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1956-02-23 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委員            草葉 隆圓君            榊原  亨君            横山 フク君            上條 愛一君            竹中 勝男君            山本 經勝君            森田 義衞君            長谷部ひろ君   国務大臣    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    内閣官房長官 田中 榮一君    調達庁総務部長 眞子 博次君    調達庁労務部長 海老塚政治君    労働政務次官  武藤 常介君    労働大臣官房総    務課長     村上 茂利君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    労働省労政局労    政課長     大野雄二郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (駐留軍労務者の労働問題に関する  件)   —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それでは社会労働委員会を開会いたします。  駐留軍労務者関係につきまして田中官房長官がおいでになっておりますので、一応報告を先にお聞きして御審議いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ではそのように計らいます。
  4. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 駐留軍並び国連軍引き揚げに伴いまする対策につきましては、これは各省それぞれの所管事項といたしまして当然やるべきものでありまするが、ただ何分にも各省関係しておりまする関係上、一応内閣におきましてその連絡調整に当っているのであります。昨年の春ごろから米駐留軍並び国連軍引き揚げがぼつぼつ始まりまして、特に昨年の六月ころ神奈川県下におきまする、追浜にございまする富士モーター工場におきまして数千名の労務者が一時に解雇されまして、非常に人心の不安を来たし、その地方におきまするいろいろな産業面にも大きな影響を及ぼしましたので、これに基きまして政府といたしましては、現在の駐留軍とのいわゆる調達形式というものについて根本的に少し検討を加える必要があるのではないか、従来は駐留軍が直接調達をいたしまして駐留軍自体工場事業場に直接発注をいたしまして、それに基いて工場駐留軍作業を請け負ってやっておったのでございます。その間に政府といたしましては、何ら容喙の余地がございません。従いまして、かりに一どきに解雇されるという場合におきましても、政府といたしましても事前にこれに対する準備、対策というものが十分にとれませんで非常に困惑をいたしておったのであります。さような関係から、まずこの調達形式を直接調達よりも、むしろ日本政府がその間に介在をいたしまして、そうして間接駐留軍事業者に対して調達をするという形式に直したらどうであろうか、こういうことが昨年の二十二国会におきましても相当論議せられまして、政府といたしましては、十分に一つ駐留軍とも折衝いたしまして、調達形式を変更することについて折衝してみよう、こういう意味から、なお各省がばらばらに対策を立てることも非常に不便であるので、この際どこかで連絡調整をはかって統制のとれた対策を立ててもらいたい、参議院におかれましても、衆議院におかれましても、さような要望が非常に強かったので、それに伴いまして、政府といたしましても、政府部内に内閣駐留軍国連軍引き揚げに伴うところの対策連絡会議を設けまして、私が議長となりまして、今まで数十回の会合を重ねまして対策をいたして参ったのであります。  そこで今までの対策につきましては、すでに次官会議におきましてもこの対策につきまして協議をいたしまするし、また今の対策協議会中心になりまして、それぞれ各省と連絡いたしまして対策をやっておったのでございます。一番私どもが困難に感じまするのは、一がいに駐留軍労務者と申しましても、労務内容が種々さまざまでございまして、中にはいわゆるデスク・ワークをしておるような通訳もおりまするし、それからまた図案を書いておる者もございまするし、カードの整理をやる者もある。あるいはまたほんとうの事務をやっておるも者もある。それからあるいは純然たる肉体労働者で、ボイラーたきをしておる者もあれば、自動車運転手をやっておる者もある。それからまた警備員もございまするし、また雑役をやっておる者もある。荷役人夫のようなものをやっておる者もあるというように、労務者内容というものはきわめて多岐複雑でございまして、これに対する対策というものが非常に困難なのでございます。まず大きなところにおきましては、県あるいは市におきまして、駐留軍または国連軍引き揚げに伴う失業者に対する失業対策本部というものをまず設けてもらいまして、この対策本部中心になって政府と折衝していただく、こういう形式をまずとっております。そういたしませんと、直接政府がその駐留軍労務者相手対策を立てましても責任の所在がはっきりいたしませんし、経費負担の点が確認できませんので、一応県なり市を相手にいたしましては対策を立てるという方針をとったのであります。そこでまず今までにやりましたところで最も模範ティピカルなケースは呉でございます。呉はすでに数千名の離職者を出しまして、これに対しまして市におきましても対策本部を立て、また県におきましても相当熱意をもって対策をやってゆかれております。本年度予算におきまして、とりあえず総額にいたしまして五千万円ほどの経費を支出いたしまして、失業対策事業を実施したり、あるいは砂防工事を実施いたしまして、この方に労務を転換させる。あるいはまた平和回復善後処理費から費用を支出いたしまして、道路改修工事をいたしまして、そうして改修工事に伴う補助金を出しまして県、市がこれを負担いたしましてその方面労働力を転換させる。それからできれば駐留軍の現在使っておりまする施設をできるだけ利用いたしまして、離職者だけで企業組合を組織いたしまして、その企業組合にできるだけの資金を供給いたしまして、そうして労務者みずからに企業経営をさせる、それによって生計を維持させたらどうか、こういうようなことも考えていろいろ対策を立てたのでございまするが、ただ企業組合につきましてはその背景と申しまするか、そのバックがそれに適応しておりませんとなかなか実現が困難でございます。たとえば自動車修理工場経営させるにいたしましても、修理すべき自動車の台数がなければ経営が成り立たぬ、こういうような事情で、現在のところまだ企業組合経営というものはいろいろ計画は立てられておりまするが、実質的にはまだ非常に実現が困難な事情でございます。  それからことに農村地帯駐留軍引き揚げに伴う労務者対策は、これは非常に困難でございまして、たとえば本年鳥取県の美保におきまして一千名以上の労務者が解雇されたのでございます。これに対しましていろいろ失業対策事業として政府負担をし、地元負担をする。この地元負担というものが非常に困難でございまして、と同時に、直ちに労務者日傭労働者に転換できるかと申しますとなかなかできません。従ってそれではというので京阪神地方にこの労務者をできるだけ移動いたしまして、そこで就労せしめるという方針考えたのでありまするが、これも地付きの者が多く、家族持ちが非常に多いので、直ちに京阪神に移住をすることは困難である、希望者を募ったのでありますが、まず少い、こういう状況で非常に困難をいたしております。従いましてまあ失対事業を割り当てまして、それによって希望者をできるだけその方面に転換せしめる、こういうような方針に移されておるのでございます。それからたとえば駐留軍施設民間の会社にこれを貸与する。そしてそれによってそこで企業経営さしてそれに労務者を転換させる、こういうような考え方もあるのでございます。現在は呉におきましても、できるだけ駐留軍の使っておりました施設民間事業方面にこれを振りかえて、そしてこの施設民間に貸与いたしまして、そしてその民間企業経営させ、それに離職したものをできるだけ振り充てる、こういうような考え方もやっておるのでございますが、ただ民間事業にこれを振り充てる場合におきまして、やはりこの大蔵省国有財産の管理の点から相当高価な賃貸料というようなもので、民間経営をやる上においてコストが合わぬということで、これもなかなか困難を来たしておるのであります。それからまた国有財産を、その施設等民間経営者に払い下げてそしてそこで経営させる。これになりますと、地元自治体当局固定資産税が取れますので、その固定資産税を上げて、それによってまた市としての失対事業を行う財源にすることができるのであります。ところがこれも今申し上げましたような払い下げ処分というものが、非常に国の払い下げ処分というものが高価でありまして、現在のところから申しますと、最高価格を入札したものでなければ落ちないということで、これも非常に実現性が困難でございまして、そういったことでこの特需対策というものは、一応形においてはわれわれとしましては最善努力をいたしておりまするが、なかなか実施が困難であります。これは政府側の技術的な点もございまするが、受け入れする労務者自体の今の労務の種類、また就労の点から申しまして非常に実情として困難な点がございまするので、いろいろと困難をいたしておりまするが、しかしできるだけこの失業者を出さぬようにというので、地元本部等が説得いたしまして、身を賭しても一つ労務を転換しようというふうに説得いたしまして、日傭労務者にもなってこの際一つ難局を切り抜けろというようなことでいろいろ努力をいたしておる次第でございます。なお閣議におきましても、本年二月三日には対策一般方針につきまして閣議了解を得まして、政府としてもこの問題は少くとも三十一年度におきましては呉におきましても目下八千名に近い離職者が出るという見込みで、そのほか熊本、大分両県の空軍基地におきましても解職の前兆が現われ、また青森八戸基地等にもそういう前兆が現われておりますが、本年におきましては相当多量の失業者を出すという見込みが立っておりまするので、政府といたしましては最善努力をいたしまして、この駐留軍並び国連軍引き揚げに伴う善後措置を十二分にいたしたい、かような関係で実は本日の次官会議におきましてもこの点を強調いたし、また明日の閣議におきましても、特に関係閣僚の御認識を待ち、理解を待って各省全力をあげてこれに集中しよう、こういう態勢で進みたいと、かように考えておる次第でございます。  そこで最初申し上げました調達形式につきましては、ただいまのところ、合同委員会等にも日本側意見を開陳いたしまして、できれば直接調達に直したらどうかということの意見を申し上げておりまするが、ただいろいろ技術的の問題で、たとえばジェット機の非常に機微に属し、また非常に機密に属するような技術を日本労務者にやらせるということが非常に困難である。かような関係から、直接調達にすぐ移すということが非常に困難である。それからまあいろいろ駐留軍には駐留軍なりの事情がございまして、すぐ直ちにこれを日本政府の言われるような直接調達に移すということは非常に困難だということで、今なお合同委員会にも間接調達を直接調達にぜひ引き直してもらいたい、できることから引き直してもらいたいということを現在も要望をし続けておるような次第でございます。  きわめて大ざっぱなことでございますが、大体の今までのやり方だけにつきまして、一応私から御報告を申し上げた次第でございます。
  5. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 質疑に入ります前に、菊田政務次官がおやめになりまして、武藤さんが就任せられましたので、ちょっとあいさつをいただきたいと思います。
  6. 武藤常介

    政府委員武藤常介君) 今回政務次官に就任いたしました私が武藤常介でございます。もとより私は浅学非才でありまして、ことに労働行政政務につきましては、全くのしろうとでございまして、果してこの任務、ことに最近の情勢下におきましてその任務を全うし得ますかどうか、きわめて心もとなく存じておるような次第なんでございますが、駑馬にむち打ちまして一生懸命勉強いたして参る考えでございます。どうか各位におかせられましても御指導、御鞭撻を賜わらんことを切にお願い申し上げまして、私のごあいさつにかえる次第でございます。   —————————————
  7. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それでは駐留軍労務者の労働問題に関する件を議題といたしますが、御質疑を願います。
  8. 山本經勝

    山本經勝君 ただいま田中長官の方からの御報告を承わったのですが、お話通り、広島の呉市を中心にして駐留しておりました連合国軍大体八千七百名と聞いておりますが、これが現在並びに六月ごろまでに大半六千名程度離職せられる。引き揚げに伴って、それからさらに年末までに、十二月までには大よそこの全員が離職せねばならぬ状態に追い詰められる。それだけではなくて実は山形、それから青森、宮城、神奈川、山梨、鳥取、福岡、大分、こうして全国各地にあります基地、あるいはキャンプ等日本人労務者がいろいろな形で人員整理、あるいは引き揚げに伴う、縮小に伴うこういったような形で職場を失うという結果が現われておるわけであります。この状態を大体総合いたしますと、私の知っている範囲では一万三千ぐらいに上るようであります。さらにそのほかに増大するであろうと推定できる数字に総合してみますと、大体それが千五百名ばかりになると考えられます。そうすると一万四千四、五百名、約一万五千名にも近い大量の駐留軍労務者職場を失う、こういう事態が実は起るわけであります。起りつつあり、かつ起っておるわけでありまして、こういう状態を大体内容的に一応検討してみますと、駐留軍撤退それから移動あるいは縮小、こういったような形での対象人員は大体一万名、それから軍の内部的な事情で、たとえば労働力調査等、いろいろの形でやるようでありますが、そのことによって、つまり何と言ったらいいでしょうか、労働能力中心にした効率を考慮して、つまりアメリカ式労働者整理する、あるいは作業量の減少に伴って、あるいはまた予算縮小でやむを得ぬ、こういうような形でほぼ二千五百名程度は整理されるようになった、それからそのほかに、特殊なケース保安解雇と称するもの、あるいはその他、非常に原因不明な形で解雇された、こういうように内容的には分類ができると思います。  そこでせんだっての本委員会におきましても御質問を申し上げ、明らかにした点でございますが、この種労務者に対する日本労働者保護の立法である労働関係三法はいずれも適用を受けるということになっておるわけでありまして、そういう面からまず第一点、総合的に労働大臣にお伺いしたいのは、こうした労務者が当然国法によって保護されねばならぬ立場にあるし、直接単に失業者として扱うのではなくて、国が行政協定に基く責任雇用をした労務者であるという点に特殊な事由があると思うのですが、そういう意味から総合的に見てどう対処されるかということがまず第一点と、それから駐留軍撤退はいずれ時期の問題であって、逐次減少していくというか、最終的には引き揚げるでありましょうし、またそれをわれわれ希望しておるわけなんでありますが、そういう状態考えますというと、これは当然起る駐留軍労務者というものの離職関係というのは必至の情勢にある。だからこれに対する根本的な労働条件としての施策をどうお考えになっておるか、まずそこらから御質問をいたしたいと、かように考えております。
  9. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お説のように、われわれは米軍が早く引き揚げることを希望いたしておるのでありますが、引き揚げるに従って生ずる失業の問題はなかなか深刻な問題であります。そこで先ほど田中長官から御報告いたしましたように、これは総合的な計画を立てませんと、なかなか出てくる失業者というものは、ことに地域的に大きな数が出て参ります。今度の点などはなかんずく一番大きなケースだと思いますが、そこで私どもといたしましては、御承知のように、駐留軍労務者取扱いは公務員に準じてやるというふうな取扱いを大体今までいたしておったわけでありますから、そういう点から考えましても政府が特にこの点に意を用いまして、内閣特需等対策連絡協議会を置きまして、いろいろ御報告いたしましたような対策を講じておるわけでありますが、なお今いろいろこの従業員の諸君からも数項にわたる要望が出ております。そういうことについて実は昨日もそれらの組合の方々にお目にかかりまして、割合長い時間腹を割って懇談をいたしました。政府の方でも何とかこの点は早く解決したいと思われるような個条もありますので、逐次そういう問題からまず解決をいたしていきたい、こういうことで、そのできる範囲のことから先にやっていこうと、こういうことで私も努力をいたしておりますが、何にいたしましてもとにかく一ぺんに出てくることで、呉のごときは何といったって、あれは戦時中海軍工廠があって、それがなくなって、今度は敗戦の結果外国軍隊が来たと、そういうことによって雇用関係がそういう立場から新しく生じた。今度はこの二つの条件がなくなってしまうのでありますから、全くゼロのところに放り出される形になるわけであります。こういうことはこれはもうとても私どもがいかに努力をいたしましても、実際これをすぐに完全にやれると考える者があれば、これはよほどその実情を知らないのじゃないかと思うので、私ども率直に申し上げてこれは非常に困難だ。そこで先ほど田中君からも申し上げておりましたが、とにかくでき得べくんば同じような仕事の方へ配置転換をするとか、あるいは自衛隊の方面で同様な作業をしておるところに行ってもらうとか、それからまたそういうことの困難な者は企業組合を作らせてそれによる自活態勢を作ってもらうとかといういろいろな計画を立てましたけれども、とにかく御承知のように、七月から始まって年末までの間に六千余りの人が出てくるというわけでありますから、容易なことじゃこれは根本的な解決は不可能だと思いますが、逐次政府の立てました方策によってとにかく就労してもらうように、あるいは企業組合など自活態勢を作ってもらうように全力をあげておるわけでありますが、この企業組合などに対してたとえば金融をしなきゃならない。しかしこれがもしこの金融が国民金融公庫とか、そういった一般金融機関に、もちろん政府大蔵省を通じて特別に面倒を見てやってくれという通牒は出してありますけれども、さて今度はその金融機関プロパーで信用を調査して貸付をするということになると、なかなかやはりそれをも強制するということは困難でありますから、どうしても別ワク金融をして企業組合を助けてくれという御希望が出てきております。これも今の実情で果してやれるかどうかということについて、われわれの方は大蔵省とも相談をいたしておるようなわけでありまして、まだそういう点についても具体的に決定いたしておるものはありません。しかしながら概括的に申し上げまして、私どもといたしましてはきわめて大きな問題でありますから、今度ことに呉あたりでたくさん出るものについては私どもの出先を通じて実態調査をいたしまして、そうしてそれぞれそれに合うような就労のできるようなあっせんを特にその地方において努めると、こういうことでございまして、昨日も知事会議のときに私どもから地元知事さんの方にもそういうことで一つ計画的に、今度出てこられる人たちの従来の経歴、それから特技を持っておられるか、あるいはまた身分的にはどういう立場にあるかというふうなことを綿密に調査をして、それぞれ配置転換のできるものはする。その他はその他で地元と中央と計画的に一つ就労してもらえるように努力しよう、こういうような話をいたしたばかりでございます。まあそういうことで遺憾なきを期していきたいと思っておるわけであります。
  10. 山本經勝

    山本經勝君 御努力をなさっているということはよくわかりますが、一応今まで、昭和二十三年当時には約三十万の駐留軍関係労務者がいた。現在は約十四万何がしですか、に減少している。半分以上実に減っているわけなんです。この取扱いがどうなってきたかということと、それからもう一つは、いずれは先ほども申し上げますように駐留軍撤退するときは当然来るのである、そうしますと、残る十四万何がしというものがあるのであって、今単に、呉の一例についていろいろ努力をされておることはわかりますが、根本的な考え方をやはり政府としては立てられる必要がある。そうしますと、そこで問題になって浮び上ってくるのは、やはり日米間、あるいは連合軍はいなくなったことになると思いますが、日米間のいわゆる行政協定に基く労務提供に関する協定内容につきまして根本的には改正を必要とするような点があるのではないかという感じがいたします。  それからもう一つは、今のいわゆる出てくるであろう縮小に伴う離職者対策、そういう点ではただいま大臣の言われたことが大ざっぱでありますが、一応考え方の筋としてはわかるわけです。そこで具体的になってくると、なかなかその点が御説明通り困難だという言葉でもって一括されてくる。困難である、困難であるというのでは一方生きていかなければならぬ労務者である関係から困るのでありますが……。  それから次の点では、当該公共団体あるいは市町村等において非常に困った事態が起るわけなんです。呉の例を挙げましても、呉の市長のお話を先日承わったのでありますが、大体現在一万七千名という膨大な失業人口をかかえております。それにかてて加えて六千人の失業者をかかえたのではどうにも呉市としてはやっていけぬのだ、呉市という公共団体の破滅にもなるということが訴えられている。ですからそういう角度から考えていきますと、第一には残る十四万何がしという現在の駐留軍労務者の問題について日米間の取りきめの中に不合理の点があるならば、それを是正するというようなことをなさる決意があるのかどうか、その点が一つと、今のさしあたり整理されていく離職者に対する問題と、それからその問題をかかえている当該公共団体実情と、こういう三つの点に分れてくるのじゃないかと思います。そこら辺で一応大臣のしっかりしたお考え方、はっきりしたお考え方を伺っておきたいわけです。
  11. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、軍関係仕事をいたしておりますものは直用間接雇用でありまして、これらについて今非常に大きな数があるのは間接雇用の方が大きいのでございますが、その点につきましては労務基本契約は現在ございますが、これについての改訂を当方から申し入れまして、大体のワクについての話し合いはついておるのでございまするが、さらに細目の協定は今折衝中でありましてまだまとまっておりません。そこで今のお話しのような問題について、この基本契約を改訂する必要があるのではないかというお話でございますが、駐留軍引き揚げるということについては、これはそのことによって生ずる労務関係について労務基本契約を改訂するということは、私は現在のところ別にそういう問題は生じないのではないかと思いますが、私の方から先方に申し入れをいたしておるのは、軍の機密だと言って突然やられては困る、事前に通報してもらいたい、そしてその間にわれわれの方ではそれぞれの就職あっせんなどをする時間的余裕をほしいのだ、こういうことを申し入れてあるものでありますから、今回の国連軍もやはり一応三月ごろから開始するのだということで事前に通報して参りましたが、実際には七月から開始をして本年一ぱいに撤退をする、こういうことでありまして、そういう点につきましては、日本政府側の申し入れば先方もよく了承いたしまして、事前通報をいたすようにしてございます。
  12. 山本經勝

    山本經勝君 もう一点申し上げたいのは、整理される人員に対する救済といいますか、救済措置、先ほどのお話は一応具体的に出た、たとえば呉市の問題を中心にしてなさったと思うのです。ところがあと十四万何がしというものがいずれは整理されるのであるから、そうすると、それに対する基本的な、たとえばこういうことも考えられると思うのです。十分な再度立ち上って更生をするに適当な一時金といいますか、あるいは退職金といいますか、そういったものがなされるなればみずからの力で開拓をするでしょうが、しかしながらそういうわけに参らぬとするなれば、その基本的な今後の取り扱い等についてやはり態度がなけりやならぬ、その点はどうなんでしょうか。
  13. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そういう問題について、従業員の方々からもいろいろ希望が出ております。しかしなかなか駐留軍労務者関係は、結局において米軍がこれを負担するということでございますから、私の方でいろいろ考えましてそういう措置をとるということになるためには、事前米軍側と話をつけておきませんというと、こちら側だけで従業員に対するいろいろな約束をいたしますと、結局それは日本政府負担になる、こういうことでございますから、それはなかなか日本の今日の状態で困難な場合が多いので、日本がやる場合には事前にこういうことをやるのだということについて先方と協議をして、そして協議がまとまったらばそれを実施に移す、こういうことでございますが、ただいまのお話は、現在約十五万の駐留軍労務者関係について、やがて引き揚げというような場合に職を失うであろうから、その一般対策はどうかというお話のようでありますが、これが現在はたしか一個師団半ぐらいかと存じますが、正確なところはよく存じませんが、米軍はそれくらいのものだと思います。これが私ども立場でいっどういうふうに引き揚げるのであるかということについては、これはきわめてむずかしい問題でありまして、私どもの方の側としてもそれを把握することは困難でございます。しかしながらただ特需関係のものは、大体御承知のように見当がついて参ります。それからまた今申し上げましたように、事前の通報をしてもらうようにしておりますから、その点についてはいろいろ対策を講ずることもできますが、あと全般のものについて、総括的に失職をした場合にどうするかということは考えられるかもしれませんが、具体的にどこの部隊がいつ引き揚げるのだということがわれわれにはわかっておりませんからして、それぞれの個所にある駐留軍労務者がいつ失職をするかというようなことについては、具体的には私どもはその実情を捕捉することはただいまのところは困難だ、こういうふうに思っております。
  14. 山本經勝

    山本經勝君 ちょっとさらにお伺いをしたいのですが、その前に田中長官にお伺いをしたいのですが、先ほどお話の中に……。
  15. 山下義信

    ○山下義信君 ちょっと田中長官山本委員質疑になります前に、関連して私は労働大臣に伺っておきたいのですが、ちょっと今の点について……、先ほど労働大臣は、近く係官を派遣して実情調査をしたいと思う、それから関係公共団体にも十分一つ実際に即したいろいろプランを持ってこい、持ってきているかどうか知りませんけれども、十分向うの計画性についてもよく話してみた、要望しておいたというお話がありました。ごもっともでありまして、ごもっともといいますか、当然でありまして、一々の実情がわかっていなければ対策が、まあ大ざっぱな、抽象的なことは別といたしまして、具体的な対策の方てようもおありではないと思うのであります。それですから、各所の対象さまざまありまして、解雇の時期、順序、それらの対象者の実情、いろいろな点をよく御調査になって初めてそこで対策が具体的に固まってくると思うのであります。従いまして、当局の調査といいますか、いろいろそういうふうな裏づけになりますような資料の収集等は、これは極力お急ぎになることだろうと思いますし、迅速になすっていただかなければなりませんが、しかし、おしなべて私思いますのに、何としましても、地元そのもので解決のつきますようなケースと、どうしたって小さな地域でそれを解決して、救済して、善処してその状況を解消していくということは、とても入れものが小さくて受け入れることのできないケースと、大別して二つあると思うのです。いずれの場合においても、ことに後者のように、たとえば呉地区のように、今度一万近いものが整理された。すでに山本委員御指摘のように、二万近い失業者をかかえている。そういう地域でそれをどういうふうに職業補導したからといって、どういうふうに何の世話をしたからといいまして、失業者の救済をその地域のみで解決するというようなことは、これはとても天から降ってくるような名案でもない限り、奇想天外なことを考え出さない限りは、現実にその地域においてそんな解決のつくものじゃとてもない。それは三年も五年もかかっていりゃできましょうけれども、当分解決をするということはとてもできっこないと思う。それはいろいに要望しておりますような、機械化事業とか、全額国庫の大きな仕事でもすぐやってもらうというようなことをなさっていただかない限りはできっこないと思うのであります。呉地区のような大量解雇の地域でなくても、まあ少数の地域でもでありますが、通じて私は解決のかぎは、何といいましても一番御研究を願わなければならぬことは、さいぜんから大臣お話がありましたが、何といいましても、失業者の手元に、失業者自身が自分を善処していくことのできるある程度の何といいますか、必要な金が入ることが、これは私はかぎだろうと思う。でありますから、その失業者が、どこから金が入るか知りませんが、失業保険金というものがどうなるのか、適用があるのかないのか、私は勉強が足りませんので存じませんけれども米軍からもらいますのか、国連軍からいただけることになっているか知りませんが、日本政府がどれだけの御尽力下さるか、負担があるのかないのか、今盛んにそのことの話がありましたが、それ以上は私は深く申しませんが、要するに失業者にできるだけこの際ある程度のまとまった金が入るということが問題解決の要諦である。そうすれば、その地区から自分自身が適当の職を求め、政府のいろいろな機関等の便宜も受け、そうしてその地区で解決ができなければ、いわゆる吸収してもらえなければ、他の地区に行く。適当に随時随所に、適所適材に自分みずからが適応していくことが、何というても大筋は、私は一番それぞれの本人自身の気にかなうよう自己解決といいますか、これが非常に肝心ではないかと思います。それを一ぺんに十万人出るから、さあいろいろな希望があるだろう。どこから金が出るか出ないかは別として、金の問題でありますから、すぐに何十億、何百億といって大へんなことにもなりましょうが、逐次、きょうは百人、あすは三百人、来月は千人ということになりますれば、きょうから解雇になるものから逐次必要な資金というものが、それを退職手当とか何資金と言えば角が立ちますから、どこから出るか、やぶへびなことになってもいけませんから申しませんが、そういろいろ逐次解雇されるに従ってその対象者に何らかの方法で必要ないわゆる整理資金というようなものが渡るような工夫ができましたらば、それが自然に問題を解決するもう最適の方法になって参ります。整理をためておいて、できなくて対策がずっと延びりゃ延びるほど整理者はたまってくる。対策がかちんとできるまでには二カ月かかる、それまでにはもう何千人か出てきた、それが緒につかないでまたその次のが出てきた、来月から追っかけられるというようなことになって、そうしてあの地域にもこの地域にもと総数が相当巨大な数になってからまとめて、それを何らかの方法にそれぞれ当てはめていこうというようなことは、対策は、まことに案としてはけっこうにできたけれども、現実にはそれまで待たなきゃならぬ、あるいは右往左往しなきゃならぬ、地元も騒がなくちゃならぬ、方針もきまらなくていろいろに心配しなくちゃならぬというようなことになりまして、無用なロスがたいへんにそこに生ずる。それよりか、もうこの月から、本日からそういう整理に会います対象者に何らかの方法でその土地を立ちのいて他に行きますとか、仕事を求めるとか、それはいろいろごあっせん政府の所定の機関で御尽力願わなければならぬ場合もありましょうけれども失業者みずからが善処し得るような支度金が何らかの方法で入りますことが、一番安くついて、一番早くて、一番実際に個々のケースの本人に適応する方法、私はそれに全力を傾けて心配願うということがまず第一要諦ではないかということを思うのでありますが、先ほどの質疑応答に大臣からお話もありましたのですが、そういう点につきまして御心配をいただきますというようなことについてはいかがでございましょうか。
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) まことにごもっともでございまして、そういうことが一番うまいやり方だと思います。そこで現在までの一番大きな多発地帯というのは呉と宮城の方でございますが、呉につきましては、市長さんなぞともよくお話ししまして、大体現在までのところでは、新たに今度国連軍から解雇される今年度の六千六百名は別といたしまして、今日までは失業対策事業だけでよろしいということで、これにはただ非常にたくさん出ますからして、地元負担がやり切れないというので、昭和三十一年度予算からは五分の四の負担率を国家がやる、こういうことで地元では非常に喜んでいただきました。そこで今問題にこれからなろうとするのは、七月以降解雇される六千六百人余りの者が一番大きい問題で、あとは地方の方は各地にいろいろございますけれども、これは数の上から申しますとそう大したものではありません。そこでその呉地区などは自衛隊でも何かそこで持ちたいという計画もあるそうでありますから、そういう方面との配置転換も今政府部内でもやっております。それから地元の方の実態を調べたいと申しましたのは、同じような仕事で他の軍施設に出ていって勤めてもいいんだという者も相当おりますからして、そういう者はほかで収容できる者はほかに収容して、語学などができる者もおるようですから、そういう者はそういう者でそういうふうに配置転換をする。そこで地元におって生活をしたい、自営業でも何でもやりたい、こういう人が相当多いのであります。あんな地点で失業対策と申しましてもそうたくさん、現にたくさんやっているわけですから、これ以上なかなかそうたくさんの期待もできませんので、できるならば山下さんのお話のような何か生業を持っていかれるような者を助けてやることがいいのではないかということで、昨日も実は組合の方々に会いましていろいろ協議してみましたが、やはり今のお説と同じような点でなかなか熱心に研究している。特別退職金をもらいたいという要望が今までもありましたが、その特別退職金をもらいましたならば、それを若干自分の預金などを合せて出資しまして、そうして企業組合を作り、その企業組合に対して政府が特段なる金融をしてさえもらえればわれわれはそこでやっていけるのだと、こういう具体的な計画までもお示しになりました。そこでそれは非常におもしろいことでありまして、そういう御希望があるならば、そういう者を助けるべきではないかということで、実は今までも大蔵省に交渉いたしまして、これは別ワクでそういう企業組合金融をしてやってくれないかということを調達側からも、打ち切ったわけではありませんで、いまだに交渉を続けておる、こういうわけでありますが、大蔵省の方の側では、特に政府保証でそういうところに別ワクを出すということはなかなか困難だということで、これも向うはけりっぱなしにけったのではありませんが、もっぱら今その折衝をしておるわけでありまして、そういうふうにできないならば、何か先ほど申しましたように、国民金融公庫などに政府が特段な措置をとってやって、そこでその企業組合金融的に援助する方法はないか、こういうようなことで今じみちにそういったような計画について話を進めておりますので、実際に解雇が始まる七月ごろまでには何らかの措置をとりまして、これは私自身も十分その実情をよく承知いたしておりまして、それから党でも社会党さんの方は山田節男氏がやっておられると思いますが、自由民主党では石田博英君を委員長として、これだけの問題について特に与党にもじみちな研究をしていただいておりますから、私どもがこれ以外に手はないと思うようなことが考えられるようになりましたならば、政府各省もその方針に協力していただいて、特殊な事情で出てくる集団的失業者でありますから、これは何とかそういう方向で、お示しのように生業を持っていかれるという方向に援助していくべきではないか、こう思って今部内でいろいろ相談いたしておる最中であります。
  17. 高野一夫

    ○高野一夫君 議事進行。やはり最初の質問者が本質的な問題にずっと触れていこうとしておるのですから、関連質問はなるたけ簡単にするように希望いたします。
  18. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 了承いたしました。
  19. 山下義信

    ○山下義信君 一つだけ。今お話が出ましたような特別退職金というような、そういうかどだったことを今ここで申し上げることは差しひかえておきますが、要するところ、失業者に金を渡してこれを何に使うか、今お話しなさったような生業的な方面に使うことが一番望ましいことでありますが、それによってまた故郷に帰るとか、ほかに適宜吸収されるような道を講ずるとか、それ自身が失業対策になり、その資金になるわけでありますが、その名は何としましても失業者に金が渡るというその金の心配、労働省には生業資金の貸与制度というようなものはないのでありましょうか。あるいはまたこれがもしなければ将来大きな失業対策一つの方法として、ただ労賃を支給するということじゃなくして、職業補導の機関を相当大規模に持っておられるのでありまして、これは多々ますます拡充強化の御方針のようでありますから、必然的にやはり失業者を生業につかせる、それ自身が失業対策であると同時に、厚生省の持っておりますような貧困救済のような生活保護的なものでなくいたしまして、やはり一つの職業補導という大きな立場から、非常に大きな失業対策一つとして、生業資金の貸与制度と申しますか、そういったものは労働省にありますか。ありますならば、そういうことの御運用がどうなっておりますか。また将来一つそういうことをお考えいただけるか。そういう制度がありますと、その方からそれぞれ金を融資してやりましたならば、それが一つの大きな失業者に対しますいろいろな手当を与える一つの形にもなるわけでありまして、そういう点労働省はどうなっておりますか、労働大臣のお考えを伺います。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまのところは、そういう制度はございません。
  21. 山下義信

    ○山下義信君 ありませんか、将来そういうことを御研究になるお考えございませんでしょうか。
  22. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そういうことは非常に大事なことであると思いますので、研究をしてみたいと思っております。
  23. 山本經勝

    山本經勝君 先ほどの、ちょっと話があと戻りをしますが、田中長官にお伺いをしたいのですが、先ほどのお話の中で、軍の直用の場合には軍の方でいろいろな計画を、まあたとえば人員に余剰があるから整理をするという場合にもあるいは軍の中でいろいろ異動等の関係がある場合もあると考えますが、そういう場合にやはり労務関係の問題の処理が非常に容易であるから、間接雇用で現在国が雇い入れて労務提供をするやり方を、むしろ直用一本にした方がいいのじゃないかというようなお話を承わったように思うのですが、そうでございましょうか。
  24. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) これは前回の国会におきましても、衆参両院の関係者の皆様方からも、むしろ直接調達よりは間接調達の方に調達形式を直した方がいいではないか、その理由は政府がある程度調達に関与いたしておりますと、いろいろ情報の入手であるとか、そのほかもっと早く雇用等がわかるというような便宜もございまするし、また実際駐留軍労務者労務の実態を政府事態としても十分に把握できますので、そしてもし失業の場合におきましてはこれを容易に他に就職、あっせんその他転換ができるのじゃないか、こういう点から、政府側としましては間接調達よりも直接調達にした方がよりこういう場合における対策が立てやすい、こういう観点から実は国会からの御要望もございまするし、政府自体といたしましてもその方がやりやすい、こういう考えから実は昨年来労働委員会の方へその点を申し入れいたしまして、できれば一つできる部分から間接調達に引き直してもらいたいということを実は申し入れいたしております。
  25. 山本經勝

    山本經勝君 ただいまの点ですが、私の御質問申し上げたのは、先ほどのお話、私の聞き違いかもわかりませんが、直接雇用に切りかえる、一本にまとめた方がいいのだというふうに承わったのですが、そうじゃなくて、逆に今のお話を承わると直接雇用ではあるいは労務管理や事情等についていろいろ問題があるので、むしろ間接雇用一本にまとめた方がいい、こういう考え方なんですか。
  26. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 最初は駐留軍日本に参りました当時は、やはり政府が入りまして政府が採用、調達しまして、それを駐留軍に提供するという形式を最初とっておったのでありますが、途中からその形式が変りまして、駐留軍自体が直接労務者雇用する、こういう形式に変っておるわけでございます。従いましてそういう点においていろいろ政府側としても不便があるので、できれば国会の御要望もございまするし、まあ政府自体としてもその方が妥当だろうという考えから、目下労働委員会にもその旨を要望いたしておる次第でございます。
  27. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、労務調達についてはもう一度確認をしておきたいのですが、政府考え方といたしましては間接の、つまり政府が雇い入れて労務を提供するというのではなくて、軍が直接雇用をして管理をしていく、こういうふうに一本にまとめたいということなんですか。
  28. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 今私が申し上げましたのは、労務以外の調達間接調達にしたらどうか、それから直接雇用にするというのは現在としては政府としても、私のちょっと考えが違っておりまして、訂正いたしまするが、今申し上げましたのは、その労務以外の調達については間接調達がよろしい、労務雇用については、現在としまして直接雇用形式をとったらどうか、こういうことなんです。私の考えが多少間違っておりますので訂正さしていただきます。
  29. 山本經勝

    山本經勝君 わかりました。労務関係については軍の直接雇用の方がよろしい、こういう考え方でございますね。  そうすると、この点大臣にお伺いしておきたいのですが、今のお話を承わりますと、労務以外、つまり物資その他いろいろな問題だろうと思うのですが、それらの調達については政府が中間で取り持つといいますか、あるいは提供するという立場をとっている、労務関係についてはむしろ直用にした方がいいのだ、こういうお考え方のようですが、この前御質問申し上げた際にはこういうことが言われたと思う。直用労務者に対する日本労働関係諸法は、軍にどういう関係があるかは別として、一応労働者そのものに対して保護立法としての効果、効力はあるものである、こういうふうに承わったと思っておりますが、今のお話を承わりますと、結局労務関係の非常に厄介な問題は直用にして軍にまかしてしまって、そうして今度はその場合に起る事象は、常に全国各地のキャンプや基地に起っているように、たとえば採用なり、解雇なり、労働条件のどのような取扱いも軍が一方的に自由にできるという立場になりはしないかと思うんですが、そうなった場合に、これらに対する、やはり勤労者である国民でございますから、大臣としてはどう考えておりますか、この点一つ基本的な問題としてお伺いたしておきたいと思います。
  30. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いろいろ田中長官お話のように、しばしば内部でいろいろな話もあることはあるようであります。現在のところでは、御承知のように、間接雇用の方が多いのでありまして、間接雇用直用人たちも、つまり日本人の従業員ですな、その直用人たち間接雇用にしてもらいたいという要望を出しております。そこで直用というのは、御承知のように、まあPXとか、クラブとかいうところに働いておられるのは軍の直接雇用基地などに働いておる者は私のところの調達庁の雇用米軍にこれを提供している、こういうことでありますが、そこで直用も、間接雇用日本人でございますからして、当然労働法の適用を受けるのであります。従って私どもとしては労務基本契約などの改訂などに際しましても、そういうことを強く主張いたしていることは変っておりません。ただ御承知のように、家庭に働かせられている直用労務者などで、これはときどき労働法もヘチマもなかったような解雇問題などがありますのでトラブルが生じているのは御承知通りでありますが、これについても当方からは労働関係法は順法するようにということを常に先方には申し入れているわけでありますが、そこで今の全体としては、直用人たち間接雇用にしてもらいたいという要望を出されていることは事実であります。
  31. 山本經勝

    山本經勝君 そこで田中長官に再度お伺い申し上げますが、直用になりますと、軍が労務管理を雇用とともにやっていきますから、雇用と管理とが一本になったという点では非常にいいのだ、やりやすいのだ、しかしながら、そうなりますと結果を、私は先ほどから申しますように、最近起っている事象は保安解雇とか、いろいろな名称による解雇が一方的にどんどん行われて、そうしてさらに、つまり企業整備という言葉は当てはまらないでしょうが、規模の縮小とか、移動あるいは予算の点等で変化が起りますと、勢い労務関係にしわ寄せが参ります。その場合に国が介在するのじゃなくて、直接労務者である人々やあるいはその組合が軍と折衝することになるのでありますが、そういうことになった場合には、今までの例から申しますと、はなはだしく不利な立場に追いやられる、こういう状態だと思うんですが、その点についてまことに長官お話は納得がいかない。しかも問題は行政協定という協定を結んで、これに役務を提供するという契約があるわけなんですね。そうしますと、私はそのこと自体がすでに国家の責任であると思う。にもかかわらず、それが煩瑣だし、あるいは失業等の問題も起り、離職の問題も起り、トラブルも起るから、それらは直接雇用にして、軍にまかしてしまう、こういうことになりはしないかと思うんです。先ほどのお話を伺うと、委員会でもそういう空気だし、政府でもそういう考え方なんだ、こういうことをおっしゃったと思うんですが、この点は労働大臣考え方とずいぶん違っていると思う。その点御解明願いたい。
  32. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 私が先ほど申し上げましたのは、少し私自身考えが間違っておりまして、これは物資調達、特需関係を私は間違って申し上げたと思いますので、雇用につきましては今大臣がおっしゃいましたように、直接駐留軍雇用いたしますと、いろいろ日本の労使関係と非常に異なっておりまして、突然解雇される、また解雇された場合における交渉の手続とかそういう点が非常に労務者側に不利になっておる、こういう点から労務者側としては直接雇用よりは間接雇用の方を希望する、こういうことでございます。しかしながら駐留軍自体としましてもいろいろ労務が必要でございまするので、現在といたしましては、やはり直接雇用というものは行われておりまして、この点は今後駐留軍側とよく話し合いをいたしませんと、それが直ちに直接雇用間接雇用になるということは非常に困難ではないかと思いまするが、まあ労務者側としましては、今労働大臣もおっしゃったようにぜひ日本側が中に入って一つ雇用してもらいたい。そうしていろいろの話し合いがあった場合には日本政府が中に入りまして、日本政府との話し合いということになりますから……。
  33. 榊原亨

    ○榊原亨君 ただいまお話になっておられます間接雇用、直接雇用の問題につきましては、政府とされましてはやはり間接雇用が望ましいというお考えでございますかどうかということを、その一点をはっきりさせていただきたい。
  34. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、家庭サービスだとかクラブの勤めというふうなものを、政府がこれを職業あっせんみたいにしてやるということはなかなかこれは困難です。基地などのああいうふうなところで働かれる労務者については、これは間接雇用で今やっていきますけれども、そういうことは私どもとしては軽々に判断ができないし、ことに直接雇用の家庭に働いている婦人などは、一般労務者よりうんと待遇がよくてチョコレートを毎日もらってくるとか何とかいうことで、とても待遇がいいので、このままにしておいてくれという希望者もたくさんあるのでございまして、そこまで政府がやたらに容喙することはどうかと思います。  それからついでに申し上げておきますが、御承知の特需関係は、品物を軍関係日本の商社に発注します場合に、たとえば一つの品物を作る場合に、このうちの何パーセントは労務費だと、こういうことで直接その業者と軍が契約するのでありますから、その契約の中に労務賃というものを含んでコストに計算しておるわけでありますから、これもやはりこの労務者をこちらが供給するというふうになっても向うはそろばんで合いせんから、なかなかこれは困難であります。
  35. 榊原亨

    ○榊原亨君 先ほど田中長官お話になりましたことは、今大臣お話になりましたことと少しく直接と間接の言葉が違っておる点があると思うのであります、私もここで聞いていて……。そこでもし違っておるようなことでもございましたら一つ御訂正願いたいと思います。
  36. 山本經勝

    山本經勝君 私が質問申し上げたときにお答えになったのはこういうふうなことだったと思うのですが、労務以外に間接に取り扱う、労務以外と申しますると、つまり物資その他の問題になると思います。労務は直接だというふうにお答えになっている。ですからそこに理解のいかない点が一点ひっかかったわけです。
  37. 田中榮一

    政府委員田中榮一君) 先ほど私の方の特需対策協議会、これはまあ、いろいろ基地におきまする失業問題というものを取り扱ってやっておったものでありますから、調達形式のこともあわせて御報告したのが、それが間違って私申し上げたと思いますけれども、労働問題とは関係ないことをちょっと申し上げておりますから、間違いのないように……。
  38. 山本經勝

    山本經勝君 そこで大臣にお伺いしておきたいと思うのですが、この間接雇用が大部分である、これは私もよく存じております。ところが直用も相当おられるわけですね、今度のたとえば広島その他先ほど申し上げた一万三千名ばかりに上る中で、やはり三、四千になりゃしないかと思う直用の方もおられるわけです。それまでにならないかもしれませんが、正確には私はわかりませんが、相当数がおられるわけです。ところが先ほどから言われるこれらの離職者に対する取り扱いについて御努力を願うお心持ちは十分わかりますが、その場合に直用間接雇用——つまり国が雇うて労務提供しているものの間は、むろん一本で対象になっていくと思うのですが、その点は大臣どうお考えになりますか。
  39. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これは当然一本でお世話いたさなければなりません。
  40. 山本經勝

    山本經勝君 そこで先ほどの話にちょっと触れて返っていくわけですが、労務基本契約というものは昭和二十八年度かに一応協定して仮調印をなさったように承わっております。その協定が現在発効をしない。つまり実施要綱の中で二、三の点で付属覚書があって、その点で未解決の問題があると承わっておりますが、それについてはこれはどなたでもけっこうですが、担当しておられるところから御説明を願っておきたいと思います。
  41. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 労務基本契約につきましては、お説のように、改訂を申し入れまして相互の間でいろいろ意見の交換をやっているのでありますが、その細目についてまだ彼我の意見が一致しない、こういうので目下交渉を継続いたしていると、こういうわけでありまして、ちょっと速記を……。
  42. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  43. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。
  44. 山本經勝

    山本經勝君 大体の模様は私もわかるのですが、ただ私の知りたいのは、二十八年の十月に一応ここにございますが、調印をなさっているわけですね。この調印後、付属書というものは一から三号まであるようですが、その問題点はどういうことなんでしょうか。
  45. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員から……。
  46. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 基本協定につきましてはお話のございました通り昭和二十八年八月十日仮調印済みということになっております。しかし基本協定が発効いたしますためには、付属いたしまする細目の事項についての合意が必要であるということになっているわけでございますが、その細目の事項を分けますと、付属書と労働政策指令、これに大きく分けることができるわけでございます。  そのうち付属書の第一、これは賃金表。付属書の第二、職務分類。これにつきましてはいまだ合意ができていない。次に付属書の第三、これは勤務時間、休暇手当その他労働条件労務管理の手続を規定している付属書でございますが、これにつきましては給与関係事項以外につきまして、昭和二十九年四月一日日米間のみ一応合意をいたしております。付属書の第四、これは船員の労働条件に関する規定でございますが、これは合意に達しておりません。さらに労働政策指令。これもいろいろこまかい点があるのでございますが、につきましては、そのうちの労働組合その他組織団体取扱規定、これは労組の取扱い及び市内の組合活動等に関する規定でございますが、これは合意に達しておりません。次に訴願及び苦情処理規定。これも合意に達しておりません。次に人員整理規定。これは昭和二十九年四月一日一応の合意に達しております。次に制裁規定。これにつきましても一応の基本的事項につきまして合意に達しております。それから雇用解除規定。これにつきましても二十九年四月一日一応の合意に達しております。こういうわけでございます。
  47. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど大臣からお伺い申し上げたように、つまり直用であれ、それから間接雇用であれ、同じ日本の国民として、日本の勤労者として労働保護法なり、あるいは法律の適用があって保護されるものであるということを伺ったのですが、私は一般的に申し上げているのでいろいろな全国各地に現在起っている、先ほども申し上げたように大体九県にわたっている。しかも非常に一つの県の中で基地が三カ所あり、五カ所あり、あるいは分れているところのそれぞれにごく少数ではありますが直用夫の一方的な解雇が行われておる、こういうことを全体的に含めて申し上げているので、その点誤解のないように。そこでそうしたものに対する保護の基本的な態度については、先日の当委員会での質問の際にも御答弁をいただいておりますからわかるのですが、ただここで問題になってくるのは、軍が雇用主であって労務管理をやっておる場合には、つまり日本人労務者に対する日本の国内法が保護の範囲において適用されるのか、あるいはさらにもしそれを、不利益な取扱いを受けたという不当労働行為等があった場合に相手方に対してはどういうふうな関係になるのか、そこら辺一点伺っておきたいと思います。
  48. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) ただいま御質問のございました労働紛議等の場合、間接雇用につきましては、法律上は日本政府雇用主となっておりますので、労働紛議その他の相手方としては、調達庁がその衝に当るというふうになっております。
  49. 山本經勝

    山本經勝君 それではやや具体的な御質問を申し上げておきたいのですが、先ほど一応一般的にはお話を承わっておりますし、それからまた山下先生の御質問に対してもお答えになっておるのですが、たとえばこれらの労務者で辞職をいたしますと、一応失業手当は、失業給付は受けられると思うのです。それからさらに退職規程の退職金もございますからこれも支給されるだろう。しかし直用夫の場合に退職金の規程があるのかどうか、その点は事務当局でもけっこうですが、どのようになっておりますか、その点を明らかにしていただきたい。
  50. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 私ども直用の方に直接タッチいたしておりませんので、また先ほど申しましたように、具体的には家事使用人その他個々の軍人、あるいは軍属が雇っておりますので、どういう程度の退職金その他が支給せられるかつまびらかにいたしておりません。
  51. 山本經勝

    山本經勝君 そこで続けてお伺いしたいのですが、これは具体的にお調べになることができないのですか。
  52. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 直用労務者の退職金につきましては、全面的な調査はいたしたことはございませんが、今日まで調べたところによりますと、この内容はかなり区々のようでございます。直用労務者約四万数千名のうちかなり大きな部分を占めますPX、一万二千以上でございますが、PXの従業員につきましては、大体間接雇用労務者と同様の退職金が支給される規定になっております。それから場所によりましては勤続一年につき給与一カ月というのもございますし、また勤続一年について給与月額の二分の一という規定を持っておるところもございます。また全然ないところもございまして、現在のところ一言にして言えば、きわめて区々であると申し上げるよりほかございません。
  53. 山本經勝

    山本經勝君 この何といいますか、PXというのはやはり一番多いようですが、PXなんかに採用される場合に、何といいますか、雇用契約といったようなものはできているのでしょうか。
  54. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) PXにおける関係はかなりはっきりしております。PXにおきましては従業員就業規則という非常に完備した規定をもって行われております。
  55. 山本經勝

    山本經勝君 今の退職金規定が取りきめられておる場合には退職金は当然支払われると思います。それはいいんですが、先ほど大臣お話のように、直用であれ、間接雇用の場合であれ、やはり同じように保護されるのだというのですから、これを対象にした人員整理については、やはりいろいろな方法が講じられてゆくと思うのですが、この場合にやはり基本的には大臣にもう一度明らかにしておいていただきたいのですが、これは単に一般失業者とは意味が違うという点なんです。このことは日本政府責任を持たなければならぬ雇用主であるという点であって、まず第一番に考えられるのは、辞職しなければならぬ、やむを得ぬ事情というものが一応明らかになった場合には、当然雇用関係において第一番に配置転換考えられると思うのですが、その場合にたとえば呉市における六千数百名に上る四月までの退職者、これらの配置転換に対する見込みは、実態がどうなっているのか、そこら辺からまず具体的にお伺いしたい。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員から答弁させます。
  57. 江下孝

    政府委員(江下孝君) ただいまの問題、大臣から申し上げましたように、呉の場合は、大量解雇になりまする見込みは七月以降のように聞いております。そこでまあ現在解雇になります人の希望ですね。たとえば自営をしたいとか、どこかよそへ行って働きたいとか、そういうこともつまびらかでありませんと、配置転換計画ができない。そういう点も先ほど大臣が申し上げましたように、調査をして現実に即したことで配置転換希望いたします人に対してはできるだけの措置を講じたい、こういうことでございます。
  58. 山本經勝

    山本經勝君 そうすると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。本人の希望によって配置転換を、希望通りにはいかぬでしょうが、少くとも本人の希望によって配置転換するということ、この点はそれでよろしいのですが、そうすると、もし配置転換が地域的な点で、たとえば呉市におる離職者が東京に行って働けといわれても、これはなかなかむずかしいので、先ほどお話がありましたように、家族を連れて移動するということ自体が容易なことではないわけですから、勢い困難だと思うのですが、配置転換がそういう希望によってなされる、それに対して努力をなされるということについては非常にうれしいわけです。ところがこの希望というのは、非常に広範だと思うのです。ですからなかなか配置転換も困難でありましょうが、およそ見込みとしては受け入れ態勢が、私が言いたいのは、どの程度に政府では考えておられるか、受け入れ態勢が……。
  59. 江下孝

    政府委員(江下孝君) 先ほど申し上げましたように、解雇予告もまだ行われておりませんし、配置転換希望いたしましても、また希望先に就職先が直ちにあるかという点も現在のところははっきりつかめないわけでございます。そこでいま少し時日をかしていただきますと、そういうことについてもある程度の見通しがつくのではないかと思います。
  60. 山本經勝

    山本經勝君 通告があっておらないというのですが、しかし二月十六日に英連邦司令官のベアワーズ中将が呉市長にあてて、本年三月より人員整理を始め、本年中に七千人余りの解雇を実施したいということが通告になっておるのですが……。
  61. 江下孝

    政府委員(江下孝君) その点について私どもの聞いておりますのは、まだ具体的に、それではいつから整理を始めるということについて、月々の計画あるいはいつからやるということについてまだ明確な通告に接していないわけでございます。
  62. 山本經勝

    山本經勝君 そこで今の、まず第一点の配置転換につきましては、私の聞きたいのは、本人が希望する、そうすると、七千人なら七千人の人がそれぞれ希望のところがないだろうと思うのです。大体大ざっぱにいうというと、希望を聞いた。しかしながら、あなたの希望には遺憾ながら適当なところがなかったということで、今度は県の方にしましても、あるいは政府においても責任を回避する余地があるわけなんです。ですから、私にはむしろこういう事業がある、必要あれば技能を養成してもそこへもっていくというしっかりした腹が政府にきまっておらなければ、単なる配置転換もお題目に終ると思うのです。今までの例がことごとくそれですから、そこら辺をもっとはっきりとした、どういうところを作って、あるいはどういうところに受け入れられるのだということがはっきりせぬと、これは通告は、私は単なるあれではないと思うのです。本年三月から開始すると書いてある。正式の文書なんですから、これはいい加減なものでないと思う。だから希望による配置転換をまず第一にやるといわれるのは、雇用者の責任において考えられる限り、少くともその受け入れ態勢が必要だと思う。それに対する一応の見通しがあるのかどうか、なければないでいいから、一応いつごろ計画が立てられるのか、そこら辺がはっきりしないというと、非常な大きな労働不安を醸成すると思う。そこら辺はどうなんです。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そこでさっき申し上げましたように、ただいまのような通告があったんでございますから、そこで実際には七月から撤退を開始すると、こういうわけでございますから、私は申し上げましたのは、そういうことについて個々の実情をこちらでできるだけ調査をして、そうして配置転換希望者は今のような個々の例もあるでございましょうから、そういうようなことについてできるだけ実態を把握して対策を立てていく、こういうわけでございます。
  64. 山本經勝

    山本經勝君 一応その配置転換の問題については、大臣努力に期待をしますし、また受け入れ態勢を作ることについては先ほど大臣お話になったように、たとえば軍使用に所属した施設について、国有財産の処分等もあわせて大蔵省と折衝していくが非常に困難であるということである。しかし私はこのことはあくまでも政府雇用に属する労務者の問題であるという観点に立って、大蔵省とも折衝をされ、さらに説得もなさって、受け入れ態勢がまず必要だと思うのですよ。これは何といってもそれで受入れ態勢を作ってもらわなければならぬ。そのことをまあこれは一つここで最終的に今論議しでも仕方がないから、努力をなさるということですから、それに期待をいたしておりますが、そこで次の問題は現在これらの労務者の皆さんが、私福岡の関係でかってあの企業組合の問題は二十九年の年末に起った臨時繰り上げの鉱害の復旧の失対事業をやる際に、県の委員になりました関係もあって、少くともこの公共事業、失対事業がとかくお題目に終っておる。ということは、とかく請負師が自分の子飼いの労務者に優先的に引き上げていくために、実際的に仕事をさせなかったといううらみがあって、これではいけないから少くとも企業組合を作って事業主体を作ろうじゃないかということを申し合せて、県も協力して二、三福岡で作ったわけです。ところがその実態を見ますとうまくいっていない、最近の話を聞きますと。そこで今回の特別失対なら特別失対の事業について、事業を受け持たせるということが実はうまくいっておりません。ですから、そういう形でこの企業組合も初めの計画のように実際の失業者が本当に潤うような態勢になっておりませんが、この点については大臣一つ責任を持って、いわゆる直営工事の請負をやらせていただくような方法がとられるのかどうか、そしてまたこれには資金が要りますし、そしてこれは労金融資等の話もありまして、一、二のそういう事例もございますが、しかしこういうのではやはり短期に返済しなければいかぬということでは、実際上運営ができていかぬ。で運営がついていない企業組合事業主体になるのでありますので、なかなか簡単にうまくいかない。そういう状況について大臣一つ責任をもって資金の面あるいはこの事業を自分でやっていけるような、つまり直営事業であって、それをこれらの企業組合事業主体にまかせてもらう。こういうようなことができるかどうか、そこら辺一つ伺っておきたいと思う。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 企業組合をそれらの方々がお作りになるということについて、政府側ができるだけお手伝いをするということは、先ほど山下さんにもお答え申し上げましたし、そういう方向でわれわれも努力をいたしますが、それから先のことにつきましては、これはなかなか事業をそれに直営させるというところまで、私がここで申し上げることはどうかと思いますので、まあそういう組合ができたら、そういうものがなり立っていくように、側面から援助するという程度のことしか私としては申し上げられないと思います。
  66. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 それに関連するのですが、これは今特別な駐留軍労務者失業ケースとしてあるのですが、大臣すでに聞いておられるかと思いますけれども大津に非常に大きな東洋一といわれる水耕農場があるのです。これは人員は二百人ほどの失業ですけれども、二億四千万円ほどかけて作りました珍しい施設があるのですが、これが一月に閉鎖になりまして、二百人ほどの水耕農場に働いている技術的な労務者失業しているわけです。これは今問題になっております企業組合を作る準備が、退職金を出資しまして、そこでできる水耕の蔬菜です。これはやはり駐留軍関係のホテルだとか、あるいは学校だとか、病院だとかいうところにすでに販売先も見通しがついておりまして、非常に有利な企業の見通しがつくわけです。これは特殊な高度の技術を持っておるところの労働者が二百人ほどおって、すでにそういう計画は進めておるのですけれども、やはり融資の面で行き詰っている状態なんです。できるだけ先ほどのように大臣は融資をあっせんするという建前でおられるのですが、これはやはりどうしても大蔵省に対して政府が保証するという建前を強力に持っていかれると同時に、特別なワクを何かこういう場合には大蔵省としては考えてもらうよりほかにないと思うのです。これはいろいろ国民金融公庫にしてもなかなかこういう事業の見通しというか、信用というか、駐留軍失業者が新しく企業組合を作って水耕農場をやるとか、自動車の会社を作るとかいうようなことが至るところにこれから起るわけですが、これについてはやはり特別に労働省、調達関係で資金のあっせんの何か具体的な見通しを作っていただかない限りは、この失業問題の解決はこういう形において解決しようとすることは困難であると思いますが、もう一度大臣一つこの点について何か具体的のもう少しお考えがないかをお尋ねしたいと思います。
  67. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) その基本的な問題につきましては先ほど山下さんにもお答え申し上げた通りに、私どもの方としてはさらに何かいい方法について努力を続けてみたいと思っております。水耕農園のことにつきましては政府委員から経過を御説明申し上げます。
  68. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 駐留軍の再編成が最近陸軍関係で行われたわけでございますが、それに伴いまして大津にございます水耕農場の接収の解除の問題が起ってきたわけでございますが、ところが東北地帯におります軍が新たに大津方面に移動するということになりまして、そのために再び大津にありまする水耕農場が使用されるというふうになっております。お話通りに、この水耕農場を利用いたしまして、企業組合等によりまして駐留軍関係労務者離職者の再起更生にはかりたいという地元要望がございました。その点につきましては軍側にも十分その意向を伝えてございますが、現在のところでは新しい部隊がどの程度水耕農場を使用するかどうかということがまだ未決定であるため、その状況によりまして水耕農場の解除その他のことも考慮しようというような段取りになっておりますが、調達庁といたしましてもできるだけ軍の利用を妨げない限り、企業組合等が利用する希望がございますれば、接収解除その他につきまして努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  69. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つ伺いますが、水耕農場のことは今の御説明でできるだけ再開されるということですが、これは非常に大きなもので、緑地や貯水池や製氷場もあります。しかし従業員は割合に少く二百人ぐらいでやれるのです。土地も非常に広く四十五町歩もあるのです。タバコの栽培と水耕で十分コストが合うという企業組合の詳細な案も出ておるわけです。これはなるべくそういうふうに再開できれば幸いですが、やがて軍は閉鎖するときがくると思う。そこでこういう特殊なものは、やはり組合を作るということも非常にやりたがっておるのですから、政府としてはこれを生かしていくと同時に失業対策としても、こういう新しい、珍しい施設は残していくというふうな計画を立っていかれるように希望いたします。  もう一つは、自動車の運転関係失業者が非常に多いのです。私もはっきりした数は知っておりませんが、自動車運転の関係で将来一万六千人ほど失業者が出ます。京都地区でも二百人ほどすでに失業しておる。この人たち企業組合を作って自動車会社を作ろうとしておるわけですが、この免許申請が非常にむずかしくなかなか許可にならない。一つは年をとった運転手が割合に駐留軍関係に多いので、そういう関係もあって、今京都地区でも三百五十人ほどの運転手関係失業者を出そうとしておりますが、何か免許申請などについて労働省あるいは調達庁としてあっせんされるお考えはおありでしょうか。
  70. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 自動車運転手が集まりまして企業組合をやりたいという点につきましては、地元の京都を中心といたしまして私の方にもそういう話が参っております。調達庁といたしましてもただいまのような情勢におきましては、できる限りそういう組合ができまして、一人でも多く生業の道を得ることを望んでおるのでございまして、私ども調達庁は免許その他に関する直接の担当ではございませんですが、今後とも担当の運輸省その他に十分伝えまして、できる限り便宜をはかっていくように努力いたしたいと考えております。
  71. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 僕からも関連して聞いておきますが、三月から七月にわたって駐留軍引き揚げていく、そこでいろいろ配置転換などについて今話があったのだが、やはり基本的には責任を持って配置転換をするということになれば、これにこしたことはないが、それは言うべくしてできないということが往々あろうと思います。その場合に退職金等についてはどういうような処置がなされる予定であるか、一応聞いておきたい。
  72. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 退職金につきましてはこれは米軍関係でございませんで、今度は英連邦軍の関係になるわけでございますが、退職規定の内容米軍と同様の内容でございまして、その規定に従いまして英連邦軍の退職金の支給をする。もちろん軍の撤退に伴いまする離職でございまするので、軍要員の整理に伴いまする退職金を支給するというふうになっておる次第でございます。
  73. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 重ねて聞きますが、整理ということだけでは何というか、扱い方としては労働三法は大体適用していく、それから身分は準公務員として今まで扱ってきておる、こういう形できて、今度はやめて、しかもこれは日本の国の要請として行政協定、安保条約等からきた責任問題として雇用して、それに必要なだけ、極端なことを言えば使ったということです。それで今度引き揚げていくから失職するという場合の退職金については、もちろん予算は向うからもらうということであるかもしらぬが、そのらち内でできるだけの交渉をするということはけっこうですが、それが可能でなかった場合が生まれてくるわけです。たとえば規定の退職金だけしかもらえなかったという場合が生まれてくるわけです。そういう場合には、やはり公務員の整理と同じような考え方を持つべきであると思うのだが、その点どういうように考えるか。
  74. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) 米軍の場合と違いまして英軍の場合におきましては、資金を立てかえて日本政府が払うというのではございませんで、英軍の方で規定に基く計算をしまして、それによって直接金を出して、それを日本政府が払うというふうになっているわけでございます。それでこの駐留軍の退職手当でございますが、これはただいまの整理による場合の退職手当の場合と、事故退職による退職手当の場合と、私傷病あるいは公傷病によって退職した場合というふうにそれぞれ異なっておりまして、もちろん事故退職等の場合に比較して、整理によりまする退職手当の額は倍近くの金額になっておるというわけでございます。
  75. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) そうすると重ねて聞きますが、もちろん事故退職とか病気による退職の場合なんかは私今問題にしておらぬのであって、軍の都合で、極端に言うと、国の都合で退職してもらわなければならぬという者に対しては、今倍というふうに聞えたのだが、たとえば八〇%なり一〇〇%の増額をしてもらってやめてもらうような考え方だ、こういうことですね。
  76. 海老塚政治

    政府委員海老塚政治君) ちょっと規定を申し上げた方が結論的にはっきりしていいと思いますが、人員整理の場合は勤続年数二年未満の者については、俸給月額一カ月分にその者の勤続年数一年につき俸給月額の一カ月分の割合で計算した額を加えた金額、勤続年数二年以上五年未満の者につきましては、俸給一カ月分にその者の勤続年数一年につき俸給月額の一・二倍の割合で計算した額を加えた金額、勤続年数五年以上の者の場合につきましては、俸給月額一カ月分にその者の勤続年数一年につき俸給月額の一・五倍の割合で計算した額を加えた金額、これが整理によりまする退職の場合の退職金の金額でございます。
  77. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと労働大臣に聞きますが、その規定がどういう規定であろうと、私は規定で英軍なりあるいは米軍からもらうという金額ということのほかに、最終的にあなた方の言われるように何か金を出してやろうとか、それから総体的な機構を作ってあげようとかということは、これはここで答弁では言われるが、実際にはなかなか言われがたいというのが日本実情である。大臣考え方がどこにあろうともやはりそういうふうになりがちです。そこで結局どこへ重点を置くとかいうことになると、やっぱりやむなくおやめになる人の退職金に対する規定は規定として作られておるのであろうが、そのほかに政府が常によく言う整理のときには八〇%増し一〇〇%増しということをよく言われるのですが、そういうふうなことを考えているかどうかというのが一点と、もし考えていないとするならば、それを今後考えていただけるかどうか。
  78. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 今の場合はやはり解雇ということも予想してきめられた規定でございますから、その範囲内でやる以外のことは、特別な支出ということを政府考えておりませんが、今のような御事情がありますれば、なお研究いたしてみたいと思います。
  79. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 研究していただくということよりも、実際にはそういう実情に即した処置が政治であろうと思いますので、そういう点労働大臣に特にお願いしておきます。  ちょっと山下さんかわって下さいませんか。   〔委員長退席、理事山下義信君着席〕
  80. 山本經勝

    山本經勝君 今のと関連をいたしますが、考えてみますと、先ほどからお話を伺っておりますように、本人の希望する配置転換、これは一番望ましい状態だと思う。そうしてこれについては、やはり御努力されることを期待します。そのときの問題として考えるのは、やはり転職とか転業、こういった問題がこの駐留軍労務者一つの特質とも言えるでしょう。これは一般工場、鉱山等に働く労働者とはかなり質が違うわけです。職場等の相違があるということについては、あらゆる職種の作業が同様でありますけれども、ここの場合には、この駐留軍労務者そのものの質的な本来の相違がある。で、敗戦と同時に占領軍が駐留するようになりまして、その当初集まってきたこれらの労務者の大部分が戦災者や引揚者あるいはまた軍人、軍属のこういったような層だと思う。ですから工場、鉱山で働いている一般労働者とはかなり趣きを異にする。ですから今日それが全部とは申しませんが、なお相当数がこれらの労務者の中にはおられる。その実情については大臣あるいはその他の関係者は御承知のことだと思う。ですから勢いそれらの人が今までやってこられた長年手慣れたあるいは技術あるいは環境、こういったものとずいぶん違った形になってきておる。それを国家の責任雇用してきたということでありますから、勢い先ほど大臣が言われたように、これは好むと好まざるとにかかわらず、国家の義務づけによってその人を雇い入れ、そうしてこれを提供したということで、公務員に準じてという表現がなされておりますが、当然責任を持っていただけると思う。そうしますと、本来民間でも公共企業体でも、あるいは官公庁でも同様に、事業所の都合により解雇がこの場合にやはり該当するのだと思う。そうすると、労働立法によって保護するのだ、あるいは労働慣行によって保護するのだというのなれば、当然この場合には本人の意思の自由ではなくてて、政府責任を持って労務提供をせねばならぬ行政協定の拘束を受けて提供をしてきて、そういったことになってきますと、本人の自由意思でない、選択の自由があってやめるのではなくて、やめなければならぬ局面におる。そうしてそのことは、あらかじめわかっておるのだから、労働省だけの責任とは申しませんが、少くとも政府はこのことについて基準法の精神なりあるいは従来あります慣行に基いて特別の措置を、つまり退職の場合の取扱いとして公務員に少くとも準じてなされることが当然だと思う。たとえば官公庁におきましても公務員、これは地方でも同様ですが、いわゆる定員制によって何人かの人がやめてもらわなければならぬということになりますと、勢いそこでは特別な取り計らい、あるいは給与の面の配慮がなされておることは御承知通りであります。であるとするなれば、少くとも今度の整理についてはいずれも冒頭申し上げたように、駐留軍引き揚げるであろう。引き揚げたとなれば当然労務者職場がなくなる、しかも国の責任において労務者を提供しておるのであるから、そうすれば勢い本人の意思によらざるそういう局面に追い詰められた場合の措置は当然私は考えられるべきものだと考えております。また考えねばならぬ責任があると思います。ですから先ほどの退職金の規定は私ども存じております。およそ推定額も想像がつきますが、それではしょせん更生も、それから職業の転換もあるいは生業資金に振り当てる金もないと思う。ですからここでこのことを考える以外に最終的にはないだろうと思う。先ほど委員長からの御質問もありましたし、その他の御質問もありましたので、重ねて重復するようですけれども、このことを一つ明らかにしてもらわないと、公務員に準ずるという口裏だけで私どもそれではよろしいというわけに参らぬから、そこを一つ大臣の方から明白に御解明を願っておきたい。
  81. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 解雇の場合の規定のことはさっきお話があった通りでありますが、その規定によって処置をする。それ以外にはさっき申しましたように、配置転換を本人の御希望によって努力するなり、それからまた企業組合を援助するなりして、生業を持っていただくように政府が極力あっせん努力をする、こういうことだと思います。
  82. 山本經勝

    山本經勝君 それは先ほどから伺ってわかっているのです。ところが今度の場合、たとえば呉の例をとれば、駐留軍労務者の七千何がしの労働者は自分がやめたくてやめるわけじゃなくて、国の責任において雇用されあるいは直接雇用でもって職についている。ところが引き揚げるというか、何というか、不可抗力というと言葉は適当じゃないが、形の上ではそういう形においてやられて引き揚げていく、そうすると職場がなくなるという現象が起る。ところが政府の場合からこの問題を見ればいずれはそういう事態が起るのです。ところが本人の意思でもなく、向う側の計画なりあるいはやり方によってそういうような結果が生まれて、その責任雇用主としての政府にあることは私の言うまでもないと思います。やめさして職場をなくしたということは政府の直接責任ではなくしても、少くとも雇用主であるという責任はあると思います。そうなりますと、労働者自身の意思によらずして、職場をやめさせられたということになってくるなれば、雇用主である政府日米行政協定に基く責任を持っておるのであるから、従って退職に対する一時金の支給とか何とか、規定の退職金以外にあってしかるべきだ。そうなければ安心してこの職場におれないということが現実の問題となって浮び上ってくる。しかもなお今日残った労働者といえども十四万何がし、十五万近い人々がまだ残っておられるのですから、初め私が言ったことは、一点はその点にあります。それで大臣いつか言っておられるように、公務員に準じて取り扱うとなれば、公務員を整理されるときはどうなされるか。少くとも国家公務員であれ地方公務員であれ、いわゆる定員制等の問題があったり、予算の面で問題が起りますと人員整理をなされる。その際にはいわゆる規定の退職金以外のプラス・アルファを出しておられる。そうすると、この駐留軍労務者の場合にそれが出せないという理由は私は成り立たぬと思います。資金の面で問題があることは私は十分存じておる。どの程度出せるかは別問題で、あとで十分協議をなさるといたしましても、少くともそれだけの手当をしてやることが私は政府責任ある態度だと思いますが、その点はっきりした大臣のお答えを願っておきたい。
  83. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 身分的には公務員に準じて取り扱うということになっておりますが、御承知のように、一般公務員より駐留軍関係の方が普通の給与は高いのであります。それで公務員には失業保険がありませんが、駐留軍労務者には失業保険もございますし、そういうようなことで、政府としてはできるだけのことをいたしたいのでありますけれども、特にただいまの段階で私の口から規定以外のものを日本政府から支出し得るかどうかということについてはお答えをいたす段階でございませんので、研究はいたしてみますけれども、無責任なことを申し上げてもいけませんから、今日のところはそういうことで、なお後のことについては先ほど申し上げましたようなことを努力をして、失職させないように努力をする、こういうことであります。
  84. 山本經勝

    山本經勝君 そこで今のお話を伺いますというと、一般公務員よりも給与水準が高いのだと言われますが、駐留軍関係組合の話を伺いますと、これは高くないといっております。それからこの点に争いは一応あったといたしましても、この給与が高い、安いかということの問題ではないと私は思う。このことはちょっと先ほど基準法の精神から私は申し上げたわけですが、しかも現在日本の国内にある労働慣行からいって、民間企業ならば、企業整備をやらなければ経営が成り立たぬということになりますと、協議の上で解雇の条件をきめる、そのときにはやはり規定の退職金プラス・アルファを出していることは御承知通りであります。先ほどから申し上げるように、公共企業体でも官公庁でもみなそのことをやっているという事実なのです。  ところがこの場合、駐留軍労務者が、自分からいやになったからやめるということではない、なお働きたいが撤退する、あるいは軍の都合で整理ざれるということになりますと、自分の意思によらぬ問題であるから、基本的には基準法の精神にのっとってこの措置がとられてしかるべきではないかということを申し上げておるのですが、一般公務員よりも給与が高いということで、高いということは争いのある点として一応残します。  そこで、失業保険が駐留軍労務者にはあるではないか、公務員にはないというようなお話ですが、私はやはり退職金の規定にしても、それから失業保険の給付にいたしましても、これは御承知のように、非常に長期にわたって就業している状態とは考えられない。また今後、将来十年も二十年もあるいは生きている間ということにはならないと思う。すでに先が見えている。そこで、しかも公務員の場合には恩給制度があって、これもみずからの掛金の一部負担等がありましても、公務員として一応辞職した場合には、その恩給年限に達すれば恩給がもらえるという条件もあるかと思います。私はおしなべてみて給与が高いということ、それからなおその他の勤務条件がいいということにはならぬと思う。これは一応問題は争いのある点として残しましょうが、しかし私は先ほど申し上げるように、本人の意思によらぬやむを得ぬ退職、しかもこれは雇用主の政府責任であるということなれば、ここで何らかの、退職金のワク外で別途やはり配慮をなさることが必要だと思う。そこで研究はしてみましょうと言われますが、ただ研究してみようという程度ではなくて、どのように政府責任をもって、内容については、先ほど申し上げたようにたとえば、額を何ぼにするかという点については、これは御協議をなさる余地があるのです。しかしいやしくもそういう追い詰められてやむを得ず職場を去らなければならぬという状態について、政府責任のある、雇用という立場からも特別の措置がなければ、これはどうしても私は合理的でない。しかも言葉の先で、公務員に準ずるなんといっても何にもならないから手形でしかないと思う。ですからここはどう考えましても、一つ労働大臣の再考を願い、労働大臣がその気になっていただいて、閣議でもって相談をなさるなりあるいはしかるべき予算の措置も配慮願わなければならぬ、こういうことになってくる。ただ研究するじゃなくて、一つこの点では努力をするというお約束を願いたい。しかしそうでなかったならば、これはやはり問題が、むしろ配置転換の困難さの方が私は大きいと思う。言葉で言いやすいが、配置転換努力するといって、土木事業に持っていって果して七千人の何人が実際使えるのか、働けるのか、あるいはまた職業の転換をするとかりに仮定いたしましても、企業組合の組織によるとかいろいろな方法はありましょうが、それについても難関はある。ところがむしろこの点では自由に選択させる方法を選んだ方がむしろ効果的であり、かつ容易で、しかもはっきりしていると思うのです。ですから規定退職金以外のプラス・アルファを何とかして労働大臣努力で、期待しているのですから、捻出の方法をお考えになるということが一番適切な有効な方法だと思う。その点についてもう一度責任ある一つ御答弁をお願いしたい。
  85. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) かりに一時金を出すにいたしましても、今お話のように、配置転換政府努力するよりは、一時金を出す方が本人たちの利益じゃないかというような意味の御発言かと思いますが、私はやはり政府としてはかりに一時金を出すにしても、もちろんその配置転換その他のことについてあるいは企業組合のお手伝いをするといったようなことの努力はやらなければいかぬと思うのです。そこで私だけでここで今一時金を考慮するというふうなことを申します立場でもございませんので、努力をするということを申せというお話でありますが、努力はいつだっていたします。あなたのそういうお話のありましたことももちろん議題に供しますが、田中長官先ほどから御説明申し上げましたように、一労働省だけでなく、政府全体としての責任で連絡協議会を持っておるのでありますから、そういうところでなおとくと一つ相談をいたしまして、私どもも特殊な事情で出てくる失業者のことでありますから、全力をあげてこれの対策協議いたしたいと思っております。
  86. 山本經勝

    山本經勝君 大臣にあまり御無理を申し上げるようですけれども、そうしたことが不都合ではない、むしろこれは正当な要求だというお考えにはなっていただけますか。
  87. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) それはもう事情が許せば、できるだけ皆さんに得心のいくようにして上げたいことはやまやまでございますけれども、御承知のようないろいろな事情がありますからして、なお一つ政府部内で十分さらに検討をいたしてみたいと思っております。
  88. 山本經勝

    山本經勝君 一応私の質問はこの程度ですが、そこでついでと言ったら大へん悪いのですが、実は大臣にお願いを、これは事務当局の方の問題でもあるわけですが、常に労働大臣が言われているのは、最近雇用量の増大ということを非常に強調されている。この計画については私ども非常にうれしいのです。そういう計画がなされているということこそが基本的には希望であるし、熱望するところですが、ところが私たち経済自立五カ年計画という政府方針の中で、この一体雇用量の増大、これは今の、一方ではどんどんこうした駐留軍失業者が出たり、その他の官公庁関係、公共企業関係においても人員整理計画されておるという向きも伺うが、これは全逓あたりでもそういうことが言われているし、電信電話あるいは国鉄等においてもしばしば聞くところである。一方ではどんどん人員整理をやりつつ、一方では雇用量の増大をはかると言ってもどうもぴんとこないわけなんです。それでこのような一方で失業者がふえつつあるという、一方では雇用量の増大といってもこれはぴんとこないんですが、この経済五カ年計画の自立計画の中で雇用量の増大をはかるといわれる実は資料をいただきたい、年次計画といいますか、五カ年計画の一括したものではなくて、もっと根本的な年次計画を、具体的にこれは来るべき機会にまた御質問申し上げ、御検討をお願いすると思うのですが、その資料の提供を、そのほか五項目お願いしておきたい。  で、今言っている雇用量増大に関する年次計画、この資料と、それからこの前大臣が労働行政一般に関する趣旨説明をなさった際にお話が出ております不完全就業者、それが取り上げれておりますが、この不完全就業者というのは、いろいろな見方や考え方もありましょうが、とにかく政府が一応見ておられる不完全就業者というのは一体全国にどれくらいあって、どういう状態で分布しておるか、あるいはこの分け方もまたむずかしいと思いますが、できれば都道府県別に分類したものもあろうかと思いますから、そういうようないわゆる不完全就労者のいわゆる行政区画別の分布状態、こういうもの、それからその次が、失業対策事業は特別失対と一般失対とに今まで分れておりますが、なお失業者を吸収するためにとられておる公共事業ですね、こういうような、申し上げるならば一般失業対策事業、特別失業対策事業、それにさらに公共事業によって吸収されつつある失業者の実態、それからもう一つは産業災害のことについて非常に熱心に大臣はお考えいただいているんですが、このごあいさつの中にもありましたように、これについては予防措置等を非常にお考え願わなければならぬのですが、この実態が非常に不明だと思うのです。現在の状態について一応資料をお出し願いたい。それからその次がこの特別国会で成立しましたけい肺法の問題ですが、これの健康診断その他がやられてきたと思う。その結果これはけい肺患者がどういうふうな状況であるか、この健康診断の結果どういうふうな状況である、どういう状態である、その後の治療、配置転換等を含む取扱い等がどうなっておるか、この問題。それから最後に労災保険の大体の実態、以上六つばかりなるべく早い機会に一つ資料の提出方をお願いしたい。そうしてどうせはまた会議を持たれましょうし、そこでいろいろ御質疑なり申し上げたい、かように考えます。
  89. 山下義信

    ○理事(山下義信君) それでは本日はこれをもどって散会いたします。    午後零時五十八分散会    ————・————