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小笠原二三男君 ただいま議題になっております
公職選挙法の一部を
改正する
法律案衆議院送付案に、日本社会党は反対いたします。理由は大きく二つに分けて申し上げます。
一つは、これが議員立法になり、また審議の経過等からして、日本社会党としてはこういう結果に立ち至ったことに対して不本意という点で反対するのであります。このことは午前の
委員会でも申し上げたのでありますが、これは前々回の
国会におきまして不肖私当
委員会の
委員長をしております際に、自由党、民主党、緑風会三派の共同提案として
公職選挙法の一部を
改正する
法律案が提出せられ、継続審査となって審議すべき筋合いにあったのであります。ところが当時重要
法案が他に山積し、またこの原案の内容とするところが著しく各会派間において意見の相違を見ておったのであります。従って
委員会の審議の進行の都合上、まとまり得るものならば各会派一本の形でこの
公職選挙法をまとめ上げ、来たるべき参議院選挙における投票並びにルールを全体としてきめて、フェアーで
一つ選挙をとり行うのが至当であろうということで、
委員長としまして各会派代表の
委員諸君にいろいろその間の
事情を
説明申し上げて御同調を願ったのでありますが、全会派
異議なく御同調願えましたので、個々の条文についてそれぞれの忌憚のない会派の意見を出していただいて、最終的には九分九厘のまとまりを円満裏に得たのであります。そして最後に残ったものが、問題になっております政党並びに政治
団体の活動に関する規制の条項であったのでありまするが、これは原案としては、現行法の政党並びに政治
団体が自由な活動をなし得る点を規制し、一政党のみにこれをとどめるという極端なる制限規定であったのであります。従って一方社会党の立場としては、今日の現行法のよってきておる主権在民の憲法の立場からこの民主政治の
基礎である選挙においてそういう制限——
団体を規制することは、選挙の公正を著しく阻害するものとして、もとより反対しておったものでありますので、この点については幾多の対立を繰り返しておった問題であります。しかし最後のまとまりを得る段階で、この
部分がそれをなし得ないからということで御破算にして、そうして自民、緑三派共同提案のこの強硬な
改正案を原案として審議する場合においては、その審議を渋滞し、他の
法律案の審議に影響を及ぼすことは、火を見るよりも明らかであって、この点は全会派ひとしく認め合っておったところであります。従って私としましては、一種の妥協案をここに提案いたしまして、各会派の御了承を得たいということでお話し申し上げたら、会派に諮ってということであって、その返事がそれぞれ全会派とも
異議がないという決定を得たのであります。ただしかし、私は
委員長であった建前上、参議院において全会派が
異議がないとしましても、少くとも
委員長発議として本会議に直ちに提案して、満場一致の御賛成を得るということは、その前提としてやはり衆議院側においても、これが同調を非公式にも願っておいてスムーズにこの
法律案の通過ということを期待するということが私の
一つのやっぱり義務でもあると
考えまして、その点は各会派に再三お願いをして、衆議院に会派を持つ
委員の間においては、会派の党議決定を得て、衆議院においてもかりにこれが通過して参ります際に、
異議がないというように取り扱ってもらって、応諾を得られることを要請したのであります。それがない限りは、
委員長発議を軽々にすることはできないということで、口を幾日か過ごしたのであります。しかるところ各会派の理事におきましては、衆議院とも話し合って
異議がないということになったという公式の御報告を
委員長としていただきましたので、社会党本来の立場に立つ、また社会党に属する私としましては、幾多不本意な点はありますけれども、これがやはり参議院の運営の上に、また来たるべき選挙を公正にフェアにとり行うということのために、全会一致で
法律案が通過するということが最も望ましいことであると
考えまして、
委員長の立場として参議院本会議に提案申し上げ、これが通過いたしまして、衆議院に送付されたのであります。衆議院の
事情によりまして臨時
国会に継続審査になっておりましたものが流れ去りまして、その後この案は、また再び参議院各会派の同意を得てどうしてもこのまま成立を期待したいということで、現在の
松岡委員長がやはり全会一致の同意を得て
委員長発議としてこれを参議院を通過せしめたものと思う。これが衆議院に回って、そしてわれわれが非常に苦労し、非常に各会派として話し合いを進めて一致点を見出しましたこの選挙法の最も眼目となっておった政党並びに政治
団体の規制の条項だけは、参議院の妥協をせられました案を一切放擲して、自、民、緑風三派の先に提案しておりました
通りに、一切の政治
団体の活動を禁止する規定となって衆議院から送付せられたというのが現行の修正案であります。私はこういう審議の過程を通しまして反省してみますと、少くとも参議院の各会派が全会一致をもって二度もこれを議員発議することに同意せられ、そしてしかも参議院の
地方行政
委員会を主宰する
委員長が参議院の役員として本会議に提案して、二度も満場一致の議決を得たものであります。それが衆議院において異なる議決がなされて、参議院に送付せられてきました。院と院とが自由にして独立した審議権を持ち、こういう結果になる
形式には私は何ら異論は申し上げないのであります。しかし内面的に政党政治としてそれぞれの会派に所属する者として、当時は自由党、民主党はばらばらでありましたが、各両党とも党としてこの参議院の議決を了承しておったのでありまして、今日自由民主党になったからといって、それで異なる態度を打ち出さなければならない何らの党内の
事情もなければ、客観的な選挙情勢もないのであります。われわれはこの案に妥協したのは、もとの二派の提案したことで規制するということが、現行法におけるいろいろな欠陥を排除するという主張でありましたが、これが欠陥であるかないかについては、議論のあるところでもある。しかしまた段階的にそれならば一応の意向はいれて、
一つ暫定的な選挙をやってみて、その批判に待ってまた規制すべき点があるならば規制し、緩和すべき点があるならば緩和すべきものとして民主的な暫定的な手続をとろうとしてこういう案になったのでありまするから、そのことを認め合った会派において、その後の客観情勢として異なる態度を打ち出さなければならない何らの理由はないと私は
考えるのであります。で、私の
考えといたしましては、衆議院が修正したものであるから、参議院は事態ここまで至った以上、これを承認しなければならないという
考え方が一部に、いな、だいぶの会派におありのようであります。しかし私は衆議院、参議院がおのおの独立した院として
法律案審議をしています場合に、異なる議決が行われ、そしてあくまでもそれが固執されるという場合もあり得ると
考えます。しかも参議院としては一度院議をもって決したものが、そしてしかも衆議院側の各会派の了解もかつてつけておったものが、こういう事態になってきて、それではその
通りにいたしましょうという前に、まだ残された参議院としての主張すべき手続があると
考えます。それは四つに分れると思います。
一つは結局この修正案をのめないということで、参議院の原案のようにこれを引き戻して衆議院側に回付するということ以外にはまず今のところないのであります。ところがそこから出てくる結果は四
通りあると思います。衆議院においてそれはのめないということで、三分の二議決をもって衆議院の修正
通り議決するという
方法もあります。あるいは三分の二を得られずして、議決の結果廃案になるという場合もあり得ます。あるいはまた参議院のこの案を衆議院がのむという場合もありましょう、また最終的には両院の意思を疎通し、民主的に一本化した
結論を得たいと、願うならば、これは両院協議会という
方法もございましょう。私はそういう結果として幾多
考えられる手順がいまだ残っておると思う。私たちは院議を尊重し、また院議たらしめたわれわれの本心、それから各会派間の信義と責任という問題を
考えるならば、私は党所属の立場も尊重されなければなりませんが、参議院の運営、
地方行政
委員会の運営として、一議員として、責任をもってそれに参画をした議員の責任を明らかにする態度こそが、参議院の態度を明確ならしめ、また二院
制度における妙味も発揮し得るものと
考えます。しかし私の申し上げているのは、この特殊な、いろいろな
事情によって衆議院から出たことが参議院で承認せられる、あるいはいろいろな形があって、一般論としては言えない点のあることも十分了承した上で申し上げておる。今回の場合はまことに特殊なケースであって、こういうあり方が将来参議院の運営に先例としては悪例として残るものであると断ぜざるを得ないのであります。何のためにわれわれが議員の職責をもってこういう発議をし、そうして何のために二度も参議院の議決をしたか、もしも衆議院の意向がそういうことであるとするなら、衆議院の意向を前もって織り込んだ
一つの議員立法もなせばなし得たのであります。ところが
形式は参議院の意思はあくまでも主張したがごとく見えて、結果としては
委員長発議というものが一部重大な蹉跌を来たすような結果になった。こういう扱いは私は今後において慎しまなければならぬと
考えます。そういう
意味において、まことにこの
法律案の審議の過程とその結果とを比較しますというと、不明朗そのものである。各会派間の信義にもとるものであるように私には感ぜられます。私といい、あるいは現
委員長といい、いかなる会派のいかなる方が立場を
委員長の地位にかえてこの問題を審議します場合においても、こういう結果になることは、たんたんとして、平然としておれないだろうと思うのです。これもまたやむなしとしてはおられぬだろうと思うのであります。ただ
松岡委員長の場合におきましては、その当時のいきさつは午前中に伺いまして、そうして民主的な決定を得たいということでありますから、それも
一つの態度であろうと思いますので、これ以上のことは申し上げませんが、社会党としましては他党の信義を重んじてくれるだろうという
考え方から、衆議院のそれぞれの機関にも諮り、衆参両院一体となっておる両院議員総会等にもたびたび諮って異論のある中から最終的なこの妥協、
結論を得たのであって、そういう
意味からいえば、結果としては、公党と公党間の信義というものはみじんも尊重されることなく踏みにじられたものと断ぜざるを得ないのであります。この間において緑風会も
委員の方々が参議院だけに所属せらるる立場から、これが原案
通り通過せらるることに幾多の御努力があったということも聞き及んでおりますが、まことに私は感謝にもたえませんし、敬意を表せざるを得ません。その努力が、結果として努力したという形が示されるならばこれは首尾一貫してまことにわれわれとしては欣快にたえないところであります。以上が第一に申し上げます反対の理由であります。
それから第二の反対の理由といたしましては内容的な問題であります。この点についてはもう前々回の
国会で論議しておる過程において社会党の立場というものは申し上げておりますから、
委員各位には繰り返してわが党の立場を申し上げる必要はないでございましょう。しかも政党並びに政治活動の制限あるいは禁止の問題につきましては、第一の理由を申し上げる過程で一部触れておきましたから、この際この点は申し述べないことといたします。少くとも私はこの結果がどうなるか今の段階においてわかりません。わかりませんが、今後においてはもっとこの種の問題に対しては、やはり政党政治を基盤とする民主政治である限り、
国会運営である限り、やはり信義と責任が重んぜられるという慎重さがあくまでもなければならぬと思います。
自分の都合がよくなれば都合
通りやる。都合が悪くなればまた悪くなったで
考え直す、こういうようなことで、どうして
国会のルールなり政治道義なりというものが確立しましょうか。私はこういうことを申し上げれば社会党も今後においてそういう信義をしからば重んずるかというお話もあるいはあるかもしれませんが、少くとも私たち
委員としましては、自己の意思あるいは個人の
考えでそれぞれの他会派あるいは他の
委員の方々と重大な取りきめをしたり折衝をしたりすることは断じてあり得ない。常にその点だけは天下の公党としての責任をもって処置して参ったつもりでありますし、今後においても社会党として不都合なことが生じようと、約束したこと、きめられたことは、その
通り守るでありましょう。私はそういうことでなければわが党といえどもあるいは信を
国民につなぐことはできないと思います。そういう
意味におきまして、多数をもってまかり通れば何半をやってもいいということについては、私は不同意でありますし、そうお
考えになっておるわけはないと思います。もしも
衆議院送付案に御賛成になられるお方々があるにしましても、
事情やむを得ないというそれぞれの理由があろうと思います。しかしその大筋において、参議院というものの立場、
地方行政
委員会というものの立場というものを
考えるならば、私は結果としてこういうふうになることなく、中途において円満解決せらるる道もあったのではないか。結局私はこう言えば失礼でありますが、
政府与党さんの方々に非常な熱意をもって御努力願えたことは了といたしますけれども、少くとも他会派に対する信義という問題から言えば、これは議員の職責をかけてでも党内において一本筋が打ち込まれるということであったならば、結果として有終の美を発揮し得たものと
考えまして、まことに遺憾にたえないところであります。いろいろ申し述べれば切りのないことでありまして、もしもそれが感情なりの問題となり、そして単にそういう
意味で対立するという形になってこの選挙法が通ることを私は不幸だと
考えます。従って私の発言は今日とめまして、そして将来においていかようであろうとも、選挙はフェアーにとり行うということで、各会派ともそういうことを十分考慮せられることを、私の方としても十分
考えますとともに、お
考えを願いたいと思うのであります。
以上るる申し述べました諸点から、実はこの
法律案の採決にも参画したくないとさえ思われる、一言にして言うならば、不信であるというふうにも
考えられますけれども、結果を見てまたわれわれの立場を明らかにする機会もあり得ようと存じますので、あえて反対討論を申し上げる次第であります。