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1956-05-28 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十八日(月曜日)    午前十時五十二分開会     —————————————   委員異動 五月二十七日委員須藤五郎辞任につ き、その補欠として長谷部ひろ君を議 長において指名した。 本日委員深川タマヱ君及び寺本広作辞任につき、その補欠として草葉隆圓 君及び加藤武徳君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君            田村 文吉君    委員            加藤 武徳君            木村 守江君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            榊原  亨君            中山 壽彦君            西岡 ハル君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            藤原 道子君            山本 經勝君            常岡 一郎君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生政務次官  山下 春江君    厚生大臣官房総    務課長     小山進次郎君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生事務次官  木村忠二郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。五月二十七日付須藤五郎辞任長谷部ひろ選任、五月二十八日付深川タマヱ辞任草葉隆圓選任、同日付寺本広作辞任加藤武徳選任、以上であります。     —————————————
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括議題といたします。御質疑を願います。
  4. 藤原道子

    藤原道子君 私はこの際、さらに厚生省にお伺いいたしたいことは、一部負担の点についてでございますが、最初大臣にお伺いいたしたいのは、厚生省昭和三十年十月において、政府管掌標準報酬月額が八千円未満の者が全被保険者の四三・〇六%を占めておるというふうな御発表でございますが、これに相違ございませんか。
  5. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相違ないと存じます。
  6. 藤原道子

    藤原道子君 それではお伺い申し上げますが、前回もこの点を繰り返しお伺いいたしましたが、さらに私には納得が参りませんので、御質問を続けてみたいと思います。  私ここに持っております資料は、栃木県の開業医の成田医師資料でございますが、結局それによりますと、世帯収入がまあ八千三十二円というような階層の、実収入の総額が一万二百七十一円となっておるのです。ところがこの階層の家計の総支出は、一万二千三百六十一円ということになっております。これは四人世帯、ところがこれがもし入院いたしたといたしますと、傷病手当はこれの六割になるわけでございます。一般労働者が若干の黒字を示しておるにもかかわらず、この階層においては、ふだんにおいてすら二千九百円の赤字を出しておるのです。ところが、これが六割の支出になりますと、一体これでやっていけるかどうか、しかもその支出を見ますと、まことに謙虚な支出内容でございまして、まあ調味料なんかも四百六十五円、これは厚生省が出しておる生活保護支出よりもさらに下回っておるのです。子供が二人おりながらお菓子類が三百七円、お酒のごときは百三十六円、こういうふうに非常に下回った生活支出なのです。住居費が七百八十四円、光熱費は七百九十一円、四人家族で被服が千三百五十七円というように、非常に謙虚な、これでやれるのかしらと思うような支出であるにもかかわらず、赤字を出しておるのです。ところがこれが先ほど申し上げましたように、六割になりますると、むろん主人が入院すれば内職すらできなくなるのでありますが、これにさらに入院費三十円をかけることが妥当とお考えになりますか。しかもそれ以下の階層が四三%を上回っておる。それでも冷酷にこの階層に三十円の入院費を払わせることを、ほんとうに真剣にお考えになって可能とお考えでしょうか。これは大臣の誠実な御答弁を私は伺いたいと思います。初めっから不可能なことがわかっていても、さらに収入を取らなければ、入院料を取らなければならないのでございましょうか。
  7. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 藤原さんの御質問は相当数字にわたっておりまするから、事務当局から答弁させてもらいます。
  8. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今お話がございましたように、この中小企業従業員は、賃金ベースが比較的低い従業員でございますから、生活に困難であるということは私どももよく承知をいたしております。それがかりに働いておりまするときでも、生活保護法基準以下の収入であって、しかも他に別に収入がない、財産がないということであれば、そのときからすでに生活保護法適用の問題が起ってくるわけです。その人がかり病気になりまして入院をいたしたという場合を考えますると、傷病手当金は平素苦しい賃金のさらに六割ということになりますから、その際にも、もしそれで生活が維持できません場合には、やはり生活保護法適用の問題は起ってくるわけでございます。今御指摘のかような場合に、さらに入院費の一部負担をするということになりますと、一昨日来申し上げておりまするように、さらに苦しくなるわけでございますが、しかしその場合にも、かりに負担ができないということでありますれば、その限りにおいて生活保護法適用考えるわけでございます。一体保険というものは御存じのように、医療給付の方におきましては平等の原則を実はとっておるわけでございます。収入の面におきまして、収入に応じて保険料を取り立てるという社会政策的な一つのしかけが入っておりまするけれども給付の面におきまして、しかも医療給付の面におきましては、これは平等ということを建前にいたしております。さような意味合いにおきまして、私どもといたしましては、この保険医療給付の面における平等の原則というものはあくまでも維持して参りたい、かように考えておるわけでございまして、従いまして、入院料の一部負担というものも、これは一応全部平等に同じような状態にある方であれば御負担を願って、そうしてそれが万一支払えない場合におきましては、他の救剤制度である保護法運用に待つ、こういうふうな建前を私どもとしましては考えておるわけでございます。
  9. 藤原道子

    藤原道子君 私はあまりくどく聞くことはもうこの際やめようと思うのですけれども、約半数のものが負担にたえないことは最初からわかっているのです。それなのに、政府が面子にこだわってどこまでもこの線を一歩も譲らないで、さらにふだんさえ苦労しておる人にさらに追い打ちをかけるようなこの改正案に対しましては、私はこの階層の人々の立場から考えましても断じてこれは許すことのできない問題だと思うのです。前回にも申し上げましたように、簡単に生活保護とおっしゃるけれども生活保護適用がそんなに簡単にはいかないということなんです。この際私は安田さんがおいでになるけれども、最近生活保護患者入院しておりまして、どんどん医療券が打ち切られているじゃありませんか。どんどん一部負担が強化されているじゃありませんか。そのために自殺問題さえ起していることを、安田局長もおそらく御承知だろうと思うのです。こういう際に、働いておれば食っていけるのですよ、この人たち生活保護を受けたくないのです。なるべく自力で生きていこうとするのが今の国民の感情なのです。ですから働いて何とかやっていこうとする意欲のある人です。しかもこれに対しては生活保護法は御案内のように、もう労働の再生産費は含まれていないのですよ。生きるに値するかどうか、じっと寝ていてやっとからだが保てる程度給与しか与えられていないのです。ですからこの労働者が一月なり二月なりで健康になれば働くのです。その人もやはりその生きるに値しないような生活保護適用に回しても、それでも少しも差しつかえないとお考えでしょうか。安田さんある程度保険に対してはゆるやかに扱いができるのですか。
  10. 安田巌

    政府委員安田巌君) 生活保護適用につきましては、これは御承知のような無差別平等に適用いたしますので、特に保険の一部負担ができないからといって、特別な扱いをするものではないのでございます。最近結核患者入院等につきましてきびしい取扱いをしておるというお話でございますけれども、一昨年の入退院基準を作りました当時から比べますと、本年の二月で約一万三千人ばかり入院患者がふえております。そう無理な取扱いをしておるつもりはないのであります。ただ入院患者が減りましたのは、いろいろ結核に対する医療方法等に新しいやわ万が出て参りましたので、そういったことがあるのではないかと考えておる次第であります。
  11. 藤原道子

    藤原道子君 それは私はそのまま聞きのがせない。医療審議会が非常にきびしくなって、主治医はなお入院治療の必要がある、さらに六カ月なり、一カ年の入院を必要とするという診断が出ておるけれども生活保護の面におきましてはどんどん切り捨てられておる事実がございます。それは安田局長も御承知だと思う。主治医意見より、医療審議会が立ち入って直接に医療券の切り捨てをして退院を強要いたしておる。同時に、一部負担は非常にきびしくなっておる。入院していたくてもいられない状態にあるじゃありませんか。政府はいかにごまかそうということだけに、私は考えをおいておられるように思えて残念でたまらないのです。そういう実情があるということをあなたはお認めになりますか。
  12. 安田巌

    政府委員安田巌君) 入退院基準は御承知のように、一昨年きめたものでございますけれども、その基準適用いたす場合に、保護実施機関の独断に陥ってはいけませんので、その府県におきまする結核権威者を集めまして一応申請させたものにつきまして、それを審査することになっておるわけであります。いろいろ医療機関の方からお出しになりましたもので、皆さんの御意見を聞きますというと、それを入院させる必要のないというのも、まま出てくる実情でございます。そういうようなことを審議するために審議会を作ったのでございますので、お話のような点であるかと思いますけれども、しかし大局的に見ますというと、非常に適性に行われておるのではないかと、私たちは信じておる次第でございます。
  13. 藤原道子

    藤原道子君 政府入院を必要とする人が百三十七万あるとしてあります。最近医療の方針が違ったとおっしゃるけれども化学治療の面がそれほど急速に進んでおるとは、私たちは納得できないのです。入院したくても入院ができない。医療券の発行が締められておる。入院していても医療券の打ち切りがある。こういう面から、入院したくてもできない階層がふえておるのです。二十一万のベッドがずいぶんがらがらにあいてきておる。これはどういうわけですか。二十一万も入院する対象者がいないとは言い切れないと思う。今ですら入院ができないのです。結核患者在宅治療をしておるために、非常に感染率がふえておる。先日感染率が減ったような答弁をされたように記憶いたしますが、最近非常に小児結核がふえてきたということは、これは常識になっておる。入院したくてもできないから、劣悪な家屋に住んでおる。従って弱い子供たちにどんどん結核が感染しておるじゃございませんか。そういうことに目をおうて、法案審議のため、ただここでごまかして通しさえすればいいのだということが明らかに私たちには見えておるのです。でございますから、今ですら入院ができない階層が多いのに、さらに保険患者に三十円の負担をかければ、やはり入院のできない階層がさらにふえてくる結果になります。これが私たちはおそろしいのです。国民の保健、衛生の立場から、これはもう断じて納得できないことですから、この際お伺いしますが、この法改正によって入院したくてもできない人がふえるという私たちの見通しですが、そういうときに局長は一体どうお考えでありますか。大臣結核対策に対して、これで所期の目的が達せられるとお考えでございましょうか。データを出せとおっしゃれば、幾らでもあるのです。
  14. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 藤原先生の御質問ごもっともでございます。ただ、しかし考えてみますると、在宅いたしまして治療をいたしておりましても、その人はいろいろ費用がかかるのでございます。食事もうちでいたしましょうし、いろいろかかるのでございます。その方が病院入院されましても、治療一切を病院で見てくれるわけなんです。従って、その際に一日三十円程度のものを御負担になりましても、私は家庭治療をなさっておる場合とあまりその家族負担、その家庭経済的な負担というものは大して変らないのではないか、しかし、それがもし変るといたしますれば、ただいまも申し上げておりまするように、生活保護法運用等があるわけでありまして、入院して九百円払えない方という、そういう家庭であるならば、その御家庭治療をなさっておる状態におきましても、すでに生活保護法運用対象になってくる、き得べきはずになるのではあるまいか、かように考えるのでございます。
  15. 藤原道子

    藤原道子君 それは詭弁ですよ。在宅患者の方が金がかかるから、だからそれと見合うために、入院患者からもっと金を取るのだという論議は成り立たないのです。在宅患者の待遇が悪いなら、これをさらに引き上げることをなぜあなた方はおっしゃらないのか、それと同時に、今までならば、入院のできる人が一部負担がかけられたために入院ができなくなるじゃないかと私は言っている。そういう人には生活保護法適用しますと、ばかの一つ覚えみたいなことはかり言っていらっしゃる。ところが、生活保護法適用がそう簡単でないことは、うしろ安田さんがにやにやしていらっしゃる、よく知っているのです、その適用ができないことを。たんすの中まで調べていますよ、このごろは。自転車があったってもうだめなんです。ラジオがあってもだめなんです。かりに小さな住宅一つ持っていたらどうしますか。それを売っ払わなければ生活保護適用にはならないのですよ。私は生活保護法のことならよく知っていますから、幾らでも論争しますけれども、この段階であまりそんなここ繰り返したくないのです。だから、逃げるのではなくして、なおったときすぐあすから労働につけるような態勢のもとに生活保護適用ができるかどうかとこれを私は聞いているのです。赤貧洗うがごとくならなければ適用しないのです。それからこの場合、申し上げました一万円以下の所得者に対しては、ほんとうなら生活保護適用よりも下回っているのですよ。けれども一般の人はどんなに苦しくとも働いて国家にお手伝いいただかなくてもやっていこうと思って内職をしたり、あらゆる物を詰めて努力しているのです。だから生活保護法よりも下回るような給与であっても、なお歯を食いしばって働いてきておる。それが病気になったときに、だから安心して病気のときにも治療が受けられると思うからこそ保険金をかけているのですよ。保険患者なんです。被保険者なんです。乏しい中から保険金をかけている人が病気になったら、さらに赤貧洗うがごとき状態にならなければ、国の保護をいただいて入院ができないというような扱い保険局長として、おとりになることをあなたは正しいとお考えですか。保険金をかけているのですよ、この人は。
  16. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 保険金をかけておるのであるから、だから生活保護法対象とは立場が違うじゃないか、この仰せは私もよくわかります。従いまして、保険給付を受けまする際には、保険金をかけていらっしゃる被保険者であれば、あるいはその家族であれば、保険できめられた給付は何と申しますか、いろいろ財産などをどうのこうのということなく、当然給付を受けるわけでございます。ただ、その際に保険に入っておるのであるから、入院してもまるまるただなんだ、ただでなければならぬということは、私は出てこないと思うのでございます。結局保険料が何と申しますか、保険経済がそれだけにたえてゆかなければ、そこで先日も申し上げましたように、まるまる保険料を引き上げてゆくか、あるいはまるまる国庫負担でゆくか、あるいは給付水準を引き下げるか、給付水準はそのまま維持しながら、一部負担というふうな方法によってまかなってゆくか、そういうふうな問題が起ってくるわけでございます。従いまして、私どもといたしましては、さような事態に対処いたしまして、今回は税金からも出し、それから被保険者——患者の方にも一部負担をしていただく、特に入院料の一部負担につきましては、繰り返し申し上げておりまするように、在宅治療されても月に九百円くらいはかかるわけでございます。食事の代金だけを考えましても、あるいはそれ以上かかると考えられるわけでございます。従いましてその方が入院されまして、衣食住を大体病院の方でまかない、治療もされてゆくわけでございますので、同じように保険金をかけておられまする被保険者の相互の均衡等から見て、私はさような措置は妥当なりと考えまして御審議をいただいておるわけでございます。
  17. 藤原道子

    藤原道子君 私はいつまでやっても水掛論ですし、あなたのような冷酷な考え方の方とこれ以上この点について論争しても意味ないと思いますから、これで打ち切ります。しかし、これに対しまして私は……現在のようなやり方では、在宅患者も金がかかるのだからとおっしゃる。在宅患者は家にいても、細君は内職でもできるのです。内職収入も入るのです。だから入院しなければ、それだけ費用政府が助かるから、そういう方向へ追いやろうとしている悪意の意図と私は考えざるを得ません。同時に政府はなんですよ、法を作るときには、非常にまじめに熱心にいろいろごまかして法を作るけれども、作った法律が正しく運営されていますか、この際大臣に伺います。大臣は、結核早期発見早期治療、こういうことをこの間おっしゃった。ところが早期発見をしても、発見された患者が現在どういう状態に置かれておるかということを御承知ですか。私はこの際伺いますが、保健所がこれの対象となって前線として働いておる機関でございますが、保健所現状を私は伺いたい。大臣から責任をもって正しく保険所が運営されているかというその現状をお伺いいたしたいと思います。
  18. 小林英三

    国務大臣小林英三君) お尋ねの保険所活動状態保険所がどういうふうに運営されているかということにつきましては、私も前線人たちが十分に機能を発揮いたしましてやっているものと信じておりまするが、なお実際問題といたしまして、担当の局長から一応御答弁させます。
  19. 木村忠二郎

    説明員木村忠二郎君) 結核対策に関しましては、保健所は最重点を置いていたしております。これにつきましては現在もできる限りにおきましてその能力を十分発揮いたしております。
  20. 藤原道子

    藤原道子君 大臣責任をもって完全に働いていると思うと、さらに木村次官は、それを裏づける御答弁がありました。もし私が間違っていたらこれはご指摘をいただきたいと思いますが、大事な保健所医師充足されておりますか。保健所には今日半数に近い医師欠員になっておると聞いております。保健所医師がなくて、それで保健所機能が完全に行われるとお考えでございましょうか、行われていると考えおいでになるのでしょうか、この点をお伺いいたします。
  21. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 保健所定員につきましては、現在藤原委員の御指摘のように、定員が全部充足はいたされておらぬのであります。これはいろいろ国家財政の方の関係からいたしまして定員充足はできていないのでございますが、現在の人員におきまして、できるだけの機能を発揮いたしておるつもりでございます。
  22. 藤原道子

    藤原道子君 保健所半数近い医師欠員になっていて、それが国家予算の面でいたし方なくと、こういうことでよろしいのですか。何のための保健所ですか。何のための国家予算ですか。結核対策政府の最も重要な政策として発表されていて、その結核早期発見早期治療を受け持っている保健所医師がなくて、国家財所のためにというような答弁は、われわれはそのまま聞くわけには参りません。もし充足してないならばどういうところに原因があるのか。ただ国家財政だけでは済まぬと思いますので、大臣の御答弁をさらに重ねてお伺いします。
  23. 小林英三

    国務大臣小林英三君) この問題は木村次官から答弁させます。
  24. 藤原道子

    藤原道子君 それもわからないのですか。
  25. 木村忠二郎

    説明員木村忠二郎君) 保健所の職員の充足が従来あまりよくなかったということは、御指摘通りでございますけれども、この点にかんがみまして、本年度予算におきまして特に充足いたさせまするつもりであります。従来の補助の単価というものがきわめて低いがために、充足がきわめて困難であるという実情にかんがみまして、本年度はその単価を引き上げまして、さらにその内容につきましても諸手当等も事前に含めるという措置を講じまして、本年度からこの充足がきわめて順調にいくという措置をとっております。この方策につきましては、今後できるだけ拡張していきたいと考えております。
  26. 竹中勝男

    竹中勝男君 私はまだ残されておる、まだほとんど触れていないこの法案に対する重要な質疑をそこに提出しておるのですが、その前にただいまの藤原委員質問に関連して大臣にお尋ねしたいのでが、一つは今の結核対策に関することで、大臣から意見を伺いたいのです。御承知通り、現在至急に入院を必要とする結核患者が百三十七万人あるということを厚生省から発表されております。ところが結核病床は二十万で、その二十万の病床の中に一割ほどの空床がある、満たされていない病床があるというこの現実を一体どこにその原因があるか、大臣責任をもって一つ返事していただきたい。
  27. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 御指摘になりました結核患者結核病床空床の問題でございまするが、これは私はいろいろの原因があると思います。大体この結核患者といたしましては、できるだけ交通の便利な至便な、同じ入院するならばきわめて便利な、また設備の完全な病院入院をいたしたいと考えるのは、これは当然でございまして、従いまして今日結核入院患者はたくさんあるにもかかわらず、今日ございまする二十三万床と思われておりまする病院空床があるということは、そういうふうな患者心理状態等にも基因いたしておると思います。それからもう一つは、いろいろの経済上の問題から入院ができないというような原因もあると存じます。
  28. 竹中勝男

    竹中勝男君 そんな返事は何の返事にもならない。もし、不便であるとか、設備が不備のために入院患者がないのだ、しかも入りたい者が数倍あるというのだったら、一体厚生省は何でそんな不便な所に、何でそんな不備な設備をやって、それで満足しているのですか。また経済と言うが、個々の経済状態でそれで入院ができないのだというならば、これは厚生省の大きな責任なのです。そんな返事返事じゃないですよ。それは白痴とか子供に対する返事だったらいいけれども、この社会労働委員会でそんなばかな答弁をすべきではない。  そこでもう一つ関連で御質問したいのですが、こういう点だけ一つはっきりした大臣の御意見を聞いておきたいのであります。  今、藤原委員質問した最初の部分の一万円以下の収入の被保険者ではみすみすこれは生活保護法適用者以下の生活に追い込められる、こういう現実ははっきりしておるのです。しかも四三・〇六%という被保険者がこういう現状に置かれておるのです。これに対しても、どうしてもこの保険給付の確立のために、保険経済の上からどうしても一日三円の患者の一部負担というものは、やらなければならないのか。またこれを緩和する方法厚生省は全然考えないのか。生活保護法なんといっても、子供だましです。ばかの一つ覚えの返事にすぎないのですから。それ以外にもうちょっとはっきりした厚生大臣の現実に保険経済においてこの被保険者が、負担能力がない者が四三%あるということがはっきりしておるのに、これを生活保護法適用するなんという最も拙劣な返事をしないで、あなたはもっと良心的に合理性のある返事をしてもらいたい。
  29. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいまの竹中先生並びに藤原先生の御質問にお答えを申し上げます。  保険制度と、純粋の社会保障制度でありまする生活保護法等についてはやはりそこに一段と違うところがあるのでありまして、保険制度の運営といたしましては、先ほど藤原委員のおっしゃったところまでは踏み込んでいけないと存ずるのでございます。相互共済の制度といたしましての保険制度といたしましては、やはり保険内容の公平というところも考えねばならないと存じまするので、その点につきましては、私どもは先ほどから御答弁申し上げておりまするところによって御了承を願いたいと存じます。
  30. 相馬助治

    ○相馬助治君 ただいまの質問に対する答弁はきわめて明瞭を欠いているようでございますが、一つ省内における意思を統一して藤原竹中委員の問いに後刻答えてほしいと思うのです。  私は以下数点にわたって、総括の段階におけるどうしても厚生省の意思をただしておかなければならない問題がありますので、順次お尋ねしてみたいと思います。従って冒頭に申し上げましたように、先ほど両委員に対する答えはいまだなっておりませんから、省内の意思を統一して後刻お答え願うということを一つ条件として進めていきたいと思います。  この社会保険の診療報酬については現在まで、ある種の医療機関と特別割引契約というものを締結しておるのでございますが、これは健康保険の発達の初期においてはこういうふうな特殊取払いというものが行われた意味が私には了解されまするけれども、現在もまたこれをやっておりまする方針は何でございますか。そしてまたこの契約締結の必要があるとすれば、どういう原則に立っていかなる範囲にこれをやらんとするものでございますか。またこの特別割引契約は市井のまじめな開業医を経済的に圧迫することになると思いまするが、これに対する厚生省の見解を承わっておきたいと思います。
  31. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今日特別に割引契約をいたしておる医療機関がございます。それはたとえばある種類の被保険者につきまして、その者の診療を目的といたしまして設立された医療機関でございまするとか、あるいは組合等におきまして、事業主の方で自分のところの従業員を診療するために設けておりまする医療機関でございまするとか、まあさような種類のものでございます。それでこれらのものは、その設立の趣旨からいたしまして、若干の割引契約をいたすことはこれは私どもの方からいたしまするならば非常に望ましい、保険経済の観点から申しますれば望ましいことでございまするし、また、それらの医療機関の設立の趣旨から申しましても不適当と申すわけには参らないと存じます。しかしながら、大体におきまして、将来さような特殊なものを除きまして、この宮公立と申しますか、さような経営主体のものに限られるものと私は考えます。特殊な事業主病院等は除きまして、一般に開放される病院といたしましては、さような経営主体のものに限られると思うのでございます。なお、私ども将来この割引の病院をどんどん拡張をいたしまして、そうして一般医療機関に圧迫を加えるというふうな趣旨のことは考えておりません。大体現行の制度、現行の状態程度を維持して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  32. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 委員会を暫時休憩いたします。    午前十一時三十四分休憩      —————・—————    午後四時二十一分開会
  33. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を再開をいたします。  休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題とし質疑を行います。午前中相馬委員質疑中でございましたので、続いて御質疑を願います。
  34. 相馬助治

    ○相馬助治君 先般小林厚相の発表したところによりますれば、大体五カ年計画をもって国民保険の制度にまで推し進めたいと言っているわけでございますが、この際問題になりまするのは、保険診療を取り扱わない一般医師、歯科医師あるいは薬剤師、こうした人々の保険行政に基く監督権に対する責任の範囲というのはどの程度と思量されておるか、これを一つ明確にしておきたいと思うのでございます。特に具体例として問題になりまするのは、指定された保険医でない一般の開業医から診断書をもらって、それを健康保険法上に示された医療給付の請求等にその診断書を使う場合に、従前とやかくの問題があったやに承わっておるのでございまするが、こういうものをも含めまして、いわゆる保険指定医でないところの診療をしておるところの一般医師、歯科医師、薬剤師、こういう方々を対象とした保険行政に基く監督権に対する責任の範囲を承わっておきたいと思います。
  35. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ただいま相馬先生の御質問の点は、いわゆる指定保険医療機関以外の医療機関の場合の御質問でございまするが、これは保険と特別な関係を結んでおる医療機関ではございませんので、保険医療機関のように、いろいろ監督をいたし、どうこうするというふうな関係にはないのでございます。ただ、この傷病手当金の支給でございまするとか、あるいは臨時に急患の場合に近所の医者に飛び込んでそれが保険の関係の指定医療機関でなかったというふうな場合、等がありまして、これらの保険と特別な関係にありまする機関以外の機関におきましても被保険者がそれにかかることがあり得るわけでございます。従いましてさような場合におきましては、この療養費払いというふうな格好に支払いとしては相なっていくわけでございまするが、保険との関係におきましては、保険の方でたとえば傷病手当金の支給をいたしまする際に、それに関連をいたしまして、指定医療機関以外の医療機関にいろいろとお問い合せをする必要が生ずることがございます。さような場合にお答えをいただくような規定が九条の二にあるわけでございます。従いまして、さような性格的な違いがございまするので、この九条の二は保険医療機関の監査のような規定ではございませんで、従いまして立ち入りとか、やかましい規定ではございません。報告を求めたり、物件の提示をお願いをしたり、問い合せ質問をいたすというような行政庁の権限を明らかにいたしておるわけでございます。  大体さようなことでございまするが、これにつきまして、現行法でも同じような規定がございまするけれども、現行法におきましては、この罰則の関係が相当重かったのでございまするが、改正案におきましては、その罰則を軽くいたしまして、一万円以下の罰金ということだけにいたしておったのでございますが、先般御承知通りに、衆議院でさらにその関係を過料に改めるというふうな御修正が行われまして、罰則の関係はさように現行法より数段と軽減をされた形に相なっております。
  36. 相馬助治

    ○相馬助治君 次に承わりたいことは、診療報酬請求書の審査に当る審査委員の決定についてでございますが、昭和三十年度四月厚生省保険局長通牒の趣旨を見ますと、審査委員会は厳正公平なる中立性を堅持して審査に当るべきものであるという旨の示達がなされておりまするが、当然この精神は本法がかりに改正された後においても生きているものであると私は了承するのでございまするが、この審査委員の任命その他に関して、どのような厚生当局は御見解を持たれておるか、この点を承わりたいと同時に、かりに今度の改正案が成立いたしまするならば、従前に比して基金幹事長の各種の干渉がこの審査委員に加えられることがきわめて懸念される問題でございまするが、この基金幹事長の各種の干渉を排除する具体的措置具体的方策、これらがありまするならば、承わっておきたいと思います。
  37. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 審査委員選任についていかなる方針を持っておるかという第一点の御質問でございますが、これらはもちろん医師でございまして、医師の中で、しかも臨床の経験の豊かな方、さらには保険診療に経験をお持ちになった方の中から選任をいたす運用方針を私どもは持っております。  第二点といたしまして、これらの審査は厳正公平でなければならない、それについてかつて通牒を出しておるけれどもその方針に変りはないかという御質問でございまするが、それは仰せの通り、従来と同様に、むしろ従来よりさらに厳正公平を期さねばならないと存じます。基金の幹事長の干渉の心配がないかという御質問でありまするが、それにつきましては、この審査委員の任命に当りましては、医療協議会の御意見を聞きまして任命をいたしまするし、さらにこの審査委員は合議体をもって審査に当るということに相なっておりまするので、かような点につきましては、法律の上でも十分保障されておると存ずるのでございまするが、しかし御質問の御趣旨の点につきましては、運用に当りましてさらに十分留意をいたし、その御趣旨に沿いたいと考えております。
  38. 相馬助治

    ○相馬助治君 ただいまの点に関しましては、今般の法改正によりますれば、基金幹事長の干渉ということが容易に想定されると思うのでありまして、今局長言明の通り、この問題については慎重に一つ考慮しておいていただかなければならぬと、かように存じます。  次に、私はこの診療報酬請求の問題にからむところの具体的なことをお尋ねしておきたいと思います。この診療報酬請求書の審査に対しては、従前切り捨てごめん的な審査が行われました。今般の法改正によりますると、いよいよこの傾向が強くなるのではないかと、かように考えるのであります。ところが、この診療報酬請求書の審査に対しては、各地区においてそれぞれ様相が異なっておって、ある地区においては、現在まではかなりこの点がうまくいっていたやに承わっております。しかしながら、一般的には切り捨てごめんの審査に対する点数の軽減が行われて診療報酬請求書を出した医師は何のゆえんをもって、いかなる事情をもって自分の点数が削られたかはわからない。しかもその次から注意しょうとしてもどういう注意をしてよいのやらわからない。またこれに対する不服があっても、どのように処理してよいのかわからないというような不満を聞いていたのでございまするが、この点に対して局長はどのようにお考えになるか、しかもこの不服処理をうまくやるために、何か具体的方策を持っておるかどうか。今回の法改正によりますれば、法事の上では医療担当者のこういう不服に対して救済規定は何らないように思うのでありまするが、それらの点について当局の確かな見解を承わっておきたいと思います。
  39. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ただいまの御質問にお答えをいたしまする前に、先ほど私が申し上げました中で、一点誤まりがございましたので訂正をさしていただきたいと存じます。審査委員選任に当りましては、医療協議会と御相談をしてやるということを申しましたのですが、それは間違いでございまして、審査協議会という機関でございます。訂正をさしていただきます。  それからただいまの御質問でございますが、この審査に不服のある場合には、一体どうなるのかという御質問でございます。訴願というふうな意味での不服処理機関は、今回の改正の中に設けてございませんけれども、しかし実際に不服を申し入れられれば、基金自体で再審査をいたしておりますのはただいまの現状でございまするし、今後もそのことは十分にやって参りたいと存じております。なおさらに、今回の改正では、新たに設置をいたすことになりました地方審査協議会というものは、これは審査の問題の方針といいますか、大綱についていろいろ御相談をし、基金の幹事長にいろいろアドヴァイスをする建前になっておりまするが、さらに勧告の権限をも法律上持っておりまするので、かりに基金自体の再審査というふうなことで十分に満足の得られないような場合におきましては、この審査協議会に参加しておられまする医療担当者の代表の方から審査協議会の問題として取り上げていただきまして、そうしてかりに不当であるというようなことがもしございまするならば、基金の幹事長の方にその旨勧告をしていただくというようなことにも、この地方審査協議会を実際上運用をいたして参りたい。さような所存でありますこれを要しまするに、切り捨てごめんというようなことに相なりませんように、私どもといたしましても十分運用に留意をいたしたい。かように考えておる次第でございます。
  40. 相馬助治

    ○相馬助治君 今の局長答弁を聞いておりますと、地方審査協議会があたかも医療担当者の保護機関であるかのごときことをおっしゃっておりますが、そうあるべきことは望ましいというような意味でならわかりますが、事実はそういう作用よりはむしろ医療担当者を、まあ何といいますか、セーブする役割の方が非常に強いと思うのです。これが健康保険の当然の使命からそのこと自体、私は非難しておるのではないのであって、そのことの意味はわかりまするけれども法律上に許された医療担当者の不服訴願救済、こういう道が今度の法改正には依然として示されていないという点について、多大の不満を私どもが持ち、医療担当者は多大の不安を持っているということを指摘して、これが善処万を強く要望するものでございます。  次に承わりたいことは、患者の一部負担金の徴収不能の場合における最終責任者はなんびとですか。
  41. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答えをいたします。支払いの最終責任者は患者であります。徴収をしていただく方は医師であるということにつきましては、先般来たびたびお答えをいたしました通りでございます。
  42. 相馬助治

    ○相馬助治君 国民健康保険において一部負担の最終責任者は保険者ですね。局長
  43. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答えをいたします。国民健康保険におきましてはいろいろこの保険者によりましてやり方が違うように私承知をいたしておりまするが、中にはその徴収を保険者がやっておるところもあるやに聞いております。
  44. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はそこに問題があろうと思います。国民健康保険の場合においては、一部負担の最終責任者は保険者である。ところが健康保険の場合にはその最終責任者は患者である。しかも徴収という面から見れば最終責任者は取れなかったという面から見ると医者である。これはどうもいささか社会保険の一貫性という点から見ても、またこの政府管掌の健保の将来の発達というところから見てもふに落ちないのでございます。従って今度の法改正におきましても、患者負担金というものをわれわれは非常に大きな問題とせざるを得なかったのでございます。で、現行法でこれはよろしいとお考えでございましょうか。やむなくこういうふうにしておるのだが、将来はこんな腹案を持っているというような御見解等でもございますか。
  45. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 国民健康保険は御存じのように、市町村が保険者になっておりまして、その保険者の手近なところにおりまする人たちが被保険者になっておりまするので、これは健康保険ことに政府管掌健康保険とは非常に事情が違うわけでございます。従いまして、健康保険の場合におきまして、だれが最終の徴収の責任者になるかということにつきましては、立法論といたしましては、ただいま相馬先生の仰せのようなお考えも十分あり得ると存じます。しかし、さような建前を健康保険の制度の中に取り入れまする場合におきましては、一部負担というようなものが事実上意味をなさなくなるようなおそれがあると私ども考えるのでございます。実際問題といたしましても、個人々々の一部負担を診療の終った後二カ月もしてから被保険者から徴収するということは、ほとんど実際問題といたしましては非常に至難なことでございまして、しかも一部負担を支払わなかった被保険者が必ずしも保険官署の管轄内に居住するとは限りませんし、また管轄内の医療機関に受診するとは限らないのでございますから、これは大へんな事務量になると存ずるのでございます。従いまして、かような実際の取扱いの上から申しまして、一部負担を実施いたすといたしますれば、これはどうしても窓口徴収の建前をとらないと、現実問題として一部負担制度の趣旨がその目的を達しないようなことになってしまう、私どもはかような観点からいたしまして、ただいま御審議をいただいておりまするような改正、従来とこれは同じ建前でございまする窓口徴収の建前法律案を整理いたしておるわけでございます。将来とも私どもいろいろ研究を続けて参りたい、かように考えておりまするけれどもただいまのところでは、今申し上げましたようなことに心得ておる次第でございます。
  46. 相馬助治

    ○相馬助治君 健康保険の実際の運営上、一部負担金は窓口徴収ということが事務員の関係からも当然であるというお話は、私は理論としてその通りであろうと思うのです。ただ午前中も問題を藤原委員から提起されましたように、問題は、当然支払い得ないような、いわば働いていてすら生活の困難であった者、それが月額八千円未満の者が全被保険者の四四%をも占めるといわれるところの政府管掌分の健康保険において、当然とることのできないような、特に入院料のごときはそういうふうな法改正を行なって、しかも一部負担金を徴収不能の場合における最終責任はこれは医者だ、また患者だ、こういうこと自体は非常に私は事実上の問題として問題が大きいと、こういうふうに考えざるを得ないのです。実はここにこそ今度の健康保険改悪の政府の意図が露骨に現われているのではないか、診療抑制である、かかりたくとも窓口へ患者がいけないように仕組まれたところの法改正ではないか、かように論ぜられるところの理由が明瞭に存しておると思うのです。政府はそうでないといくら強弁いたしましても、この一部負担金のものの考え方というものがどう考えても、われわれには理解できない。掛金をかけておるだけでやっと生活をやっておるところの低額所得者が、病気になったらとたんに一部負担金が払えるのだという、そういう理屈はどこから考えてもわれわれには割り出せないのでございます。従いまして、この一部負担金の徴収不能の場合における最終責任は将来保険者負担すべきものであろうと、かように考えるのですが、これは私見をまじえて恐縮でございますが、厚生大臣は将来この問題について政治的に御考慮なさる御用意ありやいなや、一つ小林厚相から承わっておきたいと思うのでございます。
  47. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 相馬委員ただいまの御質問に対しましては、保険局長からるる御答弁申し上げておりまするが、重ねての御質問でございますが、この点につきましては、将来の研究課題として研究していきたいと思っております。
  48. 竹中勝男

    竹中勝男君 厚生大臣にそれに関連してお尋ねしますが、一部負担の中の入院料の点について、近い将来、来年度これが困難だということはあなたも認めておられる通りです。また客観的に、約半分の人間の入院料の一部負担ということはきわめて困難であるということは認めておるはずです。生活保護法によってでもというくらいの答弁を参酌しても、それははっきりしておる。一つ質問は、近い将来において、この入院料の一部負担について、これを全廃する考えがあるか、どうかということが一つ。第二点は、保険経済の上から、健康保険建前からいっても、これは医療給付を差別するということになるからして、あなた方が反対しておられるのですが、一万二千円以下の所得者、すなわち事実上において一部負担の月九百円を負担する能力のない者。きわめて困難な者については一部負担をはずすというお考えがあるかどうか、われわれは一部負担を、全部入院料についてははずしていきたいと考えておるものでありますが、政府の方においては、非常に困難な約半数について、この際、一部負担をはずすということは、保険医療給付内容に差別を生ずるからして反対だということをどこまでも主張されるのですか。そういう点について歩み寄りができないものか、社会党と与党の考え方に歩み寄りが絶対できないものかどうか、厚生大臣にお尋ねしたい。
  49. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 今の竹中さんの御質問でございますが、今お聞きのような、そこに限界を作って区別をするということは、私どもといたしましては困難であると考えますし、またただいまのところといたしましては、入院料を全然とらないという方向につきましては、考慮していないのでございます。
  50. 竹中勝男

    竹中勝男君 考慮して……はっきりしないですね。考慮しておるというのですか。
  51. 小林英三

    国務大臣小林英三君) 考えておらないのでございます。
  52. 山下義信

    山下義信君 関連質問一つやらしていただきたいと思います。  お手間は取らせないつもりでありますが、今相馬委員の一部負担の最終支払いの責任の問題の質疑応答がありましたときに、政府の御答弁を承わっておりますと、これはどうしても患者負担してもらう、支払いの最終責任患者にあるのだ、そうしなければこの制度を立てたゆえんがないのである、制度を立てたかいがなくなるのである、患者が払わぬときには、だれかかわって払うということをしたのでは、この一部負担制を設けたかいがなくなるのである、こういう御答弁があったのです。従来一部負担については、その赤字の補てんの目的のためであるという面、あるいはその負担患者に対しては過重ではないかという点の議論は、相当われわれやってきたのであります。しかし、これを恒久制度としての、システムとしての当局の目的こういう一部負担制をしいたとき、健康保険の制度の上でどれだけのこれが利点になるのかという点については、あまり多く触れられていなかったのである。私も最初一部負担を問題にしたときに、今は赤字の問題を論じよう、恒久制度としての利害得失の問題は先で伺ってみようといって保留したことがあるのでありますが、多くを御質疑申し上げようと考えてはいないのですが、しかし、この点は当局も大いに質問に対して語らなければならぬ、答えなければならぬ、私は十分この目的を、いわゆる国民の前に明らかにする必要があると思う。ただ従来は赤字対策のために患者にかくのごとき無理な負担をかけるのだという点のみが論議されてきた。しかしこれを恒久制度としていこうとする、赤字であろうがあるまいが、当局はこういう制度を健康保険制度の上にとっていこうとするのであるならば、その目的を解明にする必要がある。おそらく私の想像するところでは、いわゆる将来の保険拡大への地ならしであるということは、一つはこの点を当局は示唆するのであろうと思う。それで、これを当局は恒久制度としていこうとする、患者負担させなければこの制度を置いた目的が失われていくんであるということは、裏をひっくり返していけば、この制度を設けて何をしようとするのであるか、健康保険をどう改善しようとするのであるか、何のプラスになるのであるかということ明確にする必要がある。それでその点を一つ当局はざっくばらんに言いたいだけのことは言うて、奥歯に物のはさまったようなことを言わないで、この制度を設ける目的を私は明快にしていただきたいと思う。
  53. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 支払いの最終責任患者にあるという建前をとっておきませんと、払えない者については他の者が払う建前でございますると、だれも払いたくないわけでございまするので、そういう一部負担制度制度というものが、財政上にも一部負担制度というものをとった意味が保険財政という観点からだけでもなくなる、かように考えるのでございまするが、山下先生のただいまの御質問は、もう少し制度的に一体一部負担というものをどういうふうに考えるかという御質問でございます。一部負担を制度的に考えまする際に、今、山下先生が仰せになりましたように、将来の国民保険の際における地ならし的な意味を持ったものであるとして、この一部負担の制度を考えられる意見もございます。しかし私どもは今、直ちにさような観点に立っておるのではございませんので、むしろ将来の給付国民保険あるいは健康保険、非常に給付内容について格差のあるものを近づけてゆこうというふうな観点から、ただいまの一部負担制度を考えておるものではございませんで、むしろ皆保険というふうに保険の制度が今後ますます広がってゆくにつきましては、それの保険制度の一つの水漏れを防ぎますと申しまするか、あるいは自動調節的な意味を持ったものとしてこれを考えておるわけでございます。これにつきましても、いろいろと御意見のあるところであろうと存じまするが、私どもといたしまして今日のところは、さような考え方を持っておるわけでございます。
  54. 山下義信

    山下義信君 私が当局の目的を尋ねた中に、いわゆる保険の将来の地ならしのためにということが、それがいわゆるレベル・ダウンを含んでいるものじゃないということであるならば、一応承わっておきましょう。あるいは今日の段階ではそこまで考えたのじゃないのかもわからぬ。しかし後段の答弁は、非常に私は示唆に富んだ答弁を当局はしたと思う。何とか言いましたね、二つ伺った、一つには自動調節のために……、なかなか意味慎重、それからもう一つは、何とか当局は言いましたね、同じような大体趣旨の言葉を使われたと思う。おそらくそうだろうと思う。当面のいわゆる水漏れを防ぐためだと言われた。なかなか含蓄のある言葉です。それじゃ一つ今の健康保険制度にどこから水がぽとぽと漏れるか、その水の漏れる穴を防ごうとする、つまり自動調節しようと期待するということは、そこなんです。水がぽとぽと漏れるところを一つ自然に漏れぬようにしよう、ここいうことなんです。すると、どこに水がぽとぽと漏れたかということを伺わなくちゃならぬ。これは遠回しにおっしゃらずと、もう少し一つ端的に私は自信を持って、確信を持って当局は一つ明らかにされるがいいだろうと思う。そういう水がぽとぽと漏れるようなところがあったら、それはそこの穴をふさぐ、ちょうどかまやなべからこうぽとぽと漏れるようなもので、そういうところは早く鋳掛屋にかけて、そこを修繕せねばなりませんからね。それと同じでありまして、漏れるところがどういうところか、これを一つ明確にしていただきたいと思います。
  55. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) もちろん先生方もよく御存じのように、今日被保険者証を他人に貸したりというようなことで、いろいろさようなことがございますことは御存じの通りであります。まあ不正受診と申しますか、それから診療が乱にわたると申しまするか、いろいろ水漏れがあることは、社会保険審議会におきましても指摘をいたされました。これについて保険財政あるいは保険運営をあずかる当局といたしましては、被保険者の貴重な保険料をお預かりをして運営をしておるのであるから、これをその責任においてもしっかりとしなければならない、こういうようなことが要望されておるわけでございます。私どもさような観点から今回の改正案を御提案を申し上げた次第でございます。
  56. 山下義信

    山下義信君 私は関連質問ですから、簡単にとどめておきますが、だいぶんベールを脱いで、だんだんと中心に私は御答弁が進んだと思うのです。その被保険者の不正受診の抑制ならば、これは言うまでもなく保険証その他のやり方があるだろうし、今回の改正案の中にも、事業所並びに被保険者について十分お取締りのできる個条を入れられたので、それは一部負担によってそういう点をチェックしようとすることが必ずしも真正面の目的じゃないでしょう。あとおっしゃったのがほんとうの目的でしよう。いわゆる乱診乱療の弊がある、これを是正したいというのがおそらく当局の真のねらいだ、真の目的とされるところじゃございませんか。そういうところはあまり問題にされませんが、おそらく一部負担の、かりに当局かわれわれはこれは非常に保険建前からいえば、適当な言葉じゃありませんが、邪道であると思います。しかし当局がこれにかりに長所があると思うならば、乱診乱療なんといいますか、テクニック的にいえば過剰診療にいい効果があるというふうに考えているのが私は大体目的の本旨ではないかと考えますが、その点はいかがですか。
  57. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 財政上の問題も一部負担の大きな目的でございます。今先生が御指摘になりましたようなこともあわせ考えております。
  58. 山下義信

    山下義信君 私はあれこれ並べてからそのお答えを求めたのじゃございません。それは重要な目的じゃありませんか、かように伺ったのです。重要でないなら、重要でないとおっしゃって下さい。
  59. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 重要な目的の一つでございます。
  60. 山下義信

    山下義信君 そうでしょう、それが唯一の目的じゃありますまい。今答えられた最前からの御答弁の中にいろいろあるでしょう。しかしながら少くとも重要な目的であるとおっしゃった。私はそれから先は追及はしません。  ただ一つお答えにならなくともいいが、当然これは審議の順序とすれば、当局は今日における保険診療のいわゆる乱診乱療あるいは何というか、過剰診療というか、そういうものの弊があるならば、それぞれの弊害の状態を明確にする義務があるのです、必要があるのです。そういう点はなるべく当らずさわらぬようにしていこうとすれば、いわゆる一部負担を置いた当局の真意というものが理解されないのですよ。あなた方がそれを明らかにしようとなさる、あるいはそれはいろいろに差しさわりがあるからなるべく黙って通ろうとなさる、それはあなた方の自由意思だ。しかしながら、少くとも今日の保険診療がいかなる状態にあるかということだけは明確にしなくちゃならぬ、水がぽとぽと漏れるといういわゆる乱診乱療の弊が、どの程度にそれが今日の実情であるかということを私は明らかにする必要がある。答えたくないと思えばお答えにならなくてもいい、答えようとなさるなら承わりたい、どちらでもよろしい。
  61. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) どの程度ありますかということは、これは私ども過去に監査をやりまして、その上で、その結果等につきましては、すでにこの社会労働委員会の過去におきまして何度も御報告を、御質問に応じましてお答えを申し上げているところでございます。さようなものがあるというととは事実でございますが、それがどの程度にあるかということにつきましては、私どもお答えをする何らの的確な資料を持ち合せておりませんので、かような点については特に私どもの方か御審議の御参考に資することとができなかったわけでございます。
  62. 山下義信

    山下義信君 そう先回りし、用心深うされたら困る。ほんとうは、ここで今日の保険診療の実情、いわゆる過剰診療というか、乱診乱療の弊があるというならば、その状態はいかなる状態であるかということを明らかにして、その資料を要求しなければならぬのだ、順序として。そのことを伺うだけで、おそらく十日は何ぼ何ぼでもかかると思う。でありまするから、私はそういう無理な要求はいたしませんが、一向資料がない、とんと、このことはわかりませんと言うたのでは、先ほど、水がぽたぽた漏れると言うたのとでは矛盾するのであります。私は、当局はそういう点はできるだけ実情を明確にされて、その弊害のあるところも明らかにすべきものはする必要があると思う。今のように用心深く逃げてばかりおられるということは、私は当を得ないと思う。でありますから、その実情の調査、あるいはその実情資料、いかなる状態に今日置かれてあるか、従って一部負担制度によってどれだけの是正をする必要があるのか、従ってこの一部負担制度によってどれだけの是正がされる見込みであるかという点を調査するか、調査しないか、そういうことを、要求するかは少しは考えて、あとで私が発言するかもわからないということだけ申し上げて、関連質問を終っておきましょう。
  63. 相馬助治

    ○相馬助治君 先ほど来一部負担金の問題をめぐって関連質問が続けられましたが、私はこの問題は依然として重要な、また解明しなければならないと考えておりました。従前、この健康保険法の一部改正は何のためにするのかという質問に対しては、健康保険制度確立のためだ、保険財政の根本的な立て直しのためだ、法律上の不備な点を整えるためだ、そうして国民医療を前進せしめ、国民保険にいくための前提としてこれがなされるのだ、と実に明瞭にしてりっぱなことをおっしゃっていたが、今同僚山下委員質問において、はしなくも高田保険局長は本音を吐かれた。その本音がいいか悪いかということを私は議論しない。私もその通りだと思うのです。これは明瞭に赤字対策なのだ。すなわち法四十三条というものを長々と規定して、保険医にどうかつをくれ、そうしてこうすれば取り消すぞとおどかしておいて、その面から不正受診や、乱診や、水増し請求というものを防ごうとされておる。不正診療、乱診、水増し請求というようなものを防ぐことは、もうまことにけっこう、これはやらなければならない。ところが、こういうふうな法律上の規定を設けて、医師を恐怖観念に陥れて、その面からこれを防ごうということは、われわれとしては受け取れない。  今度の法改正は二つの目玉を持っている。一つが今言うたこれ、第二のものはこの患者負担患者負担は自動調節をやるためだ、こういうことをおっしゃる、これはあなたが初めておっしゃったことなんです。自動調節ということは言葉をかえれば診療抑制をやるのだ、法改正が診療抑制を目的としているのだ、こういうことです。私はこれに対して意見はありまするけれども意見は言わない、私もそうだと思う。いい悪いは別として、こういう二つの目玉を持っておる。そこで私はただしたいことは、四十三条の方は依然として衆議院修正にも、また伝えられるところの参議院自民党の修正にも触れていないようでありまするが、片方の目玉の患者負担のことは二十三億何がしの負担から十七億に減り、また世上伝えられるところによるというと、ある会派の修正案をもってすれば、五億四百万に落ちたという、これでは赤字対策としての意味をなさない。にもかかわらず、どうしても一部負担という制度をこの法律の上に残したいとして現行法を満足せずしてやっておる。しかも問題な、病人としては一番哀れであると推測されるところの入院患者の一部負担の問題は、伝えられるところによりますれば何ら手が入っていない。そうして現在は御承知のように、議院内閣制度なんです。自民党の意思が同時に政府の意思なんです。政府の意思が同時に自民党の意思なんです。私は小林厚相に次の一点をただして私の質問は終るのでありまするが、私はあなたの責任は重大だと思うのだ、二十三億というような患者負担をさせるということを基本として、事務官僚をして法律案を提案せしめた、そうして衆議院から参議院にわたって、曾田君、高田君を初めとして事務官僚はわれわれの前に爼上に上せられてさいなまされた、その政府と同体であるべき自民党がおためごかしに世間をてらってか何かだんだん患者一部負担というものの金額を下げてきた。このこと自体は世論に耳を傾けたという意味では私は首肯するけれども、こういうふうなことならば、水漏れを防ぐためにもやるということの目的が達せられないので、いさぎよくこの段階において本法の改正案政府みずから撤回すべきだと思う。私は衆議院におけるところの本院に回付された案がそのまま成立するならば、よい悪いは別として、本法を撤回しろなどということは言わない、本院においてもまたこの患者負担の点については、近く大きな修正がなされようとしているやに承わっておる。まことに議院内閣度のもとにおいて、与党自民党の果した役割というものは世間騒がせだ、これは。どえらいおどかし法案を出しておいて、参議院選挙を前にして、どうも世上評判が悪いというので、ちくちくと負けてきて、そうして結局残されたものは医師会、歯科医師会から厚生省というものが信頼を失っておる。あなたの下僚であるところの局長や部長はかわいそうじゃないか。私はゆこの段階において特に小林厚相の政治的な所見を承わって、私の質問は一応ここでこの問題に関しては終りにしておきます。しかと承わりたい。
  64. 小林英三

    国務大臣小林英三君) ただいま相馬さんの御質問にございました修正案が当委員会に提案されるというようなことも私も承知をいたしております。いずれ提案されるということを承知をいたしておりまするが、相馬さんのただいまの御質問に対しましては、その際にあらためて私の所見を申し述べたい思います。
  65. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 委員長からお諮りをいたします。本会議も開かれたようでありまするし、一応休憩し、本件に関しましては委員長理事会でいま一度御相談の上、再開するなり何なりはおまかせを願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 暫時委員会を休憩いたします。   午後五時十五分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕