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八木幸吉君 私は遺憾ながら
本案に反対するものであります。
本案は第二十二
国会から参議院におきましてはすでに二回も継続審議になっておるのでありますから、大
へん時間をとりまして恐縮でありますけれども、私の反対の
理由をお聞きいただきたいと存ずるのであります。
第一点は、
本案が
衆議院の
逓信委員会で審議されましたときに、先ほど
提案者からもお述べになりましたが、
衆議院の
逓信委員会の小
委員会では三回にわたって、案の内容を変更されました。しかも一々
逓信委員会にそれが報告になった。またその案に従って
梶井総裁初め各方面の方の
意見も聴取されるというような成り行きでありますが、しかもそれが変更されておる。なぜ変更されておるかと言えば、私はそこに非常に一貫した首尾、筋が通っておったかどうかという点についても多大の疑いを持ちますし、また当時と今日とではそのときの
提案の
理由となった前提条件にも相当の変化を生じ、
情勢の変化があると思うのであります。昨年の六月の七日に小
委員会で
決定されました案には発行株数の五分の二を
公社に持たせる、こういう案でございました。そうしてその
提案の
理由は、
国際電電の株が
会社の内容にふさわしくない低株価を現出しておる実情であり、かえって
株式の
処分を困難ならしめているとともに、証券
市場全体に対しては、好ましくない影響を与えている。つまり額面では売れそうにない、こういうことが
提案の
理由になっておるのであります。
ところがその次の六月二十四日の
提案は、
公社は株を持つけれども、
議決権を有しない、こういうふうに変更されておりまして、
議決権を持たなくてもよいかということをその
委員会で
梶井総裁にお尋ねになりましたら、
議決権を持たなくてもよろしい、こういう
お答えがありました。しかもそのときの
提案理由には、昭和二十九年三月、第二回の
処分をしたが、このときはわずかに二万一千八百七十三株の買い受けがあったのみで、残余の二百八十万株、すなわち総株数の五分の二が全然売れなくて残っておるのだといって、郵政当局は再三にわたって大蔵当局に向って、
法律の定めるところによりすみやかに
処分するように要請しているが、証券
市場の
状況によって
処分ができなくて今日に至っておる。
以上の実情並びに証券
市場の現状から見て、近い将来に十四億二百万円の
株式消化は困難と見られ、かつ
大蔵省は長期にわたってこの株を多額に所有することは、たるべくすみやかに
処分しなければならないという
法律の付則の
規定から適当でないから、これは
提案するのだ、また配当も
大蔵省の収入になっておる、こういうことがうたわれておるのであります。
ところが第三回目は、七月の十一日にさらにこれがまた訂正になりまして、
議決権を持たない株主というようなことはおかしい、こういう意味でまた
議決権を有しないという
規定が削除になっておるのでもります。そうしてその
理由の中には、株価の安定ということと、
処分は困難ということがまたうたわれておるわけであります。つまり一言で申しますると、この案が昨年の二十二
国会に
提案されたときに、いろいろああやこうやといって、案の内容を変化しておるのみならず、終始一貫
提案の前提条件となっておりますのは、株価が額面より低くて売れないから、
一つ何とかしょうというのが、これが一貫した方策であります。ところが御
承知の
通り、本年の一月の十六日に、そのうちて五分て一、約額面にいたしまして、七億円が……株価五百円の株券が六百四円の平均値で売れた、こういうような当時とまるで
事情の変化を来たしまして、
法案提出の大きな
理由がすでに変化消滅をいたしておるのであります。
次に私が
本案に反対する第二の
理由は、
本案は第二十二
国会で、本
委員会におきましては、私の見るところでは、大半の
委員の方が反対の空気でありましたけれども、当時の
情勢では、もし参議院がこれを否決をいたしますると、憲法第五十九条の再議決を
衆議院においてなされるおそれがあるというので継続審議に持ち込まれたように私は想像をいたします。ところがその後継続審議になりましていろいろとさらに審議を重ねましたけれども、
本案を正当化するところの何らの
理由を発見することができませんでしたのみならず、電話設備費の臨時
措置法によりまして
電電公社の各位からいろいろ御
説明を聞きますと、
電電公社は非常に建設
資金にお困りになっておる、地方財政の窮乏を救うために固定資産税の実態を有する納付金の本年度割当七億七千万円でさえも、何とかこれはやめたらどうかというふうな論議があるくらいでありますから、非常に
電電公社としては建設がおくれておる、であるから時限
立法のこの設備負担法も本年の三月三十一日で日は切れるんだけれども、加入者にはまことにお気の毒で文明国にはないような制度ではあるが、なおかっこの時限
立法を五カ年延長するというくらいな変則の手段を講じなければ建設
資金に事を欠くというくらいな実情であるのであります。にもかかわらずこのやかましい株を、今売れば八億円にもなるような株を、同定資産税よりも上回るような金高の株を、
公社が株主にならなければならぬというような
理由は私はさらさら認めることはできないのでおりまして、何のためにこれが問題になって
法律が成立するのかまるで実はわからないのであります。
次に私が申し上げたいのは世論の動向でありまして、昨年の夏にこの
委員会で各方面の方約十人のおいでを願いまして、いろいろ
本案に対する
意見を聞いたのでありますが、そのうちで
梶井総裁はお
立場上
法律が通れば自分は異存はございません。しかし
法律は
最高限度をきめただけであるからそれを必ずしも待たなくても売ることはできるでしょう、自分
たちの一番力をいたしたいのは、一日も早く建設を完成いたしたいんだ、こういったような消極的の賛成のお
言葉がありました。もう一人学者の方で非常に回りくどい
表現でありましたけれども、結局
本案に賛成の意味の
意見開陳をされた方があります。しかしその他の八人は言論機関を初め公共企業体の合理化審議会の
委員長をしておった原氏なども
電電公社は建設に邁進すればいいのだ、何の必要あって他
会社の株を持つ必要があるかといったような強い反対
意見もございました。これをもちましても
本案に対する世論の動向がきわめて明瞭にわかると思うのであります。
次に私は申し上げないのは、
公社はこの
法律案ができましてから、
総裁はさようであるように私は思いませんが、その他の方が相当
本案の成立に熱心であるかのごとき風が見えます。また
国際電電とこの
公社とが相当これがために対立的感情があるように見えます。何のために
公社が経理内容につきましても会計検査院等から相当の指摘を受けておるのに、いわば私から言えば道草のような
公社が
会社の株を持つことに狂奔をされて本来の使命に邁進されぬかということをいぶかるものであります。また何のためにかような無意味な株の保有問題を中心として
公社と
会社がその従業員の間にせっかく今まで仲がよかったのに割り切れない感情を持たねばならぬかということを実は私は遺憾なことであると思うのであります。
次に私が申し上げたいのは、
公社が建設
資金に非常に困っておるのに、政府が財政投融資さえも何らこの方に考慮を払わない。そうして一方設備負担金の問題の
法律案を通すというようなことは、これは民営をやったらいいじゃないかといったような行き方であると思うのでありますが、しからば、なおさらこの
会社の株を持つというようなことは、これは社会党の
委員の方が賛成される一番大きな原因は一本にして国営の方式に持っていこうというのがその根底であると思うのですが、それと反対のことに賛成される、まるで違った行き方をしておると思うのであります。
最後に
安定株主のことがよく言われるのでありますが、
安定株主というのは大株主になるのでなくて、小さい株主でなるたけ数が多い方が
会社当事者としては安定感を持つのでありまして、大きな株主ができることは、一方においてこれは
会社に対する非常な圧迫でおりまして、
会社と
公社との従業員の仲がおもしろくないというのも、これをきっかけとして感情がよくないというのも、おそらくこの辺にあると思うのであります。これを要するに私は
本案のごときは
委員の各位が、ただその場の空気に動かされるというようなことでなしに、参議院の良識を発揮してすみやかに否決の方向に向われんことを切に希望するのであります。この際われわれがもしも力を入れなければならぬことがあるとすれば、それはこの株が
大蔵省の保有になってから配当二億数千万円が
公社にいかないことを、
公社にいくような
法律の
改正をすることが最も必要ではないかと、かように
考えるのであります。突然の
採決でありますので、はなはだふぞろいかもしれませんが、大要私の反対の論拠を申し上げた次第であります。