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1956-05-21 第24回国会 参議院 地方行政委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十一日(月曜日)    午前十一時二十一分開会   —————————————   委員異動 本日委員西郷吉之助君辞任につき、そ の補欠として佐野廣君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松岡 平市君    理事            伊能 芳雄君            宮澤 喜一君            森下 政一君            小林 武治君    委員            井村 徳二君            大谷 贇雄君            川村 松助君            佐野  廣君            堀  末治君            横川 信夫君           小笠原二三男君            加瀬  完君            近藤 信一君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            後藤 文夫君            野田 俊作君            鈴木  一君   衆議院議員            鈴木 直人君   国務大臣    国 務 大 臣 太田 正孝君   政府委員    自治政務次官  早川  崇君    自治庁次長   鈴木 俊一君    自治庁行政部長 小林與三次君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○地方自治法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○地方自治法の一部を改正する法律の  施行に伴う関係法律整理に関する  法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松岡平市

    委員長松岡平市君) これより開会いたします。  委員異動がありましたから、御報告申し上げます。本日付委員西郷吉之助君が辞任せられ、新たに佐野廣君が委員に任命せられました。   —————————————
  3. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 当委員会の今後の審議取扱い方については、昨夜及び今朝、再度にわたって委員長及び理事打合会を開き、慎重に協議いたしましたが、具体的な日程等については、各派の間に十分な意見一致を見るに至りませんでした。  なお、当委員会に付託せられました諸法案重要性にかんがみ、これ以上議事が遅滞することは許されぬと存じまするので、委員長委員長及び理事打合会会議経過を十分に参酌し、良識をもって今後の当委員会審議を進めて参ることに各理事各個の御了解を得ました。よって右御了承の上各委員の御協力を要望いたします。
  4. 松岡平市

    委員長松岡平市君) この際公聴会開会についてお諮りいたします。  公職選挙法の一部を改正する法律案(閣法第一三九号)につきまして、公聴会を開きたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 御異議ないと認めます。  公聴会開会の日時は、二十八日月曜日の午前十時といたしたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 御異議ないと認めます。  なお、公述人の数並びに人選につきましては、便宜委員長及び理事に御一任願うこととして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 御異議ないと認めます。  議長に、この旨の開会承認要求書を提出いたします。   —————————————
  8. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 次に、地方自治法の一部を改正する法律案地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案、以上両案を便宜一括して議題に供します。  地方自治法の一部を改正する法律案につきましては、衆議院において修正の上送付されておりますので、両案に対し質疑に入ります前に、まずこの衆議院修正にかかる部分につき説明を聴取いたします。  ただいま自治庁長官自治庁小林行政部長早川政務次官自治庁次長のほかに、衆議院議員鈴木直人君が出席いたしております。鈴木直人君。
  9. 鈴木直人

    衆議院議員鈴木直人君) 地方自治法の一部を改正する法律案に対し、衆議院において行われました修正の要旨について御説明申し上げます。  修正点は三点あります。  第一点は、政府原案では、第二百三条に一項を加えて議会の議員以外の非常勤職員に対する報酬は、勤務日数に応じて支給することとされておりますが、衆議院におきまして同項にただし書きを加えて、条例で特別の定めをすることにより例外を設けることができることに修正されたのであります。これは、非常勤職員に対する報酬日割計算とするという原則は堅持するが、勤務実情等特別の事情がある場合においては、特に条例をもって規定することにより勤務口数によらないで月額または年額によって報酬支給することができるものとし、地方公共団体が特定の職員について実情によって特別の取扱いをできるようにされたのであります。  第二点は、政府原案では、第二百四条第二項の改正地方公務員に対し支給される手当の種類を法定することになっておるのでありますが、今回国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案が衆、参議院通過いたしまして成立をいたし、国家公務員に対し新たに薪炭手当支給することになりましたので、これとの均衡上地方公務員に対しても薪炭手当支給することができるように措置されたものであります。しかして右の薪炭手当にかかる改正は、国家公務員に対して薪炭手当支給する改正法律施行される日から施行することといたしたのであります。  第三点は、地方自治法の一部を改正する法律昭和二十二年法律第百七十九号)の附則第三条を改正する修正であります。  昭和二十三年の地方自治法改正により、条例定める特に重要なる地方公共団体財産営造物について独占的な利益を与えるような処分または十年をこえる独占的な使用許可をするには、住民投票に付し過半数同意を要することになったのでありますが、その際の経過措置として同改正法附則第三条により、当時すでになされていた使用許可で十年をこえるものについては、同改正法施行後十年を経過した日、すなわち昭和三十三年七月末までの間に住民投票過半数同意が得られない場合には、十年を経過した日で失効することになっております。しかしながら、造林目的とする契約がこれにより失効いたしますとすれば、造林の経営が安定性を欠き、造林意欲を減殺し、林木が適正な伐期に達しない以前において伐採される憂いもありますので、造林目的とする土地使用許可に限って、昭和二十三年の改正法施行当時すでに生育していた立木については、適正伐期齢級に達するまでは引き続いて土地使用が認められるように措置されたのであります。なお、適正伐期齢級に達しない以前において立木の主伐が行われたときは、その完了の日に許可が効力を失うものとされております。  以上が地方自治法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正点  であります。  なお、この修正案は、衆議院におきましては、地方行政委員会においても、また本会議においても、満場一致をもって議決されましたことを申し添えておきます。
  10. 松岡平市

    委員長松岡平市君) これより両案について質疑を行います。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  11. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちょっと質疑に入る前に、委員長に希望といいますか、委員長及び理事打合会の持ち方について数日間停頓しました地方行政委員会が、正常なルートに乗って審議されるようになりましたことは、その原因責任いかんはともかく、非常にけっこうなことだと思うわけですが、私たちとしましては、数日間の混乱の中からいろいろな教訓を学びとって、できるだけ再びああいうような事態に立ち至らないようにすることは、委員長初め私たち十分気をつけねばならぬ点だと田やりわけであります。  御案内のように、衆議院では、自治法の一部改正法案は付託されてから採決まで六十五日、小選挙区を中心とした公職選挙法の一部改正は五十六日、そして御案内のように、天下の耳目を聳動するような衆議院混乱の後に、問題を含みながら、参議院に回ってきたわけであります。ここで私たち参議院で知り得ることは、そのように非常に衆議院で問題を含んで、議長裁定もあったりして、ようやく参議院に回った法案が、ここでどう取り扱われるかという際に、たった一日しか委員長及び理事打合会がなかったということがまず特徴的な点だと思うわけであります。もちろん委員長理事打合会は法的な根拠もありませんし、委員長自身の方針によって日程も組むことができると思うわけであります。しかし、昭和二十五年私たち国会に出てから、私の乏しい経験からしても、この地方行政委員会におきましては、西郷委員長岡本委員長、あるいは油井委員長内村委員長と、ほとんど委員長理事打合会を開きまして、できるだけこの委員会の円満な運営に資したわけであります。松岡委員長は、議運で長い間鍛えられ、国会きっての運営ベテランでありますが、しかし、やはり弘法も筆の誤まりということもありますし、私は、今回の事例にかんがみまして、一つ、法的な根拠はともかくとしまして、各部の委員会におきまして委員長理事打合会を頻繁に持ってやっていますので、一つそういうことを御考慮願いたいと思うわけであります。  もちろんこれまでは、委員長は就任されて以来ほとんど私たちの意中を忖度し、文句のないような、理事打合会の必要のないような運営をされたことは、私たちとしても非常に多としておったわけであります。しかし今後は、二法案がかかって、なかなか事態が重大でありますので、一つ委員長理事打合会を再々開いていただきまして、ぜひとも再び轍を踏むことのないようにお願いしたいと思うわけであります。伊能委員も、実はこの委員会、あんまり委員長理事打合会をやらぬ慣例になっているからということでございましたが、一つぜひともそういうふうにしていただきたいと思うわけであります。  わが党としましては、実に遠慮深い森下さんが理事に出ておりますし、そう皆さんに御無理をかけぬと思います。まあ問題が難航すれば、この方のベテラン小笠原君等も出て御協力申し上げ、円満な進行に資したいと思いますので、スムースに軌道に乗って、問題のないときは別ですが、一ついきなり伝家の宝刀を抜くというようなことはなさらないように、一つ長い間の地方行政委員会のとっていました委員長理事打合会一つ必要な限度においてできるだけ聞いて一つやっていただくように、これは蛇足だと思いますが、強く希望しておく次第であります。
  12. 松岡平市

    委員長松岡平市君) せっかく中田君が議事運営について御発言がありましたから、委員長所見を、これもまた蛇足だと思いますが、申し上げておきます。  今回の事例にかんがみてという御発言もございましたが、今回の事例については、私は実はまことに意外に思っております。御承知のように、私は委員長理事打合会を決して開かなかったわけではございません。委員会運営上必要であろうと考えた場合には、そのつど打合会々開いて参ったつもりであります。必要がありと思わない場合に、しいて私は聞く必要はないと今もなお理解しております。御承知のように、この問題の起きます直前も、それまで長く開かなかった委員長理事打合会を、両法案取扱い衆議院審議の過程にかんがみて、相当問題になろうと考えましたので、私はみずから進んで打合会を開きました。そうしてそれが妥結に至らない。御承知のように、委員長理事打合会妥結に至らない場合がしばしばございます。妥結に至らなければ、委員長といたしましては、委員会にお諮りするより仕方がない。そこで私は、委員会にお諮りいたしました。お諮りのいたし方といたしましては、両会派の多数委員のおられる両会派理事の御主張はこうでありますから、委員長といたしましてもこういうふうにしたいと思いまするが、いかがいたしますかと、こういうことをお諮りいたしましたところが、それに対して異議がございました。異議があって論議をいたしました。で、何ら結論は得ておりません。それで私は、その結論を得る委員会を開こうとして開くことができなかったのが昨日までの経過であると了承いたしております。私は、決して委員長といたしまして横暴をしようとかどうしようとかいう考え方は持っておりません。委員各位の十分なる御意見を聞いて、そうしてその結果、委員各位の御意思のあるところに従って委員会を開くべきものと、かように了承いたしております。今なおさようでございます。で、今後につきましては、実は昨日も今朝もいろいろといろいろな方面から検討いたしまして、先ほど委員会に御報告申し上げましたような結論に到達したわけでございます。今後のことにつきましては、中田委員の御注意もございますので、委員長としては、委員会運営がスムースに参りますように、できるだけ万全の措置を講じたい、かように考えております。(「進行、々々」と呼ぶ者あり)
  13. 中田吉雄

    中田吉雄君 この法案の内容については、加瀬委員の方から質問していただくことになっていますが、太田自治庁長官鈴木次長に、この法案帰趨によってどういう責任をとられるかという問題について御質問をしておきたいと思うわけであります。  御案内のように、今回、地方自治法改正法案提案されたのは三回目であります。第一回は昭和二十七年に第十三国会に出され、第二回は昨年の六月第二十二国会に出されて、三回目の提案であります。そこで私は、長官とされても、よほどな決意をもってこの法案を今国会提案されていると思うのであります。例を引いて恐縮ですが、マックス・ウェーバーは、その著の「職業としての政治」というところに、政治家としての三つの要素について言っているわけであります。その一つは、まず見通し、第二番は熱情、第三番目は責任、この三つを言っているわけであります。見通しを立てて情熱を傾ける。これに対して言いますならば、その通過に努力し、そしてその結果によっては責任を負うということが私は大切だと思うわけであります。これは、この法案自体といたしましては、地方自治の根本的な改革ということにはなっておりませんが、しかし、随所に目ざす方向はわかる。地方自治の将来にとってもきわめて重要な法案だと思うのであります。参議院定例改選をひかえて、参議院は落ちつかない。こういう際にこの法案を出しておられるので、私としては、もし今国会においてこの法案が不首尾になるようなことがあったら、やはり相当の責任をとられるべきではないか、また、そういう考えを持つものであります。  さらにまた、鈴木次長とされても、一回、二回、三回と出されるからには、この法案国会通過に対しては、全力を尽されると思うわけであります。三回も国会をもし通らないというようなことがあったら、私は、特に今の官僚機構として、事務当局最高責任者として、その次長が持つ責任はきわめて重いと思うわけであります。なかなか重要な段階における地方自治審議に際して、この法案帰趨によってどういう責任をおとりになるか、この法案の結果いかんによっては重大な責任をとられるか、あるいは鈴木次長とされても、一回、二回通らぬが、全然そういうことについては責任をとられた趣きを感じないが、従来と同じような態度をとってこの委員会に臨まれるのか、まず私は、審議に入るまでに、この法案と取り組まれる太田長官鈴木次長の所感を伺っておきたいと思うわけであります。
  14. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 中田委員のお言葉に対して御返事申し上げます。私は、自分の担当しておる関係法案については、全部責任を負っております。従来の経過がいろいろ複雑でありましたが、私はそのことに直接関係はございませんが、関係なしとしても、しかし、自治庁として重要なる法案であることはお示しの通りでございます。問題は、これが否決された場合と不成立になる原因が、全く私の落度にある場合において責任をとるということは当然であると思います。修正の程度によっても問題が起るかと思いますが、政府並びに私ども関係でない原因によって起った場合にまで責任をとるかということは、これは別個の問題としてたれも考えるところであろうと思います。よろしく御了承を願いたいと思います。私は、すべての問題について、小さいところまでも全部責任をとるつもりであります。ただ、法案が成立するしないという経過は、皆様方のお力添えを願いまして、私もできるだけの答弁なり意見を申し述べまして、そして無事に通ることを期待しておるような次第でございます。
  15. 鈴木俊一

    政府委員鈴木俊一君) ただいま中田委員から、この法案が通らなかった場合に、次長として責任を負うかというような御趣旨でございましたが、私は、事務的には、ただいま御指摘ございましたように、十九国会、二十二国会、二十四国会の三回の地方自治法律案には参画をいたしております。しかし、これを国会提案するしないということは、時の内閣、時の大臣の御指図によっておるわけでございまして、事務官としての問題は、私自身の問題としていろいろ考えますが、政治的の問題は、私は関係ないことと思います。
  16. 森下政一

    森下政一君 ただいま、衆議院修正点について、鈴木代議士から御説明があったのですが、その御説明の中で、ちょっと私わからぬ所があるので、それだけ簡単にお尋ねしておきたいと思います。  非常勤職員に対する報酬は、日割計算とする原則はあくまで堅持する、原則は堅持するけれども勤務実情や特別の事情あるときには、特に条例をもって規定するところによって、勤務一致によらないで、あるいは月額あるいは年頭によって報酬支給することができる、こういうふうにした。これが修正の第一点ですね。その勤務実情等軒別事情がある場合においてはというのは、どういう場合を予想しておるでしょうか。それを一つお聞かせ願いたいんです。
  17. 鈴木直人

    衆議院議員鈴木直人君) 原則につきましては、今度の政府側考え方衆議院としては一応了承したということであります。二百三条には、非常勤の職というものはどういうものであるかということが例示されておりまして、それには報酬を与える。二百四条には、常勤の職について規定されまして、それには、給与制度としまして、報酬でない意味のものを与える、こういうふうに規定されておるのでございますが、この二百三条の政府案を見まするというと、原則は破らなくてもいいのではないか、ただ、ただいま森下委員からの御質問のような条件があった場合においては、日給制度でなくてもよろしいという例外法律の中に規定いたしまして、それぞれの地方公共団体が自主的な判断を下されまして、条例を作った場合においては、その条例法律の違反とはならないというような例外をここに設けたような次第でございます。その具体的な面といたしましては、非常勤職員の中に、選挙管理委員会委員あるいは人事委員会委員公安委員会委員とか、あるいは教育委員会委員とかという特殊的な執行機関たる委員会委員がございまするが、それらの委員会の現状を見ますというと、選挙管理委員会におきましては、性格も相当違いますし、また勤務状態も、委員長その他ほとんど毎日出られまして、事務をしておられるという所もあるのでございます。もちろん全国の例をとりますと、そうでない所もございますが、そういうような、各地方団体実情に即しまして、地方団体自身月給制でやった方がよろしいとか、あるいは日当的な手当をやるにしましても、その日その日に支給しなくて、それを月に合計をして計算して、日給制にするというようなことをやっておる所もございますし、それぞれ地方公共団体の自主的なやり方にまかせていくことが、現実に即した地方団体運営であろう、こう考えまして、例外を設けたわけであります。
  18. 森下政一

    森下政一君 この日割計算報酬を出すのだけれども、それをその日その日支給せずに、月額合計して渡すというのは、これは支給一つ方法論だけのことであって、日割計算だということでちっとも間違いがないというふうに思えるのですね。そこで、勤務実情等によって、あるいは特別の事情があるというようなことで、勤務日数によらない、日割によらない月額あるいは年額幾らという報酬支給するというのは、一体どういう場合を予想されておるのかというのが私の質問の焦点なんですね。ところが、今の御説明では、各種の委員会委員というものは、みんな日割計算ではないというふうにとれるのですね。日割計算にしない方が実情に即するのじゃないか、だから、地方公共団体がそれぞれ条例で、月額あるいは年額による報酬を出すというなら出し得る、こういうように改めるとおっしゃるのだが、これはいろいろ委員会から、特に選挙管理委員会から熱心な陳情がございますが、そういう陳情をおいれになったものだ、こう了承してよろしいですか。
  19. 鈴木直人

    衆議院議員鈴木直人君) 修正の条文は、「条例で特別の定をした場合は、」ということになっておるのでありまするが、特別の定めをするというのはどういう場合にするかというときに、先ほどやや具体的な例を示して申し上げたのでありまするが、衆議院におきましての考え方としましては、ただいまの御質問通り選挙管理委員会等陳情がもっともであると考えまして、それをある程度是認いたしまして、そのような方々の陳情がそれぞれの地方公共団体においても認められるということを期待いたしまして、条例にまかしたというのが実情であります。
  20. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今の森下さんの御質問に関連して伺うのですが、そうしますると、この選挙管理委員とか、あるいは公安委員とか、教育委員とかというような特別の執行機関に関しては、結局従来通りだ、こういうふうに解釈していいわけですか。
  21. 鈴木直人

    衆議院議員鈴木直人君) そういうわけでもありません。地方公共団体におきまして、従来通りにしたいというならば、法律的に許されるということでありまして、一にかかってどういうふうにするかということは、地方公共団体にまかせるということでございます。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 自治庁長官にまず伺いたいのでありますが、すでに中田委員からの質問にも指摘されておりますが、衆議院におきまして、自治法審議というものは途中において非常に手間どりました。私どもは、その経過を見ておりますと、政府は一体自治法というものを成立させようという熱意がほんとうにあるのか、あるいはまた自治法というのは、また前例のように流されても仕方がないというあきらめの態度で一体臨んでおるのか、こういう点に非常な疑惑を持つわけであります。(「当て馬じゃないか」「選挙法当て馬だよ」と呼ぶ者あり)そこで、この自治法というものを今度提出されまして、ほんとうに通そうというお気持であったのか。そうであるならば、あの二十何日間にわたる一体修正に名をかりた実質的な審議の停滞というものをどういうふうに御対処なされたのか。あるいはまた、当院に送られて参ったわけでございますが、この法案というものに対して、現在どういうふうな御所見をお持ちであるか、まずこの点を伺います。
  23. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 提案されましてから日の長かったことは、これは暦の進行でございまして、私がかれこれ申し上げるべきことではありませんが、確かに長うございました。提案しましてから、政府側として提案者側はできるだけの出席もし、また説明もいたしました。私のいたのは二日でありますが、次官が出ておりまして、そうしてなお私のいたときも、五大都市の資料を要求して御質問があるうちに切られましたので、これは不思議だなあと感じておりました。これは事実速記にある通りでございます。私としては、もちろん自治の本体に関する重要な法案でございまするから、熱心にこれを主張し、また皆様方の御協力で御通過経過を経て、法案の成立することを心から願っておる次第でございます。私どもの立場として、政府という立場から、国会における議事運営につきましては、お願いこそいたしまするが、かれこれ申し上げる段ではございませんので、できるだけの自分たちとしての努力をいたしたことを申し上げるにすぎません。
  24. 加瀬完

    加瀬完君 大臣は自由民主党から選出されておりまする大臣でありますので、ただ政府責任というだけでなく、党の責任をもあわせて私は御答弁をいただきたいと思うのでございますが、この審議を非常に渋滞させたのは野党というなら、今の大臣の御説明も一応納得する。しかし、提案をいたしました政府の属するところの与党が重要法案としてみずから提案をいたしました政府法案を渋滞さしておるこの事態というものを、大臣はどうお考えになるか。あるいは自治法ほんとうに通そうと思うならば、その間にどういう与党との間において御折衝をなされたのか、そのことを伺っておるんです。
  25. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 延びた原因一つに、よく言われまするところの修正問題につきましても、最後の日までまとまりませんので、それじゃ非常に困るから、結局党の方にも話して、まだ御要求もあったんでございますが、譲っていただきたいというのが最後の段階でございました。で、修正の問題につきましては、ここに鈴木政調会の方の部長もおられるわけでございますが、相当練ったことも御承知通りと思います。政府といたしましては、十分御便宜といいますか、御質問があれば、修正案についてもこう考えるというようなことも申し上げました。で、御承知通り、私は午前と午後引っぱりだこになったみたいな格好で、政府自体といたしましては、できるだけのことはいたしたつもりでございます。党員といたしましては、これがおくれたということは、申し上げるまでもなく、まことに恐縮する次第でございます。けれど、私自身といたしまして、できるだけの努力をいたしたということ、また政府関係といたしましての力添えをいたしましたことは、先ほど来申し上げた通りでございます。
  26. 加瀬完

    加瀬完君 すでに本案は当院へ送られてきたわけでございますが、長官がそのようなお考えであるならば、われわれも熱心に本案の討議を、審議をして参りたいと思う。つきましては、非常に地方自治体にとりましては、自治法改正というものは重要な問題を数々蔵しておるわけでございますから、なお国との関係におきまして、非常に問題をはらんでおる法案でもございまするから、これは事務担当の者だけではなくて、必ず大臣が御出席下さいまして、政府としての責任のある御答弁をいただかなければ、本案の審議というものは非常に支障を来たすと思う。そこで、この審議のある限り、大臣の連日御出席、いろいろ御熱心な御答弁を希望いたしたいと思うのでございます。  そこで、まずただいまの前提と、もう一つの前提として伺いたいと思いますのは、この法案を提出いたしました政府の理由は、衆議院におきましてもたびたび御説明がありましたように、非常に地方団体は行政、財政の両面におきまして再建整備を必要とする、特に地方財政の問題では、経費の節減というものによりまして、財政需要を可及的に縮減をいたしまして、計画と実際との間隙をちじめて、地方財政の健全化というものをはからなければならない問題がある。この点をこの法案はねらっておるのであります。こういう意味のことがたびたび述べられましたが、さように了解してよろしゅうございますか。
  27. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 本法案は、簡単に申しますれば、行政面におきまして、簡素に総合的に合理的にやっていきたいという行政のねらいでございます。お言葉の通り、地方財政が非常に不如意でございますので、これを直すためという意図ももちろん含んでおるのでございます。金額といたしましては、ことに財政計画上の関係等においては、見積り得るものも少いのでございますが、間接的に、この処理によりまして財政上におけるゆとりを作り得る、もしくは今までの非常に不如意であったものを直していくという意味におきましては、加瀬委員の申された通りでございます。
  28. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、改めて伺いたいのでありますが、近来政府の地方行財政に対する態度は、地方自治を育成する、あるいは地方自治というものを主体に、日本の民主主義を育てていくという大きな目的、こういうことよりは、かえって簡素、能率化、あるいは合理化、こういう名の下に国の指導監督権というものを強化していく傾向というものが非常に強い。私たちはそういうふうに見るのであります。たとえば、たびたび問題になっております地方財政の再建整備法にいたしましても、あるいは交付税法にいたしましても、地方公務員法の一部改正にいたしましても、特に二十九年度以来三十年度、三十一年度と発表されました地方財政計画を見ますると、非常に簡素能率化という名のもとに、国の監督権あるいは地方財政の節減計画、こういうものが強く打ち出されておる。これは、地方自治に対して果してプラスかマイナスかという大きな私は考えの分れ目に立つ考え方と思う。そこで、私どもはそう考えておるのでありますが、政府地方自治体にどういう基本的態度でお臨みになっておられるのか。まずこの点を大臣の御説明によりまして、確認をして、質問の出発点としたいと思うのです。
  29. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) ごもっともな御質問と思います。申し上げるまでもなく、自治体は民主政治の基本でございまして、これがよくいかなければ、民主政治そのものの発展もむずかしくなると私は思っております。しかるところ、お言葉の点におきまして、政府の監督権等が強くなったことは、自治に対する反対と申しますか、自治の進むのをじゃまするようなものになるのじゃあないか。再建整備法におきましても、政府の監督というような面が出ておることも問題になりまして、また修正されたことも承知しております。今回の法案におきましても、総理大臣の地方に対する反省という言葉をたしか使っておると記憶いたしますが、そういう点はどうかと考えられるのでございますが、私は、憲法のいわゆる自治の本旨に従いましてやっていくのでありまして、これが自治の発展にこそなれ、自治を抑えるというような意図をもって今回の法案を作ったわけではございませんので、どこまでも、お言葉のように、自治が伸びていくように、またそれに対して協調ということは考えますが、互いにうまくいくように、国も十分目を向いていくようにというようにいたしますが、し、干渉し、押えていく、こういう意味の考えは毛頭もっておらないのでございます。
  30. 加瀬完

    加瀬完君 内閣総理大臣の必要な措置権と申しますか、この点につきましては、後刻質問をいたしたいと思いますが、監督をし、あるいは命令をし、圧迫をする、こういう方法はとらないとおっしゃいましても、地方経費の節減というものを大きく国の政策として打ち出して参りますると、地方経費の節減というために、実際自治団体の運営というものは、住民の要求というものにブレーキをかけていかなければならないということは当然であると思う。特にその性格が強く打ち出されておりますのは、地方財政計画でございますが、累年、だんだん地方財政計画の傾向というものを見ますると、この地方経費の節減というものに非常に重点を置かれておる。自治法改正も、この地方経費の節減あるいは機構の簡素合理化、こういうものを合法的にしていこうといういろいろの規定があるわけでございまするが、こういう傾向がですね、こういう傾向が私どもは果して地方自治というものを政府は育成していくだろうかどうかという疑問をもつのでございます。そういうことは議論になりますから差しおきまして、政府といたしましては、地方経費の節減というものによりまして、結局地方自治体というものを育てていく。赤字の解消というものによって、言葉をかえて言えば、まず赤字を解消さして、そうして自治体を育てていくのだ、こういう方針が大きな目的として打ち出されておる。自治法改正にも、その他いろいろの地方の税制あるいは行政の基本的な指導精神はそこにあるのだということをお認めになられますか。
  31. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 申し上げるまでもなく、国の財政といたしましても、この数年来健全財政主義をとりまして、その目的のもとにやっておることは申し上げるまでもありません。国の財政も地方財政も牽連をしております。交付税の関係において、あるいは義務教育費の国庫負担の関係におきまして、その他国の方でも仕事をおろして行くのは、実行するのは、地方自治体でございますので、関係のあることはもちろんでございます。国が健全財政主義をとっておることも、御了承願えることと思います。その意味におきまして、地方が赤字が減って行くということを期待することもこれは当然でございます。同時に、将来の基礎を作られることも当然でございますが、実行という問題になりますと、条例その他自治体の力によってやらなければならぬので、政府が期待するということと、手をとって監督干渉するということとは、私は区別して考えておるのでございます。政府といたしまして、国の財政、地方財政が立派な基礎に置かれたいということは、これはどなたも考えるところであろうと思います。その線に沿っての期待はいたしますが、これを実行に移す場合には、地方議会なりあるいは執行機関における良識に待ってお願いするよりないので、それをああせいこうせいと、こちらから手を加えていくと、こういう考えではないのであります。
  32. 加瀬完

    加瀬完君 そうしますと、今度の地方自治法改正の基本線といいますか、根拠にいたしましたのは、政府みずからの地方行政財政、あるいは地方団体に対する指導あるいは措置、こういう条件ではなくて、調査会なり、あるいはその前の地方行政調査委員会々議ですかなりの勧告でございますか、そういったような世論、あるいは世論を背景とする一つの客観的の常識、こういうものをもとにして地方自治法改正を進めていったんだ、こういうふうに了解してよろしうございますか。
  33. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) お言葉のように、地方制度調査会の答申を尊重しつつやってきましたので、むろん世論の動向ということも常に注意しておるところでございます。
  34. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、勧告案なり答申案なりを尊重したということでございますならば、私は市町村の規模なり性格なりというものについてまずお伺いをしたいと思う。それは昭和二十五年、昭和二十六年、いわゆる第一次、第二次の地方行政調査委員会々議でございますか、こういうものが設けられました。この勧告によりますと、市町村規模の合理化ということで、再配分後の事務の能率的処理のための市町村規模の合理化、小町村の人口八千を標準としての規模の合理化、僻地町村の事務の合理化、こういうことがうたわれております。さらに地方制度調査会の第一次なり第三次なりにわたる答申によりますと、市町村規模の合理化ということがうたわれておったわけであります。あわせて申しますと、府県の規模性格なりについても、このとき答申があったわけでございます。それによりますと、地方行政調査委員会々議の勧告によりますと、道州制はとらない、府県規模は大体人口二百万というものに押える、こういうことでございます。で、地方制度調査会になりますと、道州制をあわせ考えるということに変ってきました。それから国家的性格を有する事務の処理、こういうことに府県の事務というものを考えるようになりました。これは、自治庁から御提出をいただきました資料によって拝見いたしますと、そういう内容が了解されるのであります。こういうふうな答申なり勧告なりがあったのでございますが、ここで、今度の自治法改正あるいは自治法改正に伴う地方団体の規模なり性格なりというものの前提としての御検討のときに、町村や府県の規模というものを人口だけで押えていく考え方というものに矛盾をお感じにはならなかったかどうか。この点をまず伺います。
  35. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 自治体の規模につきましては、市町村の場合、府県の場合、さらに進んで、想像せられる道州制の問題等がございますが、人口のみで見べきものとは思いません。一応のめどは、たとえば合併町村につきまして、八千と見たのが一万二千に実績はなっておるようでございますが、一応の見方はやはり人口にあると思いますが、人口のみでもってやっていくべきものとは思いません。一応の見方は人口だと思います。
  36. 加瀬完

    加瀬完君 先ほど大臣は、今度の地方自治法改正一つ目的は、地方経費の節減ということがねらいである、こういうことだった。ところが地方経費が節減せられても、しかしながら、地方自治体の運営は、一応の最低標準といいますか、この運営に事欠くことがあってはならない。こういうさらに御前提があると思うのです。そこで、人口七千でも八千でも、あるいは一万二千でもいい、人口だけ押えていって、人口だけ拡大すれば、それでひとりでに町村は行政規模を支えるだけの財政力がついてくる、こういう御認定に非常に無理がある。そこに私はそろそろ自治庁もお気づきになってしかるべきだと思う。こういう点何か問題は出なかったでございましょうか。
  37. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ちょっとお諮りいたしますが、鈴木衆議院議員は、今休憩前に質疑がなければ、ちょっとやむを得ない用があって、退席したいということですが……。
  38. 加瀬完

    加瀬完君 あとで質問いたします。
  39. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 鈴木君、御退席下さってけっこうです。
  40. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 先ほど申し上げました言葉以上に、私の答弁は発展しませんですが、人口が何といたしましても人の集り、そこに産業、教育、文化、いろいろなものが現れていくわけでございますので、人口が主たると申しますか、重要な要素であるということは認めなければならぬ。しかし、人口だけでもってやっていかれない問題が地方自治体にはたくさんあると思います。人が集まってくれば、交通の問題はどうする、さらに教育の問題はどうするというような問題がありまするので、いろいろな点を勘案しなければなりませんが、しかし、人口がやはり自治体の重要なる要素として考えなければならぬ問題であるということには、私の考えは変らないのでございます。
  41. 加瀬完

    加瀬完君 人口が重要な問題であるということは、私も認めます。また、新市町村建設法のような精神によりまして、市町村建設が新しく発展するということも、私は反対をするものではありません。しかし、実際に町村合併をやってみまして、人口だけで抑えた町村合併ということでは、町村合併の目的である自主的な行政能力というものを支える財源というものが付随してこないという矛盾を、これは合併町村はしみじみと感じておる。そこで、今度の自治法改正に当っては、いろいろ地方自治体の性格なり規模なり、あるいは能力なりということをいろいろお考えになったでございましょうから、そこでこういう人口だけを抑えていっては、財源の賦与ということを別に考えない限りにおいては、非常に町村なり府県にいたしましても、財政能力に満足を与えられないという欠陥を生ずると、こういう点について自治庁は、何らか新しい御見識をお持ちになったのじゃないか。この点なんです、伺っておりますのは。
  42. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) すでに御審議を仰ぎました新市町村の育成の国保においても申し上げたことでございますが、人だけ集まっても、また地域的のなわ張りが広がりましても、それで新しい村作り町作りができるというものじゃありません。自治体の発展というものを見るときには、その人口というものと同様に、そこに住まう人、そこに働く人がやっていけるかということにつきましても、もちろん思いをいたさなければならない。たとえば電話がないからどうするとか、学校が分れておっちゃいかぬとか、農業委員会をどうするとか、こういうような問題につきましては、人口以外のそういう要素を増えて、そこに住まわれるお方々がよき生活、よき暮しにいくようにと考えなければならぬと思っておるわけであります。
  43. 加瀬完

    加瀬完君 私の質問が非常に的確でないようで、大臣御了解がいただけないようでございますが、私の申し上げたいと思う点は、たとえば産業構造というものは、あるいは社会経済の集中化というものによって、産業構造というものは社会経済の集中化という一つの傾向によりまして、地域によりまして、地方団体の貧富の差というものをますます激しくしていると思う。ですから、この地方団体間の不均衡発展と申しますか、この不均衡発展というものをどう解決をしていくかということを考てませんでは、町村合併だけを進めましても、赤字団体が幾つ集まっても、ますますこれは赤字団体が合計されるだけでありまして、赤字団体が集まって、人口が一万五千になったから、二万五千になったからといって、黒字団体にはならないという現実の状態というものを私は認めなければならないだろうと思う。こういう点は、自治法改正の前提の場合、どういうふうに論議されたか。この問題を解決しなければ、経費の節減々々ということだけを言っても、それは、節減するということは、行政機能を節減するということになってしまう。こういう地方団体側からすれば私は心配があると思う。この問題をどういうふうに論議されたか、伺っている点はそういうことであります。
  44. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) ごもっともな御質問と思います。実は、もう一つ私の悩みがあるのでありまして、それは、日本に市が非常にふえて参りましたが、残されたる農村がどういくかということが、現状における日本の大きな自治体のお互いに考えなければならぬ姿だと思います。ただいま申し上げました、町の新しい形を作ろうとして合併の方向に進んでおりますが、それにつきましては、新市町村の育成という方向におきまして、今回できるだけの政府としての提案をいたしました次第でございます。従って、そのことを頭におきまして、この自治法におきましても、府県の問題あるいは市町村の問題を考えておる次第でございます。
  45. 松岡平市

    委員長松岡平市君) ちょっと念のために申し上げておきますが、自治庁長官、大変お疲れのようでございますから、自後は御着席のまま御答弁下さいまして差しつかえないと委員長判断いたしますから、さよう御了承の上、御答弁願います。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 問題は私はそこにあると思うのです。国が不均衡発展によりまして、地方にできました地方団体間の貧富の差というものを何ら解決する手をまず差し伸べないで、地方だけの問題として解決をしていこうといたしまして、そういう意味のいろいろの改正法というものをお出しになるということは、果して一体これは自治体のために親切の方法かと、あるいは自治体というものを伸ばしていくことになるのか、こういう心配を当然地方は持ってくると思うのです。これらに対して大臣のもう少し御見解を伺いたいのです。
  47. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は自治体というものが自治体みずからの力で伸びていくのが第一義と思います。しかし現状においてはそれがいかれない。そこで交付税の問題が財政上における国からの一つの問題となっておる。あるいは補助金について中央に負担をかけたいようにしよう、それを減らそうというようなことを今回議会に出して通過したような次第でございます。税におきましても、あるいは起債の点につきましても見なければなりませんが、本来の姿というものは、やはり自治の本旨というものは自治、みずからを治めるのでございまして、独立心を持ってやっていくもので、政府に頼るということは、これは自治体としても第二義だろうと思いますけれども政府といたしましては、お言葉の貧富のものがあってはいけない。その平衡を得るために、かつては平衡交付金があり、今日は交付税の制度もできておるわけでございます。これが十分か不十分かということは、国の財政関係もございますが、私といたしましては、第一義は自治体が一つふんばっていただかなければならない。むろんそれに対して政府は、国はうっちゃっておいていいわけではございませんから、本来ならば交付税もなく、みずからの力でみずからやっていくという、今日の、老いたりといえども、やはりイギリスの自治体などの姿を見ますと、そうなっておりますが、私は、そういう意味においては、日本の現状はそうはいかぬ、ことに終戦後におきまして非常な打撃を受けたことでございまするから、政府としても自治体がみずから伸びていくのをお助けするという意味におきまして、十分な力を尽さなければならぬと、かように考えております。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 自治体が自分で伸びていくということが前提であって、国はこれを助けていくのだ。現状においてはそういう立場をとるのだ、こういうお話でございますが、自治体が伸びていけない原因というものはどこにあるか。そうすると、そこには国家権力によりまして自治体が伸びないという現状もあるわけです。そこで私は国家権力と地方自治体の関係をどう見ていくかということを、基本線をはっきりと打ち出さなければ、この問題の解決はできないと思います。たとえば私の調査によりますと、赤字団体ということが非常に言われております。府県は別にいたしまして、どうやらやりくりのつきそうな市町村だけを見て参りましても、赤字原因というものは、類例的に申し上げますと、まず補助金の寡少という理由があげられる。それから公共事業費の持ち出しというものがあげられる。それから合併のための赤字継承というものすらある。それから六三制、警察制度のための持ち出し、それから不況による減収額、競輪収入などの減、起債の不承認、算定寡少、単独事業、こういったようなものが赤字の原因になっておるわけです。この多くは地方自治体自体ではきめられなくて、政府との、あるいは国家の権力関係におきまして赤字を出させられておる、悪い言葉で言うならば。そうとらなければならないような問題が当然あるわけです。そこで自治法改正などにおきましては、端的に申し上げますと、この地方自治体をささえられるところの財政措置というものを基本的にどういうふうにするのだということを論議されませんでは、これはいつまでたっても地方自治権の伸長ということには私はなりかねると思うのです。この点政府の一番の端的な意思の表われは、再建整備法でありますが、ああいう再建整備法のような性格で地方に臨みまして、国家権力によりまして地方の財政を抑えていく、極端に言うならば、そういう方向というものを前提に、自治法改正というものをなされていくのでございますか。
  49. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) お話の、今日地方が非常に困っている、ことに赤字になったその原因の少からざる部分は国に関係があると私も率直に認めますけれども、国だけでこれができたということは、私また認めることができないのでございます。今回の改正の中にも、今までは地方議会に断わらずにいろいろな債権債務の関係が起きてくることもございますが、そういうことをしてはいかぬというような制度を自治法の中に織り込みましたのも、自治体自体が正当な御判断のもとに、すべての事業をやっていかなければならぬために、自分の力以上のものをやったというような場合が決してないとは申されないだろうと私は思います。国家がいろいろ不手際があったり、また指導に間違いがあったりいたしまして、赤字の出た原因は、私はあるということをかねがね申しております。しかしそれだからといって、全部が今回の赤字は、今までの赤字というものは、国だけではない。両方から相待っていかなければならないので、地方もしっかりしていただく。国としてもでき縛ることをしなければならぬ。むろん財政ということになれば限界点もございますが、その点につきましては、国としてはできるだけの努力をしなければならぬ。ただお言葉のうちに再建関係について整備にこちらが非常な強圧を加えたというようにもしおとりになるといたしましたならば、私どもの目の届く限り、かようなことはさせないつもりでございます。さよう御了承願いたいと思います。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 再建整備に自治庁のお役人がどうこうだということでなくて、あの地財法の性格そのものが、これは一つの国の要求といいますか、国家財政的な立場というものが作られた、一つの地方財政に対する計画を地方が守らなければならないように作られておる。私は法案そのものを言っておる。あなたの部下の役人がどうこうしたということを申しておるのではございません。それは念のために断わっておきます。ただ問題は、地方自治体に責任もございましょう。しかし大臣のおっしゃるように国の責任分担というものを解決するという方法をとらないで、地方の責任だけで解決をしようという傾向が非常に強い。それでは地方自治体というものは進展しないじゃないか。今回の自治法改正におきましても、一体国教権力というものと地方自治体というものの関係を、地方のみの解決にまかせないで、国もこういうふうな責任分担をしたのだということがあれば、大臣のお言葉もごもっともだ。安んじて地方自治体は自治庁にまかすべしという意見にも賛成できますけれども、そういう性格が一つもない、むしろ国家権力へ地方財政計画を誘導しているとさえ私は言いたい。少くとも地方自治体自体の立場、地方自治の推進、発展というものを前提とするとか、それを基本的な立場とするという性格は、全然ないと思うのです。この点一体どうお増えになられるか。
  51. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) まことに痛み入ったお言葉でございます。私、微力でございますが、今日まで半年足らずの間、地方行政に、また地方財政に関係いたしまして、できるだけ税制、できるだけ財政面におきましては、市町村のために、自治体のためにと思って努力してきたつもりでございます。私としてはシャウプ勧告以来の税制、あるいは財政のやり方が今日のことに対しましても関係があると思いまして、相当思い切ったことをいたしたつもりです。微力でありますから、足らぬ点はたくさんありまするが、国の財源等におきましても、不如意でありますために、私の思うようなところに行っておりません。たとえば、地方債の処理はその一つでございますが、私といたしましては、この地方自治法におきましても、いな今議会に提案されたものは、一体といたしまして、国家の監督権によって地方自治を侵そうという考え方でなく、地方自治がすくすくと伸びていくための、いわば援助と申しますか、いう立場におきまして、自治の発展ということを念願として、法案を作っておる次第でございます。微力で足らぬ点はおわびいたさなければなりませんが、私としては精一ぱいの努力を続けてきたつもりでございます。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 私は現内閣になりましてから、あるいは太田さんになりましてから、自治庁を担当されて、それが前の内閣よりも、前の大臣よりも、あなたによって、あなたの内閣によって、非常にブレーキがかけられたと、そういうことは言わない。御努力なさっていただいた点も認めるにやぶさかではありません。しかし大臣みずから、自治庁長官として、地方財政の建て直しあるいは自治体の進展というものをお考えなさって、そういうふうな努力をなさっていらっしゃると、大臣御自身の問題として、当然ぶち当るものがあると思うのです。それは確かに交付税を二二%から二五%に引き上げたことはこれは一つの進歩です。しかしこれらのいろいろのことをやられましても、まだまだ地方団体の健全化ということに対しましては、国との関係において改革しなければならぬ問題がある、あるいは国の制度のために、地方団体側から見れば、どうも見動きのできないような問題になっている点がある。こういう矛盾は、当然現在におきましてもお感じになっていられると思う。そういう矛盾といいますか、国家権力というものが、地方自治体というものとのバランスにおきまして、非常にとれていないために、地方自治体の健全育成ということにもちょっと支障のある場面もあるということはお感じになりませんか。
  53. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) もちろん国の方にも足らぬ点がございますので、それはお言葉通りに私は思っております。国の方でもどんどん直していかなければならぬ。少くとも道筋は、加瀬委員のおっしゃる方向に私は動かしておると思っておるのでございますが、力の足らぬ点は、これは私の力の足らぬ点でございます。国と地方がうまく一体となっていかなければならぬということは、行政面におきましても、財政面におきましても、お言葉のように思うわけでございます。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 御努力は認めますけれども、率直に悪口を言わしていただければ、交付税を上げたり、その他いろいろの改革というものはあった。しかしそれ以上、私は現政府になられましてから、再建整備法というものを出されたということは、これは地方自治体にとっては、非常に地方財政なり地方行政なりというものを、国家計画のワクの中に入れるという、非常な自治権の侵害という点では、大きな地方団体に対する、何と申しましょうか、私はマイナスの面であると言いたいのです。それを赤字を作ったのは地方である。従って赤字を解消するために、政府が利子補給をしたり、赤字を出さぬようにして、いろいろ地方の財政のためにやってやる法案を作って、お前は何を文句を言うのだ。こういう御理由が成り立ちましょう。しかし、そうしてワクづけられた地方行政、地方財政というもののワクが、地方住民の要求なりあるいは地方住民の希望なりというものを見動きできないようなことにさせていくということは、これは地方自治体からすれば考えざるを得ない。財源措置はさっぱり講じない。財源措置という根本的な問題は講じないで、出た赤字の処理をしてやろうということは、これは本末転倒だと思う。もっと親切であれば財源措置をして、みずから赤字の解消ができるような方法なり指導が打ち立てられるということが、まず第一歩でなければならない。こういう方法を政府はとらない。再建整備法のあの性格というものを現政府が認めておる限りは、太田さん御自身の努力は認めても、現在の政府が、地方団体に対して、地方団体の、あるいは地方自治の育成のために全力をあげてサービスをしてくれておるとは考えられない。この点いかがでしょう。
  55. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 国策の根本にまで及ぶ問題でございますが、何といたしましても、もうすぐ赤字解消にも金のかかる問題でございまして、いろいろの、具体的にいえば大蔵大臣との交渉も、私は相当したのでございますが、ただお言葉のうちにありました再建債は地方を圧迫するような意味に私は聞こえたのでございますが、そういう意味をもってあの法案を作ったわけでもなく、またこれを実行しているものではございません。その点はさよう御了承を願いたいと思います。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 お作りになったお考えは、大臣の御解釈はそうであろうとも、作られました法案というものからすれば、私は、私が前に申した点も指摘せざるを得ない。といいますのは、地方財政計画がどういう変化をしてきたかということを考えると、地方財政計画は具体的に再建整備法の性格というものを如実に現わしておる。その如実に現わしているという具体は何かということになると、節減、自己財源の拡張、こういうものにばっかり求めて参りまして、先ほど大臣もお認めいただきましたけれども政府の手によりまして地方財政の赤字の援助をする、あるいは地方財政の財源の強化をするという点は一つも強調しておらない。問題の、今お話しに出ました大蔵省は、地方財政改正案というものを予算編成のときにお出しになりました。これは大臣がお骨折りをいただきまして撤回はされましたけれども、この大蔵省の地方財政改正案というものは、将来尾を引くと思う。またこの性格が再建整備法の中に出ておるということはこれは否定できない。それによりますと、「昭和三十一年度地方財政については、左記により地方行財政制度の抜本的改正を行うとともに、国、地方を通じて行財政の運営を改善して、根本的建直しを図るものとして予算を編成する。」という前書きがございまして、「給与費の適正化、一、給与費は給与実態調査の結果に基き、国家公務員の給与規準と従来の財政計画上の人員を基礎として、適正と思われる人員によって算定がえを行い、その適正化を図る。二、義務教育職員費については、現在の実額負担の建前を、国家公務員の給与規準による定額負担の建前に改める。三、地方団体も割高な給与規準及び過剰な人員の適正化措置を講ずるものとする。四、地方公務員の停年制度及び定数規準を設ける。」それからさらに「地方行政機構等の簡素合理化」という項で、「補助事業の合理化。一、公共事業、食糧増産対策等について、総事業量の圧縮及び重点化。補助率の引き上げ、受益者負担制度の拡充による地方負担の軽減」と、こういう項目が掲げられております。補助率の引き上げということは一見いいようでございますが、その陰には受益者負担の拡充ということがある。受益者負担の拡充ということになりますと、軽減された分が全部それに転嫁されるということがこれは地方の実情なんです。こういう大蔵省の方針というものが一応自治庁の御努力によって防ぎとめられましたけれども、この方針が政府の財政方針になるということは、これはとめるわけには参らないと思うのです。さらに今年の地方財政計画によりますと、これは私は文教委員会の連合審査のときも申したんですけれども教育委員会の廃止統合とか、地方団体運営の簡素合理化あるいは停年制、待命制の実施というものを裏づけにいたしまして、さらに国庫補助、負担金制度の改革と自主財源の増強というふうなことを前提にいたしまして財政計画が立てられておる。こうなって参りますと、大臣個人の御努力、あるいは自治庁当局の御努力ということはわかりますけれども政府の方針というものは、相変らず地方財政の縮減なり、地方行財政の規模の縮小なり、という方向を露骨に現わしているということは、私はいなむわけに参らないと思う。この点いかがでしょうか。
  57. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私も地方が財政規模にしても大きくなることを望みますが、また望めない赤字団体に対しましては、やはり地盤を作ると申しますか、足ごしらえをしなきゃならぬこの今段階にあるものでございまして、それに対して国の出す金が少いとか、補助金問題があるとか、いろんな問題は御指摘の通りと思います。政府といたしましては、今の財政の許す限りにおいての、また私としては自治体のための出し得る限りの金をお願いしておるようなわけでございまして、十分でないということは、これはもう私が申し上げるまでもなく、現状におきましては財政関係からもそれができない状況にありますけれども、何とかして作ろうという意味において、あるいは自主財源の問題でございますとか、地方債にいたしましても、まあふえていかぬようにという消極的な面ではございますが、起債の総額について六百億円見当で三十二年度からやっていこうとか、利子につきましては、これはまだ十分になっておりませんが、一般の金融情勢によりましてだんだん低下していくのに乗じていきたいと、非常に加瀬委員の言われる通りに不十分でございますが、ねらいといたしましては現状において私どもとしては、できるだけの国家財政とのにらみ合いのもとにおきましてやっておる次第でございます。十分でないということはもう申し上げるまでもございません。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 国家財政のにらみ合いということが、私は非常に問題だと思う。国家財政のにらみ合いというのは、国家財政と地方財政と比べて両方、どちらを重く見るということなく、バランスをとっていくということならばにらみ合いということが言葉の通りとれると思う。しかし今の政府のやり方というものが、国家財政ということを前提にして、これだけのワクをがっちりきめて、このワクの許す範囲で地方財政というものを見ていく、こういうやり方だと思う。たびたびこれは大臣も御言明されますけれども、交付税が二五%では足らないということはわかっておる。しかしこれ以上は出せない、これがぎりぎりだ、こういうふうにおっしゃっておる。客観情勢からいえばわれわれといえども二五%よく出したということも言えないわけではない。その客観情勢ということ、あるいは大臣の先の御説明によれば、現状においてはこれ以上地方財政のワクほふくらましてはいけないという意味の御言明、御説明がございましたですが、その現状というものから推して将来を見通したときに、御努力はなさるということはわかるけれども、その御努力がだんだん地方財政を豊かにしていくという見通しをつけられるか、そういう希望が持てるか。こういうことになりますと、私はどうも、その国家財政というもののいろいろな重点が強く打ち出されておりますので、ことしはこれだけだ、来年再来年になればこういうふうに地方財政は拡大していきますよ、地方自治は進展を期して待つべきものがありますよ、こういうふうには言えないと思うのですけれども、そういう見通しは立たない、ますます暗くなる、極端に言うならば、というう観測をせざるを得ないと思いますけれどもいかがでしょうか。
  59. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 将来の観測につきまして、現状から見ますると、私は少しく見方が違っておるのでございまして、新聞紙上等においても評論されております通り、どん底というものがもしありとしたならば、どん底からだんだん直りつつある。赤字の関係もよくなりつつある、というのが世論的な評論であると私は見ておるのでございます。また私どもそのために努力をしておるのでございます。国が地方に対する考え方は、ワクをきめて、それ以上出さぬ、というような考え方におきましての、今日の国家財政と地方財政とのからみ合いを見るものが、もしありとしたならば誤りであると思います。大蔵大臣もはっきりとは言いませんけれども、私の言うのと同じような考え方であろうと思います。
  60. 加瀬完

    加瀬完君 三十一年度の財政計画を見ますと、五百三十一億、結局財政計画そのものをふくらましております。しかし昨年と比べて実質的に政府が出しましたものは五十六億か七億にすぎないのじゃないか。あとの四百七十四億というものは、これは自主財源の拡張といいますか、地方自身が自分たちの手によりまして大衆に転嫁をいたしまして、徴税強化の形で吸い上げてくるものによりまして、そのふくらましたものの大部分というものを補っておるのじゃありませんか。こういう傾向というものは、さらにこれから大臣は二五%以上交付税は上げられないと言っておる、具体的な姿を見ればもっと交付税の必要がある。少くともこれは平衡交付金制度ができたころの観点からすれば、これはふくらまさざるを得ないところの理由があるのです。しかしそれが押えられておる。そうしてふくらまさなければならないところの実際の財政膨張というものは、これは一般の税の方に転嫁されて、四百七十四億も徴税が強化される。こういう形を見て参りますと、一体これで将来とも明るい見通しが持てるということになりましょうか。それは額面の上では再建整備なんか強行すれば、赤字は解消しますよ。赤字は解消しますけれども、その赤字の解消というものは、財源が豊富になったから赤字が解消されたということではなくて、行政費の切り下げによりまして、たとえばまああまり卑近な例で失礼でありますけれども、米びつのものが減らなかった、食べなかったから減らなかったのだ。食べないところの五体というものはだんだん衰弱してくる。地方財政というものはだんだんと制限され、窮屈になってくる。こういう現状というものを、私はそういうことはない、正常発展するということには言えないだろうと思う。
  61. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) もちろん正常発展ということは言えませんです。こういう整理時期と申しますか、地固め時期におきまして、同時に片一方の要求が全部いれられるということはなかなかむずかしいのでございまして、一度はそういう経過を経るのであります。私の乏しい考え方から申しますれば、明治大正、昭和を通じての一番芳しかったときはいつであるかと言えば、明治十五年から十八年までの松方正義の財政整理でございまして、国民は苦しんでおりましたが、しかしその間におきまして明るみを認めつつ憲法もできたし、あるいは国会が開設されるということにもなったという整備現象もできたのでございますが、こういう整理時期と申しますか、赤字解消時期に、同時にまた店を広げていくということはなかなか政治としてむずかしいのじゃないか。もちろんそれを放って置けませんから、赤字が早く減るように、そうして地固めが早くいくようにというのが現下の段階ではないか。それも国家財政の方は一年先にいきまして、地方財政の方が一年おくれておるということは、私は観測として申しておるような次第でございますが、現状が赤字があるということは、それはもう言うまでもないことで、その赤字を直しつつ、さらに進んでいくという、これは今のところで二つの問題を同時に解決するような地方財政の現状、あるいは自治体の現状じゃないと思います。しかし私は、加瀬委員のお言葉じゃありませんが、御所見の中に、国から出す金だけが非常に強力にされておりますが、やはり自治体の自治そのものの本体におきまして御勉強も願わなければならぬ、かように感じておる次第でございます。
  62. 加瀬完

    加瀬完君 それはおっしゃる通りです。自治自身の立場で節減もしなければならないし、自主再建もしていかなければならないのは当然です。しかしその当然な前提に立って自主財源を作っていこうとしましても、国の方針というものは自主財源をできないようにさせておる。具体的に例を申し上げるならば、節減々々というならば、あらゆる面で節減をされなければならない。特に警察法の改正は、これによって警察費に対する地方の負担を軽減するということだった。ところが二十九年は百七億、三十年は五十三億、ふやされておるのじゃありませんか。節減々々けっこうです。しかし施設提供費は二十九年が四十九億、三十年が七十四億、三十一年が百億と増強されている。それで基地の拡張だの行政道路だのとできますけれども土地改良をしようとすれば、これは大臣は御専門でございますからよくおわかりでございましょう。今年の一体食糧増産費というのはどうなっているか。たとえば土地改良、開拓、干拓、耕地整理、こういうものをみんな減らされている。治山治水にいたしましても、去年から見ればそれは少額といってもやはり減っている。砂防にしても治山にしても造林にしても河川改修にしてもみんな減っておる。こういう公共事業費的なものがみんな減ってくるということは、それだけ地方の住民にとっては川を直してもらう、土地改良もしてもらいたいという要求が全部満たされないということである。こういう傾向というものを国が打ち出しておいて、地方だけで自主財源を作れとか、地方だけで財政の赤字の解決をしろということは、少し御無理というものではございませんかと言いたくなるのです。いかがですか。
  63. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 国の方の費用を減らせば地方の事業ができないということはお言葉の通りであろうと思います。あるいは不公平な点もあろうかと思います。けれども、大綱といたしましての今日の国家財政、地方財政はかような整理時期に入っておりますので、不公平な点等があるかもしれませんが、今両方、一方に赤字を解消し、一方にあるいは土木工事を起していくというようなことは今の世帯ではなかなかむずかしいのじゃないかと、私は率直に思うのでございます。けれども考え方といたしましてはそうあらずに、赤字も早く解消し、地方の望むような事業ができていくことを望むことは、私も一緒でございまして、また不公平のこともあろうかと思いますが、大体の筋は今申し上げたような線において、国も地方もこの数年来いろいろな不手際もあったでありましょう、私は政治責任はないから申し上げるのでありますが、それを直すための一つの地固め時期じゃないか、これは地固めのやり方が悪いということの御批判は、これは御批判としてあろうと思います。
  64. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 時間も大へんおそくなりましたので、午前はこの程度にいたしまして、午後再開することにいたしまして暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩    ————・————    午後二時十一分開会
  65. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き、地方自治法の一部を改正する法律案地方自治法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案、以上二案について質疑を行います。質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  66. 加瀬完

    加瀬完君 午前中の私の質問いたしております点は、何か、このたびの提案されております法案の内容とは関係のないような誤解もあるようですけれども、そうではなくて、今度の改正項目の中に、市町村の一般権能と特殊権能という項目や、それから都道府県の地位及び本来的権能といった、これは、地方自治体としては当然重要な問題でありまする性格、地方団体の性格が提案されておるわけであります。それらの点について伺っているのでございますから、どうぞその法案と関連を持たれた御説明をやはりいただきたいと思うのでございます。  私が午前中申しておりますのは、そういった市町村の一般的権能とか、特殊権能とか、あるいは都道府県の地位あるいは都道府県が当然なすべき行政権能というものをいいましても、今、政府が根底において考えておるような財源というものをある程度幅をせばめて、それは一つの国の方針として、経費の節減計画というものを強行していって、その幅をせばめられた財源の中で都道府県の権能を幾ら論議しても、市町村の機能というものを高めたような御説明をいただいても、それじゃできないじゃないか。もっと根本は、大臣あるいは今の政府が努力をしないとは言わないけれども、もっともっと解決しなければならないところの財政的な問題というものがあるのじゃないか、こういう点を伺っているわけであります。そういう点から、それはいろいろ、徐々にやっているのだ、あるいはこれからも地方団体の財源というものに対しては考える、こういう御説明がありましたけれども、しかしながら、今の国の方針というものを見ますと、たとえば、極端に言うならば、軍事費といいますか、あるいは国防費といいますか、こういう方向に重点が置かれておりますけれども、このはね返りというものをかぶってくるのは、地方財政という形を当然考えざるを得ない。あるいは財政計画を考えてみましても、国が必要とする警察費とか、あるいは国が必要とするところの行政協定関係の費用といったようなものは、これはふくらんでくるけれども、地方が必要とする、住民自身が考える土地改良でも、あるいはまた耕地整理でも、あるいは治山治水でも、こういうものの予算というものは、国そのものが幅をせばめている。国が幅をせばめられまするから、その負担が住民にかかってくる。住民にかかってきても、単独事業費というものは押えられますからできない。またやろうとすれば赤字が出てくる。赤字が出てくれば再建法で押えられる。これでは地方住民の意思というものは、希望というものは伸ばせられないじゃないか、こういった矛盾を私は感ずるのですけれども、これを解決しないで、自治法の上でどんなふうに権能を論議しても、あるいはまた、地位を論議しても、それは自治法で大臣の御説明のような結果は現われてこないのじゃないか、こういう点を伺いたい。おすわりになってけっこうでございますから。
  67. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 大変恐縮でございます。  これは、一つは財政に関係した点が多いようでございますが、社会党のお考えの、防衛費を削るという立場をおとりになりますれば、相当の金が出ることは、これは申し上げるまでもないことであります。けれども、その点につきましては、財政の建前と言いますか、防衛費についての問題が解決せざれば、その方向に振り向けるということはむずかしいかと思うのであります。その点を私はここで論議しようというわけじゃないのでありますが、現状におきましては、赤字を一生懸命低めるようにしていくように願う、国の方でも、それにできるだけの努力をする。そういう財政の建前からいきまして、今のところ二刀流と申しますか、一方に赤字を何して、一方に土木なりその他の金をもっていくという余地がただいまの国の財政計画のもとにおいてはなかなかできない。それならば、地方においてやる分を制限しておるからそうなるのだというお言葉がありましたが、地方をうっちゃらかしにして全部やっていこうという考えじゃない。従って、今の赤字がなくなるようになり、また国の方からも地固めができまして、少し楽観論かもしれませんけれども、財政もゆとりができるようになっておりますから、私は、今の地固め時期から地方財政もまた今後において期待し得るいろいろな問題が解決され得る情勢にあるのじゃないか。お言葉のこの権能の問題は、財政の問題ともむろん関係はいたしますけれども、今までその点がはっきりしないのを直そうと、はっきりしょうという建前のもとに、地方の市町村及び府県の権能というものをはっきりさせたのでございます。
  68. 加瀬完

    加瀬完君 今までのこの地方自治の歴史といいましょうか、地方財政の変遷といいましょうか、こういうものを見てみますと、まあ率直に申し上げると、防衛拡張といいましょうか、あるいは軍備態勢といいましょうか、こういうものが上昇して参りますと、はね返って、大体地方団体の行財政というものは圧縮されてくるわけであります。これは、昭和二十八年の自治庁でお出しになりました「地方財政の実態と問題の所在」という中にも、国と地方との歳出総額の比較というものが出されております。これによりますと、昭和九年には、国庫歳出と地方歳出の割合というものは、地方歳出の方が大きくて、国庫歳出を一といたしますと、一・〇二四ということになります、九年は。十年は少し下りまして、〇・九八一でありますが、十一年には一・二〇九と、平均いたしまして、その一よりもはるかに大きいのであります。これが戦時態勢に入りかけた昭和十二年になりますと、〇・七七一、それから十三年には〇・六六二、十四年にはO・五四〇、十五年には〇・四八六、十八年になりますと、これがO・三五二、十九年には〇・一九四と、もうはるかに圧縮されているわけでございます。今のやはり国家財政のウエートの置き方の傾向からしても、こういう心配がないとは私は言い切れないだろうと思う。この点について、軍事費といいますか、防衛費の支出というものが高まって参りますと、地方行財政に対する統制あるいは圧縮方針というものが、これは強くなって参るのが歴史上の事実でございます。こういう心配というものがないのでございましょうか、ということを聞くのは、結局こういう一つ政府の干渉権と言いますか、というものは、今度の自治法改正にもちらほら出て来ておるように私からすれば察しられるのです。そういう点がございますので、伺っておるわけであります。
  69. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) もちろん、その防衛費がうんとふえていくということは、私賛成しておりません。同時に、地方財政に向けるべき金も、あるいは今度の税制改革もまだ何の寸法もついておりませんが、期待いたしますところは、相当な自主財源も得るように持っていかなければならぬということ、及び片がつくならば、地方債の問題にも手をつけたい。これは三十二年度の考え方として、私の今描いておるところでございますが、かようにいたしまして、加瀬委員の言われる地方財政が伸びていくようにという心がまえは、私持っておるわけでございます。
  70. 加瀬完

    加瀬完君 それで、結局国の方針は一応国の方針としてのお立場がありましょう。しかし、絶えず住民として、地方自治体の住民として考えておりますのは、住民の生産能力なり、あるいは生活能力なりというものが向上するような支出の要求というものを、当然住民は地方団体に望むわけです。これは実に矛盾する考えのようではありますけれども、しかしながら、自分自身の負担というものは軽減してもちいたい、こういう要求も当然あるわけです。自治体というものを育てるとすれば、そういう意味の自治法改正というものが行われるとするならば、この住民の要求というものをどういうふうに具体化されるかということに、一番の私は中心がなければならないと思うのです。しかし、今度の自治法改正を見て参りましても、負担の軽減というものが強調されておるとか、あるいは住民の生活向上の要求というものが非常に取り上げられておるというふうな個条は、私は発見に苦しむのでございますが、こういう住民本来の要求というものを、今度の自治法の中にはどういうふうにあんばいされておるのでありましょうか。
  71. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) はなはだ恐縮ですが、足らぬところは私が補いますから……。
  72. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは御承知通り自治法というものは、地方公共団体の組織と運営の基本法でございまして、結局今、加瀬委員のおっしゃいましたように、個々の実体的な活動は、まだ各種の行政法、組織法と申しますか、そういうもので穴が埋まっていくわけでございまして、こっちもそうした仕事を最も民主的に合理的に充実してやれるような、そうした組織とか運営というものの基本をきめる必要がある、こういうのは自治法の建前だろうと思うのでございます。われわれの念願するところは、全く加瀬委員と同じ気持で、市町村がほんとうに市民に直結した行政を、できるだけ実体的な行政効果をあげてやらせたい。そのやらせ得る力というものをできるだけ、何と申しますか、組織とか運営というものを合理化してやりたい、こういう一念でございまして、今度の自治法改正というのは、そうした基本的な考え方で一貫しておるわけでございます。ただ、その仕事につきましては、もちろん国の面から、国の立場で、いろいろな仕事についての助成をそれそれの立場からもっと強力にやっていく、こういう問題も当然考えていかなければなりませんが、それとともに、自治自身がそれを受けて立って、最も実のある仕事をやれるような組織運営というものの体制を固める必要があるのじゃないか、こういうのが基本的な考え方でございます。
  73. 加瀬完

    加瀬完君 自治法で一番大きく取り上げられておりますのは、今度も地方公共団体の権能に関する事項たと思うのです。地方自治体の権能ということになりますと、地方自治体の住民の要求というものは、生活向上の支出というものは増大されるように、あるいは住民自身の負担というのは軽減されるように、こういう基本的な要求というのがある。こういう基本的な要求を満たされるような権能というものは、地方公共団体に与えられるというふうに改革されていかなければ、これは真実の意味の地方自治を進展さしたということにはならない。そういう具体的なものが今度の自治法改正の中には、法文としてでなくてもいい、含みとしてでもいいけれども、一体存在しているのかどうか、こういうことなんです。
  74. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今のお話が、われわれとしては含みと申しますか、精神と申しますか、そういうもので、いわばわれわれとしては負かれているという気持でございますが、実体的な権能は、まず第一番に自治法の二条に書いてあるわけでございます。そこで、結局府県と市町村というものの地位、権能をどう考えるかという場合におきましても、今仰せられましたような、そういう市民の実体的な生活を向上させる第一線の団体というものは市町村ではないか。そこで、市町村というものが市民に身近かなところにあって、できるだけ行政をやる建前をはっきりさせる必要がありはしないか、そうして府県はその上に立ってこれを補うて、府県らしい仕事をやっていく、結局府県と市町村というものにつきましても、事務の配分について、そういう配慮をすることが、市町村は市町村として、府県は府県として最も行政を充実してやっていくゆえんだろう、こういう基本的な考え方があるわけでございます。それとともに、市町村、府県が、すべてが実のある行政をやっていくために、行政全般の組織とか機構のあり方が、実体的な仕事を少しでも充実してやれるように、ほかのがまんできる無駄はできるだけ排除し、その間の問題をできるだけ総合的に、行政にすべての支出というものを集中できるような態勢にできるだけ持っていきたい、いわばそういう考え方で今度の改正が貫かれておるというわけでございます。
  75. 加瀬完

    加瀬完君 簡素、合理化ということや、節減の方式というものは、あらゆる点に顔を出しておりますけれども、先ほど私が述べているような、自治体本来の、住民の要求が満たされるという条項というものは、改正案の中にはどこにも出てきておらない。私が言いたいのは、これは大臣にお答えいただきたいのでありますが、簡素、合理化とか、経費の節減ということは、国の財政から考えた物の見方である傾向が強い。自治体自体の住民の立場にすれば、簡素、合理化ということや、節減ということよりも、まず自治体住民の要求する仕事のできるような財源を与えてもらいたいということの方が、これは立場としては先になる。しかし、そういう立場はどこにも認められておらないじゃないか。この点をどういうふうに考慮されたか。
  76. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 結局するところ、今、消極政策と申しますか、地方の地固めがしかかっているときでございまして、一方に節減とか、いろいろなことをして、他方になお要求を満たすということができればけっこうでございますが、なお、その二律の問題を調整していくことは非常にむずかしい問題でございます。むずかしい一番おもな原因は、財政関係になるのでございますが、かように、今の地固めに非常に政府の方も心配し、そのためには、できるだけの施策をとって、交付税でありますとか、いろいろなことでやっておりますが、しかし、それでも足らない。望むのはよき生活、軽き負担という言葉、その通りと思いますが、ただいま、せっかくまとまってきましたところを、すぐここに同じように要求を満たすことはむずかしい。たとえば、ある県でございますが、赤字を解消するためにやっておりますけれども、二十九年の赤字解消のうちに、三十年度の赤字が出てしまったのでございます。それは、県を言うのは私ちょっと差し控えますが、そんな工合でございますから、なかなかこの問題を二律調整的にやっていくということはむずかしいと思うのです。県がやはりしっかりした形をここで作り上げることが、むしろ先に行って伸びる、自治体のためにあらねばならぬ姿であろう。なお、政務次官から見解を申し上げます。
  77. 早川崇

    政府委員早川崇君) 加瀬委員の御質問に対する大臣の答弁に補足して御説明申し上げます。この自治法の中に、私は自治体の住民の要求が相当思い切って私は入れられてあると思うのです。たとえば指定都市に府県が従来持っている権能を大幅委譲いたしまするが、これは大阪なり、あるいは兵庫、神戸その他の住民が、どうしても二重行政をやめてもらいたい。できればこの程度大きい都市になった以上は、一元的に衛生とか保健をやって参る。これは私は、住民の強い要望だと思う。そういった、いわゆる自治体の組織、運営に関する面において、住民が望むことは、私は大幅に満たされると思うのでございます。また県会の議員が、自分が県会議員なり市会議員をやりながら、土木の請負を自分でやるとか、これは住民が非常にきらっておる問題でございまして、このたび、この改正でも、できないようにいたしておりまするし、また国家公務員地方公務員、公務員という同じ勤務でありながら、転職いたしますると恩給に通算されないというような問題も、これまたいわゆる自治法という——加瀬先生の言われるような財政、予算の面は入っておりませんけれども自治法という組織法において、考えられまする住民の要望は、不十分ではございましょうが、かなり私から言わせれば、画期的な改正ではなかろうか。かように思っておりまするので、財政の面における自治体の充実という面は、これは予算なり財政法なり、そういった面に譲るといたしまして、組織法といたしましては、決して御心配のように、住民の意思を参酌しておらないということはないと、かように考えておりまするので、その点御了承願います。
  78. 加瀬完

    加瀬完君 その点は、私も了解をいたします。しかし、指定都市というものをきめましたけれども、今までの自治法によれば、特別市というものがあった。特別市というものがただ混乱のもとをなすからというだけで、指定都市というものに形を変えられておるということも、それは住民の一部要求は聞かれたかもしれませんけれども、果して大都市住民の全体の声というものを大幅に受け入れたということになるかどうかと、こういう問題もあろうと思う。請負関係を一応規制いたしました。しかし抜け道は幾らでもある。ただ、本八だけが関係しなければいいので、抜け道は幾らでもある。事実請負をしなくても、いろいろな利権的な行為をするものも実際に多い。地方の乱費の原因にもなっておる。そういうふうな点は何ら防がれておらない。こういうふうなことも、政務次官の御説明に対しては、私は見解をまた異にいたします。  問題はそういうことではなくて、確かにそれは、この改正項目が一から十まで全部われわれの意に満たないとか、あるいは何ら価値のないものだとは言いません。今言ったような恩給関係、身分関係の点といいますか、特例を与えたというふうなことは、一つの長所であろうと思います。しかし、全体を通して、何といいましょうか、概括的にいえば、市町村なり、都道府県なりの権能というものをあげるというならば、もっと住民の意思というものが反映されるような方式というものをとらなければいけないのではないか。たとえば今度の法案によりますれば、議会の権能というものがきめられております。これによりますると、議会の権能というものは非常に拡大されたか、あるいは制限されたかということになりますと、皆さんの方では、これは合理化である。権能は、この合理化の中で拡大されるはずだと御説明なさるかもしれませんけれども、常任委員会というものを変更したり、あるいはまた議会の回数というものを変更したり、あるいは議会ではございませんが、行政委員会にもいろいろ改正が加えられております。こういったようなことは、住民の意思を表示する機会なり、機関というものに制限を加えたということにもなるわけです。こういう、たとえばこの条文の中から拾い出せば、議会の権能ということに対して、一応現行法を改訂いたしましたということは、能率優先ということが先になっておりましょうけれども、能率優先というものが、民主化あるいは民主主義の育成ということと一体どういう関係を持つのか、極端に言うならば、能率化というために、民主化ということを阻んでいくとか、それをある程度許容されているという前提に立っているのじゃないか、こういうことも言いたくなる。ですから根本の観念の中に、住民の意思、住民の要求というものを大幅にいれてやるのだ。住民の意思あるいは住民の希望によりまして、自治体の運営はこういうふうにできるのだ、その背景はこう作ってやったんだといったようなものは何もないじゃないか。こういう点を私は言いたいのです。この点、大臣いかがでございますか。
  79. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 地方制度調査会でも答申の中にいわれておる事柄は、もちろん議会の権能を狭めるとか、干渉するとかそういうことはいけません。また、それはしておりませんです。大体の声も、今あるべき姿としての地方議会の姿も、地方制度調査会でいわれているような方向にあるのが国民の戸ではないかと私ども思うのです。従って、今度の改正も、議会の権能をどうするとかということは一切触れずに、答申案の中にあるような、国民の声がそういうふうに、何と申しますか、調整を得るような合理的のものであるならば、取り入れるのがしかるべきじゃないか、こう考えた次第でございます。
  80. 加瀬完

    加瀬完君 自治体における住民の自治的な訓練といいますか、民主的な訓練といいますか、こういうものが向上して参りませんでは、国そのものの民主化とか、あるいは国そのものの議会政治というものも、なかなか円滑には発展をして参らないと思う。そういう意味におきまして、非常に民主主義を育てる場として、私は地方議会なり地方自治体なりというものは大切なものだと思うのです。そこで、じゃその一体地方自治体はどこで民主主義を育てていくかということになりますと、議会なり行政委員会なりというもので育ててくるということになろうと思う。今育ちの過程でありますから、これは能率的じゃないんです。効率的じゃないんです。効率的じゃないといって、その教室を閉ざしたり、教育を閉ざしたりしたら、これは民主主義が育たないと思う。そういう配慮というものが私は非常に最近の国の地方に対する態度の中には薄れてきていると思う。議会の権能というものに対して制限は加えないと言いますけれども、常任委員会というものの数を減らしたり、あるいは議会というものを回数を制限をしたりすることになれば、これはそういうことが常任委員会で討議をしたり、あるいは議会でいろいろしたりすることも非能率的なことという錯覚を一般の住民には植えがちなんです。それで、首長の権限というものが非常に強くなってくる。そうなってくると、これは一つ地方自治の伸展ではなくて、地方自治からかつての形への復元というふうにもまあ見られないことでもない。あまり能率化能率化ということを先行すると、何のための一体能率化なんだ。国の運営というものをもとにして、そのために地方が適合するような形をもって能率化ということは、私は能率にはならないと思う。こういう点が、国の都合というものが前面に打ち出されておって、地方自治体の都合というものが背面に隠されておる。そういうような根底がどうも私には感じられて、心配なんです。この点どうでしょう。
  81. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今、いろいろお話しがありましたが、そういうことは、今度の改正にはわれわれは全然考えてもおりませんし、そういう規定も実はわれわれとしてはないと考えておるわけでございます。あくまでも市町村の行政が住民の意思を基礎にして、合理的に発展していくことがこれは念願でございまして、そのために、われわれといたしましては、一つ考え方が、先ほど申しました通り、府県と市町村というものをどう考えるかということで、できるだけ市町村の自治というものを充実させたい。それで事務配分などを考えれば、府県と市町村との関係もはっきりさせたい。それからもう一つは、今度は市町村自体が動く場合に、その実際の活動が最も住民の立場から考えて住民の利益になるように動く組織とか運営というものがいえるのじゃないか。そこで、それぞれ住民の立場を代表する代表機関として、御承知執行機関と議決機関とあるわけでございまして、執行機関も議決機関もそれぞれ住民の代表者でございますから、それで両種の機関があれば、それぞれ両種の機関の間において、それぞれ権限を配分調整して、合理的にその間をうまく調和をとっていく必要があるのではないか。そういう考え方で、執行機関と議決機関との権限の動き方をどう考えるかということが問題になるだろうと思うのでございます。今度議会の問題につきまして、規定の改正が行われておりますが、これは議会自体の議決権というのは、これは当然尊重しなければなりませんし、これは十二分に発揮してもらわなければならないと思うのでございます。しかしながら、その発揮することにつきましては、それぞれやっぱり節度というものがあるし、住民のほんとうの立場から、うまく議会としての議会活動ができるような仕組みを考える必要があるのではないか、そこで、従来いろいろ御批判もありましたし、地方制度調査会におきましても御議論も出ておりました点を参酌して、たとえば議会を開くことについて、今定例会の問題もお話に出ましたが、必要なときは十分に聞いてもいい、実情によってそれほど要らない町村もあれば、それは町村が要らないというならば、無理に法律で縛って開く必要はない、町村の意思によって開く、それから常任委員会の運用は、議会が一体として運用した方がいいのでありますが、しかしながら、自治体の活動が複雑でもあれば、議員数も多くなれば、当然常任委員会の活動というものが必要であろうと思う。しかし、必要ではありますが、常任委員会の運用におきまして、いろいろ御批判があったようなことがなるべくないようにして、合理的に常任委員会の活動ができるような方向だけはきめておいていいのじゃないか、そういう趣旨の改正でございます。われわれといたしましては、あくまでも住民の代表者である議会が、議会本来の権能を最も円満に果し得るような仕組みをできるだけ考えていくというのが根本の改正の念願なのでございます。国の立場から自治体の権限をどうこうというような考え方は全然ございません。あくまでも自治体が自治体として十二分な働きができるようにできるだけさしてやりたい。それに必要な法律的なワクというものはできるだけはずして、そういう方向に伸ばすのに必要な方向だけは与える必要があるのではないか、こういうのがわれわれの気持でございます。
  82. 加瀬完

    加瀬完君 それは、あなたのお立場での御説明はそう言わざるを得ないでしょう。それならば具体的に、逆に私が伺うが、それでは現行法とこの改正法案を比べた場合、国のいわゆる監督権みたいなものが現行法よりもどういうふうに地方に委譲されてきたか、そういう具体的なものがあるか、それから、議会と首長を比べたときに、首長の権限と議会の権限で、首長の権限の方が強化されてきているというふうな事実はないのか、それからさらに、住民の代表としての議会の権限が現行法よりも改正法がこのように拡大されたという一体事実はどこにあるか、この三点について、一つ具体的にお話を伺いたいと思います。
  83. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今のお尋ねの点でございますが、中央の権限が現行法とどこがかわってきたか、これはかわっているところが著しい点が二点ございます。おそらくその御指摘だと思います。一つは府県の部制につきまして、今度の改正法では部制を一応法定して、そのワクを越す場合は総理大臣に協議しろという規定がございます。それからいま一つは、地方団体が法令違反の措置がありました場合に、その反省を求める意味で是正改善の措置を求めるという規定を入れたのでございます。この二点がこれは明らかに現在とかわっております。この二点につきましては、それぞれわれわれといたしましては、改正の理由と必要を持っているのでございまして、第一点を申しますというと、これは、府県の部制というものは、戦後御承知通り非常に部の数がふえておりまして、これは事務もふえている面もございましょうが、機構がいかにもふえている面がございまして、これは住民のために、行政をなるべく簡素能率的にやるためには、役所の機構ばかりふやすのが能ではないのでありまして、むしろ、できるだけ簡素の機構で実のある行政をさしてやるということが基本的に配慮しなければならない、住民の欲するところもそういうところでありまして、役所の機構を欲するのではなく仕事を欲するわけであります。そういう意味におきまして、できるだけ機構は簡素な形で仕事をやらしたい、そういう意味で、一応標準の部数というものを考えまして、その部数の範囲内において一つ内部の組織を作って、実のある行政をやってもらうことが今度の改正の趣旨でございます。それでございますが、しかし、自治体の実情によりましては、どうにも都合のつかぬという場合もなきにしもあらず、そこでそういう場合の一つのまあ緩衝地帯として、総理大臣の協議という規定を入れたのでございます。これはわれわれといたしましても、こういうやり方を欲するわけではございません。ぴちんとやるということも一つの方法ですが、これじゃあまりにも動きがつかぬじゃないかというのが今度の改正の気持でございます。  それから、もう一つの法令違反の場合につきましては、これは自治団体といえども国の法律を執行する組織でございまして、自治体にはおのずから法律的な規制があるわけです。国が法制を作っておる以上は、これは当然順守してもらわなければならぬ。これは当然だろうと思います。そこでしかしながら、そうした遺憾な事態がかりに起った場合におきましては、国の行政をつかさどる最高責任者である国の首長が、これは一つ考え直してもらいたいという発言権を持つことは、国と地方との関係を合理的にきめまして、ほんとう法律制度がうまく運用されて、住民のための行政がうまくいくというためには、その程度のことは当然考えられていいのじゃないか。こういうことで反省を求めるために規定を入れたのでございます。それも慎重な考慮を加えまして、これによって中央が行政的な指揮権を持ったり、監督権を持ったり、そういう特権を持つということは、これは避けぬといかぬ。あくまでも自主的な判断を求めるが、求めるだけのきっかけだけは与えたい、これがこの考え方でございます。  それからもう一つ、首長の権限と議会の権限との関係で、長の権限が何か強化した点がないかとおっしゃいました。それは私は、今度の改正にはそれはないはずだと思っております。長と議会との間におきまして、特に権限の配分をかえる意思はないのでございまして、長は長としての職務が合理的にいくように、議会は議会としての運営が合理的にいくようにということで、議会の運営につきまして、法律的な規制のあるものについて所要の改正を加えたにすぎないのでございます。議会の権限はそういうことでございまして、議会につきましても特別の権限の規制がないのでございます。ないよりも、むしろ議会の権限につきまして、実質的に権限を強化したというようなことは、まあそれほど自愛するほどの規定じゃないかもしれませんが、住民の立場からそういうものを考えたものは多少ございます。たとえば議会で、予算の審議等のために、いろいろな財務関係の仕事の業績の結果などというものを報告できるということになっておったやつを、報告の義務を入れたり、これは当りまえのことですから、特別に申し上げるほどのことはございません。それからまた、首長がいろいろな債務負担行為をやる場合に、どうも運用を見ておりますというと、非常に例が少いのですけれども、ほん占うに予算にきまっておる、あるいは議会の議決がないのに、勝手に債務負担行為をやったような事例が、これはなきにしもあらず。それが町村の行政運営を非常に困らしたという事例もございますので、そういうような規制を入れまして、そんなことをやる場合には、当然に議会の意思に従わせるという趣旨の規定もございます。こんなふうな規定は、逆に言えば、むしろ議会の権限を事実強化して、長との間における形を整えたということも言えるだろうと思うのでございます。
  84. 加瀬完

    加瀬完君 説明というものは、かくも不思議にできるかということを私は感ずるのです。実のある行政というものは、自治庁に判断してもらうことじゃないのです。実のある行政か行政でないかということは、住民が判断することなんです。あなた方にいろいろ指図を受ける筋合いのものじゃない。それを、実のある行政か行政でないかということを、あたかも自治庁が権能を持っているかのごとき立場で判断をして、こういうふうにすれば実のある行政ができるのだというワクを考えて、そのワクの中に地方行政を当てはめようという考えが、ここに根本的に改めてもらわなければならぬ点だと思う。それで、私が質問しました第一点で、国と地方の関係で、総理大臣に協議しなければならぬとか、法令違反の場合は、総理大臣が措置をしても当然だというようないろいろなことがありますけれども、現行法に大幅に地方にまかせられておった権能に対して、総理大臣という名のもとに、国が現行法よりも地方の自治というものに干渉権を深めたということは、これは否定することができない。なぜこういうことをする必要があるか。そうなってくると、結局裏には、国の一つの方針といおうか、方向というもので地方を縛ろうという根底があるから、こういう形になって現われてくる。それから長と議会に対して、長の権限は何も拡大していることはない、議会の権限はむしろ拡大しているといいますけれども改正法案の内容を検討いたしまして、議会の権限が拡大された、住民の意思が十二分に述べられるように現行法以上に拡大されたという解釈が成り立つでしょうか。長の権限はいろいろ拡大されておるのであります。そういうふうな形というものが、私はどうも国の立場で地方の行財政というものを考えて、実のある行政というものはこういうものだという型を作って、それに当てはめていくように、今度の自治法もその意図のもとに作られているということをいなむわけには参らない。これは大臣にお答えをいただきたい。
  85. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 総理大臣が干渉と申しますか、権限が自治体に対してふえたという問題は、私はこう思うのです。たとえば……。
  86. 加瀬完

    加瀬完君 いや国の干渉権を強めたのじゃないかどうかということだけをお答えいただければけっこうです。
  87. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 干渉権を強めたというように私は解釈しません。少し言葉が行政部長が言ったのは足りなかったかとも思いますが、たとえば法令違反という大きな問題に対しまして、総理大臣が反省を求めるというだけで、それ以上には進んでおらないのです。でございますから、そのくらいのことをつけ加えるということをもって干渉というのは、少しも私どもとしては考えない。今までよりも反省するということはふえたわけでございますけれども、しかも、いやしくも国の法令違反という大きいこと、また義務に属することを懈怠したというような問題につきまして、それぐらいの言葉を加えるということは、ちょうど過去におきまして、何々すべしという内務省流の権能をもってやったときを考えてみますれば、非常な違いでございます。ただワクをはずさぬように、よく考えて下さいという警告的なものにすぎないと思うのです。これもまた程度によって、それは干渉だといえば別でございますが、私はそのくらいなものがある方がいいのじゃないか。  また委員会の制度につきましても、数を増す場合に総理大臣に協議すべしとあれも書いております。幾らにするというのでなく、一つのめどを置きまして、その辺に相談をかけるというくらいなことを言っても、この制度そのものをむやみにふやしてはいけないという一つのワクが行われるのじゃないか。それもいかにすべしというのでなく、協議という程度のものでございますから、憲法の九十二条にある自治の本旨に基いての趣旨を尊重してうまく伸びていきたい、こういう考えからでありまして、少くとも立案者におきましては、干渉して、いじめて、上から押えていこうというような考え方ではございません。
  88. 加瀬完

    加瀬完君 質問がだいぶ長引きましたので、整理をいたしますが、(笑声)私が質問いたしました一番初めは、住民の生活向上のための支出の要求、あるいは負担軽減要求というものが住民のほんとうの声ではないか。これが今度の自治法には具体的にどう現われておるかと伺った。そういたしますと、あなたの方では、それが出ておると、こういうお話。出ておるならどこに出ておるかということで伺った。それで幾つかの例を出した。しかし、それは少くとも国と地方というものを具体的に比べたときに、国の権限が地方に束縛を与えるようなというか、国の干渉権が強まったというか、こういう形を認めざるを得ないだろう、あるいは長と議会を比べたときに、議会の権限が縮小されておる割に長の権限が拡大されておる、こういうふうに私は解釈するけれども、そうではなくて、自治体自体が強化されたという具体的なことがあるならばあげてもらいたい、こういうふうに質問した。そうすると、いろいろ経緯がありまして、今、大臣は、まあうまく伸びさせたいためには、これくらいなことは別に何も明治、大正の内務省時代の自治体に戻すわけでなし、いいじゃないか、これくらいはやむを得ないじゃないかという御見解のようでしたが、私は現行法と改正法と比べて、自治体を強化したような、一番初めの質問に返るならば、住民の要求がより実現されるような内容が新らしく作られたのだという事実があるかどうかということをはっきりお答えいただければよい。その点を、これはこの程度は仕方がないとか仕方があるということは、これは見解の相違ということになる。そうじゃない。現行法と比べて、一体住民の意思がはるかに大幅に取り入れられたように自治法改正されたという事実があったら出してもらいたい、こういうことであります。
  89. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 今度の改正の中で、議会に関すること、執行機関に関すること、五大都市に関することが三つの大きな柱だと思いますが、その他に給与や恩給等の点もございますけれども、これらの問題は、すべて長年の間唱えられたところであり、地方制度調査会においての答申にもあり、こうしたすっきりしたと申しますか、合理的な組織ができるならば、すなわち裏をひっくり返せば、それが住民のためになるだろうという意図のもとに答申案が出たことと思います。しかも、これを命令的にやるのでなくて、ワクをきめた、法律の部分もありますが、大部分は条例のまま、それで判断は自治体自体にまかせておる、こういう点を反省してくれ、あるいは協議してくれという程度のものでありまして、上から強い干渉をもってやるのでなく、すっきりと申しますか、合理的な組織体ができるということの期待のもとに、その心意気のもとにやっておるのでございまして、私は、答申案の趣旨もよくかんでみるというと、住民の意思もそこにあるのじゃないか、かように考えた次第でございます。
  90. 加瀬完

    加瀬完君 答申案の見解は、これは別にいたします。  大庭は、地方自治体が完全な運営をみずから行い得るような力を得るためには、こういったような改正条項も必要かもしれないけれども、根本の問題はそうではあるまい。あなた方は適正合理化とか、簡素能率化といっている。ただその前に、地方が最低行政規模を持ち得るところの財源措置というものをなぜ考えてくれなかったか。これを考えてくれないで、幾らやってみたところでどうにもならないのじゃないか。もっと突っ込んでいうならば、財源措置を考えないで、こういうことばかりでやっているということは、結局国の一つの方針というものへ地方をはめ込んでいく、こういうことにあるのじゃないか。そうでないというならば、一番必要とする地方団体の財源の要求というものを満たされるような方策というものを一体どうして裏打ちしなかったか、こういう点を伺いたいのです。
  91. 早川崇

    政府委員早川崇君) 先ほどからだ いぶ申し上げましたように、これは自治法の問題でございます。従って、地方税法あるいは交付税法あるいは財政計画、そういった面におきまして、自治体が自主的財源を多く持たなければならない。これは確かにそういう施策が不十分ではありまするが、このたびの国会において、昨年度に比べますと、大幅に認められたわけであります。交付税に関しましては、これは地方に対してはむしろ自主財源を与える、それだけの金額を与えるべしという意見すらわれわれは考えておりまするが、まあそういう面まで進んだわけでございます。で、自治法といたしましては、これは地方自治体の組織権能をいかにして合理的に、いかにして民主的に、いかにして能率的にするかという問題でございます。私一個の見解を申し述べるならば、前の国会に出されたときは、議会の権能をいたずらに減らそうという修正案が出まして、執行機関に対しましてはあまり手を触れないという改正でございましたので、ついにこれは審議未了になったと記憶いたしております。今回は、執行部に対しましても大幅な改正がなされておるのでございまして、私をして言わしむれば、むしろたとえば執行機関の助役なんかは、私は市長なり町村長が自由に選ぶべきものであって、現在はこのために議会、県会なり村会がこれを承認しないで、至るところに問題が起っておる。そういう面で、むしろこれは承認しないで、町村長の自由にしたらいいかという私個人的意見を強く申し述べたのでありますが、これは取り上げられないで、政府はこれは提出することを差し控えたのであります。そういう面から申しますると、議会の権能というものは、前の国会で出されましたのと違いまして、決して執行部とアンバランスになっておるという問題ではございませんので、その点はどうか一つ誤解のないようにお願いいたしたいと、かように私は思っておるのでございます。
  92. 加瀬完

    加瀬完君 どうも政務次官は、自治法そのものは、これは組織法であって、これは何も財政関係とは直接な関係がないのじゃないかというふうなお考えのようですがね。あなた方にそういうふうに言われるのじゃないかと思いまして、私は一番最初に大臣に、この提案の御理由の中に、行政の簡素化合理化ということで、行政経費の節減あるいは地方歳出の規模の圧縮、こういったようなことをねらっておるのじゃないですか、そういう御説明がありましたが、その通りですかと言ったら、その通りだというお話があった。そういうねらいで、地方自治法というものが作られてくるとすれば、それは地方自治法が組織法であることはわかりますけれども、その組織というものによりまして、さらに簡素合理化とか、あるいは行政規模の圧縮というものが具体的になって現われてくるわけです。逆に言うならば、この自治法というものを通すことによって、さらに簡素合理化というものが推進されるという形にもなる。それは、私どもの立場からすれば、一言なかるべからずということなんです。それよりも前に、簡素合理化をはかる前に、財源の賦与ということを先にはかるということを考えることが、より地方自治の伸展ということになるのじゃないか。簡素合理化ということだけでもって、地方自治の伸展というものを考えるのは、本末転倒しているのじゃないかと、こういう意見を繰り返しておるわけであります。具体的に申し上げますよ。私の郷里は九十九里でございますが、九十九里は、御存じのように、非常に荒涼で有名な所でございます。あそこへ軍事施設ができましてから、イワシは一匹もとれない。こういう現状になりまして、滞納は重なるわ、町村の経営はできないわという現状になって参ります。こういう問題をも取り上げて解決してくれるというふうな前提で自治法というものを考えるならば、われわれは自治法改正というものに大賛成。しかし、こういうものは国の政治の影響であって、何も地方問題として取り上げる必要がない。もちろん組織法の問題でもなければ、財政計画の問題でもないといって、目をつぶられてしまっては、これは極端な例でございますが、それとは別にしても、同じように国の政策の影響あるいは国の経済の影響というもので、地方自治体としては、やっていけないところの財政の破綻を生じてくるところの地方団体がある、こういうものを解決するということが念慮になくして、自治体というものの簡素化合理化というものだけで解決していったならば、これは自治体のためには何らプラスすることにはならないのじゃないか、こういう心配を実は持たざるを得ない。ですから、いろいろ御説明はするけれども、国の一つの方針というもので、地方団体というものをあるワクの中にはめ込んでいくという根底がどうしてもあるのではないか、これを否定するわけにはいくまい、こういう点なんです。そうでないとおっしゃるならば、そうでない点を御説明いただきたい。
  93. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) ちょっと、私から先に説明させていただきます。  これは、自治法というものの性質というものもございまして、今おっしゃいました通り自治体の自治ほんとうに充実するためには、行財政両面にわたって実施すべきことは、これはもう当然でございます。それでありますから、行政面において考えるとともに、税財政面においても当然考えるべきでございまして、今度は、税財政面の問題では、税財政の問題としてわれわれはできるだけのことを考える、今度の施行におきましても、改正は十分十分とは申しませんが、できるだけの措置が考えられ、なお進んで考えるべき問題を考えているわけでございます。しかし、それとともに、行財政面におきましても、考えるべき改正を考える必要があろうと思います。それがまあ今度の改正でございます。それとともに、もう一つは、つまり自治法は、結局これは府県市町村の一般的な制度でございますから、一般的な制度として解決すべき問題と、まあ加瀬委員がおっしゃいました通り、個別的な——町村の実情に即する個別的な解決面というものと、これはもちろん分けて考える必要があろうと思うのでございまして、今度の改正は、もっぱら市町村府県の一般的な組織運営の面から考えて、いろいろ世上論議があって、合理化すべし、民主化、能率化すべし、こういう見地の問題を、民主化精神の基本原則にのっとりつつ取り上げたのでございます。個別的な問題は、それぞれ個別的な問題として、別途考慮をすべき問題は当然にこれはあり得ると存ずるのでございます。   〔委員長退席、理事伊能芳雄君着席〕
  94. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) ちょっと私から。ことに今加瀬委員のおっしゃいました基地の問題は、私も最も頭を悩ましている問題でございます。そこに生活している、そこに生業している人がそのためにお困りになっているという事実は、重大な事実と思います。今回の制度に、いろいろな仕事をした中にそれは入っておりませんです。まあ特別交付税等で少しやっている程度のものでございますから、この点は、もうどうしても根本的に解決しなければならぬけれども、防衛問題をここで議論するのは別といたしまして、自治体に対しまして、今のお言葉実に私痛み入った次第でございます。こんな点は、各地にまあ問題ございまして、早く直さなければならぬと思っております。この自治法との関係で申し上げますと、ちょっと私の申し上げたのがくどいようでございますが、調整と申しますか、合理化という言葉を俗に言いますが、今までの点で、組織なり運用なりの面で世間で申されておりまするところ——これも私は地方制度調査会という名前を用いたのでございますが、——言われる点におきまして、調整をしていこうという建前で、この案を作った次第でございます。財政面からいってのお言葉は、御非難の点も、相当私も頭を下げなければならぬと思います。じゃどうするか、こういう問題になりますと、この調整的行政組織及び財政の二律にわたった線を、今のところの財政状況では、私どものできる限りにおいてはやったつもりでございますが、御不満のあるということもよくわかっておりますけれども、組織そのものとしては、あるいは機構そのものとしては国民もこうした方がいいんじゃないかと私考えまして、このような案を出した次第でございます。
  95. 加瀬完

    加瀬完君 そこで私は自治法が財政問題と何もからみ合っておらなくても、簡素合理化とかあるいは行政経費の節減、あるいは地方歳出規模の圧縮といったようなことが説明の中に触れられておらなければ、こういう問題を提起するはずはない、それはもう語らなくても大臣はおわかりだろうと思いますけれども、平衡交付金制度が交付税交付金制度にかわりました。この過程を見ると、基準財政需要額というものと基準財政収入額というものとを計算いたしまして、この特に基準財政需要額は一つの積み上げ方式をとりまして、この二つの差額の補給を政府がやるという建前を初めとったわけであります。こういう建前でありましたけれども、事実は毎年度の国家予算というものとそれに基く地方財政計画というものによって、この積み上げ方式というのは何割か割引された形で出てきたわけです。で、昭和二十五年の決算を基礎にいたしまして、新規財政需要額というものを積み重ねていったわけでありますけれども、もちろん収入増減額というものを推算して、新規財政需要額というものを積み重ねていったわけでありますけれども、この新規財政需要の増加というものが一体国の責任によって生じているのか、地方の責任によって生じているのかということを私は問題にしなければならぬと思う。これは地方的な事情よりも国の政策による影響というものの方がほとんどなんです。たとえば二十六年、二十七年、二十八年というこの平衡交付金制度の当初における新規財政需要額、需要増加の内訳を、これは自治庁のお出しになったものを見ますと、二十六年には給与で四七%、国の施策によるもので三九%、物価の騰貴によるもので一六%、こういうふうにふえている。二十八年になりましても、給与が三四%、国の施策によるものが四〇%ふえているわけです。すると、ほとんどの新規財政需要額のふえ方というものは、これは国の政策の影響によるものなんです。だから当然その増加分というものはこれは交付金によってまかなわれなければならないはずです。しかし御存じのように二十九年度の新規財政需要額というものは三百七十八億であります。と思います。これをどうして出したかといいますと、節減方式というものをとっておる。たとえば公共事業を百二十九億切るとか、あるいは臨時事業費というものを二百三十億切るとか、こういうふうにして当然の要求のある地方の必要経費の中から切って、新規需要額というものを埋めているわけです。これが三十年度になれば、はるかにその方式がふえまして、たとえば給与費の増がある。そうすると、行政整理によって七十二億切るとか、旅費や物件費等の節減によって八十四億切る、こういう形によってタコ配の形で需要額を埋めている。こういう方針が今までの政府の方針だったわけです。今度は収入額はどうしたかというと、二十九年を見れば地方税が四百二十七億、三十一年ならば四百七十四億、これは地方だけの増税分で大体まかなう、こういう方式をとっておる。この方式というものではつじつまが合わなくなってきておる。財政計画によって適当に行政的措置でバランスをとるというわけにはいかなくなってきてしまった。そこでその簡素合理化というものを形式的にきめなければならぬ。それが財政的には再建整備法になって現われるし、再建整備というもののさらに裏づけのために地方自治法改正ということになって現われる。だから、大臣の言葉によれば、この程度の指導はやっても仕方がないのじゃないか、お前らは禁治産者だからと、そういうような形で総理大臣の、あるいは政府のいろいろの監督権というものが強化されてくる、こういう形をとったと、財政あるいは行政の経緯を見れば、私は判断せざるを得ないと思う。そういう考え方が国の財政というものを中心に考え過ぎていやせぬか、地方団体の立場というものはあまりにも無考慮に放置されておるのじゃないか、こういうふうに私は思えてならない。国の財政というものの中に地方財政というものを位置づけようという考え方があまりにも濃厚だ、それは地方団体をスムーズに伸ばしていくということに果してなるであろうか、こういう疑問を私は持つわけですが、大臣はどうお考えになられますか。
  96. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) ずっと午前に引き続いての一貫した御主張で傾聴いたしましたが、なるほど今の赤字であるとか、地方にかりに不合理な点が組織の上などにあるとしても、それは責任はむしろどこにあるかという問題は、今議会においても幾たびか論ぜられておるようでございますが、私は公平に申しまして、国の方に相当大きな部分があることを認めなければならぬ。同時に、地方の方にも考えなければならぬ点があるのじゃないか。大体時代の空気と申しますか、これを財政に現わし、あるいは経済に現わしました場合には、俗には、古い言葉でいえば、消極的な方策で引き締めていくというときと、事業を拡張してインフレ的なやり方をする場合と二つございますが、戦後におきまして少し伸びたものが乱調子になり、これを国家財政の面から引き締めていくというのがいわゆる一兆円予算等の起った原因でございますが、同時に地方に対しましても引き締めと申しますか、調整と申しますか、合理化という通俗な言葉もございますが、やり方をとっていったので、その点におきまして、あるいは先ほど仰せの、事業を縮めるとかいうような点も、地方だけ縮めるだけでなく、国の方におきましても相当なものをしたのでございます。その程度の点におきましての、御指摘のような地方を圧迫したじゃないかというような点があるかもしれませんが、大筋といたしましては、国の財政も地方財政もともに今国が地固めというか、地方の方は一年私はおくれておると見ておるのであります。その同じ線によってやっていくのであるが、これは地方をいじめ抜くためのものでなく、地方が伸びていくための方式としてとらざるを得ない今の国家政策の行き方であり、それに沿っておる地方政策の方向である。こう考えるのでありまして、私は弁解する意味よりも、大きな経済の線、財政の線、政治の線というものが時代的に一つの方向にあるのではないか。もちろんそれが永久にあったら大へんなことでございまして、地固めということができた暁に伸びていくのにはどうしたらいいかということをもちろん考えなければなりません。また国の方と地方の方と不へんぱに行っていいということも断じてございません。ただいま御指摘の通りでございます。私どもとしては未熟ながらこの線によって財政も立て、また一方におきまして、仕事の調整を得るために、自治法におきましても組織及び機構について改正を加えていこうと、こういう考え方でございます。
  97. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど来加瀬君が、地方の自主性というものには結局財源的な措置が必要である、それが十分にされていないで、国だけが健全財政というか、均衡予算といいますか、合理的な予算を組んでいて、そうしてその結果のしわというものがどうしても地方に押しつけられる。そういう点がどうかということをいろいろ言ってるんですね。で、まあ長官は国の財政ということからいえば権威者である、ということもわれわれは敬服するわけなんですけれども、しかし今の説明を承わっておりましても、やはりまあ地固めとかいろいろの点は、まあ予算の性格としておっしゃるわけなんですが、しかし根本的に言って、国の予算にはいわゆる国債というものはとってない。しかし地方の予算には必要経費の中に、地方債というものをちゃんと財政計画の中で見積っているということは、これは重大な相違だろうと思うのです。国がもしそういう健全財政とか地固め予算とかいうことの方針をとるならば、やはり地方もそれに相当した赤字なりあるいは地方債なりというものなしに、バランスのとれるような措置をとってやらなきゃいけない。それがないのは、結局国の予算の都合によってそのしわは地方に寄せるんじゃないか、ということを問題にしてるんじゃないかと思うのですが、この点はいかがでございましょう。
  98. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 松澤委員のおっしゃる通りでございまして、実は私も憤慨いたしまして、国は非募債策をとっているが地方は募債である。しかも四千何百億という大きなものがある。これを片づける方策もことし相当大蔵大臣と議論をしたんでございますが、そこまでいかずに今日に及んでおるのでございます。しかしうっちゃっておいたわけではありませんので、何としてもふえていってしょうがございませんから、非募債はできないけれどふえるのだけとめる、消極の消極でございますけれども、現状におきましてはお示しの通りの状況でございます。また過去におきまして地方に押しつけたとかしわ寄せしたという事実も私は認めていいんじゃないか、率直にそう思います。けれども現状をどう処理するかという点につきまして、あるいは収入の方面、あるいは支出の方面、財政の面におきましては、できるだけ方向をきめてことし進んでいくつもりでございます。お言葉のように、言い返すという力もないほど、今地方債の問題というものは非常に大きな問題でございます。借りかえでもするとか、あるいは六百億以上ふやさないようにしようとか、消極的ではございますが、傾向としてはそういう方向に進めていく。なおでき得れば四千七百億円の地方債の方にもしかるべき方策をきめていかなきゃならぬと考えております。
  99. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 まあ率直に大臣お認めになりましたし、過般、この地方行政委員会におきまして、この地方債の問題につきまして大蔵大臣に尋ねたところ、やはり大蔵大臣も現在のように地方債がふえるということはどうもおもしろくないから、この点については検討しようということを言っておられました。で、私たちが、結局国の予算の都合によってその犠牲を地方にしいるものであるといった原則は、まあ自治庁長官なりあるいは大蔵大臣なりによって、漸次認められてきたということは非常にうれしいことでありますし、そしてまあ地方財政の再建という点につきましても、ある程度までは肩がわりをしようというようなことになっておりますし、われわれから言うならば、一定の期間は、政府責任と考えられるような赤字については、たな上げするなりあるいは他の方法によって、これを地方の方から国の方へ引き取ってやる、というような方法も講じられなければならないということを主張しているわけなんです。問題はあると思いますけれども、この地方団体の財政の再建ということについて手が打たれたということは、非常にけっこうなことだと思います。今後やはり三十年及び三十一年には、地方制度調査会の答申にもよりまして、交付税交付金の率を引き上げていただいた、これは暫定的なことでありましょうが、そういうふうにして財政の基礎を固めていくと、そして起債に依存するという部分をできるだけ少くして、過去の赤字を解消するとともに、今後赤字を作っていかないということが、やはり国の財政とともに地方財政を考える場合に、必要ではないかとこういうふうに考えるのです。  ただいまのお話によりまして大臣も相当考えられておるということを承わりまして、非常に愉快に思っておりますが、この点につきましてさらに大臣が今後の財政計画の点についてこういうふうにしたらいいんじゃないかということを一つ明示していただいたら、あなたのお気持だけでもよろしい、明示していただいたら大へん結構ですが。
  100. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) この地方財政計画と国の財政計画とうまく合せてゆくという問題は非常に大きな問題でございまして、まあ一番大きな問題は税の関係でございます。もう一つは今申し上げました地方債の問題があるのでございます。しかも両方からめての問題も地方債を減らすために方策はないかと、こういう問題もございますが、私の考えているのは税では国と地方との間にまだ相当考える根本問題があるのではないかと思います。案がなくて申し上げるのはなんでございますが、私は見当としてはそう思うのでございます。政府がよく税制整理をするというこれも空文句でなしに考えなければならないと思っております。  それから地方債の問題につきましては、何としてもこれは問題は利子の補給という点が一番大きいと思うのでございます。この点も実はこの間大蔵大臣と相当にやりあったのでございますが、利子補給の問題は一般の方にも及ぼす関係もございまして、問題はあとへ残しておるのでございますが、これも考えなければならない問題だと私は思います。  第三の交付税の問題につきまして、あとから私の言ったことは少し言葉が世間で誤解されているようですが、すっぽり二割五分で切ってしまへとこういう意味ではございません。二割五分は大きな数字ではないかと、三税の四分の一ということは大きな数字ではないかと、国家財政としてもこれは考えなければならんと言っただけでございまして、とめろといった意味ではございません。これはどなたでもお考え願いたい点ではないかと、一面には義務教育国庫負担を全額やったらどうかというこういう問題もございますが、地方自治の建前から申しましても、教育行政というものは根本の問題でございますによって、金ばかりで解決すべき問題ではないと、私はちょっとそういういろいろな感じも……。先ほど加瀬委員の言われました軍事基地のごとき問題などこういう問題もある。根本的に今度は考えてみたいと、何にもまとまった考えではございませんが、私の気持はそれでございまして、はなはだ不満の点も多いでございましょうが、何とかここで乗り切って地固めをしていきたいというこれが私の一念でございます。
  101. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一点だけ承わりたいと思います。今度交付税の税率を引き上げられたと、それからいろいろと新税を起された、ところがやっぱり新税を起せばいろいろ長官が心配されて、転嫁という現象が起らないように措置されるということを言明されました。この点は非常にいいのですが、しかし新税を起すということになれば、どうしたって転嫁されそうな税金だけしかあとに残っていないのです。どんなにされてみましても、やっぱりどこか住民に負担を転嫁するという格好の税だけしかもう考えられないのです。そこで問題は今もいろいろ税制調査会とかいうようなところで検討されておりますが、国税の場合地方税の場合、それから直接税の場合、間接税の場合と総合的に考えていただいて、国もある程度までは公債を認めるということを考えられなければならんでしょう。そうして多少そういうことも考えられるようになれば、国の税としても比較的転嫁とか負担とかいうような現象のないような税は地方に委譲すると、国税と地方税の割当なり配分なりというようなことがこの次に考えられなければならないと思うのです。そういうような問題についてそれぞれ検討されていると思いますが、どんなふうにお考えでしょうか。
  102. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私はやっぱり税でも国の方で直接税が非常に高くなっているということを申し上げましたが、地方も相当高いという見方でございます。それから残されたる税というものはよく言う販売の関係の税ですとか、そういうようなものも各国で行われて各国で悩んだ税であります。これも考えてみたいと思います。同時に私はやはり経費の方でもむだのないようにいたしたい、それが圧迫になったりすることはいけませんけれども、これもやっぱり国会の毒としてもそういう点が御忠告願えるような立場にお願いいたしたいと、やはり相当費用は大きうございまして、ことに人件費で食っておる国の財政、地方の財政でございますから、人の立場というものはそう簡単にできませんけれども、何とか経費の節減ということも一つの問題じゃないか、国が地方に押しつけるということはできませんから、国の方でまずやってみて、それでよかった点は地方でやっていただくようにしてもらいたい。やはり国が先に立たなければならないと私は考えておる次第でございます。
  103. 加瀬完

    加瀬完君 今交付税の問題が、松澤委員から出されたわけでございますが、もう一度特に今年三十一年度の財政計画は二十九年度を押えるということが言われておりますから、二十九年度の財政計画の一部を例にとりたいと思いますが、収入の面では先ほど言ったように地方税を四百二十五億、地方譲与税を二百三十五億、雑収入を百八十二億増徴いたしております。ところで国の方から出す国庫支出金は百四十二億減、地方債は百三十九億減、交付金は百六十億減、こういう数字を二十九年度の財政計画は示しておるわけであります。これはどこできめるかというと、御存じのように政府がきめるわけであります。こういうふうに基本線をきめて、このワクの中で地方の収入というものがきめられてくるわけでありますから、どうしても財政的には特に今度の交付税制度になりましてからは、積み上げ方式というのは一切さらに希薄になってくるわけでありますから、財政的には、形の上では地方の財政はほとんどが交付団体におきましては中央に押えられておる、中央集権化というものが完全にこれは生じておるのだと、こういう見方を私はせざるを得ないと思うのです。先ほど大臣はなかなか重要なことをおっしゃられたのであります。それはいろいろ私の質問をいたしました最後のお答えに、国家の政策という言葉をおっしゃられた、現在の国家の政策からすればこういう方法もやむを得ないということだろうと思います。そうすると、地方の要求とかなんとかいうことは取り上げるといたしましても、これは二次、三次の問題で、地方財政のあるいは地方行政の前提条件なるものは国家の政策だと、こういうことに私はなると思うのです。その国家の政策というものはどういうことを意味しておられるか存じませんが、予算の上に現われた重点から見て、防衛費の支出というものは相当これから増徴していくべきものであろう、これが一つの国家の政策の強い線になる。そうなってくると、この国家の政策を推進するためには、地方財政なり地方行政なりというものの行政規模あるいは財政規模の圧縮というものはまあやむを得ないと、こういうことになるのですか。
  104. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は国家の政策と申し上げたと記憶いたします。また言ったでございましょうが、その意味は中央地方を通ずる財政経済行政の政策という意味でございます。決して地方を忘れた意味の言葉では、言葉が足りなかったのでありますが、国家政策というものは少し何かと思いますが、それから国の財政の面から防衛費がふえてきて地方を圧迫するのじゃないかと、防衛費の問題はここで私の言うべきことではないと思いますから申し上げませんが、地方財政に関する限りは、何としても今まで以上に国の方でも見てもらう方向に進まなければならぬと思っております。その金を防衛費の方からとってくるというような意味でなしに、真剣に地方財政の建て面しには考えなければならぬと、かように考えておる、言葉の足りなかった点は……。
  105. 加瀬完

    加瀬完君 よくわかりました。しかしその国家の政策も、地方の政策を通じての国家の政策というものの中で、やはり防衛費の支出増というものをこれはやはり前提として考えなければならないだろうと思うのです。これと地方交付税なり、あるいは地方に大きく影響のある義務教育関係の文教費なりというものは、結局競合をする形をとらざるを得ないと思う。さらに賠償がふえて参りますと、これは防衛関係、賠償関係というものを引っくるめて広義の国防関係費といいましょうか、そういうものを一つにまとめたときに、これの増徴と文教費なりあるいは地方交付税なりが競合した場合、地方交付税なり文教関係費なりという毛のが、これはそれを押しのけて拡大していくということは非常に困難じゃないかと思う。こういう客観的な前提はお認めになられますか。
  106. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) もちろん一つの袋の中の金を分けるのでございますから、響くことも当然でございます。それから割合論でいきますと、義務教育費と地方の交付金というものの割合は、防衛費よりずっと大きくなっておるのです。けれども内容が違いまするから、そういう単純な比例でなしに、国で出す金、地方から集まる金、しかも地方は国の仕事を流して行う所でございまするから、また民主政治は地方の自治が伴わなければできないことでございまするから、その意味において私は地方財政及び地方行政を強調しているわけでございます。
  107. 加瀬完

    加瀬完君 今度は一面、都道は別にしても府県あるいは市町村などの行政規模が、現状においては伸び過ぎておる、こうお考えになられますか。それとも標準行政規模としてはもっと高まったものを必要とする、内訳的に言うならば、ある程度経費の増徴というものははかってやらなければ、完全な標準行政というものが行えないじゃないかと、こういうふうにお考えになられますか。
  108. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) ただいまのところ、日本の地方財政及び国の財政の限界におきまして、理想的なものにすぐ進むということは、なかなかむずかしかろうと思います。日本の国民の力、経済力、財政力、教育力全部を引っくるめまして、その力にふさわしい程度のものであるか、こういう点については合理化すべき部分もあるじゃないかと思います。何かそう言うとすぐ削るように思いますが、そういうふうに少くとも考えていい点が多いのじゃないか。考えた結晶といたしまして、この程度のことは自治法においてもやっていただかなければならぬじゃないか。しかもそれのワクをきめる場合でありましても、これを行うのは条例というものに主力を置いていきたいと、こういう考え方でございます。
  109. 加瀬完

    加瀬完君 そういう一面もありましょうけれども、もっと一般的に財政力を高めなければならない、こういう点はお認めになられますか。
  110. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 現在の行政のレベルが十分か不十分かということになれば、これはわれわれはまだ不十分で、できるだけあげたい、財政力の許す限りあげたいと、それはそういう気持でございます。
  111. 加瀬完

    加瀬完君 それはおかしい、財政力の許す限りということはおかしいと思う。財政力をさらに賦与して、もっと高めたいというなら筋は通るけれども、財政力の許す限り、財政力というものが先行することでは自治体の完全なる発展ということはできない、自治体というものを完全に発展させるためには事情はむずかしいけれどももっと財政力がほしい、こういう意味だと私は解釈をいたします。そこでそれは政府も認めるだろうと思う。今どうしても縮めても縮めても縮み得ない膨張せざるを得ないところの必然的な経費というものを、どういうふうに現在政府は按配をしておるか。それが松澤委員からも御指摘がありましたように、国の政策としてはいろいろの財源措置というものを考えられませんから、しかし地方自治体の財政膨張というものをとめるわけにはいかぬと、それがその膨張分というものが二十九年度以来の財政計画では全部住民転嫁という形に私はなっておると思う。これはいかがでしょうか。
  112. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) それは結局財政計画についての御批判、考え方という問題になるだろうと思っておりますが、われわれといたしましては財政計画の面から考えましても、従来いろいろ不備でもあり不十分であるということは、もう自覚しておることでございます。それで今年度の財政計画におきまして、相当な改善がなされておるわけでございます。あれで百パーセントだという気持はこれはもちろんありません。それだからなお検討すべき問題が残されておるということを先ほども大臣が申された通りでございます。それでございますから、私がまあ財政力と申しましたのは、要するに中央地方を通じて国民全体の財政力という問題でございまして、その国民全体の財政力、結局負担能力と申しますか、その範囲内において地方の行政というものをできるだけ実情に合うように伸ばしていきたい、これはもう自治庁としては一貫した考え方でございます。
  113. 加瀬完

    加瀬完君 実情に合うようにというようなことで、結局自治法改正や財政計画というようなものを国の中央集権化に合ったもののように意味づけられるようでございますが、これは大臣に伺いますが、それは確かに国の方でも財源措置を年々増させております。しかし国が新しく増加させる分と、地方がみずから増加していくという分というものでは、比率がこれは非常に地方の方に重いと、いわゆる自主財源という形で解決をとらせていくという方法がとられておるということは、これは御否定できまいと思う。で財政再建法によりましてもこれは赤字のたな上げや利子の補給はありますけれども、結局はまず事業をするにしても、あるいは返還額を生み出すにしても節減という一つの方式と、もう一つは増収というきつい方式をとらせておるわけです。これが財政計画にもそのまま現われておりまして、この地財法の性格というものがやはり自治庁の御方針である、というふうに私は解釈してそう誤りがないと思いますが、それが言い過ぎでございましたならば、一応地方の必要経費というものを、国の負担よりも地方の方に余計近ごろかけておるという傾向はあると、この点はお認めになられると思いますが、いかがですか。
  114. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは地方の財政は、今申し上げるまでもなく、結局中央地方を通じて、われわれは総合的に考えていかなければならない、行政も中央地方を通じて総合的に考えていく、その考え方で今の財政計画もこれはできておるわけでございます。ただその財政計画の組み方につきまして、地方の側から言えば、もっと国の財源か何かの形でいくべきじゃないかという問題だろうと思います。これはいろいろ意見、見方はあるだろうと思いますが、われわれはそういう立場で総合的に考えてそれぞれ適切を期していく、こういうことで財政計画ができておるわけでございます。
  115. 加瀬完

    加瀬完君 私は財政学の講義を聞いているのじゃない。質問したことに答えてもらいたい。自然膨張というものをとめようとしても防ぐことができないと、その膨張の計数というものを合わせるのに地方がよけい負担をしているか、国が負担をしているかというと、地方に対する負担のかけ方が強くなってきているのじゃないかと、これは認めざるを得まいと、数字が現わしておるのだからと、こういう点なんですよ。
  116. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 国の方と地方の関係のからみ合っている点の経済財政につきまして、はっきりした、今の加瀬委員の言われるように、国より地方の方が多いと、一つの費用についての問題はできましょうが、財政ということがからみ合っておりますもので、そこまで私は言い切ることが、ちょっと自分じゃできないような気がいたします。
  117. 加瀬完

    加瀬完君 三十一年度の財政計画によりますと、結局新規財政需要額として打ち出された金は五百三十一億、実質的に交付税の増率分、あるいは地方債の減額分と、こういうものを差引して参りますと、三十一年度においては国が五十六億か七億しか出していないことになる。ところが地方の方にかけられた計数というものは四百七十四億ということになる、こういう傾向がいい悪いじゃないのですよ、こういう傾向が国も出し切れないので増額分というものを地方に転嫁すると、こういう傾向が生れてきておるということは私は否定できないと思う。で、同じことを繰り返しておっては恐縮でございますが、そういうことを私が出しますのは、住民の負担能力というものは相当限界にきているのじゃないかと、松澤委員も指摘したように。にもかかわらず相変らずそういう方式をとっていますと、一体地方自治体というものはしょい切れなくなる結果にならなくはないかと、こういう点なんです。具体的に申しますと、昭和二十五年を基準年度と押えますと、地方税の負担は二千二百六十三円になります。二十六年は三千二百十九円、二十七年は三千五百八十五円、二十八年は三千八百六十三円、二十九年は四千二十円、これは指数で申し上げますと、二十五年が一〇〇とすれば、一四二、一五八、一七一、一七八とこういうふうに累増をいたしております。これを戦前の昭和九年十年の金額を大体物価指数を合せまして換算をいたしますと、昭和九年〜十一年は二千百五十二円でございますから大体昭和二十五年の九五ということになります。そうしてみますと、地方税は戦前よりもはるかにだんだん累増しておると、さらに国はもういろいろの補助金たりあるいは交付金たりというものはもう出し切れないから、というのでこれをセーブして参りますと、この負担というものがさらに地方の住民にかかってくるのじゃないかと。で、税金はたくさん納めるわ、しかしながらその税金だけでは仕事もできませんから仕事はできないわ、こういう形では地方自治体は完全な運営をしておるということにはなるまい。こういう心配があるのでございますが、これらの点が、自治法の市町村とは言わなくてもかりに最も小さい町村の行政規模、あるいは行政権能、こういうものを考えますときに、どういうふうに御研究なされましたか。
  118. 早川崇

    政府委員早川崇君) 加瀬委員のお説の問題点は、たとえば地方税それ自身が比率が多くなるということは、それだけを取り上げますると決して非難すべきことではないと思います。私は、お説の指摘される点は、国の予算なり財政というものを削って、たとえば防衛関係とか無駄なものを削って、それを地方の財源なり財政に充てる、こういう御趣旨かと思うのでございます。
  119. 加瀬完

    加瀬完君 そんなことは聞いておりません。
  120. 早川崇

    政府委員早川崇君) それなればわれわれといたしましては、地方の自主財源がふえる率自体については、決して私は好ましからざることだとは思っておりません。全体の国民の負担する税がさらに増税という形をとって、国地方を通ずる税が増税という形をとるのは限界にきているのだ、こう言われるならば、われわれといたしましては、むろんこれは好ましいことではない、限界に近い点にまできておるのではないか、要は、国民の事業生産力を上げて自然増収の方向で財源を得ていくという方向で、これ以上のいわゆる増税というものはなかなか困難な状況にあるのではないか、こういう点ではお説の通りでございます。
  121. 加瀬完

    加瀬完君 結局ですね、まあ現状におきましては、地方税をこれ以上増徴するということには相当無理がある、こういう点はお認めいただいたと思うのです。しかしながら、国の方で無制限に地方の要求に応じて交付税なりあるいは補助金なりというものを増加するということも、これも国の政策の現状におきましては非常に困難である。そうすると、地方財政というものの問題点の解決というものは、産業なり経済なりというものを発展させて、地方自体の固有の財源というものをもっと広げていくよりほかにはない、御説明はこういう点だと思います。その通りだと思います。そこで、財政計画なり現在審議しておりますような自治法なりによって、その住民の希望する経済発展、あるいは収入増加、こういう素地が作られるような方法が打ち建てられるということならば、なるほどとうなずける。しかし、そういう方法がとれないような財政計画であり、あるいは、もろもろの近ごろ立案されるところの法規というものがですね、そうならない、そういう傾向がないかということを私は先ほどから聞いておるのです。もう一度申し上げますと、たとえば、土地改良なりあるいは干拓、開拓といったような広い意味の食糧増産でもよろしゅうございます、あるいは地方産業の振興でもよろしゅうございます、こういうものをやろうとしても、中央において出費、投資といったようなものは予算的に不可能である。補助金というものは非常に詰まってきておる。広い意味の公共事業というものも、ある程度だんだん幅を狭められて参りました。だから単独事業をやろうと思えば、単独事業はまかりならぬといって、一番先にやり玉にあげられるのが単独事業である。そうすると、たとえば、農村地帯において増産をして収入を上げよう、土地改良をやろうと思っても、財源的にはできないではありませんか。中小都市におきまして、何か中小企業の振興をやろうと思って、中小企業振興によるところの予算というものを組もうと思ったところで、そういう赤字団体なら赤字団体は新規事業まかりならぬといって組めないようになっておるのであります。これではいつまでたっても地方が自主財源によって生活力なり経済力というものを増していくということはできない。できないようなきまりというものを初めから作って、自治体の発展だなどと言ってうそぶいておるということは、自治庁けしからぬじゃないか、こういうことを言いたいのですよ。
  122. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) もちろん、そういうふうにいばった気持は私持っておりません。結局事業を地方にやるということも、はね返ってやはり利益になるのでございますから、今のところできなかったのですが、今の国際情勢、貿易関係、所得の増加の割合等を見てきますと、私は先に明るみが出てきたのではないかと思います。先ほど松澤委員も言われましたが、公債の問題につきましても、今までの一本調子の考えでなく、むろん放漫でなく、インフレでなく考える余地も出てくる。非常な変化があれば格別でございますが、明るみがきておる、きつつあるのではないかと思いまするによって、国の財政に地方財政が一年おくれておると私が言うのはそこなんでございます。    〔理事伊能芳雄君退席、委員長着席〕 従って、今日のいろいろな整理的の方向を期待しているというのも、それとやはり線が沿っていかなければならぬ。もちろん国の出す金が事業その他に行きまして、はね返ってきて地方も豊かになっていくということは期待もしておりまするし、また、その方向にいくのではないか。少し私楽観論を申し上げたようですが。
  123. 加瀬完

    加瀬完君 私は、たしかに大臣の先ほど御説明されました国家の政策というものを、現在の政府のやり方から類推して参りますときには、早川政務次官のおっしゃるように、そういう方向以外にないというような形も、これは理論的には類推されます。しかし、現状でも私は工夫というものがあると思う。たとえば、第一次から第二次に移るときの鳩山内閣の経済六カ年計画におきまして高く掲げました自給度向上というものによりますと、食糧増産なり、合成繊維なり、石炭なり、電力なり、こういうものが取り上げられたわけです。これは相当産業の振興にもなるし、あるいは経済効果というものをあげることにもなるし、個人の収入というものをあげることにもなると思う。ところが、本年度の財政方針によりますと、これがひっこんじゃう、どういうわけでひっこんだか知りませんが、ひっこませてしまった。初め掲げた政策というものならば、地方においても財源拡充というものがある程度期待できたものが、それをやめちゃった。そのために、たとえば二万円以下、二万円から四万八千円、それから以上、こう段階を分けると、その中間階層の二万円から四万八千円の収入所得階層というところが分裂を生じて、そうしてだんだん上の方と下の方に分れていって、中間階級というものがなくなってきていることは統計の示す通りです。そうなってくると、地方税の負担というものに響いてくる。これが現状なんです。こういうことを考え合せまして、総合的に何とかなるだろうという前に、何とかするという前提で、簡素合理化ばっかり考えないで、もっと自治法の根底である最小限の行政規模というものを考えていただかなければならないと思う。なぜ私がこういうことを言うかと言いますと、再建整備の実施について私は自治庁の御当局に伺いました。再建計画を進めていくためには、いろいろ行政能力というものに階段を生ずるじゃないか、しかし、地方自治体であれば一応最低の行政規模というもの、行政基準というものがなければおかしいだろう、最低の行政基準というものを設けて、最低これで押えていく、こういう標準をあなた方は持って査定をされるのか、こう伺いますと、そういうものはない、Aの市ならAの市で給与費が高ければ給与年費を切る、事業費を切らなければ再建ができなければ事業費を切っていく、個々別々にやる、こうおっしゃっておる。そうなって参りますと、再建団体では、行政能力が地方自治体でありながら非常に階段を生ずる。これは地方自治体に対する地方自治の破壊です。こういうものを防ぎとめるような計画というのが一番必要でありますのに、今度の自治法改正には、町村の権能や府県の権能というものがたくさんうたわれておりまするけれども、そういう最低行政規模を確保するという保障というものが何ら打ち出されておらないように私には思える。こういう点は、一体この法案の立案に当りましてどんなように御討議がなされたんでありましようか。
  124. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これはまあ結局自治体の何と申しますか、標準行政規模の実体を自治法で確保するかせぬか、こういう問題でございますが、これは行政の面からきめるとすれば、それぞれの行政の中味を法律できめるか、しからずんば、その行政をある程度めどにおいたものを財政的のワクで保障するか、結局こういうことに結論づけられると思うのでございまして、今の建前では、それぞれの実体的な行政は自治法では必ずしも取り上げぬ建前になっておりまして、いわゆる行政のワクというか、権能という立場からきておりまして、それぞれの実体法できまっておるわけであります。しかしながら、その実体法できめるのを財政的に保障する必要があるというのが、まあ、交付税でいう基準財政需要額という考え方、だろうと思うのでございます。結局この基準財政需要額という見方が、一体まだ、十分であるか不十分であるかと、そういうことに加瀬委員のお尋ねの問題は帰着するのでございまして、これは、われわれは基準財政需要額が、今の市町村のレベルの低い、あるいは生産性の低い市民生活、生産生活から考えて、これは十分だとはわれわれも考えておりません。もっと財政需要というものを上げてしかるべし、それに沿うような標準行政規模というものをできるだけ実現さしたい、これはわれわれもそういう考えでおります。しかしながら、それは先ほど来いろいろ議論になりますが、結局中央、地方を通ずる財政の現状というものを基礎にしながら、それをできるだけ実現さしていく方向にわれわれとしても考えたいと思います。この自治法の問題は、そうした基準財政需要を財政面からできるだけ充実、向上さしていきたいといろ気持は強く持っておりますとともに、個々の町村におきまして、そうした充実した行政をやっていくために、団体の組織とか機構とかいう、要するに、内部行政部門というものの動き方をできるだけ合理的にやる必要があるじゃないか、そして、われわれといたしましては、実際の行政の実態に経費をできるだけ回すことを考えていかなければいかんのじゃないか。それには、まあ、この団体の組織とか権能とかいうものを合理化さしたい、これは、もちろんこれで問題を解決しようとするのではないのでありまして、財政上の問題を考えるだけ考えるとともに、それと相並行して、こういう面においても必要な改正を加えていく必要があるんじゃないか、両々相持って、初めて自治体の行政の充実、向上を期し得る、そういうのがわれわれの気持でございます。
  125. 加瀬完

    加瀬完君 百五十八条とか百八十条とか、今行政部長の説明されたような点が、今度の改正法の趣旨にあると思う。しかしあなたのおっしゃるような方法でその目的を達しようと思えば、この前二十二国会かに提案されたような、もう地方自治なんというものは、ある程度踏みつぶしてもやむを得ないという強い線の改正でなければ私は出て参らないと思う。目的を達することはできないと思う。そういうことを何も賛成しておるわけではございませんが、ただ、こういう機構改革というものをやって簡素化いたしましても、現在の地方団体の財源というものは何によってまかなわれているのか、ということをもう少し私どもは分析する必要があると思う。これは松澤委員もさっき出しました、やはり地方債の問題がどうしてもからんでくると思うのです。今までの政府といいますか、一般的な傾向は、地方債というものの役割を、あたかも一種の財源的性格を持たしておったのではないか。財源が枯渇してくると地方債を願うと、それは交付金というのでも何でもないのだけれども、あたかも交付金でももらったような、あるいは交付金と同じような作用をさせるような役割で、地方債というものを与えておったという傾向がある。ところがこの大体地方債というものを出願した所は、貧弱団体でどうにもやりくりがつかないから地方債を要求したわけです。ところが今度は、地方債というのが極度に制限をされまして、返還能力のある団体でなければだめだと、あるいはその地方債というものを元にして、また新しく果実を生んでいくような、そういう企業的な事業でなければだめだと、こういうふうになってきて、返還能力のない者は一応お前たちはだめだという形が打ち出されてきた。新市町村建設計画によりますと、しかしながら再建団体のようなものであっても、一応新市町村の場合は、これを許していこうということでございますけれども、許されたところでこの新市町村はまた貧弱財政に変りがありませんから、赤字の原因を再び作っていくということになりかねない。そうなって参りますと、地方債というものは、貧弱団体では、できるならば政府許可しないだろうけれども、健全財政をとっていくために、地方債というものに頼ることができなくなっちゃう。できなくなっちゃうとも一応の行政能率をあげていこうという財源に支障をきたしてくる、こういう悪循環が当然生ずると思うのです。ですから簡素合理化というだけで、財源措置というものを考えないでやっていっても、自治体の権能を発揮するということにならないという欠陥が生じてきているわけですけれども、これらの点についてはどういう御考慮がなされておるか。
  126. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) これは加瀬委員のおっしゃる通りでごさいましセント解決するということは考えておりません。これはただ自活体の組織運営、行政面だけについて必要な改正を加えようとするのでございます。あくまでも財政面におきまして、加瀬委員もおっしゃいましたような基本的な問題を、さらに検討する必要があろうと思います。特に起債の問題につきましては、先ほどいろいろ御議論が出ております通り、われわれといたしましても、一番重要視している問題でございまして、この問題は、今度の財政計画では解決をみませんでしたが、今後の財政計画の上におきましては、何とか検討いたしたい。これは自治庁一致した見解でございます。
  127. 加瀬完

    加瀬完君 数字ばかり出して恐縮ですが、地方債の借入れ先内訳というのが、地方自治年鑑に自治庁の提供した資料として出ております。たとえば昭和十五年を見ると、政府資金が五五%、金融機関の関係のものが三三・四%、その他一一・六%となっておる。それが二十五年になりますと、政府資金が九五・六%、金融機関が〇・七%、二十七年になりますと幾らか落ちまして政府資金が九二・五%、金融機関は幾らか上りましたけれどもまだ五・三%にしか過ぎない、借入れ先の内訳はこういうことなんです。ですから地方債の財政的に果しておった役割というものを十分検討して、その地方債を締めるならば、その穴埋めというものをどこかで考えてくれなければ、自治法だけをどんなに先議しても、地方自治体の運営というものは、最低限度すらも維持することができないということになるのであります。大臣この点どうお考えなられますか。
  128. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) だんだんのお話でございますが、結局私の考え方は、行政の機構及び組織について、加瀬委員が、消極的であって何らこれでは伸びないというお言葉でございますが、私は現状においてはこの線において進むべきであり、他の一面におきまして財政計画の面における税とか、お言葉のような非常に不合理と仰せられる地方債の問題とかは、別個に財政の問題として考えていかなければならない、けれども別個ということは二つつなぎ合せなければならぬのはお言葉通りに私も考えております。ただ自治法が機構及び組織につきましての点を考えて立案したということと、財政の面において十分考えなければならぬという点一を結論といたしまして、地方の自治が進んでいかなければならぬという方向に持っていかなければならぬと、私はかように考えている次第でございます。
  129. 加瀬完

    加瀬完君 私はこれで総括的な質問を終りたいと思いますが、私がるる法案には直接関係のないような点を伺いましたのは、今大臣の御説明によりましてもはなはだ不鮮明でありますように、この自治法というものの改正案を出しました政府の意図は、地方財政を健全化するための法的措置一つであり、それは経費の節減というものに重点をおいて、計画と実際の間隙を埋めることに、この法案が成立すればなるからという御前提があったわけでございます。ところがこの法案はどういうふうに審議をして参りましても、健全化するという線は、たとえば今の地方債の財源のように扱っておるような貧弱団体においては出てこないじゃないか、これだけでは健全化というものはまだできておらない、別の残された問題というのがあるのじゃないか、こういう問題というものを解決してくれなければほんとうの意味におけるところの新市町村の建設というものはできないということにもなる。でこの点は今前提の問題におきましていろいろ詳しく大臣、政務次官、行政部長から承わりましたので、今度はあわせて法案の一条々々の審議に入りましたときに、さらに私はその法文の内容についてまた伺いたいと思いますので、委員長もだいぶ急がれるようでございますので、総括的な質問は一応打ち切って私の質問を留保したまま終ります。
  130. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 他に質問はございませんか……ちょっと速記をとめて。    午後四隣十二分速記中止    ————・————    午後四時三十五分速記開始
  131. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 速記を起して。
  132. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 この間資料の要求で二十二国会に出した法案と今度の法案との相違点が配付されております。大体今度の法案が、前回のものから見ると、非常にいい改正がみんな取られてしまって、かすみたいになった改正案という批判が相当あると、われわれもそういう声をずいぶん聞くのです。そこで長官からごく要点だけでけっこうですから、二十二国会に出したものと今度の相違、これを大体出された資料によって簡単に一つ要点と理由を御説明願いたい。
  133. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 二十二国会提案されました地方自治法改正案と今国会に出しました、御審議を今お願いしておる第二十四国会提案地方自治法改正との相違の問題でございますが、今、伊能委員の言われる意味におきまして、もうだいぶんに骨抜きになったのじゃないか。あるいは後退したではないかというふうなお声も聞いております。私どもとしては、総じて申しますと、いろいろ疑義のあった点を調整いたしまして今回の案にしたわけでございまして、自治法改正案としてはいろいろな問題に触れていると思います。項目分けにいたしますと、ここに書いてあります通り、議会の問題、執行機関の問題、給与、財務の問題、国と地方団体との調整の問題、大都市の特例問題等六つに分けられておりますが、一番大きな項目の方では議会に関することと、執行機関に関することと大都市の問題が一番議論の多かった点かと存じます。議会に関する事項での今回のと前の提案との違った点を申しますと、一つは定例会の制度であります。もう一つ委員会の制度でございます。なお二つばかりありますが、おもな点は定例会と委員会の問題でございます。前のときには定例会、臨時会の制度を改めまして、通常会、臨時会の制度にしようとしたのでございます。今回はやはり定例会、臨時会の制度を置きまして、通常会、臨時会の制度はやめました。定例会についての大原則は毎年四回以内でございます。四回以内において各地の条例定める、こういうことにしたのでございます。つまり定例会制度を続けますが、四回以内ということにしたのが前の通常会、臨時会の制度を改めた点でございます。  次の委員会制度の方でございますが、委員会を俗にいう横割りにして数を制限しようというのがこの前の考え方でございます。横割り、すなわち各省別のようなものでなくて、法規委員会、歳入、歳出、決算というような、横に事柄を割っていこうというのが前  の考え方でございましたが、今回は現在の縦割りも置いて、横割りをとりたければとってもよい、御自由、ただし数におきまして、都が十二以内、道が  八以内、それから人口百万以上二百五十万未満の府県、三十万以上百万未満の市は六以内、人口百万未満の府県、人口三十万未満の市及び町村が四以内、つまり十二、八、六、四の以内におきまして都道府県、市町村のその数を制限していく、中味のことにつきましては自由でありまして、自治体にまかす、こういうのでございます。もう一つの違った点は、議員一つの常任委員にしかなれない、こういうことでございます。議会制度におきましては、なお少数者の意見を尊重するという意味におきまして動議を出す場合に、前の場合は六分の一以上の賛成を要するとしたのを、八分の一以上の賛成を要することでいいことにしたのでございます。それから前案では議会の事務局長、書記長、書記その他の職員は、長の補助部局の職員をもって兼ねさせることができるとありましたのを、こういう改正は行わないことにいたしました。なお、この議会制度の中で、前と同じように存しておるのは、請負を議員においてする場合の禁止規定は依然として前通りございます。大体におきまして定例会の問題と委員会制度、これが今回の案が前の案と違った点でございます。  第二は執行機関のことでございますが、この点につきましては大きな問題は例の不信任案の制度でございますが、過半数同意をもって足るということに改めようといたしましたが、現行通りにいたしまして、三分の二以上出席のもとにその四分の三、これもいろいろな世間の声によりまして前の改正をやめて現状通りにしたわけでございます。例の監査委員の任期でございますが、二年を四年にこの前延ばそうといたしましたが、議員でない者の方、すなわち学識経験者の方も三年にしただけでございまして、議員たる監査委員の任期は議員の任期による、こういうようにしたのでございます。執行機関に関する点は、前のものと今回ではかような差があるだけでございますが、例の部数を制限することは前通りで、今回の改正案にも入っておるわけでございます。一定の部数以上につきましては、「内閣総理大臣に協議しなければならない。」こういうことになっております。議会制度と執行機関に関する制度はかような点でございます。  給与に関した問題は、今回——前にはなかったのですが、——期末手当支給することをきめたのでございます。それから前と今度と両方を通じてありまするものは、給与の種類を法定するという問題でございます。  第四の財務に関することは、先ほど行政部長がお話しされましたが、ずいぶん議会をそっちのけにして執行機関の方で借金したりいろいろなことをするので、それはいけない、国の制度も同様でございますが、「地方公共団体は、法令又は条例に準拠し、且つ議会の議決を経た場合の外、予算で定めるところによらなければ、」 「債務の負担の原因となる契約の締結その他の行為をしてはならない。」、議会そっちのけでいろいろな事業を起したり契約をしたりする場合がありまするのでそれはいけない、これは執行機関に対する制限でございます。  その第五は、先ほど来問題になりました国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係に関するいわゆる調整問題でございます。で、法令に違反したものとか、あるいは義務を怠ったというような場合におきまして、前の改正では都道府県については内閣総理大臣、市町村については都道府県知事がその是正改善を求めるということになっておりました。今回のはそれを少し変えまして、市町村に対しては内閣総理大臣のやることを、知事をして行わしめ、市町村長がこれに異議あるときは内閣総理大臣に意見を求めることができると、少しその点が変っております。それから事務移譲の問題が総理大臣のあっせんによって調停または裁定を行うということが府県と市町村との問題について起っておりましたが、この規定は今度は設けぬことにいたしました。その三番目は恩給の問題でございますが、今回新たに設けまして府県と市町村の間及び市町村相互間におきましては、その職員の退職年金等の基礎となるべき在職期間を相互いに通算する措置を講ずるように努めなければならぬと改めて、いわゆる恩給通算の制度をここに確立しよう、こういうのでございます。これはもちろん国から府県へいく場合と市町村の場合と二つありますが、主たるものは何と申しましても第一の場合が多いかと思います。  第六が大都市の特例に関する問題。これが長い問題として答申案の線によって今回事務移譲ということをしたのでありますが、前の改正のときには十八項目を移譲しよう、こういうのを、今度は十六項目になっております。その理由は、教科書の問題及び給食関係につままして、別途の教育に関する法律の方で定めておりますので、十六項目となっております。実質におきましては十八項目でございます。で、申し上げるまでもなく、このむずかしい問題は一応事務配分で解決する。現行の府県制度のもとにおきましては特別市は適当でないという判断のもとに、今度は削除いたしたのでございます。  大体、議会、執行機関、六大都市等に関しまして今回改めた点、前の点と変った点を申し上げたのでございます。協調して方々の意見を入れたという点については、後退かも存じませんが、かような点におきまして議会制度におきましてもまた執行機関におきましても、恩給の問題につきましても、大都市の問題につきましても、ここにこういう新しい線を立てた次第でございます。  以上御報告申し上げます。
  134. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 前回のものとの比較について内容を承わったのでありますが、私は今度の改正がまるっきり骨抜きだという批判がありましても、私は必ずしも当っているとは思いません。ことに総則における県と市町村の性格に関する規定という問題は、この問題は自治法の非常に大きな根本の問題に触れていると思うので、この自治法改正案というものはそういう意味では非常に重大な問題を取り扱っている、かように考えている次第であります。ただ、ここで府県の性格がそういうふうに規定された関係もあり、同時に府県の首長である知事が調整権を大きく持つようになった、これは行政委員会に対しても持ち、一面には市町村に対しても持ち、二重にこの調整権の活動が非常に大きなものになってきた、この傾向は今度の自治法改正における大きなねらいであったと考えますが、この点につきまして巷間こういうことを言う人もあるのでございます。それは、旧内務官僚がこういうふうにして府県を強くしていって、将来知事官選へ持ち込む捨て石であり、陰謀であるというような非難をする者があるのですが、この点について、長官はまことに達識な党人政治家である、私はそんなことは決してないと信ずるのですが、長官のこういうことに対するお考えを率直にこの機会に表明して、そうしてそういう非難が当らないということを一つ言明していただきたいと思うわけです。
  135. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 今の府県の部の数を制限いたしまして、それ以上ふやします場合には、「内閣総理大臣に協議しなければならない。」「協議」となっております。上から押えるという意味でなく、まあ相談をかける、こういうような意味で、ある意味の、何と申しますか、部制というものに対する、警告とまでいかぬ程度の規定を設けたおけでございます。  それからもう一つは、法律に違反いたしましたり、あるいは自治体の行うべき義務を怠りました場合におきまして、反省を求めるという点を考えたらどうか。総理大臣にそういう権能を与えたのでございますが、これも上から押えようというような意味ではございません。もちろん国、地方を通ずる行政というものを一般的に考えました場合に、法令に違反するとかあるいは重大な義務を怠って住民の福祉に反するような事件が起りましたような場合のことを考えましてのことで、昔の内務省時代に、よく非難されましたような官僚的考えをもって自治体に臨もうという考えは毛頭ございませんのです。  なお、その点については、さらに行政部長から御説明させます。
  136. 伊能芳雄

    伊能芳雄君 多少私の質問をのみ込んでおられないようなこともありますから、もう一回ごく簡単に申し上げます。  それは、今、総理大臣が監督権を非常に付与したという点もあるわけですが、もう一つは、府県知事に、行政委員会や市町村に対する非常に大きな調整一権を与えた。これは府県の性格を規定したわけですから、ここへいくのは当然なので、また財政上から、地方財政のこの苦しい状況を救済するということが一つのねらいなんですから、当然なんですけれども、世間では、こういうことをしておいて、これが知事官選への捨て石であり、陰謀である、こういうような非難をする人があるから、そういうことでないとするなら、そうではないのだ、こういう理由でやったんだということを、はっきりそういうものでないのだということを一つ言っていただきたい、こういうことなんです。
  137. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 大へん失礼いたしました。知事がそういうことをするというのは、決して知事に非常な権能を与えてやるという意味でなくて、調整をはかっていくというような意味におきまして、市町村に対する権限などがあるのでございますが、これによって官選への道を開くとか、知事の権限を非常に増加していこうとかいうものでなく、統一的な県内の行政でございまするとか、その他につきまして、各市町村の間の調整をはかっていこう。まあ、私、調整という字を自己流に使っておりますが、決してこれによって官選の道を開くとか、知事の権能を非常に強めるというような意味のものじゃございません。
  138. 森下政一

    森下政一君 今の質問に関連してお尋ねいたしますが、地方制度調査会の二十八年の答申の中に、県は、本来その自治事務を処理すると同時に、市町村とは異なり、市町村を包括し、市町村と国との中間に位する広域の地方自治団体にして、国家的性格を有する事務を処理することをもその任務とするということがありますわけです。これは府県の性格というものをきわめて明確にするように答申になっておるわけでありまするが、今度の地方自治法改正は、第二条にこの趣旨を織り込んだのじゃないかと思うが、そう解釈してよろしいですか。
  139. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 大体この趣旨を基礎にいたしておりますが、われわれの今度の案では、むしろこの表現だけでは適切でないと思われるような点は、案文を調整する場合に、必要な調整を加えております。
  140. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 今の森下さんのお話でございますが、これも少し表現が行き過ぎております。ここまではいっておらないのでございます。
  141. 森下政一

    森下政一君 しかし大体この趣旨をくんで、第二条に私は都道府県というものの性格が表示されておる、こう考えておるので、もし私の解釈が間違いでなければ、これはけだし画期的な改正だ。都道府県というものは市町村とはおのずから別で、市町村を包括する広域の地方公共団体である。従いましてその取り扱います事務の内容も、おおむね広域にわたるもの、統一的な処理を必要とするもの、あるいは市町村に関する連絡調整に関するもの、まあ要するに一般市町村が処理するのに適当ではないと思われますようなものを都道府県は処理するものである、こういうふうに明確にしたんじゃないかと思うが、そう解釈してよろしうございますか。
  142. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 御趣旨の通りでございます。
  143. 森下政一

    森下政一君 そこで今度の改正案の中にも、さらに進んで同じ第二条の中に「都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当っては、相互に競合しないようにしなければならない。」ということが書いてある。これはその法の趣旨というものは、私はよくわかる。ところが実際のこれまでの悩みは何であったかといえば、都道府県の性格というものは、これほど明確には自治法にうたわれていなかったので、そこで市町村とはいいながら、特に市ですね、市の中でも、今度いわゆる指定市といわれておるような大都市、大都市と大都市所在の府県との事業上の競合というものが非常に多い。そのために勢いむだも累積しておる、地方住民の財政的負担も、そのために不必要に加重されてきたというふうなことがきわめて顕著であったと思う。これは何とか解決しなければならぬというふうに考えられ、また非常にこの点については議論も沸騰してここに至ったと私は思う。そこで今度都道府県の性格というものを明確にして、その性格が表示され、しかも法文に明確に都道府県と市町村とがいろいろ競合するようなことをしてはならぬということをうたっておるが、ただこれをうたいっぱなしで、これまでの弊害というものが芟除されるものだとあなた方はお考えになりますか。その点は、私は、はなはだ疑義があると思う。今度は性格の表示はしてあるけれども、それは直ちに権限の区画を明瞭にしたものとは解釈ができぬと思う。性格が表示されておるだけである。もう一つ突っ込んで、権限の区画がはっきりしておれば、私は実際の競合が排除され、一切のむだもなくなり、一切の不必要な財政上の二重の支出が府県と大都市との間で行われるということがなくなってくると思うが、どうもそこがせっかく地方制度調査会の答申を受け入れておりながら、この法律改正だけでは、これまで嘆かれておったことが解消されるとは考えられないというふうに思うがどうでしょうか。
  144. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) まあ府県と市町村の間における一切の問題が解消したということは、私も言い切れないと考えております。しかしながらこれは府県と市町村と申しましても、実にいろいろ大小さまざまあるものですから、自治法の二条の問題といたしましては、私は今お話のように府県、市町村というものの一般的な性格を明らかにして、事務配分並びに事務処理の基準をはっきりさせる。そういうことで一応満足するより仕方がないのじゃないか。あとは結局事務は、一つは法令によって事務はきまっております、法令によって府県の事務と市町村の事務がきまっておるものが一つ。それから法令できまらずに、府県、市町村が自主的に自由にやれる、両方あるだろうと思います。そこで法令によってきまっておる事務につきましては、それぞれの法令を直すという問題と、今度法令を作っていく場合の考え方の問題と二つありまして、法令で今後事務の配分をやっていく場合には、この自治法の基本原則によってもちろん考えなければいかぬ、これは当然であると思います。それから既存の法令につきましては、五大市につきましては指定市の特例でその一部を立法的に解決する、こういう問題で一応まあ五大市の場合につきましては法令できまっておる事務につきましては、一応の解決ができると思います。問題はそうではなしに、自由にやれる、いわゆる何と申しますか、広域事務と申しますか、自治体が自由にやれる仕事がございます。府県も市町村もそれにつきましてはこの基本原則に従って、われ一われは自治団体が自主的に問題を合理的に解決していただきたい、こういう考え方でございまして、そういう自由にやれる事務につきましても、もっとはっきりとどこか線を引いたならば、実は一番問題がはっきりするのでございますが、結局すべての自治団体の事務につきまして、何から何まで法律で線を引くというのもなかなかできがたいし、また必ずしも適当でないものもあり得ると思います。結局行政が法令上規制しておるものにつきましては、それぞれの法令で筋をつけたい。あとは自主的な問題は、この一般原則に従って自主的に一つ判断をしてもらいたい。その点につきましてなお不十分だと仰せられる点は残っておるとは思いますが、この方向によって一段と問題が合理的に認整されることもわれわれは期待いたしておるわけでございます。
  145. 森下政一

    森下政一君 大都市に対する事務移譲の問題は、これは私は私自身にかなり疑問があるので、きょうはもうだいぶ時間が過ぎておるから明日にぜひこの問題を取り上げて質疑をさしてもらいたいと思っておりますが、今おっしゃるように自由にやれる事務については、自主的に、合理的に、適当に、何とかあんばいしてやってもらいたいとおっしゃるのですが、言葉の上では非常にこれはきれいに聞えるのです。ところが問題はそこに残ると思う。そこに相変らず問題が残って、一向従来嘆かれておったことが解消していないというふうに思うのです。問題の解決を将来に残しておる。せっかく法律改正しても、やっぱり解決されぬままにその困難な問題が見送られておるといううらみがあると思う。同時に端的に、はなはだ失礼でありまするけれども、私の感想を申し上げますと、二大政党の政治とはいいながら、私ははなはだ失礼だけれども、自民党の現内閣というものは陳情に対してきわめて弱い。陳情のまにまにふらふらしておるという感じを私は持つのです。たとえば自治庁がこの遊興飲食税についても公給領収証という制度をしこうという決心をしたときには、閣議決定でこれをやろうと決心して議会に提案をした。しかも議会がそれに賛成をしてこれを実施することになった。数カ月を出ずして陳情があって、党の何某という幹部が業者の陳情を受け入れて、もう公給領収証制度は廃止だと、こう言うた。引き受けたからこれは何とか廃止せいと言うたら、わずかにもう三、四カ月やっただけで、しかも相当の実績を収めつつあるという事実が報青されておるにかかわらず、われわれにもそういう報告が回ってきておる、ところがいずくんぞ知らん突如としてこの制度を廃止しようかというようなことを心がけるようなうわさが立った。ところが今度の国会では、どうもそれは適当ではない。それをやり出したのでは、一方に選挙法をあげなければならぬ。もうこれは自足党の至上命令のようになっているらしい。担当大臣は太田自治庁長官だ。そこへ公給領収証制度廃止なんかということを言えば、このまた説明をする衝に当るのが太田長官だ。太田長官が引っぱりだこになっておったのでは、選挙法が上がらぬ心配があるということで、この国会では適当でないから、まあ伏せておくけれども、次の国会にはぜがひでも業者の一要望にこたえてやろうなんていうようなことが、ひそかにたくらまれているというようなうわさを聞くのですが、そこが非常に私は心配をするのだ。そこで申し上げたいのは、この内閣は実にだらしがない。閣議で決定したことであろうがどうであろうが、業者が党の方にいろいろ陳情してきて、その陳情にはなはだ弱いというようなことを聞くと、私は非常に腹黒い憶測をするのですが、今度の選挙には選挙費用これくらい献金しますというような暗黙の了解でもあったら、たちまちどんな制度をしこうが、どんなことをやろうが、ぐにゃぐにゃぐにやっとくずれてしまう自民党の幹部じゃないかというような、私は気がするのです。そこでたとえば十六項目の移譲の問題でも、これ  は僕はあすまた議論を展開しますが、法律の文句は非常によろしいけれども、これはかりに五大府県あたりの指定都市所在の府県知事が出て、政令の内容をこうしろああしろということ  で、ほとんど十六項輿の大部分につい  ては、あなた方の説明は、ほとんど大部分を移譲するのだと言うけれども、ほとんど大部分移譲しないのだというような政令の内容になって現われてこないとも限らない。そのときの陳情自体が、どっちの陳情にウェイトを置くかというわけだ。だからそこのところは非常に私は頼りないと思う、これは大へんな失礼なことを申し上げておるが。そういう意味でせっかく法律改正し、地方制度調査会の答申の趣旨を、骨組を受け入れておいでになりながら、問題の解決は将来に見送られてしまっていることでは、何にもならぬじゃないかという危惧の念が去らないのですが、この点いかがでございましょうか。大臣どうですか。
  146. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は陳情ということが悪いよりも、陳情を受け入れる政治家態度が悪いというように承わります。実は私はいなか育ちでございまして、ずいぶん都会地よりは地方は虐待されております。陳情は多いのです。その中にはよいものもあるのです。たとえば鉄道を敷くなんていいますが、東海道筋にあるにかかわらず、山の中に入っておらない、なぜそこまで鉄道がいかなかったかと思いますけれども、そういうよい陳情も私はあると思うのです。国民の声を聞くということは、実は今まで日本では偏頗に聞かれておりました。ただ政治家が情をもって、あるいは裏の変な行動と関連して、その意見を入れることは悪いと思います。だれがいっても悪いことは悪いと思います。私はそういう意味において、政治の基本というものが、民の声を聞くということは必要だと思います。陳情を悪いというふうなことには、私は反対します。しかし政治家陳情の声の正しいのを取り入れる。全くきれいな気持で受け入れるということは、私は悪いと思いませんが、裏に悪意を持ち政治を悪道をもってやるということは、これは悪いと思います。悪いことがいいとは断じてならないと思います。(小笠原二三男君「具体的に……公船領収証はどうだ」と述ぶ)公給領収証につきましては、私は裏のことについては何にも申し上げることはございませんが、最後の裁断は私がいたしたので、期間が窺いということが一つ、いろいろな手続上の議論のあることも一つ、いろいろな関係でどうしたらいいか。少くとも私の考えでは、公給領収証制度につきましては、行なったのが十二月でございますので、一年も経ないうちにものを変えるということは、これは法律上の問題からいってもいけないので、初めからしまいまで私はそれを主張いたしました。これはもう私の税制論に対する根本でございまして、しかも保存論はこういうことも言いました。現状論を言うのは一月から三月までの状況がいいから置けという、しかしそれはいけないと、大体一年の経過を見ずして経済上の議論をすることは誤まりである。ことに遊興飲食税のごときは、景気、不景気によって判断することが多いのである。一月と二月、ことしの経済状況を見ますというと、昨年からのたるみが少しよくなりまして、飲み食いする者も多くなったというのが、私の判断になろうと思います。よく世間では三カ月間でいいという議論もある、私は賛成しません。まず一年くらい見なければならぬのじゃないか。しかし一年見ずとも、的確なる材料によって判断する場合は、これは別でございます。私はそれ以上のことを申し上げる私の立場でもございません。
  147. 森下政一

    森下政一君 たまたま私が例に引いた公給領収証が問題になりましたが、これはまあ私の今日の質問の主眼じゃないのです。主眼じゃないが、派生的な問題ですが、念のためにその点について重ねてだめ押し的なことをお伺いしまするが、次の通常国会に公船領収証の廃止なんという問題が起る危険はありませんか、これはどうですか。
  148. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 税制につきましては、ことに遊興飲食税につきましては私ははっきり言えば煩悶しております。いい点と悪い点、まあ通俗に、税制の根本というものとか技術とかいうものを考えます場合に、断定はできません。私はいいことがあったら変えたいと思います。しかし変える材料として、わずかな期間でもって変えるということは、これは問題であろう。いい案があれば変えてもいいと思いますが、いい理由がまたなければいけないと思います。
  149. 森下政一

    森下政一君 つまりね、少くとも一年くらいの実績を見ずしてというお言葉がありたが、通常国会ならばちょうど一年目なんですな。そこで何か理由をつけて改正されるという心配があるのじゃないかということが私は懸念される。まあしかしこのことは私がたまたま例に引いた派生的な事柄ですから、これはもうこの問答は一応ここで打ち切ります。打ち切りますが、私が非常に落胆失望しましたことは、公給領収証制度が提議されて、そのことが国会で議決されたときに、説明の衝に当られ、熱心にこれを主張したのはあなたの党の川島正次郎氏が自治庁長官であったときなんですね、そうでしたね。ところがその後その地位を去られて、今度あなたにかわられた。新聞で見たことですから、ほんとうかどうかわからぬけれども、川島正次郎談として、業者から盛んに廃止の陳情を党が受けておるときに、川島前長官の談としていわく、僕はあんなことは不賛成だったと、廃止した方がいいと、こういうことを言うておるんだな、言語道断だと私は思う。政党政治家ではあるけれども、おのれが自治庁長官の職にあってですよ、ね、そうしてそのときに国会に提議して、−私の議論が適当でなかったので今同僚から注意を受けました。閣議決定をしたのは責任者たる川島さんだったと、こう言わなければならぬわけですね、よろしゅうございますか。ところがその人が自分は反対だったというようなことを言われておると新聞でまあ読んだんですね。私はもうだれを信用して、どうして考えたらいいのか全く迷わざるを得ぬというような感じを持ったんですが、そこで私は考えるのです。今度のこの改正の問題でも、せっかく改正しておきながら、問題の、ほんとうの解決しなければならぬところが見送られておるんだと、問題はやはりこれで見込られておる。たとえばこの「都道府県及び市町村は、その事務を処理するに当っては、相互に競合しないようにしなければならない。」ということが改正案では法文の中にうたい込まれることになっておるけれども、それは自治庁なり政府考え方としては、競合しないようにしなければならないというのは、これはけっこうな御託宣に違いないが、事実上競合しておるもの、将来競合するものが出たときには、それは一体どうなるのだ。何にも防がれはせぬじゃないか。同じような、全く目的を一にするような施設を府県は府県でこしらえる。指定都市は指定都市で同一地域内にこしらえる。結局それは何だといえば、税金でまかなわれるものだ、大部分が、その施設の運営というものが。そうすると住民は二軍の負担をさせられるということですね。事実上の競争のために二重の負担をしなければならぬ。それは枚挙にいとまがないくらいに指定都市所在府県と指定都市の間にはそういう競合が行われて今日に至っておるということは周知の事実なんですね。ところがこれはこの法文だけでは解決にならぬ。決して解決したということはできぬと私は思うのです。何かこれはいい方法がありますか、これで。
  150. 小林與三次

    政府委員小林與三次君) 今おっしゃいましたことは、私はある程度事実だろうと思います。そうしてこの注文だけではその問題は百パーセント解決できません。もしこれをやろうとすれば、結局個々の法令で一切の施設、事業についてワクをはめるか、しからざれば結局総理大臣なり各省大臣なりが主管の専務について一々振り分けを行政的にやるか、結局二つだろうと思います。それからあとはこういうふうな立法の方針を明らかにして、自治団体が自主的にそれに沿うようにやってもらうか、結局そういうことなんでございまして、われわれの今の気持といたしましては、自治団体あるいは自治団体の機関の事務で法令できまっておるものにつきましては、その法令で振り分けることによって、ぴしりとこれはやるべきだと、またそれでこの特例も設けたわけであります。それ以外の事務につきましては、そこまですべての事務につき乗り出すのは今日の段階におきましてはいかがなものだろうと、非常な煩瑣な法令になるか、あるいは非常な複雑な行政上の監督条文にならざるを得ないのでありまして、これは別の弊害、先ほどの総理大臣が出てくるような問題でも、いろいろ御議論がありますが、そういう面が非常に顕著に出てくるのもいかがかと。そこで今度のさしあたりの段階といたしましては、府県と市町村の行う事務の基準を明らかにすることによって、ひとまず自治団体の自主的な判断で、関係住民の一つ監視を求めたいと、こういうことで一応がまんせざるを得ぬのじゃないかというのが実情でございます。
  151. 森下政一

    森下政一君 地方制度調査会が答申しましたように、都道府県というものは広域な統一的な事務を処理するんだというような性格を持つものだと、こういうふうに都道府県の性格を明確にすると、市町村とはおのずから別なんだ、従ってその担任する仕事が違うということがほんとうに府県知事に徹底し、そして府県という団体がその事業に向って熱心に進んでいくということなら、これくらい地方住民にとって仕合せなことはないのですね。何にも指定都市と事業の競争をするなんという必要はない。そんな事業の競争を指定都市の地域内でやるなんということを離れてしまって、おのずからの性格の持つ統一的な広域な仕事というものはあるにきまっておる。それをやることによって府下あるいは県下全体の市町村がどれくらい潤うかわからぬ。何がために一指定都市と競争しておるかと言いたいくらいなんだ、私から言わせるならば。しかし今の質問に対して、今度の法律改正だけではこの事業上の競争というものが解消するとは思われぬという、私が指摘した点についてそれはその通りだという御答弁がありましたから、以下のことは明日の質疑に譲ります。きょうはこの委員会が幸いに正常化された第一日目なので、皆さんもお疲れだろうと思うから、ここで、私の質問は明日に譲らしてもらいます。
  152. 松岡平市

    委員長松岡平市君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会