運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-09 第24回国会 参議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月九日(水曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   委員異動 四月二十八日委員最上英子辞任につ き、その補欠として長島銀藏君を議長 において指名した。 四月三十日委員長島銀藏君、深川タマ ヱ君及び岡三郎辞任につき、その補 欠として大矢半次郎君、山本米治君及 び村尾重雄君を議長において指名し た。 五月四日委員藤野繁雄君及び菊田七平 君辞任につき、その補欠として佐藤清 一郎君及び木村篤太郎君を議長におい て指名した。 五月七日委員佐藤清一郎君、木村篤太 郎君、遠藤柳作君及び東隆辞任につ き、その補欠として藤野繁雄君、菊田 七平君、植竹春彦君及び菊川孝夫君を 議長において指名した。 五月八日委員井村徳二君、村尾重雄君 及び中山福藏辞任につき、その補欠 として大屋晋三君、岡三郎君及び小林 政夫君を議長において指名した。 本日委員森田豊壽君、大屋晋三君、植 竹春彦君及び平林剛辞任につき、そ の補欠として西岡ハル君、井村徳二 君、小柳牧衞君及び岡田宗司君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            大矢半次郎君            藤野 繁雄君            岡  三郎君            前田 久吉君    委員            井村 徳二君            木内 四郎君            菊田 七平君            小柳 牧衞君            西岡 ハル君            西川甚五郎君            山本 米治君            岡田 宗司君            小林 政夫君            土田國太郎君   政府委員    自治庁財政部長 後藤  博君    大蔵政務次官  山手 滿男君    大蔵省主計局次    長       宮川新一郎君    大蔵省主計局法    規課長事務代理 中尾 博之君    大蔵省管財局長 正示啓次郎君    大蔵省銀行局長 東條 猛猪君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省管財局特    殊清算課長   岩動 道行君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選会計法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○閉鎖機関令の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○旧日本占領地域本店を有する会社  の本邦内にある財産整理に関する  政令の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○交付税及び譲与税配付金特別会計法  の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) これより委員会を開会いたします。  議事に入るに先立って、委員異動について御報告いたします。  四月二十八日付をもって最上委員辞任され、その補欠として長島銀藏君が委員選任されました。また、四月三十日付をもって岡、長島深川の二委員辞任され、村尾重雄君、大矢半次郎君、山本米治君が委員選任され、五月四日付をもって藤野菊田委員辞任され、佐藤清一郎君、木村篤太郎君が委員選任され、五月七日付をもって佐藤木村、東、遠藤の四委員辞任藤野繁雄君、菊田七平君、菊川孝夫君、植竹春彦君が委員選任され、五月八日付をもって井村村尾中山の三委員辞任大屋晋三君、岡三郎君、小林政夫君がそれぞれ委員選任されました。さらに本日付をもって平林植竹森田大屋の各委員辞任され、岡田宗司君、小柳牧衞君、西岡ハル君、井村徳二君がそれぞれ委員選任されました。   —————————————
  3. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) なお、ただいま御報告申し上げました通り大矢藤野、岡の三理事が一たん委員辞任されましたため、理事に欠員を生じましたので、直ちにその補欠を互選いたしたいと存じますが、先例により、成規手続を省略し、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 異議ないと認めます。それでは理事大矢半次郎君、藤野繁雄君及び岡三郎君を御指名申し上げます。   —————————————
  5. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) まず会計法の一部を改正する法律案議題として、政府より提案理由説明を聴取いたします。
  6. 山手滿男

    政府委員山手滿男君) ただいま議題となりました会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現行の会計法におきましては、国が契約をする場合には、すべて公告して競争に付することを原則としております。これによりまして、国がその取引において競争による利益を享受する上に遺憾なきを期するとともに、関係職員の公正を確保することといたしておるものでございます。しかしながら、最低落札者によっては、工事の投げ出し、竣工遅延等により完全な履行がなされない場合も予想されますので、かかる場合に備え、相手方とすべき者の申し出にかかる価格によってはその者により契約内容に適合した履行がされないおそれがあると認められるときは、一定の手続を経て予定価格の制限の範囲内で価格申し出をした他の者のうち最低価格申し出をした者を当該契約相手方とすることができることといたしまして、入札による落札者によりましては、契約内容に適合した履行がなされないため、かえって国に損失をもたらすこととなるような事態を防止しようとするものでございます。  以上が、この法律案提案理由及び内容の概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げる次第であります。
  7. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 本案の質議は後日に譲りまして、資料の請求がございます方は御要求願います。   —————————————
  8. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、閉鎖機関令の一部を改正する法律案  旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案  以上、二案を便宜一括して議題にして、質疑を行います。
  9. 岡田宗司

    岡田宗司君 まず閉鎖機関令に関連する分の問題から当局に御質問をいたします。  この提案理由説明で見ますというと、昭和二十年の九月以来整理を進めてきて、当初千八十八あったが、なお今日相当な数のものが残っておるようでございます。私ども一番不思議に思いますのには、すでに十年余を経ておりまして、なおこういうものが幾多残っておるということは、どうしてこれが非常に長引いておるのかということをまずお伺いしておきたい。
  10. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 閉鎖機関につきましては、ただいまお話しのように、当初千八十八機関ございました。これは大体昭和二十年の九月から三、四年の間にわたって指定を受けたものでございます。従いまして、中には指定になってからまだ十年たっていないものもあるわけでございます。当初指定を受けたものから見れば、十年以上経過をいたしておるというような状態になっております。それで千八十八の閉鎖機関清算をいたして参ったのでございますが、その大部分、すでに千五十ばかりのものは清算を終了いたしました。この清算事務というものは非常に困難な仕事でございまして、なかなか思うにまかせない点もあったわけでございますが、非常な努力をいたしまして、ようやく今日それだけの数に減って参ったわけでございます。残っております機関の大部分は、国内清算につきましては大部分結了いたしておりまするが、国外の、在外関係が主として残っておりますために、清算がまだ結了できないというようなものが主体をなしておるわけでございます。また債権回収等が非常に困難で、一時にはこれを回収できない。何年もかかって回収していかなければいけないといったような機関もございまして、そのような特殊なものが現在残っておりまして、特にこれだけのものが非常に手を抜いたためにおくれたとかいったようなことではなしに、非常な努力は払っておりながら、なおかつ客観的な情勢から整理がまだ最終的につかないというようなものが現存残っておるわけでございます。たとえば横浜正金銀行といったようなものは、非常に国外との関係がございまして、たとえばイタリアとの特別円問題でありますとか、その他そういったような国際関係のまだ確定できないために整理がつかないというものもございます。また国内機関といたしましては、たとえば戦時金融金庫というようなものがございますが、これも戦時中の貸付が非常に多岐多様にわたっておりまして、それらの貸付を受けた会社がその貸付金の返還につきましてはなかなか思うようにいかない。何年間にわたって、これを年次計画に従って償還をするといったようなために、この清算もおくれているといったようなのが大体の実情でございます。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 一体これはいつごろまでかかるのですか、見通しは。
  12. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 大へんむずかしい御質問でございますので、何ともいつということは申し上げかねるのでございますが、できるだけ私どもといたしましては、一日も早く終了するように監督をいたしております。ただ何分にも相手のある仕事でございます。また中には訴訟関係も起ったために、その訴訟が片づかないために終了もできないというようなものもございまして、一がいにあと何年ということはなかなか申し上げかねる実情にございます。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 ただいまの御説明ですと、残ったものは対外関係があって非常にむずかしい。こういうことですと、この対外関係のものはまあいろいろなことから外交的な手段によって、根本になる問題が片づかないことには片づかない、こういうことになりますか。
  14. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 大体そのようでございます。たとえば先ほど申しましたように、横浜正金銀行などは最もその典型的な例であります。
  15. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、たとえば次の問題になってくる朝鮮銀行あるいは台湾銀行の問題は、朝鮮との関係なりあるいは台湾との関係について、さらにいろいろな問題が解決しなければこれは片づかないということになりやしないですか。
  16. 岩動道行

    説明員岩動道行君) この点は閉鎖機関令自体建前といたしまして、一応清算対象国内にある財産対象としております。従いまして先ほど申しました国外との関係国際関係と申しましても、国内債務として対外国との交渉を持っているような債権債務処理、これがなかなか簡単に進まないという趣旨で申し上げたわけでございます。従いまして朝鮮銀行あるいは台湾銀行等につきましては、国内でそのような債権債務に関して、特に相手国交渉をしなければならない特別な債権債務という問題がありますれば、これはなかなか解決が困難な場合もあり得るわけでございますが、鮮台銀行につきましては、現在のところそのような国際関係のある国内債権債務というものはございません。従いまして、閉鎖機関令規定に従いまして、現在処理最終段階に到達いたしているわけでございますので、これは特に日韓交渉あるいは日台交渉といったような特別取りきめができなければ、清算結了できないというような趣旨のものではございません。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはまあ朝鮮銀行台湾銀行もですが、まあ朝鮮仕事をし、台湾仕事をしておった。で、これは全体として見れば、仕事国内国外でもって非常に錯綜した関係にあったと思うのです。財産の点だけ、国内にあるものだけ分離してやるということでこれは片づけるということでありますれば、他の問題についても、たとえば横浜正金等についてもそういう方式をとり得るのじゃないのですか。
  18. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 閉鎖機関令によりまして、国内国外との債権債務を区分して処理をいたしておりますので、正金銀行につきましても、もちろん国外のいわゆる在外債権債務につきましては、これは切り離して処理できるような態勢になっているわけでございます。先ほど例として申し上げましたのは、たとえばイタリア特別円の問題を例にして申し上げましたことは、イタリア為替金庫日本国内における正金銀行本店に対して債権を持っている、国内債権債務である、こういう関係になっております。従いまして、これは当然閉鎖機関令国内債権債務処理対象に入って参りますので、どうしても処理をつけなければ清算結了ができないわけでございます。ところが、たまたまこれが相手方イタリア為替金庫——イタリアという国を背景といたしましたものでございますので、その間にいろいろな協定あるいは覚書等がございまして、その内容につきましていろいろな見解の相違がございまして、そこでまあなかなか結論が出て参らないという状態になっております。従いまして正金銀行につきましても、そのような国内債権債務であるけれども相手方がたまたま外国であるというものに関してはなかなか解決がつき得ないという状態になっているわけでございますが、その他の純然たる在外債権債務につきましては、朝鮮銀行台湾銀行と同様に切り離して清算結了に持っていける制度になっているわけでございます。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうようにはっきり切り離してやれるということならば、たとえば朝鮮台湾銀行については今までにもつとその点は進んでいたのじゃないか、どうしてその点について十年以上もかかるようなことになったのですか。
  20. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 大体閉鎖機関指定をされましたのは、鮮台銀につきましては二十二年九月三十日でございましたが、この断時は全く波乱の状態になっておったのでございます。しかも当時の司令部が直接その財産を管理する、また金章を完全に向うだけで握ってしまうというような状態で、日本側としては何ら手をつけ得ない状態が当分続いておったわけでございます。それから債権債務処理、その他財産処分等につきましては、これはまず相手方に確認を求めたり、こちらで資料を整えて、そして払うべきものは払うというようなことになるわけでございますが、これも資産が全体で幾らになるかという見通しがつかなければ支払いもできない。資金が十分であればどんどん支払われるということも可能であるわけでございますが、もしそれが債権額が相当大きく、しかも資産が少いというような場合には、何%の支払いをするかの問題も出て、参ってくるわけでございますので、その間の全体の数字を把握する、また債権を回収する見込み等、なかなか困難な問題がございまして、それで数年間は過ぎて参ったわけでございます。しかし鮮台銀につきましては割に資産が豊富にあったので、とにかく国内債権債務はほとんど九〇%以上、もうすでに完了いたしておるわけでございますが、その後御承知のように外地預金者、あるいは外地からの国内向け送金者等についても支払いをしてやろうじゃないかというようなことになりまして、そのためにまたここ二、三年が経過して、ようやくその預送金支払いにつきましてもその大部分を終了するというような段階になってきておるわけでございます。実情といたしましては非常に急いで整理をいたしておりますが、今申し上げたようなことでなかなかそう簡単には進まないというのが現実状態でございます。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 閉鎖機関のこの清算についての監督は、どの程度あなたの方でやっておられるのですか。
  22. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 閉鎖機関監督につきましては閉鎖機関令規定がございまして、まずその清算人選任につきましては大蔵大臣選任をいたしまして、その清算行為はすべて法律に従って清算人が行うことになっております。その間に特別に大蔵大臣指示を仰ぎ許可を受けるというような事項も出て参ってくるわけでございますが、それについては一々大蔵大臣が認可を与え、指示を与えるという建前をとっております。そうしてその清算人行為にかりに不当なことがあるといったような場合には、大蔵大臣清算人を解任することもできるという体制になっております。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 私、そういう何というのですか、法規上のことを聞いているのじゃないのです。実質的にあなた方の方でどのくらいこれに対して監督をしているか。それでたとえば清算進捗状況だの何かについて、毎年あなた方は報告を受けて、それに対してその報告を精細に調査しておるかどうかということですね。
  24. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 清算促進につきましては、特に毎月一回清算人会議を開きまして、その会議には大蔵省からも関係者が出席いたしまして、ここに、その一カ月間における清算事務進渉状況、あるいは困難な問題等についての質疑応答、またそれに対する適宜な処置の方針と指示、その他の打ち合せを毎月一ぺんはやっておるわけでございます。それからその報告につきましてはこれは随時受けて、私どもの方でまた検査をいたしております。なおこのような清算業務をいたすにつきましては、清算事務所におきまして職員を雇い、またはいろいろな経費を支出するわけでございますが、その予算につきましても、毎四半期ごと大蔵省にその計画提出して、大蔵大臣がこれを承認をして、その予算範囲内において清算事務を行うというようなことをいたしておるわけであります。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 たとえばこの清算事務を行う際に、財産処分をする際に、不当と見られるようなことが起った場合にあなた方どうするのですか。
  26. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 財産処分につきましては、業務準則というものを作っておりまして、その規定に従って、これはできるだけその機関に有利なように処分をするという原則のもとに、これは一般競争入札処分していくという建前をとっておるわけでございます。従いまして、特に金額の大きなものにつきましては、あらかじめ大蔵省にも相談もございますし、今日までその処分につきまして不当であるというような事例はなかったと思います。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはあなた方にすれば不当な事例はなかったというけれども現実にそういう問題が多々起っている、ように私は聞いているのですがね。たとえをあげてみますというと、何というのですか、朝鮮銀行東京大阪を初め各地に支店を八つ持って、それぞれ相当な建物がある。それでその八つの大きな建物が四千五百万円で処分されているというのですね。大阪の目抜きの場所にあった支店が八十五万円でもって売り飛ばされている、そういうのは不当じゃないのですか。
  28. 岩動道行

    説明員岩動道行君) これは特におもな建物につきましては、第三者の鑑定も仰いで、一応予定価格を立てて出しておるわけでございます。それからただいまの金額につきましては、これは大体、処分をした年月日が非常に早い時期でございまして、たとえば朝鮮銀行東京の店の競売は昭和二十四年に行われております。またたとえば大阪につきましては、これは土地でございますが、これは二十二年といったような非常に早い時期に行われておりますので、ただいまから考えますと非常に何か少い金額であるような印象を受けますけれども、当時としてはそれぞれ適正な入札価格で売却されているというふうに考えます。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしてそのほかに有価証券のごときもの、これは早く処分したから安いのだというお話もあると思うのですが、中には閉鎖機関関係者の手に入ったものもあるということも聞いておるのですがね。つまり非常に安く売り払って、そいつがいろいろな形でそういう人たちの手に入ったものがあるというようなことを聞いておるとすると、これまた問題があると思うのですが、そういうことは御存じないですか。
  30. 岩動道行

    説明員岩動道行君) ただいまのような具体的な事例を私は耳にいたしたことはございませんのですが、そのような株式の処分に当りましても、これも一般公開入札をいたすわけでございまして、また特に当該事務所職員入札に参加するということは厳に戒め、またできないことが建前になっておりますので、その他の関係者、旧閉鎖機関におりました元の職員等であるいは、一般公開入札に参加し、落札をしたという者があるいはあったかもしれませんが、これは特にそれだけが不当に安い価格で入手したという経過にはなっていないのではないかというふうに考えております。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから朝鮮の方の関係ですと、朝鮮銀行、殖産銀行金融組合連合会信託会社等閉鎖機関に編入されております。ところがこれらの銀行の旧関係者は、その資産状態がどうなっておるかということがわかっておるはずです。かつこれらの各銀行清算事務を、それらの金融機関に全然縁のない人たちに行わしておるというようなことがいおれておることがあったので、またそこにいろいろと疑惑が生じた点もあった。たとえば旧関係者はその清算人に対して、いろいろと説明を求めてもなかなか応じてくれないというような事態もあったというふうに聞いております。またそういうふうな各会社の諸君の方から、一つ自分たちがこの会社を育ってきたのだから、この清算事務関係さしてもらいたい。その方がうまくいくがというようなことで、だいぶそちらの方、面から、つまり元関係者の方面から清算事務をやらすようにという申請をしてきたことがある。ところがそういうことに対して当局は、要求をしてもなかなか応じなかった。それは朝鮮銀行についていうと、まあ二年ぐらい前にようやくそれに応じたというようなことだったということで、私どもいろいろその話を聞いておるのですが、なぜそういう点について旧関係者清算事務にタッチさせなかったか、そのためにかえっていろいろ清算事務も延びたり、あるいは財産処分についてもやや疑惑もあるようなことも起ったり、あるいは旧関係者等説明のできないようなことも起ったのじゃないかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  32. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 閉鎖機関整理の沿革から申し上げますと、占領時代におきましては、司令部指示に基きまして、閉鎖機関整理委員会というものができておりました。これが一切直接清算を担当するという仕組になっておったのであります。つまり一切の閉鎖機関は必ずしも旧閉鎖機関関係のある人でなく、別個に政府機関としての整理委員会にその清算事務を行わせていくという建前昭和二十七年までは行わせて参ったのであります。その後二十七年の四月から現在の制度に変ったわけでありますが、現在の制度と申しますのは、全体的な総合清算主義ではございませんけれども、大体グループ別に分けましてそうして総合清算をやるという建前をとっておるわけであります。この総合清算趣旨は、できるだけ経費を少くして、能率的に清算を行うというのが根本的の建前になっております。従いまして、現在は特殊法人関係清算事務所一つ在外活動をやっておりました閉鎖機関一つ、それからすでにこれはもうほとんど仕事は終了いたしましたが、一般法人関係清算事務所一つ、これが東京大阪に分れておったのでありますが、そのいずれも今日はもうすでにほとんど清算事務を終了いたしております。そのほかにただいま御指摘のありました朝鮮銀行台湾銀行にそれぞれ単独の清算人が現在選任されておるわけであります。このようにその清算はできるだけ総合的に、しかも少数の人間をもって、できるだけ能率的に経費を少くして促進をしていくというのが建前になっておるわけであります。従いまして、必ずしも旧閉鎖機関会社職員自体がその在職しておった会社清算だけを担当するということにはなっておりません。しかしながら、特に大きな閉鎖機関につきましては、これは特別に顧問といったような制度を設けまして、そうしてこの顧問につきましては、それぞれ旧閉鎖機関の枢要な地位におられた方をお願いいたしまして、その方々に重要な問題についてはすべて御相談もし、御意見も聞き、そうして遺憾ない処理をやっていくという体制をとっていくわけであります。たとえば正金銀行につきましても顧問を二人お願いいたしておるわけであります。また朝鮮殖産銀行につきましても現在は三人の方を顧問にお願いをして、いろいろと御相談もし、御意見も聞いてやって参っておるわけでございます。このように必ずしも旧職員の方自体の清算はやっておりませんけれども、総合的に、しかも主要な機関につきましてはそれぞれ顧問という方をお願いして、その方からいろいろな御意見を聞いて、できるだけ実情に即した解決をしていくという制度をとっておるわけでございます。従いまして、そのほかまた、たとえば預送金支払い外地からの預送金支払いといったようなものにつきましては、特に現地の事情等も詳しく知っておる人があることが非常によろしいわけでございますので、そういったような場合には特に新しく旧関係職員の方を採用して、遺憾なきを期するというようなこともやっておるわけでございます。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 今のお話を聞くと、まあ総合的にやった方が経費もかからぬし、早くいくのだというお話でしたがね。総合的にやってかえっておそくなって、そうしてまたやり方に非常な何というのですか、不適当なことが起ってきたという例もあるように私聞いておるのです。それからまた同時に、その閉鎖機関清算については、それぞれの会社からやはり費用を負担しておるわけです。この額も相当な額に上っておるというふうに聞いておる。これは相当乱費をされておるのじゃないか。清算人の方でかなりそれを十分に潤沢に使い過ぎておるのじゃないかというふうなことも耳にしておるのですがね、一体そういうものはどのくらいの割合になっておるのか、そういう点はどうなんですか。
  34. 岩動道行

    説明員岩動道行君) ただいま全体の費用につきましては、ちょっと手元に数字を持ち合しておりませんが、現在残っております三十八の機関につきまして、最近の費用の実績を申し上げますと、これは一四半期に四千三百万円でございます。これは三十八機関でございます。その現有資産に対する割合から申しますると〇・二一%に相当するわけでございます。大体清算経費一般の通念から申しますと、これははっきりした統計的な数字があるというわけではございませんが、私どもが聞いておりますところによりますと、大体そういう現有資産に対して二、三%から数パーセントくらいの経費をかけてやっておるというのが一般会社の状況のように私どもは聞いておるわけでございます。それに対しまして、ただいま申しましたようにわずかに〇・二一%というふうに、相当縮減された経費をもってやっているというふうに私どもは考えております。また先ほど申しましたように、その経費内容につきましては、一々しさいに予算書を出していただきまして、その予算書を私どもは十分検査をして、その上で費用の承認をいたしておるわけでございますので、決して乱費をしているというようなことはないと確信いたしております。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 まああなたは乱暴なことをしていない、あるいは乱費をしていないと言っているけれども、まあだいぶそういう方面ではやっているということは、もういろいろ事実があるようです。で、それはそれとして、一体そのまあ四千数百万円で何人ぐらいでやっているか。
  36. 岩動道行

    説明員岩動道行君) はっきりした数字は記憶いたしておりませんが、約二百人ぐらいになると思います。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 とにかく一四半期でそれだけの金を使って、二百人ぐらいでやっているとすれば、これは非常に潤沢だろうと思うんですがね、非常に厳重な何でやっていますか。
  38. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 人件費につきましては、これは国家公務員並みの給与で抑えてやっているわけでございます。それからただいま申しました経費の中には、外地の預送金関係仕事が相当現在あるわけでございまして、それらの送金手数料等、そういったような具体的な債権債務処理に必要な事務的な経費の方が大部分を占めておるということになっております。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは数字の上では〇・〇何パーセントで、えらい少いように見えるけれどもね、実際その現金を要しているかどうか。現金で支払われる額というものは相当大きいですね。そこでこれは非常に今言ったように問題があるのじゃないかと私どもは思うんです。その点に対する監督等は今まで私は十分でなかったように思います。今後そういう点十分にやれるつもりでありますか。
  40. 岩動道行

    説明員岩動道行君) この監督については私ども十分にやっているつもりでございますが、なお不十分なところがあるような事態でございますれば、もちろん十分に厳格に監督をいたし、経費の乱費等も厳に戒めて参りたいと、かように考えております。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなた方のお答えはいつもそういうようなことなんで、大蔵省の国有財産の管理の問題だって、聞けば、厳重に管理をしておって、いささかの手落ちもないなんていういつも答えなんですね。それと同じなんですよ。だからほんとうにしっかりやってもらわなければならぬ。そういうような経費は、できるだけあなたの方で監督を十分にし、さらに財産処分等についても、なおそういう点でいろいろ疑惑も起さないようにしてもらいたいと思いますね。それはどうなんです。
  42. 岩動道行

    説明員岩動道行君) まことにごもっともなお言葉でございますので、十分にその趣旨に沿ってやって参りたいと思っております。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから朝鮮銀行の残余財産ですね、これを閉鎖機関令の改正でもって、納付金として政府で取ってしまうということは、これは一種の私有財産権の侵害になる疑いがある、こういうまあ説をなす人もあるんですが、どうお考えになりますか。
  44. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げます。これは申し上げるまでもなく、閉鎖機関朝鮮銀行の残余財産の一部を、今回の法律を改正していただくことによりまして国に納付していただくわけでございます。従いまして、今岡田委員の御指摘のように、法律をもってこれをそういう定めをすることにつきまして、いろいろ議論があるというふうなお話でございますが、この点につきましては、この残余財産の発生いたしました経路と申しますか、そのよってきたりましたところを考えてみますると、申し上げるまでもなく、朝鮮銀行朝鮮におきまする発券銀行としての一つの大きな特典と申しますか、特殊な機能を営んできておったわけでございます。今回の残余財産につきましてこれを見まするならば、結局この発券銀行としての機能、そういう特殊の機能からこういう大きな残余財産が発生しております。一方朝鮮銀行法、これは現在でもまだ生きておるわけでございますが、この銀行法の中には、朝鮮銀行は毎年発券に基く利益金を法律の定むるところによりまして国に納付するという規定があったわけでございますが、どういうわけか、解散の場合に同じく発券銀行としての特殊機能から生ずる財産についての規定を変えておるわけでございます。他方日本銀行等につきましては、これは新しい日本銀行法におきまして、解散の場合についても明確な規定がございまして、いわゆる日本銀行の発券銀行としての特権から生ずる一切の利益は国に帰属させるということが明確に定められておるのでございます。また諸外国の中央銀行の法制等を見ましてもさような規定があるわけでございまして、通貨発行といういわば国家の独占的な一つの特権が、ある銀行において営まれております場合に、その特権に基く利益をその銀行だけに帰属させるということは、万国の共通の条理から申しましても非常にこれは納得のいかないことでございまして、朝鮮銀行法の営業中における納付金の規定というものは、その解散の過程におきましてもその精神は生かさるべきものと申し上げることができるかと思うのでございます。つきましては今回清算に当りまして、その営業中におけると同じような定めをいたしまして、発券に基く残余財産でございまするから、これが主要な発生原因でございまするから、これに対しましては、ただいま申し上げた法律以上の条理と申しましょうか、理念と申しましょうか、さようなものによって、本来国に納めていただくべきものをはっきりと法文によって明らかにしていただく、かような趣旨法律の改正をお願いいたしておる次第でございます。さような考え方は、大体におきましてだんだんと実態を明らかにしていただくことによりまして、政府部内はもとより、衆議院等におきましてもいろいろ御議論がありましたが、大体私どもといたしましては、ただいま申し上げたような筋道におきまして一般の御納得を得ておるように存じておる次第であります。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 ここに一つ問題があるのですが、まあずっと営業を継続しておるときに一定の額の納付金ということになっておりますね。今度はとにかく閉鎖されてしまってからあと、一定でない額をあなたの方でまあ大体の目分量でみな持っていってしまう。これは国家の必要だという立場でおやりになるんでしょう。予算を組むときに財源がないから目をつけてこれをねらったのでしょう。で、私らもそう思っておるのだが、一定の納付金という考え方と、今度清算の際に余ったものは一つみな持っていってしまえというのと、だいぶ意味が違うと思うのですがね。そこらはどうお考えなんですか。
  46. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいまの御質問趣旨、ちょっと私あるいは取り違えておるかもしれませんので、あるいはさらに御指摘をいただきまして答え直す必要があるかと思いますが、一応ただいま拝聴いたしましたところでは、こういうふうに私拝聴いたしたのでありますが、営業中の納付金が一定しておったのではないか、しかるにこの清算の過程において生じました残余財産からの納付金は一定していないのではないかという御趣旨のように拝聴いたしたのでありますが、これは実は営業中におきましても、発生をいたしました利益金に対しまして一定の割合で納付をしていただいたわけであります。今回もその割合を大体そのまま持って参りまして、発生をいたしました残余財産に対しまして、営業中に納めていただいた割合を乗じまして納付金を算定しておるわけであります。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 それはおかしいですね。前の場合は利益金の一定の率、今度は持っておる財産から何から何まで清算したあとにかけておるのでしょう。だいぶ違うのじゃないですか、性質が。
  48. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 御趣旨は、営業中の利益金というものと残余財産とはその性質が違っておるのではないかという点に着眼しての御質問のように拝聴いたしたのでありますが、先ほど申し上げましたように、実は朝鮮銀行の残余財産がどの金額までがいわゆる発券銀行としての特殊な機能から生じたかどうか、これはまさに仰せの通り、幾ら幾らがその分であるということを確定をすることは多少私は困難があることは御指摘の通りかと思います。しかし大体におきまして、御承知のように、すでに一昨年の法律の改正によりまして、預金の払い戻しはお認めをいただきまして、預金の払い戻しを今どんどんやっております。従いましてこの預金関係等におきましての払い戻しが済み、また一般債務につきましても、法律の定めるところによりまして返済をいたしまして、結局残る残余財産というものは、大体におきまして発券銀行としての特権から生じたものと考えてまあ大きな誤まりはないのではないか。そこでそういう財産に対しましてどの程度のものをお納めいただくかということになるわけでございますが、その際にいろいろ部内におきましても議論をいたしたのでありますが、実は昨年はこれは国会にお出しするまでには至りませんでしたのですが、政府部内におきまして一案を作ったのであります。その際は、生じましたる残余財産をまっ二つに割りまして、半分を国に納め、半分は株主の方にお渡しするというようにいたしたわけでございます。しかしこの点につきまして、やはりわれわれといたしましては多少潔癖に考え直しまして、やはり条理を——条理と申しますか、法律的な一つの理念を明文化するにいたしましても、何かよって来たるところ々求めたいという気持から、営業中の納付金の割合をそのまま残余財産に持ってきたわけであります。それ自体あまりはっきりした根拠がないじゃないかと言われますと、これは営業中の割合をそのまま持ってきたということに実は尽きるのでございますが、これはやや半分よりは下になっております。ある程度のものを控除いたしております。詳しいことはあとで計算を申し上げますが、そういう考え方を持って参りました次第は、やはり先ほど申し上げましたように、営業中に納めましたような割合をとるということならば、まずまず関係者の御納得もいただけやすいのではないかということからさような割合をとったのでありまして、仰せの通り残余財産がやはり大部分は発券に基いて生じたという建前をとっておりますが、果して幾ら幾らがそれであるかということにつきましては、仰せの通り多少これは問題があるのでありますが、この点については、大体において筋道として御納得いただけるのではないかというふうに考えております。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 条理をたてにとっておられると、発券による利益と普通業務なりによって生じた利益と、あるいは残余財産と、それぞれ別でなければならぬ。ところがその初めの方は条理々々といって、しまいの方はどうも多少あいまいだけれども、率だけは発券の際の納付金の率をかける。どうも条理が合わぬように思うのですがね、どうですか。条理を合わすならば、残余財産のうちのどれだけの分が発券によるのかということをはっきりさせなければ条理に合わぬじゃありませんか。もしあなたが条理論をやられるならばそういうことになる。
  50. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ちょっと私お答えに飛躍があったように存じますから、あらためてお答えを申し上げますが、御承知のように朝鮮銀行は、発券銀行であると同時に普通銀行業務をやっております。営業中から、一体どれだけが発券銀行としての業務から生じた利益であるか、どれだけが普通銀行業務から生じたものであるかということは、厳密に言いますと、やはり問題があったわけであります。しかしながら、今申したような割合を乗じて納めるということを、法律によって明定されたこの考え方を、そのまま持って参りまして、残余財産についても、やはりそういう多少アンビギュアスなところがある、これは仰せの通りであります。しかしそれは営業中においてもやはりそういう両方のファクターがあったわけでございますから、その両方のファクターを包摂してお納めいただいた率と、これをとってみるならば、まずまず営業中の納付金の割合、これをもって残余財産からもお納めいただく割合にする、こういう考え方に基いていくというところから、さような割合を採用いたしたわけであります。この点は私、ちょっと答えを途中飛躍いたしておりましたので、補足してお答えを申し上げます。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 今の点ですが、そのまあ今度、これを前の半分取るというのと、今度は、今の納付金についての、前の率をかけて取るというのでは、だいぶ違うのだ、今度の方は少いのだと、こういうわけですか。前に、半分くらいにしようという場合には、これは何ですか、何も根拠がなかったわけですか。ただ半分にしようというだけだったのですか。
  52. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは実は私は前の立案には直接参画しておりませんのでございますが、気持を申し上げますと、大体今度控除いたしましたのは、要するにたとえば積立金、あるいは配当のための控除というふうな控除項目を取ったのでありまして、これはまあ営業中におきまして、主として考慮すべき項目等あったものと思うのであります。しかるに今回は清算の過程でございますので、さような控除を、必要でないというふうな考え方から、二つに割りまして、半分という考え方であったかというふうに考えられるわけであります。しかしやはりこれは今回の考えは、清算の過程におきましても、結局株主に帰属する面があるわけでございますから、さような点については、営業中と同じように、控除をしていくということも、これは意味のないことではございませんし、またさようなことによりまして、常業中に納めていただいた割合でそのものを取った方が、先ほど申したように、何と言いましょうか、一貫した説明ができるわけでございますので、この点はあっさりと、常業中と同じ割合ということに訂正をいたした次第であります。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 まああなたの方でなるたけ取りたいという考えで、いろいろなことをお考えになっておるようですが、預金者についてのあなた方の考えはどうなんですか。預金者はだいぶ払い戻しが少いしするので、ばかをみておるという人もずいぶんあるわけです。不平が多い。しかもあの人たちは、朝鮮からの引揚者で、無一文の人もたくさんおったわけです。それらの人に対して、十分に保護したとお考えですか。
  54. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 一般外地からの引揚者の方々は、まことに御同情申し上げる次第であります。この点につきましては、すでに一昨年の閉鎖機関令の改正におきまして、在外預金及び送金につきまして、支払う道をお認めいただきました。これによって先ほども申し上げましたように、すみやかに支払いを進めている次第でございます。御質問の御趣旨は、この換算率その他の点から、預金者の方の保護にいわゆる十分であったかどうかという点についての御質問でございますが、この点はます一つの考え方といたしまして、通貨の事情等が御承知のように非常に急激な変化をみております。どの程度の換算率をとるべきかという点については、いろいろ議論もあったわけでございますが、一昨年の法律改正の隙に、よく御審議をいただきまして定められた換算率というものは、大体において、やはり私どもとしましては、預金者を保護したまあいわば最大限度の率をお認めいただいた、かように考えているのでありまして、今回朝鮮銀行あるいは台湾銀行だけを対象にいたしますと、相当の残余財産が出ておりますので、さらに預金者等の保護に尽すべきではないかというふうなお考え方も一部にあるようにも聞いておりますが、これは閉鎖機関全体といたしまして、やはり預金の払い戻しというものはどの程度行うべきかという点については、一昨年の法律改正の際に、よく御審議をいただいてきめられたところであります。従いまして、一、二のこの発券銀行としての特権を持った権関という観点からは、むしろ適正な納付金を国に納めていただくということによりまして、問題を処理いたしまして、将来一般引揚者等の問題につきましては、これは別に、御承知のように在外資産の調査等もただいまいたしておりますので、これまた一つの別個の重大な施策として検討をすべきではないか、かような考えを持っている次第であります。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも変なんですね。その預金者にはろくな換算率をしないで、それからまた何というのですか、全額というのじゃなくて、部分的にしか払わない。それでもって今度清算して、うんと金が余ったら、みんな国でもって持っていってしまうというのは、どうも私は納得ができないのですがね。結果としてそうなったにしても、とにかく預金者に非常な迷惑をかける、しかも預金者が引揚者が多くて困っているという場合に、国家がそういうような方法をとるということは、これはたとえ法律の条文に従った——この法律の文面にははっきり従っているので、違法ではないかもしれないけれども、社会的な通念として、預金者を犠牲にして、国家が益金をせりあさって、ここからも持っていってしまう、それで預金者には迷惑かけっぱなしでかまわないのだ、こういう態度にみえるのですが、どうですか。
  56. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げますが、先ほど申し上げましたように、鮮銀、台銀の残余財産は、私どもの研究いたしました結果、またその関係者の方におきましても、よく資料によってお認めになっておられますように、これは発券銀行としての特典から生じたものというふうな方法において申し上げることができると思います。で、預金者の方々に、一つの換算率を法律によってお定めいただいて、払い戻しをいたしたのでありますが、その換算率の結果として、こういう大きな残余財産が生じたということは私どもとして申し上げることはできないのでありまして、やはりいわゆる発券銀行としての機能から生じた、かように申し上げることができると思うのであります。この点は他の閉鎖機関等と比較をいたしましても、さようなことは明らかだろうと思うのであります。そこでそういう一つの事実を基礎にいたしまして、この残余財産処理を考えますと、これはやはり国全体に帰属すべき一つの通貨発行の特権を与えられておったということから生じたものでございますから、その相当額を国に帰属させてこれを一般財源にいたすという筋合いのものかと思うのでございます。従いまして預金者の保護あるいは引揚者の援護というふうな問題につきまして、これを等閑に付する趣旨ではございませんで、先ほども申し上げましたように、それはまた別の問題といたしまして、財政的にも許す限り、でき得る限りそれらの施策について手を尽すことは申し上げるまでもない、かように心得ておる次第であります。
  57. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもおかしいですね、さっきからの話だと預金者には三分の一切っちまって、それでしかも低い換算率で払う、それであとはみんな発券銀行としての特権から生じた利益だから国の方に持っていってしまうと、こういうわけですね。そうすると、また一番初めに戻らなければならないのだが、そうすると、朝鮮銀行は営業中に普通の業務をやっていた、普通の方はうんと損をしていたのですか。普通の銀行業務の方で損をしていたならば、その方は預金者の金で、やっていて損をしていたのだから、預金者に三分の一ぶっ切って払うということは成り立つのですが、その点はどうですか、おかしいじゃないですか。
  58. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいまの御質問の御趣旨につきまして、私あるいは取り違えてお答えするかもしれませんが、この朝鮮銀行が普通銀行の業務をやっていて利益があればそれを預金者に還元すべきじゃないかというふうな御趣旨に、私そういうふうに承わったのでありますが、もし間違っていたら取り消しますが、私はそういう筋として、やっぱり利益があれば株主ということは考えられるわけでございますが、預金者には預金を払い戻す、一定の利子をつけることは当然でございますが、そういう筋合いでございまして、これは朝鮮銀行でございましょうとも、あるいはその他の銀行でございましょうとも、同じことであろうと思うのであります。その払い戻しの際に取るべき換算率はお定めをいただきましてその通りにいたしたわけでございまして、この預金者に要するに払い戻しをいたしますのに、これは一般閉鎖機関の例によって払い戻しをする、しかし残余財産は発券銀行としての特権から生じたものが大部分であるけれども、やや普通銀行の業務のものもミックスしておるという点につきましては、先ほどお答え申し上げた通りでありまして、その点は従いまして営業中においてもそういう実体を持った利益に対して適用いたしました納付金の割合を残余財産処理の際にも適用していく、かような考え方をとったわけであります。
  59. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の言っているのを取り違えておるのですよ、それは私はこう言っているのですよ。朝鮮銀行は普通銀行の業務と発券銀行の業務をやっておる。あなたはさっきから残った財産はみんな発券銀行としての特権でもうけたのだから、それに何をかけるのだ、こういうのですね。そうすると、普通銀行の方は大損をしていた、普通銀行仕事の方はそれだから預金者に払えないというので三分の一でぶっ切っているのかと、こう言って聞いているのです。
  60. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 決して私損をしておったというふうに申し上げてはおりませんので、この点はそれぞれりっぱな経営者を持っておられた銀行でございまするから、その業績は十分上っておる。従って営業中におきましても、発券銀行及び普通銀行としての両方の機能から生じまする利益金につきまして、国に対する納付金もいたしましたし、株主に対する配当もしてきたわけでございます。今回の残余財産につきましても、その事実はこれを率直に認めまして、国に対する納付金をしていただく、また所要の税金を納めていただく、残りましたものは株主に帰属する、こういう考え方をそのまま認めておるわけであります。預金者に対する払い戻しにつきましては、一般の例によりまして、これを支払ったということでございます。
  61. 岡田宗司

    岡田宗司君 何ですね、預金者がどうも三分の一に切られて、しかも低い換算率でもって払い出すということになって、えらい損をしている。あとはまた在外財産等の処理の問題、これからおやりになって何年かかかって調査をして、そのあとでもってどれだけの金を政府でお出しになるか、それはわかりませんが、先の先のことで、夢みたいな話だと私は思う。そうすると、預金者だけはもう大損をしている。それで結局株主はまあ払込資本金に対して三十四倍ももらうということになってくる。国家の方はたくさんお金を納付金として、朝鮮銀行だけで二十七億ですか、持っていってしまう。ずいぶん虫のいい話だと思うのです。預金者だけがえらい損をしている。その中にさらにたとえば引き揚げのときに預金証書だの何か持って帰ってこられなかったり、あるいは死んでしまって、それがどうなったかわからなかったり、それから失ってしまったりして、その預金の払い戻しを受けない人がたくさんおると思うのです。それで何かそういう点でもって、政府の出した参考資料によると、朝鮮銀行関係でいうと、送金為替と預金との支払額が合計十三億三千万円程度と見込んだ、ところが実際支払った金は六億円くらいだと、こういうのですね。あとは一体どうなんですか。あとは何でも国家でとってしまってもいいと、こういうことになるのですか。
  62. 岩動道行

    説明員岩動道行君) まず最初に、損金の支払い方法、支払い処理状況について御説明を申し上げたいと思いますが、何分にも終戦の混乱によりまして、なかなか預金通帳そのものを持って帰るというようなことができなかったような実情の人が相当多かったわけでございます。預金の支払いにつきましては、まず銀行といたしましては、はっきり確認のできる預金通帳を提示を受けて、それに基いて支払いをするという建前のものでございますけれども、ただいまも申しましたように、非常に混乱な状態において引き揚げて参っておりますので、そのような正式の通帳を持っていないで帰ってきたという者も相当あるわけでございます。それに対しましては、まず現地の在外公館、日本の公館で預かり証を発行したというようなものについては、その預かり証を証拠書類として支払いをする。これは銀行の経営者の立場から申しますと、非常に危険な支払い措置でありまして、もし他人がその通帳を持ってくれば、その通帳に対しても支払いをしなければならないというような心配が出て参るわけでございます。従いまして銀行側といたしましては、非常に危険を侵してその預かり証でもって支払いをするというようなことになるわけでございますが、これも引揚者救済というような大きな見地から、できるだけそういう資料によっても支払いをするという措置を現在までとって参っておるわけでございます。このほか接収書類といったようなものでも支払いをいたしております。なお、本人がそういったようなものを持っていないでも、手帳等にメモをつけて帰ったというような場合につきましても、これはなかなか確認が困難でございますが、その場合でも銀行側の手元の資料等を照会いたしまして、できるだけ支払いに応ずる。他人の証言をとってそれによって支払いをするといったようなことで、できるだけその不確定な資料によっても、支払いをするという措置をとって参っておるわけであります。それからかつて引き揚げて参りました場合に、いろいろな資料を税関に保管をするような制度を引き揚げ当時やっておったわけであります。従って税関に資料を預けたままで、そのまま預けっぱなしで取り返しにもこない、従って預金の請求もできないというようなものも相当の件数に上っております。しかしながらこれは税関側から個々の個人の明細表を金融機関別に作りまして、それをそれぞれの金融機関に通知をいたしまして、その結果、金融機関はその明細表に基いて、所要の金額を別除して将来の支払いに応ずるという態勢をとらせるようにいたしております。なおまだ引き揚げて来ない者が何人かございますが、そのような人に対しましても、何ほどかの預金があるという見通しのもとに、ある程度の推定金額を留保してそうして支払いに事を欠かないという措置もとらしておるわけでございます。なおこのようにして相当の金額が留保されるわけでございますが、なおかつ全然資料もないと、しかし自分はあすこに預金があったというような主張をする方もまだあるわけでございます。それも将来何らかの資料が出てくるということも考慮いたしまして、そのようなもの、不確定な債権につきましてもできるだけ十分に金額を留保するという措置をとらせるように現在考慮いたしておるわけでございます。従いましてただいまのところ預金者に対しましては、外地預金者に対しましては完全に将来何年たっても支払いには応じ得るという態勢を整えつつ清算を進めていくという建前処理をいたしておるわけでございます。
  63. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて下さい。   —————————————
  65. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいま議題となっております一案の質疑を一応この程度にとどめまして、次に交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案議題として質疑を行います。
  66. 岡三郎

    岡三郎君 この法律は先般地方行政委員会でこの元になる法律案が上っているわけなんです。それで大体地方行政委員会において相当細目的に検討されておるのでまあ重複するきらいが少々ありますが、一応特別会計としてこれをわれわれが審議し、決定するという必要上二、三聞いて自治庁の方へ協力したいと思うのですが、百分の二十二から百分の二十五に引き上げるということで、果して現在の地方の赤字状態を克服していけるのかどうか、こういう疑問がおおまかに出るわけです。その点について一応やり繰りをすればこれでいけるのだという目安で、この百分の二十五に決定せられたということは推測して間違いないと思うのですが、そのために相当計算の基礎というものが窮屈になって、結論としては地方の方においては相当首切りとか、あるいは退職金にしても相当減額するとか、もっとこまかく言うと、いわゆるまかない料とか、日宿直手当というものが半減してくるとか、各種の操作によって切り詰めておると、もちろん豊かにということは許されないと思うのですがね。その点で百分の二十二から百分の二十五にしたためにできた金額ですね。その金額によってどの程度まかなえるか、それを一つ、補足説明がなかったものだから、そこのところをもう少ししっかり言ってもらいたいと思います。
  67. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 岡委員の御質問でございますが、この点につきましては、御承知のように地方の財政計画を作ります場合に、自治庁、大蔵省と十分検討いたしまして、御承知のように今回は歳出面におきましては、たとえば地方行政機構の簡素、合理化でありますとか、公共事業の補助率を引き上げまするとか、補助的の整理等をいたしまして、地方の歳出におきまして約百三十億円前年度よりも歳出減になっておる。なおまた歳入面の自立につきましては軽油取引税、都市計画税を創設いたしまして、そのほか公社有の資産納付金の創設を見まして、国有資産等の所在しておりまする市町村に対しましては交付金を納めるというようなことをいたしまして、自立財源といたしまして約百四十億円程度のものが強化されておることに相なっております。そのほか交付税率の三%の引き上げによりまして約二百億程度のものが先年度よりふえまするので、地方財政の先年度までの赤字につきましては十分、かなり根本的な改革もいたす必要があると思うのでありますが、ただいま申しましたように、歳出面の節約、歳入面の自立等によりまして、地方財政の運営よろしきを得ますならば、もう今年は赤字もない、かように確信いたして百分の二十五、こういうふうにいたしたのです。
  68. 岡三郎

    岡三郎君 その点についてですね。自治庁としての見解をもう一つ少し克明にお聞かせ願いたいと思う。要するに百分の二十二を百分の二十五に引き上げた結果として、地方の財政状態は一体どうなるのかと、そういう点についてもう少し御説明願いたいと思うのです。
  69. 後藤博

    政府委員(後藤博君) ただいまの御質問に対してお答えいたしますが、交付税だけを取り上げて二十二を二十五にしたからそれでよくなったということでなくて、三十年度、三十一年度の財政計画内容を簡単に申し上げなければならぬと思いますが、大体のところは今宮川さんからお話がございましたので、要するに、まあ従来の財政計画の欠陥と称しておりましたものをあらゆる点で是正をいたして参っております。その結果としてまあ三五%程度で大体財政計画としては従来の財政計画の是正を終ったと、その限りにおいては従来の地方団体の財政運営より苦しい財政運営をいたしておりますが、それを続けていく限りは赤字が出ない。かようなふうに私は考えておるのであります。もちろん個々の団体に参りますれば、従来の団体の財政の運営から赤字要素を持っている団体がございます。そういう要素のあります団体は、その除去をある程度しなければ、もちろん短年度で黒字を出すことはできないと思いますけれども、財政計画上は従来の欠陥を是正し、同時に財源の増強をはかり、税財源の増強もはかっております。それから特殊資金の増強もはかっております。地方負担の軽減もはかっております。いろいろな点で従来の問題となります点を解決しておりまするので、私どもとしてはまずこの程度の財政計画でもって一応の現状といたしますれば赤字が出ない。まあ出さないで済むのではないか、かように私は考えておる次第であります。
  70. 岡三郎

    岡三郎君 まあ一つの例をあげると、毎年、年度末の手当といいますか、そういう問題が起るというと、いつでも地方関係ですね、こういったものに対して自治庁が一札出すとか出さぬとかいうふうな問題がもう毎年起っておるわけなんです。昭和二十三、四年のころはそうではなかったんで、最近においてはもう地方財政が苦しいので、中央で一応年末手当をある程度上げるという形が決定しても、地方の方はこれを支払わないということが非常に多く起ってきたわけですね、そういうふうな結果として中央で財源手当をしてもらわなければ地方の知事さんはやれない、自治庁が何といっても具体的に数字を出してこれを交付するから何とかしろといわなければできぬ、こういうことが繰り返されてきておるわけでしょう。この百分の二十五の措置によってその他の財政計画によってある程度弾力性を持たしてあるのかどうか、こういう点がこれによって解決し得るかどうか、そういう点はどうなんですか。
  71. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 毎年度末におっしゃいますような事態が起るのでありますが、従来その根本の問題としてありましたのが給与費の問題であります。給与単価の問題、員数の問題があったのであります。その問題を解決しない限りはその問題はずっと永久に続くということで、昨年大蔵省と一緒に給与の実態を調査したのであります。それを基礎にいたしまして国家公務員と同じベースに財政計画を直そう、こういうことでそれを基礎にして直したのであります。その直しました計画の給与費がここに載っておるわけであります。しかし個々の団体におきまして従来国家公務員より高い団体と低い団体とございます。高い団体におきましてはわれわれの財政計画以上に出しておるわけであります。それから低い団体はもちろんそれより低いのであります。余裕のある団体と申しますのは、国家公務員より低い給与費にあるところの団体、計画よりも低く、余裕があると言えるのであります。しかし国家公務員より高い給与費を払っておる団体におきましては、これは余裕が一応ないのであります。しかしそういう団体は一応財源の多い団体であります。従って貧弱な財源しかない団体から比べまして、逆に別の方に余裕がある、こういうことも言えるのであります。ともかくも財政計画としては国家公務員と同じベースでもって組んでおります。しかし現実の給与費そのものは地方団体によってまちまちである、従って全体的にみて従来よりも給与費において二百億ばかり是正しておりますから、それからまた〇・二五、こういう給与費を加えたものをもって、やはり新しく組んでおりますから、従来より楽になっておる、かように私は考えますが、やはり現在の実情から申しますと、やはり新しい手当が出て参りますれば、財源の問題というものはからんで出てくる可能性はあると私どもは考えております。これは財政計画通りに地方団体が財政運営をしていないところから発生する問題でありまして、これは個々の団体の財政を睨まなければ果して財源の余裕があるかどうかということはわからないというふうに考えております。
  72. 岡三郎

    岡三郎君 今度の場合も、国家公務員、地方公務員ですね、これがおきざりになってきた、国家公務員の方はやろうと思えばある程度できるのだけれども、これが地方公務員に影響するというようなことも相当考えられたというふうにみておるのです。そういうふうな点で高いところの人があるが、国家公務員に比べて地方公務員は低い方々も相当にある、そういうふうなことを一ぺんに是正することはいかぬとしても、ある程度までそういうふうな面に対する対応する措置ですね、こういったものを見ておいて、まるで弾力性もないような財政の組み方であっては私は困ると思うのです。だから弾力性というものが地方々々によって違う、そう言われるけれども、大体見通して物価も少々上ってきておる状態で、また春季闘争においては公務員関係は捨て置かれておるわけです。当然予測されるのはボーナスですね、夏季手当という問題についてはこれは今度は何とかしてもらいたい、こうくるように私は思うわけです。それに対してたとえばまた〇・二五現在よりももう少しふやしてもらいたいというふうな数字が出てきたときに、自治庁としてはそういうふうに対応できる措置がこれでなされておるかどうか伺いたい。
  73. 後藤博

    政府委員(後藤博君) 非常にむつかしい問題でありますが、国家財政と地方財政と比較いたしまして、国の方は給与費がたしか一三・四%じゃないかと思います。ところがわれわれの方の地方財政の方では給与費のパーセントを申し上げますと、恩給まで含めますと、約四〇%になっております。そのうちで府県に参りますると、府県の給与費は、県によりまして非常に違いまするが、平均いたしますると約五〇%近くになるのであります。で、こういうもののほか義務的な経費が非常に多い。従って財政構造上の余裕がない、従ってこの点が国と違うところであります。国は私どもから見ますれば非常に弾力性のある財政になっております。つまり義務的経費が割合少いということであります。地方団体の現在の経費は国の施策をやる仕事が多いのでありまするから、従って義務的経費が非常に多くなっておる。地方団体におきましては給与費が県の場合に平均は五〇%でありますが、七〇%から八〇%になっておる県があります。そういうところになりますと、財源的な余裕がないのであります。従ってどうしても新しい何か制度をやりますれば、財源を付与しなければならないという問題が出てくるのでありまして、国と同一のような格好にはできないのであります。しからばこれをある程度の余裕を持ったものにしたらどうか、こういうことになりますが、そういうことになりますと、今度は税財源を増強するとか交付税の率を上げるとかいうふうな問題にからんできます。そうなりますと、国の財政自体の問題になってくるのであります。そうすると、国の財政の関係からいたしましてやはりある程度の制約を受ける。従って余裕財源がない、こういう姿にならざるを得ないのであります。しかしまあここ数年来財源の増強をはかって参りましたので、ここ数年前と比較しますれば相当財政的にはよくなって参っております。これは三十年度の場合を見ましても、二十九年度は大部分の団体が赤字を府県の場合は出したが、三十年度になりまして赤字を出す団体は非常に減っております。従来の赤字を出す要素が非常に消えて参りまするし、財源の増強によって〇・二五出しましても相当運営の余裕が出てきた、こういうように私どもは考えております。従って現在の経済情勢からいたしますれば、国税の二税が上り坂にありますので、そこに期待しまして、そこに余裕財源を求めるという以外には直接私どもの立場としてはないんではないか、かように考えております。
  74. 岡三郎

    岡三郎君 もうぽつぽつ皆さん時間を待ちかねておると思うのでやめますが、私は大蔵省に言いたいんですが、大蔵省は従来交付税の問題が起るというと、地方の財政が赤字になっておる原因は、これは故事来歴があるわけなんだが、非常にむだ使いをしておる、乱費をしておる、こういうふうに言って、緊縮財政を相当押しつけて、自治庁もそれに抵抗しつつも、ある程度それにならって下を規制してゆくという形で来たと思うのですが、最近においては大蔵省管轄の方が乱費していますよ、大蔵省国家予算の方が非常にルーズであって、まことに大まかになっておると私は思うのです。だから中古エンジンのみならず、その他各種の問題が山積しておると思うのです。これは何も宮川さんに言う問題ではないかと思うんだが、しかし主計局の次長たる人、よく聞いてもらわなければならぬと思うんですが、主客転倒してきたわけなんだな、前は国家財政の見地から見て地方財政乱費している、これをもっと厳密に緊縮政策をとって相当締められるところは締めてもらいたい。ところが最近においては百億や二百億程度はこの苦しい地方財政を救うためには出してやっても、相当中央はある程度締めれば財源が出てくると、まあ私はしろうとながらも考えるわけです。だから今回百分の二十二から百分の二十五・三%程度ですね、そのほかに譲与税の一割というものもありますが、これはまあ微々たるものです、ということになれば、やはり抜本的には百分の二十五ではなくして、もう少々ここで気ばって、そのかわりに地方で厳重にこれを監督してやらせる、そういうふうな角度でやらぬと、ちょびりちょびり少しずつ出してやっても、実際更生資金にはならないので、結局やけのやんぱちを起して、しまいに準禁治産者的に中央の監督権によってこれを縛られるというふうなことに私はなるんじゃないかと思うので——ちょっとそれましたが、防衛庁の問題はさておいても、その他の経費をもうちょっとやはり縮減して地方財政をもう少しみて、中央と地方とが一体の健全財政というものを確立するというふうにいってもらえぬかと思うのですが、その点どうですか。
  75. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 地方財政に対しまして国の財政が紊乱しておるじゃないかというおしかりを受けました。この点につきましてはもちろん会計検査院の指摘を受けまして、私ども承知しておるところでございまして、今後十分予算の使用等につきましては配意して参りたい。国の予算をほかに使うやつを少し節約すれば、地方財政に回せるのじゃないかというお話でございますが、この点につきましては、もちろん国地方を総合いたしまして、全体が健全にいくようにと運営して参らなければならないと考えております。従来大蔵省が地方財政に対しまして責任を地方財政に転嫁して、地方財政はむだづかいをしておるという態度をとってきたというお言葉でございましたが、もちろんしさいに点検いたしますと、国の方が事業を地方財政の能力以上に押しつける点もあったでありましょうし、また逆に先ほど後藤財政部長が言われましたように財政計画で盛られている以上の給与費を支払っている団体もある、また事業をやり過ぎている団体もありまして、これは国の責任であるとか地方の責任であるということでなくして、今年は非常に何と申しますかフランクに自治庁とよく検討いたしまして、地方財政の立て直しのためにはどうしたらいいか、地方財政の立て直しのために国がつぶれるようなことがあってはいけない、(「大げさなことを言うな」と呼ぶ者あり、笑声)国、地方を通じて総合的に健全化をやっていこうというようなことで、先ほど御説明いたしましたように、十分私どもとしまして歳出面、歳入面において改善策をとったわけでございます。今後も地方財政がちょびちょび交付税をふやすというようなやり方でなくて、交付税というものが出るということは、ある程度はっきり確定いたしまして、多少そのへんに財政需要がそれをオーバーしたり、あるいはそれよりも少くして済むというような事態がきましても、ひんぴんと交付税率を変更することのないような安定したことにやって参るということは私ども理想とするところでございます。そのためにはなお歳出面におきまして、またさら歳入面におきましても十分三十一年度の問題といたしまして、来年度予算編成前に十分根本的な検討をさらに加えたい、かように考えておる次第でございます。
  76. 岡三郎

    岡三郎君 もっと追及したいのですが、諸情勢を勘案して、この程度で質問を打ち切りますが、しかし知事会とか末端の自治体が大騒ぎしてようやくここまできて、自治庁もひっぱたかれながらやってきたというふうに見受けておるわけですが、われわれも地方を甘やかせということを言っておるのじゃない。やはり根本的に立て直すには地方の財政自体も欠陥があるのですね。むずかしい。だからこれをしから全部こう切ってこうはめてというわけにはなかなかいかぬものがあるわけです。だからそういう故事来歴というものを一応勘案したときに、あまり上でこれだけでやれるはずだといって押し付けても非常にむずかしい問題があるわけです。先ほど言ったように国の方から義務的にやらしている仕事だって相当あるわけですから、そういうふうな点で一つ十分この点は考えてもらわなければならない、まあそういうふうなことを一言言って質問を終ります。
  77. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 他に御発言もなければ、質疑は終了したものと認めて差しつかえございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それではこれより討論にはいります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  79. 岡三郎

    岡三郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案に対し反対いたします。  反対の理由はただいま質問をした内容に含まれておると思いますが、とにかく百分の二十二を百分の二十五にせられ、譲与税を一割奮発したという点、少し前進したと思っておりますが、ここまで来るならば、もう少し一つ地方財政の現実面を考えていただいて、わが党としては百分の二十七にこれを引き上げられることを要望して来たわけです。しかし今回はこれを容れられることになっておりませんので、やむを得ず反対するわけでありますが、地方の財政計画を見ても、最近においては、もう一つの例を言うと、学校の先生にしてもほとんど増加するどころではなくして、首を切るというような状態、しかも新しい卒業生をなかなか雇うことができない、そういう点で非常に苦しんでおります。そのほかにもいろいろと税金がふえて来て非常に困ったものだというふうな状態で、ついやはり国家財政の現状を見た場合に、もう少し、国家財政の方を切りつめて地方を救ってもらってもいいのじゃないかと、こういう声は私はもっともだと思うのです。そういうわけでわれわれ社会党としても、地方財政を甘やかして従前のような形のままでいいとは考えません。十分地方の方も財政を建て直すために、緊張して行くということの必要は認めますが、この際、百分の二十五というような微温的な数ではなくして、もう少し奮発して五%程度の増加というものを期待した方が十分な措置ができるのではないか、こういうふうに考えて、この法律案に反対するわけです。以上簡単に申し上げます。
  80. 土田國太郎

    土田國太郎君 緑風会といたしましては原案に賛成せざるを得ないのであります。先ほど岡君の反対の御意見は誠に私は妥当と考えますが、自治庁におかれましても地方の財行政につきましては、一つ特段なる御監督を願って、赤字を出さないようにお願いいたしまして、本案に賛成いたします。
  81. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 別に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて差しつかえございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それではこれより採決に入ります。  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案衆議院送付通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  83. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 多数であります。よって本案は可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続は慣例により委員長に御一任を願いとうございます。  それから多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     大矢半次郎  藤野 繁雄     前田 久吉  井村 徳二     木内 四郎  菊田 七平     小柳 牧衞  西岡 ハル     西川甚五郎  上田國太郎   —————————————
  84. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 引き続きまして、閉鎖機関令の一部を改正する法律案、旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案、二案を便宜一括議題として質疑を続行いたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  85. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて。  これをもって休憩いたします。    午後零時四十三分休憩    ————・————    午後一時五十三分開会
  86. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。  閉鎖機関令の一部を改正する法律案及び旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案、母上一案を便宜一括議題として質疑を続行いたします。
  87. 岡田宗司

    岡田宗司君 お伺いしますが、先ほど私がお伺いしたのは、外地送預金の支払い見込み額が大体十三億三千万円程度だったと思うのですが、実際には六億円しかない、これはその通りですか。
  88. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 十三億三千万円程度の外地送金支払いがある見込みだという数字が、これは法律改正の当時、まだ申し立てもはっきり受けないで一応の予想の下に計算をいたした数字が十三億三千万円になっておったかと思うのでありますが、この十三億三千万の内訳につきましては、送金で六億二千五百万、それから預金で七億一千一百万というような内訳に当時なっておったかと思います。ところで、この実績は、送金につきましては五億円、それから預金につきましては三億二千二百万円見当が現実支払いになるであろうというふうな格好になって参っております。ところで、この十三億三千万の内訳の送金につきまして、六億二千五百万円が五億見当になるのはどういうことかという点でございますが、これは先ほども申しましたように、具体的な申し立てを受けないで、一応の推定による数字が六億二千五百万であったわけであります。それで、この差額はどういうふうに起ったのか、よく原因をつきとめるすべもないわけでございますが、私どもの推察いたすところによりますと、この六億二千五百万という数字は、当時換算率がどのようになるのかはっきりわかっていない。円建ての送金であったのか、外貨建ての送金であったのか、その辺がはっきりつかめないので、外貨建ての送金も一応円建ての送金と同じような計算でやったりした点が相当大きく影響して、この差が出てきているのではないか、かように考えられるわけでございます。  それから預金につきましては相当の差額が出て参っておるわけでございますが、これは預金を計算いたしました七億の根拠は、大体当時の外地における外貨建ての預金が全部でございますが、それの総額が約百四十億になっておったおけでございます。その百四十億を地域別に一応仕分けをいたしまして、それを法律で予定いたしました換算率で換算いたしますと約七億という数字が出て参るわけでございます。ところがこの百四十億という数字は、これは一切の人の預金を含めておったわけでございます。従いまして、本邦人で本邦内に帰って来て、当然預金を請求し得るという法律上の権利を持っている者以外の、現地の朝鮮の人でありますとか、あるいは北支、満州等におきますところの現地人の預金でありますとか、あるいは現地邦人の預金でありますとか、そういったようなものが含まれておるわけであります。   〔委員長退席、理事藤野繁雄君着席〕 そのほかにまた、現地ですでに引き出されていたかも知れない邦人の預金、あるいは会社の預金等も一応入っておるわけでございます。それで、そういったようなものが除かれますと、大体現在三億余りのものが請求されてきておりますが、今言ったようなそういう本邦内で支払い対象とならないような、そういう預金を差し引きますと、まあ、大体こんなところに落ち着くのではないか、かりにまだ証拠書類がないとか、あるいは引き揚げて帰ってないとか、あるいは税関に預けてまだ請求もしてないというようなものを考慮いたしましても、これが七億になるというようなことはおそらくあり得ないのではないか。この辺はもう少し精算が進んでみないとはっきりしませんが、いずれにいたしましても、そういったように、本邦内で支払いをしなくてもよろしいような、あるいは現地ですでに支払ってしまったような預金の金額もこの中に含まれているというふうな推定をいたされるわけでございます。従いまして、十三億三千万円の見込みに対しまして、現在約八億余りのものが支払い予定の金額になっている。その差額というものは必ずしも全額を留保しておかなければいけないというような数字ではないかと思いますが、ある程度のものは必要だと思いますが、その辺は、もう少し進んでみないと、なかなか金額が的確に出て参らないというような状況になっております。
  89. 岡田宗司

    岡田宗司君 今まで実際に支払った額はどれぐらいになっていますか。
  90. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 現在朝鮮銀行におきましては、これは三月三十一日現在の数字でございますが、支払いの件数にいたしまして四万九千六百九十五件、金額にいたしまして五億四千三百十万八千円、これは全体の申し立て金額から見ますと約八七%強の支払率になっております。この残っておりますものは、いろいろと証拠資料等においてまだ的確にその申し立て金額を確認することができないようなもの、まだ受け取りに来ていないといったようなものも含まれておりますが、いずれも先ほど申しました八億余りの予定金額に対しては一〇〇%支払いをするという予定で、資金も十分留保をいたしておるような状況であります。
  91. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、あとの三億ぐらいですか、それは処分をしないでいつでも支払い得るように残しておく、こういうことでございますか。
  92. 岩動道行

    説明員岩動道行君) さようでございまして、ただいま御審議いただいております閉鎖機関令の改正の付則の項にも、朝鮮銀行台湾銀行が納付金を納付する前に、そういったような不確定な債務につきましても十分な資金を留保するという条項を設けてございまして、ただいま金額が三億になるか幾らになるか、まだはっきり申し上げかねる段階でございますけれども、いずれにいたしましても、そのような外地預金者に対しては将来十分に支払い得るだけの金額を別除いたしまして、その上で納付金を納め、あるいは送預金を納め、そうして株主に渡すという建前になっておるわけでございます。
  93. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、その残りの分ですね、いつになるか、これはわからないですね。いつか打ち切るときがあるのですか。
  94. 岩動道行

    説明員岩動道行君) そのようにいたしまして別除いたしました資金は、新会社ができた場合には、これは新会社が引き継いで、新会社が責任をもってその支払いに当るという態勢をとっていくのが妥当であろうと思っておりますが、その場合にも時効が進行するというようなことも一応考えられるわけでございますが、金融機関といたしましては、できるだけ、そのような時効を援用して、取りに来ないからもう自分のふところに収めるというようなことのないように、これはむしろ激しい言い方を申しますと、永久にその資金はそういう債権者のために留保していくという建前で運用させるのが適当ではないかと、かように考えております。  なお朝鮮銀行以外の金融機関等でこのような金額がありまして、しかも新会社を作れないというような場合には、これはどうもいたし方ございませんので、供託をいたしますとか、あるいは信託会社に信託をするという方法を取らざるを得ないかと思っておりますが、この場合には十年間の時効で国庫にそれが帰属するということもあり得るかと考えております。
  95. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、これはまあちょっと別の問題になりますが、在外公館等の借入金の返還の問題について、政府がその債務を確認しながら、その返還金額を五万円に抑えた処置に対して、引揚者の方から訴訟が起されて、第一審で国が敗けまして、それでその原告の要求額の金額に利息を合せて払え、こういうことになったわけですね。あの問題からくるのですが、何というのですか、朝鮮銀行券について、朝鮮銀行券の一円は、その券面に記載する通り日本銀行券の一円の割合で計算すべきであることを認めたことになるとすると、今度預金者が提訴した場合にはどういうことになるか、大体まあ今の判決例からいくと勝つことになるだろう。そうなってくるというと、一体鮮銀の預金の払い戻しということについて、これはどういうことになりますか。
  96. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 在外公館等の借入金に関する判決を例にお引きになって、朝鮮銀行外地預金の処理がどうなるかという御質問でございますが、この在外公館の借入金につきましては、判決の要旨は大体二点あったのであります。  第一は、先ほどお示しのように、五万円で切ったことは不当であるから、五万円以上の金額になるならそれも支払うべきであるという点でございます。この点につきましては、閉鎖機関等の外地預金の支払いにつきましては、全然その限度額というものを設けておりません。   〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席〕 資金のある限りは、幾ら金額が多くてもそれは支払いをするという建前になっておりますので、この点は、外地送金につきましては何ら関係のない事項であろうかと思っております。  それから判決の要旨の第二点は、朝鮮銀行朝鮮で借入れをした金額については一対一で支払いをすべきであるという趣旨でございますが、その判決の趣旨は、単純に、朝鮮銀行券であるから、朝鮮の内の借入れであるから一対一で支払えという趣旨ではなくて、これは朝鮮日本とが終戦の結果経済的に全く異なった地域となって、それぞれ日本銀行券あるいは朝鮮銀行券は別箇の経済的な価値変動を行なっていったので、従って朝鮮銀行券と日本銀行券との間にいろいろな値打の差が出てくるということは、これは実際上認められるところであろう。しかしながら在外公館の借り入れをしたときには、なるほど実質的には朝鮮銀行券が一円五十銭に対して日本銀行券一円というような一つの価値変動がそこに認められるといたしましても、借り入れをしたときの条件として日本円で等価で支払いをする、こういう特約が当時あったんだ、従ってその特約がある限りは、いかにその間の価値変動があろうと一対一で支払うべきである、このような判示になっているように私どもは承知いたしているわけであります。従いまして在外公館の場合には、あるいはそういう判決がなり立つと申しますか、そういう判決になっているわけでございますが、これに対しましてはいずれ政府といたしまして控訴をいたし、また今後の判決を待つ立場になっているわけでございますが、この外地の預金につきましては一対一で支払いをするというような特別な約束というものはなかったわけでございまして、これは現地で、外地で預金をいたしました場合には、その現地で流通している通貨をもって現地で支払いをする、これが預金の約束の内容になっておったわけでございます。従いまして、朝鮮日本の、日本銀行円との間にいろいろと経済の世界が違い、そうして価値変動があったとすれば、今日朝鮮の預金を日本内地において日本円で支払うという場合には、やはりそこに一つの一種の為替相場というものを適用して、それに従って支払うべきであるという建前のものであろうかと思うのであります。従いまして、在外公館の場合とは趣旨を異にして、外地預金は本来ならば外地外地通貨をもって支払うのを、特に本邦内において本邦通貨をもって支払うという特別な措置なるがゆえに、そこに価値の変動を考慮して法律に定められた換算率を適用して支払うということになっておりますので、在外公館の借入金に関する判決がかりに最終決定を見たといたしましても、外地預金の支払いに関するこの法律規定は依然としてそのまま有効に適用されていくべきものである、かように考えておるわけでございます。
  97. 岡田宗司

    岡田宗司君 実際には朝鮮銀行はなくなってしまっておるわけですが、そうすると、その外地——かりに朝鮮銀行券というものと日本銀行券というものとのレートの問題ですが、これは完全なるフィクティヴなものですね、そうなってくると。
  98. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 仰せのように、朝鮮銀行券と日本銀行券は、戦争の終結前、つまり朝鮮銀行が正常な営業をいたしておりまする場合におきましては、その正常な営業期間内においては日本銀行券と等価をもって引きかえると、こういう規定になっておったわけでございますが、営業をすでにやめました状態においては、この等価で引きかえをするという義務も朝鮮銀行にはすでにないわけでございます。さらに先ほど申しましたように、朝鮮日本との経済価値が、経済変動が全く別個に行われたという現在におきましては、新しく朝鮮銀行券の価値というものを判断して、それに基いて日本円とどのように交換していくかという考え方をとっていくべきである、かように考えておるわけでございます。
  99. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもその点がよく僕らにはのみ込めないのですがね。とにかく実際に朝鮮銀行券が、なお、朝鮮銀行自体はなくなっても流通をしておって、そうして外地でもってそれが日本円に対して幾らという相場があるならば、為替レートの問題、レートの問題も出てくるのだろうけれども、それがなくなってしまっておるのにそのレートをきめるというのは、何を基準にして一体きめるのか。
  100. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 閉鎖機関令朝鮮銀行券の換算率を定めた場合の基準と申しますのは、これは昭和二十一年の上半期を中心といたしまして、当時の朝鮮内における物価、それから日本内における物価、これを比較勘案いたしましてきめたわけでございます。このきめた数字自体は、その前例といたしましては、在外公館等の借入金の場合も同様な考え方できめておるわけでございます。それで実際の債権債務処理として預金を支払うという場合には、現実支払いをする時期の朝鮮銀行券の価値と日本銀行券の価値とを比較して、換算率が算出されるのが妥当な線であると思います。そういたしますると、実は昭和二十九年になってからこの外地預金の支払いをするということになったわけでございますから、そのころの朝鮮内の物価と日本内の物価とを比較して、そうして換算率を定めるというのが、一つの筋の通った考え方であろうかと思います。そうなりますると、朝鮮銀行券の価値というものは非常に大きく下落をしておる。つまり朝鮮の物価は非常な暴騰をして、従ってまあ日本とは非常な格差が出ておるということになるわけでございます。そういたしますと、かりに終戦前に一万円、二万円の預金を持っていた方でも、おそらく一円とか二円とか、そういったきわめてわずかな、言うに足りない金額しか払えないというようなことになろうかと思うのでありますが、そういうことになりますと、非常に預金者——引揚者に対してお気の毒な状態になりますので、そこを二十九年当時の物価を比較しないで、むしろ二十一年の引き揚げをして来るような、その当時の物価に、むしろ有利な状況で判断して、それくらいの換算率でどうだろうかという考えで、法律で、別表で換算率をきめていただいたわけでございます。
  101. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも完全に、現実のあれに基かない、一つの仮定に基いたきめ方なんですね。
  102. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 必ずしも仮定と申し上げるわけにもいかないかと思いますが、現実に基いて措置すれば、先ほど申し上げたような、非常にわずかな、言うに足りない金額になるわけでございまして、それを、それではいつの時期にとったら、社会的に見ても、預金者の方からも、あるいは銀行の方から見ても、一般的にとにかく最も妥当な線はどの辺だろうかという配慮も加えまして、そうしてたまたま引き揚げて来る時期がまあ昭和二十年から二十一年にかけてあったわけでございますから、そのころの、引き揚げて来るときに預金も引き出して持ってくるのだというような考え方も加えまして、他は預金が現実には引き出しができなかったから、そのときには引き出しができたであろうというような考え方も入れまして、大体昭和二十一年のそういった時期をとるのが妥当であろうという配慮できめたわけでございます。
  103. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしたら、もう一つ先にさかのぼって、鮮銀券と日銀券とが正規の関係にあった時代のときをとっても別に悪くはないわけですな、任意にそういう時期を選ぶなら。
  104. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 今までのいきさつは、先ほど来、岩動課長からお答え申し上げた通りであります。で、本来はこの昭和二十九年の法律の改正によりまして換算率をおきめいただいたわけでございますから、そのときの事態できめるべきでございましたが、一方在外公館等の支払いにつきましての換算率につきまして、これは政府部内におきましては審議会を開きましてきめられたようなことがございました。これまた法律によっておきめいただいたわけでございます。その先例をとりまして、まあそこまで預金者の利益を保護することが妥当であろうというところからきめられたように承知をいたしております。  なお、御参考でございますが、先ほど申し上げました送金と預金のうち、送金につきましては、これは当時内地に送金するという意思表示があったわけでございまして、内地におきまして円と朝鮮銀行券との等価支払いの意思があったわけでございまするから、特に送金為替につきましては等価で支払うことにいたしたわけでございます。預金につきましては、当時の事情からいいますと、相当預金者のためには逆の事情にあったのでございますが、先例を尊重いたしまして、在外公館借入金の換算率を採用した、かように御了承いただきたいわけでございます。
  105. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、この間の判決でまた左右されることになりはせんですか。
  106. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 先ほど判決の内容につきましても岩動君から申し上げた通りでございますが、大体判決の主眼点は、等価で払うという、この特約に着目して判示されたことは御承知の通りでございます。そこで送金為替等につきましてはまさに大体そういう趣旨のことでこちらは措置をいたしておるわけでございます。預金につきましては、これはそういう意思表示は全然ございませんので、本来、外地で、その外地のそのときの通貨で払うべきものでございまするが、これは円とのレートは非常に逆になっておりまして、ある程度さかのぼりまして、二十一年の価値まで預金者のために有利に認めた、かように相なっておりまするから、在外公館借入金のこの等価支払いの特約に関する判示はそのまま適用ないものというふうに考えられるわけでございます。
  107. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはしかし、今言った昭和二十一年九月をとるということも私は任意だと思う。これはさっき言ったように、二十九年ではあまりにも気の毒だから、二十一年九月をとったと、こう言われた。そうすれば、もう一つさかのぼって、預金の行われた当時のところをとっても差しつかえないのじゃないか、送金の方は一対一ならば片方もそうしたって別に悪くはないでしょう、そこはどうなんですか。
  108. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これはやはり理論的に申し上げますと、本来ならば、この預金の支払いを行う場合の外地預金の通貨価値をもって支払うのが原則かと思います。ただ、そうしてもよくないかと、これは一つの政策論としてさような政策も考えられるではないかという御趣旨かと存じますが、それはしかし、やはり一般金融機関の場合につきまして考えますと、相当支払い能力等の点もございまして、やはりそういう面と両方にらみあわせまして、またその他の債務支払い等とにらみあわせてきめられることかと考えるのでありまして、ただいま論議の対象になっております朝鮮銀行なり台湾銀行なりは、先ほど来申し上げたような発券銀行としての特殊性もございまして、いろいろ残余財産等が多いのでございますが、その他の金融機関につきましては必ずしもさように参っておりません。そういう諸般の情勢をにらみ合せまして、しかも預金者のためにできる限りの利益を考えるという趣旨から、国会においてこの法律の改正をお認めいただきまして、閉鎖機関令第十一条の三にはっきりとこの換算率が定められた次第でございます。
  109. 岡田宗司

    岡田宗司君 法律できめてしまったのだから、そのままやってしまったのだということなんで、まあそれはそれで問題ないかもしれませんけれども、われわれにしてみると、どうもおかしいと思うのですよ。とにかく朝鮮銀行台湾銀行が相当金が残っておる、そして支払い能力もあると思うのですね。それにもかかわりませず、今言った送金の方は一対一で払う、片方の方は支払い当時のレート、それも仮定のレートでもって払うのだ、しかしまあ、それじゃ気の毒だから二十一年の九月、これは一つの政策です。それが政策なら、送金の場合と同じように預金の方も一対一で払ったらいいのじゃないですか。しかしそれが政策論だといえば、二十一年の九月だって政策論なんです。実際にそれだけのはっきりした根拠があるわけじゃないのですからね。そうして預金者を保護しているというのは実に私はおかしいと思うのですよ。まあそれは議論だからこれ以上聞きませんが、そういうわけになりませんかね。まあそれはそれとして、なお朝鮮銀行の問題については、とにかく債権債務の問題、特に北支関係の問題の処理、あれはどういうふうな形で済んだのですか。
  110. 岩動道行

    説明員岩動道行君) 朝鮮銀行と中国連合準備銀行との関係でございますが、これは北支におきまして日本軍の臨時軍事費をまかなうための関係から生じて参ったのが主でございます。これはどのようなことをやったかと申しますと、いわゆる預け合いというやり方で、朝鮮銀行が連合準備銀行から金を借りまして、それをさらに外資金庫に預けてさらに政府はそれを借りるというような格好をとっておったのであります。従って朝鮮銀行自体は中間のただ通り抜け機関のような格好になっておって、実際は外資金庫、あるいは外資金庫と申しましてもこれは政府と同じようなものでございますが、そこが連銀券を借り入れたという格好になっておったわけでございます。これが昭和二十年の八月頃には四百億円を超えるような金額になっておったわけでございますが、これはその後、政府が金を現地で払い下げて中国連合準備銀行にそれを売るということによって、連銀はその支払代金を鮮銀を通して外資金蔵に貸した格好になっておる、その債権をもって操作すると申しますか、代金を支払うという格好になって、この預け合いの債権債務は解消して、現在では全く連銀と鮮銀との間には何らのそういった趣旨債権債務はない、消滅しているという状態になっておるわけでございます。
  111. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから朝鮮銀行朝鮮に残した財産ですね。これは今後の日韓交渉等の関係になるのですが、これは一体政府としてはどういうふうに処理するつもりですか。
  112. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答え申し上げます。御承知のように日韓の間におきましては、将来特別のとりきめをいたすことに相なっております。先般来、日韓交渉の再開等につきましても外務当局におきましていろいろ御努力になっておるように承知をいたしております。御承知のように、閉鎖機関朝鮮銀行その他朝鮮にありました日本軍の昔の会社等につきまして米軍が接収をいたしまして、この接収をいたしましたものを韓国側に引き渡すというような行為が行われておったわけでございます。これに対しまして日本政府の方針は、接収によって日本の法人なりあるいは個人なりまた政府なりの所有権というものは何ら影響を受けるものではない、あくまでもこの所有権に基きまして将来請求をいたすという方針をとっておるわけでございます。従って私どもといたしましては、将来の日韓交渉におきまする特別のとりきめにおきましては、ただいまお示しの朝鮮銀行朝鮮にある資産等につきましては、あくまでもこれの返還を請求するという方針をもって交渉に当るように考えておるわけでございます。
  113. 岡田宗司

    岡田宗司君 これは返還せられる公算はないと思うのですが、まあ返還せられたとした場合にはどう処置されるのですか。
  114. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) この交渉の結果返還するということに相なりますれば、当然、閉鎖機関資産となって、これが将来さらに閉鎖機関清算におきまする資産勘定がそれだけ増加するわけであります。
  115. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあその返されたものについても今と同じような方法で処分して、政府でもってまた納付金を取り上げるつもりですか。
  116. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 大体ただいま御質問通りでございまして、資産がそれだけ、いわゆる残余財産がそれだけ増加するというふうにお考え下されてけっこうでございます。
  117. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからまあ、大体返されないだろう、だめになるだろうと思うのだけれども、もし日本が外交交渉の結果、たとえば朝鮮における在外資産の権利を放棄した場合には、そのことは国内の問題には全然響かないのかどうか。
  118. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 在外資産、負債につきましては、それを両方比較検討いたしまして、負債が超過になっておる場合におきましては、その超過額に相当するものを国内にあります資産をもちまして引き上げて留保いたしておることは御承知の通りでございます。従いまして、そういうものに備えての、なお残余についての措置をただいま御審議を願っておるわけでございまして、これは、かりに今お話のように将来在外資産の返還をみないという場合におきましても、ただいまとろうとしております処置には影響はないという建前でやっておるわけでございます。
  119. 岡田宗司

    岡田宗司君 最後にお伺いするのは、今度政府の力で納付金を取り、さらに税金を課するわけですが、これはその場合に政府は公債をもって納付することを認めておるわけですね、認めておらぬのですか。
  120. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは、ただいまのお話は、今回のわれわれが提案いたしております法律案におきましては、現金で納付していただく建前になっております。実は昨年、けさほど申し上げましたように、一案を政府部内で用意いたしましたときは、国債をもって納めていただくというふうなことが案の中にあったのでありますが、今回はその案は取りやめまして、現金で納めていただくことにしまして、その歳入は、先般国会を通過いたしました昭和三十一年度の予算の中に歳入として計上しておったわけでございます。
  121. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは何かそういう方法じゃできないものなんですか。
  122. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 国債をもって納めるという昨年政府で用意いたしました案は、一つの案でございましたが、これは当時のやはり金融情勢等をにらみ合せまして、閉鎖機関朝鮮銀行あるいは台湾銀行資産は、非常に多くの部分を国債の形で持っておるのでありまするが、その国債を市中で換価することが当時の情勢上非常に困難でございました。そこで、やむを得ず法律をもって定めまして、特に国債をもって、いわゆる物納と申しますか、現物で納付していただく道を定めようとしたわけでございまするが、幸いにして本年は御承知のように金融情勢も非常に好転をいたしまして、市中におきましては、むしろ国債はきわめて好ましい投資の対象というふうな状況になっております。おそらく相当有利に処分ができるという見通しでございます。そこで、今回はそういう情勢をにらみ合せまして、市中におきまして、これらの閉鎖機関の所有しております公債を現金に換えまして、そうして現金で納付していただく、こういう方法をとったわけでございます。
  123. 前田久吉

    ○前田久吉君 銀行局長にお伺いしたいのですが、この前の委員会のときに、大蔵大臣が、朝鮮銀行の十七億の残余の資本金で不動産担保の中小企業対象銀行を作る申請があれば許可する考えだ、こういうような発言がありましたが、これは不動産銀行法という立法ができるわけなんですか。ほかの何か銀行法に基いて認可になるのかどうか。それから、中小企業を対象としてするならば、全国的に相当な支店も置かれてやられるのかどうか。規模の問題。そういうものをちょっとお伺いしたいのですが。
  124. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 第一は、いわゆる不動産担保の銀行を設立する場合の根拠法規の問題でございまするが、私どもといたしましては、これがための新たな立法措置をお願いするつもりではおりません。現在の長期信用銀行法によりまして銀行の認可をいたすならいたすという考え方でおります次第でございます。  第二に、設置いたされました場合の銀行の規模の問題でございまするが、まだ閉鎖機関清算人の方から正式のいろいろの申請書等もちろん出ておる次第でございませんので、今後さらにいろいろの点において検討を要するのでございまするが、不動産担保の金融機関というのは、むしろ私どもの考え方からいたしますと、現在のところ中小企業の金融機関というふうに考えまして、しかもその業務の運営の業務方針の重点を不動産の担保の金融に置いていくというふうなことが適当ではあるまいかと、かように考えておるわけであります。申し上げるまでもありませんが、現在の経済情勢なりあるいは社会情勢におきまして、純粋な意味の不動産担保ということそれのみによって銀行経営が成り立っていくかどうかということには、相当実は問題があると思われます。さきほども申し上げましたように、新しい銀行を作るといたしますれば、中小企業の金融ということがいわばそのねらいであり、その業務運営の重点を不動産の担保ということに置いて運営して参る、かようなことであろうと存ずるわけであります。そこで、支店なりあるいは業務規模の問題でありまするが、この銀行の経営は実は相当今後骨が折れる銀行になるであろう、つまり経営につきましては必ずしもそう手放しの楽観は許されない。しかしまあ中小企業金融あるいは不動産担保に重点を置いた金融機構というものが現在必ずしも十分でないという観点から、設立ということを考えてもよくはなかろうかということに考えておるわけであります。自然その銀行の経営には相当の実は苦心を要すると思っております。従いまして、もしスタートするといたしましても、開設の当初から全国的の網を広げるとか、あるいは支店も持つということは実はむしろ考えるべきでない。東京本店を置くということになると思いまするが、そのほかには、まあ、たかだか一カ所なりないし二カ所という中小企業金融のいわば不備なところを補うという観点から、小規模にスタートをいたしまして、今後の業績を見て支店を拡充するなら拡充する、多く作るなら多く作るという考え方をすべきものである。これは実はまだ研究の過程にありまするが、大体さようなつもりでおるわけでありまして、実際の具体的な問題につきましては、清算人のほうから申請が出ました場合に十分その意見も聞かねばなりませんし、今後いろいろ研究はいたしたいと思っておりますが、銀行局といたしましては大体さような心構えでおる次第であります。
  125. 前田久吉

    ○前田久吉君 不動産担保の金融というものは、現在の経済情勢においては、中小企業対象ということは私は成り立たぬと思っておるのです。大企業対象であればまだ考えによっては成り立っていくかとも思うのですが、中小企業というものはそんな担保に入れるほどの不動産を持ち得る人は少いし、よし持っておっても、今日の借家法とかいろいろな法律に縛られておる限り、かりに土地家屋があって十軒の貸家があるとして、そこから上る家賃で、税金を引いて、いろいろな諸雑費を引いて、そんな金を借りて金利を払っていくというような中小企業は、ごくまれだと思うのですが、特に中小企業を対象とした不動産貸付というものの銀行は、私は成り立たんのじゃないかという考えを持っております。  それから中小企業に対する金融機関がまだ少いというわけなんでしょうか。こういうものを新しくかりに発足さすということは、この点まだ中小企業金融というものは現在の情勢において足らないのかどうかということを一つお伺いしたいと思っております。
  126. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 中小企業金融機関の数自体といたしましては、私は現在不足しておるということはないと思うのであります。ただ前田先生の仰せでございますが、現在の金融機構をずっと眺めました場合に、中小企業の、しかも不動産を持っておって、それを担保にしてたとえば新しい仕事をしたいというような場合に、既存の民間の金融機関なりあるいは政府関係金融機関でもって、金融機構としてもう完璧なものであるか、そこに何らか制度の上においてさらに補完的な必要がないかどうかという点につきましては、既存の金融機関でも相当カバーせられておると思いまするが、なお中小企業金融の中で不動産を揖保に置いて新しく仕事をするとかいろいろな場合においては、金融機構としてなお欠けておるものが、私どもはいろいろと調査をし、またいろいろ具体的なお話を民間の方から承わるという場合において、機構のいわば不備な点がいまだに残っておるのではなかろうかというふうに実は考えております。話がくどくなりましたが、つまり絶対数においては決して私は不足していると思いませんが、機構の上において、こういう不動産担保というものに重点を置いている中小企業金融機関というものが、制度的になお欠けておる点があるということは事実であろう、かように考えております。
  127. 前田久吉

    ○前田久吉君 このごろ、ことに金融はゆるんで参っておるようであります。各銀行とも積極的に貸出をせられて、中小企業に対してもやっていかなくちゃならぬというような方向にだいぶ向いてきておるように思うのですが、かりにアメリカにおいても、大銀行がすでに月賦販売の自動車であるとか小住宅にどんどん貸し出しておる。それがまた非常に銀行が成績をあげておる、こういうのが今日の実態なんですが、特に不動産のくろうとがおるか私は知らないのですが、どうせ五年も十年もしないとほんとうの銀行の機能を発揮して活動のできないものを、特に今日の場合に履く必要があるのかどうかということを、非常に疑問に思っておるのですが、銀行局長にぜひお伺いしたいことは、池田勇人氏が大蔵大臣時代に地方の新しい小銀行を政策として設立させた。たとえば都民銀行とか北海道拓殖銀行どもかなり成績をあげつつあるという今日、非常に戦後の金融界としてはいい行き方だと私は思っておったのですが、最近はなかなか支店の設置をお許しにならない。一方ではそういう地方の銀行支店設置をとめておいて、もしやってみても三年も五年も先でないとわからないもので目先の中小企業の金融に寄与するということは、これはもうくろうとの銀行局長はよく知っておられると思いますが、金融機関というものは、きょう許可したから、あしたからすぐ成り立つというわけにはいかないと思いますが、その一方では伸ばすべきものを押えて、そしてわれわれが見て必要でないという銀行を新しく許していくという点に対して、どういうお考えでそういう方向に向うのか、一応伺っておきたいと思うのです。
  128. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 既存の銀行その他の店舗の増設をやかましく言っておるのじゃないかという点がお話の中心と相なっておるわけでありますが、先ほど申し上げました点と実は関連いたすのでありますが、現在におきまして、各種の銀行の店舗の数は、私ども、これはあくまでも原則論でありますけれども、相当もう数自体としては十分である、これは繰り返して申し上げますが原則論であります、というふうに実は考えておるわけであります。それからもう一つは、今お話にも出ましたように、現在の金融の状況あるいは今後の一応の予想を考えてみますと、金融機関の経営の合理化と申しますか、そういう点に格段の努力を必要とする事態に立ち至っておる。むしろ既存の金融機関におきまして、原則論でありますが、相当不採算店舗があるような場合においては、むしろそれを縮小整理していくという方向が、この経営の合理化という面からいたしましても正しい行き方であろう、かように考えまして、最近は金融機関の店舗の増設という問題につきましては相当きびしい態度をもって臨んでおる次第であります。これはたびたび繰り返して申し上げておりますように原則論でありまして、個々の銀行の実態と申しますか、経営の内容に応じまして、相当の裁量を加えておりますこともこれは事実であります。が、原則的には、ただいま申し上げましたように、各種の銀行支店は、その数といたしましてはむしろもうふやす時期ではあるまい。かような考え方のもとに、新規の支店の設置等につきましてはやかましく申しておるわけであります。まあ、そういう情勢が片っ方にあるにかかわらず、新しい、しかも今後経営に努力を要しまた問題が多いと思われる金融機関に許すのは、首尾一貫しないじゃないかというのが、その次の御質問でありますが、そういう点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、中小企業金融機関として、不動産担保金融というものに重点を置いた一つの長期信用銀行というものを設立することが、中小企業対策という観点から金融制度の問題として適当であろう、こういう考え方でおる次第でございます。
  129. 前田久吉

    ○前田久吉君 銀行局長もよく知っておられて、かなり不動産銀行に対しては困難であるというお考えだろうと思うのですが、しかし現実に今銀行局の方針で十分不動産担保あたりで貸し出すことは各銀行とも望んでおるのですから、そういうものは、手っとり早く新しいものに許可しても何年先からしか動かないものは、一つできるだけ現実に即して間に合せるという方向に、それからそういう新しく無理してでもこしらえるという御意思がおありとするならば、将来において一つ堅実ないい銀行には大いに見のがしてやるということを一つお考え願っておきたいと思います。これで質問を終ります。
  130. 土田國太郎

    土田國太郎君 今前田委員からもいろいろ御質疑がありましたので、私もお聞きしたいというようなことを聞いていただきましたが、一番大きな日本の現在の問題は中小企業の育成、これは一番大きな問題じゃないかと思うのですが、まあ金融々々とよく口にはいうのでありまするが、私どもの考えといたしましては、この小売商の常業経営面の合理化というものが一番大事ではないか、こういう面について、金融機関監督官庁であり指導者である銀行局はどんなお考えでありまするか。
  131. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 私はもう仰せの通りであろうと思います。中小企業の振興対策といたしましては、これは土田先生御承知の通り、単に金融問題というよりは、いろいろの面で総合的な手をみんなで地道に積み重ねて打っていくほか仕方がないのではないかというふうに実は感じておるわけであります。今お話しに出ましたように、中小企業のある部門におきましては、この経営のコストの面の把握の仕方でありますとか、あるいはどういうふうに合理化をすべきであるとかいうふうな点も欠けておると思います。それから最近当委員会でも御質問のあった点でありまするが、親企業から下請企業たる中小企業に対する代金の支払い状況、これは御承知のように七百企業にわたってやったのでありまするが、必ずしも下請に対する支払いがよくなっていないということは、これまた遺憾ながら事実であります。下請に対する支払い促進の方法も当委員会で御審議になっておるので、土田先生御承知の通りであろうと思いますが、さような下請に対する、中小企業に対する親企業の支払いを遅延せしめないように、サンプル調査によりますと、製品の納入、検定納入、それから代金の支払い、しかも小切手のユーザンスというようなものをずっと通計いたしてみますると、相当ひどい事態というものが見えております。なお中小企業の組織化と申しまするか、組合化の問題になりますが、これはいうべくしてなかなかむずかしい問題でありまするが、私ども商工組合中央金庫の実際の運営の状況を見ておりまして、やはり中小企業につきましては、困難ではありますが、組合化ということがやはり一つの忘れてはならぬ大きなことであるというふうなことも、実はしみじみと感じておるような次第であります。さようなことで、あらゆる面から手を打っていただかなければならないのでありまして、中小企業の金融の問題だけが唯一の対策であるがごとく考えることは仰せの通り間違いであると思います。また大蔵省におります私どもといたしましては、やはり中小企業はいろいろの観点から考えて非常に大事なことでありまするし、しかも金融ということが、それのみではもちろんありませんが、重要なまた一つの施策の一環を占めておるということに相なりますれば、やはりこの金融の面でもできるだけの努力を積み重ねて参りますることが、またわれわれの職責であろうかと、かように考えまして、まことにいろいろ不敏でありまして御叱咤いただいておるわけでありますが、かような面でもいろいろ検討いたしたい、かようなことでございます。
  132. 土田國太郎

    土田國太郎君 今の局長の御意見は、私もその点は同感でありまして、企業に対して健全な経営がなければ、融資なんというものはこれは小さいものですよ。それはもちろん総合的に必要なものであるが、その融資の条件だけでうまくいくはずはないのであるから、どうしてもこの中小企業繁栄振興の根本策を考えなければならないと思うのでありまするが、これはあなた方の責任上十分一つやってもらわなければならないと私は思います。なお先ほど局長は、金融機関は不足しておらない、機構または制度の上において欠陥があるのだと、こういうような御意見のようですが、私もそういうように考えております。まあ中小企業の金融機関といたしましては、普通銀行のほかに中小企業金融公庫、国民金融公庫、また相互銀行、信用金庫、信用組合、まあ数限りなくあるわけですから、この上にまた不動産銀行というようなものが出てくるということは、私は特に中小企業を相手の公庫は別ものといたしまして、信用金庫とか、あるいは相互銀行というような、小さいといっちゃ悪いですけれども一般銀行でない、こういう金融機関と競合するような問題も出てきはしないかと思います。大体その中小企業に対して一定の不動産担保というようなことでやられるでありましょうが、一口平均どうせ百万円とはいかぬでしょう、それ以下のものでありまするから、先ほども申し上げました中小企業相手金融機関とちょうど競合相手とならざるを得ないようなことになるのじゃないか、こういうように考えられるのですが、そういう点は御心配ありませんか、どうですか。
  133. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 私どもも、この新しい不動産の銀行ができまする場合におきましては、これは観念的には多少の重複ということは実は避けられないと思います。しかしながら実際の運営面におきましては、努めて既存のこの金融機関との実際業務の上の重複をできるだけ実は避けて参りたいというふうに考えております。先ほど前田先生からの御質問のありましたこの店を作る場所も、さしあたり東京あるいはそのほかに一、二カ所というふうに広いところでスタートしたいというのは、一つは、経営の問題はありますが、やはり既存金融機関との重複関係を考えてのことであります。御承知の通り東京とか、大阪という大都会におきましては、いわゆる中小企業の層というものは相当やはり数が多いわけでありまして、既存の金融機関でもって、確かに法律的にあるいは制度建前の問題から見ますると、ほとんど大半をカバーし切っているようでありますけれども現実に各地の金融相談所に言ってきている事例なんかを見てみますると、まだまだほんとうの意味の不動産担保の金融について、新規の仕事をしたい、それからあるいは親企業から手形をもらった、ところがそのもらった企業自体は中小企業でありまして、これは今まで銀行と実は取引がないという場合におきましては、実際問題としてはなかなか急にはその手形が割れないというような実例が、相当実は金融相談所等には現われているのであります。と申します意味は、中小企業の数が結局大都会においては相当多いので、既存の金融機関だけでは事実問題として手が回りかねるといいますか、カバーし切れない面が残っているのじゃなかろうか。かたがた機構、制度の問題といたしましても、これは私ども先ほど来、前田先生、上田先生の御意見ごもっともに拝聴いたしておりまするが、金融機構の問題といたしまして、中小企業で不動産担保金融ということを重点にしたそれのみでいけるとは決して申し上げておりません。それを重点的に長期信用銀行、小型の長期信用銀行というものの存立の可能性というものがあり得るのではないか、また話しがくどくなりますが、この預金業務というものを原則的に認めるつもりはありません。取引を開きましたお得意先の預金は短期に認める、受け入れるということはありますが、これは長期信用銀行法に基きまして長期の債券を出しております。それによって資金は調達する、いわゆる受信、預かる方の、受ける方の信用業務においては、あまり既存の金融機関とは競合しないというように配慮するということでいきたいと考えているわけでありますが、私どもといたしましても、なるべくは既存の金融機関の業務分野と実際問題として重複をしないように、おのおの補完的な機能をあげるということに対する、十分の、できるだけの努力をいたして参りたい、かように存じている次第であります。
  134. 土田國太郎

    土田國太郎君 その点はけっこうでありまするが、中小企業の現実は、今申し上げましたように、またあなたの御説明がありましたように、信用が薄弱なんです。従って不動産というものも非常に持っている方が少いということであります。かたがた先ほど前田委員が申し上げたようでありまするが、いろいろの法律による制約を、家屋にしろ田地田畑にしろ、いろいろの面から制約を受けておって、これが金融機関対象となって信用を強度化するということはなかなかむずかしい今の御時勢であります。これらは宝の持ちぐされになっておるのでありまするから、こういう面に対して担保価値が著るしく軽減されたる点を何らかの方法で救済し、これを開放する面に向うというお考えはありませんかどうか、それを伺いたいと思います。
  135. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 実はこの新しい金融機関をいろいろと検討いたしております場合に、一番問題になりますのは、今お仰せになりました不動滝の担保価値の問題であります。これは今御指摘にございますように、現在の法律の上で、借家法でありますとか、借地法でありますとか、そういう法制的な制約がございまして、十分の担保価値を発揮するに至っていないという、ここに法制上の問題がありますこともお話の通りであります。しかしまた同時に、現在の住宅事情と申しますか、あるいは建物の需給関係と申しますか、こういう社会的な事情、あるいは経済的な事情で、たとえ法制的には何らかの立法的措置が国会でとられましても、現実の問題としては、この金融機関が担保となっている不動産を換価処分しようというときに、なかなかやりかねるという現実の経済的あるいは社会的事情というものも、これは否定できないと思います。その方面のことは、これはやはり経済情勢が、経済地力がつきまして、逐次実際の不動産の需給状況が好転するにあらざれば、法制的な問題を離れましても、私は解決困難な問題ではなかろうか、かように考えるわけであります。従いまして、法制的に見ましても、あるいは経済的に見ましても、あるいは社会情勢から考えましても、この不動産の担保価値を高めるということにはいろいろの実は制約がある次第でありまして、情勢が許すに至りますれば、また国会方面でもこの法制的な面において御検討いただいて、適宜の御措置をお願い申すという時期は参るかと思いますが、ただいまのところでは、ちょっとそこまでお願いをして御審議をしていただくということも、われわれといたしましてその時機が熟しておらんのではないか、かようなことが実はわれわれといたしまして検討いたした結果であります。
  136. 土田國太郎

    土田國太郎君 先ほど局長が、中小企業に対する金融機関の数というようなものについては、これは十分だというようなお考えのようですが、そこで、鮮銀の跡始末が不動滝銀行になるので、数の上で十分だというところへもってきて、また不動産銀行を許可するというようなことに結論としてならざるを得ないのでありまするが、一面相手たる中小企業の方は担保力がない。全くこれは経営上非常に不安であり、せっかく十七億という金を中小企業方面の利益のためというので投資されたが、空中楼閣になってしまうような心配は多々あるわけなんですが、そこで一つ、ものは相談なんですが、どうなんでしょうかな。不動産銀行相手方の担保力のないためになかなか経営がうまくいかないであろうということは、今あなたの指摘された通り、私も指摘しておる通りだが、あえて金貸しばかり目的でなく、これをもう少し時代に即応したように、この鮮銀のあとの新規に設置する会社は、銀行でなく、こういう中小企業方面の育成強化のために、振興のために、何か保証機関的の会社にこれを向けるということが、一番私は中小企業が資金を作る上において信用度がそれだけ増加されることでありますから、そういう面のお考えはどう考えておりますか。
  137. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 従来私ども閉鎖機関朝鮮銀行清算人あるいは株主の方々の御意向として承わっておりますことは、この十七億の金をもって日本の中小企業の金融対策という意味で、不動産担保に重点をおいた銀行をぜひ作りたいという、そういう方々の実は非常に強い御要望がありますので、先ほど来申し上げておりますように、経営はそう手放し楽観はもちろん許されない、これが軌道に乗りまして経営が収支相償って参るには相当努力が要る、非常な努力が要る、そういうことも覚悟せられまして、その覚悟の上で、ぜひ意義のある仕事だから乗り出したいのだという御熱意でありますので、そういうことであるならば、こうこうこういうふうに、一応われわれの見通しはこうである。またこういうむずかしい情勢があるということで、非公式に、もちろん正式の申請はありませんから、公式ないろいろの話ではありませんが、非公式にいろいろ私の気付いたお話を申し上げ、先方の御意見も伺っているというのが実は今日の情勢であります。それで、そういうふうに検討をいたしました結果、ぜひこの第二会社として不動産担保の金融機関銀行を作りたい、かような申請が出て参ります場合におきましては、その内容を十分審査いたしまして、まあ、許可する用意があるということを申し上げている次第であります。お話のごとく、現在の信用保証協会の実際の動きを見てみますると、一応所期の目的は達していると思いますが、なかなかまだ問題点が多い、今後いろいろと改善していくべき点が、これは信用保証面にあると思います。そういうことで、この信用保証機関を作るということも一つの御着想であると存じますが、何分にも役所はそういうことにつきまして受身の態度であります。そうして清算人あるいは旧株主の方々がぜひ不動帝銀行を国のために中小企業金融対策として作りたい、こういう御熱意でありますので、それに応じてわれわれは許可する用意があるということが私ども大蔵省の態度である、かように申し上げられると思います。今まではそれらの関係の方々は、そういう実は一本筋で、非常な熱意とあれをもって、そういう方向で旧株主の同意も得られ、正式の手続を進めるべくいろいろと御準備に相なっている、つまりこういう段階であります。
  138. 土田國太郎

    土田國太郎君 一応、ごもっともな要望で、株主としてはそうしたいでありましょうが、実際に中小企業の今の現状を知らないのじゃないかと思うのだな。だから株主がそう申し出たから、まあ、その熱意に免じて許すというような情義的からいったらそうかもしれんが、実際国家のためにこれは十七億という金は相当の額ですね。それをそう借手の非常な基礎薄弱なものを相手にして、しかも相互銀行あたりと、また信用組合あたりと非常に競合せざるを得ないでしょうよ、これはあなたがどうおっしゃっても同じお客様に向っていくことですから。非常にその点は私は、両方が、既存の金融機関も不利益、新設不動産銀行も不利益、こういうことに結論は落ちるのじゃないかという心配はあるのですが、一つ今の信用保証会社的のものも一応検討していただきたい。よろしかったらそれに向うようにやって、同じ鮮銀の株主がいずれにしても中小企業のためにやるということは目的は同じなんですから、人のじゃまをしないで、中小企業に喜ばれて国家のためになる、こういうのがいいのじゃないかと私は考えるのですが、一つ御検討を願いたいと思います。  それと御承知の金融制度審議会が、あれができたのですね。調査会ですか。
  139. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) まだ、この委員会にこれから御審議を願う……。
  140. 土田國太郎

    土田國太郎君 ああいうものもできるのですから、銀行は今、金がどこにもあり余るほどあるのですよ。ただ受け入れる方の、借りる方が借り得られない立場にあるのだから、貸す力ばかりそう急いでお作りにならなくてもいいんじゃないか。だから金融制度調査会あたりができたらそういうものに一つおかけになって慎重審議して、そうして百害あってあまり国民の利益にならんというものについては一つ慎重に銀行局もお考えを願いたいと思うのです。その点お考えはどうです。直ちにお許しになるお考えですか。
  141. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) まあ土田先生、百害あって一利なしという御批判でありますが、実は先ほど来、前田先生にもお答え申し上げておりますように、中小企業金融対策という観点から考えまして、現在の金融制度、金融機構というものが完全なものであるかどうか、やはりこれを検討いたしますると、まあ私どもとしてここに一つの欠陥と申しますと少し語弊がありますが、足らざる面があることは事実である、従いまして、この不動産担保金融に重点をおきました中小企業金融機関というものは、国民経済的に見ましても意義の多いことである。ただその経営には先ほど来いろいろ御指摘のございましたような困難な問題がありますので、経営には一方ならない努力が要るであろうということを申し上げておる次第でございます。  それから金融制度調査会でございますが、いずれ御審議をいただきまして会が発足を見ることと相なろうと存ずるわけでありまするが、この審議会は、いずれそのとき御説明申し上げるのが適当かと存じますが、実はむしろ現在の各種の金融制度に関する法律制度を立法論的に御審議をいただくということに、私どもといたしましては実は重点をおいている次第でありまして、日本銀行法でございますとか、あるいは一般銀行法でありますとか、あるいは臨時金利調整法でありますとか、さような法律制度法律に根ざしました金融制度というものを中心にして、今後いかにあるべきかということに審議の重点をおきまして、この政府の行政的な裁量面のほうは何と申し上げまするか、いわば第二義的に実は考えております。これまた御意見によりまして、いろいろこの運営につきましても、もちろん私ども今後御意見によりまして検討を加えなければなりませんが、さような運営の考え方をただいまのところではいたしておりまして、先ほど来申し上げておりまするように、不動産金融機関は現行の長期信用銀行法に基きまして設立の認可というふうに考えておりますので、今日のところでは金融制度調査会で御審議をいただきます議題といたしましては一応おいておる、かような次第でございます。
  142. 土田國太郎

    土田國太郎君 正示さん、ちょっとお伺いしたいのですがね。鮮銀券には、先ほど岡田さんから御質疑に相なった問題なんですが、鮮銀券の一円はイコール日銀券の一円だと、こういう解釈を敗戦前まではしておったじゃないですか、鮮銀券と日銀券の……。
  143. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 敗戦前と申しますか、日本の領土として朝鮮がございましたところ、また朝鮮銀行が正常の営業をいたしておりましたころは、もとよりさようでございました。しかしその後になりまして、御承知のように朝鮮日本との関係がすっかり変りまして、そこからこの換算率をきめなければならんような不幸な事態に相なりまして、その場合に先ほど申し上げましたように、昭和二十一年の当時の日本国内の物価と、朝鮮における物価を参酌いたしまして定めましたのが、日本の一円に対しまして一円五十銭、こういうレートがきめられたわけでございます。
  144. 土田國太郎

    土田國太郎君 しかしながら、これは一つ契約でしょう。相ひとしい一円というものは一種の契約ですね。契約といおうか、あるいはどっちへ持っていっても一円は支払います、こういうことが原則になっておるでしょう。この鮮銀券でもそうじゃないですか。
  145. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 朝鮮銀行に預金をされました方は、将来朝鮮銀行券をもって払われることにつきましては、これはそういう預金者銀行の間の一種の契約関係があったかと思います。しかしそこには将来日本の円をもって払うというような特約はなかったわけでございます。
  146. 土田國太郎

    土田國太郎君 それで、しかもその鮮銀券に記載は、その一円は、かりに一円としましょう。日銀はその鮮銀券をもっていっても支払う義務がないという解釈ですか。日銀へ鮮銀券を持っていって同じ額面の日本円をもらうことはできないということになるのですか、あなたの解釈では。
  147. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) これは敗戦後の事態におきましてはさような義務はないと、こういうふうに考えております。
  148. 土田國太郎

    土田國太郎君 私は法理論的に聞きたいのですよ。実情はわかっているのだ。負けたから負けておけというのは……。
  149. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) はっきり申し上げますが、朝鮮銀行券を持って参った場合に、日本銀行はそれにひとしい日本銀行券を払うという義務はございません。
  150. 土田國太郎

    土田國太郎君 ない。
  151. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) はい。
  152. 土田國太郎

    土田國太郎君 それからさっき岡田さんからも問題になったようですが、私有財産の問題を繰り返し聞くようですが、実際において兌換券を発行したという特殊の事情はあるのだが、さっきの局長の説明は実際論から御説明なんですが、あれを法理論的にお聞きしたいのですが、実情はあなたのおっしゃる通り、その通りわかるのですがね、これはこういう法理論だということを伺っておきたいと思うのです。つまり憲法違反になるかどうか、私有財産政府が否認することになりやしないかという問題ですがね。
  153. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) 先ほども岡田先生にお答えを申し上げたことを繰り返すようですが、やや法律的と……実は法律が得意でないものですから非常にまずいのでございますが、そういう御趣旨でございまするので、まあ法律的な一つの問題といたしましては、この、いわゆる事後立法的な手続になりまして、本来朝鮮銀行法なり、台湾銀行法なりに、営業中はかくかくの納付金をする、解散の場合はかくかくの納付金をするということが事前に法律で、定められておりました場合には、これは非常にすっきりするわけでありますが、しかるにかかわらず、そういう解散の場合には、規定は先ほどお答えしたように、ないわけでございます。従いまして、解散になりまして、解散といいますか、閉鎖になりまして、今最終的にこの清算をする段階におきまして、かような規定をいたすということが、やや事後立法のきらいがあるのじゃないか、こういう議論が一つあろうかと思うのでありますが、この点につきまして、実は先ほどそこのところは申し上げずにいきなりお答えをいたしたわけであります。で、なるほど一つ朝鮮銀行法なり、台湾銀行法になかった規定を今入れていただくわけでございますから、事後立法的な色彩があるのでございますが、しかしこれは事物本来の理念からいいまして、そういう性質のものなのだから、これはまあいわば本来そういう規定があるべかりしものでないかというふうな議論も、(笑声)先ほどいたしたわけでございます。これはまことに形式論としてはおかしなことなんでございますが、しかしこの残余財産の本質からいいますと、そういう議論ができるということをまず申したわけでございます。そこでこれはまあ非常に政府部内におきましても慎重に議論をいたしたのでありまするが、まあ朝鮮銀行台湾銀行については、御承知のようにこれは日本銀行法のように、戦争中に改正がなくて、この解散の場合の規定が入っていないのでありますが、日本銀行法は、戦時中に改正をみまして、この解散の場合の規定が、利益金の帰属の規定が入っておるわけであります。そこからいいましても、発券銀行についての利益金は、かくあるべきものであるという一つの例があるという、これは法律一つの類推の場合の材料でございます。なおまた諸外国の例等も申したわけであります。で、そういう見地から申しまして、やはり朝鮮銀行なり、台湾銀行なりの解散の規定が設けられて、解散の場合の残余財産について規定があるとすれば、当然まあこういう規定があったのではないか、まあその割合等については、先ほど岡田先生にお答え申し上げましたように、いろいろ考え方があったわけでございますが、まあ一番考えられやすいのは、営業中に、この利益金、その利益金のよって来たるところは、発券銀行業務と一般普通銀行業務と両方からきておりまして、ああいう割合を定められておりましたから、まあ残余財産につきましても大体同じ割合をもって構成されるものといたしまして、営業中の納付金の割合をもってする、そういうことを今法文の上に成文化していただくわけでございますが、それはまあ、いわばその前に、この残余財産の本質からいいまして、そういうことは条理上当然のことではなかったかということを一応申し上げて、それを法文にしていただく、こういう意味でございまするから、まあいわゆる形式論的な事後立法論だけでは、これは論じ得ないのでありまして、やはりこの残余財産の本質から当然しかあるべきものというふうに御了解を願いたい、こういうことを先ほどお答えを申し上げた次第であります。
  154. 土田國太郎

    土田國太郎君 そいつはよくわかっているんですけれどもね、どうも法理論的にこっちは承認できない、どうしても全然ふに落ちないということです。あなたのおっしゃる通りなんです実情は、それはよくわかっているんだが……(「とにかく金をとるだけなんだから」と呼ぶ者あり)取るのはけっこうなんだけれども、うまく取っていただきたい。
  155. 前田久吉

    ○前田久吉君 銀行局長に一点伺いたいのですが、閉鎖機関令の一部改正について、緑風会でかなり今の残余財産を不動産銀行に変更していくのについて議論がありまして、それでまあ伺っておったんですが、この公債を発行する説明の中にありましたが、市中銀行の大手の銀行はかなりこれに対して批判的であるし、反対しておると私は聞いておるんですが、それでも公債を発行して、無理に大蔵省の威力でも持たしていけるというお考えなんでしょうか。この点どうなんでしょうか。
  156. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 実はその新しい金融機関に対する批判は、私どもが承知いたしておりますところでは、相互銀行の方からは相当来ております。相互銀行の方では、先ほどからお話のございました業務分野に重複を生ずるのではないかという観点から、新しい銀行については反対である。こういう意思を表明いたしました。それから地方銀行におきましては、いろいろ考え方はあると思いまするが、この金融機関、新しいいわゆる不動産の金融機関につきまして、別段の意思表示はございません。次に大きないわゆる都市銀行でありまするが、まあ私の方はこれはあるいは大蔵大臣からすでに別の機会にお答えを申し上げたかと思うのでありまするが、むしろ現在の部市銀行は、御存じのような金融情勢で、相当手元の資金が豊富に相なっております。そういう情勢でございますので、大銀行としての社会的な重要性と申しますか、地位にかんがみまして、やはり大銀行もこの中小企業金融という社会的な意義の高い問題には、分に応じた協力をやはりしてもらう。また積極的に進んでするという心構えでもって、この新しい銀行の発行いたしまする債券の引き受けを願えないものかと、かような考え方を実はいたしておるわけでございます。しかし何分事柄が、まだ法律案を国会で御審議願っておる途中でございまするし、また事務的に申し上げましても、新しい金融機関の業務の具体的内容につきましては、まだいろいろ研究中の点もございまするので、大蔵省といたしまして、そういう大きな都市銀行、大銀行の協力を積極的に要請するというところまでには、私の承知いたしておりますところでは、そこまで行動をとってはおらない次第でございますが、そういう次第でありまするので、大銀行からはぜひ協力を願わなければなりませんし、またそういう協力の上においてのみこの銀行は経営が成り立って参ります。また今日の情勢からすれば大銀行の協力は得られるものというふうに、実は私どもは考えておる次第でありまして、従いましてただいま前田先生の仰せの、金融機関にいろいろ難色があり、反対があるがという、こういう仰せでございますが、私どもといたしましては実はそういうふうに事態を理解いたしておる次第でございます。
  157. 前田久吉

    ○前田久吉君 私の聞いておる限りでは、かなり大銀行ではこれが反対の意思をとっておるのですが、どうせ監督官庁の大蔵省には、反対だというと何かしっぺ返しがあるから、あまり言わんだろうと、私ども想像するのですが、どうなんです。銀行局長、今まで中小企業中小企業というて、中小企業でありさえすれば役人も国会も何かのがれるというやり方ばかり、また同じような高い金利の不動産銀行一つこしらえる、今金利が少し下っても、やはりひどいところは三銭なり三銭二厘の金利を取っておる。それを中小企業、せっかく朝鮮のそういう尊い金で作る銀行であるならば、もっと大蔵省で思い切って金利を一つ半分くらいでまかなってやる、ほんとうに日本の中小企業を助けるという案が出ないのですか、どうですか。いつも何々銀行とか、国民金庫とかをこしらえるようなことばかりやっておるが、それはみな高利貸しです。普通銀行より高い。頭のいい銀行局長がまた重ねて同じものを作ろうということに対しては、かなり批判的にならざるを得ない。何とか一つ知恵を出して、こしらえるなれば、金利の半分くらいの銀行をこしらえて、ほんとうに中小企業を救うてやるというようなお考えを一つここで中小企業のためにお願いしておきます。
  158. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  159. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記を始めて。
  160. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 今まで朝鮮銀行に関しては清算後のいろいろの問題が取り扱われていると思いますが、台湾銀行一つもお話がなかったが、清算台湾銀行はどういうふうな形で処理されるのか、あるいは新しい会社を作られるのであったらどういう会社を作られる構想であるか、それだけお伺いいたします。
  161. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) お答えいたします。台湾銀行につきましても、大体納付金及び税をお納め願いましたあと、四億九千万、約五億弱の純残余財産がございます。これが株主に帰属する予定でございますが、ただいまのところやはり清算人を中心にいろいろ構想を練っておられるように聞いております。まだ実は正式のことを伺っておりませんが、大体仄聞いたしますると、台湾銀行が従前営業いたしておりました当時の関係等をもとにいたしまして、大体東南アジアの貿易あるいは投資等につきましてある程度寄与いたすような一種の信用保証と申しますか、そういう貿易とか、投資等につきまして、これを安全ならしめるような関係会社を構想として考えておられるようであります。その具体的な内容はわかりませんが、私どもといたしましても、いずれ成案をお出しいただきました場合には、台湾銀行の昔のスタッフ、また長らくの御経験等を活用されまして、非常に緊要な東南アジアの経済の開発のためにお働きになるということでございますれば、この計画を拝見いたしまして、適当なものにつきましては認可をして参りたい、かように考えておる次第であります。
  162. 土田國太郎

    土田國太郎君 朝鮮閉鎖機関の主なるところ、たとえば殖産銀行とか、金融組合連合会とか、信託などの法人の閉鎖機関に入れしめた右法人の以後の財産状態というものが、大ざっぱのものでもわかりますか。もしわかりましたならば、参考にもらっておきたいのですが、わからなければ、この次のときでけっこうです。ついでに台湾銀行も。
  163. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) ただいまの御質問にお答え申し上げますが、朝鮮銀行は御承知の通りでございます。まず、殖産銀行でございますが、これは国内清算残余見込み四億五千万円余りと見込まれておりますが、これに対しまして一方、社債の支払い額が十億近くございますので、この社債を支払いますと……。
  164. 土田國太郎

    土田國太郎君 済みませんが、一つ一覧表で出して下さい。
  165. 正示啓次郎

    政府委員(正示啓次郎君) それでは一覧表をすぐお届けいたします。
  166. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ちょっと伺いますが、あなたが中小企業不動産銀行について御説明になったときに、それは長期信用銀行法でやられるといわれ、それに対していろいろ御意見があり、それに答えたれた中で、金融制度調査会で審議してもらうという御説明をされ、同時にそのあとで、その会のことについて話のときに、その会で制度の問題ばかりでなく、法律問題も討議してもらうとあったが、そのあなたの御説明に矛盾があると思うのです。それをちょっとただしておきたい。そうしませんと、この問題とはちょっと離れますが、また金融制度調査会のことについて聞かなければなりませんから、一応伺っておきます。
  167. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 実はお答え申し上げておりますうちに、委員長の御指摘のようなことを申し上げたかと思います。いわゆる不動産銀行を作るべきかどうかという問題につきましては、長期信用銀行法に基きます行政措置でございますから、これは金融制度調査会にはただいまのところは付議して御審議を願うという予定をいたしておりません。金融制度調査会はむしろ日本銀行法でありますとか、あるいは一般銀行法でありますとか、臨時金利調整法でありますとか、そういう現行の法律の改正を適当とするかどうかという立法問題を御審議願うわけであります。御指摘の通りに、私の申し上げたところに矛盾するところがございましたかと存じますので、ただいま申し上げましたようなことで御了解願いたいと存じます。
  168. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それからもう一つ、これはあなたのお考えを聞きたいのですが、中小企業を主として不動産金融銀行を作るという考え方のようですが、それについて、この不動産金融銀行は経営が困難だろうというお話、また片方において、いろいろそれに対する御批判、御指摘もありましたが、またあなた自身の考え方もそうだとすれば、むしろ既存の長期信用銀行のこの制度を変えて、そうしてむしろ中小企業金融の程度まで貸し出しができるようにしていくという考え方の方が自然じゃなかろうか、こういう気持もあるのですが、これについてあなたの御所見を承わりたい。
  169. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 現在の長期信用銀行法に基きまするいわゆる長期信用銀行と申しますのは、興業銀行日本長期信用銀行と二つあります。この二つの銀行の実際の業務分野の範囲を広げまして、いわゆる大中の企業ばかりでなく、小さい方の企業にも比載的長期の固定した貸付を行わせるという考え方が成り立つかどうか、それが実行できないかどうか、その点も実はいろいろ検討いたしましたが、現実に両銀行の経営の責任者の意見を徴しましたが、いろいろ検討いたしました結果、現在両行のとっております業務運営の方針、実際の業務に当っておりますスタップの関係、そういうものから考えまして、この両行をして業務を拡張して、中小企業の金融に当らしめることは、観念的には別といたしましても、実際の施策としてはちょっと無理である、こういう実は私どもとしては結論に達しまして、先ほど申し上げましたようなことになっております。
  170. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) もう一つ伺います。こういう金庫をたくさん作るときに、勧業銀行というのが今でもありますが、その業務を普通銀行に改革するときに、私がこの委員会質問したことがあるのですが、現在あるものをこわして、そしてまた新しく作るというような考え方ですね、従来のものを取りこわして専門々々に分けていくという考え方については、それは単に数をふやすだけでやっているのであって、これは考え方によれば、いわゆる失業救済機関になりゃせぬかということを私が言ったことがあるし、そういう感が非常に強いのです。ことに今あなたがおっしゃったように、先ほど来もだれかがおっしゃったように、中小企業ということであれば、何でもかまわぬといったような、時勢のいわゆる一番風当りの少いものを取り上げてするのだという御批判も委員の中にはあったようですし、それと同時に、そういうふうなにおいも実は今までの説明なり、いろいろな委員会の空気からそういう感じがするのですが、あえてそれでもこういうものをやっていこうというお考えが、無理してでも作ろうかというお考えがあるということなのか。これはあるいは政治的な面があるかもしれませんが、それについて先ほどおっしゃるような御意見のように、十二分に検討していかれるということについての、さっきは仮定だとおっしゃったのですが、大体こういうふうなことについて、皆さんからの要望が出れば、そういう線に持っていかれるおつもりなんですか。
  171. 東條猛猪

    政府委員(東條猛猪君) 実はこの経営が困難だという言葉の響きが非常にむずかしいのでありますが、経営は決して楽でない。私どもの方でいろいろ試算をいたしますと、努力してやっていけばやっていけるという一応の試算が出ている。そのことを申し上げたいことが一つと、それから、もちろん正式の手続はこれからの問題でありまするが、生産面なりあるいは株主関係の人からいろいろと話もありますし、意見交換もいたしておるわけでありまするが、私どもの心がまえとしては、今後別段のことがなければ、正式に申請が出れば、申請内容をある程度いろいろ検討した結果に照らしまして、十分検討はいたしますが、新しい銀行として長期信用銀行法に基いて認可する方針である。それは政治的ということもちょっとありましたが、そういうことを離れまして、事務的に金融機構の問題として取り上げましても、やはり現在の機構に不備があるということも、これは否めない事実だ。それから中小企業金融に名をかりるという先ほど来のお話でありますが、実は大企業については、長期信用銀行法に基いて現在二つの長期信用銀行が現にあるのであって、これでもって十分にやってゆける。いわゆる小型の中小企業を相手にする長期信用銀行がないということが金融機構としてあるのだというわけでありまして、中小企業ということに名をかりてイージーな道を歩んでいると言われると、ちょっと私ども説明が不十分であったということになるのでありまして、やはり小型の、小さいものを相手にする長期信用銀行が現在の法律に基いてあるということが、事務的に検討いたしましても、金融機構の問題として適当であろう。だから経営にいろいろ骨が折れることはわかるけれども、ぜひやりたいという人があれば、認可することが適当であろう、かような実は考え方をいたしておるわけであります。
  172. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは今のお考えはわかりましたが、先ほど大企業に対する貸出機関ということで現在二つある。それには経営のやり方なりスタッフの問題について不適当なところもあるから云々という、今、御説明があったが、それと同じ問題で、制度としてはどうでも、今のスタッフの問題がこれに関連してくると、いろいろ問題があろうと思います。そこでこの問題は朝鮮銀行あたりの前のスタッフの方々がおそらく乗り出してこようというお考えだろうと思います。これは立案のときに経営のスタッフをどう考えたかしらぬけれども、そういうことについても十二分に検討する御用意はあるでしょうね。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  173. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて。  それではこれで散会いたします。    午後三時四十五分散会    ————・————