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1956-02-20 第24回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科員昭和三十一年二月十七日(金曜日)委 員長の指名で次の通り選任された。    主査 松浦周太郎君       井出一太郎君    今井  耕君       北澤 直吉君    北村徳太郎君       重政 誠之君    須磨彌吉郎君       山本 猛夫君    足鹿  覺君       今澄  勇君    川俣 清音君       小平  忠君    八百板 正君       川上 貫一君     —————————————    会 議 昭和三十一年二月二十日(月曜日)     午前十時三十四分開議  出席分科員    主査 松浦周太郎君       井出一太郎君    北澤 直吉君       北村徳太郎君    重政 誠之君       山本 猛夫君    今澄  勇君       川俣 清音君    小平  忠君       川上 貫一君    兼務           井手 以誠君  出席国務大臣         通商産業大臣  石橋 湛山君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   酒井 俊彦君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房会計課         長)      塚本  茂君         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (大臣官房長) 島津 久大君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     中川  進君         外務事務官         (欧米局長)  千葉  皓君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      河崎 一郎君         農林政務次官  大石 武一君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     昌谷  孝君         通商産業政務次         官       川野 芳滿君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     出雲井正雄君         通商産業事務官         (企画局長)  徳永 久次君         通商産業事務官         (重工業局長) 鈴木 義雄君         通商産業事務官         (繊維局長)  小室 恒夫君         通商産業事務官         (鉱山局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (石炭局長)  齋藤 正年君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      川上 為治君         中小企業庁長官 佐久  洋君     ————————————— 二月二十日  第四分科員井手以誠君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算経済企画庁、外  務省農林省及び通商産業省所管  昭和三十一年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管     —————————————
  2. 松浦周太郎

    ○松浦主査 それではこれより予算委員会第三分科会を開会いたします。  この際一言ごあいさつを申し上げます。私は本分科会主査に選任されましたが、各位の御協力によりまして円滑に議事を進めて参りたいと存じますから、何とぞよろしく御支援のほどをお願いいたします。  本分科昭和三十一年度一般会計予算中、経済企画庁外務省農林省及び通商産業省所管と、昭和三十一年度特別会計予算中、農林省及び通商産業省所管審査を行うこととなっておりますが、審査の都合上まず所管全部について、それぞれ政府より説明を聴取いたすことを一応予定といたしております。そして通商産業省所管の次に経済企画庁所管・次に外務省所管・次に農林省所管の順序によりまして順次各省庁別に質疑を行い、理事会の申し合せ通り二十三日には審議を終了するよう議事を進めていきたいと存じますから、御協力のほどをお願いいたします。  それではただいまより各省別に逐次政府説明を聴取いたしたいと存じます。  まず昭和三十一年度一般会計予算外務省所管について御説明をお願いいたします。森下政府委員
  3. 森下國雄

    森下政府委員 外務省所管昭和三十一年度予算について大要を御説明いたします。  予算総額は六十五億三千十六万七千円で、これを大別いたしますと、外務本省二十五億四千二百五十万三千円、在外公館三十九億八千七百六十六万四千円であります。ただいまその内容について御説明いたします。  第一、外務本省一般行政に必要な経費五億五千百七十九万三千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関一般事務処理するための職員千二百四十一名の人件費及び物件費等であります。  第二、外務行政連絡調整に必要な経費一億五千八百八十九万八千円は、本省在外公館との事務連絡のための電信料郵便料及び旅費等でありまして、前年度に比し四百三十四万円の増加は、在外公館増加連絡事務増加したためであります。  第三に、外交文書編さん公刊に必要な経費四百三十一万三千円は、明治以来の日本外交史実編集し、公刊するための経費であります。  第四に、外交電信に必要な経費二千九百二万九千円は、在外公館に対する電信事務の的確なる処理及び通信施設改良整備等に必要な経費であります。  第五に、外交運営充実に必要な経費三億七千八百万円は、各国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため必要な工作費でありまして、前年度に比して一億五千万円の増加となります。  第六、アジア諸国に関する外交政策及び賠償実施政策樹立に必要な経費千二百二十五万九千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案、その実施及び賠償実施政策樹立のため必要な経費であります。  第七に、アジア諸国との経済協力に関する事務に必要な経費一億千八百七万六千円は、アジア諸国との経済協力をはかるために企画立案し、及びその実施のための事務総合調整する必要な経費と、財団法人国際学友会補助金二千二百七十二万七千円、アジア協会補助金三千八百四十六万二千円、財団法人日華学会補助金三百万円及び技術協力実施委託費五千二百九十七万七千円であります。前年度に比し四千六百八十万五千円の増加は、アジア協会財団法人日華学会等補助金及び技術協力実施委託費増加によるものであります。  第八、賠償実施連絡業務処理等に必要な経費二百五十六万二千円は、賠償の円滑かつ統一的な実施をはかるための事務費等であります。  第九、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費千五百四十四万三千円は、北米、中南米、西欧及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施に必要な経費であります。  第十、日米合同委員会日本側事務局事務及び国連軍協定実施に関する事務処理に必要な経費五百六十八万二千円は、日米安全保障条約第三条に基く行政協定実施機関である合同委員会日本側事務局事務及び国際連合軍との協定実施に関する事務に必要な経費であります。  第十一、国際経済情勢調査並びに資料収集等に必要な経費六百十四万円は、世界経済の正確な把握を期するため、内外資料文献を広く収集整理するための経費であります。  第十二、通商貿易振興に必要な経費三百三十四万七千円は、通商利益保護増進をはかるため、通商貿易に関する調査等のための経費であります。  第十三、条約締結及び条約集編集等に必要な経費五千八百三十七万九千円は、国際条約締結条約集等編集条約典型作成条約及び国際法並びに内外法規調査研究のため必要な事務費等であります。  第十四、戸籍法及び国籍法関係事務処理に必要な経費二百七十七万八千円は、在外邦人身分関係事務及び二重国籍者日本国籍離脱に関する戸籍法上の事務に必要な事務費であります。  第十五、国際連合への協力に必要な経費八千九百九十一万六千円は。国際連合機関に参画し、あるいはその調査研究等に必要な事務費と、後進国経済開発技術援助拡大計画醵出金三千二百四十九万二千円、国連児童基金醵出費三千五百二十八万円、パレスタイン難民救済計画醵出金三百六十万八千円、財団法人日本国際連合協会補助金九百九十五万一千円及び日本エカフェ協会補助金五百万円でありまして、前年度に比し九百九十一万七千円の増加は、財団法人国際連合協会補助金日本エカフェ協会補助金等増加によるものであります。  第十六、情報啓発事業実施に必要な経費一千六百五十九万八千円は、国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内啓発等のため必要な経費であります。  第十七、国際文化事業実施に必要な経費七百九十九万三千円は、文化交流を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な啓発宣伝資料作成、購入の経費と、日本文化海外紹介事業を主として行う財団法人国際文化振興会に対する補助金二百十八万九千円及び在パリー日本会館補助金百二十三万六千円であります。  第十八、海外渡航関係事務処理に必要な経費一千二百五十四万三千円は、旅券の発給等海外渡航事務経費とその事務の一部を都道府県に委託するための委託費五百七十七万八千円であります。前年度に比し百八十九万円の増加は、渡航事務庁費等増加によるものであります。  第十九、国際会議参加及び国際分担金支払い等に必要な経費二億八千三百三十八万四千円は、海外で開催される各種国際会議わが国代表を派遣し、また本邦国際会議を開催するに必要な経費わが国が加盟している国際機関分担金であります。  第二十、在外公館等借入金整理事務に必要な経費百七十八万二千円は、在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律昭和三十年法律第七九号)により在外公館等借入金確認請求の権利を失っている者等に対し、昭和三十年十二月三十一日までに当該借入金確認を請求することができることとなったので、その審査確認事務処理するための必要な経費であります。  第二十一、ヴェニス日本館建設費補助に必要な経費三百万円は、ヴェニスビエンナーレ国際美術展において日本美術紹介するため設置される日本館建設費の一部を補助するため必要な経費であります。  第二十二、日・墨文化会館建設費補助に必要な経費二千二百五十七万四千円は、日本国と、メキシコ国相互文化交流増進をはかるため設置される、日墨文化会館建設費の一部を補助するため必要な経費であります。  第二十三、旧外地関係事務処理に必要な経費七百二十五万円は、朝鮮、台湾、樺太、関東州等旧外地官署職員給与、恩給の支払いその他残務整理に必要な経費であります。  第二十四、旧外地官署引き揚げ職員等給与支給に必要な経費四千万円は、三十一年度中の旧外地官署引き揚げ見込み職員八十名と未引き揚げ職員四百五十七名の留守家族に支払う俸給その他諸給与であります。  第二十五、移住振興に必要な経費六億七千九百七十六万九千円は、中南米及びカンボジア等に移住する者七千五百人を送出するための渡航費貸付金五億四千六百九十九万一千円と日本海外協会連合会補助金四千六百二十二万二千円、移住者受け入れ機関補助金六千五百万円、実習生移住補助金百五十万円等であります。前年度に比し九千八百万九千円の増加は、送出移住者増加に伴う渡航費貸付金及び日本海外協会連合会補助金移住者受け入れ機関補助金実習生移住補助金等増加によるものであります。第二十六、移住あっせん所事務処理に必要な経費三千九十九万五千円は、移住者本邦出発前における健康診断、教養、渡航あっせん等事務を行うため必要な経費であります。  第二十七、在外公館事務運営に必要な経費三十八億七千八百六十七万一千円は、既設公館七十七館一代表部五百二十二名と三十一年度新設予定の在パラグアイ、在ギリシャ、在デンマークの三公使館、在ウィニペッグ、在メルボンの二領事館及び総領事館に昇格する予定の在シアトル、在ベレーンの二領事館のために、新たに必要となった職員十二名及び既設公館職員増加二十一名計五百五十五名の給与旅費事務費交際費等であります。  第二十八、対外宣伝及び国際文化事業等実施に必要な経費四千九百八十六万二千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済文化等実情を組織的に諸外国紹介するための資料作成費講演謝礼及び事務費並びに日仏日伊文化協定実施混合委員会運営等に必要な経費であります。  第二十九、在外公館営繕に必要な経費四千七百九十四万七千円は、在ジャカルタ公館公邸の新営工事並びに在外公館事務所及び館長公邸建物修理費等であります。  第三十、国際会議事務処理に必要な経費一千百十八万四千円は、在外公館所在地で開催される国際会議事務処理に必要な事務費であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和三十一年度予算大要であります。詳細御審議のほどお願いいたします。     —————————————
  4. 松浦周太郎

    ○松浦主査 次に、昭和三十一年度一般会計予算中、経済企画庁所管について説明を求めます。高碕経済企画庁長官
  5. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま議題となっております経済企画庁予算案について御説明を申し上げます。  歳出予算要求総額は九億五千六百五十八万三千円でありまして、これを前年度予算額三億九千三百六十二万五千円に比較いたしますと五億六千四百九十五万八千円の増額となっております。この増額となったおもなものは、国土総合開発事業調整費五億円と地籍調査補助金五千九百四十万円であります。  次に経費の内訳を申し上げます。  第一に、経済企画庁の項では、要求額は二億五千五百五十四万二千円でありまして、前年度二億三千六百五十五万九千円に比較いたしますと、一千八百九十八万三千円の増額となっております。この増額となったおもな理由は、前年度より施行中の国富調査に要する経費一千四百七十九万八千円が増額計上せられておるためであります。この要求経費内容を御説明申し上げますと、人件費一億五千六百十三万八千円と事務費九千九百四十万四千円であります。  この事務費は一般庁務の運営経費並びに次に申し上げる内容のものであります。  一、わが国経済に関する長期計画作成するとともに、半年ないし一年程度の短期間の経済についての計画策定ないしは見通し作成に要する経費国際経済協力推進をはかるに必要な経費並びに本年度から実施する経済五カ年計画等重要経済施策調査審議に当る経済審議会運営に要する経費等でありまして、これに必要な経費として四百三十五万五千円を要求しております。  二、産業財政金融貿易、物価、失業対策等の諸基本政策計画について、総合調整を行い、あるいは企画庁として総合経済政策企画立案するための経費としては、一百五万八千円を要求しております。  三、わが国内外経済の動きを的確に把握し、また必要な統計指標作成する等経済動向調査分析に必要な経費としては、「千三百三十七万五千円を要求しております。この経費は、毎月の定期的な月報類と臨時的な印刷物及び年報にまとめて発表する経済白書等の印刷に要する経費がおもなものであります。  四、国民所得調査推計して各種経済政策計画基盤とするための経費として一百六十万三千円を要求しております。  五、国民所得統計と並んで総合経済施策基礎となるべき国富統計については、戦前昭和十年の調査以後一度も企画されたことがなく、戦時中から戦後にかけて著しく変化した最近の国富実情は全く明かにされておりませんので、前年度より本年度にまたがって調査実施いたしまして、国民資本状況部門別に明らかならしめるとともに、各種経済施策樹立基礎資料たらしめる必要がありますので、本年度経費として四千三百七十八万三千円を要求しております。  六、木材資源高度利用木材代替品普及宣伝のため社団法人木材資源利用合理化推進本部に対し補助金六百五十万円を要求しております。  第二に、国土開発調査費の項では、要求額二千一百六十七万六千円でありまして、前年度二千一百六十三万二千円に比較いたしますと、四万四千円の増額となっております。  国土開発調査費内容を御説明申し上げますと、この経費は、国土総合開発法電源開発促進法特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法離島振興法等の各法律に基きまして、それぞれ災害防除生産力向上あるいは離島後進性を除去、発展せしめるための諸施策樹立するために要する経費及び次に申し上げます審議会運営に要する経費であります。  まず国土総合開発審議会でありますが、この審議会委員会と六専門部会の外、各種分科会特別委員会から成り立っておりまして、それぞれ国土総合開発計画とその実施について調査審議の上内閣総理大臣に報告し、または勧告することをもって目的としております。  電源開発調整審議会は、電源開発に関する基本計画、費用の振り分け、開発担当者決定水利権水没補償等の事項を審議決定することが目的であります。  特殊土壌地帯対策審議会は、特殊な土壌におおわれて年々災害をこうむり、また特殊土壌であるため、農業生産力が著しく劣っている地域について災害防除生産力向上をはかるための諸計画審議決定することが目的であります。  また、離島振興対策審議会は、本土から隔絶せられた離れ島の後進性を取り戻すため産業振興経済力の培養、島民の生活力の安定及び福祉の向上をはかるための各種施策審議決定の上、内閣総理大臣に提出することが目的であります。  なお、東北地方については、特に総合開発事業推進して、未開発資源開発を促進し、農林畜水産業振興、鉱工業の発展をはかる等、人口の収容力増加基盤を育成する諸方策を早急に樹立する必要がありますので、このための調査経費として一千万円を要求しております。  第三に、土地調査費の項では、要求額一億七千九百三十六万五千円でありまして、前年度一億三千三百四十三万四千円に比較いたしますと、四千五百九十三万一千円の増額となっております。  土地調査費は、国土調査法に基きまして国土開発、保全、利用高度化をはかるため、国土実態を総合的に調査する経費であります。その内容を申し上げますと、基準点測量水調査土地分類調査地籍調査に要する経費であります。  基準点測量は、四等三角点新設でありまして、本年度予定点数を一千百九十点とし、経費は四千一百万五千円を要求しております。  次に、国土調査法第九条の規定によって、地方公共団体土地改良区等が地籍調査を行いますときの補助金として一億三千万円を要求しております。  なお、土地分類調査水調査については、委託調査を行うため前年度同額の五百万円を要求しております。  第四に、国土総合開発事業調整費の項では、新たに五億円を要求いたしております。  国土総合開発法による特定地域内の開発事業は、各省各庁によってそれぞれ別々に実施されるため、密接な関連のある開発事業進捗状況に不均衡を来たしまして、総合的な効果が発揮せられない場合があります。このような場合に経済企画庁がこれを調整いたしまして、必要に応じて、事業実施する各省各庁にこの経費を移しかえまして、開発事業の総合的な進捗をはかり、もって総合開発効果を上げようとするものであります。  さらに、特定地域及び調査地域開発計画調査につきましては、これまた各省各庁によって別々に行われるため、調査相互間に重複や不統一を生ずる場合があるのであります。このような場合にも経済企画庁調整をいたしまして、必要に応じて、調査実施する各省各庁にこの経費を移しかえ、あるいは経済企画庁から権威ある調査機関調査を委嘱する等の方法によって総合的な調査目的を達しようとするものであります。  以上で経済企画庁予算説明を終りますが、なお御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上すみやかに可決せられんことをお願いいたします。     —————————————
  6. 松浦周太郎

  7. 川野芳滿

    川野政府委員 ただいま議題となっております通商産業省予算各案について御説明を申し上げます。  まず三十一年度通商産業省所管一般会計予定経費要求額は八十三億六千三百七万七千円でありまして、これを三十年度総額七十四億四千九百五十五万五千円に比較いたしますと、九億一千三百五十二万二千円の増額となるわけであります。  次に三十一年度予定経費中重要なものについて御説明を申し上げますと、第一に、貿易振興対策といたしまして総計十億七千九百十六万七千円を計上いたしましたが、これを前年度予算額九億七千九百十六万七千円と比較いたしますと、一億円の増額を見ております。  増額の重点は、わが国貿易商社等がいまだ弱体であり、従ってその海外における活動も十分とは申せない現状にかんがみ、海外市場開拓販路拡張とをはかるため、主として貿易情報機関整備市場調査充実及び輸出見本船派遣等をはかったものであります。  まずわが国商品の展示、紹介及び貿易あっせんを行う貿易斡旋所については、前年度に引き続き、既設のニューヨーク、サンフランシスコ、カイロ及びトロントの四カ所を維持いたすとともに、その活動を活発化せんといたすものであります。  次に国際見本市参加等補助については、二億五十七万円を計上し、イラク、コロンビア、セイロンアメリカ等七カ所の見本市への参加予定いたすとともに、五千万円をさいて、中近東、東南アジア方面機械類輸出見本船を派遣して、新規市場開拓をはかりたいと存じます。  次にプラント輸出促進対策といたしましては、現地における機械設計技術相談等の便宜を供与する重機械輸出プラント協会活動を活発化するため、一億八千二百万円を計上するとともに、事業内容充実をはかりたいと存じます。  なお海外における土建事業協力しあわせて建設機械輸出を促進するため、既設のビルマに加えて新しくフィリピンに関係駐在員を派遣いたしたいと存じておりますし、また農水産物輸出増進をはかるため、農水産物輸出振興費を大幅に増額いたすとともに、電気機械・医薬品の輸出増進のための措置をそれぞれ講ずることといたしております。  海外市場開拓し、わが国商品販路拡張をはかることは輸出振興するための根本でありますので、海外市場調査のため、前年度額に二千六百七万二千円を増加し、一億三百八十七万円を計上いたしまして、海外における諸情報の迅速なる収集をはかるとともに、わが国商品および産業経済実態海外紹介宣伝するための、海外広報宣伝費を一億五千二百五十三万二千円計上いたした次第であります。  さらにわが国中小企業製品輸出に占める役割はきわめて重要でありますので、その輸出商品品質向上をはかるため、前年度額に一千三十二万九千円を増加して、新規試作品の奨励、技術研究推進等を活発に実施いたしたいと存じております。また現在先進国に比較し立ちおくれの目立つ輸出意匠品質改善費として、前年度の約三倍である三千一百九十七万円を計上して、これが進歩をはかりたいと存じます。  その他、日本国際見本市補助国際商事仲裁委員会補助等については、前年度に引き続きまして、それぞれほぼ同額を計上いたしました。  第二に、技術振興対策でありますが、これは前年度対比四億三千二百八十七万六千円の大幅増加で十四億九千五百七十四万六千円を計上いたしております。  まず鉱工業技術研究助成費については、四億五千万円を計上いたし、昨年一億円の国庫補助を計上した株式会社科学研究所につきましては、本年度よりこれを一般会計の出資に切りかえることとし、従って三十一年度分は大蔵省に計上することといたしております。  次に原子力予算のうち当省関係試験研究費及び原子燃料探鉱費補助金等を含めて二億五千一百二十二万円が当省分として計上されております。  なおわが国産業振興基礎をなす金属材料の重要性にかんがみ、新しく金属材料研究所の設置のため一億円を計上いたしました。  次に発明奨励費につきましては、前年度とほぼ同額の三千万円を計上し、発明実施化試験、外国特許出願、発明協会の補助を行うことといたしております。なお発明行政の重要性にかんがみ、本年度は特許庁の人員並びに事務費充実をはかりました。  また当省所属の試験研究機関につきましては、それぞれの基礎的研究に必要な研究費のほか、特別のテーマにかかわる特別研究費として、総計六億二千四百九十八万六千円を計上いたしました。これは技術の急速なる振興を要する現下の情勢にかんがみ、前年度のほぼ二倍に当る金額を計上いたしたものであります。これにより、工作機械オートメーション、海水利用、有機合成化学、新材料製造等、わが国経済にとって喫緊の重要事項に関する研究の促進をはかる所存でございます。  第三に、中小企業振興対策であります。まず中小企業に対する金融対策でありますが、中小企業金融公庫につきましては、資金運用部よりの借入金百三十五億円に、回収金等の自己資金等百六十五億円を加えますと、運用資金総額は三百億円と相なり、三十年度における運用計画二百五十五億円に比し相当程度の増額となるわけであります。  さらに商工組合中央金庫につきましては、中小企業金融公庫を通じ資金運用部よりの借入十億円と余剰農産物見返り資金を生産性本部を通じて十億円計二十億円を計上し、これによって資金の充実と金利の引き下げをはかりたいと存じております。  中小企業振興対策の第二は、中小企業協同組合等補助でありますが、これは前年度に五千万円を増加し四億七千万円を計上し、引き続き中小企業共同化並びに近代化等を推進いたす方針であります。  次に中小企業相談所補助についてでありますが、中小企業にとりまして、懇切なる指導と、よき相談相手とが必要なことは今さら申し述べるまでもないところであります。かかる見地から、各地にすでに中小企業相談所が設置せられ、相当の成果をおさめている現状でありますが、より一そうその機能を強化し、中小企業の要望にこたえるため三十年度に二千七十一万円を増加し、五千一百九十一万円を計上いたした次第であります。  また都道府県に対する中小企業振興費補助については、前年度同額を中小企業診断指導を中心として計上いたしており、さらに先年からの風水害に伴う小企業者に対する復旧資金利子補給につきましては、前年に引き続き本年度所要額三百九十四万二千円を計上いたした次第であります。  なお中小繊維工業の産業規模を合理化し、過当競争を避けて輸出市場の安定確保をはかるための補助金として新たに一億二千万円を計上いたしました。  第四に、産業基盤の強化対策であります。まずわが国産業の生産性の向上を前年度に引き続きさらに強力に推進するため、三十年度額に二千五百万円増加して七千五百万円を計上いたしました。新規施策としては、工業用水の確保が今後における工業生産伸張のため重要不可欠な基盤である点にかんがみ、これが確保に必要な補助金として初年度一億八千二百五十万円を計上いたしました。  次に砂鉄、磁硫化鉄鉱等重要鉱物の生産維持をはかるための探鉱費補助は、天然ガスも含めて、四千万円となっております。  なお前年度二億八千万円を計上いたしました。石油試堀費等補助については、本年度より出資金に切りかえることとし、産業投資特別会計より七億円を出資することとといたしたく、従って一般会計より除外いたしました。  次に当省所管の特別会計について、その歳入歳出予算大要を簡単に御説明申し上げます。  まずアルコール専売事業特別会計でございますが、三十一年度の歳入予定額は三十二億七千三百三十四万四千円、歳出予定額は二十八億六千三百六十四万六千円でありまして、資産、売掛金等の関係を加減しますと、三十一年度の益金予定額は二億九千百七十二万四千円となります。  第二に、輸出保険特別会計について御説明申し上げます。三十一年度歳入歳出予定額は、ともに四十二億五千一百十五万九千円でありまして、歳入のおもなるものは保険料収入六億三千一百七十八万五千円、資金運用収入一億四千八百五十万円、雑収入二千七百六十万八千円、前年度剰余金三十四億四千三百二十六万六千円等であり、歳出のおもなるものは支払保険金五億七千五百二万六千円、予備費三十六億四千八百二十二万二千円等であります。  なお本特別会計に新しく海外との経済協力を促進するため、海外投資保険を新設することといたしました。  第三に、中小企業信用保険特別会計について御説明を申し上げます。三十一年度歳入歳出予定額は、ともに三十一億二千四百三十八万二千円でありまして、歳入のおもなるものは、保険料収入三億三千七百四十九万六千円、資金運用収入一億二千六百二十五万円、雑収入九百七十五万九千円、前年度剰余金二十六億五千八十七万七千円等であり、歳出のおもなるものは支払い保険金四億五千四百四十六万四千円、予備費二十六億二千四百二十万八千円等であります。なお三十一年度より新しく指定法人を相手方とする包括保険制度を創設いたしますとともに、小品保証保険の貸付限度の引き上げを行なって中小企業信用保険制度の運用の円滑化をはかることといたしております。  第四に、特別鉱害復旧特別会計について御説明申し上げます。本特別会計は、戦時中の石炭増産に伴う特別鉱害を復旧することを目的とするものでありまして、三十一年度の歳入歳出予定額は、ともに七億八千三百二十万二千円でありますが、歳入のおもなるものは納付金収入、六億一千七百九十八万八千円であり、歳出は、その大部分が鉱害復旧事業費であります。なお、本特別会計とともに、鉱害復旧事業全般としては、国庫補助金十三億一千三百二十八万四千円を建設、農林等の各主務省に計上し、総額二十六億一千百七十一万一千円に上る復旧事業費を予定し、鉱害地帯における失業対策にも万全を期しております。  第五に、特定物資納付金処理特別会計について御説明申し上げます。本会計は別に御審議をお願いいたしております特定物資輸入臨時措置法の施行に伴う事務処理するため新しく設置いたすものでございまして、その歳入歳出予定額はおのおの十六億二百七十六万円で、歳入のおもなるものは納付金十六億二百七十五万一千円であり、歳出のおもなるものは他会計繰り入れ十五億円等であります。  以上をもちまして一般会計及び特別会計予算の概要について御説明いたしましたが、この際当省関係の財政投融資計画について簡単に御説明いたしたいと存じます。  まず開発銀行でございますが、これに対する投融資額としては自己資金を合せ三百六十億円を計上いたしまして、重要産業の合理化の促進と資源の開発及び自給度の向上に努めるとともに、その資金の運用に当っては極力重点的効率的運用に留意するとともに、民間資金の大幅な利用を考慮いたしております。  次に輸出入銀行につきましては、プラント輸出振興に必要な資金として自己資金を合せ五百四十八億円を計上し、昨年度額に比し百四十億円の増加をはかり、所要資金の円滑なる供給をはかっております。  次に電源開発会社につきましては、電源開発促進のための所要資金として財政資金三百一億八千万円を計上したほか、公募債の発行等七十億円を確保して電源開発計画の達成に努めたいと存ずる次第であります。  中小企業関係金融機関につきましては、すでに中小企業対策のところで触れましたので、ここでは省略させていただきます。  以上で通商産業省所管の一般会計及び特別会計の予算の御説明を終りますが、なお御質問に応じて詳細に御説明申し上げたいと存じます。  何とぞよろしく御審議の上可決せられんことをお願いする次第であります。     —————————————
  8. 松浦周太郎

    ○松浦主査 次に昭和三十一年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管について説明を求めます。大石農林政務次官
  9. 大石武一

    ○大石(武)政府委員 昭和三十一年度農林関係予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  本予算案は、農山漁家の経営及び経済を安定せしめることを主眼として、農林水産業における生産者の積極的な意欲と科学技術の向上を基調とし、従来の生産増強対策をさらに効率的に実施して農林水産業の生産性を向上するとともに、特に農林畜水産物の価格安定、流通改善及び農林漁業経営の多角化等の施策を進めることをその重点といたし編成いたしたのであります。  まず一般会計における農林関係予算案の総体について申し上げます。  農林省所管合計といたしましては、八百八億四千八百万円となっております。これに総理府所管の農林関係公共事業費六十七億八百万円及び労働省所管の農林関係公共事業費二億円を加えました農林関係予算合計は八百七十七億五千六百万円となり、前年度九百四十一億四千五百万円に対し六十三億八千九百万円の減となっております。  かように関係予算におきまして減額を見ましたのは、災害復旧事業費において三十一億八千四百万円の減、農業保険費において赤字補てん金繰り入れの減少等による三十四億一千九百万円の減、災害営農資金利子補給補助金において四億七百万円の減等、計約七十億円の減がありましたためで、これは災害等の減少に伴い、予算面におきましても実質上の減少要因があったためであります。従ってこれらを除けば農林関係予算は実質的には前年度の規模を上回ったものと見ることができるのであります。  次に主要経費について簡単な説明を申し上げたいと存じます。  第一に新農村建設総合対策費についてであります。この対策におきましては、農山漁民特に青年の自主的活動を基調とし、立地に応じ土地条件の整備、経営の多角化、技術の改良、各種共同施設の充実等、適地通産に重点を置いた農山漁村の振興に必要な総合対策を強力に推進するため、地元の樹立する振興計画に基き、年次を追ってその達成をはかることとし、昭和三十一年度においては農用地交換整備事業、水稲早植等適地通産奨励施設、農山漁村振興共同施設等の特別助成事業を行うため十四億五十九百万円を計上いたしておりますが、これとあわせその他の一般助成事業、農業改良基金制度についてもこの趣旨にのっとって運用いたしますほか、農林漁業金融公庫の融資についても特に十五億円の貸付金を予定し、その遂行をはかることといたしております。  第二に試験研究機構の整備強化に要する経費について申し上げます。農林水産関係の試験研究において国及び都道府県の占める地位の重要性にかんがみ、昭和三十一年度においては、特に各試験研究機関の緊密な連携をはかりその活動を積極的にするため、農林水産技術会議を設置することとし、特別に試験研究費一億円、試験研究施設整備費一億五千万円、原子力利用研究費五千六百万円、計三億六百万円を新規計上して、各研究項目の緊要度に応じ、関係試験研究機関の総合的運営と所要施設の充実整備をはかる等の措置を講じて参る所存でありまして、その他の農林関係各試験研究機関経費二十五億九千九百万円、都道府県試験研究事業の補助費二億一千七百万円、民間試験研究に対する助成九千五百万円と相待って、農林関係試験研究事業の特段の強化を期しておるのであります。なお、これに関連いたしまして農林水産業における技術改良普及事業の強化をはかるため、二十四億二千四百万円を計上いたしております。  第三に輸出振興について申し上げます。農林水産物の輸出振興わが国農林水産業の発展上はもとより、貿易収支上も重要な意義を持つことにかんがみ、特に生糸については、昭和二十九年来実施しております中央蚕糸協会による生糸の海外需要増進事業を、昭和三十一年度においても引き続き実施する等、農林水産物の輸出振興措置を講ずることとし、所要経費七千三百万円を計上いたしておりますほか、新たにマグロ・サケ等の海外需要を喚起するため、通産省に特に所要経費一億円を計上いたし、農林省においてその運用に当ることといたしております。  第四に耕種改善による農作物の増産対策に要する経費について説明申し上げます。  まず第一に農業改良基金の創設についてであります。我国農業はその経営規模が零細で、所得水準も低く他産業部門に比べ生産力発展の自主的契機に乏しいため、国の強力な財政的支援を必要とすることは言うまでもないところであります。農業改良のための奨励的補助金についても、新技術の導入を円滑にするためには、その必要性、重要性はいささかも変りありませんが、一定の補助期間を経過し、普及の度合いその他の理由によって補助金の必要な段階を過ぎても、なお奨励の必要のあるものについては、農業者の自主的な営農改善意欲の向上をはかりつつこの種の事業を促進することを適当と考え、これらに対しては無利子の奨励資金の貸付を行うこととし、また農業改良上必要な施設等の導入を容易にするため、これに必要な系統資金について債務の保証を行うことにより積極的に系統資金を活用することといたし、これらに要する経費として九億二千五百万円を新たに計上し、農業改良普及事業の強化と相待って、農業経営の安定と農業生産力の増強をはかる方針であります。  次に農産物種子対策につきましては、米麦、大豆、トウモロコシ、肥飼料作物、菜種、菜豆、ニンドウについて原々種圃、原種圃、採種圃を必要に応じ設置するほか、災害対策用農産物種子の予備貯蔵を引き続き実施することとし、これがため四億二千二百万円を計上いたしたのであります。なお、従来補助により実施して参りました水稲健苗育成施設及び西南暖地等における水田生産力増強施設の奨励は、新農村建設総合対策による場合を除き、これを農業改良基金による貸付金により実施することといたしております。  次に土壌対策につきましては、低位生産地の調査費として五千三百万円を計上し、今般農業改良基金の貸付金により実施することといたしております酸性土壌改良及び秋落水田改良事業とあわせて、低位生産地の解消に努めて参りたいと考えております。また畑地帯、特殊土壌地帯及び北海道には、トラクター等による土層改良を実施することとし、所要経費七千八百万円を計上いたしております。  次に植物防疫事業につきましては、農薬備蓄制度と相待って病害虫発生予察、防除組織の整備、特に市町村における防除機具の整備に努めることとし、四億七千五百万円を計上しております。  以上のほか、耕種改善事業としては、特殊農作物及び園芸農作物の生産確保改善の経費として三千百万円を計上しております。  第五に食糧増産対策費について申し上げます。土地改良開拓事業等の農地の拡張改良による食糧増産経費は、関係予算としましては二百四十七億二千万円を計上しております。なお、財政投融資計画中において余剰農産物見返り資金より農業関係費として八十八億円が予定されておりますが、このうち約四十七億円を農業開発に充当する予定であり、また世界銀行から農業開発のための資金をも別途考慮しており達す。なお外資導入関係事業に伴う国庫負担額は、前述の予算額のうち十一債七千二百万円を計上しております。また農林漁業金融公庫による非補助土地改良事業に対する融資を五十五億円と大幅に増額いたし、融資による食糧増産事業の拡大をはかっております。  土地改良事業費は、関係予算においては農業機械整備費を含め百二十億一千九百万円を計上しております。そのうち国営灌漑排水事業は五十五億四千百万円、都道府県営灌漑排水事業は三十一億三千六百万円、団体営灌漑排水事業は十五億四千九百万円で、いずれも前年度に比し若干の減額を見ているのでありますが、継続事業の早期完了をはかる等重点的に配分し、事業実施はできるだけ効率的に行うように努めて、食糧増産の基本施設造成の確保を行いたいと考えておるのであります。特に三十一年度におきまして温水施設、老朽ため池、農地保全事業等の経費につきましては若干の増額を考慮いたしておりますほか、外資導入により引き続き愛知用水事業等の促進をはかる予定であります。  次に耕地整備事業費につきましては暗渠排水、客土、区画整理、農道、索道等従来の事業実施することとし、所要経費二十一億一千百万円を計上しております。  開拓事業につきましては、七十一億九千七百万円を計上しております。このうち開墾建設事業として三十九億三千五百万円干拓建設事業として二十四億四千八百万円計画費として三億二千百万円、開拓事業費補助として四億九千百万円を計上いたしております。  開拓に伴う新規入植戸数は、機械開墾地区を含め五千戸を予定いたしております。入植助成のためには以上の開拓事業費のほかに、住宅、開墾作業、土壌改良のため、開拓実施費として二十二億一千九百万円を計上いたしております。以上のほかに外資導入による開拓事業地区として、上北、根釧の両地区の機械開墾による大規模開拓を引き続き促進することとし、所要経費六億四百万円を計上して、昭和三十一年度において地元増反のほか、百八十六戸の入植を予定しております。なお開拓事業に関連いたしまして開拓者に対し、営農資金及び役畜乳牛導入資金として十七億一千五百万円を開拓者資金融通特別会計で貸し付けることとなっておりますほか、上北、根釧地区の入植者に対しては、別途余剰農産物資金をこの会計を通じ、一億七千四百万円を貸し付ける予定であります。さらに開拓者の短期資金融通の円滑化をはかるため、開拓者融資保証協会に対し、前年度の五千万円に加えて昭和三十一年度においても五千万円の出資を計上いたしております。  以上の一般的な食糧増産対策経費のほか、鉱害復旧事業といたしまして八億三千万円、災害関連事業といたしまして六億八千百万円を計上いたし、これらの事業の促進をはかることといたしております。  なお一般公共事業の及びがたい農山村の小団地を開発するため、小団地開発整備事業を促進することとし、三億四千六百万円を計上いたしております。  第六に農業保険費について申し上げます。農業災害補償制度につきましては、かねてからその制度改正につき研究を続けておりますが、昭和三十一年度予算案においてはとりあえず現行制度に即しつつ農業災害補償制度の運営に必要な経費を計上いたしたのでありますが、その総額は百十一億六千六百万円でありまして、前年度に比し三十四億一千九百万円の減少を見でおるのであります。このうち特別会計繰入額については、まず前年度においては必要であった同特別会計再保険金支払い財源不足補てん金二十八億円が、昭和三十一年度においては計上を必要としなくなっておりますのと、さらに共済掛金の国庫負担については、水陸稲の平均反当共済金額の減少があり、その他麦価、繭価、家畜の掛金率の低下等が見込まれますので、八十六億八千六百万円をもってまかない得るものと考えこれを計上した次第であります。その他の経費としましては、二十四億八千万円を計上しておりますが、これにより都道府県による農業共済団体の指導監督を強化し、その運営の適正化をはかることとしましたほか、合併農業共済組合に対する特別助成、農作物の損害評価事務の強化等の新事業実施することとするとともに、掛金予納制等についても措置を講ずる方針であります。  第七に農林漁業関係団体等の経費について説明申し上げます。まず農業委員会関係につきましては、全国農業会難所、都道府県農業会議に対する事業活動促進に必要な助成費を前年と同様一億一千万円計上しておりますが、市町村農業委員会費補助につきましては食糧制度の改変、農業総合計画推進、農地関係事務等を実情に即して行うこととし、職員三分の二人分の事務に相当するもののみを負担し、残余の職員一人と三分の一人分は地方財源計算に組み入れることといたしており、町村合併による委員会数の減少をも考慮して九億七千万円を計上し、その他代表会議費等を含め総額において十一億一千二百万円を計上しております。次に農業協同組合中央会の事業活動促進補助のため六千万円、農林漁業組合の検査指導のため一億三千四百万円を計上いたしその監督に遺憾なきを期しております。また農林漁業協同組合再建整備法に基く再建整備組合の増資奨励金に充てるため、同法による最終年次である昭和三十年第四・四半期分三千万円、連合会整備促進事業費五億三千万円を計上いたし、その再建整備を促進するとともに、不振農協の整備強化対策として各都道府県に振興対策委員会を設けてその振興対策を講ずることとし、とりあえず昭和三十一年度においては組合債務に対する利子補給、長期駐在員の配置、合併の促進等指導の強化を行うこととし、これらに要する経費一億一千三百万円を新規に計上しております。  第八には、農林水産物、並びに生産資材の流通改善及び価格安定に関する経費について説明申し上げます。農林漁業経営の安定と所得の確保をはかりますためには、農林水産物等の価格安定、生産費の低下をはかることが何よりも急務であることは言うまでもないところであります。  まず化学肥料につきましては、一般会計におきまして臨時肥料需給安定法に基く需給調整のための肥料保管措置による欠損補てんの経費及び肥料市況調査等経費として一億七百万円を計上しております。  農薬につきましても前年に引き続き全国及び都道府県において保管を行うこととし、所要経費一億二千七百万円を計上しております。  購入飼料につきましては、食糧管理特別会計において海外の市況調査費として百万円を計上いたしましたほか、同会計におきまして輸入飼料の売買操作により需給及び価格の安定をはかることといたしております。  生鮮食品流通改善の対策といたしましては、生鮮食料品の取引を公正にし、生産者及び消費者の利益を増進するため中央卸売市場等の監督を強化することとし、またその施設の新増設を助成として融資等の措置を講じて参りたいと考えるものであります。  乳製品につきましても廉価な製品の供給と消費の拡大をはかるため、前年に引き続き国内産脱脂粉乳の学童給食への利用を奨励することとし、この講入費補助として一千八百万円を計上いたし、この面からも消費の促進に資して参りたいと存じております。  第九に、畜産振興経費につき説明申し上げます。まず家畜の導入及び改良増進についてでありますが、四億四千二百万円を計上いたし、従前に引き続き府県に対する種畜購入補助を実施いたしますほか、集約酪農地域継続二地区につき六百頭、新規に世界銀行資金により千九百頭のジャージー種乳牛を導入することといたしております。また有畜農家創設資金利子補給に必要な経費として二億七千六百万円を計上しております。  次に自給飼料対策でありますが、まず牧野改良対策として草地改良に一億九千四百万円、牧野改良センター二カ所の増設のために三千六百万円、北海道の乾草調整施設費補助として三百万円を計上いたし、牧野改良事業の機械化を急速に推進することといたしましたほか、自給飼料増産のため、飼料自給経営施設補助として一千五百万円、飼料作物採種圃等の経費一千五百万円を計上いたしております。  また畜産技術の振興をはかるため畜産技術振興補助として三千三百万円を計上いたしておりますが、これにより中央及び地方における畜産団体による経営診断事業実施をはかりたいと考えております。  なお、畜舎、サイロ等の畜産経営の基幹となるべき施設の導入については、農林漁業金融公庫融資によるもののほか、新たに創設された農業改良基金による債務保証によって系統資金の活用をはかることといたしたのであります。  第十といたしまして、蚕糸業の振興に要する経費について説明申し上げます。生糸の輸出増進事業及び蚕糸の技術改良につきましては、さきに申し述べた通りでありますが、これと相待って、国内における原料繭の合理的増産と生産費低減の措置として、従来の経営改善特別措置指導施設費補助として六千三百万円、桑園改植の展示のための桑園能率増進施設に対する補助として五千三百万円を計上いたしておりますが、このほか今般創設される農業改良基金制度に基く貸付金により老朽桑園の改植を促進することとしております。なお、生糸の品質改善対策の一環として新たに蚕品種の再調査、繭検定所に対する繭粒撰別機の設置、練り減り及びラウジネスの調査等に要する経費八百万円を計上しております。  第十一といたしまして、林業振興のための経費について説明申し上げます。まず山林公共事業費につきましては、治山事業に四十二億七千六百万円、造林事業に三十九億七千万円、林道事業に十六億八千四百万円を計上いたしております。また造林事業については上述のほか国有林野事業特別会計におきまして公有林野の官行造林事業として八億七千百万円を引き続き実施することとしております。  一般民有林対策としましては、林業関係の技術改良についてはさきに申し述べた通りでありますが、森林計画に三億九千三百万円、樹苗養成及び毬果採取等優良種苗確保のため八千九百万円、保安林整備計画実施に二千四百万円、森林病害虫防除に一億三千一百万円、有益鳥獣増殖に六百万円を計上いたし、森林資源の維持培養に努力いたす所存であります。  第十二といたしまして、水産業振興経費につき説明申し上げます。水産業振興のためには、沿岸及び沖合いにおける資源が枯渇の傾向を示しつつある現状にかんがみまして、従来の水産増殖事業を継続するほか、海外漁場への発展、新漁場の開発に特段の努力を払うことといたしておりますほか、別途新農村建設総合対策の一環として沿岸漁村振興総合施設助成事業実施し、沿岸漁村の振興をはかることといたしております。  水産資源の増殖につきましては一億九千万円を計上いたし、前年に引き続き内水面における種苗生産及び放流施設、貝類増殖、浅海増殖を実施いたす方針であります。  新漁場開発につきましては、沖合い漁場について五百万円、インド洋におけるマグロ資源開発のため三千二百万円、ブラジル沖合いにおける開発調査のために新規に一千三百万円を計上いたしておりますほか、海洋調査関係経費として五千五百万円を計上しております。また水産資源保護のための漁業調整及び取締り関係につきましては、北洋漁業、太平洋及び東支那海における以西底びき網漁業、捕鯨業等の国際漁業関係に三億三百万円、沿岸沖合い内水面関係一億二千六百万円を計上いたしておりますほか、新たに沖合い漁業取締船及び調査船各一隻の新規建造を行うこととしております。  次に漁港施設の拡充につきましては、既着工地区の早期完成をはかることに重点をおき、二十四億二千七百万円を計上し漁港修築事業の促進を期しております。  第十三といたしまして、農地、林野、漁港関係災害復旧費について申し上げます。農地及び農業公共施設の災害復旧費に九十八億一千四百万円、治山施設及び林道の災害復旧に四億七千百万円、漁港の災害復旧に十五億九百万円、合計百十七億九千五百万円を計上いたしましたが、前年に比し三十一億八千万円の減少となっております。これは災害が逐次減少したためでありまして、これによりまして昭和三十一年度におきまして二十七年以前の災害につきましては残事業量のほとんどを完了し、二十八年災害につきましては総事業量の七五%、二十九年災害につきましては同じく七〇%、三十年災害につきましては同じく六五%まで完了いたすことを目途としております。  第十四には農林漁業における財政投融資と営農資金等の利子補給関係費について申し上げます。まず農林漁業金融公庫でありますが、産業投資特別会計よりの出資十億円、資金運用部からの借入金百四十五億円、及び簡易生命保険及び郵便年金特別会計からの借入金五十五億円に回収金八十億円を加えて二百九十億円の原資計画により従来に引き続き土地改良、林業、漁業、塩業、共同利用施設及び自作農維持創設等に対する融資を行うほか、新農村建設のため特別の融資を行うことといたしております。  特別会計による農林省関係政府融資ないし融資保証の制度としましては、開拓者資金融通及び中小漁業融資保証保険の両特別会計があることは御承知の通りでありますが、開拓者資金特別会計の融資予定額としてはさきに述べました通り十八億八千九百万円を計上いたし、また中小漁業融資保証保険特別会計においては、今般一億円の繰り入れを行うこととし、年間百億円の保証を予定しております。このほか今後の予算措置により直接活用される系統資金量は農業改良基金制度により十八億二千一百万円、開拓者資金保証協会出資五千万円により従来の資金量に加えて、三億円、有畜農家創設資金利子補給により十二億三千九百万円が予定されております。  一般会計による利子補給金といたしましては、昭和二十八年及び二十九年発生災害の被害農家に対する営農資金利子補給、十勝沖地震による農業施設災害復旧資金に対する利子補給並びに水産関係のルース台風、十勝沖地震、カムチャッカ沖地震等による漁業災害及び昭和二十九年及び三十年発生災害に対する復旧資金の利子補給等を含めて十四億五千万円を計上いたしましたほか、有畜農家創設資金利子補給につきましてはさきに述べた通りでございます。  引き続いて昭和三十一年度の農林関係特別会計予算について説明申し上げます。  第一に食糧管理特別会計につき申し上げます。この会計の歳入、歳出はともに八千七百四十六億九千五百万円となっております。  米穀及び麦類の管理制度につきましては、制度の急変を避け、さしあたり普通外米の消費を自由にする等の所要の改善を行うこととし、本特別会計における昭和三十年度までの損失は、同年度において処理し、昭和三十一年度においては厳に収支の均衡を確保することとしております。  昭和三十一年産米の集荷数量は、三十年度当初予算とおおむね同量の二千三百五十万石と予定し、配給日数については、全国的に均衡化することに努め、普通外米については、現行の消費規正を撤廃する方針であります。  国内産麦についてはほぼ三十年度買い入れ実績程度の百二十五万トンの買い上げを予定しております。  食糧の輸入につきましては、配給外米の品質向上に留意することといたし、米麦ともにその数量は内地食糧の不足を補う限度にとどめ、米百十一万トン、麦三百八万トンを予定しております。  生産者価格について申し上げますと、三十一年産米の政府買入価格につきましては、三十年産米の政府買入価格算定に準拠した方式により、三十一年産麦につきましては、現行の政府買入価格算定方式により算定いたしたのであります。  また消費者価格及び政府売り渡し価格につきましては、内地米は、現行価格に据え置くことといたし、普通外米は、内地米との格差を適正化し、内麦については消費者価格水準の実勢を考慮してそれぞれ改訂する方針であります。  食生活改善のための学童給食用小麦の廉価払い下げに伴う損失補てん金として十五億四千万円を一般会計より受け入れることといたしております。  米麦以外の農産物等につきましても、前年に引き続き、澱粉、テンサイ糖、甘藷生切りぼし、菜種、飼料の買い入れ費を計上し、農産物及び飼料等の価格の安定及び農家所得の確保をはかる措置を講じたいと考えております。  輸入砂糖につきましては、砂糖の価格安定について別途関係業界の自主的調整措置を講ずることといたしておりますが、なお価格の安定を期し得ない場合におきましては、本会計において所要数量の買い入れ及び売り渡しを行い得るよう措置する方針であります。  第二、農業共済再保険特別会計について申し上げます。この会計の各勘症を通じまして、歳入、歳出は、ともに百七十六億七千四百万円となっております。このうちまず基金勘定につきましては、三十年度末において農業勘定の剰余金を本勘定に受け入れることが見込まれますので、その歳入歳出はともに二十八億九千七百万円を計上しております。次に農業勘定でありますが、三十一年度予算では、前年度予算に比べまして、三十年度引き受け実績を基礎として算定した結果、水陸稲の平均反当共済金額の減少があり、麦価、繭価の値下りにより、共済掛金の国庫負担額は減少を来たし、また二十九年度の風水害、冷害によります再保険金支払い財源の不足補てん分として三十年度に計上された二十八億円は当然不要となっております。この結果八十一億二千二百万円を一般会計より受け入れることといたしております。次に家畜勘定につきましては、三十一年度は死亡廃用共済と疾病傷害共済との一元化により掛金の料率も引き下げられますので、共済掛金の国庫負担額は減少し、四億八千九百万円を一般会計より受け入れることといたしております。  第三、森林火災保険特別会計につきましては、前年度同様の事業実施することとし、歳入歳出ともに四億二千万円を予定いたしております。  第四、漁船再保険特別会計につき申し上げます。まず普通勘定につきましては歳入、歳出ともに十三億三千七百万円と前年に比し増加をいたしておりますが、これは本制度の普及による加入漁船数の増加によるものでありまして、このため国庫負担分一億三千五百万円を一般会計より受け入れすることにいたしました。特殊保険勘定低歳入、歳出ともに四億二千万円を計上いたして、再保険金の支払いに充てることといたしておりますが、歳入の一部として資金運用部よりの借入金八千五百万円を予定しております。また給与勘定につきましては、特殊保険と同様の考えのもとに保険事故が発生した場合の再保険金の財源として資金運用部より五千万円の借り入れを予定し、歳入、歳出とも七千九百万円を計上いたしております。  第五、自作農創設特別措置特別会計につき申し上げます。この会計の歳入、歳出は十四億五千九百万日でありまして、土地の買収につきましては既墾地四千町歩、未墾地一万三千二百町歩、牧野千五百町歩を、またその売り渡しにつきましては、既墾地五千五百町歩、未墾地四万九千町歩、牧野四千五百町歩を予定しております。  第六、開拓者資金融通特別会計につき申し上げます。この会計の歳入、歳出は二十三億六千百万円でございます。まず営農資金につきましては二十九年、三十年の入植者を含めこれらに対し営農資金及び共同施設資金として九億五千二百万円を貸し付けることといたしております。この中には経営規模の実績が従来の予定の規模を越える状態にあるものと判明した二十九年入植者についての融資の増加を考慮いたしております。また営農不振の地区に対しましては、その振興対策として資金の貸付八千万円を予定し、さらに累年の災害を受けた入植者に対し実質的な負担軽減をはかるため農機具、家畜等の営農改善資金三億三千七百万円の貸付を行うことといたしております。開拓者が営農上必要とする乳牛三千七百頭役畜四千頭を導入するため家畜導入資金として三億四千七百万円を計上し、既入植者の安定をはかることといたしました。これらの資金の調達は償還金と借入金によりこれをまかなうこととし、十億円を資金運用部より借り入れるほか、機械開懇地区分については余剰農産物特別会計より一億七千四百万円を借り入れることといたしております。  第七、国有林野事業特別会計につき申し上げます。この会計の歳入歳出は、四百九億五百万円であります。本会計においては木材の需給計画に基く国有林よりの供給量はこれを確保し得るよう措置することとし、北海道の風倒木については、その妥当と認められる範囲において急速に処分を行うよう計画いたしたのであります。林道及び造林経費については、おおむね前年通りとし、また治山のための民有林買い上げについては、最近の木材価格値下りによる本会計の経理状況にかんがみ従来の三分の二程度に押えこれに伴う治山施設の施行もこれに応じ縮小をいたしたのであります。また公有林野官行造林については特に造林の拡大をはかるため計画通りの実施を確保することとしたのであります。以上の結果本会計の収支は十億円の不足を来たすこととなるので、これは資金運用部に預け入れてある剰余金を取りくずして、これに充当することといたしたのであります。  第八、糸価安定特別会計につきましては、歳入、歳出ともに六十四億二千四百万円を予定いたしております。糸価の異常なる変動を調整するための最低価格による生糸の買上量を一万四千五百俵とし、また輸出適格生糸につき保管会社が買い入れ保管した生糸についても特別買い入れ五千俵を予定し、また繭価の維持のため養蚕団体をして共同保管を行わしめることとし、これについても保管数量百万貫を予定し、これらに要する経費については、前年度剰余金三十四億六百万円のほか、糸価安定特別会計法の運用により三十億円を限度とする借入金を活用することといたす方針であります。  第九、最後に中小漁業融資保証保険特別会計について申し上げます。この会計は、昭和二十七年、五億円の基金で発足いたしましたが、この保証実績も昭和二十九年以降漸増の傾向にあり、その保険金支払いも今後増加が予想せられ、この基金に不足を来たすおそれがあるので、さしあたり三十一年度一億円を一般会計より受け入れ、歳入、歳出ともに六億二千八百万円を予定いたしております。  以上が農林関係一般会計予算案及び特別会計予算案の概要でありますが、農林関係予算の中で比較的に重要な地位を占める補助金につきまして申し上げますと、公共事業関係で三百四十三億六千五百万円、公共事業以外の一般経費で百六十億二千三百万円、計五百三億八千八百万円の補助金を計上いたしておりますが、前年度に比し公共事業費において四十億七千百万円の減、公共事業費以外の一般経費において二億七千百万円の増となり、差引三十八億円の減少となっておりますが、これは、公共事業費における災害復旧事業費の大幅な減少炉主因をなしておるのであります。この結果、農林関係補助金に伴う地方公共団体の負担額は、公共事業費において約百十五億円、公共事業以外の一般経費において約五十五億円、計約百七十億円と前年に比し約三十七億円の減少を見ております。昭和三十一年度におきましては、地方財政逼迫の状況にかんがみ、特に地方補助職員給与費の補助額の是正、公共土木事業中山林漁港についての補助率の引き上げ等地方負担の軽減に努力をいたした次第であります。  以上が予算案の概要でございまして、何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  10. 松浦周太郎

    ○松浦主査 これにて本分科会所管に関する説明は全部終了いたしました。午後は一時から通商産業省の所管について質疑をすることとし、暫時休憩いたします。    午後零時二分休憩      ————◇—————    午後一時三十五分開議
  11. 松浦周太郎

    ○松浦主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  まず昭和三十一年度一般会計予算及び特別会計予算中、通商産業省所管について質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。北澤直吉君。
  12. 北澤直吉

    北澤分科員 私は主として貿易振興問題についてお尋ねしたいと思います。わが自由民主党におきましても、その根本政策の第一に貿易振興というものを掲げておるわけでありまして、政府におかれましても、今回の通商産業省予算を見ますと、貿易振興という面に非常に努力を払っておるようでありますが、昨昭和三十年度の日本の輸出貿易を見ますと、昨年度予算編成当時におきましては、大体三十年度は日本の輸出は十六億五千万ドルぐらい出ればよろしい、そういう計画であったようでありますが、いよいよ三十年度が過ぎて、三十年度輸出の実績を見ますと、二十億ドルを上回っておる、こういうふうに非常に予想外に日本の輸出の伸張を見たわけでございます。これはまことに国家のために喜ばしいことでございますが、日本の輸出がさように予想外に伸張しましたその理由につきましては、いろいろあると思います。もちろん数年来の日本のデフレ政策によって、日本の物価が下ったというふうなこともあると思いますが、私の見るところによりますと、主として外国におきまする好景気、特にアメリカあるいはヨーロッパ等におきまする景気のよいことが、日本の輸出の伸張の最も大きな原因であったように思いますが、大臣は大体そういうふうなお考えでございますか、伺いたいと思います。
  13. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説の通りでありまして、昨年の貿易がよかったのは、主としては海外の景気のよかったということだと思います。
  14. 北澤直吉

    北澤分科員 そうしますと問題は三十一年の貿易の見通しでございますが、しからば欧米におきまする好景気というものは、大体本年も昨年同様の水準で進んでいく、こういうお考えでございますか、その見通しを伺いたいと思います。
  15. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは前途の見通しとなるとなかなかむずかしいのであります。ことに最近英国あたりは公定歩合を引き上げて、政府もある程度緊縮政策をとり始めておるのでありますから、相当の警戒を要する点もありますが、しかし大体申すと、御承知のように、英国あたりはフル・エンプロイメントを超過しておるくらいのフル・エンプロイメントでありますから、うっかりするとインフレになるということで非常に警戒厳重であるようであります。そういうことでありますから、今のアメリカは申すまでもなく、英国、欧州方面においてもかなり警戒厳重であるだけに、景気の非常に激しいディクラインがあるということもない。従って昨年のように非常に活発に伸びるということはいかがかと思いますが、横ばい程度にはいくのではないか。従って日本の輸出といたしましても、日本側の努力いかんによっては、昨年ないし昨年以上の輸出を期待することができる、かように考えております。
  16. 北澤直吉

    北澤分科員 昨年の日本の輸出の伸びを見ておりますと、結局先ほど大臣のお話のように、外国の景気がよかったことも大きな原因でありますが、それを見ておりますと、結局欧米の景気がよいために、荷動きが非常に活発になって、まずそれが最初に現われたのが海上運賃、普通のタンカーとかそういうものの海上運賃が非常に上ってきたということに最近現われてきたわけであります。それによって非常な造船ブームというようなことになっておるわけでありますが、最近の状況を見ておりますと、このタンカー・レートが下り始めた、海上運賃が下り始めたというようなこともありまして、私どもはこれ炉一体今後どういうふうに動いていくかという点について、いろいろ考えておるのでありますが、ただいまの大臣のお話によりますと、大体横ばい程度で欧米の景気は続くだろう、こういうわけでございますが、どうもその点について私どもは必ずしも安心をしていることはできないのじゃないかと思うのであります。特に先ほど大臣もおっしゃいましたように、今度イギリスの方ではイングランド銀行の金利引き上げを中心としまして、一連の引き締め政策をとっている、こういうことによって、日英間の貿易の競争も従来よりも激しくなることは当然でありまして、あるいはまたそういうイギリスの財政政策からやむを得ない場合には、ある種の輸入制限というふうなことも考え得るのであります。またアメリカの方におきましても、この間の大統領の教書にありますように、信用取引を制限していく、そうして景気が過度に行き過ぎにならぬように、なしくずしにやっていこうというふうな政策をとっておるようでありますが、そういうふうな面を見ますと、必ずしも横ばいでいくかどうか私どもは一点の疑いがあるのでありますが、その点はどういうふうにお考えでありますか。
  17. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 その点は先ほども申し上げますように、前途の見通しはなかなかむずかしいのでありますから、一がいにいいとも悪いとも言いかねますが、ことにアメリカあたりは警戒をしておるのでありますが、警戒をしておりましてもそれは行き過ぎをおそれての警戒である。英国も大体そうであります。ただし英国のごときは、近いうちにまた日英間の貿易の話し合いも始まるのでありますが、これは日本の輸入が非常に問題だと思うのです。日本の輸出の方については英国は必ずしも制限しようということを強く主張しないかもしれませんが、日本にもっと買ってくれという要求はこの前よりもっと強くなるのではないか、それをどういうふうにして受けて立つか。まあ一番の今の日本貿易の問題は、英国に限りませんが、輸入の問題にあるのではないか。東南アジアにしても、中南米にしましてもやはり輸入をどうしてやるか、これを輸入をしてやればそれだけ輸出も伸びるわけであります。ただ輸入をする場合には、日本の農産物との競合あるいは日本の中小企業者の生産品との競合というようなこともありますから、日本が向うの希望する品物を十分に輸入してやれないというところに悩みがある、これはわれわれのこちら側の覚悟によるのでありまして、その辺を十分研究をして、しかるべくやっていけば、輸出を維持するということは決して不可能なことではない、かように考えて、これからせっかく努力しよう、こういうわけであります。
  18. 北澤直吉

    北澤分科員 海外経済状況に関連してもう一つつけ加えておきたいのは、東南アジアの問題ですが、東南アジアでも、特にビルマとかタイ、仏印、そういう方面はとにかく米を輸出して、それによって必要なものを買うというふうな、大体昔からの経済組織になっているのです。ところが最近、世界的な食糧の過剰傾向のために、そういう米がだんだん値下りしている。従ってその方の米を売って得る外貨の量が少くなってくるというふうなことで、その面からする購買力の減退というものがあるのであります。従って日本の輸出の対象としてのビルマなりあるいはタイ、そういう方面は米の値下りの結果、その購買力が減っておるというふうに見なければならぬのでありますが、そういうことでしょう。最近、今度はビルマあたりでは、日本の消費財、綿織物その他を外貨を払わないで賠償として取りたいとうふうなことまで言ってきているようでありますが、そういう東南アジア方面の購買力というものにつきましては、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、これも大体横ばいでいくという見方でありますかどうか伺いたいと思います。
  19. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これはお話の通り、向うに購買力をつけてやらなければ輸出ができない。米の問題は、お話の通りです。そこでやはり東南アジア、中南米というものに対しては、日本はある程度の賠償問題を片づけると同時に——賠償問題ももう少し利用ができると思います。賠償問題を片づけると同時に、やはりできるだけの投資をしていくという方向へ進めていかなければならぬ、こう考えております。
  20. 北澤直吉

    北澤分科員 それでは次の問題に移ります。ただいま大臣のお話のように、日本の輸出増進するためには、輸入をふやしていくということについては、日本側の方で積極的に考える必要がある、こういうお話であります。その点についてお伺いしたいのは、今の日本の政府の外貨予算の運用でありますが、昨年あたりは大へんな日本の輸出増進のために、日本の手持外貨もだいぶふえまして、焦げつき債権なんかも全都合せまして十三億ドルということになっておるようでありますが、こういうふうな状態でありますから、もう少し外貨予算の使用について弾力性を持たせて、もっとこういう方面から輸入をふやしていく、もっと外貨を使って原材料を輸入して——それだけ輸出品の原料がふえるわけであります。ので、そういう原料の面からの輸出の制限ということを緩和するわけでありますが、政府はこの外貨の使用についてどういうふうな考えを持っておられますか、お伺いしたいと思います。
  21. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 昨年以来、外貨の面からの考慮で輸入を制限するという考えは持っておりません。必要なものは必要なだけ輸入する、こういう建前で外貨予算を組んでおります。そのほかに商社の外貨の問題等につきましても、一挙に十分なことはできませんですが、できるだけ弾力性のあるように外貨を使うという方針で今後も進みたい、かように考えております。
  22. 北澤直吉

    北澤分科員 昨年は大へんな造船ブームで、日本の船がだいぶ外国へ出まして、その結果国内の鉄鋼の需要がだいぶふえまして、一時はスクラップなんかもだいぶ上ったようでありますが、その後政府の方におかれましても、鉄鉱石ですか、そういうものを輸入いたされました結果、大体直っておるようであります。日本の輸出品のコストを下げるという面から申しましても、そういうものの輸入をもっと弾力性を持たせて、そうして輸出品の原料の輸入というものにつきましては、これは思い切った考慮を加えなければならぬと思いますが、ただいまの大臣のお話で大体わかりました。  そこでもう一点伺いたいのは、この輸出増進について大きな問題は、決済の問題だと思うのであります。たとえばインドネシアなんかに対しましては、日本の輸出が非常にふえて、その代金が焦げつきになって一億ドル見当ある。それから最近アルゼンチンとの焦げつき債権の問題で、通商局長が向うへ行ったようでありますが、これも大体九千万から一億ドルの焦げつきになっておる。そういうことで、せっかく物を売っても金が取れないというところから、こういう国に対しましては輸出を抑制しようという意見が出ておるようでありますが、何と申しましても、こういうものにつきましては、もっと決済の面を考えて、こういう面からくる輸出の抑制というものはないようにしたらどうかと思うのであります。それにつきましては、いろいろ政府の方でも考えておると思うのでありますが、二国間だけで決済をしないで、多角的に決済をすることを政府の方でお考えのようであります。現に西独なんかでは、ブラジルとの決済につきましては、西独とブラジルとでなく、よその国を三カ国、四カ国加えてやっておるということでありますが、日本におきましても、やはりこういうインドネシアなり、あるいはアルゼンチンというような、どうしても日本の方が輸出超過になりそうな国については、そういう多角決済の方法をお考えになったらどうか、あるいはまたさらに進んで、今ヨーロッパでやっておりますような決済同盟——私は特に昨年中南米をずっと回ってきたのでありますが、南米なんかはたくさんの小さな国に分れておる。それを一国々々と日本とやっても決済ができないのでありまして、中南米はこの多角決済ですね。日本とアルゼンチン、そのほかブラジル、いろいろなものを加えて決済すればできるかもしれませんが、ああいう小さな国に一々日本が多角決済をやっていたのでは決済ができないと思います。そういう面で、多角決済の方式というものについて政府がどういうふうにお考えになっておりますか、これを伺いたいと思います。
  23. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お話の多角決済のことは日本としては最も希望するところでありまして、機会あるごとにそういう方式でいきたいということで研究もいたし、またそういう話し合いもしておるのでありますが、何しろその相手が集まりましても、お互いに決済をするような輸出入品が十分ないというところが相手であるものですから、日本と向う側の同じような立場にあるものを幾つ合せましても多角決済にならない、そこに悩みがある。あるいはまたアメリカを入れて決済金融の機関を作ろうという話もあったのですが、アメリカがほんとうに入ってくれればですけれども、そうでなければ十分の力が持てないというようなことで、それは希望しておりながら実現がなかなかむずかしいわけです。日本も今できるだけそういう気持で——日本にも力がないと言えばない、あると言えばあるのですから、その力があるだけ、その限りにおいて輸入をふやしていくと同時に投資をやるというような考えから、お話しのような多角決済の方向へ一つ持っていきたいという努力をしておるわけでありますが、今のところはなかなか実現できない、こういうわけです。
  24. 北澤直吉

    北澤分科員 それは今問題になっておりました例のアルゼンチンとの決済——この間通商局長が行かれて帰ってきたようでありますが、そのアルゼンチンに対する九千万ドルか一億ドルのいわゆる焦げつき債権ですか、それについて何か具体的に向うと話し合いができたのでありますか。
  25. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは一度にあれを回収するということはできません。だんだんなしくずしでやるというような意味合いで——これまたやはり輸入なのです。ですから、羊毛と小麦でありますが、それの輸入のとりきめをしで参りました。そういうふうに逐次、一つそういう品物で決済をする。実は局長をやりますときには、もしできればそれを元にして向うで何か事業を興すというようなことに使ってもいいということまで言ってやったのですが、その話はまだつきません。結局品物で漸次取り返す。同時に私としては、だからといってアルゼンチンに対する輸出を制限するというようなことをやりたくないのです。今後の決済は決済として別にやって、今までの焦げついた九千万ドルくらいはあとでだんだん取り返していく、こういうことでいきたいと思って、大体の話はつけて参りました。
  26. 北澤直吉

    北澤分科員 今大臣のお話しによりますと、今アルゼンチンから小麦を入れるということでありますが、問題は例の日本とカナダとの通商条約ですね。今ちょっと条文を忘れましたが、同じ値段ならば何とかカナダが売るというようなことですが、そのカナダとの関係はどうなったのですか。
  27. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは局長がアルゼンチンへ行きます前にカナダを通りまして、カナダ政府とも打ち合せをしていったのですが、幸いに値段は特にカナダとの協定を変更しなくても済む値段で入ることになりました。
  28. 北澤直吉

    北澤分科員 アルゼンチンとの焦げつき債権の問題につきまして、一応の意見がまとまったそうでありまして、非常にけっこうであります。そこで伺いたいのでありますが、先ほど申しましたように、決済の問題でございますが、従来日本は相当多数の国との間にいわゆる貿易協定を結んで、協定貿易、いわゆるバーター貿易でありますか、これをやって参ったわけでありますが、だんだん世界的な貿易自由化の趨勢に伴いまして、今政府の方でも協定貿易をだんだんとやめていこう、こういうふうな方針だというふうに伝えられておるのでありますが、この点いかがでありますか。
  29. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 協定貿易は今の段階ではやめるわけにはいかないと思います。ただオープン・アカウントをドルなりポンドなりの決済方式にいたしたい、かように考えてできるだけさような方針でやっております。
  30. 北澤直吉

    北澤分科員 それでは次に、日本の貿易輸出の対象としての地方の問題について伺いたいのでありますが、最近の趨勢として、東南アジア、中近東方面でありますが、こういう方面にソ連なりあるいは中共のいわゆる共産主義国の輸出が相当伸びておりまして、特に東南アジア方面に対する中共の輸出炉相当出ておるようであります。これはいろいろそういう共産国が政策的に考えて、あるいは物を安く売るとかいろいろ考えて、政治的目的を達成するためにこの商売を利用しているという点もあると思いますが、どういうことか知りませんが、とにかく東南アジア、中近東に対する共産国の輸出が非常にふえてきている、こういう状態は否定できないと思います。そうなりますと、この日本の輸出との間において、そこに一つの競合関係が出てくるわけでありますが、政府はこういう東南アジア、中近東に対する共産国の輸出増進、これに対しましてどういう政策をとっておりますか、また今後どういうふうに対処していこうとしますか、この点を伺っておきたい。
  31. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 中共などの商品が相当東南アジアへ出ているということは事実であります。ただ、今のところでは数量の上においてはそう大きなものでないようであります。けれども、将来についてはこれは問題があります。ところが、ソ連側等のやり方は、やはり輸入を相当やる、米とかなんとかいうものを輸入をして、そのかわりに輸出をするという方式をとっておるようであります。これが一番の問題でありまして、先ほどから申し上げますように、日本もぜひ東南アジア等から輸入をもっとふやす、それから投資をする、何かそういうふうな向うに購売力をつけてやる方式をまず一つ考えて、そうして輸出をするということをどうしても強力にやらなければならぬ、かように考えているわであります。ただそれの実現はなかなかいろいろの問題がありますから、今のところではそういう方針で着々実現されているとはちょっと申しかねますけれども、そういうつもりで一つやっていきたいと私は考えております。
  32. 北澤直吉

    北澤分科員 東南アジアに対する中共商品が伸びているわけでありますが、とにかくあすこには、御承知のように、華僑が一千万人おるわけです。この華僑、従来日本の商品もこういう連中が取り扱っておった。そうして東南アジアの華僑は大ざっぱに言って、大体三分の一が中共系、三分の一が台湾系、あとの三分の一が中立という状態でありますが、こういう華僑のルートを使って、そうして中共が貿易増進をはかる。現にそれはやっているわけでありますが、この商品を扱う華僑の力が、先ほど申しました一千万人が東南アジアに散ばっているということは、これはやはり将来中共が東南アジアに貿易増進をするということを考えれば、非常に大きな要素だと思います。従いましてこれは日本としましても、その点十分考えてやらないと、将来中共にしてやられるといってはおかしいのでありますが、そういうふうなことになりかねないと思うのでありまして、政府におかれてもその点十分御注意願いたいと思うのであります。  それから問題は中南米であります。私は昨年ごくかけ足で中南米を回ってきまして、いろいろ調べてきたのでありますが、米国の商務省あたりの連中に聞いてみますと、今後二十年間で最も貿易のふえる可能性のあるものは中南米だ、中南米は今各国とも盛んに工業化政策をやっておるのでありますが、そういう情勢から見て、今後の世界のマーケットで、最も輸出の対象として有望なのは中南米だというふうなことを、米国の商務省の人が言っておったわけであります。そういうふうなわけで、この中南米の市場というのは、今後世界で最も注目の的になると私は思うのであります。ここ二、三年来の中南米貿易を見てみますと、西ドイツが非常にふえている。それから日本が多少ふえている。米国はむしろ減っておるのであります。そういうわけで、米国の方でも警鐘を乱打して、こういうことでは結局中南米市場は、西独なりその他の国に食われてしまうということで、だいぶ注意を喚起しておるようでありますが、そういうように中南米諸国の工業化政策というものを考えまして、今後二十年間最も有望な市場は中南米であろうと考えても差しつかえないと思うのであります。そういうことを考えられて、先ほど申しました決済の面その他で問題はあろうかと思いますが、日本政府におかれましても、中南米に対する日本の輸出増進につきましては、この上とも御留意願いたいと思うのであります。  それから先ほど大臣のお話で、東南アジア方面に日本の輸出を伸ばすためには、どうしても向うの購買力をつけてやらなければいかぬ、そのためには日本からも大いに海外投資をやる、そしてそれによって購買力をつけてやらなければならぬ、こういうお話でありますが、今度の通産省の予算を見ておりますと、そういう民間の海外投資を助成する方法として、輸出信用保険の中に投資保険という新しい制度を入れられたようであります。これはまことに時宜を得た方策と思うのでありますが、問題は今度政府が提案されたような程度では、民間資本が安心し、喜んで危険な外国に一体行くかどうかという問題であると思うのであります。民間業者の意見などを聞いてみますと、やはり保険料が高いとか投資をして損をした場合に輸出保険からカバーする補填率が少いとか、いろいろ文句があるようであります。日本の民間資本が喜んで東南アジアや中近東、中南米に出るというためには、やはり投資をしてもあとで安心してその投資が回収できる。資本ほど憶病なものはないのでありまして、資本は安心していけなければ外国に出ないわけでありまして、そういう面から申しますと、これは国策的に考えて、政府がある程度これを保護しないと、民間資本は外国に出ないと思うのであります。今度の政府の考えておられます海外投資保険の程度では十分じゃない。これはもちろん予算関係もあると思うのでありますが、将来この点についてもっと政府の保護を強化され、日本の資本が安心をして外国に出得るようにする必要があると思うのであります。この点について伺いたいと思います。
  33. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説の通りでありまして、今度の投資保険は私どもとしても満足しておらないのです。これではまだだめだと思いますが、何しろまだ初めてのことでありまして、いろいろ問題もありますから、とにかくこれでスタートをして、さらに来年、再来年と、お話のように、だんだん改善していきたい、かように考えて、まず手始めとしてこの程度のものを出そうというわけであります。
  34. 北澤直吉

    北澤分科員 日本から海外に投資をする問題でありますが、これまでは主として民間出資より、むしろ政府の資金によって——たよえば日本とビルマとの経済協力とか、そういう方面に政府の資金によってやる投資が多かったようでありますが、私は今後はどうしても日本の民間資本をやるようにしないと、多額の資本が出ていけない、とても政府の資金だけでは不十分であると思うのであります。先ほど申されましたように、日本の貿易増進の見地から申しますならば、民間資本がどんどん出ていき得るように、政府の制度を変えなければならぬと思いますので、そういう面につきましては投資保護の保険とか、あるいはまた昔日本がシナに対してやったのでありますが、借款団——シナに対しては各国の資本が一緒になって対支借款団を作って、しかも日本は日本の銀行がシンジケートを作って、シナに金を貸す。万が一とれない場合には危険を分散して全部が負担するというわけでありますが、そういうシンジケートのような方法によって日本の国内における危険の分散をはかってやることも一つの方法ではないかと思うのであります。経済企画庁方面では何かそういうふうな意味で海外投資会社を作るとか、これも一つの方法と思うのであります。そういうふうな面で民間資本が喜んで出かけていくというふうな方法を、投資保険のほかにもいろいろお考え願いたいと思うのでありますが、そういう点について政府に何かお考えがありますならば、伺っておきたいと思います。
  35. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 高碕長官の方に何か投資会社の案があるということは、間接に耳にしております。これは相談を受けておりませんからはっきり存じませんが、もうお説の通りで、どうしても日本としてはこの際ないそでを振ってでも、東商アジアあるいは中南米等には資本的に急激に進出する必要がある、こう思っておりますから、何かそういう案がありましたら、ぜひともわれわれもそれに参加して進めたい、かように思っております。
  36. 北澤直吉

    北澤分科員 海外投資の問題はその辺にしまして、その次に移ります。日本の海外に対する輸出増進の方法につきましては、いろいろ問題があると思うのでありますが、一番困った問題は、どこでもそうでありますが、日本の商社がたくさん行って、不必要な競争をして値段を下げておる。日本の商社と契約するとまだ下るかもしれぬというので、日本の商社と契約をしない、従って日本の商品は、値段が高いから売れないというのではなくて、あとで安くなるかもしれぬというので契約をしないのでありまして、どうしても海外における商社の不必要な競争を何とかして避けていかなければならぬというふうに思うのであります。幸いにしまして、中共につきましては今度輸出入組合というものができまして、そういうふうな不要な競争をチェックするような方法ができたのでありますが、この中共に対する輸出入組合の模様を見る、というとおかしいのでありますが、これをうまく育て上げて、この方式をあるいはインドネシアとかそういう他の方面にも及ぼして、そうして日本の商社の不要な競争を避けるようにぜひお願いしたいと思うのでありますが、政府は中共以外の地域について、そういう方法を考えておられますかどうか。
  37. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは御承知の、この前御協賛を受けました輸出入組合法の改正案によってやるわけでありまして、むろん中共以外の方面にもこれをぜひやって参りたいというふうに考えております。すでにインドネシアは地域を指定しておるそうであります。
  38. 北澤直吉

    北澤分科員 いろいろ伺いたいこともあるのでありますが、ほかにも質疑を御希望の方があるようでありますので、私はもう一点だけ伺って打ち切りますが、先ほど申しましたように、輸出増進貿易振興が非常に大事だということで、今度政府では行政機構改革の一環として、貿易に関する行政機構を変えよう、あるときは貿易省を作ろうというふうな意見も出て、最近ではそれが貿易省を作らない、通産省と外務省通商に関する機構を強化する、あるいは貿易に関する閣僚審議会を作る、こういうふうなことでやっていこうというふうに伝えられておるのでありますが、通産大臣としまして、日本の貿易行政機構を改革するという点については、どういうお考えを持っておられますか、この機会にお聞きしておきたいと思います。
  39. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 貿易省案はありましたが、これは生産部面との関係が切り離れて、かえっておもしろくないじやないかという説が強くて、私もそうであろうと思います。今通産省に通商局があるということは、たとえば輸入につきましても、各原局との間の交渉を省内においてやって、それで結論を下している、これが省が分れますと、その間の争いが少し強くなります。ですから今の通産省の通商局を強化する、同時に外務省の対外経済活動を強化するということは、穏当の方法でありましょう。もっと名案があれば、その名案に従っていけばいい。今のところではそれが穏当じゃないか。今日本の貿易については、非常に根本問題に触れておることが多いのであります。農業、中小企業の問題をどうするかということに触れておりますから、そういう点について、有力閣僚の間に一つの懇談会といいますか、委員会ができて、そういう貿易の根本問題をそこで検討し、方針を決定するということも、これもけっこうだと思いますから、まだ正式にわれわれ聞いておりませんが、今新聞に現われておるような案に大体賛成していいのじゃないか、かように考えております。
  40. 北澤直吉

    北澤分科員 大臣のお話のように、貿易というものは非常に各方面にわたって、通産省、外務省ばかりでなく、海運の問題は運輸省、それから金融の問題は大蔵省、海上保険の問題、あるいは港湾の設備とか、いろいろな面に関係して、それによって日本の品物のコストを下げて、貿易競争に勝たなければならぬのでありますが、そうしますと、これは各省にわたる問題であると思うのであります。その点については、今大臣が申されましたような閣僚審議会でございますか、そういうふうなところで関係方面全部を合せて、そうして総合的な貿易振興施策をお立てになるように希望を申し上げまして、質問を終ります。
  41. 松浦周太郎

    ○松浦主査 川俣清音君。
  42. 川俣清音

    川俣分科員 私、この際通産大臣に二点伺いたいと思います。主として電力問題についてお尋ねしたいのですが、その前に一点お尋ねいたしておきたいのです。二十九年、三十年の農村の購買力、特に農民の購買力が旺盛であるために、これを押えなければならないという議論もあったようでありますが、通産行政から見まして、耕作農民の購買力は旺盛過ぎるというふうにお考えになっておりますか、この点を一つ伺っておきたい。
  43. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私どもの考えでは、特に農村の購買力が旺盛過ぎるとは考えでおりません。これはいろいろ議論のあることでありますが、私は国内の消費というものはもっと尊重しなければならぬ、かように考えております。
  44. 川俣清音

    川俣分科員 おそらくそういう答弁にならざるを得ないであろうと思うのです。御承知のように、農村の家計費と生産資材の消費状態を見ますと、戦前と戦後と比べまして、また終戦直後と比べまして、家計費がだんだん切り詰められて、生産資材の消費が非常にふえてきております。これが今日の日本の産業基盤を、財政投融資によらないで今日の隆盛を来たした大きな原因であろう、私はこう思いますので、多分そういう答弁があると思うのでありますが、続いてそれではお尋ねしたいのですが、国内の機械工業にいたしましても、戦後盛んになって参りました化学工業にいたしましても、国内に大きな消費地盤というものを持たなければ、輸出というものはうまく振興していかないと思うのです。常に輸出については、国際市場から見まして危険状態を彷徨するわけでありますから、一定の国内の消費水準をとっておりませんと、輸出振興にならないこともまたお認めになると思いますが、いかがですか。
  45. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 御説の通り、全然同感でございます。
  46. 川俣清音

    川俣分科員 そこで続いてお尋ねしたいのですが、特に戦後におきまして重工業の進展もさることながら、無機の化学工業にいたしましても、有機合成事業にいたしましても、日本に残された発展の余地のある産業だと考えますが、これにはどれだけの努力をお払いになるおつもりでございますか。
  47. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは相当力を注いで参りたいと思いまして、本年度のごときも、たとえば開銀の資金というようなものも、そういう方面へ相当融資をするように取り計らっております。
  48. 川俣清音

    川俣分科員 そういたして参りますと、機械工業と違いまして、無機化学にいたしましても、あるいは有機合成にいたしましても、化学工業全体としては相当工業用水が必要になってくるのであります。ところが日本は相当の降雨量を持っていながら、上水道にいたしましても、農業用水にいたしましても、工業用水にいたしましても、不足を伝えられ、また一面においては洪水等の災害を受けている。このことをお認めになるならば、いかにして工業用水を確保するかということに、これは基本ですから、相当の重点を置かれなければならないと思う。どんなふうに考えておられますか。
  49. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お話のように、今日本には、水というものはただだ、こういうふうに非常に常識的な考えがありまして、ことに工業用水は閑却されておりました。しかし通産省の地質調査所では、かねて工業用水の問題を相当科学的に研究しておりまして、その結果も出ているわけです。それで今回の国会においては、工業用水の法律案を出して御審議を受けたいと思って、ただいま準備をしているわけです。最初から十分完全なものにはならぬかもしれませんが、とにかく工業用水問題を取り上げて法制化したい、かように考えております。
  50. 川俣清音

    川俣分科員 工業用水について、ようやく通産省で認識を新たにして法案を出されるということでございますが、工業用水確保の基本をどこに置いておられますか。どんなふうな方向で確保しようとお努めになっておられるのであるか、その計画なり方針なりがありましたらお示しを願いたい。
  51. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 技術的のことは私は存じませんが、第一は地下水の利用についての規制をしていきたい。むやみに地下水を使い過ぎますと、水が悪くなりますし、地盤が沈下するというふうな問題がありますから、地下水の問題を取り上げる。それから工業用水の水道に対してしかるべき補助等を行なってこれの建設を促進したい、かように考えております。
  52. 川俣清音

    川俣分科員 日本に今地下資源として残されたものはたくさんありまして、未開発のものもございます。同時に日本で持っております狭い領土に、かなり振幅の激しい山腹を持っており、しかも降雨量が非常に大きいというので、残された資源は水資源であるともいわれている。ですから、これを確保して工業用水にすることは、単に工業用水にするばかりでなく、上水道にいたしましても、農業用水にいたしましても、これが必要なことは何人も認めている。一体どういう方法で工業用水を確保するか、その予算などをお持ちでございましたらお示し願いたい。工業用水について助成をするというのですが、これは決して助成を拒むものでない。しかしどこから工業用水を取るのかという計画がなければ、補助、助成をするにいたしましても、どこに工業用水の水源地を求めるか。おそらく今では地下水は非常に危険な状態になっている。ことに市街地等につきましては、地下水を用いることによって土地の陥落等が行われて参りまして、これは限度に達している。従って天然水だ、こう思うのです。しかも降雨量が非常に多いからどこかでつかまえなければならぬ。どこでつかまえようとしておられますか、この点をお尋ねしたい。
  53. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 これは電源開発や、あるいは農業用水等の多目的ダムと関連するわけでありますが、大ざっぱに申せば、さようなダムの建設によって降雨をとらえて、洪水を防ぐと同時に、各種の水の必要に応じてこれを利用する、こういうように考えております。
  54. 川俣清音

    川俣分科員 傾斜度の高いところにダムを築きまして、貯水をして、工業用水なり電源開発用水なり農業用水にする、こういうお答えのようであります。そこでお尋ねいたしたいですが、日本の水力発電が日本の地形から見て非常に有望であるにかかわらず、一体どういうわけで電力料金は非常に高いんでしょうか。コスト高といわれている点はどこにあるのか。普通は建設の費用だともいわれておりますが、しかしこの建設の費用が多額にかかるけれども、これは償却をいたしますとすればそう高いものじゃない。大臣はコスト高の原因はどこにあるとにらんでおられるのですか。
  55. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 一言に言えばむろん建設費が高くなったということです。戦前のノミナルな貨幣からいえば非常に高いものになったんですから……。戦前においては一キロ千円なんていう発電設備はとんでもない高いもので、せいぜい数百円のものであったものが、今では十万円かそれ以上になっているんですから、従ってその金利が——水力電気というものはほとんど金利であるといっていいくらいでありまして、同じ一割といいましても、五百円に対する一割と十万円に対する一割とではだいぶ違う、そういうわけでコスト高になっている。これは逐次そうなるわけじゃないんです。戦前の建設費と比較して現在高くなっている、そこで電力がどんどん高くなる。というのは、水増しと申しますか、今までは戦前の設備をそのまま使っておりますから、割合に安い建設費の発電所でやっておったのが、これから建設すれば建設するに従って、戦後の高いコストの設備が加わっていきますから、そこである程度電気がどんどん高くなっているというような形をとっておるにすぎないのであります。戦前のやつをもし今の価格で再評価して電力料金をはじき出せば、とっくに高くなっているはずであります。それが十分に再評価されておりませんから、従って安いなりにある程度いっておるわけであります。
  56. 川俣清音

    川俣分科員 それ以外に検討されたことはございませんかどうか。例をあげてもいいんですが、それは省きますけれども、戦前のコストと比べて戦後のコストが高上りだといわれておりますが、戦前のコストも相当高上りになっておる個所が十数カ所あると思うのです。これは御検討になったことがございますかどうか、まずこの点をお伺いいたしたい。戦後作られたダムでありましても、わずか八年で貯水量皆無のところがあります。皆無であれば償還なんかできませんよ。従って膨大な経費をかけて、五年か六年で出力がなくなるような発電所を作りましても、ダムを作りましても、経済効果が上らないじゃないですか。こういう点について御検討になったことがございましたかどうか。
  57. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 せっかくダムを作ったが、四、五年で貯水ができなくなったというものは聞いておりません。
  58. 川俣清音

    川俣分科員 聞いておらないとすると、いかにもこれは危険なのであります。一つはこういう洪水のときに土砂ばけを全部あけておいて、堆積した土砂を流して貯水量を増したということがあります。これが洪水の大きな原因になっておるところが三カ所くらいあります。今問題になっておりますが、九州にもあります。そればかりではありません。もっと例を引いて申し上げましょう。これは最近の調査で、通産省にもなければならぬはずでありますが、日発関係の堆積度の調査があります。これは当時日発、極秘にしておった。なぜかというと、土砂の堆積量がときによって変化しておる。水害があるその場合の翌年は貯水量が増したが、堆積土砂が減ってきておる。たとえばこれは通産省にも資料をお持ちだと思いますが、二十四年の、調べですが、北陸の黒部川の第三、これは二十四年で、九年より経過しておりませんけれども、土砂の堆積量は七五%それから庄川の上流の利賀川、これは今まででは約十一年ですが、二十四年時代には五年経過して五二%の土砂堆積、あるいはもっとひどいのになりますと、これは神通川ですが、二十四年で七年経過になっておりますが、五七%の土砂の堆積量です。ほとんど日本のダムは七、八年から十年で全く効率が低下しております。従って発電所ごとの電力の単価をお調べになってごらんなさい。この土砂の堆積によるダム効率の低下によるところの損害というものは非常に大きい。計画されたその出力の損害というものが莫大になっておる。これをお調べにならないで、戦前より戦後のコストが高いのだというようなことを言っておったのでは、これは日本の産業基盤であるところの電力料金に対して、無関心であるというそしりを受けるのではないかと思いますが、大臣はいかがですか。
  59. 川上為治

    川上政府委員 今お話のありましたケースにつきましては、これは私どもの方といたしましても調べておりますが、やはり先生のおっしゃいますようなのはあるわけでございまして、ただこれは非常に古い施設がそういうような状況になっておるわけでございます。御指摘の黒部の第三発電所にしましても、土砂が相当たまっておるのでございまして、そのために調整能力は相当減殺されておりますが、電力の出力につきましては、あまり変ってないというような状況になっておりまして、これは単に黒部だけではなく、ほかのものにつきましても同様な例があるわけです。今先生からお話がありましたように、料金についてそういう問題も十分検討して織り込んでいくべきだという点につきましては、私どもの方としましても、今後料金を改訂する場合におきましては十分検討していきたいと考えております。
  60. 川俣清音

    川俣分科員 大臣、今局長の答弁の通りなのです。黒部の第三のごときは、それほどに出力に影響を与えていないということであるが、二十六年の水害の前に、二十五年で八七%くらいの土砂堆積量までいっておった。ところが二十六年の水害の翌年からダムの効率が上ってきたのです。なぜかというと、これは土砂を下流に流出したからなのです。ダムの効率を上げるために洪水を起したのです。これはひどい。ダムの効率を上げるために下に洪水を起した、その損害を国が負わなければならぬ。もし今黒部がそれほど効率が落ちていないとすれば、おそらくその後の洪水の場合にまた土砂ばきをあけて、中にたまった土砂を流したのだと思うのです。もしもそうだとするとこれは重大なことです。そういうことをやらしておいて、それで——これはもうあなた方が十分御承知だと思うけれども、電力会社としてのコストもあるでしょうが、電力会社はみんな各発電所ごとのコストを持っているのですよ。従ってそれが平均されれば出てくるかもしれません。しかしながらあれだけの大きな差があるものなんです。なぜそんな大きな差が出てくるのか、あるいは同じ日発時代に作られた発電所でありましても、なぜあれだけのコストの差が出てくるのですか。同じ年に同じような原価で作ったものが、なぜそれだけのコストの差が出てくるのですか。大臣、どうですか。セメントの輸送賃や何かがあって幾らか条件が違うかもしれませんが、同じ年度に作られたダムの出力にそれだけの差があって、そんな大きなコストの開きが出てくるというのはどこから出たのですか。大臣の説明では説明がつかないのじゃないですか。
  61. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 同じ年に同じ条件のもとに作られた二つのダムがあって、一方はコストが非常に安い、片方は高いということであれば、その高い方がおそらく設計を誤まるか、何かの故障によってそういうことになったのだと思います。しかもさっき私の言った戦前に作られた設備は大体において安く、戦後に作られたものは物価の関係で非常に高騰したということは一般論でありまして、あなたのお話のように、そういう二つ一つの問題についてはこれはまた別だと思います。今のような例があれば、それは確かにお話の通りだと思います。
  62. 川俣清音

    川俣分科員 これは全部例があればでなくて、全部各会社が発電所ごとにコストを調べておるのです。これは調査すれば明瞭なんです。あまりに開きが大き過ぎる。今度関西電力が愛知用水で計画しておる三浦ダム、あれは日本で一番安定した湖なんです。そのそばに、濁川という川から出てくるところに四カ所発電所を作ってある。作ってあるが、堆積が一ぱいになっている。貯水量がないものですから、四カ所のうち三カ所捨ててあります。従って設計の誤まりだと言われるならば、これも設計の誤りの一つでしょう。上流の治山の状態を調べないで、降雨量を十分調査しないで、堆積量などの予想もしないで計画するという失敗からくる損害も、一般国民が負わなければならないということは許さるべきじゃないと思う。会社の設計の誤まり、ずさん、それからくるコスト高を消費者が負わなければならないというふうには大臣はお考えになるまいと思いますが、いかがですか。
  63. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私は技術的のことは存じませんが、実は大ざっぱに言って、日本のダムというものはこんなに早く埋まるものではないというふうにかつては考えられておった。今はいろいろ治水治山とか、山の関係があるでしょう。実際に近年においては、思いのほかに土砂が早く出てダムが埋まる傾向があるということがいわれておりますから、これはもっと根本的に山を治めるということから考え直さなくちゃいけないものだろうと考えております。
  64. 川俣清音

    川俣分科員 そういたしますと、日本の電源開発は、開発に力を入れることよりも、治山工事に相当力を入れなければならないということになると思うのです。これはまた一面、先ほどの商工行政のうちでかなり重要な化学工業の基盤をなすところの工業用水についても同様だということになってくる。ところが災害がないと、直轄治山費などが特に年々減ってくる。一度、吉田内閣の末期でありましたが、治山治水十カ年計画というようなものを立てまして、十カ年間に根本的な治山工事を完了させようということでやっておりましたが、これも一年、二年でだんだん予算が減ってくる、三年目になってくるとまた減ってくるというようなことでは、あなたの所管電源開発にいたしましても心細い次第ではないかと思うのですが、この点どうですか。
  65. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それは御説の通りです。だから、治山ということは非常に力を入れてやらなければならぬということは、私も同感であります。
  66. 川俣清音

    川俣分科員 通産大臣としてではなくて、国務大臣として当然予算全体について概要をお知りだと思うのです。ところが治山費は年々減っている。ことしなどもだいぶ減ってきている。そうすると、大臣の趣旨とは違うのではないかと思うのですが、この点どうですか。
  67. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 治山について、そういうふうに十分なことができないのは非常に遺憾であります。これは私もその通りはなはだ遺憾なことだと思います。もっと力を入れなければいけないと思います。
  68. 川俣清音

    川俣分科員 それではここに新しく工業用水に対しても助成をしようという商工行政の上からいえば、取り残された問題を新たに取り上げなければならない、私はこれは大いにけっこうだと思います。それと同時に、その根源であるところの水源培養林等に対しての造林計画なり、あるいは応急措置としての治山処置なりを急速に進めていかなければ、いたずらに市街地の工業地域において用水を確保しようといたしましても、十分な確保ができないで、結局、化学工業の基本でありまする工業用水もまた得られないということがらして、またコスト高になるおそれが出てくると思うのです。工業用水が十分得られないといたしまするならば、操短をしなければならない。操短をしなければならないという事態が起きて参りますならば、せっかく発展しようといたしておりまする化学工業にまた大きな影響を与えると思いますので、工業用水のことを取り上げられると同時に、その工業用水の基本でありまする治山、造林について、一そうの注意を喚起する用意がありますかどうか、この点をもう一度お尋ねしておきます。
  69. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それはもう大いに促進したいと思います。
  70. 松浦周太郎

    ○松浦主査 今澄勇君。
  71. 今澄勇

    今澄分科員 私、予算の細目をいろいろ見たのですが、特にその中の財政投融資ですか、余剰農産物円資金から日本生産性本部へ十億円を年利四分で貸し付けて、それからまたさらに年利六分五厘で商工中金に転貸しするような操作になっております。そこで私は大臣にお伺いしたいのだが、直接商工中金に来ないで、生産性本部へ一ぺん行って、そこで二千五百万円かせがして、それから商工中金の方へ回しているというこのケースは、中小金融の側から見ると、非常にコストを上げて、しかも間で生産性本部でさや取りをやらせておるようなことになっておりますが、通産省としては、余剰農産物円資金とこれらの中小企業金融とについて、どういうふうなお考えを持っておられ、将来どういうふうに運転されるつもりであるか。しかもこういうふうな矛盾せる運営をこの財政投融資の中に載せておられるのは、何かよほどの理由でもあるのか。一つお聞かせ願いたいと思います。
  72. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 別段深い意味もありませんが、少し持って回したのでありまして、これは生産性本部の資金がぜひほしいのであります。これは一度金融機関に回しまして、どうせこの金融機関の方は市中金利その他と見合っての金利でありますから、適当の金利でこれを運用してもらって、そうしてその利ざやを生産性本部で使いたいというだけの考えでやったわけであります。
  73. 今澄勇

    今澄分科員 私、分科会ですから、そう追及するような気はないのですが、ただ思うのに、商工中金に直接貸せば非常に安い金利で動く。しかも商工中金のみならず、その他の中小企業金融公庫も金利が高いので困っておるのだから、私はこういうふうなものこそ直接貸し付けて、それで中小企業金融の金利の低下のプールにすれば非常にいいと思っているのに、通産大臣の方でそんなさやをかせがせるところに渡したというのには、何か条約上のいろいろなあれでもあるか、あるいはアメリカの意思でもあるか、いろいろなくちゃならぬわけでして、通産大臣としてそう簡単に喜んでもらっては困ると思うのだが、ちょっと御答弁願いたいと思うのです。
  74. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 事務当局から答弁いたします。
  75. 徳永久次

    ○徳永政府委員 これは先ほど大臣からお答えいたしましたように、格別他意があったわけではございませんで、一つの事情は生産性本部の活動というものを政府として援助したいと考えておるわけであります。これを援助します場合に、事務的に考えまして二つ問題があるわけであります。一つゆ事業費的なもの、これは年々の活動量に応じて、計画を見ながら援助していくわけであります。それはいわば一般会計からの補助対象というふうに考えていく方が適当であろう。ところがああいう機関を設けます場合に、一般的な基本経費と申しますか、ある程度の人間を使う人件費それから事務所の借り入れ費用とか、そういうものを考えてみました場合に、これはいわば一般事務費といいますか、基本経費といいますか、こういうものの基礎をある程度確立しておかないと、あの種の団体は実際活動がなかなかうまくいかないというような問題があるわけであります。それでこの基本経費を、もちろんある程度民間からの寄付も仰ぎますけれども、ある程度財政面において安定させていきたいということを考えました。そのために考えつきました案が、余剰農産物の金、これは非常に長期の金でございますので、長期にここに預からせてもらって、ここから何かで運用するということになれば利息も安うございますから、どこかに回したとしてもある程度の利ざやがかせげるということになって、それが基金的役割を果せるということになるということを考えたのが一つでございます。それからいま一つは、商工中金につきましても、商工中金の利子引き下げ等のために、何らか安い金を考えなければならぬという必要もあるわけであります。ところが商工中金につきましては、その性格なり、法律上の扱いといたしまして、従来の建前では、商工中金債を資金運用部で通常の金利で引き受ける手がないという仕組みに実はなっております。資金運用部から直接六分五厘の金を貸す道もないというような扱いになっていたわけであります。そこで今年の予算の際にいろいろ工夫いたしまして、これはこの予算説明の中にもございますが、中小企業金融公庫に十億を資金運用部が直接金を貸し、その金をそのまま横すべりして商工中金に回すということにいたしております。この場合六分五厘でございます。通常金融機関に資金として与えます金は、今の財政金融一般の建前、制度の中では六分五厘の金が政府からの面接払い込み以外の金としては一番安い金ということになっておりますので、商工中金としても六分五厘で入れば資金運用部に直接引き受けてもらったのと同じ効果がありますので、それで文句を言わないという事情にもなっておりますし、それから余剰農産物の特別会計の性格からいたしまして、商工中金に直接回すということは無理があるということもございますので、そこをうまくつなぎ合せまして一つの金を二重に働かせた。まあ皆さん方から見ますと、ひねたような持ち回ったようにごらんになるかもしれませんが、私どもとしては、ある意味では一挙両得といいますか、うまいことを考えたというようにおほめいただいてもよいのじゃないかと思います。
  76. 今澄勇

    今澄分科員 私はついでにあなたにお聞きしたいのですが、余剰農産物協定の第五条によると、日本政府は合意された目的の範囲内で円資金を使用できることになっておる。そこで今言った生産性本部への十億円の貸付は、アメリカ側から十億円を貸し付けてやれというような意向があったのか。それとも、こういう金を使うにはこういうふうに運用しなければアメリカの了解がどうしてもとれなかったというのか。余剰農産物協定の第五条と、今の生産性本部への十億の金との関係について、あなたはその衝に当っておられるので局長さんから御説明を願いたいと思います。
  77. 徳永久次

    ○徳永政府委員 実はこの構想につきましては、率直に申し上げますと、去年ごろから生産性本部について何か恒久対策はないかということを考えておったわけであります。昨年度のいろいろな余剰農産物が一億五千万円——そのうち四千万円は石炭の調査団の費用でありますが、一億一千万円を昨年の余剰農産物の中から借りて使うという建前になっておったわけであります。どうもあの事業の性質から見まして、借りて使いっぱなしでは返す先のことを考えると不安でしようがないというので、たとえばそういう金でビルでも作るというようなことは考えられないものかというように、実はいろいろのことを考えておったわけであります。そういう恒久対策、ある程度の基本的な基金の安定対策として、これは私どもの企業局の方でいろいろ相談いたしまして思いついた知恵であります。  なお国会との関連で申しますれば、昨年の国会におきましても商工中金の安い金を世話するように何らかの寄付をしろという附帯決議も出ておりまして、そういうものから思いついた案であります。アメリカ側からのサゼスチョンというものは何らございません。私どもの方から思いついて、まだ正式にはなっておりませんけれども、非公式にこういうことをわれわれ考えておるのだがというようなことで持ち込みまして、こういうことになったことについては、アメリカ側としても余剰農産物の金の使い方としては、日本生産性本部の仕事も大事なことであるし、よいアイデアであろうというようなことは言ってくれておりますので、ある程度の内意は得たというような事情はありますが、最初の着眼そのものは私の方からで、いろいろな基本対策として何とか手はないものだろうかということで思いついた案であります。
  78. 今澄勇

    今澄分科員 私はそこで通産大臣に一つお聞きをするわけですが、今説明されたような金の使い方は、通産省の所管大臣としてはいかぬと思うのです。少くとも余剰農産物の円資金は、折衝において許されるなら、直接中小金融機関に流して——何も六分五厘より安くては困るというようなわけはないので、今中小企業が一番困っておるのは、大企業の金融に比べろとすべてコストが高いわけなんだから、それらのコストを引き下げるために、これは直接中小企業金融機関に流して、そうしてその中小企業金融機関のコストを下げていくということが中小企業金融の一番いい道でありまして、生産性本部の仕事はいろいろ見方がありますが、何もこういうものの利ざやで、その事務費の恒久財源に充てるなんという必要は私は全然ないと思うのです。それはそれで別個に考えるべきであって、私はくどく申しませんが、この問題などは問題が問題ですから、これは相当——もし通産省の考え方いかんにおいては、予算委員会の本委員会で問題になり得る重大なことだと思います。通産大臣の方針と今後の中小企業金融についての考え方を聞かしておいていただきたい。
  79. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説まことにごもつともでありますが、今のところは、さっき局長から申しましたように、政府資金としては六分五厘という金が一番安い金だという、一つのワクでもないのですけれども、そういうふうなことになっておりますから、とにかく六分五厘の金が商工中金にもう少しふんだんに回るようにいろいろ努力したのでありますが、残念ながら預金部から直接それを出すというわけにいかないというようないきさつがありますので、ことしとしてはやむを得ずこういう少し苦しい算段でありますが、苦しい算段をやったわけであります。しかし今後中小企業の金融をもっとゆるめ、その金利を低くすることについてはむろん極力努力いたしたいと思っております。
  80. 今澄勇

    今澄分科員 今私の聞いた余剰農産物円資金を、中小企業の方へ回すような折衝をする通産省に用意と考えがあるかどうか。その際はそういう転貸しで間を通して貸すというのではなしに、直接中小企業金融機関へ円資金を貸せるような接衝が成功する見通しがあるかどうか。もし見通しがあるなら当然これは来年の予算からはそうすべきだが、これらの問題について通産大臣の所見を伺いたい。
  81. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 それはもし今後さらに続けて余剰農産物の資金を利用するような場合がありましたら、そういう交渉をする余地はむろんある。それはそのときの事情によりますが、研究をして交渉してみたいと思います。
  82. 今澄勇

    今澄分科員 そこで今生産性本部を通して商工中金にいくようになっているが、これはもうこれからでは折衝の余地はないのですから、今の余剰農産物のことについても、通産省側が中小企業金融の上にもう少し努力を上げるということになれば、大財閥、大企業家を中心にした生産性本部でさやをとらして、それで何がしか上げてからでないと商工中金に持ってこないというようなやり方については、中小企業全般からすると鋭い批判があるのです。全体的なものの考えの集中的表現として、これは非常にわれわれは重視しておるのですが、もう一ぺん一つお答え願いたいと思う。
  83. 徳永久次

    ○徳永政府委員 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、次の年にまた余剰農産物でもあります際に考えるということは、大胆が今努力もし研究もしてみようとおっしゃったのですが、私ども事務当局といたしましては、現在の協定の目的から見まして、すぐに中小企業に回せることになるかどうかということについては相当疑問がある。ある種の事業をしぼりますとか、中小企業公庫を通したとしても、産業関係目的をしぼるとかいうようなことがあるいは起るというような問題もあろうかと思います。そういうようなことからことしにつきまして考えました趣旨は、余剰農産物から直接回すことには若干の問題があるわけであります。しかし生産性本部がこれを基金的に運用するとしても、それでビルを建てるとか、そしてある程度の収益を得るというようなことよりは、生産性本部が、商工中金も金が足りなくて困っている、それのお手伝いにもなるということの方がよりベターではなかろうかということも考えまして、かようなことをしてみたのであります。もちろん最初にお断わり申しましたように、基金的なものを何とかしたいということは今年考えたわけでありまして、これは来年再来年と続くことじゃありません。今年十億のものをしていただいておれば、年々利ざやに相当します一千五百万円のものが基金的なものは確保できるということになるわけであります。生産性本部の基金対策としては一応これで済むということになります。かりに明年度ほぼ同額の余剰農産物の資金的な余裕があるといたしました際に、それを中小企業の振興のためにというようなことを考えるということしは、私ども事務当局としても、大臣の御趣旨に沿いまして極力その点を生かすごとき努力してみたいと思いますが、今すぐ無条件には相当疑問があるということは御承知願いたいと思うのであります。  もう一つお答え申し上げておきたいことは、先ほどのお話に、生産性向上の運動が大企業対策というようなお話があったわけであります。これは私どもとしては非常に意外でございまして、私ども中小企業にも生産性向上運動が非常に寄与するごとく努力もいたしております。今中小企業関係のチーームも編成していろいろなことをやっておるつもりで言いまして、その辺なお足らないところがあれば御鞭撻いただいてけっこうでありますが、誤解のないようにお願い申し上げたいのであります。
  84. 今澄勇

    今澄分科員 それで最後に聞きたいのは、これは局長さんに聞きたいのだが、商工中金に直接貸す、あるいは金融機関に直接貸すのは、条約の性質上工合が悪いというあなたのお言葉は、今年度の接衝で、やはり生産性本部を経由してでないと、中小企業金融機関に貸すことについてのアメリカ側に難色があった、そういう意味合いでしようか。
  85. 徳永久次

    ○徳永政府委員 協定の文言に照らし、ある種の制限をつけない限り、運用上の目的をしぼらない限り困難でなかろうかという意味でございます。
  86. 今澄勇

    今澄分科員 この協定の五条に、日本政府は合意された目的の範囲内で円資金を使用できることになっておるという点と、今のあなたの答弁を食い合せると 生産性本部を仲介にして又貸しで商工中金にいくケースでないと、円資金についてのアメリカ側の合意を得ることができないというふうに解釈する以外に道がないので、この点をもう少し明確に答弁をしてもらいたいのであります。
  87. 徳永久次

    ○徳永政府委員 この合意されたるという字句からではございませんので、余剰農産物の使途につきまして特別会計も設けられておりますが、その特別会計の中の目的、私、文言を正確に記憶しておりませんけれども、合意があれば何でもよろしいということでなしに、そのもとになりまする重要産業の何とかいう——この辺協定文でもありますればあれでございますが、そのもとの制約があると困るのであります。これはなお協定の文書を取り寄せましてあれいたしたいと思います。   〔主査退席、北沢主査代理着席〕
  88. 今澄勇

    今澄分科員 私分科会は、各省予算なりあるいは財政投融資なりの不明確な点を今年からは明らかにしていこう、こういうことでお尋ねしておるのだが、今の余剰農産物の運転の中で、この予算書を見ると、電源開発、農地開発事業の貸付金、開拓者資金の融通特別会計の貸付金、森林漁港等振興事業の貸付金、それに商工関係では、日本生産性本部の貸付金が一項目出ておけるだなんです。私は少くともこういう外との割り振りから見ると、通産省はもう少し何か強力な主張をして、今言った直接貸のできるような方途をとるべきだと思うのです。あなたの今までの説明からくると、どうも中小企業に直接貸せない、その理由は、直接貸したのではアメリカ側が同意を与えないから、結局こういう操作をした方がスムーズであるということでそういう操作をしたとしかとれないのです。だから、局長さんでけっこうですから、いや実は通産省としてはこういうようにやりたかったのだけれども、米国側の意向で、生産性本部を経由して商工中金に貸す以外にはまとまる望みがなかったからこうしたという話ならわかるのです。けれども、通産省側が立てた計画で、何も生産性本部を経由するような計画を立てなくても、もっとほかにいけるのではないか。その点について、率直な話でけっこうです。追及するわけではないのですから、どういういきさつになっているかということを答えていただきたい。
  89. 徳永久次

    ○徳永政府委員 御承知のように、予剰農産物の金は昨年も前例があるわけでございますから、今年の際についての通産省の立場というものをお考えいただきますと、昨年度の場合はその大部分というものを電源開発に使いまして、全体で二百十四億のうち約三十億が愛知用水等の農地開発であったわけです。それから残りのうちわずか一億百五千万円が日本生産性本部で、その他の百八十四、五億というものが電源開発の安い金を確保するためのものであったわけです。今年の協定ができます際に、日本側の全体の買付量との関係から総金額がまず減ったわけです。それからその次に、農林漁業関係のいろいろな事業の重要性と申しますか、緊急性にかんがみまして、本年度の百七十七億のうちの約二分の一というものは農林漁業関係ということになったわけです。その点から通産省的にお考えいただきますと、電源開発の金も大分減ったというような事情もございまして、そういろいろなことを考えられないような事情でございまして、その点から私どもは中小企業の分に安い金を確保するために直接貸というようなことを考える余裕がないといいますか、実はわれわれも現実に考えもしなかったのですが、先ほど来申し上げました生産性本部の基金対策というものを考えて、それを割り込みといいますか、割り込ますにも若干問題があったというような経緯からできたわけでざごまして、それ以上何ら他意はなかったわけです。従いまして、直接貸その他について当ってみて、ノーと言われたこともございませんし、また私ども当ろうともしなかったといいますか、まあ十億をやっとこさ、その限度におきましても——電力の金もまた減るというような事情もございましたので、全体から見てそういう交渉しかしなかったということございます。
  90. 川俣清音

    川俣分科員 関連して。大臣にお聞きしたいのですが、三十年度も三十七億か円資金を使わないでしまった金があるのです。いつでも余剰農産物を買い付けて、これを非常な日本の恩恵だというように称していながら、三十年度は三十七億も残してしまっている。今度も、見返り円の特別会計の使途がまだ明確じゃないのです。おそらく電源開発の方も残るのじゃないかと思うし、あるいは農林省関係の分もまだ割当が確定していないようです。その資料を出せと要求しておるけれども、まだ配分はきまらぬということで、資料が出てきていない。そうすると、今、今澄君の言うように、借りたいという明確な意思表示が委員側から出ておる、あるいは通産省にもそういうふうに考える人もあるでしょう。こういう資金は先に回すことがどうして不可能なんですか。全体がまだ未確定だというときに、この点についてどうお考えになりますか。
  91. 徳永久次

    ○徳永政府委員 私ども繰り越しの状況について直接存じませんので、大蔵省が全体を預かっておるわけであります。私とも若干間接に聞いておるところを申し上げたいと思いますが、電源開発関係につきましては、大蔵省でたまりました特別会計の金は、順調に支出してもらっております。ただ農地関係のものにつきましては、御承知のように、工事そのものが本年度から発足いたしたものですから、実際の工事の段階がおくれたわけであります。  〔川俣分科員「大臣に聞いているの   ですよ」と呼ぶ〕
  92. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ちょっと御質問の意味がよくわからなかったのですが。
  93. 川俣清音

    川俣分科員 三十年度の協定分の円資金が三十七億、まだ残っておるわけであります。これを三十一年度に繰り越して、三十一年度の協定の分と三十七億を加えて、今度の予算書が出ておるわけであります。それで三十一年度の配分計画を見ると、これはまだ不確定だ。あなたは首をひねっておられますけれども、初日から資料を請求しております。この配分はどうなっておるか、何にどれだけ使うかという資料を要求しておるけれども、出てこない、案がないから出てこない、あれば出てくるはずであります。きょうも催促旧したが出てこない。従って、ただ余剰農産物を受け入れることだけは考えておるかもしれないけれども、実際は円資金をもって何をするんだということを言うけれども、計画がないじゃないかということを尋ねたのです。もしも通産省に計画があるならば、それを確保されたらどうなのか、こう聞いておるのです。それがあれば別ですが、三十一年度計画を、ことに農林関係の何に使うか、計画がまだはっきりしていない。使いたいということはわかっております。予算書の上においてこういうふうに使いたい、それじゃ何に使うのか、その詳細を出せといえば出てこないのです。従ってこれは国務大臣として、日本の産業経済の上に大きな影響を与えるところの余剰農産物の受け入れ、それを円資金でまかなうという、その内容がないようじゃしようがないじゃないか、あなたはいかがです。
  94. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 通産省関係にはそういうものはないと思いますが、あるいは農林省の方にあるのでありますか、私存じませんから、なおよく調べて一つ聞きただしてお答えいたしましよう。
  95. 川俣清音

    川俣分科員 そんなことないですよ、これは事務官僚なら別ですけれども。余剰農産物の受け入れば、国内の産業に非常に影響があるのです。この影響をあえて冒してまで持ってきたのであるから——私なら持ってこない、あなたは持ってくる、今の政府は持ってこられた。しからばその用途は、大体すでに三十一年度予算書には作っておるけれども、一体何に使うのか。根拠なしに予算書を出されておるのではいけないじゃないか、こうお尋ねしておるのです。もしもはっきりきまっていなかったら、この部分だけ修正しますか。この点をあわせて国務大臣としてお伺いいたします。
  96. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お話のように、もしもこの予算書がはっきりしないというなら、それはまことに困ったことでありますから、よく聞き合せましよう。私知らないのです。
  97. 川俣清音

    川俣分科員 電源開発事業貸付金、それから日本生産性本部貸付金、そのほかに農地開発事業貸付金とある、農地開発事業貸付金の内訳はどこに何を使うのかという説明を求めているのだけれども、それは回答がない。あるいは森林漁港等振興事業貸付金と出ているが、これはどういう方面の何の事業に使うのかという内訳を聞いておるのだが、これに対する回答がないのです。まだきまらない、だから資料は出せない、こういっている。文書はありますけれども、文書があったって中味がなければだめなんですよ。これは閣議でも重要な事項ですよ。何銭のところまで知っておられるかとあなたにお尋ねしておるのではないのです。こういう予算書の出し方をどうお考えになりますかと聞いておるのです。
  98. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 もしお話の通りならそれはよろしくないでしょうから、農林大臣によく言いましょう。
  99. 川俣清音

    川俣分科員 私は資料を要求いたしておきますから、国務大臣として内閣を代表して、責任を持って資料をお出しなさい。そうでないと予算審議の上にも重要なことになります。
  100. 北澤直吉

  101. 井手以誠

    井手分科員 この機会に大臣に、最近問題になっております外資導入について一言お尋ねいたしたいと思います。個々の点については商工委員会で論議されておりますので申し上げませんが、私の聞いたところでは、二十九年度は導入した外資よりも、支払った技術料なりあるいは外資の元利の方が五手数億円も多かったと何かの資料で見たのであります。外資導入が民族資本を圧迫しておる問題については多くを申し上げません、今日は対策を少し承わりたいのであります。最近一カ年の間に入ってきた外資と支払われた技術料や元利はどうなっておるのか、これは数字は事務当局でけっこうでありますからお示しを願いたいと思います。
  102. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 数字は私今存じませんから事務当局でわかれば申します。わからなければ調べて申し上げます。これは一般論を申しますれば、ある年においては返した方が多いということはこれは十分あり得る。過去において借りたものがたまっておれば、それの元利償還、あるいはそのほかの償却がその年の新しい外資導入よりも多いということは、これはあり得ることだと思いますから、あっても別段不思議はないと思います。
  103. 徳永久次

    ○徳永政府委員 今全体の資料を大蔵省で実は取りまとめておりますものですから、手元に持っておりませんので、また別な機会に取りまとめて御説明申し上げたいと思います。ただ一般論で言えますことは、昨年の秋ごろも実は調べたこともございますが、外資導入によります日本経済のプラスとマイナス面、マイナス面としてのロイアリティその他の送金よりも、やはりわれわれが予測しましたごとく、そのためによりまする輸出振興等に出たプラスというものは、はるかに大きいというデータにはなっておるわけであります。これは前に調べましたデータもございますので、いずれ必要がございますれば資料にして御提出申し上げても差しつかえないと思います。
  104. 井手以誠

    井手分科員 最近一ケ年間の傾向、金額についての大体のところはどうでございますか、入ったものが多いのですか出す方が多いのですか、どちらが多いのですか。  〔北澤主査代理、退席松浦主査着   席〕
  105. 徳永久次

    ○徳永政府委員 これによってかせぎましたプラスの方が多いという数字でございますが、私数字を忘れておりましてはなはだ申訳ございません。
  106. 井手以誠

    井手分科員 プラス、マイナスはこれは見方でしょう。外国資本を過大に評価すればうんとプラスになるでしょう。私がお尋ねしているのは導入した金額と支払った技術料、元金、利子、配当などの支払いとどちらが多いか、数字がわからなければ大体の傾向でけっこうでございます。——おわかりにならなければよろしゅうございます。むしろ私は、数字から見ますれば支払ったものが最近は多くはないと存じます。そこで大臣にお尋ねいたしますが、その年々によって多かったり少なかったりするだろう、こういう御答弁でございましたが、これはいささかたよりない答弁です。いやしくも日本の通産行政を預かっている大臣が最近問題になっている外資導入によって民族資本がいかに圧迫されているかという問題について、多いか少いか、その年によりましょうでは物足らぬ。大体どいういうふうにお考えになっておりますか。この問題を総合してお考えになって、大した技術でもないのに莫大な技術料を払っている。外国資本が導入されて、次々に民族資本が圧迫されている。一々個々の問題を申し上げませんが、これに対してわが民族資本を守る立場から、もうはっきりした対策を立てられてもよさそうな時期だと考えておりますが、いかがでございますか。
  107. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 さっき申し上げましたのは、どこの国でもそうでありますが、長いこと外資を導入しておればやがてこれを償却する時期がくる。そうすれば支払いの方が多くなるということは当りまえの話であります。貿易で見ましても、アメリカでもどこでもそうなのでありまして、ある年限の間、ずっと外資導入が多い時期は輸入超過を貿易の上で現わす、それから外資の償却時期に入りますと、今度は貿易の方においては輸出超過が現われるということが原則でありますから、原則論を申し上げたのであります。ですから昨年あるいは今年の日本の状況がどうなっているか私は知りません。数字を知らないのでそれは調べてからお答えいたしますが、これも原則論でありますが、資本も技術も、つまらぬものを非常に高いロイアリティを払って持ってくるというあほうなことは、そろばんの上からしてもするべきことでありませんが、私は資本でも技術でもそう制限をせずに、入るものは入れた方が大体の筋としてはよろしい、こう考えておるのであります。それが直接にある事業に、たとえば中小企業などに非常な障害を与えるというような場合には、むろん調節しなければなりませんが、できるだけ資本も技術も入れる。そのかわり日本の資本も技術も外国へ出ていく。これはアメリカや英国へ出ていくというわけには実際上できないかもしれませんが、東南アジアとか中南米などには大いに出ていかなければなりません。従って入ってくるものもできるだけ自由にしていきたいというのが建前であるべきだ、かように考えております。
  108. 井手以誠

    井手分科員 長い期間における外資導入については、長くなれば支払いはふえてくるというお話でございますが、日本の外資導入はそう長い期間ではございません。今日まで何十年も外資導入をやったわけでありません。ここ何年かの外資導入で早くも支払いが多くなっているという事実、しかも導入した個々の会社についていいますならば、わが資本が圧迫されているという幾多の事実から考えて、自由がよろしいということばかりでは済まぬと私は思う。通産省内部でもいろいろ意見があるということも私は聞いております。大蔵省でも意見があるということも承わっております。あなたは日本の産業を育成しなければならない立場です、それが個々の会社からいけば当面の利益のためにどんどんと不利な条件も受け入れて導入されておるという事実がある。これはやはり国の行政からいきますならば、将来のことをも考えて総合的にやっていかなければならぬと私は思う。次々に虫ばまれていく産業資本、特に石油のごとき、そういう問題について、通産大臣は確固たる信念を持って外資導入に当ってもらわなければならぬと思うのですが、まだ対策はないわけでございますか、なければないでけっこうです。
  109. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 今申し上げましたように、現在において外国の資本を特に制限をする、外国の技術導入を特に制限をしよう、こういう対策は立っておりません。
  110. 井手以誠

    井手分科員 立っておらなければ、これ以上私は申し上げません。何らか新聞その他によると、通産省でもいろいろな対策があるやに承わっておりましたので、この機会にお尋ねしたかったわけであります。私は新聞に報道されているいろいろな事実から考えて、心配の余り質問をしたわけでありまして、日本の通産行政をあずかっている石橋さんが、対策がないというならばそれでよろしゅうございます。打ち切ります。
  111. 松浦周太郎

    ○松浦主査 次に小平君。
  112. 小平忠

    小平(忠)分科員 私は、先ほど川俣君から御質問申し上げた事項に関連することでありますが。電源会社あるいは発電会社のダムの管理につきまして、きわめて重要なる問題がありますので、この際この機会に通産大臣の所見を承わりまして、今後万全を期すべきでなかろうか、こう思うわけでございます。  内容は昨年の北海道の水害の際に、例の北電が管理いたしております雨竜ダムの放水によりまして、石狩平野の穀倉地帯が一瞬にして泥水化して、昨年は御承知のような豊作であるにかかわらず、その地帯はうち続く水害によりまして大打撃をこうむったわけでございます。この点について大臣はお聞きになっておられますか。
  113. 川上為治

    川上政府委員 これは、電力会社の放水によるものであるかどうかという点につきましては、いろいろ問題があるわけでありまして、これはそれ以上にいわゆる洪水とか、そういう洪水のせいであるということになるか、それともダム炉あったがためそういうことになったのかという問題については、いろいろ疑問の点があるわけでありまして、そういう問題につきましては、われわれの方としましては具体的にいろいろ検討をいたしております。今の例につきましても、私の方としましてはいろいろ聞いてはおりますけれども、とにかくまだはっきりした結論は出ておりません。
  114. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣はお聞きになっておりますか。
  115. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 いや、私はそのことについて十分の報告を受けておりません。
  116. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣は知らないそうでありますが、これは一昨年も同様の問題がありました。当時これは第四次吉田内閣であったと思いますが、一昨年の七月であります。その当時関係者はこれはどうしても自然の災害でなく、人災による被害だということから問題になっておった事項でありますが、昨年の七月、八月の水害で再びこれを繰り返したというわけであります。雨竜ダムというのは、人造湖としては本邦第一ではなかろうかと思う。貯水量ではもっと大きいものがありますが、湛水面積からいいますと、この雨竜ダムの朱鞠内湖というのは、いわゆる人造湖としてはその大きさにおいて本邦随一だと私は思います。それだけ大きなダムを洪水時に満水にためておった、それで一挙にゲートを全開にして放水するのだからたまらない、このことについてはすでに現地の北電から北海道の通産局を通じ本省にも吸い上っておるのですが、現に局長も御存じなのですから、大臣が知らぬということはそれだけ大して関心が持たれていないということだと私は解釈するのです。大臣がお知りになっていないのでありますれば、私は簡単にその真相を申し上げて、大臣の考え方を伺っておきたいと思います。  大体雨竜ダムというのは、戦前にできました関係上発電のためのダムであります。今日は大体ダムの建設については電源なり、洪水調整なり、あるいは灌漑用水、飲料水、工業用水等々多目的ダムとして、そのダムの性質によっては異なっておりますけれども、当時この雨竜ダムにつきましては、やはり電源開発ということに重点を置かれて、洪水調整ということには重きを置かれていなかったところに、私は欠点があろうかと思います。その後戦時中のいわゆる乱伐その他いろいろ気象状況等々によりまして、一昨年、昨年と二回にわたりダムの放水によりまして、下流の石狩川流域が大洪水を受けておるのでありますが、この点については現地の調査によれば、北電は成規の貯水量、さらに放水の際もダム管理に基く成規の手続によって放水をしているのであって、無謀な放水はしていないとこう言っております。さらに地元の北海道あるいは北海道開発局におきましては、現地において詳細なる調査をいたしております。私はあえて通産大臣を責めようとか、あるいは電源会社を責めようとかいう考え方でこれを伺っているのじゃございません。私はやはり現地のそういう実情を十分考えてみますと遂に、このようなことを今後繰り返してはならない、そうするためにはどうすればいいのかということを、国が責任を持って、この管理の適正を期すべきではなかろうかと思うので、申し上げているわけであります。そこでそのようなダムについて、これは一応北海道もあるいは開発局も、関係の自治体十カ町村の広範囲にわたる面積でありますから、いろいろ相談いたしました結果、北海道だけでなく、全国的に自然河川のままに放置されているものが非常に多い、これが治山治水あるいは河川の改修を行いますまでには相当な期間がかかる、そこで石狩川なり雨竜川の治水が完成されるまでは、どうしてもある程度洪水期にはゲートを下げて、そのような洪水を防ぐ若干の洪水調整の役割もしてもらわなければならない、こういう意見が強いのであります。そこで、これは常時満水面よりも一・五メートルなり二メートル、ゲートを下げておけといのではなく、大体洪水期の七月から九月の間くらい下げてもらえないか、こういうのであります。ところが北電としましては、特に会社でありますから、発電という関係において重大な支障を来たすからそれはできない、国の行政的処置とかあるいは命令によるならばいざ知らず、われわれはあくまでも公平にやっておるのだからそれはできない、こういう主張であるのであります。実は昨年突発的に起きた問題ならばあえて相当な検討をしてもらって、回答でもけっこうでありますが——冒頭の局長さんのお話しによりますと、さらに十分に検討をしてというお話しでありますが、これはもう一昨年から問題になっていることであります。さらに具体的な検討調査ということなら別でありますが、そういうようないきさつにありますので、大臣といたしましても、あくまでも電気を起して売るんだというような営業的な観点に立って、下流の穀倉地帯はどうなってもいい、それによって石狩川なり雨竜川の治水工事——決壊とかあるいは工事個所の破損等による被害は実に数十億に達するのですが、これはあくまでも法規によってやっているんだから仕方がないじゃないか、自然のことだからどうにもならぬじゃないかとはおっしゃらないのじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  117. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 もちろんお話しの通りであれば、その下流がどうなってもかまわないから、電気さえ出せばよい、そんなあほうなことは考えておりません。とれる手段がありましたらさっそく調査をしまして、しかるべき手段がとれるように努力いたしたいと思います。
  118. 小平忠

    小平(忠)分科員 大臣のお話しの通りだと思うのですが、実はただいま申し上げましたように、もう二年越しであります。それで本年また同じケースにぶつかったならば——水害にあいました当時は関係大臣も行かれて、二度とこういう災害を受けないように万全の処置を講じますと、政府関係者に言明されておるわけであります。私はやはりこれに対して今のところの方法としては、護岸ができて、堤防ができて、そういうある程度の放水がありましても受け入れるだけの態勢ができれば、それは食いとめることができ得ましょうけれども、国家予算の現状ではとてもとても、こういった石狩川の治水なりあるいはその支流の治水を完成するには、まだまだ数十年かかる。その場合にやはり方法としては、洪水期にはそれを防止するだけの、満水面よりも若干ゲートを下げて貯水量を減らしておくというより方法はないのです。この点については、やはり北電は北電として一つの発電をする計画があり、あるいは一つの採算が伴わなければなりませんから、そのゲートを下げたことによって、これに対する補償はどうするかという問題は、これは当然決して電気会社の北電の損失にしなさいとは私は言いたくないのです。そのゲートを下げたことによって起きる損失は、当然国が補償してもそういう処置はとるべきである、その補償する金額と、二年も連続ゲートを満開にして放水したことによって、下流の大穀倉地帯が大被害を受けている数字というものは、数字をあげただけで四十億、五十億になっているので、それだけの損失の被害はないのです。ですからそれは十分に——今北海道開発局におきましても調査をいたしているはずであります。これはもちろん吸い上って参りまして、建設省、通産省、経済企画庁あるいは大蔵省等々と関連する各省の相談にねろうと思うのです。そのときはやはり一番元は、電源を管理し、特に北電を直接指揮監督をされておる通産大臣が、いやこんなことには相談に乗れないでは、これは済みませんから、それが具体的に吸い上って参りますときには、ただいま大臣がおっしゃられたその考え方でけっこうであります。ぜひ十分に御善処をいただきたい、こう思うわけであります。
  119. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 申すまでもありません、相談を受けたらむろんその相談に乗りますし、またそういう相談がなくても、お話しの通りであるなら、一つさっそく北電をも調べまして、適当な処理ができるだけのことはいたしたいと思います。
  120. 松浦周太郎

    ○松浦主査 他に御質疑はありませんか。——御質疑がないようでありますから、通商産業省の所管につきましては、質疑を一応終了いたします。  本日はこの程度にとどめまして、次会は明二十一日午前十時より開会し、経済企画庁及び外務省所管について質疑に入ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会