○
田畑金光君 法律あるいは
憲法専門の先ほどの次長の説はよくお聞きいたしまして、ようよう混迷に入ってきたわけです。(笑声)それで
吉野担当大臣は
憲法担当にきまったというので、大いに
憲法学書等も数冊買い込んで御勉強なされたということを新聞でも聞きましたので、私は
相当これは権威のある御答弁を承われるものだと思ってお尋ねしたわけですが、先ほどのそれはそれとして、
山崎さんの御答弁を承わりますと、これはそうしますと、
憲法第九条第一項をそのように解釈するというのは、佐々木博士の論だけを引いておられますが、承わりますと、私
たちの読んだ限りにおいては、佐々木惣一博士は少数説だと思っているのです。こういう佐々木博士の
考え方をさらに徹底されたのが清瀬現理論だと承わっているのです。そう少数説の
代表的なものを一般通説と、こう書かれたのでは、これは
国民を惑わすもはなはだしいものではなかろうか。それで承わりますが、あなた方の第九条の解釈を聞いておりますと、単に何ですよ、第九条について「国際紛争を解決する手段としては、」この言葉にあなた方は重点を置かれて、国際紛争を解決する手段としての戦争と、国際紛争を解決する手段としての戦争以外の戦争があり得る、こういうあなた方は二様の
立場に立って御答弁をしておられるのですよ、あなたの先ほどの御答弁を承わっておりますと。そんなばかげたことは、これは少数説の
憲法学税にわれわれはすぎないと見ておるのです。さらに私はあなた方のお説を聞いておりますと、
日本国
憲法の前文というものを全然見ておらぬじゃありませんか。この前文の中には、「
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」と明確にうたわれておるのです。これは「
政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」というのは、侵略戦争であろうと自衛戦争であろうと、とにかく
政府の行為によって、あなたがたがさっき言う、一国と一国の話し合いがつかなかった、それはどちらの側に責任があるかということは、これは別個の判断に待たなければならぬ、とにかくそういう事実
関係から戦争が起きてきた、これは今までの歴史です。今までのあらゆる戦争の経験です。そういうことを見たとき、「戦争の惨禍が起ることのないやうに」、明確にこれはわれわれは決意しておるのです。
さらにまたその次に参りますと、「
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の
関係を支配する崇高な理想を深く自覚するものであって、平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと意した。」ここに決意がありますよ、決意が。そうしてさらにここにわれわれは、
国民は恒久な平和を一つ戦い取ろうじゃないかという、新しい理想を持ってわれわれはそれに努力しようじゃないかという決意を表明せられております。この前文をあなた方はどう見ておるのか。
さらにまたこの前文の最後に、はっきりうたっておるじゃありませんか。「
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇尚な理想と目的を達成することを誓ふ。」私
たちのこの平和主義というものは、従来のあるいは
憲法概念や従来の平和と戦争とのそういうような概念からは、割り出し得るものではない、新しい
立場に立って
憲法を定めた。新しい決意を持って平和主義を戦い取ろうという決意を明確にうたっているのがこの前文です。そういうようなことを
考えて、さらにもう一つ私は
提案者にもよく
考えもらいたいのだが、この第二章をよく見て下さい。第二章は戦争の放葉ということをはっきりとうたっているじゃありませんか、戦争放棄ということを。さらに第九条の第一項をあなた方のような解釈をとるといたしましても、第二項に明確に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」こうして戦争を放棄する、戦力を持たない。さらに前文、これを読んでみた場合ですよ、読んでみた場合、この第九条の
内容をどう解釈するかということは、大きな、これは重質な問題だと、こう思うのです。その場合に第一項の解釈にいたしましても、私
たちは「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に
希望し、」この国際平和をいかに達成するかというところに第二項の
内容の重点はあると、こう思うのです。その
立場に立って
考えたときに、あなた方の先ほどからの解釈を聞いておりますと、国際紛争を解決する手段としての戦争、また自衛のための戦争、こういう二つの戦争というものがあり得る。こういう前提の上に立って、そうして後者の場合は、すなわち自衛のための戦争、これは第九条は前提として
考えていないのだ、こういうような
憲法解釈をとっておられるのですよ、ここに根本的な食い違いが出ておるのです。それを改めようといっても、あなた方は少数学説を取って、いやこうだ、
政府の解釈はこうだと、こういわれておるので、これはおそらく食い違いが出てくるでしょう。そういうように私は第九条を解釈するのに、
憲法の前文、あるいはこの
憲法を守っていこうとする
国民の決意、こういう点をあなた方はまるっきり無視をされておる、どうでしょうか、
提案者に私は伺いたい。(「威儀を正して答弁」と呼ぶ者あり)