○西村(榮)
委員 そのお答えも私はもっともだと思います。先走って
総理大臣が、こういう要件で来るから、こういうふうにして応待するんだということは、これは言い得ないし、またあなたが言えば、これは大きな放言になりますから、私は答弁は要求しませんけれども、ダレス氏が来るについて、先ほど申しました三点以外に
一つの大きな任務があると思う。そこでそれについてのあなたのお答えを私は求めようと思いませんが、今議題になっております
アジア経済の問題について、ダレス氏が来たら、あなたはこういうふうな提案をされる意思はないかどうか。少くとも
日本は
アジアの
日本です。西欧の
日本ではございません。これは申すまでもない。しからば
アジアの
日本は、アメリカや
イギリスよりも
アジアのことは一番よく知っておる。この
日本が、
アジア人であり、
アジア人の感覚を持ち、地勢的にも
アジアをよく知っておる
日本が、アメリカに向って忠告するところは、
アジアの問題における、
アジア政策に対するアメリカの大きな欠点です。この欠点をアメリカに向って反省を促すだけの堂々たる
識見と態度が必要ではないか。私はその点を要約いたしまして、アメリカの
アジア政策の欠点というものは四つあると思う。これはイデオロギーと
政治を越えまして純
経済的に見て四つある。アメリカの
アジア援助計画の中の四つの欠点のその
一つは、アメリカの
アジアに対する
経済援助に長期的計画がない。第二は、複数
国家を包含するところの総合的地域的計画がない。個々にひもをつけておこうというか、
アジア全局の平和と繁栄をどうするかという、複数
国家を包含するところの総合的、地域的計画がない。第三に、現地
国家に対する
政治的
理解が乏しい。あまりにも家庭教師的です、教訓的です。高圧的です。(「君がか」と呼ぶ者あり)よけいなことを言うな。真剣に国際問題をやっているのだ。君らの頭にはわからぬ。
私はこの第三点に取り上げました
政治的
理解に乏しい、家庭教師的な感覚を持って、
アジアの民族に向っておるということが、大きなる
アジアの民族感情の反発となって現われている。たとえて申しますと、ごく最近、両三日、アフガニスタンにおいて、ソビエトにアメリカは
経済援助において敗退いたしました。理由はどこにあるか。アメリカはあの国のまん中に十年、十五年たって成功するであろうところの発電所を置きまして、その発電所の建設を中心として、アフガニスタンに対する援助計画を立てた。けれども、ソビエトはアフガニスタンの
国民が目前に待望しているところの道路の建設、家庭の衛生状態、そういろところに年間二分という低利
資金をもって援助しようとするところに、家庭教師的な感覚とそうして身近なものを解決しようというところの、このアフガニスタン民衆の意向との関連において私は失敗したと思う。従って、アメリカに反省を促さなければならぬことは、現地
国家に対する
政治的
理解が乏しくて、あまりにも家庭教師的、理屈っぽい感情とやり方をやめなければならぬ。第四には、アメリカはなるほど国内においては資本主義の多くの欠点を是正しております。そして、資本主義それ自身が変質をしていることも私は認めます。けれども、後進国に対しては、資本主義の露骨なる専横の姿が現われてきている。これが民族感情と相いれない。同時に、資本の貪欲なる姿は、各国の
経済援助に対して多くのひもがついてきている。
日本に対する金の貸し方でもそうです。金は貸してやるけれども、自分のところの
機械を買え、自分のところの技師を派遣するから、その調査費と旅費を払え、パテント代を払え。しかも一・五%の金利で預っておる銀行が金を貸すときには、五%という利息をつけて、おまけにみやげをどっさりつけて、自分のところの
商品を売ろうとするところに貪欲なるひもがついてきている。これは援助よりも貪欲なる資本の姿だと思う。そこで私は以上の点をアメリカに向って反省を促す。そして
アジアの諸国は、アメリカが重点を置いている軍事援助よりも
経済援助を求めている。第三には、
経済援助よりも
貿易の自主権の回復を求めている。
日本と中共の今の
貿易の禁止、これは世界の平等なる
国家主権というものを侵害しております。私は、
アジア諸国が求めているものは軍事援助よりも
経済援助、
経済援助よりも
貿易の自主権の回復、この三つを
アジアの
国民は求めていると思う。そこで私はダレス氏が参りましたときに、ほかのことは別といたします、外交の機密に属することは別といたしまして、このアメリカの
アジア政策の欠点に対して、
日本国の
総理大臣として、
アジアの国の
総理大臣として、堂々とダレス氏に対するところの忠告を試みんとするところの
識見と努力を傾注されるかどうか。