○
政府委員(
小林與三次君) お
手元にお配りしてございます「
地方自治法の一部を
改正する
法律案要綱」につきまして、御
説明申し上げたいと思います。
第一は、
地方公共団体の
権能に関する問題でございます。その
一つは、「
市町村は、基礎的な
地方公共団体として
一般的に
事務を
処理する
権能を有することを明らかにするとともに、二により
都道府県の
権能に属する
一般の
市町村が
処理することが不適当であると認められる
事務についても、その
規模及び能力に応じて、自ら
処理することができるものとすること。」次の問題と関連した方がいいと思いますので、あわせて申し上げますが、「
市町村を包括する
広域の
地方公共団体たる
都道府県の
地位権能を明らかにするため、主として
都道府県が
処理すべき
事務として
広域にわたる
事務(
例総合開発)、統一的な
処理を要する
事務(
例試験免許等)、
市町村に関する
連絡調整の
事務及び
一般の
市町村が
処理することが不適当であると認められる
事務(
例高等学校、病院及び
療養所の
設置等)を例示するものとすること。」これは要するに、
府県と
市町村というものの
地位、
権能というものが、
現行の
地方自治法によりますというと、ひとしく
普通地方公共団体として同じ平面的に、区別なく
規定されておるのでございます。しかしながら、
府県と
市町村とは、おのずからその
地位、職能というものが相違あるべきものでございまして、
市町村は基礎的な
地方公共団体として、市民に直結した
一般的な
行政事務を広く広範に
処理することを
建前とし、
府県は
市町村を包括した
地方公共団体でございますので、ここに例記してありますような
広域的な
事務は統一的な
処理を要する、あるいは
市町村に関する
連絡調整の
事務、その他
一般の
市町村では
処理することが不適当であるというような
事務を
処理すべきものといたしたのでございます。それで、
府県は
府県らしい
仕事、
市町村は
市町村らしい
仕事をそれぞれ専念いたしまして、両者の
協同連絡と申しますか、それぞれ分担を明らかにして、相協力すべき点を明らかにいたしたのでございます。
それから第二は、
議会に関する問題でございまして、その
一つは、「
議会の
議決事項中、
条例で定める
財産の
取得、
契約等を
条例で定める重要な
財産の
取得、
契約等とするものとすること」現在、
議会の
議決事項のうちに、
条例で定める
財産の
取得、
契約等につきましては、個々の処分でございましても、
議会の
議決を必要とするのでございます。しかしながら、その
趣旨は、すべての
財産の
取得、
契約等を
議会の
議決事項にする
趣旨ではないのでございまして、こういう
執行に関する問題は、
原則として
執行機関の
責任である、しかしながら、そのうちで重要な
財産の
取得、
契約というものもあり得るわけでございますので、そういう重要なものにつきましては、
議会の
議決事項とすべき
趣旨を明らかにいたしたのでございます。
それから次は、
定例会の問題でございまして、「
定例会の
回数は、四回以内において
条例で定めるものとすること」
現行法は、御
承知のごとく、
定例会は年四回、すべての
都道府県及び
市町村を通じて一様に
釘付けになっておるのでございます。しかしながら、
団体の
規模、大小、
事務の
繁閑等によりましては、必ずしも四回と
釘付けにする必要がないのでございまして、それぞれ一
団体の実際の必要に応じて、自主的に
定例会の
回数を定め得るということにいたしたのでございます。
それから三は、
議会の
常任委員会でございまして、「
議会の
常任委員会は、
人口段階に応じて
条例で、都にあっては十二以内、道及び
人口二百五十万以上の
府県並びに
人口百万以上の市にあっては八以内、
人口百万以上二百五十万
未満の
府県及び
人口三十万以上百万
未満の市にあっては六以内、
人口百万
未満の
府県及び
人口三十万
未満の市並びに
町村にあっては四以内において置くことができるものとすること。なお、
議員は一箇の
常任委員となるものとすること。」
現行の
常任委員会は、御
承知の
通り、
条例によって作り得るわけでございまして、それぞれの
行政部門を
建前にして作ることになっておるのでございます。しかしながら実際は、
常任委員会の数は相当これは多いのでございますが、
国会法の
改正にも照応いたしまして、これをある
程度、数を合理的に
調整し、それからなお、
常任委員会の
仕事の
建前を
行政部門別にするという
建前を
法律で書くことをやめまして、それぞれ
条例によって自主的に、いわゆる
国会と同様に、
予算、
決算等のような全般的な
常任委員会を作ってもよし、あるいはまた、それぞれの
専門別に作ってもよし、それらの問題は全部自治体の
条例にまかせよう、ただその数だけは一応
限度をきめたい、こういうのがこの
改正でございます。この数の
限度は、
都道府県の
部制につきましては、御
承知のごとく
現行法でも、
人口段階別に部の数が一応きまっておりまして、その部に応ずるようにこの数をきめたのでございます。それからなお、市につきましては、
都道府県の
議員数と照応させまして、それぞれ
議会の
規模を基礎にいたしまして、
常任委員会の数をきめたい、こういう
考えでございます。「なお、
議員は一箇の
常任委員となるものとすること」で、これは
国会におきましても、
根本の
原則はみなそういうことになっておりますので、その
趣旨によって明らかにいたしたい、こういうことでございます。
それから四は、「
委員会の
議会閉会中の
審査は、
議会から付議された
特定の
事件に限るものとすること。」これはいわゆる
継続審査の問題でございまして、これは、当然
議会というものの
合議体である性質、あるいはいわゆる会期不
継続の
原則、こういうようなことから、いわゆる
継続審査というものは、特に
議会から付議された
事件に限るのが
根本の
趣旨であるべきでございまして、
現行法でもそういう
趣旨で、
議会から特に付議された
事件という
建前になっておるのでございますが、その
意味、精神をはっきりさせるために、
議会から付議された
特定の
事件を特に
継続審査にまかせることを明らかにして
継続審議をやらせたい、そういうことによって、
議会活動というものの節度というものをはっきりさせたい、こういう
考え方でございます。
それから次は、「
議案の
提出及び修正の
動議並びに懲罰の
動議については、
議員定数の八分の一以上の者の賛成を要するものとすること。」これは、
現行法では、こうした
動議については数の
制限が全然ございません。しかしながら、
合議制の
議会の
運営のためには、やはりある
程度の数の
制限が必要でございまして、これは
国会法の
改正にも照応いたしまして、
議員定数の八分の一以上、こういうことにいたしたのでございます。これは
国会は、数は何十人と
定数できまっておりますが、
地方議会は、
議員の数が
団体によって違いますので、それで、
議員の数に対する割合をもってこの数を表わしたい、こういう
考えでございます。
次は、「
議員は、
当該地方公共団体又はその
機関に対して
請負をするか又は主としてこれらに対して
請負をする法人の役員となることができないものとすること。」この
請負関係の禁止でございますが、これは、
執行機関の長等につきましては、従来からある
規定でございます。
地方議会の
議員につきましては、その
規定が最近なくなっておるのでございますが、
地方議会は
国会と違いまして、
一般の直接的なこまかい
予算を
議決するだけではなしに、先ほど申し上げました
通り、重要な
契約とか、
財産の
取得等につきましても、
議会の
議決事項にこれはなっておるのでございます。その
意味におきまして、そうした直接
当該団体に対して
請負をするような
行為をなるべくやめて、
議会の
議員としての
活動の信用も高め、あるいは
執行についての疑いもなくしよう、こういう
建前でございます。この
趣旨の
改正は、今度は他の
執行機関につきましても、あとから申し上げますが、すべての
執行機関について、その
事務に関しては、
当該団体との
請負関係は遠慮する
建前を一貫いたしたい、こういうふうに
考えております。
それから次は、「
議員は、自己又は
近親者の従事する業務に直接の
利害関係のある
事件が
議題となる場合においても議事に参与することができないものとすること。」これは
除斥の
規定でございまして、今の
規定が必ずしもはっきりしておりませんので、直接の
利害関係のある
事件には参与できないということを明らかにしたのでございます。
次は、「
地方公共団体の長は、
議会に
予算に関する
説明書その他
当該地方公共団体の
事務に関する
説明書を
提出しなければならないものとすること。」
現行法では、こういう書類は
提出し得る
建前になっておるのでございますが、こういうものは当然
予算審議上必要でございますので、
提出を義務づけることにいたしたわけでございます。
これが主要な
改正でございます。
その次は、
執行機関に関する問題でございまして、その
一つは、「
都道府県の
機構の
簡素化を図るため、
現行の
法定局部の数をこえて
局部を設けようとするときは、予め
内閣総理大臣に協議するものとすること。」現在、
都道府県の部につきましては、
自治法で、いわゆる
標準部という形で、
人口段階別に一応部をきめておるのでございます。しかしながら、その
標準にかかわりなく、増減が自由にできる
建前になっておりますので、
相当数の部がたくさんふえております。しかしながら、
都道府県の
機構は、できるだけ合理的に
簡素化をする。他の
府県とのバランスも
考える。こういうことが必要でございますので、一応
局部の数を押えまして、その
範囲内において自主的に問題をきめる。しかしながら、その
範囲をこえたい場合においては、特にやむを得ぬ場合は、総理大臣に協議して部を置くことができるようにしよう、こういう
改正でございます。
それから次は、
地方公共団体の長は、各
執行機関を通じて組織及び
運営の合理化を図り、その相互の間に権衡を保持するため必要があるときは、
地方公共団体の
委員会若しくは
委員の
事務局又は
委員会若しくは
委員の管理に属する
事務を掌る
機関の組織等について必要な
措置を講ずべきことを勧告することができるものとし、
委員会等はその
事務局の組織等の一定の
事項について規則その他の規程を定め又は
変更しようとする場合においては、予め
地方公共団体の長に協議しなければならないものとすること。」現在地方には、いろいろな独立の
執行機関がたくさんございます。教育
委員会とか公安
委員会、その他の
執行機関がございますが、これらは、それぞれ内部の組織その他をきめるには、全然自主的にきめる体制になっておるのでございます。しかしながら、いずれもこれは、
地方公共団体の
機関でございますから、そうした
機関として、組織または
運営というものは、全体として権衡のとれることが必要でありまして、ある
委員会だけはよけいに部を置くとか課を置く、他の
執行機関の部局は非常に合理化する、こういうちぐはぐがあっては、これは事柄の性質上非常におかしいのであります。そういう
意味で、長といたしましては、最小
限度の
調整というものができるようにする必要があるのでございまして、そうしたその組織等につきまして、ある
程度の勧告権を認めたい、こういうふうに存ずるのでございます。これは、もちろん
執行機関の個々の
活動につきまして何ら干渉したり、関与する問題ではないのでございまして、そういうものはそれぞれ
執行機関として独立的に行使する。ただし内部の課の
活動をどう、するとか、部をどの
程度置くとかということは、他の部局との権衡を保持されたい。そういういわゆる内部組織と申しますか、そういうものについての
調整の
規定にすぎないわけでございます。
それから次は、「三
地方公共団体の
委員会の
事務局の組織は、
地方公共団体の長の補助部局との間に均衡を失しないようにすべき旨を
規定すること。」これは同じ
趣旨でございます。「四
地方公共団体の
委員会の
委員又は
委員については、その職務に関し、
当該地方公共団体又はその
機関に対する
請負に立つ場合、長と同様の規制を加えること。」これは、先ほど申し上げたところでございます。「五 選挙管理
委員会の
委員は、自己又は
近親者の従事する業務に直接の
利害関係のある
事件が
議題となる場合においても議事に参与することができないものとする。」こと
これは
議会の除席に類する
規定でございます。
「六 常勤の監査
委員の資格は、特に
事業の経営管理又は会計
事務に知識又は経験を有し、且つ、地方自治について識見をそなえた者とし、なお、
地方公共団体の長、副知事又は助役と親子、夫婦又は兄弟姉妹の
関係にある者は監査
委員となることができないものとすること。」今度の
改正では、自主的な監査
機構を充実強化しようということが
一つの目的になっておりまして、自治体の
運営を合理化するためには、なるべく自主的にその合理化をはかりたい。それがためには、監査
制度というものがございますので、この監査
制度の機能をできるだけ充実して、その自主的な監査の成果をあげさしたい、こういう
考えでございまして、
一つは、監査
委員の資格をなるべく専門的な知識技能を有する者から選ぶということを明らかにしたのであります。それとともに、
執行機関の
責任者等と特殊の姻戚、親戚
関係にある者は、これは避けなければいかぬ、こういうことを明らかにしたわけです。
「七 監査
委員の任期は、
議会の
議員の中から選任された者にあっては
議員の任期によるものとし、学識経験を有する者の中から選任された者にあっては三年とすること。」これも同じ
趣旨でございまして、現在その任期は二年ということになっておるのでございます。しかしながら、監査
委員はやっぱり専門の経験と知識というものがある
程度あることが必要でございまして、二年では十分目的を達成しがたい。それでこれを三年に改めたい。まあ
議会から選ばれた者は、これは当然
議会議員としての任期によるべきものと
考えられるのでございます。
「八 監査
委員については、
当該地方公共団体が元利の保証及び利子補給等の財政的援助を与えているものの会計についても監査することができるものとし、
関係人の出頭、記録の
提出等を求めることができるものとするとともに、自己若しくは
近親者の一身上に関する
事件又はこれらの者の従事する業務に直接の
利害関係のある
事件については、監査することができないものとする等、監査機能の適正な行使を図ること。」大体監査といたしまして、いやしくも自治体が何らかの財政的支出ないし
負担をしている以上は、その
事務については監査できるようにする必要があろうとともに、監査の機能を果し得るようにするために必要な記録の
提出等を求めるというようなことにいたしたのでございます。
その他
執行機関の
簡素化及び合理化に資するために若干の技術的な
改正を行なっております。
その次は、給与その他の
給付に関する問題でございます。
二 非常勤の
職員に対する報酬は、
議会の
議員を除き、その勤務日数に応じて
支給しなければならないものとすること。
「二
議会の
議員に対しては、
条例で、期末手当を
支給することができるものとすること。
「三
地方公共団体が常務の
職員に対して
支給すべき手当の種類を法定するとともに、
職員に対するいかなる給与その他の
給付も
法律又はこれに基く
条例に基かずには
支給できない旨を明らかにすること。」これが中心でございまして、その
一つは、
地方公共団体の
職員に対する給与の問題を
法律上どの
程度規制するか、これが
一つの問題点でございます。しかしながら、給与の基本
原則だけは、やはり
国家公務員に準じてこれは定める必要があるのではないか。現に
地方公共団体の給与につきましては、国は財政上の
責任を負っております。常に
国家公務員に準ずる給与というものを保証するということを基本の
建前にいたしております。それでありますれば、それに伴う基本
原則だけは合わせておく必要があろうと思います。そういう
意味でその
一つは非常勤の
職員に対する報酬で、これは
国家公務員につきましても、御
承知の
通り、みなその勤務日数に応じて
支給することになっております。給与の
建前上給与というものは勤務に対する対価でございますから、勤務の態様に応じて給与の態様もこれは変るべきものでございまして、非常勤の
職員に対して、通常の常勤の
職員と同様に、月給等をやるということは、これは
建前としてはおかしいのでございます。そこで
国家公務員の給与
制度と同様な
制度をここに地方につきましても作ることにいたしたのでございます。ただ「
議会の
議員を除き」とございますが、これは、国の場合におきましても、
議員につきましては、歳費という
制度が確立いたしておりまして、地方でも従来歳費というような観念でおおむねずっと前から行われておりますので、国との
関係も考慮して、これを除くことにいたしたわけでございます。
それからその次の問題は、給与の種類の問題でございまして、先ほど申しましたように、基本的な地方公務員の給与は国の公務員の右にならい、そういう
建前から給与の種類も、これは種類だけは国の場合と同様に法定いたしたい。国の場合も常に
法律でなくては給与を出せないのでございまして、それと同様に、国がやる以上は地方の
職員にもこれは当然やるべし、そういう
意味で
国家公務員に対する給与と同じ種類の給与を
自治法で法定することにいたしまして、ただその内部の額の
運営は、これは
団体によっておのずから相違がありましょうから、
団体の自主的決定にまかせる。ただ種類を法定した以外は、これは出すことができない。この基本
原則は、もう
国家公務員の給与については確立されておるところでございます。その二点だけをこの際明らかにいたしたい。そうして一面におきまして、給与というものの適正な
運営とともに、
国家公務員に準ずる給与というものに対する保証もあわせて
考えたい、こういう
考えでございます。
その次は、財務に関する問題でございます。
「一
財産の
取得文は設置、管理及び処分について、その統一的且つ効率的運用を図るため、
地方公共団体の長が
委員会等に対し報告を求め、実地について調査し、又はその結果に基いて必要な
措置を講ずべきことを求め、又は土地建物の
取得、営造物の
設置等につき事前に協議を受ける等必要な
規定を設けること。これは、先ほど申しました各
執行機関に対する長との
関係の一部の問題でございまして、それぞれの
執行機関は、現在では、
財産の
取得、設置、管理処分等につきまして、長とかかわりなく、どうでもやれることにこれはなっておるのでございます。しかしながら、これはいずれも
地方公共団体の金であり、いずれも
地方公共団体の
財産をそれぞれ管理処分するのでございますから、どうしても
地方公共団体として、その
財産全般についての総合的な統一的な
運営ということをはかることが、当然必要と思われる問題でございまして、これは現に国におきましても、国有
財産法で、大蔵大臣はたとい
国会の
財産であろうが、裁判所の
財産であろうが、こういうものにつきまして、ある
程度の総合
調整権を持っておるのでございます。そういう
程度のことは長も当然持ってしかるべし、そういうことによって、
財産の合理的な
運営をはかりたいと思うのでございます。そのための最小
限度の
規定を入れることにしたわけでございます。
それから次は「
地方公共団体の
予算について繰越使用の
制度を認めること」これは国は現に認めておることでございますが、地方にこの
制度がございません。それで年度末になってきますと、いろいろ無理をいたしておるのでございまして、これははっきりと繰越しすべきものは繰り越しをする、そうでないものはそうでない、会計年度とのけじめもつけ、会計経理の適正な
執行をはっきりさせたいという
考えでございます。
三は「
地方公共団体は、法令又は
条例に準拠し、且つ、
予算で定めるところによらなければ、特に
議会の
議決を得た場合を除く外、
当該地方公共団体の債務
負担の原因となる
契約その他の
行為をしてはならないものとすること。」これはまあ当然の
原則でございまして、
地方公共団体が債務
負担の
行為をやる場合は、当然法令、
条例に準拠するか、あるいは
予算の定めるところによる、ないしは特に
予算外の、つまり
議会の
議決というものによるべきでございます。これは当然の
原則でございますが、ままこれが乱れて、地方の財政を混乱させておるという事例もあるのでございまして、この当然の財政
運営の
原則を明確にして誤りなきを期したい、こういうふうに
考えております。
それから四は「
地方公共団体の長が
委員会等の
予算執行について報告を求め、実地について調査し、又はその結果に基いて
委員会等に対し、必要な
措置を講ずべきことを求める等
予算執行の適正化を図り、
地方公共団体の財政
運営の統一を保持するための必要な
規定を設けること。」これも
執行機関に対する長との
関係の
規定の
一つでございまして、これは
予算の
執行についてのある
程度の統一的な
調整の
権能を
考えたのでございます。このことも国におきましては、財政法、会計法等におきまして、大蔵大臣が、
国会につきましても裁判所につきましても同様な権限を持っております。これは同じ
団体の
予算を
執行する以上、金繰りその他の
関係などは、当然にこれはあり得るのでございまして、きまった
予算はもちろん使い得ることは当りまえでございますが、それぞれ全体の資金の
状況等によって、長としてある
程度の
調整が当然
考えられてしかるべき問題でございます。要するに各
執行機関につきましては、今度の長との
関係は、この
予算の
執行並びに
財産の管理、それから組織というほんとうの内部の管理
運営の
事務につきまして、最小
限度自治体としての統一的な
運営をはかりたい、こういう
考え方でございます。それぞれの行政
委員会の行政権限の
執行につきましては、もちろん何ら触れるところがないのでございます。それぞれ
執行機関として独立的に
活動を当然にすべきものだと心得ております。要するに内部
運営につきましては、国においてそれぞれ所管大臣が持っておると同様に、最小
限度の
調整は当然に
考えるべきものだと、こういうふうに
考えたのでございます。
五は「
地方公共団体の長が新たに歳入歳出
予算を伴うこととなる
条例案等を
議会に
提出しようとするとき又は長、
委員会若しくは
委員が規則その他の
規定を制定若しくは
改正しようとするときは、これがため必要な
予算措置が講ぜられることとなるまでの間は、行うことができないものとすること。」これも大体基本的な
考え方ははっきりしておるのでございまして、要するに歳入歳出を伴うような
条例とか規則とかいうものをきめようとする場合には、あわせて必要な
予算措置というものを当然並行して
考えるべきものでございまして、その点を明らかにしたのであります。
条例を出すならば必ず
予算措置もあわせて
考えて、そして
条例の
審議と並行して願う、これは行政、財政というものは当然一体的に
運営さるべき問題でございまして、その基本的な
原則を明らかにしたわけでございます。
六、「
地方公共団体の長は、決算を
議会の認定に付するに当っては、主要な施策の成果その他
予算の
執行の実績について報告しなければならないものとすること。」これも当りまえだといえば当りまえでございますが、現在決算を認定する場合には、
予算の数字と決算の数字というだけの問題で、間々事柄が扱われておりますけれども、問題はそうじゃなしに、自治
団体として具体的にどういう
仕事をやって、どういうサービスを住民に実現したかという行政の実績、こういうものがこれは基本にならなくちゃいかぬのでございまして、単に帳面づらを合せるだけでなしに、ほんとうに住民に役立つ行政に効果を上げて実を結んだその姿が、決算認定の基本になるべきだろうと思うのでございます。そういうう
趣旨のことをあわせて報告をして、
議会の
審議を仰ぐということにいたしたわけでございます。まあ大体それが主要な問題でございます。
それからその次が国と
地方公共団体との
関係及び
地方公共団体相互間の
関係に関する問題でございまして、一は「
内閣総理大臣は、
地方公共団体又はその長の
事務の
処理又は管理及び
執行が法令の
規定に違反している場合又はその義務に属する
事務の管理及び
執行を明らかに怠り、若しくは確保すべき収入を不当に確保しない等著しく
事務の適正な
執行を欠き、且つ、明らかに公益を書している場合においては、その是正又は改善のため必要な
措置を講ずべきことを求めることができるものとし、
内閣総理大臣の
措置は、主務大臣の請求に基いて行うものとすること。
市町村の
事務の
処理又はその長の
事務の管理及び
執行に係るものについては、
内閣総理大臣の
措置は、
原則として、
都道府県知事をして行わせるものとし、
都道府県知事のした
措置について異義があるときは、
市町村長は、
内閣総理大臣に対し、その意見を求めることができるものとすること。」これは
地方公共団体と国との
関係に関する
規定でございまして、要するに
地方公共団体は当然に自治
団体として自主的に事をおさむべきことは言うまでもないところでございます。しかしながら
地方公共団体が当然
法律に基いて国の法令を
執行することが主たる任務になっている
団体でございますので、当然国の
法律の誤まりない
執行ということを
建前にして、その公共
活動を展開すべきものなのでございます。それで、万が一にもそうした法令の違反等があり、あるいはまたこれに準ずるような非常に明らかな不都合な問題があって、公益を害している、そういうような場合におきましては、一応
内閣総理大臣といたしましては、最小
限度の何らかの
調整の権限を持つ必要が、これはあり得るのでございます。しかしながら、これは地方自治というものの
建前とも両立する
限度でものを
考える必要がありますので、ここで
内閣総理大臣に、そうした違反があった場合に、是正または改善のため必要な
措置を講ずることを求める、いわば自治体に対しまして、不正の
事件について反省を求めて、是正を
考えてもらう、こういういわば権限を認めることにしたのでございます。権力的にいわば管理したり、指揮したり、命令したり、権限を
執行したりするというようなことは、これは自治の
建前上行き過ぎでございますが、自主的に
考えて直すことを求めるというようなことは、行政の最高
責任者として、
内閣総理大臣としては当然に負うべき責務であろうと思うのでございます。
市町村につきましては、総理大臣がその一々をやるわけにいきませんので、この総理大臣の指示は
原則として知事をして行わせる、ただし、
市町村におきまして、知事の処分に文句があるときは、総理大臣に意見を求めることができる、こういうことにいたしてございます。
それから次は二、「
内閣総理大臣又は
自治庁長官は、
市町村に対する
地方自治法中に定める勧告の権限を行使する等のために、
都道府県知事をして特に指定する
事項の調査に当らせることができるものとすること。」これは総理大臣とか
自治庁長官は、現在
自治法中にいろいろ勧告の権限がこれはございます。それからなおそれに基いて、いろいろな財務につきまして調査する権限をこれは持っているのでございますが、その権限は総理大臣みずからやらなくちゃならぬ場合もありますが、たくさんの
市町村につきましては、知事を援助してやらせる必要もこれはあろうと思うのでございます。ある
程度事実上やっているところでございますが、その点を
制度としてはっきりさしたい、こう
考えておるのでございます。
次に三、「主務大臣又は
都道府県知事は、
地方公共団体に対する検査又は監査を自ら行わないで、監査
委員をして行わせることができるものとし、又自ら検査又は監査を行う場合には、監査
委員に通知し、監査
委員はこれに必要な資料を提供するものとする等、国の監査と地方の監査との協力を緊密にするための
措置を講ずること。」これは自主的な監査
制度をなるべく強化して、われわれといたしましては、国が、各省がそれぞれの立場で、ばらばらにいろいろな検査とか監査の権限を行使することをできるだけチェックしたい、できたらやめさせたいという基本的な
考えを持っておるのでございます。しかしながら、まだ今日自主的な監査はそれほどの実力も発揮しておりませんので、直ちにそこにいくわけにも参りませんが、少くとも中央各省がばらばらにやる場合には、必ず監査
委員の自主的な監査というものと調子を合せて、協同してやらせる体制に持っていきたい、場合によっては、自分たちが出ていくかわりに監査
委員に監査をしてもらった方が、中央のためにも地方のためにもはるかにこれは便利で都合がよいのでございまして、そういう道も開きたい、要するに、自主的な監査というものを主体にいたしまして、中央各省がばらばらにやるということをなるべく制御し、統制し、調節をはかっていきたい、という
考えでございます。
四、「災害その他臨時に特別の必要がある場合に
地方公共団体の間に
職員の派遣による協力を円滑ならしめるため所要の
措置を講ずること。」これは、
地方公共団体相互間に臨時に
職員を派遣するというような必要が現実にあるのでございますが、その場合に、身分
関係、給与
関係、
恩給関係等をどうするかという問題がありますので、そうした点に心配のないような保障を与えまして、相互に相協力してやっていく体制を確保いたしたい、これが四でございます。
五、「国及び
都道府県の公務員並びに義務教育
職員の間における人事の交流を円滑ならしめるため、
恩給等の
支給の基礎となる在職
期間の通算の
措置を講ずること。なお、
都道府県と
市町村との間においても在職
期間を通算する
措置を講ずるように努めなければならないものとすること。」これは、いわゆる
恩給通算の問題でございまして、これはかねてからいろいろ要望のあった問題でございます。それで今日の段階におきましては、ともかく国と
都道府県の公務員、
都道府県相互の間というものは、
恩給を無条件に通算する。なお、
市町村の
職員でも、義務教育
職員につきましては、これは
都道府県が給与を
負担いたしておりまして、給与に関する問題はみな
都道府県の
条例でやっておるわけでございます。また事実人事交流の必要もきわめて多いので、そこでこの三者につきましては
恩給を自由に通算する
建前を
法律できめたいのであります。なお、問題は
市町村の
職員と
都道府県の
職員との間における
恩給通算の問題があるのでございまして、これはまあ皆さんのお
手元にもいろいろ来ておると思いますが、特に高等学校の
職員につきまして、具体的に要望が非常に強いのでございます。これは、われわれもその必要を十分に
考えておるのでございますが、問題は
市町村との問題になってきますというと、単に教員だけの問題じゃない。要するに、
市町村吏員と
都道府県吏員の通算
関係をどうするか、こういう問題をあわせて
考える必要があるのでございます。ところが、実際問題は、
市町村によりましては給与の基礎が非常にでこぼこがある。さらに
恩給の
期間が非常に長短があるのでありまして、所によっては十年そこそこで
恩給をつけておる。普通の所では十七年でつけておる。そういう非常な食い違い、アンバランスがございまして、これを現在の段階で直ちに無条件で
法律でくぎづけにするということは、かえって
実情に合わぬ面がこれは出てくるのでございます。しかしながら、似たような所では、できるだけ人事の交流がある以上は通算をさせたいというのが基本的な
考え方でございまして、そこで今回の
法律で、ともかくも同様な
措置を講ずるように努める
建前を
法律で明らかにいたしまして、そして事情の許す限り、自主的に通算
措置を講じさせよう、そういうことによって、おのずから足並みをそろえまして、その
実情を基礎といたしまして、将来
恩給制度の通算をさらに検討いたしたい。とりあえずのところは、こういうことによって自主的におおむね問題のある所は解決し得るのじゃないか、また解決し得るように、われわれといたしましてもできるだけ指導をいたしたい、こういう
考えでございます。
それから第七は、大都市の特例に関する
事項で、「
政令で指定する
人口五十万以上の市(指定都市)又はその
機関は、左に掲げる
事務の中
都道府県又はその
機関の
事務とされているものを、
政令で定めるところにより、その
事務として
処理することができるものとすること。」「1 児童
福祉に関する
事務」「2 民生
委員に関する
事務」「3 身体障害者の
福祉に関する
事務」「4 生活保護に関する
事務」「5 行旅病人及び行旅死亡人の取扱に関する
事務」「6
母子
福祉資金の貸付等に関する
事務」「7 伝染病の予防に関する
事務」「8 寄生虫病の予防に関する
事務」「9 食品衛生に関する
事務」「10 墓地埋葬等の規制に関する
事務「11 興行場、旅館及び公衆浴場の営業の規制に関する
事務」「12 結核の予防に関する
事務」「13 都市計画に関する
事務」「14 土地区画
整理に関する
事務」「15 屋外広告物の規制に関する
事務」「16 建築
基準行政の実施に関する
事務」ここに掲げてあります十六項目につきましては、これは大都市に移譲してその
処理にまかしたい、この大都市の特例に関する問題は、ずいぶん従来特別市の問題として議論があったところでございますが、特別市問題は、現在の
府県制度を前提にして
自治法に
考えておるような特別都市を作るということは、これはいかにも無理がある。そこで地方
制度調査会におきましても、その
事務移譲によって問題を解決すべしという議論が出ており、これはだいぶ多数の業者なども賛成しておるところでございまして、われわれといたしましてもそういうことによって問題を解決したい。特別市という問題は、必ずしも実施するわけにはいかないが、しかし大都市の
実情に応じまして、その力のあるものに市民生活に密接したものはこれはもうまかせるという基本的の
考え方で問題を
考えたいので、ここに書いてありますような民主
関係とか衛生
関係、あるいは建築
関係とか、都市計画等の行政につきましては、
原則として大都市にまかせるということで、
事務を、合理的に市民に直接した民主的な
処理をはかりたい、こういう
考えでございます。
それからそれに伴いまして、二は、「指定都市又はその
機関の
処理する
事務に関する
都道府県知事又は
都道府県の
委員会が行う指揮監督は、
政令の定めるところにより、受けることを要しないこととし又は直接主務大臣の指揮監督を受けるものとすること。」「右に伴い、五大都市行政監督の特例に関する
法律を廃止すること。」一は
事務の移譲でございますが、これはいわゆる指揮監督をできるだけ排除したい、二重監督の弊をなるべく排除して、力のあるものに
責任を持たせる、こういうので、現在でも五大都市行政監督特例で一部の
事務につきまして特例を設けておりますが、これをもう少し広範に
考えまして、五大都市の実態に即した行政の
運営をはかりたい、これが二でございます。
三、「指定都市又はその
機関に対する
事務移譲に伴い、その
事務に従事している
府県の
職員はそれぞれ指定都市の相当の
職員となるものとし、
恩給、
退職年金等の算定の基礎となる在職年数は指定都市の
職員の在職年数として通算する等該当
職員の身分保障について必要な経過
措置を講ずること。」これは、
事務を移譲いたしますれば、当然その
事務に専従しておりました
職員をも移譲させる必要が、身分を移す必要がございますので、その場合における
恩給の通算、
退職年金の通算、その他身分保障について必要な経過
措置を講じたいというのが三でございます。
四、「第三編第一章の
規定(特別市に関する
規定)を削除し、
関係規定を
整理すること。」これは、先ほど申し上げました
通り、大都市の問題は、取りあえず
事務移譲並びにできるだけ監督権というものも排除する、そうして自治体が自分の力に合うような行政を自主的にやっていける体制にいたしたい、こういうので指定都市の特例を作りましたので、従来あります特別市の
規定はこれを削除することにいたしたのでございます。これにつきましては、いろいろ議論があるようでございますが、特別市の問題は、要するに
府県制度の
根本的
改正の一環としてこれは
考えらるべし、現在の
府県制度のもとにおいては
事務移譲によって解決すべしと、これは基本的な
考え方でございまして、その基本的な
考え方にのっとって
事務移譲をやる以上は、同じ大都市を対象にした
規定を存置しておくことは、これは適当でないので、この
規定を削除することにいたしたわけでございます。
それからその次は争訟手続に関する
事項として、行政争訟の手続に関する
規定を整備し、争訟の早期かつ合理的な解決に資するため、
地方公共団体の
機関の行う
地方自治法中の処分について訴願前置の
建前によるものとすること。なお、訴願裁決の公正をはかるため、自治紛争調停
委員の
制度を活用することとし、訴願を提起した者から要求があったとき、または必要があると認められるときは、その審理を経た上、裁決すべきものとすること。これは行政
事件に関する争いの問題でございまして、
現行法では、問題は特別の
規定があるものは訴願の
規定がございますが、そういうものがないものは
一般的に行政裁判として、行政
事件訴訟特例法で争われることになっておるのでございます。しかしながら、行政
事件をできるだけ早期に合理的に解決するためには、むしろ、行政上の手続で最初に問題を
考えた方が問題の解決が合理的にいく場合が多いのでございまして一そこで訴願前置の
建前をはっきりとると、それから最後にもし残って、どうしても争いが残るものは裁判で争う、こういう体制をとりたいと思うのでございます。
それからその他、他の
法律の改廃に伴い、別表を
整理する等所要の
規定を整備すること。これは条文の
整理でございます。
備考として、本
改正に伴い、
地方自治法の一部を
改正する
法律の
施行に伴う
関係法律の
整理に関する
法律により、必要な
関係法律の
整理を行うこと。これはもう
自治法に右にならえする他の
法律の技術的な修正でございます。以上が今度の
自治法の
改正の大要でございますが、そのいずれもが、地方
制度調査会が、当面自治
団体の組織及び
運営の合理化をはかるために
改正すべきものとして、出した答申が骨子になっておりまして、その答申の
趣旨にのっとりまして、なお他の問題につきましても必要な配慮工夫を加えまして、同じ
趣旨のものをここに取り上げることにいたしたのでございます。