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1956-02-24 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十四日(金曜日)    午前十一時十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            榊原  亨君            寺本 広作君            横山 フク君            相馬 助治君            竹中 勝男君            田村 文吉君            森田 義衞君            長谷部ひろ君   政府委員    厚生政務次官  山下 春江君    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省薬務局長 森本  潔君    厚生省社会局長 安田  巌君    厚生省保険局長 高田 正巳君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告社会保障制度に関する調査の件  (新医療費体系に関する件)  (つき添い看護制度廃止に関する  件)   —————————————
  2. 山下義信

    理事山下義信君) これより社会労働委員会を開会いたします。  お諮りいたします。利用紡織の労働問題に関する委員報告につきましては、口頭報告を省略して、これを会議録に掲載した後ごらんを願いたいということにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないと認めます。  それではさよう決定いたしました。   —————————————
  4. 山下義信

    理事山下義信君) 次に社会保障制度に関する調査の一環として、新医療費体系に関する件を議題といたします。  先般の当委員会における参考人意見に対しまして、厚生省当局見解をこの機会に聴取いたします。
  5. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 先般当委員会におかれまして公聴会を開かれましたが、私どももいろいろと御意見を拝聴できまして非常にありがたく存じた次第でございます。それに対してただいまおもな点について政府考え方を一応申してみたらどうかという委員長お話しでございました。何しろ多数の御意見でございますし、またこの触れられました点も多岐にわたっておるわけであります。そのおもなるものをと申しましてもかなり論議すべき点ば多いかと思うのでありますが、そのうちのこまかい点につきましては、場合によりますれば私どももいろいろ検討もいたしておりますので、書面ごらんを願うというようにいたしてもいいと思うのでありますが、そのうちのおもなる点と申しますか、お話しに出ました主要な点についてだけ、若干私ども意見を申し述べさしていただきたいと思います。  ずっとお話しを承わってみまして、大ぜいの方の御意見ではございましたが、かなり重複して問題を取り上げられておる点もございますが、皆様方を通じましてこの共通に私どもが感じられましたところを申し上げたいと考えるのであります。  一つは物と技術の分離というようなことを政府は原案の中に十分にうたい込んだということを言いながら、どうも物と技術、必ずしもきれいに分れておらないというような御意見がございます。で、これにつきましては当委員会において私どもも申し上げましたように、物の対価と技術に対する報酬というものを分けることを主眼といたしたというふうに考えておりますので、その意味はこの一つの新しい体系を立てていきます、あるいは新しい点数を定めていきます場合に、その根本になる資料としては一応今日の各診療行為の中に含まれておる物の値段と、それから技術料的な部分というものをこれをできるだけ精密に分けてみる。ところがいよいよこれを一つ診療費と申しますか、医療費とし、ことに、これを点数に具体化していくというようなときには、その基礎的な資料に基きまして、支払い便宜とか、こういうような点も考慮のうちに入れて、これをまとめて参いるというような考え方でありまして、たとえば、注射技術料でございますならば、注射薬の価格と医師に対する技術料、それから包帯材料類アルコール類、あるいは注射器等のいろいろな経費、大体この三つ、それからさらに申しますれば、手伝いをしてくれます看護婦等労務費、こういうようなものがございますが、支払いとしては、一応薬品の原価医師に対する技術料、それから、それ以外の諸経費というようなものもまとめてお払いすることが便利であるというように、一ぺん分析しましたものを、また支払い便宜というような点からこれをまとめておりますが、それを技術料と言いながらも、その中に物という分子がどうも入ってきているようだ、というふうにお考えになっているようであります。物と技術とを分けるという方針をもっておるわけでありますが、最後に具体化されたものとしては、これはまた技術を主とした報酬であって、それに若干の物の経費を加えて支払いするというような形をとっておりますので、この点が非常に政府の案は何かすっきりしないというような御批評を受けたと思っておるわけであります。  それから、その次は、いわゆる技術差の問題でございまして、難易差というものは多少入ったようであるけれども個人差というものが入っておらない。これを十分に表わさなければおかしいじゃないかというような御意見が数名の方から述べられておったようであります。私ども、この個人差を十分に今度の新点数の中に加えられなかったことは非常に遺憾と存じておるのでありますが、これはなかなか具体的な方法というのがむずかしいのでありまして、私どもはこの問題を抹殺するという考え方ではないのでありますけれども、この問題を具現化するのにはもう少しいろいろ検討させていただかなければならぬ。それから、なお難易差の点につきましても、手術料等には若干入っておるのであります。しかし、この手術のようなものだけでなく、他の診療行為にも難易差というものをもっと入れるべきではなかったかというようなお考えがあるのであります。ことに歯科関係からはその意見が強く述べられたのであります。私ども実を申しますれば、かようなことを申し上げるのもどうかと思いますけれども、今回手術料の中に入れました難易差というものも、私どもとしましては、これを客観的にどれだけの差異があるべきだということを的確に決定いたします資料は今回も持っておらなかったわけであります。ただ、ある程度皆様方からの御意見を伺いましても、各専門方々がお考えになれば、ある程度常識としても、この手術の方がこちらよりはむずかしいというような差異はある程度わかる、常識的にある程度わかっているにもかかわらず、それを全然取り上げられぬというのはおかしいじゃないか、何とか知恵を出して考えてみろというような御要望が強かったのでありますが、私どもとしては、これが最後的な最善の方法だ、あるいは純粋に容観的な決定方法だというふうに考えたわけではございませんけれども、これを単なる常識というようなもので見て参りますよりは、幾分それに一つの尺度と申しますか、一つの全般的な方針というものに基くという意味で、手術料ごらんのような差異をつけて参ったのであります。これもただいまのような状況でございますので、手術料についての難易差というものにおきましても、これはいろいろ皆様方の御意見によりましては、もう少し差を強くすべきだ、あるいはもう少し差異をゆるくすべきだ、あるいは個々手術について、これの方が他のしかじかの手術料よりはむしろ高く上げるべきだ、かような個別的な個々の点についての修正御意見というものは当然拝聴いたすべきものだというふうに考えておるのであります。  それからもう一つは、いわゆる総医療費ワクという問題でございますが、これもたびたび申し上げておきましたように、かなり参考人方々はおわかりになっていたと思うのでありますけれども、やはり何かワクをまずかけてしまって、その中で、ただ内部の操作で、一方をふやし、一方を減らすというようなことであって、これでは非常に満足のものができるはずはないというような御意見がございましたですが、私どもといたしましては、この新医療費体系に基く新点数、こういう形でこの案をお示しいたしましたのは、国民の総医療費がいかばかりであるべきかというような点につきましては、これは別に結論を出しておるわけではございませんので、ただ、むしろ新しい点数に移りましても、旧点数診療報酬を請求した場合とおおむね増減がない、同じ程度のものが支払われるということは、この切りかえのときとしては最も妥当な方法ではないか、その上で総医療費ワクと申しますか、医師技術料の正当な評価、こういう問題は、これは別個にやはり検討すべきものである、こういうふうに考えておるわけであります。このワクということについてかなり考え方の相違があったというように感じた次第であります。  それからもう一つは、これもわかり切っておるようなことではございますけれども、やはり健康保険赤字対策と申しますか、そのうちでも特に一部負担というものの影響が、これが新医療費体系を実施するときにやはり現われてくるというようなことは、これもかなり大ぜいの方がお話しになったんでありまして、私どもも非常に間接の関係まで論議されますとすれば、全然無関係ということはないと思うのでありますけれども、一応この新体系が出ませぬとしても、赤字対策の問題、あるいは一部負担の問題は論議されるでありましょうし、また先般二十九年に新医療費体系をお示しいたしましたときの状況では、決して一部負担というような問題はそれとからんできておりませんでした。むしろ医薬分業とはからんでおりましたけれども保険赤字対策というようなものとは少くとも直接にはからんでおらなかったというような事情から、これは一応やはり別個の問題としてお考えを願ってしかるべきものだというふうに依然として考えておるわけであります。この点がかなり、何べんも繰り返して多くの人から触れられた問題だと思っております。  それから注射料につきまして、これは最も手がきびしい御批判があったようであります。すなわち注射料につきましては、一応の原価計算前回政府から資料として提出してある。で、今回の注射技術料というものは、そのときの注射技術料経費というものを一そう割っておる。すなわち注射をすればするだけ罰金を食うようなものではないかというような御意見がきつい表現でなされたのであります。で、これは、私どもとしましては、確かに注射技術料を若干割っておるのでありますが、これはいわゆる診察料部分の中にこれが含まれておるというふうに考えております。初診、再診の点数の中にこの注射料技術料的部分が込められてある、こういうふうに考えてございます。そのことは、たとえば、これはたとえばでございますが、注射を大体二人の患者に一本打たれるというようなことでございますと、一人の患者平均六日お医者さんのところにおいでになる、そうすれば、この一人の患者について三本平均としては注射が打たれるということになりますれば、この注射を一々お打ちになったときの支払い点数というものの一部分をこの一件当りにいたしましたこの初診、再診、また再診と初診との関係は、御承知のように初診に非常にウエートをおきましたので、また再診としては結局差引きあまり増になっておりませんが、要するに、注射料診察料の方に回していったというような姿になっております。これが今申し上げましたような平均注射回数というものであります限りは、必ずしもマイナスになっておらぬというふうに思うのであります。そうしますと、患者によっては非常にそれ以上たくさん注射をする場合があります。さようなときにマイナスになるのではないかという御意見が出ると思うんでありますが、これに対しましては、注射よけいにやります患者さんもありますし、注射の少い患者さんもある。でありますから、たくさん注射をいたしました場合には、罰金と言うならば罰金というような形になったといたしましても、むしろ今度注射回数の少い患者さんにつきましては、まあ罰金のあべこべでありますとごほうびということになりますが、こういうものも出ておりますので、結局普通に今まで程度注射が行われていくといたしますれば、私は大きい差異はない、こういうふうに考えておりますわけであります。しかしながら、かような私ども考え方でございまして、現実に診療を担当なさる方々としまして、同じことであるならば、かような姿の方がより望ましい、あるいはこの方がより合理的ではないかというような御意見につきましては、私どもとしては繰り返しさらに検当をいたしたいというように考えております。そのほか若干ございますけれども、あまり時間をちょうだいいたしますのも恐縮でございますので、そのほかの点につきましては、御要求がございますれば書面にしてでも差し上げたい、こういうように考えております。
  6. 山下義信

    理事山下義信君) ただいまの厚生省当局見解をも含めまして、本問題に対する質疑をお願いいたします。
  7. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ただいま曾田局長からいろいろなお話がございましたが、先日の公聴会におきまして参考人の言われたところのほとんど全部が、この新医療費に対してかなり非難攻撃しておったことは十分御承知と思います。ただいまお話になりましたうちの一つ、二つだけを私は申し上げてみたいと思いますが、注射料にいたしましても、技術料というものを診察料の中に先払いの式で入れておるのだというのだからして、その方で十分いくんじゃないか。短かい患者の場合はかえってごほうび式よけい高くなるというような考えは非常に間違いじゃなかろうかと思います。注射というものは局長もお医者さんでありまするからして、十分御承知と思いますが、一つ注射をいたします場合にも、よほど医者考えてやりませんというと、あるいはその注射によって一命を失わせるような場合も非常に多いのでございますし、また注射が単なる筋肉内とかいうのに入れるだけというように考えているのは非常に間違いでありまして、あるいは血管の中に入ってはせぬだろうか、あるいは一ぺんにやればいろいろな症状がきはせぬだろうかというような、細心な注意を加えて注射というのはやるのでありますからして、それに対する技術料注射よけいやれば損をする、ある参考人の方は、注射罰金刑を非常に伴っていると言われたが、実にその通りでありまして、注射をひんぴんせんければならぬと、それだけ損害が多くなるというようなことを入れたのは非常に間違いじゃないか。ことにただ一つ考えますことは、優秀な、あるいはよその評判の非常にいい、あるいはかなり経験のある医者のところには患者が殺到いたしますし、その場合には重症者よけい来るのでありますからして、そういう重症者よけいに入れるというと、入れるだけそういう場合には注射も多くなる。だから優秀になれば、かえって罰金よけい受けるというようなことになるというと、せっかく技術を尊重するという新医療費体系が、全然これは問題外になりはせぬかということを非常におそれるのでございます。従ってこういうようなふうの方面に対しましては、一つ一つ間違いのところは直すというお話もございますけれども、ほとんど問題にならぬのじゃないかということを非常に心配いたします。そういう点までむろんお考えになったろうと思いますけれども、ほかに方法はとることができないのでありましょうか。その点に対して一言。
  8. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) ただいまの御意見も私ども考えたのでありますが、私どもとしましては、別に注射を押えるというような言葉表現がどうかと思うのでありますけれども、さような考えではございませんので、大体今まで程度のお考えで、診療虚心たんかいにお続け下さいますならば、これでもって御損は大体ないようになっていると思います。しかしその点につきましては、いろいろ御意見や御希望がございますれば、私どももさらに検討はいたしてみたいと、こういうように考えている次第であります。
  9. 榊原亨

    榊原亨君 ただいま医務局長お話は、何回も何回も注射を繰り返しておれば、多くの患者を見れば自然に平均されてくるから……こういうお話、ところがそうじゃないのです。これは頻度だけお考えになっておるからそういうことでありますが、今谷口さんが言われましたような、これは分布が違う、医者によって分布が違いますから、少くとも分布の違うものは、診療行為を何回繰り返しいたしましても、そこに平均値というものは出てこない。その点がまあ局長のお考えは頭から違ってしまっている。  それから初診料の方にウエートをかける、初診料の方に先払いでもっていくというのは、少くとも注射料なら注射料のうちの潜在技術料だけ持っていくというのが最大限度でありまして、経費を割るとか、あるいは当然受くべきその技術料までもその初診料の方に持ってこられるという考え方は、それはいかぬ。言いかえますならば、潜在技術料だけを、最大の場合におきましても、最小限度潜在技術料だけを移動させるということでなければ、今のような問題は起ってくると思うのですが、その点はいかがでございますか。
  10. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 最初の御質問でございますが、頻度個々診療所、病院についてみます場合に、全国平均というようにみたものとはかなり違うであろうという御意見に対しましては、それはその通りでございます。しかしながら診療行為が行われますのは、ただ注射だけが行われるものではもちろんございませんので、いろいろな他の行為も行われます。で、注射の多いようなところ、こういうようなところではあるいは他の手術だとか何とか、こういうようなものも多くなるかもしれないのです。(「想像だ」と呼ぶ者あり)そういうふうに、想像とは必ずしも私考えられないと思うのでありますが、いろいろな個々の事例について御検討を願いたいと思うのでありまして、こういうようにみていきますと、注射の多いところで、多いところは必ずと私は言うわけでもないと思いますが、若干注射の点について言えば幾分不利の面がある。しかしながらさようなところでは今申し上げましたように、検査だとか、あるいは手術だとか、こういうようなものも多く行われる、かような点につきましては、プラスマイナスある程度平均して参ります。これは私どもも申しておりますように、いろいろ専門科別にこの検定をしなければならぬ、もっと言いますれば、本来ならば若干個別的にも診療所に当ってみる必要があると思うのでありますが、これは一々全部の施設に当るというわけにはいきかねますので、私ども皆さん方にお示ししました検定専門科別のところまでございますが、一つ一つ施設についてはあの平均料でなしに、またかなりの差があろうということは御意見通りでありまして、ただそのプラスマイナスといいますか、動揺がどの程度であるのかということは私ども引き続いて検討はいたしてみておる次第でございます。  それからもう一つは、第二の点でございまして、潜在技術料をこの診察料の方に回すという考え方はわかるが、その技術料、それ本来の技術料それ自身をも切って診察料の方に回すのはどうかというお考え、これも一つ考え方でございますが、私どもは先ほど申しましたように、一応個々診療行為、またその個々診療行為の中での純粋な技術及び純粋な薬価、それから経費のようなものをどちらにつけるかというような点については、これは一応は分析しますけれども支払いの形としてはこれをまたある程度加えたり、離したりいたしておりますということを申し上げたのでありまして、さような考え方と通ずる考え方でありまして、ただ注射に含まれておった純粋の注射技術料を切りぱなしにしたというのではこれは相ならぬと思うのでありまして、これを他の形の診療行為の中につけ加えてお払いするということは、これは必ずしも間違っているとも考えられないと思うのでありまして、あるいは私どももさらに再考はいたしますが、一つさらに御検討をお願いしたいと思うのであります。こういうふうに考えております。
  11. 山下義信

    理事山下義信君) 谷口さんに対する御答弁をしてもらいたい。
  12. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) それから谷口先生最初の御質問につきましては、ただいま榊原先生の御質問に対してお答えいたしましたもののうちに、多少違うかもしれませんが、大体趣旨はお答えいたしたと思いますので、御了承願いたいと思います。
  13. 田村文吉

    田村文吉君 ちょっと専門家ではない私どもには納得のいかない点があるのですが、なぜ初診料注射料というものを含めたという考え方にならなければならぬのか。もしなんなら、初診料というものを下げて注射料を上げて、注射というものは損のいかないようにするというような方法はなぜとることができないものであるか、これはちょっとしろうとの私どもにはわからない。この間から伺っておりますというと、日本において注射というものが乱射され過ぎているというようなお言葉をちょいちょいほかの方からも聞いたのでありまするが、そういうことをとめるならとめるとか、あまりそういう方に走り過ぎることは悪いというなら、ほかにこれを制約する方法があるのじゃないだろうか、どうも初診料とあれとを合併にしていくようなことによって、注射を何か押えるような考え方にしなければいかぬというその根拠はどういうところにあるのか。
  14. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) これは私ども必ずしも注射を押えるという考え方でございませんので、これに似た問題として先般の参考人方々からも言われました問題では、例の眼科処置料のようなものを、これを処置料を全然払わずに診察料の中に入れておる、これもおかしいじゃないかというような御意見もございましたが、ある程度私は通ずると思うのでありまして、この処置料診察料と別々にお払いするというこのこともこれはやり方でできるのでありますけれども、しかしこれはやはり診察料として眼科以外の内科、小児科の方々と同じ初診料を支払うということがいいのではないか。そういたしますというと、この処置料を別個にお払いするとなれば、これが眼科だけが報酬がかさんで参りますので、これは処置料をその再診料、初診料の中に含めてお払いするということがより好都合であろうと考えたのであります。今の注射の場合も、私どもとしましては、初診料というものは一番初めにまあ患者を見ていただくのでありまして、このとき治療の根本的な方針というものが立てられますことが、これがまあ多いのであります。もちろん数回見なければ方針の立たぬこともございましょうが、初診のとき患者がとにかくある病苦を訴えてお医者さんのところにかけつけましたそのときに、一番まあよくしっかりとよく見ていただかなければならぬ、これがかねがね言っておられましたが、そのときにかかった時間というようなものだけではなしに、それには相当重要な意義を持たせていいのではないかというところから、その計算でいきますというと六・二分何厘かになっておりましたその初診料、時間だけでみますとそれだけだったのでありますが、これをもう少しふやしたいというふうに考えまして、それではどこまでふやしたらいいかということになりますと、これもいろいろ考え方がございます。実は私どもまあ十二点へもってきた経路もございますが、これはいつか保険局長からいろいろ御説明があったと思うのであります。ですから私どもとしましても、これは十二点の初診料は少し多過ぎるんじゃないか、元へまた戻してもいいんじゃないかというような、こういうこの度合いの問題の考え方ということにつきましては、私どももさらに検討はいたすつもりでおります。
  15. 田村文吉

    田村文吉君 私は初診をお願いするときに、注射を願うということになるのかならぬのかわからないその注射料の一部まで、初診料にお取りになるという考え方がわからない。そこで実際注射をなさるために医師方々注射技術料ももらえないような、損をするようなことになるような不自然なことをしておかれるよりも、当然注射料注射料として相当の技術料を払うべきである、そのかわり初診が高いというならば下げたらいいじゃないか、こういうまあちょっとだれでもわかりやすい考えになるので、初めから注射をするかしないかわからぬのに、注射料の一部をといっているのだということになると非常に私どもにはわかりずらい、その根本理念は一体どこから出てきているのですかということを私は伺いたい。
  16. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) これは一応の日本の風習がございまして、それを新しい姿に直そうということが問題になっているものでございますから、ただいまのような御疑念が起るかと思うのであります。私どもとしましては、この患者が初めにお医者さんに見ていただいたというときに、相当な謝礼と申しますか、今繰り返して申しますように、どういう病気であってどういうことが必要であるかないかというようなことをきめていただく、これが非常に尊い判断だと私は思うのであります。今妙な言葉考えられるかもしれませんが、むしろ注射が要らぬ、薬が要らぬという判断をしていただいたときも、これは非常にありがたい判断だと思うのでありますけれども、従来の考え方からいきますというと薬が要らぬ、注射が要らぬというふうに言われたときならば安く見積って、それから注射や薬が要るというときに初めて正しい報酬が払われるというようなのはちょっといかがかというように思うわけなのであります。
  17. 田村文吉

    田村文吉君 ちょっとわからなくなるのですが、良心的に注射も要りませんし薬も要まりせんというような医者は、非常に私は良心的におやりになっている方である、そういう方には当然に診察料も十分にお支払いするならする、また必要であったならば今度は注射をする、必要であったならば投薬をするという場合には、それの技術料というものは相当に支払われるのが当り前のことである。どうもその点がどういうお話であるか、今まで伺ったところではちょっと納得がいかないのですが、どうもあまりにも妥協されたようなふうに私はとれるので、そういう点がもっとすっきりと一ついかれるべきである、こう思うのです。
  18. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 御意見として拝聴いたし、私ども十分あとで検討してみればよいことかと思うのでありますが、一言だけつけ加えさしていただきますれば、私どもとしましては先ほども申しましたように、大体平均的に注射の回数というようなものは、大体あまり大きい差でなしに定まって参りますので、初診のときにお払いしておきましても、一人の患者さんでは確かにプラスマイナスはございますけれども、相当数ごらんになる、あるいは一月の報酬、一年の報酬として見ました場合には決して大きい差はないものである、こういうふうに思っているのであります。
  19. 相馬助治

    ○相馬助治君 ちょっと私も……。
  20. 山下義信

    理事山下義信君) 関連しておりますね、今谷口委員の質疑中でありますから。
  21. 相馬助治

    ○相馬助治君 私も幾つも質問があるのですが、谷口委員と今の田村委員との質問に関連してお尋ねしておきたいことがある。この間の参考人の御意見の中でも初診料が問題になったことは、初診料の十二点だけが悪いというのでなくて、今度の点数表は矛盾に満ちている、その証拠として初診料はどうなんだというところに議論の焦点があったと思うのです。それで今医務局長参考人意見に対して厚生省の見解を述べられた、その積極的態度には敬意を表しますが、今の田村さんに答えたような答えを黙って聞いているといよいよわからなくなってしまう。私はこの初診料の十二点というものは過去の実績のワクから計算して、きわめて科学的に割り出したのが十二点であると厚生省が最初の方では説明していたように思います。それがいつの間にか先払いの精神を含めたのだということを言ってきている。今日の曾田医務局長の説明も先払い的な精神を含めたというふうに前段おっしゃったものですから、田村委員のような質問が出た、田村委員に対する答えも私にはいよいよわからないし、またこういう場合にはどうなりますか、歯医者さんの場合にはほおを押えて来た患者がちょっと塗り薬でなおる患者もありますし、その痛みというものが非常に高度の技術を要するところの補綴にまで進んでいく場合もあるわけであります。そういうふうな場合に、初めから初診料の十二点をとってしまうということになると、塗り薬でなおるくらいな患者については、歯医者さんに対して十二点やるのはあまりやり過ぎるし、高度の技術を要する補綴を予想されるようなものに対してはやらな過ぎるし、それとこれとをチャンポンにして平均が出るのだという説明はこれはわれわれ聞けないし、これはどういうことになりますかということを一つ実例をあげて——初診料というものがやむを得ず政治的にこの辺に押えたというならこれは議論しません。そうでなくて、系統的に科学的な根拠によって計算されたのだというなら、先ほどの谷口委員田村委員の御質問に対してのお答えではどうにも満足できないし、私には少くともわからない。もう一度一つ数字で納得せしめて下さい、私並びにみんなを。
  22. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 先般も御質問があったかと思うのでありますが、いわゆる私どもに対しまして、今回は新医療費体系に基く点数表というものだけは見せたが、新医療費体系というものは出て来ぬのじゃないかというような御質問がございました。その問題にちょっと触れて来るかと思うのであります。私ども何はともあれ、客観的な資料だと思って今日用意しておりますのは、昭和二十九年にお示しいたしましたあの各診療行為経費計算経費分析、これでございます。それで新医療費体系として確たる根拠を示せと、科学的な根拠を示せということをおっしゃられますならば、私どもとしましては最も信頼すべきものはあの資料であります。でありますから今も申しましたように、初診料経費計算というものはこれは六・二分何がしというものであります。再診料は四・五分何がしというものであります。ただしこの客観的——客観的と申しますか、一つのデータというものはお医者さまに対する技術料報酬というものを個々診療行為についてどれだけのウエートをつけていくか、アルファをつけていくかということは急速的に定めかねますので、機械的に平等にこれを時間で按分した計算になっているわけであります。従いまして、この時間で按分した数字というものをそのまま採用せいというところに無理がありはしないかということを前回にも御批判いただいたのであります。私どもも、これは確かにさようでございます。さればといってこの何の根拠もなしにただ勘だけできめるわけにはいかないので、一応は時間だけで、時間の多寡によって按分をした結果がこれであります。それに対して今度いよいよ保険点数にこれを換算して参りますときにはいろいろな事情を勘案して、そうしてもう少し技術料としてもよけいみなければならぬものにはよけい加えていく、そうしてほかのところを幾分薄くしていく、こういうような操作を加えなければならぬ。その操作を加える考え方という意味におきまして、私どももこの再診料を幾分減らして、そうしてこの初診料を増点して参るという考え方には賛成いたした次第であります。でこういうようなことで、この初診料をふやして参りますが、さて各科別にお医者様方の収入に不均衡を生じさせないというようなことのために、どういうような処理をまた考えていくかというようなことで、何べんもやってみては、このアンバランスが大きければそれをさらに点数を幾分ずつ変えて、そうして各診療科別に増減があまり起らないというようなところへ持っていった幾つかの作業の結果が、かようなところへいった次第でございます。根本的な考え方は、そうして科学的な根拠を示せということを申されますと、まあ科学的であるかどうかまた御異論があるかもしれませんが、私どもとしましては二十七年のときのこの経費分析というのを基礎資料としまして、これにいろいろ実施に移す場合の妥当な解釈というものを加えて、かようなところへ持っていったというような実情であります。
  23. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 曾田局長の話を聞くと、なかなかわかりにくいところがますますふえて参りますが、先刻私がお尋ねしましたのも、注射料というようなものに対してほとんど技術を認めておらぬ。認めておらぬどころか、注射よけいやればやるほど損をさせるというところの考え方が、どうも局長自身かどなたか知りませんが、利潤追求というようなことがありはせぬだろうか、それに対しては大いに処罰せぬならぬという気持からやったので、新医療費体系なるものの根本精神を間違えておるのじゃないかしら。言いかえれば物と技術を分けるのであって、技術を大いに尊重するというのがこの新医療費体系のできる本元であったと私ども考えておるにもかかわらず、注射料の点においては技術を見ずに、よけいやればそれだけ損をさせる、利潤追求をしておるんだから処罰してもいいというような考えになるのはよほどおかしい。どうもふに落ちぬわけでございます。やはり何と申しましても、診察料診察料注射料注射料処置料処置料として、技術を認めて、適当な技術をみんなつけるのがほんとうじゃなかろうか。計算上そういうことをやれば、一方に不足してくるからというような考えは起さずに、なぜ技術料をみんなそれぞれに対してつけたかというところを一つ、聞いても同じことかもわかりませんけれども……。
  24. 山下春江

    政府委員山下春江君) この問題は私は先生方よりももっとしろうとでございまして、一切わかりません。聞けば聞くほどわからないのでありますが、しかしながらこれは今後日本が、与党も政府も近き将来に国民皆保険社会保障制度の強力な推進をいたそうとする段階でございまして、国民が皆保険になりましたときに、いかに良薬といえどもそれは受け付けないからだがあったり、あるいはその薬はどうしても飲みたくないものを、いい薬だから飲め飲めと強要いたしますような矛盾と無理の上に立ちまして、今後の日本の社会保障というものが推進されるわけはないと思います。私は今後の社会保障を強力に推進してゆくためには、その医療担当者であられるお医者様方も多少の不満はあるけれども、しかし国家的見地に立って、まあこの程度ならばがまんして協力してやろう、あるいは被保険者も今日まで多少ルーズであったけれども政府の社会保障の強力な推進という意欲に対しては、われわれも自粛し合っていこう、その他の国の立場も非常に強力にこのことを推進するという形が打ち出されて、みんなが渾然一体にならなければ、この大事業の完遂はできないと思います。かつて本委員会で大臣が人間の作ったものだから悪いところがあれば直しますと申しましたが、私は今の段階で考えますことは、各方面で矛盾だ、無理だと言われますものを無理に押しましても、所期の目的を達成することは困難だと思います。医療担当者であられるお医者様方にちっとも相談しなかった、厚生省では相談をする時間がなかったと、あるいはそういうふうに運ぶのにいろいろな不備な点があったと、こういうことでございますれば、これは医療担当者であられるお医者様方とも、諸般の関係皆様方ともよく御相談を申しまして、そうして無理でなく、だれでも納得のゆくような、しろうとにもわかるようなものでございませんと、いかによいものでも、私はこれを推進するということは政治的に考えまして無理だと考えますので、この点は私どもは諸般の世の中の情勢を勘案いたしまして、慎重に考えるべきだと存じます。
  25. 谷口弥三郎

    谷口弥三郎君 ただいま政務次官のお話は、実にわかったお言葉で、私どももそれになら大いに賛成をしたいと思います。とにかく国民のためになるような新医療費体系を作らぬならぬのだから、そうわざわざ急いでこういうふうの、どこからでも非難攻撃をされておるような方式で急いでやられる必要はないと存じますので、今おっしゃられたように、十分に各方面に納得し得るような体系ができるように一つなりたいものであると、こういうふうに私はこれに対して賛意を表するわけであります。どうぞそういうふうに進んでいただきたい。
  26. 相馬助治

    ○相馬助治君 これは山下政務次官の発言で谷口先生も満足されて、結論が出てしまったようですが、(笑声)私はそのことはわかりました。そうして私たちも最終的にはこれはやはり落ちつくところへ落ちつき、本気で日本の医療制度の前進のために考えなくちゃならないと思うけれども、しかし今問題になっているのは、この間の参考人のおっしゃったことに厚生省が答えられて、今度その答を聞いたところがいよいよわけがわからなくなった、こういうところに問題があるので、委員長にお尋ねいたしますが、この辺で議事は、この案件については谷口先生が満足されたこの段階で、一たんこの答えに対する質問をやめますか、それとも私は疑問の点があと三点ほどあるのですが、お聞きしていってよろしいですか。
  27. 山下義信

    理事山下義信君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  28. 山下義信

    理事山下義信君) 速記を起して。
  29. 相馬助治

    ○相馬助治君 先ほどから新医療費体系そのものについての質疑が継続しておるのですが、ただいま山下政務次官の御発言に関して一点だけ疑義をただしておきたいと思います。それは新医療費体系なるものは、厚生省が心血を注いで、長きにわたって作業をされたものであるということについては、われわれは十分敬意を払うにやぶさかでないのです。しかもこの問題は単なる立法問題でないために、委員会であるとかあるいはまた薬剤師協会であるとか、歯科医師会であるとか医師会というものが厚生省に対抗して代案を容易に出し得ないという点も、これは十分考えなければならぬと私ども考えておるわけです。従いまして立法府にあるわれわれといたしましては、ただ単に厚生省をたたくだけでなくて、これを一体最終的にはどう取り扱うかということに対しては各委員とも苦慮されて、そうしてしかもおのおのの立場から疑義をただして今日に至ったと思うのです。そこでただいま山下政務次官の御発言はきわめて重大でございまして、慎重に皆さんの意見を聞いてこれを実施するからというお話ですが、慎重ということはこの際何を意味するか、もう少し具体的にお聞きしたいと思うのです。すなわち四月一日より法律二百四十五号は発効いたします。医薬分業制度が実施されます。これは立法府にあるわれわれとしてはその法案を審議し、成立せしめたものの建前から、しかも全会一致であるという経緯からして、これに対しては責任を持たなければなりません。その一点からは厚生省にわれわれはあくまで協力しなければなりません。それと思い合せてみまするときに、新医療費体系の新点数を実施するのに慎重にやると申しますけれども、四月一日に見合うためには、本来ならば三月一日の官報には公示されなくちゃならない筋だと思うのです。従いまして慎重ということは、ここ一、二日慎重にやるということなのか、時間的にも十分慎重にということで御発言なさったのか、その一点を確認したいことが一つ。次の問題は医務局長の先ほどのお話を聞きますというと、部分的には不備な点を認めながらも、総体的には何とかして厚生省の原案を一つ推し進めたいというあふれるばかりの熱意がその説明の中にあるわけなのです。従いましてただいまの政務次官の御発言は、事務当局の医療関係保険局長医務局長等の意思をも含めておることはもちろんであろうと推察いたしまするが、小林厚生大臣もまた同断の御意見に立っておるのかどうか、この点に関して一つ……。ただいまの御発言は厚生省を代表する責任ある御発言と聞いておいてよろしいかどうか、この二点をただしておきたいと思います。
  30. 山下春江

    政府委員山下春江君) 前段の、新医療費体系が作成されるまでには厚生省はあらゆる機能を動員して、心血を注いで作ったものである、従ってこのものに対してはただ単にたたくだけでなく、これの推移についてはわれわれも協力すべきところは十分協力するという相馬先生の御意見に対しては、感謝のほかありませんが、その通りではありますけれども、お説の通り、三月一日くらいにはもう官報をもって公示しなければならないものであることは、これまたお説の通りであります。従いまして今日かくのごとき疑義をたくさん差しはさんでいるものがいかに努力いたしましても、五日や三日の間にこれを納得の線に作り直すということは、いかなる方法をもってしても不可能でございます。従いまして私が今発言いたしました発言は厚生大臣に御相談を申し上げておりません。事務当局のだれにも相談をいたしておりません。私が政治家としてのただ私一人の責任において、この私の発言を厚生省の意見にまとめ、あるいは大臣の御賛同を得るために、私はこれからあらゆる努力を傾けるという私の個人の決意を披瀝いたしただけでございます。当局はこれに関しては関知いたしておりません。私はあらゆる努力を傾けまして、私の言を責任あるものにいたしたい。もしできなければ私はその責めをとるというかたい決意をもって申し上げておるのであります。  それから後段の場合でございますが、後段の場合は……前段と後段が答弁が一緒になってしまいましたが、要するにこの前段と後段のごちゃごちゃになりました前段の新医療費体系に対して私が不満であるとかどうとかいうことはございません。心血を注いで作ったことは確かでございまして、それは私も認めておりますが、ただ遺憾ながら私はしろうとで、これが果していいものか悪いものかという判定の能力を私は持っておりません。従いまして多くの医療担当者の方々が非常に御不満であるとならば、私は今後日本の社会保障を推進していく立場から、政治的に考えまして、先生方の方に御無理が多少あるのかもしれません、あるいはいろいろな問題がそれにからんでいるのかもしれません。しかしながら私は政治家でありますから、その点は医療担当者の方々が同意できないとおっしゃるものを押しつけて、日本の社会保障を推進していくという自信もまだつかないのであります。しかしながらそれならば法律に規定されておる医薬分業はどうなるか。医薬分業は法律で決定されておるものでございますから、医薬分業がこのことによって阻止されるということのないような措置は私は絶対にとるべきものと思いますので、私、政務次官としての個人の責任において発言いたしましたものであり、重大な発言であることも覚悟いたしまして申し上げた次第でございます。
  31. 相馬助治

    ○相馬助治君 私ども、政務次官としての悲壮な決意を当委員会に表明されたということに対しては敬意を表しますが、やはりだんだんお尋ねしますと、政務次官という名の、山下春江という政治家の決意を承わったことになったので、厚生省の総括的な統一した意見でないということは了解をいたしました。実はこのことに対しましては政治的責任の立場からいろいろお尋ねしたいこともあるのですけれども、これ以上議論を私は本日は進めません。
  32. 山下義信

    理事山下義信君) 私から政務次官に伺いますが、一番最初に政務次官発言を求められて、ここでお話しになりました。谷口委員質問に対してお答えになりましたが、今ここで議論になりましたのは、注射料の適正な技術をなぜ認めなかったか。なぜ初診料に入れたか。一部先払いの思想はどういうことを考えておるのかという根本的な御議論が出まして、御質疑を通じて医務局長あるいは同僚議員との間に御論戦になりましたのは、わが国の医療の現状に対して注射その他投薬について、これを従来重く用い来たった医療の方法医師の診断技術というものは、注射投薬を用いる診断技術も、それを不要とする診断技術も、この診断技術の価値の検討については新たなる観点から考えなくちゃならぬという当局の見解を披瀝せられまして、一つの質疑応答がかわされたのですね。それで政務次官はこうおっしゃったのです。一番最初の御答弁では、将来国民皆保険というわが国の社会保障制度を推進していく上については、どうしてもわが国の医療の方法その他についても療養担当者、すなわち医師諸君の御協力を求めなくちゃならぬ。従来の医療の方法、私のとりましたニュアンスは、従来の医療のようなやり方をやっておったのでは、国民皆保険というようなふうにはとてもゆけないんだ。どうしてもそういうふうな全般的な社会保障制度に推進して行く上については、医療全般にわたって改善を加えて行かなくちゃならぬのだから、療養担当者の方々もごしんぼう願わなきゃならぬ点があるのだ。この新医療費体系を通してわが国の医療の改善ということに一つ協力してもらわにゃならぬのじゃと、こうおっしゃった。そのお話しの前段は、今回政府が出された新医療費体系のその考え方を政務次官は支持されたようなお話しであった。後段に至って、前段の御所説をくつがえすかのごとく、しかしながらこの新医療費体系に対する不満に対しては、これは善処せにゃならぬのだ。いわゆる大修正をしなくちゃならぬと自分は考えておると、こう仰せになりますと、私は前段の御意思と、後段の御意思とが非常に矛盾いたすようにこれは承わっておったのであります。帰するところは原案を固守する考えは持っていない。従って相当これは自分個人としても、また政務次官としても、療養担当者の希望に沿うように修正をする努力をするというお話であったのでありますから、御所説の結論は明確になりましたが、前段、この新医療費体系の実施によって医療保障の上に大きな改善を加えて、その基盤に立って国民皆保健を進めてゆく。この種の諸条件がそろわなければとうてい社会保障の強化推進はできないという御所説は放棄なさいましたのですか。その点私は念のため伺いたいと思います。
  33. 山下春江

    政府委員山下春江君) 前段に私が申しましたことを放棄するか、しないかということでございますが、関連がございますけれども、私は今事務局が作りましたものをいいとも、悪いとも批判をする能力を持ちませんけれども、私が厚生省におります限り、あれだけの努力をして、長い間かかって作ったものだから、いいものと信じます。私はわからないなりに信じます。従ってこのいいものによって根本的な医療に対する考え方を打ち立てて行きたいと念願いたしました。しかしながら今日の情勢では、私のこの念願も、お前は放棄するのかと言われると、私は非常にたあえなく崩れ去ったように聞えましょうが、私といたしましては大修正ということが、その修正ということの考え方が、一体大修正という文字で現わしていいかどうかわかりませんが、私は今日の政治情勢は、このことを私どもが強力に皆さま方に御支持をお願いするの段階でないと私はかく判断いたしまして、はなはだ、これは相馬議員にお答え申し上げました通り委員長の非常に御注意深いそのお心持ちに対して、はななだ申しわけありませんが、私といたしましては、慎重に考慮するとは、これは慎重に考慮する時間をもはや持たないわれわれとしては、放棄するのか、遂行するのかと言われれば、放棄したような表現をせざるを得ないと思うのでございます。
  34. 高野一夫

    ○高野一夫君 私は今日の政務次官の御発言を聞いて、非常に意外な感に打たれたのであります。それは、われわれは委員でありますから、委員として、個人として自由な意見を述べて質問して一向に差しつかえない。政府側からおいでになる方々に対しては、保険局長は高田さん個人としておいで願っているのじゃなくて、保険局長としておいで願っている。曾田さん個人でなくて、医務局長の曾田さんとしておいで願っている。小林さんもおいで願えば、厚生大臣としておいで願います。山下さんも、厚生省の政務次官、政府委員として御出席を願って、そうして政府委員の立場からわれわれの質問に対して見解を述べ、答弁をなさる筋合いのものだと私は思う。そこで、先ほど相馬委員の御質問に対して、それは大臣との何ら了解を得ていない。事務当局との了解を得ていないが、一政治家としての発言である、こういうお話でありましたが、それは御自由であるけれども、こういう委員会で、政府委員としておいでになった以上は、やはり政府委員としての責任ある答弁になるのでありまして、私はここで、お互いに与党同士でありますから不足は申し上げませんが、どうかこういう席で御答弁になるときは、一つ政府委員としておでまし願っているのだから、政府委員としての答弁、御見解をお述べ願いたい。一政治家としての、山下衆議院議員としての御意見を御発表願う機会は、別の機会があると思う。この点をはっきり私は区別していただきたいと思う。  そこで、それだけのことを申し上げて、一点伺いますが、先ほど相馬さんからのお尋ねに対して、非常に慎重ということは時間的、そのほかあるいは四月一日の分業実施に関連があるが、これはどういうことかと、こういうお話があった。そこで政務次官の御答弁では、四月一日はこれは法律できまっているのだから動かすことはできない。それに間に合うような措置は講じなければならぬ、こういうお話であった。これは私もごもっともなことだろうと思って、私もこれは首肯いたします。ところでどういうようなふうの慎重な修正というか、あるいは検討を新たに加えるというか、そのことと、それから四月一日の分業実施には支障を来たさないような措置は速急に、絶対的にやらなければならないと、こういう点をもう少しちょっと区別して、一つこれは政務次官としてお答え願いたいと思います。
  35. 山下春江

    政府委員山下春江君) 新医療費体系のその思想的なものに対しましては、先ほどから申し上げます通り、当局が非常に心血を注いで考えましたその方向に対しては、私は多くの医療担当者のお医者様方もこれは否定しておられないと思うのであります。従いまして、その思想的な部分を変更いたさないで、そうして皆様が納得のいくような方法考えることが私は可能だと思います。しこうして、なお医薬分業という法律に規定してあるものを、これを実行に移すということは、私は可能だと考えますので、その意味において私が先ほどからるる答弁しているのでございます。これは私は政府委員としてお答え申し上げる次第でございます。
  36. 横山フク

    ○横山フク君 今、山下政務次官の御発言でございますが、個人という問題がございましたけれども、私、記憶にございますのは、小林厚生大臣もかつてこの席で、これは決して完全だとは思っていない、そうして直す用意があるということをおっしゃっていらっしゃる。そのときに山下政務次官も御同席であったが、今日は山下政務次官だけで、小林厚生大臣はいらっしゃらないので、そういった責任を感じられて個人とおっしゃったのだろうと思いますが、それと同様の御発言は、小林厚生大臣からもかつて一月近く前にあったと思います。それはただの御発言であったのか。そのことを御発言になって今日一月近くたつのに、そのお言葉によって、どういうような用意をなされたか、どういうように足りないところを御検討して直そうとしていらっしゃるのか、そこら辺もお教えをいただきたい。今日ここでまたそういう御発言があって、そのままで終るという危険性もこれによってあるわけでございます。と申しますのは、この前、そういう御発言があったが、そのままになるのではないかというような懸念が実際あるわけでございますので、あの御発言に対して、その後どういうふうにお進みになっていらっしゃるか、それをお教え願いたいと思うわけでございます。
  37. 山下春江

    政府委員山下春江君) 横山先生のお説は、一カ月前に大臣が同様のことを発言しておった、従って厚生省の考えであろうと思うが、その後どうしたか、また考え考えるでずるずるに抜けるのではないかという心配があるということでございますが、先ほど私が高野先生にお答え申し上げましたように、今度の新医療費体系考え方というのは、非常に連絡が不十分であったとか、いろいろな点で納得をしていただく時間的なものを持たなかった、そういうことで非常に御不満を爆発さしておりますけれども、思想的にはああいう考え方でいいのだということを是認をしていただいておると思いますので、その思想的な方向をこわさないようにいたしまして、私どもは大臣とも非常にこの問題では苦慮いたしまして、何とかそういう思想的な方向をこわさないで対処する方法があるではないか、分業等も決してこれによって支障を来たさないような方法があるではないかということを常に相談いたしておりまして、私自身は今やもうその決意に到達いたしております。大臣もおそらく同様であると私は確信いたします。事務当局といたしましては、責任を持って考えた案でございますから、私と大臣がそういうことの最後の決定を事務当局に申し入れるまでは、自分たちの考えられました線でいかれることは、これは当然でございまして、私はその点ではわれわれの決意を御信用賜わりたいと思うのでございます。
  38. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 これは先ほど曾田局長の御説明で、皆さんがいろいろ問題がさらに出てきたという以上に、山下政務次官の御発言は、さらにもう根本的な大きな疑義を投げかけておるように私は感じますが、事実皆さんそうだろうと思いますが、これは大へんな発言をされたことになります。しかし私は与党ではありませんけれども、良識を持たなければならない参議院議員の一人として、とにかく四月一日から実行しなければならない新医療費体系が、このような形で、きわめて限られた条件のもとにおいては、最善の努力を厚生省事務当局はして、ここにこういう形で出されたのであります。これをわれわれが今政務次官の言われるように、さらに時間をかけてでも、政治生命をかけてでもその大修正を行うというような当局の御決意を聞くと、これはとうてい四月一日に実施されるような運びにはいかないだろうと思いまして、これは非常に危険なことであると感じております。そこで私は良識をふるい起しまして、その次官の発言と事務当局の御意向との間に調整を考えるわけでありますが、すなわち数日間か、あるいは一週間か十日の間に極力努力されて、これに対して不満を表明しておるところの医療担当者の間に、十分話し合いの機会を、徹夜してでも作られることができるわけですから、次官の意向に沿って、そうして修正すべきところは修正するというようにして、これが円滑に実施されていくようにということが、良識を持った参議院議員の委員として最後に私が希望したい点であります。
  39. 山下義信

    理事山下義信君) この問題に対しまする本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないと認めます。  なお御通知書にございました本問題に対しまする当委員会の対処いたしまする点について御相談申し上げたいという点は、すべての議案が終結いたしましたあとで御相談いたしたいと思いますから、御了承願います。   —————————————
  41. 山下義信

    理事山下義信君) それでは次に、つき添い婦制度廃止に関する件を議題といたします。  まず先般来各委員方々で、地方の実情を御視察になられました結果につきましての御報告がございましたらば、順次御報告をお願いいたします。
  42. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 実は当委員会の……ちょっとこれは保険局長もおっていただきたいのです。それからできたら、社会局長に来ていただきたいのですが、至急に連絡していただきたい。
  43. 山下義信

    理事山下義信君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  44. 山下義信

    理事山下義信君) 速記を起して下さい。
  45. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 次官もそのままおっていただきたいと思います。それから療養所課長さんも見えておりますね。  この委員会の決定に基きまして、私は二月九日、十日の両日、京都療養所と大阪療養所それから大阪厚生園の三個所に視察調査に参りました。大阪の千石荘についても視察したいと思いましたけれども、どうしても時間の都合上行くことができませんので、大阪療養所に来ていただきまして御意見の一部を伺いました。実情の一部を調査さしていただきました。これはもう詳しく申し上げればこの袋一ぱいのその当時の調査資料がありますけれども、要点だけを皆さんに、もうすでに御了解のことですから申し上げますと、京都療養所においては六百十一名の重症患者があります。   〔理事山下義信君退席、理事谷口   弥三郎君着席〕  それで最近私の参りましたときには、七十人のつき添い婦がおられました。常動の定員は三十名であります。うち二十名がすでに決定いたしております。この二十名を全部つき添い婦からとっておられました。残りの十名は三月上旬になるべくつき添い婦の中から適当なものを選んで常勤にするという意向であります。しかしながら、大半のもの、約五十数名のものはまだ転職の見込みがついておりません。施設は相当改善されております。インタホーンの設備とか手術回復室を手術室の近くに移転しておる、あるいは車患者の室内の段取りも相当合理的に配置されております。電気せんたく機その他給食に関しても複式献立てを作って改善のあとが見られております。こういう点についてはあとで総合的に申し上げます。  大阪療養所におきましては現在つき添い婦が八十七名おります。常勤は三十八名であります。そのうち十五名の採用が決定いたしております。十五名はすでに切りかえられております。ところが、ここでは十五名のうち十二名はつき添い婦から選ばれておりますけれども、三名がほかからとられております。ここにおきましても各種の設備の改善については最大の努力が払われておるということを私は認めました。いずれも先ほど言いましたインタホーンそれから病棟の移転、重症患者の病室の改善、そういう点について、また、給食施設の改善、こういうことにも相当努力が払われておるということを私は認めました。  それからもう一つ、大阪厚生園、これは割に小さい施設でありまして、三百四十六名収容患者がおります。ここでは全部切りかえが済んでおります。すなわち常勤定員十六名であります。そのうち十五名まではもはや定員化して、これは全員つき添い婦からとっております。一名が今これもつき添い婦からとるようになっております。全員ここは切りかえが行われております。設備の改善につきましても、暖房それから温食の給与、インタホーン、重症患者の病棟移転、せんたく機などもいずれも同じようにできております。  それぞれつき添い婦の代表、それから施設長初めこの経営者のグループ、職員のグループあるいはつき添い婦のグループ、患者の代表グループなどいずれも四つぐらいの団体とそれぞれ別のところで、あるときは一緒のところで、この三個所の施設において意見を聞き、希望を聞き、問題点を述べてもいらいました。詳しいことは資料を差し上げます、その方がいいと思いますので。こういう視察の結果結論を五つ、六つ私は得たのであります。  それでただいま申しました通りに、第一は常勤への切りかえについては、各療養所大体にその設備の改善ということには努力をしておる跡が見えます。病棟の移転をしたり、病室の模様がえをしたりの準備もしております。また実行に移しておるところもあります。ところが何分現在国立療養所というのが相当戦時中の粗末な建物でありまして、必ずしも現在のような計画のもとに結核患者の療養所として建設されたものでありませんために、その上すでに戦時中のこの粗末な建物のために老朽あるいはいたんでおるところが相当激しいのです。または二階建が、大阪療養所にいたしましても、厚生園にしましても、あるいは京都の療養所にいたしましても木造の二階建があります。そうして、なかなかこれを改善しようと思ってもできないような建て方の粗末なものでありまして、私が調査中に、風が吹きますともうその場で私は建物が倒れるのではないかと思うような状態です。ことに大阪の療養所ではこの二階建を重病患者の病棟に切りかえられまして、そうしてリノリウム——あまりがたがたしますのでリノリウムを床に張っておるような状態ですけれど、リノリウムを張ったくらいではなかなか音響が、ガタピシする音響というものはなくなりません。安静を要する重症患者はこういう所で落ついて療養するこということができません。二階は少し軽症のものがおりまして、下には手術した患者がおります。これは最大の努力をしておるわけでありますけれども、努力するにもかかわらず現在のこういう建物の設備では改善ということが容易でないということに気づきました。ことに、調理場とか給食設備というものが、どこにおいても調理場が相当遠くにありまして、それを運搬してくるその道が悪い、運搬車が悪い、そのためにつき添い婦の仕事というものに重要な仕事が食事を作り直すこと、これをやり直す、あたためるあるいは患者の口に合うようにしてあげる、こういう行き届いたことですが、一つは運搬されてくる、療養所で作るところの給食がどうも場所からいい、その設備からいって、患者にまだ十分の満足を与えていない。栄養の上からも、あるいは食欲の上からも、それでそういうことにつき添い婦さんが非常にお骨を折っておるというような状態、これがなくなることを患者は非常におそれておる。はたして常勤の看護人でこういうことまでは行き届くかどうかということについて、非常に不安を与えております。それから手術後の患者が四人あるいは六人、一つの部屋において、インタホーンをつけられて、そしていつでもその常勤の看護の人たち、つき添いの人たちが動けるようにはなっておりますけれども、気持の上で、こういう設備の中で、たとえば風が吹きますと建物が悪いですから、紙が飛ぶことがあるのです。自分がその紙を拾ってくれというようなときに、わざわざインタホーンで呼んで紙を拾ってもらう、一つの例ですが、そういうようなささいなことについて、十分常勤者にはできないのじゃないかという不安を持っております。これが一つの点です。現在二千二百二十七人の常勤者、四千人ほどいたところのつき添い婦が二千二百、半分になって、これを訓練して模様をかえて、あるいは設備をよくしていくならば、あるいはこれでいいかもしれないのですけれども、こういう条件のもとでは、どうも二千二百二十七人という数字ではこれは絶対的に不足しておる。私どもはそういう印象を受けました。それから四千人のつき添い婦の中から定員を満していくようにという原則が必ずしも守られておりません。この点について、私はいろいろ聞いてみましたが、大阪の療養所におきましても、新規のもの、まだあと四十、五十人ほどいる中で、どうして新規の者が入ったかということについて、現在いるつき添い婦さんの中に非常に不満があります。これはいろいろ情実があって入ったのだということまで言っておりました。こういう点については、必ずしも一方的にそうだとも信じませんけれども、とにかくつき添い婦の中から定員を満していないということにつきましては、配置転換の上に問題がすでに起っておると思います。従ってこれはどうしてもつき添い婦の中に、少くとも一年程度はつき添い婦から定員を満していく。そしてどうしても都会が悪ければ、さらに考慮していくというような、こういう段階を踏んで、配置転換においてはつき添い婦を優先的に採用するという原則を曲げないようにしてもらいたいと思いました。  第三の点は、こういう過渡的の段階では、ことに切りかえの過渡的段階では、すなわちここ数年間は、少くとも現在の定員の数、二千二百何十人というもので、看護の完全を期するということについては、不足しておるということを認めました。それではどれくらいが不足しているかということについては、客観的に私がこれをどうするというような根拠においてということは今申し上げられませんけれども、少くとも現在の定員の二割程度の常勤者に準ずるワクが必要であろうと見て参りました。こういう二割といいますと、まあ四百人くらいという数を一応出したわけでありますが、この常勤定員外に二割くらいの定員のワクを何とか当局としては確保していただきたい。そうしておのおの出張所長の手元にそういうワクを置かれて、各療養所に機動的に必要に応じて配置できる、そうして施設長の配下にこれを置くという、こういう組織のもとにおいて二割程度ワクを少くとも確保されておくことが切りかえを円滑に進め、常勤制度を将来において完全看護の重要な要素として確立していかれる上に必要であると私は考えて参りました。  こちらに帰りまして伺いましたところで、二月八日付で当局から通牒が出されております。そういう設備が十分整わない、準備が十分整わない前に、無理に常勤の定員に拘束されてしまうことがないようにというような意味の通牒が出ておることを承知いたしました。また二百八人ですかのワクもできておることを承知いたしました。そこできようできれば御相談願いたいことは、さらに二百人ほどの定員を看護券の形で社会局あるいは保険局の手元から出していただけるようにすれば、大体切りかえ時における二割程度のつき添い婦がさらに仕事を続けていくことができ、そして病院、療養所経営の上に支障がより少くなるのではないかというように見てきました。   〔理事谷口弥三郎君退席、理事山下義信君着席〕 こういう費用の点においては、追加予算によっても措置できるのではないかと思いますし、現在の予算の中でも多少こういうものが追加できるのではないかと思われます。  以上が要点でありましたが、聞くところによりますと、各所で相当やはり無理にと見られるような、そして急いでもうあなたがたは要らないのだ、もう今月限り、二月限りであなた方はこの療養所に入ってきてはいけないのだというようなことを、そういう究気が出ているところも、これは私の調査したところではありませんから確言いたしませんけれども、聞くところによりますと佐倉だとか豊中というところではそういうような施設長の態度があるということであります。しかしこれは厚生省の意向に反することであろうと私は見ております。詳しいことは申し上げませんけれども、そういう四つほどの結論を出しておるわけであります。できるだけそういう点について、他の調査報告も聞きました上で御相談したいと思っております。
  46. 相馬助治

    ○相馬助治君 去る十日と十一日と二十二日と国立療養所のつき添い婦制度切りかえに対する実情を調査するために、足利療養所、栃木療養所並びに宇都宮療養所を視察いたしました。その視察概況は別途書類をもって提出をいたしますが、若干重要な部分について御報告をいたしておきます。  足利療養所におきましては、つき添い婦制度の切りかえ問題以前の問題として、昨年度患者が前所長の退陣を要求して診療を拒否したという事件がございますが、それがいまだ解決いたしませんで、医師患者との間に全く信頼感を失っておりまして、これが今度のつき添い婦制度にも微妙に影響をいたしております。特に一点明瞭にならしめなければならないことは、今度の常勤常務者の割当がわずかに四名でございます。病床数が三百二十三、現在の患者数が二百五十六に対して今度の割当わずかに四名、しかもその割当の基礎資料となったものは、前述の問題の折に、診療拒否事件等があったために例外的に少数であったと存じます。大体同一規模の宇都宮療養所が十七名割当になっておりまする点からいたしまして、これらにつきましては、厚生当局の慎重なる考慮を要望しなければなりません。  つき添婦の失業に関する問題につきましては、該当者はわずか一名でございます。わずか一名ではございまするけれども、どうしてもこの間に所在いたしまして婦長さんの二枚舌らしいものがあって問題を紛糾させております。全くその措置は当を得ていないのではないかということが実は心配されるのでございます。  最後に重症患者自身はつき添い婦制度の存置することを希望いたしまして、この際つき添い人がなくなることは、私に死ねと言うことに等しいということを申されたのであります。同行いたしました多田室長も、この点についてはその状況を見たのでございまするが、いろいろ考えさせられました。  設備の問題につきましても、足利療養所の患者諸君は、水を十分に使わせて下さいということを申しておるのでございます。他の療養所におきましては、給与の問題であるとか、もっと進んだ医療上の要求をしておりますが、この療養所においては、水を十分に使いたいと申しておるということは銘記すべきことだと思います。  次に栃木療養所でございまするけれども、この療養所は所長並びに所側の処置は非常にけっこうです。そうして大きな問題があるにもかかわらず、やり方によっては、この新看護体制への移行ということは、そんなに問題を起さないのだという実例として私は見たのでございまするけれども、しかし未解決の問題をそのままにして、現在円滑裏に行われておるのでありまするから、将来は厚生省において特段考えてもらわなければならないことがあります。  失業問題につきましては、七十五名のつき添い婦のうち現在未解決になっておりますのは三十五名であります。しかしながら、所長がわざわざ知事室を訪問し、あるいは職業安定所を訪問しているという熱意をつき添い婦自身は認識しておりまするために、これは深刻な問題と現在はなっていないのでありますが、これはこの後の処置がどういうふうになるかということによって、問題が重要にもなりまするし、このまま円満に移行することにもなると思うのでございます。  で、その他重症患者意見、あるいはまた、患者諸君が一対一、一週間を希望し、所側は一対一、二日、これを主張いたしまして解決を見ておりませんけれども、両者とも誠心誠意解決をしようという熱意に燃えておることは事実であります。しかし厚生省が十分先ほど申された竹中先生の意見のようなものを受け入れて下さらない場合には、この療養所には問題が惹起するということを私はここで指摘しておかなければなりません。  最後に宇都宮療養所を見ましたが、これは市立の病院が国立に昇格したものでありまして、所長を初め医療陣並びに設備も非常に充実しております。しかも感心いたしましたことは、患者に対して思いやりが複式献立のところにありありと見えているということでございます。従いまして所側のいないところでもつき添い婦さんも患者も所側に対して感謝をいたしております。このことは宇都宮療養所におきましては、つき添い婦制度廃止の問題に対して当面する大きな問題というものは、ここに報告すべきものはございませんけれども、ただ患者側は二対一、一週間というこの所側の意見に対して、やはりベッド・サイドに一人いなければどうしても不安であるという患者の心理の立場から一対一、一週間を要求しておるのでございます。失業の問題に関しましてはここは一例もございません。  以上で報告を終りますが、私はこの視察した結果によって考えている点をあげたいと思います。この問題は、その性質上機械的に切りかえをしようとすることは困難です。経過的に厚生省も一つ反省をされまして、適宜なしかも何人も納得するような措置をしていただかなければならないと思います。二千二百二十七人の新定員は何としても不足のうらみがありまするから、社会局長におかれてもこの点は十分一つ医務局長とも検討をされまして、出張所長の手元に保管するところのストック人員を何人か持たなければうまくいかないのではないか。  それから経費の問題でありますけれども、現在つき添い婦として働いている者に対しては、あくまでこれはその職業は確保してやらなければならない。それを労働省と連絡しているのだ、職業安定所長に頼んだからというようなことでは、これらの人々は満足しないのでありますから、経費の都合上、制度の都合上、問題はあろうとは存じますが、経過規定として何らかの処置をしなければならないと考えます。  次の問題は、私が見た三つの療養所はいずれも対比的に、今度の切りかえに対して異なった現象を呈しております。従いまして厚生省におきましてはケースごとに一つ懇切丁寧なる指導をする必要を私は考えるものであります。そういう意味合いにおきまして、つき添い婦制度廃止、この新医療費新看護体制の切りかえに関しましては、かって厚生省側から、まことにスムースに行われて、問題がないとの報告でありましたが、私の調査せる範囲内におきましては、問題はたくさんあります。厚生省の措置がまずかったならば、問題は深刻な問題として起きてくると思いますということをつけ加えまして、報告を終ります。
  47. 山下義信

    理事山下義信君) 本件につきまして、厚生省当局に対する質疑がございましたらお願いいたします。
  48. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 報告に洩らしたことが一つあります。それは失業問題ですが、これはほとんど解決がついておりません。私が見ました三個所では合計百名ぐらい——百数十名になりますが、これは解決ということはむりなんでしょうが、解決つかないというのが当り前だろうと思うのです。年齢にしても五十歳以上の方が相当おります。そしてこういう人たちがつき添い婦によって生計を立ててきた人なんでありますが、従ってこういう人たちが新しい職場につくということは、これは非常に不可能に近い状態に今置かれております。またそれについての対策も施設長以下非常に苦慮いたしておりますけれども、ほとんど手がないのじゃないかと思います。この点につきましては、京都府のごときは協議会を作りまして、京都府や京都市安定所関係、そういう所と協議会を作って、何とかしたいという熱意は持っておりますけれども、幾ら協議会などをこさえてみても、これは日本の現在の経済社会状態では、とうていこういう人たちが相当の収入をもって就職するという場所はありません。ただこういうことは考えられると思います。この人たちはただ一つづき添いということについては技術者です。とにかくエキスパートなんですね、ほかの婦人からすれば。それでなるべく公立や私立の病院に対して優先的に国立療養所のつき添婦をあっせんするというようなことを本気でやらなければ、残っておるところの失業の不安にさらされておるところのこの人たちの問題を解決することはとうてい私はできないと思う。ことに今度の失対のあれになった中でも、特別のこういうつき添い婦だとかそういう婦人の職種というものがありませんから、これは一般のやはり求人と同じように安定所は取り扱うわけです。そういう点については十分これはやはりつき添い婦としてあっせんする制度を各地域について、各地方について安定所に十分そういう連絡をつけて努力する以外に方法がないのじゃないかというふうに私は見ております。  それからこの設備の改善のところを補足いたしますが、現在のあの建物のあの様式で、ああいう配置、建て方では、これはなかなか困難だと思いますので、少くとも二階建ての木造のぼろぼろになった療養所というものは、早急に一階建ての新しい療養所に建てかえる以外にはこれはないと思いますが、こういう点についても厚生当局は十分考えていただきたいと思います。
  49. 山下義信

    理事山下義信君) 御質疑がありましたら、お願いいたします。別に御質疑ございませんですか。
  50. 相馬助治

    ○相馬助治君 質疑はないのですが、私は、結論的に厚生省に要望したようなことについては、一つ厚生省が真剣にお考え願わなければ問題が解決いたしませんと存じまするので、委員長におきましても、この当委員会において報告された両名の報告を中心とされまして、厚生当局とよくお話し下さいまするように特にこの際お願いをいたします。
  51. 山下義信

    理事山下義信君) 承知いたしました。
  52. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 私は一点曾田医務局長にお願いしたいのですが、まあ二百八人というものを採られたということについては、私ども大へん喜んでおりますし、賢明な方法をとっていただいたと思っておりますが、保険局及び社会局に対して医療券の発行について医務局の方では申請される、すなわち現在では私ども考えではこれはとうてい二割程度の増員——定員外に二割くらいのワクを持っていなければうまく新看護体制には切りかえることが困難だと見たのですが、もう一割程度、もう二百人程度社会局及び保険局に対して要請される意向があるかどうかをお伺いいたします。
  53. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 私どもといたしましては、この新看護体制の切りかえというようなことにつきまして、できるだけ万全の措置を講じたいというふうに考えたのであります。今のところでも私ども大体二千二百七十名の者で病棟看護は足りるのではないかというふうに思っておるのでありますけれども、ただこの切りかえの前後というような事情を考えますると、確かに多少の混乱を生ずるおそれがある、こういうようにも思いまして、かたがた他面におきまして、病棟の看護陣容はかなり整って参りましたけれども、新病棟勤務の手がまだ不足でございますので、そちらの人員として二百八名の増員を予算に組んでいただいたわけであります。私ども療養所としましては、もちろん人数は多々ますます弁ずるとも考えるのでありますけれども、いろいろ国家的な財政の問題もございますし、とにかくこれだけはぜひちょうだいしなければ何ともならぬという数で、これを予算に組んでいただいた次第でございまして、私どもとしましてはこの定員——定員と申しますか、この人員を切りかえる当時における病棟の手不足というものの緩和のためにも、機械的に動かして参りたい。また竹中先生の御注意がございましたように、私どもといたしましても、これはまた相馬先生のお話にもございましたように、非常に施設々々でもって状況かなり違っておりますので、むしろ地区別の出張所長の手元におきまして、そしてさような特殊な施設あるいは特殊な事態に応じてこれを機動的に動かすようにして参りたいと考えておるわけであります。  なおこの二百八名でも不足ではないか、もう少し思い切ってふやすつもりはないかというお話でございますが、私どもとしましては、大蔵省ともいろいろ折衝いたしまして、一応これくらいで何とかなるだろうというふうに見通しをつけたのであります。事実明年度になって参りまして、どうしても手が足りない、あるいは切りかえがつきかねるというような事情の所ができるだけできないようにと私ども準備を進めておりますけれども、さような事態が起ったとすれば、私どもとしては何としても患者さんが第一でありますので、患者さんの看護の手が要るというようなことは万々いたしたくないと考えておりますので、さような特殊な事態が起りますれば、私どもも社会局あるいは保険局のほうにも特殊な患者につけていただくことを申請せざるを得ないことが起るかもしれない、さようなときには私ども手違いのないようにいたしたいと考えております。
  54. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一度曾田局長にお願いしたいが、二百八人という新規の者は現在のつき添い婦から採られるということが前提なのですかということが一つ、ぜひそうしていただきたいということが一つ、それからやはりこの失業ということが相当こういう仕事に従事しておられる家の家計が、これによって支えられている婦人の労働ですから、これは大きな深刻な問題なんですが、これはまあ厚生次官、何とか将来のめどを厚生省として努力していただきたい。それにつけてもやはりこれは多過ぎるということはないのですから、現在不足しておるのです。やはり看護婦というものは足りない。私どもそれはどうしても現場を見ても、こういうことでは十分なことができないのは当然だ。これは厚生当局も、医務当局だってそういうふうに見られるだろうと思いますが、それでも起ったときと言われないで、社会局も保険局も、医務局長がやはり要求されなければそれに応じられないのですから、一つ医務局長は要求するつもりで、そういう気持になってもらわないと工合が悪いと思いますが、一つこれは次官も何とかこれは失業対策でもあると同時に、やはり完全看護という目標に向っての切りかえなんですから、私はこれは永久にと言っているのじゃないのです。少くともこの一年間向う一カ年間にはもう二百人程度のつき添い婦を、現在のつき添い婦が療養所で働けるようにしていただきたいと希望しているんですが、それについて一言次官からのごあいさつと、それから局長にもう一度なるたけそうしますというふうに言っていただきたい。
  55. 曾田長宗

    政府委員曾田長宗君) 私初めに申し上げましたが、できるだけ御趣旨に沿うように努力いたしたいというふうに考えております。
  56. 山下春江

    政府委員山下春江君) 医務局長が一生懸命やっておりますので、そういう事態の起らないことを希望いたしておりますが、むしろ起った場合には私もできるだけの努力をいたします。
  57. 山下義信

    理事山下義信君) 本件につきましては、本日の調査はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないものと認めます。つきましては、先刻御協議申し上げました新医療費体系につきまして、当委員会の今後の議事運営の取扱いについて御相談申し上げたいと存じますので、委員以外の方は御退出願います。速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  59. 山下義信

    理事山下義信君) 速記を起して。新医療費体系に関しまして、当委員会の今後の取扱い方につきましては、榊原委員の御意見通り委員長理事会におきまして検討するということで御異議ございませんですか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないものと認めます。  それでは本日はこれをもって散会いたします。    午後一時二十三分散会    ————・————