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1956-05-24 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十四日(木曜日)    午前十時四十四分開会     —————————————   委員異動 本日委員中川以良君及び長谷部ひろ辞任につき、その補欠として中山壽彦 君及び須藤五郎君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君            田村 文吉君    委員            紅露 みつ君            榊原  亨君            寺本 広作君            中山 壽彦君            深川タマヱ君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            藤原 道子君            山本 經勝君            森田 義衞君            須藤 五郎君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    厚生政務次官  山下 春江君    厚生大臣官房総    務課長     小山進次郎君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省保険局長 高田 正巳君    労働政務次官  武藤 常介君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選労働保険審査官及び労働保険審査会  法案内閣提出衆議院送付) ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。五月二十四日付中川以良君辞任中山壽彦君選任、以上であります。     —————————————
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に労働保険審査官及び労働保険審査会法案議題といたします。  御質疑を願います。
  4. 山本經勝

    山本經勝君 大臣お見えになっておらぬので、次官にお伺いをしたいのですが、この議題になっておりまする労働保険審査官及び労働保険審査会法案内容を見て参りますというと、従来ありました基準法の中に盛り込まれておりまする基準法労災補償適用外問題等については、当然従来あった審査会つまり者構成による協議決定機関が扱ってきたものですが、これらの問題を切り離すということになって、新しく問題になっております法案の中に盛り込まれた、こういうことですから、勢いこれは基準法の一部改正に該当すると思うのです。この点はどうお考えになっているのですか。これは次官の方にお願いを申し上げます。
  5. 武藤常介

    政府委員武藤常介君) ただいま山本先生の御質問でございますが、やはり基準法に示されておるところと、今度のこの労働保険審査官及び労働保険審査会、これの内容が企図するところが同じなものですから、この方に大体それを統一したようなことになっております。
  6. 山本經勝

    山本經勝君 統一した新しい立法だと思うのです。そこでそうなりますと、新しい立法をすることによって基準法改正する、まあ一部改正ということになってくると思うのですが、そういう場合にこれはむしろ基準法改正中心になる。なぜかと申しますと、労働者が正常な形で業務に従事している。そういうところで災害をこうむる、こういうことが問題だ。そこでこの災害をこうむったものに対して基準法あるいはその他関係法規労働者に対する保護目的としているのでありますから、その労働者けがをした、仕事中にけがをしたということによって起る災害に対する負担を軽減し、あるいはさらに療養によって健康体に復して生産に従事し、生活を営むとともに、生産に寄与するということになる。それが筋だと思うのです。そうしますと、どう考えでみましても、基準法改正ということが基本的な問題になる。ですから、むしろ新しい立法措置を講ずるのじゃなくて、基準法改正ではないかということを伺っているのです。その点を一つ御解明を願いたいのです。
  7. 武藤常介

    政府委員武藤常介君) ただいまの御質問でございますが、基準法改正は、御意見通りでございます。
  8. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますると、むしろこういうふうに受け取ってよろしいでしょうか、つまり基準法改正するということについては、第二十二特別国会当時からすでに基準法問題点について調査をするということが行われてきた。そうすると、全面的な基準法改正ということについては非常に大きな反対世論がある。そこでいわゆる基準法改正に対する反対世論のほこ先をそらすために、むしろこうした新しい立法措置によって基準法を一部ずつ削って行く。あるいは改正をしていく、こういうようなコースのように受け取れるのですが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  9. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) ちょっと事務的な経過を申し上げます。御説のように、本法案の付則におきまして、基準法の一部を改正するようになっておりまするが、これは先ほど政務次官からお答え申し上げましたように、この部分は実質的には労災保険に入っておらない場合の業務上の負傷、疾病に対する補償ということでございます。保険で払うか、事業主が直接に払うかという違いはございまするが、実質内には業務上外認定にいたしましても、あるいは障害等級決定にいたしましても、労災保険と実質的に問題は同じであるわけでございます。そこで今回労災保険につきましてその扱い改正するに際しまして、当然実質的に同じような平仄を合せることが必要と認めまして、いわばその意味におきましては技術的な問題と考えておるのであります。従いまして、この改正につきましては労働基準審議会に諮問して、その答申を経て成規手続をとっておるわけであります。一方臨時基準法調査会というものは基準法改正の要ありやなしやというもっと大所高所からの諮問調査を目下していただいておるので、この間に別段大した支障はなかろうかと考えております。
  10. 山本經勝

    山本經勝君 労災保険に加入していない者という場合に、これはこの間も問題になったのですが、具体的な事例が多々あるわけです。その場合にこれは当然労働省なりあるいは基準局としては少くとも労災保険に加入することが基本的な建前になっておる、すべて入るのが。ところが入っていないようなところで働いておった労働者が一たび事故のために死亡したり、あるいは重傷を受ける、こういうことになった場合の救済措置が、今までの事例から申しますと、幸いにして従来三者構成審議機関があるから労働者が救われておった。ところがもしそれが単なる今言われるような法規上の解釈適用だけに終るような事態になりますと、実態に即して労働者は救われない。その半面の責任は労働省にあると思う、あるいは基準局にあると思う。たとえばこの間福岡県の嘉穂郡二瀬町下相田に起った事態にいたしましてもこれは適切な事例だと思う。ところがこれはもともと基準局がこういうようないわゆる不法な企業をあるいは経営を営むことを許してはならないのだ。ところが実際は失業者に許し、またやむを得ずそういう人たちが出てきておる。それが実態なのだ。しかも労災保険には加入していない。そうするとそのために死亡した労働者なり、その遺族に対して、補償というものは何らの方法がない。であればこそこうした基準法基本精神にのっとって救済措置が講ぜられる。そういう場合に法を生かして用いる。まじめに働いた労働者災害に対する補償という点で私は非常に有効な任務を果してきたのだと思う。それを取ってのけるということが私は理解できない。そのことはすぐ基準法関係のいわゆる敷石である、ステップである。こういうふうに解釈しても私は誤まりではないと思う。ですから今言われるような形で改正手続について正当な手続を踏んできましたとおっしゃるけれども、たとえば労働の三つ、四つの審議会答申案が出ております。これらなどにしましても、一月末に政府が要綱を示してわずか一週間の期限を付して、そうして十分な審査を遂げられておらない。さっき申し上げますように、基準法の一部改正であるということは疑いない。おっしゃる通りまたそうである。そうすれば基準法改正するについては審議会を通して少くとも公聴会を開くというのが建前であったと思う。基準法が制定された当時に非常に問題になった。あるいはその後改正たびごとに問題になっている。その中でやはり強調されてきたことは、基準法改正するときはいやしくも公聴会を開く。それは審議会中心になってやることになっておったはずです。そういう手続をとられずに、一月末からわずか一週間で審議が打ち切られて中途半端な意見答申された、こういうところは私は全くの手続上のごまかしだと思う。そこら辺を一つ納得いくように、しかも十分な審査をどのようにして遂げられたかを私はお答え願いたい。
  11. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) この基準法におきまする労災補償につきましていろいろ問題を起しておる主たる場合は、監督署長が、業務上の災害である、だから五十万円払わなければいけない。こういう場合に事業主が、それは業務上でない、こういうふうに言うて異議の申し立てをする場合がむしろ圧倒的に多いのでございます。その場合に直ちに監督署長が、ぐずぐず言うならばこれを送検するというようなことが、ことによってあるいは強制執行によりまして払わせるというような措置を講ずるのが建前であるわけであります。だけれども、あまりそれでは事態が激し過ぎるというので、従来は三者構成審議会でそれを審査、仲裁するということになっておるのであります。この従来の三者構成審査会審査、仲裁というものの拘束力はそれならばどうかと申しますと、それは裁判におきまして——いずれの裁判におきましても一致してそれは拘束力がない、単なる勧告にすぎない、こういうことになっておるのであります。それでそのことはともかくといたしまして、今度労災補償審査官労使代表参与がついてこの業務上外認定なり、障害等級決定などをいたすことになりましたので、基準法におきましても、実質的に同じような扱いにしろということで、その点につきましては私は別段支障ないと考えておるのであります。でこの法案労働基準審査会にかけ、そうしてなぜ公聴会を開かなかったかということでございますが、基準法改正手続施行規則等におきましてはこれは基準審議会だけでなくて、公聴会も開かなければならぬということになっております。ところが法律そのものはいずれ国会で御審議願うわけでございますので、法の改正につきましては、公聴会手続を要しない。まあやったにこしたことはないかもしれませんが、要しない。そうしてそれは国会で慎重に御審議を願う、こういう建前になっておるのであります。  なお審議会におきまして一週間の期限と申しますか、予算を伴う法案は可及的すみやかに国会提案することが必要であるという建前に迫られまして、率直に申しまして遺憾ながら一部の委員方々がもっと検討したいという意見もあったようでございますが、お急ぎいただきまして答申をいただいたことはそういう事情に基くわけでございまするが、答申には社会保障制度審議会あるいは基準審議会けい肺審議会あるいは労災審議会職業安定審議会、いずれも五つの審議会のそれぞれ審議、御答申をいただき、そうしてそこに出てきました御意見はほとんどこの法案の中に織り込めるものは織り込んだし、運用上なすべきことはその運用面にもこれを取り入れて運用するということにいたしておるわけでございます。さよう一つ御了承いただきたいと思います。
  12. 相馬助治

    相馬助治君 同僚山本委員指摘しておる問題は大きな政治問題なんだと私は思うのです。局長がるる御説明されておりまするが、そのことはよくわかります。労働省立場からはそういうふうな実態に徴して確信を持ってもちろんお出しになったのでしょうが、私は山本委員と同じ立場に立って労働大臣に伺いたいと思うのです。この法律出した、提案趣旨説明の中に、労働保険に関する審査の統一ある運用を確保するためにこれを出したと、こういうふうに申しておりまするけれども提案理由は確かにそうですが、本法が成立して結果的にどういう影響があるかということを予測いたしまするならば、労災に関する労働者請求権異議申請権これらが必然的に制限され、あるものに至っては剥奪される危険性があると思うのです。従って労働者保護目的としている労災法、また今山本委員指摘している労働基準法、この事実上の内容的の改正になるのではないか。私たちの言葉で言えば改悪ですが、法律的用語でいう改正になるのではないか、こういうことを山本委員指摘していると思うのです。倉石労相は、就任当初に労働三法の取り扱いは慎重を期さなければならない、私の見解をもってすれば、これはにわかに改廃すべきものでないという声明をされて、当時労働界からもかっさいを受けたのでございまするが、その御精神とは、いささか背反しているのではないか、かように思うのですが、これらの経過に対する倉石労相の所見を承わっておきたいと思います。
  13. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 本法改正案趣旨説明の中のことを御指摘になりましたが、基準法関係のところは先ほど来応答がありました点でありまして、私どもは当初私が就任当時申しました趣旨と、私ども考えはちっとも変ってないのでありまして、本法はやはりこういうふうな改正をすることの方が、提案理由で申し上げました趣旨を生かすのにこの方がいいのだ、こういうことであって、相馬さんの御指摘になりましたような、いわゆる労働者の利益を剥奪するというような趣旨は毛頭ないのでありまして、この本法を適用した結果も、やはり従来るるこの委員会で御説明申し上げておりますように、労働側にとって不利益な点は私はないと思います。
  14. 相馬助治

    相馬助治君 私もただいま申しましたように、そういう実態の上に立って今労働省を非難していないのです。局長がるる説明されたような実態の上に立って、確信を持って提案理由説明された精神でもってお出しになったという善意の意思を別に疑うわけではないが、結果的には労働者請求権異議申請権こういうものが制限される、こういうことが予想されると思うが、どうなのだ、そういうことになれば、実質的に労災法なり、労働基準法なりの内容的に改悪に通ずるものではないか、これは前の労相声明その他とは背反しないか、こういうことを聞いておる。
  15. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 働く側の請求権本法改正によって制限を受けるということはないと思います。
  16. 相馬助治

    相馬助治君 異議申請権はどうでしょうか。
  17. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、第一段階と第二段階、そうして今度変っていますのは、第二段階において審査官というものだけでやるという点が変っておるだけでありまして、異議申請については従来通りであります。いわゆる第一審で従来通り取り扱いをいたすわけであります。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 審査会が廃止になる関係上、異議申請中央に持ち込まれる、そうすると費用その他、地理的条件が遠くなる、こういうことから実質的には制限されるというふうに私は考えるのですが、利の誤解ですか。実際の影響を聞いておるのです。
  19. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) その点につきまして御説明申し上げます。第一に、監督署長決定に対して不服がある、それを従来審査官がまず第一に扱ってきている、この扱いの実際は前にも申し上げましたように年間約三千件でございます。その三千件を審査官扱いまして、そういうのも二千八百件は審査官決定関係者はまあともかく納得して解決した。残りの二百件が各府県に置かれまする三者構成審査会にかかっておった。その分がいろいろ各府県審査会決定にまちまちなところがございまして、非常に工合が悪かったので今回改めまして、この社会保険審査会と同じように、中央行政救済最終決定を統一的に合理的に決定したい。ただその場合に一々この中央に出てくるのも何かと思いまして、従来審査官が単独で決定しておった段階に今度は労使代表参与が三千件の全部につきまして審査官に立ち会いまして、そうして慎重に、その段階で慎重に扱います。その分におきまして、すなわち件数の圧倒的大部分につきましては、従来審査官が一人でやっておったものに労使代表参与がつきまするので、一段とその点につきましては、関係者に対してこの手厚い審査なり検討なりが行われると、私どもこれは当然なことと考えておるのであります。中央に持ってくるにつきまして、一々北海道なり九州なりから中央に出てこなければいかぬという心配が一部に、さっと考えるとあるわけでございます。おっしゃいますようにあるわけでございまするが、これも実際問題といたしまして、そういう監督署長それから審査官代表参与、そうしてその間に医師の鑑定その他が行われまして、事実の認定、事実そのもの認定はほとんど現地で、当事者の争いなく事実の認定はできます。問題は事実の認定が確定した後に、それならば法規上それを業務上と見るかどうか、そこに法規上の相当な因果関係があるかどうかという法的判断あるいは指一本切れたという事実そのものが明らかになった後に、この障害等級が十一級か十級かというような法規の当てはめ方が最後に残るのが通例でございます。一々その府県につきまして、関係者方々が東京まで出るということはほとんどまず実際問題として考えられないのでございます。しかし、もしありといたしますれば、そういうことじゃもちろん気の毒でございまするので、中央審査会の者が現地に出張いたしまして、何とかいたしまして、そういう迷惑のかからないようにいたしたい、この点につきまして、社会保険審査会実情あるいは従来失業保険審査も従来より中央で最終的には決定しておりましたのですが、そこら辺の運用状況を見まして、別段支障がないという確信を得ましたので、そのようにしたわけでございます。
  20. 相馬助治

    相馬助治君 この点確かめておきたいのですが、地方における審査会決定が必ずしも統一されていないので、この決定を統一し、権威づけていくためにこの法律案を提出していると、こう申しておるのですから、労働省の申しておることは、全く筋が立っておると私も考えておるのです。ただ、私が手元に持っておる資料が、これがある府県の特殊な実例なのでしょうか、お尋ねしたいのです。というのは、最近の神奈川県における資料を私手に入れて持っているのですが、この個人の訴えに対して、審査官審査会との容認比率が、昭和二十八年度においては、審査官容認比率が一三・四%、審査会はわずかに九・一%、ところが二十九年度になりますと、審査官の方が一八・一%になって、審査会の方は三三・三%と伸びてきておる。昭和三十年度におきまして、審査官容認した比率が三七・九%で、審査会容認したのが五七・一%となっておる。そうしますと、労働省考えている審査官の方が容認の度合いがゆるやかであると言うのとは、これは全く違う傾向がここに生まれてきておる。しかも見逃し得ないことは、審査会容認比率の方がだんだん伸びてきておるという、この現実なんですが、この例自体は特殊なのでしょうか。そしてまた、この法律案が成立するならば、労働者請求権や、特に今問題になっておる異議申請権が制限されると訴えている労働者訴えは、誤解に基くものなのでしょうか。この点を局長からはっきり承わっておきます。
  21. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) 神奈川県だけの資料はここにございませんが、たとえば、先ほどから申し上げました数字は昭和二十九年度でございます。三十年度はまだ取りまとめ中でございますが、二十九年度におきましては、審査官が扱った件数が三千件でございます。その三千件に対しまして、全国的に不服があって審査会に持ち込まれたものが二百十五。で、審査会がこの二百十五件のうち審査官決定が間違っておるというて要求を容認したものが三十八件、一部を容認したものが九件、こういうふうになっております。で、この傾向がどういうふうになるか存じませんが、少くとも従来審査官が三千件扱っておる。そのうち約二千八百件はそのまま解決して、残り二百件が審査会にきたのでありますが、今回は、審査官段階労使代表参与が入りまして、先ほど申しましたように、手厚い調査研究が行われまするので、審査官段階でもうすでに相当煮つめられて、上に持ってくる数は相当におのずから圧縮される、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  22. 竹中勝男

    竹中勝男君 それに関連して伺いたいのですが、最後に二百件残ったものが中央審査会にかかるというような場合に、その二百件というのは相当めんどうな事件だろうと思うのですが、三人の審査会で、その独自の事務局を持たない審査会が、それで審査会事務が円滑に運ばれると思われておりますか。
  23. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) これは中央審査会独立で、むしろわれわれの役所側が被告みたいなことになるわけで、独立建前をとりまして、その事務局という大げさな名称はつけませんが、社会保険審査会等の例にならいまして、私どもの方といたしましては、官房総務課に一応その事務を取り扱う係りを設けまして、支障なきを期したいと思っているのでありますが、先ほど申しましたように中央に来るときには、事実の認定その他につきましては、相当煮つまって最終的に法律上の判断を加えるという場合がほとんどでございます。それに中央審査会の三人の委員の方が、そこにおきましてもそれぞれ失業保険けい肺、あるいは労災保険というそれぞれの事案につきまして、それぞれの専門労使代表参与がつきまして判断を下す、その間にそう私どもは庶務的ないろいろな手数が、そうかかるということはほとんど想像し得ません。そこにおきましては、他の類似決定例とか、あるいはそういう類似事件に対する裁判決定例判決例とかといったような資料などを収集整理するというようなことが、必要であるというふうに考えているわけでございます。その事務局と申しますか、総務課には、そのために労災保険と、それから失業保険のそれぞれのエキスパートの職員を配置する予定であるわけでございます。
  24. 竹中勝男

    竹中勝男君 この法律は全国を一般的に対象としている法律なんですが、この法律は特に炭鉱地帯とか、北九州とか北海道とかという地理的に相当重要性があると思うのですが、それに対して何か特に法律的に、地理的に特別なあれはできないのでしょうけれども、行政的に何か特殊な方法考えられておりますか。
  25. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) そういう地理的なところにと申しますか、北海道、特に従来の実際例から見ますと、九州福岡事件が多いわけでございます。これなども一々中央に出てくるということは、われわれの方といたしましても非常に困るので、できるだけ現地解決をしたいというので、ほとんどの県は審査官が一人でございますが、福岡は特に現在五人の審査官で、今後はさらに実情をみまして、現地段階における審査が手厚く慎重に行われて、そうやみくもに中央に来ることのないように、審査官増員等を目下考慮している次第でございます。
  26. 山本經勝

    山本經勝君 大臣にお伺いしたいのですが、私ただいまの竹中委員のお話にもありましたし、また局長のお答えの中にもありましたが、全国的に見まして、福岡県におけるこの種事案というのは非常に多いわけなんであります。三十一年度の現在におきましても八百七十九件、約八百八十件に上る問題が出て、審査会もこれに対して現在四十五件を扱うている、こういう実情なんです。そこでいろいろ私福岡労働基準局の方に参りまして実情を聞いたのです。今度の立法措置につきましていろいろ意見も徴したわけでありまするが、この際に言われたことは、第一番に、現在のような三者構成による審議決定をする機関が地方にあることは第一望ましいということを、率直に係官の皆さんは言っておる。それでその理由としては、具体的なたとえばその等級の変更あるいは業務上の認定、いろいろな具体的な項目がありますが、それについて申請をして、窓口でまず一応の何らかの決定が行われ、それがさらに再審の形で審査官の手に移る。そういう段階におきまして、それぞれ労働者もしくは組合からいろいろな陳情、要請あるいは抗議、こういったような形で窓口に来られる。それで今度は、審査官の判定に対して不服があるという場合に審査会が開かれて、そこで審査に当るわけでありまするが、そうなりますと、その審査会という機関があることによって、三者構成でもって協議決議されたことについてはたとえ多少不服がある場合もやはりないとは言えません。しかしながら、まあまあ今日までやられてきた実態を見てそれで納得をしている、こういう姿がはっきり見取れる。もしこれを今度の立法措置によって審査官労使双方の意見を単に……、何か先ほどから参与参与と言われるけれども、この際条文の中には単に意見を聞くとしかなっていない。そういう形になってきますというと、勢い、労働者が不服を持って異議の申し立てをするのでありますから、そこに焦点が集まってくる。こういうようになってきますというと、円滑に処理できる問題でもなかなか円滑にできないような事態も起る。そこで今申し上げるように、毎月、少くとも一週間程度の日時がこの審査会に使われている。そこで一回の審査会に何件もが同時にかけられて審査会を続けられておる。これにつきましては、三十年度におきましてもたった一回流会があっただけで、その他各委員の皆さんが非常に協力をしていただくので、基準局としては非常に助かっておるということを率直に申している。それからさらに費用の点でどうなのかということを伺ったのでありますが、これについては、これらの審査会に要する費用は、福岡におきまして申し上げるように非常にたくさんな案件を取り扱っておるにもかかわらず、非常に安い手当で犠牲的に皆さんやっておる。従って会議の費用等合せまして、手当を含めて約四万円程度だ、こういうのです。もしこれが審査官になることによって経済的に浮ぶものがあるかというと、むしろそうではない。先ほどのお話のように、増員をする必要に迫られておる、そうしてさらに労使双方の参与を立てることになりますと、何らかの費用を伴うことはこれは必至の情勢だと……。そうすると、費用の面から見ましてもあるいは実際問題の処理から言いましても、何ら支障がないし、むしろ現在うまくいっているという。ところが、それをどうしても現在変えなきゃならぬと労働省側は主張されるわけでありまするが、その中には、先だって前回にも御質問申し上げたのでありまするが、同じ事案が地方によってあるいは審査会によって法の解釈適用等に相違もあったりしたということも言われたのでありまするが、まあそういうことは、これは実態に即する限り起り得ることだと思う。そこら辺の是正は、労働大臣として適当な是正をなさるのが私は当然な責任だと存じますと申し上げる。しかしながら、この改正をなさる必要というのは私どもうなずけぬ。そこで先ほど質問を申し上げたのですが、局長のお答えは、つまりこのことがたとえば法規解釈適用法律的に何かと的確に行われればそれでいいのだ、あるいは労使双方の意見は十分に取り入れて手厚く処理されると、こう言われる。そのために審査官審査に第二審から参与をさせる、こういうことでありまするが、そうなってきますれば、従来あった機構をそのままに存続していってもこれはいささかも不都合はないと思うわけですが、これをどうしても変えなきゃならぬという根本理由が理解できぬ。そこでこの点について大臣一つ的確な御説明をいただきたいわけです。
  27. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 前回の委員会のときも、その点についていろいろ御熱心な討議があったわけでありまするが、私どもといたしましては、最終的に裁定をいたします労働保険審査会はやはり準司法的な意味を持っておる権威ある審査会でございまして、これにしばしば申し上げますように、両者の代表に参与していただいて、そして最終的に決定をする準司法的立場を持っているものは、やはりこの今回の原案のような審査会委員三名でやってもらう方がいいではないか。労使双方の方のことについては、先ほど来御説明がありましたように、すでに窓口及び審査官の方で十分に両方の意見を吐いていただいて実情調査をいたしておるのでありまするから、最終的決定機関である労働保険審査会は今回のこのやり方の方がいいと、こういうふうに思いまして改正案出したわけでございます。
  28. 山本經勝

    山本經勝君 この今の案によります中央に設置される審査会、これは一応三名になる、それに対する労使双方の参与を認めていく、そうしますと、参与を認めて意見を十分に述べさせ、協議検討させるということになれば、これは今までの構成が、実質的に決定の最終的段階というのは、やはり三、三、三の構成による従来の構成の中で、この何といいますか、中立的といいますか、公益的立場にある委員の判定、このことが尊重されたことは言うまでもない。こういうふうに考えてきますと、どういうわけでそういう形に変えなければならぬのか、この変えなければならぬ理由が私にはわからぬということを申し上げた。それでなくて、いま一つの問題は、かりに中央にこういうものが三者構成でできましても、この問題は先だってからいろいろ御答弁をいただいておるのですが、地方に起る、つまり東京に起る問題ももちろんあります——ありますけれども、申し上げますように、一番災害の多い産業の分布しておる地方に多い。炭鉱等におきましては、御承知のように、年間約七百名に上る死亡者を平均出しておる。これらの取扱い等につきましても、常にこの審査会が活動しておる、こういうふうに見て参りますと、やはり災害の多い産業の分布しておる地方はやはり重点的に問題があると、こう判断をしても誤まりでなかろうと思う。そうすると、その地方に直接審査に携わる機関がある方がはるかに有効であると考える。それを中央の方に持ってきて、しかもわずか三人で、実際には二百五、六十件になるそういう多数の事件を、直接現地実態に即して解決するのじゃなくて、法規解釈適用だけに終るという危険があればこそ、私どもうなずけぬということを申し上げておる。ですから、ここで改正をしなければならぬ、あるいは新しい立法措置を講じなければならぬという理由が、ただいまの大臣のお話ではうなずけない、これは労働者が産業上の災害であるかあるいは保険等級の適用あるいはまた災害等級の認定等について不服があるということを申し出るのは、やはりその災害をこうむった現地が基礎になるということは大臣御想像願えると思う。そうであるならば、少くとも現地においても審査官中心にして、労使双方の意見を十分取り入れて、手厚くやろうと言われるのだから、従来の三者構成の機関を存続されても、経済的の面から見ても、労働者保護しようというのであれば、実際上大きな負担に政府がなるわけでもない。ですからそういう点からも従来の機構を変えなければならないという理由が、どうもそのほかにありそうな気がしていけない。それでこれは特に三者構成の協議決定ということは、私はしばしば強調するように、労働委員会等におきましても、また公共企業体労働関係法等の際にも強調した点ですが、労使間の問題、いやしくも作業上の補償労使間の問題にもつながる基盤になる。労使の紛争等についても同様である。こういう問題は、やはり自然にできてくる雇用関係でつながる労使関係の中で、まあ民主的に、かつ、自主的に解決されることの方がはるかに望ましいルールだと思う。そういうような形において、従来のやってきたことが非常に欠陥がある、これは非常に工合が悪いということならば、なお、検討し直す必要がある。御承知のように、福岡基準局では、全国の約二割五分の事件を取り扱っておる。その取り扱っておる基準局で、いささかも不都合はないということを明白に言っておる。もしそういうことがないとおっしゃるならば、福岡の基準監督署にあります審査官の皆さんをここに呼んで聞いていただいてもいい。そこを私は申し上げておるのであって、もう少し、通り一ぺんのお話でなくて、実態に即したものの考え方を大臣から一つ御解明をいただきたいと思います。
  29. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、たとえば労災保険関係労災補償の場合は、その今のお話のように、できた事案がありました所で紛争が起きた、そういう場合には、地元の基準監督署長審査または仲裁が行われて、さらにその上で労働者災害補償保険審査官に持ち出される。そこでは御説明申し上げておりまするように、労使関係が参画いたしまして、事実については十分な検討をいたし、そうして大体大部分のことは、この地方の審査官の程度で決定をされておる。その場合に、すでにもう労使双方の代表が参加をされて、十分ここで煮つめて、なおかつ、法律的にも疑義があるといったようなものだけが中央に持ち出されてくるわけでございますから、その中央労働保険審査会でも、また双方の代表の意見を十分に徴して、そうして最終的に判定をする場合には、やはり今度のような組織で、準司法的な立場を持っておるわけでありますから、十分両方の見解、事情を聴取した上で、この審査官が中立的立場に立って判定を下す、こういうやり方の委員会がほかの類似のものにたくさんございますことは御承知の通りでありまして、やはり私どもといたしましては、この最終的決定をする場合には、こういう独立の機関がやる方がいい。こういうことでありまして、労働者側の事情を十分に聴取し、検討するということは、すでに労働者災害補償保険審査官あるいは失業保険審査官段階において、従来もそうでありますが、今回でも、ずっと労使双方の主張を十分に、参画していただいて、検討するのでありますから、御心配のようなことが薄くなるということは断じてないと思います。ただその最終的決定が、今回のような独立した立場を持っておる準司法的な判決を下す審査官を最も妥当とする、こういうことであります。
  30. 山下義信

    山下義信君 関連して質問したい。山本委員は、政府がるるとして今回改正の必要を述べておられるんですが、今、大臣がおっしゃった理由ですね、それはどうしても納得ができない。その改正理由が何かほかにあるんじゃないかということを繰り返し追及していられるわけなんです。私もちょっとそれに関連して、改正理由が何かほかにあるんじゃないかという私もその気持がする。どうもわからぬのです。関連してその点だけ伺いますが、現行制度を改正して、そうして今度のこの改正の新しい制度、この方がよいと言われる。現行制度よりは今度の改正のこの制度の方がよい、これがあなたの方の本改正案を提出する理由なんですから、現行制度よりは、今度のこの改正する制度の方がいいということを、労働者はいつからそういう考えを持たれましたか。
  31. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) 私からその事務的な経緯だけを……。
  32. 山下義信

    山下義信君 事務的な経緯はいい。労働省として現行制度をやめてこの制度を一つとってみようという、そういう気持になったのは、いつからそういう気持になったかということを一つ聞かなければならぬ。
  33. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これは私の就任前のことでございますが、同じようなことが厚生省関係でございまして、こういうシステムにおやりになりまして、そのころから労働省では、なるほどこの方がいいんだという考えを持っておったようでありまして、これをだんだん検討いたし、そうして先ほどお話にありました四つの審議会にもおかけをいたしまして、そうして協議研究をしていただきました結果、やはりこの方がいい、こういう腹をきめて今回御提案申し上げた、こういうことであります。
  34. 山下義信

    山下義信君 提案になりまするその経過はいいんです。そうなすったんでしょう。それはいいんですが、数年前からこういう制度をやってみようというお気持があったということなんですが、そうじゃないでしょう。数年前は、労働省は、このシステムが労働省としては賛成なさらなかったでしょう。違いますか。
  35. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) 数年前の話でございますので、私から事実を申し上げますが、いつでございましたか、厚生省でこういう制度を作るということが次官会議で話がありまして、その話が次官より省議で紹介がありました。なるほどそれは労働省としても検討に値いするなという、この話が出たのが一番最初のきっかけでございます。その後いろいろ新しいあのままでいいかどうかというようなことをいろいろ研究いたしまして、最後にできた案は、厚生省と違いまするところは、厚生省の方は第一線の審査官は単独でやる、私の方は、従来三者構成審査会があるという既定事実、そうしてまあできるだけ労使の民主的な意見も聞いて慎重にやりたいという、まあ何と申しますか、労働省的な感覚を盛り入れるという意味合いにおきまして、この審査官労使代表参与をつけるということを勘案いたしましてここに至ったというのが実際の経緯でございます。
  36. 山下義信

    山下義信君 率直に御答弁がありましたから、私も率直に伺いますが、先年、社会保険審査会を作るというときに、労働省はこのシステムに賛成しない。なぜ賛成しないかというと、この取扱い件数労働省の方では非常に少い。それで一般の他の社会保険とは違って取り扱い件数が少い。そして今の制度でもりっぱに成果をあげてやっているので、それで労働省としては見解を異にして、あの制度をとらないといったのが当時の実情なんです。同時に私思うのに、この労働者関係をこの審査の機関に参画せしめるということのその特徴は、厚生省関係は廃止しても、労働行政をつかさどる労働省としては非常に重視して、私は今の現行制度をあなた方は使ってきた、教えてきただろうと思うのです。社会保険審査会の方ではこういう三者構成はかりに廃止しても、直接に労働行政に当っておる御当局は、あなた方は取り扱う件数の少いことと、それと仕事の上に一向差しつかえないことと、むしろ現行制度の方が特徴がある、労働省としては、この制度の方をまされりとして当時そういう考えを持たれていたのであろうと思うのです。どうですか。
  37. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) 当時私は基準局長でなかったので、ただ省議の一員として知っている限りのことを先ほど事実として申し上げたのでございます。その他におきまして省議全般の空気が、次官からこの制度の紹介があったときに、みんなが一致して積極的にわが方も検討に値いするということであって、それ以外のことを下の方の課長とか何とかがどういうことをどういう所へ言ったか知りませんが、少くとも労働省意見は、大臣中心とする省議が一番の正式な見解でございますので、先ほど申し上げたところで、一つ当時の労働省の心持としてお受け取り願いたいと存じます。
  38. 山下義信

    山下義信君 私は他の方では、この審査会のシステムも早くから使っている、能率がいいとか、その制度が工合がいいとかいうことが今ごろにわかるというようなことはこれはまあ通りません、そういうことでは。ですからこういう制度の方がもしいいというならば、早くから気がつかなきゃならない。何の必要があって他の方面では数年前からやっておるのを、労働省が今ごろになって、この方がいいだろう、現行制度よりはこの方がいい、言葉をかえて言えば、現行制度はどこかに弊害がある、欠陥があるということが、今ごろに気がついたというのでは、これはおかしい。だからいつからこういう制度をとろうということに気がついたかということを聞いているのです。諮問したのは数カ月前かもしれぬが、労働省がこの制度を一つやってみよう、この制度の方がいいということをいつごろからそういうことに気がついて考えたか。言いかえるならば、現行制度のどこが悪い、運用してみて、今運用しているのはどこが悪いということにいつから気がついたかということでなくちゃ、ただ事務的にこうやった方がいろいろと便利がいいというだけでは、労働省がこの新制度をとろうとする心境の変化というか、そういうことを考え出したことと、この何か別に一つ労働政策の上に一貫した考え方があるのじゃないか、その腹の底をもし疑うというならば疑う方が当りまえと言わなければなりません。この間公労法の方で労働者を排除した。また今度審査会で排除した、何か一連のこれらのいろいろ労働施策の上に、この労働者立場というものを、つまり次々と排除していくという一つの一貫した考え方から出てきたのであるかという疑惑を持たれても私はおそらく弁解の余地があるまいと思う。そういうところの疑惑を一掃いたして、それで改正案を提出し理由というものを私はもっと明らかにする必要があるのじゃないかと思う。そういう深い考えがなくて、ただ事務的に、少しおそくなったかもわからぬが、今ごろ、このシステムがいいと思ってこれを一つやってみよう。件数はやっぱり少い、大して今のでも差しつかえないけれども、いろいろと準備の都合があって、差し繰りの必要があって、大した意義がないが、ただ社会保険審査会等と右へならへの形を整える程度のものじゃというならそれでもいいと思う。どこかに深い理由があるのか。大して深い理由がない、ただそういう程度の単なることの改正理由だということは、これはもう根本だから明快にしておかれるがいいと思う。どうでしょうかね、大臣
  39. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が就任いたしましてからいろいろな点について省内で検討をいたしましたが、先ほどもお話し申し上げましたように、これはその前から懸案になっておりました事柄で、これを検討いたすと同時に審議会にもかけまして、審議会の御答申もあり、私どももやはりこの方がよかろう、こういうことで提案をいたしたわけでありまして、御指摘の中にいろいろなところから労働者を排撃していくといったような御心配のお言葉もあったようでありますが、私どもはそういう、かりにもそういうことをおっしゃられるのははなはだ残念でございまして、そういう気持は毛頭ないのでありまして、そのためには労働者災害補償保険審査官の場合は十分に両方の意見を聴取して、そこで煮つめるという態度にはちっとも変っておりませんで、ただ最終的決定をいたす準司法的な立場を持っておるものはやはり今度のようなことがいいのだ、こういうことでありまして、そのほかに別に他意はないわけでございます。
  40. 山下義信

    山下義信君 私は関連質問だからこの程度に伺っておきますが、おそらく山本委員質問の真意も何か他に重大な理由がひそんでいるのじゃないかという疑惑を私一面持っておるので関連して伺っておいたのですが、しかし当局のそういう暗に労働者をオミットする、そんなふうなことは毛頭考えていないという平仄を合せるならば、ただ裁判的な性格に移行するのであっても、それに何か参与、参与という言葉が聞えたが、どういう意味か知りませんが、この代表者、名称も何もないので……、それらの方の意見を聴取するというその意見を聴取するという性格というか、その点をどういうふうに意見を聴取するのかという内容というものを、当局は明快になさらなければならぬ。あるいは裁判で言うならば、陪審官程度に非常にその意見を尊重するか、何か具体的な安心するような点を、しばしば質疑応答には出まするけれども、ただ尊重するといっただけじゃ、これは通り一ぺんの言葉になるので、これらの代表者の意見をどういう形で尊重していくかという言辞を与えて安心をさせなければ、私はその当局の御趣旨が一貫しないと思う。何かお考えがあるだろうと思いますが、それはまた私の質疑のときに伺います。
  41. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私ども本院で本案の改正案を御審議願っております間に、実は私どもが予想しておりませんでした御心配のお言葉を承わるので、その点について非常に、なるほどなということも考えさせられました。で、私どもといたしましては、決して労働側を排除し、労働側の不利益になるようなことは毛頭考える意思はございませんので、本法通過の場合には、政令もございますし、それから二十何条かで労働保険審査会の運営について事務的なことを決定いたすわけでありますが、そういう場合には、十分皆様方の御意向を尊重いたしまして、御心配のような点のないように、また私どもはそのことはまことに意外なことでございますから、そういう点については十分慎重にいたしまして御心配のないようないい運営のできるように心がけて参りたいと思います。
  42. 山下義信

    山下義信君 今労働大臣から含みのある御答弁をいただきましたから、私も付言しておきますが、よくは存じません、私も、これは倉石労相の方がお詳しいだろうと思うのですが、言うまでもなく、これは何といいますか、アメリカの制度を取り入れた——アメリカの審査官のこの制度は、私どもが承わるのに、また瞥見するのに、この審査会制度、審査官の制度に関係者を参画せしめる行き方は、私は日本のようにただ単に意見を聞くという程度じゃないと思う。関係者意見を取り入れるのは、ほとんど向うは証言というか、ほとんど陪席判事的な立場を与えておる。従ってこの審査会の制度というもののいわゆるリファーの制度が非常に重要な性格を持っておる。それでみな片づいておる。でありまするから、私はこの関係団体の代表者、労使代表者の意見の聞き方、参与させるさせ方というものをこの裁判制度の上でどうこれを取り扱うかということは、当局もよほど意をお用いになりませんと、私は審査会制度というものが一般的にはヒアリング——ことに関係者の証言される立場というものを尊重しているいわゆるそういう点の他国の例等から比較いたしまして、かたわのようなものでは私は審査会制度というものはほんとうにいかないのだ、形の上で無理にこうやってみるというだけでもおもしろくないと思いますので、そういう点は当局にも具体的な何か審議の期間を通じて私は安心のいくように御説明があればいいんじゃないかと思います。
  43. 相馬助治

    相馬助治君 関連して。先ほど私が労働大臣にお尋ねしたときには、ただいまのような御答弁でなかったわけですが、ただいまはかなり含みのある御答弁がなされたわけです。労働保険に関する審査の統一ある運用を確保するために法改正をするということは私どもも賛成なんです。またそうなければならぬと思っておるのです。ところが、倉石労相本法運用に対する根本的な心がまえは、ただいま伺ってある程度了解できるのですが、この立法府で問題にしなければならないのは、倉石労相というものを離れて、法律ができ上りまするならば、法律はもう峻厳にその法律のワク内で動いて参りまするから、われわれはここでこれを問題にしておるのですが、具体的には、地方における審査会を廃止し、労相より任命された政府職員である審査官によって審査決定する、こういうことに結果的には相なるわけです。そこで、ここでは労相が、第一、問題です。どういうふうにものを考え、どういう労働行政を行おうとする人間であるかということが非常に問題になるわけです。それから第二には、法案第十三条によって関係代表者の意見を聞いて公正を期す、こう言っておりますけれども、必ずしも関係代表者の意見を聞かなければならないという積極的な規定はないようです。十三条の二項を読んでみると、「意見を述べることができる。」といってあるにとどまるので、審査官のみの審査で十分であると考えた場合には、主観的に審査官の一方的意思によって決定されることがあり得るわけで、結局これは倉石労相の気持もわかるし、本法提案する労働省の善意も疑わないとしても、本法が成立したあとにおいてこの運用を誤まるならば、容易に官僚統制の弊害が生まれてくると予想されるのですが、そういうことは思い過ごしでしょうか。
  44. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたように、審査会の運営等につきましては、政令等で十分にその方針を御心配のないように私どもとして作って、そうして実施の基準にいたす、こういうことを申し上げているわけでありますから、これは労働省というものの基本的な政策というものの考え方がそこへ出て参りますからして、私は将来ともその結果、立法時のものの考え方が当然ずっと継承されるものである、こういうふうに考えております。
  45. 竹中勝男

    竹中勝男君 その立法当時の精神と言われますけれども政府保険者なんです。その保険者が任命する委員というもので審査が行われるということは、どうも機構上公平が期せられないという疑点があるのですが、そうして労使の代表者が意見を述べることができますけれども、それはさっきの御質問にもあった通り、これは審査官は聞かなくてもいいし、また聞かないことが多いだろうと思う。日本では大体役所で任命されたところのそういう審査官というものは、ただ聞くだけのことでして、それを真剣に反映させるということが少いのです。すなわち、表面保険者である政府が任命した委員で、しかもそれは意見を聞くことはできるけれども、その意見を取り入れることは任意なんだ、そういう審査会組織というものは、非常に私は性格的に政府の統制という性格ははっきり出ますけれども政府の干渉とか、政府の支配という性格が強過ぎると思いますが、大臣はどう思われますか。
  46. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私ども考えから申しますというと、政府は常に厳正公平なものでなければならないと思っております。私どもがこの審査官の任命に当りましては、私の方から候補者を推選いたしまして、そうして国権の最高機関である皆様方の国会の御賛成を得て、そうして総理大臣がこれを任命する、こういうことでございますから、いずれの時代になりましても、政府は——ことにこの法律というものは広範な意味における社会保障がその目的でございますからして、そういう精神から、政府は、常に被保険者である労働者及び掛金をかけております経営者の両者の中間に立って厳正公平な裁定を下してもらえることを審査官に期待いたしているわけでございますから、しかもその審査会事務の運営については、二十三条で指摘いたしておりますように、政令等でその事務をこういうふうな方法でやってもらいたいということをきめるわけでございますから、その点については遺憾なきを期しておるわけでございます。
  47. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど山下委員の方から御質問もありましたことなんですが、大臣のお言葉を借りるなれば、準司法的な判定といいますか、つまり事案に対する法の解釈適用、こういう問題については、準司法的判定と通俗言われるわけなんであります。で、こういうものについて、いわゆる今の大臣のお言葉にあるように、国の最高権威である国会の同意を得て総理大臣が任命した三名からなる委員会決定であるなれば、これはきわめて公正なものだというお話、これは一応通り一ぺんの、一つの形の上から考えますと、一応そうも言えると思うのです。ところが、その問題はその委員会においても労使双方の、つまり関係者の代表である人々から十分意見を聞き、しかもその審査に参与をさせるということを実際上やるとするなれば、私は先ほどから強調して参りましたように、従来あった三者構成委員会が持続されていっても、何ら変りはないと思う。それでこういうふうな形に変えなければならない理由というのはほかにありはしないかということを実は伺ったら、そうではない、決して他意あるものではないというお話なんです。ところが、私はこういうことを思い起す、先ほど山下委員からもお話があったのですが、公労法の改正の際、この委員会に私は五.三・三の構成による公共企業体労働委員会の仲裁裁定に関する最終決定がこの五名からなる公益委員によってなされるということ、しかもそれが今申し上げたように、国会の同意を得て総理大臣が任命したということでなされることによって、公正に行われるのだということが議論になった当時、大臣はこういうお話をなさっておる。私の質問であったと思うのですが、労働組合法でいう労働委員会における公益委員についても本来こうあるべきだということをお話になった。そうしてこれを三つを集めますというと、つまり公労法の方はすでに成立した、それについて公益委員を五名に増員して、しかも常勤を二名おいて労使双方三・三と減らして、そこでしかも常勤二名を含めた五名の委員が任命された。そこで構成された。しかも仲裁裁定という重大ないわゆる服従の義務づけのある準司法的決定はこの五人によってなされるのだということはすでに決定になったわけであります。それをさらに今度は基準法の一部を変更することによって、ここでは労働者災害から守るためにこの立法措置がある。ところが、その災害から守る立法措置についてそれの判定では不服があるために、年間二百数十件に上る事件が再審として要求されてきたことは御承知の通り、そうすると、そういうような労働者の不服を基礎にして最終決定をする三者構成の機関をここでまた削り取って、そうして労働審査官の手に移して、単に労使双方の意見を聞いてそこで決定する、こういうことになっておる。それからまた、今度この次にくるものは何かということを私は一応想像せざるを得ぬ。この前のお話のように、労働委員会における不当労働行為の判定と準司法的事務であるそうしたものについても、こうした方がいいのだということを常に大臣は言っておられる。そうすると、先ほど私も申し上げましたように、労使間に起るこれは紛争のみならず、この等級の変更あるいは業務上の認定等の問題についても、職場を中心にした労使の問題だ、そこがもともと引っぱっておるのだ。そうすると、こうしたいわゆる民主的な機構が一々削り抜けて、やがては昔の労働争議調停官とか、小作争議調停官、こういったようなものを作り上げたいという御希望が腹の底にどこかにわだかまっているのじゃないか、こういう懸念がしてどうにもならぬ。それで、私はむしろそれよりほかに理由がありゃしないか、そういうことをお伺いしたのは、はっきり申しましてそういうことなんです。ところが、そのコースを逐次進行している、こういうことを考えますときに、こういうような改正の正当な法の欠陥がここにあるのだということが具体的に指摘せられて、こういうふうにこれを改善したらどうかという御提案であるなれば、われわれ喜んでそれに対する協力をすることは言うまでもない。ところが協力できない。そういうことから私はもう少し、ほんとうにどういうふうにやられるのか、実際上として現地において基準局の話を伺いますと、現行の三者構成による協議決定機関労使双方の協力を得ることによって非常に円滑に事態がきているということを明らかに言っておる。にもかかわらず、労働省ではそれとは全く逆のコースを打ち出しておる、こういうようになっておると思う。で、私が理解がいかないと申し上げたのはその点なんです。そのことがなるほどそうであるというふうにうなずけるなれば、自後の審査についての進行もむろんもっと順調に参る、こういうように考える。ですから大臣がおっしゃっている今までのお話では、やはり事務当局がお話になっておる、つまり局長のしばしば御答弁になったように、たとえば同じ事案について地方によって審査会が変った決定をしている。このことは法の解釈、適用の上に統一性を欠いている、従ってこれは的確でないのだ、こういうことではうなずけない、これは山下委員のお話もそうだったと思う。そういうことではなくて、法そのものにこういう重大な欠陥がある、あるいは財政上の問題等についてこういう妥当性を欠く事態があるのだ、こういうことでありますなれば十分検討する余地がありましょうけれども、今申し上げたような形では理解がいかないということを、私は重ねて申し上げて、一つ大臣の的確な御答弁をいただきたい。
  48. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 今の初めの方のお言葉を拝聴いたしておりまして意外に存じました。私はものの言い方が下手なものですから誤解を生じたのだと思いますが、私がこの前に多分申し上げたと思います。労働委員会についても同じような私は考えを持っているという意味のことを申し上げましたのは、労働委員会を任命制にするといったようなことを申すつもりではなかったのでありまして、労働委員会というものは、たとえば中労委の委員、これらは独立不覊の立場で、何ものにも牽制を受けないで、そして不当労働行為等に対する判定をいたしておるのでありまして、そういうふうな厳正公平な中立的立場に立ってやっていただくことが、仲裁委員会委員も、それから本案の審査会委員もそういうふうにやっていただきたいことを政府としては希望いたしておりますと、こういう意味で申し上げましたので、従って私どもとしては、今山下さんのお考えの御心配の点が初めてよく了解いたされましたけれども、一歩々々そういうふうに、あなたのお言葉を拝借して申せば順に削り取っていくのだといったような、そういう考えは全く実は私どもとしては意外に存じます。そういう考えは毛頭ないのでありまして、ただ本案については先ほど政府側の方から申し上げておりますように、まあ御承知のように、公労法でも調停においては三者構成でやっております。それでなお最終判決の場合にはああいうふうに労働者が参加しないで、そして準司法的立場で判決を下す、こういうふうにやっておりますので、今度の場合もやはり最終決定の準司法的立場を持っておるこの審査官は今度の方がいいのだ、そこで今度の場合には、しかもこの審査官に十分なる権威を持っていただくために国会の御承認という前提条件のもとに総理大臣が任命する、こういうわけでございますから、私どもの期待いたしております審査官の行動というものはどこまでも法律に準拠して、そして公平な建前で裁定を下していただくということを期待いたしておるだけで、そのほかに何も考えておることはございませんです。
  49. 相馬助治

    相馬助治君 議事進行……理事会の申し合せによれば、本日は午前中この労働保険審査会法を取り扱い、午後は健康保険法等の一部改正法律案ということになっておりますが、本日のところはこの辺でいかがかと思うのですが、委員長どうですか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  50. 榊原亨

    ○榊原亨君 これは理事者同士の申し合せできょう午前中あれをやってぜひ討論して、採決するというお申し合せであると私は了承しておるんですが……。
  51. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をやめて。   〔速記中止〕
  52. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を起して。  本件に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 委員会を休憩いたします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後二時四十八分開会
  54. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします、五月二十四日付長谷部ひろ辞任須藤五郎君選任、以上であります。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  55. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。  この際お諮りいたします。  委員辞任に伴って欠員となっておりました前理事常岡一郎君の後任補欠選挙を行いたいと存じます。その方法成規手続を省略して、委員長の指名といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。それでは理事に田村文吉君を指名いたします。     —————————————
  57. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括議題といたします。  御質疑を願います。
  58. 相馬助治

    相馬助治君 政府健康保険法等の一部改正法律案提案されて、その後世間に起きたところの反響のただならぬ大きなものであることに気づき、法律提案後それ相当に反省すべき点は反省し、再考慮すべき点は再考慮をしていると私どもは思量いたします。特にこの法律案は、衆議院において、改正案趣旨をなす患者の一部負担の点について修正が加えられ、経済的効果が大きく変動をしたわけです。それが本院に送られて今日まで審議を重ねて参っておりまするうちに、同僚山下議員を中心とする健康保険の財政に関する小委員会において、赤字の実態に対する見込み違いというような点が指摘され、いまだ結論には達していないのでありまするが、これらが問題となっておるのでございます。しかも伝え聞くところによりますれば、与党においては何らかの修正を施す意思ありやに承わっておるのでございます。御承知のように、ただいまの議院内閣制度によりますれば、衆議院において絶対多数を持っておる自民党は、その意図するところは直ちに政府であり、政府の意図するところはある意味では直ちに自民党であるともいうことができると思うのでございます。従って私は提案後ほど経ておりまするので、あるいは何かそこに心境の変化ありやと思量いたしまして、厚生大臣に対して次の質問をいたします。  健康保険法の一部改正の真の目的は何であったのですか、一つ承わりたいと思います。
  59. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今相馬さんの御質問でありまする健康保険改正の真の目的は何であったかということでございまするが、これは私ども委員会におきましても申し上げておりまするように、健康保険の健全なる発達をいたしたい、健全なる発達をいたして、そうしてこれを軌道に乗っけて健康保険運用をやって参りたい、こういうことでございます。
  60. 相馬助治

    相馬助治君 健康保険制度の確立を期すために本法提案した、こういうふうに申しておりますが、同時にその内容とするところは、保険財政の根本的な建て直しをしよう、かように考えたとわれわれは当時よりただいまに至るまで了解しておりまするが、本員の了解は錯誤をしておりませんか。
  61. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今、相馬さんの仰せの通りでございます。
  62. 相馬助治

    相馬助治君 従って本法改正理由は、実質的には赤字対策という面を多分に含んでいると解釈すべきであろうと思いますが、さようですか。
  63. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 赤字対策ということも、もちろんございます。これは簡単に申し上げますというと、政府の——国庫の補助並びに標準報酬の引き上げ、それから患者の一部負担ということを枢軸といたしましての財政の建て直し並びに先ほど申し上げました健康保険の健全なる発達のために資したい、こういうことでございます。
  64. 相馬助治

    相馬助治君 御答弁のように赤字対策そのものではないということは私も了解いたしますが、しかし赤字にどのように対処するかということは、今回の改正の重要な基礎となっていると思うのでございます。厚生省が国家財政のかなり急迫の折にもかかわりませず、政府管掌の健康勘定の中に三十億の国費を支出せしめたというのは、一応の前進であったと私どもはこの点に関しましては敬意を表しまするにやぶさかでございませんが、この三十億の国費支出を成功せしめたときに、大蔵省当局との間に、この赤字負担、すなわち本法に現われた具体的な面から言いますれば、患者負担という面について何らかの政治的了解あったやに承わっておりまするが、その辺のお考えをこの際あらためてただしておきたいと思います。
  65. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今の相馬さんの御質問の中で、政治的了解というお言葉を拝聴いたしたのでございますが、その点をもう少し掘り下げて御質問願います。
  66. 相馬助治

    相馬助治君 すなわち健康勘定における保険財政の根本的な建て直しをするために、国も一つ三十億出してやろう、医療担当者もいろいろな面で犠牲を払ってもらおう、患者諸君にも赤字負担をしてもらおう、こういうような三方損の建前に立ってやむなく患者負担をさせるのであるというのが、いつぞやの大臣説明のように承わっておりまするが、それを突っ込んで、三十億の国費支出と法改正によるところの患者負担との間には、重要なる政治的連関が、財政的のみでなくて政治的にもあるのかないのか、これが私の質問の趣意です。
  67. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 御承知のように、健康保険の最近におきまする二十八年の暮れころから起っておりまする赤字の問題、しかも三十一年度におきましては六十六、七億の赤字が予想されておるのでありまして、これをいかにするかという問題も一つあるのでございます。このためには、私どもといたしましては政府も相当額の負担をいたしたい。そこで三十億円政府から補助を出しておりまするのも、これは社会保障の確立という見地から政府管掌の健康保険財政に出すことになったのであります。今日の健康保険の情勢から判断いたしまして、一方におきましては標準報酬の引き上げをいたしまして、これは事業主にも一部の負担を願わなくちゃなりませんが、一方におきましては、被保険者にも一部負担をしていただいて、そうしてこの三つの枢軸によりまして、財政的にも健康保険の健全な発達をいたしたい、こういうのでございます。
  68. 相馬助治

    相馬助治君 端的に言えば、政府から三十億金を出させるときに、そちらからばかりは出させません、法律改正して患者からもとりますという約束したのじゃないのか、こういうことです。
  69. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) これは約束をしたとかしないとかということでございませんで、累年起っておりまする赤字をいかにして克服するかということのためには、私は一方におきましては政府から相当額の補助金を出す、一方におきましては被保険者も一部負担をしていただいて、そうして健康保険制度の健全なる発達をいたしたい、こういうことでございまして、私がただ衆参両院の当該委員会で申し述べましたことにつきましては、これは政府の国庫負担というものに対しまして、政府が予算を計上するその経過におきまして、私どもが最初期待いたしておりましたことと多少相違いたしております。しかし私といたしましては、少くとも被保険者の負担をする金額に見合うだけの政府の補助をしてもらいたいというようなことを、たびたび当該委員会において答弁したことを承知いたしております。
  70. 相馬助治

    相馬助治君 患者が負担する赤字分に見合うだけは少くとも国から出してほしいと、こういう交渉をして、この財政交渉がまとまっているのだとすると、大臣は大きな政治的責任を負わなければならない段階があるのではないかと思うんですが、私は別な面からお聞きしますがこういうことですか、国から三十億もらった。その後健康勘定をしさいに調べてみたところが、大へんな赤字はない、それならこの際一つ弱き者に味方することこそわが党の政治的何とやらだと自民党は好んで使いますから、その弱き者に味方するという建前から赤字負担のための患者の一部負担なんというものはやめていいんだ、もっと突っ込んでざっくばらんに言えば、やめてみたところが財政当局からとやかく言われる筋合いはないのだ、ここまで小林厚生大臣は政治的な発言をし得る自由を持っているのか、あるいはしからずか、こういうことを尋ねている。
  71. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今の相馬さんの御質問、掘り下げた御質問がよく私まだわからないのですが、まことに恐縮でございまするが、もう一度……。
  72. 山下義信

    山下義信君 今の相馬委員のあとの質問の前に、一応厚生大臣の所見をただしておかなければならない、確かめておかなければならぬことがある。それは今厚生大臣はこう言うでしょう。国の国庫負担、国の補助額は、患者に一部負担をかけるその額に見合うような国庫負担をさせるということにこの予算編成の過程で交渉した。こう言うのですね。それに相違ありませんか。
  73. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 私はたびたび申し上げておりましたように、私の考え方は、患者はこれだけの負担をする、少くとも国がこれに見合う最低の線においてこれだけの補助を出してもらいたい、こういうことで私は今日まで参っておるのであります。
  74. 山下義信

    山下義信君 私はこれは非常に重大な御答弁だと思います。あなたは何ですか、患者負担を先にして、これを主にして財政当局の補助を要求なさったんでないか。患者負担をしようと、しまいと、健康保険に対する国庫の負担はすでにして世論になっているのです。財政当局に対して国庫負担を迫って、大蔵当局がその条件に患者の一部負担をしてもらわなくちゃ困ると厚生大臣に強制したというならば、これまた話がそれはそれなりにわれわれとしても受け取れぬことはない。しかるにですよ、しかるにまず第一には、無条件に健保の国庫負担を少くとも厚生当局は世論にかわって私は財政当局に要求するのが当然であると思う。それに患者にも一部負担をさせるからということを、それを質にして、カタにしてそれに見合う補助をしてくれというようなことをあなたは交渉なさったのですか。
  75. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今の山下さんの御質問でございまするが、これは私の相馬委員に対する答弁に対しまして、言葉が足りなかったように思いますが、(「足りなくない。」と呼ぶ者あり)まあお聞き下さい。私が途中から端折って御答弁をしたためにそういう誤解を得たと思うのでありますが、健康保険の赤字という問題につきまして、私は今日の健康保険の非常に向上進歩した状態におきまして、いかにしてこの赤字を克服して健康保険財政を軌道に乗っけるかということにつきましては、いろいろ考慮をいたしておるのであります。(「簡単なことだよ、克服は。」と呼ぶ者あり)そこでまず、国庫からも進んでこれには補助を出さなくちゃいけない。それから患者からも一部負担をしていただく。標準報酬を引き上げる。そしてこれを大綱といたしまして健康保険財政の確立をいたしたい。それには国庫からどのくらいな補助を出さそうか、これは私は先般も申し上げました通りに、最初は少くとも一割をという希望を持っておったのであります。いろいろ国家財政の関係からいたしまして、非常にむずかしい問題もございましたので、先ほど申し上げましたように、この改正におきまして、少くとも国庫は被保険者の負担に見合うだけは出してくれなくちゃ困る、つまり国庫から補助金を出します過程におきましてそういうことを申し上げたのでありまして、最初から被保険者が金を出すのだから国も出してくれという意味ではなかったのであります。その点は御了承願いたいと思います。
  76. 山下義信

    山下義信君 依然として、厚生大臣は患者の一部負担に見合う国庫補助をしてもらわなくちゃならぬという交渉をなさった、これは重大です。これは小林厚生大臣だけで済む話ではありません。今後明年の予算におきましても、明後年の予算におきましても、健康保険に対する国の補助を要求するときには、まず被保険者側がどれだけの負担をするかということをきめて、それに見合うだけの補助しか要求ができぬというような建前をとるというようなことは、私はこれは重大だと思う。これを明らかにしてもらわなければならぬ。そういう交渉をなぜなすったのですか。その患者の一部負担、被保険者の一部負担は別にして、まず国庫の負担を要求するのが私はこれが世論であり、これが厚生省本来の方針である。そうして国庫が補助をする約束をして、またお前の方も何らかのこれは負担をすべきではないかと財政当局から迫られたのであろうとわれわれは理解をし、了解をしておったのでありますが、あにはからんや、あなた方の方は先に被保険者、患者負担の方をこれだけ、それに見合うだけの負担をさせるから、それに見合うだけの国の補助をもらわなければならぬというような交渉の仕方をされたというのは、それは厚生省の方針ですか。
  77. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) それは、私は山下さんのお考え方もさることでありますが、今の三十億円の補助を出しました経過を申し上げておるのであります。経過を申し上げておるにすぎないのでございまして、私が先ほど申し上げましたことは、国庫の補助金というものはどこまでも患者の一部負担に見合うものを出すのであるという意味ではないのでありまして、今年の三十億円を出させました経過を単に説明しておるだけであります。どこまでも患者の一部負担というものが政府の補助金に見合うということを申し上げておるのではないのでありますから、その点は一つ御了承を願いたいと思います。
  78. 相馬助治

    相馬助治君 財務当局に補助金をもらうまでの経過をただ単に説明したのにすぎないので、厚生省の基本的な考え方でない、これはもう言葉の上でも、内容の上でも矛盾があるということは、もうあまりにも明瞭です。しかも、言葉足らないがために相手に誤解を与えたのでもないと思うのです。そうしてまた、そういうことが事実であれば、事実としてわれわれは仕方ないと思うのです。私はそれはやはり認めるよりほかないと思うのです。従って、ここで明瞭にしておきたいと思いますことは、来年の国庫負担要求の際にもこれは非常に大きな問題となろうと思うので、明瞭にしておきたいと思うのですが、こういうことですね。ある計画の中における話ではあったけれども、ともかく健康保険財政確立のために患者にもこれだけの負担をさせるのだ、国もまた国の責任において三十億程度のものは出してもらいたい、こういうことを交渉のある過程でおっしゃったことは事実なんですね。
  79. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) これはいろいろ相馬委員並びに山下委員のこの問題に対しまする御質問が、今のような重大な私の発言として御質問されましたことは、これは私の言葉が足りなかったと思いますから、この機会に一つこの点ははっきりといたしたいと思っております。  私は先ほど申し上げましたように、健康保険の赤字というものをいかにしてこれを克服して、そして健全な財政に持ってゆくかということにつきまして、いろいろ案を立てたことは申し上げたのでありますが、そこで政府の補助金を、私の考えといたしましては、最初少くとも医療費の一割程度は出してもらわなくちゃ困る、こういうことで参ったのでありますが、そこで私が申し上げました被保険者の負担に見合うだけのものを出してもらいたいと申し上げたことを、この席上で申し上げましたのは、これは私が今日までのいろいろ、そのときには政府全体としてではなしに、厚生省と大蔵省との間におきましていろいろのいきさつがあったのであります。その際の途中の経過を、大蔵大臣と私との間にいろいろいたしただけのものでありまして、国庫が三十億円の補助を今年とりあえず出しましたということは、これは政府といたしましては、被保険者の負担に見合うだけのものを出すということでは少しもないのであります。いわゆる社会保障の健全な確立のために、社会保障の確立ということを目途といたしまして、三十億円出すということに政府として決定いたしたのでありまして、この政府最終決定というものは、これは今の、私が先ほど過程を申し上げましたけれども、これは過程は厚生大臣と大蔵大臣との間の、途中のいわゆるかけ引きと申しまするか、いろいろ言葉の間にあったことでありまして、問題は三十億円というものはいわゆる被保険者の金額に見合うだけのものということではない、最後政府としての考えは、この点は御了解願いたいと思います。
  80. 相馬助治

    相馬助治君 博徒や無頼の徒が話し合ったことならば、あれはかけ引きでああ言っただけで、わしの真意はこうであるということで逃げることもできるが、私どもがただしたいのは、三十億が出ておるということは現実なんだから、これは認めます。厚生省の努力を私は多とするといって、敬意を表しておる。問題はその三十億が出てくるまでの過程において、三十億出して下さい、患者の方にも何とか負担させて、そうして保険財政を健全化させるように厚生省も努力しますと言ったのと、患者の方もこれだけのものを出すのだから、政府も当然出すべきじゃないかと言うてもらったのでは、もらった三十億という金には二通りはないけれども、非常に違う、来年、再来年と尾を引くという意味で非常に違う。そこでただしたいと思うのですが、結果はどうあろうと、過程的には患者負担に見合う政府の出資を頼むという交渉をして、三十億という国庫補助が実現したということは事実でございますね。確認してよろしいですね。
  81. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) ただ私がこの社会労働委員会の公式な席上におきまして、今申し上げたいと思いますことは、政府がことし出しました三十億円、これは被保険者の負担金に見合うだけのものであるということにおいて出したのではないのでありまして、ただ私がその長い間の過程におきまして、大蔵大臣との間にいろいろ交渉をいたしました過程の話でございまして、政府がいよいよ最後にこれを出すときの腹というものは、これは患者の負担に見合うだけのものとして出したものではないことを御了解いただきたいと思います。
  82. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連しておりますから……。
  83. 山下義信

    山下義信君 関連、私の質問のしまいを結びたいのです。
  84. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一つあとで結びなさい。
  85. 山下義信

    山下義信君 なぜ質問者に発言を許さぬのですか。
  86. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 向うの方が先ですから。
  87. 須藤五郎

    須藤五郎君 健康保険などというものは、実際は国民の負担でやるべき性質のものではないと思うのです。すべて国庫負担でやるのが、これが本筋だというのが私たちの主張です。これはあなたたち立場意見は違うかもしれませんが、そういう性質のものである。どこの国でも、進歩した国はすべて国庫負担でやっておるのです。  そこで一つ尋ねたいのは、赤字の原因はどこにあるかという点です。私たちは今度の健康保険の赤字の出た原因は、日本の国民の所得、収入というものが、非常に低い点にあると思うのです。ですから赤字をもしもなくすのに一番いい方法は何かといったら、労働者の給料を上げれば赤字をなくすことができる。それともう一つは、結核患者が非常に多いということ、この二つが赤字の原因だと思うのですが、このような、今日においてすら生活に困窮しておる日本の人たちに対して、わずかばかりの赤字を政府が責任を持たないで、すぐ国民の負担によってこの赤字を補てんしようという考え方に私は大きな問題があると思うのですが、そういう考えであればこそ今のような議論が出てくるのだと思うのですが、厚生大臣どういうふうにお考えになりますか。
  88. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今の須藤さんの御質問いろいろ御意見があったようでありますが、つまり健康保険の赤字の原因がどうであるかということをお尋ねになったのでしょうか。
  89. 須藤五郎

    須藤五郎君 それも一つです。
  90. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) そのほかの問題、おそれ入りますが……。
  91. 須藤五郎

    須藤五郎君 それと同時に、それに対する、健康保険の赤字の原因に対する考え方に違いがあるために、赤字が出ればすぐそれを国民の肩に転嫁させようとする、そういう考えが厚生大臣には起ってくるのではないか、そういうことです。
  92. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 政府管掌健康保険の赤字の原因という問題につきましては、これはいろいろ御意見があると思うのでありますか、私ども厚生当局といたしまして、いろいろこの問題を掘り下げて研究をいたしまするというと、まあ私ども考えております点といたしましては、まず二十八年度におきましては点数も一部改正をいたしておりまするし、それから継続医療年限の二年間を同じ病気につきましては三年に延ばしております。それから抗生物質の採用ということも、これもやはりその当時、二十八年度にそういう規定を設けました健康保険の赤字を醸成する一つの原因になっておると思います。  それからまた、非常に最近医術が進歩いたしましたこと、それからまた、被保険者が毎年累増をいたしておる、病院、診療所の数もだんだんふえまするし、これは非常にいい傾向でございます。それからまたいい傾向一つといたしまして、今日の健康保険というものは昔の健康保険と違いまして、非常に国民に親みを持ってこられて、受診率も非常に増大をいたしております。こういうこともやはり健康保険の赤字の原因になっておると思うのであります。それからまた、須藤さんが御指摘になりましたところのいわゆる政府管掌の健康保険というものは、事業所は二十二、三万全国にあるのでございまして、一事業所におきまする平均の従業員の数というものはわずかに二十二、三人という程度に承知いたしておりましたものですが、しかもこれらの従業員の収入といいますか、収入がふえれば保険料も増収になるわけでありますが、この収入というもののふえ方、ふえるにはふえておりますけれども、その収入のふえるカーブというものが毎年々々年を追うに従いまして医療費が増高いたしておりますが、その医療費の増高のカーブというものは、一つは非常に急カーブになっておりまするし、収入の面は緩慢なカーブになっております。いわゆる保険料の収入と医療費の増高というものが伴わない、こういうようなことも原因の大きな一つになっておると思いまするし、また今御指摘になりましたいわゆる結核という問題、この結核というものが医療費の相当なウエートを占めているというようなこともあると思うのであります。現実の問題といたしまして、今須藤さんの御指摘になりましたような給料をふやせばいいじゃないかというような問題もあるでございましょうが、これはまあそう簡単に解決できるものでもないのでございまして、これは他にいろいろな原因もあると思いますが、いずれにいたしましても、現実な問題といたしまして、二十九年度に四十億、あるいは三十年度には六十億、三十一年度におきましてはこれもいろいろ御議論があるように思いますけれども、私どもは六十数億の赤字を予想いたしておるのでありまして、現実な問題といたしましてこのままに放っておくということになりますと、これは政府管掌健康保険制度というものは壊滅しなくちゃならぬ、何とかこれを建て直しいたしたいということで今日改正案出しているようなわけでございます。
  93. 相馬助治

    相馬助治君 関連した問題を突き進んでいただきたいと思うのです。そこで、財政当局と厚生省との予算編成における過程の折衝というものは実際重要な問題なんです。そこでこの問題にけりをつけてもらいたい。山下委員が、委員長委員長
  94. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 聞いていますよ。
  95. 相馬助治

    相馬助治君 山下委員がその点についてただしたいというので、関連した問題ですから発言を許してさっさと片づけていったら……。
  96. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) いや、いずれも関連した問題として発言を許しております。(「いや関連していない」と呼ぶ者あり)いや、それは結果においては……。(須藤五郎君「もう少しぼくが質問すれば関連してくるんです」と述ぶ)
  97. 山下義信

    山下義信君 今相馬君の発言の通りに、今一部負担を衆議院が減額し、あるいはけさの新聞を見ると、ほんとうか嘘か知らぬけれども、一部負担を減ずる、患者の一部負担を減ずることに財政当局が非常に難色を示していると新聞が報じている。要するところ、今度の三十億の国庫負担、法律改正では第七十条の三にまことにばく然とした規定がある。この問題はどうしてもこの委員会としては審議しなくちゃならぬ一つの関所なんだが、まだやっていない。たまたま相馬委員先ほどから、前回この問題に触れ、本日は大臣との間に質疑応答がかわされたが、どういう約束があったのかということを、どういう国庫負担の交渉をしたのかということは、この国庫負担が初めて健康保険に現われてきた、多年の要求が現われてきた、それによってこの一部負担、患者負担と那辺の関係があるか、どういう話があったか、したのかということは、これは重大な問題である。であるから、もし国庫負担を削除するかわりにはそれに見合っただけの患者負担をするのだよ、こういう約束になっておるのか、どういう約束になっておるのかということは事態を明確にしなければならぬ。そこで相馬委員質問大臣の答弁は、患者負担する額に見合うような国庫補助を要求したのだ、こういうことになると、われわれから言えば、主客転倒である。国庫負担がまず先である、それに条件がつけられたというのならばまだ話になるが、先に自分の方の負担額をこれだけ負担するからこれに見合うだけの国庫補助をしてくれという哀訴嘆願的な態度にもし厚生当局が出たというならば、まことにわれわれとして慨嘆にたえない、こう考えるのであります。そこで、そういうことでないのならば、先ほどの答弁を取り消さなければならぬ。ただ経過説明した、経過とはすなわち折衝の態度である。態度とはすなわち折衝の方針である。それをかけ引きであった、ただ一場の座談であったと言うならば、こういう公式の重大な答弁として私どもは納得しがたい。多から先ほどの答弁を取り消してそういう交渉をしないとか、そういう交渉の方針ではなかったとか、厚生省の財政当局に対する国庫負担の交渉の基本的方針というものをここで明確にしておかなければならぬ。それでなけらねば、あなたはいいですよ、しかしながらあなたの一言半句が後の厚生省の方針に影響を来たすということがあってはならぬ。患者負担がそれだけ減ったのだから、これからは明年の国庫負担には財政当局は容易に応じないということの関係があり、言質でも与えてある関係があるならば、それは重大であるから、われわれこの委員会としては厚生省をバック・アップしていかなければならぬ。そういう考え方があるので当局の方針をただしておるのであります。でありますから、先ほどの前段の答弁は取り消すなら取り消すということを明確にされて、国庫負担に関する厚生省当局の態度、方針をこの際明確にしておいていただきたいと思います。その辺が不明確ならば大蔵大臣を呼んで、厚生大臣と大蔵大臣との間にどういう交渉があったかということの事態を明確にしておかなければならぬと私は思う。明確な御答弁を願いたいと思う。
  98. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 私の先ほどの答弁に関連いたしまして、今山下委員からおっしゃいましたことはごもっともであると存じます。従いまして私はこの点につきまして明らかにいたしておきたいと思います。私の先ほどの答弁中にございました被保険者の負担云々について国庫の補助をと申し上げましたことは、あれはこういう社会労働委員会のような公式な席上で申し上げることじゃないのであります。これは取り消したいと思います。政府出しましたこの三十億円の補助というものは、これはあくまでも社会保障の確立の見地からいたしまして、政府管掌健康保険制度の健全な発達のために出したものでございますということを明らかにいたしておきたいと思います。
  99. 相馬助治

    相馬助治君 今厚生大臣は取り消されましたが、実際はそう言ったのだ、しかし公式のこういうところでそれを言ったなんということはおかしいから取り消すというのですか。自分の考え違いであったから、全く申しわけなかったが取り消す、こういうのですか。どっちですか。(「前者だ」「ポイントですからはっきりしておいて下さい」と呼ぶ者あり)
  100. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) そういうふうないろいろな経過をたどっておりまするけれども、そういう私的な言葉のあやにつきましてはこの席上において申し上げるべきことではないと存じますから、取り消したいと思います。
  101. 相馬助治

    相馬助治君 いよいよこれは大事件で、実際はそういうふうに交渉したのだ、しかしこれは私的な話なんだと言うが、私的だと言うてみても、厚生大臣小林英三というものは私的で口をきいたつもりでも、財務当局と話をきいたときにはこれは公的な性格で、その言葉に権威を持つと私は思うのです。従ってですね、わかりました。ここでは取り消す、しかしまあ実際はそういうふうに言ったんだ。わかりました。それでよろしい。
  102. 竹中勝男

    竹中勝男君 関連。これを確認しておきたいのですが、今の答弁に対して。すなわちこれは一部負担とは無関係に、これと見合わないで社会保障として三十億を政府が国庫負担するということを確認をここでできるかということと、それからそれではですね、補助というのをなぜ国庫補助、国庫負担という言葉を使わないのか、社会保障としてこれが永続的に、永続的というか、来年も再来年もとにかく社会保障として出るのであるならば、たとえ赤字財政がなくなってもこれは出す性質のものだということをここで確認していいかどうかを大臣から答弁願いたいと思います。
  103. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) もちろん政府提案をいたしました改正案でございまするから、この健康保険の財政に対して政府が三十億円の補助をする、それから被保険者からは二十三億五千百万円の負担をしてもらう、標準報酬はこれこれに上げるというようなことにつきましては、十分に審議をいたしまして、そうしてこのすべての点を検討いたしまして改正案国会提案いたしたわけでありまして、先ほどから相馬委員あるいは山下委員が御質問になりました今の被保険者の負担に見合うだけの国庫補助をするという私の言辞につきましては、これはこの席上において取り消していただきたい、こういうことを申し上げたのでございます。
  104. 竹中勝男

    竹中勝男君 先ほどの言葉には、社会保障として三十億円国庫が補助をする、これは患者の一部負担には見合わないものである、こういうことがはっきりしたと思うんですが、そうすれば患者負担が非常に減ってきても、一部負担が減ってきても三十億というものは必ず支出されるところのいわゆる国庫負担と同一のものであるかということを私はお尋ねしている。明確に簡単でいいですから、明確にその点をしてもらいたい。
  105. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 三十億円の国庫補助というこの数字につきましては、一部負担の形が減りましてもこの三十億円というのは国庫から出すということについてはその通りでございます。
  106. 相馬助治

    相馬助治君 先ほど来の大臣の答弁はにわかに首肯しがたいのでありますが、議論を一歩進めて、私はこの三十億と患者負担との問題について確認しておきたい。それはですね、ただいま議題となっております一部改正法律案がもしもかりに何らかの修正を加えられたとしても、一部負担ということが実現して、成立した場合には、この面については法制化せられるんです。固定化せられるんです。ところが三十億の補助金の分については法律的に固定化せられないんです。天下世論の声は政府管掌の健康勘定については定率化して、立法化してこの補助規定を明記すべきであるといわれているんです。なおわが党のことを申してはなはだ恐縮ですが、わが党は二割を支出すべきである、そうすれば抜本的に保険経済は確立すると主張し続けて今日に至っているわけであります。これがもう一つ立法化されないし、その気配も見えない、これはあなたの責任だと思うのですが、いかがでございますか。また、これに対して何らか財政当局との話し合いの上で弁解すべきような材料をお持ちでございますか、しかとこの点を承わっておきたいと思います。
  107. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 政府の今年の三十億円の補助に対する性格につきましては竹中さんにお答えした通りでございます。私といたしましては、最初からこの国庫の補助という問題については定額にいたしたい——定率にいたしたいということを最初から大蔵当局にもその経過につきましては交渉いたしておったのでありますし、今日におきましても健康保険の健全なる発達あるいは社会保障の確立の見地からいたしまして、医療費に対するある定率の国庫補助を出してもらいたいということにつきましては、十分に将来とも努力をいたして参りたいと、こういうふうに考えているわけであります。
  108. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると、実質的に患者負担の分はどうなろうとも、幾らになろうとも、減ろうと、ふえようと、なくなろうと、あろうと三十億の補助からはひもがついていない、かように本員は了承して差しつかえないのですね。
  109. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 私どもの最初からの改正案の赤字財政に対しまする立て方というものは先ほど申し上げた通りでございます。今日の段階におきまして、立法府でありまする国会がこの一部負担の財政効果につきましてあの程度の御変更がございましても、この三十億円の国庫補助というものはそれはそのまま国庫が補助していく、こういうことははっきりしておると思います。
  110. 相馬助治

    相馬助治君 そのことは私どももそう思っているのですが、私が聞いているのはなお一歩進んでいる。三十億の国庫補助というのはこの患者の一部負担についてのひもとなっているかどうかということは、今の大臣の答弁は、いささか変更しても三十億は変らない、ことしの分についてはそうです。三十億というものは認めて立法府であるわれわれがその予算を承認しておるのだから。ただ問題なのはこの三十億とそれから今度の患者負担との問題でで、極言すれば、この患者負担はなくなってしまっても明年の国庫負担要求というような場合には財政的な支障はございませんね、かように具体的に尋ねているのであります。
  111. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) ただいまの相馬さんの御質問の御趣旨がただいまよくわかりました。私はこの一部負担の問題がどうなろうとも、来年度の健康保険財政に対しては差しつかえがなかろうという御意見に対しては、これは別な意見を持っておるのでございます。
  112. 相馬助治

    相馬助治君 その別な意見を聞かせてくれなければ困りますね。
  113. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 私どもといたしましては、今日の健康保険財政を軌道に乗せますためには、私どもがただいま提案いたしておるような案によって参らなければならないと確信をいたしておるのでございまするが、先般衆議院におきまして、与党の修正案といたしまして財政効果の削減があり、一部負担の形も変って参ったのであります。しかしこれにつきましては、十分に行政努力をいたしまして御期待に沿うように善処いたしたい、こういうことを申し上げておいたのでございます。そのほかの修正案につきましては、また修正案がはっきりいたしました際に私の所見を申し述べたいと思うのであります。
  114. 山下義信

    山下義信君 私も確認いたしておきたいのですが、結局三十億の国庫負担をとるについてはひもはついていないんですね。そうおっしゃるんですね。条件はついていなかったということですね。それでよろしゅうございますか。   〔竹中勝男君「私もそれを確認したのです」と、述ぶ〕
  115. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 先ほど私が取り消しをいたしましたような条件はついていないのでございます。
  116. 山下義信

    山下義信君 その取り消しは確認しましょう。私も了承しました。それではあらためて聞きますが、三十億を国庫負担するかわりに、三十億に見合ったような金額の負担をしろという約束はしなかったのですか。この点どうですか。
  117. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 仰せの通りでございます。
  118. 山下義信

    山下義信君 それは約束したのですね。——それは今後国庫負担をとる厚生省のそれは方針になりますか。財政当局とのそれは原則になるのですか。三十二年度の予算要求のときにはそれには関係ありませんか。本年度だけですか。今後にそれが尾を引くようなことはありませんか。その点を心配しておるからさっきから議論をしているのですから。今年だけのことですか、そういうことは。
  119. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今のしたとかしなかったかということだけでは、私は答弁いたしますとはっきりいたしませんから、山下さんの御質問をもう少しはっきりさしていただきたいと思います。
  120. 山下義信

    山下義信君 私の質問ははっきりしているのですよ。あなたが三十億の国庫補助をとるときに財政当局との間にこの金額に見合ったような、いわゆる被保険者側の負担をするということを約束したかということを言うのです。
  121. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) それはしたことはないのでございます。
  122. 山下義信

    山下義信君 したことはない。しからば閣議でそういうことが了解事項となったことはありませんな。決定事項等となったことはございませんな。
  123. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) ございません。
  124. 相馬助治

    相馬助治君 私たちが世上のうわさを聞いてこういうことを言っているのではなくて、先般主計官をここに呼んでお尋ねしたときにも、政府説明員ですから基本的な政治的な発言に対して最終的な責任まで負わせるわけに参りませんけれども、こう申しているのですが、大臣、これをまことにしつこいようですが、これを確かめておきたいのです。そもそも健康勘定の分については財政全般きわめてルーズである、この一点。従ってこれについてはそれぞれの行政措置をし、健康保険法の各種の法改正を行なって、これを推進していくようにしなければならぬという意味合いのことと、それから三十億も、これは融資じゃないので補助なんだから、ことしこういうにするけれども、それはことしだけのものでなくて、了解事項としては今後も十分考えていきたい。それに見合うものとしては法改正において患者の一部負担を法制化する、こういう意味の発言があったのでございまするが、そうすると最初申したように、患者負担に見合う額を国費をもって補助させるというようなことはそれは答弁もなかった、私も了解いたします。ただし、将来を考えて健康保険法の一部改正の中に財政的な効果はたとえ少くとも、患者負担ということを明瞭に法制化するという政治的義務は負っているのだなあと、われわれは考えていたのですか、これはいかがですか。そういうひももないということを含めての山下委員への答弁ですか、全くそういうことはないという意味ですか。それくらいのことはあるという意味ですか。
  125. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) その点は先ほど竹中さんの御質問に対して私がはっきり答弁しておるつもりでございます。(相馬助治君「竹中さん、それでいいんですか」と述ぶ)
  126. 山下義信

    山下義信君 その点はまたあと別に検討することにして、私質問をいたしたいのですが、この一部負担が赤字の目的だけでなくして、保険制度の確立のためと、こういうことで、しばしば当局の説明は要するところ、社会保障前進、健康保険の強化拡充ということのためにこれは一つやるのだと、こういうことで、ただ健康保険そのものの確立のためだけじゃない、全般のいわば国民皆保険ということを目ざしてやるのだと、こういう非常に大きな目的をもって、建前をもって今回の改正をするのだ、こういう御趣旨をしばしば御説明でありますが、そういうことですか。
  127. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 御意見通りでございます。
  128. 山下義信

    山下義信君 私はこの際、政府が法改正をしておるいわゆる健康保険制度の医療保障諸制度の、そのいかなる計画をやろうとしているのか、そのあなたの方の計画を一つお示しを願いたいと思います。
  129. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) この医療保障の私どもの計画といたしましては、この委員会におきましても申し上げておりますように、今日の健康保険そのものといたしましても、政府管掌と組合管掌がありまするし、また、日雇労働者健康保険、あるいは船員保険とか、あるいはこういうふうな勤労者を対象といたしましての健康保険がございまするし、それからまた一方におきましては国民健康保険がありまするし、また共済組合というものもありまして、先ほど須藤さんの御質問にもありましたろうな結核というものをいかにするかというような問題もございまするし、本年度は約一千万円の予算もとっておりまするので、私どもが計画いたしておりまするように、昭和三十五年というものを目途といたしまして、まだ社会保険の恩典に浴してない三千万人も全部これらの保険に入れる、いわゆる国民皆保険ということを目途といたしまして、今の大臣の顧問、医療委員といいますか、五人ばかり置きまして、そうして早急に今後の医療制度全般に対してどうするかという問題に対しまして計画をいたし、年度計画等も立てまして、そして進んで参りたい、こういうふうに考えております。
  130. 山下義信

    山下義信君 昭和三十五年を目途としてというその御計画の内容はどういう内容になっているのですか。
  131. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) これはやはりなかなかむずかしい問題でございまするから、そういう問題に対しまする計画立案をやって参りまして、そうしてその計画立案に基きまして年次の計画を立てまして進んで参りたいというのでございまして、まだその内容につきましてはできてはいないのでございます。
  132. 山下義信

    山下義信君 その内容がないということになりますと、結局計画がないのですね。ただいまのところ、あなたの方では何もプランがないのですね。私はプランがあったらお示し下さいと言っているのです。
  133. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 計画は先ほど申し上げておりますように、昭和三十五年度を目途といたしまして……。
  134. 山下義信

    山下義信君 それはあなた目標を出しておられるだけじゃありませんか。目標に到達するプランはどういうプランですかと聞いておるのです。
  135. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) その計画プランはこれから立てていきたいと思います。
  136. 山下義信

    山下義信君 ですから今はないわけでしょう。ないでは困るじゃありませんか。その目標に対して着々進むという計画のもとに、それに関連してこの健康保険改正をするのだというのに、無計画では困るじゃありませんか。目標だけでは計画じゃない。そんなでたらめなことで一体健康保険改正を今からして目標へいくのは五年先だとおっしゃる。五年間の間、先に健康保険患者にこれだけの犠牲というか、これだけの改悪をしんぼうさせておいて、そして計画ができるのは五年先だとおっしゃるじゃありませんか。五年先でもいいから、せめてその目標に到達する年次計画という大綱ぐらいはあなたの方にできていなくちゃ私はならぬと思います。結局無計画じゃありませんか、どうですか。
  137. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 昭和三十五年度を目途として国民皆保険に進んでいきたいというために、十分慎重にこれは研究をいたしまして、それに対して計画を立てて参りたい、こういうのでございます。
  138. 山下義信

    山下義信君 私はそういう答弁では納得できないのです。そういうふうに慎重に検討しなければ計画が立たぬというならば、健康保険改正もそれと一緒に慎重に御検討なさったらどうですか。やはり五年先の国民皆保険の全体計画のこれは一つじゃありませんか。あなた方の方ではそうおっしゃる、その計画の内容はゼロであって、それをこれから立てる、そしてしかもそれは慎重にやるのだ、そしてその一環をなすところの健康保険は今ここで改正する、それでは首尾が合わぬじゃありませんか。誠意がないじゃありませんか。私はこういうことでは、この健康保険の根本的計画が明確にならなければまじめな審議はできないと思います。これは健康保険審議をする重大な問題です。あなたの方はどういう計画を持っておるのか、今大臣はみずから問題点をあげられたが、問題点をあげられただけでは計画にならぬ。この健康保険をどうしようとするのか、国民健康保険をどうしようとするのか、それに関連する諸問題にどうしようとするのか、あなたの方はどういう計画を持っておられるのか、その計画の原案をもとに委員会に諮問して十分具体的に中身を検討させるというなら聞えも立つが、あなたの方は手ぶらで何もなくて、一体計画はだれが作るのですか、人に作ってもらうのですか。厚生省はその大綱すら持っていないのですか、あれば出して下さい。ないことはないはずです。あなたの方は昭和三十五年度までに国民皆保険にすると大きなことを言い立てておる。何もないはずはないです。そんなばかげたことを国会の席上で言い得るはずがない、もう少しまじめに御答弁を願いたい。
  139. 相馬助治

    相馬助治君 厚生年金の審議の際にも、これと同一の問題が委員から提議されて、やはり五カ年計画をもって気の毒な三千万の人たち保険組合員に繰り入れ、同時に在来の各種保険を統合し、整理して社会保険制度をより前進させる。こういう計画中である、こういうふうに答えておる事実があるわけです。それからだいぶ日にちもたっておりますから、私はここで委員長一つお願いしたい。それは五カ年計画というのはコンクリートされたものでなくてもいいから、何か私どもの納得し得るものがあれば、素案でもいいから明日提出してもらいたい。こういう重大な前提がはっきりしないならば、私は質問しようと思って、山のように、これは全部原稿ですけれども、これ以上続けても仕方がないので、きょうはこの程度で散会する動議を提出いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  140. 竹中勝男

    竹中勝男君 それに関連して、もし大臣が言われるように、ただ五カ年というだけが計画で、それに対する内容はないのだというような御返事ではこれは承服できません。というのは、その計画の一環として、私どもはこれを審議しておる。それをたびたび政府は言われておる。この改正は来たるべき三千万の国民に対する皆保険をやりたいために、この一部負担も仕方がない、そして政府は社会保障確立のため三十億出すのだ、こういう建前であって、この改正案と五カ年計画との関連がないと言われるのでは、これはほんとうに審議を慎重にやる段階においては、十分問題にしなければならない。すでに昨年社会保障審議の企画室が厚生省の中にできておるわけです。そしてそこで五カ年計画を審議しておるはずです。それに対する予算もとっておるはずです。そしてこういう改正法もその一つとして出てきたわけです。全体の総合的な企画の一環としてこの改正法が出ておるはずです。ところが厚生大臣の今の御答弁を聞いておると、五カ年というだけがこの一カ年間にきまって、あとは全然何もないというように聞えるので、これは厚生大臣の言葉のあやと思うが、何かあるはずです。なければこんなものが出てくるはずがない。それを一つ示していただきたい。
  141. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) きょうはこの辺で散会しようという動議が出ておりますが。(「ちょっと速記をとめて下さい」「休憩」と呼ぶ者あり)ちょっと速記をとめて。    午後三時五十九分速記中止      —————・—————    午後四時十七分速記開始
  142. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を起して下さい。
  143. 相馬助治

    相馬助治君 先ほど私は厚生省から資料が提出されなければ、これ以上審議を進めてもむだであるから、散会してほしいという動議を出しました。竹中委員がこれに賛成して、私の動議は成立いたしております。ところが榊原委員が暫時休憩するという動議をやはり出しております。これに対してはどなたも賛成者がなかったようですけれども、事実は榊原さんの動議の通りになっている。私の動議というものは実質的に全く無視されてしまったわけです。しかもその間に与党議員のかり集めが行われたようでございますので、これは表決をとりますと、一票で負けそうです。私はこういうふうにして委員長取り計らっていただきたいと思います。私は山下委員が要求したこの資料を求めていることは当然だと思うから、従って厚生省は不満であろうと不満でなかろうと、委員が了解しようと了解しなかろうと、それは資料内容についてまでここでとやかく言っても仕方がありませんが、とにかくそれに見合う資料を出すということを、誠意をもって答弁すべきだと思うのです。そういうことに相なりますならば、私はさっきの動議を取り消しまして、そうしてなお続行して質疑されることを何らいなむものではございません。
  144. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 山下さんの御質問に対しまして私は、お聞きのような答弁をいたしたのでありますが、これをもう少し申し上げますというと、今日まで各種の社会保険がいろいろな経過をたどりまして発達してきているのでありますが、たとえば、五人未満の事業場につきましては、健康保険に入っていない、これらを将来どうするか、あるいは先ほど質問のありました結核の問題につきましてこれをどうするか、いろいろの問題が将来多々あると思うのでありまして、私が申し上げましたのは、これらの問題をあわせて総合的に調査研究することがよろしい、慎重に研究することがよろしい、こういうことでことしは約一千万円の予算をとりまして、とにかく問題をこれから総合的に慎重に研究して参りたい、その結果年次計画ができました場合には年次計画を発表いたしまして、それに向って昭和三十五年度を最終の目途として国民皆保険の線に向っていきたい、こういうことを申し上げたのでありますが、従いましてただいまごらんに入れるような資料はまだできていないのでございます。これから慎重に研究をいたしましてきめて参りたい、こういうことでございます。
  145. 山下義信

    山下義信君 資料を要求したのですから、ないというならば仕方がありません。これはないものを出せと言ってもそんな無理なことはできませんからね。そこに何もないものを出せと言ったってできませんからね。しかし、厚生省はそれならば社会保障の推進の五カ年計画というものを公式にも非公式にでも発表したことはありませんか。しかもそれに要するところの財政経費を計算して一つの理想図というか、一つの作業をしてこれを新聞、雑誌とかいう公刊の刊行物の上に出したことはありませんか、公式にも、非公式にも。ないのならないと言って下さい。
  146. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) そういう発表をしたことはないのでございます。
  147. 山下義信

    山下義信君 ありましたら責任を負いますね、大臣
  148. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) その通りで……。
  149. 山下義信

    山下義信君 私は証拠を持っております。厚生省が発表して、企画室が発表して、そうしてそれに必要な経費を計上して、これを全部やるならば三百億かかる、これを全部やるならば二百億かかる、そういうふうな必要な財政経費も計上して、そうしていろいろな刊行物に厚生省の省名のもとに出しておる。
  150. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 私が就任いたします前に何か新聞に出ておることを私は承知いたしておりますが、(「そんなのは答弁になりませんよ」と呼ぶ者あり)厚生省といたしましては発表いたしたことはないのでございます。
  151. 山下義信

    山下義信君 なぜそういうものが出たのを厚生省は否定しませんか。なぜその厚生省がそういうような一つの作業として出されてあるものが厚生省が関知しないのなら、なぜ否定しませんか、否定しないのならば承認していると同じじゃありませんか。私は刊行物を証拠に持ってきて責任を問わなくちゃなりません。そういうものを発表した下僚があなたの省内にいたらあなたは責任を負いますか。新聞記者が勝手に書くのじゃなくして、関係の諸雑誌、刊行物に厚生省の一つの作業としてあるいは試案としてそういうものが出た、しかも出したものはあなたの下僚である厚生省の職員であるというときには、大臣責任を負いますか。そういうことを言わないで、そういう一つの作業もして、そうしてこの健康保険の問題に関連して一つのそういうものを出しておるならば、それでもここへ出してくるのが誠意というものじゃありませんか。行きがかりで知らぬ存ぜぬ、あるいは何にもないのだというようなそういう誠意のないことを答弁なさるのだったら、私はその不誠意に対して審議はできません。むしろそういう態度をおとりになるのは、この委員会審議をあなたが軽視なさるか、侮辱なさるのだ、その態度は。従来とても健康保険審議を今日まで数十日やってきましたが、あなたはほとんど答弁なさらぬ。今日までほとんど事務当局が答弁しておる。私はこれもはなはだ不愉快に感じておるのであります。今日まで言いませんでした。しかしながら、実質的な答弁をほとんど事務当局がしておるのです。これだけの重要法案、天下があげて今回の第二十四国会の重要法案一つと言われておる。大臣みずからこの答弁の衝にお当りになるのが当然であると思うが、ほとんど事務当局がそういう質疑応答をやっておる。しかしながら、こういうような厚生省の目標に対するところの抱負、考え方が固まってはいないけれども、今ここまで作業しておる、こういう考え方を持っておるという大略のこともなけらねば提案理由に言うことはできぬじゃありませんか、国民皆保険の目標に向って進むためにやるとか、そういうことが提案理由に書けるはずはないじゃありませんか。何も考えなしにそういうような荒唐無稽なことを提案理由として、いやしくも一国の政府が出せますか、何らかの下地がなくてはならぬ。詳細なことやその仕上げはこれから新設される医療保障委員会ですか、私どもあれなんか非常に不可解に思う。元来社会保障制度の計画の根幹については、社会保障制度審議会にこれを審議させるということは法律の定めるところである、何の必要があって医療保障委員会というものを新設することができますか、法律違反である。社会保障制度の骨格についての重要問題については、社会保障制度審議会に諮問すべしと法律が命令しておる。あなた方の方には考えがなくちゃならぬ、私は今計教を立てて五カ年年次計画の具体的な進捗のプログラムを詳しく出せなんということを申しておりません。大体のお考えはどうなんですか、国保をどうしようとするんですか、健保をどうしようとするんですか、そういうような重要な項目に対しての大体の厚生省の方針がすでにあるはずです、大綱については。それすらないことになったら日々の厚生行政は何の目標でやっているんですか、無計画でやっているんですか、そんなことはないはずであります。それならば無責任と言わなければなりません。私は無理なことを言っているんじゃない、資料がなければ、大臣としての少くとも抱負経綸はなくちゃならぬ。厚生省に資料がなければ、大臣の胸の中にも抱負経綸がない、それでは大臣が勤まるはずはないと私は思う。公衆の面前でそういう私は態度をお示しになることは、はなはだ遺憾と思う。資料がないならばあなたのお考えをお述べ下さい。私が聞く項目は御必要ならば申し上げます。あなた方が国民皆保険に進み、五カ年先の目標に進むためにはこれこれの問題を処理しなければならぬはずだという重要な項目だけを申し上げます。大臣の所信を一項目ずつ伺いましょうか、どちらでもいたします。
  152. 高野一夫

    ○高野一夫君 今の山下委員の御発言に関連して大臣に……。私は五カ年計画に対する問題も非常に基本の、厚生省にとって重大なことだと思います。そのいろいろな資料内容が過去において厚生省の役人からいろいろ発表があったということもあり、こういうことはそのほかに新聞記事にいろんなのが出てしまったり、再三あることです。そこでこれはいろんな、企画室か保険局かどこか知らぬけれども、そういうところでは随時いろいろ勉強を続けられていろんな材料をお集めになっているはずだと思っているので、その経過なり、その材料なり、そういうものが随時あるいはほかの新聞雑誌へ出ることはあろうかと思います。しかしながら、厚生省として先ほど大臣がおっしゃったように、厚生省として発表なさるところまではまだコンクリートしてない、こういうことも当然言えると思う。そこでどうでしょう大臣、これは一つよくお考え願いまして、せっかく山下委員相馬委員からのお話もありますが、口頭でもってあらましの五カ年計画に対する小林厚生大臣としてのお考えをおまとめになって、明日なら明日にでも適当に一つ説明を願う、こういうことでとりあえずここに資料として出すべき材料もないことですから、そこでそういうことで山下委員なり相馬委員なりに一つ御了解を願いたい。こういうような意味で大臣の方で明日適当におまとめになって、五カ年計画なら五カ年計画、自分が現在厚生大臣の任にあるのにはこういうような考えを持っているんだ、ということは私はできると思いますので、どうか一つ明日でも、そういうような意味において御説明を願った方がけっこうかと思います。
  153. 田村文吉

    ○田村文吉君 議事進行について。私はただいまの山下委員の御発言の通り山下委員からこういう問題、こういう問題ということを大臣に対して私は提起していただくこと賛成であります。私は、ただせっかくの国会の議事をあまり実のない、まとまらない話になることは遺憾に思いますので、おそらくは五カ年計画というものに対しては、まだお立ちになっていないかもしれません。けれども、こういう問題について、ああいう問題についてという厚生行政の大綱についてははっきりと一つ、私どもも伺いたい点もございますから、まず山下委員から御発言を願い、それに対して御答弁を願う、それが本日無理ならば明日でもけっこうでありますから、そういうふうにお願いすることにいたしたいと思います。
  154. 相馬助治

    相馬助治君 私は、せっかくの田村さんのあれですから、最終的には山下委員の御見解によると思うのだが、一番初めに動議を出して、こういう基を築いた者として一言私見解を述べて田村さんの案に賛成いたします。というのは、わからないから聞くのでなくして、山下さんは、そっちがまるっきりわからないで雲をつかむようならば、こっちが条項を出すから、それに対して答えろというのですから、私らの方はわからないから尋ねるのではない。この点だけは明確にして、そうして一つ十分山下委員に時間を与えてもらう、それなら田村委員の今のお話に全く賛成です。
  155. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 山下委員先ほどの計画という御質問でございます。計画を厚生省としてここで述べろということは一応ごもっともと存じますけれども、私が先ほど申し上げましたように、これはなかなか重大な問題でございまして、ここまで参りまするというと、私どもといたしましてはきわめて慎重にこれを研究いたしまして、そうして案を立てたい、こういうことで申し述べたのでございますが、山下委員の御質問に対しまして、ただいま高野委員からして、大臣としてのこれに対するただいまだけの見解でいいから発表したらどうかと、こういうような御意見もあったのでございますが、いずれにいたしましても、当委員会におきまして、こういう重大な問題をここで私が軽率に発表するということはどうかと思いますから、明日山下さんがそれでよろしければ、明日ただいまにおける私の見解をまとめまして申し上げたいと思いますから、御了承を願いたいと思います。(山下義信君「了承しましょう」と述ぶ)
  156. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をやめて下さい。   〔速記中止〕
  157. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて下さい。
  158. 山下春江

    政府委員山下春江君) ただいま厚生大臣からいろいろ御答弁を申し上げました点に関しまして、補足発言をさせていただきたいと思います。  ただいま山下先生及び相馬先生の動議の点に対しましては、厚生省とくと前から本健康保険法案の御審議に間に合うように、たとえ要綱だけでも厚生省の熱意のあるところをまとめましてお示しを申し上げたいと存じております。いろいろな問題が広範にわたるものでございますので、まだその段階に至っていないことはまことに申しわけなく思っておりますが、この健康保険に関しましては、本年度はすでに予算におきまして、先生方あるいはその片りんを御承知であろうと思いますが、いろいろ予算折衝に当りまして私ども微力ながら全力を傾けましたが、財政上の都合で必ずしも厚生省の意に満たないものになりましたが、しかし三十二年度以降はかようなことのないように、これは今年度十分な検討をいたしまして、やはり定率をもって臨むべきものであると確信いたしますので、三十二年度に当りましては、健康保険の国庫補助に対しましても定率をもって臨みたいと思うのであります。  それから未加入者三千万人に対しましては、私ども実はあと先になってはなはだ恐縮でございましたけれども、今回の健康保険の御審議を終了さしていただきました、通過をさしていただきましたあとは、もうその翌日から取りかかりまして、五カ年間にこの三千万を必ず私どもはあらゆる努力を傾けて、保険に全部加入してもらうような措置をするということで、はなはだぼんやりした数字ではございますが、この段階では幾ら要る、この段階では幾ら要る、ただいま山下先生がちょっとお触れになりました五カ年の最終には、三百二十数億を要しても、これはどうしてもやらなければならぬ。それは今残っておりますのは、御承知のように、五人未満の工場とか、あるいはそのほか生活保護の人もございますし、いろいろ低額所得者の、非常に困窮な方々、あるいは困難なケースがだんだんあとに残りますので、それらに対する措置、あるいはその場合における結核対策等を勘案いたしまして、相当の国費を注ぎ込まなければ完了いたさないことも承知いたしておりまして、厚生省としては何といたしましても、政府全体にこの点では賛成してもらいまして、われわれの五カ年計画による社会保障の中核をなすこの医療保障だけは、不充分ながら国民皆保険の線を打ち出したい。従いまして三十二年からは国保に対しましては強制設立をもって臨んで完璧を期したいということのために操作をいたしておりましたのが、この御審議に、数字その他のわれわれの考えておる構想が文書をもってお示しできなかったことを大へん申しわけなく、遺憾に存じておりますが、さような熱意をもってこの問題に取っ組んでおりますので、何とぞその辺の御了承を賜わりまして、本日の御審議を願うならば非常に幸いと存ずる次第でございます。
  159. 山下義信

    山下義信君 一、二簡単なことを御質疑したいと思うのでありますが、今田村委員のお取り計らによりましてただいまの問題は明日に持ち越しまして、政務次官の御熱意のある答弁をいただきまして私も了承いたします。この問題は明日ということにいたしまして一、二簡単に質疑をいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  160. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) どうぞ。
  161. 山下義信

    山下義信君 本案の審議を今日まで当委員会がやってきまして、結局主として御論議をさせていただきましたのは、保険医に対するあるいは医療機関に対する立ち入り検査の問題、一部負担の問題、そういう点が重点的に論議されてきたのであります。本日は本案の重要問題である国庫負担に若干触れられまして続いて提案理由の根本でありまする政府の全体的計画を伺いかけてここに至ったのでありますが、本改正案の重大問題の一つでありますることは、言うまでもなく保険医に対する二重指定の問題であります。これはまだ当委員会では御論議がかってないのであります。どうしてもこの点はお互いに触れておかなくちゃならないのではないかと思いますので、本日はその点を少し簡単に伺っておきたいと思う。  今回政府は登録と指定という二つの方法をおとりに触ったのであります。そこでまず伺いたいと思うことは、登録とは何ぞやということなんです。私はいつもこういうことを伺って済まないのでありますが、一部負担とは何ぞやと、こういうことを申し上げまして大へん御迷惑をかけましたが、一つ登録とは何ぞや。そして手続法律に書いてありますから読めばわかる、登録ということは一体何であるか、その性格は何であるかということを一つこの際明確にお示しを願います。大臣から御答弁願います。
  162. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 改正案に規定してございまするのは、医療担当者が届出をいたしました場合におきましては、政府の健康保険を扱う医療担当者として登録をいたしまして、しかもそれはその方の生存するまでその者が登録をいたす、こういうことでございます。
  163. 山下義信

    山下義信君 いや、手続を聞いておるのじゃないのです。今おっしゃったのはちょっとおかしい。登録というのは届出ですか、届け出ればいいんですか、法律に届け出ればいいと書いてないように思うのですが、二重指定は重大な問題ですから、私は大臣から大体をお答え下さって、あと事務当局が補足なさるのが当りまえです。届出じゃないでしょう。そんな届出でなくて登録でしょう。届出と登録は違います。
  164. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 手続ではないというお話でございますが、登録というものはやはり登録であるということにお答えするよりほかに手がないと思います。
  165. 山下義信

    山下義信君 それでは伺いましょう。登録は登録だと言うのでは話にならぬ。馬とは何ぞや、馬とは動物だとお答え願わなければならぬので、馬とは何ぞやと言ったら、馬とは馬だと言ったのでは問答にならぬ。  それでは伺いましょう。登録というのは何のためにするのですか、それを伺いましょう。登録の目的いかん。
  166. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 医療担当者に健康保険医といたしまして健康保険の医療を担当さすということを登録する、こういうことであります。
  167. 山下義信

    山下義信君 そうすると何ですか、登録をすることによって医療担当者としての行為ができる、こういうことですね。
  168. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) その通りであります。
  169. 山下義信

    山下義信君 それは登録ということによって保険医たる契約をすることになるのですか。どういう意味になるのですか。保険医としての仕事ができるということは、登録ということは契約したことになるのですか。
  170. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 契約ではございません。
  171. 山下義信

    山下義信君 保険医の仕事ができるということはどういうことなんです。あなたの方で保険医たる資格を与えるということですか。私の方から質問を具体化しましょう。
  172. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) その通りでございます。
  173. 山下義信

    山下義信君 保険医たる資格ができるということは、保険医たる資格が十分ある、保険医たる能力があるということですね。
  174. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) その通りであります。
  175. 山下義信

    山下義信君 そうすると、保険医たる能力、保険医たる資格のあることを確認するということが登録ですか。
  176. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) お説の通りでございます。
  177. 山下義信

    山下義信君 この登録には取り消しがありますか、ありませんか。
  178. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 登録の抹消ということがございます。
  179. 山下義信

    山下義信君 どういうつけで登録の取り消しをするのですか——それじゃ私から質問を具体化しましょう。そうすると、保険医たる能力がなくなったのですか。だから取り消しをするのですか。
  180. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 能力ということよりも、むしろ保険医として適当でないとみなされた場合におきまして登録が取り消されるわけであります。
  181. 山下義信

    山下義信君 保険医たる資格が十分にあるということ、それを確認するのが登録であって、確認に取り消しがあるということはどういうことですか。この者は大学卒業の学力があると確認して登録して、それでその確認を取り消すとはどういうことですか。今度資格があると認めたのは誤まったのですか、あなたの方が。本人は依然として能力は変らぬのですよ。学力も変らぬのですよ。それに保険医たる資格が十分にあると確認しておいて、その能力が消えたとはどういうことです。
  182. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 能力あり、資格がございまするから登録いたしたのでありまするが、不適当とみなされました場合におきまして登録を取り消す、こういうことでございます。
  183. 山下義信

    山下義信君 不適当と能力とは違うじゃありませんか。違いもするし似たところもある。あなたの方では適当である、資格としては適当である、能力としてもあるんだ、だから保険医たる行為をするに十分である、こう認めたのが登録なのでしょう。それを取り消すというと、能力も消滅するのですか、保険医たる資格も消滅するのですか。
  184. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 保険医といたしましては、権力はございましても、保険医として引き続いてやります場合には、不適当と認めた場合におきましては、登録を取り消す、こういう事情でございます。
  185. 高野一夫

    ○高野一夫君 大臣にちょっと関連してお伺いいたします。非常にむずかしい的確なる御質問で、さぞ大臣お困りだろうと思うのですが、そういう事務的のことを、あまりにこまごましたことを大臣が答えるということは私はどうかと思う。そのために政府委員が控えているのでありまして、従って大臣は一国の国務大臣として日本の国政全般にわたり、(「答えられないのは恥辱じゃないか」と呼ぶ者あり)それから厚生大臣は厚生行政全般において大局からこれをながめて、それを統べるのが、これが私は大臣だろうと思う。従って大臣事務のことで答弁ができなくても、ちっともこれは私は恥辱じゃないと思う。そのために、それぞれ担当の事務次官そのほか局長がいるのですから、その政府委員にかわって答弁させるということを私はきぜんたる態度をもって大臣はそういう意味で答弁をなさってちっとも差しつかえないと思う。山下委員、どうぞそういう意味で御了承願いたい。
  186. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今まで山下さんの御質問につきましては、法律上の問題もございまするから、一応保険局長から答弁さしていただきたいと存じます。
  187. 山下義信

    山下義信君 ちょっと待って下さい。今高野委員の御忠言がありましたから、具体的な法律的な解釈は局長から承わってようございます。非常に重大な問題でありますから、大体はあなたがお答え下さるがいい。登録と指定という二つのことを定めるんでしょう。登録とは何か、指定とは何かということを大臣が知らずしてこの二重指定をやらすという法はない。私は登録とは何か、指定とは何かということを聞いているんですから、こまかいことを聞いているんじゃない。非常に大きい問題です。登録とは何を意味するのか、指定とは何を意味するのか、言いかえてみれば、登録とは保険医たる資格があるということを確認するんだ、言いかえれば保険医たる身分を確認するんだ、確認行為だと言う。その通りだ。私もそう思う。法律解釈もそうでしょう。確認行為に取り消しということがあるかということです、法律的には。だから保険局長にあとの分は答えていただこう。それならおおだたいを聞こう。登録と指定とはどう違うか、登録にも取り消しがあるんですよ、今度の法律では……。指定にも取り消しがあるんですよ。両方とも同じように取り消しということが与えてある。文字は違う。しかも二重の手続が与えられておる。これは非常に保険医諸君が問題にしている重大な問題ですよ。ですから、登録ということと指定ということの区別を明らかにしなければならない。法律の上では、文字は違うけれども、登録にも取り消しがあるんです。指定にも取り消しがあるんです。  たとえその対象は、一方は保険医であり、一方は医療機関と、こうあっても、しからば医療機関でも登録でいいじゃないか、保険医だって指定でいいじゃないか、なぜ保険医を指定ということをやめて登録ということにしたのか、指定と登録とどこに違いがあるのがということを明らかにしなければ、二重指定をやろうという、当局は一向その分別ができないというのじゃ話にならぬ。おおだたいのことはお答え下さって、あとのそれらのいろいろな付随した具体的な点は事務当局いくら御答弁なさってもいい。登録というものと指定というものとその本質をどこが違うのかということをお示しにならにゃいかぬ。
  188. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 指定ということになりますと、いわゆる機関指定でございまして、保険者とそれらの行政庁との間におきまして、それらの機関と保険を取り扱わすという契約をするのでございまして、それで指定という言葉を使っておるのでございます。
  189. 山下義信

    山下義信君 指定と契約は違うでしょう。これは納得できませんよ。それじゃあ私の方から質問しましょう。登録というのも、保険医としての保険診療ができるという身分を確認するんでしょう。登録というのも、指定というのも、これが保険診療ができるのであるというその身分を確認する行為でしょう。同じことじゃないですか、文字は違っておっても。だから、一方は取り消しということがあれば、もう保険診療はできぬのぞよと、こういう。指定の方だって、取り消しがあれば保険診療はできぬのであるぞよと、こういう。一方は保険医というものであり、一方は医療機関であっても、文字は登録と指定と違っておっても、その法的性格は同じじゃないかということをお尋ねしておるのに、違っておるならば違いを言って下さい。あなたの方は違うから二重にするのでしょう。同じものを二重にするばかはありゃしません。同じものなら一本でいいのです。これを二重になさった以上は、登録ということと指定ということで保険診療ができるできないにどこに違いがあるかということをお示し下すったらよい。取り消しということは両方にあるのでしょう。取り消されたらできないのでしょう、診療行為が。その大体のことを一つお答え願っておきたい。
  190. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 山下さんの今の御質問に対しまして、保険局長から答弁させます。
  191. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 保険医療機関としての指定という行為は、ただいま大臣がお答えをいたしましたように、保険診療を担当していただくという行政庁と医療機関との契約でございます。それから登録という問題は、医学上の能力ではございませんで、法律上の能力を付与する行為でございまして、能力と申しまするのは、医学的な能力という意味ではございませんで、法律保険診療に従事していただける能力と、こういうことでございます。これを確認し付与する行為でございます。それで、今山下先生が御指摘のように、片一方は医療機関が保険診療を担当してもらう、そこに資格ができる、登録の方は個人の保険医の方が保険診療に従事していただける資格ができるというような意味で、両方ともその意味で創設的な行為でございます。それからそれを取り消された場合には、指定の取り消しにおきましては、保険医療機関が保険診療というものを担当していただく能力がなくなるということになる、また、登録を取り消した場合には、その個人の方が保険診療に従事していただけなくなると、こういう関係におきましては、先生御指摘のように両方とも同じでございます。ただ私どもといたしましては、機関との関係におきましてはこれは指定といたし、それから個人の保険医の関係におきましてはこれは登録ということにいたしたわけでございます。
  192. 山下義信

    山下義信君 ですからね、私は今保険局長は私の意見と同じだと言いますからこの問題はここにしておきますが、登録というのは言うまでもなく能力を確認するのです。その確認行為に取り消しということがあろうはずはない、法律上。能力がなくなったと、この者は保険医療をする能力がなくなったということならともかくもであるが、私はそれは、一つの確認行為に取り消しということがあるということについては法律上納得しがたい。それで、保険医たる職務を行う種々なる手続上の資格を付与するということならば、私は登録でなくて指定という従来の行き方が、これが先ほど大臣の答弁した契約の意味も入っておるし、指定とは何ぞやということは多年の問題でありますけれども、多少の契約性もその中に内在しておらぬこともない。しかし、能力を確認するという意味では、登録も指定も同じではないかという議論をしたのです。それは私は、そういう点においては登録も指定も同一であって、同じことを繰り返すのだと、ただそれを保険医と医療機関と二つに分けたのは、相手が個人であるのと一つの機関であるのとでは、あなた方の方は同じことを分別をしておるのだ、なぜこういう分別をしたのか、二重指定の目的いかん、二重の指定制を採用した目的はどこにあるのか。
  193. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) お答えいたします。私どもとしましては、今日の医療の実態というものをながめまして、その医療の実態というものは、やはり医療機関として保険診療を担当していただくというふうな実態の方が強うございますので、それをすなおにとらえまして、機関との関係におきまして、保険診療をお願いいたします、よろしい、こういうことで、この保険の診療を担当していただく関係を持つという制度にいたしたのでございます。なお、この制度は他の法律におきましてもとっておる建前でございます。ところが機関の指定一本で参りますると、何と申しますか、必ずしも実態を全部尽しているということには参らない。やはり個人の方々をもつかまえまして、そうしてその方々とも関連づけておく必要がある。なぜならば、今日の医療法等におきましては、医師が診療を行いまする際には、管理者が診療の、個々の診療の具体的な内容までについて、やり方等について指示をするという権限はないものと解されておる。いわゆる個々の医師の診療の独立性と申しまするか、さようなものが医療というものの実態からいたしまして認められておるわけであります。従いましてさようなことでありますると、保険診療の個々の診療行為自体も、保険のルールに従っておやりをいただかなければならないのでございまするので、さような意味合いにおきまして、個人の方にも、何らかの形で保険のルールに従って診療に従事していただくということの御承諾を得ておく必要があるわけでございます。さようなことから申しましても、機関の指定一本ではこれは実態を十分に尽さない。従ってそこに登録という制度を、従来とよく似た制度でございまするが、ただ登録という制度を存置して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  194. 山下義信

    山下義信君 そうしますと、当局は元来保険診療、診療行為は機関本位でやろう、こういう方針ですか、今のお話を聞きますと。それで私は素朴な疑問として言えばですよ。病院は別として、ですから、あなた方が医療の実態がこれから病院本位になっていくのだ、そういうふうな集団診療的な形態にだんだん移っていくのだ、そこでおもに保険診療が行われておるのだ、従ってそういうふうな医療機関本位にこれから対象、重点を振り向けていかなければならぬという考え方も一応道理がありましょう。私どもから見ますと、医師は即診療所です、病院以外は。自分のところが診療所であって、自分が保険医であって、保険医も医療機関も、個人医師の場合においては同一なんです。従って一人の医師が自分の診療所でやるという場合には、これは全く二重になりますね。そうでしょう。ですからあなたの方の目的は、個人の医師が個人の診療所で診療行為をするということでなくて、この二重指定の目的とするところは、かりに病院のような、そういう医療機関を一つの対象にしてみればぴったり当てはまる、こういう形のように見えますね。私の見方が違いますか。さもなければもう一つうがった御質問を申し上げれば、医師が医療機関の開設者、管理者であるならば、ほとんど問題はない。もし開設者、管理者が医師でないような医療機関においては、どうしてもこの二重指定制度にしておかなくては首尾がそろわぬ、こういう見方もできるのですね、あなたの方は。もう一度わかるようにおっしゃって下さい。この二重指定の目的、何をつかまえてどこを主眼にして、この制度にすればどういう利便があるのか、従来にましてどういう特徴があるのかということを、具体的にわかりやすくおっしゃって下さい。あるいはまた端的に、露骨に言えば、取り締りでもよろしい。取り締りに便利がいい、これならね。この取り締りの便利のためにやる。言いかえて言えば、取り消し処分だって何だってぴしぴしとやり得られる便利がある。開設者が違法なことをしても、取り消しができる、病院に働いておるところの、中の保険医が一人違法なことをしても、その機関全部に連帯責任を負わせることもできる、開設者が違法でもできる。どっちにでもできるという取締り上の便宜から……。この二重指定にしたねらいと、どうしてこうしなくちゃならなかったかということを、指定の実態をながめてというのじゃわかりませんから、もっとわかりやすく、この二重指定の目的を、解説して下さい。これはたとえば病院だとか、非医師の開設者、管理者というような場合でないときは、個人の保険医、個人の診療所、個人の保険医即診療所という場合には、それでも二重指定は要りますか。あなたは要ると思いますか。登録と、その機関と、その機関の指定制度と二つ要ると思いますか、もし個人の場合で、個人の診療所でも、この新しいシステムが、二重指定がよろしいということならば、どういうところがよろしいのか、おっしゃって下さい。
  195. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私どもがこの機関の指定と、個人の登録との両方の建前で今回の改正を御審議を願っておりまする目的は、先ほど申し上げたようなことでございます。機関の指定一本でございますると、先ほども申し上げましたように、診療の独立性というふうなこともございまするので、必ずしも実態を全部尽しておらない、かような観点から、私どもといたしましては、先ほど申し上げたように、この指定と登録との関係考えたわけでございます。  しからば、実際上はどういう利便があるかという仰せでございますが、これはまあいろいろございまするけれども、この一、二気のつきました例をあげてみますれば、開設者が、病院のように、まあいろいろ公共的なもの、財団法人というふうなものという場合におきましても、それから開設者が個人で、診療所の場合におきましても、同様でございますが、開設者の責めに帰すべきことでございましても、従来のような保険医の指定ということになりますと、開設者の責めに帰すべきことであっても、その責任は保険医の方に問わなければならないというふうな関係になるわけでございます。さようなことが今回は明らかになると思うのでございます。  なおまた、大きな医療機関等で、あるいは個人の、いや、診療所におきましても同様でございますが、二人以上医師がおられまする場合に、その診療所全体としては、決してさような方向でものを考えているわけではないけれども、ある一人の医師の不適当なる行為のために、まあまずいことが起ったというふうな場合におきましては、機関の指定一本でございますると、その機関の指定の取り消しをしなければならなくなってくる、さようなことは実態にそぐいませんので、その間特定の医師の登録を取り消しをいたしまして、機関の指定というものはそのまま残して参るということもできるわけでございます。しからば、山下先生の、個人開業の場合はどうだという仰せでございまするが、私どもは今日医療法におきまして、医療機関として病院と診療所というものとは同じような取扱い……いやいろいろ取扱いの中身は違いますけれども、医療機関として、病院と診療所というものを認めておるわけでございます。しかも診療所におきましても、二人以上医師のおいでになる診療所もありますれば、一人の診療所もあるわけでございます。さようなものを医療法は特別に区別をいたしておりません。従いまして、私どもといたしましては、個人の開業の診療所も、医療法の建前と同じように診療所、二人以上おられる診療所と区別することなく、あるいは無床の診療所でありましても有床診療所と区別することなく、同じような法律上の取扱いにいたしたわけでございます。もしそういたしませんと、二人以上おるところでは、それは機関指定だ、一人のところではそれは個人指定だということになりますと、代診の先生をお雇いになったときには、またそこで指定の切りかえというものをやってゆかなければなりません。二重指定、二重指定といわれておりますけれども、ただいま御審議願っておりまする建前は、機関の指定と個人の登録でございます。むしろ機関の指定と個人の指定と二つ並びますると、いわゆる二つの指定というものが出て参るわけでございます。個人で、一人で開業なさっておいでになるところがまた新たな医師を雇い入れたときは、これはまた一つ指定のやりかえをしなければならぬというふうなことでございましてもいかがかと存じまして、医療法の建前等も勘案をいたしまして、法律上御審議をいただいておるような形に私どもとしては整理をいたした次第でございます。
  196. 山下義信

    山下義信君 いろいろこれには問題があると思いますが、これは保留しておきましょう。  一つだけ私がきょうの最後に伺うのは、指定に期間を設けましたね。政府原案は二年、衆議院は三年、その期間を設けた理由はどういう……何のために期間を設けたのか。
  197. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 指定と申しまするのは、先ほど申し上げましたように、行政庁と医療機関との、保険診療をお願いします、よしきたという関係を結ぶ契約と私どもは解しておりますので、契約には約定期間があるのが普通であるという意味で、期間を設けた次第でございます。
  198. 山下義信

    山下義信君 この指定には取り消しがあるじゃありませんか。取り消し処分があるのに期間を置く必要はどういうわけであるか、契約がいつでも取り消そうと思ったら、あなたの方で取り消すことができるじゃありませんか。
  199. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 医療機関の指定には取り消しということがございます。しかしながら、これはその法律案でごらんをいただきますように、勝手に取り消しができるのではございません。いろいろと制約があるわけでございます。なおまた、先ほど私が申し上げました御説明にさらにつけ加えまして、私どもが指定に期間を設けました理由一つといたしましては、医療機関というものを押えておりまするので、その医療機関の同一性というものは、これは保持してゆきませんと、最初指定をいたしましたときと非常に事情が変ってきたというふうな場合も考え得るわけでございます。例をあげて申しますれば、そこに勤務しておられるお医者様の方々のほとんどが保険医ではなくなったという場合も考えられるわけでございます。さような人が変りましたり、いろいろいたしまして、そういうふうな場合も考えられるわけでございまして、機関との関係ということになりますると、事情が年がたつに従って変更をして参ります。従いまして、一定の期間をつけまして、そうしてさらにその際にまた新しく一つ契約を更新するとか、あるいはもう向うがいやだとおっしゃる場合もあるでございましょう。新しい関係を結んで参るということの方が妥当ではあるまいか、かような見解に立っておるわけでございます。
  200. 山下義信

    山下義信君 わかりました。指定に期間をつける、二年、三年に限る、悪いことをしたら、違法のことがあったら取り消すことができるのですから、つまり契約途中でやめることができるのですから、悪いことがあっても、何も指定期間中じっと二年過ぎなければ処分せぬというのじゃないのですから、ですからいつでも契約解除、すなわち指定の取り消しということができるのだから、期間というものをおかなくてもいいだろうと、悪いことをしたときのことを考えると不必要のように思う。ところが政府の今の御説明によると、いや、そういう場合だけではない。いわゆる善良な指定医の場合でも、期間がきたらば、情勢の変化によっては更新する場合がある。その目的に期間を設けた。交代させる場合がある。これははっきりしています。その目的ならその目的で一応はっきりする。それで期間がきたらば、これは不適当だから、これは不都合だから再び再指定をせぬというような場合を半分考えると、それは取り消しということがあるのですから、何も期間の満了を待たなくてもいいように思いますが、そういう違法のことをしなくても、不法なことをしなくても、正常なことをやっておっても、諸情勢の変化によってはあるいはこの指定期間というものは、一部であろうと、あるいは多数であろうと、そのときの政府考え方によっては更新する場合がある。そういう目的で期間が定めてあるということならば、その理由は、可否はともかくとして、目的はわかります。それに指定をするのに指定は契約の意味だというお言葉があったのですが、政府はその解釈、方針ならそれでよろしいが、その指定にはこの法律に基準がないが、どういうわけですか。こういう基準のものに合致した医療機関には指定する、あるいはこういう基準で指定の選考をするのだという基準が示してないのはどういうわけですか。(「官僚独善だよ」と呼ぶ者あり)
  201. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 指定の条件というものは設けておりませんが、勝手に行政庁が官僚独善でどうこういたすというふうなつもりはさらさらございません。それは法律の条文にも表われておりまするが、機関指定を行政庁が拒みまする場合には、他のいろいろな場合と違いまして、医療協議会の議によるということになっておりまして、諮問とはこれは違いまして、医療審議会で拒むことはならぬときめられましたならば、行政庁はそれに反してそれを拒んだりすることはできないような法律の条文になっております。さような点で、私どもといたしましては、機関の指定につきまして、役所側が勝手にどうこういたすというふうなつもりはないのでございます。
  202. 山下義信

    山下義信君 それであの指定の拒否をしますね、指定しないという拒否をしますね、法律によりますとね。そうすると、その拒否に不服があったらば、不服の申し立てはできますか。
  203. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) この点につきましては、別にこの健康保険法の中で、不服処理の手続は設けてございません。
  204. 山下義信

    山下義信君 それで伺わなければなりませんが、書いてないですね。そうすると、指定の拒否を受けた医師は、その拒否が不法な拒否であるということはどうして、何を基準に言うことができましょかね。あなたの方には指定する基準がない。従って指定拒否の基準もない。そういうことならば、その指定拒否が不法である、違法であるということは言えませんね。拒否された方の側では、そんなら行政訴訟でもせい、何でもせいといっても、あなた、基準があるならば、その政府の指定拒否はこの基準に反しておる、この基準に反して指定拒否をしたということの、その不服申し立ての事由が立証ができますが、あなたの方で基準を設けておかれぬことになれば、指定拒否を受けた場合の、その医師の不服の申し立ては、何をもとに言い立てたらいいでしょうか。
  205. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 指定の基準というものは、その指定というものが法律上私どもは契約と考えておりまするので、特別な基準は設けておりません。ただ先ほど来、それでは非常に片手落ちな関係ではないかという仰せでございまするが、この法律関係をよく御検討いただきますると、医療機関の方では、自分でやめたかったらいつでもやめられる、一カ月のあれでございますか、予告期間を設けて届け出があればいつでもやめられるということになっているわけです。いつでもその関係は解消できる、ところが、この行政庁側におきましては、その解消というものは、途中、契約期間内における解消というものは、これは何か悪いことがあって、しかも四十三条の十二でございますか、こういうそれぞれの条項に当った場合でなければ、その関係を免かれることはできない。しかも、その取り消しという行為も、医療協議会というふうなものに諮問をいたしてやる、こういうふうに、この行政庁の方はいろいろ縛られているわけです。相手方は全然縛られておりません。しかもまた、指定の更新のときには、その指定を拒む場合には、行政庁が拒む場合には、先ほど申し上げましたように、医療協議会の議による、諮問でなく議による、ここまで縛られておるわけであります。さようなことから言いますれば、私は決して私どもの言うことが官僚独善であるというふうな意図でないことは御了承いただけるものと考えております。
  206. 山下義信

    山下義信君 私はこれできょうのところはやめます。あと保留しますが、今の保険局長の言い分は、保険医になろうとなるまいと、それはお前さんの自由だ。だから断ったからといって不服を言う必要はないじゃないかということと同じだ。そういうことを言っておる。そういうことを私はただその法律の不備を弁護するいわゆるこれが詭弁で、この保険指定医制というものを設けておいて、そうしてその指定が拒否せられた、その社会的な信用や、それらの損害なんというものを全然考慮しない、保険医になるかならぬかはお前さんの方の自由意思にまかせてある建前になっているから、指定を拒否したって、そんなことをぶつぶつ言う必要はない。だから申し立ての道も開いてなければ基準なんか設けてないから、拒否の処分が違法であるという申し立てをする形はなくても文句を言うことはないじゃないかというのと同じであって、私はこういうのは納得しがたい。あとは保留します。
  207. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連して一つ聞きますが、お医者さんは国家試験でとにかく医師の資格を取って、これで生活をちゃんとやっていく権利を得ているわけですね。ところが、今度は厚生省の方針でも、とにかく国民は皆健康保険に入るようにしようという方針なんでしょう。皆保険にしようという方針。そういうときに、あなたたちの言うような取り消しなどということをするならば、お医者さんの生活権というものは脅かされることになるのじゃないのですか。どうなんですか。これは人権問題ですよ。そこをどういうふうに考えているか……。
  208. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) お医者様は医師の免許状を持って医療に従事なさるという資格があるわけでございますから、その方個人につきましては、私どもの方は登録という制度で、これはどういう方であっても法律上登録をいたすという建前になっております。しかも、それは無期限でございます。それで今のお話に出ておりまする問題は、医療機関の問題、医療機関はこれはあるいはいろいろな種類の医療機関がありまして、まあたとえば例をあげますれば、自分の組合の組合員である者だけを診療しようという医療機関もございますし、あるいは、たとえばあるところに、職場に働いている人の診療をしようという医療機関もございます。しかしながら、ここで申しまする指定医療機関と申しまするのは、さような限定をされたものでなくして、だれでもそこで診療をしていただくという、まあ相手方からいえば義務を課せられるわけでございます。従いまして、医療機関という問題になりますると、今のような関係もございまするので、別にその指定の条件というものを設けなかったからといって、法律上の条件というものを設けなかったからといって、医師の生活権を脅かすものであるというふうには私ども考えておりません。
  209. 相馬助治

    相馬助治君 今高田保険局長の答弁は、事務当局としてはこういうふうに法律を読むのだということをたんたんと言っておいでになる。話の筋は通っているように一見聞える。しかし具体的な問題としてはそういうふうに冷酷な言い方をしてはならぬと思う。  大臣にお尋ねしますが、大臣、ものにたとえてみると、ある人間がおれは人間だから食う自由を持っているのだ、こう言うたところが、これに返事して、お前には食う自由を与えたいと思ったけれども、いろいろ考えてなかなか与えられないから、しかし全然自由を剥奪はしないのだ、お前には死ぬ自由を与えるから死んじまいなさいというのにひとしいと思う。また、この取り消された医者は、取り消されるに値する厚生省側から言えば理由があると思う。しかしながら、その医者はどこかの機関に何らかの方法で、自分が取り消されたことは不服であるというところの訴える道が許されていなければならない。今は刑事被告人ですら、これは法の示すところによって上告し得る道がはっきりと許されている。こういうふうに不利益処分に対する上訴の道が閉されているということについては、私どもは不可解だ。大臣どうですか。これは政治問題として……。
  210. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今の相馬さんの御質問でございますが、事務当局からも御答弁申し上げておりますが、なおこの機関の指定を取り消すというような場合におきましては、その都道府県におきまする医師会と十分に相談をいたしまして、そうしてその問題をきめた上で地方の医療協議会へかけてきめるのでございまするから、決してその医療機関自体の権利を……。
  211. 相馬助治

    相馬助治君 どこにこの法律に書いてありますか、医師会と相談するとどこに書いてある、おれが読んだんじゃ書いてない、どこに書いてある。第何条に書いてある、はっきり……
  212. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 法律には明記してはございませんけれども、(「なぜ明記しない」と呼ぶ者あり)行政の運営の方針といたしまして、それは衆議院の委員会等におきましても、そういう問題については私からも答弁しておりますが、通牒その他の方法によりましてそういうふうにいたしたいと、こういう意味であります。
  213. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると何ですか、法的根拠のないことを、省令ないしは通牒によって出すというのですか、それは私どもが主張していることからいえば、そういう省令触り、通牒を出していただくことはありがたい、しかしわれわれは選ばれて立法府にある者として、法律が規定した以上のものを省令や通牒で出す、そういう厚生省の態度には賛成しがたい、どういうことですか、それは。
  214. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 法律にはただいま御審議を願っておるようなことでお願いをいたしておりまするが、その運営につきましては、こまかい運営につきましては、ただいま私が申し上げておるようなことによって運営をして参りたい、こういうふうに考えております。
  215. 須藤五郎

    須藤五郎君 僕ははなはだ不満だと思うのですがね。お医者さんにしろ、医療機関にしろ、だれでも今日全部の国民が、ほとんどの国民が健康保険に入っている場合、そういう場合になったらそれを離れて生活ができなくなるのは当然です。ところがだれでも、お医者さんにしろ、だれでも生活していく権利があるのだから、それを取り消すなどということは、これは生活権を脅かすことです。機関だからいいと言うけれども、その機関が取り消されたら、そこに働いている人たちは生活をすることができなくなる。こういうことをするということは、はなはだ私は厚生省の考えとして納得のいかぬ考えです。小林大臣はいつか埼玉県でこういう発言をしていらっしゃるようです。これは公けの席上であったか、私的な発言であったかは知らないが、今度のこの取り消しの問題は、左翼的な考えを持って、思想を持っているお医者さんたちに対する政策である。だから一般の人には何ら関係がないんだと言って、一般の人に話したということが私たちの耳に入っている。もしもそれがほんとうならばあなたは憲法違反です。どうなんです。
  216. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今須藤委員のおっしゃったようなことにつきましては、私は関知しておりません。
  217. 須藤五郎

    須藤五郎君 それならば、そういうことを絶対にしないか……。
  218. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) 今、後段の御質問はどういう御質問ですか。
  219. 須藤五郎

    須藤五郎君 そういう考えは持ってないし、そういうことは絶対ないということがはっきり言明できますね。
  220. 小林英三

    国務大臣(小林英三君) お説の通りであります。
  221. 須藤五郎

    須藤五郎君 きょうはそのくらいにしておきましょう。
  222. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  委員会は散会いたします。    午後五時三十四分散会