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衆議院議員(山崎巖君) ただいま御質問の
憲法調査会法の設置の
理由につきましては、御指摘の通り現行
憲法の制定の経緯並びに過去約九カ年にわたりまする実施の実績にかんがみまして、私
どもといたしましては現行
憲法に再
検討の時期がきておる、これが
内閣に
調査会を設けんとする
理由であります。
そこでただいまの御質問でございまするが、それでは現行
憲法のどういう点に問題があるのか、こういうお尋ねであろうかと思うわけでございます。現行
憲法の内容につきまして、私
どもがただいままでいろいろ党内に
調査会を設け
検討しましたのでありまするが、まだ
検討の段階でありまして、結論的にここに詳細申し上げる時期ではないかと思うわけであります。しかしただいままでの
検討によりましても、前文を初め各条章にわたりまして、問題点は相当あるように思うのであります。
大きい問題一、二を拾って見ましても、現在の前文がいかにもごらんの通りに表現が冗漫でございまして、またきわめて翻訳的であり、またその内容を見ましても、いかにも消極的、他力本願的であります。こういう点につきましては全面的にこれに
検討を加える必要があるのではなかろうかと思います。もとよりこの前文の示しておりまする個人の
尊厳でありますとか、あるいは基本的人権の保障でありますとか、
平和主義及び
国際協調主義というような原則はあくまで堅持しなければならぬと思いまするが、今申し上げましたような
理由によりまして、より積極的に文化の
向上、
国民の福祉、民族の繁栄に対しまする
理想と決意を積極的に書き表わすような方法を
検討する必要があるように思うわけであります。
第二章の天皇の章につきましても、もとより
国民主権の原則はあくまでこれを堅持して参るつもりであります。しかしながら現在の条章を見ますると、天皇を表わすのに象徴というような
言葉になっております。象徴という
言葉につきましてもその意味が明瞭を欠くような点もあるように思いますので、この天皇の呼称といいまするか、称号といいますか、呼び方につきましても
検討の必要があるように思うわけであります。また天皇の国事行為につきましても、現在の
憲法七条をごらんになりますると、その書き方につきまして、あるいは認証を要することになっておる項目もございますし、また二面、
内閣の助言と承認によって天皇が国事を行うという二つの書き方になっておりまして、これの点につきましても調整の必要があるのではなかろうかと思うわけであります。
戦争放棄の第二章につきましても、また従来から第九条第二項をめぐりまして、現在の自衛隊すら
憲法違反になるというようないろいろな説がございます。こういう点につきましても、国力相応の最小限度の自衛力を具体化するにつきましても、もう少し明文をはっきりする必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに
考えるわけでございます。
なお、また第三章の基本的人権すなわち
国民の権利義務につきましても、現在の基本的人権の尊重の原則は、私
どもあくまでこれを堅持して参るつもりでありますけれ
ども、さらに積極的に
国民の権利等につきましても
検討をする問題が残されているのではなかろうか。
一つの例をとって申し上げますると、現在児童の保護につきましては、御
承知のように児童の酷使についての規定がございますけれ
ども、あるいは寄るべなき母子の保護でありますとか、あるいはまた老人の保護でありますとか、こういう点につきましては現在の
憲法は何ら触れておりません。また科学の振興でありますとか、芸術の尊重でありますとか、こういう点につきましても、
検討を加える余地が残されているのではなかろうか、こういうふうに
考えるわけであります。
さらにただいま
廣瀬先生からいろいろ御質問のございました
国会の
制度につきましても、ことに現在の
参議院の構成並びに任期が果して適当であるかどうか、こういう問題も十分
検討の余地がある問題ではなかろうかと思うわけであります。ただいま
廣瀬先生のお説にもございましたように、両院
制度をとります以上は、両院の構成をおのおの特色あらしめまして、その効用を発揮せしめることが非常に私
どもは必要であるように思うわけであります。そういう意味合いにおきまして、現行
憲法は果して適当であるかどうか、こういう問題も残されておるように感ずるわけであります。
国会の権限につきましても、また
民主政治を
ほんとうに守る意味におきまして、現在の
国会の権限そのままでよろしいかどうか。あるいは予算の増額
修正の問題でありますとか、あるいは予算を伴います
議員立法の問題でありますとか、こういう問題につきましても、現行
憲法に相当
検討を加えるだけの価値があるのじゃなかろうか、こういうふうなことも
考えておるわけでございます。
内閣の
制度につきましても、現在の
内閣総理大臣の
国務大臣の罷免権の問題、こういう問題につきましても問題が残されているような気がいたします。また
国会の承認を要しまする条約の範囲等につきましても、
検討を加える余地があるように思います。
司法の壷におきましても、あるいはいつも問題になりまする
国民審査の問題、あるいはまた最高裁の違憲審査権の問題、あるいはまた最高裁の規則制定権と法律との
関係、こういう問題も
検討の価値のある問題ではなかろうかと思います。
財政につきましても
憲法八十九条につきましては常に問題がございまして、御
承知のように、慈善、教育または博愛の事業に対しまする公金の支出禁止の規定でございますが、これらも
わが国情に現に適せない規定ではなかろうか、こういう
議論もあるわけでございまして、これまた
検討をする価値があると思います。
地方行政につきましても、現在の地方公共団体の長の直接
選挙の問題、あるいはまた公共団体の特別のある公共団体に適用します特別法の住民投票の問題、こういう問題も果して
わが国情に適するかどうか、こういう点も
検討をいたしたいと
考えておるわけであります。
また
憲法改正の条章につきましても、果して現在の規定が国情に適するやいなやというような問題もあるかと思うのであります。
こういうふうに簡単でございますが、述べて参りますと、現在の
憲法につきましては、各条章にわたりまして、ただいま申し上げまするように、過去九カ年の実績にかんがみまして、十分
検討を加える時期がまさにきているように思いまして、今回
内閣に
調査会を設けていただきまして、その
調査会におきまして、十分各方面の世論を反映せしめ、
国民の意見を十分に伺って適当な方向に進んで参りたい、こういう趣旨でございます。