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政府委員(樋詰
誠明君) 実は昭和二十七年からの問題だと思いましたけれども、当時ある会社——はっきり申し上げると東和商事という会社でございますが、韓国に対しまして小麦粉を六百トンばかり輸
出した。その見返りに韓国の
物資を
輸入するということだった。ところがいろいろやっております間に二万八千ドルばかりをどうしても向うから取りそこなったというのが去年残っておったわけでございます。そこで二万八千ドルのものを金ではとても取れないので、物でもっていきたい。それで物で持ってくるといっても韓国から適当なものがないので、ノリで持ってきたいという話があったわけでございます。御承知のようにノリにつきましては、これは年間に一億枚という最高限度を設けまして、そうして最高限度を限って
輸入するということをやっております。そこでわれわれの力といたしましては、一億枚の外数という格好で特別の
割当をすることは、これはできない。ただ一億枚の範囲内で
割当を受けたという方から、かりに百万枚の権利を譲ってもらうというのならば、その
割当を受けた人の名前で入ってきたノリというものに金を送らないということで、結局無為替の
輸入をさせよう、それは全体の
方針にも相反しないのじゃないかということで、一応それを無為替の
輸入を許可したのでございます。たまたまノリの生産期が十一月から三月までということになったのでございますが、昨年一億枚の
割当をいたしましたところが、八月に対日経済断交という暴挙が瀞国政府によってなされたということのために、夏場に入る予定のノリが全然入らなかった。やっと十月になって再開されたわけでございますが、とやこうしているうちに生産期たる十一月になった。そこでわれわれといたしましては、十一月以降は国内のノリの生産
業者に非常なる迷惑を及ぼすということで、
輸入しないということを前国会におきまして衆参両院にお約束しております
関係もありましたので、十一月二日に、今後もう絶対に来年の三月まではノリの通関はしないのだということの通達を税関あてに
出したわけでございます。それで一般のノリは十一月の十日ごろに入ってくるのが相当あるわけでございますが、そのノリは全部税関でストップする。これに対しまして韓国側から、船に積み
出して入ってきたというものを、幾ら生産期であるとはいえ、とめるのははなはだ暴挙である、通関させろということを再三いって参りました。
通産省といたしましては、国内のノリの生産
業者に影響を来たさないという建前でとめたのでございますが、どうしても韓国の方で通関を
希望する——通関
希望ということは結局金を払ってくれということでございます。で、通関させて同時に韓国向けの送金ということをそれほど
希望するならば、通関だけは認めましょう。ただしそのノリを国内で売られたのでは、国内のノリと競合するので困る。それは全部保税倉庫へ——営業倉庫でもけっこうですが、入れて、そうしてそこの倉荷証券というものを銀行に寄託する。政府が指示するまでは布巾にノリが一枚も流れないという
措置をとられるならば、これは韓国側の
希望を入れて、とにかく通関だけはさしても差しつかえない。国会の方に前に生産期中に
輸入しないとお約束したのは、生産
業者に支障を来たすようなことで国内に
流通をさせないというそういう
趣旨でお約束した。そういうことであれば、四月になればこれは必ず通関して入ってくるのだ。税関の向う側に置いても、あるいは国内に置いてこれは四月まで出せないということをしても、韓国においては全部材料として織り込まれるので経済的には変りがないということで、韓国側に対しても、もし通関さした
あとでも倉荷証券を全部預けるならばこれは通関さしてもよろしいということをいってやったわけでございます。しかしノリは御承知のように、いよいよ通関のときに最初の値ぎめをする。それまでは値がさまらないという特殊な商品でありますために、来年の瀞まで売れないものを半年も前に値段をきめるわけにはいかない。値段をきめる以上は売るということで通関をする、値段は割るけれどもということを向うも申しますので、それでは国内に流すことは税関として認められないから、来年の春まで待って、来年の春にゆっくり値ぎめをしましょうということで、三千二百万枚というノリは現在神戸の税関の中に眠っているということでございます。
たまたま東和商事の件につきましては、これは先ほど申し上げましたように、債権回収ということで、金を送る必要はない。そのことのために値ぎめとかいう必要がないので、金を送らない。値ぎめの必要がないということであれば、
あとは国内に入れて、それを絶対に流さないという保証というものがあるならば、これは一応
業者間にいろいろ金融
関係その他の
事情もあるということもございましょうし、あるいは韓国という国が非常に政情不安というようなことから、債務者等の地位も不安で、とにかく国内通貨にしておきたい。それで向うがだめだといって債権もとれないということになるかもしれない。
日本側としましては、とにかく対外債権というのは百パーセント取り立てるというならば結局
日本にプラスするという見地から、できるだけ早く取り立てるべきじゃないかというようなことと、それから市内に流さないという確約があるならば入れてもいいのじゃないかということで、通関後直ちに倉庫証券を預けるという条件で、必ずそれに違反しませんという誓約書というようなものを信用して一応通関を許したわけでございます。
ところが結果におきまして、倉庫証券その他が
あとからきたのでございますが、中身がすり変っておったというようなことで、そのノリの一部は通関の日に問屋元に売られてしまったというような事件が発覚いたしまして、これは衆議院におきましてもいろいろと問題になりましたし、われわれ役所といたしましても、絶対に生産者には迷惑をかけないという確信のもとにやったという、役所としての一応できるだけの行政の限度の行為というようなものが百パーセント踏みにじられたといったようなことにもなりましたので、これは不明という点、はなはだこれは不明を恥じざるを得ないのでございますが、今後はこういうことのないようにということで、前轍の戒めといたしまして今後こういう特殊な
措置というようなことについては、より慎重に臨むというふうにしたいと思っておりますと同時に、この問題につきましても、役所に対しましてうそを言い、
関係業界に損失を及ぼしたというような意につきまして、厳重なる処分というようなことをすべきじゃないかということで、ただいま事務的にも話しを進めております。近くその結論が出ると、そういうふうに
考えております。