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政府委員(徳永久次君) 日鉄廃止法につきましては、先般
提案理由で経緯は申し上げましたわけでありますが、この前
法律を二年間延長していただきまして、これで間に合わなかった事情につきましては、
提案理由でいささか尽し足らない点がございますので、これを補足します趣旨で、実はお手元に「
企業担保法について」という
説明書をお配り申し上げましたのでありますが、これについてごらんいただきますると、その経緯がおわかりいただけるかと思うわけでございます。かいつまんで申し上げますると、実は
企業担保法を何とかして作りたいということで、前に
通産省がそういうことを
考えましたんです。
企業担保法がなぜよろしいかと申しますと、現在の財団抵当制度と申しますものが非常に繁雑な手続と
費用ばかりかかり、また抵当権の
目的となります物件が限定されておったりしておりまするが、ところが
企業の担保力と言いますものは、単にその工場の物的資産ばかりではないわけでもありまするし、さらにその
企業の経営力とか信用力とかいう広い意味のものも大きな要素をなしておりまするし、また物的な
内容も実際にはしばしばこの
内容の変更があるわけでございまして、現行制度によりますと、担保に組成しましたものがまたちょっと動きますと手続を受ける、一々現況を明らかにするような手続をとらなければならないというふうに非常にめんどうくさいものでありまして、近代の進みました近代工業と言いますか、大規模の
企業体に対する担保制度としては適切を欠くという面がございまして、外国にはそれに相応する制度がイギリスではフローティングチャージという制度であり、フランスでは営業質という制度であり、アメリカにおきましてはブランケットモルゲージというような言葉で呼ばれておりますが、いわゆる
一般担保制度というものがあるわけでございまして、そういうものをまねたことを日本でやりたいということが骨子であります。そのために実は法務省で二十九年でございましたが、これの
一般的な
法律が五十一ヵ条からなりまする実は
法案ができまして、この
法案の骨子といたしておりまするところは諸外国の制度にならったものでございまするけれども、株式
会社につきまして、その総財産をこの対象とする、そういたしまして、その担保の
内容といたします総財産と申しますのは、将来にわたって
企業に属する有形無形の経済価値の一切が対象となるものでありまして、
内容が変っても変ったものに効力を及ぼすということになっておりまして、その手続は非常に簡単でございまして、この
一般担保制度を設けておるということが登記されておればよろしいということで、物品の一件々々について登録する必要はない、従って変動があった場合も一々書きかえる必要はないという仕組みのものでございます。これが実はできまして広く各界の
意見を聴取することになったのです。物事が非常に画期的な
法案でありましたために、また全然日本で新しい制度でありましたために、法務省はこのためにわざわざ
法案を作り、
法案解説書まで実は出しまして、それを各界に流しました。流しまして、各界の実は
意見をまとめました。そうしましたところ、これにつきまして、詳細にはこの中に書いてございますが、金融機関側から、いささか時期尚早ではないかという
意見が出まして、それが産
業界と金融界との調整が経団連でいろいろと相談をなされたわけでございますが、とうとううまく調整がつきませんで、法務省が経団連にたのみました期間内に返事ができないというままに至っております。実は
通産省にも
通産省としての
意見を求められたわけでありますが、
通産省も実は法務省の
法案は大筋は非常にけっこうなのでありますが若干行き過ぎではなかろうかという面の
意見を出しました。その金融機関が時期尚早と申しました
意見の趣旨と言いますのは、法務省の原案によりますると、およそ株式
会社はすべて
企業担保法の対象になり得る、
企業担保、
一般担保が設定できる、それをどの
会社に認めるか認めないかは金融機関が選択すればよろしいという建前に実はいたしてあるわけでありましたのですが、ところが金融機関から申しますと、まあ
会社は御案内の
通りピンからキリまでございまして、資本金二十億円以上の
会社もございます。
会社の数につきましてはおそらく四、五十万くらい
会社の数としてはあるわけでございます。まあ相当の
会社にしましても金融界から見ました場合には問題があるわけです。全部の
会社が株式
会社であれば
一般担保制度が認められるという仕組みになることは、このまだ戦後十年たったとはいえ
企業の経営者といいますか、信用力から見て、まだ問題のある時期なので困るのだ、それとうらはらになりますけれども、
企業全体の信用力の弱い状況のもとで
一般担保制度のように財産の中身、その
企業の持っております財産の中身というものがいつでもかわり得るというような仕組みというものは物騒だ、不安だというような御
意見が出ましたわけであります。私どもその点につきましては
通産省としましても、その趣旨の感覚は私どもある
程度理解がいくわけであります。
通産省も実は法務省に対しましては実にいい制度でぜひやらなければならない制度ではあるのだけれども、戦後の今の状況から
考えれば漸進主義で
考えて
適用範囲というものをしぼって
考えるというのが実際的ではなかろうかというような
意見を実は出されたような次第であったのです。まあそれをどういうしぼり方をしますか、技術的には若干問題があるかと存じますが、資本金のたとえば二十億以上の
会社というか、あるいは十億円以上の
会社とか、まあ金融機関がその
程度の大きさの
会社であれば、その
企業の
設備そのものを担保にとらなければ安心して金は貸せないという感覚ではなしに、その
企業の全体の経営力、全体の力というかというものを相手に金を貸すという経営者に対する信頼感とかいうようなものから見て、間違いなしにやれるという範囲にとどめる、それをずっと下の、限界線は別としましてかりに下の方を
考えてみますとまあ差しさわりがあるかもしれませんが、かりに一千万円の
会社について
考えますれば、金融機関のセンスから見た場合に、一千万円の
会社でも、金融機関として物的担保をとらなくても金が貸せる、あの経営者であり、あの経営ぶりであり、あそこの
企業の
生産の品物の信用力、技術力等から見てというケースもありましょう。が、しかし物的担保をとらなければ物騒だという
企業もあるということは御想像いただけるのであります。その場合金融機関の立場から申しますと、同じ大きさの外見上一千万円なら一千万円という
会社につきまして、Aには認めた、Bには認めないということが、金融機関の立場でやり得るはずだとは言いながらこれはなかなか実際問題として新しい制度を認められると新しく特権が認められたがごとき印象を与えて
差別待遇をしたようにとられるというようなことからいきかねる場合があるというようなそういう観測も出ております。それが一口に言いますと時期尚早であるということであります。その間何らかの調節ができればまたそこにおのずから
意見も変るという余地もあろうかと思うわけです。原案はその辺がおよそ株式
会社であれば全部認めるというような案でありました。さようなことで実は昨年の夏ごろまでには
関係各界の
意見も出て、この国会にはこの
法案が出せるかなあと思っておりましたのが、そういう事情で経団連、産
業界との調整も行われたようでございますけれども、うまくまとまりませんで、その結果この国一会に間に合わなかったという経過をたどっております。まあ私どもこの問題につきまして金融界のこういう制度が非常にけっこうな制度であるということは原則論的には
異議がないわけですが、日本の現状に照らし、原案ではいささか時期尚早であるということを
考えているというのが問題の分れ目でございます。今後行うのにどういう
修正をいたしますか、その調整の余地もあろうかと思いますし、また世の中も御承知の
通り昨年の秋以降金融情勢等も急速に変化、転回しつつあるという情勢もありますので、この状況等にかんがみまして、金融界産
業界等の調整も若干の時間の経過の途次における世の中の移り変りの過程によりまして、おのずから解決し、また原案をある
程度修正するといいますか、大筋を生かしながらこれを
考える場合にどういう
考えをとっていったらいいかという妥協のつけ方もありますが、そういう問題等において何らかの解決をはかりまして、百パーセント欲ばらないでいきますならば、この
法案を私どもは成立させ得るし、成立させることが日本の産業金融を円滑にする大筋だと実は
考えておるわけであります。この結びに書いてございますが、実は私どもこの
法案が法務省で相当案の作成が進捗していることを承知しているものですから、あれだけ進んでいるならば、二年のひまさえいただけば簡単に
法案が国会に提出され、
通り、
施行されるというふうに
考えておりましたのですが、今のような事情によりまして、この
法案が若干えんこしているというような、原案
通りとはいかない、また多少世の中の変化も現われているというような状況に相なっております。さような結果といたしましてこの
法案ができますれば、
提案理由等で御
説明申し上げておりますように、当然に八幡、富士は
企業担保法の
適用を受ける
会社となってこれは何らの御
異議がなかろうと思う。私ども八幡、富士が
適用を受けるばかりでなしに、日本の相当の産業がこの制度の
適用を受けて、今まで無用な手間ばかり、金ばかりがかかっておる日本の担保制度の不備というものを補って、産業金融の円滑に資したいというのが私どもの念願でありますので、問題の見通しを私ども誤まりまして、二年間としましたことは私どもの不明のいたすところでございますが、しかし問題の性質にかんがみまして、ぜひこの
法律はできなければならない。またできる可能性があるものと
考えますので、しこうしてその要件が金融情勢なり経済情勢の変化と若干のからみ合う点もございますので、あと一年したら大丈夫です、二年したら大丈夫ですというふうに今言い切りますことはいささか当を得ないというふうに
考えまして、と申しましても五年も十年も先にしかこの
法案はできないという性質のものとは私は
考えていないわけでありますけれども、そこらの感じからこの前のときに二年間と申したのですが、今度の
法案では当分の間というふうに書きました趣旨はさような趣旨からきております。以上でございます。
この辺の
企業担保
法案をめぐりました問題点、うまくいきませなかった事情、
内容、問題の性質というようなことのこの資料をお読みいただきますれば御了解いただけるかと思います。
提案理由でいささか
説明の不十分と申しますか、筋だけを申し上げました、具体的な経緯等の
説明が足らなかった点があったかと存じます、補足の意味で資料を作りました次第でございます。よろしくお願いいたします。