意にある特定の地域を指定してそこに軍事基地を作る、あるいはアメリカの軍隊を、アメリカが、もちろん日本には通報するでありましょうが、任意に軍隊を駒留させる、あるいは撤退させるというようなことをやっておるところはないと思います。これは要するに安保条約からきておることだろうと思います。外国に慣例のない、非常に片務的な、双務的ではない安保条約が結ばれて、これは安保条約が結ばれた当時から問題になっておるところでありますが、この安保条約の改訂に関して政府としてはどういう意向を持っていられるか、それを最後お尋ねして、私の質問を終りたいと思います。
  170. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は先刻どなたかの質問お答えをしたのでありますが、行政協定、安保条約は改正したい点がある。つまりアメリカから押しつけられたと言うと言葉は悪いかもしれないが、とにかく少し片務的なところがありますから、そういうところは改正したいと思いましてさっきの発言をしたのであります。詳細な点は船田長官から答弁いたさせます。
  171. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは堀委員が御承知の通り日米安保条約におきましても、今お話しのようなことを予定いたしまして、効力の終了について第四条の規定があるわけでございます。すなわち、国連による安全保障の態勢が整うというようなことができるか、あるいは日本の兵力がもっと整備されて、そして日米両国間において米駐留軍の撤退について合意が成立する、こういうようなことになりますれば、この日米安保条約も効力の終了ということも考えられますけれども、その時期は今日直ちにいつであるということを予定することはちょっとできないと思います。先ほど来総理が御答弁になっておりますように、わが方といたしましては、自衛体制を整備いたしまして、そして米駐留軍の撤退に備えるということがまず第一に実現しなければならぬことでございまして、そのために努力をいたしておるような次第でございます。
  172. 江田三郎

    江田三郎君 鳩山さんがまあ第一次の鳩山内閣総理になられて、それからまあ今まで相当年限がたちましたが、一体この間の世界の情勢の移り変りということについてあなたはどういうような認識をしておられますか。まあ最近ソ連の方の百二十万の兵員の縮小というようなことが言われまして、あるいはそれを受けまして、たとえばきのうの新聞を見ましても、イギリスのマクミラン蔵相が、イギリスの軍備を縮小して、軍事費に充てたものを削って経済改革に充てなくちゃならぬ、こういうふうなことを言っておる。そのほか世界にいろいろな動きがありますが、そういうふうな大きな動きというものは、結局各国とも軍備を縮小して、戦争をしない方向へ行っているんだと私たちは思うのですが、総理は一体そういうことをどうお考えになりますか。
  173. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) ジュネーヴの会議の始まりましたときには、第一流の政治家が集まりまして相談いたしましたときには、ジュネーヴ・スピリットとかいいまして、非常に世界の平和が近づいたような気がいたしました。その後次官級の人が集ったときには、またそいつが少し逆戻りしたような気がいたします。しかしながら、各国とも世界大戦が始まっては困るという観念は、各国民がすべて持っている思想であります。原爆、水爆がますますソ連でもアメリカでもだんだんと発達して参りましたものですから、戦争があれば必ず破壊だ、必ず破壊だ、小さな原爆を落されるだけで一万の軍隊は壊滅してしまう。そういうような時代には戦争はできないというような空気が非常にびまんして参りまして、いろいろな雑誌や著書にも、世界の戦争を回避したいというその熱望は各国民が持っておるものですから、世界大戦の始まらないように世界の人は努力しておると思うのです。ですから、私は世界大戦の空気というものは、一九五二、三年ごろに起るだろうといったような空気は、今日は吹き飛んだような気がしております。それですから、日本自衛隊の組織についても、日本に対する侵略についても、そういう点は大いに考慮はできると思っております。
  174. 江田三郎

    江田三郎君 各国とも戦争を避けなきゃならぬという空気が強くなっておると、こういうようなお考えですが、そこで、そういうような状態を、先ほど来総理お答えを聞いておりますというと、世界が軍備の縮小ができて、戦争の危機のない状態にくることが望ましいということを盛んに繰り返して言っておられましたが、私はこの戦争の危機のない状態がくることを望むというだけでなしに、われわれ自身が積極的に戦争の危機のない状態を作り出す、その第一歩としては、世界のこの軍備縮小の大きな動きに先がけをつけて、私たち自身も軍備の拡充ではなしに、これを減らすというところに持っていくのでなくてはならぬと、こう思うのですが、そうお考えになりませんか。
  175. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そこは考え方の非常にむずかしいところでありまして、まあチャーチルの言ったように言うのも少し極端かもしれませんけれども、とにかくどっちかが戦争に勝つということが明白であるならば戦争はあるかもしれないが、どっちが勝つかわからないところに戦争の回避があるのだというようなことも言っておりますし、アメリカが優勢だから戦争がないというようなことを言っておるのもあります。そういうようなわけでありますから、力と平和というものが全く無関係だということは言えないだろうと思う。全く力がなかったならば、やはり戦争の危険はありはしないかというような気分がいたしますので、日本としては、急迫不正の侵略に対して備える程度の、また国力に沿う、国力の許すところの程度自衛隊は持っていきたいという考え方をしておるわけであります。
  176. 江田三郎

    江田三郎君 先ほど総理もおっしゃったように、もし戦争が始まって大戦争になって、原爆や水爆が使われれば、何万の軍隊もこっぱになるのだ、世界の破滅になるのだということをあなた自身もお考えになっておるわけです。そういうときに、一体最小限の自衛といったところで、この今の日本自衛隊というものがほんとうに役に立つものとお考えになりますか。
  177. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は世界の大戦というようなものが起きた場合においては、そういうようなものは大したものとは思いません。けれども、私どもやはりこの一つの独立国が自分の国を守る最小限度の自衛隊を持つということは、その国の平和を維持し、続いてそれが世界の平和を維持するゆえんであるとは考えられます。
  178. 江田三郎

    江田三郎君 そうしますと、あなたは世界の大きな戦争でなしに、日本を取り巻く局地戦争ということを考えられて、それに対する準備をしなきゃならぬ、こういうことになりますか。
  179. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうわけです。
  180. 江田三郎

    江田三郎君 それじゃ具体的にお尋ねしますが、今あなたの内閣は、河野さんがせっかくモスクワまで行かれて、日ソの国交の調整がやや軌道に乗ろうとしておる。先ほど来田畑君に対するあなたのお答えを聞きましても、私はこの問題に関する限りは鳩山総理は非常な決意をしておられると受け取りました、それから中国との関係も、今は国民政府との関係があるから即時国交の回復はできないけれども、貿易その他を通じて国交調整に踏み出すということをおっしゃった。そういうことを考えていくと、一体ほんとうに日本に局地戦争の起るというような条件があるでしょうか。あるいは、あなたは李承晩というようなことを問題にされるかもわかりません、韓国のことを。しかし、もう韓国でも、今度の総選挙に現われたあの韓国の国民の動向ということを考えれば、これはそういう局地戦争の方向の危険よりは話し合う条件の方がうんと生まれたと私たちは思うのですが、そういうことを考えたときに、私どもは、この大陸の陸続きでない日本、海に囲まれた日本における局地戦争の条件というものはあるように考えられませんが、あなたはそういう条件があるとお考えですか。
  181. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたの考え方の方が正しいかもしれません。正しいかもしれませんけれども、とにかくいろいろな場合を想像して用意をするということは、一国を守る上に必要と思いますので、あるいはむだなことになるかもしれませんけれども、自衛のために自衛軍を持つということは、私としては怠ってはならないと考えております。それですから国力が許す、国力が許すその程度においての自衛隊を持っていきたい。
  182. 江田三郎

    江田三郎君 国力が許すということは、これは鳩山さん、一つよくお考えになっていただきたいと思う。たとえばきのう夕刊のマクミラン蔵相の演説の中で、従来イギリスは国民所得の九%を軍備に使っておった、これを五%に下げて経済回復をやるべきだということを言っておるわけです。イギリスの現在の国力からいえば、われわれの国民所得、われわれの国民の生活状態等を考えた場合には、九%ではなくて、もっと多くのものを使っても国力は許すと考えられるかもしれない。しかし、イギリスは、マクミラン大蔵大臣はそうは考えなくて、これを切り下げて経済計画をやらなきゃならぬ、そういうことを言っておるわけです。私は、今の世界の各国の方向を見る場合に、どこも経済計画なり、経済建設なり、計画的な国の建設ということを力こぶを入れてやっておると思うのですが、そういうことが今の日本のお互いの国民生活、あなた方がやろうとせられる経済五カ年計画、そういうことを見たときに、国力は許していないのじゃないでしょうか。マクミランがやった以上にもっと思い切った軍事費の節減をすることが、私は国際的な今の大きな動きじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  183. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) イギリスの国防費に使っている金は、イギリスで発行した白書で見ると、驚くべきほど多いのです。全くあれではイギリスはたまらないと思うくらいたくさんの常備軍を、空軍も海軍もみんな持っておるのです。でまあ五%くらいまでに下げたい、当然の帰結だろうと思うのです。日本としてはまだ二%強で、一つも持っていない軍備を持とうとするのでありまするから、イギリスのごときある程度軍備を持っている国に比しては全く少いと思いますが……。
  184. 江田三郎

    江田三郎君 二%と五%ということは、ただ二%、五%という単純な数字の比較をしたところで、これは意味がないことは私が言うまでもありません。その国の経済力によって、たとえ何パーセントであったところで、低い経済力の国の大きなパーセントは違ってくるわけですから、これは意味がございませんが、しかしともかくもイギリスでもそういうような動きを出してきた。おそらくまあ今度フランスの方でソビエトに行って今話し合いをやっておるようですが、そこから私はやっぱり大きな西ヨーロッパ全体を通ずる軍備の縮小ということが出てくるのじゃないかと思うのです。そういうように今後の世界が軍備の縮小という大きな方向が出てきても、日本としてはかねがねあなたが言われたように、今アメリカ軍に頼っているのだから、これを頼らなくてもいいような自衛力の増強を今後もしていかなければならない、今年よりも来年の軍事費をふやさなければならぬ、そういうお考えを変更される余地はございませんか。
  185. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 世界の情勢に従いまして日本の自衛計画というものは立てていかなければならないということは、あなたと同意見であります。ただ来年も本年の計画のように、来年は、現在の自衛力というものを増強したいというのは、私はどうも変更する余地はないと、それまでに国際情勢はさような大変化はないものと思います。軍縮会議というようなものが、世界の国が集まって軍縮会議をやる、原爆、水爆というものの戦争を禁止することに同意するか、あるいはこれを共同管理するとか、何とかいうようなことまで入っていって、ほんとうの世界の平和がきたということが目の前にぶらさがらなければ、ただ単純に世界の平和はもうきたというような断定は、今日の情勢においてはできないと私は思います。
  186. 江田三郎

    江田三郎君 どうも自由民主党の方でこの間、憲法改正の問題点ですか、改正資料というのですか、お出しになりました。あれを見ますと、憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」、こういうことが非常に消極的だ。これを積極的に内容を変えなければならぬということがあの問題点として出されておったわけです。しかし私どもは、この鳩山さん御自身もお考えのように、もし世界の大きな戦争に不幸にしてわれわれが当面した場合にはこっぱになって散るのだ。そういう考え方からして、どうしてもやはりもっと積極的にこちらが世界の平和の条件を一歩でも深めるように、そういう条件が一歩でも増していくように、積極的に働きかけをしなければならぬ、こういう考え方をして、やはりこの憲法前文の言葉というものを私は正しい言葉と思っておるのですが、あなた方はこれを消極的だと言う。ところが今あなたのお話をずっと聞いておりますと、やはり世界の動きということだけをじっとながめておられるだけで、進んでそういうふうな平和な条件を築き出そうというような心がまえも、そういう気魄というものは、私はどうも残念ながらあなたのお言葉から受け取れないのですが、もっと日本自身が積極的に軍備を縮少し、戦争をしない世の中を作ることに踏み切っていったらどうですか。
  187. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は世界の平和を維持するのは、むろんアメリカと日本との関係、これも強化しなければならないし、日ソ関係はもとより国交を正常化しなければならないし、東南アジア諸国とも賠償問題を解決して、緊密な提携を作って、東洋に波乱が起きないようにしなければならない。そういうような世界平和政策はあるでしょうけれども、同時に日本自身も相当の自衛力を持つということが、世界の平和に寄与するゆえんであると思うものであります。
  188. 江田三郎

    江田三郎君 あなたのお話を聞いておりますと、この日本のあなたがこれからふやそうという自衛力は、何か非常にりっぱなように聞えるのですが、しかし一体この自衛力の増強という内容は、この防衛庁説明を聞いてみたところで、その武器、その他についてはアメリカに多くのものを依存しているのじゃないでしょうか。結局日本自身の自衛力ということでなしに、よその国のお世話になる自衛力なのです。そこでそういうような自衛力というのは、私はこれは客観的に見れば、何も日本を取り巻く周囲の国が、日本だけの自衛力というものを切り離して考えないと思うのです。日本独自の自衛力プラス・アメリカの軍備、そういうものとして総合的に受け取るのじゃないかと思うのでして、そういう点からいえば、私どもはもっとその世界の平和の条件を生み出すためには、日本の自衛力だけ切り離して考えれば小さいものかもわからぬが、そういう日本プラス・アメリカという形の軍備というものを世界に印象を与えておるとすれば、私はこれはうんと削る方が、ソ連その他に対しても軍備縮小の、世界の軍縮の空気をもっと強めることだと思うのですが、そうじゃないでしょうか。
  189. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 日本の自衛力というものは、外国の持っている軍隊の軍備に比しては全く僅少なものでありまして、そのごく僅少な軍備を持つぐらいのことは日本でも必要だと思います。
  190. 江田三郎

    江田三郎君 そこが鳩山さん、違うと思うのすよ。あなたは日本の持っている自衛力はごく僅少だと言われるが、なるほど日本の自衛力だけ切り離せば僅少でしょう。しかしそれはそうではないでしょう。このアメリカの軍備プラス日本の自衛力という形で出ていく自衛力というものです。そうなってくると、しかもその今後がどういうような政策をおとりになるか知りませんけれども、少くとも人間の数においてはここに大きな潜在的な軍備、戦力というのですか、とにかく人間がこれだけたくさんおるということは、これは使い方によっては大へん大きなものです。日本だけ切り離せば小さなものだけれども、アメリカ・プラス日本という形では大へん大きなものになる役割があるわけです。それを考えると、私はあなたのような、しいて日本だけを切り離した考え方でなしに、やはり日本の自衛力が国際的に与える影響というものは、アメリカの戦力プラス日本の現在の自衛力並びに潜在的な戦力ということで考えていかなければならぬのではないかと思うのです。そういう意味で私は、これはやはり今の鳩山さんの考え方というものは少し変えてもらった方がいいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  191. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたのお考えにも理由はあります。それは認めますけれども日本としてもアメリカにいつまでも駐留してもらっていて、日本の自衛をようやく保っているというのを継続するわけには参りません。
  192. 江田三郎

    江田三郎君 そこだけはいいのです、あなたの考え方が。ところが、実際に防衛庁長官説明を聞いてみても、たとえば六カ年計画をやってみたところで、アメリカ軍撤退の基礎ができるというだけであって、それによってアメリカが撤退するというようなはっきりした見通しなんかありはしません。しかもその六カ年計画にしたところで、多くのものを向うに武器等を依存しなければならない。当てにしておったものが来なかったらすぐやりかえなければならぬ。そういう体裁の悪いもの、しかもあなた方の党に所属される辻さんあたりのお話を聞いたり読んでみても、どうせ大して役に立たないようなものに、二%でも何でも大きな金を使うのはばからしいじゃないか。それとも一体日本をほんとうに撤退さすだけの軍備ができるのですか。できるとすればどういう計画で、いつできるのですか。
  193. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 船田長官から……。
  194. 江田三郎

    江田三郎君 長官はよろしいよ。長官はこれまた学者で、いろいろな説が出ますから、これは一つ鳩山さんの大きな政治的な考え方だけ私は承わればいいのです。
  195. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) これは船田君が先刻説明した通りに、日本自衛隊がだんだんと整備してくれば、アメリカの撤退の基礎ができますから、そのときにアメリカと相談をして、アメリカ軍の撤退というものが実現するものと思っておる次第であります。
  196. 江田三郎

    江田三郎君 まあその点鳩山さん、やはり今の世界の政治のテンポというものは相当早いんじゃないですか。今われわれのこの経済力をもってしてほんとうに日本の独自なものを作り上げるといってみたところで、六カ年たったってこれは基礎ができるかもわからぬというだけのものであって、一向に向うが撤退するという条件にはならないでしょう。われわれはもっと世界の人々を信じたらいいじゃないかと思うのです。あなた盛んに友愛精神ということを言われますが、私はこの友愛精神というものは、自分の党内や国内だけで振り回すのでなしに、もっと世界的にあなたの友愛精神というものを広げてお考えになったらどうかと思うのです。これは私妙な話を言いますけれども、実はこの間インドへ行ったときにネールさんに会いまして、ネールさんにソ連の第二十回の共産党大会の動向をどう思うか、こういうことを聞きました。そうしてヨーロッパではあれを必ずしも額面通り受け取っていないがと、こう言ったときに、ネールさんの言われるのは、だれも未来のことはわからぬと、しかしながら、今、今度言ったことは今まで言ったことより言葉の上ではいいことを言っているんだ。だからそれをそのまま受け取ってみたらどうでしょうか、そうやってつき合っているうちには向うもそうなるかもわかりません。そういうことを言われました。私がそう言うと、非常に散文的な響きしかありませんけれども、ネールさんがそう言われると、私は非常に深い意味に聞えましたよ。鳩山さんの友愛精神というものをもっと広げてお考えになったらどうでしょう。そうすると私はもっとあなたの軍備に対する考え方というものは違ってくるのじゃないかと思うのです。どうでしょうか。
  197. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) あなたの考え方には賛成です。だから私も友愛精神とかMRA精神とかいうようなものが国際的に広まってくることを非常にこいねがっております。今インドの話も出ましたけれども、インドはとにかく、やはりまだ軍隊を持っていることが少いものですから、二十五%くらいを使って自衛軍を作っているわけですから、やはり軍備はどの国でもやってない国はないのです。だから日本が二%強くらいの軍備をこしらえても大して問題にするには当らないと思いますが……。
  198. 江田三郎

    江田三郎君 まあ予算の総額の何%ということと、国民所得の何%ということを混同されては困りますけれども、そういうことはどうでもよろしいが、しかしインドのような現実にパキスタンとの問題があるというところと、私は日本の場合とは相当違うと思うのです。そこでそれならあなたにお尋ねしますが、あなたは大戦争というものを考えてはどうにもならない。しかし局地戦争ということを考え日本の自衛力ということを考えなければならぬのだと言われましたが、それじゃ一体この局地戦争という場合に、どういう局地的な侵略の条件があるのですか。あなたのお考えになる局地戦争の危険性というのはどういうところにあるのですか。
  199. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) それは私にもわかりません。わからないけれども用意をする、常に用意をしておく必要はあるということを主張しておるわけであります。
  200. 江田三郎

    江田三郎君 わからないと言われるとちょっと困るのですがね、いつか私はあなたのこういう問題について衆議院でおっしゃったことを、議事録を見ておりますと、あなたまあ日露戦争のときのことなんかを出しておられた。戦争というものは油断しているというと向うからぽっと攻めてこられるのだ。こういうことを言っておられたんですが、どうもそういう点が、日露戦争ころの戦争というものと、この原水爆の出た時代とは、戦争というものの性格というものがもう全然達っている。ただ武器によって違うというだけじゃなしに、国際的な考え方も違うし、条件がみんな違ってきている。どうもあなたはわれわれよりお年寄りだから仕方ありませけれども、日露戦争前期の考え方になっているんじゃありませんか。
  201. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は公平に静かに考えているつもりであります。(笑声)
  202. 江田三郎

    江田三郎君 あなたは、もう一つ私たちが心配しなければならぬのは、自分は平和主義者だ、そうお考えになりましても、しかしこうやって憲法調査会を作る、あるいは防衛関係法案が違ってくる、あるいは国防会議ができるということは、これは使い方によると大へん大きな軍備のできる条件になってくるのですね。あなたは平和主義者だから、わしはこういうものを作ったところでそうむちゃな使い方はしないのだと言われておる。民主主義の世の中だから国会の協賛がいるんだから、そう簡単にいかぬのだということを言われておる。しかし、たとえばヒットラーの歴史を見ても、こういうようなものは一たん破局——破局と言ってはおかしいですけれども、せきを切って落されると、非常に違った方向へ、あなたが腹の中で考えておられるのと違った方向へいく危険性があるのです。だからわれわれはそういう危険性のないように、いつもセーブしておかなければならぬと思うのですが、あなたのはそうじゃなくて、ひょっとまかり間違いますと大へんな方向へいくという条件をこういうので作っておるとはお考えになりませんか。
  203. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、もう人間だって相当に知恵があるのですから、この間ああいうような目におって、近く大戦争をやるというような気分を持つ人はないと思うのです。
  204. 江田三郎

    江田三郎君 だからそういう考え方なら、もっと国際的な問題についても今のような考え方でいかれれば、人間だってばかじゃないのですから、そうばかなことはしないはずだということなら、もっと世界の各国というものを信用できるんじゃないかと思うのです。ところがあなたはどうもそういう点が一つの矛盾がありはしませんか。
  205. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) しかし世界の各国でもみんな相当な兵力は持っているのですから、戦争を一度もしないスイスであってもスエーデンであっても、とにかく自衛力は持っているのですから、(「持たぬことになっている」と呼ぶ者あり)いや、それは自衛力はあなたは憲法違反だと、自衛力を持つことが憲法違反だと、きめてしまうからそうなるのですが……(「書いてあるじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  206. 青木一男

    委員長青木一男君) 私語を禁じます。
  207. 江田三郎

    江田三郎君 鳩山さんそういう一つ、よその国がどうだとか、こうだとか言っても、これは歴史的な関係もあるし、地理的な事情もあるし、いろいろ条件が変っておるわけです。われわれは、日本の場合は日本のことを考えればいいのですよ。現にあなたに聞いてみても、大戦争のことを考え軍備というものは考えられないと、局地戦争のことだ、局地ならどういう侵略の条件があるかと言えば、それはわからぬと言われるでしょう。わからぬというのは、あなたが必ずしも外交関係考えてわからぬということだけでなしに、むしろないということでしょう。一体考えてごらんなさいよ。ソ連や中共とやることは、これは大戦争でしょう。局地戦争ということになると、その他の日本を取り巻く国でどこですか。
  208. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は仮想敵国というものは全く考えないで、自衛隊というものは絶対的に最小限度持つべきものだという観念から、自衛隊を作りたいと思っております。
  209. 江田三郎

    江田三郎君 まだどうもわれわれこの経済力で、おもちゃを持つ段階には至らぬのですよ。そんなぜいたくは許されないのでして、しかもそういうようなものに費用をかけて、そうして一方ではまあパッカード・エンジンか何か知りませんけれども、一つパッカード・エンジンでなしにいろいろな問題について、この防衛庁の問題についてはスキャンダルが続いておる。こういうことが国民の気持に与える影響はどうでしょう。仮想敵国というものは考えていない。それからわれわれが常識的に考えてもソ連や中共というものとは大戦争だ、これは局地戦争の条件でないのだということになれば、台湾か朝鮮か知りませんけれども、そんなものが、現在の国際情勢下において、日本を侵略するというようなことも私はあり得ないと思うのです。仮想敵国と考えないといって、考えられないでしょうよ。むしろ日本としては、こういうような仮想敵国も考えられないような条件においては、積極的に世界が、たとい一歩でも二歩でも軍備を縮小し、平和の方向に行くような、そういうリーダー・シップをとるべきものだと思うのです。私は負けた国であろうと、経済力の弱い国であろうと、そういうリーダー・シップをとって悪いことはないと思います。一体今の国際政局のリーダー・シップはだれがとっているでしょうか。もちろん大国がありましょう。と同時に植民地から立ち上った、解放された国々が大きな世界のリーダー・シップをとっていることを考えれば、日本立場というものは、使い方によりますれば、大きなリーダー・シップになると思うのですよ。そういうことが、何かあなた方は非常に遠慮をされるということが、私はどうも、それがよく言われる——あなたはそうではないとおっしゃるけれども、アメリカあたりの無言のうちの圧力を感ぜられ、無言のうちのひもをつけられ、無言のうちの制約を考えられて、自由な、あなたのいわゆる友愛精神の自由な考え方ができないのじゃないかと思いますが、そういうようなことは私の言い過ぎでしょうか。私はやはり、そういう点も鳩山さんには少し考えていただけるのじゃないかと思いますが、どうでしゃうか。
  210. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 全くアメリカからは何の強要もありません。(「この間の演説はどうだ」と呼ぶ者あり)ありません。そんなことを言った覚えはありません。
  211. 江田三郎

    江田三郎君 強要がないといったところで、あなたは強要されたことはない、事実がないのだということなんでしゃう。しかし、現実に予算編成するといえば、まず防衛関係の費用を向うと相談しなければ組めない。この一つのことをもって見ても、これを強要と受け取るか受け取らないかは別にして、客観的に見たら、大きなこれはかせをはめられていることです。日本が六カ年計画を立てる、もうその中に向うからの貸与されるもの、あるいはもらうものを当てにしなければそういうものの計画が立たんということになれば、向うの顔色いかんをいつも見ていなければならん。これは強要とあなたがとるかとらんかは別にして、客観的に見れば大きなかせをはめられているんです。私は人間というものは主観だけじゃいかんと思うのです。もっと客観的な反省が要るのじゃないかと思うのです。あなたはどうも天気晴朗なる日のばらの園の中を歩くようなお考えでおられるのじゃないかと思うのです。その点をもう少し考えていただかなければいかぬと思うのです、どうでしゃう。
  212. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 承知しました。(笑声)
  213. 江田三郎

    江田三郎君 承知せられたじゃ参りますよ。まあそういうようなことを、ちょっと具体的な問題になるとあなたは答弁されんで、防衛庁長官なり法制局の何がしという人に相談をされて答弁をされる。そんな人の事務的な答弁では何ぼ聞いたって同じで、私は聞きたくないから聞かない。あなたからじかに聞くと、お前と同じ考えだとか、承知しましたということだけで、何ぼやったって同じようなことになりましょうから、一つ帰ってゆっくりお休みになって下さい。(笑声)
  214. 青木一男

    委員長青木一男君) 総理大臣に対する質疑はこれにて終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会