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説明員(高田正巳君) お手元に縦書きのガリ版で、「新
医療費体系に基く健康保険及び船員保険の新
点数表について」というのがございまするが、これによりまして御
説明申し上げたいと存じます。
厚生省は、一昨年九月に新
医療費体系を発表いたしまして
国会の御審議を願ったわけでございますが、この
体系は、
昭和二十六年一月の臨時
診療報酬調査会の
答申の趣旨にのっとりまして、医師、歯科医師及び
薬剤師の
専門的
技術に対する報酬を物の対価と切り離して評価するという原則と、
国民の
医療費負担に変化を来たさせないという原則とを考慮いたしまして、二十七年に実施いたしました諸般の
調査の結果に基いて作成いたした
診療報酬体系でありまして、これに対しては、
国会及び
関係団体からいろいろ貴重な御
意見が寄せられたのは御存じの
通りでございます。
この
体系は、三十年一月から
医薬分業と同時に実施する予定になっておったのでございますが、一昨年十二月の第二十
国会におきまして
医薬分業の
関係法律が改正されまして、その実施が本年の四月まで延期されましたので、これに伴って、この
体系も本年四月から実施する予定に相なっておる次第でありまよす。それで、
厚生省といたしましては、その後種々研究を重ねました結果、基本的な思想は、一昨年の
体系のそれを踏襲いたしまして、昨年新たに実施した社会
医療調査、
国民健康保険
医療給付実態
調査及び社会
医療内容精密
調査の結果に基きまして、各
方面の
意見を勘案しまして、新
点数表の形式をもってこの
体系を具体的に表現することといたしました次第でございます。
基礎
調査の概要でございますが、そこに書いてありまするように、
一つには、社会
医療調査及び
国民健康保険
医療給付実態
調査を実施いたしたのでございます。
本年の四月に、
社会保険診療報酬支払基金または
国民健康保険の
診療報酬請求書を審査する機関へ提出されました
診療報酬請求明細書、この中から、入院は十分の一、外来は百分の一を抽出いたしまして、本年三月中に行われた
社会保険及び生活保護法による各
診療行為の回数と点数とを
調査したのでございます。そうしてこれを
社会保険等の種類及び
医療機関の種類別に集計をいたしました次第でございます。
それから二番目の
調査といたしましては、前記の
調査の付帯
調査といたしまして、全国の
医療機関から、
病院は約五十分の一、一般
診療所は約百分の一、歯科
診療所は約二百分の一を抽出いたしまして、昨年七月中の
社会保険及び生活保護法による診療に関しまして、投薬及び注射に用いた薬の価格及び剤型、時間外診療の割合、歯科の補綴材料の原価等主要な
診療行為の精密な内容を
調査いたした次第であります。
しからば第三番目に、新
点数表を作成いたしました基本原則でございますが、まず第一点といたしましては、一昨年の思想に基きまして、物と
技術とを分離して評価するということを主眼といたしました。それから第二番目に、
現行点数から新点数へ移行する時点におきましては、総
医療費並びに
社会保険等の種類及び
医療機関の種類別の
医療費に著しい
増減を来たさないようにいたしました。この場合の総
医療費は、
社会保険及び生活保護法による
医療に要した経費——これは患者の自己負担額をも含むのでございまするが、その総額でございまして、昨年三月中の当該
医療費を昨年八月一日から実施された歯科
医療養担当規程の改正並びに昨年の九月一日から実施された
診療報酬点数表及び薬価基準の改訂に基いて補正をしたものでございます。従って、このうちには自費患者の、いわゆる自由診療の
医療費は含まれておらないのでございます。それから各
診療行為の点数は、昨年実施をいたしました前記
調査の結果に塞ぎまして、二十七年の医業経済
調査及び医業経済精密
調査の結果から原価計算方式によって計算した一昨年の
体系の原価を勘案して作成いたしました。この場合の原価は、
病院及び
診療所の原価のうち、その
診療行為の最も頻繁に行われる施設の原価を参考といたしました。御存じのように、一昨年におきましては、主として
診療所の原価をとったわけでございまするが、今回の
点数表におきましては今申し上げましたように、頻度の多い方の、その
医療行為が
病院において頻度が多ければ
病院の原価をとり、
診療所において多ければ
診療所の原価をとる、さようなふうなことにいたしたわけでございます。
また次に一昨年の当
委員会でも御審議を願いましたいわゆる新
医療費体系と大きな修正を加えました点は次の点でございます。前申しましたように、昨年の三月並びに七月に
調査をいたしておりまするので、その新しい
調査の結果に基いて各
診療行為の点数を再
検討いたしましたことが一点でございます。また二番目に各
診療行為の難易度を考慮して点数を定めましたのでございます。この難易度の点につきましては、全般的にはなかなか至難なことでございまするので、私
どもができる限りにおいての程度の難易度を考慮したということでございます。それから三番目に
技術科の一部先払いの
考え方を加味しておる点でございます。これらにおきまして初診料の
点数等が一昨年のものと非常に隔たりをもっておるような次第でございます。
次に新
点数表の大体の骨組の概要でございますが、診察料につきましては、初診料は十二点、
現行四点でございますが、これを十二点、再診料は従来ほとんど払われていませんでございましたが、これを三点ということにいたしました。この十二点は、午前中の当
委員会でも申し述べましたように、別個に行われまする健保の財政対策で一部負担ということが
考えられておるわけでございまするが、それとは全然無
関係に点数を定めたわけでございます。従いまして現在の法律をそのまま放っておきますると、十二点がそのまま患者負担になるようなおそれもございまするので、これらにつきましては一部負担をどういうふうにするかということと一緒に法律の改正案の方で御審議をいただくことになるわけでございます。また、再診料の三点につきましては、これは御存じのように、今までは二点ということになっておりましたが、従来の二点と本質的に違う
意味を持っておるのでありまして、従来の二点は、注射や投薬を何も行わなかった場合にのみ再診料か請求てきることになっておりましたが、今回の三点はいかなる場合においても再診料として請求できるという点数でございます。
なお、所定の診療時間以外の初診及び再診につきましては、従来二点を加算しておりましたのですが、今回は特に深夜、すなわち十時から午前六時までの初診及び再診につきましてはそれぞれ八点を加算して支払うことにいたしました。これは歯科も同様でございます。
なお、ここには書いてございませんが、代理人によって、あるいは電話等によっていろいろ症状を話してお医者さんに伺いを立てたような場合、こういうふうな場合にも若干の点数をお払いするように配慮いたしてあります。
それから次は指導料でございます。指導料は従来ほとんど支払われておりませんでございましたが、これを五点として、結核その他の慢性疾患について初診後一カ月目から二週間に一回支払うことといたしました。この五点も従来と非常に変っておりまして、病状のいかんにかかわらず、これはこういう病気であればこの支払いをするという形にしたのであります。
それから検査料につきましては、検査
技術の難易度を考慮いたしまして全面的に改正をいたしました。すなわち医師自身でやらなければならない検査でありますとか、そうでない検査でありまするとか、その辺のことを考慮いたしまして点数を改正いたしました。なお、これに使用する薬剤及びフィルムの価格は、検査
技術料と分離して別に支払うことといたしました。
次は薬治料でございます。調剤
技術料と薬価とに分けて支払うこととし、従来薬治料の中に含まれていた診察料的部分は、診察料に含めて支払うことといたしました点は一昨年のものと同様でございます。
調剤
技術料は散剤及び水剤につきまては、一日一剤につき〇・六点、薬局の場合はこれは金額で表示いたしまして七円といたしました。薬価は薬価基準に定めるものを支払うことといたしました。
なお薬価につきましては、お医者さん等が請求する普通薬の価格につきましては、一昨年は薬価基による価格をそのものずばりを払うということにいたしたのでありますが、それでは非常に医師の方々の事務が煩瑣になりまするので、普通薬の価格につきましては六十円以下のものは十五円きざみの四階級に分ちまして、各階級の薬価はその平均価格で支払うことにいたしておるわけでございます。
次は処方せん料でございますが、処方せん料につきましては、一昨年のものにおきましては、特別にこれを抜き
出して支払うということをいたさないという方針でございましたのでございまするが、当
国会、当
委員会等におきましてもいろいろとこの点についての御論議がございましたので、それらの御論議を勘案いたしまして、薬局において調剤される場合の処方せんに限り文書料という形で一点をお支払いをするという予定にいたしております。
それから注射料でございます。注射料は注射の
技術料と薬価とに分けて支払うことといたし、従来注射料に含めていた診察料的な部分は診察料に含めて支払うことといたしました点が一昨年のものと同様でございます。
注射の
技術料は、医師の
技術料的な部分は診察料に含めて先払いすることといたしまして、皮下筋肉内注射は一点、静脈内注射は二点ということにこちらの方ではなっておるわけでございます。なお注射に用いまする普通薬の薬価の支払い方法は、薬治料の薬価の場合と同様でございます。
処置料は、診察と明瞭に区別しがたい単純な処置料につきましては、原則として診察料に含めて支払うことといたしました。この点も一昨年のものと原則的には同様でございます。
それから手術料につきましては、
技術料を除く原価、所要時間、手術に携わる医師数及び難易度等を考慮して、全面的に改正をいたしました。このため最高の手術料は、
現行の七百点から千三百点に引き上げられるような結果に相なっております。
入院料につきましては、従来入院患者の薬治料及び注射料に含まれていた再診料的な部分を、再診料として支払います代りに、入院料に含めて支払うことといたしまして、普通給食の行われる場合は、一般の患者は三十二点、結核患者は三十点、精神病患者は二十八点といたしましたような次第でございます。
次は歯科でございますが、歯科診療におきましては、その特質にかんがみまして、再診料を設けないで、処置料として支払うことといたしました。
また歯科の補綴科は、補綴の
技術料と材料費とを支払うことといたしまして、処置料のうちに含まれていた診察料的部分と同じく、補綴料の一部は初診料に含めて支払うことといたしたのは、一昨年の場合と同様でございます。
大体以上が新しい新
医療費体系に基きまする
点数表の概要でございます。なお御
質問がございましたならば、その御
質問について
お答えを申し上げたいと思います。