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1956-04-26 第24回国会 参議院 商工委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月二十六日(木曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   委員異動 四月二十五日委員大谷贇雄君及び古池 信三辞任につき、その補欠として笹 森順造君及び野村吉三郎君を議長にお いて指名した。 本日委員野村吉三郎君及び笹森順造辞任につき、その補欠として古池信三 君及び木村守江君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事            西川彌平治君            白川 一雄君            阿具根 登君    委員            古池 信三君            苫米地義三君            深水 六郎君            海野 三朗君            藤田  進君            石川 清一君   政府委員    経済企画政務次    官       齋藤 憲三君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   参考人    大阪大学教授  伏見 康治君    同和鉱業株式会    社社長    久留島秀三郎君    関西電力株式会    社常務取締役 一本松たまき君    財団法人原子力    研究所理事長 駒形 作次君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本原子力研究所法案内閣提出、  衆議院送付) ○原子燃料公社法案内閣提出、衆議  院送付) ○核原料物質開発促進臨時措置法案  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまから本日の委員会を開きます。  まず、委員異動について申し上げます。四月二十五日大谷贇雄君及び古池信三君が辞任され、その補欠として笹森順造君及び野村吉三郎君が指名されました。また本日野村吉三郎君及び笹森順造君が辞任され、その補欠として古池信三君及び木村守江君が指名されました。以上御報告申し上げます。   —————————————
  3. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 原子力関係法案を議題といたします。  参考人として御足労をわずらわしました各位に対しまして、委員会声代表して一言ごあいさつ申し上げます。  本日は各位におかれましては、御多忙中にもかかわりませず、当委員会の要望にこたえられまして御出席をいただきました点、まことにありがたく厚く御礼申し上げます。当委員会では、ただいま日本原子力研究所法案核原料物質開発促進臨時措置法案原子燃料公社法案のいわゆる原子力関係法案審議中でございます。御承知のように、この三法案は、去る第二十三国会におきまして可決制定されました原子力基本法に基いて、その具体的措置として立案されたものでございます。これらの法案によってわが国原子力研究はいよいよ本格化し、核原料物質開発もようやく促進せらるべき段階に至っておるのであります。われわれはこのような新しい段階におきまして、いま一度あらためて今後のわが国原子力研究はいかにあるべきか、また核原料物質開発原子燃料処理はいかにあるべきかというような点等を静かに考えてみたいと存じまして、このような趣旨で各界の権威者であられる各位の御意見を拝聴して、委員会法案審議参考に資したいと考える次第でございます。御口述の内容につきましては制約をいたしませんが、御検討願いました三法案を中心といたしまして、おのおののお立場において自由にこれに批判を加えていただき、先ほども申し上げましたように、結論としては今後のわが国原子力研究はいかにあるべきか、また核原料物質開発原子燃料処理はいかにあるべきかというような点について、御意見を承わりたいと存じます。  初めに大阪大学教授伏見参考人より御発言を願いたいと思います。
  4. 伏見康治

    参考人伏見康治君) 御指名にあずかりました伏見でございます。しばらくお時間を拝借いたしまして、原子力研究所に関しまして考えておりますことを申し上げたいと思います。ほかの方のことは私にはよくわかりませんですが、研究という面では発言する資格があると思いますので、申し上げてみたいと思います。  日本学術会議におきまして、日本における原子力開発研究開発の問題をどう始末したらよろしいかということをだいぶ前から論じて参りまして、一昨年の秋に原子力一つ体制というものを考えてみたことがございます。それは原子力委員会、それから原子力研究所といったようなものを要素といたします一つ体制考えてみたのでございまして、それがまあだいぶ内容——こまかい点は違いますですが、昨年末にこの国会通りました原子力委員会法とか、あるいは今日の研究所法案といったようなものが出て、形が整いつつありますのは、私たちとして大へん喜びにたえないところなんでありますが、しかし、そのこまかい点につきましては、またいろいろと現実に出て参りましたものと私たちが当初考えておりましたものとは相当変ってきておるわけでございます。研究所構想考えておりますとき、私たちいわゆる研究者、学者といたしまして考えておりましたときに、一番大事な点は何であるかと申しますと、それは研究の自由の問題と、それから研究目的性と申しますか、そういうものとの折り合いの問題でございます。原子力研究所といったようなものはある程度しぼられた一定の目標を持っているものでございまして、全く自由な研究をするというわけにはいかないことは、これはもう当然な話でございます。一つ目的があるという意味においては、必ずその研究制約を受けておるわけでございますが、しかし同時に開発的な、ほんとう意味での独創を盛り込んでいくような研究という面におきましては、あらかじめ何もかも計画性の下にしぼってしまうということも、これもできないわけでございまして、いつどういう新しい要素が現われてくるかということを勘定の中に入れた大まかな意味での計画性があって、その中に研究自由性というものを十分に包含させたようなものでなければ研究所としての使命を全うすることができない。こういう考え方でありますが、要するにどこまで研究の自由ということを尊び、どこまで研究計画性というものを盛り込むかという、その二つの点の折り合いを形の上では一体どうしたらよろしいか、これが一番大きね問題であったと思うのであります。ことに原子力の問題と崩しますのは、非常に率直な言葉で申し上げて失礼であるかもしれないのでございますが、原子力というのはある意味におきましては原子力研究に直接携われる方々よりも、それ以外の方々の間の方がむしろ関心が強い、非常に乱暴な言葉で申しますれば、原子力問題というのは、ある意味においてヤジウマで動いているといったような感じがするわけでございまして、中核におられる方々意見というもので必ずしも問題が動いておるわけではございません。原子力というのは非常に宣伝が行き届いておりまして大へんはなやかな問題とされておりますために普通の学問のもっとじみな領域でございますというと、その研究当事者以外にはほとんど関心が払われていないというのが普通でございますが原子力の問題に限ってだけは非常に関心を持っておられる方がたくさんおられます。そのために研究当事者の意思というものが、研究所のいろいろな段階あるいは方向といったようなものを研究者自身が決定していくというよりは周囲の状況がもっぱら決定していって、研究者というものはその大きな流れの中に単に巻かれてしまうという、そういう形態が非常にほかの学問の場合と違いまして予想されるわけでございます。そういうものを防ぐということが一方においてまた絶えず必要になっておるわけでございます。私たちが初めて考えておりました原子力委員会というものと原子力研究所というものとの関係というものが、そこで一番大きな問題になってくるわけでございますが、つまりある意味におきましては原子力委員会といったようなものは非常に広い立場大所高所から原子力というものが国全体の中でどういう位地を与えらるべきものであるか、そういうことをお考えになるところであると思うのでありますが、そういう非常に広い立場でものをお考えになる方と同時に、原子力そのものの実体というものを深く握っておられる方というものが絶えず深い関係を持っていなければならないと思うのであります。私たち学術会議考えました初めの構想では、研究所の所長さんと申しますか、そういう方が原子力委員会の中に直接入っておられまして、いわば技術的な課題を十分に持っておられる方が委員会の中に入って、大所高所から議論をなさるときに地についた意見が出てくるように考えるのが適当であろうと考えていたわけでありますが、現在できておりますこの法案では、そういう形になっておりませんでして、委員会というものと研究所というものがいわば少し遊離した形になっている。間に原子力局というお役所がございまして、そのお役所がいわば仲介になっておりましてその関係が直接的でないといううらみがあるように考えられるわけであります。それが申し上げてみたい一つの点でございました。  そのほかに研究所内部の問題でございますが、研究所内部におきまして研究の、先ほど申し上げました自由な研究立場というものと、それから目的ある計画性ある研究というものとの折り合いの問題をどう解決したらよろしいかという問題でございますが、これはこういう研究所法案といったような形でこれを盛り込むということは、なかなかその表現と申しますかどういう形でそれを法律的なものとして表現するかということが大へんむずかしいことではあろうと思うのでありますが、しかし何とかそれをしていただきたいという感じをとどめ得ないのでございます。それはまた学術会議考えておりましたときのことを申し上げることになるのでありますが、学術会議考えておりましたときには、研究所といったようなものは一応国立の研究所、普通考えて、私たちがいつも念頭に思い浮べますようなごく常識的な研究所であるということを考えておりました。今日考えられておりますような特殊法人というような、大へん特殊なものであるということは期待しておりませんでしたのですが、そうしてそういう研究所は今までの私たち学閥係研究者から考えますというと、大学付置のたとえば原子核研究所といったようなものがございますが、そういう研究所でございますというと、大学のいわば長い伝統というものがございまして、その中で大学の中の研究の自治を守る、研究の自由を守るという一つの強い雰囲気がございます。これは何も法律の上に明文化されているものではさらさらないと思うのでございますが、とにかく大学の中に長い伝統というものがございまして、その中で研究の自由というものをお互いに尊ぶという気分が完全にでき上っているわけでございますが、そういうところでは、そういうところの中で研究所が新しく作られたといたしましても、その研究所の中に今までの大学研究の自由を尊ぶという気分がそのまま伝わって参りまして、大してそのことを懸念するに及ばないと思ったのでありますが、しかし今日考えられておりますような特殊法人というような形でございますというと、それはそういう大学的な気分雰囲気というものから大分離れたものになっておりますので、果してその研究の自由という面が十分に守られるかどうかということが非常に懸念を起さざるを得ないわけであります。で、そうなりますというと、この法律の上にそれをどう表現するかということは、これは実際むずかしい問題であろうと考えますけれども、何らかの意味において、過去においていろいろな大学伝統の中ではぐくまれて参りました研究の自由を尊ぶという気分をこの中に植えていただきたいということが一つの念願でございます。  それからもう少し細かいことに話がなって参りますのですが、先ほど申しました研究自由性というものと計画性というものとの折り合いという点につきましては、これは研究所内部運営と申しますか、そういうものに非常にかかわってくるわけでございます。それで普通の大学でございますと、いわゆる講座制というものがありましてまあ大学というものは大体においてその講座という単位を寄せ集めて作られたものであり、その講座というものが一つ相当固い単位を作っておりまして、その一つ講座から他の講座に対していろいろな影響を与えるということはなかほか容易なことではございません。その講座というものが一つの何というのですか、独立的な位置を持っている主体であるというような感じがいたします。そういう一つ一つの独立した単位というものが寄り集まりまして、それが教授会というものを開いて、そうしてその中で民主的にいろいろな協議が議せられて行くという形をとっております。そうしてその教授会がきめましたことは、これも法律的には何らその十分な基礎づけは与えられていないと思うのでありますが、その教授会のきめましたことは大体において世の中にアクセプトされるようなものになるというのが普通の大学行き方でございます。その行き方学問研究にとりましては非常にいい一つ形態であると思うのであります。それ以外のいろいろの形態ももちろん考えられるでありましょうけれども、今まで私たちが非常になれ親しんで来た制度であるという意味におきまして、守るべき制度ではなかろうかと思うのでありますが、この新しくできました研究所の中で、必ずしもそういうような講座といったような相当独立した一つのユニットが中にあってそれ全体が一つの民主的な運営機構を持っているといったような形、そういう形が必ずしもできるかどうかということがわからないわけでございます。この研究所内部運営に関しまして、この法律、ただいま提出されております法案にはほとんど何も規定されていないのでございますが、何かそういう教授会といったようなもの、それに類するようなものが何か研究所の規定の中に、これはあるいは内規的なものになるかもしれませんですが、そういうようなものが作られまして、それによって研究運営が円滑に進むということを希望してやまない次第でございます。  それから最後に、大へん大まかな話になるのでございますが、原子力の問題というものは現在研究段階であるということをこの際特に強調しておきたいと思うのでございます。原子力お話をいたしますときに、よく一キログラムのウラニウムが三千トンの石炭に匹敵するということを申しまして、大へん夢のようなお話を申し上げることになるわけでありますが、非常にわずかの分量の物質の中に非常にたくさんのエネルギーがひそんでいるという、そのこと自身ほんとうでございますけれども、しかしそれを実際平和的に利用をいたしますときにそういう意味での原子力の特徴といったようなものがどの程度実際問題として現われるかということを考えてみますというと、そういう夢のようなありがたい話では必ずしもないわけであります。と申しますのは、石炭というものは大体において純粋無垢の形で山から掘り出されるわけでございましょうが、ウラニウムの方は、純粋分裂物資からできているものが山からそのまま掘り出されるわけではございませんで、いわば非常に濃度の低い鉱石の中からウラニウム分を取り出し、しかもそのウラニウム金属の中から百四十分の一だけしか分裂物質でないわけでありますから、山から掘り出した物質の上から比較いたしますと、原子力というものと石炭火力発電というものとはそれほど変るわけではございません。エネルギー集中度と申しますか少量の物質の中にたくさんのエネルギーが入っている、そういうエネルギー集中の度合から申しますれば、必ずしもそれほどけた違いに違うものではないということ、それから御承知のように原子力に関しましては、それを使う上でのいろいろな制約がございまして、たとえば放射線が非常に強いために、それを防ぐために非常に費用がたくさん要るといったようないろいろな欠点もございますために結局において原子力といったようなものの平和的利用という建前から申しますれば、ほとんど石炭火力というものとそう大して違わないという結論になるのであります。将来原子力の方が非常に安くなるとかいうようなことを申しまするが現在少くとも原子力発電の方が非常に高くつくという段階であるということも明らかでありまして、当初科学者が夢の中に描いて知りましたほど原子力というものはありがたいものではございませんでして、非常にきわどいものである、いわば石炭火力発電と比較いたしましたときに、どっちが高くなるか、安くなるかということは非常にきわどいものである。きわどいものであるがゆえに、実は原子力というものを将来経済的に成立させますためには、非常に精細な研究ということを必要とするわけであります。これが全くけた違いに原子力の方が有効でございますれば、むしろ多少ぞんざいな研究を土台にいたしましても、それが十分人類生活水準を向上させるということに役立つでございましょうけれども、現在の私たち考えのみるところでは、非常に精細な詳しい条件を、最も最良の条件というものを探し出して、その上でもって原子力を使わなければならないほど非常に精細なる研究を必要とする段階になっているわけであります。そういう点から考えましても、原子力というものは、ここ当分の間研究という点において、まだいきなり役に立つものというふうにお考えになるよりは、近い将来役に立つものであろうけれども、現在のところはもっぱら研究というところに力を集中すべき段階である。そこで原子力研究所といったような問題が、あとにございます原子燃料公社というものと比較いたしまして、はるかに比重の大きい問題であるというふうに、そういうふうに考えるわけであります。この辺で終ります。   —————————————
  5. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に久留島参考人にお願いいたします。
  6. 久留島秀三郎

    参考人久留島秀三郎君) 申し上げます。私はとにかく原料関係のことでお呼び出し願ったものかと存じますので、その意味において申し上げます。  実は私、この種の鉱物を取り扱います鉱業法を、むしろ独立した特別法を作った方がいいのじゃないかというような考えを持っておったのでありますが、すでに鉱業法の中にウラニウム、トリウムというものを法定鉱物として入れられましたので、そのあとの処置をどうするのかと実は私大へん心配しておったのでありますが、今度の燃料公社法案、またこの核原料物質開発促進臨時措置法案というものが出ましたためにまずこれで私大体この特殊な鉱物に対する特別な扱いというものができるのだろうということで、それで一応安心したのであります。その点では別に問題はないのでありますが、原子力基本法の第七条には「核原料物質及び核燃料物質探鉱採鉱精錬管理等を行わしめる」ということが、はっきり精錬ということが書いてあるにかかわらず、この原子燃料公社法案では第十九条に「公社は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。」「核原料物質探鉱採鉱及び選鉱を行うこと。」と書いて、精錬という点がないのでございますね。この点は私は非常にどうも……、あとの第三号の生産ということで精錬まで含めてやるというのであるかもしれませんが、どうもこれはやはりはっきりと精錬という言葉が特別な意味があるのでありますから、探鉱採鉱及び選鉱とまで書くのなら、当然ここに選鉱及び精錬ということを入れないというと、どうも少し法としてはあいまいな感じを受けるのでありまして、その点については何かの特別な意味があるのか、あるいはちょっと抜けたのじゃないかというような気がいたします。その点だけについてこの法案について私疑義を持っておりますだけで、その他につきましては全然この通りでけっこうだと思います。  ただ一般に近ごろは、原子力流行とでも言いますか、何か原子力原料鉱物でもあるというとすぐうちょうてんになって現に鳥取県あたりにおいても山陰、山陽の脊梁山脈のうちに幾らかのものが発見されたということになると、地方ではすぐ大きい工場でも建つような騒ぎを現にしているのを、この間もだいぶ聞かされてきたのであります。実際この鉱物なんというものは、そういうものがあったから、少し小さい露頭があったから、すぐそれが大鉱山にはるというようなものではないので、相当な基礎的な調査というのには時日がかかりますし、また相当鉱量がある、相当品位のものがあるということが確認されても、それがほんとう鉱山らしいものになるというのには相当の時間がかかりますので、そういうような点について非常に世の中がうちょうてんになり過ぎているから、そういう点に対して少し熱をさます、核燃料物質の熱をさますと言うとおかしいかもしれませんが、熱をさますやはり必要があると思います。また大体日本鉱物資源から考えても、これはまだ全然未知数で、あるのかないのかそれもわからない。しかしこれはもうアメリカだってそうであったので、一九五〇年に私戦後初めてアメリカへ行きました時分は、まだはっきりとつかんでいなかった。しかし、当てもなくジープガイガーカウンターを載せて、そうしてアリゾナ、あるいはネヴァダ、コロラド、ユタというような地方を走り回るやつが相当あるということでありました。しかし結局そういう当てもなしに走っていた連中がやはりそれを発見しておるのでありますから、なるべくこれは広い範囲においてある程度、必ずしもジープでなくても日本は狭い国なんだから、夏休みの学生のアルバイトにガイガーカウンターを持たせて、この線を歩け、この線を歩けというような指示をするというくらいのことは、これは当然燃料公社ができましたらやられるのじゃないかと思いますが、そのくらいのお気持でやらないというと、これはなかなか急には発見できないのじゃないか。もちろん地質調査研というものがありますが、地質調査所にしたってそうたくさんな人間があるわけじゃないので、大体な大ざっぱな、何かそのガイガーカウンターに引っかかるものがあるというくらいのことは、これはしろうとでもできるのでありますから、そういうようなこともやられる必要がふろのじゃないかというようなことを思っております。  そのくらいのことで、この法そのものにつきましては、ただいまの精錬という言葉がはっきり載っておりませんので、その点だけはこれはぜひ載せていただく方がいいのじゃないかと存じます。この精錬という意味は、これはもう十分御承知かと思いますが、われわれが大学採鉱学の第時間に教えられますことは、探鉱ということは土の中に有用な鉱物があるかないかということを探るのだ、採鉱ということは地下にある鉱物を外へ持ち出す仕事だ、選鉱というものは品位の悪いものをよくする仕事だ、そうして精錬というものは鉱物から金属を抜き出す仕事だということを、これは採鉱学の教室の第一時間目に聞いたことなんでありまして、そういう意味から言いましても、このメタルを鉱物の中から引きだすということが精錬だとはっきり言葉ができておるのでありますから、やはりその点はこの第十九条の第一号にはっきり載せられる方が、はっきりしていいのじゃないかと存じます。その点だけでございます。   —————————————
  7. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に一本松参考人にお願いいたします。
  8. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) 一本松でございます。  まず原子力研究所法案から申し上げたいと思いますがこの原子力研究所公社でなく、特殊法人として民間意見を入れていただくという形になりましたことにつきましては賛成でございます。しかしこの運用面につきましては、なお希望を申し上げたいと思います。運営に当って一そう民間意見が入っていくように特に考慮願いたいと思います。それから原子力研究所に大幅の権限と申しますか仕事をまかせていく、こういう措置を講じられたい。政府の各省におかれましても、原子力研究所にそういう仕事をまかせるということを特にお願いしたいと思います。これは先ほども研究所そのものの性格につきまして、伏見先生からお話がございましたが、研究所というものはあらゆる結果を予想してそう急に成果を上げるということに入り過ぎてもいけないというふうな特殊な事情もありますし、また大方針につきましては、原子力委員会において決定されることでもありますので、仕事の面につきましては、研究所に大幅の権限を与えられんことを希望いたします。  次に原子力燃料公社の問題でありますが、この第一条及び第十九条に業務の内容を規定してありまするが、これによりますと核燃料物質の輸入、買い取り、売り渡し、生産、加工、貸付け、副産物の売り渡しということを行うということになっておりますが、将来この核燃料と言いますのは、私たち電力会社から考えますと、相当大量の核燃料を必要とする時期がくるというふうに予想されます。それでこの核燃料がすべて独占される形になりますと、まして石炭鉱山とかいろいろなもので私たち運営面において困ったようなこともございますので、この点について独占という形につきまして今きめられますことは、少し早いという感じがいたしております。もっとも、この法案にそのことを明記してはないのでありますが、そういうおそれがあると考えられております。たとえて申しますと、発電の原子炉にいたしますと、炉に挿入する核燃料は相当多量なもので  ありますし、これらはメーカーが直接それを原子炉に入れて持って来るというようなことも予想されます。また灰の処理——廃棄物の処理にいたしましても、現段階ではこの方針が立てにくいのじゃないかというようなことも考えられますし、また予想されておりまする、原子炉のうちのつまり均質炉というものになりますと発電と廃棄物の処理というものを同時にするという面もございますので、こういう問題につきましては、特に将来独占という形になり過ぎて困るようなことのないように特にお願いしたいという希望を持っております。  それから核原料物質開発促進臨時措置法案につきましては特に意見はございませんが、これもできるだけ国産ということが望ましいのでありますので、開発が円滑に強力に遂行されるようにしていただきたいということでございます。この法案につきましては大体以上でありますが、先ほども委員長お話がありました、原子力推進につきましてどうしたらいいかというようなことにつきまして、一言付け加えさせていただきたいと思うのでありますが、これは三法案が本当の実を上げるためにも関連のありますことでありますが、第一に原子力委員会ができるだけの権限を持たれ、原子力政策というようなものを推進される態勢を打ち立てる必要があるため、そのためには原子力委員会に下部機構と言いますか、調査及び資料作成のためのスタッフを持っていただきたいという考えを持っております。次に技術者の養成でありますが、これは原子力は今研究段階だというふうに考えられておりますが、将来の状態は非常に大量の技術者を要求するという事態が必ず来るというふうに考えられますので、大学とか研究所等におきまして技術者を養成するという措置をとっていただきたい。それから次に、私たち電力会社として考えておりますのは動力炉の開発を急いでいただきたいということであります。これは電気事業といたしましては、約十年のちに水力及び火力に非常な逼迫した状態が参ります。水力というのは御承知のように有利な地点からどんどん開発していきます。しかも今の開発状態でいきますと、約十年いたしますと地点も非常に悪くなって参りまして、コストも相当上って参りますし、地点の制約というものも出て参りまして、もう多く望むことはできないという状態が参って参ります。それから火力につきましても、日本石炭の状態から考えまして、十年後を考えますと相当困難な情勢が出てくるというふうに考えております。そういたしますと、ここに電力を供給する責任を持っておるわれわれ電力会社といたしましては、これを放置することのできない事態がくるというふうに考えております。これは電気の需用なるものがどうなるかとか、いろいろな付随した問題がございますけれども、まあ電気の需用の伸びを内輪に見まして、しかも水力、火力というようなものを相当有効に利用をすると考えましても、十年あるいは十五年いたしますと、ほんとうにわれわれとして供給責任を果すことのできない、もう電気はありませんということを言わざるを得ないような事態がくることが予想されますので、今のところ私たち考えておりますのは、十年後に原子力発電を営業運転いたしたい、こういう気持であります。このことは原子力発電そのものにいろいろな考え方がございますが、電気の供給を確保すると、こういう立場から申し上げておるわけでありまして、まあそのとき重油を入れるとかいろいろな考え方もございますが、私たちの見通しにおきましては、十年後を考えましたならば必ず原子力発電というものに依存する時代になるというふうに考えております。そのときの発電コストというようなものにつきまして、われわれの応の予想を持っておりますのは、現在の水、火力もだんだんコストは上って参りますので、十年後にはほぼ日本において経済ベースに乗ってくる、そういう少しこれは大まかでございますが見通しを持っております。そういたしますと十年後の営業運転ということに備えるために、われわれは今からいろいろな計画をやっていかなくちゃなりません。まず第一にはやはりテストプラントを作ってやる、試験機械、これは試験でありますのでそう大きいものを考えておりません。一万キロ程度のものを考えておりまして、これでありますと二十五億円程度でやれると思うのでありますが、そういうものを二個所、少くとも二個所以上くらいは五年以内くらいに実現したい。そのためには二年後くらいに注文をするという態勢を希望いたしております。このテストプラントは原子力研究所において各電力会社、メーカーが協力をして実施するそういう方法がいいと考えております。で、その事態を考えますと、実際問題としてはどうしても最初のテスト・プラントは輸入によらざるを得ないということも、一応今のところはそういう考えでおります。そういたしまして五年くらいにテスト・プラントを作りまして、電力会社としてはそれによって用地の問題とか、あるいは廃棄物の処理、技術員の養成そういうようなことを行いまして、十年後の営業運転に備えたいと、そういうふうに考えております。  以上、電力会社からの立場を御説明申し上げました。   —————————————
  9. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に駒形参考人一にお願いいたします。
  10. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) わが国原子力研究が非常におくれておりまして、これを一日も早くそのおくれを取り戻すということが原子力の将来にかんがみまして、きわめて必要なことでございまして、これは言を要しないところでございますが、先ほどこの原子力研究をいかにしてやるか、あるいはその問題の中で一番重要だと考えられることがどういうものであるかというようなことを中心に話をしろというお話でございましたので、私二、三考えておりますことを御参考に申し上げたいと思います。  原子力仕事が学界、産業界その他各界の関連においてこれを協力的に推進していくという態勢をとるということが、まず研究を推進していく上に一番重要なことであると考えます。この意味からみますというと、日本原子力研究所が政府及び民間の両方からの出資によって行われる特殊法人の形をとられたということに対しましては、私ども賛成でございます。それでそういう意味から、この日本原子力研究所というものは、原子力研究センターというような考え方のもとにこれを推進せしめていく必要があると考える次第でございます。  第二は、研究は何と申しましても人が最も重要なる要素でございまするので、この研究の推進という一方におきまして、人の養成という問題がきわめて重要なことになるわけでございまして、人の養成ということにつきましては、もう一面、その事柄の半面を見ますというと、これは優秀な人材を集める環境をよくするということがまた同様の意味におきまして必要なのでございます。  第三の問題は各国の状況をごらんになりましてもわかりますように、原子力研究に対しましては相当の額の経費を必要とします。われわれが原子力研究に一歩を進めるということを決しました以上は、相当思い切った研究費というものを出していくというふうにしなければ、中途半端で終るということになるわけでございます。産業界等におきましても、このことに関しましては相当考えを持っていられるようでございまするからして、政府におかれましても、これは十分お考え願いたいと思うところでございます。しかも各国の例から見ましても政府の金というものが大体大きな部分を占めておるというのが、その実例でございます。  第四といたしまして、いろいろな運営に当りまして、弾力性がある運営ができるような工合にする必要があるということでございます。金の使い方ということにつきましても全く同様でございまして、弾力性ある使い方ができるようにしなければいけないと考えております。もちろん先ほど申しましたように、政府の金が大きな部分を占めております以上、これが会計検査というような問題は、これは十分厳重にこれをやることは当然でございますが、その運営に当りまして、弾力性を持たせるということがどうしても必要になってくるという点を私は強調いたしたいのでございます。  で、三法案それぞれのことにつきましては、今までに御意見がありましたこと以上のことを私が申し上げるものは持っておりません。大体におきまして三法案いずれも賛成でございますが、むしろその運営に当りまして、これが十分なる効果を発揮するような工合に運営するということが眼目になるのではないかと考えておる次第でございます。  この中の日本原子力研究所法につきましては、すでに財団法人原子力研究所というものをもってこの研究というものが発足してございまして、財団法人原子力研究所は、日本原子力研究所がこの法案で発足いたしまするというと解消いたしまして、その仕事は全面的に引き継がれるというふうになっておるのでございます。この機会に、財団法人原子力研究所のことに関係を持っております者として、御参考までに現在の財団法人原子力研究所の概要を御報告さしていただきたいと思います。  財団法人原子力研究所は昨年の十一月三十日財団法人として発足いたしたのでございます。理事十一名、監事三名ということになっておるのでございまして、このほかに相談役、参与、評議員というものがございます。内部の機構といたしましては、理事長の下に副理事長、それから一名常任理事がございます。そうして現在は四つの部の形をとっておりまして、総務部、建設部、企画部、研究部というふうになっておるのでございます。職員は現在総計で七十一名でございますが、総務部関係三十二名、建設部関係十四名、企画関係七名、研究部の関係は十八名というのが現状でございまするが、その後各大学研究所民間会社等の御推薦のありました研究者の中から、選考委員会をもちまして選抜いたしました人、約四十名程度の充足のことを考えておるのでございますが、これはおそらく五月の初めあるいは中旬ぐらいになりまして、そういうことで全部合せますと百十名ぐらいになるかと考えておる次第でございます。三十年度は従いまして十一月末から本年の三月三十一日まででございますが、この間、大体民間の寄付金といたしまして二千九百万円ばかりそうして政府の補助金といたしまして四千五百七十余万円というものを、補助金をもちまして仕事をして、三十一年度に至りましては、もっぱらこの財団法人原子力研究所日本原子力研究所に円滑にその業務が引き継がれるようにすることを考慮いたしまして、まず大体、第一・四半期といたしまして、四月から六月までの分ぐらいに対する事業の計画、仕事の計画をいたしておるのでございまするが、昨年度におきまして、大体繰越金として六百七十万円ほどのものがございましたので、先ほど申しました寄付金といたしましては約百六十社から一口十万円の寄付があったのでございますが、その十万円の寄付に対しまして、一口二十万円ずつの借入金をいたしまして、この借入金の総額五千七百八十万円という分、従って前期からの繰越金と合せまして六千四百万円というようなことで、この第一・四半期の計画をやっておる次第でございます。  財団法人原子力研究所が今までいろいろやりましたことは、一つは、土地選定委員会というものを作りまして、土地の選定につきましていろいろと検討を加え、これを原子力委員会に報告をいたしました。それから原子炉につきましては、第一に、購入するウォーター・ボイラー型の原子炉というものにつきまして、仕様書を検討いたしまして、一月末に所員三名をアメリカにやりまして、細部の打ち合せをいたしました。三月の初めに、アメリカのこれを作っておりますノース・アメリカン・アビエーションというところから技師が参りまして打ち合せいたしまして、三月二十八日にこのウオーターボイラーの契約に調印をいたしました。これは来年の一月に品物が参りまして、三月からそれの組み立てをやりまして、大体四月末ないし五月の初めごろにおきまして運転開始の予定でございます。  それから建物の関係のことにつきましてはいろいろと特殊の構造の建物を作らなければなりませんので、これに対しましていろいろと研究をいたしております。第一号の炉であるウォーター・ボイラーの建家につきましても、すでに大体の構想がまとまっておるのでございますが、なおいろいろと技術的な点で調査を要しましたので、三月の初めに所員三名をアメリカにやりまして、十日ほど前にその者が帰って参っておる次第でございます。第二番目の炉といたしましてCP5という炉を今仕様書を検討をいたしておるとところでございます。それから国産炉並びに動力炉の調査ということを始めることにいたしておりまして、それぞれこれは外部のいろいろな学識経験者をお願いいたしまして、委員会のようなものを作るというふうに今進めておりますところでございます。  研究所は先般茨城県の那珂郡東海村にその土地の決定を見ましたので、現在すみやかにその建設準備に着手しているところでございますし、茨城県当局におかれましても、全面的な協力の熱意を示されておるところでございまして、すでに地質調査というのを一、二日前から始めたところでございます。土地の測量、地質の調査、ボーリング、それから気象、海流の調査というようなものにつきまして進めて参っておるところでございます。大体現状を申し上げますというと、そういうようなことになっております。   —————————————
  11. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいままでの御公述に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。特にこの際申し上げておきますが、伏見参考人学術会議に御出席の都合がありまして、なるたけ午前中に本委員会を辞したいというような御希望でございますので、伏見参考人に対する質疑を先にしていただきたいと、かように考えます。
  12. 白川一雄

    ○白川一雄君 伏見参考人にお尋ねいたしたい。私どもはこの戦争が負けましたのはいろいろ原因がたくさんあろうと思いまするけれども、最も日本の国民全体、また指導者が科学というものに対して謙虚な気持を忘れておったという事柄が非常に大きな事柄であったろうとかねがね考えておるわけであります。私自身もそういう体験もありまして一、昭和十二年にヨーロッパへ行っておりますときに、日本の軍部が通信、航空、機関銃等に関しましてあわててあちらの方で発注をし、古いものを買っておるという事実を見まして、国産奨励けっこうだけれども、外国のすぐれたものを見て国産奨励するのはいいけれども、劣っておるものを国産奨励すると戦争を負けさせる道であるだろうということを、日本へ新聞記事として旅先から次々送りましたら、それが不都合だというので、横浜へ帰りましたときに二日ほど上陸さしてくれなかったというぐらいの事実もあるのでございまして、いかに科学に謙虚さを忘れておったかという事柄が、もう私は戦争に負ける大きな原因だったということを今に変らず考えておるのでございますが、そういう意味から申しまして、先生のお話にありました研究の自由ということは非常に尊いものであり、今回の研究所運営するに当りまして、御意見のありました研究所の所長が原子力委員に加わるべきだという御意見ももっともだと思いますし、特に大学講座制度を設けて、若い学究の徒を養っていくということも、これは原子力に重点を置けば置くほど非常に大切なことだと思うのでございますが、ただ一点、お話の中に特殊法人だと研究の自由が制約されるおそれがあるという御意見でございましたが、この法案が制定準備されていろいろやはり国立という意見が非常に強かったのも承知をしているのでございますが、その当時私の非常に心配いたしましたのは、日本の経済力の力から、原子力研究というのにもそう思い切った金は与えられないのじゃないか、アメリカその他外国では、富の関係から思い切ってこれに金をかけるというととろに、学者の能力はすぐれておりましても、そういう経済的事情に制約されてなかなか向うに匹敵したような研究が進まないのではないだろうか、もしそういうことになりますと、原子力利用という面がどんどん進んでいきまして、研究利用の実際との間にギャップというものができたら、おそらく原子力研究所というものが無用の長物視されることもあるのではないか、これは何とか挙国一致連帯責任体制でいく格好にならなければいけないのではないか、従来の観念からいくと財界が出資するとかいうひもつきがあってはこれが邪道に導かれるというようなこともありがちで、また実際そういうことが不都合な場面が割合あったようでございますが、今回の特殊法人というのを見てみますと、出資はいたしますが、株式会社のような議決権を持っておりませんし、特に規定された発言権もまあない、一種の寄付行為のような格好である。ただ原子力という日本がおくれているものを早く利用できる段階に持っていくというために民間の方もこれに協力していくんだという、いわゆる挙国一致の連帯責任体制を整えるという意味で、財界も加わって特殊法人になったということは、私は国立でいくよりもはるかに進歩した行き方でないか、もしおっしゃられるように研究の自由が制約されるというようなことがあれば、これの運営が悪いのであって、根本の理念としましては、私は特殊法人が国立でいくよりも少くとも原子力研究ということにつきましては、非常に進歩したとらわれない考えじゃないかというように考えているのでございますが、先生はその点何か不安も持っておられるように思いますが、もう一度先生のその点に対する御意見を承わっておきたいと思います。
  13. 伏見康治

    参考人伏見康治君) お答えいたします。ただいまの御意見まことにごもっともでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、すでにきまりましたその国立という考え方からその特殊法人という考え方に移りましたことに対し、それ自身に対しまして反対申し上げているわけじゃございませんのでして、ただいま言われました運営にまかせたらよかろうという点をあくまでも心配しているわけなのでございます。この特殊法人と申しますと、これは私たちの単なる誤解であるのかもしれませんのですけれども、会社組織といったようなものを念頭に浮べるわけでございます。で、まあ会社の研究所というものがどういうものであるか私は存じませんが、もう一つ別の例といたしまして、各省に属しております直轄のいろいろな研究所がございます。あるいは各地方にございますいろいろな試験研究所といったようなものがございます。そういうところにおける研究の能率といいますか、そういうものといわゆる大学付置研究所の能率というものを比較いたしますと、これはまず百人の見るところ、ほとんど間違いなく大学付置研究所の方が商い能率を持っているわけでございます、現実において。それは主としてある特定の業務的な仕事を課せられている研究所というものはどうしてもその研究者の自由なる創意というものがどうしても殺されますので、結果において研究の能率というものが非常に下って、ほんとうのいわゆるルーテイン的な業務だけしかしないという研究所にだんだんなっていく、そういう可能性があるわけでございます。この特殊法人というものが一体どういう性格のものであるか、実はこれから皆さんがお作りになることでありまして、結果を見なければわからないことでございますが、今までの研究所のあり方というようなものから考えますと、目的が非常に強く打ち出されている研究所でございますというと、研究者の創意が生かされるという面がないがしろにされて、結果においては非能率的になるのではないかということをおそれているわけでございますが、まことにおっしゃるように運営の面でそれが十分に防げますれば、大へんけっこうなことだと思っているわけでございます。
  14. 白川一雄

    ○白川一雄君 一本松参考人に一点お尋ねしたいのでありますが、多量の核燃料物質が将来非常に必要になるということが予想されると、これは独占的になるということについてはいささか疑問があり、将来そういうことにならぬよう希望するという御意見のように承知するのでありますが、将来はともかくといたしまして、現在の段階におきましては、核燃料物質の性質からいきまして、また原子力を今やっていこうとする現在の段階におきましては、やはり現在あくまで独占してこれを調整していかなければいけない実情にあるのではないかと、こういうように見ておるのでありますが、その点いかがでございましょうか。
  15. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) お答えをいたします。まあ電力会社といたしましては、さっき例でも申し上げましたように、原子力発電をやるといたしました場合には、十トンとか二十トンとかいうようなウランを最初の原子炉に入れて持ってくるというようなことが予想されているのであります。その燃料そのものがどういう形になるかということが今から予測は非常にむずかしい問題なんであります。ことに天然ウランであるとか濃縮ウランであるとかいうようなそういう問題がからみますので、非常にむずかしい問題ではありますが、ただ私たち電力界で考えますところでは、この天然ウランというものは現在でも二万トンとかそういう程度で多量に生産されております。それから濃縮ウランにつきましてはアメリカが主で、イギリスが少し作っておるということのために、これがことに原子爆弾との関係もありまして、よほどむずかしい問題があるとは思いますけれども、ずっと将来を考えますと、毎年これも相当程度向うで生産をいたしておりますので、まあ相当多量の濃縮ウランも出てくるということは考えられます。濃縮ウランの問題は別といたしましても、天然ウランも近い将来には自由市場に現われてくるというふうに私たち考えておるのでございます。そうなった場合に十トン、二十トンというようなものを入れて持ってくる、これは原子力発電は将来は日本で作りたいのでありますが、最初の何台とかいうようなものは入れる、向うから輸入するというようなことを考えました場合に、燃料公社の一々許可によってやるということを心配しておるのでございまして、それでこれは現在はまあこういう問題は非常に少いことでもありますし、現在については不安はありません。むしろ相当統制されるというのもやむを得ないと思うの戸ありますが、将来これは非常に多量に何十トンというようなものが商取引によって行われるというような場合を考えまして、それは独占形態になりますと、電力会社としては運営面において困るということが予想されますので、そういうことのないようにあらかじめちょっと希望を申し上げたわけであります。
  16. 海野三朗

    ○海野三朗君 伏見教授にちょっとお伺いいたしたいのでありますが、お話研究の自主性が大事であるこの自主性に対してはこの法案の中にどこにもその自主性がない、そのお話は私ももっともだと思うのでありますが、しかし学者の立場からお考えになって、ないよりはこの原子力法案があった方がいいとお考えになっておるのでありますか、またこれはほんとうにこの原子力研究に対しては、必要にしてかつ十分なる法案であるとお考えになっていらっしやるか、そこの率直なる御意見を承わりたい。私も、ただいまのお話では研究の自主性が確立されていない、この法案の中には。その点を私は強く一昨日も正力国務相に迫ったのでありまするが、明快なるまだ御答弁をいただいておりません。その点については伏見教授のお話をさっき承わっておりまするというと、私も全然同感なのであります。その例は科研の例を見るがよろしい、科研はああいうふうな状態でありましたから、あのサイクロトロンの研究にいたしましても、今は故人となられたけれども、仁科君が近く完成を漏らしておられた。つまり研究の自主性ということを確立することが第一番であるように私は思うのでありまするが、しかしないよりはこの三法案がいいというふうにお考えになっておるのか、今の法案でよろしい、この法案のいけないとすればどういう点がいけないのであるか、率直なる一つ意見を承わりたいと思うのです。この法案の欠点でありますね。
  17. 伏見康治

    参考人伏見康治君) ちょっとお伺いいたしますが、原子力三法というと、ここに上っております三法、原子力研究所のあの三法のことでございますか。
  18. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうでございます。
  19. 伏見康治

    参考人伏見康治君) 昨年末に成立いたしましたいわゆる原子力三法というのがございまして、そこでたとえば原子力に関する研究開発における自主性といったような面が、いわゆる原子力基本法の方には盛られておりますので、そういう意味合いから申しますれば、自主的に私たちの力でできることはやっていくという点はうたわれていると思うのでございますが、そういうですから大きな精神的なことはすでにうたわれておると思いますので、それをまたこういういわば小さな個々の法案について重ねて言うということは、必ずしも必要はなかろうと考えておるのでございます。問題はそういう精神を具体的な面においてどういうふうに裏づけることができるかどうかということなんでございます。で先ほどちょっと申し上げましたのは、たとえば研究所内部運営に関して、何か規定が要るのではなかろうかということを申し上げたわけなんでございますが、たとえば大学内部のことをいつも引用して、みずから視野の狭いことを暴露するようなことになるのかもしれませんですが、大学におきましては研究の自由ということをいつも建前にして考えておりますので、たとえばその研究所内部における普通の意味での身分の上下関係といったものに、私たちは必ずしも実際の研究所仕事で縛られないわけでございます。むしろ下の方の意見が上の方に具申されて研究が進んでいくのが普通の状態でございますが、現場で実際の研究をやっておられる研究者研究の方がむしろ上で、机にすわっておられます方よりも実際のことがよくわかっておりますから、当然下の方の意見が上の方に具申されていって初めて事が作られていくのだと思うのであります。そうでなくして上から下へという命令系統でいく仕事というものは、とかく現実から離れた仕事になりがちなものでありますので、ですからそういう以外の内部運営と申しますか、そういうものに対する何か規定といったものをもし設けるとすれば設けることが必要なのではなかろうか。そういう面で研究の自主性というか、あるいは自主性といったものに対する裏づけをしていくということが、こういう個々の研究所法案といったものに対して要求されている面だと思うのでありますが、残念ながらそういう面がこの法案の中には一つも見えていないように見えるわけであります。  まあ私たちといたしましては、あとの方で出て参りますいろいろな研究所の利益が上りました場合のいろいろな取扱いといったような面が非常にページ数を占めておるわけでありますけれども、この研究所が五年やそこらのところでもって利益の上るような仕事ができるということは全然考えられません。こういう規定をむしろお省きになった方が適当ではないかというくらいなのでありますが、いわばもっと研究所内部の大事な点、これをまたあまりこまかく規定するということは、逆にまたもちろん問題になるわけでありますが、大きな急所だけはこの法案の中に盛っていただくということが可能なのではなかろうか。そしてむしろ逆に問題にならない点をお省きになった方が適当ではなかろうかと思うくらいなのであります。
  20. 海野三朗

    ○海野三朗君 重ねてお伺いいたします。そういたしますと、この原子力研究所法案というものにまず点数をつけることをお考えに触れば、まず何点ぐらいでございましょうか。及第点がございましょうか。将来伸びるだけの、つまり将来ほんとうにこの原子力研究に対して各国を凌駕するまでに伸び得るというお見通しがおありになるか、あるいは単にただヤジウマ的にぱっと原子力がはやってきたから、それに原子力の何ものであるかを知らない大衆の人がこれにただ便乗してわいわい騒いでおるのではないかというふうにも私は考えられる点なきにしもあらずなのでありますが、そこで単音としてのあなたは、つまり第一にこの原子力研究所、この法案に対しましては点数をおつけになれば及第点がございましょうか、何点ぐらいの点数をおつけになりますか、それは率直なる御意見を承わっておきたいと、こう思いますのです。
  21. 伏見康治

    参考人伏見康治君) 大へんな難題でございまして、大学の先生でございますから、しょっちゅう点をつけておりますけれども、(笑声)それは一定の条件の下に学生のつまり判断の基準というものが長い伝統の間でできておりますので、その基準に照して百点とか九十点とか申してつけております。この今の法案に対する点数のつけ方は、それは基準のとり方によってまあ百点にもなりますれば零点にもなると思うのであります。私の基準で申し上げるということははばかりがございますので、御遠慮申し上げたいと思います。
  22. 海野三朗

    ○海野三朗君 今基準とおっしゃいましたけれども、あなたが御研究をおやりになっていらっしゃるあなた御自身のお考えを私は承わりたいのです。あなたがほんとうにこの研究ということに対しましては、権力も金力もそういうものに押されずに、真理の探求でありますから、その真理の探求をおやりになっておるあなたからごらんなさると、この法案には何点ぐらいの点数をおつけになられますか、七十点ぐらいでありましょうか、六十点台でありましょうか、あなた御自身のでけっこうでございますから、どうぞ御意見を承わりたい。
  23. 伏見康治

    参考人伏見康治君) やはり御遠慮申し上げたいと思うのでございますが、ただこういうふうに申し上げたらあるいは御満足がいくかもしれないと思います。ただいまのお言葉の中に真理の探求ということを申されましたのですが、私たち大学でやっております研究の場では、これはいわゆる純粋研究でございまして、確かに真理の探究をしているつもりなのでございますが、しかしこの原子力研究所というのは必ずしもそれが最高の目標ではないと思うのでございます。原子力研究所と申しますのは、すでにいわば真理の探求の場で発見されました原子力開放のその原理を使いまして、それをただ現実にどうしてやってみせるかというその過程の研究だと思うのでございますが、そういう意味合いにおきましては一番初めから申し上げました通りに、目的をもった研究でございます。単に真理の探求のための、いわゆる科学のための科学だというようなことをする場では必ずしもないと思いますので、そういう真理探求のその尺度だけからこの研究所の点数をつけるということは、まあ少し的がはずれているの、だろうと思うのです。ただ私たちはこういう研究所におきましても、そういう目的意識をもちました研究所におきましても、私たちが真理探求の場でやっておりますやり方というものが非常に有効であるということを信じておりますので、そういうやり方が御参考になればと思って先ほどから申し上げているわけなんであります。一番気になりますのは、あまりに目的意識が過重でありまして、たとえば原子力発電を非常に早く早期にやるといったふうなそういう課題が、課題意識があまりに強く出て参りますというと、ほとんど研究が手につかないのではなかろうか、結局原子力研究所というものは完全なる飾りものになりまして、具体的なものは全部外国技術に依存する逆の結果を招くおそれがあるのではないかということを懸念しておるわけであります。私たちが自分の力で、私たちは何と申しましても原子力の分野では後進国であると考えられますので、いろいろな意味で外国の技術、知識、物資というふうなものを援助を受けなければならないと思うのでありますけれども、しかしその援助だけでもって圧倒されてしまわないために、私たち自身立場というものを堅実に作り上げていくということがあくまでも必要だと思いますが、そのためには私たち考えております研究の自由といったような面をしっかり持っていただいて、自分自身考えが出てくる、つまり単に外国の考えを消化しそれを翻訳するということではなくして、自分自身の意思で仕事ができるという環境を作り上げるということが必要であると思うので特に申し上げた次第であります。単に真理探求という尺度だけで判断するのは必ずしも当を得ていないと考えられるわけでございます。
  24. 海野三朗

    ○海野三朗君 ちょっと私お伺いいたしますが、私が申し上げましたのは、原子力そのものの探求、つまり真理の探求をしていく間に、そのアプリケーションというものはそこから分れてくる枝葉ではないでしょうか。初めに目的をおいての研究というものはすぐ行きつまってしまう。そうじゃなくて、原子力そのもの研究、つまり真理の探求にまっしぐらに進んでいく、そうしていく間にいろんな働きが見つかってくるので、アプリケーションというものは木の枝葉でありまして、真理の探求というものは根本の大道ではないでしょうか。私はそんなふうに今まで考えていたのでありますが、もしこれが間違っていたといたしますれば、一つ蒙を開いていただきたいと思うのであります。原子力そのものの特性ということに向ってまっしぐらに進まなければならない。その間においてこの核燃料物質の性典とかいろんな副産物が出てきます。それがすなわち応用であって、応用そのものを目的としちゃいけないのじゃないかというふうに、私は今日まで考えていたのでありますが、それがもし間違いであるかどうか、一つ伏見先生の御所見を承わりたい。私は真理の探求にあるのだ、研究というものは。その間に応用すべきものは応用すべきもの、ずんずんそれが副産物になって出てくるのではないかというように考えるのであります。たとえば  このマグネットの問題にいたしましても、マグネットはどういう性質のものであるか、その根本に向って研究を進めていく、その間にいろんなK・Sマグネットとかあるいはミシマ・マグネットとか、そういうものが副産物として出てくるもの、それがすなわち応用であって、やっぱり真理の探求に向ってまっしぐらに進むのがほんとうの応用が上に出てくる母体ではないでしょうか。私はそんなふうに今まで考えていたのですが、どういうものでありましょうか。
  25. 伏見康治

    参考人伏見康治君) ただいま言われましたことは、私たちの学者としては大へんありがたい御主張だと思うのでありますが、今おっしゃいましたようなことでございますれば、これは日本全国の研究所全体がいわばやっている仕事に当るわけでございます。そして、この原子力研究所というものの中で生れ出て参りますのは、そういう意味合いでの仕事では必ずしもないのでございまして、もう少しスペシフィックな、特別な目的を持った研究所であるということは初めから、成立の由来から考えてそうならざるを得ないと思うのであります。もう少し今おっしゃいましたいろいろね例、たとえばK・Sマグネットといったようなものが純粋研究から派生してきたというような面は、もっと広く一般の研究全体の中で考えられるべきことでありまして、もちろん、この原子力研究所でもそういうことがたまたま行われるということはあると思いますが、それが主要な課題ではなくて、原子力研究所で行いますものは、主として原子炉というもの、そのものに直接くっつきました研研をなさるのが当を得た研究であろうと思うのであります。もっとさらに基礎的な研究というものは、必ずしも原子力研究所でやらなくても、たとえば原子核研究所といったようなものもございますし、いろいろの大学研究室もございますので、そういうところとも連絡をとって、純粋と応用との間の関連を絶えず緊密な連絡をとってやっていくという、その中で考えて下されば十分であろうと思うのであります。あまりに原子力研究所が何もかも集中的に握ってしまいまして、いわば原子力というものは、原子という名前のくっついたものは全部いわば研究の独占的な形態になるということは私たちとして好んでおりません。全国のこういう方面の関連した研究所が十分な基盤をもって、その中である特殊な課題を受け持つのがこの原子力研究所であろうと、そういうふうに了解しているわけであります。
  26. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういたしますと、この原子力研究所というのは、少し毛色の変った研究所であって、原子炉とか、あるいは原子力発電ということを目的とした研究所であるとお考えになっておるのでありましょうか。そういたしますというと、湯川君のこの辞任したいという気持がそこにはっきりわかってくるのです。こういうふうに原子力研究所、これをやっていきます間に原子炉とかそれから原子力発電という目的を強く打ち出して、そうして研究をしてくれというのでは、研究の大道を逸脱している研究所になるからしてそれで私には湯川君のやめたいという気持もはっきり読めるような気がするのでありまするが、あなたのお考えはいかがでございましょうか。これは普通の研究所と少し毛色の変った、アプリケーションを目的とした研究であって、原子力そのもの研究ということには少しずれておるのだとお考えになっておりますか。やはりさようでよろしゅうございましょうか。
  27. 伏見康治

    参考人伏見康治君) 湯川先生の辞任問題がどういう意味合いのものであるかということと、この問題と関連があるかどうかということは申し上げたくないのでございますが、この研究所が特殊な課題を持っていることは、これは否定しがたいことであろうと思います。そして、湯川先生のようないわば基礎研究の方が原子力委員会に入っておられますということの意味は、別のところにあると思うのであります。原子力委員になっておられます湯川先生のお立場は非常に広い視野で、原子力といったような新しい技術を開発していくのにどういう方針をとられたらいいかということを御判断になるわけでありましてそれは湯川先生が純粋研究の範囲内で今までその中での純粋研究の分野からの研究を進めていかれる上での高い見識というもの、その見識がこの場にも大いに役に立つであろうということを私たちは期待しているわけでありまして、必ずしも湯川先生が純粋研究の場の方であるから、原子力委員となられても純粋研究をお進め下さるというふうにわれわれは理解しているわけではありません。しかし、その面をあまりに強調いたしますというと、私の真意にだんだんはずれてくることになるのでございますが、海野さんのおっしゃいます純粋研究と申しますか、そういう基礎研究というものの重大性ということは、先ほども申し上げました通りに、現在の原子力研究段階ではまだ比重がかなり高いわけであります。すぐさま、きょうあすにでも原子力発電が日常生活の中に入ってくるという段階には必ずしも参っておらないのでありますから、今日の段階ではもう少し基礎研究のところに重点をおいた考え方にならなければならないということを、むしろ強調したいのでありますけれども、だからといって、この原子力研究所が純然たる基礎研究をやるところであるというふうには了解しておらないのでございます。その点どうぞ誤解のないようにしていただきたいと思います。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 お急ぎのようですから……。先ほど白川委員の質問の中で、運営によってということで御了解されたように私はお話を承わったのでございますが、政府の説明なり新聞の解説なりを見ておりますと、国立にならなかった原因の重大な一つとして、わが国原子力研究が諸外国に比べて非常におくれている、十年もおくれている、それを今から研究をやっていくには国立では非常にひまが要るそれで民間の協力を得て特殊法人にした方が早くいけるのだと、こういうようなことがいわれていると私は思っているのであります。そうすれば、当初先生の言われた国立にしなかったことは非常に残念だということは、そういう意味合いから特殊法人としての行き方では何らか研究に対しての制約があると、こういうふうに私は考えるのでございますが、その点はどういうふうにお考えでしょうか。いわゆる先ほどの運営ということとは政府が考えている今度の法案では、逆に運営されるのではないかと私は懸念するものでございますが、その点に対しまして先生の見解を承わりたいと思います。
  29. 伏見康治

    参考人伏見康治君) お答えが非常にむずかしいことになりますが、私のごくぼんやりと考えております建前から申しますと、国立の方が好ましいと考えているわけなんでございますけれどもこれは大学研究者であるという一つの狭い限られた観点から申し上げていることにおそらくなるだろう、そういうふうに考えておりまして、もっと広い視野をもたれました大ぜいの方々が、特殊法人という形態の方がより好ましいとお考えになれば、それもしかるべきことであろうと考えていることなんであります。私がただ申し上げたいのは、私、研究者としての立場から普通常識的に特殊法人といったようなもので想像されるような運営の仕方というものは、その研究の能率というものは上るまい、むしろ大学付置研究所といったような形態をお考え下さる方が、研究の能率が上るだろうということだけを申し上げているわけでありまして、その形態特殊法人というような名前のもとにもし行われるのであるならば、それでも差しつかえなかろうとぼんやり判断しているだけでありまして、今おっしゃいましたように特殊法人では、それでは逆のことになるぞとおっしゃられますというと、何とお答えしていいかわからなくなるわけでございます。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 それから一本松さんにお尋ねいたしたいと思いますのは、先ほどの御説明の中で、十年後には水力も火力も一応の限界が来る、こういうことでございましたが、火力について、特に石炭の現状からみて、十年後は電力の供給も非常に困難になってくる、こういうことでございましたが、十年後日本石炭の状況からみて、炭鉱が老朽して石炭が非常に不足してくる、こういう意味でおっしゃいましたのかあるいは石炭が別の化学方面に多量に使われるような実情にあって、火力も動力源としては非常に不釣合いになってくる、こういう意味からか、あるいは十年後には原子力を使った発電が、コストからみても非常に石炭と比較して安くなるのだ、こういう意味からのことでございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  31. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) お答えいたします。私たち電気事業者が将来の電気の需用につきまして一応見通しを立てたものがございます。それによりますと十年後水力は皆無とはなりません。まだ今のテンポでいきまして残りはございますが、地点的に見まして非常にむずかしいものになりますし、また発電コストも上って参ります。もちろん発電地点そのものもなくなってくるわけであります。そういう状態で、十年後には少くとも今日の開発テンポでやることは不可能だと考えております。火力の石炭につきましてでありますが、石炭は大体五千万トン程度を一応の日本石炭の状態から限度だと考えております。これは九州の炭鉱とかいろいろなものをわれわれ十分日ごろ調べましたことからの一応の結論でありますが、この五千万トンにいたしまして、電力にどのくらい使ってよかろうかということにつきまして、大体千五百万トンということを予定いたしております。現在が大体七、八百万トン年間使っております。これで参りまして十年後には石炭で千四百万トン使うことになっております。そうしてもちろん重油も今使っておりますのは御承知と思いますが将来重油を輸入するということで十年後に百万トン、石炭に換算しますと二百万トン近くになろうかと思いますが火力発電といたしまして千六百万トンの火力発電ができる、そういうことを予想いたしております。しかしその後におきますと、もう石炭というものは電力だけというわけには参りません。動力面で電力にかわるのは鉄道の電化というような問題がありますが、鉄道の電化でもそう大きく期待することはできませんので、現在の二倍程度になった状態ではもう石炭をそれ以上われわれの方に回していただくことは不可能だと、そういうふうに一応の結論を出しました。そういたしましてこの原子力を計算いたしますと、十年後に需用の延びに合わすために原子力四十五万キロワット程度のものが必要である。それから十五年後にはこれが二百八十万キロワット、二十五年後には六百四十万キロワット、三十年後の昭和五十五年には千百万キロワット程度の原子力発電が要る。そういう長期予想を立てましたわけであります。もちろんものの移りかわりというものは一ぺんにぱっと原子力に、今日から原子力というような、こういうことはわれわれ経済人としては考えませんので、徐々に移りかわるものであります。水力の限度も徐徐にくる火力の限度も徐々にくるそういうことから、十年後営業運転にかかるというのが私たちの基本的な考え方でありまして、原子力発電を急ぐからと言いましても、一年後、二年後にすぐ営業運転ができる、そんなことを考えておるものじゃ決してないのでありまして、十年後にそういう態勢にするためにはこういう準備行動が要る、そういうことから原子力発電を急いでいただきたいこういうことを申しておるのであります。十年後のコストの問題も先ほど御質問にございましたが、これは水力もだんだん高くなり、石炭もそう安くいきませんし、もし外国から輸入するというようなことを考えますと、これは量の制限及び外国から入れますと運搬賃というものが非常に大きなものでありますから、上って参ります。そういうことを考えますと、今予想されておる十年後の原子力発電というものはほぼ経済ベースにくるのじゃなかろうか、こういう見通しであります。
  32. 藤田進

    ○藤田進君 議事進行ですが、伏見教授は急いでおられる事情もあり、委員一つお諮りになりまして、次の会議に出向いていただく方がいいのではねいかと思います。私はそういう意味で、ありますけれども遠慮いたしたいと思います。その他の参考人方々には大へん恐縮ですが、二、三点これからお伺いしたいと私は思っております。
  33. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をやめて。    〔速記中止〕
  34. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記を始めて。
  35. 藤田進

    ○藤田進君 伏見教授の御意見を要約すると、私の間違いかもわかりませんが、利用という面、言いかえれば応用にあまり急であって、基礎的な研究をやはり軽視してはならないと、むしろそれは基礎研究からみっちりやっていった方が事の順序でもあるというふうに言われたように思うのです。私もそう思うわけでありますが、しかし現実は一本松常務がお述べになりましたように、すでにこれが利用について、特に電源としての利用については二年以内に、あるいは五年以内、将来十年ないし二十年、商業べースという点等からみて、必ずしもそのピッチが基礎研究の面と合わないのじゃないか。そこで本日は参考人としてお見えになっておりませんが、次のような説を持っておる人もあるやに聞くわけであります。それは全く伏見教授と逆の説を持っておるわけですが、基礎研究等をやって発明発見その他創作いたしましても、しょせんおくれているのであるから、むしろ先進国の研究等を取り寄せて十分これを学ぶ、そうしてできればたとえば原子炉の設計あるいはその他建設、操作ですね、そういう利用面についてマスターできることの方が結局は得策ではないか。従って基礎研究その他に膨大な経費をかけるよりも、その方がより現実的であるという全く逆の説もあるわけであります。この間のいろいろなそういう……今原子力という新しい問題がこうして出て参っておりますために、これが定説としていずれが是なりやということについては、私ども判断に迷っておるわけであります。こういう観念において、それぞれに対して今一本松常務も言われたような点は多少衝突する面が伏見さんの説にあるような気がいたします。私が今指摘いたしましたいわば第三の説といいますか、そういうような点についてあなたの具体的な反駁というか、何か御意見がありましたらお聞かせをいただきたい、こう思います点が伏見教授に対する質問であります。  これに関連してぜひこの際お伺いいたしておきたいのは、一本松常務さんの方では、今の伏見説なり第三の説ですね、これらについてはどういうお考えであろうか、おそらく実業界におられて電源をあずかっておられる立場からわれわれそんたくすれば、今申し上げた基礎研究というよりも、これが応用そうして操作といったような、いわば技術者の養成という点に重点が置かれておるのではないだろうかというふうにも読みとれるわけであります。この関連について御両者の御意見を承わりたいと思うのであります。
  36. 伏見康治

    参考人伏見康治君) お答えいたします。一本松さんの言われたことと、私の申しておりますことと衝突しておるということは事実であろうと思います。それは一本松さんの置かれました立場というものと、私の置かれております立場と違うからであると思います。一本松さんとしては、あくまでも将来の日本の電気発電量というものを十分責任を持って確保されたいという立場から言われていることであると思います。私たちの主として考えておりますのは、一番原子力に関連して特に私たち考えておりますのは、日本の科学技術というものが日本の産業というものと有機的に結合して、そうして日本の国民生活の向上に実際に役に立つという面で日本の科学技術がお役に立つということを一番大事な問題であると考えておるわけであります。日本ではすぐれた学者がおりまして、そうして実際さまざまな、湯川先生のような純粋研究の場でも、もっと応用的な場面でも、すぐれた研究成果が過去において相当上げられてきております。先ほど、たとえば白川さんが言われましたような面での例を、私の近くの例で申し上げますというと、阪大に岡部金治郎先生という方がおられまして、マグネトロンを発明された、文化勲章までもらっておられるわけでありますが、しかしこのマグネトロンを発明されたということが、日本にそう大して実はプラスいたしませんでした。御承知のように戦争中は、向う側にはレーダーというものがあるのに、日本のレーダーというものはほとんど硬いものにならない。それは主としてマグネトロンの技術が向うでは非常に進化しておるのに、発明された日本ではほとんどそれが伸びていなかったということにあるわけであります。つまり基礎研究純粋研究の場では、あまり組織ということが問題にならないと思うのでございます。つまり個人の能力といったようなもので、ある程度仕事のできる場面でございますので、岡部先生とか湯川先生とかいう天才がおられますというと、それで十分の仕事をなされることができるわけでありますが、日本の社会組織の中には非常な欠陥がございまして、そういうりっぱな種がすくすくと伸びていくような、そういう態勢というものが、とられておりません。そのために、せっかくの日本人の能力というものが、いわば宝の持ちぐされになって、私たちの生活を高めるためには少しも積極的な役に立つていないわけであります。そういうことが原子力の場でも起ったのでは大へんつまらないことになる。私たち純粋研究に携わっております者にとっては強く感ぜられるわけでありまして、で、きれば私たちの科学技術の面というものが、私たちの実際の生活に役立つということで役立たせていただきたい、こういうわけなんでございます。で、原子力というものが外国でどんどん進みまして、日本がある意味において取り残されているということも事実でございますが、しかし仁科芳雄先生のような先覚者がおられまして、原子核物理学という領域で相当長い伝統と、りっぱな研究者を長い間養成してこられまして、相当たくさんの研究者を実際日本は擁しているわけでございますが、現在日本のそういう原子核物理学者というものを動員せずして、新たにまた原子力というものを外国から取り入れてくるのだといたしますと、過去において仁科先生のやってこられました原子核物理学というものの日本における発達というものは、ほとんど無意味になってくるわけでございます。相当の国費を費して外国にあります装置と同じような、たとえばサイクロトロンというような、巨額の金を使います装置をただ日本でもまねて作ったというだけであって、そこから出てきた成果というものを刈り取るいわば伏せてしまう、一番私たちが心配しておりますのは、そういうせっかくの基礎研究から過去において私たちの先輩がつちかって参りましたそろいう成果というものを、実際の現実の生活の中に生かしていくことであろうと思うのでありますが、そういう面で少くともほかの場面でもいろいろな問題がございますけれども、原子力という問題は、特に切り離してそういうことをやってみるいい場面であるということを信じて疑いませんので、そういう意味合いから、長い間原子力について深い関心を持ってきているわけであります。原子力という場面におきましては、少くとも日本人の持っております科学技術というものを十分生かし得ると考えておりますので、そういう意味合いから、よその成果を私たち利用する、それをその上に立って仕事をしていくということは、これはもう当然のことでございますけれども、その際、あくまでも自分自身の力でやっていく、よそのものをあくまで利用するということであろうというふうに考えていきたいと考えております。別に鎖国的に何もかも国産でやっていかなければならないということを申し上げておるつもりではさらさらないのであります。
  37. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) 私さっきから申しましたのは、電力を供給いたしております供給責任から申しますと、十年後ぐらいには、どうしても原子力ができてもらわなくては困るということが一つであります。しかし、それも全然見込みのない、非常に高くて経済的にもそういうものが無意味に近い、そういうようなものを、この電気が足らなくなるから何でもやらなくてはならぬ、こういう見通しのない考えではないのでございまして、われわれ産業人といたしまして、一応の十年後の見通しを考えた場合に、大体さっきから申しますように、経済ベースに近いものに来る、そういう見通しを持ちまして、今の、さっき申しましたような需給計画を立てましたわけであります。しかし、この研究というものには、やはり基礎的研究と応用的研究と、この二つの面があると思います。これは伏見先生が初めに申されましたことで、それでしかも、その両方の調和というものが必要だと、私もそう思うのであります。ただ私たち原子力発電の面を急いで下さいということを申し上げておりますのは、これは伏見先生と少し立場が逆になるかもしれませんが、基礎研究のみに重点があって、応用研究の方がおくれては、われわれの考えております十年後の原子力発電というものに支障があるというふうに考えますので、応用面の方にもう少し力を入れて下さい、こういうことを申し上げておるわけでございまして、その間、伏見先生は、あくまでも基礎研究で、外国のものに日本の本来の研究が押し倒されるようなことになっては困る、こういうお立場であります。一方、私たち関係しておりますたとえば電気メーカーにいたしましても、現在のままで基礎研究のみに閉じこもっておる間は、なかなかこれ以上の進歩はむずかしい。どうしても外国のものを早く入れて、そこから得る知識によって、これでわれわれの原子力態勢というものを進めるということでなくちゃならぬという考えを持っておる人も非常に多いのであります。でありますから、ここらの調和によって、今後基礎研究と応用研究と、この二つの面を両方矛盾しないようにやっていかれることが必要だと思うのであります。私はこの将来の見通しにおいて、先ほどから申しておりますように、動力炉を早くやっていただくということが結局原子力研究の上に必要である、そういうふうに思いますので、それを御希望申し上げておるわけでございます。
  38. 藤田進

    ○藤田進君 一本松常務にお伺いいたしますが電源としての、原子力利用ということは、これはイギリスあるいはアメリカの場合は——アメリカの場合はテネシーあるいはカリフォルニア州あたりは特殊な地域としても、ニューヨークあるいはワシントン付近の東の海岸では、やはり火力ないし原子力ということになる。ことにイギリス本国では水力が乏しいわけですし、ヨーロッパでは、スイスを除いては、大体オランダにいたしましても、オーストリアからベルキー付近、あの辺はどうしても火力地帯ということになる。従って石炭あるいは重油はあろうけれども、いわゆる原子力発電というものがだんだん進められてくると思うのですね。今度の原子力科学というものが、何といっても戦争の要請というか、兵器としてはかなり進んできたと思うわけですが、日本のような、まだ水力が十年開発が残っておるが、その後コスト高になり、資源がすでに枯渇してくるというような面と需用の伸び、そういう総合的な立場から、ここに新しいエネルギーを求めるということだろうと思うわけであります。問題はやはりこれをコマーシャル・ベースに乗るかどうかという点に簡単に言えば私は帰港するのではないか、電力の場合は。これが医療その他になりますと、多少違ってくると思いますが、そうなりますと、いつかの時期を、時点を見てキロワットアワー、アワーによってどれくらいに押えておられるか。私のばく然たる考えでは、そのアワーのコストによっては古い水力発電所をこわして、新しい計画を立てることもできる場所もありましょう。水系によってはあるでしょう。それからあるいは既設のダムの、ダム・アップをすることによって、あるいはまかなえるかもしれません。あるいはまたコスト自体によっては、相当原子力でもコストがかさむということになれば、新しい観点で地熱発電所あたりも考えてみたらどうか。あるいはまたどうしても需用が伸びてくるということになれば、関西電力あたりは、瀬戸内海を一つ紀伊水道、豊後水道あたりをせきとめて、総合発電所あたりをまず考えたらどうか。ほかの分野を考えてみてもなおやはり原子力がアワーとしても安上りだ。もちろんこれは廃棄物の処理、その他一切を含めての話ですが、どれくらいに押えているのですか。あなたの考え、あなたの説による十年先というもののコストの面では……。
  39. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) 大へん具体的な問題になりまして、キロワット当りのコスト、これは最も端的に将来を予想する基礎の数字になると思うのでありますが、大体十年後に水力発電所地点がだんだん悪くなって、補償費ほどもふえますから、いろいろな条件を入れまして、私の非常にラフなアイデアでありますが、大体五円見当になると思います。今日が四円見当であります。これはまあ水力でありますと、古いものは別としまして、新しく立てるやつでございますが、冬は出ませんから、冬の予備のものが要るとか、いろいろなことを考えて、長い送電線が要るとかそういうことを考えまして、水力火力ほぼ同じくらいで、四円見当というのが今の状態であります。十年後にはこれが五円見当になるんじゃないかというふうに私は思っております。一方原子力発電所でありますが、これはこの間グットマンという人が一九六〇年ですか、五年先の数時を、十三ミルないし十七ミルという数字で申しております。これは四円五十銭から六円になる。これは五年後にはそういう数字になるということを申しております。で、私これは個人の考えといたしまして、十年後には大体五円あるいは高くても六円までくらいにはおさまるのではないか。そういたしますと、ほぼ採算ベースに近いものになってくる。こういうことになってくるのではなかろうかという見通しであります。しかしこれが実際十円にもつくということになりますと、十年後の原子力発電、さっき申しました四十五万キロワットというようなものはずっと減ってくると思うのであります。これはまだ今後の情勢いかんによって修正されるべき数字でありますから、一応の見通しに立ってさっきの四十五万キロワットということを申し上げたわけであります。しかしそれは十年後を一応予想したのでありますが、十五年後にかりになりよすと、もう地点というものは現実的になくなります。そうなりますと、電気の供給をストップするか、少し高くても原子力発電をやるかということになると思うのであります。  それからさっきほかの発電、これは私特にこのエネルギーの問題につきましては、前から非常に気にかかりまして、潮力発電も風力発電も入るものを一応手にかけてみたのでありますが、まだ多量に安くできるエネルギー源というものは見つからないのであります。  太陽熱がどうかという問題がありますが、これも大きな量はちょっと今のところ期待できないのじゃなかろうか、そういうふうに思っております。
  40. 藤田進

    ○藤田進君 午前中で質疑は終ったというふうにお考えのようにも思われるので、私は簡潔に二、三点だけで終りたいと思うのですが、駒形さんと一本松さんにお伺いしたいのは、今度の原子力研究所法の第二十二条の業務ですね。ここにごらんの通り、それぞれ第一は「原子力に関する基礎的研究を行うこと。」以下ずっと書いてあります。実際に、先ほど来申し上げたことは繰り返しませんが、事実問題として、この研究所が将来行います場合に結局一本松さんの言われたような現実的要請もあり、基礎的研究あるいは応用研究というようなことよりも、この研究所ではいろいろな委託的な研究もあり得るでありましょうし、技術者の養成であるとか、あるいは原子炉の設計、建設、操作、あるいはまた第五号に書いてある「放射性同位元素の輸入、生産及び頒布を行うこと。」といったような、こういったところが重点になるのではないだろうかと思われるわけでありますが、この研究所が将来どういう点がその業務の中心になるものであろうかという点であります。  一本松さんの方には、この研究所ができた場合に、電源としての、原子力という面との関係で、どの程度利用せられるのか、委託研究などの課題がありますかどうか、現在のところ原子力産業会議だとかなんとか二本建のような観を呈しておりますしいたしまするので、この点関連して一本松常務にお伺いしておきたいと思います。
  41. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) お答えいたします。ここにいろいろ研究所がその目的を達成するための業務といたしましてたくさん並べてございます。この中でどういうような考え方を持つべきであろうかということだと思うのでございますが、この研究所はやはり日本原子力研究をやります以上は、日本におきまして原子力に関する科学技術の確立ということをもってその目的の根本といたすべきであると考えている次第でございます。従いまして外国からいろいろ技術を導入するということも、やはり日本における技術を確立するという根底に立ってこれをやり、そしてその促進をはかるという意味でやられるべきものであると思うのでございます。  先ほどから基礎研究、応用研究という問題がお話がございまして、この業務の中におきましても、第一は原子力に関する基礎的研究、第二は原子力に関する応用の研究というふうな工合に二つ並べてあるわけでございます。実際研究をいたします者から考えてみまするならば、基礎研究、応用研究の限界というものは私はないものと実は考えております、研究所立場に立ちます場合。これはやっておりますことが大体において目的的に分けました場合、一つのものが基礎研究であり、一つのものが応用研究であるといったようなことになると、大体考えて私はいいのではないか、こう思うのでございます。今の問題で一から八まで並べてありますことのどこに重点があるかと申しまして、まあわれわれの方の考え方は、やはり事には順序がございますからして、その順序というものをもって申し上げますならば、原子力研究所はやはり原子炉というものを持たなければ、研究の推進ということに支障を来たす次第でございますので、原子炉を築造するということはどうしてもやらなければなりません。それで一先ほども申し上げましたように、ウォーター・ボイラー、CP5、国産炉、動力用試験炉という順序におきまして、なるべく早くこれらのものをわれわれの手に持つ、こういうふうな炉が据え付かりまするならば、この炉を使いましての各種の原子核反応や中性子の物理関係の基礎研究というものが進められて参るわけでございますし、その炉を中心にいたしました各種の応用というものがここにまた開けて参るわけでございますし、これに用います、たとえば国産炉に用います燃料の廃棄物を処理することによりまして、各種の科学処理法における研究というものが基礎並びに応用の面で開けて参るわけでございます。放射性同位元素を製造する、作るということをやりまして、そうして一方におきまして、これを各種の産業に使っていくという応用が開けて参るわけでございます。このようにしてわれわれの方は、何しろやはり順序というものをそこにやはり考えて参らなければいけない。が、しかしお話のように原子力は非常におくれている、早くこの間のギャップを追っかけていくということのために相当程度事柄を並行的に進めていかなければならぬ問題がそこにある。全部これを直列的にやっていくというようなことでは、とうていおそいのであります。動力炉の問題も、先ほどのお話で、十年後の経済運転というようなことをお考えにもしなったといたしましても、その調査というような問題につきましては、早急にこれを始めて参りませんければいかぬというように、そこに並行的にいろいろな仕事を進めなければならない、こう私どもは考えておる次第でございます。
  42. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) 先ほどの御質問、動力用の試験炉につきましては、研究所の方でやっていただきたいと考えております。もちろん電力会社の者としましては、全面的に協力をさしていただきまして、技術者等も出して一緒に試験炉の試験をさしていただきたいと思っております。それに対しまして、十年後の営業運転に入りますものは、もちろん電力会社が責任を持ってやっていきたいと、そういうふうに考えております。
  43. 藤田進

    ○藤田進君 重ねてお伺いいたしますが、原子力発電所の計画をお持ちになるということであれば、勢いこれが技術者の養成訓練ということになるわけですが、これらの点については、この研究所に委託してやるのか、あるいは独自なそういう養成機関を設け、あるいは諸外国に派遣しなどの電力会社とされての態度なのかという点が一つと、それからこの原子力発電所については、特定の電力会社ということだけでは、なかなかその資金その他の関係で問題があるかと思うわけです。将来の原子力発電所ということに触りますと、当面の電力会社としてはどういう形態で一体おやりになろうといたしますか。この際この点を一つ明らかにしていた  だきたいと思います。
  44. 一本松たまき

    参考人一本松たまき君) 電力会社といたしまして、技術者の訓練につきましては、すでに各社とも相当着手をいたしておりまして、五名ないし十名くらいの専属の人が各社ともが一生懸命原子力研究をやっておりますが、しかしさっきもお話のありました原子力研究所の方にも教育をお願いいたすつもりでおります。これは駒形さんの方に寄り寄りお願いをいたしております。人数等につきましてはまあこれからの問題でございますが、テスト・プラント等を発注するというようなことになりますと相当の人を振り向けざるを得ない、そういう状態となる予想でございます。  それから将来の原子力発電の問題でありますが、これは先ほど十年後の営業運転は電力会社がやりますということを申し上げたのでありますが、私たちの現在の考えは、原子力発電というのは大体現在の火力発電とほぼ同じような性格を持ったものであろうと思っております。そういたしますと、容量五万キロワットないし十万キロワットというような程度になり、さらに大きなものでありますと三十万キロワットというようなことが予想されます。これは現在の火力発電所とほとんど同じような程度のものであります。そういうものでありますから、現在の各電力会社が自分の会社のみで利用の中心地に建てる、そういう形になると予想いたしております。
  45. 藤田進

    ○藤田進君 社長さんにお伺いいたしたいと思いますが多量にしかも廉価な濃縮ウランがアメリカ等から入ってくるということになりますと、勢い日本開発なり製造なりといったことが、これは採算上もふるわなくなるし、そういう企業が成り立たないと思われるのですが、それらの点についてどのようにお考えになりますか。
  46. 久留島秀三郎

    参考人久留島秀三郎君) その点につきましては、全然これはだれもお答えができないのではないかと思います。現在日本のウラン資源というものについてはまだ調査もできておりませんし、まあほとんど調査の着手という程度にも及ばない、もちろんこれは地質調賢所でやっておられますが、地質調査所でごく少数の人が幾らか見ているという程度でありまして、これで将来日本原子力発電というものの原料資源が日本で得られるのか、得られないのかということは、これはおそらくだれも言えないのじゃないかと思います。これは現に五、六年前のアメリカだってそうであったので、その当時コロラド州内に出てくるということがわからなかった。ただ先ほど申しましたように、ガイガー・カウンターを載せてジープで走り回しているという人間がいるということをまあわれわれ方々で聞いたのでありますが、そんな状態であったのが、その結果がやはり発見されているのでありますから、それでまだ日本はそこまでのこともしていないで、今日すぐそれで間に合うとか間に合わぬとかいうことは言えないのじゃないかと思います。しかしまだ一方ではどの程度それで採算点に乗りますかわかりませんが、外国では、もう全然そんなものは問題にしていないような過燐酸肥料あるいは輸入したその燐鉱石の残渣をさらに加工してそれからとるというようなことも研究されておりますのでありまして、ただいまのところでは、これはだれもおそらく日本でこれが自給されるとかされないとかいうことは言えないのじゃないかと思いますが、同時にまたあまりこれまで利用されていないような東南アジア地方相当たくさんあるモナザイト砂の砂糖のようなもの、そんなものが相当割安にとれるのでありますから、そんなものの利用ということも考えられますので、これはちょっとだれもはっきりした明答はできないのではないかと存じます。私自身わかりません。
  47. 藤田進

    ○藤田進君 時間がありませんから私は以上でやめます。
  48. 海野三朗

    ○海野三朗君 私は駒形さんにお伺いしたいのでありますが、先ほど伏見教授に伺ったのですけれども、はっきりした御意見ではなかったのでありますがこの原子力研究所法案をずっと読んでみますというと、どこにもこの研究の自主性ということがうたってない。いわゆる原子力だけが規定してある、総理大臣の監督のもとにおいてやる、つまり一つのワクをはめた中で、その中で研究しろということになっておる。こういうことではほんとう原子力研究というものは私はできないのじゃないか、外国の原子力研究に上回るというようなことはとうていあり得ない、欧米人の研究の糟粕をなめる結果以外の何ものでもないと思うのでありますが、この研究の自主性の確立ということについては御要求がありませんか。この原子力研究所法案はこれでまずよろしいとみていらっしゃるか、その点の御所見を承わりたい。率直に大胆にお述べいただきたい。
  49. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) 研究の自主性という問題につきましては、原子力関係原子力基本法というものにおいて、これが明確にうたわれておるのでございますので、基本法を受けてこの研究の実施機関である日本原子力研究所というものが作られるということになっておるのでございまするから、私どもといたしましては研究の自主性ということにつきましては、すでにその基盤の上に立った事柄と考えておる次第でございます。この第二十六条によりますと、「研究所は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、事業年度開始前に内閣総理大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。」というふうになっておりますが、これは内閣総理大臣の認可を受けるということはこれは私当然のことと考えております。そうしてその事業計画というものは研究所において立案いたしまして、そうしてこういうような事務的の手続のもとに運ばれていくということでよろしいと私は考えております。
  50. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういたしますと、この法案には点数をつけると何点くらいつきますか。(笑声)八十点くらい……及第点でありますか。
  51. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) 私は前に申しましたようにこれに対しましては特殊法人というようなお考えをこの中に入れられ、その点まあ協力して事をやるという態勢というものをそこにおいて相当徹底しておられるという面で賛成であるということを申しておるのでございまして、及第か落第かということを申されますならば、もちろん私は及第だということを申し上げます。(笑声)
  52. 海野三朗

    ○海野三朗君 少し話は古くなりますが、仁科芳雄君とあのサイクロトロンは、アメリカで初めてサイクロトロンを作るときに、大きさは全部同じものを相談の上で作ったのです。ところがあの当時に仁科芳雄君の研究に対して何ぼ金を使ったか、出したかというと三十万円きりしか出しておらない。ところがアメリカは三十億ドル使っておる。つまりそこで仁科芳雄君と私はいろいろ話をしたのでありますが、結局金を与えてもらえないから研究ができないのである、原子核の分裂とか、私は皆知っているのだ、これは仁科君が言っておった、ところがこれには金を出さない、日本政府が……。原子核なんというのは学者がやるようなことであって、そういうことは、というような政府要路者の考えである。いわゆる金を出すというようなことは政府が握っておるのであるから、財布の口はしぼっているのであるから、その人間が理解してくれなければ予算なんというものはなかなか辛い。そういうことではいけないので、もう少し研究者の自主性というものを確立する、すなわちこの研究員の人たち意見を総合してそれをまとめて原子力委員会にこれをのせるということもこの案の中に入れなければならないのではないかと私はこういうふうに見ておるのでありますが、つまり権力をもっている人、財布の口を握っている人たちが理解できなければ、その方が辛いですから、予算をあまり出さないから、それを私はおそれるのです。将来これを伸ばしていくためにはどうしてもその研究の自主性というものをはっきり確立して、その機構の上においてこれをうたっていかなければならないのではないか。そうでなければ単にアメリカでやっておる動力炉、原子炉をまねしただけじゃいかんのであって、すでにそれよりもまだ歩先に世の中は駸々乎として進んでいるのでありますから、そういう点から考えるとどうしてもこの自主性というものをこの中にうたって強くこの機構の上にもこれを反映せしめていくようにしなければ欧米の研究のただ糟粕をなめるということにすぎないことに私はなるのではないか、こういうように私は考えるのでありますが、この中にはっきりそれをうたわれてもよいとお考えになっていらっしゃいますか、どうですか、駒形さんにその所信を承わりたい。往々にして私はこういうことを言うと政府の忌諱に触れるとか何とかいうようなことで御遠慮なさっておられる学者が所々方々にたくさんあるのです。率直に言ったらいいのです。こういうようなんですということを。私はそれで重ねて申し上げますが、率直に不備な点を指摘していただきたいと、こう思ってお伺いするわけでありますが、駒形さんのお考えはいかがでございましょうか。
  53. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) 重ねてのお話でございますが、先ほど申しましたように、私は原子力基本法におきましてこの点は十分にうたわれておるのでありますから、基本法と同じようにここにお書きになるのが法律上どういうことになりますかは私は知りませんが、書くとすれば同じようなことを書くということになると私は考えます。おそらくそういう基盤のもとに次の日本原子力研究所法というものが書かれているのでありますから、基本法というのが元なんでありますから、その必要はないのだと思います。それから御説のように欧米のそのあとだけを追っかけていくことになるのではないかという御心配でありますが、これは忌憚なく申しましてそういうことになることをおそれます。炉の問題につきましても、であるがゆえにわれわれは国産炉というものをその計画の中に入れまして、その日本でもって生産される材料を極力使ってわれわれの手で設計をして、そうしてわれわれのところで国内においてそれを作り上げていくというそういう国産炉、国産第一号炉、国産一号炉と申しておるのでありますが、そういうことでそういうものをわれわれは非常に重点を置いて考えているのでございます。輸入いたしますたとえばウオーター・ボイラーというもの、CP5型というもの、そういったようなものは国産炉一号、二号、三号というものに対する準備的のデータをとるというのを目的とすると、こういうふうに、むしろ逆に私どもは実際問題として考えておるのでございまするからして、今のその点につきましては海野先生のお話のことに対しましては、私ども同様な意見を持っておる次第でございます。
  54. 海野三朗

    ○海野三朗君 もう一点私はお伺いしたいんですが、ただいまお話によると、基本法にうたっておるからいいとおっしゃいますけれども、日本でもこの前の戦争中のあの憲法、憲法にうたっておったってそれに違反したことがだんだん行われていくのであって、私は基本法だけじゃならないので、この原子力研究所に対して、やっぱり相当なここに注文をつけておく必要がないかというふうに思うのですが、基本法において、基本法はなかなかやっぱりこの問題に即しないと、これにくっつけたものでないというといけないと思うのですが、大丈夫でしょうか、それで。
  55. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) 基本法と離れた、それから先の法律というものは私どももちょっと考えるべきではないと思っております。やっぱり基本法というのが元でありまして、その基本法によってこの研究所を作るように、あのずっとあとの方の条文に出ております。それを受けておる次第でございますから、その基本法であってもそいつは心配だと言われましても、階本法の中でもこれにぴったりくっつく基本法なんでありますからして、いいのじゃないかと思います。  それから先ほどの内閣総理大臣の認可を受けなければならないという、その内閣総理大臣の権限がここにあると言われましても、おそらくこれは、やはり内閣総理大臣の認可は私は必要だと考える次第でございます。
  56. 海野三朗

    ○海野三朗君 それはもちろんそうでありましょう。総理大臣が認可することにならなければいけないのでありますが、そこまで持っていく道程におきましてね、もう少し研究者意見がはっきり反映されるようにならなければならない。そこがどうもこれに抜けておるように思うのでありますが、それは基本法があるからいいとお考えになっていらっしゃるわけなんですか。
  57. 駒形作次

    参考人(駒形作次君) さようでございます。基本法と申しますのは、この日本原子力研究所法の基本になるものでありまして、憲法とか何とかというもの、ずっと離れておるものはもちろんそれに従うわけでございますけれども、それよりもこの研究所法にくっつくものでありますから、むしろ一体と考えて基本法の第一章、第二章という、第何章目かに当るような性質のものではないかと私どもは考えておる次第でございます。
  58. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 以上をもちまして参考人の公述並びにそれに対する質疑を終了いたしたいと思います。  この際委員会を代表いたしまして、御出席参考人各位にお礼を申し上げたいと思います。冒頭に申し上げましたようにわれわれはわが国原子力研究、特に初めて一緒につこうといたしておりますこの平和利用の問題がいかに処理されて行くべきであるかということ、並びに核原料物質開発原子燃料処理等について深い関心を持っているわけ空ございます。これらの問題について日ごろそれぞれの立場で御熱心な研究、御討議をされておる各位から非常に貴重な御意見を拝聴いたしまして、まことに委員会として幸いに存ずる次第でございます。もちろん現在審議されておりまする三法案の検討に皆様方の御高見を十分取り入れて参りますほか、将来の運営に当りましても、御懸念になっておる問題等については政府において十分御考慮されるように、委員会としても特段の関心を払い、また注意もいたしていきたいと存じておる次第でございます。  なお本日は原子力関係の政府の者も出ておりまするし、記録になって、それぞれ検討されることでございますので、皆さん方の御協力を十分生かして参りたいと存じておる次第でございます。まことに御多忙中ありがとうございました。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  59. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記を起して。  午前中の委員会はこれをもって休憩いたします。    午後一時二十五分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕    ————・————