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1956-05-28 第24回国会 参議院 地方行政委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十八日(月曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松岡 平市君    理事            伊能 芳雄君            宮澤 喜一君            森下 政一君            小林 武治君    委員            井村 徳二君            大谷 贇雄君            川村 松助君            佐野  廣君            堀  末治君            横川 信夫君           小笠原二三男君            加瀬  完君            中田 吉雄君            永岡 光治君            松澤 兼人君            河野 謙三君            野田 俊作君   政府委員    自治政務次官  早川  崇君    自治庁選挙部長 兼子 秀夫君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   公述人    朝日新聞論説委    員       飯島  保君    中央大学教授  川原次吉郎君    評  論  家 田中壽美子君    日本生命保険相    互会社顧問   清水徳太郎君    弁  護  士 正木  昊君    弁  護  士 坂  千秋君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松岡平市

    委員長松岡平市君) これより、地方行政委員会公聴会を開会いたします。  本日は、公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、お手元に書類でお示ししておるように、六人の公述人方々により御意見を拝聴いたします。大体の議事の進め方といたしましては、午前中まず三名の公述人方々に順次公述を願った後、委員各位の質疑をお願いいたし、午後もまた同様な取り運び方で進めて参りたいと思いますので、この点あらかじめ御了承願いたいと思います。  次に、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中のところ、しかも大へん唐突な間に御出席をお願い申し上げましたにもかかわらず、ここに御出席をいただきまして、委員一同を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。これから、内閣より提出され、衆議院において修正の上、本院に送付されて参りました公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、御公述を願うわけでございます。本法律案内容につきましては、お手元にお届けいたしました法律案参考資料その他、新聞紙上等でもすでに先刻御承知のことと存じますので、あらためて申し上げませんが、各位におかれましては、十分に忌憚なき御意見をお述べ願いたいと存じます。本問題について、広い御知識をお持ちでございますので、われわれといたしましては、十分諸先生方のごうんちくをこの機会にお聞きしたいのでございますが、委員会の運営の都合上、時間の余裕を持ちません。せっかくおいで願って、まことに申しわけございませんが、大体御公述をお一人二十分程度に御圧縮願いまして、われわれに必要だとお考え下さいます御意見をお聞かせ願いたいと思います。二十分を一応越えました場合には、委員長におきまして、時間が参りましたことをお知らせするようなことになろうかと思います。その点あらかじめお許し願っておきます。それからなお、委員会ではすべて君づけで、何々君ということで委員長は発言その他を指名いたします。この点も一つあらかじめお含みを願っておきます。そしてその後、委員から質問をいたしました際は、なるべく簡明にお答えをいただいて、議事の進行に御協力願いたいと存じます。この点あらかじめお含みおき願います。それではまず、朝日新聞論説委員飯島保君に御発言願います。
  3. 飯島保

    公述人飯島保君) 小選挙区制の是非につきましては、すでに理論の面から、また実際の面から、相当論議が尽されておるように伺っております。それで、ここでは私は、結論的に、内容としては政府原案のような形における区制案に対しては不賛成であって、また時期としては、小選挙区制を実施するには、現在はまだその前提条件が未熟である、こういうふうに判断するものであるということを最初に申し述べておくにとどめまして、改正案に盛られている公認制度とか、政党選挙運動とか、あるいは衆議院修正案付則、そういった問題について、私の所見を述べさせていただきたいと存じます。まず最初に、政党候補者公認制度について申し上げます。選挙に際しまして、政党がその政党候補者公認して、それを応援するということは、これは当然すぎるほど当然なことなんでありますけれども、選挙法といったような法律をもって、きびしくそれを規制する必要があるでしょうか。公認問題のようなことは、これは純粋に政党統制に属する事柄でありまして、政党が自主的に党則におきまして規制すれば事は足りるものであると私は存じます。政党自身自分自身で始末すればよい事柄法律にゆだね、法律の手を借りなければみずからを律することができないというようなことであっては、私は、それはりっぱな政党としては大きな恥辱ではないかと考えます。それで、この法文を拝見いたしますと、まあそれに関する法文の第一項は別といたしまして、第二項、これはこういう規定です。一つ政党公認候補者となった者は、同時に他の政党公認候補者となることができないという規定でございます。  第三項は、政党は、一つ選挙区において、選挙すべき議員定数以上の公認をすることができないという規定でございます。これは政治常識政党常識の問題だと私信じます。もっともかつては、大きい政党で、たった一人の定数選挙区において二人の公認候補者を出したというようなことがありますけれども、これは政党の見識を疑われるようなことでありまして、これは、良識ある政党であるならば、こういう規定がなくても、党の党則なり何なりでおきめになってしかるべきものだ、その方がりっぱじゃないかと私は考えます。  さらに第四項を見ますと、政党及び当該政党に所属する者は、公認候補者を有する選挙区においては、他の候補者推薦し、または支持してはならないという規定があります。大体これも常識でございましょうけれども、政党に所属する者というものはどういうものか、法的に申しますと、少しあいまいのように感じます。入党届けを出した者ということでありましょう、おそらくは。しかし、党員の資格とか、法的には所属する者ということがあいまいのように私は考えます、現状では。そうしますと、この規定は、個人行為を制限する規定でもあるわけです。そうしてこの後段の方で、他の候補者推薦し、推薦という行為はわかります。大体ぼんやりしておりますけれども、推薦ということはわかりますが、推薦し、または支持してはならない、この支持ということは一体どういう行為を指すのか、私は法的に明確を欠くと思います。この支持を最も強めて狭く考えますと、投票するということが支持であるかもしれない。この法案では、個人の投票を制限するということではないと信じます。けれども、法律としては、これは法文が明確を欠いて未熟であって、私は、うっかりすると、国民権利を不当に拘束する弊害が出るおそれがあると考えます。  次に第五項でございます。これは非公認候補に対する規定と解されます。提案理由を拝見しますと、政党公認を受けない候補者は、その政党に所属する旨を公表して選挙運動ができないというようなことだろうと思いますけれども、法文をしさいに拝見しますと、何人も非公認候補者のために、その者が公認候補者であると誤認させるような事項を公けにし、または当該政党に所属する者である旨を公けにして選挙運動をしてはならないというようなことだと思います。これは非常に読みにくい条文でございますので、私があるいは読み違いをしておるかもしりません。それだったらばごめんをこうむりたいと思いますけれども、もし私が読んだ、解したようなことでありますならば、この場合は公認はされないけれども、政党に所属する非公認候補者が存在するということを予想しているわけでございます。これは、そういう政党に所属するが、公認されない候補者があるということは事実なんです。しかし何人も、第三者もこの事実を公けにして選挙運動をしてはいけない。うそじゃない事実までも公けにしてはならない。公けにして選挙運動をしてはならないということは、これは選挙の自由というものを不当に私は拘束するおそれがないか、国民権利というものを拘束するおそれはないかということを憂えるものであります。こういう場合に、常識的に申せば、非公認候補者は脱党すればよろしいのです。また政党は、どうしても公認し得ない候補者が党を名乗って立つというならば、それを除名すれば事は済む。これは党内の問題であります。法律規定する必要はいささかもないというように考えるものであります。それでその条文は、第一項だけを残しておけばそれでよろしいのではないか。民主政治におきましては、申すまでもなく、自由な選挙を通じて、国民の信頼の度合いによりまして、政党が大きくなったりあるいは小さくなったり、消長があります。これは大原則なのであります。改正案は、冷たい法律によって、公認制度などを法的にきびしく規制してあまりにも早急に、人為的に、また機械的に政党を大きくしたり、小さくしたりすることを考えすぎていやしないだろうか。政党の方は、党内統制をみだりに法律の力を借りるなどというような、そういう官僚的な考えをお捨てになって、むしろ自主的に政党内容を高めるということに私は努力していただきたいと存じます。政党選挙運動については、五十人以上の公認候補者を有するものでなければ選挙運動ができないということになっております。しかも政党選挙運動のために支出する金というものは、個人候補者法定費用に加算されない建前のように思います。そうすると、それは少数の政党に対して非常に不利益を与えるものじゃないか。小選挙区制を実施するという理由の中にも、こういうことが書いてあります。政策本位選挙を争うために小選挙区制をやるんだとまでもおっしゃっておるのです。なぜこういう方法で小政党をいじめなければならないか。そういうことはおやめになって、堂々と政策をもって政党が争われるということは、ほかに方法があると私は信じます。  急ぎますので、修正案の方に参りますと、付則というものがなかなか重大のようでございます。最大の修正点は、区割案を削除してしまった。そうしてそのかわりに付則をつけたということであります。付則においては、衆議院議員選挙画定委員会というものが設けられることになる。付則の第九項を見ますと、私はこういう感じを受ける。これは申し合せ事項あるいは決議事項というような感じがするのです。そういう決議事項付帯決議にでもしたらばふさわしいのではないかというような文句が条文の中にまぎれ込んでおる。そういう感じです。全文は読みませんが、「答申を尊重し」とか、あるいはこれこれこれこれを「なるべく均等になるようにすること」あるいは「なるべく尊重し」あるいはまた「なるべく尊重すること」というような言葉がたくさん入っております。一体この選挙法は、事細かに綿密にいろいろなことが規定されておりまして、用語もなかなか私は厳格のように思う。ところがこの付則条文は、しろうとの目から見ると、何かそういうものの中に、非常に決議事項にした方がいいのではなかろうかと思われるようなものが木に竹を継いだような形でまぎれ込んでいるという印象を強めるのでございます。これは最も重大な一項ではありますけれども、私は、法案の中に含めないで、別個に取り扱った方が法案全体の形としては体裁が整うのではないかと思います。さらに付則の第一ですかを見ますと、この修正案施行期日というものが実に妙なものであります。詳しく申し上げる時間はありませんが、ある部分は公布の日からすぐに施行する、あるいはある部分条件付きであって、ずっとあとになって公布されてから六カ月たってから施行するというような、ちぐはぐになっております。それは、付帯訴訟に関する法律案とか、あるいは区画案とかというものができないからでありますけれども、まことに施行期日がちぐはぐな法案でございます。それというのも、この修正案自体に非常な無理があるということを私は示しているんじゃないかと思う。また、この施行期日がそういうふうになっておることは、この提案者は、この法案が、修正案が必ずしも急いで施行せねばならぬというお考えではないというふうにも判断されるのでございます。そうすると、結論を申し上げますと、こういうことになります。政府提出改正案内容に私は反対でありますけれども、政府原案はまだしも法案体裁としましては、よかれ悪かれ、本文区割案とが車の両輪のごとくそろっておりましたので、法律案体裁としては、内容はともあれ、格好がついておったと私は存じます。ところが修正案は、その区割案をはずして、本文を残して付則を付けたという形になっておる。法案としては、すでに正しい態様を備えておらないと私は考えます。残骸を残しただけのかたわの法律案が、修正案がここにできているような感じがいたします。しかも、生き残った部分本文にも批判すべきものが多々ございます。かくのごとき不完全な法案が成立しますよりは、私は、国民の一人といたしまして、こういう法律案が成立しないことを望むものでございます。すなわち撤回ということも一つ方法でありましょうし、審議未了ということも一つ方法でありましょうが、何らか新規まき直しで出ていただきたい。そうして小選挙区制というような問題もあらためて考えて、りっぱな法案をお作りになって、そうしてそれに付随するところの各種の法案を一斉にそろえて、そうして御審議なすったら、それが一番よいのではないかと、こういうふうに考えます。まだ時間がございますか、二分ぐらい……それで意見を飛ばしたものですから、非常に不明確であったように存じます。  もう一つ申し上げておきたいのは、立会演説会修正案では復活されております。これはけっこうなことだと思いますが、ここで考えなければならぬのは、こういう事柄であります。「秩序保持のため必要があると認めるときは、その者を会場外に退去させなければならない」というふうに改められておるようであります。これは、秩序が乱れることはまことにけしからんことでありますけれども、だれが会場外に退去させるのでございましょうか。警察官というようなものが会場におって、そうして聴衆をある場合整理するのですか。会場外に退去させたりするようなことになるのでありましょうか。もし司会者がそういうことを予想して、警察官を常に何か置くということすらも考えられないではない。そうしますと、何か私には、昔の臨検といいますか、警官の監視の中にあって演説会が開かれるというようなことを想像しまして、何かここは割り切れない感じがいたします。小選挙区制を実施すると、聴衆混乱が起るということが最初の案では立会い演説会を取りやめにした理由のように伺っております。しかし私は、選挙ごと方々参りますけれども、これまではそういう事態にぶつかったことはなかった。たまたまときどきはあったようです。けれども、その場合はほかから非常な批判が出る。  ところで、一つ皆様考えていただかなければならぬことはこういうことです。国会混乱が起ると、どういうものか府県議会などでも同様に混乱が起ったりするのです。しがちです。したと言っては悪いですけれども、そうするとまた市町村の議会などでも同じようなことが流行のように、一つ風潮のように起ります。これは私は新聞を調べておるものですから、よくそういうことに気がつくわけですけれども、そうしますと、何かそういう風潮をかもし出す大源がどこかにある。お手本を示すのがどっかにあるのじゃないか。国会とは申しませんけれども、どっかに何かそういう大混乱というようなことがあると、議会演説会に非常にもめごとが多くなる。混乱が多くなる風潮をかもし出す。そのお手本を示すものがどっかに存在しておってはならない。国会とは申しませんけれども、どうぞ立会い演説会でも、会場秩序保持ということをこれほどまでに御心配になるならば、そういうお手本を示さないようにお願いをしたいと思います。   —————————————
  4. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 次に、中央大学教授川原次吉郎君に御公述を願います。
  5. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 公職選挙法の一部を改正する法律案が目下問題になっておるのでありますが、それは主として衆議院議員選挙に関してであります。そのうちで、目下論議の焦点になっておりますのは、小選挙区制の問題であります。これにつきましては、世上ほとんど論じ尽されたようでありまして、その可否の問題点も、今ではほとんど常識となっております。従って、今私はここでそれを繰り返したいとは思いません。ただ私は、若干の基本的な点で日ごろ考えておりますことを申し述べまして、何かの御参考に供したいと存ずるのでございます。  新憲法施行によりまして、わが国民主主義の新しい国是に立つことになりましたが、思いますに、民主主義一大長所は、政変が平和的に合理的に行われる可能性が多いということであります。すなわち自由な総選挙の結果によって次の政権が定まるということでございます。総選挙には国民後継内閣を担当すべき政党を選ぶという意味が多分に含まれておると考えます。でありますから、総選挙の直接の結果というものは、よくよく尊重されなければならないものと思っております。しかし、それには二大政党対立制が最も適しております。二大政党対立制ですと、過半数を占める政党の出てくる可能性が多いと言わねばなりません。いわゆる二大政党対立制でありましても、もちろん第三党以下の小政党の存在することはあります。従って、わずかの不足で絶対多数党のできないことももちろんあります。しかしながら、大体において二大政党対立制のもとにおいては、絶対多数党のできる可能性が多いとみることができると考えます。そして絶対多数党ならば、容易に直ちに単独で内閣を作ることができます。小党分立制でありますと、総選挙はやっても、どんな内閣ができるかは、選挙の結果だけでは判明いたしません。何党と何党との連立ができるかは、できてみなければわからないのであります。二、三の政党間の折衝によって内閣ができるのですから、そのたびごとにすっきりしない問題が起ったりして、政局の空白の時期が生じないとも限りません。それよりも、政変は総選挙の結果によって、第一党である政党内閣を作るという政治的慣例ができまして、その内閣が何か行き詰まりでも生じて総辞職をしますならば、第二党が新たに内閣を作る。しかしその場合、絶対多数は持たないのでありますから、解散して新たに民意を問う。すなわち総選挙をやり、その結果によって新内閣ができるというように、政変が一定の軌道に乗って行われるということになりますれば、民主主義政治はどんなに明朗になるかしれないと思うのでございます。ところで、小党分立ですと、とうていそのようなことは多く期待されません。政変ルールを立てて、軌道の上に順調に政治が運行されるようになるためには、二大政党対立制がよいと思っております。  さて、わが国でも、今や二大政党対立の形態だけはできております。これを国民は歓迎していると信じます。そこで、これを保持していくための努力がなされねばならぬと思います。その一つとして、制度の上でも二大政党制が続きやすいものをとるということもあってよいと思います。そこに小選挙区制の問題が出てくるのであります。もちろん小選挙区制の制度以外の制度でも、二大政党のできることはあります。しかしながら、すでにできている二大政党対立制を将来も保持しようとするためには、小選挙区制の方がより適しているということはたしかであります。断わっておきますが、二大政党制保持と申しましても、必ずしもただいまある何党何党という意味ではなくて、将来どんな政党が出て、それが二大政党を作ろうが、とにかく二大政党制度というものを一般的にここでは申しておることを申し上げておきます。  さて、小党分立制、従って連立内閣制度をとっても、政治運用よろしきを得ておる、そういう国もあります。けれども、一般運用と申しますのは、いつも必ずよくいくとは限らない。うまくいくこととうまくいかないこととがある。できることならば、制度の上でもうまくいくようにするということは、またそうするために努力をすることは、より正しい態度ではないかと考えます。もっとも二大政党制ができても、いつも必ず政局が安定するとは申されないのでありまして、たとえばその二大政党の勢力の差がきわめて僅少であったりしましてそのほかに第三党があって、キャスチング・ボートを握っているという状態が生じますというと、不安定な状態に及ぶということもあり得るでありましょう。しかし、一般論として申しますならば、小党分立よりも二大政党対立の方が政界の安定が多いということは言えると思います。私の申します政界の安定とか、政局の安定とかいうのは、一つ政党永久政権を取るというのではないことは申すまでもありません。そうなりますならば、それは一党独裁制的になります。民主主義のもとにおきましては、有力な反対党のあることが望ましいのでありまして、それが常に政府政府党を監視し、またあるときは協力するというようなことがあって、政治向上の上によい結果をもたらすのだと考えております。すなわち、特定の政権永久政権を持ち続けるのではなくして、政権授受がなめらかに行われて、いわゆる反対党もいつかは政府党となって、責任ある内閣を作るというように、政権授受がひたすら総選挙の結果そのままに行われることが政界の安定ということになります。どのような政党をして政権の座にすわらしめるかということは、総選挙によって国民意思表示をいたします。わが国議院内閣制をとっておりますから、以上のような意味政変ルールを確立して、民主主義政治を安定した軌道に乗せて歩ませるようにすることが大切だという見地から、小選挙区制は新憲法施行と同時に行うべきであったと考えます。しかしながら、今ようやく二大政党対立の形ができまして、国民の間にはこれを歓迎する気運が強く、またこの制度保持したいという考えのものも多いようであります。こういう二大政党制がせっかくできたときに、この小選挙区制の問題が出てきたということも、あながち理由のないことではないと考えます。ただ問題は、選挙区の区割の問題であります。これは、政党が直接タッチするよりも、公平な第三者が定めた方がよろしいと私は考えます。元来私は、選挙区の問題ばかりでなく、もしできれば選挙法といったようなものも、政党議員よりも、それ以外の第三者が定めることにしたらどんなによいだろうかと考えておるのでありますが、しかし、これは法律でありますから、国会できめるのが当然で、いたし方ございません。しかし、今度の修正案を見ますと、選挙画定委員会というものが設けられて、そこで定めたものを国会に提出するといったような案になっておるようでありますが、それでよいと私は思います。これは、それをあとでまたあまりにいろいろと動かすということは、あまりすべきではないのではないかと思います。さきに調査会答申がありましたが、あれがそのまま提案されてましたら、その後に起ったゲリマンダーリング云々という世論もあるいは起きなかったのではなかろうかと想像しておるくらいであります。なお私は、小選挙区制をとるならば、一人一区制に徹底した方がよいと考えておるものであります。  次に、小選挙区制の問題に関連して、死票の問題がございます。しかし、民主主義政治は多数決制でいくよりほかに方法がないのであります。すべての個人の意思を尊重するという民主主義の理論を徹底すれば、全会一致制ということになりましょう。しかし、全会一致制は、少数の独裁をさかさにしたようなもので、とても民主政治の実際には当てはまりません。そこで、多数決制でいくよりほかないのでありますが、多数決制ではどうしても死票が出てきます。ただ、その死票をできるだけ少くしようとする努力は十分認められなければなりません。そこに比例代表制の理論の強みがあると私は考えます。けれども、比例代表制のつきものである少党分立制には、前に述べましたように、より多くの弊害が伴います。やはり政変ルールを打ち立てるという角度から見ますならば、比例代表制ではなく、二大政党対立制を保つに都合のいい小選挙区制がよいと言わねばなりません。また、死票の出てくる多数決制をとりましても、民主主義のもとにおいては、言論の自由がありますから、少数派はそれによって将来の多数党となることの期待が持てます。私は、言論の自由という原則は、少数者保護の意味があると考えておるものであります。  次に、新たに問題になっている点について、ほんの一、二だけ申し添えておきたいと思いますが、まず、政党政治活動が選挙運動にわたってよいという原則に変ったようであります、案によりますと。これは私は賛成です。当然のことがこうなっただけのことで、問題はないと思っております。ただ、私のひそかに疑問としますものは、政党及びその他の政治団体ということでありますが、公認制度がもし設けられれば、その他の政治団体というものも政党と見てよいのではないかという気がするのであります。いかがなものでございましょうか。これは大方の御教示を受けたいと思っておるところでございます。ただ、公認制度の問題ですが、非公認の党員が個人で立候補しても、自分は何党の党員であるということが言えないということはちょっとおかしいのでありまして、公認されないものが公認と言って名乗って出れば、それはもちろんいけないでありましょう。しかし、真実その党員である者が、党員であるということが言えないというのはどうかと思います。しかし、政党としては、統制上乱立を防ぐ必要もありましょうから、それに対処する方法としては、たとえば除名というようなこともあり得るかもしれません。これはむしろ政党内部の統制力の問題であるように思うわけであります。これを法律できめるほどの必要があるかどうか、ただいまのところ疑問を持っておる点であります。公認制度そのものは、わが国政党を育成するという意味で、もっともっと私は成長しなければならぬと思っておるのですが、育成するという意味で、あの公認制度の問題も一応考えていい問題だというふうに考えます。  要するに、私の最も主眼といたします点は、民主主義一大長所であるところの政変の平和的、合理的軌道の確立ということでございます。その意味における政界の安定ということであります。特定政党永久政権を確立するというようなことは、国民もさせますまいが、制度としても極力避けねばなりません。やはり明朗な政権授受が総選挙に基いて行われるようなことになることが願わしいので、その意味において、二大政党制が続けば、両者の政策の基本もおのずから共通の広場に立ち、妥当な近寄りがおのずから出てくるものと考えます。国民大衆は、極端から極端に動揺するような、社会生活上犠牲の多いことよりも、平和的な進歩の道をより多く好むと信ずるからでございます。  以上をもって、まことに簡単でございましたが、私の公述を終ります。   —————————————
  6. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 委員の異動がありましたから、この際御報告いたします。  委員西川彌平治君は二十八日辞任せられ、新たに川村松助君が委員に任命されました。同じく委員後藤文夫君が辞任せられ、新たに小林政夫君が委員に任命されました。   —————————————
  7. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 委員各位にお諮り申し上げますが、実は、田中公述人は所用のため、御出席が少しおくれるとのことでございます。後刻御出席になりますまで、ただいま公述をいただきましたお二人の方に対して質疑をお願いしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 御異議ないようでありますから、さよう取り計らいます。飯島、川原両公述人に対して、質疑のおありの方は御発言願います。
  9. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 ただいまお二方から、いろいろと示唆に富んだ御公述をいただきまして、非常に感銘をいたしております。  そこで、飯島先生に二、三お尋ねを申し上げたいと存じます。まず最初に、あなたから冒頭にお話になりましたのは、今回のこの改正案は、まだ前提条件がととのっておらぬから、従って不賛成だ、こういうお話でありますが、その前提条件がととのっておらぬという点について、もう少し詳しくお聞きを申し上げたいと思います。
  10. 飯島保

    公述人飯島保君) 先ほど、川原先生からお話になりましたように、私はだいぶ賛成の点があるわけですけれども、やはり平和的に政権授受ができるというためには、二大政党の方が都合がよろしいように思います。それから小選挙区論者は、皆その点を強調されるわけでございますけれども、一面において総選挙というものは、次の政権を何党に託すべきかということで争われるのが、これはほんとうだと私は思います。正しいと思うわけです。けれども、こういうことが日本では一面にあるということをお考え願いたい。それは、よく総選挙の前になりますと、各新聞社やなんかで世論調査をやります。それでその場合に、党を選ぶか人を選ぶかということをしょっちゅう問いが出されるわけです。そうしますと、こういう声がだんだん逆に多くなってくる。それは、人を選ぶという考えが相当多くなってきているわけです。これは私は、よく考えてみなければならない、こう信じます。というのは、人を選ぶという答えを出す人は、総選挙が次の政権を託する政党を選ぶんだという考えを度外視しているのじゃないと私は思います。ただ、そう申しては失礼に当って悪いかもしれませんけれども、もっと今の政党をよくしたい、そのためにはよい人を出す、出さねばならぬのじゃないかという、こういう考えが非常に強いように私は判断するのであります。それからまた最近、相当教養のある人、また政治問題に理解を持っている人でも、こういう答えをする人があります。それは、あなたは小選挙区制に賛成か反対か、こう言いますと、まあそれは別として、自分の選挙区では、まあ政党を選ぶのがほんとうだけれども、あの人が一人しか立たないなら、私はどうもあの政党支持するけれども、投票する気になりませんよと、こういう人が、私も何人かはわかりませんが、相当あるんです。そういう条件がもう少し緩和されまして、国民も総選挙というものがどういう役割を持つかということを理解することが大事でしょうし、政党自身の方は、今とにかく二大政党の形だけとよくいわれますけれども、できたんですから、そこをよく一お考えになって、両々そういうことがもう少ししみ渡っていったときに、小選区制というものを実際問題として考えた方がよろしいんじゃないか、こういう趣旨であります。
  11. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 ただいまのお話は、非常にごもっともだと思いますが、世論調査等で、政党を選ぶことよりも、だんだん人を選んだ方がいいというような国民の声が強いということは、もう確かであろうと思いますが、これは、今お話がありましたように、政党自体が自覚を持って、そうしてりっぱな人に出ていただく、またそういう人を公認をする、政党人がそういう態度を持ち、また国民政治の関心を高めていくということによりまして、これはだんだん解決ができていくんじゃないか、こうまあ思うので、かつて東京の市会が紊乱をしましたときに、例の市政革新同盟ができまして、三輪田元道氏や曾我さんやら、菊地寛やらいうような人が出ましたが、ああいうように、やはり政党がそういう点について深い自覚を持っていくということは、御説の通り同感でありますが、それはしかし、そういう体制がととのってからするという御趣旨もわかりますけれども、それだけでは、前提条件がととのわぬから、従ってこの小選区制度は早い、まあ不賛成だということとは、ちょっと距離が遠いようにまあ思いますが、その点はいかがでございましょうか。御趣旨は実はよくわかっているんです。
  12. 飯島保

    公述人飯島保君) 今の御質問のあれも、私の方でもよくわかっているんです。ところで今、衆議院の改選の選挙はございませんけれども、だんだん地方におきましては、いろいろなあれを通じて見ますと、政党の組織化ということがだんだんと進行しているんじゃないかと私は見ておるのであります。そういうあれが出て参りますと、小選挙区制を採用しました場合に、こういうことも考えられるんです。それは、地方で国会議員にふさわしいような適当な候補者を持たないというような場合もあり得るわけです。そういうときには、組織はあるが、そういう人が見当らない。そうすると、政党がより組織立っておれば別、政党でいい候補者をそこへ持っていって、土地にゆかりはない、今大体まあ郷土出身の人が地方では代議士に推されているようなのが多いと思いますけれども、そうでなくて、ゆかりはないけれども、その組織に、この人を公認候補者として政党が持っていく、そうして地方の支部組織はそれに動いて、政策本位でその人を出すというようなこともあり得るわけであります。そういう、これはいつになったらあるかという、それは政治的な判断で、この前提条件がいつになったらしからばととのうかと言われますと、私も困りますけれども、ただ、ぼんやり大きく大局から見ていくと、だんだんそういう方向に向っていくのではないかと私は考えているんです。で、それは政治的な判断で、政党で、あるいは国会でおきめになればいいんじゃないかと思います。
  13. 加瀬完

    ○加瀬完君 川原先生に伺いたいのでございますが、現在二大政党ができておる、この二大政党というものの制度保持育成をしていくべきである、そのためには小選挙区制というものがとられた方がいい、こういう御前提のお話のように承わったわけでございます。しかし、この小選挙区制というものによりまして、二大政党というものが作られるわけであるけれども、その二大政党というものは永久政権とか一党独裁とか、こういう形式には反対である。あくまでも有力な反対党というものが存在をいたしておりまして、必要があるならば、いつでも政権授受の円滑さが期待できると、こういう姿でなければならない、こういうふうに拝承をいたしたわけでございますが、それでお間違いはございませんでしょうか。
  14. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) はい。
  15. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういたしますと、先生のお言葉にもありましたけれども、かりに小選挙区制というものによって行われる選挙にいたしましても、それは、その総選挙国民の意思そのままがよく反映されるという選挙制度でなければならない、こういう前提にもなろうかと思いますが、さよう承知をしてよろしゅうございますか。
  16. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) さようでございます。
  17. 加瀬完

    ○加瀬完君 そこで問題は、先生は基本的な問題をお述べになられたのでございますが、今私どもが審議をゆだねられておりますのは、政府が提出いたしましたいわゆる小選挙区制法案というものが、先生のおっしゃられるような基本的な条件が備わっている一体小選挙区制の法案であろうかどうかということに、私どもは問題を感ずるわけでございます。先生は、原案並びに修正案を通してごらんなさいまして、たとえば永久政権、一党独裁、こういうような傾向を生ずるおそれはないと、あるいはこの政府の提案されました、あるいは衆議院におきまして一部修正をされました改正法案が、国民の意思をそのまま反映できるような条件に満たされておると、このように御判断なさいますでしょうか。
  18. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 私は、二大政党対立制保持していくためには、小選挙区制の方がベターであるということを信じておるのでありまして、もし国民の意思——政治的意思ですね、この場合。政治的意思をそのまま国会に反映させるということを前提とすれば、むしろ比例代表制の方がいいかもわかりません。けれども、これは制度の評価の問題で、どちらを重要視すべきかということになると思うのですが、結局政治はやはり実践を伴っていかなければならない。いつまでも大学の研究室と違って、長々ともう何年でも一つの問題を論議していくというわけにいかない。やはり会計年度といったようなものがあり、ある程度のところで実践に移し、また次にそれを改めていくという努力を常にしていくと、そういうことでありますので、あまりこまかいところまで政党が分れてしまうということはどういうものであろうか。大体ある公けの問題については、賛成とか反対とかいうことで落ちつくものじゃなかろうか。そうすれば、二大政党対立があれば、国民は大よそどちらかに近いものに賛成する。完全に、百パーセント自分の意思にぴったり合った政党というものは、それは厳密な意味においてはなかなかあり得ない。不満足であるけれども、こちらの方がこちらよりもよりよいという程度でいくよりほか方法ないものだと考えますので、私は、国民の意思云々という問題だけではここでは解決つかない。やはり小選挙区制の方がいいと考えます。ただし、ただいまのあの案、前の政府原案、私はあれを拝見しまして、二人区制のあるのは、どうも私は、先ほど申しましたように、やるならば一人一区制、そうして若干の不備なところもあるでしょうが、私は調査会案といったようなものが割合よい案で、もうだれがやってもあれに近いものしかできないんじゃなかろうかという感じを持ったんでありますが、まあそれよりも、それに近いようなものができて、一人一区制で徹底していく、そうしていけば、二大政党制は育成されていくというふうに考えております。
  19. 加瀬完

    ○加瀬完君 二大政党の対立を欲するということは、先生の御説明は、これは客観的にもどなたも御異議のないことであろうと私どももよくわかるのでございます。しかし、現実の小選挙区制法案というものが通りまして、作られる二大政党というものは、あくまでも先生のおっしゃられる永久政権、一党独裁と、こういう傾向のものであってはならない。反対党の存在というものも許容されて、国民の要望によりまして、この反対党政権授受が円滑にいくと、こういう条件も備わった選挙区制あるいは選挙法でなければならない。こうなって参りますと、選挙法そのものの改正の内容というものには、二大政党を望むということとともに、二大政党が、先生のおっしゃられるように、平和的に、合理的に政変によりまして政権授受ができるという、もう一つの大切な要件も私は備わっておらなければならないと思うのでございます。そういう点から見まして、今、先生は調査会案をお出しになりましたが、調査会答申よりもはるかに離れたものが原案であり、あるいは修正されたものにいたしましても、まだまだ答申からは離れておるのでございます。で、現在私どもにまかせられましたこの法案というものに対しまして、先生の御主張から御賛成でございましょうか、御不満なんでございましょうか。その点を伺いたいのです。
  20. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) その選挙区制の区割については、選挙画定委員会で慎重にやってもらいたいと、そしてそれについて私の考えましたのは、大体調査会案に近いようなものになるよりほかないのじゃなかろうかと申し上げたわけであります。もっともある時期には、その二大政党対立といいましても、その差があまり離れすぎるといったようなこともありましょうし、しかしながら、政党がだんだん成長していけば、今度は、前の小さな政党も、小選挙区制のもとにおいてはかえって逆にだんだん大きくなっていくということもあり得ることなんで、むしろ政権授受ということになれば、つまり過半数を取り得る政党になるためには、その前提として、むしろ小選挙区制の方が、それぞれの政党に長い目で見れば有利じゃなかろうかと、こういうふうに私は考えております。区画の問題が一番大事です。
  21. 加瀬完

    ○加瀬完君 その区割というものはいろいろ非難もありますので、今度は、修正案によりますと、削除されておるわけでございます。先生のおっしゃられます通り、この区割は、選挙画定委員会によりまして、七人委員会でございますか、七人による委員会によりまして区割がきめられるわけでございますが、公平な第三者と申しましても、なかなか全国にわたって公平な区割をきめるということは、それがかりに修正案に出ておりますような七人の委員によりまして行われたといたしましても、私はなかなか困難な問題だと思うのです。この七人委員会というものによりまして、果して区割がいわゆる公平なものが作り得られるという御想定でございましょうか。
  22. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) なかなか困難でありましよう、いろいろの立場々々から利害関係その他がありましょうから。しかしながら、制度はやはり、ある程度多少の無理があっても、それをきめていくよりほかに方法はないのじゃないか、若干の不満があっても、すべてのものに満足を与えるということがなかなかできないものでありますから、そこは程度問題になってくるというふうに考えます。やはり公正な第三者方々がおきめになったものを尊重していくということの方がいいので、あまりそれぞれの政党が、あるいは自分の選挙区を考えてかれこれ変更するというようなことをしないでいった方がいいというふうに思います。
  23. 小林武治

    ○小林武治君 飯島先生にお伺いしますが、先ほどのお話もありまするが、まあ私ども了解するところによりますれば、小選挙区制は理論的にも制度的にも絶対反対だと、こういう御意見じゃなくて、むしろその時期でない、こういうふうに承わったのでありまするが、お話のように、今度の修正案というものはいつ実施されるか、相当遠い将来のことをきめたり、または政策の宣言あるいは希望、こういうものを述べておる。従って、法律の形式あるいは実体は、極言すれば法律の体をなしておらぬと、こういうふうなことを仰せられたのでありますが、この点は私も同感いたしておるのであります。しかしこの中で、私は、実体的に最も意味のあるのは、衆議院選挙区の画定委員会、これは私は実体的に非常に意味があると思っておるのであります。しかして先生のお話では、これは時期の問題であるとすれば、この画定委員会がもしできても、ことしの暮の結論でありまするし、またその実施はいつになるか、これは国会を通らなければわからない。こういうような建前であるからして、私は、この際この画定委員会を成立せしめておくことは、もし時期の問題だけであるとするなら非常に意味がある、こういうふうに私どもは考えておるのでありまするが、他の各般の条文はともかくとして、この条文をこの際通しておくということは、先生も御反対でないだろう、こういうふうに思いまするが、この点はいかがですか。要するに、繰り返して申しますが、ほかの方は今そうとりあえず急ぐものではない、しかし、時期の問題で、将来その必要があるとするなら、この委員会を通しておいて、そうしてこれを検討してもらうということには御賛成いただけるのじゃないかと、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  24. 飯島保

    公述人飯島保君) そういう委員会ができますことは、私けっこうだと思うのですけれども、選挙法でなくて、あるいはあの委員会を作るというのは別に、これは国家行政組織法の改正になるわけであります。委員会を作る、こういうふうになっております。「国家行政組織法第八条第一項の規定に基いて、総理府に、衆議院議員選挙画定委員会を置く。」と、こういうふうに付則にはなっているのです。これに基いて置くのですか。この場合は、国家行政組織法を改正しなければ、こういう委員会を置けないわけでございますか、どうなんですか。それで、もし国家行政組織法を改正しなければ、こういう委員会が置けないということでありますならば、私はこの国家行政組織法の改正案をお出しになって、こういう委員会をお作りになったらそれでいいんじゃないかと、こういうふうに思いますがどうでしょうか。
  25. 松岡平市

    委員長松岡平市君) その点について、ただいま飯島さんの方から御質疑があったようですが、政府委員から説明させます。
  26. 兼子秀夫

    政府委員(兼子秀夫君) 衆議院修正案について、付則の第二項でございますが、「国家行政組織法第八条第一項の規定に基いて、総理府に、衆議院議員選挙画定委員会を置く。」このように選挙法付則に書いてあるのでございますが、これは国家行政組織法の規定に基いてこのようなものを置き得るという根拠を置いたのであります。
  27. 小林武治

    ○小林武治君 よくお話はわかりました。要するに私どもも、法案体裁としてはきわめてまずいと、たとえば、これはお話のように、むしろ初めからおやりになるなら、選挙区の画定委員会の設置法、こういうふうな形にすればきわめてわかりやすい。こういう意味からいたしましても、この法案そのものは、その初めのいわゆる小選挙区法などというものからはだいぶ離れている、こういうふうに考えまするが、それは要するに法の体裁の問題でありまして、きわめて不体裁であると思うが、先生は、こういう委員会を作ることはけっこうだ、こういう結論であれば、私どもも非常にお話を了とすることができるのでありまして、それだけ御返事を申し上げます。
  28. 飯島保

    公述人飯島保君) ただし、その委員会におきまして区割案ができる、それに対する批判というものはまた別であります。その点は御承知おき願いたいと思います。
  29. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今、小林委員飯島さんの間のお話で、この修正案というものは全く体裁をなしておらない、先ほどのお話では、単なる申し合せ事項あるいは決議事項とすべきところを、修正案という法律的な形をとるというふうにお話を承わったのであります。私も実は、結局あれだけの大騒ぎしてでき上った修正案というものが、区画委員会設置法という形になった、こういう点は非常に、法律体裁から考えてみましても、われわれとして遺憾の点があるのでありまして、結論として必ずしもこの法案の成立を急ぐ必要はない、あるいは、審議未了もしくは撤回という形をとった方がいいという結論が出たのでありますが、この点につきまして、もう一度最初の出発に戻って、広く世論を聞いてから、小選挙制度というものを採用するかどうか、いわば一つの総選挙を通じて国民に訴えて、国民の意思を聞いて、選挙制度をどういうふうにするかということを国民の意思に尋ねて決定し、それからたとえば小選挙区制がいいということであるならば、あるいはその主張をしている政党が勝利を占めるならば、その後小選挙区制というものを、委員会を通じて区画割を作るなり、もしくは公職選挙法の改正法律案の原案を作成するなり、そういう形をとることの方が適当であると私は思うのでありますけれども、飯島さんはそういう点について、最初の出発に戻ってやることについていかがでございますか。
  30. 飯島保

    公述人飯島保君) 私も実は、先ほど申し上げませんでしたけれども、そういう方がよろしいと思うのです。この小選挙制度と申しますものは、学者の間とか、あるいは政党の間とかで、相当久しくこれは論議はされておったわけです。それから選挙制度調査会答申があったというようなことも、私たちは存じておりますけれども、一般国民はおそらく、今度この法案が出て、寝耳に水のような感じ一般国民は僕は持ったのではないかと思うのです。ですから、本来ならば、この問題だけでもありませんけれども、今のままの制度で総選挙をおやりになって、その際小選挙区制がいいか悪いかということを国民に判断を求めるということをおやりになれば、これは万全な一番いい方法だと私は思います。この前の総選挙では、小選挙区制が是か非かというようなことは何も出ておらない。それから一般国民はまた、こういう考えを持っているのです。たとえば、まあちょっと思い出せませんけれども、大きい市や何かで、区画が衆議院議員選挙の場合には小さくなって、市会議員や何かの場合には大きい。何かこれは妙じゃないかというような考えを実際持っておる人が多いのではないかと思うのです。ですから、そういう人にも、小選挙区制というものをやればこういう利点があるのだとか、あるいは弊害もあるのだというようなことをよく理解させることが私は必要ではないか。それにはやはり総選挙で一ぺん国民に問うてみるという形をとれば、これは一番けっこうなことではないかと思います。
  31. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 川原さんにお伺いいたしますが、川原さんは、新憲法を実施されてすぐにこの小選挙制度というものを採用した方がよかった、こういうお話でございます。この点、飯島さんと多少意見が違うようでありますけれども、まあ飯島さんの御意見のことは触れないで、あの二十一年の選挙というものは、御承知のように大選挙区でやりました。そのために、革新勢力と申しますか、当時の日本社会党というものは非常に躍進したわけです。これがもし小選挙区であったとするならば、あのように革新勢力の伸びというものは期待できなかったのではないか、こう思うのです。そのことは、現在でもやはり同じことでありまして、小選挙制度というものを終戦直後と申しますか、あるいは新憲法直後実施するということがよかったということは、ちょっと私には了解できないのです。この点いかがですか。
  32. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 私は、先ほど申しましたような基本的な点から出発して、選挙制度のことを考えておりましたので、新憲法ができたら、民主主義政治をりっぱにやっていかなければならない。それには、一番大事なことは政変ルールを確立することである。そういうことでありましたので、初めから小選挙区制をやったらよかったと、こう申し上げたのでありますが、革新政党は、ただいまの今日の状態では、大選挙区制の方が有利であることは私も認めます。ですから、小選挙区制に反対しておられる。しかし、長い目で見れば、英国などの例を比較してもわかりますが、長い目で見れば、やはり革新政党も——たとえば社会党も、やがては政権の座にすわる可能性を持たなければならない。その場合には、やはり小選挙区制で少し……まことに失礼な言葉ですが、苦労を少し続けていけば、やがてそういう時期も来るのではないか。ですから私は、社会党のためにも、小選挙区制は必ず不利——今の当面ははなはだ不利でありますが、それでは、今の制度のままで絶対多数党になるか。これはまあ努力次第でありますから、私はわかりませんが、長い目で見れば、結局小選挙区制の方がいいということになるのではないか。その制度をやはりとっていくべきだというふうに考えております。ただいま松澤さんがお話しになりました、第一回のときは大選挙区制であったがために、革新政党がたくさん出たということは、これは疑いのないことです。その通りであります。それから、ただいまも若干不利だとは思います。思いますが、しかし、こういう制度は相当先を考えてみなければならぬということを考えますと、結局有利に展開していく。それは政党努力により、国民の共鳴を博すべく、双方とも努力をしなければならぬということは言うまでもないことであります。そういうことであります。
  33. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこでお伺いしますけれども、もちろん私たちも、今こういう制度ができたとすれば、不利を乗り越えて、将来有利に展開しなければならぬという努力はしなければならぬと思います。そこで問題は、よく小選挙区制というものは、婦人や新人などの進出に非常に困難を来たすという話を聞くのですが、これは純粋に政党の中の、つまり公認制度というだけの問題であるか、あるいはまたそれ以外の要素、要件というものがあって、婦人やあるいは新人の進出が困難なのか。もう一度言いますならば、どんな人でも、党の中において公認されれば、あとはもう同じような——ハンデキャップなしに、同じような選挙戦を戦い得られるということであるのか。あるいはそういうような条件が同じであっても、新人である、あるいは婦人であるとかいう人たちは、こういう選挙制のもとにおいては進出が非常に困難であるということでありましょうか。これは一つ科学的、客観的にお話願いたいと思います。
  34. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) その点につきましては、政党というものが十分成長して、党内統制がしっかりできるようになれば、その政党公認いかんによって、公認のやり方いかんによって、婦人が出られれば新人も出られる。ただし、政党それ自体の内部の統制がうまくいかないと、そうはいかぬでしょうが、それは結局政党自体の内部的な問題である。従って、政党公認をし、公認をされたものが非常に有利だという状態になれば、新人でも婦人でも、公認されればこれは非常に有利に働いていくことができる。かえって公認されない顔のきく人よりも、むしろ公認された新人の方が有利だということも言い得るというふうに私は考えます。   —————————————
  35. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ただいま田中公述人出席がありましたから、質疑は一時停止いたします。  田中公述人には、先ほど公述人の皆さんには申し上げましたけれども、御列席がございませんでしたから、申し上げる機会がございませんでした。きょうはお忙しいところをまげておいで下さって、ありがとうございます。お約束の時間も少しおくれたようでございます。委員会は急いでおります。それで、大へん申しわけございませんが、あなたの公述の時間を二十分以内にまとめてお話を願い、その時間内に忌憚のない御意見を伺いたいと思います。田中公述人に御発言を願います。
  36. 田中壽美子

    公述人田中壽美子君) 私は、一人の婦人有権者といたしまして、今回提案されております公職選挙法の一部を改正する法律案の中に含まれております小選挙区制に対して、反対意見を述べたいと存じます。  反対の第一の理由は、小選挙制度が実施されましたときに起りますところの事態を具体的に考えてみますと、一般選挙民の意思を十分代表しないのではないかという点にあるのでございます。一般選挙民とは、今日有権者の半数以上を占めておりますところの婦人有権者を含んでおりますわけでございまして、婦人有権者は、昨年度の人口調査によりますと二千五百六十七万でございます。男子が二千三百五十五万に対して二百万ほど多いのでございますが、この小選挙制度を抽象的に考えます場合には、非常にいろいろの長所があるように言われております。で、自治庁選挙部でお出しになりました資料によりましても、小選挙制度の長所と欠点と両方があげられておりますが、その中にも、たとえば長所としては、多数代表となり、二大政党の対立をもたらす、それからまた欠点に死票増加の傾向があるということが述べられ、また候補者の人物、識見は徹底させやすいが、選挙運動が過激になりがちである、長所と欠点と両方載せてございます。また選挙運動費用は比較的少額で足りる、選挙違反の監視及び取締りが容易であるという長所があげられておりますかと思いますと、また地方的勢力家に有利となるというような欠点もあげられておりますわけですが、こういうことは抽象的に考えました場合には、長所と欠点と両方あげられますけれども、現在の日本の情勢に当てはめます場合には、非常に欠点の方がたくさん実際問題として起ってくると思われるのでございます。  第一に死票の増加という点でございますが、二大政党の対立による政局の安定ということを口実にして、小選挙制度をしかれることを提案されておりますのでございますが、この中では少数意見を二大政党の口実のもとに無視しやすい、つまり民主主義に反すると思われるのでございます。で、今日の自民党と社会党以外の小党の票は、今日の中選挙制度によってまあ全区にわたって集めた票が多いのでございます。で、婦人の議員なんかが得ておりますところの票などもそういう性質のものが多いのでございまして、二大政党の名のもとに少数者の発言を封じてしまう心配がある。各全国にわたっての選挙区に、こういう少数者の意見が代表されない心配がございまして、非常に非民主的になる。で、私はこの二大政党による政局の安定ということを盛んに第一の提案理由にされておりますけれども、果してこれをだれが望んでいるのかという点に疑惑を抱いておりますわけでございます。  次に選挙運動が激しくなるということは、これは牧野法務大臣がかつて朝日新聞紙上に社会党の人と二人対立した意見を述べておられました中にも、買収が非常にふえるだろう、それから小選挙区になるので花輪議員や香典議員がふえるだろうということを言っておられますが、そういうことは十分起るだろうと思われます。また地方的勢力に有利になるということですが、これなんかもほとんど男性ボスなんでございまして、婦人有権者は目下政治への正しい参加ということを、選挙権を得て十年の間に訓練されております最中でございます。で、現在の制度においてすら地方では部落投票のような、つまり本人の意思を生かすことのできない投票が起りがちでございまして、婦人なども団体的にそういうボスの勢力に左右されることがあるのでございますが、目下そういうことをなくすために自覚した選挙民となる訓練を一生懸命でしております最中でございますが、それがさらに地方的なボスの勢力が強くなって参りますと、地方の利益に結びついて、つまり地方に暮しております婦人にとりましては、どうしてもそういう人たちの勢力下に入っていきやすいのでございます。そういう意味で弊害が出て参る。実はこういうふうに抽象的に理屈づけました際の長所の方を強調されますけれども、小選挙区制をしかれますほんとうのねらいは、むしろもっと党略的なものにあるように思われますし、また非常に議員本位であるように思われます。私ども有権者の立場から見ますと、こういったいろいろの議論がずいぶん議員本位で勝手な言い分のように思われるのでございます。  提案理由としてあげられております二大政党対立による政局安定ということでございますが、これなども、二大政党を作って安定するというふうに言われますのは、一種の自己満足のような気がいたします。さっきも申しましたように、少数者の意見が無視されまして、非常に少数者が不満を抱きますことは、政局を果して安定することになるかどうかと考えますし、また当然だれでもが予想いたしますように、現在の状態で小選挙制度をしきまして、自民党が圧倒的な多数を占めて、そうして社会党がずっと議席が減っていく、革新系のものがずっと減っていく場合に、果して二大政党の対立による政局安定と言えるかどうか、非常に権力によったところの安定、つまり力による安定をもって二大政党の対立による政局安定というふうにおっしゃっているように思われます。で、選挙民の側から申しますと、これを望んでいるか望んでいないかということはわからないわけでございます。これはただいま自民党が合同されましたけれども、これも選挙後のことでございまして、そういう合同された安定勢力を望んでいるかどうかは、解散によって民意を問わなければわからないことではないか、それを勝手にそういうふうに言われて、それを提案の第一の理由にされているということを非常に選挙民としては不満に感ずるわけでございます。それから公認制で乱立が防げるというようなことを言われておりますけれども、これなども選挙民の側から言うよりは、むしろ議員たちの問題なのです。それから費用が少いというようなことも長所として非常にあげられておりますけれども、これなどもまた議員さんの側からのことでございまして、まして衆議院では修正されましたけれども、区割制の問題なんかにつきましては、非常な議員本位のものでございまして、選挙民から見ますと、全く何でこのようなことを今日しなければならないのか、非常に不思議に思われるわけでございます。ですから、選挙民にとっては非常に押しつけがましい改正であるように思われます。  なお、今日言われております二大政党と申しますのは、私は二大政党というふうには考えられないのでございます。アメリカやイギリスの二大政党は、これは二つの政党がほとんど勢力伯仲して、そうしてお互いに牽制し合うところの、民主主義ルールに乗ったところの政党でございますが、今日の二つの政党を二大政党対立という形では考えられないのでございます。私は、むしろ今の制度のままで少数意見者の意見も代表されて、そうしてむしろ不安定な形で、たびたび解散が行われたびたび選挙が行われることの方が望ましいように思います。これは金がかかるからということでよく言われますけれども、たびたびやればやるほど新人も出て参ります。それから金がもう続かなくなって、金がいらなくなるようになってほしい。それから選挙公営をやってもらうことによって、そういう点を補っていけると思います。  それからその次に、私は憲法との関連で、この小選挙区制が一そう民意を反映しないという点について申し上げたいと思いますが、小選挙区制実施の結果、当然一般に予想されておりますことは、衆議院の三分の一以上を革新派が掌握することは不可能であろう、保守系が三分の二以上とりますと、憲法改正の発議をする権限ができてくるわけでございまして、このような重大な変化をもたらしますところの制度を——この前の選挙のときに公約で掲げられたものではなくて、しかもこのように重大な変化をもたらします制度を——出されますことにつきましては、非常に民意を反映していない点で、私は反対なのでございます。  なお最後に、婦人有権者は、特にこの憲法改正に対しましては反対者が多いのでございます。第一番に平和を望む気持から、また特に今日の憲法が基本的人権を保障しておりまして、あの基本的人権の保障に基いて今日の婦人の地位はございますので、非常に大切な憲法をさわることのできる権限を与えるような結果を生み出すところの小選挙制に対しては、非常な疑惑を持っておりますので、この点でも婦人有権者の意思を無視するものと思われますのでございます。今年の二月初めに全日本婦人議員大会が東京で開催されまして、地方議員初め五百人ばかり婦人議員が集まりましたけれども、この席上で超党派に——この人たちの中には保守系の無所属の方が最も多かったんでございますが、この人たち全部が超党派に決議いたしましたことの一つに、家族制度復活の反対がございました。で、憲法改正の中の一つの要点として家族制度問題を含んでおりますので、なおさら婦人有権者の立場からはこの憲法をさわられるような結果を生じる選挙法の改正には反対なのでございます。  で、もう一つ最後に、小選挙区制になりました場合に、婦人の進出が非常に押えられるだろうということを、婦人はおそれておりますので、その点をつけ加えたいと思います。一人一区で男女が対立します場合に、まず第一に公認制度が確立されました場合、婦人を公認するということが非常に少いということは当然予想されることでございます。現在でも婦人の候補者党内公認候補となりますことは非常にむずかしゅうございます。現在衆議院には八人、参議院に十五人の婦人議員がおりますが、これらの数が戦後第一回の選挙から今日までに、たえず衆議院の方では婦人議員が減っておりますことにつきまして、これは婦人に政治的能力がないのだというような簡単な言い方でやっつけていられる方がございますが、実はそういうことよりももっと重大なのは、次第に政党の中で公認制度が実施されて参りまして、婦人を公認候補として選ぶことが非常に少いということでございます。これは長い間選挙権も何もなくて政党活動の経験もない婦人が、党内公認される、それだけの実績を上げるということは非常に困難で、従って公認されることが少い、これを、公認も革新系の方には比較的多いのですが、保守派になりますと、なお勢力家が多いものですから出にくい、それから選挙に地盤とかお金とかいうものが非常に要るようになり、地方ボスとの連絡が密になって参りますにつれて、あとから出て参りましたところの婦人や新人が出にくいのは当然でございまして、そういうことが一緒になって婦人議員の減少をもたらしたと思われます。これに比べまして参議院の方に比較的たくさん出ておりますのは、これは参議院の選挙区が大きい、そしてことに全国区というようなものを持っておりまして、婦人は全国区の方から出やすくなっているようなんでございます。それらの点から考えまして、小選挙区になりますと、婦人が非常に進出しにくいだろうと思われます。これは諸外国の例から見ましてもそうでございまして、イギリスやアメリカのように民主主義が非常に発達していると言われております国において、婦人議員の進出が非常に少い。これは全国会議員の三%余くらいしかアメリカもイギリスも出ておりません。これはユネスコの資料によったものですけれども、それに比べてイタリアだとか西独あるいはフランスの方がはるかに多い。さらにスウェーデンとかフィンランドとか、ルーマニアや、あるいは中国、ソ連になりますと、婦人議員の進出が多い、その大きな理由として考えられますのは、イギリスやアメリカが一人一区、政党公認制である、そういう小さな選挙区から女がほとんど進出できないという状態でございます。そういう点から考えましても、婦人としてはこの点を非常に心配するわけでございます。で、日本では私考えますのに、まだ特に婦人の進出は要請されなければならない時期だろうと思っております。なぜならば、婦人は今日まで権力の地位にありませんでしたので、すべての革新的なあるいは民主的な勢力として青年や婦人はその役割を果しておりまするのでありまして、そういうものに対して政治的な進出を育成されなければならないと思っております。それに、婦人は有権者としてだけではなくて、有権者としての婦人の票は男子の候補者たちも非常に一生懸命にこれを期待されるわけでございますが、間接的な、投票をするという政治への参加だけでなくて、積極的に政治家として婦人が進出することも十分の権利があると思いますし、またそれは、日本が民主的な国として発展、進歩して参りますために最も必要な要素であると考えております。そういうわけで、長い目で見て、その小選挙区制を実施して四回も五回も選挙しているうちには、だんだんよくなるということをおっしゃる方もございますが、そういう長い経過を待つよりは、今そういう逆行を防いで、何年、何十年の進歩の上に損失をしないように、その損失を防ぎたいと思っております。憲法改正反対に連なっておる革新派や民主的な勢力、婦人の進出を何年分も後退させるような結果を生じると思われます小選挙区制に対しまして、私は以上のような理由から反対意見を述べさせていただきました。
  37. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ちょっと田中公述人にお伺いいたしますが、今日は大へんあとの時間がお急ぎのようでございますが、ここでどのくらいの時間までおとどまりを願えますか。質疑を委員にお願いしたいと思いますので……。
  38. 田中壽美子

    公述人田中壽美子君) 十二時半ごろまで。
  39. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 委員各位にも申し上げておきます。午後一時に午後の公述人の御出席を願っております。これはしばらく御休憩を願って正一時半には午後の公聴会を再開をいたしたいと思います。  ただいまお聞きのように田中公述人は十二時半まではこの場にとどまれる、こういうことでございますので、他の公述人方々もすでにお昼休みで御迷惑きわまると思いますので、十二時半になりますれば、委員長は午前の委員会を休憩にいたしたいと思っておりますから、その範囲内で三人の公述人の方に御質疑を順次行なっていただきたいと思います。
  40. 森下政一

    ○森下政一君 川原先生にお伺いしたいと思います。先ほど松澤委員飯島先生に質問いたしましたが、同じことを私先生にただして先生の御見解を伺いたいのですが、それは、小選挙区制というものについては長短があると、どういう点が一番長所であり、どういう点が短所であるか、もう論議は尽されておると、政府はそういう見解に立っておるわけです。それは私どももよくわかるのです。ところで、今わが国政党は二大政党対立状態にありますけれども、保守党は前の自由党と民主党が両者合体したわけであり、社会党も一時分裂しておったのが統一された。保守、革新ともに今日の態様を整えましてから、あとにまだ国民の判断というか、総選挙の洗礼を受けたことはないという状態にもありますので、私は、いやしくも小選挙区制による選挙を将来実施して、二大政党をより以上に育成強化していきたい、そして政治の進歩をはかりたいというねらいが、政府の説くがごとくにあるとすれば、まず国民の判断を求めていく、すなわち国会を解散して総選挙に訴えて、国民がどう判断するかというその結果によってあらためて小選挙区制を提案するならするという機会をつかむことの方が妥当ではないかというふうに考えるのですが、その点について先生の御見解はどうありますでしょうか、と同時に、政府はこの小選挙区制というものは憲法改正とは関係がないのだということを常に唱えるのです。関係がないのだと言いますけれども、すでに先生御承知の通りに、鳩山総理は憲法改正の必要を力説しておる。と同時に、社会党の勢力は微弱ではあるけれども、保守党に比すべくもない微弱なものであるけれども、しかもなお憲法改正を妨害するだけの勢力を持っておる。実勢力を持っている。これは国民諸君が一つ社会党を減殺することにおいて協力してもらわなければならぬというふうな演説もやっておるという事実がある。しかもしばしば言うておることは、自分の手で憲法改正を是が非でも断行したいという、すでにこの国会にも憲法調査会法案なんというものを通して、憲法改正をねらっておるというようなやさきである。だから小選挙区と憲法改正と関係はないのだと言いながら、やはりその意図があるのじゃないか、こう邪推されても仕方がないような客観性をだんだん積み上げつつあるということを考えるときに、私はむしろこの憲法改正とか小選挙区制とかいうものを標題にして、一ぺん国会を解散して、総選挙に訴えて、国民の判断を求めるということが先決であるべきだというふうに思うのですが、先生のお考えはどうでございますか。
  41. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 一ぺん総選挙をやって国民の意向を聞くという、それは私は根本的にはいろいろの場合において、あっていいことだと思います。たとえば政党が合併したというような場合、あのとき、ただいまの自民党も、ただいまの社会党も合同した、その合同したことを国民が認めるかどうかということを、やはりあのとき選挙があれば非常によかったと思うのですが、別にない。私は当選のときはある政党で当選して、あとからまた別な政党分野に変るということは、総選挙というものをやはり軽視しておることになると思います。ところがこの問題、小選挙区制の問題に関しては、結局いろいろの見解の相違は、何を基準として可と言い非と言うかというところに帰着すると思うのです。それぞれ論議を見ておりますが、ある物事、制度のいいとか悪いとかいうことは、何か基準があって、その基準に基いてこれはいい、これは悪いということにならなければならない。その基準をどこに置くか、小選挙区制の問題に関して。そこである方はこれは憲法改正と連なっておるからいけない、あるいはまた新しい政党なり、革新政党にただいまのところでは不利だからいけない、これもやはり一つの基準だと思う。またある人は費用の点でどうだとか、選挙違反の点でどうだとか、いろいろの基準を立てて話をする。そしてもういろいろの基準によって、これは可、これは否と言っておりますけれども、私はそうした基準の価値判断、一番大切な根本の基準は何か——そこで私自身は、先ほども公述いたしましたように、民主主義政治体制をとるということに国是がきまった以上は、これの一番大切な点は何か、要するに結局政変ルールというものを確立することだということで、私自身はもう新憲法ができました当時から、小選挙区制論者でありましたのですが、その根本の基準のところはそこなんでありまして、その後になっていろいろの問題ができて、いろいろの論議があります。私個人意見としましては、その基準の置き方は、りっぱな政変ルールを打ち立てるというところからきておるのであって、ほかの方はまたほかの動機でもっていろいろ可否を論じていくでしょうが、それはその立場に立てばそう言えるというだけのことであって、私のと少し出発点が違っておるのでございます。お答えになりましたかどうかわかりませんが。
  42. 森下政一

    ○森下政一君 そこで先生は先生としてそういう基準によって小選挙区の是非というものは判断される、国民はまたいろいろの基準を持つでしょう。とにかく一ぺん解散をして、総選挙に訴えて、国民の判断を求めたらどうだ、そのことは必要がないのだと、こうおっしゃいますか。
  43. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) いや必要ないとは申しません。それも一つ方法だと思います。それもあっていいでしょう。
  44. 森下政一

    ○森下政一君 そうですか。
  45. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 必ずそうでなくても、この論議は、国会国民の代表機関なんでありますから、その代表機関がやる。ことこどくの問題を一々総選挙に聞くということになると、ちょっと国民投票、レファレンダムのようなことになりましょう。それはもちろんレファレンダムを一々の法律案についてやれば、それは民心は非常に徹底したことになりましょうが、それは度をこすと煩雑になります。ただいまでは憲法改正が国民投票による、あと法律案は、やはり国民の代表機関であるところの立法府において、国民を代表し、国民の意向をよくおくみになって、御審議になることがいいのじゃないか、そういうふうに考えます。
  46. 森下政一

    ○森下政一君 ただいまのお答えで、必ずしも総選挙に訴えるのに反対ではないという御意見だということがわかります。  それからどうも私はこの法案を審議しておりまして、納得のいかん点があるのです。先刻来ここでも委員の方から質疑がどなたかから出ました。法律としての体裁が整っていない、ことに衆議院修正されたからそうなった、同時に小選挙区制といいますけれども、小選挙区というものは、別表にあるところの区割というものを分けてしまったのでは、これは全く骨抜きになったものだと私は思う。鳩山総理は過日もこの委員会に出まして、骨抜きじゃないかという議員各位の質問に対して、精神が残っているから骨抜きとは思わぬというように答弁したのですが、全くこの小選挙区というものは、区割というものが大事なことなんです。区割が欠けてしまったら、骨抜きだと言われても仕方がない状態だと私は思うのです。そこで端的に言えば、この画定委員会を設置するようなことを、単にそれだけの法律を作ればいいくらいのことであって、いや公認制度がどうだとか何とかいうことは、他日で一こう差しつかえないことのように私には思える。しかもなおこの期間にどうしてもこういうものを作らなければならぬのだという、何かこの緊急性があるのかどうか。なぜそんなに急がなければならないのか、それがどうも私には納得できない。その緊急性というものを何かお認めになって、この機会にこれだけのものを用意して置かなければいかぬ、こういうふうなお考えでございましょうか。先生の御見解をお伺いしたいのです。
  47. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 私は初めから二大政党、この小選挙区制がいいと思っておりましたが、昨今問題がいよいよ現実の日程に上ってきましたのは、二大政党制がとにもかくにもでき上った、でき上ったことを国民が歓迎している。そこででき上った二大政党体制というものを保持しなければならぬ。くずさないように。くずさないように保持するためには、できるだけ早く小選挙区制をとらなければ、またどんなことで——失礼な言い分かもしれませんが——内部が分れて別な党ができるとか何とかいうことになったら、せっかくここまででき上ったこの歴史の発達段階が逆戻りになってくる。ところが小選挙区制を早くとってしまえば、私は政党の分立が非常に抑制されるのじゃなかろうかという感じです。ですからやはり二大政党対立制ができたこの際に、小選挙区制の問題が世間、世論の日程に上ったということは、むしろ当然なことだと思う、こういうことです。  それから初めの方の御質問の小選挙区制をとるということをきめて、別表は別に離したと、これはおかしいという御意見、そういうのも私、いろいろ伺うことがあります。しかし私はこれに対してむしろ進歩であったと思うのです。と申しますのは、小選挙区制をとるかとらぬかということを法律でおきめになった、ところがその具体的な区割の問題は、国会の方で、われわれは議員があまり例を出すというよりも、むしろ第三者に、小委員会を設けてそれを作らせて、それを原案とする——それにまかすとは要綱にはないけれども、むしろそれは進歩なんで、原則は議員できめる。こまかいことは公平な第三者区割してもらう。それに基いて賛成か反対かきめようじゃないか。この程度は、このことは私は先ほどの公述の中にも申しましたように区画割はむしろ議員がタッチしない。むしろ控え目にして第三者がやった方がいいという考え方から申しますと、むしろ国会の方でああいうふうに分けてお出しになったことは、むしろ私の理想に近いので、むしろ進歩だというふうな感じすらいたします。
  48. 森下政一

    ○森下政一君 ただいまのお答えで、区割については区画定委員というようなものにまかした方が進歩だと言われましたが、これは全く自民党の計画しておったような自民党案から比較しますとはるかに進歩と思います。そのことは私は何も否定しようとは思わぬのです。しかもこういう不体裁のものでも小選挙区と称して今これを国会で通しておかなければならぬのだというほどの緊急性がどこにあるのですかということをお尋ねしたらですね、結局こういうふうにお答えを聞いたのです。今やっておかぬとまた政党が割れてしまう。せっかく二大政党対立という格好ができておるのに、これがまた分裂してしまったのでは機会を失するおそれがあるから急がなければいかぬという、こういう御見解のように聞いたのですがそうですか。つまり寄り合い世帯の自民党が分裂した、社会党が統一したけれどもいつまたけんかするかわからぬ、どうまた保守党が分かれてしまうかわからぬ、そういう政党に対して信頼が置けぬから、今でなければいかぬ、こういう御見解でありますか。
  49. 川原次吉郎

    公述人川原次吉郎君) 私のはそういう政党を侮辱したようなことは毛頭考えておりません。そうじゃありません。そうじゃありませんが、やはり政党では二大政党制ができた、これを維持したいという前提に立てば、それがくずれないようにしたいということですな。できるだけそういう状態が存在しているときにそれが保持できるような制度を作るべく努力することが、早く努力することがむしろ民主主義の発達のためにいいと、こういうことなのでありまして、何も分裂するのを予想しているとか、危険性があるとかそういう失礼なことは何も考えておりません。
  50. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 田中さんがお急ぎのようでありますので田中さんに先にお尋ね申し上げます。  先ほどのお話では、小選挙区になると花輪議員だとか、まあ香典議員だとかいろいろな地方勢力がふえてと、(「その通り」と呼ぶ者あり)従って何ですな、婦人がなかなか出られぬと、目下婦人は政治訓練中であるというような御意見でありましたが、これは私はですね、そういうことはないと、りっぱな御婦人であれば幾らでも私はお出まし願えると思う。そういうお言葉があるということは、私は婦人みずからを低くあなた自身がごらんになっておる表明だとこういうふうに思うのですが、その点はどういう御所見か、もう一度伺っておきたいと思います。  それから小選挙区になれば、そしてこの政局安定をだれが望むのかわからぬというようなお話もあるのですが、小選挙区になれば政策が非常に徹底をするということは、これはまあ明らかだと思うのですが、その点についての御所見を承わっておきたいと思います。  それから公認制度議員側からの立場で言っておるのだというようなことですが、これも政党政治が発達していきまする以上は、公認制度ということは私どもは当然だと思いますが、これについても伺っておきたいと思います。  それから現在二大政党は認めぬ、考えられぬというようなお話でございますが、これは今の川原さんのお話のように、厳然として社会党も自民党も二大政党として今日あるのであります。従ってそれは何かの誤解でそういうことをおっしゃっておるのじゃないかと思いますが、その点はいかがでございましょうか。  また今のままで何べんも選挙をやっていけばいいというようなお話しかと思うと、そうでもないような御意見であります。小選挙区で長い時期を見ていくということもいいというようなお考えのようにも伺われるのですが、その点はどういうものでありましょうか。  また、婦人議員がだんだん減るというようなお話ですけれども、これはまあ先ほどあなたも御例証におあげになったように、まあイギリスでもアメリカでも少いということはありますが、私どもは男性と女性と半分ずつ出てやることが一番けっこうだと思うのです。従いましてこれがもう男女相ともに手をつないでいくゆえんであろうと思いますが、しかし現実は必ずしもそうでない。これは女性のお仕事の点、本質上からくることが大きな点じゃないかと思うのです。必ずしも婦人の政治的な、先ほどあなたがおっしゃるように婦人の能力がないからなんだということは、これはそんなことは決して私はないと思っておりますが、これはどういうふうにお考えか、さらに承わっておきたい。
  51. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ちょっと大谷君に御注意申し上げますが、先ほど申し上げましたように田中公述人は十二時半までにどうしても御退席にならなければなりませんから、その範囲で御質問願いたいと思います。
  52. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 はい。なお、飯島先生に伺っておきたいのですが、立会演説会が非常に乱れてくるので、しまいには警察官でも入れるのじゃないかというようなお話ですが、そんなことはむろん政府考えておるはずはございません。この秩序保持していくことが必要であるということは、これはまあ当然なことでありますが、しかしこの間あたりの各党の立会演説会を見まするというとああいう状況でございます。これは国民の教養の高さに待つところが非常に大であると、かように思いますが、新聞人としてそういうような世論の喚起をぜひともしていただかなければならぬと思いますが、そういう点はあなたはいかがお考えになっておるか、この点承わっておきたいのであります。
  53. 田中壽美子

    公述人田中壽美子君) ただいまの御質問、だいぶ私の申しましたことを誤解してお聞きになっていらっしゃった点がたくさんございましたと思います。  第一点の、地方勢力家の有利となるということで、地方ボスに婦人が支配されることについて私が少し言及いたしましたのを、婦人みずからをさげすむことではないかというお言葉でございますが、それは婦人だけでなくて一般選挙民が御存じのように、今日部落で百パーセント投票率を上げておりますような所は、部落投票というような形で申し合せ投票で、翌日になれば投票した人の名前を覚えていないような投票が盛んに行われております、地方では。そういうことがさらに強化される心配がある。これは婦人だけではないのでございます。男女ともに農村等では相当多うございますので、そういうことがあり得る。これは自治庁でお出しになった資料にも載っておりますし、牧野法務大臣のおっしゃった言葉からも引用したわけでございます。  それから選挙法の改正を一体だれが望んでいるかということについてでございますが、それは私申しました通り、今回の小選挙区制の改正は選挙民の方からお願いして提案していただいたものではないのでございます。  それから公認制度のことですが、政党がだんだん発展していくと公認制度となるのは当然だとおっしゃいました。それは当然だろうと思います。ただこれは私が申しましたのは、たとえば今回の小選挙区制についての長所としていろいろあげてあることの中に、公認制度一つあげてありますが、これらのことは全部ほかのものも含めて、ともに全部議員の側からお考え出しになったことでありまして、選挙民の意思でこういうふうになっているのではないということを申し上げたわけでございます。  それから二大政党を認めない云々の問題ですが、これはいわゆる皆さんがイギリスやアメリカの二大政党のようなつもりで今日の日本の自民党と社会党のあり方をお考えになっておっては間違っておる、絶対多数を持っておりますところの自民党が相当圧力をもって自由に行動できるというようなことは、これは民主的な二大政党ルールに沿ったものではない。ですからそういう意味の二大政党とは考えられないということを申し上げたのでありまして、ことに保守の合同は選挙後にできましたもので、政策によった合同というよりは、むしろ社会党の合同に対立するための合同であったと思われますので、二大政党がそういう意味の、西欧の民主的ルールに従ったそういう二大政党のようには考えられないということを申し上げたのでございます。  それから今のままの状態でたびたび選挙があった方がいい、そうして次々と新人が出て行って選挙に金が要らないようになった方がいいと申し上げましたのを、後で私が申しましたことと一緒にしていらっしゃいますが、最後に申しました長い目で見れば必ず将来はうまくいくというふうにおっしゃっておるのは皆さんの側でございまして、私は法務大臣の牧野さんの言葉を引用したので、牧野さんが新聞紙上でおっしゃっておりますが、四、五回小選挙をやっていけば、初めのうちは民主勢力も出られなくても、将来は出られるだろうと言っておるのでありますが、私はそのような危険を冒すことは今日を逆行させることになるので、それには反対だ、むしろ今のままの状態で日本の民主化のためには新しい勢力が次々と出ていくようにすべきであるということを申し上げたのでございます。  それから婦人議員の減少についてですが、私は男女が半数ずつ国会に出るべきだとは少しも考えないのでございます。婦人には婦人特有の仕事があることはもちろんでございますけれども、今日出ております比率は、日本は英米並みでして約三%ちょっとでございますが、こういうような状態はまだまだ少な過ぎるのでございます。婦人の活動は主として社会福祉の面の活動でもございますので、国を作り上げておりますところの家庭の中の幸福も大いにこれに関係いたしますのと、それからまた別な意味では、国会の中に多少とも浄化の役割をしておりますわけでございます。それだけでなくて、圧迫されがちなものの利益を守るという意味で、民主的な勢力をふやす、そういう意味で婦人の進出が望まれるのでございまして、そういう意味から私は小選挙区制はこういうものにすべて不利に働くと申し上げたのでございます。
  54. 飯島保

    公述人飯島保君) 立会演説会ですね、そういうことになってはいけないということを私は強く申し上げたのです。で、あの場合この法文を見ますと、一体そういう騒擾がかりに起った場合にはだれが会場から出したりするのだろうと、それは警察官なんだろうかどうだろうかということ、それからもう一つは、あるいは騒擾は起るかもしれないということを予想して警察官を入れて置けというようなことが、しばしばあるようになってはいけないのじゃないかということです。それにはそういう風潮が起らないように、いろいろなことを審議する方でもお考え願いたいと、こういうことでございます。
  55. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 他の各委員の御質疑もあることと思います。また冒頭に述べましたようにせっかくの機会でございますから、公述人各位もこの際ごうんちくをお傾け願いたいと思うのでございまするが、予定いたしました時間をすでに経過いたしました。公述人各位に非常に御迷惑でございますので、午前はこの程度にいたしたいと存じます。  委員長から公述人各位に一言御礼を申し上げます。本日は種々有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。当委員会といたしましては、各位の御意見を十分参考といたし、今後の審査に資したいと存ずる次第でございます。委員一同を代表して厚く御礼を申し上げます。  休憩いたします。    午後零時三十五分休憩    ————・————    午後一時三十六分開会
  56. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 地方行政委員会公聴会を再開いたします。議事に入ります前に一言公述人各位委員長からごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中のところ、しかも大へん唐突の間に御出席をお願い申し上げましたにもかかわらず、当委員会のために時間をおさきいただきまして、委員一同を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。これより内閣提出衆議院修正送付の公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして各位の御公述を願うわけでございますが、本法律案内容につきましては、お手元にお届けいたしました法律案、関係資料その他新聞紙上等で各位も十分御承知のことと存じますので、ここで改めて種々申し上げることも時間の関係もありまして差し控えたいと存じますが、本日は十分に忌憚なき御意見を私どもにお聞かせ願いたいと考える次第でございます。せっかくおいで願いましたので、各位の御意見を十分お伺いしたいと思いまするが、委員会の運営の都合上、また皆様方も大へんお忙しいさ中でもありますので、時間をあまりとるわけに参らぬと考えております。従って、御公述はお一人二十分程度でお願いいたします。三人の方の御公述が全部終りましてから委員より質疑を行います。その際はなるべく簡明に御答弁を願って、議事の進行にも御協力を願いたいと存じます。この点お含みおきを願います。午前の会議が午後にまでわたりましたため、再開がおくれて、大へんお待たせをいたしました。おわび申し上げておきます。  なお、当委員会といたしましては、皆様方に発言をしていただきます際には、委員長は何々君ということで君づけで呼びますが、その点は委員会の慣例としてお許しを願いたいと存じます。  まず日本生命保険相互会社顧問清水徳太郎君に公述をお願いいたします。
  57. 清水徳太郎

    公述人清水徳太郎君) 選挙制度改正に関する政府提案に対しての衆議院修正には賛成であります。ことに世論非難の中心であった別表改正の行き過ぎ案の撤回英断は賢明だと思います。そうして、四百九十七名の定員限度を認められたことは、当然のことだと思います。思うに、現在の四百六十六名(奄美大島を除いて)この定員は大正九年十月一日現在の国勢調査の国内人口五千六百万人を基礎とし、人口十二万人について定員一名の割合で定めたものである。しかるに満三十五年後の昭和三十年十月一日現在の国勢調査の人口は、八千九百三十六万九千人で、実に三千三百三十七万の激増で、かつ婦人も有権者となり、人口の約半数が選挙権者であるのに、人口約十八万人につき定員一名の割合で四百九十七名ということになりますから、むしろ五百名定員でもいいと思われるものであります。これを外国の例にとりましても、英国は人口五千十万人(一九五二年の国勢調査)の人口に過ぎないのに、議員定員は六百三十名でありまして、すなわち人口わずか八万人につき一名の割合である。また仏国は人口四千二百万人(一九五一年国勢調査)であるのに、定員は六百二十七名で、すなわち人口わずかに六万七千人につき一名の割合であるから、四百九十七名の限度は当然と言わねばなりません。決して多いことはないと思います。  次に政界浄化、人物の輩出を期する必要上、金のかからぬ選挙区制は、選挙公営を徹底し、立会演説を中心とし得る範囲に限ると思います。しかも政界を安定し、二大政党の対立を育成するには一人区を原則とし、これに二人区を加えることが最も適切肝要であると信じます。ただし選挙が公明かつ適切に執行せらるるように、国民政治常識の啓発運動を強力に展開せしむる必要がある。これ選挙制度調査会答申を尊重する主眼で、英国に学ぶべき日本国民の最も大切な政治訓練なりと思われます。  次に実は私が昭和七年海外に出張視察に行きました際に、英国の選挙制度を研究しまして、また久しきにわたって選挙係をしておりました関係上、今日社会党の出しておらるるような二人区を中心として、これに一人区及び三人区を加えたのを中小選挙区制と申して研究しておりましたのであります。そのときにたまたま昭和二十六年秋、選挙管理委員長でありました牧野良三氏が、吉田首相の命を得て、英国の小選挙区制を三カ月視察にいかれましたが、帰朝後に十二月末に至るも案ができないで因っておるとのことでありまして、私にその試案を参考までに年内に送ってくれということでありまして、十二月末に送りましたのでありました。それを吉田総理大臣へ参考に供して責めふさぎをした。ところが吉田さんは、日本でこういうものを一人で作れる者がおるのかと言って、非常に驚かれたということを聞いております。富来研究を重ねておりましたが、昭和八年の選挙管理委員会発行の雑誌「選挙」の六月号に、中小選挙区制試案として登載せられたこともあります。当時保守党も社会党も二派に分れて、合同統一の機運は全くありませず、二大政党の対立が望まれがたくあったために、そういう案を作っておったのであります。しかるに今や自由民主党も、社会党も合同が成って、政局の安定をはかるの必要急なるものがあるのであります。かつ同士打ちをなくして、両党とも結束を固くして、二大政党対立育成の必要に迫られております。故に一人区を原則とし、二人区をこれに加えるの適切なるを信ずるに至りました次第であります。なにとぞ御了解を願います。   —————————————
  58. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 次に弁護士正太英君に御発言を願います。
  59. 正木昊

    公述人(正木昊君) 私はこの原案に反対するものであります。もしもこのようなものを強行いたしますと、次の時代を担っていこうとしておりますまじめな国民に、道義的に絶望感を与えやしないかと思うのであります。反対理由はすでにいろいろなものを、もう衆議院の方のもちょっとですが拝見いたしますと、こまかいところは出尽しておりますし、また提案者みずからも表まで作りまして、その利害得失を研究されておることを知っておりますし、またその欠陥の相当深刻なものがあるのも御存じのようであります。従って私はこの短かい二十分の間に、こまかいそういうようなことをとやかく言うことは省略いたしますが、専門家でない私は一個の市民、国民といたしまして、道義的な感覚は持っておるものでありますが、そういう立場から三項目だけを強調したいと思うのであります。  第一はこの提案を自民党並びに政府がいたしましたその動機と目的とについてであります。いろいろ三百代言的な言いわけは承知しておりますけれども、われわれが市民といたしまして、はだに感ずることは、何といってもこの法案の目的とするところは、自足党が今後も政権を壟断し、社会党にはこんりんざい渡さないようにし、社会党ばかりでなく、その他のものに渡さないように強固に、がんじがらめに固めるばかりでなく、それを恒久化するために憲法の改正等を行い、逆コースをたどろうとしておる、その方向性を私たちは感ずるものであります。二大政党による政局の安定、あるいはまた選挙費用の節約というようなものはもちろん名目についておりますけれども、それがつけたりのものであるということをわれわれは感ずるものであります。私自身を初めといたしまして国民の相当有力なるまじめな部分は、現在の政治に非常な絶望を感じております。現にいろいろ不祥なことが公けに関して多く、また国民の道義もいつの日かよくなるものか見通しのつかない絶望的な状態にあるこの現在の日本におきまして、それを担当しておる現在の保守党に対して、だれがこれが永久にこういうようなやり方をやって国が明るくなると考え得られましょうか。安泰であるのは単に保守党の陣営及びそれと歩調をともにしておる人たちのみではないかと思います。また社会党それ自身も、私自身それに加入しておらないごとく、あの政策それ自身が完全であるとも思わないし、またその道義的なものがあれでいいとも思っておらないのであって、現在の日本の政局並びに国情を明るい方に向けるには、もっとすぐれたる政治を要求しておるのであろうと思います。従ってこの現在の保守党と社会党とどっちか一つにしろといわれても、どっちも困るといわれる人の多いことも、新聞のときどきやる世論調査というような中で、あなたはどちらの政党支持するかというような場合に、わからないというのが三〇%ないし四〇%くらいあるのは、必ずしも彼らが無知であるというのではなく、どっちもどっちで困ったものだ、どっちとも言えないというような人たちが相当私はあるのであって、これらの人たちは必ずしも政治に無関心なのではなくて、ほんとうはもっとりっぱなものを求めておる人たちが相当多くあると思うのであります。その意味からいうと、ここに日本では第三党と申しますか、もっと別の道義的であり、もっと正義の、国民が信頼し得るところの政党の出現を待っておるというような状態であるのではないかと思うのであります。しかるに、この法案の目ざすところは、小選挙区制にして、今の自民党をそのまま固めてゆくということが目ざされておることは、先ほど申した通りでありまして、この小選挙区制がもし不幸にして参議院を通過するようなことがあると、次の新しい、ほんとうに国を憂える政党並びに政党人の出現を非常に困難ならしめる。そればかりでなく、現在の政党の中におきましても、人々その人物によりましてみな違う点があるのであります。そういう人たちの競争といいますか、古い人だけがいわゆるボスのような者がいつでも死ぬまでがんばる。鳩山氏みたいに死ぬまでがんばるというような傾向が出て参りまして、政党自身の中の新陳代謝も行いがたくなるということも憂うるものであります。そうしてこの小選挙区制では、それでなくても地方的にボス的になりがちな政治を、非常にローカルな、県会議員、都会議員的なものが衆議院にまで入ってくる。そういうものによってぬりつぶされてゆくということは、非常な憂うべき状態になりはしないかと考えるものであります。  第二番目に、この手段についてであります。現在の自民党は多数決を持っておいででありますが、この多数決は選挙の初めからできたものではなくて、選挙民の承諾なく、あらわなる承諾なくできた多数決であります。この承諾なくできた多数決によって非常に政界を安定させようというような目的を持つような重大なる法案を早急に通してしまおうということは、少くとも手段として公明を欠くように道義的に感ずるものであります。少くともこれは選挙のスローガンとして国民に問うた上でやってもおそくはない。自分を選んだところの選挙法をみずから否定してかかるということは、選挙民に対する侮辱ではないかと思うのであります。そういったように、自分の政権のために選挙法を改正してやるというような方法がいかに不公明なものであるかというととは、お隣の国の李承晩の大統領選挙でよくわかっておるのであります。あれはいつも選挙の前にいろいろな手を打って選挙法をこの前のときも変えて、結局は維持しておりますが、それがいかに一時的の安定であって、世界各国からみれば最も危ういものであるかということは、われわれは直覚的にも感ずることができるのであります。従って、こういったようなことの可否は一応解散した後に、選挙のスローガンとして国民に問うてからやるべきではないか。安定でなく、非常なあわてて、何かどさくさにやってしまうというようなことが非常に不公明を感ずるので、現在の道義のすたれかかっておるときに、一そうしゃにむにな事後承諾的なやり方をやってみせるというのは、非常におもしろくない現象ではないかと考えます。  最後に、この法案は、私は専門家でありませんが、ちょっとここにくるときにみたところによりましても欠陥が法文上にも幾多の抜け穴があり、また少数党をいじめるような魂胆を持っておる、非常な意地の悪い不公正、不適切なものがあると考えられます。たとえば公職選挙法の百九十九条の二というようなものがくっついてゆけば、一方におきまして費用がかからないといっても、持っておるものを使うのは使い方はちゃんと出ておるのであります。あるいはまた今度の二百一条の4、5というようなものにおきましても、たとえば一つ選挙区で少数党の者があり余る票数のある場合に、自分と似たような、自分と政見を同じくするような者を支援するというようなことを禁ずるような、こういったようなよけいなこと、これは党内の綱紀、規律にまかしておけばいいものを、それを外部から干渉しようとする、こういうようなところもよけいなことで、親切過ぎることであって、これは実は逆用できるような法文ではないかと考えられるのであります。これはまだ研究すればいろいろあると思うのでありますが、ざっと見たところでも、そういったようなあいまいな点がずいぶんあります。押せば抜けてしまうような非常に柔らかくできている。逆用のできるようなところがあって、これは現在の自民党のみに大へん都合がいいが、ほかには非常にそれが差しさわるというような、えげつないような点が考えられます。従って、今日までに、この法案が三月とかに出されたのでありますが、非常な世論の反撃がある。誰も世論としてこれをやってくれと言った者はあまり聞かないので、自分たちの仲間がこれを世論に押しつけようとしたのであるが、学者までがだんだんとこれに対して批判的となり、最初法案がずたずたになってきたということだけでも、そう私どもは歓迎すべきものでないということが考えられるのであります。で、従って参議院におかれましては、いたずらにただそのときの流れ、勢いに妥協することなく、国民のこういった次の時代をになうべきほんとうの良識のある者の満足のいくように。参議院までがこれをいいかげんにうのみにするようなことがありますと、政治国民が絶望しやしないか、むしろその結果の方を私は憂える者であります。これで一応。   —————————————
  60. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 次に弁護士坂千秋君に御公述を願います。
  61. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 私は別段取り立てて申し上げるような意見を持っているわけでもありませんのでありますが、お指図がありますので、衆議院修正のありましたあとのこの改正案を対象といたしまして、この全般にわたりまして一応私の私見を申し上げたいと思います。私は選挙制度調査会委員であったのでありますが、それと私がこれから申し上げるのとは全然関係のないことでありますから、これは御了承願っておきます。  結論を先に申し上げますと、この衆議院修正がされました結果といたしまして、この法案内容は大体いいと私は考えます。若干不十分な点とか議論のあるところもあるかもしれませんが、まあ大体は特に非難せらるべき点もないのじゃないかと考えておるのであります。でありますから、できるならばこの際この法案が成立することがはなはだ望ましいことであると私は考えておるものであります。ただ法文法律改正の形式にはいろいろごたごたがありました結果でありましょうが、改正案本文と別表とが分離されまして、別表がいずれこの選挙画定委員会答申によって次の常会、国会でありますか、国会できまるというように振り分けられておりますことはあまりいい格好とは考えません。あまり前例もないことでありましょうし、好ましいこととは思いませんけれども、しかしこれも法律的に考えてみれば差しつかえのないことでありましょうし、またいろいろ御論議の結果として大体において実質的な内容はきまっておるもののようにも了解せられるのでありますから、若干すっきりしないような感じはありますけれども、それで差しつかえなかろうとやはり考えております。  法案の根本は申し上げるまでもなく選挙区制を中心としたものでありまして、これに関連いたしまして、まあその他のいろいろの問題もあるように了解せられるのであります。選挙区制の第一は定数の問題、全国的な議員定数の問題でありまして四百九十七名以下というようになっておるようであります。以下というのはどういう意味でありますかよくわからないのでありますが、まあ私は大体こういうことでよかろうと思います。  それからこの四百九十七名以下の定数が各府県に対してどういうふうに割当せられるかということも、これは将来の問題でありましょう。いずれその案がきまりましてからのことでありますから、特にこの際は申し上げることを差しひかえておきたいと思います。  それから次は具体的な選挙区の問題でありますが、その前にいろいろまあ当初の政府原案に対してのきびしい批判もあり、いろいろのいきさつはありまして修正になった結果、この選挙画定委員会という新しい制度が臨時に設けられることになりまして、その画定委員会答申に基いて次の常会に改めて法律案が出る。もっともそれは選挙制度調査会答申を尊重してやるということになっておるようでありますから、尊重ということはどういうことでありまするのか、十分のことはわからないのでありますが、まずその言葉の通りに受け取って参りますると、やはり大体あと似通ったようなものができ上ってくるだろう、こういうふうに了解せられるのであります。そういう意味におきまして、やはりいわゆる小選挙区制を前提とした改正案であることを理解し得るのであります。  こういうことでありますが、それが選挙画定委員会というものは七人の委員で構成せられる。しかしそれは直接に議会方々、すなわち衆議院、参議院議員という方々はお加わりにならないで、いわゆる第三者、公平な第三者というのでありますか、そういう者だけで構成して、その答申に基く、これは私は非常にいいことであると思います。いいことであると同時に、よくまあそこまで決心をせられたものだという感じはあります。これもいろいろの事情からいろいろの経過を経てそうなったのだろうとは想像せられるのでありますが、結論的に考えてみますると、まあ議会の構成の本当の基本でありますから、その基本である選挙区の構成を直接の利害関係を持つ人の手をはずして第三者のみからできる委員会でそれを審議させて、その答申に基いてやるという態度は非常に公明であります。よくまあできたものだという感じが正直に申しましてあるのでありまして、これはこの修正後の改正案におきまして特にわれわれが注目すべき点であるように考えております。この委員会制度だけのことを考えましても、非常な一つの進歩でないかと思いまして、何とかしてこういつたものが成立いたしまするように、私は希望をいたすものであります。  それから今申し上げましたように、答申に基くとは言うのでありますが、将来の答申に基くというのでありますが、小選挙区制を根本的な原則としては前提としておることを理解せられるのでありますが、これがいいとか悪いとかいうことは、これはずいぶんもう言い尽されておることでありまして、私が特に申し添えるようなものはございません。  結論といたしましては、私は小選挙区制を原則とすることがよろしいと考えております。それはまあ簡単に申しますと、一つ一つ申しますと、今世の中がだんだん落ちついて参りまして、食べものの不自由はありませんし、着物も自由に手に入るようになって、何となしに安定してきたような外観は呈し募りまするけれども、私はそれはただうわっつらのことだけであって、この敗戦によりまして何もかもなくなってしまった日本の国が、これから再建せられていくということを考えますと、なかなかその容易ならざる時代であると思います。そうなまやさしい時代ではないのでありまして、従ってそういう時代には何か少しちゃんとした政府がありまして、その政府が相当仕事をやってくれなければ困るのでありまして、ああでもない、こうでもないというようなことでは、今日の日本の大きな要求には合わないと思います。仕事のできる政党政治というのでありますか、むろん民主主義の原則が根本でありまして、それを崩すことはできないのであります。その許されたワク、民主主義ルール、あるいはワクのうちではどうしても仕事のできる政府を作り上げるということが絶対に必要であると思うのでありまして、そういう立場から考えますと、やはりこの小選挙区制がよろしいと思います。地域代表制を基本とした民主主義におきまして、これがやはり仕事のできる政府を作り上げるには一番いい方法であろう。むろん小選挙区とか大選挙区とかといいましても、いずれもいいことばかりではないのでありますから、議論すればいろいろありましょうけれども、これを総括して、私はそれがよろしいと考えておるものの一人であります。  ただ小選挙区といいましても絶対の一人一区がいいのか、あるいは若干の二人区というものが加わるのかというやや技術的なこまかい問題になりますと、私は調査会答申のように必ずしも一人一区ということをそう固く守らぬでもいい、むしろ守らぬ方がいい場合があるのじゃないか。これはしかしあのゲリマンダーとかなんとか言われておりますような、ああいう政略的な意味で申すのでは毛頭ございませんが、ごく事務的に考えましても、やはり二人区の方が都合のいいという場合は若干はあると思います。従ってそれはあまり厳格に一人一区ということに限定する必要はない、むしろそうでない方がいいのじゃないかと思うのでありますが、大体におきましては、ただいま申し上げました通りに考えておるのであります。  それからその次に、この改正案の骨子となっておりますことは、現在のような個人本位の、個人中心の選挙制度はどうもいろいろな意味でおもしろくないから、それを政党本位というのでありますか、政党中心と申しますか、そういう選挙制度にだんだんかえていきたい、一ぺんに何もかもやるということはむろんできないことでありましょうし、適当でないが、しかしそれを漸次そういうふうに移していきたい、こういうことは前提を貫く一つの大きな方針になっておるように見えるのであります。これは私はしごくけっこうであると思います。そうなることは急激には参らぬといたしましても、漸次その方向に持っていくということは、むしろこれは当然、あるいは必然のものであろうと考えております。あまり、現在の選挙制度、あるいは選挙の個々の運用の問題もあると思いますが、個人的になっており、個人中心になり過ぎておるということが、現在の日本の政党政治、あるいは選挙というものの大きな弊害の根本でないかと考えておるものの一人であります。そのための具体的な方法としては候補者公認制度、いわゆる公認候補者という制度ができておりまして、候補者公認をある程度規制する、またそれに公認せられたる候補者に対してはある程度の特権的なものといいますか、何らか特殊の利益的なものが与えられるような考案が織り込まれておるようであります。これは考え方によりますと、この法律でそういうことをするのがいいか悪いかということは、原則的な考え方としては、それは議論はあると思います。それは各政党の自律あるいは自省、めいめいがやったらいいじゃないか、こういう考え方ももっともな点はあると思いまして、できればそれがいいと思うのであります。思うのでありますが、しかし現在の実際の状況がそれではだめだ、それを許さないというならば、それが現状であるならば、まあ法律でこういうことを書きましても差しつかえないんじゃないか。好ましい形ではないかもしれませんが、必要があるならばやむを得んのじゃないか、こういう程度に私は考えておるものであります。選挙の際における政治団体がいろいろな政治活動をする、ある程度容認しよう、選挙運動とごっちゃになってもやむを得ないという趣旨もあるのでありますが、とれにつきましてまた同様であります。  それから選挙の公営の問題は、改正案の中には含まないようであります。まあないと言っていい程度でありますが、私はそれでいいのじゃないかと思っております。選挙の公営ということを口ぐせのように言う人もありますけれども、言葉だけなら何とおっしゃってもよろしいのでありますけれども、実際の問題はそう簡単にできないでありましょう。これは具体案なり適当なものがなければ、もう議論をしても仕方がないのでありまして、いいことがあればやったらよろしいのでありますが、そう無理に公営々々と言うほどのこともない、まあ皆さん御承知のように、どこの国でもそう公営ばかりやっている国はないのでありますから、日本の公営についても、まあ改正案の程度でいいんじゃないか。ただ立会演説会修正せられたということ、これをやめるということを修正せられたことはもう当然のことでありまして、立会演説会をやめる理由は毛頭ないと考えます。  それから次にもう一つ大きな問題になっておりますのは、選挙の公正を確保する。小選挙制度になると、ことに選挙の公正が乱れるのではないか、現在でもその弊害があるのに、さらにこれが強くなっていくのではないかという、世上にもいろいろ議論があるようであります。これは選挙制度調査会答申の中には、まあいろいろなことが盛り込まれておりまして、また文字の上でも相当強くその実現を望むようなことが答申せられておりますのでありますが、この改正案を見ますると、そのうちの多くのものは実現せられておらないようであります。これはしかし小選挙区になったからといって、これらのことを一ぺんにやってしまわなきゃならぬとは私は考えません。それはできれば好ましいこと、望ましいことであるでありましょう。ありましょうけれども、しかしそれをやらなければ小選挙区制は実行はできないというようにつきつめた考え方をするべきものではないと考えております。ただ今度実現しておらないようでありますが、たとえば選挙犯罪をした者は選挙権、被選挙権を停止するということは、裁判で停止するとかしないということをきめるのでなくて、もう当然にそうなるようにしたらどうかというような答申案なども不採用になっているのであります。これなどは私は、これはだれがおきめになったことか存じませんけれども、まあいろいろこういうことをすれば都合の悪いということもあるかもしれませんけれども、思い切ってこのくらいのことはおやりになってもいいんじゃないか。選挙の粛正とか革正ということに少し熱意を持っておられるならば、その程度のことは決心せられたらよかったんじゃないかという感じはあります。金のかかることでも何でもないのであります。すぐできることでありまして、また選挙犯罪をした者でありますから、それはまあ過失とかいろいろ情状を言い立てればあるかもしれませんけれども、それも選挙権、被選選挙はある程度ある期間停止するということは、これは当然と言えば当然と言えることじゃないか、こういう点は若干不満の感じを持っております。  それから連座に関する問題につきましても、免責要件ははずすということは結局実現せられておらないようであります。これもいろいろ理屈はあるのかもしれませんけれども、私はこんな免責要件くらい思い切ってはずされたらよかろう。なるほど訴訟の形式を変えまして検察官が付帯訴訟でやるという方法にすることは、これはよろしいと思います。かつて似たようなことがありまして、現在それがなくなっておりますが、それはよろしいのでありますけれども、私はそれだけでなくて免責要件くらいのことは、免責要件もはずせば訴訟問題は減ります。減りますけれども、しかし総括主宰者という問題が残ります。出納責任者は形式的にきまっておりますけれども、総括主宰者というものはだれであるかということは法律的にきまっておりません。事実の問題からこういうことはやはり残るのでありまして、免責要件をはずしましてもなおそういう問題は残るくらいのものでありますから、少し決心をせられたらよかったんじゃないか、こういう感じは持っているものであります。  以上簡単でありますが、大体全般にわたりまして申し上げました。
  62. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 以上で公述人公述は終りました。これより公述人に対する質疑に入ります。  委員長といたしましては公述人各位の御都合をも考慮いたしまして、大体公聴会は四時前に終了できるように運営したいと考えております。委員各位はその辺のところをお含みの上、自後の質疑をしていただきたいと思います。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  63. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 二、三の点、坂さんにお伺いしたいのですが、坂さんの御意見はだいぶ御融通性があるお考えのようで、結論としては衆議院修正案というものはけっこうである、こういうふうにおっしゃっておられますが、その際まあ言葉の上のことなんですが、修正案内容において大体いい、であるから成立を望むというお話だったのですが、実質的な内容がきまっているということをおっしゃったように承わったのですが、この実質的内容がきまっているということはどういう意味でありますか。あるいはその実質的内容がきまっているということの断定はどういうお考えからなさっているのでありますか。この点ちょっとお聞きします。
  64. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 実質的内容がきまっておるように自分は理解するということを申し上げたのでありますが、それはなるほど選挙区は別表のところは取りはずしになりましたけれども、選挙画定委員会というものができましてそれが今申し上げましたように、七人かの中立的の立場に立つ人が委員となられまして、そしてそれが選挙制度調査会答申を尊重し、とあったと思いますが、尊重して次の常会に間に合うように答申をする、答申に基いて議会にさらに法律案改正案を出す、こういうことがこの修正内容としてとれるのであります。で、選挙制度調査会答申ということは御承知でありますように、これは非常に厳格な一人一区制であります。一つの例外もないほどの一人一区制のものでありますから、これを小選挙区制を可なりとして、その基礎観念のもとに全国を四百大十七区の選挙区に割ったものでありますこともこれは疑いがありませんので、そういうこともからみ合せて考えますと、その意味において内容はきまっておるものであると私は了解していると、かように申し上げたのであります。
  65. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これは坂さんにお尋ねいたしましても、まあ立場上どうかと思うのですけれども、いろいろ審議しているうちに修正案ということは、結局小選挙区の区割というものがなくなってしまって、要するに選挙画定委員会を設置するというだけの法律になってしまった、そういう修正になってしまった。そうするとここのところは多少意見が違いますけれどもいっそもうあの案というものは廃案なり、あるいは撤回してしまって、衆議院選挙画定委員会設置という法律だけを作ったらよかったのじゃないかというような議論もいろいろ出ております。で、修正案法律体裁からいってわれわれとしてもあまり感心しない、こういうふうに考えておるのですが、まあ坂さんは法律を作るという点からはちょっと立場が違っておりますけれども、外から見た感じは、修正案法律体裁上いいとか悪いとかというような感じはどんなふうにお考えでございますか。
  66. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 私は外から見ておりましてああいう修正案は大へんすっきりしないものだと思いました。ずいぶん妙な格好になったなあという感じを持ちました。それは私どもの知らないいろいろな複雑ないきさつもあるので新聞紙上等で拝見する程度でもずいぶんいきさつがありまして、ああいうふうになったのでありますから、そう簡単にすっきりしたもののようにはできなかったのだろう、こういうふうに私は了解しております。
  67. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一つ坂さんにお伺いいたします。何かこう政局の安定ということについて、民主主義のワクという条件がありますけれども、非常に強力な安定性のある政権あるいは内閣ということをお考えになっていらっしゃる。どうもちょっと聞き方によっては安定政権というよりは固定政権と申しますか、あるいは恒久政権と申しますか、あるいは強力政権と申しますか、そういったようなことをお考えになっていらっして、政局の安定は小選挙区制の採用からというお考えになっておるのじゃないかと思って非常に心配するのです。まあしかしそれには民主主義のワクという前提がございますから、私どももそう心配しなくてもいいと思いますけれども、ただ安定政権ということは強力政権であって、固定政権であってあるいは恒久化するような政権であってはならないと私は考える。この点いかがですか。
  68. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 全く御同感でありまして、私は一つ政党が永久に政権を握っておるということは民主主義としては許されないことと考えます。従って安定と申しましたことは、非常に数の似通った党派がありましてちょっとした欠席とかいろいろな関係で決議がどうなるかわからぬとか、あるいは非常に政党が分裂していまして、たとえばフランスを連想するようなすぐにもがらがら崩れるというようなものでは何一つできないから、少し安定性あるしっかりした政党ができまして、相当の期間やってもらわなければ日本を建て直すには困る、しかしそれはいつまでも同じ政権であるということはむしろ許されないことだと私は考えております。
  69. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 正木さんにお伺いいたしますが、どうも私どもも小選挙区になりますと個人の点でAよりもBの方がいい、しかし政党の方ではBよりもAがいいといったような判断によりまして、どうしても立候補しております二人あるいは三人の立候補者に対して投票できないというようなことが起ってくるのじゃないか。そういう場合にはやはり相当広い選挙区で三人、四人立ってそのうちから自由の意思によって選択し、その人に投票するということの方がまあ妥当のように考えられますが、先生のおっしゃる二党に納得ができない場合には、第三党的な立場に立つ候補者に入れる、あるいは入れたくなるという場合の第三党的な立場というものはどういうことをお考えになっておるか。
  70. 正木昊

    公述人(正木昊君) それは松澤委員のおっしゃった前の個人のことと二つ申し上げたわけなんでありますが、政党の場合におきましても、必ずしもいつも旗幟鮮明であるのが実態ではなくあいまいの方が多いのじゃないか。そういうのが実態であって、それを国民としてどっちかにしなければならぬということもかえって不自然であって、そういうような場合にもっと理想に近いものが出る場合、これだこれだというような意味におきまして、次の時代をになうと言ったのは、少数がいつまでも少数でないという場合があるから、選挙の地盤は広くしなければいけないというのと、それからもう一つ人間の面があります。甲の政党の掲げるところはいいが人物が非常にボス的であるとか、あるいは背徳的であるというような場合、やはり国民としてはそういうものを自分の所から出したくないという結果、その同じ派の人がもっと出てくれて、あの男はいやだけれども同じ党の中でもこちらの方の人を選挙しよう、そういう人が多くなりますと前に大臣をしたとか何とかいう経歴の人でも落ちてくる。これを非常にこの改正案ではおそれておるようでありますけれども、それはむしろ新陳代謝が行われて政党自体が若返る、あるいは正義化していく、そういう意味で、私はこの法案はそれと逆行するものである。そういう意味で申し上げたのでありますが、その点松澤さんと何か意見の相違があるのでしょうか。
  71. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 意見の相違があるというわけではないのですが、私はまあ二大政党対立とか小選挙区ということになれば、Aを選ぶかBを選ぶかそのいずれも選ばなければ、先生は政治的、道義的な第三党という言葉をお使いになりましたが、私が心配するのはAでもない、Bでもないという場合には結局棄権をしてしまって、それで政治的な発言もしなければ、政治的な期待も持たないし、政治的な無関心という状態になりはしないかということを考えまして、私どもはもちろん御承知のように中選挙区の立場をとっております、比例代表、大選挙区の立場をとっておりますけれども、少くとも現状維持の立場をとっておりますから、その方が棄権をしたり、あるいはまたは政治的な無関心になるようなことがないと考える、これは意見ですけれども。ということで、私は候補者も多いし、定員も多いということの方が、政治的な信頼性も多くなってくるのじゃないかということを考えます。先生は多少お考えが違うのか、第三党というような言葉を言われましたので、その第三党という意味が多少気になりますものですから、お伺いしたわけなんです。
  72. 正木昊

    公述人(正木昊君) もちろん私の申したのは、人がない場合には今度は冷淡になり棄権するということは申し上げなかったけれども同じ意味であります。
  73. 森下政一

    ○森下政一君 坂先生にちょっと伺います。今度できる選挙画定委員会ですね、これは私どもは原案についておりました別表とは全く趣きの違うものを作るだろうと思いますので、確かに一つの進歩だと考えております。ところで法文にも出ておりますように、大体選挙制度調査会答申案というものを尊重し、というふうにあるのですね、画定委員会がきめるのは、その尊重してというのは。先ほどちょっと御意見もあったようですが、どの程度のことを尊重ということに解釈しておいでになるのですか、その御見解を一ぺんただしたいと思います。
  74. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) それは非常にむずかしい御質問でありまして、私もそう立ち入って御返事ができないのでありますが、私の解釈を申し上げますならば、尊重していくというのでありますから、あの中で悪いところがあれば変えるのは当然であると思います。変えることを正しとする理由のあるものはそれは変えるでありましょう。ありましょうけれども、特に変えなければならぬ理由のないものは変えない、その変えないという程度が非常に強いものであると私はまあ了解しております。しかしそれは議会内のいろいろ御意見等がどうなっておるか、それは私どもにはわかりませんけれども、私はそう解釈しておるのであります。
  75. 森下政一

    ○森下政一君 選挙制度調査会委員であられた関係で、選挙制度調査会答申しました区画の原案というものに対してはそう無理のないものだ、そう変えなければならぬようなものは多くないのだというふうな見解をお持ちじゃないでしょうか。
  76. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) いや、その点は私も選挙制度調査会のあの案がそう完全なものじゃないだろうと思っております。それはいろいろまだ、あのときはずいぶん小委員会で研究いたしましたけれども、しかし全国のことを急いでやったことでありますから、なお再検討の余地がないとは言い切れないと思います。完全でないと思います。先ほどもちょっと申し上げましたように、これは私個人意見にすぎませんけれども、二人区などは例をあげますと、札幌であるとか仙台であるとか、そういう所は私は二人区の方がいいと思っております。ああいう所は二つに分けるのは無理じゃないか、無理に分ける必要はない。あれは一つの行政区画で、四十万前後でちょうど人口も都合のいい所で、しいて一人区という形にこだわらないで二人区にした方がいいじゃないかと、私は事務的と申しますか、何も政党的な立場でなくそう考えております。当時も委員としてはそう考えておったのでありますが、これは多数できめることでありますし、また二人区を作りますとやはりどこまでいってもきりがないという心配がありますから、従って委員会としては一人一区という原則を相当強く押し出す必要があると考えられたものと思います。私は若干二十や三十、二人区があっても差しつかえないじゃないかと思っております。これは私の個人意見であります。
  77. 森下政一

    ○森下政一君 選挙制度調査会答申案というものが全く完全なもので、どこも手を入れる必要がない、これはだれしもそうは思わぬだろうと思います。実際に地形その他を睨み合せてみると少し無理があるのじゃないか、むしろ改めた方がいいのじゃないかというふうな公正に考えてそういうものもあるだろうと私は思う。ところが衆議院修正されますまでの小選挙区法の原案に対して、衆議院委員会でいろいろな質疑があったのに対して、太田自治庁長官の選挙制度調査会答申案を大いに尊重しているのだという答弁の中には、四百九十七という区画の中で二百六十は全然答申案に手をつけていないということをあげて、答申案を尊重しているゆえんのものだというような説明があったのですが、どうもそれは私は納得ができないのですね。二百六十は手をつけていないから尊重したと言われても、物事というものはやはりおのずから限度があると思うのですが、魂が一体どこにあるのだということで考えて、自民党に都合がいいような修正が行われたとすれば、たとえ二百六十は選挙制度調査会答申そのままのものであっても、やはり尊重しているとは言えぬと私は思うのでございますが、そういうふうにお考えにならぬでしょうか。
  78. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 自治庁長官が議会で御答弁になったことの批判はちょっと差し控えたいと思いますけれども、私も率直に申し上げますと、新聞に出ておりました、今お述べになったことが。二百六十ですか、二百六十はそのままだから、大いに尊重しているのだと言われたように新聞に書いてありまして、まあ、多少疑問はあるなと思いました。あなたが持たれた瞬間と同感の感じは私も持ちました。
  79. 加瀬完

    ○加瀬完君 坂先生に今、森下委員の質問をいたしました点について伺いたいのでありますが、理論的には確かに第三者によって選挙画定委員会というものが持たれるということは筋の通った話でございます。しかしこの修正案に出ております選挙画定委員会は、衆議院議長が推薦する学識経験者が二人、国立国会図書館長、中央、都道府県、市、町村の各選挙管理委員会の代表一名ずつということになっております。衆議院議長が推薦する学識経験者二人というのは、当然これは区割について相当な識見を持っている学識経験者という意味に解して、いわば区割についての専門家と推定できます。しかし、あと国立国会図書館長は第三者という意味ははっきりいたしておりますけれども、これは区割決定の専門家であるという認定は私は下せないと思う。その他の委員もそれぞれの選挙事務については一応専門家であることはわかりますけれども、全国をまんべんなく公平に区割をしていくという技術については専門家であるという認定は私は下せないと思う。こういう構成で区割委員会というものができましても、この構成による区割委員会に上りまして正しい区割というものが作られるということは、これは予想する方が無理ではないかと思う。そうしますといずれにいたしましても、一応選挙制度調査会の案というものを尊重することになっておりますけれども、尊重するということには幾分か変更をする権限もあるわけでございますから、どの点を尊重してどの点を新しいものに作り変えるかということは、選挙画定委員会の事務局に当るようなところで実際は作業が進められるということになるのじゃないか。この事務局というものは当然新しくまた第三者によって構成されるということではなくて、自治庁の選挙部なりあるいはこれに類するような形でできるだろうことが想像されますから、これはどうしても今度の区割答申が与党あるいは政府によりまして改変されたような経過を、大小深浅の差はあってももう一回たどる危険性は私は当然あると思う。だから理論的には、選挙画定委員会というものが作られてこれで区割がきめられるということは筋の通った話でありますけれども、実際の作業になりますと、選挙制度調査会答申政府原案の間にいろいろの確執のようなことを、またどうしても繰り返さざるを得ないじゃないかという危険を私は感ずるわけであります。午前中の公述をなさいました方の御意見の中に、前提条件が非常に未熟であるという御説明がありましたが、この区割委員会によりまして区割をきめるにしては、現在の政党関係、あるいは選挙事務の技術というものが、そういう意味合いにおける前提条件が、やはり未熟であるというふうに私は考えるのでございますが、先生は、この選挙画定委員会が七人によって構成されましたならば、相当期待の持てる区割ができるというように御想像なさっていらっしゃるのでございましょうか。この点をまず伺います。
  80. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) その七人の中立性を持った人からできる委員会ができたということは、一つの注目すべき事実のように考えていいと申し上げたのであります。で、その中立性と申しますことは、私は、国会方々が不公平なことをされるということを申すのじゃありませんけれども、直接国会で議席を持っておられる方が加わらないで、まあそれ以外の人にその決定権をまかすという思い切った態度をとっておられるようにみえるのでありまして、これは相当の決心であろうと私には考えられるということをまあ申し上げたのであります。その七人の構成員が適当であるか、さらにそれ以外にもっと適当な人があるかということになりますと、これは私はまだ判断がつきません。おそらくいろいろ研究された結果、ああいうのになったのだろうと思いますけれども、それ以外にあるかないかちょっとはなはだむずかしいのじゃないかと思いますけれども、しかし、ないということを断定して申すのもそれはどうかと思いますので、その点はその程度で御了承願いたいと思います。  それから、それによって正しいものが行われるか、全国のことをみな一々知っておるわけじゃなかろうと、こういう御質問でありましたが、全国のことを知っておらないでありましょう、それは。しかし全国のことを知っておる人はまたなかなかおりませんのですから、これは比較的の問題で、まあそれぞれの立場に、中央選挙管理委員会委員長さんですか、あるいは各都道府県、市町村の選管の代表の方々が加わるのでありますから、これはむろん至公至正であります。むろん人間でありますから、考えの足りないこともありましょうし、誤まりのないということも期しがたいでありましょうけれども、心持としては至公至平に職務に当られると私は信じたいのであります。
  81. 加瀬完

    ○加瀬完君 その、先生のおっしゃるように、私はこの七人委員会が公平であるということは私も同感であります。しかし公平であっても、区割というものは、一応の事情に精通しておる上に区割技術というものが相当むずかしいものがあると思うのです。そういうものにたんのういたしませんと、選挙画定委員会というものが公平な立場でやろうといたしましても、結局問題の解決というのが困難になってくるのじゃないか。そこで区割委員会というものを作るということは認めるとしても、こういう構成で作られては結局において区割ができないような委員会になってしまうのじゃないか。そうすると、それは結局事務局にたよらざるを得ないと、事務局は政府の支配下にあると、これではやっぱり政府与党に都合のいいような区割というものがまだまだ生まれてくるところの危険というものがあると、こういうふうなことを感ずるわけでございますが、先生はこういうたとえば図書館長とか、あるいは市の選挙管理委員会を代表する人、こういうふうな構成によりまする区割委員会によりまして、国民の期待するような、今度の原案に対しまして国民が反撃をいたしましたような、あの不平というものを解消されるような区割がこれでできると、こう御確信でございましょうか。
  82. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 立ち入ったことは存じませんが、衆議院であれほどやかましい問題になりましたのは、まあ選挙制度調査会答申と違った区割改正案が出まして、それがまあいろんな好ましくない動機からきているのじゃないかと、こういう想像その他が起りましてあれほどやかましい問題になったと思います。私もあの起草委員の一人なんでありますが、選挙制度調査会でもずいぶん悪口を言われたんであります。これは主として革新系の人から言われたのでありますが、お前らは政府の言うことを聞いて勝手な案を作っているんだろうというような意味の、ずいぶん激しい非難を受けましたのでありますが、これは若干まあ誤解せられている点があるのでありまして、そういうことはありませんでした。むろんだれか、事務的、機械的に、地図に色をつけるとか、数字の計算をするとか、交通関係はどうなっておるとか調べてくれということをやる人がいなくちゃできません。七人だけでやれといったってできっこありません。そういう補助機関の人たちはどうしても要ると思います。それは自治庁の人がやるのでありますか、だれがやるんでありますか、そういう人がいなくてはなりません。それについていろいろ作為がなされるであろうという御想像がされるでありましょうし、その御想像も全然理由がないとは存じませんが、それまで考えますれば何ごともできないのでありますから、それは七人の委員の識見と腹のすえ方の問題でありますから、実際はそれほどひどいことにはならぬと私は存じます。
  83. 加瀬完

    ○加瀬完君 それからもう一つ伺いたいのでありますが、いろいろ午前中から先生方の御公述の、特に小選挙区に賛成なされる方の御意見の基本的なものは、安定政権とかあるいはまた二大政党の対立というようなことをお述べになっておられるわけでございます、で政権の安定されることを希望しない者はだれもないと思うのでありますが、安定されたる政権の前提といたしましては、かりに小選挙区をとるといたしましても、その小選挙区がいずれの党にも選挙の公正ということを確保されておらなければならないと思う。これは特に法律専門家の正木先生、坂先生でありますから伺いたいのでありますが、昨日も私は政府に対してこの点を質問したのでございますが、じゃ選挙の腐敗の最たる原因は何であるかと申しますと、やっぱり問題は選挙資金がどういうふうに集められ、どういうふうに散っていくかという選挙資金の問題に大きな原因があると思う。で、その選挙資金といいますか政治資金といいますか、こういうものに対しましては世論も相当きびしいのでありますが、今度は選挙制度調査会答申が具体的でないということを理由に、これをあと回しにされております。選挙資金の規正といったような問題に十二分な対策を立てませんで、修正案の通りで区割なら区割というものが作られ、小選挙区制によりまして小選挙区制の選挙というものが行われましたときに、果して選挙の公正というものはそれだけで野放し状態でできるであろうか。小選挙区であればあるほど競争が激甚になりますので、対立が激しくなりますので、私は、選挙の公正を期する上からも、選挙資金の規正につきましては特に対策というものが立てらるべきである、という立場をとるものでございまして、この点は法律専門の両先生はどのようにお考えになりますか、御意見を承わりたいと思います。
  84. 正木昊

    公述人(正木昊君) おっしゃる通りだと思います。そうして先ほど申したように、この法案並びに前からあるものを踏襲する公職選挙法にも抜け穴がありますし、今度、顔の範囲、それから比較的小さな地域における利益、利益も公けの利益というよりは半ば私的の利益が介入する余地が非常に多くなって腐敗を強める。今日でもこの腐敗に対する摘発その他が非常にいろいろな点から微弱であって、国民がその点からも政治に絶望しておるのに、その絶望を直す方向に向わないで、むしろそれを苛烈ならしめるような方向に向う。この法案は私が申し上げましたように、非常に危険性をはらんでいると私は思っております。
  85. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 抽象的な考え方としましてはお考えの点にごもっとものところは十分あると思います。結局は具体的にどうするかという具体の案があるかどうかということになると思います。政党の台所をどうするかと、それを法律できめていく問題でありますので、私も実は昨年言いつけられましてイギリスの総選挙を見に行けということで、イギリスに参りましてそのときに政党の本部にも参りまして聞いたのでありますが、向うでもなかなか台所のことは言いません。それから規則もそうきちんとしたものはないようであります。これはイギリスがそうだからどうだというわけではございませんけれども、やはり台所の問題でありますから、そうきちんとゆきにくい事情があるように聞き取れました。わが国におきましても何かそれよりうまい案があればけっこうと思いますが、これは具体案の問題ではないか、こう考えております。
  86. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは意見を申し上げるようで恐縮でございますが、具体案があるかないかということの前に、公正なる選挙をする基礎的な条件として、政治資金の問題を解決しなければならない、こういう立場というものが私はあるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。いろいろ自治庁関係の御説明によりましても、イギリスにおきましては、アメリカにおきましてはということで、政治資金というものがそれほどやかましくないのだ、日本におきまして政治資金だけをそう急に取り上げて対策を立てるという必要もあるまい、こう言外にそういう意味の御説明がたびたび繰り返されたわけでございますが、日本の政治特に日本の選挙事情といいますか、選挙の現実というものを見て参りますときに、アメリカにおいてもイギリスにおいても、こんなに選挙たびごとに、違反件数あるいは腐敗選挙の対象となるべきような事件の多いということもまたないと思うのであります。この現実現象というものに対しまして、一体政治資金というふうなものに対策を立てないで、小選挙区制における公正なる選挙というのが期し得られるというふうには私たちには考えられないのであります。選挙制度調査会においても、やはり私が今、申し上げておったような基本的な立場にあるように思われるのであります。この修正案が通過をすれば、直ちにこれから近い将来に発効するということでございますならば、これがあとに譲られぬということも考えられるわけでございますが、一年数カ月の後でなければこの修正案の実効は生じないわけでございますから、そうであるならば、もっと今、私が申し述べたような点にも十二分の対策を立てて、単に選挙画定委員会の設置法みたいなものではない、ほんとうの意味選挙法というもので打ち出されることの方が適当ではないか、こういうふうにも考えるのでございますが、坂先生いかがでございましょうか。ただ具体的にどうということでなくて、根本的に政治資金というものに対して、これは対策を立てていかなければ公正選挙というものは期し得られないと私は考えますが、先生の御所見また重ねて承わりたいと思います。
  87. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 選挙が公明にならなければならぬということは全くもうお説の通りと思いますが、それはいろいろの原因からこなければならぬのでありまして、政治資金の規正ということも、その一つの大切なものであるには違いありません。ただ政治資金規正だけがその腐敗の原因とのみ考えがたいと思うのでありますが、そこで今具体案の問題だということを申し上げたのでありますが、私は実は立ち入った研究をしたこともございませんけれども、私はただ常識的にこう考えてみましても、また政党の台所はどうなっておるかということをよく存じませんけれども、現実に即してあまり無理がなくて、しかも相当効果のあるような案を立てるということは、これは実際は相当むずかしいのじゃないだろうかと、こう考えております。そう言いますと、そんなこと言うて逃げるのだろうということになるのでありますが、逃げる逃げぬではなくて、実際問題として非常にむずかしいのじゃないか。しかし、それができなければ小選挙区制をやらないということになると、私はそうは考えないのでありまして、小選挙区実施に伴いましてその点が解決され得られるならば好ましいに違いありません。違いありませんが、それがたとえできなくても、やはり小選挙区制は他の理由によってやるべきではないかというのが私の考えであります。
  88. 加瀬完

    ○加瀬完君 正木先生にお尋ねを申し上げるわけでございますが、先ほど先生の御説明の中にも、法文上に一見いたしましても非常に欠陥が多い。特に少数党に対します制圧の不公正、不適切な点があるという御指摘がございました。そのほか単に少数党に対する制圧だけでなく、私どもの調べましたところでは、個人の権威をも侵害するのじゃないかと思われるような点をも私どもは発見をするわけでございます。小選挙区制になりますと、これはだれしもが言うように選挙が激烈になって参ります。表面には今は浮び上っておりませんけれども、警察法が改正されまして国家権力の警察というものが強くなりましてから、選挙に対する干渉というものも巧妙な方法で非常に強く現われておると、私どもは判断をいたすのでございます。今度の小選挙区制というふうな形で、安定政権を得るために一方に非常に有利に働いて、そのために警察権があらゆる形で、警察権とのみは申しません、いわゆる旧来の選挙の弊で言うならば、官憲の権力というものが他方にマイナス的な支配をして参るというようなことが憂えられておりますが、この点先生はどのようにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  89. 正木昊

    公述人(正木昊君) それは私、同感で憂うるところですが、二十分でございますからこまかくは申し上げませんでしたけれども、いわゆる地方におけるボスという言葉は変な言葉ですが、そういう顔役の演ずる範囲が非常に強化される。いわゆる顔役というのは、いつも警察とは腹と腹で了解を持っている人たちであります。これは法律の表面にはありませんが、日本の実情はさようなものと私の過去三十年間の法律事務によってよく知っております。  それからなお基本的人権の問題に関しまして先ほどちょっと申し上げましたが、改正案の二百一条の三の4というような所にもその疑問の点があります。それはその中で、当該政党その他の政治団体が公認候補者を有する選挙区における当該公認候補者以外の候補者推薦し、又は支持してはならない。」というようなものも、これは憲法十九条の良心の問題というものとある場合にはぶっつかってくるのであって、こういうことは党規によってやるべきであって、そのために、個人の良心の方がいつも自己に責任を持ち、社会に責任を持ち、命をかけるものでありますからして、党というよりも、ある場合には個人の良心の方が強いことがあり得るのであって、それによって人類の文化が推進されてゆくというような歴史的な事実から見ましても、この法案の中には、そういう点に対する考慮が足りない。まだ探せばたくさんあるのじゃないかと思いますけれども、早急の指名だったものですから十分検討できなかったのですが、ちょっと見ましてもそういう点が考えられるのでありまして、少くとも小選挙区の法案としても非常な未熟であって、これを早急に出すということは非常な危険を持っていると私は感じております。
  90. 加瀬完

    ○加瀬完君 坂先生は選挙制度調査会委員でもあったと承わりましたので伺うのでございますが、先ほど午前中に公述した先生方の御意見でも、あるいはただいま正木先生の御意見の中にも、こういうような小選挙区制というふうな根本的な選挙制度というものを改革するというのであるならば、これは一応国民に信を問うて、しかる後に行うべきじゃないかという御意見がありまして、これはやはり一般世論の方向もこういう点に決着をみていると思います。そこで選挙制度調査会の中の空気といたしましては、選挙制度調査会でありますから、いろいろの政府の諮問に応じて優秀な答申を作る、それはもっともでございます。しかしながら答申されたものが実際に法律となって施行されるについては、その間に一度小選挙区というものを政府国民に問うて、小選挙区なら小選挙区というものによって、小選挙区をしていいかどうかということを国民に問うてみて、そういう国民に約束をするという一つの階段のあとに小選挙区制というものを出すべきではないかといったような、小選挙区法そのものの提出についての何か御意見調査会そのものの中にはなかったでございましょうか。
  91. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) ちょっと、記憶が間違っておるといけないのでありますが、そういう意見もあったかもしれません。ちょっと記憶がはっきりしません。しかし、多数の人はそうしろという決議をしたようなことはむろんございませんけれども、そういう意味の発言をされた方はあったかもしれません。それははっきりしません。
  92. 加瀬完

    ○加瀬完君 私がこういうことを伺いますのは、選挙制度調査会の最後の結論というものは、私どもが新聞で拝見いたしております通りでございましたならば、相当混乱のうちに結論が打ち出されるというふうな過程を通ったと思うのです。もしも十二分に審議を尽して、政府がこの答申を実行するに時期をかすというならば、ああいう混雑というものは起らなかったのではないか、あるいはより優秀な答申というものが生まれたのじゃないか。こういうふうな点が私としては想像をされますので、伺ったようなわけでございます。そこで、また七人委員会に戻りますが、七人委員会区割をきめるということになりますと、またその区割の原案というようなものは選挙制度調査会というところに戻るわけでございます。先生の御経験では、あのような人員構成の選挙制度調査会でも甲論乙駁、なかなか結論が得にくかった、それを背景にして出されたものも政府はにべもなくけった、しかるに、今度区割委員会ができたからといって、その答申案を受けついで、区割委員会がかりに決定したといたしましても、現在の政党において、やすやすとその区割委員会の決定の区割というものが受け入れられるという状態にあると御判断でございましょうか。
  93. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) それは、私にはわかりません。その判断は非常にむずかしいので。私は、政治のことはわからんのでありますから。
  94. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 正木先生にお伺いしますが、小選挙区制の法案が実施されますと、少くともわが国議会政治に大きな変革が起ると思う次第であります。そういう点から私たちは、政府が言われているように、政局安定という表面上の理由だけでなしに、先に正木先生が言われたように、その提案の動機、奥の奥にあるものをやっぱり見抜いて、そして小選挙区の本質論に立ってやはりこの可否を、わが国議会政治を擁護して、そして民主主義を守り、日本の独立と平和を守るために役立つかどうかという根本にさかのぼって、この是非を判断しなければならぬと思うので、私たちとしましては、ただいま正木先生が言われましたように、これは政府は、政局の安定という美名のもとに、自民党政府は今は多数だが、いつまでもそれは続かぬ。しかし、何とかしてこれを恒久化したい。さらにまた、三分の二を取って、憲法も改正したいというような意図だというふうに理解をして、そういう点では正木先生とほとんど変りない、私、日本社会党ですが、持っているのですが、われわれの党員もそういうふうに理解しているのですが、正木先生が広く市民大衆に接触されて、この小選挙区制と今の政府を構成する自民党の恒久化、憲法改正というようなことが一連の関係にあるということがどの程度理解されているのでしょうか。われわれとしては、政府が解散をして、小選挙区法の是非を問わぬ限りは、そういう形でも正しい世論の動向を見ることが必要だと思うんですが、この小選挙法案と今の内閣の恒久化、憲法改正というような一連の関連性についての一般の下々の市民大衆の理解の程度はどうなんでしょうか。
  95. 正木昊

    公述人(正木昊君) 先ほど時間的な関係上、ごく簡単に、李承晩を見よと言ったのはそのことでありまして、今の青年層の犯罪、それからあの太陽民族と申しますか、ああいったような身辺の享楽に走るというような傾向は、国民が大きな、政治を含むところの公共生活への壁に突き当って、絶望的の感じから来ているんであって、そういうことをやりますと、日本自体が朝鮮化するような感じをおそらく持っているんですね、少しも国民は明るくならない。で、国自体のいろいろな環境からくる不便すらも政治の悪ということに一元的に考えて、非常に堕落するか、または暴力的なものになるか、どっちかに追い詰められていく傾向があると思います。ことに戦後の青年たちは、昔の青年と違った、生死に対して恐怖必を持っていない。昔のわれわれの子供のときには、とにかくお上は偉かったし、刑罰はこわかったが、今の青年たちはもっと、デスパレートといいますか、とにかく何といいますか、命をかけて実行的にすぐ即座にやる、衝動的に非常になっておるんであって、これに対して、そういったような政治一つのトリックを用いまして、手段を用いて押え込みをやる、寝わざでとにかく立ち上らないうちに押えて、口に手を当ててやっつけてしまうというような気配を国民はみんな、えらい方々の説明にもかかわらず感じとっておりますから、これが非常な危険をはらんでおると、私はむしろ心配しておるのであります。
  96. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 清水先生にお伺いしますが、小選挙区制の母国ともいわれるイギリス等の視察にかんがみまして、わが国は今こそこの小選挙区制を実施すべきだということで、本質的な問題についての御懸念はないようでございますが、しかし、小選挙区制が実施されて、これがスムースにいくためには、やはり国民を構成するものの利害の一致、利害の共通ということが非常に大きな前提になるので、イギリスとアメリカに行われているから、今、日本に行なって、直ちにイギリスやアメリカのように政局安定の効果を発揮するかどうかは、私疑問に思うのです。イギリスは、戦後におきましては、広大な植民地をそれぞれドミニオンとして、自治領として解放いたしました。しかし、広範な植民地搾取の上に立った、かなり裕福な経済を持っているし、さらにアメリカは世界一のたくさんの資源を持ち、資本主義も、いろんな矛盾を含みながら安定した上昇的な傾向があり、こういう所では、私、やはり小選挙区制が実施されて、しかもその両政党というものがイギリスにおける保守党と労働党、アメリカにおける共和党と民主党との差が非常に少くて、そして二大政党が対立しながら政権授受がスムースにやれるというようなことができると思うのですが、日本の今置かれている事情、特に政府からいただいた資料を見ましても、明治二十三年に国会が開設されて、そして選挙をやってから今日まで、計算してみますると六十八年ぐらいです。それで、小中大の選挙区制によって期限を見ると、大体小選挙区制が実施された期限は六、七年しかない、あとの六十数年というものは中選挙区、大選挙区というような、そういう選挙制度が行われた、そういうようなことからみて、しかもわが国は今敗戦国であります。米ソ両勢力の間にはさまれて、一方におきましてはアメリカとの関係を密接にやった方がいいという勢力、あるいは共産党のように、ソ連との関係をもっと緊密にやった方がいいという勢力、あるいは米ソ両勢力からもっと自主独立の政策をとった方がいいというような、国民の利害が非常にまだ調整されていない段階に、私は、この小選挙区制を行うことは、これまでの小選挙区制のもとで選挙をやったときには、大ていその政府与党、その小選挙区制をやった党が絶対過半数、圧倒的な多数を占めておるんです。そうなると、世界の平和的な傾向等からみて、日本をもっとアメリカから独立し、外国軍隊の撤退その他をやって独立することが要請される際に、これは必ずしも私は日本の政局を安定せぬじゃないかと思うんですが、その辺の呼吸はどうでしょうか。
  97. 清水徳太郎

    公述人清水徳太郎君) これは、私の作っておった案ですが、私の作っておった案では、社会党の幹部で落ちる人は一人もありませんでした。どうしてそんならこういうふうにできておるんだというたら、これは強いからです。社会党の幹部が強いから当選するんです。私の意見ですよ。それから何ですね、その案をまだるっこいとしてでしょうな、少し行きすぎたんですね、そういうことですな。私に作らせれば、社会党の幹部は腹の中では反対しない。しかしながら、陣がさの手前というか(笑声)一通り反対はしましょうがね。それからまた、天災地変で、どんなことで自由民主党が内閣を投げ出さなきゃならぬことはないとも限らない。そのときに、反対派に人材がおらなかったときには国家国民が迷惑です。非常に悩みます。そういうことは、国家のために憂うべきことだから——私の案はそうです。かつて私は、若い時代からやっておったものだから、三木武吉君の香川県ですが、矢野庄太郎といって、戦後の大蔵大臣になった男が、三土忠造さんの地盤に若い青年がおって、あの人が立てば三土さんは落されるから、視察に来てくれと言うので行きました。そうして視察した後に、その青年にも会いましたけれども——若い人にも会いました。それから矢野氏にいわく。浜口雄幸さんなき後に、四国一の人材は三土忠造じゃないか。その人を落す案に私は賛成できない。天下は回り持ちじゃないか、反対党といえども、人材がおらなかったら国家のために困る、私は賛成できないといって帰ってきたんです。そうしたところが、そのうちに議会が始まりまして、牛なべつついておったところへ、三土忠造さんがはす向いで牛なべ注文して、私の顔をにやにや見ながら、清水君、この間君は選挙区へ行って何だそうだな、おれの地盤へ行ったという話じゃないか、あなたの耳に入りましたか、どんなことを言っておりましたか、清水はからだは小さいけれども大物じゃのう、(笑声)こう言っておりました。
  98. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ちょっと清水公述人に申し上げますが、なるべく質疑者の質問に、簡単明瞭にお答えを願いたいと存じます。
  99. 河野謙三

    ○河野謙三君 私は、簡単に一点だけ正木先生と坂先生にお聞きしますが、特に正米先生の先ほどのお話を伺いますと、大体小選挙制度には反対のように伺いましたが、今度われわれの手元に出ております制度以外の制度であっても、小選挙区そのものには全面的に反対なのか、その点を一つ伺いたいのです。  それからですね、なお、私がお尋ねいたします、私本人の気持を申し上げますと、私自身も数回の選挙の経験がありますが、日本の政治をよくするために、選挙制度の改革によって政治がよくなる部分というものは私は非常に少いと思う。制度よりも、国民の大衆の諸君にははなはだ失礼でありますけれども、国民の大衆の大部分と申しますか、まあ相当部分政治に対する意識が非常に低い。そこにすべての私は問題があると思うのです。そこにすべての問題の中心をぶつけていきませんと、私は選挙もよくならない。従って日本の政治もよくならない。こう思っているのです。で、それをごく小部分が解決されるでありましょうが、選挙制度そのものによって日本の政治がよくなる、かような期待をしておったなら、私は間違いだと思っておるのです。そういう意味合いにおいて坂先生は、今の選挙制度から小選挙区法に変ることによって、非常に大きく日本の政治というものが純化され、日本の政治というものが進歩する、こういうふうに思っておられるのかどうか、そういう意味で私は聞いているのです。従って、正木先生からは、小選挙区法がいけないなら、一体正木先生はどういうふうな制度にかえたらいいか、これを一つ貴重な御意見を御発表願いたい。同時に坂先生からも、非常にお忙しいところでありますけれども、この機会に、一つ日本の政治をよくするために、選挙制度はかくあるべきである。また、それ以外にどういうようにしたらいいか、選挙制度以外の問題でも、どういうふうにしたらいいかということについて私は伺いたい、こう思うのです。ただわれわれは、この立場におりまして批判だけしていても仕方ないのでありますから、具体的に一つ両先生から、いかなる具体案をもって臨んだらいいかということを一つお示し願いたい、こう思うのです。
  100. 正木昊

    公述人(正木昊君) きょうの公聴会は、この案がいいか悪いかというのであって、私自身の案を述べる機会ではないと思うのであります。従って私は、今この小選挙法案には大体反対ではなくて、絶対反対である。それは動機がいけない。目的も違っている、いけない。それから手段がいけないというのでいけないのであって、まずいけないときには、現状でもって、現状をよくやっていくというのでこの際はやるべきである。もし変えるような場合があったならば、国民に問うてやったらいいので、そこまでのことを申し上げたので、私自身がどういう理想案を持っているかということは申し上げない——ここでは大へんなことになります。非常に紛糾いたしますから、それはお許し願った方がいいのじゃないか。とにかく現在の中選挙区の方が、腐敗その他の点におきまして、また国民政治に対する懸念からいきまして、現状の方がまだいい、現状の罰則を強化するというような点におきましては別でありますが、それを小選挙区にするというのは、選挙を腐敗させる方に導くというのであります。  それから、国民は低い低いとおっしゃいますが、国民が低いよりは、今の代議士諸君の中にはもっと低いのがあるということを私はつけ加えて申し上げます。
  101. 清水徳太郎

    公述人清水徳太郎君) 今、正木先生の発言に対して私は驚いたね。
  102. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 坂君に発言を許しております。(笑声)
  103. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) お尋ねの点がもし誤解があるといけませんが、私は小選挙区がよかろうということは、ちょっと申し上げましたように、今日は何と申しましても、まあ非常な時局でありますから、ちゃんと仕事ができるような政府ができなくちゃ困る。その意味において小選挙は役に立つということを申し上げたのであります。しかし小選挙になるからといって政治がやはり十分に純化され、きれいなものになるという意味には考えておりません。必ずしもそういうふうになるとは考えておりません。小選挙区になるからといって、選挙がきれいになるとか、政治がいわゆる正しい、倫理的な意味の正しさを加えてくるというような感じのようには思っておりません。私は悪くなるともそう思いません。それをやれば悪くなるという論も世の中にはあるようでありますけれども、そうは考えませんけれども、小選挙区にすれば、それが非常によくなるのだというふうには考えておりません。それから、それじゃ一体選挙の腐敗とか、間違った世の中になることをどうして直したらいいかというのは、これは非常にむずかしい問題でありますが、せんじつめますと、これは教育であると思います。制度を少々いじりましたところで、これは仰せになりましたように若干の効果はあるでありましょう。ある程度のものは期待できるのかもしれませんが、それは小さい部分でありまして、結局は世の中の人の自覚が進み、頭が改造されなければだめでありますが、社会教育なり、まあ学校教育なり、広い意味の教育、それ以外にまず方法はなかろう、もっと簡単に申しますと、物をもう少し合理的に判断する考え方が国民の間に養われなければだめだと、こう考えております。
  104. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 私、遅参をいたしまして、正木先生の御高説を聞き漏らしたのですが、先ほどの松澤さんのお話のときに出ましたが、その点につきまして正木先生に一つお尋ねいたしたいと思います。ということは、先ほどの御公述の中に、もっと道義的な第三党の出現をさえ望んでおる国民がある、こういうお話があったようでありますが、これは正木先生は肯定をしておいでになるのかどうかということが一点。私どもの見解では、せっかく二大政党ができて参りました今日、これを育成をして、保守党も革新政党もりっぱに育て上げるということが、私は国民の大事なことだと思うのですが、無論両党とも結成日なお浅いことでありますから、いろいろその中には足らざる点も多々あると思うのであります。そういう点があればこそ、国民といたしましては、これらの二大政党を育成をして、りっぱに育て上げて行くということが大事であろうと、かように私は確信をいたすのでありますが、この二大政党というものに対して、正木先生は、そういう二大政党も否定をなさろう、こういうお気持であるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  105. 正木昊

    公述人(正木昊君) 質問の要旨が非常に的確にはわかりませんけれども、私個人ばかりのことを言っておるのではなく、政治のこの絶望的な、そしてまた政治の業績の非常に悪い場合に、それを反省し、よくして行くということは、だれしも考えるのでありますが、またヨーロッパなんかで、これも実は政治学のことは知りませんけれども、ヨーロッパなんかはキリスト教社会党というような、社会主義政党というようなものもあるように聞いておりますが、そういったようなものが日本でも将来出てくることを押えつける必要はないのではないか。そういうことも私の頭にはあるのでありまして、今の二つはだめだから、今度第三党を作ると、私はそういう立場を固執して言ったのではなくて、もっと選挙法というものを、私ばかりでなくて、だれにも適用されるようなものを作る場合には、そういう余地を、国家の政治活動に弾力を与えておく方がよろしいのではないか、こういう意味で、私は個人の問題は申し上げませんです。信頼するかどうかということは……。
  106. 河野謙三

    ○河野謙三君 ちょっと私さっき質問が途中だったので……。正木先生に重ねてお願いしますがね。正木先生は、今度の法案は動機がいかぬ、いわゆるわれわれよく聞くところの、この制度の改正によって再軍備を意図しておるのだ、憲法改正を意図しておるのだ、その他社会党に圧力を加えるための小選挙区法である、そういう意味合いから動機がいけない、こういうふうに伺ったのですが、そうしますと、この動機さえよければ小選挙区法においてもとるべき点があると、こうおっしゃるのか。それは小選挙区法というものを、他の角度から考えても、現在の中選挙制度には劣っておる、こういう御見解なのか、これを私は伺いたいのです。
  107. 正木昊

    公述人(正木昊君) 私は動機が悪いからいけないというふうに申し上げたのでなくて、さっき段階を作りまして、動機、目的、それから手段と、それからその次に、まだ最後にと申し上げたのであって、その動機だけどうというのではありません。ことに動機は、これはなかなか立証困難でありまして、(笑声)これは非常に逃げられるのでありますから、あまり……、小さく申したのであります。これは肌で感ずるのであると言っておいたのでありまして、これが私のよってもって反対すべき理由ではない。私どもの感じておる道義というものは、ちょっとつかみどころがなくて、ちょっとあるものですから、道義感には……。しかしつかみどころはないが、しかし国民の道義感に非常にショックを与えておるということを、一市民として代弁したいような気持であります。
  108. 河野謙三

    ○河野謙三君 私はちょっと立場を申しておきますがね。こちら側におりますけれども、私は自由党じゃないのです。従って今度の制度がいいとか、悪いとか、まだ結論は出ていないのです。出ていない。本日のような参考人の方に、もっと専門的な立場から御見解を伺って、今後の判断の材料にしたい、こういう意味でお尋ねしておるのですから、その点を御了解を願います。従って私は先ほどお伺いいたしましたが、御遠慮なすっておられましたが、何か正木先生の経験から言ってですよ、選挙制というものは、現在の国民政治的意識から行けば、この辺のところがいいだろうというような、何かのものをお持ちになっているはずだと思うのです。これをお伺いすることは、本日御出席願いました、私は当委員会の皆さんにつながっている希望だと思うのですがね。この際、何か私のような迷える羊と申しますか、(笑声)こういう者に一つ示唆を与えていただきたいのでございますが、どうでございましょうか。
  109. 正木昊

    公述人(正木昊君) 私はですね、それを申し上げますと、だから私が反対したというふうに逆手を取られるおそれがあるので、ここでは申し上げないのです。ただここで今やるのがよくない、これはいじるべきでないという程度にしていただいて……、ありますけれども、それは皆さんも御迷惑であるし、私の説を思いついて、ちゃんと整頓してこられないで申し上げますと、非常に誤解を招きやすいし、四時ということにもなっておるのでありますからして、時間の関係からも不必要であるし、さか手を取られるおそれがありますと、ああいう意見だから反対したのだというふうに、今度はすぐ非常な危険を僕はこういう会議のやり方として感ずるものですから、その点はごめんをこうむりたい。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤喜一君 私には正木さんのおっしゃっていらっしゃることは、かなりよくわかるように思うのでありますけれども、つまり結論として言っておられますことは、現状というものが非常によくはないけれども、こういう法律案でそれがきまることは、少くともそれをより悪くするであろう、そういう意味でこういうことはやめた方がいい、今日御展開になった議論は、その範囲で物を言っておいでになるというふうに了解いたしますし、それから確かに先刻、国民の多数の人の気持が正確に政治に反映されないそのときに、たしかデスパレイトという言葉をお使いになりましたけれども、国民が非常にデスパレイトな気持になっておる。非常に、私にはおっしゃっておられることの意味は理解ができるように思うわけであります。そこでつまり、これを俗な言葉で言えば、政治というものが国民の気持と非常に離れてしまっておる、こういう現状として御紹介になったのであろうと思いますが、そういう、これは私がそのことに同意をするという意味ではございませんで、先生の御説明によるそういう現状において、国民の気持を政治に反映させる方法としての選挙というシステム、それから選挙の結果選ばれました立法府において支配をしておる多数決という原理、これは必ずしも現在その原理が非常に正しく、かつ賢く運用されておるということは、これは言えないかもしれないのですけれども、少くとも多数と少数との間の話し合いという経過を通じて一つの結論が出て行くという、そういうまあ制度、こういう選挙及び多数決という基盤に立っております議会制度というものが、正木さんの先刻描写されましたような現状、それを同意するわけではございませんが、そういう現状のもとで、そういう制度というものが、果して予期された効果をあげ得るものであるかどうか、その次に、そうやって選ばれました立法府において、そういう多数決というような原理を通じていろいろな立法がなされるわけでありますけれども、そうしてその立法の上に、いわゆる法治主義というもので国の政治なり、国民の営みが行われておるのでありますけれども、国民の意思を正確に反映し得ない立法府において作られた法律あるいは法治のシステムというものが国民の生活を支配しておるということであれば、国民は必ずしも、そうして与えられた法律のシステムに満足をしないかもしれない、そういうことはおそらく論理として言えるわけであります。従いまして、先生の描写されましたような現状が今の日本であるといたしますと、そういう社会において議会主義なり、法治主義なりというものは、果して非常に円滑に運営され得るものであろうか。もしかりにそうでないとするならば、どういう政治が最もこの正木さんの描写された社会において妥当であるとお考えになりますか。この点は今日御公述をお願いいたしました当面の問題ではないわけでございますけれども、先ほど公述人自身が、公述人としてそれにお触れになりましたので、それとの関連においてその点を承わっておきたい。もし御準備がなければけっこうでございますが、御準備がおありであれば御所見を伺いたいと思います。
  111. 正木昊

    公述人(正木昊君) ただいまの議会制度並びに法治主義ということを、何とかして今やって行かなければならないのだと思って、そっちの方に向けるという努力以外に私は知らないのであります。そうして、まだ憲法実施からわずかでありまして、新しい憲法になってその運用意味というようなことを、われわれも法律の実務家の一人として、一生懸命にそれが徹底するように今努力の最中でありまして、そちらの方へ国民を持って行くこと以外に、世界の一国民として立って行くこともできないし、人類としての進歩もないと私は固く信じておりますからして、そういう意味から、これに逆行し、また、これに絶望を与えるようなこの法案に賛成できないと、こう申したのであります。そういう意味であります。つまり何とかして持って行きたいというのであって、予言者のごとく、これができるとか、できないとか、日本国民はだめなんだとかいうふうには私判断しておりませんです。何とかしてやって行かなければならぬということで一ぱいでありまして、日本国民民主主義に適さないから、じゃ独裁でやれというような感じには私は至っておりません。
  112. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 坂先生にお伺いしますが、この小選挙区制の是否は別といたしまして、党利、党略なしでも、日本のような地勢的な条件、都市の形態、あるいは山岳重畳として非常に村落の多様性のような所では、本来一人一区を貫くことは非常に無理じゃないか、地域からいって区割をやるのは無理じゃないかということを考えるのですが、長い間内務省に御関係になって、この方面では全国的な視野に立っておられるのですが、日本の都市の形態、聚落の形態等からして、技術的にどうなんでしょう、あまり一人一区というような狭い区割を公平にやること自身が、すでに党利、党略なしでも無理じゃないかと思うのですが、そういうことはいかがなものでしょうか。
  113. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 都市と申しましても、このごろは御承知のように非常に合併をやりましたものですから、いわゆる市街地という感じとは非常に変っております。非常に農村部と申しますか、そういった色彩を含んでおります。非常に違っておりますから、お話を誤解しているといけませんが、違っていることは、むしろ小選挙区にした方がいいことになるのじゃないでしょうか。それは違ったものを大きな区域にまとめましても、いろいろ違った種類が混在するわけですから、これがもし分け得られるならば分けて、それぞれの産業経済その他が、特殊性を持って主張される地域になるということも一つ考え方として成り立つのじゃないでしょうか。  それから、先ほどちょっと申しましたように、大都会を割るということは、私はいろいろな意味でこれはまずいと思いますけれども、十万や十五万の市、あるいは三万、五万という市であれば、まわりのものとくっつけてやりましても必ずしもおかしいということでもない。鳥取などずいぶん作りにくいのでありまして、四つに分けるのにずいぶん苦労いたしましたが、大小不ぞろいのものでありまして、調査会などでも、決してよくできておりませんが、まあ御不満がたくさんあると思いますけれども、ああいう程度のものになりますけれども、まああれでも選挙区としては一応成り立つのじゃないかという、こういう感じを持っております。
  114. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 いや、ああいうものを、私の県だけでなしに、もっと大きい区に、二人区に分ければもっと矛盾が……、一方の地区が二十万、二十二万になり、一方の区は十三万になったりして、非常に県民が……、あの区割は実際は社会党に有利なんです。社会党には有利ですが、とにかく公平に見て非常に狭い区を、たとえば郡はできるだけ割らぬとか、町村は分轄しないというような、いろいろな前提条件をやられようとするために、かえって無理じゃないかというふうな印象を受けるのですけれども、もっと大きく二人区というようなことをやってしまえば、もっと二人区が公平にやれると考えているのでありますが、そうじゃないでしょうか。
  115. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) 二人区が、原則的になりますと、いわゆる小選挙区制のまだ大きな政治上のねらいがぼやけてくるのですから、お述べになったような点はあるかもしれませんけれども、それとのにらみ合せの問題になります。結局選挙区を作る場合に、あまりいろいろな条件というか、原則のようなものを作りますと、自己矛盾に入ってしまいまして、うまくいかぬことはお説の通りであります。大小不ぞろいは、これはよその国はどうだというわけには参りませんが、イギリスの選挙区でも三倍ぐらい人口のある選挙区もございますし、これはいろいろな事情である程度やむを得ないのじゃないか、こういう私は感じを持っております。
  116. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 選挙制度調査会区割委員会ができたわけですが、それに対するいろいろな働きかけということは、公平な区割には影響しなかったものでしょうか。内閣にできました選挙制度調査会、私も途中まで入っていましたが、その区割をする委員会に対して、いろいろな働きかけがあって影響されるというようなことはなかったものでしょうか、その点はどうなんでしょうか。
  117. 坂千秋

    公述人(坂千秋君) あれは御承知のように、小委員会ができまして、小委員会にさらに起草委員会というもっと小さい七人ぐらいのものを作りまして、それが原案を作りまして、それが小委員会も通り、総会も通った形になっておりますから、結局起草委員会でできたものでありますれば、これは人のことまでかれこれ代弁できませんけれども、それは世間で想像しているようなものはなかったと思います。私は少くとも、私のところに言ってきてもだめだということでこなかったのかもしれませんが、私の方は全然ございません。他の方のお話を聞きましても、それは世間でいうほどのことはないと私は確信をしております。
  118. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 他に御質疑はございませんか。……御発言もないようでありますので、質疑はこの程度で終ります。  公聴会を閉じるに当りまして、委員長から公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり種々有益な御意見を御開陳願いまして、まことにありがとうございました。当委員会といたしましては、今後の本法律案の審査に際しまして、各位の御意見を十分に参考といたして参りたいと存ずる次第でございます。ここに委員会を代表いたしまして、各位にお礼を申し上げます。  これにて公聴会は散会いたします。    午後三時四十三分散会