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1956-05-09 第24回国会 参議院 内閣委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月九日(水曜日)    午前十時四十一分開会     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            千葉  信君    委員            青柳 秀夫君            井上 清一君            木島 虎藏君            木村篤太郎君            西郷吉之助君            佐藤清一郎君            江田 三郎君            木下 源吾君            田畑 金光君            永岡 光治君            吉田 法晴君            梶原 茂嘉君            豊田 雅孝君            廣瀬 久忠君   衆議院議員            山崎  巖君            古井 喜實君   国務大臣    国 務 大 臣 吉野 信次君   政府委員    法制局次長   高辻 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○憲法調査会法案衆議院提出)     ―――――――――――――
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  憲法調査会法案について質疑を行います。
  3. 木下源吾

    木下源吾君 きのういろいろお伺いしたのですが、結局きのうの話では私どもとしては、こういう調査会の必要はないと、こう考えておるわけです。なぜなればあなたのおっしゃる民主主義と、平和主義人権尊重のこの原則というものを守るということになりますれば、現行憲法においてこれを改正する、再検討をするというような具体的な問題はないように思うのです。そこではなはだ恐縮ですが、もっと具体的に現行憲法のどこの所をどういうようにやろう、そういうお考えを具体的に今述べていただきたいと思うのですが、たとえば今の民主主義平和主義基本的人権尊重原則、これだけを確立しているならば、具体的にこの条文についてこういう所はこうだということは言えるはずだと思っておるのですが、この点についてはどうですか。
  4. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 木下さんから、現行憲法改正を加える必要のあると思われる諸点について、御説明を求められたわけであります。実は木下さん御欠席の委員会におきましても、一応私はその考えを述べたつもりでありますけれども、重ねてお尋ねでございますから、もう一度繰りかえすようなことになると思いますけれども申し上げてみたいと思います。お手元に差し上げておりまする問題点の順序に従って御説を申し上げたいと思います。  まず前文についてでありますが、前文はお読みになりますとわかりますように、非常にその書き方が冗漫でありまするし、まただれが見てもこれは翻訳であるというふうに考えられるわけであります。またその内容におきましてもきわめて消極的、他力本願的であります。どういう点かと申しますると、この間の参考人意見を求められた際にも廣瀬委員からもお話がございましたように、前文の中に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と、こういうことは私どもは非常に他力本願的の考え方ではないかと思うわけであります。こういう点につきましても検討を加えたいというのが私ども考えであります。もとより国民主権の宣言をはっきりいたしますることは、まず第一に考えなきゃならぬ点でありまするし、また個人の尊厳、基本的人権保障平和主義及び国際協調主義原則前文に明示することも必要と思いまするし、何時に文化の向上、国民福祉、民族の繁栄に対する理想と決意をはっきりここにうたい出す必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  現行憲法の各単に従って問題点を掲げてございまするから、この章に従って御説明を申し上げますと、天皇の章につきましても、調査会基本方針はたびたび申し上げまするように、国民主権原則をいささかも変更する意図は私ども調査会ではないわけであります。一部の人々の憶測するように、天皇主権者とするとか、あるいは天皇地位を強化するとかいうような考えは、今のところ議論としても出ておらぬようなわけであります。ただ現在の天皇地位が象徴という言葉で書き表わしてあります点において、ことに第七条の国事行為との関係におきまして、天皇地位が対外的に日本国を代表するかどうかという点に非常な疑問が起っておるわけであります。現に学説等も、この憲法が明確でないためにいろいろの学説が出てきておるようなわけであります。こういう点をはっきりさせる必要があるのじゃなかろうか、これが第一章についての意見であります。  第二章の戦争放棄につきましても、私ども調査会基本が針はもとより平和主義を堅持し、国際協調主義を推進することを基本といたしております。ただ現行憲法の九条の、ことに第二項、をめぐりまして、従来から憲法違反というような議論国会を通じてもしばしば起っております。そういう点を明確にしたい、する必要があるのじゃなかろうか、憲法違反議論の起る余地のないようなことにする必要があるのじゃなかろうか、こういうことを考えておるわけであります。  第三章の基本的人権につきましても、むろんその人権尊重原則は堅持することは当然でありますけれども、さらに現在の個々の基本的人権公共福祉関係、これも昨日の御質問にお答えしましたように、この関係現行憲法では必ずしも明確を欠いておるような点がなきにしもあらず、というような感じがいたすわけであります。そういう点をはっきりする必要があるのじゃないか。また基本的人権権利保障におきましても、たとえば現在の憲法では、児童保護につきましては、この児童の酷使を禁止する規定がありますけれども、老人の保護、あるいは寄るべなき母子の保護という点につきましては規定が欠けておるような次節であります。また現在の諸規定の中でもいろいろの規定はございまするけれども、たとえば勤労の権利最低生活社会保障等に関しまする規定もあるいは抽象的に過ぎはしないか、もう少し明確にする方法がありはしないか、こういう点も研究課題一つではなかろうかと思います。またあるいは科学の尊重、芸術の尊卑、国費による英才教育、こういう問題につきましても、現行憲法の他の権利の条章と比較いたしましてこれを加える必要がありはしないか、こういうことも考えておるわけであります。さらに家族の問題でございますが、戸主権中心の旧家族制度を復活するという議論は私ども調査会では一つも出ておりません。ただ現行憲法家庭生活ということについて何らの規定がない、各国憲法を見ましても、家族保護規定しておる憲法はほとんど各国憲法にその例を見るわけであります。そういう点もあるいは憲法検討の場合には問題の一つじゃなかろうか、こういうことも基本的人権の章では考えておるわけであります。  国会の章におきましては、参議院の問題につきまして、現在参議院の構成が果して両院制度の効用を十分発揮し得るやいなや、こういう点につきましても、両院の性格に適当な差異を設ける必要があるのじゃなかろうか、これは研究課題国会における大きな問題の一つではなかろうかと思います。またよく問題になりまする予算増額修正予算を伴う議員立法の問題、国政調査権問題等につきましても、私どもとしては検討を加えたい、こういう考えであります。  また内閣制度におきましては、国務大臣罷免権、すなわち内閣総理大臣国務大臣を任意に罷免し得る現行憲法が、果して適当であるかどうかというような問題もあるかと思います。また内閣法律提案権、これはまあ大体現在では提案権ありという定説にはなっておりまするけれども、なおこれについては異論が学界においてはあるわけであります。また解散権につきましては、御承知のように第七条と六十九条をめぐりまして、内閣に第七条によって解散権があるかどうかという点につきまして、いろいろ従来から問題が起っておるわけでありまするから、そういう点を明確にする必要がありはしないか。国会の承認を要する条約範囲等につきましても、もう少し研究余地がありはしないかというふうに考えておるわけであります。  司法の問題につきましては、昨日もいろいろ御議論が出ました、最高裁判所裁判官国民審査の問題。それから裁判所規則法律との関係、御承知のように現在最高裁判所では裁判に関しまする規則制定権を持っておりますけれども、これと法律関係の調整について考究を要する問題がありはしないかというような点もあるわけであります。  それから司法の問題につきましては、いわゆる憲法裁判所の問題であります。現行憲法建前といたしましては、法律自体最高裁判所が審査し、あるいは違憲であるという決定をすることについてはその権限はない、というのが私ども定説だと思いますけれども、しかし、それにつきましても異論があるわけであります。いわゆる憲法八十二条だと思いますが、八十二条の解釈をめぐりまして、法律自体についての違憲審査権もあるという説もあるわけであります。そこでこういう問題についてもなお、憲法裁判所を設けることがいいか悪いかは別問題にいたしまして、考究余地があるような気がいたします。  それから財政の賞につきましても、これも昨日具体的に例を申し上げましたように、慈善、教育あるいは博愛の事業に対しますところの公金の支出を禁止いたしておりますが、これとても日本の現在の実際に合わないのじゃないか、こういうことが考えられるわけであります。  地方自治につきましても、私どもは今知事官選がいいとは思っておりませんが、現在の地方公共団体の長につきまし上ては、御承知のようにすべて直接選挙ということに相なっております。この条文につきましてもいろいろ議論はありますけれども、私ども解釈といたしましては、直接選挙という制度であろうと思います。そういう制度につきましても、それ以外の何か選出の方法がありはしないか、こういうことも私ども考究余地があると思います。  また住民投票合理化の問題、これも昨日具体的に申し上げましたが、この現在の憲法建前は申すまでもなく、公共団体の不利益になる場合に、住民投票制度を設ける必要があるという立法趣旨だと思いますが、法文が明確を欠きますために、現在はたとえば東京都に首都建設法というものを作ります場合には、東京都民が全部住民投票をしなければならない。熱海国際観光都市になりますれば、熱海市民がすべてその法律に対して住民投票をしなければならぬ、こういう点が考究余地があるように思うわけであります。  憲法改正につきましても、その手続につきまして、日本憲法ほど厳格な改正規定が設けられておるのは、世界各国憲法でも非常にまれであります。こういう点につきましても考究余地があるような感じがいたします。  条約憲法との関係につきましても、いろいろ当委員会でも御議論が出ておるようなわけでありまして、これとしても今の憲法をもう少し明確にする必要があるのじゃないか。こういう点実は問題点として、私ども調査会では今いろいろ研究をいたしておるような次第であります。  少し長くなりましたけども、せっかくのお呼ねでございますから一応御説明を申し上げます。
  5. 木下源吾

    木下源吾君 前文についてのなんですが、前文翻訳調である。これはやはり構文上の問題などは、実は憲法改正するという問題の中には入らぬと思うのです。ただ消極的であり他力本願的であると、こう言われておりますが、大体この軍法はどちらかというと、国連集団安全というところに問題があるのであって、従って日本だけで独自でという面だけではなく、やはり国際的に今後緊密にしかも互いに相寄り相助けていく、こういうのが基本的になっておるのであって、それをただ他力的なという一面的な面だけでは、これは割り切れないのじゃないか。なおさら今われわれのやらんならぬことは、全体としての集団安全保障というか、そういうようなものをこれを基礎として進めていくことに努力せにやならないのじゃないか。こう考えておるのですが、今日御案内の通り国連におきましてもそういう努力が続けられておるようであるが、日本の場合にはどちらかというと、アメリカ中心とする自由諸国といいますか、そういう側に強く立って、そうしているために、全体の集団保障ということに対してはかえって障害になっている。こういうように考えるのですね。そこでどうしても私どもはこの現在のような立場に立ってこの憲法改正するというのであれば、いわゆる全体、国際的な集団安全保障というようなことを捨ててかかるのじゃないか、そういうことを前提としているのじゃないかというように考えられるのですが、こういう点についてのお考えはどうですか。
  6. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 木下さんのお説のように、国際協調主義を推進することにつきましては全く同感でありまして、わが国としましても、一日もすみやかに国連加盟の日を私どもとしても心から切望をいたすものでありします。ただ先ほど読み上げましたように、現行憲法前文にありまする「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こういう規定がございますけれども、その後の国際情勢をごらんになりましても、諸国民の公正と信義に信頼して果してわが国の安全が保てるかどうか、また国民生命保持ができるかどうかという点は、私どもはこの表現ではまことに消極的であり、他方本願的の精神であると思うわけであります。そういう点を今後の国際情勢変転ということも思い合せますると、そういう消極的の考え方ではわが国独立の完成をはかる上において不適当ではないか、こういう点から前文について検討を加えたい、これが私ども考えであります。もとより木下さんの今お話になりましたような国際協調主義につきましては、私どもとしても今後できるだけ努力を払いまして、これを推進したいという基本的の考えであることは繰りかえして申し上げる必要もないことと思います。
  7. 木下源吾

    木下源吾君 今お話のように私の根本的な考えに御同意されるならば、この前文他力本願であるから書き直すんだということにはならぬ、消極的であるということにはならない。ただ日本たけがひとりよがりをやろう、こういう面からいけば消極的に見えるし、他力本願のようになる。こういうように私は思うのですが、こればあなたのお考え方とこちらの考えとは根本において違うかもしれませんが、私はそうは増えません。今日本が立っておる地点というものは、どうしても片一方に片寄っているのでありますから、国情に即した……、現在の国情に即しておるといえば、この憲法があるいは障害がある。やはり私どもはそうでなく広く世界集団というものの正義のつながりによって日本も生きていくんだ、こういう建前に立つならば、この前文で私はけっこうではないか、こう思っておるわけです。  そこでお尋ねしますが 恒久の平和を念願しておる。これは皆さんはそういうことを言っておるのです。この平和についてですが、恒久、平和というものは今日のように力に依存してこの平和を確立して、保持していくというのも、力によっての平和を確立する、保何していくということにももはや限界がきておる、こういうような時代だと考えられるのですが、この意については山崎さんあるいは自民党がどういうようにお考えになっておるか、これを一つお尋ねしたい。
  8. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 恒久の平和を念願します点につきましては、自由民主党としましても決して人後に落ちないつもりであります。ただ現在の国際情勢の実際を見ますと、決して私どもは力にようない、平和という時代がきておるとは思いません。現在の平和を維持されておりますのは、やはり力の均衡によって平和が維持されておるような観測をいたしておるわけであります。その点におきましてはあるいは一昨日鈴木義男さんがお話になりましたように、世界観相違といいますか、あるいは国際情勢判断相違ということにもなるかと思いますが、私どもの方はそういうふうに考えません。
  9. 木下源吾

    木下源吾君 力の均衡であると言われますが、そうすると、わが日本がこの場合力の均衡ということには、具体的にはどういうように考えられればいいのですか。
  10. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私どもわが国独立体制を整備するためには、やはりわが国としては自分の国は自分国民の手によって守り得るだけのいわゆる自衛力というものは少くとも持たなければならぬのではないか、こういうふうに考えておわけであります。
  11. 木下源吾

    木下源吾君 力の均衡の上に立って、日本がみずからを守る白御方を持つということでありますが、どのようなだけを持てば力の均衡につまり即する状態になるのですか、その白御方というものが。
  12. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私は今申し上げまする自衞力と申しまするのは、あくまでも日本自分国土自分の力で守るという限度に限られと思うわけであります。
  13. 木下源吾

    木下源吾君 その限度というのは、具体的に言えばやはり今は原爆日本に落されたのは御承知通りであります、そうすると日本でもやはり原爆を持たなければ均衡がとれないことになりはしませんか、その点はどうですか。
  14. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私ども日本国土を守るといういわゆる自衛力範囲というものは、きわめて限られた範囲でありまして、近代戦争を遂行するような原爆というようなことは毛頭考えておりません。
  15. 木下源吾

    木下源吾君 しかし相手があるように今あなたおっしゃるから私も言うのだが、力の均衡と言えばやはり相手がある。この相手均衡をとれるだけということになれば、具体的にはほかで原水爆を持っておればこちらも持たなければ均衡がとれない、こういうことだと私は思うのです。これは誰が聞いてもそうじゃないですか。今のお話では力の均衡の中には入らない。それでは力の均衡はとれない。従って平和を維持することはできない、こういうことになりますね。
  16. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私が申し上げておりますのは、わが国独立体制の整備をいたしまするためには、国土自分の国の力で守り得る限度にとどめたい。従いましてそれは何ら原爆の問題とか水爆の問題とか、そういう問題にふれて考えておるわけじゃありません。最小限度自衛力を持ちたい、これだけに限界をして考えておるわけであります。
  17. 木下源吾

    木下源吾君 私は平和について今お話を承わっておるのでありまして、恒久平和をわが国が念願し、それを確保しようとするには、あなたは今、力の均衡によってこれを確保する、こういうお考えだ、こう言われるので今お尋ねしておるのであります。それはすなわちこの憲法中心のつまり基本的な平和に関する考え方、また事実になるだろうと思うのでお尋ねしておるのであります。で、あなたのおっしゃるようにすれば、日本の平和を確立する、日本建前として確立するのには、力を持つ、それが平和を確立することができる、平和をもたらすことができるの、たという根本の立論になっておるわけであります。ですから私はそれを具体的にお尋ねしておるのであります。あくまでもみずからを守るだけの自衛力、これは非常に抽象的であります。自衛隊の防衛計画の六カ年計画でそれが完成できるのやら、これもまだしっかりしておりませんし、そういう点でまずお尋ねしておるのであって、決して軍隊をどのくらい持つとかあるいは軍艦をどのくらい持つとか飛行機をどのくらい持てばということよりも、私は原爆のようなもの、水爆のようなものが現われている今日、なお力の均衡で平和を維持するという考え方は現実に即しておらないのではないか、こう考えまするので、お伺いしておるわけであります。この点にもう少し突き進んで一つお話しを願いたい思います。
  18. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私が先ほどから申し上げておりますのは、国際間の現在の、平和が、私ども判断では、まだ相当力による、力の均衡によって保持されておるということを申し上げておるわけでありまして、何も日本がその力を、その限度まで打つということを申し上げておるのではありません。日本としては、平和を念願して、自国の防御をするたけ最小限度の力を持つことが、やがては日本の(江田三郷君「ちよっと今の答弁矛盾している」と述ぶ)自衛の態勢を整備する、こういう意味で申し上げておるの、でありまして、何も日本原爆を持つとか、水爆を持つというような趣旨で申し上げておるのではないのでありますから、その点をよく御了承願いたいと思います。
  19. 木下源吾

    木下源吾君 一致はしておらぬようであります。  さらに進んでお尋ねいたします。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して。ちょっと今、先に進むようですから、伺いますが、力の均衡によって平和が保たれるのだ、こういうまあ日本国憲法なり、それから私どもと全く違った意見をお出しになっているわけでありますが、憲法建前なり、あるいは私ども意見は申し述べません。あなたが、あるいは自民党政府もそうでしょうが、平和は力の均衡によって維持される、こう考えられますならば、力の均衡というのは、これは二つ陣営があり、そして双方力を持っておる。そのブロックの均衡によって平和が保たれる、こういうことでしょう。そうしますとね。先ほどお話しになる、日本を守るために云々、こういう日本を守るための力というものが一つ自衛の中の力の一部と申しますか、関連があって、そしてそれが力の均衡、それによって、平和に貢献をする、こういう考え方になるのですね。そうすると、それはそうでしょう、力の均衡によって、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)その力の均衡の片方の力と、日本の力というものとは全然関係ない、こういう工合にお考えになるのですか。お考えになるのならば、力の均衡によって平和が維持されるという理屈は、これはお捨てにならないといけない。少くとも、何というか、米軍の駐留なり、あるいはアメリカ日本国との間の安保条約なり、行政協定なり、いろいろなものがありますが、その自由主義陣営なら自由主義陣営の中で力を持つ、こういうことはないはずなんでありますが、考え方の中にはそれはあるのでありますか。そうすると、もしそれを否定せられるならば、力を持つという悪味はございません。平和のために、力の均衡に貢献するために兵力を打つという意味はございませんから、憲法精神に従って、この力によらないで、武力によらないで国際関係を片づける、こういう武力にようない、あるいは力にようない平和主義というものが、これは出てくるべきなんです。その点はどうなんですか。(江田三郎君「さっきの答弁矛盾している」と述ぶ)さっきの答弁矛面しているのですよ。(江田三郎君「今度は山崎さん、矛盾しないように答弁しないといけない」と述ぶ)
  21. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 先ほど申しましたのは、現在の国際情勢に対しまする判断を申し上げたわけであります。先ほど木下さんから、一体世界平和というものが、軍備なんかを捨てても、とにかくそういう限界にきているのじゃないか。こういうお尋ねでございましたから、私どもは、現在の国際情勢判断としては、やはりまだ力の均衡というものが大事なポイントじゃないかということを実は申し上げたわけであります。御承知のように、軍縮の問題にしましても、なかなか世界各国で話し合いがつかないという現状から見まして、私どもとしては、そういう判断をいたしたわけであります。そういう国際情勢下でございまするから、わが国としては、この国際情勢変転ということも将来考えなければならぬ問題でございいまするので、最小限度わが国土を守るだけの自衛力というものは持つことが当然必要ではないか。こういうことを、二つのことを分けて申し上げましたことが、あるいは誤解を生じたもとかと思いまするけれども、私は、国際情勢判断と、またそういう国際情勢下において、わが国としては最小限度自衛力を持つ必要がある、こういうことを申し上げたのでございます。その点について、私は何ら矛盾はないと思います。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねて。日本に攻めてくる国があるから、あるいはその危険性があるから、それを守るために力を打たなければならぬ、あるいは軍隊を持たなければならぬというのなら、それも一つ議論であります。私どもは、そういう前提もないし、それに、力あるいは軍隊でもって日本を守るということは、これは日本国憲法の予定するところではない。外国が攻めてくるという前提がない、こう考えておる、実際的にも、理論的にも。ところが、あなたたちはそうでないようにお考えですが、あなたは、今外国から攻めてくる危険性があるから云々ということじゃなくて、平和を守るには力の均衡によって守る以外にない、従って日本を守るために自衛力を打つべきた、力を持つべきだ、こういうお話ですから、国際的な力の均衡というものと、日本の力というものは、あなたの御説明では関連があった。だからそれは、国際的な平和維持の方法と、それから日本の力を持つということとは関係があるではございませんか。こう質問をしたわけであります。どっちなんです。
  23. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) あるいは私の説明が不十分だったために、誤解を生じた点があるかとも思いますが、私は、現在の国際情勢判断として、まだ武器を捨てた平和という時代は到来していない。また武器を捨てるというところまで、その限界まではきていない。まだやはり力の均衡という時代ではなかろうか、こういう判断を申し上げたわけであります。また今、吉田さんから御指摘のあり左したように、今すぐどこの国が攻めてくるというようなことは私ども考えておりません。しかし、遠い将来を考えまして、国際情勢はいつどういうふうに変転するかもわかりません。そういう場合に、日本としては、国土を守り得るだけの自衛力は持つ必要があるのではないか。この二つ考え方一つにして申し上げましたから、あるいは混沌したようなことにお聞きとりになったかもしれませんが、私としては、別にそれは考えているわけであります。
  24. 木下源吾

    木下源吾君 その問題は、非常に重大な根本的な問題でありますので、まあ皆さんにも非常に意見もあり、質疑もあろうと思うのですが、私は私なりにこの問題を一つお尋ねしようと思うのです。  実は、ここに書いてあります「人間相互の関係を支配する崇高な理想、」こういうように書いてある。そうしてこれを「自覚」して、「平和を、愛する諸国民の公正と信義に信頼」する、こう書いてありますことについてですが、これがどういうように御解釈になっておるのか。それによってこの憲法にいわれるところの恒久平和というものが明らかになる、こう考えますので、この点を一つ、どういうようにお考えになっておるかをお尋ねしたいと思うのであります。
  25. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) もとより、先ほども申し上げましたように、平和主義に徹するという点につきましては、この憲法にもございまするように、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」という点につきましては、私どもは圧すますこの精神を生かしていかなければならぬと思うわけであります。ただその次にありまする言葉が、いかにも諸国民の公正と信義に信頼すれば、わが国の安全も国民生存も保持することができる、この書き方につきまして、この点が非常に消極的であり、また他力本願的な書き方ではなかろうか。こういう点については、前文検討の場合に適当な言葉を見出したい、これが私ども考えであります。重ねて申し上げまするけれども平和主義に徹する精神におき、なしては、木下さんの御所論と全然同感であります。
  26. 木下源吾

    木下源吾君 私のお尋ねしておるのは、「人間相互の関係を支配する崇高な理想」、こういうことをどう理解しておられるか、具体的に……。  それからもう一つは、「諸国民の公正と信義」、これをどういうように御理解になっておるか。これをお尋ねしておるのです。
  27. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 「人間相互の関係を支配する崇高な理想」と申しますのは、これはもう書いてあります通りに、高く理想を掲げたものであると信じます。  それから「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し、」と申しますのは、外国いずれの国も、常にその諸国民は公正であり、また常に信義を重んずる、こういう前提のもとに、この前文はできておるものと思います。
  28. 木下源吾

    木下源吾君 どうもあまり、あなたのおっしゃることが私の尋ねておることと離れております。「人間相互の関係を支配する崇高な理想」、こう書いてある。この内容についてのあなたのお考えを私はお尋ねしておるので、ただ、ここに書いてあります通りでありますというのでは、ちょっとそれは御答弁にならぬ。  それからもう一つ、「諸国民の公正と信義」ということも、これもあなたはどういう解釈をしておられるかということによって、おのずから「恒久の平和を念願して、」と、こう書いてある文字が、内容が生きてくるのではないか、こういうつもりで、おそらく私のお尋ねしておる中からは、力の均衡だとか、自衛力を持っていいということにはならぬのじゃないかと私は考えておるので、(「その通り、その通り」と呼ぶ者あり)それをお尋ねしておるのであります。
  29. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) お尋ね趣旨が、実ははっきりつかみがねるわけでありますが、「人間相互の関係を支配する崇高な理想」ということは、私は、ここで書いてある以外に、この意味説明するに、何もつけ加えることはないと思います。どういうことを具体的にお尋ねになっておりますか、具体的な御質問がありますれば、それにお答えを申し上げたいと思うわけであります。
  30. 木下源吾

    木下源吾君 そういう御答弁をなさる。そうしてこの憲法改正するために調査会を作る。それが私は、非常に危険ではないかと、こう考えておる。いわゆるこの「人間相互の関係を支配する崇高な理想」というのは、当時ミズーリ号上で、日本に占領に来たマッカーサーが宣言した一言葉をあなたは御承知であろうと思いますが、私はこの全部を礼賛するわけではない。けれども、その中に人格の尊厳という言葉があったと私は記憶しておる。やはり賢明な山崎さんもそれを御承知であると思う。私は、だいぶ長くなって、このごろ物忘れして、物覚えが悪いから、あるいは間違っておるかもしれぬ。あの中に人格の尊厳という言葉が私は明らかにあったと思う。いわゆる人格の尊厳ということが人間相互の関係を支配する崇高な理想ではないか、こう考えますが、あなたはどういうようなお考えでございますか。
  31. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 御説のように、人格の尊重ということは全く同感でありまして、それもこの各条文の間にあります大きな理想の一つであろうと思います。マッカーサーの言葉を御引用になりましたが、その御引用を待つまでもなく、わが国憲法におきましても、人格の尊厳ということは一つ基本的な原則として掲げておりますことは、木下さんも御承知通りであります。
  32. 木下源吾

    木下源吾君 これを御承認になれば、人格の尊厳とは具体的にはどういうことだと、それをお尋ねしましょう。
  33. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 人格の尊厳の内容を申せというお話でありますが、これはどういうことをお聞きになっておりますか、私にその御質問の趣旨がわかりません。そこで、もう少しはっきり、どういうことを御答弁していいか、もう少しその質問の方を詳しくおっしゃっていただきたいと思います。はなはだ恐縮でございますが……。
  34. 木下源吾

    木下源吾君 そういうことを私からうまでもなく、あなたは自民党を代表しまして、こういう重大な憲法改正を意図して、調査会を作ろうと言われる人が、そのあなたが一体今のような御答弁では心細いですね。人格の尊厳というのは、具体的には、おのおの互いにその人の人格というものを尊重し合うということであります。(「全くだ」と呼ぶ者あり)そうじやありませんか。(笑声)アメリカが白人であるから、日本の顔の色の黄色い者を軽べつする。黒人であるからこれを軽べつする、金がないから軽べつする。いろいろそういうようなことは、これは人格の尊厳にはならぬ。華族であるから平民を下に見る。いいですか。こういうような、人間自体に等差をつけて、そうしてお互いを尊び合わぬということが、そもそも平和をこれは傷つける、平和を侵す基本的な問題である、こういうことでしょう。そこでここに「人間相互の関係を」云々と書いてあるのは、いわゆる人格の尊厳、互いに、人は人間である以上は、その人格というものを認め合う、尊重し合って、ということなのでしょう。それをあなたはどう御解釈するかわからないでもって、この憲法改正しようということは、とんでもない話じゃありませんか。(笑声)失礼、失礼、私はそうは言わない。(笑声)御存じであろうと思うけれども……、私の問い方が悪かったと、私の方から訂正しておきます。  いずれにいたしましても、こういうことは、ここの中だけで、笑いながらでもいいから、お互いに確認しておく必要がありますよ。そうでないと、この憲法基本的に改めなければならぬというお考えが出てくるのではないかと、こう思いますので、そこでお尋ねします。  マッカーサーが十年前ですか、八月の何日ですか、ミズリ一号の上で宣言した、今の重光外務大臣が行って受けたわけです。この人格の尊厳、人間相互の関係を支配する理想というものは、あんたはいうぬとおっしゃるか。
  35. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 人格の尊厳ということは、これはもう人類普遍の重大な原則だと考えております。
  36. 木下源吾

    木下源吾君 その次だ。「平和を愛する諸国民の公正と信義」ということを、もう一応一つあなたから説明願いたい、わかりやすく。もうこれは、私は説明しませんよ。(笑声)
  37. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) この点も、別に私から特別にこの字句の御説明を申し上げる必要はないように私は思います。ここに書いてある通りにお読み下されば、おのずからその解釈ははっきりすると思いますが、どういう点を御質問になったのか、その点も私わかりにくいのでございますので、あるいは木下さんからこういう趣旨じゃないかということをおっしゃれば、それについて申し上げます。
  38. 木下源吾

    木下源吾君 そこで、いずれも平和というものが乱れる根本を書いてあるのですね、ここには。不均衡であれば、これは平和にはならぬ。子供が乳をほしがってでも、一人によけいやり、一人によけいやらぬというと、お母さんの乳でさえもかきむしる。不均衡というものは平和にはならぬ。いわゆる公正でなければならぬ信義とは、互いに偽わらない、疑わない、これがもう信義というものの内容であることは、これは中学校の生徒でもわかっておる。それで、日本の場合、果して公正と信義を今日守っておられるかどうか、これをまず反省してみる必要ありませんか。それを、私は悪意で疑っておるとは申しません。けれども、私のめがねに赤い玉をつけておけば赤く見えるね、相手は。そうでしょう。青いめがねをかけておれば相手が青く見えるですね。けれども、御自分では、自分のめがねをかけておることを何にも言わないで、向うの方が青いとか赤いとか、こういうように断じてしまうことは往たにあるんですよ。そうでございましょう。そうなると、相手を疑うことになる。侵略してくるだろうと、私どもは何べんか国会で聞いておりますが、断定的に侵略してくるという具体的な何物も説明聞いたことないです。皆さんからばかりじゃない、政府からも。だがしかしおびえておる。それはどういうことか。それは自分でめがねに色のついたやつをかけておる。自分が侵しそうなお考えを待っておる。いいですか。それゆえに私は、ここでは大切な憲法を今何するのだから、その点まで深く考慮をする必要があるのである。そのことは、すでに過ぐる大戦によって明らかにされたことであります。その大戦の結果として、こういう文句が現われてくる、憲法の中に、前文に出てくることは、まことにこれは当然ではありませんか。この点についてどうですか。
  39. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) わが国としまして、公正と信義を守らなければならぬということにつきましては、私どもは全く御同感であります。色めがね云々の御質問がございましたが、それは具体的にどういうことをおさしになっておりますか、私にはわかりませんけれども、むろんその精神といたしましては、わが国として公正と信義をあくまでも守ってゆくという建前に立たなければならぬことは当然であろうと思います。
  40. 木下源吾

    木下源吾君 公正と信義をあくまでも守っておれば、いわゆる軍隊を持っての自衛力、そういうものの必要があるかないかは明らかである、こう私は考える。今日、隣りの中国は、私も行って見ましたがね、侵略すると考えておる。戦争をみずから進んですると考えておる。行って見るとわかりますよ。もう四才ぐらいの子供の教育に、母親が叱ったり打ったりすれば、幼稚園の先生からひどくたしなめられるような教育が行われているのを私は見て参りました。幾多の事例を見て参っておるが、かかる具体的な問題を見せつけられて、中国が侵略してくるとはごうも考える人はないと思うのですよ。だがしかし、侵略してくる、こういうふうに考える人々もたくさんあるのです。というのは、みずからそういうめがねをかけて、日本が過去にやったようなことが一番平和になる、東洋平和のためなればというので、鉄砲のたまになって皆死んでしまう。それをやはり繰り返さなければ、恒久平和というものができないのだと考える、めがねをかけているのじゃないか、これを私はお尋ねしている。断じてそういうことはありませんか。
  41. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 現在の国際情勢下におきまして、私は侵略がただちに起るというふうには考えもしませんし、そういうことを申し上げたわけではございません。ただ、遠い将来を考え、また国際情勢というものも、必ずしも現在のままで進んでいかないという点を考えまして、わが国としては、最小限度自衛の力を持つ必要があるのじゃないか、これが私ども考えであります。ただ、この点につきましても、木下さんのような、これは必要ないというふうな御議論もあるわけでありますが、そういう点こそ、一つ憲法調査会ができましたら、その調査会におきまして、十分論議を戦わして、そうして適当な結論を得ることが私は最も必要だ。そういう意味におきましても、憲法調査会の必要が私どもは痛感されるわけであります。
  42. 木下源吾

    木下源吾君 それは逆ですよ。そんなことは必要がないから、ないために、私は現行憲法の条章、この字句に書いてあることで御質問しているので、それはお考えは自由であります。さて、みずからを守るということは、これは力が全部ですか。
  43. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) むろん国を守るためには、まずなんらかいろいろの問題が起りましたときには外交手段に訴える。そうして外交手段で問題を解決するということが第一段だと思います。しかし、それがなお成功しない。そうしてかりに侵略でも起りました場合に、国を守るということでなければならぬと思うわけであります。
  44. 木下源吾

    木下源吾君 この憲法ができましてから、あなたがおっしゃるような外交手段で解決しないで力でやらなければならないという事態が何かあったんですか。
  45. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 具体的にそういう事件があったということをここで申し上げるものはないと思います。
  46. 木下源吾

    木下源吾君 この十年の歳月の間にそういうことのなかった事実の前に立って、何故に今それを強調しなければならないか、どういうことで強調しなければならないか、憲法まで改正してやらなければならぬこの理由が承わりたい。
  47. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 現在の日本の安全は、申すまでもなく日米安全保障条約によりまして、また日米行政協定によりましてアメリカの駐留軍が日本の安全の処置に当っておることは御承知のことであります。ただしかしながら安保条約といい、行政協定といい、これをそのまま永久に残すということは、永久という言葉は不適当と思いますが、長くこれを残すということは――漸次日本の力をつけて米軍の撤退を求めていくという方向に進むことが、日本独立体制の整備のゆえんだろうと、こういうふうに考えるわけであります。
  48. 木下源吾

    木下源吾君 そうするとこの憲法改正すれば、アメリカ軍が撤退するとこう考えておられるのですか。
  49. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) この憲法改正によりまして、直ちに日米安保条約あるいは行政協定をやめるというわけにはいかぬと思います。これは私が申し上げるよりも、むしろ政府当局あるいは防衛庁長官から申し上げるのが適当かと思いますが、私の考えを申し上げまするならば、直ちにこれを廃止するというわけにはむろん参らぬと思います。ただ漸次日本自衛力が充実していきます段階につれまして、駐留軍の撤退、減少をはかるという方向へいく以外には道はないだろうかと思います。
  50. 木下源吾

    木下源吾君 事実についてお尋ねしましょう。あなたは当初から力の均衡によって平和を維持する、こういう御見解ですね。今日、ある時よりは非常に平和の波が高くなってきた、これは御承認になろうと思います。これは力の均衡のためであるか、あるいはその他の原因のためであるか、この点についてはどういうお考えを持っておられますか。
  51. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 現在の国際情勢が平和の方向に向っておるだろうという判断につきましては、木下さんと私も同感でありますが、ただそれが、何が原因かというお尋ねでございますが、それは先ほども申し上げましたように、私ども判断としましては、力の均衡ということもございましょうし、また外交の成功ということもございましょうし、いろいろな要素が含まって今日の国際情勢が生まれ出てきておると考えるわけであります。
  52. 木下源吾

    木下源吾君 外交折衝と力の均衡関係以外にはお考えありませんか。
  53. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) いろいろの要素があると思いまするが、今申し上げたようなことは一つの重要な要素じゃないかと思うわけであります。木下さん何をその点お唱えになっておりますか、私どもちょっと判断がつきかねるのであります。
  54. 木下源吾

    木下源吾君 お考えになっておる事実を……。朝鮮戦争が休戦になった、ヴェトナムが停戦になった。これは御承知通り数年の戦いをやめたのであります。これは時日が長い間かかったけども、お互いの話し合いできまったんですよ。ヴェトナムの問題はジュネーヴにおける会談によってこれはさまった。そうでありますね。なるほど戦争で非常な苛烈な戦が、力の均衡もあろうけれども、必ずしも力は均衡がとれておったとは考えられない。朝鮮においては人海戦術をとっておる、一方は機械力でどんどんやる、一方は人海戦術をやる。これは力、あなた方のおっしゃる力というだけの問題ではない。しかもこれが休戦になったと、停戦になったということは、ただ一つ全人類が何とかして平和を、戦争をやめねばならぬ、戦争というものをなくさにゃならぬ、当面の原水爆というものをなくさにゃならぬ、戦争愛好者が幾らやってもやっても、一方は力を持たない人類社会のこの従来の植民地の、ことに被圧迫階級の人々の心の中での決意が、戦争をなくさにゃならぬ、原水爆をやめてもらわにゃならぬ、こういう決意がああいうふうになったのであります。具体的には話し合いによって、それは言うまでもなく平和共存の方向によってでしょう。それが御承知通りジュネーヴにおけるところのあのヴェトナムの停戦になると同時に、あれほど力に依存してその政策を進めておったダレスが孤立してアメリカへ帰ってしまった。アメリカはこの力の政策を巻き返しとかあるいは追い込みとか言っておる。あの政策をやっておった共和党が中間選挙に敗北したでしょう。決してこれば力の均衡や外交ではありませんよ。私はそう考えている。全人類が、平和を愛好する全人類が戦争を防止せにゃならぬという決意がこう進めておる。そのために吉田内閣も、ダレスにつながっている内閣も倒れたじゃないですか。従って鳩山内閣ができた。こう私は一連の歴史的事実を知っている。このような平和を愛好する全人数のなにに対して、力をもって平和を維持しようというような考えは、一部、一握りの人々より以外は今はないわけです。これはその一握りの中に日本は孤立化しょうという方向をたどっておるんではないかと私は……。この憲法を今改正するという意図は何で、あれ、具体的なこの事実を私はあなたにお尋ねしておっても、この平和憲法精神というものは惜しむらくは徹底しておらない。むしろこういう調査会なんというものを作るよりも、進んで平和憲法精神国民の前に津々浦々まで浸透せしめるという努力を払うということが政治家の任務ではないかと私は思う。この点についてはどうお考えになっておりますか。
  55. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) われわれといたしましても平和主義に徹するというただいまの木下さんの御所論につきましてはたびたび繰り返して申し上げましたように、全く同感であります。憲法改正の問題を検討いたしまする場合にも、これを基本原則として堅持していこうと申し上げておるわけであります。決してわれわれは力によって問題を解決するというような考え方でこの憲法問題に当っておるわけじゃありません。ただいま木下さんの御所論の通りに、この平和主義を、できますならば平和に徹していくという精神のもとに、基本原則のもとに、憲法改正をいたそうと考えておるわけであります。従いまして木下さんのただいまの御所論と私ども憲法検討の問題とは決して矛盾する問題では私はなかろうかと信ずるわけであります。
  56. 木下源吾

    木下源吾君 昨日来の御答弁によりますと、信ずる、あるいは思う、それでは貴重な時間を使って国会での具体的ななににはならぬじゃないか、もう少し私は努めて具体的な問題を取り上げてお尋ねしておるのであるから、もう少し具体的に、真剣に、誠意をもって御答弁になったらいいと私は考えるのであります。このあなたと私との質疑が、何らかの形で国民の中に浸透していくんですから、そうでしょう。今わずか三行か四行の前文の中においての私の質問とあなたの答弁で、国民はいずれも正しく取るかということも明瞭ですよ、これは。こういう平和憲法というものはマッカーサーから押しつけられて、占領されておって、のませられたというようにあなた方は宣伝せられておるのであるが、よしその形はあなたがおっしゃる通りであるかしらぬけれども、なおここに現われておるものそれ自体というものは、このように指導者が進めていくならば、日本国民の幸福というものは急速に幾十層倍増加するかわからぬ内容を持っておるのでありまするから、私はお尋ねして、おわかりにならなければ、まだまだ主権の尊重の問題から領土の不可侵の問題から、いいですか、いろいろまだこの内容についてお尋ねしたいけれども、おそらく、しかし私とあなたと一日こうしておっても、そうであると言っても、あなれはどこかにお帰りになるかしれぬけれども、お帰りになればそれと反対な行動をなさるのではないかということを私は心配するのです。あなたがいまさつき言われた米軍ば撤退するであろう、こう言われるが、米軍が来ておることそれ自体は日本の占領の継続なんでしょう、その形態というものは。そうしてわれわれの主権が及ばない七百数十の基地というものがあって、それが一体、どういう作用を日本の国に及ぼしておるか、そういうことを合理化するためにこの憲法改正しようというのか。私はもう少し具体的な事実について、まじめに一つ御答弁を実はお願いしたいのですよ。真に平和を念願しておるということをおっしゃるならば、力の平和ということに対しての概念、自衛力をもってのみ平和を維持していこうというこの考え方が――もっともっと街頭で行われておるところの平和の運動というようなもの、そうして公正でないところの国内の内政に対して目を向けて、もっと公正な政治が行われるように、毎日の新聞記事をごらんになるように、ああいう不公正な、そしてある者は国民の税金を、きのうも決算委員会でありますように、ああいう想像ももっかないことが行われておって、憲法だけいかに改正したって、あなたは一体これは国民の幸福になるとお考えになっておるのかと、思う、そういうことは断じて私どもは信用できない、各国民の公正よりは国内の公正ですよ、そして互いに信じてやられるところの政治を行うという、こういうことに一つ目を向けられる方が、はるかに私は国民の利益になる、日本の前途のためになると思うが、どうですか。
  57. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 御説の点につきましても十分に考慮を要する問題であると思います。申すまでもなく、わが国はサンフランシスコ条約の締結によりまして独立はいたしましたけども、国の安全を守ります力がございませんので、やむを得ず安保条約並びに行政協定によりまして米軍の駐留によって現在わが国の安全を守っておるわけであります。これは木下さんもおそらく御同感だろうと思います。しかしながらいつまでもこの状態でありますることは、日本独立体制の整備の上から考えましても、漸次米軍は撤退をしてもらいまして、そしてわが国の安全はわが国自衛力をもって守ると、こういうことでなければならぬと思うわけであります。憲法改正の問題は、この憲法九条をめぐりましても、重大な一つの問題でありますけれども先ほども詳しく申し上げましたように、第一章から第十一章にわたりますまで、わが国の現状にかんがみまして、私どもとしては検討を要する問題は多々あると思うわけであります。従いましてこの際独立の完成のためにも、現在の憲法に再検討を加える、再検討と申しますことは、われわれが憲法改正が至当であるという方針をとり、またわが党はその政策を掲げておりますけれども、しかし憲法の問題は一党一派で決定すべき問題ではございません。そこで内閣に今回特に法律によりまして憲法調査会を設けまして、各界の有力なる代表的な方々にお集まりを願って、広く国民の世論を調査会の方に反映せしめて、適当な結論を得たいと、もとより初めは憲法改正是か非かということから御検討願い、そして是なりとするならば、どういう点を検討するかということが、この調査会の使命であります。従いまして私は調査会を設くること自体についてのいろいろの御議論もありましたけども、私どもはそういう趣旨で、どうしてもこの際調査会を設けて、現行憲法に全面的な検討を加えていただきたい、こういう趣旨で本法律案を出しておるわけであります。
  58. 木下源吾

    木下源吾君 現行憲法に対していろいろお考えも承わりましたが、ただこの際この状態においてそぐわないことがあるから改正する、こういうことは少し考えが間違っておるのであります。少くも憲法である以上は、一つの高いやはり理想を持っておるのであります。それであるならば、この憲法それ自体が規定するように、国に仕える者ばすべてこの憲法を守って、この理想精神を完成するために努力しなければならぬのではありませんか、何か突発的な事件が起きる、そのたびに憲法改正する、こういうようなことを言われるのは、私はふに落ちません、ことにこれをなにしたときは占領下だと、占領下にもらった憲法だという、この憲法にはそれならば独立はないというようなことをどこに書いてありますか、これこそ独立憲法を明らかに志向しておるものであって、これを改正していくことによってのみ独立が失われるのですよ、この点についての御見解も一つあらためてお聞きしておきたいと思う。
  59. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私どもが現在の憲法に再検討を加えたいと申しますのは、現行憲法独立を否定しておるものとか何とかという前提の下に申し上げておるわけではございません。ますますこの憲法の内容を充実いたしまして、わが国の繁栄、あるいは国民の幸福、福祉増進、こういう点を主眼にして考えているわけであります。もとより現行憲法の非常に長所でありまする木下さんのいろいろお説もございました平和主義、あるいは民主主義、あるいは人格の尊重すなわち基本的人権尊重というような原則につきましては、これをごうもゆるがさず、あるいはますますこれを堅持していきたい、こういう精神のもとに憲法の再検討をやりたい、これが私ども趣旨でありまして、決して木下さんのただいまの御所論と私は何ら食い違いは、また矛盾はないものと考えるわけであります。
  60. 木下源吾

    木下源吾君 そうしますと、提案者はこの調査会を作ってやる仕事は大体限定されてきたと私は思う。それば冗漫である法文を簡潔にするとか、言葉づかいを直すとか、それから手続的に解釈がいろいろになる問題を、それを明確にするとか、こういう点に限定するものであるというようにお聞きしたのですが、間違いありますまいな。
  61. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) そういう点ももとより検討の題目になることば当然であろうと思いますが、それだけでは決してございません。先ほどもくわしく最初に御質問がありしましたので実は繰り返して申し上げたわけなんですが、問題点を掲げましたその問題、全面的にわたりまして御検討をこの調査会でいただきたいと、こういうのが私ども考えであります。
  62. 木下源吾

    木下源吾君 先ほどあなたの御説明によると、私が今申し上げた以外には出ておりませんな。基本的な問題は今あなたもおっしゃる通りの問題である。そして内容については字句が翻訳的である。こういうようなところを直したい。あるいはいろいろ国会の問題その他においても手続、解釈のあいまいな点がある。ちっともあいまいではないのだけれどもあなたはあいまいであると、こうおつしゃるのたが、そういう点だけの御説明なんですね。根本の問題は改正する必要はない。これを堅持するのだということももうおっしゃっておる。それから出てですね、いろいろ問題が先ほど説明になったが、改正すべきなには、私が今申し上げた意だけじゃありませんか。
  63. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 基本原則につきましてはこれをゆるがさず、ますます堅持していくということについては木下さんの今御指摘の通りであります。私が問題点として先ほどくわしく申し上げました点を、あるいは解釈を明確にするとか、あるいは字句の修正のみに限ると、こういう御判断をなさいますことは、木下さんの御自由でありますけれども、私はそれはただ字句の解釈の問題、あるいは字句の修正の問題だけではないと思う。内容に相当触れて私ども検討いたしたい、こういう考えであります。それを木下さんが字句の修正、あるいは解釈の明確化というふうな御判断をなさいますことは御自由でございます。
  64. 木下源吾

    木下源吾君 この点だけはそれでははっきりしておきましょう。恒久平和を念願するとここに書いてある。先ほど来のお尋ねした点では、力の平和をあなたがおっしゃっておる。現行憲法は力の平和ということではない。今度はあなたは力の平和ということに、これを中心に置いて憲法改正せられるのた、この点だけは明確でありますな。
  65. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) そういうことを私は申し上げたつもりはございません。先ほど国際情勢判断について、現在の平和が武器のないいわゆる恒久平和というような限界にきておるのじゃないかという御質問でございましたから、私はまだ現在の平和の段階はそこまではきていないのじゃないかということを御説明申し上げたわけであります。私どもはこの憲法改正して、力による平和を維持していこうという趣旨ではございません。ただ、先ほども申し上げました通りに、わが国としては独立体制を整備する意味において一つの問題として自衛力を持ち、わが国国土国民の手によって守りたいということは、はっきり申し上げたわけでありまするが、何もそれが力による平和あるいは力による憲法ということにはならないと考えるわけであります。
  66. 木下源吾

    木下源吾君 いや、あなたは今そうおっしゃるけれども、事実は今平和のこれをお聞かせしておる。この憲法は力による平和ということは一つもこれは意味しておらないということは御承認になったのでございますから、なおしかしこの平和という問題、民主主義の問題、人権の問題はますます強化していこうと、こうおつしゃるから、そうすると、この憲法上の平和という一点をとって見ても、そのような憲法の、この憲法の平和というようなことで進められるという意味ではなく、だろう、あなたのは……。あなたの考えるのは、力の均衡による平和、その平和に置きかえようとするお考えなんでしょう、あなたの改正というのは……。
  67. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) そうではないということを繰り返して申し上げたわけでありまして、私どもとしましては国際情勢判断についての御質問に対してお答えをしましたのは、現在の国際情勢がまだ力の均衡という点に相当重きをおいているのじゃないかという判断を申し上げたわけであります。憲法改正の場合に、わが国が力によって平和を維持する、そのために憲法改正するのだというようなことを私は一度も申し上げておりません。私どもとしましては、最小限度自衛力を持ちたい、これは一つの、憲法改正の場合に考究問題点の大きな一つだということは繰り返して申し上げましたけども、それだけでもございません。先ほど問題点としてたくさん掲げましたように、全面的に御検討をいただきたい、これが私どもの本案を提出しましたゆえんでありまして、決して力による憲法を作るとか、あるいは力による平和を維持するというような考えは毛頭ございません。ことにたびたび御質問に、他の委員の方々の御質問にお答えいたしましたように、憲法第九条第一項のこの精神につきましてはあくまで堅持していきたいということは、私どもはたびたび申し上げておるわけであります。そういう点から考えましても、私どもが力の平和、あるいは力による憲法ということを考えていないことだけは、他の委員の方の御質問にお答えしましたことによりましても、私はきわめて明瞭であろうと考えておるわけでございます。
  68. 木下源吾

    木下源吾君 そうすると現行憲法のこの平和を念願する云々といういわゆるこれは、力によらざる平和を書いておるのであって、この点は承認せられ、そうしてさらにそれを強化する、この点はあなたの言葉から明瞭ですね。
  69. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私どもといたしましては恒久平和を念願するこの高い理想に対しましては何ら反対はございません。その趣旨で今後も進んでいかなければならぬものと確信をいたしております。
  70. 木下源吾

    木下源吾君 大切なところは見のがしてしまってはだめです。ここに書いておる、先ほど来長い時間をかけて話しをし、お互い質疑応答したのは、この現行憲法の平和を念願するという平和は、人類相互の関係、それから公正信義の問題を解明していくと、力の平和ということにはならない、これは承認せられたのです。その承認せられた上に、今度改正するという憲法はますますこの平和を強化しようとする。この平和を強化しようとするこの点は御異議ないのですね。
  71. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私が先ほど独立国家として自分の力によっていわゆる自衛力を持たなければならぬということを、(木下源吾君「自衛力は別問題」と述ふ)こういうことを申し上げましたのは、要するに最小限度の正当防衛の力を持ちたいということでありまして、決して力によって平和を維持していこうという趣旨ではないことは繰り返した御答弁によって私は明瞭だろうと思うのです。世界平和を、恒久平和を念願するという、この高い理想に対して、何ら私どもは反対を申し上げておるわけではございません。今後の憲法といえども、その理想をもって進むことは、私は当然であろうとこういうふうに考えておるわけであります。
  72. 木下源吾

    木下源吾君 なぜ私はこうしつこく言うかというと、この憲法は、国民に平和憲法といって感謝されているのです。それですから、これをあなたは大切なこの三つの問題は堅持すると、こうおつしゃるから、ここに書いてあることを堅持せられるなら、国民は安心します。いいですか、平和憲法が今後もあくまでもくずされないでわれわれは持っていけるという、この安心があるわけです。ところが、一たびここにある平和とは、力の均衡によってかちとる平和である、こういうことになりますとだ、次に書いてあるいろいろな文句と相矛盾するばかりではない。根本的にこの憲法を貫いていっておる一切のものをやり直さにゃならぬ、こういうことになるのです。それですから私はこれを今明確にあなたから、この憲法は力の均衡によって平和を維持しようと念願しているのではないということを承認せられたのだから、それを変えないぞ、こういうことを明確に言っていただけば、国民は非常に安心するだろうと、こういうことを言っているのです。
  73. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 繰り返して申し上げることになりますが、平和主義という理想につきましては、何ら私どもはこれを変更するということを申し上げたことは一ぺんもございません。これはますます堅持していきたいということは、繰り返して申し上げたことによりまして、御了承を得たいと思うわけであります。決してこの憲法改正にうんと力をもって、その力によって平和を維持していこうという趣旨でないことは、もう繰り返して申し上げる必要もないかと思うわけであります。
  74. 木下源吾

    木下源吾君 私はまだ民主主義、それから人権の問題でお尋ねしたいと思うのですが、実は少しからだをいためているので、少し休んでやっていただきたいと思います。休憩を一つお願いします。
  75. 青木一男

    委員長青木一男君) 暫時休憩して、一時半から再開いたします。   午後零時二十二分休憩      ―――――・―――――   午後一時五十三分開会
  76. 青木一男

    委員長青木一男君) 休憩前に引き続き委員会を開きます。
  77. 田畑金光

    ○田畑金光君 吉野さんと山崎さんにお尋ねいたしますが、自民党の調査費料を拝見いたしまして、天皇地位についていろいろ再検討される意向を明らかにされておるわけであります。これに関連いたしましてお尋ねいたしたいことは、御承知のように明治憲法時代においては大日本帝国憲法と皇室典範というものが日本の成文憲法をなしていたわけであります。ところが新憲法のもとにおいては、こういう成文憲法の二元性といものをやめて、一元性を確立しておるわけであります。明治憲法時代になぜ皇室典範というものを成文憲法の中に入れたかということは、いうまでもなく、皇室に関する事柄については議会のコントロールの外に置こうという現われであり、反民主主義的な性格を持っていたものと言えようと思います。今回、憲法改正を論議され、また天皇地位の問題についていろいろ検討なされるわけでありますが、このことは当然皇室典範の問題についてもお考えになっておられると思いますので、一つ皇室典範に関しましてどういう考え方を持っておられるか、これを承わりたいと思います。
  78. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) まず私からお答えいたしますが、政府の方では具体的にどういう現在の憲法の条項を改正するか、しないかということは何らきめていないのであります。ただ憲法を全般的に検討をするということはよろしいであろうということだけでございまして、憲法の内容については何ら意見を持っておりませんから、従って今お尋ねになりましたことにつきましてもお話しするほどの準備は私持っておりません。
  79. 田畑金光

    ○田畑金光君 山崎さんの方では一つ自民党憲法調査会についてどういう取扱いをこの問題についてなされておるか、伺いたいと思います。
  80. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 天皇とそれに関連する皇室典範の問題でございますが、天皇の章について私ども問題点として掲げておりますのは、この調査資料に載っております範囲でございまして、皇室典範の問題を全面的に改正するとか、そういうことはまだ一向検討に入っておりません。事実そうなのであります。ただそれについてはお前の考えはどうだというあるいは御質問になるかと思いますが、私どもといたしましては、むろん現行憲法国会の決議した方針、この方針を変えることは考えておりません。
  81. 田畑金光

    ○田畑金光君 今はそういう考え方であるかと思いますが、いずれにいたしましても、憲法の全面的な改正を主張されておられる現在の政府、与党でありまするから、当然それの一環といたしまして、皇室典範の問題等についても将来取り上げられる時期がくるものと私は見ておるわけであります。山崎さんはこの両者の間に関係はないと言い切られるのかどうか、もう一度重ねてお尋ねいたします。
  82. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 自由党時代あるいは改進党時代憲法検討をいたしました際にも、皇室典範の問題で現行法の原則を変えるという意見はほとんど出なかったように記憶いたしております。今度の自由民主党の憲法調査会におきましまも、この問題はまだ全然検討をいたしておりませんし、また議論のないところを見ますると、現在の憲法の第二条の趣旨を変えるという意見は今までもかって出ておりませんし、また今後もおそらく、私はそういう意見等については多く出ないのではないか、わが党の調査会におきましては。しかしながら、内閣にできます調査会におきましてこの問題をどういうふうにお扱いになりますかは、これは設置後の問題であろうと考えるわけであります。
  83. 田畑金光

    ○田畑金光君 山崎さんの御答弁でありますが、昭和二十九年の十一月五日の自由党憲法調査会改正案要綱を読みますると、その説明書の中に明確に加えられておるわけであります。今般自民党調査会資料として出されましたこの案を拝見しますと、かっての自由党時代憲法調査会改正案要綱とほとんどこれは同一の精神、ねらい方においても大体これはほとんどと言っていいくらいに同じところを問題点として取り上げておるわけであります。その要綱説明書によりますると、こういうことが書いてあるわけです。「皇位継承については、皇室典範第一条を改正し、皇男子なき場合は皇女子がこれを継ぐものとする。皇女子が皇位を継承する場合におけるその配偶者は一代限り皇族待遇を受けるものとし、摂政となることができないこととする。」、これは言うまでもなく皇室典範の第一条が皇位継承の資格として、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」、この点に関しまして、当然将来予測されるような事態に対処して、これを単に皇男子のみに限定しないで皇女子にも皇位を継承しよう、こういように明確にうたわれておるわけであります。取り上げられておるわけであります。ましてや今日の憲法精神から見ましても、あるいはイギリスの王室等の現在の姿を見ましても、皇位継承の問題等については、当然これは男系の男子のみということでなく、こういう皇女子が継承するということもあり得ると思うわけで、現に、あなたは取り上げてないとおっしゃるけれども、ちゃんと説明書に載っておるのです。でありまするから、これは日程に上ってくると思うのですが、御存じないというのはちょっとおかしいですね。
  84. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私の申し上げ方が非常に足りなかったと思います。私の申し上げたのは、第二条の皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところによると、この国会の統制といいますか、国会がきめた皇室典範によるこの原則について何らの議論はなかった、こういうことを申し上げたつもりであります。あるいは言葉が足りなかったと思います。今御指摘になりまして、私もはっきり実は記憶を新たにしたわけでありますが、議論といたしましては、その女帝の問題といいますか、女の天皇といいますか、その問題は自由党時代には論議になったことを記憶をいたしております。しかしこれは結論的にそういうふうにやるべきものであるというような、私はこの要綱にはそういうふうにはっきりは出てなかったように記憶いたしております。論議の対象としてはそういう問題があったことは間違いないと思います。従ってそういう問題は、皇室典範の内容に関する問題でありまするから、憲法調査会におきましてもあるいは今後論議される問題かと思いますが、しかし現在の自民党憲法調査会におきましては、まだこの点については何らふれてないことは先ほど申し上げた通りであります。また、内閣にできますでありましょう憲法調査会におきましてこういう問題が取り上げられることも、私はあるいはそういう機会がきやしないかということは予想はいたされますけれども、むろんそれがどういう方向に向うかということは、これは調査会自体の問題でございまするから、調査会の御審議に待つ以外はなかろうかと、こういうふうに考えるわけであります。先ほど申し上げ方が非常に下足いたしまして、その点は追加して、ただいまの答弁で一つ御了承をいただきたいと思います。
  85. 田畑金光

    ○田畑金光君 山崎さんが旧自由党時代憲法調査会改正案要綱をよく読んでおられなかったということは、いささか不勉強と申し上げなければならぬと思う。この要綱の最初は前文になって、その次に天皇となっているのです。天皇の中でも一項から五項まで載っておりまするが、その五項でこういうことが書いてあるのです。「憲法改正の発議に天皇の認証を要するものとする」、これはいいですよ。その「附」として、「皇室典範を改正し、女子の天皇を認めるものとし、その場合その配偶者は一代限り皇族待遇とする。但しその場合摂政となることを得ないものとする。」明確にうたっているわけです。でありますから、もうすでに旧自由党の中でもこれが取り上げられてきている。今回皆さん方が憲法改正を全面的になさろうとするならば、当然憲法と皇室典範というのは、明治時代の歴史を振り返ってみて、しかも皆さん方の多くの人方が、これは多くの人方という表現を用いますが、旧憲法時代一つの郷愁にしておられる、あこがれておられる。なるほど、それは基本的な人権その他現行憲法のよさについては、決してこれを後退させよう、そんなことは考えていない、さようにお話しになりますけれども、その根本的なねらいがどこにあるかということは、およそ見当がついているわけです。そういうことをわれわれが考えましたときに、皇室典範について記憶がないなどということは不見識だと、こう思うのです。明確にこれは載っているのです。さらにまた、これに関連して当然問題になってくると思いますが、現行憲法が制定されました際にもいろいろ論議されたと聞いておりまするが、要するに皇位の継承というものが、天皇の崩御ということのみを理由にしているわけであります。今後こういう民主的な憲法のもとにおいて、また人間としての基本的な人権を尊重しなくちゃならん、あくまでも人間の自由と権利というものを守ってゆこうとするこの憲法建前からいうならば、天皇が一生皇位についておられる、こういうふうな点等についても論議が出はしないか、こう見ているわけです。すなわち天皇の存命のうちにおいて天皇の位を譲られる、譲位なされる、こういうような問題等が出てきはせんか。これは占領政策の前後においても天皇が退位なされる、こういうふうな問題等もしばしば――事実であったかどうか知らんが、どういういきさつがそういう報道を生んだか知らんが、そのような報道がなされたのも事実である。こういうようなことを考えるときに、皇室典範の検討とともに天皇の退位、こういうような問題等も当然取り上げられてくるのではなかろうか、また取り上げられていい問題ではなかろうか、かように考えまするが、この点について吉野さんのお考え並びに山崎さんのお考えを承わりたいと思います。
  86. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) 私個人の考えは、述べてもしょうがないと思いますから、差し控えたいと思います。政府としては先ほど申し上げた通りで、何ら具体的のことは考えておりません。
  87. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 自由党時代に、私が記憶がはっきりしませんために、いろいろ御迷惑をおかけしたような格好になりましたが、今の女子の天皇の問題は、確かに論議をされたことははっきり今記憶を新たにするわけであります。しかしこの問題として、自由党におきましては一応の結論が出ておりますけれども、これは非常に重大な問題でありまして、むろん憲法調査会ができまして、そういう調査会におきまして論議の対象になることはあり得ることだと予想いたすわけであります。ただ自由党時代におきましても、繰り返して申し上げますけれども憲法第二条の建前を変えるという議論は全然なかったのでありまして、皇室典範といえども国会の議決を要するという点につきましては、異論一つもないと記憶をいたしているわけであります。しかし、将来この問題が検討の対象になることはあり得ることであろうかと考えるわけでございます。
  88. 田畑金光

    ○田畑金光君 憲法第二条は、将来とも変える意思がない。これはけっこうなことだと思うのです。私のお尋ねいたしておりますことは、要するに皇室典範の第一条と第四条、この問題について当然これは憲法調査会等の論議の爼上に上る問題であると見られまするが、この点について提案者はどうお考えなされておられるか、これを承わっておるわけです。
  89. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 第二条並びに第四条につきましては、今まで自由党の憲法調査会以外ではあまり論議がなかったように記憶をいたしております。また今の自由民主党の憲法調査会におきましても、この点についてはまだ論議が進んでおりません。かって皇室典範の問題、あるいは第四条の国事に関しまする行為の問題、これについては多くまだ論議をいたしておりません。しかし、今度できます内閣における憲法調査会におきましては、私どもといたしましては、現行憲法の全面的の御検討をいただきたいという趣旨でございまするから、こういう問題に触れていろいろと御検討になりますることは私はあり得ることであろうと思っておるわけであります。
  90. 田畑金光

    ○田畑金光君 現行憲法を読んでみますと、言うまでもなく明治憲法のもとにおける天皇主権というものが否定されて、あるいは神勅主権と申しますかは否定されて、国民主権になっておるわけであります。ことに明治憲法のもとにおいては祭政一致ということが言われていて、政治とまつりごととが一つになっておる、こういう建前であったわけであります。しかし新しい憲法のもとにおいて、政治から神々が離れていく、取り去られる、政治と神々が分離されてくる、分離された、こういう建前になっているわけであります。こういうような一つ憲法精神というものは、言うまでもなく一九四六年の正月元旦における天皇の神格否定、人間宣言、こういうものになっていると見るわけであります。ただ最近、この間も触れましたが、いろいろ天皇の権威を回復するというか、天皇の権威を高めるためにいろいろな復古的な行事等が起きつつある。これは否定できないと思うわけであります。たとえば、これはどういうように見た方がよろしいかわかりませんが、鳩山さんも正月休みでしたか、伊勢皇大神宮に参拝されておる。また防衛庁長官になる人方は、ことに砂田防衛庁長官は勇ましく、伊勢神宮を参拝して、あそこで有名な放言をなしておる。こういうような事柄を見ました場合、伊勢の皇大神宮とかあるいは明治神宮に対する一つの信仰的な最近の傾向というものは、どうも復古的な傾向が非常に強い。それがある意味においてはまた明治憲法のもとにおける祭政一致というか、そういうような一つの現われと見ざるを得ないわけでありますが、こういう点について提案者としてはどういう考えを持っておられるか。さらに具体的に申しますと、天皇の権威を確立するために、いろいろ国事行為についても再検討されて、相当追加される御予定のように見受けるわけであります。こういうような点等を見ました場合、われわれといたしましては、かっての祭政一致のあの明治憲法の政治から今日の新憲法のもとにおける政治の発展というものを振り返りましたときに、時代の進歩というものを抹殺するというか、再び逆行する、こういう危険を感ずるわけでありますが、この点について提案者はどのようにお考えになっておられるか、承わりたいと思います。
  91. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私どもはたびたび申し上げておりますように、国民主権の大原則はあくまでも憲法検討の場合にも堅持して参りたいと、こういう前提で考えておることは申すまでもないところであると思います。また天皇国事行為につきまして、自由党の憲法調査会の結論として、現在の国事行為にやや追加をしておる要綱ができておったかと記憶いたしておりますが、こういう問題につきましても、今のわが党の憲法調査会におきましては、自由党の案も検討いたしておりまするが、あのままでいいかどうかということにつきましては、私どもはむしろ疑問を持っておるのであります。新たな立場で国事行為についても検討を今続けておるわけであります。なお自由党の憲法調査会におきまする結論が、天皇は元首として国を代表する、この言葉が非常に世上あるいは明治憲法の復活をはかるものではないかというような誤解も生じておるようであります。従いまして、元首という言葉につきましても非常に慎重な検討を要するというのが私どもの方の調査会の態度であります。決して天皇の政治上の実権を強化するというような考え方は、現在の調査会におきましても、一人も持っておらぬのが事実でございます。従いまして今御心配のような、私は明治憲法への郷愁というようなことは毛頭考えておりませんことを重ねて申し上げておきたいと思います。
  92. 田畑金光

    ○田畑金光君 元首という点については大へん慎重を期されているようでありますが、その御説明はわかりますけれども自民党憲法改正資料を一貫して流れる思想に、あるいはその方向をわれわれが追及して参りましたときに、名称は元首という名称を用いようと、実体は元首にしなければならぬ、これが偽わりない今の自民党考え方であり、政府考え方であると考えております。問題はしからば元首とは何かということになってきょうと思うのです。いろいろ憲法書等を見ましても、元首の性格としては、行政権の首長たる地位と国の対外代表権を意味しておる、こう書いてあるわけであります。要するに行政権の首長たる地位と対外代表権、この二つを持つ者が元首である。あるいはまた二つとも兼ね備えるということは近代的な憲法政治のもとにおいては実際上存在しない。君臨すれども統治せず、こういうような考え方からすると、対外的な代表権を保有している、こういう点で元首というように呼ばれているわけであります。こういうようなことをわれわれが考えてみましたとき、お手元の配布されました資料を拝見しますと、天皇が対外的に国を代表することを明らかにしよう、それがために国事行為について以下かくかくのものをつけ加えたい、こういうのが皆さん方の考え方であるわけであります。要するに今の象徴としての地位は非常に不明確である。この象徴的な地位に国の代表をなされる権能というものを付与するために国事行為というものをさらに追加される、こういう考え方でいるわけであります。そういうように、私たちがこう見て参りましたとき、名称、名目はいかような名目を使われるかはこれは別といたしまして、国を対外的に代表される、こうなって参りますると、これは当然元首の地位というものを私は予想しなければ、今日の憲法学説上それは私は説明できぬ、説明がつかない、かように考えるわけであります。たとえばこれは東大の宮沢教授の憲法書でありまするが、元首というのは国の首長のことで、外に向ってその国を代表する権能を持つ国家機関である。君主制のもとにおいては君主は通常この意味の元首である。ところが現行憲法のもとにおいては、日本天皇はそういう権能を持っていない。そこに皆さん方がいろいろ心配されておる不明確な地位だ、こういうことになってこようと思うわけであります。ところが今度は皆さん方としては、先ほど申し上げましたように、国事行為を追加して、天皇の権能、地位というものを強化されて、名実ともに対外的に国を代表される、あるいは国民に対しても天皇、象徴としての地位を強化される、こういうようなことを考えておられるわけですから、元首という言葉はともかくとして、国の対外的に代表なされる方は天皇であるという考え方のもとに憲法改正を考慮されておると私は思いますが、そう解釈してよろしいかどうか。
  93. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 大体田畑さんのお話通りに、私ども考えといたしましては、対外的に国を代表する者を明確にしたいと、こういう考えはあるわけであります。およそ各国憲法を見ましても、国の代表者が非常に不明確であるというような憲法は、私どもは非常に寡聞にして見当らないような気持がいたすのであります。そこで現在の憲法はいろいろ不明確なために、学説としても、日本の国を代表する者が天皇であるというふうに言い切る人もあります。また天皇じゃなくして総理大臣であるというふうに言い切る人もあります。あるいはまた天皇と総理大臣が代表権といいますか、代表する場合におのおの分担をしておるという説もあります。こういうふうに現行憲法につきまして、非常に国の対外的の代表者というものがはっきりしないと、こういう点は憲法検討の場合に十分に検討に値する問題じゃないか、これが私ども考えであります。これは私ども考えでありまするが、あるいはまた内閣にできまする憲法調査会におきましては、こういう考えに対して反対の御意見もございましょう。そこでこの調査会で十分御検討をいただいて、適当な結論をつけていただきたい。これが私ども憲法調査会内閣に設置していただきたいという理由の一つでございます。
  94. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういうように御説明を承わりますると、結局提案者としては、あるいは提案者というよりも自民党としては、現在の憲法のもとにおいて、対外的にだれが国を代表するか、いろいろ憲法論争の上においても分れておるし、憲法において不明であるからして、その不明を明確にして参りたい。そういう意味において、天皇というものを対外的に国の代表とする国家機関にはっきり規定してもらいたい、こういうことだと考えるわけですが、今の御答弁はそのように受け取ってよろしいかどうか。
  95. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私の先ほど御答弁申し上げました趣旨はその通りであります。ただしそういう場合におきましても、天皇に行政の権限を、実質上の権限を与えるという点は全然考えておりません。ただ国を代表するものが天皇であると、対外的に天皇であるという点を明確にする必要がわが現行憲法ではあるのではないか、そういう点を再検討の場合に検討をしてもらいたいと、これが私ども考えであり、またわが党の憲法調査会におきましてもその点を種々検討をいたしておることは事実であります。
  96. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういうような考え方でおられるとしますと、この間から繰り返して質問しておりますように、それははっきりと天皇を元首の地位に据えられる、こういうことになろうと思うわけであります。象徴という言葉でもって今お話しのような天皇が対外的に日本を代表される、そういうような一つ法律の構成あるいは解釈の確立、こういうこともできようかと思うのですが、はっきり申しますと、要するに今までの憲法上の常識から言うと、天皇を元首の地位に据えられる、こう解してちっともおかしくないと思いますが、どうですか、この点。
  97. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 昨日も堀さんからもいろいろ御意見が出ましたのでありますが、各国憲法を見ましても、必ずしも元首というはっきりした言葉を使っておりまする例は十カ国以内くらいであると思います。しかしながら、その国の憲法といえども、何人がその国を代表するということははっきりしておると思います。従いまして私どもは元首という言葉が非常な誤解を生ずるならば、他の適当な言葉もけっこうでありましょうし、そういう点は憲法調査会におきまして十分の御審議を願い、適当の結論を得ていただきたい。これが私ども考えであります。しかし繰り返して申し上げますけれども、そういう際におきましても、天皇に実質上の権限を与えるということは毛頭考えておりませんことをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  98. 田畑金光

    ○田畑金光君 九条の問題については、あるいはこれに関連して国防の義務等々については後日質問いたしますけれども、そういうように天皇地位を明確にされると、あるいは実質的には強化をされると、こういうことになって参りますと、いろいろ天皇の権威を強化するというようなこと等が考えられてくると思うのです。それはすでに先ほど申し上げたように、国事行為の追加の中に明確に出ておりまするが、そのほかに統帥権の問題等々も関連して当然取り上げられてくるかと考えられるわけであります。たとえば、自民党の資料によりますると、軍の最高指揮権は内閣総理大臣に置いて、政治に対し軍事の従属を明らかにしよう、統帥権の独立を、どこまでも統帥権の独立の弊害は厳に防止することにするが、要するに総理大臣に統帥権を持たすといっても、いろいろ政局の変動によって変っていく政党総裁であり総理大臣である、そういうことになってくると、軍事に対するいろいろな不安、動揺が起きてくる危険性がある。こうなってくると統帥権というものは単に総理大臣にある、それだけで十分でない。そこに何らか軍に権力を付与しなければならない、そういうような意味において天皇に軍の名誉的な地位についてもらう、あるいは軍の精神的な中心にすわってもらう、こういうようなことも当然出てくると考えられるわけであります。お話のように、元首にしても政治上の実権は何も天皇には付与しない、それはその通りであるかもしれぬが、同様に実際の統帥権は総理大臣が握るとしても、さらにその上に名誉的な地位というものを天皇に付与する、こういう形というものが生まれてくるとわれわれは見ております。それはなるほどそうなってくると、実質的には天皇は何ら政治権力を持たないといっても、結局名誉的な地位といっても、明治憲法のもとにおいてもまさにその通りの、国務大臣については、天皇は何ら実質的な権力は持っていなかった。輔弼ということによって、あるいは内閣が、あるいは総理大臣が、国務大臣が輔弼の責に任じていた、そういうようなことも明治憲法のもとにおいてすでにとられておる。そういうことをわれわれが考えたとき、先ほどの答弁を承わっておりますると、元首になられるということが、今言ったような統帥権等の問題についても、十分憂うべき現象が、将来あるいは危険な性格が出てくるものと私たちは見ておりますが、この点についてどうお考えになりましょうか。
  99. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 田畑さんの御心配でありますけれども、私どもといたしましては、かりに憲法九条第二項が改正に相なりまして、国力相応の、相当の最小限度自衛力、これがはっきり憲法の上で認められたという場合におきましても、その最高指揮権というものは当然に内閣総理大臣並びに国会の統制下に置くべきものだと考えております。また今、自由民主党の憲法調査会におきましても、その方向に検討を進めておるわけであります。御心配のような往時の軍閥の再現でありますとか、あるいはまた統帥権の独立であるとか、こういう弊害が絶対に起らないように、この軍の最高指揮権の問題は確立をすべきものだと考えており、またそういう意見が党内の調査会におきましても圧倒的であるということを申し上げておきたいと思います。
  100. 田畑金光

    ○田畑金光君 将来とも天皇と統帥権との関係については全然何らの関係もないのだ、またそのような関係は絶対に憲法の中に取り入れられないのだ、こういうように断言なされるのであるかどうか。ことに私がこうお尋ねいたしまするのは、あなたはまだお読みになっていないわけですが、先ほど私が読み上げた旧自由党の憲法改正要綱説明書の中にこういう言葉が出ておるわけです。それは「政党の総裁たる内閣総理大臣に軍の最高指揮権が帰することに対し、政局の変動等により軍に不安、動揺を与えるおそれのあることを考慮して、天皇が軍の名誉的地位にあって、その精神中心になるような構想も主張された。」、現にあなたの方の、古い自由党の時代においてはそういう議論も交換されているわけです。ことに天皇国民の道義的な中心、あるいは国民精神的な中心、こういうことになって参りますると、こういうような考え方は予測される問題だと思うのです。ことに今の自衛隊なんかを見ました場合に、自衛隊の一番欠陥というものは、精神的な支柱がどこに置かれているかという問題だと思うのです。あるいは編成やあるいは装備、こういうようなものはMSA援助によって、あるいはアメリカからの援助によってりっぱな装備を備え、あるいは近代的な編成を持っているわけです。しかしあれだけの外の形式を整えても、あれはほんとうに国民の側からいうと、安心して国土を守り得るのかどうか、こういう心配、また自衛隊内部からいうと、どうも影の軍隊と申しますか、さっぱりはっきりしないわれわれの立場であるというこの卑屈な気持、こういうことを考えたとき、自衛隊の支柱には、粕神的な支柱をどこに求めるかということだと思うのです。これは同町に国民においてもよく皆さん方が言われている国民道義の中心をどこに求めていくか、こういう問題につながってこようかと思うのです。そういうようなことを考えたととき、あなた方の古き調査会の中ですでに論議されたというこの統帥権と天皇との関係というものは、決して今後起り得べからざる杞憂ではない。私はかように考まえすが、この点どうでしょうか。
  101. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 自由党時代憲法調査会におきまして、ただいま田畑さんの御指摘のような議論があったことは事実であります。しかしその結論といたしましては、その説は結局取り入れられなくて、軍の最高指揮権は内閣総理大臣あるいはまた国会の統制のもとに置くということになったように私は記憶をいたしております。現在の自由民主党の憲法調査会におきましても、その考えをもって今調査を進めておるわけであります。将来内閣にできます憲法調査会におきまして、そういう議論が出ないということはこれは保証はできません。しかし私ども考えは今申し上げたような方向で調査を進めておると、これは現在の段階におきまする事実でございます。
  102. 田畑金光

    ○田畑金光君 あなたの御答弁を聞いておりますと、今はあるいはわれわれとしてはそういう考えを持っていないが、今後できる憲法調査会の中等においてはそういう問題が取り上げられるかもしれない、こういう答弁で一貫しておるわけであります。先ほど私の質問いたしました皇室典範の問題についても、今お尋ねいたしまする天皇と統帥権との関係等についてもそうであります。われわれはその今後持たれる憲法調査会においては取り上げられるかもしれない、このしれないということが、突き詰めていうと、皆さん方のほんとうの腹の底であろうと見ざるを得ないのです。この問題についてはこれはこうなって参りますると、何と皆さん方が弁解されて、あるいは現行憲法のよき精神は決して後退せしめないとお話しになりましても、国民は納得しないと思うのです。私の尋ねているような不安は多くの国民が、今政府の唱えておる、与党の唱えておる憲法改正の将来の構想というものはこういうものであろう、大よそこれは以心伝心持っているわけであります。そういうようなことを考えたとき、ほんとうに現行憲法平和主義あるいは主権在民、あるいは基本的人権尊重民主主義の擁護、こういう大きな柱を守っていこうとするなら、天皇と統帥権とに関する問題等は、今後設置されるであろうこの憲法調査会等においてもこれは論議の当然ワク外になければならぬ問題だと私は考えまするが、その点についてもう一度一つ提案者の考え方を承わりたいと思います。
  103. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私は先ほど申し上げましたように、かりに憲法九条が改正されまして国力に相応する最小限度自衛力というものが憲法上はっきり認められたということに相なりましても、その最高指揮権はあくまで内閣総理大臣あるいは国会の統制のもとに置くべきるのであるという考えを持っておるわけであります。ただ私どもはそういう考えを持っておりますけれども憲法調査会内閣にできまして、その調査会においてどういう議論が出るかということを今から予想しまして、これはもう絶対に天皇と統帥権の問題と関連のあるような議論は出ないであろうということをここで、私はこの憲法調査会ができる前から保証するわけには参りません。こういうことを申し上げておるわけであります。かりに憲法調査会に資料を出すような場合には、私ども考えをできるだけ主張したいと考えておる次第であります。しかもその考え方は、今申し上げますように、軍といいまするか、自衛力といいまするか、その最高指揮権はあくまで内閣総理大臣並びに国会の統制下に置くべきものである、こういう考え方であることを繰り返して申し上げます。
  104. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御答弁を繰り返しますと、自由党の憲法調再会では、自衛軍に関する最高指揮権を天皇の権限に加うべきだという有力な意見があったけども、今はそうではない、こういうことを言っておられますが、その点は自由党憲法調査会改正案要綱の中に、自由党にはこれはあったということを書いてあります。前の方は読みませんが、「政党の総裁たる内閣総理大臣に軍の最高指揮権が帰することに対し、政局の変動等により軍に不安、動揺を与えるおそれのあることを考慮して、天皇が軍の名誉的地位にあって、その精神中心になるような構想も主張された。」、これははっきり響いてあります。そこでこれは御否定にならないと思うのですが、もう一ぺんそれについて、自民党としては、それから今の提案者には、そういう考えはないのだ、はっきり御否定になりますか。あるいは自民党の人はそういう意見はおそらくそのまま受け継がれておるのでありますか、強さはともかくとして、あるのか、その点を一つ。それからもう一つは、総理大臣が国会か、こういうお話、非常にその辺がはっきりいたしませんが、これは総理大臣が指揮権を持つということになりますと、これは行政の長が、内閣総理大臣として指揮権を持つ、こういうことになる。それから国会が持つということになりますと、これは立法機関、国会が最高機関であるかないかということは大へん問題でありますけれども、一応行政機関ではないということだけはっきりしている。その国会が軍に対する指揮権と申しますか、あるいは行動についての決定をするかどうかという点も含まれておるのだと思うのでありますけれども、総理大臣が持つということと、国会が持つということとは、これは大きな違いであります。かりに最小限度自衛組織を持つとしても、一兵といえども、一艦といえども国会の監督のもとに置くべきだ、こういう強い主張がございます。従ってその辺をあいまいにされることは、私は論理的なあいまいだけではございませんので、その点は明らかに一つしていただきたいと思います。
  105. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 自由党の憲法調査会におきまして、ただいま吉田さんの御指摘のような議論のあったことは、この記録の通りだと思います。ただいま私ども考え先ほどはっきり田畑さんに申し上げましたように、いかなる場合におきましても往時の軍閥の圧制、統帥権の独立のごとき弊害を生じないように、軍隊の最高指揮権はあくまで政府及び国会の統制のもとに置く考えであります。国会政府との関係でありまするが、かりにそういう組織ができましても、その組織に対しまする、たとえば軍ができました場合にその編成、これは法律によることは当然であろうと思います。またその予算につきましても当然国会の議を経べきものであると思います。その他国会の持ちまする監督権は至るところに私は及んでいくものと考えます。ただ実際の指揮をする者がだれであるかということになりますと、やはり政府の最高責任者であります内閣総理大臣ということになると思うわけでありまして、国会政府との関係はその点では私は明瞭になることと信ずるわけであります。
  106. 吉田法晴

    吉田法晴君 重ねておそれ入りますが、前のような統帥権が独立をして、政治のコントロールの外に出てしまう、こういうことは繰り返したくない、これはわかります。それはそれでわかりますが、しからばそういう意思がどういう建前になることによって貫かれるか、そこが問題だろうと思う。これはかりにあなたたちのような自衛軍を持つべきだという御意見にしても具体的な方法だろうと思う。ここには「天皇が軍の名誉的地位にあって、その精神中心になるような構想も主張された。」、それから別のところに宣戦講和の布告は天皇がやる、こういうことが自由党案の中にあるわけです。そうすると前のような統帥権の独立というものはこれは避けたい、そうして政治から離れて軍隊が一人歩きをする、こういうことはやめたいと言われるけれども、大泉が宣戦布告をされる、宣戦講和の布告を天皇がするとあなたたちの案に書いてある。それは単に軍の名誉的地位にあると書いてありましても、あるいはそれが精神地位であるということになっても、具体的に別に、国事行為なら国事行為ということの中に宣戦講和の布告ということが書いてあれば、これは進言があっても、まあ進雷と天皇との関係は、政府との関係は別にあれいたしますけれども、そうすると天皇で宣戦講和、まあ講和の方はあと回しにして、軍を戦争に動かす、こういうことは天皇のこの権限としてできる、それは進言がありましょうとも、こういうことになれば、これはあなたの言われるような統帥権の独立というものはなくなるはずなんだけれども、なくなるという希望を持っておられる、あるいは説明をされる、説明をされますけれども、そうならなくなるこれは可能性が出てくるわけであります。そこで抽象的な表現でなくて、宣戦、講和の布告ということについての天皇規定をされることと関連して、自民党の中にどういう考え方  それをやらんのだと言われるなら、これは別問題です。天皇が軍の名誉的地位にあって、その精神中心になるような構想もない、あるいは宣戦布告も天皇国事行為の中に加える考えもないと言われるなら、そんなら承知いたします。しかしそういうものがある限りにおいて、言われるようなそれは、希望的な観測になります。そこでもう少し具体的に御説明願いたい。
  107. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 自由党時代憲法調査会の結論といたしまして、天皇国事行為の中に、宣戦の布告、講和条約の締結というような点が掲げてあることは事実だろうと思います。しかしその考え方も、むろん賞戦にいたしましても、講和にいたしましても、国会の議を経た上で天皇がこれを決定せられる、こういう建前であったかと考えられるわけです。(「国会はないですよ」と呼ぶ者あり)しかし宣戦布告でありますとか、講和条約の締結でありますとか、こういうことを憲法の中に、この再検討の場合にうたうか、うたわんかということは、これは非常に私は問題だろうと思います。今自由民主党で検討いたしますのは、その点まではむろんいっておりまんけれども、私自身といたしましては、宣戦の布告とか、あるいは講和条約の締結ということを予想して、憲法の中にうたうということについては、非常な問題だろうと考えておるわけであります。
  108. 田畑金光

    ○田畑金光君 今個人としてはこう考えるというお話があるわけですけれども、要するに今の自民党憲法改正に対する考え方をみますると、第一に国民よりも国会というものに強い地位を与える、第二には国会よりも内閣に強い地位を与えよう、第三には内閣よりも天皇に商い地位を与えよう、こういう一貫した思想が流れているわけであります。これは旧自由党の資料等を見ましても、国の安全と防衛、この中には、たとえば今も話が出ておりましたが、軍の編成、維持、こういうような問題等について、あるいはまた戦争並びに非常事態の宣言、軍事特別裁判所、軍人の政治不関与並びに権利義務の特例等、軍事に関する最小限の規定を設ける、また国防に協力する国民の義務並びに戦争または非常事態下における国民権利義務の特例について別途考慮する、こういうように国民権利の制限あるいは国家に対し行政権の強化、こういう思想が強く流れているわけであります。私はついでにお舞ねしておきますが、先ほどの御答弁の中に国防の義務、こういうものを規定しようという話がありましたが、この国防の義務あるいは国防に協力する義務、また国家に対する忠誠の義務、これはどういう考え方の上に立って憲法機構上、どのような役割を占めようとするものであるか、これについて提案者の考え方を承わっておきたいと思います。
  109. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 自由党の憲法調査会におきまして、ただいま田畑さん、御指摘の通りに、国防の義務等、その他二、三の義務を追加すべしという結論を出しておることは事実であります。ただしかしながら、私どもはこの義務規定につきましては、今度できております自由民主党の憲法調査会におきましては、相当考究を要する点があろうかと思うわけであります。ただ国土防衛の義務ということをこの調査会の調査資料の中に掲げておりますのは、各国憲法を見ましても、国土防衛の義務というものをほとんど、あるいは自由主義の国におきましても、あるいは共産主義の国におきましても、それぞれ規定があるわけでございます。こういう意は参考にして検討を加える必要がありはしないか、こういうことで検討をいたしておる段階でありまして、こういう点こそ今度のできます調査会で十分御審議をいただかなければならん問題であろうと、こういうふうに考えるわけであります。
  110. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ大いに憲法調査会で各般の問題について検討を加えることはけっこうなことだと思います。提案者といたしまして、ことに提案者は現在自民党憲法調査会の会長もやっておられると聞いておりますが、そうでしょう。そういうあなたが国土防衛等についてのどういう構想なのか。あるいはそれが憲法上において憲法機構の中にどんな地位をあるいは位置付けようとなされておるのか等たについ考えがないはずはないと見るわけであります。国土防衛の義務あるいは国防に協力する国民の義務ということは、往々にしてあるいは国民一般としては兵役の義務、こういうようなものに関連して考え勝ちであります。ところが兵役の義務は全然考えていないのだ、こういうお話があるわけであります。国防に協力する義務というものを一方に期待しておいて、同時にまた一方においてはその兵役の義務というものを規定しないとするなら、国隣に協力する義務というものは実体のないものになりはしないか、こう私たちは湾えておるわけです。すなわち言葉をかえて申しますと、ほんとうに国防に協力する義務、これを憲法でうたい国民にそのような強い精神的なものを求める、こうなって参りますると、当然にそれは兵役の義務というものにいかなければ国民に対する義務を要請するということは、不可能と、こう見ておるわけですが、この点についてどうお考えになりますか。
  111. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私どもの方の考えております国土防衛の義務と申しますのは、かりに急迫不正の侵略でもあった場合に、国民全体が国土を守る、こういう義務を考える必要がありはしないか、そういう点を検討をいたしておるわけであります。この国土防御即徴兵制度というような考えは毛頭持っておりません。また御承知のようにわが自由民主党としましては、徴兵制度はしかないということを天下にはっきり政策の上に公表いたしておるわけでありまして、この国土防衛の義務と徴兵制度とを結びつけて考えておるわけでないことをはっきり申し上げておきます。
  112. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、例に引かれましたように急迫不正の侵害等を受けた場合に、国民国土防衛に立ち上る、これを期待されることは当然だと考えますが、まあかりにそのような最悪の事態が発生したような場合に、さて国民国土防衛の協力を要請されて、それが事実上協力体制ができなかった、そういうようなことになった場合にはこれはどうなるわけですか。
  113. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私どもただいま申し上げますように、そういう場合には国民全体が国土防衛の義務を持つという必要はありはしないかということで、国土防御の義務を憲法検討をしておるわけであります。それが、直ちにそういう場合にそれでは国民を徴兵をして国土防御に当らせるという方法考えて、そういう前提のもとにこの国土防御の義務を考えておるものではございません。
  114. 田畑金光

    ○田畑金光君 徴兵の義務はしかないとおっしゃいますが、それはよろしいです。そのような説明を一応了承することにいたしまして、ところがこういう国土防衛の義務は国民に課せられた義務でありますから、それはある程度国民に対する強制力というものを国土防衛という性格上当然これは予測されるわけであります。自発的な協力に待つ、そういうようなものではないと思っております。国土防衛に対する義務というからには、それは何らかの精神的な、時には肉体的なある程度の強制を伴う、こういう一つの義務観念というものが裏づけられなければならぬ、でなければ国土防御の義務といっても、それは無慮味な単なる言葉に終るわけです。そのように急迫不正の侵害がかりにあった、この場合に国土防衛に対する国民の負担する義務というのは、どういう形で発動すべきものであるのか、また皆さんはどういう形で国民が協力することを期待しておられるのか、この実体について私は承わりたいと思うのです。
  115. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 万一急迫不正の侵害がかりにあったといたしました場合に、国民国土防衛の義務を遂行するためには、各職域におきましてそれぞれ防衛の義務を果し得られるものと私たちは考えるわけであります。具体的にはそれではどういうことかということは、今われわれは申し上げる段階ではないと思います。十分今後検討を加えたい、こういうように考えておるわけであります。
  116. 田畑金光

    ○田畑金光君 あなたのお話を聞いておりますると、国土防衛義務というのは、何か国土上防衛隊、郷土防衛隊、こういうものを考えておられるように印象づけられるわけです。ところが国土防衛の義務というものは、皆さん方は節九条を改正して、最小限度自衛隊は憲法でも明確に持れるのだ、その裏づけとしての国民に対する防御義務というものを私は予定されていると思うのです。そうではありませんか。
  117. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 先ほども申し上げましたように、各国憲法を見ましても、国土防衛の義務というのは相当多数の国が実は憲法の上に掲げておるわけであります。従いまして、かりにわが国において急迫不正の侵害があった場合、国土防衛の義務ということにつきましては、憲法検討の価値がある問題ではないか、こういうことで問題点として掲げておるのでありまして、今具体的にそれではどういう郷士防衛隊を考えておるかというような御質問でありまするけれども、そこまで私どもははっきり考えをまとめてこの国土防衛の義務を検討の題目にしておるわけではございません。
  118. 田畑金光

    ○田畑金光君 答弁が非常にあいまいで、模糊としてつかみどころがないのです。とにかくあなた方としては最小限度自衛軍隊を打ちたい、すなわち第九条の第一項についてはまあ大体このままにしておいてもいいが、この第二項等については改正して、解釈上の紛議の起きぬように改正して参りたい、こうお話しなさっているわけです。そうなって参りますると、当然憲法改正ということは再軍備、こういうことを明確に前提としておるわけであります。そういうような再軍備体制を憲法上でも明確にうたった場合に、憲法上の他の面において国民国土防衛の義務を貧打をする。こうなって参りますると、国土防衛の義務というものは、あるいは最小限度自衛軍隊の面において、あるいは今あなたのお話しのように急迫不正の侵害があった場合にそれぞれの職域においてこれに協力するのだというような考え方等において、国民のそれぞれのそれに対する協力義務というものを予定されておるものと考えるわけです。その意どうですか。
  119. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 先ほども繰り返して申し上げましたように、国土防衛の義務というものば他の国の憲法にもたくさん掲げてあるわけでございます。(田畑金光君「それはわかっております」と述ぶ)そこで私どもは、この急迫不正の侵害ということも万一起り得ることも考えなければならぬと、そういう場合にこの各国憲法がとっておりまする国土防衛の義務につきまして、憲法検討の際に一つ十分検討をしたいということで個々の問題点を掲げておるわけでありまして、その国土防衛の義務が具体的にそれじゃどうなるかというような検討はこれからの問題であります。また内閣調査会におきましてもそういう問題を御検討願いたい、これが私ども趣旨でありまして、具体的にそれじゃどんなことを考えておるかということは、今日の段階ではまだそこまで調査が進んでおりません。
  120. 田畑金光

    ○田畑金光君 私、具体的にお尋ねいたしますが、今提案者の御説明のように、憲法改正によって国民国土防衛の義務を憲法上負うことになった、その場合今例に引かれました急迫不正の侵害があった、このような場合に、国民は当然国土防衛の義務としてそれぞれの職域で立ち上らなければならぬ、こういうようなことが一応あなたの仮定を想定しましても予測されると思うのです。そういう場合、現在の憲法の第十八条に奴隷的拘束及び苦役からの自由、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」、この奴隷的拘束及び苦服からの自由、この第十八条との関係はどうなるかということです、私がお尋ねしようと思っておりますことは……。すなわち憲法上に国土防衛の義務が課せられた。私はそのような義務が出て参りますると、当然国民というものは精神的にも肉体的にもある程度の強制力、こういうものにさらされると、こう見るわけです。そういうような場合に、今の憲法十八条に規定いたしておりまする「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。」、こうなっておりまするが、そういう急迫不正の侵害等が行われた場合において、国土防衛の義務上第十八条というものの適用というものは停止されるのかどうか、この点はどう御解釈なされるか、吉野さんにまず私は伺いたいと思います。
  121. 吉野信次

    国務大臣(吉野信次君) お尋ね憲法条文解釈でございますから、法律担当の政府委員の方が適当だろうと思います。(田畑金光君「憲法担当の国務大臣に承わりたい」と述ぶ)
  122. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) この国土防衛の義務を掲げました場合に、十八条との関係いかんというようなお尋ねでございます。実は法律的に申しまして、そういう場合があることを前提として、その場合の法律解決ということを実は研究をしたことはないわけでございますので、さしあたり思いつくままを申し上げることになると思いますが、もし、そういう規定が入りますといたしましたならば、一つにはこの十八条の規定をどういうふうにまた修飾をするかという問題もございましょうし、それからまたこれはそのままといたしましても、国土防衛の義務というものは、ここにいわゆる苦役というものではないという解釈の仕方もあると思います。具体的にこれはこうだろうというはっきりした御答弁を申し上げ得ないのは申しわけないと思いますが、おのずから解釈なり、あるいは立法的に事を明らかにするというやり方もあると思いますが、こうなければいけないというようなことは、今申し上げる段階ではないというふうに考えます。
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の御答弁は、今申し上げる段階でないということは、最初にお話しにあったように、国土防衛の義務というものを想定して、そのような義務の条項と第十八条との関係がどうなるのか、これについてまだ十分の検討をしていない、こういうような御答弁であると承わってよろしいのかどうか。
  124. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 今申し上げたのは、私正直に申し上げたわけでございますが、もう一ぺん繰り返して申し上げますれば、国土防衛の義務というようなものが果して十八条にいう「その意に反する苦役」というものに入るかどうか。もし入るといたしますならば、その辺の調整が必要でございますし、いや、国土防衛の義務というのは、これは神聖な義務であって、荷役に服するような、苦役に入るようなものではないの、たというような解釈もできないことではないと思います。(「逃げるな」と呼ぶ者あり)それは私確言して申し上げるわけではありませんが、そういう場合にどうなるかという考え方といたしましては、その二つ考え方があるだろうと、こう申し上げるわけであります。
  125. 田畑金光

    ○田畑金光君 二様の解釈ができると、あり得ると、こういうお話で、大へん、どうもあいまいで納得が参りませんが、私が十八条に関連して先ほどからお尋ねいたしておりますことは、当然国土防衛の義務、こういうものになって参りますると、一方においては国民は固有のその民族防衛に対する国防上の義務を負担しなければならぬ、こういうような考え方のもとに、当然十八条との関係が問題となってくる。そこで節十八条の建前からいうと、現在の描法のもとでは、これは兵役の義務というものは第十八条との衝突からできないと私は見ておるわけです。現在の憲法のもとでは第十八条との関係からこれはできない、こう思うのです。しかし、一方において兵役の義務というものが――国防の義務というものが出て参りますと、当然十八条の関係から見ましても、これは兵役の義務という問題が表面化してくると、こう考えるわけです。でありまするから、言葉をかえて申しますと、国防の義務というものをもし憲法にうたうならば、当然第十八条との関係で兵役の義務というものが表面に出てこなければ、国防上の義務食掛ということは、先ほど来申し上げておるようにこれは空文に終ってしまう、こういうように見ておるわけですが、この点について山崎さんはどうお考えになっておられるのか。私が先ほどお尋ねしておるのは十八条との関連でお尋ねしていたわけです。
  126. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 国土防衛の義務ということは、私ども憲法検討問題点として各国憲法等にも実例がございますので掲げただけであります。従いまして十八条の関係がどうなるとかというような点の検討は、そこまで進んでおりません。ただし、先低どから申し上げますように、国土防衛の義務ということを研究課題として掲げておりますけれども、これは当然に兵役の義務ということを予想してれ書かれたものでないということだけは、はっきり申し上げることができると思います。
  127. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連。田畑君のお尋ねしておるのは、この国土防衛の義務を規定するということになると、兵役の義務あるいはその他の、たとえばかっての国家総動員法による国民徴用というか、その他国土防衛のいろいろな義務を具体的に法律規定をするということになるではないか、こういうことをお尋ねをしておるわけです。それから必ずしも兵役の義務が出てくるとは限らない。しかし、そういう規定を作りますならば、そこから兵役の義務を規定した、具体的に帆走した法律が、兵役法というか、あるいは徴兵法というか、必ずしも全面的な徴兵、ばかりでないかもしれませんけれども、そういうものが法律規定し得る根拠になるのではないか、こういうことをお尋ねしたのだと思います。それにまず御答弁を願いたい。
  128. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 先ほどからたびたび申し上げまするように、私ども国土防衛の義務ということについて、現行憲法検討の際に検討をいたしておりますのは、兵役義務を前提としてこういう意味検討をしておるものではないということを申し上げておるわけであります。いわば道義的な義務といいますか、そういう範囲検討しておることを御了承をいただきたいと思います。
  129. 吉田法晴

    吉田法晴君 ところがそれは、憲法上にはそういう規定を設ければ、法律であるいは兵役の義務といいますか、そういうものを規定することができることになるじゃありませんか。自由党のこの調査会改正案要綱を見ても、「旧憲法の兵役の義務を削除したのは第九条の武装放棄の結果として当然であろうが、」云々と書いてある。お認めになっているじゃありませんか。兵役の義務を削除したのは、第九条の武装放棄の結果として当然であろう。そこでこの第九条を変えて、国土防衛の義務というものを憲法上掲げるならば、それから兵役の義務を引き出すこともできるだろう。あるいはその他の徴用というか、国土防衛にいろいろな義務を課する法律を作ることができる。あるいは兵役の義務の中に徴兵制度を入れるか入れないか、それはわかりませんけれども、そういう法律規定し得るではないか、そういうことが可能になるではないか、こういうお尋ねをしている。それを御否定になるでしょうか。それは憲法規定は一般的な規定でありますから、そこからそのまま徴兵制度あるいは兵役の義務が出てくるとは、それは言えぬかもしれぬ。言えぬかもしれませんけれども、そういう法律を作り得るこれは結果になる。そのことは自由党にしても、逆に兵役の義務を削除したのは九条で武装放棄をした結果だ、だから「外敵の侵入等の場合之を防衛することは国民の当然の義務であるから」、「これを憲法に明記すべきである。」こう書いておられる。どうなんです、それは。ごまかさぬで答弁して下さい。
  130. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私ども国土防衛の義務を検討課題として掲げておりますのは、先ほどから繰り返して申し上げますように、徴兵義務というようなことを前提として考えておるものでないことは申す京でもない点であります。ただ国土防衛の義務ということを掲げますると、それから当然に徴兵の義務ということが法律的に、法律をもって規定されやせぬかというお尋ねでありまするが、そういうことを私ども考えておるわけじゃございませぬ。またソ連の憲法等を見ますと、国土防衛の兵役義務と徴兵の義務というものははっきり書き分けて規定されておるような実例もあるわけであります。ただ私ども検討しておりますのは、兵役義務ということを、繰り返して申し上げまするが、前提としての国土防衛の義務ということではないことをはっきり御了承をいただきたいと思うわけであります。
  131. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではもう一回重ねて聞きますけれども、それでは徴兵制度の、これは国民皆兵というか全面的な徴兵制度、あるいは選抜徴兵制にしても、徴兵制度を全然実施するつもりはない、そういう意味のことを意味するような根拠になるような九条の改正はやらぬ、それから兵役の義務がそこから出てくるような憲法改正というか、条文書くつもりはない、こういうことなんですか。そうするとそのほかに残るものは何と申しますか、先ほどお話がございましたが、急迫不正の侵略の場合に国民国土を防衛するその他の義務ということになる。あるいはそれは竹槍を持ってあれするのか、ほうきを持ってするのか、バケツを持って走りかけるのか、しりませんけれども、とにかく何といいますか、法律によってその具体的なあれは規定をするでしょうが、兵役の義務の残す国土防衛の義務というものを規定したい、そうするとたとえば今自衛隊なり何なりについて精神的な支柱がない云々という話がありますが、それとこの憲法改正とは関係がないのだ、少くとも国土防衛義務という点から言いますならば、自衛隊の精神的な支柱がないから云々ということからくる国土防衛の義務とか、そういうものを規定する考えはないのだ、こういうことなんでしょう、もう少し明らかにしていただきたい。
  132. 山崎巖

    衆議院議員山崎巖君) 私ども国土防衛の義務というのは、繰り返して申し上げますが、徴兵義務を前提として考えておることではございません。ただ、国土防衛は国民が防衛に当るということが、私どもは道義的にも当然考え得られる問題である、こういう点を検討しておるわけであります。ただ徴兵の義務ということになりますと、これは非常な重要な問題であります。また先ほどもあげましたように、各国憲法を見ましても、徴兵の義務ということは特に一条を掲げておる憲法もあるわけであります。そういう点も、徴兵の義務ということをかりに考えるとしますならば、私は国土防衛の義務のほかに、憲法におきましてもあるいははっきり別に規定を設ける必要があるいは起りはしないか。私どもは少くとも徴兵の義務ということを前提としてこの防衛の義務を考えておらないことをはっきり申し上げたいと思います。
  133. 青木一男

    委員長青木一男君) 本会議の関係で、本日はこの程度で散会いたします。午後三時二十四分散会