運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1956-05-10 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月十日(木曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            草葉 隆圓君            榊原  亨君            寺本 広作君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            藤原 道子君            山本 經勝君            森田 義衞君   衆議院議員            藤本 捨助君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 英三君   政府委員    厚生大臣官房総    務課長     小山進次郎君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○厚生年金保険法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○船員保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○小委員会設置の件   —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  初めに、四月二十六日本委員会において、山下委員から質疑いたしまして回答が保留となっておりました立ち入り検査を拒み得る場合の見解について、修正立場から考えた具体的な場合の例について、衆議院議員の方から御説明をお願いいたします。
  3. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 前々回の委員会におきまして、山下先生から第四十三条の十の、いわゆる保険医療機関保険医に関しまする監査規定につきまして、種々有益なる、また適切なる御意見がございました。この点に関しまして、いやしくも乱用にならず、また、医療機関に無用の不安を与えないようにとの御配慮から若干の御質疑が私にございましたが、これに対しまして、次に私ども考え方を申し上げたいと思います。  申すまでもなく、ある医療機関保険医療機関としまして指定して、療養担当者といたしますのは、保険者、被保険者にかわりまして行政庁が公法上の契約をするという意味でございます。さようでありますから、指定する行政庁といたしましては、療養担当者が正しい保険医療機関であることを保証していく責任が、保険者、被保険者に対してあるのでございます。また一方、被保険者事業主からの保険料及び国庫からの補助金を預かりまして、行政庁政府管掌健康保険を運営しておりますので、行政庁といたしましては、その責任上、被保険者等のために療養費が妥当に支出されておるかどうか、常に注意する義務があるわけでございます。従いまして、診療内容なり、診療報酬請求なりを個別的にせよ、また定期的にせよ、検査いたしまして、その妥当性を保持しようとすることは当然なすべき責任でございます。その意味におきまして、法律監査権を認められておるのでございます。従いまして、法的には厚生大臣または都道府県知事が、診療報酬請求または診療内容に不正、不当があると疑うに足る理由がある場合において、個別的に監査を行い得るばかりでなく、たとえ不正、不当の疑いがなくとも、一般的ないしは定期的に診療契約の当事者といたしまして監査をなし得ることは、現行法におきましても、また改正法案によりましても全く同じく規定されておるのでございます。ただ、その実際の適用なり運用に当りましては、現在のところ、大方の医療担当者良識に期待いたしまして、定期的に行う必要もございませんので、不正、不当の事実があると疑うに足る理由があり、監査の必要があると認められるような場合に限りまして、そのつど監査を実施することを建前といたし、医療協議会に諮問の上決定いたしております監査要綱に基きまして、監査を行うこととして、行政事務簡素化をはかり、また一方、実施に当りましては、医師会行政庁が連絡しつつ、医師会協力をお願いいたして実行し、これによりまして無用の紛争を避けているわけでございます。  改正法成立後におきましても、改正法によりまして検査の方法が整理されまするので、その関係上、現行監査要綱につき若干の改正は、あるいは必要となるかもしれませんが、建前は従来通り乱用されることのないよう、十分留意いたし、不正、不当の疑いのあるときに監査を実施するようにすべきでありますが、政府当局もまたさよう取り計らいますと申しておりますので、従いまして、御心配のような乱用ということはないと、かように私どもは判断いたしておる次第であります。さらに、私ども先生方とともに、この点政府に十分注意いたしたいと存じておりますが、どうぞよろしくお願いいたしたいと存じておる次第であります。  次に、四十三条の十の規定違反のための処分取り消し処分につきましては、第九条の二の違反の場合の罰則と異なり、「故ナク」という字句がないのでありまして、この点また不安が多い、いかなる場合に正当性を是認されるのかという疑念があり、御注意をいただいたのでございますが、元来、このような行政処分の場合は、立法上「故ナク」というような文句を言わないのが普通の法律条文の慣例となっております。罰則につきましては、通常「故ナク」という文句を入れる取扱いとなっておりますので、その取扱いに従ったわけでございます。しかしながら、その趣旨とするところは全く同様でありまして、いずれの場合におきましても、正当な理由があればこれを拒んでも、指定取り消しなり、罰則適用の事由とはならないのでございます。このことは「故ナク」という文句があってもなくても、規定性質、事柄の性質上当然なことであるという見解に立ちましたから、私どもは「故ナク」と特に修正いたさなかった次第でございます。  しからば、正当な理由がある場合とはいかなる場合を考えているかと言われますと、私どもといたしましては、医師が現に診療中で手が離せないとか、急患のため直ちに往診に行かねばならないようなときとか、往診で不在であるとか、その他慶弔の行事の場合、あるいは夜間で差しつかえのある場合などを考えておるのでございます。もちろん以上申しましたような場合以外でありましても、あれこれと口実を設けて検査を忌避するというようなものでない限り、きょうはどうしても都合がつかない、明日にしてほしいというような場合は、従来と同様、正当な理由がある場合と見て取り扱うべきものと考えておるのでございます。要するに、前回にも申し上げましたように、このことは結局法は運用にあり、運用は人にありということでございますので、その場合に、良識をもってすれば、おのずと問題の解決はできることと信じておるのでございます。以上でございます。
  4. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に質疑に入りまするが、審査の都合上、なるべく衆議院における修正の部分を先にして、順次質疑を進めていきたいと存じますので、御了承をお願いいたします。  御質疑をお願いいたします。
  5. 山下義信

    山下義信君 ただいまは藤本議員から、懇切かつ明快な御答弁をいただきまして感謝いたしております。立ち入り検査の問題に関連いたしまして、この立ち入りを拒否し、あるいは検査を拒否する、従って罰則があり、かつまた指定取り消し等行政処分がありまして、しからば正当な理由をもっていわゆる検査を拒む、検査の中には言うまでもなく立ち入りを含む、その正当な場合とはいかなる場合を許容するかという点も、大いに検討いたしておかなければならぬことでありまして、今回それらが、その立ち入り検査に関連いたしまして、現行法同一の問題ではありまするが、しかしながら、保険医に対しまする監督を厳重にされまして、それに対する衆議院側の重要な修正がなされました以上は、かりに現行法におきましてもこの問題はあるのでございまするが、この機会に明確にいたしておく必要があると存じまして、御質疑申し上げたのでありました。これらの点につきましては、なお政府当局質疑応答を重ねまする機会がございまするので、ただいまのかなり御懇切な、かつまた相当具体的な御答弁をいただきましたそれらの問題点につきましては、他日なお検討機会を得たいと存じまして、本日は御答弁を承わっておくという程度にいたしたいと存じます。  続いて私が衆議院修正点につきまして伺いたいと思いますのは、本日は一部負担の問題でございます。貴院におかれましては非常に御苦心になりまして、周知のごとき御修正に相なったのでございますが、この一部負担は今回の健保の改正問題の全く中心問題でございます。保険医諸君と被保険者とがともに反対をいたしておりまする最中心の問題であります。この一部負担につきましては、同僚議員諸君におかれましても、非常に御意見のあります点でございますので、私は本日は、衆議院の御修正に対しまして若干の御質疑を始めさせていただくという程度にいたしまして、他の議員諸君のまた御発言も願いたいと思うのでありますが、ただ、私個人の意見といたしましては、この一部負担の点に関しまするわれわれ参議院の審議は非常に責任があると存じておるのでありまして、いかにわれわれが一部負担の問題を審議していくか、検討していくかということは、おそらく参議院の任務として、いわゆる参議院本来の立場といたしまして、重大な責任を痛感いたしておりますことを申し上げておきたいと思うのであります。  それでさっそく本論に入りますが、衆議院におかれまして御修正になりましたところの投薬、注射ごとに徴収いたしまする三十円を二十円に改める、入院におきましては、一日三十円、六カ月を三カ月に改められる、この修正です。この修正の御理由をまず承わりたい。どうして、どういう理由で御修正をなされたかということを、まず総括的に承わりたいと思います。
  6. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 健康保険は御承知のように、毎年非常な赤字を出しておりまして、これをほうっておきますと、この健康保険が、社会保険の中核でありまする健康保険が破壊してしまう。従いましてこれを根本的に立て直しまして、財政の立て直しはむろんのこと、その運営を合理化いたし、これを基盤といたしまして社会保険医療保険前進確立をはかりたい、そして現在約三千万の国民がなお医療保険対象になっておりませんから、この国民医療保険対象にする、こういうことを考えまして、根本的な、総合的な計画をいたし、そのためにまず政府といたしましては、この運用の費用として三十億円出す。それから事業主、被保険者等におかれましても一つ協力を願う、医療機関におかれましても一つ協力を願いたい、かようなあらゆる観点から、根本的に、総合的に政策を立て、そしていろいろ検討いたしまして、その内容政府原案となった次第でございますことは、前回申し上げた通りでございます。ところが、その後いろいろな観点から、ただいま御指摘のように修正いたしたのでございますが、私ども政府社会保障という観点から、できるだけ政府負担といいますか、助成といいますか、それを多く求めましたが、しかし政府といたしましては、被保険者側協力ということで、二十三億五千百方円という一部負担範囲拡張をされたのであります。いろいろ検討いたしまして、またいろいろの声も拝聴いかしまして、今回の修正はできるだけ被保険者の一部負担範囲を軽少にする、最低にするということでございます。さようなわけで、政府原案は三十円でございましたのを、二十円にいたす、つまり十円減じた次第でございます。それからもう一点の入院期間の六カ月を三カ月にいたしまして、つまり半分にいたしましたが、これは御承知のように、六カ月もおられる方は、どっちかというと重い方でありまして、負担も多くなるというようなことや、その他いろいろ政治的のことも考えまして、六カ月の制限案を三カ月に短縮いたし、一日の三十円というのは元通りといたしまして、ともかくもこの入院期間を半減いたした次第でございます。
  7. 山下義信

    山下義信君 結局あなたの方では、患者負担をできるだけ軽減してやりたい、こういう御趣旨減額したのだ、こういうことでありますが、そのできるだけ軽減してやりたいというこの目安はどこでお立てになりましたでしょうか、またあなたの方の減額でどれだけ患者負担減額なされたのでありましょうか。その減額なされたその目安というものをどこにお置きになったのですか。ただつまんで腰だめになされたのでしょうか。何かその軽減させるという金額といいますか、目安一つの何か目途があったのでございましょうか、いかがですか。
  8. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) ただいまのお尋ねにお答え申し上げます。実は御承知と存じますが、どうしても保険という建前からいきますと、赤字になればまず保険料を増すとかあるいは医療給付内容を減らすとかいうようなことが考えられますけれども、これは一つ社会保証という観点におきまして政府の何とかして義務的な支出をさせたい、しかも一年限りでなく、また社会保障の推進のためにぜひ政府財政の許す限り多くさしたいというようなことで、実は長い間政府と交渉いたしまして、ようやく三十億円を最後に出すことに相なりました。それに対しまして、被保険者側協力するということで、最初医療給付の一割とか何とかいうことも考えましたけれども、これもできるだけ下げるということになりまして、政府原案は二十三億五千百万円ということに相なりました。それをさらに私ども入院期間を半分にするとか、あるいは三十円を二十円にするということにいたしまして、大体五億六千五百万円という減額をいたしまして、患者といいますか、被保険者側負担を軽減いたしました。しかし、それはこれだけ軽減いたしましても、今度の改正によりまして何といいますか、運営上合理化ができないか、こういうような意味で、これぐらいな支出減が出てくるであろうということを考えた次第でございます。もっと減らせという声もありましたけれども、まずいろいろの検討の結果、合理化等によりまして、まあこれぐらいな程度ならば支出減経費減が出てくるであろう、こういうことを考え、それに見合いまして、まず五億六千五百万円というような減額の線を出した次第でございます。
  9. 山下義信

    山下義信君 私は本日は議論はいたしません。議論はいたしませんが、しかし一言言っておかねばなりませんことは、これはあなたの方でも、政府でもですが、しばしばそのおっしゃることは、社会保障的性格を強めて国庫負担をするので、被保険者も片棒をかつがねばならぬという議論をいつもなされるのです。これは私は妥当でないと思う。誤謬とは申し上げませんが、妥当ではない、これは他日議論せねばなりません。社会保障的とは何をいうのか、健康保険における社会保障的性格とは何ぞや、これは当院におきましても、いずれ同僚議員諸君とともに検討いたして明確に見解を明らかにいたしておかねばなりませんが、俗語ならよろしゅうございますが、われわれ専門委員会としてきわめてばく然とそういう言葉を使うことは誤解を招きやすい、私どもはこの被保険者相互扶助的な保険理論社会保障理論というものとは同一ではない、社会保障的性格を今回持ち込んだ、その意味国庫負担をするのだ、一応了承します。それから被保険者負担を重くする、これは相互扶助という意味で重くする。相互扶助という意味社会保障的という意味とは同一じゃない。御承知通りであります。私どもは、この関係は明快に今回の政府の施策において十分検討追及しておかなくちゃなりませんが、ばく然と使っておる。それでことに今おっしゃるお言葉の中に、一部負担を被保険者負担と言われる。これも私は妥当でないと思う。被保険者ではあるけれども患者という特定対象なんです。患者負担させる。被保険者全体の負担ではない。被保険者負担というものは相互扶助である。いわゆる一つ保険の中の分配政策なんです。被保険者負担ではない。患者という特定の者の負担なんでありますから、被保険者同士保険料をもって助け合うという相互扶助という理論に何ら関係ない。これは患者という特定対象負担させるということであって、何も保険制度の強化でもなければ改善でもないのでありまして、私はそういう考え方ばく然とした点につきましてはお互いに注意していきたいと思います。これは患者負担である。それで今の御答弁で五億六千万円減額することになった、こういうことなんです。五億六千万円でよろしいのでしょうか。これは七億減額さしては悪いのでしょうか。十億減額さしては悪いのでしょうか。どういうわけで五億六千万円という減額限度をお出しになったのか。これは何か減額目安に、反対に申しますというと、患者負担させる負担額には何らか合理的な根拠を持ってお当りになったのでしょうかということですね、その点はいかがでしょうか。
  10. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) ただいま非常に、ごもっともな御指摘をいただきまして、私もよく御趣旨はわかります。わかりますが、しかし、最初二十三億五千百万円の患者の一部負担拡張ということは大体政府助成の三十億円と見合うというようなことでございました。それから衆議院修正で五億六千五百万円減りますが、減ったらそれだけ予算面においても狂いがきますが、それをどうして調整するかということにつきましては、先ほど申しましたような次第であります。しかしまた一面、私どもはできるだけ患者負担最小限度にとどめるということがねらいでございましたので、政府原案の三十円を二十円にした、それから入院料の一日三十円、六カ月を三カ月にした。そういたしますと、五億六千五百万円の減額になるのでありますが、しかしその程度ならば、合理化によって何とか収支バランスが一年間を通じて出てくる、しかし、これ以上は無理だろう、こういうように考えました、それから今お示しのように、社会保障ということはよほど今後も考えなければなりませんが、実はここに私どもは非常に大きい悩みを持っておるのであります。それは先ほど申し上げましたように、国民保険社会保障前進確立ということを指向しておりますので、何とかいたしましてそういう大使命を果したいと考えております関係上、どうしても一部の患者負担拡張を願わなければならない。しかしそれは最小限度だ、こういうことを考えまして、今申し上げましたような結果に相なりましたが、なお私たちといたしましては、大きい一つ悩みと申しますか、大きい使命を達成するために、どうしても患者の一部負担をこの程度は願わにゃなるまい。いろいろこれは苦慮いたし、非常に長い間悩みましたが、しかし、この程度は何とかして一つ協力願わにゃなるまい、また、医療行政合理化をはかり、その御協力によって医療保険社会保険前進をはかる、こういうふうに考えました次第でございます。
  11. 山下義信

    山下義信君 藤本議員の、衆議院修正して五億六千万円減額をせられたその根拠は、まあこれだけのいわゆる保険財政のやりくりができて、合理化して、これだけ財源捻出ができたのだ、これだけ減らせるだけの財源捻出ができたのだということが一つ。  それからいま一つは、こうおっしゃるのですね。この程度負担はいわゆる患者——保険者としておきましょう、被保険者にもこの程度負担はしてもらわなければならぬのだ、保険財政確立の上から。だから財源が五億六千万円であろうと、あるいは十億の財源であろうと、その財源いかんにかかわらず、ある程度の被保険者負担というものもさせなければならぬのだ、こういう御答弁に聞きましたが、そうでございましょうか。
  12. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 衆議院修正に対しまして、大体一カ年を通じ五億六千五百万円くらいの経費節減ができるだろう、そういうふうに推測いたしましたが、まだこれはわかりません。それだけ出なければ赤字がふえますので、衆議院におきましてもこの点非常にいろいろ質問がございまして、収支バランスがつかなかったらどうするか、その場合には最後の手として、予備金の問題も考えるというようなこともございましたが、とにかく私どもの推測といたしましては、一カ年の間にいろいろの合理化によりまして、この程度ならばできるだろう、こういうふうに推測いたした次第でございます。  それからなお患者負担でございますが、政府原案は私ども最初妥当と思いましたが、しかし、何とかして最小限度にこれをとどめたいというようなことで減額いたしたのでございます。それで十七億八千六百万円になるのでありますが、この程度はどうしても政府の三十億円と見合う立場から申しましても、また私が先ほど大きい悩みと申しました重大な使命を遂行する上に考えたいのであります。実は御承知通り国民所得の増加とそれから医療費伸び、あるいは一般会計伸びと、それからこの社会保障伸びとは非常に違うのであります。私ども社会保障費伸びることは非常にけっこうでありますけれども国民所得バランスがとれなければいかぬのじゃないか。また伸びることは適正なる受診の増率や、あるいはまた、医療内容の向上、非常なる医学医術の進歩によりまして、これは当然であります。これらによる場合はけっこうでありますが、しかし常識になっておりますように、いろいろ好ましからぬ点もあるように聞いておりますので、そういう点でとにかく合理化をはかりたい、といいますのは、御承知のように、昭和二十九年度の総医療費は大体二千二百八十億であります。ところが三十年度になりますと、これは推定でありますが、大体二千八百億、この調子でいきますと、昭和三十五年度には国民医療費が四千五百億ぐらいになるのであります。その三十五年度の国家一般会計は一兆三千億円でありますから、その三分の一になるというような点も一つ考えました。このテンポから申しますと、国民の総医療費は非常に大きくなるのでありますが、国民所得なんかの伸びにいたしますと、そう伸びておらぬのであります。たとえば、国家財政伸びは二十七年度を中心にしてみますると、御承知のように、九千三百二十五億円でありますが、三十年度は一兆百三十三億であります。わずかに八%ぐらいしか伸びておらぬ。それから三十一年度になりますと、一兆三百四十九億でありますから、大体一〇%ぐらいの伸びしかありません。にもかかわらず、非常に社会保障費とか、医療費伸びは大きいのであります。そういうわけで、できるだけ合理化するということが今度の改正のねらいであり、しこうして合理化した基礎に立って、たとえば国民健康保険なり、あるいは結核の問題なり、あるいはまた三千万のまだ医療保険対象になっておらぬ方がありますから、こういう方面の方も医療保険対象にする、そういうようなことを国家財政、その他いろいろな面から検討いたしまして、まずこの程度一つお願いいたしたい。しかし、それは最小限度にとどめる、修正によりまして減らしたところは何とか一つ医療担当者の方々やそれから政府行政庁におきましても非常に勉強して合理化をはかり、これだけ減らすが、それが赤として残らないように、バランスが一年の末に合うようにと、こういうような意味でいたした次第であります。
  13. 山下義信

    山下義信君 るる御意見御陳述されましたが、御意見の点は他日また意見の交換をいたしましょう。私の質問に対して、これは財源いかんにかかわらず、患者負担をこの程度させるというお考えか、財源のでき次第によって、この一部負担金額をきめたのかということの質問をいたしましたら、あなたは、五億六千万円に見合うところの十円の減額財源とにらみ合せたのだ、財源いかんにかかわらず、この患者一部負担というのは医療合理化のためにやるのだ、こういうことなんです。それで後段の理由をるる敷衍をしてお述べになったのでありますが、議論の点は私はあと回しにして、五億六千万円という財源をいわゆる保険運営の合理化でやるのだ、こういうことで、合理化とは何かということを開かにゃなりませんが、またこれも別といたしまして、衆議院の方は、一体政府が申しているところの患者の一部負担による、ここに資料として配付された財政効果、いわゆる政府原案のようになれば二十三億支出減になる、言いかえれば、それだけ増収になる、こういう数字を衆議院の方は十分御検討になりましたか。この数字に間違いないと御検討になりましたか。
  14. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 今の御指摘の点でございますが、いろいろ政府から材料を取りまして検討いたしまして、さように信じております。(「確信を持っているわけですか」と呼ぶ者あり)そうでございます。
  15. 山下義信

    山下義信君 私はなお先ほど藤本議員の御答弁の中に、入院料を三カ月に減じた理由は、長期にわたる入院者は病気が重いのだから負担をかけぬようにしたと、こう言うのです。私はこれは何のことかその意味がわかりませんが、病気の重い者には負担をかけられぬというのはどういうことですか。その理論ならば投薬、注射ごとに二十円取るのも、長きにわたって払わなければならないが、病気が重いのは、入院の長い者が病気が重いばかりじゃない。通院する者でも長期にわたる者は病気が重いのです。この方は病気の重い者によけい取ることにしておいているじゃありませんか。入院重症の者に軽減させるという理論と矛盾するじゃありませんか。私はこれは問題として残しておきますが、一部負担によるところの収入の見積り、政府が言うごとく、果して二十三億という数字が上るのか、私は多大の疑問があるんじゃないかと思います。衆議院はいかなる方法をもって調査せられましたか。あなたの方は、政府の数字をいかなる方法で御調査になりましてさような確信をお持ちになりましたか、これを伺っておきたい。おそらく政府の御提出の数字をそのまま御信用になり、そのままうのみにされる、政府の持って参った数字を基礎にされて私は御処理をされたんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。それならそれでよろしゅうございます。
  16. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 御指摘の点につきましては、御想像といいますか、御推察を願えると思います。われわれといたしましてもできるだけの材料を取ったのでありますが、その材料たるや、政府の出した材料、その他からも、私どもの手の届く範囲内におきましていろいろ材料を求めましたが、これは実に厄介なめんどうな問題でありまして、果してこうなるかあるいはこれだけ出るか出ないかということも、一年間通算するというような点もありますので、なかなか容易なことでございませんが、まず政府を信頼いたしまして、政府の出しました採算を、出しました材料を、あれこれ検討いたしまして、これを信頼いたしておる次第であります。
  17. 山下義信

    山下義信君 私は藤本議員の御答弁の中で、五億六千万円の財源合理化によって捻出したと言われた。その合理化の問題、その他減額をせられた理由につきましての論点は保留しておきます。  ただいま政府の資料を信頼したということでありますから、私はこれだけの大問題を御審議なさるのに、衆議院はおそらく全力を尽して御検討なされたと思うのですが、保険は理屈じゃない。理屈もございます。しかしその理屈、理論を裏づけするものは数字です。保険は言うまでもなく、保険数理で成り立っておるのです。保険理論とは、保険数理に基くものであると私は思う。従いまして、理論もよろしいのであります。理屈もよろしいのであります。政治的配慮もよろしいのでありますが、河としても問題は、私は数字を正確に検討するということが第一議題でなくちゃならぬと思う。保険財政、あるいは保険収支の見積り、その数字が不正確でありまするならば、凡百の問題はことごとくナンセンスでございます。従いまして私は、衆議院におかれましては、おそらく全力を尽されましてこの数字の検討をなされたのであろうと思います。私はさように信頼いたしたいと思います。従いまして私は、委員長を通じまして、衆議院におかれましてこの保険財政に関する数字の検討をされました諸般の資料を、これは一つ当院に参考に御提出を願いたいと思う。かつまた、政府にこの際要望しておきますが、衆議院の審議に際しまして提出されたすべての資料を、すみやかに当委員会に御提出を願いたい。これはいつもする通りであります。今日いまだに、衆議院に提出された資料を御提出になっておりません。これは数字以外でありましても、すべて資料はすみやかに御提出を願いたい。  そこで私は、この機会政府に関連してお尋ねします。数字に関することはただいま申し上げましたように、非常に重要でございますので、政府責任をもって御答弁を願いたい。もし間違いがあったなら、私は重大なる責任であるということを申し上げておきます。従って責任のある御答弁を願いたいのです。  この一部負担によるところのいわゆる財政効果といわれる収入増が、医療でいうならば支出減、この数字は果して確実でありますか、どうでありますか、間違いはございませんか。
  18. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 確実なものだと信じております。
  19. 山下義信

    山下義信君 それでは伺いますが、かりに、政府におかれては再診日ごとに十円を徴収いたしますと、三億五千四百万円の財政効果という額をあげておられますが、これは、同じように政府で提出されておるこの数字によりますと、本人分で外来の再診日ごとに十円を徴収すると、四億五千七百六十万円の財政効果が上るという計算をされておりますが、この相違は、どうしてそういう相違が出て参ったのでありますか。
  20. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 今御指摘のその数字の相違と申しますのは、私ちょっと了解できないのでございますが、どこでございますか。投薬または注射のない初診以外の日一日について十円、これは政府原案におきましても三億五千四百万円で、それから衆議院修正案におきましても同じような数字でございます。
  21. 山下義信

    山下義信君 それでは伺いますが、ではどういうふうな質問の仕方をしましょうかね。それでは政府において、再診日において十円徴収することによって四億五千七百万円という計算をしたことはありませんか。なければないでよろしい。
  22. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私の記憶によりますれば、ないと思います。
  23. 山下義信

    山下義信君 投薬または注射のあった初診日以外の日一日について三十円で十六億ということですね。これを二十円にするというと、十一億になるのですね。この投薬一日一剤かりに十円徴収しただけでも、十五億四千二百万円の収入になるという計算をしたことはありませんか。
  24. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 投薬注射のあった日に十円徴収をして、十五億幾らになる計算をしたことがあるかという御質問でございますか。
  25. 山下義信

    山下義信君 その通り
  26. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 私の記憶によりますれば、さような計算はいたしたことはありません。
  27. 山下義信

    山下義信君 もし薬剤一日一剤十円徴収することになれば、十五億四千二百万円の収入があるとするならば、薬剤だけ二十円徴収しましても三十億の収入になるという計算になる、こういう計算をしたことはありませんか。
  28. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 一日薬剤一日分で十円ずつという計算をいたしたことはございます。薬剤一日分について十円ずつと、そういう計算をいたした記憶はございます。その金額が幾らになりましたか今記憶をいたしておりませんが、そういう計算をいたしたことはございます。
  29. 山下義信

    山下義信君 そうすると、この投薬と注射とを分けて、投薬について二十円というのは一日何剤という計算をしてこういう収入にしましたか。
  30. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) これは何剤ということでなくして、投薬、注射のございました日の割合を押えまして、従って何剤に関係なく三剤もらいましても、五日分もらいましても、あるいは水薬、散薬、両方もらいましても、とにかく投薬、注射があった日という日において二十円あるいは三十円という計算をいたしておるわけでございます。
  31. 山下義信

    山下義信君 私はこの一部負担のこういう掛け方によるとこれだけの収入があるという見積もりには、多大なる疑惑を持つものであります。これはこの計算が、そろばんが間違っているかいないか別として、いわゆる見積りの仕方に疑義がある、少くとも。見積りの仕方によれば、ただいま言うがごとく、一日一剤ごとというふうにとってみると、二十円とりますというと、三十億になる。幾ら薬をもらってもその日一日だけということに計算するというと、今のような計算になる。注射またしかり、注射は何回その人につけても一日だけ、その日だけということになればこういう計算になる。また注射のごとに負担をするということになれば、こういう金額になる。いろいろ計算の基礎によりまして私は数字に動きがあると思うのです。しかもこの数字は十カ月の数字です。しかしながら、この一部負担による徴収は明年度からは十二九月分です。この二十三億というのもおそらく十カ月の計算でしょう。これを十二カ月に直しますというと二割の増収です。私はこの十カ月の数字を基礎にして、なるほど本法は五月一日から実施になっておっても、三十二年度は十二カ月分の適用をするの  である。三十二年度からは二十三億じゃありません。三十億の一部負担になってくるのであります。きわめて私はこの数字の見方というものが粗雑である、正確にしなくちゃならぬと思う。これは当委員会におきまして、なおこの見積りの算定の内容その他につきまして、政府から詳細に計算の基礎内容を承わらねばなりませんが、私は資料として一応提出をしていただいて、多大な疑義があるということだけを申し上げておきます。われわれが他の計算によりますというと、十カ月分にいたしましても三十数億の——三十六億も七億にもなる。十二カ月に計算するというと、かなり一部負担衆議院修正のような一部負担をいたしましても、計算の仕方によれば、四十五億にも六億にも達するという見込みの立て方もあるのであります。でありまするから、政府の二十三億という一部負担の収入のこの見込み等の、この算出の方法につきましては、当委員会におきまして、資料を求めて十分に検討いたさなければならぬと思います。  なお、この機会に進んで私はお尋ねをいたしておかなきゃなりませんが、一体一部負担をさせるという根本は、少くともその大部分の目的は赤字対策なのである。一つには先ほどの御答弁のように、恒久対策でやるのだ、恒久制度でやるのだと言われたけれども、少くとも数字の基礎は赤字対策にある。制度としていくならば、何も三十円、五十円にこだわることはない。十円でもいいのだ。その三十円といい、二十円といい、それに顔を赤らめて論じ合うのは赤字対策ということが含まれておるからだ。赤字ということがなくなれば、衆議院だって十円にするでありましょう。また再診日だって削るでしょう。制度としてやってみるのならば五円でもいいのです。赤字関係があるから二十円以下は引かれない、三十円以下は引かれないといって顔を赤らめて論じ合うのである。根本は保険財政赤字問題にある、私はそう思うのです。しかるに最近いわゆる世評によりますというと、昭和三十年度の政府管掌の健保の保険財政は予想とは非常に異なって、保険財政は好調を呈している、赤字じゃなくて黒字だという世評が高いのです。私は三月八日の本院の本会議におきまして、再質問においてこの点をお尋ねしたけれども答弁はなかったのです。おそらく三十年度の決算は二月に締め切りますから、政府にもはっきりおわかりだろうと思う。予想のごとき赤字ではない。おそらく三十一年度の保険財政の見積りも私は当初の見積りと大いに異なる要素が出てきたのではないかと思うのです。この点は衆議院はどういうふうに御検討になりましたか、承わりたいと思います。また政府は、どのように三十年度の決算をながめておるか。三十一年度の赤字見積りについて、依然として早くから提出しておる三十一年度の予算に狂いはないと考えておるかという点を答弁していただきたいと思います。
  32. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 大体三十年度の赤字は六十億、それから三十一年度の赤字も大体このままでいきますと六十七億ぐらいになってくるのであります。私どもは今の御指摘のように、確かに今回の措置は、一応この健保財政赤字対策になるということは仰せの通りであります。しかし、これをやらなければ、そして財政の立て直しをやらなければ、社会保障、あるいは医療保険前進いたしませんから、そこがねらいとなっておるのでございます。  それから仰せのごとく、これは黒にでもなれば、三十年度もそうなればありがたいのでありますが、私どもはそれはまだ聞いておりません。しかしあるいは三十一年度は今回の改正によりまして黒にでもなるということになりますれば、私どもは実はまた次に多く考えておるところの医療給付内容の向上、それからまた、一点単価の問題につきましても、御承知のような、まことに不合理な点に据え置いてありますから、そういう方面にも手を伸ばしていく、まあ、今後、申し上げてはおりませんが、早くこの財政の健全化をはかりまして、非常に日進月歩の医学医術の進歩に伴いまして、医療内容の向上をはかり、また、その他現在の制度におきましても、医療担当者等に対しまして、不合理な点が多々ありまするから、それを直していきたい。それからさらに国民保険の方へ進んでいくという意図でございますし、またいろいろな観点からいたしまして、早くこの結果がつくようにということを期待しておりますけれども、今までの私の知る限りにおきましては、三十年度はやはり相当の赤字、三十一年度もこのまま放っておけば、健康保険を崩壊の危機に導くような赤が出るのだと、かように現在のところ信じております。
  33. 山下義信

    山下義信君 藤本先生、その信じておるとおっしゃっても、昭和三十年度はもう決算ですよ。予想ならば信ずるということができますが、三十年度は二月末日で正確な、動かすべからざる数字が出ているのですから、三十年度はもう赤字だろう、何だろうとおっしゃっても、これはもう数字が出ちゃっていますから、三十一年度はそれは見込みですから、お互いにおのおの別のニュアンスで見ていくのでありますから、それは議論はありましょうけれども、しかし三十年度はもう出ちゃった、それで……待って下さい、これは厚生大臣から答弁してもらいます。こまかい数字は委員会検討してもらいますが、だから私が間違いがあったら承知しませんぞと言ったのです。この保険財政の問題は、ね、あとで、理屈じゃありませんから取り消したり言い直しは許しませんよ。数字は不正確なことをおっしゃったら、私は厚生大臣責任問題にします。ですから……。
  34. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 山下さんの御質疑でございますが、たびたびこの委員会で申し上げましたように、二十九年度と三十年度の赤字につきましては、三十年度の赤字は六十億円と推定をいたしました。そしてこの両年度の赤字につきまして七十億円の借入金、それから、料率の千分の五の引き上げによりまして二十五億円、それでいわゆる三十年度の赤字に対する決算になってきているわけでありますが、決算はまだ終了いたしておりませんが、大体現在の見通しといたしましては、われわれが最初に推定いたしました三十年度、六十億円の赤字とんとんというふうにわれわれは想像をいたしておるわけでございます。大体、その通りにゆくと考えております。
  35. 山下義信

    山下義信君 たびたびおっしゃったと言いますけれども、私は三十年度の保険経済の状態はどうなっているか、三十一年度についての見通しについて当初の見込み通りか、若干変更する要素は出てこなかったかという問題は、当委員会では私は初めてお尋ねしたのです。たびたび大臣の御答弁を承わったことはございません。従来の赤字対策をどうするかということは、これはたびたびおっしゃったでしょう。私はこういう委員会で、お互いに、政府もわれわれ議員も、おざなりの質疑応答はよしましょう。あなた方の保険財政赤字というものは、二十九年度にできた赤字を三十年度に持ち越して、三十年度のそのちょっと出てくる赤字をそれに継ぎ足して、三十年度に六十億の穴埋めをしなければならぬというその六十億を、また三十一年度に持ち越して、その政府から長期の六十億の借入金を、これを大蔵省にお返しにならなくて、そのままずっと借りっぱなしになされるということになりますと、どうなるのです。三十年度にも六十億の借入金をお返しにならず、三十一年度にもお返しにならず、借入金は借入金のまま、ずっとこれを持ち越しておいでなるということになりますと、どうなります。
  36. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) それはすでに山下先生承知のように、一カ年延ばしまして、六カ年かかってお払いするのを七カ年にするということに相なっております。
  37. 山下義信

    山下義信君 私はこまかい数字は私はこの委員会で、時間を取りますから……。
  38. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 六十億という、三十年度とんとんと行きそうだという大臣のお答えは、六十億の借金をかかえてとんとんということでございます。  それから三十一年度の問題につきましては、六十億を借り入れて、そうして政府から六十億を借り入れて六十億は返す。従いまして、これは計算外ということで六十六億の赤字を見込んでおる、こういうことになるのでございます。もう少し正確に申しますと、歳入の方で、一般会計よりの受け入れを十億見まして、それから借入金を五十億を見まして、そうして歳出の方で六十億、それに若干の利子をつけまして六十億を返すということを考えまして、今言われておりまする六十六億という赤字が出るという見積りでございます。
  39. 山下義信

    山下義信君 三十年度の予算は、そうすると六十億をそのままにすれば、そうすればもう赤字は出ない、出ていないでしょう。大臣から答弁いただきましょう、簡単ですから。
  40. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 六十億の赤字が三十年度に見込まれておりまするから、それが今年の年度末におきましても、六十億円の赤字がとんとんになる、こういうわけでございまして、三十一年度六十六億円の赤字を見込んでおりまするのは、それらの六十億円の政府借入金その他とは全然別個の問題でございます。新規に六十億円の赤字を予想しておるということであります。
  41. 山下義信

    山下義信君 いや、三十一年度はあとにしましょう。三十年度の赤字の見積りというものは、六十億をそのままにしておきますと、そうすると赤字が、なおその上に赤字が出るだろうと思う。三十年度は赤字が出なかったでしょう。
  42. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 今の山下委員のおっしゃるようなことから言えばその通りであります。つまり、われわれが考えておりました予想通りにとんとんに参っておる、こういうことでございます。
  43. 山下義信

    山下義信君 いや、私はとんとんに参るとは予想しておいでにならなかった。三十年度に六十億かかってもなお赤字が出る。従って、その趨勢をたどるならば、三十一年度には今おっしゃったように六十億の借入れをしても、なお六十数億の赤字が出るという見通しをお立てになった。ところが、三十年度はもう二月に、先々月にもう年度が済んじゃった。あなたの方には三十年度の決算がもうおわかりでしょうから、三十年度の保険経済はどうなっておりますかとお尋ねしたのです。おそらく見込みよりは好転しているでしょうということを聞いている。とんとんじゃないでしょう。少しくらい黒字になっちゃいませんかとこういうのです。黒字になるということが悪ければ、赤字ではありませなんだでもよろしい。もう決算なんですから、決算が出上っているのじゃないかと思うのですが、まだ厚生省がわかっていなければ基金を呼び出して……。
  44. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 先ほどお答え申し上げましたように、三十年度は六十億円の赤字を予想しておりまして、これも今申し上げましたように大体決算はいたしておりまするが、とんとんにいきそうでございます。  なお詳しい問題につきましては、ただいま保険局長からお答えいたさせます。
  45. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 今山下先生が仰せになりましたように、三十年度の当初の予算を組みました場合には六十億の借入金をいたしまして、とんとんで収入支出が見合つたような予算を組んだわけであります。ところが、年間の途中におきましては、これはこのままでいくと、とんとんに予算が組んであるけれども赤字が出るかもしれないという見通しを一時立てておりました。ところが、その後若干の行政措置等を行いましたのが影響をもっていると存じまするが、さような関係で、まだ決算はできておりませんけれども、私どもの見当では、赤字は出ないというように今のところ推計をいたしております。
  46. 山下義信

    山下義信君 私は三十年度の保険経済がもうかっておればその金をよこせというのじゃないのです。何もそうおそれて隠すととは要らぬのでありまして、もし保険経済が好転したらば関係者めでたきことこの上もない。何も赤字が出ることを喜んで手柄顔に、六十億より八十億になった、八十億よりは百億になったと、多々ますます赤字が出るようになったと鬼の首を取ったように言わなければならぬことはない。赤字が出るであろうと思ったら、八十億が六十億になり、六十億が三十億になり、三十億出るであろうと思ったのがとんとんにいく、あわよくばそれが一億でも二億でも黒字になったならば、実に関係者は一ぱい飲んでもよろしい。このうっせきしたもやもやしたものは一ぺんに吹き飛んでしまうのである。赤字がなくなったならば問題はなくなるのである。赤字であってこそ心配するのでしょう。政府も心配なさるのでしょう。何もあなた患者負担させて、そうしていろいろ保険医をいじめつけて、こんなに苦労なさる必要はないのでありますから、私は何も赤字を——赤字が好転したことは政府の手柄ですよ。あなた方がうまいことをやったから、三十年度がこういうふうな結果になったのだと特筆大書していい大功績ですよ。厚生大臣大手柄ですよ。ですから私は何も遠慮なさる必要はないので、三十年度の保険経済はおそらく私は好転したのだ。このことは昨年十二月にもうすでにうわさが高いのです。新医療費体系を審議する当時に、十月調査、十一月調査において療養費の支払いの状況が好転してきた、いわゆる下降線をたどってきたということは隠れもない天下のうわさである。しかしながら、その当時われわれはこれに触れてこれを追及することはなお自重したのであります。一カ月や二カ月の趨勢をもって即断することはできない。しかしながらすでに二カ月という、年度がもう済んで決算ということになったら、隠すこともどうもできない。これは見込みじゃない、正確な決算でありますから、それが政府の当初見積ったよりは非常にその状態が好転してきたということは注目すべき事実であります。従って私はそれらの数字は資料として御提出を願いたい。  委員長、私は次回にこの支払いの関係者として基金の責任者を出席せしめられたいのであります。なお、政府の三十年度の保険経済の決算の報告をすみやかに当委員会に資料として御提出を願いたいと思う。従って、私は三十一年度の保険経済の赤字の見積りも当初よりは相当見込みが私は変ってくるのじゃないかと思うのでありますが、その点厚生大臣のお考えはいかがですか。
  47. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) この点は数字の問題でございますから、保険局長からお答え申し上げます。
  48. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 昨年の八月をピークといたしまして九月以降医療給付支出が減少をいたしておりますることは事実でございます。で、これが一つにはこの結核の入院料等の点数の切り下げ——まあ切り下げとは違いますけれども、実質的に支払いが少くなるというふうな措置をとりましたり、あるいはまた、薬価基準の関係等もございまして、そういうふうな行政措置によるものとも考えられまするけれども、しかし毎年八月をピークにして医療費はだんだん下って参るわけでございます。この下降傾向というものは、八月以降をピークとして下降をいたしまする、この後半において下降をいたしまする傾向というものは、大体その前年とも、三十年度の模様ともよく似ております。そうしてさらに年度の一番最終的なところになりましてまた上昇をしてくるということも、大体の今までの傾向と同じような傾向をとっておるやに私は承知をいたしております。従いまして、この三十一年度のこの財政収支の見込みが——これはもちろんあくまでも見込みでございまするけれども、私どもといたしましては、昨年来——三十年度のこのカーブ等を見ましても、大体この程度の、今予算として成立をしておりまする程度医療給付費の額を見込んでおくべきであると、かように私どもは目下のところ考えております。
  49. 山下義信

    山下義信君 見込みはですね、これはあなたの方も一つの見込みでありますから、しかし私は見込みだから勝手に見込んでもいいというわけにはいかない。数字を基礎にして予算が組まれ、数字を基礎にして諸般の対策が立てられる。でありまする以上には、これは見込みだからといって勝手な見込みをしていいということは許されない。先ほど申し上げましたように、いやしくも保険に関する数字は非常に、ほとんど専門家がこれを扱うべきであると言われるほどの数字である。茫漠たる見込みでもって何百億なんという保険財政の見積りやそういう予想をさるべきものじゃないことはもう三才の童子も知っている常識です。でありまするから、同じ見込みであってもほとんど予想に違わないような、よほど特別な異変がない限りには、正確な予想が立てられていなくちゃならぬ。あなた方の方の三十一年度の予算は、これはもう資料としてわれわれに御配付下すっているのですから、だれも知っています。三十年度から医療給付は約一割ほど上るものと見込んで、しかも二十九年度から三十年度の十月までの医療費の支払いの増加の趨勢を、その増加の率をそのまま三十一年度の予想の数字に持ってきて、そうして三十一年度の医療費の療養給付の支払いの予想数字というものが立てられた。なるほど十一月から恒例のごとく下半期の下降線をたどるのであるが、しかしまたそのたどり方は前年度と果して同一であるかどうか。もう決算が出たのですから、従って三十一年度の昨年の十月、十月一ごろに当局が立てた予想と、今日に至って最近の正確な数字をもって、それを基礎にして三十一年度の、本年度の今後の予想というものをどういうふうにして見ていくか。当初の通り修正する必要はないか、修正する余地はないか、見込みに狂いはないかということは、私はこれは政府責任をもって答えてもらわなくちゃならない。私どもは私どもなりのですね、数字を持っております。われわれの数字からいえば、本年は少くとも政府の見込みとはおそらく三十億ないし四十億前後ごろの政府の見込みとわれわれの見込みとの間に数字の食い違いがあるのではないかと考えておる。もし政府の見込みとわれわれの見込みと三十億の差ができてきたならば、私はこれは重大な問題であると思う。従ってです、この三十一年度が三十年度の実績に照し合して政府保険経済の見込みに誤まりがあるかないかということは、あらゆる問題に先行して私はこれは当委員会として正確に検討しなければ、もろもろの議論というものは戯れの論になってしまう。ナンセンスである。従いまして、私は政府に三十一年度のこの保険経済の見込みに関する一切の資料を提出を願って、そうしてそれに対するわれわれの納得のいく説明を願って、ただいま申し上げましたような三十年度の決算がもうできたのですから決算の報告をなさって、それと照し合せて政府の当初の見込みに狂いがないかどうかということを当委員会として十分の御検討を願いたいと思う。従って、私は本日はこの程度にとどめておきますが、次回は大蔵省関係者も全部出席をさせまして、そして基金の関係者も全部出席をさせまして、なお保険数理等に関しまする専門的な関係者も出席を求めまして、まず当委員会の審議の順序といたしましては、政府提出の三十一年度の保険経済の見通しいかん、三十年度の保険経済の決算の検討、これをまず正確に当委員会としては把握して、しかる上に御審議の御進行をお願いしたい。かような希望を申し上げておきたいと思います。
  50. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 三十年度の決算はたしか五月一ぱいに整理をいたすということになっておったと思いまするので、決算としましてはまだ御提出をすることが不可能と存じます。大体の決算見込みといいますか、そういうふうなものにつきましてできるだけの努力をいたしまして、資料として提出いたしたい、かように存じます。
  51. 山下義信

    山下義信君 先ほどの私の希望いたしました点について、なおつけ加えておきたいと思いますが、この問題の取扱いにつきましては、他の委員の方々の御意向も十分承わりまして、委員会としての検討の方法を御考究を願いたいと思う。従いまして、取扱いにつきましては、委員長理事会におきまして十分御検討願うように御一任申し上げたいと思います。私はこの程度に本日はしておきまして、他は保留しておきます。
  52. 相馬助治

    ○相馬助治君 先ほど来、山下委員藤本議員との質疑で、衆議院側修正の態度というものが概略つかめたのですが、私はそれに関連いたしまして、も少し具体的に、詳細にただしたい点がございまするので、以下若干質問をいたします。  まず、衆議院政府の提出した保険財政の資料を信頼したと、かようなことでございまするが、具体的に次のような資料の提出を求め、これが検討いたしておる事実がありますか、ございませんか。すなわち、昭和三十年度見込額保険料収入に関する件、第二には、昭和三十一年度予算の基礎となった三十年度現年度分保険給付費の総額の資料、少くともこの二つは詳細に検討されなければならぬと存じます。いわゆる赤字というのは収入と支出とのバランスの破れているのを言うのでございますから、このことをお尋ねするのですが、以上の資料の提出を求め、これが検討いたした事実がございますか。
  53. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) その点は検討いたしました。
  54. 相馬助治

    ○相馬助治君 そこでお尋ねしたいと思うのでありますが、衆議院側修正した結果五億六千五百万の財政上の一応のロスが出る、こういうことでございまするが、厚生省側の、責任ある方ではないのですが、ある人が二、三度言うた言葉の中に、審査、監査等を強化するならば、現行法のままでも簡単に五億や十億の問題は片づくのだ、こういうことを耳にいたしております。そこで、この五億六千五百万程度ならば、いわゆるいうところの合理化によって何とか解決がつく。別な言葉でいえば、先ほど通過した予算案をいじらずに何とか都合がつく、こういうので逆算をしてあの修正案を出したのとは違いますか。
  55. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) さようなことはございません。
  56. 相馬助治

    ○相馬助治君 まことに当然な答えで、私もそれ以外の答えを別に期待したわけではございません。少くとも衆議院の権威においてさようであったと思いまするし、私は現在の藤本委員答弁を了といたします。そこで問題は、現在議院内閣制度であって、与党、自民党の立場というものは、あるときは政府とひとしいと思うのです。少くとも世間をこれほど騒がせている健康保険法の改正というものが一体どのような目的の上に立っているのかという、このことが今日必ずしも明白でございません。衆議院側を代表し、同じく自民党のこれら政策審議の中心である藤本さんにお尋ねするのですが、今般の健康保険法の改正の目的は保険財政の根本的立て直しをして、社会保険制度をより前進せしめるという善意の意図に出ているのですか。それとも率直に赤字が出てどうにもならぬからこの対策だとおっしゃるのですか、いずれですか。
  57. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 相馬さんのお尋ねでありますが、その件は最初修正をなぜしたかということのお尋ねに対してお答えした点でもございますし、先ほど簡単でありますけれども、私が申し上げましたように赤字対策オンリーではございません。一応赤字が出ましたから、それを合理化によりまして立て直して、これを基盤にしまして、社会保険社会保障前進 拡充をはかりたいという大きい目的の地固めをいたさんとしたわけであります。
  58. 相馬助治

    ○相馬助治君 同一趣旨の御見解は前々から私も承わって承知しておるわけです。ただ問題は、一部負担の問題は、その金額を操作して解決つく問題でないと私は考えております。自民党が、同時に衆議院が、あるいは政府が確たる理論的な立場に立つならば、一部負担もけっこうだ、堂々とこれはやったらいい。ただ私どもが賛成できかねるのは、そういうわれわれを納得せしめる答弁がなされていないということと、第二には、ただいま山下委員指摘しておりまするように、私が乏しい力をもって計算した範囲内においても、このいうところの赤字というものが政府発表の通り、にわかに首肯しがたい、この二点がありますものですから、私どもはこれを問題にしなければならぬのでございます。  そこでお尋ねを進めまして、五億六千五百万円は合理化することによって予算上問題を残さないとこう申しておりますが、それは現行法においてもですか。それとも衆議院を通過した法律案が成立したという前提に立っておるか、いずれですか。
  59. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 大体現行法改正いたしますことによってでございます。つまり現行法合理化することによりまして、それくらいな経費の節減ができるのじゃないか、こういうふうに推測いたしました次第であります。
  60. 相馬助治

    ○相馬助治君 この点は、山下委員合理化内容については質問をしばらく保留されました。これは第一陣に質問されたる山下委員においても、何らかのこれを明らかにしないところに含みがあるのだと思うので、私はここでこれをただしたい念しきりなるものがあるのですが、私もまた一応保留しておきますが、衆議院側の一部負担の数字を操作したこの仕事は、厚生省側とはどのような連絡とどのような了解があるのですか、また、ないというのですか。
  61. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、できるだけ患者負担を最低限度にいたしたい、しこうして、最低限度とは一体どういうことかということでありますが、まず医療中心はやはり私どもは診察に重点を置くべきだと考えております。ですから、初診によって若干容態がわかってきましょう。それを再診において慎重に検討してもらう。その際に、最低の料金といたしまして十円、それからさらに再診を十円にいたしましたのは、内科以外は注射や投薬はまずあっても微々たるものでございますから、内科以外の、たとえば外科とか、歯科とか、耳鼻咽喉科とか、そういう方面とのバランスも考えまして十円、それから投薬の方も散薬もありますし、水薬もあり、また注射もいろいろありますから、とにかくまあどちらを、また両方をもらっても、その上注射をやっても十円、これは最低だと考えました。それからさらに、実は長い間でありますから、いろいろ意見も聞き、いろいろ調べもいたしました。近ごろ保険と申しますと、社会保障的な、いうところの分配所得の再分配方式というよりも、相互扶助というようなことが近ごろの傾向であるようであります。そこで、そういうこともあり、また、外国の立法例あたりも、しかしまあこれはそのまま日本に当てはめるわけにはいきませんけれども、さらに、一九五二年の国際労働会議の情勢というような点からもいろいろしんしゃくいたしまして、この程度ならば、施行して健保財政の再建のために、健保財政合理化をはかって大きい目的に前進するというようなことから、まずこれくらいは妥当でないか、こう考えた次第でございます。
  62. 相馬助治

    ○相馬助治君 患者負担をなるべく少くしたい、その犠牲をなるべく最小にとどめたい、こういう基本的な立場に立って、この程度ならばやむを得ないと、かようにしたという御答弁は先ほどもなされて私も聞いております。そこで問題は、この政府管掌健康保険というものを基本的に藤本議員はどうながめているかという問題に発展してきます。従って私は、次の一点だけ本日は質問をして終るのですが、これはしかとお答え願っておきたい。それはどういうことかといいますと、政府管掌健康保険と組合管掌の健康保険の間には、継続給付の占める比率が非常に大きいという事実のあることをあなたは御存じでございますか。——うなづいているようですから、御存じのようです。  そこで問題は、そういう差はどうしてできたか、そういう問題です。それで弱き者に味方することこそ政治の要諦なりと鳩山さんがおっしゃった、そういうことを言った人を親分にして内閣ができている。ところが、現在の政府管掌健康保険、これは中小企業を対象としているものだけに非常に雇用の不安定、それから劣悪な労働条件、それから大企業は厳重な身体検査をいたしまして病気になるおそれある者はどんどんはじいてしまう。中小企業者はそれができない。そういうふうな角度から、現在統計で明らかでありまするように、大企業からは結核患者がどんどん減っているにもかかわらず、中小企業の健康保険組合の中にはどんどん結核患者がふえている。この事実を藤本さんは御存じですか。
  63. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 政府管掌健康保険は、御指摘のように、中小企業を対象といたしております。事業所といたしましても従業員五人以上平均二十人そこそこの規模でありまして、小さいのであります。従いまして、標準報酬あたりも三十一年度は一万二千二百五十二円であります。そういうような点で組合管掌とは非常に違います。違いますが、どうしても社会保険医療保険の歴史から考えましても、これは医療保険の中核体でありまして、非常に大事なのであります。そういうわけでありますので、まず国が社会保障というような観点から、今まで事務費は全部出しております。医療費とは申しておりませんけれども保険の運営の費用の一部として今回三十億出している、こういう点から、私どもは、特にこの健康保険医療保険の中核体として非常に尊重いたしているわけであります。  それから組合管掌の方は御指摘のように、健康保険に比べましては非常に豊かな点がありますが、今後社会保険医療保険前進確立という上から検討いたしたいと思っております。これは今後われわれに課された重大な問題点であると考えております。
  64. 相馬助治

    ○相馬助治君 私はですね、政府管掌健康保険と組合管掌の健康保険とがあってその差が非常に激しい。しかもそのうちで最も気の毒な立場にある政府管掌健康保険法の改正を今般はやって、しかもそれが患者負担ということをここに織り込んで、さもそれが正当であるかのごとく立論しているところの政府当局並びに与党、私は真実はあなた方自身よく知っていると思うんです。これはもう明瞭に赤字対策なんです。ところがすぱっと赤字対策だと言えないものだから、ああだの、こうだのと説明しておりますけれども、これはもう一番医者が、歯医者がわかっておる。気の毒な患者を取り扱っておるからわかっておる。それで問題が今日こういうふうにこじれておるわけであって、私はここで議論をしようとは思っておりませんけれども赤字の実態が政府提案の資料通りだという基礎の上に立って今般の衆議院修正がなされたとするならば、もしも当院の慎重審議による精査の結果、政府が見込んでおる赤字の基礎というものがゆらいだ場合には、衆議院を代表して藤本さんは、気の毒な政府管掌健康保険組合員のために、本院でこの一部負担に関連する問題は何らかの修正が成立することを期待いたしますか。
  65. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 御承知と存じますが、今回の改正は、組合管掌にも及ぶ関係でございますことは申すまでもないことでございます。
  66. 相馬助治

    ○相馬助治君 保険局長が耳打ちされてそういうふうに答弁をそらすことはきわめて遺憾です。高田さん黙っていらっしゃい。  問題は、私が聞いておることは、こういうことなんです。政府管掌健康保険立場というものをよく理解されて、そうしてまた現在の立場から幾分赤字負担させなくちゃならぬという立場をとって、そうして衆議院患者にも同情して一部負担を減らしてきた。ですから、その精神が拡大されて、もしも本院において、政府提出の赤字の基礎というものがゆらいで、もっと少いということになれば、衆議院の方は、政府が今言っている赤字の基礎の上に立ってああいう修正をしたのだから、本院においてその基礎がゆれれば、むしろ衆議院は、参議院においてより合理的な修正を期待するという御意思かどうか、こういうことを私は立ち至って聞いておるのであります。他院に関することだから答弁の限りじゃありませんというのなら、これもいたし方がありません。
  67. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 私どもは再々申し上げますように、今度の対策は決して赤字負担オンリーでございません。それから政府に対しても最初いろいろの考え方がありましたけれども、たとえば三十一年度で赤字がなくなったらもう次は国庫の補助はやめるのかというような点もありましたが、これはやめませんとのことであります。とにかく恒久的な、根本的な医療保険確立をはかりたい、こういう意味でありますので、今後これを医療合理化によりましてやっていくということはけっこうなことだと、かように考えております。
  68. 山下義信

    山下義信君 私は本日の、一部負担に関する、ことに数字関係の、予算関係のことをお尋ねして、私の質疑はその程度にとどめておいて、この保険財政政府の予算見積りの検討、調査、その方法等については理事会に一任しておきまして、これに関する質疑はこの点にとどめておきましたが、午前はこの程度一つ休憩にしていただいて、理事会を一つ御招集願い、午後御継続を願いたい。藤本議員は午後お差しつかえのようでありますが、御出席  いただけますかどうか。
  69. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  70. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。
  71. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 今、一部負担の問題と赤字との関連のことが出ておるわけですが、藤本さんは非常に真率な態度で、非常に良心的にやっておられることはよく私どもはわかりますが、しかしながらこの問題は、赤字の分析が足りないのじゃないかと私は考えておるのです。先ほど、どういう資料で赤字を分析されたか、医療費の方で計算をされたかというときに、厚生省の資料を中心にしてやられたという御答弁ですが、それ以外にはどういう資料をお使いになりましたか。
  72. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) まず私といたしましては、政調会、社会部会その他いろいろ、たとえば日本医師会の方からもいただいた資料もありますし、その他何といいますか、若干こういうことに関係ある著書等もあります。要するに私どもの手の届く範囲内、わけても、何としても政府の資料というものは尊重しなければなりませんから、これも見まして、あれこれ検討いたしましてやった次第でございます。
  73. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もし政府の資料以外に、信憑性を持った資料というふうにお考えになってお使いになったものがあったらそれを知らしていただきたい。それでそれに関連して、政府の資料は十二カ月をやっていないのですね。大よそこれは十カ月か八カ月の資料で、大体先は推定しておると思います。ところが、この医療費のカーブというものは相当変動がコンスタントでないように思う。そういう場合に、傾向線をたどった統計の取り方はよほど慎重でなくてはならない。というのは、ほかに一生懸命にやった人の資料を一、二聞きましたのですが、それとだいぶん違うのです。結果が違って出てくる。そういう場合には、ことにこういう統計というものについては、相当分析が必要じゃないかと思っております。ところが、私自身はどうもやっておることはやっておるのですが、日本統計学会の会員ですから。ところが一番不得手なのは数と統計なんです。それでだれかそういう非常に良心的な材料を持っておる人の統計もこの委員会にあわせて一つ考慮をしたいと思います。一、二私は聞いております。非常に良心的な、純粋に学術的な立場からとられた統計を私は拝見したことがある。で、それについても私はもう少しこれは根本対策がやはり赤字対策、ほかにもむろんあられるでしょうけれども、あると考えられるでしょうけれども、私どもはどうも健康保険法の改正というものは純粋に、また大部分が本質的には赤字対策のように見受けられますから、この赤字対策であれば、赤字に対するこの数の根拠をやはり追究することが参議院としては必要だと思います。そうして、ことにもう一つわれわれが研究しておかなければならないことは、衆議院の方では、政府管掌健康保険対象についての実態を研究されましたでしょうか。
  74. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) これは仰せの通り中小企業でありまして、まあ最初対象人員は五百三十九万人とかいろいろありましたが、慎重に研究いたしまして最後に五百三十一万人説になりました。それを最後案として取り上げた次第であります。
  75. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 これは御承知通りに零細企業のものであって、この組合管掌の、いわゆる大企業の被保険者の中には、もはや結核患者というものは非常に減っております。ところが中小企業、この政府管掌の分と生活保護法の分は依然として高い。そうして、こういう人たちの所得、労働賃金は格段の差があります、組合の方の、組合管掌の被保険者と比べて。だから、たとえば一部負担の問題にしても、医療券で入っておる人たちで、しかも一部負担をしておるこの人たちがよく似ておる状態があるのです。この医療費の一部負担の滞納が約四〇%出ております。三九%。そうしますとですね、一部負担をやってみても事実上これは入らない、入らないのじゃないか。そうすると、政府の考えておる赤字対策をこれは三者に等分して分担させようという、事業者と、被保険者と、お医者さんに分担さすわけなんです。そうすると、こういう分担方法というものは非常に無理がいって、事実は一部負担があらゆる面において日本の医療の充実の上に逆の結果をもたらすのじゃないかと思います。一部負担のために、初診料、再診料のために、やはり早期診療だとか早期治療とかいうものがおくれます。これはいろいろな参考人の意見を聞いてみてもそうです。日本のこの今の零細企業に働く者は、一部負担の能力というものは非常に低い。われわれが想像した以上に低いという事実が出ておりますし、あるいはそのために非常な制限になってくる。あるいは初診料を払わないでもお医者さんが実際には診療しなくちゃならない。そうするとお医者さんが今一割くらいは初診料を実際受け取っておらないと思いますが、京都あたりでは一割大体初診料を払わない患者が一部あるようですが、これも増大してくると思います。それを見ると、再診料についても、さらに払わない患者が出てきます。お医者さんはこれはどうしても見なければならないものだから見ます。そうすると、その患者とお医者さんにその赤字が一部負担という形でぐっとしわ寄せされてくると、こういう被保険者の実態というものをやはりしっかり知らなければならないと思いますが、そういう点について、もしこしらえたものがあれば、その資料をお出し願いたい。
  76. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  77. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて、今山下さんから出た、午後続行するということで、どうですか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それでは委員会を休憩します。    午後零時三十九分休憩    ————・————    午後二時二十五分開会
  79. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) それではただいまから再開いたします。  本日の委員長理事打合会の協議事項を御報告申し上げます。  健康保険法等の一部を改正する法律案審査の便宜上、小委員会を設けること。  明日の委員会の案件は、左の順序によって審査を進めることにいたします。午前中は、へい獣処理場等に関する法律の一部を改正する法律案、採血及び供血あっせん業取締法案、右二案の質疑、討論、採決をいたします。午後は健康保険法等の一部を改正する法律案のほか健康保険関係二法案の質疑をいたします。残余の法律案審査は次週の、次の週において審査することに決定いたしました。   —————————————
  80. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) なおお諮り申します。本委員会に付託されておりまする健康保険法等の一部を改正する法律案の審査の便宜のため、保険経済に関する小委員会を設けることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。つきましては、小委員の数は五名とし、小委員及び小委員長の人選は委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。それでは私から指名いたします。谷口——私と、榊原亨君、山下義信君、相馬助治君、田村文吉君、また小委員長には山下義信君をお願いいたします。   —————————————
  83. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。午前中に引き続き質疑を行います。御質疑を願います。
  84. 榊原亨

    ○榊原亨君 午前中の、山下委員衆議院の側の御意見との質問応答の場合に、これに関連いたしまして、現行一点単価は不合理であるから、保険経済がもしも順調になりますならば、この点についても修正をすべきものであるという衆議院側の御意見を拝聴いたしたのでありますが、この点は特に重要でございますので、もう一度御意見を御発表お願いいたします。
  85. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) ただいま御指摘の点につきまして、午前中におきまして申し上げましたが、なお御要求がございます、実は今度の健康保険法の改正は、あらゆる観点から総合的な根本的な政策を立てるという点において、広い視野に立って検討をいたしました。今御指摘の現行一点単価というのは非常に古いものでありまして、物価上昇の基準等から考えまして、適当なものと考えておりません。そういうことに関しましては、社会部会においても、いろいろ御存じのように御意見がございましたが、今回の改正や、あるいは行政努力等によりまして、また、今後の財政事情等の問題も検討いたしまして、私といたしましてはかような計画といいますか、なおまた、今朝相馬委員の御指摘もございましたように、実は根本的な対策がないから赤字補てんみたいな意味があるのじゃないか、ごもっともな御指摘だと思いましたが、しかし根本的の総合政策を今非常に研究いたしております。そういうこととも見合いまして、私の希望といいますか、今後の考え方としましてさように考えております。
  86. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいま現行の一点単価は不合理であるという衆議院の御意見を拝聴いたしまして、私もしごく同感であります。この際厚生大臣はこの点についてどういうお考えを持っておられるか、念のためにお承わりいたしたいと思います。
  87. 小林英三

    ○国務大臣(小林英三君) 榊原委員の御質問にありました現行の一点単価の問題につきましては、先般衆議院におきましても同じような御質問があったのであります。私は、この点につきましては、将来健康保険財政というものが軌道に乗っかりまして、財政上相当な余裕を生ずるような場合におきましては、当然そういう問題にも触れていくべきだと、こういうように考えております。
  88. 高野一夫

    ○高野一夫君 私藤本議員に、午前中の各委員の御質疑に対する藤本議員の御答弁で確かめておきたい点があります。明確に伺いたいのでありますが、それは五億六千五百万円の衆議院修正によってそれだけのマイナスができた。それはいろいろな保険医療の経済問題に関する合理化といいますか、科学的にやることによって十分浮び上ってくる見込みがあるというようなことの御答弁中心にして、どうもその見込みではいいとか悪いとかというような話があったと思いますが、このことについては、われわれお互いに与党の政調会においても十分相談をし合った問題であって、なおまた、衆議院の社労のあなた方の委員会においても、数十回にわたってたしか委員会をお開きになったと思いますが、十分検討されて、その見込みができたものだと私は考えているわけなんです。そこで社会保険の方は、私の考えでは過去に、前年度前までの分は、金の問題はまあわかるけれども、正直のところ、これからのところは全くわからぬというのが、これが私は保険医療の実態じゃないかと思うのです。推測でいくよりほかない。一体何人病人ができるのやら、重い病人ができるのやら、軽い病人ができるのやら、入院患者が幾らになるか、去年の通りでいくものやら、新たなる事態が発生するものやら全くわからぬのです。従って、過去の統計に基いてできるだけ誤差のない線に沿うた推測の数字をもって当てはめるより仕方がないのかもしらぬと私は思うのです。そこでやってみて、その数字が狂うかもしれぬし、あるいはまたマイナスに狂うかもしれぬし、プラスに狂ってくるかもわからぬというわけです。こういう点を考えた場合に、あなた方は、衆議院修正をなさったその結論に対して、先ほど相馬委員質問に対しまして、あなたが参議院側で適当な考えがあるならば、修正されてもそれはごうも差しつかえないというような意味のことも御答弁になったように私は受け取った、それはまあやむを得ないだろうという——、それは衆議院参議院は違うのでありますから、われわれが認めても衆議院でお認めにならないかもしれませんし、衆議院で適当だとお考えになったととが、われわれの方で適当だと思えないこともそれは多々出てくるわけです。しかしながら、長い間検討されて出てきて、数字についてもできるだけ誤差のない線に沿うた推測が下されて、この一部負担に対する修正案をお作りになった以上は、私は確信を持って、この線に参議院側が深い理解を持ってくれるようなふうに、あなたが強い決意を持ってわれわれの方にお臨みになるというか、御答弁があるのがほんとうじゃないかしらぬと、こう考える。しかしそれに対して、われわれが同意をするせぬは、これは委員会最後の結論によらなければならないわけですから、ただこちら側から、各委員がお尋ねした場合には、十分の確信を持ってできた修正案であると  いう点において、私ははっきりしたあなたの御答弁といいますか、決意といいますか、そうふらふらして、またほかのところで勝手な数字が、別な数字が出てきて、それは仕方がないからまたその通りで、いろいろやり変える分には差しつかえないじゃないかと、こういうようなものでも、あなた方の立場としてはないのじゃないかとも考えられるわけです。この点について、衆議院側が十分審査なさったということは、私は考え、またそういうふうに信じたいので、あらためてさように私は衆議院側を代表しての藤本議員答弁についての確信あるお気持を伺いたい。
  89. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) ただいま御指摘の点は実にごもっともな点が多いのであります。修正案によりますと、十七億八千六百万でありますから、政府原案と比較しますと、実際の差は五億六千五百万になります。それは今御指摘のごとく見込みでございまして、実は一カ年の間大いに行政努力をやる。しかし第一、五百三十一万人という保険対象も果してそれであるかどうか、あるいはまた向う一カ年に非常に医学、医術の進歩によりまして、医療給付費がふえるということもありますが、まあ大体これくらいな点に落ち着くだろうというようなことに検討いたしまして、衆議院といたしましてはあれは最低の線だ、それに対しまして、予算上は——予算は通っておりますけれども、予算上の考えといたしましては、行政努力によりまして、それくらい経費の節約を出す、またそれが最高だというようなことでございます。  それからなお、相馬委員の御質問に対しまして、今御指摘のような意味の私は答弁をいたしておりませんが、その点御了承願いたい。
  90. 山下義信

    山下義信君 一部負担赤字との関係につきましては、午前においてお尋ねしまして、理事会で小委員会を作っていただくことになりましたから、あらためてその機会検討することにいたしまして、本日午後藤本議員に引き続いてお出ましいただきましたので、衆議院側に対する私の修正点質疑の大略をこの機会に済ませていただこうと思うのでありますが、伺いたいと思いますことは多々ございますが、まあ何と言うても一部負担のところが最重要な点でございますので、一体衆議院におかれましては、一部負担というのをいかなる性格のものであると御解釈になり、御規定になったのでありましょうかということを、これは一つ一部負担そのものの根本論として明確にしておいていただきたいと思うのであります。私のお尋ねする趣旨は、一部負担とは何ぞや、一部負担をするゆえんのものは、赤字対策でもあろう、一つの恒久制度でもあろうが、そのいずれであるにしても、一部負担とは、そのものは何ぞや、いかなる性格のものであるかということを、衆議院はどういうふうにこれを了解して、こちらにお回しになったのだろうか、これを一つ私は明確にしておいていただきたいと、こう思うのです。
  91. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 一部負担範囲拡張は、実は健康保険財政の建て直しという性格と、さらにこれによりまして、これを基盤といたしまして、医療保険社会保険の拡大、確立をはかる、こういうような重要な意味を持った一部負担拡張と、さように考えております。
  92. 山下義信

    山下義信君 ごもっともでありますが、それは一部負担を設くる目的でちりまして、一部負担という、そのものの一体本質は何かということですね、これは現行法では明確なのです。割に明確なのです。一部負担は診察料なのです。今日の現行法の五十円というそのものは何ぞやということは、法律で診察料であるぞよということが書いてあるのですね、診察料に相当する額ぞよ、言いかえれば、額そのものは診察料に相当する額とあるが、言いかえてみれば、診察料ぞよ、お前の払う一部負担は診察料を払うのぞよとあるから、一部負担はそれぞよ、すなわち診察料である。診察料の一部を払うのである。あるいは全部を払うのである。そのものは診察料であるということが明確なのである。今回の改正案におきましては、一部負担は何であるかということが書いてない。関係の条項が数カ条ある。私の見落しであるかもわからぬが……。すなわち、一部負担金というものは何であるかということが書いてあるところの現行法の一部負担規定、それから今回の政府提案の改正案の上には、一部負担は何であるかということが書いてない。であるから、衆議院におかれてはこの一部負担というものは一体何であるか、何ものであるか、一体正体が。金額の五十円、二十円の議論もよろしいのであります。また、一部負担をかける目的も一応はわかります、善悪は別にして。しかし、一部負担というものは何を負担するのか。一部負担金というものは一体何だ、十円払う、二十円払う、三十円払うというそのものは一体何だという物柄が明確になっていないと私は思う。だから、衆議院はどういう解釈をこれにとられ、どういうふうな見解をお下しになったかということを、お宅の方のお考えを承わっておく方がいいのではないかと思うのです。
  93. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 現行法におきまする初診料は御指摘通りでございますが、その初診料も医療費の一部でございますから、今度私どもが考えましたのも、やはり医療費の一部をこの根本的な改正の一環として一つ負担願う、かように考えたのであります。
  94. 山下義信

    山下義信君 医療費の一部であるということが法律のどこに書いてありますか、御指摘を願いたい。第何条の何項のどこに、この一部負担というものは医療費の一部であるぞよということをどこにお示し下されてありますか。どこの箇条の解釈がそういう御解釈になるのでありましょうか。
  95. 藤本捨助

    衆議院議員藤本捨助君) 実はここに一部負担というのは、その範囲拡張であります。これは政府支出の三十億に見合っておるのであります。少し最初よりは額が減りましたけれども、やはり政府の三十億が健康保険を執行する費用の一部ということでございますから、それに見合いますものと考えております。しかしお示しのごとくになっていないのでございますけれども、やはり私はそれと見合って、医療費健康保険の執行に要する費用の一部を患者といいますか、被保険者側において御協力願うということを考えておるのであります。
  96. 山下義信

    山下義信君 私はこの一部負担というものが、非常に重大な問題でありまして、各界の権威者がこれを議論する、たとえば社会保障制度審議会、社会保険審議会、それらの委員諸君の一部負担に対する見解といいますか、議論といいますか、非常に無責任、非常に不明瞭、あいまい模糊としておる、私は実に遺憾に思う。わが国の社会保障制度あるいは社会保険に関する最高のそれらの審議機関が、この一部負担の問題に対する態度というものが非常に低調をきわめておるということは、非常に遺憾と思うのです。一体一部負担というものは何だ、いかなる性格のものか、現行法においては初診料、初診料に相当する額と明確に書いてある。今回の改正案におきましては、十円であろうと二十円であろうと、入院の三十円であろうと、一体何である、何の一部を負担するのであるかということが明確でないと私は思う。もし明確であるというならば、法律のどこに明確にされてあるか、一体これは何の性格の金を徴収しようとするのか、保険料率でもなけらねば、医療費そのものでもなけらねば、医療費の一部であると通説にはいうのである。通俗にはいっておる。法律のどこにそれが書いてある。もし療医費の一部というならば、その性格を明確にして、医療費の一部を患者負担させるというならば、その基盤の上に立って議論を展開してゆかなければならない、法律がそうなっておるかどうかということも追求してゆかなければならぬ。一部負担金というものは、保険料率でもなけらねば、医療費でもなくして、たとえば七人委員会の近藤君が言うがごとく、これは一つの手数料的なものだというならば、またこれそういう性格のものである。いかなる性格のものとしてこれを規定したかということを明確にしておかなければならぬ。それでなければ法律のつじつまが合わぬ。衆議院の方では、ただ三十円を二十円にしたという、つじつまをお合わせになったのではなくして、一部負担金というものの性格をいかなるものであるかということを規定されて、それから打ち出されたものでなけらねば理論が立たない。それでこれはどういう性格のものか、法律にどこに明確にそれが書いてあるのかということを、これを御指摘願いたいと私は思う。
  97. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 原案に関係をいたすことでございまするので、私からお答えをさしていただきたいと思います。  一部負担金がどういうものであるかという定義につきましては、現行法にも改正法にも、それを解説したような条文はございません。現行法の御引用になりました四十三条の二の第二項でございますか、ここにはその一部負担金として支払う一部負担金の額をきめておるのが、この規定趣旨でございます。それで改正法の方におきましては、その額を四十三条の八の第一項にございまするように、初診料に相当する額という、現行法の額に相当するものをここに一号、二号、三号というふうにあげてきめておるわけでございます。それでしからば、一部負担金というものはどういう性格のものだという御質問の、要点についてでございまするが、私どもも先ほど藤本先生からお答えがございましたように、医療費の一部である、それを患者負担していただく性格のものであるというふうに解釈をいたしております。それが正面からさような説明を加えた条文はございませんけれども、それが現われておりまする条文といたしましては、四十三条の八の第三項、これは前項の第一項に規定しまする額がその日の医療費に満たない場合には、それで一部負担金の額を押えるという趣旨規定でございまするが、その三項の規定並びに四十三条の九には、「療養ニ要スル費用ノ額ヨリ一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額トス」、こういう法律規定がございまするが、これらの規定が何と申しますか、条文といたしましては、その一部負担金の性格というものを裏の方からと申しますか、それに関連をして規定してある条文である、かように考えるわけでございます。御指摘のように、正面から定義づけたような条文はどこにもございません。
  98. 山下義信

    山下義信君 私は何か定義したところがあるかと……そうですね、まあ聞いたと言ってもいいのですけれども、まあ別に定義はあってもなくてもいいのです。定義があろうとあるまいと、それじゃ療養費の一部ということであなた方が考えるならば、一体療養費の一部であるということがどこに書いてあるのですかと、こう言うのです。私がこうずっと、これは見そこないかもしれませんが、私のいただいた資料は少しガリが薄いので見そこないかもしれぬが、私の見たところでは今度かける一部負担金というものは療養費の一部負担であるぞよと書いたところがない。そうすると、私は非常に疑義が生じてくるのを心配する。私は政府の……心配をする。それでこれは書きそこないじゃないかと思う。現行法は「初診料ノ額ニ相当スル額」とはっきりしてある。それは額は初診料と匹敵する額であるぞよというが、同時に常識で考えてみても、初診料は払う意味ぞよということはすぐ条文そのものからも出てくる。ところがあなたのおっしゃる療養費の一部ぞよということは書いてない。療養費の中から差し引くぞよとある。差し引いてもそれが必ずしも療養費の一部とは限らぬ。何でも差し引くことはある。税金でも差し引くことができる。療養費の中から差し引くぞよといえば、そのものは療養費の一部に限ったことではないのでありまして、療養費の一部ぞよということがこれに実は正確には出ていない。そこで今おっしゃったような四十三条の二の規定そのものは、そのものずばりにしてあった、今度だってそうしたらよかったでしょう。四十三条の八の一号も二号も三号だって入院費の一部を持つのぞよ、あるいは薬剤、注射のその費用の一部を持つのぞよ、こう言うたらはっきりする、初診料の一部を持つのぞよ、こう言ったらいい。前には、初診料に相当する額とその性格がはっきりと現行法に打ち出してあるのに、今度はそれをやめて五十円払うのは初診の際にという、払う時期を示してあるだけだ。何も初診料に相当する額とも何とも、せっかく明確な現行法をやめちゃって、払うその時期を、「初診ヲ受クル際」と、今度は注射や投薬を受くる、給付を受くる際にとこうある。そしてその負担すべき、その何を負担するかということが明確でない。一体これは何を負担するのですか。療養費の一部を負担するということは通説にはいう問題でありますから、これは名所旧跡でありますからだれでもわかっているが、せっかく療養費の一部というなら、それをどこかに明確にしておかなければ、全法律を通じて疑義を生ずるおそれがありはせぬかと私は思う。これでいいというならそれでよろしい。これでもうはっきりしているというならばそれじゃその次を聞いてみなければならぬ。はっきり工合を聞いてみにゃならぬ。どうもはっきりしておらぬ点があるとおっしゃれば尋ねぬ。はっきりしているとおっしゃれば聞かんならぬ。
  99. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) この現行法の「初診料ノ額ニ相当スル額」というこの表現からいたしまして、なるほど現行法通りであれば療養費の一部だということがわかるように読めるじゃないか、改正法の方ではその点がわかりにくいじゃないかというふうな仰せでございます。確かにこの文章の上からいたしますると先生が仰せのような感じを持ち得ると私も肯定をいたします。しかし厳密に申しますと、現行法におきましてもこの「初診料ノ額ニ相当スル額ヲ」とこうなっておりまして、あくまでもここは額をきめたのでございまして、一部負担金というものの性格をはっきり打ち出したという規定ではないように私は読むのでございます。一部負担金というものについて、これはこういうものなんだということにつきましては、従いましてこのどこにも正面から規定をしたものはないというのが私の考えでございます。その意味におきましては、現行法改正法も厳密に法律的に突き詰めて参りますと同じようなことに相なるのではないかと存ずるわけでございます。と申しまするのは、結局一部負担金というこの字句の意味が従来の法律にも規定してございまして、すでに法律用語として熟しておるというふうなことも言えるかと思うのでございます。なるほどこの文章から受ける感じからいたしますれば、先生御指摘のように、現行法の方がなおそれを読み取るのに非常に読み取り安い表現になっておるという点につきましては私もあえて異論を申し立てるものではございませんが、改正法のままにしておきましても、その点についてはさして論議が起らないのではあるまいか、かように私は一応考えておるわけであります。
  100. 山下義信

    山下義信君 だいぶ保険局長苦しそうな、それで健康保険法と心中しようという、まあまあそれならそれでよろしい。現行法も不明確であの程度で通ったんだから、今度も不明確でも大がい察してくれと、こういうことだと、要するところ、改正案における療養費の一部ということは法文の上においては明確に打ち出されていないということは事実だ。それで、現行法と比較することはやめても、改正案において、そのものにおいて療養費の一部であるということがいうてない。これをはっきりしなかったについては何かほかにあったんですか。はっきりささないのについてはほかにあったんですか。
  101. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) この一部負担のやり万につきましては山下先生よく御存じのように、初診料とか、あるいは再診料とか、注射、投薬料とか、そういうふうに医療行為個々のものをつかまえてそれを一部負担にするというやり方もございますし、それから全体にかかった費用の何割を本人が負担をするというふうなやり方もございます。それからこの改正法がとっておりまするように、その日にかかった医療費のうちで定額に幾らというふうにきめるやり方もいろいろあるのでございます。それで私どもの考えといたしましては、初診の日に、この初診料ということでなくして、初診の日に初診料もお払いをしましょうし、あるいはその日に投薬、注射があれば投薬、注射料もございましょう。あるいはその他の処置がありますれば処置料もございましょう。そういうふうな初診の際に、あるいは注射、投薬を受けた際に、あるいは入院をいたしました際に一日について幾らというふうに、その日にかかった医療費のうちで定額式に負担をするというふうなこの一部負担の方法を考えましたので、かような法文の表現になったわけでございます。
  102. 山下義信

    山下義信君 一部負担の方式についてはいろいろ方式があって、それぞれに特徴があって議論がありますが、今その議論をしているのじゃない。それで、一部負担医療費の一部だということが法律に明記してない、はっきりしてないということは申し上げたんです。それらしいようなところはある。がしかしながら、明確でないということを私は指摘したのです。しかし、衆議院の方では医療費の一部であるとかように規定をしてかかってきたのだということでありますから、それでいきましょう。それでその法文の不備なことは不備としておいて、それで医療費の一部ということでいきましょう。そうせにゃ議論にならぬ。議論じゃない、質問が進まぬ。法律の上にはっきりしておるとおっしゃったら聞いてみにゃならぬが、しかし、法律の上でははっきりしてないけれども、いわゆる療養費の一部だということでいくのです。そうすると、療養費の一部を患者に払わせるというのは、どういうわけですか。療養費の一部を患者に払わせるということは、法律のどこに許してある。健康保険法の建前は、今回の改正案においても、療養費保険者が払うのであるぞよと書いてある。療養費の全額は保険者が払うのであると書いてある。一つ改正されてない。その点は現行法も今回の改正案も同じです。法の建前は、医療に要したる費用の一切は保険者が払うのであるぞよと書いてある。四十三条には療養の給付をするのだと書いてある。一部は知らぬぞよということがちっとも原則に出ていない。そういうことを原則にうたわないでおいて、突如として療養費の一部だというて患者にこれをかぶせるのは法律上許してない。だから、療養費の一部と、こう解釈するなら解釈してもよろしいから、療養費は全額保険者が払うのだぞよというところを改めてもらわなければならぬ。たとえば療養給付は全部するぞよというところを改めてもらわなければならない。その原則を変えずにおいて、一方においては療養費の全額を払うぞよ、療養の現物給付は残りなくするぞよというておいて、突として四十三条の八に何らの前ぶれも何の相談もなしに、療養費の一部を患者に負わせるというのはどういうわけですか。払わせるというのはどういうわけですか。
  103. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 全額を給付する、患者には一文も負担させないで全部保険が出すぞよという規定があるという仰せでございますが、それはちょっと私もう少し現行法を探してみないと存じますが、ともかくどの程度患者負担するか。
  104. 山下義信

    山下義信君 ちょっと待って下さい。保険局長は、療養の給付を政府保険者の方でするのじゃということは、探してみないとわからぬとおっしゃるのですが、そうすると、療養の給付はしないのですか。
  105. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 先生が御指摘になっておるのは、一条それから四十三条等に、たとえば一条には、「事由ニ因ル疾病、負傷若ハ死亡又ハ分娩ニ関シ保険給付ヲ為シ」云々と、それから四十三条には、「被保険者ノ疾病又ハ負傷ニ関シテハ左ニ掲グル療養ノ給付ヲ為ス」(山下義信君「あるじゃありませんか」と述ぶ)というふうに書いてあるわけでございまして、そうして別にその費用につきましては、(山下義信君「費用については保険者療養担当者に払うとあるじゃありませんか」と述ぶ)いや、それからたとえば現行法規定におきましては、四十三条の二にこれこれ、いや、もう少し御説明の仕方を変えて申し上げますと、療養の給付をなすということを四十三条でうたっておりまして、そうしてそれに関連をいたしまして、以下の条文で、たとえば四十三条の二に、「前項ノ規定ニ依リ給付ヲ受クル者ハ其ノ給付ヲ受クル際第四十三条ノ六第二項ニ規定スル厚生大臣ノ定ムル所ニ依り算定セラルル初診料ノ額ニ相当スル額ヲ一部負担金トシテ支払フベシ」というふうになっておりまするし、また費用の支払の方法等につきましては、他の条文でそれぞれ規定がしてあるわけでございます。従いまして、その患者負担をさせるかどうかということにつきましては、この健康保険法自体でさようなことをきめるわけでございます。その一部負担金の範囲を広げるかどうかということにつきましては、改正法で御審議をいただくわけでございます。そういうわけでございまして、この健康保険の各条文は一つの条文だけが特に重いというわけではございませんので、それぞれの立場規定をしておりまする法律の条文というものが全部関連して一つ法律ということに相なりまするので、従いまして、現行法でも一部負担金というものはございますが、それはそれを払えということは四十三条の二ではっきりと規定をいたしておるわけでございます。それを今度はやり方を変えるので新しく改正案を御審議をいただいておる。従いまして、この法律によってそういうふうなことが起きてくるわけでございます。御質問の御趣旨にぴたりとしておりますかどうか、お答えといたします。
  106. 榊原亨

    ○榊原亨君 関連して。ただいま山下委員の御質問に対しまして厚生当局がお話しになっておりますそのお話を理解する上におきまして、厚生当局の解釈の御見解一つ承わっておかなけりゃ、どうも話が私ども横で聞いていてわからぬのでありますが、それは一部負担金は療養費の一部分だ、こういうお話は、一部負担に対応すべき診療部分は保険給付の範囲内であるという御見解でありますか、範囲外であるという御見解でありますか、それを承わっておかなきゃどうも今法律をいろいろお話を承わっておるのですが、理解に苦しむわけであります。一部負担金は療養費の一部分であるというお考えは、一部負担金に対応すべき診療部分は保険給付の範囲内であるとこういうお考えでありますか、範囲外であるというお考えでありますか、それを承わって、今山下委員に対する御答弁を第三者として聞きたいと思う。その点がはっきりしませんと、この問題はなかなか理解に苦しむ。
  107. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 保険給付の範囲内であるという解釈でございます。
  108. 山下義信

    山下義信君 原則としては、言うまでもなく、療養の給付をする、それからその療養に要したる費用については保険者療養担当者に払う、これが原則なんですね。それでその原則というものの中に、療養費の一部は患者に払わさせるぞということはない。それで今言ったようなえたいの知れぬ一部負担金を命じてあるのですが、これがまあ医療費の一部とこう規定して議論を進め、お尋ねを進めていくのでありますが、この患者療養担当者に払う一部負担金はこれは療養費の一部だというならば、すなわち療養費なんですね。一部であっても療養費なんですね。療養費保険者療養担当者に払う建前になっている。しかるに、その一部だけは患者をして療養担当者に払わさせるということをするのである、その規定がどこにある。どうしてそういうふうにしたんですか。規定はどこに規定してあり、なぜそうしたのかと、これを詮議をしていかなければならぬ。
  109. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 四十三条の六に、「保険医若ハ保険薬剤師又ハ之ヲ使用スル者が療養ノ給付ニ関シ保険者ニ請求スベキ費用ノ額ハ療養ニ要スル費用ヨリ一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額トス」という現行法規定がございます。それとよく似たような規定改正法案におきましては四十三条の九にあるわけでございます。  それでただいま山下先生が、保険給付という、療養の給付というものは、全部その費用については保険者が払うのが建前であるという仰せでございますが、どういうふうに費用を払うかということ自体が法律できめられるのでございまして、それが、保険者が全部払うという建前としてきめるか、あるいは一部は患者が払い、一部は保険者が払うという建前にしてきめるか、それがいずれがいいかということは、これはいろいろ論議がございますが、どういうふうにして払うかということをきめまするのは法律自体で、その法律改正を御審議をいただいておる、なお現行法にも同じような建前規定が載っておるという関係に相なっておるわけでございます。
  110. 山下義信

    山下義信君 ちょっと私の質問が、少し言葉が足らなかったかもわからぬ。私は、医療費の支払い者はだれかということを法律でもってきめるので、これはもう改正案でいきましょう、現行法は別にしておいて、改正案でいきましょう。いわゆる医療費はだれが払うかということをきめておかなければなりません。これはきまっております。保険者が払うのです。療養担当者保険者が払うのだという建前がきまっておる、しかるに一部を、療養費の一部だという一部負担金を、その療養費の一部を患者をして負担させておる、負担させておるということは、言いかえれば療養担当者に払わさせる、患者をして払わさせる、ね、原則は保険者療養担当者に払うのが原則でしょう。それが患者をして払わさせるということは、筋が違いやせぬかということを言う、今度それじゃもう一ついこう。わかりやすく勝負を早くしよう。それは一部負担金をかけるのはかりによろしい、一部負担金をなぜ保険者が徴収して、療養養として責任をもって保険者療養担当者になぜ払わないか、これがおそらくものの支払いの、しかも保険に定むる原則に準じた扱い方じゃろう、こういうのじゃ、私の質問は。患者をして、療養費の一部を療養担当者に払わさせて、保険者が知らぬ顔をしておるとはこれいかに、こう言うのです。言いかえてみるというと、この一部負担療養費の一部だ、療養費というものを保険者療養担当者に払う責任があるのです。その建前になっておりながら、その一部を患者をして療養担当者に払わさせてだ、払うたか払わぬか、払わなかった者に対してはどうするかという保険者責任が明確でないのはどういうわけかという、だからこの一部負担金は、療養費の一部と規定するならば、療養費というものは保険者療養担当者に払うのが建前なんです。それを患者をして払わさせるということも、あるいは便法として、一つの方便としては、支払いの一形式としては、事の可否は別として、支払いの手続としてはよろしいが、その支払いについての責任保険者が負うていないのはどういうわけかというのです。もし負うておるところがあったら、法律で、条文でお示し下さい。保険者は知らぬ顔をしていやしないですか、この一部負担の支払い方については患者療養担当者に払おうと払うまいと、医療費の一部といいながら、保険者療養費の一部負担については、その療養費を差し引いておられますか。その一部負担金が、支払いがされているかされていないか、されていない場合においても保険者は知らぬ顔をしていやしないですか、しからば療養費の一部に対しては、保険者責任を持っていないじゃないですか。今回の改正案についてはもし責任を持っておるとするならば、この一部負担療養担当者に対する患者の支払いについて、その療養費の一部の支払いについて保険者がその責任療養担当者に対して持っておる点があったら、この法律の中でお示しを下さいと、こういうのだ。話はわかっておるはずなんだ。
  111. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 保険者がこの一部負担金につきましては支払い責任を持っておるような条文は、改正法の中にございません。これは現行法にもございません。それで今山下先生の、この保険者がそれは全部責任を負うのが原則ではないかという仰せでございますが、お言葉を返すようで大へん恐縮でございますが、これは原則、例外というものは別にあるわけではございませんので、保険のいろいろな制度の立て方がございまして、保険者が払うとか、責任を持って払うとか何とかいうことになりますれば、それはもう一部負担という観念ではなくなるわけです。この患者が払うというのが一部負担建前でございまして、それをどういうふうに、しからば保険者が全部費用を払うか、あるいは患者に一部払ってもらって、そうしてあとを保険者が払うかというふうなのは、結局はいろいろな保険の制度の立て方の問題に相なると思うのであります。従いまして私どもといたしましては、現行法もその建前をとっておりまするし、今回の改正法におきましても一部負担金は患者が窓口で払っていただく。残りを保険者が払う。こういう制度の立て方をいたしておるわけでございます。
  112. 山下義信

    山下義信君 わしの方じゃこういう立て方をしたんじゃから、あなたの気にいらぬかもわからぬけれども、私は私のこういう立て方をしたんじゃというんじゃ話にならない。あなたの方の立て方にこういう欠点がありゃしないかと伺っておるんですから、欠点はありまへん、心配はありまへんと、わしのこの制度の立て方は実に完璧でございますというてもらわにゃ話にならぬ。そっちはそっちで、わしはわしの考え方でやっておるんじゃ、欠点があろうと、不十分なところがあろうと、それは制度の立て方だから仕方がないと言うけれども、私の方ではその制度の立て方が不完全じゃないかとこう言うておるんですから、それじゃ話にならぬ。でありますから、私はこう伺いましょう。その療養費の一部についてだな。保険者責任を負わぬのだ。患者療養担当者に払うことになっておる。保険者は知らぬ顔をして、涼しい顔をしておる。つまり言いかえれば、一部の療養費については責任を持つが、一部の療養費については保険者責任を持たないという制度なのか。これもあなた方のお好きな制度だから、わしはこれが好きだから立てたんだからとおっしゃる。そうしておいて、一部には療養担当者には、ねえ、その療養をなす義務を義務づけている。その義務の、義務も一部でよろしいという立て方にならにゃ合わぬじゃないですか。義務の方は、義務が十が十義務づけておいて、その義務に応じなければ罰則があって処分される。そうして費用の方は一部しか知らぬということは、これは都合のいい制度じゃなあ。これならなるほど工合がいい。こういう勝手な制度が天下を大手を振って通れるものなら、わしはこれほど都合のいいものはないと思う。これはあまり勝手過ぎやしませんかと私は言うのだ。療養費の方も全部おれが責任を持つぞと、その支払いの方法は患者側から直接にお医者さんに払わすような制度をとるぞよ、しかしながら保険者は全責任を持つぞよと、だから療養担当者医療の給付については責任を持ってくれよ、その療養の給付の責任を持ちそこねたらば承知せぬぞと、これで平仄が合う、首尾が一貫するのです。療養の給付の義務づけは療養担当者にさせておいて、そして医療費においては一部は責任を持たぬぞというのは少しこれは勝手な制度になりはしませんかと、こういうのです。どうでしょう。
  113. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 一部負担の制度を実際に運用いたしまするには、私どもといたしましてはただいまのような立て方でないと、何と申しますか、その制度自体が運用が非常に困難になるというふうに私どもは考えておるわけです。しかしながら、今先生が仰せのように、それははなはだ勝手なあれじゃないかという御議論も私あり得ることと存じます。かような建前がいいか悪いか、私どもはかような建前でないとうまくいかない、かように考えておる。その点について御審議をただいま願っておるわけであります。
  114. 山下義信

    山下義信君 議論はいたしますまい。議論はまた議論機会がありますからお尋ねをする。これはなんですか、話を広げると切りがありませんが、事のついでにちょっと伺っておきましょうかね。これは患者の一部負担を支払わなかったときは、お医者さんは治療を断わってよろしゅうございますか。
  115. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 一部負担を支払わなかった場合に一体どうなるかということにつきましては、いろいろと法律的に問題があるわけでございます。私ども省内並びに法制局等とも相談をいたしまして、その問題の法律的な解釈につきまして実はかように考えておるのでございます。いずれにいたしましても、いわゆる医療保険というものは、そこに保険とか何とかということに先行して、一つ医療が存在しておるわけでございまして、診療行為というものがあるわけでございます。従って原則的に申しますれば、この診療がどういうふうなことになるか。診療をしなければならないときには保険にもちろんかぶさっていく。診療をしなくてもいいという解釈になりますれば、保険の方も診療がないのでございますから保険の給付もないというふうな関係に相なるかと思うのでございます。それで、従いまして医師法の診療の義務というものとの、規定との関連が一番問題になってくるわけであります。私どもの考えておりまするところでは、一部負担が払われない場合という場合におきまして、まあ能力がない、能力がないから払いたいけれども払えないというふうな場合と、それからもう幾ら自分は金持ちであっても一部負担みたいなものはもう絶対に払わないのだという場合と、法律的に分けて考えれば二つの場合に分れるかと思うのです。それでさような場合を医師法との関連におきまして考察をしてみますると、医師法の十九条の第一項では「正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」ということになっておりまして、この医師法上の正当な事由というものが一体どういうことになるのかということに関連をして参るわけでございます。今日の医師法の解釈におきましては、本人が貧乏だから、経済力がないからということをもって診療を拒むということはこの正当の事由として認めがたいというふうな解釈になっておりまするし、従いまして、さような能力がなくて一部負担金が払えないというふうな場合におきましても、やはり医師としては診療をしていただかなければならないというこの医師法の建前になりまするので、従いまして保険といたしましても、診療が行われた場合におきましては、それにかぶさって給付をしていくということに相なるわけでございます。ところが、そうすると一部負担が払えない者についても診療をしてやらなければならぬということになると、それは医師に対して非常に何と申しますか、酷な制度ではないかということに次に疑問がわいてくるわけでございまするが、私どももそれは非常にお気の毒なことであると私も考えまするけれども、しかし、それは保険のシステムの問題ではなくして、むしろ医師法の建前の問題でございまして、自由診療の場合におきましても同じような関係が出てくるわけでございます。言葉を返して申せば、医師というものの何と申しますか、職業的な立場医師法という法律はさような建前規定をいたしておるということに相なるかと思うのでございます。それから第二番目の、いや自分は能力がなくて払えないという場合でなくして、能力はあるけれども、もう払わないというふうな場合におきましては、これは自由診療の場合におきましても同様でございますが、おれはもうお医者さんに金を払うのは、代金を払うのはいやなんだというふうなものまで医師診療の義務を課するということは、いかに医が仁術と申しましてもこれは酷でございます。今日の医師法の解釈におきましてはそこまでを求めることは酷であろうと存じまするので、さような場合には正当の事由あるものとして診療を拒否されてももちろんこの医師法の規定違反にもならないということに解せられると存じます。従いまして、その場合には保険診療というふうなものもそこで起って参らない。すなわち言葉をかえて申せば、保険医の方は診療を断わっていただいてもこれはもうやむを得ないということに相なってくるかと思うのであります。  以上、場合を二つに分けて御説明を申し上げましたが、しかしこれは平常の場合でございまして、いわゆる瀕死の重病人というような、あるいは交通事故でそこいらのお医者様にかつぎ込まれたというふうな緊急な場合は、当然この医師診療をしなければならないということはもちろんでございまして、さような場合におきましては、診療が行われますれば、保険といたしましては、それにカバーする形で給付が行われる、かようになるであろと思います。
  116. 山下義信

    山下義信君 問題が少し重大で、かつ法律事項でありまして、しかも医師法に関連があり、また本法の他の条項にも関連がありして、法の解釈の問題になってきます。少し複雑になってくるかと思うのですが、しかし、ただいまのような医師法のいわゆる医師としての診療に応じなくちゃならん応招の義務、その解釈にも理があり、また一部負担金を支払わない患者に対しては、いわゆる立ち入り検査と同工異曲であって、診療の必要があるかないかという一つの前段をこしらえておいて、そして一部負担を払わない患者に対しては診療の必要のないものとこれをみるならば、保険の給付を断わることができるというような、少し牽強付会のような解釈もして、そしていずれにしても一部負担を払わない患者に対しては医師診療しなくてもいいような解釈の仕方というもの、あるいはそういう制度の立て方というものは少し無理ではありますまいか、そういう無理な解釈をして、しかもその貧困によって医療費の一部負担の支払いのできない正当な状況下にあるということはだれが判断するのか、どういうふうにそれを見ていくのかということになるとなれば、あなたの御答弁のありましたように、お医者さんには少し酷だとか、お気の毒だとかいうような結果にこれがなるということは、ひっきょうするに、本日の私の質問のように、この医療費の一部に対する支払いの最終責任保険者が回避するためにだんだんと関係の法規を無理に解釈していき、ついには一部負担を支払わない患者診療しなくてもよろしいというがごとき驚き入った制度というものをここに持ち出してこなくちゃならぬということになってくる、私はそれは少し無理じゃないかと思う。これはしかしながら、見解の相違になってきますから、法律の解釈等は今晩ゆっくり一晩寝て考えますから、一晩寝て考えますとまたいい知恵が出ますから、よく法律関係は考えさしてもらうが、私は少し無理じゃないかと思う。何でもないことなんです。ひっきょう一部負担というのも最終の責任保険者が負いますぞと言うたら何でもない、断わることも何にも要らぬことになってくる、療養の担当者も安心して見ることもできる、何らちっとも不安を与えることがない、ひっきょうするに、何のために保険者がその最終支払いの責任を回避するのかということが私にはわからぬ、保険者がこの一部負担金の最終の支払いの責任を回避することによって何の利益があるか、そんなさもしい根性はいわゆる市井の一狡猾なる商人でも持ちません。保険料を納めて疾病の時分には療養の給付をしてやろう、療養費については療養担当者に支払ってやるぞ、かかる制度のもとにそれぞれ被保険者保険料を納めて、療養担当者が療養の義務に従事する、しかるに保険者が一部負担金についてはその支払いの責任は持ちませんぞと責任を回避している、損がかかっちゃどうもならぬと言わぬばかりの態度をとるがゆえに、諸般の疑義と諸般の不都合が生じてくると私は思う。そんなことをあなた大世帯の天下日の丸の政府がどのくらいの不払いがあるかしらぬけれども、おそらく不払いというものは僅少なものでしょう、あっても、全体から見れば。そんなに膨大な額ではないと思う。そういう支払いしない患者があったら、跡始末くらいは保険者が払うと言っても、私は全体にはちっとも不都合ではない、御損ではない、痛痒を感ずるほどの問題ではない、しかもこれだけの一部負担をかけようという以上には、私は政府もそれだけの、いわゆる保険者もそれだけの心配をするのが至当ではないかと、かように思う。しかしこれは議論、これは見解だ、あなた方の方はこの制度がいいという、私どもはこういうような制度の立て方ではだんだんと無理なところが生じてきはしないか、しかも保険者が、療養の一部を患者責任をもって医師に払わして、そしておのれは全然責任を持たないというようなことは、保険の制度の上においてどういう考えで、それがどういう長所があってその制度を採用なさったか、私どもとしてはまことに了解に苦しむ。で、これは法律の解釈その他でありますから、可否の議論は別にいたしまして、よく私も関係条項を研究するということにいたしておきます。この問題については私はこの程度にしておきます。  ただ一つ、これは政府でもよろしいんですが、この機会に伺うんですが、初診の日を除いての、いわゆる再診の日でしょうね、再診の日の投薬、注射のそのつどに二十円を徴収いたしますが、処方ぜんの交付、それからどうありましたか、調剤の交付ですか、注射のことですか、こうありますね、これは私わからぬから聞くのでありますが、あれは何ですか、処方せんの交付というときにも二十円納めますの、それから今度調剤の交付というときにも二十円納めますの、もし処方せんの交付と調剤の交付とが、いわゆる医療機関が違っておりましたら、そちらも二十円納めますが、こちらへも二十円納めますの、合せて四十円になりますのか、それはもうとにかく二十円で、一つだけで済みますのか、両方納めますのか、その処方せんの交付といわゆる調剤の交付というときが二重になりますのか、これはいつの場合でも一つになりますのか、一連になりますのか、あれは、二十円払いますのはどうなりますか。
  117. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 一回でございます。
  118. 山下義信

    山下義信君 そうすると、処方せんの交付を受けますときは払わないのでいいんですか。それは薬局へ持っていったときに払うんですか、どっちで払いますか。
  119. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) 医師の窓口で処方せんをいただいた場合に払うわけでございます。
  120. 山下義信

    山下義信君 そうすると、今度は薬局に行きまして、調剤の交付を受けますときは、もう払わないでよろしいんですか。
  121. 高田正巳

    政府委員(高田正巳君) さようでございます。
  122. 山下義信

    山下義信君 わかりました。この問題に対する私の質問はこの程度にしておきます。
  123. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) ほかに……。速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  124. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 速記を始めて下さい。  それでは本問題に対する本日の質疑はこの程度でとめておきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 御異議ないものと認めます。  次に、残余の法案の審議は次回以後に回すことにいたしたいと存じますので、本日はこの程度にいたします。  なお先ほど報告いたしました本日の委員長理事打合会の協議事項中に、明日の案件で食品衛生法の一部を改正する法律案質疑が報告漏れとなっておりましたので、この際御報告いたしておきます。  本日はこの程度で散会いたします。    午後三時三十九分散会