○山花
委員 倉石さんのただいまの御答弁は、何かちょっともっともらしく聞えるような御答弁でございましたが、私は、この点を十分政府としてはお
考え願いたいと思うのであります。
これは、政府当局ももう多分御存じだろうと思いますが、生産性を向上するということを経企
長官もたびたび言われておりますし、また倉石労働
大臣も、今利潤分配を要求するよりも、コストを下げるようた運動で国民にサービスをする、あるいは将来の生産性向上のために社内蓄積を行なって産業
合理化をやって将来を期した方がいい、こういうような御意見でございます。ところが、対日援助をやっておられるアメリカの国会においてどういう議論があるかということを、この際
一つ御紹介を申し上げて、政府もお
考えを願いたいと思うのであります。
これは、一月二十日の朝日新聞に紹介されておるものでありますが、米上院外交
委員会での報告書で、「米上院外交
委員会は十九日、グリーン議員らによってなされたアジア、中近東十一カ国に対する技術援助調査報告書を発表した。報告書は現行の対日技術援助に関して「日本の生産性向上
計画が労働賃金の引上げと生産コスト引下げとを伴わずに産業利潤の向上だけに終るなら、結局は失敗となるばかりか、重大な害毒さえもたらすことになろう」と警告し、米国は、その
意味で周到な注意のもとに援助実施を行わねばならない」ということを勧告しておるのであります。
米国五六会計
年度の対日援助は、御承知のように技術協力費総額百万ドル、三億六千万円で、現在日本にアメリカから来る唯一の現金援助であります。調査団は、この援助
資金をもとに実施されておる日本の生産性向上
計画を視察いたしまして――みずから金を出しておりますから、誤りのないように視察をしたのだと思いますが、次のように報告をしておるのであります。
日本経済の問題点は、他の未開発諸国のものとは大いに異なっておる。賃金水準が比較的低いところに置かれておるにもかかわらず、日本産業はコスト高という大きなハンディキャップに悩み続けておる。これは旧式な生産設備と
行政管理法とから由来すると
考える。従ってアメリカ一九五六会計
年度の対日援助
資金の百万ドルのうち、ほぼ三分の二、六十四万四千ドル、邦貨に直しまして二億三千百八十四万円は、生産性向上
計画につぎ込まれている。だが、日本との生産性協力協定は一九五五年四月に調印されたばかりで、この
計画の成否を論じ得るほどには進んでいない。そこで今注意をする。こういうことを言っておるのであります。
また、米国が現在抱いておる技術援助
計画を実施する対象として、日本は最も適切な国家である。だが、生産性向上は、経済上の信念が伴わない以上はとうてい実行できない。労使、消費者三者一体になってより多くの分け前にあずかることであって、それらのどれかに対する分け前の増加が他の利益を減らしたりというようなことがあってはならないとも言っております。
また、生産性向上
計画からくろ利益が公平に分配されることを見届けるよう、周到な注意のとに対日援助は実施されなくてはならぬ。貧者をより貧しくする一方、富者をより富ませる結果に進んではならないということをうたっておるのであります。
私は、これは最も合理的な
考え方であると
考えております。
計画自体が技術的に成功をおさめても、もし労賃の
引き上げと消費者に対するコストの引き下げとをもたらさぬような、いたずらに産業の利潤の向上に終るならば、結局失敗すると同時に、
一つの害悪をもたらすものであるということを喝破しておるのであります。ただいま労働
大臣も言われましたように、産業によっては高利潤に恵まれているものがある、労働組合は御承知のように団結体でございます。団結体というのは、お互いに強力に組織的に団結をして、憲法によって保障されたる団体行動権を実施して目的を達成しようというのが、労働組合本来の姿であります。倉石労働
大臣もよく御存じのように、一律に賃上げを要求しておりますが、
金額は一率ではございません。
金額はそれぞれの産業によって高低のあることは、労働組合がみずからわきまえて、みずから企業の実態を知ってやっているのであります。
特に申し上げたいことは、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、多年の低賃金に悩んで、そして利潤が上ったからといってすぐにそれを社内留保に使われるようなことは、これは耐えられないことであります。企業家でも、賢い企業家はやはり労働組合の要求を率直にいれております。そして労働者を満足させ、労働者に喜んで生産に協力させ、さらに社運の隆盛をはかっておるというのが賢明なる企業家のやることであります。政府は、たびたび労働者に、賃上げ闘争はけしからぬとか、純然たる経済的な闘争を、あたかも政治闘争であるかのごとく喧伝させ、そして逆に申しますと、全国的組織体の分裂を意図するような、国民と労働者の利害
関係を裂くような政治的な謀略が、政府のたびたびの――特に倉石労働
大臣が大阪あたりでなされた御所見にも、そういうことが十分含まれていると思うのであります。
御承知の
通り、政府は、労資
関係においては中立性を保たなければなりません。その中立性は、特に弱者に対してパーセンテージが加わるように、あたたかい心がまえでなすべきことではなかろうかと
考えておるのであります。この点に関しまして私どもの
考え方、今労働組合がやっている、経済のぐっと利潤の上ったときに対する賃金分配の要求が果して政治闘争であろか、政府は、どういう点を政治闘争とけなされているか、私どもは納得がいきません。今労働組合が共同して戦っている春季闘争に対する政府の所見を、もう少し明快に御披瀝を願いたいと思うのであります。