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1956-05-08 第24回国会 参議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月八日(火曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事            西川彌平治君            阿具根 登君            河野 謙三君    委員            古池 信三君            高橋  衛君            中川 以良君            深水 六郎君            上條 愛一君            藤田  進君            上林 忠次君   国務大臣    通商産業大臣  石橋 湛山君   政府委員    経済企画庁計画    部長      大来佐武郎君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省企業    局長      徳永 久次君    通商産業省公益    事業局長    川上 為治君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   参考人    日本デパートメ    ント・ストア協    会理事長    能勢 昌雄君    全日本小売商団    体連盟理事長  高橋 貞治君    主婦連合会副会    長       三巻 秋子君    青山学院大学教    授       向井 鹿松君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○百貨店法案内閣提出衆議院送  付) ○経済自立方策に関する調査の件  (公営による電源開発に関する件)   —————————————
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) これより本日の委員会を開きます。  まず百貨店法案を議題といたします。  本日は百貨居法案につきまして、参考人の諸氏から御意見を伺うことになっております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。各位におかせられましては、本日御多忙中のところ、本委員会のために御出席を賜わりまして、まことにありがとう存じます。  百貨店法案は、御承知のように、衆議院におきまして、一部の修正が加えられました上に、去る四月二十四日可決されまして、本院に送付されております。修正の第一点は、百貨店審議会意見を徴すべき対象を商工会議所だけに限定しないで、利害関係者またはその団体及び参考人意見を聞かなければならないことにその範囲を広げております。第三点は、罰則規定中体刑を除きまして、罰金刑だけといたしました。以上の二点でございます。  本委員会におきましては、衆議院送付案につきまして審議中でございますが、審議の慎重を期するために皆様の御出席をお願いしたような次第でございます。従いまして、この機会に各参考人におかれましては、それぞれのお立場から、この百貨店法案につきまして忌憚のない御批判をしていただきたいと存じます。そういたしまして、本委員会審議参考に資したいと思う次第でございます。御陳述の内容につきましては別に制限をいたしません。百貨店法案全般について御意見を承わりたいと存じますが、しかしおのおのお立場がございまして、自然と、能勢参考人百貨店を代表して、高橋参考人小売商を代表して、三巻参考人消費者を代表して御意見が発表されることと思います。向井参考人産業合理化審議会商業部長として、商業問題について種々御検討を進めておいでになっております関係上、総合的な観点から御意見をお述べいただければ幸いと存じます。  それではまず日本デパートメント・ストア協会理事長能勢昌雄君からお願いいたします。
  3. 能勢昌雄

    参考人能勢昌雄君) 私がただいま御紹介いただきましたデパート協会能勢でございます。本日は当委員会へ御招致いただきまして、この百貨店法が衆、参両院で御審議になる過程におきまして、ただ一介のわれわれの意見議事録に残されるという機会を与えていただきましたことに対して深くお礼を申し上げる次第でございます。あまり長く時間をとりましても御迷惑だと思いますし、大体の問題については皆御了承と思いますが、お許しを得ましてしばらく私ども百貨店法に関する考え方を述べさしていただきたいと思います。  御承知通り昭和の初めからでございますが、どうも不景気になりますと、百貨店小売商——小売商と申しましても、百貨店はやはり小売商なのでありますが、独立中小と申し上げては失礼かもしれませんが、中小商業者との問題が不景気になると出て参るのでございます。御承知通り百貨店は明治の末期、大正の初めに欧米の一つ商業の形態としてわが国に取り入れられまして発展して参ったのでありますが、その当時は別にこういう問題は大してございません。関東大震災以前というものは、私の承知しております限りにおきましては、それほどの問題はなかったのでありますが、東京における関東大震災のあとの復興に伴いまして、消費者の要望もあり、経済的な見通しもあり、東京におきましては相当大きな百貨店ができて参ったのでございます。それに伴いまして、各地方都市並びに地方の比較的大きな都市におきまして、百貨店経営小売居が出て参ったのでございますが、その後この小売商百貨店との問題の経過等につきましては、貴院の専門調査室で御報告になっております内容によくございますので、省略いたしますが、昭和の初めから不景気に伴いましてこの問題がまた再燃をして参ったのであります。そういたしまして、御承知通り昭和十二年に百貨店法というものが成立されたことになるのでございますが、その際におきましても、数回の国会に御審議になり、特に当応の貴族院におきましてはこの問題について非常に慎重に御審議を願い、何回かの国会を経て、最後に十二年に成立したわけであります。しかしその当時の経済界はすでにある程度戦争経済の始まりでございまして、いろいろの諸統制もすでに始まりかけておりましたので、今日の経済情勢とはよほど違っておると考えるのでございます。  さてその法律戦争の終結とともに国会によりまして廃案になりましてからは、しばらく百貨店法というものがなかったのでございますが、一昨々年あたりからいわゆるデフレ影響というものが深刻になり、それまでの間はいわゆる小売業者としては、取扱い商品の多くは統制時代が続いておりましたので、百貨店も発展しようにも取扱い商品について制限せられ、また小売屋さんもそのワクの中におきましてよろしい御成績を上げておいでになっていたように承わっておりますので、大して問題はございませんでしたが、いよいよ統制は次第に解けてくる、しかもその後にデフレ傾向が出てくる、その以前のインフレ時代におきましては、これまた大した問題はなかったのでありますが、デフレが始まってきて、その問題が出て参ったのでございますが、そのデフレーションの小売に及ぼす影響というものは、ただ単に中小商業者に対してだけでなく、百貨店に対しましても非常に影響があって商いの伸張を阻止されていましたことは数字の示すところであるのでございます。かくいたしまして、小売商の方の団体の方にも、一つ百貨店存在並びに活動をある程度規制して、そうして中小商業者の発展を望みたいという御希望でいろいろの大会なり、あるいは御陳情なりがあったのでありますが、前国会におきましては、御承知通り社会党から御提案になり、また続いて当時の民主党からも百貨店法提案になったのでございます。それがいろいろの事情によって審議未了になりましたことは皆さん御承知通りでございますが、私どもはその当時におきましても、各方面意見を述べておりましたし、また本国会におきまして、これまた社会党並びに政府から百貨店規制についての提案がされましても、私どもはその妥当でないことを主張して参りましたのでございますが、今日でもなおその考えを変えていないものでございます。  話が少し前後いたしますが、一昨年の衆議院商工委員会委員会に御招致されまして、委員長らの御質問に私はお答えいたしまして、百貨店はこれ以上そう伸びることはないと考えますということを申し上げたのであります。この点は昨今どうも百貨店協会理事長うそを言うというようなことでおしかりを受けたこともあるのでございますが、私は今日までうそを申し上げたつもりはございませんので、大体そのときの経済情勢から考え金融あるいは資材の面からみまして、そうして経営というものが成り立つという限度を考えて、これ以上百貨店というものはそうむやみに新増設拡張されるということはないだろうと申し上げておりましたのでありますが、御承知通りその後デフレ傾向は収束をつげまして、生産の正常なる拡大消費拡大というものに伴いまして百貨店売り上げ成績小売屋さんの数字とともに増加して参りました。そうして先ほど申しました金融情勢あるいは建築資材その他につきましても、拡大し得る情勢に相なりましたので、ここ一昨年の私が申し上げました事情とは変って最近相当売り場面積拡張新設が行われて参ったのであります。ただそればかりでなく、やはり百貨店に対する建築増設に対してある程度の規制が加えられるだろうということはやはり無影響ではございません、これはやはり私の考えでは少くとも四、五年先の計画が現在に早められまして、そうしてこの機会に増築あるいは新築をした店がないとは申せないのであります。このことが皆様方相当御懸念になった点でございますが、これはまあ百貨店ばかりじゃなく、あらゆる点におきまして何か規制されるという場合には、その反動といたしまして今のうちにやっておこう、あるいは個人生活にいたしましても、物がなくなるとなればすぐ買いだめをしようかと、決していいことではございませんけれども、そういう傾向のあることは否定できないのでございます。そういうことも重なりまして百貨店のここ一年ほどの間の面積、さらにそれが完成される一年ほど将来の面積というものはある程度ふえていっているのでございます。しかしこれとても百貨店は道楽にやっている仕事でもございませんのですから、やはり経済の趨向を見届けまして、そうしてこの程度の新増設をすることが適当だという考えのもとにやっておりますので、そうむやみやたらに、ことに最近の場合におきましては自己資本というより流入しました資本を使ってやることでもございますから、そう無鉄砲にやっておることでもないのでございますが、事実ある程度の増加を来たしておるのであります。また来たさんとしておるのであります。しかしこれも消費の面、特に人口増加というようなことを考えてみますと、統計の示すところによりますと、人口増加に先ばしって百貨店面積がふえているということはないのでございます。過日衆議院のたしか自民党の政調会だと思いますが、私どもを御招致になりまして意見を述べさせていただいたのでありますが、そのときでも、先生のお一人が、消費がふえてきて、そうしてそれを一般小売歴百貨店とが分け合っているならばさほど問題はない、どうも小売屋の方を百貨店が食っているということに問題があるんだというお話がございましたので、その席でも申し上げましたのですが、大体通産大臣官房調査統計部のお調べによりますと、昭和二十八年四月から二十九年の三月までに全国の小売商業界売上高に対する百貨店売上割合と申しますのは七・七一%でございます。次に二十九年の四月から三十年三月までは七・七二%でございます。次の三十年四月から三十年の九月、これはまだ今年までは出ておりません。それまでは六・九二と前年度に対して小売に対する百貨店商いは減っておるのでありますが、最後の三十年の四月から九月までの間には比較的百貨店がよく商いをいたします暮れの数字が入っておりませんので、これを見ましても大体横すべりと申しますか、特に小売商いの中に百貨店商いが食い込んでいるということは見受けられないのでございます。東京だけにとって考えましても、昭和二十九年の四月から三十年の三月までの一年間の百貨店売上高は比率は一五・三%でございます。それを戦前東京都の商業調査の示すところによりますと、戦前昭和六、七年では二五・一%でございまして、必ずしも東京都におきましてもそれほどふえてはいないのでございます。先ほど人口のことを申し上げましたが、昭和十三年を百といたしますと百貨店売り上げ増加小売物価指数を勘案いたしまして、三十年度におきまして二割七分の増加になっております。人口はこれまた十三年を百といたしますと二割六分五厘の増加でございまして、先ほど申しました通り売り上げの二割七分増加というものは人口増加に比べましてさほど先ばしってはいないのでございます。また売場面積拡張のごときはわずかに一割二分の増加でございまして、これまた人口増加に比べると非常に低いのでございます。しかしこれは三十年現在でございまして、今計画しておるものを入れますとある程度ふえますが、これを予想いたしましても、著しく人口増加に先ばしってそうして百貨店売場面積がふえるということはないと考えておるのでございます。  こういう状態であります際に、先ほど申しましたように、百貨店存在、すなわち新設増設また事業活動というようなものを規制するということは私ども考えられないのでございますが、しかし百貨店の言うことばかりが正しいわけでもございませんでしょう、また事実小売商の現実にお困りになっている状態も私どもは認めるのでございますが、ただいつも私どもが申しておりますのは、百貨店規制法律規制するということは果して適当であるかどうかということを考えさせられるのでございます。小売商の側の方も、通産省審議会におきましても、この百貨店法が通ったからといって小売屋がすぐよくなるというわけのものでもない、もっとしっかりしたやはり中小商業振興策というものが生まれてこなければ、この法律が通ったからといってすぐよくなるものではないという御意見でございました。また私どももこの前の国会から今国会までの間に、私ども法的規制が適当でないという考えが果して適当であるか間違っているかどうかということにつきましてはいろいろな評論が経済学者、あるいは国会の諸先生方に御意見も聞きましたのでありますが、意見として間違っているとおっしゃった方はあまりないのでございます。法的規制というものはかなり問題だろうということが各方面の御意見であったのでございます。過日来御審議になりました通産省審議会において、大体において法的規制というものは必要だという御結論が出ておりますが、これにつきましては委員長である向井教授からもお話がございましょうが、その過程におきましては相当意見もあったのでございます。必ずしも初っぱなから法律をもって百貨店規制すべしという御意見ではなかったのであります。ことにその審議会におきましては私ども百貨店だけを規制するということは妥当ではない、もし一歩譲って商業の秩序全体について規制するということならばこれはやむを得ないでしょうということを発言いたしまして、百貨店法の問題とあわせて、ほかの商業機構の問題とあわせて御審議を願うことになって、しかもそれは結論を出さず、適当な機会において総合的に考えていただくということでありましたのですが、不幸にしていろいろな事情が起りまして、今日の段階におきましては百貨店規制の問題だけが結論を得て、そうして発表されたようなことになっているのでございます。  私どもはかように考えておりますが、先ほど申しましたように、百貨店は営業が自由であるから勝手なことをやってよろしいという考えは毛頭持っていないのでございます。ただ法的の規制がこの複雑なる商業の問題を規制するのに適当であるかどうか、また地域地域によって非常に事情が違うものを一本の法律によって規制するということははなはだ適当でないのでないか、百貨店行き過ぎについては公正取引委員会の不公正な競争については監視がありますし、また通産省あるいは商工会議所等からわれわれの行き方につきましてもいろいろと御指導があるのであります。また私どもも自発的に自粛委員会をこしらえてできるだけのことはしておるのでございます。しかしその自粛委員会につきましてもとかくの御批評がありまして、自粛々々といって何もしてないじゃないかという御批評があるのでございます。これはやはりその自粛委員会と、私の方も悪かったのでありましょうが、私どもの方が自粛しょうということと、小売業者の方が自粛しろ、自粛してほしいということと必ずしも一致していないのであります。現にこの百貨店法が出て参りますときに、生まれて論議されまするに先立って、商業団体の方は具体的に申し上げれば月賦販売をやめろ、それをやめれば僕らは百貨店法は賛成だということは言わないのだというお話がありましたときに、私どもは毅然として月賦販売消費者のためにやっている、もし月賦販売のやり方がまずいと言うなら直しましょう、しかしそれをやめて百貨店法を取引するということはできないということをお答えした次第でございまして、私どもは、決して百貨店はわがままなことをしてやっていこうとは思っておりません。自粛もいたします。また今の新増設につきましてもかねて自粛しておるのであります。それは私ども自粛のあれは、増新築というようなものはすべて経済情勢がきめるものである、消費者の力、消費力というようなものがきめるものである。しかしながら今日の社会情勢考えた場合に、そればかりではいかない。十分諸般情勢を考慮して、そうして無理押しにすることはいけないということが私どもの申し合せであったのです。それは明らかに守れておりまして、反対のあるものを押し切ってやらなかった例はございますが、やったことはあまり聞かないのであります。しかしそれに最近の一年におきましては先ほど申しましたようなほかの事情が入ってきて、多少この自粛が乱れていることはまことに申しわけないのでありますが、かようにいたしまして私ども法律でなくとも行政指導、その他の公共的な機関によりまして、われわれが監視され、指導されて、参りまして、また私ども自分たちもできるだけ行き過ぎのないように考えて参りましたならば、こういう問題はむしろ適切に解決されるのじゃないか。一本の法律規制されるということは非常に困るのじゃないか。また法律となりますと、御承知通り今度の法律の案によりましても、大都会におきましては三千平米、地方におきましては千平米を区切りをつけられましても、これはどこへ筋を引いても同じでありますが、その下の線というものの占めております店舗というものは法律に触れないために何をしてもいいということに相なるわけであります。また百貨店以外の、この法律に触れない売場面積を持った新しい商業の機構が決して生まれないとは申せないのであります。商業人のことでございますから、現在の百貨店でなくとも多くの人は百貨店がそういう規制を受けたらこの範囲でこういうことをやればいいのだということが必ず出て参りまして、それは小売商影響があると考えるのであります。また現在におきましても必ずしもこの百貨店のみが小売屋さんを圧迫しているということではなく、そういう百貨店法考えられております線以下の商店が、より小さい小売屋を圧迫しているという事実はあるので、百貨店法の推進の運動をしていらっしゃるお店がもっと小さなお店をいじめられているというようなお話も聞くくらいであります。  かようにいたしますと、なかなかすべての商業のいろいろな問題を法律一本できめることははなはだ困難であると私ども考えるのでございますので、これは消費者が決定されるものでありまして、消費者の声を聞いて行き過ぎを是正し、サービスを改善し、百貨店小売屋さんもやっていって初めてよろしいので、それを無視して一つ活動規制するということにはある程度無理があるのではないかと私ども考えておるのであります。今度の法律の中にございます勧告の問題につきましてもやはり同様のことが言えると考えるのであります。勧告の問題につきましても私どもはどういう点が勧告されるのかまだわかりませんが、勧告のあるなしにかかわらず、法律のあるなしにかかわらず、やはり依然として私ども百貨店として中小商業者に対する問題とは別に、消費者のために悪いことはしないように、いいことはするようにわれわれは努力していく考えでおるのでございます。  かように私ども法律でもって画一的に規制するということは地方事情もあり、はなはだ妥当でないということに対しまして、今回の法案提案者である方から伺いますと、だから今度の法律案禁止法じゃなく許可する法律だ、こういう条件に沿わなければ許可しないということになっておるが、沿っていればそれは許可するという方針だから、それでいいじゃないか。何も全部がいかなるときにおいても禁止するというのでなく、中小商業者を圧迫することがなければ許可するということである。それで私どもは一応それを了としたのでありますが、それはいかにこの問題がむずかしく、この法律内容がむずかしく、画一的にできないということで、非常に幅を持った法律案であるということに解釈いたしまして、それであるだけにまた半面どういうことまで規制されるだろうかというような不安も伴うのであります。しかし私どもはおのずからそれには限界がございまして、せんだっても伺いますれば、世論というものがこれを判定して、こういうことはいかぬ、こういうことはだれが陳情しようともやって差しつかえないということに相なろうと思いますが、なかなかその世論というものは集団をもって動かれるデモ運動のようなわけに、結集されて目の前に現われてこないものであります。今日の百貨店法につきましてもすでに評論家あるいは学者あるいは雑誌、その他につきましても世論ともいうべき意見が出ておりますのですけれども、すべてそういうものは何と申しますか、抹消されるといいますか、抑圧されると申しますか、ただ政治情勢ということによって本案がここまで運ばれてきたように私どもは感ずるのであります。  長い間各方面において慎重な御審議を願いましたけれども、私どもの方から見ればもっと慎重に御審議していただくべき性質のものじゃないか。まかり間違えば憲法の問題にも関連し、また消費者の利益にも多大の影響のあるものであると考えておりましたのでありますが、いろいろの情勢によりまして、今日はすでに衆議院を通過し、貴院において、ただいま商工委員会において御審の段階になったのでありますが、かように考えますときにこの法律が通過いたしました場合には、一にその運営の問題に重点があろうかと考えるのでございます。私どもはこの運営は法文の示すところによりますと、その多くの権限を審議会が持っておられます。その点を参考として決定される通産大臣はもちろんでございます。どうぞ私どもはこの運営におきまして百貨店小売屋を通じて陳情あるいは泣き落しというようなことに耳をかさないで、ほんとうにこの提案理由にありますように中小商業者振興になり、そうしてわが国の健全なる国民経済の発達になるということを考えていただきまして、そうして消費者の便益というものを阻害しない、またわれわれの職業の自由を認めていただいて、そうして百貨店の持つ公共性と申しますか、いい点も十分助けていただいて、そうして円満に発達していくように運営をお願いする次第であります。  もっといろいろ申し上げたいのでございますが、一人で時間をとりますこともはなはだ失礼でございますから、一応この辺でとめまして、また後刻何か御質問がありましたらお答えしたいと思いますが、最後に当りまして、われわれにこういう発言の機会を与えていただきましたことに深くお礼を申し上げるとともに、衆参両院制の本質によりまして、どうぞ貴院におきましては冷静に慎重にこの問題を御審議願いまして、できれば否決していただきたい。もしこれを通過なされるような場合におきましては、運営の面におきましてわれわれの懸念しているところを十分御留意願ってお取り計らいを願いたいと、こう考える次第でございます。はなはだ簡単でございますが、一応私の意見を終ります。
  4. 三輪貞治

  5. 高橋貞治

    参考人高橋貞治君) ただいま御紹介を受けました高橋貞治でございます。全国の小売商で作っております各種組合団体の総合組織として発足いたしました全日本小売商団体連盟を代表いたしまして、ただいま議案とされております百貨店法案に対しまする意見を述べさせていただきます。  私ども小売商業者がやむにやまれぬ生活権の主張から立ち上り、百貨店法制定を要望して運動を起しましてから早くも五カ年有余を経過いたしました。見方を変えますれば、ほんとうは昭和初年からの運動の継続であると申し上げてもよろしいのでございまして、小売商百貨店との間の問題は三十年来の懸案なのでございます。  私どもの先輩が幾多の犠牲を払ってかち得たところの旧百貨店法は、当時の社会が急激に戦時態勢に移行して参りましたために十分な効果を表わさないまま終戦を迎えました。戦後は混乱した経済が落ちつきを取り戻すのも待たずに、連合軍の命令であえなくつぶれ去ってしまいました。そしてそのかわりといたしまして、百貨店の膨張を押えますくさびとなっていた独禁法第八条以下の不当較差の排除の条文もまた昭和二十七年の改正で全文が削られたために、公正取引委員会として、百貨店拡張を取り締るきめ手がなくなってしまったことも御承知通りであります。それから以後今日まで、百貨店のやり方は野放図な運営となり、現にりっぱな鉄筋、鉄骨作りの既存建物をたたきこわしてまでもなお百貨店を増築あるいは新設するというような事態を引き起しておるのであります。このたび政府百貨店法を制定して、横暴な事業活動規制しようという決意をされ、また各党の皆様が御理解ある御協力を下さいまして、本院の審議まで参りましたことにつきましては深く感謝いたしておる次第であります。願くは本院におきまして、零細弱小な全国百五十万小売商業者の安定のために、またあわせまして家族従業者を含めて人口の一割にも達しようという小売部門の安定振興のために、一日も早く百貨店法が通過成立いたしまして、実効ある施行に移されますようお願い申し上げます。  私ども百貨店法制定の要望をするに至りました理由の第一は、私ども自身の生活権といたしまして、零細な漁場をトロール船で根こそぎさらうような小売部門におきまする大資本のじゅうりんに反対するからであります。  翻りまして、わが国経済の現状を見まするときに、このような弱い者いじめと申しますか、大企業の繁栄を中小企業の犠牲をもって償うことは決して国家経済の繁栄にはならないのではないかと存じます。ことに小売部門の現状は、企業とは申しかねる零細なものが大多数を占めておる上に、生産面で吸収し得ない人口が年々まことに零細な資金を元手としまして小売の分野に流れ込んで参っておりますことは、停年退職者の行く先一つ見ましても御了承いただけることと存じます。あるいは妥当でない申し上げ方かもしれませんが、私ども小売商立場から見ますと、小売部門は政治上、経済上の緩衝地帯として扱われておるように思えます。言いかえますれば何事によらずしわ寄せの場所に使われているといった感じさえ持たざるを得ないのでございます。その上昨年発表されました政府経済五カ年計画の中には、生産部門で吸収でき得ない非常に多くの労働人口小売部門で消化するように要求しておられるのでありまして、このような部門での大資本の横暴はこれを抑制していただくよう要望いたしましても決して私どものわがままとは言えないのではないかと思うのであります。このように考えましたときに、私ども百貨店法の制定が小売商一個の利益と申しましても、死活に関する深刻な問題ではありまするが、小売商のみの利益ではなく、国家経済の大きな利益ともつながるものであり、社会正義にも通ずるものであるという確信がわいて参ったのでございます。私どもは常に私ども経営の合理化、近代化に心がけておりますし、またそのような方向に業界全体を一そう進めていきまして、より明朗な、そして消費者が楽しいお買物のできるような営業にして参りたいと存じております。しかしこの問題は決して個々の企業のワク内ではいかんともなしがたい障害があるのでございます。  それは第一に大資本の業界じゅうりんでありますし、またもう一つは年々小売部門に流れ込んできざるを得ない他に行き場所のない人々が多数存在するというのは事実でございます。同業過多の問題や小売商同士の過度競争の問題はその原因から見まして、小売商の数を制限しさえすればよいというように簡単には参らない問題でございます。しかしもちろん何とかしていただかなければならないことでありまして、百貨居法の次に積極的な業界安定策としまして、この問題解決に皆様方の御尽力を仰がなければならないと存じておりします。それにいたしましても、非常に困難な問題であることは明らかでありまして、それゆえにこそ大資本のじゅうりんから保護する百貨店法によって事業活動規制するということが焦眉の急であるということになっておると存じます。  この意味からいたしまして、私ども百貨店法ははっきり小売商保護のための立法であると確信いたします。一部に言われておりますように法の効果を云々いたし、膨脹し切った百貨店の保護に終るのではないかというような論は、アメリカの百貨店の例を見ましても事実とは違うのではないかと思います。ただこれはあとにお願い申し上げる内容に重複いたしますが、法の制定を見越して昨年来始まった全国的大拡張工事は、これは法の尊厳を示し守る意味からも、厳格に取り締っていただきまして、よりよい法の効果を上げていただきたいと存じております。仏作ってその上に魂の方もはっきり入れていただきたいと存じます。  次に衆議院商工委員会におきましての百貨店法審議経過にかんがみまして、法の施行におきまして私ども小売商として心配しておる点を率直に申し上げまして、百貨店法が名実ともに小売商保護のための法律としてより有効に実施されますよう御配慮をお願いいたします。  第一に、独占禁止法百貨店法との関係についてでありまして、独禁法の領域と百貨店法の傾城とはおのずから異なるものであるということは了承できるのでございまするが、百貨店業の取引のうち独禁法によって特殊指定を受けましたものについても、調査が困難であるとか、脱法行為によるためとかの理由で見るべき実効を上げておりませんので、百貨店法の制定によりまして、この抜け道を封じ、両々相待って小売商保護の見地から厳重に取締りを実施するよう本委員会において強調していただきたいと存じます。  次に百貨店法が公共施設を独占的に利用する問題でありまするが、「国、地方公共団体または公共企業体の所有する土地、または施設を利用して百貨店業を営むことを原則として許可しない」という付帯決議は公共物を一私企業の利に供するとい反公共性とともに、交通網の発達しております昨今ではきわめて広い範囲に甚大な影響を及ぼし、ちょうど釣場の上流にせきを設けて網を張るようなことになってしまうのでありまして、この意味からもまことに当を得たものでありますので、本委員会の御審議に際しましてもぜひ再確認していただきとうございます。  最後に付則第三条に規定いたしてあります経過措置の運用は、実に重要でありまして、許可あるいは不許可の基準として考えられますし要件も十分に御審議いただきまして、百貨店審議会運営をして公正ならしめるよう特にお願いいたします。  なお、これにつきまして私ども小売商考え方を簡単に申し述べさしていただくならば、第二十二特別国会以降に着工したものにつきましては、そのあとの工事の進行状態いかんにかかわらず許可しないようにしていただきとうございます。またその以前に着工して相当工事の進んでいる、たとえば鉄骨が全部完了しているというものでありましても、その地域の実情から影響が非常に大きいものには許可しないようにしていただき、増築の場合には売場としての使用を認めないで、何か他の用途に供せしめるようにしていただきとうございます。それからすでに建築中または既設の建築物の所有者と百貨店が契約して、その建物を店舗として百貨店が利用するというケースがあるようでありますが、これははっきりと認めないようにしていただきとうございます。  以上長々長時間国会審議の貴重な時間をちょうだいいたしましたが、これをもちまして、全国の小売商業者を代表しましての百貨店法案に対する意見並びにお願いを終らせていただきます。ありがとうございました。
  6. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に主婦連合会副会長三巻秋子君の公述をお願いいたします。
  7. 三巻秋子

    参考人(三巻秋子君) 主婦連合会の三巻でございます。消費者立場から大へん概念的で申しわけございませんが、二言申し述べます。  家庭経済の安定を願って、常に消費の合理化を研究し合って、適正価格と品質の向上を業界に望んで参りました私たち消費者は、一定の財布の中身をどのように有効に使おうかと、あるときはデパートへ、あるときは専門店へ、物によっては小売店へ、日常品は地元でと選択買いをして参っております関係上、町に同業者がたくさんできて、お互いに競争をしていくということの方が私たちにとっては有利なことは事実でございます。また小売商の奥さんがときにはデパートへ買いものに行くということも当然あり得ることで、品物によってはあるときには業者であり、あるときには消費者であるという立場から、こういう商業活動においてはほんとうに共存共心でいかなければならないということを常に感じておるのでありますが、しかしながら戦後経済事情はますます貧富の差をつけまして、経済の悪循環は農業では二、三男の対策問題、商業では失業問題とからみ合いまして、これが社会問題化しまして、日に日に悪化して参りました現在、一つの物品に大ぜいの人がぶら下って生活していかなければならないという、また人の手を経ればそれだけにマージンがふえていって、それが全部消費者にかぶされてしまうというようなこういう実情のときに、消費者は共同購入とか、生産から消費者への道の直結というようなことを自分たち考えて生活を守っている実情でございます。最近小売商の方たちが百貨店を敵視いたしまして、購買力の乏しい私たち消費者の財布をねらって、あの手この手の争奪戦が始まっておるようでありますが、それもまあうなづけるのでございます。一方デパートでは、デパート同士が大資本にものを言わせて特売に次ぐ特売で、年中特売日でございます。また特売のために特売製品を作ってみたり、ときにはおとり品を作って不良品さえ出たという話さえ聞いております。案内状たるや一家に三枚もくるようなむだでございますし、宣伝広告のすばらしさは観光デパートの対象となって、その商品にかけられる負担は、みんな消費者にかかるか、一部への圧力ともなりましょう。たとえ安く消費者のために仕入れても、毎日各デパートが市場価格調査に歩く人がいるほどで、消費者価格は共通のようでございますので、このような仕組みに対しましては、消費者のためだとばかりは蓄えないと思います。中小企業の工業の面におきましては、中小企業の安定対策といたしまして、中小企業安定法の適用があります。ある程度設備とか操業の規制がありますが、商業活動のあり方につきましては、何ら根本対策がないのが実情でございましょう。自由経済のもとでは原則的には規制は矛盾もはなはだしいとは思いますが、最近のデパートの建築物の新増築、改築は目ざましく、全国的に法の成立を見越しましてか、目抜きの場所へ競って投資されている現状や、また地方からの東京進出や、ターミナル・デパートによる沿線業者の圧迫は結局法の作成を促進されることになったのではないかと思っております。このように消費者の零細な金をかき集めて、またたく間に消却していけるデパートとか、銀行とか証券会社、保険会社、映画館などの業種建築物のみが著しく伸びていきまして、その方面にのみ金融が優先的に出されているという現状を見ましたときに、この非生産性がもっともっと海外に消費市場を伸ばす生産工場拡充に向けられるならばと私たちは残念でなりません。ただ消費をあおられる拡充、特売競争ももうこれでたくさんだと思います。このたびの法が地域的には許可される幅のある法であるということを考えまして、ただ単に便利だからという常識論をいま一歩国家的立場から考え合わせまして、このたびの法に賛成いたします。  ただし、この法が通過いたしましたとて、中小企業の道が開けるとも思いませんし、政府は選挙公約にいつも中小企業対策を大きく打ち出しながら、今もって何一つ実のある対策がなされておらぬというこの政治の貧困さを今さらのごとく私は抗議いたします。  私は五年前から主婦連の主張として繊維製品品質表示法を通すために努力して参りました。この表示の実施によりまして、今までデパートの品は信用がおけると言って衣料を多くデパートで求めておりました人たちも、その正確な表示を見つけることによりまして、末端の小さな業者でも柄合いと値段によっては安心して買えるのではないかと思いますので、中小企業対策の一つの生きた方法だと自負しております。このように商品の知識を普及徹底させまして、消費者の便益を考えながら中小企業の振興対策を早急に打ち出していただきますようにお願い申し上げます。審議会ではいろいろとデパートの横暴だということが中小企業の方からもまたお話が出ましたし、そういうときに私も申し上げたのですが、中小企業の方では一方的にデパートが横暴だ横暴だと言いながら、あるいは手伝い店員を、あるいは品物を入れるためにデパートにへつらって自分たちだけがいいことをしているというような相当業者の多いということを聞いております。こういう点も一応みんなが反省なさいまして、小売業者はこの際組織を強固にいたしまして、団体の力で組合化をし企業化をし百貨店のまねばかりをせず、大資本百貨店ばかりのあとを追うのでなくて、自分たち自分たちの道を切り開いていく。デパートをこれほど盛況にしたこの事実をみんなが研究いたしまして、他のじゃま者だけを規制して事足れりとしてあぐらをかくようなことがあるならば、おそらく消費者の支持はなくなると思います。  次に付帯決議につきまして希望を二、三申し上げますが、一の不公正競争に関する限りデパートのみだけでなく、この不公正競争におきましては、各業界にこれに類するものが多々あろうと存じますので、公正取引委員会の仕事が不公正に終らないようにお願いいたします。  次に国鉄等公共物に乗客の便宜をはかるという美名のもとに、一部の人に独占させ、改築費を稼ぐような他力本願は絶対にやめていただきたいと思います。  付則第三章の法の経過規定に関しまして、この法をいかに処理されるか。工事施工程度等なまはんかな裁決は既得権を認めることになります。正直者はばかを見る世の中は通りません。慎重にお願いします。  また審議会については、現在都の風呂屋の実情を参考に申し上げますならば、この都にございます三法委員会は一年の任期でございますが、大へん微妙なものが事前にありまして、猛烈な運動があると聞いております。許可は衛生局、建築は建築局である関係上、悪ボスの温床となるように聞いております。公正なるべき審議機関に、許可はおそらく通産省建築の方は建築局ともおそらくなるのではないかと思いますので、その際悪人を出さないようにぜひ一つ公正にやっていただきたいと思います。  大へんあけすけなことを申し上げまして失礼いたしましたが、これで終ります。
  8. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に青山学院大学教向井鹿松さんに公述を願います。
  9. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) 私、向井でございます。本日ここに百貨店法案審議に対して一言述べる機会を与えて下さいましたことを厚くお礼を申し上げます。  しかし、私の本日申し上げたいことは、ほんの書斉に引きこもっておりまして、純学問的な立場から、一学究の放言としてお聞きとりを願いたいと思います。従ってあるいは百貨店の方々、あるいは小売商の方々、あるいはまた先ほど来お話のありました通産省委員会関係の人にも、あちらこちらに差しさわりがあるかとも存じますが、その点はこれは学者の放言だとしてお聞き流しを願いたいと思います。ただ私はほんとうに自分の信念だけをここに申し上げておきたいと存じます。  非常にむずかいし問題でありまして、この問題について何人も納得いくような結論を出すということは、まあ現在の世界の学界でもまだ与えられていないと考えております。そうしてこの問題はまことにわれわれ日常生活に関係があり喫緊の問題であります。はなやかな問題ではないかと存じますが、私は事は日本民族の将来に影響のある非常な深刻な問題が内在しておると思いますので、きわめて迂遠な説になると存じますが、お許しを願いたいと思います。百貨店に対しましてはいろいろ非難がありますけれども、私は百貨店が社会経済的に大きな効果を持っておるという事実はこれは何人も否定しないだろうと存じます。と申しまして、この百貨店が全小売配給をつかさどるということも夢にも考えられないのであります。百貨店がどういう点で社会的な利益を持っておるか、まあ講義めいたことを申し上げてはなはだ恐縮でありますが、われわれが日常生活をし、また忙しい者が物を買わなければならぬというときに、百貨店へ行ってとにかくわずかの間にたくさんの品物がまとめられる、まあ何万人はいりますか、何千人はいりますか、この労力の節約と申しますか、時間の節約、この時間の節約というものはこれは非常な大きな社会的な節約だと、エコノミイだと存じております。前参考人お話の繰り返しになる点が多々出て参りますが、あしからず。  第三はわれわれがわれわれの所得を——三巻参考人から話が出ましたが、効率的に利用する、われわれはまことに貧弱な所得をなるべく有効に使う以外にわれわれの生活を改善する道はないのであります。しかし百貨店に行ってみますというと、同じ物でも形が違う、あるいは色合いも違う、あるいは新製品がある、あるいは代用品がある、いろいろなものを比較して、結局これがいいと思って選んで、自分に最も適当な、あるいはその社会において最も新しいと申しますか、安いと申しますか、とにかく選んでいい物を買い取るということは、同じ百円を使いましても百円の値打が非常に大きいものがあると思います。私はこれも社会的な一つの利益だと考えております。  第三には消費者として私は特に思うのでありますが、百貨店で買えば安いとは私は思いません。が、まずわれわれのような商品鑑定力のない消費者にとっては高いかもしれないが大した間違いはない、言いかえれば、悪い言葉でありますが、まずつかまされるというようなことがない、この安心感、そしてそれがまた大体において私は事実だろうと思いますが、そういう点において買いそこなうという危険が少いということも私一つの社会的な効来だと思っております。  第四には、われわれ貧乏な国で労力、資本というものはなるべく有効に利用しなければ今日の社会的貧困は絶滅できません。しかし百貨店というものはそういう点におきまして非常に優秀なものを集めておる、非常に資本というものを効率的に使っておる、私はこれも同じ一千万円の資本を社会経済の上に必要欠くべからざる配給事業に使うという意味からいえば、あの少い資本、また労力は少くありませんけれども、これを効果的に利用する上において、むやみな事業を始めて一、二年あとにはその投じた資本が何にもならなくなるようなことはまず百貨店がやればない。そういう意味におきまして資本、労力を効率的に利用するというふうな社会経済的な利益もこれも何人も否定できない。百貨店において有利である。私はこういうふうに考えて、百貨店というものが今日の社会経済的な立場からみて非常に経済的能率の、あるいは利益のあるものであるという事実は私は疑うことができない点であろうと存じております。でありますからして、一部の、私は特に一部と申しますが、一部の中小商業者の自分の非常な苦しい立場、またこれにわれわれ同情するのあまり、この今申し上げましたような百貨店の利益に目をおおって事を判断するということは、これは誤まりである。われわれはいいところはあくまでいいとして見なければならぬ、こういうふうに考えております。  しかしながら、翻って考えてみなければならぬことは、私どもは日常生活の上において小売商というものはなくてばならない、これなくしては一日も生活できないのが小売業界で、その小売業界といった中には百貨店も含めております。この小売業界というものは社会的な配給機関として欠くべからざるものでありますが、その中におきまして、ただいま申しました百貨店というものは、そのきわめて一小部分にしかすぎないのであります。先ほど能勢参考人から全国の七%と申しました。これは全国でありますが、都会をとってみますというと、まだ相当に高い率になると思いますが、それにしても一小部分であります。このわれわれになくてはならぬのは社会機構全般でありまして、その一部にいかに優秀なものがありましても、それだけでわれわれは満足しておれないのでありまして、あらゆる全体としての小売配給機関を考えてみなければならないのであります。いかにプロペラが優秀でも飛行機の体が、翼がいけなくては何もなりません。また、いかに船のスクリューがよくても船体がまずければこれも優秀な目的は達せられません。たとえば私どもが、まあつまらんことを申し上げますけれども、急にお客様があった、肉が要る、菓子が要るといったときに、百貨店に走れといったひにはこれはまことに時間の不経済この上もないことである。いわんや日常のそうざいを一々百貨店でまかなえるものでもありません。こういう欲しいものがあるが、一つたずねてみてくれないか、取り寄せてくれないか、こういうようなこまかいことを一生言ったところで、百貨店は相手にしてくれるものでもありません。こういう意味から言いますれば、われわれに必要なのはむしろ百貨店よりも全般としての小売業でありまして、われわれは全般としての小売業をよくすることがわれわれの経済生活の上にまことに必要欠くべからざるものであります。ただ小売業——いわゆる普通小売商といいますが、普通小売商はあまりに数が多いためにわれわれは恩恵を感じない。空気はあまりに多いためにわれわれは空気のありがたさを知らない。空気がなくなってはじめてわかる。全百貨店がストライキをやりましたところでわれわれはそう痛痒を感じません。しかし全国の、あるいは東京小売商がゼネラル・ストライキをやった場合にはわれわれは二日と生活はできないと思います。そういう意味合いにおきまして、私は普通小売業者を全体として維持育成するということはまことに必要なことではないかと存じますが、一方百貨店立場から申しまして、百貨底が利益でありますけれども一つの地域に百貨店が今まで一つあったものが二つになったからといって、先ほど申しました経済的利益は二倍になりません。三つになりましたからといってこの経済的利益は三倍にはなりません。その結果は、結局百貨店みずからも非常に能率が落ちるばかりでなく、先ほど三巻参考人から言われましたように、今日のように、ああいう小売業者もありましょうが、不当競争のような状態では、消費者というものはこれは利益を受けるよりもむしろ弊害を受ける方の立場があるのであります。ついつられて買わなくていいものを買う、なけなしの財布をはたく、あるいはそういうことはないでありましょうが、一部の今おとり類似のことをやられてついでに買う、こういうような状態にまでなる、そうして結局はその競争は普通の小売業者立場にまで食い入ってくる。ある種の競争は非常に積極的な効果を上げますけれども、競争過度に至りますというと、結局これは先ほど高橋参考人から出たと思いますが、他人の利益からやってきたところの競争は何もなりません。社会的な利益は何も生じません。ある会社の名の通ったミルクキャラメルを百貨店で買おうが、小売商で買おうがちっとも違いはないのであります。名の通った品物があるならば、どこで買ったって今日では規格がきまっておればちっとも差しつかえない。それが過度競争になれば、百貨店の目についたところで買うというような結果が生じますからして、百貨店は非常に効果的でありますけれども、あまり過度に至るというと、私はその利益はその割に生じてこないばかりでなく、かえって弊害を生ずる面がある、ことに商業がもし工業のごとく大経営になるに従って利益を生ずるものとしたならば、小売業というものは、普通小売商というものはとうの昔になくなってしまうと、あたかもあの手車で糸を紡いでいたあの方法が、紡績業の発達によってなくなってしまったと同じようになくなってしまうのであります。けれども、今日なお中小小売業者増加こそすれちっとも減少はしない、そうしてわれわれもこれから利便を受けておるということは、大きければ大きいほど節約が生ずるというところのいわゆる経済学の教える大経営の利益は、商業におきましては起ってくることが非常に鈍いのであります。お客一人に売るために、百貨店、だから十人売れるというわけに参りません。一人のお客にサービスしているときには、百貨店は店員が一人ついていなければならない、小売店でも一人ついております。百貨店におって、百人のお客を一人でやるというような利益は生じて参りません。ことに、私は特に小売配給機構の本体であるところの中小企業を育成しなければならぬということを考えておりますのは、まことに釈迦に説法を申し上げまして恐縮でありますが、これは私の信念でありますから一つお許しを願いたいと思います。  世の中が進みますと、月給取りが非常にふえて参ります。月給取りというのは、悪い話ですが、ある意味において非常に無責任なんでありまして、間違ったことをいたしましても大して首になることはなし、生活には困りません。責任が非常に軽い。真剣にならない。彼らは他と競争しても木剣試合である、これに比べると独立の中小企業というものはほんとうに火の出るような仕事をしております。まことに非常に苦しい。勤勉家であり、責任感があり、努力家であるこの国民の素質というものは、私は中小企業において育成されるので、月給取り社会においては私は育成できない、まことにその日暮しの消極的な人種がこの月給取りの多い社会にはできてしまう。私はそういう意味合いにおきまして、ほんとうに日本の国が今後とも今までのように非常に発達したる優秀なる国民として残るためには、なるべく多くの者がほんとうにおれたちは毎日真剣勝負をしているのだ、ちょっと用心をしないと血が出るのだ、命を失うのだという気持の人たちが多数できるということが、私はやまと民族の発展にとりまして、まことに必要なことだと思います。またこういう方々はよくすれば他日いい階級に、あるいは富豪までいかなくとも、りっぱな財産ができる一つの中核段階におるのでありまして、非常に穏健な社会脚であろうと存じます。こういう社会層を維持育成するということが、私はまた社会全体としても非常にいいことであろうと存じます。百貨店はいいということはこれはほんとうなんであります。しかし銀座へ行ってお茶が飲みたい、これもいいことなんです。しかし銀座へ行ってお茶を飲むから晩飯はいいということになりますというと、これはもう元を枯らしてしまうもので、私はそういう意味合いにおきまして、この全体としての中小商業者の地位というものは、全体としては非常に育成していかなければならぬ立場ではないかと考えております。おこがましい話ですが、最近アメリカの雑誌にあった一つ批評を御紹介申し上げます。アメリカのようなところは非常に金持の国だろうと思いますけれども商業者の所得というものは非常に少くて、かつかつの生活しかしていけない、そのために物の値は相当安くならぬが、とにかくそれで生活は苦しい、しかし彼らは朝から晩まで生活しておるのだけれども、まことに苦しい生活しておるけれども、働いてしかも所得は少いけれども、とにかく一国一城のあるじだ、自由の者だ、俸給生活者には考えもできないような一つの自由な人間だ。もしこれが大企業家によって彼らが職を失うとするならば、これらの小さい業者というものは、必ずや社会保障の対象になる、そうするとこれは税金で養わなければならない。ところが今中小商業者が苦しいけれども維持できていくとすれば、これはなるほど自分の経営上の必要からどうしても物は安くなりませんが——これは高くなると消費者の負担になる、そうすると結局現在のようであったところでこれは消費者の負担になるかもしれない、しかし職を失えばまたこれは納税者全体の負担になる、どっちでも社会の負担だとしたならば、これは一体どっちがいいとするならば、それは、今のような自由な社会にほんとうに一生懸命働いておる中小業者を維持した方が、社会にとっても、また業者にとってもいいのではないかという、これは私の意見ではありません、本を読みましたのですが、まあわれわれとしては一つ考えさせられる問題ではないかと存じます。  なおこの際にそれにつけて一言いたしたいのは、先ほど来も話が出ましたが、人口が非常にふえる、そうして多くの人がその職を小売業界に求めることができる、日本のような人口過剰なところでは、小売業界を維持していくということは、増加する人口に職を与えるという意味において、いいことではないかという考え方ですが、まあ完全雇用というようなことが今日では非常に流行語になっておりますが、しかし私自身これに対してきょう自分の意見は申し上げませんが、しかしあまり収容し過ぎて、いいかもしれませんが、今度小売業者みずからは困るという小売業の過剰という問題が起って参りますけれども、この点はまことに非常にむずかしい問題になろうかと存じます。私は一律にこの議論のどちらにもきょうここで自分の意見を、賛成的意見、あるいは反対的意見を申し上げないことにいたします。私のこういう基本的な考え方から今日の百貨店法を見ましたときに、私はやむを得ないのではないかと、こういうふうに考えております。能勢参考人から一本の法律規制するということはどうか、まことにその通りであります。しかしこの一本の法律規制するということはスローガンとしては非常にけっこうな言葉で、強い印象を与えますけれども規制の方法なんでありまして、百貨店の数は全国百にすべし、あるいは東京では十にすべしというならば、これは非常に融通のきかないものだろうと思います。が、しかしどなたかからも話がありましたように、今度の法案はそういうところまでは行っておらない。必要な場所には、必要なときには認めるのでありますから、その点は私は心配はしておりませんが、ただこれもどなたかのお説にありましたが、一体これをだれが運用するのだ、こういう問題なんであります。私はこの点において非常に今日の百貨店法案なり、あるいは百貨店法案が通らなくても、国家の政策として非常にむずかしい問題だと思います。この談論ももう時間もありませんから私申し上げませんが、私は投票で動いてもいかん、金で動いてもいかんと思います。といって、委員会ができましてもイデオロギーで動いても、これも困ると思います。私は何か一つの、何人も異議を言わない客観的な一つの基準が設けられるものではないか、まあ設けられないでも、そういうような気持で運用しなければ、これは法律がありましても小売業者は安心ができない。百貨店もまたこのやり方によってはそう心配することもない。いかようにもなるものと思いますから、問題は一体この基準をどこに置くかという問題に私は帰落してしまうのではないか、こういうように考えるのでございます。  それから勧告に関する条文、私はあの点も非常にけっこうであると思うのです。またそうしなければなりませんが、それも一体どういう基準であの勧告を逆用しようとしておるか、これもまたあの問題も運用に関してくることであります。きょうここで三巻参考人から非常に私が言おうと考えておりましたことをお話しになりましたから私申し上げませんが、私はもし三巻参考人の言われたように、消費者が教育されたならば、私は今日のような問題は著しく軽減されるのではないか、消費者がほんとうに自覚して、むだな宣伝に乗らず、仮装的なといいますか、表面的な宣伝に乗らず、こういうようなことになれば私は非常にいいのじゃないか。特に政府が、これも先ほど話がありましたが、規格を統一する、あるいは品質の保証をする、それから品物の、何といいますか、銘を打った品物がたくさん出てくる、先ほどの何々キャラメルと言えばどこで買っても同じだということになりますと、私は小売業界が、今日のような混乱状態百貨店のためには起らないのじゃないかということを考えております。同じ基本的な考え方なんですが、不正、公正でない競争、私が公正でない競争と申しましたのは、商品の代価、品質の競争でなくして、これに関係のない他の方法によって消費者を獲得しよう、あるいは仕入先を獲得しようという方法なのであります。ほんとうにいい品物を安い代価で供するのはちっともかまいません。けれども、これは百貨店関係ないのですが、因縁情実で悪い品物を買わなければならぬということがありますが、そういう式の百貨店には、百貨店でそういう方法が私はあると思っております。またやっていると思います。そういうような事柄を目標に運用し、そうして日本の政策をもって行くならば私は日本の小売業界全体として行くべき道があるのじゃないか、言いかえれば一つの方針をもってやるならば今日ほどこの問題は深刻でなく、また将来緩和される余地があるのではないか、百貨店も決して先ほど申したように社会小売業態としては一部の職能しか果すことができませんので、全体的には大きくなり、これに取ってかわるということはできないのです、おのずからその限界がありまして。ただ今のところでは限界を、守っておりません。また私の言ったような政策がすぐに行われるものでもなく、消費者の教育がすぐに効果の……、そういう消費者がたくさん出て来るものでもありません。これはかすに相当の時間をかけなければならぬ。言いかえればかりにアメリカならばアメリカに例をとってみればそういう程度まで達しなければならぬ、それにはいかにすればいいか、それをわれわれは待っているわけには参りませんから、この際この程度の規制はやむを得ないのではないか。ただ運用の点において私は一つの方針をもって逆用してもらいたいそうして動かない、ある特殊の勢力あるいは事情によって動かないようにしていただきたい、これが私の考え方でございます。法案に関しまする詳しいことは私本日は控えておきたいと思いますので、この程度で……。
  10. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 以上の御意見に対し質疑のある方は御発言願います。
  11. 高橋衛

    高橋衛君 私は高橋参考人に一点お伺いいたしたいと思います。小売と申しますか、中小商業に関連して、百貨店のほかにもう一つ大きな利害関係を持っているものに、大きな工場であるとか、職域におけるところの購買会の問題があると思うのです。この種の購買会は多くは事業主の厚生施設として行われているのが普通であり、従ってほんとうにペイするラインにおいて行われるということよりは、非常に安く行われている場合があり得ると思うのであります。ことにその購買会がそこの従業員に対してのみにやった場合にはこれは問題がありませんが、多くの場合に従業員以外に対しても相当販売をしているというのが実情であります。そういう問題を、これは東京におけるよりもむしろ地方都市において相当問題が深刻であると思うのでありますが、そういう問題を同時に考えて行くとしなければ、この措置はおそらく非常にアン・バランスな結果になりはしないかというふうに考えるのでありますが、その点についてどういうふうに考えておられるか。それからこの点について向井先生にやはりお伺いいたしたいのですが、ああいうふうな購買会、いわゆる厚生施設の一つとして行われているところ、つまり工場によりましてはむしろデパート以上の規模をもったものがあるようでありますが、そういうものが組合員以外、工場の従業員以外にどんどん販売しているというその社会経済的な効果と申しますか、それについての御意見をお聞きいたしておきたいと存じます。
  12. 高橋貞治

    参考人高橋貞治君) ただいまお話ございました購買会並びにこれは生協もあるわけでございますが、まあ生協の場合は百貨店売り上げが先ほど七%と出ましたわけでございますが、繊維などは二〇%から三〇%、都市だけのデパートと小売商売り上げ比較でございますね、二〇%から三〇%になるわけでございます。大体この生協は一%といっておりますが、非常にこの生協だけを考えた場合には今日小売商に対してはデパートほどの全国的な比率ではないわけであります。しかしながら地方におきましては生協は相当圧迫を小売商にいたしておる実情であります。これは現在われわれも材料を集めまして、必ずこれは将来何らかの法律を作っていただきたいと思っておりますが、とりあえず今申し上げた通りデパートと比較いたしまするとほんとうに比率が少い、やがてこれは絶対に手をつけなければならないと思っております。  それから購買会の問題でございますが、これは鉱山とか特殊なところでございますと、今仰せの員外活動と申しますかこれは少いのでございますね。大体会社だけの購買会が多いのでございまして、そしてその購買会で取り扱っております商品には、品物にもよりますが大体金額の多いものでございますと、小売商相当利用しているのでございます。その購買会にいたしますと、一番むずかしい大きな問題になるのでありますが、それに対する何と申しますかわれわれの本部の方で購買会をもう一度研究しようということで、特に会社の購買会をワク内でやっておいでになるということは多いのでございますが、鉄道のような場合はこれは大きな問題になっております。仰せの通り特に鉄道の運賃を八割引きしてやるとか、あるいは鉄道の職員がその事務系統を一切やりまして、給料は鉄道で払うというような問題はたしかに原価採算が非常に安くなる、われわれが幾ら苦しく徹夜をしあるいは主人が夜十二時までやってもそういった原価計算の面では競争でき得ない、これも相当現在問題になっております。しかし特に購買会は相当小売商の中へ入っておりますので、今資料を集めつつございますけれども、比較は今申し上げた通りデパートが一番大きい、とりあえずこの問題は何らか規制をお願いしたいという現存考えでおります。
  13. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) ただいま御質問がありましたが、私はこういうふうに考えております。購買会が購買会として、といいますのは私の解釈するような購買会としての任務にとどまるならば、また生協が私の考えている本来の仕事に従事するならば、これは小売業者がお困りになられてもこれは私は仕方がないのじゃないかと思います。たとえばある会社が厚生施設に自分の金を出して俸給なり収入の一部を補ってやるという政策をとるなれば、私は月給でやるというのはいいが、安い品物でやるのはいかぬという理屈は私はどうかと思います。が、しかしこれは国営の場合には違います。私は国家事業がそういう式をとって、その事業の収益で特別な金を出して、特別な何と申しますか給与をやっておいて、赤字が出たら納税者の税金で補う、こういうようなことは私はもう絶対いけない。これは国家の事業の場合と、一私会社の購買会とは明確に区別しなければならない。国有財産は国有財産として一つ公正に扱ってもらいたい。私の企業はこれは私有財産でありますから、他に影響を及ぼさない限りは自分の従業員にいい待遇をするのだというならばこれもやむを得ないかと存じております。ただ問題はそれが本来のわれわれが観念しているその配給状態の域を脱して、一般社会的な配給機構として活動するようになりまするというと、これは一般配給機構と同じように扱ってもらうのはこれは当然だと思います。私はその意味におきましてドイツの一九三四年の立法が小業者もまた購買組合も協同組合も同じように一本の法律で扱って行くということは非常に興味の深い事実であろうと思います。その点は日本の行政機構ではもうだいぶ官庁が分れておるようでありまして、まあこれは私よりも専門家の方がありますが、同じ組合でありながら厚生省あるいは農林省あるいは通産省関係があり、ばらばらの行政を行い得るようになっております。これは全く非常な統一を欠くような現象で、先ほど来申し上げましたように、われわれはとかく社会人として社会配給機構に頼っているんだから、これは一つ一本として考えてもらいたい、こういうように考えております。
  14. 上林忠次

    ○上林忠次君 向井さんにちょっとお尋ねしますが、これは自由主義国家全体の問題であろうと思いますが、もちろん日本の各種業界の編成も違いますし、資源関係も違う、特殊な日本の状態のもとでこういうような職業別の構成ができておるので、よそとは違う点があるかもしれませんけれども、デパートあるいは協同組合、消費組合、こういうような連動が盛んになっておる点では同じじゃないか、よそではどういう工合な、こういうような業者に対する規制をやっているのか、現状はどうなのかと、先ほどお話がありましたようにデパートもそう大きくなるもんじゃない、常に配給機関として小売というのは必要なんだ、ある限度があるんたということを聞いておりますけれども、おのずから日本も日本と諸外国とは違うんじゃないか、どこまでこの状態で進むのか、まあよその欄熟した国はもっと日本より進んだある程度の域まで行っているんじゃないか、それに対してどういうような規制をしておるか、協同組合の活動なんかどういう工合になっているか、私農林省関係の農業協同組合のあの状況を見ておりますけれども、仕入れの状態あるいは営業の状態経営状態を見ていますと、ある限度でやはり小業者を全部抹殺する域には行かない、もう限度が来ているんじゃないかというような感じがしております。デパートにおきましてもある限度があるのか、あるいはデパートから進んで特定のビル街というものができて、そういうような方向に進んでいくならば、小売業はもう抹殺されるんじゃないか、そういうような懸念もあるのか、諸外国の今の進展の状況、これに対するコントロールの状況、どういうような程度にやっているか、そういうような点について諸外国の状況をお聞きしたいと思うのです。
  15. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) ただいま御質問ありましたので、ただ平素の考えだけを述べさせていただきたいと思います。私は先ほど来やかましく申し上げましたが、私は購買会なり生活協同組合といっておる場合にはこういうものだということを頭に置いておりまして、私はそういうものである限りはそれの自由にしておいてよろしいんだと、しかしこういうことはあらゆる組織においてあることでありまして、自分はこの消費者のために、われわれの仲間の消費者のためにといって組織を作るのですが、組織を作りまして軌道に乗りますというと、これはほんとうの社会改良的な気分に徹底しないというと、だれしも組織がおもしろいために、何といいますか組織の強制と申しますか、組織の強制によって発展さしたり、それに一つの興味を感じたり、その自分の領域を脱していくのじゃないか。私はそういう場合には、一つ規制が必ず社会的に必要が起ってくるのではないかと思う。百貨店が外国ではどうなっているか、あるいはチェーン・ストアがどうなっているかという話がありましたけれども、私はこういうように自分の案では考えております。先ほどどなたか同じ漁場に他が入り込んで競争するのだ、そういう場合には私は競争も自由放任はこれはもう許されない。競争はいいことだ。しかしその事業そのものの競争でなくして、先ほど言ったように金の力、政治の力、何のいうような、あるいは他の営業者のやるような営業をやってお客様をつる、自分のする仕事が配給効率ではない、これは私は差しさわりがあるから申しませんが、当然他の営業に属する仕事を自分がやって客を何するというようなやり方で競争するということが、私はこれはいけないのじゃないか、そういう考え方であるからして、私は自分の意見としては百貨店でもチェーンでも、職域を、同じ職場でやる仕事が競合するようになれば、特にそれが不当だと、あるいはそのために多数が困る。多数がなくなったことによってかえって社会的におもしろくないというような場合には能率が高いからなるのだろうから、それに対して一つの税金をかける。税金をかけます場合には、これは数を制限するのではありませんし、免許も要らないのですからこれはもうかる。こういったやり方をやれば非常に能率が上るから、うまくやれるという自信がある者はハンディキャップがつきましてもとにかくやれる。税金を払ってもやれるということはそれだけ能率が高い。そして消費者の利益になる。こういうやり方をやっている国は多々ではありませんが、ある。それならばちっとも競争を制限するということにはならない。能率が高いからということになれば高いだけの、所得の多いものが多くの負担を個人でも負担するように、これは人と違うのだ、能率が高いのだということになれば、それを国家が取り上げていく。もし目的税的にするならば、先ほど私が小売業界がこういう方針でいけばいいのではないかという方面に利用するならば、小売業者も一般消費者も全体として円満にいくのではないかというような室想は描いておりますが、あまり今詳しい例を持っておりません。
  16. 上林忠次

    ○上林忠次君 それじゃ何ですか。外国ではデパートの進展、発展状況というのは日本に比べてもう限度がきているとか、時にこれを規制するような必要はないということになっているのですか。
  17. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) 少くともアメリカが一番発達しましたけれども、一九二〇年から三〇年の間にほとんどとまっております。私はその当時から、もう二十年前から日本の小売業者百貨店をわあわあと言っているけれども百貨店というのは一つの、一カ所に多数の物を集めてこなければならないのだから、これは必ず限度がくる。まあ今日でも、おこがましい話ですが、アメリカの話をしますが、都心の百貨店というものはもう人がそこに集まらなくなった。時間がかかる、交通も危険でしょうがない。費用もかかる。それでこう分散する傾向があります、と同じように、私は百貨店がおそろしいのではなくして、チェーン・ストアがおそろしいのだということを……どうしてチェーン・ストアができたかということを二十何年前から言っておるのですが、日本はチェーン・ストアが発達しない。それはだんだん一カ所に集中するが、ある程度客を追って向うへ行きますから、これこそ小売業者に対して非常な脅威だと思っておりますが、アメリカでは二十年代に、私の記憶が間違っていなければ、二十年代に百貨店問題はもうそう大きな問題ではなくなってしまっております。起ったのが今のこれはチェーン・ストアで、これは非常な脅威を与えました。これに対して各州大ていチェーン・ストアに特別の税金をかけています。そうして店の数をふやすほど税金が高くなる。エー・アンド・ピー、あれが一万幾ら店があったのが今は七千ぐらいでしょう。その税金のためにだいぶ減っております。だから国によってこれは違うのじゃないかと思いますが、私は日本でももし百貨店ができるならば、あちらこちらにやはり百貨店チェーンみたいなものでもできるのじゃないか。現在のように一カ所にやるということではもう行き詰まりがきているのじゃないか。なるべく百貨店チェーン的なものを作って、先ほどチェーン・ストアと言ったのとはちょっと意味が違いますけれども、作っていく。
  18. 上林忠次

    ○上林忠次君 それでは百貨店に対する規制というのは、どこの国もないのですか。
  19. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) アメリカでは私は承知しておりません。それは今言ったように、もう社会的にすでに問題がないようなふうになっております。チェーンに対しても厳重な規制をしております。ですから、その事柄には、この社会ではこれがおそろしいのだといえば、これがエキセントリックだといえばそれに対してはあるのじゃないか、あるとこう考えております。
  20. 阿具根登

    ○阿具根登君 能勢さんに御質問申し上げますが、今デパート側と中小企業者側から御意見を伺いましたが、いずれも抽象的でございまして、法案の細部には言及されなかった。かように考えておりますが、能勢さんの先ほどの御意見の中にもデパートというのは一応その限界にきておるのだと、そうひどくならないのだ、こういうことをこの前の二十二国会でも申し上げて、現在もその通り思っておる、こういうことをおっしゃったと思います。なおまたただいまの向井先生お話をお聞きしておると、デパートというのはもう一応限界にきておるのだと、こういうように私はお聞きしたのであります。ところが先ほどの能勢さんのお話では、昭和十三年から三十年まで約二十年間の間に一割二分の増加をやっておるだけである。ところが今度こういう法案が出るようになりますと、全国で約五十万平方メートル、三三%の増加、こういうことになってきましたので、審議しておる私どもはこの法案百貨店拡張促進法案のような気がするわけなんです。そういう点から考えてみましても、能勢さんのおっしゃったように、もうデパートというのはそう心配されるほど拡張はできないのだと、そうして二十年間の間に一割二分しか拡張しておらないのじゃないか、ところが今度物がなくなれば買いだめるという人間の心理だと、これは私もわかりますけれども、この法案審議されるようになった近々一年半ぐらいの間に五十万平方メートル、三三%ふえたということは、今までの例から見るならば三十年分ぐらいこれは拡張されたような結果になるのじゃないか。それにもまして、この法案に反対されるとこういうことになってくると、少し矛盾した点があるのじゃないか、こういうように考えるわけですが、その点一つお聞きしたいと思います。
  21. 能勢昌雄

    参考人能勢昌雄君) 今の御質問でございますが、先ほど私が述べました言葉に不十分な点があるかと思いますが、一昨年の衆議院商工委員会で申し上げたときには、今先生お話のようにふえないだろうと思っておった。今日でも私はそう考えております。と申しますのは、私も業者ではございませんけれども、大体向井先生お話しになりましたように、百貨店というものにも限度がありまして、先ほど三巻参考人お話と関連いたしますが、やはり自由競争をやっておりましても、広告をやり、あるいはいろいろな宣伝をやり、またサービスをやるといいましても、それをみな簡単に消費者に転嫁するということはできないことば御承知通りであります。よそより高いものを売ったらお客さんは安い方に行ってしまうわけで、百貨店の方はそういうコストがかかる。小売屋さんの方はかからぬ。従って小売屋さんの方が安いということになれば、とても百貨店の方は太刀打ちができない。それは何で現われているかと申しますと、それは百貨店の方では全部利益で負担しておりまして、御承知通り戦前から百貨店の利益率というものは年々低下しておる。もうこれ以上低下すれば、企業としても、皆商人ですから、採算をもってやることですから、大ていできないんじゃないかと思います。ただ最近の増加につきましては、ちょっと私も遺憾の意を表しましたように、私の見通しの違いもありましたが、一つはやはり数年先の計画をここにしわ寄せをした最も大きな理由は、割合に建築がしやすい状態にあるということが一つでございましょう。それとまたもう一つは、全部がそうではなく、かねてから計画を立てたところが、やはり通常の状態において一割——一割五分というものの増加がその中に含まれていることも事実であります。そういうものの大きな原因としましては、やはりわが国経済の安定と申しますか、正常なる発展の結果、やはり生産方面も合理化され、いわゆる生産性が発揮されてだんだんふえて参りました。もちろん輸出ということが大眼目であるとおっしゃいますけれども、国内市場がなくて輸出ということはできないわけでありまして、やはりいわゆる生産全部を需要、大きな意味における消費、国内、国外を通じてそれに合うように生産をされていくわけでございます。そういうわけでございまして、やはり百貨店といたしましても、今年はどのくらい、その翌年はどのくらいという、やはり経済の見通しをつけて、ここ一両年の間に、一昨年以来拡張計画を持ったということは、私やむを得ないだろうと思います。それともう一つは、生活の内容というものの変化、向上ということが著しいのでございます。一例をとって申し上げますと、戦前は、たとえば電気器具と申しましても、そう大した売場は要らなかった。また衣料品と申しましても、混織の新しい繊維がどんどん出まして、従来の倍やそこらの面積ではそれだけのものが並べられない。それでは並べなければいいじゃないかというお話もありますが、やはり百貨店は先ほどもお話いたしましたように、一堂にいろいろの品物を集めて御便宜をはかるという建前から、そういうものを並べる面から言いましても、ある程度の増築は必要でございます。しかしこれも今申しましたように、採算がございますので、これ以上どんどんふやしていくということは、新しい企業が別の観点をもってふやすなら別ですれども、現在の百貨店業者は、私はよほど経済的ベースを見通すか、あるいはよほど先行きの見通しを、楽観と申しますか、先を買ってやる人でない限りは、そう著しい増加はないと、前にも思っておりましたし、今も思っておるわけでございます。ただしかし、それは先ほども申しましたように、三十年以後、三十一年、二年の末におきまして、私どもの手元におきましては三割何がしの増加、これは割合に信憑性がないのでございます。特に現地に行って調べたわけではございませんが、ただ届け出の数字を基礎といたしまして、ここ一両年はその結末として、もし許されるならばふえてくるというわけでございますけれども、そう将来むやみにふえていくということは、私はあり得ないと考えるのでございます。東京に非常にふえたということは、全国的な面積以外に、政治の中心、消費の中心地である東京を目の前に見ていらっしゃって、ふえているということが割合に皆さんの目に触れるわけでございますけれども東京という所は割合に百貨店面積が従来少かったのでございます。大体私どもの調べによりますと、昭和三十年十月一日の国勢調査のときの人口を基礎といたしまして、そうして私どもの同日の百貨店の協会で調べました売場面積を見ますと、人口一万人に対しまして、全国平均は五三二・二平方メートルでございます。六大都市では六一三・四平方メートルでございます。六大都市以外の地方は四二五・六平方メートルでございます。ところが東京は、一万人に対しまして五三一・四で、むしろ全国平均より低いくらいのところでございます。それに対しまして、大阪は一〇八三・一というところで、東京の倍もございます。いわゆる商業採算と申しますか、そういうものからいたしまして、東京に出てきて店を開きたいという人が多いわけでございます。また将来を考えますというと、東京消費は当然もっと大きく向上されるだろうという点で、非常に東京地方へ企業者が出てきたということが多いので、かりに東京増加を見ますと、東京が今の私どもの方に出ております表では、三十二年末で三割一分ほどふえるわけでございますが、かりにふえましたといたしましても、五三一の三割で、大阪に対してはまだはるかに低位にあるということが東京へ出てきた理由でございます。しかし多少でも東京に対しては、あるいは私はもっとふえる可能性があるんじゃないかと思います。東京都市そのものの発展に伴ってふえるんじゃないかと思います。で、私はそういうふうに考えました場合に、先ほどどなたかお話がありましたように、百貨店というものは、もうこのくらいでけっこうじゃないか、もうそれほどふえなければこういう法律があってもじゃまにならぬじゃないかということに相なると思いますが、やはり私どもは将来の国の経済の正常なる拡大、膨脹、発展ということを目標に置いておりまして、そういう場合にやはり許されるべきものは許されるという状態に置いていただきたい、こう考える次第でございます。これで御質問にお答えできたことになっておりますでしょうか。
  22. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっとはずれておるようなんですけれども、いわゆる私が質問したのは、非常に本法案に対して、能勢さんの御意見では、これは否決をしてもらいたい、こういうことを言われましたが、当初言われた百貨店の需要の限界というものから見比べるならば、この法案がそのまま通るとするならば、あなた方の意見が皆通っておるということになりはしませんか。これをどうして否決せいと言われたのか、それは矛盾しておるじゃございませんかと言ったわけです。
  23. 能勢昌雄

    参考人能勢昌雄君) それじゃお答え申し上げます。最後に言いましたように、将来やはりだんだん発展、経済とともに百貨店も発展していきたい。それでちょっと先ほどの説明のときにつけ加えました、今、向井参考人からお話がありましたが、画一的に耳ざわりがしつかりしておるというお話がありましたが、これも全部申し上げましたことをお読み願いましたらわかると思いますが、画一的な法律はなかなかむずかしい結果、非常に幅のある法案が出たということでございます。その運営におきまして、どうしてもこの法案をお通しになるということに相なりました場合は、やはり将来の経済とともに発展していく正常な百貨店の発展もお許しを願うようにお考えを願いたいというわけでございます。
  24. 阿具根登

    ○阿具根登君 高橋さんに御質問申し上げますが、いわゆる百貨店規制というんですか、今こういう法案が出ておりますが、いわゆるこういう法律によって百貨店を押えたから、小売業者はこれで立っていくんだ、こういうようなお考えでは私はないと思います。先ほど三巻さんがおっしゃいましたように、百貨店は各小売店に調査員を出しておいて、そうして小売店の値段と百貨店と調整をとっていっておる。もちろん小売店の方は少しは安いでしょうけれども、それは先ほど向井先生お話にもありましたように、信用の度合いとか、あるいは多数のものが一ぺんに購入できるというようなことでプラス、マイナスになっていっておる。そうすれば、結局三巻さんが言われたように、あなた方のその中において犠牲になっておるのは消費者じゃないか、そうすれば消費者百貨店にも小売店にもあいそをつかしまて、生協を作るとか、あるいはチェーン・ストアを作るとか、こういうことに私はなってくると思います。そうした場合に、小売店よりも生活協同組合を作った方が安くて、消費者は助かるんだということになってくるが、そういうようなことから考えました場合に、ただいまあちらからも質問がございましたけれども消費者消費者自身の生活から考えるならば、百貨店が立っていこうと、小売店が立っていくまいと、そういうことは考えられない。自分の生活をよりよくするために、より安い、よりいいものを選んでいくのが消費者でございますが、そういう点に対してどういうお考えをお持ちになっておるか、お尋ねしたいと思います。
  25. 高橋貞治

    参考人高橋貞治君) 実はこの百貨店法百貨店規制していただきたいということを申し上げました理由の一つといたしまして、現在まで野放図にどんどん建築がされておるわけでございます。特に一例を申しますと、豊島にデパートの二万坪ができたといたしますと、もちろんこれは駅の近くの場所のいい所へ作ります。小売商は一軒七坪平均でございますので約三千戸の小売店がふえることになるわけであります。そうしますと、ちょうど豊島が約三千ございますが、まあ購買力はそう大して違いございませんので、売り上げは半減する。こういう実例が出て参るわけでございます。まあそういったことが、規制がある程度これは百貨店法にもございまするが、百貨店審議会におきましてここはどうしても、消費者としてはまあ百貨店小売千に対して一つぐらいあってもいいという妥当なお考えで作らしていただくことが百貨店法案の今度の法案になっておりますが、こういうのはやむを得ないと思いますが、もう実際、これは何と申しますか、東京市内におきましても不安におののいております。きょうは新宿にまたデパートができたそうだ。また裏にできそうだ。また池袋に二つも三つもできる。特に有楽町にできる。あるいはまた有楽町に近くのマツダビルをまたデパートが買ったらしい。おそらく今のわれわれ小売商会に伝えられておるところの不安は十や十五どんどんできるわけです。なお、ちっと基礎工事ができたなら、大体これは全部許可するというような姿が出ておりますが、はっきり申しますと、品物を安く売るということに対しましては、われわれ団体といたしましてもまあ消費者に対して反省して、より以上研究いたし、勉強していかなきゃならぬと思っておりますが、これは専門のりっぱなお店もございまして、まあある程度のお客をつないでおりますが、今申し上げました通り、購買力は大体きまっておりますが、店舗がどんどんいい場所にできますれば、売り上げが半減するという、これが実情でございます。こういった状態で、われわれといたしましては、とりあえず新増築をこれをある程度規制していただくことが、すべて内容におきましてもうちっといろいろ申し上げたい点もございまするが、まあ重要な点を新増築の売場の規制という点に主眼を置いたわけでございます。何かまた足りませんところがございましたらお答えいたします。
  26. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは私の意見になってまことに失礼なんですが、私どもは莫大な資本を投下して中小商店を圧迫するということは非常に反対です。しかし反面考えて見る場合に、莫大な資本を投下した人がその資本をそのまま置いておくというわけにはいかない。それを回収するために私はやられると思うわけなんです。そうするならば、その商品は必ず高いか、あるいは非常に多く販売しなければならないということになってくると思うのです。もう一つ極端に申し上げるならば、そういう資本を投下しても立っていかないように、中小企業というものは消費者にぴったりくっついておるならば、これはいいんではないかと、しろうとがこういうことを言ってまうことにおそれ入りますが、こういうような考えを持っております。かりにこういう法案が通ったとしても、それによって自分たちが事足りるというのじゃなくて、自分たちの対象は消費者であると、者と自分たちは密接にくっついているのだ。その間に莫大な資本を投下するならば、投下した資本はふくらんで必ずその人のふところに返るのだから、その点十分注意してやってもらいたい。かように、私の意見でまことに申しわけないのですが……。
  27. 高橋貞治

    参考人高橋貞治君) 非常に仰せの通りでございまして、われわれも、小売業者も極力反省いたしまして、今までサービスの点、あるいは正札そういった面を研究いたしまして、寄り寄りそういうことをやっておりますが、一面から言いますと、巨大の資本をもちまして、特にお子さんの遊ぶ場所を作りましたり、また夏は冷房にいたしましたり、冬は暖房にいたしましたりなんかをいたすことは、現在食うだけが小売商大体一っぱいなんでございますが、これが百五十万、家族人員を入れて八百五十万もおるわけでございますので、われわれの足らぬところは、仰せの通り、十分ございますので、より以上消費者とぴったり、喜んでいただきますようなことにはわれわれも注意して行きたいと思っております。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 三巻さんに一つ質問申し上げますが、先ほど御意見の中に、審議会のことをちょっとお触れ願ったと思います。この法律では、審議会委員はわずか六人になっているわけなんです。そうして学識経験のある者と、こういうことになっているわけです。学識経験のある人も消費者ではあろうと私は思うのですが、先ほどのお話の中にも、審議会が変なふうに動かないように、慎重に審議会委員はやれというお言葉でして、まことに私も同感なんですが、これに対して消費者側からとしてどういう御希望がございますか。御意見を承わっておきたいと思います。
  29. 三巻秋子

    参考人(三巻秋子君) 各般からのそれぞれ平均した人数で、いろいろとその立場の違ったものをお入れいただく。ただ学者だけということでなしに、大体消費者の声も相当入りますような方法をとっていただきたい。私は具体的にはまだ何も考えておりませんので、お答え申し上げられませんが……。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 向井先生に、重複するようですけれども、一言だけ質問さしていただきますが、アメリカの百貨店のことを先ほどお話していただきましたが、日本の人口と、日本の経済状態と、日本の消費者の生活環境から考えて、日本の百貨店は現在で一応限界にきているものと、そういうように私はお聞きしたように思いますが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  31. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) 私はそこまで明確には言わなかった。私は抽象的に百貨店というものは、集中的なものだから、会社が一つしかない。しかもそれが都心にある。成立の当初、まあ百貨店は都心百貨店が普通ですが、できた場合にはこれは経営としては必ず限界に達する。おそらく日本もそのときに達しているのだろう。が、企業としてやった場合には、それは話は別で、また客を追うて、客のあるところへ別の店を出せば、これまたその地方で、つまり、やはりそのときには結局他と競争になって、そこの従来のお客をわけて取る。もちろんそうでなくて、建設的ないい競争、いい、安いものをやれば、それはそれに及びませんが、そうでない場合にはやって行けなくなると、過度競争になる。そういう場合には、従来の商業のお客を取るということになるんじゃないか。ですから経営としては、もう現に、おそらく都心とか、大都会のまん中にある百貨店は、おそらく限界にきているのじゃないか。これ以上やれば、事業としては、百貨店株式会社としては、経営を別にしなければいかん。そこで、そういう意味において進展する余地がまだあるのじゃないか。何となれば、そこにはチェン・ストアはできません、新しく、新式の動きのあるやつが他の方面に進出するという形を取るのじゃないかと思います。
  32. 上林忠次

    ○上林忠次君 どういう工合に申し上げていいのか……。向井さんに、日本の百貨店人口割合というところから行きますが……。日本は非常に秘密な人口をかかえていますからね、また相当集まっていないと百貨店はできないと思う。わざわざそんなところへ行くんで時間をとるばかもないというわけですが、まあ外国から比べると、これだけ棚密な人口が集まっていますからね。この一般小売店の数と、それから百貨店の数と言いますか、キャパシティと、両方を比較しますときに、アメリカじゃ飽和状態になっているというけれども、今の日本はこれの倍は必要だ。今の状態、今の社会機構ではこの倍は必要だ。あるいは三倍が必要だということになるんじゃないか。アメリカじゃ現在は飽和状態になっているが、われわれの国はちょっと違う。人口構成、都市の構成が違うのじゃないかというようなこともあるのじゃないかと思いますが、どうなんでしょうか。
  33. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) いかがでございましょうか……。百貨店売上高を全国的の人口にとるということが適当じゃないんじゃないでしょうか。百貨店は、百貨店の置く場所の都市存在、おそらく小都市じゃできないのじゃないか。おそらく一定の人口を持たなければ今日の百貨店という程度の規模の百貨店は、一定の購買力の集中したところ以外にはない。全国をとりましても、お客にならぬところを見て、割合を見たところで、これは必要がない。それは結局一部市々々々について言わなければならぬ問題じゃないかと思うのです。私が知っている例では、それは正確な数字を忘れたのですが、世界で一番百貨店の死上荷の多いところはピッツバーグだと思います。それは購買力の三割か四割かいっているのじゃないか。四割はいってないかもしれないが、三割以上です。
  34. 上林忠次

    ○上林忠次君 それで人口の分散度といいますか、集中の程度、その度合を見ますと、三千とか二千とかの町があるのじゃなしに、日本にはまとまった人口の集中都市があるのだから、そういうところから見ると、まだまだ百貨店は進出しなければらなぬ。百貨店の効用という点から考えると、まだ大きくなる余地がある。みんなが喜ぶ、消費者が喜ぶような百貨店はまだまだ立ち行く余地があるのじゃないかという工合に考えるのです。人口の割合だけでなしに、密度、分散度の状態からいって、そんな面から見てどういうふうに考えますか。
  35. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) たとえば、かりの例ですが、中央線のずっと奥に入ったところに、かりに四十万、五十万、の人口があそこに密集したとすれば、百貨店はできると思います。都心にはできなくてもあそこにはできる。できた方がまた消費者に便利だ。そういう意味の拡張は、私は人口が膨大になって集中すれば情勢的にはできる、人口がその方面にある地域に限ってあれば……。私が先ほど今度できようとする審議会の運用がただそのときそのときの考え方によらないで、何かだれしも納得する基準があるのじゃないかといった考え方はそういうことを言っているのです。
  36. 上林忠次

    ○上林忠次君 それで、もう今まで東京の最も大きい人口のうちでも、日本橋とかあの辺に集まっている。最近になってようやくボーダーにできますけれども、できるべき筋合いのそういうような原因があるのだ。まだまだ日本の状態を見ると、東京だけでもまだまだできる余地がある。こういうような時代に百貨店ができるなら、小売業者はどうしてもっと団結して、大きいビルを作って、特店街に相当するものではありますけれども、あれだけ集まって一つの町になった方が便利だ。消費者も便利だ。時間的にもあらゆる点に便宜が供与される百貨店の特質を備えた一つ小売業者の集合を作るのです。百貨店が成り立つ限りはそんなビルディングを作っても引き合うのじゃないか。ただ来ちゃ困る、来ちゃ困る、というだけじゃなしに、小売店がどうしてそれをやらんか。集合して大きな百貨店に対抗するピルを作ったらいいじゃないか。そういうような時代が来ると思いますけれどもどうですか、将来は。
  37. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) 今言った大きいビルを作るという意味は、組合を作って一つ百貨店を作る意味か、あるいはまたビルの中にみんなが店をかまえておくという意味か。
  38. 上林忠次

    ○上林忠次君 そういうのはあとでいいのです。
  39. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) 私は小売業者百貨店でなく、他の形態の小売業、いわゆる近代式小売業を作り得る余地は、外国の例を見るとあるのじゃないか。ただ旧態依然として、そういうものも必要なんで、そうでないやり方も多々あるのじゃないか。これはどこの国にもあることなんです。おそらく日本にもあることだと思います。
  40. 上林忠次

    ○上林忠次君 ついでに、昔丸ビルの二階でおのおの業者がますを借りてやっておりましたですね。あれがどうしてつぶれたのか、相当人も集まったし、便宜は消費者は供与されたでしょうが、ああいうような式のものができてもいいんじゃないか、あれがどうしてつぶれたのか、そういうようなことも一つ参考に聞かせていただきたい。
  41. 向井鹿松

    参考人向井鹿松君) 大昔ありました、私の学生時分に。あれはいけませんでしたね。それから御存じかもしれませんが、自由丘の小売業者が大きくもありませんが、いわゆる最近やみ市であったものを、大きな建物がそのブロックが集まって、できまして、各やみ市をやっていた人たちが各店を持ってやっておりますが、ああいう形も一つのいき方でしょう。便利ということからいえば確かに便利で、人も入っております。しかし二階になるとだめのようでございますな。二階、三階はありませんから……、地下室を入れて三階までありますか。まあデパートも必要ないことはないのでありますけれども百貨店経営と違うのでありますが、あくまで小さい業者は小さい業者、百貨店に類しても、本質はだいぶ違うものじゃないでしょうか。これは能勢さんが一番経営というのは詳しいでしょうが、どうも小売業者がそういう形で百貨店をやりましても、単独小売店舗よりはいいかもしれないのですが、百貨店と同じくなるということはむずかしいかもしれませんね。   〔委員長退席、理事具根登君着席〕
  42. 上林忠次

    ○上林忠次君 高橋さん、どうお考えになりますか。どうもああいうふうな連中が、小売店が集合して、ビルディングにしても、町は盛んにやっておりますね。何銀座、何銀座と銀座のああいうふうな繁華街をまねてきれいにやっておりますけれども百貨店ができるのをそう驚くなら自分たちの力で一つ集まってやろうじゃないか。どうしてやらんのですかね。
  43. 阿具根登

    理事(阿具根登君) 雑談にならないようにお願いします。
  44. 高橋貞治

    参考人高橋貞治君) その問題でございますが、小売商の個々でございますと統一したものができ得ないという戦前でもすべての会社のそういった点があるのじゃないかと思うのでございます。一例をあげますると、新宿にございますが、露店商人が、現在丸物が使っておりますが、あそこがやはり成績が上りません。個々の大きな宣伝とか統一、こういったものができ得ないのでこれはむずかしいのでございます。今小売商人が先ほど向井参考人からお話ございましたが、自由丘はあれは場所がよろしいのでございまして、それにしても一つのデパートを作りますと十何億あるいは三十億とこういつておりますが、とてもまとまった数多いと貸し手がないわけでありまして、なかなかまねごとで、場所のいいところはある程度横のデパートと申しまして、個々の店の方がむしろ成績がよろしいようでありまして、大きな建築は名古屋でも計画があるようでございますが、われわれとしてはある程度成功を危ぶんでおります。
  45. 阿具根登

    理事(阿具根登君) ほかに御質問ございませんか。  参考人の方よりの御意見の聴取は終りました。  ごあいさつ申し上げます。百貨店法案につきまして、その審議参考に御意見を求めましたところ、非常に御多忙中のところを長時間にわたって御出席いただき、貴重な御意見をそれぞれ御開陳いただきまして、まことに委員会といたしまして幸いに存ずる次第でございます。委員会を代表いたしまして深甚なる謝意を表したいと存じます。どうもありがとうございました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 阿具根登

    理事(阿具根登君) 速記を起して。  休憩いたします。    午後零時五十九分休憩    ————・————    午後二時五十五分開会
  47. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 午前に引き続き会議を開きます。  経済自立方策に関する調査の件を議題といたします。
  48. 中川以良

    ○中川以良君 私は本日通産大臣と、それから経済企画庁の長であらせられる石橋長官、この二つの御人格を持った大臣に特に御質問を申し上げたいと存ずる次第でございます。  私がきょう御質問をいたしたいと存じまするのは、電源開発に関連をいたしました最近各地で行われているところの公営による開発地点の問題について大臣の御所信を承わりたいと思います。  御承知のごとく、戦後電源開発の進むにつれまして、各地におて公営の電源開発が進められて参っております。これら大体見ますると、全く一つの水系の中のいい所だけを食い荒しているように考えられるのであります。しかもこれは起債をつけますると、県としては赤字財政を持っておりながら、その起債で電源開発をする。しかもその原価というものは相当にこれは高くついている。これは大臣もよく御承知のことだと思いますが、技術的にも、その他事務的から見ましても、やはりなれない人がやるのでございまして、工事期間のごときは非常に長くかかってくる。しかもその間にたびたび水害等に見舞われて、予定の工事日をはるかに超過をしてくるというような実例が各地にあるのでございます。そうすると、この料金というものは、これは電力会社に太半は供給されておりますので、卸売の料金というものは相当高い算定基礎をもって売られております。これがまた電力会社が一般に供給いたしまするために、一般の需用者は割高なものを受けなければならぬ。県の少くも県営とし、県の財政に寄与するという考え方であるといたしまするならば、これは根本的に私はその観点が間違っているのではないか。県民その他需用家に対しまして、高い電力を供給して、県の財政に寄与するという考え方があるなら、これは非常に大きな誤まりであろうと私は思うのでございます。ことにこの問題は、私は多目的ダムの建設が進められております、これにおいて公営が行われている点は、まだ幾らかこれは考えられる余地があるのでございますが、しかし少くも電源開発の問題は、これはもち屋はもち屋でございますので、わが国といたしましては、今日必要なるのは大貯水池式の水力電気の開発、それから一方において新鋭なる火力発電を作るということに主眼を置かなければならぬと思うのであります。しかも小さい地点におきましても、これは当該地区の電力会社と十分に協議をいたしまして、でき得ればもち屋はもち屋にゆだねて、電力会社にこれはゆだねる方が、一般需用家のためにも国家的見地から見ましても、資産を投入する立場から考えましても、その方が私は有利であろうと思うのでございます。また大きな開発地点は、当然これは電源開発会社をしてやらしむべきでございましょう。こういうような点につきまして、多目的のダムにおいても、電源開発の地点につきましては、当該電力会社と十分なる協議をなすべきでございましょうし、できれば、その地点は電力会社にやらしめるということを考える方が私は妥当であろうと思います。なかんずく私は最も遺憾に思いますることは、電気オンリーの開発地点におきまして、これがしかも公営でもって今日なお行われておる、また行われんといたしておるところがあるのでございます。こういう点については、私ははっきりした政府の御方針を御樹立になるべきであろうと思う。不幸にしてまだ電気事業法ができておりませんが、私は早く一つ電気事業法をお出しいただきまして、こういう点も明確にしていただきますと同時に、また水利権の問題等につきましても、これは従来官選知事の場合は私は公明なる裁定ができたのであります。今日の民選知事が水利権を持っているという点は、むしろその利益よりも弊害の方がはるかに私は多いと思います。こういう点につきましても電気事業法ができまする機会に非常にむずかしいことであろうと存じますが、国家百年の大計をお立てになりまする意味合いにおいて根本的な御改革を私はしていただきたいと思います。まずこういう点につきまして大臣の御所信を承わりたいと思います。
  49. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 大体お説の通りで、われわれも同感をいたしております。でありますからいろいろな事情がありまして今まで公営の開発を許した場合もありますし、現にやっておるところもあるのでございますが、しかし今後におきましては十分検討しましてあやまちのないようにしたい。また電気事業法のことはいつも申し上げます通りまことにおくれておりまして相済まないわけでございますが、これも急いでやりたいと努力いたしておる次第でございます。
  50. 中川以良

    ○中川以良君 基本的なお考え方は私がただいま申し上げた点について大臣もまた御同感であらせられるように承わりまして私も非常に意を強うする次第であります。ただ現実に行われております問題について全くその考え方と相反するものが多々ございます。たとえて申しまするならば、ある地点を公営でやった、その地点の開発というものが決していわゆる渇水期におけるところの助けにはならぬのでございまして、むしろ豊水期には水を捨てて、渇水期にはほんのわずかしか出力がないというようなものであります。それでそんなものを開発するよりも、渇水期にこれを助けるところの新鋭なる火力発電をやるべくその方に金をつぎ込んだ方がはるかに国家的見地からもちましても有利でございます。またそういうものはやめてしまって、大きな貯水池式の安くつく電源開発電源開発会社等にやらした方が非常に有利だという事例がたくさんございます。で、こういうものについて一々御検討は願っていると存じまするが、たとえば公営でやる場合も電力開発地点を十分に調査をいたしまして、その土地の電力会社と協議を十二分にしてから初めてこれを決するというようなことにしなければならぬと存じます。現に電力会社とは全く無関係に、協議もしないでやっておるというところもございまするし、これから着手しようとする点もあるのでありまするから、こういうものに対しましてはどういう御方針でお臨みでございましょうか。
  51. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) こまかいことは局長に答えさせますが、できるだけ調整をいたしてやりたと考えます。
  52. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 従来はそういう調整が十分につかないでやった例もあるようでありますけれども、最近におきましていろいろ方々で弊害も生じておりますので、私の方といたしましては、少くとも電力会社と県につきましては両方でよく話し合いをして、そして調整のついたところでやるようにした方がよくはないかというふうに考えておりますので、そういう方針で参りたいと思っております。
  53. 中川以良

    ○中川以良君 その御方針全くその通り実行されなければならぬと存じますが、しかし実行できない地点がずいぶんあると思います。こういう点については一つ調査をいただいて、ほんとうに納得するようないき方をなさらないと、せっかく電源開発という大きな問題がいろんな点において支障を生じ、乱れて参ると思うのであります。たとえて申しますると、昨年できた公営の電力等につきまして事前に十分打ち合せがとれていなかったために、いまだに料金の契約が当該電力会社とできていないというような地点もあるのであります。しかもその地点においてまた今度も公営を着手をしようというような考え方を持って電力会社と協議をしていない、そういうところもあるのですが、そういう点は局長は御存じでしょうか。また局長はどういうふうにお考えでございましょうか。
  54. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 私もそういうようなお話を聞いておるわけなんですが、まあ具体的な問題としてどこどこの地点ということは申し上げる必要もないかと思うのでありますが、従来話が一応前の知事さんの時分についておったけれども、知事さんがかわったためにまた話がいろいろもつれてきて、話がつかないというようなことで、料金が話がついていないというようなふうにも聞いたのですが、まあそういう問題とからんでまた新しい地域についてそういう問題を未解決のまま新しい所を求めてやるというようなことは、これは禍根をいつまでも残すということでありますので、私どもとしましては少くともそういう従来のものも十分話し合いをつけて、それからまた新しい地点につきましても料金というものなりそういうものについても十分話し合いのついたところで、どっちにやらすにしましてもさようにもっていきたいというように考えております。
  55. 中川以良

    ○中川以良君 現在いろいろと御検討中のものに対しましてもその方針をぜひとも貫いて通していただきたいことを特に私は希望いたします。  それから電気オンリーの関係のものは原則として公営でやらせないという御方針を御確立になりますかどうでしょうか、その点一つ大臣に伺いたい。
  56. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 原則としてはさように考えております。なおそれを法律などに盛る場合には十分検討してみたいと思います。
  57. 中川以良

    ○中川以良君 その原則を曲げていろいろと悪用をされる場合があるのであります。この点はどうぞ一つ厳たるお立場をもちましてその方針がりっぱに通りまするように御対処をお願いしたい。  それからこれは非常にこまかいお話になるのでございますが、各地方でもって公営の電源開発ができますと、これを監督指導をいたしますために、多目的ダムでございますと地建が出てこれを指導していく。それから電気オンリーの場合には通産局から出てこられると思うのであります。こういう人のためにややともいたしますると、大体このダムが済んでしまうと次の地点の開発をやってそこでまたその人が収容できるというような考え方が多分に盛られましてまことに軽薄なる考えでほんとうの電源開発の魂の入らない開発をすることがまだ行われることがあると私は思っております。そういう事例もございます。一々ここで申し上げませんが、こういう点につきましてもぜひ一つ十分にお取締りをいただきまして、少しでもそういうようなことのないように電源開発の行政を一つ公明にやっていただきたい。  なおこれに関連いたしまして、これがややともすると当該県の関係のものがこれを悪用して県民の関心を集めると同時に、一方においては一つの利権がそこに生ずるというようなことがこれはあるのであります。これは非常にゆゆしき問題でございますので、こういう点も何とぞ今後起きないように十分なるお取締りと御指導とをお願いしたいと思いますから、これに対する一つの所見を承わりたいと思います。
  58. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 人のために仕事をするということもよく聞いております。しかしそれは結局県のためにもなりますので、その人の処分というようなことについても今通産省としては電気の方に限りませず、どうしたらいいかということを検討いたしております。
  59. 中川以良

    ○中川以良君 それから公営でありますところの電源開発のできます電気料金の算定の基準でございますが、これが、一般会社でやりますると非常に高くなっておりますので、結局高い電力を当該電力会社は買わざるを得ないという状態になります。これは高い電力を売って県が少しでも財政的に寄与できるんだということを言っておるのでございまするが、電力会社の一般の需用家にいきます電力料金は、水力と火力とをこれは一緒に計算をした平均を出しておりますので、一水力地点の、いわゆる料金だけとを比較いたしますると、一見非常に安いようにも見えます、従って県民はなるほどこれは公営でやった方がいいということに飛びつくのでございますが、これは非常に知識がないために、そういうことだけに先入感が入るのであります。これは実際専門家が検討いたしますれば、同じ開発地点におきましても、会社がやるのと公営でやるのとでは、時間もかかりまするし、経費も非常にかかるということは争えない事実でございます。こういうものが安く供給できたという観念を持ったといたしますれば非常に誤まりで、当該地区の産業はこれがために高いものを買わなければならない。一般国民生活も結局安い電力にはならんということになりまして、むしろ県当局というものは安い電源開発を電力会社なり電源開発会社にさせまして、そして産業に安い電力を供給し、当該地区の産業をいよいよ振興発展をさしていく、それから一般民生の安定にも寄与するということによってこそ、私は県の財政もおのずから豊かになって参るということになるのです。これは基本的に考え方が私は間違っておると思います。こういう点も、私の申しましたことにつきまして大臣どういうふうにお考えでありましょうか、一応伺ってみたいと思います。
  60. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) その通りでございまして、県営のやつと、それから会社の持っておる火力と結びつけてようやくとそろばんが合うというようなこともしばしばあると聞いておりますので、今後そういうことのないように何とか——実際その電力そのものが安いということが結局その県のためにもなりますので、そういうふうに一つ指導をしたいと思います。
  61. 中川以良

    ○中川以良君 ぜひ一つそういうふうに……。それから公営の電気料金の算出の基準というのは一体どういうふうになっておりますか。一応これを一つ局長からでも。
  62. 川上為治

    政府委員(川上為治君) これは公営の場合におきましても、また電力会社の場合におきましても原価主義をとっておることはこれは両方とも同じでございますけれども、その内容につきましては若干変っておる点があるわけでございまして、たとえば電力会社におきましては資金償還のための減債基金というのは建設費の二%特別に見ております。それから発電所が電力会社と違いまして非常に少い関係もありますので、償却につきまして特別な償却を見ております。普通の償却よりも五〇%増しというような特別の償却を見ております。それから固定資産税につきましては電力会社の方よりも現在安くなっておるわけでございます。大体半分程度ということになっております。それから水利使用料につきましては電力会社の方は取られておりますけれども、公営の方ではゼロになっておる。それから利息の問題につきましても若干違っておりまして、普通の電力会社でありますというと、配当とか法人税を含めた場合におきましては建設費の七・三%程度認めるとかというようなことをやっておりますが、公営につきましては六・八%低い利息になっております。それから法人税とか、あるいは事業税につきましては、公営の方は全然ございませんが、電力会社の方はある。それから配当につきましては公営の方は認めてないが、電力会社の方では一割二分の配当を認めておるというようなふうに、内容につきましてある程度変ったやり方をとっておるわけでございますが、それは結局公営というものの性格、それから電力会社というものの性格から、こういうような措置をとっておるわけでございまして、まあこの発電所によって非常に違いますけれども、電力会社の方が非常に安くなる場合もあれば、あるいはその公営の方がこの点からいきますというと安くなるような場合もあるわけでございますけれども、先ほどお話がありましたように、これ以外のいろんな要素がありまして、結局全般的には公営の方が割高になっておるというのが過去の実績になっております。
  63. 中川以良

    ○中川以良君 今のお話で一応わかったのでございますが、私の調査をいたしたところによりますと、公営電気料金の算定の基準というのは、非常に有利にこれは内規ができておるように思うのです。たとえて申しますならば、定額償却というものは建設費に対しまして一カ年に二・二六%になっておる。それから金利は、これは資金運用部のものは六分七厘、公募債は最近八分くらいでございます。これはわかっておることでございますが、しかるにこのほかに役所の内規といたしまして、公営卸売料金の認可基準ということでもって、定額償却のほかに特別償却として、普通償却の半分以内のものを認めておる、今の二・二六%に対して一・一三%を特別償却として認めておる、そのほかに減債基金は元金の二%、これはさっきのお話では、減債基金は一般電力会社にも認めておられるとおっしゃったのですが、ちょっとこれは違うのではないかと思うのですが、どうでございましょうか。そういたしますと、これを加えると五・三九%の償却ができることになります。こういたしますと、毎年これだけの積み立てを行なって複利計算をいたしますと、大がいの今の標準の電力開発でございますと、十三年くらいでこれが償却できるのです。ところが一般電力会社は四十年ないし四十二、三年かかっております。ここにも非常に私は矛盾があるのではないか、そうすれば十三年たってですよ、全部償却ができたならば、あとは普通の維持費だけで、今度は安い電力を供給してくれるならいいのでございますければも、これはそういう例はまだかってございませんし、また望むべくもないと思うのです。こういう点もやはりもっと慎重に御検討せられる要があるのではないかと思います。この点はいかがでございますか。
  64. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 減債基金については、先ほど私は……電力会社の方には全然特別に見ておりません、公営だけ建設費の二%というふうに見ておるわけでございます。これはちょっと私の言い間違いかもしれませんが、そういうふうになっております。電力会社の場合にはゼロになっております。  それから特別償却の問題につきましては、今先生のおっしゃった通りでありますが、ただやはりこの県営というのは、発電所一カ所とか二カ所とかいうような程度を持っておりまして、危険といいますか、危険の補償というような意味合いから、特別にこの特別償却を認めておるわけでございます。一応私の方としましては、この電力会社と公営というのは、その性格上若干違う点があると考えましたので、今までそういう措置をとっておるわけでございます。特に借入金の償還の問題につきましては、その償還期限が大蔵省の関係から相当短かくなっておりますので、どうしてもそれに対しまして特別な手配をしておかなければならんというふうに考えましたので、従来は、今おっしゃいましたような特別にそういうものを見ておるわけでございますけれども、こういう点につきましては、もう少し償還期限を長くしてもらうとかいうようなことをいたしまして、普通の電力会社とあまり変らないような措置を私はとるべきではないかというふうに考えるわけでございます。ただ公営の場合におきましては、こういう特別な措置をとっておりますので、最初におきましては料金が高いけれども、だんだんこれは低くなっていくというような計算には一応なっておるわけでございます。従いまして将来におきましては十年か、あるいは二十年たちましたならば電力会社とほとんど同じような料金になっていくというのが、一応計算としてはそういうことになっておるわけでございます。
  65. 中川以良

    ○中川以良君 今のお話のように、結局この基準の定め方が相当ゆとりがございますので、結局その一ぱいまでにみな持って行っております。従ってこれは高い料金を買うと一番困るのは需用家であり、一般のその地区に居住をしておるところの住民が迷惑を受けると思うのです。こういう点も一つ合理的にやはりお考えをいただいて、今のお話のように一般の起債は大蔵省は今五年としておりまするから、五年で償還をしなければならぬということになるのであります。県には財政のゆとりがないから、ここから金を持って来て償還させるわけには行かぬ。従って全部電気料金にふっかける、こういうような問題を一つ五年ごとに借りかえができるような制度にしてやれば、これは長い間の借り入れ償還ということになりますけれども、電気料金もそれだけまた合理的に下げることができる、こういう点をぜひ一つ御検討をしていただきたい。ほかに御質問もあるようでありますから一応私はこの程度にして、あとから必要によって御質問申し上げます。
  66. 古池信三

    ○古池信三君 ただいま中川委員の御質疑中にいろいろ気のついたことがありまするので、二、三お尋ねしたいと思います。第一に、電気の供給事業というものが非常に高度の公益性を備えておるということは申すまでもないのですけれども、それと同時に独占的な性質の非常に強いものであるということが言われております。しかもこれは一定の地域というものを対象に考えた場合に、かりにそこに幾つもの競争者が現われたとしても、おのずからその間にこれが一つになって、自然的に独占されるようなことになる、それがまた最も経済的なことになって、不当な競争は長く許されない性質のものである、こう私は信じておるのですが、これは供給するという面からいってもそうですし、また一方電源の開発というものと、供給するサービスの面とは不可分のものだろうと思います。こう考えてみますと、電源の開発ということ自身が、あまりこれを無計画にやるべきものじゃなく、統一して総合的な観点からやって行く、これは私は絶対にそうあるべきだと思うのですが、この点についての大臣の考え一つお伺いしたいと思います。
  67. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 申すまでもなくお説の通りです。総合的に考えなければいかんです。
  68. 古池信三

    ○古池信三君 そこで私考えまするのに、総合的に開発を考えて行く、日本の水力は比較的豊富だとは言われていましたけれども、今日いろいろ調査をしてみますると、決してそう豊富だといって安心のできるような情勢ではないわけであります。残っておる水力電源地点を最も経済的有利に開発して行かないととんでもない悔いを将来に残すことになるわけであります。かように考えますと、決して豊富だとは安心しておれない、こういうときに当って、一方においては電力会社が開発をする、一方においては公営事業が勝手に開発するということになると、そこにおのずから一貫性というものが欠けてくるおそれがありやしないか。なるほど昔から公営の、たとえば県営等の発電設備がありましたけれども、これは比較的全体の数から言えば少かったのです。ごく少い場合にはむしろネグレクトしてもいいくらいな程度であったと思うのですが、ただいまお配り願ったこの資料を拝見しますと、今日継続しておる県営だけでも二十一カ地点に及んでおる。こういうわけでありまするので、これがよほど注意をしてやっていただかぬと先ほど申したように困ることになりはせんか、こういうわけです。それでなるほどその出力は非常にすぐれて大きいというものはないようであります。まあ一万キロ、二万キロというような程度、あるいはそれ以下のものが多いと思いますけれども、しかし川を一貫的に開発するという点から考えてみますと、その中に別の系統の開発が行われるということは、やはり合理的な川の開発という点から見た場合には必ずしも好ましいとは言われないと思う。そこであくまでもこういう点は従来も御注意願っておると思いますけれども、今後一段と注意をしてやっていただきたいと考えるわけであります。そこで私は一つ例を地域にとって見ますが、先ほど中川委員からもちょっと触れられたようであったのですが、四国というあの四県をとってみますと、あそこにおける水力の開発の状況、その中で県営で最近やられた出力というものはどのくらいになっているか、これと四国電力の水力地点、その比較はありますか。
  69. 川上為治

    政府委員(川上為治君) その詳細な数字は今持って来ておりませんが、実は四国におきましてはほかの地方に比べますというと県営関係のものが相当大きくて、四国電力に対しまして大体三〇%以上のものが県営でできておるということになっております。ほかの地域におきましてはまあ大きくて大体一割足らずということになっておりますので、特に四国につきましては、そういう問題につきましては今先生のおっしゃいますように十分今後においては調整をし、気をつけて行かなければいけないというふうに思っております。
  70. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまのお話によると、四国の水力の三〇%あるいはそれ以上が県営である、こういうことになりますとよほどこの供給責任を持っている電力会社と、一方県営で開発をして行く事業者との間の調整というか、相談が十分まとまっておらないとこれは大へんな不利益なことになると思うのですが、従来その間の協議とか相談とかいうものはうまく円満に行っておったものですかどうですか、局長の知っておる範囲においてけっこうでございますから……。
  71. 川上為治

    政府委員(川上為治君) これは四国の県の中でいろいろあると思うですが、たとえば高知県の関係におきましては、まあ御承知通りいろいろ問題がありまして、非常に電力会社の方と県との間に紛争を生じましたことは御承知通りでございます。それから徳島県につきましては、これは現在料金が問題になっておる地点につきましては、私の聞いている範囲におきましては従来県の方と話し合いがついていた。ところが何か知事さんが変りました関係から、そのあとで何か問題がまた再燃しておるというふうに聞いております。この点私はっきり調べたわけではございませんので正確なことは申し上げかねますけれども、まあ私はそういうふうに聞いているわけなんですが、いずれにしましてもかって高知県との関係においていろいろ問題がありましたし、また最近におきましては徳島の方といろいろ話がもつれているということは、これはやはり電源開発なり、あるいは電力行政の関係からみまして必ずしも私はよくないというふうに考えまするので、先ほど中川先生からもお話がありましたように、こういう県についての開発につきましては、事前に十分その話し合いがついて両方とも将来にわたって円満に行くような解決をした上で着工すべきものではないかというふうに考えております。
  72. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまの局長の御答弁で大体私もわかったのでありまするが、何といっても電気は豊富にして低廉な電気を供給する、これが一番の理想であろうと思う。もとよりその豊富という中には性質の悪いものが幾ら豊富になってもこれは大した利益がないので、性質のいい電気を豊富に供給する。しかもまた料金はできる限り安くする。こういう関係から言いますると、この料金問題にまあ入るわけでありますが、県営が、まあ勝手にと言ってはなんですけれども、独自の開発をやる、その結果コストが相当に高くついた、しかしながらその県営自体はこれを供給するという権利もありません。従って電力会社に売らなければならぬ、また電力会社としてはその供給区域の中では十分電気を供給する義務がある、こういうふうなお互いの関係から県営の方でそういう非常に高い原価の電気も無理に電力会社に押しつけて買わせようと、こういうふうな傾きがあるやに聞いておるのであります。これは必ずしも四国とは限らぬかもしれませんが、そういうようなことがあるとすれば、これは非常によろしくない。そういう場合に県という立場が二重人格になって、一方においては県営発電所を作るというそういう事業者的な立場と、一方においては電力会社に対してはほかにもいろいろ地点があって水利権を握っている。で、県知事は一方において水利権を握り、一方においてはこれに電気を売ろうというような立場を両方持っている関係から、非常にそこに好ましからざる事態を生ずるのではないかということを憂うるわけです。従ってただいまの局長の御方針はけっこうだと思いまするが、将来かような場合にはぜひとも事前に十分なる打ち合せを遂げて、後々になって苦情が起らぬようにお互いが納得をして、むしろ開発に協力できるような態勢をとらしめていただきたい、こういうことを私は重ねて希望をいたす次第であります。まあこれはただいま局長の説明がございましたから、まあ念を入れるまでもないと思いまするけれども、こういう点は四国以外にもたくさんの地点が県営によって開発されるということになると、これはよほど気をつけなくちゃならぬと思うのです。十分に御考慮を願いたいと思います。  それからまあ特に今問題にした四国のように、三割以上も県営でやるというようなところでは、今後の県営開発については相当政府としても考えなくちゃいかぬと思うのですが、将来こういうものは積極的に抑制しようと、こういうふうなお考えはありませんか。
  73. 川上為治

    政府委員(川上為治君) これは最初大臣からお話がありましたように、やはりその電力の開発につきましては、電力会社が中心になっていくのが私はこれは正しい方法であろうというふうに考えております。従いましてその特別な場合を除きましては、これは電力会社にやらせるという方向で、どこまでもそういう方向で貫くべきであるというふうに考えております。従いまして、やれないという地点につきましては、これは電発でやるとか、あるいはまたどうしても電発でもやれないし、あるい電力会社でもやれないという特別な地域につきましては公営でやるということを考えざるを得ないと思うのであります。従来一応そういう方針でやってきたのでありますけれども、まあ先ほどお話がありましたように、若干乱れておる点もありますので、私どもの方としましては、そういう方針をこの際さらに再確認して進みたいというふうに考ております。ただ県営につきましては、いわゆるその総合開発、多目的のダム、そういうようなものにつきまして、どうしても県がやった方がいろいろの点でベターだというものにつきましては、これは私は県営でやらした方がよくはないかというふうに考えておるわけなんですが、そういうものとは全然異なった新しい地点等につきましては、今お話がありましたように、十分その点は考えて電力会社にこれはどこまでも原則的にはやらせるという方向に進んでいきたいというふうに考ております。ただ問題は電力会社も現在全然やる意思もない、二、三年たってもやる意思がない、それからまた電発でやるにしてはあまりにも小さい地点である、それから案外非常に安いコストで電気が開発できる、金につきましても、ある程度県の方で余裕を持っているというようなところがもしありましたならば、そういう点につきましては、私はこれは県営でもいいんじゃないか。もちろんその際におきましては、電力会社の方と十分話し合いをつけての上でありまして、話し合いがつかないものは話し合いがつくまではこれはやむを得ないと思いますが、話し合いがつきましたならば、それはやらした方がいいのじゃないかというような気持を持っております。なおその点につきましては、現在われわれの方でいろいろ検討中でありまして、私は一応そういうような気持を持っておるのであります。
  74. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまの最後局長の言われたそういう例外中の例外と言われる場合は、これは特殊の考慮を払われるのも行政上当然であると思うのですが、大体私どもの常識として考えるところでは、県でこういう開発をやり電気を起すということになりますと、もちろんこれにも例外はあるかと思いますけれども、一般論としては開発の技術者あるいは、電気事業経済の専門家というような見地から見れば、これは確かに電力会社の方に優秀なる人が多いと思うのです。県はそれ以外にたくさん県自体としてやるべき仕事があるのですから、そこにきわめて優秀なる技術者や電気経済の専門家をおくということはこれはむずかしいことだろうと思うのです。従ってまず先ほどのもち屋はもち屋という話が出ましたが、やはり開発にはそれぞれ専門の企業を利用していくということが賢明であろうと思いまするし、そのほか予算の建前等からも、県営であると非常に不利益なことが多いだろうと思います。ときにはみすみすこれは不経済だと思っても、やはり公共団体の予算の使い方という面からやむを得ずそれに従わなくちゃならぬという場合もあって、これらが積り積って県営の電気は高いということになるのじゃなかろうかと思うのです。それともう一つは、先ほど局長からの説明にありましたように、償却が、まあ水力発電所ですと、大体四十年、耐用年数四十年を下回るものだと思うのですが、これを半分ぐらいの期間に全部償却してしまうというようなことになれば、非常にやはり最初の料金の方にそれが振りかかってくるわけですから、高い料金になってくる。そうして償却済みになったらそれじゃすぐ安くなるかというと、必ずしもそういうわけにいかないで、やはり惰性でもってそんなに安くすることもできないだろうと思います。従ってその不利益をこうむるのは電気の消費者だということになりまするから、その豊富低廉の電気を供給するという面からいっても、ぜひこの点は十分なる御注意をいただきたいと思います。  それからもう一つ伺いたいことは、従来もたびたび議論になったことですが、四国はあそこの地形からいいまして、雨は相当に多い。多いけれども川の流域が短かいと申しまするか、急峻なる山にぶつかって雨が降り、それが早く流れてしまう。いわゆる鉄砲水というのがあるようです。従ってこれは四国自体には大きな貯水池を作ってこの豊富なる雨をたくわえるということが必要になると同時に、中国、あるいは九州等の火力地帯とすみやかに連携をとって季節的にも有無相通ずるような方法をとることが電気事業の運営として最もいい計画じゃないかと思うのでありまするが、瀬戸内海横断送電線ということが前から問題になっておりますが、この点については現在の政府当局者はどういうふうにお考えになっておるか、これを一つ意見を伺いたい。
  75. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 今先生がおっしゃいますように、あるいは九州なり、あるいは関西の火力発電とやはり結びつけていくべきだというお話でありますが、私どもの方も全く同感でありまして、何とかして早急に四国の大きな開発を進めるとともに、また送電の線につきましても瀬戸内海を横断していくというような方向へ今進めておるわけであります。ただ実は最近問題になっておるのですが、淡路島、鳴門海峡を渡ってそうして関西の方へつなぐという線を今考えておるのでありますけれども、鳴門海峡は御承知通り非常に流れが早い関係もありますので、海底を送電することが非常にむずかしい関係から実は上の方を通したい、橋みたいにしたいという考えでやったのですが、これが国立公園とかそういうような関係からなかなかできないのであります。またそれと同様な意味をもちまして、もう一つの線につきましても同じような問題があるわけなんですが、こういうような問題につきましても私どもの方としましては関係方面と十分早く話し合いをつけましで、そうして送電ができるようにしていきたいというふうに考えております。
  76. 古池信三

    ○古池信三君 ただいまの御所見の件は一つ至急に御研究になって、実現に移してもらいたいと存じます。  それから最後に大臣にお尋ねをいたしたいのですが、本年度の会社あるいは公営の電源開発の総合計画というものがおそらく近くできるだろうと思うのです。そうして電源開発調整審議会に付議されることになるだろうと考えまするが、その計画の中には、今日大臣並びに局長から答弁されたその根本方針はさっそく盛り込んで実行に移していただくようにしてもらいたい。これを一つ大臣から御答弁をいただきたい。
  77. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) なるべくそういたしたいと思って今督促しているところです。
  78. 河野謙三

    ○河野謙三君 ちょっと前に伺ったと思うのですが、せっかくの機会ですから、向う十年間の価格、電力料金の見通しですね、それと電力需給関係の見通しがございましたらちょっとラフのものでけっこうですから御説明願いたいのですが、十年間がなければ五年間で、けっこうです。
  79. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 料金の問題につきましては、開発が進みますというと結局金利がかさんで参りましたり、あるいはその償却がかさんで参りますので、勢い五年後におきましては料金をある程度どうしても上げなければならぬというようなふうにも考えるのでありますけれども、最近におきましてはわれわれが予定した以上に金利がだいぶ下って参っておりまするし、それからまたこの一年ばかり非常に電力会社の方では豊水に恵まれ、あるいは石炭の価格が安くなりました関係から内部保留の金が相当できましたので、いわゆる無利子の金というものが相当できましたので、その関係から相当開発が予定以上に容易になっておりますし、また料金面につきましても相当いい影響を及ぼしておりますので、果して五年後にわれわれが最初考えていた程度の料金を引き上げる必要があるかどうかという点につきまして最近は相当疑問に思っておるわけでございます。ただ電力会社の中におきましては相当苦しいところもございますので、この点につきましてはことし一年の推移を見蔵して検討してみたいというふうに考えております。たとえば東北とか、あるいは北陸とか、そういう地域におきましてはいわゆる石炭の価格が下っておるという点の恩恵にも別に浴しておりませんし、それから豊水につきましてもほかの地域と比べまして非常に異なった非常に大きな利益を得ているというわけでもございませんので、しかし一方北陸にしましても東北にしましても電源の開発はやはり進めていかなくてはなりませんので、やはりこの点は料金問題についていろいろ検討していきたいと思っておりますが、われわれとしましてはなるべく電気料金というものはここ数年間は安定して上げないように持っていきたいと思います。もし東北なり、北陸がそういうふうな事態になりますれば、たとえば東京から、あるいは関西から融通する電力を非常に安く出させるとかいうようなことにしまして、極力東北なり、北陸の電気料金にはね返らないような措置をとっていきたいというふうに考えて現在せっかく研究をいたしておるところでございます。  それから電力の需給の関係から申しますというと、実は半年くらい前から、非常に電力需給の関係が問題になって参りまして、この一月に電力五カ年計画というのを立てまして、これは電源開発審議会審議決定になったわけでありまして、この計画によりまして、三十六年度におきましては千九百二十八万キロワットまで持っていく。現在におきましては千四百万キロワット程度でございますので、その程度火力なり水力の方を開発して大体その時分には需給の点におきまして均衡がとれるように持っていきたいというふうに考えておるわけなんですが、ところが先ほども申し上げましたように、どうもこの半年くらいの需用の伸びというものを見ますと、鉄鋼関係とか、あるいはカーバイド関係とかそういうものが非常に伸びて参りまして、普通需用の伸びというものを、年間われわれは前年度に比べまして六%ないし七%と見ておるのでありますけれども、昨年の実績を見ますというと、一二%くらい全国的に伸びている。しかも地域的には東北におきましては、ある産業によりましては倍くらいになっているというようなところがありますので、この計画をこの際早急に変えるということはこれはよほど慎重に考えなくちゃなりませんけれども、少くとも繰り上げて電源開発を急ぐ必要がこの際あるのじゃないか、こういうふうに考えますので、三十一年度の電源開発計画決定につきましては、その点を十分考えて処理したいというふうに考えております。  なお、その資料もございますので、あとで御必要によりましてお配り申し上げたいと思います。
  80. 河野謙三

    ○河野謙三君 前段の電力料金の値上げの問題、これは上げたくないという気持を聞いているのじゃないのです。ラフでけっこうですから一体今のところでは電源開発が順調に計画通り進んだ場合に、幾らアップとなるかという計画を持っておられるかということです。  それと、後段の需給関係ですが、昨年度に一二%の需用増が出たのを、今後の需用増を六%ないし七%に見た根拠は一体何かあるのですか。
  81. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 料金の問題でございますが、実は平水ベースでずっといきますというと、それから一応将来の金利も考えてやっていきますというと、大体一割あるいはそれより若干オーバーするかと思いますのですが、その程度はどうしても上げなくちゃならぬという計算が出てくるわけでございす。しかし先ほど申し上げましたように、最近は非常に豊水になっておりますので、石炭価格も下っておるという関係から、果して全国的にそういう引き上げる必要があるかどうかという点につきましては疑問を持っているから、われわれの方としましてもう少し推移を見て検討していきたい、こういうわけでございます。  それからもう一つの需用の伸びというものが、従来計画としましては七%くらいとっていたけれども、昨年の実績は一二、三%であるので、それを将来の計画として七%くらいをとっていくということはおかしいじゃないかという問題なんですが、実はその六カ年計画をきめましたのはことしの一月の末でございまして、その際は一応従来の実績なり、あるいは最近いろんな需用の伸びというものを一応考えまして、七%というふうに押えたわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように昨年の実績が一二%程度でありますし、最近需用が相当旺盛でありますので計画そのものについてはもう一ぺん再検討することにしましても、とりあえずことしの計画につきましては繰り上げてこれを実施するということに持って行くべきじゃないかというように考えまして、検討いたしておるわけでございます。
  82. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、この一三%という数字をとらないまでもかりに将来の需用増というものを一〇%とかりにとった場合には、現在七%とって需給関係のバランスをみているのですから一〇%とった場合には需給のバランスは合わないということになりますね。
  83. 川上為治

    政府委員(川上為治君) その通りでございます。
  84. 河野謙三

    ○河野謙三君 それからこの電力料金が一応一〇%程度は値上りは今のところではやむを得ないだろう、これはできるだけ押えていくようにしたい、こういうのですが、これは九電力会社平均で一〇%ということであって、五年なり十年先にいきますと、現在の九電力会社の機構、組織でいきますと、地区別に非常にアン・バランスになっていくということはありませんか。
  85. 川上為治

    政府委員(川上為治君) これはやはり全国平均の問題でありまして、もうすでに相当なアン・バランスが生じて参っておりますので、地区別にはこれはどうしても現在の機構をそのままにしておきますというと上げなければならぬというような問題も起きますし、またそう上げなくてもよろしいというようなものも出てくるかと思うのであります。ただ問題は豊水、あるいは石炭の価格の問題でありますので、あるいは一年なり、あるいはもう少し状況をよく見ないというとここで早計にこの地区においてはこれだけ将来上げるとかいうことはなかなか見当がつかないのじゃないか、ただ従来の実績を見ますというと、東北あるいは北陸地方相当苦しい状況になっておりますので、これにつきましては早急に検討しなきゃならぬのじゃないかと思う。しかしこれだってもことしからすぐ上げるというのではなくて、少くともこの一年の状況を見て検討すべきじゃないかというとかうに考えます。
  86. 河野謙三

    ○河野謙三君 大臣に一つこの際伺いたいのですが、現在でも九電力会社に相当のアン・バランスが起っておる、将来このアン・バランスが非常に激しくなっていく、聞きが大きくなっていくという場合に、現在の九電力会社の機構というものについては再検討をぼちぼちしなければいけないのじゃないかと思いますが、大臣、遠い将来を考えて、何か御構想はございますか。
  87. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 今のところでは九電力会社をどうするという具体案は何も持っておりませんけれども考えなければならぬ。九電力の今の経営状況が非常にアン・バランスが起っておるという原因も一つ突き詰めてみないと、東北電力等が特に苦しいという事情もあるようでありますから、そういう点も検討し、なおその上にどうしても九電力会社のいろいろ再々編成とか何とかいうものが必要であるかないかということも検討してみたいと考えておりますが、今のところではまだ何も結論が出ておりません。
  88. 河野謙三

    ○河野謙三君 電力の総合計画につきましては大臣先ほど賛意を表しておられましたが、私は料金の問題ももう少しこの国の産業の中心として、中心に立っておられる通産大臣が、政策料金というものが私はなければいけないと思う。たとえばずっと前にこの委員会でも申し上げたと思うのですが、北海道のごときで、北海道の開発開発といって政府が騒ぎましても、大臣御承知のように北海道の開発のしようがないと思う。なぜかというと、北海道に行くと第一人夫賃が高い。釧路の、あんなへんぴな、人の住まないような、非常にだれもきらうような釧路に行きまして日当がやはり六百円、七百円なんです。電気料金も高いのです。電気料金が高くて人夫賃が高い、これで産業が興り得るはずはない、北海道の振興はできるはずはないのです。そこで北海道は別な面で人夫賃も幾らか安くなるように、ことに電力料金は北海道の振興を叫ぶ以上は特に政策料金で、北海道電力の原価計算からくる料金でなくて、政府が北海道の開発という観点からこの政策的な料金を立てるというところに行かなければ北海道の振興はできないと思うのですが、そういう意味で、北海道のみならず各地区に一国の大きな総合的な産業開発計画、その裏づけとしての電力の政策料金というものは、これは政府の方から出てこなければ私はいけないのじゃないかと思うのですが、そういうことを考えますと、この現在の九重力会社というものはそういう政策を遂行するには非常に困難な一つのものじゃないかと、こう思うのですが、そういう点、大臣どうでございましょうか。
  89. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 九電力会社があるから政策料金ができないということもないかと思いますけれども、これはまあなお検討し、議論してみなくちゃわかりませんが、政策料金が場合によって必要だということはお説の通りと思います。
  90. 河野謙三

    ○河野謙三君 それから最後一つ伺いたいのですが、電力料金は認可制度になっていますね。
  91. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) ええ。
  92. 河野謙三

    ○河野謙三君 ところが通産省でも、これは局長に御答弁願いたいのですが、通産省は認可制度になってるにかかわらず、電力会社の経理内容についてはどの程度までタッチしておられるのですか。
  93. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 今電力会社に対しましては公益事業令に基きましていろいろ監督なり、あるいは経理の調査なり検査なりやっておるわけなんですが、最近におきまして特別監査制度というのを設けまして、現在この三十年度におきましても、北海道電力とか、あるいは東北とか中国とか特別な監査をやっております。で、その監査によりましてどうしてもこういう点につきましてはむだな点がある、こういう点は一つもっと切り下げるようにしろ、節約するようにしろというような点につきましては、特別にその会社の幹部を呼んで私からも強く要請をいたしておる次第でございます。そういう特別な監査制を一般の監査制に並行してやっておるわけでございます。まあただこれはいろいろな、人手の問題とか予算の問題とか、いろいろな問題もありましょうが、私の方としましてはこれで必ずしも十分でない、また現在の公益事業令の規定そのものが必ずしも十分ではないというふうにも考えておりますので、電気事業法を作成する場合におきましてはその点も十分考えて、十分な検査なり監督ができるようにしたいというふうに考えております。
  94. 河野謙三

    ○河野謙三君 そういう監査、検査の権限を持っておられるにかかわらず、現状においては私は非常に通産省の電力会社の経理内容調査というものは不十分だと思いますがね。私は電力のことはしろうとでありますけれども、いろいろ世間から聞くところによりますと、電力会社の内容というものは健全を通り越して、少し通産省の認可料金を決定する場合の査定が甘過ぎるということをしきりに聞きます。たとえば非常に膨大な機構であって、しかもその機構調査する通産省に人手がない点もあるでありましょうけれども、数多くの発電現場で建値を建てる場合に、そこですでにたっぷりした修繕費をみたりいろいろそれをみてしまって、今度本省の方でもう一度そういうふうなありとあらゆる経理上いわゆるその範囲においてもう一ぺんダプっていろいろな積立金その他の予備金というものを建てるわけですよ。現在それでありますから非常に料金というものは高くなっておる。こういうことは私は一般の声だと思う。少くとも検査する以上は、まあ人手の関係もあるでありましょうけれども、サンプル調査でけっこうですから、発電現場くらいへ行って、一体どういう建値をとっておるか、どういう経理をやっておるかということも私はごらんにならなければいかぬと思いますが、そういうことはやっておられますか。
  95. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 今まで料金を査定する場合におきましては、もちろんそれは全国のすべての発電所に行ってというわけじゃございませんですが、発電所にもある程度参りまして、いろいろ全体も調査しまして建てておることと私もそういうふうに聞いております。もちろん本社だけ調べてそうして建てるというのじゃないと聞いておりますが、ただ料金が甘過ぎるということはわれわれもよく聞くわけなんですけれども、これはやはり水をどういうふうに見るか、あるいは石炭の価格をどういうふうに見るか、あるいはその石炭の需要をどの程度に見るかというような問題につきまして、われわれの方としましては過去の実績なりそういう点を十分検討してやったつもりでございますけれども、たとえば昨年度におきましては水が非常に出ており、おととしも非常に出た。従ってどうも最近のベースというのはもっとこれは特に最近の事情を十分入れてやるべきじゃないかというような話も聞いて、そのために通産省なんかでとっていたベースというものは少し甘過ぎるのじゃないかということは聞いておるわけなんですが、われわれとしてはそういう点につきましては、今後の料金改訂の場合におきましては十分検討してやりたいというように考えております。
  96. 河野謙三

    ○河野謙三君 川上さんのお耳にも世間の非難の声が入っておれば幸いでありますから、何も重力会社をいじめるというわけではありませんけれども、およそ世間が納得するような十分な調査、監査をされて、もう少し妥当な料金に引き直していただくようにぜひ御尽力願いたいと思います。
  97. 中川以良

    ○中川以良君 きょうは通産大臣経済企画庁長官からはっきりした電力行政の点について御言明をいただきまして私ども大へん意を強ういたしたところでございます。そこで先ほど古池委員がちょっと触れられましたが、四国の問題でございまするが、今の公営の出力とそれから重力会社の設備とを比べまする場合に三〇%というふうにおっしゃいましたが、私の調査したところでは三九%くらいになっております。約四〇%近くのものが公営になっております。これは非常なる問題でございます。ことに先ほど局長のおっしゃったように他の、会社で一番多いのは九州電力で、これが一割弱であります。そのあとはずっと少いからそれだけにこの問題は十分一つ慎重にお取り扱い願いたいと思います。古池委員のおっしゃったように、四国は雨の多い所で、奈半利川の開発によって相当安い霊力が得られるということは前々から主張しておったところでありまして、すでに軍源開発会社の開発地点に決定されております。まだこれが着手されておりませんが、小さい公営で方々突っついたり、電力会社で小さい所をやらせるよりも、むしろ電源開発をして奈半利川をできるだけ早く一つ開発を促進していただきまして、これを中国、九州の方に連絡をする、これは西日本の電力不足地帯におきましても非常に大事な供給源であります。また安い電力ができて参ると存じますので、いわゆる地域差の問題もこれによってある程度自然的に解消するという大きな課題もここに横たわっております、こういう点につきましてぜひ一つ御関心を持ってこの開発は促進をしていただきたいと思うのでありますが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  98. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 四国のことは私も多少なりとも伺っておりますから十分注意します。
  99. 古池信三

    ○古池信三君 ちょっとこの機会局長にお伺いしたいのですが、佐久間の発電所の現在の段階はどの程度になっているか、それからもう、一部電力の発生を始めておると思いますが、その供給状況並びに料金はどんなふうに決定をされておるか、その辺のところを一応御説明願いたいと思います。
  100. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 佐久間の発電所は、これは秋葉の発電所ができませんというと完全なフル運転というところまでいきませんが、佐久間だけはこの前ほとんど完成をいたしまして、もうすでに発電はこの四月の二十三日でありましたが、この日から発電を開始いたしております。それで大体現在の能力といたしましては、これは三十五万キロワットの能力を持っておるわけでございますけれども、大体今のところで二十五万ぐらいはいけるのじゃないかと思うのですが、大体十八万から三十万ぐらいのところで運営をいたしております。秋葉が来年の十一月ごろにでき上ると思いますので、そうなりますというと、秋葉、佐久間合せましてフルに運転できるということに相なるわけでございます。  それからこれをどういうふうに配分しているかという問題で、ありますが、これは私どもの方出しまして、東京方面の需用、それから中部地方の需用、それから全国的な需用をいろいろ考えまして、結局豊水期におきましては半々、中部に半分、それから東京方面に半分ということにいたしまして、湯水期におきましては中部の方へ六割程度それから東京の方へ四割ということにいたしまして、この配分につきまして認可をいたしまして、そうして現在実施いたしておるわけでございます。  それから料金につきましては大体キロワット・アワー当り平均三一八十幾らと思いましたが、ちょっと今忘れておりますけれども、大体そういうところで中部とそれから関東の方で……、ここにちょっと資料がありましたので、中部におきましては名古屋変電所渡しでキロワット・アワー当り三円五十銭上期におきましては三円六銭、下期は四円十銭ということになっております。東京につきましては東京の変電所におきまして三円七十八銭、上期は三円三十銭、下期においては四円六十銭ということになっておりまして、平均三円六十三銭ということになっております。
  101. 中川以良

    ○中川以良君 もう一つ、これは企画庁の方の大来さんに伺いたいのですが、きょういろいろ論議をされました問題につきまして、これは建設省並びに自治庁のわれわれは意見を求めなければならぬと思いまするが、建設省、自治庁においては今の電源開発の幹事会とか審議会におきましても、やはりきょう通産省、企画庁が御所見をお述べになったような考えを持っておられるかどうか、あなた方のお考えと食い違いがあるかどうか、この点をちょっとよく伺いたいのです。
  102. 大来佐武郎

    政府委員(大来佐武郎君) 私どもの方といたしましては、通産省、建設省、自治庁等、関係各省の事務当局と打ち合せを何とかやって参っております。やはりそれぞれ各省の立場がございますので、企画庁の方で一応調整する、各省の立場必ずしも一本ということには参らないかと思いますですが、先ほど大臣の御答弁にもありましたようなラインでできるだけ事務当局としては努力いたしたい、かように思っております。
  103. 中川以良

    ○中川以良君 どうも、こういう点が従来通産省の方がどうも弱かったように私は思うのでございまして、幸い石橋大臣がおられますので、この機会にほんとうに日本産業の振興のために、また国民の生活の安定のために安い豊富なる電力が合理的に出ますように一つきょうの御主張をりっぱに貫徹を賜わりますように最後に私は特にお願いを申し上げます。
  104. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 私からこの際電力行政について一、二お伺いしたいと思いますが、最近この名港あるいは三重、多奈川、東京火力、苅田、こういったような新鋭火力の発電所の出現によりまして、過去における電力行政の考え方に一つの変革が来つつあるのではないかという感じがするのであります。それはある地点において、またある時期においては過去において水力が主であり、火力がそのピークの調整をしておったという、この考え方が一変いたしまして、火力が電力供給の主軸をなし、水力がむしろピークを調整するという形も出ておると思うのであります。かような電力供給面における水力が占めておりまする比重の推移、さらに将来の大きな電力需給の面におけるこれがどういうふうなことになって参りまするか、これはもちろん原子力発電等もこの前参考人を招致いたしまして公述を願った際にも、十年後には経済電力発電をしたいというようなこともございまして、もっと大きな変革もあると思うのですが、そういうことをまず抜きにいたしました水火力の問題において、いかような見通しを持っておられまするか、その点大臣より御答弁をお願いしたいと存じます。
  105. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) 私は御承知のように電力についてはしろうとでありますからこまかいことはわかりませんが、しかし近ごろの水力の技術上の変化によって大きなダムが作られて、それが水力、今までの流し込みでなくてダム式でやるということから、それへ火力が結びつくという技術上の変化は私どももしろうとながらも、最近お話のように、火力がある意味において主軸をなして水力がその調整をするというような傾向を技術的に持ってきたということは事実のように思います。またそれがこれからの日本の電力の大体の傾向と見ていいのではないかというふうに考えております。
  106. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それに関連してですが、最近建設を始めております常磐炭鉱地帯における常磐共同火力の発電所ですね。それから九州におきます苅田の発電所、これらはいずれも石炭の生産地に非常に有利な条件で火力発電所を建設いたしまして、常磐のごときは出炭量の二割をこれによって消化いたしまして、炭鉱から炭は固形物のままで出ないで線によって東京へ運ばれてくる、それから苅田の場合でありますと、田川の炭田地帯のものが石炭鉱業合理化法の実施によります川崎線の新設等によりまして、非常に低廉な運賃で苅田に運ばれまして安い発電をする、こういう形が出ておるのでありまして、私は非常にこのアイデアは日本の新しい産業の合理化、石炭鉱業の合理化、電力行政、こういったようなものを総合して非常にいい形であろうと思うのであります。これをどういうふうにもつと推し進めていこうとお考えになっておりますかどうか。  それからさらにこういう地点が今申しました二つの例以外にもありますかどうか。このあとの段については川上局長からお伺いしたいと思いますが、その根本的な総合的な立場に立った電力行政のアイデアの問題については、大臣より御所見を伺っておきたいと思います。
  107. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) これもお話のように最近の傾向として私は今後なお推し進めていくべきものと思っております。ことに常磐の方は低品位炭を、あすこの低品位炭を使ってそれを輸送するかわりに電力の形にしてエネルギーを流そう、こういうのでありまして、これはまあ今後技術的にも相当困難もありましょうけれども、なおこういう方法は今後さらに各地に実現をしたいと考えております。たしか北海道あたりもそういう傾向を持っておるように思います。
  108. 川上為治

    政府委員(川上為治君) ただいま大臣からお話がありましたように、そういう方針で私どもの方も極力進めていきたいというふうに考えておりまして、たとえば苅田、常磐以外におきましても、東北の八戸の辺におきましてもやはりここに新鋭の火力を作ったらいいのではないか。それから北海道の石炭を割安に持ってこれるのじゃないか、そういう考えを持っておりますし、また大阪方面におきましても、中央火力とか、あるいは多奈川の第二号機とかそういうような点につきまして、もっと積極的に進めていきたいというふうに考えております。  現在のところ、火力と水力の割合なんですが、水力の方が七百三十一万キロワット、それから火力の方が四百九十七万キロワットというのが現在の状況でありますけれども、三十一年度以降におきましてはさっきの六カ年計画におきまして水力の方が三百四十三万キロワット、それから火力の方が二百五十七万というふうに従来は大体二対一ということになっておりましたのが、火力の方が非常に大きくなってくる、こういうふうにそういう計画で現在進めているわけでございます。
  109. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) これは一つ今大臣からこういう形の推進をなお進めていきたいという力強い御発言でありまして、非常に満足するわけであります。私はかつて石炭合理化法のときもそういう感じを持ちましたが西ドイツのドルトモンド地帯の炭鉱地域を見学した際に、そこではこの日本における炭鉱という感じじゃないのですね。石炭製造株式会社というような感じで、地下には石炭があるわけですが、その上にはビルディングが建っている。そうしてガス化し電力化いたしまして、線とパイプで消費者にそれが送られていく、非常に安い石炭になるために、日本のように無理をして重油ボイラーの規制をしなくても、関税政策と相待ちまして重油よりも石炭が安いからそっちを使う、こういう形が出ているのでございます。これは日本においてはもちろん多少その基本的な条件において違いますから、必ずしもそのまま当てはまりませんが、しかしそういう考え方で強力に推し進めていけば私はそういうりっぱな合理化ができていくのではないかということを常に考えておりますので、ぜひ一つ積極的に御検討をお願いいたしたいと思う次第であります。  それからそれに関連いたしまして、一体日本のこの火力発電機の現在の生産の能力、キャパシティから申しましても、性能から申しましても、価格から見ましても、一体国際的な競争力はどういうところにあるのか。もちろんわれわれは国産のものを愛用しなければならぬという基本的な考え方については全く同感である。本委員会においては特に国産自動車のごときは非常にその振興を積極的に取り上げているところであります。しかしこういう消費財と違いまして、生産費に非常に大きな関係を持つ電力等のごとき場合におきましては、大型の自動車を節約して中型でがまんしておくというような形にはいかないわけであります。ある場合においては、日本が国際的な競争力を持たない大型のものは輸入をする場合がありましても、また日本から適当な小型、中型の発電機を、海外のそれを求めている東南アジア諸国に出すということも決して矛盾しないわけでありまして、そういう点に関連をいたしまして、日本の火力発電機は一体現状においてどの程度の国際競争力を持っているのか。もちろん先に通過いたしました機械工業振興臨時措置法ですか、こういうものでだんだんと部品等もよくなって参りますから、いいものができてくると思いますが、現在において一体どういう状態にあるのか、これを一つ公益事業局長に御答弁願いたいと思います。
  110. 川上為治

    政府委員(川上為治君) 発電機が国際的にどの程度競争力があるかという問題でございますが、これは私がお答えするよりも重工の方からお答えするのが適当かと思いますが、まあ現在大体国産におきましては七万五千程度、これは優に国際的に競争できるのじゃないかというふうに考えております。たとえばその二軍火力につきまして六万ちょっとのものを入れましてそうしてまあ現在やっておったのでございますが、また一方東京の新東京におきましてはやはり六万幾らのものを動かしている、これは国産でございますが、それを比べて見ますといろと、若干輸入品の方がいいようでありますけれども、まあそれほど変らないというような状況となっております。しかしこれよりももっと大きいものになりますというと、やはり現在におきましては、とても競争できないのじゃないかというふうに考えられます。従いまして私どもの方としましては最近関西あるいは、東京あるいは中部におきまして、十五万程度のものをどうしてもこれは輸入するということにいたしたわけでございます。外国におきましては、特にアメリカにおきましては大体二十万ぐらいのところまでいっておるというふうに聞いておりますが、すなわち十万以上のものにつきましては、とてもこれは現在のところは太刀打ちはできないというふうに考えますので、極力それ以上のものにつきまして輸入できるようにしなくちゃいけないというふうに考えておりますけれども、ただ輸入そのものにつきましても、何でもかんでも全部入れるということはこれはどうかと思いますので、やはりどうしても国産でできないものだけを限定して入れるべきじゃないかというふうに考えておるところでございます。
  111. 古池信三

    ○古池信三君 先ほどの委員長と大臣との御問答を聞いておりまして、少し感じたことがあるので一応お伺いしたいと思いますが、私の聞き方にもよったでありましょうけれども、昔は大体水力が中心で火力が補給用であった、俗な言葉で言えば、水主火従というようなことが言われておる。ところが最近は非常に最新式な高能率な火力発電機ができてきて、火力の方に重点が置かれて、水力が従のような地位に置かれるんじゃないかというふうに受け取れるような印象を受けたんです。しかし私が考えまするのには、もとより以前においては水力発電所のほとんど大部分は水量式でありましたから、渇水時における補給はいつも火力をもってやらなければならぬ。そういう意味において水主火従とも言われたのかもしれませんけれども、最近は水力の開発も、非常に大きな貯水池式、ダム式がふえてきたとは申しまするが、やはり私は現在日本としては水力の開発に主眼を置くべきであって、火力があくまでもこれが中心になる火主水従になるべきではない、あくまでも火力はやはり水力を助け補っていくべきものであろう、こういうふうに思うのです。もちろん従前の火力というものは、非常に設備も古い、能率の悪い発電所がありましたから、これにとりかわって最近できましたような、たとえば三重であるとか、多奈川、苅田あるいは東京というように、きわめて高温、高圧の最新式の火力発電所を作るということは、これは最も必要であると思いますけれども、そうかと言って、火力が中心になって水力はおろそかになってもいい、こういうものではむろんない。あくまで私はやはり水主火従というような、そういう意味においてこれは必要じゃないかと思います。それからもっとも委員長が先ほど注意をされましたように、炭鉱が地元においてその石炭に最も適合したような発電所を作る、粗悪炭、あるいは低品位炭を十分利用できるような発電所を作って総合的な石炭産業とでもいうべき意味合いにおいて、発展をはかるということは、これは私は必要であろうと思う。しかしこれはどこでもやれるわけじゃないが、ごく限られた部分的なものであろうと思うので、日本全体の大局の電力政策としてあくまで水力に重点を置いて、しかもそれを補って火力の方は最も優秀なる能率の高い発電所を作っていく、そういうやはり方針であるべきであろうと思うのですが、この点一つ大臣の御方針を伺いたいと思います。
  112. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) それは先ほどあるいは私の言葉が足りなかったので……、それは開発についてはむろんです。日本としては水力を開発するということに重点を置かなければならないことは、これは言うまでもございません。これは先ほど申しましたのは、私はよくわからんが、近ごろの水力も火力もだいぶ技術が変って参りましたので、以前のようなふうに水力を使って、その補いとして火力というような傾向はやや変りまして、火力というものもコンスタントリーにたかなきゃならんとうことを申したのであります。
  113. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) なお私の質問の中にもそういう意味のことを申しましたが、それはある場所において、ある時期にという前提のもとに言っておりますが、あなたのおっしゃったことと私のは全然矛盾しません。つけ加えておきます。
  114. 上林忠次

    ○上林忠次君 その問題はこの一年間くらいにちょいちょい出る問題ですが、私は苅田発電所を見て、将来の基礎産業である発電、これをもとにした第二次的、あるいは三次の産業がこれで支配される、そういうふうな観点から見て、地方の失業救済、人口の分布ということから考えましても、理想としては全国に発電所を、しかも安い電力を供給し得るような発電所がほしい。最近石炭の値段が下ったとか、いいボイラーができたとかいうので、従来われわれの考えておりましたような、水力主義、火力は従というあの気持はいかぬのではないか、特に最近ダムを作ると経費は高い、電力の単価も高くなってくる、火力が安いのではないかというような傾向になってきて、にわかに最近一年くらいで通産省の気持は変ったのではないかと思いますが、変り方があまりおそいと思うのです。私らしろうとが出て行きまして、苅田の発電所を見て初めてこういうようなボイラーがあるのか、ボイラーの効率もいいし、電力も安い、そんなボイラーがとうにできているではないか、なぜぼやぼやして、通産省の連中は海外に出張してこういうことに気づかんか、これまで水力でいっているのではないか、私は水力というものは、川の保全、川にダムを作らないと川がこわれる。それから灌漑施設としてどうしてもダムが要るというならダムを作らなければならぬ、少々電力が高くなっても、これはダムとしては必要なんだから、ほかの目的のために必要だから、かたわら電力をとるのだ、そういう電力だから、安くっても高くてもしょうがない、しかし電力を作るためダムを作ったり、こういう経費をかけて高い電力を供給するのはおかしいのです。安い火力発電ができるならば、どんどんそういう適地を日本中にあさって火力に変えていく、そうしないと産業の分布が変ってしまう、失業救済、それから考えても、二次産業が全体に発達しないと困るのではないか、今ごろになって、通産省としてそういうような方向に進みましょうくらいの話では、どうも僕は何しているかと、通産省は。私もあの最近苅田を見て帰りましたときそういう話をしたのです。これらの方向を変えないかんのではないかと言ったら、そういうような方向にいきましょうというような簡単な返事で、その場限りの返事しかしてくれない、僕らそれで将来どういう工合にしていくか、基本観念というものを変えていくというところまでだめ押しはしませんけれども通産省としてはもっと先を見て、今ごろあんなボイラーができたとか、日本のボイラーはああいうような昔の古いボイラーであったので、火力発電で満足していたんだ、こんな単価の電気と、それと水力を比較して通産省はこれまでやっているのではないか、それでは通産省の、ほんとうの日本の産業の基礎を固めていく通産省の行政としては、どうもわれわれ食い足らん感じがしたのです。今ごろ盛んに皆さんが言われる、今ごろこんなことを言われるようでは何たることだというような感じがするのです。その点もう少し通産省は先を——五年、まあ少くとも三年五年の先を見て、将来は原子力の発電所もできるのも近いようになってくると、ますます水力というものは、永久施設にどんどん金をつぎ込むということは考えものではないか、早いこともっとほかのものに交代して、ますます火力に主を置くか、半半に置きますか、この目先の日本の産業再建のために安い電力を供給する、しかも日本全体に、地域的ではなく、全体が安く電力を使えるというところまで考え出していかないかんと思う、そういうふうな感じがするのです。先ほど大体火力に相当重点を置くようになるだろうということを聞いておりますが、もっともっと数年先を見てやっていただきたいと考えます。
  115. 石橋湛山

    ○国務大臣(石橋湛山君) どうもありがとうございました。それらもこれは一つは、戦時戦後のしばらく技術上にもブランクがありましたでしょうし、いろいろ窮迫事情があるということもございましょうが、石炭の問題がありますから、いきなり火力に飛びついて、いわゆる火主水従で、火力に非常に偏傾するのもいかがかと思いますが、日本としては開発すべき水力はほかの目的もありますが、やはり電気を中心として考え相当のダム式のもので発電開発をしなければならぬと、かように考えております。
  116. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) この際お諮りいたします。百貨店法審議に関連して、現在新造築されておる幾つかの百貨店のうち、全国的な一つのサンプルになるような新増築の進捗の状況を視察することは必要ではないかというふうな御意見もありまして、実は審議の時間等の関係でゆっくり御相談するひまがありませんでしたので、休憩中に各会派の理事の人にお諮りをいたしまして、大体の御賛成を得ましたので、実は非常に早急なんですが、あすの午後一時から三越本店、新宿伊勢丹、池袋の西武、丸物、この四つの新増築状況について視察いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それでは御異議ないと認めまして、さよう決定いたします。  なお、なるたけ多数の諸君の御参加をお願い申し上げます。  本日の委員会はこれをもって散会いたします。    午後四時三十一分散会    ————・————