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1956-02-17 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十七日(金曜日)    午前十時五十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理 事            高野 一夫君            谷口弥三郎君            山下 義信君    委 員            榊原  亨君            相馬 助治君            竹中 勝男君            山本 經勝君            田村 文吉君            森田 義衞君            長谷部ひろ君   政府委員    厚生省医務局長 曾田 長宗君    厚生省薬務局長 森本  潔君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    厚生大臣官房計    析課長     菱沼 従尹君   参考人    健康保険組合連    合会常務理事  湯川 憲三君    全国国民健康保    険団体中央会常    任参与     柳川  力君    日本労働組合総    評議会幹事    全日本国立医療    労働組合委員長 井上 五郎君    全国繊維産業労    働組合同盟本部    員       上田 豊造君    岐阜薬科大学学    長       宮道 悦男君    朝日新聞社論説    委員      江幡  清君    読売新聞社論説    委員      梅田  博君    大阪経済大学助    教授      鈴木 正里君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (新医療費体系に関する件)   —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではただいまから社会労働委員会を開会いたします。  社会保障制度に関する調査の一環として、新医療費体系に関する件を議題といたします。  昨日に引き続きまして、参考人方々から意見を聴取するために御出席を願っております。この機会委員会を代表いたしまして参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。たまたま本会議が始まっておりまするために、大へんおくれまして申しわけございませんが、直ちに全員そろうことと思いますから、御了解願いたいと思います。  参考人方々には非常に御多忙のところ特に御出席下さいましてありがとうございました。新医療費体系の制定は、厚生行政特に医療行政に関する重要な問題でありまして、国民健康の向上に直接関係を有しまする各種の要素を含んでおるのでありまして、当委員会におきましては厚生当局から説明を聴取いたしまして、さらに本問題に関係を有せられます各位の御意見を拝聴いたしまして、調査上の参考に資したいと存じておるのであります。どうか忌憚のない御意見を御発表下さいますようお願いを申し上げます。  さらに御意見を発表いただく事項につきましては、さきに文書で若干項目的に並べてみてありまするが、そのことにとらわれることなく、率直にお話願えればなおけっこうだと存じております。ただ、まことに勝手でありまするが、時間の関係上お一人当り十五分以内くらいで御意見を発表願って、さらに委員質問にお答えを願うというようなことでお運びを願いたいと存じております。どうかよろしくお願いいたします。  委員皆さんにお諮りいたしまするが、午前中に予定いたしました参考人の皆様の意見をみんな聞いてから質問に入っていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではそのようにお取扱いいたします。  それでは健康保険組合連合会理事湯川憲三さんに御意見を発表していただきたいと思います。
  4. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) ちょっとお尋ねいたしたいのですが、私実はこういう席は全然初めてでございまして、また急に会長のかわりとして私来ましたので、あらかじめプリントをちょうだいした内容に、どういうふうにわれわれの意見を申し上げていけばよいのか実はわからないわけでございます。総論として申し上げるのか、それとも一、二、三、から七、八とありますが、これを順次申し上げていいのか、ちょっとその点……。
  5. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいま申しましたように、一応御参考までにこういうようなものを一つ刷り物にいたしましたけれども一、それにこだわりなく、今度の新医療費体系に対して健康保険組合連合会から見た場合にこれはどうであるかというような意味合いのことをお話願えればけっこうでございます。そのことにこだわらないようにお願いいたします。
  6. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) それではいろいろ総論から申し上げるのも時間的な関係もあるかと存じますので、まず大体の、基本的にはお示し下さいました一、二、三、四、五、というこの順序に従いまして意見を申し上げたいと思うのであります。  まず第一の「今回の新医療費体系実施されることによって、専門的技術に対する適正な報酬が得られるため、おのおのその専門的職業に専従し、医療適正化合理化が実現するものと考えるか。」と、こういうことなんでございます。その次の物と技術に対する報酬分離が完全に表現されているかどうか、こういうような問題でございますが、これはまあ双方関連性があろうと思いまして申し上げるのでございますが、この新医療費体系に関してはどういうふうに思うかということに尽きるのじゃないかと思うのでございます。そういうふうに考えまして意見を述べさしていただくのでございますが、われわれとしてはこの新医療費体系が物と技術分離をしておるということで、従来は先生方が薬の中にいろいろの潜在技術とかその他の点を含めての診療費ということについては理論的にはわれわれとしては賛成でなかったわけでございます。以前からわれわれはこういった点はもっと何らかの合理化した形を生み出すべきであろう、こういうふうに考えておったのでございまして、従いまして今回できました新医療費体系というものは物と技術分離をしておるという点において、これは基本的にはわれわれは賛成をしておるような工合でございます。そういう観点に立ちまして、一応物と技術分離賛成であるという観点に立ってこの新医療費体系というものをわれわば眺めておるわけでございまして、この技術料、あるいは物への報酬というものはどういうふうに表現されていくかということは、これは一つの新医療費体系内容の、具体的に申し上げますと、点数をいかにして取り上げていくかという問題になるのでございます。そういった問題につきましては、これは厚生省の方から出されておる点数表を見まして、これは果してほんとうにその内容がよりよい点数が組み得ておるかどうかということにつきましては、われわれはこれでよいのだという自信を持っておりません。これからなお研究をせなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。で、いろいろと厚生省の方の説明を聞き、あるいは具体的な数字のお示しを願いましても、われわれとしてはまだ十分納得のいかない点も多々あるわけでございますが、まあそういった点につきましては逐次われわれとしても研究を進めて参りまして、基本的にはこういうふうにわれわれは考えておるのでございまして、この新医療費体系実施されることによって先生方も大きなと言いましょうか、収入面におきまして非常に損をする、あるいは収入がどか落ちに減るということはこれはとんでもないことだ。だからそういう点はわれわれとしては先生方と同じくその収入が非常に減る、あるいはまた現在の収入よりか少しでも減るというような点については、これはどうかそういう点のないようにというような気持でこの新医療費体系というものを見ておるわけでございます。  また一方われわれとしましては御承知通り健康保険経済というのは非常に苦しい状態にあるのでございますから、これ以上診療費が上るということはこれはわれわれとしても大いに考えなきゃならない問題であるということで、要するにまあ厚生省の総体的の意見の御発表としましては、まず先生方収入もあまり変らないと、それから保険者支払いもほとんど変らないのだ。だからプラス、マイナスほとんどゼロだというようなこの考え方につきましては、われわれは一応それを信用し、それを信頼するという基本的な態度の上に立ちましてこの新医療費体系というものを眺めておる、こういうわけでございます。この点はまあとかくわれわれ保険者は金を少く払えばいいんだというようにややもすれば誤解を受けるかもしれません。そういう意味では決してないのでございまして、ただ先生方もうまくいくように、またわれわれもうまくいくように、率直に申し上げればそういったような気持の上に立ってわれわれば常に考えておるということだけを明確に申し上げておきたい、こういうふうに思うのでございます。  それからこの三の方に入りまして、「各診療行為種類別頻度回数)に変化がなければ国民医療費は変らないとしているが、果してしかるか。」という問題でございますが、これはどうも今からそういうことは明確に申し上げることができないのでございまして、また医療協議会の方もそういったような具体的な問題にも入っておりませんし、なお具体的な研究をいたしませんと、こういう点につきましては明確にわれわれの意見を申し上げることがまだできないと、こういうことを申し上げるよりほかないのでございます。  それから四の「新体系実施によって、将来、医師所得を確保し、国民医療費負担軽減を期待することが可能であると考えられるか。」ということでございますが、これもわれわれは先刻来申し上げましたように、われわれが医師所得を確保し得るのじゃないかということを考え、また医師所得が確保できないようじゃこれは困るという気持でございます。それから、国民の総医療費負担軽減を期待するか。これによって負担軽減を期待できるか云々という問題でございますが、これは実際問題としましては一応実施をしてからでないとこれははっきり言えない問題であろうと考えます。ただわれわれとしては、先刻来申し上げましたように、これ以上国民の総医療費というものはふえるのも困る、その反対にまた先生方生活がこれ以上切り詰められるということは困るというような点で、そういったものが考えの基礎の上に立ちましてわれわれ終始しておる関係上、こうしたことは、この四のお尋ね内容につきましては、われわれはできる限り新医療費体系というものはよりよいものをこしらえなければならない、そういうことをわれわれは心から念願しておるという言葉を申し上げるほか、今日のところ非常に申しにくいのでございますが、そういうわけで、ある一部の方では物と技術を分けることによって先生方注射回数も減って来るだろうとか、あるいは従来の健康保険点数のあの取り方というものは、現在の点数の取り方というものは、高い薬を投薬、注射すればするほど利益が多いというような点が、これは少くとも今度の新医療体系においては一応解決がつくというようなことになっておりますので、前段申し上げた高い注射あるいは薬を患者に施すことによって、よりよい先生方収入がふえてくるというようなああいった状態が一応結論をつけるから、新医療費体系実施によって若干診療費が減るのじゃないかというような意見を出す人もございますが、われわれとしてはさようにはこれは考えておらないのであって、そういったような点をいろいろ申す方がございましても、われわれとしては過去の問題は過去の問題としましてこの総ワクというものをこしらえる場合に、厚生省としては昭和三十年三月の総ワクというものを全部総計しまして、それを総ワクとしてきめて、結果それをそういったようないろいろな問題も、技術料とかあるいはその他の点数表に入ってございまして、若干その点はどうかというような点もあるのでございますが、しかしわれわれとしてはそういったような問題を深く掘り下げないで、ただ新医療費体系というのは三月現在の総ワクの範囲内でよりよい内容ができればそれ以上に欲したことはない、非常にありがたいことであるというような気持でおるわけでございます。  それから五の方でございますが、「今回の新体系社会保険等実施した場合、保険経済及び事務手続等にいかなる影響を及ぼすか。」ということでございますが、これはもちろん今回の新医療費体系のかりに実施ということになれば、これは社会医療保険の面には大きな変化、つまり大きな変革を生ずるものでありますから、従いましてこのお尋ねの点は究極的には、これはまあ実施してみなければ結局わからないのじゃないかというような気持をしております。ただ基本的には先刻来繰り返し、繰り返し申し上げたのでございますが、医師生活先生方生活安定それから社会医療保険経済的な安定というものを二つの基本的な要素としまして、われわれその実施後の状況を見守っていくよりかほかないのじゃないかと、現段階においてはそういうような気持をしているわけでございます。それから事務手続ということにつきましては、これは私どもどういうふうになりますか、ちょっと今のところ、たとえば基金の支払いの様式あるいは手続というものはどういうふうになるかちょっとわれわれの方ではまだ検討してございませんので、ここではわれわれの意見としては申し上げることができないのでございますが、これも厚生省としては医師会等と相談の上適切な事務手続、できるだけ先生方事務手続を少くし得るように厚生省として大いに考えてもらいたい、こういうような気持を持っておるわけでございます。  それから六の方に入りまして「今回の新医療費体系に関し、左の点についてどう考えるか。」ということで、診察料検査料調剤料注射料処置料手術料補綴料入院料というようなことでいろいろお尋ねになっておりますが、こうした具体的な問題につきましては厚生省の方から非常に、たとえば手術の問題につきましても厚生省の方では少くともわれわれに対しまして詳しい原価計算を示されておるわけでございますので、われわれとしては一応この原価計算というものを信じて、その上に立っていろいろ考えるよりほか法がないのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。しかしそのうちでもわれわれとしてはこの際特に申し上げておきたいのですが、われわれ連合会としましては、入院料格差という問題はこれはずいぶん長い以前から主張しておるわけでございます。非常に優秀な病院と、それから有床診療所と申しましても割合設備が劣っておるというより、劣っておるというような表明でなくて、むしろ非常に粗悪な病室を持っておるところあるのでございますが、そういうところも、またりっぱな設備をしたところも同じような点数で請求するということはこれは不合理であるというので、われわれ連合会としましては、この点について格差を設けてもらいたいということをこの際大いに主張しなければならない、この機会を失ってはそういうふうな格差を設けるということはあるいは不可能じゃないか、この機会は一番チャンスでおるというような、実は率直に申し上げてそういった気持を今持っておるわけでございます。  それから「新医療費体系について、総医療費ワクの問題、社会保険赤字対策の問題、一点単価との関連問題、患者負担問題等をいかに考えるか。」というのでございますが、われわれとしては、この新医療費体系関連をしまして、こうしたような一点単価の問題、あるいは患者負担の問題、大きくいえば法律改正の問題ということは現段階においては一応関連性がないという、こういう上に立ってこの新医療費体系というものを眺めておるわけでございます。で、こうした問題をいろいろ関連性があるのだという前提に立ちましていろいろこの新医療費体系というものの問題を考えていきますると、なかなか、何といいましょうか、結論というのは得られない、時間的には、ずいぶん長くかかるのじゃないかという点も考えられまするし、実は私も医療協議会委員でございますが、法律改正の問題とそれからわれわれの医療協議会の問題とは、これは別個で進められておるという現在でございますが、われわれはそうしたような審議の進め方に対しても別に異論を持っておりませんし、まあ厚生省当局もそれに対しては繰り返し、繰り返しいろいろ法律改正の問題、あるいは一部負担問題等々、この新医療費体系とは一応関連性ないものとして一つ協議を進めていただきたいというような説明でございましたが、われわれとしても一応そういう説明に対しては了承しておるわけでございます。  それからもう一つわれわれの率直な意見を、まああるいは総論ということになるかもしれませんが、特に申し上げておきたいのでございますが、今度のこの新医療費体系をこしらえる場合には、三十年の三月現在の各診療行為頻度計算いたしまして、それから三月現在における総ワクはこれこれというようにきめて、それからいろいろ各診療行為内容を分類し、薬と技術を分類するという形になっておるわけでございますが、さてわれわれとしては総ワクという問題については、一応これを皆さん方に聞いていただきたいと思うのでございます。もっともこれはわれわれとしては決して固執する意味ではございませんが、一応聞いていただきたいと思うのでございますが、その三月現在の総ワクというものは果して正しい総ワクであるかどうかというこの問題でございます。御承知通り、健保は政府管掌においては莫大な赤字を出しておる。これは現実の一つの事実でございます。あるいはまた健康保険組合におきましても、決して経済状態がよいのではございません。過去において積み立てた法定準備金というものはほとんど食って、一応の帳面ずらはございますが、内容はほとんど食ってしまっておるというような状態なんであります。非常に苦しいということは、これは言い得られるのでございますが、これはどうしてそういったことになったかということは、まあいろいろ原因がございます。ございますが、しかし一面われわれとしてはっきり言えますのは、この十年間というのは健康保険ほんとう混乱期でございます。われわれは厚生省に対しては、この赤字というのは厚生当局無為無策原因だというようなことを非常にやかましく言ったのでありますが、そういったような厚生省無為無策であったということもこれは大いに原因でありますが、要するに結論として出てきたものは、非常な混乱であったということは言えるのでございます。だから、従いまして、そのうちには被保険者の今のそのいろいろの関係からする健康保険というものの不正利用、あるいは事業主方々においても若干あった、もとより先生方におきましてもこの機会とばかりに非常な不正もあったということはこれは言えるわけで、実はその問題につきましては医療協議会でも私は発言したのでございますが、私としては一応確信をもってそういったことは言えると思うのであります。そういう若干ふくれ上った総ワクをもってこのワク内で操作するということにつきましては、これはわれわれとしては一応異論を言わざるを得ないというような状態でございまするが、しかし私は実は医療協議会でも一応そのことを申し上げて、しかしこの新医療費体系というものを円満に実施しまた審議を円満に進めて行く上についてはわれわれとしてはもう一応そういうものは申し上げないで、もう過去のことは一応御破算にして、新しい考えの上に立って新医療費体系というものをわれわれお互いにクリエートしていこうじゃないかというような意見を申し上げたのでございますが、この機会でございますので、医療協議会の私の発言をまた繰り返したようでございましてはなはだ恐縮でございましたが、私その点だけは新医療費体系の基本となった三月現在の総ワクというものそのままの総ワクというものをもっていくということについては、これは保険者全体から言えば、相当の犠牲の上に立っておるんだ、相当われわれとしては考えた上での発言を控えておるのだということだけを特に申し上げておきたい、かように思うのでございます。  若干時間も経過しておるようでございますので、この程度で終ります。
  7. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ありがとうございました。  次に全国国民健康保険団体中央会常任参与柳川力さんにお願いいたします。
  8. 柳川力

    参考人柳川力君) この条項に沿いまして私の私見を述べてみたいと思います。  国民健康保険健康保険と違いますところはどこにあるかと申しますと、健康保険には雇用者と被雇用者とございますが、国民健康保険は、大体が自分で仕事をしております者の健康保険でございます。結局百姓とか中小の小さな商人もしくは工業に従っておる、こういう人たち健康保険でございますので、ただいま健康保険で騒がれておりますような一部負担金関係するような問題の要素からは割合に遠のいておることが一つの特徴でございます。そういうような立場からこの問題を考えてみますに、一の問題について申し上げますと、今までの点数表というものがある部分においては全く赤字である、ある部分においてははっきりとプラス数字が出ておる、そこの間に実際的な関連がないと言われております。そういうことから考えました場合に、今回の新医療費体系、これは完全なものとは考えませんけれども、その矛盾を取り去ろうという努力をされたということだけはわかるのでございます。要するに、今までは、ただいま湯川さんが申し上げました通り、高い薬を処方し注射すればもうかる、こういうような形でありましたものを、やはり医師技術であるところの診察行為というものに重点をおこうという考え方、これは大きな前進の現われだと考えておるのでございます。そういうような点から申しまして今までより、より合理的であったということが言えると思います。  それから二の物と技術とに対してでございますが、ただいま申し上げた通りに物と技術を分けようとした、これが十分であるかどうかという問題でございますが、この十分というのはおのおのの見方がございますので、私は十分という言葉についてはっきり申し上げることができませんが、できるだけ分けようという考え方は持っておられるようである。それではなぜとことんの分け方をされなかったか、これを委員会などで聞いておりまして、一点として上げることのできないようなものは計算のできないようなもの、これの分け方をそのときどきの重点に基いて動いておられるような感じがいたしたのであります。その点におきまして一部には不満の言葉が漏らされているようにも考えております。ここに書いてあります個人差という問題でございますけれども、これは非常にむずかしい問題であると考えるのでございます。同時に五十人なり八十人なりの新しい先生方がここに国家試験を通られて生まれたといたしましても、一番の成績を取られた方と、一番しまいに出られた方とこういうようなことを考えましたときに、これは人の行為ではなかなか分離ができないと考えております。外科のごときは相当技術難易度考えておられるようでありまして、ものによっては私たちがびっくりするような点も出ておりますので、その点から申しますとでき得る限りのものをしたという程度であろうかと考えます。  三でございますが、「新医療費体系は各診療行為種類別頻度変化がなければ国民医療費は変らないとしているが、果してしかるか。」とおっしゃっておりますが、国民健康保険では政府当局も若干の値上りがあるものというような数字が出ております。これに対して私たち上げるということは困ると考えておりますが、誤差の程度であると当局説明しておられます。診療行為回数変化は予想されないかということでございますが、私たちがこの点でおそれておりますのは、再診行為がふえはしなかろうかということを予想しております。これに対して当局は適当な技術的な方法を考えてもらわなければ困ると考えております。  四でございますが、この問題は実施してみませんとわからない問題だと考えます。三十年三月の数字が基礎でございますから、同じような行為が行われましたならば負担変化がない。また医師所得についても各科別もしくは診療所別の所得は確保されるはずだと考えますけれども、必ずしも三月という月が年間を通じての平均の月とは考えられませんので、その点将来実施してみませんとはっきり御返事をいたしかねます。  それから五の保険経済と事務の手続でございますが、国民健康保険には被保険者の窓口の一部負担の問題がございません。元来が一部負担金は五割から三割の間でございます。これは原則でございますので、新しく特に変るものとも考えられておりません。保険経済につきましてでございますが、これを実施いたしました場合に、どの行為をやったらもうかるかという形で医療が加えられたならば変化があるものと思います。もしそのような形でなしに、当局考えたようなそのままの形であるならば、そんなに大きな変化はせずに月々の今までのようなカーブを続けていくものだろうかと考えられます。  次の六の(イ)から(チ)までの問題でございますが、初診料が十二点になるということは、国民健康保険でも一部負担金先生方の窓口でお支払いするという制度のあるところではなれるまでは患者さんに相当ショックがあるものと思います。しかしそのあとの薬治料とか注射料というものが減ってきておる。大体今までの薬治料、注射料が五割でそれが今度診察料五割に置きかえられておるということがわかりましたならば、窓口の支払いということも割合になれましたら問題はなくなってくるのじゃないかと思います。それよりもこの全体のあれから申しますと、一部負担金の窓口払いと保険者徴収の場合、この場合の医師の手取りの多少ということの方が問題になりまして、貧乏な農村では窓口払いにいたしました場合には医療費の総額が確かに減ってくるようであります。そのかわりに昔からの盆暮れの先生方のツケ、こういう習慣があります先生方は窓口徴収を非常にきらっておいでになるようでありますが、町の先生方は窓口徴収の方がすぐ入ってよろしい、こういうような二つの御意見があります。なぜそういうふうなことができるかと申しますと、国民健康保険経済から申しますと、国費の入ります間、これが非常に苦しゅうございます。事務費のごときも四十七条が改正いたされましてそっくり十割いただけると考えておりましたのですが、実際から参りましてその六、七割程度しか入りそうもございません。結局四月初めに保険料なり保険税が入りましても事務支払い、どうしても働いております者の給料や諸帳簿は整えなければならぬ。そういうことになりますと、先生方の方にお支払いするつもりのものがどうしてもなくなって参ります。こういうことの方が大きいのではないかと考えます。検査料も多分に今までの画一的な計算から先生が直接に手を下されなければならないようなもの、これの点数の値上りがございます。しかしこれはどうも診察技術というものに重きを置かれる以上これも仕方がないと思います。それから調剤料でございますが、当局説明を聞きますと、薬剤師への処方せん料が一点となっておりますが、この説明を聞きますと、院内は院内処方で略式処方が基礎になって、正式な処方は何か別だというような形になっておるようでありますが、これは総体に及ぼす点数はわずかでございますけれども、ものの考え方からいたしまして、私は決してこれは中央会の意見とか全保険者意見とかいうのでございませんけれども、私は何かそこに少し割り切れないようなものがあると考えております。注射料は薬治料とともに原価計算の方式で置かれた、これに対してだいぶん先生方の方に御不満があるようでございますが、総ワクを動かさないということになりまして、どこかで処置をしなければならないということになりますと、ここにも多少お互いに研究する問題が残っておるかと思います。で、処置料でございますが、二点の処置料というものは大体削られたようでございます。この処置料が初診料と再診料に置きかえができるかできないか、これらの点は将来資料をいただいて研究をしませんと、正確な御返事ができません。手術料当局の御説明によりまして、難易度考えたと、こういうことを聞いております。大体先ほども申し上げました三倍のものがあるということでございます。補綴料でございますが、国民健康保険には補綴を給付しておるところが非常に少うございます。そういうことでございますので、割合に問題を総体から見ますと軽く考えておりますけれども、先生方のおっしゃることもわからなくもございません。結局初診料と補綴料とのワク関係が問題になってくると思います。入院料でございますけれども、これはいなかの入院室というものを十九床以下と申しますけれども、多くの場合一つか二つを持っておられる先生のすすけたまっかな障子の部屋の入院料も、絵を四つもそろえておるような病院でも同じ基本で考えられておる。このことは非常に矛盾があると思います。この点につきましては、私たちどうしても前々から承服のできなかった問題でございますが、今回はこの点がそのまま残されております。これは今後考えようというような当局の御説明でございますけれども、今後考えようという問題はなかなか解決つきません。この点について私たち保険者といわず、被保険者といわず、この点は何とか考えていただきたい。  七の問題でございますが、先ほどから申し上げました通りに、国民健康保険ば、保険者、被保険者といいましても、保険者は被保険者から選挙によって選ばれたものでございますので、その間に階級的な問題はございません。割合に少うございますので、そういうような一部負担の問題はあまり問題ないと思うのです。総医療費ワクでございますが、これは米作地帯のごとき将来統制をはずされたならばどうやって食っていくかという問題がございます。それならば蔬菜地帯はよかろう、上ってもよかろうという、こういう御意見もあるかと思いますが、昨年私の村ではインゲンが手取り一貫目二円でございました。このために、おそらくインゲンを作るために買いました竹代も払えない。キュウリにいたしましてもナスにいたしましても、皆様御承知通りでありまして、都会の小売価格を御存じの方にはかご一ぱい十円、十五円、蔬菜の十貫目入るかごが十円、十五円という手取り、こういうことは御想像がつかぬと思います。こういう点から参りまして、何とかこのワクはこの程度でとめておいていただきたい。もしどうしても上るようなことがありましたならば、ぜひ社会保障制度審議会の御答申の通りに、国費三割、県一割、市町村一割、このくらいの公費負担がございませんでしたならば、これ以上のワクのふえる問題は非常に困ると考えております。  それから一点単価との関連の問題でございますが、当局からせんだって必要経費が二十七年に比べて四六%増、点数において五〇%増、その開きのために前の調査ではマイナスであったが、今回の調査ではそのマイナスというものはほとんど問題にされない。十二円三十銭が十一円七十八銭六厘ですか、そういうような御答弁があったと考えております。  八、その他とございますけれども、私の申し上げます点、一応その辺でやめさしていただきます。
  9. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 次に総評幹事の井上さんにお願いいたします。
  10. 相馬助治

    ○相馬助治君 議事進行……。ただいままで湯川さんと柳川さんの参考意見を拝聴したのですが、非常に意見聴取事項に忠実におやり下さっておることはけっこうだと思うのですが、総体の時間が短いために、実は聞いていて話が非常に分散してしまって、私たちがお聞きしたいのは健康保険組合から来られた湯川さんはその立場からこの新医療費体系をこう思うということを詳細な資料等をも含めて突っ込んだ話を承わりたいと期待していたのでして、あと三人のお方は、まことにこういうことを言っては失礼だが、委員長さんがおっしゃったように、このことにあまりとらわれずに、突っ込むところを突っ込んでお話をいただきたいと思うので、まことに失礼なことを議事進行で申し上げるようですが、委員長によろしくお願いをいたしたい。
  11. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) よろしゅうございます。では井上さん。
  12. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 新医療費体系の物と技術分離するという基本的な考え方には、私たち保険者としましても賛成でございますが、これは機械に一本のナットをとめたり、それから機械を組み立てたりするものと違いまして、技術や、労働面では大して困難ではない。たとえば皮下注射の場合の例をとってみましても、それがちょっとした不注意によりまして直ちに患者の重要な生命に関係するということになります以上、医師技術をどう評価するかということはなかなか困難なものだというように考えます。このような医業という非常に技術評価の困難な、むずかしいものを、国民医療費ワクを動かさないという大前提から、総医療費の中から医薬、材料費を引いたものを医師と薬剤師の取りまえを二分した形になりました以上、当然これに初めから誤謬があるのではないかというふうにわれわれは考えます。この誤謬をちょっと申しますと、農林省の家畜の健康保険実施されております馬の血沈が二十八点、ところが新医療費体系の改正点数では人間の血沈が五点になっている、寄生虫検査が十四点、人間のやつが二点、それから尿の検査が馬のやつが雄が十九点、雌が十五点、人間が一点、こうなってきますと、いわゆる人間と動物の命の尊重、技術の評価というものがどうなるか、全くこれは転倒しているような気がいたします。このことは被保険者のわれわれにとりましたら、私たちが動物以下の物体としか取り扱われておらない。技術を施す者からすれば技術としての評価がされておらない、こういうふうになると考えます。多分この注射料のたとえば一点、二点という問題は頻度のことから考えただろうし、また今の家畜の健康保険につきましてこのように高いのは頻度が少いから、こういうふうなことでこういう点数が設けられたのだろうと思いますけれども、しかしこういう一つの点を考えてみましても、どうも今度の新点数には多分に疑問の点がある、こういうふうに考えます。もちろん私たちは皮下注射の一点、静脈注射の二点が技術的に適正であるか、こういう点については私にも何とも言えません。しかし少くとも質問の一項にあります専門職業に従事して、医業の適正化とか、合理化が実現すると思うかどうかということにつきましては、私たちはそうでないというふうに答えたいと思います。なぜなれば、現行診療報酬点数制自体が医療機関の医業の正しい発展と近代化を促しておらない、こういうふうに考えるからであります。このことにつきまして一番わかりやすい例を私たちの所属しております国立病院を例にとって述べますならば、まあ一応名前を伏せまして丁病院としておきますが、ここでは五百二十五床の定床です。ところが実際の患者は多いときで約八百名近く、七百は常に前後して入れております。こういうような状態ですから、たとえば一つの小児科病棟を例にとりますと、五十四名の小児科患者が入っている、ここに看護婦の割り振りは婦長を入れまして七名しか来ておらない、これで完全看護、完全寝具、完全給食を実施しております。一名のつき添いもおらない。そうしますと七名の看護婦が三交代でやっておりますので、昼間一番忙しい時期に三名しか看護婦が配属できない。ところが小児科病棟ですから、零才から五、六才の非常に多種多様な患者が来ておりますが うんこのたれ流し、あるいはおしっこのたれ流し、こういうことで一時も目が離せない。そうしておむつだけでも一日五百点から六百点出ます。ですから洗たく場で、せいぜい医療機関の能力でできる範囲は、おむつの洗たく一日分と、それから一週間に一枚の包布をかえたり、シーツをかえたり、これがやっとですから、結局患者が失尿したりなんかした場合のじゅばんの洗たくとか、あるいはおむつカバーの洗たくとか、あるいはよごし回ったその辺のお掃除とか、あるいは食事の世話とか、こういうのがただでさえ忙しい看護婦の上にまた押しかぶさってきておる。こういうような状態にあるわけです。なぜこういうような状態があるかと申しますと、国立病院はまだ一般の医療機関よりもよほどいい。これは建物の減価償却、医療機械の減価償却、そういうものを見込むわけではありません。整備費は大蔵省の方から一般会計の繰り入れを認められておりますけれども、しかしその中で特別会計独立採算制を実行していこうとすれば、五百二十五床の定床に対して五百二十五の患者を入れておいたのではここの経営が成り立っていかない。従いまして七百も八百も入れて、そうしてこの収支の均衡をとらざるを得ない。これが一番公的医療機関のモデルと言われる国立病院の実態でございます。まして他の中小病院あるいは開業医の方におきましては当然こうした現行診療報酬制の矛盾というものが、あるいは看護婦を採用することをやめて奥さんや女中の自家労働に頼らざるを得ない、こういうような形になっているのであります。これが現行診療報酬制の矛盾であります。しかもこの現行診療報酬制の矛盾を薬価とか材料費とか引いたものをさらに医師と薬剤師に分けるということでございますから、この技術料と称するものが医師にとりましても、薬剤師にとりましても、技術ではない労務債にも当らないかもわからない、こういうふうに私たち考えるわけです。総医療費ワクを動かさないでということが大前提であります以上、やはりこうした矛盾が当然起きてくる。ですから、お医者さんがこれに対して反対したり、あるいはまたいろいろやっているわけです。  この新点数によりまして国民医療費ワクが変るか変らないか、これは前二者も言われました通り、私たちもこのままの処置、治療の頻度を持続しました場合に、減るか減らないかということにつきましては何とも言えません。ただ長期間の処置を要する患者収入がむしろ減少するようなふうになっておりますから、だんだんあるいはワクが減っていくかもわかりません。しかしこれは被保険者患者にとっては大へん不幸なことだというふうにわれわれは考えております。もちろん私たち今の医療内容というものが注射にたよったり、あるいは薬にたよったり、これをそのまま肯定するものではありませんけれども、しかし社会保険の医療というものも絶えず医療の進歩と学問的な進化をもたらさなければならない、こういう点から申しまして、逆にこういうような方針は医療の進歩と、学問的な向上を阻害するのではないか、このように考えております。この例を申しますと、今いろいろ収入が新点数によって減るか減らないかということが新聞なんかでも相当問題になっておりますが、このままの頻度をそのまま計算いたしていきますれば、これは国立病院全部にとりましては二%から三%の減少、これは言えるだろうと思います。ただし頻度を変えまして、検査を多くしたり、あるいはまた指導料を多くしたりというような方法によってはこの収入減を免かれるかもわからない。従いまして総医療費ワクがふえるかどうか、医者の収入減になるかどうか、この問題はこの新医療費体系だけではわからない、問題は健康保険の改正の問題と関連しているというふうにわれわれは思っているわけです。で、健康保険の改正というものは、現在は赤字財政という問題をどう克服するかということに出ております。当然新医療費体系というものもこれと関係している。ですから新医療費体系自体の実施によりましても収入を上げようと思えば上げられる方法もある。しかしそれにつきましては健康保険の中で、いろいろ監査の強化とか、あるいはワクの制限だとかいうものが出ておりますけれども、当然そうした制限が出て参ります。そうしますと新医療費体系実施によりまして、やはり収入減になるということは言えるだろうというふうに考えます。それでいろいろこの新医療費体系実施自体につきましては、さっき言いましたように抜け道はある、抜け道はありますけれども、今の健康保険の改正と関係があるといいますのは、今の全般的な情勢自体が、こうした総医療費ワクを減らす、あるいは健保財政の赤字を克服するというような方針で一貫して出ている以上、この新医療費体系内容というものも当然それと無関係ではあり得ないというふうに考えます。被保険者といたしましては、私たちは別に新医療費体系実施について反対するものでもなく、むしろこれが新しい医療の近代化、それから医学の進歩をもたらすものとしてむしろこれをほんとうに適正に進めていきたい、このように考えるわけです。しかし今の総医療費ワクということと、今言いましたようないろいろな初めからの誤謬がある以上は、これは当然私たちが希望しているところにむしろ逆行していくのではないか。だからまあ、日本人の欠陥といたしまして、注射をしてもらいたい、あるいはいい薬を飲ましていただきたいというような要求があります。これはいいとは言いません。いいとは言いませんけれども、しかしそれだけではなくして、やはり医者の方からいえば早くなおしたい、それから患者の方からいえばできるだけいい治療を受けたいというような点が、今度の新医療費体系によりまして、いい高い薬を使えば使うほどむしろ収入面においてマイナスが出るようになる、そういう点からやはり医者が自分の収入をふやそうとすれば安い薬を使うということになっていくとすれば、被保険者患者にとりましては非常に不幸なことだというふうに考えます。  で、最後になりますが、ですから今言ったような前提のもとで、もちろんこの六項にありますように、内容を見ますと、たとえば手術料その他につきましては多少は難易度に応じた技術評価がしてないとは言えない、言えないけれども、いろいろなその中に矛盾が含まれている。これは一々批判することを避けますが、問題はやはり健康保険の改正という問題と、それからまた一点単価を、二十六年にあれだけ問題になりましたけれども、その後の物価の上昇にかかわらずそのまま据え置きにしている、まあ、こういう点がやはり今度の新医療費体系の中でも、もっともっとそういうものと離れて、そうしてほんとうに物と技術分離する学問的な研究と検討が加えられなかったというところが一番大きな矛盾ではないかというふうにわれわれ考えるわけです。  ですから私たちは、むしろ私個人といたしましては、医薬分業というものが医療の近代化を促すということで賛成いなしておりますけれども、しかしこうした矛盾を無理やりに押しつけた形の医薬分業ということについては反対でございます。従いまして新医療費体系の問題につきましても、もう少し学問的にも、また国民全体の福祉のためにも総括的な立場から良心的に出さるべきであったと、健康保険の改正の問題と別個に離れまして、もっと良心的な案というものが出さるべきであったと、このように批判いたしております。  以上簡単でございますが。
  13. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) どうもありがとうございました。  次に全繊同盟の上田さんにお願いいたします。
  14. 上田豊造

    参考人(上田豊造君) 井上さんも申し上げましたように、被保険者代表でありながら、御承知のようにこまかい点につきましては全然しろうとなことで、詳細につきましては医学的なことは全然ゼロでございますので、その点あらかじめお含みおきを願いたいと思っております。  今回の新医療費体系につきまして、私どもはいわゆる労働者なりにいろいろと検討を加えたり、当局説明等も聞いて参りましたが、原則的にわれわれが受け取りましたのは、従来の物に依存をしてきた医療を、物と技術とに分けるというこの原則は、われわれとしては大きな進歩ではないか、かように考えまして、原則的に賛成をしております。ただし内容的に見ました場合に、今申しましたようにわれわれはしろうとで、いわゆる処置にいたしましても、あるいはその他の技術にいたしましても、十分われわれ自身の認識がその点では足りませんので、何とも申し上げられない。ただ原則的にわれわれが当局説明を聞いておりましたが、今回の新医療費体系なるものが昨年の三月を基準にしているということに、これは大きな問題点があるのじゃないか。一年の中にはそれぞれ大きな起伏がある。あるいは二年、三年の場合にはそれぞれまた違った私は平均値が出てくるものではないかと、かように考えておりますが、それを昨年の三月に限ったものをば当てはめていこうという出発点には、どうもわれわれとしてははなはだそこに不十分なものを十分に見のがすことができない。なぜ厚生省はしからばもっと年間の平均値を持っていったり、あるいは三年、四年の平均値を中心にした資料に基いて、こういうものに立案着手をせなかったかということが、われわれとしては一面言えるのではないか。そうすれば頻度においてももっともっとほんとうに合理的な数字が私どもは得られると、かようにまず考えられるのであります。  それともう一つは、いろいろと言えば言われますが、大体大事な人の生命を預かるお医者さんの技術を、いわゆる金銭的に割り切らなければならぬという今日の状態は、私どもとしてはまことに苦しいという思いが実はするのでありまして、そういう点からこういう手術、こういう処置がこういう点数、言いかえると、こういう金額に評価されることが正しいかどうかということになりますと、今申し上げましたように、われわれとしては正しいとも正しくないとも言うのには、非常な困難をきたしておると、こういう私は原則をまず一応申し上げておきたいと思います。  個々にわたりましては物と技術に分けられて参ります関係から、いわゆる今までのように薬物に依存をしておった面が、精神的に今度は指導という関係が大きく取り上げられてきたということにつきましては、まあそういう点からいけば新医療費体系というものにつきましては、一応私はある程度点数を与えていいのではないか、かように考えまして、従いまして、ある程度大きな進歩をもたらすことにはなるんじゃないか、かように見解を表明したいと考えます。  内容に至りましては先ほど申し上げましたような考えでございますが、まあそれにいたしましても大体それぞれに要する労働時間をお取りになったり、あるいは必要な人員等も検討されて、そういう原価計算を基にしたそれぞれの療養に対する点数を割り出したと、こういうことでございまするが、まあこれを一つの金額に直していくとするなれば、おそらくそういう方法でしかわれわれとしても考えられようがないじゃないかとも思います。  それからこれを厚生省が立てるに当りまして遺憾なことは、もっと学界やあるいはその当事者である医師会に協力を求めまして、今日のごとき各方面における総辞退運動の起らぬような、なぜそういう処置をとらなかったか、いわゆる官僚が独善でこの案を作り上げたというところに、われわれ被保険者としても非常に不明朗な点が見受けられますし、同時にもしもこういう事態になれば迷惑をこうむるのはわれわれ被保険者でありますから、その点に対する配慮が不十分でおったということにつきましてはわれわれはまことに遺憾である、かように考えるのであります。そういう見解からこういう見解を持っておりまして、従いまして個人差だとか、あるいは難易度というようなことにつきましても、なかなかこれは、学界、あるいは医師会自体においても、おそらくこれはこうだという確たるものをなかなか表明しにくい問題でありますから、一応やはり今回出されておる厚生省の案なるものを中心にして、それを一つの基本にしていく場合に、やはり出発点におきましてはある程度の凹凸があったり、あるいは不十分な点はあろうけれども、まあ何といいますか、新しい出発の点といたしましては、これはある程度やむを得ないような状況ではないかと、かようにわれわれは考えております。  輝度の問題につきましても先ほど他の参考人が申し上げましたように、われわれが考えられるのは、一部負担の問題と関連して私どもがいつも考えておるいわゆる医療費が、一体新医療費体系がなかった場合に、われわれ自身がどういう財布との相談が成り立つかと、こういう点から私どもは見た場合に、もしも今言われている健康保険法が改悪されて初診料が八十円になり、入院料がとられるということになれば、勢いこれは大きな頻度関係が起ってくるということを私どもは予想しております。ただこれ自身から出てくる頻度の問題といたしましては、あるお医者さんは先ほども参考人が申しましたように、高貴な薬を使っても同じだ、悪い薬を使っても同じだということになると、そういう点から意欲が減退する点もありまするが、同時に他面技術がそのままに生かされていく、こういうことになってくればまた頻度が、いわゆる再診がふえまして、それだけまた患者に対する医療の徹底がはかれると、こういう大体二面が考えられてくるのではないかと、こういう見解を表明申し上げるしかやむを得ないんじゃないかと思います。  それから所得医療費負担の軽減の問題でございますが、所得がどうなるかということよりも、これによって大体技術に基いたお医者さんの収入というものはかくかくであるということは私はつかめると思います。しかしそれが世にいわれておりますいわゆるお医者さんの生活それ自身を確保するといいますか、あるいは安定するということになるかということになりますと、これは門外漢の私どもではとうてい判断のできにくい問題でありますし、同時に負担の軽減という問題も、先ほど申しましたように、一部負担の問題と関連して考えていかなければならぬ。その点から軽減が期待できるとも言えるし、できぬとも言えて、この点は私どもとしては明白に実はお答えできないのをはなはだ遺憾に存じておる次第でございます。  五番の経済と事務の問題は、保険経済につきましては、大体三%程度のものしか考えていないという当局説明でありまするが、これはやはり頻度の問題と関連してそれぞれ判断をせざるを得ないと、かように考えます。従いまして事務的にはこれはどういうことになりますか、私どもは当然今まで支払いの場合にいわゆるお医者さん関係だけの支払いであったものが、今度は調剤関係にも及ぼすので、当然事務的にはある程度増加を来たすということは、これはだれが考えましても私は当然のことではないか、これ自身としてはあるいは全体から見ればわずかなものではあろうけれども、やはり相当事務量が私は増加する、こういうような見解々持っております。  第六番目のお答えの内容でございますが、今の初診料から見ました場合に、いわゆる今回の初診料は金額でいいますとあまりに飛躍したといいますか、あまりに高く上り過ぎているきらいが私はあろうとこういうお答えを申し上げたいと思います。従いまして応診料にいたしましてもたとえば距離だとかあるいは難路だとか、風雨だとか、そういう判定の場合に、まさかお医者さんがこの道は楽な道であるから点数はこれだけだ、あるいはこれだけしか払えないというようなことはおそらく言わぬとも思いますが、しかしその判断というものが私は相当これは問題点になっていくから、これは何かもう一つ別な方法をやはり考えて、しろうとにもなるほどとうなずけるというような、こういう大衆的に使われるような方法等をもう少しわれわれ患者代表といたしましてはとってもらわないと困る、国民から遊離したような方法では困ると、かように大体申し上げたいと存じます。  それから調剤料の問題と関連して処方せんの問題ですが、これは社会保険審議会でもいろいろ議論をいたしましたし、われわれ被保険者自身がよりましていろいろ討論をしてみたのですが、処方せんというのは大体初診料あるいは再診料の中に含まれるような性質のものではないか、お前の病気はかくかくであるというのを口で言うのをば紙で現わす、見て見っぱなしで何も感想を述べないということはあり得ないのですから、その感想を述べる処方せんというものにこれだけのわずかな点数ではあろうけれども出すということは、われわれ被保険者としてはどうしてもこれは納得のできない問題、だと、かように考えております。処置料手術料等は先ほど申しましたように、いろいろ労働時間や必要人員を考慮されてそれぞれ点数を修正されたという結果でありまするから、まあ専門的に見ればいろいろな不満といいますか、修正すべき点がありましょうけれども、大体現在から見れば大きくその点が考慮されたということは前進ではないかとかように考えております。それから入院料の問題でございますが、この点は先ほども参考人の他の方が言われましたように、国立病院の大きな病院であろうとあるいは東京都内の飯田橋にあるようなりっぱな病院であろうとも、あるいはいなかのいわゆる九尺二間の裏長尾の診療室であろうとも、これが同じ点数で二十八点や三十点で割り切られるというところはわれわれとしてははなはだ納得ができない。しかもそのような病院の内部の、たとえば一人一室の場合、二人一室の場合、あるいは二十人、三十人というような大部屋というようなそういう点を見てみましてもなおさらこれが同じ点数、同じ金額でまかなわれるということにははなはだわれわれは納得ができない。同じところで同じものでやるならいいですが、それぞれ環境から部屋の設備からおのおの違うところに持ってきてやはり同じものだと、こういう評価の仕方は決して合理的でない、私はかように考えております。  それから主として一番あとの七項の問題について意見を述べさせていただきたいと思うのでございます。たとえば今日の総医療費ワクというものが、先ほどもどなたかおっしゃいましたが、それぞれ医者並びに被保険者の不正なるものが含まれておるということはわれわれも原則的に認める。しかしながらそれをそのままに放任しておいて、それを是なりというワクのもとに逆に今次は点数の引き直しをしていった。いわゆる金で今度はかく新医療費体系を割っていったという大づかみな今回の割り方というものははなはだ非科学的であろうと、かように考えます。総医療費ワクというものはわれわれ関係者といたしましてはもちろんふえることは、すなわち被保険者負担をそれだけ増大するわけでありますから、もちろん歓迎しません。絶対にこれは現状以下でとめたいということはわれわれの念願でありまするが、しかしながらそのために角をためて牛を殺すようなことになって、社会保険の意義というものが内容的に低下をしたり、退歩するというようなことは、これは厳に避けてもらわなければならぬと存じます。従いまして新医療費体系実施に当っても十分にこの点が、いわゆるお医者さんはもちろんでございますけれども、同時に被保険者に対しましても十分徹底をして、被保険者の了解といいますか、十分に認識の上に立っての実施を私どもは願わなければならぬ。何が何だかわからないうちに医療費が上り、あるいは一部負担が重なってくる。こういうようなことでははなはだわれわれ被保険者としても迷惑至極である。今日の社会保険の赤字問題にいたしましても、早い話が、何が何だかわからないうちに、要するに診療が非常にふえたこういうことで六十億、九十億の赤字になったから従って標準報酬を直し、昨年は保険料率を五%上げて、なおかつ本年はそれで足らずに一部負担を行わなければならぬ。こういうようないわゆる不見識な状況ではなはだわれわれ被保険者としては遺憾でありまして、赤字問題の対策といたしましては、健康保険は少なくともいわゆる被用者の労働者が病気や傷病になったときにそれを治療して再び職場に帰って労働に、生産に励ます。こういう原則から私どもは考えまして、いわゆる長期に二年も三年も、私どもが聞きますと、はなはだしい人は二十年も二十五年も長期にわたりまして結核で入院しておる人もあるそうでございますが、こういうように長期に療養を要するような医療の給付は、これは健康保険から別なものにするのが私は当然ではないかと思う。従いましてこれは国家全体としての立場から、医療をそういう面から、もっと大きな見地から私どもはこういう結核とか精神、神経関係等のいわゆる長期療養を要するものは社会保険から除外をした別の対策を立ててもらわなければ困る、かように考えます。同時に社会保険がそれぞれ事業主、被保険者負担によってはおりますけれども、原則といたしまして社会保険は政府自身が監督、経営をしておる。従いましてわれわれは赤字が出ようと黒字になろうとそのことに関しましては、直接に私どもは今まで関係がなかった。従いまして、各企業、会社になれば赤字では立ちいかぬから、いわゆる企業合理化という面が行われますが、こういう公企業の場合には、赤字赤字でそのままで労働者に負担させればいいのだ、あるいは国民負担させればいいのだという、そういう安易な私は経営が過去三十年間社会保険においてもとられておった。特に健康保険におきましては、そういう点が十分に考えられなかったという点につきましては、もっと経営の私は合理化をば一つ当局にお願いをしたい、かように考えます。  それから新医療費体系実施関連いたしまして、いわゆる患者の一部負担の問題が昨今大きく取り上げられて参りましたが、私どもは御承知のように、世界最高の保険料を出しておる。しかも、なお今日当局の言う大きな赤字を来たしておるが、同時に先ほど申しましたように、この経営というものを政府がひとり握っておって、赤字か黒字か、どうなっておるかということは、全然監査が——われわれ国民自身の監査というものがない。こういう点からいたしまして、はなはだ私どもとしては疑問を持っておる。もっともっと先ほど申しました方法によって、もっと保険の合理化をはかることによってこの赤字がなくなるのではないかという希望を持っておりますけれども、その点は一切政府まかせでございますから、従いまして、政府はそういう経営と監督権を持っておりまする点からも、これは当然政府がやはり一端の費用は負担すべきだと、かように考えます。しかも今回のごとき、患者負担が行われるということになれば、大きな頻度におきまして、あるいは診療に制限を来たすということは自明の理ではないかと、かように考えて非常に悲しい思いをしております。たとえばよし初診料が五十円が八十円になって、わずか三十円の値上げではありましょうけれども、その他薬にしても、あるいは注射にしても、入院のたびごとに三十円を支払うということになれば、たとえば外来で行く場合にも、おそらく給料の一週間や十日ほど前にはほとんどどこの労働者も金がございません。そういう場合に、病気になったときには結局売薬で済ますとか、あるいは医者にかからずにそのまま無理をして済まさなくちゃならぬという、こういう現状はおそらく今後こういう問題を契機にして大きく出てくる。このことは社会保険の私は一大大きな退歩を来たして、同時に国民に保険というものは無用の長物であるというような忍は印象を与えるということにつきましては、まことに私は遺憾でありまして、この機会一つ委員会におきまして十分この点に遺憾のないような御処置を私はお願いをしたい、かように考えます。
  15. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御苦労さまでした。  それでは次に岐阜薬科大学学長の官道さんにお願いします。
  16. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) 新医療費体系案並びに健康保険の改正案を作成するに当りましては、これらに対しまして鋭い批判が予想されておったことでもありますので、御関係当局の御苦心、御努力はさぞかし多大のものがあったろうと御推察申し上げまして、この機会に心から敬意と感謝の念を捧げたいと存じます。また改正のこの案につきまして御審議に当られます皆様方の御努力に対しましても深く感謝の意を表したいと存じます。しかしながら新医療費体系案に関しましては、大体において政府の御説明を信頼し、了承できるのでありまするが、なお二、三の問題点を持っておりますので、これにつきまして所見を申し述べたいと存じます。  第一の問題点は、処方せん料の問題であります。医師患者を診察いたしました場合に、その診断に基いて必要と思われまする投薬の内容結論を与えたものが処方せんなる文書であると考えます。処方せんの交付は従って診察行為の一部であり、また義務であることは明らかであります。診察、診断すなわち見立てと調剤の処方せん、すなわちさじかげんとは別個のものだというお説を唱えておる方もあるようでありますが、見立てなくしてさじかげんはあり得ない。すなわち診察に処方せんは付随した、一貫したものと考えるのであります。従って診察料を取れば、処方せん料を取るべきでない、診察料の中に当然処方せんは含まれておるものと考えるのであります。従って諸外国におきましても、北欧の二、三の国——スウェーデン、ノールウェー、デンマーク、それらの国におきまして診察を行わないで、処方せんを交付する場合に限って処方せん料というものを取っておりますが、その他の国におきましては取っておらないのであります。これは当然のことだと考えるのであります。これを私どもの身近な事柄に例をとってみますると、たとえば何かの物質の分析を依頼されたといたします。分析が終りますと、その結果を分析証明善あるいは分析成績書なる文書となしまして、分析依頼者に交付いたしまするが、このときに分析料は支払ってもらいますが、文書料なるものはいただかないのが一般の慣例であります。事柄は違うのですが、相似たケースではないかと考えるのであります。また処方せん交付は、いわゆる修正分業法で義務づけられておるものであるから、紙代、インク代の意味で処方せん料は取るべきだというお説もあるようでありまするが、処方せんの交付は新たなる義務ではなくて、従前から存在いたしておりまする義務であります。かりに文書料として処方せん料を取るにいたしましても、薬局の調剤に限り処方せん料を取り、医師調剤の場合には無料である、こういう原案はきわめて不合理で納得ができがたいのであります。医師調剤の場合におきましても、文書の形式はともかくといたしまして、何らかの形で処方を表示する文書的記録がなければならないと思うのであります。  なお薬局調剤の処方せん料というものが薬局調剤の場合のみにとられるといたすなれば、患者負担とすればおそらく分業阻止の結果を招くことは明らかであると私どもは想像いたしておるのであります。  第二の問題点は薬価の算定方式であります。政府原案によりますると、医師調剤の場合と薬局調剤の場合とではその算定方式が違っておるのであります。医師が調剤しても、薬局が調剤しても当然同一の価格であるべきはずのものではなかろうかと考えます。もしもこれが同一でないといたしますると、健康保険の扶養家族の場合または国民健康保険の被保険者の場合には一部現金支払いとなっておりますので、このときは医師に支払う薬価と薬局に支払う薬価とが数字が違って参りまして、患者に大きな疑惑を与えることになるのではなかろうかと存じまして、賛成はできないと考えます。両者の支払いの算定方式は当然同一にいたすべきだと考えます。原案では薬局の薬価算定方式は、薬品の原価プラス調剤技術料原価計算の方式できわめて合理的なものでありまするが、事務員においては医師の薬価算定方式よりもやや多くなるのじゃなかろうかと考えます。事務量の点においては医師の薬価算定方式の方がややすぐれておるかと考えるのであります。医師の薬価算定方式は小刻みの十五円の差で、小刻みのプール計算でありまして、たとえば薬品の原価が十五円以下といたしますると、原価が九円より安くても高くても九円プラス調剤料の〇・六点がそれに加えられる、これが一日分の薬価となるのであります。ところがプールに誤差を生じた場合には、一日分の場合はともかくといたしまして、これが数日分になりますと、損益の開きが大きくなってくることは明らかであります。そこで薬品の原価が十五円以下の場合は、五円くらいの小刻みの形となし、十五円以上は十円くらいの小刻みの形となして損益の誤差をできるだけ少くして、しかもこの方式を医師調剤の場合、薬局調剤の場合双方に同一に適用して、事務処理量の軽減をはかってはいかがなものかと考えるのであります。  次の問題点は薬局における調剤料の点であります。水剤、散剤一剤一日分の調剤技術料は七円ということになっておりますが、七円は安きに失するのではなかろうかと考えます。昭和二十六年、日本薬剤師協会は、資料といたしまして提出した中に、一日一剤の調剤技術料八円という線を出しておるのでありまするが、それは昭和二十六年でありますので、現在におきましては当然これに上回る数字考えられなければならないと思うのでありますが、かえって減額になっておりまして、七円ということであります。薬科大学におきましては、調剤学、製剤学というような直接調剤に関します科目はもとよりのこと、これに関連しまする諸学科目の修得に多大の時間をかけておるのであります。その薬剤師の技術科としては、この七円なるものは決して適正な報酬とは考えられません。かりに一日平均五十日分の調剤をいたしたといたしましても、一日三百五十円、一カ月一万円そこそこで、薬剤師一人の最低生活費にも足らないといったような状態であります。しかしながら総医療費ワク内では、これ以上操作ができない、値上げは無理でないかと私どもは考えまして、目下のところではこれでがまんをいたしまして、薬局薬剤師は副業などで生活費を補っても、医療合理化に協力したり、そうして大衆福祉のために犠牲を払おうという気持になっておるのが、全国薬剤師の心境であります。この事情を十分御認識下されたいと思うのであります。  以上で私の所見を終るのでありますが、医薬分業と医療費支払い方式とはもとより別個のものではありますが、支払い方式が決定しなければ、分業は事実上進行いたしません。従って医療合理化促進のために、新医療費体系すなわち新支払い方式については、技術と物との対価を分離した新しい医療費体系がなるべくすみやかに成立いたすことを念願してやまない次第であります。  以上で私の所見は終ります。
  17. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではただいままでの参考人の御意見に対しまして、質疑をお願いいたします。
  18. 榊原亨

    ○榊原亨君 宮道先生にちょっとお伺いたしたいのであります。先ほど、医師が診察をいたしましてそうして治療の方針をきめる、あるいは薬の処方を考えるということは、診察料の中に入れた方がいいという、これはお考えでありますから、私はとやかく申しませんのですが、たとえそれは診察料の中に入れましても、その治療の方針をきめるという科学技術に対する対価はお認めになっていらっしゃるのでございますかどうかということが一点。  第二点は、先ほど分析のお話がございましたが、分析の結果は紙に書かなければならぬと申しますと、それはちょうど医者の書きます診断書と同じことではないか、そういたしますならば、診断書の上に処方というものがあり、あるいは注射はどういう注射をするかということを決定する科学技術診察料の中に入れる、入れぬは別といたしまして、科学者としては当然お認めにならなければならないと思うのでありますが、その点のお考えを承わっておきます。
  19. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) 二点の御質問でありまするが、診断書も処方せんも結局は診察行為の結果を示すものでありますので、処方せんを診断書の一部と考えてもいいのじゃないかと思いますが。
  20. 榊原亨

    ○榊原亨君 そうすると先生は、治療の方針を決定するという、そのことは医師にとりまして、患者を診察いたしましてこの病気をどうだということをきめると同じようなウエートを持った大事な科学技術であると私は信じておるのでございますが、その対価をお認めにならないというお説でございますか、その点だけ……。
  21. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) むろん処方せんとか診断書は価値の深いものということは明らかに認めるのでありまするが、それは診察、診断と別個のものでなくして、その結果において当然現われるものであるから、一本で対価を支払っても差しつかえないのじゃないか、そのほうが正しいのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。
  22. 榊原亨

    ○榊原亨君 もう一度くどいようでありますが、一本にする、二本にするということを私は御質問申し上げているのじゃないのです。一本になさるというならそれでいいのです。けれどもその一本にして、その対価の中には今後の治療の方針を決定するという技術に対する対価をお認めになっていらっしゃるかどうかということを聞くのです。
  23. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) 治療の対価ですか、それはどういうことなんですか。質問をもうちょっと……。
  24. 榊原亨

    ○榊原亨君 治療の方針を、診断をしてこの病気はかぜ引きだ、それではこういう治療をしなければならぬという治療の決定をいたしますための、その科学技術の対価をお認めになっていらっしゃるかどうかということであります。それを一本にする、二本にするは別の問題であります。
  25. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) それは認めておるのであります。
  26. 榊原亨

    ○榊原亨君 わかりました。今度は柳川さんに私は承わりたいのであります。国民健康保険におきましては給付内容が全国的に一緒ではない、同一ではない、たとえて申しますと、半額自己負担するというのが大多数であると思うのでありますが、中にはストレプトマイシン、パスの抗生物質だけはあなたは自弁だ、あるいは往診料だけはあなたの自弁だ、あるいは診察料だけ自弁だというところがたくさん——たくさんではないかもしれぬけれども、かなりあると思うのでありますが、まあ厚生省当局意見を聞きますと、半額負担をさせるのか理想的だ、こういうようなことを承わるのであります。そうしまするというと、半額負担に全国を統一いたしますための御努力がされるかどうか、また実現の可能性があるかどうか、その実現をもしするとしますならば、何カ月くらいかかったら実現ができるかという、この期間を承わりたい。
  27. 柳川力

    参考人柳川力君) ただいま国民健康保険は各市町村のきめております条例で給付内容を決定することができますので、それを全国統一することができるかどうか、それをもし統一するとしたら何カ月くらいでできるか、こういうお話と存じます。国民健康保険一つの例を申し上げますと、初診料、往診料、こういうものを抜いておるところもございます。これが環境の相違でございまして、なかなかこれを健康保険の給付の状態にまで引き上げていこうという努力は官庁側もまた保険者も被保険者もともに努力しておりますけれども、先ほど申し上げました通りに、各被保険者経済的ないろいろな事情もございまして、なかなか統一できかねております。これはできるだけ統一して参りたいと思いますが、先ほども申し上げましたような関係がございますので、これに対してほんとうに統一していくということになりましたならば、強制的な法の裏づけがございませんと、なかなか困難であろうかと思います。また法の強制的な裏づけと申し上げましても、その統一できない原因が被保険者生活費にございますので、もし強制的な、法律的な統制ということになって参りますならば、社会保障制度審議会の答申にございます通りに、国費県費、市町村費こういうようなものに対してもはっきり財政的な裏づけをお願いしたい、こういうことになりましたならば、いつまでと申し上げることは私個人の立場では申し上げ切れません。おそらく全国の保険者がそうであろうと思いますけれども、その暁には必ず統一されるかと考えております。
  28. 榊原亨

    ○榊原亨君 そういたしますると、そういう困難な状態において、今この新医療費体系点数表国民健康保険にも行われるといたしますると、たとえば初診料を自弁しておる村がございます。今初診料が十二点ということになりますと、混乱が起りませんでしょうか。あるいは往診料が今までのウエートとアンバランスができた、今までとはバランスが破れた新医療費体系がもし行われますと、国民健康保険の側におきましては御迷惑がないでしょうか、今の状態において、これが一点。  もう一つは先ほど当局のお言葉を信じて三%くらい医療費国民健康保険で上るかもしれぬけれども、それは信ずるのだ、こういうお話がございましたが、それでは国民健康保険、実際あなたの御傘下にございまする国民健康保険組合におきまして、この新医療費体系を行なったならば、どれくらいのワクが広がるか、狭まるかという御試算をなさいまして、先ほどのお話がございましたのでございますか、あるいは全然そういう試算がないままに当局が三%上るだろう、それはそれでいいだろうというお考えで先ほどの参考人としての御発言があったかどうか、この二点を私承わりたい。
  29. 柳川力

    参考人柳川力君) 第一点はおそらく今までの点数表の上に立っての条例がきめられております。よって新しくもし今度の点数表実施されるということになりましたらば、条例の範囲内で許されておりますものは条例の改正が行われまして、でき得る限りその矛盾を小さくする努力が行われるだろうということを申し上げた次第であります。現に私たちの集まりましたものの中には、条例をその場合は改正しなければならない、そうして現実との間に矛盾のないような条例を持たなければならないというものが数例ございました。  それから三%上るということは、私申し上げた覚えはございませんで、若干と申し上げたと思います。で、これは計算の誤差の範囲内に近い数字厚生当局から指示されたように記憶しております。でこれを検算したかどうかという御意見でございますが、私ただいまのところでは当局の若干、ほんの少い程度であると、そういうような説明を聞いておりまして、まだ検算の時間を持っておりません。またその具体的な内容についても正式に説明を聞き、検討する時間がございませんので、その点から申しましても検算をまだいたしてございません。
  30. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は湯川さんと柳川さんと宮道さんにお尋ねしたいんですが、まず湯川さんに念を押しておきたいんですが、参考人として述べられた中にこういうことをおっしゃったように聞きましたが、間違いでしょうか。新医療費体系実施は法改正とは関係がない、こういうふうにおっしゃったように思いますが、その通りでしょうか。
  31. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) そうです。
  32. 相馬助治

    ○相馬助治君 第二の点は、三十年三日診療行為頻度を調べて、そうしてこの総ワクを押えて今度の新医療費体系を作ったのだが、これがいいか悪いかということは前提としないで、医療協議会においてあなたは論ずるという立場をとりたい、こういうようにおっしゃったように聞きましたが、それはどうでしょうか。
  33. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) 新医療費体系とそれから法律改正との関連性については、われわれは関連がないという考えの上に立って、新医療費体系というものを考えておる。これは先ほど申し上げた通りであります。  それから後者の、診療費の総ワクという問題につきましては、三十年三月現在の各診療行為頻度考え、それをもととしての、つまり総ワクというものをこしらえたということについては仕方がなかろうということは申し上げたのです。
  34. 相馬助治

    ○相馬助治君 わかりました。それでは御質問するのですが、参考人の井上君の意見では、これは健保改正と重大な関係がある、こう言っておられます。湯川さんの場合には、考え方としては関係がない、こう申しておりますが、私どもここで問題としておるのは、実際問題として健康保険組合の立場から見たならば、新医療費体系というものは、事実問題としては法改正と重大な関連があるのではないかと、こういうように考えるのですが、その点はどうでしょう、事実問題として。
  35. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) 私は基本的にはこの健保改正というものはこの健保再建のための一つ法律改正だということを基本的に考えておるわけであります。それから新医療費体系というのは、御承知の本年の四月一日から実施される医薬分業に関連する一つの問題、こういうふうに考えて、従いまして双方の間には直接的な関連性がない、こういうように申し上げておるわけでございます。
  36. 相馬助治

    ○相馬助治君 議論は私すべき立場でないからお考えだけを聞いておくのです。  第二の問題は、三十年三月の診療行為頻度数を調べて、この総ワクを出したということは、これはそれとして認めると、こういうことですが、それは事実問題として認めざるを得ないのですが、御承知のように新医療費体系というものの合否を論ずる場合において、この委員会においても、どだい三十年三月の基礎調査というもの自体に問題があるということが今日問題になっておるのです。で、これは湯川さんが単なる一参考人ならば、私はこれは聞きのがすことですが、あなたは医療協議会委員でいらっしゃるそうで、そういうことになると、厚生省が言うからといって、この調査は正しいのだという前提に立ってものをお考えになるというのはいささかどうかと思うので、本委員会においては、ここに基礎を置いたこの資料そのものに疑念を持っていろいろ議論が戦わされておるのですか、その点についてはどうお考えでしょう。
  37. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) 新医療費体系という一つのこの新しい制度、すなわち言葉をかえて言いますと、新しい健康保険点数規定、点数表というものを作成する場合、どこかに基準が要るのだということは、これは私どもさように考えておるのでございますが、そうなりますと、どこに一応基準を置くかということになりますと、まず三月に置いた。先刻各参考人の方のうちにもちょっと触れたようですが、これは一年間の平均をとるのも一つの方法であるというように考えますが、まずもって三月をとったということはやむを得ない、いろいろ経験から見ましても総診療費の非常に下る月でもなし、また上る月でもないというようなことが一応考えられるのでございますが、まあそういった点も考えまして、われわれとして、また私個人としては三月に基準をとるということは仕方がないのじゃなかろうかと、そう大きな変動がないものと信ずると、まあこういうような意味から、まず三月を基準としたもので、その上に立っていろいろこの計算を立てていくということは、これはやむを得ない、こういうわれわれの結論に達したわけです。  それから内容につきまして、この行為は何点でいいか、あるいはこの行為は何千点をあげなければならぬかということにつきましては、これは実はわれわれとしてはこれはまことに申しわけないのでございますが、なかなか厚生省原価計算説明されても、今もってわれわれがちょっとわからないということで、まあせっかく勉強中でございます。従いましてわれわれその意味におきましては、ちょっとこの内容の各点数の各個条につきましては、さらにわれわれは検討していきたい、まあこういうふうに思っておるわけでございます。で、その厚生省から出された点数の全面につきまして、われわれあれでいいのだという結論にはもちろん達しておりませんし、またそういう確定的な意見を決して申し上げたわけではないのでございまして、ただいろいろ計算基礎を一応三月においたということにつきましては、先刻来申し上げましたような意味合いで一応了承しておる、こういうわけでございます。
  38. 相馬助治

    ○相馬助治君 まあお考えについては、私は実はそれに対立した意見を持って、事実問題として持っているのですけれども、ここで議論はいたしません。お聞きいたしました。  次に柳川さんにお尋ねしたいのですが、柳川さんは全国国民健康保険団体中央会のきょうは代表としてここへおいで下さったのですか。それともこういう肩書きは持っているけれども、指名されたのでいらっしゃったので、私見を述べると、こういう立場でございますか。どちらでございますか。
  39. 柳川力

    参考人柳川力君) 私の立場は、中央会の方から常任参与としてお前出席せいと、こういう話でございまして、必ずしも会議いたしましてこの答えを持って行けという立場でない。中央会の方針はこうであるという確定的な理事会を経て出席したわけではございません。
  40. 相馬助治

    ○相馬助治君 実はこの当委員会においていろいろ議論されておる中において、この全国国民健康保険の問題については同僚榊原委員が問題を提起して、いろいろ話し合いがここでなされたのですが、どうも私たちも確たる実態がつかみ得ないで、この問題については率直のところ、明確な結論もないし、明確な対立した意見というものもない状態なんです。それで実は私はあなたからは新医療費体系自体がいい悪いの議論がまあ一つお聞きできるだろうと思ったのです。またそれがいい悪いの議論があるいはないとしても、かりにこの新医療費体系実施された場合には、現行法によるところの国民健康保険の実態が非常に混乱を来たす心配があるというような点でも指摘あるのではないかということをまあ私は期待したのです。それは同僚榊原委員が指摘いたしましたように、国民健康保険は給付内容が非常に区々であります。そういたしますと、あるところではこの新医療費体系で影響を来たさないところもありましょう。あるところではまあひどく影響を来たして、町村条例を改廃しなければならないというようなところもあると思うのです。で、要しまするに、私は全国国民健康保険団体中央会では未だ勉強中だと言うがごとき、そんなのんきなことでなくて、かりに新医療費体系実施された場合には今の現行法、そうして今の条例下における健康保険の実態に合せてみると、現実に合せて試算をしてみるとこういう結果がくる、これは国民健康保険そのものを直してもらうか、ないしは新医療費体系そのものを考えてもらうか、どっちかしなければこれは大へんなことになるという意見が出るか、ないしはこれで両方けっこうですという意見が出るかどっちかだと思って期待したのですが、そういう私の期待が過大であったかどうかは別として、そのポイントをお聞きできなかったのですが、その点についてはどうお考えでございますか。
  41. 柳川力

    参考人柳川力君) 御心配の点よくわかりました。私のお答えの仕方が不十分であったかとも思いますが、先ほども旧点数表のもとに考えられた条例は新しい点数表実施した場合には改廃しなければならない部分もございましょう、そう御返事申し上げたのですが、中には旧点数表でもかまわない、新点数表でもやっていけるという保健所もあるはずでございます。健康保険が東京近在でもし新点数表でやって参れますものならば、私のおります神奈川でも大体それに従っていけるのではないかとこう考えております。じゃ同じ神奈川県でも津久井郡方面へいったらどうかとおっしゃいますと、多少この影響はまた出てくると思います。今まで特にその地帯の影響の大きいところを給付からはずすような条例ができておりまして、点数表ににらみ合せた条例でございますから、点数表が変って参りますと、また条例を変更しなければならない。いつでもそういうような形で国民健康保険の条例はきめられておりますので、その辺非常に不満足な答弁かもしれませんけれども、実際問題から言いますとそういうことになるかと思います。もしそういうようなことでなしに、健康保険並みに参るということになりますと、山村あたりの乏しい財政をどうするかというようなことが問題になって参りまして、これを完全に実施いたすということになりますと財政の問題でございまして、これに対しては社会保障制度審議会の御答申にかつてありましたような形が出て参りましたならば、そういうような矛盾もとれるかと考えております。
  42. 相馬助治

    ○相馬助治君 私本気で聞いておるのは、今日本で問題になっているのは、実は三千万人の国民保険にも何も入っていない人の問題が第一です。その次は国民健康保険に入っている方々の問題です。新医療費体系ができたからというて、それに見合って条例まで直されたというのでは、医療給付の内容がそのときどき変ったのでは、医者も困るし患者も困る、そうかといって国民健康保険というものは今の国民財政の状況、それから国家財政の規模からみてこれも望ましい形にいくということはなかなか困難だ、こういう状態も私は知っておるのです。そこで新医療費体系のでき方によってこっちは直すんだという態度をとるか、国民健康保険団体中央会ということを名のるからには、少くとも国民健康保険というものをスムースにやるためには、でき得るならば新医療費体系はこうしてもらいたい、こういうのではまるきり立場が違うので、私はあなたからあとの立場の証言があるものと期待して聞いたのですが、一つこれはここでまた議論になりますので、あとでもけっこうですから、国民健康保険団体中央会からこの新医療費体系に対する基本的な見解ですね、こういうものも一つお洩らしいただき、われわれにも指導をしていただきたいと、こういうふうに思うのです。
  43. 榊原亨

    ○榊原亨君 柳川さんにお聞きいたしますが、私先ほど端的に時間がございませんで——実際お聞きいたしますと、給付内容をいろいろ違ったものを統一するのには一カ月や二カ月のことじゃない、いつまでかかるかわからないというお話でございました。そうすると条例を改正するということも同じことであると思うのでありますが、厚生省当局は四月までに給付内容を再編成してそうして新医療費体系をやるのだ、こういうお話でありますが、四月までに今の条例を——全国津々浦々の条例を改正してそうしてやれるというお見込みがあなた自身はおありでございましょうか。私そこまで聞くのは失礼だと思ったから先ほど私は御遠慮申し上げたのですが、ただいま同僚相馬委員のお話がございましたので、参考のために承わらしていただきたいと思います。
  44. 柳川力

    参考人柳川力君) その点につきまして、私たちはできるだけ多くの時間をとりたいと思います。そのためには審議会が早く答申いたしまして私たちにその準備をちゃんととらせていただきたい。実際の新しい予算を組みますには、総ワクは大して変らない。こういうような見通しのもとに当初予算は各地で組むものだと思います。それに見返りまして、実際の条例の決定、これは審議にかけます前に、三日前に原案を会議に提出すればよろしいのでございます。それの条例の被保険者に対する浸透という問題がございます。私たちはできるだけ早くこの答申が当局になされまして、その結果公布されることを希望いたします。
  45. 高野一夫

    ○高野一夫君 私ちょっと一点だけ確かめておきたいのですが、湯川さんにお伺いしたいのですが、あなたのお話の中にワクの問題があって、そのワクが増大するということには賛成できかねるが、昨年の三月現在におけるワク、それが正しいか、いなかは研究問題である。十年もの混乱時代を経て今日相当ふくれ上ったワクであるというふうにも考えられる、こういうようなお言葉があったように私は記憶しておるのですが、そこで私伺いたいのは、私も三十年三月、また現在においてもワクの操作というものがだいぶ審議会で問題になっているわけです、御承知通り。そこでそのワクというものについては、私も多分に疑問をもっているわけです。適正であるかどうかということについて……。そこでふくれ上ったいわゆる適正でないワク内の操作はいけない、こういうお言葉は、三十年三月のこの厚生省が基準にしたワクというものには相当検討すべき問題がある、率直に申し上げれば、このワクは正しく言えばもっと圧縮されたワクであったかもしれない、こういうような意味であるかを一つ伺っておきたい。
  46. 湯川憲三

    参考人湯川憲三君) 全く今お尋ね下さったのでございますが、実際私の気持をそのままお尋ね下さったような感をいたしておるわけでございます。まことにわれわれとしても、三月のワク、時期を三月にとったということにつきまして先刻来申し上げましたように一応やむを得ないとしましても、そのワクそれ自体というものは、これは相当検討の余地があるということは考えております。しかし、これは劈頭申し上げたのでございますが、われわれとしてはそういう点が不満があるが、しかし新医療費体系というものを円滑に早くこれをもっていく、あるいはまた完成するという方面から考えますれば、過去のそういったような問題について、いろいろ議論をしてもこれはどうかと思うから、この際われわれとしても、そういったような議論は一応取りやめて、そうして一意専心この新医療費体系の完成のために努力しなければなるまい、私もそういう気持でおる、こういうことを申し上げたわけです。別にあれにこだわって、われわれ連合会としては、あの総ワクの再検討を徹底的な線にもっていかないと、われわれは絶対反対だというような意味ではない、こういうことを申し上げたわけでございます。その総ワクに対する時期はともかくとしまして、総ワクというものに対するわれわれの考えなり、われわれ連合会の全体としての考えもそこにある。これは相当われわれとしては考えてもらわなければならぬ問題だ。しかしその問題については先生なんかも十分承知をして下さり、またわれわれの気持も十分わかって下されば、われわれとしてはそれ以上問題を、これは一つの気分の問題と言いましょうか、新医療費体系という大きな問題を解決するのには、保険者とあるいは医師会というものとのやはり気分の一致と言いましょうか、双方わだかまりのない気持の上に立っていろいろ話を進めていく必要がある、またそうしなければならぬという基本的な一つ考えの上に立ちまして、あえて議論はもうこれ以上進めたくない、こういう気持をもっているわけでございます。その点われわれの気持一つ御了察をお願いしたい、かように思うわけでございます。
  47. 相馬助治

    ○相馬助治君 高野さんから非常にいいことを聞いてくれたので、私は湯川さんの言った意味がよくわかりました。いいことというのは、好ましいということじゃない。総ワクは正しくないという中には、今非常に問題になっているように、故意に総ワクを縮めた疑いがあるとお医者さん方は抗弁しているわけですね。そういう意味で正しくないのだと、こう私は合点していましたところが、そうじゃなくて、むしろこれすらも少し大きいんじゃないかというふうな建前の考え方があるということが今わかったわけです。しかし、ここでやはり議論せずに、私はそういうお考えだけは非常に重要な御意見としてお聞きしておいて一そうしてまたこちらも研究をしたいと思うのです。私さっき了解したのは、高野さんが了解したのと反対の了解をしていたものですから、重ねてここで言うておきたい。  それから私は次に官道先生にお聞きしたいのですが、全くこれはしろうとの質問でして……、しかしこれは非常に医薬分業の論争のときにも問題になって、払いまだにわからないので、お聞きしたいと思うのです。  ちょっと速記をやめてくれませんか。
  48. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  49. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。
  50. 相馬助治

    ○相馬助治君 今からお聞きしますが、ある特殊な薬品を使わなければならないようなケースが診断書の結果示された場合に、ほんとうに微量使ってあと一びんの薬品がむだになってしまう、ないしはその薬がないために特殊な輸送方法をもってこれを取り寄せなければならないということが事実あり得ると思う。従って、新医療費体系の中には特別ケースとして、薬局が、ないしはこれは一開業医の場合にも起き得る問題ですか、特にまあ薬局が申請をして、そういうものに対しては特別の点数を加算するという制度をこの新医療費体系の中に置くことが正しいとお考えですか、それともこれは、そういうケースはあるけれども、日本の医療体系の上からそういう特殊な但し書をこの医療費体系につけることは、事実問題としてはそういうことが予想されるが、体系の上からはさようなことをつけない方が正しいと、こういうふうにお考えでしょうか、特にこの点について一つ御指導的な立場から御意見をお漏らしいただきたいと思います。
  51. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) お答えいたします。  過去におきましては、薬局において処方せんをもらった場合に、その処方せんの内容に相当する薬品を持ち合しておらないというようこともままあったかとも聞いております。しかし、それは事実上処方せんがほとんど出ておらないので、処方せんが出るということがきわめてまれなことでありましたので、各薬局においては準備が不十分だった。しかしながら、もしもいよいよ分業が実施されるとなりますれば、一応必要と思われる薬品は各薬局は貯蔵する予定になっております。また現在も、大部分の薬局においてはもう分業を目の前に控えまして用意を怠らずやっておるわけでございます。しかしながら、このまれに使う希用薬品の問題でありまするが、これは実際問題としてははなはだ困るのでありまして、使うか使わないかわからぬものを全部の薬局がちゃんと用意するということははなはだ困難なのでありますが、しかしある程度は先ほどお話のあったような変敗を来たさないというようなものは貯蔵いたすようには大体に薬剤師協会の方で指導をいたしておるようでありまするが、特に注意を要するような薬品、しかもまれに使うような薬品は、これは要所々々にセンター薬局というものを作りまして、そのセンター薬局に貯蔵いたしまして、電話をかければすぐにこれを持ってきてもらうと、こういうようなしかけにいたしたいと、こういうように予定いたしておるように伺っております。なお、薬品の変敗というようなことはあり得ることでありまするが、この薬品が変敗しているかいないかというような問題は、これは私ども薬剤師を養成しておる立場におきまして、その見分けなり鑑定は十分薬剤師はできるのではないかと思いますので、かりに一度使ってあと長く貯蔵しておって変敗したというような場合に、これを使用するというようなことはないと思いますし、使用させないようにいたしたいと、こういうように考えております。
  52. 相馬助治

    ○相馬助治君 ちょっと先生取り違えていらっしゃるのではないかと思うのです。薬剤師がそういう変敗したものを使用する危険性があるのではないかというようなことは、私は全然考えておらないのです。そうではなくて、変敗し得る薬を使わなければならないという場合には、これは明らかに微量を使うために一びんがだめになる、こういうことを予想して新医療費体系の中には特別ケースとして点数請求の道を開いておく必要があるのではないかということなんです。
  53. 宮道悦男

    参考人宮道悦男君) そのお答えを忘れておりました。ごくまれに使ってしかも変敗のおそれがあるというような場合には、薬局としては相当場合によっては損害を受けるわけでありますので、特別の操作が願えれば、これはまことに好ましいことだと私どもは考えます。
  54. 山本經勝

    ○山本經勝君 井上さんにお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中に、国立病院の引例をなさってお話いただいたのですが、その場合に、非常に医療従業者の労働強化があるように承わった。これは昨日の参考人の中にもちょっと触れられた点ですが、労働強化があるだけでなくて、これらの医療従業者の給与にもこの新点数実施に伴って給与の引き下げ等が起るというような事態はありませんか、この点が一つ。  それからもう一つは、独立採算でやっていかなければならぬ建前もあって、頻度を増す等の方法で収入の増加をはかるであろう、それについてのいろいろな方法があると言われたのですが、そのいろいろな方法というのはやはり具体的にあげておいていただく必要があろうかと思いますので、その点を一つお願いいたしたいと思います。
  55. 井上五郎

    参考人(井上五郎君) 私たちは公務員でございますので、その点非常に恵まれておると思います。しかし、全般的な今医療機関に働く医療従業員というものは、非常に給与が低下して参っております。日本赤十字社の従業員、それから結核予防会関係、こうしたものが大体そうした法人関係の民間の代表的なものですが、こういうところにおきましては最近非常に給与の低下を来たしておりまして、しかもそれがたとえば、組合ですから、年末には年末一時金をもう少しふやしてもらいたいというような戦いを例年起しているわけですが、昨年は抗生薬物の減点と、それから開放性結核患者の二点減点がございましたので、今年は医療従業員自体が、もう年末の一時金闘争を起せないということを去年は言っていたわけです。ですから国立の内部でもこういうことが起っております。たとえば看護婦を採用することにいたしました場合に、高等看護学院を卒業いたしました者は、六級の一号で採用する。それから准看護婦でしたら五級の一号で採用できる。で、国立病院では全部が高等学院卒を要請しておりますが、その比率が、非常に高等学院の採用率が多いために、人件費がふえてきました。それで人件費のパーセンテージが上昇してしまう。それで高等学院の看護婦を出して、そして准看護婦に代える。中には特殊な例といたしましては、高等学院卒業者を一名も採用せずに、准看護婦の採用をするということが出てくる。それからたとえば結核病棟なんかに勤務しますと、調整号俸というものが三号俸つくのですが、これを遠慮したり、それから欠員ができますと、それをわざわざ欠員を補充しないで、人件費のパーセントを下げる。こういうような形が国立病院で出てきております。それから民間関係では、先ほど申しましたように、全般的な医療従業員の労働強化と同時に、低賃金化ということが現われてきている。  それから独立採算の建前で収入を増すという方法があるというのですが、これはたとえば検査を非常にたくさんする、頻度をふやしていく。検査料はいいようでありますから、それをやっていって、それから処置とか、注射とか、こういうものはできるだけ避けていく、そういうことをやりますと、確かに収入のバランスの変動を来たすことができる。実は十日前後の毎日夕刊で、新潟県十日町病院の院長さんがプラスだという発表を新聞に報道されております。非常に私たちも不思議に思ったのでありますが、あれはおそらくそうした今後の、たとえば検査をたくさんするとか、まあそういうことで計算されたのじゃないかというような疑問を私たちも持っているわけです。それから指導料がまあ上っていきますので、これも指導料をふやす方法はある。ですから健康保険の改正の、改悪に関連があると申しますのは、健康保険の、今でも、たとえば今こちらで総医療費ワクの中に疑問があるとおっしゃられましたが、これ自体が、お医者の不正だとか、あるいは医療機関の不正だとか、こういう問題だけで律しされない問題があるわけです。収入が、非常に低賃金であるために、たとえばビタミンの注射をよけいにするとか、そういう二とをしていかなければ、医療機関、医者の収入自体が非常に低下しているというのが現実でございますから、ですからこういうことは新医療費体系の問題でも、各医療機関が放任の状態だったら、おそらくそういうふうな方法をとるだろう、これが非常におそれられる。ですからそこで健康保険改正の問題が非常に関係している、こういうふうに申し上げたのであります。
  56. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ちょっと私から全員の方に御要望申し上げておきたいと思うのですが、きょうは御承知通り時間が非常に短かかったということと、私どもがこういうものを出して——きのうは実はお医者さんがほとんどでありまして、こういうものを出しても、これにはほとんど触れずに御意見の開陳をせられたように思うのですが、そして時間もきょうはなかったために、これに若干とらわれたやにも感ずるのであります。従って時間もございませんでしたので、そういうことを申し上げるのははなはだ失礼でございまするが、あのときにこういうことを若干まだ言いたかったのだが、時間がなくて言えなかったということがございましたならば、あとで書類でお出しを願いたいと思います。なおまた私ども、きょうお聞きしまする件では、若干趣きを異にしておる面もあるので、また書類でお聞きしたい面もあろうかと思いますが、それには一つ御協力願いたいと思います。  いかがでございましょう。いろいろまだ御質問はあろうかと思いますが、参考人の方に対する質疑はこの程度にいたしておきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。  それではこの機会参考人皆さんに申し上げます。非常に皆さん方には長時間にわたって、貴重な御意見を開陳下さいましてありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  ではこれで休憩いたします。    午後一時十四分休憩    ————・————    午後二時十五分開会
  58. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) それでは休憩前に引き続きまして、新医療費体系に関する件について参考人の御意見を聴取いたします。なお守安参考人は地方へ旅行のため出席いたしがたいとの御連絡がございましたことを御報告いたします。  この機会委員会を代表いたしまして、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。参考人方々におかれましては、御多忙のところ特に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。新医療費体系の制定は厚生行政特に医療行政に関する重要な問題でありまして、国民保健の向上に直接関係を有しまする各種の要素を含んでおりますので、本委員会におきましては、厚生省当局から説明を聴取いたしますとともに、本問題に関係を有せられます各位の御意見を拝聴いたしまして、調査上の参考に資したいと存じておるのでございます。どうぞ忌憚のない御意見を御発表下さるようお願い申します。  次に御意見を発表いただきます点の参考資料などは、さきに文書でお知らせいたしておきましたが、それらの項目にとらわれることなく、広く国民の立場から率直なお話を願えればまことに幸いと存じます。ただ時間の関係上、一人当り十五分以内で御発表をお願いし、なお後刻委員方々から質疑がございますので、これに対するお答えをお願いいたしたいと存じます。  なお委員方々におかれましては、時間の関係もございますが、午前中と同様に、参考人意見発表が全部終りましてから御質疑をお願いいたしたいと存じます。御異議はございませんか。
  59. 榊原亨

    ○榊原亨君 参考人の方の時間的関係がありますので、もしも早く御退席になるような方がありますならば、その方が済んだところで、もしも質問がありましたら質問さしていただいたらいかがかと存じます。
  60. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) それでは急ぐ方々から先にお願いをすることにいたしたいと思います。  それでは朝日新聞論説委員の江幡さんに一番最初にお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  61. 江幡清

    参考人(江幡清君) 江幡でございます。新医療費体系につきまして、きわめて概括的な意見を申し上げたいと存じます。  新医療費体系が、構想におきまして旧来の医療体系よりもまさるということは、これは明らかな事実であると思います。やはり物と技術分離するという構想が、現在の医者の社会的な地位というものを確立し、さらに医業の面している経済的な危機を将来において救うであろう、そういう点において、やはり、現在の医療制度よりは合理的である、その点は否定することはできないと思います。  それではこの体系が果して適正であり、合理的であるか。つまりこの中に盛られている技術料の算定その他が果して適正であり合理的であるかという点になりますると、これは私ども合理的であると言いきる自信は持ちません。また合理的でないという確信も持ちません。これはきわめて専門的、技術的な問題でございまして、やはり専門の方の御判断に待つべきでありまして、私どもしろうとの第三者とすれば、意見を差し控えたいところでございます。ただ常識で考えまするならば、この新医療費体系の採用に当りまして、総医療費ワクをかえない、それから各診療機関の所得を従来と変動しない、従来の所得を各診療機関ごとに確保するようにする、そういう二つの前提があったように聞いております。もし、そうであるといたしまするならば、この体系の中における技術料の算定、その他が合理的と申しましても、一つの限界がある、初めから総医療費ワクがなかったり、あるいは所得に変動を来たしてもよろしい、そういうふうな前提がございまして、そうして自由に技術差、あるいは技術難易度、そういうものを算定いたすといたしましたならば、これは合理的にできたと思います。しかし、総医療費ワクを変えないし、それから各診療機関の所得に変動を来たさない、そういう限界で考えますると、これは常識的な算術で考えますると、やはり合理的にならない。合理的と申しましても、やはりワクがあるのではなかろうか。もちろんその中で非常に合理的に作業されたであろうということは私ども想像しております。しかし、これは私どもよりもっと専門の方の御意見に待つべきことであります。従ってこのお尋ねにもございまするが、技術難易度、その他のものが十分に考慮されておるか、そういう点についてはおそらく無理があるだろう。  それからいま一つ私どもとして、この新医療費体系の作業に当りまして若干疑問に感じますのは、やはりこういうような大きな現在の医業界にとりまして根本的な制度の改正を行う場合には、もう少し民主的に作業を進めるべきだったと思います。伝え聞くところによりますと、この作業に当りましては、やはり厚生省が極秘のうちにあるいは医師会、医学会に諮ることなく作業いたし、それを昨年末に発表いたしたのでありまするが、これは従来の医療費体系のいろいろないきさつからいたしましてやむを得ない点もあったと思います。やねを得ない事情はあったと思いまするが、やはり作業の手続といたしましては、特にこれほど根本的な問題の決定におきましては、やはり欠けるところがあったのじゃなかろうか。十分に医学会の意を聞き、あるいはさらに医師会のその他各界の意見を聞き、その上に幾つかの基本的な原則を立てて、そして作業をすることがやはり至当ではなかったか、もし、ただそういうことをする際に、厚生省にそういうことはできない、そういうふうにできさせたものが、いわばこの問題がきわめて政治的に扱われる、あるいは雑音が多いということになりますならば、これは私は関係者におかれましても十分にお考え願いたいところと存じます。  それから簡単に結論を申したいと思いまするが、要するに私の考えといたしましては、この新医療費体系は旧来の医業制度よりは、これははるかに合理的である。そうしてまた進んでおる。そして、おそらくこれによって医者というものの社会的な地位が確立される、専門的な職業としての社会的な地位が確立される。現在のように薬を売っておるような医者でなくて、専門的な職業としての地位が確立される。それからまた医者の所得も将来においてやはり確保されることになるだろう。ただそういう意味では旧来のものよりも進歩的であり、これを実施すべきである。しかしその中には必ずしも全体の技術、その他から見まして、合理的であるとは言い切れないものがある。これはやむを得ない。しかしこの制度が旧来のものよりも合理的であるならば、やはりひとり政府あるいは厚生省だけが実施するというのではなくて、医学会の方も、医師会の方もよりよい合理的な制度を作るために協力していただきたい。それが国民医療にとって幸福なことではなかろうか。  それからまた正面には出ておりませんが、この医療費体系に対する反対の中で、医者の所得が非常に変動するのではなかろうか、あるいは減るのではなかろうか、そういう疑問がございます。厚生省の方はそういうことはない、所得は減らない、そういうふうなことを申しておりまするが、しかし減るかもしれないという不確定な要素もございます。おそらくその点におきまして、実際の現場の医者の方の不安は非常に多いと思う。とするならば、なおさら医師会の方も医学会の方も協力してこの体系をよりよくするために努力すべきではなかろうか。それからもし時間的に間に合わないとするならば、あるいは半年なりまた一年なりたってからこの中身をかえていってもいいのであります。一年たってやってみて、もう少し国費の経済に全体に余裕が出て参る、あるいは薬代がもう少し下る、全体としての国民生活がもう少しよくなって参る。そして医者にかかる率も多くなる、そういうふうなことも予想されますし、そうなった際に現在の技術難易度、その他の点において不合理なものを改める余地も出て参ります。従いまして、現在多少不備な点があるといたしましても、やはり旧来の制度より合理的であるとするならば、この際実施をいたし、そうしてさらに後刻においてこれをよりよい完全なものにするために協力し、また改めていく、そういうことが必要ではなかろうか。  それからいま一つこの新医療費体系の問題につきまして非常に不幸な事実は、やはりこれが健康保険赤字対策と時期を一緒にしたことであると存じます。もし健康保険赤字という問題がなければ、この新医療費体系という問題はもう少し円滑に行い得たかもしれない。理論的に考えますると、新医療費体系健康保険赤字とは関係ございません。ただ結果といたしまして健康保険赤字にどういうふうな対策がとられるか、そのことによりまして若干医者の所得に変動が起ります。それによって新医療費体系もその方面から影響を受ける。その方面から新医療費体系は医者の所得に変動を与える、そういうこともあろうかと思います。そういう点で新医療費体系実施健康保険の大きな赤字と時期を同じくし、そうしてその赤字対策が患者の一部負担とか、そういう若干患者のあるいは被保険者の受診を制限するごとき対策が考えられている最中にこの問題が起ったということは非常に不幸なことであった。そういうふうに思います。しかしこの二つの問題はやはり理論的に別であると思いますし、従ってその点を数字的にばかり判断するのでなく、やはり新体系新体系として合理的な解決の方法を見出さるること、これが必要ではないか、こういうふうに思うわけであります。  以上総括的な意見を申しまして意見にかえます。
  62. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) それではお急ぎのようでありますから、読売新聞の論説委員の梅田参考人にお願いいたします。
  63. 梅田博

    参考人(梅田博君) 昨日から引き続きましてすでに二十余名の参考人がその意見を陳述されまして、すでに言うべきことは言い尽されているのではないかと思うのでありますが、それでごく端折りまして私の考えを申し上げたいと、こう思うのであります。  で今度の新医療費体系というものが、物と技術というものを分離する、そういった基本的な考え方に対しましてはこれは全く賛成であります。しかしながらそれが一たび数字となって現われまして、そうしてあるいは点数制度となりました場合には、そこにその考えは正しくても大きなあやまちが出てこないか、ことにこの資料の基本になりましたものは、昨年三月の調査並びに七月十七日から七月二十三日におけるところの精密調査によったものと伺っておりますが、果してこれだけの大きな仕事がこういつたような短期日のうちに合理的にして完璧なる結論が出てくるということは、これは常識論として考えられないのでありますけれども、しかしながら何と申しましてもこの問題に直接タッチした人間でもありませんし、また数字をひっくり返してせんさくするひまもありませんので、これは御専門の方々の御研究におまかせしておきます。  そこで私は多少私の疑問とするところにつきまして二つ、三つ考えを申し述べたいと思います。  その第一点は、この新医療費体系というものが全く健康保険赤字の穴埋めに関係がないと、こう厚生省の方も申しておられまするし、一見理論上は別個のように考えられるのであります。しかしながら私は必ずしもこの間に何らの因果関係がないものとは考えていない。その第一点は、何といっても健康保険の受診者を抑制するといったような考え方がこれに出ているように思うのであります。たとえば注射をできるだけ押える。第二に再診料をとる。そうしてこの保険の利用者を少くしようという考えが全然無関係、全然出ていないとは私は考えられないのであります。現在健康保険におきまして、乱療ということは事実であります。ちょっと疲れたといってはビタミンの注射をする。しかしながら医療費の増大というものは現在世界的な傾向でありまして、いやしくも健康に支障のある人間はどしどし医療行為を施すというのが厚生行政の最も大切な点でなかろうかと、このように思うのであります。しかるに、ただだから医者はやるだろう、また医者は必要もないのに注射する、これはけしからぬ、幾ら言ってもだめだから保険の方で押えてしまえ、こういったような考えがもしあったとしたならば、これは医者及び国民の良心を信じない官僚的な方法だと言わざるを得ない。ことに受益者負担といったような考え方で再診料をとられるというお考えがあるのであります。受益者というものは一つのものによって経済的な利益を得る、経済的な利益を得て余裕ができるからそこからとるからというのが大体の受益者の負担金考えだ。病気につきましてはいかなる経済的な利益増加が出ましても、そういったような考え方は少し違っているのではないかと思います。これが第一点であります。つまり医者にかからせぬための新医療費体系、こういったような感じはわれわれ国民の側としましては深く思わざるを得ないのであります。  第二点は、これも申し上げたことでありますが、果して当初案による再診料の三十円というものが零細所得者の負担にたえ得るかどうかという問題であります。厚生省のお話によりますと、家族の方は診療費というものを負担しておる、本人は負担をしていないのだから本人からは三十円とる、こういうお話であります。しかしながら、これがたとえば日給取りの場合、もしくは月給取りといったような場合、こういったような場合に、本人は病気になりますから収入一つも入らなくなるのであります。しかるに再診料だけはきちんきちんととられる。これを逆にしまして、本人が元気であって家族は病気の場合は、多少の診療費をとられてもこれは生活上何の影響もありません。しかしながら本人が日給、月給の場合もしくはいろいろの社会にありますが、たとえば基本給が非常に少くてあとは過勤料もしくは請負制度といったような月給制度になっているような場合には、本人の収入はなくなるが、再診料はとられるというようなことになりまして、非常に窮地に追い込められるのではないか。つまり、これは余談にわたりますけれども、私の個人的な考え方でありますが、零細所得者に対しましては社会保障、それより上の者に対しましては現在のような相互保険的な考え方でやっていく。それでなければ今申しましたようにもう少し下に厚い政策をお考えになって、この再診料というものを引き下げる、そういったようなあたたかいお考えがいただきたいと思うのであります。  第三点は、これは現在の保険制度も同様でありますが、大学出のほやほやの、クリニックを終ったばかりのほやほやのお医者さんと専門の大家と、ここに診断の個人差というものを認めないということは、あまりにも機械的である。たとえば英国の上院におきまして、こういうように参考人として医者が呼ばれた場合、専門の大家というような人、いわゆるフィジシャンというものは三ポンド三シリングの日当がもらえるのでおります。ところが町医者メディカル・プラクティショナーというものは二ポンド二シリング、こういったところでお話するにしましても、大家といわゆるそれより下のお医者というものの差はつけてあるのであります。そこで現在英国の保険制度というものは、その個人差というものは医者の団体がこれを主宰してきめることになっているように聞いているのでありますが、こういったようないわゆる機械的にものを定める、換言しますれば、質的にものを見ないで、単に量的な方面からばかり観測していこうというところの一つの思想の流れ、これに対しまして私は大きな疑問を持つのであります。この御当局の努力に対しましては私は非常に敬意を払い、その理想を追究していこうという考えに対しても讃辞を惜しまないものでありますけれども、いささかそういったような一つの刑にとらわれて独走している感があるのではなかろうか。その証拠には、たとえばこれに対しまして社会党から反対論が出ておりますし、自由民主党からも修正案が出ているように思うのであります。真に科学的であり、合理的なものであるならば、おそらくこういったような反対論が出る余地もなければ、修正論が出る余地もなかろう、いささか問いをもって答えになすようでもりますけれども、私は大ざっぱな見方でありまして、先ほどから申し上げました通り、あまり数字その他につきましては何のつかんでいるデータも持っておりませんが、こういったような案を見まして概括的にこのような疑問を抱くのであります。賛成とか反対とかそうはつきりしたものではなしに、単にわれわれがこう疑問と思いましたことを申し上げまして、あえて問題を提起しまして陳述にかえさしていただきたいと思います。
  64. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) ありがとうございました。  お諮りいたします。江幡、梅田両参考人は急いで退席されるということでありますので、御質疑の方ございましたら……。
  65. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 お尋ねいたします前に、ちょっと一言今梅田さんの御発言の中に、社会党はこの新医療費体系に反対しているという言葉がありましたが、私は社会党の政策審議をやっておりますが、反対いたしておりません。修正はいたしておりますけれども、原則的には賛成しているのです。  それでお伺いいたしますが、江幡さんあるいは梅田さんにお願いしたいのですが、物と技術分離——医療行為における物と技術分離医療制度の進歩の上に大切な意味を持つという点においては私どもも大いにこれは賛成しておるところです。医者が専門的職業としての地位を高めていくし、医療技術というものが進歩する。ところが江幡さんも梅田さんもともに技術料というものに対して疑問を持っておられるわけなんであります。私どもも疑問を持っておるわけです。すなわち現在の医療費というものの中から薬価、物と、それからいろいろのものを差し引いた残りが技術料に充てられておるわけでありますからして、そういうワクの中から適正な技術料というものが出てくるはずがない。この点ははっきりしておると思います。  それでお尋ねいたしたいのですが、一体医師技術料をどのように評価すべきでしょうかしら。第一点はその点ですが、もう一つ疑問がありますが、まずその点を江幡さん、それから梅田さんからお伺いいたしたいと思います。
  66. 江幡清

    参考人(江幡清君) 医師技術の評価につきましては、非常にむずかしい問題があると思います。ということは、医師の持つ社会的な使命というものがございます。つまり医師は人間の、しかも国とすれば国民の生命を預かります。その意味におきまして、医師技術というものは非常に尊重すべきものであります。これをそれでは経済的にどのように評価するか。やはり国が進歩し、文化的になるに従ってその評価は高くなって参る。それでは具体的にどのくらいにするか。これは非常にむずかしい問題でありまして、たとえばヨーロッパにおきまして医者とそれから一般の労働者の所得の差が大体四・六倍くらいにたるかと思いますが、これを経済的に医者の技術料を評価する場合には、結局はその医者の技術に対する社会的な使命に対するいろいろな問題と、それからこれを医者の生活に当てはめてみた場合の問題、つまり医師の社会的な使命というものを達成させるに十分なだけの生活を与える。そういうことがやはり医者の技術料の評価の基礎になると思います。それじゃ一体医者にどれだけの生活を与えたらいいか。先ほど申しましたように、ヨーロッパですと、多分一般の熟練労働者の五倍くらいあったと思います。それから戦前の日本におきましては、これは非常に医者の技術料は高かった。技術料が高かったのじゃなくて、医者という職業が高かったと思いまするが、これは非常に高かった。これは見方によりましては高過ぎたと見てもよろしゅうございましょう。そういう点で考えますると、今の日本は、特に戦後の経済的な縮小の中で、相当生活水準が一般に低下しております。それからまたかなり平等化して参りました。そういう中で、医者の生活にそれじゃヨーロッパ並みに一般の労働者の五倍の収入を与えるような保障ができるような技術料を出すべきかどうか。これは非常にむずかしいと思いますけれども、ただ巷間伝えられるところによりますと、たとえば現在の公務員の職にある医師収入が一般の公務員より悪い。あるいはまた病院に勤務しておる医者の収入が公務員よりも悪い。あるいは電産ならば電気産業の労働者の平均賃金よりも悪い。しかし医者として必要な技術の修得その他の問題はこれは非常に高い経験と学識を要するわけであります。従いましてもし一般の公務員、あるいは一般の労働者、あるいは俸給生活者、そういうものの平均よりも悪いという事実がもしかりにありといたしまするならば、これはやはり医者に対する正当な待遇でないし、またそういうものを基礎として考え技術料には、これはやはり問題があると思う。もちろん一挙によくすることはできません。また国民経済の成長に伴ってよくなって参りましょう。だけれども、とにかく専門的な職業として水準以上の生活は保障すべきであると思います。
  67. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 もう一つ梅田さんにお尋ねいたしたいのですが、江幡さんも梅田さんも、この新医療費体系そのものは国民医療の進歩の一つ段階として賛成である、すなわち物と技術医療行為において分離するということは、医療の進歩に大いに貢献する、そういう意味においてこの新医療費体系は非常に原則として賛成であると、こういうように陳述されましたのですが、それで言論界におられる方々としてお尋ねいたしたいのですが、この新医療費体系のそのような内容といいますか、性質といいますか、これが一つ国民医療に対して進歩的な、あるいは革新的な、あるいはそれをよくしていくものであるということが一般国民に一体どれだけ徹底しておるものでしょうか。ことに医師会、医師の方、保険医の方々が強力にこれに反対しておるという現実、すなわち一日休診をやるとか、保険医が総辞退をするというようなことが言われて、また一部なされております場合に、一般の国民が果して正しくこの新医療費体系というものを評価しておるでしょうか。あるいはこれは悪いものであるというような印象を受けておるのではないでしょうか。お医者さんたちがこんな反対をするのだったらこれは悪いものであるというふうに印象を受けられておるのではないでしょうか。言論界におられる方々としてそういう点をお聞かせ願いたいと思います。
  68. 梅田博

    参考人(梅田博君) 一般国民は、これは私の率直な考えでありますが、いいとも悪いとも認識していない人々がほとんど大部分でありまして、どちらの運動も民衆に徹底していないでからすべりをしておるように、私の考えとしてはそう思います。
  69. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 江幡さん、一つお願いいたします。
  70. 江幡清

    参考人(江幡清君) 私も梅田さんと同様に考えます。やはりこの問題が非常に技術的な、専門的な問題であるということが一つと、それから、何と申しましょうか、医師に対する従来の患者考え方というものは、やはりそう大して変化していないと思います。それと、ただこの新医療費体系の問題が、私先ほど申しましたが、健康保険赤字対策とからみ合せて論ぜられておるところに非常におかしな点が出ておるのじゃなかろうかと、そういう感じを持っております。
  71. 山下義信

    ○山下義信君 私遅刻いたしまして、江幡先生の一部の御所見を拝聴する機会を逸したのでございまするが、もしお話の中に、すでにお示し下されてありますれば御指摘をいただきたい、またお許しをいただきたいと思いまするが、両先生に私伺いたいと思うのでありまするが、このたびの新医療費体系の持っておりまする性格なり、方向、目的と申しますか、少し誇大かもわかりませんけれども、ある意味におきましては、日本の医療に対しまする一つの革命ということも言い得られるような気持がいたします。それで私が新医療費体系のみを見ますというと、そういう性格が非常に積極的に打ち出されてありまして、確かに一つの方向が、いわゆる医療の合理性といいまするか、いろいろな表現の言葉は穏当な言葉を用いてありまするが、私が先ほど申しましたように、非常にそういうふうな医療の世界における革命的な方向が、革新的の方向が示されてあるわけです。非常にそれが強い。新医療費体系のみを見ますというと、私はこういうふうな医療の世界に大きな、革命という言葉が使いたいのでありますが、革命的な施策をとるという時分には、関連したやはり諸政策がすべてピッチを合せてそれぞれ整っていかなければならぬのじゃないかという気持がいたします。これは私の意見を申し上げるのじゃないのでございまして、私の質問の要旨を御理解いただきたいと思うのでありますが、従いまして医療の革新とは何ぞや、健康保険の場合にとりますれば、一つには保険医制度の問題でございます。それから健康保険のみじゃございません。医療制度の面にとりますれば、医薬分業の制度でございます。従いまして医薬分業の制度と健康保険の制度、そして両者に共通する新医療費体系のこの内容、これが私は三つがピッチをそろえ、方向を同じゅうしなければ、いわゆるテンポを同じゅういたしません限りには、その中の一つがずれておりましたのでは、新医療費体系内容そのものでなくして、全体の方向として不ぞろいになってきたのでは、私は政治的に見まして果してどうかという気持を、疑問を一つ持っております。私の個人の意見でございますが、両先生はどうお考え下さいますでしょうか。私ども国会で決定いたしました現在の医薬分業関係の法律案はまあ御承知のように不徹底で、いわば現状維持の程度でございまして、もうかろうじてまあ少し色がついたという程度が現在の医薬分業関係法律でございます。また政府が出そうとしておりまする健康保険内容とする保険医制度と申しますのも、これもただ単に一つの、ごくほんの一部分の制度と言えば制度でございましょうが、多少の規制といいますか、そういうのを加える程度でありまして、ただいま梅田先生のお話のようなイギリスの保険医制度のごとく確固たる一つの制度の九牛の一毛にも及びません。保険医の生活やその他の保障もございませんし、もうほとんど権利もございませんので、従いましてそういう不ぞろいな中にこの新医療費体系のみが合理的に革新的に急ピッチに理想を追うていきましても、私は全体ひっくるめまして医療の改善、革新ということになりまするとどうかという気持がいたします。従いまして新医療費体系の持っておりまする革新の程度が他の諸制度と比べまして少し出過ぎたような、行き過ぎたような気持が、まあ今後もっと研究さしていただかなきやわかりませんが、気持がいたします。やはりそれらと足並みをそろえていく必要があるんじゃないか、そういう点において少し物と技術分離の仕方が、点数の多い少いは別として、その考え方が、完全な医薬分業が実施せられた制度の上に通用しても差しつかえないほど進み過ぎておる、理想に走り過ぎているような気がするのです。ただ与える点数報酬程度はあるいは低いかもわかりません。そういう気持がいたしますのでございます。そういう全般的に見渡しましてのこのバランスといいますか、この新医療費体系の持っておりまする行き方につきましての御所見はいかがでございましょうか。
  72. 江幡清

    参考人(江幡清君) お答えいたします。お尋ねの御意見はまことにごもっともな点が多いかと存じます。確かに医薬分業は実施されると申しましても、従来とあまり変らないようなものでございます。従って新医療費体系だけが独走しつつある。そういうふうなことはやはり全体の政策としてまずいのではなかろうかという御意見もあろうかと思います。その点は私非常に政策的にむずかしいところだと思いまするが、しかし現在の医療制度をもってする限りやはり今の医療というのは崩壊を早めつつあるのではないか、言葉が極端かもしれませんが、やはり無理ができているように思います。従って三者の歩調が合えばこれはもちろんよろしいのでありますが、しかし多少合わないところがあってもどこか一つから先に手をつけてゆく、そういうことも考えられるのではなかろうか。それからまた現在の保険医にいたしましても、今健康保険の普及率は六割強でございますけれども、これは至急に拡大の方向をとってもらいたい、そしてとにかく若干でこぼこがございましても、この際はまずこれを実施してみてそしてもし実情に合わない点があれば、その中のいろいろな技術上の問題はやはり直すところがございましょうが、やはりどこからか先に少し進み過ぎてもやってみた方がいいのではなかろうか、そういう感じを私は持っております。
  73. 梅田博

    参考人(梅田博君) 私が先ほど大体、御質問のようなことに対しまして申し上げたつもりであります。  重ねて申し上げますと、三月並びに七月の調査によりまして、この医療費体系というものが大体作られた、私専門家でありませんからはっきりしたことはわかりませんけれども、三月、七月の一区間を区切ってそれが果してほんとうにだれしもが納得できる医療費体系というものができるかどうかということに疑問を持っております。さらにこれが医学会並びに医師会、そういったような方面の広く御意見を求められないで、そうして一部の官庁によって立案せられ、こういったような大きな変革というものがそういったようないわばまあ専断的な考えできめられていいのかどうか、従いましてその中に大きな官僚主義というものが走っているのじゃないか、その官僚主義というものの克服ということが現在の民主主義というものには最も大切なものではなかろうか。この考え方は非常に正しい、物と技術分離というものは正しいと思いますけれども、ただそれだけの資料でこれは唯一のものである、合理的なものだといったようなことに対しましては、私は非常に危険性を感じているのであります。やってみたら、不都合であったら直せばいいという考え方もあると思いますが、もう少し調べてからやってもいいのじゃないかと、私はそのように考えております。
  74. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) お二方の参考人の方は三時ころお帰りにならなきゃならぬのでございますが、どなたか御質問はございませんか。別に御質問もございませんければ、お二方に対して一言お礼を申し上げます。  まことにお忙しい中をわざわざお繰り合せいただきまして、貴重な御意見を開陳いただきましてまことにありがとうございました。  それでは次いで鈴木参考人にお願いいたします。
  75. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 私、主として実態統計の方をいぢって参ったのでありますが、最近大阪府の医師会が開業医の実態調査をされましてそれを分析いたしまして、大阪府における開業医の実情というものが数字的にかなり明らかになりましたので、その結論をごく簡単にまずお話し申し上げて、そしてそういう実情と関連させて新医療費体系について意見を申し述べたい、こういうふうに存じます。大阪の開業医の実態と申しますのは、これは昭和二十九年七月に大阪府医師会が実施いたしましたかなり詳細でございますが、若干粗雑なサンプル調査でございまして、従ってここに出て参りました結論をもちまして、厳密な報告であるというふうに申し上げることはできまいと存じますけれども、これによって大阪府の開業医の実情というものの大体をつかむことができるかと存じます。大阪府の開業医を収入別によって分類いたしますと、大体上中下の三つの層に分けることができます。下層は大体総数の三割、それから中層は四割、上層が三割という割合になっております。下層と中層との境界線は月収総額九万円、中層との境界線は月収総額十八万円、これが境界線になっております。なおいわゆる開業医と申す人たち収入の上限は、大体六十万円と押えて差しつかえなかろうかと存じます。そこでこの下層、上層、中層の開業医の状態と申しますものをごく簡単に報告申しますと、まず月収九万円以下の総体の三割を占めますところの下層の開業医たちは、これは非常に収入総額、俗に売り上げと申しますこれが少いために、経営か動揺しているということが言えるのじゃないかと思います。生活は大体一般勤労者並みの生活もしくはそれよりもなお低いものもある、大体半分以上が月三万円以下の生活をしておりまして、残りの大部分も月六万円以下の生活をしておる。月六万円以上の生活というのは大体四%、六万円というのは、厚生省の課長さんの中くらいから上なら六万円以上の生活になるだろうと推定するのでございますが、そういうふうな生活をいたしておりましても、下層の下部では完全に赤字を出しております。上部の方でも非常に赤字を出す危険性にさらされております。全体として全体の六〇%が赤字を出しておる、薬品の材料費、その他の支出も非常に切り詰めておりますが、大部分はおそらく生活に追われているために切り詰めざるを得ないのじゃないかというふうな気がいたします。たとえば月生活費一々八千円、薬代その他の経営総支出一万八千円というふうな数字を見ますと、何となしに私などこわくなります。これではおそらく砂糖水でも飲ませなければ、一万八千円の経営総支出ではやっていけぬじゃないかという気がいたしておる次第でありまして、要するにこの下層において黒字を出しております黒字というのは、健全な黒字でなくて、生活並びに経営を極端に切り詰めた結果の黒字、こういうことが言えると思います。なおこの層で五十五才以上の老人の比率がかなり高く、また保険収入に対して依存する率の少いものの比率が非常に多い、要するにこの層はわれわれ患者となるべき連中の側から申しますれば、はなはだありがたくないお医者さんである、こういうふうに申さざるを得ないわけであります。九万円という収入は税支出に見合う部分を含んでおりませんので、それを加えますと、大体大阪府におきましては開業経営が安定いたします最低限界というのが、現状のもとにおきましてございますが、これが十万円というふうに押えていいんじゃないか、こういうふうに考えます。そういたしますと、この十万円以下の月収を持ちますところの開業医は、大阪府は開業医総数の約三六・二%、四割近く、これが安定線の下にあるということになるわけでございます。  次に中層月収九万円以上十八万円未満の中堅層でございますが、これはさき申しましたように、全体の四割、一番大きな層でございますが、一般的にはどうにかこの層では経営が安定して、まずやっていけるというところでございます。上の方ではサラリーマンの上層程度、具体的に申しますれば、六万円ないし九万円ぐらいの生活をしても、何とか赤字を出さずに済むか、経営の改善にも幾らか費用を回すことができる、こういうふうな状態でございます。年令的には青年層、壮年層の比率が高くなりまして、保険収入の依存度は高いものの比率が圧倒的に大きくなります。下層では助手を使わない、看護婦その他を使わない経営がかなりありましたが、この中層になりますと、ほとんどの経営が助手を使っている。ただし使っておっても大体一人ないし二人というのが圧倒的でございまして、しかも専従家族の比率が非常に高い。要するにこの中層と申します層は、いわゆる開業医という概念を最も端的に代表する層である、こういうふうに考えますと、この層が一番大きな比重を占めているということは、いろいろな意味から申しまして、注目に値すると思います。  最後に上層でございますが、つまり月収十八万円以上の層、これは大体サラリーマンの上層程度生活をしておっても、赤字は出ない。ただし月支出九万円以上の生活をすると、この上層下部の方では、また赤字を出しております。経営は完全に安定しておりまして、赤字を出しております経営は、月九万円以上の生活をしているいわゆるぜいたくと申していいかどうか知りませんが、一応ぜいたくな生活をしている経営だけになる、こういうふうになっております。  なお月九万円以上の生活をしております開業医は、大阪府では全体の一〇%、一割見当でございます。生活水準の高いものの比率が中層、下層、に比べましてずば抜けて多いのでありますが、たとえば中層では三割であるのがここでは七割、しかも高率の黒字を出しているものの比率が圧倒的に高い、こういうふうな状態でございます。ただしこの黒字というのは、これはお医者さんの報告でございますが、お医者さんは大体償却費というのを非常に見込んでおりませんので、この黒字を正直に全部が黒字であるというふうに考えていいかどうかは疑問と存じます。それからこの層では年令的に申しますと、下の方では中層と変りませんが、上部になってきますと、青年層ががたっと落ちて、圧倒的に壮年層の比率が高くなり、保険収入への依存度は最も高く、経営形態は、医者が一人に看護婦が一人ないし二人という伝来の開業医の経営形態、家内工業的な経営形態と申しますか、それを打ち破る、あるいは打ち破らざるを得ない条件が、この層では出て参りますが、現実にそういうような近代的な経営が出て参りますのは、上部の方だけでございます。まあ大体のところで大阪府の開業医の状態というのはこういうふうな状態にあるわけでございます。  さてそこで新医療費体系の問題なんですが、お医者さんは非常に新医療費体系が行われた場合には収入が減るというので騒いでいらっしゃいます。私たち消費者といたしまして、正直なところ、お医者さんの収入が減って、お医者さんの経営が悪化する、あるいは生活水準が下るということは実は無関心でございまして、人のことどころではないというのがほんとうに正直なところでございますが、しかし経営が、収支が悪化し、あるいは生活水準が悪化いたしました結果として、医療内容が荒廃してくるということになりますと、これは患者となるべきわれわれにとってはこれは重大問題だ、こういうふうに考えざるを得ないわけでございます。  そこでこの新医療費体系内容をいささか検討してみたのでございますが、御趣旨は先ほど二人の参考人の方がお述べになりましたのと大体同じように、私も物と人とを分離するという基本的なお考えは、けっこうだと存じます。しかしながら私は統計技術のことを主としてしゃべれということでございますので、基礎資料の作り方についてみますと、かなり私、自分が統計を作ったりなんかいたします経験からしまして、ふに落ちかねるという部分があるように思うのでございます。  その第一点を申しますと、この基礎資料の三月調査の方にございますが、基礎資料は診療報酬請求明細書、これを対象としてこの標本を抽出するということになっております。明細書を対象として標本を抽出するならば、その標本を抽出すべきところの母集団を幾つかの層に分ける場合には、これはあくまでも明細書を基準にして分けるべきであるにもかかわらず、この層化をいたします場合に、たとえば病院をベットの数、種別、経営主体というふうなものを基準にして層化をしておられる、これはおかしいじゃないか。明細書を対象として抽出する場合には、層化はあくまで明細書によってやらなければ——たとえば人間を背の高さによって分類すると言っておりながら、洋服の色合いによって分類するというのと同じことでありまして、もし背の高さと洋服の色合いとの間に何らかの連関があるということが証明されておりましたらしいて無理とは申せませんけれども、そういうふうな関係の全然ないところのベット数あるいは種別あるいは経営主体というふうなものによって層化をやっておられる、これはおかしいと思います。  それから第二点でございますが、これは病院それから有床診療所これからは十分の一を抽出し、入院分は全数、それから入院外は明細書の十分の一、一方無床診療所の方は百分の一その全数ということになっておりますが、どうしてこれを百分の一なら百分の一、十分の一なら十分の一と統一なさらなかったのかという点に疑問を感じます。特にそれを合計したものをもって開業医全体の動向を現わすものというふうにお考えになるのはどうも私はふに落ちない。なお一方の方は、さらに十分の一を抽出すべきであるということでしたらまあ一応理屈は合うかもしれませんけれども、それにしてもどうしてそれならそういうふうな二段階に分けて抽出するというふうな複雑なことをなさったのかということがわかりかねます。従ってどちらかに統一なさらないとやはりこれはおかしいじゃないか、こういうふうに考えざるを得ないわけなんです。一番基本的なやり方についてそういうふうに大きな疑問があるのでございますが、その結果かどうかは存じませんけれども、その結果として出て参っておりますところのサンプルについてかなりの疑問がございます。というのは三十年三月のサンプル調査、三月調査によりまして点数をおきめになったわけなんですが、このサンプル調査では科別に各経営が出て参っております。ところがその前に厚生省では一たしか厚生省だったと存じますが、二十九年十二月にお医者さんの経営の全数調査をやっておられます。全数調査に出てきておりますところの科別のパーセンテージとそれから三十年三月のサンプルで出てきております科別のパーセンテージとはかなり大きな開きがあるということは、このサンプルは全体を代表しているとは申しかねるんじゃないか、たとえば二十九年十二月の全数調査におきましては、内科の比率は全体の三八・七%でございます。それに対して三十年三月のサンプル調査では内科の比率は全体の二二・七%でございます。これは非常に大きな開きでございます。また外科は二十九年十二月の全数調査では七・五%、それに対して三十年三月のサンプル調査では一一・三%、こういうふうになっております。そしてこのサンプル調査の方によりまして点数をおきめになる、承わりますところによりますれば、内科の方は、これは新点数によって減る、外科の方はふえる、もちろん厚生省当局としましては、作意的ではごいますまいけれども、減るものの比率が三十八から二十二にまで減って、ふえる方の比率は七から十一にまでふえておるということになりますと、ここに出てきた点数というものが、果して全体を代表するものかどうかということで、これはいささか疑問と考えざるを得ない、こういうふうに感じるわけでございます。  なおこまかい点が若干ございますが、まあめぼしい私の疑問と感じましたところはそういうようなところでございます。  それで結論を申しますと、御趣旨ははなはだけっこうでございますけれども、この調査だけによりまして、今にわかに新医療費体系というものを推進されるということに対しては、これは問題があるのではないか、できますればもう一度、たとえば学界あるいは業界と緊密な連絡をとられまして、新しく調査をやり直されて、その調査の結果、学界、業界をも満足させた上で実施されるということが望ましいのではないか、こういうことを考えます。
  76. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) たただいまの鈴木参考人の御陳述に対して質疑がございましたら……。
  77. 榊原亨

    ○榊原亨君 ちょっと鈴木先生にお伺いするのでありますが、先ほどの御陳述の中で、大阪の開業医の実態をお述べになりましたが、その上に立って新医療費がどういう影響があるかというお話をするというお話だったのですが、今そのことが時間の関係か何かわかりませんが、承わらぬようでありますが、もしもあれでございますれば、その新医療費体系を、先ほどおっしゃったような大阪の開業医師のところに使った場合に、どんなことになるかというお話を、簡単でけっこうでありますから承わりたいと思います。
  78. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 実は新医療費体系を使った結果、開業医の収入が減る部分が多いということを大阪府の医師会では申しておりますが、私は二の資料を見せてもらいまして、これをにわかに正しいともあるいは誤まっておるとも判定いたしかねておるのであります。しかしもし医師会が申しますように、これによって収入の減るお医者さんが多いということになりますれば、現在すでに経営が動揺いたしております、従って医療行為の荒廃しておることを推定させられますところの下層はもちろん、その上にありまして、一応安定しておりまして開業医の中核となっておりますところの中層、ここにも経営の動揺が波及してくるのではないか、もし改悪される、悪くなるといたしますればそうなって参ります。私たち患者といたしましても、ゆゆしい問題ではないか、こういうふうな危惧を抱くわけでございます。新医療費体系によりまして必ず開業医の収入が悪くなるとか、何とかいうようなことは私わかりません。まだそこまで検討いたしておりません。
  79. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 鈴木先生にお尋ねすると同時に、厚生省の統計をやられた方にお尋ねしたいと思います。明細書を対象とした標本抽出法といいますか、サンプリングに疑問があると言われるのですが、その明細書の標本的な抽出をやる場合に不完全なところがあるということはわかるのですが、どういう点ですか。
  80. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 私から申し上げます。明細書を基準にして明細書によって抽出をする限りは、層を分ける場合には明細書の多寡によって分けるべきであって、たとえば経営主体とかあるいは病院の床数とかによって層を分けるべきではない、たとえば明細書の数が一枚から百枚を層とする、百枚から千枚までを一つの層とする明細書の多寡によって分けるべきだと、こういうふうに私申し上げたのであります。
  81. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 その点については厚生省はどういうふうにお考えですか、サンプリングの方法なんですが。
  82. 菱沼従尹

    説明員(菱沼従尹君) 計析課長の菱沼でございますが、一応私どもから統計学的な見地から二、三申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一点の明細書の統計であるからして直接明細書を抜くべきだという御意見でございますが、たとえばほかの調査でも世帯を調査するようなサンプル・サーベイがあるといたしますると、世帯のリストを作りまして、それから世帯を抜くということは事実上不可能でございまして、統計局のFIESにいたしましても何にいたしましても、国勢調査地区というものを抜くわけであります。専門的な表現をいたして恐縮でございますが、いわゆるクラスター・サンプリング、集落抽出法という方法を用いるわけであります。今回の調査対象は母集団としては確かに明細書でございますが、やはり今申し上げました例と同じように、医療施設というものを一つの集落と考えてクラスター・サンプリングのメソッドを使ったわけでございます。  そこから第二点でございまするが、第二点は、なぜ同じく百分の一に抽出率をそろえないかという御質問でございますが、私どうも聞き違えたのじゃないかと思いますが、要するに標本調査は標本誤差をどの程度に押えるかということによっておのずから標本設定が定まるわけであります。たとえば一つ例をあげさせていただきますると、五百調べれば十分われわれが満足する結果が得られるというようなことがあらかじめわかっていたといたします。そうするとAの方は五千ある、それからBの方は五百あるといった場合に、Aの方は五千の中から十分の一無作為に抜きまして、五百個所調べればよろしいわけでございます。ですからBの方も同じように十分の一抜かなければならぬかと申しますると、十分の一とりますと五十個所になってしまって、もはや統計的な観察にたえないというようなことになるわけでございまして、やはり要するに標本誤差をどのくらいに押えるかという観点から、おのずからどれくらい抜けばよろしいかということが技術的にきまって参ろうかと思います。  それから第三点の科別の問題でございますが、診療所を診療科別に層を作って抜いたと、この場合には十二月の調査はあくまでも標榜科名の調査でございます。今回私たちが作りました層は、純粋に内科診療所は内科的なものによって層を作りましたので、若干その食い違いができるのもこれはまたやむを得ないところかと思います。それからもう一つ私の何か聞き違いじゃなかったかと思いますが、何かウェートがついて十分の一、百分の一になっているのを単純に足し算をなさったということを御指摘になりましたが、私どもはいささかもそのようなことはいたしておりませんから、その点は何か誤解されておるのじゃないかと、かように考えております。
  83. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 第一点の御説明、やはりいささか納得がいたしかねるのですが、これはまあちょっと抜きまして第二点の方に参りますが、これは十分の一、百分の一、これを別々に集計して、そうしてそれを別々に検討する場合には仰せの通りでありまして、これは一方が十分の一であり、一方が百分の一であっても差しつかえないと思います。  それから説明いたしてないとおっしゃいますが、これは私の考え違いかもしれませんが、たとえば新旧点数の変動というもので総計となっておりますものは、両方の合計じゃございませんか。
  84. 菱沼従尹

    説明員(菱沼従尹君) まず第一点の問題でございまするが、百分の一、十分の一と抽出率を変えましたゆえんは、入院患者の数に比べますと外来患者の数の方が圧倒的に多いわけでございます。従いまして標本誤差というのは、そのとった標本は、これは私から申し上げるまでもないことだと思いますが、とった標本の大きさに関係いたしまするので、当然多い方の外来の方は少し抜く、少い方の入院の方は多く抜くということがおのずから出て参ります。なぜ十分の一、百分の一にいたしたかと申しますると、これは御指摘のように両者を足し算いたします場合には、片方は零を一つつける、片一方は零を二つつけるとしごくあとの製表作業が容易になりまするので、実際的な見地から十分の一、百分の一という抽出率を設けましたゆえんでございます。  それから単純に足し算してと申しまするのは、たしかパンフレットをごらんになっていられると思いますが、これはちゃんとウェートをつけたものをもって計算いたしております。
  85. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) そうすると今のお話でかなりわかって参りましたが、しかしそれにいたしましてもやはり足し算をいたすというふうな、総計を見るというふうな場合には、やはりそろえる方がよろしいのじゃないかというふうに私は考えるのでございますが、いかがでございましょう。
  86. 菱沼従尹

    説明員(菱沼従尹君) 御指摘のように同じ率をとってそれで標本誤差が同じ程度になれば全く御指摘の通りだと思いまするが、私どもは標本誤差を一定のワク内に押えたいという観点から、わざわざ十分の一、百分の一という差をつけたわけでございます。
  87. 森田義衞

    ○森田義衞君 ちょっとお伺いいたしますが、先ほど医者の収入としまして詳細な御報告をいただいたのでありますが、その中で医者の生活状態が非常に困っておるとかいろいろなお話もございましたが、やはり衣食足りなければ礼節を忘れまして、お説のようなとんでもない診療をする者が中に出てきやしないかということを患者側からしておそれられていると思いますが、そういった点は、標準の医者の御家庭でこの程度収入があれば妥当な適正な診療をするといったようないわゆる生活費の保障でございますが、そういった点は、御観察になった点からどの辺の収入が医者に得られればそれがやっていけるのか。先ほども実はどなたか参考人から、英国では一般の熟練工よりは五倍程度の待遇が与えられているといったようなお話もあったのですが、日本ではとても一般生活状態が悪いですからそこまではいきかねますが、そういった点を勘案しまして最小限度の安全な生活といいますか、そういったものを確保して、今申し上げましたような適正診療ができる程度いかんといった点の御意見一つお伺いしたいと思いますが。
  88. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 大阪府の現状で申しますと、大体四四%、約半数が三万円から六万円の生活をいたしております。そうしてその上と下とに残りの半数強が大体同じ割合で散らばっております。そこでどの程度の、まあ理想的なものじゃなくして、現状を前提にいたしまして、どの程度生活が妥当であるかということは、最近私具体的な数字を出した経験はございませんので、ごく大ざっぱな感じたところで申しますと、現在開業医の大部分生活いたしております三万円から六万円という幅のもう一つ上でございまして、六万円から九万円、まあ年金によって相違がございましょうけれども、中年の一応円熟したお医者さんならこの程度の家族とかその他に応じてこの程度生活は最低必要ではないかというふうに私感じだけでございますが、感じております。
  89. 榊原亨

    ○榊原亨君 参考人にお聞きするはずでありますが、ちょっとここで今統計の話が出ましたので、統計の神様がおいでになっておりますからちょっと承わりたいのですが、先ほどお話がありましたように、非常に異質的な客体の、性質が著しく異なっておるものをサンプルにとります場合にはやはり質の同じものを一応集めまして、その中からとるといった方が誤差が少くなるのではないかと思うのでありますが、その点のお考えはどうですか。  それからもう一つは、ランダム・システムの一番の欠点は、非常に客体の性質が同じような内容をもったものから抽出する場合にはランダム・システムは非常にいい成果が上がるが、その客体が異質的でありますならば、私が今申し上げたような操作をしなければその成果は発揮できませんが、誤差が多くなるという関係はないかどうか、私統計は全然しろうとでわかりませんので、一つその点を関連して。
  90. 菱沼従尹

    説明員(菱沼従尹君) ただいま榊原先生の御指摘の通りでございまして、要するに層化という段階に入れますものはできるだけ異質的なものは分けまして、一つのカテゴリーに入るものは質が比較的同じようにする。そうして抜いた方が単純に抜くより効率がよろしいわけでございまして、全く御指摘の通りだと思います。
  91. 榊原亨

    ○榊原亨君 もう一点だけ大へん逆のようなことになりましてあれですが、承わりたい。そうすると、今度の抽出は全国のいろいろなお医者をおとりになったのですが、病院とか診療所別におとりになったところでは一応分離できておりますが、その客体は非常に違った種類のものがある。そういう点でお気づきになったことはございませんでしょうか。これ以上私は申し上げません。
  92. 菱沼従尹

    説明員(菱沼従尹君) ただいまの榊原先生の御指摘、御意図がどういうことかちょっと私了解しかねるのでございまするが、私どもといたしましても先ほど申し上げましたように、請求書自体を直接百分の一なら百分の一抜くという作業は、たとえば東京都とか大阪府のような非常に基金で取り扱っておる量が多いところでは事実上不可能でございまして、そのような意味合いで、いわゆる集落といたしまして病院なり診療所というものを一つの抽出単位と考えたわけでございます。集落抽出法を用いまする場合には、できるだけその集落を今榊原先生が御指摘のように、いくつかの適当な層に分けて、それで層化抽出をいたしました方が効率がよろしいわけでございますが、そこで病院につきましては約六十八ぐらいの層を作り、それから診療所につきましては診療を市部、郡部に分けて、かつ診療家によって層を作って抽出をいたしたようなわけでございます。
  93. 榊原亨

    ○榊原亨君 きょうのあれは参考人のあれでありますからこれ以上……、私はもうこの点だけでよろしゅうございますが、この点に私は多少の疑問をもっておりますので、いずれ一つもう一回おいでを願ってお教えを願いたい。
  94. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 菱沼先生に御質問いたしたいのですが、今おっしゃいましたような趣旨からいたしましても、明細書の多寡だけにしぼった方が単純化するのじゃございませんでしょうか。
  95. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) ちょっと参考人に……。
  96. 鈴木正里

    参考人(鈴木正里君) 質問したらいけませんか。
  97. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 質問一つ……。  それでは参考人に対する意見の聴取及び質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 谷口弥三郎

    ○理事(谷口弥三郎君) 御異議ないものと存じます。  この機会参考人に対してお礼を申し上げます。今回公私きわめてお忙しい中をわざわざおいでいただきまして、貴重な御意見を開陳していただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度で終りたいと思います。これで散会いたします。    午後三時三十七分散会