○
八木幸吉君
官房長にはその
程度にいたしておきます。
官房長官に続いて伺います。今お聞きの
通りのような成り行きで、私は
依願免職という
処分はどうしても
納得がいかない。そこで何かこれを是正する手段はないか、こういうのでいろいろ研究をいたしました結果、
国家公務員法の第八十四条には、御
承知の
通り、
懲戒処分の
規定があるわけでありまして、第一項には「
懲戒処分は、
任命権者が、これを行う。」第二項には「
人事院は、この
法律に
規定された
調査を経て
職員を
懲戒手続に付することができる。」こういう
規定があるのでございますから、
人事院総裁に当
委員会にお越しをいただきまして、この第八十四条第二項によって、
人事院みずからが、この
依願免職の
処分が不当であるというふうな御
見解ならば、
人事院独自の
立場でさらにこれらに対して
調査をし、適当な
処分をするということをしてもらってはどうかということを実は聞いたわけなのです。そういたしますと、
人事院総裁は、どうもこの
法律の従来の
解釈では、一たん
免職したものは
公務員としての
身分を喪失しておるから、
人事院の
懲戒の対象にはならない、こういうまあ
お話しでありました。この
解釈に対して、私、必ずしも全面的に
納得が今でもいっておりません。というのは、御
承知の
通り人事院はいろいろ
任命権者の不当な
懲戒の
手続に対して救済的な
立場におるわけでありますから、救済するということがあるならば、今度は軽いものを是正するということも当然やはり行うのが、
人事院の
立場としては当然であるし、それの
根拠規定としては八十四条第二項が適用できるのじゃないか、こういう気持ちはあるわけでありますけれ
ども、
人事院総裁がそう言われますので、その点はそのままにいたしておきまして、次に、
依願免職以外の、
免職しておらぬ
行政処分措置による
懲戒処分の
一覧表というのを、
人事院当局から
提出を求めたわけであります。そういたしますと、
人事院の
職員課から過去一カ年間における全
省庁懲戒処分理由別件数表というものをいただきました。それを拝見しますと、過去一年間に
懲戒処分になった者が二千七百名あります。
懲戒の種類は、
免職、
停職、
減給、
戒告ということになっておるわけであります。この
一覧表を見まして、私、非常に驚きましたことは、たとえば
文書偽造、収賄、横領、
公金流用、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、暴行、傷害といった、一言で言えば
破廉恥罪ともいうべき悪質の犯罪に対して、
戒告処分だけで、
停職にも、
減給にも、いわんや
免職にもなっておらぬ
件数が千三百十三件、二千七百の約半数というものは、今申しましたような非常に悪質な
事件であっても、なおかつ
戒告だけで済んでおる、こういう事例が発見されましたので、私は実は非常に驚いておるわけであります。さらに、それでは一体この
国家公務員の
背任罪というものはどれぐらいあるのかということを、法務省の
刑事局に
調査を依頼いたしまして、この二十一日にその
調べが参ったわけでありますが、非常に完全な
調べとは申すわけには参りませんが、「
国家並びに
地方公務員在職中
背任容疑で取り
調べられた
件数、
起訴不
起訴の
件数について。
在職中の
背任容疑そのものについては統計がないので、
当局に対し
右年度中に
報告のあった
事件につき、取りあえず」
報告する。こういうので
報告がありましたのですが、それを見ますと、
昭和二十八年に
報告件数が十二件、不
起訴件数が十二件、
起訴がなし。
昭和二十九年が
報告件数が十二件で、
起訴が一件、不
起訴が十一件。
昭和三十年が
報告件数が十三件、
起訴が四件、不
起訴が七件、未処理が二件。つまりこの三カ年を通じまして
報告された
件数が三十七件で、
起訴がわずかに五件である。これをみましても、
背任で
司法権発動、検事が
起訴するというのはきわめてわずかである。そういたしますと、
公務員の
懲戒に値するような
事件が非常にたくさん起っているのに、
背任罪でこれを
処置するということは非常に少い。
行政処分としては、今申しましたように、これもまた非常に少いということでは、結局
官紀の
粛正ということは望みがたいのじゃないかというふうに私は実は考えるのでありまして、試みに諸外国の例を
調査立法考査局に
調査を依頼いたしまして、「フランスにおける
官吏の
汚職行為に対する刑罰による制裁」の
調べだけが参ったわけでありますが、それによりますと、公
文書偽造は無期徒刑一本です。これは私非常に驚いたんですが、公
文書偽造は無期徒刑一本です、フランス刑法の第百四十五条にあるのですが……。公けの受託者の横領罪が一万フラン以下のものでも二年ないし五年の禁固であります。
官吏がたとえば税金なんかを不法に請求した場合の罪が、二年以上十年以下の禁固、収賄は二年以上十年以下の禁固で、おまけに収賄したものの二倍の罰金を課せられて、その罰金が、しかも二万五千フラン以上収賄でもらったものは
国家が没収する、こういったようなフランスの
規定が、おそらくフランスの
官吏というものは非常に腐敗しているから、こういう
規定が起ったのだろうと思いますが、そこで私は
官房長官にお願いしたいのは、国民感情としてこのようだ、今の
印刷局長の例で申しましても、かような例でも
依願免職で、
恩給も
退職金ももらえるというようなことでは、われわれ年に一人当り平均一万五千円以上も苦しい中から税金を払っている国民としては、この税金で衣食している
公務員がこんなふらちを働いて、しかもなお
恩給も
退職金ももらって、
依願免職くらいで、そうしてその職を離れるくらいの
処置をしておっては、一体われわれの税金はこんなことに使われていいのかということが、これが偽らざる国民の感情であろうと思います。また
公務員の中にも善良な方がたくさんおられるわけでありますから、この善良な方々の
考え方からいっても、ああいうことをしてさえ、何ともないんだからといって、まじめな人は非常に憤慨されるんじゃないか、私はこう思うのでありまして、どうも今の上の方の方の
考え方というものが、非常にわれわれの国民感情から離れておるという、ここに
一つのまた例があります。これは郵政省ですが、郵政省は、
依願免官に容易にするとあとに困るからと、こういう回答が参っております。「当省では、
職員が非違
事件を発生した場合は、すべて部内の
懲戒処分基準に照らし相当
処分を行い、特に軽微な事案を除き直ちに
依願免職の
措置はしないこととしております」、こういう非常にはっきりした前書きがあるのでありますが、その
依願免職者の
調べを見てみますと、たとえばある郵便局では、三十万三千七百十二円の保険料の横領があったのに
依願免職にしておる。この
依願免職にどうしてしたという
理由は、非違者が
局長の五男であって、その奥さんから内済にするように懇請されたから
依願免職にしておる、頼み込まれたから、三十万円横領したけれ
ども依願免職にしておる。それからまたもう
一つは、ここに七万三千三十五円の保険料のやはりこれは横領
事件がありますが、
〔
委員長退席、
理事大倉精一君着席〕
それの
依願免職にした
理由は、被害金はすでに弁償したこと、及び
事件が表面化することにより、保険募集に努力している局員の士気に影響を与えることがおそれられたこと、並びに非違者が
局長の次男であり、親子の情にかられ、
依願免職として処理した。こういうことになっている。私は悪いことをしている連中が保険の勧誘に当っているのは、それを
処置しなければ、他のまじめな保険勧誘員の士気に悪影響を与えると思うのですが、この
理由書では七万三千円使った者を
依願免職にして、表面化すると、保険募集に努力しておる局員の士気に悪い影響を与えることをおそれ、また親子の情にかられて
依願免職にした。一体こういう
行政処分のやり方では、国民がこれを聞いたならばこれはとてもやりきれぬとこう私は思うのです。
そこで
官房長官にお願いしたいことば、どうか
一つこの問題をもう一ぺん
閣議なり、あるいは次官
通達でもお
出しいただいて、厳重にこの問題を新しい観点で、もっと強く
国家公務員の
不当不正行為に対しては
処置をしてもらいたい。これは単に私がここで申し上げるだけでない。参議院としましては、すでに院議でかなり強い
決定があるわけです。くどいようでありますが、
昭和二十九年四月二十三日の本
会議で「
懲戒処分の適正励行に関する決議」、これは参議院の満場一致で通過いたしておりますが、念のためにちょっと読ましてもらいます。
内閣提出の決算検査
報告によれば、
公務員による不当
行為は累年激増
し、
官紀の弛緩これより甚しきはな
く、
国家のため憂慮に耐えない。
然るに他面これらの不当
行為者に
対する
処分は緩慢にして、却って成
規の処罰を回避している観が強い。
即ち特に刑事
事件に聞しない限り、
その制裁は単に「注意」又は「訓告」の
程度に惜まるのを常とし、
法律上の
懲戒処分は殆んど行われず、
国家公
務員法第八十二条は空文化している
現状である。
かくの如き微温的態度は、不当行
為の防止上何等の効果なく、却って
法律軽視の気風を醸成するに過ぎ
ず、
懲戒制度の目的を甚しく滅却す
るものといわなければならない。
内閣は、かくの如き弊風を一掃す
るため、
懲戒処分を厳正に励行し一
罰百戒の実を挙げ、もって吏道の刷
新に努むべきである。
右決議する。
これは二十九年四月の本参議院の満場一致可決した決議であります。
ところがこの二十九年度の決算
処分の
調査を見ますと、
国家公務員法のいわゆる
懲戒処分の行われてない省庁が、建設省、
通産省、厚生省、調達庁、北海道開発庁には一件も
懲戒処分が行われていない。ただ建設省などはいろいろ補助金
関係等で、相当やはりこの決算
報告で
会計検査院の
指摘を受けていることがあるのです。あるけれ
ども、
戒告さえも行われていないというのが実は現状でありまして、今ここで朗読いたしましたこの参議院の院議なんというものは、まるで無視されているというのが現状であります。
そこで私はお忙しいところを特にここに
官房長官に
委員長を通じておいでをお願いいたしましたのは、この実情をさらけ
出して、
一つここら辺でまるで違った観点で、われわれからいえば、悪いことをした者は
懲戒免職になる、これは非常に素朴な
考え方ですけれ
ども、その考えが上から下まで徹底すれば、これはいい方法ではありませんけれ
ども、もう少し
官紀が振粛されるんじゃないか。
局長の職にある人でも、いろいろな
理由をつけて
依願免職にする、相当巨額の
退職金をもらう、
恩給ももらう。
理由はいろいろありましょうけれ
ども、今
理由をいっている場合ではないのですから、
公務員で悪いことをすれば
懲戒免職になる、その
処置が不当であれば
人事院がこれを救済するというくらいのはっきりした素朴な勇断をもって、
一つこれを今の内閣ではぜひやってもらいたいということを、この機会にお願いしたいと思って、実はお忙しいのをおいでをいただいたのでありますが、この点についての
一つ御所見を拝聴いたしたいと思います。