○
衆議院議員(
山崎巖君)
木下さんから、
現行憲法に
改正を加える必要のあると思われる諸点について、御
説明を求められたわけであります。実は
木下さん御欠席の
委員会におきましても、一応私はその
考えを述べたつもりでありますけれ
ども、重ねて
お尋ねでございますから、もう一度繰りかえすようなことになると思いますけれ
ども申し上げてみたいと思います。お手元に差し上げておりまする
問題点の順序に従って御説を申し上げたいと思います。
まず
前文についてでありますが、
前文はお読みになりますとわかりますように、非常にその書き方が冗漫でありまするし、まただれが見てもこれは
翻訳であるというふうに
考えられるわけであります。またその内容におきましてもきわめて消極的、
他力本願的であります。どういう点かと申しますると、この間の
参考人の
意見を求められた際にも
廣瀬委員からも
お話がございましたように、
前文の中に「平和を愛する諸
国民の公正と
信義に信頼して、われらの安全と
生存を保持しようと決意した。」と、こういうことは私
どもは非常に
他力本願的の
考え方ではないかと思うわけであります。こういう点につきましても
検討を加えたいというのが私
どもの
考えであります。もとより
国民主権の宣言をはっきりいたしますることは、まず第一に
考えなきゃならぬ点でありまするし、また個人の尊厳、
基本的人権の
保障、
平和主義及び
国際協調主義の
原則を
前文に明示することも必要と思いまするし、何時に文化の向上、
国民の
福祉、民族の繁栄に対する理想と決意をはっきりここにうたい出す必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに
考えるわけであります。
現行憲法の各単に従って
問題点を掲げてございまするから、この章に従って御
説明を申し上げますと、
天皇の章につきましても、
調査会の
基本方針はたびたび申し上げまするように、
国民主権の
原則をいささかも変更する意図は私
どもの
調査会ではないわけであります。一部の人々の憶測するように、
天皇を
主権者とするとか、あるいは
天皇の
地位を強化するとかいうような
考えは、今のところ
議論としても出ておらぬようなわけであります。ただ現在の
天皇の
地位が象徴という言葉で書き表わしてあります点において、ことに第七条の
国事行為との
関係におきまして、
天皇の
地位が対外的に
日本国を代表するかどうかという点に非常な疑問が起っておるわけであります。現に
学説等も、この
憲法が明確でないためにいろいろの
学説が出てきておるようなわけであります。こういう点をはっきりさせる必要があるのじゃなかろうか、これが第一章についての
意見であります。
第二章の
戦争放棄につきましても、私
どもの
調査会の
基本が針はもとより
平和主義を堅持し、
国際協調主義を推進することを
基本といたしております。ただ
現行憲法の九条の、ことに第二項、をめぐりまして、従来から
憲法違反というような
議論も
国会を通じてもしばしば起っております。そういう点を明確にしたい、する必要があるのじゃなかろうか、
憲法違反の
議論の起る
余地のないようなことにする必要があるのじゃなかろうか、こういうことを
考えておるわけであります。
第三章の
基本的人権につきましても、むろんその
人権尊重の
原則は堅持することは当然でありますけれ
ども、さらに現在の個々の
基本的人権と
公共福祉の
関係、これも昨日の御質問にお答えしましたように、この
関係が
現行憲法では必ずしも明確を欠いておるような点がなきにしもあらず、というような
感じがいたすわけであります。そういう点をはっきりする必要があるのじゃないか。また
基本的人権の
権利の
保障におきましても、たとえば現在の
憲法では、
児童の
保護につきましては、この
児童の酷使を禁止する
規定がありますけれ
ども、老人の
保護、あるいは寄るべなき母子の
保護という点につきましては
規定が欠けておるような次節であります。また現在の諸
規定の中でもいろいろの
規定はございまするけれ
ども、たとえば勤労の
権利、
最低生活、
社会保障等に関しまする
規定もあるいは抽象的に過ぎはしないか、もう少し明確にする
方法がありはしないか、こういう点も
研究課題の
一つではなかろうかと思います。またあるいは科学の
尊重、芸術の尊卑、国費による
英才教育、こういう問題につきましても、
現行憲法の他の
権利の条章と比較いたしましてこれを加える必要がありはしないか、こういうことも
考えておるわけであります。さらに
家族の問題でございますが、
戸主権中心の旧
家族制度を復活するという
議論は私
どもの
調査会では
一つも出ておりません。ただ
現行憲法が
家庭生活ということについて何らの
規定がない、
各国の
憲法を見ましても、
家族の
保護を
規定しておる
憲法はほとんど
各国の
憲法にその例を見るわけであります。そういう点もあるいは
憲法再
検討の場合には問題の
一つじゃなかろうか、こういうことも
基本的人権の章では
考えておるわけであります。
国会の章におきましては、
参議院の問題につきまして、現在
参議院の構成が果して
両院制度の効用を十分発揮し得るやいなや、こういう点につきましても、
両院の性格に適当な差異を設ける必要があるのじゃなかろうか、これは
研究課題の
国会における大きな問題の
一つではなかろうかと思います。またよく問題になりまする
予算の
増額修正、
予算を伴う
議員立法の問題、
国政調査権の
問題等につきましても、私
どもとしては
検討を加えたい、こういう
考えであります。
また
内閣の
制度におきましては、
国務大臣の
罷免権、すなわち
内閣総理大臣が
国務大臣を任意に罷免し得る
現行憲法が、果して適当であるかどうかというような問題もあるかと思います。また
内閣の
法律提案権、これはまあ大体現在では提案権ありという
定説にはなっておりまするけれ
ども、なおこれについては
異論が学界においてはあるわけであります。また
解散権につきましては、御
承知のように第七条と六十九条をめぐりまして、
内閣に第七条によって
解散権があるかどうかという点につきまして、いろいろ従来から問題が起っておるわけでありまするから、そういう点を明確にする必要がありはしないか。
国会の承認を要する
条約の
範囲等につきましても、もう少し
研究の
余地がありはしないかというふうに
考えておるわけであります。
司法の問題につきましては、昨日もいろいろ御
議論が出ました、
最高裁判所裁判官の
国民審査の問題。それから
裁判所の
規則と
法律との
関係、御
承知のように現在
最高裁判所では裁判に関しまする
規則の
制定権を持っておりますけれ
ども、これと
法律の
関係の調整について
考究を要する問題がありはしないかというような点もあるわけであります。
それから
司法の問題につきましては、いわゆる
憲法裁判所の問題であります。
現行憲法の
建前といたしましては、
法律自体を
最高裁判所が審査し、あるいは
違憲であるという決定をすることについてはその権限はない、というのが私
どもは
定説だと思いますけれ
ども、しかし、それにつきましても
異論があるわけであります。いわゆる
憲法八十二条だと思いますが、八十二条の
解釈をめぐりまして、
法律自体についての
違憲審査権もあるという説もあるわけであります。そこでこういう問題についてもなお、
憲法裁判所を設けることがいいか悪いかは別問題にいたしまして、
考究の
余地があるような気がいたします。
それから財政の賞につきましても、これも昨日具体的に例を申し上げましたように、慈善、
教育あるいは博愛の事業に対しますところの公金の支出を禁止いたしておりますが、これとても
日本の現在の実際に合わないのじゃないか、こういうことが
考えられるわけであります。
地方自治につきましても、私
どもは今
知事官選がいいとは思っておりませんが、現在の
地方公共団体の長につきまし上ては、御
承知のようにすべて直接
選挙ということに相なっております。この
条文につきましてもいろいろ
議論はありますけれ
ども、私
どもの
解釈といたしましては、直接
選挙という
制度であろうと思います。そういう
制度につきましても、それ以外の何か選出の
方法がありはしないか、こういうことも私
どもは
考究の
余地があると思います。
また
住民投票の
合理化の問題、これも昨日具体的に申し上げましたが、この現在の
憲法の
建前は申すまでもなく、
公共団体の不利益になる場合に、
住民投票の
制度を設ける必要があるという
立法の
趣旨だと思いますが、法文が明確を欠きますために、現在はたとえば
東京都に
首都建設法というものを作ります場合には、
東京都民が全部
住民投票をしなければならない。
熱海が
国際観光都市になりますれば、
熱海市民がすべてその
法律に対して
住民投票をしなければならぬ、こういう点が
考究の
余地があるように思うわけであります。
憲法改正につきましても、その手続につきまして、
日本の
憲法ほど厳格な
改正の
規定が設けられておるのは、
世界各国の
憲法でも非常にまれであります。こういう点につきましても
考究の
余地があるような
感じがいたします。
条約と
憲法との
関係につきましても、いろいろ当
委員会でも御
議論が出ておるようなわけでありまして、これとしても今の
憲法をもう少し明確にする必要があるのじゃないか。こういう点実は
問題点として、私
どもの
調査会では今いろいろ
研究をいたしておるような次第であります。
少し長くなりまし
たけれ
ども、せっかくのお呼ねでございますから一応御
説明を申し上げます。