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1956-05-15 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十五日(火曜日)    午前十一時三十一分開会     —————————————   委員異動 本日委員最上英子君、井村徳二君、西 岡ハル君、紅露みつ君、榊原亨君及び 藤原道子辞任につき、その補欠とし て加藤武徳君、寺本広作君、中川以良 君、池田宇右衞門君、長谷山行毅君及 び菊川孝夫君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            榊原  亨君            寺本 広作君            横山 フク君            竹中 勝男君            藤原 道子君            山本 經勝君            田村 文吉君            森田 義衞君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    調達庁労務部長 海老塚政治君    厚生省保険局長 高田 正巳君    労働政務次官  武藤 常介君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    労働省労政局労    政課長     大野雄二郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○労働保険審査官及び労働保険審査会  法案(内閣提出衆議院送付) ○労働情勢に関する調査の件  (駐留軍労務者失業対策に関する  件)     —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。五月十五日付最上英子辞任加藤武徳選任、当日付井村徳二辞任寺本広作選任、当日付西岡ハル辞任中川以良君選任、以上であります。     —————————————
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  御質疑お願いするのでございますが、審査都合上、衆議院修正点に対する衆議院議員への質問を一応本日は留保いたしまして、全般に対する質疑政府に対して行うことにいたしたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。それでは質疑お願いいたします。
  5. 竹中勝男

    竹中勝男君 きょうは予定は、衆議院修正案に対して衆議院の方に質問をするつもりでおったのですが、きょう都合で見えられませんので、衆議院に対する私の質問の点につきましては、次回に保留いたしたいと思っておりまするが、それできょうは質問政府の方に対してするわけでありますが、この改正案の一番重要な点は、一部負担の問題と、政府管掌健康保険赤字の問題の二つに、大体集約されると考えます。それで、この前衆議院の方に向って、衆議院担当者に向って、山下委員からお尋ねがあり、それに関連して政府からの御返事があった点でありますが、どうも私にとっては不明瞭なのでありますが、従ってもう一度、この点は重要な意味を持っておると思いますから、お尋ねするのでありますが、患者の一部負担初診料、再診料、入院料についてですね、その一部負担というものの性格は何かという質問に対して、厚生省当局は、これは医療費の一部負担だというふうな返事をされたように記憶しております。医療費であるという点についてはきわめてその通りだろうと思いますが、医療費の中で、初診料の五十円、再診のときの十円ないしは二十円、三十円、入院の場合の一日六カ月間三十円というものは、医療費の中で一体何なのであるかということを、まずお尋ねしたいのです。   〔委員長退席理事谷口弥三郎着席
  6. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) お答えいたします。医療費の中のたとえば初診料とかあるいは処置料とか入院料とか、医療費内容といたしましてはいろいろなものがあるわけでございますが、それのどれを負担をするというのでなくして、その際にかかりました医療費全体のうちのたとえば二十円とかあるいは三十円とか、こういう趣旨でございます。従いまして、医療費の中の何かという御質問につきましては、その際にかかった医療費のうちの一部というふうにお答えをいたすより、方法がないと存じます。
  7. 竹中勝男

    竹中勝男君 それは、具体的にお尋ねいたしますが、初診料の五十円というものは何かということを、この前山下委員が尋ねられましたときに——これは五十円ということを、もう一度その点明らかにして下さい。
  8. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 改正法の四十三条の八に一部負担のことがきめてございますのでございますが、その際に、たとえば今御指摘の点は一号に関連するものだと存じますが、この五十円ということは「五十円以下ニ於テ厚生大臣ノ定ムル額」ということは、初診の際にかかりまする医療費の中で五十円を一部負担してもらいたい、こういうことでございまして、たとえば初診の際にはもちろん初診料というものを支払うわけでございますが、そのほかに投薬もあることがございましょうし、あるいは検査等があることもございましょうし、あるいはまた手術が行われることもございましょうし、処置が行われることもございましょう。そういうふうに、初診の際におきまして行われました医療行為に対して支払うその医療費、その中で五十円を本人負担していくというこの制度でございます。
  9. 竹中勝男

    竹中勝男君 今の四十三条の二には「初診料額ニ相当スル額」というふうに法律では書いてあるわけなんですが、そうすると、その初診料というものは、技術料でもなければ、技術料に制限されるわけでもなければ、薬剤の費用でもない。ただ五十円という数字をそこにつけたということなんですか。
  10. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 今、先生が御引例になりましたのは現行法の四十三条の二でございまして、その二項には「初診料額ニ相当スル額ヲ」と、こう書いてございます。で、私が御説明いたしましたのは、改正法の四十三条の八で、かような一部負担建前をこの規定規定しておるのでございますということの御説明を申し上げたのでございます。
  11. 竹中勝男

    竹中勝男君 それでは、この一部負担を、これは何年からやられたわけですか。二十四年か、あるいは二十六年に実施されたわけですかな。そのときの初診料というものはどういう考えで、どういう意味説明されておったわけですか。
  12. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 現行法のこの規定はどういう趣旨かという御質問であろうかと存じますが、これはそこに書いてございまするように、「初診料額ニ相当スル額ヲ一部負担金トシテ支払フベシ」ということでございます。「初診料額ニ相当スル額」とは幾らであるかということになりますと、初診料現行御存じのように、四点でございます。当時も四点であったように記憶をいたしますが、その四点に相当する額ということでございますから、単価がかりに十二円五十銭であるといたしますれば五十円、十一円五十銭であるといたしますれば四十六円ということに、「初診料額ニ相当スル額」というのは相なるわけでございます。
  13. 竹中勝男

    竹中勝男君 そうしますと、この四点、甲地で四点、乙地でも四点、五十円あるいは四十六円というものは、現行法によるとこれはどこに、その見通しといいますか、四点ということの意味診察料ということが主たる理由ですか、一部負担内容というものは。
  14. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 御質問の御趣旨は、改正せんとしている、改正法における一部負担意味合いをお尋ねになっておるのでございましょうか、あるいは現行法の四十三条の二に規定せられておりまする一部負担のことを御質問になっておるのでございましょうか、その点をもう一度、恐縮でございますが。
  15. 竹中勝男

    竹中勝男君 むろん現行の五十円というものの性質を明らかにするために、二十四年度に初診料というものが五十円と規定されたときのことを伺っておるわけなんです。それと全然別ものだという解釈なんですか。
  16. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 一部負担やり方につきましてはいろいろな方法があるわけでございまして、たとえば先ほど申し上げましたように、投薬、たとえば薬治料を一部負担をするとか、あるいは初診料そのものを一部負担をするとか、あるいは入院料を一部負担をするとかいうふうな、一部負担やり方もあるわけでございます。またわが国の他の府県でとっておりまするように、あるいはまた外国でもそういう例が多々ございまするように、全体にかかった医療費の半分を一部負担をするとか、あるいは一割を一部負担をするとかいうふうなやり方もあるわけでございます。それからまた注射とかなんとかいうようなことが、ある医療行為が行われた場合にその代金を一部負担をするということでなくして、その際に定額的に何円を一部負担をするというふうなやり方もあるわけでございまして、いろいろなやり方があるかと思うのでございますが、それで改正法でとっておりまする一部負担建前というのは、先ほど申し上げましたように、その際にかかった全体の医療費の中で定額的にこれこれを負担をするという制度でございます。それから現行法の四十三条の二の一部負担条文をよく読んでみますると、これは初診料そのもの負担するとは書いてございませんので、「初診料額ニ相当スル額ヲ」と、こういうふうに書いてございますので、先般の山下議員の御質問にもお答えをしたわけでございまするが、これにいたしましても、初診料というものは、額を決定する際のその額に関連をする初診料というものが出ておるわけでございます。初診料を一部負担しろというふうに書いてはございませんので、従いましてこの際におきましても、現行法制度におきましても、初診料に相当する額をとにかくお医者様にかかったときには負担をしなさいというふうに書いてございます。従いまして、その間に現行法建前改正法建前と、さほど本質的な相違はないものと私自身考えておるわけでございます。  〔理事谷口弥三郎退席委員長着席
  17. 竹中勝男

    竹中勝男君 現行法改正法と本質的に初診料解釈については変化がないという前提、そういうお考えのもとに、この前も問題になったわけですが、「初診料額ニ相当スル額」というものと初診料とは別であるということは、これはもう文法的にもはっきり別だということはわかりますけれども、それじゃ、なぜ「初診料額ニ相当スル額」と書いたかということは、やはり初診料という一つ技術なら技術というものに相当する四点の額ということでなければならないと思うのです。なぜ——それじゃ、いこい一個に相当する額と書いてもいいというふうに思われるわけなんですか。「初診料額ニ相当スル額」と書いてあれば、初診料ということがあまりにもそこに問題になっておるわけなんです。それでなければ、まあ「いこい一個ニ相当スル額」と法律に書いてもいいわけなんですね。その違いです。それをどういうように解釈されますか。
  18. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 現行法規定につきましては、ごらんになりまするように、非常にあいまいな、たとえばその支払いの時期というようなものにつきましても何ら条文に載せておりませんので、非常に不明確な規定になっておりますることは事実でございます。従いまして、現行法規定解釈いたしまする際に、かように表現をしてございまするので、現行法上は初診料そのもの負担するんだ、一部負担として初診料そのもの負担するのだというふうにも解釈されておる向きもあり、またさようなふうにも若干読めるような表現がしてあるわけでございます。しかし厳密に私がこの規定を読みまする際には、やはり最初申し上げましたように、初診料というものはその額を決定する一つ基準になっておるのであって、従いまして、ここでかりに五十円と書きましても、その法文のここに五十円という金額を入れましても、この法文はそのまま読めるようなことになっていると、私は厳密にはさよう解釈をいたすのでございます。おそらくここにさような金額をきめませんでした趣旨は、初診料というものは御存じのように点数表で動くものでございまして、その点数表で動く、すなわち厚生大臣の告示で動く額をそのまま一部負担の額にしようという法律趣旨であったろうかと、かように思う次第でございます。しかし改正法の方におきましては、さような現行法の不明確な点をそれぞれ明らかにいたしておるのでございまして、いつどれだけの金額を払うかということを明確に規定をいたしておる次第でございます。
  19. 竹中勝男

    竹中勝男君 何かそこにやはり具体的な基準がなければ、その額というものをきめる根拠は出てこないわけなんです。事実一般に現行法によっても、これは初診料であるというふうに解釈するのは当然なんです。初診料に相当する額というものは、厳密な意味においては、初診料すなわち五十円だ。一部負担だとは考えてないんですけれども、しかし、それとほとんど一致するこれは表現なんですね。「初診料額ニ相当スル額」という場合には、たとえば今度の入院のときの三十円でも、法文にはないのですけれども、これは食費考えたらどうかという説明当局からあったわけなんです。それはありました。うちにおっても三十円はかかるのだから、完全給食できるわけだから、三十円の負担は大した負担じゃないという説明がありました。そうすると、三十円ということも全く根拠のない数字だということになりますか。お尋ねします。三十円とは、何ら具体的な根拠のない数字か、何に当るという数字ではないのか。
  20. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 入院の際におきまして、一日について三十円ずつ負担をするということを改正法の四十三条ノ八で規定をいたしておりますが、この三十円が食費負担するんだという御説明は、実は私どもといたしましては、国会では今までさような御説明はいたしておらないのでございます。ただ御存じの七人委員会等報告書をお出しになりましたものの中に、一日の米代に相当するぐらいの金額ということで三十円ということを書いてございます。私どもといたしましては、別にさような、これはたとえば米代であるとか、あるいは食費代であるとか、あるいは入院の際の何々代であるとかという法律建前にいたして規定をいたしておるつもりではございませんのでございます。従いまして、その二十円というものは一体何の基礎によるものかというただいまの御質問でございますが、別に三十円につきまして数学的な基礎はございません。
  21. 竹中勝男

    竹中勝男君 数学的な基礎がないと言われることは、この二十数億の赤字を一部負担に分けるときに、初診料に五十円、再診料に三十円、入院のときに一日三十円というふうに、どういう根拠でこれを分けられたわけですか。根拠なしに分けられるはずはないわけですが……。
  22. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 私どもが三十円という金額を全然根拠なしにきめたという意味ではございませんので、この三十円というものが米代に相当する金額だということではない、あるいは何々代に相当する金額ではないと、そういう建前になっておるのでございますということを御説明申し上げたわけでございます。たとえば米代負担するんだということになりますれば、米代の上下によって一部負担金額は変ってこなければならぬという理屈になるわけでございます。この一日三十円入院の際に御負担を願うということを私どもがきめましたその過程におきましては、いろいろな配慮はいたしております。しかしながら、この三十円が米代であるとか、あるいはこういう数学的な積み上げから三十円になったんだというふうな、三十円そのものの数学的な基礎は別にございませんということを御説明を申し上げたわけでございます。入院患者について一部負担お願いをするということにつきましては、いろいろ、たとえば各種の関係者機関等におきまして、在宅患者との均衡の問題でございますとか、いろいろ論議をされて、入院患者にも一部負担お願いをいたしたいという建前に立ちまして、しからば一体どの程度であれば一部負担として御本人負担を願えるであろうか。その際には、私どもといたしましては、一カ月の入院料が一体どのぐらいに医療費がかかるかというようなことも参考にいたしまするし、あるいはまた、かりに被保険者入院いたしました際に受ける傷病手当金金額というふうなものも頭におきまして、いろいろなことを勘案いたしまして、まず三十円くらいを御負担を願うのが適当であろうと、こういうふうな諸般配慮から、この金額というものは私どもとして適当なりと判断をいたしたわけでございます。
  23. 竹中勝男

    竹中勝男君 諸般事情勘案して三十円なら三十円というものを決定したんだと。諸般事情ということは、まあいろいろな条件を、傷病手当だとかその他との比較から考えられたのだろうと思いますが、究極においてはそういう観念が、負担能力が三十円ならまあるというところで決定されたわけなんですか。
  24. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 負担能力というものは、これは非常になかなかめんどうなものでございまして、たとえば税金の際の担税力というようなものでも、なかなかこれはめんどうなものでございます。一体こういうことについて負担能力があるかないかということを判定いたしまする場合には、これはそう簡単に参らないと思うのでございます。まあ水が百度になれば沸騰するというふうな一つの、何と申しますか、数学的といいますか、そういうふうな確定線というものはなかなか引きにくいと私は思うのでございます。従って、厳密な意味で、一日入院患者について三十円ぐらいのものは、厳密な意味負担能力があるかないかというふうなことを検討いたしますることは、被保険者のいろいろな経済的な事情も個人々々によって違うわけでございますから、必ずしも画一的には論ぜられないと思うのでございます。ただ、一カ月入院をいたしました場合には、大体一万二千円ぐらいから一万五千円ぐらいの医療費がかかるわけでございます。さようなことをも勘案をいたし、まあそのうちの大体九百円ということになるわけでございます。  それからまた、先ほどちょっと申し上げました傷病手当金というふうなものも、かりに独身者で一番標準報酬最低の四千円の方であるといたしますると、一人者ですと千六百円、まあ傷病手当金金額ということになるわけであります。さようなものをも勘案をいたしまして、まず一部負担というふうなものを被保険者に、患者にかけまする場合には、どこに、どういうところにかけていったならば、何と申しますか、被保険者相互均衡といいまするか、さような点で一番妥当であろうかということを考えまして、まず入院患者につきましては大体一日につき三十円という程度であれば、いろいろ在宅患者との均衡とか、あるいは外来患者との均衡、あるいはまた入院患者自身にとりましての何と申しますか、この程度は御負担願えるのではあるまいか。これも厳密な意味負担能力という意味ではございませんが、まずそういうふうな考え方から、一日三十円というものをきめた次第でございます。
  25. 竹中勝男

    竹中勝男君 まあ均衡という考え方ですね。これは大事な考え方なんです。けれども均衡ということを考えられる以上は、事実上負担ができない者もその中には出てくるということを予想しなければ、均衡という理論は出てこない。均衡平均はむろん違いまするけれども、大体そういう一つのめどというものを最低に置かれたわけではないのですから、最低のものもあるから、たとえば独身の者というものは、最低のものと考えなければならない。そうすると、こういう人たちは明らかに理論上からも負担能力がない人なんです。七百円ぐらいしか自分の手もとに残らないわけですから、入院したら九百円を負担すれば。最低標準報酬というものから割り出したら、そうなんです。明らかにこれは負担能力がない者です。負担能力がない者であることははっきり理論的にもわかっておることなんです。そういうことを予想した均衡論というものは、私は現実の場合には非常に相当多数の人間が事実上一部負担が不可能になるのじゃないかと思いますが、局長のお考えはどうでしょう。あるいは大臣の御意見も伺いたい。
  26. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ただいまの御引例独身者最低標準報酬の方、これはまあ傷病手当金が支給されるといたしますれば、千六百円という……
  27. 竹中勝男

    竹中勝男君 九百円差し引くわけですよ。
  28. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) その中で負担をして、九百円を負担していただくということになる。
  29. 竹中勝男

    竹中勝男君 そうすると、七百円しか残らないでしょう。
  30. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) さようでございます。しかし、かような例は何も、その方お一人でございまして、それが入院なさる場合、その方の衣食住というものは大体、病院の方でめんどうをみていただくわけでございます。小づかいがまあ若干必要であるということになるわけでございます。かえってそういう方は、私はむしろそれほど負担ができないという方ではないのではあるまいか。むしろ、かりにお困りになる方が出るといたしますれば、そういうふうな独身の方でなくして、家族を若干でも抱えて、そうして平均標準報酬、まあ一万円とか二万円とかいうような方の方が、ことによりますと、現実には苦しいというふうな場合もあり得ると思います。従いまして、私が最初申し上げましたように、この負担能力というものは画一的に、標準報酬が低いから負担能力がないとか、高いからあるいはどうだとかいうふうには参らない。その人その人の事情によりまして、楽な方もあるし、苦しい方もあるでありましょう。しかし、まず月九百円程度ということであるならば、まずまず何とか入院を願って、一万二千円から一万四、五千円程度の給付を受けられるわけであります。そのうちで九百円程度を御負担願うということは、どこかほかにもかけるということを考えまするならば、まずまずその辺であるならば非常に苛酷な負担ということにはならない。もちろん全然御負担をなさらぬよりは苦しいわけでございますけれども、まずまずこの程度であればというふうな私ども考え方なのでございます。
  31. 竹中勝男

    竹中勝男君 今の局長説明、何ですね、非常に機械的に、七百円あれば、ただ入院しておるのだから、まあやっていけるということなんです。私が独身者最低賃金の者、こういう例をとったのに対するそれは答えなんですが、私が独身者ということを言ったというのは、はっきりものごとがするから言ったのであって、その周辺に、日本の今の賃金の、ことに中小企業賃金の形態からいうて、独身者あるいはその独身者でない一応家族のある者というものがその周辺にあるから、尋ねておるわけなんです。そういう人たちがまあ最低生活をしている、しかも傷病手当生活をしていかなければならない。そうして入院している、主人が入院しておる。そういう場合に、生活に困ることはもうわかり切ったことなんです。これはもう、たとえば独身の場合にも、一日に一つリンゴを食べていけば、五百円やそこらかかるのです。七百円という金の値打ちというものは、お互いに知っておる通りです。何したって、すぐなくなる金なんです。そういう状態にあるものを、この人たちはやはり一部負担に三十円くらいは耐えられるものだという解釈のもとに、こういう一部負担制度入院料に課していくということについては、非常な危険な状態に陥る、一部負担が事実上できなくなるのじゃないか、こういうように私ども考えるのですが、まあ机の上で、七百円残るじゃないか、それで入院料は全部ただ生活ただじゃないか、こういうふうに割り切ってしまえば、これはもう人間の生活現実の社会に生きておる人間というものを対象にしたものの考え方じゃないと私は思うのですが、厚生大臣に一応お尋ねしたいのですが、こういう無理なことをやって、果して国民が、被保険者が一部負担をやれるというようにお考えですか。喜んで、これは日本の政府はありがたいことをしておるという感謝でなくても、とにかくこれでやっていける、生活に困らないとお思いですか。主人が病人になり、家族がいる。しかも傷病手当をもらって生活しなければならない。そのうちから九百円差し引くということで、この今の独身最低の者の周辺に住む、家族を持っている人たち生活が、これで安定が期せられるとお思いですか。
  32. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 竹中さんの御意見も、そういういろいろなあらゆる観点からお考えになりますと、そういうようなケースもあり得ると思います。しかし大体におきまして、入院につきましては、一カ月一万四、五千円もかかりまして、月に九百円くらいな御負担は、これは私は、ただいま保険局長も御説明いたしておりまするように、御負担していただけるものだ。今、竹中先生の御心配願っておりまするような、非常に窮迫したような場合、こういう場合には、これは別途の方法で、あるいは生活保護とかなんとかというような問題で考えることでありまして、今局長のるる御説明申し上げましたような工合に私も考えておるような次第です。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 関連して。私は大臣お答えを聞いて、実にもうがまんがならないのです。保険というものの性質はどんなものでしょうか。あなたはいつも、口を開けば、社会保障の確立と言っていらっしゃる。今の政府は社会保障の拡大をもって去年の選挙には臨んだはずなんです。ところが、この考え方は一体どういうわけなんです。保険をかけておる人が病気になって、入院して、一部負担ができなければ別途方針がある、生活保護を適用することも考えられる、というお言葉を伺うに至っては、あなたの社会保障に対する考えを根本的に追及していかなければならないのですが、それは私は関連質問でございますから、あまり時間もいただけませんけれども、それならば伺いますが、一部負担考えられて、一日三十円くらいは持てるだろう。持てない患者はどうなるのか。それと同時に、一部負担ができなかったら、最終的な責任は一体だれが負うことになるのでしょうか。ことに政府管掌は中小企業が対象になっている。中小企業の給与というものは非常に低いのです。非常に低い給与で、せい一ぱい働いて月給もらっても、それこそ水準に至らない生活をしている労働者が多いのです。入院して、医療給付で妻子を養って、さらに一月九百円の負担というものは容易じゃないのですが、そういう点はあなたはおわかりになっていないのじゃないでしょうか。ということは、乏しい給料から保険料をかけておりながら、つらいつらい思いをしながら保険料をかけている人が、また入院すれば、わずかな療養給付から、また九百円。九百円といえば、そういう労働者にとっては膨大な金ですよ。こういうような場合に、それが当然だとお考えでしょうか。負担ができるとお考えでしょうか。  結局、そういうことになれば、生活保護だ何だということになれば、少々病気でもがまんして、入院しない結果になるでしょう。そうなったら病気が悪くなる。早く入院すれば十日で済むものが、重くなって入院すれば一カ月も二カ月もかかる。人権問題であり、また保険経済上からいっても私はマイナスだと思う。そのくらいのものはできるでしょうという考え方根拠を私聞きたいのですよ。全額もらって豊かな生活をしているとお考えでしょうか。それから療養給付になって、三人五人の家族を養って入院しておる患者さん方が、九百円の負担をする。ことに入院すれば、局長にも伺いたいのですが、七百円残るじゃないかという。病気になれば何かと小づかいが要ることはわかるでしょうがね。卵一つ買ったって幾らになりますか、リンゴ一つ食べたら幾らになりますか。労働者が病気したら、そういうものを食べればぜいたくだというお考えなんでしょうか。それから一つ私は聞きたいのです。
  34. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 私が竹中さんに答弁を申し上げましたのは、今藤原さんがお聞きになったようなつもりはないのであります。
  35. 藤原道子

    藤原道子君 だって、そうじゃありませんか。
  36. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 大体におきまして、入院している方は、外来で保険にかかっている方から考えますれば、先ほどから保険局長がるる御説明申し上げているようなことでございまして、それは一カ月に九百円の負担をするよりも、しない方がいいのはもちろんでございますけれども、すべての均衡等も考えまするし、まあ私といたしましては、いろいろなお考えがございましょうけれども、まずまず一カ月に九百円くらいならば御負担は願えるものだ、それができ得ないようなケースの場合におきましては、別途に考えてあげるべきものじゃないか、こういうふうにお答え申し上げたのでございます。
  37. 藤原道子

    藤原道子君 もう一点、政府お答えをいつも聞いておると、在宅患者はこうだからとかなんとかとおっしゃるのですよ。だけれども入院の必要のある患者ならば、保険者なら入院させるようにするのが建前でしょう。そうじゃないんでしょうか。在宅患者に比較して費用がこちらの方が恵まれているから、だから一部負担するのは当りまえだという考え方は、絶対に私どもは承服できません。保険患者である以上は、保険をかけておる人である以上は、入院の必要がある人ならば入院ができてるような施設を持ち、当然入院させるのが当りまえじゃないですか。在宅患者入院者に比較して給与が低いなら、それのお手当を高くするのがあなた方の使命じゃないですか。一方が低くいるから、だからこっちが犠牲をしょうのは当りまえだなんという考え方は、本末転倒だと私は思うのですけれども大臣のお考えを伺います。
  38. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 藤原さんの御意見に別のことを申し上げるようでありますが……
  39. 藤原道子

    藤原道子君 そらさないで下さい。
  40. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 私どもは今の入院患者につきまして、一日三十円ちょうだいいたしたいという考え方でいるのであります。
  41. 藤原道子

    藤原道子君 私、関連ですから、この程度にしておきます。
  42. 竹中勝男

    竹中勝男君 開会がおくれて時間があまりないのですが、もう二点ほど重要な点をお伺いしたいのですが、その前に政府当局に、今日は医務局の方が見えておられませんので、私、要求しなかったのですから見えられないのも当然ですけれども厚生省当局としてお調べ願いたいことが一つあるのですが、今これまでのずっとこの委員会の質疑を伺っておりますと、やはり明らかにこれは赤字をどのようにして補てんしていくかという対策を、まあできるだけ合理化していこうという努力については私はよくわかるのです。結局一部負担、あるいは三親等に限る——六親等であったものを三親等に限る、あるいは保険料の標準報酬を改訂する、あるいは官給明細書を、これは多少修正になりましたけれども、出す、あるいは二重指定をやるということ。病人、患者が医療の恩恵からはずれるように、はずれるように、すなわち乱診乱療を防ぐということは正当ですけれども、それ以上に、そういう目的から全く別の動機で、被保険者がなるたけ医者にかからないように、入院しないように、できないようにという意図がはっきり見られるわけなんです、この改正法全部を見渡して。すなわち赤字対策ということのために抜本的に健康保険法を改正する段階としては、あまりに非合理的だ、合理的でないと私ども解釈せざるを得ない。その点については、議論になりますから、私は控えますけれども、具体的に一つの点を取り調べていただきたいのです。  それは、同僚の平林剛議員から申し出がありまして、同君が調査に行きました。それは福島県の国立の須賀川という所にある療養所ですが、ここではあらゆるサービスの点についても非常に改善しておるようです。そうしてちょっとへんぴな所にあるので、駅からわざわざバスまで出して患者入院さし、送り迎えまでしておる。それからつき添い婦の点についても相当、これを廃止したについては、改善をしておるそうです。にもかかわらず、この病院の病床——私は記憶で、今書いたものをよそへ置いてきたものですから、きのうもらったのですけれども、六百床というふうに私は覚えていますが、その半数が空床なんだそうです。約三百床があいておるのだそうです。しかも極力勧誘——勧誘というか入院の便宜をはかっていながら、しかも結核患者が福島県に少いわけではないのです。患者はいる。そうして事実上入院ができない、こういう事実があることが同僚の平林議員のところに申し出がありまして、平林君がその調査に行きましてその事実を確認して参りまして、私にそのことを報告しました。これなどもやはり、せっかく国立の療養所ができていながら、それを利用する被保険者、あるいは他の患者が入れないという事実を展開しておるわけです。まあ赤字対策からいえば、これは理想的な形だと思うのです。人が来ないのですから、医療費が要らない。そうであれば、あなた方のいわれる合理化ということは、実に現実的な非合理をやっておることになるので、この実情について御調査願いたい。そして報告していただきたいと思います。それを一つお願いしておきます。  もう一つお尋ねしたいことは、これは質問ですが、こういう一部負担の性格といいますか、一部負担の本質というものが、非常にこれが一般的な医療費を被保険者負担するのだという解釈で、これは技術料でもなければ薬治料でもないという解釈をされた場合に、これと新医療費体系との関係ですね、いわゆる医薬分業といいますか、技術料薬治料、あるいは材料費とか、そういうようなものとの分け方に基いた新医療費体系を実施する場合に、これとの関係に不便が起りませんか、そういう解釈でいかれると。私その点がわからないのです。
  43. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 新しい点数表の改正につきまして、今も医療協議会で御検討中でございますが、それとの関連におきまして、別に今回のようなこの規定の仕方の一部負担で不便はないかという御趣旨でございますか。
  44. 竹中勝男

    竹中勝男君 はあ。
  45. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 別に私どもはさようなことを感じておりません。むしろ、従来のような規定でございますと、たとえば額をきめるのに初診料の相当額とかなんとかいうようなことでつかまえておきますと、この点数表の改正によって被保険者の一部負担金が変ってくる、金額が変ってくるということになりまして、むしろ非常に問題が起る。従いまして、金額そのものを国会で御審議をいただいておくという今度の改正法建前のような一部負担金の方が、むしろああいうふうな問題につきましては、取扱い上いろいろな問題が起らないというふうに考えておる次第でございます。
  46. 竹中勝男

    竹中勝男君 もう一つお尋ねしたいのですが、持時間がきておりますので、いずれ小委員会において専門的な分析が行われると信じておりますが、その赤字、三十一年度の赤字の実際算定された方法ですね、その資料の取り方、材料の取り方、あるいは並行線の見方ですね、曲線の見方、あるいは薬価の見通し、あるいは材料費の見通し、それから罹病率をどういうように見られたか、あるいは患者の頻度をどういうふうに見られたか、大筋のところだけを二言御説明願いたい。こまかいことは専門的にやはり分析しませんとわかりませんから、私どもしろうとでわかるような大筋の点だけを御説明願っておきたい。
  47. 山下義信

    山下義信君 議事進行で発言します。  ただいまの竹中委員の御質問非常な重要な点でありまして、われわれも承わりたいと思うのでありますが、御相談願いたいのでありますが、大筋という非常な御配意のある御発言でもあったのですが、どの程度の御質疑をなさいますか、委員長竹中委員一つ御相談を願いたい。保険経済の、ことに赤字を中心といたしまするそれらの数字についての詳細な検討は、小委員会ですることに本委員会で御決議になっておりますので、一応この問題は小委員会に付託の形になっておる。それでこの委員会でお扱いになるということになりますと、小委員会に付託せられたという御決議と抵触をして参りますので、私は竹中委員の御質疑を阻止するんじゃございません。大へん重大な御質問で、大筋としては御質疑があってもけっこうと思いますが、一応それらの問題は小委員に御付託になっておりますので、議事進行上若干この問題については御配意を願わなければならぬと思うのでありますが、その点を一つ御善処を願いたいと思います。
  48. 竹中勝男

    竹中勝男君 私はもう時間もないことで、その詳しい説明を要求しているんじゃないのです。ただ、小委員会に付託されて、小委員会から出てきたところの結果を判断するのはわれわれなんです。この委員会なんです。委員会の者が厚生省のこの赤字というものの算出の仕方の大筋だけはやはり心得ていないと、審議ができないと思うのですから、その点を、私の時間はもう一時間来ているのですから、そういう綿密なことを私はお願いしているのじゃないのです。何年度を標準にした、それからどういう程度のサンプリングをやったか、どういう立場からカーブを、曲線を判断したか、あるいは罹病率をどういうふうに判断したか、そういう点だけを項目をあげて質問しておるのですから、そう時間はかからないし、それからそれだけのことは知っていないと、小委員会から上ってきた報告というものをわれわれが判断できない。
  49. 山下義信

    山下義信君 私は、議事進行上、その問題についての質疑応答については御善処をお願いしておるのでありまして、もし御処置ができないようでしたら、ちょっと速記をとめて相談していただきたい。
  50. 竹中勝男

    竹中勝男君 どうですか、そういう御返事できるかできないか、まだ聞いていないのですが。
  51. 高野一夫

    ○高野一夫君 これは保険のことは結局いろいろな経済問題が中心になるし、その質疑応答をこの大ぜいの委員会で繰り返すというと、こっちの方も十分な資料を持っておらない場合もあるし、答弁される方でもとりあえずの資料がない場合があるので、そこで先ほど山下委員のおっしゃった通りに、いろいろ審議の促進また適正を期するため、小委員会で十分の資料を持ち寄って検討しよう、こういうことになっておりますので、今動議が出ましたように、それで小委員会で十分検討願った上でその結果を本委員会に移していただいて、そこで小委員長から御報告を願い、その結果またいろいろ疑義があれば質問をするということの方が、非常に適正なる質疑、また政府側の方の答弁も間違いがない答弁が、その是非は別として、できやしないかと思いますので、せっかくそのような小委員会を作りましたのはそのような趣旨でありますから、どうぞ一つ、私は竹中さんの御質問もまことにけっこうな御質問であると思うのですが、委員会運営の都合上、こういうようなきめ方をしておりますので、山下委員の動議に賛成いたしたいと思います。御善処を願いたいと思います。
  52. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  53. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をつけて。
  54. 竹中勝男

    竹中勝男君 これは時間が相当かかるおそれがあると思ってみんな心配されると思いますが、私の目的は、小委員会に付さなければならない重大問題ですから、委員が十分この問題については心がまえというか、研究の準備が要るんです。そうしてまた報告されて、これがまだ時間がたくさんあってゆっくり審議するというのだったら、そういうことは必要じゃないのです、幾らも質問の折があるのですから。しかし、もうあまり時間がない審議の状態ですから、それで私は自分でも時間を切っている。時間が来たから、十分程度と時間を切って私は質問したのです。それに対して、それすらいかぬというような動議が出るということは、私は非常に不本意なんです。それで今言った点の大綱をプリントにして、書類にして委員に配付していただきたい。そうすれば時間が省けます。わかりやすく、どういう資料を使ったか、どういうものでやったか、局長にその点を——私の質問しておるのはどういうものを使ったか、どういう資料を使ったか、それからどういう物価指数を使ったか、どういう罹病率を予想したか、どういう頻度を予想したか、そういう点、そういう項目だけでいいのです。そうしなければ、小委員会で幾ら検討しても、専門家が検討したものの結果をわれわれ委員が判断する資料がないですよ。書類で——書類というか、書類かプリントで出して下さった方がいいかと思います。
  55. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) ごく荒筋をお答えをいたします。幾ら赤が出るかということの見積りをいたしまするには、収入と支出との見積りをいたさなければなりません。その差が予想の赤字になるわけでございます。それで収入の中にはいろいろ、たとえば国庫補助金とかいろいろな、たとえば借入金とかいろいろな費目がございますが、その中で一番問題になりまするのは、保険料の収入でございます。それで保険料の収入は、原則的に申し上げますると、三十一年度の平均標準報酬月額が一体幾らになるであろうかという推定を一ついたさなければなりません。それからそれに対して収納率、保険料の収納率が一体どの程度になるであろうかという推定をいたさなければなりません。それからもう一つは被保険者数でございます。被保険者の数が幾らになるかということが問題になるわけでございます。これらのものが一応このくらいになるという見通しがつきますると、あとは、保険料率はこれが法律できまっておりまするので、これで保険料収入が出て参るわけでございます。それでそれらの基礎的な、主として問題になりまするのは、平均標準報酬月額、それから収納率、それから被保険者数、これらのものはいずれも一口に申し上げますれば、過去の実績によりまして、これを推定をいたしたわけでございます。その過去の実績と申しまするのも、分解して申し上げますると、標準報酬月額にいたしましても非常にめんどうなことになります。たとえば定時改訂を行うわけでございますが、その定時改訂のときに一体何円上ったか、それから定時改訂以外は、平均標準報酬月額というものは毎月下降をいたすわけでございますが、その下降額をどのくらいに押えるかということにつきましては、いずれも一口に申し上げますれば、過去の実績によって推定をいたす、こういうことに相なるわけでございます。  それから歳出の方でございますが、これにもいろいろな費目がございまするけれども、その中で一番問題になりまするのは、医療給付費でございます。これは……
  56. 竹中勝男

    竹中勝男君 いや、御答弁の最中ですけれども、私の要求しておるのは、さっきあげた項目について御答弁願いたい。だから、それは書類にして出していただきたい。
  57. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) 書類にして出すといたしますると、小委員会に御提出をいたしまする書類がその御質問の……
  58. 竹中勝男

    竹中勝男君 それを簡単にして、皆がすぐ読んで理解できるようなものにしていただきたいと思うのです。
  59. 山下義信

    山下義信君 明日保険経済に関する小委員会を開くことになっているのでありますが、厚生省の方では明日にならなければ、三十一年度保険経済の見込みその他の正確な資料の作成は本日のところはできませんので、明日は間に合せまして提出いたしますということでありましたが、明日小委員会に提出された資料は、もとより全委員会にこれはそのまま即座に御配付していいと私は考えております。
  60. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  61. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を起して。
  62. 山下義信

    山下義信君 午前の竹中委員質疑応答を承わっておりまして、一部負担金額について、その数字にはいかなる根拠があるかという質疑応答が主要な点であってなされたのでありますが、私が承わっておりますと、その一部負担金額数字については当局は数学的な基礎はないのだ、そんな合理的な根拠はないのだ、こういう答弁が一度あったように承わるのです。その次には、諸般のいろいろなことを勘案をして、そうして種々な点の配慮を加えてこういうふうにきめたのだという答弁があった。それについて若干の御説明があったのです。なお、前回の委員会で田村委員質疑の要点を後に承わりますと、これは私まだ速記を拝見していないのでありますが、要点をメモしたものを見ますると、衆議院側に対して一部負担金の修正等の御質問があって、衆議院側の答弁は、別にこれという合理的な根拠があるわけじゃないが、まあ腰だめでこういうふうな数字の訂正もしたわけだというような御答弁があったと承わっておる。衆議院側の御答弁は別として、政府はこの五十円、三十円、二十円といったような一部負担のこの金額数字に何らか基準があるのか、何らか根拠があるのか、腰だめでこの程度でよかろうという、いわゆる俗に言う社会通念というか、いわゆる常識的判断で、別に合理的根拠がなくてやったのかということは明確にしておかなければ、答弁に二様にも、三様にも答弁があると私は困ると思うのです。ですから、私は竹中委員質問に対する答弁に、いろいろな諸般事情勘案をして配慮するところがあったのだ、拠り所があったのだということになれば、それらの資料を私はこれまた文書として提出してもらいたい。どういう検討に基いて、どういう拠り所があってこれらの数字が出たのかということを、資料として出してもらわなくちゃならぬ。そうでなくして、まあ大体この程度でという、俗に言う社会通念というか、常識的判断のもとにいわば腰だめでこの数字を出したのだ、この程度金額が出してあるのだと、こういうことであるならば、これには資料を要求する方が無理であるから、必要はありません。  ことに、先ほど点数に関係があるかないか、いわば新医療費体系に関係があるかどうかという質疑応答の場合に、これはもとより関係がない、一部負担金にはそのものは関係がないが、現行法初診料というあれがそのまま五十円になっておるので、あれは非常にぴったり合って都合がいいが、今度点数を変えるというようなときには、その点数とぴったり合うようにしておくと便利が悪いから、今度改正案でいうように五十円という金額をずばりと出したのだということは、これは新医療費体系の関係の有無に便乗して、改正案が適切に改正されたということの当局は答弁をなされたのだが、そうすると、言いかえると、一部負担金は定額制をとったというのです。割合というか、一部負担率というものの、そういうような制度でもなく、あるいはその他の制度でもなくして、今回政府がとった一部負担金の、一部負担制度は、定額制の一部負担金の制度をとったという。そうすると、その定額制の金額の裏づけは、定額制をとる以上は、あるのかないのかということを明確にしておかねばならぬ。私の最初に提起した問題と同じで、何か定額制をとったその数字理論根拠があるのならある、ないのならないということを、きょうの午前のこの質疑の終りには締めくくりをつけておいてもらわなくっちゃいかぬと思う。これは関連して、その点を一つだめ押しをしておきたいと思うのです。
  63. 高田正巳

    政府委員高田正巳君) どういう場合に五十円とか、三十円とか、二十円とかいうふうに、私どもがきめましたその金額自体につきましては、先ほど私がお答えをいたしましたように、何と申しますか、積み上げ計算的な拠根はございません。従いまして、今の御質問の中のお言葉を拝借いたしますれば、社会通念上といいますか、この程度金額ということできめたわけでございます。ただ、それをきめまする際にいろいろなことをも考えましたということをちょっとつけ加えたわけでございますが、しかし、それは別に資料として御提出を申し上げるような性格のものではございませんので、先ほど申し上げましたように、二、三のことを考慮しながらその金額を、何と申しますか、腰だめといいますか、社会通念的に三十円なら三十円、こう押えたという意味でございます。
  64. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  それでは休憩をいたします。    午後零時五十七分休憩      —————・—————    午後二時二十七分開会
  66. 高野一夫

    理事(高野一夫君) それでは午前に引き続き、本委員会を再開いたします。  まず委員異動を報告いたします。紅露みつ君が辞任池田宇右衞門君が選任されました。     —————————————
  67. 高野一夫

    理事(高野一夫君) 労働保険審査官及び労働保険審査会法案を議題といたします。御質疑を願います。
  68. 山本經勝

    ○山本經勝君 先般の本委員会の理事会で議題になっております労働保険審査官及び労働保険審査会法案につきまして、審査に資するために調査をいたしました。それで御指名をいただきまして、私参りました。で、この調査の概要をまず冒頭報告を申し上げます。  労働保険審査官及び労働保険審査会法案の審査に資するために、埼玉県及び福岡県における労働基準法及び労働者災害補償保険法の施行状況を調査いたしましたので、その結果の概要を御報告いたします。  まず、埼玉県については、労災保険の適用事業場は約九百件でありまして、これらの適用事業場に働く労働者は十七万名強であります。二十九年度中に支払われた各種補償の総額は一億三千九百万円に達し、その件数も一万六千六百十六件の多きに達しているわけでございます。その産業別補償費の内訳を見ますと、製造工業が全補償費の六〇%を占め、次いで建設事業の二二%、それから貨物扱い業の約六%立木伐採業の五%、こういう大体の順になっておるようであります。さらに遺族補償費について見ますというと、建設業の二十二件、七百八十万円が最も多く、次いで製造業、林業その他の事業となっておる実情でございます。建設業は二十八年度はわずか五件であったのに対しまして、二十二件という飛躍的な増加を示しておる点は全国的な傾向であると考えられるのでありますが、将来建設業に対しては効果ある安全施策の実施の必要が痛感される次第でございます。  次に障害補償費の内訳を見て参りますと、補償件数は五百五十一件で、減少の傾向にあるのに反しまして、補償費は四千七百九十万円と、前年に比べまして約千八百万円の増加となっておるという点、これは賃金の上昇等による点もあるのでありましょうが、障害の程度が高くなったものと、こういうふうに想像されるわけでございます。この件数は産業別に見ますと、最高が金属工業の百二十三件、次いで機械器具工業、製材、木製品工業、こういう順になっております。以上は二十九年度の労災保険の支給の概要でありますが、三十年度も大体以上の程度のものと推定されておる実情でございますが、正確な数字は出ておりません  以上のごとく、本県の労働災害は建設業の例外はありますが、適用事業場及び労働者の数に比較して強度の災害は比較的少い。従って保険料の収入に対する支出の収支率も七五%程度であります。全国平均に比しましてやや下回っておる、こういう実情でございます。なお災害発生の最近の傾向を労災保険のメリット制の実施状況から見ますと、適用事業場の増加の傾向にあるにもかかわらず、漸減の傾向にある。すなわち料率の変更のないものは毎年約十カ所程度であり、料率の上ったもの、これは災害の増加した事業場でありますが、二十六年から三十年にかけて毎年四十カ所程度であるのに反しまして、料率の下ったもの、これは災害の減少した事業場でありますが、これは二十六年の六十六事場業であったのが逐年増加いたしまして、二十九年から三十年にはそれぞれ百四十事業場となっておるような次第でございます。  次に、保険審査官及び審査会に対する審査の請求の状況を見ますと、昭和二十九年度には審査官請求は十一件、うち決定は八件、審査会へ再審の請求をなされたものが審査請求事件数にいたしまして三件、うち決定が二件となっており、三十年度は審査官請求件数は十八件で、決定は十五件、審査会に審査の請求をされたものが三件で、決定が三件となっており、請求件数も比較的少いのでありますが、処理も大体円滑にいっているように見受けられる次第でございます。しかしながら、審査官決定を審査会決定によって取り消し、あるいは変更されたものがあることは注意を要する点と存じます。  次いで川口市における従業員八十五名の冷蔵庫並びに精米機等を製造する渡辺鉄工所の視察をいたしましたが、当工場は労働時間、残業、休日出勤等に対する割増給に関する違反等、労働基準法及びその他関係諸法規の違反が枚挙にいとまがない実情であります。かつ最近には年少の見習工に重大な災害が発生いたしております。当地は鋳物業等中小企業の多い地域であるのでありますが、基準法などの違反はきわめて多いものと推測をして誤まりがないと考えております。労働者保護の万全を期するためには、さらに一般の監督強化及び使用者の遵法精神の涵養が必要かと痛感される次第でございます。さきに労働大臣が全国労働基準局長会議の席上、訓示をなさった言葉を引用いたしますなれば、「これを単なる法の解釈、適用の問題として判断処理することなく、中小企業全体に対する労働対策ないし経済諸施策との関連において解決されるべきものと考える」と言われておるのでありますが、この意図がどのようなものであったかということは一応別問題といたしましても、労働基準局は労働者の保護を建前とした労働基準法を完全に適用し、あるいは実施させるような指導なりあるいは監督業務の強化による推進が必要かと考える次第であります。  次に福岡県につきましては、主として労災保険審査官及び保険審査会に対する審査の請求の実情等を調査して参ったわけでございますが、審査機関の活動状況は、昭和二十八年度におきましては、審査官請求は前月末残を含めまして八百十二件の多きに達しております。うち決定を見ておるものは五百六十三件であり、この決定中請求が容認されたものが二十七件、一部容認されたもの二十六件となっており、さらに保険審査会請求は、前月末残を含めまして三十九件で、うち決定を見ておるものは二十二件で、請求が容認されたものは四件となっている。また補償審査会に請求されたものは一件あります。これは容認をされております。  次に昭和二十九年度について見ますと、審査官請求が前年末残を含めて千十件の多きに上っておるのであります。このうち決定を見ましたものは七百十八件であります。そのうちでさらに請求の容認されたものは四十三件、一部容認されたものは三十三件となっておるような次第でございます。保険審査会については、請求は前年末残を含めまして四十八件で、うち決定を見ているものは二十四件あり、このうち容認されたものは四件、一部容認されたものは二件となっている。補償審査会は二件でいずれも決定を見たわけであります。  次に昭和三十年度については、審査官請求は二十九年末残を含めまして千百六十二件でございます。うち決定を見ているものが八百七十九件あり、このうち容認されたもの四十五件、一部容認されたものは五十一件。さらにそのうちで保険審査会へ再審の請求をしたものが二十九年末残を含めまして七十六件で、うち決定を見たものは三十一件あり、そのうち容認されたもの一件、一部容認されたもの二件となっております。補償審査会については三件ありますが、いずれもいまだ解決を見ておりません。  以上が審査機関の上に現われました数字でありますが、件数は逐年増加の傾向があり、三十年度は審査官請求件数は千百件をこえ、保険審査会請求も七十六件の多きに達しておりまして大体審査会に請求するものの一割に相当する状況でございます。請求内容はほとんど傷害等級の変更を求めるものであり、ついで業務上の決定を求めるもの、再発の確認を求めるもの、及び給付制限の取り消しまたは変更を求めるもの等となっておりますが、事務処理は現在審益官の手で円滑に行われておるといって大体誤まりがないと考えます。  次に、審査決定の内容を見ますと、審査官請求及び審査会請求の一割強は全部または一部容認されておる。特に注意を要することは、審査官の決定をさらに再審査した審査会が請求の一割強を全部または一部容認しておるという点であります。これは審査会が現地において三者構成の妙味により、労働者の保護の万全を期し得たものであろうかと思われます。  なお、福岡県においては、審査会に要する費用等について十分実情を伺ったわけでありますが、それによりますと、年間審査会に要する費用が四万円程度でありまして、しかも審査会では七十件から八十数件に上る多数の事件を取扱っておる、こういう実情が明らかになって参ったわけであります。また、今回の審査官法では、審査官の職権を特に強化しておられる点がおもなものでありますが、今回の調査の範囲内では審査官が事実の審査を行うに当って労使とも十分協力をいたしておりまするし、それからさらに審査会の活動が非常に円滑に進行しております関係上、新しい提案になっております法案のような実情ではなく、むしろこの点では現在のような三者構成によってやられることの方が実態に即した労働者を救済するという法の趣旨にも合致するものであるということを基準自身で言われております。  最後に、今回の審査官法は労働基準法第八十六条の労働者災害補償審査会を廃止いたしまして、基準法のみ適用される労働者の補償に対する審査の請求は審査官どまりとなっておりますが、この点は特に保護の必要な五人未満の零細な企業に働く労働者の取扱いに著しい不均衡になるのではないかというふうに憂慮をされております。先ほど申し上げました通り、福岡県においても毎年二件ないし三件の補償審査会請求が出ており、さらにその請求が容認された事件が多い実情でございます。  以上、今回の調査の概要を御報告いたしましたが、具体的事件の内容その他問題点につきましては、審査官法案の審査の過程におきまして、関連してこれを解明して参りたいとかように考えます。ただつけ加えて申しておきたいことは、今回の調査に当って埼玉県と福岡県という形になったのは、埼玉県は大体中小企業が非常に多い、しかも何といいますか、零細企業を含む中小企業が、福岡のように大資本による基幹産業、鉄鋼、石炭、化学、こういったような大工場、大資本による大企業のもとに下請けをやった中小企業という形でなく、主として独立された零細な中小企業が散在している、こういうような状態のところと、福岡のところで申し上げましたように鉄鋼、石炭、化学、こういった基幹産業でしかも代表的な大企業がございます。従って中小企業はありますけれども、これが多くはこれらの大資本の大企業の下で下請といったような関係で、一つの関連性をもっているというところの相違性があると思います。そういう点を特に考慮に入れまして、以上の通り調査をいたし、御報告を申し上げる次第でございます。     —————————————
  69. 高野一夫

    理事(高野一夫君) この機会に委員異動について報告いたします。五月十五日榊原亨君が辞任長谷山行毅君が選任されました。     —————————————
  70. 山本經勝

    ○山本經勝君 きょう政府側でおいでになっていただいておるのは労働省と……。
  71. 高野一夫

    理事(高野一夫君) 武藤政務次官、富樫労働基準局長、村上総務課長が労働省からお見えになっております。
  72. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでは一つ質問をしてよろしいですか。
  73. 高野一夫

    理事(高野一夫君) どうぞ。
  74. 山本經勝

    ○山本經勝君 まず第一番にお伺いしたいのは、大臣お見えになっていないようですから、次官でもまた局長さんでもけっこうですが、労働保険審査官及び労働保険審査会法案なるものが、内容についてこまかな質問はあとから申し上げますが、従来あった基準法の定めております審査機構、審査会機構を廃止しなければならないという私は理由が実はわからぬわけなんです。そこで提案の趣旨はむろん新しい一つの立法措置になってくるであろうと思うのですが、それについては基準法の根本的な精神が抹殺されるような結果が起りはしないかということを強く憂うるものであります。ですから、まず従来あった基準法の三者構成による審査会機構を廃止しなければならないという点から一つ御解明をいただきたい、かように考えます。
  75. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) お答え申し上げます。労災保険と基準法におきまして労災補償の問題を扱うのでありますが、実質的にはやや似た格好になっておりますが、法律的な立場から見ますと、二つの制度は非常な違いがあるわけでございます。で、基準法に基く補償のほとんどの大部分は労災保険でまかなっておるわけでございます。その労災保険につきまして、何か問題があった場合に一々裁判所に持っていくのであれば、非常にこの労働者の権利救済上困るというので、何とかして行政のワク内において権利救済の制度を設けよう、そのために監督署長の扱いに不服な者は審査官、そうしてそれで不服な者は審査会、こういうことで決定して参っておるわけであります。で、この労災保険にかからない五人未満の問題は、これは保険のように役所と労働者との権利義務の争いでなくして、労使の争いになるわけであります。この労使の争いに対してこれまた裁判所に持っていくということは非常に実際上関係者の権利救済の上において不便である。しかし何か救済の方法はなかろうかというので、便宜この審査会、労災補償審査会を設けてそこで救済しようという建前になっておるわけであります。しかしこの補償審査会というものを独立に設けるということは、法律上は独立なんでありますが、実際問題として全国一年間に五十件内外しか事件が出てきませんし、かつまた労災についての実際の学識をもっておる労災保険審査会があるわけでございまするので、形式はこの保険審査会と独立の労災補償審査会ということになっておりますが、実質的には同じ方々が委員になっておるのであります。そこで第一に、なぜ基準法についてその制度を廃止したかということでありまするが、一つの動機は、保険におきまして、審査会を廃止することになった同じ人がなっておる。本家本元の方が一応廃止することにしたということが一つの契機になっておるわけでございまするが、もともと、さらに突っ込んで考えますと、保険の場合は、審査会の決定というものは法的な拘束力を持つのであります。しかるところ基準法の方におきましては、元来労使の争いである。そうしてそれは基準法上の最低労働条件でございまするので、これは他の者がとやかく言う余地がないはずである。で、決定は裁判所で決定すべきものである。そこで基準法の条文を見ますと、補償審査会は、事案の審査または仲裁をするという文句を使っておりまするが、この審査または仲裁ということは、すべてのこれに関する案件についての裁判所の判決例は、すべて一致してこれは拘束力がない、単なる勧告の程度に過ぎないものである、こういう裁判所の判決例が全部一致しておるわけであります。つまり勧告程度である、こういうことになっておるわけであります。そこで、そういう意味におきまして、保険の場合と基準法の場合とが法的な意味が非常に違う。そこで、一体それならばどうしたらいいかということで、今回の保険に関する改正におきまして、審査官がこれを第一次的に扱うということになりましたので、審査官に同じような基準法の案件について扱っていただく。ただその場合に、従来三者構成で民主的にやっておったという精神は、これは尊重しなければなりませんので、その方が妥当と考えまするので、審査官が扱う段階において、労使の代表委員をかねて委嘱しておきまして、その労使の代表委員と申しますか、代表参与と申しますか、その人たちの参画を得て、その事案についての意見を述べる、こういう制度にいたしたわけでございます。
  76. 山本經勝

    ○山本經勝君 局長お尋ねいたしたいのですが、今言われた労使の委員をあらかじめ任命といいますか、あるいは指名といいますか、きめておいて、そしてそれに参画をさせるというのでしょう。参画する場合、三者構成の機関とどうでございますかね、同じことじゃないかと思うのです。それを参画させ、あるいは名称はどのような形にせよ、参与といいますか、いずれの形にいたしましても、公益関係の代表を、利益代表という言葉は非常に問題があるようですから、一応問題があるといたしまして、とにかく第三者公益的立場に立った委員を中心にして、労使双方の代表を加えた三者で協議をするということと、私は実質的に変りがないと思うのですよ。それならば、しいてこれを廃止して、何といいますか、審査官によって意見を聞いてやるという形に変えんでもいいんじゃないかと思うのですが、そこら辺あまりにも技術的な点だけを考慮されたような印象を受けるのですが、その点どうなんですか。   〔理事高野一夫君退席委員長着席
  77. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) この基準法の労災法上の案件は、先ほど申し上げましたように、非常にわずかの案件でございます。従いまして、たとえば一つの県におきまして、一年間にたった一件しか出ないというような平均率になっておるわけであります。そこでそういったものにつきまして、特殊の委員会を設ける、設けましても、この委員の方々が同種の事案をいつも手がけているというのでございますと非常にいいのでありますが、毎年改選される委員の方が新たに改選されてきて、年に平均一件しか扱わない、こうなると、そういう方々はみんな何と申しますか、しろうとの方でございまして、非常に問題の処理に御苦労になり、かつ手間ひまが非常にかかる、こういうことになりますので、実質的には、同じ案件をほとんど常時扱っている労災保険の方の機関を、こちらの方で同じように利用することが、実際的に有効であり能率的である。そこで今度の保険の方が、審査官に労使の代表参与がつく、こういう態勢になりましたので、これを基準法上のその問題の扱いに当っていただく、こういうことの方がより実際的であり、妥当である、こういう考え方であるわけであります。
  78. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほどちょっと御報告の際にも申し上げたのですが、やや詳細に申しますと、今全国各都道府県別に見ますと、なるほど仰せの通り、件数が少いところがあるのです。ところが福岡のごときは、何と申しましてもこの事件数というのは相当なものだと思う。二十八年度の分を見ましても、審査会に再審査の請求をしたものが二十二件、それから未解決のもの、数量は何ぼになりますか、前月末の残事件、残った未解決の事件を含めますと三十九件、そうしてこういう件数が年々かかっているわけです。それから二十九年の実情を見ましても、大体四十八件という事件がかかっている。それから三十年度におきましても七十六件という事件がかかっている。この事件というのは、少し詳細に御説明申し上げると御理解できるのかもわからぬと思いますが、問題は一つ一つの問題が異議の申請であり、不服の申請がありますというと、これを実地調査をし、それからまた会議をもって協議をし、さらに必要であればいろいろな鑑定人や証人等も呼び出してやる、こうやって参りますので、この件数は少いものではないわけなんです。で三十年度の現在まだ審査中のものを含めまして七十六件かかっている。そうしてほとんどひっきりなしの状態審査会が開かれいる。これは私どもたびたびその実情を見たり、あるいは要請に行ったりしてよく事情を知っているわけで、三者構成のこれらの委員の人々の努力というものは並み大ていのものではない。こういう状態であって、なるほど一年に一件しか、あるいは二件しかないという都道府県よ。あることは、これは事実であります。ところが福岡のごときは、あるいは北海道のごときは、やはり労働者が多いということによって私は裏づけられると思うのですが、こういうふうに事件が多い。しかも現在福岡の場合は、基準局として六人の審査官で審査をして、どんどんその処理をしていく、そこでどうしても労働者側がこれに絶対に応じない、あるいは取扱いが妥当でないと考えるということから、再審の請求をするのですから、そうした事件が今申し上げたように非常にたくさんある。そうして三者構成の会議が毎月、一カ月のうちに多いときには六回も七回も開催されている。こういうような実情です。それから現地の調査に出かけたり、いろいろな仕事を活発にやっている。この状態をみますというと、私は決して事件が少いということはいえない。なるほど労働者の少いところは、おのずから労働者の災害も少い、こういうことだと思う。で、全国的にみますと、やはり数からいいまして平均二百十五件の再審請求があることになっている。これは私は決して少い事件というふうに考えるわけにはいかぬ。ですから、そういう状態から考えてみましても、今言われるようにわずかな事件だからという考え方は、これは法そのものの精神から、是正をしていただかなければならぬ点だと思う。で、労働者が業務上災害によって作業を休む、あるいは治療をしたけれども、十分にもとに復することができぬ、従来の作業を続けることもできぬというような場合に補償が生まれる。あるいは死亡した場合には、むろん遺族に対する補償が生まれるのですが、そういう問題についての審査をする機関として、この事件というものは私は決して少数だということで葬り去るわけにはいかぬと思うのですが、この点局長は、少数だからという理由でもってそういう機関を廃止することが合理的だ、こういうふうに仰せになるわけですか。
  79. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 私が先ほど申し上げましたことに食い違いがあったのであれば、恐縮でございますが、労災保険でなく、基準法の事件ということで申し上げたわけであります。労災保険に入っておらない、基準法で直接に扱いまする異議申し立て事件は、たしか福岡におきましても、二十九年、三十年、いずれも年にわずか二件であったと考えるのであります。  そこで先ほど申し上げましたのは、その二件だけのために、この独立の特殊の機関を設けましても、その機関の方々は、しろうとの方々であれば、非常にむだなと申しますか、必要以上の苦労と手はずと、それからいろんな各種の事例の研究とかということで手間ひまがかかって困る。だからできるだけ実質的に同じ事件を常時扱っておる保険の方の機関をその方に援用した方が能率的であり、実際的であるということを申し上げたわけでございます。で、今、先生のおっしゃいました年間二十件も三十件も扱う保険の方の審査会の御活躍につきましては、私どもといたしまして、特に事件の多い福岡等におきましては、非常に感謝し、敬意を表しておるわけでございます。ただこれを今回何ゆえにこういう制度に改正したかという趣旨は、前に大臣の提案理由でも申し上げましたように、元来最終的には裁判で決定すべき法律解釈適用の問題である、それを各府県ごとに三者構成の審査会で決定いたされますると、それでもう手続は最終的に決定されてしまうということになりますと、従来まま県ごとにいろんな同種の事件について、ある県の審査会は容認する、ある県の審査会はこれを却下するというような、まちまちの例がございまするので、そういうことのないようにいたしたい。それからその間におきまして、この例はかねてのわれわれの悩みであったのでありますが、研究してみますると、失業保険につきましても、あるいは健康保険につきましても、今回の案のような制度がすでに実施されておりまするので、その例にならって今回の制度を作ったわけであります。ただ先生のおっしゃいますように、官僚独善といったようなことになってはいけませんので、従来審査官が一人でやっておる、年間、全国的にみますると約三千件あるのでありますが、三千件を審査官が単独で扱っておったのを、それは、まあ単独で扱っておりましても、そのうち二千八百件くらいのものは関係者の得心を得て、その段階で解決しておったのでありますが、今回は審査官の段階に最初から労使の代表参与の御参画を願って、この問題の処理をできるだけ現地において早期に解決したい、そういたしますると、審査官だけでも二千八百件解決しておって、残りが二百件でありまするから、今回の制度によりますれば、おそらくは三千件のうち二千八百件、それにプラス・アルファの事件がその段階で解決されるのではなかろうか、こういうふうに期待しておるわけでございます。
  80. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の二件福岡にあったというのは私もよく存じておりますし、最近の事件でも、先だって当委員会で救済の要請をしたわけです。これは基準法の点からいって、いろいろ問題が複雑な要素を示しておるのは、つまり労使双方の関係は、一つの事業場が合法的であれ、非合法的であれ、いかなる形にもせよ、とにかく仕事があるということになりますと、事業主は何らかの人を雇う、自家労働であるなら別といたしまして、雇うのですから、これは現に二瀬における下相田の炭鉱の落盤による死亡事件についてもまだ未解決ですが、こういったような事件、これは当然保護されていかなければならぬ、労働者のやることには変りはないと思うのです。これは局長も十分御存じで、しかも努力をいただいておるわけですが、そういうような問題がなるほどわずかではありますが、労災審査会が先ほど申し上げましたような多数の事件をかかえて、一カ月に多いときは七日も八日もかかるというのですが、そういう会合をひんぱんに開いて審査していく上に、これらをやはり集約していく、これだけでは私はないと思うのです。けい肺の検診が昨年行われました。その結果についての数字も後ほど詳細に申し上げたいのですが、大体二百六十ばかりのいわゆる認定が行われております。最近労働省の方からそれぞれ現地に通達になって、昨年のいわゆる検診の結果が集約された。それから今度は、今までにけい肺で死亡しておる人々に対する問題も新たに加わっておる。そうしますと、相当な問題がこの審査会にかかってくるわけです。ですから、そういうことになりますと、今の審査官を中心にした労使双方の参与によった機構をもってやると言われるのであれば、なるほど基準法による審査はそこに一緒に集められた方がいい。しかも審査官だけがやっているのじゃなくて、これも審査会の委員が協力してやっておる実情を御勘案願えれば、少くともこれを労働者災害補償保険審査会にまとめて、少くとも労使双方の参与を許すというものじゃなくて、従来の機構そのままでやっていって少しも差しつかえない。しかも経営費の面でもわずか四万円というのです。むしろ労使双方が協力して、政府負担を軽からしめるような努力さえもしばしば現われている。そういう実態に即して考えてみますと、どうしても私ども改正をせなければならぬという必要性を感じぬわけなんです。しかもそのこと自体が、先ほど言われるような法の解釈適用、ここに重点が置かれている。実態に即した、災害によって困っている労働者をどうするかという保護立法の精神ではなくて、単に事務上の法解釈適用の上で簡単にずばずばと事務的に処理をしていきたい、こういうねらいがあるとしか受け取れぬわけなんですがね、そこら辺がまだどうも局長の御説明では納得がいかない。なるほど労使双方の意見を十分に聞いて、そこで民主的に決定をするからいいではないか、こういうふうに仰せになるかもわからぬ、しかし今までの例は、労使双方の意見を聞くというのであれば、いろんな意見を言うでしょう。しかしそれをどのように取り上げるかということは、かかってこの審査官の判断に属するそうしますと、うるさくなったら、えいこれで適当にやっておけ、こういうととが今までの慣例なんです。そういうことでありますから、勢い救済されるべき災害をこうむった労働者の補償がほんとうに実施されぬ、こういうことになってくるということは、これは私は火を見るより明らかなところではないか、こういうように考えるのです。そこら辺もう少し懇切な一つ御解明をいただかぬと理解がいかぬわけです。
  81. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 先生のおっしゃるお心持は非常によくわかるのでございますが、法律論で法の解釈適用ということを申しましたのは、制度的に元来裁判所で決定さるべきことであるという建前から問題を申し上げたわけであります。従いまして問題がこじれますと、結局裁判所に行ってえらい手数がかかるのですから、裁判所にかりにかかっても原審がくずれぬような制度というものが一方においては必要かと考えるわけであります。それからいろいろな事案を私どもも見て確かに気の毒だ、こういうような場合もございます。けれどもそれは全般的に見た気の毒さということであって、業務上の障害であるか、業務外の障害であるかということはやはり客観的に決定しなければいかぬか、あるいは傷害の等級の決定にいたしましても、単に労使関係で金を出す出さぬという関係でありまするならば、あるいは行政官なりあるいは第三者が中に立って和解をさせる、遺族がかわいそうだからもう少しよけいに見舞金を出せというようなことは言い得るのでありまするが、保険という制度になっている限りは、指一本切れた、切り取られた傷害等級というものは、金持の労務者でも、貧乏な労務者でもやはり客観的に法律の定める基準によってやるほかはない、ただその問題は事実認定が妥当にきまるかどうかということ、法律解釈の前提であるところの事実認定が妥当であり、正しいかということに問題は結局しぼられるかと考えるのであります。この点につきましては、今、先生がおっしゃいましたように、審査官がめんどくさくなると、やっちゃえというような場合も絶無とは私申しませんが、客観的に見まするならば、先ほど数字であげられましたように、全国的に見れば三千件のうち二千八百件は審査官の判定に関係者が得心して処理されておる、それに不服な残り二百件について審査会が審査して、なるほどこれはこの審査官の決定がまずいというのは、そのうちのわずか一割程度であるということは、これはその一割だからいいのだということは決して申し上げませんが、全般的に見て、審査官の段階におきましても相当一生懸命にまじめにやっておるということは、一つ先生にもお認め願いたいと思うのであります。今回の制度におきましては、先ほど申しましたように、一方におきましては審査官単独で扱っておった段階に労使の代表参与の御参画を願うと同時に、従来は制度的にあいまいでありました証人の喚問とか、あるいは鑑定人の鑑定とかいうようなものが制度的にきわめて——きわめてというよりも制度的にはそういうものの取りきめがなかったのでありますが、今回は厳重にそういう制度を法的制度に取り入れまして、誤まりなきを期しておるわけであります。そこら辺一つよろしく御了察をいただきたいと存ずるわけであります。
  82. 山本經勝

    ○山本經勝君 この審査官のやっておるこの審査、それに対して不服があって再審の請求をするという手続的な問題、その他審査そのものが私は不都合であったと申し上げているんじゃないんですが、それは十分非常に努力をしていただいたことも私ども認めるのです。ところがそこで今度は、今、局長のおっしゃったように、実態に即した問題の解決ということは、やはり災害の起った現地がやはり中心だと思うのです。それで私も直接関係した、たとえば貝島の大ノ浦炭鉱での死亡の問題なんです。簡単に要点を申しますというと、作業個所が少数の非常に天井の低いスラをもって石炭を運ぶ作業個所で、しかもその曲方の坑道のワクがまを掘っておった。そうしたところが——ワクがまと申しますのは、坑道を維持するために大きな鉄のはりを乗っける柱を片盤と両方に二本立てる。それが下がやわらかいところには岩盤につくまで掘り下げなければならない。二尺ばかりの穴を掘り下げるために非常に短時間に掘らなければ天井が崩落する心配がある。従って先山が作業を一生懸命でやっておる。従って穴が深いものですから、うつむいてその中に手を入れて、突いてほごした泥を出すというような作業が一時間半ばかりにわたって継続された。その間うつむき込んでおったために頭に血が集まったというような問題が起ったことはあるいは御承知かとも考えます。そこでそういう状態でありましたが、これは脳出血であるということで審査官の方は公傷にしなかった。つまり業務上の死亡ということにならぬのだという認定がなされた。しかし福岡の審査会はそれを取り上げて——遺族からの申し立てもございましたし、取り上げまして、非常に懇切な現場の実情を現地調査をし、作業の工程等を実演まですることによって、長い時間二尺余りの深い穴の中に頭を突っ込んだ形で、ワクがまを掘ったこの作業を強行しておったということが認定された。そうして業務上死亡に該当した、こういう事例もある。その他今まで再審によって業務上死亡の認定あるいは等級の変更等がなされた事例はほとんど具体的な現場について……このことは今言われた実態に即した問題の究明ということになる。これはやはり形の上で法規解釈と適用だけに終るならば、こうしたほんとうの意味で努力をした労働者の死亡もあるいは災害も結局法の精神とは反して救済されないという結果に陥っていくことは火を見るよりも明らかだ。こうしたひどい事件は割合に少いのです。一体に等級の変更とかあるいは業務上の認定の中でもこの種の深刻な問題は少いのでありますけれども、しかしこの一つの事件がきわめて私は重大だと思います。この法の精神はまじめに働いた労働者が業務上のために死亡した、あるいは災害をこうむったということをほんとうの意味で救済することが目的だと思う。そうしますと、申し上げるように、審査官の法文解釈や適用だけに終るような事態になりますというと、これは救われない。結果はこういう事態になってくる、あるいは公傷が残るというような場合の認定と申しましても、実際はその人のからだを単に診察すればいいということだけではなく、その作業の実態というものが調査されなければほんとうの意味の……その労働者がそのときの状態においてどうなったか、あるいはその後どういう形で治療の経過をたどってきたかということもやはり実態に即するという問題の中に入ってくる。こうした問題はやはりむしろ事務上の煩瑣とか何とかいうことで葬られるような事態になりますというと、これは全く法の精神を没却したあり方と、こういうことになっていくと思う。ですからそういうような問題を今度の法案の中では、つまり再審はするが、しかしそれは中央の審査委員がやることになっている。中央でやる、それではこの実態に即した問題の処理なんということはおよそ縁の遠い話で、わざわざ出てくることも困難ですし、しかもわずかな給与で生活をしている労働者が東京まで出てきて査証をしてもらわなければならぬ。こういうようなことでは福岡のごときは年間何十人もが東京に上ってこなければならない、こういうような問題になってくる。このことを考えてみますと、私はそれは福岡は労働者が多いからそうなってくるのでありましょうが、全国的に見ましても、この種労働者のそうした経済的余力というものはありますまいし、また、ありましても時間的にも許せない。それが中央で再審ができるということになるのでありますから、その点はまことにこの立法精神とは反する結果になる。この点から見ましても、どう考えても、単に法解釈と適用を事務的に簡素に、早く片づける、こういう考え方基礎になって今度の基準法の一部改正を含むこうした立法措置の提案になったのじゃないか、こういうふうに考えざるを得ぬのですが、その点はどうなっておるのですか。
  83. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 今回の制度は先ほど申し上げましたように、各県でまちまちの決定が最終的に決定されてしまうということを、もっと合理的に、的確にやりたいという趣旨に出ておるわけでございますが、ただいま例をもってあげられましたような脳溢血とかあるいは心臓麻痺とかいうようなものはいつも——一体法律には業務に基因すること明らかなる、こういうことで、非常にいつでも脳溢血とか心臓麻痺とかいうのは問題になることでございます。これはややもすると、現地において審査官が、大体その場合に死んだときの診断したお医者さんの診断書とか、場合によりましては、単に局の嘱託医というような者の診断なり、あるいは鑑定なりで処理する傾向が従来一、二あったようで、私も報告書を見て気がついた例もあるのであります。こういうようなものは審査会の労使中立の方々が現場に出かけて、いろいろ実演までしてなさるということは非常にありがたいことであり、この御苦労に対しては感謝するのでありますが、こういうことはそういう方々にお出まし願わなくとも、たとえば九州におきましては九州の大学病院とか、あるいは労災病院とかという権威あるところの医者の方々に厳密なる現地鑑定というものを、権威をもってなして判定していただけば、それはそれで解決される問題ではなかろうかと考えるわけでございます。  で、実際に事実認定につきましてそういうややこしい問題について厳密な鑑定をいたさずして、問題を処理するということに一番いかぬ点があるわけであります。それをそのまま上の方に持ち上げてくるというと、事態は非常にむずかしくなり、手間ひまがお互いにかかることになりまするので、今後この法案におきましては厳重に証人なり、鑑定人なりの制度を設けまして、今度は福岡にはただいま申しました病院のほかに、穂波にも病院を設けることにいたしておりまするし、そういうことで、できるだけ末端の現地におきまして、事実認定の適確を期するということで、一々東京に事案が送られるということのないようにしたい。また、審査官の段階に労使の代表参与がつきますれば、私の方からもしょっちゅう戒めまするけれども審査官の段階において労使の代表参与がこの御注意をいただけることになると存ずるのでございます。  そういうことで事実認定につきまして、事実そのものについて当事者においてほとんど争いがない。それを今度は障害等級表で第何号に該当するかという法律問題が残って、当事者から見ると、結局金が足りないということでありましょうが、法律論としては、障害等級表に、この事実はどっちに当てはまるかというようなことで争って東京に出てくる。そういう場合がほとんど大部分かと考えるのでありますが、これは東京は東京なりにそれぞれまた代表参与のついた審査会において決定する。審査会が見てこれは事実認定がなお不十分であるという場合には、あるものにつきましては原審差し戻しをいたしましょうし、ある事案につきましては、さらに権威ある方の鑑定を依頼しましょうし、場合によりましては審査会の委員が直接に現地に出かけるというふうに、もう関係者の方々が経済力もないのに無理々々東京に出てこなければいけないというような事態のないように事案を処理していきたいし、また、そういうふうに法案を構成しておるつもりであるわけであります。
  84. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の局長のお話によりますと、事実認定を何といいますか、実態に即してやっていくということはこれはけっこうなことで、そうなければならぬと思う。ところがそれを画一……、地方はそれぞれ北海道から九州にわたる各地方に分れるわけですが、それらの実情がまちまちで私はあるのが実態でないかと思う。むしろ、それが画一的に法解釈の適用だけの問題であれば考え得るといたしましても、事実認定を実態を基礎にしてやろうというなれば、これは私はまちまちであるのが本筋ではないか。ですから、今のお話はやはり法の解釈適用に重点を置かれておって、つまりその事実認定ということを第二義的に考えられておる、これが私は大きな問題になってくるのじゃないか。それでまず医師の認定にしましても、たとえば健康保険医あるいはまた指定された公立の病院あるいは労災病院等、直接関係のある病院の医師の認定であれば誤まりないということにならぬと思う。あるいはその傷害や実態等によりますというと、それぞれ専門の医師が、しかも医師にもやはり医師自体の能力にも段差があることはこれは否定できぬと思う。そうしますというと、その事実認定をすることにそれぞれ実態に即して差がある、あるいは地方々々によってまちまちである。むしろそれが私はこの事案については実態だと思うのですが、その点はどうでしょうか。それを画一的に局長の方では事実認定をするように……、なるほどそうなりますと、業務上の問題として扱われる当局としては簡単で都合がいいでしょうが、それじゃやはり労働者は助からぬと思う。ですからむしろまちまちであるのが実態であるから、やはり現場を主体にした事実認定が基礎になっていくということでないというと、私はやっぱり大きな矛盾があるように思う。ですからそこら辺はさらに一つ御審議を願いたい。
  85. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 事実は森羅万象ございまして、事実は一々の事件がすべて同じではもちろんございません。事実はそれぞれ同じ脳溢血で事業場内で倒れました場合におきましても、それが業務上の状態によりまして、あるものは業務に基因した脳溢血である、場合によりましてはそうでないというふうに、いろいろの相違があることは事実でございます。従いまして私は先ほど申し上げましたように、事実認定につきまして、できるだけ現地において慎重に科学的に、客観的になされなければならないということに特に力を入れたわけでございます。問題はその結果、同じ事実について法の適用があるものが業務上になる、あるものが業務外になる、これが私どもとしては非常に困るわけです。二、三日前も私書類を見て発見したわけでございますが、これは大阪の事件でございますが、私どもの常識から申しますれば、当然のことが逆に地方の審査会において逆の扱いを受けておる、そこで相手方の労務者は何としても不満であるというので、裁判所にかけたら、裁判所の方で、大阪の審査会の決定は間違っておると言うて取り消しをされておる。これなどもどもは、初めから裁判所の決定例の方が正しい、これはかねて地方にも通牒を出しておったのがどうしてこんなことになったかなというような感じで、非常に関係の労務者の人に迷惑をかけている。事実の認定は千差万別でありますが、それはそれなりに客観的、合理的に権威のある認定をする、法の適用につきましてはそれぞれの質に応じて間違いのないような適用をしなければいけない。これにおきましては先生と同感であり、先生も御賛同願えるのじゃなかろうかと思うわけであります。
  86. 山本經勝

    ○山本經勝君 今のまたお話だと、さらに新しい問題になってくると思うのですが、同じ事実が業務上と業務外の認定を求める問題でかりにあったとして、ただいまの引例によって、その認定が同じ事実の上に立ってその認定が違ったということは、これは私はむしろあなたの方の責任だと思う。この審査官の認定の誤まりであって、あるいは手落ちというか、むしろそういうことがあることをもってこうした立法措置を講じようということは、これはむしろそうした当局自身の認定といいますか、やはり業務上の問題として、むしろ局長の方から厳重に監督指導されて改善されなければいけない行政的なものである。ところが、法を改正しようという理由が、そういうところに理由づけられたのじゃこれは困ると思う。こういう点はどうなのですかね、今の同じ事実の上に立って、その認定が二つの監督官によって違っておったということは、どう考えても私ども理解できない。そういうようなことでは、私はさらにこの法改正の精神が重大な疑惑を生じてくる、裁判所の決定の方が正しかった、そういうことでは審査官というものは全くあてにならぬ、たよりないものになってしまうわけなんですが、その点はどうなのですか。
  87. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 第一次の取扱いをいたします監督署長の決定につきましては、われわれの方の業務上指揮監督の配下にございますので、できるだけ疑問のあるところは伺ってきますし、また、気がついたところはこちらからも指示いたします。審査官の段階はこれはある程度独立ではございますから、監督署長のようには参りませんが、しかしそれでもやはりわれわれの方の職制の内輪にありますので、これも相当のわれわれとしては目が届き、気がついたところは直させる余地が相当あるわけであります。しかし、それでもまあ手抜かりで間違いがないとは申しませんが、一番こまかく申しまして非常に恐縮なんでありますが、三者構成の審査会の段階になりますと、これは完全にわれわれの方から独立しておりまして、各県の審査会の扱いがまちまちでありましても、われわれの方としてはとやかく言うことができない。そこでまあ非常に悩んでおりましたところ、聞いてみますと、健康保険なり、失業保険なりが最終的には中央で決定をして、そういう二・三の扱いのないような制度になっておるというので、それに見習ったわけでございます。
  88. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、この認定の食い違ったというのは、審査会で違ったというのですか。
  89. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) さようでございます。
  90. 山本經勝

    ○山本經勝君 その具体的な事例はお手元に資料はございませんか。
  91. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) ございますが、ここにはございません。ここ数年来の事例を一々あげますと非常に大量の書類になります。それから一覧表にするというような性質のものでなくて、いろいろな条件がついて見られる性質のものでございまするので、大へん恐縮ですが、ここでは一々何できないというわけでございます。
  92. 山本經勝

    ○山本經勝君 先ほどの医師の判断、これはやはりたとえば労災病院というのは各地にございますが、こういう所、つまり国立もしくは公立等の病院であれば、たとえば傷害の程度がどういう状態であるかということの診断に信頼ができるというわけですか。
  93. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 町のお医者さんだから信頼ができない、国立病院だから信頼できるという意味合いじゃございませんが、おのずから社会通念上関係者なりあるいはたとえば最終的にもし裁判所にもっていかれたという場合に、証拠力が必要になりますので、できるだけそういう方々に鑑定なり診断を依頼する、こういうことにいたしますれば、関係者の方も納得していただけるであろう、こういう考えでございます。
  94. 山本經勝

    ○山本經勝君 それで先ほどの話の、同じ事実の上に異なった二つの認定がなされたというような事例は、この法案の審査に必要な重要な問題になってくるだろうと思うので、一つ資料の御提出をお願いしたいと思う。  そこで先ほどから基本的な問題としてこの立法措置を必要とするあるいは理由といいますか、そういったものを伺っているわけなんですが、一つ法律を作るというのですから、しかもそのことが今まであった基準法を一部変更したり、あるいは地方公務員法の規定を一部変更したり、あっちこっちだいぶ変更になるわけなんです。でありますから、根本的にその法律の施行上非常に適当でないという問題か、あるいはまた法の精神にのっとってうまくない、こういうことが何らかの具体的な、しかもしっかりした事由がなけらねばならぬと思う。そこで今まで伺ったところでは、結局事実の認定を、実態を基礎にしてやっていくという点で、私どもそれでそうなければならぬと思うのですが、そのことは各地方々々によってまちまちである、あるいは医師の判定にしても相当な違いがある。さらには同じ事実の上に立って認定された事案が食い違っておる、こういうような、こういう以上のような点でこの法案を成立させなければならぬという筋になってきたと思うのですが、これはむしろ私の方から考えますというと、実態に即してやるのであるなれば、今までやった再審の機関が、直ちに三者構成でもって協議決定されるという姿の方が一番合理的だと思うのですが、それはつまらんのだと、そういういき方ではだめなのだというはっきりした理由を示していただきませんというと、私ども理解ができないわけなんです。さらに一つ御解明をいただきたいと思う。
  95. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これは全く私どもといたしましては、保険金を払いたくないとか、締めたいとか、そういう心持では絶対にないのであります。何も、ざっくばらんに申し上げまして、これで役所の金が足りなくなるとかあるいは大蔵省から金をもらわなければならぬとかいう性質のものでなくして、全額事業主負担というわけであります。払うべきものに相当する保険料は、それはそれなりに取ればいいわけであります。問題は払うべきとき、払うべからざるとき、それが的確に行われるかどうかということに問題があるわけであります。そうして事柄の性質が、最終的には事実認定を、客観的な事実認定を前提とした法の解釈適用の問題である。従ってたとえば、例はちょっとかけ離れまするが、健康保険でもやっておりまするが、かけ離れた類似の例としては、労働委員会の不当労働行為の扱いというようなものも、これも事実認定はきわめて重要なウエートを持ちますけれども、最終的には法の解釈適用の問題ということで、中立委員がこれを判定を下す。そしてそれで不満ならば裁判所に行く、こういう制度になっておるわけであります。別段これでどうということはなかろうかと考えます。
  96. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、つまり保険金の支払いをどうこうというのではないというのですね。それから問題は的確に事実に即した支払いがなされることが必要である。それから解釈適用の上で統一させることが必要である。こういう意味からこの三者構成ではなくて、審査官が労使双方の指名の代表の意見を聞いてきめるということにした方がいいんだ、こういうことですか。
  97. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 筋道はその通りでございますが、ただそれだけでは、中立だけで決定したのであれば間違いが起らぬとも限らぬし、あるいは関係の方々も得心しにくい場合もあるかと思います。そこで健康保険は審査官だけでやるようでございまするが、われわれの方といたしましては、労使の代表を参与、参画していただく、法の建前は最終的には審査官なり審査会が決定するわけであります。実際上の運用におきましては、私どもこの法案立案の過程におきまして、役所の審議会の答申におきまして、できるだけ実質的に三者の構成の実をあげようという付帯的な意見もございまするので、運用上は、できるだけそういうふうに労使の代表参与も自主的に参画願って、関係者の得心と運用上の円滑を期そう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  98. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、先ほどまあ一つの事例をあげられたわけですが、同じ事実に対する取扱い、業務上の認定が食い違ったという事例。そこで的確に行われなかったというのは、それはだれが判断したんですか。
  99. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これは、たとえばある事件に、同種の事件につきまして大部分の審査会が白と判定したのに、ごく一、二の審査会が黒と判定する、どっちがいい悪いといいましても、われわれとしては差し出がましくなりまするけれども、大部分が白と言うのに、一、二だけが黒と言うことは、これはいかがかと、こういうふうに考えるわけでございます。  先ほど資料の要求がございましたので、全都というわけにはいきませんが、次の機会まで若干例を御提示いたす所存でございます。
  100. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の的確に行われなかったという資料を次回に提出を願って、またいろいろ御検討をいただきたいと思います。  そこで解釈適用の問題について、この解釈適用の問題になりますと、つまり公益といいますか、第三者の立場にある委員が中心になり、たとえば三者構成の現在の審査会の中には、いわゆる専門家がおられる、お医者さん、法律屋、それからいわゆる一般学識経験者といったような立場の人、これらの人々が専門家でありますから、それぞれ具体的に検討をしてやられるわけですが、それが実態を基礎にして、一応判定した事柄が裁判所に出て、裁判所であるいはその決定が違っておるということをきめる場合に、結局法解釈と実態との間の食い違いが私はやはり避けられぬのではないかと思うのですが、そこら辺を局長は、そういう事態が起らないようにできるという確信なり、具体的な措置が講じ得るのかどうか。
  101. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) これはその監督署長の段階、審査官の段階、それから中央の段階、この三つを経て、中央の段階において絶対に間違いのない、神様から見ても間違いのないということは私としては保証できません。その最終的決定は制度的には最高裁判所において決定されるわけでございます。しかし、そういう事例が最小限度に食いとめ得るということが、現在われわれの考え制度としては、この改正案ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  102. 山本經勝

    ○山本經勝君 そこで審査官が、実際問題として事案が提起されて参りますというと、審査に当って、その際に初めからもう労使双方の代表を参画させて、あるいは参与させてやるんだと、こういうのと、先ほどの私質問しましたけれどもはっきりしなかったのですが、はっきりお答え願いたいのは、現在の三者構成の協議決定機関が、最終的には公益委員の判定が中心になって決定をみるという行き方と、どういう点が違いますか、具体的には。
  103. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) どういう点と申しますか、先ほど申しましたように、事実白と黒との扱いの相違が出てくるのでありますが、そこはおそらくはおのずから三者構成で決定するということは、ちょうど労働紛争時のあっせん調停みたいに、おのずから妥協と、まあこの程度という、折り合うというような心持、また人間でございまするから、そこに感情だとか、冷酷さとかあるいは同情とか、そういうふうなものが織り込んで、そういうことになる傾向がちょくちょく出てくるのではなかろうかというように考えるわけでございます。法律問題でなければ、みんなが妥協してまあそれでよかろうといえばそれでいいわけなんですけれども、保険の金を出すべきか出さざるべきかということは、法律根拠がなければいけないわけであります。まあ気の毒だから出そうじゃないか、ああけっこうだというと、それだけではちょっと工合が悪いので、それでまた裁判所に不満なら不満のやつが訴えると、そこにまた文句が出る、こういうことになるので、まあ私どもとしては非常に苦心いたしまして、実際問題から申しますと、今まで三千件のうち二千八百件は審査官だけでやっておったわけでございます。その段階に一々労使の代表参与の御参画を願うということは、実は事務的に申しますと、参与の方々も非常に御苦労願うわけでありますが、こちらから申しましても非常なそれだけの手間がかかるわけであります。だけれども、おっしゃいましたような御意向、一件でもこの民主的な心持、建前を浸透さしてやりたい。だけれども一方におきましては、この客観的な的確性を得たい、そこの中間を非常に苦心して、こういう制度考えたということは一つ御了察いただきたい、こういうふうに申し上げるほかないわけであります。
  104. 山本經勝

    ○山本經勝君 大臣もお見えになっておるようでありますが、大臣に今のことを伺っておきたいのですが、今の局長お答えは、私の質問したこととは若干違っておるのです。これは簡単に申しますというと、いわゆる審査官が労使双方の代表、あらかじめ指名された労使双方の代表を呼んで意見を聞くかどうか知りませんが、いずれにせよ、意見を聞き、しかも協議に参画させるというのですよ。そうすると、現在ある三者構成による協議決定とは本質的にどういう相違がございますかね。一つ大臣の方からお答えを願いたいと思います。
  105. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) よくわかりませんでしたが、この何と申しますか、第一審の方では審査官の段階で労使双方を呼んで、そこでよく話を聞き、そこで最終的な審査会においてもやはり両方の意見を聞くという形になっておるのと、いわゆる三者構成とどう違うか、こういうことだと思いますが、その点は先ほど政府委員の方から申し上げましたように、やっぱりいわゆる三者構成というのは、先ほど申し上げましたようないろいろなファクターが加わって、いわゆる準司法的な判決を下すには適当ではないのではないかということで、苦心をいたしました結果、審査会の最終段階においては両方の意見はもちろん聞く、しかし決定するのは審査会だけでやると、こういう方がいいのではないか、こういうふうに考えまして原案を提出いたしたわけでありますが、しかもこの審査会の委員選任に当りましては、改正案に申し上げておるように、きわめて権威のある者を当らしめておる。そうしてその最終的決定にも権威あらしめる、こういうことにいたす方が現行法よりは合理的ではないかと、かように考えております。
  106. 山本經勝

    ○山本經勝君 どうも先ほどのお話で、大臣聞かれておったと思うのですけれども局長のお話では、つまりまず基準監督署長という窓口、その次に、そこで不服の申し立てをすれば審査官が労使双方それぞれあらかじめ指名された代表の意見を聞くというが、それは単に意見を聞くというものでなくて、参画してもらうと、こういうふうにおっしゃったわけです。そうしますと、労使双方の代表を参画させて検討するということになって参りますと、現在の三者構成機構とあまり変りがないと思う。そうであるならば、これをしいて国会に持ち出して立法化してやっていかなければならぬ、こういうことにならぬでも、現行状態を十分監督指導なさっていかれるだけで間に合うのではないかと思う。そこの考え方をはっきりお願いしたいのです。それから大臣の今おっしゃったいろいろなファクターが加わると、こう言われたが、そのファクターとはどういうものですか。非常にじゃまになるものですか、それとも実態に即した、事実の認定に基いて、ほんとうに法の精神に従って労働者を救済する、業務上の障害によって困っている労働者を救うということができるならば、それでもいいのじゃないかと思うのですが、そのファクターというのはどういうものなんですか、そこら辺を一つ
  107. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど政府委員の方からいろいろ、情実、因縁の話がありました。そういうようなことも加わるのではないかと、こういうことでありましたので、私もそういうことになるだろうと思っているわけでありますが、そこで今のいわゆる三者構成のことでありますが、三者構成で最終的決定をするということになっておりますというと、やはり決定のときにはその三者がお話をなさって、三者の意見を統一して決定をされるということになるわけでございましょうが、この改正案にはその決定に参与していただいて十分に意見を徴するということでありまして、最終的決定はこの委員会がする、こういうことでありますから、若干そこで現在のところよりは違ってくるのは当然のことであります。
  108. 山本經勝

    ○山本經勝君 それじゃもう一点だけ伺って、次に先ほど申しました資料の提出を願って次回にお願いしたいと思いますが、ただ、今言われた情実因縁というものがいわゆる決定に当っていろいろなファクターとなって決定を左右しておるのかというようなお話ですが、私はこれは実際驚くべき言葉だと思うのです。もし審査官が労使双方の意見を聞いてやるというこの法がかりに成立した場合における実施の状況から判断して、この情実、因縁というものは、これはおそらく人間のいるところどこにでもついておって、おそらくこの場合でも情実、因縁というファクターがなくなって、そうして非常に純粋な形で協議、決定ができてくるというようなことは、私はやはり期待ができぬのじゃないか、情実因縁というようなものは、今こそむしろ官僚の中にこれは大きく言ったらあって困る。それはたとえば基準法の実施の監督業務遂行についてもしばしばこういう事実を見つける、むしろこうした点は少数の官僚の手によって労使双方の意見を一応形式的にも聞いてやっていくというところの中にこうした問題は起りゃせぬか、こういうことを私は懸念するのですが、大臣はその点どうお考えになりますか。
  109. 富樫總一

    政府委員(富樫總一君) 先ほど大臣が私の説明を引き継いでこの情実、因縁という言葉を使われましたが、ここで私から弁明申し上げまするが、普通の悪い意味の、けしからぬという意味の情実、因縁という言葉でなく、意味合いは何と申しますか、ちょうど三者構成、三者というのはいろいろ立場が異なるので三者、こういうわけでございます。従ってこの立場の異なる三者が意思を統一して決定するということになりますと、その間におのずから、ややもすれば、全部とは申しません。みんな立場が違いましても、りっぱな人方にお願いしておるのでありますから、多くの場合間違いはないのでありますが、まま妥協して、足して二で割る障害等級にしても十級であるあるいは十四級であると対立した場合に、まあ理屈はもっともらしくつきますけれども十二級にしておこうというようなことがままある、大体労働争議の調停などが三者構成でやられるということのそのいい意味は、いい意味の妥協がそこに期待されておるから三者構成、従ってそれがこういうような最終的に裁判所に持ってゆくという場合にはそういういい意味の妥協は時によりましてかえって障害になる、こういうことであります。
  110. 山本經勝

    ○山本經勝君 私は特に的確に行われなかったという問題が非常に気にかかるので、どういうふうに的確に行われなかったかということは、今後審議する上に重要なかぎになってくると思いますので、次回に資料を出していただいて、さらに質疑をしたいと思うのです。
  111. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 労働保険審査官及び労働保険審査会法案に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  113. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次にお諮りいたします。  労働行政に関する調査の一環として、駐留軍労務者失業対策に関する件を議題といたします。御異議ございませんか——異議ございませんね。
  114. 山本經勝

    ○山本經勝君 海老塚労務部長さんにお伺いしたいのですが、例の駐留軍関係の労務者については、当委員会でもすでに決議等もありますし、それから御承知だと思いますが、法務委員会の方でも同様決議をしておるのでありますが、当面の問題として大きく浮び上っているのは失業対策、呉市だけではなくて、全国的に大体二万数千に上る多数の今年度の解雇者、離職者が出る実情のもとにある、あわせて不当労働行為の関係の問題も出ておるわけです。でありますので、決議に基く推進は当局として努力をなさっておることのように伺っておりますが、それが現在までどういう段階にまで進行しているのかさっぱりわからないわけであります。せっかく決議もございますので、現在までの交渉の段階、それから労働省の方も同様、先日実は中西労政局長にお目にかかりまして折衝の経過について一部承わったわけでありますが、この労働省の対軍折衝あるいは交渉、または調達庁における労務問題に関する対軍交渉、こういったものが二本建でやられておる姿がはっきり見受けられる、これがこの間に統一がありませんというと、将来これら関係労働者に対する労働関係諸法による保護が円滑にいかないだろうし、あるいは組合が念願しておるような不当労働行為の今後の絶滅ということも期しがたい。ですから失業問題、これは総括的に申しまして、離職に伴う失業対策の問題とあわせまして、不当労働行為その他関係諸問題の対軍交渉が労働省と調達庁との間でどういうふうに調整され、どういうふうに進行しているか、その段階をまず承わり、それからあわせて今後の対策をどういうふうになさるつもりであるか。あるいは労働省と調達庁双方の間で話し合いをなさる機会もしばしばあると思いますが、そこでこれはやはり統一された方向で進まないというとうまくなかろうと思うのですが、そこら辺の具体的なやり方がどういうふうになっておるか、そこら辺を伺いたい。どちらからでもけっこうですが……。
  115. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 御質問のうち失業対策につきましては、調達庁といたしまして、当委員会におきましても先般この問題につきまして御質疑がございましたので、山本先生十分御存じのこととは存じますが、軍側に対しましては採用及び解雇の情報の早期提供ということ、その他特に呉におきまする失業対策につきましては、軍所有の財産施設等の日本側への転用、あるいは解雇者に対しまして就職その他によりまして、解雇予定期日以前に自発的にやめたいという者に対しましても軍命解雇の場合と同様な退職金を支給するように措置してもらうとか、あるいは現在解雇されない状況にあって当然勤務の義務があるのでございますが、これらの労務者につきましても、就職のために休みたいという場合には有給休暇の取り扱いをするようにするとか、そういうような点につきまして軍側と了解を得たわけでございますが、その他解雇に伴いまして駐留軍労務者の取扱いが少しでも有利になるような諸方策につきまして、国連軍並びに米軍当局に対して折衝をいたしているわけでございます。  なお国内的な失業対策の諸方策につきましては、これは調達庁の権限に属しない事項が多いのでございますが、それらにつきましては、労働省の失業対策事業、建設省の公共事業あるいは大蔵省所管の生業資金のための資金の貸付あるいは起業許可等に対しまする通産省あるいは運輸省その他との折衝等を内閣に設置せられておりまする特需等対策連絡会議を通じまして、解雇されました、あるいは解雇される労務者の今後の更生が少しでも容易に円滑にできるようにいたしたいという方針で、右の会議を通じまし、て関係各省との連絡をはかっている次第でございます。今後も国内諸問題につきましては、特需等対策連絡会議を通じまして、あるいはそれとは別に個別に関係各省と折衝いたしまして、実情に即した失業対策の諸施策ができるように努力いたしたいと考えておる次第でございます。  第二点の不当労働行為につきましては、特に労働省との連絡の問題でございますが、時宜労働省とは連絡をとわまして、対軍折衝の結果なり、あるいは新しく得られた情報等につきましても、重要なものにつきましては労働省、また単に労働省のみならず、法務省あるいは外務省その他関係各省と随時連絡会議を開催するなり、あるいは個別に連絡をいたしまして、国内の意見が違ったというような印象を軍に与えて、そのために不当労働行為その他におきまする取扱いが不利になるようなことのないように努力いたしている次第でございます。
  116. 山本經勝

    ○山本經勝君 今の対軍折衝を、解雇問題については、調達庁としてはいわゆる抜き打ちの解雇は困る、それで事前の協議の余地のある、事前の通知あるいは連絡を要請されている。それでその場合に就職あるいは転職をするために、有給休暇等の利用の便宜を供与せよ、こういう点で折衝をなさっている、こういうふうに考えていいですか。
  117. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 就職のための有給休暇の点につきましては、国連軍につきましては了解を得まして、現在そういうように措置されております。ただ米軍につきましては、この点いまだ了解を得るに至っておりません。国連軍につきましては、特にこのたび呉地区におきまして、すべての国連軍が撤退するという、そういう非常事態にもなりましたので、特別の措置として、この場合就職のために必要な場合には、できるだけ有給休暇でもって、就職するための運動ができるような便宜の取扱いをはかってもらうようになりましたけれども、米軍につきましても、この点につきましては、特に陸軍に対しまして、たとえば九州におりまする第五空挺隊等が全面的引き揚げになりまする場合、その場合におきましては全面撤退、従って全員解雇ということがはっきりわかっておりますので、そういうような事態に対しましては、英連邦軍と同様の措置をとってもらいたいということを先般も陸軍当局に要望いたしたのでございますが、事は陸、海、空三軍に通ずる問題でありまするので、軍といたしましても、陸軍だけで回答することができないという返事になっておりまして、三軍の意見を徴しまして回答いたしたいという返事がございますので、私どもといたしましても直接FECあるいは三軍を代表する地位にあります立場の関係官を通じて、この問題をさらに折衝いたしたい、こういうふうに考えております。  なお、解雇の問題につきましては、これは御質問趣旨がはっきりわからなかったのでございますが、日本の法律に従いまして解雇の措置をとるということはもちろんでございます。
  118. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働省の方のにちょっとお伺いしたいのですが、先日、さっき申したように、中西労政局長にお目にかかって、一応経過——中間状況は聞いたのですが、これは労働省の方では、主として今度の板付の解雇問題、あるいはまた最近起った東京の直用と、それから間接雇用とがあったように聞いておりますが、即時解雇の問題が出た、こういった問題については労働委員会でも決議もしておりますし、また、法務委員会の決議も御承知の通りなんです。その後こうした問題に対する交渉なり折衝を直接、課長はやっておいでにならなかったならば、あるいは詳細におわかりにならないかもしれませんが、おわかりの範囲でけっこうですが、一応お聞かせ願いたい。
  119. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 板付の保安解雇の問題に関しましては、四月中旬、長い間かかっておりました調査を一応まとめまして、米軍にその意見を出しまして、米軍は自後これを検討いたしまして、五月の初旬に米軍の方とこちらと折衝をいたしました。で、米軍の方はその折衝の結果に基きまして目下検討中でございます。  それから直用の解雇の問題につきましては、この委員会でも再々お答え申し上げましたように、紛争処理機関の設置によって円滑なるその解決を望むことが根本的解決と考えまして、機会あるごとにあるいは合同委員会の労務小委員会、それから空軍と折衝するときには、その場において、また外務省等の筋を通じまして、米軍の方と話を進めておる状況でございます。
  120. 山本經勝

    ○山本經勝君 米軍の方が目下検討中という話もこの間聞いたのですが、これは米軍の方が、労働省に対して何らかの回答をするような筋になっているのですか。
  121. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 結論が出れば、当然回答すると考えております。
  122. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、その際に板付の問題について、四月中旬ですか、労働省の方で一応調査した資料を出されたというのですが、それらの資料はここには持っておいでにならぬでしょうが、労働省の方にはございましょうね。
  123. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) そういった交渉の資料あるいはやりとりというものは、今の段階では発表をしないのが交渉を円滑にする方法ではないかと考えております。
  124. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働省の方で、板付問題について米軍の意見をただし、折衝をするために調査をなさった資料は、これは公表しないというのはどういうわけですか。
  125. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) それは個人の問題に当然わたっておりますし、また、米軍と労働省の行なっております折衝の経過も、これはある意味においては外交折衝でございます。またいろいろ及ぼす問題もございますし、元来そういったものは非公開の建前でございますので、これを発表いたしますれば、とうてい私は交渉の成果をあげることはできないと考えております。
  126. 山本經勝

    ○山本經勝君 そうすると、実はどういう交渉をなさっているか、さっぱりこちらの側からわからぬわけですが、特に公表というのはどういう意味か理解しかねるのですが、公表というのは、たとえば新聞に発表するとか一般に知らされるというのじゃなくて、ここで、国会のこの委員会で、もしこれはどういう内容であるかということを御質問申し上げれば、これはお教え願わなければならぬのじゃないかと思うのですが、その点どうですか。
  127. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 私はむずかしい法律論は別といたしまして、現在の段階においてさようなことを申し上げるのは、ともかくもこの委員会で申し上げれば、不特定多数の人に知られる機会となりますので、さようなことは私はいたしたくないと存じております。また、これが交渉を円滑に持っていくためには、私としては絶対に必要な要件であると考えております。
  128. 山本經勝

    ○山本經勝君 それでこれはどうなんでしょうか、私もよくわからぬのですが、私ども参りましたらその内容をお見せ願えますか、ここでお答えを願ったり、資料を出してもらうのじゃなくて……。
  129. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) それは私は現在のところは……(山本經勝君「できないのですか」と述ぶ)できないと思います。
  130. 山本經勝

    ○山本經勝君 それじゃ一応これは検討した上にいたしましょう。そこでこういうことを一つ両方にお伺いしたいのですが、交渉について調達庁とそれから労働省とやはり二本建で相手は一つで問題は同じ、そうしますと今後の交渉の推進について何らか有効な、しかも進む方法考えられているのか、今までのところ、先ほどからお話のように、関係各省の意見を調整し協力していくと言われるけれども、それは総花的にいつも言われることで、さっぱり進行しておらぬと思うのです。率直な話が。ですからむろん今後も努力していただかなければならぬと思いますし、またなさると思いますが、しかし、一応めどを立ててやはりこの折衝を進めぬというと進行はしないのですから、今の調達、労働両関係当局が同じ問題を一つの相手に向って二本建で交渉をなさっている姿ですから、そこの間を調整した一本建のものにすることが必要だろうと思う。もちろん方向がそこで統一されておらなきゃ有効にいかぬと思うのです。私も二、三回折衝もしたし、やってもみたんですが、話がみんな違っている模様で、向うでもやはり困っているという格好がうかがわれるので、そこら辺のお考え方はどうなんでしょうか。
  131. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 不当労働行為の問題その他につきまして、軍との関係で折衝をいたしますときには、政府部内の違った見解を示すということは、同一事案につきまして違った見解を示すということは、交渉上当方の目的を達する上において非常にマイナスになることははっきりいたしております。労務問題につきましては、すべて同一事案につきまする限り私どもといたしましては、直接間接監督官庁でございまする労働省と連絡をとっております。また私自身、個人的なことを申してははなはだあれでございますが、前に労働省にもいたこともあるのでございまして、労働省の方々とは個人的にも十分知り合いになっておりますので、話はざっくばらんに労働省との連絡ができる立場にあります。外務省に関しましても個人的にも十分連結ができる立場にありますので、これらの問題につきましては、今までも十分連絡をとっていたつもりでございますが、御注意の次第もございますので、今後とも十分連絡をとるようにいたしまして、円滑に対外折衝ができるように努力いたします。
  132. 山本經勝

    ○山本經勝君 時間もないようですが、両当局の話し合いや連絡はむろんとられていると思うのですが、一方の方は、お聞きのように労働省としての独自の調査が完了して、それを基礎にした交渉をなさっていると言われるけれども、その交渉の段階がどういうものやら、しかもこの調達された内容についても公表せぬ方がよかろうとおっしゃる。私どもしいて聞こうとは申しませんが、少くともそういう状態でありますと、何か交渉しておられるようだけれども、どういうふうになるのかさっぱりわからぬというような姿だと思うのです。それではさっぱりどうもしようがありませんし、今の部長さんのおっしゃるような立場から申しますと、今後とも努力するし、今までもやってきた、これは私ども認めているんですよ。ところがいつまでたってものれんに腕押しでさっぱりきりがつかぬという状態でずるずるといっておるわけです。ところがそれではやはり現実には労働者が被害をこうむっておるんですから困る。そこで私ども申し上げておるのは、何らかの目安を持った交渉が進められぬというと解決も促進されぬであろう。ただ個人的な知り合いや、事務的な連絡がありましても内部的の問題であって、それは米軍の方に当るところは一向に影響が変らぬということも言えるのじゃないか。ですから両方で、同時に組合の代表も加えるなりして話し合いなさるか、そうしてこの交渉の段階等については随時両者が、つまり調達庁と労働省当局者と組合と三者で話し合っていただいて、そうしてそこで方向を定めて自後の交渉の促進というようなことはお考えになれないかどうか、これは両方に一つお伺いをしておきたい。
  133. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 先ほどもお答え申し上げました通り、特に板付問題につきましては、労働省と十分連絡をとっておる次第でございます。また、組合からの要求その他につきましては、中央本部のみならず、昨日も現地の方々がお見えになっておりまして、私以下関係係官にその後の情勢を詳しく説明しておられております。また、県側とも常にこの問題につきましては連絡をいたしておる次第でございまして、私どもといたしましても、この事件の解決につきましては、せっかく努力をいたしておるのでございまして、今後も十分組合側と労働省側と連絡をとりました上で軍と折衝を進めていきたい、こう考えております。
  134. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働省の方はどうでしょうかね。
  135. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 労働省と調達庁が足並みをそろえてやっておりますことは、海老塚部長の方から答えられた通りでございます。なぜこれを一本にやらないかという御質問は、ごもっともと存じますが、何分間接雇用と直用とでは基本的な状況は変っております。それから直用の四名につきましては、御承知の通り、福岡地裁で仮処分の決定が出ております。そういたしますると、板付の問題につきましては二十二名について共通の問題もございますが、違う問題もございます。これを両方でやってもよろしいのでございましょうが、問題は個々人の解雇にございますので、分離してやることは一向差しつかえないと考えております。ただその共通の事象に対しましては同じような判断でやっておることは、先ほども申し上げた通りでございます。それから組合の方ともお話をよく承わっておりますことは、これも調達庁の方からお答えになられたと同じでございます。これを米軍と交渉するとき一緒にするかどうかという問題につきましては、これは十分検討しなければならない問題だと思います。組合側と完全に意見が常に一致しておるとは限らないものでございまして、労働省の方と組合と一緒になって米軍と交渉できる場合もあるかもしれないし、またできない場合もあるかもしれない。また、交渉を円滑に進めるためには両者が一緒に出るのがいいか、あるいはばらばらにした方がいいのか、これもそのときそのときに応じて考えなければならない問題ではないかと思います。板付の場合などにおきましては、私は現在の状況からいたしますと、労働省が単独で交渉するのが最もよろしいと考えております。
  136. 山本經勝

    ○山本經勝君 労働省が単独でやられるということもけっこうだが、その交渉の状況がどういうふうに進んでいるのかわからぬわけです。問題は軍と労働組合の二つだと思う。両方が焦点だと思う。ところが、その中を通る道が労働省の通っているルートとそれから調達庁の通っているルートは二つになっている。そこにどうもうまくないところがあるように感じられるわけです。交渉がどういうふうに進行しておるかということになると、相手からいうと、天びんにかけていいかげんにやらしておけばいいということも極端に言えば言えると思う。そこで、政府の立場はいわば調達庁は、労働者とともに被害者の一方をなすと考えてもいいわけです。そこで労働省の方がむしろこれを監督指導し、保護していくということになってくるのが筋じゃないかと思うのですよ。不当労働行為等の問題になりますと、これが間接雇用であれ、直接雇用であれ、その雇用の状態のいかんにかかわらず、労働関係諸法は労働者を守っているという建前でしょう。そうしますと、むしろ調達庁が労働省にプッシュされて前進するというような格好にもなるかと思う。ですからそこでやはり交渉の要領なり、方向というものを統一してかからなければ、私はうまくないと思う。しかもそれぞれ交渉の段階が違っておったり、あるいは同じ問題について見通しが変っておるという格好では、これはもう明らかに交渉が強力に行えぬということは当然だと思う。ですからむしろ今後の問題として、これは要望なんですが、組合の意向を十分に聞いていただいて、決議の趣旨にのっとって一つ交渉の方式なり、見通しを立てて、そうしてまたその組合の折衝をなさる際に、その段階については一つ懇切に解明を願って、それからして協力してもらうと、こういうことにならぬといかぬのだと思う。そういう点で、時間もございませんし、非常に超過しておりますから、この程度で本日あれしておきますが、どうぞ一つ労働省も調達庁の方も一つお骨折り願って……関係者は非常に困っておるのですからね、現在問題として……、ですからそこら辺十分御配慮を願って、早急に組合の方の理解のいく機会も作っていただきたいし、できれば一本建の交渉をなさるべきだと思う。もちろんそれが労働省の大野課長がおいでになるか、調達庁の海老塚部長がおいでになるかということよりも、統一された意思の上に立って、統一された目標でもって交渉が進められぬというと、その交渉は成果をあげぬと、そういうことを一つ御要望申し上げまして、一応この程度で私の質問を終りたいと思います。
  137. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) では僕から関連して聞きます。さっきから聞いておりますと、今、結論が出て、大体いいと思うが、しかし委員が行っても交渉過程であるから話ができぬという、そんなかたくなな考えは、僕は、少し思い上りというか、考え方が少し違やせぬかと思うのだが……。どれだけの責任をもって、どういう交渉をしておるか知らぬが、それならば労働組合なり、たとえば労働省が考えること自体のような、希望のような条件さえ出なかったという場合に、どういう責任を、だれが負うんですか、一体……。そういうことと、それからもっと極論すれば、やってるやってると言いながら、内容も、どういう交渉をしているかということを、委員が行っても聞かせることができないというくらい極秘にやっているということになれば、結論は、極論すればやっておらぬでもわからぬわけだな。もう少し突き詰めて言うならば、委員会は決して政府と反対的な立場に立っているのではなくて、これは速記の上に余り残したくない問題になるかもしれぬが、政府も、委員会も、労働組合も、三者一体になって、こういう問題はよりいい処理をつけようという考え方が、言わず語らずのうちにあるはずであって、従ってもし委員の中にも、労働組合の中にもいい考え方があるならば、いい考え方を聞いて、それを交渉の上に乗っけるくらいのものがなければ交渉がうまくいかぬと思うが、そういう考え方はないんですか。どっちからでもいいんですが……。  ちょっと速記を止めて。   〔速記中止〕
  138. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をつけて。  本問題に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  委員異動を報告いたします。五月十五日に藤原道子辞任、菊川孝夫君選任、以上であります。  本日はこれをもって散会といたします。    午後四時三十八分散会