運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-02-24 第24回国会 参議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十四日(金曜日)    午後一時三十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三輪 貞治君    理事            高橋  衛君    委員            上原 正吉君            西川彌平治君            白川 一雄君            深水 六郎君            阿具根 登君            海野 三朗君            藤田  進君            上林 忠次君   政府委員    内閣官房長官  根本龍太郎君    人事院総裁   淺井  清君    人事院事務総局    給与局長    瀧本 忠男君    通商産業政務次    官       川野 芳滿君    通商産業省軽工    業局長     吉岡千代三君   事務局側    常任委員会専門    員       山本友太郎君   説明員    通商産業省通商    局次長     佐藤 清一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○輸出保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○派遣委員報告経済自立方策に関する調査の件  (科学技術行政に関する件)   —————————————
  2. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ただいまより本日の委員会を開きます。  まず初めに輸出保険法の一部を改正する法律案議題といたします。政府側より提案理由趣旨説明を願います。
  3. 川野芳滿

    政府委員川野芳滿君) ただいま提出されました輸出保険法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。  御承知のように、昭和二十五年に輸出振興目的といたしまして、輸出保険法が制定せられまして以来、数度の改正により現在普通輸出保険のほか五種類保険制度を実施しております。しかし、最近におきまして中南米東南アジア等に対する本邦人技術提供及び現物出資等による海外投資が盛んに行われる実情にかんがみまして、これらの対外取引において生じます危険の一部を、保険によってカバーして本邦人対外取引を促進いたすために、現行輸出保険法所要改正を加えるものであります。  次に、改正点概要を御説明いたします。改正点の第一は、目的拡大であります。現行法目的は前にも申しました通り、物の輸出振興することを中心としておりますので、前述のような物の輸出とは必ずしも関連のない対外取引の発達をはかるためにはこれを広げる必要があります。  改正点の第二は、輸出代金保険制度拡大いたしまして、物の輸出に伴わない技術提供及びこれに伴う労務の提供をこの保険対象とし得ることとした点であります。これによりまして海外における建設事業請負等輸出代金保険対象となり得る次第であります。  改正点の第三は、海外投資保険の創設であります。この保険は、(一)、海外投資を行なった者がその海外投資によって取得した株式その他の持分を外国政府またはこれに準ずる者により奪われたこと、(二)当該海外投資を受け入れた外国法人が、戦争革命または内乱により損害を受けて解散した場合において、海外投資を行なった者が、当該株式等処分したことまたは当該外国法人の清算が結了したこと、(三)当該外国法人が、戦争革命または内乱により損害を受けて一定期間以上事業を休止した場合において、その事業の再開前に、海外投資を行なった者が当該株式等処分したことによって受ける損失を填補する保険制度であります。以上のほか、これらの改正に伴いまして若干の技術的改正を行なっております。  以上が今回の改正概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いたします。
  4. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 本改正案内容説明を願います。
  5. 佐藤清一

    説明員佐藤清一君) ただいま政務次官から提案理由を御説明申し上げましたが、その内容につきまして若干補足して申し上げたいと存じます。  改正趣旨でございますが、現在一般の貿易振興をはかりますために、六種類輸出保険制度が行われております。ところが最近中南米東南アジア地域に対しまして合弁事業への出資、あるいは技術提供建設事業請負等、種々の経済進出が多くなって参っておることは御承知通りでございます。それらの経済進出につきまして不測の事故が発生いたしました場合、その損失をカバーいたしまするために海外投資保険制度を創設し、または現行輸出代金保険制度拡大するために、輸出保険法改正を行おうとするものでございます。  次に、改正内容につきまして御説明申し上げます。まず第一に海外投資保険新設でございますが、この制度によりましてカバーされます担保危険は、まず外国政府による株式の没収、収用あるいは戦争内乱革命等による企業の解散または一定期間以上の事業休止がありました場合に、株式等の喪失または処分によって損失が発生した場合これをカバーしようとするわけでございます。で、その填補率差しあたり損失額の五〇%を限度としてきめることにいたしております。で、填補される損失限度でございますが、これは法律案によりますと、非常に複雑な書き方がしてございますが、これを要約して申し上げますならば、投資額あるいは時価のいずれかの低い方から受け取り済み配当金補償金元本処分金等を差し引いた額を限度とするということになっております。料率は一年につきまして、大体契約保険金額百円につきまして一円五十銭というところで定めたいと存じております。  次は、輸出代金保険制度拡大でございますが、輸出代金保険制度は、プラント輸出代金、またはこれに伴う技術提供対価対象といたしておりますが、これを拡大いたしまして、プラント輸出を伴わない技術提供対価及び海外建設請負代金等対象に加えたいと考えております。この場合填補率損失の八〇%を考えておりまして、従来のプラント類につきましては九〇%でございますが、これは若干物の輸出を伴っておらないという点におきまして危険率が多いということも考えまして八〇%といたした次第でございます。なお、料率につきましても、従来のプラント類の場合におきましては、プラント類におきまするものに比較いたしまして五〇%増しを考えております。  次に、本制度改正と三十一年度の予算関係でございますが、輸出保険引受限度特別会計予算総則規定をいたしておりますが、その引受限度に対しまして輸出代金保険制度改正によるもの四十億円、海外投資保険新設によるもの三十億円を新たに追加をいたしたいと存じております。  なお、この制度は全く新しい制度でございますが、根本的に考えますと、従来のプラント類輸出と実質的においては非常に関連の深いものでございまして、海外投資を行います場合、それに伴って必ず相当額プラント類輸出がその結果相関連して行われるという実情でございます。  なお、本制度改正につきまして諸外国立法例等も参照いたしてみましたのでございますが、最も参考となるべきものは米国のMSA援助法による海外投資に関する保険制度でございます。  なお、本制度填補率が非常に低いこと、あるいは料率がやや高いこと等につきまして、業界方面でも問題があるのでございますが、これにつきましては何分新しい制度でもございますので、今後の運用の実際によりまして十分この点は考慮いたして参りたい、このように考えております。  概略本改正内容につきまして御説明申し上げた次第でございます。
  6. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 本案の質疑は次回から行うことにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それではさよう決定いたします。   —————————————
  8. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に、派遣委員報告議題といたします。  まず第一班から御報告を願います。深水六郎君。
  9. 深水六郎

    深水六郎君 それでは第一班の視察報告をいたします。派遣されました委員深水委員藤田委員の二名でありまして、二月十三日から十六日までの四日間をこれに充てたわけでございます。  まず、視察しましたところを順次申し上げますと、大阪南部綿織物工場、堺市、尼崎市の中小機械工場尼崎市の地盤沈下状況広畑製鉄所及び関西電力の尼崎第一発電所姫路火力発電所でありますが、このほかに百貨店問題及び機械工業関係につきましては関係者意見を聴取する機会を得ることができたのであります。  次に、各視察個所について御報告いたしたいと思いますが、報告の便宜のために繊維関係機械関係百貨店関係最後尼崎市の地盤沈下状況という順に御報告いたします。  第一に、繊維関係でございますが、今回参りましたのは、大阪南部機業地でありまして、当地の規模は協同組合の資料によりますと、組合員数四百四十八名、機械台数二万三百十七台、平均の台数が四、五台ということになっております。なかんずく十台未満業者が四〇%、五十台未満が八〇%を占めているのが実情でございます。敷布業者に至りましては全部が五十台未満、十台未満は七四%という零細なものでございます。従いましてその生産は紡績及び商社の賃織が半分以上となっております。ここではきわめて短時間でございましたが、当地といたしましては比較的大きな工場でございましたけれども、紡織兼業工場と織布専業工場視察し、その後関係者から若干の要望を聞きました。そのおもなる点を申し上げますと、第一点は、繊維設備調整の方法としては、紡錘については買い上げよりも格納だけにした方がやりやすくなるだろうというような意見でございました。  第二点は、法律繊維設備調整することには賛意を表するが、旧設備買い上げてもらって新設備に入れかえたいということでありました。  第三点は、買い上げ資金業者負担分についてでありますが、織布業者は十台未満業者相当数あるので、十台未満のものに対しても負担してもらえるよう明確にしてもらいたいということでございました。  第四点は、繊維設備調整は、長い期間にわたって実施するのでは、その効果が非常に少なくなるであろうと思われますから、きわめて短期間の間にできれば一年間でやってもらえるように希望するということでございました。  次に、機械工業関係でございますが、機械関係としましては、堺市のミシン中釜製作東北工作所尼崎市内歯車メーカー、大阪製鎖造機及び工作機械メーカー大日金属の三工場視察し、後、関西の機械業者代表方々から、機械工業振興に関する意見を聞いたのでございますが、そのおもな意見を申し上げますと、機械工業振興に関する法律が考えられる場合には、次の点を考慮してもらいたいというのであります。  第一点は、機械工業界担保力も少く、機械も陳腐化しているので、開発銀行融資の条件を緩和して、特に増し担保とせずに、持ち込み担保にしてもらいたいという点でございました。  第二点は、特に中小企業の多い機械工業界においては、設備更新資金がありませんので、資金のあっせんを強力に行い得る措置を盛り込んでもらいたいということでございます。  第三点は、審議会の構成はその人選に慎重を期し、中小企業者意見を反映できるようにしてもらいたいという点でございます。  第四点といたしまして、認定工場制度が盛り込まれるといたしますならば、業者にとってはきわめてデリケートな問題と思われますから、これが運用に当っては、特に注意してもらいたいという要望が出ておりました。  ついでに申し加えますと、中小企業に対する政府援助は、実際には効果が少いというのが過去の通例でありましたが、今回は特に中小企業の育成ということに重点を置いて考慮してもらいたいという意見もございました。  第三は、百貨店関係でございますが、百貨店関係につきましては、大阪商工会議所で、百貨店側代表者小売商側代表とに分けまして、別々に意見を聴取いたしました。その主なものを簡単に申し上げますと、まず百貨店側では、第一といたしまして、局部的な制限法を作って、百貨店を押えるのではなくて、逆に中小商業を伸ばし、百貨店に負けないよう積極的に育成してやるべきであり、そのためには百貨店法よりもむしろ商業法ともいうべきものが必要なのではないか、たとえ条文を修正しても、百貨店法を法文化すること自体に反体なのでございまして、商業活動調整委員会その他の機関を作って相互の連絡をとれば、目的は十分に達成できるように思うとの意見でございました。  なお、どうしても百貨店法を制定するというのならば、次の意を考慮してもらいたいということでございました。  その一つは、百貨店の定義が、床面積千五百平方メートル以上になっているようでございますが、これを千平方メートルまで下げてもらいたいということでございます。第二点は、審議会の逆用について、百貨店営業時間、休日等は、各地でいろいろ事情が異なっておりますから、各地事情を理解している人が運営し、不公平にならないよう留意しますとともに、特に大都市と地方との二段がまえの規制ができるようにしてもらいたいということでございました。第三点といたしましては、経過規定として、少くとも三カ月の余裕を置いてもらいたいという要望が述べられておったのでございます。  次に小売商側意見を申し上げますと、百貨店法の制定を熱望一するのは、消費者の利益を奪おうというのではなく、また営業自由の原則まで抑制しようというのでもなく、危急にあえぐ全国百五十万の小売商業者の救済と、百貨店の行き過ぎの行為を妥当な法律規制に求めようとするのであって、経済問題を離れて、社会問題として考えてもらいたいということでございます。  内容的には、第一に経過規定として、現在建築中のものについては、中小商業者に著しい悪影響のあるものは不許可にしてもらいたいということでございます。第二に、百貨店営業に関し、通産大臣の勧告する事項に、出張販売百貨店割賦販売業者加盟店になること、積立方式による販売、また駅など公共施設独占的利用を明記してもらいたいということでございました。第三に、百貨店審議会意見を聞く場合、商工会議所と限定せずに、中小商業者の団体にも聞くよう明記してもらいたいということと、あわせて罰則を強化し、三百万円以下の罰金、一年以下の懲役としてもらいたいという要望も出ておりました。  次は、尼崎市の地盤沈下の概況でございますが、尼崎市の地盤沈下実情視察いたしましたので、最後にその状況を簡単に御報告申し上げます。尼崎市の地盤沈下の原因は、一日当り十万トン以上に及ぶ地下水に依存しなければならない現状にありまして、しかも尼崎市の地層は軟泥層で、その厚さも非常に大きく、その軟泥層水分含有率も高いために、脱水の結果による圧密の度が大きくなっているのでございます。加うるにこの過剰くみ上げのため、地下水位表面下十六メートル、深いところでは三十五メートルまでに低下し、塩水浸入を不可避ならしめておりますとともに、たくさんの井戸が接近していますために、地盤沈下を一そう激しくしているように見受けられたということでございます。沈下量昭和十年から二十八年までに一メートルに及び海岸部では一・八メートルから二メートルにも煙しておる現状でございます。工場施設の水中あるいは地中埋没精密機械の基礎のひずみによる使用不能の現象を呈しておることはもちろんのこと、台風、豪雨による浸水地域拡大して、昭和九年の室戸台風のときには市の三二%が浸水したのに対し、昭和二十五年のジェーン台風のときには四五%に及んだのでございます。  これが対策としては、すでに台風による高潮浸入のための防潮堰堤が設けられておりますが、水源の不定量についての措置が急がれなければならないものと考えられるのでございます。地下水対策としては、尼崎市では地盤沈下を防止する観点から、一日当り十万トンの能力を有する工業用水を布設しようと計画しております。しかし現益の用水単価地下水で二円五十銭ないし三円、工業用水道で三円五十銭になっておりますので、地下水から工業用水道に転換するためには、少くとも経済的につり合う用水単価が要求されるのでございます。そのために所要資金と国庫の補助の額が計画の成否にかかっておるようでございました。  以上簡単でございますが、今回の視察当りましては、現地のたくさんの方々に御多忙中にもかかわらず非常に熱心に私たちの視察あるいは意見の聴取に御配慮を得ましたことをお礼申し上げまして御報告を終りたいと思います。
  10. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 皆さんにお諮りいたします。次に第二班の報告をお願いするわけですが、かねて海野三朗君より要求されておりました科学技術行政に関する件について、政府委員の方が見えております。なお根本官房長官並びに淺井人事院総裁もすぐお見えになる予定でありますので、時間の関係で第二班はあとに譲りまして、この件を先に議題といたしたいと思いますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   —————————————
  11. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) それでは、科学技術行政に関する件を議題といたします。
  12. 海野三朗

    海野三朗君 この一国の興廃と申しますか、平和になりましてからは、輸出貿易、すなわち科学技術重点を置かなければならない現状であると私は思うのでありますが、そうしまして、通産省はもちろん、そのほかの各省の技術官事務官との待遇のことを私が比較いたしてみますと、技術官というものが、つまり事務官とははなはだしい差別待遇を受けておる。これは吉田内閣のときにも私は発言したことがあるのでありますが、これを改善するに至らずして、次の鳩山内閣になった。内閣がかわっても相も変らずこの技術者というものは下積みにされておる。こういうあり方にありまするから、通産行政に例をとってみますると、石炭合理化法案、あんな法案を出さなければならないのはなぜであるかと申しますと、ひとえに技術方面行政に非常に欠けておるものであります。つまり石炭のブームの時代において、すでに石炭の掘り方については石炭局長は改善を指示しなければならない。ところがその石炭局長というものは、大体もう事務官で占領されておるというようなことで、技術官というものを非常に冷遇しておる。こういうふうな状態では私は非常に困るのじゃないか、こういうことを思うのですが、人事院の方ではどういうお考えを持っておられるか、その辺についての一つ御所見を承わりたい。
  13. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 今お話しの技術官の問題でございまするが、これは各省庁におきまして、どういう人を、どういうポジションに任用するかということは、任命権者側の問題によるわけでございまして、従いまして人事院給与担当部局といたしましては、その結果におきまして給与をどういうふうにするかということを主管いたしておる次第でございます。  われわれの方といたしましては、昇給昇格の問題が、今直接この問題に関連いたすと思うのでございますが、まず昇給については、これは事務官技術官とを区別しておるということはないのでございます。ただ、現在の給与法というものは、職務の級というものは十五段階ございまして、次官が十五級、新制大学を卒業しまして六級職に通ってくる者は、いわゆる六級というように、これはご存じのことと思いますが、十五段階に分れております。その各職務の級に対しまして俸給の幅というものがございまするが、この俸給の幅があまり広くないのでございます。従いまして場合によりましては、一つ職務の級で、上に上れません場合におきましては、頭打ちになるとか、ワク外になるとかいうような事例が起ってくる場合があるわけでございます。そういうふうになって参ります際には、これは一般的にワク外になっても、頭打ちになっても、事務官技術官とを区別しておるわけではございませんが、頭打ちになる場合がもし技術官に多いといたしますならば、その結果はやはりおくれとして現われるということがあろうかと思います。ワク内におきましては、昇給上は別に事務官技術官差別はいたしておらないのであります。  そういう状況では非常に結果的に工合が悪いのではないかというお話があろうかと思うのでありますが、人事院といたしましては、現在の給与法というものはすでにいろんな点で矛盾がございまするので、これを合理的に解決する必要があるというので、すでに昭和二十八年におきまして、いわゆる給与準則という新らい給与体系を国会及び内閣に勧告いたしておるのであります。その勧告案によりますと、現在の職務の級が十五ありますものを、これを整理いたしまして、七段階にいたす、七つの等級にいたす、そして一つ等級の中におきましては、非常に巾の広い俸給表を作っておりますので、おおむね頭打ちとかワク外ということは予想されないというような俸給表になっておるのであります。従いましてもしこういう人事院の勧告しておりまする俸給表を御採用願えるならば、今おっしゃるような事務官技術官におきまして、昇給におきまして結果的に見ても差別があまり現われないのじゃなかろうかとこのように考えております。  それから昇格の点でございまするが、これはすでに御存じのように現在給与法を運営いたしまするのに、いわゆる級別定数というものを設けております。たとえば次官十五級であるとか、外局の長官は十五級であるとか、あるいは各部局長級はおおむね十四級というふうにきめております。これはたとえば技術官につきましても研究所長等におきましては相当数の十五級がおられる、また十四級もおられるというようなわけでございまするが、実際行政官庁におきまするこの組織上のポジションは現実に相当数の技官が占めておりますけれども、なおこれを事務系統の人に比較いたしますならば、数は少いということが一般的に言えるのではなかろうかと思います。まあ建設省のように技術官ポジション事務官より多いということはもちろんでございますが、一般的にそういうことが言えるのじゃなかろうかと思います。ところで従来事務官は比較的早く退職されるという機会が非常に多かったために新陳代謝と申しますか、そういう関係で非常に多かったわけでございます。従いまして一つ職務の級によって、これは全体の事務官とはなかなか申されないのでございますが、まあある種の事務官におきましては、上のポジションから順々抜けていくという新陳代謝が相当ひんぱんでございますので、下の人が上に上っていく機会が多いということになると思います。それに比べますと、技術官は、また技術官の中にも種類がございますが、おおむね在職される年数が長い。従って上の級がなかなかあきができないというようなことで、上の級に進まれるといわゆる昇格される場合が非常に制限されておるというのが現在の状況ではなかろうかと、このように見て参りますると、昇格の点においていわゆる技術官事務官より総体的におくれておるということは、これは現在の段階においてもあろうかというふうに思っておりますが、しかし、その昇格につきまして特段の差別待遇をいたしておるということではないのでございます。で、もし将来において、現在でもすでにその徴候が現われておりますが、やはり事務系統の職員の在職が延びて参るということになって参りますならば、この状況は漸次技術官状況に近づいて参るのではなかろうかと、このように考えておりまして、現在の給与上の取扱いにおきましては、昇給におきましては別に差別待遇はいたしておりませんし、昇格の問題はこれは人事院が自主的にやる問題ではございませんので、ただポジションに任用されました場合にあとから追っかけていく問題でありまして、その場合におきましても特段の差別待遇をいたしておるわけではございませんが、結果的におくれておるというのが、現在の状況ではなかろうかと思うのであります。  で、この技術官優遇の問題はすでにもう二、三年来起っておる問題でありまして、人事院といたしましても、これに対処すべくいろいろ考えておったのでありまするが、はっきりと技術系統の官職であるというようなものがわかっておりますポジションにつきましては、上位の定数を増す、ポジションにつかなくても、ある程度上までいけるというような方法を従来も講じて参りましたし、また三十一年度に対しましてもそのような措置をいたしたいと思っておりまするし、また、研究官職を占める職員並びに医療職員等におきましては、現在職務の級別がございまするが、その級別をいわゆるわれわれの言葉でくくると申すのでございまするが、くくりました結果、事実そういう職員に対しては級別の制限がないにひとしいような状況に一応するということを目途にいたしまして、現在研究を進めておる次第でございます。技術官給与上の取扱いにつきまして、これを現在よりよりよくするという問題につきまして、ただいまそのように努力をいたしておる次第でございます。
  14. 海野三朗

    海野三朗君 しからば私は結果について率直に伺うのでありますが、この事務官と技官とにこの年次においても明らかにカーブが違っておるのはどういうわけですか。こういうことは人事院がよく監督しなければならないのじゃないですか、人事院の使命というのはどういうところにあるのですか。
  15. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 今御指摘の点でございまするが、現在公務員の給与というものはやはり初任給というものが定まりまして、そして昇給あるいは昇格というようなことが漸次行われまして現在のその人の俸給が定まっておる、こういう体系になっております。従いまして現在ある人がどういう給与をいただいておるかということは、これは現在の事態だけ押えて議論いたしましても、なかなか解決のつかない問題であります。十年、二十年という過去の給与行政の累積が現在に現われておる、こういうことになるのではなかろうかと思うのであります。従いましてただいま申し上げましたように、事務官につきましては従来新陳代謝が非常に早かったということが御指摘のような状況を現出しておる一つ状況ではなかろうかと、このように考えておるのであります。人事院といたしましても、先ほどから御説明申し上げておりまするように、この給与上の結果的に起っておりまする差等をなるべく縮めるように努力しておりますことは、先ほど御説明申し上げた通りでございます。
  16. 海野三朗

    海野三朗君 事務官昇給の仕方、技官の昇給の仕方、また研究所の人たちの昇給の仕方は三本のりっぱな曲線になって現われておる。事務官の方は群を抜いておる。こういう結果は先ほどお話しのようにほかの転勤が早いからということを言っておりますが、何ゆえに転勤が早いのでありましょうか、これは昇給を早めるからですよ。技官に比べて半年くらい早い、内規というものが各省にあるでしょう。その内規というものはどういうふうになっていますか、高文を通った者の昇給技術官昇給とはどんなふうになっておるのですか、その辺を人事院一つお伺いしたい。
  17. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 現在問題にされておりまするポジションを占めておりまする職員というものは、おおむね公務員となりまして十四、五年ないし二十年くらい経過しております人たちの話であろうかと思います。そうしますと、そういう職員の給与というものが、終戦前、昭和二十年以前にいろいろの経過をたどってきておるということがあろうかと思うのであります。その二十年、終戦前までは各省庁におきまして、この当時は給与法というものがございません。勅令でやっておるときでございまするし、相当各省庁におきまして内規等が持たれまして、その結果において御指摘のように確かに事務官の方の昇給が早かったという事例もあるかと思うのであります。ところが終戦後におきましては、給与法という法律に基きまして昇給が行われております。それでおおむね勤務成績が悪くない者につきましては、給与法に最短の昇給の資格を得ます期間が書いてございまして、その期間が来れば昇給するという状況になっておりまするので、この俸給表の幅のワク内にありまする限りは事務官技術官差別はなく昇給いたしておるのであります。ただ、ただいまも申し上げましたように、この上に参ります機会が少いということのために、自然この俸給表の幅のらち外に出る場合があるわけでございまして、そういう場合にはこの給与法ワク内にあるものより昇給の速度がおくれるということはあるのでございます。従いまして今申し上げましたように終戦前の昇給のやり方、そのことが現在の給与決定に大きな影響があろうかと思うのでありまするが、終戦後におきましてはさような事務官技術官昇給上の差別はないのでございます。
  18. 海野三朗

    海野三朗君 そういたしますと、この事務官の方は、全部上にいっているのです、このカーブから見ますと。つまり成績がよかったからというふうに各省で臨まれる人もあるかもしれませんけれども、技術官の方はもっとずっと下の方にいっている。こういうふうなことは人事院としては、つまり全体を統べくくったところをよく監督しておられないかに思われるのですがその辺はいかがなものですか。つまりこういう事務官昇給させるというのはだれがやるかというと、つまり官房長でしょう。各省の官房長、官房長はみんな高文を通った連中ばかりです。それでありますから成績がよかったといって上げていくけれども、あまりにはなはだしい差と申さざるを得ないのであります。私は今お話しのように、成績がよかったからそういうものを上げていくのだろうというお話し、それも一理はありましょうけれども、技術官はみな成績が悪くて事務官の方だけまるで人種が違うかのごとき待遇をやっておる。こういったところを一体人事院としてはどういうふうにお考えになっておるのでありますか、その辺を私はお伺いしたい。ただ漫然と給与のことを取り締っておられるのか。この技官と事務官との違い、こういうことについてはどういう関心を持っておられますか。ここにもう動かすべからざる結果が出てきているのです。それで事務官の方はいまだかつて技官より下に下ったことはない。初めのときはみな同じです。初めのときは同じですが、一年二年、もう二年目から違っておる。もうずっと違ってくる。だんだん違ってくる。そして局長級ぐらいになるともううんと違ってしまう。こういうふうな差別待遇人事院としてはどういうふうに見ておられますか。
  19. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 結果におきまして、まあそういうふうにカーブをかりに引いてみまするならばそういう結果が現われておるということは、まあわれわれも十分承知いたしておるんであります。先ほどから申し上げておりますように、なぜそういう結果が現在出ておるかということにつきましては、その結果の半分以上というものはこれは終戦前にそういう状況になっておったというのが現在も残っておるのでございます。従いまして一朝一夕にこれを払拭するということはなかなか困難な状況でございまするし、また、現在におきましてもなかなかどういうポジションにどういう職員を充てるかということは、これは各省各庁の任命権者が適当な人を充てられるということでございますので、人事院としてそれを指図する権限はないわけでございます。従いましてその結果から見ますると、まあ先ほどから申し上げておりまするように、建設省のように課長ポジション技術官の方が多いというのもあるのはありますけれども、おおむね技術官の方が少いというのが現状でございます。その少いのに加えて、そういう職員が比較的在職が長いということになりますると、下から上に上っていく機会というのが自然少いというのが現在の状況でございます。従ってそういう場合に、先ほどから何回も申し上げておりますように、現在の給与法におきましては、俸給表ワク外にはみ出すというようなことが出て、また昇給がおくれるというようなことがあるわけでございます。従いましてそういう状況は好もしくないと思いまして、昭和二十八年にすでに人事院給与準則というものを国会及び内閣に勧告いたしまして、かりに職務上の級にならなくても、十分昇給していけるというような俸給表を作るのが適当である。こういうことにおきまして時間のおくれを相当取り返すことができるというこういう勧告をいたしておるのであります。従いまして、そういうことを促進していただければ、われわれといたしましてもこの技術官の問題が解決する一助になるのではなかろうかと、このように考えております。まあそれだけでやっておっても、人事院はそれでいいとは申しませんので、まあその新しい給与準則ができます間におきましても、なおかつわれわれの、新しく法律が制定されませんでも、現在やり得る努力があるのではなかろうかといろいろ考えまして、たとえば研究、医療職員等につきましては職務の級をくくるというような措置によりまして、上のポジションにつかなくても、職務の級だけは上り得る。従って頭打ち、あるいはワク外になることを防ぎ得るという措置は従来もとって参りましたし、今後もさらにそれを強化しよう、このように考えているのであります。で、一般的に給与法におきましては技術官事務官という区別はいたしておりません。給与法上は従いまして今申しました研究官でありますとか、医療技術に従事しておるというものはこれは一般行政職でございませんで、そういうものについてはあとから優遇措置ができるわけであります。ところが一般行政官庁におきましては事務官技術官という区別は現在われわれの方としてはいたしておりませんので、そういう特段の区別はできませんが、しかしある省庁において特に専門職というようなことで、技術官を優遇するために方途を講ずるというようなことはこれは考えておりまするし、またその一般の行政官庁におきましても、特に技術官としてグループとして取り扱い得るような場合におきましてはこれはやはり定数をくくる。あるいは上位の定数を増加するというような措置によりまして、役所の責任あるポジションにつかなくても、上級に進み得るような方途を講じておる次第でございます。まあ今後におきましても人事院としてわれわれの権限で、できまする限り技術官の優遇に努めたい、このように考えております。
  20. 海野三朗

    海野三朗君 ただいまいろいろるる御説明がありましたが、国会の審議を要せず人事院規則によって二五%の手当、本省におきましてはそういうことをおきめになったので、なお一そうこの試験所方面の人間とは非常な差がここに出ておる、待遇の面において。こういうふうなことを、人事院規則をおきめになるときに、どうも実に給与と言ったら狭いワクの中からだけ考えておられるように私は思っておるのですが、もう少し眼界を広くして見ていただかないというと、ますます不均衡になってきておる、人事院規則においてやった結果が……。二五%だけの職務俸といいますか、本省の方においては二五%だけよけいになってきておる。これは本省の事務官がまあそういうふうな恩典にあずかった者はより以上に上に出ておるし、試験所の方においては、職務の恩典に浴していない、こういうふうな結果、私は人事院につきましてはあなた方に注意を喚起したい。ことにこういうところにこそ人事院が勧告をしなければいかぬじゃないか、私はこう思うのです。で、その結果はどうなるかと私は申しますると、軍人万能の時代には結果がどうなったかというと敗戦で日本がたたきつけられた。この法科万能の時代をやっておるというと、そういう将来の日本がどうなっていくか、そういうことに思いをいたしますると実に戦慄せざるを得ない感じがするのです。今日少し目ざめてきてようやくこの科学技術庁を設置しようというような案がある。この間も赤坂の公会堂の技術者懇談会に私が列席してみましたが、そのときに各党の代議士の人たちが来て、みんな祝辞を述べられたのでありますけれども、一人もこの待遇の問題について論じておる人はない。科学技術が非常に必要だから大いにやってもらわなければならぬなんということばかり言ったって、そんなことを言ったってこの技術者はほんとうに盛り上る気持ちは出てこない。そういうところのその根本を握っておるのは、つまり各省にしてみれば官房長、また人事院、そういうところの仕事をやっておられる人、おそらく失礼ですがあなたも事務官でいらっしゃるでしょう。で、こういうふうな事務官を偏重するという考えも、それが根本になっておりまするから、年数早く出ていくのだ、出ていくから……。なぜそういうふうに出ていかなければならないようになるのであるかということをだんだん上まで持っていくから、かけ足して持っていくから、そこにおってまじめに仕事をすることができない。まず事務次官にしてみれば二年おる事務次官がほとんどいないでしょう。ちょっと事務次官になって、ちょっと便所で小便をしたぐらいでやめてしまう。(笑声)実際がそうなんです。大てい二年おる事務次官というものは少い。そういうあり方であるから私はいけないとこう思うので、ここに人事院というものがもっとしっかりしたいわゆる勧告もし、場合によっては注意も与えるだけの親切がなければならないと思う。ここにはっきりと事務官と技官と、それからこの試験所と、差がはっきり出てきている。これは戦争前だけが差があったとおっしゃるけれども、その後の状況も依然としてその通りなので、こういうことに対して人事院としてはどういう御決意を持っておるか、これを訂正すべくどれだけの御決意があるのか、それを私ははっきり伺いたい。それでなければ何も人事院の存在の意味はない。人事院というものは非常に大切なものである、私はこの人事院というものがあって、各省の給与のことなどもちゃんと横から見なければならないのではないか、こういうふうに考えまするがゆえに、人事院は、これは最も大切なものである、くさびであると考えておりますが、人事院の御当局はどれだけの御決意をお持ちになっておりますか。この誤れるところの待遇の問題、これを根本からやり直さなければ、科学技術振興などはとうてい望み得ない。これはつまり待遇の問題です。そういうことに対してどれだけの御決意があるか、私ははっきり御決意のほどを承わっておきたい。ただ給与のあれで帳面づらをただ次から次へと事務的に処理していかれるというお考えか。また、各省のこの進級の状況、この昇給状況を詳しくごらんになっておるのかどうか。それを私ははっきりもう一度お伺いいたしたいと思います。
  21. 瀧本忠男

    政府委員瀧本忠男君) 今いろいろお話が出ましたのでありまするが、まず最初に一般事務職の上級ポジションを占めております者には二五%の特別調整額が出ており、研究所方面に出ていない、それは非常に不均衡ではなかろうかというお話があったわけであります。この特別調整額というものがどうして設定されましたかという経緯をちょっと簡単に説明させていただきたいのであります。つまり公務の上級ポジションにおります者は時間的に、たとえば国会の場合でありまするとか、あるいは予算折衝の場合でありまするとか、なかなか時間が不規則にわたることが多いのであります。そういう場合に、かりに手待ちというような時間もあるかもしれません。そういう場合にその待っておりまする時間をみんな超過勤務手当に計算いたしますると、これは膨大なものになります。しかしながら上級ポジションにおきましては、そういうことは実は職務内容の本体でありまして、しからばそういうようなものを一々超勤手当というようなことで考えるということが適当であるかどうかということが問題になりまして、やはりこういうものはもう超勤の打ち切り額というものを渡して、それでもう一々時間計算をしない。少くも心がまえにおいては上級官職にあります者はその職務に専心するものであるという心がまえが必要なのではなかろうかというようなことから、特別調整額というようなものを作ったわけでございます。ところでこの発足は超過勤務から発しておりますので、従来の超過勤務手当の額から増額いたすというような措置をとらないで、それを原資といたしましてそれを配分するというような方法をきめたのであります。ところがこの超過勤務手当の予算のつけ方に問題がないかどうかは、これは問題でございまするが、現実に予算上ついておりまする超過勤務手当というものは、行政官庁の方が多くて技術官庁に少かったのであります。その結果が当初におきましては行政官庁の上級ポジションには特別調整額がついたのでございますが、研究所等の所長あるいは部長等にはつかなかったという状況でございます。しかしこの特別調整額というものが一ぺんついてみますると、これはやはり超過勤務というようなものとして理解されない。やはりその職務に対する報酬というような考え方が自然出て参るわけであります。そういう一般的な状況がございまするので、われわれといたしましては研究所等にやはりこういう手当をつけるべきであるというので、一昨年、昨年、本年と、これは漸次努力をいたしまして、そしてこの研究所の所長、部長等にもこの制度を漸次及ぼす努力を現にいたしておるのであります。現在十分とは申しません、しかし今後におきましてもこの努力は継続して参りたい、このように考えております。  それから次に人事院給与局長自身が事務官ではないか、おそらくそうだろうというお話しでございましたが、私は実は技官でございます。数学専攻の技官でございまして、従来賃金の問題をやって参りまして現在のポンジションを占めておるわけであります。従いまして私自身の私情から申しますならば、技術官優遇ということにつきましては非常な熱意を持っております。  次に人事院といたしましては見ておるだけではないかというようなお話しでございますが、やはりこれは一朝一夕にこの制度を切りかえろと言われましても、なかなか無理な点がございます。それで漸次この順を追いまして技官の待遇を改善していくという努力をいたそう、このように考えておるわけでございます。現に科学技術振興というようなことが非常に広く問題になって参りますと、こういう問題をやりますのに一そうやりよくなるのではなかろうか、このように考えまして、この後におきましてもこれは私個人だけではございませんで、人事院といたしましてはやはり科学技術向上ということが現在の日本にとりましては非常に必要なことである。この観点から技術官の優遇ということは今後大いに考えたい、このように考えております。
  22. 上林忠次

    ○上林忠次君 今回は科学技術庁ですか、ああいうようなものができるという運びになっているということを聞いておりますが、戦後の日本の再建のために、またこの狭い地域と少い資源しかない日本としましては、何とかして技術の力で立っていくよりわれわれの国は再建できないのだ、これはもう皆が考えておるところであります。国の建設のためには産業の発展をはかるよりほかにないということはこれはもう戦前から唱えられたことでありますが、日本におきましては各官庁とも、これは特にまあ農林省あるいは通産省、こういうような技術の相当多岐にわたる行政をやっているような官庁においてすら、昔から技術官は冷遇されておる。戦争のときのことを思い返しますならば、われわれの戦争、あの第二次大戦はなぜ負けたか、あのときひしひしとわれわれは反省したわけでありまして、軍部と産業人が分れておる、また軍部でも海軍、陸軍は分れている。有能な技術者をどんどん徴用して無意味な軍事的な仕事に携わらしたというようなことで、一つはあの戦争に負けたのだ。また技術的な日本の基盤がなかったために、常にわれわれの日本は外国技術を導入しながら、ようよう世界の水準まで追いつきながらこれまでやってきた。いよいよ戦争で中断されますならば、自分の力でやっていくよりしょうがない。この差が技術の微弱な、弱い日本と外国との差があの敗戦の原因であった。戦争中におきましてはかようなことが強く反省されまして、特に戦争末期におきましては相当技術者が優遇されたのであります。官庁におきましては技術者のポストが相当に上まで上ってきて、あのとき以後その後戦争が済みましてからだんだん経済情勢、一般の情勢が平和な状態に逆戻りしますと、最近は上位のポストがだんだん技術者がのいて、事務官がこれに代ってくるというようなことで、現在は相当これが戦争末期とは違うようなことになっている。われわれようやく日本のこれから立とうという情勢に向って、あの技術者の優遇がまた逆転しつつあるということを考えますときに、日本の将来の建設のために嘆かわしいことであると考えておるのであります。先ほどから技術者は寿命が長いからじくじくと上っていくのだ。事務屋の方は早くやめるからどんどんショート・カットで行くのだということも聞いておりますが、おそらく私技術者は老齢になるまで使う、しかしながらそれが順繰りに回転していくのでありますから、そう長く勤めるからポストがないというわけじゃないじゃないか。順繰りに古くやれる、また次の人も古くやれる、こういうふうにいくのなら一時的なものではないので、循環していくのでありまして、長く勤めるから上り方が少いということは私はおかしいのじゃないかという気がするのであります。私は、戦時中フィリピンあたりに行きまして、向うの連中に悪口を言ったのであります。ああいう植民地では、法律家とか、あるいは医者とか、かような地位にある人が一番崇拝されている。フィリピン人に対して、私は、あなたたちはこういうようなことでは国を独立させることはできぬぞ、また大きな国にはなれないぞ、もっと産業人を優遇しない限り、さような学校に行く人も少くなるし、医者の学校、あるいは法律家の学校にみなが集合するということになると、国の建設ということはできないぞ、そう言ったのです。植民地はどこの植民地もそういうような傾向がありまして、その当時、日本でもやはりそうであったのであります。同じ轍を踏んで、植民地同様の技術段階、あるいは貧弱産業でがまんするというならばいいのでありますが、われわれ日本としては、今、何とかして、国の力である技術者を優遇して、これにりっぱな人物を集合させるということが必要じゃないか。ところが今の情勢を見てみますと、もう戦争中あるいは明治時代に立ち返るような格好に技術者が扱われておる。この際、技術庁でも作って、日本の技術再建をはかろうというなら、実際に具体的に技術者をもっと優遇するような道を考えない限りは、このままでは依然として植民地的な後進国に日本はとどまるのではないか。この際、もっと人事院におかれましても、また各省の人事をやっておる人たちが、昔の法科万能の時代に立ち返らないように、一変した施策を講じなくちゃならぬと考えておるのであります。今の情勢でいきますならば、技術庁ができましても、日本の技術は発展しないのじゃないか。私は先年中共に行きましたが、中共では現在法科系統の学校はほとんど作っておらぬ。みな技術系統の学校ばかりを拡充しておる。しかも、技術も日本のような大分けの分化じゃなしに、もっとこまかいところまで、石油技術とか、あるいは石炭技術とか、あるいは電信、電話の技術、鉄道技術とかという工合に、大学までがそういうようにこまかく分化しておる。ソ連においてもそういうことを聞いておりますが、何も、ソ連、中共をまねるわけじゃありませんが、あのような産業教育の振興をやります限りは、相当な発展を期待されると思うのであります。かような隣国の状況を見ますときに、日本がぼやぼや今ごろ文科系統の学校ばかりを作って……。まあ、これは学術の水準が上るのもけっこうでありますが、もっと産業教育を強化したらいい、そうしなくちゃ日本はつぶれるぞ、あの国に行きまして、ひしひしと日本の技術者に大きく期待する、技術者によろしく頼む、日本の技術者は今でも相当な水準にあるのだ、あのような国がいかにがんばろうと、われわれは何年か先を進むのだ、常にソ連、中国が三年進むならば、われわれはまた三年先を進んでいる、常に世界の優位にわれわれの技術はあるのだ、かようなことにしたいという気持、日本の技術者、技学者に期待する気持が強かったのであります。帰ってみますと、まあ戦争末期よりもまた後退した待遇技術者が受けておる。かようなことでは日本の国はもう立ち得ないのじゃないか。先ほど申しましたように、地域も狭い、資源も少い国でありますから、技術的に進歩するよりしょうがない。この点は十分一つ考えていただきたいと思いますが、こういうことに対しまして、どのくらいの熱意をお持ちですか、人事院のお気持を聞きたいと思います。
  23. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 遅参をいたしまして申しわけございません。先ほどから人事院の考えにつきましては給与局長よりだんだんと申し上げたと思っております。ただいまの御論旨に対しましては、まことにわれわれも同感に思っております。これからもさようなつもりで増えておりますが、ただ、これは将来の制度の問題に関することも多いように思っております。すなわち職階制というものを将来いかにいたすべきか、またかねて人事院の勧告をいたしておりまする給与準則というものをどうするか、その点に大きな問題があるように考えております。
  24. 海野三朗

    海野三朗君 ただいま将来の問題とおっしゃったけれども、将来ではありません。今現実に、その制度が、つまり事務官がずっと上の方の職階にいって、技官が下の方に伸びていっている。また、研究者がなおその上にいっている。こういうふうな現実の姿をいかに見ていらっしゃるか、将来の制度のことじゃありません。この現実の姿に対してあなたはいかなる御決意を持っていられるか。
  25. 淺井清

    政府委員(淺井清君) お答えをいたしますが、現在においても同じように考えております。ただいまのお話が将来の問題でございましたので、さっきお答をしたのでありますが、現実においても同じことでございます。ただし、現実において、やはり人事院といたしましては、法規のもとにおいて仕事を処理するよりいたし方がございませんので、そこに問題が若干あるように思っております。ただ、上位の課長以上の官職につきましても、現在は職階制というものを完全に実施いたしておりませんために、事務官と技官とのつくべきポジションというものははっきりいたしてないところがございます。ただ自然に従来から技官の占める地位、事務官の占める地位、こういうものはおのずからきまっているものもございましょう。しかし、その他のものにつきましては、事務官から出てもよろしいし、技官から出てもよろしい、かような状態になっておるわけであります。  それから第二には、級別定数でありまするが、これは今人事院指令をもって施行しておりまするが、大体において、技官の定数、事務官の定数というものはきめてはございませんが、しかし、人事院といたしましては、部分的には技術官と明記して、特に定数を与えておるようなものもございます。それで、人事院といたしましては、現在においても十分努力はいたしておるつもりでございますが、ただ人事院のやり得るところには限界がございまして、どの人をどのポジションにつけるかということは、これはやはり任命権者の問題になって参るので、そこに問題があろうかと考えております。
  26. 海野三朗

    海野三朗君 しからば、この差というものは、こういうふうな差ができちゃいけないの、だということを今の人事院が勧告をなさったことがありますか。
  27. 淺井清

    政府委員(淺井清君) ただいまちょっとお尋ねの趣旨でございますけれども、つまり、技官が事務官よりも非常におくれておるからいかぬという意味の勧告でございましたならば、さような勧告は正式にやったことはございません。
  28. 海野三朗

    海野三朗君 私は科学技術振興という点から考えも、なお一そうその感を深くするのでありますが、こういうような意味で差別待遇をやっておる状態に対しまして、人事院は今日まで勧告をせずにただ漫然とあぐらをかいていなさったわけでございますが、人事院の存在の意義というものはどこにあるものであるかということを私は思う。
  29. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 人事院といたしましては、なし得ることはやっておるつもりでございます。  公けに勧告をすることもございましょうし、あるいは事実上技官の優遇について、政府もしくは大蔵省当局等と交渉することもたびたびございます。たとえば、昭和三十一年度におきまして、人事院といたしましては、勧告という形はとりませんでございまするけれども、技術官の優遇については考慮もいたし、ただいま給与局長から申し上げたかもしれませんが、研究職、医療職等につきましては、上位の十四級ないし十五級等におきましては、むしろ権衡を失するくらい技術家を優遇しておるつもりでございます。
  30. 海野三朗

    海野三朗君 私は大体今人事院の方のお話を伺いましたが、官房長官一つ私はお伺いいたしたい。この事の起りは、つまり通産省の方がまず第一に目についたわけであります。通産省の方におきましては、課長の数が百二十二人おります。そしてそのうち技術官が十二人おります。一〇%にちょっと満ちません。しかも石炭局長、重工業局長技術官を必要とするところにことごとくみな事務官が坐っておる。その結果がどうなっておるかと申し上げますと、石炭合理化法案、出さなくてもいいものを出さなければならないような状態になっておる石炭合理化法案、また繊維品の今度の機械の整備問題、あるいはまた近くはミシンの問題、そういうふうな、みな行き詰まりをきたしておるのは何であるかと申しますと、石炭におきましては、このブーム時代に何とか設備の改善をするとか、あるいは縦坑を掘るとかいう方面に早く指示してやって、出炭の能力を増しておかなければならなかったのではないか。そういう方面の技術的指導が全然なってないのです。たとえば繊維品にしたってその通り事務官の万能、法科万能の弊が今日また着々現れてきておるのだ、これを思いますると、吉田内閣のときからも私はやかましく申したのでありますが、さらに手が及ばなかった。今度は鳩山内閣において賢明なる皆様方が寄っておられるのでありますから、この事務官と技官との差別待遇、こういうことを何とかして改めていただかなければ、この日本の科学技術振興ということは、幾ら政府が笛吹けども技術官は踊らないのじゃないかと、私はそういうように考えるのですが、この点に対しまして、私は臨時国会のあとから官房長をだいぶ責めつけて参りました。結局するところ、在来の習慣がありまして、一朝にしてこれを改められないのかもしれませんけれども、このりっぱな科学がこういうふうに違っておるのです。技官の方はみないけないのです。進み方が悪い。これはなぜであるかというと、今伺いましたところが、人事院給与局長の方から、事務官の方は早く移りかわっていくからであると、こう言われるけれども、その早く移りかわるということ自体が間違っておるのである。そうしてお役所というものを足場にして、お役所がすんでしまってから、今度は民間会社に入って、それからほんとうの仕事にとりかかるというのが、今日までの事務官のあり方であった。例をあげて申し上げてもいいのだが、それはもう時間がありませんから申し上げません。それでほとんど腰かけなんです。事務官というものは二年おった人は少い。一年半か二年足らずでぽんぽんやめていかなければならないようになっておる。下が詰っているからと言うが、詰るようになるのはなぜか、早く給料を上げ過ぎるからそうである。優遇し過ぎるからそうである。私はそれに対して官房長官はいかなるお考えを持っていらっしゃるか。これは何も私が野党でありますからこう申し上げるのではありません。ほんとうに科学技術振興、今日これを最も急速に力を入れてやっていかなければならないのじゃないか、こう思いまするがゆえに、第一に根本は待遇の問題である。そうして技術官の盛り上る意気をわれわれは要求しなければならないのだ。こう思いまするから、この点について一つ官房長官の御所見を承わりたいと思います。
  31. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) ただいま御指摘になりました点については、私も実は直接に数次にわたって技術官の諸君からの陳情も受けております。政府といたしましては技術官なるがゆえに差別待遇をするというような方針は全然とっておりません。ただし部課長というような管理職のあれは技術官事務官といつも平等にやらなければならんという画一的な指令も、もちろん出しておりません。みな各省庁の権限に基く任命権者がたとえ技術官でありましても、十分に管理能力のある者はこれをその管理の身分につけさせるという方向をたどっておるものと承知しておりますが、しかし一般的に言いまして、これは日本の古い時代から技術官がなかなか管理職に上らないという  一つの一般趨勢があることは、私も否定できないものと見ております。それで能力のある者は、技術者とそれから技術官にあらざるいわゆる純粋法科出身と申しますか、そういう関係と、特別な差別をつけないようにというように要請しておることは事実であります。今後ともできるだけ能力のある技術者の諸君が十分そのポストが確保されるように、留意するように各任命権者において考慮していただきたいということは数次にわたって私どもの方からも忠告しておる次第でございます。
  32. 海野三朗

    海野三朗君 もう一つ、任命権者と今あなたがおっしゃいましたが、それは多く官房長であって、その官房長はことごとく高文を通った連中をもって占領しておるのです。技術官でもこの経営の才があればというお話しでありますが、通産省始まってから何年になりますか、その間に技術官の局長の出たためしは、戦時中機械局長一人出ただけでありまして、ほとんど事務官をもって占領されておる。これは何も適材を適所に置くというて、この前からも通産省の岩武官房長が答弁されておりましたけれども、適材適所はもちろんでありまするけれども、あまりひどいじゃないか、いまだかって局長は通産省の開聞以来一人、二人というぐらいしかいないので、全部が事務官をもって占領されておる。ものは程度問題でありまして、何も事務官技術官を対等に交互にやっていけというのじゃありません。人材がなければ仕方がありません。ありませんけれども、あまりにはなはだしい差別待遇と言わざるを得ないのです、幾らひいき目に見ましても。この技術官でなければならないところの課長のいすが、みなことごとく法科出身の者をもって占領されております。それでありますから、通産行政はなっておりません。それが大きく現われてきたのがまず石炭合理化法案、繊維の整備法案、ミシンの問題にしても、私は全部そうだと思うのです。そこから出てきておるのでありますから、多年の積弊でありました法科万能という考え方を是正するためには、どうしたって各省の官房長をまず入れかえる必要があるのじゃないかと私は思うのです。それに対しましては、いずれ官房長官の方からいろいろ御指示があることだろうと思うのですけれども、それに対してこれを直していくという点についてはいかなるお考えがありましょうか。それを一つお伺いいたしたいと思います。
  33. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) ただいま海野さんがおっしゃった中で、任命権者は、これは各省大臣であります。官房長ではございません。そこで今御指摘になりました各省の官房長をいわゆる技術者をもってあてるように指示したらどうかというようにもとれますが、そこまでの指示は困難でございます。これは十分に御趣旨の点を体しまして、技術者なるがゆえに特別に差別しないようにということは、これはできることであります。今も現在そういうふうに、注意してはおるのでありますが、各省とも管理者として適任であるという人であるならば、技術者であろうとも、あるいは法科出身であろうとも、その点は公平な立場において任命すべきであるというように要請しておきたいと考えておる次第でございます。御指摘になりました通産省は非常にそのようでありますが、建設省とかあるいは運輸省、農林省、厚生省等は、かなり技術者の人であるいは局長、部課長、あるいは外局の長官を勤めておる者もあるのでありまして、これは決して政府が特別に技術者なるがゆえに差別するというような方針でないことの一つの立証ではあろうと思うのでございます。
  34. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと関連して……先ほどの答弁にちょっと関連して御質問したいのですが、能力ある技術者は引き上げたい、こういうことを言われた。それから今の答弁では公平にということを言われた。おそらく今まで数回の国会で公平でないと、いわゆる事務官優先にというようなことはだれもお考えになっておられないと思うのです。そうすると任命権者は大臣だ、大臣は能力のある技術者は公平にこれを見なければできないということになってきますと、今まで公平にやってきて能力のある技術者はおらなかった、このバランスから見て能力のある技術者というのはおらなかった、こういうことになると私は思うのです。その点が一点。それから公平ということは、そのポストについての公平であろうと私は思うのです。ところがそのポストは、技術者がなる方がいいのか、あるいは事務屋がなるのがいいのかという問題が一つあると私は思うのです。そこで海野委員の質問は当然はこれは事務官がならなければできないようなポストに技術者を持ってこいとは言っておられない。そうするとその公平というものは何か、今日農林あるいは通産等には相当な技術者がいるべきである。その技術者を下に置いて、なぜ上にそれでは事務屋を持ってこなければできないか、それが公平であるか公平でないか、こういうところにくると思うのです。そうなると私は今の答弁では何年たっても、公平であって、能力のある人はいつでも任命者は任命することになりますという答えにしかならないと思うのですが、その点どうですか。
  35. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 任命権者が技術者なるがゆえに特につけないというような措置はとっていないものと解釈しておる、こういう意味でございます。従いまして管理者として適当であるというふうに管理者である大臣が認めますれば、それは技術者であろうとも技術者でない人であっても、任命権者の公平なる判断においてなされるものと私は考えております。この意味で申し上げた次第であります。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はそこにもう一歩考えなければいけないところがあると思う。その考えは一貫した政府の考えだと思うのです。それでこういう弊害ができておるから、今そういう質問がされておるのに、同じような答弁をされておるんではこれは直らない、こう思うのです。技術者でなければ、技術者がやった方がいいというポストが確かにたくさんあると思うんですね。ところが事務官僚でなければできないポストもたくさんあるはずだ。それをはっきりすることはできませんかと言っている、今のままでは任命権者はどうしても法科万能と言われておるようにそうなっていく、そこを私は聞いておるのです。
  37. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) これは人事院の方の御所管になると思いまするが、どのポストは技術者をもって充てなければならないというふうに指定することは困難ではなかろうかと考えます。要は任命権者であり、行政のその省における責任者である大臣が、どのポストにどういう人間を持っていくことによって、行政が一番うまくいくかということの判断にこれは帰するものではなかろうかと思います。しかし、今いろいろ御指摘なされた点がそういうふうな立場をとっておったでありましょうけれども、現実には技術者の人々が常識から見て非常に少い、この点を是正すべきだという御意見だと私は思いまして、できるだけその御趣旨に沿うように各省大臣が善処してもらうようにわれわれの方でも連絡いたしたい、こう思います。
  38. 海野三朗

    海野三朗君 ただいまの官房長官のお話しの中に、私は何も官房長を全部技術者にかえろと言うのではありません。この任命権は大臣にありますけれども、その資料を準備するのは官房長でございましょう、私はそこを言うんです。でありまするからどうしても自分の方に有利なようにしか大臣のところに持っていかない。そういうふうでは日本の国としまして全体から私は考えると、まことに遺憾だと思うのでありまして、一つ場所を変えてみる、そういうことが大事だろうと私は思うんですね。われわれ野党としても今の政府を攻撃するけれども、今度当番がわれわれ野党に回ってきたときのことも考えてみなければならぬ、それはお互いです。で次に官房長、高文を通った人間が資料をそろえて大臣のところへ持ってゆきますから、そういうふうなあり方が私はいけないと言うんです。今度は反対の、立場を変えた者が公平に資料を提出するようにしていただかなければならないんじゃないか、私はこういうことを申すのです。任命権が大臣にあることはもちろんでありますが、大臣が任命するのは、官房長が持っていったところのものが唯一の参考資料になるのでありまして、一つ詳しく技術官の方面の意向といいますか、そういう技術官としてながめておるところのものをはっきり官房長あたりが一つ聞いていただきたいと私は思う。そしてまた、ことに鉱山保安局長なんかいつも事務官がやっておる、とんでもない話だ、また通産省にしても重工業局長はやはり事務官、それからまた石炭局長がそうである。そういうふうなあり方が私は日本の現在及び将来を思いまするときに非常に寒心にたえないのです。でその結果がぼつぼつ現われてきておる。石炭合理化法案をなぜ通さなければならないかといいますと、その原因はここにあるのである。いろいろなことを考えますと、みなことごとくそのガンというものはこの技術者を冷遇しておる、差別待遇しておるというところにありますので、官房長官としては何かここに各省に向って一つ通達でも出して内示、内示ということはありませんけれども、そういうことがないようにということの一つ通達でもお出しになるお考えがないのでありますか。ただ漫然とこれをながめていらっしゃるお考えでありますか、一つその御所見を私は承わりたい。
  39. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 御指摘の点は私適当な機会に閣議においてこう言いう趣旨のものがありましたから十分に、差別待遇のないようにやっているだろうと思うけれども、さらに念を入れて、技術者にして十分に管理者たる資格と能力のある者については、差別待遇するがごとき印象を与えないように要請はしておきたいと思います。しかし、私が官房長官としてただいま御指摘のあった点を指示する権限はございませんので、よくその点は各省大臣に御意向の点を申し伝えておきたいと思います。
  40. 上林忠次

    ○上林忠次君 この問題は昔からの伝統的な技術者軽視というところから来ておるのでありまして、いかにして法科系統の連中に優位の位置を与えるかということを昔からどんな方法でやっているかといいますと、高文のあの制度であります。高文を通らないと一人前じゃないぞ、行政官として一人前じゃない、あるいは外交官として一人前じゃないと、ああいうような試験を国家でやりまして、片方技術者にはそういうような試験がなかった、国家試験がなかったんです。試験があるならおれたちもその試験を通って同じように扱ってもらいたいということを、ぼくらも若いとき言ったんでありますが、さよな特権を高文でもって与えてある。これがずっと一生涯つきまとって技術者は下積みだと、これは道具だと、人間扱いしないというところまで軽視されるに至ったんだろうと思うのであります。で、法律を適用する仕事は何もかも事務屋がやるんだと、高文を通った、たんのうな法律家がやるのだということになっております。そうでありますから、現状を見ましても技術専門、技術以外の行政的な仕事はないのだ、専門的な仕事ではないというところに技術者、これが課長ぐらいやっておる、あるいは部長をやっておるというのでありまして、少くとも法律に照らして問題を処断しようというような位置は技術者一つもやっておらぬ。法律を作るのじゃない、法律を適用するだけでありまして、これらの技術者でもたんのうな人は出てきます。また長年やっているうちにたんのうになります。さような人間をどうして上げないか。先ほども官房長官のお話のように、適任者があれば上げるんだということになっておりますけれども、少くとも法律を使うのだという位置には決して技術者は上げない。さようなことで、常に技術者は下におると、事務色の多い部課におきましても技術者が二人なり何人なりおる。ところが技術色の多い部課には事務屋は一人もいないというのが現状じゃないか。私は法科の連中が技術者を下に使うならば、技術者が上にあって法科の連中を使ってもいいのじゃないかと思う。そういうような実情では今ないのであります。事ほどさようにもうすでに技術者というのは道具だ、人間扱いじゃないというような現状ではないかと思うんであります。先般、あすこの会計検査院の増員がありましたときに、今回の増員は、農林省あるいは建設省でやる工事が予算に対してうまくいっているかどうかという、あの検査官が足らぬ、うんとこれを強化しなければいかぬというので、相当増員があったのでありますが、その増員のときに部が一つふえております。この部長は事務屋をもって充てるという項目が出てきたのであります。われわれはこういうふうに、昔の明治時代ならこういう事態があった、高文尊重の時代に、しかもまだ日本が文化国家としては過渡期の時代でありまして、世界の先進国に追随しながら、従属しながら伸びておった。その時代ならそういう事態もあったが、今の時代にかような事務官をもって充てる、なぜこういうものを入れる、こういうような法律はない、一つもないはずだ。適任者があれば充てていいじゃないかということをやかましく言ったのでありますが、こういうふうな気持が全般にみなぎっておる。この気持は、技術者は使われるけれども、これを使うのは事務屋だというふうな気持があるのでありまして、この気持が絶えない限り日本の技術者は、これはほんとうに努力の結果が恵まれない、勤労意欲もこれで欠けるということになろうと思うんであります。幸い会社の方には官庁と違いまして技術者が社長にもなっているし、そういうような地位におると、これで私は一つ安心しておりますが、官庁においても、この産業を指導する官庁におきましても、さような技術者を冷遇するような格好にしておきますと、いい人間が集まらない。こんなこっちゃ、ほんとうの産業指導もできないじゃないか、技術的な指導もできないじゃないか、これが日本の発展を阻害するものであろうと思うのであります。この際ほんとうに抜本的にこういうような気持を払拭して、ほんとうの国の宝である、建国の、産業建設の宝でありますところの技術者の優遇ということを考えていただきたいと思うのであります。検査院の例を申し上げまして、かような気持がだれにもあるんだというところを払拭する手を講じてもらいたいと思うのであります。
  41. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 現在人事院で行なっております。これは私よりもむしろ人事院総裁が言うのが適当でありましょうが、大学卒業程度の採用試験が、従来のような高文試験ということでなく、法文系も技術者と同様なる試験を受けることになっておりまして、その点は是正されておると存じております。なお、これは私事で恐縮でありますが、私実は技術出身の者でありますから、実は各官庁の技術をやっておる連中から数次にわたってその点の要望を聞いております。従いましては私はそういう事実についても相当詳しく資料を提供されて要請されておりまするので、事あるごとに私は今日まで関係各省の人事管理をやっておる人々にも要請をいたしておるのでございまするが、なお今後とも技術者ができるだけそういうポストができる運営をしてもらうように努力いたしたいと思っております。
  42. 阿具根登

    ○阿具根登君 私が最初から言っておるのは、先ほど海野委員も言ったように、たとえば大蔵省関係とか、法務省関係なんですね。あなたが何ぼ公平にと言われても技術屋を持ってくることはできません。そうでしょう。そうですから、通産省関係のさっき一例も出ましたけれども、鉱山保安局長などは、これは事務屋でできるということではないのです。これは考えるならばどうしても技術者ということに私はなると思います。重工業局長なども、それは事務屋でもできるでしょう、しかし公平だといっても、そういうふうに厳然といえない区画があるわけであります。そこで事務屋が伸びるところを指定してやるか、見つけてやるか奨励してやる。そういうふうに奨励しなければ公平だといっても、この弊は直らないということを言っておるのでありますが、その点についてどういうふうにお考えですか。
  43. 根本龍太郎

    政府委員根本龍太郎君) 先ほどお答え申した通りでありまして、これは各省大臣がそういう重要なポストでしかも技術者をもってやった方が、より行政の能率が上るというふうに判断されておるのは、今日でもやっておると思います。しかしそれでもなかなか考慮が足りないというように皆さんがお考えになっておるようでありますから、その旨もよくお話をいたしまして、でき得るだけ技術者をもって充てることの可能なポストについては、特別な考慮を払うように私からし申し上げておきたいと思います。
  44. 海野三朗

    海野三朗君 ちょっと今の質問、私はこの通産行政が法科万能でやっておる結果、近き将来において製鉄合理化法案も出さなければならなくなるでしょう、製鉄合理化法案も……。私はそういうことが、思われるのです。それから石炭合理化法案が……、そういうことが出てくるというのは、技術行政に暗きがいたすところでしょう。それは何であるかと申しますと、技術官にしてその道に詳しい人が通産行政の掌に当っていないからだと私は思います。石炭合理化法案と同様に製鉄合理化法案も将来出てくるだろうと思います。こういうふうな先の見えない通産行政をやっておるというその根本は、どうしたって今の現内閣においてはっきりと直していただきたい。私はこういうふうに思いますので、これは強く閣議に要望していただくことをお願いします。
  45. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記を始めて。
  47. 海野三朗

    海野三朗君 ちゃっともう一言総裁に。ただいまいろいろお話を承わりましたが、人事院というものは私は最も大切なるお役所であると思うのであります。人事院がしっかりしてもらわなければ、これはもう各省群雄割居の姿で、ただそのワクだけを与えてやって漠然としておられたのでは困る。これはやはりこの人事院としては各省の技術官事務官待遇昇給の仕方、そういうものをはっきり見ていただかなければならないのじゃないか。ことに給与局長は数字専門におやりになったということを承わってみると、こんな科学を作ることはわけない話だ、お手のものだ。これでは別れていった科学の先がどうなるか、こうこうふうなこういうところを見ていただいてこそ、私は人事院の存在の意義がある。ほんとうに人事局なんて小さくしようと思って今の内閣が考えておるのは、とんでもないことだと私は思いますけれども、そういうふうなことについては淺井総裁はどういうふうに考えておられますか。
  48. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 御趣旨に従って善処いたしたいと思います。ただし、これは多少現在の制度に基盤があるのではないかと思っております。それはさいぜんも申し上げましたが、第一は、職階制における職務分析がほんとうにできていないということ、従ってこのポストにはほんとうに技術者がいかなきゃならぬという裏づけが今の制度ではあまり完全でないのじゃないか。それが完全にできますれば、私はたとえば御趣旨には反するようでありますが、官房長ということを仰せられましたけれども、この官房長というようなポジションはこれはむしろ職務分析をすれば、技官よりも事務官ポジションじゃないかと私は思っております。御趣旨はよくわかったのでありますが、そう思っております。そういう官房長が技官になったからうまくいくというような問題じょない、もっと深いのじゃないか。つまり職階制における職務区分を正確にする、そういたしますれば、おのずから技術官をもってあてなければならないというポジションははっきりするのじゃないかと思っております。  それからもう一つは、課長になりませんでも、技術官が優遇されるようにする、それはやはり人事院のかねて勧告いたしておりまするような俸給表の幅の問題でございます。つまり課長になり、局長にならなければ給与が上らないのではなくて、給与準則のような制度をとりますれば、俸給表の幅がずっと長くなりますから、一生安んじて一研究員に甘んじましても、その給与はずっとはるか上にいく、こういう点も必要じゃないかと思っております。  なお、人事院のことを申し上げて恐縮でありますが、人事院には非常に技術官が多いのであります。そうして人事院には技官の定員というものは一つもございません。技術者は全部事務官に任命しておりまして、事務官一本やりでございます。ことに人事院の一番重要な給与局長技術家出身の事務官でございまして、任用局長も国鉄出身の技術者事務官であったのでございます。ただいまは更迭いたしましたが、そういう事情でございますし、ことに職階の方をやってやりまするのが技術家出身の事務官、これが非常に多いのでございます。従って人事院といたしましては、十分御趣旨を尊重いたしまして善処できるであろうと思っております。
  49. 海野三朗

    海野三朗君 ただいまのそのことにつきましては、総裁は御計画を持っていらっしゃいますか。ただそうなればいいとお考えになるだけであるか、またそれに対しては何か立案中でいらっしゃるのですか。
  50. 淺井清

    政府委員(淺井清君) それは人事院の立場から申しますれば、第一には職階制というものを完全に実施していただくということ、第二には職階制と表裏一体となっております給与準則というものを実施していただくということでございます。この二つがまあ一番重大な問題であろうかと、かように思っておりますが、ただ、それは今の問題でなくて将来の問題になるのでございますが、現行制度のもとにおきまして、さいぜんからも申しましたように、人事院といたしましては、なるべく技術者を優遇し得るように、ただ級別定数の問題等におきまして、しょっちゅう大蔵省とも交渉して取れるようにというふうに努力はいたしております。
  51. 上林忠次

    ○上林忠次君 一つ希望を申し上げますけれども、まあ技術者のヘッドになる席が少いから、そういうふうに差が出てくるのが差の大きな原因だということになっておりますが、それでは技術者、純粋の技術者であって、これはもう管理職になるのは不向きだということを言う人もあろうと思います。そういう人に限って技術的にたんのうな科学者あるいは研究者である、かような人は席がないからといって所得が減るようなことがないように、同じ時期のどんどんとまっすぐに上に上っていった人と同じような待遇がとれるように、そのためには技術者全体がそういう工合に頭打ちなしに上っていくというような表はできないと思いますけれども、何%、全員の一割とか三割とか、その程度にこれは位置に関係なしにぐんぐん上っていく、これは極端に言うならば、いい技術者ばっかりならば全体がポジション関係なしに上っていける、そうして自分の職務に一生懸命尽瘁するようにしないと、このままだとみんないやけがさして、そうして仕事ができない。勤労意欲がわかないというようなことになるのじゃないか。これは日本の現状としては、何べんも申しますが、大きな産業を興さなければならない、発展を期さなければならないという現状からかんがみますと、何とか喜んで働くというような、まあ位置を与えくても、実質的の優遇してやる、待遇をしてやろうということが必要だろうと思うのです。さようなことも一つお考えいただきまして、先の楽しみがあるようなふうにして引っぱっていっていただきたいと思います。
  52. 淺井清

    政府委員(淺井清君) しごく御同感でございまして、御趣旨に従って善処いたしますが、現在におきましても各省の級別定数を定める権限は人事院が持っておるわけであります。そのときにただ級別定数を与えませんで、特に技術官、専門職というふうに表示して級別定数を与えておるのもままございますので、つまりその範囲内においては技術家でなければその級別定数は取れない、事務官は取れない、そういうふうにして、特に技術家のために級別定数を与えておる例もございます。また三十一年度におきましては、研究職、医療職等の上の部分は非常によくしてあるように伺っております。まあほんとうのことは、ただいま申し上げましたように、職階制、給与準則にかかるのでございますけれども、現状におきましては、われわれもたびたび技術者方々から陳情も受けておりますので、まあ人事院の権限でできることだけは努力しておるつもりでございます。
  53. 海野三朗

    海野三朗君 ただいまの総裁のお話承わりましたのですが、この職階制の改善とか、そういうことに対して、現状をもう少し改めていくということに対しましてのあなたのお考えを、内閣の方に勧告でもしようというお考えがおありになりますか、これはいかがなものでありますか。
  54. 淺井清

    政府委員(淺井清君) この職階制の問題につきましては、非常に私は毀誉褒貶があると思っております。人事院といたしましては、すでに職階制に関する法律は型が出ておるわけであります。職階制の完全実施ということになりますと、それとうらはらになっておる給与表とひっつけませんと、実際は動きませんのでございます。そこで給与準則を勧告しておるわけでございます。ところが世上におきましては、まま職階制というものが非常に悪いものであるという考え方もあるように伺っております。私どもはそうは思っておりません。これは職階制は必要であるし、民間においても、どんどん職階制というものはやっておるように伺っております。なお公務員制度調査会等においても、この点に答申もあり、ただいま内閣の公務員制度調査室についても研究中であると思っております。
  55. 海野三朗

    海野三朗君 あなたのお考えを、政府に向って所見をお述べになる、いわゆる勧告でもなさろうというお考えがありますか、ありませんか。
  56. 淺井清

    政府委員(淺井清君) その点は、もう人事院が勧告しております給与準則、あれを実施していただけばそれでよろしいのでございます。ですから、もう勧告は済んでおるわけでございます。内閣はこの勧告を受け取りまして、これを公務員制度調査室で研究しておるというのが現状でございます。
  57. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) これをもって科学技術行政に関する件の質疑を終りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) ではさよう取り扱います。   —————————————
  59. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 次に、議事進行上中断をいたしております派遣委員報告を続行いたします。  第二班の報告を、上林忠次君にお願いいたします。
  60. 上林忠次

    ○上林忠次君 それではただいまから、第二班派遣委員視察報告をいたします。  当班の派遣委員は、三輪委員長海野委員、上林委員の三名で、阿具根委員が現地参加され、二月十三日から十七日までの間に行われたのであります。  まず、視察いたしましたところを順々に申し上げますと、九州電力株式会社が建設しました苅田火力発電所、苅田港、八幡製鉄所工場、久留米地区機業工場、ブリヂストンタイヤ株式会社工場等を視察したのでありますが、なおその間九州電力株式会社本社を訪問しては、電力一般概況の説明のほか、電源開発促進法の一部改正の問題について意見を聴取し、また福岡通産局においては局側からは石炭合理化法実施についての一般概況を、労働組合代表からは右に関する意見を聴取し、また石炭会館においては日本石炭協会九州支部代表、北九州石炭鉱業会代表、西九州石炭鉱業会代表、市町村代表等からそれぞれ意見を聴取し、また久留米絣調整組合事務所においては、福岡県久留米絣調整組合代表、福岡県綿スフ織物調整組合代表等から意見を聴取して帰った次第でございます。  次に、各視察箇所につき日程の順序により御報告いたします。  苅田火力発電所でありますが、これは昭和二十八年十月十五日、ワシントン時間でありますが、その当日に署名成立をみた火力借款のうち、世界銀行より苅田火力発電所建設資金分として、千百二十万ドルを借り入れ、これに加えて国内資金二十七億円を投じて工事に着工して今回完成したものであります。設備機械はウエスティング・ハウスより購入したものでありまして、発電所出力七万五千キロワット、年間発電力量四億一千三百万キロワットアワーでありまして、わが国としては最新を誇る新鋭火力発電所であります。なお、苅田火力発電所としては将来発電所出力四十万キロワットを目標としてその工事新設計画を企図しており、従来は第二期計画として、時期は昭和三十三年でありますが、七万五千キロワット、第三期計画として昭和三十五年十二万五千キロワット、第四期計画として昭和三十七年十二万五千キロワットの計画を樹立しておったのでありますが、今回第二期計画七万五千キロワットを変更して、十五万六千二百五十キロワット増設工事計画中であって、昭和三十三年十一月には運転開始をしたいとの話であったのであります。  次に、苅田港の石炭積出状況について申し上げますと、当港よりの石炭の移出は、昭和二十八年が約百万トン、昭和三十年は百五万一千トンでありますが、将来は現在計画中の川崎線、これは汽車の線です。川崎線の新設に伴いまして、三百七十万トンの積み出しを可能とする港湾計画中であります。なお、苅田港地区においては、苅田火力発電設備の増設にタイアップしまして、現在の三十万坪の工場敷地のほかに約百二十万坪の工場敷地の拡充を計画しております。またきわめて工業用水にも恵まれておりますので、右の発電力を利用する新工場の誘致を行い、九州地方の産業の振興をはからんとしておるものであります。  九州電力株式会社の本社におきましては、九州電力の一般概況、将来の電源開発計画、電気料金等についての説明を聞き、ついで電源開発促進法の一部改正案についての意見並びにその他の問題について意見を聴取したのでありますが、その概要は次の通りであります。  九州地方は水力資源に乏しく、石炭資源に恵まれている関係上、将来も火主水従でいくべきが当然でありまして、ことに最近の新鋭火力発電機械設備等は日進月歩の発達をとげており、建設費用も安くつき、従って水力発電所建設の場合より電気料金も減額し、これによって九州地方の産業の振興を招来し、もって雇用の増大をはかるのが当然でありまして、この見地から九州電力株式会社では昭和三十四年度までに十四万七千八百キロワットの水力発電開発計画のほかに、火力六十万キロワットの火力開発を計画しておるものであります。  次いで、電源開発促進法の一部改正案のうち、下流増利益の問題につきましては、九州電力としてはこれに該当するものがきわめて僅少であると予想されるものでありまして、その問題は起らないのではないかと思われるのであります。受益の限度測定はむずかしいので、われわれ業者の間では、受益の範囲内において当時岩間の協議を主とすべきであり、行政措置でいけるのではないか、立法化には賛成しがたいという意見もあるとの話であったのであります。また、県営と会社営との競願あるいは復元の問題は、その一部改正以前に解決しなければならない問題であると思うのであります。真に九州のために、また県民のためになるかの見地に立って考慮されるべきである等の意見が述べられたのであります。  次は、八幡製鉄所の視察でありますが、炭層の豊富な筑豊炭田を背後に控えまして、関門港に連る自然の良港洞海湾を擁して、海外からの原料受け入れ及び製品搬出に好適な地であります。恵まれた立地条件を有して、東洋最大の銑鋼一貫設備により鋼材のあらゆる品種を製造しております。内外の需要及び市況に即応した品種を供給し得る弾力性、機動性を持ちまして、特に運輸、造船、建築、造機等の需要に対して各品種をとりまとめて応じ得る強味があるのであります。現在は東田溶鉱炉六基中三基、洞岡溶鉱炉四基を稼動しており、前者は多少旧式でありますが、後者は新式でありまして、千トン二基、七百トン二基を有しております。この後者中七百トン溶鉱炉を視察したのでありますが、最近機械設備した第四製鋼工場視察をやったのであります。ここはストリップ線材工場等圧延部門の拡充に伴う所要鋼塊の確保と製鋼部門の根本的合理化のために米国式近代化を採用した新鋭製鋼工場であります。  次にまた、戸畑ストリップ工場視察をいたしましたが、本工場は今次戦争によって付属設備が半端なままであって、熱延と冷延の能力にも非常な不均衡があるので、輸入機械によって冷延及び付属設備を補充し、その全幅活用によって品質の向上と原価の切り下げをはかっているものであります。圧延作業をできるだけ広範囲に機械化し、生産方法を簡単にし、生産度を高め、高能率、高品位、低コストの製品を作るために研究を重ねられて、旧プルオーバー式圧延は四重五段、連続式圧延と発達してきたのでありまして、本工場はこの連続式圧延機で広巾帯鋼、ストリップを圧延する工場であります。米国アームコ社の技術を導入した世界に誇る工場で、熱間圧延工場、冷間圧延工場、ブリキ工場、亜鉛メッキ工場に大別され、主としてブリキ亜鉛鉄板、冷廷薄板及び高級仕上げ鋼板を圧延しているのであります。そのおもな部門を視察した次第であります。  当製鉄所としましては、第一次合理化工事の結果、昭和二十六年度下期銑鉄トン当りコークス使用量九百七十六キロであったものが、最近は六百九十キロとなって、三割の消費量を減少しております。また、製鋼燃料消費及び製鋼能率につきましては、鋼塊トン当り燃料使用は二分の一に減じたのに、製鋼一時間当り鋼塊生産量一人当り昭和二十六年におきまして八・七二四トンのものが十三トンないし十四トンと画期的に製鋼能率を上げているのであります。  また戸畑工場におきましては、一及び二冷延帯鋼工場生産高並びに目的一級歩どまり、こういうような一つの一級歩どまりという製品の品位でありますが、一級歩どまりも前者については昭和二十七年五千九百五十三トンから二万五千三百三トンというふうに、後者につきましては二十九年の七八%から八五%に上っているのであります。その他につきましても相当向上して見るべきものがあるのであります。  五カ年計画としましては、厚板工場におきましてはその二、三の工場一つに併合しまして稼動率を高め、また近代的管理計器を使用することにすれば、切り捨てが少くなり、注文通り延びが平均してむだが少くなるし、なお、上吹転炉装置という装置でありますが、この装置によりまして短時間に製鋼ができまして高性能を発揮し得るものでありまして、四十トンの転炉一つが平炉にしますと百トン四基に相当し、年間約四百万トンの生産量に達するものでありまして、これに十五六億の資金を要するということであります。かように改良をせんとしているのであります。  また、鋼塊は八十ないし百万トンを増産する。銑鉄については、現在二百万トンの能力があるのでありますが、五カ年後にはこれを三百万トンにする計画であります。  かように設備の改善に努力をしてきたので、国際競争に伍しまして現在の輸出をしておるのでありますが、今後とも合理化、近代化につきまして、目下鋭意計画中であります。目下のところ精煉技術としましては世界水準に達しておるということを申しておりますが、今後の問題は粘結炭あるいは原料鉱石の補給状況をいかにするかという問題が残っておるのであります。  次に、福岡通産局におきましては、局長又び関係部課長並びに石炭鉱業整備事業団九州支部等の代表者から、石炭鉱業合理化基本計画、同実施計画、石炭鉱業整備事業団の炭鉱買上申込状況、坑口の開設状況、合理化工事の進捗状況等につきまして説明を聴取したのでありますが、その概要は次の通りであります。  石炭鉱業合理化臨時措置法第三条第一項の規定による石炭鉱業合理化基本計画によりまして、昭和三十四年度までに石炭鉱業整備事業団の買収により減少すべき石炭の生産数量に三百万トンであります。同法第四条第一項の規定による昭和三十年度石炭鉱業合理化実施計画に基いて同事業団の買収により減少すべき石炭の生産数量は全国合計四十万トンが予定されておるのでありまして、当九州地区内における石炭鉱業整備事業団の炭鉱買上申込状況を申し上げますと、石炭合理化臨時措置法施行に伴いまして石炭鉱業整備事業団が買収する採掘権及び鉱業施計の売り渡し申込については、昭和三十一年二月十三日現在におきましては、福岡県が十六件、長崎県が一件、計十七件で、県別の三十九年度年間出炭量及び申込前の一カ月の実働労働者は次の通りであります。二十九年度年間出炭量は十七万八千三十四トン、申込前一カ月の実働労働者の数は千四百十七人、かような炭鉱が現在申し込みをしておるのであります。なお、事業団における作業進捗状況を見ますと、本部の審査の結果不適当と認めたものが一件、また本部の審査で適格と認め、評価の段階に入ったものが四件、本部において審査中のもの三件、支部において審査中のもの六件、申込書類の不整のため督促中のものが三件、以上のような状況でありまして、昭和三十年度全国合計四十万トンの出炭量を有する炭鉱買上予定のうち九州分十七万トンの出炭量を有する炭鉱の買上見込みはほぼ順調であると当局は見ています。ただそのうち一番提出が早かったのは、昨年十二月十五日でありまして、現在のところまだ買上終了が一件もないのであります。その点については、公平な価格で買い上げるよう公平な取扱いをしなければならぬので、必然的に審査に必要な資料が複雑にならざるを得ない。その結果、その真正な資料が提出されておらず、その提出を督促すること等によりおくれるものも相当あるのであります。その買上基準に基いての具体的な適正資料としての書類が具備して、これらによって信憑力を得て、公平な価格で買上げを終了しなければならないと考えて、鋭意努力していると言っているのであります。さらにその期間が遅延することによって、従業員の生活問題、離職手当等や失業保険等の問題を惹起するから、彼此考慮して、少くとも原則として申込後一カ月間以内に買上げが終了しなければならぬ点を指摘して、その促進方を注意してきた次第であります。  次に、盗掘問題が現在問題になっております。去年の年末以来田川地区に相当数の、石炭の盗掘をやる連中があり、これが集団的に行われておるというような事例があるのであります。その間に悪質なボスが介在し、取締りの日を免れながら盗掘をやっているというような問題があります。最近はこの盗掘中に婦女子がまじりまして、二名も死亡したというような事例があります。相当取締りを強化してかような保安上許すべからざる問題の発生しないように忠告を与えて参ったのであります。  また、鉱害問題が最近頻発しておりまして、これにつきましては、局側からは、地方の通産局ですが、毎月保安上の検査をしておると言っておるのでありますが、最近の頻発する鉱害状況を見ますと、保安検査について欠けるところがあるのじゃないか、昭和三十年八月以降五カ月間も何ら保安上の検査をしていないのじゃないかというような問題も検討されておったのでありますが、監督上の注意を促して参った次第であります。  それから合理化工事の進捗状況でありますが、縦坑開さく工事、この縦坑開さくの計画は全国で六十八本のうち、九州地区は一十本でありますが、その進捗状況は三十年度までに九本完成しております。また三十五年までには残り十一本というような計画で進捗を見るはずであります。  それから炭鉱の機械化工事でありますが、炭鉱の機械化の推移を見ますと、中小炭鉱の機械化は大へんおくれております。中小炭鉱機械化の促進のための施策が何か打たれなくちゃならぬというような気持がするのであります。  最後に、石炭鉱業にとっては昭和二十九年、三十年は苦難時代でありまして、これを重力料金未払い状況から見ましても、昭和二十九年六月には一億七千万円の未払いがあった。また三十年六月には三億五千万円余り、その十二月は一億五千余万円の不払いがあった。本年度は前年度の一千三百十九万トンに対しまして二千三百五十万トンの出炭が予定されておりまして、外国炭の船賃が上り、国内炭に有利になって電力用炭が動き、鉱工業部門が活発で、荷さばき増があったので、少くとも前上の未払いがふえないと予想しているという話があったのであります。  ついで、福岡県労働組合総評議会、副議長の勝野登君、また日本炭鉱労働組合九州地方本部執行委員長丸岡吉夫君、その他二氏が出席されたのでありますが、労働組合代表意見を聞いたのであります。全炭鉱のうち未払い賃金を有する炭鉱は出炭が悪い。機械化すれば出炭できるのであるから、できるだけ組合の方から機械化するように働きかけておるのが通常であるというような話がありました。  その他大きな問題としましては買収の期間が長いという点であります。なるべく早く買い上げをしてもらいたいということを希望しております。予告手当、離職金一カ月分ももらえない。それで解雇されて失業保険につながろうとするものが出てくる。この失業問題をどうしてくれるのかと、かっての本法案の公聴会の席上、救済は政府がやると言明をしていたが不十分であるから、時に失業対策事業をやってもらいたいというような要望があったのであります。  このほか大手筋炭鉱でも合理化によって三万何千人かを減らすと聞いているが、五カ年計画は各炭鉱から出されているのかというような質疑がありましたが、これに対しましては、三十一年の合理化計画だけは出してもらっているというのでありして、これに対しては三十一年度だけでやれるかとの質問に対しまして、各炭鉱間の精密な積上作業は間に合わなかったが、今後できればそれによって修正することもあり得るとの回答でありました。また縦坑を掘る場合は長期計画でなければならぬと思うがいつまでとするのか、というような問いに対しまして、なるべく早くとの答えが本省の石炭課長からされました。また労働組合が了解しないものは買い上げないというのが法の趣旨ではないか、申請されたときに了解しているかどうか。現在は、最初は買い上げ申請の承認も得ないで申請され、買上契約がきまってから労組に言って来ても、すでにそのときは不承認できないところに追い込まれているのではないか、買上げ申請を組合側も知らぬんでおって、急に買い上げますと言われても困りますというようなことで、調査の際は幹部等に聞くだけでは困るので、労組関係者に直接に会って了解を得るようにしてもらいたいというような要望があったのであります。また、離職金の支払いは売買契約成立の日の在職を要件とするが、現実問題としては、申し込みと契約成立の日との期間があまり長いから、申し込みの日にさかのぼって支払ってもらいたい、これが不可能ならば、なるべく早く少くとも申し込み後一カ月以内に買上契約が成立するようにとの要望があったのであります。  ついで、石炭会館におきまして、日本石炭協会九州支部代表伊藤八郎員外四名、北九州石炭鉱業会代表の藤江泰氏外六名、西九州石炭鉱業会代表石川鉄弥氏外四名、市町村代表等との懇談会が通産省炭政課長、福岡通産局長、総務部長、石炭部長、炭政課長の列席のもとに行われたのでありますが、まず市町村代表からは、合理化法に対しましては反対でないと意思表示をしておったのであるが、その内容が明確を欠くので、修正を要望しておったのでありますが、その点が明らかになっていない。それは買上炭鉱の鉱害賠償の件であります。すなわち未発の鉱害賠償制度が確立していないことに不安を持っている場合、買い上げ以後は事業団が全部責任を持ってもらいたいということ、また石炭業者中には、公租公課が延納ている事実がありまして、これは市町村財政に大いに影響を及ぼしているので、この点履行されるようにしてもらいたいというようなこと、次に、買い上げによって生ずる従業員の失業問題でありますが、これは一般の失業者と区別して対策を講ずるようにという要望があったのであります。これが実現しないと、右の失業者が市町村に流れ込んで財政の破綻をきたす不安が生じますというような意見が述べられたのであります。業界代表からは、合理化法の適正な施行を期待しているが、これと並行して総合燃料対策、労務対策資金政策について万全を期してもらいたいという意見が述べられた後、北九州石炭鉱業会及び西九州石炭鉱業会からは合理化法施行法に関する次のごとき要望があったのであります。その第一は、事業団の業務処理について業務処理を迅速化してもらいたいということ、第二は、買収価額の引き上げでありまして、現在の予定でありますところの年産出炭トン当り買収価額二千三百五十円は低い、少くとも三千五百円までは引き上げてもらいたい。これに要する財源の不足は政府資金で充足してもらいたいというようなことであります。第三は、事業団が買収する採掘権の基準につきまして、実情に応じて改められたい。理由は合理化基本計画に定める地区目標の六〇%以下では、これに該当する炭鉱の多くはすでにもう廃止していると思われるので、その基準によって三百万トンの買収目的は達せられがたいというような理由であります。  また租鉱権問題であります。買収申し込みにかかる租鉱権炭鉱がその鉱業権者から分離独立するためには、鉱区面積について鉱業法の制限規定現行十五ヘクタール以上という規定でありますが、これを排除してもらいたい。すなわち合理化法に特別な規定を追加するか、鉱業法の当該規定改正するか、何とかしてこういうふうな租鉱権問題を考えてもらいたいということ、また次に、債務処理委員会設置促進の件でありますが、買収代金による債務弁済は当事者間ではなかなか処理が困難であるから、こういうような委員会を設置してもらいたい。  次に納付金についてでありますが、すでに事業を休止した採掘権者、または租鉱権者については、前年中に出炭実績がある場合といえども、普通納付金の納付義務を免除すること、こういうことをやってもらいたい。次に、鉱区税につきましては、抗日開設の許可を拒否された採掘鉱区に対する鉱区税は免除すること。  次に、合理化法実施の前提条件として次の措置要望しているのであります。それは、石炭需給の安定、合理化資金の確保、旧債の特別処理と金利の軽減、税制の改正、労働対策、かような項目でありますが、なお、ある業者からは某炭鉱の買い上げに当って、その隣接炭鉱に水が流れ込んでくる。その排水設備に多額の金を要するから、この炭鉱も買い上げてもらえないかというような要望があったのであります。  炭鉱関係は以上のようでありますが、次に、福岡県の久留米絣の調整組合事務所に参りまして、同絣の組合代表者及び綿スフ関係業者代表者が集合いたしまして懇談会が開かれたのであります。久留米絣代表者からは、福岡県久留米絣調整組合は昭和二十八年十二月発足したもので、構成員は久留米絣協同組合員で、組合員は現在三百十二名、なお休業中のものが百十名あります。その四割までが機械大体十台以下であるというような話しであります。戦前の最高生産数量の昭和三年の二百三十四万反に対しまして、昭和二十九年にはその二分の一にも達しない約百万反というような不況にあえいでおる状況でありまして、伊豫、備後のものに圧せられて現在窮地に陥っている。五割以上の操短を行なってきたのでありますが、目下打開策について努力中であるのであります。  なお綿スフ織物につきましては、福岡県綿スフ織物調整組合の代表者から、昭和二十六年三月ごろまでは好況を持続しておったのでありますが、最高広幅織機二千七百台、小幅の織機が千八百台、計四千五百台で操業いたしておりましたが、その後経済界が不況になりまして倒産したものが相当ある。現在は広幅機械千六百台、小幅機械千二百台で操業している、従業員は好況時代の三分の一に減じておる、約三千五吾人で操業を続けているというような不況の状況であります。広幅織機一台につきまして一万円、小幅織機一台について五千円というような融資を願ったこともあるが、実現しなかった。かような状況でありまして、炭鉱の場合と同様に過剰設備買い上げをできるだけ早く実現してもらいたい、そうして工員を短い時間の操業でつないで、この業を続けるのがお願いであるというようなことであったのであります。買上価格の問題につきましては、織機よりも型式、タイプの問題、それから付属設備の問題、製造メーカーの問題、製造年度、耐用年数等によって差があるのでございまして、これによって適正に算定してもらいたいということを希望しております。実際の買い上げ当りましては耐用年数の古いものは買上値段も安いわけであるから、初年度は予算も減額されたそうでありますから、その古いもののうちから買い上げてもらいたいというような意向もあったのであります。また三潴織物工業協同組合関係者の話しによりますと、買い上げになったからといって顕在失業者がふえるということにならぬ、何となれば遊休織機が多くて六割操業で、その遊んでいる機械を一割ぐらい買い上げられても、従業者に影響は何らないというような話があったのであります。当組合の現在生産量の六割は九州、四割はそのほかに販売されておりますが、今後は九割の機械で農村漁村のみならず都会に販路を開拓して、残存織機をフルに稼動できるようになることを望んでいる、そういうような計画でいるのだということを申しておりました。  一番最後に訪問しましたのは、ブリヂストンタイヤ株式会社久留米工場でありますが、同工場は東洋最大のタイヤ工場でありまして、終戦後はいち早く機械設備の根本的な近代化に着手しましたが、年を追って名実ともに充実してきまして、これに加うるに一九五〇年このブリヂストンタイヤの社長一行がアメリカを視察しまして、一九五一年に、グッドイヤというタイヤの会社がありますが、グッドイヤ社と技術提携協約を結んだのであります。その契約の成立によって、事業の進展にさらに一そうの拍車を加えたのであります。  大体の規模を申し上げますと、当工場におきましては自動車タイヤ、チューブ、それから自転車タイヤ、チューブ、ベルト、それからホース、工業用品、ゴルフボール等を一製造しておりまして、単に数量ばかりでなく、その能率も大へんな進歩をとげているのであります。すなわち設備改善の主点が全自動化に置かれておりまして、品質の均一性、低コストによる合理的な製品を完成せんとしております。大量生産方式の確立、特に合成ゴム、強力人絹処理機構の整備は、来たるべき飛躍を大いに期待されているものであります。アメリカ側は、最初資本参加を主張して参ったのでありますが、当社は技術参加を主張して譲らず、ついに当社の意向がいれられまして、米人二君が常駐しておるのであります。しかも、日本の土地に適したタイヤを製造するという目標のもとに、当社は月産八百トン、全国生産量中の三五%を占めており、新しい車の生産量一台について、五、六本を基準として生産しておるような状況であります。生産会社の数がこのゴム関係は少ないのでありまして、マーケット・リザーブができる。すなわち、無理な生産量を作らずに、自粛生産をして需給のバランスをおのずからとっておりまして、先の見えない競争を避けているというようなことで、比較的安定した業態であります。昨年百三十億円の生産額であったものが、今年は百五十億円の生産額に達するという見込みでありまして、そのうち八割がタイヤで、自転車タイヤは約十五分の一くらい、ただし、金額にしますと一割五分にもなるというようなことであります。一年の生産高一万トン中の二割を、タイ、ビルマ、マレー、イラン、中近東、東南アジア、南米に輸出しておりますが、この二割を三割に引き上げるべく努力中であります。将来の問題としましては、原料として、天然ゴムよりは、合成ゴムが価格が安くて、しかも石油化学の発達に伴い、品質の上等なものが生産されて供給されるというような状態になるんじゃないかということを期待しております。  以上でありますが、調査に対しましては、視察先の関係者から格別な便宜を供与していただきまして、ここに深謝申し上げておきます。
  61. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) これにて、派遣委員報告は終りました。  なお、以上の報告につき、質疑の通告がございますが、関係当局の出席を待って、次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  63. 三輪貞治

    委員長三輪貞治君) 速記を始めて。それでは本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後四時十四分散会    ————・————