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1956-03-28 第24回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年三月二十八日(水曜日)    午後一時十八分開会     ―――――――――――――   委員異動 三月二十七日委員佐多忠隆辞任につ き、その補欠として山田節男君を議長 において指名した。 本日委員山田節男辞任につき、その 補欠として佐多忠隆君を議長において 指名した。     ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     山川 良一君    理事            鶴見 祐輔君            羽生 三七君            須藤 五郎君    委員            黒川 武雄君            小滝  彬君            杉原 荒太君            野村吉三郎君            曾祢  益君            石黒 忠篤君            梶原 茂嘉君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 重光  葵君   政府委員    外務政務次官  森下 國雄君    外務参事官   法眼 晋作君    外務事務官    (公使)    木村四郎七君    外務省欧米局長 千葉  皓君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省国際協力    局長      河崎 一郎君    外務省移住局長 矢口 麓藏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○オランダ国民のある種の私的請求権  に関する問題の解決に関する日本国  政府オランダ王国政府との間の議  定書締結について承認を求めるの  件(内閣送付予備審査) ○すべての種類鉱山坑内作業にお  ける女子使用に関する条約(第四  十五号)の批准について承認を求め  るの件(内閣送付予備審査) ○有料職業紹介所に関する条約(千九  百四十九年の改正条約)(第九十六  号)の批准について承認を求めるの  件(内閣送付予備審査) ○国際情勢等に関する調査の件(日ソ  交渉に関する件)(北洋漁業問題に  関する件)(原水爆実験に関する  件) ○日本国とカンボディアとの間の友好  条約批准について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 山川良一

    委員長山川良一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。昨二十七日佐多委員辞任せられ、その補欠として山田節男君が委員になられましたが、本日再び山田君が辞任せられ、佐多君が委員にもどられました。     ―――――――――――――
  3. 山川良一

    委員長山川良一君) 次に、オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府オランダ王国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件(予備審査)  すべての種類鉱山坑内作業における女子使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件(予備審査)  有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件(予備審査)  以上各件を議題といたします。まず、各件の提案理由の説明を願います。
  4. 森下國雄

    政府委員森下國雄君) ただいま議題となりました「オランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府オランダ王国政府との間の議定書締結について承認を求めるの件」について、提案理由を御説明いたします。  第二次世界大戦中、旧蘭印地域に在住し日本軍によって抑留されたオランダ国民は、食糧不足、悪居住条件、衛生及び文化施設欠如等によって多大の苦痛をこうむり、その結果として多数の死亡者及び廃疾者を出したのでありますが、昭和二十六年九月のサンフランシスコ平和会議に際し、オランダ政府は、この問題を提起し、その結果わが国吉田全権委員オランダスティッケル全権委員との間で書簡の交換を行い、右の被抑留者が受けた苦痛に対してわが方が好意ある自発的措置をとることあるべき旨を確認した後に、オランダ政府平和条約調印が行われた経緯があります。  政府といたしましては、両国伝統的友好関係にかんがみ、また、今後の日蘭協力関係を一層強固にするため、このような苦痛を受けたオランダ国民に対する見舞金の支払いによって本件問題を円満に解決することとし、昭和二十八年十一月以来オランダ政府との間で具体的な交渉を行なってきたのであります。しかるところ、本年一月に至って、千万ドル相当ポンド見舞金を五年間に分割して支払うとの条件をもって本件問題を解決することに両国政府当局意見が一致いたしましたので、さらに右解決条件規定すべき議定書の案文について先方と折衝を行いました結果、今般妥結を見るに至りました。よってさる三月十三日東京において私とロイヒリン、オランダ大使との間でこの議定書の署名を了した次第であります。  この議定書締結によって戦後の日蘭間における最大の懸案が解決されるわけでありまして、今後両国親善協力関係強化に資すること大なるものがあると確信いたします。  よって、ここにこの議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次にただいま議題となりました「すべての種類鉱山坑内作業における女子使用に関する条約(第四十五号)」及び「有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号」について提案理由を御説明いたします。  「すべての種類鉱山坑内作業における女子使用に関する条約」は、一九三五年に国際労働機関、すなわち、いわゆるILOの第十九回総会で採択された条約でありまして、その目的とするところは、鉱山における坑内作業女子にとって風紀上及び生理上好ましくないので、これを原則として禁止しようとするものであります。この条約内容は、わが国内法においてすでに規定されているところであります。  次に、「有料職業紹介所に関する条約」は、一九四九年にILOの第三十二総会で採択された条約でありまして、「職業安定組織の構成に関する条約」を補足するものであると同時に、一九三三年に作成されました「有料職業紹介所に関する条約」の全文改正条約であります。その目的とするところは、有料職業紹介所の運営には種々の弊害が伴うのでこれを廃止するか、または権限のある機関の監督のもとに置こうとするものであります。この条約は、五部に分れておりその実質的規定は第二部と第三部でありますが、第二部と第三部とはこの条約批准に当りそのいずれかを選択して受諾することができることとなっております。この条約内容は、わが国内法においてすでに規定されているところでありまして、政府といたしましては、この条約批准に当り、わが国における現在の雇用慣習特殊性等を考慮して、まず第三部を受諾しておき、将来諸条件の整備を待って第二部を受諾することが適当と認められる時期が参りましたならば、条約第二条2の規定に基き、政府権限をもって第二部を受諾する旨の通告を行いたいと考えております。  以上二条約内容は、ただいま簡単に御説明申し上げました通りでありまして、いずれもわが国内法においてすでに規定せられているところであります。しかも、これら二条約批准いたしますことは、わが国が公正な国際労働慣行を遵守している実情を広く世界に知らせ、また将来もそれを維持してゆくことを国際的に約束いたしますことになり、ILO憲章の趣旨に沿った国際協力を進める点からいいましても、また、わが国の海外における信用を高める点から見ましても、きわめて事宜に適するものと認められます。  以上の点を了察せられ、御審議の上すみやかに御承認あらんことを希望する次第であります。
  5. 山川良一

    委員長山川良一君) 以上の各件に対する質疑は後日に譲りまして、国際情勢調査に移りたいと思いますが、大臣が出席されるまでちょっと速記を中止いたします。   〔速記中止
  6. 山川良一

    委員長山川良一君) それでは速記を始めて下さい。  まず国際情勢等に関する調査議題とします。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 最初に、日ソ交渉問題でお尋ねをしたいのですが、御承知のように、これは自然休会にはなったが決裂でもないし、妥結でもないという妙な格好のものであるわけで、このことについての政府政治的責任というような問題はまたいずれかの機会にして、きょうはあるがままの姿で現に事実交渉が休止になっておるのですから、そういう現実の上に立って二三の問題をお尋ねしたいと思うのであります。  それで私どもとしては率直に申し上げて、この敗戦国ではあっても、日本がまた国際的地位が弱くても、主張することを十分主張するに憶病であっていいという理由はないと思いますので、引揚問題漁業問題その他まあもちろん領土問題は最重要問題として取り扱われておるわけですが、そういう問題について十分主張することに全然異議はないし、また当然だろうと思うのです。しかしまた同時に外交が主観のみにとらわれないように、各種の客観的な諸条件を冷静にかつ確実に把握して、誤まりのない判断をしていかなければならぬということもまたこれ確実な問題だろうと思う。こういう意味で私たち国際情勢日本の置かれた立場というものを考える場合に、まず相手方ソ連について見るというと、国際情勢から見てソ連が特に日本より国交回復を急がなければならないという事情はあまりないと思うのです。もう一つソ連国際的地位ば日に日に強くなったと思うのであります。これに対してこの日本はどちらかといえば早急に解決しなければならない抑留者引揚問題、あるいは漁業問題等をかかえておる。それで政府が人道上の問題として抑留者問題等を前程条件に、あるいは条約とは別個の問題として考えられるということも必ずしも理由のないこととは思えません。しかし諸般の事情から考えて、私ども日本最初に申し上げたように卑屈になる理由は毛頭ないが、しかし現実国際情勢を見た場合にはむしろ日本の方が問題解決を迫られておる点ではむしろイニシアチブはこちらがとらなければならぬような立場に置かれていると思いますので、自然休会になったとしても、今後の日ソ交渉をどうしていくのかということについては積極性がわが方にむしろあってしかるべきだ、こう思うわけであります。その意味交渉の再開はなるべく早い方がよいと思いますが、政府は近い将来それを再開する意思があるのか、当分はそういうことはあり得ないという考えなのか、この点まず第一に伺いたいと思います。
  8. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今のお話日ソ交渉に対しての心がまえをどうすべきかという当面のお話が主であったように思いますが、私はそういうことについては実は全幅的に御同感の意を表したいと思います。これは卑屈であってはなりません。こういうことは卑屈であってはならぬ、すなわち正当な主張は十分主張しなければならぬ、こういう御意見は全然私はそう思います。しかしながらこれは日本の国家として、民族としての具体的の事実をよく客観的に判断をしてやらなければならぬ、利害関係もよく考慮してやらなければならぬじゃないかというお話もその通りだと思います。そうやらなければならぬ、こう考えております。それでありますから、主張すべきは主張しなければなりませんが、何もかも言って、決裂をも辞さない、一方的に考えていい、決裂をしてもどうでもいいのだというふうな考え方は悪いとともに、それならばいろいろなかけ引きもあるのに、そのかけ引きに乗ぜられたというのはおかしゅうございますけれども、すぐ小回りをして、そうしてお言葉ではイニシアチブはこっちにある、こっちがイニシアチブをとるということをさらに進めていって、こっちだけ妥協して早くまとめるべきだということは私はこれも少し行きすぎじゃないかと思う。私はまだ十分に日ソ交渉によって国交を調整する、こういうことの準備がまだ十分できていないように思う。ただこれを理論の上で早くまとめるとか、いやこんなものはもうすべてけ飛ばしてしまうんだと、こういうことは端的に今言うべき時期じゃないと私自身は考えております。それは先ほどは日ソ交渉においても四年半も費してようやくできた。それは初めからあまり変ったことじゃないけれども、あれはできた。双方とも譲歩してあそこまでようやく行ったんであります。日本も譲歩したが向うも譲歩した、日ソ基本条約というものが北京で四年半の後にできた。会場は所を変えること四五たびもありましたでしょう。また最近ではオーストリア条約といえどもこれは七年もかかってようやく成立したのであります。私は今日の日ソ交渉がそれと同じ轍を踏むべきであるということは、これは少しも申し上げません。全力を尽してやるべきことはやる、今は重要問題において意見が合わないんでありますから、やっぱり少し情勢変化客観情勢もむろん含むのであります。国際一般情勢も含む。そうして機会を見つつ利害関係は十分に考慮して、かつまた主張すべきは主張するという正しい行き方は十分やらなければならない。中断したからすぐ翌日からこれを譲歩して始めなきゃならぬと、こういうことを、非常に急激な変化があれば別といたしましても、その点は私は今の情勢じゃないと思います。私は日ソ国交正常化ということは大局上これはどうしても方針として変えることができぬ方針でありますが、そこに達するのには相当時を要する、これは止むを得ないと考えております。従いまして一般的の考え方気持の点において御同感を表する意味においても、この際はわが方の立場はまげないで一時事態の変化を見守るということが必要だと考えております。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 今のお話の中に、やはり国際情勢等変化を待たなきゃならぬというお話もありますが、先般ダレスさんが来られたときに小笠原沖縄等の問題に触れられたかどうか知りませんが、おそらくかりに政府が触れられても、ダレスさんが別に今早急にどうなるという回答をされたはずはないと思うのです。一面において対米関係領土問題も少くとも、もう問題になし得るほどの条件は成熟しておらぬ。同時に今度の日ソ交渉自然休会領土問題がその中心であるとするならば、米ソ両国国際的地位考えた場合に、国際情勢変化を待つとは言っても米ソ両国の緊張が緩和されて、一方においては小笠原沖縄、一方においては千島あるいは場合によってはほかにも及ぶでしょうが、そういう領土について何らかの新しい妥結の道を見出し得る、そういう意味国際情勢変化というものを早急に期待することば困難であろうと思うのです。そういたしますと、今の大臣の御答弁の中にもあったのですが、こういう形だと、つまり暫くは日ソ交渉については、現地における西大使等がかりに松本全権にかわって何らかこまかいことで話合うというようなことがあっても、基本的な条約締結というあるいは国交回復というような問題については、まず暫く動きはないと考えていいのか。あるいは領土問題について、ソ連側日本側要求を入れるまでは、実質上再開されることがないというふうにわれわれは考えてよろしいのか、その辺はいかがでありますか。
  10. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 日本側で変更すべき主張がないとするならば、日本側主張が実現する時期を待たなければならない、こう思います。それはソ連側の態度にもよりましょうし、また直接間接に国際情勢変化ということもありましょうし、今動いておるのでありますから、これは将来の、はっきりしたことをどうなるかということを今申し上げるのは早計であろうかと私は考えます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 今朝の新聞を見ますると、政府の方で留守家族生活保障等関連をするんでしょうが、引揚問題漁業問題についてソ連側別個交渉考えられておるようですが、実際問題として条約なり国交回復という基本線と切り離して、目的はもうまさにその通りだと私は思うのですが、実際問題としてそういう協定を別個に取りまとめることが可能とお考えになりましょうか、いかがですか。
  12. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは向う意向を聞いてみなければわかりません。これはわかりませんが、引揚問題、これはもう最初から申し上げます通りに、かつまたその点については皆さん方の御主張もそうであると思いますが、これはもう国交回復の問題とは別にあくまで主張しなければならない、こういうふうに私ども考えております。そしてこれは主張し得るのであります。これはそれだからすぐ向う先方がその主張を受け入れる、こういうことはすぐに申すわけではございませんけれどもソ連としてはソ連のまた主張を入れて条約ができなければいかんと今こう言っておるわけでございます。しかしそうであっても引揚者はそれとは別個の問題としてこれは実現するように、あらゆる機会をとらえて交渉するということは、この方針は変える必要はないと私は考えます。  それから漁業問題につきましては、これは実際具体的な問題であります、北洋漁業の重大な利害問題がこれに関連をいたしております。そこで問題は公海における漁業をどうするかとこういう問題であります。公海における漁業に対して一方的に力をもって制限を加えようとしておる問題でありますから、これは国交正常化というような問題とは離れて実際問題として取り上げなければならん問題になってきます。それはいろいろ方法があろうかと思います。方法があろうかと考えますが、ソ連はこれはソ連政府措置としていろいろやっておることでありますから、これはやっぱりこちらは政府であろうが民間であろうが相手はソ連政府ということになります。しかも公海における漁業制限でありますから、これは日本だけに関係をしておる問題では理論上ございません。そこで国際的にこれは問題が起るわけであります。現にオットセイ条約、この前ちょっと申し上げましたオットセイ条約などが今交渉の爼上に上っております。これはソ連も入っておる。それからカナダにおける漁業北太平洋漁業の問題について、いろいろ交渉をいたしました、これもソ連はオブザーバーを出しているわけであります。さような関係もございますし、これは公海における漁業の問題は大きな国際問題として私は取り上げられるべき問題だと考えます。しかし日本といたしましては、現在起っておる問題について、それを具体的に適当な方法をもってこれは話し合いをするということは、これは実際の利益擁護の点に必要だろうかと考えるのであります。そのことについてはやはりこちらはそういう考えであるし、またこの点については相手方であるソ連側もそれならばそういうことについて話をしようと、こういう意向であるかどうかということを今確かめ中であるわけであります。それ以後でなければ方策はきまりませんが、しかし適当な方法が見つかるのじゃないかと、こう考えて進んでおるわけであります。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 他の同僚議員の諸君の御質問もあると思いますが、問題をこの日ソ交渉はちょっとここではしょって、他のことでお伺いしたいと思いますが、先日ダレスさんが見えて、東南アジア諸国を回って、アメリカ対外援助、特に対アジア援助については、軍事援助から経済援助に切りかえる、ウェートを経済援助におくという方針に転換しつつあるように見受けられるわけです。それでまた場合によってはアジアの、インドその他インドネシア等の特殊的な地位と、ビルマもそれに入るかもしれませんが、そういう諸国の特殊的な地位というものも、ある程度理解をもって考慮しなければいけないという考えにもなったかと思います。しかしひとりわが日本については、この非常に防衛力強化を要請することといい、その他少くともアジア全体に対する考え方日本とは切り離されて、日本が何でもかんでもアメリカと特殊的な関係を持って進まなければならないような話し合いを進められておるような感じがするのですが、これは私の誤解であれば幸いだけど、そういう感じを受けるのです。それから感じでなしに事実上アジアに対する経済援助日本に対する要求とを考えてみた場合に、今私の申したことは必ずしも不当なことではないと思うのですが、大臣はどうお考えになりましょうか。
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 米国ダレス国務長官が帰途に日本に立ち寄った、わずかの時間でありましたが、いろいろ意見交換機会があったということは申し上げた通りであります。そのときにはまあ一般的の問題について、いろいろなことを順序通りお話したわけでありますから、あとは御想像にかたからんところであります。しかしその結論的にこれを要約して申し上げれば、日米は、われわれが主張しておるように、かねて協力関係を円滑に密接にするという考え方で進んでいることは、それは申し上げ得ると思います。これはまたそうしなければならんと思います。どこの国からどういう人が来ても、できるだけ親善関係を増進するということは当然の話であり、またその機会がきたらそうすべきであると考えるのであります。しかしそれだからといって今までとは全然違って軍事方面だけをこうやれとか、ああやれとか言って、特に立ち入った話をしたということじゃありません。日米の間において共同防衛関係上、そのやるべきことはどう日本側が進めていく、防衛力を増強するということは、ちゃんと約束しておる、条約に書いてあることであります。それでそれをマイナスに導くこともむろん不可でありますし、プラスマイナスなしにその通りにやっていくべきだと考えておるのであります。特に特別のことを要求したということは少しもございません。しかしながらお話通りに、昨今はこの世界の全体からみても、特にまたアジア方面形勢からみても、軍事方面よりも経済方面にだんだん各国の力が注がれるという形勢にあることは、これはもういなむことはできない。これまた御承知通りであります。アメリカだけでなくして、ソ連のごときも非常に飛躍的に出てこようと、こういうわけであります。従いまして経済上の問題に重きをおかれた気持お話をしたことは事実でございます。そうして経済問題については特別の経済問題、それで日米との関係はどういう経済問題を協力していこうかという、特別の問題を論ずることはしなかったのでありますけれども日本経済上の困難に対する米国側理解を求めることにも努めたのであります。  それから東南アジア方面についても、日本は賠償も支払わなければならん、貿易もできるだけ発展をしなければいけない。これらのことにつきましては、米国との関係がいろいろ出てくるわけでありますから、そういう問題についても十分意思を疎通しておくことが必要であり、また利益であると考えてそれを努めたわけであります。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点だけ。なぜ私が今のようなお尋ねをしたかといいますと、実はこの日ソ交渉の問題で、特になかんずく領土問題についても、ほんとうに領土権そのもの至上最高の問題であるかということになると、私どもは時と場合によっては、ソ連領土問題で私は話がつくと思うのです。ところが今私がさきにお伺いしたように、日米特殊的立場という制約を受けている、しかもそれは国際情勢の一環として重要な制約を受けているこれもまた一つの大きな障害だと思うのです。だからもしもそういうことではない純粋な領土問題ということならば、私は他に解決もあるであろうと思うのですが、しかしこれは理屈を言っても政府立場が違うし、また鳩山さんの議論を借りるというと、国論が統一していないから外交をやりにくいとおっしゃいますが、実際には私どもがここでこうお尋ねしても、もう政府外交の妨げにならない、それほどの決定的な段階にきているから、私たちは平気でこういうことを申し上げられる、それほどにも私たちはきょうまで遠慮しておった。あまりにも野党は遠慮しすぎるくらい遠慮しすぎてきたと思うから、きょう改めて申し上げるのですが、私は純粋に領土問題だけ取り上げて、相手方の譲歩を促そうとするならば、他にやりようで道はあろうと思います。それはあまりに国際情勢で他国の制約を受けないということも、一つ条件であろうと思う。  それからもう一つは、これは質問というよりむしろ意見になるのですが、自然休会というものは全然つまり先がない、自然休会というものは、この程度までいったら、今そこで外交政府が何回先になどというわけにはいきませんが、しかし必要条件については日本イニシアチブをとって働きかけていいということがなければ、これは一種の無期延期ですよ。そうすると政府の政治責任というものはどういうことであるか、私はあえてきょうは政治責任を問うのを目的にしている質問ではないから多くは申し上げませんが、しかし二大政党という建前から反対党の社会党に何か案がなければいいが、現に反対党の社会党でも一つ解決方式を持っておるのです、政府別個の。同僚曽祢委員佐多委員等もしばしば指摘されたが、別個解決方式を持っておる。歴史的に将来日本の民族から判断を受けても、決して、あとで社会党の考えておる解決方式が日本民族を不利に陥れたと、そういう歴史上の判断を受けないということも私どもはある程度信じておるのです。あとから、後世の民族から、社会党のやり方が日本のために非常に失敗だったというようなことが見通されるならばこれまた問題ですが、私たちはある程度社会党の考え方に若干の自信を持っておるのです。そういうものがある際に、一方で今の政府が、無期限に動きがあるまでということで交渉を中断していくということになると、一体早期妥結を公約された政党政治の責任としてまことに責任の所在が不明確になる。いつまでもこうやってずっていく、しかも国際的に見れば、先ほど来申し上げますように、別個の前提条件であるとはいっても、抑留者を早く帰してもらうとか、あるいは貿易を促進するとか、こういう問題は私は三年五年先に延びていい問題じゃないと思う。そういうような意味から私は先ほどの対米関係の問題についても触れたのでありますが、しかしわれわれは別にソ連のイデオロギーなら何でもいいとか、ソ連的でなければならんとかそういうことじゃありません。むしろ先ほど一番最初に申し上げたように、冷厳に客観的に国際的条件を見て、その上で誤まりのない判断をしていくという立場からいっても、今私の申し上げたことは決して不当ではない。そういう意味からやはり政府交渉再開のめどを適当な時期につけるだけの責任はあろうと思う。そうでなければこれは全く政治責任のない無責任なことになると思うのですが、まあこれはお答えがあればよしなければないでよし、私の質問はこれで。
  16. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 非常な、御意見等もまじえられた何でありますけれども、私の感想を、意見をまじえるかもしれませんが、申し上げます。今言われた社会党は案を持っておる。その案は私はずいぶん前から伺っておりました。これは公式に伺っておりました、議会を通して。それはたしかに一つの案であろうと思います。政策はもう党派によって異なることがあるのは、これは当然のことでありますし、その意味において私は社会党の政策について非常に敬意を払っておるわけであります。これはそういうことを伺わしていただいたということについては、私は非常に実は感謝をしておるわけであります。しかしそのときも申した通りに今交渉の最中に、いわばたな上げ方式を大政党が責任をもって言われるということは、果して私はどういうものであろうかという意味で幾分か批判的なことも申し上げました。しかし今話を伺ってみて、私は今日そういう何と申しますか、政策に対してこれをこの席で一々批判したり弁駁するところでもないし、またそういう意向を持っておりません。私はただそういうことを詳しく、かつまた熱心に聞かしていただいたということを実は感謝をするのでありまして、それにとどめたいと思います。  そこでそれじゃこのまま放っておくか、これは私はさっきから繰り返して申し上げる通りに、放っておくということは、これは全然考えておらんのであります。おらんのでありますが、それならばこちらの言うことは、今従来の主張をかえりみずに、これがまとまるように妥協的の政策に振りかえていくべき時期であるかというと、それはそうじゃないということを私どもは信ずるところをもって申し上げておるわけであります。しかし国際情勢変化とか何とかいう相手方の状況はむろんのことであります。またすべてのことをよく判断をして、検討をしつつ、とらえ得べき機会があればとらえて、終局の目的を達するように努力をするということがなければならんと思います。それは当然そういう考え方を持って進めておるわけであります。責任の問題ということをときどき言われましたが、これは外交全般に対する責任は政府においてこれを負わなければならん。特に私において負わなければならん、それは少しも辞するところではございません。しかし主張が折り合わないで、そして話が一時的にしても延ばさなければならん、これは私はあり得べきことで、またむしろその時期を見ることも一つのこれは大きな外交であろうと考えます。そこでこれはそういうような意味においてあまり小回りをしないで一つ国家的に考えられて、そして大きく一つ全体的に、むしろ私は常々主張しております通りに国家的に、超党派的に考えてこういうようなことは大きく一つ考え、私はこの外交全体について責任を問われるということは少しもいといませんけれども、これは一つあまりこまかく言ってもどうもしょうがございません、しかし御意見は十分私伺わしていただきたいと思います。
  17. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 外務大臣日ソ交渉に対して非常に強気な意見を述べていらっしゃいますが、おそらく早晩外務大臣はその非を悟るときがくるだろうと私は思うのです。それは国内的にも国際的にも必ず外務大臣はわれわれの言っていることが正しいことを悟られるときがくると思いますから、私、きょうはその問題にはあまり触れませんが、漁業問題に関して一点伺っておきたいと思いますが、政府は最近ソビエトの魚族保護、サケ、マス保護のあれを無視して出漁を強化しようという意見を持っていらっしゃると聞くのでありますが、そういう考えを持っていらっしゃいますか。
  18. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 強行というのは、公海漁業するということですか。公海漁業するということは、許されておることは御承知通りであります。
  19. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 昨年と同じ方式をもってやるということですか。
  20. 重光葵

    国務大臣重光葵君) どういうような私は、規模でどういう組織で漁業をやるかということは私自身存じません。これは漁業者、またその方面考えておることだろうと思います。しかし公海漁業は、これは自由である、こういうことはこれは国際的に正しい議論だと考えます。
  21. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その北洋漁業のやり方に関して、政府は何ら方針も示唆も与えないで、自由にまかして勝手にさしておくということなんでしょうか、政府方針は何もないのでしょうか。
  22. 重光葵

    国務大臣重光葵君) かような業務に従事することは、民主国では自由であります。それですからこれは公海の自由、公海漁業はやり得ると、こういうことを考えております。
  23. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それに対して、政府は何でしょうか、海上保安庁の船を出すとかなんとか、そういうことはなさらないということなんでしょうか。
  24. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 海上保安庁がどういう考えを持っておるか、水産庁がどういうやり方をするということは十分に確かめておりません。まだ確かめる必要も私はないと思っております。これはそういう方面考えて普通にやっていけばいいことだと考えております。
  25. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それでは昨年と同じような方法で漁獲がなされた場合、ソビエトの間に問題が起った場合、政府はそれに対して責任をどういうふうにとられますか。
  26. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は問題は起らないし、また起るべからざるものだと考えております。公海において漁業をするということはソビエトもできるし日本の漁民もできる、またその他の国の漁民も当然できることだと、こういうふうに了解しております。
  27. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは乱獲を防止するという方針で、公海漁業の自由は別に問題視されていない。乱獲が問題になっていると思いますが、昨年と同じような方法でなされるならば、乱獲で問題が起るだろうと思うのですが、その場合に政府はどういうふうに処置をなさろうとするのでしょうか。
  28. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 乱獲の問題、公海で乱獲があって、それでソ連ならソ連に、損害があったと、こういうことならば、これは国際間の話し合いになり得ることだと思います。しかしながらこの場合においては、日本側においては、従来問題になる以前からやっておった漁獲量以上にはやっておらないのであります、これはどれだけ漁獲があったという統計が示しております。そこで日本側の業者の主張は乱獲はなかったとこう主張しておるのであります。しかしながらこれは公海で乱獲がなくても、その他の原因でソ連領において漁獲が少くなったということはあり得ることなんです。これはよく調査をしなければならない、さような調査には十分に協力するつもりであります。しかしこれは話があった後の話であります。それと公海の自由の原則というものは混同することはできぬと思います。
  29. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ソビエトの方では国交回復をすればこの魚族の問題、漁獲の問題、それらに関してもお互いに話し合おう、乱獲をしない、魚族の保護に対しても話し合いをしようという意図を持っておるが、日本国交回復に応じない、その結果このような問題が起ってくると、そう簡単にはいかないだろうと私たちは思うわけですが、そういういろいろな事態が起った場合に政府はそれに、どういうふうに対処をしていこうとするのか、また政府はそれに対してどういう責任をとるのかということを伺います。
  30. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今あなたは、ソ連考え方はこうであると言って非常に自信をもって言われます。ソ連公海漁業の問題を日ソ交渉国交調整の問題に引っかけて、そうして国交調整に日本が譲歩しなければ漁業問題でいじめるのだ、そういじめられては困るじゃないかという結論に達する今御意見がありました。
  31. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 冗談を言っちゃいかん、そのように人の言葉を曲げちゃいけません。もっと大臣らしく話しなさい。
  32. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はそういうふうに聞きました。
  33. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはあなたのひがみ心だ。
  34. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは一つの解釈だろうと思います。しかし私はそれを信じません。そういうようなことをソ連考えておるのじゃないと思うのです。そうであるから漁業の問題については、実際魚族の保護ということについていろいろソ連側考えておるのじゃないか。それならばその考えについては私ども日本も十分共鳴をして、協力をし得ることだと思います。それは話し合いができると思います。しかしもしそれが私が今了解したごとく、日ソ交渉国交調整の問題ができなければこういうこともあるぞ。こういうふうなことであったならば、これはちょっと交渉の糸口がないかもしれませんが、それは私はそうじゃないと思うので、ソ連意向も間もなく明らかになると思っておる次第でございます。
  35. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この国交調整は、外交慣習の上に立って、そうして領海の問題なりいろいろな問題でも話していこうというのがソ連の態度である。ところがそれを拒否しているのが日本のあなたたちの態度である。そういう関係の中でこういう問題が起ってきた場合、そこに起る事態にわれわれは憂慮をしておるわけです。そういうことが起った場合に、日本政府がどういう責任をとるかということを私は尋ねておるのです。
  36. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは議論になるかもしれませんが、公海で漁獲をするという問題について協力しようという態度を持っておる、それを協力を欲せずして一方的にやるというのは責任がどこにあります。国際関係ではっきりしている、日本にはないでしょう。
  37. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あなたはそれは今ソビエトが言っているサケ、マス乱獲に対する防止に協力しようという態度なのか、それを無視しようとする態度なのか、どっちなんですか。
  38. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 乱獲ということを前提にするわけにはいきません。魚族の保護ということについては、国際的に今ところどころで話し合いをしておるわけであります。日本としてはソ連との間に話し合いをするということには協力するということです。少しも異存はないのであります。
  39. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 最近の新聞によって見ますと、渡航の制限の問題が閣議で決定されるとか何とかいうことが出ておるのですが、これはどういう立場から渡航制限をしようというお考えなんでしょうか。
  40. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 渡航の制限の問題はずいぶん古い話で、われわれが政府に入る前からもこれはずいぶん渡航の制限はございました。国交の開かれておらない国との間の渡航については、ずいぶん加えております。それが実際最近は特に共産主義国との間に問題が起ってきたということもこれは事実でございます。共産主義国はしきりに他国の人、他国のこれはと思うような人々を招待して、そうしていろいろ自国の設備等を見せたいと、こういう考え方意見交換もしたいという考え方が多くなってきたようでございます。(「はなはだけっこうですね。」と呼ぶ者あり)これは世界的にそういう方面のことを共産主義国は政策として非常にやるようになってきたんだと、そこでそういう方式によって自分の主張を相手国に宣伝をするのであるということを、もうこれは共産主義国の何としてです、政策がそうなったんであるとして、世界にほとんど定説としてそう言われてくるようになりました。これは私は必ずしもそうと断言するわけではございませんが、しかし今共産主義と非共産主義との問にいろいろなまだみぞがあるということは、これは認めなければならぬ。考え方についてですね。そこでですな、これはそれをすべて利用しようという意思であるということを言ってしまうわけじゃございませんが、すべていわば丸抱えで、そしてさような国交の開けてない所に多勢向うの費用でまあいわば御馳走になりに行くというようなことは、政府としてはこれはどうもあまり感心したことでないと、こう考えるのも無理からぬことではないかと思う。(「政府が金を出さぬからだ」と呼ぶ者あり)金は本人が出せばいい、(「外貨割当をせぬからだ」と呼ぶ者あり)そういうわけでありますから、特にこれを禁止するとか何とかいうことではございません。
  41. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 共産主義諸国が招待をして現に自国を見せようと言っていることはこれは平和の精神からですよ。お互いに理解をしてそして世界の緊張を緩和しようというその立場からやっておることであって、あなたみたいにいつまでもみぞを作っておっては、いつまでも世界はよくならぬじゃないですか。そういう立場からやっているのですよ。魯迅の言葉に、道はおのずからできるものではない、人が作るものだという言葉があったと思うのです。中国と日本との関係においてもその通りでしょう。貿易一つ見ましても、政府がいやいや、なかなか、妨害しておるのに、民間人が一生懸命で打開していこう、やっと中国と日本との道も通じて貿易もやっとここまでこぎつけている。これは少しも政府の努力ではない。政府は妨害していた。これは民間人、国民がやったことです。政府の力ではない。もしも政府が放っといたままだったらいまだに道は通じない。日中貿易だってできない段階でしょう。それをわれわれはやっている。それをそのように解釈することは大きな間違い。ソビエトでも中国でも自分の国と日本人との了解をつけて早く国交を回復しよう、この世界の緊張をなくしようという立場からやっておることであって、何も他意ない。われわれが招待を受けて行くのもその通りです。政府は外貨さえ割当てるなら、われわれは何も向うに招待を受けなくても行ける。あなたたちが妨害して外貨割当てなければ、行っちゃいかぬと言うから向うの招待を受ける。つまらぬところにたくさんの金を使って、このようなりっぱなところに金を使わないからです。責任はみなそっちにある。もっともっと私の意見を聞きなさい。
  42. 重光葵

    国務大臣重光葵君) いやあまりに見えすいたことを言うから……。
  43. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうではない。そういう点をよく理解しないと事がよく運びません。今のようなあなたの御答弁の考え方では……。  それからこの中に今度は許可する場合に基準を設けたというようなことが出ておる。どこをどういう基準で作ろうとされるのか、一ぺん聞きたい。
  44. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はお互いに理解するために多くするという主義の問題に少しも、何も異存もなければ賛成をするのです。けれどそうじゃないのであって、これは先ほど申し、またあなたも言われる通り、道は人が作る。いろんな宣伝を人が作ってしようとする。そういう政治上の宣伝はこれはまっぴらごめんをこうむらなければなりません。これは今回の日ソ交渉でも内政不干渉、いろいろな文化的にも経済的にもそういうことは一切お互いにやらないという主義を、同意をしたゆえんであります。それだからそういうことがなければ問題にならない。ところがそれが問題になることが今社会の通念であることを遺憾とする。それが間違っておるというお話でありますが、そうすると社会の通念が間違っておるということだからそれはまあそれでいい。私はそれから先に言を進めていくというつもりは一つもない。そこで(「基準の問題です」呼ぶ者あり)旅行制限をするという基準は今何にも考えておりません。基準をつけたらいいという議論はあります。ありますけれどもまだ政府としてそこまで考えておりません。
  45. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは基準を考えていなければけっこうでありますが、基準はつけられないのが当然だと思うのですね。基準のつけようがない。憲法で守られておる人権の自由に基準を特につける、そんなばかげたことはあり得ないので、もしもつければ明らかに憲法違反だと私は思う。だから基準をつけないというのが当然なのだから、あなたが基準はきめていないというのならそれでもいいのですがね。
  46. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それは憲法の問題でも何でもないと思います。政府の方策がどういう程度にするかというこの考え方です。憲法は何もどうしようという考えは少しも持っておらぬのであります。
  47. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあよろしい。それではまあその問題はその程度にしまして、私、原水爆の決議に対する回答を実はきょう要求しようと思ったら、今とにかくこれは十日前に、大体三月の十九日ですか、そうするともう約十日になって参りますが、十日も放っておいて、新聞に発表があるのになお国会が決議したことに対する回答を今まで提出を怠っていたことは、私は非常に怠慢だと思うわけでございますが、この言葉の中に、この四ページの終りのところに「合衆国政府は、過去又は計画中の実験によって世界中に亘る保健上の危険が生ずることはないと確信している。」という条項がありますが、政府は危険がないというふうに考えられますかどうですか。
  48. 重光葵

    国務大臣重光葵君) それはアメリカ側の返答の内容の一部分だと思います。私はその点は危険がアメリカの言う通りであるともないとも今答えることはできません。  それからこれはまあ提出が遅れたという、これは向うと打ち合せた向うの何でありますからその時に発表したのであります。これは衆議院の外務委員会が開かれる予定日に私は外務委員会で発表しようと思ってやったのであります。そのときに開かれませんでしたから、これをその日に発表したのでございます。
  49. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私が先ほど質問しましたのはね、アメリカでは被害がないというふうな見解を述べておるが、外務大臣は被害がないというふうに考えられるのか、被害があるというふうに考えられるかということを言っておるのです。
  50. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私は今申し上げました通り、私は今それをお答えすることはできません。私今それだけの知識がございません。これは政府部内においてその方面に十分検討してもらいたいと存じております。
  51. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 僕は実に無責任だと思うのですがね。被害がない、答えられないというのですが、被害は事実あったじゃないですか。日本人はそのためにたくさんの被害を受けているでしょう、ビキニの灰で。それがなぜ被害があるというふうに答えられないのです。
  52. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ビキニの問題で被害があるということはわかり切ったことです。
  53. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今後もあそこで演習をされる、来月の二十日から五カ月間の長期にわたって演習をやろうとしているのでしょう。それに対して日本国民は非常な不安を感じておるから、国会でも国民の意思を代表して決議案を出したのでしょうが。それに対する回答がこれでしょうが。それに対して日本政府はどういうことを考えているかということをお尋ねしておるのです。
  54. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 先方の答の内容については、目下専門家に研究を依頼しておるところであります。
  55. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 実に卑屈ですよ。
  56. 山川良一

    委員長山川良一君) 須藤君、ほかの委員諸君から質問があるようだが、どうかな。
  57. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ私の質問、これだけにしておきます。まだありますが、これだけにしておきます。
  58. 曾禰益

    ○曾祢益君 羽生、須藤両委員からあげられたような問題についての質問ですが、日ソ交渉について、この間私が本会議で御質問申し上げた点にやはり関連する問題なんです。どうも私は羽生委員に対する外務大臣の御答弁を伺っておっても、またそうでなくともこの間の外務大臣の中間報告でも、やはり交渉が、これはまあ実際上停頓状態であるという点を、やはりはっきり国民に十分に意識させるという努力が足りないのではないか。あるいはむしろ逆に、それをまあまあ停頓ではないのだ、交渉の途中だというふうな点を特に強く言われておりまするが、ただいまの御答弁を伺っておっても、事実上は相当の時間が要るのはやむを得ない。あるいは日本主張が実現する時期を待つ、私はまあ実態はそうだと思うのです。ところがその点は必ずしもそうはっきり言っておられない。そうしてまたそういう意味からいえば、これは当分、非常な長い間時期を待つということになる。昨日もある与党の有力な外交関係の人の座談会に行ったのですが、はっきりとまあ日ソ基本条約の事例を引っぱり出して、四年待ったこともあるんだというようなことを言っておられるので、そこに非常に私は問題の中心があると思う。ほんとうにこの国際情勢変化というようなものを、従ってソ連が、ソ連領土に関する主張なんかということを、日本には歩み寄ってくるというようなことを、甘く国民にそういう期待を持たせるということは、これは適当でないと思う。ところがどうもそういう事態を正確に国民に知らして、従ってこれは非常な長期にわたる忍耐と努力によってやるんだということを……。率直に言えば、これは外務大臣は事実初めからそうお考えになったと思うのです。これはしかし現内閣としては、去年の二月の総選挙のときの公約の建前からいっても、まただたいま問題になっている引揚問題漁業問題等々をせっついた問題もあるから、やはり早期に国交正常化を実現するという看板に偽わりありということになって、これは内政上も非常にこれじゃ困る、そこのやはり私は矛盾が出てきているんじゃないか。しかしもし外務大臣がほんとうに長期に、ゆっくりかまえて、そうしてウェイト・アンド・スィーという態度でしばらくいくのであるならば、そのことを率直に国民に告げる。さらにそのことが政府方針であることを国内において、また与党の中でもはっきりとその点を政策として、そうして国民にそれでいくんだということを示すべきではないか、そこに非常に私は矛盾がある。私はこれが中心であって、まああとでも時間をいただいて、やはり今後どうするかという点に関連する議論もそこで分れてくると思う。今までみたいな、たとえば去年九月にマリク全権が一時帰国したような、ああいったような中間に水が入ったような状態とは本質的に違うのです。やはり早期解決方式でない、ほんとうに長期にぐっとこらえていくというならば、その点をはっきり出して、と同時に抽象論と希望だけでなくて、そういう場合に漁業問題あるいは引揚問題についてはこれらの策と見通しを持っているのだということを明らかにする責任は私はあると思う。でありまするから、この点をほんとうに外務大臣は内閣の方針として、まあ与党を含めた内閣の方針として、はっきりと長期的なかまえにするのであるという、これをなぜお打も出しにならないか。その批判にこたえて、はっきりした勇気を持ってお出しになれば、また一つのこれは国民の世論を作っていく。その政策はいかんという、まあ民主主義の上に立った外交、いわゆる民主的な論議というものが行われると思う。それをどうも避けていきたいということは、単に対外的の考慮だけじゃないと思う。これは対外的の考慮はあると思います。あると思いまするが、主として対内的な、あるいは対閣内的な、あるいは対与党的な内部の意見の不一致というものがそこにありゃせんか、こう考えるのですが、外務大臣どういう御意見ですか。
  59. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今のお話はまあ主として何と申しますか、政党の伏線でも張られるという御質問の内容のように私は伺えたのでありますが、私は長期も短期もない、現在の状況をはっきりとあからさまに申しておるつもりでおります。これを長期と言えとか短期と言えとか、こういうことは御批評にわたるわけでありますから、これは私は実はごめんをこうむりたいと思います。私は今お話通りに、この前にマリク全権が不在のために交渉が中断されたというのと性質が違うというお話があった、これは私はその通り考えます。何となれば、これは合意のできそうな問題は洗いざらいに一つ努力をしてみたわけであります。そうして最後にむずかしい問題が、どうしてもこれは何らかの変化がなければ困難だというので、これは延期されたわけでありますから、これは私は前のなにとは違うと、こういう今のお話はその通りだと思います。しかしそれだからこれは決裂であると、長期でと、まあ長期というのはどういうことを意味するかということは、これはまあ言葉の問題になりますけれども、しかしこれは情勢変化を十分検討して、あらゆる機会をつかまえて一つ目的を達したいのだという希望を表白したからあいまいだということは、私は少しもないと思う。またそうでなければならぬと思う。これは国の内外を通じてそういうふうにいくべきだと私は考えます。そこで将来その情勢の展開と申しますか、変化と申しますか、それはいつくるかということを今予見することはできぬと言えば、それは長期じゃないかと、こういうことになれば、それはそういうことは言えるかもしれません。しかし国際間のことというものは、私はこういう問題というものはあまり早期であるとか長期であるとかいうことで前もってはっきりしてこれを言わなければならぬ、また言うべきだと、また言い得るのだというととはどうかと思うですな。それはおのずから心がまえはこうなければならぬ、こういうことを言っても私は少しも差しつかえのないものだと思う。そこでできるだけすみやかにこれは機会をとらえたいという意思表示は、私は対外的でも対内的でも、これは同じものだと思います。それは実際そうでなければならぬように思うのであります。しかし、だからといって私はすぐあすからでもまた方向の転換があるかという予想は、今つきかねるというととは、先ほどから申し上げておる通りであります。その意味においては、何と申しますか、十分に検討をして、そしてある意味において時をかけてもこれは検討をしていかなければならぬ。こう思うのでありますが、その説明を繰り返すよりほかに仕方がないと思います。
  60. 曾禰益

    ○曾祢益君 短期、早期、長期ということは私たちが言い出したのではなくて、鳩山総理が早期という言葉を使われたことにこれは内政上の政治的責任が大きなものがあると思うのでありますが、その点は責任論であるとともに、これは意見の相違ですが、そういう展望に立てば、これはやはり実際問題として国交調整のめどは事実上しばらく失ったというのが客観的な情勢だと思うのです。政府のあるいは外務大臣の積極的な意図の有無にかかわらず、事実はそういうことになる。そこでたとえば引揚問題についても、政府が従来からこういう問題、未帰還者の援護措置をやはり国内的にもとらなければならないということは、やはり長期態勢の表われだと言わざるを得ないと思うのです。そこで実際そういうふうなことになると、こういうような懸案について実際どういうふうに進めて行くかということも真剣に考えなければならぬと思うのであります。  第二には、私たちの申し上げておるようないわゆる暫定協定の方式を考えなければならないということと合わない問題だと思うのであります。それはあとにして、実際引揚問題を促進するめどがあるかというと、これは非常に不幸なことに、ソ連の方は抑留者の問題、北洋漁業の問題を、実際交渉の道具に使おうとする露骨な意味を持っておるのであります。これは非常に不当きわまる問題であるけれども、事実はそうであります。従ってこの点についていかなる見通しがあるかと言われても、非常に困難である。私は引揚問題についてあらゆる措置をとられるととを期待するが、との点に関する見通しは非常に暗い。さらに漁業問題ですが、この点については、これは外務大臣も言われたように、この問題は引揚問題とはちょっと形式的にも違うわけです。いわゆる公海上の漁業の一方的制限の問題ですから、形式的には日本の漁船のサケ、マスの漁獲だけが問題じゃなくて、理論的にはほかの国の問題もあるわけであります。そこでこういう問題については、たとえば日米加三国の方の、いわゆるべーリング海などの漁獲に関する制限の協定もあるし、だからことにカナダなんかもソ連が一方的にこういうことをやると、今度は日本日米加協定を侵して、そしてべーリング海の真中から東の方にやって来やせぬかという危惧の念を持っておる。すなわちこの点は日ソ両国だけの問題でもなくて、関係国の問題もあるわけであります。従ってこういう特殊な問題については今も須藤君の言われた点にも関連するのですが、ソ連のやり方は一方的に権利としては認められるものではありませんが、もしソ連がほんとうに魚族保護という意味での真意であるならば、それならば国際的な一つの漁獲制限の話をしたらどうだ、これはカナダ等も間に入れて、あるいは語らって、そうしてソ連の方とも話をするというような手をお考えになっているかどうか、この点の一つ外務大臣のお考えはいかがですか。
  61. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 今のお話は私も筋道をその通り考えております。
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 この点は外務大臣もお考えになっていると思いますので、やっていただきたい、少くとも試みていただく価値があると思います。しかしこういうことをやっても、たとえば国連の加盟の問題等でも、また短期、長期の水かけ論になってはいけませんが、めどがつかない。そこで私がこの前本会議でも申し上げたように、つまり現在のままの状態で情勢を見るということは、これは事実上何もしないことで、そうかといって個々の懸案を解決するといってみても、あるいは漁業問題等についてソ連がほんとうに交渉の道具でなくて、乱獲の禁止といいますか、魚族の保護ということを目的とするならば、別にこれだけは解決の見込みがある、しかし一般的に懸案を個々に解決する方式も困難である。さりとてソ連の言いなりほうだいの内容による平和条約にはこれは国民が反対だ。そこで問題が、われわれがしばしば申し上げている暫定協定方式ということをやはり真剣に考えなければならないのじゃないか、これは外務大臣は非常に途中で水をかけるというようなことで、やや激しく非難的な言葉を述べておられましたが、これは羽生委員からも申し上げたように、われわれから言うならば、かくならないことを希望しておったけれども、なった場合には無期限に延びるようなことは望まない。この方式でやるならば、これは少くとも国交調整というものの前進があって、そうして平和条約の問題は領土の問題を含めて、これはさらに続けるという一つのそこに発展のできる方式なのであって、その意味において、事実上の行き詰まり状態がなければ何もだれも喜んでこういう方式を初めから言う人はない。ソ連日本も平和条約方式を、これは原則なんであるからそれでやってみたのですが、しかし今日の状況においては情勢判断からいって、確かにこれは事実上のデッド・ロックである以上は、何らかの進展を求めるとすれば、やはりこの方式を考え直すという必要が私はあると思う。それでなけ無期限の延期で、そうして当分の間全然無期限にただ待っているという状態になってしまう。私はそこのやはり岐路に来ていると思う、大ざっぱな見通しとして。だから従来は交渉の途中だからそういうものは困るということも、一応われわれとしてもそれもごもっともな点がある、まあお手並み拝見と言っては悪いけれども、成功を祈るという意味で、むしろ待っていたけれども政府の方でもそうこだわらずに、この方式が一体どこが悪いのだ、この点についてはただ参考に承わっておくとか、それも一つの見解であるとか、交渉に水をささないようにしてくれという以外に、やはり責任のあるこの方式がなぜいけないかということを明らかにされる必要があると思う。もしいけないというならば外務大臣のお考えはいかがですか。
  63. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 私はその問題は社会党の御意見としても承わり、また今曽祢委員の御議論としてはずいぶん前から伺っておるわけであります。そうして先ほど申し上げた通りに、それに対しては私は十分の御議論の値打を認めておるわけであります。しかし私は従来それに対して当局として御賛成を表するわけにはいかぬということを申し上げて来たのであります。その問題を貴重な御意見として伺っておくという以上に、今こういう点でそれはいかぬのだ、不賛成だということを一々申し上げるのは、私は個人として申し上げることはなんですが、今申し上げるのはプロパーな話ではないと思う。そういうことを言って、将来自分の考えはこれとこれだというような考え方でもって……。今交渉の題目にやっぱりなっているわけですから。ただ私は先ほど羽生委員にお答えした程度で、一つ私はこの方は進めていきたい、こう考えるのです。
  64. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは松本全権も近く帰ってくるわけですから、十分に政府において、さらにこだわらずに考えていただくことを強く希望します。結局意見が合わないかもしれません。今までは合ってなかったのですが、ただ従来の抽象論の段階でなくて、具体的な段階になっておりますので、われわれは何も議を好んでいるわけでない。なし得る限りこういう基本的な問題については意見が正しい方向において大まかな一致をみるならば望ましい。こういう意味において強くこれらのことを早くお考えになることを希望します。これはこれ以上あれしても議論になりまするからやめます。  次に原水爆の問題について一点だけ伺いまするが、このアメリカからの返事、いろいろのアメリカ側の主張を盛ったものでございますけれども、結論において非常に不満足であるわけでありますが、特に学術的にも須藤君が指摘された放射能の危険がないという断定において、われわれが納得し得ないのみならず、特にこれまた私はこの前本会議で申し上げた点ですが、少くとも公海における軍事的演習が、公海の伝統的な利用の一つである――これはもう確かに過去においてそうであったけれども――こういうような昔の軍艦の実弾射撃的なものによって公海を他の伝統的な用途に利用する場合の不便は、押えられてもかまわないのだ、こういったような問題の法的な一方的な取り上げ方は、これは承服できないと思います。これは本会議の際も外務大臣意見を強く要請したのですが、なるほど純粋な国際法の、現在ある国際法の議論としてはこれは確立した原則がないという一つの何といいますか、中間地帯的なものだ、こういうのがあるいは正しいかもしれません。しかし日本側立場からいえば、これは当然にこういったような原水爆の実験、ことに水爆時代に入ったあの大がかりな実験を、公海の伝統的な利用の一つであると、従って他の利用の方が押えられても補償の義務は生じないというような、そういったような権利というか、あるいは自由の乱用ということは、これは私は黙って承服できない問題だと思うのです。これについては外務省としても最高の国際法の知能を集めて、法理的な立場から少くともこれは反駁しておく必要が絶対にあると思う。外務大臣のお考え、今後の処置等についてお伺いしたい。
  65. 重光葵

    国務大臣重光葵君) この原水爆の実験に関連しての国際法の規定するところがどうであるかということを、非常に詳しく今御議論に応ずるということも私どうかと思います。また私自身十分資格を持っておるかどうか疑うのであります。ただこれだけは私は御議論に対して言い得ると思う。今日まで原水爆の実験を禁止するというところまで国際法はきまっているのではないのだというととは先ほど認められたようであります。ただそれじゃ今までそこまできまっておらぬからこれはやるんだ、やることを認める、こちらが承認するということは必要もないのみならず、承認をしない方がいいのだという議論は、私は成り立つと思う。それは成り立つと思うのです。それだから日本としては、そういう国際法上そこまではまだはっきりときまっておらぬけれども、将来国際法をそこまで何と申すか、発達せしめるべく努力をするということは、これは私はやらなければならぬと、こう考えておるわけであります。そこであらゆる機会と申しますか、特に国際連合あたりの議論をそちらの方に向けていく、誘導していく、もしくは助成していくということは、これは方針としてやるべきだ。しかし今国際法上これが全然いけないことであると、日本がそういう解釈をもってこれに臨むということは、実際問題として少し国際法の範囲から行き過ぎておる。そこにもつていく努力をしなければならぬ、こういうふうに考えておる。この考え方は、私はそれはもの足りぬという感じがあるかもしれぬけれども、これは国際法の発達の歴史から見ても、私はそれはやむを得ないと思う。そっちの方にせいぜい努力をしていく、こう思っております。
  66. 曾禰益

    ○曾祢益君 これは国際法の議論をお互いに外務大臣と私がやっておるわけじゃないのですが、具体的に言えば、少くともアメリカの回答に示された議論そのものは反駁しておく必要はあるのじゃないか。つまり軍事的演習は公海の伝統的な利用の一つである。であるからこれによって生ずる他の伝統的な利用に対する不便については補償の対象にならない、これはこちらのいわゆる原水爆実験のごときものは公海でやっても、これは場合によったら自国でやっても他国に災を与える場合には、これは自国の領海、領土といえども完全な自由を認めらるべきではないという立場をとりたいわけですが、しかしそれが国際法上確立した議論であるということは、これはあるいはそういうことが立法論であっても、議論そのものが弱くなるからそこまでは言わないにしても、こっちの自由は当然にあるのだという議論に対しては、それもまた確立してないのだという反駁を加えておく必要はあるのじゃないか、こういうことを申し上げておるのです。それに対して何も外交文書の内容にまで私はとやかく申し上げることが目的ではなくて、少くともそういうような態度でこの回答に対しては、もちろん続けて補償の問題もありましょうが、私たちは補償の問題ということだけに取っ組むと、まああれは実験はやむを得ないのだという前提を容認したようになって適当でないから、そういうことをとりたくないのですが、いずれにしても実験に関するこの回答を最終的なものとお考えになっているとは思わない。従ってこれに対する私は反駁と言いましたが、少くとも反駁を含めて押し返すといいますか、交渉というものは引き続きやっていただきたい、かように考えるので、私は事例として今の点を指摘したわけなのです。ですからこの回答に対する態度及び措置ということをお話し願えばけっこうです。
  67. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 関連して……。私は公海の自由を主張することは正しいと思いますが、それでは公海の自由ということば何を意味するかというと、お互いが使う自由があるということだと思う。ところが今回の場合はビキニのあの広い水面を、海域を、五カ月にわたってとにかくアメリカが独占するということであって、そのためにアメリカはあそこを使うことは公海だから自由だ、その結果日本があそこに魚をとりに行くこともできない、そういう不自由が起ってくる、これは公海の自由でないわけです、われかれの立場からいうと。公海の自由というのは相互的な問題であって、決して一方的な問題ではない。アメリカ公海の自由を主張するかわりに他国に対しては非常に不自由を押しつけているということになる、われわれの側から見れば、公海の不自由ということで、公海の自由という原則はあそこで破られているわけなんです。だからわれわれは当然公海使用の自由という立場からでもこれに対する抗議はすべきである、私はそう考えておるのですが、外務大臣公海の自由の立場に立ってアメリカに抗議を申し込まないという立場をとられるようですがどうですか、公海の自由の立場からわれわれは抗議すべきだと思います。
  68. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ちょっと私もよくわからないのですが、公海におけるさようなことをしてもらいたくない、これは日本利益にも関係するのだからということで申し込んでおるわけであります。そしてまたその主張でもって将来もいこうということは繰り返し繰り返し申し上げておる通りでありますから、何だか申し込む気持がないと断言されるのはおかしいと思います。公海の自由の方面からの議論は、非常に日本主張の基礎になると私は思います。そしてまたそうしておるのであります。だから公海を力のあるものがここは漁業は相ならぬ、ここはこういうわけだからふさぐ、こういうことになってくれば、これは公海の自由の原則に私は反すると思う。それが今そこまで国際法が認めておるかどうかということが今議論の焦点になっておるのであって、国際法としてそこまで確立していないという建前を相手方がとっておるから、これに対してこちらは国際法上そういうことを禁ずるというところに持っていこうと将来にわたって努力するわけです。これはもう変りはないわけであります。そこで……。
  69. 曾禰益

    ○曾祢益君 これの回答に対する措置ですね。
  70. 重光葵

    国務大臣重光葵君) これは回答は実は今これをまだ十分に検討尽すいとまがございませんでした。そこで十分に検討して、いわば主張を実現するためには、私は相当長くかかると思うのです。国際連合や何かにこれはしつこくこちらの主張を繰り返さなければならぬと思っております。そういう余地がどこにあるかということを十分検討して、先ほどの御趣旨は十分に一つその趣旨によってやりたいと思います。賛成です。
  71. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 私は超党派外交を信じているもので、反対党の羽生さんその他の御意見も始終謹聴しておるのです。どうしてもそういうふうに持っていかなければならぬ。この日ソ交渉に関して私の見るところでは、今の政府の案はまあ最低の要求だと思う。何となれば、ソビエトの方が法律を犯して侵略してきたんだ、日本は被害者である、そして今まであの有為有能なる松本全権があそこで交渉してあそこまで話がやってきた、それを見てみると、こっちの方ばかりが譲っておって、向うの方は占領した区域より一歩も退いておらぬ。賠償の相互キャンセルといったって、日本は満州とか樺太あたりから数十億米ドルに達するものが、戦利品だといって取られておるけれども、こちらはロシヤ人に対して何も損害を与えた覚えはないんですから、これは一方的の問題であって、で、まあ日本の安全から考えて今の要求は最低である。国後、択捉二島、これは北海道のことから考えてみても……。  今一つ私はきょう伺いたいのは、領土問題とともに海峡の航行権、あれをロシヤの言う通りにしたら、日本海の性質は変ってしまって、あの言う通りいれたならば、共産圏から裏日本方面、北海道方面に対する脅威というものは非常に大きくなって、未来永劫日本の安全は脅かされる。こんなことはないということは皆さん方から承わっておったんですが、最近ではその問題が一向進捗しないんだと、その点までも向うはがんばっておるというので、こういうことを考えてみれば、松本さんがまあ見合いをやったということで、それで帰ってくるということは、これはやむを得ぬ、今外務大臣の責任を問うたりするということは少し早過ぎるのではないかというふうに私は思っておるんです。それで海峡のロシアの主張する通行権、私はこれは非常に重大な問題だと思っているんですが、これはどういうふうな話し合いになっておるのか。こんなものはブロックするのは当然だろうというふうに承わっておったんですが、一向そうなっておらないものですから、その一点今までの交渉の経過をお差しつかえない限り承わりたいのです。
  72. 重光葵

    国務大臣重光葵君) 海峡の航行権の問題はお話通りに国家主権に関係する問題であるわけで、きわめて重要な問題であるということはわれわれもよく頭に置いております。置いておりますが、これは海峡でありますけれども、やはりこれは領土権の問題と関連した観念の問題でございます。それで島の問題、領土権の陸の問題が話し合いがつけば、同時に話し合いをつけ得るというふうな考え方で、むしろ領土権の問題を主にして議論をしてきたような経緯がございます。そして結局領土権の問題で対立して話がつかないので、従いまして海峡の問題も話が結末がつかないまま延期になっておるという形のように電信には見えます。領土権の方が解決がつけば、海峡の問題もそれだけ解決が容易になるというふうな空気になってこれは進んできて参っておるわけでございます。経過はそういうことでございます。
  73. 野村吉三郎

    野村吉三郎君 そこは非常に御楽観のように見えますが、私は海峡航行権の問題は非常に重大な問題だと思う。シベリアの問題に関連して非常に自分のエグジステンスの問題としてやっておる。そうして今の軍艦やオネスト・ジョンで日本が騒いでいるんですけれども、みんな最新式の軍艦、誘導弾を持っておるんですが、ロシヤの軍艦だけが津軽海峡、函館沖を勝手に往来する、対島海峡を勝手に通るのだ、日本にはそんなものはない、そういうようなことを考えてみると、海峡をロシヤだけが通ってよその国の船が通れないのだというようなことになったら、日本海の性質はすっかり変ってしまって、大問題になるんじゃないか、日本の将来の安息に関する問題じゃないかというふうに自分は感じておりますから、これは一つ自分の意見にすぎないのですが、そういうところを御参考までに申し上げておきます。
  74. 山川良一

    委員長山川良一君) それではこれで時間も大分過ぎましたようで、大臣に対する質疑はこれで終りたいと思います。     ―――――――――――――
  75. 山川良一

    委員長山川良一君) それでは次に日本国とカンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。  本件について御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  76. 羽生三七

    羽生三七君 本条約はきわめて簡単なものですが、内容的には一般的抽象的な問題だけで格別具体的なものは示されておらぬのですが、移民とか通商関係、こういうものは具体的にどうするか、何か別個の取りきめをやるのか、その辺はどうですか。
  77. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通り、本協定はごく大きな原則的な規定だけでございまして、経済的の事項、移民に関する事項というのは、将来逐次話し合を遂げました上で、協定を結びたいという考えでおるわけであります。
  78. 羽生三七

    羽生三七君 それで、カンボディアは独立国家になったわけですが、現在までの貿易金融関係というようなものは、フランスとの間に結ばれた協定によって規律されておったというふうに考えるのですが、この協定の結果として当然対仏関係の問題が起ってくると思うのですが、それは将来どうなるのか、またそのほか貿易金融以外にも、従来のフランスと日本との関係で、何か対カンボディアとの新たなる友好条約締結によって、変更を起される問題があるかどうか、この点をお伺いいたします。
  79. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せのようにカンボディアと日本の間は日仏貿易の一部でございまして、最近実は昨年シアヌーク総理が見えましたときに、日本から貿易取りきめ案を提出いたしたのでございますが、それはカンボディアは独立の立場において日本と直接の貿易関係を策定しようという建前で出したものでございます。ただ先方はまだ通商経済関係につきまして外国と協定をいたしました経験が浅いものでございますので、十分検討をした上で締結したいということで、日本側の案を持って帰った次第でございます。従いまして、取りきめもなるべく日本側としては早くしたいということになっております。貿易以外の分につきましては、移住協定の案をいうものを昨年の暮にやはり話し合ったことがございます。これは移民にも関係があるところでございますが、移民のみならず一般の人間にも適用される協定でございます。それもまだ話し合い中でございまして、まだ今のところいつできるかという見当はついておりません。それ以外にはカンボディアの独立に伴いまして、差し当り別個の協定を日本と結ぼうとしておる事項はございませんか。
  80. 羽生三七

    羽生三七君 内容的には第五条が主たるものとなるわけですが、移住関係については先般矢口局長も現地に行かれたようですけれども、具体的にどういう話し合いをされたのか、その辺を一つ承わりたいと思います。
  81. 矢口麓藏

    政府委員(矢口麓藏君) 向うに参りまして話し合いをしたことをお答え申し上げます。これはただいま条約局長からも説明いたしました通り、去年の暮にシアヌーク首相を首班とするミッション一行が参りまして、移住に関する細目は現地できめるという約束ができておったのであります。その約束に基きましてこまかい点をはっきりさすという目的をもって参ったのであります。  まず第一に一応の話し合いがきまりましたことは、移住者の数が一年間に一万人、五カ年間に五万人、それから先は追って考えるというのであります。その内訳につきましては、主として農業移住者を歓迎するが、農業に限らず、工業についても漁業についても林業についても一般中小企業についても移住者を歓迎する。そのワクは一万人ということであります。そしてその受け入れ施設につきましては向うは腹の底に持っておりますのは、賠償請求権の放棄等がありますので、それに財政上建国早々で非常に困難な立場にもありますので、主として日本側が見る、先方が見ますのは、実を建てるについての材木の伐採権とか、あるいは持って参りますところの機具、機械、そういったものを無税にするとかあるいは港から現地までの輸送機関先方が持つとかいうようなことでございまして、自余のものは主として日本側が見る、税金につきましては三年間無税にする、与えられる土地につきましては、一人について五町歩ないし十町歩ということ、それから兵役の関係につきましては何もない。本人が義勇軍を志願するときはその限りにあらず。それから国籍の問題につきましては、五カ年間滞在の後に向うの言葉によって試験した後に、希望者は帰化することができるかもしれないということ、それから男女の比率につきましては、当時は女子二十人に対して男は八十人という割合でございましたが、それもわれわれが帰りましてから、吉岡大使の折衝によりまして十人の男に対して六人の女、こういう比率になったのであります。話し合いの大きな点は大体そのようであります。
  82. 羽生三七

    羽生三七君 今のお話の中に、五年を過ぎたならば、現地語で試験をした後に、必要に応じて帰化を許すというお話ですが、そうすると、これは場合によったらまた皆集団的に日本引き揚げてくるということもあるのか、私どもは少くとも新らしい形の移民とか移住者ということを想定する場合には、たとえばカンボディアで言えば、日本人が現地へ行ってカンボディアの人民ととけ込んで、昔の国策移民型でない新しい一つのタイプというものを作り上げていくということを想定しておったのです。そうでなければ、何か農業技術指導というような意味で、技術者として一定期間を限って行くということも別途考えられる。ところが今のお話によると、五年後にはまた引き揚げてもいいというようなことになるのか、そうすると、これはどういう性質の移住者になるのか、その辺の性格というものはどういうものでありますか。
  83. 矢口麓藏

    政府委員(矢口麓藏君) 決してそういう意味では、ございませんで、向うとしては一日も早く同化してもらいたい、とけ込んでもらいたいという強い念願を持っておりますし、一方わが方といたしましても、近時の移住政策は御承知通りまず受け入れ国に同化するという点に、ございますものですから、できるだけ早くとけ込んでもらいたいというのが双方の念願でございます。今申し上げました五年間というのは、とにかく五年たてば希望者が帰化できるというのでありまして、希望しなければできないのです。また試験に落第すればできないのであります。それはオプションでございまして随意にできるのであります。そこらはお説の通り双方とも同化するということを強く念願しております。
  84. 羽生三七

    羽生三七君 これと関連して、ラオスやヴェトナムとはどういう関係になるのか、何か動きがあるのかどうか、その辺はどうでありますか。これらの移住関係だけでなしに、何か条約あるいは協定の問題として。これは条約局長ですか。
  85. 下田武三

    政府委員(下田武三君) ただいままでのところラオス及びヴェトナム側からこの種の条約締結しようという話は別にございません。特にこの協定ができましたのは、シアヌーク総理の個人的の対日親愛感というものが大きな原因をなしておると思うのです。さしあたりのところこの種の協定は旧仏三国ではカンボディアだけでございます。
  86. 山川良一

    委員長山川良一君) ほかに御質問ございませんか。
  87. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一点だけお尋ねしたいと思います。第四条の財政協定というのはどういうことを考えておるのですか。
  88. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは融資等の場合の金融協定のことを考えております。
  89. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうだろうと私も想像しておりますけれども、財政上の協定というとおかしいような感じがするね。意味はそういうものですね。ファイナンスの方ですね。
  90. 下田武三

    政府委員(下田武三君) ええそうです。ファイナンスの方です。
  91. 山川良一

    委員長山川良一君) ほかに御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 山川良一

    委員長山川良一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  93. 羽生三七

    羽生三七君 この条約については承認することに賛成をいたしますが、先ほど質問の際にも申し上げたように、これは内容的には非常に抽象的なものでありますので、この条約の精神が実質的に生かされるような具体的な取りきめを、すみやかに行うことを希望して賛成をいたします。
  94. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 カンボディアはSEATOに加入することを極力否定している国ですし、非常に平和を愛する国だと私たち考えておるのです。その国との間に今度の条約が結ばれるわけですが、この条約を見ますと、平和五原則の精神が盛られておると思うのです。そういう点から、私はこの条約に賛成するものでありますが、ただいま羽生委員が申されたように、この条約に盛られた精神が実際的に行われるように努力されたいと思います。
  95. 山川良一

    委員長山川良一君) ほかに御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 山川良一

    委員長山川良一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。  日本国とカンボディアとの間の友好条約批准について承認を求めるの件を問題に供します。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  97. 山川良一

    委員長山川良一君) 全会一致でございます。  よって本件は全会一致をもつて承認すべきものと決定をいたしました。  なお、本院規則第百四条により本会議における口頭報告の内容、第七十三条により議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例によりこれを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 山川良一

    委員長山川良一君) 御異議ないと認めます。  さよう決定いたしました。  それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本件を承認された方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     佐藤 尚武  石黒 忠篤     杉原 荒太  小滝  彬     梶原 茂嘉  黒川 武雄     須藤 五郎  羽生 三七     鶴見 祐輔
  99. 山川良一

    委員長山川良一君) それでは外務委員会はこれにて閉会いたします。    午後三時二十五分散会      ―――――・―――――