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説明員(白石正雄君)
所得税法の一部を改正する
法律案、
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案につきまして、内容の御
説明を申し上げます。
まず、
所得税法の一部を改正する
法律案の内容でございますが、これは先日
提案理由におきまして申し述べました内容以外に、ほとんどつけ加えることのないほど簡単なものでございますけれど、一応条をおいまして御
説明を申し上げたいと思います。
まず、
所得税法の一部を改正する
法律のうち第九条第五号のうち、「十分の一・五」を「十分の二」に、「六万円」を「八万円」に改めようといたしておりますが、これは給与所得控除の引き上げに関する規定でございまして、今まで一五%、その最高
限度六万円というふうになっておりましたものを、今回二〇%、最高
限度を八万円に改めようとしておるわけでございます。
それからこれに関連いたしまして源泉徴収税額表の
数字を改訂いたすわけでございますが、今回この改訂に伴いまして、今まで月額表の中に端数があったのでございますが、これは毎月ただ徴収いたしまして年末調整では最後に調整をいたしまするので、従いまして毎月の分につきましては端数をこの際整理いたしましてまるい
数字にした方が計算上も適当であろうかと考えまして、月額表の中の甲欄につきまして端数を整理いたしておるわけでございます。たとえば改正
法律案の別表第三の三ページのところをごらんいただきますと、月額表の二段目にその月の社会保険料控除後の給与の
金額が八千五百円以上八千七百円未満というところでは、扶養親族の数が〇人である場合におきましては三十円というような税額に相なっておりますが、これは正確に計算いたしますと三十一円になります。しかしこれは端数切り捨てによりまして三十円というようにして以下順次端数を整理いたしておるわけでございます。
本文の内容といたしましては以上の
通りでございまして、あとは附則におきまして例文並びに経過的な規定を設けております。一項は、「この
法律は、三十一年四月一日から施行する」、すでに
提案理由におきまして御
説明申し上げましたように、給与所得控除の引き上げは財源との関連もございまして七月一日以降の分から適用することを目途といたしておりまして、この附則の第六項におきましては、「新法別表第三及び別表第四は、
昭和三十一年七月一日以後の支給に係る給与所得について適用し、同日前の支給に係る給与所得については、なお従前の例による」と、かようになっておりまして、毎月の源泉徴収につきましては、改正法は七月一日以後の分について適用することにいたしておるわけでございます。しかしながら本法はこの改正法の施行は四月一日からいたそうとしておるわけでございますが、これは現在の
所得税法の建前は年分課税に相なっておりまして、その年一年分の所得額につきまして適用することに相なっておりまするので、毎月の月額表は、二割、八万円に基きました分につきましては七月一日以後の分において適用すると同時に、それまでの分につきましては従来の一五%、六万円の
限度でいたしまして、そして終局におきましては三十一年分については附則の四項で書いておりまするように一七・五%、七万円という額において年末調整をいたしまして、年分の所得税額を算出いたすということに相なっておりまするので、従いまして三十一年分の所得につきましては一七・五、七万円という額によって所得税額が算出されることに相なるわけであります。そういたしますと、六月までに源泉徴収せられまして、そしてたとえば六月において死んだ、あるいは
外国に行った、かような人につきましてはどういうことになるか、かような問題が生ずるわけでございますが、このような場合におきましても、この付則四項において書いておりまするように、三十一年分といたしましては年間の分を一七・五%、七万円という額で精算することに相なりまするので、このように七月一日より前、すなわち六月末までに死んだ人、あるいは
外国へ出て行った、かような人につきましても、この改正法を適用する必要があるという
意味におきまして、この改正法の適用は四月一日から施行するというようにやっているわけでございます。従いまして、このような途中で死んだ人とか、途中で
外国に行ったというような人につきましては、準確定申告の制度があるわけでございますが、このような人につきましては、そのような整理をし、さらに従来の額につきまして更正をするというような規定を付則ののちの方において設けております。
それから付則五項の規定でございますが、これは所得税につきましては、御
承知のように予定納税の制度が採用されておりまして、前年分の所得というものを
基礎といたしまして、そうして算定いたしました税額について、予定納税をしていただくことになっておるわけでございまするが、この予定納税の税額が前年分の所得を
基礎といたしまして算定いたしまする
関係上、今回その所得の計算の
方法につきまして、給与所得控除の改訂を行おうとしておりまするので、この改訂されたところによって予定納税もしていただくという
意味の整理の規定を設けておるわけであります。つまり、予定納税におきましては、前年分の所得ということに相なるわけでございまするが、その前年分の所得は従来の規定によりますれば、給与所得につきましては一五%の控除をやったものが前年分の所得になっておりますが、これを
昭和三十一年において予定納税いたします場合においては一七・五%で控除いたしまして、そうしてその所得の計算を改訂いたしまして、それによって予定納税をしていただく、かようにしておるわけでございます。もちろん予定納税につきましては、源泉徴収された税額は控除することになりまするので、この分がすぐ直ちにそのまま税額等に響くということはないわけでございまするが、しかし給与所得以外の所得と、それから給与所得とこういったものの関連におきまして所要の規定の
整備をはかって、予定納税制度を今回の改正法に合うように規定の
整備をしよう、かようにしておるわけでございます。
六項はもうすでに御
説明申した
通りでございます。
七項、八項が、先ほど申し上げましたように、準確定に関連する規定でございますが、このように六月までに死んだ人、あるいは
外国へ出て行ったというような人につきましては、やはり従来一応確定申告をして、これが済んでおるものがあるわけでございますので、このような人につきましては、本法の施行後におきましてその税額が変るわけでございますので、このような人につきましては、さらにあらためて更正の請求をすることができる。そうして更正の請求に基きまして税額を改訂いたしまして、もし還付の必要が生ずるというような場合におきましては、これを還付してやるという規定を設けておるわけでございます。このようなものにつきましては、この
法律施行の日から、つまり四月一日から還付加算金をつけて返してやるという規定が八項の規定に相なっております。
なお、九項及び十項は、これは改正法に関連いたしまして従来の規定の整理をしておるわけでございまして、実体的の問題ではございません。
以上が
所得税法の一部を改正する
法律案の内容であります。
次は、
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案につきまして御
説明申し上げます。
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案は、
租税特別
措置法とそれから有価証券取引税法、登録税法とこの三つにつきまして、それぞれその一部を改正を行おうとしておるわけでございます。
まず、
租税特別
措置法の改正でございますが、これは第五条の十二につきまして改正を行わんとしております。新旧対照表がお手元に渡っておると思いますが、それの七ページのところをごらんいただきますと、上の方に改正案が載っておりまして、下の方に現行法がございます。その現行法の五条の十二は、七行目のところの「
金額の二分の一に相当する」というのを削除しております。第五条の十二は御
承知のように交際費に関する規定でございますが、この交際費につきましては
昭和二十九年の改正におきまして、いわば二十八年中の実績の七割相当額及び各
事業年度の取引
金額に政令で定める一定の率を乗じた額との、この両方の額のいずれが多い額をこえて交際支出が行われたという場合におきまして、そのこえた額の二分の一につきまして従来課税をいたしておったわけでございますが、今回そのこえる額の全部について課税をしよう、かように改めようとしておるわけでございまして、従いまして「そのこえる部分の
金額の二分の一に相当する
金額」となっておりましたその「二分の一」のところを削除することによりまして、そのこえる額全部について課税する、法文の規定によりますれば「これを損金に算入しない」、かようにいたしまして、交際費課税の拡張をこの際行おうとしておるわけでございます。
次は、七条の六でございますが、七条の六は、これは輸出所得控除の規定でございまして、御
承知のように、輸出奨励という
意味から輸出所得につきましては一定の控除の制度を設けて、
租税の上で奨励策をとっておるわけでございますが、その中に、輸出と他から購入した物品の輸出というものにつきましては、本規定を適用しておるわけでございます。ところが輸出という場合は、これは通関手続を経まして税関を通って行くものを輸出と一応考えるわけであります。そういたしますと、最近賠償
関係がいろいろ進展しておるようでございますが、賠償
関係で取り引きせられまして、それが通関手続を経て通って行くという場合に、やはり法文から見ますと、これは輸出というような解釈になりかねないわけでございます。しかし本来通常の常識的にみて、輸出の奨励というものは、賠償
関係も含めて税を軽減するという必要は考えられないわけでございまするので、そういう
意味で昨年の改正のときにカッコ書きにいたしまして、他から購入した物品の輸出のうち「対価の支払が
日本政府においてなされるものを除く」と、かように除外規定を設けたわけであります。ところがその後、この規定がちょうど
国会で
審議中であったと思いますが、そのころ賠償
関係の細部の規定が固まりまして、その固まったところによりますと、支払いが
日本政府においてなされるというようにならなくて、むしろ支払いがやはり賠償使節団からされ、ただ
一つ一つ日本政府が承認をしましてチェックをして、そうしてその使節団の勘定に払い込むというような取りきめがなされたわけであります。今後フィリピンとの賠償協定その他におきまして、どのような取りきめになりますか、まだはっきりいたしませんが、大体ビルマとの賠償取りきめがそのようになりました
経緯に顧みますと、同じような支払い形態がとられるものとも予想せられまするので、この昨年の改正におきまして行われましたような規定では、必ずしも賠償が除かれるということになるかどうか、やや疑問が生ずるわけでございます。当時
政府側の
説明といたしまして大体「対価の支払が
日本政府においてなされるものを除く」と、こう書きましたのは、その趣旨からかんがみまして、
一つ一つ日本政府が承認をして、特にそのための支払いということで賠償勘定に払い込んだようなものをも含む
意味であるというような答弁がなされておりまするけれ
ども、しかし法文の解釈といたしましては、必ずしも明確を期していないと考えられますので、この際この点をはっきりせしめるという
意味で「対価の支払が
日本国と
外国との間に締結された賠償に関する条約に基き
日本国
政府又は
外国政府によりなされるものを除く」というように、はっきりと規定しようとしておるわけでございます。
それから二十六条でございますが、これは航空機の燃料用に供する揮発油につきましては、揮発油税及び地方道路税を免除する規定でございますが、その適用期限が
昭和三十一年の二月三十一日までと相なっておりますけれ
ども、なおしばらくこれを延期することが適当であると考えられますので、
昭和三十四年三月三十一日までに延期しようとしておるわけでございます。一
次は、有価証券取引税法の一部改正でございますが、有価証券取引税は御
承知のように、株とそれからその他の確定利付
債券、証券とに分けて税率を異にしておるわけでございます。国債、社債等につきましては、その税率は証券業者を譲渡者とする売買による譲渡の場合におきましては、譲渡
価格の万分の三、それからそれ以外の譲渡人の場合におきましては、譲渡
価格の万分の七の税率で課税することになっておるわけでございますが、最近社債市場の再開というようなことも予定せられておりまするので、この際、社債等に対する有価証券取引税の税率を
検討してみますと、従来の税率が必ずしも適当でないということが考えられまするので、この際その税率の引き下げをはかりまして、証券業者を譲渡者とする売買による譲渡におきましては万分の三から万分の一に、それ以外のものにつきましては万分の七から万分の三に引き下げようといたしておるわけでございます。
次に、登録税法の一部改正でございます。社債または第二回後の社債払込みに関しましては、現在登録税が課税されることに相なっておりますが、その場合に社債の償還期間によりまして税率を異にしておりまして、期間一年以下のものにつきまして千分の一・五、三年以下のものにつきましては千分の三、三年をこえるものにつきましては千分の四というように償還期間の長短によりまして税率を区分しているわけでございます。その場合に三年をこえるものは千分の四になっておりまするけれ
ども、ただし農林
債券、商工
債券、
北海道拓殖
債券、興業
債券、勧業
債券、台湾拓殖
債券、そのほかのものにつきまして千分の二という逓減税率を規定いたしておるわけでございます。これは今申し上げたことをお聞きになってもおわかりになりますように、戦前の規定でございまして、その整理がなされていなかったわけでございます。この際、この規定を整理いたしまして、そうしてすでになくなったようなものはこの際削除して、新しいものを入れるという
意味におきまして、
長期信用銀行法により
発行する
債券というものを挿入いたしまして、
北海道拓殖
債券、興業
債券、勧業
債券、台湾拓殖
債券、東洋拓殖
債券、北支開発
債券、鉱業開発
債券、樺太開発
債券というものを削除するということをしようとしているわけでございます。これは
長期信用銀行法により
発行される
債券が、従来は三年ものでございましたので、それでこの千分の四という税率の適用については問題とならなかったのでございますが、昨年末ごろから五年ものが
発行されることになりまして、この点が問題になりましたので、再
検討をいたしました結果、この際このような
金融債につきましては、戦前の例にもならい、逓減税率を適用するということで、規定の整理を行おうとしているわけでございます。
それから
租税特別措置法等の一部を改正する
法律案の内容は今御
説明した
通りでございますが、別途
租税特別
措置法の一部を改正する
法律案を近く
提案する予定になっておりますので、この機会に名前が類似した
法案でございますので御
説明を申し上げたいと思いますが……(「この次やれよ、そんなもの」「まだ
資料が回っていないもの」と呼ぶ者あり)それではこの次にいたします。