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羽生三七君 いずれこまかいことはまた後日承わることにして、
外務大臣にもう
一つ承わりたいことは、これはまあちょっと
意見になるのですが、
外務大臣からいわれると非常に何というか、現実離れした
議論みたいに聞かれるかもしれませんが、とにかくきょうは私の
見解を述べさせてもらいたいと思います。
それはまあこの
MSA協定で
日本がいろいろ軍事的な
援助を
アメリカから受けて、
政府としてはそれで
独立国家の
防衛力というものを確立したい、それで真の独立の姿になるというのが、
政府の
見解だろうと思うのです。それじゃ、われわれはこの自衛力を認めないかというと、これはもうしばしば内閣
委員会あるいは本
会議等で
議論されておるように、私たちは当然自衛力を認めておる。ただその自衛の形がどういう手段をとるかということで違うわけですね。それから軍事的な力を持たなければ自衛ができないという
立場もあるし、またその他の手段で自衛を全うしようという
立場もあるわけです。私は
日本が幸いにして憲法第九条をもって、これは世界で例のない特殊な憲法でありますが、この憲法をたてにして強力な外交を展開した方が、二十万や三十万の軍隊を持つよりも、私は、自衛力はむしろ強い、そういう
立場をとっておるのです。またとるべきだろうと思う。というのは、
近代兵器がかくも驚くべきテンポで発展をして進歩をしておる際に、
日本のような今の
防衛のあり方というものが、たとえば一応今の
防衛力を認めるという
立場の側に立っても、私はそう大して
意味をなさないと思う。もちろん、われわれのような
立場に立てば、そういう形でこの
日本の
防衛をやることよりも、むしろ話し合いによる外交
なり、あるいは、思想的に中立なんというのは断じて私はないと思っておりますが、おのおのの人が
一つの
考え方を持っておる、思想的に中立というものはあり得ないけれども、しかし、どちらの軍事的な陣営にも属さないという
考え方はあり得ると思う。ソ連の軍事的ブロックにも入らないし、
アメリカの軍事的ブロックにも入らない、私はそういう
考え方はあり得ると思う。ものの
考え方でいうならば、そんな中途半端なものは許さないということはあるかもしれないけれども、私は、この両態勢の軍事面に関する限りは、どちらにもくみしないという行き方もあると思う。いわゆる中立主義というものとは違います。つまり軍事的な面では、どちらの片棒もかつがないということでありますから、それを中立的と批評されるのは御自由でありますが、むしろそういうことの方が、私は実際上、
日本の真の安全と平和と
防衛のために役立つ、こういうように
考えておるのであります。だから
外国から侵略がある場合とか、何とか、いろいろありますけれども、それは神様でない限り、そういうような保障は絶対につくものではありませんが、しかし今の
国際情勢をわれわれが普通の常識で判断して、
日本の近隣の国が武力をもってすぐに
日本に侵略してくるというようなことは
考えられない。また、かりにそういうことがあって、ほんとうに交戦が起るとするならば、今のような武力で自国の
防衛ができるものではないし、むしろ危険があるとするならば、この東西両陣営が戦うような場合に、
日本がその渦中に介入を余儀なくされるようなことの方に、むしろ危険のウエートが多いと思う。しかも
国際情勢からいえば、そのような危険すら日々に解消して、完全に解消をしておるわけじゃないが、解消の方向に近づきつつある。また世界各国が何とかしてその糸口を見出して、国際緊張を緩和しようという非常な努力をしておる。まだその希望は十分あるわけであります。しかるに、こういう私どもの
考え方は、一片の空想的な
意見として退けられて、
日本の
防衛力の増強のみが、ただ
一つ、
日本の安全を守り得る
唯一の方針であるように
考えられることは、私はどうかと思うのです。そういう
立場に立つ限り、
MSA協定というものは長く続くであろうし、そうしてこの本
技術協定は、とりあえず
特許権や
技術の
交流等に関連されておるが、将来は現行の秘密保護法をさらに改正をして、あるいは国内的な新
立法をして、非常に強権発動の方向に向わなければならないことに、だんだんなってくるのじゃないかという杞憂を持てるわけであります。私はここで自衛力論争をやる意思はありませんが、こういう
協定を結んでまで、
日本の
防衛態勢というものを強化しなければないない、そういう積極的な気持にどうしてもなれないのであって、
議論めいたことに
なりますが、
外務大臣の御
見解を承わっておけば、これは御返事があってもなくてもよろしゅうございますが、私の
意見ですから。