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1956-05-17 第24回国会 参議院 内閣委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十七日(木曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員の異動 五月十六日委員西郷吉之助辞任につ き、その補欠として井上知治君を議長 において指名した。 五月十七日委員亀田得治君及び井上清 一君辞任につき、その補欠として永岡 光治君及び泉山三六君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            千葉  信君            島村 軍次君    委員            青柳 秀夫君            井上 知治君            井上 清一君            木村篤太郎君            木島 虎藏君            江田 三郎君            菊川 孝夫君            田畑 金光君            永岡 光治君            松浦 清一君            高瀬荘太郎君            豊田 雅孝君            廣瀬 久忠君   衆議院議員    黒金 泰美君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    文 部 大 臣 清瀬 一郎君   政府委員    内閣官房長官 田中 榮一君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    文部省調査局長 福田  繁君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国家公務員に対する寒冷地手当及び  石炭手当支給に関する法律の一  部を改正する法律案(衆第十九号)  (衆議院提出) ○臨時教育制度審議会設置法案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  委員変更についてお知らせいたします。  五月十六日付小酒井義男君、西郷吉之助君が辞任せられまして、その補欠菊川孝夫君、井上知治君が選任されました。     —————————————
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引き続き質疑を行います。
  4. 島村軍次

    島村軍次君 私はまずこの法律案につきまして、人事院見解を伺いたいと思います。それは寒冷地手当というものの定義は一体どういうものですか。どういう範囲を含んでおるのですか。
  5. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 寒冷地手当と申しますと、寒冷地に在勤しておる職員が寒冷ということによりまして非常に困難な状況にある、たとえて申しますと、燃料費というものが、これが一般寒冷でない地域に比べまして多くかかるということが明らかであるわけであります。そのほかにたとえば寒冷ということに対しまして被服等一般暖地にあります職長に比べまして非常に多くかかる。また積雪というようなことがございます場合には、その積雪に対しまする対策というようなことをいたさければならぬ。たとえば家の回りを補強いたしますとか、あるいは雪の中を歩きますために長靴等も用意しなければならぬ。その消耗度一般暖地に比べまして非常に消耗度が高い、そういうような状況に応じましてその費用をみようというのが寒冷地手当である、このように理解いたしております。
  6. 島村軍次

    島村軍次君 そうしますと、寒冷地手当というものは積雪地帯に関する住宅の補強、あるいはそれに対する設備を行う、同町にただいまの説明によりますというと、薪炭を要する、従って寒冷地手当というものは新炭をも含んだ意味のものが寒冷地手当と、こういうふうに解釈していいのですか。
  7. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) その通りでございますが、さらに敷衍して申し上げますると、暖地寒地というふうに明らかに線が引かれておるわけじゃございません。寒冷地も五段階分けてあるような状況でございますので、それぞれ程度が違うわけでございます。寒冬地最下級に該当いたしません所ですれすれのような所もあるわけでございます。そういうような所は薪炭、いわゆる暖房費のかかり工合も寒冷地手当のついております最下級と大して差がないというような所もあるわけでございます。まあそのような場合に、それではそういう地域についてその暖房費というものが全然考えてないかと申しますと、これはやはり一般給与、通常の給与の中にもそういうものは含まれておると解釈すべきであろうというふうに思っております。従いまして寒冷地手当として支給されます部分の中に薪炭費用というものがもちろんあるわけでありまするが、それだけが寒冷地におきまする必要薪炭料というわけには参りませんので、足らない部分をそれで補った、このようなことになっておるわけであります。
  8. 島村軍次

    島村軍次君 そこで現在の法律では寒冷地手当及び石炭手当——石炭手当北海道だけに支給されておるということになっておるのであります。従って寒冷地手当というものには暖風装置をするような設備に要する費用をも要するから、そこで広い意味に、総括的には寒冷地手当を含んでおるのだ、北海道暖風については特別に費用を要するので、特に石炭手当等支給しておる、こういうふうに解釈すべきであろうと思うのですが、それでいいのですか。
  9. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 北海道におきましては、寒冷地手当のほかに石炭手当というものが支給されております。で、この石炭手当というものと寒冷地手当というものが重復するのではなかろうかという御心配があろうかと思うのでありまするが、暖房装置を使いまする地域というものは北海道だけに限られておるわけではございませんが、従来から北海道には石炭を産出するという特殊事情があり、また北海道地域寒冷度が高い、両者相待ちましてこの暖房装置というものが非常に内地と比べて格段の違いがあるわけでございます。それでわれわれはこの北海道石炭手当というものは、寒冷地手当で考慮される暖房費のほかにさらに北海道地域におきまして必要とする暖房費をそれでまかなっておる、このように考えております。
  10. 島村軍次

    島村軍次君 二十五年八月二十八日の総理府令によるいわゆる寒冷地及び石炭手当支給規定によりますと、ただいまお話になりましたような意味を含めてその暖房装置を要する、あるいは積雪寒冷相当する程度によっておのおの一級地から五級地に分けてある。従ってその五級地というものは寒冷度によってただいまお話になったような問題、すなわち石炭手当寒冷地手当を含む意味支給率を増しておると、こういうふうに区別されて紋別を作られておったものと、こういうふうに考えたいと思うのですが、それは一体どうなんですか。
  11. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 今特に暖房設備というお話があったわけでございますが、いわゆる寒冷地手当というものにおきましては、先ほど私が申し上げましたように、いわゆる採暖費も含んでおりますが、そのほかにいわゆる寒冷積雪ということに対しまするいろいろな費用というものをいろいろ含んでおるわけでございます。所によりまして、積雪が非常に多いという所もありましょうし、雪はないけれども寒さが非常に強いという地域もあると思う。総合いたしまして一級から五級に分けてある。従って五級の辺が特に暖房装置ということを特段考えておるというふうにはなかなか説明しがたいだろう、このように考えております。
  12. 島村軍次

    島村軍次君 そこで暖房装置はそれはちょっとおかしいじゃないですか。ただいま前段の説明によりますと、寒冷地手当というものには積雪その他寒冷に対する薪炭その他暖房装置を要し、あるいは住宅等に特別の施設を要するので紋別を分かって支給すると、これが寒冷地手当一般原則、こういうふうに考えられておるのであって、特に北海道石炭手当はこれは寒冷皮がはなはだしいので暖房に関する設備の方は重複をすると、こういうふうな御説明と承わったのです。そうではないのですか。
  13. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 説明が足りませんで、あるいは誤解をいただいたかと思うのでありますが、石炭手当というものが寒冷地手当重複はしていないと、このように考えておる。重複しておると考えられるかもしれませんけれども、これはわれわれの方の見解では重複はしていない、このように考えております。
  14. 島村軍次

    島村軍次君 そうすると薪炭を要する費用はこれは含んでいると見ていいんですか。
  15. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 薪炭といい、石炭といい、これは燃料でございますが、まあ燃料は採暖の費用にも使いますし、また厨房用にも使いますわけでございます。北海道におきましては石炭を使うことが多いであろうということは、これは言えると思う。しかし内地における寒冷地地帯におきましてどの程度石炭を使っておるかと申しますと、これは程度は低いもので、主として採暖は薪炭によっておる方が多いであろう、こういうことは申し上げられると思います。
  16. 島村軍次

    島村軍次君 そうしますと寒冷地手当一級から五級に分かっておるその具体的な計算基礎というようなものは、おおよそ人事院ではどういう程度のものというふうにお考えになっておりますか。   〔委員長退席理事野本品吉君着席〕
  17. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) これはただいま寒冷地手当はどのようなものであるかというお話がございまして、まあ寒冷地手当は、これは主として暖房用、採暖といった方が適当であるかもしれません。採援用——寒地における、特に寒冷でありますので、採援用、それからまた雪のありますときには積雪を防備する費用、そういうものをいろいろ含んでおる、こういうふうに申し上げたわけであります。われわれの方におきましてもいろいろこれを説明するようなと申しまするか、現在の支給金額というものが実体化計費から見まして、大体妥当であるという斜度研究はいたしております。しかし表面これを一級から五級までに分っております基準は、後にもし御必要がございますれば詳細なことをあるいは表にして提出してもけっこうなのでありまするが、まずこの寒さというものと積雪というものと兼ね合せまして、たとえば最下級一級地でございますならば、年間積雪、この一番寒い時期におきまする平均積雪というものが三十センチというところが一級である。それから積雪が、平均積雪というものがふえて参りますれば、それに応じて段階をきめておる。また寒冷度によりましてもこの段階をつけております。その組み合せによりまして、一級から五級までを作ったわけであります。このようなことに相なっております。
  18. 島村軍次

    島村軍次君 どうも今の御説明を承わりますと、寒冷地手当というものには、要素積雪と採援用、こう二つの要素を含んでいる、こう見なければならぬのですね。そうしますると、北海道石炭手当については、まあおおよそぼんやりながら意味はわかりますが、採暖用ということになれば、これはやはり薪炭以外には方法はないと思うのですがね。採援用として計算に入れるべき具体的な根拠を一つ聞かしてもらいたい。
  19. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) あるいは十分御質問の趣旨は了解しないで御答弁申し上げることになるかもしれませんが、採暖用と言います場合に、まきというようなもので採暖いたす場合もありまするし、また木炭というようなものを使う場合もありまするし、また石炭を用いまする場合もあるわけでありまして、薪炭だけで採暖するわけではない。これはまた地域々々によって違うわけでありまするが、北海道地域につきましては、石炭の産地でもございまするので、石炭による採暖ということが多い。このように考えております。
  20. 島村軍次

    島村軍次君 提案者にお伺いいたしたいと思いますが、先に同僚の千葉君から提案されました当時のことは私はよく存じませんけれども、今回特に衆議院において自民党の方から御提案になりました際の寒冷地手当と及び石炭手当、しこうして今回御提案になりました薪炭手当等のはっきりした具体的な区分についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  21. 黒金泰美

    衆議院議員黒金泰美君) 先ほど来滞村さんからのお尋ね、非常にむずかしい点でございまして、われわれもこの薪炭手当という名前をつけますにつきましては、いろいろ検討もいたしてみたつもりでございます。今、給与局長からいろいろお話ございましたが、私どもそれほど専門家でないものですから、比較的割り切って考えておるのでありますが、北海道では内地寒冷地手当に当る分が二本立になっておる。採暖と申しましょうか、燃料費だけ、これは石炭手当という昔からあった慣行に従って別個の手当になっておる。その他の積雪寒冷による生計費増高というものが寒冷地手当という名目で与えられておる。この二つ合せましたものが、大体内地における寒冷地手当と同質のものである。そのように一応理解いたしまして、そういうふうに理解いたして参りますと、内地寒冷地手当の中には、もとより採暖用薪炭費が入るわけであります。その薪炭費が入っております上に新しく薪炭手当という名前をつけることは、これは観念的には非常におかしい、私どももそう考えたのでございます。実態から申しますれば、今やむを得ない理由を申し上げてみたいと思いまするけれども、たとえば函館でございます。函館におきましては石炭手当が一冬に一万九千五百円世帯主でもらいます。それから寒冷地手当は一万四千八十円もらいます。これは五級地でございます。合せまして内地寒冷地手当に当る願が三万三千五百八十円になっております。ところがすぐ海を隔てました向い側青森でございます。これは石炭手当制度がないのでありまするから、寒冷地手当の最高五級地の一万四千八十円をもらうだけでありまして、むしろ積雪寒冷度合いから申しますれば、しろうと目で見ましても恵まれていない青森市の方が半額以下の金しかもらっていない、かような点で、どう考えてもこれはおかしいじゃないかということからいたしまして、きのうもるる御説明申し上げました通りに、公社なり現業官庁でこれのほかにもらっております四千五百円なりあるいは五千円なり以下のものを合せて与えることによって何とか権衡をとろう、こういう考えに立って、実質的には私ども十分に皆様にお願い申す理由があると思うのでありまして、そこで観念的に分析いたしまして、それなら薪炭手当という名前をつけた場合に、今までの寒冷地手当の中に薪炭手当が入っているではないか、こうおっしゃられますればこれは一言ないのでございます。ただこれをたとえば寒冷地手当の増給と呼ぶことが、実体とすれば、一番合うかと思ったのでございますけれども、通称的にこれを薪炭手当ということがもう大分前から言いならわされておりましたし、ことにかつて参議院におきましても二回ほどこの名前でお通しになった。前回衆議院におきましても、こういう名前で出したというような経過もございましたので、あえて薪炭手当という名前を使いましたが、観念的に突き詰めて申しますると、今申し上げたように、全面的な今の寒冷地手当では不足の分の補給、こういう観念に相なるかと存じます。
  22. 島村軍次

    島村軍次君 そこで給与局長にお伺いいたしますが、公務員制度調査会答申によりますと、第六項に給与に関する答申が出ております。この(イ)(ロ)(ハ)の(ハ)によりますと、「石炭手当及び寒冷地手当は、総合的に整備し簡素化すること」、こういうことの答申になっておりますが、今回の提案によりますというと、ますます複雑化して、しかも観念的には寒冷地手当に含むべきものがさらにはみ出して薪炭手当、こういうふうなことに複雑化してくるということになると思います。そこで人事院としては、この答申案についてどういう見解をお持ちになっておるか。また答申案以外に、答申案を尊重するという建前で御研究になっておるかどうか。今後の給与制度についてこれらの諸問題をどう扱わんとしておられるか、こういう問題について一つ何ってみたいと思います。
  23. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいま御指摘になりました公務員制度調査会答申でございまするが、この答申を受けましてこれを制度化いたしまするために、内閣公務員制度調査室というものが設けられまして、この調査室におきまして鋭意その問題は研究いたしておるわけであります。人事院給与実施官庁でございまするし、またこういう問題について勧告もできる立場にあります。人事院はもとより給与制度合理化ということにつきまして独自の研究を進めておるわけでございますが、総括的に申しますると、この給与制度というものが非常に複雑化しておるという状況は、あまり好ましくないということは言い得ると思うのであります。従いまして、将来の方向といたしましては、この制度というものは簡素化されるのが適当であろうというふうに考えております。で、石炭手当寒冷地手当並びに今回の御提案薪炭手当というようなものをめぐって考えてみ決した際におきましても、いろいろ理由はあることでございまするけれども、いずれをとりましても、傾向としてはやはり冬季の寒冷に対しまする手当であるということに、大きな意味から申しますると変りはないわけでございます。こういうものが細分されておるということは、これはやはりいろいろ制度が複雑になるわけでございまするので、遠い将来の方向といたしましては、これは合理化されるのが適当をあろうというふうに考えております。まあさしあたりの方向といたしましても、人事院といたしましては、いろいろ考えてはおるのでございまするが、いろいろ昨日来御論議のございましたように、あるいは北海道のごく南端部とそれから内地のごく北端部の間におきまして、条件がそれほど違わないのに格差があるではないかというような問題もあるわけであります。これはいかなる制度を作りましても、その境目におきましては、どうしてもそういう問題があろうかと思うのでございまするけれども、それが相当著しい差であるといたしまするならばこういう問題は制度のやはり十分熟していない点があるのではなかろうかというふうにも考えられますので、そういう点につきましては、従来この制度をより合理化することにつきまして、努力すべきであろうというふうに考えております。最終の方向といたしましては、これはまあ公務員制度調査会答申方向が、制度としては適当であろうと思うのでございまするけれども、さしあたりの問題といたして考えてみまする際に、この現在の寒冷地手当をより合理化する方便があるのではなかろうか、こういうふうなことでございまして、人事院といたしましては、二通り考えに基いて現在研究を進めておる次第でございます。
  24. 島村軍次

    島村軍次君 私はどうも人事院寒冷地手当一級から五級にお分けになったその考えのうちには、やはり薪炭所要のいろいろな基礎調査をやられた結果、こういうふうにお分けになっておったんじゃないかと思うのですが、そうじゃないのですか。
  25. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) まあ寒冷地に該当いたしまする地域薪炭使用状況がどうであるか、これをつぶさに研究いたすということは、制度考えます際に、許されまするならば、やってみなければならぬことであろうというふうに思うわけであります。ところが実際やってみるといたしましても、これは大へん困難なことになるであろうというふうに考えられます。従いましてわれわれといたしましては、まあサンプル的に特段条件の異なる地域を抽出いたしまして、そうしてこれで見当をつけてみるというよりしようがないのじゃなかろうかというふうに思うわけであります。その程度のことはもちろんやっております。しかしそれを基準にいたしまして、ただそれのみからその程度の抽出されたものを基準といたしまして作りまするのには、はなはだこれは基礎が十分でないうらみがございまするので、これを置きかえまして、当然寒さがひどければ採暖の程度も大きいであろう、また積雪が深ければ対積雪費用もかさむであろうというようなことから、これを一定の客観的条件、たとえば積雪度合いでありますとか、平均気温でありますとか、こういうものに置きかえまして、そういう基準でこの一級から五級までを区分いたしておる、こういう状況になっております。     —————————————
  26. 野本品吉

    理事野本品吉君) この際ちょっと御報告を申し上げておきます。  委員亀田得治君が辞任されまして永岡光治君が補欠として就任されました。     —————————————
  27. 島村軍次

    島村軍次君 大蔵省はまだみえませんか。
  28. 野本品吉

    理事野本品吉君) 給与課長が来ております。
  29. 島村軍次

    島村軍次君 給与課長にお伺いいたしますが、今回の薪炭手当に関しましては、大蔵省はどういう見解をお持ちになっておりますか。
  30. 岸本晋

    説明員岸本晋君) ただいま提出になっておりまする法案に対して大蔵省としてどういう見解を持っているかと申しますと、政府全体といたしまして、一つ見解をまとめまして、三月の中旬でございますか、閣議決定でもってその意思は表明いたしたのでございます。内容を申し上げますと、やはり給与制度簡素化という面、あるいは財政負担、そうした面から本法案に対しては御賛成申し上げられない、こういうような趣旨決定が行われております。
  31. 島村軍次

    島村軍次君 三月何日かの閣議決定は本法案に対しては反対だ、こういう御見解ですね。
  32. 岸本晋

    説明員岸本晋君) さようでございます。
  33. 島村軍次

    島村軍次君 黒金さんはもと大蔵省の御出身ですから、いずれよく大蔵省とはお打ち合せになったと思いますが、その間の経緯を一つお話しを願いたいと思います。
  34. 黒金泰美

    衆議院議員黒金泰美君) きのうも実は千葉さんからお尋ねがありましたので、率直にお答え申し上げたのでございますが、まあこの問題は実は非常に長い沿革ございまして、私、今御指摘になりましたように、東北で勤めておりましたころからの、もう数年にわたる問題でございます。で、今お話しに出ましたように、給与関係の方では、まあそのうちに何とかして給与関係の全体の見直しをするからというようなことで、延び延びに延びて参りました。まあもうこれじゃ何ともがまんし切れないというのが実はもう二、三年前のことでございます。従いまして参議院の方でもかつてこの御提案がございました。これもおそらく私どもと同じようなお気持でお出しになったのではないかと、かように考えるのでございますが、何とも待ち切れない、それからでございますね、そういうような趣旨でもって今度も提案をいたして、そうして幸いに衆議院の方では、まあこれは政府がそういっても、無理からぬことだろうということで、幸い通過いたしたような次第でありまして、大蔵省との関係につきましては、予算がきまった後でありますために、これはもう予算に見込んでいない経費だからやめてもらいたいということはしばしば話がございました。ただ、きのうも申し上げました通り、この法律案表面から申せば、来年の予算の上でもってかりに計上になりますれば、別にことしの予算とは食い違いなしに施行できるような体裁にはなっております。ただ実際問題といたしまして、このための差増額が修正を受けたものを加えましても三億四千万ほどでございますか、それは地方団体負担分まで入れてのお話しであります。政府一般会計だけにいたしますると、八千万程度、これはまあ施行の上でめどがつけばやれるのではないか、この点につきましても、正面切って大蔵省はうんとはまだ申しておりませんけれども、しかし今後の実施状況によっては何とかやっていかれるのではないか、先ほども申し上げました函館青森の例のごときは一番極端な例でございますけれども、このような不均衡が数年間放っておかれ、また一方におきましては、きのうからるる申しました通りに、公社なり現業官庁では、今この提案いたしておりまする相当額、あるいはそれ以上の額をすでに支給しているのでございますから、何としても同じ土地に勤務しております職員の方々にお気の毒だということで、これを提案申し上げたような次第であります。率直に申しまして、まだ大蔵省は決して正式にうんとは申しておりませんけれども予算の執行状況によりましては、何とかこれは皆様のお力によりまして支給できるようにいたして参りたい、このような考えでおるわけでございます。
  35. 島村軍次

    島村軍次君 提案者説明によりますと、予算の方は法案成立後は何とかなるということなんですが、これは一体大蔵省予算関係がある事項として御反対になったこととは当然でございましょうが、現在の予算の範囲内においてこの法律案が通った場合に施行し得るの確信をお待ちでしょうか、どうでしょうか。(江田三郎君「軍人恩給なんかと関連して物を言いなさいよ、一方的なことを言ってはいかぬよ、軍人恩給はどうするのだ、政府は」と述ぶ)
  36. 岸本晋

    説明員岸本晋君) 軍人恩給の問題は、私は専門でございませんので申し上げることはできませんが、薪炭手当の問題につきましてはまだ法案の御審議の最中でございまするし、まだ内容も不明な点がございますので、具体的にぎりぎり詰めたところどのくらい金がかかるかと、それを本年度の予算の執行でできるかどうかという問題につきましては、まだ詰めたところまで実は検討いたしていないのでございまして、とにかく予算に計上していないということで今まで御反対申し上げておるわけでございます。(江田三郎君「軍人恩給だって計上していないじゃないか、それに関連があるから慎重に答えなさい、どうせこれが回ってくるのだから」と述ぶ)
  37. 島村軍次

    島村軍次君 この法案決定になった場合には、いずれ国会法の規定によって閣議にお諮りになると思うのですが、そういう手続は当然行われると思うのですが、その場合に対しての措置はどういうふうにすべきであるというようにお考えになっているのでしょうか。
  38. 岸本晋

    説明員岸本晋君) 法案が成立した場合のことでございましょうか。
  39. 島村軍次

    島村軍次君 そうです。
  40. 岸本晋

    説明員岸本晋君) 法案がかりに成立いたしますれば、これはやはり国会の御意思でございますから、御意思に沿うようにできるだけの努力をいたして参りたいと考えております。
  41. 島村軍次

    島村軍次君 この法案によりますと、当然地方公務員にも及ぶと思うのですが、地方公務員の予算上の措置については、提案者の方では金額なりあるいはその措置をどういうふうにお考になっておりますか。
  42. 黒金泰美

    衆議院議員黒金泰美君) ただいまの御質問の点でございますが、地方公務員におきます分が、これは私どもが初めに出しました原案で御説明申し上げたいと思います。ただ修正によりましてもこれと一割ぐらいの差しかないと思いますが、地方公務員に対して支給の額がおおむね一億六千二百万でございます。その地方公務員の中には、教職員でありまして、国が負担しなければならない分もございます。これは国の方の予算にも関連して払わなければならぬ分になると思うのですが、これまでの数字はまだ私はっきりいたしておりませんが、この中でかりに金額が地方の負担といたしましても、この中でおおむね一番大きく負担しなければならない県は大体青森県だと思いますので、青森県におきましても知事さんその他にお打ち合せをしてみまして、まあまあ何とか自分のところの額ぐらいは今の予算の差し繰りで払えるのじゃないかしらと、このような御返事でございました。ほかの小さな、小さなと申しますか、この法案にあまり縁故のない県とは、十分な打ち合せはまだできておりませんけれども、一番代表的な青森の知事さんあたりに伺ってみても、今の経費の中で何とかやりくりがつくだろう、こんなようなお話でございました。
  43. 島村軍次

    島村軍次君 全額はわずかといえばわずかでありましょうが、当然地方財政計画にも影響のあるものだと思うのですが、自治庁との間のお打ち合せはどうなんでしょうか。
  44. 黒金泰美

    衆議院議員黒金泰美君) 自治庁との間は、実はまだいたしておりません。
  45. 島村軍次

    島村軍次君 そこでさらにこまかく伺いたいと思いますのは、この五級地等に限られておる、しかもその五級地は人事院の規則によって別表で定められておるようでありますが、実際問題として、この区別というものがなかなか困難ではないかと思うのですが、それが一つと。そこで人事院にこの五級地と四級地とに分けられましたその根拠、それからなお私はここにあげられておる五級地以外にも、他の府県で山間部にはほとんどこれに相当するような土地が相当あると思う。先般来の低温多湿の情勢から見て、あるいは霜害の情勢等から見ましても、ほとんど差のつかないというような地方も相当あると思う。そういう場合にこの今回の法律案によりますと、総理大臣の指定するということになっております。これは他に、この五級地以外の別表で定めてある区分以外に、さらに拡大をするというような考え方であるかどうか、また拡大をせなければ権衡がとれないと、こういうふうなことになると思うのですが、そういう問題についてどう考えられるか。
  46. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 最初の提出されました原案は五級地となっておったのでありまするが、修正案によりまして、内閣総理大臣が指定する地域ということになり、その地域人事院の勧告に従ってやる、こういうふうになっておるようでございます。で、先ほどお答え申し上げましたように、人事院といたしましては、本法案関係なく、独自に寒冷地手当の問題は現在の状態より、より合理化する必要があるであろうということで、いろいろ研究はいたしております、しかしそれは本法と無関係のことであります。それでもし本案が通過いたしました際には、人事院といたしましては、本法案に準拠いたしまして、忠実に最もいい方法でこの問題を研究いたさなければならぬと思うのでありまするけれども、この問題は非常にむずかしい問題を含んでおるであろう、こういうことは今から予見されるわけでございます。で、さらに現在指定してある五級地以外にも、山間部等においてこれに匹敵するような地域があるではないかというお話でございます。これはわれわれといたしましては、いわゆる気象図と申しまするか、寒冷積雪の従来の統計を集積いたしましたものを頼りにいたしてやっております。でき得る限り詳細なデーターを求めまして、誤まりなきを期しておる次第でございまするけれども、何しろごく微細な点になって参りますると、なかなか条件が違うものもあり得るわけであります。しかし国家公務員の場合におきましては、地域とは申しましても、これは対象になりまするものは、所在官署のことでございまするので、その所在官署につきまして十分研究いたしておけばこれで足りるのじゃないか、山間部等でかりにそういう該当地域があるといたしましても、そこに国家公務員の所在官署がないということでありますれば、これはわれわれの場合として一応問題にならないということも出て参るのであります。先ほど来基準がどうかというお話で大ざっぱなことを申し上げたのでありますが、われわれの基準といたしましては、平均雪積五十センチ以上三百センチメートルというのが一般状況でございまするが、その間を一級から、五級に分けて、平均気温につきましては、 ○度からマイナス十度までを一級から五級に分ける、両者がかみ合います場合には、両者合せまして一方だけでは基準に足らないものは上に格上げしておるというのがある状況でございまして、先ほど三十センチと申し上げましたのは、これは三十センチで平均気温が一カ月間〇度であるというような場合を申し上げたのでありますが、そういうような状況によってこれは現在格つけをいたしておるわけであります。まあ人一院といたしましては、もう少し光のことを申しますならば、さらにこれによりいい基準でこういう格づけをいたす方便がないものかどうかというような問題も現在いろいろ研究をいたしておる次第であります。
  47. 島村軍次

    島村軍次君 暫時休息を願います。
  48. 野本品吉

    理事野本品吉君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  49. 野本品吉

    理事野本品吉君) 速記を始めて。
  50. 千葉信

    千葉信君 私の質問は提案者の方でもいいし、人事院の方からでもいいし、少し今の島村君の質問に関連してすっきりしない点が出ているようですから、問題の将来にためにも私はこの際考え方をある程度すっきりしたものにしておく必要があると思う。それはどういう点かというと、先程提案者の方から行われた答弁にいたしましても、寒冷地給、それから石炭手当、それから今回の薪炭手当支給対象となる条件、それからその対象に応じて支給しなければならないという限界なり、数量なり、金額なり、こういう点が私はかなりはっきりとつかめない御答弁だったと思うのです。そこで私の方から一応考えを申し上げて、そういう考えでいいかどうかということを御答弁を承わりたいと思うのです。第一番には、今の給与の中にもこの手当を除いても若干はその冬季におけるいろいろな生活上の負担、つまりその中にはある程度暖房料に該当するような要素もその他の給与の中で全然考慮されていないわけじゃない。これは全くその通りだと思う。しかしそういう条件ではあるけれども、温暖な地方と比べてまあ積雪が幾らとか、寒冷度合いがどういう程度にひどいとか、そういう特殊な条件に応じて、温暖な地方に比べて特に負担のかかっている地域に勤務する諸君に対しては、やはり何らかの処置を講じなければならないと思う。そういう観点からこの法律はそれを救済するために立法化された。ですからそういう意味から言いますと、私は支給の対象になる条件も、それからどういう方法となり、もしくはどういう手当という格好で支給するにしても、私はその支給される場合の条件なり、支給する内容なりは日本全国一本のものでなければならない。ただその日本全国各地域にはある程度の開きがあるから、まあその開きに応じて配分が合理的な傾斜でなければならない、こういうふうになると思うのです。それが本案は所期しなければならない考え方だし、やり方だということになると思う。それは最初のこの法律の立案過程においてそういう条件に適合するような予算措置が見通し困難であるという、まあつまり予算の通過後でしたから、昭和二十四年……まあこの法律案提案者は私どもです。そのときにどうしても予算上の見通しがつかないために、合理的な傾斜を選ぶことも適切な金額を徹底することも不可能だという状態のもとで、どこで万やむを得ず二本立という格好で、一方は寒冷地給、一方は石炭手当ですからそのやり方は合理的な配分じゃなくて、必要に差し迫られて、ある地域には有利な条件で特別なものをつけることによって、その地方の特殊な困難な生計費の状態に対して対応する措置をとった、したしその次の地域、これは合理的な傾向じゃかくて、がたんとがた落ちに落ちた取扱いを受けたものが青森以西の地方です。ですからそういう条件に対しては、これはできれば人事院においても積極的に解決していただくことが一番望ましい方法だったのですが、まあこの前の給与準則の勧告に当っても、これは議員立法であるからということで一応敬遠の態度をとられた。ですからそういう態度で今日まで人事院が終始されておるのですから、これは議員提案者であるということを考え合わせられて、やはり国会における立場としては、その不合理な状態あるということを修正しなければならぬという責任を私は持っていたのです。ですから私の提案もそうですが、今回の黒金議員の提案に際しても、合理になっている一宇の陥没地域に対しては、やはりある程度の救済措置を講じなければならぬ。これはつまり一本給与でなければならないものに対して、がたっと落ちて二つに種目が分かれておる、これをもう一つ種目を加えることによってこの配分を合理化するというのが、これが薪炭特別手当考え方だと思う。ですからその意味では、さっき公務員制度調査会答申云々の問題が出ましたが、なるほど簡素化するとか名前一つにすれば、それは一本やりになり簡素化した給与ということになるかもしれない。しかし本来その公務委員制度調査会なるものは、これは非合法に機関であります。政府は一体はっきり法律に基いて設置しなればならない機関を、全然国会に諮らずに非合法な態度をもって公務委員制度調査会を、まあそういう設け方をしたのはいいとしても、そこで出した結論が今進行中の法律案考え方と全然正反対なものだということにはならない。どうしてかというと、石炭手当寒冷地給を簡素化し、一本に持っていくということと、本来その同一条件、同一種目の給与であるものが、単に名前を変えて寒冷地球、石炭手当となり、それが不合理な部分があるから、その不合理な部分に対してこれは救済する措置を薪炭手当でとる。ですから寒冷の場合、積雪の場合に対する給与しては初めてここで三つの要素が一本になっているということになる。ですからこれは将来公務委員制度調査会等の答申を中心にして、かりに一本化されていく場合もあるとしても、これは名前を変えればいいだけであって、実態は現在の状態で完全に一本化されてきている。名前がいろいろついただけである。私はこういう考えでこの問題を処理していくべきだし、またそれが正しい方法だと思うけれども提案者並びに人事院はどう考えるか。  それからもう一つは、ついでですから大蔵省の方にお伺いしておきます。  その家計費の決定のあった当時は、これはなるほど政府としてはさっき申されたような御意向であったかもしれない。しかし御承知のようにもう今ではこの法律案衆議院を通って、場合によれば参議院を通過するかもしれない。予想外に早く通過するかもしれない。通過した場合に、さっき給与課長も言われたように、国会の意思が決定されるわけですから、従ってそうなれば、私は大蔵省としてはもう少しこの問題に対して積極的な態度をとらなければならぬ必要が出てくる。特に今始まったことじゃないのです。二十二国会ではとにもかくにも参議院を全会一致で同種の法律を通過した。ですから、もし予算編成の際に大蔵省がこの問題に対して全然無関心で予算編成を試みたということについては、私は少し物事の判断において欠けるところがなかったか、あったんじゃないか。そういう条件もあるし、かたがたこれが国会を通過したという場合には、先ほどの国会を通適したということになれば、まあ大蔵省としては考えなければならぬということになるだろうという御答弁でしたが、私はもっと具体的な答弁をしていただけると思う。これはどうしてかというと、提案者の力からも御説明がありましたように、一般会計等の場合に必要となる所要額というのは非常に少いのです。で、予算執行の過程ですから、今直ちにここでどうこうということをはっきりと御答弁いただくことは困難でしょうが、見通しは一体やろうと思えばできる見通しなのか。やる意思ありやいなやということは、岸本君きょうは大蔵大臣の代弁人としてここへ出ておられるはずだから、大蔵大臣というつもりで答弁してもらってもいいけれども、そこまではちょっと困るというならば岸本君の立場で答え得るもっと積極的な、最大限度の答弁を私は期待できると思う。そういう意味でその点は岸本君から答えてもらいたい。
  51. 黒金泰美

    衆議院議員黒金泰美君) 今非常に千葉さんからよい御質問と言いますか、むしろ教えられるところが非常に多いのでありますが、今お話になりました通りに、われわれ提案者といたしましてはこの寒冷地手当あるいは石炭手当なり、あるいは内地におきまして薪炭手当、これは全部を包含いたしまして温暖平均地よりも以上に、まあこれは観念的でまことに恐縮でありますが、温暖の平均地よりも積雪寒冷のために生計費がかさむこの差増額を埋める。全部はかりに埋められないまでも、できるだけこれを補てんしようということにこれを当てたい、かような考えでございます。従いまして今もお話出ましたように、北海道なりあるいは富山とかあるいは松本あたり、比較的寒冷積雪皮の低い地方と比べまして非常に積雪寒冷度の高いところが穴ぼこになっている。これをまず何とか埋めてもらいたい。しかしこれを埋めた結果といたしまして、果して四級地あるいは三級地までもある程度の均霑をしなければまた権衡がとれないのじゃないかという問題が当然起って参ると思います。こういう点につきましては、大蔵省なり人事院におきまして十分な御検討を願って、公正な方法を御勧告願いたい。たださしあたりといたしましては、予算の通ったあとでもありまするし、とりあえず何と申しても同一地に勤務いたしながら、一方の公務員はこれは薪炭手当類似のものがもらえる。片方の者はもらえない。せめてこの不均衡だけでもこの年内にぜひ解決をしてもらいたい、かような気持で作りましたような次第でございます。この点を御了承願いたいと思います。
  52. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) ただいま千葉委員から法律二百号の制定当時の経緯のお話があったわけでございます。その当時はもちろんそのようであっただろうと私どもも思うのです。その後におきまして人事院といたしましてもいろいろ研究をいたしまして、級地の再配分もやり、またその率等につきましてもやはりこれはわれわれの方の研究に従って変えているのでございます。従って人事院といたしましては現在の状況で一応これは理屈はついている、このように考えております。しかしながら制度として現在のもので十分であるかどうかということになって参りますると、先ほど来申し述べておりまするように、それほど気象条件の違わない、たとえば北海道の南端と内地の北端と比べますると、そこに制度をこうきめましたために、ある程度大きな差等がついているというようなことは、これはやはり制度として再考を要する点ではなかろうかというような考えがあるわけでございます。そういう点につきましては、これは将来にわたって十分研究しなければならぬと思うのであります。  それからもう一つ現在三公社五現業につきまして、これは団交とは言いながら、やはり黒金先生から御提案になっておりまするように、一般職との間に非常な不均衡があるという事実もこれは否定できないわけでございまして、こういう事実に対処いたしまして、やはりある程度の均衡を必要とするという事情はあろうかと、このように考えております。
  53. 岸本晋

    説明員岸本晋君) 本法案につきましては、先ほど申し上げました通り、一応閣議決定で御反対申し上げておるわけでございますが、かりに成立いたしました場合には、やはりこれは先ほど申し上げました通り、国会の御意思としてできるだけ御尊重して参るということにいたさざるを得ないと思います。ただ現在の段階におきましては、まだ支給地域も具体的に明確にきまっておりませず、また特に予算が第一・四半期のまだ半ばを終えたばかりでございます。先の状況予算全般の執行の状況も見通しが明確には立たない面もございまするので、必ずこれを法案が成立した通り実施できるかどうかという、これはここで確言申し上げかねる次第でございます。法案自体もそうした含みで御作成になられていることと存じます。できる限り成立いたしました場合には、これを尊重して参りたいと、かように考えております。
  54. 野本品吉

    理事野本品吉君) 別に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 野本品吉

    理事野本品吉君) 御異議ないものと認めます。これより討論に入ります。(「人数はいいのか」「人数が足らん」と呼ぶ者あり)ちょっとお待ち願います。速記やめて。   〔速記中止〕
  56. 野本品吉

    理事野本品吉君) 速記始めて。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの力は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  57. 島村軍次

    島村軍次君 私は本案に対しましてはまことにその内容の、提案者提案理由につきましては、函館あるいは青森の例を引かれましたことに対する措置についてはまことに御同情を申し上げますが、しかし給与体系からいい、あるいはまた公務員制度調査会答申等からいいまして、実際これらの問題、すなわち寒冷地手当石炭手当等簡素化すべきものであるということは、これは提案者並びに大蔵省給与局等のいずれも認めておられるところであると同時に、また予算が少額といえども予算決定後でありますので、この議員提案は、しかも大蔵省出身の黒金氏から提案されまして、予算のないものを法案提案されたということに対してはまことに遺憾と存ずるのでありますが、あるいは地方公務員との関係上、将来この制度に関しましては真剣に政府におきましてあるいはまた提案者におきましても、本日私が御質問申し上げたような点をとくと御考慮の上で、本制度に関するすっきりした筋の通った案に至急に修正されることを希望申し上げまして賛成をいたします。
  58. 野本品吉

    理事野本品吉君) 別に御発言もなければ、討論は尽きたものと認めて御異議がございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 野本品吉

    理事野本品吉君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を衆議院送付原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  60. 野本品吉

    理事野本品吉君) 全回一致と認めます。それでは本案は全会一致をもって衆議院送付原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第五四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条により議長提出すべき報告書の作成その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願うことといたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 野本品吉

    理事野本品吉君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。    多数意見名署名      田畑 金光  永岡 光治      豊田 雅孝  高瀬荘太郎      宮田 重文  木村篤太郎      江田 三郎  千葉  信      木島 虎藏  島村 軍次      青柳 秀夫  井上 清一
  62. 野本品吉

    理事野本品吉君) 暫時休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      —————・—————    午後一時五十五分開会
  63. 青木一男

    委員長青木一男君) ただいまより委員会を再会いたします。  委員変更についてお知らせいたします。本日井上清一君が辞任せられまして、その補欠に泉山三六君が選任せられました。     —————————————
  64. 青木一男

    委員長青木一男君) 臨時教育制度審議会設置法案を議題といたします。  質疑を行います。
  65. 江田三郎

    ○江田三郎君 私は鳩山総理には初めて質問をするわけでして、どういう問題もまだ鳩山さんには質問したことはございません。きょう初めて質問いたしますので、ちょっとこの法案に関する質問の前に、前提になることをお聞きしておきたいと思うのですが、どうもこの委員会あたりで総理の御答弁なさるところを聞いておりますというと、まことにたわいのない答弁ばかりで、一体どこに一国の首相として国民に呼びかけるような気魄があるのか、どういう高邁な識見と理想を持っておられるのか、そういうものを一つも感じ取ることができないわけなんです。あるいはまた先般も本委員会で憲法調査会の質疑打ち切りというようなことで混乱を来たしました。そういうことについても、総理なり、あるいは政府委員なり、あるいは与党の方々は、質問は何べんやっても同じことじゃないか、こういうような感じを持たれて、一方的に質疑を打ち切るのもやむを得ぬと、こうお考えになってやられたんじゃないかと私は思うのですが、なるほどそういう点もあると思うのです。ところが、質問が同じことが繰り返されるというのは、これは一体どちらに責任があるかということなんでして、質問に対する答弁というものがきっぱりできておれば、これはそうくどくできるものではございません。ところが、どうも総理の答弁が最も代表的な例ですが、一向に要領を得ない。そうしてちょいちょい見ておりましても、きょうは一つ離れておられますけれども、法制局何がしという人がへりで耳打ちをしてそれで答弁をしておる。私は総理がことごとく何んでもかんでも知っておられるとは思いません。しかしながら軍要法案についての重要な部分だけは、私はこれは総理自身が自分の意思で明確にお答えできる人でなければ総理の資格はないと思います。今日どこの国を見ましても、総理なりあるいはその他の政府の重要な部署についておられる人々は、気軽に外国へも出ていってどんどんとスピーディな外交折衝等をやっておられる。私はああいう姿を見るときに、今も総理が中国なりソ連なりに行かれてはどうかという意見も国会に若干あるようですが、しかしここで出てくる質問に、へりから法制局何がしというような者がしょぼしょぼと言わなければ答弁ができないというようなことであって、一体外国へ行ったって何ができるのかと思う。そういうことが一体自分の意思で世論をリードするような気魄に満ちた答弁がなぜできないのか。私はあなたは肉体的にもそういうことがおできにならないのか。あるいはあなたの率いるところ内閣なりあるいは自由民主党の中にさまざまな意見があって、あなたの自由なる意思を述べることをとめられて、へりから陰の声で言う通りを言わなければならないのか。そういう点について一体どうお考えになっておるのか。法案について質問する前にまずそのことをお伺いしておきたいと思います。お答え願います。
  66. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は質問に対して自分の知っておることについてはそのまま答弁をしておるつもりであります。
  67. 江田三郎

    ○江田三郎君 そうすると、本委員会で私は総理の答弁は憲法調査会のことだけしか聞いておりませんが、そのほかのたまたま他の委員会の議事録を見ましても、ほとんど答弁になっていないと思うのですが、大事な点については私はまだそれは知りませんとか、あるいは答えられてもへりから言われた通りかどうか私ここで聞こえませんからわかりませんけれども、とにかくまことに要領を御ないしつぼだけつかまえられなければいいというような内容の答弁を二、三行ずつしておられる。これが一体あなたの口ぐせに言う独立独立という独立をした国を新しく建て直そうというときの総理の態度であっていいとお考えになっておられますのですか。
  68. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は適当な答弁をしておるつもりでおります。
  69. 江田三郎

    ○江田三郎君 適当な答弁——これでもって適当だと言うのでは私もあきれてものが言えないわけなんですが、あなたも自分で一つどこかの委員会へあなたが出られてお答えになっているところの速記録を読んでいただきたい。ことごとく何か問題の答弁をされるたびに質問者の方からそれに対して不満を述べているじゃありませんか。あるいは不満を述べるような答弁でなければ、あなたが今度は失言だと言って取り消さなければならぬような答弁、これを見ているというと、まず善意に解釈すればもうあなたは肉体的に今のスピーディな政治の中で、世界のこのめまぐるしい政治の中でこの日本の総理大臣として部署につくのは無理なんじゃないかと私は思います。私どもはあなたに言われるまでもなく、友愛精神というようなものによって人の欠陥については寛容でなければならぬと思います。御病気であればそれに対して御同情しなければならぬと思います。しかしこれは個人的な場合と総理大臣という要職にある人の場合は私は違うと思います。ときどき病気をされるというなら私たちもそれに対してはそういう病気の起らないようにたえずお互いの心を打たなければならぬと思いますが、そういうときどきでなしに継続的にだれが見ても不満足な答弁しかできないということになりますと、私はそういう肉体的な欠陥にいつまでも甘えられては困ると思います。総理大臣は個人じゃないのですから。そのために国の政治が停滞したり、国民が向うところを知らぬようになったり、あるいは外国から軽んぜられるようなことがありましては、これは取り返しのつかない損害であるわけでして、私はもう少し総理としてそういう点について自分で御反省をなさってはどうかと、はなはだ苦言を申しますけれども、その点はそうお考えになりませんか。御答弁はございませんか。
  70. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 答弁いたしません。
  71. 江田三郎

    ○江田三郎君 われわれはあなたを何もいじめているわけじゃないのです。しかしこれは一つ客観的にお考えになってみていただきたいと思います。すでにあなたが党の総裁になられたときにも相当数の白票等が出ました。そうしてそのときにあなたを支持された人々も最良とは思わないがやむを得ないからというようなことを私に直接申している人もおりました。私が今言っていることは、これは反対党だから私は言っているのじゃないのです。もっと客観的な立場で考えても、何という日本は不幸なことだと私は思うのです。そういうことについては一切もう答弁はされませんか。
  72. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は若くて頭のしっかりしている人が早く総理大臣になることを望んでおります。
  73. 江田三郎

    ○江田三郎君 あなたはまあ今の御答弁から見られても、やはり自分で相当お疲れだということは御自覚なさっておると思います。私も早く鳩山さんは音羽の山でほんとうにいい天気の下でバラでも見ていただくのが一番いいと思います。あなたのためにもいいし、日本の国のためにもいいと思いますが、そこでそういうような一つ、自分でも新しいいい人が出ればいいというようなことをお考えになるだけに、私はやっぱりあなたには何か欠けた点があると思うのです。たとえば今度の問題のこの臨時教育制度審議会につきましてもですよ、これはすでにあなたが御承知のように、この法案だけでなしにその他の教育関係と並んで全国の各大学の学長さん、あるいはその他の教育の寺川君たちが、こぞってとは思いませんけれども、ほとんどの人々があなたの内閣の掲げておるところの教育制度について不信の念をもっているわけです。一つの大学の何がしという人じゃございません。ほとんどの人がそういう立場をとっておられる。しかもあなたはこういうものを強引にやっていこうとせられる。そこに私はやっぱりあなたは過去の人なんであり、過去の人といっては失礼です、現在総理大臣でありますから……。過去の人ではありませんが、とにかく古い日本に長く生きておられた人なんだから、あなたがほんとうに正しいと思っていることも、今の世界の現状から見たら、どこか歯車が合わぬ点があるのじゃないかということをあなたはお考えになったことはございませんか。
  74. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ありません。
  75. 江田三郎

    ○江田三郎君 まことにけっこうなことです。一体そういたしますと、まあ小選挙区制の問題についてはあなたの方も相当無理をされて言論機関の集中攻撃をくっている。それを押し切ってやられました。私はあの経過を見ておりましても、これは社会党が反対するというだけでなしに、衆議院議長の扱い方一つ見ても、議長を除く自民党の方々には反省をしてもらわなければならぬ点があったのじゃないかと思います。そういう点についても、あなた方は今自民党のやっていることが何ら世論にかんがみて反省する要はない。天地神明に恥じざることをやっているのだ、確信があるのだ、世界の大勢に従っているのだ、こういう御確信がありますか。
  76. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は小選挙区制は二大政党を育成するために必要な制度だと思っております。
  77. 江田三郎

    ○江田三郎君 二大政党の内容については私も私なりに意見があります。しかしまあこれは当委員会の直接の問題でございませんので、その点は省きますが、とにかく今度のあなた方の一連のこの教育制度を変えようという点については、先ほど私が申しましたように、多くの教育者から反対の声が上っておるわけですが、これはあの多くの教育者が間違っているのであって、国会で長く答弁をすると失言をされるようなあなたの方が正しいのだと言い切ることができるでしょうか、鳩山さん、あなたはよくこの委員会の速記録なんかを見ておりますと、民主主義の講義をされております。自分の権利を言うだけでなしに、人の立場を認めなければならぬ、自分の立場を言うだけでなしに、自分を反省しなければならぬということをよく言うておられます。そのあなたがいつも説かれる民主主義の長いあなたの体験からこられた民主主義の精神に照らしてみて、いやしくも教育に直接関係しているところの専門家の多くが間違いではないかと批判するようなことをやられることが、ほんとうに民主主義者としての態度でしょうか、それはどうでしょう。
  78. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 自分が正しいと思うものを政府が議会に原案として提出して国民に意見を問う、国民の代表者の意見を問うということは当然なさねばならぬ仕事だと私は思っております。
  79. 江田三郎

    ○江田三郎君 あなた方がそうおっしゃる背景には、絶えず自由民主党の多数ということがあるわけです。あなたはいやしくも民主主義をわれわれに講義をされる以上、多数というものはどういうような役割をしたらいいかということは十分御承知だと思います。あなたは世論の反撃があろうと何であろうと、自分が正しいと思ったことは国会に出せばいいと言う、国会へ出せばあなた方の党は多数を持っておるわけです。どんな無理だって通るわけなんです。そこで多数の上に立っている自由民主党の総裁であり、総理大臣であるだけに、まず多数に物を言わす前に、もっと率直に世論に対して聞くという心がまえがなければ、日ごろあなたが説かれるところの民主主義の精神とは違うと思いますが、それは私の言う方が間違っていますか。
  80. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 世論に聴従するということは民主政治の上に必要なことだと思います。
  81. 江田三郎

    ○江田三郎君 それならばなぜ多くの教育の専門家たち、しかも国民の多くから尊敬を払われておるところの大栄の総長なり、専門家たちが反対するような、そういう趣旨のものを強引にやろうとせられるのですか、あなたが今おっしゃることが、ほんとうに鳩山さんの腹の底からの信念であるなら、私はこういうことはできないと思いますが、どうでしょう。
  82. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 政府は大学の諸先生の意見をも慎重に検討いたしまして、そうして出処進退すべきものと思います。
  83. 江田三郎

    ○江田三郎君 大学の諸先生の意見を聞かれたと言って、聞くのにも鳩山さんいろいろ開き方がございましょう。ただ左の耳から入れて右の耳へ出してしまう聞き方もあると思います。私はそういうことは聞くということじゃないと思うのです。しかもただ一人や二人の人々がそんなことを育っておるのなら、これはまた少数の、ほんの少数の考え方としてあまり多くのウエイトを置かなくて、これを軽く見ることもできましょうが、今回のような大学の諸先生の声明というものは日本の国初めてのことじゃないでしょうか。日本の国初めてというより世界始まって以来の私はできごとだと思います。それを聞いたというのは、聞いてどういうお感じを持ったのですか。しからば聞きますが、ただ右の耳から入れて左の耳へ出したのじゃないというなら、あれを聞いてどうお感じになっておるのですか。自分の意思で、お答えなさいよ。鳩山さん、こういうようなことこそ法制局何がしなんかという者の作文を読むべきものじゃありませんよ。
  84. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 教育に関する法案の世論は必ずしも反対ばかりではございません。賛成の者もずいぶん多いのであります。政府としてはこれらを考えまして、正しいと思ったことをやっておる次第であります。
  85. 江田三郎

    ○江田三郎君 そういたしますと、あの大学の諸先生方の方が間違っているのだ、あなたの立場からいくとそうなりますね。かつてあなたは京都大学における滝川先生でしたかね、鳩山さん、ああいうような措置をとられましたが、今のあなたの立場からいくと、この六百数十名の署名をしたところの大学の先生どもは、かつてあなたが滝川先生を処分したごとく、もしあなたに昔のような方が、権限が与えられておるならば、この六百何十人も処断しなければならぬ人たちとあなたお考えになりますか。
  86. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) あの当時におきましては、滝川君の問題は、私は今日記憶にあるところによれば、滝川君の著書の「刑法読本」というものは共産主義の宣伝であるとして内務省において発売禁止になっておる本なんです。内務省において発売禁止になっておる「刑法読本」を学校において講義をするということは不都合だと私は考えたのであります。共産主義は当時は非合法になっておる時代でありまするから、共産主義の講義を学校でしてもらっては困るという考え方を私として持つのは当然なことだと思うのです。
  87. 江田三郎

    ○江田三郎君 滝川先生と今の六百何十人の先生との問題は厳密に一つことではございません。これは私が申すまでもない。しかしとにかくあなたの信念から言えば、あの六百何十人の方が間違っておるので、しばしば失言をなさるあなたの方が正しいのだという信念で、そうしてこの法案の今度の臨教審の内容を見ると、教育に対して国の監督権というようなものが相当大きなウエイトを持ってきている。私はもしこういうものができてどういうことをするかしりませんけれども、国の教育に対する監督権というものが強化されたら、結局再び、あるいは三たび滝川先生の問題を繰り返すことになる、その処罰の程度は違いますといったって、私はやはりそういうことをせざるを得んことになってくるのじゃないかと思いますが、あなたはそうお考えになりませんか。もしそうでないと言うなら、何のために一体こういうようなものを新しく出して、教育に対する国の監督とか何とかいうことを言わなければならぬのですか。そこに私はねらいがあるのじゃないかと思う。これは私はひがみじゃないと思う。
  88. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 先刻申しました通りに、教育に関する法案の世論は必ずしも反対ばかりではないと、先ほども申しました大学の教授でもやはり私はここの点で同じようなことが言えると思うのです。大学の教授等は必ずしも法案に反対してはいないと思っております。
  89. 江田三郎

    ○江田三郎君 世論というものは、これはどうでもこれが世論だということは言えると思います。おのおの都合のいいようにこれが世論だということは言えるわけです。しかしあなたがこういうようなことをなさっておる間に、たとえば数字に出てきた世論調査をみたところで、鳩山内閣に対する世論調査に出てくる支持の数字は低下しているじゃありませんか。鳩山さんは早くおかわりになった方がいいという。この数字がふえているじゃありませんか。自由民主党の支持率は減っているじゃありませんか。そういうような動きというものをあなたはどうお考えになりますか。これは世論ではない、自分に都合が悪いからこれは世論じゃないということになりますか。このくらいのことは自分でお答えなさい。
  90. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は江田君のようには考えておりません。(「聞こえない、もう一度」と呼ぶ者あり)江田君のように考えておりませんと申したのです。
  91. 江田三郎

    ○江田三郎君 あなたは仕合せな人ですよ。(笑声)だから私は最初に言うんです。あなたに何か聞くと、私はまだ知りませんとか、あるいはそういうことは考えたことはございませんとか、いつも言っている。しかし一体今の世界のどこの国の総理大臣が、そんな答弁をしている人がありますか。われわれがたまたま新聞で外国電報を見るだけでも、アイゼンハワーの言葉でも、あるいはブルガーニンの言葉でも、立場は立場として、やはり人にアッピールする強い力を持っているじゃありませんか。一体たかがこのくらいの質問に、もうまともに答えることができないで、ただ問題をそらすことだけ、あげ足をとられぬようなことだけ、そういうことで、それでもあなたは総理大臣として勤まるとお考えですか。鳩山さん、もう少し日本の国のために御反省なさいよ、どうです。
  92. 青木一男

    委員長青木一男君) 御答弁ないようですから質問を進めて下さい。(松浦清一君「答弁がなければ質問できやしない、待っておってもいいじゃないか、質問が継続しているのだから、途中でしり切れトンボになっちゃ質問ができやしない」と述ぶ)
  93. 江田三郎

    ○江田三郎君 私はなお多くの  を聞きたいのですが、このような鳩山さんの態度では、今は質問してもむだだと思いますから、ほかの人に質問していただきます。いずれあとからもう一ぺん質問します。
  94. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、江田君から強く要望がありましたように、鳩山総理も率直にお答え願いたいと考えます。  臨時教育制度審議会設置法案を通じて私たちが憂えますことは、政治と教育の関係がどうなければならないか、この問題であろうと思います。戦争前の日本の政治のもとにおける教育、政治と教育の関係、あるいは戦争のさなかにおける教育も、すべてのものが、政治のもとに奉仕したというあのあやまれる歴史を反省いたしましたとき、新しい日本において最も大事な問題は、政治と教育の関係がどうあるべきかという問題だと考えますが、この点に関しまして総理の御見解を承わりたいと思います。
  95. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 学校が一党一派の主義、主張の宣伝の場と化することは避くべきことだと思います。その意味において、教育の政治中立を厳に確保しなければならないという考え方をしております。
  96. 田畑金光

    ○田畑金光君 学校が一党一派に偏してはならない、あるいはまた教育の中立性というものが厳然と守られなければならない、これは全く同感でありますが、そういうようなことになって参りますると、今度臨時教育制度審議会が設置をされた議事録等について、われわれはよく政府考え方というものは承知いたしておりますが、この際鳩山総理へらあらためて、臨時教育制度審議会が何を目的としておるのか、ことに私は質問時間も限られておりまするから、率直にお尋ねしますが、中央教育制度審議会が設置をされておる、にもかかわらず、新しく臨教審が置かれたということは、何を目的としておるのか、これをまずお尋ねしたいと思います。
  97. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 現行教育制度は占領下という特殊な状態において急速に定められたものでありまして、必ずしもわが国情に十分即していない点もあると思うのであります。これについて国政全般の立場から、総合的に調査審議していただくために、本会を設置することといたしたのでございます。
  98. 田畑金光

    ○田畑金光君 その御答弁はすでに提案現出説明書の中で承知いたしておりまするが、具体的に申しますと、現在の教育制度あるいは教育内容等において、どの点が国情に沿わざる点であるのか、占領制度のもとにおける教育行政のあり方について再検討を加えられるといたしまするならば、どういう点に目標を置かれて再検討なされようとされるのか、具体的にお尋ねしているわけであります。お断わりしておきますが、具体的と申しましても、いずれ文部大臣に詳細に質問いたしまするから、総理としては大綱について、どういう点に今の教育制度の欠陥があるのか、これを教えていただきたいと思うのです。
  99. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) とにかくこの今回の提案については、反対論をいう人は、この提案が復古主義である、国家主義的傾向であると言うのでありますけれども、それは見方の相違でありまして、教育については占領下において改革せられた現行教育制度について、国情に適しない点だけを再検討いたしまして、改善をはかろうとするものであります。
  100. 田畑金光

    ○田畑金光君 答弁の繰り返しでありますが、占領制度のもとにおいて立てられた教育の中に、今日の国情に沿わないという点があるので、再検討をなさるのが政府の態度であります。あえてこれを復古主義とか、あるいは封建的とかいう言葉を私は使っておるわけじゃないのです。どのような点に改革しなければならない目標があるのか、それを私はお聞きしておるわけです。
  101. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) その点については、いろいろ人によって異なった考え方をしておるかもしれませんけれども、わが党内において声の高かったのは、占領中になされた改革によりまして、歴史だとか、地理だとかいう教育がなくなった、そういうようなことは非常に嘆かわしい、こういう点に——それをその一つの例にとっているわけであります。そういうようなことのないようにしたいと、こういうことを言っておるわけなのであります。
  102. 田畑金光

    ○田畑金光君 歴史とか、地理とか、教科の内容でありますと、臨教審を新しく設けられた理由は何もないと考えます。そのような問題については、すでに明らかに中教審というものが存在して、中教審がそういうような問題を取り扱ってきたのだということは、明確に総理あるいは文部大臣の答弁でわれわれは承知いたしております。そのような問題ではなくして、現行制度に検討を加え、教育制度及びこれに関連する制度に関する緊急な重要政策を総合的に調査審議をする、これが臨教審の取り扱う問題であるといたしますなら、総理の今の答弁のようなことでは、これは的はずれだと思っております。
  103. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 田畑君の言われるのも理屈はあります。私も言い足りない点であります。教育の目的というものはもっと明瞭にいたしたいし、教育に対する国の責任のあり方も明瞭にいたしたいし、大学制度についても検討いたしたい、これがおもなる点であります。
  104. 田畑金光

    ○田畑金光君 教育の内容という御答弁でありますが、教育の内容というと、いろいろな問題にまたがってきょうと考えております。教育の内容、それは言いかえますと、教育基本法について検討を加えていこう、こういう政府考え方であろうと思いますが、その意味と解釈してよろしゅうございますか。
  105. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 文部大臣から答えてもらいます。
  106. 田畑金光

    ○田畑金光君 いや、その点だけですよ。それは総理に答えさせなさい。
  107. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 教育の目的、これもやはり明瞭にいたしたいし、教育に対する国の責任のあり方も明瞭にいたしたいし、大学の制度についても検討したいというのですから、大体において教育基本法に関連して臨教審の設置の目的があろうと思います。
  108. 田畑金光

    ○田畑金光君 なかなかどうも答弁を聞いていて、この法律の目的が那辺にあるのか、理解しかねるわけですが、教育基本法についてはどういうお考えを持っておられるのか。私はこれを率直に承わっておるわけなんです。
  109. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 現在の教育のやり方に、何か足りないところがないかということを検討することも必要だと考えて臨教審を設置したわけであります。
  110. 田畑金光

    ○田畑金光君 現在の教育の内容に足りない点がありはしないか、すなわち、これは教育基本法第一条の教育の目的を指しておられると考えますが、一体今の教育で、どういうような点が足りないのか、どのように政府としてはこの点について考えておられるのか、これを承わりたいと思います。
  111. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) とにかく日本は戦争に敗れまして、民主政治というものができたばかしでありまするから、この現制度に対して再検討をするということは、すべての点にわたって私は必要だと思うのであります。
  112. 田畑金光

    ○田畑金光君 再検討するというようなことで、こういう重大な法案を次から次に出しておられるわけです。昨日参議院においては、憲法調査会法案が多数で通りましたが、憲法調査会法案説明の際にも、憲法改正の要否について検討するんだ。ところが政府の、あるいはことに鳩山さんの気持としては憲法改正はあくまでもやるんだという既定方針を持っておられるわけで、鳩山内閣の大きな使命の一つが憲法改正にあるということも明らかであります。しかも具体的にどういう点に憲法改正を考えるべきかという点等についても、すでに与党の中に憲法調査会等が置かれて、問題点をあげておるわけです。この臨教審を設置されるについても、現行の教育制度について検討を加えよう、それだけの考え方を積極的にお打ちであるならば、もう少しどういう内容において、どういう点に今の教育制度、あるいは教育の内容、あるいは目的と欠陥があるかということは、当然政府としては取り上げられておるはずです。そういうような答弁でもって、質問に対するあいまいな答弁を繰り返しておられますると、問題の所在、あるいはこの法律の目的、性格、内容というものが、何一つ総理のお言葉から聞くことはできぬ、こういうことになるんです。どうですか。
  113. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は占領治下においてなされたるところのすべての制度、機構等について再検討をしたいという考え方を持っておりますが、審議事項の詳細については私はよく存じませんから、文部大臣からお答え申し上げさせます。
  114. 田畑金光

    ○田畑金光君 文部大臣、簡単に答えて下さい。
  115. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今総理の大局についての御答弁と同じく、今回の審議会では、およそ三つの項目について御審議をわずらわしたい。(「簡単簡単、応問がないから簡単々々」と呼ぶ者あり)その一つはわが国の教育の目標でございます。それが今、田畑さんの御質問の最初でございます。その二つは、教育に対する国の責任ということ、それから第三は、学校教育、わけても大学の制度について考え直す必要がありはせんか、大体この三つに分れるのでありまして、第一の問題、すなわち、わが国の教育の目標について、もう一皮考え直そうというのは、この教育の目標は、次の国民の非常に大切なところでありまするが、実は占領最中にできておるのであります。憲法のごとくに、一部圧迫があったという声はございませんけれども、しかしながらわが国にはぴったりいたしておりません。教育基本法第一条には、八つの徳目をあげておるのであります。すべてこれはいいことです。世界共通のことであります。人格の完成をし、平和国家を立てるということ、(「わかりました、わかりました」と呼ぶ者あり)けれどもこれだけじゃ日本の教育として足りないんじゃないか、ここが御審議を願うところです。日本の教育といえば、国家に対する忠誠とか、伝統の父母、親子の関係とか、そういうところがまだ少し日本的ではないじゃないかという世論があるのであります。それをこうだときめてここで申し上げることはよくないので、こういう方面について碩学大家の御意見を聞こう、聞くまでにあまり言うてしまってはいけないから、(笑声)方向はこれでおわかりと思います。
  116. 田畑金光

    ○田畑金光君 文部大臣の御説明でようやくわかりましたが、まあ要するに第一条に足りない点を検討しよう、すなわち、忠誠の義務、親孝行の義務、あるいは隣人愛、こういう点について検討していこう。まず教育目的について取り上げていこう、このようなお話しでありまするが、こういうお話しを承わって参りますると、憲法改正の問題と帰を一にしておると申し上げたいのであります。総理大臣に伺いまするが、今のあなたの与党で憲法調査会で取り上げておりまする問題点、憲法改正の問題、その一番大きなねらいは国家に対する忠誠の義務、あるいは国防に協力する義務、こういうことになっているわけであります。教育基本法の第一条の目的の中にも、忠誠の義務、こういうことをうたおうとするのでありますならば、当然教育基本法の改正というものは憲法の改正と帰を一にしておるのでありまするから、教育基本法というものの改正をお考えなさるならば、当然前提としては憲法の改正、この問題がなければならぬと考えまするが、この点総理はどうお考えになっておられますか。
  117. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法改正調査会はみずからどういう点を改正しようかということをみずから決定をするのでありまして、私の力でこういうような点を改正すべきであるというようなことは指示しておりません。  忠誠の義務を、忠誠の義務というのはどういうことになるかしりませんが、徴兵制度考えてみても、あるいは国民の基本的権利だけを考えて、基本的の義務を少しも考えていないというような論もありますけれども、どういうように改正するかというようなことについてはまだ少しも審議会に問うということはきめておりません。
  118. 田畑金光

    ○田畑金光君 いや、私はそういうことを尋ねているのではないのです。第一、ほんとうにどうも私の質問せんとするところが理解できないのですかね。私のお尋ねしていることは、憲法調査会で、特に与党の方では問題点を取り上げておられる、その問題点の中には忠誠の義務、国防に対する協力の義務、これがうたわれているのです。またあなたの今御答弁のように、決してこれは徴兵佃皮をしくとかという考えはないのだということも聞いているのです。それは私はお尋ねしていないのです。そのように憲法の中でも忠誠の義務ということを大きく取り上げられておる。今度はまあ教育基本法の第一条についても忠誠の義務を検討なされようとする。ちょうど同じことなんです。またこの教育基本法というものは憲法から流れてきているのがその教育基末法であることは総理御承知のことと思うのです。でありまするから、私のお尋ねしていることは、教育基末法の改正ということは憲法の改正を前提として、憲法改正の上に立って初めて教育基末法の改正というものはなされるべきである、こう思うのですが、その点はどういうふうにお考えになるか。
  119. 青木一男

    委員長青木一男君) 総理に、なるべく高声にお答えを願います。
  120. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私の答弁も田畑さんがよくわからないようでありますけれども、田畑さんの御質問もどこに要点があるのかよくわからぬのであります。とにかく田畑さんの聞かれたことは、忠誠ということを臨教審で取り上げている、憲法においても忠誠ということを取り上げるのであろうというような御質問だと思いましたから、私は憲法改正審議会におきまして何を議題として検討をするか。それは審議会自身がきめることであって、私の方では考えておりません。こう答えたのであります。そうして忠誠ということは、一体君主政治においては忠誠ということはよくわかりますけれども、民主主義においての忠誠ということはどういうことになるのでしょうか。これはまだ私にはよくわからない。国民に対してお互いに国土を守るということが忠誠ということならば、国土を守る義務ということを国民全体が考えるということは適当でありまたなさねばならぬことだと思います。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 憲法と教育基本法との関係は、総理どのようにお考えになりますか。
  122. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は別問題だと考えております。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 別問題と申しますと、関係がないとおっしゃるのですか。
  124. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そうです。憲法改正と、教育基本法の改正とは別問題だと考えます。(「今までと違った答弁だ」と呼ぶ者あり)
  125. 田畑金光

    ○田畑金光君 答弁が違ってやしませんか。今、直前の答弁では、憲法と教育基末法とは関係がないんだとおっしゃった。また今のお言葉をお聞きしますと、改正は関係がないんだと……。どっちがほんとうなんですか。
  126. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法の改正と、教育基本法の改正とは別の問題だと考えるのです。
  127. 田畑金光

    ○田畑金光君 教育基、本法は憲法から発しているということはお認めになりますか。頼りないな、全く……。
  128. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 文にありまする通り日本国憲法、わけてもその平和主義、人権主義に発しているということは、基本決自身が響いているのであります。で、憲法調査会その他の方法で新たに憲法を改正するという論がありましても、基本人権のことについてはわれわれは改正さるるものとは思っていません。それから(「田畑金光君「そんなことだれも言ってない、基本人権のことなんか……」と述ぶ)平和主義についても改正さるるものと思っておりません。それに憲法の改正と、臨教審の諮問事項とは関係がない。たとえば憲法が改正さるるにしても、されないにしても、その部分はわれわれが今研究しようと思うところに関係はないと、こういうふうに御解釈を願いたいのであります。
  129. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理の御答弁ではなかなかどうも問題をしっかり理解することができぬわけでありますが、さらにお尋ねいたしますと、忠誠の義務とか、あるいは親孝行の義務というものは、国民の道徳基準を示すものと言えると思うのです。これははっきり申しますと、今の教育の中に、教育の上から育っても、あるいは国民生活の上から言っても、国民がよりどころにすべき道徳基準というものがないというところに問題がある、こういうお考えだと私は見るわけであります。率直に申しまして、たとえば明治時代には教育勅語というようなものがあった。あるいはかつて吉田内閣のおりに天野文部大臣の時代においても、国民の道徳基準というものを設けなくちゃならぬというようなお話等もあります。今政府考えておられることが同じ考え方に通ずるものと考えまするが、言葉は、あるいは表現はとにかくといたしまして、総理といたしましては明治時代における教育勅語的なものが、新らしい民主主義の教育においても必要であるとお考えになっておられるのか。この点総理の考え方を率直に承わりたいと思います。どうですか。
  130. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 今のあなたの御質問はどういう点ですか。道徳の基準……。
  131. 田畑金光

    ○田畑金光君 この忠誠の義務とかあるいは親孝行とかあるいは隣人のつき合いとか、こういうようなものを教育の内容に盛りたい、これが臨教審を作られる第一の使命である、こういう文部大臣から御答弁があったんです。それは、そうすると明治時代において、教育勅語というものがあって、教育の基準あるいは国民道徳の基準というものが一応あの時代において立てられていた。ああいうようなものを考えておられるのかどうか。
  132. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 文部大臣が答弁いたしました通りに、道徳の基準だとかその他について目標を国民に与えるということは必要だと思っております。
  133. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) この際一言言わしていただきたいと思います。私が忠誠の義務と言いましたね。誤解のないようにですよ。忠誠といえば、背は主権が天子、天皇にありましたから、これに向って忠誠といった。今は民主主義になって、国民全体が主権者でありまするから、忠誠は国民全体——というのはピーブル・アズ・エ・ホールですね。民主主義の忠誠と御了解願いたいのです。アメリカのルーズベルトの就任のときは忠誠の宣誓をしております。あのときの忠誠の宣誓と同じ意味で忠誠という文字を私は使っておりまするから、それが明治、終戦以前の憲法下における天皇に対する忠誠というものと誤解されぬでも、連想して問答して下さると、お問いと答えとの間に行き違いが生じまするから、私の忠誠はロイアルティという意味で、ルーズベルトが、またアイゼンハワーが就任の際に国民に対して忠誠を誓ったというあの意味ですから、どうぞ誤解ないようにお使い願いたいと思います。
  134. 田畑金光

    ○田畑金光君 鳩山総理にお尋ねしますが、今文相から忠誠についての定義があったわけです。そうしますと、総理としては、かつてのような教育勅語、ああいうようなものは考えていない、従って今後内閣としても政府としても、あのような形式的な道徳基準というものを設けて、これに国民が従うべしというようなやり方はやらないのだということを、はっきりとお認めになるわけですね。
  135. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 前の教育勅語にあるような意味をそのまま採用するというような考え方はしておりません。
  136. 田畑金光

    ○田畑金光君 文部大臣のお話しの中にもありましたが、忠誠というものが変ってきた。それはあくまでも国民主権、主権在民の民主主義に対する忠誠である。こういうような御答弁を聞いて、その限りにおいてはこれはりっぱなことなんです。そこで最初の問いに戻りますけれども、教育が政治的な中立をあくまでも守らなくちゃならぬ。なるほど教育基本法の第十条によりますと、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものである、」、こう規定しております。また教育委員会法の第一条を見ますと、「この法律は、教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきであるという自覚のもとに、公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うために、教育大委員会を設け、教育本来の目的を達成することを目的とする」、教育委員会が制定されたというのは、もう申し上げるまでもなく、国民全体のために教育行政をやっていこうとするねらいがあるわけです。教育の民主性、自主性、地方分権性を確保しようというのが、教育委員会制度のねらいであるわけです。ところが今日民主的な教育委員会制度が大きく後退しようとしておる。この一つを見ても、あなた方の言う今後の忠誠というものは、主権を持っておる民に対する忠誠、あるいは民主主義に対する忠誠と言われても、現実にやっておること自体が食い違っていやしませんかし文部大臣の教育行政に対する指揮監督権というものが明確に強化されていいじゃありませんか。そういうことを考えたとき、皆さん方がどのように答弁されようと、なされていること自体は、大きく民主主義の後退を、教育面からも推進しておられるじゃありませんか。鳩山総理は教育と政治の関係について、あくまでも教育は政治から中立性を保たなければならない、こういうことを言われたんです。その中立性を確保するためには、国民の選挙によって出てきた教育委員会というものが教育行政をつかさどる、そこに私たちは民主性があり、自主性があろうと思うんです。清瀬一郎君は文部大臣だが、これは政党人です。典型的な政党人です。文部大臣に就任されてから今日までやっておられる業績を見ても、あるいはいろいろな発言を見ても、典型的な政党政治家です。私は政党政治家としての有能無脂は別にして、これはりっぱな人でしょう、しかし文部大臣として、文部行政、教育の自主性を確保できる文部大臣であるかというと、これは最も私は不適当な人じゃなかろうか、こう見ているわけであります。なぜなれば、教育行政というものは、こういう政党政治家によって運営されたのでは、教育の自主性がそこなわれてくる、教育というものが政党の政略のもとにじゅうりんされてくることは明らかではあり、ませんか。これは今日の世論の動き、世論の批判というものを見てもおわかりだと思うんです。いやしくも東京都において東大の総長以下十名の学長が共同声明を発せられた。関西においては、京都大学の総長初め十三の総長、学長の方々が共同声明を発せられた。すなわち、今政府の意図している教育改革というものは、民主主義教育の危機だ、これを阻止する手としては、ただ一つ世論が沸き上って、激しく政府を糾明し、糾弾することにある、こういうことを言っているんです。この世論というものを鳩山総理はどう解釈されるか。私たちは少くともあの十名の総長、学長あるいは関西における十三名の総長、学長、少くとも日本の今日の良心の代表であり、知性の代表であるとわれわれは見ている、こういう学校の声明に対しまして、文部大臣は、子供のとき覚えた民主主義で今ごろ何を言っているのか。まことに不遜きわまるわれわれは文部大臣と申し上げたいのです。こういうような文部大臣が教育行政をつかさどっていくならば、一番心配することは、教育の自主性、中立性がこわされる心配がある、この鳩山総理はどうお考えですか。
  137. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は教育の自主性、あるいは中立性、これは厳として守らなければならないと思いますし、清瀬君はそれをくつがえすような人ではないと確信をしております。
  138. 田畑金光

    ○田畑金光君 教育委員会制度、これについて学名が非常に反対の声明を出された。教育委員会制度というものは公選によって直接国民が教育に参加する機関の制度です。これを改めて、文部大臣が承認されなければ、府県の教育長も任命ができない、あるいは文部大臣も必要な措置を教育行政に加えることができる、この点について総理はどう考えられるか、総理の見解を私はお尋ねしておるのです。
  139. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はその問題についてはかつてここで説明したことがあると思っておるのでありますが、間接にやはり国民が関与していることなのでありまして、決して、後退をしたというようにみるのは不適当だと思っております。
  140. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今、私の名をあげて御質問中に御論がありましたから、弁明の機会を得たいと思います。  第一、今、田畑さんの御引用の大学教授諸君の声明ですね、私よく読んでみました、繰り返して読んでみました。われわれの考え方とあまり違ったことはない。(「何を言っておる」「時間がないぞ」と呼ぶ者あり)それは教育は大切なことであるからして、自主性を持てということでありました。私はそれは賛成だと、予算委員会においても答えておるのです。  第二に、しかしながら日進月歩だから、改正の必要があるならば、審議会等をよく開いてその意見を聞け、このことも私は賛成だと、そこで教科書制度については中教審の意見によって、九分九厘あれによっております。教科書制度は改正していく、この教育委員会の力のことはずっと中教審に諮問したのは大達さんのときで古いのでありますから、諮問するにはしましたけれども、あまり古かったので、もう一度諮問したいと思いましたが、しかし国会も迫っておることで、 古い御意見や、(「論弁だ」「簡単」と呼ぶ者あり)それからして各種の委員会を総合してやったと、こういうことでちっとも違いやしません。(田畑金光君「議事録を読みます、いずれもまた」と述ぶ)それからして、もう一つ弁明されて下さい。  今やっている法案は民主主義に反するかということであります。私は教育委員会の直接選挙をやるというと、選挙だから勝ちたいのは当たり前であります。この間の文教委員会との合同審査の時分も申し上げましたが、選挙になれば勝ちたいのは当たり前だ、選挙するけれども、勝つなというわけにいかん、二大政党になって、今社会党の方も地方に非常に力を持たれるし、われわれも待つか打たんかしりませんけれども、勉強をしておる。そこで従前通りに直接選挙をやるというと、教育委員会を乗っ取るというとおかしい、言葉ですが、マジョリティーをとろうという争いが起るのです。そんなことをするよりも、やはり町村長も選挙、町会議員も選挙であるからして、町会議員の同意を得て町村長がきめる、間接というようなことになりますけれども、その際には、委員である五人の中で、二人はいいけれども、三人以上同じ党派でとってはならんぞという制限をつけるのです。(「わかっております」と呼ぶ岩あり)そうやれば中立が保てる、(田畑金光君「文部大臣、あとから十分に質問いたしますからあとでやって下さい、総理大臣に対する質問です」と述ぶ)それは私が、いかにも教育の中立をじゅうりんするかのごとき前提で総理にお問いになりますから、そうでないということをあらかじめ申し上げておく必要があると感じて、一身上の弁明方々私の問題について答えた次第であります。(「よろしい」と呼ぶ者あり、笑声)
  141. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 鳩山さんと教育ということを考えた場合に、われわれの第一番にぴんと連想しますのは、かつての瀧川事件だと思うのです。それで鳩山さん、少くともいろいろと過去においては、お互いに失敗もあり考え方の違いもあったのですが、今日になって、鳩山総理、静かに振り返られて、その当時文部大臣として、滝川教授の罷免を行なったことが悪かったのであろう、ああいうときに失敗をしたと、こういうふうに反省をしておられるか、あのときの処置は適当当であったと今も信じておられるか、一つそこからお尋ねしたい。
  142. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 滝川君を罷免したのは、京都大学の自由を文部省がじゅうりんしたという点に、非難の焦点があると私は思うのです。ところがあのときに大学総長が——あれはよく覚えていませんですけれども、大学総長が、こういうわけで、閣議でもって、こういうような教科書を講義する人は大学を罷免したいというような閣議があったから、あなたの手においてやってくれないかと申しましたら、そうしたら私の手でやりますと言って帰って行ったのです。そうして帰って行きましてから、また上京されまして、どうも自分の手でやるわけにはいかないから、文部省においてやって下さい、こういうことだったのです。それから私も、その当時専門局長は赤間君でした。非常に文部省から直接にやるということは、大学の自由の問題でまた何らか問題を生ずるといかんから、とにかく小野塚君に聞きに行こうと言って、当時小野塚君は軽井沢におりました。軽井沢に参りまして、小野塚の意見を聞き、どうだろう、こういうふうな問題が生じているんだが、それが東京大学まで飛火するというようなことになると重大問題だから、どうだろう。自分は責任を帯びて、かくのごとく教授をするのは不適当であるから、文部省が勇断をもって罷免するように賛成するというような同意を得たものですから、それで文部省で滝川君を罷免したわけなんです。その当時においては、私としては踏むべき手続は取って、適当な処置をしたつもりでおります。
  143. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 いや私の聞いているのは、その当時あの滝川事件を契機といたしまして、河合教授が罷免される、矢内原教授が罷免される。そうして少くとも自由主義者と目されるような青年教授は次々に罷免されていった。その口火を切ったのはあなたの行なった滝川教授の罷免事件だと私は思う。それ以来日本がずるずると軍国主義的になり、いわゆる学者は吉田さんの言う曲学阿世の徒によって占められた、時の軍閥に抗す者がなくなってきた。それらの連中を追放したのです。従ってあなたは今あのときに失敗であったと考えるかどうかということについては、言を左右にしておられる。手総を踏んだというだけであるのだが、今から考えて、静かに考えたときに、失敗であったと考えるか、成功であったと考えるか、少くともあのときには教育に政治が干渉したことです。これだけは認められると思う。時の国策に合わんからというのであって、あの教授を追放しようと、こういうことになったのです。だからそういう思想がいいとする、手続さえ踏めばいいということならば、今後も鳩山内閣が続く限り、いずれはそういう思想が生きてくると思う。従ってその点について失敗であったか、それともあれは大へんやり過ぎだ、こういうふうにお考えになって反古しておられるかどうかということだけ伺ったらいい。
  144. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) その当時においては共産主義は非合法になっておりまして、共産主義者はやはりその共産主義の宣伝はできないということになっておった。で、あの刑法講義というものは、共産主義の宣伝であるかどうかということは問題になるわけなんです。これは内務省において共産主義の宣伝であるとして発売禁止をしておったのであります。そういう事情でありまするから、文部省としてはとらなくてはならないその当時の法律によった処置であると私も思っているのであります。
  145. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこで共産主義であるとか赤だということは、戦前においてはみずからの主張に対して反対するもの、権力に対してレジスタンスを行うものについては、すぐ一番便宜な方法として赤である、共産主義者であるといってレッテルを残ったものであります。最近いまだに一郎の人たちの中にはすぐ、国会の中では少くとも言い得ないのでありますが、院外へ出ますと、すぐ反対する者に対して赤だとレッテルを残る傾向が今あるわけであります。しかもそういう色眼鏡で見る傾向があるわけで、あります。しかし私が今静かに考えてみたときに、滝川教授がその当時共産主義者でなかったということは、この間の京都事件によって私は少くともはっきりしたと思うのです。共産主義者でなかったということだけははっきり私はできると思うのです。それは共産主義者であるという赤紙を張ったというのは、内務官僚が張ったのか、警察官僚が張ったのか、わからんが張ったのです。その意のまま動いたのは文部省で、むしろあなたはそれを認めるべきである、こういうふうに考える。これはなぜ言うかというと、将来そういう趨勢になったとき、臨時教育制度審議会を設置して、そうして教育のやり方を根本的に一つ考え直してみようというときに、今私の申し上げたような危険な方向に走ることをおそれるから、そういう改革をすることに走ることをおそれるからお伺いするのであるが、あのときあなたは、あの当時としては失敗でなかったというのなら、今の政治の風潮に従うということがいいのだということを是認せられることになると思うのです。従ってここであの当時のことを反省しておられずに、少くとも内務省の力でやれと言ったからやったのだということは、政治に従属したことになると思うのですが、どうお考えですか。
  146. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はその当時においてそうは考えなかったのであります。とにかく共産主義を非合法化するということは——いろいろな弊害を生じますことですから、非合法化された当時においては、やむを得ない処置だと思っております。
  147. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 その点は、滝川教授は共産主義者だ、こういうふうに考えておられたのですか、そういうふうに認めて……。
  148. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいまですか。
  149. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そのときに。
  150. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そのときはそうだという意向を内務省から聞いております。
  151. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすれば、あなたはその当時文部大臣として……こんなことを今あんまりくどくど言っても仕方がありませんから、次にいきますが、そこで盛んに占領中にできた制度であるからということを、憲法にいたしましても、すべてのなにか改正をする場合には、一日に占領中にできた制度である、こういうことを言われるのでありますが、どうも自民党の鳩山さんの周辺を囲めておられるところの、いわゆる有力者といわれるか、幹部といわれる人たちは、たいていは占領下における追放を受けた者である。あるいは戦犯として裁判を受けた者であり、巣鴨に拘置された者である。その人たちが出て参りまして、復讐心に燃えて、そしてあのときにおれを追放しおった、けしからん、だから占領中やったことについては一つ復讐をしてやろう。復讐の鬼になっているようなきらいがなきにしもあらず、こういうふうに私は思うのですが、鳩山さん、占領下においてできたことについても、復讐心——なんでも一つ直そう、こういうふうにして考えるのはどうかと思うのですが、どうもあなた方のおやりになっていることは、すぐ占領下にできたものであるからといって復讐的に考えているように思うが、そういう主張はあるんじゃないか、主張は閣内に流れているのではないかと思うのですが、いかがでありますか。
  152. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういう復讐心は、私は少くとも持っておりません。
  153. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではこの臨時教育制度審議会設置法案なるものを一体だれが考え出されたのであるか。鳩山総理の構想に基くものであるか。それとも清瀬文相の構想に基くものであるか。文部省の官僚の違憲の真中を清瀬文部大臣がいれ、さらに清瀬さんの意見を総理がいれてこれを出すことに決定されたものであるか。鳩山さんから直接清瀬さんに命じてこれを立案さしたものであるかどうかをお伺いしたいと思います。
  154. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) これは保守二党が合同いたしますときに、合同の際に協議をされて提出することに至ったのであります。
  155. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 鳩山さんが野党当時に吉田内閣の側近政治を盛んに攻撃をされたのでありまするが、最近は少くともあなたのは側近政治じゃなしに、側近が今や執権になりつつある、北条時代の北条時政的な勢力を持ちつつあると私は思うのでありますが、というのは、吉田さんは少くともその側近をとにかく使いこなした。あなたは側近の思うままにかつがれている、こういうのが今の動きのように私たちは見えて危なくて仕方がないのであります。従ってこの臨時教育制度審議会設置法案を出すに当っても、特に追放解除者あるいは戦犯の復讐心に燃えて、そしてなんとかもとへ戻そうという人でもってしてきたのではなかろうかという疑い、きわめて濃厚なものがあるのでありまするけれども、そこであなたにお伺いしたいのは、そういうものではなしに、日本の民主主義を一歩でも推進させよう、こういうふうに考えてお出しになったものであるか。それともあまりに行き過ぎだからここらで少しブレーキをかけてあとへ戻そう、こういう考えでお出しになったものか、どちらか一つお伺いしたい。
  156. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ただいま閣僚が党によって制限されるという事実はございません。やはり閣僚によって協賛をして本策を提出したわけであります。本案は自由主義を阻害するというか、自由主義の発達を阻止するというようなことはむろんないものと思って出しておるのであります。
  157. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 先ほどの他の委員に対する答弁の中に歴史、地理というようなことが出てきたのでありまして、そこで鳩山さんに伺っておきたいのですが、歴史について、私どももあの天孫降臨というような神話を教えられたこと、歴史というとすぐそれを思い出すのでありますけれども、そこであのようなところまでもう一つ一ぺん検討して歴史教育はまたああいうのがやはりよかった、鳩山さんもこれはお習いになったことであるし……。ああいうものは捨て去ってしまって近代的ないわゆる日本歴史が日本民族というものはどうしてできてきたのか、こういうところまで掘り下げて考えようとするのか。ああいった神話というものは一つの神話として残しておいて、歴史として少くともとり入れて考えておらんのかどうか、その辺を一つ伺いたいと思います。
  158. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 今あなたのおっしゃった通りに、歴史は歴史であります。神話は神話である、歴史を教えたいと思うのでありまして、神話を教えたいとは考えておりません。
  159. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そうすれば、たとえば天孫降臨で、あるとか紀元節と申しますか、すなわち金色のトビが弓の上にとまったといったようなことは、今さらもう一ぺん回顧をしようと思って、臨時教育制度審議会あたりへ、なんとか考え直せというふうに持ち込む意図は毛頭おありになるわけでございませんか。ちょっと申し上げたいのは、天の岩戸であるとか、それから天孫降臨で、あるとか、それから金色のトビが弓の上にとまったというようなことをもう一ぺん一つ考え直してみたらどうだろう、こういうことを教えるのを考え直してみたらどうだろうというようなことをここで討議をさせようとお考えになっておるものでないかどうか。
  160. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いろいろの国の何といいますか、神話というものはどこの国にもあるわけです。
  161. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 神話は神話としているのだ。
  162. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) だから神話は神話として国民に教えることは一向に差しつかえない。どの国にもある神話は……。歴史は、歴史である。神話は神話である。だからして神話を歴史だと思うことは弊害があることだと思いますけれども、この国はこういうふうに優越するような国民であるというような考え方をも国民自身が持つということは私は必ずしも悪いことじゃないと思う。これは教育審議会なり何なりで検討するのが当然だと思います。
  163. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それから小選挙区制、あれだけ衆議院でもめましたあれに関連して、この臨時教育制度審議会でもそのようなおそれを感じられますが、一つの学識経験者という美名のもとに各委員を委嘱して何らかの結論を出さしたが、その結論をそのままに採用することなく、みずからの都合のいいところだけをその審議会の答申を利用してしまって、一つの国民の世論に対する隠れみのとして各種の審議会を利用するというきらいが最近あるわけです。一番極端なのは選挙制度調査会だったと私は思います。またこの臨時教育制度審議会も都合のいいことだけは取り上げてしまって悪いのはさっぱり用いずに、自分たちの力といいますか、自民党、鳩山内閣の都合のいいような結論だけを採用して、これが今後の教育制度、新しい教育制度を打ち立てる基本方針にするという危険が多いと思うのでありますが、いいところも悪いところも、鳩山自民党にとって都合の悪いところも大胆に率直に取り入れるかどうか、この党を一つ伺っておきたい。
  164. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういうような考え方を持っておりません。
  165. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そういう考え方を持っておらないというのは、悪いのは取り上げない……。
  166. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 自分に都合の悪いのは取り上げない、時分の都合によって決定するというふうな考え方は持っておりません。
  167. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは選挙制度調査会の、調査会というのを作らして、少くともあの区割りをこしらえたのは政党関係は生じらなかった。少くとも学者であるとか評論家連中が長い間地図とそろばんに首っ引きでこしらえた区割り制度です。少くとも区割りというのは与野党共通の広場であり、土俵なんです。それを一応制度調査会の委員の、政党関係でない人がこしらえたものですから、なぜそのまま、かりに小選挙区制を出すとしてもそのまま率直にお出しにならなかったのですか。全部もう一ぺんこれを自民党でたたき直すということをおやりになったじゃありませんか。ああいうむちゃなことをやったじゃありませんか。
  168. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 太田長官委員会において言明いたしました。この次の委員会においてはその成案をそのまま出して、変更を加えませんという約束をしたのでありますから、前のように審議会案を変更するということはもう将来はないものと私は考えております。
  169. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それに関連して、この教育制度審議会をかりに設置せられた場合に、そこから出ました答申案というものについては、相当これは大胆率直に採用するだけの勇気と雅量をもってこの法案を出しておられるものであるかどうか。
  170. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 諮問機関でありまするから、その決議に従うという義務はないはずでありますけれども、(菊川孝夫君「義務はない」と述ぶ)尊重はする希望を持っております。
  171. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 そこで一審問題なのは教育予算、これをたくさん取れという問題を取り上げる。これは教育予算、これは教育制度全般について考えなければならぬので、まず予算の問題、それから盛んに今言われることは、学者連中の教育費が足らぬ、研究費が足らぬ、さらに外国に視察に行ったり、これは何といっても国内だけで、清瀬さんのあれ式に、うまく国内だけで議論を戦わしておっても、世の中は日進月歩だと清瀬さんも言っておられるようにどんどん進んでおるのだから、外国を見てこなければ、特に学者のように人に教える者は、外国も知らずに本だけを読んでおるだけではだめです。そういった視察費あるいは留学生の問題、こういったものをこれは取り上げるのなら話はわかるのですが、そういうものはなるべくあと回しにしておいて、ただ昔のものに戻すというようなことだけが優先しそうな気がするのですが、この点研究費の増額、外国視察費、留学生の増員、こういったものをまず出して、かりに臨時教育制度審議会が出してきた場合には、これは少くともだれが見てもいいことだと思いますが、大胆にこれは取り上ぐべきだと思いますが、鳩山さん、いかがなさいますか。
  172. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私、先刻申しましたように、この審議会の決議は尊重いたします。尊重いたしますが、そういう外国にやるということは、必ず承知をしますということは、財政の都合もあるでしょうから、ただいま約束をするわけには参りません。
  173. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この臨時教育制度審議会を設けられますと、一番やはり政府にとって都合の悪いものはこの問題だと思います。金の問題だと思います。これはほんとうに中正な学識経験者であったならば、何といっても教育の予算が足らぬ、で、もっと海外も広く見なければならぬ、海外の知識を吸収するようにしなければならぬ、研究費も足らぬ、これの増額、これをやかましく言ってきて、あぶはちとらずに、あなたらの考えておられるように、紀元節を復活したらよかろうというようなことはなかなか出してこずに、その方ばっかりが大きく浮び出してくるということも想像されるのですが、そういう場合には、やはり真剣にその問題に、取り組む用意を持っておられるかどうか、もう一ぺん重ねて伺います、尊重するというだけではいけない。
  174. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私としては決議を尊重するという、なるべく決議に従いたいということを申し上げておきます。必ず決議に従いますというわけには参りません。
  175. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではもう逃げられるから次に行きますが、総理はそれなら、今の教育制度は一体悪いと思っておられるのか、それともいいけれども、多少修正したいと、こう思っておるのか、それとも悪いと思っておるのか、どっちか。それで取り組み方で少し違うので、悪いものであるから一つ直そうというのか、いいけれども多少のちょっと手直しを加えたい、このぐらいのお考えにおられるのか。
  176. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 根本的に直すというような考え方をしておりません。
  177. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それじゃ悪いと思っておられるのか、いいが少し足らぬようなところがあるから補足したいというようなぐらいの考え方か、総理の一般論としては……。
  178. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) まあ、あなたが今おっしゃったような程度でしょう。(笑声)
  179. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 わしは二つを聞いておるのです。悪いと思うか、いいけれども、それを少しどうも直した方がよかろうと考えておるのか、どっちか。
  180. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 大体はいいだろう。けれども少し直したところもあるという程度です。(「同じだ」と呼ぶ者あり)
  181. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それではあまり……、技術的なことを総理にお伺いしたいと思いますが、特に多少直したいと思われるような、今総理としてお考えになっておるようなことは、この点だけは少しどうかなと思うようなところがお気づきになっておるか。それともただ抽象論として、どうもお気に食わぬので、何とか一ぺんやり直しと考えておるのか。それとも少しぐらい気がついて、これはちょっと直したらよいかというふうにお考えになっておる脈があるかどうか、伺っておきたい。
  182. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) さっき言いましたが、三点について申したが、その三点について考えてみたらどうだろうと思っております。
  183. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは、総理の御一家は、昔から教育問題についての教育一家といってもいいくらいなお育ちでありますが、教育の成果というのは、十年、二十年あるいは三十年の歳月を経てきてこそ初めてその成果は現われてくると思うのです、まだあなた方は、まあ占領下においてできた制度だというんですが、とにかく戦いに負けたときには、何でも一応反省として一ぺん改めて新しい方向にやってみようということであって、ようやくそれが軌道に乗り出したときだと思うのです。だからこれのいいか悪いかというようなことは、その成果を見てからかからなければならぬと思いますが、その成果のわかるのは十年、二十年の歳月を要すると思うのだが、まだ成果が現われていないのに多少とも直そうというのは、あまりにも朝令暮改すぎるおそれがあると思うのですが、この点総理はどうお考えですか、
  184. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) とにかく占領中にできた諸制度は、今十年たっておりますから、再検討すべき時期だと大体において私は考えておるのであります。審議会において慎重に検討してもらいたいと思っております。
  185. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は教育については、教育の成果というものは、十年、二十年かかってようやくそれの効果が現われてくるわけです。その効果を見ずに、占領下にできたものであるからというのは、私は先ほど申し上げたように、どうも復讐心で、占領下にこしらえたものだから一ぺん検討しようという復讐的なにおいがきわめて濃厚である、かように考えるのですが、どうですか。その成果を見てからやられたらどうです。またこんなものを何であわててこの国会に出さなければならぬのか、私はちょっとわからぬのです。
  186. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 十年の間には経過は相当に進捗しました。欠陥の出たものもあるのじゃないかと思っております。
  187. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それでは文部大臣に伺いたいのだが、具体的に資料として、この教育制度の結果、こういう欠陥が現われてきているというものがあなたのところに出てきて、あなたはもうそれを集められて、その上で踏み切って、この教育制度、これはどうもいかぬ。あなたは文部大臣になられてからまだそう長くないのです。今度文部大臣になられていろいろと検討をされて、それからこの臨時教育制度審議会設置法案というものを設けざるを得ないという緊急な必要を認められたというのは、あなたも相当の資料を得、確信を持って臨まれたと思う。ただ万事どうも具合が悪いからというのではないと思う。最後にあなたに一ぺん何っておきたいのです。
  188. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 教育の成果というものは、数字とか有形的な事実で、表を作って差し上げることは、やや困難なことであります。けれども、このごろの起った事件だけでも菊川さん考えてみて下さい。大阪の大鉄高等学校では、卒業の免状をもらって一たん門を出て、すぐ帰って、教えてもらった先生をなぐって気絶さして、鼻血の出ているものを顔をなぐった。どうも私は学校の関係でも、人道としてもえらいことです。自分の先生にそうしたわけです。岐阜県の某公立学校では、一級に五十人万引が出た、万引はどろぼうですよ。それからして京都の旭ケ丘中学事件、御存じでしょう。あれも惨たんたるものですよ。その原因がどこからきたかといえば、「アカハタ」という新聞を教材として、使って、それを毎日請求しておったというのです、しかし文部省には直接監督権がありませんから何ともいたし方ないわけです。そこでどういう器用な法律ができるかしりませんけれども、私も代議士ですから、地方の有史等の話を聞きまするけれども、みんなこの道徳基準の低下を憂えております。ある学校では、親には孝行はしないでいいのだ、自分の親だけに孝行するのは、人と親と区別するので、平等心に反するということを公然言った先生がある。このようなことでは、どうも私は占領この方続いておる教育というものは、少し変えなければならぬ。しかしいてあることは、教育基本法第一条にはりっぱに書いてある。人格の完成です。人格の完成といいながら、実際具体的に人間像を描いて、こういうふうな人になれということがぴんと表に出てくるくらいな雰囲気がないのじゃないか、こう私は思っております。
  189. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 清瀬さんも立って御答弁になっておるので、私もそれに対して……。(笑声)国会は最高の機関であるということになっておりながら、戦後国会議員でありながら、汚職事件であるとか疑獄事件であるとか、国民の血税を食った忌まわしい事件が幾たびか出ております。そうしていまだに疑惑々もってながめておられる人たちがあり、新聞や雑誌もこれをいっておりますが、指揮権発動であるとか、いろいろな事件が今日までもございました。なかんずく、ここで率直に申し上げたいんですが、今やはり最高の責任者であられまする鳩山さんに対しましても疑惑を持たれておるのであります。と申しますのは、佐藤榮作氏が保守合同に当って、兄貴が幹事長をやっているのにこれに参加しない佐藤さんのことは、どう考えても腑に落ちぬところがあるのでありますが、それはあの、今政治資金規正法違反に問われている二千万円の行方について、あれは鳩山さんの手に渡したか、あるいは側近連中の手を通じて渡したか、とにかくそれは渡したのである。それにもかかわらず、そのことを甘えない。言えないがゆえに、まあ保守合同に参加しないという一事をもって国民にそのことを示しておるということは、まあくろうと筋の大体想像するところである。先般も徳川夢声との対談において、あの文章を読んでも、佐藤榮作氏がにおわしておるのであります。はっきりとあれを読んで、くろうとでそんなことを感ずかぬ者であったら、よほどセンスのにぶい者であると思う。といって政治家の中にもそういう疑惑を持たれたり、あるいはそういう事実があるということが、まあ大体のこれは常識論になっていると思う。そういうときに、一部学生が卒業式にちょっと走り過ぎたということをとらえまして、これは学生はけしからぬ、何がけしからぬという前に、まず私は政治家が反省しなければならぬのじゃないか。特にそういう事件をたびたび起して参った旧保守党の人たちも、特に考えてもらわなければならぬ。もちろんわれわれもそういうことの将来担ぎなしように考えなければならぬと思いますが、まずそれがきれいになって、それから学生連中に、これは政治家もこういうふうにりっぱにやっているんだ、だからお前たちもというのでなければ、今ごろちょうど夕方になって上野駅前、あるいは新橋駅前へ行ってごらんなさい。戦争犠牲者の婦人の方が、売るものがなくなって最後のものを売っている。一つそれを調べにいった帰りに、赤坂や柳橋の高級料理店や待合の前へ行ってごらんなさい、みんな三万台の白ナンバーの官庁の車が列をなして並んでいるじゃないですか。これを改めて、そうして一つ学生、お前たちもしっかりせいというならいいが、試みに文部大臣、今晩、うそだと思うなら、散会後同行して、お供をしてもいいと思いますが、大ていはこれは官庁の車であり、その内容を調べてごらんなさい。そういう状態に置いておいて、そうして学生はいかぬ、生徒はいかぬといっているのは、清瀬さん、これは一つみずから政治家が改めて、こういう法案を自民党が出してくるならば、ああいった待合政治をやめて、その上に立って国民に訴えるところの、私は政治家は、まずみずからをきれいにして、そうして国民に求める、青少年に求める、こういう態度でなければいかぬと思うんですが、みずからは何をやってもいい、青年や少年に対して、お前たちは正しくあれ、こういうような政治をやろうというのが、この臨時教育制度審議会設置法案を出してきた清瀬さんの構想のように考えられて、非常におそれるのであります。で、私の申し上げることは、清瀬さん、もしも極端な表現であるというなら、何ならばこれから委員会が終りましたら、一つ時間を限ってお供をして、この車は何番であるか控えて、それを調べてみましょう。大ていは官庁の車であります。これらは回り回ってわれわれの血税を食っているのです。それを改めなければ、それを改めてこそこれを出してくる資格があるのです。そういう意味において清瀬さん、あなた——とくにあなただというのじゃないのですが、弁護士として、そういう不正を追及することにおいて、法律家として特に大域であるので、こういった風潮をいかに考えておるか。これと教育との関連をどう考えておられるか、一応最後にあなたから伺っておきましょう。あなたの発言の機会がなくてさびしそうにしておられるから、特にこの問題伺います。
  190. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) 今、菊川さんより御引用の事実、わけてもわが総裁、総理の名前が出ましたが、私は総裁、総理において、さような関係は断じてないと信じております。しかしながら、わが国の政界においてやはりいろいろの問題が起ることは、実に残念と思っております。有罪の判決があるまでは無罪でありまするから、今起訴されておる人々の名前などは言いたくありませんが、大きな両党にわたって、やはり収賄事件の起訴を受けておる人もあるのであります。実に残念で、政界の改革はともにやらなければなりません。わが自由民主党が成立の際の六つあげた第一が教育の改革で、第二が政界の粛正であります。(菊川孝夫君「第一が政界の粛正でなければならん」と述ぶ)しかしながら、(菊川孝夫君「今の「自民党の待合政治をやめろ」と述ぶ)ちょっと、今度は私に言わしてもらったのですから……。私がそういうことを言いましたのは、大鉄高等学校の学生を責めたのじゃないのです。岐阜県の学生を責めたのじゃないのです。日本の教育を責めたのです。こういう教育が行われておる。この教育をしかし、そもそもだれがしたかといえば、もとはわれわれの責任、政治家の責任であります。たとい占領下といえども、ああいう教育をやったからこうなったので、十才以下の子供に、お前たちが悪いといって私どもしかる権利はありません。そういう教育を私ども先輩が法律を作ってやっておるのであります。でありますから、われわれは考えて、一方菊川さんのおっしゃる通り、両党とも疑獄事件の起らないように、また一方それと並行して教育が正しくするようにしなければならん。疑獄をなくさないうちは教育はほうっておいてよろしいというふん切りは私はつかないのであります。両方しなければならないと考えております。(笑声)  これをもってお答えといたします。
  191. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 清瀬さんの御答弁、一応それがほんとうにやっていけるという勇気を持っておられるなら、私もけっこうだと思うし、賛成でありますが、そうすると、あの制度をこしらえた政治家が悪かった、こういうことです。あなたが今そのことを発言されましたので申し上げるのだが、あなたがその当時には追放になっておられたかどうか、ちょっとわかりませんけれども、そうすると、アメリカからその当事に押しつけられたと、こういうふうに言うのはどうかと思いますけれども、押しつけられたと、あなたはほんとうのところは言いたいのでしょう。押しつけられたとするならば、少くともそれを反撥するだけの勇気を当時の政治家は持っておらなかったということを、だらしなかったということだけは少くとも考えられるのでしょう。ところが教育制度ができたときに、いずれもいい教育制度ができたのであるといって宣伝したのは、憲法ができたときに記念日を設けたと同じいき方をした。しかもその当時これを謳歌した人たちは、今自民党の中にも相当おられるわけです。大多数を占めておられる。あなた方のように追放解除された人はこれは別です。ちょうどそれは表現を変えて言うならば、戦争中に軍に協力した者を、監獄から出てきた徳田さんや志賀さんが、おれらは監獄におって知らなんだからあのときに戦争に協力……、こういうのと同じことで、あなた方はちょうど追放中であったから、あの当時に押しつけられたのをようそれをはね返さずに、日本のほんとうの思うことをようせなかったということはだらしがなかった、少くともあなたの腹の中ではそのくらいに思っておられるかどうか。もう少しあのときに突っ張って、日本的なものにしておけばよかった、こう考えるのか。あのときのやり方は悪かった、占領下であったからようやらなんだが、その占領軍に対して少くとも言うべきことをよう言わなかった、これは残念であったというふうにあなたはお考えになっているのか。それともまああれはあれでやってみようというので張り切ってやったんだが、そのこと自体はいいと思ったけれども、結果が悪かったと、こういうふうに考えておられるのか、どっちか、一つ伺っておきたい。
  192. 清瀬一郎

    ○国務大臣(清瀬一郎君) むしろ最後の方に近い考えを打っております。(菊川孝夫君「そういって逃げるつもりでいる」と述ぶ)あなたは非常にロジカルにお問い下さるの、で困るのですが、私は占領後の教育が全面的に悪かったというのじゃございませんよ。戦前の服従一本の教育、詰め込み教育を、かくのごとき自由なる教育にし、子供の自発的能力が発達するようにやりましたについては功績はあると思うのです。それから今の青年は、大体からして朗らかになって、いい青年になっておるということは認めるのです。悪かったという、当時の政治家を悪をもって責めるような考えは持っておりません。しかしながら、今の成績から見れば、やはりもう少し民族的のものがあってよかったろうと、こういうことです。鳩山総理がもう少しばかりとおっしゃったのはそれなんです。私はこの教育基本法を議する時分の貴族院の速記を読んでみましたが、京都の佐々木惣一郎博士がその当時の文部大臣に聞いておられる。この基本法をずっと見て参りますと、国家民族に対する中世という言葉がちっともないじゃないかという問があるのです。そのときの会のは知りませんけれども、文部大臣は、その文字はないけれども、して平和的国民ということがある。平人格完成という言葉もあり、それからもう少しはっきりした答えをおそらくしたいのであろうけれども、このテキストができておるんですね。それがやはり進駐軍の手からきているのです。そこで非常に窮屈な答えをされておりまするが、今われわれは独立して、解放した日本国になりましたから、その遠慮なくして、もう一ぺん考えてみるということはよかろうかと、こう私、——今の答えはざっくばらんの答えですから、その通りにお聞きを願いたいと思います。
  193. 青木一男

    委員長青木一男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  194. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記を始めて下さい。  本日は質疑をこの程度にとどめて、散会いたします。    午後三時五十一分散会