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政府委員(柴田達夫君)
建設業法の一部を改正する
法律案につきまして、その要点を逐条的に御説明を申し上げます。
本改正案の骨子は、
建設工事の請負契約に関する
紛争の解決をはかるため新たに
建設工事紛争審査会を設置して、
紛争につきあっせん、調停及び仲裁を行わせることとするにあります。これに伴いまして、従来の
建設業
審議会によるあっせん制度は発展的に解消することとなりますので、第三章の次に、第三章の二として、「
建設工事の請負契約に関する
紛争の処理」と題する一章を設けた次第であります。
改正案の第二十五条は、
建設工事紛争審査会の設置に関する規定でありまして、あっせん、調停及び仲裁の手続を一行わせるため、
建設省及び都道府県にそれぞれ付属機関として審査会を設けることといたしたのであります。
第二十五条の二は、審査会の組織に関する規定であります。すなわち
委員の定数は十一五人以内とし、その資格は、利益代表的な観念を排除いたしまして、人格が高潔で視野の広い達識の士のうちから任命することといたしまして、会長の選定方法等とあわせて、本審査会の組織を定めたものであります。
第二十五条の主ないし第二十五条の六は、
委員の任期、欠格条項及び解任、並びに審査会の
会議等に関する規定であります。
第二十五条の七は、特別
委員に関する規定であります。
紛争処理は本来
委員をもって行うべきものでありますが、一時に多数の事件の発生を見た場合、あるいは特殊な事件につき専門的な判断が解決の鍵となるような場合等も予想されますので、そういう場合に処理一を全からしめるための万全の策として、
紛争処理に参与させるため特別
委員を履き得ることといたしたのであります。
第二十五条の八は、都道府県審査会の
委員及び特別
委員の地方公務員法上の地位に関する規定であり、
第二十五条の九は、審査会の管轄に関する規定であります。本条におきましては、原則として、当事者たる
建設業者が登録を受けた行政庁に付属する審査会が
紛争処理に当ることといたしました。すなわち、
建設工事の請負契約に関する
紛争は、契約の性質上、当事者の一方または双方が常に
建設業者であり、
建設大臣または
都道府県知事の登録を受けており、登録をした
大臣または
知事が当該業者の業態を最も的確に把握している実情にかんがみ、登録行政庁に付属する審査会において
紛争処理に当ることが最も実情に即した解決を得る捷径であり、当事者にとっても利便であると思料した次第であります。
第二十五条の十は、申請手続、処理の経由等の規定であります。
第二十五条の十一は、あっせんまたは調停の開始に関する規定であります。第一号は、現行法により
建設業
審議会があっせんを開始する場合と同一の規定であります。第二号は、公共性のある
施設等で政令で定めるものに関して
紛争が生じた場合の規定でありまして、
紛争により工期の遅延その他公益を阻害するおそれが生じた場合、審査会が積極的にあっせん等に乗り出すことといたしまして、公共
工事の施行の確保をはかったのであります。
第二十五条の十二は、あっせんについて規定しております。あっせんは対立する両当事者間に円満に話し合う機会を与え、解決に導くという最も簡易な手続でありまして、会長が事件ごとに
委員または特別
委員のうちから指名するあっせん
委員に解決を一任し、手続もあっせん
委員の判断によって適宜定め縛ることとしたのであります。
第二十五条の十二は、調停に関する規定であります。
本法による調停は、民事調停法による調停のように、裁判上の和解と同一の効果を有するものではなくて、単に裁判外の和解の仲介をする程度の効力を有するにとどまり、その効果の点はあっせんと異ならないのであります。ただ、
建設業
審議会によるあっせんが従来相当の成果を収めてきた経緯にかんがみ、裁判外の和解の仲介をする手続を軽重二つに区別し、簡易なあっせん手続のほかに、やや慎重な調停手続を設けることが運用上効果的であると
考えたのであります。すなわち審査会は当事者に出頭義務を課し、さらに調停案を作成して当事者に受諾を勧告することができるものとし、調停案決定の方法をも明確化したのであります。
第二十五条の十四は、民事調停法第十三条と同趣旨の規定でありまして、請求が
法律的にも道義的にも理非明白で、互譲の余地がなく、または互譲による妥協を不可とする場合は、あっせんまたは調停をしないことができることといたしました。
第二十五条の十五ないし第二十五条の十九は、仲裁に関する規定であります。由来民事上の争いに関する解決に関しましては、もとより訴訟によることが通例でありますが、なお和解や調停などの簡易な解決の道も開かれておるのであります。しかしながら、訴訟はもちろん、和解や調停な
ども裁判所の手続によるのでありまして、
建設工事における
紛争のように迅速な解決と、技術上の専門知識を必要とし、複雑多岐にわたる施行上の事実認定が解決の鍵となるような分野におきましては、訴訟や調停などによる解決の方法は必ずしも実情に即せず、むしろ当事者の合意による仲裁手続のごとき制度によらしめることが実情に適するものと思料するのであります。しかしながら、
建設工事の請負契約に関する
紛争のような特殊の領域におきましては、仲裁人の選定その他の仲裁手続そのものに関して当事者間に
紛争が起る可能性もあるのでありまして、見事訴訟法の規定のみをもってしては必ずしも十分ではありません。よって、
建設事業の性格にもかんがみ、新たに行政機関による迅速公正な仲裁手続を法定し、難波
工事の適正な施行に寄与せんとする趣旨のもとに仲裁制度を設けた次第であります。
第二十五条の十五は、仲裁の開始に関する規定であります。すなわち、第一号は、当事者の双方から審査会に仲裁の申請がなされた場合の規定であり、第二号は、
工事請負契約等において、あらかじめ仲裁に付する旨の合憲があった場合は、一方の当事者からの申請により仲裁を開始し得る旨の規定であります。いずれにせよ、仲裁の開始が当事者の合意にかかる点については同様であります。第二項は、中央審査会は都道府県の審査会の行なった仲裁判断に対する
異議申し立てについて第二審的機能を行うことができる旨の
権限規定であります。
第二十五条の十六は、仲裁の手続に関する規定であります。審査会による仲裁は、審査会の会長が
委員または特別
委員のうちから指名する三人の仲裁
委員によって行うことといたしまして、その指名は原則として、当事者が合意によって選定したものについて行うこととなっております。
第二十五条の十六第三項は、仲裁
委員の資格に関する特例でありまして、仲裁が当事者間において確定判決と同一の効力を有する点、従来仲裁人が往往にして
法律知識に欠けるために適正な仲裁判断を下し得なかった点等にかんがみ、仲裁
委員のうち少くとも一人は弁護士となる資格を有する者、すなわち
法律専門化でなければならないものといたしたのであります。同条第四項は、民事訴訟法の適用についての特例を規定いたしております。すなわち、
本法による仲裁には原則として民事訴訟法の適用があることを明らかにしたのであります。ただ、仲裁
委員の選定手続や証拠調べの手続、仲裁判断
に対する
異議の申し立て、費用、手数料徴収等に関する規定は同法に関する特例でありまして、これは
本法の仲裁が行政機関による仲裁であることに
かんがみて、設けられたものであります。
第二十五条の十七は、証拠調べの規定であり、第二十五条の十八は、裁判所外における証拠調べに相当する規定でありまして、立ち入り検査に関する規定でありまして、この場合においても管轄裁判所の協力を求めることができることといたしております。
第二十五条の十九は、
異議の申し立てに関する規定であります。民事訴訟法の仲裁においては、仲裁人のなす仲裁判断は直ちに確定判決と同一の効力を生ずるのでありますが、
本法による仲裁は、行政機関による仲裁
委員の選定が必ずしも当事者の合意にかかっておりませんので、特に慎重を期し、
異議申し立てを認めた次第であります。同条第二項は、
異議申し立て期間に関する規定でありまして、仲裁判断の効力をいつまでも不確定の状態におくことは適当でありませんので、当事者は二週間のいわゆる不変期間内に限って
異議を申し立てることができることといたしたのであります。
第二十五条の二十は、手続の非公開に関する規定であります。
第二十五条の二十一は、
紛争処理手続きに要する費用に関する規定でありまして、裁判上の和解の例にならい、当事者が当該費用の
負担につき別段の定めをしない限り、各自これを
負担することといたしました。
第二十五条の二十二は、申請手数料に関する規定でありまして、手数料は
紛争処理の申請者の
負担といたしまた。
第二十五条の二十三は、
紛争処理状況の
報告に関する規定であります。
第二十五条の二十四は、政令委任の規定でありまして、おもな事項といたしましては、
委員の報酬、
委員及び特別
委員の名簿の作成及び閲覧、あっせんまたは調停の取り下げ及び打ち切り、
異議申し立ての手続、費用の範囲等を予定をいたしております。
以上で第三章の二を終りまして、以下は、
建設工事紛争審査会の設置に伴う
建設業
審議会に関する規定の整備であります。すなわち今回の改正により、従来
建設業
審議会の重要な事務でありました
紛争の解決のあっせんが
建設工事紛争審査会に移管されることとなりましたので、この際地方行政機構簡素化の趣旨にのっとり、都道府県
建設業
審議会は任意機関とすることといたしまして、これに伴う条文の整備を行うとともに、中央
建設業
審議会の組織につきましては、
建設業界の実情を一そう反映させるため、
委員定数を五名増加することといたしたものであります。
以上、
建設工事の請負契約に関する
紛争の処理を強化いたしますために所要の改正をはかったのでありますが、この改正により、
建設工事紛争審査会布の日から起算して九十日をこえない範囲内で政令で定める日から施行することとし、あわせて
建設省設置法の改正に関する規定を附則中に設けた次第でございます。
以上逐条説明を終ります。