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田中(織)
分科員 鈴木君の事件につきましては、ただいま長戸さんの
お答えになりましたような経緯でございますが、鈴木君は、
関係者として起訴されておりましてすでに懲役八カ月、三年間執行猶予の判決を受けている和歌山県有田郡岩倉村の土建業植木安一から、当時の県土木監理
課長阪口稔君を通じて鈴木氏に渡された二十八年十一月の五万円の贈賄については、その収賄の事実を認めております。しかもこれは、贈賄者が起訴されて、執行猶予でありますが判決はおりております。また、鈴木君と同時にその植木から金を受け取った阪口君も、現に起訴されて、懲役四ヵ月、一年間執打猶予、追徴金五万円の判決を言い渡されております。この事実だけは鈴木君がはっきり認めている事案でありまして、この鈴木君の五万円の収賄の事実は疑う余地はいが、額が小さい上に、静岡、和歌山県等を通じて三十年に近い間官吏をしておったその官界の生活を彼が任点退職という形でやめたという情状の点から、これを不起訴処分にせられておったのでありますけれ
ども、私は、
金額は小なりといえ
ども、贈賄者が、また同時に鈴木料と同じ立場において収賄をした片一方の監理
課長が、両方ともが起訴されておるのに、鈴木料が起訴を受けないということは、これは審査会の決議の
通り不合理だと思う。これと同時に、審査会の議決書が本省へ報告になっておることと思いますので明白だと思うのでありますが、市大な問題はむしろこの点にあると思うのです。鈴木君は、去る二十九年十月果土木
部長に就任、去年の九月の二十九日に退職しているが、この間二十八年七月の大水害で県下に大きな被害があったが、これにからんで中央官庁職員の接待費や国庫補助金獲得運動費などで和歌山市和歌浦、旅館岡徳にたまった借財返済に充てるため、湯浅土木出張所長の矢野岩太郎――これは公判係属中でありますが、それに二百万円の調達を依頼いたしました。有田郡有田川にかかっております田殿橋のから工事二百万円を鈴木君が命じまして、矢野は上司の指令として二百万円をから工事でひねり出し、二十九年九月に当時次長であった鈴木氏に渡した。ところが、問題の岡徳の借財の二百万円は県の方で災害復旧費の中から百万円を岡徳に支払っておる。これは事実が明白になっておるのであります。従って、当然このから工事の
関係で捻出した二百万円の鈴木君が受け取った金の行方がわからない。この点が一番検察審査会として重要視いたしておるところなのであります。この翼係は和歌山県議会での鈴木君の
答弁でも明白になつておるのでありますが、そういう
観点から、これらの事実が明白になっておるにもかかわらず――相当長期間にわたって鈴木君が検察庁へ喚問されて取調べを受けたことは私らもよく
承知をいたしておりますが、しかし、このから工事に関する限りにおいては、鈴木君もその事実を県議会においても明確に申し述べておるのでありまして、このから工事がどういうふうに事後の
処理がされておるかは別問題として、これ自体も鈴木君の
責任であるかどうかは別問題といたしましても、当然検察当局としては取り上げなければならない問題だと思うのであります。和歌山県は、私らも
昭和二十二年以来
国会に和歌山県から出してもらっておりますが、毎年のごとく二回、三回という水害を受けて、
国民の上血税の中から少からぬ災害復旧
関係の補助金をもらっておるのであります。われわれは、
国会の各委員会を通じて全
国民を代表して出ておる同僚諸君の賛成と協力を得て和歌山県に持っていった金がこういう形で空費されるということについては、協力を願った同僚議員諸君に対して、またその根源が
国民の血税であるだけに、これを明白にしなければならぬ。個人の情としては、私も鈴木直彦君というのはよく存じておりますが、清廉潔白な男です。これらの件によって鈴木君はやめて、さびしく和歌山県を去って郷里の浜松に帰るときに、われわれの社会党の
関係の県
会議員その他の諸君には、鈴木はどんなことがあっても曲ったことはいたしておりません、あくまで白だった、しかしその白である
自分がこの県の汚職事件を適当に締めくくりをしなければならないという
関係から
責任を負ってやめていかなければならぬ心境というものをくんでくれと言って、彼は
ほんとうにさびしく和歌山を去っていっているのです。近く鈴木君からその心境をぶちまけた和歌山県の汚職に関する文書が発表せられる
段階まできておると思うのですけれ
ども、それだけに、われわれとしては、その
あとに隠されておる問題を
国民のために追及しなければならぬと
考えておるのであります。その無味で、気の講ではありますけれ
ども、これだけ明白な事実になっておる
関係で
責任をとっておる鈴木君は、これは涙をふるって馬謖を切る立場から、当然和歌山の地検においてこれを起訴手続をする――
ほんとうは鈴木君より上のところへ行っているだろうということは、もう和歌山県民の常識なんです。それを鈴木君が食いとめているのですが、
自分がいよいよ起訴されれば、裁判の結果懲役に行かなければならぬ、――むすこさんもいます。そういうことで、渇しても盗泉の水を飲まずということは鈴木君の身上であるとまで彼は言っているのでありますが、いよいよ起訴されるということになると、初めて和歌山県の汚職の真相というものがここに明白になったのであります。われわれは、その
意味で、鈴木君は同情に値するけれ
ども、この際鈴木君を起訴すべきであるという
意味で、全県下にわたって汚職の真相の発表もいたしました。そうしたことがたまたま検察審査会の取り上げるところとなって、この結論になってきている。私は、その
意味で、この問題については早急に結論を出していただかなければならないと思うのであります。なるほど安西さんは大阪高検の次席になられるまでは和歌山の検事正であった。これは私もよく存じ上げております。しかし、こういう形で和歌山県の汚職が、税金を納めた県民の立場から見るならば、どうも納骨のいかぬまま押さえられたということについては、かつてのいわゆる造船汚職に対する指揮権発動に似たような政治的な圧力が検察庁に加わっているのじゃないかということが、和歌山県民の中で常識になっておるくらい出てきている。私は、その
意味から見ても、また検察当局の公正なる威信を回復する見地から見ても、この際審査会の結論を断固として取り上げて、これは起訴していただく、そうするとさらに新しい事実が出てき、明快になるものだ、かように私は
考えておるわけでありますが、その点については、こういう
事情をくまれて、積極的に和歌山地検に対してこの
処置を――それは検事正の裁量によることでありますけれ
ども、そういうを
法務省として、和歌山地検に指示されるお
考えがあるかどうかということを、この際伺っておきたいと思います。