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1956-02-13 第24回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月十三日(月曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 小坂善太郎君 理事 重政 誠之君    理事 西村 直己君 理事 小平  忠君    理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    植木庚子郎君       北澤 直吉君    纐纈 彌三君       河野 金昇君    高村 坂彦君       河本 敏夫君    周東 英雄君       須磨彌吉郎右    竹山祐太郎君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實右    賃崎 勝次君       松浦周太郎君    宮澤 胤勇君      山口喜久一郎君    山本 勝市君       山本 猛夫君    井手 以誠君       井堀 繁雄君    今澄  勇君       春日 一幸君    神近 市子君       川俣 清音君    小松  幹君       河野  密君    田原 巻次君       竹谷源太郎君    楯 兼次郎君       成川 知巳君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    八百板 正君       川上 貫一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 牧野 良三君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 吉野 信次君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 馬場 元治君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 田中 榮一君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十三日  委員河野金昇右久保田鶴松君、滝井義高君及  び辻原弘市君辞任につき、その補欠として高村  坂彦君、楯兼次郎君、春日一幸君及び神近市子  君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 二月十三日  昭和三十年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十年度特別会計予算補正(特第4号)  昭和三十年度政府関係機関予算補正(機第1  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置の件  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算
  2. 三浦一雄

    三浦委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。昭和三十一年度一般会計予算外二案の審査のため分科会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なししと呼ぶ者あり〕
  3. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  なお分科会の区分、主査の選定及び分科員の配置につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 三浦一雄

    三浦委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————
  5. 三浦一雄

    三浦委員長 それでは昭和三十一年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。楯兼次郎君。
  6. 楯兼次郎

    楯委員 私は運輸交通行政について、建設大臣並びに運輸大臣からまず御質問をいたしたいと思います。  第一番に私がお聞きいたしたいことは、総合的な交通政策の確立ということであります。私が言わなくても御承知のように産業活動と動力の関係、これがちょうど輸送関係にも当てはまると思うわけであります。従って崖業の発展に見合う輸送増強国民経済上の重要課題であります。今政府立案をされました国内輸送について、少し数字をあげて冒頭に申し上げてみたいと思うのであります。  国内輸送について見ますと、昭和二十九年度貨物輸送量は七百九億トン・キロであるが、五ヵ年計画によりますと、三十五年における貨物輸送量は八百七十五億トン・キロ、約二三%の増加であります。かかる輸送需要増加に対して、国鉄及び自動車並びに海運にいかなる割合で輸送させるべきであるか、総合的な交通対策が必要であると思うのであります。今国鉄について見ますと、昭和二十九年度において約四百億トン・キロ輸送しております。従来の輸送量推移から見ますと、大体産業活動指数に伴って過去においては増強をされてきております。従ってこの傾向が将来も続くものといたしますと、三十五年にはその二三%増、約九十億トン・キロ増加して、四百九十億トン・キロ輸送しなければならないということになります。しかるに経済自立五ヵ年計画では、昭和三十五年においては約六十億トン・キロ増加にとどめてあります。四百六十億トン・キロとしてその増加率は、輸送生産指数一二三%を下回る一一七%と規定をいたしております。その差額の約三十億トン・キロ自動車輸送転換をされております。これに対して自動車輸送の伸びは、輸送生産指数一二三%をはるかに上回る一六二%となっております。昭和二十九年度の約七十億トン・キロから三十五年の百二十億トン・キロと約五十億トン・キロ増加し、この五十億トン・キロ増加輸送量中その六〇%に当る三十億トン・キロ鉄道輸送からの転換量ということになっております。一方海運の方を見ますると、ほぼ輸送生産指数と見合っております。以上から陸運において鉄道輸送量頭打ち的傾向自動車輸送負担の著しい増大がうかがえるのであります。この傾向昭和四十年あるいは五十年にたるに従って、ますます顕著なものがあると考えるのでありますが、以上のような輸送推移の見通しに対して、いかたる対策をお講じになるつもりであるか、建設並びに運輸大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  7. 吉野信次

    吉野国務大臣 お答えをいたします。ただいま御指摘になりました数字は、企画庁において編んだのでありますが、大体そういう数字になるだろうと思います。それで私どもといたしましては、やはり今の陸上なりあるいは海運なり、自動車というものについての総合的な政策を立てなければならぬ、こう思いまして、今交通審議会で総合的な政策の面についてせっかく御審議を願っておるわけであります。その答申を待って適当な対策を立てたい、かように考えております。
  8. 馬場元治

    馬場国務大臣 ただいま運輸大臣から申し上げた通りであります。
  9. 楯兼次郎

    楯委員 今御答弁をいただきましたが、対策がないようであります。私は国鉄の五ヵ年計画の問題、それから経済五ヵ年計画のいわゆる交通部門対策を見てみました。ところが対策がございません。おそらく鉄道はこの増加数量に対しまして、膨大な財源を 投入する必要がある、こういうことが書いてあります。ところが自動車輸送増加に対しましては、増大をするであろう、これはしり切れトンボになっております。これではせっかく経済自立五ヵ年計画をお作りになりましても、輸送の面から抑制されて参る。従って政府立案経済五ヵ年計画というものが輸送面から制約を受けて行われ得ない、こういうふうに私は考えておるわけでございますが、大体今審議会考えられておりますところの構想は、自動車輸送の激増に対していかに対処しようとしておるかという点をば、運輸大臣にいま一回お伺いをいたしたいと思います。
  10. 吉野信次

    吉野国務大臣 ただいまお尋ねの点は、まだ審議中でございまして、今こういう席上で申し上げる段階には至っておりません。
  11. 楯兼次郎

    楯委員 それでは私はお聞きいたしたいと思いますが、私どもは、鉄道輸送できない貨物の量が、今後膨大に自動車負担をされて参ると思うわけでございます。従って両大臣とも御承知であると思いますが、この貨物自動車で円滑に輸送をするために、自動車道建設ということを私ども提唱いたしておるわけであります。総合的な交通政策の面から、これは二十二国会提案をされておりますので、内容を十分御承知と思いますが、自動車道に対していかなる考えをお持ちになっておるか、両大版にいま一回お伺いをいたしたいと思います。
  12. 吉野信次

    吉野国務大臣 お尋ね自動車道につきましても、ただいまお話通りに、目下参議院継続審議になっておると承知いたしております。いずれその法案が成立しました上で工作するつもりでおります。大臣におきまして、輸送量増加に対してそういう自動車道というようなことも考えなければならぬでありましょうし、また現在の国有鉄道というものを電化によりまして、輸送量を非常に増大するという方面考えなければなりませんでしょうし、そういうことで、総合的に考えたい、こう考えております。
  13. 馬場元治

    馬場国務大臣 自動車道の問題につきましては、ただいま参議院継続審議になっておる法案もございまして、これが審議を終り、通過をいたしました上で、具体的にはさらに詳細なる調査をいたしました上で、現実の施策を講じて参りたい、かように考えております。お話通り輸送最が増大いたしますにつきましては、そういった施策を着々行なっていかなければならぬ、かように考えておるのでありまして、今度作ります。御審議をお願いいたします道路公団ども、そういった意味における輸送量増大緩和、消化する一助にも考えておる次第であります。
  14. 楯兼次郎

    楯委員 運輸大臣の御答弁では、電化等によって輸送増加に対応するということでございますが、これはだいぶ認識が不足しておると思います。といいますのは、電化十ヵ年計画をば国鉄立案をいたしました。しかし私は現在の輸送に対応するためには国鉄は十年おくれておる、こういうように考えます。これは私がそう感ずるのでなくて、あなたの方でお出しになりました輸送の五ヵ年計画にはっきり載っております。前を省略いたしますが、現在でも列車増発、季節的な波動輸送車に対する弾力性はなく、今後の増加にはとうてい対応できない、今日ですからこういう状態であります。従ってこれから十年かかって電化をして、そうして今年から増加をする貨物輸送するというようなことは非常におくれておる、私はこういうふうに考えます。  そこで自動道の問題でございますが、私はこういう情勢からして、好むと好まざるとにかかわらず、自動車輸送というものはだんだんと、長距離輸送という二とに伴いまして増加をして参りますので、どうしても自動車の通る道路というものを今から立案計画をしておかなければ、もう数年後には輸送に困ってしまう、こういうように考えるわけであります。今建設大臣の御答弁を聞きますと、道路公団等を作って云々というようなことでございますが、私ども考えております自動車道というのは、いわゆる人も馬も通る混淆交通では、この輸送というものははき切れない、いわゆるレールレス・レールウエーといいますか、レールのない鉄道でなければこの輸送というものははけない、こういうふうに考えておるわけでございます。私は今総合的な輸送対策の面から申し上げましたけれども、われわれが考えておるのはただ単に輸送の面ばかりではございません。国土普遍的開発、これを主に考えたわけであります。今日までいろいろな施策が講ぜられて参りましたけれども、今日起きておりますところの弊害は何であるか、それは地域的な経済開発の不均衡であります。この不均衡を直すためには、いわゆる既存の鉄道あるいは道路というものに改良を加えるということはこれは必要であろうと思いますけれども、これによっては解決はしない。いわゆる国土開発基本的条件の変更というところに着眼をしなければ、都市にばかり人が集まってしまって、地方は少しも開発をされない、こういう片ちんばな情勢というものが今後ますます多くなってくるであろう、こういうふうに考えて、国土の普遍的な開発という面からも、私ども自動車道ということを強調をいたしておるわけでございます。なお私ども就労対策についてもこの自動車道ということを強調をいたしております。私ども計画によりますれば、もし自動車道建設に着手をするということになりますと、大体十万人からの就労対策になるというように考えます。今生産指数は上りましたけれども雇用関係は低下の状態にある、こういうようなものを見ます場合に、就労対策からいっても私はこの自動車道というものは必要ではないかと考えます。建設大臣は二十二国会衆議院通過をいたしました自動車道については今後慎重に検討をしてやるというようなことをおっしゃいましたが、少くとも四百三十名の議員がこれに賛成をして衆議院通過したのでございますから、私は今日までに相当な研究が積まれ、そうしてこれに対する何らかの手が打たれておらなければうそだと思います。今ごろこれから検討をするというようなことでは、われわれ議員の総意を無視することもはなはだしい、こういうふうに考えますが、この点について建設大臣はどういうふうな今日以後のお考えを持っておられるか、承わりたいと思います。
  15. 馬場元治

    馬場国務大臣 お話通りに、衆議院における大多数の方が提案者になっておられる法案でありますので、政府といたしましても御意思は十分に推察をいたし、尊重しなければならぬと考えております。ただしただいま参議院継続審議になっておりまして、せっかく御審議を願っておるのでありますから、その結果を見るということがこれまたきわめて大切なことであると考えます。もとよりこれに対処いたしまして、この法案趣旨に盛ってありまする諸計画、それに対する調査は従来とても進めて参っております。いよいよ通過をいたしました暁には、その法律を基礎といたしましてさらに調査を進めたい、こういう意味を申し上げたつもりであります。
  16. 楯兼次郎

    楯委員 それでこの点について一点お伺いしたいと思います。この自動車道については、東京名古屋間では、われわれは東京名古屋直線に結ぶコース考えておりますが、東海道線の方がいいではないか、こういうような議論もたくさんあったように記憶いたしております。ただ単に交通緩和という面からいけば、東海道の方がよろしいでしょうけれども、先ほども簡単に申し上げましたように、国土の普遍的な開発というような面からいきまして、この自動車道というのは東京名古屋直線で結ぶコースでなければ意味をなさない、こういうふうに考えております。従って将来は鉄道東海道線を複々線にしていくというような考え方の方がきわめて適切であろう、こういうふうに考えておるのでありますが、この中央道東海道かという案に対しまして、建設大臣としてはそのどちらを選ばれた方がいいのであるか、建設大臣の心がまえといいますか、お考えをお伺いしたいと思います。
  17. 馬場元治

    馬場国務大臣 お尋ね趣旨は、種種議論の種になっておりまする中央道か、あるいは東海道かという御趣旨であったように拝聴をいたしました。これにつきましてはいろいろの議論があるのでありまして、お話のように、ただ単に交通緩和するという意味だけでなしに、産業開発その他観光であるとか、あるいは就労関係であるとか、人口の普遍的な分布であるとか、あらゆる面から考えられなければならぬことは申すまでもありません。北海道の北端から九州の南端まで、日本のいわゆる脊椎骨に当るところを南北に引き通す縦断道路ということが、ただいま法案として提案をされておるのであります。その中におきまして東京名古屋の間を、東海道を通る方がよろしいか、あるいは中央道路直線コース山岳地帯を一直線に近い線で引き通した方がよろしいか、いろいろ議論があるようであります。あるいは技術上の点からいいまして、中央道は困難であるという議論も耳にいたします。また東海道の方は補償関係その他で反対の意見も地元に相当強いということも聞いております。そのいずれをとるべきか、私は両方ともぜひやりたい路線なんでありまして、中央道もぜひやりたい、東海道もこれまた非常な不便を感じており、今の状態で不足でありますことは申し上げるまでもないので、両方ともやりたいのであります。しかしいわゆる縦貫道路としていずれをとるか、こういう御趣旨質問でありますならば、私どもといたしましては、東京から名古屋までの路線、おそらく名古屋の少し北の方になるかと思いますが、その路線中央道通りたいものである、私はかように考えております。
  18. 三浦一雄

    三浦委員長 関連して宮澤胤勇君から質疑がありますからこれを許します。宮澤君。
  19. 宮澤胤勇

    宮澤委員 ただいま建設運輸大臣、それから大蔵大臣、また経済企画庁高碕国務大臣とちょうどお見えになっておりますので、私は今の中央道の問題について一つ大臣において——もっとも石橋通産大臣が見えておりませんが、一度御考慮を願ってお話し合いを願いたいと思うのであります。この中央道はただいま建設大臣お話のように、東海道線両方やりたい、これは非常にけっこうなことでありまして、私どももさよう考えております。やれる方から先にやってきたらよろしい。しかし一貫した縦貫道路としては中央道の方がよかろうという建設大臣の御意見もしごくごもっともで、従って先ほど楯君からお話のありました通り、この縦貫道路のうちまず中央道だけを建設する。これは日本としても初めての試みであり、一つやってみて、それから北海道から九州に至るまで脊髄山脈を一貫する、このくらいなことをやらなければ、日本のこれから一億の人口を擁する産業開発はできないと思うのであります。ことに金は千数百億円で、五ヵ年くらいにやろうと思えば大したものではありません。必ずしも政府の出資によらないでも、民間資金をもってまかなう方法もいろいろあると思います。ただ日本経済全体として、ここに千数百億円の金を五年間にこの中央道に費すか費さないかという問題だけであります。財政資金の一部を持ってこようが、借入金にしようが、あるいは一部外貨によろうが、どういう方法でもあると思いますので、一つちょうど四大臣見えておりますので、これに他の産業関係大臣を加えて十分に御検討を願い、このくらいな仕事一つ勇断を持ってやらなければ、日本のほんとうの産業の発達はできないというように考えております。私はお答えはいただかなくてもよろしゅうございますから、その点を関連して一つ希望を申し上げて、十分な御考慮をお願いいたしたいと思います。
  20. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御説はごもっともでありまして、私ども双手をあげて賛成するわけでありますが、何しろ一千数百億という大きな金であります。同時にまた自動車専用道路というものにつきましては、これは鉄道との両方関係があるわけでありますから、二重投資になるということも考えなければならぬ。いろいろな点から考慮する必要がありまして、今にわかにこれを予算関係というような点で決定しかねますが、私ども考えておりますところは、まず自動車専用道路というものについては、どういうような仕事がどういうような結果になるだろうかということをまず知るために、神戸名古屋間——これは中央幹線になっても、あるいは海岸線になっても同じなのですから、その点だけまず一応先にしてみたらどうか、こういうような考えでただいまその方面調査に着手したようなわけであります。
  21. 宮澤胤勇

    宮澤委員 もう一言。ただいまのお話ですが、自動車専用道路については今さら検討するということは、高碕さんのお話としては——もう海外の事情も十分御存じであるし、日本においてもあのくらいのものをやることは何でもないことと思います。ことに名古屋神戸間においてまず着手する、それはけっこうであります。いずれにしても早く着手していただきたい。
  22. 楯兼次郎

    楯委員 次に運輸大臣にお伺いしたいと思います。  過日、わが党の伊藤委員質問に対しまして、三十一年度予算の中には運賃値上げは入っておらない、こういう御答弁でありました。ところが私ども、聞くところによりますと、運賃法改正をしようという動きがあるということでありますが、運賃法をどういうふうに御改正になるのか、その大綱を、しごく簡単でけっこうでありますから、お伺いをしたいと思います。
  23. 吉野信次

    吉野国務大臣 まだ正式にはきまっておりませんが、運賃問題はなかなか複雑な問題でございますから、過日のお間いがありましたときには、ただ三十一年度予算には考慮したい、こういうことだけ申し上げておきました。  この運賃問題をどう取り扱うかということにはいろいろな問題がございまして、その間の一つとしてこれをきめる方法も私は問題になると思うのです。すなわちただいまのところでは、これは国会がきめるようになっております。つまり立法府が行政府に対していかなる程度監督権を持つかということは、方法上の一つの重大な問題でございます。そういうようないろいろな問題がございますから、私はそういう問題をも含めて、国鉄というものの今後のあり方について各方面から研究をしていきたい、こういう意味運賃法改正という問題についても考えておりますけれども、まだこれをこういう方法にというまでには至っておりません。
  24. 楯兼次郎

    楯委員 まだ報告する限りでないとおっしやいますが、私どもの聞いておるところでは、運輸大臣の許可によって運賃値上げをするというところにねらいがあるそうでありますが、これは間違いございませんか。
  25. 吉野信次

    吉野国務大臣 その問題もまだ考慮中でございます。ただ今申しました通り公共企業体、公社というもので自主独立採算制をとっておるのが現在の国有鉄道の形なのであります。そういう建前のときに、立法府がその事業のうちの一番重要な運賃を一々きめるがいいかどうかということは、私は問題になる、問題になり御ることだと思うのです。それがいいか悪いかということについての結論はまだ持っておりませんけれども、少くとも国鉄の今後のあり方について研究問題としてこれは十分考慮してよろしいものだ、かように考えております。
  26. 楯兼次郎

    楯委員 私も運賃法改正がいいとか悪いとかを言っているわけではありません。あなたの方でそういう腹案があるということを聞いているので、その内容はどうとかいうことを聞いているわけです。内容はここで発表できませんか。
  27. 吉野信次

    吉野国務大臣 いずれ成案が出ますれば皆さん方の御協議を仰がなければならぬと思っております。
  28. 楯兼次郎

    楯委員 私は時間の関係もありますので率直に申し上げたいと思いますが、国鉄の本年度予算運賃値上げをしなければ実行できない予算である、こういうふうに考えるのでありますが、運輸大臣は三十一会計年度においては絶対に運賃値上げはやらないと断言できるかどうか、御答弁願います。
  29. 吉野信次

    吉野国務大臣 それでは運賃問題についてお答え申し上げます。大体国鉄の経営が引き合っているかどうか、あるいは引き合わないで赤字になっておるかどうか、赤字になっておるならばこれを合理化して、言葉をかえるならばいかにして収入を増すことができ、いかにして経費を節約することができるか、こういう問題があるわけです。しかしていろいろそういう方面に手を打ってなおかつ引き合わぬというときはどうするか。今日の運賃法建前からいえば、支出は収入をもってまかなうということが原則になっておりますから、採算の問題だけからすれば上げるのが当然だという議論も成り立つと思います。しかしながら運賃問題というものは、御承知通り経済採算だけの問題ではないのでありまして、そこにいろいろ心理的の問題もございますし、また低物価を堅持する建前の問題もございます。どういうふうにやるか、その程度はどうか、また時間の問題もあろうと思います。また先ほど御質問に出ましたその方法の問題もあろうと思います。そういうようなあらゆる面を考慮しなければなりませんのですから、今ここで運賃をこの年度上げるとか上げないとかいう結論を出すには、あまりにも複雑な問題ではないかと思います。今慎重にその問題を考慮していると申しておるのであります。   〔「それは二枚舌だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  30. 楯兼次郎

    楯委員 今日までの予算委員会では、たしか先日の山花委員質問で、絶対に上げないとお答えになっていると思いますが、今の御答弁とはだいぶ食い違います。この点どうも政府の方針が一貫しておらない。上げるのか上げないのか、ここで政府の方針を一つ断言してもらいたい。
  31. 吉野信次

    吉野国務大臣 お尋ねですけれども、私は伊藤さんにお答えするときに、ただいま御指摘のありました通り、三十一年度予算には運賃値上げ考慮しない、私はこれだけしか申し上げておらないのであります。
  32. 楯兼次郎

    楯委員 運輸大臣はそうであるかもしれないけれども、今速記録がありませんが、ほかの閣僚から絶対に上げないということを、山花委員質問に対して断言をいたしておる。このように閣僚間の意見は統一されておらない。鳩山内閣の運賃に対する方針を一本にしてはっきり御答弁願いたいと思います。
  33. 吉野信次

    吉野国務大臣 重ねてお答えをいたしますが、私が申し上げましたのは、三十一年度国鉄予算については運賃値上げのことは考慮してないということであります。
  34. 楯兼次郎

    楯委員 まだ私は理解がいきませんので、これは二、三質問してからあとで締めくくりにお尋ねしたいと思いますが、三十一年度予算では考慮をしてない、こういうことを運輸大臣はおっしゃいました。そういたしますと、昨年の暮れ行政管理庁が、国鉄の経営の問題についていろいろ勧告をいたしましたが、その勧告がこの予算案では実行されておらない、こういうふうに考えます。  第一番に私がここに取り上げたいのは、減価償却の問題であります。減価償却の問題につきましては行管は、国鉄の現在の状態は過剰償却であるということを言っております。国鉄の方では、いや償却不足である。緊急に坂りかえなければならないものが千八百億くらいある、こう主張いたしておりました。ところが経営調査会がそれぞれの権威者に依頼をいたしまして、研究調査を行なった結果、今回視察した構造物はすべて老朽、陳腐化がはなはだしく、すでに取りかえの域に達している。経営能率の上からも、また安全の上からも一考すべき状態である。当面の運転上の保安については、現場職員の異常な努力によって細心の注意が払われているので、直ちに危険であるということではないが、現状をこそくな方法で維持することは、保安上不適当である。すみやかに根本的な対策をはかるべきである、というふうに説明をいたしております。またあなたは行管の勧告に対する回答の中にも、減価償却については経営調査会の答申を全面的に尊重して処理すると御回答になっております。全面的にですよ。全面的に尊重をされなければならない。調査会は事が運転保安上の問題でありますから、減価償却については、この答申書の中にもありますが、わざわざ四百二十七億という金額を明示いたしまして答申いたしております。ところが私ども予算編成に際しましていろいろ聞いておりますところによりますと、運輸省は当初この答申を尊重いたしまして、四百八十五億の要求をいたしております。ところが大蔵省の第一次査定で、三百億に削減をされております。すると当局は——これがどうも不可解でありますが、さらに、増額の要求ではない、減額の二百五十億の要求をしておるということであります。結論として減価償却費は、二百七十七億に決定をいたしておりますが、一体なぜこの危険な減価償却不足というものを放置したか。まあ過去いろいろ行管との論争がございますが、過去のことは私は間いません。少くともこの安全確保のために、四百二十七億の減価償却費は何ものにも優先をして予算に盛り込まなくてはならぬ、確保しなければならぬと私は思うが、それを増額どころか、減額の要求をして、二百七十七億に決定をしたということは、一体どういうことであるか。これではせっかく昨年の暮れから行政管理庁と国鉄が論争をし、専門家をこの中に入れて、経営調査会を作って調査をした結果というものは、意味をなさぬというふうに私は考えるわけでありますが、この点運輸大臣はどうお考えになるか、お聞きしたいと思います。
  35. 吉野信次

    吉野国務大臣 ただいまのお言葉ですけれども、別に償却費について減額を要求したということはございません。ただあの答申は予算が大体できましてから後に受けたのでございます。そしてあの問題につきましては、学者間にいろいろの議論がございますが、私はやはり経営調査会の方の論が適切じゃないかというふうに考えておりますが、その観点から申しますと、現在出しております国鉄予算は、幾分償却不足であるということは私も認めます。
  36. 楯兼次郎

    楯委員 時期的に答申案と予算の編成は別だとおっしゃいますが、あなた方国鉄から、資産の中にどれだけ償却をしなければならないかというのは、もう一年も半年も前からその金額が明示をされておるわけであります。それで、繰り返すようでありますが、国鉄の十一年度予算は、減価償却は少くとも四百二十数億というものを計上しなかったならば、昨年来の国鉄の経営合化に対す理る権威者の意見、あなた方の努力、経営調査会の真剣なる討論というものは、水泡に帰しておるじゃありませんか。そんなことならあなた方が一生懸命になって調査をしたり宣伝をしたりする必要はないじゃないですか。だから私は運輸大臣の今のそんな簡単な答弁では了解することはできぬ。もうあらゆるものを犠牲にしても、四百二十七億以上というものはこれは衆目の一致するところです。だからこれだけは盛らなければ、昨年来の努力は全然無意味じゃないですか。そんな答弁では私は納得することはできません。もう一回はっきり答弁を願いたい。
  37. 吉野信次

    吉野国務大臣 楯さんもよく御存じだろうと思いますが、結局それがすなわち運賃を上げたらいいかどうかということにからむ問題であります。そこで三十一年度につきましては、先ほど申しました通り、いろいろな理由から、運賃値上げは三十一年度には国鉄予算には含めておらないのであります。でありますから償却が不足でありましても、十分な償却というものは認めがたい、こういう事情でございます。
  38. 楯兼次郎

    楯委員 運輸大臣、私が今この点を申し上げたのは、それであるからこの予算案というものは、やがて運賃値上げを含んでおるということです。一番重要な盛らなければならぬ予算の項目を削減をしておるということは、やがて運賃値上げをするから削減をしてある。なぜかということになると、これは調査会もあなたに答申をいたしております。運賃値上げということは、国鉄の資産食いつぶしを防ぎ、国鉄の資産を維持増強してその使命達成のために行うものである。いわゆる実体資産の維持のためにこそ運賃値上げは行うべきである、こういう答申である。これは当然だと思う。その実体資産の維持の金額を減らしてあるということは、ここに運賃値上げの合法的な一番強い理由を温存されておるということです。だから国鉄の三十一年度予算というものは、あなたがあいまいな答弁をなさっても、運賃値上げを前提として編成をされておると思う。それは断言できると思います。今私の言ったことをあなたは否定なさるならば、この予算案はこういうふうに大幅に修正をしてしかるべきものであると私は考えますが、この二点についてお答えを願いたい。
  39. 吉野信次

    吉野国務大臣 先ほども申し上げました通り採算上の問題からいえば、運賃値上げしなければならぬだろうということをさっき私は申し上げたと思います。けれども運賃というものは、ただ経営の採算だけの問題じゃないので、一般の物価にも響きますし、また大衆の心理にも非常に関係する問題でありますから、それは慎重に扱わなければならぬのだから、それは今は考えていない。しかしながら国鉄のようなああいう国有国営の事業におきましては——これは民間事業でも同じだけれども、ある時期をとれば赤字経営をやっているのです。しかしながらやはり何年間にわたって国鉄が健全なあり方をするというときには、運賃値上げという問題も当然考慮の中に入れなければならぬという時期がくることは、これは楯さんもよく御了解を願いたいと思います。
  40. 楯兼次郎

    楯委員 私は今運賃値上げがいいか悪いかの論争をしているのではありません。この予算案からいえば、当然運賃値上げを前提とした予算の編成の仕方である。なぜはっきりとそうであるとおっしゃらないのですか。それから運営値上げの可否の論争というものが生まれてくると思う。あいまいな御答弁では私は納得することはできません。  それから時間がございませんのであまり多くを質問することはできませんが、運輸収入はむちゃくちゃです。私は残念ながら職員が努力をして、一この実績を上げた方がいいということはできないと思います。といいますのは、簡単に申し上げますが、経済五カ年計画に基く運輸数量を基礎として、一応二十五年度国鉄収入考えてみますと、二千九百億円です。大体三十年度指数は二六%というふうにあなたの方の資料には出ております。当初あなた方が三十一年度の増収を見込んだのは、旅客八億、貨物十九億、計二十七億です。一%の上昇です。ところがどうです。この予算案に出て参りまし運輸収入を見ますと、旅客が八億から三十四億となっておる、貨物が十九億から百十九億にふくれ上って、二十七億から再五十三億というような鹿大水増しが行われておるということです。一体これは輸送できますか、今貨物一トン平均輸送キロは七百五十円です。これで百十九億の増収を上げるためには、一体貨車の新造がどれだけ要るか。客車の新造がどれだけ要るか。ことし作るとしましても、でき上るのは来年です。こんなばかな膨大な運輸収入というものは絶対に上げることはできぬ。この面からいっても、あなた方は運賃値上げ運輸収入の中にもう見積っておるじゃないか。運輸収入百五十三億も本年現在の国鉄の施設と人員によって輸送をする自信がありますか、御答弁願います。
  41. 吉野信次

    吉野国務大臣 お話通り、それだけの運輸収入を上げますることはなかなか容易でないと思います。しかし私どもは努力しまして、どうしてもその目標までいかなければならぬ、かように考えております。
  42. 楯兼次郎

    楯委員 私は先ほど冒頭だ国鉄の五ヵ年計画に対する項目を読み上げました。現在ですら対策が立たない。一ぱいだと言っている。これは昨年の十一月のあなたの方の資料でありますが、現在ですらもう手をあげておる。こういうことを言っておるのです。さらに百五十三億どうして輸送できますか。今貨車は余っておりません。品物を送りたくても、貨車がないから業者は困っておる。そこで私は百十数億の増収をするためには五千両くらい要ると思います。そんな貨車がどこにありますか。そういうでたらめな予算を作っておるという点を御指摘しておきたいと思います。  それからここで私は不可解に感じますのは、これだけの増収を上げるために、一体人件費の増額をどれだけ見込んでおるのですか。人は現在のままでこれだけの増収を上げることができるのですか、答弁して下さい。
  43. 吉野信次

    吉野国務大臣 別段に人件費はふやしておりません。しかし経営費か何かにつきまして、特別に余分に働いたときに若干のことをするという建前になっております。ですから先ほど申しましたように容易でない、決して生やさしいことでないと存じますけれども、私どもとしては努力しまして、ぜひそういう目標まで持っていきたいと考えております。
  44. 楯兼次郎

    楯委員 私は大臣も帰ってよく勉強していただきたいと思います。私が調べましたところによりますと、三十年度——年度の一番最近の統計でありますが、三十年の三月から九月までの職員の休暇の消化状態を調べてみました。ところがとれておらない。当然とるべき休暇を一割はとにかく流してしまって、当然とるべき権利の休暇の一割は未消化です。だからすでに今日人員は今の輸送量に比較して少い状態である。ところが百五十三億の増収に対して、今あなたのおっしゃいましたような働きができるか。今でさえ与えられた休暇が消化できない。その人員で百五十三億がなぜ輸送できるか。こういういいかげんな予算案では承服することはできないと思います。これも運賃値上げを含んでおるからこそ、こういう予算の編成ができるのだ、こういうふうに私は申し上げることができると思います。  次に、時間もありませんので、私はこれも運賃値上げの黙契のもとに考えられたと思います新線建設の問題についてお開きいたしたいと思います。わが党も新線の建設ということは賛成であります。賛成ではありますけれども赤字国鉄の財政的面を考えますと、あくまでも新線建設というものは政府出資でなくちゃならないとわれわれは考えております。もし政府出資がどうしてもできないときには、少くとも借入金に対する利子の補給くらいは考えなくちゃならないじゃないか、これはわれわれ年来の主張でありますが、そうしてやらなければ、今三十線着工しようとしておりますが、三十線が完了いたしますと、年間四十五億の赤字が出る。こんなことでは国鉄の公共性というものは失われていく。従って私どもは新線建設ということは賛成ではあるけれども、その資金については政府出資、あるいは政府出資ができない場合には、少くとも利子の補給くらいはやらなくちゃいかぬ。船の方にばかり補給をして疑獄事件を起すより、国鉄の新線建設に対する利子補給を行なった方がよほど国児は再ぶと私は思う。ところが昨年の十一月十八日に、今度建設をするという川崎線でありますが、川崎線は特別失業対策費で一つ建設をしよう、こういう決定になっております。ところが最近の情報を聞きますと、全部財政投融資でこれを建設する、こういうふうに変ってきました。これも運賃値上げをやるという前提でなければ、国鉄当局、運輸当局は納得しなかっただろうと私は思います。この面からもこれは運賃値上げの黙契があると考えているわけであります。ここでお聞きをいたしたいのは、昨年十一月に閣議決定によって失対費から川崎線の建設費を五億円出す、この分をなぜ財政投融資の方に変更になったか、この点をおききいたしたいと思います。
  45. 吉野信次

    吉野国務大臣 お尋ねの川崎線の問題ですが、これは別に財政投融資でやるということになっておりません。やはり一般の方の借り入れでやるということになっております。
  46. 楯兼次郎

    楯委員 建設費の五十億円は運用部と債券の二百四十億でやるのでしょう、だから失業対策費からと昨年閣議で決定をしておきながら、どうしてこれが変更になったか、赤字国鉄が失業救済事業をやっているじゃありませんか。運賃値上げの相談がまとまらなければ、こんなばかなことはできないと私は思う。
  47. 吉野信次

    吉野国務大臣 重ねてのお尋ねですが、川崎線は失業対策の費用になっておりませんので、一般の新設の五十五億の中に含まれております。
  48. 楯兼次郎

    楯委員 だから昨年は失業対策費で出すということを十八日の開議で決定しておきながら、どうして変更になったかという点を聞いているのです。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 川崎線のことでありますが、これは閣議決定はいたしておりません。ただ当時、調査費としては一応出そう、まだこれは結論は出していなかった。私は特に大蔵大臣として、失業対策のために今日鉄道を作るということについては、ちょっと異論があるのでありまして、もう少し弾力性を持った——鉄道というものは今後何十年あるいは何百年にわたる——常にそこに失業者が生ずるとは限らないので、失業対策の事業としては、やはり弾力性を持って仕事ができるところに動いていく行き方がよろしいという考え方から、これはやはり鉄道の新線のうちに入れてやって、そしてそこで失業者をなるべく吸収する、こういう行き方がよかろうということで、きまっておったのではないのであります。
  50. 楯兼次郎

    楯委員 大蔵大臣についででありますから簡単にお聞きしたいと思いますが、国鉄運賃値上げということをあまり考えずに、まだ私は打つべき手はいろいろあると思う。たとえば今言っております新線建設についても、少くとも利子の補給ぐらいはやってやらなくちゃいけない、こういうふうに考えておりますが、これはもう二、三年前からわれわれの間で話し合っていることでありますが、将来そういうことを考える意図があるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  51. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この国鉄債については、まず一つ基本方針を申し上げれば、国鉄債とちょうど同じものに電電公社債があるのでありますが、この両方につきましては、まず基本ではできるだけ公募をして、市場で消化する限りは公募して、なお足らぬ場合にはこれは財政資金でやる、こういうのが従来基本方針になっていることであります。そうして三十一年度予算では大体この公募債が、私の今の記憶では二百四十億、昨年は百二十五億でありましたので、百十五億ことしは多い。それから財政資金で出ますのがことしは五十五億でありますから、昨年百十五億で六十億減っております。それならこの両方からくる国鉄の金利負担増加は幾らかと言えば、約八千万円であります。国鉄運賃収入は、ごらんになりましても約二千七百億を突破しておる。そのうちの八千万円。ですから私は、この利子の関係から運賃問題を言うのは、むろんそれだけをとれば、それは少しばかり負担増加するからという意味から言えば、問題にならぬことはありませんが、二千七百億に対して八千万円という程度のことで、そのことをとってすぐに運賃問題を論議するのは少し当らない、こういうふうに考えて、特にこれは今独立採算制になっているのでありますから、その性格から見ても、私はそう国家補給をすぐに考えるべきでない、かように考えております。
  52. 楯兼次郎

    楯委員 どうも政府運賃値上げをやるようにやるように、当然避けてやれると私は思うのでありますが、運賃値上げを必然的ならしめるような政策をとっている、こういうふうに考えます。これは今二、三質問をいたしましたが、ほかのことでも言えると思います。たとえば固定資産税を納付金という名前になっておるかしれませんが、本年度は三十六億鉄道からまたひっぱり出しておる。地方財政赤字補てんのために国鉄から三十六億を出させて、その穴埋めを受益者負担というようなことで、運賃値上げに持っていこうとしておる。そういうばかな、運賃値上げをやるような原因を作っておる。それから今大蔵大臣から、政府資金の運用の仕方についてちょっと話があったわけでありますが、これの運用の仕方にいつても、私は国鉄の公共性というものをみんな剥奪をしておる方向に行っておると思います。たとえば五十五億円が政府資金の借入金です。これは財政投融資の総ワクの二%ですね。ところが民間資金の方は二百四十億、これは民間資金の一七%に当ります。安い利子のやつを少く貸してやって、高利のやつを国鉄にたくさんしょわしておる。しかも民間会社には低利資金をどんどんと融資をしておる。まるでこれは逆なんです。この面からも、私は国鉄の公共性というものが失われてくる、こういうふうに考えます。総括をいたしまして、政府はもう少し考えて、いろいろな策をおとりになったならば、運賃値上げを避けてやっていけるのではないかと私ども考えるのでありますが、運賃値上げをせざるを得ないそういう方向にあらゆる面から突込んでおる、こういうふうに私どもにはとれるわけであります。そこで前に返りますが、運輸大臣はそんなあいまいなことを言わずに、一つ参議院の選挙が終了したならば、われわれは臨時国会において運賃法改正をする、そういうふうにはっきりと御答弁になったらどうですか。そのときにわれわれ社会党と、運賃値上げはやらなくてもこうすればやっていけるじゃないか、いや必要だと、そのときにあなたとわれわれと論戦すればいいと思います。そんなあいまいなことを言わずに、はっきりと、参議院の選挙終了後臨時国会において、運賃法改正を行なって運賃値上げをやるのだと、はっきりおっしゃっていただきたい。
  53. 吉野信次

    吉野国務大臣 鉄道運賃値上げにつきましては、先ほど来申し述べた通りでございまして、それ以上につけ加えることはございません。
  54. 楯兼次郎

    楯委員 それでは繰り返すようでありますが、国鉄経営調査会等があなたに勧告をし、全面的に勧告をいれると回答になっておりまする減価償却の二百七十七億については、この予算案を訂正する御意思があるかどうかお伺いしたい。もしないとすれば、もう昨年の暮れから今日まで国鉄がいろいろ検討調査をした項目はゼロ、こういうことになると思いますが、お答え願いたいと思います。
  55. 吉野信次

    吉野国務大臣 その点も先ほど申し上げました通り採算の点の見地からならば、運賃というものは値を上げないと無理だ、こう先ほどから私が申し上げた通り運賃問題というものは、ただ経済採算だけの問題ではないので、非常にいろいろ複雑でありますから、三十一年度国鉄予算を組むときには、運賃値上げということは考慮はしなかった、こう申し上げておるのであります。
  56. 楯兼次郎

    楯委員 どうもはっきりとれないのですが、そういたしますと、やがて運賃値上げをやる場合もあるというふうに解釈をすればいいのですか。
  57. 吉野信次

    吉野国務大臣 まあ問題が非常に複雑でございますから、私の答弁につきましても、解釈がいろいろ生まれるだろうと思いますが、ともかく国鉄の現状は引き合わない経営をしておるのだ、それをどういうふうにして国鉄というものを、おっしゃる通り公社の公共性を持つあり方にするかということについて、私は今いろいろなことを研究しておるのでございます。
  58. 楯兼次郎

    楯委員 時間がないようでありますから、労働問題についてごく簡単にお聞きしたいと思います。予算案を見ますと、公務員と公共企業体の職員との期末手当、奨励手当が違います。これはいつも年末、夏期には問題になりますが、なぜ一緒にしないのか、お答え願いたい。
  59. 吉野信次

    吉野政務大臣 お話通り違います。これは国有鉄道の方は公社でございまして、まあいわば一つの商業的企業でございますから、そこで従業員に対しましても、もし経費を節約するとかあるいは収入を多くするとかという場合には、特別な手当を出すことができる、こういう建前になっております。従業員というものの能率を上げてもらうという建前で、ただいま申しました通り一般の公務員とは違っておることになっております。
  60. 楯兼次郎

    楯委員 今運輸大臣の言われる業績賞与制度でありますが、これは出すという保証がないと思います。当然これは期末手当の分に上積みをされてこそ、初めてこういうものが生きそくるのである、こういうふうに私は考えますが、時間がございませんから次に移りたいと思います。  労働大臣と、これは運輸大臣関係しておりますが、いつもむし返されることでありまするが、給与総額制度のために、私はどう考えても公共企業体の組合と当局とは給与に関する限り無能力者である、とにかく団体交渉の価値がない、こういうふうに考えますが、労働大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  61. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 給与総額はございますが、御承知のように公労法では仲裁の裁定が出ましたときには、三十五条で当当者双方を拘束することにたっております。ところがそれを受けて十六条では、しかしながら予算上、資金上支出不可能なる仲裁裁定による協定のできた場合は、政府では不可能でありますから国会の議決を求める、こういうことでございますから、国会で議決があれば当然政府はそれを支出する政治的な義務がある、そういうふうに解釈いたしております。
  62. 楯兼次郎

    楯委員 だから問題が国会に移るのであって、給与問題については国鉄の場合でありますと、国鉄総裁も組合の代表者も無能力者だとこういうふうに考えるのであります。そこで仲裁が出ました場合に国会の議決があるわけでありますが、今日まで政府は一回も実施をしておらない、こういうふうに私どもはとっておるわけです。これは私どもばかりでなくて、仲裁安貝会、調停委員会が過去において、この給与総額制度はいけないというのでワクの制度の廃止の勧告をいたしております。それからつい八日の日に臨時公共企業体審議会ですか、これが新たに答申をいたしております。予算総則の給与総額制度を緩和し、仲裁裁定が当該企業内の資金上実施可能である場合には予算上の移流用を最大限に緩和し、給与額にかかわらず実施できるようにし、また業績賞与制度をさらに広く活用できるようにする等、給与について企業当局の自主性をできる限り認めるようにすること——八日の日にやはり給与総額制度のワクは何とか撤廃なり緩和しなければいけない、こういうことを答申しております。調停、仲裁、臨時公企体法審議会が口をそろえて、この給与総額のワクの撤廃について勧告をいたしておりますが、労働大臣はもう全部が勧告しておるのですから、さぞこの総額のワクの緩和についてはお考えがあろうと思います。お聞きをいたしたいと思います。
  63. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公共企業体労働関係法について幾多研究すべき点があることは、しばしばこの席で私が申し上げた通りでありますが、それについて三者構成をもって審議会を設けまして、その答申が出たことも御指摘の通りであります。そこで私どもといたしましては、せっかくああいう特殊な法律で下ったる裁定については尊重すべきであるという建前でありますから、そういうふうにしたい。そこでそうするにはどうしたらいいかということで研究を願って答申案が出たわけでありまして、ただいま私の方で、答申案に基いて政府部内で検討を続けておるところでございます。先ほどちょっとお触れになりましたが、公共企業体労働関係法の裁定が出て、従来の政府は一ぺんも尊重しないというふうなお話がありました。御存じのように過去二十回仲裁裁定が出ております。そのうちで政府側から申し出てその裁定の全額を削ったのは一回ございます。完全実施されたものは八回であります。そのほかは国会が中に立ちまして両者にあっせんをして、そして時期が若干おくれたのでありますけれども仲裁裁定は実施されておるわけでありまして、政府を御指摘になりましたが、これは現在の政府ばかりではございませんで、ただいまの公労法の建前が今申しました十六条二項の拘束を受けておりますからして、移流用の範囲内でできることはそれはありますけれども、私どもといたしましては、政府だけを責めてもあの法に欠陥があるのでありますから、そこで私どもはこの方法をどうやったらなるべく実態に即し、政府も経営当局も便利な方法はないかということで検討いたしておるのでありまして、給与総額をやめろとかどうとかいうことでなくて、あの法律をどうやってうまく実施することができるかということで、ただいまお読み上げのような答中が出たのであります。この答申に基いて公労法の研究を今部内でいたしておるわけであります。
  64. 三浦一雄

    三浦委員長 楯君に申し上げますが、残余の質疑が立て込んでおりますから、簡潔にお願いします。
  65. 楯兼次郎

    楯委員 これは見解の相違で今論争をしても仕方がないと思いますが、私どもでは、出されました裁定そのまま完全に実施をされておらない、こういうふうに考えておるわけであります。この論争はもうやめます。やめますが、それでは調停、仲裁を尊重するとおっしゃる政府は 具体的に言いますが、昨年公共企業体の調停案というものが出ました。これは十六号であります。これは国鉄の場合は大体二百八十円でありますが、給与是正をするという調停案が出まして、労使双方がこれを受諾いたしました。そこで国鉄その他の公共企業体は労使双方がのんだのであるから予算一つ計上してもらいたい、こういう要求を大蔵省に出しました。ところが大蔵省は、労働問題があまりわからぬのかどうか知りませんが、これをけっております。二百八十円の調停案を労使双方がのんで、そうして大蔵省の方に行ってけられてしまっておる。予算から削られておる。これで尊重するとおっしゃる労働大臣の裏づけになるでしょうか。卑近な例を一つ申し上げたのでありますが、いかがですか。
  66. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これは労働大臣より大蔵大臣の方が適切かもしれませんけれども予算上、資金上政府が支出不可能と認めた場合には国会の議決を求めるということになっておる、その点を私は申しておるのでありまして、法の建前がそういうふうになっておるのであって、政府予算上、資金上支出不可能だという場合には、当事者双方が三十五条において拘束はされておりますけれども政府はこれに拘束は受けないのだ、そこで田会の議決を求める、こういうことになっておるわけであります。
  67. 楯兼次郎

    楯委員 これが経済状態が悪くなっていけば別です。少くともよくなっておるということをあなた方が宣伝しておる。企業の成績も上っておる。しかも金額は二百八十円だ。労資双方はのんで、けっておる。もうあとわれわれ鳩山内閣に何ができるか、この調停仲裁の結論については何が期待できるか、こういうことを申し上げなくてはならないと思います。  それから時間がございませんからいま一つ実例を申し上げますが、労働大臣はべース・アップはやめた、昇給で一つめんどうを見よう、ところがやはり公共企業体の昇給資金は御承知のように昨年より減っておるのです。減っております。労働大臣のおっしゃることと予算編成とはさかしまです。こういう例を申し上げておきます。これは返答は要りません。  そこで最後にもう一つだけお聞きしておきたいと思いますが、外航船舶の利子補給の問題であります。われわれは海運界の好転によって、この利子補給というものはもう要らぬのじゃないかくらいに思っておるわけでありますが、しかし今ここで三十一億円今年度のやつを削減するということでも、これは問題が起るであろう。従ってこの海運業者の自己負担分は今五分になっております。これはずっと引き上げる必要がある、こういったふうに考えるわけでありますが、運輸大臣としてはどのようにお考えになるか、お聞きしたいと思います。
  68. 吉野信次

    吉野国務大臣 ただいまの問題につきましては、大体考え方は楯さんと同じ考え方をいたしております。しかしまだ何分にも多大の欠損を持っておりますし、まだ償却もしておらない分がたくさんございますので、今直ちに利子補給を全廃するということは適当でないかと思います。しかし御指摘になりましたように半分になっております。それから資金の面は半々ということになっておりますけれども、これもだんだんよくなって参りまして、自己資金が負担し得るものには、余分に自己資金の負担をさせてやろうというふうに考えております。定期船なり不定期船なりタンカーなりによって事情は違いますけれども、なるべく会社が自力でやられる限りにおいては、政府はこちらの方のめんどうを見て、資金は少くするという方針で参りたいと思います。
  69. 楯兼次郎

    楯委員 終ります。
  70. 三浦一雄

    三浦委員長 井堀繁雄希より関連質問の申し出がありますので、この際これを許します。
  71. 井堀繁雄

    ○井堀委員 さきにお尋ねいたしました事項の中で留保されております通産、労働関係について、簡単にお尋ねをいたそうと思います。これは今重大な段階に当面しております雇用の問題であります。ことに嶋山政府は完全雇用を呼号して選挙を戦かわれたのでありますが、実際これは全くナンセンスに近い政策であったと私ども考えます。ここに深刻に当面しております健用の問題を解決するためには、労働と通産と経済企画庁のそれぞれの責任者に明らかにしていただきたい点がありますので、端的にお尋ねをいたしますので、率直にお答えをいただきたいと思います。それは雇用の問題が最近非常な特殊な現象と申しますか、世界にまれな傾向日本に現われてきているのであります。そこでわれわれは、雇用の問題をどう定義をするかということに問題があると思うのです。  まず企画庁長官お尋ねをいたしたいと思いますが、雇用の問題は現在どのように形の上に現われているか。さらにこの雇用の問題を完全雇用に切りかえようというのでありますから、それが五年あるいは六年の後に、どういうふうに変化するかということについては、非常に重大なことで、他の政策とも深い関連を持ちますので、この際雇用に対する一つのはっきりした定義をわれわれは知りたいと思っております。現在労働力人口増加と雇用の問題をどういうふうに解決するかということについて一番大切な点だと思いますので、まず雇用の現実と、雇用とは一体どういうことか、この点について簡単でけっこうでございますから、明確に御答弁願います。
  72. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 労働力人口人口増加率より、五カ年計画において非常に急速に仲びてくる。特に日本におきましては、五年間に一二%ふえる。こういうようなことはほかの国で見られない大きな事態であります。これが一番大きな問題だと考えております。それにつきましては、根本的には国民所得を増加し、国民総生産を増加するということ以外に、労働力を吸収する道はないと考えております。もちろん一時的にはいろいろ産業の合理化をするとかいうことによって、一部の産業部面には思ったほど吸収されない。たとえば輸出に関連した第二次産業部門には思ったほど吸収されないということもあるかもしれないが、それは一時的には第三次産業に吸収する等の方法により、間に合わしていきますが、しかし基本的には将来において全体の生産を増加し、輸出をふやしていくことが、雇用問題を解決する唯一の道だと考えております。   〔委員長退席、稻葉委員長代理着席〕
  73. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねしておりますのは、少くとも雇用ということですから、労働人口雇用関係の中に吸収されてくるということでなければ雇用対策ではないと思う。従来政府のいろいろな資料や答弁を総合してみますと、労働人口のはけ口がどの方面にいっているかということを明らかにしていない。私の知る範囲内の統計から見ますと、今日労働力人口は、零細事業者に著しく増加してきている。これは雇用の形をとっていない。たとえば夜店をやったりかつぎ屋をやったりあるいは小商人をやっている。そういうものをみな労働人口が就業されているから、すなわち完全失業というものに現われてこないからということで片づけている傾向が強い。また世間もこれを許しているかのごとき感がある。これはおそるべきことだ。でありますから、雇用の増大という限りにおいては、少くとも雇用関係の中に労働が吸収されてこなければならぬことはいうまでもないと思うのでありますが、この点で完全雇用というからには、統計の上でこれもちょっと簡単なものを拾ってみましてもわかるように、二十九年と二十八年の増加の三十三万人がありますけれども、その三十三万人の中に、農林関係においては逆に労働力人口は四十六万から減少している。反対に非農林関係については七十九万人の増加を見ている。その七十九万の増加がどういう雇用関研に分布されているかということを見てみますと、一番多く出ているのは、家族従業者の形あるいは小企業、零細企業といいますか、自分一人で商いをしたり、自分一人で下職をやったり、こういう関係に十五万人、家族労働に二十三万人で三十八万人ふえている。でありますから、二十三万人が増加したところで、三十八万人上回ってふえているがゆえに、逆に農村の余剰人口をこういう零細事業の中に吸い込んでいる。これでは雇用関係ではないのです。こんなものは決して雇用問題を好転させたという数字ではないのです。雇用関係は悪化している。この関係についてはっきりお尋ねをいたしたいと思いますが、あなたの御答弁はあとでもう一ぺん伺うとして、今通産大臣一つ明らかにしていただきたい。通産行政の中にこの関係からいって雇用問題は入っている。中小企業という定義でありますが、通産行政をあずかっておられる通産大臣は、中小企業というものをどのように定義され、また対策を立てておられるか、まずこの点からはっきりお尋ねをいたしたい。
  74. 石橋湛山

    石橋国務大臣 一応中小企業というものは、資本金一千万円ですか、雇用人員が三百人以下のやつを中小企業といっておりますが、実ははっぎりしない。これが問題になるのは、中小企業といっても、むしろ零細企業に近い方が問題なんです。実ははなはだ怠慢といえば怠慢でしょうが、統計的に調査ができておりません。三十一年度予算にはごくわずかですけれども調査費用を見込んでおります。中小企業の実態を調査したい、こう思っております。お話のようにはなはだあいまいなんです。
  75. 井堀繁雄

    ○井堀委員 正直に御答弁があったように、鳩山内閣の中小企業対策というものは、中小企業それ自身をつかんでいないということを正直に告白されている。中小企業の実態がわからないで対策があろうはずがない。今日中小企業対策というものは、かくのごとく政治の中から放擲され、忘れられている。これは重大な事柄です。それで完全雇用などととぼけられては迷惑しごくなんです。そこで、通産大臣が今はっきりされましたように、私は中小企業という定義は三百人未満の小企業というだけではなくて、今問題になるのは、一体一人で商売をしたりかつぎ屋をやっている者を、通産行政の中で見るか、あるいは労働行政の中で見るかということは重大な事柄です。どっちもこれを相手にしないというのが現状なんです。今通産大臣ははっきり告白されております。しょい込んでくれるだろうと思って期待して私はきょうはお尋ねしようと思ったのでありますが、のっけから逃げられた。これはどこに行くかというと、労働行政の中です。そこで労働大臣お尋ねをいたしますが、雇用問題といえば、雇い主があって、そこに雇用されておるという関係において労働法は保護をし、また行政の基準がそこにあるわけです。ところが雇用関係がない。一体勤労と労働という問題をどうわれわれは定義したらいいか。一体日本政府のどこで雇用関係を持たない労働者の問題、しかも一番悲惨な生活苦に追い込まれておりますこれらの人々の雇用問題をつかみますか。まず労働大臣の労働行政の中でこれをつかむ方針があるかないか、あるいはそのワクの外かどっちかということについて、はっきりお答えをいただきたい。
  76. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように雇用の問題につきましては、政府は五ヵ年計画を立てました。井堀さんのおっしゃるのは、いわゆる雇用関係を確立したものでなければ、生活も不安定であって、その雇用関係を正式に持っておるものの増大をはからなければ、完全雇用の道へということは行けないではないかというお説のようでありますが、私どももそういうことを思います。日本は現在いわゆる雇用関係に立つものとしては、大体三三%ぐらいかと存じます。アメリカやイギリスに比べて、井堀さん御存じのように、いわゆる雇用関係を正式に締結しておるものの率は非常に少いのでありますが、そこが私は日本経済機構の特質かと存じます。その間に、あなたの今御指摘になりましたように、いわゆる第三次産業的なものが多いということは、非常に国民経済上不安定ではないか、こういうことだと存じますが、私どもはそういう点はもちろん御同感であります。そこで、政府が策定いたしました経済五ヵ年計画の最終年度の三十五年度においては、いわゆる第二次産業の面を、正確な数字はただいまは忘れましたが、四三%でしたか、その程度増強することによってそれに雇用を吸収していく、こういうことでございまして、一挙に雇用関係を持っ——いわゆる就労をやらせなければ不安定だということはわかっておりますが、そこまで一挙に行くことは、日本状態としてなかなか困難でありましょうが、経済五ヵ年計画を策定いたしましたのは、そういう面で第二次産業増強をはかって、それに雇用量の増大をいたしていくということで、そこで第三次産業的ないわゆる中小企業とも言われない、ただいまお説のようなものをどこでどういうふうに処置するかということでありますが、これは非常に大きな問題であることは確かであります。私ども日本経済機構を考えてみまして、それが非常に大きな問題であることは事実であります。数字から申しましても今申し上げましたように、正式の雇用関係を持っておるものよりその方が多いのでありますから、そこでこの下安定な状況をどういうふうに打開していくかということが、この経済五ヵ年計画で私ども政府が一番熱心に検討いたしたところであって、順次それに近寄っていきたい、こういうことでまず当初の五ヵ年計画の三十五年度においては、第二次産業増強をはかって雇用量の増大をはかる、こういうこと一応策定いたしたわけであります。
  77. 井堀繁雄

    ○井堀委員 労働大臣答弁は不得要領ですが、私がお尋ねしておる問題は、これは労働省の所管に移るべきものだと判断するには無理があると思う。さらに一番明確に通産大臣から答弁があったように、通産行政の中では救い得ない。これは一般に言われておる潜在失業なんです。これは認めなければいけないですよ。だから失業対策としてかかえなければならぬものと私は判断する。私は完全雇用というものは、全部雇用関係の中において生活を保障するという行き方が望ましいけれども、それがすぐ日本の現状において可能だとは考えていない。非常に困難なことだ、一番むずかしいことだと信じておる。でありますからこの問題の解決については政府は重大な責任がある。それで今日私のただしたいことは、どこの竹でもこれをかばっていないということなんです。今労働大臣は要領よく逃げる答弁としかとれない、五ヵ年計画をこれから立ててその剛に何とかなるということは、そんなゆうちょうな問題ではないのです。私は多く時間をもらっておりませんから、ここではっきりいたしましたので、この問題はまた別か機会にそれぞれ追及をいたすべき機会もあろうと思いますけれども、ここで大蔵大臣と企画庁長官にこれに関連して責任のある予算措置を伺っておきたいと思うのです。問題は失業対策として政府が見てきそおるのは完全失業を対象にしておるだけなんです。あるいはこれから完全失業の形において現われてくるものを予想して失業対策を講じておる。数字の上から見て私はそうしか判断できない。こういうことでは失業対策ではないのです。今おわかりだろうと思う。失業対策というものは今労働大臣も通産大臣も答えられておるように、むずかしい問題、困難な問題、深刻な社会不安を誘導する温床になる社会悪の原因を作り上げておるいろいろな問題から問題になってくるのであります。こういう問題を解決するための失業対策というものが出てこなければならぬと思う。そこで今やっております緊急失対あるいは特別失対、こういう法律に規定されております失業対策費用というものも、どだい出し惜しみしておる。この前私があなたに注文しておいた、出たものに対して抗議をすることは困難だ、失業問題が非常に深刻になってくるであろうから——承知いたしました、出しましょうと言っておられたが、まだ出しておらない。失業対策はいろいろ社会不安が起ってくる、いろいろな問題が起ってきますが、こういう問題に対してこの程度で事が足りるとお考えでありますか、あるいはこの予算の運営の仕方でうまい手があるとお考えでありますか、この点を一つ大蔵大臣からお答えいただきたいと思います。
  78. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 失業対策につきましては三十一年度予算でも格段の注意を払ったわけであります。特に私がすでに御答弁申し上げましたように、今回は臨時就労対策事業費として建設省所管に六十九億計上いたしております。さらに昨年成績のよかった特別失対も三十五億ばかり計上いたしております。そうして両方で四万人としまして、一般失対で二十八万八千人、合計約二十四万八千人、昨年に比べて二万八千人の増です。さらにまた失業者多発地帯については、先刻お話のありました川崎線、これも二千人、約三万人は昨年より増加することになっている。なお特に今回は資材費等を計上いたしまして、金額もふやしまして、失業救済に便宜を与えるように、予算面では、今回の予算においてできるだけの配慮をいたしておるつもりであります。
  79. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私のお尋ねいたしましたのは、今完全失業として現われているものの対策ではない。それはお聞きの通りじゃありませんか。時間があればもっとお尋ねをして、そうすればもっとはっきり答弁をしなければならぬ義務をお感じになると思うのですが、遺憾ながら時間の関係意見を伺うことができませんが、結論的に申し上げますと、今日の失業対策というのは、一般に潜在失業、不完全労働、この問題に備えなければ失業対策にならない。今あなたが答弁しましたけれども、その答弁だってインチキに満ちたものです。PWの形で二百八十二円の予算をはじき出すのだって、むごいはじき方をしております。   〔稻葉委員長代理退席、委員長着席〕 その算定方式の中だって、二十八年の統計ではじき出してきておる。もう今度はずっと変ってきておりますよ。そういうものも値切っておる。こういうことでは失業対策に熱意を持っておる政府とは私は思えない。しかしそのことはいずれあなた方責任を背負わなければならぬと思います。  最後に一言労働大臣に、私はこの問題と関連が深いから申し上げておきたいと思います。先ほどもまた今も、当面の問題になっております公務員や公企業体あるいは民間の賃金値上げの問題が起っておる。これに対して労働大臣政府を代表されまして、べース、アップはいけない、定期昇給の形で賃金問題を解決しようということを、何かこの内閣の建前のように言われておりますが、私はおそるべきことだと思う。もちろん私どもも大幅なべース・アップを行うということが物価にはね返ってきて、それがいろいろな政策を刺激するであろうことは十分承知しておる。しかし大事なことは今言うように、失業対策についても手をこまねいておる、零細企業のこの危機に当面しておる問題に対しても、手だてがない、こういう場合において民主主義の許された最小限度の国民の権利としては、みずからを守るために、みずからの人権を守り、みずからの生活を守るための戦いがある。その戦いが行き過ぎであるかもしれない、あるいは失敗があるかもしれない。その失敗がもしあったとするならば、施策を持たない政府の責任なんだ。人権を尊重し生活を保障する義務が政府にはあるんだ。その政策を持たなかったから、そこに必然的に起ってくる国民の慣激もある。この責任を痛感しなければならぬ。労働行政は特にそうなんだ。労働者の人権を守り、生活の安定を育成していくための重大な責任があるんだから、私はべース・アップは好ましくない、けれどもベース・アップをやらなければ、自分の生活が守れない。これを適当に保護してくれる道が他にない。もしそれがあるならば、失業対策というようなものに対しては、はっきりしたものが出てくるはずだ。私はきのうの住宅対策ではっきり聞きたかったのだがおいでがなかった。今日住宅問題は労働時間の問題に非常に関係してきている。八時間労働制の必要なことは言うまでもないが、現在は通勤に非常な労働の減耗をしている。あなた方は口を開けばコスト・ダウンを言うが、コスト高になっているのは労働にむだがあるからだ。労働のむだは政府施策の失敗の中に随所に出ている。住宅対策に出ており、失業対策に出ている。こういう問題を積極的に取り上げて、そうして労働運動に対して注意があり、警告があり、親切な指導援助が行われるということが政治でなければならぬ。自分の悪いことはたなに上げて、その結果から起ってくるものに対して、目の色を変えて騒ぐというようなことは、私は災いを拡大する以外の何ものでもないと思う。そういうことでは健全な労使関係の平和は生まれてこないし、産業平和というものは出てこない。こういう点から、公務員あるいは政府の直接かかえております労働者の賃金問題等が、やがて社会問題をかついで出てくるだろうと思いますが、そういう問題に対して十分責任ある態度をもって解決されんことを要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  80. 三浦一雄

  81. 神近市子

    神近委員 私は第二十二国会での売春等処罰法案の否決に当りまして、決議されました決議に基きまして田中官房副長官、法務大臣、文部大臣、厚生大臣大蔵大臣の方々に多少御質問を申し上げたい事項がございます。  官房長官お尋ねいたします。最近お持ちになっておられる売春対策連絡協議会で、法案の御作成をお始めになっているそうです。その法案の原案ともいうべきものができたということでございますが、そのA案あるいはB案、両方とも簡単でけっこうでございますから、内容をお聞かせ順いたいと思います。
  82. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 先般の国会におきまして、売春取締りに関します法案の作成をすみやかに政府においてなすべきであるというような強い委員会の御要請もありまして、なおまたさらにこれをもっと深く掘り下げてやるためには、法律に基いてでも委員会をさらに拡充強化して、これによってなすべきである、こういう御決議がなされたのであります。従いまして政府といたしましては審議会法案を準備いたしておることが一つ。それからもう一つは花春法そのものについての研究をいたさせておるのでございます。これは最終的に論はまだ出ていないようでございまして、この研究の過程において委員会の方にも十分に連絡して案を練るようにということで、今研究を進めておる状況でございます。従いまして本日法の内容がどういうふうにきまりておるかということは、今私の手元にございませんので申し上げかねます。もし必要とありますれば、担当しております田中副長官を出席いたさせまして、御説明させてもよろしゅうございます。
  83. 神近市子

    神近委員 私は原案について伺いたかったので、こまかく伺わなくてもいいのですけれども、この立法は大分けにいたしまして、個人の女の人たちをどうするかということ、それからそれを仲介する者、それからこの営業をさせて搾取する者、あるいはこれに金融してその利益を上げる者、これら四つくらいの項目に分れると思うのです。一番大きくは婦人の問題なのでございまして、婦人に対する措置をどういうふうになさるか、何でもラジオの吹き込みがもうすでにあったということを伺いましたので、私はもう御決定の土で御発表になったのかと考えていたのでございます。
  84. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 お答えいたします。ただいま田中副長官を呼びまして、今日までの検討の結果を報告させまするが、今御指摘になりましたうち私が承知しておりまするのは、単純売春に対するところの取締りにつきましては、法律においてこれを規定することは非常に困難な点もあるそうでございます。従いましてこれは各地方の条例においてやっている点もございますので、そちらの方との関係において研究すべきである。ただし今御指摘になりました、いわゆる売春行為を行うところの環境、これを清掃いたすべきだ、従って金融の問題、あるいは場所の提供の問題、あるいは人身売買、前借等、こういうものについては法律に基いて禁止する、こういう方針のもとに研究を進めているというふうに私は報告を受けている次第でございます。  なおこの方法につきましてもこれは非常に重大な人権等、それから社会的な問題になりますので、その内容をより深く検討するために法律に基いて審議会を設けまして、その答申によって本格的な法を整備していきたい、現在こういうような考えを持っている次第でございます。
  85. 神近市子

    神近委員 この前売春問題対策協議会というものが犬養法務大臣時代に作られまして、それが昨年の八月に答申したことがございます。その約二年近い間というものはこの協議会に非常に期待をおかけになって、日本の最高の責任者をもって構成したものであり、重大な法案であるから、この協議会にかけてその意見を尊重して、その結果を見た上でこれを参考にして国会通過するような案を作る、こういうようなことがもう再三再四繰り返されたのでございます。それでこの答申が行われておりますが、罰則の面ではあなたがおっしゃった通りに、ある程度満足のできる方向に向っていると思いますけれども、更生面の問題については、どの程度計画を持っておいでになりますか、お伺いしたいと思います。
  86. 根本龍太郎

    ○根本政府委員 更生に関する問題でございますが、これは大きく考えますれば、非常に広範なところまでやらなければなりませんが、現在厚生省において婦人相談室を持っております。あるいは労働省においては婦人少年局、こういう方面において御指導申し上げたい、あるいは救済する等の方法もございましょう。しかし売春行為をしておりました人が更生するために、政府が法律上具体的に特別な予算措置を講じて直接その人に金を貸すとか、あるいはまた生業資金を出すとかいうようなところまでは、ただいまは参っていないのでございます。これは方法についてもいろいろ問題もございましょうし、そういう関係からいたしまして、それらの問題をも法律によって作られまするところの審議会の御答申を得て整備いたしたい、こういう考えを持っておる次第でございます。
  87. 神近市子

    神近委員 また審議会が大ぶん長く利用されるのかもしれないと、われわれはおそれているのですけれども、今ちょうど田中副長官がおいでになりましたから、大体の骨子——私に与えられた時間が一時間でございますので、大体の骨子でけっこうでございますから、ちょっと原案を承わりたいのでございます。
  88. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 法案内容はむしろ法務省からお答えするのが適当だろうと思うのでありますが、ただ内閣といたしまして取りまとめをいたしておりますから、全体のことを大体知っておりますので、私から便宜筒単に御説明申し上げます。  まだ名称もはっきりいたしておりませんが、この法案は、先ほど官房長官から申し上げましたように、単純売春と申しまして、光春行為そのものを処罰することについてはこれは地方におまかせする。現在各都道府県もしくは大都市におきまして、売春取締りに関する条例ができておりますので、この条例に全部おまかせいたしたいと思います。国としてやるべきことは、法律的事項として法律をもって規制せねばならぬようなことについて国がお引き受けする、こういう建前をとっております。従って法律そのものでは、面接に単純売春、いわゆる売春行為そのものを処罰することを避けまして、むしろこれらの売春の環境なり不良の温床を全部排除していこう、こういうような建前法案を形づくっております。従いまして、売春を周旋する者であるとか、売春の場所を提供した者、それから婦女を欺き、あるいは困惑をするような窮境に陥れて、やむを得ず婦女が売淫をせざるを得なくなったようなそうした行為、それからいろいろ親族、業務、雇用その他特殊の関係にある者が、その影響力を悪用いたしまして、婦女にやむを得ず売淫をさせるというような特殊の関係を利用した者、それからいわゆる前借制度というものに対しては、これを絶対に禁止させる。それから売淫をさせるような契約をすること自体もいけない。それから売淫施設を経営する、いわゆる売淫の場所を作るようなことに対しましては、絶対にこれを排除しよう。それから売春施設の経営に当る資金あるいは建物、不動産、また運転資金そうしたものを供与した者に対しましても処罰をする、こういうような環境の粛正、排除というものを重点にして国が法律をもって規制することだけを、一つ今回の売春法の内容にしていったらどうか、こういう建前でやっております。  それから当初婦人の保護更生に関する法律案を作る予定でおったのでありますが、予算の計上が十分でありませんので、やむを得ずこの点につきましては法律案を出すことを断念いたしまして、とりあえず行政措置としてこれをやる。そうしてさらにまたこの審議会等におきまして十分御検討願って、必要があるならばまた予算的措置を講ずる、こういうようにいたしたいと考えております。
  89. 神近市子

    神近委員 総理府は予算の請求としては百五十三億御請求になったのですね。そうしてそれが取れれば更生施設をしようと思ったけれども、それができないから、単純売春は罰しないで地方に——地方といいましても、都道府県、市町村まで入れまして、条例がございますのは五十五くらいでございますよ。私はその点では非常に整備できるかどうかということを考えているわけですけれども予算がないからそうなさったのでございますか。個人売春を不問に付するというようなことになるわけですが、そこのわけ合いをちょっと伺っておきたいと思います。
  90. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 今の単純売春を地方条例にまかすかどうかということは、保護更生施設の予算が取れたかどうかということとは全然別個の問題でございまして、国の考え方としましては、単純売春を法律まで作って取り締る必要はない。これはむしろこまかい勉方条例にまかせて、そうして単純売春については地方条例によって十分取締りの目的を達成することができる。国としてはむしろ法律によってその環境を粛正する、そういう方面に重点を置いた方がすっきりしたものができる、こういう観点から法律でやることは、不良の温床を少くし環境を粛正する、こういう点に重点を置いたわけでございます。
  91. 神近市子

    神近委員 その大きな方向としては私大へんけっこうで、巷間に業者だけは助けておくのじゃないかというようなうわさがいろいろ出ておりましたから、今原案の御趣旨を承わって大へんけっこうだと思うのです。ですけれども、条例でこれを取り締らせるという点に、私はまだちょっと納得のできないことがある。それは今まで条例がなかったのではなくて、これがやれなかったということが一つ。それから今五十五くらいあるので、あと作るように御奨励になるお考えだろうと思うのですけれども、第十九国会から第二十二国会にわたりまして、大へんこの問題は論議になったのでございます。ですけれども、地方条例では何ともできないから単独の禁止令に類するものがほしいということは、これはあなたではございませんが、労働省の転落防止に尽力していられる方々、特に警視庁の方々、それから私はどこかに書き抜きを持っておりますけれども、単独の立法がぜひ必要だということをおっしゃった。その中に、売春をする者を整理しなければ、どうにもこれができないということをおっしゃったことがあるのですけれども、それで私どもは独立した立法——半分は地方条例にまかせるというようなものでなく、厳とした確立されたものがほしいということが今日この法律要請になっていると思うのですけれども、その点どういうわけでそういうことになさったのか、ちょっと理由を承わりたいと思います。
  92. 田中榮一

    ○田中(榮)政府委員 従来の地方条例によります。取締りは相当励行されておったのでございます。ただそれの裏づけになります保護更生施設の面が非常に欠けておりまして、いかに取締りを励行いたしましても、それが全部むだになりまして、あるいはむしろ逆効果を来すというような場合があったのであります。今回は国が法律をもってこうした環境を粛正するという裏づけがございますので、たとえ地方条例でございましても、取締りの励行、それから環境の粛正と相待って、売春防止に相当役立つのではないか、こう思っております。従来はそうした方面の裏づけがないために、単に取り締る一方で参ったために、十分効果が上らなかったのであります。今回はそういう裏づけもございますから、私は十分これで効果が上るものと考えております。なおさらにこれに加うるにりっぱな更生施設があるならば、さらに効果が上るのではないか、かように考えております。
  93. 神近市子

    神近委員 私もあなたのお考えのように、ほんとうに施設を供与する者、資本を供与する者、この中間の仲介をする者、あるいは前借その他の項目で厳重にお取締りになれば、過半の効果はおさめることができるということで納得するものでございます。  次に法務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、法務大臣には先日審議会設置法案のときに多少御意見を伺っております。吉原とかフジヤマとかいうことについて、巷間に流布されておりました問題は誤解であった、新聞の誤報であったということで私は了承いたしました。その点では今まで法務大臣をいろいろ臆測いたしましたことは大へん悪かったと思いますけれども、今ちょうど田中副長官がおっしゃったように、やはり個人売春についてどういうふうにしようかということの私案を、法務大臣としてはお持ちになっているはずでございます。私はこの点でこの間も学識経験者——経験者はちょっと困るのですが、(笑声)学者方をお願いしていろいろ伺ったのですけれども、それで私はこの前法務大臣が婦人を罰することは要らないじゃないかとおっしゃったあれを、もうちょっとよく御真意を伺いたい。私は今まで、たとえば施設を預かっている人たち、それから検挙に当られる警察の方々、あるいは保護補導に当られる婦人局の方方から、売春というものをはっきりと禁止する、これはやめさせるのだという立法がないと、どうにも仕事がやりにくくて実効が上らないという御要請をずいぶん聞いているのです。今度はその点が、誤解がないようにお願いしたいのは、私どもは決して婦人たちを縛って喜ぼうというようなことは絶対に考えていないのでございます。ただ長い間の営業の中に落ち込んだ人たちを連れ戻すということには、ある期間の再教育が必要なんです。そのことで法務大臣の今お考えになっている構想を、それでいいのかという私は疑惑を持ちますのでお尋ねしているわけですけれども一つその御構想を伺わせていただきたい。
  94. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えを申します。私は売春問題に関しては婦人は気の毒な立場におる、そのことをあくまでも国家は同情してみるということが大切だと思います。取り締る方は主として、職業的に婦人をもてあそぶ、弱い婦人を利用しておのれの私腹を肥やし、しこうして社会の風紀を乱す、この方面がよろしくない。ことに戦後非常にこの方面が乱れて参りましたからこれを取り締る。それにはどうするかといいますと、今田中副長官が述べましたような点は事務的に考究する必要がありますが、同時に神近さんが今失言だと言ってお笑いになったけれども、経験者をやはり委員に入れなければいかぬと思う。(笑声)これが大事なところで、今まではものを知らない人が、ただ人を憎んで形式的に取り扱っていたから、法律もできなければ、できようとする法律がぴったりこなかった。だから今度は相当経験者を委員の中に入れまして、そうして社会の表裏に通じた人が、どうしたらいいか、どの方面は取り締ることができないものだ、どの方面は取り締ってはならないものだ、どの方面はがっちり取り締れば効果がある、この三つの方面審議会で明らかにすれば、必ずあなたのなるほどと御承認下さる案ができると思っております。私はどうもできそうに思うのです。
  95. 神近市子

    神近委員 一つだけ大へん御同情があって美しいお心持がよくわかるのですが、今までどこでも言われておることは貧乏がもとだからこれは安易に——この前の法務委員会のここでの採決のときも、何人かの方々の口から出たのは、これは貧困から落ちたのだ、貧困だからこれを救わなければならないということ、これは非常に便利な言葉で、社会も納得し、覚えるのも簡単で、貧乏だからこうやっておるのだということになるのですが、私ども労働省の売春白書、それから最近出ました婦人少年局の調査というようなものを信用しないというのは悪いような気がするのですけれど、あの業態は絶対にほかの営業とは違う業態なんです。それで決して真実を言わないということが一つ、それから虚妄を語るということが一つ、とにかく婦人を非常に教育しておるのです。こういうふうにやれ、社会というものはばかなものだと言っておるかどうか知りませんが、貧乏と哀れな者だと言えば、これは無批判で通る、そういうことでいろいろ調査にそごを来たしたことがあります。終戦直後吉原に調査に行った御婦人がありまして、これはうまうまとひっかかって七割が未亡人であったといって驚いてお帰りになったことがありました。続いて神崎さんが調査に行かれたときはそれが反対であって、三割が未亡人であったというような事実があるのでございます。労働省の売春白書だとか、あるいは婦人少年局の調査だとかは、大部分が貧乏だということで、この間東大の先生方をお呼びしても、同じような理論的な根拠によって発展させたことをおっしゃっておられましたけれど、私どもはもうちょっと考えなければならない。今ここに昭和二十五年から二十七年にかけましての二年間、神奈川県の高橋芙蓉氏の県立婦人相談所の相談係になっている人が、調査をしようと思ったのでなく、自分が扱ったケースをあとで集積したものと、それから婦人少年局が、八十三例でございますけれども、鹿児島と山形でやった調査とがありますが、これが一番実態を明らかにしておるのではないかと考えております。そして貧困から落ちた者は高橋さんの調査の場合には二割五分、それから友達に誘惑されたり、自分の好奇心あるいは何かもっと物がほしかったというようなことから落ちた者、すなわち個人の責任で落ちた者が七割五分、こういうような調査になっていますから、その根拠を少し考えていただいて、貧困だからこれは救っておかなければならない——貧困で救わなくちゃならないものなら、まだニコヨンの婦人たちとかあるいは生活保護を受けている子供をかかえた母親とか、その人たちも同列に考えていただかなくちゃならぬ。この人たちだけを特別に優遇するという法はないというふうにいつも考えているわけですけれど、その論拠を一つよく頭に入れておいていただきたい。昨年の何日でございましたか、警視庁の養老さんはこういうことを言っておられます。「幾ら検挙しても、罰金以下の軽い措置では帰った日から商売を始める。」そういうふうな事実を考えましても、これは個人売春だからまあ地方にまかせておこうとか、あるいは軽い措置で放免してやろうという声もありますが、私どもは決して苦しめてうれしがっているのでなく、今日のこういう状態になったものを、何とかここでブレーキをかける程度のことをやっていただきたいと考えていますから、こういう御注文を出すのでございます。その点でもう一ぺん個人売春の対策には考え直していただけないか、これが今私のあなたに対してお尋ねする要点でございます。
  96. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 その点私は神近さんと全然同感でございます。過去の国会質問応答も聞いておりますが、貧乏なりということで隠れてはなりません。あんなことで売春問題というものが気の毒だとかなんとかいうのは、あれは近松の浄瑠璃にある方面のことでありまして、今の時代にあんなことが問題になるのじゃない。やはりあなたのおっしゃる通り環境がいけません。日本の今の社会がいけない。これを立て直させなければいかぬ。ただし個人が特別な関係を結んで仲よくなるのを干渉してはならぬ。(笑声)これは基本的人権尊重の意味においてしてはならぬが、それ以外の淪落の女というものは、やはり考えなければいかぬことでありますから、この点はあなたと全く同感であります。同じ心持で、法律案を形式的に作らないで、ほんとうに人情に徹して、社会のほんとうの実態を把握して解決していきたい、こう思っております。だから形式的な議論、あんな逃げ口上のことには耳をかさないつもりです。
  97. 神近市子

    神近委員 それでだいぶ安心いたしました。私はこの間のあなたの御答弁では、これはどうなることかというふうに考えましたので、一つこの個人売春をどうするかということ、これは今保安処分にするとか行政罰にするとか、あるいは地方にまかせ心とかいろいろ考えられておりますけれども、業者に対する罰の方、これをさせる者の方はだいぶしっかりしてきたようですけれども、この個人の場合一つ考えて、よく御研究願いたい。  それから多分皆さんのお手元にも来ておると思いますけれども、非常にりっぱな陳情書が来ているのでございます。これは先般結成された女子従業員組合連合会と、それから売春問題に関する陳情書と申しますのは、これは全国性病予防自治会と申しまして、吉原に本拠がございます赤線地区の組織でございます。どちらを見ましても、この前論議をなさった法務委員の方々を上回ったりっぱな文章でございます。非常にりっぱで、この女の方々は「私達は神聖なるべき肉体を一個の商品として生活の資を得る行為が人倫の道に背き人間性の堕落であることは、私達自身痛切に感じているであります。従って売春禁止法の成立を真から切望するものは私達であります。」これは婦人たちの陳情書の文句であります。それから性病予防自治会という赤線の業者の団体から、やはり同じような、「今回私達特飲業者が陳情申上ぐる趣旨は、売春問題の解決に関してであります。因より売春の事たるや国家風教の上よりも、保健衛生の見地よりも看過すべからざる重要なる人道問題があることは論議を要せざる所であります。」こういうように婦人も業者も、自分たちの営業というものが社会と人道にはずれていたということを自認しているのです。ですからこれは指導さえよろしければ、転業させるとかあるいは更生させるということは容易で、私はこの文句から見ても、これは三回にわたるこの法案審議に当りまして初めてもらった陳情書でございまして、私は非常に驚いて拝見したのでございます。  けれども裏の方に行きますと、また別のものが出てくる。それは業者が関東連盟理事会を開いて協議しているのでございます。私はこの点を頭に入れておいていただきたい。この業者の問では、ともかく非常時体制をとらなくちゃならないというので、いろいろ論議されているのですけれど、気になることは、「業者は直接運動をより以上、強力な線で行ってもらいたい。」ここがどうも私どもはくさいと思うところで、この前もいろいろここの廊下で立ち話のことが委員会に出ましたり、あるいは私の友達が現金の授受されるところを見たりいたしたことがございましたけれども、それは問題といたしませんでも、ここにこの分は書かないでおくということを、言ってあるところは、これは運動資金の相談だろうと私には思われるのでございます。この決議なんかでも、強力に実行運動をやるということで、また何か変なことが起らないように、この点法務大臣は清廉な方だということをもって信頼されている方でございますから、一つ信念に徹してやっていただきたい。これをお願いいたしまして、私は法務大臣に対する御質問を終ることにいたします。  次に文部大臣に一、二お尋ねいたしたいと思います。  文部大臣は、前の国会のときに民主党の政審会長でおいでになった、あの当時には、六月十五日には自由投票ということがきめられてあって、そして七月十九日の法務委員会の採決の日には、党議で縛って、そして共同提案者になり賛成者になった婦人の方あるいは他の議員の方々もこれを規制なさった。そのもとは政審会によっての御決定ということだったのですが、最初党議で自由投票ということをおきめになって、そして審議が進むうちに、党議でこれに反対というふうな御決定をなさったそのいきさつがございましょうと思います。その方針の変化というようなものをちょっと伺わしていただきたい。
  98. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 売春をいかに扱うかは、日本の政治としては非常に重大な問題でございます。かりにも国政を担当するための一党を立っておる以上は、やはり貨の方針として深く広く考えまして、一致の行動をとるべきだと考えます。それゆえに自由投票ということはやめたのでございます。
  99. 神近市子

    神近委員 大事な問題だから党議によって決定しなければならない。御存じのように、国会の中には営業者である人もあるし、あるいはそこの選挙によって出て来ている方もありますから、これを一律に党議によって縛るということが必ずしも実情に沿わないとしうことで、自由投票——良心をもってこの社会悪の国家に対するあるいは国民生活に対する影響を憂えるというような方々が、自由に行動なさってよいということをせっかくおきめいただいたのに、そういうむちゃな——たとえばいろいろな業者もある、あるいはそれにつながっている人もある、そういうものを無理に縛ろうとなさったところに、何か私どもには無理が感じられる。そして委員会採決の前日あたり、婦人たちが陳情に行ったときに、あなたはえらく怒っていらっしゃった。あれはどういうことなんですか。私は、これは自分で見たのではないのですよ。あとで伺いましたけれど、あなたは、女の子を牢屋に入れるのじゃないかというふうにおっしゃったそうです。だれも、牢屋に入れたがってたわけじゃないので、いろいろの実態を調査して、こういうふうにしていかなければ効果がないのじゃないかと考えてああいう法案になっていたのですけれど、あなたは御研究にもならないで、女の子を牢屋に入れるのかというようなことをおっしゃって、そうして、いいえ、そういうわけじゃないので、あなたのような御反対では業者の方を利益することになるんじゃないかと反論した方がありましたら、あなたは立ち上って、今にもつかみかかるような態度をおとりになったということで、婦人団体がえらく怒っていたのです。私はその場に居合せなかったので、決して御批判申し上げるわけではないのですけれど、そこらのお気持のいきり立ち方というものは、どういうところから起きてきたのであるか、伺いたいと思うのであります。
  100. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 かかることをいろいろ申すことはあまり事に益がないと考えますけれども、あのときのいきさつは、婦人陳情者のうちのある人が、私及び私の同僚が業者より請託を受け収賄したといわんばかりの言辞を弄されたのです。政治家としてこれぐらい大きな侮辱はありません。それゆえに、その誤解なることを私は強く申し上げたのでございます。
  101. 神近市子

    神近委員 それはどうも大へん恐縮でした。私は何もその婦人団体に連絡を持ったわけでも何でもなかったのですけれど、御存じの通りいろいろのデマが飛んでおりました。あの後の週刊朝日に金高まで出ているし、私がある地方に参りましたところが、女が二百円ずつ、業者が千円ずつ運動資金を出したというようなうわさがございまして、その証人は、時間さえかければいつでも呼び出すことができるようになっているわけですけれど、まあその必要は今ない。特に清瀬文部大臣が………。
  102. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は、政治家になってから収賄したことはないのであります。収賄せりという疑いを受けたことも初めてであります。
  103. 神近市子

    神近委員 私は今、清瀬さんがどうというようなことを申し上げたのではない。ただ新聞記事と、それから地方に行きまして実情を聞きましたことを申し上げようとしたので、何かお気にさわることを申し上げたのでしたらお許し願いたいと思います。私は、この問題は教育と非常に関連があると思うのです。それで、御存じのように、この前の松村文部大臣に申し上げましたから、あまり申し上げたくないのですけれど、学校教育というものがほとんど破壊されている。川治温泉とかあるいは丘庫県の尼崎とかあるいは横須賀とか、学校が特飲街あるいは売笑街に包囲攻撃されていて、学校が逃げ出さなくちゃならないというようなところまで来ているところが、全国にたくさんあると思うのです。教育との関係におきましてこの法案の成立ということが非常に必要ではないか。その点文部大臣は、今日の御心境におきまして、この法案が教育面からぜひとも必要であるというようなお考えが出ているかどうかということを伺います。
  104. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 このことは教育に非常に関係がございますので、むしろわれわれ教育に従事しておるものの重大責任、よく掘り下げて考えますれば、売春行為というものは人格の尊厳を害するものであります。今日の教育のもとは教育基本法にありますが、個人の価値を尊ぶ、この大原則に違反いたしておることで、今皆さんのおっしゃる処罰も処罰、それからして更生施設も更生施設でございますけれども日本民族をして個人の尊さを心から知らしめるということがこの問題の第一なんです。ですから、この重大責任者は私でございます。日本の道徳を徹底せしめて心からこういうことがないようにいたしたい。ただ、今日の教育は年令の発達に応じてやっておりますが、高等学校の段階において純潔教育ということを教育指導要領の中に入れておりますが、一層私は——学生はむろんでありますけれども、社会教育も私の責任であります。世人をして個人の尊厳を心から感ぜしめるようなふうに、私はしむけていきたいと存じます。この法律の成立は心から私は祈っております。
  105. 神近市子

    神近委員 それで、これは総理府の管轄ですけれど、新生活運動というものがありそうになっていることは御承知のことと思います。あれなんかの予算はあとで大蔵大臣お尋ねいたしますけれども、今あなたは純潔教育ということをあなたの責任においてやっている。純潔教育を幾ら教室で講義して聞かせても、環境ということが一番大事だと思うのです。幾ら学校の中で砂をかむような口から口の話を聞いていても、一歩外に出れば目に美しいものや楽しげなものがいろいろあるということになっては、その教育がこわされることになる。私はその点では、やはり新生活運動の綱領の中に売春をやめさせるような社会教育が行われ得るように、婦人会とかPTAとかあるいはその他の成人の組織とか青年の団体とか、そういうところで——かまどの構造だとか時間の厳守とかいうことは、もうちょっと先でも私はがまんができると思うのです。この問題を早く片づけて——青少年の今日の犯罪の状態なんかもうあれから来ているということは明らかなんです。私はこの点の推進に閣内で文部大臣が強力に御協力下さるようにお願いしたいと思うのです。いかがですか。
  106. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 ごもっともでございます。御承知の新生活運動は日常生活を合理的、文化的にするということを主張しております。ただいま神近さん御承知通り新生活運動協議会というものがございます。私もその協議員の一人であります。今御指摘の時間のことその他のこととともに純潔運動はいたすことに過般取りきめておるのでございます。強力にいたしたいと存じます。
  107. 神近市子

    神近委員 厚生大臣にお伺いいたします。新聞でも伺いましたし、先月末のNHKの放送で山下政務次官からも伺いましたが、今度のこの売春対策に必要な予算として十億円を大蔵省に要求した。その要求はもうしぼりにしぼった予算だったのです。それが通らなくて一億九千万円を大蔵省からやろうと言われた。しかし一億九千万円ではどうにもならないから、これを突き返して、十億でなければもらわないというような放送があったのですけれども、これは私自身聞いたのでありますが、その要求をなさったことは事実であるかどうか、そして十億を要求なさったことが事実であるならば、どういう内訳でその予算を想定なさっていらっしゃったか、それをお伺いしたいと思います。
  108. 小林英三

    ○小林国務大臣 神近さんの御質問にありました、いわゆる婦人のそういう問題につきましての厚生施設に対しまして十四億要求いたしたのであります。それは大体各都道府県に窓口機関であります相談所を設けまして、そして財政及び取締り当局の能力等も勘案して、約一万人収容できるような保護施設を設けてやっていきたいという最初の厚生省の腹で要求いたしたのであります。しかし国家財政の関係から大へんに少くなっておりますが、厚生省といたしましては本年はまず六大府県に窓口であります相談所を設けまして、そしてそこに一時に二十人くらい収容できるものを設ける。そのほかにもでき得れば各府県に相談員を二、三人置いて、将来財源がございますときに累増してやって参りたい、こういうように考えておるわけであります。
  109. 神近市子

    神近委員 これは法務大臣にも聞いておいていただきたいのですけれども、私どもは、ちょっとさっきも申し上げましたように、そんなにたくさん、今一万人とおっしゃったのですけれども、一万人が一時に来ることはないと思うのです。大体五十万というのは推定でございまして、いわゆる登録されている、調査が行き届いている人は十三万、そのうちで約四万くらいが赤線区域でありまして、あとは基地ハウスと芸者でございます。そしてそば屋だとか中華そば屋とか一ばい飲み屋だとかの業態を持っているものを、潜在することは事実であっても発動しないものをいきなり縛ることはできないだろうと私は思うのです。これは人権の上からもあるいは警察の方の実態からいっても縛ることはできない。まず問題になるのは売春オンリーで、皆さんが御視察なさるか、あるいはたまたま行き合せてごらんになれば、紅茶の支度もほとんどないようなところへいきなり部屋が窓をあけて待っている。そういうところのとりこわしが第一番の必要事であります。この前の売春問題対策協議会の案をお作りになった正木先生は何と言っていらっしゃるか。御存じだろうと思うのですけれども、一ぺんに欲をかくべきではない、安政条約が改訂されたときに外国人から日本にはろくな監獄ないではないかと言われて作ったのがたった三つの監獄だった。それから家事審判所を作ったときは東京と大阪であった。児童福祉法が通ったときの少年鑑別所がやはり東京と大阪、二つであった。それがだんだん発展していくのですから、私は一億九千万円もらっておけばよかったのではないかというふうに考えるのです。一ヵ所なら、あるいは二ヵ所か三ヵ所なら相当完全なものができたのではないか。大がかりなものを初めからやらないで初歩からやっていく、そういうふうに逐次的でなければこの仕事はできないと私どもは思います。そうして収容所だって、ここへ永久にいるわけではなく、半年くらいで中は転換して流れていくのですから、私はそうぎょうさんな予算で大がかりでやらなくてもよいと思います。それを、予算がとれないからやらないのだというようなことではちょっと困るのではないかと思うのです。これはいかがでございますか。
  110. 小林英三

    ○小林国務大臣 御質問の一億九千万の問題でありますが、少しお話に行き違いがあるようでございます。一億九千万という話もあったにはあったのでありますが、とどのつまり四千万円になりましたので、厚生省といたしましては四千万円の範囲内におきまして、ただいま申し上げましたような施設をしていきたい、こう考えておるわけであります。
  111. 三浦一雄

    三浦委員長 神近君に申し上げますが、大体の時間が参りました。
  112. 神近市子

    神近委員 あと五分くらい、ちょっと始まったのがおそかったので……。  大蔵大臣にちょっとお伺いいたします。私はただいま決算委員会に籍がございますので、決算の報告をいろいろ伺っていますと、非常な浪費が行われたり、あるいは欺瞞でお金が出ていたり、まだ郵政と運輸、やっと建設に入ったばかりですけれども、ずいぶん不正支出をしておいでになる。それを今監察されていらっしゃるわけですけれども、それからさっきも造船利子補給の話があって、今年も三十一億出ている。厚生省はたった十四億、この十四億出ればずいぶんりっぱな施設もでき、そしてどこからも文句を言われないで済む。私みたいに、個人売春をどうするのだ、一体費力の弱い、そしてまだ封建性が残っている都道府県にこれを一任することは、どうも効果が上らないのじゃないか、教育の破壊、そういうことはどうするのだというふうな文句がなくて済むわけなんですけれど、どういうわけであなたは、十四億というものをびた一文今出さないというようなことになったのでございますか。びた一文というても、四千万は出ているわけです。ほかに二千五百万施設費に出ているということも承知しておりますけれども、これはあなたのお考えの中に、いろいろお立場もあるだろうと思うのですけれど、こういうものはあと回しでいいんだ——もうあと同しにできないから私どもは騒ぐのですよ。そういうことをお考えになれないのですか。ちょっと伺わしていただきたい。
  113. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 本年度は売春対策費として七千五百万円計上いたしております。昨年度の三倍になりますが、むろん十分ではございません。これは全体の財政の関係からもきますが、私どもとしては、売春対策がはっきりきまりまして、それによってまた考えてみたい、かように考えております。
  114. 神近市子

    神近委員 だから私は、昨年の法案が通っていれば、ことしはあなたがお金をお出しになるのだと思うので——この間山下さんは、どうしても十億とる、補正予算でも予備費の中からでも、あなたに体当りしてでもとるというようなことを放送していらっしゃいましたよ。(笑声)それは放送なんです。私は自分で聞いたのですから、人聞きじゃないのです。これは冗談かもしれませんが、これは大へんだ、きっと大蔵大臣は負けるだろうと思っていたのですけれど……。(「婦人が体当りするのは少しおかしいじゃないか」と呼ぶ者あり、笑声)これは心理的な体当りなんですよ。私は決してそういうことは考えません。精神的ですね。直接談判してでもということだったろうと思うので、その点は誤解なしに願いたいと思います。(笑声)これは補正予算でとれますか、もし今度の法案がある程度予算を必要とするというときは。それはどういうふうになっているでしょうか。
  115. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 山下先生が非常に御熱心でありますことはお話通りであります。なお今の点ですが、これはいつどういうふうにして実行に移されていくかというような具体的な実際問題とも関連いたしておることでございますから、今ここで補正をどうするということは考えておりません。
  116. 神近市子

    神近委員 それでは法律ができれば、そこに必ずしも打開の道がないとは限らないと言われるのですね。打開の道があると考えてよろしいのですか。
  117. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 法律ができまして、その法律を実施する上に必要となりますれば、私は考えなくちゃならぬと思います。私も実は売春の禁止にもちろん賛成でありますから、そういうことが早く実現できるように念じておるものであります。
  118. 三浦一雄

    三浦委員長 この際、古屋貞雄君の関連質問がございます。これを許します。古屋貞雄君。
  119. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私は大蔵大臣と法務大臣に簡単に御質問申し上げたいと思います。実は先日私御質問申し上げるときに法務大臣がいらっしゃらなかったので、お尋ねしたいと思うのですが、鳩山内閣が成立いたしましてから後、特に官公吏の犯罪が多くなっております。御承知通り三十年度が遺憾ながら終戦以来一番多い官公の起訴の件数を示しているわけであります。これは鳩山内閣の綱紀の弛緩した現実の証明だと私は思うのです。特に法務大臣のこれに対しましてのお考えを簡単に承わりたいと思います。官公吏の問題——これは特にあとからちょっとお尋ねしたいのですが、綱紀粛正の問題の大きな看板を掲げてこられましたその鳩山内閣が、結果においてはどうも落第をしておるというようなことであります。これに対しての法務大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  120. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 お答えをいたします。ただいまの仰せられることは数字の示すところであります。従って前からの悪い風習がここに至っております。来年また再来年の数字がどうなりますか。おそらくそれはりっぱな成績をおさめ得ると存じます。しばらくお待ちをいただきたいと思います。
  121. 古屋貞雄

    ○古屋委員 さらに承わりたいのは、実は決算委員会の報告を先日この委員会で私述べたのですが、不当不正に支出されました件数が約二千三百、金額にして七十四億、特に五万円以下の不当不正支出についてはここに計算をしないというつけ加え的なただし書きの報告があるわけです。こういう問題について国民に最も政府の信頼をつなぎ得るためには、こういう問題が明確に解決されて、国民の納めまする税金が、たとい一銭一厘といえどもむだに使われない、よってもってそれが国民の台所に響いてくる、台所がよくなるため、国民生活の安定のために使われたということにならなければならぬと思うのでありますが、この点について法務大臣は、特に検事を招集して、政府補助金の不正不当支出に対する取締りをされる御計画があるということを承わっておりますが、私どもはむしろさような取締りよりも、根本的にさような不正不当支出をやめるような指揮あるいは指導をすべきが内閣の責任であろうと思うのです。遺憾ながらそういう結果が出ておるのですが、そのお考えを承わりたいのです。補助金などの不正不当支出に対する取締りを、特別に検事を訓練さして、専任の検事を配置する、こういうことはむしろ本末転倒である、こう考えるのですが、法務大臣のお考えはいかがでしょうか。
  122. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 その点全く同感でございます。かつ、私が調査をしたるところによりますと、政府がいけないところも非常に多い。なぜかというと大蔵省がいかぬ。金の出しようがおそい、時を誤まる。それで地方自治体の諸君がやりくりをされるところが非常に多い。それを刑事事件として取り上げていくということになりますと、やや過酷な点が出るので、私は全般に向って、次席検事の会同において、これらのことについては慎重の手配をいたしたいと思います。すべて御同感でありまするから、貴意に沿うようにいたしたい存じます。
  123. 古屋貞雄

    ○古屋委員 そこで私は大蔵大臣に承りたいのです。私どもも国民も要望しておりますることは、特に食糧増産に関する自給制度を助長するための農村の補助金のごとき問題は、法務大臣がおっしゃられたように、時期がずれて参りまして、もう使えない時期、あるいはそのときにやったのでは目的を達せないときに、予算が流されてくるということがだいぶ影響しておるわけなんです。これに対しまして大蔵大臣が、こういう予算の流し方についてもう少し根本的に改めていただきたいと思うのですが、大蔵大臣のお考えはいかがでしょう。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御指摘の点につきましては、従来ともこれは気をつけておるわけで、今法務大臣が言うたように、大蔵省が悪いのだという断定も私は適当でないと思います。しかしその後いろいろと実情を調査いたしまして、たとえば補助率を土げるとか、あるいは補助単価を上げる、あるいはまた今お話の金の出し方を非常に適切にするというような、いろいろな点について改善を加えております。なおまた補助金につきましては、私の方としては財務局長を中心にいたしまして、地方で協議会を作りまして、相談づくでこの補助金の運用が適正になるよう、お互いに関係者が話し合って無理のないようにする、こういう点に努めて指導をいたしておるのであります。
  125. 古屋貞雄

    ○古屋委員 どうも大蔵省はきんちゃくの口を開くのを非常にいやがるのですけれども、ためになるときに出さないと何にもならないので、ただいまのような答弁を実践に移していただきたいと思います。  なお承わりたいのは、これは大蔵大臣おわかりにならぬかもしれませんが、東京税関長以下告発された事件がある。三億円の砂糖の脱税問題です。これについて当委員もよく存じておるのですが、メキシコの黒砂糖の輸入をした、こういうことによって税金を取っておりますけれども、それを当時倉庫から現実に持って来て、しかも食糧庁の技師に鑑定をしてもらったところが、黒砂糖ではなくて二番糖であったということがはっきりした。これについて二十九年十二月二十二日に、東京税関長に対して再調査の要求が出ておったのでありますけれども、この調査の要求がいつの間にか税関長の方で、どうしたのか知りませんけれども、再調査をしなかったという事実がある。従ってこの点はあとから法務大臣に承わりますけれども、これは告発されておる、こういうことについて再調査の要求があれば、税関長並びに税務署は再調査をすべきであると思うのですが、これはなさったのであるかどうか、この点はいかがです。
  126. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その事件につきましては、私あまり詳しく聞いておりません。また告発の方は取り下げたということも聞いております。なお十分調査いたしまして、正確なところを御返事申し上げることにいたします。
  127. 古屋貞雄

    ○古屋委員 その点は現物の砂糖がなくなってしまえば再調査はできないわけなんです。すでに処分されておるはずです。こういうことについて私ども大蔵大臣に承わりたいのは、相当の無理をして税金の立てかえをされ、税金を納めるのが苦になって親子心中をするという問題がたくさんあるわけです。こまかいものについてはやかましく言っておりますけれども、本件のごときは、黒砂糖と二番糖と比較しますと、税金の差額が約三億なんです。こういう重大な問題については少くとも重大事件として、そのときすみやかにこれを再調査された結果なりを——もし再調査要求がないとおっしゃるならば、私の方では確かにそれを出した証明を出します。再調査要求は出ておる。それを今大蔵大臣調査しなければわからぬとおっしゃっておりますが、あなたのところの局長なり関係者がいらっしゃるはずです。こういう調査要求が出たかどうだかということについてはどうです。昭和二十九年十二月二十二日に税関長あてに再調査要求が出ておるかどうか。再調査をしたかどうか、その点を御答弁願いたい。
  128. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 私の方の所管ではございませんが、わきから聞いていましたところに従いまして経過を申し上げます。  ある雑誌にただいま御指摘のような事件が報道されまして、また税関長にも再調査要求がございました。その結果再調をいたしましたところ、事実がないことが判明いたしましたので、税関長の方では何らの措置を講じなかったわけでございます。それに対しまして、ただいまお話しのような告発がございました。これに対しましては税関長の方も名誉棄損というようなことで告発をいたしたような経過がございましたが、その後両方告発を取り消しまして、その雑誌にその間の経過が報道されたというふうな経過もございまして、その事件は落着をいたしておるやに私ども伺っております。ただ御指摘の事件がどの事件か、その点が問題がありますが、私が承知いたしております某雑誌に載りました事件でありますれば、さような経過になりまして、今日では落着をいたしておると承知いたしておりますので、所管ではございませんが、御参考までにお答え申し上げた次第であります。
  129. 古屋貞雄

    ○古屋委員 取り下げが行われれば解決したということ自体が、私にはわからない。そこで法務大臣に承わりますが、この事件は昨年三月十七日に東京の地方検察庁に告発が行われておる、私自身も告発をする前に関係して承わっておる。そこで今大蔵省において答弁がありましたように、両者が取り下げをした、反対の名誉棄損の告発をされ、ここに告発人は告発を取り下げ、名誉棄損の告発も取り下げられた。どうもこれはなれ合いで片づけたと私は思う。一番大事な人間は、この問題が起きました当時に、この黒砂糖が保管されておりますところの倉庫に、普通侵入はできませんから、麻袋に入って、荷物と一緒に倉庫に参りまして、黒砂糖と称する現物を持って帰った人間がある。その人間に私も会っておる。従いましてこの人間を調べればこれは明確になってくる。告訴事件がどういうことになっておりますか。法務大臣も法律家で弁護士であります。告発があって、告発取り下げがあったから、それで事件は解決すべきものではないと私は思う。国民の重大な税金に関する事件であります。しかも税に対する国民の信頼に重大な関係を持っておる。これを両方が取り下げたということだけで葬るというようなことは、刑事事件の取扱い上から見ましてもあり得ないことだと思う。しかもうわさによりますと、当時の大臣関係があるとまでいわれておる事件なんです。そういう重大な事件でありますから、検察庁におきましては十分御捜査されたはずだと思いますが、捜査の経過はいかがでありますか、法務大臣に承わりたい。
  130. 牧野良三

    ○牧野国務大臣 おっしゃる通り、やみからやみに葬ることは許しません。ただいま地検において厳重捜査を続けております。御安心下さい。その結果はいずれ御報告申し上げげます。
  131. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私は法務大臣を信用しないわけではございませんが、告発をいたしましたのは昨年三月十七日なんです。従いまして私が申し上げました唯一の証人であります。現物を倉庫から持って参りました本人が、東京にはおらないということでおくれておるようですけれども、さような生ぬるい捜査方法はないと私は思う。私どもおるところを知っております。この人間は大阪におります。でありますからこの人間を連れてきて調べますならば、真相がはっきりいたしますので、一年もかかりましてこれだけの捜査が出ないということは、どうも私は法務省に信頼が置けないのであります。私はこの問題については本日はこれ以上追及はいたしませんが、どうか法務大臣は徹底的に御捜査を願って、この点を明らかにして、後日御報告を願いたいと思う。以上でございます。
  132. 三浦一雄

    三浦委員長 午後は二時十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  133. 三浦一雄

    三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。竹谷源太郎君。
  134. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 鳩山首相が昨年十一月二十二日に第三次鳩山内閣を組織いたしまして、認証式の直後に発表いたしました談話の中で、次のように育っております。今まで進めてきた外交内政の諸策をさらに前進させることはもちろんでありますが、それと同時にわれわれは新たな目標として、一、行政機構を国情に適応するよう全面的に改正をする。一、税制改革をやる。一、憲法を改正する、この三点を掲げ、強力にその実行をはからなければならないと考えます。こう言っておるのであります。また河野農林大臣は、行政管理庁長官を兼任いたしまして、そうしてやはりその二十二日の記者会見で、行政改革断行の決意を明らかにしておりまするが、この第三次鳩山内閣が三大施策一つとして取り上げましたる行政機構改革、今回行わんとするこの行政機構改革につきまして、これはどのようなねらい、目標を持っておるのであるか、これをまず最初に行政管理庁長官お尋ねをいたしたいと思います。
  135. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。出席いたします時間がおくれまして大へん御迷惑をおかけいたしましたことをおわび申し上げます。  ただいま仰せになりました行政機構の改革につきましては、総理のたびたびの説明にもありますように、この内閣といたしましては、十分に準備を整えて、ぜひこれを具現いたして参りたいということにいたしておるのでございますが、機構の改革はなかなか、さて実か打するとなるといろいろな障害が起りやすいものでございますから、われわれといたしましては用意に万全を期しまして、そうしていたずらに摩擦を起してみたり、一たん言い出したことがあとで消えたりすることのないように、最善の注意をいたしつつ進めておるわけでございます。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 そういう意味におきまして、昨年末の臨時国会にまず行政機構改革の委員会を設ける、従来のものを改組いたしまして、しかも各方面の御注意もございましたので、従来の委員の方を全部一応おやめを願いまして、全然新しく委員の人数をふやして作って、目下その委員によってあらゆる角度から検討を進めていただいておるわけでございます。この委員会の運営に当りましては、もちろん堪能なる委員長が適当におさばきいただいておるのでございますけれども、われわれといたしましてもこの委員会に対して、いやしくも政府の方の制肘を加えるとか、もしくは政府の要望を先にこれを出すとかいうようなことは、かえって一般の委員諸君の発言を自由にするゆえんでないということを思いつつ、また反面委員会の答申をぜひそのまま実行できるように、政府との間に緊密な連絡もとっていく必要もあるということを考えまして、これは内部のことでございますが、与党たる自民党の首脳部と政府の連絡閣僚との間にたびたび会合も開きまして、委員会の進行を一応この会議でまた話し合いもしたり緊密な連絡をとって、目下進行中でございます。大体の目標としましては、二十日前後までに一応委員会のお取りまとめを願って、そうしてこれを政府の方に答申を願う順序にいたしておるのでございまして、委員会内容については今ここに申し上げることを差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、委員会としては大体差しあたり中心になるものについて、第一次としてこの国会提案するものを今審議して取りまとめて政府に答申する、これに引き続いて第二次改革を考慮して、引き続き委員会検討を続けていくということにいたして、第一次改革として差しあたり実行すべきものについて六、七項目にわたって今案を進めておられます。今申し上げますように、これについて二十日前後に答申をちょうだいすることができることになっておりますから、それをちょうだいいたしましたならば、すぐにわれわれ政府において検討し、成案いたしました上で本国会に提出するという順序でいきたいと考えておる次第であります。
  136. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 行政審議会を改組してこれに諮問をしておるという事情は、新聞の報道でも承知をいたしておりますが、私が河野長官お尋ねをいたしたいのは、政府がこの行政審議会に諮問するに当って、このような行政機構改革をるやに当っての一応の動機といいますか、ねらいというか、理由といいますか、それがあろうかと思う。それをお尋ねいたしたいのであります。
  137. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は前国会委員会法案提案いたしまして以来申し述べております通り、また総理のたびたびの談話にもございます通りに、現在の機構は戦争もしくは占領治下にだんだんでき上ったものであって、これは独立完遂の将来の日本の行政の機構として必ずしも適当でないものが多い。のみならずまた日本の国是を将来進めようとする方向とも重点的に多少ずれておるところもあるというような諸般の点を考慮して、ここに将来の行政のあり方を目途としつつ改革をしていきたい。しかしながら行政改革は常に必ず人員の整理を目途といたしますけれども、今側は人員の整理はこれを目標にいたしません。なぜならば人員を整理いたしましても、その整理せられた人がすぐに失業して、政府はこれに対して施策をしなければならぬようなことになる、そういう今の社会情勢であり、経済事情でもございますので、そういう点は考慮いたしません。人員整理を考慮に置かず、機構組織だけを目標としてやっていきたい。そこに今回の行政機構改革が従来の行政機構の改革とその目的とするところを違えてやっていきたい。人員整理は、いずれの機会か、官界をやめられた人が十分に吸収される社会情勢になったときでなければ、みだりにこれをいたす気持は持っておりませんということをつけ加えておるのでございまして、そういう意味合いにおいてくどいようでございますが、人員整理を目途とせず、民間と行政とのつながり合いをより一そう便利にし、しこうして国策の遂行をより有効にするためにやっていきたいということが目標であるわけでございます。
  138. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そうしますと行政機構改革のねらいは二つある。一つは戦時下及び占領政治下の行政機構で、独立後の日本にふさわしくないものはこれを改めるということ。またこの行政整理をやるに当りましては一応人員整理をしないでいきたい、こういう二点のようであります。戦時下及び占領政治下に成立した行政機構で、もしよくないものがあれば改めるのは差しつかえないことでございますが、ただ占領治下の行政の是正というようなことの口実のもとに、民主化のためにわが国の進展に非常に役立っておるものをこの機会に改革すると称して改悪するようなことのないように、この点は厳重な御注意が願いたいのであります。  なお第二点の人員整理を伴わない機構改革という問題でございますが、これについては私はいささか旋疑問を持っております。河野長官が十二月二十七日の初めての行政審議会の会合におきまして、問題点というものを幾つか審議会に提示しておるようであり、その第一次は戦時及び占領治下の行政機構の改革という問題、第二点に行政の民主化及び簡素、能率化をはかる見地から、現在の行政機構をいかに改めるかということを言っておるのでございまして、行政の簡素、能率化ということはもちろん好ましいことでありますけれども、これはこう言いますと同時に、従来とも安い能率のいい行政機構を作るのがねらいになってきておったのでありまして、当然そうしたことは人員整理を伴わざるを得ない、これについては時節柄行政機構改革をやるが、しかし行政整理はしないという政府のたびたびの言明ではありまするが、世人は簡単にそうは聞いていないのであります。戦後しばしば行われました、あるいは企図された行政機構改革の例に徴しますと、その成否は別といたしまして、政府の内外、ことに公務員に与える影響がすこぶる甚大である。今全国各大学から今年の春卒業し、そうして新しく就職戦源におどりでる青年は十数万あるのでありますが、そのうちまだ職のない者が七、八万もあると言われております。従って行政機構改革、そうして行政整理、公務員の退職ということになりますと、それらの退職者が新たに職を求めるということは非常に困難な情勢にあるのでございます。去年の十月、十一月ごろの統計によると、国家公務員の数は百二十万ばかりである。それから地方公務員は百五十七万くらいと記憶しております。公共企業体の職員がまた六、七十万、合計いたしますと三百三十万か四十万のこういう公職者がおるわけでございますが、これらの人々は首をなでながら、今にも行政整理になりはしないかということを心配するのであります。なお行政機構改革といえば、各省、庁、局、部課等の廃合統合等が行われまして、いろいろと摩擦がたくさん起きておる。こういうように行政機構改革は、先ほど河野長官がおっしやるように非常にむずかしい、慎重を要する問題でありますが、そうすると今度の改革は経費の節減にもならないということになる。しかも鳩山首相は全面的の改革を今度はやるのだ、こう言明をいたしておりますが、新聞の報道するところによると、きわめて中途半端な散発的な行政機構改革に終らざるを得ないようであります。そうなりますと副作用ばかり大きくて機構改革のいい効果が少いということになりはしないか。薬は飲んだが副作用が強くてからだはよくなるどころか悪くなっちゃったというようなことになっては、せっかく企図する行政機構改革というものも逆作用、副作用ばかりで国家のためにならない、このようなことになりはしないか、こう思いますので、なお重ねて、行政整理を伴わないかどうか、また第一次は伴わないとしても第二次においてどのようことになるとお考えであるか、それを承わっておきたいのであります。
  139. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘になりましたような点を十分注意しつついたさなければならぬと思います。われわれの意図しますところのものは、全然逆な方向をねらっておるわけであります。間違って今御指摘のようなことになってわずかな行政機構改革が摩擦ばかり大きくなって不安を醸成するというような結果になりますことは最悪でありますから、その逆に、中心部の基本をまずこの際に改め、そうして摩擦を避けつつ障害を除去しつつ順次下部に及んでいくということをいたそうと考えておるのでございます。そこで今お話のように、そういうことが今度は起きぬにしても、この次は起きはせぬかということでありますが、一例をあげて大体こういう見当でいこうと思っておりますことを申し上げておきます。たとえば、従来でございますと、課長の数が非常に多い、部長の数が非常に多くなっておる、その多くなっておりまする原因は、御承知通り給与体系が職階制で、職についての給与がきまっておるわけでございまして、ある年限がくればどうしてもある地位を与えなければいけない、それでなければ給料が上らないというふうになっておりますのが非常な欠点だと思うのであります。そのためにいたずらに機構を複雑にし、機構を煩瑣にしておる。課長の数は十人でいいものが二十人になっておる。そのために民間から申しますれば一人のところで話の済むものが二人、三人のところに話をしなければいけない、もしくは判が五つで済むものが十判を押さなければならぬということになっておる場合があると思うのであります。こういうことはすみやかに直した方がよろしい、こう思うのであります。直せばそれで首を切るのか、要らなくなった人はやめるのかといえば、そうではない。そういう人はそのポストに置いておいて、十分に深く長く民間との間に緊密な連絡をとって、民間にも便利であり、しかも行政の堪能者として、課長でなくても課長以上の月給をとる場合もあるようにすればいいのじゃないか。局長にならぬでも局長以上の高給をとる技術者があって差しつかえないのじゃないか。そういうふうにするというようなことは考えられるか考えられぬかどうかというような点が相当に考慮のできる点だと思うのであります。そういう点を考えつつやりますれば、決して御指摘のような点はなしに、数が多ければ多いだけ民間に便利であって、多いために民間に迷惑をかけるというようなことのないようにしていけると私は思うのであります。そういう機構を作りつつ、民間でこれらの人を吸収できるようになったならば、そのときに初めて簡素にしてよろしいのではないか。一ぺんにこれを整理をする、簡素にするということをやりますと、その間にかえって民間にも迷惑をかけ、そうして摩擦を起し、そして世の中が混乱するというようなことになりますので、そういう点を漸を追っていく、時を得て実行するということにいたしますれば一向差しつかえないのじゃないかというふうに考えて、慎重にしていきたい。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 しかもこれにつきましては、今いろいろお話もありますけれども、占領行政の修正に名をかって民主化を阻害するようなことはせぬかという御懸念もおありでございますが、われわれといたしましては、最も慎重に、十分に民間の各方面の有力なる方々にお集まりを願って、この審議会の答申を待ってやりたい。そのために私といたしましても、審議会の発足前にはいろいろ意見の発表もいたしましたが、審議会で十分なる御検討中でございますので、この期間におきましては、一切お尋ねに対してもお答をいたさずにいきたいということでお許しを願いたい。また新聞その他の報道機関に対しても、一切発表を避けていくということでいきたいと考えておる次第でございます。
  140. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 受け入れ態勢が十分に整わないうちは行政整理はしないという方針であることはそれでよろしいと思いますが、この行政機構の根本問題をもう一つお尋ねしたいのであります。この行政機構改革は、河野長官が指摘したように、非常に与える影響が甚大であるから慎重でなければならぬ、これは当然であり、従いまして、この行政機構改革というものは、根本的な周到綿密なる調査に基きまして行わなければならぬと思うのであります。ところが政府が今回行政機構改革をなすに当りまして、行政審議会に諮問をいたしておるのでございますが、初めて諮問したのは昨年十二月の二十七日である、そして二月の二十日に、すなわち二ヵ月足らずの間に審議を完了しろという、これでは時間的な余裕もございません。そうなりますと、これは政府考えた一定のワクの中で取りまとめさせるという結果になるような印象を世間に与えておるのであります。このようなことでは、往々にして見られたように、政府が案を作りまして、それを審議会にかけて、ただ承認をさせるというような、天下り的なやり方に堕するのではないか。ただいまも二十日に答申がある予定だという河野長官答弁でありますが、それでなおさらこの点がはっきりしたのであります。どうも政府の命令、指示通りいくんじゃないか。二月の四日か五日ころの新聞にもありましたが、都内某所において河野長官が行政審議会長と面談をして、そうして政府の構想を伝えて、その協力を求めた、このような新聞記事を見たのでありますが、一そうその感を深うする。これではどうも先ほどの、政府は何も言わないで、白紙で審議会に答申をしてもらうのだという言葉とは違うのではないかと思うが、この点どうですか。
  141. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り、今回の審議会委員はいずれも練達堪能の士で、ことに会長は御承知のような方でございまして、われわれの大先輩でございます。われわれがあえて指示をし政府が強要しても、方向を定めて強要するというようなことに応ぜられる人であるかないかということは、私が今ここで申し上げなくとも御了解いただけると思うのであります。新聞に何と出ておりましても、新聞のこれは想像であろうと思うのでありまして、私は会長の連日の労を謝して一夕の歓談をいたしました。いたしましたが、これは単に歓談であり、先輩に対する私の微意でございまして、決してそれによって審議会の取りまとめを、また方向をどうというような筋合いのものではございません。審議会の経過を見てもおわかりになることと思いますが、これほど熱心に、しかも日を詰めて長時間審議を続けておられる委員会は最近私はなかろうと思うのであります。しかもこの行政機構の改革につきましては、従来しばしば委員会もでき、各方面意見もいろいろな角度において取りまとめられておるわけでございまして、いわば今回の審議会におきましては、従来取りまとめてありますこれらの各種の委員会の結果について再検討して、現在の時局に適合する案を得ようとしておられるような見当で進んでおられるわけでございまして、初めてこの問題が持ち出されて初めてやるということではないことは御承知通りでございます。従いまして、用意、準備等は、十分いろいろ資料等も集まっておる、それをしかも経験のあられる方が熱心に取りまとめしておられるので、政府におきましては、この取りまとめについて、その結果を待って一つ善処して参りたいと考えておるわけでございます。ただその結果が、御答申をいただきましても政府においてとうていできぬというような場合は、これは困りますから、それはわれわれとしてもときに審議会に出席をして要求されるままに意見を述べることはございますけれども、あとはわれわれ政府はただ傍聴の立場をとって、十分審議会の自由なる取りきめをお待ちしておるということにいたしておるわけでございます。
  142. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 行政審議会の会長以下委員の人たちがりっぱな人であり、また一生懸命勉強して下さっているであろうことは信ずるのでありますが、しかしながら国家の行政機構は非常に膨大なものでございまして、りっぱな勉強家でもなかなか全部に精通をして、適切妥当な案を練り出すということは、二ヵ月足らずの期間では全く困難でございます。しかもこの行政機構改革は非常な慎重な研究を要するのでございまして、政府ではそう早急な考え方をとらずに、アメリカのフーヴァー委員会は二ヵ年近くもかかっておりますが、ああいう大規模な組織的な審議会を作って、十分な検討をして、真に国情にふさわしい機構改革をやったらいいじゃないか、この点に関して長官の御意見が承わりたいのでございます。よい行政機構はどんな内閣にとっても歓迎せらるべきものである。われわれ社会党が天下をとりました場合、そのよい行政組織をすぐ使えるようにしたいものだと思っている。従ってわれわれも能率の高い適切妥当な公正な行政組織というものには非常に賛成をするものであります。従ってこれを一党一派やあるいは早急な政治的な理由によってでっち上げるようなことでなしに、超党派的な大きな組織で、科学的な合理的な行政機構改革案を作る方がいいのじゃないかと思うのです。そういう点に関して河野長官はいかように考えられるか、承わりたいと思うのであります。
  143. 河野一郎

    河野国務大臣 ごもっともな御意見でございますが、先ほど来申し上げましたように、今回中央から地方、トップ・マネージから下部の局課の廃合まで全面的に検討して、一ぺんにやるということはいたしておらないのでありまして、ごく主要な部分を一応ここで格好を整える、そして次に細部にわたって策二次をやるということで、従ってことしで一切片づくということはできませんので、明年にも及んで、さらに十分細部にわたって検討してやるということを慎重に委員会でも取り上げて御検討中でございますので、その答申を待ってわれわれとしてはこれを具現して参りたい、御注意の点は十分これを尊重いたしまして善処したい、こう考えております。
  144. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 それではもっとこまかい点を伺いまするが、いろいろ新聞等で伝えられて、世上においても大いに注目をしているわけでありますが、食糧省設置する、あるいは建設省と自治庁で内政省を作る、あるいは一部には北海道省を作る、防衛庁を昇格して国防省を作る、あるいは貿易省を作るというようないろいろな案がありまするが、これらの五つの問題は、今行政審議会審議の上で、また政府考えではどうなっておりまするか。少し具体的になりまするがお伺いしたいと思います。
  145. 河野一郎

    河野国務大臣 それらすべての問題についていろいろお話し合い、御検討はされたことはありますけれども、そのうちてこれはぜひ実行する方がよかろうという方向に行っておりますものもございますし、それはやらぬ方がよかろうという方向に行っておるものもあるわけでございまして、一つ一つにつきましては答申を待ちましてからなお政府としては案を作りたいと考えますから、これは一つその時期までお待ちをいただきたいと思います。
  146. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 第三次鳩山内閣の成立早早のころに、トップ・マネージメントの意味であろうと思うのでございますが、副大臣を置こうというような意見があって、いろいろたたかれて立ち消えになったようでございますが、どうして副大臣制度をやめたのであるか。また今回考えられる総理府に副官房長官を置いて予算編成に関する事務を鞅掌させるとか、あるいは計画その他の重要官省には政務次官を増員をしてこれに当らせるというような案があるようでございますが、この副大臣、今度の増員すべき政務次官、この関係はどういうことでございますか。
  147. 河野一郎

    河野国務大臣 そんなふうなお話し合いもあったようでございますけれども、いずれもこの答申を待って、その答申を基礎にして政府としては考えていきたいということにいたしておるわけでございまし、今申し上げます通り、答申のありますまでは、あまり私から政府考えであるとか政府の希望であるとかいうようなことは申し上げない方がいいだろうと思って、お許しを願っておるわけであります。副大臣につきましても、今申し上げた通り一部にそういう意見もあったようでございますが、それらはいずれも行政機構改革の際にこれをやる方がよかろうということで、政府の方ではこれらについては手はつけなかった、こういうように私は了承しておるわけであります。
  148. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 次に、私は企画庁長官と行政管理庁長官と双方に、同じ問題について御意見を承わりたいのでございまするが、さて、わが国現下最大の課題は、何といっても経済の自立と雇用の増大というこの二つの問題であると思います。これを解決するためには、偏在した人口産業を再配分をしなければならない。また幸いにして未利用のままに残されてある国土の七制を占める山林原野地帯がある。この土地の資源を開発しなければならないと思うのであります。そのためには革命的な構想のもとに総合経済計画を樹立し、そうして国土普遍的開発をはかるべきものと思うのであります。今そこで行政機構の改革を考えるに当りましては、平和経済建設のための強力かっ能率的な行政機構の整備こそ第一のねらいとしなければならないと考えるものでございます。そこで経済計画やあるいは予算編成、科学技術等を所管するところの経済企画省を作るべきではないか。なおまた、午前中問題となりました国土開発縦貫自動車道建設や、なおまた国土開発計画の実施に当るべきところの国土開発省を設置する。このようにいたしまして、日本経済自立、そして国民生活の向上をはかるというところが、今われわれが行政機構を考えるときには第一に目標としなければならぬのではないかと思う。この点につきまして経済企画並びに国土開発を相当しておる高碕長官の、そしてまた今行政機構改革を行なわんとするその担当大臣である河野長官としては、この経済問題を第一のねらいとして今回の行政機構改革は考えられるべき時期であると考える問題につきまして、いかようの御見解を持たれておるか。また今回の機構改革に当って、このような経済関係の機構整備拡充という問題について、どのように取り計らおうというお考えを持っておるか、承わりたいのであります。
  149. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 経済自立のためには未開発国土開発すること、資源の開発ということは最も重要なる問題として取り上げられて参ったのでありますが、現在におきましてはその事業の種類と事業の規模によりまして、中央におきましてはその実行機関といたしまして省、庁、地方におきましては都道府県あるいは市町村あるいは公団等によってこれを行なっておるのでありますが、ときどきその総合性を欠くということのために、今回新たに経済企画庁に総合調整をするということのために、わずかでありますけれども五億円の予算を組んでいただいたわけでありますが、これを総合的、に開発いたしますにつきましては、どうしてもある程度の組織を考えなければならぬ。これは行政機構の改革と一緒に並行的にこれを考えていきたい、こう存ずるわけでありますが、まだ経済全体のことにつきまして技術省とか、どうするとか、こういった問題につきましては河野長官から御答弁願いたいと思います。
  150. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘のような問題につきましては、これも審議会におきまして、経済関係の問題をどう取り扱ったらよろしいかということは、前回の委員会でだいぶ御検討になりましたということだけ申し上げて、あとは先ほど申し上げましたような理由で、一つ御猶予をちゅうだいいたしたいと思います。
  151. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 長宮の答弁はきわめて不十分でございます。行政審議会がいかなる答申をするか、それはわかりませんけれども、現下の日本にとりましで、経済問題の処理、拡充のために、そのような経済官庁の強化、ことに経済参謀本部であるべき経済企画省のようなものの設置、国土開発省のような問題、この点は政府としては、機構改革においても取り上げんとする考えを持っておるかどうか。これは審議会審議とは別として、政府の御所見を承わりたいのであります。もう一度お願いいたします。
  152. 河野一郎

    河野国務大臣 委員会の方におきまして、各般の問題について総合的に検討を加えておられますので、今一部の問題をとらえて、これについての所見を私から申し上げますことは、いたずらに委員会審議に対して制肘を加えるようなおそれもありますので、この点もしばらく御猶予をちょうだいいたしたいと思う次第であります。
  153. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 これに関連をしまして、国土開発問題で一つだけお尋ねしたいのでありまするが、北海道に関しましては、明治以来拓殖計画が実施せられておりまするし、今北海道開発庁が特設せられまして、強力に開発を押し進められておるのでございます。ところがこれに対しまして、北海道省を設置する、あるいは北梅道を五つの県に分けるというような意見がある。与党の方の政策審議会等においてそのような問題が出て、そのようなことが決定しているのかいないのかわかりませんが、その問題をまず第一にお尋ねをしたい。  次に、私は東北開発のことをお尋ねしたいのでありまするが、北海道はさようにしてある程度開発計画が進められておるのでありまするが東北地方は、幕府時代には外様だし、明治になってからは薩長に反対をしたというようなこと、またその後の自由主義経済のもとにあっても虐待をせられまして、産業の発展と資本の蓄積は、非常な立ちおくれになっておる。しかしながら農地、牧野に造成のできる適地が非常に広いのであります。また林産、地下資源あるいは包蔵水力がきわめて豊富でございまして、なおまた水産資源にも恵まれている。そういう状態であるにもかかわりませず、未開発経済後進性のために、東北における一人当りの分配国民所得は、全国平均のただの六割、半分に近いのでございます。こういう貧乏なのが東北の現状でございます。そこで国民生産を拡大し、人口問題を解決することが急務なこのときに、東北地方の総合開発は焦眉の急といわなければならないと思う。昨年八月閣議におきまして、東北地方総合開発調査実施要綱というものが決定せられたようでありまして、政府においては本年度並びに明年度おのおの一千万円の経費を支出して、これが調査研究に当っているそうでございますが、その調査の状況と東北開発の構想とを、この際お伺いしたいと思うのであります。
  154. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま御質問北海道のことにつきましては、これは行政組織の問題になりますから、河野長官からお話を願ったらいいと思いますが、北海道の方は、おかげでとにかく北海道開発公庫というものができるのでありますが、これはかれこれ八十億という金を動員して当ることに相なっております。東北につきましては、お説のごとく三つの点が、私どもが昨年調査いたしました結果わかっているのであります。それは、第一に東北の人口増加率が、平均日本増加率は一・一になっておりますが、東北は非常に多いのでございまして、一・五になっております。それからただいま御指摘のごとく、一人当りの所得が六〇%台である。これは間違いであろうと思っていろいろ調べたのでありますが、事実そうなんでありますからして、この点のごときも考えなければならない。それからもう一つは、東北地方から、人口がふえる結果東京方面に毎年七、八万ずつの人が流れてくる。こういうふうなことは自然の要求であると思います。しかるに一方から見て、ただいま御指摘のごとく地下資源のごときは、これは日本の中で一番地下資源に富んでいる。またお話のごとく森林あるいは水産資源におきましても、決して劣っていないということも事実であります。その上に水力資源等も十分あるわけでありますから、これが今日まで開発されなかったということは、人口問題等から考えましてまことにごもっともでありまして、私は、何らか開発の方針をとらなければならぬというので、わずかながら一千万円の調査費を三十年度はちょうだいし、今回また一千万円をちょうだいしてやっているわけでありますが、大体の根本方針といたしましては、やはり一番先に考えなければならぬ問題は、東北がほかの地方に比して交通が悪い。鉄道にいたしましても、道路にいたしましても、今まで等閑に付せられておったというここが第一だと私ども考えております。第二に、資本がどうしても偏在いたしまして、東北は資本が顧みられない、こういう状態であるということが私は非常な欠陥だと思います。こういうふうな点についてよく考慮いたしまして、十分の調査研究をいたしまして、相なるべくは早く東北を工業化する、あるいはもっと東北を開発するということについて努力していきたい、こう思っております。
  155. 河野一郎

    河野国務大臣 これはまだ私の所管すべきところにはきておりません。今せっかく北海道長宮のもとにおいて、ないしはまたこういうことをここで申し上げてよろしいかどうか知りませんが、自民党の方におきましては特別委員会を設置されまして、そこでは北海道の分県というような話も出ておりますることは聞いております。しかし、それはまだ行政管理庁長官として取り扱うべき段階にはきておりませんから、その意味において私は答弁を避けたいと思っておるわけでございます。
  156. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 次に、私は労働大臣とそれから行政管理庁長官とにお尋ねをしたいのでありますが、昭和二十九年に公務員制度調査会というものが設けられまして、昨年の十一月十五日に、公務員制度に関する答申がなされたようでございます。この答申を見ますと、今まで人事院は、公務員制度に関しまして、そうしてその立法等に関して、国会並びに政府双方に勧告ができる。このように人事院は使用者側の政府、被用者側の公務員、この間に立ちまして、憲法に保障されたる労働権が著しく制約され、団体交渉権もなければ労働協約も結べない、また団体行動、すなわちストも怠業もできない、そのような本来の憲法上保障せらるる労働権を制限される公務員のために、特に人事院という制度が設けられておるのでございますが、この人事院の国会に対する勧告権を剥奪する、そうして、ただ政府に勧告といいましても、これは政府に陳情、意見を申し述べる、こういうことにとどまってしまうようになる制度を答申しておるのである。ただ当局側と公務員の代表者側との協議会というものを設けることを、この答申では提唱いたしておるのでございまするが、今の国家公務員法におきましても、社交的厚生的交渉ができるとある。これは交渉とありますけれども、実際は当局に対する陳情にすぎないのであります。このようなことでは、公務員の憲法に保障された権利というものはまるでめちゃになってしまうと思うのでございます。そしてこの答申によれば、人事院は存置するが、その事務部局、ことに実施はほとんど全部総理府に移してしまうという骨抜きでありまして、これではわれわれは絶対に承服はできない。今度の行政機構改革に当りまして、この人半院という問題も一応検討に上っておるようでございまするが、このような公務員制度調査会の答申につきまして、労働大臣である倉石さんは、同時に公務員担当の国務大臣であるのであります。ことに労働大臣としての立場からどういう御見解を持っておいでになるか、それを承わりたい。  また行政管理庁長官には、今回の行政改革に当りまして、この人事院をいかに処置せんとするか。これは三、四百万の公務員に関係する、しかも非常に重大な問題でありまして、責任のある御答弁をお願いいたしたいのであります。
  157. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘になりました点は、その通りそのまま先般の審議会において数時間論議せられたことを私は傍聴いたしました。これについての結論も、必ず委員会として答申があるものと考えておりますが、その内容については、今ここで申し上げることを避けさせていただきたいと思います。それは十分委員会において、しかもその委員の一人の方も、今度の委員になっておられるということもございまして、委員会の経過等についても、今回の行管の委員会に御報告があり、十分検討されて、検討の結果御答申があるものと考えておるわけでございます。それを待って政府検討したい、こう考えておるわけでございます。
  158. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公務員制度調査会の答申では、人事院の国家公務員の給与改善に関する勧告は、御指摘のように国会及び内閣に対して同時に行う現在の制度を改めまして、これを政府に対してのみ行うことといたしておりますが、政府はその勧告を国会に付して報告をしなければならないということになっておるのでございまして、さらに政府が勧告に従うことができない場合におきましては、その理由を同じく国会に提示しなければならないというふうになっておるのでありまして、従って、職員の利益の保護を薄くすることにはならないものと存じます。人事院勧告の制度をどのようにいたしますかは、今後なお十分検討いたさなければならないことでございますが、それはただいま河野行政管理庁長官からお答えいたしました通りでございます。
  159. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 行政審議会にすべてまかしてあると言って逃げられて、どうもしっぽをつかまえようがないのでありますが、ただいまの人事院の問題につきましては、これは憲法上の重要な問題でございまして、政府においても民主化のための行政機構改革を考えているはずである。占領政治の是正という名前でもって、この民主的な当然の国家公務員その他の公務員の権利を守るところの重大な人事院問題に関しましては、かりそめなる改革等のないように、一そうむしろこれを強化して、そして雇い、王である政府と雇われておる労働者の公務員との間に立って、人事院なり国会が妥当なる問題の解決をするような、そういう一そう完璧な組織を作ることに行政機構改革を考えるように、ぜひ政府に要望しておきたいのであります。  次に、先ほど企画庁長官から、北海道開発公庫を作って北海道開発を大いに押し進めるというお話がありましたが、これは聞いてみると、八十億の政府投資並びに民剛から集めた金でもって、北海道開発に関する各種の事業に融資をするそうでございます。ところがその融資先を聞いてみますると、農業協同組合とかあるいは漁業、中小企業組合というような公益的な団体、あるいは地方公共団体、そのようなものには、それぞれの融資の金庫なりあるいは預金部運用資金があるから融資をしない、しかし個人にはまた貸さない、こういうのでありまして、せんじ詰めると私法人、私立会社に金を借す、こういうために八十億という膨大な予算をもって北海道開発に当るというのでありまするが、これはわれわれは多大の疑問を持たざるを得ないのでございます。金もうけをしようとする者は、北海道へ行ってチーズやバターを作る工場だとか、あるいは石炭を掘るのだとかいって会社を作って、何億という金を借りて、そうしてぼろいもうけができる。こういうことになるのでございまして、このような制度はまた汚職疑獄の原因となるのじゃないかと思う。アメリカに復興金融公社という会社があったようでございまするが、これはいろいろ問題を起しております。中央鉄鋼会社という会社に復興金融公社が六百二十万ドルというのですから二十三億円くらいの金を融通して、問もなく検査役であった人間がその中央鉄鋼会社の重役にすべり込んだ。ところがだんだんそれが問題になって、調べてみると、その検査役が検査に行って、その検査報告を理事会に出したとたんに何千ドルかの金を会社からもらった。それは収賄じゃないかというので聞いてみると、いや、これはやめて会社に入ってからもらう月給の前渡しだといって逃げ口上を張ったそうでありまするが、いろいろと多くの問題を起しておるのでございます。この北海道開発公庫——北海道開発するための金融機関はむろん考えなければならぬのでありまするが、このような、地方公共団体に貸すのでもない、あるいは農民、中小企業者、漁民に貸すのでもなく、一私立会社にだけ莫大な金を融通するというようなことは、一体今回の行政機構改革における公社公団の再検討という問題とは逆行するのではないか。この問題について、これは所管は大蔵大臣になりますか農林大臣になりますかわかりませんが、行政機構改革が公社公団等についても検討するのだという立場から、いかに行政管理庁長官考えられるか、第一点としてお尋ねをしたい。  もう一つは、きょうの午前中の予算委員会におきましても、公務員の予算が今年あたりは戦後最大である、また予算の不正、不当なる支出が七十四億にも上ると会計検査院が報告しているというようなことが問題になっておる。このようないろいろな疑獄事件が起きておるのでございまするが、今回の行政機構改革に当って、行政の腐敗を防止するような行政機構を考えなければならぬのじゃないか。これは重大な問題でありまして、ひとり国家公務員のみならず、特別職の議員をも含めた腐敗を防ぐための機構を作るべきではないか。先ほど経済を第一のねらいとすべしということを言いましたが、これをぜひ第二のねらいとしなければならぬと私は思う。農林大臣おひざ元の農林省の所管の問題等につきましても、あるいは砂糖専売云々というような問題、あるいは硫酸アンモニアの値下げ問題、あるいは北洋漁業船団の許可問題、これは一船団を出すと十億円ももうかるというような話でありますが、これらの問題につきましていろいろとちまたに不愉快なうわさが飛んでおるのでございます。今回行政機構改革に当って、どのような熱意を持ってこの行政腐敗を防止するためのねらいを考えているか、それを行政管理庁長官お尋ねしたいと思います。
  160. 河野一郎

    河野国務大臣 だんだんお話しでございますが、行政機構改革にただいま御指摘のようなことを十分考えていたさなければならぬことはもちろんでございます。しかしこれは行政機構にもむろん考えなければならぬ点があるかもしれませんが、要は、運用の面において欠くるところがある結果だろうと思うのであります。ただいま北海道開発について公社を作ろうとしておるのが、今町の公団、公社の再検討とどうかというようなことでございますが、今回われわれが考えますのは、むろん公団、公社に対する監督管理権というものが従来とかく微弱であったのではないかという点を強く指摘し、考慮しようといたしておるのであります。公団、公社に対する管理監督権が従来とかく手薄であったのじゃないか、その点について配意が欠けておるじゃないかというような点については、十分に強化しなければならぬと考えておりますが、しかし二面においてまた公団、公社が予算の制約を受けない、事業の伸縮性があるというような長所もあるのでございしよして、その長所を生かしつつ、ただいま御指摘のような短所を補っていくように考慮をしていきたいという点は、もちろん御指摘の通り考えなければならぬと思っております。  たまたまただいまいろいろ砂糖の点でありますとか、硫酸アンモニアの点でありますとか、北洋漁業の点について御指摘でございましたが、これは非常に私は迷惑に考えるのでございまして、たとえば砂糖につきましては、私は砂糖の取締り、もしくは一部の利益を剥奪するために、これを強化せよということを主張し続けてきておるのでございまして、この点については大方の誤解のありますることも、私の不徳のいたすところと考えておりまするけれども、私の立場はあくまでも砂糖の二部の利益を襲断する者に対し厳重な監督をし、もしくはそういうことのないようにしなければいかぬということか強く主張し、その立場をとっておりますことについては御理解いただきたいと思うのであります。また硫酸アンモニアその他肥料につきましては、常に私は値下げをして、農民のために利益をはかり続けてきておるのでありまして、そこに業者との間に摩擦のありますることはもちろんでございまするけれども、業者の利益をはかって、当然値下げすべき肥料を値下げせずにおいてよろしいということの態度をとったことは一度もないのであります。どうかその点についても御理解かいただきたいと思うのであります。ただ北洋漁業につきましては、これはどこかの船団が行かなければならぬのでございまして、それについて私の許可の仕方が悪かったとかいうことについては、これも私の不徳のいたすところでございますけれども、これもはっきりこの際申し上げておきますが、従来漁業につきましては、戦前の施策が妥当であったかどうかは別といたしまして、戦前戦後を通じて一貫した漁業施策があるわけでございます。たとえば南方における鯨の漁業につきましては、大洋漁業と日本生産がこれに当っております。以西底びき、すなわちシナ海のトロールにつきましては、これはこれでやはり戦前の日本水産の統制統合時代の権利をそのまま継続してやっておるわけでございます。そのときに北洋における鮭鱒漁業につきましては、日魯漁業がこれに当るということにいたして参ったのでございます。こういう経緯からいたしまして、鮭鱒についてはこの会社に専門家がおり、この会社に特殊の技術家がおるわけでございます。そういう意味で、従来比較的おくれておったものをこの会社に能率を上げさせることは妥当であり、これが農林行政として従来のあり方、従来のとって参りました行政の処置をそのまま続けたということでございまして、たまたま私がかつて日魯漁業に関係があったということから、私が特別に日魯漁業を支持するというような御批判を受けますけれども、これは戦前戦後を通じての日本の生産行政のあり方を御検討いただけますれば、私は一部に偏した行政処置をとったつもりは決してないのでございまして、私は公平に農林行政のあり方をそのまま続けて参ったというのでございますから、どうかそれらの点について御了解をいただきたいと思う次第でございます。
  161. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 これは大蔵大臣にちょっとお伺いしますが、行政機構改革の一つにもなると思います。会計年どは、ヨーロッパのまねをしたのでありますか、日本は四月に始まって三月に終ります。しかしながら一般の商取引の関係からいいましても、また農民が一年の収穫を終えて正月を迎えるという点からいたしましても、日本古来の暦年——一月から十二月に至る方がむしろ便宜ではないか、妥当ではないか、このように考えらるるのでありまするが、この会計年度を暦年制に改正する問題については、政府はいかような考えを持っておりまするか。
  162. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま暦年制に改訂する考えは持っておりませんが、しかしなお検討を加えてみたいと思います。
  163. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 もう一、二行政機構改革の問題をお尋ねいたします。内閣の中に内閣調査室がある。そうかと思うと破防法の取締りには法務省に公安調査庁がある。なお警察としては国家警察の警察庁があり、また府県警察があるのでございます。このように幾通りもの要りもしない機関があるのでありますが、今回の行政機構改革でこの内閣調査室とか公安調査庁とか、このようなものは改廃をいたしまして、行政を簡素強力にしたらどうかと思うのでありまするが、この点が一つの問題。  第二は、行政腐敗を防止する方法といたしまして、ただいまいろいろな監察機関があります。すなわち会計に関しましては会計検査院という昔からの制度がありまするし、なお行政管理庁があり、大蔵省には予算の執行を監督する予算実施監察官のような制度がある。この三つが一般的なものとしてあります上に、各省でそれぞれ自己監察をやっている。たとえば郵政省の監察官というものは七百人もあるようでございます。これは間違いのないようにできるだけ周密なる監察を行うことが妥当でありまするけれども、いろいろと制度ばかり多くて実効があがらないきらいがある。しかも小さい問題ばかりとらへて、呑舟の魚をのがしているようなきらいがあるのでございまするが、今回の行政機構改革に、監察機関の調整強化という問題についてどのように考えているか。この二つの問題をお尋ねしたいのであります。
  164. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘になりました問題につきましては、むろん政府においても十分検討を加えて結論を得たいと考えておるのでございますが、しかしこれらにはそれぞれ特殊な使命があり、よって生まれて参りまする経緯もあるのでございます。たとえば私が長官をいたしておりまする行政監察といたしましては、これは会計検査院とは全然趣きを異にしておるのでありまして、会計検査院は金銭の出納、行政監察の方は、その同じ予算を運用いたすにつきましても、より効率的に、もしくは弊害の起らないようにというようなことで、金銭出納の妥当性以外の面をねらっておるのでございます。しかしこれらにつきましても、仰せの通りに、これらを取捨按配してよりよき機構はないかということはむろん研究いたさなければならぬ問題でございますから、それらにつきましてはむろん研究をしておるわけでございます。一方治安問題につきましても、もちろん御指摘のような、調査室であるとか、調査庁であるとかいうようなものにつきましても、一部においてそれがダブるという場合がある。もしくはこれらが分派いたしておりますために、十分な機能を発揮しないというようなこともございましょうが、そのよってきたる原因もしくは経過は何であるにしろ、これらについてよりよき制度がないかということは、せっかく研究中でございます。
  165. 三浦一雄

    三浦委員長 お打ち合せの時間もだんだん越して参りました。簡潔にお願いいたします。
  166. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 行政機構改革の問題につきましては、行政審議会に今答申を求めているので、何も言えないということで、何ら要領を得ないではなはだ残念であります。しかしながら重ねて申し上げますが事きわめて重大な問題ででございますので、今ここで答弁のがれにいうような態度や気持でなしに、一つ真剣な気持で行政管理庁長官は、この行政機構改革と取っ組んでもらいたいと思う。これは国家百年の大計に関する重大な問題でございまして、これによって国家行政がうまくいくかどうかも分れるのでございます。国会が幾ら勉強してりっぱな法案を作りましても、この執行に当るのが行政組織でございまして、こういう観点から、今ここで予算委員会における答弁として、体裁のいいことを言うという答弁じゃなしに、真剣に取り組んで、ことに日本の平和化、民主化と逆行するようなコースをとるような行政機構の改革に陥らないように、厳重に警告を申し上げたいのであります。  次に、私は郵政大臣に電波放送の問題で、ごく簡単にお尋ねをいたしたい。近ごろ放送の問題でいろいろと世上に論議がなされておるのでございますが、まず放送法に対しまして、部分的な改正は別といたしまして、政府は根本的な改正の意思があるのかどうか。もしありとするならば、どのような構想でこの放送法を改正せんとするのであるか、それをお伺いしたい。
  167. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。現行放送法は、わが国が占領下にあった昭和二十五年に制定されたものでありまして、当時国会並びに政府から強くGHQの方に要望した事項が二つ、三つあります。それは御承知のように、日本放送協会の経営委員を全国的に八人とってもらいたいという要望に対して、関係当局はこれを全国八地区から一名ずつ選任せよというようなことで、今日やはりその通りになっております。また日本放送協会の予算あるいは計画、その他収支計算等にも、もう少し政府が責任を持ってタッチして、これを国会に報告したいというような要求に対しましても、これは単なる政府が郵政大臣として監督するという程度で、国会にそれを直ちに提出するだけであります。そういうようなことと、当時今日の商業放送とか、あるいはまたテレビジョン放送等がなかったのでありますが、それらの非常な発達に伴いまして、相当この放送法に検討を加える必要があると思っておりますので、目下関係各局等におきましては、慎重に検討いたしております。
  168. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 その放送法の時代変遷に伴って改正を要すると思うので、研究中だというのでございますが、そこで今NHKの意思決定機関として、経営委員会というものがあり、これには八人の委員が全国各地区代表で出ているようでございます。いずれも個人としてりっぱな方々と思うのでございますが、それが保険会社の社長さんであったり、またあるいは石炭会社の社長であり、あるいは請負会社の社長である、それぞれ商売人の方々でございまして、国民のある階層を代表する、あるいはある地域を代表するというような強固なる背景のもとに、世論を日本放送協会の運営に反映するという立場にはない人のように思われる。従って経営委員会は、個人個人の委員はりっぱな方々でありましょうとも、きわめて弱体であると遺憾ながら申し上げなければならぬと思う。そこでこのような弱体な経営委員会政府の一喝にあって、あるいは三木鶏郎さんの冗談音楽をやめちまったり、そういうような放送の表現の自由に政府から圧力を加えられたり、あるいは放送番組編集の自由を侵害せられたりするようになるではないかと思う。放送協会の経営委員会というものも、それぞれの国民の各層を代表するような、強力な世論を背景に持つような方をもって組織するように、経営委員会の強化がまず必要ではないか。それなくしては公正なる表現の自由というものが保たれないのではないかと思うのでありますが、この経営委員会に関して、郵政大臣はどのように考えておられるか承わりたいのであります。
  169. 村上勇

    ○村上国務大臣 お答えいたします。竹谷委員の御指摘の通り、この経営委員会の構成あるいは選任につきましては、非常に慎重を要することだと思いまして、目下その線に向って検討をいたしております。先ほど御指摘の言論の自由を圧迫するとかなんとかいうような点については、これは断じてさようなことのないように注意いたしたいと思っております。
  170. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 現在の放送法によりますと、放送番組の編成あるいは表現の内容につきましては、公安を害しない、政治的に公平であること、報道は事実を曲げないこと、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること、この四つの項目の制限があるだけでございます。むろん公共の安寧を害したり、あるいは非常に事実と違う放送する、これは当然の制限でございますが、これ以上に政府が放送法を改正して強力な表現あるいは編集に対する干渉を加えるようなことを企図していないかどうか、そういうようなことがあってはたいへんなことでありますが、そういうようなことは万なく、現在より一そう放送の自由を確保する方向に向って改正をなさんとする御意図であるかどうか、それを承わっておきたい。
  171. 村上勇

    ○村上国務大臣 竹谷委員御指摘の通りであります。
  172. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 次に受信料の問題でありますが、現在受信契約を結んで、聴取者から放送協会が徴収をするということになっておりますが、それを税にしろというような意見もある。しかしこれには非常な反対論もあるのでございますが、それにつきましては郵政大臣どのようにお考えになられておりますか。
  173. 村上勇

    ○村上国務大臣 その問題は非常に重大な点でありまして、ただいま慎重に審議をいたしております。ただいまの段階でははっきりしたお答えを申し上げることができないことを遺憾といたします。
  174. 三浦一雄

    三浦委員長 竹谷君に申し上げますが、お打ち合せの時間をだいぶ経過しておりますから、簡潔にお願いいたします。
  175. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 そこでこの放送法の改正に関しましては、一体政府ではいつごろ原案を作るつもりであるか、またそうしていつごろ国会提案するような気持があるのか、また部分的改正はするが、根本的な改正は当分しないのであるか、その点を最後に承わっておきたい。
  176. 村上勇

    ○村上国務大臣 目下慎重に検討いたしておりますが、成案を得次第に電波監理委員会その他に諮りまして、成案を得ましたら直ちに国会に提出いたしたいと思っております。
  177. 三浦一雄

  178. 春日一幸

    春日委員 私は中小企業が当面いたしておりまする重要な諸問題について、まずもって石橋通産大臣に二、三お伺いをいたしたいと存じます。  まず第一番は、百貨店法についてであります。これは百貨店が大資本の威力をほしいままにして、とどまるところを知らないほどの勢いで、だんだんと増築、新設等が行われて参りますので、この活動を何らかの形で規制すべきであるという世論がずつと年来高まって参りました。かくて政府は昨年の二月の総選挙におきまして、時の民主党の公約として、最も近い将来に百貨店法を制定して、小売店と百貨店との関係を調整する、こういう公約がなされたことは大臣も御記憶の通りだと思うのであります。そこで当然この公約に基いて、この法律案は政府の責任において、すでに第二十二国会において制定されてしかるべきものであり、少くとも国会提案をされなければならなかった事柄と存ずるのでございます。しかしながら先国会におきましては、あの会期中におきましてすでに提案がなされてはおらないので、われわれ日本社会党では、やはりこのような世論を受けて立ちまして、百貨店法案国会に上程したことは御承知通りであろうと思いますが、先国会においては、政府並びに自民両党はこれに対してむしろ妨害的であり、遂にこれが成立をすることができ得なかつたのであります。ところが伺うところによりますと、今国会においては、政府政府提案の形でもってこの百貨店法を国会に上程するということでありますが、前国会提案されず、しかも社会党が提案をしたものに対して妨害的に、遂に審議未了の形に追い込んでしまっておきながら、今国会において特に政府みずからがこれを事新しく提案をするに至った理由、これは一体何であるか、この点のいきさつを一つ明確に大臣からお示しを願いたいと存じます。
  179. 石橋湛山

    石橋国務大臣 別段お話するようないきさつもないのです。この前の国会において、社会党から提出された百貨店法案に対して、妨害をした事実はない。少くとも私の知っている限りではございません。しかしながら今お話のように百貨店と小売商の問題はずいぶん古い懸案でありまして、実は具体的に取っ組んでみると非常にむずかしい問題になるのでありますので、政府としても、なかなか正直に申しまして、名案がありません。しかしながら世間しきりにこの何らかの調整を欲して要求もありますので、実は一案を作成をして、できれば本国会提案して御審議を願いたいと存じまして、準備をしているわけでありますが、これには賛否両論あることもまた御承知通りであります。百貨店を制限をするということそのものが、果して適当なりやいなやの議論もないではありません。しかし政府としてはともかく一つの案を作りまして御審議を願う準備を、ただいまいたしておるわけであります。
  180. 春日一幸

    春日委員 少くとも責任政治を重んずる政党内閣において、選挙で公約をしておきながら、果して政権を獲得した後において法案を出さない、これには相当の理由がなければならないのであります。そこでこういう問題をめぐりまして、現在世論はいろいろとこれを取りざたをいたしておるのであります。と申しますのは、なぜ政府があのような公約をしておきながら、第二十二国会においてその法律案を出さなかったかという事柄についてでありますが世評はこれをこのように批判をいたしております。それは昭和三十年六月十八日、これは通産省の商務課の調査によりますと、そのとき現在において、百貨店の新築計画中のものが東京都において十合東京店外三店、それから拡張工事中のものが、東京都における伊勢丹外十三店それから拡張計画中のものが、岐阜において丸物外六店、拡張の意向を有していろいろとその工事計画を進めておるものがこれは札幌において丸井、今井外九店、合計三十一の百貨店が折しも百貨店法が国会の議題となって論議されておりますその渦中においていずれも建設中、工事中、計画中である。そこでもしもあの法律を政府が公約に従って提案をするならば、これらの百貨店がたちまちに拘束を受けなければならない。こういうような立場において、今次国会においてこの法律案を出さないでおいて、すなわち時間をある程度ずらして百貨店に時をかせがしめて、そうしておおむねその工事が完了しあるいは工事に着工をしてしまって、経過措置においてその法律の拘束を受けないような状態になるころを見計らって政府は百貨店法を出したのだ。こういうような手きびしい批判が行われておることを大臣は御承知であるかどうか。こういうような実情から考えますと、もうすでに百貨店は、新設計画も増築計画もおおむねそのことをなし遂げてしまっておるのではないかと思われるのであります。そこで政府が今回出そうとする法律案の要綱を拝見いたしますと、その法律案の内容は、新設並びに増設の場合通産大臣の許可認可事項にするという、きわめて軽微な調整を考えておるようでありますが、現実にはこんな法律ができても百貨店は痛くもかゆくもない。言うならばこれは小売店を保護するというような法律の効果はもはや全然上り得ない。むしろこれは百貨店相互間において、新しい百貨店ができることによって、百貨店の内部において相互競争を防ぐための百貨店保護法ではないかというような、手きびしい批判が行われておるのであります。私がこの際大臣にお伺いをいたしたいことは、政府が今回提出を予定されております百貨店法のねらいは小売店の保護、すなわち百貨店の強大資本によっていよいよ侵食されつつあるところの小売店を保護するのがねらいであるのか。あるいはまたすでに完成されたる百貨店に対して、新しい百貨店の進出を許すことによって、既存の百貨店が不当な競争の中に落ち込む、そういう心配のある事柄を防ぐのがねらいであるのか。重点はいずれに置いて立法されようとしておるのであるか。この点一つ大臣の御見解を承わっておきたいと存ずるのであります。
  181. 石橋湛山

    石橋国務大臣 百貨店法の提出がおくれておりますのは、先ほどお話のように、百貨店の建築中のものが完成するのを待ってというそんな器用な考え方は持っておりません。世間でいろいろどんな批判があるか知りませんが、私はさような意図を持ってやっているのではないことをはっきり申し上げておきます。それから実は建築中のものは非常に問題でありまして、たしかこの前の社会党からお出しになりました案によりましても、建築中のものは大体認められるようなことになっておったように記憶するのであります。これは記憶でありますから、あるいは間違いがあるかもしれませんが、そんなことであります。実は今回もし百貨店法を出しましても、現在建築中のものはどういうふうに取り扱うかということについては、相当問題があると存じます。しかし私どもとしては、できるだけむやみな拡張は許さないようにいたしたい、またただ資本のあるにまかせて不当に小売商を圧迫するがごとき商売のやり方は、これは防ぎたい、こう考身ております。しかしただ申し上げておきますが、これによって小売商が非常に保護される、小売商が助かるということは、実はなかなかむずかしいのでありまして、大きなものを押えたから、それで小さなものが栄え得るかというと、そうはいかない、小売商は小売商として、小売商が成り立つようか経済基盤を何とか作ってもらう、政府もその努力をする必要はありましょうが、小売商自身もそういう方向に努力してくれなければ、いかに百貨店を押えましても、小売商の助けにはならないと思います。  それから最後にお尋ねの問題ですが、統制をいたしますと、どうしても既存のものにある程度のこぼれ災害があるということは、免れないことでありますから、百貨店を押える、ことに拡張を押えるということになりますと、その限りにおいて既存の百貨店がある程度の保護を受けるというよう外傾きを持つことは、お説の通りであります。これはああいう法律には免れない弊害であります。ある程度やむを得ないものと存じておりますから、それはお説の通りで、正直に申し上げておきます。
  182. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、重ねてお伺いをいたしますが、ただいまの大臣の御答弁によりますと、百貨店法というようなものを作っても、これでは小売店の保護にはならない、しかしながら結果的には既存の百貨店の利益になることはやむを得ない、こういう御答弁でございました。そういたしますと、結局は百貨店法の効果、ねらいというものは、大臣は小売店の保護ということを目的とされておるのではないとするならば、一体何を目的としてこの法律案を提出されんとしておるのであるか、この法律の目的としておりまする効果、上げんとしておりまする効果、これは一体何であるか、一つ端的に御答弁伺いたいと思います。
  183. 石橋湛山

    石橋国務大臣 今の春日君のお言葉は、私が先ほど答弁した私の言葉の解釈とちょっと違いまして、私はこれが小売店に何らの効果がないと申したのじゃないのです。これだけによって小さな小売店がほんとうに助かるか、非常に繁栄するかというとそうはいかぬ、これはこれでもって、積極的な方策を講じないと、百貨店を押えたから直ちに小売店が大いに繁栄するという、非常に簡単な結論にはならないから、そこで小売店に対しては、別途小売商自身も考えてもらわなくちゃならぬし、政策としても小花商自身が経済的にほんとうに成り立つような、基盤を作る方策を講じなければならぬ、こう申し上げたのであります。百貨店法は、その限りにおいてむろん小売商のある程度の保護になることは事実であります。決して既存の百貨店を保護するために出すのではなくて、小売商との不当、不正の競争を防いで、小売商が成り立つように、そこへある場を作ってやりたい、こういうのがねらいであります。
  184. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、いささか明確にたりましたことは、やはり百貨店法は大資本の脅威にさらされておりまする小売店の保護が、一応のねらいであるということが、おぼろげながら私にもわかりました。そこで私が重ねてお伺いをしたいことは、それならば、すでに既存の百貨店が行なっておりますところの営業行為、なかんずく特に仕入れ行為と販売行為、こういう問題について、その法律はどのような制限を行おうとするのであるか、この点を一つ明確にお伺いいたしたいと存じます。
  185. 石橋湛山

    石橋国務大臣 商行為は非常に複雑でありますから、こまかく一々あれがいけない、これがいけないというふうに、列挙することはいかがかと思いますが、とにかくお話しのように、不当、不正と認められるような苛烈な競争を小発商に対して行う行為は、何かの形でもって抑制するつもりで法案を作っております。
  186. 春日一幸

    春日委員 業界あたりに大体の政府案なるものが示されておりますが、それによりますと、今回の法律はただいま大臣答弁されたごとく、不当あるいは不公正あるいは苛烈に過ぎるというような抽象文学を羅列するにとどまりまして、これこれのことをしてはいけないという、いわば制限の列挙することによって、問題点を明確に調整していくという措置がとられていないかのごとくに、私どもは聞いておるのであります。大臣御記憶にあられましょうが、私どもの法律案もそのことをうたっておりましたが、同時にこれは百貨店法を制定してくれという小売業者側の意見も、また世論も、仕入れ行為については不当かつ不公正とおぼしき仕入れ行為、販売行為、これはさきに公正取引委員会が九項目にわたりまして、独占禁止法に照して、具体的にそれを例示いたしまして、これを禁止事項として百貨店側に注意を勧告いたしておることも、御承知通りであろうと思います。従いまして、大臣は不当あるいは不公正ということを、具体的に摘出することは困難であるというようなお言葉がありましたけれども、しかしそういう困難な情勢下において、すでに公正取引委員会は独占禁止法に照して、これに対して町題の解決を与えております。その解決に従いまして、私どもはあまり小売店を不当に圧迫するような月賦販売行為であるとか、特定顧客を限るところの即売行為であるとか、あるいはまた製造元の直売行為であるとか、あるいは仕入れ行為等につきましては、不当返品であるとか、納入先の店員をただで使うというような行為、こういうような行為は、明らかに売場面積の拡張、新築と同じように、大臣の許可、認可事項となすべきである、こういうことでわれわれは今までその立場を明らかにし、問題を取り扱って参りました。ところが大臣の御答弁によりますと、そういう問題の制限を列挙して的確に示すということについては、非常に困難性があるから、今回はそういうような問題についての取扱い方は別途にこれを定めると言われておりますが、要綱によりますと、何でも商工会議所あたりの商業活動委員会か何かの勧告事項に、これをたな上げするというようなことになっておるのでありますが、もしもそうだといたしますれば、私はそんなことでは小売店の保護とか、あるいは彼らが当面いたしておりまする百貨店によって侵食されておるところの、いろいろな商業取引における場面が、これによって何も調整されない、緩和もされない、また救済もされないと私は思うのであります。せっかく大臣は、この法律案は小売店を保護するためのものであると言われておりますが、そこが法律のねらいでありとするならば、私は現に彼らが強く要請しておるところの仕入れ行為、販売行為に対する制限事項、これをも含めて、やはり百貨店法の中に明確に制定されるべきであると思うが、今回そのことをあえてなされない理由は一体何であるか、この点あわせて明確に御答弁を願いたいと存じます。
  187. 石橋湛山

    石橋国務大臣 独禁法に照しまして不当と認められる行為は、これはお話しの通り、すでにその制限をいたしておるのでありまして、これはむろんそのままそれとして、公正取引委員会から勧告をし制限をいたします。そのほかの行為につきましては、これはいろいろ複雑でありまして、中には一般の小売商といえどもやはり同じ行為、たとえば月賦販売というものは小売商もやって悪いというわけにはいかない。ただ百貨店だけがやっていけないということが、果して適当かどうかというような疑問もいろいろ起ります。しかしながら目にあまるような行為が百貨店にあるということが事実なんでありますから、そこでケース・バイ・ケースによって、実際に即して研究をして、その行為については確かにこれは小売商を不当に圧迫するだろう、過激に圧迫するだろうというふうなものについては、それぞれの機関を通して勧告を行なって、その行為を抑制する方法を講じたい、かように考えております。
  188. 春日一幸

    春日委員 公正取引委員会がすでに特殊指定を行なっておるから、それによってすでに法律的あるいは行政的効果が上っておるような大臣の御答弁でありますけれども、それは大臣がすでに御承知通り、公正取引委員会の機能がどのようなものであるか、しかもそういう特殊指定を行なったり、あるいは勧告を行なったりして、果してその効果がおさめ得られておるかどうか、これはもう明確な問題であります。それは何回そういったような勧告を行なっても、あるいはそういう指定を行なっても何らその効果が上らない。だからこそ小売店の諸君はそういうような不当な行為が横行されておることによって、自由にして公正なる競争の場が百貨店との関係において保たれていない、こういうことから何とかこれこれのことをしてくれという猛烈な陳情になって現われておるのであります。公取は日本経済憲章として、行政機関と検察機関として広大な権限を持っておりますけれども、御承知の給仕から長官まで二百三十何名という少数でもって、わが国における経済万般を管理し、そうした独禁法の規制に基いてこれを取り締っていくということはできはいたしません。だからこそこういう単独法を設けて、警察あるいは司法機関あるいは地方の行政機関を動員することによって、そういう法律的な行政的な効果を上げようとするところに、この単独立法のねらいがあるわけであります。だから私は大臣に申し上げたいことは、せっかく大臣がその小売商の声にこたえて、大資本の脅威に抗しがたい立場にあるこれらの小売店を保護していく、小売店というものはわが国の産業構造の中において必要欠くべからざるものであるならば、小売店がやればやっていけるという経済態勢を法律によって作り上げていく、温存していく、こういうためには私は現在百貨店がやっておりますところの不公正行為とおぼしき事柄、かりにも公正取引委員会が特殊指定を行なった項目については、売場の面積の拡張新設が大臣の許可事項として制定されるこの際に、私は販売行為、仕入れ行為についてはあわせて規制を行なっていくべきである、これを明示していくということも、すでに公取委によってこの問題は明らかにされており、結論の出ておることでありますから、私は技術的にそんなに困難ではないと思う。私はそういう意味において相願わくは、政府が今回提案をされんとしておるその法律案の中には、この仕入れ行為と販売行為の事柄を、不当あるいは不公正と思われる事柄について規制をなさるべきだと思うが、大臣にその御意思ありやなしや、この際お伺いいたします。
  189. 石橋湛山

    石橋国務大臣 独禁法に触れる行為を規制するのは当然のことであります。ただ今度の法律にそれをさらに二重に書くかどうかという問題だろうと思うのです。これは百貨店法ができますれば、今の勧告にせよ何にせよ、独禁法に触れるような行為をするということはむろん許されないのでありますから、そこでこの法律によっても、われわれは百貨店に対して警告を発してその行為をやめさせる、今考えておりますのはいわば頭から法律でもって何をしてはいかぬ、こうしてはいかぬというよりは、多少モラル・プレッシャーによって百貨店の規制といいますか反省を求めていく、百貨店自身に自粛月省させるという考えがそこにあるのであります。モラル・プレッシャー、それに公取の決定が加わるわけでありますから、私は相当効果はある、かように考えております。
  190. 春日一幸

    春日委員 私は問題を明確にしておかなければならぬと思うが、言うならば百貨店はただいま申し上げました通りもうすでに膨脹して、拡張し切っている。もうこれ以上拡張してもしょうがない、またその必要もないというような段階になってから、この法律が出ようとしておる。この事柄は別の角度から批判するならば、これは有貨店保護法であり、既存の百貨店が新しい百貨店との競争がなくなるように保護されておることは明らかである。ところが小売店との関係においてはその仕入れ行為、販売行為における独禁法違反の取引行為については、何らの制限をしようとはされておらぬ。しかも大臣はそれは公取によって取り締られておるから、こういうような言葉でもって逃げようとされておりますけれども大臣も御承知通り他の法律によって禁止されております事柄が、その法律によって効果の上らざる場合単独法が幾つも設けられて、さらにその効果の上るような法律措置は幾多講ぜられておる。あるいは近くはあの補助金等の適正化に関する法律なども、他に幾らも公文書偽造だとかあるいはその他刑法上のいろいろな制約があるにかかわらず、その補助金等の使用が適正に行われていないから、従って特にその問題を単独法によって、効果を完全におさめるために必要な措置として、あの法律が立法されておるわけであります。今回のごときはすでに公取が特殊指定を行いましてから両三年にまたがりますけれども、懲罰をされた百貨店は一店もない、あるいはまた仕入れ行為、販売行為等においてその特殊指定あるいは公取から注意を受けて、本質的に改められたという気配はありません。だからこそそういうような事柄を含めて小売店側はやればやっていける態勢と、自由にして公正なる商業活動の場合を法律によって確保していく、こういうことを強く要望しているのでありますから、この法律案が政府提案として最終決定をされます過程において、なお論議が交えられることと考えますけれども、どうか大臣もそういうような世論をも十分汲み入れて、せっかく法律案を作るなら、百貨店保護法やら小売店保護法やらけじめのつかないようなそんななまぬるい法律でなしに、もっと責任的な、権威のある純粋な法律を作ってもらいたい。小売業者はこういうような事柄を強く要望しておりますから、大臣がせっかく今回そういう法律をお作りになるなら、味もつけて、すなわち仕入れ行為の制限というような塩かげんあるいは販売行為の制限といういうような砂糖かげん、塩や砂糖を入れて一つ料理を作ってもらいたい。まるで白湯でゆでたような、どぶづけのようなえたいの知れない百貨店法なんか、私はむしろなきにしかずだと思いますので、一つこの点を十分御検討願いまして、この独占禁止法を守りつつなおかつこの小売店と百貨店との間の関係がもう少し明確に、しかも独禁法の精神に照して十分均衡のとれた関係が、そこで保障されるようた法律を御提案願うことを強く要望いたしまして、次に入ります。  この際大蔵大臣と通産大臣両方にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、それは損書保険事業に関する問題であります。火災保険に関係する問題であります。御承知通り現在わが国に火災保険会社は二十社ございます。ところが損害保険業法によりますと、新しくこの事業を行おうとするものは、資本これこれの制限があって、なおかつその事業を営むに当って再保険契約を付して、その営業許可の申請を大臣に提出しなければならない形に相なっております。ところがすでに営業いたしておりまするこれらの二十社は、それぞれ暗黙の協約を取り結んで、新設されんとするそういう会社に対して、再保険の契約に応諾をいたしません。従いしましてこういう営業の許可を大臣に願い出ましても、既存の二十社の損害保険会社が、いずれも新規に開業せんとするものに再保険の契約をいたさない。これは明らかに潜在カルテルであり、独占禁止法違反であります。しかしながらこの問題は、われわれがいろいろと指摘いたしましても、その会社個々に当りますると、私の会社はすでに再保険を十分してしまって、新しく再保険に応諾するだけの経済余力がないので、私の会社としては再保険に応諾ができないから、他の方面一つ当ってくれということで、いずれも二十社が申し合せて再保険に応諾をしないのであります。従って現行法律の範囲内においては、新規会社というものができ得ない状況にあることは御承知通りであります。現にここ数年来、特殊の場合を除きましてはほとんど新設の会社というものができて参りません。ところが現在損審保険のわが国におきまする普及率は、諸外国の例に比べますると非常にパーセンテージが悪いのです。イギリスは一三〇何%、たしかアメリカは一二〇何%という工合に、この火災保険の普及率は相当のものであって、万一事故がありまする場合は、その保険の給付を受けることによって、自力でもって再建ができるという経済態勢が確保されておる。ところが日本においては結局二〇数%の普及率でありますから、事ある場合自力で再建することができ得ないという状況にある。一体どうしてそういう状況にあるかと申しますと、これはそのような独占禁止法違反の独占カルテル、潜在カルテルが存在することによって保険料が非常に高い。特にこの保険料については、保険料率算定に関する法律とか、あるいはその公定料率を乱した場合は、保険募集の取締に関する法律とかいうのがあって、それでもって体刑六ヵ月に処すというようなきびしい法律でもって、結局自由な競争の道がはばまれておる。これは独占禁止法の適用を除外されておりまするが、こんな関係でもって現在高い料率が、この二十社によって確保されておりまするために、その負担にたえかねて、結局火災保険というものは普及されておりません。こういうような状況下において、中小企業者においては、事業協同組合法中の共済活動といたしまして、あるいはまた勤労者においては、生活協同組合の一つの事業といたしまして組合を結成して、組合保険というものがすでに数年来行われております。あるものは非常に成功いたしております。すなわち火災保険料率よりもはるかに低い料率でもって、保険契約を結んでおりまするから、従ってそれは事業会社の足らざる面をその組合保険で補うとか、あるいは小額のものはそのものだけによって保険をかけるとかいったような方法によって、これは健全なる協同組合活動として発展しつっあるのであります。  そこで、聞くところによりますると、今回この保険協同組合法なるものを、通産省あたりから提案しようというような動きもあるように報道されております。事業協同組合法中一部改正法律案としてこういうことがなし得るという法律によって、この問題を明確に処理されるということが報道されておりまするがまた一方には大蔵省で単独立法として保険協同組合法を提案するというような事柄も、内部的に報道されております。ところが今国会は再開されてから、もうすでに一ヵ月有余経過いたしておりまして、この問題は今や法律によって明確に回答を与えなければならない段階に立ち至っておるのであります。健全にこれを育成するためには、やはり法律の保護を加えていかなければいならないと思うし、また十分に成長してないものは、それぞれ必要な基準を設けて、堅実に指導することによって、被保険者の利益を守っていかなければならぬ段階にあると思うが、この協同組合火災保険の問題を、一体政府は今国会においてどのようにまとめ上げるつもりであるのか。これはすでに中小企業問題といたしまして、十九国会以来幾たびか国会において論議されつつ次の国会へ、次の国会へと繰り延べられておりますところの歴史的な懸案でございます。この際通産省はこの問題について、中小企業政策の一環として、この火災保険の問題をどのように取り扱い、処理されようとしておるのであるか、まず通産大臣からその御方針を伺っておきたいと思います。
  191. 石橋湛山

    石橋国務大臣 こまかいことは、もし中小企業庁長官が来ておればお答えをさせますが、まだ研究をいたしておりまして、結論に達しておりません。
  192. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 検討は急いでおるのでありますが、まだ成案までいっておりません。
  193. 春日一幸

    春日委員 検討されておって、まだ結論が得られていないとの趣きでありますので、さらに一言加えまして、私はすみやかに結論を得ていただきたいと存ずるのであります。と申ましますのは、現在保険料率があまりに高過ぎる。そうして今損害保険会社の資産繰り状態がどんな工合であるかを調べてみますと、戦後再出発をいたしましたこの二十の保険会社が、今その流動的資本として計上できるものをトータルいたしますと、その額は実に八百五十一億三千七百八十四万円、実に八百五十一億という巨大な利潤が、この火災保険事業からわずか七、八ヵ年の間に確保されておる。と申しますのは、法律じかけでもってとほうもない高い料率でありますから、従って利益がかくのごとくに蓄積されて参るわけであります。こんなことでわずか二十社でもって、実に八百五十一億、これはまさしく被保険者の犠牲によって、被保険者から収奪することによって、しかも自由競争の道をはばんでおくことによって、すなわち権力じかけでもってそういう高い保険料をせしめとったことによって、こんな巨大な蓄積が行われておる。私は現在の火災保険事業は、現在の法律のままに放任されておいてはいかぬと思う。現在都心においてはパーセンテージは多少違うでありましょうけれども、アメリカあるいはイギリスにおける火災保険の普及率と比べますと、その五分の一にも足らざるところの低い普及率である。これは火災損害保険事業の公共性にかんがみましても、またその経済的な必要性からかんがみましても、料率をうんと引き下げてもう少し軽い負担によって、みんなが加入できるような、法律上の改正を行なっていかなければならぬと思います。そういう根本的な問題は、いずれまた損害保険事業法の面において御検討願うことでありましょうが、とりあえずは中小企業者がみずから相よって助け合う共済活動の中において、当然組合保険として認めてやるべきであり、現在すでにこれが行われております。これは広域にまたがって相当の経済効果を上げておる事柄でありますから、私はこの際法律によって基準を作り、保護をし、これを助長育成していく必要があると思いますので、通産省においても、あるいは大蔵省においても、これがもたれ合いになってはならぬと考えまするし、今やその結論を得なければならない段階にあると考えますから、一つ政府において、すみやかにこの問題の結論を得られますよう強く要望いたしておきます。  次に大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存ずるのでありますが、政府は過ぐる第二十二国会にいわゆる資金委員会法なるものを上程されて参りました。これはあのような法律によらなければ政府が必要とするところの政策を行うことができないという大確信に基いて、あの法律案が出されたものと思うのであります。この法律の中に盛られております事柄は、きわめて重要な事柄ばかりでございました。しかるところその法律は先国会において審議未了となりました。ところが、その政府提案の資金委員会法が今国会において上程されないのは一体どういうわけであるか。その点大蔵大臣から御答弁を願いたいと存じます。
  194. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お説のように前国会におきまして、資金法案を出したのでありますが、しかし当時においても、あのままぜひ出さなくてはどうにもならぬということよりも、むしろあの当峠の客観的な金融情勢からして、あのときはああいう事柄を法律に規定した方がよかろうという考え方であったのです。ところがその後における金融の状況は非常な変化を来たしまして、いわゆる金融正常化が非常に進みまして、また一面には金融の本質からいたしまして、この正常化をすなおに成長させていくことが望ましい、こういうふうな考えからして今回はそういう法律によらなくともよろしいという確信のもとにおいて、法案を提出いたさないのであります。
  195. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、二十二国会といったところで、わずか一年前の情勢でありますが、むろん金融が正常化の方途をたどっておるということは、われわれ野党の側におきましてすら、その事柄はおおむね予測をいたしておりましたし、政府施策もそこにこらされておりました。政府は当然資料はあまねく手に握っておるのでありますから、金融情勢がいかなる方向に向っておるかぐらいは予見のできないはずはあり得ないと私は思う。先国会においては、この種法律によらざれば政府は必要なる施策を行うことができないであろうという確信によって、この法律が出されたものとして私どもは真劔にその法律案と取り組んだ。ところが今の答弁によりますと、そんな法律がなくてもその後情勢が変ったからやれる、こういうふうなことであれば、少くとも今日の金融の総元締めである大蔵大臣はその金融情勢の分析、それからその動向というものに対して全然先見の明がなかった、的確な判断を下すことができなかったと誤認して、あの法律を先国会に出された、こういう工合に理解してもよろしゅうございますか。先国会においてはああいう法律がなければ、政府施策が行い得ないという考え方であったが、実は大問違いであってあの法律がなくてもよかったので、まことに恐縮でありましたと、こういうことならば、そういう言葉で答弁をしてもらうのでなければ、まるで法律を火遊びみたいにもてあそんでもらっては、審議する側のわれわれがはなはだ迷惑であります。この点のいきさつを明確に御答弁願いたい。
  196. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は当時の答弁といたしまして、必ずしも法律によらなくともよいかと思うが、しかし何さま金融情勢転換期であるところから、むしろこの際は今の状況であれば法律に基いて規制をするということも悪くないだろう、こういうような考え方で法案を出したというふうに、私は御答弁申し上げておいたわけであります。
  197. 春日一幸

    春日委員 政府提出の法律案というものは、もう少し慎重にお扱い願うのでないと私は困ると思います。先国会においては転換期だから必要だと思う。——あれは暫定立法ではありません。少くともああいう法律を作る作らないということで国会論議は沸騰し、特に銀行協会などというようなものは青天のへきれきとしてあわてふためいて、猛列川なる陳情があちらこちらに行われたことは、大臣は当然御承知通りであります。小くとも法律案を出して、その法律案そのものによっていろいろな影響を業界に与えて、その与えた結果によって、そういう反省をするなら、あるいはそういう協力を政府にするなら、こういう法律案は出さないでおこうというような形になっておると、私は理解せざるを得ないのです。少くとも法律案をもって業界をどうかっするとか、あるいは業界に対して反省を求める資料とするとか、そういうようなことでこの法律案をとにかくもてあそんでもらうということは、不謹慎きわまることだと私は思います。そういう意味合いにおいて、私は少くとも政府が責任をもって出した資金委員会法なら当然今次国会においてもその法律案を上程されて、その所信に基いて態度を明確に貫かれるのが、私は大蔵大臣としてあるべき態度だと思うのでありますが、いかがでありますか。
  198. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 当時の状況といたしましては、私はあの法律案を出していいという考え方で出したのであります。ただそのときにも申し上げましたように、こういう性質の法律は常に必ずしも発動させなくても、法律によってはいわゆる伝家の宝刀というようなことも実際の運用においてあり得る。こういう意味のことを申しておいたつもりであります。
  199. 春日一幸

    春日委員 法律というものは国民を拘束いたします。伝家の宝刀というようなものではない。法律を守らなければそれぞれ処罰を受けなければならぬ、という形になるのであって、そんな伝家の宝刀として抜かなくてもいいようなこけおどしの法律なんかをやたらに出されるような態度は、私は今後十分戒心を要する事柄だと思いますので、十分御注意を願いたい。  そこで私は時間がありませんから論旨を進めますが、御意見をお伺いしたいのは、今回この法律にかわるものとして、形式はそれでありますが、われわれの判断するところでは、先国会に出された資金委員会法、これは銀行協会が猛烈に政府並びに与党に働きかけてこの立法は思いとどまってもらった、ようやくこの火は消したというふうにわれわれは聞いておりますけれども、この法律にかわるものとして、政府に資金審議会というものを閣議決定事項として設けると報道されておるのであります。この資金委員会なるものの職務権限は一体どういうものであるか、一つこの際この資金委員会の使命、性格というようなものを明確にお示しを願いたい。
  200. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回法律による資金委員会というものを出さなかったのは、何も銀行協会等の運動があったためではありません。その点ははっきりいたしておきます。ただ客観的な情勢がそれを必要としないということに基くのでありますが、今考えておりますのは、閣議決定で、大蔵省の中に大蔵大臣の諮問機関として資金運用に関する審議会を作りたい、こういう考えであります。なお詳しいことについては今事務当局に検討を加えさせておりますが、要は諮問機関でありまして、同時に運営の中心は資金運用に関しての基本方針を審議させる、こういうことになると思います。たとえて申せば、たとえば五ヵ年計画を遂行する上において資金の関係において民間の協力はどういうふうにあるべきであるか、あるいはまたその際における財政資金民間資金との調整、あるいはまた融資の態様についてどうであるか、あるいはまた中小企業の金融を円滑にするにはどういうふうな方策をとるべきか、あるいはまた親企業と下請工場との資金関係はどうであるか、不急不要の資金を押えるのにはどうするか、こういうふうな資金運用の基本方針について審議を願う、かように私は今考えております。
  201. 春日一幸

    春日委員 そもそも閣議決定事項というようなものは、私は法律的には何も権威のないものだと思います。ただいま大臣の御答弁によりますと、この資金審議会によって、言うならば財政と金融の一体化と申しましょうか、民間資金をどの方面へ流していくか、またどういう工合に、民間資金を中小企業の面とかあるいは重点産業とか、こういう問題をもあわせてここで審議される、こういうことに私は伺いました。そうだとすれば、少くともそれは国民に対してやはり拘束力をある程度持ってくる、影響力を持ってくると思う。国民との関係において、そこに直接であろうと間接であろうと、とにかくそういう拘束力を持つような機関の設置、これは当然私は法律によらなければならぬと思う。特に掘り下げて論じますならば、今回政府は、予算案の中にも明確に示しております通り、千三百六十何億でありますか、これは当然財政資金によって調達すべき公団公社関係の資金を、民間資金によって調弁しようといたしております。だといたしますれば、そういう千三百六十何億の民間資金等をも想定して、この資金審議会がいろいろとその民間資金の協力体制をも論議するということでありますならば、これはやはり当然その拘束力を持つ。拘束力を持つような機関は、これは当然法律でやるべきであり、政府が第二十二国会において、法律によって資金委員会というものを作ろうとしたのだが、私は前の国会でやられた態度の方が、むしろ国民との関係において問題を処理するのに明確であると思うのだが、今回その資金審議会というような、法律によらずしてしかも国民に影響力を持たせるような機関を作られるというようなことは、明らかにこれは財政法上、さらにまた政治道義上、私は多くの疑義があると思うが、この点について大臣の御見解を伺いたい。
  202. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 拘束力は全然持たないのであります。拘束力を持たずして資金の運用がうまくいくというところに、非常に妙味を持たしているわけであります。
  203. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、政府はこの三十一年度におきまするこの投融資計画において、千三百六十九億でありますか、この月間資金を政策資金として吸収することを考えております。そこでこれは一体どういう法律の根拠でこういうことをやられるのか、一つその法的根拠、これを一つ伺いをいたしたい。明確にしなければならないことは、このかりに千三百六十九億なるものが、一つの金融べースによって、公団公社に金融機関が自主的にそれを強要するということなら、これはわかる。けれどもこれは相手に相談もなく、相手は応諾するともどうともきまってはいない。さらに法律的な立法措置は何ら考えられていない。法律的措置を講じないで、ここにこういう財政措置が講じられておりますが、これは一体どういう法律を根拠として、この千三百六十九億になる民間資金を、財政資金として拘束しようと考えられておるのであるか。また拘束しなければ、一体この予算に示されておるところの公団公社関係の資金というものは、調弁できない形になる。これは重大なる事柄であろうと思いますが、これについて一つ伺いをいたしたい。
  204. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 法律または拘束力を持たせないと、経済的な活動ができないというふうに考える御意見には、私賛成しかねるのでありまして、特にこの経済の、金融のことにつきましては、そういう拘束力を持たずして、最も重点的かつ適正な方向に資金が流れていくということが、最も望ましいのであります。しからば千三百億の金の調達に自信を持つかということになるのでありますが、これは大体私の考えでは、三十一年度におきましても三十年度の預貯金の増加の実績が約八千億をこえております。私はやはり三十一年度におきまするこの預貯金の増加は、八千億から九千億に及ぶだろう、それから産業資金に供給し得る資金量全体は一兆数千億になるだろう、こういうふうに考えておるのでありますが、この数字はなお正確には計算をしてみなくちゃなりませんが、そうしてみると、調達を必要とするのは資金の集まる量の約一割であります。この程度の金を自主的に十分調達し得るという確信を私は持っておりますし、また金融機関もその程度ならばやれるという考え方にあるのであります。
  205. 春日一幸

    春日委員 金融機関を監督管理する立場にありまする大蔵大臣が、今述べられたような民間資金を対象として、なかんずくその一割内外の金をこちらへ同せ、こういう工合に強要するとか、あるいはまた言葉をかえて、構うならば、懇請するとかいうことによって、そういう結果が得られるということは、これは当然のことである。そんなことは当りまえのことであるけれども、しかしそういうことが財政法上において、あるいはまた政治道義上において、少くとも法律によらずして、その金融業者にこれだけのものをこっちへ回してやれとか、あるいは出してくれとか、頼んだりあるいは命令したりすることが——いろいろな法律がありましょうが、少くともわれわれが理解いたしておりまする憲法の根本的な考えから考えたって、これは明らかに私は違法行為であろうと思う。あるいは行き過ぎ行為であろうと思う。私は自然的にそういう結果に金融機関からその金が流れていく可能性は当然あり得ることです。あり得ることであるけれども、少くともこの財政投融資計画の中に、これだけのものは民間からこの金を拉し来るのだ、こういうことをうたわれる限りにおいては、国民に対して拘束力を持つ、少なくとも民間資金、国民の預貯金です。この預貯金を公団公社に出したい人もあるし、出したくない人もあるだろう、あるいはまた公共的性格を持つ企業体は幾らもあるのだが、そういうような特定の会社にのみ、大臣が政治力をもってその企業の資金を調達してやるというのたらば、ほかの企業会社に対してもそういうことをやってくれといったら、あなたはやってやらなければならぬ形になる。法律によらずして、この財政投融資計画の資金を、大臣民間資金から、とにかく個人の画策によって調弁するというようなことは、私は財政法上疑義があると思うし、私は政治道義上、大臣がそんなところに頭を下げたりあるいは落したりして、そんな金か調弁すべきではないと思うが、この点いかがでありましょうか。
  206. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大蔵大臣がこういうところに融資をせよとか、こういう債券を持てとか、そういうことは毛頭言うのじゃないのであります。ただ先ほど申しました資金の露給関係からいたしまして、今申しましたような一割程度のものは、民間において自然に十分自主的に取り上げる見込みがある、こういうふうな意味合いでございます。
  207. 春日一幸

    春日委員 それは単なる一つの金融べ一スによって、当該公団公社が民間資金でそれを調達するということなら、財政投融資計画の中で、千三百六十何億、少くともそれは政府政策をその公団公社はやるのでしょう。すなわちその公団公社の自主的な計画に基いて。そういう公団公社が事業をやるのではない。あなたの政府政策に基いてそういう資金が要るのだから、その資金は当然政府において調弁してやるというのが今までの財政投融資の慣例的なあり方であり、そしてその必要な法律は、そのためにいろいろと立法されておる。今回だけ全然前例のないそういう方法をとられることは、財政法上、政治道義上、私は疑義あり、なかなか理解できないことだと思う。これについて私はもう一ぺん大臣から明確なる御見解をお述べ願いたいと思います。
  208. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 こういうふうに一応説明をいたします。従来電力の開発については財政資金でほとんどやっておったのです。ところが今日の金融情勢から見れば、金融機関の方も電力会社には一つ金を貸してあげようという機運が非常に高まってきた。電力会社の方も全体の金利が下っておるのでありますから、民間から金を借りても、従来に比して金利負担が多くはならない。それで民間に移っていく。これは私は何も妨げる必要はないと思う。ただそういう場合に一応考え方として、政府としてはこのくらいな電力を開発しよう、しかし財政資金はたとえば百億なら再億ことしは要る。そうするとかりに三百億要るとすれば二百億は民間に譲っていくというだけであります。これは従来の財政投融資というものが、何も計画経済をやっておるわけではないのでありまして、民間に資金の蓄積がなかった。そこでどうしても税金という形で、政府がいわゆる強制貯蓄の形でやってきた。それで政府は非常な産業資金を出ておった。それが今度は民間の方に資金が集まるようになったから、正常な姿に返していくというふうに御理解下されば、よくわかるかと思います。
  209. 春日一幸

    春日委員 それではもう一つ伺いいたしますがその資金調達をいろいろな企業体が、ある場合においては、政府資金により、あるものは民間資金によって調弁しておる。これはわかります。ところがそれらの公団公社が、特にこの計画の中に明記されておりまする千三百六十九億、この融資関係がここに計上されていない。おそらくは一年間の貸し出しが三兆何千億といわれているものが、そういう金融べースによっての貸し借りとそれからこの財政投融資計画の中で、民間資金千三百六十九億とここに掲げられておる資金との間に、何らかの相違がありますか。あるいは全然同じものでありますか。ただここにちょっと気休めに書いてみたくらいのものなのか、それともこの千三再六十九億は断然民間資金から調達するという責任を持って、政府がこれを国会に出してきているのであるか。ただここに落書してあるだけのものなのか。これは一つ明確に願っておきたい。これは純粋のべースでそれらの公団公社が自主的にそれらの金融機関へ行ってこれだけの金は調達できるであろう。他の金融会社が調達していると同じようなケースで、また同じような方法で調達するのか。あるいは財政投資計画の中で計上してあるところの千三唐六十九億は、何らかのプラス・アルフア・ハンディキャップがあるのか。プラス・アルファがあるとするならばこのプラス・アルファは何ものであるかこれを一つ答弁願いたい。
  210. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その資金が採算制を持っておるということが一つ。もう一つはこの際思い起していただきたいことは、金融機関はいわゆる公共性を持っておるということ。金融機関の金は金融機関が勝手に使うというわけではない。これは国民が日本産業のために最も有効に使ってほしいと信託的に銀行に預けておる面があるのでありまして、従って金融機関というものは、そういう公共的な見地からも資金の運用を自主的にはかっていく義務がある、こういう兄地に立つわけであります。
  211. 春日一幸

    春日委員 大臣答弁は私の質問を解明する的確な内容を備えておりません。けれどもこの問題は重要な問題でありますから時間の関係もありますのでいずれ他の委員会において、さらに掘り下げて疑義をただすために、さらに質問を行うことにいたしまして、私は先へ進めますが、そこで金融制度調査会、これはこの法律によって今回この関係を明らかにされるとのことでありますが、それならばこの金融制度調査会なるものの調査目標は、一体どこに置かれておるのであるか。まずこの一点を明らかに願いたいと思います。
  212. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金融制度調査会につきましては、なお今後十分検詞を加えていくつもりにいたしております。今成案を得ておりません。従って確定的なことは言えませんが、しかし銀行法、あるいはまた日本銀行法、あるいは臨時資金調整法、あるいは金融機関の分野に関する問題、こういうものがおそらく私は審議会の対象になると考えております。
  213. 春日一幸

    春日委員 御答弁によりますと日銀法、銀行法それから臨時資金調整法ですか、こういうような法律に対して所要の改正を加えたい、こういうことに了解をいたしましたが、こういう問題はすでに新聞でいろいろと報道されて、いろいろな揣摩憶測が行われておりますから、本委員会を通じて、政府の態度をあらかじめ一つ明確に願っておきたいと存ずるのであります。  まず第一番に日銀法の中で、どういう事柄を改正せんとされておるのであるか、巷間伝うるところによりますと、日銀政策委員会を廃止して、これらの権限事項を大蔵大臣の所管に移したいというようなことも、多年日銀法改正の懸案になっておったと伺っております。さらには銀行の支払い準備金、これを今回制度化したいというような動きもあるとのことを伺っておるのでありますが、この二つの関係はどういうぐあいの運びをしようと考えておられるのであるか、この点一つ大臣の御見解を承わりたい。
  214. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま申し上げましたように、まだ成案を得てはおらない。これは政府部内でも相談をせなくちゃなりません。また党とも相談をする。これはなぜかと申しますれば、金融の基本法になります。そうして百年の日本経済を律するかもしれない、こういう非常に重大な法律改正になるのでありまして、十分検討を加えた上で申し上げた方が、間違いがなくてよろしいと思います。今私がここで考えておることを申し上げることは差し控えます。
  215. 春日一幸

    春日委員 この問題はすでに多年にわたりまして、関係者間でそれぞれ専門的な論議が行われておる事柄に属しておりますが、保守党並びに政府が従来考えておりました考え方は、中央銀行をもう少し時の政府の影響下に権力を移譲せしめて、そうして中央銀行を通じて、政府の金融政策がもう少し強力に影響を与えられるような工合に持っていきたい、こういうようなことでこの日銀政策安貝会を廃止されることは、年来の保守党のお考えのようにわれわれは伺っておるのであります。私どもの見解は今その法律がここへ出される段階でありませんので、今しいてここで論議をする必要はあるいはないかもしれませんが、しかしながらやはりこの中央銀行の持つところの公共性、中立性、これをあくまでも私は政党支配というようなものからできるだけ遠ざけて、政府の影響力を金融政策の上に現わすことは当然でありましょうけれども、それは他のいろいろな方策を講ずることといたしまして、時々の政府がこの中央銀行を直接支配していくというようなあり方は、極力避けるべきである、しかしてやはりこの中央銀行の民主的な管理運営をする、このためには日銀政策委員会が存置されることが私はむしろ望ましいのではないかと思われますので、この点等についてもよく世論のあるところを一つごしんしゃくを願って、万全を期せられたいと思うのであります。  次は銀行法の問題であります。この数年来銀行は大へんな好調を続けて、膨大利潤を社内に留保いたしておりますけれども、最近金融が緩慢化され、金利が低下いたしますと、銀行利潤も勢い下って参ります。そうすると現在のような支払い準備制度の全然ないという日銀法のあり方に対しては、何らかの預金者保護の法的措置が講じられなければならない段階にあるのではないか。それは信用度の高い銀行はそういう必要があるいはないかもしれませんけれども、やはり銀行のなかには内容が悪い、あるいは今後さらに悪くなっていくというような銀行もなきにしもあらずと私は思う。だからこういうような金融情勢を察知して、あらかじめ預金者保護のための必要なる支払い準備金制度、こういうものが必要な段階にありはしないかと考えるが、大臣はこれに対してどのような見解をお持ちでありましょうか。
  216. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 申すまでもなく、預金者保護には常に万全を期しておるのでありますが、しかしなお御意見のように、今後におきましても一そうこの預金者保護に意を用いることにいたしたいと考えます。
  217. 春日一幸

    春日委員 支払い準備制度について、制度化される御意思はありませんか。
  218. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういう点について十分検討を加えたいと思っております。
  219. 春日一幸

    春日委員 さらにお伺いをいたしますが、先国会以来私どもの最も強い主張でありますのは、銀行法を改正して、貸し出しについて一定率の規制を行えということを、強く要望して参りました。ただいま大臣の御答弁の中にもありましたけれども、銀行といえども、その資金源は大衆の預金であり、足らざるところは公的な資金を借り入れておる。結局公共性の最も高い資金源である。だからこれに対して法的規制をある程度加えていくということは当然のことだと、大臣答弁されました。そこで私が大臣にお伺いをいたしたいことは、現在の銀行法は貸し出しに対する何らの規制がございません。相互銀行法、日本貯蓄銀行法等には、自己資金の一割を越えて同一企業体に貸し込んではならないという規制があるのであります。ところが一般銀行法の中にはどこにどれだけ金を貸そうと、これは銀行の経営者の自由意思という形に相なっております。この問題を指摘いたしまして、やはりこれは預金者保護の立場から、貸し出しに対して何らかの規制基準を設けて、そうして一企業体に大きな貸し込みを行うことによって貸し倒れの心配、もってその預金者に対して大きな被害を与えるような場合を避けるための立法、こういうものを作る必要がないかと大臣に私が質問をいたしました。これは去年か一昨年であります。大臣はその必要ありと思うので、最も近い将来に貯蓄銀行法、相互銀行法等の例にならって、貸し出し制限の規制を行いたいと考えておるという答弁がなされました。自来すでに一、二ヵ年を経過いたしております。今回金融制度調査会が設けられて、銀行法全般にも触れていろいろ検討したいということでありましたが、今回のその検討の対象となる事柄の中に、この貸し出し制限の問題は含まれているかいないか、そうして今次国会において銀行法を改正して——今や銀行の経理内容がだんだんとつらくなる傾向にあるときに、一ところに大きな金を貸し込むということは、これは危険を伴うことである。また金融の公共性から考えても、多くの人々に潤わせるという立場において、一ところに貸すということは好ましくないと思う。すなわち集中融資の規制を行う意思ありやなしや、この際明確に御答弁願いたい。すでに年来の大臣の御主張でもありますから、今や法的措置の段階にあると思うが、今次国会にこの銀行法を改正する御意思がありや否や、御答弁を願います。
  220. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今申し上げましたように、そういうふうなことも一切含みまして、金融制度調査会で一つ考えてもらおうというふうに考えているのでありますが、私の考えでは今お話の銀行の貸し出し限度といいますか、そういうものも当然取り上げられる対象になると考えております。
  221. 春日一幸

    春日委員 大体そういう答弁を一両年前からされておるが、何ら実行に移されておりません。私は少くとも責任的立場にある大臣が、そういう必要ありと、こういう委員会答弁しておいて、一年も二年もそれに必要なる法的措置を講じないというようなことは、これは全く食言するもはなはだしいと思います。どうか大臣がそういう必要ありとお考えであるならば、すみやかにその必要なる措置を講じてもらいたい。講じないのだったならば、そういう必要があるなどということを言われないように願いたい。必要があることをやらないで置くことは、これは職務怠慢のそしりを免れないと私は考える。大臣はそういう必要があるということをいつも答弁されているのだから、金融情勢がだんだんと悪くなろうとしており、銀行の経理内容が悪化の傾向をたどっている今こそ、預金者保護の立法措置が必要だと思いますので、今次国会一つ上程されるよう強く要望いたします。  次は銀行法に関連してでありますが、現在銀行法の中には、重役の他の営利事業との兼職禁止の条項がございます。ところが最近いろいろな傾向がございますが、その中でこういうような事柄がある。銀行がある企業体へ金をうんと貸し込んでおりますと、そういうようなことが実績になって、その銀行の幹部の立場にあった者をその会社の重役に送り込む。こういう事柄は、直接には銀行法の保護制限には触れないでありましょうが、これがよってもっていろいろな悪い影響を与えております。と申しますのは、当然産業に奉仕するための金融機関が、やはり資金と、それから人とによって、その産業を逆支配するというような形に現われて参っておりまして、これはわが国の産業のために好ましいあり方ではない、正常なるあり方ではないと思われます。私がこれからお伺いしようと思いますことは、そういう健全企業に重役を送るということではなく、悪い企業体に重役が送られておることによって、実は各地において重大なる問題を起しております。具体的に申しますと、今回愛知県、それから岐阜県地方に大きな経済力を持っておりました岡本自転車工業株式会社、これが十億近いところの負債を残して、昨年の八月でありましたか整理に入りました。これは通産大臣にも一つ聞いておいていただきたいと思いますが、岡本工業は勧業銀行がその資金の供給をいたしておったのであります。ところが勧業銀行は岡本に金をどんどん貸し込んで、そうしてその経営がだんだんと危殆に瀕するや、何とかこれを挽回しようというので、その後岡本の社長が更迭して、後任の社長には勧業銀行から人を派遣して、そうして岡本自転車の社長になった。専務も勧業銀行から人を派遣してこれを専務にした。常務、総務部長も全部勧業銀行から銀行の管理というような形で人を派遣して、この岡本自転車なるものを経営せしめること二年有余に及びました。その結果かれこれ十億近いところの負債を残して手をあげてしまった。この間この会社の下請関係にありましたところの中小企業、これは全部で愛知、岐阜、三重三県下にまたがりまして四百数十軒あります。ところがこの岡本工業に対する下請関係の認識は、銀行から社長も専務も常務も総務部長も全部来てやっておるのだから、従って個々の仕事は幾らしてやっても支払いの心配はあるまい、銀行管理だから、相手は勧銀だから、この勧銀の信用によってどんどん品物を納めてしまった、そうして突然これは経営が不能になったから整理する、こういうことで手をあげてしまったわけです。問題はその整理方式であります。先般来これら中小企業者が泣く泣く寄り集まって、いろいろこの問題について訴えて各方面にも陳情いたしておりますが、結局らちがあかない。得たところの結論は何であるかと申しますと、勧業銀行がその債権者会議に提示いたしました整理案は、もしも債権者各位が債権九割を放棄するならば、大体一割程度のものはお支払いいたそう、ところが支払い資金というものはその整理会社にはないので、従って勧銀が別途根抵当として設定しておるところの抵当権の一部を解除する、そして解除したものを換価処分することによって、一つ皆さんそれでしんぼうしてもらいたい、しかしその配当金額はおおむね債権金額の一割程度のものである、従って九割は一つ債権を放棄してもらいたい、債権放棄に調印をしてくれるならば根抵当を解除して、そうしてその整理資金としてこれを使ってもらうことを了承する、こういう案を勧業銀行が出しております。おそらくこの問題については通産大臣に陳情が行われておると思うのでありますが、こういうような銀行のあり方が許されてよいかどうか、銀行の監督を行なっておる大蔵大臣の所見を私は一番に伺わなければならぬと思うが、少くとも銀行がこの重役の兼職禁止の条項に直接触れずとはいえ、銀行から人を派遣して——この際申し加えておきますが、その重役、専務、総務の中には勧銀から派遣されてその衝に当り、経営ができなくなったというてまた勧銀へ戻って、東北地方の支店長に栄転して行っておるものが幾らもある。まるで人事の交流が行われておる。これは私は直接どういう結果になるか知りませんけれども、これは銀行法によって禁止しております兼職禁止の条項に抵触しておると思うが、そういう結果で今あの地方における四百数十名の中小企業者が、何百万円あるいは何十万円という個々の債権を回収することが不可能な状況に立ち至ることによって、みんな次から次と将棋倒し式に手をあげておって、大きな恐慌のもととなっております。一体こういう問題について、銀行を監督する立場にある大蔵大臣として何らかの措置を講ずべき意思はないか、あるいはまた通産大臣として、少くとも銀行の信用によってこれは大丈夫だと思って一生懸命仕事をやってきた零細業者のその品代金が、わずか一割であともらえないという状況にあることについて、何らかの救済を行う、あるいは勧銀に対して何らかのアドヴァイスを行うというような意思はないか、一つ大臣から私が今申し上げました事柄について、その所見を伺いたいと存ずるのであります。
  222. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。銀行が金を貸したからといって銀行から相手の会社に人を送り込む、重役を送るということは、私は適当でないと思います。銀行が資金の融通をするということは、これは当然のことであります。その対価として人を送る。ただ今お話になった事例は、私の察するところでは、銀行の方も会社の方もやむを得ない状況下において、そうすることが会社更正のために最もいいという判断のもとにやったことだろうと思います。そして多くの場合はそれで成功しておる。そういうやはり実績が至るところにあるのだと思います。それでそういう措置もとったのだと思いますが、今の場合はこれは失敗した例になるのでありまして、そのためにいろいろと御迷惑もあったかもしれません。しかしやらなくても同様のことがやはり起ったろうと思いますが、そういうふうなことについては今後一そう銀行は慎重な態度で十分の見通しをつけて、そうして常に被害を最小限度にとどめるために、人を送り込まぬ方がいいという判断がつけば送り込むべきではない。送り込む以上は成功すると確信してやる、こういうふうにしてほか様にできるだけ御迷惑をかけない態度でやっていくようにいたしたいと考えております。
  223. 石橋湛山

    石橋国務大臣 実は私はまだその事情を詳しく聞いておりません。ただ岡本なるものがまずいことになっておるということだけは承知しておりますが、別段陳情も受けておりませんし、詳しく知りもいたしません。お話通りなら、常識的に言って少しおかしいと思います。十分調べまして、何らかの道があれば講じたいと思います。
  224. 三浦一雄

    三浦委員長 春日君に申し上げますが、だいぶ予定の時間を越しておりますから、簡潔にお願いします。
  225. 春日一幸

    春日委員 では簡潔に……。大蔵大臣の御答弁によりますと、そういうことがあったということは好ましくないことだということで、どこ吹く風やらということで、私はこれは銀行を監督する責任者として、ふさわしい答弁ではないと思う。企業体に銀行から社長、専務、常務、総務部長が送り込まれて、そしてそこでいろいろな事業を経営していくという形になれば、それは銀行とその経営者との間ではどんな話し合いをされているかもしれない。けれどもその下請関係やその交渉の衝になかったところの当該者は、どういう話ができておるかこれはわかりません。受ける印象は銀行が本腰を入れて乗り出したのだからこれはもう大丈夫だ、従ってその仕事を一生懸命やろうというので、現に銀行が乗り出したことによってその売掛代金はぐっとふえてきておる。ふえた形で銀行が手をあげてしまった、援助を打ち切ってしまった、そうしてその債権に対して勧業銀行たるものが九割を放葉しろ、一割ならば根抵当を設定したものを解除してやるからそれで一つの処分してくれ、こういうことである。それで銀行がそれだけ自分も大きな損をするならば別でありますけれども、銀行は大きな動産、不動産というものを全部根抵当の設定をしておる。長い期間にこれを換価処分すれば銀行は損をしない。そうして零細業者だけが大きな血を流すことになるのだが、こういうような問題が少くとも銀行の監督の立場にある大蔵大臣としてわかった以上、これは当然何らかの適切なる措置を講じていただかなければならぬと私は思います。当然この問題はこの場において解決が得られる問題ではありませんから、他の機会を得てさらに掘り下げていろいろと政府の善処を促さなければならぬと存じますので、この問題がこういう工合に動いておるということを一つ大臣十分御銘記願って、少くとも基礎的な調査のお進めおきを願って、そうして他の機会におけるわれわれとの検討に万遺憾なきを期していただきたいと存じます。  それからもうただ一点であります。これは一つ郵政大臣に御答弁願っておきたいのでありますが、こういう問題があるわけなのです。その前に通産大臣にちょっと伺っておきたいのでありますが、公社関係あるいは独占命業関係、これらいろいろな料率、代金というようなものは、おおむねこれは大臣の許可、認可事項に相なっておると思うのであります。ところがなかんずくそのいろいろな工事代金とか、さらにその公社、公団関係が請求いたしまする物件の代価、これが独占企業の立場を悪用いたしまして、そしてとほうもない金額を一般国民に要求しておるという傾向が最近非常に顕著である。というのは、これらの独占企業の経理内容がいろいろ苦しい面等もあるでありましょうが、一例を申し上げますならば、東京におきましてガス会社が壁に穴をあけて、そこにガスを引いたというだけで実に五千円の代金の請求をしてきた。これはとほうもない代金であるからというので、もちろん文句を言うたら、たちまち二千五百円に負けた。二千五百円でもこれは非常に高いというので、文句を言うたら、それじゃ負けておこうかというようなことでここに関係書類もありますけれども、少くともガス会社とか電気会社とかいうような、法律によっていろいろ保護を受けておりまする企業体がそういうような工事代金を一方的にとほうもない法外な価格を要求してくるきらいがある。現にそういう事例はたくさんここに集まっております。こういうような意味合いにおきまして、公社あるいは独占関係の企業体の、こういういろいろな料金あるいは代金に対して、大臣は一体どういう監督をされておるのであるか。どういう建前になっておるのであるか。またこういう事例を防ぐために何らかの措置が必要であると思うが、これに対する大臣の御答弁をお願いしたい。
  226. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御承知のように、電気等の料金については、むろん認可許可を要するのでありますから、そういうむちゃなことはないわけでありますが、今のお話のような工事については、会社自身があるいはやらなくても、会社の下請をやっている工事人が法外な工事料金を請求するというようなことは、折々耳にいたしております。また私自身などもそういうことにぶつかった例もないではない。ああいう公益事業に対しては、絶えず注意は促してありますが、しかし今のところ直接そういうものにまで政府として干渉する、直接これを監督するという制度にはなっておらないようであります。なお一つ十分注意はいたします。
  227. 春日一幸

    春日委員 むろん直接関係のものについては、政府において管理が行われることは言を待たないのでありますが、関連事業等についても、公共事業としての趣旨を十分尊重願って、下請関係やあるいは代理店関係等においても、公益事業たるの本来の立場にもとるような料金請求の行われないように、一つ厳重に注意を御喚起願いたい。  それから郵政大臣に、恐縮でありますが、やはり同じような問題でありまして、電話番号簿に広告をとる場合、独占事業でありますので、その広告をとって、代金は幾らかと言うと、それは言えません、いずれ公社の方で決定いたしまして、こういうことで軽く広告を載せると、請求されたものは小さなものが四万四千円であるということで、公社を背景として関連産業、傍系産業の諸君が暴利をほしいままにしている、こういうような事柄も大衆に被害を与えるような事柄でありますから、今のガス、電気の関係と同じように、関連事業、傍系事業等の経営についても、十分御監督を願うことを強く要望いたしまして、私の質問は以上をもって終ります。
  228. 三浦一雄

    三浦委員長 明日は午前十時より開会し、補正予算審議をいたしたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十四分散会