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1956-03-26 第24回国会 参議院 議院運営委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十六日(月曜日)    午後二時四十三分開会     —————————————   委員異動 三月二十三日委員天田勝正辞任につ き、その補欠として亀田得治君を議長 において指名した。 本日委員田畑金光辞任につき、その 補欠として天田勝正君を議長において 指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     石原幹市郎君    理事            寺本 広作君            藤田  進君            森田 義衞君    委員            雨森 常夫君            石井  桂君            榊原  亨君            佐藤清一郎君            高野 一夫君            宮田 重文君            横川 信夫君            阿具根 登君            東   隆君            岡  三郎君            亀田 得治君            三浦 辰雄君     —————————————    議     長 河井 彌八君    副  議  長 重宗 雄三君     —————————————   国務大臣    国 務 大 臣 太田 正孝君   政府委員    法制局長官   林  修三君   事務局側    事 務 総 長 芥川  治君    参     事    (事務次長)  河野 義克君    参     事    (委員部長)  宮坂 完孝君    参     事    (記録部長)  丹羽 寒月君    参     事    (庶務部長)  渡辺  猛君   法制局側    法 制 局 長 奥野 健一君     —————————————   本日の会議に付した案件議院運営小委員補欠選任の件 ○理事補欠互選庶務関係小委員補欠選任の件 ○国会法等改正に関する小委員補欠  選任の件 ○各府県における保険医総辞退問題に  関する緊急質問の件 ○議院運営に関する件 ○議案の取り扱いに関する件     —————————————
  2. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいまより議院運営委員会を開会いたします。  まず、本委員会委員異動がありましたので御報告いたします。
  3. 宮坂完孝

    参事宮坂完孝君) 本月二十三日付をもって天田勝正君が辞任されまして、亀田得治君が選任いたされました。  また、三月二十六日付をもって田畑金光君が辞任され、天田勝正君が選任されました。以上。     —————————————
  4. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、議院運営小委員補欠選任の件、理事補欠互選の件、庶務関係小委員及び国会法等改正に関する小委員補欠選任の件を一括議題にいたします。
  5. 宮坂完孝

    参事宮坂完孝君) 社会党から議院運営小委員天田勝正君、同じく東隆君、理事天田勝正君、庶務関係小委員天田勝正君、国会法等改正に関する小委員天田勝正君がそれぞれ推薦されました。
  6. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ただいま報告の通り決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  8. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、緊急質問に関する件を問題に供します。
  9. 芥川治

    事務総長芥川治君) 日本社会党竹中勝男君から、各府県における保険医総辞退問題に関する緊急質問の御要求がございます。  所要時間は十五分間、要求大臣総理大臣及び厚生大臣であります。  以上、御報告いたします。
  10. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 本緊急質問を行うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  12. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 次に、次会の本会議に関する件を議題といたします。  理事会において協議いたしました結果、明日は定例日ではございませんが、予算等上程のため本会議を開くことに意見が一致いたしました。理事会申し合せの通り決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 御異議ないと認め、さように決します。
  14. 藤田進

    藤田進君 先般来、理事会におきまして公職選挙法の一部を改正する法律案について、本会議においてその趣旨説明を聴取すべきであるという意見が出ておりますが、これを本委員会で決定せられる前に明らかにしておきたいことがありますので、この際、その質疑をお許し願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  15. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) どうぞ。なお参考までに申し上げておきます。政府側から太田自治庁長官及び法制局長官が見えております。
  16. 藤田進

    藤田進君 自治庁長官にお伺いいたしますが、本院の予備審査で現在提出せられております公職選挙法の一部を改正する法律案、これは御承知通り、すでに衆参両院とも、三月十四日に、別途公職選挙法の一部を改正する法律案提出せられ、これが可決成立いたしたのであります。これらとそれぞれの条章等を照合いたしますのに、相関連重複いたしております部分がかなりあるわけであります。さような見地から、本法のこの膨大な内容、主として別表でありますが、こういう選挙法の一部改正について、自治庁長官といたしては、この条章のうちいずれが重要であり、いずれがそれほど重要ではないか、いわば甲乙丙ととるならば、どういうふうにそれをお考えになっているか、この点の御明示をいただきまして、私はそれぞれしるしをつけたいと思いますので、お願いいたします。
  17. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 大へん仕事関係上とはいえ、おくれましたことをまずもっておわびを申し上げます。  先般、参議院議員選挙を主といたしまして公職選挙法の一部改正案提出いたしました。内容に関することでなければ、一事再議原則というものは、私は法律はあまり詳しいのではございませんが、重大な国会運営の問題と思います。旧憲法時代にはございませんでしたが、議会運営上、新憲法下におきましても、また国会法の精神から見まして、まことにこの点は重要なことと思っております。ただいまのお言葉にありましたいかなる点がこの公職選挙法重点かと申しますと、総体といたしまして、小選挙制度をしきますために改めたのが今回の改正案でございまして、前の参議院議員選挙関係したことが主たる部分を占める改正とは非常に差異があり、どの点が重点と申し上げるより、全文を通じて小選挙制度をしくわけでございます。むろん条文整理等はございまするが、全体として小選挙区のために作ったのが今回の改正案でございます。
  18. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、私どもの調査によれば、先般の本会議において改正成立いたしましたものと明らかに重複いたしておるものがあり、これは必ずしも小選挙区制がしかれることによって自動的に起きるというものではなくて、最もこの点が峻別できる性格のものであって、しかもその内容が今回三たび変る。つまり現行、それにこの三月十五日改正、さらに今度の改正、こういうことになるわけで、そういう部分については今の小選挙区制との関連がないように思いますか、二、三提示いたしますると、三十四条の六項あるいは百四十四条の一項、その他ありますけれども、そういったような点がいかなるものであろうか、これはなぜそう申し上げるかというと、選挙区が小さくなったのだから少くするということよりも、立会演説との関係その他からして、どう考えてみても、総合的にこの全体の改正案という立場において関連を持たせるということについては異議があるかと思いまするが、その点に対する長官のお考えを伺いたいと思います。
  19. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 藤田委員の言われる三十四条第六項は選挙期日を告示する問題でございます。お言葉通り、形式的には再度改正ということでございますが、内容について申しますれば、衆議院議員選挙について運動期間の短縮をはかることといたしまして、今回初めて改正されたものであります。また、お言葉のうちにありました百四十四条一項第一号、すなわち選挙運動用ポスターの数でございますが、前回の改正で、告知用ポスターを廃止した結果形式的に改正されまして、選挙運動用ポスターは五千枚となっていたのを、今回小選挙区制の実施に伴いまして三千枚に改正するつもりでございます。法律的解釈につきまして私の足らないところは法制局長官もしくは選挙部長が参っておりますので、補足さしていただきたいと思います。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 いろいろな私ども一事再議に対する考え方等は後ほどにいたしまして、その前提としていろいろな事実関係をもう少しはっきりしてもらいたいと思います。それは三月十五日に改正現行法と現在提案された法律案、この二つを比較しまして、形式的な観点から見て同一事項というものがどれとどれであるか。ただいま二つだけは一応形式的には同一事項というふうな趣旨で言われたように思うのですが、その全部について、まずその点、重要度とか、そういう考え方は抜きにして、形式的にどれとどれが同一事項か、その点をまず見解を明示していただきたい。
  21. 林修三

    政府委員林修三君) 形式的に同一事項というお話しでございますが、われわれといたしましてはいわゆる一事再議原則には当らないものと考えておりますが、同じ条文をいじったところはどこかというお話しでございますれば、それを一応御参考のために申し上げます。  まず第一は、三十四条の六項、今御質問がございました三十四条の六項のところでございます。第一号でございます。それから百四十四条第一項第一号、それから百五十一条の第二項、それからこれは正誤で出ておるはずでございます。もう先週正誤が出ておりますから、それも入っておりますが、百五十五条の一項、それから百六十四条の二の七項、それから二百一条の三、二百一条の五、二百一条の七、八、二百一条の十、二百三十五条の二、罰則のところでございます。それから二百五十二条の二、形式的に同じ条項に触れた改正というお話しでございますれば、大体私どもの調べたところでは以上の点だと思います。
  22. 藤田進

    藤田進君 今の点についてなお伺いますが、二百一条の七、八、十ですか、これは入るが、二百一条六は入りませんか。
  23. 林修三

    政府委員林修三君) 失礼をいたしました。二百一条の六も形式的には入っております。同じような条文を、たしか形式的に伴う制度として入っておったようでございます。
  24. 藤田進

    藤田進君 先ほど六を特に落された理由は見落しですか、それとも何か理由が……。
  25. 林修三

    政府委員林修三君) 見落しでございます。
  26. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、いずれにしても非常に明確な重複部分があるので、一事再議原則については、これはいかに重要なものであるかは、ただいま太田自治庁長官がみずから認めて発言をされております。憲法に関する説明については若干私もそのまま受け取れない点がありますけれども、しかし重要性については認識されております。そうなりますると、この一事再議原則というものの定義とその理由、これについて政府はどうお考えになるか、承わりたいと思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと藤田委員の御発言ですが、もしお許しいただければ……。藤田委員が先ほど質問された点ですね、十分答えておらないと思います。というのは、重要度がどうか、現在の法案の中の重要度ですね、その点の質問をされたんですが、何か小選挙区制というものが中心になって、何か一体になっていてということであまり明確でない。私はこれをもう少し明確にしてもらわないと、後ほどのやはりいろんな結論的な判断に……。
  28. 藤田進

    藤田進君 それは、実は会派を代表して質疑をいたしておりませんし、この点の打合せも得ておりませんから、いろいろあろうかと思いますが、私としては一通り政府のお考えを聞きまして、それからやはり最初お尋ねしたものについては納得のいかないもの等が、今指摘された通り私自身にあるわけであります。これは全体の中で、一通り大意がわかったあとで、なお不足分については深く聞きたいと思っております。
  29. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田君に少し待っていただきます。
  30. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は、先ほど言った言葉が足りなかったかと思いますが、一事再議考え方につきましては、今回の政府の出しました小選挙制そのもの別表だけではございませんので、政党による選挙ということに主力を置いております。従ってその運動政治活動等にも及んでおります。公認制はどうするか、内容にわたることは御説明する必要はないかもしれませんけれども、そういう意味において本質的に違っております。一事再議原則目的において、趣意において、客観的事態におきまして違っております場合におきまして、これがその目的、その趣意において根本的に違っておるかということが、この一事再議原則判断する重点ではないかと、こう思うのでございます。法律的にどう説明していいかわかりませんが、私としては一事再議原則をかように考えておるので、先般御審議を仰ぎ、可決されました衆議院議員選挙のあの改正は、同時に衆議院議員運動にもかかったものもございますが、いずれにしても、小選挙区という目的趣旨客観的情勢等におきましては、全然違ったものという考えのもとに今回の法律案を出した次第でございます。なお、法制局長官から補足させていただきたいと思います。
  31. 林修三

    政府委員林修三君) ただいま自治庁長官からお答えした通りでございまして、一事再議原則につきましては、これはいわゆる合議体を合理的に運営する一つ基本原則だと私ども承知いたしております。現在の憲法及び国会法には別段の規定はございませんけれども、これは当然この国会においても運営を合理的に行われる基本原則であろうと思うのです。その場合に一事再議原則という意味はどういうことかと申しますと、私どもの理解するところでは、ひとたび議決または決定をした事項については再びそれを議決することを許さないという御趣旨だと思うのです。しかしこの趣旨は、結局ある事項についての議決がありました場合に、その後何ら平信が変らない、何らの事情変更がないにもかかわらず、それを後においてさらに別の議決をする、あるいは再び議決するということは、これは国会審議を非常に混乱に陥れる、こういう趣旨として一事再議原則が認められておると思うわけです。従いまして、また一事再議原則適用範囲も、今申しましたような趣旨と理解すべきものと私ども考えております。従いまして、この適用につきましては、機械的、形式的に、同じ法律、同じ名前法律あるいは同じ名前法律の中の同じ条項というものを機械的に形式的に比較して、一つかどうかということは判断すべきことではなくて、やはりその事項と、それからその背後の事由と申しますか、前にその事項について議決のあった趣旨目的あるいは客観的な事情、後に同じ条項についてさらに議決をしようという場合の趣旨目的事情、こういうものを総合的に判断いたしまして出して、その案件が同一事項か、同一事項でないかということをきめるべきものだ、かように考えるわけでございます。今度のこの公職選挙法の一部を改正する法律案につきましては、これは三月十五日、公職選挙法の一部を改正する法律が成立いたしておりますことは、十分われわれもよく知っております。その内容と今度の内容とが果して一事再議原則に当るかどうかということは慎重に研究したわけでございまして、これはやはり前の改正法律参議院議員選挙運動を主とするものであります。衆議院議員選挙についても一部触れてはおりますけれども、これも現行選挙区制を前提としてその改正をされたものであります。今度の政府が出しました法律案は、先ほど自治庁長官から申し上げた通りに、小選挙区制の採用を前提といたしまして、それに伴いまして選挙運動をいかに合理化するかということをきめたものでございます。その趣旨目的等において全然違うものであります。従いまして、これはいわゆる一事再議原則に当らないものだ、かように考えて案を提出したわけでございます。
  32. 藤田進

    藤田進君 この点については今度の核心でございますから、なお深く質疑をいたしたいと思いますが、いずれにしても今の御答弁を要約すれば、まず一事再議原則の由来というものは会議体を合理的に運営するためだ、これは国際的概念だろうと思いますが、そういうことが一つ。さらに再び同一案件について、これは単に名称も同じだという意味ではない、事項別に見て再び同一議決をするということは許されていないのであるが、ただ例外としては重要なる事情変更があったかないかという点において、その適用がやはり可否を問われるという趣旨答弁であったろうと思います。しかしこれだけの原則基本理念というものだけでは、ただ単に会議運営ということだけをお考えになっているようであるが、かつては憲法規定されている、あるいはまたすでに世界の、あるいは日本の国内はもちろんのこと、国会のみならず、あらゆる会議体の今日常識となって、その成文を要しないまでになっているこの一事再議原則というものは、さように会議運営だけにとどまるものかどうか、さらに念のためお伺いいたします。
  33. 林修三

    政府委員林修三君) この国会におきまする一事再議原則適用は、これはあくまで国会が御判断になるべきことと思いますが、私ども考え方を許していただけますれば、今申しましたようなことに理解しておるわけでございます。結局これは国会という会議体運営混乱に陥れず、合理的に行われるための基本原則であろう、またその範囲において理解すべきものであろう、かように考えるわけでございます。これはやはり国会は現在相当長い期間会期があるわけでございまして、その間にいろいろ新しい事情が起って、前にできた法律あとで直すということも、当然そういう必要が起るわけでございます。そういうふうに新しい事態が起り、新しい事情が起った場合に、前に機械的に一ぺんきめたことだから、絶対に同じ事項については再議を許さないということは、これはやはり一事再議原則考え方としては、そこまで窮屈に解釈すべきものではなかろう。これは当然その原則適用として私どもはそう考えております。これはおそらくすべての会議体運営においてそうあるべきことじゃないかと思うわけでございます。過去の第一回国会以来の、この国会における運用の実態を私ども拝見いたしましても、そういう私どもが今まで申しましたような考え方で、この一事再議原則は理解されておる、かように考えておるわけでございます。
  34. 藤田進

    藤田進君 過般衆議院から回付されて、三月十五日に本院を通過いたしまして議決されているんですが、このときは先刻御答弁になったように、各条章についてそれぞれ検討を加え、しかもそれが今度の提出にかかるものと重複をいたしておるわけでございますが、もし小選挙区を中心とするこの選挙法の一部改正案提出されるという予定であったならば、あの審議のときに、今日の議院内閣制のもとにおいて、与党内閣との不離一体性という観点などよりいたしましても、自治庁長官とされては、与党あるいは議会に対して何らかの連絡なり、その示唆がなくてはならないのではないだろうか、一事再議原則ということを知りつつ、しかも今の答弁は、それぞれあとから気がついていろんな理屈をこね回すという感が深いのでありますが、一体この一部改正案というものは、あの三月十五日においてはいまだ提出を予期していなかったのか、いたとすれば、なぜそのような点に対する、もっと議会政府との円滑なる連絡等をいたさなかったのか、この点について自治庁長官から御答弁をいただきたい。
  35. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 先ほど法制局長官の言われた通り一事再議原則は非常に重要なる国会の方式でございまして、三月十五日に主として参議院における選挙目途とした改正がありましたときには、新聞でもごらんの通り、われわれは小選挙区制について案を練っておったときでございます。しかもそのことは総理大臣施政方針演説においてすでに申し上げたことであり、また新聞等に出ておったことでございますが、過去の例を一々私は聞きまして、こういう場合にはこうだ、こういう場合にはこうだということを法制局長官などから承わりましたので、似たような例がたくさんありますから、そこでもって、それならば一事再議原則には、抵触しないという、こういう判断を持ちましたので、その措置をとった次第でございます。その過去の例につきましては、法制局長官から補足させていただきます。
  36. 林修三

    政府委員林修三君) さきに成立いたしました公職選挙法の一部を改正する法律案は、御承知のように、この法律参議院選挙を主としたものでございまして、これに関連する範囲において衆議院議員選挙運動にも触れております。今申しましたような趣旨でございます。しかもその施行は三月十五日から施行するという前提でできております。今度の公職選挙法の一部を改正する法律案は必ずしも三月十五日施行ではもちろんございませんので、次の総選挙というようなことを目途としておるのでございまして、衆議院の次の総選挙というものを目途として法案を作られておるのでございます。そういう意味において、その施行のやり方あるいはその趣旨の相当違うものがある、これは、こういうのは分けて国会で御審議を願うことも別に一事再議原則から申して差しつかえないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  37. 藤田進

    藤田進君 太田自治庁長官は、過去幾多の一事再議原則はあっても、なおかつ同一案件について審議した事例がたくさんあるという点を示されております。私はその点については、たまたま議論にならなかったというのは、全会一致のごとき、それが円滑に行くようなときにおいては、会議の合理的な運営をモットーとされる一事再議原則だとするならば、政府の言うように、それは過去の前例というものは何ら問題にならぬ、円滑なむしろ運営をはかるためにその方がよかったと解されるし、いたします。同時に、この原則が過去いろいろな事情によって累積してきておるということによって合理化されるものではないと思います。しかし、いずれにしてもそういう多数の前例があるとするならば、その前例について、政府からその資料をいただきたいと思います。
  38. 林修三

    政府委員林修三君) いろいろ例はあるわけでございますが、二、三の例を申し上げてみたいと存じます。
  39. 藤田進

    藤田進君 それは資料としていただきたい。
  40. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 二、三の例をせっかく言うと言っておりますから……。
  41. 林修三

    政府委員林修三君) 最近の国会の例といたしましては、第二十二国会、昨年の特別国会でございます。ここで補助金等臨時特例に関する法律、この法律が実は四回ばかり改正されております。で、その内容でございますが、第一回の改正は、これは三十年法律第六号でございますが、この補助金等臨時特例に関する法律の効力を持続する期間を昨年の三月三十一日から五月三十一日までの二ヵ月間延ばした。その次に三十年の法律第十三号で、さらにこれを、五月三十一日まで延ばしたものを六月三十日にまた延ばした。その次さらにこれを追っかけてもう一ぺん改正をやりまして、三十年六月三十日までに延ばしたものを本年の三月三十一日まで延ばしております。一つ国会で、実はこの法律失効期限を三回改正いたしております。そういうふうに同一法律の同一条項について、しかも失効する期限を三回改正した例がございます。  それからこれも一つの適例でございますが、第十三国会におきまして、国家行政組織法が実はその国会で通計八回改正されておりますけれども、特に同じ条項について触れた点は、その中の二十四条の二という、局の中に部をたしか置く規定だと思いますが、これの期限を、日にちを五月三十一日から六月三十日にかえ、さらに六月三十日を七月三十一日にかえた、こういうようにこれも追っかけて改正いたしております。  それから、これも同じ第十三国会におきまして、行政機関職員定員法の二条一項に、各省各庁の定員の表がございます。あの表が二回改正されております。もちろん日にちを違えてでございますが、同じ表を二回改正した例もございます。まあそういうような、これは一、二の例でございますが、そういう例はいろいろあるわけでございます。
  42. 藤田進

    藤田進君 いろいろと言っても三つ言われたわけで、これについてはそのいろいろについての事例を資料としてお出しいただきたいと思います。これに対して自治庁長官の御答弁を求めます。
  43. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 資料一つ……。
  44. 林修三

    政府委員林修三君) さっそく、それは私の方で調べる範囲のことについては調べまして、資料として御提出いたしたいと思います。
  45. 藤田進

    藤田進君 今の法制局長官答弁の三案について、取りあえず一点ただしてみたいのは、あなたの御答弁では、一事再議原則というものは、これは合理的な会議運営をモットーにして、この点がまず基準であって、それ以外にはこれは事情変更によって新たに、一事再議原則があろうが、例外としてなし得るという答弁であったように思うが、この三葉とも、その線についてはいずれの会派からも議会運営上異議が出、運営上これがかなり議論があったというものなのか、あるいはさような議論のないままに、賛否の内容についての態度はそれぞれあろうけれども、これが議題とすることについては何らの異論はなしに進められているのか、いないのか、あなたの御調査によって御答弁をいただきたい。
  46. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほど私申し上げましたことでございますが、今申し上げましたような例、あるいはこの公職選挙法の一部を改正する法律案は、まあ一事再議原則の例外というわけではございませんで、一時不再議原則の中に入らないだろう、こういう意味で申し上げておるわけでございます。  で、ただいまの御質問でございますが、昨年の補助金等臨時特例に関する法律の場合でございますが、これは衆議院におきまして、三月の三十一日までの期限を五月三十一日までに延ばし、さらにそれを追っかけて、これは六月の三十日まで延ばしたのでありますが、この過程は、御承知のように昨年の国会は実は暫定予算で七月まで行ったわけでございますが、最初の暫定予算が五月までの二月間の暫定予算、さらに一月間の暫定予算を組み、さらにその後本予算を組んだと、こういう格好に行ったのに並行して実はこの法律改正があった。その過程におきましては、今おっしゃいましたような一事再議原則に関する多少の質疑応答も衆議院であったように私記憶いたしております。
  47. 藤田進

    藤田進君 いや、それは資料がないので不明確ですが、多少の衆議院での論議という内容は、要約すればどういうことですか、この三葉についてお伺いいたしたいと思います。
  48. 林修三

    政府委員林修三君) 私が先ほど申しましたほかの二つの、ただいま申しました補助金等臨時特例に関する法律以外のものにつきましては、そういう御議論があったことを記憶いたしておりません。また聞いておりません。おそらくそういう御議論はなかったのじゃないかと思います。この補助金等臨時特例に関する法律の場合には、衆議院におきまして、実はこれはいきさつはそのときの速記録を詳細に取り調べて申し上げた方が実ははっきりいたすかと思いますけれども、私の今記憶いたしておりますところでは、三月三十一日までの期限を五月三十一日まで延ばすことは、これはもちろん問題なかったわけでございますが、その五月三十一日をさらに政府の案では三十一年、ことしの三月三十一日まで延ばす案になっておりました。ところがそれは暫定予算との関係で、衆議院におきましては、たしか暫定予算が六月分の一月分の暫定予算が出た関係で、五月三十一日というのを六月三十日まで一月だけ延ばすべきじゃないか、そういう御議論で実は一月間だけ衆議院で御修正になった。その御修正は、今度追っかけまして本予算が出ましたので、それをさらに本年三月まで延ばす案を政府がまた別に出したのであります。それが前の修正議決一事再議原則に当るのじゃないか、こういう御趣旨質疑応答がございました。これは初めのは暫定予算に対応してやったものでありまして、あとのは本予算に対応してやったものであるから趣旨が違う、一事再議原則に当らない、こういう質疑応答があったように私記憶いたしております。
  49. 藤田進

    藤田進君 その案件については少くともそういう議論はあったけれども、最終的には会派がそれぞれ了解せられて、そして議会運営のレールに乗って行ったものと解してよいのかどうか確かめたいと思います。
  50. 林修三

    政府委員林修三君) この補助金等臨時特例に関する法律に対する賛否が果してどうであったかは私記憶いたしておりませんけれども、少くともそう私ども説明をいたしまして、それは御了解になったのではないかと実は思っておりますが、果して補助金等臨時特例に関する法律全会一致だったかどうか、これはちょっと私記憶いたしておりませんけれども、またその御反対の理由は必ずしもそうではなくて、別の方の理由だったかもしれませんが、これはちょっと調べてみなければわかりませんですが、今の点に関する限りは、法案審議の当初においては御議論ございましたが、その後はあまり御議論がなかったように記憶いたしております。
  51. 藤田進

    藤田進君 その点私申し上げているので、一事再議原則があっても、これはあくまでも原則で、国家国民の利害に徴してみて、会派それぞれこれはそうではあるが、特に例外でこうしょうという場合はあり得ると思う。そういうカテゴリーについては従来おやりになっているのだろうが、今回のような明らかに一事再議原則に抵触し、しかも二大政党対立と言われている衆議院においても疑義があり、今日その問題でもんでいるし、わが参議院におきましても、かなり疑義があるという形でこれが取り上げられているという事態からして、十分過去の事例も再検討していただきたいと思います。  そこで、この際参議院の法制局長に伺っておきたいと思いますが、この点は純然たる法律解釈の面で、政治的な考慮を払うことなく率直にお答えいただきたいのは、一事再議原則のいわば定義また必要性というものを、一つまとまった形でわれわれにわかりやすく説明をしてもらいたい。
  52. 奥野健一

    ○法制局長(奥野健一君) 旧憲法時代におきましては、旧憲法三十九条に、両院の一つの院で否決された法律案は同一の会期中再び提出ができないという規定がありまして、これが一事再議の根本的な法文上の根拠とされております。これに基きまして両院議院の規則におきまして、やはりそういう案件を議事日程に設けてはならないといったような規定がありましたが、新憲法におきましては、もちろん旧憲法三十九条のような規定もなく、またそれに対応した議院規則もなくなっておりますので、明文上は一事再議と申しますか、という原則は明文上はありません。しかしながら、国会の意思決定といたしまして、事の性質上、同一会期中に同一事項について国会の意思決定が二、三になるということはおかしいので、また何回でもやれるということであるならば、際限なく同一議事が議せらるるということになって、国会運営ということも円満に行かないということで、明文上はありませんが、事の性質上、同じ事項について別段の理由もなく再び、あるいは三たび議決するということは、一事再議として、これは国会運営上の慣例として認めないというふうに取り扱われておるものと考えます。ただ同一事柄に関係がありましても、新たなる事情変更とか、新たなる改正の必要を認めて、すでに一たび議決された事柄でも、しかも同一会期におきましても、これを改めたいとき、あるいはこれをやめたい、この法律案を廃止したいという必要に迫られて、いわば新しい前提のもとにこれを改正、あるいは廃止というような議決は、いわゆる一事再議に該当しない、こういうふうにみていいのではないかというふうに考えております。
  53. 藤田進

    藤田進君 さすれば問題は、新たなる事情、いわゆる事情変更原則というものとの調整、統合ということになろうかと思うが、今回のような場合もどういう新しい事情変更のもとに行われているかという点は、これから伺うとして、奥野法制局長に伺いますが、その事情変更を例示してみれば、大よそこういう場合というものはどんなものがあるか、一つ答えてもらいたい。
  54. 奥野健一

    ○法制局長(奥野健一君) たとえば新憲法になりまして、国会の会期というものが百五十日等に非常に延びた関係もあるような関係から、ことに財政上の事情変更して、税金あるいは俸給等について、これを上げなければならぬとかというような事情があるような場合は、もちろん事情変更としてみていいと思います。またそのほかにおきましても、その新しい政策に基いて、新しい法制を必要として、前の旧法制を改正、廃止する必要があるというような場合も、一事再議の例外と申しますか、に当らないと申しますか、それに該当することにならないかと思います。
  55. 藤田進

    藤田進君 そうすれば、今回の選挙法の一部を改正する法律案のように、そういういわば憲法に保障している労働に対する対価というような、たとえば今例示されたように、当初会期は百五十日にきめられていたが、これが会期の延長等になって給料が当初の予算ではもらえないという、予備金その他では充当できないというような場合には、これが追加予算なりをなし得るというようなことが言われていたと思いますが、今回のような、すでに選挙法については逐条検討した結果、特定部分を露出して、このピック・アップしたところの条章について、ことに今会期だけじゃなく、三月十五日の場合は相当長期にわたって、前々国会以来審議をしてやってきた。しかもこれは与党中心となって、三月の十五日にこの法律案は可決成立をみたというようないきさつからみて、これが新しい事情変更ということではっきり割り切れるのか、割り切れないのか、法制局の見解を承わりたい。
  56. 奥野健一

    ○法制局長(奥野健一君) 三月十五日に成立した法律案は、二十三国会参議院がこれを議決して衆議院に送って、衆議院において継続審査いたしまして、さらに当院に送付されて成立したものでありまして、これはもっぱら参議院の議員の選挙に関することを主にして規定されましたもので、今回の法律案衆議院選挙について、小選挙区、あるいは公認制度、あるいは政党の政治活動の強化という、全く衆議院だけの選挙に関する改正でありまして、そういうふうに改正する必要がありと国会で認められて、そういう改正議決をされることは一事不再理ではあるまいと思いますが、そういう小選挙区にしたり、あるいは政党活動の強化、あるいは公認制度というようなものを採用するのがいいかどうかということは、これは政策の問題でございまして、法制局としてはお答えができかねる問題だと思います。
  57. 藤田進

    藤田進君 どうも不可解な答弁で、それではわれわれ納得がいかないのでありますが、過般の改正案は法制局長もよくわかっていると思うが、これは衆議院にわたることが相当ある。今重複している部分を見ても、衆議院にわたるものを含めた。衆議院にわたるものであっても、しかし衆議院がおやりになることは参議院はとやかく言うべきではない、参議院の場合は参議院が議論するがという、そういう考え方に基いておるようにしか聞こえない。二院制というものは、私から申し上げるまでもなく、法制局長ともあろう者がわかっているはずであるが、今の答弁は要約すればどういうことになるか。衆議院に関する限りでは一事再議原則適用がないというお話であるけれども、先般の改正については衆議院に関するものがかなりある。衆議院ではこうするという従来の法律に対して、三月十五日改正というものは、すでに議論をして成立しておるわけです、同じ会期に……。その点はどういう意味合いになるのか、今の答弁をもう一ぺん……。
  58. 奥野健一

    ○法制局長(奥野健一君) 前の法律におきまして衆議院選挙に関して関係の実質的にあった部分は、個人演説会の告知用のポスターを五千枚とあったのを、選挙用ポスター五千枚というふうに改めた点、その点を今度は三千枚に減らそうという、その点が実質的にと申しますか、衆議院選挙について、前の法律案が触れている点を今度の法律案がこれを改めたという点は重複して参ります。その他の点は、たとえばラジオの放送の点等につきましても、これは前の法律については衆議院の分だけは触れてなかったのでありまして、それをまあ今度の法律案では触れようとしております。それから公認団体の問題にしましても、衆議院だけの選挙についての部分を今度は取り出して別に規定をしたということでありまして、そういう意味で、今度の法律案衆議院選挙のための改正案であると申し上げたわけでありまして、その意味は、今度の案は衆議院選挙について小選挙区をとり、またこれに伴って公認制度あるいは確認団体の強化という必要があるという政策の上に立って、その意味改正の必要があると認めて提出されたものと思われるので、そういう意味において前の法律と抵触する部分は、それより新らしき改正の必要を認めてそういう改正案を出されたものと、そうしてそういう改正をするということを国会として認めてこれを議決するのであれば、これは一事再議ということにならぬではなかろうかというふうに申し上げたわけであります。
  59. 藤田進

    藤田進君 こまかくはあとでまたやりますが、政府中心に今日は伺いたいと思うが、しかし奥野法制局長ももう少し調べてもらいたい。今、政府から言ったように、あなたの言ったのは百五十一条の二項に触れ、あるいは百四十四条の一項に触れたのにとどまるので、三十四条の六項についても、これは衆議院に関することを過般の成立した法案では触れておる。二十五日にきめて、今度で二十日になるわけです。時間がないから申し上げないが、さようにこの前の改正部分に触れておるわけです。この点は、必ずしも前回触れないで今回衆議院だけに触れたというものではない。こまかくはあとでまたやりますが……。  そこで、自治庁長官に続いてお伺いいたしますが、過日、根本官房長官は本議院運営委員会において、選挙法改正については目下開かれておる選挙制度調査会の答申を待ち、これを基として作案あるいは提案をするということを言われております。ところが、私どもこの法案を配付せられて調査いたしますると根本官房長官のここで約束せられたものとは相当変っておるように思う。これでは重大な政府代表官房長官の食言と言わざるを得ないわけでありますが、しかしまだ断定はいたしません。自治庁長官におかれて、選挙制度調査会の答申をどのように採用した、どの個所でどういうふうにしたという点の証明がつけば、これはまた話は別だと思いますが、この点についてあらまし御答弁をいただきたい。
  60. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) そのお答えをする前に、私御問答を聞いておりまして、私の見たところを率直に申し上げたいと思います。  第一の問題でございますが、先般の三月十五日から施行しておりまする公職選挙法の一部改正は、一つ参議院を主としたものであり、第二の衆議院に関するものは現在の制度、中選挙区のものにおけるものであります。これを三月十五日から施行しよう、今回のものは次の選挙のときから行おうというものであり、しかも内容は、参議院にも触れた問題ではございませず、中選挙区ではなく、小選挙区で、新たなる、先ほど奥野局長の言われました通り、事の性質という意味におきまして、私の説明においては目的趣意ということを使いましたが、小選挙区というもののために新らしい制度、しかも政府としては大きな施策の一つとしてこれを出したのでありまして、参議院の主たる選挙に関するものでなく、また中選挙区の現状におけるものを改めんとするものでなく、小選挙区という新らしい姿、新らしい目的、新らしい奥野局長の言う性質に沿いまして出したものでございます。これは私の解釈でございますが、一事不再理の原則中心問題になることでございまするので、これを申し上げます。  第二のただいま藤田議員からの御質問の、官房長官委員会の議を待って提案すると言った、しかも出たるものはだいぶ違っておるじゃないかと、こういうお言葉でございます。私といたしましては、この委員会の報告をつぶさに見まして、きょうの午前の衆議院の特別委員会においても申したのでございますが、四百七十七回、区が設けられることになります。そのうちの二百六十区というものは委員会の報告そのままをとったのでございまして、よく世間の批評に、ほとんど黙殺したという言葉がございますが、しかもあと残った二百十七区につきましては、人さまざま見るところもございましょうが、私どもとしては、客観的な事実、あるいは人口、あるいは地勢その他の事情からこうした方がよいと、たとえば二人区を設けたことにつきましても、すでに縁風会において最初に百二十三区設けられました。あとに発表になりましたのは七十八設けられております。しかも委員会におきまして、初めの決議のときはなるべく一人区にしよう、しかし二人区を設ける場合もあるべしということでございましたが、起草委員会の手になりましたときは全部一人一区でございます。しかるに今回二十区も選んだのはどういうわけか、委員会議決を用いなかったのではないか、これには私ども一々御説明申し上げたいと思いますが、委員会の見方と私どもの客観的に見たところと違っておりますので、その方がむしろいい、こう認めたものをとったのでございます。世間で言う、この委員会のものを黙殺したということは断じてございません。またこれを改めるにつきましては、一々の理由を持っておるのでございます。さらに一つの個所を改めますと、方々へ響きまするので、細かい計算はつきませんが、たとえばごくわずかなところでも方針を変えて行きますと、北海道のごときがその例でございますが、これは内容にわたるから今日説明するところではないかと思いますが、ずいぶん響くものでございます。そんな点を考えてみますると、委員会の案を全部入れたもの及び修正の理由があるもの等でございまして、官房長官の言われた言葉に私は決してそむいているわけではない。政府としては委員会の案を基礎として作ったものである。もちろん委員会は両党の人が入っておりますので、またりっぱなお方々でございまして、その労苦というものには私は感謝しなければなりませんが、政府としてどういたすかということにつきまして、今申し上げましたような区画につきましては考えを持ってやったのでございます。
  61. 寺本廣作

    ○寺本広作君 今の質疑応答は法案内容に入っておるのじゃないかと思うのです。(「そうでない、大ワクだけだ」と呼ぶ者あり)いや、質疑も入っておる。ここで根本長官選挙制度調査会の答申を待って法案提出したいと言われたのは、法案提出時期についての答弁だったと私は了解しております。というのは議運で取り上げたのは、各種法案がいつ政府から出てくるか、それが会期中に議了できるかどうか議院運営に関して説明を求めた際、根本長官は、答申を待って法案を出したいというふうに言われたと思うのです。しかし今の藤田さんの御質問は、答申の内容法案内容との比較論というものがそこに入っておるので、そういう問題に入って行くと、法案の実質的な内容に入ってこの委員会審議するということになれば、地方行政委員会との関係もございますので、この際の論議としては少し御遠慮いただく方が適当じゃないかと思いますが、議事進行上適当な御処置を願いたいと思います。
  62. 藤田進

    藤田進君 内容にわたるという今の寺本さんの意見は、その線に沿ってやりたいと思うし、やっているつもりでありますが、ただ私が今聞いたのは、官房長官がかように言ったことについてはお認めになると思う。官房長官の言われましたことが、この委員会でそれが食い違っているかどうかということは、どうしても確かめざるを得ない。ただ内容については、先ほど来一事不再理の原則自体というものを、何条何条でずっとピック・アップしてやっておるわけで、その点は議論の中心は十分注意したいと思いますが、一つ続けさせていただきたい。  そこで今、太田自治庁長官が御答弁になった法律論は、おおむね法制局長官の方に譲られていたように思うが、私は今の答弁を聞いて、本院としても、衆議院としても、現行の中選挙区というものを大前提として一部改正案が出てきたのです。あなたのおっしゃる通りなんです。そのことが、その成立を見るに当って、当然腰だめに、現行法を整理して、その中で質的にこういう改正をするという付帯条件がついたのではない、そういう付帯条件はついていない。いいですか。大前提として中選挙区を認めたのです。現行法で認めて、そしてあとの手直しをやっているのです。そこに問題があるということを申し上げているので、あなたの言われることは、むしろわれわれの論拠に対する応援をいただいたようなものですね。そこに問題があるわけなんです。それで今の答申案をどの程度重要視してきたかどうかの深い議論は、これはまた地方行政委員会に付託された後に、あるいはその問題になった場合にはおやりになると思いますが、しかし私どもとしては、ここでせっかくの御答弁もありましたから、一言加えておきたいのは、そもそも委員会が、もう結果が先にわかっているようなこの委員なんです。小選挙区に一番積極的な人を集めておやりになり、これには政府の直接の大臣も入っておやりになり、そういう特殊な、従来吉田内閣でもそういうことをおやりになって……、しかし今回ほど非常な色の濃いそういう構成分野というものは、かつてないと私は思量されておる。その委員会が答申したのさえ、今言われたように、意見の半分も採用ができないというところに、なるほどこれをいじれば前後左右、周囲の選挙区にそれぞれ響く。広汎なる反応を起すだろうと思いまするが、この点については私ども納得がいきません。なお御質疑については、それぞれ当局の改正の重要点は、あるいは一事不再理の原則等について、他の委員からも先ほど来疑義があるようでありますから、私は一応ここで総括的に質疑をいたしましたが、あとは細部について、あるいは総括的な議論に対する個人的な、漏れた面等を加えて、他の委員からの質疑に譲りたいと思います。
  63. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 今、藤田委員からのお言葉にございましたが、この間の三月十五日から施行しておりまする法律は、言うまでもなくすぐ行われることなんで、しこうして衆議院においても中選挙区下において行われることでございます。で、今新たに提出したものは、小選挙区制定のもとにやろうといべもので、次の選挙からやるのでございまして、これをここで行うというものではございません。その点は、私のあるいは解釈が違うかもしれませんが、私としては二つきっぱり分けているつもりでございまするから、さよう御承了を願いたいと思います。
  64. 藤田進

    藤田進君 ちょっと。そうなると、この間改正したのも次の衆議院選挙に行われるので、選挙のないときにこれを実施することはない。そこを混同しないように、それはあなたの言うように選挙もないのに選挙法適用なんて……。
  65. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) いやちょっと言葉が……、政府の新らしい施策として新らしい政策として、総理大臣施政方針演説以来ずっと通ったやり方で、現状の中選挙区とは本質において違う、こう申し上げた方がまだはっきりするかとも思います。
  66. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  67. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) それでは速記を続行いたします。亀田君、なるべく一つ……。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 私は質問する前にちょっと考え方を申し上げておきたいのですが、私もこの問題が起きまして、まあ関係の文献はともかくほとんど見たつもりです。十数冊、ともかくこまかいものまで検討しました。ところがこれは法律条文があるわけではない。結局まあ一つの慣行ですね。そういうものですから、それからの文献等によっても明確なものはないのです。一応の項目に分けた見解というものは出ておりますが、はなはだこれはおのおの主観的です。どうも自治庁長官なり、法制局長官意見を聞いておると、自分に都合のいいような意見だけ少し拾ってきてうまくつけ合わしておく、そういう感じがするのですね。私はそれではいかぬと思うのです。これがこれほど激しくやはり論議の対象になったこの機会に国会としてほんとうに正しい一つの建前、これをやはり作ってほしいと思うのですね。今皆さんの方が与党ですけれども、いつまた野党になるかもわからぬのですね。まあしばらくはないかもしれませんけれども……、ともかくそういう問題として一つ慎重にやってほしい。質問に入る前に、先ほど過去の実例を資料として出すと、こういうふうにおっしゃったのですが、それを出される場合に、問題になった議案の賛否がどういう状況であったか、それから一事不再理の議論がその問題についてなされたかどうか。その点何か付記する格好で、非常に調査がめんどうくさければ、そういうところは抜かしていいですから、できるだけそういう点をつけ加えて明日出していただきたい、これを要求しておきます。  本論に入りますが、先ほど重複しておる部分ですね、これについて最初にお示しがあったこれと、現在の法案別表選挙区割りですね、これはどちらが一体重要だとお考えでしょうか。
  69. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) お言葉通り資料につきましてはなるべく早く出すように申しつけます。  私は実は変なことを申し上げるようですが、この前落選して、この前の議会のことなど存じませず、また戦後に出たもので、戦前にも出ておりましたが、事情を知らず、さっきたくさんということを申しましたが、あのたくさんは聞いた言葉で言いましたので、その数は非常に多いという意味でなかったのでございます。事実を私は存じません。ただ法制局長官から幾多の例があったというので幾多という言葉を使いましたが、それはどうぞ御了承を願います。  それから、この法案につきまして一事不再理の原則適用ということは、亀田議員のお言葉通り、私も法律でなく慣習であり、また条理と申しますか、当然な議会運営のことと同じような解釈をしております。  第三に御質問になりました今回の法案の中の別表とその他の部分との関係、いずれがと、こういうお言葉でございますが、実は小選挙区制というものは大正八年に当時の原内閣時代に行われました。けれどもその当時には政党の公認制度、こういうものはございませんでした。今回は政党と政党とがこの選挙に向って小選挙区を採用してもらいたい、こういう意味でございますので、よく世間に大正八年の例ということを申しますが、あの当時はただ区割りだけが小選挙区になったので、今回の改正のごとくに、公認候補制度とか、政党が選挙運動をしてもいいというようなところまで行っておりませんでしたから、世間では非常に誤解されておるようでありますが、私は画然たる区別をしております。しかし今回の小選挙制度は区画の問題も大切でございますが、政党の対立、二大政党と申しますか、政局の安定のためを大きなねらいとして、それを筋としてやっておるのでございますから、別表と政党を本位としての選挙であるということは、ともかく何と申しますか、上下なく、軽重なく考えておる次第でございます。政党ということを主とし、政策によって国民に判断をしていただくにはこの小選挙制度が一番いい、イギリスなんかでやられる小選挙制度の根本論を考えてやったことで、区制というものと政党を本位とした政治活動ではなく、選挙運動ができるということ、あるいは公認制度を認めた、寺本議員のおっしゃった内容にわたっては恐縮でございますが、またどっちが重要かという意味はさよう御了承ありたい。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 これはまあ若干内容に触れてもいたし方ないと思いますが、重複の同一事項と申しますか、同一事項になっておるのは選挙運動に関することです。結局は選挙運動の態様ですね。その点概括的に言ってどうです。
  71. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 小選挙区のもとにおける運動のやり方、方式と、中選挙区の現状におけるものは、同じものをもって行きましても私は違って行くという考え方を持っております。だから一事不再理にならい、私はそういう意味に解釈しております。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 そこまで先へ行ったらだめだ。この同一事項と言われておるものは、これは選挙運動に関することでしょうというのだ。それが中選挙区だろうと小選挙区だろうと、そんなことは別個のことで、運動に関することをきめておる。
  73. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほど例としてあげましたことは、いわゆる三月十五日から施行せられました法律と、今度の法律案とが同じ条文、同じ項等を改正しておるところをあげたのでございます。これは内容から申せば選挙運動に関するものでございます。それが同一事項という言葉はちょっと語弊があると思いますから、同一の条文を直しておるところであげたわけでございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 そこで自治庁長官に聞きますが、国民の立場から考えた場合に、政治家はどういうやり方で運動をしてくれる。ポスター何枚張り、あるいはあいさつ状何枚よこして、あるいは演説会をどういうふうにやってくれる。国民にとってはこのことが非常に大事なんです。政治家にとっては区割りというものが重要関心事かもしれませんが、国民の立場からみたらば長官はどう考えます。
  75. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は区割りにつきましても、運動につきましても、尊き一票を投ぜられる国民の立場を十分に考えなければ選挙法というものは取り扱えない、こういうふうに考えております。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 両方とも重大でしょうが、国民の純粋な立場に立って考えてごらんなさい、どっちを一体重視しているか、率直な意見をもう一度。
  77. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) もちろん国民の立場を第一に考えなければならぬと私は信じております。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 その国民の立場に立って考えると、この同一事項と言われる運動の仕方ですね、あるいは罰則とか、罰則も若干あったが……、そういうことが国民にとっては重大な関心事じゃないかということを聞いておるのです。
  79. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 小選挙区の本質論になりますが、直截簡明に甲の政党と乙の政党とが政策でもって争う、これを判断する場合の国民の立場を考えてやったのでございまして、やはり小選挙区を主としての考え方、それが国民のためと考えてやったのでございます。
  80. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 亀田君、なるべく先ほどの趣旨に沿うてやっていただきたいと思います。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば百四十四条一項一号のポスター、あるいは百五十一条二項の経歴放送の回数、こういうものはこのままで中選挙区にも結びつけば小選挙区にも結びつく、その点どういうふうにお考えになります。
  82. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 第一の百四十四条につきましては、運動用のポスター五千枚であったのを三千枚にする、これも小選挙区になったためにそのことを考えたのでございます。百五十一条の二項における経歴放送においても、従前十回であったのを五回にいたしましたのも小選挙関係でございます。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 小選挙区になりましてもポスター五千枚でいいですよ、国民はその方が余計宣伝してくれていい、こういう考えも成り立つわけです。従って私が聞くのは、あなたの方では小選挙区という建前があるからみんなそこへ吸収しちゃうのだ、この同一事項というものを非常に軽く見るから私聞くんですが、これは何も小選挙区と必ずしも結びついたものじゃない、これを切り離すことができない条項というふうにあなたは考えますか、百四十四条、百五十一条、これはまあ一つの例ですが、そのほか一つ一つについてこれはお尋ねしてもいいのですが。
  84. 林修三

    政府委員林修三君) 今回のこの改正案趣旨は、もちろん小選挙区制の採用を前提といたしたものでございます。小選挙区の場合に、理論的にあるいは何枚でなくちゃならないということは、これは中選挙区の場合でも、大選挙区の場合でもないと同様に、これは理論的にはいろいろ御議論もございましょう。しかし今度のこの案は小選挙区を前提としてここが適当である、こういう考えのもとに出したわけでございます。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 政府の意図というものと、この同一事項であるかないかというこの法律的な批判というものは、これは若干違った標準があっていいと思うのです。私はそういう意味で聞くんですが、この同一事項といわれるものは、全部小選挙区等と密接不可分、切り離し得ない、こういうふうにあなたはお考えなんでしょうか。
  86. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほど自治庁長官からお答えいたしました通りに、小選挙区及びこれに伴いますいわゆる政党の政治活動の拡張、あるいは公認候補制、これとが結びついてこういう案になっておるものと考えます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、かりに百四十四条一項、百五十一条二項、これは現行法のままにしておいても小選挙区制でしょう、その点どうです、当然なことですが、念を押しておきます。
  88. 林修三

    政府委員林修三君) ただいまの仰せでございますが、もちろん現行法のままにしておいても、一方に小選挙区をとれば小選挙区におけるポスターの枚数になり、あるいは経歴放送の回数にそれはなります。形式的になりますけれども、小選挙区をとり、あるいは公認候補制をとった場合には、この枚数の五千枚を三千枚にする、あるいは経歴放送の十回を五回にする方がより合理的である、こういう考えのもとにこの改正法案を出さんとするのでございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 そういう政府の主観的な意図を聞いておるのじゃないんです。同一事項であるかないかは、これはあくまでも客観的に判断して行かなければならぬ、だから分離できない問題ではない、分離できないことはないものだ、このことだけは言えるでしょう。
  90. 林修三

    政府委員林修三君) 今の同一事項かどうかということは、この改正案が同一事項であるかどうかということになるわけでございまして、ただいま御質問の分離できるかできないかという問題は、それとは別問題だと思いますが、もちろん小選挙区のもとにおいて三千枚でなければならない、理論的に、あるいは何と申しますか、そういうものではこれはないわけで、もちろん合理的に判断すれば三千枚がいい、こういう案のもとに出したわけでございます。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 結局そうなると、現在の改正案選挙区の別表と、そうしてこの重複しておる同一事項というものが必ずしも一体不可分のものじゃこれはないはずです。だからそこでこの法案の扱いとしては、一事再議という問題が一方で出ておるのであれば、そういう部分だけは削除すべきなんですね、そういうふうに考えませんか、自治庁長官どうです。
  92. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は再三申し上げました通り言葉が統一的でないかもしれませんが、小選挙区という狙いのもとにおけるポスターとか、いろいろな問題を考えましたので、中選挙区における場合と違いまして、政党の関係とか、区割りの関係などを考えて、これが小選挙区という一つ目的、先ほど奥野局長の言われた異なる性質と申しますか、中選挙区と違っておる、非常に違っておるとも言ってよい小選挙制度のもとにおけるすべての問題を一体として考える、こういう考え方で作った次第でございます。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 まあその点はこちらの考え方が大体わかっておると思いますが、次に、現在施行済みだ、三月十五日、この前の法律施行済みだから一事再議原則適用は受けない、これはどういうわけでそういう主張ができますか。
  94. 林修三

    政府委員林修三君) ただいまの御質問でございますが、この一事再議原則適用についての考え方として、今おっしゃいましたように、この法律案の場合をとれば、すでに成立し、あるいは施行された法律あとで直すことは一事再議原則に当らないんだ、そういう考え方もございます。そういう考え方を言っておる方もございます。しかし私どもとして、先ほど申し上げましたのは、そういうことをひっくるめまして、ともかく前の議案とあとの議案とが同一であるかないかということは、その前提となる趣旨目的、あるいは事情が異なるかどうかということによって判定すべきものである、かように考えております。従いまして、この法律施行になった場合に、それを更に追っかけて改正しようという場合には、当然何らの理由なしにそれを改正することは考えられませんから、必ずその場合には事情が違う、目的が違う、趣旨が違うことであろうと思いますけれども、形式的に、それだからといって直ちにということは少し問題があるかと思いますけれども、しかしそういうふうに言っておられる方もあることは御承知通りだと思います。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことを言っておるのはほんのわずかな人です。そんなものは単なる主観的な見解であって、何も理由がないんじゃありませんか。一事再議原則というものは、同じ国会で同じ問題について二つの違った意思表示をしてはならぬ、これだけのことです。だからそういう、今聞くと大した理由にもならない、あなた自身もそれを強い理由にしておるわけでもないようなんだ。それをも含めて、ほかの考え方もひっくるめて一事再議にならない、こういうようなややこしい説明をしなければならないような理由を、ことさらに麗々しくしゃべっちゃ困る。何のそんなものが理由になりますか。施行されたか、されぬか、一つ国会において同じ意思表示を二回やつちゃいかぬものでしょう。
  96. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほどから申し上げます通りに、同じ事項について、同じことについて再び議決を許さないというのが一事再議原則だということでございます。同一事項という意味は形式的に同じ名前法律、あるいは法律名前の同じ条項という意味ではないということは再々申し上げた通りでございます。それが背景となっておる事情趣旨目的等々を総合的に判断してきめるべきだ、こういうことを申し上げたわけでございます。私は先ほど、すでに前の法律施行になっておるから、それだけの理由でいいと申したわけではございません。これはしかしそういうふうに考えておられる方もあるということは先ほど申した通りでありますが、特にそうは申しておりません。しかしある法律案国会で成立し、それが施行された場合、それをさらに変えるという場合は、おそらく何らの理由なしにあとから法律を変えるということは考えられません。すべて何らかの新しい事態の発生、理由趣旨によって行われることが大部分、またおそらく全部であろう、そういうことは言えるんじゃないか、そういうことを申したわけでございます。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 法制局長官ともあろう方がそんなことを言い出せば、どんな問題だって一事再議になりません。法律施行されようが、また施行前であろうが、違った決議をしようということであれば、それは何らかの事情があるにきまっています。そんなことをすれば結局この原則に反する決議というものはあり得ないです。これは原則にならぬようになってしまう。だからそういうあいまいな見解を発表されては困る、議事録に残るんですから……。あなたの不名誉になります。
  98. 林修三

    政府委員林修三君) 一事再議原則というものは、先ほどから申し上げました通り、これは結局会議体、特に国会における会議の議事運営混乱せず、合理的に行うための原則だと思うわけでございます。従いまして、前の議案、あとの議案が趣旨において違えばそれを別な議案として取り扱い、別な意思表示をされることは当然私は認められてしかるべきだと思うわけでございます。単なる形式的、機械的に同じ名前の議案である、あるいは同じ条文だけに触れているということをもって一事と見るのは、これはやはりおかしいのじゃないか。一事再議原則適用範囲はこの範囲ということでとどまるべきで、要するに議事が混乱し、再び同じことについて、前に甲ときめたことをすぐ乙になるということを防止しよう、こういう趣旨のもとにおいて認められた原則である、かように考えるわけでございます。その法律が成立した場合に、あるいはある法律案が出た場合に、それをさらに追っかけて別の理由でそれを改正する必要が生じて変えることは、これは何ら一事再議原則に抵触をしないのだと、かように考えております。
  99. 藤田進

    藤田進君 ちょっと関連して。今一つの例をあげてそれに対する答えを得たいと思うわけです。それは事情変更あるいは大前提となる趣旨が違っておれば一事再議原則には抵触しないということだとすれば、過般衆議院において、鳩山総理があまりにもお気の毒なので、からだの調子も悪い、確かに悪い。今までも二回目の答弁からは自席でなければできないということで、特に議長もこれを許すという事態になっておるわけです。これに対して見るに忍びず、社会党衆議院において引退されてはどうかと、引退すべきだという院の意思を統一して、院議をもって勧告しよう、これに対して聞くところによると、それは議決せられれば当然その意思に沿って辞職しなければならぬ、引退をする、だからこれは内閣不信任案と同一案件である、一事再議原則内閣不信任案は出せないぞという御主張をされていたように思う。今の法制局長官法律解釈に基けば、さような一事再議原則適用もない。これは引退すべきだという決議は、これは不信任とはおよそ事柄を異にしておるわけで、その点の解釈はどのような態度をあのときもとられ、今日もとられているか、この際この例についてのお答えをいただきたい。
  100. 林修三

    政府委員林修三君) この間の衆議院におきますことについては、私実は直接これに携わったわけでもございませんから、その御解釈は実は私申し上げる限りでないと思います。ないと思いますが、これはやはり内容において、理由において同じような理由があれば、これはやはり一事再議という問題になるだろう。結果において、内容において、趣旨において、そういうことじゃなかったかと、私はこれは想像でございまして、直接これに触れたわけでございませんから、的確なお答えは私はできかねます。
  101. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  102. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 速記を始めて。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃもう一つ。この一事再議原則が慣習として生まれたと、この説明としては、いたずらに審議が未決定の状態で長びくといったような点は先ほど言われた。と同時に、私はまた別な一つの立場というものがこういう慣行、原則が確立するについてあったと思うのです。それは、一たんきまった院議ですね。それを軽率に変える、これはいけない、こんなことをしていたら、これは国民は信用しませんから、こういう思想的な背景というものはあったはずです、単なる手続的な困難を防ぐという意味ではなしに……。この点を自治庁長官どのように評価されますか。
  104. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) お言葉通り考えます。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、私もこの原則の例外といいますか、こういうものを全然認めないという意味ではないのです。しかし原則の例外を認めるについても、これはおのずからそこに客観的な標準がなければいけない。その点どういうふうにお考えになりますか。
  106. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私の考えまするところは、一事再議原則にそむかないというので、これを例外にお願い申し上げているのではございません。国会において決議したことをまたやり直すことは、これはもちろんいかぬと思っておるのですが、全然目的において、趣意において違っておる現在の制度と、いわば中選挙区、大選挙区、小選挙区とあります内容について申し上げるのではございませんが、本質において違っておることでございまするから、御審議を仰ぐために提案しようと、こういうのでございまして、私は一事再議原則そのままを確保して参りたいと、こう考えております。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、例外をお願いしているのじゃなしに、一事ではないのだ、こういうことをおっしゃるわけですね。
  108. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 一事再議でないと、こういう考え方でずっと続いて私は申し上げております。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 ところが先ほどお聞きしましたように、これはだれが見たって一事なんです。たとえば、それじゃお聞きしますが、これは旧帝国議会のころですが、女子に選挙権を男子と同じように与える、そのころの議論ですが、そういう考え方が否決された。その後に、特定の女子にだけ選挙権を与える、こういう一体提案ができるかどうか、こういうことについて、当時の美濃部博士は、それはやはり一事再議原則でできない、こういう見解をはっきり出しておられます。私はたくさんの文献を読んだのですけれども、具体的に例をあげて、これが一事になるかならぬか、こういうふうな書き方をしている人ははなはだ少いのです。これは自信がないからずるい書き方だと思うのですが、美濃部博士がたまたまそういう例を出して、これは一事再議原則に反するから、そういう提案はできないのだとはっきり言っている。その点はあなたはどういうふうにお考えですか、博士の考えは間違いですか。
  110. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 美濃部君がどういう解釈をしたか、私がそれを取り上げて今の場合の解釈を私がするのはふさわしくございません。ただ私の言う一事再議というのは、目的において違っておる、中選挙区と小選挙区と大へんに目的において違っておる、こういう意味において申し上げたので、美濃部博士の説をここで私が批判をすることはお許し願いたいと存じます。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 そこなんです。私が一事再議原則国会がどういうふうに扱うかということは、ただ自分はこう考えるということじゃなしに、その考えというものが相手方にもやはり納得の行くものでないといかぬ。それじゃ、目的が違っているということが理由だとおっしゃるのですが、目的が違っているというのは、これは非常に主観的なものも加わりやすい要素ですよ。そういうもので一事でないという主張をしていいか悪いか、これはどういうふうにお考えですか。
  112. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 大へん理詰めな御質問で私答えられるかどうかわかりませんが、先ほど奥野局長の言ったことの本質ということ、これはもちろん客観的情勢を主観的に判断するのでございますから、お人様によっていろいろな御意見がございましょう。私は何も両院の立場において、衆議院の例を申し上げるのじゃございませんが、衆議院におきましては、私の言った解釈を、まあ客観的と言っては少し行き過ぎるかもしれませんが、この通りのことを私は申し上げたので、私一個の主観から、これは一事再議原則にそむかないと、こう申し上げるのではございません。閣議におきましてもこの問題を取り上げまして、こういう御意見がありましたが、私としては、政府としては一事再議でないと、こういう立場においてこの法案を決定いたしましたので、私のは法律的でないから言葉がまずうございますから、御了解を願いたいと思います。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 これは問題のポイントはやはりこの辺にあると思うのです。この目的が違うとか、そういう主観的な要素の非常に加わりやすいものを持って来て、そうして説明されるということになりますと、これはもうどんな場合でも、前にはこんな決議をしたのだが、今度はこういう目的でこういう決議をするのだ、これをやられたら、この原則というものは原則と例外が逆になってしまう。その危険性はあなたはお感じになりませんか。
  114. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は客観的に見ましても、小選挙区制と中選挙区制というのは大へんに違っていると感じましたので、先ほど来の言葉を繰り返している次第であります。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、この選挙制度というワクの中で、そんなに大した違いでも何でもないのです。そこらはまた議論の分れるところになりますから、あまりしつこく申し上げません。それから先ほどの事情変更があれば例外が認められる、これはその通り言葉でおっしゃっている。二人ともおっしゃったはずだ。例外という言葉を使ったはずだ、事情変更があれば……。この事情ということを一ぺん説明して下さい。どういう事情変更の仕方か。
  116. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほどから私申しましたのは、一事再議原則適用範囲について申し上げたわけでございまして、ある一つの事柄について議決があった後に、その議決をするに至った趣旨目的あるいは事情、背景の事情等が変更された場合に、次の新しい議案を別の目的、別の趣旨、別の事情においてやることは一事再議原則には当らないであろう、こういうことを申し上げたわけであります。それで、そこにはいろいろの目的、あるいは趣旨、あるいは背景の事情、客観的な事態、こういうものを総合して一事かどうかということを判定するべきだと思います。それに当らなければ一事再議原則に当らないし、それに当れば一事再議原則になる、こういうことで申し上げたわけであります。例外とか、本則とかいうことは申し上げたつもりはございません。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 一体どういうことなんですか、基準というのは……。言葉が若干ずつ違うのですがね。ただいまの言葉と先ほどの言葉との形容詞が若干違っていますよ。それから大体三つあるのですか、一事再議になるかもしれんけれども、これは一事再議ではないと言われるその根拠というものは……。あなたは三つ先ほどから言われておりますね。
  118. 林修三

    政府委員林修三君) 結局その一事かどうかということを判断するのは、単に機械的に現われた文字、あるいは条文名前だけではない。その背景となる事情趣旨目的、こういうものを総合して判断すべきものであろうと思います。そのほかの事情ももちろんそういうふうな代表的なものとして私考えておりますが、あるいは事柄の性質に応じては別の考え方を取り入れる必要のある場合もあろうと思いますが、代表的なものは今申したようなことではないかと、かように考えております。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、事情趣旨目的、この三つを言われるわけですが、この三つが全部そろって変ったということでなければいかぬのか、その三つのうちのどれか一つが変ればいいのですか、これはどうなんです。
  120. 林修三

    政府委員林修三君) 結局そういう要素を総合して勘案して、一事になるかどうかということを判定すべきもので、必ず三つの要素が全部そろっていなくちゃならないというものではないと思います。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そういう解釈を政府がされるのであれば、この原則というものはもうほとんどこれは適用がないのですね、どういう場合でも……。私の考えるのはそうじやなしに、一たんきまった院議を尊重する、そういうことを先ほど自治庁長官も言われた。だからそれを変えるのですから、形式的に変ってくるんですよ。変らぬというけれども、形式的に、三千枚を五千枚にするとか、五千枚を三千枚にするとか、明らかに変っているじゃないですか。ですから、あなたのおっしゃるのは、それは小選挙区という大きな目的に結びついているから変らないとおっしゃるのですが、しかし形だけは変っていることは認めているでしょう。だから、その形の変ることを認める根拠というものは、今あなたのおっしゃるのは、目的趣旨事情、こういうことなんです。そこで、そういうことで一たんきまったこの形式的に存在するものを形式上も変えていいかどうか、ここがポイントです、問題の……。そこで、私はこの原則が世界共通の原則としてあるのは、単なる議事手続だけじゃなしに、院議の尊重という背景があるのです。院議の尊重、だから院議の尊重ということを認めるのであれば、この修正というものは、よほどの事情というものが出てこなければだめです。目的とか、事情とか、その趣旨とか、そんなものを総合してとか、そういう不明確なものではだめです。だから、やはり院議の尊重を認める以上は、それを変えねばならない緊急不可欠な事態、こういうものがなければだめです。私はそう考える。だから、それがあれば、形式的には一事であっても一事不再理の原則に当てはまらぬ、こう私自身も言いますよ。その点どう考えるか、これは最後のポイントですから自治庁長官の率直な意見を聞かして下さい。
  122. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は、同一の目的のもので院議が先にきまったものを変えることはできないと思います。小選挙区と中選挙区、私の見ましたところでは、くどいようでございますが、全然違ったものでございますので、先の審議が甲というものを目的としてやったものを、次の審議が乙という目的のために、項目は単に同じでありましても、その精神というもの、目的趣意において違っておる場合には、決して私は院議を軽々しく考えたものではないと、こう考えております。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そこで私は最初に聞いたんです。全体の条文一体となっていて、絶対に分類できないというようなものなら、その説明も若干当てはまるでしょう。ところが、必ずしもそうだとは絶対にこれは断定できない問題です。だから、そういうものまで含めるということになりますと、これは非常にそこに疑義が出てくるわけです。目的々々というけれども、必ずしもそこにくっついた問題ではないのですから、政府与党がそうお考えになっているだけで、客観的に国民がそれを批判した場合に、必ずしもそんな受け取り方はしませんよ、これは……。だから、そうなれば、従ってこれは明らかに同一事項になるわけだ。だから、その同一事項を変えようというのだから、よほどな事情というものを私は説明してほしい。私の方で積極的にその点の見解を言えば、たとえば、国際間において非常に国際情勢が変ってきたとか、それでそれに対して急遽対策を講じなければならぬので、同じ事項についてまた別な考えをしなければならぬとか、あるいは国内問題について何か暴動が起きたとか、会期の初めの方で警察法を作ったけれども、この点が不備だからこうするとか、そういう客観的なものが出てこなければだめですよ。あるいはいろいろな予算等の関係においても、災害が起きたとか、それに対してすぐ予備費が足らぬから補正予算をどうするとか、これならわかるわけです。ところが、今問題になっておるのは、そういうものじゃないでしょう。質的に非常に違うでしょうが。これは政党の内部のことでしょう。こんなもの、今それに手を打たなければならぬというふうな、その緊急不可欠というようなものは一つもないですよ。私は、だから一事不再理という原則がある以上は、いやしくも同一事項を取り扱う場合には、それだけの客観的な背景があって初めて、これは長官なんかが言う総合的な事情と言いますかね。そういうものになり得ると思う。そんなあんた政府の意図で……、そういう説明ははなはだ不十分だと思うのですが、その点どうお考えでしょう。私の見解を今申し上げている。それはお前の言うのはかたすぎるというお考えかどうか、厳格すぎるというのかどうか、どうですか。
  124. 林修三

    政府委員林修三君) 一事不再理の原則についての考え方は、実は私が先ほど来申し上げた通りに私ども考えております。そういう点の解釈から、今度の法案が果して一事不再理の原則に当るかどうかということは、検討して、まあそれに当らない、こういう考え方のもとに出したわけであります。その趣旨につきましては、先ほど来自治庁長官から申し上げた通りでございます。ただ、この一事不再理の原則についてのお考え方は、これはいろいろあり得ると思います。しかし、また最終的には、国会が果してこれが一事不再理の原則に当るかということは御議決の際におきめになることだと思うのであります。一応私ども考え方といたしましては、政府といたしましては、一事不再理の原則というものは先ほど来申し上げたような趣旨のものと考え、これに当らないものとして御提案申し上げた次第であります。
  125. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ちょっと亀田君に申し上げたいのですが、大体同じことが繰り返されておるように思いますので……。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 答える方が繰り返している。(寺本広作君「結論を押しつけている」と述ぶ)そうじやない。押しつけているのじゃない。私の見解を申し上げているのですよ。質問しているのです。その見解に対する質問をしている。これは私どもの党としての見解なんです。同一事項、いやしくも形式的に同一事項というものが出てきておる以上は、それを変えるには、今申し上げたような、そういう厳格な客観的な事情というものがなければならぬ。この答えは間違いですか、どうですか、あなたの考えはどうです。長官答えて下さい。こういう結論的なことですからね。
  127. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 御審議につきまして内容をごらん下さいましたならば、亀田委員の言われる客観情勢がどうかというようなことも出てくるかと思いますが、私は信念として申し上げたいのは、二大政党ができたという大きな事実がございますが、これは世の中の声でもあったと思います。その二大政党のできたときに、世の中の声はまた何であったかといえば、小選挙区制というものを次に考えた人が少くなかったと思います。全部とは申しません。そういう政治的の立場から、政策的に政府が今回の施策をいたしましたので、そういう意味で、現在の中選挙区という目的制度と小選挙区という目的制度と違っておるから、ここで一事不再理でない、こういう立場におきまして政府としましては提案をいたした次第でございます。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 二大政党ということを前提として説明されるのですがね。ともかく問題は、前の法律ができて、その後における事情の変化、こういうものじゃございません。いわゆる二大政党はさかのぼって前にできておるわけです。二大政党ができてしまった状態において前の法律ができているでしょうよ。それはどうです。
  129. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 二大政党ということがもし悪かったならば、政局の安定ということはこの数年来の国民の声であったと思います。もちろんその二大政党のできたという事実は前に起りましたが、最初にこの問題をきめるのにはいろいろな手続等、委員会を経るなどの手続がありまして、出すまでには至らなかったのでございます。決して新しい事実を作ったり、また新しい事実を見て、ことにそういう判断のもとにやったのではございません。ただ私どもは政局の安定のためには二大政党、それはまた政策で争う、その争うにはどうしたらいいか、小選挙区というものがよいと信じまして、こういう法案を出したわけでありまして、私の言葉法律的でありませんから、あるいは誤解なさったかもしれませんが、私の気持はその通りでございます。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 それは政局の安定だって同じじゃありませんか。政局の安定を望んでいるのは、何も前の法律ができた後じゃありませんよ。これは前から国民は政局の安定を望んでいますよ。だから私は一たん院議できめた以上、それを変えるには、その以後において緊急不可欠の要件——これは法律の一般用語でしょう。どういう場合においても、一つのきまったものを変えるには必ず緊急不可欠です。そんなものをルーズにやったら大へんなものですよ。政局の安定といったって、そういう国民の要望は前からある。何も新たな事情じゃない。
  131. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私の申し上げたのは、政局の安定のためにはこうすればよい、政局安定のためには小選挙制度がいいということを申し上げたので、政局の安定という事実の判断を私申し上げたのじゃありません。
  132. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  133. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) それじゃ速記を始めて。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 中断されていたので……。決して無理な議論を私は言っておるのじゃない。つまり事情変更だとか、諸般の事情、その後の状況を考えて……、しかしそれは前の法律を可決した後の事情でなければいかぬから、その点を聞いておる。ところがどうも御説明になる政局の安定とか、あるいは二大政党対立とか、こんなものは前からある事情なんです。こんなことが通って行ったら大へんなんです。そんなことが通るのならば、どんな場合でも勝手に変えられることになる。ほんとうに事情変更があって緊急不可欠のものであるなら変えなさいという。ところが、これは聞いているとそうならぬ。
  135. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほどから申し上げましたように、私どもといたしましては、一事不再理の原則適用範囲は、結局それが一事であるかどうかということの判断になると思います。一事判断は、その形式的な条項のみならず、それを改正せんとする目的、あるいは趣旨、あるいは事情変更、こういうことによります。必ずしも三つの要素が全部なくちゃいかぬということを申しておりません。今度の場合は主として目的が違う、趣旨が違うということを先ほどから自治庁長官は申しておるわけであります。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 あなたの説明自治庁長官説明とは若干違うのですよ、こっちから聞いているとポイントが……。政治的答弁の方がはっきり気持が出ているわけです。ところが、はっきり出る気持というものが、実は法律的に考えると、はなはだふに落ちないのです。結局前から持っておった目的、そういう目的を持ちながら、一つの院議をきめておいて、前から同じ目的を持っておるのですからね。その院がまた違ったものをきめるから、これは一事不再理の原則に反すると、こう言っておる。これは常識ですよ。それはどうですかね。
  137. 林修三

    政府委員林修三君) これは先ほどから申し上げました通りに、前の法律参議院議員選挙運動の合理化ということが目的でありまして、それに関連する範囲において衆議院議員選挙にも触れたわけであります。これはその際に、現行の中選挙区というものをそのままそこに判断を加えずして、それに伴う参議院議員選挙運動の合理化に関連いたしましての改正をされたものを考えております。今度の法案衆議院選挙区というもの、あるいはそれに伴う選挙運動というところに重点を置きまして、そういう主題の下に、これに小選挙区制を採用し、そこに公認候補制を採用し、政党の政治活動を拡大する、そこに重点を置きまして、その目的のために改正をしようとするので、前回の改正とは全然目的趣旨が違うわけであります。そういうものは一事不再理の原則にならぬと申し上げたのです。
  138. 藤田進

    藤田進君 最前から目的々々ということで、いわば中選挙区制を目的とする改正案であり、また参議院にわたる面が多かった。この三月十五日の場合は、中選挙区制を大前提として、これを目的として、この参議院にわたる面が多い改正であった。しかし今度の場合は小選挙区を目的とする改正であって、しかも衆議院にわたる面が多い、こういうことだと解するが、答弁が、しかしそうではないという、自治庁長官はそうなんでしょう、今の御説明は……。
  139. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) この間の三月十五日に効力を発生いたしました法案は、参議院選挙を主としたもので、中に中選挙区たる現状についてのものも出ておりました。今回のはもっぱら小選挙区制に関する改正案でございます。
  140. 藤田進

    藤田進君 だから中選挙区、小選挙区についてその目的が違っているものだから、一事不再理ということじゃないというのでしょう。その点どうですか。
  141. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 私は一事不再理ではないと信じます。
  142. 藤田進

    藤田進君 それが要するに答弁を要約すると、そういうように目的の大前提が違っておるのですよ、今度はね。そういうことなのでしょう。
  143. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほどから申し上げました通りに、この前の法律と今度の法律案とはその改正せんとする趣旨が違う、その目的が違う。従いまして、前とたまたま同じ条項についての改正を加えておりましても、別な観点から、別な趣旨から改正しようとするものでありまして、全く同一の案件ではない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  144. 藤田進

    藤田進君 その点が非常に違う。私どもはこの公職選挙法目的というものは、第一章総則第一条に書いてある「この法律は、日本憲法の精神に則り、衆議院議員参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び長並びに教育委員会委員を公選する選挙制度を確立し、その選挙選挙人の自由に表明せる意思によって、公明且つ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期することを目的とする。」と、今度の御提案になっているものも、理由として、「議会政治の健全な発達を図るため、」、これが目的なんです。これは全然第一条について目的は今度は変っていないはずなんです。手段については、手段を選ばずというか、いろいろあるだろうが、その点は、ずっと速記録を調べてみれば、目的は違っている。確かに皆さんの与党なり政府としては、その目的は違っているのでしょう、この第一条よりは、目的は……。けれども、われわれとしては絶対に目的は変っていないというふうに解したいのだな。なぜならば、第一条の改正案がないのだから。この点は明確にしておいてもらいたい。
  145. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほどから申し上げておりますことは、その第一条を改正しようとする趣旨ではございません。前回の法律案も第一条には触れていらっしゃいませんし、今度の改正案でもその第一条に触れておるわけではございません。私の申しましたのはあるいは自治庁長官の申しましたのは、この改正案趣旨は今までの中選挙区制を今度は小選挙区制に改めたい、そういう趣旨目的から出ているということを申し上げておるのでございます。第一条の目的改正するということではございません。
  146. 藤田進

    藤田進君 そうすると、法律家、法制局長官選挙法改正に伴う一事再議かどうかということを聞いているので、その目的は第一条に書いてある以外にないはずなんです。あとは手段じゃないか、小選挙区という形において第一条を具現するか、あるいは中選挙区という姿において具現するか、いわば手段、行為の問題じゃないのですか。それ自体目的になったような答弁があるわけなんです。
  147. 林修三

    政府委員林修三君) 先ほども申しました目的とか、趣旨という言葉は、この改正法の目的趣旨を申し上げておるわけでございまして、それとして、前のは参議院選挙が主たる目的である、参議院議員選挙の合理化ということが主たる目的である、今度の法案は、衆議院議員選挙について小選挙区制を採用することが主たる目的である、こういう意味目的ということを申し上げたわけでございます。
  148. 藤田進

    藤田進君 そうすると、百九十七ページに、お出しになった理由の中に、「議会政治の健全な発達を図るため、衆議院議員選挙について、小選挙区制を採用し、候補者の公認制度を確立し、あわせて選挙の際における政党の政治活動の規制を合理化し、もって民主政治の基盤を強化する必要がある。これが、この法律案提出する理由である。」、こうなっているわけなんです。あくまでも第一章のこの総則、これに沿った理由が出されているが、はしなくもここで聞いてみると、一事再議の問題に関連して、それはその目的が違うんだと、その点もっとはっきりして下さい。
  149. 林修三

    政府委員林修三君) 今度の改正法律案の理由は、明らかに理由に書いてある通りでございます。これは、もちろん公職選挙法の第一条のこの法律目的変更しようとするのではございません。その目的範囲内において、衆議院議員選挙につきましては小選挙区制を採用し、及びその選挙運動について公認候補制等を採用することが合理的であると、こう考えてこの理由が書いてある。その理由に従って、またこの改正法の内容が出ているのでございます。決して公職選挙法の第一条の目的改正しよう、こういう趣旨で出ておるものでないことはおっしゃる通りでございますが、私どもが先ほど目的趣旨と申しましたのは、改正法案がいかなる題目をとらえ、その題目をとらえて、それをどういう趣旨改正したらいいかという趣旨から出ているということで、目的という言葉を申したわけでございまして、前の成立になった法律参議院議員選挙運動の合理化、あるいはそれに触れて衆議院選挙にも触れておりますが、これは現行選挙区制を前提としてのことでございます。そういうことが改正の主題、あるいは目的でございます。趣旨でございます。今度のはそうではなくて、衆議院議員選挙の区制及びその選挙、それに伴う選挙運動の合理化、そういうことが主題である、目的である、そういう意味目的という言葉を使ったわけであります。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 約束の時間のようですから結論的に申し上げますが、法制局長官のようなお考えで運用されると、これはもう結局非常にルーズなことになります。これはただ強弁しているに過ぎない。むしろ自治庁長官の方は率直にわれわれのやはり感じに合った答弁をされていると思うのですけれども、というのは、やはり院議は尊重すべきだと、こうおつしゃる。私もこれはこの一事で、非常に実は、きょうは大きな収獲だったと思うのです。法制局長官のあれは院議尊重の立場に立っておりません、背景としては……。ただ、そこで院議尊重というものを、院議尊重という立場に立てばなるといったって、形式的に同一的な問題を扱っているのですから、だれが見たって。それだから、そこで緊急不可欠な事情というものはどうしても出てくるわけですね、実際緊急不可欠な事情があるのです。政府には。それは小選挙区制によって憲法改正をしたい、こういう緊急不可欠な事情があるのです。しかしそういうことは公けに言えぬものだから、そこで答弁がどうもはっきりしないということになる。だから私はそういう意味で、ともかくまあ院議だけは尊重してもらいたい。そういう立場に立てば、私は今後同じような問題が起きても、今回政府与党がおやりになっているような態度を、社会党がたとえ政権をとってみても私はやらぬと、これだけ申し上げて私は終ります。
  151. 太田正孝

    国務大臣太田正孝君) 亀田委員のお言葉でございましたが、法制局長官の言われたのも私の言いましたのも、院議尊重ということと同一の目的でできたところの決議なり、法律案につきまして尊重すると申し上げたので、法律家の言うことを私が弁護するのは妙でございますが、法制局長官言葉も同じ意味であると思います。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃもう一つ最後に、そういうせっかく院議尊重ということを言いながらそういう主観的な目的というふうなものをあなたが入れてこられると、前の言葉が帳消しになってしまう、非常に苦しいところだと思います。これは私ともかく、今後の国会運営として、まあこの問題については、皆さんの方はやむを得ない立場にあるかもしれぬが、理論的にはやはり私は慎重に考えてもらいたいと要望しておきます。
  153. 石原幹市郎

    委員長石原幹市郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会