○
平林剛君 私はただいま議題となりました
公共企業体等労働関係法の一部を
改正する
法律案に対する修正案につきまして、その提案の理由と内容の概略を御
説明申し上げます。
公共企業体等労働関係法は公共
企業体の職員、特に当時の日本労働運動の指導的役割を果しておりました国鉄労働
組合を抑圧する隠れた目的をもちまして、昭和二十三年占領軍の示唆によって立法された
法律であることは御承知の
通りであります。このため、労働者の基本的権利である団結権、交渉権に対して、大幅な
制限規制を行い、罷業権を剥奪しまして、これを公共の福祉という名目でおおっているのであります。ただ、その代償として
調停、
仲裁の機関を設け、職員の待遇を保護し、
仲裁裁定をもって当事者を最終的に拘束したのでありますが、今日までの経過を見ますと、
法律の
運用と
解釈が常に
政府の都合のよいように行われまして、そのため
労使関係の円満な調整が破れ、無用な紛争と混乱が続いておりました。
政府はしばしばときの情勢に応じて、
公共企業体等労働関係法の一部を
改正する
法律案を
提出して参りましたが、それにもかかわらず、本質的な解決をもたらすことができませんでした。これは要するに、
公共企業体等労働関係法そのものの存在が問題でありまして、私
どもとしては、占領下における翻訳立法であるこの
法律案は、この際根本的に検討して、これを廃止すべきものと思うのであります。従って本来であれば、間に合せ的な諮問
委員会よりは、公式の
審議会でも設けまして、廃止もしくは根本的な
改正を検討すべきでありますが、諸般の情勢、特に
国会における実情を考慮いたしまして、当面可能な限りの不備欠陥を是正する
改正案をもって現状に対処したいと思うのであります。もちろん今回
政府提出によります
公共企業体等労働関係法の一部を
改正する
法律案におきましては、若干の
部分についてはその意図を認めるものであります。しかし、その
政府提案の中には私は三との重大な欠陥を見出すのであります。
その第一は、
仲裁裁定に対する
政府の態度が従来と本質的に変りがないということであります。
政府は
仲裁裁定をできる限り尊重する
精神を明らかにして、
給与準則や
給与総額の
制度に若干の
改正を加えようとはしておりますが、本
委員会の質疑応答で明らかなように、問題は当事者たる公共
企業体を権力で支配できる
政府の態度いかんにかかるものでありまして、これに対してもっと明確な規制をいたしませんと、これからも予想される紛争を解決することにはならないと思うのであります。
第二の欠陥は、紛争を処理する機関に対する
政府権力の強化が深められつつあるということでありまして、
調停、
仲裁の機関を統合してこれを
労働委員会という構想にまとめることについては、公労法を廃止し、
一般の労働者と同様な機構で労働関係を考えるという方向を示唆している限り、私は
賛成をいたしておるものでありますが、問題は従来の
労使、
公益の三者
構成の比率を破ったことであります。このねらいがどこにあるかということは、その
公益委員の
任命の仕方が、
労使の
意見を聞くだけで
同意を必要としないように
改正を加えたことや、
公益委員の中に政党員を加えることを
法律で明確化して、そこに
政府与党の
意向を体する者を含めることができるようにしたことで明瞭であると思うのであります。こういうことは、そうでなくても、
労使の紛争に
政府が悪い意味で介入をして紛争を長引かせた事例を排除することが私はできないと思います。
政府の
説明によりますと、
国会で
同意を求めたのだから、
仲裁機関が権威を持って、紛争がそのために解決するかのような錯覚に陥っておるのでありますが、私に言わせると、
労使の
調停仲裁機関に対する最も必要なことは、権威よりもむしろ信用でありまして、
任命制度が
労使の
意見を聞くだけであることは、当事者たる
政府が公平を維持する時代は別にいたしまして、もし反動化したような場合、その紛争処理機関は、もはや役に立たなくなってしまう、こういうことを
心配するのであります。
政府案のままでは、公共
企業体の職員がせっかく紛争の
調停機関としての
労働委員会を持ちましても、これを離れてしまって、かえって、変則的な労働運動に走ることを余儀なくされる。その責任はやはり
政府の提案の中にあると思うのであります。
第三の欠陥は、
労使に対する政党支配の傾向が強まっておることを指摘しなければならぬと思うのであります。
公益委員の中に、政党員を加えるということを
法律で明確化しておりますことは、同時に政党の
意向を受け入れようとすることをより多く利用される結果になると思うのでありまして、
公益委員が政党員であってもよい、
公益委員が積極的でなければ、消極的であれば、政治活動を行なってもよいこと、この
法律改正は、一見いたしますと、憲法の上から当然のように聞えますけれ
ども、今日の情勢でこれをまともに受けることができないということは、まことに遺憾なことであります。最近の総評を中心にする春季闘争における
政府与党の動きがどうであったかということは、私が指摘するところを裏づけてくれるものでありまして、すなわち、私の伝えられた情報によりますというと、
公共企業体等に対して、
政府与党の中には、それぞれ
企業担当者を定めて、労働
組合に対する態度を監視し、処罰を督励するという行為に出たということは、最近の保守政党が何を考えているだろうかということを示唆するもので、それゆえ今回の
公共企業体等労働関係法の一部を
改正する
法律案は、今日の政治情勢からいきまして、
政府与党の支配が強まる、それは結局公正妥当を欠く結果になる、こう思うのであります。いずれにしても、このような傾向は、保守と革新の対立時代に入った場合に適当なことではないのでありまして、このままでは公共
企業体の職員の組織する労働
組合は、対
政府与党との深刻な対立まで発展をして好ましからぬことになることを憂えなければならぬと思うのであります。また、
政府与党としましても、こういうような印象を避けるように私は
努力すべきであることが多数政党である
政府与党のとるべき道だと思うのであります。
以上のような欠陥を可能な限り排除いたしまして、少くとも臨時公共
企業体労働関係法
審議会の
答申書の
趣旨を正しく理解させ、反映させるということがお手元に配布いたしましたような修正案になると思うのであります。
その概要を申し上げますと、まず現行法第四条第三項は、
法律をもって公共
企業体の職員の団結権を侵害しているものでありますから、
政府部内においても修正の
意向があることでも明らかなように、また臨時公労法の
審議会の
答申書にもこれを削除することが適当であるとされておりますから、この点を
提出した修正案のように改めようとするものであります。
第二の修正点は、
仲裁裁定に対する
政府の措置を規定をしまして、従来これがなかったために紛争の処理が長引いたり、公共の福祉が阻害された傾向を是正しようとするものであります。すなわち第十六条第二項中に「二十日以内に、同項の協定実施のために必要な
予算上又は資金上の措置案を附し」といたしまして、現行法を修正しようとするものであります。これは
答申案のいう誠意をもってできる限りの
努力を尽せという
趣旨を、言葉だけでなくて、手続でもって実現しようとするものであります。
第三の修正点は、
委員会の
構成について、労働者側、使用者側、
公益側の従来の三者
構成にして公正を保つことといたしまして、
公益委員の
任命につきましては、
公共企業体等労働関係法の目的である
労使の友好的且つ平和的な調整をはかるためと、罷業権を剥奪された代償としての機関であることに顧みまして、労働者側、使用者側の
同意を必要とすることにいたしたいと思うのであります。
その他、
公益委員を非
常勤とすることによりまして、
政府提案の
常勤制度による欠陥を是正しようといたしております。
以上がこの
法律案の提案の理由及び内容の概要でありまして、この
程度の修正を認めることにより、
政府が繰り返し繰り返し労働法の改悪をはかっているという批判を若干でも軽減させたいものだと思うのであります。特に
政府の責任者である
労働大臣は、しばしば、公労法に関しては、関係者の強い
反対があるものは無理に通すようなことはしない、こう言明をされておるのでありますから、言行を一致させるためにも、何とぞ御
審議の上、
賛成を下さるよう、お願いを申し上げるものであります。
以上、私の修正案に関する提案
説明を終ります。