○野本
品吉君 御報告申し上げます。島村
委員、木下
委員及び野本
委員の三名は、去る二月六日から十日間、当
内閣委員会の決定に基きまして、新潟県におきまして、米駐留軍航空基地の現状と、国の地方出先機関の
事務運営の実情を、また群馬県太田市におきまして、米駐留軍の駐留により、同市の受ける影響につきまして調査を行なって参りましたので、その調査の
概要について以下御報告申し上げます。
最初新潟県に参りまして、まず新潟
飛行場拡張問題について調査いたしましたが、初めに地元の新潟
飛行場拡張反対期成同盟の代表者から、次のごとき拡張反対の
趣旨の陳情を受けました。その第一点は、拡張によって七十町歩の山林、田畑がつぶされること。その第二点は、四十五戸が立ち退きを命ぜられること。その第三点は新潟大学農学部が、爆音、騒音等のために廃校にならざるを得ないこと。その第四点は、新潟市と旧松ケ崎を結ぶ県道が遮断され、これがため将来新潟市の大都市建設が阻まれること。その第五点は、地元部落の諸学校等は、爆音、騒音または飛行機事故等による不安や、危険に脅かされること。その第六点は、将来対岸貿易によって繁栄せんとしている新潟市の平和的な発展が阻害されること。その第七点は、この
米軍基地は、中国、ソビエトに対する戦略基地であるとともに、その拡張の意図は原水爆搭載の大型ジェット機の発着のための拡張であると思われるので、平和を求める二百七十万の新潟県民の悲願が踏みにじられること等であります。
私どもはこの反対期成同盟の
方々の陳情を聴取いたしまして、ついて新潟県に参り、北村知事より新潟
飛行場滑走路拡張問題についての現状について
説明を受けましたが、新潟県においては県議会も拡張反対の決議をなし、また知事も現在のところ土地収用に関する公告の
段階には達していないとのことでありました。
続いて新潟
調達事務所におもむきまして、この拡張問題について
調達事務所の取り扱いの現状について
説明を受けましたが、同
調達事務所におきましては、
昭和二十九年六月
調達庁長官より、新潟
飛行場拡張予定地の調査指示を受け、米駐留軍拡張要求土地面積七百八十四万平方フィート、すなわち二十二万四百二十坪について、
昭和二十九年十月二十日から一カ月の予定をもって日米共同の現地調査を行うため、知事に対しては協力方の要求並びに
昭和三十年三月土地関係人三百二十九名に対しては、立ち入り調査方の同意を要求するとともに、協力方にについて説得に努力して参りましたが、今日のところ何ら効を奏していないとのことでありまして、
調達事務所としても、
調達庁よりさらに指示を待っている現状であるとのことでありました。
引き続き私どもは新潟
飛行場拡張予定地を視察し、オームスデット新潟
飛行場司令官及びレッシング第四十一航空戦闘師団長と会見し懇談いたしましたが、レッシング師団長より、新潟
飛行場拡張の必要の具体的
理由等について
説明を受けました。
なお今回私どもの新潟
飛行場視察の
機会に、現地の各種団体代表者よりそれぞれの
立場から反対の陳情を聴取いたしました。
次に、国の地方出先機関の
事務運営の実情の調査として、新潟地方監察局、農林省新潟統計調査
事務所、新潟労働基準局、第九管区海上保安
本部におもむき調査いたしましたが、その調査の詳細な資料は、
内閣委員会調査室に備えつけてありますから、必要の場合はそれを御利用願いたいと存じますが、ここでは私どもの視察いたしました概略だけを御報告申し上げます。
まず新潟地方監察局において調査いたしました主な点を申し上げますと、全国の各監察局におきましては、
昭和三十年二月から新らしい試みとして、苦情相談窓口業務を開始いたしておりまして、この業務は地方にある各行政機関の行政
措置について不服や苦情が相当多い現状にかんがみまして、行政の民衆化に資するために、行政監察の一環として、その窓口となって各出先行政機関の業務に関連する範囲内のもろもろの苦情等を一般民衆より受け付け、これらの問題の早期
解決をはかって行かんとするものでありますが、この業務
実施の結果は、監察局の懇切かつ早期適切な
措置によって、民衆から非常に感謝されているという実情にあるとのことであります。また、行政
管理庁が最近新たに各監察局に対し、現地所見表示という新しい方法を
実施させております。この現地所見表示と申しますのは、御承知のごとく、監察の結果は管区において、管区直接調査のもの及び地方局調査結果をとりまとめまして、現地の総合結果報告を作成の上、中央に報告し、中央では全管区の報告に基き、監察会議において
審議の上、監察結果報告書を作成いたしまして、関係機関に通報するとともに、改善事項を相手方に勧告することによって、行政
事務改善の効果を上げるのが原則でありますが、現地において明らかに
措置を要し、また
解決し得る問題は、右に述べましたような一般原則によらずに、現地監察機関の所見表示という形式において相手方に懇談いたすことにより、即時改善を促すという方法でありまして、この新しい方法の
実施の結果は、行政
事務改善の上に多大な効果を上げておるとのことであります。
これらの
説明と関連して、監察局で行なっている行政監察と、会計検査院の会計検査とが世上往々混同され、誤解を生じていますので、局長より行政監察業務の本質と特色とについて、るる意見が述べられました。
最後に、監察局当局より要望事項として、監察局としては、現在の
定員と監察及び研修のための旅費では監察局が
責任をもってその所掌
事務を
実施するのには不十分であって、この点について
国会においても十分御理解を願いたい旨の意見が述べられました。
次に、農林省新潟統計調査
事務所に参りましたが、所長の
説明によりますと、米の供出の場合、その数量の把握については、現在主要食糧の統計に当っている農林統計
事務所、食糧
事務所及び県庁のうち統計調査
事務所の数字が最も正確であるので、これが
使用されている実情であるが、今後、統計の正確を期し、各方面に利用され得るよう、さらに努力したい旨の
説明がありまして、このような
立場にある統計調査
事務所としては、将来さらに一そう正確な資料作成について能率を上げ、その資料保管の万全をはかるため、次のごとき諸点の実現について特に御考慮を望む旨の要望が述べられました。
その第一点は、重要統計書類保管のための不燃書庫の
新設、
事務所の拡張増設、また出張所の建物が現在民間より高家賃で借用しているものが多く、それらが売却されて移転を余儀なくされる場合があるので、これがために
職員の勤務能率にも影響するところが多いので、出張所の固定勤務場所の確保に努められたいこと。
その第二点は、
事務連絡の機動化をはかるため、現在、
昭和二十四年購入以来の自転車によって、出張所においては現地調査、
事務連絡に当っているが、これらの自転車にモーターを取りつける等の改善によって、業務の能率化をはかられるようされたいという点であります。
次いで、新潟労働基準局におもむきましたが、新潟労働基準局管内のおもな産業は、農業、機械器具、農機具、繊維各工業でありますが、近時天然ガスの無尽蔵と称せられる下越地区の各所で天然ガスの開発が進められ、その工業化が進行中であり、また奥只見電源開発、黒又川第一発電所工事等の建設工事も行われている等の現状でありますので、これに伴い、当労働基準局の労働監督行政も広範囲にわたっているとのことでありまして、労働基準法違反の防止、この法の
趣旨徹底をはかるがために、集団指導等の方針をとって、できるだけ各事業場の納得のいくよう努力し、違反事件の減少をはかっているが、その成果は割合に上がっているとのことでありました。
次に、労働基準法
改正の是非の問題について、局長は、同法施行後八年を経過した現在、同法
実施の従来の経験にかんがみ、実情に即した業務運営の簡素化の面での
改正は行われるべきものと考えるが、各種の国際的労働基準に準拠しているこの労働基準法の基本的
内容の
改正については、労働者の基本的権利を擁護する法の精神から見て、なすべきものでないと考える旨の所見が述べられました。従来、行政機構改革の一環として、労働基準局及びその下部機構の地方委譲の問題が、一部の人々から唱えられておりますが、この問題に関し局長は、かりにこれらの行政機関が地方へ委譲せられた場合には、都道府県の地域ごとに個々別々の
立場から労働基準行政が行われることになり、国全体としての統一された労働基準行政が行われ得ない欠陥も考えられるとともに、検察庁と不離
一体の関係にある本行政が、不当な地方的勢力に左右される懸念も考えられるので、結局労働基準法の精神を実現することが困難となるおそれがある旨の意見を述べておりました。
最後に、局長から、従来の経験上、労働基準局の要望の第一点として、ボイラー検査、電源開発事業所監督等の特殊勤務についての危険業務手当
制度並びに労災保険徴収官に対する特殊手当の実現をはかられたいこと。第二点として、超勤手当、監督旅費の増額についての予算上の
措置を講ぜられたいこと。第三点として、労働基準局及び下部機構の監督官の
定員の増加並びにその身分保障の確保について特に考慮せられたい旨の意見が述べられました。
新潟県におきまして、私どもは最後に第九管区海上保安
本部を視察いたしました。第九管区海上保安
本部は、新潟、伏木、七尾の各海上保安部、新潟航空基地、両津、福浦の各海上保安署、小木分室並びに管内十四カ所の航空標識
事務所を下部機構として持っているのでありますが、この管区が他の管区と比較いたしまして、その業務
内容の点で特に著しい特質としてあげ得る第二点は、この管区が日本海の浮流機雷の処置についての業務の点でありまして、季節的に十一月から翌年三月までの間に日本海方面に多くの浮流機雷が浮流し、これがため、
昭和二十九年度に二回、本年度に三回、当管区では特別捜索船隊を編成して、機雷の特別捜索に努めたとのことであります。また特質の第二点は、当管内においては、例年佐渡海峡の底びき綱禁止区域をめぐって、機船底びき網漁業者と沿岸漁民との間に漁業紛争が発生し、海上保安
本部においては、適宜、係官を現地の出雲崎町に派遣するとか、あるいは巡視船による巡視警戒を強化して、厳重な取締りを
実施する等の方法を講じて、紛争の予防
措置に力を尽しているとのことであります。
なお、
職員の勤務状況についての
説明によりますと、当管区は特に気候不順に影響されるために、毎年休職者または長期療養を要する欠勤者が跡を断たず、特に巡視船乗組員にこの傾向が強いとのことでありまして、これら
職員の健康
管理については、特に努力しているとの
説明でありましたが、そのうち、管区当局より最も強く要望されましたことは、船員の上陸後の宿舎
施設が現在不完備な状況にありますので、船員の上陸後、いこいの場所たる宿泊
施設を今後ぜひとも設けていただきたいという点でありまして、なおこのほか、巡視船艇の
増強、直江津海上保安署の
設置及び
航空機の
増強についても、そのすみやかな実現方が要望されました。
私どもは新潟県下における調査を終り、次いで群馬県太田市に参りまして、米駐留軍の駐留によって、地元の市の財政等、諸般の事項に及ぼす影響について調査して参りましたが、時あたかも水道
給水問題について太田市と、太田市の米駐留軍との間に紛争の生じている最中でありましたので、この問題についてまず調査いたしました。すなわち私どもが同市に参りました本月十一日は、市議会が水道問題で米駐留軍キャンプ並びに駐留軍家族の住宅に対する
制限給水断行を昨十日に決定し、最悪の事態にまで立ち入ったときでありました。太田市におけるこの
給水制限問題と申しますのは、太田市は御承知のごとく戦時中は中島飛行機株式会社の所在地でありまして、戦後これらの工場は米駐留軍キャンプ及び駐留軍家族の住宅用として接収されて参りまして、太田市では米駐留軍を迎えるとともに、米駐留軍関係には太田市の水道
施設より
給水を行い、
便宜を与え来たったのでありますが、近ごろでは
米軍の需要水量は同市の
給水量の五〇%まで上りまして、従って水量不足のためしばしば断水を余儀なくされる事態に立ち至りましたので、同市においても上水道増量工事が必要となり、これが
解決のため日米合同
委員会に提訴して折衝を続けて参りましたが、その過程において、当初市の水源拡張予定費一億六千万円をさらに最小限必要拡張計画費五千万円に縮小し、水道
使用料については、当初座間の米技術
司令部より
提案されたことのある一立方メートル当り二十二円案によって
解決するよう、同市より再度
米軍側に
提案した結果、昨年五月、前述の提訴が
米軍側で取り上げられ、日米合同
委員会に正式に
提案せられるに至り、目下討議中であるにもかかわらず、最近に至り軍自体では井戸掘工事を入札に付し、一方的に独断の処置を講ずる挙に出るに至ったのであります。
米駐留軍の駐留当初から、太田市民は駐留軍に対し協力的な
態度に出ておったのでありますが、この米駐留軍の井戸掘計画の挙があまりにも同市の
立場を無視した行動であるとして、太田市議会におきましては、本年一月三十日
米軍への断水決議を行なうに至りました。しかしその後外務省当局の調停もあり、市議会としてはその調停の結果を待っため待機の態勢をとっておったのでありますが、この外務省当局の調停案も米国側で拒否されたので、倉石労働大臣がこの紛争
解決の調停に入るとのことであるから、
制限給水についてはしばらく猶予したらどうかという太田市長の意見も市議会では受け入れられず、ついに太田市議会においては今回全国にも前例のない
制限給水を断行するに至ったというのがこの問題の現状であります。
なお、この
制限給水と申しますのは、市民への
給水の確保とともに、従来米駐留軍への
給水のために
給水できなかった地区へ今後
給水するがため、従来あった米駐留軍との
給水契約をこの際廃棄して、日米
行政協定第七条の
規定に従い、市民と何ら差別することなく、市民と同じように同じ量の
制限給水を行っていこうというのでありまして、この問題は現在におきましては日米両国
政府間において
解決さるべき懸案の問題であります。
私どもはまた太田市並びに県内米駐留軍基地関係町村の代表者より次のような陳情を受けました。その要旨は、地方財政が極度の窮乏状態に陥っている現状下にありまして、地方財政の歳入面においては、米駐留軍の駐留に伴い、固定資産税の収入減のほか、電気、ガス税等の地方税の収入の減少が生じておりますが、他方歳出面においては、米駐留軍の駐留に伴う道路、橋梁の修理その他一般渉外経費の支出が相当巨額に上っておりまして、これら地方財政面の是正については今後
国会並びに中央
政府において次のような善後
措置を講ぜられたいという
趣旨でありまして、その第一点は、
政府は一般渉外問題に関する地方の実情を十分把握し、この渉外問題の円滑な処理に要する経費の財源を地方に配付されたいということ、第二点は、米駐留軍諸般の
施設に関連して必要とされる道路、橋梁等の維持修理費並びに地方の
不動産及び動産の
提供に伴う各種補償等については、
政府において実情に即した適切なる予算
措置を講ぜられたいということ、その第三点は、日米
行政協定実施に伴う
地方公共団体委託費については、渉外面の紛争の増加に伴い、必要額を地方へ配付するよう
措置されたいということ、以上の三点であります。
以上が私どもの先般新潟及び群馬県の両県に出張いたしまして調査して参りました
概要の報告でございます。
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