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1956-02-23 第24回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————   委員の異動 二月十七日委員吉田萬次君、岸良一君 及び後藤文夫辞任につき、その補欠 として菊田七平君、小林政夫君及び片 柳眞吉君を議長において指名した。二 月二十一日委員戸叶武辞任につき、 その補欠として江田三郎君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡崎 真一君    理事            岡  三郎君            土田國太郎君    委員            青柳 秀夫君            木内 四郎君            菊田 七平君            白井  勇君            西川甚五郎君            藤野 繁雄君            野溝  勝君            平林  剛君            片柳 眞吉君            杉山 昌作君            前田 久吉君   国務大臣    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君   政府委員    北海道開発政務    次官      白波瀬米吉君    大蔵政務次官  山手 滿男君    大蔵省理財局長 河野 通一君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    大蔵省主税局税    制第一課長   白石 正雄君    大蔵省主税局税    制第二課長   吉国 二郎君    大蔵省主税局税    関部業務課長  崎谷 武男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定物資納付金処理特別会計法案  (内閣送付予備審査) ○食糧管理特別会計昭和三十年度に  おける損失をうめるための措置に関  する法律案内閣送付予備審査) ○北海道開発公庫法案内閣送付、予  備審査) ○租税及び金融等に関する調査の件  (百円硬貨鋳造問題等に関する件) ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○租税特別措置法等の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○砂糖消費税法の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○関税定率法の一部を改正する法律の  一部を改正する法律案内閣送付、  予備審査)   —————————————
  2. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) これより委員会を開きます。  議事に入るに先立ちまして、委員の変更について御報告いたします。去る十七日付をもって、委員吉田萬次君、後藤文夫君及び岸良一君が辞任され主補欠として菊田百平君、片柳眞吉君及び小林政夫君が委員に選任されました。また二十一日付をもって委員戸叶武君が辞任され、補欠として江田三郎君が委員に選任されました。   —————————————
  3. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それではこれから本日の議事に入ります。  まず、特定物資納付金処理特別会計法案予備審査)、食糧管理特別会計昭和三十年度における損失をうめるための措置に関する法律案予備審査)、以上二案を便宜一括して提案理由説明を聴取いたします。
  4. 山手滿男

    政府委員山手滿男君) ただいま議題となりました特定物資納付金処理特別会計法案外法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  最初に、特定物資納付金処理特別会計法案について申し上げます。  今回、政府は、バナナ、パイナップル罐詰等、その輸入が制限されるため、国内の需給の不均衡が著しく大となり、その輸入によって通常生ずる利益をこえて異常な利益を生ずると認められる特定物資につきまして、その輸入により生ずべき利益の一部を徴収するため、別途特定物資輸入臨時措置法案を提出して御審議を願っているのであります。この法案によりますと、特定物資輸入について外貨資金の割当を受けた者は、適正な利潤をこえて生ずべき特別輸入利益を国庫に納入する義務を負うことになりますので、政府におきましては、同法の制定に伴いまして、その特定物資納付金を徴収し、これをもって産業投資特別会計からの投資の財源に充てることといたし、これに関する政府の経理を明確にするために、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理することが適当であると考えまして、ここに特定物資納付金処理特別会計法案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案の概要について申し上げます。この会計は、通商産業大臣が管理することとし、特定物資納付金及び附属雑収入をもってその歳入とし、産業投資特別会計への繰入金、事務取扱費及び附属諸費をもってその歳出としております。また、その会計から産業投資特別会計への繰入の方法につきましては、毎会計年度歳入収納済額から事務取扱費及び附属諸費支出済額等を控除した金額限度として、予算で定めるところにより、随時繰り入れることとし、その他この会計予算及び決算等の作成並びにその手続等に関し特別会計の運営上必要な事項を規定いたしているのであります。  次に「食糧管理特別会計昭和三十年度における損失をうめるめの措置に関する法律案」につきまして提案理由を御説明申し上げます。  食糧管理特別会計昭和三十年度当初予算におきましては、この会計昭和三十年度末における損失を、昭和二十九年度からの繰越損失を含め、約百億円と見込んでいたのでありますが、その後において、内地産米で約百八十八億円余、内地産麦で約十億円及び米の集荷数量増加等に伴い三十億円余、合計約二百三十八億円の損失増加することが見込まれることとなったのであります。一方、利益について見ますと、外国食糧売却益百十一億円余、酒米等売却益約三十一億円、内地産米希望配給による益五十三億円余及び雑収入その他による益約十七億円合計約百六十三億円の利益増加が見込まれることとなり、差引当初見込に比べ六十六億円余損失増加し、昭和三十年度末におきましては主約百六十百億円の損失が生ずるものと予想されるのであります。  この百六十百億円の損失のうち主百億円は、昭和二十六年度において一般会計から繰り入れたインベントリー・ファイナンス百億円に見合いますので、今回この百億円に相当する金額につきましては、一般会計に繰り戻さなくてもよいこととし、また、六十七億円につきましては、一般会計から食糧管理特別会計に繰り入れることとしてこの会計損失を補てんし、もって、この会計の今後の健全な運営に資しようとするものであります。  以上特別会計法案ほか一法案について、その提案理由の御説明を申し上げました。  何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますようお願いを申し上げます。
  5. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ただいまの両案の質疑は次回に譲ることにいたしまするが、資料の御要求がございましたらおっしゃっていただきます。ございませんか。   —————————————
  6. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは次に北海道開発公庫法案予備審査)を議題として提案理由説明を聴取いたします。
  7. 白波瀬米吉

    政府委員白波瀬米吉君) ただいま提案になりました北海道開発公庫法案につきまして、その提案理由及び法律案要旨について御説明いたします。  御承知のとおり北海道総合開発は、第七回国会において制定をみました北海道開発法の施行に伴い、昭和二十六年度より実施して参りました結果、道路、河川、港湾、電源等基礎施設整備につきましては、かなりの進展を見ておりますが、これと並行して振興ぜらるべき諸産業につきましては、北海道の持つ特殊な立地条件から資金の導入がはなはだ遅れている状況にあります。従いまして北海道における産業振興をはかるためには、産業振興上有望な企業に対し、長期金融措置と、民間資金呼び水的役割を果すところの投資とを兼ね行う機関を設置し、基礎施設整備と相待って、企業育成助長に役立たしめることが、この際緊要であると考えるのであります。  以上のような理由から、北海道産業に対する投資融資及び債務保証を行う機関として北海道開発公庫を設置することを提案いたした次第でございます。  次に本法律案要旨を御説明申し上げます。  まず第一に、本公庫は、北海道における産業振興開発を促進するため、長期資金を供給することによって、民間投資一般金融機関が行う金融を補完し、または奨励することを目的といたしております。従って本公庫一般金融機関と競合するものではありません。またその行う業務融資のみならず投資債務保証を行う点において他の公庫と異る特色を持っております。  第二に、本公庫の行う投融資または債務保証対象は、一、石炭または可燃性天然ガス利用度の高い工業、二、農林畜水産物加工度の高い工業、三、鉱業及び製錬業、四、産業振興開発にかかる交通運輸業、五、その他産業振興開発のため特に必要な事業主務大臣の指定するものに、範囲を限定されております。しかして本公庫事業計画及び資金計画につきましては、四半期ごと主務大臣認可を受けさせることにいたしておりますが、投融資等対象投融資等条件等につきましては、本公庫業務開始の際設定いたしまする業務方法書により規制したい所存でございます。  第三に、本公庫資本金政府産業投資特別会計からの出資金十億円でございますが、本公庫は、特に資本金の二十倍を限度として北海道開発債券発行しうることになっております。またこの債券につきましては、その元本及び利子の支払について政府保証できることになっております。しかして昭和三十一年度はとりあえず十億円の資本金資金運用部特別会計からの借入金三十億円、政府保証に基く債券発行による民間資金四十億円、合計八十億円を運用資金として本公庫を発足せしめる所存でございます。  第四に、本公庫理事長一人、理事三人、監事二人を置き理事長監事主務大臣が任命し、理事理事長主務大臣認可を受けて任命することになっております。また主たる事務所を札幌市に、従たる事務所を東京都に置くことに予定しております。  第五に、本公庫予算及び決算に関しましては、他の公庫と同様「公庫予算及び決算に関する法律」が適用されることになっております。従いまして、木公庫の毎事業年度予算につきましては国会の御審議を願いますとともに、決算につきましては会計検査院の検査を受けることとなっております。  第六に本公庫に対する監督内閣総理大臣及び大蔵大臣主務大臣としてこれに当ることとし、主務大臣は本公庫業務に関しこの法律案に定められた認可を行うとともに、監督上必要な命令を発することができることとされております。  以上が本法律案提案理由及びその要旨であります。  なにとぞ慎重御審議の上すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  8. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 本案の質疑につきましては次回に譲ることといたしますが、資料の御要求がございましたら今お申し出を願います。   —————————————
  9. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それでは次に、租税及び金融等に関する調査議題として、百円硬貨鋳造問題に関する件を問題に供します。  本件につきましては岡委員から発言を求められておりますので、岡さんどうぞ。
  10. 岡三郎

    岡三郎君 大蔵大臣が所用で参っておりませんので、さしあたり理財局長さんに質問をして、後刻また大臣の見えた折に質問をしたいと思います。  まず第一に、青木委員長の当時に、一萬田大蔵大臣に対して、一万円札、五千円札、それとあわせて百円の硬貨鋳造に対しては特に慎重に大蔵省においては取り扱ってもらいたいということに対して、大蔵大臣は慎重に取り扱いますという趣旨を答えたというふうに記憶しておりますが、その後大蔵省理財局方面においては、大蔵大臣の言明にもかかわらず着々としてその目的を達しようという準備が伝えられ、それが自民党の政調会との間にいろいろといきさつがあって、新聞紙上その他によれば、硬貨鋳造ミツマタ業者との関係があって、六月の参議院選挙にも響くのではないか、こういうことで一応中止するということになったように聞いておりますが、この点についての経緯理財局長からまずお聞きしたいと思う。
  11. 河野通一

    政府委員河野通一君) 去年の秋でありましたが、百円硬貨鋳造問題につきまして、当委員会で御質問を受けたのであります。そのときは今、岡さんからお話のような御意見に対して、慎重に検討するということを申し上げたのであります。自来この問題につきましては、私ども方面意見も聞きながら慎重に検討いたして参りました。その結果、次に申し上げまする一つの点について十分なる対策ができるならば、これは方向として鋳造を開始して差しつかえないのじゃないかという結論に到達いたした次第であります。  その一つの問題と申しますのは、今、岡さんからもお話がありましたようにミツマタの問題であります。百円の硬貨鋳造することによって、百円の銀行券の印刷がそれだけ減る、そうすれば、硬貨が出なかった場合に比較してそれに使われるミツマタ所要量というものはそれだけ減るという問題があったのであります。この点につきましていろいろ関係の向きとも御相談いたして参ったのでありますが、そのミツマタに対する的確な対策として私どもはいろいろ考えて参りましたが、まだ関係方面の十分に御満足のいただけるところまで対策というものが練れて参っておりません丁目下この点について慎重な検討を続けで参っておりますが、この対策が十分に納得いただけるような意味において対策ができました上は、なるべくすみやかなる機会に百円の硬貨鋳造ということを始めて参りたい、かように考えておる次第であります。  これが昨年の秋以来この問題に対する大体の経緯と御承知をいただきたいと思います。
  12. 岡三郎

    岡三郎君 そうすると、その見通しが立ったならば、というんですが、その見通しという点ですね、それをどういうふうに理財局は考えておるのですか。
  13. 河野通一

    政府委員河野通一君) 今ミツマタ関係者あるいは農林省当局その他どもいろいろこの問題を相談をいたして参っておりますが、御案内のように、ミツマタは必ずしもその全部が紙幣の、紙幣と申しますか、銀行券原材料だけとして、その使途原材料に限られるのではないのでして、その他にも相当な広い使途を持っております。従って、これらの問題を通じて、ミツマタに対する価格を安定し、その用途の安定ということを期しますためには、ただ大蔵省あるいは大蔵省関係部内だけではなかなか問題の解決がむずかしいわけで、これらの点につきましては、農林省のそういった当該の責任部局等とも、今、よりより相談をいたしておる段階であります。まあそういったことで、現在検討を鋭意続けておる段階でありまして、これらの問題についての結論がいつごろ出ますか、私どもなるべく早くその結論を出したいということでおりますが、今的確なる見通しを申し上げる段階まで至っておりません。
  14. 岡三郎

    岡三郎君 そうすると、まあ大蔵省の方は、その見通しが立ったならば一応硬貨をどうしても鋳造すると、こういう方針ですな。
  15. 河野通一

    政府委員河野通一君) これは先ほど申し上げましたようなことで、いろいろ検討をいたしました結果、諸般の理由から、その事情の許す限り百円硬貨は出して差しつかえないと、こういう結論であります。
  16. 岡三郎

    岡三郎君 その事情の許す限りということはどういうことですか。
  17. 河野通一

    政府委員河野通一君) これは先ほど申し上げましたように、たとえばミツマタの問題に関して、それに対する各方面納得のいくような対策ができるやいなや、そういった問題であります。
  18. 岡三郎

    岡三郎君 そうすると、参議院選挙でも済んだらぽつぽつとやろうかと、こういう考え方ですかな。
  19. 河野通一

    政府委員河野通一君) 私どもはそういうことは考えておりません。今申し上げましたように、ミツマタに対する対策について、御納得が得られるような解決方法、打開の方法ができ次第、なるべくすみやかに、こういう考えであります。
  20. 岡三郎

    岡三郎君 まあ銀行券紙幣以外の用途という点の開拓、またミツマタ価格安定という点でどういう団体と話し合っているんですか。
  21. 河野通一

    政府委員河野通一君) 直接には私は団体とは一、二回会って相談をいたしたことがございます。それからなお個々的にはいろいろな形で御要望は承わっておりますが、これは別に交渉するという問題とは私は考えておりません。主としてやはりそういったミツマタに対する産業行政上の立場から責任当局である農林省その他と十分に打ち合せをいたしておる、こういうことであります。
  22. 岡三郎

    岡三郎君 硬貨鋳造する場合においては法案を提出することとなるわけですが、そうなると、結局、通常国会を一応送れば参議院選挙になって、次の通常国会までに臨時国会があるかどうかまだ見当がついておらんが、大蔵省の方としては、その点もう少し直截に御説明願いたいと思う。つまりいろいろな団体と折衝し、価格安定等を考究して、その目途がついたならばやるといっても、これは大きな問題である。われわれとしても軽々にこれを発行することについては賛成していないわけです。しかし政治的な含みがあって、われわれの反対があっても鋳造するというからには鋳造するのでしょうが、大体いつごろやるならやるということになるのですか。
  23. 河野通一

    政府委員河野通一君) 先ほど御答弁申し上げたところをもう一度繰り返すより仕方がないので、私どもミツマタに対する今申し上げたような対策ができて御納得をいただけるならば、なるべくすみやかにやりたい。もちろん本国会においてもそういった法案の提出ができればお願いいたしたい、かように考えております。しかしこの国会中に必ず提案ができるかどうかにつきましては、今申し上げましたように、ミツマタに対する問題等解決経緯あるいは推移に待つより仕方がないものと考えております。
  24. 岡三郎

    岡三郎君 それと関連のある一万円札、五千円札は四月から発行する予定ですか。
  25. 河野通一

    政府委員河野通一君) 一万円札、五千円札の問題は、これは理論的には必ずしも百円硬貨と不可分の関係であるという問題でございません。ことに、この問題につきましては、特にこれを発行いたしますために法律を要することでもございませんので、現在のところでは大体三十一年度中には一万円と五千円の銀行券発行する方向で考えていきたい。ただその時期等につきましてはもう少し検討いたしたい。かように考えております。
  26. 岡三郎

    岡三郎君 三十一年度予算編成の際においても、相当一兆円を超えるワクの問題については大蔵省は頑強にがんばったと私どもは考えております。それで歳出歳入の内容を調べれば、相当無理した歳入の上に立っていろいろと検討しておられる。ということになると、健全財政といってもなかなかそう断言できない要素が十分今回の予算にはあると思う。特に補正でも組むように立ち至る要素が出てくるならば、相当むずかしい段階になるのじゃないか。そういう面から、われわれはインフレ的な要素を含んだ予算案であるというふうに考えておるわけです。そういうふうな予算の構成の中において、三十一年度内に、一万円札、五千円札を出すということは、心理的にどうしてもインフレ的な要素を助長すると私たちは考える。この前、理財局長通貨が安定したと言われたが、これは見方によると思います。現在の経済実態というものは、やはり大蔵省の方で言っている通りに、まだ、おかゆを食べておるという状態である。われわれもそう考えておるわけです。そういうふうに考えた場合に、三十一年度において一万円札、五千円札を発行するということはどうしても納得ができない。こういうふうにわれわれは考えておるわけですが、この点どうですか。
  27. 河野通一

    政府委員河野通一君) 日本経済の現状及び今後の見通し、前途についての御意見、よく拝承いたしたのであります。この点については、私どもも決して日本経済の将来がインフレーションの危険なし、こういうことを申しておりませんし、そう考えておりません。私どもはさらに着実な施策をもって日本経済基礎を固めていく施策を今後といえどもさらに続けて参らなければならんということについては、今、岡さんが言われたところと同じような考え方に立っております。しかしながら私どもは来年度の予算、これは今御審議をいただいておるわけでありますが、この予算は決して百パーセント満足なものでないといたしましても、私どもは決してインフレ予算とは考えておりません。健全財政という意味にもよりますが、私ども健全財政の線を十分に維持し得たものと考えております。経済実態は、今お話しのありましたように通貨の安定を通じ、あるいは金融正常化を通じ、事態は私は決して悲観すべき状態ではないと考えておるのであります。こういう基礎的な認識と申しますか、考え方のもとに立ちますならば、現在一万円あるいは五千円の銀行券発行いたすことにいたしたとしても、決してそれが心理的にインフレ的な傾向を助長するといったようなおそれは私はないと考えております。ただしかし、これは理屈の問題ではなく、やはり心理の問題等が非常に影響するわけでありますから、方向としては私は今申し上げましたように考えておりますが、現実に発行いたします時期等につきましてはさらに今後の経済界推移等を見まして慎重に検討いたしたい。四月になったら直ちにこれを発行するということをここで私は、はっきり主張いたす必要はないと考えております。  なおこれは、たびたび申し上げておるところでありまして、すでにおわかりいただいておるかと思いますが、日本の戦前の、いわゆるいろいろな指標を使います場合に基準年度と申しておりまする昭和十年をはさんだ前後数年のころの状況、そのころにおける銀行券券種状況及び券種別発行高ウエート等を考え、その当時と現在の貨幣価値推移等を見た場合、また現在における諸外国、あるいはアメリカでありますとかイギリスでありますとか、フランス、西ドイツ、そういったところで現在銀行券として出されておりまする券種状況と、日本の円の通貨価値とを比較いたしました場合における状況等を見まするならば、現在一万円の銀行券というものは決して高い数字ではございません。かりに数字を申し上げますと、アメリカでは現在一万ドルの銀行券が出ております。一万ドルといいますとこれは三百六十万円になります。イギリスでは千ポンドの銀行券で、千ポンドといいますと約百万円になります。それからフランスにおきましては、これは大体日本の一万円に相当する一万フランが出ております。ドイツでは百マルク、これが約八千六百円ばかりになりますが、まあ大体これらの数字を比べてみましても、一万円の発行は決して券種として大きすぎるということはないというふうな考え方をいたしております。
  28. 岡三郎

    岡三郎君 それは河野さんの考え方で、国民はそうは考えておらんと私は思うわけなんです。それで結局この前の千円札発行についても、やはりいつの間にか千円札というものが当時の値打ちよりもだんだんと下っている。だから一万円札が出てみても、結果から見れば大したことはないじゃないかといっても、やはり心理的に与える影響というものは相当大きいと思う。それでまあ政府の方もベース・アップはやらぬとか、いろいろなことを言って、結局月給袋をもらうときに、一万円札一枚と、あと二、三枚ちょこっと千円札が入っていたくらいの給料で、実際問題としては、私はやはり心理的に大きな影響を与えるものだと考えているわけです。それで、なぜ一万円札、五千円札を、外国と比べて無理はない、だから出すのだ、こういうふうなことで片づけるのか。私はこの前の御説明のように、通貨が安定したからこれをやるのだ、こういうふうな論旨できているものと思っているわけなんです。われわれは、まだまだそれほどがっちりと安定したものではない。大蔵大臣がしばしば言っているように、今おかゆを食う体だ、それをすぐ、病人は、なおりかけるというと、かたい飯を食いたがるのだ、それがいかぬのだと、こういうことを大蔵大臣は、そのつど言っているわけなんです。そうすると、ちょうど大蔵大臣が来たからまあいいけれども大蔵大臣の言っているおかゆ説ということから考えると、河野さんの話は、ちょっと、かたい飯を国民に食わせろ、こういうふうなことに私は聞きとれるわけなんです。だから私は、外国が、アメリカがどうのとか、イギリスがどうのとかということではなくして、インフレ的な要素がないとあなた方は言うけれども、しかしとにかく順次拡大均衡の線をとっていかなければならぬ。相当収支決算をした場合に、今年の財政支出というものは無理をしている。そういうふうなことから、補正を組むような段階、かりに将来補正を組むような段階が来たときに、その財政財源をどこに求めるかという各種の問題が含まれていると思うのです。そういったときに、やはりインフレ的な要素になるものは、やはり大蔵省の方としてはできるだけ慎重に処理していかねばならぬというのが私は態度だと思う。だからわれわれは、将来とも、一万円札、五千円札がいかぬといっているわけじゃない。やはりそれならそれに相当する時期が来るであろう。その時期が来るまでやはり大蔵省の方としては慎重な態度をとるべきではないか、こういう考え方を持っておるわけなんです。だからそういう点で、大蔵大臣が来られたから大蔵大臣にお聞きしますが、ちょうど病人がなおりかかってきているところが、今の日本の財政である。なおりかかるときには病人は何でも食いたがるし、かたい飯でも食いたがるということで、どうも危い。こういうふうに大臣は言っておられますが、この見解は大臣は変らぬと思うのですが、どうでしょうか。
  29. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) そういう考えを今も持っております。
  30. 岡三郎

    岡三郎君 そうすると、この一万円札、五千円札というものが、私は通貨が真に安定するならばデノミネーションをやるべきだと、こういう意見をこの前申し上げておったわけです。理財局長が今、適当な時期に一万円札、五千円札を出したいと、こういうふうに言われておりますが、大臣の見解はどうですか。
  31. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 大体私の考えを率直に申し上げますと、財政も、健全財政三カ年、予算としては私はやはり相当厳しい緊縮予算だと思います。三カ年続けてやり、経済正常化を進めております。  ただ私が今ここで問題にしているのは、御承知のように今日のヨーロッパを中心とする世界経済の動向であります。これについては、いわゆるインフレを防止する施策イギリスを初めとして各国相当厳しくとりつつあるのであります。この成り行きも私は注目しておるわけであります。また日本経済について、今申しましたように大体私は健全な線で推移しておると思うのでありまするが、しかしなお一応今後の物価情勢等については注意をしておる必要がある。そういう状況下において、しからば今問題になっている一万円札の発行はどうか、こういうのでありますが、その情勢にマッチするように私は今考えておるのであります。おそらく発行し得ると私は思うのでありまするが、なおそれらについては慎重な考慮を加えてはおります。これが今の私の考えであります。
  32. 岡三郎

    岡三郎君 結局一万円札を発行しなくても、小切手とかその他の問題で大きく金を動かす場合には処理できる。直接こういう紙幣発行されるということによって、やはり気分的にインフレ的な要素を含んでくると私は思うわけなんです。それで先ほど言ったように、補正予算を組むというふうな要件が出て来た場合、あるいは本年も昨年のように非常に豊作であるというふうな場合はこれは別ですがね。しかし輸出の傾向を見ても今年度をずっと通して、それほど楽観的な要素ばかりはないというふうな点を指摘されておると思うのです。だから私は絶対にこういう紙幣発行してはいかんと言っているのではなくして、とにかく大体与党も野党も国民も、もう大体よかろう、八分どまりこれは、もう健康は完全に回復した、大体第三者が見ていいというふうになったときに発行してもおそくないのじゃないか。それをなぜ急がなければならんのかというふうに考えるわけなんです。だから三十一年度にいろいろな要因があるということを指摘して私は言っておるわけですが、そういう事態が出てきたときには、おとりやめになると思うのですが、その点、大蔵大臣どうですか。
  33. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 私が今考えておりますことは、物の価値のはかりとしての太さとしては、一万円というものが別にインフレ的であるとは考えておらないのでありますが、ただ先ほどから申しましたような、内外の客観情勢をよく見きわめて、心理的な見地、これで若干のやはり配慮を今後とも一万円札というものについては加えていくべきであるというふうに考え、そういうふうな見地からいくと、一万円の発行については、民間等においては、相当前からもう一万円を出してもらったがよろしい、別にインフレ的な心配は、まあ、ないだろう、こういう意見が強かったのでありますが、しかし私は少くとも三十一年度の予算が健全性を貫き得るかどうか、そういうところにもかかると思うから、三十一年度の予算を通過した後に考えようというふうにして今きておるのですが、今御質問のような考え方は私もやはり持っておるのでありますが、私はしかし、そういう考えを持っておっても、一万円札は発行するというような考え方で準備をしておいてもよかろうというふうに思っておるわけであります。なおしかし今後の推移によっては考えてみようと思っております。
  34. 岡三郎

    岡三郎君 大体これ以上質問をしてもこの点については回答が得られないと思いますが、河野理財局長にお聞きした点について大臣意見を聞きたい。という点は百円硬貨の問題ですが、理財局長は、ミツマタその他の価格の安定の見通しがついた場合に百円の硬貨発行する、こういうふうに言っておりますが、その用途の安定とか価格の安定というものはなかなかつかぬとわれわれは見ておるわけです。一体どうして硬貨を出すか。この理由としては、硬貨の方がずっと経費が助かるというふうなお答えなんです。しかし、最近見ておるというと、にせの硬貨というものもだいぶ出てきておる。そういったような面から、みんなが本当に納得して百円硬貨がよろしいというときまで、何も無理にやる必要がないのじゃないかと私たちは思うわけです。こういうふうなところで大蔵省が無理をするというところは、経費の節約だと、こういつておりますが、国民全体的に考えていった場合に、それほどの硬貨の要望というものは私はないと思う。だから、こういうふうな点については、やはりよく意見を聞いて、大蔵省だけが先走らないで、少くとも大蔵委員会あたりの意見を十分聞いてものを考えていくというほどの慎重さがあってほしいと思う。その点、大臣どうですか。
  35. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 全く私はお説と同じ意見でありますが、従いまして百円硬貨を出すことも実は私はあまり無理はしておらないと思います。ただ、この点についていろいろ御意見がありましょう。たとえば硬貨については、これは持ちがよろしい、かつまた、価値の上から見ても、もうこれは補助貨になるべきだ、そうして昔の十鏡かそこら、そんなものだから、これは硬貨としてはどうかというようないろいろな意見もありましょう。またそれと違った、そうせぬでも日本銀行券の百円でもいいのじゃないかという意見も、それは立たぬことはありませんが、これは一年くらいで役に立たなくなりまして、非常に取りかえが激しいので、経済的な見地からすれば、これはやはり硬貨にした方がよろしい、こう思うのでありますが、しかし、問題は何といっても私はミツマタ、この関係です。私もそれで、この話を聞いた際に、一体ミツマタの生産というものについて、こっちが奨励したことはないのかということを私は聞いてみますと、自分の要るときは、うんと作らして、今度硬貨にするといってポンとやる。そんな不人情なことをしてはいかぬということが私の一つの……。それで私も事務当局に、かりに百円硬貨にした場合のミツマタの消費量、それを減さない方法はないのか、そういう点について、十分皆さんの意見や党の意見あるいは生産者の意見も聞きなさい、こういうことで、その結果、大体具体的な数字もあったようですが、ミツマタの消費量は、ほぼ、少くとも向う一カ年はお困りにならないような処置がとれるというようなお話であったので、それなら一つしてみようかということを考えて、決定しておるわけではありません、これは実はもう少し考えてみたいと思うのは、日本のお札は私はもう少しよくしていいのじゃないか、言いかえれば、おそらくお札の中に使用するミツマタの使用量をふやせばいい。よくなればこれは耐久力が強くなる。必ずしも私は、一万円の製造費がいくらか高くなっても、耐久力が強ければ差し引きそう必ずしも損はない。その辺も十分はじいてみて、そうするとミツマタの消費量がかえってふえるということになり、何も百円硬貨を出すことにこだわらぬでもいいじゃないか、その辺を事務当局に十分検討さしており、その辺で満足すべき答えが出れば、また皆さんとお話がつけば硬貨にしよう。こういうことがただいまの偽わらざる考えであります。
  36. 平林剛

    ○平林剛君 関連して。大臣に、私はこれは一万円札と百円銀貨の件につきまして御意見を聞いておきたいと思うのです。特に私が一万円札と百円銀貨の件について最近感ずることは、大蔵当局が全般の意見を聞かないうちに自分勝手にものを進めるという傾向が強くなってきておる、私はそれを指摘したいのです。まあ百円銀貨についても、あるいは一万円札の発行についても、国民経済やあるいは国民の生活にとても大きい影響を与えるということは、どなたも異論のないところだと思います。ところがこういう国民生活や経済影響を与える大きな問題について、大蔵省当局だけで物事を判断して強引に進めるという傾向がある。たとえばこの間も百円銀貨の発行の件についても理財局長が答弁をしたのでありますけれども、国民のまあ半分程度が賛成をすればこれを発行するのだというような気持で物事を処理しようとする、これは私は非常に危険な考えだというふうに思う。だから私は、百円銀貨のことについても、一万円札のことについても、ときどき大蔵省当局に指摘をするわけです。やはり国民全般の意見を聞いて、国民全般が大体そういう方向でいい、また専門家の人もある程度これは大丈夫だというときに、百円銀貨の発行があったり一万円札の発行があるというのならば無理はない。ところが大蔵委員会においては少くともそういう問題について相当している委員会です、この委員会で面円銀貨の発行についても非常に異論があった。一万円札の発行の問題についても議論があって、大臣にときどき質問をし答弁を頂戴しておった。ところがこういうふうに国民の声を代表すべき大蔵委員会の議論が反対の方向にむいているのに強引に進めようとする動きがある。私はそれが一番いかんことだと思うのです。  そこで私は大臣にお聞きしたいのですが、去年の六月十七日に一万円札の問題についてこの大蔵委員会で議論されたことがある。そのときに大蔵大臣が、一万円札というものについて、これを発行する考えを持っておりませんという答弁をした。これは六月十七日の議事録です。ところがそのときに、すでに印刷局においては二万円札の発行準備が整えられていたわけですね。私はこの点どうお考えになるか、大臣の見解を聞きたいのです。大蔵大臣がこの委員会において一万円札を発行する考えは持っておりませんと答弁をしたときに、すでに政府大蔵省印刷局においては一万円札の図案もでき上り、そうして発行の準備もでき、もう大体、型全部できちまって、すぐでも印刷が、機械が回れば動けるという段階までいっている。ところが大臣はこういうふうに答えている。私はこれに非常な危険を感ずるのです。大臣の御見解をお聞きしたい。
  37. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 昨年私が答弁したときにおいては、私は一万円札発行の考えを持っていないことは、これはその通りであると……、ただ図案というようなものを、これはまあ私がまだ大蔵省に入らぬ前もよくあったのですが、まあ将来こういうものを発行しようかというような場合に、その図案を一応作っておく、図案といいますか、原型ですか、そういうことはよく大蔵省もときどきおやりになっておったように伺っておりますが、ただそれは原型程度のものを用意しておる。まあむろん将来発行をする考えのないものに原型を作ることもないのでして、まあ要するにそれは時期の問題、発行する時期の問題で、いろいろな準備、計画というようなことについては、まあ私、そう責めずにおるので、そういう意味で別に発行するというような考えは持っておりません。
  38. 平林剛

    ○平林剛君 大臣は今そういうお答えになるが、それはまあ、あなた大蔵大臣として、もう少しその点は、実際には政治家が中心に政治を行うわけですから、もっと見識を持ってやって下さい。もう発行する準備があって初めて仕事をするというやり方の方がいいので、これは理財局やあるいは事務当局の研究課題として、発行準備や図案化されるということであってはならんと私は思うのです。今度の場合もそうです。先回百円銀貨の発行は一応せないという結論になった。これはいろいろ条件はあったかもしれませんけれども、一応いろいろな各方面意見を聞いた結果、百円銀貨については発行しないということを取りきめられたわけですね。ところが今度昭和三十一年度の特別会計の印刷局の予算を見ると、この中にはちゃんと一万円札、五千円札の予算が組み入れられている。五千円札、一万円札の発行準備をするということは、私、今まで理財局長の御答弁から聞くと、百円銀貨ということと切り離して考えられない、通貨の体系を整えるという意味で百円銀貨を主張せられているのでありますから、こういう意味では、五千円札や一万円札の予算が印刷局の予算の中に組まれてあるということは、これはすぐ百円銀貨のことも一緒に考えているが、今どうも形勢が悪くて工合が悪いけれども、形勢がよくなったら一つ最初の通りにやろう、私はそこは何と言いますか、一つのふてぶてしさがあると思います。つまり全般がこの反対の方向に行っている、また反対の議論が強いという中において、事務当局においてはそういうことを考えている。これは私は、政治家というものはわからないから、官僚がうまくやればいいという考えがあれば別ですけれども、しかし私は、現在の官僚人の中には頭のいい人がいるから、ただ、ずるけて、うしろの方でさっとやるという傾向がある。これは私は非常に危険な考え方になると思います。そういう意味で今度のミツマタも、大蔵大臣に聞きますが、五千円札や一万円札の発行準備をやっているのは、まあ準備ぐらいはいいのじゃないか、そういうお考えであるのか。それとも、それは、百円銀貨を、いろいろな今障害になっていることが除かれれば、年内にも発行するつもりでいるのかどうか。この点について今日は一つはっきりお答えを願っておきたいと思います。
  39. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) これは事務当局の方から聞かれた方がいいのですが、多分一万円札の方は、私がまだ日本銀行におったころ、一万円札を発行しようかというような相談はあったように思います。従ってあるいはその当時からすでに原型はあったのかもわかりません。この百円の銀貨は、私が大蔵大臣になってから、ごく最近にこれは考えようというふうに、まあ、しかしいずれにしても、かりに百円銀貨を出すということになりますれば、これは私はやはり紙幣について考えてみる必要があると思うのです。そうしないと、まあ、そうしないとというのもちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、千円と五百円、二種類しかなくなる。何も三つなくちゃならんというわけじゃないが、やはり一つ紙幣の流通というようなものを考える場合に、百円が、お札なくなって硬貨になれば……やはり取引の形としては、大量のものは、これは市中に余り流通しないと思いますが、取引の大量のものについては二万円もある程度いい、そうして千円、五千円というものが流通する、こういうふうな一つの形態をとるのが紙幣の形態としてはいいのじゃないかというふうに考えております。ただその百円硬貨については、私はやはりミツマタを生産する生産業者に御迷惑をかけないようにということを中心にして考えておることは今も変りありません。ですから、かりに百円の硬貨を出した場合に、これはインフレという問題は考えない。ただ扱いの上において銀行なんかはこれは非常にいいんです。耐久力もあるし、同時に銀貨なら機械でもってすぐ計算ができますから、百円札に当るよりもよほど事務の簡捷化、合理化になりますから、それはいいと思いますが、持つ人はどうかと思うのです。私の方はどうかというと、あまりポケットにじゃらじゃら入れて歩くよりも、百円のお札の方がいいんじゃないかということを考えないでもないんですが、そういうことを総合的に考えてかれこれ言うよりも、要するにこれはミツマタ業者に対する影響というものを考えている。それを一つ、つぶさぬようにということを事務当局にも十分注意を与える、そうしてこれをカバーするということを考えている。これは河野さんにもよくそういうことを考えてもらっております。
  40. 平林剛

    ○平林剛君 大臣の答弁が違うから、私の質問の答えにならぬ。私の言うのは、大臣は変な話に持っていくけれども、一万円札、五千円札の発行準備としての予算が組まれておるけれども、これは百円銀貨と切り離して考えてもいいのか。切り離して考えられないということであれば、百円銀貨の問題については一応やめるという話をしながら、予算の中ではちゃんとそれと同じようなことを計画しておるということは、これは、ずるさだと私は思うのです。今印刷局の予算の中に五千円札、一万円札の予算が組んである、これは百円銀貨と切り離して考えていいんですかということを聞いている。そうでなければならぬ。もう一つ大臣に追及しなければならぬので大臣にお答えを願いたいのです。
  41. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) 予算に組んであるのと切り離してもいいかどうか、これは私はどちらでもいいと思うのです。(笑声)
  42. 岡三郎

    岡三郎君 私は先ほど大蔵大臣に言ったように、大蔵大臣は大体こちらの御意見御無理ごもっともと言っておきながら、事務局に対して云々と、こう言っておるわけなんですけれども、一万円札、五千円札についてはミツマタ業者との関連を考えてやると言っておりますが、私の意見も、それもその通りだ、しかしもう一点、三十一年度予算の執行面、特に補正を組まなければならぬ要因が出てくるような場合、それから輸出の伸びの状態とか、または米作との関連、こういったような問題を考えていったような場合に、大臣が当初考えていたように慎重にこれをやってもいいんじゃないか、慎重にこれを取り扱ってもいいんじゃないかということを考えれば、やはり今年度の予算を執行してみて三年目ですから、ミルク論から考えて二年目ですから、とにかくデフレ予算を組んでから順次今拡大均衡の線に来ているわけなんですが、本年が一つの山だということを大臣は言っておきながら、この見通しがついてから一万円札、五千円札を出しても私はおそくはない。そんなにも銀行家にほめられなくちゃならんこともないと思いますが、河野さんは銀行家だから銀行家にほめられなければならぬと私は思いたくない。でもそういうふうに思わざるを得ないが、何も銀行屋さんにほめられるということよりも、国民全体に十分納得されるように、たとえば公聴会を開いて、一万円札、五千円札の発行の可否を聞いてごらんなさい。それはお金持ちの人は便利かもしれませんが、国民の大多数は、過去の経験から考えて、私はやはり一万円札が出れば千円札というものは価値が落ちる、心理的に。だから、そういうふうな見当で国民はいろいろと考えると思うのです。そういう点で、この一万円札の予算がここに出てきているという点とあわせて、造幣局の特別会計予算の五十二ページに、事業費として造幣局事業に必要な経費、この経費の中に百円硬貨予算が入っておるかおらないか、これを聞きたいのだ、私は。
  43. 河野通一

    政府委員河野通一君) ややこまかい点ですから、私からお答えしておきます。造幣局の予算の中の原材料費、七億七千四百万円の積算の基礎の中には、銀を三十トン購入するということを書いております。銀の三十トンというのは、もちろん百円銀貨を作るための材料としての銀であります。しかしこれは原材料費自体の中の内訳でありまして、それ自体は予算上の拘束力を持つものではございません。積算をそういうふうにいたしたと、こういうことです。
  44. 岡三郎

    岡三郎君 そこで大臣、こういう状態になっておるが、結局先ほど平林君が言ったように、とにかくこういうことをやることについて、非常にまことに用意周到でけっこうと言いたいのだが、どうも周到すぎると私は思う。だから、一応こういうふうに予算の中に頭を出しているということについては、予算委員会でさらにやらなければならんと思いますが、私は大臣に要請しておきますが、やはりこの点は三十一年度予算の執行ですね、いわゆるこの固い飯を食っていいか悪いかという一つの端境期、一つの峠にきているというときに、十分健康度を打診していくという点で、特に慎重に願いたいと、こういうふうに私は考えております。ただ私は、ミツマタ業者だけでなくて、やはり国民全体の生活に影響を及ぼすという点から考えているわけなんです。そこで、そういうふうな関連になるかどうかわかりませんが、大臣が定期取引に反対しておる理由をここに述べてもらいたい。定期取引に反対する理由、これはまた関連があるかもわからん。定期取引は何によってやることに反対するのか、その点を私は聞きたい。私は定期取引には何も賛成しておるところの一人ではない。反対する理由も……。私は日本経済関係があるから聞いておるので、経済の今後の動向を大蔵大臣にお聞きしたいと思う、なぜ大蔵大臣は定期取引に反対するのか。
  45. 一萬田尚登

    ○国務大臣(一萬田尚登君) こういうふうに私は考えているのです。今の証券取引の問題ですが、これは私の考えでは、資本の蓄積、それから長期資金の調達に関連する。あるいは証券の価格構成、あるいは公正なる価格の形成、さらにまた証券業を営む者の資格とか、あるいは取引の方法、こういうものが、今のこの実物取引を変えて、定期にするとすれば、基本的にこれは違うのです。非常に変る。この定期取引をやめて今の実物取引にするとき、あれは占領下にあったのですが、ああいう力を持ってやったというふうにちょっと考えていいくらいに大きな変革である。それをまた今度はもとに戻すことは、これもまた大きな変革、従ってこういう変革をやる場合には、国民経済の上からも、国民生活の上からも非常に大きな影響を与えますから、私はこういうものをやる場合には、いろいろと研究がすんでいるというような立場の方もありましょうが、しかし国民が十分納得いくような審議の結果に待ってやるのが適当であろう、こういうところが今の私の主張しておるところの見解です。そういうような公正な意見を十分大蔵大臣として聞いた上で、自分の判断を加えて決定をしようと、こういうふうに私は申しているのです。
  46. 岡三郎

    岡三郎君 そこで、これで終りますが、私はそれほど慎重にやられている、これは株を買ってる人、特に証券民主化という線に沿って、投資信託その他ずいぶん施策をとってきた。そういうふうに広くこれが行きわたって、しかもこの段階で信用取引を飛び越えて定期を開くということになれば、これは株の面に対する不健全化といいますかね、これは中小証券業者というものは、これで取引高が大きくなるから、相当もうけになるかもわからんけれども、しかし非常に株の動きというものが激しくなる。つまり思惑によって激しくなるというふうな点から、経済に与える影響も相当なものだろうというふうに考えておられると思うのです。いろいろと大蔵省が、条件を出して、こういうきびしい条件でも定期をやるならば、信用取引をもうちょっと緩和した方がいいのじゃないかなどと、いろいろなことを言っておられる。そのくらいの考え方があるならば、理財局長も、百円硬貨と五千円、一万円札が同じじゃないかと言うけれども、庶民の生活から言ったら、国民経済に及ぼす影響は、私は同じだと言うのです。もっと深刻かもわからない。零細企業で働いている人なんか、一万円札なんていうものは見るわけにもいかんと言うけれども、しかしこれは、いつの間にか一万円札というものが現行の千円札の姿に帰ってくるのです。現行の千円札の姿に私はなると思う。これは慣れるより慣らされてくるわけですからね。そういうふうにして考えてきた場合に、どうしても微妙な心理的影響ばかりじゃなくて、物価にやはり私は影響してくるというふうに考えるわけです。特に心理的にはそういうふうにインフレ的な気がまえが出てくるというふうに、一万円札の登場からどうしても離して考えられない。そういうふうな点で、私はこういうふうな定期取引とかなんとか、大きな株屋さんとか、財界ということについては、非常に慎重に考えられるけれども、声なき庶民の声というものについては直接大蔵省に響いていないのじゃないか。だから私は、もっともっと定期取引と同じように、大蔵省においては、相当その国民生活に与える影響を甚大なりと考えて、十分配慮してもらいたい、こういうふうに私は希望を申し上げて、自今、定期取引その他の問題についてはまた別の機会に質疑します。
  47. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 大蔵大臣に対する質疑はこの程度にとどめまして、ほかに局長に……。
  48. 平林剛

    ○平林剛君 大蔵大臣は所用があるようだから、また別の機会に話しますが、理財局長にちょっと私が今大臣質問したことについての見解を一つ。つまりどうも大蔵委員会に反対の空気が強い。また国民全般についてもそれほど一万円札の発行を要望しているものでもなければ、あるいは、百円銀貨についてもまだどうともつかんときに、あなたの方がどんどん準備を進めている、そういうことについて私は指摘をしたわけですけれども、あなたはどういうふうにお考えになるか。
  49. 河野通一

    政府委員河野通一君) たびたびのお叱りでありますが、少くとも私は独善的にこの問題の処置をやっておりません。政府の部内においても、こういうふうなことになりますについて、それだけの手続をとって、私はやっているつもりであります。  それから一般の方々の意見を少しも聞かんじゃないかというお話がありましたが、これは私は私のできる範囲内において、いろいろの方の意見を聞いております。(「大蔵委員会には聞いてない」と呼ぶ者あり)私は決して自分だけで考えて、それでいいと思ったからといって、そんなことを押しつけることは大体できっこない。できっこないのだが、やるつもりもありません。そういう意味で、私は今お話がありましたこの問題に対する世論というものがどういうところにあるか、皆が反対しているかどうか、それはおそらく百人が百人全部賛成する、百人が百人全部反対するという性質のものじゃないと私は考えます。結局どっちが多いかということだと思います。その点では、私は決して自分で先入主に基いて独善的にこの問題の結論を出しておるということはないと、私は、はっきり断言申し上げられます。ただ、それじゃどこの人の意見を聞いておるかというお話でありますから、それは私は新らしい意味の形式的な公聴会とかそういった仕組を作ってこの問題の処理には当っておらんことは事実です。しかし私がいろいろ聞ける範囲で、私の同僚たちがいろいろな機会においてこういう問題についての意見を聞いてやっておるつもりで、今までのところではごく一部の直接利害の関係の深い人はこれは一応除いて考えて、利害の非常に——特別に利害を持っていない方々の意見として、私はここに一万円札についてもあるいは百円の銀貨の問題についても強い反対は聞いておりません。私はただこれは率直に申し上げますが、たとえば百円の銀貨を出されることによっていろいろ影響を受ける方々——直接に影響を受ける方々はこれに反対の意見を述べておられる、これは私どもちゃんと聞いております。けれども、直接の利害のない方々の意見を私が聞いたところでは、そう強い反対は私は聞いていない。もちろん反対される方があることは事実です。事実ですけれども、これは私、何もうそを申し上げておるわけじゃない。私が今まで得たところでは、むしろ賛成して差しつかえないじゃないかという意見の方が、私の接した範囲においては多い、こういうことは申し上げられると思います。
  50. 平林剛

    ○平林剛君 その点はあなたとの見解の違いということになるので、それがやはり独善だと僕らは言うのです。少くともこの問題を議論する大蔵委員会においては、採決こそとらなかったけれども、与党においてもあるいは私どもにおいても、十分慎重にやってほしいということを要望し、少くとも国民大多数の声を聞いて物事を処理するようにという前の大蔵委員長の要望もあった。あなたはそのときにいたわけです。それについては、そういうこの問題を議論するところの大蔵委員会において、委員長を初めそういう要望があったことに対して、全く無視して、あなた、だれと相談したのかしれんけれども、同僚だとかごく一部の者という見解は、それは私は独善的であると思う。そうじゃないですか。大蔵委員会においてあれだけいろいろな、委員長を初めとする要望があったのに対して、あなたの方は着々としてこういうことをやっておる。私はどこに根拠があるのか、それは水かけ論です、国民全般に全部聞いて見ない限りは。しかし少くとも当委員会においてはその空気が圧倒的に強かったじゃないですか。それをこの委員会に聞かなかったら、どこに聞いたら物事の判断ができると思うのですか。その点を聞きたいと思うのです。
  51. 河野通一

    政府委員河野通一君) 私が先ほどお答え申し上げましたように、去年の秋ですか、青木さんが委員長のときに、慎重に研究せよということを受けたから、慎重に研究してきたのですから、これから先は私は見解の相違としてお答えするより仕方がありません。
  52. 平林剛

    ○平林剛君 この点については、私どもとしても、ただそういう傾向を指摘して、大臣も言ったように、大臣が答弁をしているのと反対の意向が実際的には事務当局にある、こういうことは厳然たる事実として指摘しておきたいと思います。
  53. 岡三郎

    岡三郎君 これは参考までに河野さんにお願いしたいのだが、私の聞いたところという点で結構ですが、どの程度の範囲で、どういうところの世論調査で聞き出したのか、いずれにしても結構だと思うが、その資料を出してもらいたいと思う。大体どういう層が賛成しているのか、私はもう官公吏にしてみても、賛成だという人は、よほど、三万円以上取っているか、相当の層でなかったならば、一万円札を一枚とあと千円札が二、三枚なんという人は、とてもくずすのに手間がかかってかなわないというふうに私は考えている人が多いと思う。私の聞くところでは大体そういう層が多い。だから高給者はいざ知らず、非常に下の者はそれによって得る利害というものは害の方が多いという見解をずいぶん聞いている、私の方の聞いたところによると。だから河野さんが言うところの大体賛成するという層の——それは私から言うと珍しいんですよ。一般の庶民の中にそういう声があるのかどうか。だからこれはある特定の人でないのかと私の方で思うわけです。私たちは印刷庁の労働組合から言われてやっているのではなく、日本経済に対する一つの見方からこれは言っているわけです。千円札が発行されたときと、今の状況とは違うといっても、私は、やはり日本経済の中にはインフレ的要素があるんだ、だからそういうものが出れば、一時的にしろやはり相当ショックを与える、影響する、こういうふうに見ているが、どうですかと聞いて歩いたところ、大体そうです。だから河野さんの方で調べた、一つその資料を参考に私はお知らせ願いたいと思う、委員長の方を通して。それが妥当ならば私は考え直さなければならんが。
  54. 河野通一

    政府委員河野通一君) これは先ほど申し上げましたようにいわゆる世論調査的なことを、形式をとってやったわけではありません。これは先ほど申し上げた通りです。公聴会を開いて皆さんにきていただいてどうするということもやっておりません。これは先ほど申し上げた通り、私どもなり私どものそういった問題に関係している者が接し得る範囲の人々にできるだけ広く聞いてみる、こういうことで聞かしておるわけです。どこのだれがどうということを一々申し上げるわけに参りませんが、そういう範囲で私どもやったのです。それは事実私どもも聞いております。聞いておりますが、そう強い反対は、少くとも私ども接した範囲においては聞いておらん、こう申し上げたいと思います。  それからさっき平林さんのお話、ちょっと誤解があるといけませんからお答えをいたしたいのですが、大蔵大臣の言っておるところと違ったことを着々として事実としてやっておるのではないかというお話ですが、そういうことはございません。今はっきり——大蔵大臣はおられませんけれども、そういうことはないので、先ほど申し上げましたように、予算書を作るに当っては、すべて大蔵大臣に具体的に相談してやっておるのでありまして、大蔵大臣の意思に反して、予算書を見せることを隠して処置をしたという御疑問をお持ちならば、そういうことはございませんということだけを申し上げておきます。
  55. 平林剛

    ○平林剛君 その点は私は去年のことを言っておるのです。去年の大臣の答弁と事実が食い違っておるということを言ったのです。それはあなたの方が大臣にうまく教えておかなかったかもしれないけれども、そうだとすると、大臣の答弁と違うということです。どういうことになりますか。
  56. 河野通一

    政府委員河野通一君) 六月何日かの大臣の言われた一万円札に対する答弁はその通りだと思います。一万円札ができておったのは、さっきの大臣のおっしゃったように、一萬田さんが日銀の総裁をしておられた二、三年前、三年くらい前だったでしょう、一万円札を出そうというので、政府部内で検討し、日銀当局と話し合いがついて、それではそれを発行することに準備をしようということで進めたことはございます。それが最後に、いよいよ発行する告示を出そう、告示でできるのです、法律的に。告示を出そうという段階になって、具体的に申し上げますと、日本銀行の政策委員会の方で、慎重論が出まして、もう少し待ったらどうか、こういう話で発行することを取りやめたのです。そのときは印刷ができておったのです。それがおそらく、二、三年前のものが、去年の指摘された問題も尾を引いておったと思うのでありまして、これは別に間違いでも何でもないので、その通りであります。
  57. 平林剛

    ○平林剛君 あなたの方の指摘は、さっきくらいでとめておきますが。  もう一つ、別な面でお聞きしますが、今度予算で出されておる一万円札と五千円札の発行は、さっきお聞きしましたように、百円銀貨の発行と見合せて考えておるのですか。そういうことが三十一年度内にあり得るのではないか。つまりあなたの言われたミツマタ耕作者の方と納得がつけばそれをやりたい、こういう希望であらかじめ予算の中に組んだんですか。その点について明らかにしていただきたい。
  58. 河野通一

    政府委員河野通一君) これは先ほど申し上げましたように、私どもは、一万円券、五千円券、百円の銀貨、これは事情が許すならばともに出してゆきたいという考えであります。ただこれについてはいろいろ先ほど申し上げましたが、時期の問題、それからいろいろの事情がありますから、それらの問題の解決に待つことがいいと思います。ただ方向としては、これはやはり通貨体系という見地からはおのおの関連を持って処置もし、考えていくことが適当とは思いますが、必ず一方をやったならば同時に他もやらなければならぬかというほどの密接な因果関係があるかとお尋ねがありますならば、それは必ずしもそれほど密接な因果関係はない。しかし通貨体系全体の立場からやはり並行してこれらの問題は考え、かつ処理していった方が適当であろうということは言えると思います。そういう意味で先ほど大蔵大臣もお答えしたのではないかと思います。
  59. 平林剛

    ○平林剛君 私は重ねて要望しておきますけれども、この問題については、やっぱりあなた専門家だから、全般的経済の方はいろいろ御造詣が深いと思うのでありますが、やはり一万円札や五千円札ということは一般の国民心理というものを考えなければいかぬと思います。これは、しろうとであろうと、くろうとであろうと、やっぱり国民全体に多くありますところの心理の動きによって違ってくるわけであります。幾ら頭で弾いて大丈夫だと思っても、国民心理の受け方によっては思わない結果になることがあると思う。そういう意味では、やはり国民全般の輿論というものをよく確かめて、そうして発行するなら発行する、発行しないなら発行しないということをやるべきだ、こういうことを重ねて要望しておきます。ところでミツマタ耕作者に対する対策のことでちょっとお伺いしておきます。これはあなたもしばしば言明しておるように、ミツマタ耕作者に対する対策を慎重に考える。大臣もそういうふうに指示なさっておるようであります。この対策については私はいろいろあると思うのであります。今の百円札の中にミツマタをうんと含めるというやり方でこれらの対策を考えるということもあります。それから五千円札と一万円札を発行するのだから決して百円銀貨を発行してもあなた方は困りませんよと言う言い方もある。いろいろあると思うのでありますけれども、今考えておる方向はどういう方向に向っておりますか。それは先ほどの質問で大体私はあなたの考え方はわかっておりますけれども、この点についてはっきりお伺いしておきたい。
  60. 河野通一

    政府委員河野通一君) 先ほども大蔵大臣からちょっと申し上げましたように、百円の銀貨を作ることによって紙幣の印刷用のミツマタ所要量は減らないと思っております。百円の銀貨を作ることによってミツマタ所要量は減らない。このことは、はっきり現在確信を持って言えるのです。大臣はちょっと間違って一年だと申しましたが、一年じゃないので、ここ十年くらいは少くともいい。十年先のことはいろいろほかの事情もありますからわかりませんが、少くとも私どもの計算では十年くらいは現在のミツマタ所要量よりも相当程度多額のものが紙幣の用として使われる。それからそのうちにはこういうことも入っております。百円の銀行券ミツマタ所要量、現在二〇%を使っておりますが、これを三〇%に上げる。これは若干質が今悪いものですから、少し強くしたいということで三〇%に上げるということも、もちろんその中に入っておりますが、ことしの所要量よりも相当程度上廻る所要量を確保できるということは言えるのであります。ただこの点につきましては、先ほどもちょっと申し上げ落したのでありますが、ミツマタの業者の立場から言えば、この際できるだけたくさん買ってもらいたいという希望でありますから、これは限度がないのであります。実はその生産量が御承知のように相当多いのですから、それでその程度では満足をしないという問題が一つあると思います。従ってその問題について今いろいろお話し合いをしておるということが一つ。それからもう一つ価格の問題について、これを印刷局が買います場合に、相当高く買うことができるかできないかという問題が一つある。これはやはり政府会計という点から見ますれば、時価というものとかけ離れて高いもの、かりに政策的な考慮はいたすにいたしましても、かけ離れて高いもので買うということは、これまた他の面からいって、政府の責任という点から見て問題があるのじゃないか。たとえば今千円くらいの時価のものを、かりに五千円で買うということをするということが果して政府会計としていいか悪いかといったような問題が起ってくるわけです。そういった問題から、結局は時価自体を、時価と申しますか、市価、紙幣用のものでない、一般の市価というものを安定させるということがやはり必要じゃないか。で、このためには、やはり農林省当局等がこの問題について具体的に考えてもらいたい。私ども、もちろんお手伝いしますが、その価格の安定の責任をすべてその一部を買っております印刷局において操作をするということは、これは、はなはだ困難です。これらの点についてさらに私ども農林省ともよく相談しなければならぬ。これはむずかしい問題です。非常にむずかしい問題ですけれども、これは結局百パーセント皆さんが満足いくということはなかなかむずかしいので、どの程度の御満足をいただけるかということで解決をするかということにかかってくるというふうに私ども考えておるわけであります。今せっかくそれらの問題についてお話し合いをしておるのであります。
  61. 平林剛

    ○平林剛君 私はこの百円銀貨とか一万円札は、先ほど申し上げたように慎重に取り扱ってもらいたいという要望を持っておりました。同時に先ほどお話しを聞いたのが非常に私は安易に聞こえたのです。たとえば五千円札とか一万円札を発行するからミツマタ耕作者は大丈夫だろうということで、相手を納得させてからやるというような感じを受けたものですから、こんなことはないと思いますので、そういう安易な宣伝や何かで物事を処理しないように、これも御注意をしておきたいと思います。  それからちょっと聞きますが、今度の予算に組まれている一万円札、五千円札は、かりに、さっきあなたのお話しでは百円銀貨とは切り離す、直接強い関連のあるものでもないというお答えがあったから、そういう意味で聞くのですけれども、かりに五千円札がはっきりこの通り印刷されるということになりますと、大体どうなんですか。これだと一万円札で百億円、百万枚、五千円札で五百万枚だと、これはどういうふうな形で流通をさせるつもりで考えたのか。
  62. 河野通一

    政府委員河野通一君) これは平林さん御承知のように日本銀行の銀行券であります。従って日本銀行が窓口から現金の需要に対してこれを出していくわけであります。需要がなければもちろん出ないわけです。さっきも大蔵大臣が申し上げましたように、一万円札というものは、そうしょっちゅうその辺の小売店あたりで現金として使われる性質のものでは私はないと思う。しかし現金の取引が相当多量に行われる分野においては、この一万円札が使われるということが非常に便利がいいということがあることは、これは間違いないと思います。これは限られた面であるかもしれませんが、そういった点で、これらの需要は、私は金額と申しますか、枚数的に非常に多いとは申しませんけれども、相当な需要があり、それらについては、やはり百円で、あるいは千円でこれらの需要を満たすというより、はるかに便宜がいいということはあると思います。
  63. 平林剛

    ○平林剛君 まあ私、先ほど申し上げたように、この程度の発行準備というやつはどうも何かあなたの方で格好づけたような形にもとれるわけです。格好というか、この問題についての処理をめぐって、一応何か、こう意地っぱりになっておるような感じがあるから、そういうようなことで、一体これはどういう点に流通させるのかというような点で疑問を持ったわけです。また同時に私はこういうことを希望しておきたいと思うのです。もしかりにミツマタ耕作者の問題についての対策を考えるなら、むしろあなたがいつも言われるように、発行高の準備を、これから十年がかりでやるというようなお話しも、むしろそれなら千円札をもっともっと印刷したらいいのじゃないかというふうに思ったので、そういう点について、むしろミツマタ耕作者の対策をお考えになるというならば、今の政府の方針その他から見て、千円札をもっとたくさん用意するという方が、まだ、まともじゃないかと思ったのですがね。そういう点についてはどうですか。
  64. 河野通一

    政府委員河野通一君) ミツマタ所要量をふやそうと思えば千円札をやった方がいいということは、これは明らかであります。ただミツマタ所要量をふやすことのために札の体系を作るわけじゃないのですから、それは札の体系がまずできて、それはまあ、いろいろ御意見がありましょうが、私どもがいいと信ずるところに従って、その体系を考えておるわけでありますが、その体系ができたところで、それによってミツマタ所要量が非常に影響するということを何らかの形で緩和していこう、こういう配慮があるべきであるというので、順序としては逆に私どもは考えております。
  65. 平林剛

    ○平林剛君 私のさっきの要望は、大体理財局長、おわかりになったようですから……。
  66. 岡三郎

    岡三郎君 私は河野さんの考え方と違うのだが、私は百円硬貨は事と次第によって、ミツマタ関係があれば出してもかまわんが、一万円札には絶対反対という意見だ。それであなたが先ほど言ったように、まあ大したことないのだ、そういえば何でも大したことない、今の世の中じゃ。大したことであったら大へんだ。だから低額所得者というものに対する配慮をどの程度しているのか。これは影響を私はすると思うのですよ、相当、低額所得者に対しては。銀行その他で取り扱う場合において、今度は一万円札を作れば、これは百万円、一千万円くらいは右から左へと現金取引をやれるから、それはいいけれども、こういう恩恵にあずからないところの層は、どうしてもやはり幾分物価の影響を受けると私は思う。それはそれとして、将来の通貨体系というものを一応一万円でおとめになると思うのですが、デノミネーションという点についてはどうお考えになるかという点と、デノミネーションに対する、実行する場合の要素といいますか、今それがこういう要素が欠けているからできないのだというふうな点について、一つ通貨という問題に対する御見解を承わりたいと思うのです。
  67. 河野通一

    政府委員河野通一君) デノミネーションの問題は、まあ当委員会でもたびたび御意見を伺っております。私どもはそのたびごとに、少くとも、将来のことは別として、現在としてはデノミネーションをやることは適当じゃない。適当でないのみならず、その必要性もあまり感じられない、こういうことで申し上げております。従ってやるとした場合にどういう方法を考えたらいいかということは、私ども研究をいたしたことはございません。デノミネーションの問題は、これは結局呼称をかえるだけであります。呼称をかえるだけでありますから、一般の平価切り下げというような問題とはもちろん学問的には問題が違うと思います。これはやはり今お話のありました心理的影響という点から見ますれば、やはりそれは相当大きな影響を及ぼすということは間違いないと思います。私どもはそういう点から見まして、一万円札を発行するという問題よりも、はるかに心理的に影響が大きいと思うのであります。従ってその切りかえが行われる過程における物価間の何と申しますか、体系の紛淆と申しますか、混乱といったような問題に私どもは非常な強い心配をもっております。せっかく経済全体が今の通貨価値を基準にしていろいろなバランスがとれてきておる。そのバランスがいろいろな形においてまたくずれる、くずれたあげくにおいて、あるいは安定するということがあるかもしれません。そのくずれる過程において相当大きな混乱を起すおそれがはなはだ多いという見地から、少くとも現在においてデノミネーションを考える時期でないと私どもは考えております。
  68. 岡三郎

    岡三郎君 しかし高額の紙幣発行するについては影響するところは、それは大したことはない。その根本原因は、通貨が安定して経済正常化した——こういう理由で言われているわけです。それならば、それだけの自信をもって言うならば、デノミネーションをしたらどうか。それは一万円札を発行することよりも、千円札を百円なり、十円にする方がむずかしい。しかし通貨の安定ということと経済正常化からいったら、どうしてそれだけ違うのかということになると、一万円札の方は心理的に影響がないが、百円札にすることは影響がある——私はそれはわからんと思うのです。河野心理学を聞かしてもらいたい。その点の心理的影響を分析して、それはそういうふうに断定しているのだから、それは河野さんがそういうように断定してはっきり今お答えして、そういうことは考えたことはないということになってみると、これは雲泥の差ということになるのですね、心理的影響が。だから、その雲泥の差の心理的影響というのを少しどういうふうに分析しているのか聞かしてもらいたい。
  69. 河野通一

    政府委員河野通一君) この問題は長くお話をしなければ、なかなか簡単に御説明は私はできないと思う。通貨の呼称とは言い条、たとえば今の百円というものが十円であるとか、あるいは一円であるということにいたしました場合においては、すべての市中において取引されておる物価をどうするかという問題がすぐ起って来ます。その物価について一々公定価格を作るわけに参りません。作ったってなかなか押えられるわけでない。そうした場合に、その物価が今まで百円いたしておったものが今度は一円になった。これは物価というものは、商品だけじゃありません、すべての不動産から、有価証券からあらゆる金銭価値を現わしたものすべて影響してくるわけであります。それらの間のバランスというものが、一体今ある状態そのままの形で百分の一なら百分の一になるかというと、これは私はならぬと思います。その間に起ってくる紛乱なんというものは非常に大きいといっても差しつかえない。
  70. 岡三郎

    岡三郎君 杞憂じゃないか、それもあなたの自信からいったら。
  71. 河野通一

    政府委員河野通一君) 私は、まあ杞憂というお話があるかもしれませんが、私の信ずるところによっては、おそらくそういう心配が非常に大きい。ただその心配とそのデノミネーションをいたしたことによって得る、何と言いますか、いい結果とバランスがとれないということを申し上げておる。デノミネーションをして何を期待するか、デノミネーションをして何をねらっておるのか、これはゼロを二つ減らした、書くのにめんどうくさくないが、こういうことはこれは決していいことじゃありません。決していいことじゃありませんが、こういう効用があるかもしれません。そのほかに一体どういうことがデノミネーションによってねらわれているのか、その積極的な効果と、今申し上げました非常に大きな心配とをバランスしてみた場合に、天びんにかかるかどうか、こういうことを申し上げておるのであります。
  72. 岡三郎

    岡三郎君 わからんな、その説明は。とてもわからん。説明でずいぶん専門的な話のように話したのだけれども、とにかく端的に言って、どういうところに現われるのですか、欠陥が。つまり百分の一を、いけなかったら十分の一でもいいですよ。何も一ぺんに百分の一にしようとか、五十分の一でもそれはいろいろ考え方がある。しかし今の小さな子供は戦後こういうふうな高額紙幣のあれでならされておるのだけれども、しかし零を二つ取ることは簡単だと言うけれども、これは大へんな数だよ、これはほんとうから言うたら。これは一万円札というやつを百円札といったらずっと金の価値というものは私は出てくるのじゃないかと思う、心理的に言って逆に。とにかくまあ一円なんというのは金の価値の中には入らん。十円なんかももちろん入らん。ほとんどまあ百円、子供でも五円のような金を持っていったのじゃ小遣の中に入らぬという時期になって来ておる。しかし私が言うのは、私は何もデノミネーションを強行しろということを言っておるのじゃないですよ。通貨が安定し、経済正常化したから、一万円ぐらいで影響しないと言っても、その心臓で、十分の一、百分の一に呼称を切り下げたなら、どえらい影響がそれはありましょう。一万円札だってそれはありますよ。上げる場合には、エレベーターじゃないけれども、大したことじゃない、現在は。しかしこれは各種の要素を含んでくれば、インフレに一つ段階がくれば、これはまたたくまに一万円札が千円札になるということは明らかなことなんです。だから今のところはインフレが頂上にきている、経済正常化ができていると言っても、今の場合は、日本企業の合理化が完全になされてできたということじゃなくて、世界の好況の波に乗って輸出が伸びている、こういうようなファクターをとっている。これはしろうと考えかしらぬけれども、米が豊作だったのは、これは天候が幸いした。日本の耕作条件が整って、大体アヴァレッジでああいうふうになったとは私は思わない。だからそういうようなものがあった場合に、もっと慎重にやっていってもらったらどうかということを言っているわけです。ところがこっちの方は大したことはない。そんならデノミネーションはどうかということを、やっぱりそれは一つ資料にしたいから、河野さんの書いたものを委員長の手元まで私は提出してもらいたいと思う。デノミネーション、インフレーションと高額紙幣発効との心理的な違いというものはむずかしいというけれども、それを一つ書いて出してもらいたいと思う。ここでやってもしようがない。これは一つお願いしますよ。
  73. 河野通一

    政府委員河野通一君) 一つだけ、もちろん誤解しておられるとは思いませんが、申し上げてみたいと思います。一万円券を出すということは、円自体の価値は変らないのです。円は円なんです。円は円のものを、千円の価値で出ておったやつの十倍の呼称であるところの一万円を出すということです。ところがデノミネーションというのはそうではない。円自体の単位、円でなくて元になるかもしれませんが、その単位が違ってくるのです。単位自体の持っておる価値が違ってくるのです。そこはデノミネーションと高額の銀行券を出すということとは本質的に違う、こういうことを申し上げておきたい。  なお、今お話しがありましたので、御満足のいくような作文ができますかどうか、帰って一つ考えてみます。出して、ごらんいただきたいと思います。
  74. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ほかに御質問がないようでございますから、本件はこの程度にとどめます。
  75. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 次に、所得税法の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案砂糖消費税法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、以上いずれも予備審査のものでありますが、一指議題として順次事務当局から補足説明を聴取いたします。
  76. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) 所得税法の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、内容の御説明を申し上げます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案の内容でございますが、これは先日提案理由におきまして申し述べました内容以外に、ほとんどつけ加えることのないほど簡単なものでございますけれど、一応条をおいまして御説明を申し上げたいと思います。  まず、所得税法の一部を改正する法律のうち第九条第五号のうち、「十分の一・五」を「十分の二」に、「六万円」を「八万円」に改めようといたしておりますが、これは給与所得控除の引き上げに関する規定でございまして、今まで一五%、その最高限度六万円というふうになっておりましたものを、今回二〇%、最高限度を八万円に改めようとしておるわけでございます。  それからこれに関連いたしまして源泉徴収税額表の数字を改訂いたすわけでございますが、今回この改訂に伴いまして、今まで月額表の中に端数があったのでございますが、これは毎月ただ徴収いたしまして年末調整では最後に調整をいたしまするので、従いまして毎月の分につきましては端数をこの際整理いたしましてまるい数字にした方が計算上も適当であろうかと考えまして、月額表の中の甲欄につきまして端数を整理いたしておるわけでございます。たとえば改正法律案の別表第三の三ページのところをごらんいただきますと、月額表の二段目にその月の社会保険料控除後の給与の金額が八千五百円以上八千七百円未満というところでは、扶養親族の数が〇人である場合におきましては三十円というような税額に相なっておりますが、これは正確に計算いたしますと三十一円になります。しかしこれは端数切り捨てによりまして三十円というようにして以下順次端数を整理いたしておるわけでございます。  本文の内容といたしましては以上の通りでございまして、あとは附則におきまして例文並びに経過的な規定を設けております。一項は、「この法律は、三十一年四月一日から施行する」、すでに提案理由におきまして御説明申し上げましたように、給与所得控除の引き上げは財源との関連もございまして七月一日以降の分から適用することを目途といたしておりまして、この附則の第六項におきましては、「新法別表第三及び別表第四は、昭和三十一年七月一日以後の支給に係る給与所得について適用し、同日前の支給に係る給与所得については、なお従前の例による」と、かようになっておりまして、毎月の源泉徴収につきましては、改正法は七月一日以後の分について適用することにいたしておるわけでございます。しかしながら本法はこの改正法の施行は四月一日からいたそうとしておるわけでございますが、これは現在の所得税法の建前は年分課税に相なっておりまして、その年一年分の所得額につきまして適用することに相なっておりまするので、毎月の月額表は、二割、八万円に基きました分につきましては七月一日以後の分において適用すると同時に、それまでの分につきましては従来の一五%、六万円の限度でいたしまして、そして終局におきましては三十一年分については附則の四項で書いておりまするように一七・五%、七万円という額において年末調整をいたしまして、年分の所得税額を算出いたすということに相なっておりまするので、従いまして三十一年分の所得につきましては一七・五、七万円という額によって所得税額が算出されることに相なるわけであります。そういたしますと、六月までに源泉徴収せられまして、そしてたとえば六月において死んだ、あるいは外国に行った、かような人につきましてはどういうことになるか、かような問題が生ずるわけでございますが、このような場合におきましても、この付則四項において書いておりまするように、三十一年分といたしましては年間の分を一七・五%、七万円という額で精算することに相なりまするので、このように七月一日より前、すなわち六月末までに死んだ人、あるいは外国へ出て行った、かような人につきましても、この改正法を適用する必要があるという意味におきまして、この改正法の適用は四月一日から施行するというようにやっているわけでございます。従いまして、このような途中で死んだ人とか、途中で外国に行ったというような人につきましては、準確定申告の制度があるわけでございますが、このような人につきましては、そのような整理をし、さらに従来の額につきまして更正をするというような規定を付則ののちの方において設けております。  それから付則五項の規定でございますが、これは所得税につきましては、御承知のように予定納税の制度が採用されておりまして、前年分の所得というものを基礎といたしまして、そうして算定いたしました税額について、予定納税をしていただくことになっておるわけでございまするが、この予定納税の税額が前年分の所得を基礎といたしまして算定いたしまする関係上、今回その所得の計算の方法につきまして、給与所得控除の改訂を行おうとしておりまするので、この改訂されたところによって予定納税もしていただくという意味の整理の規定を設けておるわけであります。つまり、予定納税におきましては、前年分の所得ということに相なるわけでございまするが、その前年分の所得は従来の規定によりますれば、給与所得につきましては一五%の控除をやったものが前年分の所得になっておりますが、これを昭和三十一年において予定納税いたします場合においては一七・五%で控除いたしまして、そうしてその所得の計算を改訂いたしまして、それによって予定納税をしていただく、かようにしておるわけでございます。もちろん予定納税につきましては、源泉徴収された税額は控除することになりまするので、この分がすぐ直ちにそのまま税額等に響くということはないわけでございまするが、しかし給与所得以外の所得と、それから給与所得とこういったものの関連におきまして所要の規定の整備をはかって、予定納税制度を今回の改正法に合うように規定の整備をしよう、かようにしておるわけでございます。  六項はもうすでに御説明申した通りでございます。  七項、八項が、先ほど申し上げましたように、準確定に関連する規定でございますが、このように六月までに死んだ人、あるいは外国へ出て行ったというような人につきましては、やはり従来一応確定申告をして、これが済んでおるものがあるわけでございますので、このような人につきましては、本法の施行後におきましてその税額が変るわけでございますので、このような人につきましては、さらにあらためて更正の請求をすることができる。そうして更正の請求に基きまして税額を改訂いたしまして、もし還付の必要が生ずるというような場合におきましては、これを還付してやるという規定を設けておるわけでございます。このようなものにつきましては、この法律施行の日から、つまり四月一日から還付加算金をつけて返してやるという規定が八項の規定に相なっております。  なお、九項及び十項は、これは改正法に関連いたしまして従来の規定の整理をしておるわけでございまして、実体的の問題ではございません。  以上が所得税法の一部を改正する法律案の内容であります。  次は、租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  租税特別措置法等の一部を改正する法律案は、租税特別措置法とそれから有価証券取引税法、登録税法とこの三つにつきまして、それぞれその一部を改正を行おうとしておるわけでございます。  まず、租税特別措置法の改正でございますが、これは第五条の十二につきまして改正を行わんとしております。新旧対照表がお手元に渡っておると思いますが、それの七ページのところをごらんいただきますと、上の方に改正案が載っておりまして、下の方に現行法がございます。その現行法の五条の十二は、七行目のところの「金額の二分の一に相当する」というのを削除しております。第五条の十二は御承知のように交際費に関する規定でございますが、この交際費につきましては昭和二十九年の改正におきまして、いわば二十八年中の実績の七割相当額及び各事業年度の取引金額に政令で定める一定の率を乗じた額との、この両方の額のいずれが多い額をこえて交際支出が行われたという場合におきまして、そのこえた額の二分の一につきまして従来課税をいたしておったわけでございますが、今回そのこえる額の全部について課税をしよう、かように改めようとしておるわけでございまして、従いまして「そのこえる部分の金額の二分の一に相当する金額」となっておりましたその「二分の一」のところを削除することによりまして、そのこえる額全部について課税する、法文の規定によりますれば「これを損金に算入しない」、かようにいたしまして、交際費課税の拡張をこの際行おうとしておるわけでございます。  次は、七条の六でございますが、七条の六は、これは輸出所得控除の規定でございまして、御承知のように、輸出奨励という意味から輸出所得につきましては一定の控除の制度を設けて、租税の上で奨励策をとっておるわけでございますが、その中に、輸出と他から購入した物品の輸出というものにつきましては、本規定を適用しておるわけでございます。ところが輸出という場合は、これは通関手続を経まして税関を通って行くものを輸出と一応考えるわけであります。そういたしますと、最近賠償関係がいろいろ進展しておるようでございますが、賠償関係で取り引きせられまして、それが通関手続を経て通って行くという場合に、やはり法文から見ますと、これは輸出というような解釈になりかねないわけでございます。しかし本来通常の常識的にみて、輸出の奨励というものは、賠償関係も含めて税を軽減するという必要は考えられないわけでございまするので、そういう意味で昨年の改正のときにカッコ書きにいたしまして、他から購入した物品の輸出のうち「対価の支払が日本政府においてなされるものを除く」と、かように除外規定を設けたわけであります。ところがその後、この規定がちょうど国会審議中であったと思いますが、そのころ賠償関係の細部の規定が固まりまして、その固まったところによりますと、支払いが日本政府においてなされるというようにならなくて、むしろ支払いがやはり賠償使節団からされ、ただ一つ一つ日本政府が承認をしましてチェックをして、そうしてその使節団の勘定に払い込むというような取りきめがなされたわけであります。今後フィリピンとの賠償協定その他におきまして、どのような取りきめになりますか、まだはっきりいたしませんが、大体ビルマとの賠償取りきめがそのようになりました経緯に顧みますと、同じような支払い形態がとられるものとも予想せられまするので、この昨年の改正におきまして行われましたような規定では、必ずしも賠償が除かれるということになるかどうか、やや疑問が生ずるわけでございます。当時政府側の説明といたしまして大体「対価の支払が日本政府においてなされるものを除く」と、こう書きましたのは、その趣旨からかんがみまして、一つ一つ日本政府が承認をして、特にそのための支払いということで賠償勘定に払い込んだようなものをも含む意味であるというような答弁がなされておりまするけれども、しかし法文の解釈といたしましては、必ずしも明確を期していないと考えられますので、この際この点をはっきりせしめるという意味で「対価の支払が日本国と外国との間に締結された賠償に関する条約に基き日本政府又は外国政府によりなされるものを除く」というように、はっきりと規定しようとしておるわけでございます。  それから二十六条でございますが、これは航空機の燃料用に供する揮発油につきましては、揮発油税及び地方道路税を免除する規定でございますが、その適用期限が昭和三十一年の二月三十一日までと相なっておりますけれども、なおしばらくこれを延期することが適当であると考えられますので、昭和三十四年三月三十一日までに延期しようとしておるわけでございます。一  次は、有価証券取引税法の一部改正でございますが、有価証券取引税は御承知のように、株とそれからその他の確定利付債券、証券とに分けて税率を異にしておるわけでございます。国債、社債等につきましては、その税率は証券業者を譲渡者とする売買による譲渡の場合におきましては、譲渡価格の万分の三、それからそれ以外の譲渡人の場合におきましては、譲渡価格の万分の七の税率で課税することになっておるわけでございますが、最近社債市場の再開というようなことも予定せられておりまするので、この際、社債等に対する有価証券取引税の税率を検討してみますと、従来の税率が必ずしも適当でないということが考えられまするので、この際その税率の引き下げをはかりまして、証券業者を譲渡者とする売買による譲渡におきましては万分の三から万分の一に、それ以外のものにつきましては万分の七から万分の三に引き下げようといたしておるわけでございます。  次に、登録税法の一部改正でございます。社債または第二回後の社債払込みに関しましては、現在登録税が課税されることに相なっておりますが、その場合に社債の償還期間によりまして税率を異にしておりまして、期間一年以下のものにつきまして千分の一・五、三年以下のものにつきましては千分の三、三年をこえるものにつきましては千分の四というように償還期間の長短によりまして税率を区分しているわけでございます。その場合に三年をこえるものは千分の四になっておりまするけれども、ただし農林債券、商工債券北海道拓殖債券、興業債券、勧業債券、台湾拓殖債券、そのほかのものにつきまして千分の二という逓減税率を規定いたしておるわけでございます。これは今申し上げたことをお聞きになってもおわかりになりますように、戦前の規定でございまして、その整理がなされていなかったわけでございます。この際、この規定を整理いたしまして、そうしてすでになくなったようなものはこの際削除して、新しいものを入れるという意味におきまして、長期信用銀行法により発行する債券というものを挿入いたしまして、北海道拓殖債券、興業債券、勧業債券、台湾拓殖債券、東洋拓殖債券、北支開発債券、鉱業開発債券、樺太開発債券というものを削除するということをしようとしているわけでございます。これは長期信用銀行法により発行される債券が、従来は三年ものでございましたので、それでこの千分の四という税率の適用については問題とならなかったのでございますが、昨年末ごろから五年ものが発行されることになりまして、この点が問題になりましたので、再検討をいたしました結果、この際このような金融債につきましては、戦前の例にもならい、逓減税率を適用するということで、規定の整理を行おうとしているわけでございます。  それから租税特別措置法等の一部を改正する法律案の内容は今御説明した通りでございますが、別途租税特別措置法の一部を改正する法律案を近く提案する予定になっておりますので、この機会に名前が類似した法案でございますので御説明を申し上げたいと思いますが……(「この次やれよ、そんなもの」「まだ資料が回っていないもの」と呼ぶ者あり)それではこの次にいたします。
  77. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) では砂糖消費税法の一部を改正する法律案
  78. 吉国二郎

    説明員(吉国二郎君) それでは砂糖消費税法の一部を改正する法律案につきまして概略を御説明申し上げます。  今回の改正案の内容は先般の提案理由説明にございましたように、主眼といたしますところは三点ございます。  第一点は現在砂糖の課税につきましては、保税地域から引き取ります砂糖類につきましては、その引取りの日、それから製造場から移出いたします砂糖類についてはその移出の日に納税をいたすことにいたしまして、別に三カ月以内の徴収猶予をいたすことになっております。現在この徴収猶予は実際上は二カ月として取り扱っておりますので、現在は砂糖類を引き取った場合または移出した場合におきましては、その日から二カ月間の猶予が認められているという形になっておるわけでございます。しかしながら現在の砂糖の引き取りまたは移出の際の決済の実情を見ますると、二カ月間の徴収猶予は若干長きに失する点がございまするので、この際、その猶予期間を若干短縮しようというのがこの改正の第一点でございます。同時に砂糖消費税法を昨年改正いたしました際には、従来引き取り課税制度をとっておりましたものを、酒税その他物品税等のごとく移出課税制度に改めたわけでございますが、従来から引き取り課税制度の場合は、引き取りの際即時納付、移出課税の場合は取りまとめて翌月末または翌々月末納付にいたしておったのでございますが、砂糖につきましては移出課税制度をとりながら、納付につきましては即時納付の制度をとっておりましたので、この際、徴収猶予の短縮とかね合せまして、物品税法あるいは酒税法と同様に、製造場から移出いたしまする砂糖類につきましては、取りまとめて移出の日の属する翌月の末日までに納付をすることに、一括納付を、いたすことに改めたものでございます。こういたしますと、移出が平均的に毎日行われるといたしますと、平均して移出のときから一カ月半の期間の猶予が置かれることになりまして、実質的に約半カ月の納付の短縮が行われるということになるわけでございます。ただ法律の上におきましては、徴収猶予をなお一カ月認めることにいたしておりますが、現在といたしましてはこの徴収猶予を認める必要はないのでございますので、保税地域から引き取る場合を除きまして、製造場から移出する場合につきましては、政令で定める日までこの徴収猶予の規定は適用しない。それによりまして実質的に半カ月の短縮ができる、こういうことになっております。  改正の第二点は、昨年の改正の際に、引き取り課税を移出課税に改めました関係で、第一種の甲類のたる入れ黒糖につきましては、納税に関する事務が非常に複雑になって参ったわけでございます。と申しますのは、たる入れ黒糖は非常に小規模な製造者が多数でございまして、一例を申し上げますと、奄美大島におきましては、約八万の製造者があるわけでございます。そのうち四万近くは自家用免税で課税されておりませんが、四万は実際上納税義務者があるわけでございます。従来引き取り課税の際には、その製造者から引き取っておりました協合組合その他の団体が、納税義務者になっておりました関係で、約六千程度の納税義務者で済んでおりましたのが、法律改正の結果その六千が約四万にふえてしまいまして、手続上も非常に煩瑣でございますし、零細な農業者でございますので、申告手続もうまくいかないというようなことがございますので、これにつきましては、製造場から移出したものが納税義務者になるというのをある程度法律上変えまして、税務署長の承認を得て他の者に、つまり集荷業者でございます協同組合等に委託をいたしまして蔵出しをした場合には、その委託を受けた者、つまり受託者が納税義務者になるという法律にいたしまして、納税義務の転換をいたしました。これによって旧法時代の引き取り課税の際におけると同様に、協同組合等が納税義務者になりまして、納税義務者の数が著しく減少すると同時に、手続の簡素化がはかられるということになるわけでございます。  第三点は現在政府が買い上げて払い下げをいたしておりますテンサイ糖につきまして、その納税制度を合理化したわけでございます。現在の法律によりますと、テンサイ糖を買い入れた国がこれを払い下げまして、製造場または蔵置場から移出をいたしまして、その際に国が納税義務者になるわけでございます。国が納税義務者になりますと、払い下げの際に砂糖消費税を含んだ価格で払い下げをしなければならぬ。ところが買い受けたものは、払い下げがあって後、何日かたってから蔵出しをするわけでございます。実際の納税義務の発生は蔵出しのときからであるわけでありますが、政府に代金を支払う際に、先に消費税を払ってしまわなければならないという点で、他の場合に比べまして著しく不便だ、これが第一点であります。第二点は、原料免税を受ける業者が払い下げを受けた場合には、政府がまたあらためてその代金の中から砂糖消費税相当分を返還しなければならぬという手続が起る。これらの不便を避けますために、政府の払い下げにかかる砂糖につきましては、その製造場内で払い下げがあった場合に、その払い下げを受けた譲り受け人を納税義務者にすることによりまして、あらためてその納税義務者になったものが蔵出しをした場合に砂糖消費税を徴収するという形にしたわけでございます。  以上おもな点は三点でございますが、その他こまかい規定の整備をいたしております。ごく簡単に条文について御説明申し上げます。新旧対照表をお配りしてございますので、これについて御説明を申し上げます。  最初の第三条、第五条は、いずれも即時納付を一括納付に改めたために規定を改めたものでございます。と申しますのは、従来は即時納付でございますので、製造場から移出する砂糖類の重量に応じて砂糖消費税を納める義務があると言っておりましたのを、一括納付で事後納付になりますので、それを製造場から移出したというふうな表現に改めた。第五条も同じような意味で、納付時期が一括納付となった関係で規定が改められたわけでございます。  第六条は、ただいま第二点として申し上げましたたる入れ黒糖等の第一種甲類の砂糖課税関係を改めたために新たに設けた規定でございます。  従来の第六条は改正案におきましては第七条となっております。従来の第七条は、これは引取時の即時納付の規定を前提といたしました納付前の引き取り、または移出の制限の規定でございます。この規定は今後は必要がなくなりますので削除をいたしまして、従来の第六条を第七条にいたしたわけでございます。  次に第八条の糖蜜につきましての不可飲処置の規定でございますが、従来はこの終りから二行目にございます「税務署長又は税関長の承認を受けた方法により飲食することのできない処置を施した糖みつ」と言っておりましたのを、今回は「糖みつ」の下にカッコを加えまして「氷糖みつを除く」ということにいたしております。これは氷糖みつは御承知のように非常に質のよいものでございまして、実質上糖水と同じようなものでございますので、かような不可飲処置を施して使用いたしますのは、実際上あり得ないわけでございますので、この際はっきりそれを除いたというだけの意味でございます。  第十条は、従来の申告の規定でございますが、これは従来は、移出または引き取りの際に申告書を提出することになっておりましたのが、製造者が移出する場合には、その移出をした日の属する翌月十日までに申告書を提出する。これは物品税あるいは酒税法と同様になったわけでございます。保税地域から引き取る場合は従前と同じわけでございます。従来の第十条の第三項、第四項は、これは従来の法律におきましてもたる入れ黒糖つまり第一種の甲類の砂糖類につきましては、先ほど申し上げましたように、製造者が零細でございますので、製造場でその都度納付させるということは無理な関係で、今度の改正法と同様に一カ月後の一括納付ということにいたしております。今回は原則が一括納付に変りましたので、三項、四項は削除いたしたわけでございます。  第十一条は、これも即時納付から一括納付に変った関係で、特に内容的には重要ではございませんが、規定の整理を行なったものでございます。  第十三条が納期の規定でございまして、従来「製造場から移出する砂糖類に係る砂糖消費税は、税務署長が、その移出の際徴収する」となっておりましたのを、「製造場から移出した砂糖類に係る砂糖消費税は、税務署長が、その移出した月の翌月末日を納期限として徴収する。」と改めたわけでございます。  徴収猶予は従来は三カ月、ただ先ほど申しました第一種甲類の砂糖につきましては現在と同様な制度で翌月末の一括納付になっておりましたのが、それについては一カ月というのが従来の規定であったわけでございますが、今回はそれが前の十四条のむしろカッコ書きの中が原則になったわけでございますので、それに応じて「一月以内」というふうに改めたわけでございます。  それから第十五条は、改正点は第五項でございまして、従来の第五項の三行目に「引取先にその砂糖類を移入した者が」となっておりました下に、カッコを加えまして、「当該移出先又は引取先において国から譲渡された砂糖類については、当該譲受者」ということになっております。これは先ほど申しました現在未納税移出をいたしますと、その移出先きに移入したものが納税義務者になるという規定になっております。その関係で国がテンサイ糖の株式会社から砂糖類を購入いたしますと、これをたとえば東京の倉庫に持って行くという場合には、国が移出者になってしまうわけで、その関係で現在では国が納税義務者になるわけでございますが、それを移入者、ただ国が譲り渡した砂糖類についてはその譲り受け者ということで、納税義務を切りかえたのでございます。これに伴いまして、第七項に、譲り受け人から一定の申告を徴することにいたしまして、納税義務の転換をはっきり税務署に申告する義務を課したわけでございます。  次に、第二十一条は、これは若干細かい規定でございますが、砂糖類を戻し入れるような場合におきましては、蔵出しの際に徴収されました砂糖消費税に相当する金額をその後の砂糖消費税から控除することにいたしまして、一ぺん出した砂糖を戻し入れた場合には、その税を実質上返してやるという形になっているわけでございますが、ただその場合に現在の二十条の規定で、課税ずみの砂糖に、さらに加工を加える。たとえば第二種の砂糖に加工いたしまして、角砂糖を作るという場合には差額課税で、七百五十円の差額課税が行われるわけでございますが、その差額課税を行なった砂糖を戻し入れた場合には、その税額も僅かでございますので、二十一条の規定の適用がないわけでございます。この場合規定の適用がないのでございますが、例えば角砂糖を作って出した。ところが角砂糖が崩れまして、もとの砂糖に戻って帰ってきたという場合には、この七百五十円を返えしてやりませんと、実際はあとで出すときには普通の砂糖になって出るわけでございますから、七百五十円を返えす道がない一わけでございますので、そこでこの二十一条の最初のカッコ書きが、従来は「前条第一項又は第二項の適用を受けて移出した砂糖類を除く」、これが二十条の課税ずみの砂糖に対して加工をした場合の規定でございますが、そういうものは除いておりましたのを、今回はカッコ書きを改めまして、「前条第一項の規定の適用を受けて移出した砂糖類及び同条第二項の規定の適用を受けて移出した砂糖で種別の異なる砂糖となったもの以外のものを除く」、種別の異なったものと申しますのは、第三種の砂糖、たとえば角砂糖になったものが、またこわれて、また第二種になったというものを意味しております。二項も同じような意味で改正をいたしております。  また二十八条は利子税の規定でございますが、この規定も即時納付制度から、一括納付制度に代ったことに伴って、利子税の計算期間を改めたものでございます。  三十二条は、規定の整備だけでございます。  三十四条も条文の変った関係で、規定を整備した関係だけでございます。  第三十五条は、従来第七条の規定がございまして、税金を納付する前に引き取り、または移出してはならないという規定がございまして、それに対応して三十五条の第一項第二号に「第七条の規定に違反して砂糖類を製造場から移出し、若しくは引き取り、又は保税地域から引き取った者」、これは第七条を削除いたしましたので、当然削除になるわけでございます。第四項は、その第二号についての納税違反をした犯人から砂糖消費税を徴収する規定でございますので、これも相伴いまして削除になったわけでございます。  三十六条は条文の改正による規定の整備でございまして、第三十七条は、先ほどの、国の砂糖類の譲受人が新らしく申告義務を課せられましたので、その義務違反に対する罰則を追加いたしましたのが第一号でございます。  次に附則でございますが、この法律は本年四月一日から施行することにいたしておりますが、ただ先ほど申し上げましたように、徴収猶予の規定につきましては、特則を設けておりますのが第三項でございます。「この法律の施行の日以後政令で定める日までの間に製造場から移出する砂糖類については、改正後の第十四条の規定を適用しない」、これは保税地域から引き取ります場合におきましては、従来と同じ制度でございますから、単に徴収猶予が三カ月から一カ月になったわけでございます。その関係で保税地域から引き取りました砂糖につきましては、徴収猶予の規定を適用しないといけないわけでございまして、従ってここでは製造場から移出する砂糧類については、政令で定める日まで、改正後徴収猶予一カ月という規定は適用しないということにいたしておるわけでございます。ところが現在は即時納付ではございますが、二カ月の徴収猶予が認められておる。ところが今度の新しい規定によりますと、翌月末納付になるという関係で、最初にこの規定の適用がございます四月の蔵出し分につきましては、その納付の時期が五月末になるわけでございますが、三月に移出をいたしました砂糖類につきましては、従前の規定によって二カ月間の徴収猶予がございますので、この三月中に移出をいたしました砂糖類については、その納付の時期が五月の一日から三十一日までの間にわたるわけでございます。そういたしますと、この法律の改正によりまして、五月には三月分の砂糖を五月中に逐次納めながら、同時に四月に移出した砂糖に対する砂糖消費税を五月末に納めなくちゃならない、二カ月分がダブってくるような格好になりますので、資金的に無理が生じます。その関係で四項で経過的に徴収猶予を認めることにいたしまして、「昭和三十一年四月中に製造場から移出し、又は保税地域から引き取る砂糖類に係る砂糖消費税額については、六月以内の範囲内で、政令で定めるところにより、その徴収を猶予することができる」ということにいたしたわけでございます。この場合におきましても、保税地域から引き取ります砂糖につきましては、これは単純に一カ月を短縮したわけでございますから、これはその全額についてそれを何カ月かに分けて徴収猶予をすればいいわけでございますが、製造場から移出した砂糖につきましては、実質上十五日の短縮をしただけでございますので、政令で定めます場合には、半月分についてこの六カ月以内の徴収猶予をすることに現在考えておるわけでございます。  それから砂糖消費税に関連する法律につきましても、この改正の結果、若干移動が生じて参りますので、その関係を付則で直しておりますのが第六項と第七項でございます。第六項は、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予に関する法律の中で、申告申請の特例、それから徴収猶予に関しての規定がございますが、これを新法に合わして改正をいたしたわけでございます。第七項は、輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律におきまして、この法律の今回削除をいたしました第七条を援用しておりますので、この部分を削除するのが第七項でございます。  以上簡単でございますが、砂糖消費税法の一部を改正する法律案説明を終らしていただきます。
  79. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 崎谷税関部業務課長から。
  80. 崎谷武男

    説明員(崎谷武男君) 関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由のほかに補足して簡単に御説明申し上げます。  これは提案理由説明しました通り、純粋に砂糖関税を増徴するための改正でございまして、提案理由で御説明したように、六十二億三千七百万円の砂糖関税を増徴するということのほかに、今まで二十六年の改正以来とって参りました従価税の制度を——それまで、砂糖について日本はずっと従量税でございましたが——だんだんと価格も安定して参りましたので、従量税に改めるという規定を置いたわけでございます。  それでこの法律の条文について簡単に申し上げますと、一番冒頭に「この類において「糖度」とは、」云々という規定がございますが、これは従量税にすることに伴いまして、また世界の砂糖取引が実際問題として糖度ということで、これを基準として取引せられておること、それから砂糖消費税法におきまして、昨年改正いたしまして糖度というものを基準にしました。従来、関税定率法は、しょ糖の重量が全重量のうち幾らを占めておるかということによって税率を区分して参りましたが、今回は糖度というものを基準にするという改正をいたしたのであります。それで糖度の規定が入ったわけでございます。それで問題の砂糖は、税番三百十一番の原料糖並びに精製糖、それから三百十二番の氷砂糖、角砂糖と、三百十三番の糖蜜と、三つになりますが、まず原料糖につきましては、現在の二〇%を従量税に改めまして、一キログラム十四円ということにいたした次第であります。これは現在の二〇%の従価税をCIF百五ドルとして計算いたしますと、一キログラム当り七円六十二銭になります。これを十四円に引き上げるということでございますので、一キログラムについて六円三十八銭の負担の増加になる、こういう計算に相なります。従来の従価税二〇%に対しまして、この十四円を従価に直しますと、三六・七五%という計算に相なります。それから精製糖につきましては、同様にCIF百三十五ドルといたしまして、現在の従価三五%は、キログラム当り十七円一銭になりますが、これを一キログラム当り二十四円、負担増加六円九十九銭ということになりまして、現の従価三五%が、キログラム二十四円を従価に直しますと四九・三八%に相なります。この精製糖と原料糖との間差というものが、一応十四円と二十四円で十円ということになりましたが、これは結局今申し上げた現在の二〇%、三五%という従価税を従量税に変えました場合に、ちょうどそのまま同じ間差を、現行税率による同じ間差を従量税に持ってきた、こういうことになっております。それから三百十二番の氷砂糖、三百十三番の糖蜜につきましては、従来の税率が従価税でございますが、これも原料糖と精製糖と合せまして、糖蜜のうち、びん詰、つぼ詰といったようなものを除きまして、全部従量税に改めました。精製糖その他とのバランスを考えまして、現在の氷砂糖はキログラム当り三十六円ということにいたし、糖蜜につきましては、一キログラム当り六円と十円と、二つの税率を設けたわけであります。このカン詰、びん詰、つぼ詰と申しますのは、これは現在の従価三割五分をそのままにいたしましたが、これは現実にはほとんど輸入がございませんが、非常に価格の高いもので、そのまま食料に供せられて、食卓用になるわけであります。これをそのまま従量税にいたしますことは、価格がかなり動いておりますと、かえって不合理な結果を来たしますので、これだけは従価税をそのままにいたしたわけであります。  次に、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案でございますが、これは御承知通り、今関税定率法の付則で、いろいろな品目につきまして、暫定的に一年ごとに減免税をしております。それの改正でございます。今回は大部分の種類につきましては、ただ一年延ばすということのほかに、乾燥脱脂ミルクと、それから原子力研究のための機械というものとピグメントレジンカラー用のエキステンダー、この三品目について若干改正する必要がございます。それと大豆につきまして、大豆は輸入方式がまだ確立しておりませんが、輸入方式がかりに自動承認方式がとられるとすれば、関税を復活するということで、特に政令の定める日まで免税を続ける、こういうふうに大豆に関する限り政令の定める日まで免税を維持するということにいたしたわけであります。  粉ミルクにつきましては、学校給食法の改正に伴いまして、今まで小学校の児童に給食しておりましたが、中学校、盲学校、ろう学校等の中学部にまで給食が拡大せられましたので、それに伴いましてこの免税規定を整備したわけでございます。これによって約五十万人くらいの中学生が給食を受けることになります。  それから原子力の研究のために輸入する機械でございますが、これは現行法で学術研究用品というのがございます。学術研究用に供せられるものは免税されるわけでありますが、そのうち、その規定だけではどうしても今度の原子力平和利用のための研究というものがカバーされませんで、つまり、民間政府の委託を受けたり補助金を受けたりして、民間で原子力平和利用の研究をするという場合に使用します機械等が免税規定がないわけでございますので、今回付則で追加いたしましてこれを免税する、この免税金額は大体三十年、三十一年合せまして五百万円前後になると予想されます。  それから、ピグメントレジンカラーベースというものとエキステンダーというものがございますが、これは主として織物の染料、輸出織物の捺染、浸染の染料に使う合成樹脂とか顔料とかで作ったものでございますが、これは今までベースにつきましては一五%の税率、エキステンダーにつきましては二〇%の税率を全部免税しておりましたが、最近、国内生産がかなり出て参りまして、国内生産の保護と輸出繊維のための原料であるということで、輸出奨励という意味もありますので、ちょうど今までのように全部免税するというのでなく、本来の税率の半分だけ取ろう、半分だけ減税しようということにいたしまして、定率法の付則では、別表甲号の免税のリストから今度は乙号の減税のリストの方に移しかえた、こういうことにいたしました。これでベースとエキステンダー合せまして五千万円程度の免税金額になると推測しております。  それからこの条文について申し上げますと、付則十項の、これは別表甲号の免税規定でございますが、三十一年三月三十一日を三十二年三月三十一日といたしまして、今免税しております小麦、A重油、石油コークス、エークス、鉛、鉄鋼の発生品、航空機というふうなものを一年免税を継続いたしますが、大豆に限りましてここにカッコ書きをいたしまして、「大圏にあっては、同日以前で政令で定める日」と改正しようという案でございます。これは大豆はいろいろ検討いたしましたが、従来国民生活の安定に資するために、食用油の価格を安くするためということで、輸入大豆は全部一〇%の税率を免税して参りましたが、最近大豆の輸入方式を自動承認にしたらどうか、大豆をつまりもっと余計入れたらいいじゃないか、こういうことに議論が進んで参りましたので、自動承認にするのならば、大豆の関税は全部復活するという、国産大豆の保護もございますので、自動承認にして輸入がふえるならば、関税は取る、そういう思想でおりますが、さてその自動承認がいつから行われるのか、その辺がはっきりまだいたしておりませんので、主として自動承認の関係から、大豆につきましては来年の三月三十一日以前で政令で定める日まで免税する。こういう規定にいたしたわけであります。  それから昨年から改正いたしました石油類につきましては一応原油二%、重油六・五%、水産用その他につきましては行政指導で関税を負担させないようにするというやり方を、まだ始めて一年にもなりませんので、もう一年、その昨年と同じ方式を踏襲するということで石油につきましては今回は前年通りということでこの案を作った次第でございます。  その他は付則七項の用途外使用に供します場合の使用によって減耗した場合は関税を軽減する規定でございますとか、税関職員の権限の規定といったようなものを条文整理をいたしまして、それぞれ原子力研究に使用される機械が用途外に使用された場合にも、こういう従来通り用途外使用の場合と同じような規定を適用できるようにいたしたわけでございます。
  81. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) それではただいま補足説明がありました法案につきまして質疑を行います。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  82. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 速記をつけて。
  83. 土田國太郎

    土田國太郎君 資料の提出要求があります。特別軽減措置によりまする減税額の調査、三十一年度の見込みですね、それが一つと、それから二十九年度の法人の払込資本金、階級別の所得の金額調べ。それから退職給与金の制度が今度改正されるということなんだが、この減税額の算出の根拠、その他減税見込額につきましては、三五%税率の適用を、今御承知のように五十万円でできておるわけなんですが、それを百五十万円にのぼせた場合には何ぼ、二百万円にのぼせた場合には減税は何ぼになるんだという、三十五をですね、それを一つ調べていただきたい。  それから同族会社の積立課税を廃止する場合の総金額はどのくらいの額になるか。できれば五百万円以上、以下くらいにしてもらえればなおけっこう……二段ぐらいに分けて……その積立金の額を調べてもらいたい。それから給与所得がことし八万円までの御提案説明があったんだが、それを十万円とする場合にはどのくらいの減額になるか、それの一つ資料をお願いしたいと思います。
  84. 平林剛

    ○平林剛君 私は所得税法の一部を改正する法律案の中の必要な資料をお願いします。この間政府の方の提案説明をお聞きしたり、提案理由説明の文書を読んでみますと、所得税について今回とった措置に対し、こういうことを言っているわけです。「最近の所得税負担の状況に顧みますと、給与所得者の負担が他の所得者の負担にくらべて特に重いと認められますので、この点における不均衡の是正は、全般的税制改正に先立って、昭和三十一年度において行うことが適当であると考えられます」。そこで私の要求したい資料は、最近の所得税負担の状況に顧みて特に給与所得者の負担が重いと認められる、その重いと認められたところの資料、具体的資料を提出してもらいたい。これはこの法案審議するに当って、今回行なった不均衡の是正が大体見合っておるかどうかということを確かめなければならんわけです。その具体的資料を御提出願いたい。  それから砂糖消費税法の一部を改正する法律案関税定率法の一部を改正する法律案関係のある資料でありますが、今度の法案説明を聞いてみますと、納付税制度の変更で四十億八千八百万円国家の収入増があります。関税定率法の方では従価税率を従量税率に直すだけで六十二億円の増収になっております。これから見ると、えらい砂糖会社が利潤があるということに相なるわけで、一つこの砂糖会社の超過利潤が今議論されておりますから、大体それがわかるような資料を、どの程度、おもな砂糖の会社の超過利潤があるかということを見たいと思います。もちろん正直なものは出せないと思いますけれども、大体のことがわかる資料を御提出願いたい。この二つであります。
  85. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 昭和三十一年度の砂糖の需給計画、それから関税定率法の一部を改正する法律案提案理由によってテンサイ糖の国内生産の保護というものに資するということになっておりますが、現在の国内産のテンサイ糖の生産状況及びこれに対するところの対策政府はどういうような方向をとっておるかということ。またこの前の二十二国会に出されたところの法律案によって見るというと、砂糖の価格というものは、澱粉とかテンサイ糖の価格とかいうものを勘案して値段をきめなくちゃできないということになっておるが、今度の関税定率法の改正によって澱粉などの値段をどういうふうにすることになるか。その澱粉等の値段に関するいろいろな資料を出していただきたい。  次には大豆のことがいろいろ話が出ましたが、現在大豆が輸入されておるところのものがどのくらいで、その輸入されておる大豆はどういう用途に使われておるかという資料をお願いしたい。
  86. 白井勇

    ○白井勇君 今の砂糖の消費税に関連してですが、テンサイ糖の砂糖消費税は、諸外国においては、とりましたものをほとんど生産増強に当てられるという話を私今聞いておるのですが、あなたの方でもし諸外国のその例をお調べになったものがありましたら、あとで御提出願いたい。
  87. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) ほかに御意見ございませんか。——それではそれぞれの資料を御提出願います。
  88. 白石正雄

    説明員(白石正雄君) ただいまの御要求資料をでき得る限り提出したいと思いますが、中には資料として御要望通り提出できないと考えられるようなものもございますので、よくまた御相談申し上げまして適宜努力いたしたいと思います。
  89. 岡崎真一

    委員長岡崎真一君) 本日はこの程度で散会いたします。    午後四時四十一分散会    ————・————