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1956-05-24 第24回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年五月二十四日(木曜日)    午後十時五十一分開会     —————————————    委員の異動 本日委員須藤五郎君辞任につき、その 補欠として長谷部ひろ君を議長におい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梶原 茂嘉君    理事            小滝  彬君            鶴見 祐輔君            羽生 三七君            須藤 五郎君    委員            遠藤 柳作君            鹿島守之助君            黒川 武雄君            津島 壽一君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            曾祢  益君            上林 忠次君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君    国 務 大 臣 船田  中君   政府委員    防衛庁防衛局長 林  一夫君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省情報文化    局長      田中 三男君    特許庁長官   井上 尚一君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百五十五年五月三十一日に東京  で署名された農産物に関する日本国  とアメリカ合衆国との間の協定第三  条を改正する議定書締結について  承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) ○農産物に関する日本国アメリカ合  衆国との間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○防衛目的のためにする特許権及び技  術上の知識交流を容易にするため  の日本国政府アメリカ合衆国政府  との間の協定及び議定書締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、千九百五十五年五月三十一日に東京署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して議題といたします。  本件に関し羽生君の質疑が残っておりますので、この際発言を願います。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 この本件に関する直接の質問とやや離れるかもしれませんが、間接的には大いに関係がありますのでお伺いいたしますが、このアメリカにおける日本綿製品輸入制限に関する問題でありますが、さきに非常に大きな問題として取り扱われていたわけですが、つい先日、一昨日ですか、アメリカ下院農業委員長綿製品輸入制限に関してアイゼンハワー大統領へ要請をしておるわけであります。日本綿製品だろうと思います。特定の国を指しておりませんが、多分日本綿製品だろうと思うのです。そこでこの問題に関係してお尋ねしたいことは、このいろいろな外務省見解やあるいは先方の考え方を察するに、何といいますか、この問題の解決は裁判に待つ以外にないということをアメリカ側では言っておるようであります。そこで私は非常に疑問に思うことは州法とこの条約との関係であります。アメリカの、たとえば南カロライナ州とかあるいはその他の州で行われておるこの綿製品禁止に関する、禁止といいますかいろいろな法律上の取扱いですが、そういうものがもし裁判でこの州の法律合法性を認められた場合、つまり勝った場合には、それとこの二国間の日本アメリカとの条約との関係は一体どうなるのか。これは非常に重要な問題だと思うことは、この日米通商航海条約違反だろうと思う、今アメリカのとっている処置は。しかも州の法律裁判上合法的だと確定された場合には、これは明白に通商航海条約違反にならないか。しかも当面の綿製品のみならず、将来にそういうことが非常な悪例とならないか。二国間でお互いに協定した問題を、特定の一国が、州法で規定しただけでなしに、さらにそれを裁判上合法的だと、正当だと確認した場合には、これは通商航海条約違反にならないか。そういう先例アメリカ綿製品の問題に関連して開くことにならないかということであります。政府はどういうふうにお考えになっておるか、御見解を承わりたいと思います。
  4. 下田武三

    政府委員下田武三君) 米国は御承知のようにまことに外国側から見ますと、ある意味では非常に勝手な国でございまして、自国は連邦制度をとっている。そしておのおのの州は独自の立法権司法権行政権を持っている。そこで御指摘のような今回の問題につきまして、州法日米通商航海条約違反となるような立法をいたしましても、現実には米国中央政府つまり行政府としては、州の立法なり裁判所なりに対して、それは間違っているからいかぬということを言えない立場にあるわけでございます。それでございまするから、結局裁判に訴えて、まず州の裁判所でその州法条約違反だ、無効の判決を求めまして、もしもそれが負けました場合は、さらに今度は米国中央最高裁判所にまで上訴しまして、かりに最高裁判所がなおかつその州法を合法的だという決定を下したという場合がありと仮定いたしますと、さらにそれでは今度は国際司法裁判所日本側から訴える。そういう非常にめんどうな手続をとらなければならないわけでございます。しかし今回の場合は米国行政府といたしましても、これは日本側のいう通り通商航海条約違反であるという見解をとっておるわけですが、ただそういう法律条約違反するかどうかという法律問題は、大っぴらには行政府見解として違反だということを言えないので、その点がまだるっこいところがあるのでございますけれども、いずれにいたしましても法律問題としては最後は国際司法裁判所決定を求めるべきものである、そういうように考えております。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 これは今お答えにもあったように、最終的には国際司法裁判所までいく問題だろうと思いますが、いずれにしても私はこれは日米通商航海条約違反であると思いますので、さらに政府の積極的な日本側立場における意思表示を期待いたします。のみならずこの綿製品もとである原綿が、綿花が今度の余剰農産物協定でも日本に入るわけでありますが、今度のアメリカ制限処置に関連をしてこの問題を見ますると、日本からアメリカ輸出した綿製品は、米国の昨年度の生産高のわずかに一%半である。またそれを原綿に換算しても、米国日本輸出した原綿の五分の一に過ぎないと言われている。それであるにかかわらず非常に日本が手きびしい処置を受けているということは、私は適当でないと思うのです。しかも今申し上げましたように、この取扱いいかんでは両国間の通商航海条約一つ先例を開くことになって、そういうことを行なっても、相手国に対する制限処置を行なっても、それが合法的であるということになれば非常にまずい先例になると思いますので、特にこの問題についての日本政府の積極的な態度を期待するわけであります。経済局で最近のその方面情勢がわかったらちょっと御説明願いたいと思うのですが、おわかりになりますか。
  6. 湯川盛夫

    政府委員湯川盛夫君) 本件につきましては、事件の起きた当初からさっそく日米通商航海条約違反する問題である、日米友好関係に顧みてもおもしろくないということで厳重な申し入れを行なっております。これについてアメリカ政府としましては、日本政府同様に本件については重大な関心を持って、できるだけ善処したいということを申しております。実際においてもいろいろな経済団体等政府もできるだけの働きかけをしているようであります。ただすでにできた二つの州法の無効を宣言するということは、アメリカの憲法上行政府としてはできませんので、その直接の救済措置はこれはやはりコート・アクションによらなければならないということを申しております。ただしかし、その後関税委員会等においても、日本綿製品についていろいろな苦情が出ておるのでありますが関税委員会も先日、日本のいろいろな提起されている問題というものはダンピングにも該当せず、これはエスケープ・クローズを発動すべき問題でないという意見を公表しております。で、米国政府としてはできるだけの措置をとっておりますので、私どもとしては米国政府のとっております措置に信頼して事態を静観しておるわけでございます。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点お伺いしたいことは、これは問題が違いますが、先日もお伺いしたことでありますけれども、かりに明年度協定を結ばなかった場合、その場合にはこの農業開発等に関する投資あるいは融資、そういうものは積立円というものはなくなるのですから、ほかからまかなわなければならないことになる。これに対しては先日他の処置を適当にとるというお答でありましたが、実際問題として二百数十億の財政投融資が、今までの既往の計画を食うことなしに、プラスしてできる可能性があるのかどうか。この問題を明らかにしておかぬというと、またそういうことであるから明年度もこの協定を結ばなければならないという議論も一面に出ることもあり得るので、その点に関する御見解をもう一度重ねて承わっておきたいと思います。
  8. 湯川盛夫

    政府委員湯川盛夫君) ただいまの御質問につきましては、今までの委員会でもいろいろ政府側答弁があった通りでございます。明年度これを同じような協定を結ぶか結ばないかということは、現在まだ方針としてきまっておりません。そこでかりに結ばないということになった場合に、当然他の財政的措置でまかなわざるを得ないと考えております。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 もう一度念を……。それは他の財政的措置でまかなわざるを得ないというのはきまっておりますが、その二百数十億というものはそう簡単にできるものではないと思うので、特に強く注意を喚起しておるわけでありますが、まあこれ以上は申しても仕方がありませんからこれで質問を打ち切ります。
  10. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 他に御発言はないようでありますから、質疑は尽きたものと認めて御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 私は、日本社会党を代表して本協定二件に反対をいたします。  その理由は、先日来の質疑の過程でも明かにいたしましたように、この協定によってアメリカ余剰農産物日本が受け入ることによる積極的な利益というものが、われわれには十分納得ができないからであります。たとえば農産物一般的輸入計画ワクの中で受け入れるとするならば、これはむしろ通常商業取引でやるのが妥当であるし、また一面、日本経済上の事情から四十年にわたる長期借款で低利で受け入れることが日本経済に寄与する、という政府見解をわれわれが判断する場合に、日本の現在の外貨事情からいって、必ずしもこの程度農産物借款を結ばなければ日本経済が成り立たないという理由もないと思うのであります。確かに今一面日本経済輸出入のバランスからいって好転をしているけれども、情勢如何ではいつこれがアンバランスになるかもわからないという説明政府がなさっておりましたが、それはその通りでしょう。また一面日本が特需で支えられた経済であることもよくわかります。それらのことから言えば、今の日本経済状態が必ずしもそう積極的ないい面を持つているわけではないから、この際借款を受け入れて日本経済の発展に寄与するのがいいという政府説明でありますけれども、問題はむしろ逆であって、そうであればこそ、この際手持外貨が余裕のある際には通常取引でやるべきで、借款をあえて後世に残すべきではないと思うのです。特にただいま賠償等関係を見ましても、先般ビルマとの賠償があり、また今度フィリピンとの賠償協定され、またそのうちにインドネシアも起るでしょうし、あるいは問題の発展如何ではガリオア、イロアもどうなってくるかわからない。そういう対外債務に対する支払いに加えて、さらに年々こういう協定長期にわたる借款日本がしょっていく場合には、今後の日本経済から考えまして、私は、国民負担というものが今後に持ち越されるということもありますので、経済上から見ても必ずしも好ましい条件ではないと思うのであります。  また、もう一つ事情は、日本農業に与える影響考えてみても、私は、日本農業が他の国の農業と対等の立場国際農業競争に対応できる条件を作らなければならないと思いますが、そういう場合であっても、日本のようにわずか七、八反歩の平均耕作面積で、アメリカの数十町歩とかあるいはデンマークの二十町歩あるいはドイツ、フランス等の七、八町歩農業に対して、あまりにも日本農業耕地面積は狭小でありますから、そういう零細農を守るにはある特定国家の保護が要ると思うのです。そういう意味で言うならば、私は、この程度余剰農産物輸入でも、通常商取引ワク内と政府は言っておりますけれども、しかしいろいろな面から考えて、日本農業を圧迫する点は相当多大であろうと思うのであります。もとより、私は先月もちょっと質問の際に申し上げましたが、安い農産物を他国が売る際に、わざわざそれを日本自給自足体制でカバーしなければならないことはないではないかという議論も一部にはありますけれども、日本外国からの輸入食糧を節約すれば節約するだけ、その節約した部分工業原料輸入資金に回すことも可能であります。ですから私は、外国に対する支払いを少しでも削減することによって、この加工貿易国家である日本が、原料輸入する資金を調達し、そしてそれに加工することによって、日本貿易を伸張させるという意味もありますので、消極的な自給自足という意味とは別の意味から考えても、私は、この国内食糧の増産をはかって外国からの輸入を最小限に減らしていくという基本的な政府の政策を堅持すべきであり、その意味から考えても、この余剰農産物輸入は好ましくないと考えております。  もう一点は、本協定の第三条にもありますが、この種の農産物の受け入れをする場合に、防衛問題とこの問題とが結びつけられておることであります。第三条にこのことは明記されておる。これは公正な商取引の流通を阻害するばかりでなしに、食糧品すらが防衛問題に結びつけられるということは必ずしも適当でない。そういう形をとってまでこういう協定を結ばなければならないという積極的な条件は、私はどこにもないと思うのです。こういう点を勘案いたしまして、結論的に言うならば、六千五百八十万ドルの余剰農産物協定を結ばなくとも日本経済はやり得るし、またむしろ結ばないことの方が日本農業にはプラスするであろうし、国際的に見ても第三条の関係から好ましくない。これら諸点を勘案いたしまして、本協定二案に反対するものであります。
  13. 須藤五郎

    須藤五郎君 私もこの協定反対をするものでありますが、昨日津島委員から非常にいい意見が述べられたと思っております。おそらく津島委員もこの協定には反対をなさるだろうと想像するわけでありますが、津島委員の述べられた、手持ち外貨がたくさんあるときに、なぜこのような借款をしなければならないか、通常輸入で要るものならば買った方がいいではないかというのは私はやはり正論だと思います。それに対しまして政府答弁は、資金が必要だからだという意見だったと思うのでありますが、もしもほんとうに資金が必要ならば、このような方法によって、また、このような高い利息のついた金を借りる必要はさらさらないと思うのであります。もう今年は昨年とは非常に国際情勢が変ってきておるし、日ソ漁業協定もでき、政府自身ソビエトとの国交回復はもう間近だというふうに決意を固めておる今日、このような金を借りなくても、ソビエト方面からもっともっと安い条件で、半分の利子で、ひものつかない金が十分借りられる状態になっておりますので、むしろその方向に政府は努力すべきであると私は思うのです。  いろいろ反対理由はありますが、私は本会議におきまして反対意見を詳しく述べたいと思いますので、本日は簡単に一言だけ述べまして私の反対意思表示をしておきます。
  14. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 他に御発言もないようでございますが……。
  15. 上林忠次

    上林忠次君 一言だけ。私緑風会の代表としての意見ではありませんけれども、この農産物の購入する品目のうちに葉タバコというようなものが入っておる。日本の将来の農村建設というような点から考えまして、また現在の繊維事情等から生糸の将来ということを考えますときに、農村の大きな現金収入としてこれまで大きな寄与をしておった養蚕の将来がさみしい、こういうような現状を考えますときに、これにかわる日本換金作物、また世界的な作物として年々の価格の変動のない唯一のわれわれの輸出作物としては、葉タバコ以外にないじゃないか。現在は日本葉タバコは専売の原料として生産されております。計画生産をしておりますが、私は、将来桑にかわる農村収入唯一作物として、タバコを最も重要視しなければならぬ。この狭い耕地面積を有効に利用するためにはタバコ以外にない。かような日本農業の将来を考えますときに、ますます耕作を拡充して輸出に向けなくちゃならぬタバコ反対輸入する、どういうふうな意向でこういうようなことが行われたか。私は審議中に御質問申し上げましたが、いろいろな協定を結ぶためのいきさつがあって、これをきめたんだ、将来はこういうことがないようにするという大蔵大臣意向もあったのでありますが、かような失敗がないように、再び協定が結ばれる必要が生じましても、タバコのような将来の日本農村をになうべき唯一作物を、ますます拡充していただくように、葉タバコ生産を充実していただくように政府にお願い申し上げますとともに、再びこういうようなことがないように、タバコ輸入するがごときことがないように政府にお願い申し上げまして、この協定に賛意を表します。
  16. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 討論は終局したものと認めて御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、千九百五十五年五月三十一日に東京署名された農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して問題に供します。両件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  18. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 挙手多数であります。よって両件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第百四条による本会議における口頭報告の内容、第七十二条による議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりましてこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないものと認めさよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりまするから、両件を承認された方は順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     小滝  彬  鶴見 祐輔     遠藤 柳作  鹿島守之助     黒川 武雄  津島 壽一     野村吉三郎  上林 忠次     佐藤 尚武     —————————————
  20. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 次に、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件について御質疑のありまする方は順次御発言を願います。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 その質問の前に、防衛庁長官は出てこないですか。
  22. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  23. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記を始めて。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 これは件名が長過ぎるから、これから略称技術協定とやりますから。この技術協定もとは、昭和二十九年に結ばれたMSAからもとを発しておることは言うまでもないのでありますが、そこで外務大臣に私お尋ねしたいことは、MSA協定に基く援助を今後なおかつ長くお受けになるつもりかどうかという問題であります。これは私防衛長官にもぜひ承わっておきたいと思うのですが、外務省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  25. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 将来のことはむろんはっきりきめておるわけではございませんが、この協定援助なくしては日本防衛が将来も十分でない、援助を受けることが利益であるというふうに判断せられる部分もあるのでございます。そうでございますから、そういうことになれば、それは防衛庁と十分に協力して検討をしなければなりませんが、この援助程度は別として続けてもらうことが必要になりはしないかと、こう思っております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 なぜ私がこのMSA協定に基く援助を今後継続するかしないかということをお尋ねしたかと言いますと、これは私日本経済に非常に大きな関係を持ってくると思うのです。これはこの前の予算委員会でも若干お尋ねをいたしましたが、もしこの援助を長く受けるとすれば、外国から世話にならない自前独立防衛体制なんということは、これは口で言うだけで実際にそうでないことになるし、もし長期にわたることを避けてすぐこれを打ち切ることになると、打ち切った場合には、今までMSA援助で、受けてきたそれだけの費用というものは、日本自前でまかなうことになる。そういたしますと、今の一兆円予算の中で千数百億を占める防衛関係費用というものは、相当国民生活に非常に大きな圧迫を与えておるわけでありますが、それにプラスをしてこのMSA協定に基く援助の分、それを日本自分でまかなう場合にはその部分がプラスして予算に出てくるわけですが、そうするとこれは私は今の千数百億のこの防衛予算すら日本国民に相当な過大な負担をかけておるのに、今後自前でまかなうという場合に、私は非常に大きな影響を与えると思う。明年度の分はどの程度かと聞きましたら、防衛長官はこの前たしか五百億とか六百億とか言っておられました。つまり明年度部分日本の円に換算した場合です。今日本では平気でなんのことなしに向うから援助だからといってもらっておりますが、いざ独立国家になるためにこれを自分の国で自分費用でまかなうということになれば、明年度からすぐ六百億なり一千億の予算がふえてくるのですよ。これは大へんなことです。それでは予算処置ができないからということでは、いつまでたってもアメリカ援助を受けていかなければならない。そういう矛盾にぶつかっておる。だから防衛庁長官は今後の見通しを述べてくれという私の要求に対してついに述べ得なかった。明年度数百億という程度にしか述べられなかった。数百億は日本の円に換算した場合です。私はこれは非常に重大なものだと思う。しかも今後今の政府考えているように、非常な大規模な近代兵器というものを入れる場合には、もうその費用というものは非常に大へんなものになると思う。それを全部アメリカ援助を受けるとするならば、これはもうほとんど軍事的な従属国である。そうでない場合を考えれば、今申し上げた通り日本の千二、三百億の防衛関係直接予算、その他のものを含めたら二千億を突破するでしょうが、直接に防衛に出されている千数百億にプラスすること五百億とか千億になるでしょう。これは日本国民としては重大な問題になります。さてどうするかということになる。この前、防衛庁長官の確たるお答えがなかったので、今度出席されたらあらためて御見解を承わりたいと思いますが、外務大臣はどういうふうにお考えになっておりましょうか。
  27. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はその点はお話の通りに非常に重大な根本問題だと思います。日本防衛を独立完成のために自前でもってして参らなければいかぬ、それでなければ実は独立完成というわけに参りませんから、それに向って努力すべきことは当然だと思います。ただ問題はお話の通りに、すべての防衛、国防の問題については、従来のいきさつもありまして、この点については米国援助を受けておるというのが現状でございます。それでありますから、独立完成のために少しでも日本自身がこれをまかなっていくという方向に向けることは当然だと思います。またそうしなければならぬと思います。ただそれが急激にできないことは、お話の通り日本負担能力もございますから、これは非常に徐々に、また実際的に進まなければならぬように考えます。そうなりますと、国力全体の考慮の上にさような方向に徐々にすべきものだと、こう考えておるのでございます。そうでありますから、将来いろいろ兵器の関係もございましょう。そういうようなことを非常に考慮に入れて、一体日本の国防はどのくらいの程度でいいかということも十分に考慮に入れて、目的としては他国の援助を受けるということを少しでも少くしていくという方針のもとに進むべきだと、こう考えております。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 私の言うのは、日本防衛態勢を是認して言っておる議論ではありませんが、平行する二つの線で質問しておっては問題が明らかにならないので、一応予算の問題を私関連さしたわけでありますが。  もう一つ問題は私の聞いておるところでは日本へくる援助の兵器は実際防衛庁計画に合致するようになっておらないそうであります。これはアメリカの都合もあるでしょうから日本の要求通りにはいかない。しかも非常に使い古しのものが多い。日進月歩のこういう兵器の発達のテンポの早い時代に、一体そういうものを向うの御都合で払い下げを受けて、それで日本防衛態勢がどうとかこうとかいうのは、それは非常にナンセンスというとどうかと思いますが、ナンセンスのようなことじゃないかと思うのです。これは防衛庁関係のことですから防衛長官がおいでになったら承わりますが、こんな形のものでもやはり今後続けていかなければいけないとお考えになるのかどうか。外務大臣は直接御関係がないからお答えがあってもよく、なくてもよい。いずれこの問題は根本問題として防衛長官に伺いたいと思っておりますが、外務大臣はこの問題に対して無関心でありますか、いかがですか。
  29. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 決して私は無関心ではない、また無関心であってはならんと思います。お話のようなことであるならば、これはこういう点についてよく検討しなければならぬと思います。しかしながらさようなことについてやはり専門知識を持って十分検討した上で方向をきめるべきであって、そうして一応そういうことによってきめた問題については、それが兵器として必要であるかないかというような点については、一応それを私は政治家としては認めていいことじゃないかと思います。大きな問題を、専門的なこと、第二義的なことにあまり関連させるというと私はどうも判断が正鵠を欠くように考えますので、われわれとしては大体そういうふうに考えて専門的な検討に信頼をしておるわけでございます。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 それではこの問題は防衛長官に承わりますが、もう一つ。これは大臣でも条約局長でもいいのですが、承わっておきたいのは、この協定の前文にもありますが、これはいずれかの一方の政府の要請があったときにこういうものは合意されることになっております。これはMSA協定の第四条ですかに明記されておるわけですが、これはどちらのイニシアチブで合意ができたのですか。両政府といいますけれども、日本国政府がこういう協定を求めたのか、アメリカが求めたのか。どっちがイニシアチブを取ったのか。この点を承わっておきたい。
  31. 下田武三

    政府委員下田武三君) この点はMSA協定締結のときから話があったのでございますが、やはり相互的の協定ではございますが、実際問題といたしましては日本側が受ける援助が多いわけでございますので、受益国側としての日本国側のイニシアチブから出ておるわけであります。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 私は、本協定を結ばなければならない積極的意味が、この前述の政府の提案理由だけではのみ込めないのです。具体的にどういう理由があるか。たとえば日本防衛生産のどういう部面で、どういう理由があって、それが特許権とどういう関連になって、それを品目にすればどういう品目で、どこの会社でと、こういうことがある程度具体的にならなければ、こんな抽象的なもので協定を結ぶと言っても、現実的な利害関係というものは何も出てこない。だからその点はもう少し具体的に、この協定を結べばどういう部面にどういう影響があるのだ、それからどういう現実的な必要からこういうことが起ったのだ、ということをもう少し具体的に明らかにしていただきたい。
  33. 下田武三

    政府委員下田武三君) 防衛局長からあとで御説明があると思いますが、その前に従来の経緯を簡単に御説明いたしますと、MSA協定の折衝のときから日本側の一貫した立場は、なるほどアメリカからできた、完成兵器をもらうのもけっこうであるけれども、日本自体も相当の工業力を持っているのであるから、すみやかにその日本自体で国内生産をするようにしていかなくちゃならないとわれわれは思っている。ただそれには戦争中のギャップがあって日本技術的に立ち遅れていることを認めざるを得ない。ついては完成品の援助もさることながら、ノー・ハウとか技術上の知識、ブルー・プリントをもらうようにしたいという希望を強く表明しておったのでございます。アメリカはむろんそれには異存はないのでございますけれども、しかしそのためにはこの協定の四条に書いてありますように、アメリカ技術上の知識日本に供与して、その知識の所有者の私権、私の利益が保護される、十分な保障がないとアメリカの所有者は安心してやはり上げるわけにはいかない。ついてはそういう保護が全うされるような取りきめを結びたいということを申しまして、それがMSA協定の第四条に相なったわけであります。そこでもう一年以上にわたりましてこの第四条に基く折衝を続けて参ったのでありまするが、何分特許その他の制度に国内法制が両国とも違いますので、相当の技術的の調整、むしろ技術的の見地からの折衝に長引いたわけでございまするが、今般この協定ができましたので、この協定援助を導入すること自体よりも、導入された技術上の、知識上の保護を全からしめるというところに主眼があるわけでございまして、この協定が発効いたしますと、アメリカ技術の所有者は安心して日本側技術を供与する。そうして日本の国内生産の分野が広まり、またレベルが高まるという結果をもたらすことになる。それがこの協定の主たるねらいでございます。
  34. 小山雄二

    政府委員(小山雄二君) ただいま条約局長からこの協定利益の一般的な御説明がございましたが、防衛関係庁といたしまして具体的にどういう点を期待しているかという点について申し上げますと、従来御承知のように、MDA協定によりまして装備品をいろいろ供与を受けております。供与を受けておりますが、装備品とかあるいはこれを操作するための教範とか、これを補修するための教範とかの技術的な教範、図面その他を受けておりますが、これらはそれを受けて運用するためだけの技術しか今までもらってないわけであります。通常供与を受けます際にはある期間の、部品、取りかえ部品、その他をつけてもらっているのが通例でございますが、これも半年分とか一年分くらいしかないわけでございます。逐次年月がたってきますと、われわれが切実に感じておりますことは、これらの補修、取りかえ部品等からじみちにこれを生産して、国内で調達するような態勢を作っていかなければならぬということでありますが、そういうものにいたしましても、すべて向うの特許あるいはノー・ハウ等の関係にからんでくるわけでございまして、そういうものが制度的に解決いたしまして、向うの方のそういう権利を持っている人が安心して出せるとか、あるいはまた先方の秘密上の問題も安心して解決できるという態勢になりませんと、そういう技術がスムースに入ってこないという関係にありまして、私どもといたしましては、そういう技術がこちらに入ってきましたものが保護されるという機関ができまして、その上にそういう技術がどんどん入ってくる態勢ができ、それを土台にして、そういう部品その他の生産から手をつけていくということを、一つの重点として期待しておるわけであります。  なお具体的にこれによってどういう技術を期待するのかというお話でございますが、これは今後の折衝にもよりますし、われわれも従来からいろいろ研究いたしておりますが、一口になかなか言えないのでありまして、あらゆる面のあらゆる技術という方が正確なのでございまして、たとえば今F86、T33、ジェット機の国産、組み立てをやっておりますが、これらに関する、これは初めは部品を全部もらいまして、それを組み立てるという仕事から始めているわけですが、これも逐次部品の国産化をやって参らなけばいかぬわけですが、そういう点につきましても、こういう問題が全部からまってきておるわけでありまして、これらについてもそういう面のこういう協定によって、技術の導入が促進される面が非常に多いと考えております。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 いずれこまかいことはまた後日承わることにして、外務大臣にもう一つ承わりたいことは、これはまあちょっと意見になるのですが、外務大臣からいわれると非常に何というか、現実離れした議論みたいに聞かれるかもしれませんが、とにかくきょうは私の見解を述べさせてもらいたいと思います。  それはまあこのMSA協定日本がいろいろ軍事的な援助アメリカから受けて、政府としてはそれで独立国家防衛力というものを確立したい、それで真の独立の姿になるというのが、政府見解だろうと思うのです。それじゃ、われわれはこの自衛力を認めないかというと、これはもうしばしば内閣委員会あるいは本会議等で議論されておるように、私たちは当然自衛力を認めておる。ただその自衛の形がどういう手段をとるかということで違うわけですね。それから軍事的な力を持たなければ自衛ができないという立場もあるし、またその他の手段で自衛を全うしようという立場もあるわけです。私は日本が幸いにして憲法第九条をもって、これは世界で例のない特殊な憲法でありますが、この憲法をたてにして強力な外交を展開した方が、二十万や三十万の軍隊を持つよりも、私は、自衛力はむしろ強い、そういう立場をとっておるのです。またとるべきだろうと思う。というのは、近代兵器がかくも驚くべきテンポで発展をして進歩をしておる際に、日本のような今の防衛のあり方というものが、たとえば一応今の防衛力を認めるという立場の側に立っても、私はそう大して意味をなさないと思う。もちろん、われわれのような立場に立てば、そういう形でこの日本防衛をやることよりも、むしろ話し合いによる外交なり、あるいは、思想的に中立なんというのは断じて私はないと思っておりますが、おのおのの人が一つ考え方を持っておる、思想的に中立というものはあり得ないけれども、しかし、どちらの軍事的な陣営にも属さないという考え方はあり得ると思う。ソ連の軍事的ブロックにも入らないし、アメリカの軍事的ブロックにも入らない、私はそういう考え方はあり得ると思う。ものの考え方でいうならば、そんな中途半端なものは許さないということはあるかもしれないけれども、私は、この両態勢の軍事面に関する限りは、どちらにもくみしないという行き方もあると思う。いわゆる中立主義というものとは違います。つまり軍事的な面では、どちらの片棒もかつがないということでありますから、それを中立的と批評されるのは御自由でありますが、むしろそういうことの方が、私は実際上、日本の真の安全と平和と防衛のために役立つ、こういうように考えておるのであります。だから外国から侵略がある場合とか、何とか、いろいろありますけれども、それは神様でない限り、そういうような保障は絶対につくものではありませんが、しかし今の国際情勢をわれわれが普通の常識で判断して、日本の近隣の国が武力をもってすぐに日本に侵略してくるというようなことは考えられない。また、かりにそういうことがあって、ほんとうに交戦が起るとするならば、今のような武力で自国の防衛ができるものではないし、むしろ危険があるとするならば、この東西両陣営が戦うような場合に、日本がその渦中に介入を余儀なくされるようなことの方に、むしろ危険のウエートが多いと思う。しかも国際情勢からいえば、そのような危険すら日々に解消して、完全に解消をしておるわけじゃないが、解消の方向に近づきつつある。また世界各国が何とかしてその糸口を見出して、国際緊張を緩和しようという非常な努力をしておる。まだその希望は十分あるわけであります。しかるに、こういう私どもの考え方は、一片の空想的な意見として退けられて、日本防衛力の増強のみが、ただ一つ日本の安全を守り得る唯一の方針であるように考えられることは、私はどうかと思うのです。そういう立場に立つ限り、MSA協定というものは長く続くであろうし、そうしてこの本技術協定は、とりあえず特許権技術交流等に関連されておるが、将来は現行の秘密保護法をさらに改正をして、あるいは国内的な新立法をして、非常に強権発動の方向に向わなければならないことに、だんだんなってくるのじゃないかという杞憂を持てるわけであります。私はここで自衛力論争をやる意思はありませんが、こういう協定を結んでまで、日本防衛態勢というものを強化しなければないない、そういう積極的な気持にどうしてもなれないのであって、議論めいたことになりますが、外務大臣の御見解を承わっておけば、これは御返事があってもなくてもよろしゅうございますが、私の意見ですから。
  36. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 非常に高遠な御議論でございまして、私はその御趣旨において決して御共鳴にやぶさかなものではございません。私はこの日本の国防というものは、決していわば武力だけが国防であるとは私は少しも考えておりません。国を守るためには、いわば大きな意味の政治力、外交はむろんのこと、特に国際関係を顧慮した外交の運用ということが、直接の関係を持っておると思います。しかし御議論の要点は、武力がない方が国防がいいという御議論のように思います。私どもはその点は御共鳴ができないのであります。やはり自分の国は自分で守るというその精神があって、それはやはり独立の完成の意味であって、そのためには必要な国防力、武力という点も考慮しなければならぬと思う。しかしそれだからといって武力だけに頼んでおっていいか、それは非常に誤まったことです。そこでわれわれはいわば平和外交ということを志しておるわけでありますが、それはあくまで武力以外の力で国防を全うするということは考えなければなりません。しかし武力がないから、ない方が、そのためにいいとは私はどうしても考えられないのであります。決して武力だけを不均衡に、過大にしようという考え方は、これは無論間違いであると思いますが、少くとも自衛の精神を裏づけるだけの努力はしなければ、今日の国際情勢においては国防を全うすることは私はできぬと思います。それがあるいは実際問題、憲法問題等に関連をしてのわれわれの意見の相違のある点ではないかと思います。われわれは憲法第九条をたてとして大いに平和的に一つ主張したらよかろうという御議論だと思います。私どもはその趣旨はその通りに思います。しかしながら憲法第九条には自衛に必要な国防力を除外してあるとはわれわれは考えておらぬのでございますから、その点においても解釈上御議論が違うかもしれません。しかしいずれにしましても、そういう国防力と申しますか武力をも含めた意味の独立の完成、それから自衛の精神の充実ということをして、私はあくまでも平和的方法をもって国防をも全うしていくべきものであると、平和外交の運用によっていくべきである、これは非常に大きな問題で議論は抽象的にはなはだ形式的になりますが、しかしこういうふうに考えます。これは私、思想的な考えであります。
  37. 須藤五郎

    須藤五郎君 この法案とは直接関係のない問題ですが、船田さんが見えないので、その間大臣を遊ばしておくのは大へんもったいないから私ちょっと質問したいのですが、最近鳩山内閣はたくさんのヒットを打ったと思うのです。漁業協定初めココムのあの中国における見本市の出品目録の拡大、それから今度は通商代表部をお互いに置こうというようなこと、また不十分ではありますけれども、確かに鳩山内閣のヒットで、小選挙区制に対する不人気を多少取り戻したということが言えるのではないかと私は思っております。  そこで私は外務大臣にお尋ねしたいのですが、もう中国と日本との第三次貿易協定の期限が切れたわけです。それで今私たちの間で一年延期を向うに申し入れて、向うも承知をしてきておるようでありますが、この際通商代表を交換するというような状態なりますならば、第四次貿易協定政府政府の間でなされるのが一番適当ではないか。そしてその時期は来ておるというふうに私たちは考えておるのですが、外務大臣どういうふうにお考えなりましょうか。
  38. 重光葵

    国務大臣重光葵君) その問題について第四次協定は今すぐやらなければならぬということではないと思います。期限がきましたときには十分考えなければならぬと思います。考えなければならないと思いますが、今申し上げ得ることは、今日までこの問題については割合によくいっておると私は思っています。中共との貿易は国際義務に反せざる限りという一つワクはありますけれども、その中においてどんどん発達いたしております。そうでありますから従来の通りの方式で私はまだこれは発達する余地があると思います。それで一ついったならば、あまりどうも今御承知の通りに通商関係は小さなことでもついいろいろな波乱が起りますから、なるべく故障のないところで目的を達し得るならば達し得る方がいいと考えます。一つそういう方面に御協力願って、あまりむずかしい何を持ち出されないように願いたいと思います。
  39. 須藤五郎

    須藤五郎君 もちろん私たちも、中国と日本との貿易がどんどん発展すれば、日本にとって大きなプラスだと思うのです。今日までやってきているのですが、第三次貿易協定は五月の三日か、四日で期限が切れたのです。どうしても新しく協定を結ぶということが必要とされておるのです。やむを得ずまあしばらく延期ということを申し入れておるわけですが、できることならばこの際第四次協定というものを新しく結ぶことが私は必要ではないかと思っておりますので、政府はその気持になって政府政府の間で協定を結んだらどうだろう、そうすると外務大臣は、国交回復をしていない国との間に協定は結ばない、という御意見であったと思うのですが、それはそうではないと思います。ソ連との間においても漁業協定もやってきたのであるし、ほかの国々との間においても国交回復をする前に協定を結んでおる場合がたくさんある。決して不可能ではないと思うので、この際政府政府協定をなされることが一番好ましいと思っております。  それから第三次協定の中で問題となりました、通商代表部の設置と支払い協定の問題があるわけです。あのときに向うから日本の円をともかく認めようという話が出ました。私たちはそのことに対して非常に喜びを感じた。というのは、今日国際取引で円というものが初めて公けに話し合いになったのは、昨年の中国と日本との貿易協定のときに初めてだと思う。それで日本の銀行、東京銀行と向うの中国銀行との間にそれができれば一番いいのではないかという話し合いがあったのです。どうもそれはうまくいかなかったのですが、それができると非常にまた貿易上好都合になると思いますので、やはりこういう問題を解決をしていくためには、政府政府が当事者になることが私一番好ましいことだと思いますので、何とか第四次協定を結ぶ場合は、日本政府一つ出て中国の政府との間に協定を結ぶように努力されたい。外務大臣もその気持になってほしいと思うのが私たちの気持なのですが、どうでしょうか。
  40. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 御意見は十分受け取っておきます。私も今の考え方は、先ほど申し上げました通りに従来故障のないやり方がここにできてきているのでありますから、従来の故障のないやり方でだんだん進んでいけば世の中はまた変ってくるのでありますから、その変ってくる情勢を待ってだんだん進めていく、こういうことが日本としては一番大切なことではないかと、こう大体考えております。そうしないと今、日本は非常に戦争で負けて押しつぶされた国でありますから、まずだんだん国の力を作っていく、これには忍耐を要すると考えております。
  41. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  42. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記始めて。それでは暫時休憩いたします。一時から御開することにいたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後二時二十七分開会
  43. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 午前中に引き続き委員会を再開いたします。  委員の変更について御報告申し上げます。須藤五郎君が本日委員を辞しまして、長谷部ひろ君が外務委員なりました。     —————————————
  44. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 午前に引き続きまして、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件について御質疑のおありの方は御発言を願いたいと存じます。——では私から一つ長官にお伺いしたいのですが、この協定によって当面期待されている具体的な事柄が何かあるのか、それと、概括的な話し合いを取りきめようとしておくというだけですか、その点を一つ
  45. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま委員長の御質問なりました点は、きわめて重要なことでございますが、大体この協定は、外務省関係で御説明が一応なされたことと存じますが、防衛産業につきましてわが国の技術、科学上の知識といったようなものが非常に遅れておりますので、アメリカからそういう技術、科学上の知識を導入することを容易にいたしまして、わが国の防衛産業を育成強化するようにして参りたいということに、そういう目的で一般的協定を結ぶということになっております。  今御質問のありましたような点は、今後の折衝によりまして個々具体的の問題につきまして一々話し合いを進めていくということになるわけでございますが、しかしさしあたりわが方として期待いたしておりまするのは、水中聴音機、ソーナー関係、あるいは射撃指揮装置とか、あるいは最近防衛兵器として米・ソ間においてもずいぶんいろいろ論議になっております誘導弾、そういうようなものについての特許権なりあるいは技術上の知識というようなものを、わが方としてはアメリカから、これは政府の持っておりますものは無償で供与を受け、また民間のものは政府を通じて借与を受けるようにいたしまして、そうしてわが方の防衛産業の技術の水準を高めていきたい、そうしてそれによりまして防衛力の増強に資していきたい、大体こういうように考えておるわけであります。一応一般協定を結びまして、その上具体的の問題につきましては、個々の場合に話し合いを進めていこうということになっておるわけでございます。
  46. 小滝彬

    小滝彬君 関連して質問させていただきます。今のお話を聞いてみると、防衛産業を今後大いに立ちおくれを補って育成していきたいという長官のお考えでありますが、防衛産業というものは今実際問題として非常な困難に遭遇しやしないかと思われます。事実、いろいろ困難があるだろうと思います。これは結局民間がやるということになれば、採算に乗らなければならぬという点もある。戦前においては国営というのですか、国家がそういう産業の相当部分をやっておったというような関係もあったようですが、大体の防衛産業に対する基本的な長官の考え方を一つお聞かせ願いたいと思います。
  47. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいま御質問がございました防衛産業につきましては、御指摘の通り、終戦当時ほとんど全面的に破壊され、あるいはその前からもう爆撃を受けたというようなことであるいは撤去をされたというようなことで非常にこれはおくれをとっております。ただ、そのうちにおきましてやや回復をして参りましたのが、造船関係、それから通信器材の関係でございます。従いまして、艦艇の建造ということにつきましては、昭和二十八年度の予算におきましても警備艦の予算を計上していただきましてそれが最近昨年の秋以来できつつあるというような状況でございます。また通信器材につきましても、これはやや他国に比較いたしまして多少おくれはとっておるにいたしましても、かなり回復をしつつあるという状況でございます。しかし、その他のものにつきましてかなりおくれをとっております。で、米国からの供与は、御承知の通り、直接殺傷兵器ともいうべき装備品甲類の初度装備につきましては、米国からの主として供与を受けるというようなことになっております。しかし、車両、通信器及び各種装備品の補充、維持用の部品、または装備品の取りかえ、補充ということにつきましては、漸次国内生産に待たねばなりませんし、また若干の航空機、たとえばメンター初等練習機、T33A航空機、あるいは実用機のF86F航空機、及び警備艦、掃海艇等の艦艇につきましては、すでに国内生産が行われておりまするし、さらに航空機及び艦船搭載用武器その他につきましても、国産化され、または国産化すべく計画されているというような現状に進んでおります。で、それらの状況をも考えまして、これらの分野における国産化が、この協定を結ぶことによりまして一段と促進されるようになろうかと考えておるような次第でございます。
  48. 小滝彬

    小滝彬君 まあこういう点については、兵器製造法がこの前成立していろいろ政府としても施策がおありのようなんですが、しかし実際直接兵器というのですか、たとえ今没落したような格好になっておる日平産業のようなものもある。あるいは今後の注文を期待していろいろ設備をしかけておったけれども、それがどうも将来に対する見通しがはっきりしないので、中途半端の状態にあるというようなものもあるようなんですが、これは今後の国際情勢にもよることでしょうが、そういうものについて一体どういう措置をとろうとしておられるのか。また従来の造兵廠とかいうようなものについて、いろいろな議論も行われているのですが、そういう積極的な点についての船田長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  49. 船田中

    国務大臣(船田中君) 鉄砲弾の生産につきましては、御承知の通り、朝鮮戦争が始まりました直後アメリカ側の特需がにわかに起りまして、そうして従来国営で持っておって払い下げられたような工場がにわかに活況を呈してきまして、ただいまおあげになりました会社等におきまして相当生産が進んで参りましたが、だんだんこれが朝鮮戦争が終りその後の情勢が平静になっておるというような関係もありまして、一応特需というものに大きなものを期待することができないという状況になって参ったわけでございます。そこで、鉄砲弾の製造会社のあの能力は、防衛目的から申しますればぜひ維持しておきたいということで、これは私が就任後直ちに、この問題につきましても通産省初め関係の省庁との協議をいたして、何とかこれを予算化するように努力をして参ったのでございますが、まだ具体的な成案を得るまでに至っておらないために、昭和三十一年度の予算の上には何らこれを計上していただくことができなかったわけでございます。しかし防衛庁といたしましては、ぜひああいう銃砲弾の製造設備というようなものも、ある程度の能力を維持しておいてもらいたいという強い希望を持っておりますので、引き続きこれをどういうふうにして維持していくかというようなことについて、関係省との間にもなお連絡をとりまして十分研究をいたしておるような次第でございます。成案ができましたならばあるいは法制化し、あるいは予算化するというようなことにしたいと思いますが、その他の防衛産業につきましても、ものによりましては国有国営がいいか、あるいは国有民営にすべきか、あるいは民有民営にすべきか、それらのところは各具体的の各種の産業について十分検討をいたしまして方針を立てるようにしたい。ことに国防会議が設置されるようになりました場合におきましては、直ちに、そういう問題も長期防衛計画と並んで、長期防衛産業の育成強化の方針というものもぜひ立てて参りたいと、かように考えておる次第でございます。
  50. 小滝彬

    小滝彬君 羽生さんが見えましたから私はやめますが、そうすると長官としても大体の方向と種類別にどうしたいというような点は、まだ具体的にはおっしゃる段階に至っていないということですか。
  51. 船田中

    国務大臣(船田中君) その通りでございます。今せっかく関係省との間に研究を進めておるという程度でございます。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 この技術協定自体から防衛問題一般を引き出すのは、非常に無理な話でありますので、しいて深くはお尋ねはいたしませんが、ただこれと関連してお尋ねしたいことは、たとえばこの日本防衛態勢が、自衛の限界というものはどこで線を引くかという一般的な問題がありますが、それは別としても、この本技術協定特許権及び技術交流等に関連して考える場合に、この問題に関する限り一体どの程度まで攻撃的兵器と純粋の自衛のための兵器との区別をつけ得るか、これはなかなかむずかしい問題だと思いますが、しかし今誘導弾の問題なんかも出ておる際に、この特許権なり技術上の交流の分野なりというものが、一体どこで線を引き得るのか、この防衛問題全体からいってもむずかしい問題ですが、問題を限定して今申し上げたようなことについて考えてみても、一応のやはり御見解を承わっておくことが必要であろうと思いますので、御見解を承わりたいと思います。
  53. 船田中

    国務大臣(船田中君) 今御質問の点は、先ほど実は委員長からも冒頭に御質問がございまして、あるいは重複するかとも思いますが、大体この協定を結ぶことによりまして、これはまあ御承知の通り一般的の協定でございますので、これを結んだから具体的の問題がすぐ解決するというわけではございませんので、具体的にどういう技術を導入するかということは、今後側々に折衝をして話し合いをつけていかなけりゃならぬ問題でございます。そこで今具体的にどういうことを考えておるかといいますと、まだ具体的にこれこれとはっきり申し上げる段階には至っておりませんが、たとえば水中の聴音機、ソーナー関係の兵器、あるいは射撃指揮装置関係の兵器とか技術、あるいはジェット・エンジンの飛行機の生産に伴う部品の生産についての技術あるいは特許、もしくはただいまも御指摘のありました誘導弾に関する特許あるいは技術上の知識、こういったようなものはぜひなるべく早い機会に導入することをできるようにいたしたいというふうに考えております。もちろん原水爆の問題は本協定には全く関係がございませんし、また政府としても、これもたびたびあらゆる機会に御説明申し上げておりますように、原水爆を今後わが自衛隊が持つというようなことは毛頭考えておりません。また客観的に見て攻撃的の兵器であると見られるようなものにつきましての特許権あるいは技術上の知識というものの導入、ということも考えておらないわけでございまして、たとえば誘導弾にいたしましても地対空、あるいは空対空といったような防衛目的、防御的の兵器についてはこれを導入いたしますけれども、しかし地対地、ことにICBMといったような非常に大きな攻撃的な兵器といったようなものについては、もちろん今後わが自衛隊として持つ意思がございませんから、従ってそれらに関する技術上の知識なり特許権アメリカから導入するというようなことは、考えておらない次第でございます。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 その第八条の(d)から見て、原子力の分野における問題を包含しておらないということは明らかでありますが、今大臣からお答えのあった中にも示されておりましたが、誘導弾はぜひ近い将来にこの範疇に入れたいというお話でありましたけれども、しかしそういうことになってきますと、誘導弾と原子力と切り離せるかどうかという点は、私しろうとでよくわかりませんが、先日のニュースなんかで聞くと、この水爆実験の場合に関連してのニュースでありましたが、これは原子弾頭に利用できるものであるということも、ニュースに間違いがなければ発表されておったようであります。そうなってくると誘導弾をこの原子力問題全体と切り離して、原子兵器と切り離して論ずるということは非常に当を得ないと思うんですが、今は大臣の御説明のようなことで一応なんといわれておっても、近い将来必ずこの問題にぶち当るのではないかと思うんですが、いかがでありますか。
  55. 船田中

    国務大臣(船田中君) 日本の自衛隊といたしましては、先ほど申し上げましたように、原水爆を持つという考えは全く持っておりません。ただ今御指摘もありましたようにある兵器はそれに原子弾頭をつけることができるというものはあるわけでございますが、たとえばオネスト・ジョンのようなものも、弾頭に原子兵器をつけ得るということは、確かにつけ得るわけでございますが、しかし原子爆弾あるいは水爆というような非常におそろしい攻撃的な兵器は日本の自衛隊としては持たない、従ってその研究もしない。これはたとえば誘導弾の研究をするためにアメリカから技術上の知識を導入し、あるいはパテントの許可を得るというような、もちろんこれは個々の折衝によってきまることでございますが、そういう場合においても、その問題と原水爆を持つという問題とは全然切り離して折衝もでき、またわが方といたしましてはどこまでも原水爆は持たないということで、その他の防御兵器についての特許権なりあるいは技術上の知識を導入する、ということにして参りた  いと考えておる次第でございます。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 私の最初の質問が、前の委員長の御質問にあるいは関連しておったと思うのですけれども、中座をしておりましたので、あるいはダブることになるかと思いますが、重ねて申し上げることは、防衛問題一般からいうと問題が広くなるので、それを狭めて本協定自体に関連して考えた場合でも、どっかで何らかの線を引かなければ、単に防御的ということだけではこの概念の幅が広すぎる。もっとたとえばどういう兵器について言えばどの程度ということがきめられておらんと、防御的であるならばということでどこまででも拡大解釈ができると思うのですが、それはやはり今のお答えのように原子兵器つまり原水爆は持たない、それ以外のものは全部防御兵器という考え方でお考えになるのか、その辺はどうでありますか。
  57. 船田中

    国務大臣(船田中君) 原水爆はもちろん持つ意思はございませんが、なお長距離爆撃機といったようなものは、これは客観的に見ても攻撃兵器と見られまするから、従ってそういうようなものは自衛隊としては将来も持たない、従ってそれに関連する技術の導入というようなことは考えておらないわけでございます。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 実は先ほど外務大臣にお尋ねしたことでありますが、それからなおかつ私のお尋ねしようとする問題は、先の予算委員会の際に船田長官にお尋ねしたことと関連するのでありますけれども、もう一回重ねてお尋ねいたしますが、この技術協定MSA協定もとを発していることは言うまでもないわけでありますが、このMSA協定はやはり今後ずっと継続してお受けになるつもりなのか、この問題をぜひ明らかにしておきたいと思うのですが、どういうお考えであるのか。防衛何カ年計画というようなものの確たるものはないというお答えでありますが、それにしても船田長官が長官の地位につかれてずっと防衛庁の仕事を見て来られて、今後何年くらいは協定援助を必要とするのか、あるいは今後どのくらいたったらそういう援助を必要としない段階になるのか。それはそのときになってみなければわからぬということでは私は変だと思うので、一応その御見解を承わっておきたいと思います。
  59. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは予算委員会のときにも一応御説明申し上げたことでございますが、防衛庁の試案として今持っております長期防衛計画は、昭和三十五年度末において陸上自衛官が十八万、海上の艦艇が十二万四千トン、対潜哨戒機等が百八十機、それに航空自衛隊といたしまして練習機を含めて千三百機、大体それを目標にいたしております。一応そういう長期防衛計画を立てておりますが、これはまだ政府案となっておるわけではございませんで、できれば国防会議法を早く通していただいて、そうして国防会議に十分御検討願って、政府案としてなるべく早い機会にこれを確立する、またそれによりまして、大体この先ほど申し上げました防衛産業というものも、大体の目途がそれでつくのじゃないか、というふうに考えておりますので、そういう方向に進めて参りたいと考えております。しかしその目標を達成したときにMSA援助を断わるかと言われますと、どうも私はこのMSA援助がそう永久に続くものとは考えませんし、また先方においてもそれを永久に続かせるという考え方ではないように思いますが、今申し上げた長期防衛計画の達成される昭和三十五年度の終りにおいて、それができたらMSA援助はなくてもよろしいという段階に達し得るかと申しますると、ちょっと私はそれについては確信をもって申し上げかねるのでありまして、もう少しこの長期防衛計画の進捗状況をよく勘案し、また国際情勢をも見ていかなければなりませんが、MSA援助はもう少し続けておらなければ日本防衛態勢は十分整備されない、というように考えております。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 この前の予算委員会で申したことをもう一度繰り返すことになりますが、そういう見通しに立たれたことは財政的原因によるのですか、その辺はどうですか、ウエートはやっぱり財政的な原因にあると考えていいんですか。というのは私たちは今の政府防衛計画反対ですが、その立場は別として、政府がある一定の防衛計画を持つと何年後においてどういうことになるということを想定して、一応の考え方を持っておるが、しかし当該年度の予算上財政上の制約のためにその目的を達せられないと、そう解釈すべきなのか、その辺はどうでありますか。
  61. 船田中

    国務大臣(船田中君) これは財政の問題は相当重要な部分を占めておると存じますが、そればかりとは言えないと思います。先ほど来問題になっておりますこの防衛産業の点から申しましても、今直ちに日本防衛産業の現状をもって多くの新兵器を生産する、あるいは弾薬の補充が十分つき得るというふうには考えられませんので、そういう点におきましても、直ちにこのMSA援助がなくなってもよろしいという状態なり得ないであると存じます。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 まあ立場を異にしておってそして私が今のような質問をしておるというのは、実は変な話ですが、ただそれは問題を明らかにするためであることを御了承願いたいが、もし財政的処置以外の、たとえば国内における防衛産業の発達の度合等から言うならば、ないものは買えばいいという議論にもなってくるわけでありますが、それはそれとしても、むしろ私はMSA協定を長く続けていくということは、単に日本の兵器の不足、またそれを自分でまかなう力がないということの問題以外に、MSA協定を結ぶときに明らかになったように、これはやっぱりアメリカ防衛態勢の一環をなしていくという考え方を密着しておるのです。でありますから自衛力を増強することの云々ということは別としても、どうも今の国際情勢の中からいって、アイデアの上で西欧陣営の側に立つということに、私はあえてそういう意味政府立場まで反対はいたしませんが、MSA協定を長く続けて、いわゆる防衛態勢としても特定の陣営に所属するという考え方は私は適当でないと思う。そういう意味からいっても、やはりすみやかにMSAというような協定から脱却できることが私は望ましいと思うのです。この点いかがですか。
  63. 船田中

    国務大臣(船田中君) 理想としては自衛中立と言いますか、日本経済上においても自立を達成し、防衛関係においても全く自立し得るということになり得れば、これは私は非常に理想的にはいいのじゃないかと思いますけれども、しかし現状及び近い将来のいろいろな想定をいたしてみました場合において、なかなかそういう自衛中立というような立場をとるということは困難ではないかと存じます。しかし、さればと言って、MSA援助を永久に受けていくということは決して望ましいことではございませんので、従いまして、わが国の防衛産業も漸次これを育成強化して参りまして、そうして経済の上においても自立し得ると同時に、防衛の上においても自立のできまするようにいたしていくことが、防衛責任者としては必要なことであるというように考えておるわけでございます。しかしMSA援助があるからと言って、日本がいつまでもアメリカ従属国であり、あるいはまたアメリカ防衛の一環として日本の自衛隊が育成されていくということでは私はないと思います。わが国の国力、国情に相応する最小限度の自衛態勢を整備する。そうしてそれにつきましては、どこまでも日本は自主性を持っておることでございます。ただ日本の独力で日本の国土の防衛ということは現状においてはできませんので、日米安保条約によりまして、日米が共同して防衛の責任を持ってもらう。また日本防衛力の増強のために、アメリカMSA援助を受ける、こういうことでありまして、これが永久に続くものとは考えておりません。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 これもけさ午前中に外務大臣にお伺いしたことでありますが、MSA援助をかりに断わった場合日本自前で年間の兵器をまかない得るかどうかということになると、さきの予算委員会では防衛庁長官は、明年度分のMSA援助兵器を日本円に換算した場合、これは何百億であるという数字を出されたわけであります。今後五年間についての見通しはついに御発表はなかったわけでありますが、この兵器は日進月歩でありますので、たとえば今後何年間、昭和三十五年度までに一応の防衛計画を達成して、それに必要な兵器の援助を受けた、そうすると、その翌年からは兵器を何ら補充しなくともいいかというと、全部、全部と言わなくとも、やはり補充をしていかねばならぬ。もし援助を受けなければ、自前でやっていかねばならぬということになってきますと、この予算全体の中における防衛費のウエート、それから日本国民所得と軍事費との関係、これを諸外国の例に比較した場合、多いとか少いとかいうような議論がいろいろありますが、そういうことは一応別にして、現在の日本の一兆円予算の中で、現在占めておる防衛予算がさらにアメリカ援助を打ち切った場合、自前でこの自衛隊の兵器をまかなう場合に、果して日本予算がそれに耐え得るかどうかということになってくると、私は非常に限界があって、政府考えておるような自衛態勢ということは、非常な予算上、国民生活上無理を生ずると思うのですが、いかがでありますか。
  65. 船田中

    国務大臣(船田中君) 昭和三十二年度以降においてMSA援助が全く得られないということになりますれば、今羽生委員も御指摘になりましたように、わが国の財政経費の上においては、ことに現状のこの自衛体制を整備し、かつこれを強化していくという上においては、財政上非常な大きな負担が生じてくるであろうということは、これは事実そういうことになると考えられます。
  66. 小滝彬

    小滝彬君 さっきこの原子力に関する特許権や、技術上の知識には適用されないという点が指摘されておったのですが、条約局長にお伺いしますけれども、これは日本との間の特別なものですか。同種の協定アメリカが結んでいるほかの国の協定にも全部これが入っておりますか。
  67. 下田武三

    政府委員下田武三君) 同種協定にもこれと同じようなことが入っております。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 これは私の勉強不足かもしれませんが、あえてこれはお尋ねをしておきますが、この議定書の3の(a)からあとずっと見ますと、アメリカ合衆国の特許が日本側に提供される場合のみを規定しておるわけですね。全部一方的になっておるが、これは現実にアメリカ技術日本のそれより高度であって、実際においてはまた日本技術の提供、援助を受けなければならぬという立場に即応してこういう書き方になっておるのか、その辺はどうなんですか、これ。
  69. 下田武三

    政府委員下田武三君) 議定書の規定はすべて本協定の第三条の規定を受けておるものでございますが、本協定の第三条で「提供国で秘密に保持されている特許出願の対象たる発明」と書いてございますが、このやる方の国で特許出願を秘密に保持しておくという制度は、実はわが国にはございませんで、アメリカだけにしかない制度でございます。そのために第三条の規定を受けます議定書の中でも、もとの国の方で秘密に保持しておる国、すなわちアメリカの方から日本に来る場合ということだけを規定しておるわけでございます。協定第三条に原因があるわけでありまして、それを受けて議定書でこういう一方的な規定になっておるわけでございます。
  70. 羽生三七

    羽生三七君 この協定を取り結ぶことによって、さきに第何国会でしたか、できた秘密保護法、あれを改正するとか、あるいは新たに国内立法を必要とするとかいうことは絶対に起りませんか。
  71. 船田中

    国務大臣(船田中君) そのことについては、この協定を結ぶことによりまして、さきの防衛秘密保護法を改正するとか、あるいは拡張するとかというようなことは考えておりません。
  72. 羽生三七

    羽生三七君 考えておらないということはわかるのですが、そういうことに発展はしていきませんか。どうも私は、このアメリカの原子兵器の発展、これは第八条で原子兵器のことは落してありますが、から言い、それに照応する日本特許権技術の問題と関連して、どうも現行の規定だけじゃ不十分だというようなことに、問題が発展してくるのじゃないかという心配を、どうもしなければならぬような気がするのですが、しないつもりでしょうが、ほんとうにそういう見通しは全然ありませんか、どうですか。
  73. 船田中

    国務大臣(船田中君) この協定を結ぶことによって今御心配のようなことは起ってこないと信じます。
  74. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと関連して特許局長官に聞きたいのですが、今の問題で、日本の特許法関係等で、何らか特別な工夫といいますか、立法をするような必要は起ってこないのですか。
  75. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) 現在日本の特許法第三十三条の規定といたしまして、「特許ニ関シ条約又ハ之ニ準スヘキモノニ別段ノ規定ノアルトキハ其ノ規定ニ従フ」。そういう場合には、条約ないしはこれに準ずるものは優先するという規定が特許法上ございますから、従って今度の協定議定書というものが、第三十三条に申します「条約又ハ之ニ準スヘキモノ」というものに該当いたしますから、特許法中の規定の改正の必要はないと、かように考えております。
  76. 小滝彬

    小滝彬君 それに関連して。そうするとこの第三条及びこれに関連する議定書に書いてあることが、直ちに実質上国内法的な効果があるので、特にこの手続きは何も経なくてもいいのですか。
  77. 井上尚一

    政府委員(井上尚一君) その必要はまずないものと考えております。これは特許法では、言うまでもなく従来の普通の審査の手続きといたしましては、出願に対しましてこれを拒絶する理由がないと認められました場合には、出願公告をする。公告によりまして公衆審査になる形でございます。公告しましてこれを公表することによって、異議がなければこれは特許権として確定する。それが普通の順序であります。今度の場合はアメリカでその特許の出願がいわゆる秘密の扱いであるという場合に、日本では本来の特許法上の成規の手続きとしてそれを公告することになりますから、これの例外として、今般の協定及び議定書にありますので、第三十三条によって公告しないという例外の方法を設けようと  いうわけであります。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 けさほどもお尋ねしたのですが、重ねてお伺いいたしますが、それはこの協定を結ぶことによって、直接に日本防衛産業に何か現実的に関連を今すぐ起すとすれば、ジェット機ぐらいなものですか、もう少し具体的でないとどうも何かはっきりしないのですが、どうです。
  79. 船田中

    国務大臣(船田中君) 今御質問のありました具体的なことにつきましては、今後日米間の話し合いによっていくことでございますから、今具体的にどれだけを、この協定を結ぶことによって導入するかということを、まだ明示し得る段階に至っておりません。今御指摘にもありましたような、ジェット機の部品の国産ということにつきましては、これは相当技術の導入ということの必要はあると存じます。そのほかに水中の聴音機、ソーナー関係、あるいは誘導弾の研究ということも進んで参りますると、相当アメリカ政府の持っている特許権なり、あるいは民間の持っておりますものを導入する必要があるように考えられる次第でございます。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 けさほどお尋ねした点に、いずれか一方の政府の要請があったとき、両国政府間で適当な取りきめを作成することになると、これに関連して私がお尋ねした際に、下田条約局長は、この場合はいずれかの一方の政府というのは、日本がむしろイニシアチブをとったのだ、MSA協定四条からそういう方向へ発展したのだということでありましたが、しかし今のように、これから何か検討して具体的な問題を考えていかなければならんというこのときに、日本は、昭和二十四年MSA協定が結ばれて以来今日まで、この問題に取組んできたと言われましたが、非常に非現実的であると思うのですが、どうですか、これは。
  81. 下田武三

    政府委員下田武三君) けさほども申し上げましたように、日本側MSA協定締結交渉のときから、完成品をもらうのもけっこうだけれども、日本にも工業力があるのだから、なるべく技術上の知識、ブルー・プリントを提供してもらって、日本自体で作りたいということを非常に強く言っておりましたので、それはけっこうだが、それにはまず技術上の知識を提供した場合には、その所有者の利益が保護される態勢をとってもらいたいという向う側の態度でありましたので、それでは一つMSA協定に予見される協定締結交渉をいたしましょうと言って、交渉に入ったのでありまして、やはり日本側利益を受ける立場にありますので、アメリカ側から押しきせてきたのではございませんので、日本側から要請したという経緯になっております。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 それじゃもう一点、大臣にお伺いしておきますが、かりに誘導弾あたりを日本防衛生産として製作に着手する、というような場合は、一つ私は明らかにしていただきたいと思うのですけれども、知らぬうちに問題が発展しているという、のっぴきならぬところへいってしまうことのないように、一つしていただきたいと思うのですが、まあ私の質問は、きょうは防衛庁長官に対する質問はこれだけにしておきます。
  83. 船田中

    国務大臣(船田中君) ただいまの羽生委員の御質問のうちにありましたようなことは、今日日本としては、ことにこの自衛隊に関係する限りにおきましては、特に秘密のうちに何かやっておるというようなことは、まあほとんどないと私は申し上げて差しつかえないと思います。おそらく御懸念になられる点は、原水爆を弾頭につけるというような誘導兵器の生産でもやりはしないか、というような御趣旨の御懸念かと思いますが、この原水爆につきましては、全然わが方としてはこれを持つという考え方を持っておりませんので、従ってこの原子力の平和利用という関係は別でございますが、その他において自衛態勢整備のために原水爆の研究をし、あるいはその生産をやるというようなことは全然考えておりません。またこの誘導弾につきましても、先ほど申し上げたように、地対地、ことにこのインターコンチネンタルの、非常に大型で敵地を攻撃するといったような、そういう誘導弾を取り上げたいというのではございません。ただ主として地対空というような誘導弾でございますから、これも防衛目的の範囲内に属する誘導弾の研究、しかもこれもそう直ちに試作ができるというような段階にまではなかなか進まんと思います。従来書面上の調査研究はいたしておりましたが、こういうようなものは現物について実地に研究を加える必要がございますので、昭和三十一年度の予算においては、これまた御承知の通り、スイスのエリコン社から誘導弾一そろえを購入して、そして研究を始めるという方針になっておるわけでございます。
  84. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 他に御発言ございませんか。
  85. 小滝彬

    小滝彬君 防衛庁長官はもうお帰りいただいていいのですが、大体きょうくらいで済ますのじゃないですか。
  86. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  87. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記を始めて下さい。それでは本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十一分散会