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1956-04-26 第24回国会 参議院 内閣委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十六日(木曜日)    午前十時四十三分開会     —————————————   委員の異動 四月二十五日委員川村松助君及び小笠 原二三男辞任につき、その補欠とし て西郷吉之助君及び木下源吾君を議長 において指名した。 四月二十六日委員木下源吾君及び永岡 光治君辞任につき、その補欠として亀 田得治君及び岡田宗司君を議長におい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            野本 品吉君            宮田 重文君            千葉  信君            島村 軍次君    委員            青柳 秀夫君            井上 知治君            井上 清一君            木村篤太郎君            西郷吉之助君            佐藤清一郎君            江田 三郎君            岡田 宗司君            亀田 得治君            田畑 金光君            吉田 法晴君            廣瀬 久忠君   衆議院議員            山崎  巖君            古井 喜實君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    国 務 大 臣 吉野 信次君    国 務 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    法制局長官   林  修三君    総理府恩給局長 八巻淳輔君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和二十三年六月三十日以前に給与  事由の生じた恩給等年額改定に  関する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○憲法調査会法案衆議院提出)     —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) これより委員会を開きます。  委員変更についてお知らせいたします。四月二十五日、小笠原二三男君、川村松助君が辞任されまして、その補欠木下源吾君、西郷吉之助君が選任されました。  四月二十六日、木下源吾君が辞任されまして、その補欠亀田得治君が選任されました。     —————————————
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 昭和二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた恩給等年額改定に関する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑を行います。
  4. 吉田法晴

    吉田法晴君 今度の改定で大よそ不均衡是正はできるということでございますが、なお、若干残るのではないかと思いますが、恩給局ではどういう工合考えておられますか。
  5. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいまのお尋ねでございますが、今回の法律措置によりまして、昭和二十三年六月二十三日以前にやめました方と、それ以後の方との不均衡というものは大体において解消する、こういうふうに考えております。ただお尋ねの若干残るのではないかという点につきまして、おそらくこういう点をお考えの上でのことではないだろうかと思うのでございますが、すなわち教職員とかあるいは警察職員というような、特に警察職員につきましては給与改善が著しく行われておる、こういう方々については相変らずアンバランスが残るのではないだろうか、こういうふうなお尋ねではないかと思うのでございますが、この点につきましては、今回の増額措置は、あくまでも一般公務員というものを中心にして考えまして、そういう方々中心にして考えました場合に、二十三年六月三十日前後の不均衡は解消されると、こういうふうに考えている次第でございます。
  6. 吉田法晴

    吉田法晴君 御設例になりましたような、教職員なり、警察職員なりについても残りますけれども、なお、一般公務員についても完全に不均衡是正が残るのではないのではないか、こういう疑問が残るのです。それではこれで、二十三年以前ということについてはアンバランスが完全になくなるというならば、どうしてアンバランスが生じたか、そしてこういうことによってアンバランスが完全になくなるのだという御説明一つ願いたいと思います。
  7. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 二十三年以前の退職者と、二十三年以後との関係の不均衡を生じたという原因といたしまして、それ以前にやめた方の恩給につきましての基礎になっておる俸給の根源というものは、結局官吏俸給令というものであったわけでありますが、二十三年を境にいたしまして新しい給与体系、すなわち何級何号というような職階制に基くところの給与体系に移り変ったわけであります。従いまして以前に判任官一級俸であったという方が、果してこの給与体系が変りました後において何級何号に相当するか、こういう問題があるわけでございます。現実に判任官一級俸であった人が、その新給与体系に移り変っていくという実態を見ますと、相当広い幅でもって、下は八級俸から上は十級俸というような、幾段階かに実際の態様においては分れて切りかえられておるわけであります。その幾段階かの切りかえの間におきまして、どれを前の判任官一級俸と同一であるというふうに見るかという問題において、まあ問題があったわけでありまして、この見方の問題としまして、低目に見ておけばあとの人の方が割が悪くなるというふうなことはなかったわけであります。そういう意味で最初は低目に見ておったのですが、昭和二十七年の法律二百四十四号というものによりましてそれが是正されてきた。なおさらに、まだ不均衡がある、こういうので今回の増額措置をすることによって、大体中間的なところへ対応させるような考えでこれを是正していくということになったわけであります。
  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 中間的なところに直していくというお話しでございましたが、仮定俸給年額新旧比較表によりますと、引き上げ号俸数字はいわゆる中間的なところと申しますか、五号俸引き上げが行われている。これを中心にしてではございませんけれども、三号俸、四号俸引き上げておるところもある。上の方は従来のこれは給与是正もございましょう。それからその給与の何と申しますか、改訂に伴う仮定俸給表是正恩給法上の是正がこれを反映して中位のところに置いて、あるいは六級五号から八級八号程度のところで一番矛盾があった、不公平があったという実態がまあ出てきておりますが、それは二十三年六月までのものを直した場合の矛盾だと思うのでありますが、それがそれではその後の改訂、あるいは今回の改訂で完全に直ったということが説明をされなければならぬと思うのでありますが、もう少し具体的に御説明を願いたいと思います。
  9. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) この切りかえの実態につきまして考えました点と、それからたとえば判任官一級俸をもらった方々が新しい給与体系職階制の中に入り込んだ場合に、大体どのくらいのクラスの人であろうかというふうな制度的な面から眺めて、このくらいであろうというところを押えたわけであります。たとえば判任官一級俸というところを例にとりますというと、現在すなわち昭和二十七年の法律二百四十四号で考えました当時は、いわゆる九級三号というところで課長補佐の下位あるいは係長の上位というところで抑えておったのでありますが、今度こういう判任官一級俸の人がどういうふうな地位をもつべきであろうかということを考え直してみました場合に、一般部門についてみますと課長補佐の中ほどの地位係長としては最南に近い地位というふうに考えまして、これを十級職二号というところに持ってきたわけであります。で、これを切りかえの実態に徴しましても、昭和二十三年七月の切りかえで判任官一級俸の人がどういうふうになったかということを見ましても、大体十級二号というものを中心に見ていくということが、大体の実態に即するということの確信を得たわけであります。まあ以下それと同じような方法を講じまして、それぞれの対応の号俸をきめた、こういうことでございます。
  10. 吉田法晴

    吉田法晴君 話はちょっと横道にそれますが、今度是正をしなかった上級と申しますか、号俸の上の方の職員については、二十三年以降についても、何と申しますか、妥当な取り扱いを受けた。それから今度五号俸是正をされた諸君はずいぶん長い間いわば不当な取り扱いを受けてきたわけでありますが、不均衡があるからそこで是正をされる。そうしますと、ここ数年の間というもの、何と申しますか、ずいぶん不当な取り扱いを受けてきたわけでありますが、これはまあ過去の不当でありますが、そういう不当、不均衡というものが何の理由もなしに、あるいは何のカバーもなしに、これはこのまま行くものなのでしょうか。納得しがたい点がございますが。ついでに所見を承わりたいと思います。
  11. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) この昭和二十三年六月三十日前後の不均衡是正と、こういう問題につきまして、昭和二十七年の法律二百十四号はこれは議員提案でなされたのでございますが、これによりましてその当時は一応この不均衡は解消したと、こういうふうに考えていたわけでございます。しかしながらその後なお問題の是正ということにつきまして、いろいろ御意見がございましたので、しかもまた昨年の国会におきまして付帯決議として是正指掛を検討せよ、こういうお言葉でございましたので、その後検討いたしました結果、今回の増額措置を得た、こういうことになったわけでございます。
  12. 吉田法晴

    吉田法晴君 経過はわかります。経過はわかりますが、ほんとうはべース改訂せられ、それと相前後して恩給法上の仮定俸給是正せられる、こういうのが当然の措置でしょう、ほんとうを言いますと。ところがそれがその通りに行かなくて、恩給の方の改訂がずっと遅れている。しかも二十三年に改訂されても、上の方はまあ妥当なと申しますか、その点について給与改訂がそうだからということもございますが、恩給法上についても優遇せられたというか、給与にスライドした恩給法上の待遇を受けてきた。ところがそうでないものは、特に今度五号俸も上げてきたものについては、この何年というもの不当な取り扱いを受けて参ったわけであります。それは今この前の付帯決議に従って今度直すのだと、経過はわかります。経過はわかりますけれども、そういう失われた、不当な待遇というものを行われてきたその待遇というものは、これはどうなるのですか、あるいは不当の待遇に対する救済はどういうことになるのかと、こういうことをお尋ねしているのです。
  13. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 先ほど申し上げましたように、過去における是正措置が逐次講ぜられて参りまして、それはそれとして、その後の財政事情その他諸般の状況にかんがみまして、それはそれとして是正されて参ったわけでございます。なお、完全になされておらないという点の付帯決議もございまして、それに基いて今回の改訂措置がなされたと、こういうわけでございます。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、説明はもう聞いているのです。ですから説明を聞いているのじゃないです。今度の改訂理由、それから措置、これは提案理由説明なりその他で伺うことができるのですが、それではこの恩給法上の恩給を受ける権利と申しますか、これはどういうものなんでしょうか。恩給とは何か、あるいは恩給を受ける権利というものは何か、こういう疑問が起って参りますが、その点についてはどういう工合にお考えになりますか。
  15. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 恩給を受ける権利と申しますと、公務員恩給年限に到達いたしまして退職いたしますと、その退職時の俸給基礎にいたしまして恩給が支給される、こういう原則になっています。問題は退職時の俸給がずれて参りますと申しますか、その後変化して参ります。べース・アップであるとか、その後の給与体系変更とかで変化して参る。その場合に、退職時の俸給をどれと同一的にみるか、こういう擬制が起ってくるわけであります。その擬制方法についての当否という問題が出ておるわけでございまして、今回、その是正措置付帯決議もございまして、今回の是正を行なった、こういうことでございます。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 説明ですがね。まあ退職時の俸給基礎にして恩給を受ける権利を持つ。ただし、給与改訂があるから擬制を要する。いつの俸給にマッチするかということの当否を検討するのだ、こういうお話ですが、これは不均衡是正をしなければならぬということで、その不均衡のよってきたるところは、この給与変化、物価その他による給与変化、ベース・アップといいますか、給与がだんだん上ってくる。これは下るときも同じことだろうと思うのですが、そこでどういう工合にならせばいいか、均衡をとればいいかと、こういう問題でしょう。その場合に二%ずつかけてきた、そうして退職後は、退職時の俸給基礎にして恩給を受け得る、こういう権利恩給法から発するということは、まあ異議ありませんが、そうすると一つ期待権といいますか、退職後においては恩給を受け得る、退職時の俸給基礎にして恩給を受け得る権利があるはずです。しかもその俸給基礎にしてというその俸給変化があるならば、俸給調整をするということは、あるいは均衡をとるということは、これは当然の措置であろうと思います。その後給与変化があったら、これは恩恵で直してやるのだ、国で、権利はないのだけれども直してやるのだということでは私はなかろうと思います。そういう点についてまあ所見を伺ったのですが、たとえば完全に今までそういう点で調整がなされなかった事態の責任をどうするのかということをお尋ねしたのであります。具体的にもう一つ、今度の改訂で問題になります点を引き合いに出してお尋ねをいたしますが、たとえば今度の何といいますか、是正をされた諸君については、その差額を六十才に満ちる月までは停止をする、こういう点がございます。普通の場合は五十五才、それにこの場合だけなぜ六十才まで停止をするのか、この場合は恩恵であるというなら、これは勝手にきめることはできましょう。しかし恩給を受ける権利というものがかりにあるとするならば、私ども先ほど申しますように、それは期待権を含んで権利があるとするならば、これは当然五十五才に達して、六十才にならない前に、今までの条件でこれは支給されなければならぬ、こう考えるのですが、そういう点については、どういう工合にお考えになりますか。
  17. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 今回の措置におきまして、六十才以上の受給者に対して今回の増額分をプラスする、こういうことにした意味は、今回の対象となります人員が全体で二十万三千人ございます。これをこの通り実施いたしますというと、年間といたしまして十六億六千万円の財政支出となるわけでございますが、国家財政現状並びに恩給費現状にかんがみまして、できるだけこれを詰めていくという意味考えまして、今回の増額措置は六十才以上の老齢者に対してこれをいたそう、こういうことにいたしまするというと、十三万五千人という者が対象になるわけでございまして、その費用が大体十億八千万円ということになるわけでございます。こういうふうな財政的な面からの制約と申しますか、そういうふうな面を考えまして、今回の増額措置につきましては六十才以上の方だけにしていただきたい、こういう考え方で六十才という線を引いたわけでございます。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ何のことはない、理屈はない。とにかく財政上の理由だけで六十才にした、あるいは六十才以上ということにした、それから是正にしても二十三年以降の分については云々ということですけれども、まだべースの点から言うと、全部が今の一万五千べースに直るわけではないように承知をいたしますが、そこにも問題が残っております。とにかく金の点から言うて、これだけしか金がないから、こういうことにしたのだ、こういうことですか。
  19. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいま申し上げましたように、今回の増額措置はそうした財政的な面並びに六十才という今回の増額につきましては、六十才以下のまだ労働能力があるという方には、これはがまんをしていただきたいというような観点に立ちまして、六十才以上の方々に対して措置を講じた、こういうことでございます。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つ財政上の理由がおありのようですけれども、それはあとで聞きます。六十才までは労働能力があると、こういうことですが、同じ国の法律で、ほかのところでは、五十五才になったら労働能力がなくなった、この改訂案だけ六十才まで労働能力がある、こういうことにまあなるわけですね。労働能力があるかないか、これは一応の標準でしょう。しかし個々の人について労働能力があるかないか、仕事があるかないかということは、これは個々に調べなければわからない。問題は法律上いつまで労働能力があるかということですが、ほかの法律では五十五才で労働能力がなくなって、この法律だけが六十才まで労働能力があるというのはどういう理由ですか。
  21. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 大体六十才という目安をおきましたのは、戦傷病者遺家族援護法におきましても、遺族年金を受ける受給資格というものを六十才にしぼっております。また厚生年金におきましても、六十才という一つ目安を引いております。また一般職職員給与に関する法律におきまする扶養家族手当対象になる年令におきましても、六十才というふうな目安をおいておりますので、それらを参考といたしまして、今回の措置によりまして、六十才という線を引いてきたわけであります。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどは六十才にしたのは金のせいと言われる。今じゃほかの制度でも云々と、ほかの制度とおっしゃるけれども、たとえば厚生年金傷病年金についても、これは法の精神が違いましょう、制度が。それからたとえば老後生活といいますか、社会保障としての老後生活水準というものもこれは問題になると思います。おたむね生活保護法についてもそうですが、日本の場合には、最低生活、それも国際的な最低生活水準以下のものをみておるわけです。それと恩給生活水準考えておる、受けておった退職時の俸給の三分の一云々というのは、これは考え方が違うと思うのです。同じ恩給法の中で普通の場合には、五十五才、今度是正をする人だけについて六十才ということは、これは理屈が合わぬ。しかも先ほど申し上げますように、同じように一%なら一%、また最近二%、二%かけてきた、そして自分のかけたものもあります。それから国から支給する分もございますが、これは恩恵で国が与えるというのならばとにかく、その他の諸君については退職時の給与の三分の一をもらえる、こういう建前になっておる、それから今働いておる場合には、それは退職後については同様のとにかく期待をもっておりましょう。給与変更があれば給与変更があるに応じて徴収もそうでありますが、支給の方についても給与変化に応じてこれはやはり支給さるべきでしょう。そういう建前の中に、これだけどうして六十才までは停止をするのだ、こういう理屈がたちましょうか。理屈はたたぬでしょう。ほかの制度理由をもってこられましたけれども、ほかの制度水準も違います、考え方も違いますが、それでもってこの人達だけについて停止をするという理由にはならぬと思うのです。どうでしょうか。
  23. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 先ほど申し上げましたように、国家財政の苦しい中からこの増額措置をしなければならぬ、こういう状況の下におきまして、ここに一つのそうした社会政策的と申しますか、そうしたほかの立法における面の措置というものを、ここに取り入れまして、そうした線を引く、こういうことが必要な措置ではないか、こういうふうに考えた次第であります。
  24. 千葉信

    千葉信君 関連質問局長にお伺いしますがね、今回のこの二十三年六月三十日以前に給与事由の生じた諸君に対する不均衡是正提案については、あなたの方の提案理由説明によりましても、二十二国会衆参両院の行ったそれぞれの内閣委員会決議趣旨に沿ってお出しになっておられる。その決議趣旨にありますように、その給与にしても恩給にしても、当然その額が公正なものでなくちゃならない、適正なものでなくちゃならない。同時にやはりこういう問題はですね、不均衡があったり、不公平があったりするということは、あくまで避けなければならない。そういう意味で二十三年の六月以前のものとその以後のものとの不均衡があるから、これは至急こういう不均衡是正しようという決議趣旨なのです。あなたの方でもその趣旨を尊重して、今回法律案提案されるということになられた。その場合に、ただいまの六十才という制限をすると、六十才未満の者との不均衡が今回の改訂によっても起る。あなたの方でこれ以上もういかんとも財政上の措置が不可能であったという理由ならばまだしも、私どもその点についてはある程度考慮する余地があると思う。しかしそれを局長の方でああでもないこうでもない、厚生年金の問題、それから公務員給与における扶養手当問題等理由として、何かそこにこういう基準をきめたことに根拠のあるかのような答弁をされるということになると、これは問題は少し紛糾すると思うのです。この点どうですか。それからもう一つ大体普通恩給等にいたしましても、恩給失権年令というのは私の承知する限りでは大体平均年令六十五才でしょう。六十五才の平均失権年令だということになると、今回の措置は大体五年間だけがある程度均衡是正されて、従来のその他の二十三年以降の受給者の場合には、四十五才からそれぞれの減額措置を行なって支給されておる、五十五才の人たち、そういう人たちとの不均衡がこの法律によってかりに是正されたとしても、平均失権年令が六十五才程度であるということになれば、これはほんとうにこの法律はまさに申しわけ程度に過ぎないということに結論としてはなると思うのですが、この点はどうですか。   〔委員長退席理事宮田重文君着席〕
  25. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいまの私の説明が必要以上に六十才の線の説明を強調した点につきまして誤解を招いたようでございますが、問題はやはり御指摘のように、国家財政現状にかんがみまして、やむを得ない措置といたしまして六十才、こういう線を引いたわけでございます。(「そんならそうとはっきり言えばいいじゃないか」と呼ぶ者あり)また失権年令の点でございましたが、全体といたしまして今回の対象となるものが二十万三千人ございますが、その六割五分というものが大体六十才以上の方々でございますので、大部分と申しましょうか、その三分の二がこれによって特に同令者が均霑を受ける、こういうことになると思っております。
  26. 千葉信

    千葉信君 今の数字、ちょっと違っておりはせぬですか。あなたの方からいただいている資料によってみましても、六十才以上というのは五六%以下、つまり五五・九%という、そういうことになっていて、今の御答弁数字とは少し違っておりはせぬですか。十、十一ページでしょう。
  27. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) この昭和二十三年六月以前の退職者の数、並びにその中で六十才以上の方がどのくらいおられるか、こういう計数につきましては、私、申し上げた通りだと思います。
  28. 千葉信

    千葉信君 わかりました。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君 今度の是正の分について六十才まで停止をするという点は、主として財政的な理由で、ほかの理由はつけたりだ、こういうよう率直なお言葉でありましたが、これはどういう理由によるんでしょうか、この改訂によって、先ほど数字が述べられましたが、私の聞くところでは、三十一年度においては、三十一年のこれは四・四半期分だけ予算が計上をしてある、言いかえると、三十一年の十月から十二月ですか、以降受給権の発生する分について、あるいは整理をして、事務的に整理されたものについて三十二年——暦年でいうと三十二年の一月以降支払うのだ、こういうお話でありますが、その他のものについてどうして同じように支給しない。ただひたすら財政上の理由だけだろうと思うのでありますが、三十一年度なら三十一年度から実施をするとして、法律施行のときから発生する、これは権利であるかないかということは一つの問題ですが、私は従来と違って、名前は恩という字はついておりますが、これは民主政治のもとにおいて一つ権利だと思うのでありますが、あるならば三十一年度初めから受給資格者について、事務の整理がおくれたとしても、さかのぼって支給をするというのが穏当でなかろうかと思います。同じ一年の中で途中から実施をするというのは、おおよそ四分の三なら四分の三のものについては一年分は支給をしない、この法律改正の恩典に浴させないというのはどういう理由なのか承わりたい。
  30. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 今回の増額措置は、今年の十月分の支給からいたしますと、こういうことでございます。すなわち先ほど申し上げましたように、六十才以上の方々が十三万五千人、これに平年額としては一年を通じてこれを支給いたしますと十億八千万円になるわけでございますが、これを四分の一、すなわち三カ月分、ことしはさしあたり三カ月分だけにして、すなわち十、十一、十二と、この三カ月分が来度の一月支給になるわけでございます。そうして一、二、三というものは三十二年度予算に組まれるわけでございまして、三十一年度予算では十月から実施するといたしますると、十、十一、十二の三カ月分が計上されるわけであります。すなわち今年度の予算におきましては二億七千万円が計上されておる、こういうことになっております。すなわちこの増額措置は六十才以上の人についてこの十月分から支給しよう、これに見合う予算措置が今年度の予算におきまして二億七千万円計上されておる、こういうことでございます。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 その事実は知っている。事実は知っているが、なぜそれでは法律改訂されて、施行期日は公布の日からということになっておるということでありますが、そうすると、三十一年度の初めから三十一年度分についてはこれは受給権ができると、こういうことになります。十月以降の分だけになぜ限るか、どうもやはり頭の中に、局長なりあるいは関係者において恩恵的にやるという考え方が私はあると思うのです。法律が通ったらこれは受給権ができて参る、十月以前の諸君が、なぜおれにはやらぬのか、こういうことを言って参ったら、これはどうしますか。あるいは裁判所に訴えたらどうしますか。この恩給法上の権利ができた・それが十月以降の分にしかやらない、従って二億七千万円しか支給がされない、こういってきたらどうしますか、裁判所に訴えたら私はとれると思う。
  32. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) この法律の施行は公布の日から施行するわけでございますが、実質的な内容におきましては、この現実の給付というものが発生するのが十月以降であるということでございまして、公布の日からその請求権が発生するということではない、こういうふうに考えております。
  33. 吉田法晴

    吉田法晴君 どうして公布の日から請求権が発生しないで、十月以降請求権が発生するのですか、財政上の理由だけから、金がないから。金がないから十月分以降だけにしかやらない、それではその間におれは公布の旧から請求権が出たのだからくれ、こうして裁判を起したらどういうことになりますか。
  34. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 先ほど申し上げましたように、予算は二億七千万円ということにきまっております。それに見合って第三条では「十月分以降」、こういうことに規定してございます。従いましてその請求権は十月分から発生する、こういうふうに考えます。
  35. 吉田法晴

    吉田法晴君 私の主張に対してお答えはないのですが、普通はとにかく法律施行の日から請求権なら請求権ができるはずですが、それは論理的にはあるのだけれども法律で十月以降としてあるから、あるはずの九月末日までに発生したる請求権はこの法律によって否定する、こういうことですか。
  36. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) この法律で否定するというのではなくして、新らしく十月分以降にそういう権利が生ずる、こういうふうに考えております。
  37. 吉田法晴

    吉田法晴君 ですから、どういう理由で四分の二の十月前のものについては支給できないということができ、十月以降の分だけ支給をするということができるのですか。法文を拝見いたしますと、一条一項の末段でしょうが、これを拝見して、これはどうしてそういう不公平ができるでしょう。その法理的な理由一つ伺いたい。財政上の理由だけならまあ別問題です。
  38. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 財政的の、予算面で二億七千万円という三カ月分の予算を組んでおりますし、第一条にも「昭和三十一年十月分以降」と、こう書いてございます。従ってこの法律の実体面から申し上げまして、十月分以降この新らしい額による給付がなされるということが法律そのものとして規定される、こういうことになるわけでございます。
  39. 吉田法晴

    吉田法晴君 ですから理屈がなくとも何でもできる、法律できめるなら、勝手な法律をあなたの方で書いて勝手にできる、だれにやろうと、それからどの者にやりどの者にやるまいと、それは勝手である、そういうことはないでしょう。まあほかのアンバランスもでしょうが、従来のアンバランスについてもでしょうか、三十一年から実施をするというのに、法律にこう書いておいたから、十月以降の分だけにやればいい、その以前のものについてはやらなくともいい、理屈がなければ、恩給局でこれはあなた方が書かれたのでしょうが、書きさえすれば、法律に書いたらそれが通るのだ、こういうことではこれはやっぱり民主主義ではない。何かやはり理屈がなければならぬ。不均衡是正というけれども、それはやっぱり同じ恩給を受ける者の中でアンバランスがあるから、そのアンバランスのよってきたところは俸給改訂なり何なりであるが、それを是正しよう、その是正しようとする措置の中で、少くとも三十一年度なら三十一年度に受給資格のできる者の中でアンバランスができる。そのアンバランスについて法律にこう書いてあるから——それじゃ説明になりません。もっと実質的な説明を願わないと、これは恩給受給者もですが、私どもは納得することができません。もう少し実質的な説明理由に納得のゆく説明一つ願いたい。   〔理事宮田重文君退席、委員長着席〕
  40. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) この法律で十月分以降ということにいたしました点は、先ほど来申し上げましたように今年度の予算でこれに対する経費といたしまして三カ月分を計上することになったわけでございます。財政事情が許すならば、もっと計上するということもできたでございましょうけれども財政事情からいたしまして三カ月分を予算に組んだということからいたしまして、これに合わせて十月分から支給する、改訂するということにしたわけであります。
  41. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、さっきのと同じことですけれども、要するに金がないからそういうことに、本年度こういうことで、実際理屈はまあないでしょう。もう一つお尋ねをいたしますが、これで是正はあれですが、一万二千八百二十円ベースですか、そうしますと、今のベースは一万五千円ベース、この不均衡はいつ是正なさるおつもりなんでしょうか。まだ不均衡と申しましても、ベースとそれから恩給法上の仮定俸給基礎になりましたベースとは食い違いがあるようですが、それはどういうおつもりなんですか。
  42. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 昭和二十九年の一月一日から一般公務員給与は二万五千円ベースになったのでございますが、現在の恩給のベースは一万二千円ベースでございます。これを二十九年一月一日以降のものとの関係において一万五千円ベースにするということについての問題につきましては、国の財政事情等から考えまして、将来において十分検討をしていかなければならないとこう思っております。
  43. 吉田法晴

    吉田法晴君 将来考えたいと……。財政事情が許すならばベース改訂されれば恩給法上の仮定俸給はこれはスライドするのが原則だ。財政事情が許せばなるべくスライドするのが、是正されるのが建前だという点はこれはお認めになりますね。どうですか、それは。
  44. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 必ずそれについてと申しますか、それに必然的にということではございませんけれども、過去の恩給増額におきましてもベース改訂がございましたそのあと追っかけて逐次是正はされてきております。それもまた国家の財政事情と十分にらみ合せの上、これをやっておる、そういうふうな実態でございます。
  45. 吉田法晴

    吉田法晴君 最初の質問にかえりますけれども。ですからそういう点で恩給局と申しますか、政府はどういう工合考えられるかということなんです。この法律の実施に関連をして旧軍人の恩給がどうなるかという問題がございます。それでそういう意味で旧軍人の恩給があれは一部で言われたように旧恩給法上の既得権であったのか、あるいは全然新しく新しい法律によって恩給が付与されることになったのか。私はまあ旧軍人の場合については軍人というものがなくなった。憲法さえ変った。私は既得権があったとは考えません。この恩給については、いわゆる文官恩給といわれる恩給については、これは継続してございましたし、あるいは掛金もかけてこられた、あるいは支給も続いておった、法律も続いて参った。そこで比較にはならぬと思うのでございますが、しかし実際にはどうなるかということが、これはあろうかと考えます。従ってそれについてこれは局長ですけれども、政府の方針と申しますか、意向を承わりたいと思います。
  46. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいまの趣旨は今回の増領と軍人恩給の関係はどうかと、こういうお尋ねだと思います。で、今回の増額は文官における縦の線の二十三年六月三十日の前後を比較しての問題という判定に立ちましての措置でございます。従って直接軍人恩給と関係は一こういう増額措置をいたしましたからといって、直接軍人恩給との関係ということは生じない、こういうふうに考えております。
  47. 吉田法晴

    吉田法晴君 それはそうでしょう。直接にはない。あるいは理論的には関係はないと考えますが、実際的にはと申しますか、あるいは政治的には関係がないと言い切れるかどうか。そこであなたがこれは恩給局長一人おられるのですから、政府を代表しておられるということになります。それはおれの答弁の範囲内でないと言われるならば、あるいは担当大臣を呼んでもらわなければなりませんが、これは政府じゃないけれども、あるいは自民党の政調会での御意見等もあるようです。それからあるいは旧軍人等においてこの恩給法改訂がどういう工合になるかというあれもあろうかと思います。そこであるいは政府の意向か、政府の意向でなければ恩給局のお考え方でもいいですが、はっきり伺いたいと思います。
  48. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいま申し上げましたように、直接関係はない、こう申し上げましたが、間接の関係はそこに出てくる。こういたしましても、今回の措置をやったからすぐにどうこうと、こういう問題はないと思います。従いましてもしも間接な関係において何らかの増額というような問題が出ましたにいたしましても、それはそれといたしまして、別途今後の国家財政その他の諸般の事情を考えて検討していかなければならぬという問題だと、こう考えます。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっとさっき聞き落しましたが、一万五千円ベースに直すためにはどの程度の金が必要なのでしょうか。
  50. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 精密な計算をいたしてございませんけれども、一万五千円ベースに文官の恩給を引き直しました場合に約二十億以上の金がいるのじゃないだろうか、こういうように考えております。それがまた旧軍人におきまして昨年一万二千円ベースにいたしました。また四号俸引き上げるというふうな是正措置をいたしたわけでございますが、これがまた旧軍人についても一万五千円ベースをやると、こういうことになりますと、またこれが大体九十億前後の金が要ると、こういうことになるわけでございます。従いまして両方合せますというと百十億前後というものがいるのではなかろうかと。ただこれは精密な計算をしておりませんから、あるいはもっとふえるという可能性があるかもしれませんけれども、ただいまのところ大体の目安としてはそんなふうに考えております。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、もう一ぺん返りまして、旧軍人恩給というものについての恩給局考え、それから今の文官恩給の一万五千円ベースへの所要資金二十億円、これは財政事情が許すならば改訂をしたい、こういうことであります。それから軍へ恩給の一万五千円ベース改訂への所要資金九十億前後、これについてどういう態度か、まあそのときはそのときの話と、こういうお話でありますが、これに対する態度をもう少し伺いたい。恩給局所見を伺いたい。
  52. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 問題は文官の恩給を一万五千円ベースにもっていくにいたしましても相当金がかかる。従いまして財政事情というものを考えてやらなければならぬということになりますし、もしそれをやりますならば旧軍人にもそういうような問題が起るだろうということになるわけでございまして、これとてもやはり財政の観点から、果してそれが可能であるかどうかというようなことが検討されなければならないわけであります。問題はあくまでもそれと将来の国家財政あるいは恩給費全体の趣向と申しますか、成り行きというものを考えて決定しなければならない、こういう問題だろうと思います。
  53. 吉田法晴

    吉田法晴君 将来というお話ですけれども、問題はあるわけですね。たとえば一万二千円ベースに直した。あと二万五千円べースに直さなければならぬ所要資金は二十億、もしこの法律が通ったならば、あるいは軍人恩給の点について旧軍人から要望があるかもしれない。それについてどう考えるか、あるいは恩給費全体としてもやはり考えなければならぬのじゃないか。すでにこの前の、これは主として旧軍人の恩給ですが、増額その他から合せて一千億になんなんとする国費が出る。従って恩給亡国論という議論が相当強く院内でも出ましたが、あるいは院外と申しますか、新聞雑誌等世論に強く反映をいたしておる。その要求と、それから財政事情あるいは国全体の財政考え合せてどうするかという大きな問題があるのであります。事実はお話になりましたけれども、方針は何にもない、方針らしいものは……。あるいはこれは大臣にお尋ねをすることかもしれませんが、あるいは政府全体の問題かもしれませんが、ここにおいでになりませんから、もう少し方針らしいものをお伺いしたい。こういう問題がございますという御説明だけ、あるいは恩給全体について少くともこの程度で何とかしたいというお話がございましたから、それについて恩給費全体云々というお話がありましたから、それについて考えがあるのか、問題の列挙、羅列だけでなく、所信を一つ伺いたい。
  54. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 恩給につきましてのいろいろな問題があるわけでございまして、これをどういうふうに、逐次と申しますか、それを給い上げて問題を解決するかということの問題は、あくまで国家財政全般のワクの中で一体恩給問題というものをどういうふうなウエートを置いてと申しますか、どの程度の割合において考えるかという問題ともからみ合ってくるわけでございまして、一がいにどうこうというわけにいかないのでございまして、そのときそのときと申しますか、将来の財政事情等十分にらみ合わせて検討して参る、こういうことになろうかと思います。
  55. 島村軍次

    ○島村軍次君 関連して。ただいまの問題はきわめて重要な問題だと思うのでありますが、現在の恩給総額が予算に出ておるのですが、総額が幾らで、そして今回の改正によって——総額分はわかりますが、年額、このまま推移するとすれば、たとえば五年先にはどういうふうになるかという見通し、あるいは今後現状のままで行ったら増額がどの程度になる、こういうことに対する将来の見通し、同時に先ほど吉田さんもお話しになったように、必ずしも現在の恩給額は、ベースにおいてもあるいはまた旧軍人の恩給額においても、理論的には恩給の観念からいっても必ずしも適正であるとは認められないと思うわけです。そこで私は先般審議しました三公社の共済制度に関連をした恩給制度考えますと、現在の恩給では大体国庫負担が八割以上にもなっておる。しかるに共済組合の制度によりますと五五%、こういうふうな割合になっておるので、漸次国家の財政の見地からあるいはまた国全体の施策の上から、社会保障制度との関連において、あるいはまた他の産業開発なり国民経済、国民生活安定の上から、一体どういう助成をすべきであるか、あるいはまた軽減率もこの程度に上げて将来の財政負担をこうやるべきであるという問題が残ってくると思うのです。それに関して恩給局長はどういうお考えをお持ちになっておりますか。なお本問題に関しては大蔵省なりあるいは責任のある大臣の御出席を得て、これに関する所見一つ承わりたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  56. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいまの御指摘の点につきましては、将来の恩給制度という問題がどうあるべきか、こういう点でございますが、人事院勧告におきましても公務員に関する退職年金制度が勧告され、また内閣に置かれました公務員制度調査会におきましても、その答申の一環といたしまして、恩給制度に関する答申がなされております。これを受けまして、現在内閣の公務員制度調査室が中心になって、今後の新しい公務員の年金制度というものをどう持っていくかということを研究することになっております。でその年金制度におきましては、御指摘のような社会保障制度との関係、あるいは共済組合との関係等、総合的に勘案いたしまして、恒久的な新しい公務員退職年金制度を打ち立てようというねらいを持っておるものでございます。この仕事が将来の課題として残される、そういうことでございます。
  57. 島村軍次

    ○島村軍次君 現在の恩給総額は幾らですか。それから将来の−このままとして約五年後にはどういうふうな大体の見通しですか。
  58. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 今年度の恩給費の総額が、文官恩給費、旧軍人恩給費と合せまして八百九十八億九千万円と、こういうことになっております。将来の推計におきましては、まだ確実な統計資料というものをつかんでおりませんので、それに立脚いたしましての数字というものがはじけないという段階でございますけれども、文官恩給費におきましては、約十億前後の自然増がございます。それからまた旧軍人恩給費におきましては、昨年の増額措置が、三十二年度におきましては、年間を通じて行われるというようなことになりますので、大よその検討といたしまして、来年度が、現在の措置のままで参りますと旧軍人恩給費の山になる、こういうことになっております。従いまして来年度は、推算といたしまして今年の約九百億が九百五、六十億になるであろう、そういうふうに見込まれております。その後の趨勢につきましては、なお詳細なデータに基きませんと、推計が立ちませんけれども、旧軍人恩給費におきましては、来年度がピークになって、再来年からだんだんと減少していくという予定でございます。
  59. 島村軍次

    ○島村軍次君 文官が約十億ふえる、それから旧軍人恩給は来年がピークで、現在よりは約五十億ふえる、そこでまあ九百五、六十億、こういうことだと思うのですが、しかし恩給局としては、将来の問題の制度の改廃は別として、国家財政の上から大よその——経済五カ年計画をお立てになるし、あるいは共済制度とか、将来の掛金との関係で、どういうふうに三公社でなるかという見通しはあったはずです。そこで、やはりなかなかこの計算はむずかしい問題ですけれども、しかし一つ制度として考える場合には、共済の意味を含めるということになると、財政上の問題も、資金の問題というものも当然考えられると思うのです、保険制度におきましても……。差し当って概算でいいですから、将来に対する——今お話になった以外に、約五年後にはどの程度になるのだという一つの見通しがあるだろうと思うのです。これを一つお話を願います。
  60. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) ただいま手元にその資料を持っておりませんけれども、五カ年の大ざっぱな見通しというものは大体の計算ができないことはございません。そういう意味におきましていろいろな仮定の数字、そこの基礎には仮定の数字が使われておる、すなわちたとえば失権率にいたしましても、今までとって参りました失権率というものは二・八%というくらいの失権率を見て参りましたが、実際の恩給統計が固まりまして、その結果現われてくるところの失権率が二・八%より下回っているかどうかということをさらに検討いたしませんと正確なものと言えませんけれども、現在まで一応客観的に使って参りましたそうした失権率を使いましたならば、どうなるであろうかというふうな数字はつかめると思いますので、そうした資料を作りまして後ほどまたお手元に差し上げる、こういうことにいたしたいと思います。
  61. 千葉信

    千葉信君 議事進行について。午後からの委員会開会の都合もありますから、ここらで休憩に入って再開願いたいと思います。
  62. 青木一男

    委員長青木一男君) 今労働大臣を要求しておきましたから、返事を一つ……。
  63. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっと島村君のあれに関連してですが、局長から資料を出すという話が、数字上の……。それを一つお出しを願いたいと思うのですが、それには言われましたような現状とそれから将来、それから文官、軍人、そこでお出しになるというお約束になったわけですが、これは出せますね。
  64. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳輔君) 先ほど申し上げましたような、そうした基礎のいろいろな仮定のあれはございますけれども、そういうものでお許しを願いますならば出したいと思います。
  65. 島村軍次

    ○島村軍次君 念のために申し上げておきます。私の要求したのも、とにかく現状で、たとえば今お話になったような失権率を現状のままで……、しかし日本人も大分年令が長くなったのだから、死亡率が、そういうことはそれはどうせ仮定の問題なんですけれども、当然仮定であっても大よそいわゆる仮定の上の数字というものは、こういう場合にはこうだ、こういう場合にはこうだということがあり得るはずだと思う。そういう意味で出して下さい。
  66. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  67. 青木一男

    委員長青木一男君) 速記開始。  先ほどの島村委員の国務大臣に対する質疑をもう一度繰り返していただきます。
  68. 島村軍次

    ○島村軍次君 ただいま二十三年六月三十日以前の給与に関する恩給法の改正案審議中に、まず総体的に伺いたいと考えますことは、恩給局長の説明によりますと、現在恩給総額は八百九十八億九千万円で約九百億である。そこで来年におきましてはすでにこの法律によって増額すべき分が約十億、それからそのほかの説明であったと思うのでありますが、一般文官が十億、それから軍人の恩給が大体来年がピークとして五十億、そうなりますと、まあ九百五、六十億前後になると、こういう今お話があったのでありますが、ところが大臣も御承知の通り恩給制度というものは、一面には恩給亡国の声があり、長い間恩給に関する制度としては国民全体も非常な関心を持っておる。しかるに現在の財政事情におきましては、なかなか増額が困難であるというような点から、公務員制度調査会なりあるいは先般可決されました三公社の共済組合制度等々と関連をしまして、将来一体どういうふうな考え方をもって進んでおられるか。具体的に申し上げれば、現在は八割以上の国庫負担をもってやっておる。この負担率についても相当考究する余地があるのじゃないか。さらに年限なりあるいは恩給法全体を通じて大よそどういうふうな措置で進むべきであるか。将来の見通しをここで立てなければならぬ。また給与のベースの問題もすでに残っておるし、旧軍人の恩給についても残っておる。こういう問題に対して一体政府としてはいかなる方針で考えておいでになるか。まずその点から伺っておきたい、こう思うのであります。
  69. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 恩給の問題につきましてはただいま御指摘のように年々支給する金紙が今日まで増加いたして参っておりますが、政府におきましては、この恩給につきまして、その根本的改正ということについて、御承知のように人事院の勧告もございますし、また公務員制度調査会の答申も出ておりますので、これらの勧告、答申の趣旨を十分に尊重いたしながら、一方においてはその基盤となる公務員制度自体の改正をもあわせて考慮いたしまして、その結論を得たいと思って努力いたしております。公務員制度の改正につきましては、今申し上げました答申に基きまして、なるべく早い機会に御審議を願えるように今努力をいたしておる最中でありますが、そういう場合にやはりこの恩給の問題も今の答申案及び勧告等に基いて根本的に改正をいたしておきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  70. 島村軍次

    ○島村軍次君 その目標がある程度まで具体的に、人事院の勧告なり公務員制度の答申の具体的の問題で、重要と考えられるポイントはどの辺なんですか。
  71. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、現在のこの恩給制度を廃止して、社会保障的な制度を拡充して、これにかわるものにしてはどうかというふうな御意見も出ておりますが、そういうようなことにつきましては、今申し上げました勧告及び答申等に基いて、われわれも研究いたしておりますが、今のいわゆる社会保障制度に拡充して、これにかわるようにしてはどうかというふうなところまでは、まだ私どもとしては考え及んでおりません。もちろん社会保障が広く行われることは、国の財政が許す限りにおいては望ましいことでございますが、現在の恩給はすでに既得権として恩給法が存在いたしておって、それによって今まで公務に従事し、国に尽していただいた方々のことでありますから、これはやはりその点はいわゆる一般の社会保障とは性格が違うと、こう考えておるわけでありますが、今申し上げましたように、答申案、勧告は、いろいろな趣旨で政府に答申されておりますので、これをもとにして今検討いたしておる、こういうところでございます。
  72. 島村軍次

    ○島村軍次君 そこで将来の制度を立てる場合におきましては、当然財政上の問題を考えなければならない。財政上の措置としてどういう方法をとるべきであるという大よその基本方針というものはお持ちになっておるでしょうか、どうですか。
  73. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) このことにつきましては、財政的に非常な負担になるということは、私どもといたしましても、この制度の検討を続けていく間にも非常な重要なウエイトを持っておる問題でございますが、御承知のように、この恩給は今も御指摘がありましたように、大体軍人恩給もすでにピークに達しておりますし、この上いろいろな範囲を広げられるということになれば、これは別でありますが、現在の状態から申しますと、私はこれ以上非常に大幅な財政的負担が加重されるものであるとは現在のところ考えておりません。
  74. 島村軍次

    ○島村軍次君 私はけっこうです。
  75. 千葉信

    千葉信君 議事進行。そろそろ時間ですから休憩して、午後に委員会を再開されるように……。
  76. 青木一男

    委員長青木一男君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にとどめておきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。  暫時休憩して、午後一時半より再開することにいたします。    午後零時十九分休憩      —————・—————    午後二時四十五分開会
  78. 青木一男

    委員長青木一男君) 委員会を開会いたします。委員変更についてお知らせいたします。本二十六日永岡光治君が辞任せられまして、その補欠岡田宗司君が選任されました。
  79. 青木一男

    委員長青木一男君) 憲法調査会法案を議題といたしまして質疑を行います。
  80. 吉田法晴

    吉田法晴君 質問に入ります前に資料の要求をいたしたいと思います。これは政府の方で担当大臣にお聞きを願いたい。一点だけは総理にもお聞きを願いたいと思います。たくさんございますから、メモをおとり願いたいと思うのですが。  日本国憲法の作られます前に、松本試案といわれるものがあったといわれておる。その松本試案。  それから同じく松木氏のあとで憲法改正に関する補充説明というのが出されたということであります。その補充説明双方。  それからその前に近衛さんが佐々木惣一先生に依嘱をして案を作られようとしたということでありますが、その近衛・佐々木案というもの、それが二。  それから当時民間からいろいろ案が出されておりますその民間案を、三つありますのか四つありますのかよくわかりませんけれども、高野先生等の案もお出しをいただきたいと思います。  それから昭和二十一年三月四日、政府から案が出されております。それはマッカーサーの、鳩山総理を初め自民党の皆さんでは、よく憲法はマッカーサー憲法だと、こう言われますけれども、一般的な方向は出て参りましたが、それについて案は政府の方からお出しになったということでありますが、三月四日に政府案が提出されたということでありますから、その案をお出しいただきたい。  それから、案が出ましてから、出るまでのいきさつ等もございましょうが、出ましてから憲法制定議会の速記録、これは衆議院で問題になりまして、提案者を代表して山崎さんですか、それから総理からも、出すようにしたいが、それについては社会党も御協力を願いたいという言葉が残っておりますけれども委員会の、小委員会ですかの会議録は出ておりません。  それから帝国憲法改正審議録というようなものがございますが、これは私は持っておりますけれども委員会には、委員全部にお配りになるべき性質のものだと思うのです。これは希望を申し述べておきます。  それからマッカーサーの米国の上院軍事外交合同委員会の公聴会で公述をされた、日本国憲法九条が誰の意思によって作られたかという点が述べられておる点があるのであります。従来私どもが見得るところでは、政府から改正案が出ております。何と申しますか、摘録というか、部分でありますが、その全文をお出し願いたい。  それから、これは自由党の時代でありますけれども、政府で法制局に命じて作られた「憲法の問題点の研究と整理」というもの。  それから旧改進党の、五十四年ですから、おととしの一月二十日の決議と改進党案、それから旧自由党の案、これは、きょう委員部の方で配ってくれましたけれども、これは比較で、全文がそのまま載っておるのかどうか、私まだ原木と対照することができませんが、政府の方でその全文をお出しを願うように御努力を願いたい。  それから自民党案については新聞で拝見をいたしましたけれども、その正確な全文をお出しを願いたい。他の点についてはお出しを願うと思うのでありますが、その中で、今申し上げました中で、憲法制定議会の速記録については、衆議院以来、出しましょう、あるいは出してもらいたいということでありますが、出せるかどうか、特にここではっきりと御返事を願っておきたいと思います。
  81. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 現在の憲法制定当時の衆議院の小委員会の速記録だと思います。それはまだ公開になっておりません。そこで本法案の審議の際に、委員会におきまして御要求がございました。私といたしましては、できますならばぜひ参考資料として出してもらいたいと、しばしば衆議院の事務総長を通じまして、申し入れをいたしております。事務総長におきまして、いろいろ検討を続けておりまするが、この参議院の審議の御資料にもなるかと思いますので、さらに督促いたしまして、できる限り速記録が見れますように努力をいたしたいと存じております。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 関連して。ただいまの吉田委員から要求された速記録についての山崎さんの答弁ですが、衆議院で飛鳥田君が要求されて以来、同じような答弁をされておる。で、事務総長において、法的な検討をされておるというような趣旨のようですが、どういう点を一体検討されておるのか。私どもとしてはですね、飛鳥田君が要求したのは今年の二月末ごろだったと思うのです。それ以来ずいぶんたっておりますし、私どもの旧議院法なり現在の国会法の秘密議事録、秘密会における議事録の取扱いに関する規定の検討では、決してそんな差しつかえがあるというふうには考えておらないのでございます。なぜ一体そんなにひまがかかるのか、どこを一体どんなふうに検討されておるのか、それをちょっと一つ、もっと詳細にお答えを願いたい。
  83. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 衆議院の事務局におきまして検討いたしております点は、あの速記録がその当時司令部としましても公開をあまり希望しなかったというような点があるようであります。それを今、今日の時代にすぐに公開することがどうだろうかというような点が、衆議院としては非常に疑問を持っているところであります。(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)それは事実を申し上げたわけであります。そういう点で、まだ事務局としても結論が出ないような段階であります。しかし私どもとしましては、別にこれは隠すべき性質のものでもないと思いますし、さらに事務局を督促し、これは成規の手続が要ると思います、むろん衆議院におきましては議運で決議をしまして、おそらく本会議の決定を経なければ、この速記録の問題の解決はできないものと、こう考えております。その諸般の手続をぜひ進めたいと、こういうふうに考えている次第であります。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 もう一ぺんちょっと……あまり答弁がはっきりしませんので。事務総長にこういう重大なことをそんなにいつまでもまかす必要は、私、なかろうと思うのです。で、旧議院法では、秘密会になったものの公開は、刊行はこれは禁止すると、はっきり法律の明文で禁止しているのですね。しかしその旧議院法というのは、もちろんこれは現在はない。で、現在の国会法では、たとい秘密会における議事録でありましても、公開が原則になっている。その秘密会の中で、特にここの部分だけは秘密にしなければならんというふうな必要があった場合、初めて院の決議によって公開しなくてもいい。この原則がまるきり反対になっております。だから、そういう立場からいえば、これはもうそれを出さないという根拠は一つもないわけです。従いまして私は事務総長の段階でなかろうと思うのです。与党の皆さんがそれは一つ出そうというようなお気持になっているのであれば、その立場で議運にお諮りになれば、これはもうすらすらと事が運んでゆくことだ。私はそういう意味で、これは山崎さんよりもむしろ鳩山総理が、これは総裁として、山崎さんは何べんもそういうことをお答えになっているのですから、総裁として、鳩山総理において、そういうふうに処置をされれば、これはもうあすにでも解決がつく問題だと思っている。(「その通り」と呼ぶ者あり)だからこの点、まあ今議事進行に関しての問題ですから、詳しくはお伺いしませんが、これは解決つけなければ——私はこれは絶対にこの法案の審議の過程において、もっと明確にしなければならんと思っているのですが、鳩山総理のちょっと一つ決意といいますか、それを一つ聞いておきたいと思います。これは総裁として、国会の問題ですから……。
  85. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) これは国会で提出すべきや否やをきめるべき問題だと思います。それですから党としても関与するだろうと思います。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 もちろん国会できめるのです。しかし国会の運営は、これは与党が多数であり、その与党が中心になって運営するものなんです。それは国会のことだから私は知りません。これは政府のことならあるいはそういうことを言えるかもしれない。国会の問題だから、従って国会の運営の中心になっておる自民党のあなたが解決できる問題なんです。先ほどの答弁はちっとも納得できませんね。そうじゃないですか。
  87. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 党として提出することに努力するように私からもそう言いましょう。
  88. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の点は審議に問に合うように出してもらわなければ困るのであります。その点は審議に間に合うようにできるだけ早く出そうということですが、これを含みまして全体……これは審議の前提でございます。私どもが手に入れた資料でもって審議に入る……すみやかにおそろえを願ってお出しを願いたいのでありますが、できますかどうか。全体について御答弁を願っておきたいと思います。
  89. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 私、実は衆議院の本会議でちょっとおくれまして、全部の資料を伺いかねたのでございますが、途中から伺いましたもののうちで、大体手元にあるものも相当ございます。しかし全部とりそろえて出せますかどうか、よく政府当局とも相談をいたしましてきめたいと思っております。
  90. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいま鳩山総理は、できるだけ努力しよう、こういうことを言われたのでありますが、これは憲法調査会を設け、憲法の改正、あるいは改正しないか、いずれの点についでも憲法について検討をするというととでありますれば、当然これは出さなければならぬ。それが今まで出す努力を、与党で憲法調査会を設ける案を出しながらしなかったということは、私は非常な手落ちだと思います。従いまして、首相はきょう言明されました以上、この憲法調査会法案を審議する過程において間に合うように、直ちにあなたの党の幹部諸君とお諮り下さいまして、衆議院の議運に、ここ一、二日中の議運でこれが議決されるように、一つあなたの方から御指示を願いたい。その点お約束できるでしょうか。
  91. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 努力するつもりであります。
  92. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうふうに努力をしていただくことは非常にけっこうでございますが、その委員会の速記録がどの程度のものであり、またそれが印刷にどれくらいかかるか、あるいは山崎さんの方で御存じかもしれません、今までに衆議院からそれについての質疑も出ておるのでありますから。従いまして、それの印刷等についての日数等についてもすでに御検討になったはずだと思うのですが、山崎さん、その点いかがでございますか。
  93. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 秘密議事録は今衆議院院の事務総長の金庫の中に実はしまってあるようでありまして、私もどの程度のものであるかまだ見たことはございません。従いまして、それを印刷するのにどのくらいかかるかということはここで申し上げかねるのでございます。
  94. 岡田宗司

    岡田宗司君 衆議院で飛鳥田君等からその要求がありました。で、あなたは先ほど言われましたように、事務総長にそれを要求している、それについての何も具体案を持っておらぬということは、結局あなたは、衆議院においてそれを出せと言われたことに対して、具体的にこれを何とかしょうというおつもりがなかったものと認めざるを得ないのですが、こっちでは、はっきり首相も今言明されたのでありますから、それに基きまして山崎さん具体的に一つお取り運びを願いたいと思います。
  95. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 私どもできるだけ努力いたします。
  96. 青木一男

    委員長青木一男君) 質問に入りたいと思います。(「進行々々」と呼ぶ者あり)
  97. 田畑金光

    ○田畑金光君 質問に入るのです。鳩山総理に私は憲法調査会法案のこの提案理由説明中心としてお尋ねいたしたいと思いまするが、法律の細目にわたることでもありませんので、一つ鳩山総理の率直な御答弁を願いたいと思っております。林法制局長官等、よけいなことをあまり授けぬように一つあらかじめ要望しておきます。(笑声)この説明書によりますと、今回政府において憲法調査会を設置されるに至りました原因は、要するに現行憲法が自主的に制定された憲法でないということと、また今日までの九ヵ年における憲法実施の経験にかんがみまして、いろいろ検討しなければならぬ段階に来ておる、こういうような立場において今回の調査会設置に至ったのである、こういうような御説明であります。調査会法の第二条を拝見いたしますと、「講義会は、日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告する。」こういうようなことになっているわけであります。この法律をすなおに読みますと、調査会におきまして今後現行憲法を調査審議いたしました結果、現状でもよろしいという結論も出て来るであろうし、また現行憲法を改正しなければならない、こういう結論も出て来るであろう、こういうように考えられるわけでありますが、調査会の調査審議の結果は、今申し上げますように二様の結論が出て来るということを総理としてもお認めになっておられるかどうか、まずこれをお尋ねしたいと思います。
  98. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) それは調査会の権限のうちにあります。憲法を改正する必要なしというのも答申であるし、憲法改正の必要ありというのも調査会の答申としてはあり得ることであります。
  99. 田畑金光

    ○田畑金光君 調査の結果、改正の必要なしという場合もあり得るし、改正しなければならぬ、こういう場合もあり得る、こういうことをお認めになるわけですね。
  100. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そうです。
  101. 田畑金光

    ○田畑金光君 私といたしましては、確かに理論としてはそのようなこともあり得るかと考えておりますが、政府の今日までの憲法問題をめぐる論議、国会における答弁、こういう一連の動きを通じましても、政府の意図というものはわれわれとしては察知できるわけであります。ことにまた現在の政府、与党の今日までの憲法問題に対する研究あるいは調査機関における審議等についてもわれわれは承知いたしておるわけであります。もしそのように調査会というものが二様の結論もあり得るのだ、こういうことになって参りますると、調査会は委員が五十名で構成される、こういうことになって参りますが、調査会の今後の運営というものは非常に重大な問題を左右すると、こうわれわれは考えておりますが、この調査会の構成とか、あるいは運営とか、あるいは調査会に対する政府の期待というものは、どのようにお考えになっておられるか、これを一つ承わりたいと思います。
  102. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 調査会は、たびたび申しました通りに、各界の学識経験ある者及び国会議員、総数五十名をもって、三十名と二十名で組織することになっております。
  103. 田畑金光

    ○田畑金光君 その構成はよく存じておりまするが、具体的に申しますと、調査会には、たとえば国会議員が三十名の委員として参加する、こういうことになっているわけであります。その場合に、国会の内容をみますると、憲法を守るべしという者と、改正しなきゃならぬ、こういう二つの政党によって構成されていることは御承知の通りであります。そういうような場合に、調査会の委員の構成等が、大きなかぎを握ると思いますが、その場合に、あなたが、先ほどのような二様の結論もあり得ると、こうなって参りまするならば、委員の構成等については、たとえば社会党と自民党というものの委員というものは、同数であるということが、公正を期する道であろうと考えます。この点についてどうお考えでありますか。
  104. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 公平にというならば、代議士の数に比例してやるのが一番公平だと思っております。
  105. 田畑金光

    ○田畑金光君 代議士の数に比例をしてやるとおっしゃいますならば、そうしますと、ここに問題として出てきますことは、御承知のように、旧自由党においても、旧改進党においても、あるいはまた自主憲法期成議員同盟におきましても、それぞれの改正案というものが出ておるわけであります。そういうようなことを考えて参りますならば、当然、すでに旧各保守政党の出しましたところの改正案というようなものは、憲法調査会の中に大きな比重として持ち込まれるだろう、かように考えておるわけでありますが、今度でき上りまする憲法調査会というものと、今までの保守派の各会派の憲法に対する一つの改正案、こういうようなものとは関係があるとお考えになりますか、無関係とお考えになりますか。
  106. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 先例をよく尊重いたしまして、先例に近くやっていきたいと思っています。(「先例とは何の先例だ」と呼ぶ者あり)
  107. 田畑金光

    ○田畑金光君 先例とは何の先例ですか。
  108. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 委員会を作るときの先例・委員会をたびたび作っておりますから、その委員会を構成する場合、各派からどういうふうな比率でとるとか、あるいは同数でとるかということはきまっていると思います。
  109. 田畑金光

    ○田畑金光君 大へんお疲れのようにお見受けしますが、私のお尋ねしていることは、ちょっと総理は聞き違えておられるようです。もう一度申し上げますと、あなたのかつておられた旧自由党の折にも、今の岸信介氏が会長となって、憲法調査会を作っておられて、すでに一つの案が出ておるわけです。また旧改進党においては、清瀬案というものが出ているわけです。また自主憲法期成議員同盟会においても廣瀬案というものもわれわれは承知いたしておるわけであります。こういう、すでに既存の保守各派は、憲法改正に対する一つのそれぞれ案を持っておるが、今度でき上ります、そしてこれから活動するであろう憲法調査会の案と、これらの保守政党のそれぞれの会派が作りました憲法改正案とは、どういう関係になるか、無関係なのかどうか、このことをお尋ねしておるわけです。
  110. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 個人の考えは別として、憲法調査会が独自に審議するのであり、各党の案とは一応無関係と私は思います。
  111. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは私は総理の御答弁では納得いかないのです。それは理屈はなるほどそういうようなことをあなたも申し、それから衆議院における委員会等の答弁を見ますと、山崎さん方もそういう御答弁をしておるようです。この憲法調査会案を議員立法として提案され、その説明は自民党の山崎さんが当っておられます。ところが自由民主党の中に、憲法調査会というものが、本年の二月下旬以来調査研究に取りかかっておる、その憲法調査会の会長も山崎巖氏であるとわれわれは承わっております。この自民党の中における憲法調査会は、相当研究を進めて、すでに重大な十項目については意見の統一をみていると、われわれは新聞を通じ、承知いたしておるわけであります。今自民党の、この憲法調査会の研究の経過を振り返ってみますると、私が先ほど申し上げましたような旧自由党の憲法調査会、旧改進党の憲法調査会、自主憲法期成議員同盟の出しました案、こういう三つの案を集約して、その中から最大公約数をとって、自民党の案にまとめるために努力をしておるように見受けているわけであります。たとえば天皇の地位とか、自衛軍創設と国防義務、国民の基本的人権に関する制限規定を設置するということも、あるいは地方公共団体の首長選任の改正、議院制度の改正、こういうような重要点についてはほぼ一致していて、先ほど申し上げました三つの試案の最大公約数が、近き将来自民党の憲法改正の骨子になる、ここまできているわけであります。そこで私は鳩山総理にお尋ねいたしますが、自民党の憲法調査会が、やがて一つの改正試案にまとめられ、おそらく参議院選挙に間に合うように準備を進められるだろうと、われわれは政党人として推察いたしますが、その自民党の憲法改正案というものと、今後憲法調査会の中で独自で審議をし、案を作るとおっしゃっておりますが、関係がないとあなたはおっしゃるのかどうか、この点どうですか。
  112. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 先刻申した通り、憲法調査会は、憲法調査会委員として独自に研究をしていくものと私は考えております。
  113. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで私は疑問になってくるわけですが、あなたは、憲法調査会の委員の構成は、議会における各政党の勢力分野に応ずるのが公平であろう、こういう御答弁であります。そうなって参りますと、当然憲法調査会における、少くとも国会議員三十名の内容というものが、自民党の委員が多数を占めるということは明らかであるわけであります。その自民党の委員は何をもとにして、調査会において、憲法改正案を主張するかというと、自民党の党としてでき上っている憲法改正案を持ち込むことは、理の当然だと思うのです。そういうことになっては、あなた方が調査会に、第三者的な公正な機関として調査を依頼せしめるということとは矛盾するものであると考えますが、この点どういうふうに総理は判断なさいますか。林さんよろしい、あなたしゃべらぬでいいから、総理の判断で答弁させなさい。
  114. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 先刻申しました通りに、委員は独自の考え委員会において発言行動すべきものと私は考えます。
  115. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは総理、どうですか。そういうごまかしを答弁せられたのでは私は引くわけにいかないのです。大体憲法調査会をごらんなさい。憲法制度調査会をごらんなさい。憲法調査会の構成を見ましても、委員の構成を見ましても明らかではありませんか。(「選挙制度調夜会じゃないか」と呼ぶ者あり)あらかじめあなた方は小選挙区制度に賛成する人方を構成分子として入れておる。並びにまた国会から出ておる委員の数を見ましても、まさに先ほど総理が答弁されたように与党の数がよけいに出ておる。そうして選挙制度調査会のそれに対する最終の諮問案決定の場合は、ああいう紛糾を見て、中立系の委員あるいは第三者の委員は無効を主張しておる。こういう混乱も巻き起しているじゃありませんか。この一つを見ても、憲法調査会の性格とか、今後果すであろう役割とか、それが政府に答申するであろう答申の内容というものは、すでに私はきまっていると考えていいと思うわけであります。鳩山総理は憲法調査会に、本当に公正な立場において現行憲法について調査審議をされるということを期待されるといたしますならば、どうですか、委員の構成等についてはあなたが先ほど答弁なさったことでは公正を期し得ないと思いますが、この点についてもう一度お尋ねいたします。
  116. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は先刻の答弁を繰り返す以外には方法はありません。いろいろの意見が委員会に出る、それを委員各自が自己の判断によって結論を得て、委員会としての意見をまとめていくというのが当然だと考えております。
  117. 田畑金光

    ○田畑金光君 鳩山総理に、今度は一つ総裁として、鳩山総裁としてお尋ねいたしますが、今自民党の中で、(「党のあれじゃない」と呼ぶ者あり)自民総裁という立場においての所信をお伺いいたしますが、(「総裁兼首相だ」と呼ぶ者あり、笑声)今(「党の立会演説会じゃない」と呼ぶ者あり)自民党の中におきまして私が先ほど申し上げましたように憲法調査会がある。そうして自民党の調査会においては近く改正案を出す、こういうようなことになっておりますが、この改正案について、まあ総裁ということがいろいろ御意見があるというのなら、(笑声)総理として、あなたは憲法調査会の今後の運用とは全然関係がないと言い切るかどうか、もう一度お尋ねします。
  118. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 何ですか。
  119. 田畑金光

    ○田畑金光君 何ですって、私が質問しているのに聞いていないのですか。
  120. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 総理の御答弁の前にちょっと私から申し上げておきたいと思います。ただいま御指摘の通りに、自由党時代、あるいは改進党時代に憲法の検討をいたしまして、一応の大綱的な結論を得ておりますことは事実でございます。そこで新党——自由民主党ができましてから、さらに新党におきましても憲法問題の検討をいたすべく、本年の一月から党内に憲法調査会を設けまして、今熱心に再検討の段階でございます。ただ今田畑さんからいろいろお話がございましたけれども、私どもとしましては別に急いで結論を出すというような考えはございません。この問題はきわめて重要な国の基本に関する問題でございますから、党内の調査会におきましても慎重な上にも慎重を期して参りたいと考えております。先ほど御質問が出ました、近く政府与党が憲法問題に対する結論を出すのじゃないか、こういうお話でございましたが、それはそういうふうにはなっておりません。今新聞等に現われておりますのは、私どもの方が憲法を検討いたします場合にどういう点に問題があるのか、今、問題点の検討でありまして、それは絶対に結論ではございません。そういう問題を十分に慎重に検討した上に自由民主党の結論を出したいという次第でありまして、今新聞等に現われておりますのが直ちに結論だとおっしゃいましたことにつきましては、その点が異なっておりますので、その点、誤解を解いていただきたいと思うわけであります。  なお、今回の憲法調査会法案が両院を通過しまして内閣に調査会が設けられまする場合には、私どもの党の機関はおそらく並行して審議を続けていくことに相なるものと考えておるわけであります。従いまして、内閣にできますこの調査会は、従来のいろいろの意見にとらわれることなく、独自の見解をもって(「うそを言いなさい」と呼ぶ者あり)ぜひ一つ御審議を願いたいというふうに、こういうように私どもとしては考えておるわけであります。
  121. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理にさらに伺いますが、総理としては、憲法調査会がかりに本国会で法案が成立をして発足をした、こういうことになって参りますと、本来憲法改正論の一番熱心な主張者である総理でありまするから、早く調査会の成案ができることを期待されていると考えます。一体どのくらいの年数がかかるとお考えになっておりましょうか。
  122. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は憲法改正を決して急いでおりません。実質的に自主憲法を作るのには非常に憲法の慎重な審議が必要だと思いますので、これは今から時間を想像しておらないのであります。できるだけ審議した方がいいと思っております。(「そんなら法案を撤回しなさい」と呼ぶ者あり)
  123. 田畑金光

    ○田畑金光君 二十二国会の折、私からこの委員会で同じような問題をお尋ねいたしましたところ、総理は、一、二年間のうちには……こういう御答弁をなさっているわけです。ところが、あのとき、私が質問したときの法案審議の内容は国防会議構成法案でありましたが、かんじんの問題の憲法調査会法案の審議の際に同様なお尋ねをいたしますると、総理は非常に言葉をにごしておられるのです。もう少し率直に、そんなにお急ぎでないならば、何を好んで今いろいろ物議をかもすこういう法案を急がれるか、私たちはおかしく思うのであります。もしあなたのおっしゃるように、そんなに慎重に、そう急ぎもせぬ憲法改正について慎重を期しようというなら、なぜこういう法案を急いで通そうという努力を払われるのか。そういうようなことをごまかさないで、国民も聞きたいのだから、もう少しすなおに率直に一つ総理の気持を聞かしていただきたいと思うのです。
  124. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は率直に言っているのです。そんなに急いでいないのです。
  125. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、総理にお尋ねいたしますが、この憲法調査会の発足も別にそうお急ぎにはなっておらないのですね。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  126. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 審議に時間のかかることは大へん必要だと思うのです。だけれども、審議が始まらなければ、いつ期限がくるかわかりません。審議を早く始めて、そうして慎重に審議をするのがよいと思うのであります。
  127. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理の御答弁では、なかなかこれはどう私たちはくみ取ればいいか、把握に苦しむのですが、あなたとしては、おそらく憲法調査会の案においては、改正の案については、早く答申が出てくることを期待しておると考えるわけです。それじゃお尋ねいたしますが、あなたは非常に世論を尊重されるとか、あるいは反対党の言い分でも、聞くべき点は十分に耳を傾ける、こういうことをおっしゃるわけであります。そういう意味におきましては、まことに日本において珍しい民主主義政治家だと、こう私たちもかねて敬意を表して参っているわけなんです。ところが最近は少し頭の働きが鈍ってきたようなきらいもないでもない。一月の二十八日に自主憲法期成議員同盟の主催で、東京の神田共立講堂で第一回の演説会を持たれております。この演説会には、廣瀬さんを初め芦田均、中曽根康弘、あるいは法学博士の神川彦松、評論家の山浦貫一、こういう方々が一緒に演説会に出ておられます。そのときに鳩山首相は、憲法改正を非常に強調されまして、そうしてその演説の中に、「これに反対する勢力に社会党というものがある。われわれはどうしても社会党の力を減殺しなければならない」と、卓をたたいて、あなたは体が悪いと承わっておりましたが、このくだりになってきますと、卓をたたいて興奮して絶叫されたということを承わっておるわけであります。まことにどうも反対党の意見等を十分にくんでやっていこうという平素の鳩山総理の態度からしますと、この演説会における鳩山さんの態度は対照的な雰囲気であったようでありまするが、社会党を減殺する、それがために小選挙区法案をごうごうたる国民世論の批判に耳を傾けることなく出しておられる。このねらいは、あげて憲法改正を強行されるという意図であることは、万人承知しておるのです。にもかかわらず、こういう反対党に対する、しかも唯一の反対党に対するばり雑言を浴びせながらも、あなたは今一体憲法改正についてどの程度の期間を考えておるのかというと、慎重な審議を期待して急ぎもしない。何のことかわからない。もう少し一つすなおにあなたは答弁していただきたいと思うのです。どういうわけで、あなたは、こういう神田共立講堂において、このような矯激な言葉で演説をなされ、憲法改正の強い意思を表明されたか。もしそうであるとするなら、この際、憲法改正に対するあなたの態度を率直に御説明願いたいと思います。
  128. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 今あなたは、私が社会党をばりざんぼうしたようなことをおっしゃいましたが、私は演説会において社会党をばりしたことは一度もありません。ただ、とにかく社会党に勝ちたい。勢力は減殺したい。これは、ばりじゃありません。
  129. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理はまだ答弁になっておりませんが、どうですか。
  130. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は憲法を改正したいという希望を持っていることは間違いないのです。憲法を改正するのには、社会党よりも数が多くならなければ、三分の二以上の勢力を持たなくてはいけないし、のみならず国民の投票を必要といたしますから、国民のレフェレンダムにおいても勝たなくてはなりませんから、自分の主張を強く主張することは当然だと思っております。
  131. 田畑金光

    ○田畑金光君 三分の二の多数を取るために今回の小選挙区制度の選挙法改正案になったというわけですか。
  132. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういうことは申しません。三分の二を取りたいために小選挙区制を出したということは一回も申しておりません。
  133. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理にさらにお尋ねいたしますが、調査会の設置というものは、たびたび衆議院においても質疑応答が繰り返されておるようでありますが、あらためて私はお尋ねいたしますが、これは国会自身の問題ではなかろうかと考えます。従って、憲法改正の審議をする機関、調査会等は、内閣に置かれるべきものではなく、当然これは国会の中に置いてしかるべきではなかろうかと考えるわけであります。この点は、あるいは憲法七十二条をもってお答えになるかもしれませんが、憲法九十六条の改正の手続を見ましても、内閣法第五条の建前から申しましても、これは当然国会の中に置かれるべきものだと私は考えるわけであります。なぜかならば、現行憲法の下においては、主権者は国民である。しかもこの憲法というものは最高の法規である。行政権である内閣というものは当然この憲法を尊重し、あるいは、この憲法の下において法律の諸般の執行に当る、こういうことを考えておりましたとき、あらゆる政治行動、あるいは行政行為の源泉である憲法問題を審議するというようなことは、これは国会以外においては許されない。これが私は今の憲法の中に流れる精神だと考えておりますが、どういうわけでこれを内閣に設置をなさったのであるか、この点、明確に一つ教えていただきたいと思います。
  134. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 学識経験者を入れる関係もありまして内閣に置くことといたしたものであります。これは先例もありまして、むろん議会を尊重し、議会の決議がなければむろん案も成立しないことは当然でありますけれども、提出の案の下ごしらえは、内閣に置いた委員会で、草案というか、原案を作っても差しつかえないと私は考えております。
  135. 田畑金光

    ○田畑金光君 先例とおっしゃいますが、憲法改正についてこういう委員会を置いた先例というものはないと思うのです。普通の法律改正の先例と、憲法改正の問題とを混同されておるということは、それ自体の中に憲法軽視の姿が出ておると私は申し上げたいのであります。その点どうでありますか。
  136. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそう考えません。
  137. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の御答弁によりますると、憲法調査会の中で改正案を出すことも今の憲法の建前から申しておかしくはない。こういう御答弁でありましたが、そういうふうに承わってよろしいのですか。
  138. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 答申を出すという意味で申したのであります。
  139. 田畑金光

    ○田畑金光君 改正案を出すと言いまし九。
  140. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いや、改正案というものの提出は議会以外にできません、国会以外には……。しかもそれは三分の二以上の決議によって国民に提案、発議ができる。発案権はちゃんと書いてあります。発案権は無視するわけにいかない。それはわかっております。
  141. 田畑金光

    ○田畑金光君 それじゃお尋ねいたしますが、総理は、そうしますと、憲法調査会が一つの憲法改正に対する答申案を提出する、それを期待しておられる。で、調査会から出てきた答申案というものが内閣において審議をされ、これを妥当と認めるならば、内閣が憲法改正の発案をやる、こういうようなお考えでありましょうか。
  142. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 内閣が草案を提出するか、国会議員が提出することになるか、それは決定しておりません。
  143. 田畑金光

    ○田畑金光君 内閣が提案することもあり得るし、国会提案することもあり得る、こういうようなことでおっしゃったわけですね。
  144. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 国会議員がやはり原案を出すのには三分の二必要なんですから……
  145. 田畑金光

    ○田畑金光君 いや、そうじゃないのです。お聞きなさい。そんなことじゃない。
  146. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 内閣に提出する権利があるし、国会議員も提出する権利があると、そういう意味であります。
  147. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういう意味ですか。
  148. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) ええ。
  149. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、総理にもう一度ここをお尋ねいたしますが、内閣に発案権がある、こういうことをお認めになるわけですね。
  150. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 原案を出すという権利は内閣にもある。
  151. 田畑金光

    ○田畑金光君 内閣にも……(「そういう条文はどこにあるのか」と呼ぶ者あり)そういうことになって参りますると、内閣が憲法改正の発案をする、こういうようになってきますると、当然にそういう場合は、おそらく議会においてどういうことになるかというと、当然政府が、内閣が発案をする以上は、さらにそれが議会の発議になるということを期待して提案される情勢がなければ、私は、提案できない、こういうことになろうかと思うのです。
  152. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そうであります。
  153. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうなって参りますると……
  154. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 三分の二がなければ発議はできません。
  155. 田畑金光

    ○田畑金光君 そこで、そういうことになって参りますると、当然こういうことになってくるかと申しますると、その場合に、議会というものが発議権についても事実は内閣の指導のもとに決定をされる、こういう結果になるのじゃないかと思うのです。もしそういうことになって参りますると、憲法のこの九十六条の精神から申しますならば、この九十六条の改正の手続というものは、議会の「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」その場合の国会としての機能というものが抹殺される、あるいは減殺されると申しますか、こういうことになりませんかと思いますが、どういうことになりましょうか。
  156. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそう考えません。
  157. 田畑金光

    ○田畑金光君 もう少しわかりやすく御答弁願いたいと思います。
  158. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそうは考えません。やはり三分の二の賛成がなければ発議はできないということは当然なんですから、それが侵害せらるるというような虞れはないと思います。
  159. 田畑金光

    ○田畑金光君 私の主張していることは、裏返せば、憲法九十六条の建前から申しまして、これは仮に憲法調査会というようなものを置く、憲法問題を審議する機関というものは、国会に当然置かなければならない。しかもこの場合に、国会というものが、与党も野党も協力して憲法問題を審議するという形のものでなければ、国会の発議というものは、ならないと、こう考えるわけです。先ほどのようなことになって参りますると、発案権というものと、発議権というものが可分である、こういうことになって参りますると、政党内閣の下においては、政府が、内閣が発案をする、そうなって参りますると、仮に三分の二の多数を与党が持っているとするならば、国会においては何ら、ほとんど憲法という特殊な取扱いも受けることなく、普通の法律案と同じような、単に多数決によってすらすらっと通って行くと、こういうことになってしまうと、九十六条のこの趣旨というものが、この精神というものが抹殺される結果になると私は考えますが、どうでしょうか。
  160. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそうは考えません。内閣が提出する場合においても、国会議員が提出する場合においても同じことになります。(「問題があるぞ。おかしいぞ」と呼ぶ者あり)
  161. 亀田得治

    亀田得治君 関連して……。政府は内閣に提案権があるという根拠として、今まで内閣法の第五条ですね、これを根拠にされているようです。それは間違いないですか。
  162. 林修三

    政府委員(林修三君) これは衆議院でたびたび御説明しているところでございますが、憲法第九十六条は、国会が三分の二で国民に対して、国民投票に対して発議する、そういうことを言っている規定でありまして、ここで当然に国民に発議すべき原案を、国会で御審議になるについての原案が当然あるわけであります。その原案をだれが出すかということについては、憲法九十六条は直接にはうたっておらない、さように考えているわけでございます。従いまして、そういう議案が、一般の原則に従って国会議員がお出しになる権限を持っておられることは、これはもう言うまでもないことでございますが、また内閣も、議院内閣制の建前から言っても、また憲法第七十二条で「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に」提案すると、そういう規定の趣旨から申しましても、憲法改正の議案を内閣が提案する権限を否定するものではないと、かように考えているわけでございます。それで、この憲法第七十二条の規定を受けまして、内閣法第五条ができているわけでございますが、内閣法第五条もさようなことを否定するものではないと、かように今お答えしているところでございます。
  163. 亀田得治

    亀田得治君 非常に問題点だと思いますが、まあ憲法七十二条は総括的な規定ですから、それを受けたところの内閣法第九条が、やはり法律的には非常に問題だと思うのです。ところが内閣法第五条には「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出法律案、予算その他の議案を国会に提出し」こう書いてある、憲法とは書いてない。で、おそらくあなたの方ではその他の議案、この中に含まれるという解釈でありましょうが、これは普通の法文の解釈からいけば、重要なものを二つ、三つ書いてきて、「その他」といえばこれは雑件に当るわけです。憲法というものについて、ほんとうに内閣にも提案権を認めるという趣旨で憲法七十二条ができ、そうしてまた内閣法の第五条もできておるとするのであれば、これは当然憲法を一番初めに持ってこなければうそですよ。これは憲法軽視の考えがあるから、憲法を大体雑件の中に入れたりする。これはちょっとよぶんなことですがね、普通の常識からいって、憲法、法律、予算その他と、こうなるのがほんとうじゃないですか。その点について非常に無理な解釈をみなさんがされておる。ちょっと無理だぐらいのことはお考えになっているかどうか。もっと親切に、懇切にその点を説明してもらいたい。
  164. 林修三

    政府委員(林修三君) 立法技術としてのいろいろの御批判は、これはあると思いますけれども、先ほど御説明いたしました通りに、政府といたしましては、憲法七十二条の規定の趣旨から申しまして、あるいは憲法全体の趣旨、つまり議院内閣制という建前から、内閣がいろいろの議案を提出することは否定されるものではない。七十二条はそれを具体化しているものと、かように考えるわけでございます。憲法七十二条において否定されておらないことを、内閣法が否定できるわけではないわけでございます。内閣法は当然に憲法の範囲内において書かれておるわけでございまして、そういうことから申しましても、あそこに具体的に書いてないからと申しましても、これはかりに具体的に書いていないからと申しましても、憲法でかように認めておるものは法律が否定するわけにはいかない。また今の法律は御承知の通りに「法律案、予算その他の議案」とございます。そのために当然憲法改正の議案もかように考えておるわけでございます。これは憲法改正をあそこに書かなかったということは、理由はいろいろあると思いますが、非常に異例的な、そういう始終起り得ることではもちろんないわけでございます。そういうことをあそこに書くことはどうもいかがかと、こういう配慮もあって書いてないものと考えます。これは内閣法の制定のときから、大体政府としてはそういうふうに考えてやってきておるわけでございます。
  165. 亀田得治

    亀田得治君 内閣法制定のときに、そこからそういうふうにお考えになっておるということであれば、これは当然内閣法制定のときに、憲法を入れておくべきじゃありませんか。私はそのほかのいろいろな今の説明は、はなはだ納得できないものがたくさんある。たとえば憲法全体の趣旨から見てとか。憲法全体の趣旨から見たら、むしろ提案権が議員だけにあると言う方がむしろ全体の趣旨に沿っている。しかしその辺は私の質問の時間にしましょう。しかし一番最後に言われた内閣法制定のときから、政府はそういうつもりだというようなことをおっしゃるのであれば、なぜ内閣法制定のときにそういう重要なことはちっとも書いておかないか。内閣法制定のときには、おそらくこれはなんでしょう、そこまでのことはないということで、そこまでのものは含めておらぬのだということで、これはこうなっておるに違いない。ただあとからみなさんがそういう理屈をつけているだけの話なんです。内閣法制定のときに、憲法も含むというように考えていたという趣旨のことをおっしゃったのだが、一体それはどういう理由、根拠があるのですか。
  166. 林修三

    政府委員(林修三君) 内閣法の制定されます当時、私、法制局におったわけではありませんけれども、これは前任者佐藤達夫氏からもそういうことは聞いております。聞いておりますが、この国会において、そういうことは明らかに御説明はいたしておりません。しかしやはり先ほど申し上げましたような事情で、憲法改正の議案はきわめて異例なことでございます。異例なことでございますから、これをあそこにあからさまに書くことはどうかというような考え方で、毎国会において常に起って参ります法律案、予算、これを代表的に書いたもので、あとのものは「その他」のものにつきましたもの、かように考えるわけでございます。そういう解釈は当然成り立つわけだと思います。
  167. 亀田得治

    亀田得治君 私が先ほど説明しましたこの解釈、それは法律的には非常に間違った解釈だ、こういうふうにあなたは専門家の立場からはっきり断言できますか。
  168. 林修三

    政府委員(林修三君) 「その他」のというのは、これはもう亀田先生に申し上げるまでもないことでございます。法律案、予算その他のことでございまして、そこに書いてないものという意味でございます。従いましてその中に憲法改正の議案が含まれ得るということは、これは法律的には当然なことと考えます。かように考えております。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 私はそういうことを聞いておるのじゃない。普通法律では重要なものから順番に書いてくるわけですね。そうしてそれが並んで、一番あと雑件についてその他のこと、こうなるわけです。こういう普通の法律の立法技術ですね、これはお前の言う通りだ、内閣法は別にしなさい、法律技術としては一般的にはお前のようなことが言えるということは、あなた専門家ですから言えるでしょう。
  170. 林修三

    政府委員(林修三君) これは先ほども申し上げたと思いますが、立法技術といたしましては、ただいま亀田委員からおっしゃいます通りに、重要なものからあげてくる場合もございます。しかし常例的に起るものをあげて、異例のものを「その他」に含ませる場合もございます。この内閣法の場合は後者の例だと思います。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃあなたにお尋ねしますが、憲法という問題が取り上げられていて、実際に取り上げられていて、しかもその憲法という問題を表面に表さないで作られているような条文が、日本の現在の法制にありますか。
  172. 林修三

    政府委員(林修三君) 今おっしゃったような、この憲法改正という問題は、これはほかにはそう出てくることではございません。出てくることではございませんが、これは例を申せば国会法でありますが、これはどなたも国会議員が憲法改正の議案の提案権をお持ちになっておることは否定されないと思います。ところが国会法は憲法改正の議案について、特別な提案の手続は書いておりません。これは当然普通の議案の中に含めて書いております。そういうことで、ただいまの国会法の解釈から申しますれば、憲法改正の議案は国会議員が御提案になるのも普通の議案の手続と同様だと思います。当然その中に含まれておるものと考えるのでございます。国会法が国会議員に憲法改正の提案権なしと考えておるのじゃないと思います。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことはまたよけいなことです。憲法は国会が国民に対して、三分の二の議決で国民に対して発案をするわけなんです。この原則が憲法に明示されておる以上、提案権ぐらい持っているのは、これは当り前のことじゃないですか。それこそ書いても書かんでも当り前のことなんです。しかし内閣の場合は非常に疑義があるわけなんです。そういう疑義がある場合には、これを書いておくのは普通の手続ですよ。もっとほかに例ないですか。国会法の例は適切じゃない。
  174. 林修三

    政府委員(林修三君) これは憲法改正という問題は、今の内閣法のような場合、あるいは国会法の場合以外にはめったに起ってくることじゃございません。従いまして、私は最も適例だと思いまして国会法の例を申し上げたのであります。御承知のように第五十六条で、議員が議案を発議するのは衆議院においては議員二十人以上、参議院においては十人以上の賛成を要する、この「議案」に憲法改正の議案は当然入っているかと思います。現在においては入ってくると思う。将来においては憲法改正の議案について、特別の提案手続をお書きになるのは、これはもちろん自由でございますけれども、現在の段階においてはこの議案の中に当然法律案のほかに憲法改正の議案も含めておる、かように考えております。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 一つだけ最後に聞いておきますが、前の佐藤法制局長官から、そういうあなたのおっしゃるような趣旨で、内閣法が作られたということをお聞きになった、こういうことなんですが、これは私は非常に重要な問題だと思うのです。たとえば憲法第九条の問題にしても、制定当時における国会の総理大臣の発言、こういったようなことがやはり非常に重要なことなんです。と同じように、今あなたのおっしゃったこともはなはだ重要なんで、そのことは何か記録の上に明確になっているのか。あるいはおらないとすれば、あなたがどういう機会にお聞きになったのか、これを一つ明確にしておいてほしい。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は私は内閣法制定当時の速記録を調べてみましたけれども、速記録には出ておりません。私は御承知のように法制局に、同じ所に勤務しておりました。常時いろいろなことについては従来のことを聞いております。その段階において聞いており・ます一。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 同じ場所で勤務していて、その当時お聞きになったと。はなはだだんだんぼけてきたわけですが、もう少しその点を明確にしておいてもらいたい。都合によっては佐藤さんに来てもらって聞かなければならぬかもしれません。
  178. 林修三

    政府委員(林修三君) 私が実は役所の内部において聞いたことをここで申し立てたことは適当かどうかわかりません。わかりませんけれども、私はそういうことは実はただいま申し上げましたのは、内閣法は当然憲法の規定を受けておるわけでございますから、憲法解釈上、第七十二条の解釈、あるいはその他の規定の解釈からいって憲法改正の議案を内閣は提案することも否定しておらない。内閣法第五条のその他の中に含まれるのだ、こういうことを申し上げておるわけでございます。これは私の現在の解釈を申し上げておるところでございます。ただその過程でこういうことを申し上げた。(「時期だ」と呼ぶ者あり)それは私実は内部で一緒に勤務しておりますから、はっきりいつだったということは覚えておりません。(「大体の時期でいい」と呼ぶ者あり)私が法制局に参りましたのは二十三年でございますから、それ以後現在までの間でございます。
  179. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちょっとその点だけ関連して。先ほど林法制局長官は、内閣法制定の精神として、五条の「その他」の中には憲法改正案を含む、こういう佐藤前法制局長官の解釈であったという御答弁ですが、その後少し答弁がぼけましたけれども、それはあなたの佐藤法制局長に仕えておられた、あるいは一緒に仕事をしておられたときの佐藤さんの解釈というならわかります。わかりますが、昭和二十二年内閣法が作られます当時の法制局長官はたしか入江さんじゃないかと思うのですが、佐藤さんの解釈をお聞きになったのか。内閣法ができたときの立法当時の精神、こういうものはこれは違うと思う。制定当時の解釈、あるいは内閣法を技術的に作られた、そうして国会説明をせられた人は、これは入江さんと思います、責任上。私もそう思うのですが、その制定当時の精神としてお話になったのか、あるいは制定当時の精神、解釈というものはこれは別なのか。私はまあ今でもその点は佐藤さんに来てもらうよりも、入江さんに来てもらって証言を願うべきだと思うのですけれども、あなたは制定当時の精神を佐藤さんが言われたと、こういう御答弁なのですか。それとも昭和二十三年後、佐藤さんの解釈をお聞きになったというのか、その点を明瞭にしておいていただきたい。
  180. 林修三

    政府委員(林修三君) 私は先ほどから申し上げました通りに、内閣法制定当時あるいは改正当時の速記録にはその点は明らかになっておりません。従いましてその点を当時の政府が国会においてはっきり述べたわけでもないわけでございます。しかし私が申し上げましたのは、私の前任者の佐藤達夫氏のあるいは解釈かもわかりません。そういう意見として私は聞いておるということを申し上げたわけでございます。当時から考え方としてはそういう考え方をいたしたということを聞いておるわけです。
  181. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の答弁は佐藤さんの解釈であったかもしらぬとこう言われますが、先ほどは制定当時の法の精神だとこうい言われた。これは速記録を見ればはっきりわかります。私もそう聞いた。佐藤さんの制定当時の精神として、(「その通り」と呼ぶ者あり)こういう御答弁、それなら制定当時の法制局長を呼ばなければ私はならぬと思うのであります。というのは、憲法九条なら九条についても佐藤さん時代には戦力に達しない自衛力と申しますか、実力は用いる、こう言われました。しかし入江さんは佐藤さんがそういう多少牽強付会な答弁国会でしておられると、「人事行政」の中ではっきりこれは否定をせられた。武器は武器、人間は人間、しかもその武器は原爆を持っても、それから飛行機を持っても、それが結びつかなければ戦力にはならぬのだ、こういうことであるならば、それまでどんな兵力を養っても、武器を持っても、それはこつ然とある瞬間にくっつかなければ戦力にはならないということになる。そういうのは憲法九条の精神に反すると、これは明瞭に「人事行政」という雑誌の上で書いておられることはよく御存じだろうと思います。私は入江さんの考えは知りませんけれども、衆議院の法制局長をしておられた当時に、さすが憲法なり、あるいは内閣法についてもそうだと思いますが、制定当時の法制局長らしく民主的に解釈された。私はその問題について入江さんに伺うならば、おそらく憲法改正案の提案権はこれは国会固有のものだと解釈されるのだろうと思う。今あなたが言われるような「その他」というような、法律案あるいは予算よりも何と申しますか、順序に従ってあとのいわば軽視された表現の中には憲法改正草・案を入れるとは考えられません。これはまあ憲法の精神全体を論議するのはあとにいたしますが、私は入江さんがそういう解釈をされるとは考えません。これは憲法制定あるいは内閣法制定のときにそういう解釈が出てくるとは思いません。その憲法制定あるいは内閣法制定当時の精神であったのか、それともその後の佐藤さんの解釈であったのか、それがあなたの解釈につながっているのか、その点は明瞭にしておいていただかないと、あとで問題にする仕方がございますから、はっきりしておいていただきたい。
  182. 林修三

    政府委員(林修三君) 私は先ほどから申し上げておりますのは、現在の内閣法及び憲法の規定の解釈として申し上げておるわけでございまして、(吉田法晴君「さっきの表現と違う」と述ぶ)前に佐藤さんから聞いたということはっけたりに申し上げたわけでございまして、私の考え方は現在の憲法の解釈、内閣法の解釈を申し上げておるわけでございまして、そういうことで御了承願いたいと思います。
  183. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点はあとでいたしますが、今の答弁でははっきりいたしませんから、その点はあと一つはっきり明らかにしたいと思います。
  184. 田畑金光

    ○田畑金光君 鳩山総理に今度またお尋ねいたしますが、少し休みましたから今度は一つ懇切に御答弁願いたいと思います。(笑声)  この説明書によりますと、「現行憲法が昭和二十一年占領の初期において、連合国最高司令官の要請に基き、きわめて短期間に立案制定せられたものであり、真に国民の自由意思によるものにあらざることは否定しがたき事実であります」、こう述べておられまするが、こういう理由であるからして、現行憲法は押しつけられた憲法あるいは翻訳憲法、いろいろな呼び名があって、端的にマッカーサー憲法という呼び名で言われております。政府の高官の中にもそういう呼び名をやられておる方もありますが、どうですか、この点は鳩山総理としてはどういうようなお考えを持っておられますか。
  185. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 現行憲法が連合国の占領時代に連合国の示唆あるいは強力な指導によってできたということはこれは疑いがない。しかも短時日の間にできたということも否定はできないわけです。そういうような制定の事情と、その後の施行の結果を、経験を考え合せまして、憲法改正の必要があると私は考えているのであります。
  186. 田畑金光

    ○田畑金光君 短時日の間にあるいはでき上ったとか、連合国の司令部の指導のもとに制定されたとか、まあそういうようなことがあったがゆえに現行憲法を改正しなくちゃならぬというお話でありますが、単に手続がそうで るから改正しなくちゃならぬというのか。憲法の内容の中にけしからぬ内容があるので改正をしようという御意思なのか、どっちなんです。
  187. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) それは両方ともある。制定の手続上にもただいま申しましたような問題がありますし、その後の経験によりましても問題があります。この前のこの委員会において山崎君から詳細に改正の諸点について申し上げたはずであります。
  188. 田畑金光

    ○田畑金光君 内容について問題がある、そういうお話でありますが、そうしてまた過去九年間の実施の経験にかんがみて、内容に検討する点が出てきたと、こうお話になりますが、具体的に言うと、どういうふうな点が芳ばしくないのか。
  189. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) この前のときに山崎君から問題点について詳細に御説明がありました。どうぞそれによって御承知を願いたいと思います。
  190. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は総理に聞いておるので、そう詳細にわたる必要はないのです。現行憲法の内容、性格あるいは本質というものは、おのずから大綱があるはずです。そういうような大綱の中のいかなる内容が実情に即しないと判断されておるか、総理の見方を一つ私はお尋ねしているわけです。
  191. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) まあ幾度も申します通りに、平和主義、あるいは基本的人権、あるいは主権在民主義、民主主義、これらの点については改正する必要はないと思いますが、その他の点においては、前文からあるいは第一章から最後の章に至るまで直したいと思う点は諸所に散見できると思います。
  192. 田畑金光

    ○田畑金光君 今お話のように、平和主義とか民主主義とかあるいは基本的人権尊重とか、こういう点はあくまでも守る、直したくない、画さない、こうなってきますと、直すのが何もないじゃありませんか。前文から末端の文章まで変えるとなってきますならば、前文もあるいは本文の各条章も、すべて今あなたのお話のような三つの精神を守ろうという前提のもとにこの憲法の全体が構成されているわけです。その三つを改める意思がないとするならば、何を直そうとされるのですか。
  193. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 前回に山崎君の説明した通りであります。
  194. 千葉信

    千葉信君 関連して。鳩山さん御承知ないようですがね、前回の内閣委員会というのは、(「委員長独裁で開いた」と呼ぶ者あり)委員長の職権で開かれた委員会で、今質問しておられる方も、われわれも、その委員会には出ていないのです。ですから、速記録もまだでき上っておりませんから、山崎さんから答えた答えたということでなく、やはり総理大臣としては懇切丁寧に御答弁をされないとわからぬと思います。それを一つお含みの上御答弁して下さい。
  195. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理から聞きたいのだ、総理の考え方を。(「総理みずから」と呼ぶ者あり)
  196. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 具体的の諸問題については、調査会が自由に審議するのが当然だと思うんです。私は先刻申しました通り状況によって制定せられたる憲法は、日本が独立した今日は自由に討議して全般にわたって審議をし直すのは当然だと思っているのであります。
  197. 田畑金光

    ○田畑金光君 審議をし直すことはけっこうだが、審議をするについては、問題はどういう内容について鳩山総理としては審議をしてもらいたいのだというお考えなのか、その点を私はお伺いしているわけで、あなたは先ほど来三つの点については、これは厳然として守るとお話しになりましたが、そうなってきますると、何を改正なさろうという御意思なのか。
  198. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) とにかく両院において、衆議院においても参議院におきましても、御承知の通り、憲法九条については大へん意見の相違があります。ああいうような重要な事項について、これを明瞭にするということは特に必要だと私は思っております。将来も、山崎君が言われたのは前文もやはり翻訳的のような前文ではなく、簡明直截にいたしたい。天皇の表現についても、象徴というところだけでは満足できないようなこともあるから、これも検討をしてし直したい。国会の権限についても、予算の編成権だとか何かについてやはり検討をしてみたい。裁判所についても、その他についてずっと逐次最後まで御説明がありました。
  199. 田畑金光

    ○田畑金光君 そういう万般の内容にわたってきますると、あなたは先ほど憲法の平和主義とかあるいは国民主権とかあるいは基本的人権、こういう問題には手をつけないのだというお話でありましたが、矛盾してくるではありませんか。
  200. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) それはあなた方と見解が違うのでありまして、私どもは憲法において自衛軍を持ちたいという、憲法を改正して、自衛軍を持つということは憲法違反でないということを明白にするということが、これが世界の平和を維持する上に必要だと考えております。それもあなた方は侵略主義、軍国主義になるのだというように考えられるのでありまして、考え方の根本が違うのです。目的はやはり平和主義なんです。平和主義の目的を達成するのに意見が違うわけなんです。(「もっとも東条だって君、東洋の平和ということを言ったよ」と呼ぶ者あり)
  201. 田畑金光

    ○田畑金光君 総理のお話を承わっておりますると、これはたとえば憲法第九条の問題、いつでもこの問題について、この問題を中心として憲法全般に改正を考えているんだ、こういうようなお話しでありますが、憲法第九条のこの解釈等については、また論議をすると限りないと、こう思うのです。しかし問題は憲法第九条を初めといたしまして、一体今憲法を改正するとか、改正の論議を難上にのせておりますが、むしろ政府の立場においては、憲法をいかに守るかということが内閣としての責任であるし、義務であろうと考えるわけであります。むしろ——むしろというよりも政府の立場といたしましては、憲法違反の事実があるならば、そういうことをなくするために、あるいは現実のいろいろな情勢というものが憲法の規範と相反しているならば、そういう事実を憲法の内容の方向に近づけるような、こういう努力こそ政府の責任だろうと考えるわけであります。そういうようなことを考えてみましたとき、一体今まで政府はこの憲法を守るためにどういう努力をなされてこられたのか。今自衛隊の問題が出ましたが、あなた自身も、たびたび問題になっておるように、現在の自衛隊というものは憲法違反である、こういうことを繰り返してきたわけです。ところが自衛隊法ができたから自分の考えも変ったのだ、法律によって憲法の内容をじゅうりんする、侵害する、こういうことをあなた自身は変節してきているわけなんです。総理自身が憲法を守ろうとする努力を払わない。憲法の正しい解釈をやろうとする努力をしない。そういうようなことで、押しつけられた憲法である、占領下において制定された憲法である、だからこれを改正しなくちゃならぬ、これは筋が通らぬ、こう考えるわけですが、私の伺いたいことは、一体憲法を守るためにどういう努力を払ってこられたか。また政府というものは憲法を守るために当然努力すべきであるのだが、総理はどういう見解であるか、これを伺いたい。
  202. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 政府は憲法を守ることを一日も怠ったことはございません。私の申したのは、ただ憲法九条の解釈について私は前の解釈を取り消したのである、こう言っておるのです。それは自衛隊法というものが最初は憲法違反だということを私が主張したのはこれは事実なんです。けれども、自衛隊法が衆議院を通過した時分から、国家固有の権利として自分の国の国土を守るという権利は当然にある、それは憲法の九条の本質として否定はしていないというような解釈をすべきだというように自分の解釈を変更したのであります。これは憲法違反ではないのです。
  203. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ今は憲法九条の解釈について意見が変ったのだというお話でございますが、憲法を改正すべしという御意見は、これは終始変らなかったものなのでしょうか。最初、これはまあずっと前のことでありますが、戦後自由党を組織せられた。そして不幸にして自由党総裁の地位吉田茂氏にかわられた。そのあと、あるいは二十六年ダレス氏にお会いになったり、あるいは自由党との関係でかわられたり、出られたりされたわけでありますが、その際にも憲法改正問題というものが関連をいたしておったようであります。憲法改正云々という点について鳩山総理の信念と申しますか、信条について概略承わりたいと思うのです。
  204. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は日本は独立したということを名実ともに持ちたい、それには憲法を改正するということも必要だと、つまり占領時代にできた諸制度、諸法令というものは再検討したいというのが昔からの私の持論でありました。
  205. 吉田法晴

    吉田法晴君 昔からの持論であったとおっしゃいますが、独立したら云々というのは、これはあなたのお言葉ですけれども、昔からではあったとは考えられぬですが、伝え聞きますあなたの憲法改正云々という意見は、ダレス氏が何回も来ておられますが、その間に講和条約あるいは今から考えますと、安保条約の締結、そういう使命を帯びて日本に来られる際に、吉田前総裁なりあるいは首相に対抗してと申しますか、お会いになる際に、初めて意見が述べられた、かように聞いておるのでありますけれども、その前から、あるいはその後を通じても一貫した同じ持論で憲法を改正すべしという、こういうお考えなのでしょうか。言葉じりをとらえるわけではございませんけれども、独立したら、云々という今の御答弁ではちよっと私ども納得いたしかねます。
  206. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はいつからそういう論を唱え出したかはちよっと明白に申し上げかねますけれども、ずいぶん前から憲法改正の必要はあるということは唱えておりました。病気になりまして最初に演説をしたときに、まずそれを日比谷公会堂で演説をした気がしております。
  207. 吉田法晴

    吉田法晴君 日比谷公会堂の演説も大体承わっておりますが、それじゃいつから持っておられたかという点は明らかになりませんが、私どもが知っておる限りでは、二十六年以降、ダレス氏の来訪の際に述べられてから、内容は違うかもしれません、内容は違うかもしれませんけれども、持っておられた。それがあるいは自由党に行かれたり、出られたりした一つの契機であったということも承知をいたしております。ところが最近の、これは今の日比谷公会堂の点もでございますが、記録に残っておりますものの中で、いずれが本心なりやという点がわからぬ点がございます。先ほど共立講堂での演説については田畑君からも聞きましたけれども、これについては、学者ですけれども、大へん感情的で興奮をされた、感情的な議論ではあるけれども、中身のある議論ではないという批評もいたしておりますが、そういう感情的な要素は抜きにして、冷静なときもございました。たとえば昨年の二月二日仙台で、これは記者会見だろうと思うのですが、お話しになったときのごときは、大へん冷静ではないかと思うのですけれども、こういうことを言っておられるのです。再軍備は二年半前に比べると左右勢力の暴力革命の危険性は薄らいだ、また国際的にも第三次世界大戦の心配がなく、情勢は大きく変った、従って今急に憲法を改正してまで大がかりな再軍備をする必要はないと思う、こういう、これは選挙を前にしてであるかもしれませんけれども、いわば憲法改正について消極論を述べておられる。あるいは第三次大戦の心配がなくなった、従って云々という、こういう点は、これは私どももそう思うのでありますが、話の筋は大へん冷静だと思う。ところが、あるいは共立講堂で、あるいはこれは自由党の憲法調査会等でお話しになっておりますのを見ますというと、大へん感情的な御議論のようですが、これはまあここで読み上げるまでもございません、御存じであると思うのです。一体いずれが鳩山首相の本心なのか、私ども捕捉に困難をするのであります。明瞭に願いたいと思います。
  208. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は憲法の改正の必要はあると思っております、今日でも。常にそういうような考えを持っております。
  209. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは三十年の二月二日の、先ほど読み上げましたけれども、そういうお話はこれは間違いですか。
  210. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) いやその意味は急ぐことはないという意味で申したのであります。(「おかしいね」と呼ぶ者あり)
  211. 吉田法晴

    吉田法晴君 急ぐことはない、急ぐことはないとは書いてないのです。もう一ぺん読み上げますが、再軍備は二年半前に比べると、左右勢力の暴力革命の危険性は薄らいだ、また国際的にも第三次世界大戦の心配がなく、情勢は大きく変った、従って今急に憲法を改正してまで大がかりな称軍備をする必要はないと思う。なるほど急に改正する必要はない、まあこれは多少時期がありますけれども、しかし私どもとして読みますところでは、憲法改正について消極的だという印象を受けます。それから大がかりな再軍備をする必要はないのだ、表現は、たしかにその理由からいたしまして、二年半ほど前に言っておったような憲法改正を急ぐ理由はなくなったんだ、第三次世界大戦の心配はなくなったんだ、そこで憲法を改正してまで大がかりな再軍備をする必要はないと思う、こういうように聞こえますが、この何といいますか、この言明はこれは今日ではお用いにならないわけですか。
  212. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 二年半前とそう申したのは、その通り考えたからそう申したのであります。今日世界の大勢というものは実に違いますのでありまして、ジュネーヴの会議の巨頭会議の時分ではジュネーヴ・スピリットといいまして、非常にあの当時においては戦争はなくなってきた。で、ジュネーヴのスピリットといりものが今度は次官級の会議になってから急に激変しまして、その後には原爆、水爆等の、今度は製造の競争のような形になった。今度はまたブルガーニンや何かがイギリスへ行きすまして、イギリスは非常にこれを歓待しまして、非常にまた戦争の空気というものが遠ざかったような気がします。ヨーロッパの空気というものは変りますのであります。(「あなたは出たとこ勝負か」と呼ぶ者あり)捕捉しにくい、実際。実際のところそうです。日本としてはいかなる情勢になっても最小限度の自衛隊を持つということが世界の平和を保持するのに必要だという考え方を今日持っておるのであります。その最小限度の自衛隊を持つにすら、とにかく憲法違反だと主張する人があるくらいでありまするから、そういうものは違反で。ないということを明瞭にする必要は今日はあると思います。
  213. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと、今のお訴では国際情勢の変転に応じてときどき考えが変る。三年半前、そのとき去年の二年半ですか三年半前は、あるいは緊張が多くって急いで憲法改正しなきゃならぬと思った、しかし去年のそのお話のときには緊張が緩和して急いで憲法を改正してまで大がかりな再軍備をする必要はなかった、その後またトップ・レベル討議というか、巨頭会談のときには、緊張緩和の情勢が強く見えたそのときには、今仙台でお話になったように感じておる、その後あるいは外相会議等において必ずしもそう国際緊張の緩和が望めないのではないかと思われるようになった、そのときには意見が変った、こういうまあ御答弁であったように思うのですが、それと憲法改正問題あるいは今のわずかな自衛力を持つことも憲法違反だという意見もあるから云々という点はわかりますけれども、問題は憲法を改正する必要があるのかないのか、ときどき意見が変る、意見が変るが、昨年の二月には憲法改正してまで大がかりな再軍備をする必要はないと思われる、これはまあ御否定にならぬと思うのでありますが、それと今の憲法改正する必要はある、その改正する必要というのは、占領下で自主的な状態におかれなかったからと、こうおっしゃる、しかし国際情勢の変化は今申し上げた通りに、ときどき変化をいたします。最近はブルガーニン、あるいはフルシチョフ等の渡英、あるいはアジア等への旅行等もありまして、今のお話ではあるいは緊張緩和への方向に向っているかもしれません。あるいは軍縮の傾向、これは程度の違いもあるかもしれませんけれども、いずれが本心なのでしょうか。
  214. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は最小限度の自衛軍というものは持っておった方がいいと思います。その他においても憲法改正の必要のある条項があると思うということは、先刻申した通りであります。それですから、憲法改正ということを大体にした方がいいという意見は私は変更いたしませんが、外国の情勢のいかんにかかわらず、憲法改正はした方がいいと思っております。
  215. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと、最小限の自衛隊を持つために、憲法改正した方がよろしい……。
  216. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) それも一つ理由だということを言っておるものであります。
  217. 吉田法晴

    吉田法晴君 それも一つ理由、しかし今の御答弁は、最小限度の自衛隊を持つことも違憲だという意見もあるから、改正した方がよろしい、こういう御答弁……。
  218. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) その他にも理由があるということを申しました。
  219. 吉田法晴

    吉田法晴君 その他にも理由がある、その点についてですか。それでは国際情勢の変転によって最小限度自衛隊云々という点が変ってくるのでしょうか。憲法改正の意見は終始変らない。ただ国際情勢によって持つ自衛力の程度が違うから、従ってときどきこの表現が違うのである、こういうお話でしょうか。
  220. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 最小限度の自衛力を持つということは、世界平和のために常に必要だと思っております。(「何が最小限度だ」と呼ぶ者あり)
  221. 吉田法晴

    吉田法晴君 最小限というのはどういう程度のことを考えておられますか。予備隊程度のものでも最小限度、七万五千も、あるいは今年は今陸上は十五万でしょう。この間予算が通りましたし、自衛隊法が通ったので今年のうちに陸上十六万、まあ全部で二十万人に達するか達せないかということであるが、それも最小限度だと思うのか、あるいは防衛庁試案では陸上十八万云々というお話をしている。それも最小限度でしょう。言われるような、昨年二月二日言われたような世界の情勢は第三次世界大戦の心配はなくなったので憲法改正してまで大がかりな再軍備をする必要はないという程度ならば、現状でこれはいいと、こういうことになるのだと思うのですが。
  222. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 急迫不正の侵略に対して一時これを防御し得る、つまり自衛といったところで、ほんとうの自衛力を持つことはとうていできません。これは集団安全保障による以外に、日本の自衛力というものを完全に持つということはできない。急迫不正の侵略に対し一時的にもこれを防御し得る最小限度の自衛力を持ちたい。(江田三郎君「突然原爆を落されたらどうするのです、鳩山さん。これはどうやって最小の自衛をするのですか」と述ぶ)
  223. 青木一男

    委員長青木一男君) 私語をしないで下さい。
  224. 吉田法晴

    吉田法晴君 おのずから起ってくる疑問だから、ああいう言葉が出てくるのだと思うのですが、それでは鳩山首相の最小限度というのは、どういう程度なんですか。
  225. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 経済と見合うということが一つの。ポイントだと思います。
  226. 吉田法晴

    吉田法晴君 経済と見合う……、それから先ほどのお話の急迫不正の侵略に対して最小限度防衛し得る。それは抽象的な言葉ですが、自衛力というものも、自衛隊がありますし、その最小限は、実は具体的な数字なりあるいは程度というものがあるわけなんです、それはどういう工合にお考えになるのですか。現状なら現状が最小限度とお考えになるのか。それとも憲法が許すならばどこまでも——十八万あるいは十八万以上になるか、それが最小限とお考えになるのか、どういう工合にお考えになっておりますか。
  227. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はその意は専門家でないからわかりませんが、限度は——経済に見合わない兵力を持つということはできないと思います。そこに制限が一つあると思います。
  228. 亀田得治

    亀田得治君 関連して。それでは経済力が倍になった、そうすると、その倍に軍備を増強しても最小限度と、こういうことは言えるのですか。
  229. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 最小限度は、幾度も言う通りに、自衛のためという条件がむろんつくのは当然です。これは侵略の程度に兵備を持つということは危険ですから、そういうようなことは考えません。
  230. 亀田得治

    亀田得治君 非常に抽象的ですが、現在の自衛隊の状態は、これは最小限度なんですか、あるいは最小限度よりもまだ以下なのか。
  231. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は以下だと考えております。とうていその最小限度の自衛力を持つのには、安全保障条約によっても日本の自衛力を漸増する義務を負っておるくらいでありますから、今の限度をもって最小限度の自衛力を日本が持つということは言えないと思っております。
  232. 亀田得治

    亀田得治君 集団安全保障の問題と一緒にするのはちょっと問題が混同すると思うのです。あなたの立場から言っても、日本としての最小限度の自衛力を持つ、こうあなたは絶えず言っている。しかしなおそれで足りないで、集団安全保障ということをさらにその上にワクを考えておる、こういうことなんです。だからそこで日本だけの立場における最小限度の自衛力、それに限定してお答え願いたいのですが、先ほどのお答えは、私が、現在の自衛隊は最小限度の自衛力かと、こうお尋ねしたのに対して、集団安全保障というものも加わらなければ完全でないから、これは最小限度ではないと、それよりも以下だと、こういうふうにお答えになったのですが、そうじゃなしに、集団安全保障とは別にして、日本独自の立場で持てる最小限度の自衛力でありますかと、この点を聞いておるのです。どうです。
  233. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はまだその程度にまで日本の自衛力が達していないと思います。
  234. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、日本独自の立場として持てる最小限度ですね、それは大まかに言って、現在に比較してどの程度のことをお考えになっておりますか。差があるわけですね、まだ。
  235. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういうふうな点については、国防会議ができました後に、よく検討いたしてみたいと思います。
  236. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃだめですよ、ここまではいけるのだ、大体のめどというものがあって、初めて現在の持っているものはまだそこまでもいっていないのだということが言えるのであって、私は何もこまかいことを聞いているのではない。兵力において何方何千幾らまでとか、そういうことを聞いているのではない。ワクというものを、大体の最小限のワクがあって、初めて現在のやつはそこまでいっておらんと言えるのに、そのワクを聞いたら、それは国防会議等においてと、こういうことでは、あなたの現在おやりになっておることは非常にあいまいで、はないですか、現在維持しておる自衛隊が最小限度の線をこえておるか、こえてないか、ちっともわからんじゃないですか、それなら、もしこの国防会議が、あるいはあなたの意見に反して、現在の自衛隊はいわゆる最小限度よりも少しはみ出ておる、こういうことになるかもしれませんよ、あなた自身に確信がない以上は、さっきの答弁からいきますと、そういうことになります。だからその全体のワクを、国防会議ではなしに、あなた自身が今どう考えておるか、それを聞いておるのです。
  237. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 抽象的に私は言うだけでありますけれども、とにかく共同防衛計画というものができて、日本は自衛力を漸増するという約束をしているくらいに防衛力は日本は欠如しておるわけでありますから、その程度に達するくらいは——日本は防衛力は十分だとは言えないと思っております。
  238. 亀田得治

    亀田得治君 だからそれがどこまでかということを聞いておるのです。
  239. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そこは防衛庁長官がときどき説明しておりますが、陸上何方、海上何トン、飛行機何千機というようなことは、防衛庁長官が目安一つきめていると私は思っております。
  240. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ数字については全然御存じないというか、関心がないというか、自衛隊の指揮と申しますか、防衛庁長官がいう——昔でいう統帥権の責任者は、総理大臣が自衛隊を指揮されるあるいは動かされるのですよ、あるいは防衛力を増強されて、今のお話の共同防衛云々という点がございますが、それについても責任を持っておられる、それに全然、とにかくどの程度までどうしていくのか、関心がないというか、責任観念がないというか、これはあきれ返りますが、かりにまあ事実問題として、覚えておられないにしても、憲法改正をしたいと言っておられる、一党を代表しあるいは政府を代表して、そしてその理由として憲法は自主的な判断で制定し得るような事情でなかった、あるいは別なところで言っておられますけれども、共同防衛というか、安保条約を結ぶためには全然自衛力がないから、そこで米軍の駐留を願っているのだと、その状態をなくするために自分で自衛力を持ちたい、こう言っておられる。ところが今御答弁を伺うというと、共同防衛、あるいは集団安全保障ということだから、安保条約等によって自衛の任務を負うておる、こういうお話。それでは今お話の自衛ということは、アメリカから要求せられる自衛じゃありませんか。憲法を直したいというお話ですが、憲法がどういう事情のもとでできたかということは、これから御質問申し上げて参りたいと思うのでありますが、しかしその自衛問題の、自衛の点についても安保条約云々ということを言われますが、それをアメリカから要求される自衛、アメリカから十個師団、あるいは今の十五万、十六万で足らぬ、あるいは十八万にしなさい、あるいは防衛努力が足らぬ、もっとふやせと、こう言われるならば、これはエンドレスにどこまで大きくなるのかわからぬが、それはアメリカの、要望のままにこれはおふやしになるのですか。それなら自主性も何もありゃせんじゃないか。
  241. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 防衛については日本が自主的にきめるのでありまして、アメリカからは何らの要望はございません。(「しらじらしい」と呼ぶ者あり)
  242. 吉田法晴

    吉田法晴君 今、あなたは、集団防衛、集団安全保障条約で、集団安全保障条約という言葉を使いましたけれども、集団安全保障条約というのは、安保条約及び行政協定によって、あるいはMSA協定によって防衛努力をするという義務を負っているから防衛力を漸増するのだ、こういう御答弁でした。
  243. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 防衛分担金の制度もありまして、ある程度の防衛、自衛力ができれば防衛分担金の減額を要求し得るということになっておるのであります。それで防衛分担金の減額の問題についてアメリカに、日本がどのくらいに防衛力ができたから分担金をどのくらい減らせということが言い得る制度ができておるので、その点申したのであります。
  244. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は何も防衛分担金の問題を聞いているのではありません。先ほど来自衛のための自衛力は、軍事力は、最小限度に持たなければならぬ、その限度はどこか、こういう質問をいたしました。ところが、亀田君と私が質問いたしましたところが、共同防衛の建前から自衛力をふやさなければならぬ、こういうお話、あるいは集団安全保障の建前から自衛力をふやさなければならぬ、こういう御答弁ですから、それならアメリカから要求されている条約の建前上、要求されるからふやす、こういうことになるではございませんか。それでは自主的な防衛努力ということではないではないか、こういうことをお尋ねをしたわけです。これは私がここで長々聞く時間もございませんけれども、昨年の重光外相あるいけ岸幹事長、それから河野農林大臣、これらの人たちがアメリカにおいでになった。これは防衛分担金削減の点もございましたでしょう。直接的ではない、具体的な問題はないのだということだけれども、日本の外交方針その他を御説明においでになったんでありましょうが、そのときに重光外相は、今の安保条約、行政協定が片務的であるからこれを直したい、できれは双務的にしたい、こういうことで行かれた。そうしたところが、双務的になるにはもっと自衛隊が、自衛力がふえなければならぬ。そうして西太平洋における第一義的な自国の防衛に責任を持てるだけでなくて、西太平洋の防衛、安全についても責任を持てるようにならなければ双務条約というものはできない。こういうことで海外派兵問題が持ち上ったのです。今のような片務的な条約ではいかぬ、直してもらいたいと、こういうお話があると、すぐに向うから双務的な条約にするにはこれだけの条件が必要であるということで防衛力の増強努力について、あるいは西太平洋の防衛、安全について責任を持つまでいくべきだ。その際に憲法改正問題も示唆されたと報ぜられておりましたが、自主的に云々ということを言われますけれども、実際はそうじやない。そうして今お話しのような共同防衛とかあるいは集団安全という、これはあなたもお認めになっておる。そんなら自主的に防衛をきめるとおっしゃっても、それは自主的でもない。かりに自主的ならばその目標といいますか、限度というものがはっきりあるはずなんです。どっちもないじゃありませんか、はっきり御答弁を願いたい。
  245. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 自主的に日本の防衛力をきめることはこれは間違いありませんけれども、日本の防衛は日本で自主的に日本の経済力と見合ってやっていくのが当然だろうと思っております。アメリカはそれに条件を付しているということはないのであります。
  246. 吉田法晴

    吉田法晴君 条件を付しておることはないと、今の、たとえば十五万を十六万にふやす、あるいは十六万を十八万にというこれは案があることは御存じだろうと思う。それに対して日本の防衛努力が足りないという話があることは、これはお認めになりましょう。なりませんか、それも。
  247. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私はそのことは知りません。
  248. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではこれは国を代表して行かれたわけですが、今の安保条約あるいは行政協定が片務的なものであるからもっと双務的なものというか、片務的なものを直したい、こういうことでアメリカに行かれた日本政府の代表の意向と申しますか、あるいは向うで話しをしてもらう、それからその話の結果がどうであったか、こういうことはこれは御存じございませんか。
  249. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 外務大臣が国会説明した以外には私は存じません。
  250. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、説明した以外のことを聞いておるのではございません。そのアメリカにおいでになった意図、あるいは言われたこと、そこで向うから言われたことについて、防衛の努力が足らぬ、あるいは双務的な条約にするについてはもっと自分の防衛について——これはマザー・ランドと書いてありましたか、ホーム・ランドと書いてありましたか、ちょっと今はあれがありませんけれども、日本の防衛についで第一義的な責任を負い、西太平洋の安全と防衛についても責任を持ち得るほどになるべきだ、こういう話があったことはこれは御存じでしょう。これも御存じないですか。
  251. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は知りません。私は外務大臣からそういう報告を受けません。
  252. 吉田法晴

    吉田法晴君 受けません……。これは驚いた大臣です。政府を代表してアメリカへ行って話しをしたけれども、その話の内容は知らぬというようなことで、まことにもっておそれ入った話ですが、それでは今、先ほど来伺っております自衛力の増強ということについてアメリカからは何の話もなくて、自分の判断だけでふやしていきたい、そのふやしていく目標というものはどういうものであるかということ、これもまあ御存じない、こういうわけですか。
  253. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 自主的に日本できめるので、アメリカの容喙によって日本の防衛計画を立てるわけではありません。国防会議ができましたならば、私は議長を勤めるわけでありまするから、そうなればまたよくわかると思います。今日ではどういうような程度の防衛力を作っておるか、それについて私は知識を持っておりません。
  254. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ知識を持っておられぬ点もあきれ返りまするけれども、あれだけ問題になっておりますアメリカとの関係というものについても全然御存じがない。まあ口があいてふさがらぬという格好ですが、国防会議で自衛力云々という点について、増強計画についてもそうでありますが、これは私ども説明を聞いて参っております。ところが昨年の重光外相その他がアメリカ側と話をされてきたときに、先ほどのような日本の防衛について第一次の責任を持つ、あるいは西太平洋の安全と平和についても責任を持ち得るようになるべきだと、こういうお話があったということでありまするが、なおこれからの防衛計画について日本側とアメリカ側と東京において相談をしておる。これは混合軍事委員会という言葉で表現されておるということもありますが、あるいは日米協議会ということでいわれておることもありますが、日本で、東京でそういう点について話し合いが行われる、こういうことも全然御存じございませんか。
  255. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そういう話は今起っておりません。
  256. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ重光外相も呼んでこなければ、聞いておらぬ、そういうことについても知らぬというお話らしいですが、あれだけ当時政府でも騒がれた問題について、これはその前に、昨年の九月外務省から、あるいは帰ってきた重光外相からも——あの当時はあるいは軽井沢におられた当時かもしれませんが、報告があったということでありまするが、全然そういうことについては聞いておられぬ、御存じないというのでしょうか。
  257. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 外相の報告はありましたが、あなたのおっしゃるような報告はないのです。
  258. 吉田法晴

    吉田法晴君 あのときには海外派兵を約束しなかったのだと、こういう報告があったのだろうと思うのでありますが、今日、先ほど私が申し上げましたのは、共同声明の中にあることですが、母国といいますか、日本自身について防衛の第一次的な責任を負い、それから西太平洋の安全と平和に寄与するようにならなければいかぬという、そういう話も全然ございませんでしたのですか。
  259. 林修三

    政府委員(林修三君) ちょっと私から御答弁するのは筋違いかもしれませんが、今の共同声明のことでございますが、あれは御承知のように日本が第一次の防衛の責任を負うようにして、よって西太平洋の安全と平和に寄与する、こういうふうに声明はなっていると思います。つまり前段とあとは、原因結果によって結びついている、そういう共同声明の趣旨だということが、外務大臣の報告の趣旨だと思います。
  260. 吉田法晴

    吉田法晴君 いや、その全文の翻訳の仕方についてあなたからお教えを受けようというわけじゃない。先ほど総理は、日本の防衛ができるまでにはなさなければならぬ、こういうお話でしたから、それについてアメリカ側から、共同声明の中ではあるけれども、「日本が、できるだけすみやかにその国土の防衛のための第一次的責任を執ることができ、」、できるように、あるいは「かくて」か「かつ」か、これはアンドと書いてありますから、ほんとうは「かつ」でありますが、「かくて西太平洋における国際の平和と安全の維持に寄与することができるような諸条件を確立するため、」、今後努力をしなければならぬ、これはまあ「協力的な基礎にたって」と書いてありますけれども、そうしますと、アメリカ側からも日本を守るために、日本が自分で自分を守るためになお努力をしなければならぬ、こういうこと、そういう意味が入っておる。そういう話が去年あったということではないかと、こういうことを申し上げておる。これはまあ鳩山首相に聞いておるので、そういう点についても全然鳩山首相としては御存じないということでしょうか、そういう話ならば聞いておるということでしょうか。
  261. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 日本が日本の自衛のために自衛力を持つということを、日本はやるのだということを言ったのです。それは否定しません。それだけのことです。
  262. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじゃ自分でそう言うたと、こういうことですか、まあ共同声明の書き方は、日本側からこう言った、外務大臣はこう言った、それからアメリカからこう言われた、合意に達したものについては双方で意見が一致したと、ここには「意見が一致した。」、こう書いてあります。
  263. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 日本が自衛力を増強して、それを目的として進むということを日本は声明しました。アメリカもそれを了承したわけです。
  264. 吉田法晴

    吉田法晴君 日本がまあ自分の自衛力をどの程度にふやすかということは、日本でも判断されるということはわかりますけれども、日本の自衛という問題についても、アメリカからも何と申しますか、話があった、これは御否定にならないだろうと思うのです。そのときにあなたたちがよく言われるように、アメリカの軍隊におってもらって、アメリカの軍隊だけから日本の防衛を守ってもらうのは、それは独立国としてふさわしくないから、そこで自分の軍隊を持ちたい、こういうことを言ってこられた。それが憲法違反の疑いがある云々ということだから憲法を改正したい、こういうまあ意味です。ところがその同じ日本の防衛問題について、あるいは防衛努力についてアメリカからも意見が述べられた。あるいは三十五万ということは、言われたかどうかは別にして、防衛努力が足らぬというか、あるいはもっとふやせと、こういうお話があったかと、こういうことを聞いておるわけであります。なおさらに双務的なものにしたい、庁務的なものでない条約にしたいという外務大臣からの話に対して、双務的なものにしたいというならば、それは条件がある、こういうお話があったということですが、これは、言われた言われぬということは、あるいは水かけ論になるかもしれませんけれども、それでは総理として、そういう双務的な条約になるためにはもっと自衛力をふやしていく、自衛隊をふやしていかなければならぬ、あるいは西太平洋の安全保障についても寄与し得るためには、双務的な条約に加わって、双務的な条約を結んで、西太平洋の防衛についても責任を持ち得るようになるためには、この憲法の改正はしなければならぬ、こういう工合にお考えになりますかどうか。向うの話があったかどうかということは、これはまあ聞いても御答弁がございますまいから、こういう問題に関連をして総理としてはどういう工合にお考えになりますか、この点について伺いたい。
  265. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は海外派兵を含むような義務を日本は負担すべきものではないと考えております。
  266. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは西太平洋の安全に寄与し得るというような状態になるためには、海外派兵が必然的になる。海外派兵が必然になるような双務的な条約を結ぶ考えはないか、あるいはそういう形で西太平洋の平和に寄与する、こういう考えはない、こういうことですか。
  267. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) そうです。海外派兵ということは政府としては考えておりません。
  268. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその西太平洋の、日本以外の、西太平洋の安全に寄与し得るような双務的な条約も結ぶ気持はない、こういうことなんでしょうか。
  269. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 今申した通りです。海外派兵を含むような双務条約はする意思はありません。
  270. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは今の憲法のもとにおいてはできないことですから、する意思はないということですが、憲法に関係なしに……、憲法とはその問題は関係はないと、こういう工合に言明されるのでしょうか。
  271. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法と関係なくそういうように考えております。
  272. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではこの問題と憲法改正問題とは関係がない。従って日本の領海、領空から出ていくような義務を伴う双務条約、あるいは集団安全保障条約に加わる意思はない、こういうことですか。
  273. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 憲法を改正しましても海外派兵を意味するような、海外派兵をやりたいために憲法を改正するという意思は毛頭ないのです。ただ最小限度の自衛力を持つということが明瞭になればいいと思っております。
  274. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうして最小限度というところに、これはこの憲法改正問題と関連が私どもあると思うのですが、従来吉田内閣時代に、憲法改正はいたしません、それから再準備はいたしません、こういう答弁がなされてきたことは、これは御承知の通りであります。それは再軍備は憲法で禁ぜられている、あるいは戦力を持つことはできない、その再軍備の中身として戦力を持つことはできない、戦力に至らない程度の自衛力を持つのだ、こういうことで、戦力というのは一つの限界であったことは、これはお認めになると思う。ところが鳩山内閣になって、鳩山首相みずから、そういう程度の差はないのだ、戦力に至らない云々ということはないので、そういう限度はないので、自衛のためならば戦力も持つことができる、あるいは軍隊も持つことができる、こういう御解釈、そうすると、鳩山首相の解釈だと限度がございません。そうするとこれは憲法を改正しなくても自衛力は幾らでも持てる、憲法を改正の必要はないじゃないか、こういうことも言える。吉田内閣時代にはそれは憲法改正の必要があった、再軍備のためには。自衛隊を持つこと、再軍備と憲法改正とは関係がございませんか。軍隊を持つことと憲法改正とは関係がございませんか。
  275. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私は自分の主張する通りに、自衛のためには軍隊を持ち得ると思うのです。だけれども、それは憲法上禁止していないと私は言うのですが、これをそういうように考えない人があるのですから、そういう疑いのないようにいたしたいと思っております。
  276. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は、まあこれは疑義があるないの話ですが、今はその点を聞いているのではなくて、今の憲法でもどこまでも自衛隊は持ち得ると、こういう工合にお考えになるのですか。
  277. 鳩山一郎

    ○国務大臣(鳩山一郎君) 私自身は自衛のために必要なる限度においては畠小限度の軍隊は持ち得ると思っております。
  278. 吉田法晴

    吉田法晴君 理由はわかりませんが、ある程度で今日の質問を終れということです。その点についてもう少し質問をいたしたいと思いますが、途中で切ることになりますが、この点を、これは最後に聞いておきたいと思う。これは憲法の根本原理だと思うのですが……、これはお立ちになる時間があるのですか。
  279. 青木一男

    委員長青木一男君) 時間があるのです。
  280. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一、二分いいですか。
  281. 青木一男

    委員長青木一男君) それはやめて下さい。
  282. 吉田法晴

    吉田法晴君 途中ですから……。(「保留しておけ」と呼ぶ者あり)
  283. 青木一男

    委員長青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会      —————・—————