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1956-05-17 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十七日(木曜日)    午前十時五十分開会     —————————————   委員異動 五月十六日委員池田宇右衞門君、長谷 山行毅君及び菊川孝夫辞任につき、 その補欠として紅露みつ君、榊原亨君 及び藤原道子君を議長において指名し た。 本日委員藤原道子辞任につき、その 補欠として小林亦治君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    理事            山下 義信君            高野 一夫君            谷口弥三郎君    委員            加藤 武徳君            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            深川タマヱ君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            田村 文吉君   政府委員    厚生政務次官  山下 春江君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁巳君   説明員    厚生省薬務局細    菌製剤課長   加藤 英市君     —————————————   本日の会議に付した案件健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○社会保障制度に関する調査の件  (ペニシリン禍に関する件)     —————————————
  2. 山下義信

    理事山下義信君) これより社会労働委員会を開会いたします。  委員異動報告いたします。  五月十六日付池田宇右衞門辞任紅露みつ選任、同日付長谷山行毅辞任榊原亨選任、同日付菊川孝夫辞任藤原道子選任。     —————————————
  3. 山下義信

    理事山下義信君) この際お諮りいたします。田村委員からペニシリン禍の問題につきまして、緊急質疑をいたしたいとの申し出がございます。案件に追加いたしまして、社会保障制度に関する調査の一環として、ペニシリン禍に関する件を議題とすることに御異議こざいませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないと認めます。  ペニシリン禍に関する件を議題といたします。田村委員から質疑をお願いいたします。
  5. 田村文吉

    田村文吉君 最近に起りました非常に不幸なことであったと思うのですが、尾高大学教授が歯の治療を受けておりまする際に、ペニシリン中毒のために頓死をされたということが新聞に伝わっておりました。まことにお気の毒にたえないことでございまするが、新聞紙の伝うるところによりましても、また私のさきに聞いておりましたところによりましても、この問題は今度がむろん初めてではないのでありまして、しばしばかような問題が起ってきているということでございます。  そこで原因のわかっていることで百人の人が死んだ場合には、これは一つただすべき方法考えられるのでございまするが、原因がわからないで一人の人が死んだということでも、これはなかなか重大なる問題であると考えますので、この原因をできるだけ早く究明をいたしまして、しかもそれに対する善後処置というものを考えなくちゃならないというふうに考えます。  かような意味におきまして、きょうは政務次官もお見えになっておりますので、大体の経過及びこまかい対策についてはそれぞれの政府委員から御説明をいただくといたしまして、この問題に対しては大体どういうふうに善処されようとするか、お考えのほどをまず伺いたいと思います。
  6. 山下春江

    政府委員山下春江君) 非常に不幸な事件でございますが、非常にむずかしい問題でございまして、私ごときしろうとにはちょっとこれは扱いかねておりますけれども、しかしながら厚生省といたしましては、早くからこの問題を非常に重大視いたしまして、厚生省科学研究費研究保留分を使いまして、この問題について発生頻度、あるいは発生頻度調査、あるいは予防方法研究等を行なっておりますし、本年度におきましては同じ厚生省科学研究費を使いまして、全国的な調査を行い、それからまた、過去数年間にわたって研究されてきました文部省科学研究費による抗生物質の副作用に関する研究という研究がなされておりましたが、それの成果を基礎といたしまして、予防方法につきまして、できるだけ早く結論を出しまして、こういう問題が発生いたさないように努力をいたしたいということで今鋭意努力中でございまして、まだ結論を申し上げる段階に至っておりませんけれども、重大な問題として研究いたしておるところでございます。
  7. 田村文吉

    田村文吉君 これは当該政府委員からの御答弁でけっこうでございまするが、ペニシリン禍によっていわゆるショック死を受けたという例がずいぶんあるようでございまするが、日本におきましては、どのくらいの人がこのために死んでいるかという統計がございまするかどうか、外国における文献はどんなふうになっておりましょうか、この際説明を承わりたいと思います。
  8. 森本潔

    政府委員森本潔君) ただいまお尋ねになりましたペニシリンアナフィラキシーショックによりますところの死亡の実数でございますが、これは実を申しますと、正確なものはございませんのでありまして、この問題のショック死は、わが国に限らずどこの国におきましてもこの事実は発生いたしておりますが、全面的な調査というものはどこの国においてもまだ行われておりません。ただ断片的な若干の調査が出ておる状況でございます。  それで一、二の例を申し上げますと、アメリカにおきましての例でございますが、最初ショック死に至らずにアレルギー症状を起す場合でございます。アメリカ調査によりますと、ペニシリンアレルギーを起す場合が大体五ないし七%ぐらいあるだろうというような文献報告がございます。それからわが国鳥居教授調査によりますと二・九%のアレルギー症状を起す場合があるというように出ております。それからアレルギー症状以上に進みまして、今お話の出ましたアナフィラキシー状況でございます。重い方の状況でございます。これはアメリカ調査によりますと〇・一%という数字が出ております。それからこれもアメリカ数字でございますが、非常に違うのでありますけれども〇・五%という調査報告が出ております。それからわが国におきまして先ほども申しました鳥居教授調査結果によりますと〇・〇七%という数字でございます。そうして今申しましたアナフィラキシー症状を起して、そのうちで死んだ者がどれだけあるかという数字でございます。これも断片的な調査しかないのでございまして、アメリカ調査によりますと八十八のアナフィラキシー症状を起しまして、そのうち死亡した者が二十五例あるという一つ報告が出ております。これが非常に高うございます。それからわが国の北海道において調査いたしましたところによりますと、これは五十六のアナフィラキシー症例におきまして二例が死亡している。五十六例中二例が死亡いたしている、かような数字でございます。  それで、全部個々調査報告を申し上げましたが、ただいま申しましたように、それぞれの報告によりまして非常な差がございます。でございますので、全般的にペニシリン注射してアナフィラキシー症状を起すのは何%あるか、さらにそのうちに死亡するものは何%あるかというまとまったことを申し上げるのは少し日を持ち合しておりませんので、ただいま申しましたような数個の報告がある程度でございます。  それからこれも一つ推定の材料になるのじゃないかと思うのでございます。あくまで推定でございますが、別の面から見まして、昨年度におきましてわが国におきますところのペニシリン製造数量が五十三兆億単位生産量になっております。おおむねこれは消費されたものと考えます。これも非常に危ない推定でございますけれども、かりに一回に三十万単位注射をいたしますと、注射回数が約一千六百万回数あるだろうと存じます。そして同一人がかりに二回打つといたしますと、八百八十万人の人がペニシリン注射をしておるのではないかという数字でありまして、これが一つ推定数字でございます。それに呼応しましてこれを打った場合にどれだけ死んだろうかという数字、もちろん推定でございます。これもあくまで一つの例でございまして推定でございますが、東京監察医務院死体解剖——疑わしい死亡について死体解剖いたします。その結果二十八年にペニシリンショック死によるものが一例、それから昭和二十九年には四例、それから昭和三十年には五例というふうに出ております。一応はっきりいたしておりますのは、今いった東京都の監察医務院の結果でございます。これから言えますことは、東京都におきましては大体年間に四、五例こういう例が大がいあるのではないか。これも大ざっぱな推定になりますが、この東京都の推定全国のおよそ一割というような考え方をいたしますと全国で四、五十例があったのではないか。まあかような推定もできるのではないかと思います。  なお、そのほかに監察医務院以外で取り扱ったものも若干あると思われますので、年間で四、五十例、あるいは百例近いショック死があったのではないか。かような推定を一応いたしておりますが、正確な調査ではございませんので、個々の断片的な報告例をまとめて申し上げた次第でございます。
  9. 田村文吉

    田村文吉君 ペニシリンが人類に与えた非常な功績については私も疑わないものでございますが、ただ私どものようなしろうととして考えてくるときに、何でも問題を特異体質というようなことでお医者さんも片づけてしまい、学会もそういうふうに結論をもっていかれるという前に、もう少し検討される問題が残っているのではないかと、こういうことをしろうとはまず考えるのです。たとえばできているペニシリンというものは——日本で何社あるか知りませんが、そのペニシリンというものは絶対その品質においては同じものであるか、不純なものはないのかどうか、あるいはもうペニシリン自体にさような毒素を必ず持っているものなのか、持っていないものなのか、こういう点がまず疑われる点なんです。  それからできたペニシリンというものを研究所試験をなさるわけでありますが、その試験の場合において試験が完全に行われているだろうかどうか、こういうようなことをまず疑うわけであります。  それからある日数をたったものが変質をするようなことはないものであるか。まあ最近でございますなら腐敗という言葉は適当ではございませんが、変質をするようなことがあり得ないものなのかどうか、あるいは温度の調整というようなものがもっとやかましく論じられるべき性質のものではなかろうか、こういうような点について私どもはたとえ一年間に四十人でも五十人でもこのために死ぬ人があるという不幸は何とかして排除しなければならぬ。こういう点から考えてまず特異体質であるからということで問題をすぐ片づけるという前に、そういうせんさく、詮議は十分になされているだろうか、こういうことを疑うのでありますが、この点についてどうお考えになりますか。
  10. 森本潔

    政府委員森本潔君) このペニシリンショックによります死亡原因として考えられますのは、およそ三つあろうと思うのであります。  一つペニシリン自体が間違いのないものであったかどうか。  それから第二は、使い方が間違っておらなかったかどうか。まあこれはほとんど間違いないと思いますが、こういう場合。  それから患者体質と申しますか、特異な性質と申しますか、その面。およそ三つの面があろうかと考えるのであります。  ただ御質問になります第一のペニシリンそのものが完全であったかどうかという点でございます。このペニシリンショックの問題が起りましてからまず第一に考えられましたのは、今お話のようにペニシリン自体がおかしいのではないかということが問題になりまして、ここ数年間検討されたのであります。最初のうちは何かペニシリンの中に不純物が入っておってそれが作用するのではないかということで検討されました。その結果ペニシリン製造につきましても不純物が完全に除去されるようになりまして、そうして純粋なペニシリンを使うようになったわけでございます。その完全なペニシリンを使いましてもなおこういうショック死を起すことがあるということがわかったわけでございます。それでただいまのところではこのペニシリンの本来の性質といたしまして、その中にアレルギー症状、それから場合によりましてはアナフィラキシー症状を誘発するところの性質ペニシリン自体の中にあるけれども、ただいまのところは除去することができない、こういう一応の結論になっております。そういうアナフィラキシー現象を起すような因子をペニシリンから除去できればいいのでありますが、ただいまのところはそれはできないペニシリン自体性質がそういうものであるというような説になっておるわけであります。それでなおこの点も今後の研究問題でございますが、ただいまの段階ではさような考え方でございます。  それからその次に考えられますのは、そういうような基準で、ペニシリンはそういうものであるとしても、現実に作られたペニシリンへんなものがあるのではないか、こういう問題でございます。これにつきましては現在ペニシリンメーカーは十社ほどございます。そこで作られました製品はいずれも国立予防衛生研究所におきまして国家検定をいたしまして、製品を持って参りまして、もちろん抜き取り検査でございますけれども、それを一々予研で調べまして、これであれば検定基準に合っておって間違いないという証明ができたもののみを使用いたすようにいたしております。  それからその検定基準自体でございます。これは現在国際的に一つのレベルがございまして、わが国のこの検定基準も諸外国検定基準もほとんど同じものでございます。とにかくこれであれば間違いないという各国共通したところの一つ基準でございます。それによって検定いたしております。従いまして現在出ておりますペニシリンにつきましては、国家検定という網を通して出ておるというので一応間違いないと考えられております。  それから自後の市場に出ました後の保管の問題でございますが、これはただいまのところでは室温において冷暗所、冷たくひややかな所に貯蔵するという程度の保管方法になっております。特にやかましいことはございません。おおむねこの保管方法で足りるということになっております。さような方法でいたされておりますので、特別の場合以外にはさようなことはないのではないかと考えております。  それから問題になりましたペニシリンにつきまして調べてみたのでございますが、この製品は本年の三月十九日に国家検定をいたしております。同時に同じロットで五千本ほどのペニシリンが出ております。そのうちの一本が使用されております。国家検定は間違いないということ。それから保管方法についても特にその使用されたペニシリン注射液が悪かったということも考えられないのでございます。それから他の五千本に近い注射液につきましては今のところ格別な事故も起しておりませんので、特に使用いたしましたペニシリンが悪かったということはなかったのではないかと考えております。なお念のために同じロットのものにつきまして、予研において再検査をいたしておるような次第であります。なお今の検査の結果あるいは何かの支障が発見されるかもしれませんが、ただいまのところはペニシリン自体においては間違いなかったのではなかろうかという考え方でございます。
  11. 田村文吉

    田村文吉君 とにかく十万人に一人か、あるいは百万人に一人か知りませんけれども、それに万一あったら大へんだということは国民の皆が考えているということなんだろうと思うのです。そこで今の特異体質という問題で片づけてしまえば、そういう疑問は一応は消せるかもしれないけれども、私どもはそう簡単には考えたくないので、そうするとその今の統計がものを言うのですね。十人のメーカーがあった場合において、そのメーカーのどの人の場合が幾ら作って、幾らの中毒症が出たとか、もっとはっきりとしていくことも一つ方法じゃないかというような、もう少し行政的にこれを監督する必要がある。  それから今お話の中に、五千本ですかお作りになったというのですが、果してその中の一本が特別のものであったかどうかということは、今御調査になっているというお話でございますが、そういう不純のものが五千本の中に一本でもまじるような可能性があるのじゃないかということを私どもはちょっと心配する、そういう点については絶対に間違いないということは御証明できますか。
  12. 森本潔

    政府委員森本潔君) ただいま申しました五千本というのは、同時に製造しまして、それを五千本に小分けするわけでございますが、すなわち同じ過程を経まして作られたものが五千本小分けされる、その中の一本が使用されたのであります。でございますので、一応は五千本のいずれも間違いないとは考えられるのでございますが、しかしそれは万一の場合、その五千本のうちの御使用になりました一本について、ちょっとどういうことがあるか想像できませんけれども、あるいは悪い物が入るということが絶対にないかということは、これはちょっと何とも申し上げかねますが、一応の常識といたしましては、さようなことはなかろうと考えますが、絶対ないかということになりますと、これはちょっと何とも申し上げかねますが、一応はないと考えていいのではないかと思います。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 私はこういうことはいわゆるミステークであってほしいのでして、原因がわからんで、ペニシリンというもの自体にもうそういう毒素を持っているのだから、ある程度のアレルギー体質の人には必ずショックがくるということになると非常に危険なんです、感じ方が。ミステークでこの点の手落ちがあったとか、あるいはこういう点についてもっと厳重に取り締ればこういう災いがなくなるということがわかれば、国民は安心して今後ともペニシリンというものに対してたよるであろうということもあるであろうと思うのですが、この点が今一番初めのお話の中に、ペニシリン自体にどうもそういう毒素があるだろうということに断定されますと、非常に使う人とすれば不安なんです。そういうことははっきりそうおっしゃっていいのですか。
  14. 森本潔

    政府委員森本潔君) 結果的に見ますれば、ただいま先生のお話になったように、ある一本がちょっと悪かった、いいことではございませんけれども、そのために事故が起きたということの方がいいのでございますので、ただいまの学者の方々の御研究の結果によりますと、そうじゃなくして、ペニシリンの中にはさような性質を持っておるものであると、かように一応の研究の結果が出ておるようでございます。なお今後検討の結果別の結論が出るかもしれませんが、ただいまのところでは、ペニシリンそのものがそういう作用を起す性質があるんだということになっておるわけでございます。
  15. 田村文吉

    田村文吉君 くどいようですが、そうするとペニシリンというものは、最近は全く種類一つであって、二種類、三種類はないものですか、その点はどうですか。
  16. 森本潔

    政府委員森本潔君) 加藤説明員から説明さしていただきます。
  17. 加藤英市

    説明員加藤英市君) ペニシリンにおきまして、一がいに言うとペニシリンと普通申しておりますけれども、これにいろいろなペニシリン本体になる化学構造のもとがあるわけでございます。それにいろいろな物質を結合させまして、あるいは、といいますか結合、ほかのペニシリンの基体を母体にして、ただそれにいろいろな物質を結合さして・いわゆるペニシリンというふうな薬ができるのでありまして、たとえて申しますと、その結合する物質によってペニシリンGでありますとか、ペニシリンOでありますとか、あるいはペニシリンKでありますとか、そういうふうないろいろなペニシリンがこまかく分けますと中にあるわけであります。ですけれども、そういうふうなものはいずれも基準がございまして、効力が十分ありかつ無害であるというふうな国家検定を得まして、市販されるようになっておりますから、それによりましてこういうふうなアナフィラキシーのようなショックが起ると、まざっておるものによって起るというふうなことではなくて、やっぱりどうもペニシリンの結合する、したものではなくて、ペニシリンの結合するもとにそういうアナフィラキシーを起すような物質本体があるのではないかというふうに、学者の人は研究の結果申しておられるのであります。
  18. 田村文吉

    田村文吉君 学問的のことをそう詳しく伺っても私自身もわかりませんから……でありまするが、次に臨床上の措置について医務行政としてもっと注意さるべき問題が残っているのではないか、こういうことです。たとえばさっき申し上げました薬の保存方法、それから乱用するために起るんだということをちょっと言われたのですが、あるいは乱用という言葉が当らんかもしれませんが、続用といいますか、多用といいますか、そういうことのために起るということも考えられる、また体質がかようなアレルギー体質の場合には、特殊に注意をして予備的な行為をやって、それから用いるとかいうような点についての大体の行政上の御指導方針というものが立てられないのですか、そういうことは考えられないものか伺いたい。
  19. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 先ほど薬務局の方からいろいろお話も申し上げましたように、このペニシリンアナフィラキシー本体というようなものにつきまして、いろいろまだ学者の間にも最後的な結論が出ておられないようであります。大体考えますれば、かような特異な反応を呈し、不幸な結果が出ておるというようなものにつきましては、体質という問題が非常に重要な問題のようである。いわゆる異常反応を起します特異体質というものがいかようにして生ずるかということになってくるわけであります。考えられますことは、一つは、先天的な素質ということなのでありますが、今のところペニシリンアナフィラキシーについて多くの学者人たち研究の結果によりますと、それも否定はできないのでありますけれども、ある特異な体質を持っておった人たち——すべての人間というわけではないのでありますが、ある人たちに対しては、ペニシリン注射いたしますと、それに対する抗体が後天的にだんだん増加して参る。そうしてある時期をおいて、その後またペニシリン注射いたしましたときに、いわゆる抗原抗体反応というものが起ってくるわけであります。こういうような工合で、むしろペニシリンを使用することが一般に普及して参りますと、後天的にさような不幸な反応を起すものがふえてくるのではなかろうか。むしろそういう場合の方が多いのじゃないかというふうに、今のところさような筋で考えられておるようであります。いずれにいたしましても、ある時期にペニシリン注射いたします場合、そのときの患者体質が異常反能を示すような状況であるかどうかということを察知できますれば、これが不幸な事件を防止できるわけであります。それを検査する方法がありはしないかということで、これが一つ重要なテーマとして検討されておるわけであります。ある程度皮内反応、ごく少量の、あるいは稀薄のペニシリンをさしてみまして、あるいは傷つけたところに塗布いたしてみまして、そしてその反応を見て若干の異常反応が予想されるならば、以後大量のペニシリン注射を避けるというような方法考えられ、それからまたある程度の効果を上げ得るようであります。しかしこの方法だけでもって絶対に災いを避け得るかどうかと申しますと、必ずしもこれで全部避け得られるものとも言い得ない。あるいはまた検査のために用いますきわめて少量なペニシリンのために、非常に強い反応を呈すというようなこともあり得るので、この検査方法が絶対安全だというふうにもいかないというふうなわけで、この点はさらに検討を続けなければならない、かようになっておるのであります。しかし今のような方法にいたしましても、この災いを若干軽減するということだけはできます。今のところお医者さん方も多くの方々はさような方法を心配なときには御採用になっておるようであります。こういうような点について、注意によりましてある程度災いを軽減することはできるのでありますが、今のところ絶対にこれを避けるという方法を発見し得る段階にまでは、遺憾ながらいっておらんというような状況であります。
  20. 高野一夫

    ○高野一夫君 ちょっと関連して。よく医学者が言われているのですが、ペニシリンをしょっちゅう使うというと、体内に抵抗ができる。抵抗の物質ができるのかどうかしりませんが、抵抗ができる。しかもだんだんペニシリンがきかなくなる、こういうことを言われておる。ところが最近、ただいま田村先生から、乱用、多用の弊害がないかというお話がありましたが、ちょっとかぜで熱があってもペニシリンを打つ。私は最近その経験を二回持っておる。旅行先で、昨年非常に発熱いたしました。これはかぜですが、すぐペニシリンを打った。ことしも郷里に帰っていて、かぜをひいて、発熱してすぐペニシリンを打った。かぜくらいですぐペニシリンを打つ。けさの新聞にも出ておりましたが、かぜぐらいにはペニシリンを打たないようにというある医学者の話が出ておりましたけれども、ちょっと熱があればすぐペニシリンを打つ。そのために体内にペニシリンに対する抵抗もできれば、また今度はいよいよペニシリンがなければ困るという病気にかかった場合にペニシリンの効果が薄らぐ。きかなくなる。こういう事実は医師自身よく承知しておられるはずなので、だから今度そういうものの乱用といいますか、多用といいますか、打てばきくんだけれども、何がなんでもペニシリンを打たなければならぬというような一種の新薬の流行気分というものに対して何らか医学会の方で適当な警告を出すとか、あるいは自発的にその辺について開業医諸君が、もっと慎重に、ペニシリン使用について、こういう種類製品の使用について考えられるかどうか、こういう点について何か厚生省医務行政の立場からお考えを願った方がいいのじゃないか。しかもペニシリン製造、発売は厚生省が所管して許可し、それで取り締っておられる。従ってそれを臨床上に使うという場合についても、これは使うのは医師の勝手ではあるけれども、そこに何らか適当な考慮を払って使うように、何か医務行政の立場から措置をとられる方法はないのですか。医学会なら医学会と連繋をとってやっていただくという方法はないものですか。
  21. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 仰せの通り、さような措置は必要だと私ども考えておるのでありまして、ただその方法といたしましては、厚生省から何らかの形式的な御注意をいたす必要があるかどうかということはまだ検討を要すると思うのでありますが、少くとも医師会、歯科医師会等を通じまして、ただいまの御趣旨のような御注意を医師、歯科医師各位にお願いいたしたいというふうには考えておるのであります。それと同時にまた一方におきましては、患者と申しますか、国民と申しますか、こういうような人たちの一般衛生知識といたしましても、何か注射でもしていただかないと早く病気がなおらん、できることならばそれほどいい薬があるのならばぜひさしてもらいたいというような御希望と申しますか、そういうような気分もあるのでありまして、もちろんこれはさような患者の意向ということにはかかわらず、医師、歯科医師の独自の判断で治療は行われるのでありますけれども、この医師、歯科医師の方々に御注意を願うとともに、また一般国民の衛生知識としても、さような事情をよく普及さして参るという必要があるかと考えておる次第であります。
  22. 相馬助治

    ○相馬助治君 田村委員の質問に関連して、高野委員から医務行政上の当局の考え方をお尋ねしたようですが、私は薬務局長がいらっしゃっておるので、薬務局長に同断の意味の質問をして御見解を承わっておきたいと思うのです。今度のペニシリン禍の問題は特異体質だということに一応なって、大かたこれを納得しぎみですけれども、しかし結果的に見ますと、私は医者に対する信頼をあの問題で失うという面と、薬というものに対する国民の信頼を失うという面では薬というものに対する国民が信頼を失うという危険性を感ずるというか、この度合の方が強いと思うのです。そこで当局としてはいわゆる日本薬局方の規格に示されたもの、それからそれ以外の許可でもって販売をしているもの、そういうふうなものをあらためて再検討されて種類を少くし、何といいますか、厳重に再調整をする必要があるんじゃないか。これは法律二百四十五号の施行に伴う処方せんの問題とも連関をしてくると思うんですね。ですからそういうふうなことを現に考えているかどうかということ。それから健康保険の薬価基準表を見ると、三千種も薬があがっている。これは実にお医者さんも迷惑だと思うんです。それから薬剤師も非常に迷惑だと思うんです。この医者と薬剤師の迷惑は、国民にとって迷惑であり、医薬分業というものがうまくいかない原因をなすと思うんですが、今度のペニシリン禍に連関して、薬務行政厚生省が何か考えている面があるかどうか、これが第一点。  第二点は、ペニシリンのようなものは、貯蔵方法というものがかなり問題だと私は思うんです。ところが薬剤師が金融を策する場合に、非常に今困難な立場に置かれている。それは御承知のように、医薬分業に伴って薬剤師も何とか店の整備をしたいという念がしきりなものがありますが、中金の方に頼みにいっても、金融公庫の方に頼みにいっても、非常に困難なところに置かれている。厚生省の方からの何か通達では、そういう政府資金を使うことについては上の方で了解がついているから、借りてそうして整備をしろと、こう言っているが、さて薬屋の主人が中金や国民金融公庫へ行くと、なかなか向うじゃいい顔をして貸してよこさない、こういう問題があるんですが、この種の薬の貯蔵の問題に関連して、薬局整備の関係上の金融問題等について、どういうふうに現実を把握し、将来どうしようとされているのか、この二点を簡単でいいですから見解を承わりたいと思います。
  23. 森本潔

    政府委員森本潔君) 第一のお尋ねの薬品の種類、数を制限してはどうかという御意見でありました。ただいまのところさような考えはいたしておりませんです。薬局法に収載されるもの、あるいは個々に審査をして許可いたすものにいたしましても、これはいずれもそれぞれの効能を認めているものでございますから、無害有効という基準で審査をいたしております。それでございますから、薬の種類、数が多くて、これがために医療上困るということはなくして、これは多々ますます弁ずという患者あるいは医師の立場になるのじゃないか。そういう意味からいたしまして、一般的に薬の種類、数を制限するという考え方はとっておりません。ただし保険等で使用されまする薬につきましては、これはただいまお話のように別途検討する必要があろうかと考えておりまして、これは検討いたしております。  それから第二番目の、薬品の整備あるいは保存等に関連いたしまして、薬局の金融のお尋ねがございました。これにつきましては、今回医薬分業等の法律も適用されましたので、ことに保険等をやります場合には、相当の医薬品を整備しなければならないという事情がございます。それでこの関係の省と相談をいたしまして、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫と話をいたしまして、今回の医薬分業実施に伴って相当数の医薬品の整備が薬局において必要であるから、それの金融方について相談をいたしまして、一定の条件で融資をしてもらえるように中央で話をいたしまして、これにつきまして地方の方でそれぞれの出先機関と話をいたして借りるようにいたしております。なお、そのほかに薬剤師協会等におかれましても、一般の市中銀行から融資を受ける方法もおきめになりましてやっております。三つの方法でやっておりますが、これは何と申しましても貸す方と借りる方でございまして、その両者の関係が契約でございますので、それがうまく成立しなければならぬという前提がございますが、ただいま各地の状況を聞いておりますと、その折衝が済んでうまくいっているところもございます。まだ話し合いの途中のところもございますが、それぞれ順調に進みつつあるように聞いております。何分最初のことでございますので、同時に全部がうまくいくというようなことは考えておりませんが、だんだんさような道が開けて参る、かように考えております。
  24. 相馬助治

    ○相馬助治君 局長の話わかりますし、そういう適切な措置を当局自身が打っていることも承知しておるのです。で、政府資金関係については、大きなトラブルめいたものはなくて、逐次よくなっていることも私は知っているのです。ところが薬剤師協会と市中銀行との取引は、今申しましたように貸す者と貸される者の関係ですから、薬剤師協会と市中銀行との置かれている立場等から、必ずしもあなたが楽観しているようにはうまくいっておりません。具体的に申しますと、栃木県なんかではまだ全くうまくいっていない、しかもこれは銀行側が悪い、薬剤師協会が悪いというよりも銀行側が悪い、もっと金のもうかりそうなところへ金を貸すという傾向がある、従いまして当局は善意をもっていよいよ努力されますように特段に希望しておきます。
  25. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 薬務局長にお伺いいたしますが、ペニシリン製造いたしまして、検定して販売するという場合には、抜き取り検査とかいうような方法で検定いたしておりますが、その後におきまして、あるいは温度などの関係でいろいろと変化をする場合が多いことは十分御承知の通りだと思います。従ってアメリカあたりでも、温度が一度高くなった場合があったら、それはもう使わせぬようにまでしておるというようなこともあるようでございますから、何か再検定をするような規定がありますでしょうか、あるいは製造後何年たっても、それは一度検定したらそのままで販売させておるのでございましょうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  26. 森本潔

    政府委員森本潔君) 検定に合格いたしまして市場に出ましたものにつきましては、一般的に再検定するということはございません。ペニシリンにつきましては保存の方法、それから有効期限というものがきまっておりまして、その有効期限内に所定の保管方法でやっておれば、効力は減退しない、有害にならないという考えでございます。  さて、これが流通過程におきまして、たとえば薬局でありますとか、あるいは卸の関係、あるいはさらに医療機関等に行きました場合に、保管方法が適切でないとか、あるいは有効期限後のものを置いておくというような場合が一応考えられますが、これにつきましては薬事監視の方法によりまして、監視員が出向きまして、ときどき所要のものを抜き取り検査をする、それによって不良品があるか、有効期限後のものはないかという調べをいたしておる次第でございます。ですから行政措置としましては、ときどきの抜き取り検査をやって監視をしておる、あとはそれぞれの医療機関あるいは医薬品の関係者におきまして、所定の方法保管をしてもらう、こういう方法でございます。
  27. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 次に、医務局長にお伺いいたしますが、とにかく最近ではペニシリンがかなり乱用されておるし、またペニシリンをたとい注射でなく内服でも、あるいは膏薬、点眼とかいうような場合のペニシリン応用でも、かなりそのために抗体現象が起きておるというので、医者の方面では注射をする場合に、必ず、まず初めごく小量のものをさして、それから一応経過を見て、そうして別にアレルギー反応とかあるいはアナフィラキシー反応が起らぬ場合に、続いてやるというふうなことは大てい良識のある医者はやっておると思いますが、しかし私どもはときどき方々で聞きますというと、いろいろの方面の方が使用に対して間違った方法で使用するという場合もあるようでございますが、医務局としては何かこういうふうな方面に対して特別に御注意されたことがございますでしょうか。あるいはまあ医師会などもいろいろとやっておるところでこれでけっこうというところでおいておるでしょうか。その点を一つ……。
  28. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 御承知のように医師法の規定のうちに公衆衛生上、広義の意味でありますが、いろいろな危害を生ずるおそれがあるというような場合には、厚生大臣がこの医師、歯科医師の業務について指示をすることができるというようなことになっておりまして、例の輸血の場合の注意というようなものは、これに基いてこの取りきめが出ておるわけであります。これと同じような意味で、ペニシリンを用いますときの使用上の注意というようなものを出したことがあるかという御質問に対しましては、今までのところはまだ出してはおりません。しかしながらこの事故が最近ふえてもおるようでありますし、またこの内容がだんだんと、ややわかりかかってもおります。こういうようなことについて何か御注意申し上げる方がいいのじゃないかということは、私どもも今検討いたしておるのでありますが、しかしこれもただいま谷口委員から仰せられましたように、ある程度お医者様方、歯科医師の方々大体御存じのところなのでありまして、特にこちらから文書のようなもので差し上げる必要があるかどうか、実質的にいろいろ御相談申し上げて皆さん方の御注意を喚起するというような方法で足りるのではないか。またはっきりとした形で厚生省から出しますとしては、今日までの研究が果してしっかり固まった段階まで来ておると見られるかどうかというような点につきましては、いましばらく私ども検討さしていただきたいと、かように考えております。
  29. 田村文吉

    田村文吉君 私は最後に結論的に政務次官にお尋ね申し上げ、かつ希望を申し上げたいのでございますが、ちょうど混雑の中で足を踏まれた場合に、お前はその足を出していたからいけないのだと、こういうようなたとえ話のように、お前は特異体質を持っているのだからいけないので、薬自体はいいのだと、こういうような解釈で年々五十人、六十人の人が死ぬということ、特に今度のような非常に有為な大学教授がなくなったというようなことは、私どもはどうも割り切れない感じがするのですね。それで私は第一にこれに対する研究というものは新聞で承わりますと、一年十万円をお出しになったというようなお話でございまするが、世界的にこの問題が研究されておりますことであるならば、日本こそかようなことについては、学界も、お医者さんもほんとうに力をあげて一日も早くこういう問題について解決すべく努力をしなければならない。また政府もこれに対してどこまでも日本の名誉のためにも、医学界の名誉のためにもやらなければならぬ、援助してやらなければならない、こういうふうに私は考えるのでございますので、もしかような点について特に御研究になっておる方が四・五人おありということも聞いておりますが、なおさらに範囲を広めて、こういう問題はどうか一つ足を出したから踏まれた、お前が足を出したのが悪いというような考え方では、問題を一つ私は解決したくない、こういうふうに考えますが、在来ややもすると、すべてお前は特異体質だ、特異体質だというが、特異体質に合うような薬を考えたらいい。もしそういう医学かあるいは薬学が足りないならば、まさしく人類に仕合せをもたらしたが、同時にまた不幸をもたらすということを考えなければならない。こういう意味におきまして、私は政府のこれに対する善処方を第一に要望したい。  第二には、いよいよこれが臨床の場合になりますると、今谷口委員からお話もございましたように、私どもペニシリンがそもそも初め出た時分には、これは冷凍して運搬しなければならぬというくらいにやかましく言われておったのでございまするが、今日は室内において普通に冷やす程度のものであればよろしいのだというふうになるのだそうでありますが、何かしら五十三兆もの単位が使われているこの薬に対して、いかにもこういういわゆる霊薬と申しますか、特効薬と申しますか、こういう薬が必ずまた毒を伴うことがあり得るのでありますから、こういうものに対する扱い方、考え方というものが、少しく全般に疎漏になってきているのではないか、こういうことを考えますので、政府の検査先ほどから二度もお繰り返しになって、政府は検査するのだからというのでありますが、私はその検査自体にも非常に疑念を抱かざるを得ない。同時に私らは、販売されてきてからの容態がどう変化してきているかということについて非常に疑念なきを得ないのでございます。またこれが使用に当りましてみなお医者さんは良心を持っているのだから、そういう心配がないとおっしゃるけれども、すでに五十人からの人が一年に死んでいるとすれば、これは私は重大なる問題であると思いますので、こういう問題の扱い方については全知全能を傾けた点において判断をお下しになって、医務局長さんからは十分そういうことについて至急これを決定するようになさるべきである、こう私は考えるのでありますが、以上のような処置がなされなければならないが、まず何よりも日本の学界の名誉のためにも、今日こういうことで貴重な人を失っていくようなことはまことに残念なことであり、不名誉な次第であると私は考えます。どうかこの点について政府も特段のお考えをなすって、御処置をなさるお考えがあるかどうか、これを一つ伺って私の質疑を打ち切りたいと思います。
  30. 山下春江

    政府委員山下春江君) 田村先生のお説まことにごもっともでございまして、こういう事例が起りました以上は、厚生省といたしましても従来やっておりました科学技術研究費がまことに些少でございまして、お説の通りこれは日本が、こういうことこそ日本結論を出すために、全知全能を傾けまして取っ組まなければならない問題だと私も考えます。世界にまだこれに対する確たる結論が出てない今日、これこそ日本がこういう問題に取っ組んで結論を出したいという先生のお考え方は全く同感でございまして、ペニシリン自体研究、あるいは予防方法、あるいは治療の方法等について、根本的な、徹底的な研究を進めるために、ぜひ費用を増額することに努力いたしまして、すみやかにこの問題に取っ組むように進めて参りたいと思っておりますし、思うだけでなく、これは必ずやらねばならないことでございますので、予算措置をいたしまして、お説の通り広範囲な方々の知識を借りまして、結論を出すために努力いたす所存でございます。
  31. 山下義信

    理事山下義信君) 本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  33. 山下義信

    理事山下義信君) この際委員異動報告いたします。五月十七日付藤原道子君が辞任され、小林亦治君が選任されました。     —————————————
  34. 山下義信

    理事山下義信君) 健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  衆議院における修正の点に対する質疑も含めて御質疑願います。ただいま厚生大臣の出席を要求いたしております。
  35. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 昨日に継続して、まだ二、三問題を残しておりますのでお尋ねします。  きょうも衆議院の方の方が見えておりませんので、主として厚生省の当局に向ってお尋ねいたします。一部負担のことに関連して、昨日福島県の須賀川における国立病院においての空床が、約半数にも及んでおるという報告を受けましたので、それの調査をお願いしておるわけでありますが、それに関連しまして、最近の入院患者の傾向としまして、扶養家族の入院者が非常に減っておる。  〔理事山下義信君退席、理事谷口弥三郎君着席〕 あるところではほとんどなくなっておるような病院があります。これも一部負担、半額負担ということの現われの一つである。すなわち医療費がいかにそれを負担する能力が減っておるかということの一例を示すものだと思います。この点について、何か扶養者の入院状況について当局は資料を持っておられますか。被保険者当人でなくて、その扶養家族の入院。
  36. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) もちろん資料がございますのですが、今手元に持って参っておりませんから、適当な機会にお示しいたしたいと思います。
  37. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それがここ数年間減っておるか、ふえておるか、あるいは変らないか、そういう点についてお調べ願いたいと思います。  もう一つの点は、療養所あるいは病院に入院してくるところの患者の最近の傾向として、非常に重病者が多くなっておるということを聞いております。すなわち入院することが困難であるために、制限がきつくなっておるために、自宅で医者にかかり、あるいは自分でその他の方法で治療をして、そして相当重患になって初めて入院するというような傾向が出てきておるのではないかと危惧するわけです。ある国立病院で開いたことでありますが、ほとんど手術できないような患者が入ってくる傾向がふえてきたということでありますが、この点について、当局は何かお聞き及びですか。報告されておりますか。
  38. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 前の御質問に対しましてお答えいたしますが、被扶養者の入院の状況は、今先生が御指摘のようなことでなく、やはりふえております。逐年増加いたしておりますが、三十年度の前年と比べますと、四二%ほどふえております。従いまして、被扶養者におきましても、被保険者本人と同様にふえておるということは申し上げられると思います。  それからただいまの御質問の、入院患者が非常に重態になってから入院するような傾向になってきたという話であるが、そういうことを当局は聞いておるかという御質問でございますが、私ども特にさような傾向が顕著に現われておるということは、私の聞き及びまする範囲内におきましては聞いておりません。医務局長等がもう少し広い医療行政の観点からあるいはお聞き及びになっておるかもしれません。私の関係いたしております範囲では、さような傾向が特に顕著になっておるということは聞いておりません。
  39. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 国立療養所に限定して手術の件数が非常に減っておるという報告を受けておりますが、その点について何か資料がありましたら。
  40. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 手術の件数につきましては、これは月々の報告も参っておりますので、明確にわかります。私ども月によりまして増減はございますけれども、大体の傾向としては特に減少しておるというようなことは今のところないと考えております。数字でございますれば、また別に資料としてお示しいたしたいと思います。
  41. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 ある国立療養所の手術の件数のごときは半分になっておるという資料を私は受けておる。それは人員整理のためにいろいろな条件が重なっておりますけれども、主として重症患者につき添う人員が手不足のため、あるいは非常な、手術ができない容態になって入ってくる患者が相当ふえておるためだというふうに説明されております。この点については、一度手術のごく簡単な傾向というものを一つ見せていただきたい。
  42. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 資料の御要求でございますから後ほどお示しをいたしたいと考えますが、先ほどの御質問の点も重ねて申されましたので、私どもただいま考えておりますことを申し上げますれば、特に重症者の入院が最近ふえてきたのではないかということのお話につきましては、私どもも一部の人たちからどうも最近初期のものと申しますか、手術及び重症のものがふえて、そして何と申しますか、中等度と申しますか、かようなものが減っているんじゃないかというようなことを意見として注意されたことはございます。これも数字に当って見ますればどういう傾向にあるかということがわかるのでありまして、ただいま持ってきておりませんので、これは後ほどお示ししたいと思うのでありますが、ただかような事情がございますので、御承知の通りに、結核病床が若干ずつ空床を生ずると申しますか、増しておるわけであります。かように空床が出て参りますれば、従来はいずれかと申しますれば、ベッドがないために長い間ベッドをふさがれます重症者、慢性の患者というような人たちにはむしろ多少遠慮していただいて、早く手術をするとか、積極的な化学療法が行い得る、治療効果が比較的早く現われるというような人たちに先入っていただいて、まあベッドの回転をはかるというような方針が主になっておったのであります。しかしながら、最近のようにベッドに余裕が——その理由のいかんはともあれ、生じるといたしまするならば、自宅におります新しいまた結核の感染のもとになります開放性の患者、かような人たちをどんどんと収容すべきではなかろうかというような方針をだんだん採用しなければならぬのじゃないかというふうに、かような傾向に動いておりますので、この重症の患者さん方もまあ遠慮なしに、いらっしゃれば私どもの施設としてはどんどんと収容するようにいたしましょうというような方針をとっておりまするので、さような状況から、重症者がふえているというようなことも考えられる、かような事情もからんできておるというふうに私ども思っておる次第でございます。
  43. 山下春江

    政府委員山下春江君) しろうとの全くお答えにならない答えであろうことを恐縮に存ずるのでありますが、先ほど竹中先生から、福島県の須賀川の国立療養所というお話がございました。実はそこは私の選挙区で、多少片りんを存じております。福島県全体の県の形勢から申しまして、その地帯は健康保険患者というのが非常に少い地方でございます。国保が今年の四月一日から発足したような個所がその周辺を取り巻いております。従いまして、きょうまで、保険の恩典に何もあずからなかった者はやむを得ずまあ自宅療養——療養もできなかったと思いますが、しておったのではなかろうかと思います。そこであの地域の病院を詳しく私調べて参りませんでしたが、個人開業医の結核ベッドを持っておるところも、つい最近満員でございました。そういうことで、国保が発足いたしましてから、非常に重患であろうと思いますけれども、今病院に入っておる傾向にあるようでございまして、いろいろな理由があるかと思いますが、その病院、その療養所に関する限りは、保険の恩典にこれまであずかれなかったということが、重症にし、入院できなかったというようなことではなかろうかと、まあしろうと考えで恐縮でございますが、その地域はそういうふうになっております。
  44. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 須賀川のことは私も実際調査したわけではないので、ただ私の同僚の議員の平林君が調査に行きまして、あまりに空床が多過ぎる、しかも病院がいいということを認めて、非常にサービスもよくやっておる、設備もよく行き届いている、それから不便の所にあるので、バスまで出して患者を送り迎えまでしておる。それにもかかわらず、その半分のベッドがあいておるというところに、何か保険制度の、ことに一部負担に関する、あるいは入院の制限に関する問題がそこに関連して、こういう現象が一般的に全国的に起っておるのが、極端にここに現われてきたのじゃないかという疑義がありましたので、一度調べていただきたいということを昨日要求したわけです。今の医務局長のお話にもありました通りに、全国を通じて結核患者が依然として減らないにもかかわらず、また入院を必要とする患者が減らないのにもかかわらず、病院に空床があるということですね。相当の空床がある。一割あるいは二割というような空床のあるところもある。今のように半分まで空床だというような国立病院もあるというようなことは、これは重大な問題だと私は考えるのです。結核の患者がなくなって、空床ができるというのだったら、これは喜ぶべきことですけれども患者が減らないにもかかわらず、病院の必要に迫られている国民が数多くあるという現状にもかかわらず、せっかくの病院が利用されていないということ、そのためにまあある病院のごときは人員を減らされるというおそれを持って、患者の勧誘をしきりに——勧誘というか、その入院をむしろ非常に勧めている、患者をとる運動を、保健所とタイアップして、患者の獲得運動すら起しているという病院がある。こういうことはどこかに根本的な欠陥がある。現在の社会保険の医療についての欠陥があると、私は考えるのです。それは、言うまでもなく、この今度の健康保険改正の法案に現われてきているように、保険経済の赤字のために、その赤字を制限するために、とられるところの方法の中に、この赤字を患者、被保険者、保険者、医療担当者、そういうところにかけてきた、さらにそれがこの一部負担という形において強化されてきつつあるということとにらみ合せて考えるときに、この結核の公立、国立病院の中に空床がふえているということとこれをにらみ合せるときに、ここに大きな最も根本的な問題がある、すなわち社会保険によって国民の医療を解決しよう、こういう目的が、逆に社会保険によって国民の医療が制限されるという結果を生んでいるものだと、私は解釈せざるを得ないで、こういう点について、まあこれは一般的な質問になりますけれども、もう一度そういう点でこういう相関関係、病院の空床があるということ、それと社会保険経済の赤字対策のための一部負担の増加ということとの相互の関連性をお認めになりますか。
  45. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) お答えいたします。健康保険財政は御存じのように、ここ二、三年赤字を出して参っておりますことは事実でございます。しかし別に今日までのところ、その赤字をどうこうするために、入院の手続についてむずかしいことを言い出したり、何だというようなことは全然いたしておりません。
  46. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 そんなことはないですよ。
  47. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 従いまして、ただいま空床があるということは、私ども政府管掌健康保険の赤字と無関係であろうかと存じます。で、今後、御審議をいただいておりまするような一部負担の拡張によりまして、顕著に空床がふえてきたということでありますれば、これはその相関関係等について十分に検討をしてみなければならぬかと存じます。ただいまの空床につきましては、赤字問題とは何ら関係はない、むしろその空床がかりにかりにでございます、経済的な原因によるものであるとするならば、それは保険の恩典に浴さない人たちが非常に多いというようなこと、あるいはまた保険におきましても、たとえば国保等におきましては、入院を給付の対象にしておらない国保等もございます。従いまして、そういうふうな保険をもう少し広く拡充していかなければならぬというふうなことには相なるかと存じます。あるいはまた生活保護法の運用というようなものにも関連があるかもしれません。しかし政府管掌の健康保険の赤字に、今日の空床は関係ないものと、相関関係はないものと私は考えるわけでございます。
  48. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それではですね、保険局長にお伺いしますが、今まで病床が相当利用率が一ぱいで、入院患者を断っておった状態と、今日空床ができておる状態というものは、どこから起ってきたのか。
  49. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) これは私がお答えのできる範囲でないと存じます。非常に広いいろいろな観点から検討をしなければならぬものと存じますけれども、これは私もその道ではしろうとでございますが、化学療法というようなものが非常に発達をいたしまして、結核に例をとりますれば、化学療法というようなものが非常に発達をいたしまして、在宅でも結核の治療というものができる方途が非常に広くなったというふうなことも、一つの私は原因ではあるまいかというふうに考えるわけでございます。なおその他国民生活のいろいろな問題というふうなものが、広くこれには関連をいたしておるかもしれません。私の所管の立場から、その相関関係を御説明申し上げることは、非常にこの問題が広範でございますので、いたしかねると私は考えるわけでございます。
  50. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 厚生当局に対して、こういう一般の政策、社会医療に関する政策として、一方に空床ができてきた、しかも今までは入院を待っている患者が、カードがずいぶんだまっておって、入院の順位を待っておったというような状態から、今日は空床が相当ふえてきた。しかも入院しなければならないという必要性は決して緩和されていないという、この事情のもとに空床があるということについて、厚生省当局はどういうふうにこれを考えられるか、政務次官が見えておられますので。
  51. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 政務次官からお答えがあると思うのでありますが、その前と申しますか、全般的なお答えがございます前に、私ども考えておりますことを申し上げさしていただきたいと思います。  ただいま竹中委員から御提出になりました問題は、非常にむずかしい問題でありまして、空床ができた理由は何であるかということは、結論的なことはなかなか申し上げかねると思うのであります。保険局長も申しましたように、幾つかの要因があろうかと考えます。そのうちで一つ重要なことは、確かに今指摘されましたように、化学療法の進歩によりまして、在宅治療におきまして相当な効果を上げ得る、もちろんこれは入院することが好ましくないというような意味ではないでありましょうけれども、必ずしも入院しなくても、在宅治療でかなりな成績が上るというようなことから、必ずしも入院を要しないという人たちがふえてきておるということが、一つの重要な問題だと思うのであります。このことはすでに御承知のように、すでに発表になっております資料としましても、昭和二十八年の結核の実態調査と、それから二十九年の実態調査の場合におきましても、ちょっと違うかもしれませんが、私の思い違いかもしれませんが、たしか百三十七万程度、全国推定された要入院患者が二十八年にございましたのが、この翌年の調査におきましては、百万余りになって出ておりましたが、これなんかも病気の実態が変ってきたというよりも、むしろその化学療法の急速な進歩によりまして、お医者さん方の判定が変ってきたものだと、こういうふうに私ども思っているわけであります。その後もいろいろとこの考え方が進んでおりますので、かような意味で、要入院患者が幾分減ってきたということが考えられます。  それからもう一つは、何のかのと申しましても、結核のベッドは相当な勢いでふえて参った。たしか二十八年から九年でございますが、このときが長大であったと思うのでありますが、一年間に三万五千ぐらいは結核のベッドがふえておったのであります。こういうような工合で、ベッドがだんだんふえてきている。こういうこと、それから一方におきまして、今度は患者の実情があるのであります。これはいろいろと学者側の意見があるのでありまして、簡単に結論は言えないのでありますけれども、私、この点についてもよく言われておりますが、死亡は減ったけれども患者は減らないという言葉で表現されておりますが、果して患者が減らないかどうかということについては、これは減らないとも言い切れないと思うのであります。また特に全体の患者数と申しましても、入院を要する患者というふうに考えてみますならば、これが必ずしもふえていると言えるかどうか、あるいはこのある人たちの意見といたしましては、やはり徐々に実態は減じているのじゃなかろうかというような考え方も成り立つのでありまして、かような事情もある。しかしながら他面におきましては、患者は減ったと申しましても、おそらく入院を要する患者は百万に近い、少くとも近いものがあるだろう、そのうち発見されている患者というものは、比較的その少数の一部でございまして、こういうような点から患者を新たに見出していくというようなことになりますれば、まだまだこのベッドの需要がふえるのではないか、こういう事情も考えられます。  一方で検診、患者を発見していくという方が必ずしも進んでおりません。御承知のように、昭和二十八年の調査のときには、当時発見されております要入院患者というのは、三十七万ぐらいかと、私、覚えているのであります。やはり見つかった患者でございませんと、具体的に入院の運びには参りません。この発見の方が果して具体的にその後どの程度に進んでいるかということも、この問題にかかって参ると思うのであります。こういうような工合にいたしまして、その見つかっている患者、入院を要する患者というのが、果してどれくらいの数であるか、そうしてそれがどのようにふえているかということが必ずしも明確でございません。総合的に考えますればその見つかっている患者も大きな変化はあるいはないのでないか、そういたしますればその化学療法の進歩というようなことによりまして、在宅治療で間に合わしたいというような方がふえてきておるのではないか。ただ私ここで申し上げますのは、それにしましても要入院患者が全部入院できておらないのが実情でございまして、こういうような患者さんたちを、どうやって入院していただくかというようなことが問題となる。これは先ほども申し上げましたように、むしろ長い間結核に悩んでおられた、慢性の開放性の患者、こういうような方が相当まだたまっておるのではないか、こういう方々の収容ということに結核療養所は努むべきではなかろうかというような筋を大体考えておるような状況でございます。
  52. 相馬助治

    ○相馬助治君 このことに連関して厚生省の見解を承わっておきたいのですが、今医務局長の答弁は、おっしゃっておることはみんなその通りだが、根本的なことをわざと目をおおうていらっしゃる。先ほどの保険局長のおっしゃることもその通りです。というのは、医療がこのたびは進んできたから在宅治療でもよろしいので、患者自身の意思をもってあるいは医師自身の意思をもってあきベッドもできておるのだ、こういうこと。その次にはベッド自体が非常にふえたからあきベッドができているのだ、こういうことですけれども、そういうことも理由の中の何%かにあることは私は否定いたしませんが、もっと根本的な問題は、例の生活保護法の締めがきつくなってきて、それから結核予防法に規定された入院患者の問題が、各府県における審査会をパスしないで、医者は入れたいのだけれども、結核予防法の恩典にその患者を治せしめることができないというのでみすみす、入院させたい、また本人もしたいという患者が、経済上の理由をもって病院に入らないというのがこれは実態です。これは社会局長がここにいないから管轄外だというので、保険局長も医務局長も故意でなくてその答弁を善意でもってずらしたのかもしれませんけれども、問題は現在各府県の福祉事務所がどういう態度をとっておるか、それからまた健康保険法の規定するところの強制入院を決定する審査会がどういう態度をとっておるか、みないずれも金がないためにそれらの審査もきつくなっておれば、患者自身も一部負担が——健康保険の一部負担じゃないですよ、生活保護法からくるところの一部負担がきつくなって、泣く泣く退院しているのです。非常に特徴的なことは、大企業関係の、あるいは官公吏関係の肺結核患者はみな入院をして治療を受けて、そうしてなおる率もよく、非常に現在の社会保険の制度の恩典に浴しております。みな感謝しています。私もこれを認めます。ところが今問題になっておる健康保険の政府管掌の分の中小企業の分、それからその恩典にも浴しないで、生活保護法の規定するところによって従来治療を受けておった者、あるいは今後治療を受けようとする者、こういうところの締めつけ方が最近財政上の理由をもってひどくなっておる、曾田医務局長よく御存じでしょう、あなた自身はつき添い婦の廃止に対して反対だったでしょう、気分の上では。ところがやはり経済的な事情をもって社会局関係の、いわゆる生活保護法上の財政上の理由をもってつき添い婦も廃止しなければならない、こういうことになってきておることはあなた自身認めると思うので、そこで竹中委員の質問に対する回答をはずさないでほしい、医務局長の立場からの答弁はそれでよろしい、保険局長の立場からの回答はそれでよろしい、しかしあきベッドがあるというこの現実はおおうべくもない事実、それは患者自身が入りたがらないのだとか、ベッドが総体的にふえたからベッドがあいているんだというような、そんなしろうとだましの答弁をもってして私たちは今日満足できない、それはもうみんなわかっている問題です。従って健康保険法の改正の問題と、今直接関連のないもっと基本的な問題で、この結核対策は考えなければならないのです。しかも健康保険法の改正に伴って、結核対策は独自の特別立法をもってして、特別財政の支出をもってしてこれを救わなかったならば、この今の健康保険、社会保険財政の救済も不可能な段階にきていると思うのです。従ってこれに対しては、総括的に山下次官の見解を承わっておきたいと思うのです。もう一度言いますと、高田、曾田両局長の答弁は、そのみずからの管轄している面から見た一部分の答弁としてもちろん了承します。説明説明として了承します。しかし厚生省自体の見解を一つ承わっておきたい。
  53. 山下春江

    政府委員山下春江君) 先ほど竹中先生の御質問、相馬先生の御質問に対しまして、両局長から申し上げた通りが実態だと思いますが、しかしながら御指摘の通り、私も生活保護法で入ってきます者が非常につらがっているということは認めます。これははなはだ言葉が穏当でないかもしれないと思いますが、どうも生活保護法でお入りになる方々のお考え方というのは、私実はきのうも長野県で養老院を見て参りましたが、ここでも同じような声を聞いたのでございますし、それからほかの施設でも聞いたのでございますが、ごもっともとは思うけれども、どうも権利を主張し過ぎて、義務に対して生活保護法の方はほとんど忘れたような格好になっているので、それでまあ一般的につらいつらいつらいと、こういう声だけが外に出ているようだと、これは私その管理者でない、いろいろな事務に直接携わっておる方から聞いたのでございますので、多少は、先生方のお耳に入るのも、生活保護法が苦し過ぎるぞというようなことばかりが非常に強く入っているのではないかと思いますが、しかし私は生活保護法の方が療養をしておる現状は楽でないということは認めます。  それから結核予防法につきましても、公費負担を拡充しなければならぬ、現にまあ法律をさかのぼったような形で、今年度の分も実は公費負担拡充分を充当いたしまして、なるべく結核患者が入院治療できるようにいたしてはおりますが、いずれにいたしましても、結核予防法の公費負担を拡充いたしますことと、国民皆保険をすみやかに実施いたしまして、この面を拡充することが最も大切だと思います。結核を別に考えなければだめじゃないかという御意見もございましたが、それもごもっともですが、私は結核の回復状況しろうとで詳しいことはわかりませんが、早期発見、早期治療をいたした者は非常に早く全快をしておる、そうして特に若い方は全快率が早いというようなことで、以前よりも健康保険が結核を扱っておるおかげで早期に発見し、早期に治療することにおいて回復が早くなったということもこれは事実だと信じております。そういう点から結核問題については厚生省も鋭意今後どうするかということにつきましては研究努力を今いたしておる最中でございますが、いずれにいたしましてもこの結核を保険で扱うことの問題をどういう解決をするかということはいろいろな観点からいろいろな御議論があろうと思いますが、私は保険でこれを見ている方がその面では非常にプラスであると信じておりますし、なお健康保険の運用につきましてただいまのところかれこれときびしい取締りなぞをいたしまして、結核患者の入院をはばんでおるというようなことはこれは断じてございませんでして、私ども何といたしましても国民皆保険ということをすみやかにいたさなければこういう問題の解決がだんだんおくれる、これはかたく信じて実行いたそうとしておるものであり、先ほどちょっと竹中先生にも申し上げました通り、私どもの地域の国保の設立が非常におくれておりますために、重症患者に追い込まれておるものが今ようやっと蘇生の思いで病院にぼつぼつ行っておるという現状でありますので、この面につきましては御意見をよく私ども尊重しつつ対処して行くことの研究を、すみやかに何か結論を出したいと考えております。
  54. 相馬助治

    ○相馬助治君 ちょっと誤解があるので……今厚生省が悪意の意思で入院患者を拒んでおると、そんなことは思っていない、問題は入りたくても患者が生活上自分の入院費、治療費と同時に家庭に残した妻子の生活費で入れない、それから福祉事務所も病院も厚生省自体も入れてやりたくてもない袖は振れぬのたとえで財政上の理由でなかなかみてやれない、こういう基本的な問題があるからあきベッドもあるのだ、こういう点をおわかりいただければいいので、厚生省が入れないのじゃないかというように、そんなふうに私は言いがかりをつけておるのじゃないのです。よく努力して下さい。
  55. 山下春江

    政府委員山下春江君) ただいまの相馬先生のお言葉、私実はあとで申し上げましたことは申し上げなくてもよかったことでございますが、その通り信じておりまして、非常に窮屈だがしかし何とかして入院して治療したいというので苦しい中を治療しておる姿が現状だと思っております。
  56. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 山下次官の大へん真摯な御答弁に対しては私は敬意を表します、ことに権利だけ主張しておるという面だけでなくて、やはり生活が苦労であるからだという点も認められておることですし、これは事実権利だけ主張しておるような結果が出てきますことは私は生活が苦労だからだと思うのです。苦労だという事実は失業者が依然として減っていない、半失業者、潜在失業者といいますか、一千万近くあります。八百万ほどおります。国民経済の国民所得はふえておりますけれども、しかしながらその所得の分布状態といいますかは決して下がよくなっておるというような形においては国民所得はよくなっておりません。すなわち貧乏人が非常に多い、生活に困る者が非常に多いという現実からしますと、たまたま施設に入ってくるような人たちが権利だけを主張しなければならないような生活の根拠しか持たないということ、そういう事実があるということを次官もお認めになっておることを私は心強く思います。  それから早期発見、早期治療ということが一番いいことだということを認められておることも正しい見解を持っておられるということは言うまでもないことですが、この健康保険法の改正がですね、私どもは早期発見、早期治療をおくらす結果になるだろうということについて私どもは懸念をいたしておるものであります。  それから国民皆保険を早急に実現したいという御希望の点、これについては私も非常に賛成なわけですが、これについてのそれでは御計画を聞きたいと思うのですが、きょうは大臣も見えておられませんし、いずれこれは準備も要られることと思いますので、この質問を私は次回に保留したいと思います。  そこで私は、時間の経過も、相当昼が過ぎておりますし何ですが、最後にもう一点お尋ねしたいのですが、それはいわゆる審議会とか委員会とかいうものの性質です。現在私の知っている限り少くとも五つ大きな医療保険に関する審議会があります。一つ社会保障制度審議会というもの、これは私も数年出ておりましたので事情も内容も知っております。そうしてもう一つは社会保険審議会というものがあります。これは主として運営の事項を取り扱う審議会だと私は理解しております。さらに第三に中央医療協議会というものがあります。これは点数や報酬や指定取り消しの問題を取り扱う審議会であります。それからその上に臨時医療保険審議会といいますか、点数の問題などを多分これはやっておられるんじゃないかと思います。それからもう一つは最近新しくできたもので医療保障委員会ですか、というものができておりますが、こういう少くとも五つの審議会があって社会保険の円満な運営のために審議機関が活動いたしておるわけでありますが、それにもかかわらず医療担当者がこういう大きな問題、健康保険の改正というような大きな問題に、根本の問題について非常に反対をしておる。こういう審議会に医療担当者も相当入っておるにもかかわらず、その審議会に当然その意思が反映されていなければならない保険医療担当者がこれに反対するという結果が生まれてきておるんですが、私はこういう審議会をもう少し整備されるお考えがないのか。この上に国民皆保険をやられようとするならば、一体どの審議会を使われるのか、あるいはさらにこの上に審議会をふやしていかれるつもりなのか、あるいはこれを整備してもっと機能を、機能といいますか、仕事をですね、審議会本来の仕事をもっと総合的にやられるようなお考えはないのか。あまり審議会が多過ぎて実際その審議会の結果がよくないように思うのですが、厚生省当局にお尋ねしたいのです。
  57. 山下春江

    政府委員山下春江君) 今竹中先生仰せになりました五つの審議会の中で最後にお話がございました医療保障委員会というのは、これは今年度の予算で実は医療保障に対します厚生省の今後のあり方についてぜひとも行き先を明確にしてその都度国民の皆様に訴えていく具体的な方法を見出していきたい。抽象論でなく、具体的にそれを打ち出すことを調査する、あるいは立案する機関としてぜひほしいということで私ども熱望いたしまして、許されてこれはできたのでございまして、私ども今後国民皆保険をいたしますにつきましては、この委員会で研究もいたし、それから立案もいたし、医療保障というものに対する基本的な性格を打ち出していく、委員会として活用していきたい、こう思っておりまして、今後の日本国民医療保障というものの姿を明確に打ち出すと、こういうふうに考えておるのでございます。他の審議会につきましては、実は私どもまだ研究不十分で、お説の通りのような面があると思いますが、これは従来ずっと運営に当っていきました局長から答弁をしていただくことにいたします。
  58. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  59. 谷口弥三郎

    理事谷口弥三郎君) 速記を起して。  それでは本案に対する本日の質疑はこの程度にしておきたいと存じます。御異議ございませんか。——御異議がないものと認めまして、これをもって散会いたします。    午後零時四十三分散会