運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-04-06 第24回国会 参議院 商工委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月六日(金曜日)    午後二時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事            西川彌平治君            白川 一雄君            阿具根 登君            河野 謙三君    委員            大谷 贇雄君            小野 義夫君            古池 信三君            高橋  衛君            西田 隆男君            深水 六郎君            海野 三朗君            藤田  進君            上林 忠次君   政府委員    法務省民事局長 村上 朝一君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君    通商産業大臣官    房長      岩武 照彦君    通商産業省企業    局長      徳永 久次君    通商産業省重工    業局長     鈴木 義雄君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   参考人    経済団体連合会    事務局長    堀越 禎三君    日本興業銀行常    務取締役    日高  輝君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本製鉄株式会社法廃止法の一部を  改正する法律案内閣提出)   —————————————
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) これより本日の委員会を開きます。  まず日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案を議題といたします。この際参考人の方に一言御挨拶を申し上げたいと存じます。  本委員会におきましては、口鉄法廃止法の一部改正法律案審議中でございますが、御承知のように、日鉄法廃止法は、去る昭和二十五年第八国会におきまして可決制定された法律でありまして、その附則に、企業再建整備法規定により設立された日本製鉄株式会社の第二会社たる八幡製鉄株式会社並びに富士製鉄株式会社に二カ年の期限を付して一般担保制度適用を認める規定を置いておりました。これは八幡及び富士両社に対し、財団組成のための猶予期間を与える趣旨からでありますが、両社財団組成法律期限内に完了せず、昭和二十七年第十三国会において廃止法の一部改正を行い、さらに二カ年の期限延長を認め、さらに昭和二十九年第十九国会において、企業担保法制定が間近く行われるであろうという前提のもとにまたまた二カ年の期限を延長して今日に至ったのでございます。問題の企業担保法は、今日の状況よりいたしますると、果していつ制定せられるか予測できないので、口鉄法廃止法附則中、一般担保制度に関する部分は当分の間、換言すれば、企業担保法制定されるまで有効期間を延長しようとするのが本一部改正法律案趣旨でございます。八幡及び富士両社に対しまして、財団組成のための猶予期間を与えることを本旨とする口銭法廃止法経過措置からいたしまして、企業担保法に乗りかえさせること自体がすでに法律論として問題もあろうかと存じますが、その問題はしばらく別といたしまして、日鉄法廃止法改正案企業担保法との間には、ただいまも簡単に触れましたように、密接な関係があるわけでございますので、多年業界にあって、その企業担保法について研究を進められて参られました両参考人に忌憚のない御批判をしていただきまして、委員審議参考に資したいと思う次第でございます。御陳述の内容については別に制限を設けません。企業担保法全般について御意見を承わりたいと存じます。経団連事務局長堀越禎三君。
  3. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 堀越でございます。経済団体連合会といたしまして、一般担保、あるいは企業担保と言われておりますが、これにつきましては非常に企業側としましては、ずいぶん古くから要望いたしております問題でありまして、昭和二十九年一月の二十八日に、一般担保法制定に関する要望意見というものを出しております。これは経済界において社債担保として、あるいは一部借入金担保として最も多く活用せられておるものは、工場抵当法に基く財団担保であるが、この今の財団担保にはその組成手続がきわめて繁雑であり、また費用も時間も多くを要する等の欠点がある。しかしてわが国の最近の実情は、かかる担保制度についても合理化が要請せられているこの際、近代企業に最も適すると考えられるイギリスフローティングチャージのごときを導入し、企業全体を担保とする一般担保法を新たに制定する必要を痛感していると冒頭いたしまして、大体そのときの経済情勢に合うような一般担保法制定してもらいたいという要望をいたしました。その年の秋に、かなり形ができました一般担保法が提示せられたのでございますが、当時何分まだ銀行オーバーローンの状態でありますし、経済正常化をいたしておりません。従って企業内容もまだ十分に正常化していないという実情でありました関係上、銀行関係の方から非常に強く、この一般担保法に対する反対の御意見が出まして、時期尚早ということで、前に提示されました一般担保法は、そのまま制定せられずに済んだような実情がございますが、企業といたしましては、この企業全般担保としていったことについては非常に強く要望いたしておりますので、この前の提示されました法律は、非常にまあ適用範囲も広範でありまするし、かつまた特定担保との関係等につきましても、かなり銀行に不安を及ぼすような面もありましたので、これらの当時検討されました面の難を調整して、そうして一方御承知のようにオーバーローンもなくなり、企業内容も相当正常化されつつあります来年度からは、従来一部の監査に定められておりました公認会計士監査も、いよいよ来年の三月期決算以後は、全面監査に入るといったような情勢にもありますので、おそらく銀行等の間のある程度の妥協ができて、そう遠くない時期に、企業担保法というものができ上ることを、われわれ自身としては非常に切望しておるような次第であります。その面を申し上げまして御参考までに……。
  4. 三輪貞治

  5. 日高輝

    参考人日高輝君) 日高でございます。参考人といたしまして、企業担保と申しますか、一般担保に対しまする考え方を申し述べさせていただきたいと思います。英、米などと違いまして、わが国企業に対しまする信用程度、あるいは法律を順法するといったよらな心がまえ、そういういろいろな面におきまして、遺憾ながらわが国におきましては比較的薄いように思われる点がございます関係から、今直ちに担保物件制度一大変革を来たすような企業担保法を施行することにつきましては、時間的と申しますか、時期的にやや問題があるように思われるわけであります。特に先般御提示をいただきました一般損保法につきましては、ただいま堀越氏からもお話がございましたように、企業担保、あるいは一般担保に対しまする特定担保が優先をするということ、また担保権実行をいたしますまでは、その客体特定しないということ、あるいは担保権客体の包括されておりますことに対しまする短期債権が保護されないといったようなこと、あるいはこの一般担保適用する対象が非常に広いのであるか、限定されるのであろうかといったようないろいろむずかしい問題がございますわけでございますけれども、だんだん経済正常化しつつございます。企業大小を問わずオーバー・ボローイングもだんだん是正されてきておる方向にございますので、段階的にと申しますか、漸次、今申し上げましたような問題を解決、調整することができるならば、近い将来におきまして、この企業担保法制定は可能であるようにも思われる次第でございます。  以上、簡単でございますが、私ども考え方を申し上げた次第でございます。
  6. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 両参考人の公述につきまして御質疑のある方は御発言を願います。
  7. 阿具根登

    ○阿具根登君 堀越さんに御質問申し上げますが、ただいまの御意見では、私は全企業に対してこれを適用すべきであると、こういうような御主張であると私は考えておるわけなんです。それにつきまして、興業銀行の方からは、そういうことはまだ時期尚早である、こういうことで、適用範囲のことを言われておりますが、その中で、たとえば、経済が安定しておらないということは、これはわかりますが、法を軽視するというようなこともあったと思うのです。こういうことを考えてくる場合に、借る方の立場は非常にこういう法律ができてくれば簡単になっていいかもわかりませんが、事業をやる場合には、貸す方の人のことをまず考えなければ私はうまくいかないと思うのですが、どういうふうに適用範囲というような問題でお考えになっておるか、御説明願いたいと思います。
  8. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 今の全体というふうに印象を、お考えいただいたのはちょっと言葉が足りなかったと思いますが、当時私たちの出しました意見書にも、払込資本金四十億円というような限定をしたらどうかといったような意見も入っております。現在におきましても、企業全体に果して適用していいかどうかにつきまして多少疑問をもっております。ただいま引用いたしました公認会計士監査も来年から全面監査に入りますが、資本金一億円以上の会社に限られております。ですから、その点多少法律上、技術上に問題があるかとも思うわけでありますが、何らかの措置を講じていただきまして、漸進的にやっていただくというようなことならば、企業担保法制定も可能になるのじゃないかと考えております。
  9. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいまの御発言では、資本金四十億以上ということになりますると、わが国でも大会社中の大会社だけということになってくると思うのであります。それだけの大きなところであれば準備もできておるだろうし、信用度合いもあるであろうし、私はそういう大企業中の大企業だけを取り上げてこれを実施するということはどうかと思うのです。逆にそれ以下の人の方が、そういう点で非常に苦しみがあるのではないかと思うのですが、その点どういうふうにお考えになっておりますか。
  10. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) イギリスフローティングチャージという問題をここに引用いたしましたのも、現在イギリスフローティングチャージは、大体社債適用されております。社債を発行しておるような会社がこれに均霑するというようなケースが出ておるわけであります。おっしゃいます通り、小さな企業におきましても工場担保財団を組成する場合にも、かなり金がかかると思います。できるだけ範囲の広い適用になることが望ましいことでございますけれども、一時にそこまでいくことは少し……、何といいましても、日本におきまして、最初のこれは法制でございますので、多少そこに漸進的な面が加味されなければ、円滑には進まないのじゃないだろうかということを心配するといったようなことでございます。
  11. 阿具根登

    ○阿具根登君 興業銀行日高さんに御質問申し上げますが、ただいま堀越さんが言われたように、適用範囲という問題については、銀行でもそういうことを考えておられるのかどうか、あるいはそれだけでも銀行としてはまだ選択にも非常に困るし、範囲が広過ぎるから、もっと狭くしなければならない、そういうお考えであるかどうかお尋ねいたします。
  12. 日高輝

    参考人日高輝君) お答えを申し上げます。堀越参考人が言われましたように、広く適用されることが望ましいことと考えまするが、一面先ほどちょっと申し上げましたように、一般担保客体は、ただいまの考え方では、現預金、たなおろし資産、そういったものまで包括されるように承わっておるわけであります。従いまして、そういった短期資産を見合いといたしまして融資をいたしておりまする銀行側から申し上げますると、企業の規模の大小というような関係から、小さいものにつきましては、幾らか安心が薄らいでくるといったような感じは逆に出てくるのではないかというふうに考えますので、そこら辺をどの程度で線を引いたらいいかということははっきりわかりませんけれども、何かやはりあるところで線を引くということは必要であろうと考えるわけであります。
  13. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういたしますと、今この法律が出ておりますが、先ほどおっしゃいましたように、現在としてはまだ時期尚早である、こういうことになると思いますが、そうですか。
  14. 日高輝

    参考人日高輝君) ただいまおっしゃいましたように私は考えます。
  15. 阿具根登

    ○阿具根登君 法務省の方にお尋ねいたしますが、私どもこの法律案を見ます場合に、通産省が非常に急いでおる。急いでおるということは、特定八幡富士製鉄対象にして急いでおる、こういうことにしか考えられない。そうした場合に法務省としては、そういう関係は抜きにして、一番いい方法だと、法律だといっておきめ願っていると思います。ところが私どもが前のことを調べてみますと、昭和二十九年の第十九国会等におきましては、通産省の説明ではもう今すぐできるのだと、今にでもできるのだというようなことをいかにも安易に考えておられる。それが二年たった今日まだできておらない。ところが法務省の方では、できておるようでありますが、これらに対していろいろな意見が出ておる、こういう点につきましては、法務省立場からどうあるべきであるかということを一つ御説明願いたいと思います。
  16. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 企業担保法案につきましては、かねて経済界からの要望がございましたので、私どもの方で一応の試案を作りまして、これを発表いたしましたのが昭和二十九年の七月二十九日でございます。もとよりこの法律案は、わが国法制にとりまして画期的な法律案でございますために、一価におきまして経済界実情から遊離することのないように、また理論上また技術的に支障のないように慎重に立案をいたすつもりで、実はきわめて初期の段階であります参事官室試案という段階で公表いたしまして、各方面意見を聞いたわけでございます。関係官庁経済界及び学界に対しましてこの法案につきましての意見を徴したのでございますが、この機会にこの法案に対する各方面意見の概要を御報告したいと思いますが、その一つはただいま参考人からもお話がございましたように、かような法律案制定が時期尚早であるという意見でございました。この意見は主として金融界から出されたものでございます。その理由とされておりますのは、この企業担保法案による担保権効力が薄弱である。と申しますのは、担保権目的物流動性を与えまして、担保権実行のときまでは自由に担保権目的である債務者財産が出入りするわけでありますので、もっと債権との結びつきが、他の普通の抵当権に関する財団抵当などに比較いたしますと、はるかに希薄でございますから、その意味におきまして企業担保権効力が薄弱であって、必ずしも債権保全をこれだけでははかり得ないうらみがある。そこでこれを担保に取って金を貸す方の立場からいたしますと、こういう担保では安心できないという場合には貸さなければ済むわけでありますけれども、こういう担保制度ができますと、ある人にはこの担保で貸したが、他の人には貸さないということがやりにくくなる場合も出てくるし、銀行相互の間で無用な競争が惹起されるおそれもあるという弊害も考えられますので、か、えって融資の円滑を阻害するおそれがあるのではないかということが時期尚早論理由であったように記憶いたします。この論拠につきましては私ども必ずしも全面的に首肯いたすわけではないのでありますけれども経済界の複雑な事情によることでもございますし、何よりもこういう制度経済界に喜ばれる制度でなければ、新たにかような制度を作ることは望ましくないというふうに考えた次第でございます。  もう一つ意見は、企業担保法案による企業担保権を設定し得る、この制度を利用し得る債務者株式会社だけに限るべきである。企業一般に許すべきではない。株式会社だけに限るべきであるという意見であります。これも金融界、あるいは官庁方面からさような意見が出たのでございますが、この企業内容の弱小な、また信用度の低い企業について企業担保制度を許すということになりますと、金融の混乱を生ずるおそれがあるということが理由であったかと思います。私ども個人企業、あるいは会社企業にいたしましても個人企業の実態とほとんど異ならない会社もございますので、そういうすべての企業にかような担保制度を認めることは、個人財産と、企業を構成する財産との区別が必ずしも明確でない場合が多いと考えられますので、ある程度これを、債務者範囲を限定する必要はあるということは考えておりますけれども、逆に大企業については幾らも金融方法があり、必要なのはむしろ中小企業ではないか。かような制度を作るならば、中小企業に道を閉ざすことは好ましくないというような意見も出ておる次第でございます。なおこの点に関連いたしまして、ただいま参考人からお話がありましたように、株式会社で、しかも資本金四十億以上の会社に限るべきだという御意見、あるいは資本金二十億以上に限るべきであるという御意見、あるいは政令で定める株式会社ということにして、別途制限考えるべきであるというような御意見等もありまして、もっともこれらの御意見はさしあたりかような制限のもとに出発して、将来実情を見て、漸次緩和して行くのがよろしいというような意味でございますが、そういうふうな意見もあったのであります。もう一つ意見は原案に大体において賛成である。早急に実施する方がよかろうという意見でありまして、これにつきましては、官庁方面からそういう意見が多かったように記憶いたします。なおまた産業界からも、あまり高いところに制限を設けないで、なるべく広く一般産業界にかような制度の利用を許すべきであるというような賛成意見がございました。ただこの案はきわめてラフな試案でございますために、法律技術的にはいろいろな修正意見は出ております。  かように各方面から出ております御意見は私どもといたしましては詳細検討いたしまして、ことに金融界産業界との意見の調整が行われましたならば、かような画期的な法律制度でございますので、法務省に設けられております法制審議会にも諮りまして、理論的あるいは技術的な面から十分検討していただきました上で成案を得たいと、かように考えておる次第でございます。  先ほどお尋ねのありました富士八幡会社のために急いで粗雑なものを提案するというつもりは法務省としては持っておりません。
  17. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、まあちょっと極端な御質問になりますが、この法案審議する上において一番重要な点は、ただいまおっしゃいましたような意見が相当あると思います。私ども自身考えましても、そういう大企業、四十億以上のような大企業は私は金融の面でそんなに苦労されないと思う。もっとその下のところがうんと苦労するんだと、そういうことになってくれば、銀行側立場としてもいろいろな問題が起ってきて、早急にこの法案ができるとは考えられぬと思いますが、法務省立場から考えて、いつごろこれができるとお思いになりますか。
  18. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 私どもといたしましては、かような法案ができまして実施されますことは経済界のためにプラスになることでございますので、なるべく早い機会にかような法案成案を得たいと考えておりますが、ただ、ただいま申し上げましたように、いろいろ検討を要する問題もございますし、審議会に諮る等の関係もございますので、半年、一年という間に確定案を得ることはむずかしいかと考えておりますけれども、しかしなるべくすみやかに成案を得るように事務当局としては努力いたしたいと、かように考えております。いつごろになるかという見通しは、さような次第ではっきり申し上げかねます。
  19. 海野三朗

    海野三朗君 ちょっと今のに関連いたしまして、堀越参考人にお伺いいたしますが、四十億以上と言われましたが、その資本大小企業内容との関係についてはいかようにお考えになっていらっしゃいますか。資本金が大きくさえあれば、企業内容は大丈夫だというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。その辺ちょっとお伺いしておきたい。
  20. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 必ずしも資本金が多いからその会社がいいとは限らないと思います。当時、昭和二十九年の一月ごろでございましたが、当時の四十億と言っても非常に限られた会社でございます。そしてやむを得ざる場合は最大限資本金二十億円以上の範囲としてもよろしいということをこれにつけ加えておるわけでございます。大体当時の四十億円以上と言いますと、非常に限られた会社で、これはもう日本といたしましては、日本産業全体としてつぶすにつぶせないような会社だけだと言ってもいいような会社ばかりでございます。その後三十年にまた増資がございましたが、現在におきましては、かなりまた数はふえておりますが、大体その程度に限れば懸念はないんじゃないかと考えます。
  21. 海野三朗

    海野三朗君 そうすると、つまり時期尚早であるというお話も伺ったのでありますが、つまり資本金大小と、企業内容とは違うというお考えであらっしゃるのでありましょう、そうじゃありませんか。
  22. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 理論的にはそういうことになります。
  23. 海野三朗

    海野三朗君 違うから個々一律には行かないというお考えでありますか。
  24. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 理論的に申しますとそういうことになると思いますけれども、こういうふうに資本金をこの当時、限れば、現実においては銀行の心配しないような会社ばかりになるんじゃないかということです。
  25. 海野三朗

    海野三朗君 そういたしますと、そこに一定の限界がつけられないから時期尚早であるというお考えでございますか。当初一般にこれをもう少し拡大するには時期が早いという御意見のように伺ったのでありますが、そうしますと、そのワク内に入るものといたしましては、どういう、どのくらいの会社があるのでありましょうか。どうぞ参考のためにお聞かせ願いたいと思います。
  26. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) その数でございますが、会社の数ですか。
  27. 海野三朗

    海野三朗君 ええ。
  28. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) ちょっと今持っておりませんのです。はなはだ恐縮なんでございますが……。最近相当また増資がされておりますので、当時とよほど数が変っておりますので、ちょっと数字の点ははっきりいたしません。まあごく腰だめ的なこれは数字でありますが、もう少し具体的に考えれば、ここで委員会でも設けられて、そこで選別をされるということも、また一つの道でございましょう。かなりいろいろの方法があるのじゃないかと……。何らかの基準によってまず最初はそういう点で、この程度で大丈夫だと思われる会社に限ってすべり出す、そうしてだんだんこの企業担保法というものがよく運用されるという見通しのもとに漸次一般をならして行くといったような方法をとる方が、この法律そのものについてかえっていい効果を出すのではないかという考え方意見書でございます。  なお時期尚早という意見出しましたのは、これは金融界の方からお出しになったのでありますが、われわれといたしましても、当時、先ほど民事局長からお話がございましたが、素案としてお出しになりましたのは、株式会社だけに限られておりましたが、株式会社全部に適用するという御方針のようであります。それではどうも時期尚早だという意見になったわけです。
  29. 海野三朗

    海野三朗君 今の、法務省民事局長村上さんにお尋ねいたしますが、これは時期尚早であるという御意見に対しては、法務省としては、つまり資本金及びこの企業内容について、かくかくの様相を備えているところの会社というふうに限定されたならば、その法案の御提出はそうさして困難ではないのではないかというふうに思うのですが、御意見いかがなものですか。
  30. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほど申し上げましたように、時期尚早という意見もございましたけれども金融界並びに産業界におかれまして、ある程度制限のもとに実施するならばかような法案が望ましいということに意見の調整ができましたならば、技術的、理論的な面について検討を加えました上で、成案を得ることがさほどむずかしくないと、かように考えまして、大体におきまして経済界意見の調整を待った上で今後の立案作業を進めたいと、かように考えている次第であります。
  31. 海野三朗

    海野三朗君 そうしますと、そういう方面金融界意見をまとめて、まとまればこういう法案をもっとほかにも適用するようにやっていかれる、こういうお考えのように思いますが、そうしましたならば、努めて早くこの法案を作って金融方面の人たちの不安だと思われないような会社のみについて当てはまるような法案をあなたの方でお作りになるのが至当ではないのですか。ただ金融界の方で反対があるから、そいつは……と言って半年、一年、二年も捨てておくということではどうも私は感心できない。こういう法案は非常にけっこうな法案であるから、それならばこういう法案を作っていこう。その際に金融方面賛成のできない会社があれば、そういう会社はみなオミットをし得るような法案をお作りになるのがほんとうじゃないでしょうか。どうなのでしょうか、その辺の御意見は。
  32. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほども申し上げたのでありますが、金融界意見として四十億以上の資本金会社に限るならば、直ちにかような法案制定されても異存はないというような意向を表明されたことがあるのでありますが、四十億で線を引くことに産業界その他から、いろいろ異論もございますので、経済界全般の意見の調整をはかった上で立案いたすようにしておると、かように考えておる次第であります。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は少し違った考えを持っておるのですが、堀越さんにお尋ねいたしますが、銀行側が安心してできるようなところに線を引くということになれば、そういうところは銀行側だって今まで何ら不安のないということをしてやっておられるのだということになるわけです。特に法制局においては、これは株式なら株式全般といって出すのが正しいのであって、法務省側からこれからこれまでは不安だというようなことをやることは、これは全く私は不可能だと思うのです。ところが堀越さんの御意見では株式人会社全般ということは困るけれども、その中に銀行側が安心できるようなところがということになれば、企業日体に、企業の中に線をお引きになるのですか。それをちょっとお伺いしたい。
  34. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 先ほどからたびたび申し上げておりますように、当初からは非常に何と申しますか、せっかくわれわれが長年要望しておりました法律ができましても、それが適用のやり方いかんによって、そういう法律では困るということになって、かえって混乱を生ずるということがあっては困る。従って漸次こういう法律一般の人が馴致していくための一つの手段として多少そこに線を引いてもやむを得ないのじゃないか、こういう考え方で進んでおります。ですから、そのときに引かれても漸次ほかの方に及んでいくということはもちろん前提としてありますが、永久にそういう線が引かれるというわけではないと考えております。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 局長にお尋ねいたしますが、そういう法律案法律家として作ることが是であるか、非であるか。極端に申し上げると、私たちが間違っておるかもしれませんが、法律というものは全部をやはり包括した、みんなに潤いのある法律でなければできない。しかしその法律ができたからといって、これに対してその選択は銀行にあるのであって、銀行が貸しやすいように、間違いのない会社だけを選んで、こういうのを適用するということは、私は法的に見てどうかと思うのですが、専門家の局長はどういうふうにお考えになりますか。
  36. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 私ども事務当局といたしましては、昭和二十九年に発表いたしました試案の線、これが適当であろうと考えておった次第であります。ただかような法律案の性質上、経済界がこれを歓迎しないような法律では所期の効果を期待することがむずかしいと考えまして、できるならば、金融界産業界を通じての意見の調整ができた上で成案を得ることが適当であると、かように考えておる次第であります。
  37. 阿具根登

    ○阿具根登君 日高さんにお尋ねしますが、今でも財団組成で手続をしている場合でも銀行側ではこれは大丈夫だ、これはこれくらいしかできないということは自由に銀行側でおよりになっておると考えるのであります。そうした場合にこういう企業担保法ができて、しかも皆さんが安心して貸されるというような所だけ選べば皆さんの手数は何にもかからないわけです。しかし銀行側としてはそうではなくて、やはり全般の問題と大いににらみ合せて、むずかしいかもしれぬが、その中からこれは融資してもいい、これはできないというようなことをお考えになるのじゃないかと思いますが、その点いかがでしょう、銀行側として。
  38. 日高輝

    参考人日高輝君) 大体考え方と申しますか、扱い方は私、ただいまのお話通りだと思います。ただわれわれ銀行側といたしましていささか不安と申しますか、むずかしいと思われます点は、先ほどもちょっと触れましたが、一般担保特定担保に劣後するという点が問題でありまして、そこら辺の法律の実体自体にも若干の不安を持っておるということを申し上げておきたいと思います。
  39. 河野謙三

    ○河野謙三君 全くのしろうとでございますからちょっと教えてもらいたいのですが、企業担保法制定をいつどういう方法でやるかということにつきましては非常にむずかしい要素があるので、これは少し時間が私はあると思います。それが現在の日鉄法の廃止法の一部改正法律案、これが期限がかりに切れた。その間ブランクがありますね。そうすると現在の富士八幡にはどういう混乱が生ずるか、どういう弊害が起るのですか。これを一つ教えてもらいたい。法律期限が切れたままにしておいて、その場合にどういう混乱が起るのでしょうか。これを一つ教えてもらいたい。
  40. 日高輝

    参考人日高輝君) 委員長からお話がありましたように、この法律一般担保富士八幡の発行いたしておりまする社債並びに開発銀行融資をいたします開発銀行からの借入金、これに均霑することになっていると記憶いたしております。従いまして御質問のようなことでこの法律が八月四日でありましたか、切れますと、担保関係がなくなってくるのであります。無担保として扱われていくということになるわけであります。従いまして無担保による社債の発行なりあるいは開発銀行が無担保で貸付をやることができるかどうかということに関連を持ってくるわけでございます。なお両社の発行いたしておりまする社債は御案内のように市場に公募いたしておりまする関係から社債権者が非常に広範囲にわたっております。従いましてこの社債権者との関係におきましても今まで一般担保がついておりましたものが法律期限切れと同時になくなってしまうといった影響を及ぼしてくる、こういうことに相なると考えております。
  41. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、この両社には金融の道が全然断たれてしまうとこういうことにもなるわけですか。
  42. 日高輝

    参考人日高輝君) 端的にと申しますか、直ちに御質問のようなことになるとは限らないわけであります。そのときのいろいろな客観情勢その他を勘案いたしまして行われるということになると思います。これははっきり私にもわかりませんけれども、開発銀行の貸付金は無担保では扱いがむずかしいのではないかというふうに理解いたしております。
  43. 河野謙三

    ○河野謙三君 私の全くしろうと中のしろうとの意見ですが、開発銀行金融の道が断たれるということにつきましては、これらのむしろ国策会社的なものでありますから別途また方法を立てる道はあると思う。ただ、全然金融の道が断たれないとすれば、何もこの限定された両社のためにこういう法律期限をいつまでも延ばしておくということにつきましては、私は少しく法律の恩典が片寄っているのじゃないか、こういうふうに思うのですが、金融業者の立場から見て、これは具体的に教えてもらいたいのですが、私は金融の道が断たれないと思うのですがね、両社のこの現在の信用、実力から見て。これはたとえば興銀の場合、もしこの法案期限が切れたままで八月以降においてこの両社から金融の道を求められた場合には興銀は一体どういうふうな措置をとられるのですか。
  44. 日高輝

    参考人日高輝君) 興業銀行がそういう場合に融資をするかしないかという御質問のように承わったわけです。興業銀行は、おそらくただいまお話にもございましたように、この両社のような国策的な融資につきましては御協力を続けるだろうと思います。が、問題は興業銀行の貸付がいくかいかぬかということではございませんので、先ほど申し上げました社債権者に対しましてどういう影響がくるかということの方が私どもにとっては大きな問題であると思うわけでございます。申し上げるまでもなく社債権者はこの両社の発行しておりまする社債につきまして一般担保がついておるということで社債を買い持ちしておるわけで、従いまして、そういった優先担保のものがなくなってしまうということは社債権者に対しまして少なからざる不安を与えるということになろうかと思います。それはとりもなおさず信用の点に混乱を来たすということになるのではないかという意味合いにおきまして、この法律がかわりの企業担保法でございますか、何かかわりの救われるものとのつながりなくして廃止されるということは私どもにとっては非常に大きな問題であると、かように考えております。
  45. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、事実上この法案期限が切れたままでいけば社債発行は不可能になる、こういうことになりますか。
  46. 日高輝

    参考人日高輝君) この法律が切れたままでございますると、商社の社債の発行は困難になると思います。
  47. 河野謙三

    ○河野謙三君 そうしますと、事実上非常に混乱を来たすわけですね、両社の経営には。従って社債権者の方にも非常に迷惑があると、こういうことになりますか。
  48. 日高輝

    参考人日高輝君) さようなことにもなると思います。
  49. 河野謙三

    ○河野謙三君 はなはだ参考人の方に言葉じりをつかまえて失礼ですが、さようなことにもなるのじゃなくて、さようなことになりますか。
  50. 日高輝

    参考人日高輝君) さようなことにもなると思います。
  51. 河野謙三

    ○河野謙三君 ことにもなるし、ことにもならん場合もあるのですか。
  52. 小野義夫

    ○小野義夫君 ちょっと関連して。それは大へんな意外なことになります、と私は考える。それでは一種の社債というものは詐欺行為です。社債というものは担保が十分に確保せられて、その上に社債というものを発行しているので、突如として担保権が消滅するようなことになれば、社債というものは社債権者を欺いたことになって、これからできるできないの問題ではなくして、過去の社債に対する非常なゆゆしき大事件を起すと思うが、その点ははっきりしていただきたいです。どうでしょうか。社債の発行条件というのは必ずそういうような担保の裏づけあってのみ行い得るのじゃないでしょうか。
  53. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) この問題については民事局より御見解を求めたいと思います。
  54. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 企業担保法案ができます前に、日鉄法廃止法附則による法定の一般担保規定効力を失ってしまいますと、さような担保のない社債になってしまうわけでございます。ただ富士八幡会社のことでありますから、そのために社債の償還が不能になるという事態にまで至らないとすれば、現実に社債権者が損害を受けるということはないと思いますけれども社債権者の期待に反した事態が起きると思うのであります。今後発行する社債につきましては、全然担保のない社債というものは、現在の経済界実情といたしましては発行がむずかしいだろうと思われますので、おそらく富士八幡会社が今後社債を発行する場合、工場抵当法による財団抵当等を組成して、それを担保として社債を発行するということになるのではないかと考えます。
  55. 小野義夫

    ○小野義夫君 今無効になるとは申さないです、いやしくも債務を起しておりながら。それは無効になるとは申さないけれども、直ちにそれじゃ償還するというような、他の手を打てばよろしいけれども、漫然と公債の乗りかえとか社債の乗りかえをやろうとしても、それは担保権があるとして皆応諾しているのでありますから、経済上の実際問題としては、直ちに社債の償還に応ずべしということになった場合に、果してそれの経済上の運営がつきますかどうか。それは単に法律問題でない、経済上の大きな問題になるのです、金融上の。その点を私ははっきり参考人から言ってもらいたいのです。
  56. 日高輝

    参考人日高輝君) 私が先ほど信用に大きな影響を来たすと申し上げました意味は、ただいま小野委員からお話しになりました点と全く同じでございます。
  57. 阿具根登

    ○阿具根登君 堀越参考人にもう一点お伺い申し上げますが、八幡富士等の場合に財団組成の手続をするとすればどのくらいの期間が要るか、お教え願いたいと思います。
  58. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 一年ないし二年……、それから相当莫大な費用と、両方要ると思います。一年、二年といいますと、とうていそれは……。私は先ほど小野委員の仰せられましたような、いわゆる経済界をだまし討ちにするというような形になるという点が一番大きな点じゃなかろうかと思います。社債担保を、急に従来の担保があるものとして社債を持っている人たちの担保法律で抜いてしまうというような形になりますので、これは相当信用という面においても大きな影響があると思います。
  59. 阿具根登

    ○阿具根登君 今の質問はこの次の政府側に対する質問の準備でございまして、一応二年ということになれば、八幡富士に対してはすでに三年間という期限は与えられておったわけです。それでもそういう手続はしておられない。そのあとに今度は企業担保法というものが持ち出されてもう二年になる、こういう点に私は疑問があったからお尋ねしたわけでございます。どうもありがとうございました。
  60. 河野謙三

    ○河野謙三君 私はちょっと意見になりますが、どうもわれわれがこういう法案審議するに当って一番いやらしいのは、電気とか鉄とか石炭とかいうようなものは、何か政治権力と結びついたり特権階級のような扱いを受けている。こういうものが一日もすみやかに一掃されることをわれわれは望んでおる。いわゆる国民全体が一つの疑問を持っておるわけであります。でありますから、今混乱を起してまで私は事を踏み切っちゃいかんと思いますけれども、何かもう少し……こういう特定会社特定の権利を与えるなら、別途何かもう少し理解のしやすい形において私は法律的な措置をしてもらいたい。こういうふうに二年延ばした、また二年延ばした、また三年延ばした、今度また無期限に延ばしたというような形でなしに、もう少しすっきりした……基幹産業であってこれに特定な権利を与えることが必要であるならば、何かもっと別途すっきりした方法がありそうなものだ、こう思うのですが、法務省あたりどういうような御見解を持っておられますか。
  61. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 同様に考えております。
  62. 河野謙三

    ○河野謙三君 何か具体的にお考えはございませんか。何か別途こうもしたらいいだろうというような……。
  63. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この日鉄法廃止法附則規定にかわる措置として、別途どういうことをすればいいかという点については考えたことはございませんので、さしあたりお答えしかねますが、ただ先ほど申し上げました企業担保法法律になりますと、特定会社だけでなく、一定の規模で制限が置かれるにいたしましても、一般会社がそれを利用し得るということになりますので、ただいまの御質問の御趣旨のようなことになるかと、かように考えております。
  64. 河野謙三

    ○河野謙三君 私はこの際政府に申し上げたいのですが、こういう期限はあらかじめわかっておるのでありますから、期限のまぎわまでほうっておいて、そうして期限がきて、期限の直前にこういう法案を出されて、そうしてこの期限が切れたままでいけば混乱する、いわばわれわれは押しつけられていやおうなしにこれをのまざるを得ないという形になるわけです。こういう形ではなしに、本法案に限らずすべて法律期限のあるものにつきましては、延長やむを得ざる場合は、もっと事前に対策を立てるべきである、またわれわれにもっと前にいろいろな御報告があってしかるべきだ、かように思うのである。経団連の方としては、一応企業担保法というものの対策を要求しておられますから、それはわかりますけれども、政府当局がこういう形で、特に先ほど申し上げましたような、国民全体が一つの疑惑を持っておるような、特定な基幹産業に対してこういう措置を再び今後繰り返されることについては、われわれ非常に迷惑をするのであって、これは一つよろしく政府においても今後こういうような法案の取扱いについては、もっと疑惑の起らんようなふうに善処していただきたいということを特に私は政務次官にお願いしておきます。
  65. 川野芳滿

    政府委員(川野芳滿君) その点はまことに相済まない次第でありますが、何しろ企業担保法という問題につきましては大きな問題でございますとともに、所管官庁も相当各省にまたがっております関係上、今日まで立法化することができないことを非常に遺憾に存じております。しかしできるだけ早い目に研究いたしまして御希望に沿いたいと考えておる次第であります。
  66. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も河野委員と全く同じ意見を持っておりますが、この日鉄法廃止法の一部を改正する法律案をしょっぱなから考えてみますと、昭和二十七年三月二十八日に同僚議員の中川君から質問されて、政府提案は一年だったのを二年にしたが、これに対する政府の考えはどうだということをつかれたときに、政府は、これによって八幡富士も必ずすべて手続を完了する、また政府も極力鞭撻して再び延期をお願いすることはないということを言明されておる。それにもかかわらず、今お聞きしてみれば、一年か二年あれば必ずこの手続は完了できるはずだったのです、それを完了させなかった、鞭撻もしなかった、会社もしなかったということは、何か権力を背景にした、あるいは俗に言われておるように、通産省八幡富士の出店だということまで言われておる、それもまた私はやはり一つの世論かと思うのです。内容考えてみましても、通産省のお役人の方々がどんどんそういうところに就職されておる、そういう点から考えてみましても、国会のこの審議場において再び延期することはないと言明しておられる。しかもそれが延期になった、このときにはこの企業担保法なるものを出されておって、しかも徳永さん、あなたの口からこのときに何と言っておられますか、これは十九国会ですが、企業担保法は二十国会には必ず出します。それが目の前にぶら下っておるのに、これを期間切れにするのはまことに情ないからやってくれということを言明されておる。こういうことから考えてみましても、私は二十七年時代から、何か八幡富士に対しては、政府があと押しをしてやるとか、あるいは政府がこういうことを考えてやるということをにおわしておったからこそ、三年間は全然財団組成の手続はされておらないと思う。それならば全部政府の責任である、しかりでなかったとするならば、八幡富士の責任というものも私は重大なものだと思う。一年間でいいというやつを、わざわざ国会は二年間延ばしてやっておる。それにもかかわらず何ら手続はしておらない。しかも今度第三回目になってきたときには、今皆さんのお話をお聞きしても、ここ一年、二年ではできない。私は十九国会にもそのくらいのことは見通しを持っておられたと思う。それをこういうことになってくるということは国会審議を無視されておる。どの委員発言を見てみても、二回も三回もこれを延ばすということはあり得ないということをいつの場合でも念を押しておる。それに対して今次官が言われたようなことをみな答えられておる。こういう点から考えてみます場合に、私はまだ質問も残っておりますが、この企業担保法の問題は一番根本でありますが、第二義の問題でございます。そこで、そこまでして八幡富士を特別な待遇にしなければならないということになるならば、私たちは八幡富士に対してもっと検討したいからいろいろ資料をお願いしたい。なおまた企業担保法にいたしましても、小さい本はもらっておりますが、それ以外は何ら資料もそろっておらないから、法制局の方からもこれに対する必要な資料を全部提出してもらいたい。なお通産省側は、昭和三十一年三月末現在の八幡富士両社社債発行残高、金融機関別の借受金残高、こういうものを出してもらいたい。昭和三十一年四月以降の両社合理化計画並びにその資金計画、これも出していただきたい。それからわが国の鉄鋼業界における両社の地位、生産、従業員、そういう問題を一覧表として次の委員会出していただきたい。かように思いますが、その資料はできますか……。
  67. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) ただいま阿具根先生からおしかりを受けましたわけでございますが、これは前にも申し上げましたわけでございますけれども、実はこの前の約二カ年前のときに、ただいま阿具根先生からおっしゃられましたように、二カ年間延ばすことにしたいという法案は、実は私重工業局長をいたしておりました際に責任局長としてただいまありましたようなことを申し上げておりましたのですが、にもかかわりませず二年間にできなかったということ、これはまあ私の不明と申しますか、観測を誤まりましたことをおわび申し上げるよりいたし方ないわけでございます。ただ言いわけを申し上げるわけではございませんけれども、二年間ではできそうにもないにもかかわらず二年くらいでできるということは実は申し上げたつもりはないのでございますが、大法典ではございまするけれども法務省ではずいぶん御熱心な御検討をいただいたことでありまするし、まあ原案が、私どもから見ましても多少修正の余地があるといいますか、というような気もいたしましたけれども、その辺経済界の要請にも即し、ある程度の調整もできて、法案ができるもの、だろうと実は思っておりましたような関係から二年おひまをいただければというふうに実は思っておりましたわけでございます。その辺私の不明のいたすところでございますが、今回当分の間というようにお願いいたしました意味も長々と延ばすという意味ではございませんけれども法案作成に法務省が当られ、それに対する経済界の反応というものの状況から見まして私ども調整の余地はあるものとは思いますものの、しかし問題を決定しますかぎが、次に法務省におきましてどの種の修正をなさいますかということのほかに、経済界それ自体のある程度の変化といいますか、改善といいますか、というようなこと、そこから金融機関等の感覚、考え方ということもある程度のほぐれる道もある、そういう要素も含んでおりますので、また今度二年とか三年とお願い申し上げまして、万が一その期限がわずかでありましても超過するというようなことになりましては国会にも申しわけないということになりますので、そういう事情というものをとくと御了承いただきましてお願い申し上げたいということで実はただいま当分の間というふうに御提案申し上げたような次第であります。その辺の経緯の詳細というものは先般お配り申し上げました資料でもその気持は実は出したつもりでございます。私どもそれ以上何ものもないのでございまして、企業担保法が先ほど来御議論が出ておりますように、従来一般担保制度日本では電力会社とか、電源開発とか、日本航空とか、石油資源開発会社とか、帝都高速度交通営団とか、その他ありますが、いずれも特別法によりまする会社だけにその道が開かれております。これは便利だからそうしてあるということもあるわけでございますけれども、しかしこの制度というものは先ほど来議論になっておりますように、特別法によりまする、あるいは事業法のありまする会社というだけでなしに、広く適用するということ、これがわが国の産業、金融を円滑にし、金融界産業界両方が無用の手間、ひまをかけない、しこうして信用の確保はできるという、いわば世の中の前進になる道でありますので、そういう道をぜひ開いていただきたい。これはいつか申し上げたと思いますが、実は企業担保法というような法制通産省でももしできたら提案申し上げたいと思って、実は研究も始めたわけでありますけれども、ところがあまりにもむずかしい専門的な法律でございますので、もちはもち屋でございますので、法務省にお願いしたというようなことでございますので、私どもこの種制度を少しでも幅広く日本産業界金融界に利用されることを実は切望いたしておりますし、しこうして法務省もそれに本腰を入れてお立ち上りいただいておりますので、一日も早くできることを実は期待はいたしておりますが、今後私どもといたしましても、まあ一番便益を受けるといいますか、日本産業界が便益を受けることにも相なりまするので、今後の法案の進捗を早めるお手伝いは及ばずながら申し上げて、金融界産業界との歩み寄りで利用調整ができますように、漸進主義でもできるように私ども切望いたしておりますような次第であります。従いましてそう長くというわけでもありませんし、さりとて前例にもこりておりますし、また世の中に、先にどういう変化があるということもわかりませんし、そこらのところで一応問題の性質をおくみ取りいただきまして、当分の間ということにさしていただいたことを御了承いただければ幸いかと思っております。さような次第であります。なお今御注文がございましたような資料につきましては、現在ある程度、たとえば富士八幡両社がどの程度社債出しておるか、あるいは借入金があるかというようなデータは、若干のデータも持っておりますわけでありまして、なお項目に応じまして調製いたしましてお示し申し上げたいと思います。
  68. 上林忠次

    ○上林忠次君 通産省の方に質問しますけれども、こういうようなことは、アメリカでも英国でもやっている一つ制度が今出ておりますが、これは何ですか、向うではある業種、基本産業とか固定資本の特に大きな産業とか、特殊な企業に対してやっているのか、全般に対してやっているのか、私はまあ現在行われておりますような、ああいうような政府資本の入ったような会社日本ではやられている。将来は全般に及ぼしたい、しかも資本程度もなるべく小さいところの企業まで及ぼしたいというような気持がありますが、まあ先ほどの話のように今の鉄鋼界だけを見ましても、二企業の調査をするのに二年もかかる、あるいは一年かかるということになりますと、早くこの調査もしなくちゃならぬ、調査したところでいざやるとなってもなかなか小さい企業まではこれは行き届かぬ。それならば早く特に日本の産業を復興するのにはこれは必要だという産業を、一つカテゴリーを作って、これをまずやって行く、しかも資本程度も相当大きいところ……、小さいところもどの程度まで行くか、通産省の気持はわかりませんが、小さいところまで行こうとするならば、これはそういうような制度ができましてもとても問題にならぬ、十年も後にならないとそこまで資本が流れて行かぬというようなことになるのじゃないか。それならばもっと今からその見当をつけて一応大くくりするか、どこまで行くかという目標を立てて、今から調査をしてもらうということにしないと、せっかく法律ができても何にもならぬのじゃないかと思うのですが、外国の状況……やろうと思うならばどの程度企業規模までやるのか、そういうような点は前にお話があったかしれませんが、私あまり出ていませんので、前にお話があったらあとから記録を見まするけれども、ないならばそういうようなお話を願いたいと思います。
  69. 徳永久次

    政府委員(徳永久次君) 外国の制度なり、それの実際適用範囲につきましては、興銀の方にお越しいただいておりますので、なお正確なところがおわかりと思いますが、私ども常識的に承知いたしております範囲で申し上げますれば、英米では社債には適用されるが、先ほど来議論のありましたような、企業の大きさをしぼるというような制度といいますか、そういう法律はないようでございます。実際上、社債出しまする範囲というものがおのずから信用度の高いところというふうな限定も事実問題としてはあるということはあると思いまするけれども法制的に区切っておるということはないのではなかろうかというふうに承知いたしております。  それから実際にこの制度を作って広い範囲に及ぼすのに一年も二年もかかってはというお話がありましたが、先ほど御議論のありました八幡富士にあと二年くらいなければ困るというお話が出ておりましたが、二年という意味は、これが期限が切れまして、一般の工場財団に切りかえるといたしますと、資産内容も膨大なことでありまするし、それの調査及び登記等の手続に二年くらいかかるだろうという趣旨でございます。法律を今後作るといたしまして適用範囲をどの程度にしたらいいかということのために、各会社を一々調べなければならぬという問題ではございませんで、八幡富士を切りかえるのに二年かかるから、一億以上の会社にしたら五年も十年もかかるという問題には相ならないと思うのです。その辺は金融機関としまして、この辺以上の企業であるならば、そう不安なしに貸せるというふうにお考えになる範囲がどの程度であるか、産業界としまして、少しでも幅広くする意味において、この辺までできないかというような金融界産業界意見交換といいますか、というような調整の問題なり、法案それ自身の一部の修正なりその他の問題、そういう問題で大筋で片づけ、あとは細目的な立法手続といいますか、というようなことになるわけでありまして、漸進主義で行くという、かりにそういう方向になりました場合に、そのために五年も十年もかかるということではないのではなかろうかというふうに思います。
  70. 小野義夫

    ○小野義夫君 堀越参考人に承わりますが、もうこれはかえって私が研究が足りないのかもしれませんけれども、経団連、あるいは金融界でこの問題は非常にむずかしい問題でありますけれども、非常に急ぐ問題でもあると思うのです。そこで、ある程度の綱領とか何とかいうものができていらっしゃいますか、まだその程度ではないのでございますか。
  71. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) この前、民事局の方から御提案がありました法律の検討をいたしましたときに、多少のその法律修正意見は作っております。しかし、金融界産業界とはその点において意見は一致はいたしていないのであります。しかし、その後、昨年はほとんどこの問題が提起されませんでしたが、その後あまり研究されておりませんので、今日のように正常化した経済を前提にしてこれから検討していくべきではないかと考えておるのでありまして、現在どういう具体的な案があるかとおっしゃられますと、ちょっと持ち合しておらぬということであります。
  72. 小野義夫

    ○小野義夫君 まあ経済団体連合会は、金融業者も含んでの大きな団体でありますから、これは至急に一つ意見を両方をまとめて、骨子を政府に御提示を願うということは、私どもこれはなかなか、経済上の問題、あるいは法律上の問題、金融上の問題と、非常に多方両にわたっての問題でありますから、よほど慎重にやっていただきたいということが一つと、そかれらいかにも今のこの抵当法——この工場財団法は、実際、金を借りる者の方からいうと、たとえばあまりにも微に入り細に入っておって、一つのモーターとか、あるいはトランスを取りかえるにしてもいろいろ前の廃棄手続をして、今度新設をやると、あらゆるその登記面の動かしをしなくちゃならんというので、今資本金大小とか、信用程度のいかんというのでなく、一体これは最後のときに働く物的の工場財団などは、おそらく受け取ってみたってもうその働く場合は、債権者のけんかの問題の一つの武器にすぎないのであって、経済の実態からいうたら、こういうものを実行するなどというときば、もはやその会社は存続しないような場合でなければならないのですから、そこで私ども一般的にこの経済上の信用というものは、特別の場合において、まあ債権者が必要と認める場合、あるいはぜひともこれは危険があるけれども貸すのだから、他日のけんかと申しますか、債権の行使、優越権をとっておかなければならんとか、あるいは社債発行にはもっと簡単な方式で、総括的な、いわゆる財団の担保でやるとかいうようなことで、特例も要りますけれども、今の資本金何十億とかなんとかいうのは、そういうところの資本金もしくは信用度のいかんというようなことは、これは実際に金を貸す場合に参考となるのでありまして、事実上の担保権というのは、信用の有無にかかわらず、今日信用があっても、明日信用がなくなると思う。信用というものは動揺するものです。従ってある簡略な方法担保を設定しておいて、それの増減変更等も非常に簡便にやっていただくというのでないと、これは実際経済の活動に非常な不便が——旧式な、いわゆる地所を揖保にしたときのような考え方で、今日、たとえば、テレビジョンの設備とか、あるいはラジオの設備とか、その他無形の特許権、いろいろな有形無形を包含した一つ企業団体というものが担保力を形成しているのだから、そこでそういうふうなもののある極の物件、モーターとか、あるいはトランスとか、あるいはロールとか、そういう今日やっているようなこまかいものは一切この際改善すべきではなかろうかという考えなんです。そこで今企業担保、けっこうでありますけれども、同時に不可分なものは、やはり今日の工場財団法を、資本のいかんにかかわらず根本的に改善するようなことが考えられていないでしょうか、どうですか。その点も一つ経団連の御意向を承わりたい。
  73. 堀越禎三

    参考人堀越禎三君) 工場財団法の改正につきましては、かなり前から検討いたしていろいろ法務省とも連絡いたしております。なかなかむずかしい問題でございますので、できるだけ今後とも努めていきたいと考えております。先ほどの金融界と財界との話し合いということは、私どもの方の会員でございますから、できるだけ早く企業担保につきましてはその話し合いを進めていきたいと思っております。
  74. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 参考人に対する御質疑はございませんか。
  75. 海野三朗

    海野三朗君 もう一つ私がお伺いしたいのは、旧日鉄に対するこの法案の必要なことはよくわかります。また金融内容も詳しく承知しております私は、これはぜひ必要であると思うのでありますが、これを国家的見地から見ました際に、この条件に当てはまる会社がもっとほかにあるはずだ、それであるのにこれだけを通すということは国家的に見て妥当ではない、ほかのものはどうしたのだということについての疑問が第一点なのであります。ところがその疑問に対しましては、経済団体連合会の方と金融方面とが意見が合わないから、こういう御意見でありますが、そういう際にはこのいわゆる最大公約数と申しますか、この法案適用し得る会社がほかにもあるべきはずであるから、それをも包含したところの法案を早く作っておくべきはずではなかったか、それがじんぜんとして今日まで延びておるのだということでありますから、ここに私は政府当局の怠慢と申しますか、通産省の怠慢と申しますか、とにかくここに私は非常な不合理を覚えるものであります。で、こういうことについてはできるだけ早くというお考えがありますけれども、もう少しこの方面に政府当局が御勉強なさって、そうしてこの法案に適合するような、いわゆるこの企業担保法案というものを適用し得る会社の現在の状態を直視して、そうしてこの法案をもっと広く活用されるようにすべきものではないか。こういうふうに私は思うのでありますが、この点に対して政務次官及び法務省民事局長に御所見を承わりたい。
  76. 川野芳滿

    政府委員(川野芳滿君) 通産省といたしましても、先ほどお答え申し上げましたように、できるだけ早目にこの企業担保法制定いたしたい、こういうふうに考えまして所管庁である法務省とも実は連絡をとっておる次第であります。しかし御承知のごとく非常に経済界等に及ぼす影響も大でありますために、従っていまだに意見の一致を見ていないという現状下でございます。従いまして法案作成が非常におくれましてまことに恐縮に存じております。しかし御要望等もございましたのでできるだけ一つ関係各省が相談いたしまして御期待に沿いたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  77. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 法務省といたしましても、できるだけすみやかに経済界における意見の調整をはかりまして成案を得たいと考えております。
  78. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  79. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をつけて。  これをもって参考人に対する質疑を終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それではさよう決定いたします。  ごあいさつを申し上げます。冒頭にも申し上げましたように、また質疑の過程においても明らかにされましたように、日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案審議をいたしております当委員会といたしましては、かような便法による法によっていつまでもこれを引っぱっていくことは許されない事情にかんがみて根本的な検討をいたしている次第でございます。その審議参考に御意見を求めましたところ、非常な御多忙な中を長時間にわたりまして、しかも本会議の進行等の都合でずいぶんと時間をお待たせいたしましてまことに恐縮でございましたが、貴重な御意見をそれぞれ御開陳いただきましてまことに委員会といたしまして幸いに存ずる次第であります。委員会を代表いたしまして深甚なる謝意を表したいと存じます。どうもありがとうございました。  速記をやめて。   〔記速中止〕
  81. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記をつけて下さい。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十七分散会