運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-23 第24回国会 参議院 内閣委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十三日(月曜日)    午後四時三十八分開会     —————————————   委員の異動 四月二十一日委員小柳牧衞君及び岡田 信次辞任につき、その補欠として井 上清一君及び紅露みつ君を議長におい て指名した。 四月二十三日委員野本品吉君、西郷吉 之助君、紅露みつ君、田畑金光君、亀 田得治君、内村清次君及び松浦清一辞任につき、その補欠として菊田七平 君、川村松助君、佐藤清一郎君、秋山 長造君、岡三郎君、阿具根登君及び永 岡光治君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青木 一男君    理事            宮田 重文君            島村 軍次君    委員            青柳 秀夫君            井上 清一君            川村 松助君            木村篤太郎君            菊田 七平君            佐藤清一郎君            廣瀬 久忠君   衆議院議員    山崎  巖君   国務大臣    内閣総理大臣  鳩山 一郎君    国 務 大 臣 吉野 信次君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○憲法調査会法案衆議院提出)     —————————————
  2. 青木一男

    委員長青木一男君) ただいまより内閣委員会を開きます。  委員の変更についてお知らせいたします。二十日、最上英子君が辞任せられまして、その補欠岡田信次君が選任されました。  二十一日、小柳牧衞君、岡田信次君が辞任せられまして、その補欠井上溝一君、紅露みつ君が選任されました。  四月二十三日、田畑金光君、亀田得治君、内村清次君、松浦清一君が辞任せられまして、その補欠秋山長造君、岡三郎君、阿具根登君、永岡光次君が選任されました。なお野本品吉君、西郷吉之助君、紅露みつ君が辞任せられまして、菊田七平君、川村松助君、佐藤清一郎君が選任されました。     —————————————
  3. 青木一男

    委員長青木一男君) 憲法調査会法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。
  4. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 調査会法案につきまして、総理大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。  調査会法の第二条「調査会は、日本国憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議し、」こういうことに相なっておるのでありますが、私がお伺いしたいことは、この調査会において憲法検討を加えるについて、「関係諸問題を調査審議し、」、その関係諸問題とは何ぞやということについて、総理はどういう工合にお考えになっておるか。申すまでもなく、憲法国家生活の基本の法でありますから、関係諸問題ということは、その範囲は実に広範で、内政外政の全部にわたるものだと私は心得ます。そういう工合に解釈して私はおるのでありますが、総理大臣のお考えはどうでありましょうか、これをまず……。
  5. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 関係諸問題というのは、やはり広く解釈いたしまして、調査検討の上に、憲法改正すべき点があれば改正案検討するということになろうかと思います。
  6. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 検討を加える上において必要のある諸問題、私は非常に広範なるものであると思っております。内治及び外治、外政の問題、内政の問題、全部関係ある、こういうふうに思う。そう考えますと、よほどこの調査会関係するところは広い。そういう考え一つ進むとすれば、いかにも予算面などを見ると、非常に小じんまりし過ぎておるように思います。これらについては十分将来お考えを願いたいと思う。それとともに、私がこういうことを申し上げるのは、関係諸問題というのは内政外政の全般にわたるのだ、またそれでなきゃできないと思います、憲法改正は……。外交上の問題、単に平和主義というだけじゃだめなんであります。これについてはわが国の世界に対する態度はどうである、あるいはアジアに対してはどうだ、共産圏に対してはどうだ、あるいは自由諸国家に対してはどうだというような問題をすべて検討しなければ、憲法の上に平和主義あるいは国際協調主義を表わすことはできない。そういうことをやらなければ、憲法ほんとう検討は私はできない。内政においても同様であります。で、私はきょうはその内政関係してまず総理にこの関係語問題についてお伺いをしてみたいと思う。  まず第一に、総理にこの関係諸問題の一つと私が考え内政上の大きな問題、それをお伺いしますが、わが国議院内閣制をとっておる。私は、この議院内閣制をとっておるということは、やはり民主主義実現においては今考えられる最も適当なる制度であると思います。民主主義実現という見地から議院内閣制は最も適当だと思う。そこで議院内閣制を現在の憲法がとっておる。またこれをいかに検討しても、これをやっぱりわれわれは堅持していきたいと思うのでありますが、そこで総理に特にお伺いしたいのは、議院内閣制をとる以上は、二大政党主義をとられなきやならぬというのが今日の原則だと私は心得ておる。そこで一つ総理に二大政党主義というものについてどういう工合にお考えになっておるか。非常な長所もあると思います。同時に短所もあると思います。それで議院内閣制で二大政党主義をとるということは、総理も常に言われておるが、今日あらためてどういう長所を持っておるかということを一つはっきりお伺いし、次に短所の問題について議論を進めてみたいと思います。
  7. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 二大政党主義責任政治を明らかにする上に非常に便利な主義だと考えます。とにかく民主政治というものは責任政治でありまするから、責任の帰趨が明らかになっていくことが非常に必要だと思うんでありますけれども、二大政党主義というものを採用しておる民主政治先進国においては、その三大政党の間に近似性があるのであります。特に外交問題などについてはバイパーティザン・ポリシーなどと言いまして、近似性が非常に多いのでありまするから、二大政党というものもこれを是認していく上においては、二つの党派の間に政策——内外にわたっておる政策近似性というものができてくる必要があろうと私は思いまして、そういうように進歩していくことを希望しておるのであります。
  8. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 議院内閣制をとる以上は二大政党主義をとって、そうして責任政治を明らかにして、内閣国会に対して責任をとり、そうして国会を通じて国民責任をとる。民主政治をそれで完全にやっていこうという点についてはまことにその通り私も思います。そのほかにあるいは政局安定の見地からいっても、あるいは政治能率増進見地からいっても、あるいは政策一貫性見地からいっても、私は二大政党主義をとって、内閣が動揺しないという態勢におることが最も必要であると思いますが、ただ先ほどお話し政党間の近似性がなきゃならぬ。諸外国の例としては外交問題等については超党派的な政策をとるというようなこと、あるいは国防問題についても同様な態勢に立っておる、政党間の近似性があるということを言われたのでありまするが、これが私は日本言論界等において言われておるところの、いわゆる二大政党共通広場に立たなければならぬということを常に言われておる。それが鳩山総理のいわゆる近似性の問題であろうかと思う。しかしこの共通広場、あるいは近似性というようなもの、それをどうしてこれから作っていこうかということについてお考えがあるかどうか。すなわち今日、言うならば自民党社会党お互い根本的なイデオロギーを異にしておる。そうして内政についても外政についても近似性は非常に困難である。これをどういう工合近似性を持たせ、あるいは共通広場を作るということについて、総理として一国の政治を担当しておるのみならず、日本長老政治家として、初めて二大政党一つを率い、わが国の将来の国政の行くべき道をこれできめていく時期に入っておる。いかにして近似性を作り、いかにして共通広場を作るかということについて総理のお考えをぜひ伺いたい。
  9. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は民主政治根本お互いに尊敬し合うということにあろうと思いまして、とにかく民主政治というものは、自分自身人格尊厳を尊重すると同時に、他人の、相手方の人格尊厳も尊重しなくてはならない主義なんでありますから、個人同士においてもお互いに尊敬し合わなくてはならない。この民主政治は、当然に政党間においてもお互いに尊敬し合うというような空気が出てくることをこいねがっておるのであります。お互いに尊敬し合うというようになれば、だんだんと近似性というものも出てきやしないかというように考えております。
  10. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 お互いに尊敬して、お互いに話し合いをして、お互い理解を深めるということが一つの方法であるということは、私もそう思いますが、しかしこれは非常に時間のかかる、そういうように長く時間をかけてやると、自然にそういくのを待つというのでは、政治家としては物足りないことである。やはり非常な困難ではあると思うが、こういう工合にして共通広場というものを作り上げていきたいのだという、そこに目的というのか、理想というものを持たなければならぬと思うのでありますが、ただお互いに尊敬をして、お互い理解を深めていけばいいのだというだけでなしに、もっと具体的に何らかのものがほしいのでありますが いかがでありましょうか。
  11. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) そういうような時代においては、やはり二大政党が不適当な時代だと思います。最近にフランスにできた、何といいますか、私、名前を覚えていたことがあったのでありますが、ただいま忘れましたが、この人は二大政党否認論者であって、どうしても三大政党というのはうまくいかない。小党分立がいい。フランス自身小党分立でああいうように政局も安定をしていないのにかかわらず、小党分立で政界が安定している例をたくさんあげまして、そうして小党分立以外に国民意思を尊重して円満にやっていく政治の方式がないということまで論じておるのでありまして、二大政党が完全に実行される時期というものは、やはり年月を経なければできないのではなかろうかと考えます。
  12. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 総理は二大政党というものをお作りになって、お作りになったと私は言ってもいいと思うが、そして二大政党を作っても共通広場を作り得る、持ち得るのには非常に時間がかかるのは、これはやむを得ないのだというようなお考えでありますが、しかし総理は、日本国民政治意識日本国民の、政党政治訓練というようなものから、二大政党主義によって共通広場を作っていくという可能性はないというお考えなんでありましょうか。あるいはそれはあり得るというお考えなんでありましょうか。
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はあり得ると思っております。
  14. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 あり得るとすれば、現実にはいかなる御努力をなさっておるか、またなす方針でおられるか、お伺いをいたしたいと思う。
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 国民に対して、われわれとしては、われわれの党派理想を説得をしていくというよりほかに道はないと思います。
  16. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 国民政治思想向上をはかる、そして政党的訓練向上をはかるというようなことについて、私は、私自身政党員でありまするが、外部の、政党以外におって政党員行動を見まして、どうか日本長老政治家である鳩山総理総裁はぜひ一つ二大政党共通広場を作るについての最善の努力をしておるということを、国民に納得せしむるような行動をとっていただきたいということを切望いたします。  この問題はその程度にいたしまして、そこで私は具体的の問題としてお伺いしたいのでありますが、二大政党による共通広場を作るについて、ただ抽象的に、あるいは観念的に国民政治思想の啓発をするとか、あるいは政党訓練をするというだけでなしに、私は憲法の問題として制度的に、制度的にこの二大政党に対して共通広場を与え得る道があるのだ、こう私は考えております。そのことについてはいずれこまかくまた議論をする機会もあろうと思いますが、私がこういうことを申し上げるのは、憲法改正に当って非常に関係問題として大きな問題である民主主義議院内閣制、二大政党主義というものを主張して、これをただ政治上の議論だけに終らせることなく、私は憲法の上にこれを保障していきたいと私は考える。そういう点について憲法上にどうしたらいいかということについては、私はこういう考えを持っているのですが、総理はどういう工合にお考えになりましょうか。私は、議院内閣制をとって、いわゆる二院制度をなおその上にとっていく。その場合に衆議院は絶対二大政党でいかねばならぬと思う。そうしなければ政党主義というものは通らぬのでありまするから、衆議院は私は絶対二大政党でいかなければならぬと思う。しかしながら、参議院は私は違うのだ。参議院こそ絶対中立にして、政党から離れた参議院を作るということを考えたらどうか。これによって、参議院の絶対中立性によって、私は衆議院における二大政党に対して共通広場を与える制度的の保障ができるのだと考えております。しかしこれはなおあとでいろいろ議論をしていくうちに私の考えを申し上げますが、私は二大政党共通広場については、むろん政治的の訓練政治的の慣行ということが共通広場を作るように向って進むべきであると思うが、それだけではだめだ。やっぱり制度的にこれを保障してやらなければだめなんだ。制度的に保障する道は、参議院中立性憲法上に確保するにあるのだという考えを持っているのであります。この問題についてだんだん進むのでありますが、そこで一つ現在の憲法において総理大臣参議院運営問題を伺って、そうして結局共通広場の問題に返っていきたいと思う。  そこでまずお伺いするのは、二大政党主義というものを現にとっておる、憲法議員内閣制をとっておる、そうして政治としては二大政党主義をとっておる現行憲法下において、いかにこの二大政党主義というものを参議院において運用していくかということについて、一つ私は数点にわたってお伺いしたいと思う。  第一にお伺いしたいのは、第二院というものは、これは申し上げるまでもなく、第一院の行き過ぎといいますか、あるいは片寄りということでありますか、要するに第一院に対するチェックアンドバランスということが第二院の生命だと言われて今まできておる。ところが二大政党主義をとって、そして今日の憲法をもって、また今日の選挙法をもって進んだ場合に、選挙をやるたびに参議院政党化するという事実はお認めになりますか。それをまずお伺いしたい。
  17. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 参議院のあり方につきましてはいろいろの議論がありまして、廣瀬君の言われるような考え方も成立するものと思われます。敬意を表します。けれども、現在のやり方でいけば、参議院衆議院と同様にだんだんと政党化されていくと思います。なかなか共通広場を作る助けにはなっておらないと考えます。とにかくそういうような諸問題につきましては、憲法調査会において当然論議さるべき重要な問題だと考えますので、政府としては右調査会の答申を得て尊重していきたいと思います。
  18. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 ただいまのお話で、総理調査会に譲られたのでありますが、私は憲法調査会にいく前に現在の政治運営一つ伺っておきたい。現在の政治運営において、今日の憲法では、一体参議院政党化するということをお認めになるかどうかということを、それだけ簡単に御返事を願いたい。
  19. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は政党化する傾向が強いと思います。
  20. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 政党化するということを、これはもう実に明瞭であって、これはいかんともすることが、今日の憲法及び選挙法によってはどうにもならぬ。そういうことになりますと、一体政党化するということをお認めになると、チェックアンドバランスの作用ができなくなるということをやはりお認めになるかどうかを伺いたい。
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 衆議院参議院とが分れておりますれば、参議院としては衆議院と別の常識が成立するものと思います。
  22. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 非常に喜ばしい返事をいただきました。参議院衆議院とは違うから、参議院参議院考え方に立つのだ、立ち得るのだということをおっしゃられた。これに間違いなければ実にけっこうな、現行憲法下における参議院運営として、一国の総理大臣、一党の総裁考えるのに私は非常にけっこうな考え方であると思います。どうか参議院運営については、あなたは自民党参議院においても最も大きな力だ、これの運営については参議院良識ということを特にお考えを願いたい。これを別な言葉で申しますれば、衆議院自民党参議院自民党とは別の行動をなし得ることもあり得るということであろうかと思うのでありますが、さよう承知をいたしてよろしゅうございましょうか。
  23. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) さようでございます。それでけっこうだと思います。
  24. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 総理大臣はあるいは御承知がないだろうと思いますが、ときどきいわゆる党議拘束というもの——党議拘束ということによって参議院自民党拘束せられているのじゃないかということを私ははなはだ遺憾に思う場合が多いのであります。たとえてみれば、ごく最近のことでありますが、ごく小さい問題のようではありますが、つい二、三日前、家事審判法というのが参議院を通過いたしました。このときに、政府原案衆議院修正しました。そして参議院に送られたのであります。ところが私どもこれを見ますと、政府原案の方が私どもはよろしいと思う。衆議院修正した方が私は無理がある。そこでこれは私どもはやはり政府原案に返したいということであったのであります。そこでこれは委員会においては政府原案に返るという緑風会の意見によって通った。ところがこれが本会議においては、政府原案を支持したすなわち緑風会修正衆議院修正をまた修正して政府原案にする……、それで緑風会政府原案に返すという案はこれは本会議は通らないということになったのであります。このときは緑風会社会党一緒になって、そして自民党政府原案に対して賛成しない。われわれは政府原案自民党自分政府原案に賛成しないということになった。まあこれはどういうことであったか存じませんが、私はやはりこれは、参議院つまり自民党というものが党議拘束ということを受けたのじゃないかと一これは推定であります。間違いであるかもしれませんが、私はそういう感じをして、はなはだ遺憾であります。私はこういうような問題が党議拘束によって参議院自民党拘束するということは、それは政党である以上はいたし方がないのでありますが、良識的にやってもらわないと、この第二院の存在というものはほとんど意義がなくなってしまうのじゃないか。ことにどうも総理政党化するということをお認めになり、参議院良識でやれということをおっしゃるが、私どもの立場からいうと、どうも緑風会議員自民党に数人引き抜いて持っていかれた。進んで政党化することを自民党自体がやっておられる。これはいかがなものだろうかと私は思う。私が一番心配するのは、この次選挙があると、私は自民党は大きくなると思います。その結果衆議院において絶対多数を持っておる自民党が、参議院においても絶対多数を持つということが必ずあると思う。そうなったならば、私はほんとうチェックアンドバランスなんということはできない。消化不良の法律案や消化不良の予算案がどんどん通過するということになりはしないかということを心配するのであります。どうか、二大政党主義もむろんけっこうで、これでなければならぬと思う。なければならぬと思うが、このままいったならばチェックアンドバランスというようなことは参議院ではできなくなってしまう、政党化してしまって……。それは国家のためにならぬのだということ、すなわちこれが憲法改正の大きな理由一つになるということについて、総理はどういう工合にお考えになっておりますか。
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 最初のお話家事審判法改正問題につきましては、私は詳しい事情を聞いておりません。  それから次にお話のありました自民党参議院議員を引き抜いたというようなことは、私はないと思います。御本人意思に従って自由民主党に入党せられたものと考えております。  なお党議参議院議員行動とにつきましては、大きなワクとしてはもちろん党議によって党員は拘束せらるるものと思いますけれども、そのうちで参議院良識を発揮していくようにいたして参りたいと考えております。
  26. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 ただいま私の言葉で引き抜いたという文字を用いたのははなはだ適当でありませんでした。私は取り消しておきます。本人意思で行ったのでありましょう。いずれにいたしましても、私はこれからの参議院行動については、どうか一つ良識ある行動のできるような態勢に進んでいくようにしていただきたいと思う。  それからもう一つ次にお伺いしたいのは、総理大臣三権分立ということについては、三権分立ということが国政の正しい運営をする上において、また国民の権利、自由を保護する上において必要であるということをお認めであろうと思うが、もし将来自民党衆議院においても、参議院においても非常な大きな勢力になったということを仮定してみるというと、その際にはやはり政府——政府自民党政府でありますから、自民党政府自民党衆議院自民党参議院というものが一体となってしまうということを、私は当然くることだと思う。そういう場合に、国会政府に対する独立性というもの、すなわち三権分立ということが行われるでしょうか、それを伺いたい。
  27. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政府国会とはとにかく組織が違っておりまするので、やはり三権分立の機能は破壊せずにいかれるものと思います。
  28. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 総理大臣お疲れのようではなはだ声が低くて私の耳に聞えませんでしたので、まことに恐縮ですが、もう一度御返事をお願いしたいと思います。
  29. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私の申しましたのは、政府国会とは組織が違いますから、三権分立が混汚せられるものとは考えませんし、政府与党が大きくなりましても……。
  30. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 それは形の上では政府国会とは憲法上の機関として異なるのでありますが、議院内閣制をとる以上は、衆議院の多数党が内閣をとる。そうしてその内閣衆議院の多数と一緒になるからこそ政局が安定していく、そうして政治能率が上る。それが今度は参議院までその政府与党が多くなった場合においては、政府衆議院与党というものの決定する事項は、非常な注意をして、参議院与党が非常な注意をした運営をするにあらずんば、政府及び与党がきめたものはすべて参議院を通過することになるんじゃないか。そういうことになれば、国会内閣に対する独立性というものはなくなってしまうのです、事実問題として。制度上はともかく、実際問題としては私はこういうことになると思う。こういうことがすなわち憲法改正の大きな理由なのです。憲法は一面三権分立を主張しながら、他面において議院内閣制をとるということから、二大政党主義によるということから、ここに非常に大きな矛盾がある。これをいかにして打開するかということが憲法改正根本一つなのです。  私がお伺いしたいのは、私は制度上、内閣内閣国会国会であるということは当然であるが、実際政治運営に当って、政府衆議院与党が話し合ってまとめ上げた予算案なり法律案なりは、参議院において与党が絶対多数なら必ず通る、そういうことは必ず通るということになる。そういうことがしばしば行われるうちに、すなわち消化不良の予算案法律案の通過ということになる。こういうことが、すなわち三権分立を形の上で表わしているが、実際において実行できなくなる原因なのです。それが私はやはり憲法改正しなければならぬということの原因の一つになると思う。そういうことについて今の憲法ではどうにもならぬ、今の憲法では、先ほどお話したように、参議院政党化するんだとあなたは言われる。政党化するという以上は大きなワクで抑えるとは言うけれども、そういう衆議院の多数がやはり参議院でも多数であるならば、消化不良の案が通るおそれなしと言えない。こういう点について私は現在において総理大臣としては参議院運営というものは別格に考えてもらいたいということを言いたいのであります。はなはだ自分の意見ばかり申しているようでありますが、そういう心配はありませんか。国会政府との間が、三権分立の原則から離れるような傾向にいくおそれがあるということを御心配になりませんか、それをお伺いいたします。
  31. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 先刻も申しました通りに、参議院のあり方につきましてはいろいろ議論があろうと思います。そういうような弊害が起らないように何か名案があるならば、調査会においてそういう名案を作ってもらいたいと考えております。
  32. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は次の問題に入ります。二大政党主義をとって、そうして参議院政党化して、そうして与党が多くなったということになった場合に、私はどうしても人情の自然として、政府及び衆議院与党の案はやはり参議院をも通る。そこで三権分立ということについて非常なそこで混迷を来たすということを非常に憂えるものであります。それよりもっと心配なことは、二大政党主義は私はいいと思います。それによらなければならぬと思いますが、今日の二大政党主義において、共通広場を見出すということについて、はなはだ遺憾な状況にある。どうかというと、今日は政党間が私はイデオロギーが違うから全部一緒になるということは、それはむずかしいと思います。むずかしいと思うが、現実の政策においては、現実の個々の問題については、お互いに話し合って、或る程度納得がいきそうなものだと思うのでありますが、なかなかこれがいかない。そうして今日社会が憂えておること、私どもが外部におって憂えておることは、こういう状況において進むと、民主主義を行なっていく上において、最もおそろしいところの弊害、何だそれは、一党独裁です。一党独裁ということが、このままにしておいたならば、起きるおそれが私はあると思う。どの党派とは私は申しません。申しませんが、政党共通広場を見出すことができないで、長い間争っておる。自然にそうなるまではだめなんだというようなのんきなことをいっておるというと、政党間の対立というものは私は非常にひどくなる、だんだんに感情の激化がある。それは人間がやる政治だから、感情の激化があるのはやむを得ぬと思う。そういうことになると、感情の激化がありますれば、その結果はどうなるかといえば、相手の政党には政権を渡すまいと思うのは、これは私は当然だと思う。そこに一党独裁のおそれがある。今日のような状況にいったならば、だれもそれを心配しておる。一党独裁になりはしないか、これを心配しておる。それはなぜかというと、共通広場というものを見出し得ない。総理は現行憲法のままにして参議院政党化をも、選挙のたんびに政党化することを認めていけば、あるいは一党独裁ということになるおそれがあるということをお認めになりますか。
  33. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はファシズムかあるいは共産主義かでなければ、一党の独裁というものは起きないと思います。すなわち個人の人格というものが、個々の個人の人格というものが尊重せられていくという民主主義根本の原理を国民が納得していけば、決してそういう心配は起きない。ファシズムとかあるいは共産主義によれば、そういう事態は、独裁政治というものは起きますけれども、これは人の自由意思を抑えつけて権力でもって圧迫していくから起きるのでありまして、自由が認められている民主政治のもとにおいては、決してそういう心配は起きないと私は考えております。
  34. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 総理は現在の二大政党対立の現状というものから、これが共通広場を見出して、お互いにイデオロギーは違っても、政策については協調していけるということが近き将来にくるのだというようにお考えなんでしょうか。あるいはそれはなかなかむずかしいとお考えなのでしょうか。その点だけに限ってお伺いしたいと思います。
  35. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、ほんとうに虚心たんかいに話し合いをしていけば、そういう事態は生じ得るものと思っております。
  36. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 まあ世の中で心配しているところは、このまま政党が相対立していけば、感情が激化して、ついに一党独裁のおそれがありはしないかということを心配している者が多い。その点は総理は御心配にならないはずはないように思うが、私は現行憲法のままでいけば、そのおそれが多分にあるということを思います。しかしこれ以上質問いたしても仕方ありませんから、次の問題に移ります。  一体総理は今二大政党対立でうまくいくと言われますが、二大政党でいった場合に、内閣の更迭があった——一党独裁ということはない、内閣の更迭があったという場合に、総理は両政党の間に政策の違いがあるということからくる、甲の内閣から乙の内閣に移った場合の国政上の大転換ということが起るおそれがあるということはお認めになりましょうか。
  37. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私はそういう非常な大転換が生じないために、二大政党政策近似性というものができ上ることを欲しているのであります。民主政治というものがほんとう理解せられていけば、そうなっていくのは当然だと思います。国民良識が現われてくるはずでありますから、これが権力だとか圧迫によっては国民全体の良識というものがゆがめられる場合もあるでしょうけれども、自由が認められて、正義が認められている世の中では、そういうところまで心配する必要はないと私は考えます。
  38. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は総理は非常に友愛精神並びに人の性の善ということをばお考えになって今お話しになっているが、そこまで政治が到達するのは時間が長くかかるということを、また一面においてはお認めにならなければならぬと思います。そこまで政治が進む間に、われわれが心配しているのは、国会の現状から見て、また政党の現状から見て、これはどうなるんだということを心配するのであります。そこで私はさっき一党独裁のことをも言った、また今は甲の政党から乙の政党にいった場合に、かりに一党独裁のことがなくて、政権の授受があったとしても、このままでいったならば、やはり政策の大転換が起き得るんだ、すなわち国民はボイラーの中から冷蔵庫の中にぶち込まれることが起るかもしれない、こういうことを国民は心配している。そういう点に心配がある。そこで共通広場ということを言うんだが、一向それが現実の問題として、われわれに身近に共通広場がどこにあるか、すぐそれが身近にくるように政治家努力しているのかということについて、どうも国民は安心を持たない。こういう点について、私は総理のように、人間が自由であり、人間が正義であるということならば、そういうことは起きないんだとのみ楽観することは、あまりに楽観し過ぎはしないかと私は思う。それからもう一つ伺いしたい。もう一つ一体政党というものは国民政治意識をまとめ上げ、そうしてこれを国政に反映せしむる非常に重大な使命を持っている。しかしながら国民というものは全部が全部政党員になるということはまずあり得ないと思う。従って国民においては、いずれの政党にも属せざる中立的の政治的意見というものが常に国民にあると思う。すなわち政党によって代表せられざる国民政治上の意見というものがあると思うのでありますが、総理大臣はそういうものはないとお考えでしょうか、その点を一つ伺いいたしておきたい。
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、国民の多数は中立的で中正の意見を持つものと思います。そてしてこの中立的の中正の意見というものは支配的の勢力を打つものと思います。世論というものはこの意味を——これを尊重したいというのでありまして、決して一党一派の意見を尊重するというのではなくて、この中正の意見を尊重するというのが民主政治長所であろうと思っております。
  40. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 総理の言われることは、そういうように、中正、中立ということを民主政治の一番大きなものだというように今の御返事ではなるのでありますが、そうすると政党というものは、自己の政見というものは常に中正なところへいかなければならぬと思うが、二大政党対立ということになると、両党とも自分の意見が中正なりと信じ、相対立しておる。そういう対立した政党の政見というものは、それは国民の、総理のただいま言った中立性政治上の意見より低い階級にあるものというお考えなのでありましょうか、そこはどういう工合にお考えになりますか。
  41. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 政党自分の政見を最上のものと信ずるのは当然だと思います。これをしかし第三者が判断する自由を持っておる、第三者のその自由を持つ判断が政界を支配するということがやはり民主政治の必要な要素だと私は思っております。この世論というものは無視ができない。多くの例をもってみても、新聞等に出ておりまする世論というものは確かに強い意味を持っていまして、その世論が支配するというような制度は危険が最も少いと私は思っております。
  42. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 いろいろ数点にわたってお伺いしたのでありますが、なお結論的にお伺いいたします。別にむずかしいことをお伺いしておるわけではないつもりでありますが、結局私はこういうことを考えるのであります。総理の人生観あるいは社会観といいますか、そういうものは非常に善良でしていい方に非常にお考えになっておる。悪い方はおっしゃらない。それは何か私に対して警戒をしておるのかもしれませんが、(笑声)警戒の必要はありません。やはりいいところはいい、悪いところは悪いと言って進むべきであると思います。  先ほど来いろいろお伺いしておることの私の目的は、現行憲法のもとにおいては、議院内閣制、二大政党主義、これはけっこうだ、それでいかなければならぬ、しかしその二大政賞主義衆議院まででとめてもらいたい、そして参議院は絶対中立の立場に立つようにしていきたいのだ、そういう憲法改正を私自身は意見として持っておる。その理由とするところを今一つ一つあげて質問をいたしたわけであります。すなわち、現在の憲法のもとにおいて、二大政党主義をとって国政運営していけば必ず第二院参議院チェックアンドバランスができなくなってしまう。それから次に、もし衆議院における与党参議院における与党も大きくなってしまって、衆議院参議院与党が大きくなってしまえば、国会独立性というものはなくなってしまう、三権分立はなくなってしまう、こういうおそれがあるということを第二に私は申し上げたのであります。その次に、私が最もおそれるのは、二大政党が対立して、衆議院においても与党が絶対多数であり、参議院においても与党が絶対多数であるということになれば、人情の自然として、また政党の党情の自然として一党独裁になる傾向が非常にあるのだ、これを破るのはなかなかむずかしいのだ、こういうことを私は第三にはお伺いした。第四には、二大政党によって内閣の更迭があれば、一党独裁のことなしに政権の授受が円満に行われたとしても、なんとしても甲の政党と乙の政党においては政党政策がくっきりと違うのだから、内閣をとって政権を握った場合には自己の政見を行う、その結果は国政上に大転換を来たすのだ。すなわちボイラーから冷蔵庫へ人間を入れるようなことが起きる、経済界には恐慌が起きる、思想界にも非常な混乱が起きる、二大政党主義をとって、そうして衆参両院が政気化するようなことになれば、そういうことになるのだということを第四に私はお伺いした。第五にお伺いしたのは、政党というのは万能じゃないのだ。両政党があっても、国民の中には政党によって代表せられないところの中立政治論というものがある、政治意識というものがあるのだ。そうしてそれが尊いのだ。しかしながら、それを二大政党が完全に代表するということは政党の立場としてできないことが起きる。総理はこれはまあやるのだと言われるけれども、それは百年河清を待つものであって、それはできないのだ、こういうことである。  そこで私が結論的にお伺いしたいことは、現行憲法における参議院制度においては、どうしてもこういう弊害が出てくるのだ。だから私は憲法改正に向いたいのだ。これらについて総理はどういう工合にお考えになるか。  すなわち私は、第一に、チェックアンドバランスができませんぞ。第二には、国会独立性が失われますぞ。第三には、一党独裁の傾向がありますぞ。第四には、政策の大転換によって国民に迷惑を及ぼすおそれがありますぞ。第五には、国民中立性というものを代表することができなくなってしまう。そこで私は、議院内閣制、二大政党主義、それは衆議院にのみ限ってもらいたい。そうして参議院は絶対中立でいきたい、そうしてこれを憲法上の制度として持って行きたい、こういうのが露骨な私の今持っている憲法改正論の大きな柱であります。これに対して総理はどういう工合の御見解を持っているか、伺っておきたい。
  43. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 私は、参議院良識というものが相当の勢力、支配力を持つというような制度が発見せられるならば大いに検討をしたいと考えております。
  44. 廣瀬久忠

    廣瀬久忠君 私は以上、憲法調査会法案第二条の「関係諸問題」の中の一つとして参議院制度の問題について総理にお伺いをしたのでありますが、これ以上お伺いしても、立場上十分なお話を伺うことは不可能だと思いますからこれで私の質問を打ち切ります。
  45. 島村軍次

    ○島村軍次君 今回の調査会法案につきましては、提案理由にその要領が記載されておりますが、その要点は、二十一年占領初期における司令官の要請に基く短期間の立案であるということが第一の理由、そうしてさらにその後九カ年の実績に徴してさらに検討を加うべきであるというのが第二の理由であるようでありますが、今回この調査会法案を提案されました趣旨は、この二つの柱の点から考えまして、もっと具体的に、この提案者は現在の憲法中で大よそかくのごときところが改正の要があると、こういう各条ごとでなくてもいいと思いますが、この二大柱の点をもっと国民に納得のいくような具体的な項目にわかって、こういう点を改正したいんだ——この点に対して立案者の方の御説明を伺いたい。
  46. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) ただいま御質問の憲法調査会法の設置の理由につきましては、御指摘の通り現行憲法の制定の経緯並びに過去約九カ年にわたりまする実施の実績にかんがみまして、私どもといたしましては現行憲法に再検討の時期がきておる、これが内閣調査会を設けんとする理由であります。  そこでただいまの御質問でございまするが、それでは現行憲法のどういう点に問題があるのか、こういうお尋ねであろうかと思うわけでございます。現行憲法の内容につきまして、私どもがただいままでいろいろ党内に調査会を設け検討しましたのでありまするが、まだ検討の段階でありまして、結論的にここに詳細申し上げる時期ではないかと思うわけであります。しかしただいままでの検討によりましても、前文を初め各条章にわたりまして、問題点は相当あるように思うのであります。  大きい問題一、二を拾って見ましても、現在の前文がいかにもごらんの通りに表現が冗漫でございまして、またきわめて翻訳的であり、またその内容を見ましても、いかにも消極的、他力本願的であります。こういう点につきましては全面的にこれに検討を加える必要があるのではなかろうかと思います。もとよりこの前文の示しておりまする個人の尊厳でありますとか、あるいは基本的人権の保障でありますとか、平和主義及び国際協調主義というような原則はあくまで堅持しなければならぬと思いまするが、今申し上げましたような理由によりまして、より積極的に文化の向上国民の福祉、民族の繁栄に対しまする理想と決意を積極的に書き表わすような方法を検討する必要があるように思うわけであります。  第二章の天皇の章につきましても、もとより国民主権の原則はあくまでこれを堅持して参るつもりであります。しかしながら現在の条章を見ますると、天皇を表わすのに象徴というような言葉になっております。象徴という言葉につきましてもその意味が明瞭を欠くような点もあるように思いますので、この天皇の呼称といいまするか、称号といいますか、呼び方につきましても検討の必要があるように思うわけであります。また天皇の国事行為につきましても、現在の憲法七条をごらんになりますると、その書き方につきまして、あるいは認証を要することになっておる項目もございますし、また二面、内閣の助言と承認によって天皇が国事を行うという二つの書き方になっておりまして、これの点につきましても調整の必要があるのではなかろうかと思うわけであります。  戦争放棄の第二章につきましても、また従来から第九条第二項をめぐりまして、現在の自衛隊すら憲法違反になるというようないろいろな説がございます。こういう点につきましても、国力相応の最小限度の自衛力を具体化するにつきましても、もう少し明文をはっきりする必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。  なお、また第三章の基本的人権すなわち国民の権利義務につきましても、現在の基本的人権の尊重の原則は、私どもあくまでこれを堅持して参るつもりでありますけれども、さらに積極的に国民の権利等につきましても検討をする問題が残されているのではなかろうか。一つの例をとって申し上げますると、現在児童の保護につきましては、御承知のように児童の酷使についての規定がございますけれども、あるいは寄るべなき母子の保護でありますとか、あるいはまた老人の保護でありますとか、こういう点につきましては現在の憲法は何ら触れておりません。また科学の振興でありますとか、芸術の尊重でありますとか、こういう点につきましても、検討を加える余地が残されているのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。  さらにただいま廣瀬先生からいろいろ御質問のございました国会制度につきましても、ことに現在の参議院の構成並びに任期が果して適当であるかどうか、こういう問題も十分検討の余地がある問題ではなかろうかと思うわけであります。ただいま廣瀬先生のお説にもございましたように、両院制度をとります以上は、両院の構成をおのおの特色あらしめまして、その効用を発揮せしめることが非常に私どもは必要であるように思うわけであります。そういう意味合いにおきまして、現行憲法は果して適当であるかどうか、こういう問題も残されておるように感ずるわけであります。国会の権限につきましても、また民主政治ほんとうに守る意味におきまして、現在の国会の権限そのままでよろしいかどうか。あるいは予算の増額修正の問題でありますとか、あるいは予算を伴います議員立法の問題でありますとか、こういう問題につきましても、現行憲法に相当検討を加えるだけの価値があるのじゃなかろうか、こういうふうなことも考えておるわけでございます。  内閣制度につきましても、現在の内閣総理大臣国務大臣の罷免権の問題、こういう問題につきましても問題が残されているような気がいたします。また国会の承認を要しまする条約の範囲等につきましても、検討を加える余地があるように思います。  司法の壷におきましても、あるいはいつも問題になりまする国民審査の問題、あるいはまた最高裁の違憲審査権の問題、あるいはまた最高裁の規則制定権と法律との関係、こういう問題も検討の価値のある問題ではなかろうかと思います。  財政につきましても憲法八十九条につきましては常に問題がございまして、御承知のように、慈善、教育または博愛の事業に対しまする公金の支出禁止の規定でございますが、これらもわが国情に現に適せない規定ではなかろうか、こういう議論もあるわけでございまして、これまた検討をする価値があると思います。  地方行政につきましても、現在の地方公共団体の長の直接選挙の問題、あるいはまた公共団体の特別のある公共団体に適用します特別法の住民投票の問題、こういう問題も果してわが国情に適するかどうか、こういう点も検討をいたしたいと考えておるわけであります。  また憲法改正の条章につきましても、果して現在の規定が国情に適するやいなやというような問題もあるかと思うのであります。  こういうふうに簡単でございますが、述べて参りますと、現在の憲法につきましては、各条章にわたりまして、ただいま申し上げまするように、過去九カ年の実績にかんがみまして、十分検討を加える時期がまさにきているように思いまして、今回内閣調査会を設けていただきまして、その調査会におきまして、十分各方面の世論を反映せしめ、国民の意見を十分に伺って適当な方向に進んで参りたい、こういう趣旨でございます。
  47. 島村軍次

    ○島村軍次君 ただいま大要の説明を承わったわけでありますが、これらの諸問題は目下提案者並びに内閣においても相当の検討を加えられておると存じますが、私はさらに具体的に、第一に先ほど廣瀬さんのお話になりましたように、第二条の「諸問題」とは、いわゆる内政外交諸問題を全部含める、こういうふうに承わったのでありますが、そこで具体的に申しますれば、たとえばアメリカにおきましては、外交問題、特に条約の批准権等は国会の権限中いわゆる上院にその権限が与えられておる、こういうふうになって、おのずから国会の権限中、両院の制度の上に、わが国制度以上に判然としたものがあるように見受けられるのでありますが、まずこれらの問題について提案者の方で御検討をされておりますかどうか、これらの問題に対してどういうお考えをお持ちになっておりますか、次に伺いたいと思います。
  48. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) ただいま自由民主党におきましては、本年の一月から憲法調査会を党内に設けまして、すでに検討を進めております。今四つの分科会に分かちまして毎週相当研究を進めておるような段階でございますが、もとよりまだ結論的に申し上げるまでには至っておりません。  ただ自由党時代におきましても、党内に憲法調査会を設けまして、その当時は自由党としての一応の何といいまするか、意見をまとめた時代がございます。その際にもただいま島村先生からお話のございましたように、参議院衆議院の権限を異にするような方向に持っていくのがよろしいじゃないか、こういう意見も実はその調査の段階におきましてはあったわけであります。しかしながら結論的に、その当時は、当時の自由党におきましては、両院の権限を異にするという結論は出しておりません。そういう段階でございまして、そういう問題につきましてもわが党の調査会におきましても今後十分検討をいたしたいと思いますし、またこの法案が通りまして内閣調査会ができます場合には、この調査会におきまして、さらに検討せられることを私ども希望をし期待をしておるような次第でございます。
  49. 島村軍次

    ○島村軍次君 次に、現在の憲法議院内閣制をとっておることは、これは一つの大きな民主主義憲法として特色のあるものだと思うのでありますが、国民の一般は過去の実績にかんがみて、露骨に申し上げれば、内閣総理大臣の権限があまり強過ぎるのじゃないか、その結果があまりに国政の上に、あるいは内閣組織の上にいろいろな弊害を来たしておるのじゃないかという議論が一部にあると思います。それに対して提案者の方ではあるいはまた今日まで御検討されました実績に徴して、どういうふうなお考えをお持ちになっておりますか伺っておきたいと思います。
  50. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) 先ほども憲法検討の問題点の際に内閣の章について申し上げましたように、現在の内閣総理大臣の権限が強大過ぎると申しまするのは、ことにこの大臣の罷免権の問題が中心ではなかろうかと思います。この問題につきましても、今私どもの党内の調査会でもいろいろ検討を加えておりまするが、まだ結論には至っておりません。この内閣にできますでありましょう憲法調査会におきましても、その点を十分一つ検討をいただきたいと思いまして、先ほど問題点の一つとして申し上げたようなわけでございます。
  51. 島村軍次

    ○島村軍次君 文民優先に関する考え方は、今回現憲法におきましては強い主張であり、今日までそれが国民一般の間に強く透徹いたしておると思うんでありますが、この自衛隊との関連におきまして、この考え方に関していろいろとかくの評があるようでありますが、この問題に関する研究の過程のお考えを承わっておきたい。
  52. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) かりに憲法九条第二項を改正いたしまして、国力相応の最小限度の軍備を持ち得るという、まあ憲法の規定が改正せられた、こういう場合を予想いたしましても、その軍隊と申しまするか、自衛隊と申しまするか、それの指揮はどこどこまでも内閣総理大臣と申しまするか、文官優位の方針で進みたい、こういうことが今検討せられつつありまする段階であります。現在の憲法にございまするいわゆる文民優位の原則は堅持して参りたい。この気持で検討をいたしておりまするような次第でございます。
  53. 島村軍次

    ○島村軍次君 最後に、小さい問題でありますが、この調査会法案の内容について一括してお答えを願いたいと思います。  第一は、今回提案のうちで委員五十人として、そのうち国会議員を三十人、学識経験者を二十人とする、こういうことのようでありますが、この比率をおきめになったその理由と、なお、学識経験者の範囲、現にどういう人を予想されておりますか。それが第一点。  それから第五条の専門委員内閣総理大臣が任命することになっておりますが、むしろこの選考に当っては調査会等の意見を聞くとか、あるいはまた選任方法を変えるというような必要があるのではないかと思うのでありますが、特に専門委員に限って内閣総理大臣の任命ということにされましたその理由、それから第六条の幹事については、これはまた内閣総理大臣の任命でありますが、幹事はどのくらいの数をお置きになる御予定でありますか。しかもこれは非常勤とするということになっておりますが、私がこの点を承わるのには、やはり調査会はやがて憲法改正の大きな問題を取り扱うのでありまして、現在の予算の一千万円の程度では不十分じゃないか。むしろ幹事等は専任者を置いてやられるのが適当ではなかろうかと思うのでありますが、それに関する御所見を承わっておきたいと思います。
  54. 山崎巖

    衆議院議員(山崎巖君) まず第一の点には、委員の五十名のうち国会議員三十名、学識経験者の二十名、これについての問題でございますが、この憲法の問題は申すまでもなく非常な国家の基本法の問題でございまして重大でございますので、またそういう意味合いから国会議員を相当多数参加を願うことが適当ではないだろうか、こういうことで国会議員の方を多数にいたしたわけであります。また学識経験者の範囲でございまするが、これはもとより憲法学者というふうに限定する考えはございません。あらゆる学会の代表的の方々のぜひ御参加をいただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。五十人の定数の問題でございますが、これは別に根拠があるわけではございませんので、ただ他の調査会のときの前例等も見まして五十人ということにいたしましたのと、昨年国会に民主党から提出しました法案もこの通りになっておりますので、それを踏襲したということにすぎないわけであります。  それから次の第二のお尋ねは、専門委員の任命の問題でありますが、調査会委員は非常に重大な任務を持っておられますので、内閣でこれを任命していただくことに相なります。内閣で任命と申しますのは、結局総理大臣の専断でなくして、閣議決定を仰ぎまして、その閣議決定に基いて任命するという建前でございます。専門委員委員に比べまするとやや何と申しますか、職責も委員ほど重大でございませんので、これは任命の形式としては、ただいま申し上げましたように内閣総理大臣ということにいたしております。しかし任命の場合には御意見にもございますような点は十分内閣総理大臣におかれましても考慮せられることでございましょうし、また私ども外部からもそういう意見を内閣側にぜひ申し入れたいと、こういうように考えているわけでございます。  それから幹事の点でございますが、幹事をむしろ専門職にしたらどうかというような御意見でございましたが、この幹事はおそらく関係の官庁方面からも相当入られましょうし、そういう点も考え、また別にこの幹事のほかに調査会には事務局を今度は置くことになっております。この事務局で相当事務は総括をしていただきまして取り扱うことに相なっておりますので、幹事の方は刑に専門職でなくても、こういう形で足りるのじゃないか、こういうことでこの建前をとりましたような次第でございます。
  55. 島村軍次

    ○島村軍次君 多少まだ質問は残っておりますが、本日はだいぶん時間も経過したようですから、この程度にいたします。
  56. 青木一男

    委員長青木一男君) 他に御発言もなければ、本日は本案に対する質疑をこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 青木一男

    委員長青木一男君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会      —————・—————