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1956-04-10 第24回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年四月十日(火曜日)    午前十時五十三分開会     —————————————   委員異動 三月二十九日委員鶴見祐輔辞任につ き、その補欠として堀木鎌三君を議長 において指名した。 三月三十日委員堀木鎌三君辞任につ き、その補欠として鶴見祐輔君を議長 において指名した。 本日委員鹿島守之助君及び小滝彬君辞 任君につきその補欠として最上英子君 及び新谷寅三郎君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    理事            鶴見 祐輔君            宮澤 喜一君            羽生 三七君    委員            大谷 瑩潤君            黒川 武雄君            新谷寅三郎君            野村吉三郎君            最上 英子君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            梶原 茂嘉君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君   政府委員    外務政務次官  森下 國雄君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    労働大臣官房国    際労働課長   村松 伍郎君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選日本国における英連邦戦死者墓地に  関する協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○防衛目的のためにする特許権及び技  術上の知識交流を容易にするため  の日本国政府アメリカ合衆国政府  との間の協定及び議定書締結につ  いて承認を求めるの件(内閣送付、  予備審査) ○日本国カナダとの間の小包郵便約  定の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○オランダ国民のある種の私的請求権  に関する問題の解決に関する日本国  政府オランダ王国政府との間の議  定書締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○すべての種類鉱山坑内作業にお  ける女子使用に関する条約(第四  十五号)の批准について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○有料職業紹介所に関する条約(千九  百四十九年の改正条約)(第九十六  号)の批准について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査の件(北洋  漁業問題に関する件)     —————————————
  2. 羽生三七

    理事羽生三七君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。先月二十九日に鶴見委員辞任せられ、堀木鎌三君が委員となりましたが、翌三十日堀木委員辞任され鶴見君が委員に戻られました。なお、本日鹿島守之助君が辞任され、補欠として最上英子君が、小滝彬君が辞任され、補欠として新谷寅三郎君が、それぞれ本委員となられました。     —————————————
  3. 羽生三七

    理事羽生三七君) 続いて理事補欠互選の件をお諮りいたします。ただいま御報告いだしました通り鶴見理事が一時委員辞任せられたため、本委員会理事が一名欠員になっておりますが、鶴見君が再び委員に戻られましたので、この際成規手続を省略して、鶴見君を理事に指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 羽生三七

    理事羽生三七君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたします。   〔理事羽生三七君退席、理事鶴見祐輔君着席〕     —————————————
  5. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) それでは次に、日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定締結について承認を求めるの件、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件、日本国カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  以上三件につきまして政府より提案理由を御説明願います。
  6. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) ただいま議題となりました、日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、サンフランシスコ平和条約署名の際に行なつた宣言におきまして、日本国の領域内にある連合国戦死者の墓、墓地及び記念碑に関して、必要とされる協定締結するために交渉を開始する旨を明らかにしておりますところ、昭和二十七年四月英連邦諸国を代表するオーストラリア政府より当該協定締結のための交渉を開始したい旨を申し入れて参りました。自来、オーストラリア政府との間に交渉を続けて参りました結果、案文について協定当事国の合意が成立しましたので、昨年九月二十一日、東京においてこの日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定署名されました。  この協定は、大体において、英連邦がイタリア、ベルギー、オランダデンマーク等締結しております墓地協定と同様のものでありまして、横浜市保土カ谷区にある第二次大戦中に戦病死した英連邦軍人墓地を、三十年間無償で使用させることを認め、それに伴う墓地維持管理等に関する事項を取りきめようとするものであります。  政府といたしましては、前記の平和条約宣言の趣旨にもかんがみ、かつまた、英連邦諸国南西太平洋地域及び東南アジア地域における旧日本軍人の墓の維持及び遺骨の収集等につきまして、好意ある態度を示していること等を考慮いたしまして、この協定に調印いたしました次第であります。  よって、ここにこの協定の御承認を求める次第であります。なにとぞ慎重御審議の上すみやかに御承認あらんことを御願いいたす次第であります。  次にただいま議題となりました日本国カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  日本国カナダとの間の小包郵便物交換業務に関しましては、戦前は、大正二年の約定によつて規制されて参りましたが、戦後も、カナダ政府は、サンフランシスコ平和条約第七条の規定に基いて、との約定の復活を通告して参りましたので、現在この戦前約定両国間に適用されております。しかしながら、この戦前約定は、大正二年以来一度の修正も行われていないため現状に適するよう改訂の必要がありましたので、政府といたしましては、新約定締結の希望をカナダ側に申し入れますとともに、オタワ専門官を派遣いたしまして先方予備交渉を行わしめましたところ、その内容についてほぼ両者の意見一致をみましたので、その結果に基きこの約定が作成され、わが国は、本年二月十六日に東京署名し、カナダ側も三月二十日にオタワ署名いたしました。  この約定は、小包交換に関する条件小包運送料金に関する事項、誤送小包転送小包等に関する事項航空小包に関する事項価格表記小包に関する事項等について現在の状況に適した規定内容としております。従いまして、この約定締結することにより日加両国間の郵便小包交換業務は改善せられ一層円滑に行われることとなる次第であります。  よって、慎重御審議の上、なるべくすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。  第三に、ただいま議題となりました、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  日米両国政府は、昭和二十九年三月八日に東京署名された相互防衛援助協定第四条におきまして、「両政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、防衛のための工業所有権及び技術上の知識交換の方法及び条件規定する適当な取極であって、その交換を促進するとともに、私人利益を保護し及び秘密保持をはかるものを作成するものとする」旨を合意しておりますが、両政府は、この規定に基く取極を作成するため、一昨年十月以来交渉を進めてまいりましたところ、幸い意見一致をみましたので、さる三月二十二日東京において重光外務大臣アリソン米国大使との間で本件協定及び議定書署名を行なった次第であります。  この協定及び議定書は、相互防衛援助協定第四条の規定に明らかな通り日米両国政府及びその国民の間における特許権及び技術上の知識防衛目的のための交流を容易にし、促進するとともに、その間にあって、関係私人利益の保護及び秘密保持を確保することを目的としております。従ってこの協定締結によりまして、日米両国間に防衛上の近代的技術交流の体制が整備されるわけでありまして、わが国にとりましては、米国防衛用装備資材の製法、用法等の導入、及びその結果として、わが防衛力の強化と防衛産業の育成を期待することができる次第であります。  よって、ここにこの協定及び議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  7. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) ただいま御説明を願いました三件に関する質疑は次回に譲りたいと思います。速記をとめて下さい。   〔速記中止
  8. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 速記を始めて下さい。次に、オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府オランダ国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件について質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 本件サンフランシスコ講和条約の第十四条に関係のある問題とみえますが、この案件内容は普通の一般賠償ともやや異なって一種の道徳的慰謝料と同じような性質のものと考えるわけですが、こういうケースがほかにもあるのかどうか。また今度この協定が取りきめられることになると、他の諸国との間に何らか同一の要求が起るようなことはないのかどうか、まずこの点を伺いたい。
  10. 下田武三

    政府委員下田武三君) 戦時中旧蘭印で抑留いたしましたオランダ人と同様の目に合いました連合国人は実は各地にあるわけでございます。香港におりましたイギリス人を抑留いたしましたり、あるいはマレー方面におきまして、シンガポールにおきまして、それぞれシビリアンを抑留したこともあるわけでございます。ただその中でオランダケースは何分十一万人という婦女子を含むシビリアンでありまして、それから補給等の困難によりまして非常に食糧の配給また衛生資材配給等におきまして困難な状況にありましたために、多数の死亡者廃疾者等を出しました点におきまして、一番大きなケースオランダケースでございます。そこで同様な事情は他にもあるわけでございますが、サンフランシスコ平和条約の場合に、特に日本側に対しましてその補償問題を提起いたしました国はオランダだけでございます。その他の国はただいま御指摘の第十四条(b)の規定によりまして、そういう面においてはございますが、これに対する請求権放棄いたしております。オランダだけはどうしてもこの問題の解決をみないと、オランダ政府平和条約署名するわけにはいかぬということを、オランダ全権スティッカー外務大臣吉田全権に強く申し出まして、日本側といたしましてはこれはうっかり言質を与えますと、またほかの国の同様の要求を誘発するようになってはいかぬという見地から、法律的には義務を負わないで、しかも何らかの満足オランダ側に与えるという見地から、将来自発的にすることがあるということにいたしまして、それによって、とにかくオランダ条約署名を取りつけたわけであります。そこで当時も言いました通り日本側法律的の義務はないのですが、見舞金として一千万ドルやるということで解決をみた次第でございます。  なお今後この議定書締結しましてオランダに支払います結果、他の国から同様は要求が出るというようなことは万ないと思っております。もしかりにありましたといたしましても桑港条約の当時のいきさつから見まして、何らこういう申し入れをしなかったのでございますから、わが国といたしましては平和条約原則通りに対処するということで拒否いたして参りたいと存じます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 今の御答弁中に、同様な要求が他国から起ることは万なかろう。それから万一の場合というような形でお答えがありましたが、万一にも起る可能性があるのかどうか。第十四条の請求権を各国がみね放棄したとするならば、万一にも起らない、この種のケース請求権は起らない、こういうふうに了解した方がいいんじゃないかと思うのですが、その点はいかがでありますか。
  12. 下田武三

    政府委員下田武三君) 法律的にはまさしく仰せ通りだと思います。ただその法律規定に不服で請求見地から申し出るということは、仮定としては考えてもいいのでございますが、実際問題といたしましては、政府当局といたしましてもないと考えております。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 本件については、吉田総理大臣オランダ側代表との間の交換公文が基礎になっておるのですが、きょうまでこの問題がずっと延びていたのはどういう事情でありますか。
  14. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはオランダとの間の交渉が非常に長引いたわけでございます。そこでオランダ政府は昨秋イッテルサム公使を長といたします交渉代表を特に本国から東京に派遣しまして交渉いたしました結果、当初イッテルサム公使は一千七百五十万ドルという数字を持ち出したのでございますが、接衝の結果一千万ドルまで譲歩させまして手を打ったわけであります。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 この一千万ドル五カ年払いということになるわけですが、この一年分はこの条約締結承認されれば本年から支払うことになるわけですか。それからその場合は例のあの賠償関係の百億ですか、あの中から支払えるように予算的になっているのか。その辺はいかがですか。
  16. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通り国会の御承認を得まして発効いたしますと、この議定書が発効いたしましたときの属しておる会計年度に第一回は払うということになりますので、ちょうど四月から始まります本会計年度に払わなければならないわけでございまして、その第一回の二百万ドル相当ポンドを支出する予算措置はもうすでにとってあるわけでございます。
  17. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この一千万ドル相当ポンドオランダ政府に与えますときに、オランダ政府の、見舞金を受ける人員は大体どのくらいというふうになっておるのでございましょうか。
  18. 下田武三

    政府委員下田武三君) 被抑留者が十一万人おりましたうち一万八千人が死亡いたしております。でございまするから九万二千人という者が生き残っておるわけであります。そこでオランダ側がどういうようにそれを分けますかは向う側の自由にまかしておるわけでございまするが、その九万二千人のうち一万人は永久に回復できない廃疾者になっております。こういう者はまあ手厚い補償を受けるのだろうと存じます。また九万二千人のうち一万一千人は夫が死んだための未亡人であるか、あるいは両親が死んだためのみなしごとなっております。こういう人もあるいは厚い補償を受けることになると思っております。大体九万二千人としますと一人当り三十二ポンドという見当で話をまとめた次第でございます。現実にはそれが金額の差は生ずると存じます。
  19. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 この種の私的請求権に対する見舞を支払うというふうな事柄は、国際法慣例としてはこれまでそういう例があるのでしょうか。どうでしょうか。
  20. 下田武三

    政府委員下田武三君) この慣例といたしましては当然法律上から見ますと、損害賠償を払ってしかるべるき場合に、外交上の観点から賠償金と言わずして見舞金という言葉を使って、実質上の満足を与えるという場合が多々ございます。一昨年の福龍丸ビキニ補償、これも日本側は当然損害賠償であるべきものであると主張いたしまたのでありまするが、先方はやはり見舞金ということで補償したわけであります。補償という字は使ってありますが、それは損害賠償についての補償ではなくて、見舞金としての補償であります。それから阿波丸事件犠牲者に対する補償、これも実は損害賠償という字を使わずして解決されたのでありますが、今回の場合はこれは法律的にの私は損害賠償とは言えないと思うのでありまして、損害といたしましても対人的の、物を失ったというようねことではなくて、むしろ人が死んだとかあるいは廃疾者になったとかみなしごになったとかいう精神的の、金の数字で表わせない苦痛に対する同情の意、遺憾の意を表するということでございますので、これは見舞金という名目でありまするが、名目だけでなくて実質上の私は見舞金であると思います。それから法律関係から見ましても、とにかく桑港平和条約の第十四条で法律的には請求権放棄しておるわけでございますから、その関係から申しましても損害賠償ではないという考えでございます。またオランダ側損害賠償でないということはよく納得いたしております。
  21. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 賠償性質では法律的ではないように考えます。フィリピン賠償に関連して、フィリピンの人々の受けたこれに類するような損害ですかについて、現金をもっての一つ補償をこれまで要求されておったのであります。わが方としては現金をもってする賠償は、平和条約規定からできないという立場で今日まできたように思うのであります。こういう補償関係せずに見舞というようなことで若干の措置ができるとすれで、あの問題等についてフィリピンとの交渉の上にも一つの道が開かれるように思うのであります。そういうことはこれまで論議されなかったのでしうよか、どうでしょうか。そういう点。
  22. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本側はそのフィリピンが主張いたしました現金による賠償の、これは桑港条約規定から申しまして、現金賠償というものはないのでありまするから、払わないという態度で当初からがんばっておったわけでございます。そこでそれに従いまして、見舞金ということも避けまして、全部まあ賠償一本でしかも役務と生産物による賠償ということ一本でいこうということを言っておったわけでございます。しかしちょうどフィリピンでも死亡したり、みなしごになったりした悲惨な目にあった者がおりますために、それにはどうしても現金を多少、どんなに少くてもいいからキャッシュのディストリビューションをしないと、内政上どうしても困るということを申しますので、そこで日本としては現金をちっとも出さずに、しかもフィリピン側に入ると、要するにフィリピンで分けるのでございますから、ペソ貨フィリピン政府のふところに入ればいいわけでございますので、日本現金負担はなしに、しかもフィリピン側にはペソ貨が入ってくるような仕組みを考えまして、そこで生産物に対する日本加工賃をまけてやる。そのかわりフィリピンではその加工賃をまけないものと仮定した値段で物を売りまして、そうしてその差額をフィリピン政府に受取らせまして、それを分配するという仕組みが今考えられておりまして、これも賠償協定中の一部分としてただいま交渉しておるような次第でございます。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 今の梶原さんの御質問と関連することなんですが、この賠償と違うということですけれども、本件内容でいくというと、純粋モラルを中心としたもので、たとえば財産とか、それから現在ではオランダが当時の支配国を独立せしたのですから、全く領土的な意味損害とか、それから先ほど申し上げた財産的な意味損害とかいうものとは切り離された純粋の、人的の純粋モラルに基くものだけということになってくると、たとえばイギリスにおけるシンガポールフランスにおける旧インドシナ関係というようなことになってくるわけでありますが、イギリス放棄をし、フランスにおいてはあれはカンボジアですか、これも政府請求権放棄した。そういう意味においては純粋に他にそういうケースは全然ないし、かりにあったとしてもこの案としては全く従来の賠償なんかとは関係のないほんとうの道議的なものだということでいいのでありますか。
  24. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本側戦時中抑留しました人間のうち、捕虜はやはり苦痛を味わったわけでございますが、これは御承知のように平和条約の十六条で中立国及び独伊枢軸国にある日本財産を取り上げてそれを分けるということで解決をいたしたのでありますが、軍人でない一般人の苦痛に対しましては、十四条の(b)項でこれは戦争であればお互いにシビリアンも巻き添えになっていろいろなハードシップをなめるということはしようがないという見地から、日本側日本国民苦痛に対する何らの請求権も持ち出さない、連合国もそのかわり同様の請求権を持ち出さないということで解決をいたしたわけでございます。  そこで先ほど申し上げましたように、オランダは何分多数の者にあまりにひどい目にあったという見地から、東京会議の際に持ち出しまして、そうして初めは条約に第十四条の規定留保して、と明記して、十四条の放棄オランダだけは放棄しないという意味留保をいたして、それにしょうかということも考えておったようであります。そうしますと、調印式の際にオランダがそんな留保をつけますと、ほかの国もそれではついでにということで留保をたくさんつけられた日には大へんなことになりますので、何とかしてそれをやめさせるという見地からも、吉田ステイッカー会談というものが行われまして、そこで法律的には日本義務を生じないで、しかも道義的責任だけは負いましたけれども、そういうことでオランダの問題は解決いたしたという次第でございます。
  25. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) それではほかに御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べ願います。……別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府オランダ王国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  28. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 全会一致でございます。よって本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお本院規則百四条による本会議における口頭報告内容、第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 御異議ないと認め、さように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから、本件承認せられた方は順次御署名を願います。   多数意見者署名    大谷 瑩潤  野村吉三郎    最上 英子  新谷寅三郎    梶原 茂嘉  宮澤 喜一    佐藤 尚武  加藤シヅエ    羽生 三七     —————————————
  30. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 次にすべての種類鉱山坑内作業における女子使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件、有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件、以上二件を一括して議題といたします。  本件について御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  31. 羽生三七

    羽生三七君 この鉱山関係条約の方ですが、これは国内法で、労働基準法の第六十四条ですか、これでこの鉱山関係条約に内包されているような問題は、一応国内的に規定されていると思いますが、実施上本条約を取り結ぶに至った関係を簡単に御説明願って、それから御質問したいと思います。
  32. 村松伍郎

    説明員(村松伍郎君) 女子の坑内労働は保健上も風紀上もよろしくないとしまして、多くの諸国において立法によって禁止されておったのであります。ILOにおきましては、一九三五年の十九回総会におきまして本条約を採択したのであります。現在本条約批准国は三十八カ国、わが国といたしましてはこの条約が採択されました当時におきましては、国内法におきまして除外例としまして、行政官庁の認可を受ければ一部の坑内労働を認めておりましたもので、採択の当時におきましては批准できませんでした。その後一九五一年にILOに再加入を認められまして、五十二年から事実的にILOの会議に参加したのでありますが、今回女子の労働関係としましては最も基本的な条約であるという建前から、本条約批准承認をお願いした次第であります。
  33. 羽生三七

    羽生三七君 この本条約が実施上効力を持つようになった場合に、国内法規定されておる内容とほぼ同一のものである場合問題はないと思いますが、特にこの条約に抵触するような違反事項というものは現に国内的にあるのかないのか、その辺。
  34. 村松伍郎

    説明員(村松伍郎君) 昭和二十九年の数字でありまするが、労働基準法の六十四条の違反件数は三十三件でございます。三十年も全く同じ三十三件でございます。
  35. 羽生三七

    羽生三七君 それは内容的にはどういうようなものでありますか。
  36. 村松伍郎

    説明員(村松伍郎君) 内容的には主として労働基準監督官が鉱山の中に入りまして調査しまして、発見したものでありまして、大部分が女子が男子に擬装したと申しますか、そうして入って働いておった場合が大部分でございます。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 それは雇用主側が低賃金で女子を雇う目的でそういうことをさせるのか。あるいは生活上女子の方が頼んでそういうことが行われるのか。その辺はどうですか。
  38. 村松伍郎

    説明員(村松伍郎君) 大部分は女子の方が生活上の問題からそのことをむしろ欲した場合が多いようであります。なおその他のケースとしましては、だんなさまの所に弁当を届ける。こういうふうな格好で行きまして、そのままそこで働いておったというケースもございます。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 今のは昭和二十九年、三十年の件数ですが、また現在はこれは増加しそうな傾向なのか減る傾向なのか。条約を結んだ場合に、それに即応してもしそういうことがあれば、国際法上こういうことをきめるのですから、もっと取締りを厳重にすることになるのか。その辺どうでありますか。
  40. 村松伍郎

    説明員(村松伍郎君) 御趣旨の通りこの条約批准しまするならば、一そう国内法の励行も強化いたしまして、できるだけそういう違反をなくするように努力するつもりであります。
  41. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この説明書の中に規定してございます第二「条約内容」という中の(c)のところに「特定の種類女子は、国内法令の定めるところにより第二条の禁止から除外することができる」というこの「特定の種類女子」というのはどういうことなんでございますか。
  42. 村松伍郎

    説明員(村松伍郎君) これは条約の第三条に規定してございまして、第一は「管理の地位にあって筋肉労働をしない女子」、第二は「保健及び福祉の業務に使用される女子」、第三は「実習の過程において坑内で訓練を受けている女子」、第四は「その他筋肉労働の性格を有しない職業のため随時坑内に入る必要がある女子」でありまして、これはこの条約による坑内労働禁止の除外例になりまして、こういうふうなものについては坑内労働を認められております。しかしわが国労働基準法におきましてはこのような除外例も認めておりませんので、わが国におきましてはこういう女子の坑内労働も認められておりません。
  43. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) ほかに御発言もないようですから、質疑はこれで尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 先ほど質問の際に申したように、本件については国内法上立派な法律を持っておるわけですが、今度こういうこれの内容と同じような国際取りきめができる場合においては、わが国の国際的な信用関係からも、十分にその目的を果せるような、国内的運営が行われることを希望して本件賛成いたします。
  46. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) ほかに御意見もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。すべての種類鉱山坑内作業における女子使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件、有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件、以上二件を問題にいたします。右二件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成若手挙〕
  48. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 全会一致でございます。よって右二件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお本院規則第百四条による本会議における口頭報告書の内容、第七十二条による議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 御異議ないと認めてさように決定いたしました。  それから報告書には多数意見者署名を付することになっておりますから二件を承認された方は順次御署名を願います。   多数意見者署名    大谷 瑩潤  野村吉三郎    最上 英子  新谷寅三郎    梶原 茂嘉  宮澤 喜一    佐藤 尚武  加藤シヅエ    羽生 三七     —————————————
  50. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) ただいま外務大臣が見えましたから、これより国際情勢等に関する調査を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 日ソ交渉についてお伺いしたいのですが、なかんずく漁業問題でありますが、承わると、今朝ロンドンの西大使から公電があって、この問題についてソ連側も話し合っていいような意味のことを言ってこられたと思いますが、この場合、それは純粋に漁業問題だけで、引揚問題等は含んでおらないのかどうか。あるいはまた、この話し合いをする場合には民間の代表を意味するのか、政府間の話し合いなのか、まずこのごとを最初お伺いしまして、それからあと御質問に入りたいと思います。
  52. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) これは政府から政府に申し入れたのでありますから、この問題についてはむろん政府間の交渉であるわけであります。漁業問題に関係する政府間の交渉でございます。それは御承知の通りのようないろいろ日ソ間にこんがらがった問題が起ってきておるものですから、これを解決することが当面の必要に迫られたということもむろんでございます。そこで漁業問題を双方の間で解決すべく交渉に入りたい、日ソの全面的な交渉は自然休会と申しますか、そういうような形になりましたので、この必要なる処理を要する漁業問題だけは話し合いを進めていこう、こういうことで先方の了解を求めて、これの了解を得たわけであります。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 それは非常にけっこうなことでありますが、特に私がお伺いいたしたい点は、今外務大臣のお話にもありましたけれども、日ソ間の本交渉が一時自然休会になっておる際に、今漁業問題についてこの種の話し合いの糸口が作られるわけですが、この場合、政府としては日ソ間の正規の国交回復と切り離してこの協定が可能であると、つまり漁業協定が可能であるというお考え、そういう理解で話し合いを始められるわけでありますか、その辺いかがでありますか。
  54. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) むろんそうであります。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 その場合に、いわゆる言われておるところの本格的な漁業協定をいうのか、本年度の出漁期を前に控えた本当の暫定的な取りきめをお考えになっておるのか、その辺はいかがでありますか。
  56. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) それは話をしてみなければわかりません。漁業問題について話を進めていきたいと、こう思います。特に問題になっておるのは漁族の保護ということが大きな問題になっておるのでありますから、その問題を中心にして話が進むだろうと、こう考えます。
  57. 羽生三七

    羽生三七君 日ソ交渉と並行して、その一環をなす本格的な漁業協定と、当面の出漁期を前に控えての暫定的な話し合いとでは、問題の性質が根本的に違うと私は思っております。しかし、それにしてもとりあえず今漁業者が非常に困難を感じてその打開に苦慮している際でありますから、話し合いの糸口ができるということはわれわれも歓迎をいたします。この場合には政府がどなたか代表者をお選びになるのか、またその場合には場所はどういう所でおやりになるのか、日本側としてはどういうふうに、お考えになっておりましょうか。
  58. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今それはいろいろ検討中であります。検討中と申しますのは、これは時期も切迫しているのでありますから、至急結論を得なければなりませんけれども、しかしそういう問題については詳細ね政府部内における検討を経なければならんことも御承知の通りでございます。それを今やっているわけでございます。私もこうやって御意見を伺いながらいろいろ考えているわけであります。
  59. 羽生三七

    羽生三七君 卒直に申し上げて、日ソ間の本格的な交渉というものが一時停頓をしてしまってこれをもう一度軌道に乗せるということが非常な困難な情勢になっておったと思うのです。幸いにして、今この漁業問題を中心に何らか話し合いの糸口が開かれるならば、これを機会にむしろ交渉を本格的な軌道に乗せて、引揚問題の早期解決、そうしてすべての案件解決をやるように進むべきではないか。その意味で、この今度のソ連側の西大使を通じての申し入れと申しますか、回答でありますか、これは非常に歓迎すべきだと思いますが、その本格的な日ソ間の交渉に関する外務大臣のお心がまえというものをこの際伺わさしていただきたいと思います。
  60. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) 今表明されたのは御意見でございます。その御意見は十分に伺っておきたいと思います。日ソ間の本交渉がどうなっているかということは過般御説明をいたした通りであります。双方の意見が重要問題において食い違って、ついに一致をみなかったという状態において、この問題は他日の機会の来るまで一つ自然休会をしようというような状態になって終っていることは御承知の通りであります。むろん情勢がこの交渉の再開を促すような場合には、またさような情勢の進展と申すか、変化と申しますか、があり次第これは再開したいという意向であるということは申し述べた通りであります。それが漁業問題の、今回のことがこの機会になるかならぬか、また今お話のようにこの機会にすべきではないかと、こういうお話はこれはまあ十分考慮をしなければならないのではないか。ここで御返答ができませんが、それは本交渉において、全体的な交渉においていろいろの事情をよく考慮に入れて日本側の立場、要求を、漁業問題の交渉があるからそれを全部軌道に乗せるということが、でき得るかどうかということを十分検討しなければならぬだろうと思います。しかしさしあたっての私の考え方を申し上げます。これはそういう全体の問題が行き詰ったから、そこで必要に迫られたこの漁業の問題を別に取り上げて交渉しようじゃないか、こういうことで向うの了解を得たわけでありますから、今後開かれるべき漁業に関する交渉は漁業の問題に限ることが話し合いのいきさつでございます。これは当然のことだと思います。それを先方の了解なくしてレールに何しようと言ったってこれはでき得る筋のものでもないし、またそういうやり方は私は好みません。漁業問題としてこれはしなければならない、そういう漁業問題などが円満に解決をみれば、私はそれが漁業全体の問題に好影響を与えるということはこれは想像にかたからぬことであります。特にわれわれの非常に念願しておる抑留者の送還の問題等にもいい影響を与えるようにしたいと、こういうことは考えておりますけれども、これも別問題として抑留者送還の問題は送還の問題として申し入れをいたしておるということは、これまた御存じの通りであります。その返答も待たなければなりません。まあそういう状態でありますから、漁業問題の交渉を向うが受け入れれば、あるいは漁業問題について話し合いをするのであると、こういうふうに御了解を願うことが順当であろうと、こう思います。
  61. 羽生三七

    羽生三七君 よくわかりましたが、いずれにしてもこれは日ソ交渉と関連する本格的な漁業協定、その種のものには通商航海条約がありましょうが、その本格的なものはなかなか私はむずかしいと思いますが、とりあえず本年の出漁を前にして暫定取りきめでもけっこうでありますから、今外務大臣からお話があったこのことが成功することが、他の案件、つまり本格的な条約を取り結ぶ上の潤滑油にもなるという意味にとれる御発言でありましたので、私はそれを期待いたします。  ただ私は最後に一言強く要望申し上げたいことは、今朝のどこかの新聞にも出ておりましたけれども、結局政府は参議院選挙を前に控えて、国民世論とかも考えてこの日ソ交渉の問題についていろいろな意見があるように伝えら出ております。それで鳩山さんがどのように日ソ交渉はやるんだ、しかもなるべく早くやるんだ、自分の考えには変りないということを言われても、まあ今外務大臣のお話のように近々に自然休会が毛との線に戻る可能性がねいと思うが、そのうちに議会は終ってしまいます、国会は終ってしまう。選挙がくればなおそんなことには触れたくない方もたくさんあるでしょう。そうすると一体、そうかといって鳩山さんがいつまでも総理大臣や総裁の地位におるかどうかも私はこれは疑問だと思う。それは外務大臣は、おれが外務大臣をやっておるから責任はおれが背負うと言われても、鳩山内閣という面から見ると、一体それは長期の自然休会が続く場合には、それは鳩山総理大臣が現職にいつまでもとどまっており、そうして自分がいつまでも総裁の地位におるということを前提にしなければ出てこない。そうすれば鳩山さんの公約というものは食い逃げになってしまう。私たちは人がいいから、鳩山内閣を信じて多分適当なところで、そうかといって私は毎々大臣に申し上げておるように、拙速でどんなことでも早くきめさえすればいいとは申しません。私はこれは前々から申し上げておる通りです。われわれも常識をもって外交を考えておりますから、非常識なことは申し上げません。しかしそれにしても、今申し上げたように鳩山さんが永久に長く総裁や総理大臣の地位におるはずもないのですから、そうすれば自然休会がいつレールに乗るかわからぬということになると、一体政党内閣としてそういうことがあっていいのかどうか。当分見込みがないなら、だめならだめとはっきりおっしやれば、またわれわれとしても考えるべき点があるのですが、いかがですか、その点は。
  62. 重光葵

    ○国務大臣(重光葵君) その点は私は日ソ交渉が始まるから今日まで、私は言を左右にしたことはねいつもりでございます。もしそれがあって、いろいろお前の言うことは矛盾がある、こういうことがあるならば、御指摘をしていただいて差しつかえございません。私は初めから一つの何をもって、それは日ソ交渉のごときは重大なこれは外交問題であります。さような問題であるから、私はむしろこういうのは実は当面以上の問題であると常に考えて、外交自体、全局の問題について私はそういうような考えをもってこれに対処しておるということはあるいはお認めになったかとも思うし、またお認めにならなくても私はそういう気持であるということを申し上げた。いわんや日ソ交渉においてをやであります。そこで選挙の今いろいろなお話がありましたが、それは政党である以上はいろいろ政党としての働きがございましょうけれども、実は私が外交を預かっておる地位から見て、私はあまりそういうことは頭に実は置いておらなかったのです。そうして今日までずっときておる。これはもう選挙のことや何ぞを超越して、そうして国家の外交は冷静に、かつまた誤りなく取り扱っていかなければならぬ。少くともその心がけだけは持つべきものであるとして今日まできておるわけであります。そこで日ソ交渉が今後自然休会がいつこれが開けるということは、これはそのときに申し上げた通りに、交渉をしておるソ連の態度であり、また相手方である日本態度とかいうことが主要な要素になる、こういうことを申し上げた。しかしソ連の態度日本態度も世界の情勢、国の内外の情勢の変化、推移によってこれはおのずから左右されるわけであるから、世界情勢の推移を見なければいかぬと思うと、こういうことを申し上げて、はなはだこれはばく然たる観察であるとして批評を受けたわけであります。しかしこれは、私は、今日といえどもそう申し上げるよりほかに方法はないし、それが外交の観察だと私は見ております。そこでいつそれじゃ開けるか、再開できるかということを今はっきり私は申し上げてお約束するわけには参りかねます。しばらく情勢の変化を見て、相手方の出方その他をも見て、もしこれが好転するとすれば、それは十分にその機会は失わんようにすることが将来の仕事の要諦じゃないか、こう考えておるわけであります。あるいはいろいろ不満なお答えと思われるかもしれませんが、私は。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点希望だけ述べておきますが、外交に政党的色彩はあまり含まない方が好ましいという外務大臣のお話はある程度同感です。だから私は今日まで実際はとかくの論議はしても、かなり長時間この成り行きを見守って来たわけです。だからむしろそういう問題が与党内部にあるのじゃないか。私たちにそれをおっしゃるよりも、与党内部に調整しがたいものがあるがゆえに非常に困難を来たしておる。特に日ソ交渉、日比賠償等もしかりです。これはまぎれもない事実だろうと思いますが、あえてお答えを求めません。とりあえず今漁業問題が幸いにして先方がそういう話し合いの糸口を作って来たのですから、これを成功的になし遂げて、そして引揚問題等解決の糸口を作り、本格的な日ソ間の国交の回復ができて、案件がすべて処理されるように勇気をもって邁進されんことを望んで私の質問を終ります。
  64. 鶴見祐輔

    理事鶴見祐輔君) 他に御質疑ございませんか。……それではほかに御質疑もないようでございますから、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会      —————・—————