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1956-02-14 第24回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十四日(火曜日)    午後零時十一分開会   —————————————   委員の異動 二月九日委員佐藤清一郎辞任につ き、その補欠として高橋進太郎君を議 長において指名した。 二月十三日委員藤原道子辞任につ き、その補欠として上條愛一君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重盛 壽治君    理事            高野 一夫君            山下 義信君            常岡 一郎君    委員            榊原  亨君            深川タマヱ君            上條 愛一君            相馬 助治君            竹中 勝男君            山本 經勝君            田村 文吉君            長谷部ひろ君   国務大臣    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    労働省労政局長 中西  實君    労働省労働基準    局長      富樫 總一君    労働省職業安定    局長      江下  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       多田 仁己君   説明員    調達庁労務企画    課長      坂本  實君    労働省労政局労    政課長     大野雄二郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (利用紡織株式会社労働問題に関  する件)  (駐留軍労務者労働問題に関する  件)  (炭坑災害対策に関する件)   —————————————
  2. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) それではただいまから社会労働委員会開会をいたします。  本日は労働情勢に関する調査議題といたします。
  3. 上條愛一

    上條愛一君 私から利用紡織労使関係に関する調査議題として取り上げていただきたいと思うのですが……。
  4. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) ただいま上條委員から言われました利用紡織労使関係に関する問題をこの際、議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 御異議ないと認めます。
  6. 上條愛一

    上條愛一君 私から利用紡織労使関係について、きわめて概略の経過を御報告申し上げまして、後にきわめて簡単に御質問申し上げたいと思います。  事業場名古屋の中川区にあります。名前は利用紡織株式会社という会社でありますが、社長、副社長重役四名がおりまするが、そのうち一人が日本人で、あとはみな韓国人人々であります。綿織機を三百四十九台持っておりまして、綿布の賃織りを主要なる業務といたしておりまして、従業員は百四十名ありまして、うち百二十名というものが婦人労働者であります。ここに本年の一月十日に利用紡織労働組合という労働組合を結成いたしまして、翌日の十一日の午前に工場在勤重役組合結成のことを報告したところが承認を得たわけであります。ところが午後六時ごろに突如利用社長の命令だということで、組合を認めることはできない、組合を解散しなければ一時工場閉鎖をするという通達で、直ちに工場をくぎづけにして閉鎖を断行してしまった、こういうのであります。その後、工場閉鎖をしておきまして、一月の二十七日になりまして全員解雇の告示をなして、通達を個々に書面でいたした、こういう経過であります。それで組合側といたしましては、百四十名のうち百二十九名が組合に入ったわけでありまして、一月十二日に団交を申し入れて、団交いたしましたけれども、何らの結論を得なかったので、直ちに地方労働委員会あっせん申請をいたしたわけであります。で、引き続いて一月の十六日に地労委に対しまして、不当労働行為救済申請をいたしておりまして、目下地方労働委員会においてこの問題の審議中であるわけであります。  以上が大体の事件内容であります。  私の労働省当局にお伺いをいたしたいということは、利用紡織は、社長利用秀吉氏は利用紡織だけではありませんで、そのほかに利用工業株式会社というのも経営いたしております。ところがこの利用工業株式会社において、昭和二十八年の四月に今回同様、労働組合が結成されましたのに対して、利用社長は、組合を解散しろ、さもなくば工場閉鎖をするということで威嚇をいたしまして、この威嚇のために組合を脱退する者もできて参りまして、ついに五月四日に五十名ほど残して、あとの三十名がついに解雇になった、こういう事件が起きておるのであります。今回は第二回目であるのであります。それで労働省当局に対しての御質問は、すでにこの事件地方労働委員会申請が行われて審議中でありますので、不当労働行為の問題については、いずれ審査の結果、結論が出されると思います。ただ、私の重要だと考えまする点は、この前に一回同様なことがありまして、労働組合を作ったということだけで工場閉鎖をすると威嚇して、三十名の解雇を断行しておるわけであります。今回は二回目であって、しかも私の観測するところによれば、これが韓国人であるという一つの特殊な経営者立場を持っておるわけであります。想像するところによれば、日本における労働組合法などの内容をよく理解しておらない点があるのではないか、そういう点について労働省当局としては十分、昭和二十八年のときのような事件が起ったときに、すでに社長その他重役に対して、日本には労働組合法があって、そのような処置は不当であるということをよく理解せしめて、どうしてもその説明、納得をせしめて、理解して労働組合法の適法な処置をとらないということであれば、そのときに何らかの警告なり処置をとるべきであった、こう考えるわけであります。そこで今回の事件にいたしましても、韓国人であって日本労働組合法その他の法律を軽視する、もしくは無視するという態度をとられておると考えるのであります。こういう態度に対して、どのような処置をおとりになったか、また、おとりになろうとしておるのか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  7. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) この問題は、まだ十分調査いたしておりませんので、十分調査の上、しかるべく善処いたしたいと考えます。
  8. 上條愛一

    上條愛一君 まだ調査をしていないというのでありますが、すでに一月十日に組合が結成せられまして、そうして二十七日には全員解雇をされておる。地労委にもこれを提訴しておる。これは労働者にとりましては生活問題であります。そういう重要な問題が、ほど遠からぬ名古屋に起っておるのに対して、一月以上経過しておる今日において、いまだ労働省に対して報告も来ない、調査もないというようなことは、これは非常に労働省当局としても怠慢な処置であると思いますが、そのような日時を要するものでありますか。
  9. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) この事件は、事件が起りましてから二日後に、愛知地方労働委員会あっせん申請が行われ、さらに数日後、不当労働行為の申し立てが行われております。従いまして通常事件でございますれば、さような労働委員会に係属したような事件につきましては、労働省といたしましては、労働委員会の公正かつ迅速な判断に待つのが原則でございます。ただお聞きいたしましたような二回目の問題であるという、韓国人であるというような特殊的な問題につきましては、実は本日初めて伺ったような次第であります。従いまして、さような特殊な問題がございますれば、それに相応して特に調査して善処いたしたいと思う次第でございます。
  10. 上條愛一

    上條愛一君 それからもう一つ伺いしたいのは、去る一月の二十七日に全員解雇するときに、重役も含めて職員まで、重役事務員も全部解雇を申し渡したのでありますが、しかし重役まで解雇してしまうということになり、守衛や小使まで解雇してしまうということになれば、あと工場管理が不可能ではないかということになりまして、そのときは重役事務員職員だけは解雇せずにそのまま残るという処置がとられたようであります。その後二月の十日でありまするか、重役職員も全部解雇するという再び通達があった。それでその重役のうちの韓国人秋山という重役が、自分たち解雇されるに至ったのは労働者労働組合を作ったからだというので、十一日かの夜組合長と今澤という執行委員二人を秋山重役がなぐった。それでそのために組合長は顔面及び頭部に十日間の重傷を負い、今澤執行委員は三日間の負傷をしたという事件が起っておりますが、この報告労働省に参っておりましょうか。
  11. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) まだ参っておりません。確かめてみたいと思います。
  12. 上條愛一

    上條愛一君 それでなお私の希望するところは、労働省としてすみやかにこの実情調査の上で、このような第三国人日本国法を軽視しもしくは無視するというような態度を黙認しておるということになれば、これは他にも影響するところ大であると思いまするので、これはむろん地方労働委員会に提訴して審議中でありまするので、労働省としてその結果を待つということは、これは当然なことだと思いまするが、その地方労働委員会だけにまかしておかずに、やっぱり労働省自体としても労政事務所も存在しておることでありまするので、すみやかに調査の上ですね、このような問題に対しては、もし韓国人なるがゆえに日本労働組合法その他の関係法をよく理解しておらないということでありますれば、労働省としては十分に理解させて、なお説得してもそういう国法無視態度を持続するということであれば、何らかの反省あるいは改める態度をとらせるような努力を払うということが望ましいことだと考えまするので、すみやかにそのような御処置を願いたいということをお願い申し上げます。  それから第二番目には、この利用紡織会社においては労働基準法違反が今日までずっと継続せられておるということでありまして、たとえて申しますれば、労働時間のごときも午前三時から午後の十二時まで二交代で約十時間の労働をさしております。百四十名のうち百二十名が婦人労働者でありまして、これは年少婦人人々もこの労働に従事しておるわけでございまして、このようなことはこれは明らかに労働基準法違反としても特異の違反だとわれわれは考えます。しかも八時間をこえての早出残業に対する労基法による手当ども支給しておらぬということであります。それから人員整理をする場合でも、解雇ということをせずして、人員整理の場合には六割の手当だけを出して遊ばしておき、自然にやめるのを待って解雇手当などを出したり、予告手当を出したりすることを免れて、きわめて悪らつな手段を従来とも講じつつあるということであります。これらについて労働基準局長は十分なる調査を今日までされておりますかどうか伺いたい。
  13. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) ただいまお話ございましたこととほぼ同様の事実をもちまして本月四日に関係組合より愛知基準局長申告がございまして、本省にも連絡がございました。会社閉鎖その他と関連する事態また申告内容が仰せのように女子年少者の深夜業というような労働基準法違反関係の中ではきわめて重要なる事案を含んでおりますので、特に慎重なる調査監督を実施するよう指示し、その後電話連絡によりまして、おそらくきょう中ぐらいに相当のその結果に関する報告が来ることを期待しているような事情でございます。
  14. 上條愛一

    上條愛一君 事件発生後にそういう措置をとられ、調査をされておるということは了承いたしますが、このような悪らつなる労働基準法違反が過去において長い間行われておったにかかわらず、名古屋基準局がありながら、このような問題を今日まで放置しておったということはどういうわけですか。
  15. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) 十分なる事情はさらに調査しなければわかりませんが、私のもとに参った報告によりますれば、過去におきましてもたしか八回か九回監督を実施いたしております。そのつどそれぞれの違反を発見し、それにつきましてそれぞれ請書等をとり、そうして再監督を実施したというような報告があります。ただ遺憾ながらその他の方面の監督等のために、最近におきましての監督の手が及んでおらないということは事実であります。今後十分に注意いたしたいと存じます。
  16. 上條愛一

    上條愛一君 過去においてすでにこういうことを知って、八回も九回も監督をしておるにかかわらず、その監督に応ぜずして、依然としてこういうような午前三時から夜の十二時までというような深夜業をやっているにかかわらず、何らのことを……禁止の措置をとれなかったということは、これはどういう理由ですか。
  17. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) 私のところの手元に参りました過去のただいま申しました報告によりますれば、先ほど申し上げましたように、そのつどそれぞれ是正の請書をとり、そうして一、二カ月後の再監督の際には是正されておったというような報告であったわけでございます。
  18. 上條愛一

    上條愛一君 これは基準局長に申し上げておきたいことは、今日まで労働基準監督官が知らなんだというならば、これもまあ人員不足の折から了承もできますが、すでにこういう悪らつなる基準法違反を知って、従って幾たひか監督をしつつなおこれは改めさせることができないということであれは、日本の法の権威がいずこにありやということを疑わざるを得ないと思います。  ことにわれわれの注意を喚起したいのは、労働基準監督署が、数年来私どもが叫んでおりまするが、ほんとうに法を守るという厳正な立場に立っての態度をとっておらぬ。特に今回のこの事件が起きましたときにおいて、重役基準監督署へ行って首を切りたいと思うがどうしたら切れるかということを相談したのに対して、三十日の予告手当を出せば首を切り得るというようはことをやはり答えておるといううわさも生じておるわけです。そのような労働基準監督官たるものは、明らかにこれは不当労働行為であることは明白である、そのようなことに対してサゼスチョンを与えて、これを容易にし得るようなことをとったということが真実でありますれば、そのようなことではわれわれは労働基準法が存在しておっても、労働者は安んじて労働に従事することができないと思う。  私の最後に基準局長に申し上げて処置を願いたい問題は、このような基準法違反は他の微々たる違反とは形を異にしておる。ことにこの利用紡績というものが利潤のない非常な困っているというような会社であれば、多少の了承の余地がありますが、すでに新聞に発表されているところによりますれば、数億円の利益を上げておるとまで言われておる会社であります。そのような会社において婦人労働者をこのように搾取しておるという事実が長く続いておるにかかわらず、何らの処置が取られないというようなことは、これはもう全くの法治国じゃないと思う。でありまするから、私は今調査中であると言われるのでありますが、調査が明らかになりましたときにおいては、これは厳然たる処置をとっていただきたい。ことに日本法治国として、韓国人もしくは第三国人に対してはきわめて寛大な処置をとられている傾向が強いと思います。でありまするから、今回の処置に対してはいずれ地方労働委員会の裁決によって明らかになるとは思いますが、それとあわせて労働省基準局としてこの問題についてはすみやかに適切なる処置をとっていただきたいということを希望申し上げておきます。
  19. 山下義信

    山下義信君 本件につきましては、今上條委員が指摘せられましたように非常に重大なる事案であると考えられますので、委員会にお諮り下さいまして、委員会としてこの実情調査するということにいたしたいと思います。お諮りを願いたいと思います。  なお関連いたしまして私は労働省当局にもお願いしておきますが、今上條委員から提案がありましたように、また労働省も御調査になるということでありますが、この種の第三国人といいますか、韓国人資本事業場におきます労働関係法規順守状況といいますか、この一つ事件をもちましてことごとくそのようであろうという推測も早計に失するかもわかりませんが、非常に私は重大であると思いますので、本件のみならず、一般に他国資本を主とする事業場における、ことに韓国人資本事業場における労働法規順守状況というものを、これを機会に一つ労働省でも一般的に御調査下さいまして、適当な時期に御報告を願いたいと思います。
  20. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) いかがでしょうか。今の山下委員の御発言に関係しまして、利用紡績韓国人経営の、何といいますか、乱脈状態に対して、一応本委員会から委員派遣して実態を見てきていただきたいと考えますが……。
  21. 田村文吉

    田村文吉君 これは韓国人問題云々でございますが、中小企業にはこういうことはえて非常に多いのでありますから、こういう問題のために一つ一つ出張して調査するということはいかがかと考えますので、一応これは理事会でお諮りなされて、理事会のほうでお話がまとまりましたらおきめ願いたい。今すぐここでそういうことを決定するのはちょっと早いと思います。いわんや労働省のお調べというのはほとんど出ておらぬわけです。もう少し進んで、理事会で御相談の上でいいということでございましたらその上で……。
  22. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記をとめて。    〔速記中止
  23. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて。ただいまの委員派遣の問題に関しましては、皆さん方の御意見を参考として派遣あるいは人員、これの可否等につきましては委員長理事会に御一任願いたいと存じます。速記をとめて。    午後零時三十八分速記中止    ——————————    午後零時五十分速記開始
  24. 重盛壽治

    委員長重盛壽治君) 速記を始めて下さい。  午後に労働大臣がくるまで暫時休憩いたします。    午後零時五十一分休憩    ——————————    午後二時二十一分開会
  25. 山下義信

    理事山下義信君) それでは労働情勢に関する調査の一環として、駐留軍労務者労働問題に関する件につきまして、前回に引き続き質疑を行うことにいたしまして、休憩前に引き続き委員会を再開いたします。御質疑を願います。
  26. 山本經勝

    山本經勝君 実は労働大臣にお伺いを申し上げたいのですが、本日午前十一時から当委員会開催を九日の理事会の決定で御連絡があったと思いますが、ところが本日になって労働大臣出席ができなかったと言われるのですが、その点私ども委員立場から申しますと、少くともこの第二十四通常国会に当って、参議院労働行政に関する質問なり審査が一向に進捗をしておらぬ状態を考えましても、労働省では、特に労働大臣立場から労働行政についての参議院審査を真剣にお考えになっているかどうか、この点が非常に私ども疑問に感じたわけなんですが、その点御釈明を私はお願いしたいと思います。
  27. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) まことにごもっともでございますが、けさ昭和三十年度の補正早算を衆議院でなるべく本日中に質疑を終了いたしたいということで、全閣僚が予算委員会に出るようにという要求がありまして、特に社会党の成田君から私に数個の御質疑がありまして、それが済んでから参議院の方に行ってもらいたいという要求があったものでございますから、やむを得ず向うの方に午前中出席いたしたようなわけでございます。どうぞあしからず御了承願いたいと思います。
  28. 山本經勝

    山本經勝君 かりにそういう事情であった場合にでも、いやしくも正規の委員会開催が予定されて、しかも連絡済みであったはずなんです。であるなれば、一応大臣がこういう事情だということを御説明になったらよかったんでしょうが、私はむしろそういう点で今後の審査の進行上にも問題があると思う。ですから、そういうような事情でやむを得ないと仮定するなれば、単に職員のお使いだけじゃなくて、常に事前に連絡があり、御通知があり、しかもそれを了解されておったとするなれば、この委員会に対する大臣立場からもしかるべき方法が講じられていいのじゃないか。またそれが全然この院内にいてできないというふうには考えられないのですから、私強く追求はいたしませんが、せっかくおみえになっていただきましたので、そういう点は一つ十分今後の問題として御考慮を願っておきたいと思うのです。  それで、本日労働大臣にお伺いしたい点は、大体大ざつぱに申し上げまして駐留軍関係労務者の現に起っております紛争に関する問題。それからいま一つは、第二十三臨時国会におきまして大臣に御質問申し上げ、かつまた御要望申し上げたと記憶いたしております、これは炭鉱保安に関する問題であります。この二つの点について御質問並びに御意見を承わりたい、こういうふうに考えております。  そこで第一番の駐留軍関係労務者の問題で紛争がありますのが二カ所、これはすでに御承知だと思う。で、兵庫キャンプに関するSG労務者のストライキが今ようやく三者会談で協議が進められておるが、未解決の状態にある。いま一つ福岡板付基地関係する同じくSG関係のある問題ですが、ここには二つ問題がある。一つは勤務時間変更に伴う紛争、それから人員整理の問題がこれにからんでおる。それからいま一つの問題、特に重要な問題としては二十二名の保安解雇なるものが行われた。そのうち四名は直用と申しまして、御承知通り、軍が直接日本人労務者の中から選択して採用をしておるもの、それからその他の十八名は調達庁下部機構として県が雇用をして労務提供をしているもの、合計二十二名が実は出勤停止並びに即時解雇の処分を受けた、こういうような問題がございますが、これにつきまして一昨十二日、日曜日でございましたが、福岡県の労働部長室関係者が集まりましていろいろお話をいたしたわけであります。これについては調達庁並び労働省の方にも連絡があっているはずです。現地へ参りました十日の夕方、県の労働部からも現地調査に見えており、そういう状況ですから、どういうふうに報告があり、それをどういうふうに受け取っておられるか、事務当局者でけっこうですから一応御説明を願いたい。
  29. 坂本實

    説明員坂本實君) 御説明を申し上げます。昨年十二月二十日と二十一日の両日にわたりまして、軍の係官が駐留軍労務者九名につきまして面接をいたしまして、種々のことを調査をした、その調査自身についてどうも不適当であるという趣旨で、関係労働組合から種々の申し入れがありまして、軍と折衝が行われておるという事実も報告がきております。さらに本年一月二十日ただいまおっしゃいましたように、駐留軍労務者、とりわけ調達庁雇用をいたしておりまする間接雇用の者十八名が出勤停止となりました。その中で前に調査を受けました九名のうちの七名が含まれておるという状態です。なおその他に四名、直接雇用の者四名はやはり一月二十日付で即時解雇になったという情報を受け取っております。その後この事案につきまして軍側種々連絡し、話し合いが行われておるという点について県から報告をいただいております。
  30. 山本經勝

    山本經勝君 その調査内容はどういうものであったか。これはちょっとお願いを申し上げておきたいが、私の方からみんな申し上げますと、これは非常に時間を食うと思うのです。ですから調査内容等について報告があっておりますなればその点は省略してもいいのですが、これは非常に重要な問題になって参りますから、もし内容について調達庁が御承知になっておらないとすれば、ここに詳細に申し上げておく必要があると思う。その点は……。
  31. 坂本實

    説明員坂本實君) 軍が労務者と面接いたしまして、いろいろ調査をいたしました内容につきましては、県側労働組合あるいは本人からの申出でのもので、それを大体網羅されたものが調達庁報告されてきておるわけでありますので、大体私どもとしましては関係当事者の知っておられる点については、大体は書面等承知をいたしておるわけでございます。
  32. 山本經勝

    山本經勝君 そういうのは一般的なんですね。たとえばどういう内容調査をしているのかという点でまだ十分な御報告を受けておられないように受けとれますので、その点私の方から申し上げておきたいのですが、第一番に呼び出された組合人々が総数七名でございますが、まず組合の機関紙の発行について。これは倉橋という組合の教宣部長であります。どういう方法で何の目的で出しているのかということから始まって、その取材から、その目的あるいは編集の詳細にわたってその質問を受けておる。そうしてその中でたとえば昨年の五月一日、労働祭として盛大に全国各地で行われるメーデーの主催者がその会議に出てメッセージを述べたものだから、いろいろなそういうような問題まで含めて、やはりニュースであります、機関紙でありますから、その時々の問題について、これを編集し、新聞に掲載して組合員に読ませるわけなんですが、そういうものについての問題からおよそ編集のすべての問題について相当突っ込んだ調査を受けておる。こういうような状況であった。さらにまたコーラス会と称する組合の文化活動がございます。そのコーラス会に出てくる者のメンバー、どういう者が集まるか、そのコーラス会を主催する者はだれか、その人名、今度は読書会をやっているその読書会に出てくる人々の名前、並びにこれを指導する人々、それからさらに映画のサークルがございます。つまり映画同好者が集まって、福映協と申しますが、福映協に集まる者は、これらの人々は必ずしもこの駐留軍関係労務者ばかりではないわけです。福岡市内に在留する多くの団体の代表を加えた広汎な組織ですが、そういうものに出席した者、あるいは出席して意見を述べた者、あるいはまた出席を世話した者、こういう者の人名あるいは行動等についての詳細な調査をする、こういうようなことまで実は行われておる。ところがこれは一貫して申し上げるように、労働組合の文化教宣活動として、あるいは組織活動の一環としてやっておるものである。しかも基地の中でやっているのじゃなくて、その居住している福岡市内一円あるいは筑紫一円に散在しておりますこれらの労務者がその地域で集合をやっている。こういう状態についての広汎な調査が行われるわけで、いわゆる思想調査として組合員が非常に憤激したと、こういうことなんですが、これに対するまず調達庁の方の御見解を承わりたい。
  33. 坂本實

    説明員坂本實君) ただいまおっしゃる通り、機関紙の編集の状況であるとか、あるいはコーラス会の運営の状況であるとか、さらには福映協の運営等の状況について、面接をして調査が行われたという点については承知をいたしておりません。これらの調査につきましては、やはりその目的なりそういう点を明らかにして、調達庁として考え方をまとめたいというふうに思っておるのでありますけれども、その後判明いたしましたところでは、はっきりとは断言はいたしかねるのでございますけれども、軍の保安上の利益に害があるかどうか、こういうことの心証を得るために調査をなされたのみであるというふうに考えておるわけでございます。もしもさようなことであるといたしまするならば、実は保安上の問題につきましては、現在の契約の中で濫用防止のために特に一つの条項について協定をいたしておりまして、その種の事案については十分公平に調査をするということに相なっておるわけでございますので、調査それ自身についてはこれはやはりできるだけ丁寧にするという建前になるというふうに考えるわけでございます。しかしながら調査内容なりあるいは手段なり、そういう点について行き過ぎがあるとか、そういう点がありとするならば、そういう点については十分軍側と打ち合せの上、是正するところは是正するという立場でいきたいというふうに考えて取り扱われておるわけでございます。  そこでこうした調査について、御本人あるいは組合側からの申し出に対しまして、調査をした側というのは軍の方でございますので、軍側について事実等を十分確かめました上で、調達庁自身としてもそれぞれ処理すべきものはいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  34. 山本經勝

    山本經勝君 保安上の立場から適当でないものについての調査が行われるということを言われたのですが、これは日米労働基本契約の中にもこの基準なるものを明らかにされている。一応一から三にわたる三つの項目にあげられておりますが、これらのどういうところに該当するからつまり解雇出勤停止の処分をしたのか、今の調査だけではないのですよ、結果はすでに十八名の人々出勤停止になり、四名の人は即時解雇として職場がなくなっている現状の中で、単なる調査ではない。すでに処分が行われているという状態ですが、その処分に該当するものとお考えになるのかどうか。その点は労働大臣調達庁、両方お答えを願っておきたいと思います。
  35. 坂本實

    説明員坂本實君) 昨年十二月の調査と、本年一月二十日に行われました出勤停止との間に、必然的な因果関係があるかどうかという点はしばらくおくといたしまして、出勤停止それ自身につきましては、一応軍の方から今おっしゃいました保安の基準の最後の項、第三項に該当するというふうに通知がきているというふうに県から報告を承わっております。
  36. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまのお話の事実の詳細は目下調査中でございまして、この特別調査事務所の調査は、今までのところでは主としてただいまお話のようなコーラス部とか福岡映画協会、幻灯班、読書会、キャンプ祭など、青年文化部関係に限定されまして、組合活動一般を対象として調査をしたものではないように承わっておるのであります。また調査の方法も組合活動に介入したり干渉するがごとき言辞ないしは組合に対する批判等が行われたという事実はまだ聞いておりません。
  37. 山本經勝

    山本經勝君 大臣にお伺いいたしますが、まず私は基本的な点が非常に不鮮明だと思うのです。保安基準というものを、ここに文章がありますが、第一番に「作業妨害行為、諜報、軍機保持のための規則違反、又はそのための企図、若しくは準備」こういうふうにあげられております。第二番目に「軍側の保安に直接的に有害であると認められる政策を断続的に、且つ反覆的に採用」するということがあげられている、それから「破壊的団体に加入している」第三番目が今お話の一、二号の記載の団体に加入したり、軍側の保安利益に反して行動をする、こういうふうに大体大ざっぱに申すとなっているのでありますが、この場合はコーラスあるいは読書会それから福映協と申しますが、福岡映画協会、こういうところの会合に出たりすることがこれに該当するかどうか、これらの判断はどうお考えになっておりますか。大臣のお考えを一つ伺いしておきます。
  38. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) それがどういう程度にどういうことをおやりになったのか、どういうものをどういう考え方でやったのか、私まだ具体的に詳細なことを存じませんが、駐留軍のこの保安上の問題が、思想、身上、団体の問題と密接な関係があると認めるに相当な理由がある場合には、保安上の目的に必要な限度内の調査は思想、身上に関することがあっても、それは行政協定の建前からこれを認めざるを得ない、こういうふうに概念的には私ども考えているのでありますが、そのただいまのコーラスとか、福映協とかいうふうなものをどういう考え方でどういうふうな調査をしたのかについては、事務当局からもう少し具体的に御説明を申し上げる方がいいかと思います。
  39. 坂本實

    説明員坂本實君) 具体的な調査の事実については御本人から県が聴取した点で承知をいたしているわけでございますが、さらにそういった調査の事実については、調査をした軍側と十分打ち合せて判断しなければならないと思うのでございまして、今おっしゃるようなコーラスの会合あるいは福映協等の運営とこの保安の基準の第三項とがいかように関係があるかというような点については、さらにやはり掘り下げて今後検討していかなければならぬのじゃないかというふうに存じているわけでございます。
  40. 山本經勝

    山本經勝君 問題はこれは駐留軍関係労務者のみの問題でないのでありまして、先ほど申し上げたように、福岡の市内にありますが、私も参加することも、呼ばれて講演をしたこともございます。あるいは読書会に出てお話を申し上げることもございます。主要な単産あるいは単組の同好者やそうしてもちろん理解者が集まってやっている読書会につきましても、これは労働者の日常生活の中でやはり自分の教養を高めるためにも、また一方で組合の団結を強化するためにも必要であって、組合運動の一環として欠くことのできないものなのであります。ところがそれに出たことが理由になって、いわゆる保安上の問題に触れるというつながりが私ども理解できないわけであります。ですからその点についていま少し突っ込んだ詳細な解明をお願いしておきたいと思います。
  41. 坂本實

    説明員坂本實君) 確かに十二月の二十日に個々面接して調査をしたことと一月二十日に出勤停止になったこと、その両方の因果関係については必ずしも偶然ではない、必然的なものではないかということが前提になっているように覚えておりますけれども調査をされた者のうち七名は確かに出動停止をされた者を含んでおりますが、調査されない者もあるし、そういう点につきましては果してこの調査の事実と出勤停止とどういう因果関係にあるか等の点については、十分軍側とも事実関係について争いがないようなことにしておいて判断をいたしたいというふうに考えております。
  42. 山本經勝

    山本經勝君 それで問題が、先ほど申し上げましたあげられている基準に該当するということの範囲ば一体どういうふうにお考えであるか。たとえばここで言われる保安上の基準として三項目をあげられている。これはその人の生活、あるいはその基地外の広い範囲に、まあ極端に言えば福岡市内全部、あるいは福岡県全体どこに行っても、こういうふうにこれに該当するというものかどうか、その辺の解釈はどうなりますか。
  43. 坂本實

    説明員坂本實君) この基準の適用に関しましては、特に基地の中だけであるとか、外であるとかいうことについては関係なく、およそこの基準に該当するかどうかという点を一般的に考えていくということで扱っておるわけでございます。
  44. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、今の基地外でも個人的な行動でも、それでこの拡張解釈でどういうふうにでもなると思うのですが、実際問題として、非常に抽象的な表現ですから——具体的な行動で、御飯を食べることでも極端に言えば不都合であるということも言えると思いますが、そういう考えをもって御飯を食ってもだめだというような極端な解釈をかりにしない場合でも、その人の居住権、そうしてその環境の中で、それぞれ労働者として先ほど申し上げた教養の向上とか、あるいは団結の強化のための寄り合いとか、こういったものが常に行われるのであるが、そうしたものがいわゆる問題となって解雇の理由になるとするなれば、これはいわゆる衆議院の七日の委員会でも質問があって問題になったように、思想や宗教の自由という基本的な権利の侵害になってくるという点では、法務大臣自身もお認めになっている。行き過ぎがあったとするならば不都合であるということを明確に言っておるのでありますが、もう少しはっきりさしておく必要があると思うのです。
  45. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいまお話の保安上の利益を守ることを理由といたしまして、不当な取扱いが行われませんように、特に御承知のような保安基準を当事者がそれぞれ合意の上で定めておるわけでございます。その合意の上で定められました基準の趣旨に沿って、具体的事案の処理につきましては、政府としても乱用のないように軍と意見の調整を行なっていくようにいたしたいと存じます。
  46. 山本經勝

    山本經勝君 ところで少し話が今度は変りますが、組合側ではこれは不当な解雇であるからその解雇は取り消してほしいというあの請願書も当委員会に出ております。それからまた現地では、福岡地方裁判所に対して身分保全の仮処分の申請を二月二日でありましたかやっております。そうして今度は七日に口頭弁論がなされた。それで福岡地裁の亀川判事係りでこの口頭弁論に出席するように文書通告をしたのですが、いわゆる書類送達と申しまして、御承知のように直接市内の場合には裁判所の使丁が送達簿に書類をはさんで持って参ります。ところがその持って参りました送達者の書類さへ受け取らない、そうして門に入れなかったという事態が起っている、こういう状態については責任のある担当国務大臣という立場で、倉石労働大臣はどうお考えになりますか。
  47. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように軍は公務上の行為につきまして、司法機関の出頭命令には応じない態度を昨年五月に明示いたして参っております。合同委員会ではそれでは困るということで合同委員会にそれを持ち出しまして、そういう問題の解決の協議が行われておると聞いておりますが、この今の問題につきましては、具体的な報告がありましたら事務当局から御説明申し上げます。
  48. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) さような報告は本日受け取りましたが、仮処分事件については、相手方の出頭を必ずしも必要としない状況でございますので、現在軍側が出頭しないことによって裁判所の審理が妨げられているとは言えないと思います。
  49. 山本經勝

    山本經勝君 二月七日付で福岡県知事の土屋香鹿氏あてでこういう文書が出ております。「親愛なる土屋県知事殿」として、「本書状は、下記署名の者に一九五六年二月七日出頭することと、不当解雇申し立ての苦情に対して書面をもって回答することを福岡地区裁判所が依頼してきた一九五六年二月三日付書簡に対する回答であります。」として、「その手続または調査は、合衆国の将校または機関によって公務遂行中なされた行為に関するものであります。(事件がどのようなものであれ)公式指令によって回答者が出頭することは許されておりませんし、また自分で回答することも、書面で回答することも許されておりません。」レーマン、これは空軍士官で大佐です。レーマンからこういうような書類がきております。これに対して裁判所は、担当判事はむろんのこと裁判長にもお目にかかりました。それで第一番に送達した文書を受け取らないということは、少くとも日米行政協定の中に含まれているあの裁判に関する——たとえば所轄の違いがあっても相互が証拠の提供に協力するという前提にも食い違いがあるということを指摘している。そこでそういう状態に置かれて——つまり労働者の基本的な権利が侵害されるという状態については、日本国法が——労働関係諸法が日本労働者を守るんだという明言は、せんだってのこの委員会においてもなされたし、衆議院の委員会の際にもなされております。ところが、にもかかわらず労働者が現状を維持するため仮処分の申請をした、その申請に対して理由を述べず、そして述べることが必要な資料の提供も拒んでおる、こういう状態が行政協定と合致するとお考えになるのかどうか、その点大臣の方からお願いを申し上げたい。
  50. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 今のは事務当局の方から御説明申し上げます。
  51. 坂本實

    説明員坂本實君) 裁判所との関係でございますけれども調達庁雇用をいたしておりまする労務者関係のある事案につきましては、できるだけ公正に司法機関の審理を進めるという立場から、軍側に常々協力を要請をいたしておるわけでございます。しかしながらなかなか公務上の原因になった事案について日本の司法機関の招請に対して応じるというあるいは証人出頭という点については軍側は現在ポリシーとして応じないと、こういう立場があるために現実的には処理しにくい、こういうことで非常に難渋をいたしておるわけでございますけれども、この点につきましては合同委員会でこの点の一般的な解決を待つことによって処理いたしたいというふうに考えて、合同委員会審議状況を実は待っておるようなわけでございます。
  52. 山本經勝

    山本經勝君 大臣にお伺いしたいのですが、私が福岡で県の労働部長から承わったところによりますと、なるほど調達庁雇用をして、そして労務提供をしておる、間接雇用関係におかれておる労務者は別としまして、直用と称する、軍が直接雇用した労務者に対する問題については、労働省が直接管理するものである、これらの労働者に対する労働法あるいは安全衛生、こういった問題については、労働省が直接管理をするものと承わっておるのですが、この点について明白にしておいていただきたい。
  53. 中西實

    政府委員(中西實君) 直用につきまして労働省が所管するということは少し表現として正しくないのでございまして、結局直用につきましては、労使関係は国内の一般の労使関係と同じようになる、従って労使関係は、軍、それから従業員という関係で、その間に違法なことが起るかどうかということにつきまして、われわれは、政府側としまして監視しておるという格好になるわけでございます。間接雇用につきましては、調達庁が使用者という立場に立つわけでございます。従って労働省調達庁と軍と共同の使用者対従業員関係を、さらに政府の立場として見ておる、こういう関係になるのでございます。
  54. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、お伺いしますが、これらの人々に対する労働法上の保護というものは、一体どこが責任を持ちますか。
  55. 中西實

    政府委員(中西實君) これは一般国内の労使関係と同じように、軍側が原則として日本労働法を守るということを期待いたしておるのでございまして、その間に違法の点がございますれば、われわれもこれに対して注意をするということになります。
  56. 山本經勝

    山本經勝君 その違法なことがあるならば、注意と言われますが、こういう事態が起れば、今申し上げたような直用四名の即日解雇という事態が起れば、その解雇の原因が正当であるかどうかということについて、あるいはそれに対する審査、さらにそれに対する軍側との——何と言いますか、労働者に無理をしいないような、保護をする方法をどうやって講じますか、どういう方法で。
  57. 中西實

    政府委員(中西實君) 解雇の理由が問題と思います。労働法規におきましては、不当労働行為、つまり組合の正常な活動をする、あるいは組合を結成し加入する、こういうことを理由として解雇するのは不当労働行為でございます。これは明らかに労組法上救済規定がございますので、そういった理由の解雇は、これはやってはいけないことになっております。それ以外の解雇は、これは実は当事者の一応自由になっております。ただその場合問題は、基準法で解雇手当を、予告手当を出すかどうかということが問題として残るだけでございます。もちろんその場合、解雇の理由がいわゆる一般の解雇、世間に行われております解雇理由から離れた、極端に申せば、公序良俗に反する理由で解雇になるということであれば、これは裁判所で違法解雇の訴えによって是正される、こういうことになります。
  58. 山本經勝

    山本經勝君 今の労政局長お話は、全くどうも私どもふに落ちないし、大へんなことだと思うのです。そういうことになりますと、ただいまのお話だと、組合の結成、加入を妨害あるいは阻止した、こういうような点、そのほかのことは、関係者の間の自由である。解雇は、あたかも予告手当を出せば正当である、こういうことになるのですか。
  59. 中西實

    政府委員(中西實君) 先ほど申しましたように、解雇理由にはおのずから社会的な一定の考えが、基準がございます。  それからなお解雇につきまして双方について協約でもあれば、その協約に規定した理由によって解雇される。あるいはまた就業規則に解雇の理由があれば、それに該当する場合に解雇されるということはございます。しかしそうでない場合には一般論といたしまして、一般の常識で、それはいかにも不当な解雇だという場合以外は、問題は予告手当、基準法上の予告手当の問題になるかと存じます。
  60. 山本經勝

    山本經勝君 ただいまのお話しだとなおさら不可解になって参りますが、このいわゆる協議して納得ずくで事態を収拾されるというのはまだしも、ところがそうでなくて一方的にきめた判定が、それが正当なものとしていやしくも労政局長が、それは予告解雇、あるいは手当の支給等によって正当であるとこういうことになるなれば、およそ日本労働組合法というものはあなたは全然無視されていると、こういうふうに私は断ぜざるを得ぬと思うのですが、この点はどうなんですか。
  61. 中西實

    政府委員(中西實君) 一般の解雇の原則は先ほど申した通りと考えております。普通の雇用関係におきましても、たとえばどうしても気が合わないというようなことで使用者が解雇するという場合もあり得るわけでありまして、従って今の一方的判断でと言われますが、その場合にその判断が大体許される、社会常識から許される判断に基いて、また理由に基いてなされますならば、これは違法とは言えないというふうに考えております。
  62. 山本經勝

    山本經勝君 その判断が、やはり今労働組合法は第三者の公正な判断を求めておると私は理解しているのですが、違いますか。一方的に軍なり、あるいはその雇用主が、これは事業場に置くと都合が悪いとか、あるいは怠慢であるとか、能力が低いとかいうことの判定をして、しかも一方的に処理することができるということには私はなっていないと思うのだが、その点では大きく問題が残ってくると思う。そこのところをもう少しはっきりと解明していただきたい。
  63. 中西實

    政府委員(中西實君) 法律の保護は、先ほど申した通り不当労働行為にわたる解雇であればその救済方法がある。それから一般的にはいわゆる協約、あるいは就業規則できめてある場合はともかく、そうでない場合に、もしも理由が不当だというふうに考えれば、これは裁判所において不当な解雇だということで訴えはできます。しかしながら一応その判断はそういった取りきめ等がございませんければ、使用者側の判断に一応待つということになると思  います。
  64. 山本經勝

    山本經勝君 それではこの場合こういうふうに理解してよろしいのですか。たとえば軍側が、問題は駐留軍の労務連絡官がやった措置なんですが、その連絡官がやった措置はとにかく軍側の都合によって不適当だと思うので解雇をしたのであろう。それで解雇の手続が正当であれば違法ではない、こういう考え、解釈ですか。
  65. 中西實

    政府委員(中西實君) そういうふうに考えております。
  66. 山本經勝

    山本經勝君 そうしますと、今の日本人労務者に対する日本国が現に施行し、有効である労働関係三法と言われるものは、ここの場合に労働者の保護にならないことにならぬかと思うのですが、その点どうなんですか。
  67. 中西實

    政府委員(中西實君) 労働法規の上では解雇につきましては先ほど来申しておりますように、労組法の不当労働行為による解雇の救済、それからあとは基準法で解雇の際の手続等がきまっておる、法律上は一応そういうことでございまして、あと解雇理由が社会常識上不当かどうかという判定は、これは最終的にはまあ裁判所がするということになっておるわけでございます。
  68. 山本經勝

    山本經勝君 その裁判所がしようとしたところが、さて裁判所には資料も提供せぬ。それからまた出頭して陳述もせぬ、こうなりますとどういうことになりますか。
  69. 中西實

    政府委員(中西實君) その問題につきましてはこれは法律とは別に、今の、先ほど来調達庁からも言っておりますように、合同委員会においてこの管轄権の問題につきまして目下協議をしておるという段階でございます。
  70. 山本經勝

    山本經勝君 それじゃ一応話をもう少し元へさかのぼりますが、実は今度の思想調査について単に従業員の思想調査だけの問題ではなくて、非常に大きな問題があるわけなんです。この軍属と称するものが通訳のうち大部分のように承わっておりますが、軍属である通訳が市内へ出て組合の大会に傍聴を強要し、あるいはその他の集会、これは一般に駐留軍の労務者だけではなくて、先ほど申し上げました福岡市内にある多数の労働者あるいは組織、こういったものの会合、こういうものに通訳を派遣して情報を求める、こういうことが行われているのですが、この点はどういうふうに御解釈になりますか。
  71. 中西實

    政府委員(中西實君) 先ほど調達庁からもお話がありましたように、軍の保安という必要上調査自体はなし得るかと思います。傍聴が禁止されておる場合はともかく、一応自由に聞けるというような状況にある場合に、軍が必要と感じてそこに係官が出ておるということにつきましては、どうもとめようがないのじゃないかというふうに考えております。
  72. 山本經勝

    山本經勝君 これは実例でありまして、全駐労の蹶起大会に当って、そこに強引に入って来てつまみ出された実例がある。こういうようなことが許さるべきかどうかということを私は申し上げているわけなんです。
  73. 中西實

    政府委員(中西實君) 傍聴を禁止し、入場をこばむ。これは会議を主催しておるものの管理権でございますので、入っちゃいけないというところに入ってくるということは、これは不都合なことだと言わざるを得ないと思います。
  74. 山本經勝

    山本經勝君 そういう方法によって情報を収集して処罰の、つまり基準に反するということで処分を受けたとしたらどうなりますか。
  75. 中西實

    政府委員(中西實君) だれが処罰を受けるのですか。
  76. 山本經勝

    山本經勝君 そういうように、たとえばいわゆる軍事警察的な役割だと思うのです。いわゆる米軍側の諜報機関として、一般市内に労働者の会合に対して情報聴取やあるいは大会等にあるいはいろいろの会議に入ってくる、いわばスパイ行為を極端に言えばしているのですよ。そういうような事柄がなされ、その結果が出てきた。いわゆる三項目の保安基準に該当するというので処分された実例がここに問題になった四人に該当するのだとするならば、そのことが正当な解雇の事由になりますかということをお伺いしておる。
  77. 中西實

    政府委員(中西實君) 具体的事例はまだ確かに存じませんが、抽象的に申しまして、軍の保安の確保の必要上、それに対しての調査の権能があるとしますれば、その調査の方法において違法にわたらなければこれは軍としてもなし得るのじゃなかろうか。そうして調査の方法さえ正当なものでありますれば、それによって得た資料によりまして、必要あって解雇するということは差しつかえないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  78. 山本經勝

    山本經勝君 この軍の必要があって正当な方法で調査したということは、先ほどから申し上げますような事実に基いた調査と、それから処分が進められておる。ですから従業員日本国民として、日本労働者として、しかも駐留軍の労務要員として働いておるという関係から訴えを起したのですよ。ところがそれについて、先ほど言うように詳細な内容についての説明もせず、資料の提供もせず、さらに出頭どころか文書通達も拒否したというようなことは、そのままでおいたならば少くとも日本労務者の基本的な権利、労働条件の維持向上なんということはとうてい望まれぬ。そうなりますと日本国法で、いわゆる労働三法なるものは完全に無視されて、労働者の保護はなされぬことになるのですが、それでも局長はやむを得ぬとこういう解釈なのですか。
  79. 中西實

    政府委員(中西實君) 保安の必要上、どうしてもやはり有害だとして解雇するということでございますれば、やむを得ないのじゃなかろうかというふうに考えます。
  80. 山本經勝

    山本經勝君 局長は十分日米行政協定を御存じだと思う。その十二条の五項には、労働関係については日本国法を守るのだということを明文に規定されておる。しかも必要があって保安上の調査をする、あるいは保安上調査というよりも、さらに軍事警察によっていろいろな保護あるいは調査、こういったものをなす場合の規定もございます。この規定によればこういうことが書いてある。「合衆国軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は、第二条に基き使用する施設及び区域において警察権を行う権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」ところがその後段に、「前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必らず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、且つ、日本国の当局連絡して」その警察権を行使するものとし「その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。」こういうことになっているようですが、この点で先ほど申し上げますように、軍事警察的な行動をいわゆる基地以外のところで公然とやっておるというのが組合に対する動きなんだ。これにもやはり局長はやむを得ぬ方法である、いたし方ございませんというので、日本労務者を提供なさいますか。
  81. 中西實

    政府委員(中西實君) その辺の条文の解釈はその方の専門の方にお願いしたいと思うのでありますが、警察権の行使となれば、それは確かに地区外ではできないと思います。ただいろいろと情報をとるというような点につきましては、私はあるいは必要な範囲ではやむを得ないのじゃないかと思いますが、この点の解釈は一つその方の専門の方にお願いしたいと思います。
  82. 山本經勝

    山本經勝君 先ほど来縷々申し上げておりますように、何も軍事警察あるいはMPというものが外部に出て来てやることなら、はっきりしております。ところがそうでなくて、軍属というのはすでに軍隊の編成員と同じような資格において情報の収集その他をやっておる。しかもそれが民主団体である労働組合の会合に割り込んでくるというようなことになったとき、一体どうなんですか。私は実に納得のいかぬ点だと思う。
  83. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) おっしゃられるような会合に入ることは単なる事実行為にすぎないものでありまして、警察行為と認められないような場合にはこれをもって非難するわけにいかないのではないか。行政協定には警察権の行使についての制限がございますが、他面二十三条に安全確保の措置という規定もございまして、アメリカ軍が必要と認める範囲内でやっております。そのための措置については、それが日本の法規に違反しないまた強制力を伴わない限りは、これは必要な限度内では認めてやらなければならないのではないかと考えております。
  84. 山本經勝

    山本經勝君 その言われる安全に必要な措置というのは一体どこでというわけですか。これは基地でというのか、そうでなくて基地外一般、そうなりますと、アメリカの軍隊は全国に基地だけでも七百個所に近いといわれます。福岡県だけでも大きな基地が五個所ある。一万七千名のこれらの労務者が働いておる、こういう状態ですが、そうしますと、福岡市一円もそういうワクの中に入って来ますか。
  85. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 第二十三条は基地内、基地外についての区別をしていないと考えております。
  86. 山本經勝

    山本經勝君 そうなりますと、今の、警察権と銘打ってはございませんが、軍隊の構成員と同じ待遇を受けてこの協定に基く行動をしている通訳その他、通訳は大体軍属でありますが、この軍属の行動は結局無制限に自由であると解してよろしいのですか。
  87. 大野雄二郎

    説明員大野雄二郎君) 決してそう申し上げてはおりません。基地外で情報を収集いたしまして、それによりまして六十九号違反の事実を発見した場合に、それに基いて六十九号に従って解雇するようなことは一向差支えないと思います。ただ基地外におきまして、警察権を行使して調査を行うことは、これは私はできないと考えております。
  88. 山本經勝

    山本經勝君 この七日の衆議院の社労の委員会で井堀委員の方から質問をしておる点でありますが、内容をこういうふうに表現をされております。これは牧野国務大臣からの答弁でありますが、「井堀委員の言われるような事実だとすると不愉快なケースですね。こんなことがあっちゃいかぬと私は思います。」と言うてまた「内容はおっしゃる通りちとおかしゅうございますね。こういうものに対しては相当びしびしした態度をとらないと、基地の問題だからといって、私はそう簡単に見のがしちゃならぬと思います。」こういうふうな大体お話があっております。それからまた保安上の必要に名をかりて不当な労働行為があるなれば、やはりこれを法律上の問題とせなければならない、こういうようなふうに言われておるのですが、この点労働大臣の御見解並びにただいまお話になりました課長さんのお考えとはかなりな差があるように理解するのですが、この点どうなりますか。
  89. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私はただいま来政府委員から申し上げておることが正しいと思っております。もちろん不当なことがあってはいけないことは当然なことでありますが、ただいままでこの席で申し上げておることが私の考え方でございます。
  90. 山本經勝

    山本經勝君 不当な行為があったとすれば法律上の問題であるという解釈ですが、ところが先ほどから申し上げるように、不当であるがゆえにこそ労働者はふんまんやるかたもなく裁判所に対して身分保全の仮処分を請求し、さらに組合は組織をあげて反対の闘争をやっておる、こういう状態なんですが、しかし公正な機関と一応考えねばならぬ国法がきめた機関の調査や、あるいは法律上の審査をこばむ状態になりました場合にはどうなって参りますか。この点が非常に問題だと思う。さらに申しますなら、せんだって来駐留軍労務者は、日本国の政府が行政協定に基く責任において提供し、協力することになっておる。そうするとその労務者に対しては日本労働関係法は適用されるし、その法律によって守られるものであるということは再三明言されたのでありますが、実際上は一方的な押しつけで守られないと、こういう結果になりはせぬかと思うのですが、この点大臣の方から一つ説明を願っておきたい。
  91. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 間接雇用労務者の問題につきましては、労務基本契約を結んでおることは御承知通りでありますが、この労務基本契約の改訂について、ただいまアメリカ側と日本政府側との間に折衝を続けております。大体の方針については意見の一致いたした点もありますが、細目の点についてはまだ話し合いがつきませんので、目下それを促進いたしておる最中であります。
  92. 山本經勝

    山本經勝君 これは非常に重要な問題でありまして、先ほどから申し上げますように、思想調査が基地外の広範な市民生活の中に波及し、しかも軍属を用いて調査をしている。そういうことからいろんな問題も持ち上っている。ところが御承知のように、福岡では基地移転促進協議会というのが福岡にできまして強力な問題になっている。しかもかてて加えてそういったいわば軍事警察的なスパイ的なやり方が公然と行われている。こういうふうになって参り、しかも国内法では一応守られる建前になっておるし、守られることを労働省当局その他調達庁にしても同様に述べられておりますが、事実は守られておらない。そうしますと少くとも今全国的な問題に大きく波及しようとしている、すでに冒頭申し上げましたように、兵庫のキャンプの場合には一応争議状態は終息して三者協議会まで進展している。これは非常にいいことだと思う。ところがこうした協議もなされず板付ではどしどし首切りが強行されている。人員整理も二百名近い人員整理が現に行われている。労働力の切り下げがどんどん行われている。勤務制の一方的変更が押しつけられている。これらのものは基準法違反の点があっても泣き寝入りをしていくという姿では、日本労務者は駐留軍の労務に従事するということはできなくなり、おそらく重大な決意をもって行動を起す以外にない。そうなった場合に政府の責任は大きく浮び上ってくるものだと私は考えておりますが、こうならぬ前に事態を解決づけるためにはどうなさるお考えであるか。私はこの点責任のある労働大臣からの御説明を願いたい。重ねて申しますなれば、労働者がただ口で守る、国内法によって守られると言いながら事実は守られていない。思想調査からさらに従業員の思想調査だけでなく、労働者の祭典といわれるメーデーにまで出しゃばる。あるいはまた大会等にまで軍属を派遣して情報を取ってこいと言われましたから来ましたといって強引に入ってつまみ出された、こういうような事態を起している状態は、これは私はきわめて重大だと思う。それをきわめて軽く法律上の問題として正当な手段で解雇される分にはいたし方ありませんというのでは、日本労働省やらどこの労働省やらわからないと思う。率直に申し上げてこういう状態をもう少し親切に、しかも責任のある立場でどうあるべきかというお考えが労働大臣としては実はあるべきはずなんだからその点を一つ御解明願いたいと思います。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 駐留軍当局労務者の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、軍には軍の機密があることでございましょうから、その保安上の意味で先方がどういう形でいろんな調査をするかということはいろいろ手段もございましょうが、先ほどのお述のようなことについては、政府委員から申し上げました通りでございますが、先ほどお話申し上げました間接雇用の方については労務基本契約の改訂について今もっぱら努力を続けておるものでございますが、直用についてはなかなかいろんなPXに働いておる人だとかいろんな種々雑多な関係がございまして、個々別々にいろいろな事案が実はありまして、私どもの方でも困難を感じておるところでございます。しかし基本的にはもちろん間接雇用の方については労働三法は適用されることになっておるのでありまして、ただいまここで問題になっておりましたような事柄についても私ども先ほどもちょっと触れましたが、協議会で両方出てきて話をつけて円満にやっていくというふうなことで当局も指導いたしておるわけでございます。
  94. 山本經勝

    山本經勝君 直用についての問題として今の労働省としては、これらの労働者については関知しないというわけですか。
  95. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そういうわけではございませんで、その点については先ほど労政局長から申し上げました通りであります。
  96. 山本經勝

    山本經勝君 それで政府が雇用をして、間接雇用の形で労務供給をしておる者には三法が適用されるが、しかし直用については、直接雇用関係の点で今の軍の方が適当にやるものである、こういうことになった場合に、争いが起らねばいいのですが、現に問題になっているような争いが起った場合に、一体国家の法律というものは何をしているのか、あるいは裁判官は何をしているか、あるいは政府は何をしているか、こういうことになって参ります。そこで私ども憂慮するような事態が起りかねない実情にある。かりに労務の提供はせぬ、労働者は働かぬという、つまり失業者になります、その失業者の措置もありましょうが、同時に私は政府の立場はどうなるのですか。私はやはり日米行政協定というものは反対しているけれども、しかし現に協定され、実施されているものであるから、それに一応従う義務があるだろうと思うのです。こういう点についてお考えになるならば、今後どうしたらよいかという、こういう御見解ぐらいは、いやしくも労働大臣にはお考えがありそうなものだと思います。
  97. 中西實

    政府委員(中西實君) 原則としまして、日本労働法が直用にも適用になるということは前々から申し上げておる通りであります。そこでその場合に、仲裁手段として今の裁判所、また労働委員会、これの管轄権についてごく最近になりまして、向うと見解が違ってきておる、これは事実であります。従ってこの問題につきましては、先ほども申しましたように合同委員会に上げまして、そうしてそれぞれ話し合いを進めております。ただなかなからちがあきませんので、そこで実は昨年直用につきまして争いが起りますれば、これはやはりさしあたって府県知事が中に入って十分に調整をするようにということで、指示をしております。と申しますのは、事柄は地方で起り、具体的な調査は中央から一々どうにもできませんので、知事がやはり責任をもって紛争のある場合は処理するようにということで指示してございますので、それだけではどうも完全にも参りませんので、そこで具体的にそういった管轄権の争いはともかくといたしまして、一応両方から適当な人を出して処理の、つまり紛争の処理機関を設けたらどうかということで一案を作りましてこれは組合とも相談をして、組合の賛成を得まして、それを一つ各府県ごとに置こうじゃないかという提案をいたしまして、これが合同委員会にかかり、そうしてさらにそれを具体的に検討しようじゃないかというので、合同委員会のサブ・コミティに下りております。私ども早くこのサブ・コミティを開くようにということを前々から突いておりますが、つい最折向うのチェアマンが交代をいたしまして、そのために若干おくれておるのでありますが、つい最近向うからできるだけ早い機会に会議を持つからということを言って参っております。向うはどういうふうに申しますかわかりませんが、さしあたって紛争処理機関というものが設置できれば、これによって具体的な地方々々の事案が処理できるのじゃないかということを期待をいたしております。
  98. 山本經勝

    山本經勝君 大臣の方に伺っておるのは、根本的な問題でして、今のキャンプの問題を現場へ行きましていろいろ見せてもらったり、また事情も聞き、かつ司令官とも会ったのですが、この際にももう一度事態が紛争になる前にほんとうは第三者の会議を持ちたかったが、あいにく自分が不在であったために事前の措置が講ぜられなかったと言うておるのですが、この間の事情を考えますと、やはり言葉が違うと通訳を介して話し合いをするには、非常に具体的な内容のある問題になりますとなかなか意思が通じないということを私は考える。だからこそ三者のような、つまり県当局軍側と、それに組合側と、この三者でもって協議をして話し合ってやっていくということならわかるのですよ。ただ状況やむを得ぬということで了解することもありましょうし、あるいは反対なら反対で新しい方法を選ぶこともあり得ましょう。いやしくも労使の関係はやはり話し合いだと思う。これは大臣もすこぶるその点ばかり強調されておる。だとするなれば、少くともそうしたものでもすみやかに設置せなければだめだと思うのです。そうでなければやはり労働者は重大な決意をもってこの際は臨むという腹になりつつある。ここに審議されつつあることも国民全体にわかっておる。こういうことが行われる。こういうことではついに駐留軍の労務者というものは一方的に押しつけられても泣き寝入りしかできないのだ、この日本国の法律というものはこういうことに対しては無能である、裁判所も能力を発揮しない、労働委員会もつまらぬ、国会もつまらぬということになればもう働きませんということになると思う。そういう事態になったのでは、私はやはり憂慮すべき、いわゆる国際信義にももとると思う。行政協定そのものは、一応政府とアメリカ政府の間で取りきめている。そうなればそうなるほど重大であるからこそ、担当されている労働大臣としては国務大臣という立場で、やはりこの処理についてこうあるべきだという信念のある考え方があるはずなんです。それを私は求めている。どうなんですか。
  99. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 一般的なことはただいま労政局長から申し上げましたが、具体的に先ほど来お話の板付の問題につきましては、もう少し当事者で話し合ってもらうようにということを調達庁の方からさらに努力させるようにいたします。
  100. 山本經勝

    山本經勝君 その現地で話し合ってもらうようにというのは、現地で話し合えないのですよ。すでに裁判沙汰になっている。そこで裁判所は、福岡地裁の所長の名で最高裁にその取扱いについて問い合せをしているはずです。この十六日には参議院の法務委員会でも取り上げられる。事態ここに至って国会の問題になった今日、担当大臣である労働大臣が、今から研究したり調査したりしておったんでは間に合わないのですよ、率直に申し上げて。だから大臣としての信念なり、こうしたらいいのではないか、こうすべきではないかという考え方があろうと思う。それが私は最後的な方法であるならば、われわれの力をあげて、こぞって協力をして、そうした解決の方向に進まなければならぬ。現在全国におる十四万の駐留軍労働者はきわめて不安な状態におかれている。随時にいつでも首を切られるだけでなく、賃金を引き下げられる。一方的に軍の都合で、軍の機密であるということになって、一つの鉄のカーテンか何のカーテンか知りませんが、カーテンの裏にあってきめられたことが、いやおうなしに押し付けられるということであれば、日本労務者の権利は守られておらない。そういうことを考えますと、その不安は全国の駐留軍関係労務者の問題になりつつある。さらに広く言えば、全日本労働者の階級的な問題にまで発展しようとしておる。この状態を私は決して労働大臣立場から見られてもけっこうな状態であろうとは考えられぬと思う。であるなればこそ、私は繰り返しそのことを強調しつつ、大臣の所信と決意とを伺っておる。ただ事務的な御答弁を私は求めているのじゃない。一国の労働行政を担当されている労働大臣として、その状態についてどうお考えになるかということを最後に伺っておきたい。
  101. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) なお具体的にもう少し詳細に検討いたしてみまして、考えて参りたいと思います。
  102. 山本經勝

    山本經勝君 それでいつも労働大臣に逃げられるのですが、それでは私は済まぬと思う。しからばあと事情調査してとおっしゃるならばどういう方法で調査なさいますか。
  103. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は調達庁も担当いたしておりますから、調達庁関係十分調査の方法はありますから、調査をいたして研究をいたします。
  104. 山本經勝

    山本經勝君 それで私はまあこれは大臣のみでなくて、本委員会に要望申し上げたい。今までの姿は率直に申し上げて、労働行政担当の執行部が日米行政協定の重圧に屈して、少くとも日本の基本的な労働者の権益を守るための努力をなさっておらないと私は思う。で、むしろこの実態を調査して委員長の御判断を願って、本委員会に諮っていただいて、国会から調査団の派遣をお願いしたい。それからなお労働大臣に対しましては、調達庁の長官も遺憾ながら病気ということでお見えになっておらぬ。しかし調達庁の長官を待つまでもなく、労働大臣国務大臣立場での最高責任者ということにおいてこの労務提供に関する基本的な問題の解明をし調査をして、その結果、対策を具体的になされるのはおよそいつごろになるか、そのことを教えておいていただきたい。
  105. 坂本實

    説明員坂本實君) 調達庁措置の方法といたしましては、先ほど一般的に申し上げたわけでございますけれども、軍の方で保安上危険であるという立場をとって、ともかくも出勤停止をしてきておる。出勤停止をしてきたあとは、さらに軍側としては調査を続行して、最終の決定につきましては現地でやらないで空軍司令部まで持って参りまして、空軍司令官が最終的な措置をする、しかし空軍司令官も勝手に最終的措置をするのでなくて、日本側としては調達庁長官がやはり最終的な意見を持っていって、必要に応じて意見の調整をしたあげくで決定をするというふうに相なっておりますので、調達庁といたしましては、十分の調査を行なって、心証を得た上で必要に応じての意見の調整に持っていくということを考えておるわけでございまして、この種事案の処理については、一週間とか、十日ぐらいで早急にずばり意見が出るというものではないのでございまして、相当の時間をかけまして、丁寧に扱っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  106. 山本經勝

    山本經勝君 調達庁の方の考え方はさっきからたびたび承わっておるのですが、調達庁は、つまり危険な行動をしたもの、これは保安上の解雇はやむを得ぬという前提に立っておられる。そうしますと、先ほどから申し上げる具体的な事実、組合の役員並びに組合員が組合運動の一つとして文化活動をやったということは、この保安上に危険な行動となると判断をされておるのですか、そうではないと判断されておるのですか、どっちなんですか。
  107. 坂本實

    説明員坂本實君) まあ組合の文化活動それ自身については、保安上危険であるとかないとかいうこととは関係がないと思うわけでございますけれども、さらに具体的にどういう心証をもって保安上危険であるというふうに考えておるかという軍側態度というものをやはり相当たたいてみるということからこの問題を処置していく、と同時に、果して保安上の危険が労務者側にあったかどうかという点をやはり実質的に日本側でも調査いたしまして、処置していきたいと思っております。
  108. 山本經勝

    山本經勝君 その調査ですが、その調査の方法をどういう方法でいつやられるかということを伺っておるのです。いつでもいいというわけにはいかぬのです。二十二名のうち現に十八名は出勤停止で、県が一応何といいますか、法に基く最低生活保障の六〇%の給与支給はやっておりますが、これもいつまでも続かぬ。出勤停止が永久であれば解雇と等しいですから、そういう状態に置かれており、現に問題があるのですから、のんきなことを言っておったんでは、これは申し上げるように、この事態は全駐留軍関係労務者の全体の問題になり、さらに大きく発展して、労働者全体の大きな問題になる、こういう要素を帯びているからそれを伺っておるのですから、いつでもいいと、調査をするという、この委員会での言い逃れであってはいかぬということを私は申し上げている。
  109. 坂本實

    説明員坂本實君) もちろん十分丁寧に調査をするというふうに申し上げましたが、ゆっくりやるというわけではございませんので、すでにそれぞれ調査のために手を打ちつつあるということでありますので、その点は御了承いただきたいと思っております。
  110. 山本經勝

    山本經勝君 それでは今の板付基地に関する問題についてはなお十六日に法務委員会質問をさしていただくようにしておりますので、この程度にして打ち切りますが、あとは……。
  111. 山下義信

    理事山下義信君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  112. 山下義信

    理事山下義信君) 速記を起して。  先刻山本委員から御提案になりました本問題の委員会におきまする取り上げ方並びに現地調査につきましては、委員長及び理事会で適当に審議いたしまして善処するということにいたします。
  113. 竹中勝男

    ○竹中勝男君 私はさっきから山本委員質問に対して当局の答弁を聞いておりますと、この問題はきわめて重大な意味をもっておるにかかわらず、答弁に際しては技術的な問題にこれを限って答弁をされておるのです。特に労働大臣の責任ある原則的な態度を聞いておるのに対して、一度も労働大臣は原則的な労働大臣としての所信を返答しておられない。私はこういう点でさらにこの問題は追及されて解決に本質的な解明をしなければならないと考えております。私は今日この社会労働委員の一人として、今日の当局態度、答弁に対しては非常に不満だということを私は表明しておきたいと思います。それでそういう意味におきましても、理事会においてはこの委員会自身がこの調査をするということについてはぜひやってもらいたいと思っております。
  114. 山下義信

    理事山下義信君) 本問題に関する本日の質疑はこの程度にいたしたいと思います。   —————————————
  115. 山下義信

    理事山下義信君) 次に炭坑災害対策に関する件を議題といたします。御質疑を願います。
  116. 山本經勝

    山本經勝君 この問題につきましては、先日衆議院の労働委員会でそれぞれ御質問があっております。問題は福岡県嘉穂郡二瀬町相田というところにある通称もぐり炭鉱というのでございますが、ここで起った災害が一件、それから山田の筑紫炭鉱に起りました災害、大体こう二つの災害の問題で、そのほかガス爆発等に関する問題等でございますが、その中でこの山元炭鉱における災害につきましては、これはすでに御承知のような状況の下で、正規の炭鉱として施業案を認可を受けてやっておらない。これは現地で私も見ましたし、また鉱山保安監督部にも参りましていろいろ話を聞きました。実情調査もやりました。そこで基準局という立場から見る場合に、当然三人の従業員を雇うて石炭の採掘を目的とした企業を営んでおります。ですからここで問題になってくるのはこうした炭坑の災害、この災害に対する労災の補償の問題だ。で、労災補償の規定に基けば、つまり当然保険に加入しておって、そうして保険金を支払っておる。そうしてそれぞれ支払いの条件が整わなければならないことは私も承知しております。ところが問題は災害の直前に保険に加入して掛金を払い込んでおったが、しかし実際問題としては手続的に若干おくれておったという実情がございます。ところが基準法で考えて参りますというと、一応事業場として認められるし、その雇用関係も確認できておる。それで飯塚監督署で当然この実情を認定しておりますので、この補償の方法を手続的にも促進をしていただきたいし、また労働省基準局の方にはどういうふうな御報告があっておるか、その点をあわせてお知らせ願いたい。
  117. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) ただいまのもぐりの小さな炭鉱におきまして、ことに女子を使いまして、禁止されております女子を坑内労働に使ってそういう死亡事件を起しましたということにつきましては、まずもって大へん私どもといたしましても遺憾に存じております。二つの事件のうち一つはすでに送検し、一つは目下送検すべく検討中であり、さらに類似の事犯がありましては大へんでございますので、筑豊炭田のそういう類似の事件調査を一斉的にやらしております。ただいま仰せの労災補償につきましては、現地報告によりますれば原則的には労災保険から支払うことは困難で、使用者が基準法に基いて直接に支払うべきものであるという建前の話でございまするが、私どもの方といたしましては、この筋道といたしまして、任用者におきまして、この直接に労災補償の支払能力がありますればそれでいいのでありまするが、そういうもぐり炭鉱業者でありますので、えてして十分なる支払能力を持っておらないという場合をも考えまして、もしさような場合におきましては、元来労災保険に強制的に加入すべきものであり、そうしてそのもとにおいて労災保険によって的確に保険給付として労働者がもらい得べかりしものであったわけでございまするので、その使用者に全部または一部の直接支払能力がどうしても欠ける場合におきましては、労災保険の給付制限について緩和の措置を講じて、不足分を支払ってやるようにという指示をいたしてございます。ただ何でもかんでも保険から払えばいいというのでありますれば保険財政は崩壊に帰しまするので、まず第一前提としては使用者に十分にできるだけの支払能力をたたき出しまして、払えるだけ払わせるということに努力しておるわけであります。つい最近の中間報告といたしましては、最初の死亡災害事犯につきましては使用者側の支払能力がきわめて稀薄であるが、二番目の事犯は経営者が三人で共同経営しておる。一人は無財産であるが、二人は若干の財産も持っておるということで、ただいま申しましたような筋道で、この当事者とそれぞれ折衝し、調査もやっておる、こういうことでございます。近く終結し、最終的な報告のくることを期待しておるわけでございます。
  118. 山本經勝

    山本經勝君 この種の炭鉱がたくさんあることは今おっしゃった通りです。ところがこの責任が、これは通産省の方の関係だと思いますけれども、ところが労働基準法というものがやっぱりあるのですから、それに基く観点からの調査なり指導、あるいは監督という点も問題になって参ると思うのです。ですからこの種の災害が続発したのでは困りますし、一方労働大臣にお願いなり御協力いただかなければならぬ点は、こういう状態が起るということは、少くとも筑豊炭田に多数の失業者がおりまして、そしてこれが一部のボスの手先になって働いたりする場合もありますが、非常な安い賃金で働かなければならぬ苦境に陥りまして、やむを得ずこういうもぐり炭鉱をやって、法に違反していることを知っていてやっている、しかもそれを一方本来の鉱業権者が見のがしているという状態が非常に重大だと思う。できれば私は災害防止の建前からも、少くとも鉱業権者がこうした無責任なもぐり炭鉱を認めないようにしてもらわぬと困る。この場合には、川上武雄という人間がこの炭鉱の鉱主になっておる。ところがその炭鉱の鉱区に属する採掘を許可なくやったというのですが、初めは話し合いをしておったことは事実なんです。そうしますと、こうしたことに対する責任は鉱業権者に対して強い態度をとらない限り今後改善しなければならないという心配がありますので、この辺は一つ大臣なり局長の方にお願いして十分監督指導をお願いいたします。  それからこれは実は臨時国会の際に大臣にお聞きもし、またいろいろお話も申し上げ、御質問もいたした点なんですが、昨年十一月に起りましたあの連続的なガス爆発、ガス吐出、ガス燃焼、こういった問題、さらに今年の一月十九日に、御承知通り、九州採炭の高陽炭鉱で死亡者七名、重傷五名、軽傷八名、こういうような実は事故を起しております。これもガスの爆発によるもので、この坑内状況等については現地調査をいたして問題にいたしておりますが、こういうふうに振り返ってみますると、ガス爆発、ガス吐出、ガス中毒、つまりガスを中心にして死亡した数が福岡の通産局の石炭部に集計されているだけをみましても、大体四百名内外の災害者、罹災者のうちで八十四名はガスでやられておる、それで割合にいたしますと、大体二割というところです。こういう多数の人間がガスによって倒れて参るのでありますが、これに対する予防措置を含めた勧告をしてほしい、またすべきではないかということを御提案申し上げ、それについては労働大臣も十分考えねばならぬ、勧告することをするというお話であったのですが、その後なさったかどうか。この点明白にお伺いしたい。
  119. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) この問題は非常に大事な問題でございまして、災害というのは人命にも、国の貴重な財産にも非常な大きな関係がありますので、先ほどちょっとお話のありました、衆議院の社会労働委員会でもいろいろこの間も論議されましたが、それでこの前あなたの緊急質問のありましたあとでも、通産大臣ともいろいろ話賦しましたのですが、具体的に先方の事務当局とこちらの基準局でその後も話をしておりますので、そういう事務的な話し合いについて基準局長から御報告をいたしたいと思います。
  120. 富樫總一

    政府委員富樫總一君) この点につきましては、山本先生よく御存じのように、そのつどいつも向うの正木保安局長等に私どもとしても厳重な抗議を一申し込んで、事務的に申しましても、私の方の炭鉱の労災保険の赤字という重大な問題もかかえております。きわめて事務的にも非常にわれわれ遺憾に思って厳重に言うております。また経営者団体にも正式な警告書を発しておるのであります。何分具体的にガスの災害について、こうしろ、ああしろという技術的な措置につきまして、この申し入れするにつきましては、遺憾ながら労働省としては専門的な調査検討をするという機能を全く欠いておる、こういう状態でございます。そこでわれわれの方といたしましては、通産当局におきまして、それぞれの専門の研究機関も持っておる。あるいはまたこの学識経験者及び労使の専門の代表者をもって構成する審議会もあるので、一つそういうところの意見も、君らの方ですぐ審議会を開くのはめんどうくさいというような感じでないがしろにすることは遺憾である。十分にそういう意見を聞いて、このなすべきことはなしてもらいたいということをついこの間も申し入れたような次第でございます。
  121. 山本經勝

    山本經勝君 その話はこの間も実は伺ったんですが、ところが問題はなるほど労働省に担当官としてあるいは担当した任務としての職員なりあるいは技術者を十分配置されておらないことは、私もよく知っておるんです。そこで本来法五十四条がいいます保安の問題につきましては、労働大臣の勧告というのは、たとえばガスを排除する方法をどうこうするという技術問題ではないわけです。その方は通産省の方はよほど精通しておられるし、十分な資料も持っていられる。ですから問題はただガスが排除されるということが必要なことだと思う。ガスが排除されなければ、この災害はいつまでもつきまとう。私どもの知った範囲では少くともその石炭の容積の一とか二とか仮定いたしますると、ちょうど五十倍に当るガスが、いわゆる吸着ガスとしてあるいは流動ガスとして炭層の中に常にあるわけですよ。ですから火をつければいつでも燃えるようになっておる。そのガスが排除されることがなされずしては、これはとうていお話にならぬと思う。ところがガスを抜く方法がないのかといいますとそうじゃない。すでに北海道で三炭鉱、九州で二ないし三炭鉱が実行しておる。ところがそのガスを抜く方法が費用がかかるのですね。ところがその費用をコストにかけては炭鉱の採算が立たぬものだからやれないという現状にある。そうしますと労働省から少くともガス抜きをやれという勧告をかりになさったとするなれば、そのことの必要な予算措置も問題になってくるでしょう。ガス抜きについては現に通産省が融資の道を開いておる。ところが融資だけではやれない実情にある。しかも労働者の生命身体の安全衛生という立場で守らなければならない労働省立場からは、そのことを何としても通産省と協力してやらせるようにしてもらわなければならぬ。そういう方法がとられぬ限り私はガスに対する災害が永久につきまとってくるということを申し上げたい。それを技術者が足らぬと言われるが、大臣は少くとも技術者をいつでも審議会とか何とかというので集めてこられる。いつでも集め得ると思う。あるいは通産省の協力を得られると思う。私どもは実際にそうした現場で働き、実際にどういう方法でガスを排除できるかということを経験で知っておる。ですからそうしたものの意見を徴して勧告の内容を作ってもらいたいのである。大体この前の臨時国会では研究した上でそういたしましょうという約束であった。ところが今日まで依然として何らなされておらぬ。そういうことは私はきわめて不満だ。そういう方法を私は労働省に技術者がおらぬから、あるいは資料がないからということで逃げられるということは、それは完全な大臣のいわゆる逃げ手であるというふうに言わざるを得ぬ、この点をもう少し責任ある立場大臣から一つ解明を願いたい。
  122. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 非常に大事な問題でありますから、先ほど基準局長が申し上げましたように、通産省とは緊密な連絡をとって万全な策をとるようにわれわれの方としては要求しておるのでありますが、ただいまのお話のようなことも参考にいたしましてさらに通産大臣とも協議をいたしたいと思います。
  123. 山本經勝

    山本經勝君 どうもその点が大臣のおっしゃることはいかにもその場の調子でするするとうまく答弁を回避し、逃げられるきらいが非常に強い。そうではなくて、一つやろうと思われればできることをなぜやろうという決意になっていただけないのか。こうして年々歳々全国で平均五年間の統計をとってみましても、毎年大体七百名の労働者が死んでおるのです。ところがその中の二割は大体ガスの爆発、燃焼、あるいはガス中毒等で倒れておる。こういう状態を考えたら、この労働者の貴重な生命が奪われつつある現実を直視していただくならば、もっと親心を示すなり、もっと積極的な労働者保護の立場に立たれ、労働大臣立場から積極的に通商産業大臣に勧告ができないということは言えないと思うのです。それをなさるのかなさらないのか、それさえもこの前の約束と違って今日なをなされていない、こういうことはあまりにも死んでいく労働者の生命を一塊の石ころのごとく考えておいでになるのではないかということを疑わざるを得ぬ。その点ほんとうに信念のある対策なり考え方を解明していただかなければ私は納得がいかぬし、また私がこのことを炭鉱労働者に伝えるなれば、そのことがまた大きくはね返りになって労働行政に対する不信の念にもなりましょう。ですからそこら辺をもっと責任のある立場から解明していただきたい。そういうことのためにこういう措置をとろうということになって参りますれば、それは労働者の皆さんが喜びますし、われわれも協力してそういう方向に推進ができる。そこで一つもっと責任のある立場で解明をはっきりしていただかなければ納得がいかぬわけです。
  124. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど基準局長から申し上げましたように、この前の議会でお尋ねになりましたあと手をこまぬいて見ておったわけではないので、通産当局ともいろいろこちらから先ほどお話のように話をしておるわけでありますが、今具体的なお話がございましたが、そういうことは通産当局でもおそらくそういう知識は持っておるのだろうと思いますが、なお今日実行されておらないことについてはどういう事情があるか、そういったような点について私どもの方からさらに通産省と十分打ち合せしてできるだけの措置をとっていきたいとこういうわけでございまして、私がここで申し上げることが逃げるようなことだという御意見でありますけれども労働大臣がどこかへ行ってしまうわけではありませんから、何べんでも同じことを言われるわけで、私の方としてもよく保安関係の方と、通産当局の方と話をして万全の策を講じていくように努力をいたしたいと存じます。
  125. 山本經勝

    山本經勝君 今の逃げるという言葉は極端かもしれませんが、しかし責任のおありであるということは十分承知なさっていると思う。そうしますと、その責任のゆえにどうしなければならぬかというお考え方があろうと思うのです。今のような手続的な事務的な問題ではないわけです。それで先ほど申し上げたように私ども今考えておることは率直に申し上げると、ガス抜きはできる、しかもガス抜きは有効にできるということはすでに試験済みなんです。そうするとそのために費用がかかる、ところが申し上げたように、問題は技術的な問題は通産省がやります。それはもうこっちで考えなくてもやる。ガス抜きをやれ、ところがそのガス抜きに必要な方法が予算の問題にかかってくる。ところが融資はするけれども、これはいわゆるやり切りの金だということになりますと、その施設をしようとしても、したことによってコストが上って採算がとれぬという事態が起るから、中小炭鉱等の場合にはやり切れない。この救済なんかの場合には実に顕著な該当の例です。日炭ではガス抜きをやっておる、そうすると従来あった流通ガスがなんぼでありますか、三%あるいは二・五%あるものが〇・二に下っておる、その顕著な事実がある。そうすれば爆発せい、ガス中毒せいといってもできぬです。そのガス抜きの実際的な方法が具体的に行われておる今日、これに対する適当な補助を与えるなりする以外に、中小炭鉱をガスの災害から守るということにはなってこないと考えるのです。ですから大臣としてガス抜きをすること、ガス抜きに必要な補助等予算措置を含めて考慮をせよ、こういう要請は私は労働者をかわいがるなればできると思う。そのことが閣議に持ち込まれたりあるいは通産省との話し合いでどの程度できるかということは、私は別問題として十分理解ができる。こうしたらできるのだということが目に見えておって、そのことを勧告しようとなさらぬことに私は疑義を持っておる。鉱山保安法の五十四条に御承知通りくどいようですが、労働大臣の勧告権を認めておる。その勧告権はいわゆる生産一本やりの保安が考えられて、資源や施設の保安のみに重点が置かれ過ぎるということから、あの法律ができる当時に議論になって労働大臣の勧告権というものが認められてきた。労働者の生命と身体を安全に守るという建前の趣旨であったと私は聞いておる。だとするなれば、少くともこの問題は勧告の内容を盛り込んだ筋の通った勧告の方法を講ずべきである。そのことができないことはない、今から研究します、調査します、あるいは協議をしますというような事態ではない、もはや専門家が技術的に研究をして、これならば確実にガスによる災害はほとんど絶滅し得る見通しが立っておる。そのことが財政的の面から困難であるのであるから、そうすればそのことに対して通産省に勧告をするとともに、通産省と協力されて閣内でそうした措置が当然講ぜられるのが責任者の立場にあるものの態度ではないか、私はこれはきめつける意味じゃなくして要望をしたい。そういうお考えがあるのかないのか、そういうことをやるという決意かあるのかどうか、それを私は伺いたい。
  126. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 炭坑災害を防ぎたいということはもちろんだれも考えておることでございますけれども、鉱山保安は御承知のように通産省の所管でございますから、私の方から十分ただいまのような御意見を参考にして相談をいたします。
  127. 山本經勝

    山本經勝君 相談をいたされるのでなくて、私の申し上げておるのは、五十四条に勧告ができるというふうに明文で規定されておるのです。そこで労働者の要望がかくある。私の言っておることは炭鉱労働者意見だと聞いてもらっても不都合じゃない、そうしますと、そういう現実の要望があり、しかも可能であり、有効である方法がすでに目の前にぶら下っておる。そして実は問題はただ補助金か、貸付金が問題になっておる。補助金でこれを全面的に一斉にやれと、私は申し上げておらぬのです。九州には四十三の第一種炭鉱があり、そこに働いておる労働者の数は約四万に達する。これらの者が毎日ガスの危険にさらされて作業に精進しておる。だとすれば、いつそのガス災害によってこれらの人たちは多数死亡するか、あるいは重傷を負うかわからない状態に置かれておるのだから、私は全炭鉱に一斉にやれとは言わない、それはやってもらえればそれにこしたことはないが、一つ一つでもいい、逐次それらの炭鉱に対する補助なりをしてガス抜きの方法を励行をさせるという勧告ができぬという理由は私にはうなずけない。今から協議するということでは、率直に申し上げて間に合うような事態ではない。
  128. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 同じようなことを申し上げるのでありますが、通産省の所管でございますから、私がここで、政府部内でどういうことをやるべきだということについては、やはり通産省の意見も尊重しなければなりませんので、十分にそういう御意見のありましたことを体して協議をしていきたい、こういうことでございますから、どうぞ御了承願います。
  129. 山本經勝

    山本經勝君 大臣伺いますが、たとえば閣議においてあるいは経済閣僚懇談会とかいろいろの会合もあるのですから、話をなさる機会はたくさんあると思う。今までにも話をされておると思う。かりに例をあげて言えば、失業問題を取り上げるときに労働省は当然建設省と話もなさるでしょう。あるいはその他の関係閣僚との話もそれぞれなさると思う。そういう方法は当然とれるのです。そうじゃなくして労働大臣が勧告する権限を持っているのだから、その技術的な問題をどうこうせよという必要も何もない。そんなことはみんな知っている。問題はやはり補助にするか貸付金にするのかということにかかっている。融資はすることになっている。融資ではできぬから少くもこれは補助によってなすべきであるという勧告をなさったらどうかということを私は申し上げている。それさえもできないということは私はうなずけない。
  130. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そういうことになりますと、やはり財政上の問題もあるでありましょうから、私がここで政府が一致してできることでないことを事前に私だけの考えをでたらめに申し上げることは慎しむべきだと思いますので、なおよくそれぞれの当局と相談をいたして参りたいと思います。
  131. 山本經勝

    山本經勝君 それで問題は、一応そのあなたの言われることはあなたの言われるなりにわかるのです、私も。しかし勧告をするということは、ガス抜きが有効である、それによるなれば少くともガスによる災害はほとんど絶滅に近い状態に置き得るのだということだけは、はっきりしているのです。であるからガス抜きをすべきであるという勧告が私はできないことはないと思う。それから後予算の面でどうするかは閣僚の皆さんの間でお話し合いをなさるでしょう。あるいは政府としての検討もなさるでしょう。私はそれはそれでいいと思う。そうじゃなくて、その前に法五十四条がいう勧告の権能を持っている労働大臣がガス抜きをやるべきであるということをいまだかつて一度もなさっていないのだから、それを一つやってもらいたい。それをなさる考えがあるかどうかということを前国会で質問を申し上げたら、やるのだと、十分関係閣僚と研究調査をした上でやるのだというお話しであったが、今日までやっておられないから私は重ねてそのことを質問申し上げ、意見を申し上げているのです。
  132. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私があなたの御質問にお答えしてガス抜き云々といったようなことをお答えいたしておらないのでありまして、そういう問題については私も十分な知識を持っておりませんから、私の方から労働大臣として今まで先ほど基準局長が申し上げましたような勧告とか話し合いを進めているわけでありますけれども、本日ただいまのような具体的なお話があったのでありますから、さらに部内でもよく相談をいたしまして、そうして通産省当局と懇談をいたしたい、こういうことでございます。
  133. 山本經勝

    山本經勝君 何べん質問しても同じことの繰り返しであって、のれんに腕押しですが、問題は大体法規があって、法規を忠実に執行してゆくことは、やはり政府の責任であると思う。法律に明文で規定されておる。そうすると、法律を守ることは、順法闘争はいかぬかもわからぬが、そういうふうなことは、おそらく大臣はお考えになっておらぬだろう。そうすると、明文で規定されている勧告が——勧告の内容が予算を伴うけれども、それが労働大臣の一手でもって予算をどうこうしてもらいたいということを申し上げているのじゃない。できなければできる範囲において逐次実行に移し、それを拡大してゆく方法があると思う。ですから勧告をなさらぬというそのこと自体が前の約束とも違う。しかも本委員会で重ねて質問を申し上げますというと、また前と同じようにのれんに腕押しでもって、結局十分関係閣僚あるいは通産大臣とも相談をして……、こういうようなことになりますと、またいつのことかわからぬ、またいつ災害が起るかもわからぬという実情のもとにおいてお考え願うなら、少くとも積極的な一つ勧告の内容を検討すると言うなり何とかもう少し前進の話が伺えそうなものと私は考える。どうなんですか。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほど申し上げた程度で御了承を願いたいと思います。
  135. 山下義信

    理事山下義信君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  136. 山下義信

    理事山下義信君) 速記を起して。  本問題に関する質疑はこの程度にいたしまして、残余の日程は次回に譲りたいと思いますが、御異議ございませんですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 山下義信

    理事山下義信君) 御異議ないものと認めます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十六分散会