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1956-02-23 第24回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月二十三日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席分科員    主査 松浦周太郎君       井出一太郎君    今井  耕君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       重政 誠之君    須磨彌吉郎君       山本 猛夫君    足鹿  覺君       井上 良二君    川俣 清音君       小平  忠君    川上 貫一君    兼務       井手 以誠君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局次長) 原  純夫君         国税庁長官   阪田 泰二君         農林事務官         (大臣官房長) 谷垣 專一君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      安田善一郎君         農林事務官         (農地局長)  小倉 武一君         農林事務官         (農業改良局長         事務代理)   庄野五一郎君         農林事務官         (畜産局長)  渡部 伍良君         農林事務官         (蚕糸局長)  永野 正二君         食糧庁長官   清井  正君         林野庁長官   石谷 憲男君         水産庁長官   塩見友之助君  分科員外出席者         総理府事務官         (自治庁税務部         市町村税課長) 鎌田 要人君         大蔵事務官         (国税庁税部         所得税課長)  亀徳 正之君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  野田哲五郎君         農地局参事官  戸嶋 芳雄君         農 林 技 官         (農地局建設部         災害復旧課長) 任田 新治君         農林漁業金融公         庫理事     小山 正時君         農林漁業金融公         庫自作農資金課         長       川島 敬忠君     ————————————— 二月二十三日  分科員今澄勇辞任につき、その補欠として井  上良二君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員井上良二辞任につき、その補欠として  今澄勇君が委員長指名分科員に選任された。 同日  第四分科員井手以誠君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算中経済企画庁、外  務省農林省及び通商産業省所管  昭和三十一年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管     —————————————
  2. 松浦周太郎

    ○松浦主査 それではこれより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昨日に引き続き、昭和三十一年度一般会計予算及び同特別会計予算中、農林省所管についての質疑を継続いたします。井手以誠君
  3. 井出一太郎

    井出分科員 農林省関係については、重要問題はすでに委員会においても質疑されておりマすので、私は、災害復旧のことと農薬被害について若干お尋ねいたしたいと存じます。  農林省事務当局は、予算編成に当って、過年度災害は大体三十一年度には完了する予定のようでございましたが、提案された予算によりますと、昨年よりも相当額減額になりまして、この予算では早期完成はなかなかむずかしいようであります。  そこでお尋ねいたしますが、予算説明によりますと、二十七年災までは残事業量の四〇%、二十八年災は全体の七五%までを完了するとありますが、二十六年から三十八年くらいまでは三十一年慶で完了するわけには参らないのか、そういうやりくりはできないのか、その点をまずお尋ねいたします。
  4. 小倉武一

    小倉政府委員 私どもの当初の予算要求といたしましては三十九年災まで全部完了したい、こういうことで折衝いたしたわけでございますが、結果は今お尋ねのように、二十八年災は七五%、二十九年災は七〇%に終っておる、こういうことに相なっております。予算の実行上、これを極端に引き上げるということは、全体の予算が三十一年度ば九十八億でございますのでむずかしかろう、かように思います。
  5. 井出一太郎

    井出分科員 二十八年災は全体の七五%とありますが、説明にあるように、二十七年以前の災害については残事業量のほとんどを完了し、かようになっております。二十九年災害については総事業量の七〇%とありますので、これを差引いたしますと、なお残事業量が二百十六億に上っておる、二十八年災害が七五%完了するという数字はどうしても出てこないのであります。現地に参りますと、三十年度まではやっとやっとぐらいです。しかしまあ大蔵省とも話し合いしてどうなりますかわかりませんが、だいぶ率が現地よりも高くなっておるようであります。幾ら計算しましても、この予算では七五%には達しません。私はずっと前に出された当時の災害資料を持って参っておりますが、いかに計算しても七五%にならないのであります。その点はどうですか。
  6. 昌谷孝

    昌谷政府委員 お答え申し上げます。二十七年災までは残事業の四割という説明をいたしておりますが、その結果、残ります経費といたしましては、農地関係で申しますと約六億でございます。当初の総経費は約二百五十億程度予想されておりますので、その意味におきまして、二十七年災以前につきましては、残工事の四割を完了することによりまして、ほとんど完了いたすというふうに御説明いたしておる次第であります。  なお、三十八年災につきましては、三十一年度予算によりまして工事を行います結果、三十二年度以降に残ります要経費は約百億でございます。従来までに完了いたしましたものを含めましての総復旧経費は四百三十五億でございますので、その意味におきまして、おおむね七割五分を完了しておる、さように御説明申しております。
  7. 井出一太郎

    井出分科員 農地関係災害復旧に九十八億が計上されておる。ところが二十六年災、二十七年災がほとんど完了するまでに経費を支出し、二十九年災にも出しますと、残った金はおそらく七十億弱、六十数億でありましょう。ところがあなたの方の資料によりますと、三十一年度以降に残った卒業量は三百十六億、どうしても七五%には達しないのであります。おそらく六五%か六八%でしょう。あなたの方の数字の間違いではございませんか。
  8. 昌谷孝

    昌谷政府委員 農地関係災害復旧費予算、三十一年度九十八億はお説の通りでございますが、それの年度的な割り振りといたしましては、一応予定いたしておりますのが、二十六年災、二十七年災で先ほど申し上げましたように、四億七千万円、二十八年災で約七十億、二十九年災が約十億、当年災が約十三億ということであります。それで先ほど申し上げました総経費に対する割合、あるいは残経費に対する割合を出したわけであります。
  9. 井出一太郎

    井出分科員 三十年度末にやっと五二%程度竣工率であるのに、それが七十億そこそこの二十八年災害に対する経費でどうして七五%になりますか。そんなことになるはずはありませんよ。間違いではございませんか。
  10. 昌谷孝

    昌谷政府委員 二十八年災につきましては、先ほど申し上げましたように、総国費におきまして四百三十五億という査定をいたしております。これに対しまして従来までに行いました事業、それから三十一年度予定しております。十億を加えますと、三十二年度以降に残ります二十八年災害国費所要額は約百億になります。総事業量と総国費の間に資料の上で多少の食い違いがあろうかと存じますが、私ども申し上げておりますのは、今申しました数字に基いておるのです。
  11. 井出一太郎

    井出分科員 この資料はあなたの方から三十年十二月十六日に出たものであります。毎月国費補助額が変るはずがないと思います。これによりますと、総経費は四百五十六億、三十一年度以降に残るものが二百十六億一千四百万円、そこでお尋ねいたしますが、現地の各都道府県における事業経費災害復旧金額大蔵省とあなたの方との関係金額において合致いたしておりますか。各府県数字相当大きいと思います。
  12. 昌谷孝

    昌谷政府委員 災害復旧工事量見積りあるいは残工事につきましては常に査定を続けております。私どもの出先で府県、財務局の調査と常に照合いたしまして、合いましたものから逐次取り上げております。御承知のように、地元災害申告数をそのままとるということはいたしておりませんで、その間要復旧費査定をやりまして調整をとっております。その過程におきまして数字食い違いが出てくることはやむを得ないと思います。終局的には各関係者意見の合致いたしましたところで数字を取り上げておる次第でございます。
  13. 井出一太郎

    井出分科員 一昨年から昨年の春にかけて最終の査定があったはずでありますが、その後もなお異動がありましたか。また今日ではすでに復旧費というものははっきりきまっておるはずですが、今でもだんだん事業量が減っておるようですが、いかがですか。
  14. 昌谷孝

    昌谷政府委員 逐次査定を重ねまして、数字の固まりましたものを取り上げております結果、前に計算されております数字が逐次減って参るということは、そのことの性質上やむを得ないかと存じます。それによりまして要復旧費がより正確になって参るということで逐次やっております。そこで決定のおくれておりますものは、決定を見ますまで最後的な予算をつけることをせずに、決定をしたものから予算をつけておりますので、一見そういう逐次減るような感じをお持ちになるかもしれませんが、これはそういう経費であります。
  15. 井出一太郎

    井出分科員 災害復旧費のことは毎年毎年繰り返しておりますので、本日は査定その他のことについてはあまり申し上げません。あなたの前の責任者の方あたりとはずいぶん公私の会合で、あるいは直接に相談をいたしてきたものであります。いろいろ申し上げたいことはありますが、同じことを何回も繰り返したくありませんので申し上げません。  それでは二十六年災、二十七年災は大体三十一年度をもってほとんど完了すると承わってよろしゅうございますか。その点だけはっきり承わりたい。
  16. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいままでに判明しております要復旧費二十六年災、二十七年災を合計いたしますと、約二百六十億程度になります。これに対しまして、ただいまの計算で参りますと、三十二年度以降に残るであろうと予想せられまするものが約六億ございます。全体の二百六十億のうち約六億程度がし残りとして残りますけれども、全体とのパーセンテージから見て、私どもはおおむね完了しておるというように御説明申し上げた次第であります。
  17. 井出一太郎

    井出分科員 二十八年度災はいつまでに完了なさる予定でございますか。
  18. 昌谷孝

    昌谷政府委員 二十八年災は、ただいま判明しております否定数字で申しまして、三十一年度で七割五分を完了するわけでございますので、残すところ二五%になります。私どもの希望といたしましては、なるべく早期過年度災害を完成いたしたいと思っておりますので、明年度財政事情が許しますならば完了いたしたいと思っております。
  19. 井出一太郎

    井出分科員 ちょっと水産庁にお尋ねいたします。水産庁関係災害復旧で二十六年災がまだだいぶ残っておるようでありますが、この二十六年災については三十一年度予算で大体完了なさる御予定でございますか伺いたい。
  20. 塩見友之助

    塩見政府委員 二十六年度災は三十一年度で全部完遂いたします。
  21. 井出一太郎

    井出分科員 二十七年度災はいかがでございますか。
  22. 塩見友之助

    塩見政府委員 二十七年度災もおおむね農地と同じようになっておりまして、大体八〇%見当は実行されるものと思っております。
  23. 井出一太郎

    井出分科員 大臣も大体災害復旧については御承知であろうと存じますが、鳩山内閣になってから毎年災害復旧費は減っておるのであります。なお各地には災害がそのままにされて、荒廃しておる。国土復興を主張されておる鳩山内閣にとって、災害復旧費が減っておることを私どもは非常に遺憾に存じております。特にひどかった二十八年災害について、当時吉田内閣は三・五・二の比率で三カ年で復旧する約束をいたしたのであります。もちろんその点について大臣責任はございませんけれども、少くとも三年、おそくとも四カ年でしなくちゃならぬはずのものであります。それが今なお完了せずに、事務当局説明によっても七五%、実際は六割に達するかどうかわかりません。私の方の佐賀県の相知は特に災害のひどいところでございますが、毎度の災害に死人まで出しておるようなところであります。まだほとんどの災害がそのままになっております。その実態に対して、大臣は非常に強い政治力を持っておられますので、三十二年度には、いわゆる過年度災害である二十九年度災まで完了なさる決意がおありになるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 お説ごもっともでございまして、ぜひ二十九年度までは、三十一年度予算でやりたいということで努力いたしましたが、財政の都合で実現を見ることができませんでして、はなはだ残念に考えております。従いましてお説の通り三十二年度におきまして御意見通りいたさなけれ、ばならない、こう考えて、せっかく努力するつもりでございます。
  25. 井出一太郎

    井出分科員 農地復旧については、建設関係と異なって、一日も早く食糧増産をしなければならぬという農民立場から、農協その他で金を借りて、復旧しておるのが多いのであります。そのために先般は京都の井手町でございましたか、町役場を閉鎖しなければならぬという事態に立ち至ったということも新聞で報道されておるのでありますが、多くの農地災害が借金によって復旧されておる、その負担がきわめて大きいのであります。従って三・五・二を約束したことを信頼いたしまして、借金して復旧しておる。その利子負担のために、二十八年度災については、せっかくの九割補助が今日では六割補助、五割補助、もっと下っておるところもございます。それでせっかくの高率負担もその効果を現わしていいないのであります。そういう面に対して、大臣は何とか救済の御用意があるかどうか、その点をお伺いいたしたい。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 災害につきましては、御承知通り、発生の当時には非常に熱意を持ちますけれども、時日の経過につれまして、地元に非常に同情すべき問題が多々ありますことは、私も同感でございます。従いましてただいま申し上げましたように、一日も早くこれが解決をいたすということにいたさなければならない点につきましては、全然同感でございます。御承知通り、たまたま一兆予算であるとか、緊縮予算であるとか、もしくは基礎を十分作るために、しばらく忍ばなければならないような現状にございますので、その目的が当初の予定通りいっておりませんことは、はなはだ遺憾に考えますが、なるべく機会を得まして、すみやかにお説の通りいたしたいと考えております。
  27. 井出一太郎

    井出分科員 私が承わりたいことは、補助金の交付がおくれたために借金して復旧した市町村農協に対して、せっかくの高額補助が大剛になり五割になり、そのやり繰りに四苦八苦しておる今日の実体から考えますならば、その利子補給政府が行うべきではないか。海運会社は、新聞によりますと、増配気がまえであり、金が余ってしょうがない。なるべく社内留保をしたいけれども、金が余ってしょうがないから増配しよう。それに今日なお三十一億円の利子補給がされておる。ところが政府の約束した三・五・二を果されぬがために、市町村農協においては金を借りて復旧しておる失体に対して、利子補給をなさる、いわゆる農民を愛するというあなたの農政の立場から申しなすならば、そういう心がまえがあるかどうかということをお尋ねしております。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 ごもっともな御意見でございまして、われわれにおきましても、御意見通り考えまして、いろいろ大蔵当局とも話し合いをいたしたのでありますが、何分今申し上げたような事情でございます。これは引続きその熱意を持って、御意見通りすることに尽力をいたしていきたいと思っております。
  29. 井出一太郎

    井出分科員 それでは農林大臣は、そういう農村災害実情に対して、利子補給をしたいという御意思でございますか。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 することが適当である、従って私といたしましても、十分努力するということに御了承いただきたいと思います。
  31. 井出一太郎

    井出分科員 もし議員立法においてそういう適当な法律が出ました場合には、これに協力して御支援下さる御意思がございましょうか。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 私どもの所属いたします党におきましては、予算の伴うものは議員立法を避けて、政府提案にすることに党できめてあるものでございますから、従いまして今のお話の点が議員立法で出ました際に、私がそれに対して協力するかということにつきましては、今申し上げた事情もございますので、政府部内におきまして、これが実現するために努力をするという私のお答えで御了承をいただきたいと思います。
  33. 井出一太郎

    井出分科員 事務当局にお尋ねいたしますが、いわゆる三万円以上十万円までの小災害はなお方々でそのままになっておるようですが、また情報によると打ち切られたような話もございますが、どういうふうになっておりますか。大体三十数億円に上る小災害国庫補助額に対して十数億円をきめられ、それで打ち切りになったという話を承っておりますが、いかがでございますか。地方に参りますと、法律できまった九割の補助を当然交付しなければならないものを、農林省が打ち切ったために、ある一定の時期まで藩主したものだけに補助金を交付する、文句が出た場合には九割補助を三割補助、四割補助に薄くして配分しているという事実が多いのでございますが、その点はいかがでございますか。はっきりと九割を補助するという法律があります。もし関係農民から政府に対して要求があった場合にはどういう事態になるのですか、その点もあわせてお尋ねいたします。
  34. 任田新治

    任田説明員 お答えいたします。小災害は三万円から十万円の範囲内で三十年度まで大体実施して参ったわけでありますが、親災害との比較におきまして、大体目的を果しまして復旧が済みました。その後二十八災以後のものにおきましては、、その災害地現状からいきまして、自粛がありましたり何かいたしまして、一応当初計画より若干下って参ったわけでありますけれども、終ったと見ておるわけでございます。
  35. 井出一太郎

    井出分科員 あなたは災害復旧課長さんですか。
  36. 任田新治

    任田説明員 はい。
  37. 井出一太郎

    井出分科員 本気でそんなことをおっしゃいますか。おそらく小災害補助金をもらった人で九割補助をもらった人はいないでしょう。補助金の恩典に浴した人は六割か七割か五割か知りませんけれども、そういう補助額をおそらく半分ももらっておりません。その間の事情うしろの方にいらっしゃる方はよく御存じです。農村実態がどんなものであるか、災害地実態がどういうものであるか、あなたが御存じないはずはないのです。三十数億円に上る小災害補助金が、大蔵省折衝でうまくいかないで十何億かで打ち切られておる。それを二十九、三十両年度で出すことにしてあなた方は地方庁へ指令を出しておる。従って地方庁では二十九年度までに着工していないものは打ち切りだというふうに宣言している。それに文句がある者は、それではお前たちは半分にしろ、三分の一に分けろ、こういうことで配分されておる、それを終ったとかなんとかおっしゃいますけれども、まだ終っておりませんよ。私は事実をよく知っておりますからそのくらいの答弁では承知いたしません。
  38. 任田新治

    任田説明員 その一地区地区につきましての適正な査定をいたした結果、減額しておるものがございますので、その減額決定したものについての九割は見ておるわけであります。総体に当初の復旧計画よりは額は下っておるわけでありますけれども、その地区の、たとえばほかの地区の配分も考えて比率が下ったという処置は、あるいは各県においてとっておるかもしれぬとは思いますけれども地区別査定の結果に対する九割の補助はやっておると私は考えております。
  39. 井出一太郎

    井出分科員 どうもおかしいですな。努力しましたけれども大蔵省との折衝でやむなくこうなりましたとおっしゃれば、私も事情を知っておりますから引き下りますけれども、実際はそうじやございませんよ。たとえば百カ所の小災害があった場合に、四十カ所だけが復旧に着手しておった。その分だけは認めて、あとは切り捨てだということをどこでも言っておる。これは現実ですよ。先刻申しましたように、それで文句が出た場合に、それでは困るから九割補助を四割補助、五割補助とか、あるいは三人で分けろということで打ち切っておる。しかし法律には九割補助が明記されておる。地方庁では適当に配分しただろうとおっしゃいますが、そんなことでは法律はばかにされたようなものです。いま少し率直にお話して下さい。
  40. 任田新治

    任田説明員 ただいまも申し上げましたように、地区につきましては、いろいろ検査院あるいは行政管理庁関係からの調査がございましたりいたしまして、その間当初計画よりも仮査定をした結果額が下っておるわけでございます。その額が下っておるものに対して九割補助を実施しておる、こういうふうに考えております。
  41. 井出一太郎

    井出分科員 農地部長はその点は御存じですか。今の話はでたらめです。そんなばかな話は御承知ですか。災害地に行ってごらんなさい。お前の方はまだ着工しておらないからもう打ち切ったとはっきり言っておるじゃありませんか。九割の補助は絶対にやっておりません。ほとんどもらった人はないでしょう。三十数億円に上る国庫補助額が——それは行政管理庁が何に言おうが、どこが何と言おうが、災害復旧はあなたの方が主体です。農林大臣主管者ですよ。それは現地に渡っていないのです。私の近辺でもやろうとしましたが、補助金が全然来ないのですよ。県庁も打ち切り役場打ち切りです。法律にははっきり九割補助すると書いてある。そうして最初二回か三回査定を受けてはっきり台帳に載っておる。それをなおあなたは完了したとおっしゃいますか。もしもらわぬ者から訴訟が出たらどうなりますか。
  42. 任田新治

    任田説明員 全国的には非常に多い、何万カ所というものでございますので、あるいは何地区かそういったような実情で、県において処賢をとられておるかもしれないと思うのであります。それについては十分調査を進めたいと思います。
  43. 井出一太郎

    井出分科員 今ごろになって十分調査を進めたいなんておかしな話です。当時の官房長であった渡部さんなんか、その辺の事情を知っているが、きょうは関係外ですから聞きませんけれども農地局長はそれは承知のはずです。あなたは災害地に行ったことがございますか。実際に災害地農民の話を聞いたことがありますか。そんなお話では絶対に引き下りません。百カ所の小災害地に対して補助金をもらったのが四割か五割、やっとそのくらいです。それでもなお九割はもらっておりません。五割か六割ですよ。打ち切ってしまっておきながら、あなたの方は二カ年間でこれをまかなってくれろと地方に対して言ってある。因果を含めてある。あなたはそれは御承知ですか。
  44. 任田新治

    任田説明員 打ち切った処置をしてあるというようなことは、私はしておらないつもりでございます。もちろん私は最近赴任したばかりでございますから……。
  45. 井出一太郎

    井出分科員 そんなことじゃだめだ。三十何億の問題だ。局長どうです。
  46. 小倉武一

    小倉政府委員 おそらく小災害補助につきまして、こちらの地元要求あるいは農林省要求と、財政当局からする査定との間の開きがございまして、だんだんと補助を実行いたします場合に、地方的に相当無理がいっているようなところがあるのじゃないかと思いますが、そういう点はお示しによりまして十分調査いたしまして今後善処したい、かように思います。
  47. 井出一太郎

    井出分科員 大臣もただいまの応答で大体おわかりだろうと思うのですが、三十数億円に上るものを、私は金額を忘れましたが、六億か七億、あるいは千億に上ったかもしれません、それくらいで打ち切ってあるのです。ずいぶん農林省から大蔵省にかけ合ってもらったのですけれども、どうしてもうまくいかない。やむを得ずそれではその当時まで着工していた分だけについて何とかしよう、そういうわけで打ち切り経費を出されている格好になっておるのであります。そこで、地方関係農民は、今か今かと今なお首を長くして待っているのです。それを今事務当局に聞きますとあれは済んだなんて、そんなばかな話はないのです。それが予算上の都合でということであればいたし方がありませんけれども、それが法律ではっきり九割補助が明記されておる。これは私は当然出さなければならぬ問題だと思うのです。大臣はこの点についてどういうふうにお考えになりますか。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 詳細は、はなはだ遺憾でございますがよく心得ませんけれども、大体こういうことだと思うのであります。御承知通り災害につきましては、農林省予算施行上、事故の起っておりますものは小災害割合に多いわけでございます。そういう関係で、どうも予算運用上遺憾な点が多いというような点から、俗な言葉で申せば評判の悪い予算だということになりまして、大蔵当局も、どうも予算がうまく使えない、会計検査院の方もやかましいし、なかなか地元まで徹底しにくい。むろん全部が全部ということじゃございませんけれども災害復旧事業補助金のうちで事故の起っておりますものは、比較的この種のものが多いものでございますから、そこで予算折衝の上におきましても、思うようにこちらの主張が通りにくいというようなことから、この施設はあまりやっても無理がかかるというようなことで、今までのもので一応従来のものを適当に片づけていく、というと語弊があるかもしれませんが、操作をして、あとは別の方で考えることにしたらどうだ、今後はこのやり方は考えなければいかぬじゃないかというようなことに現在なっておるのじゃなかろうかと私は思っておるのであります。私もこれは予算編成当時、こういうことを申してはどうかと思いますけれども、そこまで十分に注意も行き届きませんでしたが、大体申しますれば、今私が申しますように、補助金のうちでうまく使いこなせていないというものはなるべくやめるということになりがちなものでございます。実際私も農村におる者でございますけれども、一番大事なものはむしろそういうものが大事だということもあるかもしれませんが、やはりたとえば災害保険の運用がうまくいかない、事故が多いといいますと、どうしてもこれについては再検討を加えて考慮しなければならないというようになりますし、災害復旧補助事業につきましては、小災害にその事故が一番多いというようなことから、まず大きなもの、事故の少いものに重点的にいこうということになりがちな結果が、今御指摘のことになっておると思うのであります。今局長から答弁いたしましたように、特にそういうことで一応打ち切りの指令を出しますと、あとはほんとうにこういう事情だというものははっきり浮かんでくると思います。そういうことで御指摘のようなものにつきましては、あらためて別途考慮するということは決して不可能なことでございません。事情によりましていたすことは決してできぬことではないと思います。ただ総じて査定が不十分であるとかもしくは実情が違うとかというようなことで、あとから問題が起りやすいものでございますから、そういうことで事務当局におきましても善処いたしたいと申しておると思いますので、私もその処置を正しくやらせることがいいだろう、こう考えておりますから、一つ御指摘をいただきますれば、それらにつきましては十分考慮いたして進むということにして参りたいと思います。
  49. 井出一太郎

    井出分科員 どうも聞いておりますと法律できめられたことがいいかげんに扱われておる。なるほど災害復旧については不正使用とかいろいろなことが言われております。しかしそれは政府部内の問題であって、農民のことじゃないはずです。主管省である農林省がしっかりしておれば、そんな問題は起らぬはずであります。予算の組み方がどうだとかそんなことを言われるなら、むしろ主務省のだらしのないことを表明するものです。そういう事実があれば何とかしょうというお話でございますが、それはあなたの方が進んでしなくちゃならぬ問題だと思うのです。そういう事実がはっきり、たくさんございます。おそらく百の小災害のうち五、六十カ所はそのままになっておる。復旧はされておるけれども補助金はそのままになっておる、そういう事実でございますので、進んで農林省がそういうものについてはこの際申請をしろと、こういう通達をなさる御用意がおありになるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見でございますけれども、何分にも何万という小災害地を一々係を本省から派遣して調査するということは、ほとんど不可能なことでございます。従いまして、現地の申請によってこれを認定いたしておるわけでございます。そういたしますと、私も実は役所の中に入って驚いたのでございますが、相当大きな事故にいたしましても、前回の写真をもって申請される、今回は全然災害がなかったにもかかわらず前回の写真をもって指定地の要求をされるというような事故が、全然絶無ではないのでございます。そういうことで小災害に至りましては、一々現地に人をやるわけにはいかず、そうして参りますものが会計検査院の指摘するところによりますれば、事故が多いというようなことで、今回補助の基金制度を作りましたものの、こまかいものについては中央から調べにいくわけにもいかず、調べにいかなければ役人がだらしがないとか、役所の事務が怠慢だとかいうことは、決してないとは申しませんけれども、不可能なことを要求しても私もできぬだろうと思う。してみれば、これをやはり地元責任においてやっていただくようにしなければいかぬ。そういうようなことも、決してこの問題をとらえて申すのじゃございませんが、やはりこ衣かく地元に配分される金については、これは地元責任においてやっていただく方がいいじゃないかというようなことも考えてみたり、いろいろなことを考慮しつつ工夫をこらしているわけでございます。今御指摘の小災害につきましては、何分三万、五万というものの事故について災害地を調べて回る、何万という個所を一々調査して回るということもとうていできませんしするので、そういう結果が出てき、その結果が今申し上げたようなことになるのでございまして、これは今申しますように、一応先ほど課長からお答えいたしたような処置はとってありますが、また一方、実情はただいま御指摘の通りそういうことになっておる、正しい地区においてそういうことになっておるところが全国にあるだろうと思いますので、これらにつきましては、地元要求府県からの実情の報告によっていたすよりほか仕方がない、その上に考慮するより仕方がない、こう考えるのであります。
  51. 井出一太郎

    井出分科員 今お述べになりました農業基金制度については、私ども意見を持っておりますがきょうは触れません。  そこで、件数が多いからなかなか困難とおっしゃいましたが、そのために地方公共団体の仕事を信用しないわけには参らぬ。地方の申請を信用しないというわけにはいかないわけです。また次々に査定を受けるとか、会計検査がやかましいとかおっしゃいましたけれども査定はきびしくともかまいませんよ。いかにきびしくとも当りまえの申請をし、当りまえの補助金を出してもらえばそれで済むのです。ただ何回も繰り返し繰り返し査定をされる、そして無理に金額が補正されていく、こういうことをみな心配しているのです。それでは最後に大臣にお聞きいたしますが、本年から役場を通じ、県庁を通じて申請がありますならば、直ちに査定して、正しいものに対しては補助金を交付なさる御意思があるかどうか。その点だけを承わりたい。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、今直ちには、予算がございませんから、できませんが、そういうものが出て参りますれば、別途これについて考慮いたします。
  53. 井出一太郎

    井出分科員 別途に考慮をなさるっいえば、正しい、当然支出しなければならないことが判明すれば、法律に従って補助金を交付なさるということでございます。
  54. 河野一郎

    河野国務大臣 一応全国的に地元は済んだことになっておるわけでございます。しかし今御指摘のように、そういうものが事故がある、これについて処置が徹底しておらぬものがあるということになりますれば、それについては今申し上げましたように、別途これを考究して善する、こういうことでごいます。
  55. 井出一太郎

    井出分科員 大体百のうち五、六十件はございましょうから、私が都合によってはまとめて持って参りますから、よろしくお願いいたします。そこで、ほかにも大臣に対する緊急質問があるようですから、ついでにもう一点だけ大臣に承わっておきたいと存じます。例の農薬被害の問題。大臣は農林委員会においても何回も農薬被害の対策樹立を言明なさった。また被害漁民も大臣を非常に信頼しておったのであります。ところが出されました対策によりますと、三十年度の補正予算を除いて、三十一年度予算にはわずか四千八百万円くらいしか組んでいないのであります。しかも三十一年度打ち切りだということが、当局から伝えられている。そういうことで、非常に関係被害漁民は不安におののいておるのであります。転業もできない。対策も講ぜられない。非常に困っておりますが、そこで私は結論的にお尋ねいたしますけれども、今直ちにこれを増額するというわけには参りませんでしょう。そこでこの後も引き続いて対策費をお出しになるお考えがあるかどうか。三十一年度打ち切りでは困るという声が非常に強いのでございますから、三十二年度以降も引き続いて本年同様の措置をおやりになる御意思があるかどうか。これが第一点。  第二点はこの被害漁民はほとんど零細漁民であります。信用が薄いためにほかの金融機関から借る力もないのであります。従って転業資金を非常に求めております。松業資金を非常に強く要望いたしております。これについても何らか出せるような御用意か対策があるか、この際あわせて承わりたいと思います。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 有明海の農薬被害の問題につきましては、地元調査その他を十分取りまとめていろいろ対策について考究しておるのでありますが、今お話のように、これはこれで打ち切るべき性質のものじゃない。なるべく被害が起らぬようにすることが一番大事でございますが、引き続いて被害がありますならば、これが対策について当然続いてやっていくべきものであって、被害の有無を考えずに予算を今年限りで打ち切るということはあり得べきものではない。続いて被害がある以上は続いてやる。被害がないように努力したいと思います。  さらにまた転業資金その他につきましては、できるだけ御協力申し上げるということは当りまえでありますから、できるだけ一つ農民の御要望にこたえるようにして参りたい、こう考えております。
  57. 松浦周太郎

    ○松浦主査 井上良二君。
  58. 井上良二

    井上分科員 私特にこの際発言を求めまして、農林大臣に対して、一、二点重要問題について質問いたしたいのですが、それは一つは、先般農林省の多分平川次官が、硫安工業協会の石毛会長に対して「硫安工業関係の労務賃金について」という通達を出しております。この通達は、その考え方いかんによりましては、いろいろにとれるかもしれませんけれども、今合化労連を中心とする硫安工業関係の労働者は賃上げの要求をいたしまして、相手方と具体的な折衝を開始いたしておるので、このときに政府がこの賃上げ闘争に対して、もし賃上げの余地がかりにあるならば当然硫安を引き下げるべきである、こういう意図を含んだ通達を出すということは、労使の紛争を政府みずから政治的関与する重大な問題でございまして、今後他産業における諸般の紛争に対して影響するところが非常に大きいのでありますから、この際特に重要に考えますので、農林大臣のはっきりした御答弁を求めたいのであります。特に重要と思われる点は「労賃の上昇を以って直ちに肥料価格の引下げの阻害要因となし、若くは肥料価格の上昇の要因となすが如きことは、当省としてはこれを看過しえないところである。以上の観点より、この際肥料消費者である農家の側にも、肥料価格の面における利益を充分に考慮せられるよう、特に善処を期待する。」さらにその続きに、「貴協会傘下の各会員に対しては、貴職より上記の趣旨を通報する等適宜の措置をとられたく御願いする。」と、こういう要請がされております。このことは農相は、現在の肥料産業の労働者の労働賃金が他産業に比べて非常に高い、その上にさらに値上げをするということになれば、せっかく農民に安い肥料を供給しようと思って一いるのに、それではできぬことになる。だからこの際賃金値上げの余地があるならば、当然肥料も値下げすべきである。こういう趣旨であろうと思います。そうしますと、一体今日合化労連を中心にする硫安工業の労働者の賃金体系というものが、あの産業形態の過電労働の現状から考えて妥当な賃金であると思うか、それとも高過ぎると考えての通達であるか、その点を明確にされたいと思います。
  59. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまのお尋ねのうちで御指摘になりました通り農林省から石毛君に出しました通牒の前段にこう示してあります。朗読いたします。「もとより当省としても労働者の労働条件の適正な改善に反対するものではない。」ちゃんとこう書いてあるのでありまして、適正な改訂はけっこうであります。それについてとやかく申すものではございません。この点を御留意願いたいと思うのであります。これを改善してはいかぬ、今のところわきの産業より高いからこれ以上上げる必要はないということは決して申しておらないのでございます。この点は私は最も注意をいたしまして、妥当公正に労働条件をきめていけということを要求しておるわけでございます。
  60. 井上良二

    井上分科員 前段の御趣旨はわかりますが、後段においてただいま私が指摘いたしましたように、労賃の上昇は肥料値下げの大きな阻害になるからそういうことは許さないぞ、またそれは肥料代上昇の大きな要因になるというので当局としては認めないぞ、こういう裏打ちをしているわけです。このことが実は重要であります。だから農相は硫安産業を中心とする肥料産業の労働者の賃金が他産業に比べて安い賃金コストであると考えるのか、あるいは高過ぎると考えてこれを意図しておられるのか、これが一番大事であります。問題はそこにあるのです。だからその見解をただしておるのです。
  61. 河野一郎

    河野国務大臣 これを通してごらんいただけばおわかりの通りに、ただいま申し上げました通り、適正なる改善に反対するものじゃない。だから適正に改善されることは労使双方の間でおきめになることでございますから、それについてとやかく申そうという意図はございません。ただしそれが適正な労銀を越えて、労銀が上ったから肥料の値上げをしなければならぬ、こう言われては困るということを申しておるのであって、これは農民の利益を代表して申す立場から申せば当然で、注意をうながしておることはあたりまえだと思うのでございます。これをしもお小言をちょうだいする理由はなかろう。私は適正なる改善に反対をしないということをはっきりうたっておるのでございます。適正な改訂をされることはけっこうだ、適正な労賃にきまったものについては農村側もとやかく申すのではありません。しかしそれが万一不適正に高くされることは困ります。それじゃ適正、不適正とは何だということになると、それがきめられたときに世間がそれを考えれば、適正、不適正ということはおのずから世論の批判があると私は心得ております。
  62. 井上良二

    井上分科員 少くともこの通達を出す以上は、肥料価格はこのくらいが正当な価格であるという前提に立って、たとえば農林者が意図しておる肥料価格はこれくらい下げるべきである、下げるには生産コストをこうすべきである、その生産コストの中の要因たる労賃の部分はどうすべきであるということを、およそ肥料審議会でも検訂されてきておるはずです。肥料審議会の肥料比産におけるそういうコストの審議過程を通じて、肥料産業の労働者の賃金が高賃金であるか低賃金であるか、あるいは他産業に比べて大体あの労働過程ならばこれを妥当とするかどうかというようなことは慎重に検討されておるはずです。そういうことをあなたが知らぬとは言わせません。知っての上のことであります。知っての上においてかような通達を出すということは、明らかに労使双方に起っておる賃金紛争に対して、政府農民の利益を守るという唯一の武器をもってこれに対して政治的干渉をしておることは事実であります。それならば何ゆえ貴職を通して傘下の各工場に対して、各関係産業に対して、政府の意図を十分伝えるように善処されたい、適宜の措置をとるようにされたいといったのか、適宜の措置とは具体的に言えば何ですか。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 適宜の措置とは、政府から会長に通達いたしましたから、その通達を傘下の協会員たる会社に対して通産をしてほしいということが適宜の措置であります。
  64. 井上良二

    井上分科員 そういたしますと、政府がこの通達を出すに至った根本理由は何ですか。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 根本の理由は私は明瞭に申し上げることができます。昨年の末におきまして、御承知通り、硫安関係の各会社で出しましたボーナス——これは決して労働者諸君とは申しませんが、ボーナスが非常に多かったということが新聞記事に載って、世間を非常にうらやましがらせたことは御承知通りであります。これを見た農民が硫安とはあんなにもうかるものなのか、それなら農林大臣はもっと硫安の値を下げたらどうかということで、農民を非常に刺激したことは事実でございます。でございますから、過ぎたことはともかくといたしまして、今こういう問題が起きても、前にそういうことがなければ私は申さぬのであります。そういう事態がなかったのに私が事前にそういうことを予想してやったというのならこれは行き過ぎだと思います。事前にそういうことがあって、農民諸君から事ごとにそういうことが出て参りますから、今回適正な処置をしてほしい、昨年の暮れのようなことがあって、農民をいたずらに刺激するようなことがないようにしてほしい、そういうことを申すことは私は当然の処置だと考えております。
  66. 井上良二

    井上分科員 昨年の暮れの賞与が他産業に比べて非常に多かった、だから今回の賃上げ闘争も他産業に比べて非常に出過ぎたことをやっては困る、こういう御趣旨から今回の通達は出された。こういう話ですが、一体さような賞与に多く支払われるような利潤を生ずる原因はだれが一体作ったのですか、たれが生産を上昇さしてさような利潤を生み出すに至ったのですか。労働者に不当な年末手当が出されたことにそれほどあなたが関心を強められるならば、何ゆえに肥料産業を国家管理しないのか、何ゆえに肥料産業に対する生産をもう少し政府が管理しないのか、資本家側のふところに入る金の方は知らぬ顔をしておる、それでもって労働者の賃上げや賞与、これに対して政府がけちをつけるというのは、そこまで言うならば何で肥料産業に対して政府は具体的に統制管理をしないのですか、そういうことは一方的ではありませんか、そう思いませんか。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 今のお話は全然別の話だと思うのであります。肥料産業がよくなるのはいろいろ条件がありまして、労働者諸君の勤勉、創意工夫はむろん大きな要素でありましょう、その他に電力料金を押え、石炭の値が上るものを上らせないような措置をとるというようなことも非常に重要な要因でございます。たまたまそれらの要因が重なって今肥料産業がよくなったというようなことであって、私は肥料はもっと価格を下げて、世界的な価格までコストを下げなければいかぬという建前をとっておるわけであります。そうして日本農民は国際的価格で肥料を使えるようにしなければならぬというのが、年来からの私の主張であります。その意味において肥料産業についてはあらゆる方面から協力しておるつもりであります。従って肥料がもうかるようになったことは、労働者諸君の勤勉ももちろん大きな要因でございますが、他にもいろいろ大きな要因が加わっておるということであります。でありますから昨年来春に値を下げ、また夏に値を下げるという処置をとって、いやしくも合理的に運営してほしいということについては常に注意を払っておる次第であります。
  68. 井上良二

    井上分科員 河野農林大臣は、具体的にあなたが御指摘のように、肥料価格が国際価格に下回るように努力するということは当然の任務であります。そういたしますと具体的に一体労賃はどのくらいが妥当とあなたは考えていますか。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 労賃の妥当性はいろいろな要因がございますから、ただいちずに今労賃は何が妥当かと言うことはできぬと思います。従って労賃の決定のむずかしさがそこから生れてくると思うのでありますから、労賃は幾らが妥当だとおっしゃっても、これは幾らが妥当ということはむろん決定はできないと思います。
  70. 井上良二

    井上分科員 しからば今回の通達で労賃だけ取り上げたのはどういうわけです。
  71. 河野一郎

    河野国務大臣 労賃の問題が起っておりますから、そこで私は今申し上げる通りに、適正なる労賃をきめてほしい、適正な改善をなさることについてはむろん異存はございませんということを、明確に指示しておるわけでございます。
  72. 井上良二

    井上分科員 それは言いのがれであって、こういうときにはこのような裏づけはいらぬじゃありませんか。何ゆえに裏づけがいるのです。最初の適正なる賃金なら適正なる賃金だけでいいじゃありませんか。何ゆえにその上昇が直ちに肥料価格の引き下げを阻害する要因となったり、あるいはまたこれが肥料価格上昇の大きな問題になるということにならぬようにせよというようなことはいらぬことじゃありませんか。適正な価格をきめよということならば、労使の冷静な明確な態度にまかしておいたらいいのであって、何もよけいなことじゃありませんか。
  73. 河野一郎

    河野国務大臣 これは私は言わなければならぬことがあるのであります。なぜかと申しますと、最近硫安組合から石炭の値が上ってきた、何が上ってきた、だからむしろ逆に硫安の値段を上げるようなことも考えてもらわなければ困るというようなことを言ってきておりますから、それはそうは参らぬということを私は言うて、むしろ反対しておる立場でございますから、今度はまた何が上った、かにが上った、労賃も上ったでは困りますから、だから適正な価格でなければ困る。電力についても適正な価格をわれわれは主張いたしておるわけでございますから、後って申しておるのでございまして、全然理由なしに申しておりません。
  74. 井上良二

    井上分科員 しからばこの通達によって硫安工業会傘下の各会社が、政府がかような要請をしてきておるがゆえに、今回の賃上げ交渉に対しては応じるわけにいかぬと答弁をした場合どうします。
  75. 河野一郎

    河野国務大臣 それはそういうことの理由で政府が言うたから賃上げ闘争に応じることができぬと当事者が申しましたところで、それを労働者諸君がお聞きになる必要はないと思います。労働者諸君が適正なる労銀を要求することは当然の権利でございますから、それは大いにおやりになったらよろしい。そうしてもし労使の意見が合わたければ、第三者等が適正な労銀について話し合いをなさる機関がそれぞれあるのでございますから、私の言うのは、適正な手段によって適正におきめになることについては決して異存を申すものではないということを前段に明確に指示して、条件つきで言っておるわけであります。
  76. 井上良二

    井上分科員 それは詭弁であります。現実に資本家側が何とか賃上げを阻止しようとする考え方は当然です。その場合にあなたの方の援軍を送って、政府でさえこう言うているのだ、政府からこういう通達があった以上は簡単に聞けません。それははっきり政府とは言いますまい。農林大臣とか農林省とかいうことは表面には出しますまい。出しますまいが、それが大きな労働者側の要求を阻止する政治的な発言力を裏づけることになることは事実です。そういう経済闘争の紛争に対して、政府はその問題が解決しない限りにおいて、とやかく仮定でさようなことを言うことははなはだ行き過ぎであると思う。そうお思いになりませんか。
  77. 河野一郎

    河野国務大臣 仮定でとおっしゃいますけれども、私は仮定ではありません。先ほど来申し上げる通りであります。現実に何が上ってきたからどうだ、かにが上ってきたからどうだということを受けて、それで硫安価格の引き上げを要因にして申しておるわけでございます。でございますから、決して仮定ではない。それから前段は昨年末のことがあります。ありますからこれも仮定ではないというふうに私は考えておるのであって、しかも十分に念を入れるために、適正なる改善には反対はしないということを断わってありますから、労働者諸君は、政府さえ適正な改善に反対しないと言っているじゃないか。だから適正な改善を要求されてどんどんおやりになったらよいじゃありませんか。だからこれだけちゃんと念を入れて書いてあるものを、それをもしそういうふうにおっしゃることは、私は農民の側に立ってもお考えを願いたい。農民諸君が米について今日非常に努力をしておられるが、その米についてわれわれといたしましては労働者諸君に配給価格は一切上げません、値段は上げません、こういうふうに申しておるわけでございます。ですから農林大臣として、農作物の生産の重要な要因であります肥料について無関心でおるわけには参らぬのでありまして、これについて関心を持つことは、全国農民の期待に沿うゆえんである、こう私は考える。しかも労働者諸君の立場も考えなければなりませんから、そこで適正な改善については決して自分はとやかく申すものではないけれども農民のことも考えてもらわなければ困るということを申すことは、公正妥当なる措置をとったもの、こう考えておるわけでございます。
  78. 井上良二

    井上分科員 農林大臣の御答弁を聞いていると、全く詭弁もはなはだしいですよ。政府としては、そんなことにとやかくくちばしを入れるわけにはいかぬ、農民にこの価格にしなければならぬというところの前提があると思うのです。国際価格を下回るものにしたい、これはすべての農民とすべての政治家が望むことです。それに私は何も反対しておるのじゃない。それならば一体日本の肥料産業の労働者の賃金はなんぼが妥当と考えておるかと質問しておるが、それに対して答えてしない、それに対して現在の賃金は高過ぎるからこれ以上上げた場合には、肥料価格に影響してくるから上げてはならぬ、もし上げるとするならば、われわれの方としては他の方でいろいろ考えるべきであって、直ちにそれが肥料価格に影響するような上げ方は困る、こういうふうに持っていかなければならないでしょう。だから農林省が考えておる肥料価格をこの価格に下げるためには、賃金はこの程度が妥当だという一定の確信がなければいけない。それを私は伺っておるのです。
  79. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申します通りに、労働賃金の適正化を期する、労働賃金は今硫安工業関係労働組合については幾らが適正か、それは申します通りに、そのときの生活条件、その他労働条件等いろいろ労働賃金の決定には要因が非常に多いのでありますから、幾らが適正かということは言えません。そのときどきに違うのでございますから、これをきめようがない。これは当りまえだと思うのであります。社会情勢の変化によって変化していくことでありますから、物価が上れば高くなるでありましょうし、安くなればそう上げなくてもいいのじゃないかということも一つの要因でございましょうし、いろいろ要因はたくさんございますから、お話通りに非常によく働かれ、非常に能率が上っておる、配当が非常によろしいというような場合には幾らか上げるというようなこともあるでございましょうし、適正化の条件は非常に多いのでございますから、肥料の場合にはそれ以上とってはいかぬ、だから肥料の価格はこう形成されて、こう結論が出る、そういうふうに割り切れるものではない、こう思っております。
  80. 井上良二

    井上分科員 私が聞いておりますのはそういうことじゃないのです。少くとも肥料価格を形成する生産コストを積み上げてきた場合に、肥料産業における賃金水準はおよそこういうところが妥当だという当然の一つの指数が出てくると思うのです。そうじやなかったら議論になりません。あなたみたいなことを言うておったら……。大体石炭のコストはこうだ、電力はこうだ、金利はこうだ、これでこれだけの労賃を加えれば肥料のコストはこうなってくるということを、大体において検討されてきておるはずでしょう。
  81. 河野一郎

    河野国務大臣 それは御承知通りに、会社の分布、地区によっても条件が違うでありましょうし、みな違います。それから製造の用式またその職場によっても違うでございましょうし、これは全国一律に申すわけには参らぬ。従って会社ごとに違ってくるだろう。これを一つにして硫安の場合には労銀は幾らが適正かという裏づけをせいといってもできないのが当りまえだと思いますから、適正なる料金については決してとやかく申すものではないということ以上に出ることは、それこそ行き過ぎになると思うのであります。
  82. 井上良二

    井上分科員 それならば、前段の適正云々の問題は全くあなたの詭弁ですよ。適正な決定に何も反対するものではない、こう言っているでしょう。それと違いをして差しつかえないとお考えになりませんか。かりに労使の紛争の結果賃上げが妥当とするならば、政府としては当然やむを得ないものと認めることになりましょう。そうなれば、賃上げをしてからコストが安くなるということはありませんから、それによってコストが高くなるのは当然です。その反対に、それだけ能率が上って生産量が多くなれば、全体的に価格が下るという問題が起ってきます。私どもはそういう面を強調しておるのであって、賃上げを決しておそれる必要はない。それだけ待遇をよくして、能率を高める条件を作れば、結局増産がされるから、されたらされただけ全体的に安くなっていきます。こういうことを私どもは考えておるのであります。だから、一概に賃上げだけをとらえて、直ちにそれがコスト高になるという単純なものの考え方は、私ども議論をしたくない。だから、私自身きょうここで特にあなたに伺いたいのは、もし政府が民間産業の労使の紛争に対して一々かような通達を出すということになりましたならば、これは今後政治的に問題が非常に大きくなっていくと思います。特に農林省のように国民の生活に関係しておる行政をあずかっておる役所が、かようなことに一々手を入れるということになりますと、大へんなことになります。農民側の要求をあなたが聞こうとすれば、現在の米価が妥当かどうかということについても問題がありましょうし、反対に消費者側から要求されれば、またこれも問題がありましょう。あるいはまた現在の酪農業においても、一体現在の牛乳価格が妥当であるかどうか、そんなに牛乳を上げることは相ならぬ、また牛乳屋の賃金が高過ぎる、牛乳屋の賃金を適正にせよ、その他いろいろ国民生活に関係のある産業について、一々労使の紛争に対して政府がかような通達を出すということになりますならば、大へんな問題が起ってくると思うのです。従って、私どもは単に硫安工業だけの問題ではなしに、政府が一々民間産業の紛争に手を入れるべきではない、こう考えているのです。どうお考えですか。
  83. 河野一郎

    河野国務大臣 私もあなたと同じであります。労働賃金が上って、非常に労働意欲が向上して、増産されて、肥料が下ることはけっこうなことであります。だから、労働賃金を上げたからといって、肥料の値上げはいけませんよといっておるのであって、労働賃金が上って、増産されて、肥料の値が下ってくる、おかげで下りましたといって会社からいってくればけっこうだ、会社がそれを口実にして値上げをいってくるようなことはだめだといって、この文章に書いてある。あなたのおっしゃることと同じことが書いてあります。決して違っておりません。  それから、政府がいろいろなことにくちばしを出すことはよろしくないということは、私もその通りに思っております。無理にくちばしを出そうと思っておりませんから、他の会社については申しません。今申す硫安工業関係労組につきましては、硫安会社が昨年末やりました当時、私は非常に苦々しく思って、非常に困ったという気持がした。しかし済んだあとでそういうことをいう必要はない、今後そういうことをしないようにしてほしいということはたびたび考えておったわけでありますが、またしてもそういうことで、ただこちら側の方によけい出したから、こちらの方に値を上げてもらえばよいのだという安易な気持で、押された方に動くのと、値を下げられたから労働賃金は上げられないのだというようなことをいうこともよろしくないだろう。そこで適正な処置をとれ、それは自主的に社長としてやれ、こういうことを注意を喚起しておるのでございまして、決して私は不当な干渉をしようというような気持は持っておりません。
  84. 井上良二

    井上分科員 そうすると、農林大臣は昨年の暮れの賞与の問題に関連して、今度の賃上げ闘争に警告を発するに至ったのですか。そうすると、春肥の価格は幾らに下げようと考えているのですか。そういう交渉や申し入れを相手にいたしておりますか。
  85. 河野一郎

    河野国務大臣 春肥につきましては、御承知通り、大体同系統の会社がやっております尿素について値下げを要求いたして、決定いたしましたことは御承知通りでございます。同じ会社の内部でございますが、硫安につきましても、目下検討を加えておる最中でございます。
  86. 井上良二

    井上分科員 この申し入れを硫安系統の会社に政府がするゆえんは、昨年末の賞与の支払いが不当であったので、春肥を値下げする上において非常に支障を来たす一つの要因を作った、そこで今度の値上げに対しても、世間からとやかくいわれるような不当な値上げは困るぞ、私の方では春肥を下げてもらおうと思っておるからという、一つの含みが当然そこになければならない。その含みがなしにかようなことをやることは、全く干渉であります。そうなると、一体具体的に春肥を幾らに下げようというのですか。政府の意図です。肥料審議会は別です。
  87. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろん政府は肥料審議会に原案を出すのでございますから、その計算を政府がするのは御承知通りであります。政府におきましては目下検討中でありまして、私は先般来国会を通じましても、次の肥料価格の決定に当っては相当に下げることをするつもりだ、その含みでおったので、今ここで突如として言うわけではありません。その含みで目下やっております。
  88. 井上良二

    井上分科員 そういたしますと、具体的にはそれがいつはっきりいたしますか。それをまず一点伺いたい。
  89. 河野一郎

    河野国務大臣 硫安については、今さしあたりは次期肥料価格の改定の際に行う。尿素につきましては現にこれをやることをきめた、こういうことであります。
  90. 井上良二

    井上分科員 次期改定というと、毎年七月ではないですか。
  91. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうことでございます。
  92. 井上良二

    井上分科員 七月にやるものを昨年の暮れの問題、ことしの春肥のこの問題ということが一体直接どういう関係になってきますか。これから硫安は雨期を控えまして非常な増産の時期です。この増産の時期に労働者が全力をあげてその生産に協力する態勢を作ることは、生産者としては当然考えなければならぬことです。そういう重大な時期を控えて、政府がこの春肥に対してこれだけの値下げを意図しておるから、従ってこの値下げを阻害するような大幅な値上げは困る、こういう意図ならば、政府としてはおよその値下げの試案といいますか、一つの原案を持っておらなければならぬ。それを七月までほったらかしておいて、それでもって当面しておる問題にとやかく言うことは——七月の改定というものは、一体春肥の全体の増産が、上半期にどういう生産状況をとってきておるか、国際市場価格はどうなっておるか、国内の需要はどうなっておるかという、諸般の見通しの上に立って価格がきめられていくのです。そういう結果を待ってきめられる問題に対して、政府が先回りをしてこれはこうでなければならぬというような考え方は、私としてはあまり行き過ぎだと考えております。
  93. 河野一郎

    河野国務大臣 これは意見が違います。はなはだ恐縮でありますが、私はそうは考えないのであります。労働賃金の適正化は私の期待するところでございますが、労働賃金が適正でないというそんなことは万々ないでありましょうけれども、そういうふうになった場合には、その要因が明年度の肥料価格決定に当って重要な要因になりますから、そういうことのないようにしてほしいということは、私は適当だと思うのでありまして、今お話通りに、肥料の価格を改定するといいましても、限月で参りますから、すぐにといいましても、物の動きでありますから、なかなかそう急にはいきません。でありますから調査は続けておりますが、こういうふうなやり方でいいのじゃないか。尿素については、御承知通り、今改定する時期でございますから、同じ会社内で尿素については相当下げさせるということで適当な処置をとっていけるのじゃないか、こう思っておるわけであります。
  94. 井上良二

    井上分科員 今回のこの政府の通達は非常な誤解を生じておることは事実であります。だから今後少くとも政府がかようなことをやります場合は一応国会の方の意見を十分聞いて、その上で政府としては態度をきめてもらうべきであり、特に目の前に、たとえば肥料審議会が開かれておるとか、あるいは政府みずから春肥の値下げを業者と交渉を開始しておるとか、そういう重要な段階にあるときに、一方にそういう紛争を起して肥料生産を下げたり、あるいは争議が長引いて肥料生産が下ることは困る、だからこの際そういうことの紛争を避け、できるだけ業界が安定して、生産が上昇するような対策を業界としても講ずべきである、こういうような肥料生産を高めるための政府としての親心の通達ならいいのですけれども、そういう通達は一向されておらぬ。そうではなしに、賃金を上げることが、直ちに肥料価格の値下げを阻止する要因になるという印象を与えておりますことが、肥料産業の生産労働者に非常な刺激を与えることは事実であります。そこで私はこれに伴って、資本家みずからがかような紛争が生じないように、不断に労働者が働きやすい条件を作って、増産できる体制を作るべきであるということを注意すべきであります。そういう点についての注意をせずに、単に目の前に現われた賃金体制だけについてとやかく干渉がましいことを言うことは、全くそれは政府としては行き過ぎもはなはだしいといわなければなりません。これ以上ここで議論をしておりましても結局やりとりになりますから、私はこの程度にとどめておきます。  最後に一点きわめて重要な問題について一つだけ伺いたい。それはかねて政府は、今国会に農業団体再編成の問題を予算十五億の裏づけを持って法案を提出するということを主張し、またたびたび関係団体の人々や国会の委員会においても声明をしてきております。ところが先般あなたの属しております自由民主党の総務会におきまして、農業団体の再々編成はこの際やらないということをはっきりきめております。ところがその後さらにあなたは新聞を通して、あるいは衆議院の農林委員会を通じて、また参議院の関係委員会においても、農林省としては、十五億円の予算を持っておる関係があって、新農村建設運動を中心にした新団体を作りたいということを述べております。そうしますと党としては再々編成はやらない、新団体は作らないということをおきめになっておるようでありますが、党の出身閣僚たるあなたは、党の意思は尊重しないのか。これはどうなりますか。
  95. 河野一郎

    河野国務大臣 だいぶ井上さんのお話に誤解があるようでございます。今お話の中の予算十五億をもってやるものは、新農村建設施設でございます。これは今世上いわれておりまする新農村団体とはあわせて考えておりません。これは別でございます。ですからその点は御了承を願います。  次に農村関係団体の整備強化の問題でございます。これを再々編成とか、再編成とかいう言葉を使って多少混淆しておる向きがあると私は思うのであります。われわれの所属しておりまする党の言いますことは、当時私も総務会に出席しておりましたが、これは世上伝えられますところのいわゆる再編成、ああいう姿のものはやらないんだということを声明しておるのでございまして、私が考えておりまする協同組合系統関係等のものには手はつけない、それから農業共済関係のものについては別途考えるんだ、その範囲外におきましていろいろ任意団体もしくは農業委員会等について、これを十分整備強化していくということをやって参りたい、こういうことを考えておるのでありまして、この点はさよう御了承をいただきたいと存じます。
  96. 井上良二

    井上分科員 その農業団体の整備強化ということをやりたいのであって、別に新団体は作りたくない、こうはつきり解釈していいですか。
  97. 河野一郎

    河野国務大臣 それは農業委員会を中心にしてやりますか、農業委員会を発展解消いたしますか、目下検討中でございます。
  98. 井上良二

    井上分科員 あなたの方の党の岸幹事長は、農業団体の代表者と合同会見をいたしまして、農業団体の代表者から、党としてはやらないと言うが、新聞では農林省が案を発表し、農林大臣はやる意図を明かにしておる、こういう質問をしておる。そうしたら岸さんは、今は政党政治であり、官僚が何を言っても政党が了承しないとだめである、自分も官僚出身であるが、農林省に十分注意をしょう。さらに、いろいろ検討するとか考えるとか言われておって不安で仕方がない、だから農業委員会の改組やあるいはまたこれの廃止等をめぐっていろいろいわれておるが、ほんとうに作らないのですか、こういう質問に対して、岸さんは、絶対信頼してほしい、農協に対する信義を裏切ることは絶対しない、こういう答弁をはっきりしております。そうすると、党の意思は、いわゆる農業委員会の改廃を通じての新団体、または農協にかわるべき他のいろいろな推進あるいはまた農政運動をやります新団体等は、作らないということを明確に答えておりますが、この岸さんの答弁は間違うておりますか。
  99. 河野一郎

    河野国務大臣 私、そこに立ち会いませんでしたから、それが間違っておるかどうかわかりません。しかし私は総務会に出席しまして、今お答えいたしたと同様のことを答え、おおむね三月の上旬に案を具して、総務会の議を経てこれを扱うということに了承を得ておりますから、その通り進めるつもりでおります。
  100. 井上良二

    井上分科員 わかりました。それでよろしいです。
  101. 松浦周太郎

    ○松浦主査 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時より再開することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時十六分開議
  102. 北澤直吉

    ○北澤主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管についての質疑を継続いたします。足鹿覺君。
  103. 足鹿覺

    足鹿分科員 最初に国税庁長官に伺いますが、農林大臣がお見えになったら、この問題についてはあとで農林大臣にもお尋ねいたします。  二月九日の予算委員会の一般質問の際に、私は大蔵大臣農林大臣国税庁長官に農業所得税の適正化の点についてお尋ねをしたのです。昨年の十月二十八日の閣議決定の趣旨が末端において守られておらない、その事実をあげてその善処方をお尋ねしたわけでありますが、大蔵大臣からも、農林大臣からも、国税庁長官からも、そういう事態については十分調査をし、善処をして、税の適正化をやる、どういうところにそういう事実がありますか、もしあれば、知らせてもらえばいろいろと話し合うとまで大蔵大臣はおっしゃっておった。その後二週間足らずの日にちが過ぎておりますが、地方においては何ら善処されたと思われる節がないのであります。私が先般指摘しまして以来、国税庁はその専門の立場からどのように御善処になったか、地方に対してどういう指導方針を与えられたか、この際具体的にお示しを願いたいのです。
  104. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、先般予算委員会の当時にもお答え申し上げたわけでありますが、昨年の十月二十八日の閣議決定——これは米の集荷制度の改正等に伴いまして、農業課税の標準率等につきましても、従来と行き方を変えることになりまして、そういったようなことからそのために税の増徴が行われることがないように、また標準の切りかえに伴いましていろいろと関係の市町村、農業団体等とも十分に連絡を密接にして課税標準の決定等をいたす。農林省の統計、こういうようなものも十分に尊重いたして収穫量等の決定もいたすといったようなことが閣議決定にあるわけでありますが、その趣旨につきましては、これが実際の衝に当っております末端の税務署まで徹底いたしますように、私どもといたしましては細目の取扱い、実行方針等いろいろときまりますたびに地方に通達を流しておりますが、そのほかにも随時所得税課長、農業所得係長等の会議も開催いたしまして、遺漏のないように努めておるわけであります。大体そういったような方針で、全国各地におきます調査は、作報の方の数字が出るのがおくれた地方もありまして、早くできたところもおそくできたところもありますが、大体におきまして最近ちょうど各署骨内におきまして標準の案ができまして、これをいろいろ関係方面に内示いたしておるという段階になっておるのであります。私の方といたしましては、内示の段階におきまして、具体的に各署それぞれ市町村別にどういう内示をいたしたかという資料は集めておりませんので、まだ具体的にどういう案が出たかということまでは判明いたしておりません。具体的に標準が確定いたしますれば、もちろん全国の数字をまとめまして検討をいたすつもりでありますが、現段階におきましてもいろいろと各地におきまして問題があると申しますか、内示されました案につきましての各方面の意見等も多少部分的、個別的に参っておるような場合もありますので、それらのものにつきましてはまた現地の国税局、署等と十分連絡をとりまして、実態がどうなっておるか、先ほど申しましたような本年度の課税方針に即してできておるかどうか、無理なものでないかどうかといったようなことにつきましても、随時検討して指示はいたしておるようなわけでありますので、御了承を願いたいと思います。
  105. 足鹿覺

    足鹿分科員 今の御答弁は、先般承わった答弁と何ら変らないのですが、この前の九日の予算委員会で私が指摘したような事実は知らなかった、そういうことがあるならば善処するということであった。ですから、私は広島国税局の事例を申し上げたのであるが、あなた方はそういう特殊な地帯等に対してどういう手配をなさったか。要するに閣議決定の線が各地で尊重されておらない。事実上豊作に名をかりて反当課税に切りかえることによって著しい増徴の結果を招来しようとしておるという事実を私は示しておるのです。そうでない、そうでないと言われますが、そうでない理由は一体どこにあるのか。先ほど開会前に雑談的に申し上げておったのですが、あなた方は収穫量の算定の基礎は一体どういう資料に基いてやれとお示しになったか、また必要経費はどういう方針に基いてやれと言われたのか、やはり具体的にお示しになるのが当然だろうと思う。私は一ついい事例を申し上げますが、本年の二月一日広島国税局におきまして、鳥取県の農業団体の代表があなた方の出先である広島国税局当局と農業所得税の適正化問題をめぐって会談をした。その際に鈴木直税部長はこういう放言をしておる。給与所得者との均衡のために農業所得税の増徴はやむを得ない、こうあいさつに言っております。これなんか閣議決定を頭から無視しておるじゃありませんか。しかも午前中にあなたのところの直税課長に伺いますと、そういう人間が管内の税務署指導に行っておる。一体適正化のために指導に行っておられるのか、それとももっと徹底的にとれという指導に行っておられるのかわからぬ。第一このような人間がおること自体が、閣議決定というものを全然無視しておる証拠じゃありませんか。広島国税局に対してあなた方は、給与所得者との均衡のため農業所得税の増徴はやむを得ない、こういう方針をお示しになったのでありますか伺っておきたい。
  106. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまお尋ねの広島国税局の管内の問題でございますが、これにつきましては広島管内の鳥取県におきまして、内示した案につきましていろいろ意見が出ておるということを伺いました。広島国税局に内示案といいますか、どういったようなものが出ておるか、多少調べてみたわけでありますが、先ほどお尋ねがありましたように、閣議決定の趣旨に従って適正な標準率を作るというような趣旨からいたしまして、米の収穫の調査、これにつきましては閣議決定の第三項にございますように、農林省の統計の数字を尊重するということはございますが、これはやはり税務署で調査して決定いたすものでありますから、署といたしましても、それぞれ実地調査——坪刈りをするとか、在庫米を調査するとか、いろいろそういったような収穫の調査をいたしておるわけであります。そういったような数字をもとといたしまして、閣議決定の趣旨にありますように、作報の数字も出ましたので、こういうものも十分尊重いたしまして、それを基礎にして標準率の内示案も作製いたしておるようなわけであります。問題になりました鳥取県の一部の実例を調べてみたわけでありますが、これは実際出ました数字は、反当の収穫高を見ますと、一見作報の数字を上回っておるように見えるわけでありますが、これは御承知のように、作報といたしましては、全国府県あるいは市町村別の収穫高を決定いたしますが、その収穫高を出しますについては、反当の収穫高、それと作報で調べましたその市町村の耕作反別、作付反別が基礎になっておるわけであります。それと、署で調べました署の課税の基本といたしまする農家台帳の面積、これが違っておる場合があるわけであります。多くの場合はなわ延びと申しますか、作報の面積の方が多いわけであります。さような場合には収穫高をそれぞれの反別で割りました反当の収穫高につきましては、現実に総体の収穫高としては、ある税務署の調査の方が内輪になっておる場合でありましても、反当で見ました場合に税務署の数字の方がやや多いというようなことが出るわけであります。その他いろいろ災害等の関係もございます。それで三割以上の災害があった土地は標準率から除外いたしますので、そういうような部分を除外いたしまして、残りの分だけにつきまして反当の収量を算出いたしますと、反当の収穫高が多くなるといったような場合も出て参ります。いろいろそういったような事情がありまして、多少誤解があったような点もあるようでございますが、実態におきましては、不穏当な調査といいますか、不穏当な標準率の案にはなっていないように、私どもの一応調べましたところでは見たわけであります。  なおこれはっけ加えて申し上げておきますが、鳥取県下に一おきましても、現在すべてのものにつきまして内示がすんだわけではございません。まだ内示の段階でございまして、標準率まで確定したというものではないわけでありまして、なお十分広島国税局、現地の税務署等におきましても、検討いたさせますし、私どもの方でも、今後の状況によりまして、なお十分現地実情調査してみたいと考えておるような次第でございます。  なお最後に広島国税局の部長がいろいろ申し上げたということでありますが、これにつきましては、実情を私どもまだ承知しておりませんので、調べてみまして不穏当な言動がございますれば、十分注意いたしておきたいと思います。ただこれは給与所得、農業所得、いかなる所得にいたしましても、適正に賦課していかなければならないことは当然のことであります。そういう趣旨のことにつきましては、あるいは表現の仕方が適切でなかったというような点があるかとも存じますが、農業所得にいたしましても、いかなる所得にいたしましても、公平に適正に賦課徴収していかなければならぬ、これは当然のことでございます。恐縮ですが、その辺のところも申し添えておきたいと思います。
  107. 足鹿覺

    足鹿分科員 いろいろと御調査になって、御指導になっているということでございますが、それではちょっと伺います。私は事実をもって申し上げるので、理屈であなた方と議論しているのじゃないのですから、その点よく……。地方の名前を出して恐縮ですが、こういう事例があるということで御答弁願いたい。あなた方は所得税の基礎であるところの所得率の算定の根拠は、一体何で指導していますか。最初鳥取県の場合、国税局は二石九斗四升だといった。所得率七八%で、必要経費六千四百円だといった。ところが、農業団体といろいろの話合いの過程において、それではというので、約七、八升低目に収獲量を修正して、二石八斗八升ということになったそうです。そこで所得率はどういうふうになったかというと、逆に〇・二%上げて七八%になっている。なぜ上ったかというと、必要経費を最初のときは六千四百円と見ておったのを、今度は必要経費を六千百円に下げた。反収をやかましくいうから反収は下げて、必要経費を下げて結果的には所得率をふやしている事実があるのです。こういうことが一体許されますか。私どもはいたずらに事をかまえて荒立てようとするものではない。あなた方がいかなる善意な意図をもって指導されておっても、末端税務署は——従来からもあることですよ、いつも割当課税になっております。税務署ごとに大体一つの標準の徴収高を割り当てられる。そういう一つの伝統が国税局の中にある。従ってあなた方がいろいろな注意や指示を与えられても、末端ではそれが一つも消化されておらないのです。これは事実ですよ。今私が調べたような事実は、全国至るところにあるでしょう。あまり農業団体がやかましく言う。そうすると反収を下げて、今度は逆に裏をかいて、必要経費を下げておる。そして所得率は逆に上げていくなどという不誠実なやり方がありますか。何か一つの坂らんかな主義だと言われても、弁明の余地は私はないと思います。一体所得率の算定はどういうふうにしてやれというふうにあなた方は指導なさっているのでありますか。こいう事実についていかようにお考えになりますか。だから、先ほど私が言ったように、広島国税局の鈴木直税部長は、給与所得者との均衡のためならば、農業所得税の増徴はやむを得ないと放言してはばからない。そういう思想がびまんしているのですよ。先ほどあなたは非公式のときに、農業課税のようなちっぽけなものに対しては、そう苛斂誅求する意思はないと言われているが、事実は保有米と——一例を申し上げますと、農民はいい米を売るのですよ。なるべくくず米を農民は食う。従って、保有米はその石当りの価格をうんと下げるのが大体従来の例なんです。それを山形県の例からいえば、わずかに百円下げただけじゃないですか。それくらい小さなところにまでこまかくきざんだ課税が行われようとしている。あなたはなかなかりっぱなことをおっしゃいますけれども、事実においては一つも反省の色はないのです。今私の言ったようなことについて、あなた方御調査になっている事実がございますか。農業団体の考え方としては、現下の総収量というものを一応押える。ところが、あなたの方の国税局のやり方は、山間部、中間部、平坦部と標準モデル地区を指定して、その反収というものを見て、そうして拡大推定計算をされるから総収穫量を上回っていくという事態が起きてくる。そうでしょう。従って一率課税になる。元来税は個人のその所得率に応じて課税さるべきものであり、国民の義務として納税を怠ろうとするものはだれもない。ただ問題は個人差が出るのはあたりまえじゃないですか。その個人差も認めないような一率課税の方式をあなた方自体が取っている。もしこういう事態が起きますならば、あらゆるところから一斉にこの再審査の問題をめぐって——税額がたといあなた方の立場からは小さいといわれても、個人の農民にとっては死活の問題ですよ。私が今二つあげた事例から推して、あなた方の指導が末端に徹底しておらないということ、こういうことについてあなた方はさらにどういう手段を講じられるか。もう一応御所信を承わっておきたい。
  108. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 ただいま当初二石九斗四升のものであったのに二石八斗八升になったではないかという数字に関連しての御質問がございました。実はこれに関連しまして、われわれが第一線をどういうふうに指導したかということをもう少しこの際詳しく申し上げた方が適切ではないかと思いますので、昨年の末、私どもが直税部長会議を開催いたしましてどういうふうに第一線を指導したかという点をちょっと御説明申し上げたいと思います。実は本年度は非常に、石当りから反当りに切り変りまして、むずかしいときでもありますし、特に収量の点につきましては閣議決定もございましたように相当慎重にやっていかなければいけない、もちろん税務所におきましても在庫米調査あるいは坪刈り調査というようなものを通じまして、大体ある村の収量はどのくらいであろうかという推定はいたしますが、また別に農林省の公的な機関による調査もございますので、これらの点も十分見合せて慎重に決定する、こういう方針でわれわれとしては仕事を進めていきたい。ところが十二月末の直税部長会議の際にはまだ作報の数字も発表になっておらない段階でございました。従ってわれわれはこの会議の席で、たとえばどの局は反当り何石ぐらいでいいとかいうことは決して言える段階ではございません。またそういうふうな指示はいたしておりません。ただもちろんその会議に至る前に、各税務所のたとえば基準町村、そういったところの基準農家を選定して、必要な経費調査というものはやっておりますが、この会議で具体的にまだ作報の数字も発表になっておらない十二月末の段階で、ここまでの収量はどうだということを言える段階じゃない。従ってそこの基本的な収量セにいてのわれわれの考え方というものは、われわれの方で在庫米調査と坪刈り調査をした結論とあるいは作報の調べた調査と、その間にもしも食い違いがあれば、その食い違いはどういう理由に基くものだろうか、その食い違いが合理的なものであるかどうかという点を十分検討して収穫量を決定するように、それから経費の点を細かくここではきめられないが、その点は十分実情調査して確定するようにという一般的な指示をしております。さらにまた、たとえば米価の点でございますが、従来は保有米につきましても事実上供出米と同じ価格で見るというふうに指導しておったのございますが、これは常識的にも多少合いませんし、また十月以降において一部雨が降ったところもございまして、何らか一般的に考慮しなければいかぬじゃないかということで、若干保有米にもしんしゃくするような形で、米価についてのしんしゃくの歩合を指示するとか、そういった基本的な線、あるいはまた本年度の農業団体等の最後の確定標準の開示のやり方、これは従来たとえば標準が開示になりました際に、意見が一切言えないような形でいろいろ意見を聞かれる、今年はそういうことはまずいのではないか、従って一応農業団体の方々からも意見を聞いて、最後に決定する余裕を持つような仕組みで標準を確定していこうじゃないか、こういうような基本的な線を直税部長会議で確定したわけでありまして、たとえばこまかい、お前の局の所得率は何%でなければならないかというようことは決していたしておりません。今言った基本的な線に基きまして、各局がその後の作報の資料の開示を得まして、それらと自分たちの調査したところがどういうふうな関係になるかという点を、各局それぞれいろいろその状況を判断いたしまして標準を逐次確定していく、しかも、そういうような手間をいろいろかけました関係で、時間的にも若干おくれております。従って目下税務署で一応こういう案でいってはどうかという案を、各市町村なり農業団体の長の方々にお示ししている段階であります。いずれそれが確定しますのは、あるいは二月末、三月上旬にかけて最終的には決定になるのではないか、こう考えております。
  109. 足鹿覺

    足鹿分科員 農林省にちょっと伺いますが、昭和三十年産米の最終の実収高をあなた方が把握されるのは十二月二十五日、だと思うが、どうですか。
  110. 野田哲五郎

    ○野田説明員 今お話通りに十二月二十五日に公表することになっておりますし、昨年もほぼその期日にやったと思います。
  111. 足鹿覺

    足鹿分科員 それなら亀徳さん、あなたに伺いますが、今のあなたの話とは全然違うじゃないですか。われわれがしろうとだと思ってあまりいいかげんなことを答弁してはだめですよ。あなた方が国税庁の会議をやっているのは十二月二十七日、二十八日、二十九日の三日間じゃないですか。農林省の実収高の推定調査は二十五日に発表しているじゃないか。いいかげんなことを一言ってはだめですよ。
  112. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 その点につきまして、今統計調査部長がおっしゃいましたのは県の段階での数字でありまして、われわれの仕事の作業といたしましては、やはり市町村別の数字がございませんと仕事にならないのでございまして、その市町村別の開示をいただきますのは一月の二十日もしくは一月の末までにはお示しを願うというお話ができて、それに基いて開示を受けておるのでございます。その点は統計調査部長からも御説明あろうかと思います。
  113. 足鹿覺

    足鹿分科員 私が先ほどお尋ねした際には、大体県の米なら米がなんぼとれたか、その総ワクが一応一つの課税の参考資料になることは事実でしょう。それをもととして閣議決定というものは、農林統計調査部の資料をよく尊重して打ち合せをしてやれということになっておる。農林統計調査部の資料にしましても、それがいきなり県のものがまとまるわけではありますまい。みな下から積み上げたものででき上っておるのですよ。そうでしょう。それだったらあなた方が課税技術上署別にわけられるということはそれからのことであって、県の総ワクというものについては別に新しくその後農林統計調査部で公表した事実はないでしょう。だとするならば、そのものがあなた方の参考資料になって、そしていろいろな指示事項や当局との打ち合せをなされた、こう解釈せざるを得ぬのです。またさっきのあなたの答弁では、十二月のことであって、作報もその資料がないし、どれだけとれたかということの把握もできなかった、従って抽象的な打ち合せしかできなかったという御答弁であるから、私は農林省の意向を正式に伺った上で今あなたに言っているのですよ。違うじゃないですか。何を根拠にしてあなた方はやっているのですか。
  114. 野田哲五郎

    ○野田説明員 私の方の統計は、建前といたしましては県別推定というものを最初に出しまして、それを郡市町村に配分していくという建前をとっております。県別推定といたしましては大体目標精度一%というというところに置いておりますが、実際の問題といたしましては郡単位にも目標精度四、五%のところで推定できるようにしてあるわけでございます。町村ということになりますと、これは明らかに郡別推定を配分していくということにしておりますので、その点は御了承いただきたいと思います。
  115. 川俣清音

    ○川俣分科員 ちょっと関連して。この際統計調査部長国税庁にお尋ねいたしますが、今の統計技術、調査方針からいたしまして、これは県別集計で誤まりのないことを期待しての計画に基く調査です。従って郡別、町村別を公開しているわけはないはずです。できないはずです。そういう基礎に基いて町村の収穫をつかむとか郡の収穫をつかむというような統計の仕方じゃないのです。この点ははっきりしておるはずです。今後その必要があれば別問題です。その内示があったとか開示があったとかいうことがあったんですが、これは開示できないことになっている。これはおかしいですよ。開示したことがあるかどうか、これは統計調査部長に、受けたことがあるかどうか、これは国税庁から伺いたい。
  116. 野田哲五郎

    ○野田説明員 指定統計の内容といたしまして、私の方は県の単位について推定いたします。なお推定単位をさらにこまかくいたしまして、郡市におきましてもこれを公表いたします。こういうことになっておりますが、町村別につきましては指定統計の内容としてはそういうものが盛られていないわけであります。しかし他のいろいろな機関が御調査になるよりも、われわれが県単位、さらに細密に郡単位に推定しましたものを、一定の方式によりまして町村別に割り振るのが比較的高い精度を持つことができる、かように考えまして、各方面の便宜のためにかようなものを作っておるわけでございます。これをこのたび国税庁の方にもお示ししたわけであります。この数字につきましては標本調査による推定値でございませんので、すなわち県単位、郡単位のものを見回り調査によって配分する、こういうような方式をとっておりますので、その精確度というものは計算上もはっきりすることはできないわけでございますが、ただ他の方法によります統計調査よりもより高い精慶を持つことができるであろう、かような考え方を持っておるわけであります。
  117. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 ただいま統計調査部長から御説明ございましたように、正式に開示を受けております。なお昨年の十二月五日、こちらの直税部長から統計調査部長あてにその御依頼の趣旨、しかし扱いにつきましては十分留意する旨を付しまして御依頼状を出して、また正式に御回答をいただいております。そういう形によりまして、大体一月二十日もしくは一月末ぐらいまでに市町村別までの数字はちょうだいいたしております。  ただこの際申し上げておきますことは、やはり閣議決定の際に作報の資料を尊重するということは、今川俣委員がおっしゃいましたように、そのままの数字を直接とるということはいろいろ問題がございます。しかしさりとていろいろの調査を勘案しますときに、やはり最も妥当な調査ではなかろうかということで、われわれの調査した結果と作報の調査した結果と食い違いました場合には、十分その点は留意して収穫量を決定するようにというふうに指導しておる次第であります。
  118. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは重大なことなんです。というのは、作報は階層別な収穫調査はしておらない、従って国税庁で使えるような個々の調査をやっておらない。村とか県とかいうものはあらゆる階層を含めての調査です。なわ延びにしても収穫量にいたしましても、あなた方の基本になるものは納税の対象になる農家なんです。納税の対象になる農家なんというものはちっとも調べていない。調べているのは農家経済調査、これは階層別にやっておる、農器具とかいうものは階個別にやっておる。農薬等も階層別にやっておる、これは明らかに税の対象になり得るような調査なんです。税の対象になり得るようなこれらの階級層の違った調査などは一つもあなた方は使われない、どういうわけなんです。調査の目標が全然違うのです。はなはだしいときは、秋田の例をとってみますと、あなた方標準にとったのは、私名前はここに出しませんが、ここがたまたま耕地整理の対象になった、農林省から耕地整理の補助を受けて今計画中なんです。従ってその地域は全部正確に面積が把握されておる。それを適用せずに一般的ななわ延びのものをとっておる。合わないはずです。これは土地区画整理をやるのですから正確なものです。設計もそれと違ったものを出して、これは全県平均だからこうだと言っておる。しかも説明によりますと、われわれ実際調査した結果だと言っている。調査した結果と一方の耕地整理で精密な調査したのと合わなくてはならぬはずである。勧めの答弁だと、私どもはなわ延びを実際に当って調査した結果は、この村はこう出ました、これは性格が違うじゃないかというと、いやこれは全県の平均だからこうなんだ、でたらめもはなはだしいのです。たまたま標準町村がそういう耕地整理の対象になっておったから正確なものがある。これらはあなた方のような、ただ抽象的になわ延びはどのくらいだ、なわ延びだって山村も入ります。税金の対象にならないような山村もなわ延びには入っておる。が、税の対象になるような農家はなわ延びがあるかないかということは一つも調べてないじゃないですか。その村の収遣というものは大体つかめないことはない。その県のものももちろんつかめないことはない。はっきりつかめておる。それを村に分配するようなことになっていない。村は違いますよ、逆なんです。ほんとうは調査団と村との違いさえ出てきておる。これは私は別な機会に統計調査部に突っ込みますが、村とにらみ合せて違ったらどうしますか。調査団というものはそういうためにできたものではなくて、その村の付近全体の情勢を把握するための調査団であるから、これは問題はない。ほんとうはそれから村にいかなければならぬはずだが、村にも行かない郡にも行かないで県へ行っておる。逆に今度は村に割当に行っておるだけである。大づかみに言えば間違いないということは言えましょうが、税金の対象になるような面積ではないということははっきりしておる。一体これはどこから持ってきたんです。全くの推定じゃないですか。これは村全体を標準農家として、村全体を対象として税金をとられるのなら別問題です。納税義務者は個々です。こんなに食い違っておることをあなた方どうしてわからないのです。統計の使い方を知らないじゃないですか。
  119. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 府県の段階と市町村の段階によって作報の資料の正確度が異なるという点はわれわれもよく承知しております。従いまして第一線を指導いたします場合も、閣議決定で作報の収獲量を尊重するようにということで明示されておりますが、この尊重するという意味は、黙ってただ作報の数字をとれ、こういう意味ではないのだということは十分注意いたしております。現に、これは府県を具体的に申し上げてあれかと思いますが、長野県のような場合は、実際税務署の調査と作報の調査相当食い違いがございます。何もこの作報の数字に対して税務署の調査比率を一定割合におけとかいうような指導はいたしておりません。従いまして作報の調べました数量と、税務署の調べました量との食い違いというものは、各署、各局によってそれぞれ違っておる状況でございます。なおもう一つは個々の納税者の実態が標準に反映されておらないのではないか、こういうお話でございます。実は農業課税につきましてはある程度反別その他がわかっておりますし、また大体同じ規模で経営されておられる方についての必要経費というものはそうひどく食い違うものではないのではないか。また農家の方々につきましては、なかなか記帳ということも困難である。われわれも大体調査その他に基いて適正な標準が作られるならば、それを目安として報告していただく、こういうことで大体妥当な課税が行われるのではないかという考え方で、主としてこの農業については標準課税をやっておる次第でございます。
  120. 足鹿覺

    足鹿分科員 問題が統計調査関係に移ったから、ついでに伺っておきますが、農林省大蔵省の代表意見を聞きたいのですが、閣議決定第三項で、「前記の場合において、市町村の反当収穫量につき、当該税務官庁は、農林統計調査機関の作成する市町村別反当収穫量を懸垂して妥当な課税標準の基礎となる収穫量を決定すること。」とあるが妥当な課税標準の基礎となる収穫量を決定する場合は何をもととしてやりますか、妥当という解釈はどういうことですか。どうもその辺から食い違いがきておるように思う。  そこでさっきからその点を伺うと同時に、私は議論をしても始まらないので、事実をもって申し上げますが、これは鳥取県の事例で広島国税局と県の農業会議が交渉したときは二石八斗八升で所得率は七八・五%であった、これを国税局は主張して全然譲らなかった。物別れになっておるのです。そして最近二十一日になって管内の三署長と直税課長が集まって、農林省の作物統計事務所の報告や農業団体の調査参考資料決定した三署の反当り収量の均衡をはかるという会を開いておるのです。一体最初は二石八斗八升というものの県平均率というものは譲らないと言っておきながら、事実においては三署長会議あるいは県内の関係団体を集めて調整するということはそれを破ることじゃないですか。そうでしょう、要するに妥当な課税標準の基礎となる収穫量をきめることを協議することではないですか。それでなければあなた方は最初から私の質問に答弁をしたことと全然食い違うのです。そうじゃないですか。妥当な収穫量をきめて、そしてこの課税の基礎となるものを算定するに当っては、どういう手段方法でやったのか、これを納得がいかないからそれを示しなさい、そうしたら具体的に一つ検討しようじゃないか。これが納得納税の線じゃないですか。自分たちの算定の基礎というものは一つも出さぬ。農業団体や農林省の出先が示したものは全部資料をとって、自分たちがそれを参考にしてこういうことをやったんだという具体的な内容は全然示さぬで、これが納得納税と言えますか。そんなばかなことはないでしょう。どうですか。その点は農林省大蔵省はどういうふうにそれを考えますか。閣議決定なんか一つも守られておらないじゃないか。
  121. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 ただいまの閣議決定の第三項に関連する問題でございますが、たとえば今二石八斗八升、これはおそらく何カ所か調べたものを平均しましたものですから、その数字は、何カ所かの分を分別して説明しないと、事実上問題かと思いますが、今二石八斗八升と一応内示して、あとまた相談し直すということは、まさに皆さん方のいろいろな御意見もございまして、もう一ぺん検討し直さなければいかぬじゃないかということでやったことと思うのでございます。その点は、まさに第二項にございます農業団体の長、それぞれの意見を尊重するというような線で、われわれとしてはもう一度、一応二月一日にはそういう案を、こちらの調査ではこうなったという案をお示ししたが、なお検討の余地があるということで再度検討いたして、その数字が修正されてくる、こういう姿になってくるのではないかと思います。その検討の際に、やはりこの統計調査部の数字というものが、一つの——われわれとしてこれに必ずよるということは、先ほど申し上げましたように問題ではございますが、一つの有力な参考資料として、もしこの資料とわれわれの資料食い違いがありました場合には、それが果して妥当かどうかということを検討する。そこに妥当な課税標準の決定する場合の努力があると、こう御了解願いたいと思いおす。
  122. 足鹿覺

    足鹿分科員 私の言っているのは、そういう話し合いをなさることはけっこうなんですが、現地の声を聞いてごらんなさい。とにかく出てきた数字をお互いが話し合うのであって、そして関係の農業団体と統計事務所から出た資料をあなた方の出先はとる。そして自分たちがどういう根拠に基いてやったかということの計算の根拠となる基礎については、一向これを説明しない。それをやらせますか。あまり理屈を長々とやってもしようがないが、その根拠を明らかにして、これからやらせますか。
  123. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 先ほどのお話は、県平均の大体の傾向を皆様にお伝えした話だと了解するのでございます。やはり最終の段階では、税務署ごとにどういう標準が作られ、またその標準はどういう資料を参考にしつつこの最終のこちらでお示しする案になったかということを、根拠を示して説明するようにというふうに、特に今年は注意して指示いたしております。先ほどのは県平均の——二月一日の会議と申しますと実はまだ作業がなかなか進んでおらない。最終的な腹がきまるところまで段階が進んでおらない時期でございまして、しかも県平均でのお話でございまして、やはり標準の具体的な最終の話になりますと、署ごとにきまりました標準をもとにしていろいろ皆様方の御意見を聞く、そこで話も具体的になるし、またそこで妥当な課税標準を作成していく、こういうふうに事務を運びたいと考えております。
  124. 足鹿覺

    足鹿分科員 それではその課税標準の基礎となるべきものを資料としていただきましょう。もらえますね。国会にも出さぬわ、一般にも見せないわというのでは、あなた方の天下り課税じゃないですか。
  125. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 確定しました標準につきましては、御指摘の場所がございましたら出したい、こう思います。
  126. 足鹿覺

    足鹿分科員 御指摘の場所といって、あなた方が指導して作らした国税局別に各県の代表的なものを全部出しなさい。出すべきでしょう。
  127. 亀徳正之

    ○亀徳説明員 これは各省につきまして、ことしは反当りの標準を細分して処理しておりますので、全部数字を出すということになれば非常に困難なことになりますが、一、二代表的なものにつきまして、大体今内示をして双方の意見を聞きながら作業を進めている最中でございますので、その部分につきましてはちょっと無理かと思いますが、確定いたしましたものにつきましては御指示によりまして提出したいと考えております。
  128. 足鹿覺

    足鹿分科員 それでは具体的に指摘して申しましょう。こういうことになっているんです。二十二日から二十四日にわたって、私どもの県では、基準反収の発表をして、税務署の改正説明会をやるというわけですから、もうそれはできているはずなんだ。だからこれは、作業中だなんと亀徳さんおっしゃるが、作業中じゃない。今作業なんかだったら大へんですよ。もうすでに確定申告の期日は今月の十六日に始まっているじゃないか。三月の十五日まででしょうが、三月十五日までにもし申告をしない場合は、これはあなた方の説明がおくれるのですから、農民責任じゃない、農業団体のもちろん責任じゃない。一体どうしますか。今作業をしている。あるところでは説明会を開いている。そうしてこれから農家は一生懸命確定申告をやるということになりますと、三月十五日には間に合いません。間に合わない責任農民や農業団体にあるのでなく、あなた方の準備が不足だからだ。こういうことになるのだから、確定申告の期日を一ヵ月ぐらい延長いたしますか。そうして納得納税の線を出す用意がありますか。この点については政府を代表して河野農林大臣からこれは承わっておきましょう。閣議決定の線を——大臣はおいでにならなかったが、私が先般予算委員会でいろいろ指摘した事実に基いて、どういうふうに善処されたかということについて、いろいろ伺ったのですが、私は納得がいきません。一つの事例を申し上げますと、広島国税局の鈴木直税部長なる人物は、私どもの県の農業団体との第一回の二月一日の会見の席上において、給与所得者との均衡上農業所得税が増徴になることは当然であると放言してはばからない。失言だといって追及されても、失言を取り消しもしないで、当然のごとく叫んでいる事実もある。またはなはだしきに至っては、要するに反収が高いという抗議に対して、これを七、八升下げる。そうして逆に今度は所得率を〇・二%上げて報復手段に出ている。どうしてやるかというと、反収を低めると、今度は必要経費を下げて、そうして事実上所得税を上げるような、陰険老獪な手に出て、事実増徴主義をとっている。こういうやり方をやっております。閣議決定の線というものを出先の税務官庁の人々は忠実にこれを守ろうとしておらない。そこに私どもは豊作に名をかる農業所得税の増徴、不適正化が現に進行しているという点から、このことを執拗に追及し、この適正課税の点について政府の反省を求めたいと思っておるのです。あなたも十月二十八日には農林大臣としての談話を発表され、この適正化の問題については十分なされなければならない責任があるはずです。伝え聞くところによれば、この閣議決定の案は大蔵省とあなた方との間で納得ずくで作られた案だと思う。農林省の意向もよく入っておるだろうと思います。こういう事態で、一体何が適正課税になりますか。今私の手元に出ております一つのものに資料をとってみましても、大体三七%、四一%所得率の増加した地帯等もありますが、著しいのは七九%の所得増というような県が出てきておるのです。二〇%、三〇%はざらですよ。ただ反収の点だけではなくして、いわゆる所得率の増加はものすごくでかいものが出ておるのです。こういう実情にあって、十月二十八日の閣議決定というものは、現実にはほとんどほごにされておる形が出ておる。でありますから、私は執拗過ぎると思いますが、先日来この問題をお尋ねをし、適正課税の点について閣議決定の線を守られるように政府の善処を要望し、所信を伺っておるのであります。今までここでいろいろ押し問答をしましたから、そのことはくどくど申し上げませんが、閣議決定の線がこのような事態でくずれつつあることについて、農林大臣の御所信はいかがでありましょう。対策を承わりたい。
  129. 河野一郎

    河野国務大臣 お話ごもっともでございます。私としましては、従来の方法によりますと、とかく予約遂行に支障を来たすというような懸念がございましたので、特に今回の課税処置に変えたわけでございます。しかもただいま足鹿委員から、それが徹底していない、そういうことになっていないということを伺いますと、これははなはだ重大なことでございますから、よく大蔵当局を督励いたしまして。閣議決定の趣旨を徹底いたしますように厳重に警告を発して善処するつもりでおります。
  130. 足鹿覺

    足鹿分科員 その御言明をわれわれは期待して、実効の表われることを期待いたしますが、もう期日がないのです。きょうは二十三日ですし、来月の十五日が期限なんです。もし今から大臣がそれをやられても、これが末端へ来て現実に納得のできる線にいくには相当の時間を要すると思うのです。従って、政府の納得約税に対する熱意と準備が足らなかったのであるから、こういう変革を来たした場合においては当然この確定申告の期日を一月程度延長して、そして真に農民が納得をし、その中に立った農業団体も十分その機能を発揮して適正納税が行われる余裕を作るべきだと思います。その点について政府はどうお考えになりますか。三月十五日の確定申告の期日を相当大幅に延長する用意がありますかどうか。
  131. 河野一郎

    河野国務大臣 明日閣議がございますから、明日の閣議において私からよく提案をいたしまして、あらためて確認をいたしまして、その趣旨を下部にすみやかに徹底するようにいたしまして善処させることにいたします。それでも支障が起りました場合には、ただいま足鹿さんのお話のように、またあらためて別途方法を講ずることにいたしますが、なるべく政府としましてはできる限りの処置をとりまして、支障が起った場合にあらためて考えるということで御了承いただきたいと思います。
  132. 足鹿覺

    足鹿分科員 それでは、今の農林大臣の御言明によりまして、一応明日の閣議における政府の御処置を待つことといたします。十分御善処あらんことを希望いたします。要するにこれは農民側の責任ではないのです。課税の方式を変えたのは政府が変えたのであり、それに対する徹底を欠くところから摩擦が起き、適正課税が行われないということについては、すべて政府がこの責任を負うべき筋合いのものでありまして、これは無理でも何でもない。十分に慎重なるところの配慮をされんことを重ねて要望しておきます。  それから、これは国税庁長官に伺いますが、あすの閣議でいろいろと御意見があって、そうして善処されるということにしてみても、所得税法の第二十八条ですか、私もその法律をよく調べておりませんが、この期間の延長についての申告書を個人の農民から取り、そうしてそれについて許可を与えた場合には扶養控除の不適用の条項を適用しない、こういうようなことになる可能性が大体予想されるが、そういうことではだめですぞ。そういうことならかえって繁雑になる。農民が一件一件申告の延長を願うなどというようなことでは納得できませんから、その点は主務官庁として延ばすならあっさりと延ばして、そうして思い切ってこの際課税の転換に伴う犠牲をなくしてもらいたい、摩擦をなくしてもらいたいと思うのですが、その用意がありますかどうか。
  133. 阪田泰二

    ○阪田政府委員 ただいまの問題、お示しのように、いろいろと調査に慎重を期しましたりその他によりまして標準そのものの決定がおくれますと、期限内に申告を出すということが無理になって参りますから、そういうような場合には延長いたすことが必要になるわけでありますが、これにつきましては、法律を改正するとかいうようなことになりますと、そのためにまた非常にいろいろと手数もかかるようなことになりますので、これはできるだけ便宜な処置をとりまして、現行法に基いてできまする期限の延長をやって参りたいと考えております。
  134. 足鹿覺

    足鹿分科員 農林大臣がお見えになっておりますから、この問題はちょっとここで一段落つけておきます。この農業課税の問題は、少し専門的になりましたからあとに保留いたしまして、大臣へのお尋ねをいたします。  大臣に一、二点伺っておきたいのでありますが、政府の農林金融政策についてであります。政府は本年度から農業改良基金制度を設ける等、大幅に政策の転換を行なっていこうという方針に見えるのでありますが、昨年の十月公布になった自作農維持創設資金の貸し出し及び運用の問題についてであります。公庫の方もおいでになっておると思いますが、公庫からいただいた資料によりますと、本年の二月二十一日の受理件数が、件数にして二方二百十七で、決定が一万七百六十五、金額にして、受付が二十一億三千六百万円で、決定が十一億六千八百万円ということになっております。事実私の県の実情を調べてみますと、鳥取県の場合は、二月一日現在において申請が七百一件、申込額が八千三百七万円、これに対するところの決定が、申請七百一に対して百九十六で、三分の一にも足りない、金額にしては、八千三百方円に対して二千十万円、わずかに四分一にも足りない、こういう実例が出ているのであります。そこで伺いますが、このような農民の要望れ対してこの程度しかこたえられないというのには何か原因があるはずだと私は思うのです。いろいろ調べてみますと、事実において、この自作農維持創設資金融資関係のいろいろな政府の方針を示す書類によりますと、この貸し出しの対象になる農家を非常に制約しておる事実がある。たとえば昭和三十年十月十日、自作農維持創設資金融資要綱というものの第一、通則、一項二号によりますと、農林水産業外の所得が総所得の過半を占めるものについては通用しないというような条項がちゃんと載っておる。またその一号には、その地方における中流の経営規模をこえる規模のものは除外をするというように、それでなくとも資金のワクが二十億しかない、相当狭められた資金ワクのところへ、適用を受ける農家に対して非常に激しくきびしい制限がせられておるところに、こうした貸し出しの隘路があるのではないか、こういうふうに思うのです。少くとも四倍、五倍の申し込みがあるものに、この程度の融資しかできないということに対して、政府はどういうふうにお考えになっておりますか。昭和三十一年度の自作農維持創設資金のワクは、予算を見ると、五億円ふやしておられるようでありますが、この程度では私は焼け石に水だと思う。どういうふうにお考えになっておりますか、大体の御構想を承わりたい。もっとこれを緩和して、農民の期待に沿うように善処せられる意思があるかどうか、農林大臣の御所信を承わりたい。
  135. 河野一郎

    河野国務大臣 お尋ねでございます点につきましては、昨年度は御承知通り予算の成立いたしましたのが非常におくれましたので、今足鹿委員のお述べになりました数字は、調査等準備がおくれましたので、決定がおくれた点もあると思うのであります。従って、大体詳しいことは政府委員から説明させますが、その後の数字から参りますと、必ずしも申し込みに対して資金が非常に足らないというような状態でもないように思われます。もっとも今御指摘のように、制限が少し妥当でないという点があるかもしれません。しかしこの金融は、ほかの方からまた通じていく道も全然絶無ではないのでございますから、いろいろな面から回していくということで一つやっていきたい。今年五億をふやしたのでは少いとおっしゃる。もちろん多い方がなおけっこうであるかもしれませんが、御承知通り資金がすべて十分に行きかねる点がありますので、まあまあこの辺でということでやっていきたい、こう思っておるわけであります。
  136. 戸嶋芳雄

    ○戸嶋説明員 現在私どもの手元にございます。番新しい資料で、これは二月二十日現在の調査ですが、現在までに受理をいたしました件数が一万九千六百二十六件、金額にいたしまして二十億七千五百万円になっております。これにつきまして審査の上決定されましたものが、件数にいたしまして一万五百七十三件、金額で十一億四千六百万円に上っております。  なお、県の方で貸し出しのための安定計画を認定いたしました計数を申し上げますと、同じく二月の二十日現在で二十四億程度ごいます。現在のところそういうような状態でございます。
  137. 足鹿覺

    足鹿分科員 十月の初めに公布されて、そして二月二十日現在でここまできておる。半期に満たない期間に、ワクの二十億を七千五百万円も突破をするというような実情にもうすでになっておる。従って、通年の場合を考えた場合に、足りるはずはないのです。第一、あなた方の政府が、経済企画庁が発表いたしましたところによりますと、特に自作地の売買というものが非常に目立っております。特に西日本の中以下の農家にそれが顕著である。自営農業の赤字や、失業、半失業による家計の破綻を克服するために農地を手放すという傾向が非常にふえまして、面積の上においては昨年よりも三七%、件数の上においては四三%もふえておる。これは経済企画庁の最近の農地の移動の実態についての調査を取りまとめたものによるのです。そこにまでもうきておるのです。きておるにもかかわらず、今の大臣の御答弁では、まあ仕方がないというようなきわめて熱意のない御答弁のように聞いて、私遺憾に思いますが、こういうあなた方の経済企画庁の調査の上において四割ないし五割の農地を手放す人々が多くなっておる。しかもこの自作農維持創設資金を作ったゆえんのものは、農家の生活資金あるいは相続に要するところの資金、そういったようなものに充てることを主たる目的として、去年の国会において作ったはずであります。ところが事実私の県では、申込みの四分の一にも足らないようなそういう事例がすでに出ておる。半年においてそうであります。従って通年の場合には、この恩典に浴するものはおそらく雨夜の星のようなごくわずかなものになってしまうでしょう。それではいたずらに大きな看板のみを掲げて、非常に難航に難航を重ねてあの法案が通った趣旨を達成することはできないのではないかと思います。そういう点について、まず金はいかようにしてでも、あとで必要があればワクをふやすということであれば、これはいいのであります。問題は、その貸し出しの条件が非常にむずかしいところに、こういった申込みが、その困難さを乗り越えてまでも出ておるということであります。ですから一連の、自作農維持創設資金の融通に関する農林漁業金融公庫の業務方法書から始まって、すべての点について農村実情にマッチするようにこれを改正し、農家の利便をはかる方針を立ててもらいたいと思うが、そういう点について検討する意思がありますかどうか。
  138. 河野一郎

    河野国務大臣 農村全体の金融の問題につきましては、御承知通り戦後比較的農村経済が豊かになりかけまして、都市の工業方面の方が農業を下回っておるという時代も一時ないことはなかったのでございますけれども、最近またこれが平常——と言ったら誤弊があるかもしれませんが、農業生産が工業生産を下回るようになりまして、勢い農業の生産資金が枯渇して参っておるような状態になっておることは事実でございます。従いまして農村金融に対しては格段の配意をして参らなければならないということは、私も深く考えておるのでございまして、それについて農村関係の金融、たとえば不動産金融を起したらいいか悪いかとか、ないしはその他の協同組合系統の金融機関が三段階、二段階制の問題がどうかというような、およそそういう問題が話題になって参りますのも、これらの一つの現われだと思うのであります。お説のように、全般にわたって早期に深く留意をいたしませんと、また不当に土地が担保化されてみたり、または農村に不測の高利の金が動くというふうになりまして、非常に大きな問題になる危険もございますので、いま一度全面的に勘案いたして考えなければならぬだろうと思っておるのでございますけれども、思うことと実際の実行することとはなかなか一致いたしませんで、はなはだ恐縮でございますが、私といたしましては深くこの点には留意をいたしておるわけでございます。
  139. 足鹿覺

    足鹿分科員 今の大臣の答弁は、どうも何が何だかさっぱり得るところがないようですが、結局今はまだ検討できないということですか。私はこういう顕著な事例の現われたものに対しては当然事務当局にその再検討を命ぜられて、予算が二十五億で足りないとはいっても、今は一応間に合うでしょう。半期で二十億、今度二十五億でありますから、まず本年の前半期程度まではおそらく間に合うでしょう。それで足りなくなればあとでワクを拡大されればいいわけでありますから、その点についてこまかく言うのではありません。問題は貸付を制限するがごとき困難な条件をこの際除去すべきではないか。それには農林漁業金融公庫の業務方法書を初め融通要綱から金融機関事務取扱要領といった一連のこれらのものを、農地の移動等の頻繁な実情にかんがみて、農民が高い利子に悩む、あるいはいろいろな点で不自由をしていのに対してまず緩和をしていく、その段階がすでに来ておると思うのです。去年この法案を通すときには、農地担保という点でわれわれは反対をした。そこであなた方の方でも考慮をされて、その法案の中から農地担保という字句を削って、そうして当面の農村の逼迫した農林金融に備えるべく、一応これは各派が賛成して通った法律であります。従って、その法律に基いてかくのごとき顕著な事例が現われておるとするならば、当然これを当初において改めらるべきが筋合いであり、誠意のあるやり方ではないかと私は思う。ですから、金融は今の二十五億で本年は一応おやりになり、足らなければあとでまたおやりになればいいのだから、条件の緩和をしてもっと困った農民に行き渡るようにお考えになる必要があると思うのです。最近私は国に帰ったときに、四百戸ばかりのある村を歩いてみましたが、その村でこの恩典にあずかる者が二人しかない。その二人も、審査の結果一人は落されるというような実情です。実際においてそういうことで、この自作農維持創設資金と銘打ったいわば農地改革の一環であるこの法律の成果があるとお考えになりますか。件数については今承わりますと、相当な件数に達しております。達しておりますが、一万七百六十五件ということになっておりますから、その件数自体から見ますならばそうでありますが、一つの村にとってみますならば、一人か二人の程度であります。そういうことでこの自作農維持創設資金と銘打つに値する役割を果しておるかどうかということですよ。特に政府は改良基金制度等に補助金政策を改めて、特に金融政策を重視していく。そういう基本方針を打ち出しておる政府は、こういった顕著な事例を知らぬ顔をするということはないと思う。くどいようでありますが、いま一応御再考になって御答弁願いたい。
  140. 河野一郎

    河野国務大臣 お説ごもっともでございますが、何分昨年の夏御決定を願いましたものを、政府がまた半年たつかたたないうちに、これを変えるということは、あまりに急激な変化になりますから、できるだけ運用によってやっていこうじゃないかというような考えもいたしており、また今お話でございますけれども、た玄たま足鹿さんのお歩きになった村が十分活用しておられないのであって、現在では全国で四、五千に村の数はなっておると思うのでありますが、そこで一万七百と申しますれば、一村当り数件あるわけであります。それにしてもこれをだんだん利用されるようになりますれば、それに従ってまた政府としても、この制度については拡充して参るということが当然だと思います。また貸出条件その他についても今お話でございましたが、これらについてはもちろんそういう御要望があれば検討することは決して私は悪いことじゃない、検討すべきだと考えております。
  141. 足鹿覺

    足鹿分科員 これは公面から一つ資料をもらいたいのですが、貸付金の種類が大体四つあるのです。その種類別の受理件数、貸付金額、たとえば自作地の取得資金、小作地の取得資金、相続資金、維持資金、この四つありますが、この件数なり、貸付金の率は、おそらく維持資金に私は相当申し込みがあったのではないかと思いますが、それらの資料を一つ整備して御提出を願いたい。それに基いてもっと一つ深刻にこの点についてはお考えを願いたいと思います。先ほどの大臣お話ではそう悲観したものでないというようなお話でございますが、事実においては、全くりょうりょうたるものです。そして結局府県実情を見ておると、非常に厳重な条件のために、これは常識的に貸してもいいと思うものが、みすみす借りられない、そういう実情になっておるのです。これはもっと府県を督励されて、そしてこれはすべり出したばかりであって、完璧を期することは、あるいは十二分なことを望むことは無理かもしりませんが、資金の持つ意味が非常に重要であるだけに、もっと本気に再検討願いたい。このことだけを私は重ねて申し上げて、この問題は一応打ち切ります。  それから次に農業技術の問題について伺います。先般予算委員会の一般質問で、農林大臣に私はお尋ねをいたしました。技術最高会議等をお作りになって、技術を尊重されるということはきわめてけっこうでありますが、三十一年度地方農業試験場の補助職員に関する一つの資料をとってみますと、相当大きな変化が起きてきておる。それは予算そのものには大きな変りのないものもありますが、その定員上の身分が著しく変ってきているという点が一つの特徴であろうと思うのです。中央にいかように技術会議を設けて大臣が熱心に企画をされても、地方においてこれを応用実際化していくところの出先機関がこのように予算を削られ、身分が変わるというようなことで、技術の総合性を発揮して実効を期することができるかどうか。たとえば指定試験の事業が昨年度三百十四人であったものが三十一年は百九十人に減っておる。カンショの試験用材料の隔離、増殖事業の四人が零になっておる。特に低位生産地調査事業の二百六十五人が零になっておる、施肥改善事業四十六人が零になっておる、土地改良地区の試験地三十三人が二十六人になっておる。小計六百六十二人が二百十六人に減るのを初め、著しい変化を来たしておる。これは一体どういうわけですか。特に私はこまかいことを言うようでありますが、分科会の任務はそういうところにあると思いますから突っ込んで申し上げますと、日本の農業の一番の盲点はどこにあるかといえば、低位生産地の対策が足らないというのが日本農業の農業政策の根本欠陥です。低位生産地帯というものに対して総合的な施策をやろうとすると、いわゆる地域立法だといって非難が起る。積雪寒冷単作地帯振興法に対して議員立法だといって非難が起きたり、あるいはようやく効果を上げかけた急傾斜のあれが削られるというようなことで、事実において非常にこの低位生産地に対するところの総合施策が講ぜられなければならないにもかかわらず、それが講ぜられないところに日本農業の大きな盲点があると思うのです。そういったことを十分に調べ上げていくならば、生産力の向上もさることながら、農業災害補償法に基く——いろいろ現在問題となっております災害補償法の必用等にも非常に貢献することは明らかであります。にもかかわらず、一例を言いますならば、都道府県の農業試験場の補助関係において、特にこの低位生産地の調査事業等に手をつけるというがごときことは、私は間違いではないかと思うのです。これは技術上の小さな数字にすぎませんが、その示唆しておる点は非常に大きな問題を含んでおると思うのです。そういう点で、上の技術会談やアイソトープの研究やいろいろなところに手を伸べておったとしても、事実において手足をもぐような行き方というものは、私どもは納得ができません。地方にとっては非常に大きな問題だと思うのです。大体総合的に技術関係についてもう少し御所信を承わっておきたいと思う。
  142. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまの点は、予算の組み方を技術的に変えた、予算の使い方を使いやすくするために組み方を変えたということでございまして、これは事務当局から詳しく説明させたいと思います。
  143. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 ただいま大臣から御説明がごいましたところを敷衍申し上げますが、今足鹿要員から御質問がありました地方の試験事業補助の点でございますが、御指摘のように、指定試験なり、あるいは低位生産の試験なり、あるいは施肥改善の試験なり、そういったものにつきまして、従来人件費というふうに予算上掲げてあったわけでございますが、来年度からこれにつきましては事業費的な考え方で組みかえたわけでございまして、内容は全然従来と同じでございます。定員なり、あるいはその単価なり、そういうものは従来通り掲げてあるわけであります。われわれといたしましては、これは従来それに従事しておりました職員なり、あるいは常勤の労務者なり、そういったものにつきましては従来通りこれを実施していくというふうにやっていく、そういうことで増えております。
  144. 足鹿覺

    足鹿分科員 こまかい技術上の点についてはあとでよく資料を調べてなにしますが、とにかく定員上の身分がいろいろ変化したということの内容はどういうことですか。予算がかりにそうだったとするならば、内容的には変って、どうなるのですか。地方の諸君が心配しておるのは、一体どういうことなんですか。
  145. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 組み方が変っただけでございまして、従来定員というものは県の条例定員できめてあるわけであります。それに対してこちらから補助金が出ておったわけでありますが、それが定員については関係なく、ただそういう人件費に充て得る金ということで、今度は同じ内容のものが計上されておるわけであります。そういう県の定員が確保され、予算的措置は講じてあるわけであります。それにつきましては、試験研究に文障のないよう県に対して指導等を加えていく、そうして指定試験なり、さっき指摘されまして低位生産の調査事業、そういうものの円滑な運営をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  146. 足鹿覺

    足鹿分科員 常勤振りかえということはどういうことですか。
  147. 昌谷孝

    昌谷政府委員 ただいま庄野総務課長から申し上げましたところをさらにこまかく申し上げますと、従来の補助の方式は、これらのものにつきまして予算単価と予算上の員数を定めまして、それを積算したものを補助いたしておりまして、従いまして補助金の使用方法等についてかなり拘束的な意味がありました。それで今回の三十一年度予算におきまするこの関係予算の組み方は、予算金額は全く従来と変っておりません。ただ員数、単価について実態と離れておりました区分けの説明をしいてつけることをやめまして、現地におきまして実際に使いいいように、かねて知事会議等で御要望のありましたように、員数なり、単価なりについてはそれぞれの地方々々の実情にまかすべしという方向に一歩組み方を変えたわけであります。従いましてそのことが査定の過程におきまして、常勤労務者扱いというふうに伝えられたことは事実であります。それが地方の試験場長会議等に伝わりまして、ただいま御指摘のように、誤解に基きまして一応不安である、身分が非常に不安定になったというようなお話を私どもも聞いております。それにつきましては、今申し上げましたような予算の意図を詳細御説明申し上げまして、予算金額は従来と変っておらぬし、また使用方法についてもそれぞれの県にまかされておる、従来の本定員いという趣旨のことを十分申し上げまして、誤納得を願ったわけであります。なおこういった予算の組み方は、御参考までに申し上げますが、公共事業費の系統の県の事務費につきましては、従来ともにこういう組み方がされておりまして、それによって、県において必要定員が確保せられておるようなわけであります。それと同じようなことをこの種事業につきまして、能力あるいは員数等の関係をむしろ地方実態に即しやすくするというふうに補助方式を私どもは改善をしたつもりでおります。
  148. 足鹿覺

    足鹿分科員 変化がない、そう予算課長が言明になるならば、それ以上申し上げても、こちらの聞いたこととちょっと違うように思いますけれども、まあこれは一応それで打ち切りますが、とにかくそういう誤解を与えるようなことはなるべくやめられた方がよろしい。常勤労務者扱いをされるということはとんでもないことでありまして、農林省には常勤労務者というものが非常に多いのです。ほかの部門にも非常に多いのですから、そういうことはなるべくおやめになったらよろしいと思いますが、それはさておきまして農林大臣に一つ伺います。  先般の予算委員会の一般質問で私申し上げましたが、農業災害補償制度の改正の問題について、大臣は現在これをどうお考えになっておりますか。農業団体の再々編成と並んで、これは目下非常に重大な問題であります。私は三、四年前からこの制度改正と取り組みまして、衆議院では満場一致の決議で十原則を作り、これを政府に進言をし、前政府は制度改正協議会を発足せしめて、おととしの炎天下から年末、厳寒に至るまで十数回の熱心な会合を開いて、そうして中間答申を行なったまま、現内閣はこの協議会を全く無視したような形にも受け取れます。会合を開くでもなければ、その中間報告についてのいいも悪いもおっしゃらない。一体衆議院が昭和二十八年に両院協議会を提唱し、その両院協議会の決定に基いてなされたこのことに対して、かくも軽くお考えになっておるということは、私は少し納得がいきません。一体どういうふうにおやりになるつもりでありますか。団体再編成の場合に、かつての平野構想によれば、町村では農民会にこれを一本にする、そうして県段階からは保険部会を作って中央にまた再組織をするというような、下は一本で上は二つも三つもするというような構想であったように伺います。その後平野構想は一応やめたということでありますが、しからば、団体再々編成の中で非常に大きな部分を占めておるこの農業災害補償制度の改正の問題についてはどういう構想でありますか。
  149. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、農業災害補償制度は、制度それ自身といたしては非常に適切な制度でございますが、これが運営に当りまして全国各地に、会計検査院の指摘いたしますように、非常に遺憾な点の多いということもまた事実でございます。従いましてこれを調整いたしまして、適切なものに変えなければならぬ段階にきておるということも、私は見のがすことのできない問題だと思うのであります。従いまして、各制度審議会の委員諸君が非常に熱心に御検討の結果、中間報告をちょうだいいたしましたことも私は十分了承いたしております。この取扱いにおきましても十分これを尊重いたしまして、一方においてこれと見合いつつ、今申し上げました現状とにらみ合せて何とか考えなければいかぬ。かたがた一方において、農業委員会の問題があるわけでございます。先ほど来誤解があるといけませんから重ねて申し上げますが、農業協同組合の点につきましては今回はこれは別途考慮いたしまして、これの整備強化について引き続きこれを拡充することに努力をして参る。別に農業災害補償制度につきましても、これを農業委員会制度の改正と全然一つにして考えるということも考えていないわけでございます。さればといって、農業災害補償制度を従来通りにしてよろしいかどうかということにつきましては、非常な疑問があるわけでございます。でございますから、これを合せて一つにするという考えは持っておりませんが、さればといって、農業災害補償制度につきましては全然これ々協同組合と同様に全く別のものであるというふうにしていいか悪いか、ないしは災害程度の認定もしくは災害程度決定を、他の新しく考えるものについてこれを諮問するという程度がいいか悪いかというようなことについて、せっかく今検討をいたしておるわけでございます。でありますから繰り返して申しますならば、われわれの想定いたしております農村の団体のあるべき姿といたしましては、協同組合系統のものが一本、全然別にこれを考える。そのほかに災害補償に関するものが一つ考えられる。別にこれとは一部関連を持つ、全然関連を持たないという点について考慮しつつ今別の団体を考えておる。農業委員会の改組でこれをいくか、ないしは農業委員会という考え方をさらに発展的解消して持っていくかということについて、せっかく検討しておるというのが今日ただいまの現状でございます。これは昨日も他の委員会で申しました通りに、なるべく早く、三月の上旬にその結論を得て、そして国会の御審議を願うようになりますか、また各方面の御批判を十分願いまして大体の賛成を得られれば、国会に提案をして国会の御批判を願う、御検討を願うということにいたしていきたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  150. 足鹿覺

    足鹿分科員 大体の御構想は一応わかりましたが、この際大事なことでありますので、この議論は今まで何回もやっておりますから、そう多くは申し上げませんが、大臣に特に考えてほしいと思うことは、農林省の持つ団体主義に対する自己批判を私はやってもらいたいと思う。現在この農業災害補償法に基く村の共済組合というものは、みんな協同組合にその事務所も役員も職員も依存しておる。そうして県段階以上のものは協同組合よりもりっぱな事務所を持ってやっておるまことに不思議な団体であります。末端へいくとほんとうに協同組合に依存をしてほそぼそと生活しておるこの組合が、県段階以上になるというと急に堂々たる事務所をかかえ、協同組合などはそばにもよれないような運用をやっておる。ここにこの組合の問題がある。従ってこれは団体主義を農林省が考えるとするならば、あっさり協同組合にやらせるぐらいの腹を持つべきだ。ところがそれもようやらぬ。従って問題になるのは、そのような運営よろしきを得ない——この法律自体はまことにいいとしても、運営よろしきを得ないこの共済組合をどうするかという場合においては、その事業の部分をいろいろと分割をする。町以上の災害に対するところの補償は国家の補償であります。でありますから、それらの点等を勘案して、むしろこれはもう市町村にその業務を委譲して、市町村の農林行政の一環としてやらせていくならば、市町村の議会が厳重に目を光らしておりますし、今の組合の運営のようなことにはなるまい。今は全く、会計検査院あるいは行政管理庁の報告をまつまでもなく、実にひどいです。そのひどい内容についてはくどくどと申し上げませんが、そういうのはどこからくるかというと、協同組合の総会の終りに十分ぐらいこの総会をやる。そうして何を審議したかわからないうちに異議なし、異議なしでこの一年間の共済組合の総会が済んでし願うというように、全く運営上にも欠陥がある。ですから、これが協同組合なら協同組合ということになりますれば、協同組合もその気になってやるでしょう。しかしそれも農林省は、対自治庁の関係があって、なるべく自分たちのところにその農業団体として残しておきたいという腹があるようでありますが、かりにこれを自治庁なら自治庁の所管に移してみたところで、事の次第は専門の農林省の指導なくしては行われない仕事であります。ただ所管が一応形として市町村に委譲されたからといって、その指導権そのものは何ら喪失するものではありません。あくまでも農林省が厳然として公正な運営を行い、そのために必要な指導を加える必要が私はあると思います。またそれは行政的にいろいろ調整をあなた方がおとりになればいいことであって、今もってなお団体主義を固執されるところに抜本的な改正の行き悩みがあると思います。そういう点についてはもっとこの際考えられねばならぬのではないかと私は思います。この制度の改正がいかに困難であるかということは大臣も身をもって体験しておられると思う。この前にお考えになっておるような低位被害地を自由加入にする、任意加入にする、あるいは第一種、第二種の兼業を任意加入にするというような構想をいたしますならば、この制度はもう音を立てて崩壊するに違いありません。やはり強制加入の建前というものを存続していく限りにおいては、事実上において地方公共団体等に全責任を負わせて、この農作物共済、農家所得の一部を災害から守るという精神を公共団体によって貫いていくということがいいと思います。その団体そのものを、もっと公共性にするということもありますが、おそらくこれは現状においては私は無理ではないかという感じもいたします。そこでどうしてもこれは経済行為を行なっておる協同組合なら協同組合というものに、思い切ってすべてをまかせるならまかせる。あるいはそれもならぬとすれば、その業務に従って、任意共済の点については、適当なものにこれを委譲する、あるいは強制加入の農作物共済の面については、これを市町村なら市町村に委譲していくというふうにして、その公共性とその業務の実態に応じた再分割を行い、発展的にこのものを解消して機能を高めていくということが、今残されている基本的な問題ではないかと私は考えているのです。そういう点について、私の意見が間違っているかもしれませんが、とくと農林省としては団体主義に対するところの自己批判をなさらなければならぬということが一つ。  それから制度改正協議会はもうおやりにならないならならないでよろしい。あるんだかないんだかわからないような委員会にわれわれも名を重ねておくということは非常におもしろくありませんから、やめるならおやめになって下さい。そして新しくお作りになるならお作りになってよろしいが、一体これをどう取り扱うつもりでありますか。当面の問題として一つそれも伺っておきたい。
  151. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ御意見でございましたから十分拝聴いたしました。やっぱり非常にむずかしい点がありますことでございますから、なかなか軽々には扱えない、私も全く同感でございます。しかしこれを、団体主義について反省すべしという御意見でございますが、この点もむろん考えなければならぬ点もございますので、あれこれ研究をして何らか大体の御賛成を縛るように願いたいと思っておるわけでございますが、何分御指摘の通り強制加入でなければ崩壊するという制度それ自体が、やはり疑問があるというような気も実はするのであります。強制加入でないとだめになってしまうというものを、あえてこれを強制して参れば、農家の負担になるというようなことになる点もあるのでございますから、そういう点についても十分本質的にも検討をしなければならぬ点があるだろうと思うのであります。でございますから、これを自治体にまかすといたしましても、またそこに問題が起ってくるし、さればと申しまして、これを今日の協同組合にやらせるということになりましても、今さえ非常に問題の多い経理を、これを協同組合にまかせまして、むろんりっぱにいくものもございましょうけれども、協同組合自身におきましてもいろいろ改善強化して参らなければならないものが相当に数があるのでございますから、その中に入れるということもなかなかむずかしいというような、あれこれ考えますると、いろいろな点から困難な問題が出てくることは御承知通りでございます。私といたしましても、足鹿さんのお考えになりますように、あらゆる点を実は考えて、行きつ戻りついたしているわけでございますが、せっかく検討いたしまして、なるべく御期待に沿うものを結論を得たいと思っています。  なおこの制度に対する審議会をどうするかということでございますが、成案を一応得ましたらそれにお諮りをいたし、そしてその上で結論を得たい、こう考えておるわけでございます。
  152. 足鹿覺

    足鹿委員 結論的に申し上げますと、そうすると団体再編成と切り離してこの改正法律案は今国会に提出されますか。
  153. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げますように、なるべく早くやらなければならぬ段階に来ておりますことは御承知通りでございます。しかしただ急いで、現に進行中のものでございますし、これを混乱させてしまうということも、非常によろしくございませから、よほど慎重にいたさなければなりません。これは農業委員会と違いまして、いろいろと金の動きもございますし、事務も非常に煩瑣なものでございますから、これを改訂する場合にはよほど慎重にいたさなければいかぬという考えでございますので、必ずしも本国会に成案を得て提案をできるというわけには私はいかぬと思う。しかしなるべくやりたいという考えで現在考えております。せっかく急がしておりますということで御了解願いたいと思います。
  154. 足鹿覺

    足鹿分科員 だいぶ長くなりましたので、大体この程度で、もう一問くらいで終りたいと思いますが、日本の農業政策の面からいって、これは大臣も御承知のように、この災害補償制度は一本の大きな支柱です。これくらい経費を食って、またこれくらい国民の評判の悪い制度はないのです。ですから、どんな困難があってもこの抜本改正の点については、昭和二十八年の衆参両院の協議会に出発して今日に至る経過から見ても、これは議会側は十二分にこの制度改正については協力しておるはずだと思う。ほんとうに党派だとかそういうことは考えないで、日本農業政策の一本の支柱である、農民所得をどうして災害から守るかということについては、きわめて真摯な態度で協力しておると思う。これはあなた方がやられないのは、政府のこれは責任であります。いたずらにこれをたなざらしにしておくということは、末端のその業務に精励しておる何の罪もとがもない職員たちは、どれくらい迷惑しておるかわかりません。従ってだんだん人材は他の団体や他の職場を求めて流れていく。どうせおっても見込みがないというような気持を持っている者が、地方へ帰ってみますと相当おります。しかし私は、そういうことはなかろう、この制度は国の大きな制度であるから、必ず何らかの措置が今国会でつくであろうといって激励をし、慰めもし、励ましてもおりますが、実際に気の毒に思います。あまりいつまでもこの問題をたなざらしにして、慎重を期する、期すると言いながら放っておくということは、私はもう許されない段階がきておると思います。特に政府の決断を私は要望し、この改正については抜本的なものを今国会に提案をされ、もしそれに対して必要があるならば、制度改正協議会も早急に開いて、衆知をさらにしぼって最善を尽されんことを最後に申し上げて、この農業災害補償制度問題についてはこの程度で終っておきます。  最後に一月十六日の閣議了承事項で、きょうの新聞によると、おとといの閣議できまったそうでありますが、戦争被害に対する補償問題を総合的に検討するための機関を内閣に設置する、こういうことだそうでありますが、それによりますと、在外資産の補償を初め農地改革の国家補償の問題も範囲として取り上げるというような新聞記事を見ましたが、これはほんとうでありますか。そうすると長崎や広島で被害を受けた者から一切合さいこの戦争の被害を現内閣は補償するというのでありますか。直接の被害を受けた者と、政府のそのときの施策によって、たとえば農地解放が行われた、これも被害とする。戦争中に先祖伝来の生業を失った、いわゆる中小企業の整備等によって転換を余儀なくされたような戦争犠牲者も出て参りましょうから、これは大へんな問題になります。おそらくこういった問題が軽々に取り上げられるということは、これは重大な問題だと思う。またそういったことが世間に及ぼす影響は、これまた非常に深刻なものがあろうと思う。いわんや昨年末から本年の初頭に行われた地主の反当十万円の解放農地の国家補償の運動等も起きているやさきに、これに呼応するかのごとく、このような問題を取り上げて、閣内に審議機関を作られるというようなことは、非常に私はその及ぼす影響は甚大であろうと思う。そういう点について閣議決定の真意またはその構想等について伺っておきたい。
  155. 河野一郎

    河野国務大臣 さような閣議決定は私はないと思います。
  156. 足鹿覺

    足鹿分科員 最近一月十六日にあなたが提案しているんですよ。河野さん、あなたですよ。戦争被害に対する補償問題を総合的に検討するための機関を内閣に設置するについて、これは一月十六日、それからタベの夕刊からけさの新聞相当出ております。戦争被害の国家補償の問題について相当具体的に、補償の範囲等までうたっておりますが、これはうそですか。うそならそれでけっこうでありますから、はっきりしていただきたい。
  157. 河野一郎

    河野国務大臣 閣議の決定はないと思います。
  158. 足鹿覺

    足鹿分科員 閣議の了承はどうですか。
  159. 河野一郎

    河野国務大臣 了承もありません。ただいま新聞をごらんになって御指摘になりましたことは、一月予算編成当時に、戦争による犠牲、被害というようなものがいろいろな面から主張されることが多い、引き揚げの方々の在外資産の問題、国内における各種の問題が各様に出て参る。そういう問題が次々に出てくるのに、国家としてどういう応待をしてよろしいか非常に困る、またその負担にも限界がある。であるからこれらについては一度戦争に原因して生じた国民の損害というものを一括調査をして、これに対して国家としての支払い能力の限界を定めて、これを処理する方法を考えるということもしなければならぬのじゃなかろうかというような話があったことは事実でございます。最近党内におきまして有力な方々の間にまたその話が時文かわされておるということも私は聞いております。いずれにしても私が今申し上げた方向でわが党並びに内閣の内部においてそういう話が出たという程度でございまして、これが将来どういうふうに発展して参り、どういうふうに具現して参るかということは今後の問題でありますから、私はここで今申し上げかねますが、経過はそういうことであります。
  160. 足鹿覺

    足鹿分科員 それでいいんですが、在外資産の補償問題と解放農地の国家補償問題とは全然性質の違うものであります。私は急いで十ぱ一からげに言いましたから一応申し上げておきますが、在外資産の国家補償の問題はよほど内容が違うんです。農地解放は戦争が済んだ後における政策として国が行なったものであります。でありますからこれは全然違う。戦争被害と銘を打つから戦後の場合をよく連想しがちでありますが、戦争中に起きた被害が事実大きいのであります。それを一括して戦争被害ということになりますと、何か戦後の印象がなまなましいためにそこへ重点が向けられ、便乗組が解放農地の国家補償というがごとき荒唐無稽の要求を掲げて、あたかもそれがなるかのごときことを宣伝して相当な金を集めていろいろな運動を展開しておる。これらのものと結びつけがちになると、その及ぼす影響はきわめて大きいのであります。そういう事実は閣議決定も了承もないという大臣の御答弁でありますから、これ以上私は申し上げませんが、そういう問題については、農地改革後農業改革が今こういう重大な段階に達しておるときに、復古調の、時代に逆行せしめるがごときことについては、保守、革新たるを問わず、おそらくそういうことは考えるべきではなかろう。いかに保守党が一つの考え方をもってしても、そのようなことがなし得るものではないと私どもは信じております。選挙を前にしていろいろなことが起きて参りますけれども、そういったことについてはまどうことなしに農地改革の精神、基本方針を貫かれることを希望いたします。  それから落しておりましたので伺いたい。これは大臣でも清井長官でもけっこうでありますが、昭和三十一年度の食管特別会計における米価、麦価はどうなるんですか。米の場合は三十年の実効一万百六十円と、三十一年度予算米価九千九百六十円というものを差し引きますと、石当り四百二十一円の減になっております。これの算出基礎、それから甲場米あるいは包装代や格差や、いろいろの予約奨励金、そういう加算額等に対するところの具体的な内容はどういうふうになるのでありますか。資料もいただいておりませんし、御説明を願いたいと思います。   〔北澤主査代理退席、主査着席〕
  161. 清井正

    ○清井政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、三十一年の食管特別会計に予算上計上いたしました三十一年産米価は九千九百六十円ということになっております。その計算の基礎は本年の一万百六十円の米価を計算いたしましたときと全く同様の算定方式によって算定いたしました。詳しく申しますと、九千九百六十円の根拠は、パリティで計算いたしました九千六百七十三円という計算がありまして、それに三十年と同様の包装費百八十七円を加えまして、さらに予約格差と申しますか、その百円を加えてあるのでありまして、全く三十年産のパリティの計算方式と同様でございます。三十年の米価を計舞いたしましたときのパリティが二一〇・四四という計算でありましたが、最近のパリティは下って参りましたので、最近までのパリティをとりまして一一八というふうに計算いたしまして、当時の一二〇・四四を一一八に置きかえた次第でございます。従ってこの計算に基いて計算いたしましたパリティ計算が九千六百七十三円ということになっております。
  162. 足鹿覺

    足鹿分科員 そういたしますと、昨年よりも四百円ばかり差があるのですが、これは米価審議会にも全然諮られないし、従来はよく米価審議会に御相談になっておりましたが、最近は全然お聞きになりませんが、今年は米価決定の時期はいつごろになりますか。
  163. 河野一郎

    河野国務大臣 予約制度を実施いたしますのに、今年は昨年と違いまして国会も早く御決定いただきます。従いましてまず私といたしましては六月の初めには予約の開始をするのがいいのじゃないかというふうに——決定はいたしておりませんが、大体の見当をつけておりますので、まず五月中に米価はきめなければなりません。従って米価審議会も五月に開くことが適当であろうと考えております。
  164. 足鹿覺

    足鹿分科員 大体今年の食管特別会計は非常に弾力性を失っておるようでありますが、赤字は三十年度で一応すっかり解消された。外米の利益等が相当大きく見積られておるが、その可否は別としまして、予算米価を中心としてこれ以上になる可能性がありますか。見込みはどうですか。大体予約でいく場合にはどうせ予定米価になるのです。五月に諮問なさって六月に発足されるということになりますと、原単位計算もできません。八月十五日現在の原単位計算もできないということになると、要するにこの予算米価で結局予約をお取りまとめになるというお考えでありますか。
  165. 河野一郎

    河野国務大臣 それは昨年と同様の方式でやるつもりでございます。従って今後の物価の変動、情勢の変化等考慮されるものがあればよく考慮して米価の決定をしなければならないし、それは昨年と同様の方式でやるつもりでおります。
  166. 足鹿覺

    足鹿分科員 昨年同様ということはどういうことですか。
  167. 河野一郎

    河野国務大臣 予算米価でやるのではない。ただし結果が予算米価と同様になるかもしれませんけれども予算米価は、予算を編成するに当って想定できる米価を、予算米価としてとりましたということでございます。
  168. 足鹿覺

    足鹿分科員 今の溝井さんのお話を聞きますと、パリティの一二〇・四四というものを一一八に切り下げて組んだのがこの予算米価というお話でありますが、それはいつの基準ですか。
  169. 清井正

    ○清井政府委員 予算編成時に知り得ましたところの最も近いパリティをとりました。それは昨年の十一月のパリティでございます。降年の十一月のパリティが二七・九幾つでございました。それを切り上げまして一一八ということにいたしたのでございます。
  170. 足鹿覺

    足鹿分科員 そういたしますと予約米価を公表される場合には、その予約米価を公表する時期に近いときのパリティでやっていきますか、あるいはある一つの見通しをもって想定米価をやっていくのでありますか、どういうことになるのですか。ことしがいよいよ一番本格的な予約制度になると思うのです。ですからでき得る限り米価は早くきめる方がいいのです。
  171. 河野一郎

    河野国務大臣 昨年の決定の際には五月のパリティを使ったそうであります。従ってことしは五月の末に決定いたします際に当って、なるべく用い得る、確定しておる一番新しいものでやるのが妥当だ、こう考えております。
  172. 足鹿覺

    足鹿分科員 昭和二十九年産のバック・ベイはもう払わぬお考えですな。——そうするとパリティというものをあなた方は米価決定の重大要素にとってくる理由がもうくずれておるのじゃないですか。都合の悪いものは捨ててしまうのですね。パリティが下りそうなときにはパリティでいく。清井さん笑っていっちゃだめですよ。そんなばかなことがあるか。昭和二十九年産米はパリティが終ったのに払わない。今度はパリティが下りかけるとパリティでいくというような、そんな得手勝手な米価のきめ方がありますか。
  173. 河野一郎

    河野国務大臣 これは御承知通り昨年の米価の決定は、パリティと、たまたま別途調査いたしました生産費の計算とが一致したところできめたのでございます。でございますから今年度の米価の決定に当りましても、むろん昨年同様な方式でやるということはかねて私が申しておる辺りであります。たまたま予算米価の決定に当ってはパリティだけでやった、こういうことでございます。
  174. 足鹿覺

    足鹿分科員 そうしますと、要するに五月末に予約米価を公表する。それに近いところのパリティで一応試算をして仮米価を定める、こういうわけですな。そうすると最終米価をきめるときにパリティが上昇した場合にはどうしますか。
  175. 河野一郎

    河野国務大臣 それはだから私は昨年の米価の決定と同様な方式でいたしますと申しておるのであります。パリティだけではやりません。パリティと他の生産費調べもやっておりますから、それと両方合せて用いてやっております。でございますから、御承知通りにパリティのとり方でも、昨年はパリティのとり方を、従来二十六年、七年のパリティをとっておったものを、昨年は八年、九年に直してパリティをとっております。そういうふうに変えておるわけであります。従来の低かったものでとらぬで、高いところのパリティでとって、そのとった昨年のパリティがたまたま生産費調べと一致したというのでそこに置いておるわけでございます。そういうふうに要素を変えております。ですからあまり詳しいことは御存じの仲でありますから申さなかったのでありますが、そういうふうに変えております。ただパリティ、パリティとおっしゃいますけれども、いろいろ変えてやっております。でありますから私は先般来答弁をいたします際に、昨年と同様の方式でいたします。古い話を用いませんで昨年と同様でやって参るつもりであります。こう申しておるのであります。一万円米価、一万円米価という、そういう強い御要望もございましたし、一方生産費調べでとりました数字も出ましたし、それに合いますパリティをとりますと、八年、九年をもっていたしますれば、そこにそういうパリティが出てくる、そういうものを合せてきめたのが昨年の米価でございます。でございますから、その前の年には、相当に政治的な配慮も加わって二百円を加算した。昨年は今申しますように一万円米価ということの要望にこたえていろいろこれを裏づけするものを各方面から検討して、そしてこれに合理性を求めて、そこに一万円米価というものを私は定めたということでございます。従って今お話のように、それじゃ五月にきめたならば、出来秋になってパリティが下ったならば払うかとおっしゃいますが、それならばことしのような大豊作だったらどうするかという問題が逆説として出てくると思うのでございます。ですから農業政策の上におきましては、おのずから常識の範囲においてこれを施策として運用に妙を得ていくことが一番妥当である、こう考えてやっておるのでございまして、でございますから、今五月にきめますものは、一応五月に前年同様の方式でこれを決定いたし、そこで予約をいたして参ります。非常に減産だという場合には、むろん減収加算をしなければなりませんし、非常にパリティが上昇したということであれば、そのときには諸般の情勢を考えてバック・ペイをしなければ、農業再生産に支障を来たす、農家経済に非常に影響を与えるというときには、これらを当然なさなければならぬ、こう考えておるのでございまして、これは一に政治判断によってやってよろしいのではないかというふうに考えております。
  176. 足鹿覺

    足鹿分科員 大臣は基準年次のことを何かパリティのように考えられておるのですが、二十八、二十九年を基準年次にとっておいて、それを基準として算出をするという場合もありましょうし、あるいは経済年次であります昭和九、十、十一年の三カ年を基準年次にとって試算する場合もありましょうが、それはパリティでも何でもない、パリティの一部分の一つの基準年次のとり方を変えるだけのことでございまして、清井長官、あなたの補佐が足りない、そんなことで僕を何しようといったってだめですよ。要するに基準年次の二十八、九年でとるか、それはパリティのほんの一部分の説明であって、そんなことはないのです。私の言っておるのは、いわゆる現在の米価政策というものをずっとながめておりますと、あなた方の内閣のみならず、昔からでありますが、とにかくパリティが上っていくときにはやはり米価は上っていく。要素があるから他の要素を非常に強くとる。米価が下りぎみになると比較的パリティに忠実な態度をとるということは従来からも一貫した政府の米価政策の流れになっているのです。その過程で……。麦価の場合は昭和二十五、六年を基準としてとれ、そういうふうにちゃんと法律に書いてあるからこれは抜き差しならない。米価の場合には残念ながら食管法にその規定がないから、時の政府の悉意性によっていろいろ動かされておると思う。大体麦の場合には行き過ぎであったというような意見がありますが、あれはよくきいておるので現在麦価を政府がいじくろうとしても、あの法律を変えない限りはできない。一部には河野農林大臣大蔵当局とあの食管法改正の点こついて暗黙の了解をしておるというような評判も聞いておるのでありますが、麦価の問題についてはそういうことはないと断言できますか。
  177. 河野一郎

    河野国務大臣 足鹿さんのお話でございますけれども、従来の年次の取り方でやれば九千七百円程度に昨年の場合パリティはなったそうであります。それを年次の取り方を変えて一万六十円の結論が出るように高いところにとった、それはそうだとおっしゃいますけれども、これは重大なことだと思うのであります。これはほんの一部とおっしゃいますけれども、三百円動かすということは、普通のことじゃなかなか動きはしません。それはそうだとおっしゃいますけれども、そういうふうにして調子が合うような結論を得るように努力したということはお認め願いたい。従来の官僚主義で政府はいつでもとおっしゃいますけれども、われわれも政党内閣としてわれわれの見識においてやっておるのであります。でありますから、政府はこういうくせがあるとおっしゃいますけれども、そういうくぜによってやっておるのではないのであります。あなた方社会党は二重米価でいろいろ高くおきめになるようでありますけれども、そういうお考えもけっこうであります。決してこれを批判しようとは考えませんけれども、私たちはこういう方法で世の中に対して合理性をお認め願って、消費者、生産者の納得を得てやっていきたいというところに苦労しておるということを申し上げたのでございます。でありますから、今回の米価の決定に当りましては、基準年次をいつにとってもいいのだというわけにはいかない、昨年と同様の方式によってきめるつもりである、こう私は申し上げておる。かたがた生産費調査の方からやって参りますと、大体数字が合えばよいし、合わなかった際には合わなかったときに、あらためてどっちにウェートを置くかということを考慮すべき問題だ、これは米価審議会等において十分御議論を願うべき問題だと思うのでございます。でありますから、私は必ずしも一方にとらわれてやっておるのではない。農業経済とにらみ合せつつ持っていくべきだ、こういうふうに考えておるのでございます。  麦の点において大蔵当局と何か約束があるとかないとかいうことをしきりにおっしゃいますけれども新聞に何か出るとばかにそれを重くお考えになりますけれども大蔵当局談というのが従来の食糧政策の上において一ぺんでも具現したことがあったら、私はそういうことをおっしゃってもかぶとを脱ぎます。大蔵当局談というのが新聞に出てその通りになったことが一ぺんでもありますか、一ぺんでもその通りさしたことはないつもりであります。農林省所管については、私は私の見識においてやっておるつもりであります。それを一々破り上げて、大蔵省と密約でもありはせぬか、大蔵省に一本とられてはいないかということをおっしゃいますと、農民諸君にいかにもわれわれの内閣は農村の問題を非常に軽く見ておる、そうしてすべてが金融資本家か何か知らぬが、そういうものの言うことを開くように聞えまして、はなはだ遺憾なことでございますから、どうかそういうことでなしに、十分御声援を賜わることはけっこうでございますが、何か大蔵省の味方をするようなことはおやめ願いたいと思います。
  178. 足鹿覺

    足鹿分科員 大体質問しようと思った事項も尽きましたからこの程度で終りますが、パリティ論蔵の点については私は駁論するわけではありませんが、もっとお考えになってもよろしい。目的は基準年次の取り方、基準米価の取り方、あるいは品目のワクの取り方、いろいろな点にあって、一つの方式に基いたものなんです。それを、ときの経済の面から見て、物価と大体つり合いを持たせていくために、米価に対して合理的な必要な方法を考えるということは、これは善意の場合もあり得ると思うのです。それで昨年の事例は、溝井さんの説明の内容は見なければはっきりわかりませんが、あるいはそういう事例があったかもしれません。しかし多くの場合は、ぱリティそのものを悪用するというと語弊がありますが、大体低く落ちつけようというときに、従来往々にしてこれは多く使用されておるのです。私どもは生産費主義というものを唱えて今日にきておりますが、生産費主義というものに対しては一応わかっておりながら、事実において農林統計調査部のようなりっぱな機構を持ちながら、そこで調べられたものが現在の米価には全く役に立たない。ときの内閣が一万円前後の米価を作ろうというときに五、六千円台の生産費米価を出しておるようなことで、果して現在の経済事情に適応するかどうかということです。従って私は原則としてはパリティを謳歌しておるものではありません。パリティというものは、今大臣が言われたように非常に伸縮性が強い。そのときの内閣なり、ある人の悪意性というか、その人の意見によっては基準年次の取り方でも、品目の定め方でも、あるいは基準米価の取り方でも相当大きくゆれてくる。それほど振幅度の非常に強いものであって、生産力との関係がなければ災害があっても、豊作があっても、そのこと自体と何ら関係のないものであります。従ってそれを生産力と関連を持たせ、豊凶その他と関連を持たせていく場合には生産費主義が正しい。従って歴代の内閣に対してその方向へ向っての努力をわれわれは強く要請してきたわけであります。そういうわけであって、私が何かパリティを礼讃したようなふうに大臣はおとりになったかもしれませんが、私はそうではない。あくまでも生産費米価、特に所得との均衡の度合いのとれた米価を作っていく、そうして都市の熟練労働者と度合いの同じ程度の労働に対しては同じ程度の労賃を支払っていく、こういう考え方に立って生産費主義を長いこと主張してきたものであります。そういう点で、私は別にパリテイを謳歌も何もしてきておりませんが、ただ従来は実情がそういう方向に向ってきておりましたから、これにいろいろなものを加えて、ほんとうに適正米価の線に近づけていく努力をわれわれは払ったというだけのことに過ぎません。そういう点において、来年は依然としてパリティの方式を中心として考えられるようでありまして、その点では、われわれとは米価算定の問題についての考え方を異にしておるということをこの際明らかにしておきたいと思います。  麦価の点について大蔵省とそういう暗黙の了解事項等は何らないという言明がありましたので、その通り信用いたします。法律に明記されたものに対して改ざんを加えたり、恣意性によってこれをいろいろ融通するということは許されないことであります。特に麦価の場合は法律に明記されております。従ってそういう点については、一つ法律の命ずるところに従って問題をはっきり処理あらんことを希望いたします。  以上で私の質問を終ります。
  179. 松浦周太郎

    ○松浦主査 川俣清音君。
  180. 川俣清音

    ○川俣分科員 私は質問に入る前に予算の編成方針について大蔵大臣に尋ねたいことがありますので、大蔵大飯の出席を要求したいと思います。
  181. 松浦周太郎

    ○松浦主査 できるだけそのようにいたします。
  182. 川俣清音

    ○川俣分科員 大蔵大臣に対する質問の前に農林大臣にお尋ねしておきます。  食糧の不足が日本経済の弱点であることは何人も認めております。そしてこれを解消する方法についての努力が払われなければならぬわけであります。そこで国内の食糧の自給度を高める上からいって、農地の造成、あるいは耕種の改善、あるいは肥培管理等の状況、または水利その他の土地の条件の整備強化と相待って増産効果が上ってくる、こう思うわけです。そこでこの障害になっているものは何か、こういう点から一点お尋ねしたいのですが、国が相当補助助成をいたしましたり、指導いたしまして、増産効果を上げるためにいろいろ努力されている。ところが、都市の増張または町村合併によって、せっかく補助助成の対象になって耕地の整備が行われたところが、これが宝地に編入されていくという問題が、最近非常に多くなってきている。二十六年ごろから統計をみますと、急激に宅地または工場、道路、河川敷地に壊廃していくところの面積が非常に大きい。これは予算の効率の上からいきましても、せっかくの熟田に、それを補うだけの倍の面積を造成していかなければ間に合わないということになってくると思うのです。ところが、この壊廃されていくところの耕地が高い値段で、耕地としてよりも宅地になることによって何倍かの値段、あるいは十数倍の値段で売買されていったその利益が農民にわたるということは、農民立場からして私は好ましくないと思う。やはり耕作地としているところに補助助成されているのであって、宅地として転売する耕地に補助をする余力は国にないと私は思う。そういう点から、国がこれを徴収していって、新しく開墾しなければならぬ、また新しく造成しなければならぬところに資金を回していく、財政的にめんどうを見ていくという方法をとるのが至当じゃないかと思うのだが、この点についての所感を伺いたい。
  183. 河野一郎

    河野国務大臣 全く私も同感でございますが、この点については私も実はいろいろ研究をしてみたのであります。ある国の例等を考えましても、その際に、その差益を政府に没収するというようなこともあるように承わっておりますが、わが国でそういうことを実行してよろしいかどうか。それを没収した費用をもって新たに土地を造成するというようなことも考えられるのじゃないかといろいろ検討してみましたが、今なお実は結論に達し、これに対して適切な手段を講ずる決心がつかないわけでございますが、何らかの処置を講じなければいかぬのじゃなかろうかということは、今川俣君のお話と私は全く同感であります。
  184. 川俣清音

    ○川俣分科員 私はこれは大した問題ではないと思う。かっての住宅難の時代にすら、不動産を取得した場合に取得税をかけた例もないことはない。今直ちにそれを用いるかどうかということは、他に影響する点があると思います。しかしながら、国がせっかく補助助成をして耕地として適当ならしめるための努力が払われたのに対して、それを耕地として利用しないというものについては、これは国の予算の適正化の上からいって何とか処置を講じなければならぬのじゃないか。そんなものを取り立てる必要はないほど国の財政が豊かであれば、これは問題はないと思う。ところが一方、先ほども質問したように、土地の造成が必要であるにかかわらず、予算がないということで削減に応じなければならない。あるいは土地改良についても、国の全体の予算の上からがまんしてくれ、こういう問題が起きている。一方においてはどんどん壊廃していく。この現状の調整こそ、私は責任をもって河野農林大臣がやるべき仕事ではないかと思うのです。
  185. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見通りでございますけれども、実はこれを実行いたしました際に、どういうことになるか。たとえば今日住宅難で、住宅建造のために敷地が非常に必要であります。ところが、そういう制度を作りますと、これを住宅敷地に転換して、敷地を得るということがほとんどできなくなるだろうと思います。それからまた、工場敷地の場合にいたしましても、工場ができることによって失業問題の解決等に大いに稗益するところが多い、ところがこれを転換することによってその土地の所有者が利益が得られないということになりますと、これを手放すことをしないということになりまして、そういう面が非常に窮屈になるというようなこと、たとえばそういうことでなかなか簡単にいい制度が見当らないということで躊躇しているわけでございます。何らかの方法で考えていかなければいかぬということだけは間違いのないことだと思います。
  186. 川俣清音

    ○川俣分科員 今ここで私は即答を得ようとは思いませんが、その研究を待つまで遺戒の費用あるいは土地改良の費用を国の予算の面からやむを得ないのだという口実を見出すとするならば、もっと取り得る余地があるのじゃないか。そういうものを全部集めてなお国の財政が不定だからというならば、これはやむを得ないだろう。一反歩失えば二反歩ふやしていかなければ日本の食糧増産が維持できない現状である。しかもそれが宅地に編入されるとによって、非常に宅地に弊害があるなんということを言いますけれども、大体日本のような狭い領土で一戸建ての家をどんどん建てていくなんということはもったいないことなんです。上に伸ばしていくべきである。面積の狭いところに横へはって庭を作ってというようなことをやるから、いよいよもって狭い領土の中にたくさんの人口を抱えていって、しまいには全部宅地にしなければ日本の人口をしまうことができないというような状態も予想されるときに、この問題についてまだまだ研究の余地があるのだというようなことで安閑としているわけにいかない状態じゃないか。これを指摘しているのです。今即答を要求しません。十分な研究を要する問題だと思いますが、ちょっと農地局長のこれに対する見解を伺いたい。
  187. 小倉武一

    小倉政府委員 御指摘の点をよくお聞きしなかったので、あるいはとんちんかんなお答えをするかもしれませんが、農地の転用の場合の差益吸収の問題でございますが、これは一つは法律上の問題がございます。法律制度としてどういう手段ならばそういうことが可能か、それから差益吸収したものをどう処理するかということについて政治的社会的に考慮しなければならぬ問題が相当あると思います。農地局として従来検討はいたしておりましたけれども、まだ結論に達しておらない状態でございます。
  188. 川俣清音

    ○川俣分科員 この問題はこれ以上質疑をいたしません。十分一つ研究してほしい。少くともこの内閣がもしも続くならば、これは農林大臣の宿願としてやるべきではないかと思いますから、その点はこれ以上追求いたしません。  続いてお尋ねしたいのですが、外麦の輸入について一点お尋ねしたい。なぜ一体外麦の中で大麦を買わねばならないかということについて私は非常な疑問を持っている。日本の大麦と外国産の大麦と比較しまして、日本産は決して劣らない。しかも大麦の耕地面積がどんどんふえておりますし、また反当収量も非常な発展をとげているわけです。小麦に至りますというと、日本の湿度の関係で必ずしも量産を望めない場合もありますし、災害の受け方も非常に大きいのであります。従って質的にもこれは低下いたしておりますから、小麦の問題には触れませんが、大麦は買ってきて損をしている。損をするような大麦をわざわざ買ってこなくてもいいじゃないか。国際的に食糧の買付が非常に楽になった、こう言っておられるときに、わざわざ日本にもでき得る将来性のある大麦をなぜ入れなければならないのか、この点を一つ承わりたい。
  189. 河野一郎

    河野国務大臣 お説の通り大麦、裸麦等については一そう増産を奨励して、そして小麦と違いましてあと作の関係もいいわけでございますから、なるべく国内で増産をはかっていくということは必要な施策であると考えております。しかし当面はまだ国内生産が不足いたしておりますので輸入いたしておりますが、これは他のものよりもむしろ優先して増産の方向にいくように施策をすることが適当であろうと思っております。その点私も同感でございます。
  190. 川俣清音

    ○川俣分科員 そこでお尋ねいたしますが、今年の予算を見ますと、今年の大麦の買付が昨年、一昨年よりも減っておる。これは耕作農民に与える影響がずいぶん大きいのじゃないかと心配しておる。食糧庁長官の答弁によりますと、これは目標であるから必ずしもこれにとらわれる必要はないのだというのでありますが、これはあるいはくろうとはそういうかもしれません。しかし一般から思われる点から言うと、三十年度予算では大麦は二十七万トンです。今年は二十二万七千トンです。二十九年度は二十七万九千四百トンを実際に買いつけておる。この二十九年度の実績が上ったのは、大麦に対する指示価格をちょっと高めたので、そのために非常な影響を与えておるわけであります。それで今後私の見るところから言うと、輸出市場からいいまして菜種の方が減ってきて、大麦の方がふえていくのじゃないかと予想せられる。これは一面好ましいことではないかと見えないこともないのです。むしろ裸麦、大麦というものは今大臣の答弁のようにもっともっと増産の余地がある問題である。それだけにこんなに買い入れ数量を、大麦二十二万七千トン、裸麦四十四万一千トンとかいうふうに昨年よりも落しておりますと、何か価格を安くするために売る者が少いだろうということでこういう予算を組んだのじゃないかという誤解が生ずると思うのです。先ほどの足鹿委員の質問に答えたところによりますと、麦価も従来通りの方針であるし、また食管法も変える御意思がないようでありますから、価格が下るというおそれは、計算上の価格は別といたしまして、故意に下げる意思はないようでありますから問題はないのでありますけれども、どうもこれ以上買い上げられないという表情をしていると、何らか価格を下げるのじゃないか、下げる結果集まらないのじゃないか、こういうことで算定をされたのじゃないかという誤解を避けるために、この点をもう一度伺っておきます。
  191. 河野一郎

    河野国務大臣 それは先ほど来申し上げておりますように、昨印と同様の方式で三麦価の決定をいたしますから、そういった懸念は絶対にございません。その決定いたしました麦価で政府に売る希望の方については、制限なしに無制限に買い上げるということも間違いない措置でございます。
  192. 川俣清音

    ○川俣分科員 次にもう一点お尋ねしておきますが、大体無制限に買い上げられるという予定でありますならば、今年を平年作といたしますればおそらくもっと申込みが多いであろうということが予想されると思うのです。しかしこれは政府はできるだけのものを買うという御意思でありますから、その点は私も認めることにいたしますけれども、それにしても輸入の大麦を三十年度予算では六十七万三千トン、二十九年度の実績では四十四万六千トンだったのを、三十一年度では二十九年度の実績から見て約倍の八十四万一千トンというような輸入を予算化されておるようです。これは多過ぎると思うのです。これは買ってきて損をするやつなんですよ。食管会計が赤字で困っておるときに、わざわざ損をするものを大きくこしらえる必要はないじゃないですか。これは何か会計上の操作で、たまに赤字のものを吊しておいて、それで実際は買わないで赤字にしないというような操作をするなら別ですけれども、私はそんなに悪どく考えたくないから、この大麦を八十四万一千トン買うというようなことは考慮しなければならぬ点じゃないかと思いますが、農林大臣の所見を伺いたい。
  193. 清井正

    ○清井政府委員 私から数字の点についてちょっと御説明申し上げます。昨日お答え申し上げたことをも一う度繰り返して申し上げるわけでございますが、内麦についてはただいまも大臣のお答え申し上げたような方針を立てておるのでありますけれども、私どもの需給計画といたしましては、毎年大麦、裸麦及び小麦の需要が現実に増加をいたしておる状況でございます。特に最近の米の豊作の状況で若干下向きかけた傾向がございますけれども、やがてこれが回復いたして参ることは当然でございます。そこで三十一年会計年度も、三十一年度の産米は一応平年作ということに計算をいたしますから、従って麦類も平年作というふうに一応予想せざるを得ないわけでございまして、そのような関係から例年の需要状況を勘案いたしまして専門的に計舞いたした結果、需要と内地産の供給との差引を八十四万一千トンと計算をいたしたのであります。それが御指摘のように内地産麦の価格がすでにきまり、しかも政府の買い入れが相当ふえるということになりますれば、それだけ外麦の供給量が少くて済むわけでございますから、実行上の問題といたしましてはそういう事態が起りますれば当然減ることもあるわけでございます。ただいまの需給計画といたしましては今申し上げましたような国内需要というものを考えておりますので、従って外麦の輸入はこの程度ということになるのでありますが、これは御承知通りあくまで計画でありまして、今後の内麦の買い入れ状況に従って外麦の輸入も違って参るということは操作上当然起る、こういうふうに考えておるわけであります。
  194. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま清井政府委員からお答え申し上げた通りであります。
  195. 川俣清音

    ○川俣分科員 それはおかしいですよ。需給のバランスから大麦を多く入れなければならないというからおかしい。他に目的があるなら私は別だと思う。二十九年、三十年の実績から見ても、現状の価格計算でいくともっと多く集まる余地があるのだと指摘しているのです。それを内輪に見て、わざわざ外麦を入れなければならないという計算をなぜするのかというのです。むろん私どもは日本の食生活の改善の上からいって粉食奨励をいたしまして、食糧事情に即応し国民生活に即応したような食生活改善運動が起っていますから、粉食を用いていく方向をたどることはよく認めます。従って非常に需要が増してきていることは認める。今になってようやく需給の上にその結果が現われてきておりますから、麦の消費量が増大することは好ましいこととして認めなければならぬと思うのです。従ってそのこと自体は内麦をもっと増産させて買い上げるという方向に行かなければならぬのに、不足だから外麦を買うというようなことではだめじゃないかというのです。小麦は別ですよ。
  196. 河野一郎

    河野国務大臣 私は川俣さんの数字のとり方が少し違うのじゃないかと思うのです。どうして違うかと申しますと、二十九年も三十年も御承知通り麦は豊作でございました。豊作でありました実績によって二十九年、三十年を議論されております。ところが三十一年度につきましては平年作の計算をいたしますから、今御指摘になります数字に狂いがある。三十年と同様な豊作の事情が予想されますれば、それと比べますときには数字が合いますけれども、三十一年は一応平年作という計算をいたしますから、国内が減って外地がふえる、こういうことになるのじゃないかと私は思うのであります。
  197. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは大臣違うのです。二十九年の実績が高まっておることはその通りなのです。この実績を基礎にして、三十年の予算を組むときも二十九年の実績よりちょっと予算を減らして組んでおられる。これはなぜかといいますと、耕地面積もふえてくる。大麦は比較的豊凶の差が少い。比較的天候の影響を受けないときに作られているために、日本にとって一番好ましい時期に好ましい姿で収量されおる、小麦の方は豊凶の差が激しい。これは統計局長がおるからお聞きになってごらんなさい。この方は豊凶よりも耕作面積なのですよ。植付面積に影響される。植付面積さえふえれば把握できることは間違いない。そこで価格が非常に影響してくる。大麦は豊凶よりも作付面積です。だから三十年度になぜこういう莫大な予算を組んだかというと、二十九年の作付面積通り作付けられるものとして予算を組んだ。予算を組まれるときに三十年度は豊作だといって予算を組んだわけではない。おそらく耕地面積がふえたからこの調子で三十年度も耕地面積がふえるであろうということで予算に組まれたのに違いない。そうでなければこんな予算は組まれないじやないですか。
  198. 清井正

    ○清井政府委員 私から数字の点だけ御答弁申し上げますが、おそらく川俣委員のおっしゃるのは数字よりもむしろ裸麦、大麦の政策についての前提としての数字のことをお聞きになっていらっしゃると思うのでありますが、私どもの需給計画の計算といたしましては、ただいまの御指摘もあり、また私も御説明申し上げた通り、一応平年作ということを前提として予算を組まざるを得ないことは御承知通りであります。そこで私どもの計算いたしましたのは、今年の大麦、裸麦の買い入れ数量の計算の基礎は、作付面積は一番新しい前年のをとったのであります。ただ反収は豊作通りにはいきませんから過去の平均反収をとったのであります。そこで平壇反収に作付面積をかけまして、一応このくらいの生産があるであろう。そこで自家保有率は前年の宮家保有率をとり、同時に出回り率あるいは政府の買い入れ率は大体平年通りいくであろう——これは予算でありますから想定でありますが、そういう想定で計舞いたしましたのがただいま申し上げた数字になるわけであります。その数字が少い数字であるというふうに御指摘になっておったのでありますが、御引例二十九年は非常に麦が豊作であった。三十年も非常にいいわけであります。二十九年、三十年ともに平年度に比べれば非常に麦がよかったのであります。従って価格も適正でありました関係上、政府が集めました数量も多かったのでありますが、それに比較いたしますとやや少くなっておりますけれども、これはあくまでも計算でございますので、実際の麦価の決定並びにその買い入れはただいま大臣からお話し申した通り、今年の麦価を決定いたし政府が買い上げるわけでありますから、買い入れ実況に応じましては外麦の買い入れもいたすわけでございます。これはあくまでも予算上の数字でありますから、予算上の数字は過去の数字に基いて計算をいたさざるを得ない、これは毎年そういう例で計算いたしておるわけであります。御了承願いたいと思います。
  199. 川俣清音

    ○川俣分科員 毎年こういう例だというのだけれども、三十年度予算を二十七万トン組んでいるでしょう。二十九年の実績を見て三十年は二十七万トン組んでいる。裸麦は五十一万トン組んでいる。毎年の例でいけば同じようにならなければいけない。そんなばかなことを言ってはだめですよ。収量の平均をずっと前にとって、大麦、裸麦に対する農民熱意が加わっていない過去の実績をも入れるから反当収量が減ってきているのです。それでなければ三十年の予算を組むときになぜ二十七万トン組んだのです。なぜ裸麦五十一万トン組んだのです。それと同じきめ方をしたら減るわけがないじゃないですか。三十年度組んでいなかったら別ですよ。三十年度ちゃんと組んでいるじゃないですか。ことしが非常に凶作だと見るなら別ですよ。あまり変な答弁をしないでいただきたい。
  200. 清井正

    ○清井政府委員 お話でございますが、これはあくまでも一定の数字を前提としているわけであります。そこで三十一年度の買い入れ数量について計算いたしましたのは、作付面積は前年の作付面積をとりました。反収は過去三カ年間の平均反収をとっておるわけであります。従って一年ずつずれていくわけであります。そういうわけでありますから、二十七万トンと二十七万二千トンと多少数字は違って参りましたが、結局作付面積は前年作付面積、反収は前三カ年の平均反収をとっております。従いまして一年ずつずれていくわけでありますから、単なる計算上の問題としてのみ御解釈願いたいのでありまして、あくまでも意図的に少くしたわけではございません。そういう例によって一応の計算をして出す、こういうふうに実はいたしておるわけであります。
  201. 川俣清音

    ○川俣分科員 なおなお詭弁になってくる。二十九年、三十年は豊作なんです。豊作でない年の入った三十年度の方が多く出て、豊作の年が二年入った方が少く出ている、そんな計算があるものでしょうか。二十九年、三十年が不作であったために減ったのなら別ですけれども、豊作の年が二年入ってなお減りましたというそんな話がどこから出てくるのですか。その議論はそれでいいけれども、そういうことでわざわざ赤字になるような大麦は買わない方がいいということなんです。同時にこれから植付が始まるのであるから、麦の値段は相心した値段で買うのだということが出て参りまするならば確保ができるということなのです。要はそこだけなんです。あまり少くいたしますと——農民が売らないような値段で買うつもりじゃないかという印象を植付前に与えてはならないということです。  次に移ります。余剰農産物金融特別会計の資金の計画についてお尋ねいたしたいのですが、この資金はアメリカの余剰農産物処理法に基いて日本が協定を結んでこれを特別会計に予算化したものであると思われます。この協定は余剰農産物処理法に基く五五、五六、五七年三年間有効の協定であることは私が言うまでもないのです。その処理法に基いてアメリカ側が日本と協定を結んだのでありまするから、この特別会計の限度は五五年、五六年、五七年までだと理解すべきではないかと思いますが、農林大臣はどのようにお考えですか。
  202. 河野一郎

    河野国務大臣 さようでございます。
  203. 川俣清音

    ○川俣分科員 そういたしますればこの協定の範囲内において最も経済効果を上げる方策をとるべきだ、こういうことになると思うのです。従ってこのアメリカの余剰農産物を買い付けるべきかどうかということについては非常な問題点があると思いますけれども、その問題は別にあとで論ずることにいたしまして、先に内容からお尋ねしたいのですが、農地開発事業貸付金三十一年度は五十一億六千七百万円、これは八十八億八千三百万円のうちの一部でありますが、五十一億六千七百万円を愛知用水公団、農地開発機械公団、開拓者資金融通特別会計へ、もう一つは森林漁業等振興事業貸付金に四十一億四千五百万円を貸し付けるということになっておりますが、この内容は一体何でございましょうか。もう少し明細にすべきではないかと思うのです。金額にして四十一億四千五百万円を一ワクにしておいて、これで承認を求めるといってもちょっと無理ではないか。もう少し内容をはっきりして下さい。
  204. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、今年度の協定がようやく調印が終りまして、目下議会の承認を提案いたしたばかりでございまして、これの進行と見合いまして実は具体案につきましてもすでに検討は加えておりますが、最終決定には至っていないわけであります。
  205. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると、今協定を結んで国会に承認を受けつつあるから、それが確定しないとこの内容も詳細に配分することができない。こういう御趣旨でありますが、そういたしますると、協定を結んだのを承認を得ない限りにおいては、この予算というものは正確な予算でない。こう理解してよろしゅうございますか。
  206. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうようにお答えしたのではございません。そういう次第でございますから、それと見合って具体案は今作っておる、こういうことでございます。従って今それができなければ、この予算は一方において落ちるわけだと考えます。
  207. 川俣清音

    ○川俣分科員 どうもおかしいですね。これは予算としてはもうすでに出されている。一方においては承認を求める法律を出しておられる。そしてこの確定は、承認を受けなければ確定しない。こういうことになりますね。それまでは予算審議の中から除かれなければならぬということになりますね。未確定なものだというと、これは確定してから予算は出さなければならぬと思います。
  208. 河野一郎

    河野国務大臣 これは従来の慣例がそういうことでありまして、承認を得たならばこれが実行できる。承認が得られない場合は当然これは実行できない。歳入がありませんから、一方の方は落ちる。こういうことであります。
  209. 川俣清音

    ○川俣分科員 そうすると条件付ということになりますか。今まで、条件付予算というのはないと思うのです。かって旧憲法時代は、予算予算、実行予算は実行予算ということはあり得たのですが、不確定要素で予算を組むということは、私は許されないと思う。予算総則に不確定要素は含まないことになっている。不確定要素の場合はあらかじめ予算総則においてこれは条件をちゃんとつけておる。これは予算総則に条件がないのです。だから大蔵大臣に来てくれ、こう言っているのです。
  210. 河野一郎

    河野国務大臣 これはそういうふうにならぬと思います。これは全然日米間の話し合いも済まない、全然不確定だというのではないのでありまして、日米間の調印はいたしまして、これを今国会の承認を得るという前提だけでございまして、ほかのものでも、予算を作る場合に、法律が通らないという場合にはその予算は使いませんというように、双方見合ったものがたくさん私はあると思います。
  211. 松浦周太郎

    ○松浦主査 川俣君に申し上げますが、大蔵省政府委員の主計局次長原純夫君が出席しております。
  212. 川俣清音

    ○川俣分科員 そういたしますと、予算総則にこの協定が国会の承認を求められなかった場合においては、これは削除するということが加わってなければならぬはずだと思うのです。今原君が見えたのですが、これは大蔵大臣要求しているのです。予算編成権だから……。
  213. 原純夫

    ○原政府委員 予算の内容は、なるべく確定した事実に基いて組むというのが望ましいことはもちろんでありますけれども、年に一回、年を切って組む予算でありますから、確定といいましても組まれている費目の間に確定の度合がいろいろあるわけでございます。この程度のものであれば、予算に項を立て、目を立てて組んでも一向差しつかえない。あまり未確定になりますれば、今度は予備費とか全然組まないということになりますが、この程度のものでありますれば、費目を立てて組んで差しつかえないと思います。
  214. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは予算審議の上に非常に大きな影響がある。予算総則の上にあらかじめそれを予定して承認を求められておられるなら別です。四十一億なんというのは少いと思っておられるのですか。少ければ少いで、問題にならないならならないでけっこうです。金額は少いから問題が少いというふうにお考えですか。この点はっきりしておきたい。
  215. 原純夫

    ○原政府委員 四十一億円はなかなか大金でありますが、この中身は、大体この感覚において非常に未確定だというのでなくして、大体はきまっているというふうに考えております。あと手続としていろいろ踏むべきものがあるという種類にほぼ近いものと思ってよろしいのではないかと思います。
  216. 川俣清音

    ○川俣分科員 この議論は大蔵大臣が来てからやることにして、そこで原さんに聞きますが、四十一億というものは決して少い金じゃない。少い金でなければ、これは内訳がなければならぬ。ただ一つかみじゃないはずです。四十一億だって、これはどうも中身がはっきりしてなければならぬと思う。中身は何なんですか、あなたはこれを事務的に組まれたのでしょう。
  217. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ御意見でございますけれども、大体歳入の面にはそういうものは相当多いんじゃないかと私は思うのであります。たとえば今度の予算を見ましても、新しい税を作っております。これらでも、税制改正案が通らなければその歳入は入って参りません。議会の承認を得なければ入ってこないという要素は相当に多い。これはいつでもそうです。それはしかし、一方において税制の改正案を提案し、一方においてそれを歳入として予算を組む。一方において、余剰農産物買い入れの協定が国会の承認を得るということを見越して、歳入にこれを立てる。承認を得ることができればこれは歳入として一応見られる。これはそれで行けるのではないかと思うのでありますが、どうぞ御了承願いたいと思います。
  218. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは大臣、事務官から聞くからそういう答弁になる。予算総則にそういう点は承認を求めている。財政法を引用して特例の承認を求めている。予算総則で承認を求めているものは問題はない。それならば、不確定なものというものは、やはり予算総則で承認を求むべきでなかったかと、こういうのです。しかしその問題は議論しません。原さん、四十一億四千五百万円の内訳は何です。
  219. 原純夫

    ○原政府委員 これはなお具体的に案を、話をすべき方面と話をしてまとめなければならぬということから、私ども農林省と、確定的なものとしてはまだまとまっておりません。中身を、ここにありますような森林開発、道路整備、農林水産物加工施設等の充実に使用するという考えで、つけて参ると  いうわけであります。
  220. 川俣清音

    ○川俣分科員 国会の承認を求めるには、この五十一億六千七百万円というものは少くない金です。しかもその中の一番問題なのは四十一億四千五百万円、これは決して少い金じゃない、農林予算を見れば大きな金です。この内訳がはっきりしないというのはおかしいじゃないか。国会の承認を求めるからには、およそ何と何にはどのくらいというような目安がなければならぬと思う。それではつかみ金で承認しろというのと同じことじゃないか。そんなことは許されておりません。
  221. 原純夫

    ○原政府委員 この余剰農産物資金融通特別会計とありますように、一種の投資、融資をいたす会計でございます。腹づもりはいろいろいたしておるのでございます。ただこの種のものにおいては、ちょうど銀行が本年度の貸出し計画幾ら、うちどこに幾ら貸すというのを初めに聞かれますと、非常に困る場合もございます。また関係の向きに不当な、間違った期待を持たせてもいかぬというようなこともございますので、十分に中身が熟してから世間には出すようにいたしたいと思っておりますので、その辺は御了承願いたいと思います。
  222. 川俣清音

    ○川俣分科員 了承できませんよ。開拓融資は一億七千四百万円、この小さいものでもちゃんと区分けしているのです。それから農地用開発機械公団については十一億一千六百万円、ちゃんと区別してあるのです。大きい方の四十一億四千五百万円の方をあいまいにしておるというのはおかしいじゃないですか。だから、腹づもりがおそらくあるだろうから、なぜこれを出さないのです。この程度ならば承認を求められるだろうというようなことは話したらいいじゃないですか。
  223. 河野一郎

    河野国務大臣 大蔵当局に御質問でございますけれども、実はもと立案いたします私の方で、まだ大蔵省の方に全部こういうふうにしたいということを申し入れいたしていないわけでございます。農林省としては、先ほど申し上げましたように、最も有効適切にこれを使いたいということで、しかも全国的に普遍的にこれを使いたいということで、森林関係、畜産関係、水産関係その他テンサイ糖関係、東北振興等についての肥料の関係というようなものをあらゆる角度から研究いたしまして、そうしてこれを各種層別に、またこれを全国に普遍して参りますように検討を十分加えまして、その上で議会の承認を得る事項が起って参りますれば、法律を議会に用意するということにしたいというので、目下これをどういうふうにするかということは検討中でございまして、これもそうおそくならぬ機会に、国会の開会中に最終決定をいたしまして、皆さんの御意見を十分伺うつもりでおります。
  224. 川俣清音

    ○川俣分科員 その程度でかんべんしておきましょう。ほんとうからいうならば、もっと細分されて審議をわずらわすということが本来だと思うのです。その内容が悪いというような意味で聞いておるのじゃないんで、おそらくこれを最も有効適切に使うであろうということは期待いたします。それだけ、発表されてはどうだ、こういうことなんであります。その程度にしておきましょう。  次に、ついでに愛知用水公団のことについてお尋ねいたしますが、愛知用水公団の事業が所期の予定通りに進行していないで、いたずらに事務費や、計画変更などが行われて、進捗度がまことに悪いように聞き及んでおりますが、さようなことがあるのでありましょうか。
  225. 河野一郎

    河野国務大臣 私は事業全体としてそうひどくおくれておる——決して成績よくいっておるとは申しませんけれども、何分御承知通りダムを作る場所、これらの計画等について、いろいろむずかしい点もあります。用地の買収、地元の了解を得る等について、なかなか困難な問題があります。しかもこれらは他の同種の事業の進捗に比べますれば、決して私はそうひどくおくれておるとは考えておりませんが、一面において世界銀行の関係等について、多少両者の間に意見の一致を見ない点がございまして、これも月曜日でしたか、世界銀行の当局がこちらへ参ることでございますから、それが参られれば、そこで最終決定をすることができるのじゃないかと期待しておりますが、これも相当当初に予定いたしておりましたよりも、あらゆる角度から深く強く検討いたしまして、そうして設計費の引き下げをするとか、その他いろいろ当局が緻密にやっておられますので、多少そういう点で、一方において効果を上げつつ、一方において進捗が多少おくれておるというようなことでございまして、決して私は悪い結果になっておるようには監督上考えていません。
  226. 川俣清音

    ○川俣分科員 続いてお尋ねしたいのですが、私も愛知用水公団を非難攻撃しょうというのじゃないのです。要は三十四億四千八百万円というような予算を裏づけいたしておりますが、この特別会計全体が大きな農民の犠牲の上に立っておる資金なんです。あなたはそうお思いにならないのですか。日本の農業の上に大きな打撃を与えておるところから発生してきておる金なです。しかしまた議論が分れますからあとにしますが、それだけにこの三十四億割り当てられた金がすみやかに使われて開発になるならば、まだがまんできる。それで幾らかの帳消しができる。年々使いきれないだけ割り当てておいて効率が上らないとすると、一方犠牲だけがあって、さらにここに犠牲がプラスされるという結果になると思う。この犠牲を幾分でもここでカバーしょうというのがあなたのねらいだと思う。犠牲だけになって効果が上らないのじゃないかというわれわれの見解ですけれども、一歩譲歩して、これだけの打撃はあるかもしれないけれども、これだけの効果があるじゃないかというのが、おそらくあなた方の協定を結ばれる原因だと思う。それならば効果の上るようなことをなさらなければならぬはずだが、去年も割り当てただけのものが消費できない、それだけ事業が進捗しない。経済効果が早く現われないというような予算のつけ方についてあなたに意見を聞きたいんです。それならばもっと有効な方面に、たとえば四十一億でも、私が内容を聞いたのは、その内容によってさらに三十四億からずっと削ってきて四十一億に足していってもいいと思っておる。それで内容を聞いた。必要なところに、すぐ効果の上る方に使われる方がまだましじゃないかと思う。おそらくこの三十四億というものはことし一年で、今の進捗状態では消化できないと思う。どうですか。
  227. 河野一郎

    河野国務大臣 御説の通り年度の分は相当に多額の次年度繰り越しが出てくると思います。これはその通りと思います。しかし計画年次の中においては、資金が十分予定があるのでございますから、完成の年次がおくれるということのないように十分督励をして参りたいと考えておりますので、最初は今申し上げますように、すべてダムを作るとかこういう用地関係等のあります分につきましては、なかなか用地の折衝その他地元民の了解を得るということのために事業がおくれますけれども、始まりますれば、範囲が広いところでございますから、相当予算さえあれば完成年次はおくれるということのないようにはやれるんじゃないか、従って効率を上げる年次においてはおくれずにいけるんじゃないか、またそういうふうにしなければいかぬと考えております。
  228. 川俣清音

    ○川俣分科員 最後の点について答弁がないんですが、三十四億と消化し切れないじゃないか。今の事業進行状態から見て、設計の変更がたびたび行われておるような状態からいうと、三十四億を三十一年度において消化しきれないのじゃないか。それならば初めから森林、漁港等の振興事業費の方に振りかえても、効率の上る方向に振りかえても、着工できる方に振りかえていって、より効果的にこの資金を活用することが考えられるんじゃないか。愛知用水公団が生まれたんだからいつまでも予算をつけていかなければならないということに引きずられることはないじゃないか、こう聞いてるんです。
  229. 河野一郎

    河野国務大臣 御説ごもっともでございます。また今年度から次年度へ繰り越しも相当にある。私は今の点については、その通りと思うのであります。従って明年度またこれに相当の金を振り当てるということは、明年を通じてさらに明後年に繰り延べる費用が一部出るかもしれないと思います。従ってこれはなるべく出ないように、来年度においては大体の基礎的な構想、基礎的な準備も完了することと思いますから、一つ予定通り進ませるということに努力していきたいというふうに考えて、ぜひ予定の年次には終るようにしなければならぬと思っておるわけであります。
  230. 川俣清音

    ○川俣分科員 次にお尋ねするのは、今年の治山治水の費用の削減について石橋通産大臣並びに高碕長官に質問を行なったのでありますが、日本の河川を利用いたしましたダムの効率が非常に低下いたしまして、ところによりますと堆積土が半分以上になって、そのためコスト高になっておる。これを消費者に負わすべきではないという点を指摘いたした。この根本策をどこに求めるか、この点について石橋通産大臣は、自分の方で今度初めて工業用水を考えるようになった、そのためには工業用水の源泉を確保しておかなければならぬ、こういう答弁をしております。高碕長官もまた根本的に治山治水をやらなければ問題は解決できないと言っておる。そうすると今度は河野農林大臣の所管になってくるわけですが、大蔵省予算説明によりますと、災害が起さなかったから治山治水の費用は少くてもいいのだというような説明になっておる。災害復旧費用ならば災害がなかったら減ってもかまいません。災害を起さざるよう処置するのが治山工事でなければならぬはずです。この費用を一体どうして削られたのですか。しかも治山工事の成績は顕著なるものがあると認めている、認めていながらこれを減らすというのはおかしいじゃないですか、主管大臣としてどうです。
  231. 河野一郎

    河野国務大臣 お説の通り治山治水の事業費全体は多少減っております。しかし一方において今回議会に提案しております法案にもあります通りに、植林の面におきまして水源涵養林を民有部落有林にまで及ぼすというようなことで、まず林を十分茂らせていこうという方面に多少意を用いておるわけであります。もちろん御期待に沿うようなわけにいきかねることは遺憾でありますが、まず十分な植林をしたいということに力を注いでおりますので、熊野方面の植林をするとか、奥地林の開発をするというようなことで大きく行こうと考えておりまして、御指摘の治山治水は非常に重要である。しかし各方面の認識を得ることがなかなか困難でございまして、その点が従来間々おくれておるために、いろいろな方面に支障を来しておりますことは、私は川俣さんと全く同意見であります。従ってせっかく努力をして御期待に沿うようにいたしたいと思っておるのでございますから、一部治山治水事業費が他の予算関係で減っておりますが、これは他の方面で埋め合せていき、さらに将来は御協力を得て目的達成のできるようにいたしたい考えであります。
  232. 川俣清音

    ○川俣分科員 官行造林の対象を公有林からさらに部落有林までやって、幾らかでも造林をして将来の治山治水の基本になるようにという考慮が払われたことは私も認めます。非常にけっこうなことだと思うのです。本来から言えば、農林大臣は就任早々三十万町歩の造林をやるといって大きな旗を掲げたのだから、ほんとうはもっとおやりになると思っておったのですが、どうもアドバルーンを上げたけれども、一向そのアドバルーンに沿わない傾きがあると思う。ですから、この際もう一度注意を喚起いたしたい、こう思うのです。やはり造林をするには結局林道もつけなければならぬ。ところが林道の費用もまた削減を受けておる。日本の資源は、戦前と比べて森林面積において約四〇%くらい減っております。また材積においても三〇%減っておる。そういうように国の経済構成の上からいって大きな変化を来たしておる。そしてこれをそのままに放置して安閑としておられないのですから、十分な心得が必要だろうと思うのです。おそらく今の余剰農産物の一部をそういう方面にも使われるだろうと思いますが、同じ使うにしても、愛知用水みたいにもたもたしておるところに、腐れ縁のあるようなところにいつまでも執着しないで、もう少し視野を大きくして効率の上るようなことも考えられるのじゃないかということを指摘しておきたいと存じます。  次に農業団体再編成について伺いたいのですが、これについての大臣の構想はたびたび聞かされました。しかしその構想も必ずしも毎日同じだと言いかねる点があります。農業協同組合についてはこれを育成強化する方向をとり、共済組合についてはこの団体の持っておる本質を生かすためにどう改善していくかということについて検討する、こういう答弁です。ところがきょうはそれと変って、これを新団体と幾らか結びつける点があるやに答弁されております。私はそれを必ずしも追究しようとは思いません。それで農業委員会だけは改組する、あるいは強化するというふうなお考えのようですが、私は必ずしも内容をお聞きするわけではないのですが、変えるのですか、変えないのですか、この点はっきりしていただきたい。
  233. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど足鹿君にでしたかお答えいたしました通りに、農業委員会を中心にして、いろいろ任意団体等もございますから、これらもあわせて整備強化して参りたいという一環の考えを持っておるわけでございまして、先ほども申し上げました協同組合関係については、これは別立として整備強化する、共済組合については基本的に検討の必要がございますから、これが検討を進めていく、そしてその間新しく構想しております団体と共済組合との間にお互いに協力し合う関係を持たした方がよろしいという場合には持たせるし、その点については目下検討中でございます。
  234. 川俣清音

    ○川俣分科員 農業委員会については、これを変えていこう、こういうことですが、これが法律では、農業委員会と農業会議所と二つありますが、そのどっちを変えるのですか。
  235. 河野一郎

    河野国務大臣 委員会も会議所もみな一緒でございます。それといろいろございます任意組合等も含めるということを考えておるわけでございまして、それについては検討中でございます。もちろん農業委員会の仕事の中で一部分はこれをはずして町村にあずけた方がいいというようなものもございますが、それらはまだ未確定でありまして、全部あわせて検討しておる、こういうことで御了承願いたいと思います。
  236. 川俣清音

    ○川俣分科員 私どもは今度の予算を拝見してその点は変えないようにして予算審議をしておると思ったのですが、これは間違いだったんですか、その点一つ。
  237. 河野一郎

    河野国務大臣 もし新しい団体というものが国会の御審議を願いまして御賛成を得られました場合には、予算関係におきましては別途考慮するというわけでございまして、これがない場合には今の予算は農業委員会予算としてそのままやります。農業委員会をつぶしてしまったという場合にはそれで打ち切りになります。
  238. 川俣清音

    ○川俣分科員 そういたしますと、新団体ができた場合には、補正予算を組んであらためて予算をつける、こういう意味でございますか。
  239. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまの答弁をちょっと訂正いたします。農業委員会の仕事をそのまま継承して、そうしてこの予算の範囲内でやる場合には、この予算をそのまま使う場合もありますし、足りない場合には補正をいたします。こういうことに訂正しておきます。
  240. 川俣清音

    ○川俣分科員 それで私はお尋ねする。権限が同じであればこの予算をお使いになるのに何にも問題はない。名称等が変っても権限が同じであれば問題はない。ただ性格が変るとすると、この予算を使うわけにはいくまいと思う。そういう移用は許されておりません。総則の中にもありません。これ以外は移用を許さないということをちゃんとうたってある。従ってその新団体の性格というものは、従来の性格のままだ、こういうふうに理解してよろしいのですか、どっちなんですか。この予算に基いたような団体を作る、こういうのか、別な団体を作って予算を変えていく、こういうのか、どっちかということを聞いておるのです。
  241. 河野一郎

    河野国務大臣 そういう点について今研究をしておるのでございます。予算に縛られて新しい団体を作るわけには参りません。新しい団体は新しい団体として考えます。それでその予算が使える性格のものなりました場合には使います。使えない性格の団体を作るということに法律を善きました場合には、別途これはまた補正予算等を考えてやる。それはそのときに起ってくる問題だと思います。
  242. 川俣清音

    ○川俣分科員 私は内容についてあまりかれこれ言わない。もう時間もないし……。しかし問題は、予算審議中ですから、変るべきものだったら変るように、変るときまで待たなければならないということなんです。しかし新しく団体を作ることによって予算が変るということになれば、その間予算の審議を延ばしていかなければならない。これはその通りなんです。あなたがどんなことを言われてもその通りなんです。だから予算を中心に審議してくれ、こういうのならそれはそのつもりでやりますよ。しかし予算の審議とこれは別個だというなら、また別に補正予算を出されるなら、これは同じ年度内ですからまた補正予算を組むよりも、今すぐ修正せられた方がいいのではないかと思うから、従って一日や二日や三日や四日で案ができるならば、できてから予算を審議した方がよろしいと思うのです。しかし大体予算の方向通り新団体も作るのだ、だからそれに関係なく予算を進めてもらいたいというのならその進め方もありますよ。主査そうでしょう。
  243. 河野一郎

    河野国務大臣 予算は今農業委員会として予算要求をいたしておるのでありますから、その通りで御審議を願いたいと思うのであります。新団体をやることはこれは別に今検討中でございますから、できた上であらためて御審議を願うことになります。
  244. 川俣清音

    ○川俣分科員 それならば予算の審議ができます。新しい団体ができて、それが別の性格のものができるかもしれぬということになると、せっかく審議してもこれはどうせ不用額になる。せっかく審議して一週間で不用額になるようなものを審議したのでは国会の権威がなさ過ぎる。どうしても新団体がこの予算を使える方向で作れると言うのならこれはあなたの任意だからそれはいいですよ。しかし全然別個な立場から団体は団体として予算にとらわれないということになると、とらわれない方針を先に出して、それに従って予算を組み変えていかなければならない、それまで待たなければならないということになる。ここでちょっとお尋ねいたしますが、農業委員会というものは公法人だと私は思います。どうもあなたの考えは私法人のようなものを作られるような考え方のようですが、どっちなんですか。
  245. 河野一郎

    河野国務大臣 農業委員会は行政機関でございまして、公法人とかなんとかいうふうにいろいろ法律上そういうようなことをいう考え方もあるかもしれませんが、私は行政機関と考えております。
  246. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは私の見解なんです。私は行政の補助機関じゃないかと思う。ところがこの前に農業会議は公法人的性格だと言っているのは農林省ですよ。私じゃないですよ。私は行政の補助機関であるから、これを農業会議に転用することはげしからない、こう言ったところが、公法人的性格だからいいといって大蔵省なんかそれを認めた。私はあくまで行政の補助機関だと思う。それが本来は正しい。ただ農林省がそう言うから、譲歩しておるだけの話、そんなことで争いたくないから一歩譲歩してそう言ったのです。ほんとうは行政の補助機関です。明らかに法律に従って、法律的な権限を持った機関で、行政の補助機関として設立されたものである。その罪においては公務員と同じ罰則がある。わいろをとってはならない、すなわち公務員と同じ待遇を受けておる。従って行政の補助機関であることは明らかなんです。ただ農林省がそう言うから譲歩しただけの話です。これは議論になりますからやめます。こんなことで苦しめようと思わないからやめますが、しかし問題は行政の機関として予算を受けたものであれば、民間の団体に補助金的な形でこれを流用することは許されないと思う。これは明らかなんです。そう思いませんか。任意の団体に対しては補助です。これは国が義務を負ったところの予算予算を組まなければならない義務をもって受けておる予算である。一方は補助するが、出してもいいし、しなくてもいいといった団体である。それに流用することは許されないと思う。また総則の中にもないと思いますがどうですか、ないでしょう。大蔵省どうです。
  247. 原純夫

    ○原政府委員 昨年だったと思いますが、団体再編成のときに同様な問題が起きまして、その節、私ども目的が同じであるならば補助を受ける対象が、当初行政機関と考えておったが、——たしかあれは府県の農業会議のときだったと思います。法人格を持つというときになった場合も、それを使うことは差しつかえないと申し上げております。従って同種のケースが起ります場合には、同種の御返事になる、もちろんそのときそのときの中身がいろいろ問題だろうと思います。中身によるとは思いますが、同種の場合であれば同種のことを申し上げることになります。
  248. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  249. 川俣清音

    ○川俣分科員 大蔵省にもう一つお尋ねしたいのですが、あなたのところで予算総則に移用を許す分がちゃんと出ているでしょう。移用する場合にはこれに限るとなっておる。そうじゃないですか。これは限らないのですか。予算総則を変更する御意思ですか。これはあなたでなければ大臣に聞かなければならない。
  250. 原純夫

    ○原政府委員 その前に、移用という概念は、財政法でいたしてある問題でありますけれども、流用といい、移用といいますものは、国会で御審議願います款項目という審議の単位がございます。その単位の一つの目盛むに入っておりましたものを、他の目盛りに持っていってその金を使う。使う場合にあるいは流用あるいは移用ということになるわけでございます。本件は農林振興費の項におきまして、目で農業委員会補助金というのがございます。これをどう使うかという問題でございまして、一つの項の一つの目の金をどう使うかという問題でありまして、ワクの目盛りといいますか、ワクに盛っていって使うというのではないのでございます。従いまして予算を御審議願います農村振興費のうちの農業委員会補助金というもの、これにはおのずから性格があり、目的がある。その目的に非常に違ったことをいたしますことは、これはいかぬことであります。しかしこの農村振興費の項、農業委員会補助の目の性格といいますか、これは実情に応じ、若干の動きがあることは、よく予算の各費目についてあるわけでございます。これは私ども流用、移用の問題ではなくて、一つの項目の金額をその本来の目的に合わして使うべきである、その範囲内であるならば、それで一向差しつかえないという問題として考えるものでございます。
  251. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは大へんな答弁ですね。そうすると、これは農村振興費なんですか。もしも振興費といって補助的な性質のものであれば、これは行政の補助機関に対する支出じゃありませんね。項の立て方が悪いですよ。法律命令によってできた行政の機関に対する補助なんという形はない。振興費でまかなうというような項の立て方がおかしいんですよ。単なる民間団体としての一つの機能を持っているという立て方であれば、これはいいでしょう。そこで私は公法人というふうに一ペん聞いたんです。ところが行政の補助機関だという御答弁です。行政補助機関であれば、これはそんなふうな項の立て方はおかしい。これは私が言うことじゃありません。大蔵省がみんなに話していることじゃないですか。そんなことで大蔵省に受験したら、みな落第しますよ。冗談じゃありません。しろうとの私でさえ言うことです。くろうとが知らないということはおかしな話です。
  252. 原純夫

    ○原政府委員 幾らでもそういうことはあるのでございます。ある一つの目的を持つ費用の中に行政部費が入っておるということはあるのでございます。一向差しつかえないとえます。
  253. 川俣清音

    ○川俣分科員 あるからいいんじゃないんですよ。原則からいってはずれたことをあなたはやられるのですか。やはり予算の立て方の原則というものはあります。財政法で明らかですよ。予算の立て方が財政法で明らかな点は、やはり原則は原則として立てなければならぬ。そういうことを大蔵省が勝手にやれると思うものだから、せっかくできた予算を一割保留するなんて、どこからそういうことが出てくるか。誤まったことをまだやろうとしておる。
  254. 原純夫

    ○原政府委員 大へんおしかりでございますが、誤まっているとは思わないのでございます。この予算のうち一般の行政費は、たとえば何々本省とか、あるいは何々庁というような組織で、かつ項目を組んでおりますが、いわゆる事業費を組みます場合は、その事業に属する職員旅費ないし庁費等、つまり行政部内で使うものもその事業で一括して計上するという方が、むしろ御審議願う場合に、この事業をやるのに幾らかかる、それは補助金ももちろん出るし、それから工事なら工事の費用も出る。しかしながらそのほか中央官庁なり地方官庁なりの旅費、庁費も要りますということは、やはり一括して御審議を願う方がよろしいという趣旨から一括しておりますので、そういう例は多々あります。そしてそういうつもりでやっているのでございますから、一つ御了承願います。
  255. 川俣清音

    ○川俣分科員 農業委員会法に基いて政府負担を負わねばならぬのですよ。あなた、農業委員会法を見ないんじゃないですか。国は負担の義務を負っておるのです。行政の補助機関としての負担の義務を負っておる。それをつけてもつけなくてもいいというのはどこからくるのです。農業委員会というのは、他の法律によって、たとえば市街地計画法、都市計画法にも、農業委員会査定を受けるということがたくさん出てきている。行政機関の裁定を受けることになっておる。法律全般にわたって農業委員会というものは一つの行政機関としての任務を果さなければならない義務を負わされておって、補助をつけてもつけなくてもいいというようなものではないのです。国から一定の義務を負わされていて、ほかの行政費用が出ておれば国が負担しなくてもいいというものじゃないんですよ。法律を変えていけば別ですよ。一体、小さな目を新しく起す場合でも、新しい目は許さないとかなんとか、あなた方ずいぶんやかましく言っているじゃないですか。新しい目でも、新規事業だとか新規項目だとか、だいぶやかましいことを言っているじゃないですか。あとになるとけちけち文句を言っておって、初めからはっきりしないからいかぬのです。法律できまった行為に対して、きまった義務を負わなければならぬ。権限を縮小するなら別ですよ。権限を与えておいて、権限を履行させるような義務を与えておいて、責任を与えておいて、しかも罰則を見ると、収賄してはいかぬとか、あるいはどうとか、公務員と同じような罰則規定を設けて厳重に取り締っていくようにして、行政機関の任務を果すようにできている。それでいながら、あなた、それは補助してもいいんだとかしなくてもいいんだとかいうようなことができますか。農業委員会等に関する法律——前の農業委員会法律によるともっとはっきりしていた。等になって、農業会議所ができたりして、確かにあいまいになった点は認めます。確かにあなたのおっしゃる点はないわけじゃありません。昔の農業委員会法よりもその点は権限が薄らいでおることは、これは認めます。しかし町村農業委員会と県の従来持っておった農業委員会は、これは行政機関の権限、任務を持っておる。法律にもその点は明らかです。農業会議所の中で、旧農業委員会、県の農業委員会に当る部分だけは別に認める、こういうふうになっておる。この点の費用だけは義務として負わなければならなぬ。それを予算を削減するなんてとんでもない話ですよ。どんな団体が生まれるかわからぬから、この予算を削る。法律を先に変えてやるなら別です。
  256. 原純夫

    ○原政府委員 法律負担すべき金はもちろん出さなければいけません。そうして補助金と書いてありましても、義務的なものとそうでないものとございます。そうい点はわれわれ、法律に反するというような気持で予算を計上しているのでは毛頭ございません。ただただいま農村振興費という項に幾つか目があります。その中にこれを入れておるのでございますけれども、それはほかの例から見ましても、予算書をごらんいただけばわかりますが、農林行政は非常に多岐にわたる事業費をつけてやられるわけでございます。先ほど申したように、行政機関の経費であるからどこか別にというような考え方ももちろんありましょう。行政機関の分は一括しろという考え方もありましょうが、同時に、やはり機能別に各予算を組んで参るという考え方もある。そうしてあとの方がより的確に予算を御審議願えるというような考え方で、事業別に組んでおる。たとえば水産関係の漁業調整の関係補助でございますね、これも水産業振興費の項の中で目を設けて組んでおるというようなことで、予算書全体をごらんいただきましたならば、その点の御不審はおわかりになると思いますが、決していいかげんに、補助すべきものを補助しないとかなんとかいう気持はありませんので、その辺は御了承いただきたいと思います。
  257. 川俣清音

    ○川俣分科員 了承しないですよ。削減しようと思うから、初めから項を起していないのです。それは悪い考え方です。なるべく大蔵省の意図の通り動かそうとするからわざわざ項を起していない。財政法からいえば、明らかに項を起すべきものです。人件費を事業費に使って、事業費を人件費に使ってはいけないとあなた方は目のところまでやかましく言っているじゃないですか。あなた方は、支出の配分は明確にすることを建前としておられるじゃないですか。なるべく支出を項目ごとに明快にすることが望ましいということが、あなた方の今までとっておる態度じゃありませんか。おかしいですよ。大蔵大臣がときどき目にしなければ予算をつけないというから、農林省がそれに従っているだけですよ。不見識もはなはだしい。法律に従って項を立てるべきです。憲法においても、法律が優先することは明らかです。法律の範囲内において予算を組むべきです。新しい法律が出た、議員立法だから項を落して、目の中に入れて、 いつでも削ってやろうという不届きな考え方があるからいけない。それでは説明になりませんよ予算局なんという問題が起きてくるのは、そこから来るのです。それならば、補助金でもいいから負担行為を負っておる、その負担行為を負う団体が変ったならば、負担行為をしなくてもよいという、その点だけは間違いないでしょう。この点はどうですか。
  258. 原純夫

    ○原政府委員 最後のお話は、負担行為の相手方があった場合ですか。
  259. 川俣清音

    ○川俣分科員 負担行為をすべき団体として負担するというのでしょう。負担すべき行為を持たない団体ができても、それを移用するのかと聞いているのです。
  260. 原純夫

    ○原政府委員 ある団体に補助予定して予算を計上した、ところがその団体が機構が変ったといいます場合に、あまり大へんな変り方をいたしますれば目的違反ということになりますから、その後は出さないということになりましょう。しかし、単に組織が若干変ったというだけで少くなるということはないのであります。
  261. 川俣清音

    ○川俣分科員 その点は保留しておきます。答弁すればするほどだんだんまずくなるから、この程度でやめておきましょう。  そこで大臣にお尋ねしたいのですが、今度は新団体が総合助成をやる、非常にけっこうな考え方のように見えます。ところが一方、大蔵省補助金を細分化されると補助金の効率が下るから、なるべく細分化されないようにということを、局議か何かで問題にしておるようです。そこで聞くのだが、今度会計検査院の指摘事項の中に、私どもが非常に期待して作った農村振興総合施設費というものが、二十三カ町村が検査院の検査対象になりまして、十一カ町村が目的外使用ということで摘発されておる。しかもこれは金額にしては非常に大きい。事業量の不足という方が件数が多いけれども金額は少い。目的外使用というのが非常に大きいのです。これはどんな仕事でもやり得るという総合助成で、非常にうまみのあるものであるけれども目的外に使用されるということで指摘されておる事項です。もっとも会計検査院からいえばあいまいなことになるということを指摘されておる、この点どうなんですか。
  262. 原純夫

    ○原政府委員 目的外使用はもちろんいかぬことでありますが、総合助成にしたために特に目的外使用になるかどうかという点はなお問題ではなかろうか。個々のこまかいひもつき補助についても検査院の批難事項は相当あるのであります。何もそれがあるから総合するという考え方ではございません。またこの総合助成は使い道がおそらく二十かそこいらあったと思います。こういうわけでございますから、それをはずれるというのははなはだ遺憾でありますけれども、総合すればむしろ村に一番都合のいい施設を選ぶ、しかしそれは勝手なものではいけないから、これこれこういうタイプの中でという補助のやり方は十分な合理性を持つのじゃないかと思います。検査院の指摘はなおよく調べまして、ひもつき補助との対照問題、この点は将来研究問題だと思いますから、十分研究して参りたいと思います。
  263. 川俣清音

    ○川俣分科員 会計検査院の報告を見ると、農村振興総合施設なんというものは非常に好ましいものだと私は思っておる、ところがこれを大いにやれやれといったところが、どうも指摘事項が多くなってきた。私は反対じゃないのですよ。あなた方からいうと、指摘事項の多いものはやめようとこういう腹になるから、そこで聞いておるのです。しかも件数が少い割に金額が非常に大きいのです。総体金額が少いからその意味において金額が少い、そういうのでなくて、受けた金額割合目的外使用金額が大き過ぎる。ほかの分は補助金は一部です。これは全部だということになる、全部が目的外使用に使用されたということが大きい、金額が非常に大きいのです。指摘された金額が交付された金額割合に比べて非常に大きいということです。積寒法をやってみ、あるいはいろいろな総合開発をやってみて、これは総合的に金を使われることが一番実情に合うのじゃないかという考え方をわれわれも持っておるのです。ところが実際やらしてみると、こういう会計検査院の指摘事項がいつも起ってくる。あなたは今度の計画の中にこういうことを考慮されておったかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  264. 河野一郎

    河野国務大臣 従来とかく細分化されました補助金が他に不当に流用されております事実もありますことは、はなはだ遺憾でありますが、しかし今回の新農村建設計画は、御承知通りに全く新しい事業であり、しかもこれが非常に規模を大きく行うことでござまいすから、今御指摘のものとは多少違って、しかも専門に協議会等が県もしくは中央にもできて、これらの示唆、協力も得ることでありますから、そういうことはまずなかろう。またわれわれとしても十分注意をいたしまして、そういうことのないようにしていきたい。特にこの企画には青年諸君の推進力を非常に期待いたしておりますから、そういう点で従来の例とは非常に違う面が出てくることを期待しておる次第であります。
  265. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは大臣大へん違うのです。前の総合施設にしましても、最初の出だしは一町村約一千万円当りという計画だった。だんだん予算が削減されて、思うようについてないだけのことです。たまたま予算のついたところは指摘されておる。こういう結果になっている。今度も一町村一千万円当りという同じ計画なんです。従来やったことを、もう一ぺん新しい角度で、青年を集めるか集めないかというだけです。前のときには、総合振興審議会とかいうものを各町村に作らせてやることになっている。各種農業団体その他学識経験者などを集めて、村の大半の有力者を集めて、総合振興計画を立てて、充実したものから徐々に予算をつけてやるというのが考え方になっている。積寒法に基くところのあれもそうです。審議会を開いて積寒地帯の総合振興対策を立てて、それに即応して予算をつけてやる、こうなっている。ところが実際を見ると、いかに振興計画を立てましても、積寒地帯にきておる予算は土地改良事業であって、その他のものは切りぼしの工場の二十坪だとか、あるいは水車を一つ作ったとか、そういうまばらな予算より実際はきていない。これは例はたくさんあります。新しく村道をつけたとか、それが振興計画のうちの一部なんだ。これは問題になりません。一体補助金が悪いとかなんとかよく言われますけれども、私から言うと、補助金が悪いのでもないし、積寒法の法律が悪いのでもない。一つは予算が少いからである。予算が少いのに対して、希望が大きいから運動が起ってくる。運動費をかけていくから不正工事や、事業量が不足を来たしてくる。運動も何もなしに、どこへでもどんどん出ていけば、不正工事なんて起ってきはしません。運動しなければ補助金がとれないから、補助金をとるために運動をする。ところがその運動費が出ないから、請負師などがついてくる、農林省へ行って陳情をみてごらんなさい、町会議員や県会議員に土建屋がくっついている。みんなあれは旅費を出している。それに代議士なんかがついていって、そのうしろにもみんな土建屋がくっついている。補助金が悪いのではない。無理に運動をして自分のところへ補助金を持っていくから問題が起きてくる。それが保守党の地盤になっておるのだとすれば、(発言する者あり)これはとんでもないことだと思う。従って運動によって補助金を左右するという考え方をやめなければ、いつまでもこの問題が続くのです。会計検査院の指摘されたところを見てごらんなさい。だれだれが必ず運動をした——小さいのであれば県会議員、大きいのであれば代議士が運動したところです。従って補助金自体が悪いのではない。だからあなたがせっかく新しい団体を作っても、運動によって動かされるということになると、指摘事項が多くなってきて、あなたの理想と反するような結果が出てくるのじゃないか。こう思いませんか。
  266. 河野一郎

    河野国務大臣 これは運動によってやるのじゃないのでございまして、知事もしくは農林大臣はそれぞれの審議会に諮問をして決定するのでございますから、これで適切であるという答申がない以上は、幾ら運動があってもやるわけには参りません。従って、これは公正適切に進むものと考えております。
  267. 川俣清音

    ○川俣分科員 それは今の総合建設と同じなんです。別にこれを運動によってやるということになってはおりません。しかしながら、予算が不足なためにおれの村へ、おれの村へと取り合いが始まる。ことに小選挙区にでもなるならば、これは熾烈になってくる。あそこの隣の郡へやったのなら、おれの郡へもよこせという熾烈な運動が始まる。だから運動によってこれをやると言う人はだれも言う人はない。補助金だって運動によってやると言う人はだれもない。だけれども補助金をうまく自分の村や関係のところに持ってくれば有利になるから、一生懸命やっていると思う。そこに運動が始まる。全部一ぺんにやればこれは運動も何もありませんよ。総合助成もみなそうなんです。ですから今までの総合助成の誤っている点は決して、助成方策が誤っているのじゃない。予算が中途半端でありますいうと、こういう運動が行われて、行われた結果、思うように予算が活用されていないという結果が起るのじゃないかというんです。もう一ぺん答弁願います。
  268. 河野一郎

    河野国務大臣 予算があまり大き過ぎますと、機の熟さぬところにやるようになりまして、むだに使われるおそれがあります。また私の期待しますのに、あちらでもこちらでもぜひ早くというほど全国の農村が新農村建設に熱意を持たれて、そういう要望が強くなればあえて今年の十五億を来年は百五十億にふやすということになるだろうと思うのでありまして、それは社会党の諸君が現在のようでなしに、もう少しこの運動に御協力を賜わりますように、超党派的に御要望なればそういうことができるようになりますから、どうぞ川俣さんにも御協力をお願いしたいと思います。
  269. 川俣清音

    ○川俣分科員 これは積寒法地帯に対しても同様なんです。みんな計画ができている、その計画のためにどのくらい町村費を使っているかわかりません。県費を使い、総合助成についても、そうした幾多計画を立てられている。計画だけはおそらく農林省の倉庫に山になるほどある。もう一ぺん振り返ってみてごらんなさい。莫大な費用をかけて計画を立てられている。計画は一年か二年立てられるが、それがみな予算が飛んでしまって、全くいわゆる人件費なり、そのための事務費なり、計画費用というものは全くむだになっている。だからこれは思いつきでやってはならぬのです。その点です。  団体についてもう一ぺん触れますが、農業団体などは、民間団体というものは超党派的にやるべきものだと私は思う。それだけにこれは農林委員会なりあるいは国会内でもいいから、超党派的にこの再建をどうすべきかということをよく検討されて、それが末端に一ぺん流れていって批判を受けて、それから法制化するということでなければほんとうに私はいい団体はできないと思う。少くともどの党が作っても、作った党が十五年、二十年と続かせるような団体でなければ、末端に迷惑しごくです。民主党が作ったにせよ社会党が作ったにせよ、党が変るたびごとに団体が変らなければならぬということは煩瑣にたえません。農民はそんなことではたまるものではありません。従ってどの内閣ができてもこの団体だけは永続性がある。改善すべき点を除々に改善することはもちろんやぶさかでないにいたしましても、どの内閣ができても変らなければならないというような民間団体は作るべきでないと私は思う。それだけに新らしい団体を作られるについては超党派で作られるべきだと思う。だから農業団体については一つ独走されることなく、衆知を集められてやられることを希望しておきますから、これに対する答弁をもって私の質問を終ります。
  270. 河野一郎

    河野国務大臣 私は決して独断でやろう、独走しようということは考えておりません。これにつきましてはすでに昨年から農業団体のおもなものには諮問をいたしまして、その答申を得てやることに準備をいたしたのでございますが、いろいろのむずかしい問題がございますから、十分満足すべき諮問の答申が得られておりませんことは御承知通りであります。従ってこれについては十分に各方面の御意見も伺って、準備をし、検討しているということは御存じ通りでございます。勝手にやろうということは考えておりませんし、なお今後も十分川俣さん等御意見がありましたらお聞かせ願いまして参考にしてやりたいと思っております。
  271. 松浦周太郎

    ○松浦主査 先ほどの川俣さんの発言中、保守党云々は速記録を調べました上に善処いたしたいと思います。  他に御質疑はありませんか。——御質疑はないようでありますから、農林省所管に対する質疑はこれにて終了いたします。従いまして昭和三十一年度一般会計予算中経済企画庁、外務省農林省及び通商産業省の所管並びに昭和三十一年度特別会計予算農林省及び通商産業省所管に対する質疑は全部終了いたしました。  この際お諮りいたします。本分科会所管の予算両案に対する討論、採決は先例によりまして予算委員会に譲ることにいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 松浦周太郎

    ○松浦主査 御異議がないと認めまして、さよう決定いたします。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。分科員各位の御協力によりまして円満に議事を進行することのできましたことを深く感謝いたし、お礼を申し上げます。  これをもって第三分科会を散会いたします。    午後五時二十一分散会