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1956-02-04 第24回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十一年二月四日(土曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 三浦 一雄君    理事 稻葉  修君 理事 川崎 秀二君    理事 重政 誠之君 理事 小平  忠君    理事 柳田 秀一君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    今井  耕君       今松 治郎君    植木庚子郎君       小川 半次君    北澤 直吉君       纐纈 彌三君    河野 金昇君       河本 敏夫君    周東 英雄君       須磨彌吉郎君    竹山祐太郎君       中曽根康弘君    楢橋  渡君       橋本 龍伍君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三田村武夫君      山口喜久一郎君    山本 勝市君       山本 猛夫君    足鹿  覺君       井手 以誠君    今澄  勇君       川俣 清音君    久保田鶴松君       小松  幹君    河野  密君       田原 春次君    辻原 弘市君       成田 知己君    西村 榮一君       古屋 貞雄君    矢尾喜三郎君       八百板 正君    山花 秀雄君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         法 務 大 臣 牧野 良三君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 清瀬 一郎君         厚 生 大 臣 小林 英三君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 太田 正孝君         国 務 大 臣 正力松太郎君         国 務 大 臣 高碕達之助君         国 務 大 臣 船田  中君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 松本 瀧藏君         法制局長官   林  修三君         調達庁長官   安田  清君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月四日  委員松浦周太郎君及び伊藤好道辞任につき、  その補欠として今松治郎君及び井手以誠君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員今松治郎辞任につき、その補欠として松  浦周太郎君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十一年度一般会計予算  昭和三十一年度特別会計予算  昭和三十一年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 三浦一雄

    ○三浦委員長 これより会議を開きます。  昭和三十一年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。松浦周太郎君。
  3. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 私は与党立場において、日本完全独立日本の再建のために、主として建設的な意見を述べまして、政府考えをたださんとするものでありますが、もとより与党立場においてここに立ちました以上、真剣にお尋ねいたしますから、政府各位におかれましても、真剣にお答えを願いたいと思います。  まず第一に総理大臣に対しまして、憲法改正の問題に関しまして重要な点を二、三お尋ねいたしたいと思います。過日来本会議並びに本委員会におきまして、総理の熱意ある本問題に対する御答弁に対しましてはまことに同感であります。これによって政府考え方国民全般にわかりまして、国民もはっきり認識したことと思います。しかるに去る三十日の本会議において社会党の河上君は、その演説中に、憲法改正に関して革命的な重大事態を惹起するおそれありと述べられましたことは、これは乱暴しごくの議論でありまして、私は遺憾にたえません。この重大なる問題については、政府与党また野党を問わず、虚心たんかいになって国家の前途をおもんばかり、子孫繁栄基礎を今日こそしっかり打ち立てなければならぬときであると私は思っております。  そこで改正の実態についてお伺いいたしますが、まず憲法調査会法というものを作らなければなりません。この憲法調査会機構あり方についてでありますが、この点を総理大臣にお尋ねいたしたいと思います。つまりこれは民法や刑法の改正と変りまして、国家百年の基本的ないわゆる憲法であります、従って調査会委員たるべき人は、単に法律専門家であればよろしいというようなことではない。真に時局を達観し、国家の遠き将来を洞察し得るところの大人材がならなければなりません。政治上卓越せる識見を有する達識練達の士を選ばなければならぬと思います。明治憲法制定の経過を見ましても、実に七カ年の長きにわたってその審議を続けており、その研究あるいはあらゆる材料を集めました跡は今なお残っております。このたびの憲法改正に当りましては、その点は憲法全体にわたっての検討が必要であります。現憲法に含まれておりますところの進歩的な思想を後退させないように留意しなければならぬことは当然でございますが、その表現、字句等については全面的に研究いたさなければならないと思います。そのためには私は拙速主義を改めて、時間をゆっくりかけて完全な姿に仕上げることが肝要であると確信いたしております。かく考えて参りますと、憲法調査会委員長たるべき人は最も重大な責任を持たなければならぬのでございますから、明治憲法制定のときには当時の卓越せる大政治家であった伊藤公がその委員長につかれまして、そのもとにそれぞれ専門家の俊秀を集めて審議せられております。  私は以上述べました趣旨から、今日の憲法改正の重大なるにかんがみまして、総理大臣憲法調査会の組織、機構またいかなる委員長の人材をお選びになる考えがあるかということをお聞きいたしたいのでございます。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの松浦君のお考え通り憲法改正は一国の興亡に関する重大事件であります。どこの国でも自分の国の憲法というものを土台として、その国が興隆しておるわけであります。日本国民が自慢のできるような憲法をこしらえなくてはなりません。これはどうしても国民の衆望の帰するような大人物憲法改正に携わる必要があると思います。そこでその人選につきましては、できるだけ国民代表としてだれもかも承認するような、恥かしくないような人間を集めたいというのに苦心をしております。識見の高きはもちろん、代表としてどの点から見ても恥かしくない人聞によって、日本国民の期待がその中に包含されるというような憲法を作りたいと切望しておるわけであります。あなた方の御意見ももちろん参照いたしまして遺漏なきを期したいと考えております。
  5. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 第二に、しからばお尋ねいたしたいことは、憲法改正問題の重要なことは改正手続きであります。私が前に述べました拙速を排して完全を要求するゆえんは次の通りであります。憲法調査会においては、その審議過程と結果を広く世間に発表せられる必要があるという点であります。これによって国民の批判を求めると同時に、他面国民理解を深くする、この手続はどうしても省略してはならないものと思います。国民の大体が理解を得たる後において、初めて改正の成案を作り上げ、改正法律的手続きをとるべきものであると私は思っております。この審議過程を経て、初めて国民憲法改正の必要及び改正内容を把握することができるのでありますから、改正はスムーズに、きわめて理想的に行われるのではないでしょうか。改正内容については、調査会の発足以後に種々検討せられるものでありますから、ここには触れませんが、広く国民とともに考え、また国民とともに納得の行く方式を、改正審議過程においてぜひとっていただきたいのでございます。この点について総理大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もとよりそういうように考えております。憲法改正調査会というものは、憲法の草案を作るというのが目的ではなく、同時に国民に知らせて、国民とともに歩む、その職責までが改正調査会職責だと考えておりまして、国民によく訴えて、国民納得を得て、国民理想を盛り込んで行きたいと考えております。
  7. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 第二は、二大政党の基本的のあり方についての点であります。昨年はわが国憲政典上画期的な重大な問題が決定せられました。すなわち自由主義的な政党と、社会主義的な二大政党対立が実現いたしましたととは、まことに御同慶にたえません。今後における相互の任務と責任は、全く重くなったのでございます。真に民主主義政治議会政治の本義に基いて、すべての政策審議検討や、政権授受が円滑に国会の中で行われるようなルールを確立しなければならぬと思います。これに反してもし相互国会外勢力、これが左翼勢力であろうと、右翼勢力であろうと、直接行動的な暴力やあるいは集団圧力をもってする国会外勢力を利用して、これに便乗し、政策の変更や政権の交替を求めるようなととがありましたならば、それは全く議会政治破滅であります。せっかく民主政治の進歩と前進を目ざして断行せられました自民、社会二大政党の結果が、かえって議会政治の墓穴を掘る結果と相なるわけであります。かく憂いをいたして参りますために、両党の政策に相当の距離がある現状を、お互いに努力によって解消することが必須の条件であります。それがためには社会党政策を実現可能の方に改めよと迫ると同時に、むしろわれわれ自由主義政党が思い切って進歩的な政策を採用し、それが成功していくことを考えなければならぬと思います。そうならば社会党またおのずから現実的な、着実な、今日の大多数の国民の常識にマッチするような政策に改めなければならなくなるだろう。かようにして両党の政策は接近し、国会審議は円滑に行われ、政権授受もまた無理なく行われるものであろうと思うのでございます。しかるに先日鈴木社会党委員長は、全国都道府県連合会代表者会議におきまして、二大政党対立は過渡的な手段にすぎぬ、理想社会主義政党永久政権樹立にあるごとく述べられておりますことを新聞で拝見いたしました。私は前述の立場から考えまして、鈴木委員、長はみずから二大政党対立を否定するものであるごとく考えるのであります。かような考え方を打破するためには、われわれは清潔公明なる政治を実行し、政治の道義を高めるととむに、国会運営を刷新し、反対党意見を尊更し、暴力的な行動を根絶するごとき措置を講ずるなど、果敢に国民の共鳴を得る清新な施策を打ち立てなければならぬと思うのであります。保守合同初代内閣を持っておられます鳩山総理大臣は、この二大政党運営に対しましていかにお考えになりますか、率直にお伺いいたしたいのでございます。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は二大政党議会政治というむのは、これは原則として正しい行き方だと思っております。この発達というものは、二大政党徳義、知識、それによってだんだんとよくなっていくわけでありまして、政党外の力、国会外の精力によって議員内が左右せられるということになれば、二大政党の美点というものがじゅうりんされてしまいまして、これは暴力政治の端緒を来たすものであります。そういうようなことを二大政党論者が主張するはずはない。鈴木君が社会主義を信ずるのあまり、だんだんと時代が進めば社会主義に全部がなるということを強調されただけにすぎないと思うのでありまして、決して二大政党を否認される趣旨において鈴木君が発言されたものとは私は考えません。とにかく二大政党発達というものは、二つの党員の徳義、これが基礎になって発達していくものでありますから、どうかお互い寛容互譲精神でもってりっぱな先例が徳義から生まれてくることを私は期待してやまない次第でございます。
  9. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 大蔵大臣が参議院においでになるそうですから、大蔵大臣の方を先にお伺いいたしたいと思います。  経済諸問題をお尋ねする前に一つお尋ねしておきたいのでありますが、今年の予算国家財政均衡のとれる予算である、なるほど均衡はとれております。国家財政の面から見るならば均衡はとれておりますけれども、その基盤をなす国民生活全体から見るならば、これは均衡がとれていないということは、与党野党——数字で示しているものでありますから、はっきり申し上げなければなりません。失業者の数におきましても、また潜在失業者の数におきましても、地方財政の点から考えましても、国家だけは健全財政ではあるが、国全体から見るはらばまだ健全財政ではない、こういうふうに考えられるのであります。ところが今のこの予算は、当然健全財政の面において作ったものでございますから、これを実行する面、あるいは金融の操作の面という点の運営において、これらのことの万全をほからなければ広らぬと思う。それはとりもなおさず、日本産業経済というものを拡大しねければならない。その拡大については、インフレをおそれるというけれども、消費的な面に資金を出すならば、これはインフレになるかもしれない。けれども生産的な面にそれぞれの施策によって出しましたならば、これは決してインフレになるものではない。特に輸出貿易の面から見ましても、今日の世界経済状況から見ましても、そういう面に積極的は施策をとっても、決してインフレになるものではないと私は確信いたします。そういう点について、この予算外あるいは予算運営の面において、日本経済拡大の方向にさらに努力せられるお考えがあるかどうか。予算の問題はきまっております。その予算外において、これは一つ日本経済拡大完全雇用の面について、総理大臣大蔵大臣にお伺いいたしたいのでございます。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 総じて申しまして、経済拡大通貨価値の安定の基礎の上に立つことは申すまでもないのですが、特に日本経済貿易に依存している。どうしても輸出の振興といろものが先行しなくては経済拡大を困難ならしめる、こういう制約を基本的に受けておりますから、どうしても通貨価値の安定ということが必要であります。言いかえればインフレなき経済拡大であります、他の言葉でいえば今日いわれておる数量景気なんでありますが、この形を日本はどうしてもとらなくてはならぬ。その意味におきまして予算健全性を貫いていっておるわけでありますが、その結果は、今日いわゆる数量景気という形で——これはいろいろな原因があります、ひとり日本経済の力のみによらない、いわゆる対外的の原因もあります、しかし、数量景気という形において大体私は今日うまくいっておると思う。この状況はすなおに伸ばしていきたい。これはあくまで数量景気でいくべきなんで、これが価格景気になったら大へんだ。これは結局日本経済破滅だ。従いまして、予算の執行、運営についてもそういう意味においてやっていきたい。これはすなおに伸ばすことをやっていきたい。  なお今のお話で、それなら全然縮こんでおるのかといえば、決してそうではないのでありまして、たとえば経済拡大について、生産的なものならどしどし金を出していいのじゃないかというお考えがあるようでありますが、これは結局生産規模設備拡大して、そしてそれから生産されるものが貿易なら貿易によって海外に出ていくということを前提にしないと、いたずらに生産拡大して生産支出が二重になった、あるいは拡大された生産設備稼働率が一〇〇%稼働してない、七〇%ということになれば、これは生産コストを上げていく、結局物価騰貴価格景気的なものになりますし、輸出はとまる、こう考えるものでありまして、そういう点を十分に考えまして、必ずしも私は消極主義でありませんが、十分そういうことの見通しが立った上で経済拡大ということも考えていきたい、かように考えております。
  11. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 今仰せにほりましたように、日本貿易日本経済の根幹であり、いわゆる貿易立国主義経済を樹立していくことが一つの基本であるということを考えますと、この際私は一つの腹案を提案いたしまして、大蔵大臣並びに通産大臣の御意見をお伺いしたいのでございます。  日本の近代的な工業力は、欧米の下であるが、アジア諸国から見るならば上位であります。またアジアにおける日本は、言うまでも広く人種も同じでありますし、アジア経済を一番よく知っておるのは日本であります。ゆえに、欧米アジアの中間にあって、一方欧米経済に合せる、他面アジア経済に合せるということを考えて参りますならば、今のような産業規模経済規模では、とてもアジア中心勢力たる経済圏になることはできないと思う。この面から見ましても、どうしても日本産業経済拡大をして、アジア経済中心勢力になっていかなければならない。そうすることが初めて、高碕さんの御出席になりましたコロンボ会議精神であるアジア共存共栄の実を上げるゆえんであると私は考えます。かような積極面だけではなく、日本の今日の輸出貿易で、もその他の経済でも、今仰せになりましたように、多少物価が上りかけておるというようなこともないわけではありません。すなわち昨日運輸大臣運賃は上げないと言っておりますけれど、運輸省の経営上あるいは生産指数消費指数のアンバランス、そういうものを考えれば、十三〇か一五〇の収入で五二〇の機関車を買わなければならぬという状況においては、またこれはどうしても運賃は上ると見なければならない。今年上げないにしてもどうしても上げなければならない。電気の問題も高値見通しであります。また今年は三月の総評の賃金攻勢があります。輸入原料に対しましても、鉄の原料のごとき特に高くなっております。スクラップあたりも、もう二万八千円にもなっておる。スクラップばかりではない。日本の各種の原料が、運賃その他の関係において高くなりつつあります。従ってコストはどうしても高くならなければならない。このコストのだんだん高くなるものを押えていく手段が、日本経済政策上とられなければならないと思う。その私の一つの案というのは、日本生産工業は、なるほど機械工業をやっております。けれど部分的の機械である。機械機械との間は人間がやっておる。そのために非常にコストが高くなります。これを近代的な総合機械化と申しますか、いわゆるコンベヤ・システムのようなものにいたしていきますならば、コストは安くなる。もちろん日本鉄工場欧米各国のやっているような近代的なものができないことは、鉄の質にもありますが、どうしても輸入しなければ、外国商品日本商品が戦うことはできない。そこで私は、現在日本手持ちいたしておりますところのドル、四月になれば十五億ドルくらいになるでありましょう。この中から毎年計画的に一億か二億ドルというものをあてて、いわゆる近代的な機械外国から買いまして、これを直接貿易をやっておるところの生産メーカーあるいは一般産業に貸与する、こういう方法をおとりになったならば、日本貿易はますます振興するであろう、同時に金利のつかないドル手持ちしておるよりも、生産の倍加する、そうして良品廉価になる施設を、死蔵のドルによってやることが、国の経済をより一層高からしめるゆえんであると思うが、これに対する通産大臣並びに大蔵大臣の御意見を率直にお伺いいたしたいと思います。まず通産大臣にお願いいたします。
  12. 石橋湛山

    石橋国務大臣 お説はごもっともでありまして、実は大体それと似た考えから、本年度においても追って御審議をわずらわしたいと思いますが、中小機械メーカー工作機械改善整備をしたい、こう考えております。その場合に、これは機械輸入は、今外貨事情から決して抑制しておりません。必要なものは幾らでも入れてやるという考えを持っておりますが、ただ国産機械でできるものをしいて外国から入れて、国産機械メーカーの仕事を減らすということも好ましくありませんから、その点は十分注意をしておりますが、必要なもの、また日本ではできない、——たとえば火力発電機械にいたしましても、そのほかのものにしましても、日本ではまだできない、あるいはこれを入れれば日本の将来の機械政策に貢献するというものは、ちゅうちょなく入れております。なお中小企業者機械改善はぜひ今年度やりたいと思って、今その法案を準備しておる次第であります。
  13. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 貸し付ける方法についてはどうですか。中小企業には金がありませんから、貸し付けてやるということはどうですか。
  14. 石橋湛山

    石橋国務大臣 それは金融のあっせんをし、また政府も指導しまして、ある計画のもとに資金を貸し付けて、そうして機械を買い入れさせる、こういう方法をとります。
  15. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はこの産業基盤を強化し合理化する、言いかえれば生産コストを下げるためにいい機械を入れるということについては、むろん賛成いたします。ただこれを入れる場合には、私どもの考えでは日本機械メーカー立場考えなければならないのですから、個々の人が使うのに一々入れるというよりも、機械メーカーに入れさせて、そしてそれを日本生産するという道をやはり講ずべきではないかというのが一つ。同時にこれはしかし外貨政府が買ってそれを貸与するという点については、及ぶところが非常に大きいのですから、特に外貨の将来の見通しというものも十分立てなければなりませんし、現在外貨々々と言いますけれども、実際に使用し得る外貨というものについてはいろいろな制約がありますから、すぐそれをそういう固定的なものに変えておくということについてはかなり考慮を要します。同時にまたそういう行き方日本産業をして自主的にりっぱにしていくということも、よほど考えないとならぬと思います。どうも終戦以来事業家も商売人も腕一本すね一本でいこうという気魄が少くなりまして、何でも陳情して政府の力を借りようという、こういう考えを基本的に考え直さなければならぬと思います。むろん日本の今日の現状において、国が手を差し伸べるということは必要ですが、そういう考え方から脱却していく必要があろうかと思います。そういういろいろな点がありますから、十分検討の上でないと何ともお答えいたしかねます。
  16. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 大蔵大臣はいろいろドルのことについてお話しでありますが、一体大蔵大臣日本財政経済上、手持ちドルの限度をどれくらいあればいいと思っておりますか。ドイツは八十億ドル貿易に対して手持ちドルは五億ドルであります。また特別な例はイギリスでありますが、イギリスは属領というかその他の関係国のものもありますけれども、百七十億ドル貿易に対しまして二十億ドル手持ちであります。現在日本は四十億ドル貿易をやったといたしまして、四月になれば十五億ドルになります。いろいろ事情がありますからそれぞれ一致はいたしませんけれども、しからば現在において日本幾らドルがあったらいいかということは、大蔵大臣の腹づもりがあるでしょう。それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一国の貿易決済にどのくらいの外貨手持ちしておくべきか、これは国の情勢によって違うものである。たとえば欧州においては決済方法が非常に違う。欧州ではたとえば支払い同盟というものがありまして、高く決済をしていくという方法がある。イギリスもポンドの、あるいは世界的な地位から考え方が非常に違う。また日本の場合においては敗戦国ということで、賠償ということも控えている。特に国内的にもどちらかというと戦後の復興がありますから、常にインフレ要因、言いかえれば物価騰貴をはらむ傾向をかなり持っていると思う。そうすると外貨についても、貿易振興についても、十分考えないと、そうやすやすといかない。こういう国柄を長期にわたって考える場合には、外貨手持ちが多いとかいうことは、大体において私は日本の場合においてはそんなに外貨手持ちが大きくあるような状況にはないのではないか。これは米から一切の原料輸入しますから、いいときはいいが、長い目で平均して見ると、やはり輸入をふやしていかなければならない。人口が多いから、経済規模拡大していく上からは、どうしても輸入をふやさなければならない。そうしてみると、差額としてそれほど大きな手持ちがあるという状況——今こそ一生懸命になって、賠償もしていかなければならないからたまっておりますけれども、ほんとうにこれを安心して使うという平常な状態を考えると、それほど手持ちは多くないのではないか、こういう気持が私はしております。それは一般論でありますが、そういう感じからして、日本貿易決済にどれくらいいるかということは、そろばんをはじいてみて、まあこれくらいでしょうと大蔵大臣が言うのも少し軽率ではないかという感じがいたします。現状外貨手持ちはそれほど多過ぎないということだけ申し上げておきます。
  18. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それならば、現状は多過ぎない、しかし現状が限度でありますか。一体、十五億ドルなければどうしても決済はできぬ、こういうのか、それくらい以上たまれば、それはある程度為替管理の緩和をして、どんどん有利にドルを使わせるという考えがあるのか、そこのところを聞いておるのです。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今の外貨手持ちが、まあ私はこれで安心するわけではありません。ふやしていきたいと思ってはおりますが、この状況が続けば、私はなるべく貿易の自由化、為替管理の緩和ということを推し進めていく考えであります。
  20. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 青天井のAA貿易について、石橋通産大臣は何かそういう、心組みがあるような新聞記事が出ておったのですが、どの程度までおやりになりますか。
  21. 石橋湛山

    石橋国務大臣 貿易はなるべく自由にいたしたいというのが方針でありまして、従って、その手始めとして、輸入についてはなるべく多くのものを自動承認制にしたい。一々統制をして輸入許可とかいう手続をとらないでやるようにいたしたいと考えて、できるだけAA制に直していきたいと思っております。御承知のように、日本産業が戦争以来非常に変態的でありますことと、同時に海外との関係が多角貿易でなくて相互協定でいかなければならないような貿易がほとんど全部と言ってもいいようなありさまである。この二つの事情に妨げられて、今もって全面的にAA制に持っていくわけにはいかない。できるだけその方向に持っていきたいと思いますが、たとえば羊毛とか綿花とか鉄の原料というものも、今日ではすぐにAA制にする段階まで来ておらないことははなはだ遺憾でありますが、できるだけそういう方向に持っていくように努力いたすつもりでおります。
  22. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 大蔵大臣にもう一点お伺いいたしたいのでありますが、財政金融の一体化が今年の予算の一番中心課題であります。この間の本会議一の御演説の中に、「さらに、資金の運用に関し、国の施策がより円滑に反映いたしますよう、適当な方途を論ずる考えであるます。」、こう仰せになりましたが、これは昨日ここで御発表になりました資金委員会を指すの、であろうと思いますが、他にこれに対処する具体的な方法がございましたら、御発表願いたい。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の予算の特徴の一つ財政金融を一体化してやろうということ、でありますから、従いまして、金融面について相当な施策があることは、これは私も当然であると思います。ただ、今日、金融の本質と言いますか、性格からしまして、特に今日の金融情勢からすれば、十分自主的にやらせまして、国家の要請にこたえ得るという確信を私は持っているわけであります。しかし、単にそれだけでもまた一面において安心できぬであろうという点も、一体化を主張する以上やはり考慮する必要がある。こういう意味におきまして、そういう両方の立場、両方の関係を調整いたしまして、そうして、名前は何と言いますか、資金協議会でも資金委員会でもよろしいのですが、そういう一つ委員会を作っていきたいと考えているのであります。これは、むろん、今言うたような状況下でありますから、私は、大蔵大臣の諮問機関、法律によらなくても十分やり得る、こういうふうに考えているわけであります。  なお、そのほかに何か考えているかということでありますが、そのほかにつきましては別に制度的には考えておりませんが、今日私の考えは、何としても、政府の要請に応じて民間資金が動く上においても、特に政府財政投融資的な意味において民間資金の活用ということになりますれば、なるべくコストのかからないように、従いまして、私は今第一にやはり従来通りの貯蓄の増強ということに十分力をいたしたい。特に若干予算面からも消費的な支出もあるのでありますから、できるだけ貯蓄増強をはかります。そうして金利を、今も相当下っておりますが、なお継続していきたい。特に、金利を下げる場合には、短期の資金はことに多くの資金が出ましたために、短期の金利は相当下っている。コールについても一銭五厘くらい、あるいはもう少し下るかもしれぬ。ところが、社債の条件は、発行者の支払い額からすると、やはり九分五厘ぐらい。これはやはり高いと思います。従いまして、むろん急激な変化を与えてもいかぬが、社債市場、長期市場に金が回ることを指導いたしたい。そして社債の条件を発行者に有利にする。そして長期の金の金利を下げる。同時に、そういうふうに社債を出して民間で消化する以上は、必要の場合に金繰りに困るといけませんから、社債市場、いわゆる社債等の債券の売買市場というものを育成していく。あるいは再開をすると申した方がいいかもしれませんが、そういうふうにいたしまして、今後十分政府の意図を反映する。特に、中小企業関係については、今日政府金融機関の資金量をふやしておりますが、さらに新しい方法考えまして、これは一つ金融機関の、特に大銀行等の金融機関の協力を得まして、何らかの特別な措置を講じたい。これは今後の相談にもよりますけれども、大体従来大銀行等において中小企業の専門の店舗を設けて中小企業金融をやらせる、これは大銀行の経営の形態からしてほとんど言うべくして行われない。ですから、そういうふうな店舗は、そういうことはやめさせて——やめていいと思うのです。そのかわり、大銀行も中小企業に十分関心を持って資金的にも考えていくというような、何らかの形においてそういう方面に一つ新しい構想も考えてみようと思っております。これは具体的には今後の相談の結果にも待ちますけれども、そういうふうにして中小企業の方に金が向くようにいたしたい。特に下請方面において、大企業は金融はゆるんだのですから、物の納入に対しては現金でどんどん払う、言いかえれば大企業が昔の問屋の性格を持って問屋的に中小企業のめんどうを見る、言いかえればあるいは系列ということを言うてもいいかもしれませんが、そういうような方途を講じて、今後中小企業金融については格段の配慮を加えたい、かように考えます。
  24. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 資金委員会を作るということについては昨日もここで御発表になりましたが、これは法的の根拠を持つか持たぬかということは相当議論のある問題でありますから、ここには触れませんが、私は、この資金委員会というものをお作りになるならば、それについて構成のことを一つ注文をしておきたいのです。それは、今全銀連がいわゆる投融資計画委員会という自治的なものを作っておりますが、これは全銀連だけなんです。信託であるとか保険であるとか、あるいは相互銀行その他の金融グループにはこれは作られておらぬ。もし千三百九十億の民間資金を割当するとするならば、これらにも割当しなければならない。でありますから、自治的に大蔵大臣の勧奨によって作らせることが必要ではないか。その上部機構としての委員会をお作りになって、その上部機構委員会には、これらのブロックの代表者が委員として入るというような機構、それにさらにそれぞれの専門家を入れるというようにいたしまして、この資金委員会というものが、静かに考えるならば日本金融というものは言うまでもなく産業経済の動脈なんですから、これが国家の意思に沿うように相談し合うところにされたらどうか。今は全銀連の自治的なものしかございませんが、経済団体その他にもかようなものを作って合理的なものにされたらどうか、こういうことをお伺いしたい。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたしますが、全銀連には信託、保険等も入っておるのでありますが、私の今申しました資金委員会等につきまして、産業界、金融界等の必要な意見が十分反映するように、そういう構成にしたいと考えております。
  26. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 そういうふうにぜひお願いいたしたいと思います。  その次は、先ほどもちょっとお触れになりましたが、金利の問題であります。日本の金利は世界のどこに比べたって三倍半くらいなんです。しかも、このコストの割合を見ますと、金利の負担するところのコストが非常に多い、高いもんなんです。これでは今のような商戦には勝ち抜けない。どうしてもこれは金利を安くしなければならない。金利を安くすろ手段として預金金利を下げるということば、これは預金が減りますから、換金金利を下げちゃいけない。どこで資金コストを安くするかというならば、これはやはり銀行に経営合理化を大蔵大臣は勧奨して、そうして経営合理化をさせなければならない。この銀行の経営合理化の一番私どもの目につく点は、預金吸収の手段として支店、出張所をむやみに作る、それを競争で作る、あるいは大都市の目抜きの場所とするならば、そのビルディングは大体銀行なんです。こういうことにむだな金をずいぶん使っております。それがコストに影響しておる。また、今日の中小企業生産業者はつめに火をとぼすような思いでコストを切り下げておるが、銀行の方はその上部にあって、いわゆる前には法王さんという名前もあったけれども、銀行は実際産業の法王なんです。そこに働く従業員も、つめに火をとぼすような気持で働いておる従業員より、銀行の従業員には倍以上報酬をやっておる。それはまあ非常にいいことです。けれど、均衡がとれない。あるいは、政府の方からいろいろな調査事項を言いつけられますから、それに対して相当むだな人を使わなければならない。これは必要なことでありますけれども、それも簡潔に考えなければならないというように経営合理化をやりまして、この資金コストを下げて、現在平均金利が二銭四厘三毛くらいになっておりますが、せめて二銭一厘あるいは二銭くらいまでこれを下げさせる御意思はないか。これが日本産業経済を勃興させろ基準だと私は思うのです。これについて大蔵大臣の御意見を伺います。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金利の問題ですが、これは私の考えでは二つの点が一番重要だと思う。一つは、戦争によってみな貧乏になった、自己資金というものがなくなったということ。これは、従来は自己資金と外部の借り入れば会社等では六、四で、六が自己資金、四が外、それが今日ではあべこべで、四が内で六が外で、この面からも金利の負担がどうしても多い。もう一つは、資金の蓄積がないためにどうしても金利が上る。ですから、一番基本的には、資本の増加をはかる、いわゆる資金の増大をはかる、同時に、いろいろな手でもって会社等に自己資金、内部保留をふやさせていく、この二つをやらなくちゃならぬと思いますが、さらに、今仰せの銀行の経営の合理化、これは申すまでもありません。特に今後におきまして金利が下るのでありますから——それは非常な膨大なといいますか、大きな何千億という預金を持っておる銀行は運用量がふえますから、金利が安くてもやっていける。やっていけるばかりではない、一そうこれはいいかもしれませんが、そういう銀行に限りません。小さい銀行もありますから、それらは金利が下れば非常に収入が減りますから、いやでもおうでも、そういう面からも銀行の経営の合理化ということは推し進められなければならない。同時に、そういうものを政府としても十分指導いたしまして、仰せのようにいたしたいと考えております。
  28. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 どのくらいお下げになる考えでございますか。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 金利を幾らにするかということを人為的にやるわけにはいかぬと思いますが、今日の情勢におきまして、短期における貸付金利が二銭を割るというようなことはあると考えております。
  30. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 もう一つは、さっきもちょっとお触れになりましたが、大企業の下請企業に対する支払い遅延の問題であります。これは、中小企業の弱いところを見て、百貨店であるとか大企業というものは、その契約に対しては競争入札でやらして、品物が納まってから一カ月も延ばして、はなはだしいのは二百七十日の手形を切っておる例がある。こんなことをされて、それならばこの大企業は金を借りる力がないかといえば、どこへ行っても金を借りられる。中小企業の弱さを見込んで金利かせぎをしておる。これは全く日本の商道徳がここまで行ったのでは日本経済はできないのです。どうしても、手形は六十日、これを大企業からやらせなければいけない。二百七十日の手形をもらっているものですから、どうにもならない。従って、高利貸しの金を借りる、倒産する、不渡り手形を出す、これが今の姿なんです。そこで、大蔵大臣金融業者を督励して、金融業者が大企業に資金を融通するときに、そういう長い手形を切っちゃいけない、六十日にするという条件をつけて貸さしたらいいじゃないか。それでなければ私はだめだと思う。今度通産省の方で下請企業支払い促進法というようなものをお作りになるようでございますが、これを作ったところが、かなめの押えるところで押えてやらねければ、これは法文だけで効果がないと思う。それはやっぱり、金を貸す方の銀行、金融機関に、そういう不徳義な手形を乱発するような企業には金を貸さぬ、こう言わせれば自然そうなると思うが、これに対してどういうお考えでございますか。今の下請企業はこれによって全く困っておるのです。
  31. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全く従来仰せの点がありまして非常に遺憾に思っておるのであります。私どもは、そういう場合に、大企業の下請工業等に対する未払いのリストをとりまして、そうして、銀行から大企業に金を貸す場合にも、大企業に渡さずに、むしろ未払いになっている中小企業の方に振りかえて、その口座の方に貸金から入れるというくらいに、実は中小企業の方に金を回すように努力いたしております。しかし、これはそういう未払いが出た後の処理でございますから、私は十分でないと思っております。それで、今後におきましては、前は大企業にしても金が十分には借りられなかった点もありますが、今日の金融精勢からすれば、そういうことは絶対ありませんから、大企業も当然やってくれると思いますが、なお、仰せのように、大企業が決して下請工業等の物の納入に対して代金を適当にといいますか正当に払わないということのないように、あらゆる措置をとりたいと考えております。
  32. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 金融経済の正常化を叫ばれておられます大蔵大臣は、この点特に御注意を願いたいと思います。  次に、通産大臣に一点お伺いいたしたいと思います。日本の今の現状考えますならば、貿易立国にすると言うが、国内の資源は限度がある。貿易は無限にしなければならない。従って、加工貿易日本の生命でなければなりません。これに対して、先ほども述べましたが、最近の、原料高は、日本貿易ができなくなるようになる一つの線であります。この原料高をどうして克服せられますか。スクラップのごときは、先ほど申しましたように三万円になんなんとしておる。鉄鉱石もまたしかりであります。今の日本貿易面から見れば、鉄の輸出というものが相当大きな面を担当しておるが、かように原料が上ってくるならば、これはやっぱり貿易ができなくなるということになります。これは鉄の原料ばかりではありません。その他の点にも相当響いておりますが、この輸入原料の値上りを阻止するために、どういう考えを持っており、どういう措置をおとりになりますか。
  33. 石橋湛山

    石橋国務大臣 鉄のごときは、ほとんどこれを輸入に待っております。原料については、国際価格の騰貴には、これは日本だけでは対抗ができない。できるだけ引き下げるように、生産の上その他においてコストの引き下げに努力しておりますが、もう先が上ってくるんですから、現在、鉄のごときは、スチールでも輸入ができるならししよう、あるいはスクラップのごとき、むろん輸入することになっておるのでございますけれども、さてなかなか物がない。実際世界的に今鉄は品物が足りないらしい。そういう影響で最近上っておるのでございますから、当面の問題としては、実はいたし方ないと申すよりほかにないんです。ただ、国内でスクラップのごときは、できるだけ出す。これは、現在政府が持っておるいろいろの機械あるいは、建物とかいうようなものは、大蔵省と昨年以来話し合って、最近はだいぶ順調に出ておりますが、国内で出せるものはできるだけ出す。それから、将来の問題としては、磁硫鉄鋼でありますとか、あるいは砂鉄でありますとかいうものの屡用を考えて、国内資源にも供給を持つという方策を講じたいと思って、それは現在鋭意研究を進めておる次第であります。
  34. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 農林大臣がお見えになりましたが、参議院においでにならなければならぬということでありますから、農林大臣と大蔵大臣にもう一問お願いいたします。
  35. 三浦一雄

    ○三浦委員長 それでは、どうぞ簡潔にお願いいたします。
  36. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 農政について農林大臣に一言お伺いいたしておきたいのでありますが、近時、食糧増産投資は非能率である、資金の効率が低い、それよりも貿易産業の方に大いに力を入れて、食糧を外国から買い入れる方がよろしい、こういう論が国内にも相当あります。この点は、日本貿易振興、いわゆる経済の中心である貿易振興と日本の農村経営、日本の食糧自給策、この二つのジレンマにかかりまして、政治の一番むずかしいところであると思いますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。従って、五カ年計画を見ましても、千三百万石の増産とのみ記してあります。もっとも、二割以上の増産をするということは容易ならぬものであります。けれども、先ほども申しましたように、日本の全人口の四三%が農村保有量であるという点を顧みますときに、国土の総合開発であるとか、耕地の拡張であるとか、干拓であるとかいうような方面に万全を期しまして、将来は少くとも自給策をとるということが、私はやはり一つ政治の目標でなければならぬと思うのであります。これに対して、この二つの調整をどうおとりになりますか。これは日本の人口、食糧問題に対する重大な問題でございますから、総理大臣からも御答弁をお願いいたしたいのでありますが、まず農林大臣にお願いいたします。
  37. 河野金昇

    河野国務大臣 国内におきまして農地の造成をいたしまするには相当の資金を要することは御指摘の通りであります。それであるから、この資金を他の方に転用していくという議論も一部にあることも私は承知いたしておりますが、さればといいまして、その論に直ちに私は同意をすることはできないのであります。今日、食糧問題は、国民の食糧という面から考えるだけでなしに、農家の経済を安定確立せしめる上におきまして、現在の農村人口をもっていたしましても、なおかつ農地は非常に不足いたしております。農家経済を安定確立せしめる上から参りましても、農地を可能の範囲においてこれを造成いたしまして、ここに基礎を置いて農業生活の安定をはかるという面からしても、私はぜひ農地の造成、農地の改良には十二分の意を用いて参らなければならないと考えているのでございます。ただいま土地と食糧との関係についてのお話でございましたが、私は、食糧の問題を考えることと農家経済の安定を考えることと、別に切り離して考えたい。これは、そういうことを私が申しますと、お小言をちょうだいする向きもございますけれども、私は、戦争中とか占領下において非常に食糧が窮乏している、いかなる方法をもってしても食糧の供給ができないというときの食糧政策とこれを切り離して、そういうときには、農家の犠牲におきましても、あくまでも食糧の増産に向わなければなりませんけれども、今日の段階におきましては、農家経営の安定確立ということに重点を置きまして、その結果として食糧の増産を意図するということにしたいと考えているのでございます。そういうことにいたしませんと、たださえ困窮いたしております農家経済は一段と困窮するということになりまして、これを補うだけの米価の決定をいたすということにいたしますると、またそこに米価問題がやかましく出て参ります。これらを勘案いたしまして、適当なところに視野を置いて、当を得るということでなければならぬのでありまして、これを一面から割り切りてやるということは適当でないというふうに考えている次第であります。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 農林大臣の答弁で、どうぞ御了承願いたいと思います。
  39. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それでは、もう一問重要な問題を、農林大臣はお急ぎのようでありますから、お聞きいたします。今お聞きしました点と裏腹にありますが、食糧管理制度の改正をすると、ときどき新聞に出ておりますが、どのようにおやりになりますか。ときどきの御発表によると、一面から見れば撤廃のように見えるし、他から見ればまだ存続するかのように見える。この点で消費者も生産の農民も迷っておりますので、この機会を通じて一つはっきりしていただきたい。国民にとって食糧政策はその生命であります。そもそもこの現行食糧管理法の建前は、出産者に対しては再生産を保障すると同時に、一方消費者に対しましては、生活の脅威を与えないということが本義になっております。かりにこれを間接統制いたすことにいたしましても、米価の安定をはかって農村経済の安定をすることはできない。消費者の生活を確保することもできないと思います。米価の変動は賃金、賃金は経済経済日本経済全体に及ぶ重要な問題であります。大正十年より米穀の間接統制に対しましては多大の国費を使っておりますけれども、なかなかこの成果はよくなかった。大蔵省あたりでは米の間接統制をやれば資金は要らなくなると早合点をしておるようにも見えるのでありますが、間接統制の方がかえって資金が多くかかって、その結果は不十分であります。これは過去の経験からであります。私どもはどのように改正されましても、米価は政府が保証する、集荷は協同組合に担当させる、しこうして生産、消費米価は物価安定の基礎にする、この三点はどうしても厳守しなければならぬと思いますが、この間接統制にするかあるいは他の方法をとるかということについて、大蔵大臣並びに農林大臣にお伺いいたしたいのでございます。
  40. 河野金昇

    河野国務大臣 お答えいたします。この機会に一つ私はいろいろ誤解もあるようでありますから、率直に所見を申し述べさせていただきたいと思うのであります。米の問題につきましては、ことさらにとはあえて申しませんけれども、いろいろ誤解に誤解を生むような話がだんだん伝わって、そのためにわれわれの意図する方向のほかに向っておる実情があると思うのであります。たとえば米の統制を撤廃したらば米価が暴落するだろう、暴落するような撤廃を絶対にするはずはないのであります。また消費者の面から申しますと、撤廃をしたらば米価は暴騰するだろう、反対である、こう言われるのでありますが、暴騰するような撤廃は絶対にするはずがないのであります。撤廃する場合におきましても、必ず暴落もしなければ暴騰もしないという諸般の準備ができて、少くとも消費者の諸君にも生産者の諸君にも迷惑をかけずに、安心して消費大衆も生産大衆も信頼できる諸般の準備が整わなければ絶対にやってはいけないということは、私はだれでも当然考えることだと思うのであります。それを逸脱して、そういう暴挙をあえてする、またはそういうことを主張する人があるはずはないと思うのであります。従いまして私といたしましてはいつまでも統制を続けていかないで、そういう不安感を国民が持たぬでもいいような事態を招来して、そうして自由に取引ができるようなことができれば、撤廃した方がよろしい、そういうことが可能であるかどうか、またそういう信頼感を国民諸君に持ってもらうように政府の一切の施策、備準が整うかどうか——整う段階まで努力をいたしまして整ったならば統制をはずした方がよろしい、こう考えておるのでありまして、手放しの統制撤廃をしようというようなことはだれも考えるわけがない、またしてはいけない、こう思うのでございます。そこでしからば政府は現在どういうふうに考えておるか——今申し上げましたような方向をもちまして、順次その統制のワクをはずしまして、そうして消費者の方はどなたも、なるべく食糧を適当な価格で自由に求められるようにしていくがよかろうし、また生産者の方から見れば、再会産の保証が安心できるようなことに持っていくことがよかろうという意味合いをもちまして、明年度の特別会計を編成いたしますにつきましても、たとえば内地米につきましては、従来通り生産者価格の決定方式によってこれを決定して参ります。また消費者価格につきましても、価格の引き上げはいたしません。ただし、外米につきましては、外米の下っていく方向をキャッチいたしまして、これを操作の対象にいたしまして、そうして外米の売り渡し価格はこれをなるべく下げていくようにいたします。そうしてかっての内地米と外地米、との価格差になるべく接近するよう、そうして消費大衆の生活費の引き下げに寄与するようにしていきたい。またこれから差額の出ることによって、内地米の買い入れ価格の一部にこれを引き当てていくということにして、そういう、実績を積み上げて参りまして、内地の生産大衆も安心していけるし、また消費大衆も安心していけるという現実を事実の上に作り上げて、そうしてそこにいくということが一番正しい行き方だと思っておる次第であります。
  41. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私もできれば統制を撤廃したらいいがと思うが、それには各般の準備が要るという考え方に同ずるものであります。
  42. 三浦一雄

    ○三浦委員長 大蔵大臣、農林大臣に対する質疑はよろしゅうございますか。
  43. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 この問題は相当聞きたいのですが、時間がありませんからいいと思います。
  44. 三浦一雄

    ○三浦委員長 両大臣、参議院の予算委員会においでになってけっこうです。
  45. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 厚生大臣に一つお伺いいたします。社会党の方では、この予算を再軍備予算ではないかと身勝手な攻撃演説を方々でいたしております。しからばどれだけ一体軍備費に使っておるか。きのうの御演説にも一五%、それは恩給が入っておるから。その恩給には率先して賛成されたのではないか。でありますから、私ども公平に考えまして八十億しかふえておらないと思う。四百三十四億の中のようやく八十億であります。特に地方行政のごときは、公共事業費は一四・四%になっておる。その他厚生施設におきましても一〇・八%であります。しかしながらわれわれはこの百二十二億の社会保障の経費で満足するものではありません。保守党といたしましても今後ますます年度ごとにどうしてもこの社会保障を強化していかなければなりませんから、その方向にわが党は進むつもりであります。ここで私どもは厚生大臣にお伺いいたしたいのでありますが、各種の社会保障を含めまして、医療保障が未加入者三千万人の全体に及ぶように、少くともここ四、五年のうちに計画的に実行せられたらどうかという点であります。これは前厚雄大臣におかれましても、五カ年計画を立ててその実施を希望しておられた。また審議会の答申も、二年の後にはそうしたらいいだろうという答申もある。こういう現状において経済五カ年計画がだんだん進み、日本経済がよくなるということは、反面においてやはりそれと相応する社会保障の制度を強化していかなければならない。大臣はここ四、五年のうちに一つの計画を立てて、未加入者三千万人というものが全部医療保障の恩典を受けられるような構想を持っておられるかどうか、この際御発表を願いたいと思います。
  46. 小林英三

    ○小林国務大臣 ただいまの御質問でございますが、仰せ通りに、現在未加入者が約三千万人いるのであります。そこでこれらの方々にも国民保険の普及をいたしますと同時に、経済五カ年計画の最終年度の昭和三十五年までを目途といたしまして、国民の全部が社会保険の恩典に浴するように計画をいたしまして、そうして私どもといたしましてはこれらの年次計画を立てて参りたいと思っております。昭和三十一年度におきましてはとりあえず医療保障委員というものを設けまして、これらの方々と協力をいたしまして、これらの具体的な立案あるいは計画等をいたして参りたいと思っておるのでございます。
  47. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 厚生大臣、計画を立てるのですか。今のはあまりはっきりしないのですが、四、五年のうちに完全に三千万人というものを恩恵に浴せしめるということをはっきりお答え願いたいと思います。
  48. 小林英三

    ○小林国務大臣 五カ年計画の少くとも最後の年次までには、国民皆保険の実をあげていきたいと思っております。
  49. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 さように御努力を願いたいと思います。  今度は労働大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、現在総評のゼネストを目標として計画しているところの春季闘争のごときは、民主主義労働運動の本旨に反すると私は思う。国民大衆の利益を裏切り、公共福祉と社会秩序に反抗する行為であると私は思います。われわれ与党といたしましては政府とともに協力して、かような計画的ほゼネストに断固反対しなければならぬと私は思っておるのでありますが、しかしこれはなかなかむずかしいことではございましょう。まあ緩急おのずから手はありましょうが、労働大臣はこれをどう処置せられますか。これは重要な問題であります。一つ労働大臣の御意見を伺っておきたいのでございます。
  50. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 伝えられます総評の春季闘争については、政府考えは先般の本会議で大体申し述べた通りでありますが、御承知のように昨日いわゆる総決起大会というものがありまして、国会議員の有力な方々も激励の御演説をなさっておられます。共産党の方も激励の演説をしておいでになる。そこで私どもといたしましては、民間産業の個々の賃上げ争議などについては、政府はなるべく介入すべきものではない、こういうふうに考えております。(「なるべくとは何だ」と呼ぶ者あり)なるべくと申しますのは、そういう行為の間にしばしば違法が行われるのでありまして、そういう場合には政府としては黙視いたしておることはいけないのでありまして、断固たる処置をとるつもりでありますが、そうでない限りは、民間争議についてはなるべくよい労働慣行を作っていってもらうように指導いたしていくのが私どもの建前であります。伝えられます争議についてはゼネストという言葉がしばしば用いられておりますが、私はいわゆるゼネストであるかどうかということについては、これからの形態を見なければわかりませんが、御承知のように総評だけでありまして、七十数万の会員を擁する全労会議の人々は、この総評の春季闘争というものは政治的な偏向がある、こういうようなことで、まっ先に反対の声明をされたことも御承知の通りでありますし、大きな中立団体も反対の意向を表明しておられるのでありまして、全労働者の要求ではありません。ことに私が非常に遺憾に存じますのは、せっかくここまで発達して参りました日本の労働組合——元来日本産業を復興するためには、労働運動の健全なる発達が期待されるのでありまして、日本の民主化のために労働組合の持つ役割は非常に重大であります。そこでこれが健全なる発達を期待いたして、それを助成するように努めて参りたいのでありますけれども、御承知のように今回の争議については、やはり若干遺憾の点がないではないのであります。たとえば非常に利益率の多い産業と、全然困っておる石炭のようなものと、日を同じゅうして一挙に賃上げ闘争するというようなことに対する批判が、全労会議あたりの批判となって現われておるのでありまして、私はどうか総評の人々もそういう点に十分なる理解を持っていただきたいと思うのでありますが、私は、今申し上げましたように民間産業については個々の争議には介入しないで、違法なる行為があれば、従来しばしば問題になりました放置されておるといわれておる非難を受けないようにすることが、国民に対する政府の義務であると存じますから、諸般の情勢を検討しながら、万全の対策をとっておるということを申し上げて差しつかえないと思います。
  51. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 民間企業に対する問題はわかりましたが、公企業、官公労等にもし違法なことがあった場合に、断固たる処置をおとりにねるお考えがございますか。
  52. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公共企業の方は御承知のように三公社五現業のうち、すでに六つは調停委員会に提出されてあります。調停案が下れば二カ月以内に仲裁委員会に持ち込むというのが法律の命ずるところでありますが、今度の声明を拝見いたしますと、どうも仲裁委員会に持っておいでにならないで、争議にひとしいような行為をされるのではないかという懸念があるようでありますが、これなども私は公労協の人々の慎重なる態度を期待いたしておる次第であります。  公務員につきましては、私どもはいろいろ検討いたしまして、人事院の勧告ほども十分検討いたしましたが、ともかくも先ほど農林大臣も申し上げましたように、消費者米価を上げない、運輸大臣のお話のように鉄道運賃も上げない、しかも乏しき国家財政の中であるにもかかわらず、昭和三十一年度においては勤労所得税の減税をいたしておるというような状態でございますし、ことに物価は近来横ばいであります。従って実質賃金が向上しておるということは争うことのできない現実の事態でありますので、私はまじめに働かれる公務員の諸君に対する定期昇給の原資は、三十一年度の予算において確保いたしておるのであります。従っていわゆるベース・アップはその時期でない、こういう考えでありますので、公務員の諸君にもわかっていただくようにいたしておるのであります。伝えられておりますようなスケジュール闘争の中で、公務員の官公労の本部がいろいろな指令を出しておいでになりますが、私はああいうことを実行されるような気はないのだと思うのであります。もし実際にああいうことをおやりになれば公務員法の違反であることは当然であります。そこで先ほど申し上げましたように、そういう違反行為がありましたときには、断固これを取り締るのが政府職責ではないか、こういうように考えております。  ただ一言申し上げておきたいと思いますのは、私は民間産業でも、もちろん国家公務員の方はなおそうでありますが、一部の指導的立場に立っておいで、になる方々は、どういうお考えであるか知りませんけれども、公務員の大衆、民間産業の労働大衆というものは、決して非常に左翼的なものの考え方で、日本経済を破壊するようなことを考えているのではないのでありますから、こういう人々に対しては政府としてはあたたかい気持を持って、敵視をしないで、間違った行為をおやりにならないで、健全なる労働運動をやってもらうように指導いたしていきたい、これが政府考えであります。
  53. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 もう一点この問題についてお導ねいたしたいと思いますが、自由主義経済社会を肯定して、まじめに経済的な欲求を掲げておる民主主義的な労働組合に対しては大いにこれを育成擁護して、労使協調の実をあけるところまで一つ御尽力を願いたい。そうして労使の協調ができて産業平和が確保し、その企業体から合理的な生産報奨制や、さらに一歩進んで利潤の分配制の普及促進をはかられるお考えはないかという点であります。そうすることによりまして、働けば働くほど収入は多くなる、生産は高められる、コストは低減する、貿易は増大される、国家全体の富は増すでありましょう。ここまでいけば総評がいかにかねや太鼓で踊ろうが、傘下の者は自然に健全組合に帰ってくるであろう。これが私の一つ考え方であります。これは非常にむずかしい点でありますが、ドイツその他の産業の勃興する方面におきましては、法的には作っておらぬけれども、そういう勤労者が企業の利潤を一部受けられる、それで非常な励みをもって働いておるという例は、各所で見てきたのであります。日本経済の中にもそういうものはないとは言われませんけれども、これを政府が促進するように向けられるのと向けられないのとでは大きな違いがあります。そこまで行くことも私は産業的に一つの大きな進歩であると思うが、これに対して通産大臣と労働大臣の両方の御意見をお伺いいたしたいのであります。
  54. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 労働問題のうちで非常に重要な部分を占める賃金政策でございまして、自由民主党の結成のときの綱領の中にも、たしかただいま松浦さんのお話のような文句があったと記憶いたしておりますが、いわゆる生産報奨制ということについては、いろいろに解釈ができると思いますが、私は賃金というものは、大体民間産業内においては、当該企業の経理内容において自然にそこにきまるべき地点が発見されるのたと思いますが、利潤率が非常に多いからといって、その一つ産業の中で非常に多くの分配を労働者にするということは、当該企業だけでなくて、経済社会一般に及ぼす影響を考慮しなければなりませんので、やはり賃金というものは、国民経済全般をにらみ合せて設定されるべきものではないかと思うのであります。そこでいわゆる生産報奨制というような考え方、つまり非常な成績を上げたいということによって、多くの収入を労働者に分配するということについては、南米あたりの少数の国ではいわゆる利潤の分配制度をとっておる国もあるようでありますが、これはごく少数であります。そこで私どもは、その企業の中で非常に能率を上げたというようなことに対して、その能率に応じたる報奨をやるということならば、ただいまお話の報奨ということは非常に意味のあることであろうと思います。従ってそういうことの範囲内における報奨は、もちろん能率に応じたるものをやるのでありますから、これはけっこうでありますが、最終的においては、しからばもうかったときにはそういうふうに配当するけれども、その企業が今度非常に赤字を出したときにはどうするかということも検討してみなければなりませんので、一概に決定しにくいことでありますが、能率に応じたる報奨をやるという制度は、これは助成していくべき重大な賃金政策の問題だと思います。
  55. 石橋湛山

    石橋国務大臣 御質問に対しては、ただいま労働大臣から相当詳しく御答弁があり、その通りであります。これは御承知のように、かつては利潤というものが各企業で平均をしてあるべきものだという経済理論もありましたが、利潤がもし各企業において均衡するものとすれば、その上に対して今度は賃金もおのずから均衡する。そこで利潤の分配の考えも合理的に考えられたのであります。今の経済では、ことに産業界が非常なアブノーマルでありまして、たとえば先ほどお話のように、日本においては石炭のごときはまるでいけない。そうかと思うと、片方には相当利潤の高いものがある。こういうようなでこぼこがあるだけに、賃金問題もはなはだ厄介だと思います。ですから私は利潤分配制度は十分考慮すべきものと思いますが、その実施については、ただいま労働大臣が言われたように、相当実情に合うように考慮する必要はあろう、こう考えます。
  56. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 教育の問題につきまして総理大臣と文部大臣にお伺いいたしたいと思います。  教育の基本的な問題について、今日世界のいずれの国に行ってみましても、民族意識が非常に旺盛であります。特にドイツ民族の旺盛なる祖国愛、民族愛に燃えていることは、私はほんとうに一つの感激を持ちましたくらいであります。また政治のイデオロギーは違っておりますけれども、中国復興の民族意識も非常に燃えております。この民族意識の喪失という点については、日本は世界の代表的なものであり、まことに残念しごくであります。従って青年は希望を失い、社会は混乱し、政治も指導力を失っておるという状況であります。これは日本の教育の一大欠陥であると私は思う。日本の民族意識を理解し、祖国愛の涵養、国民道徳の確立、よき伝統の尊重、正しい民主主義の徹底を期する必要があると私は思いますが、これに対しまして総理大臣の御意見と、衝に当られる文部大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  57. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私から先にお答えいたします。わが日本民族は本来強烈なる民族意識を持っておったのでございます。しかるに今仰せらるるところは、戦後の教育に関係してであろうと存じます。松浦君御承知の通り、わが国の教育は、占領中わけても占領前期にきまったのでございます。ちょうど憲法と同じように、アメリカから教育使節というものが参りまして、その報告がございます。それを基準といたしまして教育基本法と学校教育が組み立てられておるのであります。教育基本法には各種の道徳律が盛られておりますけれども、不思議なことには祖国を愛せという言葉がないのであります。正義と真理を愛せという言葉はありまするが、祖国を愛せという言葉はないのです。勤労と責任を重んぜよという言葉はありまするけれども、父母に仕えろという言葉はないのでございます。これは大きな欠陥でありまするから、これらのこと及び学校の諸制度を根本的に改革していただくために、今回は臨時教育審議会なるものを設けて、徹底的の検討一つやりたいと、かように考えております。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 文部大臣からの御答弁で、ほぼ御了承願ったと思いますけれども、日本に占領政治がありました時分に、とにかく地理の教育はやめろ、歴史の教育はやめろというような制度によって、占領政策が行われていたのでありまして、ただいまにおいても歴史、地理はないような状態でありますから、教育の改善をしなくてはならないのは当然だと考えております。日本憲法におきましても、御承知の通りに基本的人権というものは制定せられておりますけれども、国民としての義務というものは少しも書いてない。こういう憲法はないのであります。それでありまするから、日本の教育のあり方について、われわれが断然とした処置をとらなくちゃならない時期にはすでに到着しておるので、よく考えて実行に移したいと思っております。
  59. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 文部大臣はただいまの御答弁では、審議会の結果を待たなければ、なおわからぬという意味になるのですが、どうですか。教育基本法についていろいろ御議論がありましたが、これは御意思のように直すお考えはありますか。
  60. 清瀬一郎

    ○清瀬国務大臣 私は、これが改まることを希望いたしております。しかしながら、ほかの法律と違って世間では教育憲法ともいわるる大法でございまするから、審議会にかけまして、一毫一厘のあやまちがないように十分検討したる上に、立案いたしたい、かように存じております。
  61. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 今の点は重要でありますから、御努力をお願いいたしたいと存じます。  その次は、防衛問題について防衛庁長官にお尋ねいたしたいと思いますが、言うまでもなく、祖国の防衛をいわゆる国民の負担力の範囲内においてやるということは、予算の上にも現われておりますし、これは当然のことであります。これは予算上から見ましても、兵器や装備を完成させるためにも、一つの確固たる計画がなければなりません。しかしながら、反面から見るならば、世界の科学防衛力は日進月歩というよりも、さらに進みまして、分進時歩というくらいに進んでおりますから、計画があっても、これは途中で修正しなければならぬことが起るでありましょう。しかしながら、一つの計画なしには行けないと思うのです。一、二年前から、六カ年計画というものは始終ここの場で議論されておりましたが、いまだそれが発表されておりません。この六カ年計画というものをお立てになることが、防衛を完成する上においても、計画的な予算を作り上げる上におきましても——毎年々々予算の前にアメリカとの間に相談しなければならぬということでは、計画的な予算はできない。でありますから、この策定はすみやかに行わなければならぬと思うが、これに対する御答弁をお願いいたしたいと思います。
  62. 船田中

    ○船田国務大臣 ただいま松浦委員から仰せられたこと、まことにごもっともでございまして、自民党の結成の際における根本政策といたしましても、わが国の国力及び国情に沿う最小限度の防衛体制をすみやかに整備して、外国駐留軍の撤退に備える、こういう考慮ができております。政府といたしましては、その考慮に従いまして、すみやかに防衛長期計画を確立いたしまして、ただいま御指摘にもありましたように、わが国の防衛体制の整備の目標を早く徹底するようにいたしたいということでございます。これは、総理の施政方針演説にもございますように、今国会に国防会議の構成等に関する法律案をすみやかに提出いたしまして、国防会議が成立いたしました際におきまして、それらのことを審議していただきまして、すみやかに成案として決定してもらうように手続を進めておる次第でございます。
  63. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 そうなっておれば、事務的には、防衛計画というものの検討は相当しておられると思う。そうでなければ、何らの指針なくてはやっていけるものではありませんから、事務的にどの程度まで計画が進んでおりますか。発表の可能の線までこの際一つ発表していただきたい。
  64. 船田中

    ○船田国務大臣 大体防衛六カ年計画というものを、防衛庁試案として持っております。それは、最終年度を三十五年度といたしまして、その最終目標におきましては、昨日のこの委員会においても申し上げましたように、陸上自衛官において、十八万名、海上自衛隊において、艦艇十二万四千トン、飛行機百八十機、航空自衛隊において、練習機をも含めて千三百機、このほかに予備自衛官約二万名を三十五年度において達成するようにいたしたいという目標を立てておる次第でございます。
  65. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 今、国防会議法案というものを今国会に提案するということでありますが、これは、先国会においてもずいぶん問題になったものでありますから、これは整備してぜひお出し願いたい。その中にある委員に、民間委員を入れるかどうかということは、どうでございますか。
  66. 船田中

    ○船田国務大臣 国防会議の構成委員といたしまして、民間委員を入れるかどうかについては、なお検討をいたしておりますが、政府といたしましては、すでに第二十二国会におきまして、衆議院において、御承知の通り修正案が可決されております。従いまして、これを原案として提出いたしたい考えを持っておる次第であります。
  67. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 ただいま御答弁にありましたように、六カ年計画が遂行せられるならば、米軍の撤退ができるという確信のもとにやっておられるようでありますが、なるたけこの地上軍隊の早期撤退を私は要望するものであります。  外務大臣に一つお尋ねいたしますが、かようになりました以上は、安保条約、行政協定というものは、日本とアメリカの関係が変って参りますから、そこに改訂が必要であろうということになるのであります。このことは、今問題になっておるところの日ソ交渉の領土問題についても、千島並びに樺太、あるいは歯舞、色丹、こういう問題に対しましても、この安保条約の内容によって交渉がしにくいという点もからんでくると思うのでありますが、この条約の改訂というものは、地上軍が撤退したならば改訂しなければならぬかどうか、その考えがあるかどうかという点をお尋ねいたしておきます。
  68. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、安保条約並びにこれから出て参りました行政協定、これらの改訂を希望いたしておるものでございます。そしてそのことについては、米国は幾つかの希望を表明してきたものでございます。しかしそれには、御了察の通り、非常に準備が要ります。この準備は、お話の通りに、日本の自衛軍備の充実ということが準備の基礎になります。かような暁におきましては、このことが漸次実行に移される時期になってくる、こう考えております。しかし今のお話の、これが日ソ交渉に直接妨げになるということは、私は考えておりません。のみならず、日ソ交渉をする前から、かような米国との関係ははっきりといたしておるのでありますから、それを頭に置いて日ソ交渉は進められておる。これは日本側だけではない、相手方むよく承知しておると心得ますから、従いまして、日ソ交渉にはこれは関係ないものと考えて進んでおるわけでございます。
  69. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 基地の拡張問題は、きのうもここで御議論がございましたが、民心の動揺の一つであります。この真相を発表することは国民を安定させることであると思います。現在の飛行場は四十カ所ある。うち米軍は十カ所だけにして、その中のジェット機基地は、五カ所を拡張するだけであって、残りの三十カ所は返還すると言っておるが、これを返還するならば相当の面積になると思う。これらがどういう状況になっておるか、この際御発表願うことが、民心を安定させる一つ方法であると思うがどうか。けさの新聞にも、ハウザー司令官の談といたしまして、北海道の演習地約四千万余坪、これを早期返還するというようなことが出ております。こういうようなことがありましたならば、始終問題になっていることですから、この機会を通じて御発表になることは、国民を安心させるゆえんであると思いますが、調達庁長官にこの際一つ御発表願いたいと思います。
  70. 安田清

    ○安田(清)政府委員 お答えを申し上げます。飛行場の関係に関しましては、前国会以来御答弁申し上げております通り、現在まで、米駐留軍の使っておりました飛行場が、約四十カ所ほどあったわけでございますが、五カ所の飛行場の拡張問題が取り上げられました以後、合同委員会を通じまして種々折衝いたしました結果、現在までに返還になりました飛行場は、約七カ所でございます。面積にいたしまして四百六万坪でございます。返還にありました飛行場は、曽根の飛行場、阪神の飛行場、焼津の飛行場、浜松の飛行場、矢ノ目の飛行場、松島の飛行場、防府の飛行場・この七カ所がすでに返って参っております。政府といたしましては、なお引き続きまして次の五カ所の飛行場、面積にいたしまして約二百三十四万坪の飛行場の施設を返還をしていただくということについて、現在鋭意米側と折衝中でございます。五カ所と申しますのは、美保の飛行場、築城の飛行場、雁ノ巣の飛行場、九会の飛行場、大分の飛行場、それ以外の現在提供中の飛行場に関しましても、その使用の度合いが減りましたものについては、今後できるだけすみやかに返還をしていただくように要求をするつもりでございます。それから、ただいま北海道の演習場の返還についてのお話がございましたが、最近の施設特別委員会におきまして、米側から北海道所在の演習場のうち、沼端の演習場及び石狩花畔の演習場を日本側に返還する手続を開始した旨の通報があったわけでございます。さらに昨日発表がございましたように、北海道地区の米軍の演習場のうち千歳恵庭の演習場、それから門別の高射砲の射撃場を近く返還するという発表があったわけでございます。これらを合計いたしまして、お話のございましたように、約三千万坪に及ぶ膨大な演習場が返還になるということになって参ったのであります。
  71. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 時間がありませんから、簡単に申し上げます。防衛生産の問題について、防衛庁長官にお尋ねいたしますが、防衛生産は、兵器、装備、これを自給自足するという建前の上に立って、その工業力を盛んにすることで、これは化学工業、重工業の先端を行くものであり、ある意味においては、化学工業の試験場であります。でございますから、防衛生産力を増強していくことが——日本アジアの工場として将来発展するためには、これをどうしても取り入れていかなければならないと思います。ところが、今やっておる防衛生産状況を見れば、古い軍需工場の草のはえているのを、個人の犠牲においていろいろおやりになっておるが、これは個人の力ではなかなかできない。アメリカあたりでは、これを政府が作って民間に経営させておるというような例もある。こういう話が今年度の初めにあったようでありますが、立ち消えになっておる。こういう点は、一つできるようにしてもらいたい。しかもアメリカから二千万ドルとか三千万ドルの注文を出したいけれども、その機械状況では出せほいということになっておりますが、この防衛生産の拡充あるいはその基礎計画、考え方について一つお漏らしを願いたい。
  72. 船田中

    ○船田国務大臣 防衛生産をいかに維持育成し発展せしめていくかということは、わが国の防衛体制整備の上におきまして、ただいまお話の通り、きわめて基礎的な問題であり、このことはぜひやって参らなければなりません。従いまして、長期防衛計画を、国防会議が設置されましたときこれに付議して、政府の案として確定をしていただく場合におきましては、これに見合うところの防衛生産の体制につきましても十分御検討を願って、政府案を確立するようにして参りたいと存じます。現在のところ、ただいま御指摘のありましたように、その方面におきましてまだ十分手が届いておらないということは、まことに遺憾に存じます。弾薬等の製造設備に対しましても、防衛庁の責任者といたしましては、これは、ぜひ国有民営なり何なり、この能力を維持し、さらに発展することのできるようにしていただきたいという希望を持っておりましたが、まだ十分議が整いませんので、本国会には政策としてお示しすることができなかった次第であります。
  73. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 与えられた時間がありませんから、外交問題その他たくさんございますが、同僚小川君の場合にやっていただくことにいたしまして、最後に綱紀粛正の問題について、一言総理大臣にお尋ねいたします。  最近の会計検査院の報告によれば、昭和二十九年度は七十三億四千万円の不正不当の事実がありますことが、新聞にも発表せられまして、国民はあぜんといたしております。お互いに耳新しいことでございます。これは氷山の一角にすぎず、さらに追及によっては、数百億に達するに違いないと私は思う。また戒告案件はこの不正不当の事実の何倍かを示すであろう。勧告案件も同様であります。さらに驚くべきことは、官吏の刑事事犯の多いことであります。その数は、昭和二十五年をピークとして、二十九年まで漸次減少して参りましたけれども、昭和三十年にはまた上昇しております。その数は、起訴、不起訴を合せまして実に一万二千七百余件であります。かつその中に検察官、裁判官に関するものが百十五件あるということでございますが、まことにりつ然たるものである。年度末に経費を残しておいて、これを旅行費に充てるとか、あるいは緊急でない雑品の購入をするとか、予算額の残りをいろいろな方面に使っておって、あるいは寮の経営までやっておる等はもはや常習とされております。すべてこれは国民の血税であって、この浪費は、戦後乏しきに泣く国民に対して、その罪まさに万死に値すると思う。鳩山総理は、これをいかに粛正せられますか。総理は、まことに御苦労のことでございますが、祖国の官吏道の復興のために、その善処と英断を私は要望いたします。総理の御決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 よく調査をいたしまして、答弁をすることにいたしたいと思います。
  75. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 それではそういうふうにいたしまして、もう一点申し上げます。また血税の浪費の一つとして、自治団体の首長公選から生ずる人気取り政策が、官紀の紊乱と予算の乱費を招いている事実も見のがしてはなりません。これが直接地方財政の赤字の因となっております。これらの刑事事犯もまた多いのです。地方自治団体関係が三千五百件あります。これは法務省の方でお調べになればすぐわかる。私は法務省の統計によってやっておる。この点自治庁長官はどのようにお考えになりますか。まず地方財政の赤字についても、きょう私は、時間がございませんから申し上げませんけれども、こういう点も一つ直してかからなければならぬではないか。このことについてお尋ねいたしたいと思います。
  76. 太田正孝

    ○太田国務大臣 お答え申し上げます。地方財政の赤字のことは、御指摘の通り心痛にたえません。また地方公務員が、不正なこととかいろいろなことがありましたことは、御指摘の通り遺憾にたえません。この点につきましては、地方公務員というものが、全体に奉仕して公共の利益のためにやらなければならぬので、かようなことがあった場合に対しましての禁止もしくは制限がございます。これに対しましては、任命権者が適当に懲戒権を持っていくよりほかないと思います。自治という考えと、政府もしくは国がどうするかということは、非常に微妙な問題でございまして、新憲法下におきましては、自治の本旨ということをいっておりますが、その説明はございません。総理大臣及び地方知事がこれに対して助言勧告をして、その運営をなめらかなものにしろという規定は、地方自治法にあります。しかし、政府が直接にこの問題を処理するということはできませんので、今の公務員法にありまする通り、適切なる助言及び協力をして、御趣意に沿うようにいたしたいと思っております。
  77. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 最後に今の点を総括して、もう一回総理大臣にお願いいたしたいと思います。各省の長官、局長級が参議院とか衆議院に立候補する、これが公職地位の乱用と経費の乱費というようなことは、今も行われておるのです。事実以上のようなことが、まことに遺憾にたえませんが行われておる。このときにあたって、断然鳩山内閣は、公紀、官紀の粛正に乗り出さなければならぬと思う。信賞必罰を明らかにしなければならぬと思う。身をもって官吏道を実践しておる者に対しましては、これを表彰し、悪徳官吏には、秋霜烈日のごとき断をもってお臨みを願いたいのであります。かくして、新年度予算が施行されますならば、その効率は倍加せられるであろう。これが全国民の待望する神聖な政治の姿であると私は思います。この点について、いかなる方法改善、処断せられますか。もしこれが放置せられまして、いろいろな忌まわしき問題が起るような結果になりましたならば、それは、やはり保守党内閣の責任としなければならないのでありますから、ここで、一つこの日本官吏道の復興ということに対しまして、日本の官吏道は世界でも冠たるものであったが、終戦後の虚脱状態にいろいろな問題が起りまして、今日のような状況になっていることは、まことに遺憾であります。しかしかような人ばかりではない。よい人の方が多い。その多い人はどんどんほめてやって、悪い人がこれに見習うということがどうしてもなければ、日本の国は立たぬと思うのです。この点についての総理の御意見をお伺いします。
  78. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 御趣旨は、ごもっともなお話でありますが、それに対してどういうような処置をとるかということは、先刻の御質問と同時に御答弁を申し上げます。
  79. 松浦周太郎

    松浦(周)委員 私は、時間がありませんから、外交問題その他は次の機会に譲りまして、質問を終ります。
  80. 三浦一雄

    ○三浦委員長 午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後一時四十分開議
  81. 三浦一雄

    ○三浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。西村榮一君。
  82. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は本日、財政並びに国民生活貿易、外交の四点にわたって、総理大臣並びに所管大臣に御質問申し上げたいと思います。大綱についての質問でありますから、相なるべくならば、大綱について総理大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。  私は自分が質問いたしまする結論だけ先に申し上げます。と申しますることは、本年の財政は、私は何と申しましても財政規模を縮小すべしという結論であります。その理由とするところは二点ありまして、第一は、低物価政策を堅持して、わが国経済の足固めを両三年持ち続けるべきである。第二は、国際経済の変化に備えて財政のひもを締めておくべきだ。世上国際景気の動向について楽悲両論がありますけれども、政府も御指摘になったように、国際経済の将来の動向について私は楽観いたしておりません。そこで万一国際景気が停滞するか反動化する場合においては、日本経済一つの危機が来るのでありますから、そのときにおいては新しい産業を起すとか、土木事業を起すとかして、経済の危機と雇用の問題を解決するためには、今は最も健全なる方針をとらなければならぬのではほいか。これについての総理大臣並びに所管大臣の大綱の御意見を承わりたい。
  83. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 西村君の御意見については、大体私は同感でございます。本会議において大蔵大臣が説明をいたしましたごとく、国際経済は三十一年度も昨年と同様好況ではあるでございましょうが、上昇率は昨年ほどではありますまい。財政金融面で健全財政を堅持すると言いましたのは、あなたと憂いを同じゆうしておる大蔵大臣の方針だと考えます。大体におきましては御同感でございます。詳細のことは大蔵大臣から答弁させます。
  84. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 強く健全財政を貫けというお言葉につきましては、まことにありがたく思っております。  まず今回の財政の規模ですが、これは一兆三百四十九億ですが、国民生産から見ますと、大体総生産の増加に比例して——生産が四・三程度と思っております。予算の方は四・四程度になっております。それから国民所得の関係から見ますと、昨年の一兆のときもことしも、国民所得に対する関係では一四・八でありまして、国民所得に対する圧力は同じことになっておるわけであります。むろんそれだけですべてここで御説明申し上げるというのではありませんが、そういうよう底いろいろな観点からいいまして、この程度の予算の規模が、今日の日本の経群あるいは国民生活の上から見て妥当である、かように考えておるのでございます。なお今後の国際的な経済情勢につきましては、私財政演説で相当詳しく所信を申し上げてあるのでありまして、軽々に今後の景気を楽なりとは判断しておりません。しかし非常に警戒を要すべき点があることを心得て、それに対応するように日本経済を今後指向していきたい。言いかえれば、を育成していきたい、かように考えておるわけであります。
  85. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ただいまの大蔵大臣の説明は、本会議においても承りました。しかし私が大蔵大臣に問わんとするところは、本年の国際景気というものは楽観できないということでありまするならば、それに対処するの政府の方策を聞きたかったのです。これは私だけではなしに、国民ひとしくそうだろうと思います。私はそこで、抽象的にあなたにお聞きしても仕方がないのでありますから、私の聞かんとする要点を申し上げますと、昨年日本輸出貿易が予想外に伸びたのは四つの理由があります。一つは後進国の生産が非常に上昇した、それに対して先進国の生産がマッチしなかった。この間隙に乗じて日本の品物は予想外に伸びたけれども、本年は後進国も一定の生産の段階に来ている、先進国もまた頽勢を取り戻した。従って昨年ほどは、この観点からいって、日本輸出貿易というものはそう楽観を許さぬ。第二点においては、アメリカ並びに西欧諸国において、昨年の国際貿易の状態にかんがみまして、かなり保護貿易主義的な傾向が台頭してきた。これはアメリカ大統領選挙を前にいたしまして、またヨーロパの政治情勢にも当然保護貿易主義というものが台頭してくる。この二点においては楽観を許さない。それからアメリカの景気の動向は、日本経済を著しく支配するのでありますけれども、生産財においてはもはや頭打ちになっている。同時に耐久消費資材もかなり在庫品がふえている。第四番目には、こういうふうな国際貿易の激甚なる競争は、当然貿易の停滞となって現われてきている。この四点の国際経済の動向を看取いたしまして、日本貿易政策というもの、あるいは産業政策というものはどういうふうな対策をすべきか。大蔵大臣並びに経企長官は単に国際景気を警告するにあらずして、あなた方は経済評論家ではないのであって、国政を担任する政治家なのでありますから、政治家としての識見のあるお答えを願いたい。
  86. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま国際経済の動向を将来において規制いたしまする四つの事情をお話しになりましたが、大体において私もそれには異論はないのでありますが、ただ第四の、今後世界経済において貿易が小さくねるだろうというような意味のことがあったようでありますが、私はそれににわかに同意しがたいのでありまして、ただこれが非常に激しい競争になるだろうということは言えるが、世界経済貿易全体として縮小するというように私は考えておりません。われわれとしては、今お話がございましたような情勢に対応していくためには、どうしても日本経済基盤を強化拡大をして、そうして国際的な競争力を日本経済がもっとより大きく持つということ以外には、私は対応する根本的な点はないと思っております。従いまして今回三カ年目ではありますが、なお依然として健全なる財政政策をとり、さらにこれに基いて国の経済について健全なる政策を貫こうとするゆえんもここにあるのであります。言いかえれば物価を上げずして良質なものを作り、いわゆる数量景気というものをすなおに育てていくということに目標を置いております。なおまたその根本だけでは足りませんので、どうしても今後の日本貿易拡大していくためにはたとえば対外的な経済活動というものを盛んにしなくてはならない、かように考えておりまして、そういうふうな具体的なことについて今回予算はできるだけの配慮を加えたつもりであります。たとえば経済外交を大いに推進していく、従って海外公館等についてもできるだけの措置をとる。あるいはまたジェトロといいますか、ジャパニーズ・エクスポート・トレード・リサーチ・オーガニゼーションというものを通じての海外の宣伝調査というものも強化をしていく。あるいは海外における銀行商社を強化していく、これに対して外貨手持ちさせる。あるいはまたガットに加入ができましたので関税引き下げについて努力する。あるいはIMFの国際通貨基金において、できるだけ為替の制限の緩和ないし撤廃の要請に努めておる。さらにまた従来具体的な予算面のことではなかったのでありますが、海外投資について保険をするということを今回特に予算面にも認めることによりまして、できるだけの措置をとって貿易の増大、今の国際情勢のお話の、なかなか安心できないところに対応することにいたしておるわけであります。
  87. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ただいまの大蔵大臣の答弁は、経済基盤拡大するために本年度の予算において万般の処置を講じておる、こう言われるのであります、私はもう少しあなたから具体的な説明を承わりたい。と申しますることは、先ほど申しました日本輸出貿易についての障害の四つの以外に、日本貿易の一大弱点は安定せる市場がないということであります。これは御同感であると思います。どさくさにまぎれて去年は伸びた、けれども安定した市場がない。従ってその安定した市場というものをどこに求めるかというと生産財の輸出です。これ以外にありません。問題はやはり機械工業を中心とする生産財の輸出——これは安定市場でありますけれども、これが日本にないということが輸出貿易の大きな弱点です。私があなたに承わろうとするのは、その問題を一体施策の上にどう解決されるのであるか。ドイツは大体五〇%以上が機械工業輸出であります。が、日本は辛うじて二割です。ただこの二割も造船業のあれでささえられておるのでありまして、機械工業は、ほんとうの精密工業、その他の機械工業と称するものは統計上昨年は減っております。そこで私は安定せる市場並びに日本と東南アジアとの経済機構考えまして、この東南アジア諸国の勃興してくる軽工業に対して、日本は競争的立場に立ってはならない、彼らを援助し、かつまた日本の特色を生かす産業構造というものをここに考えなければいかぬじゃないか。これが昨年幸いにして貿易の伸びによる黒字が出た、貿易が幸いに順調に進んでおる、このときに日本考えるべきではないか。そこで私はそれに対する具体的な施策をあなたに聞いている。そこで機械工業一つの例をとりましても、私は新しい産業を育成する財政の投融資が減っている、あるいはプラント輸出に対する政府出資と民間出資との、バランスも少し減ってきている、こういうふうにあなたがおっしゃる点と具体的な施策が逆転しているというところに不可解なものがあるのであって、一体その点における真意いずこにありやということを私は具体的に聞きたい。
  88. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 貿易において安定した市場を持つべきであるということは、これは言うまでもないのでありまして、これに努力を払っておるのであります。そこで日本の場合において安定市場が東南アジア諸国にまず指向されるであろうことも、将来の問題として当然努力を払わなくちゃならぬはずでありますが、これには私の考えでは、まず第一にやはり賠償というようなものを解決して、そして国交回復をはかるということ、同時に賠償の解決に際して、それらの国と十分協力関係ができるような方途において、この解決をはかるというのも、私は具体的な方法であろうと思うのであります。なおまた後進国は繊維類——軽工業はみなやるから、しょせん日本との競争になるという説でありますが、これも私は大勢としてそうであると思うのでありますが、しかし東南アジア、特にアジアの人口等を考え並びに今日の民生の程度、いわゆる生活程度、これの将来における向上等を考えますときに、そう日本の繊維が引っ込むこともない、従来のようにはいかぬがこれらの国に軽工業が発達しても、なお日本の繊維工業は十分やっていける余地を将来相当の期間において残すだろうということを考えております。しかし大勢としてはやはり機械工業その他のものに移行する、従いまして今日の日本産業構造、これはいずれ経企長官からも話があるかもしれませんが、現に軽工業から機械工業並びに車工業的のものに徐々に移動をしつつあるというととも、言うまでもないのでありまして、それらについては十分な措置をとりつつあるわけであります。なおこういう面について一つの例をとっても、私は東南アジア等におけるそれらの施策を円滑にやるために、前年もそうでありますが、今回は特にまた輸出入銀行の資金を大きく充実しておるゆえんもその辺にあるわけであります。
  89. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ちょっと閣僚に御注意申し上げておきますけれども、私の問わんとすることは、あなたがおっしゃるような経済読本のような講釈を聞いておるのではない、具体的に聞いているのですから、とぼけた答弁をしないで具体的にお答えを願いたい、私は具体的にお伺いをしましょう。  政府施策があなたのおっしゃるところと逆転しているということは、一例を言えば輸出に対する財政資金が、前年度は政府資金八に対して民間資金二です。本年度は財政資金七に対して民間資金三です。このことは金利にどういう影響を持ってくるかというと、八と二でやります場合においては、総計いたしまして五分三厘の利息になる。しかし七と三になりますと五分六厘七毛になる、これは今日でさえも国際競争の入札に日本が立ちおくれておるのでありますから、これだけ金利が高くなるとかなり輸出業者というものは困難になってくる。政府のおっしゃる施策とこれとは逆じゃないか。同時にあなたは賠償の問題を言われました。賠償という問題も必要でありますけれども、そういう抽象論じゃなしに、施策に現われた現実的な点を見ますならば、機械工業輸出振興するためにはどういう施策が必要であるか、その機械工業の次にくるところの重化学工業の育成方法は一体どうしていくのであるか、今日、あす、あさっての関連性において、アジアの安定せる市場において日本が相当の進出をするにはどうするかということを承わっている。あなたのおっしゃるところは、一つの例を申しましても、去年は八と二であったのを今年七と三になさる、これは施策は逆です。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 鉄鋼行政その他に関することにつきましては、通産大臣からお話になるのが適当と思いますが、私の関係する限りにおいて、たとえば金利の点についてのお話でありますが、それにお答えいたしますと、むろん財政資金から出ます資金量が小さくなりましたから、その限りにおいて金利負担が大きくなることは申すまでもありません。これは算術的にわかる。しかしながら一つの企業が使用する資金量というものは、何も政府から出す金だけではないのでありまして、おそらく政府から出す金の何倍というものを民間資金に従来依存しておったのであります。政府から出るのは大体設備資金の一部であります。設備資金が一であると、運転資金は大体その三倍くらいというのが従来の仕事をする上においての通例であります。そうしますと、今日運転資金その他の資金に対する金利いかんにかかっておるのであります。従いまして、企業の金利負担というものは、かりに財政からする資金量が減っても企業としては楽になっていく。ごく具体的な例を言っても、たとえば電力という問題、これは電気料金の関係ですが、電力に対する国の投融資が減ったから、いかにも電気料金を上げなければならぬように錯覚するのですが、そうではないのでありまして、今日電気事業については、おそらく今の金利が下った結果、年間にして十数億も金利負担が軽減になっているというのでも、きわめて明白であります。
  91. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私がしばしば御注意申し上げるように、要点をはずした答弁をしほいように。私の言うのは、輸出に対するだけに一例をとっても、昨年八と二であったのが今年七と三になった、その結果金利が輸出に対して高くなる、それでは日本輸出業者は国際競争に対してそれだけの割を食っている、貿易の動向は先ほど私がお話申し上げたように、しかもこれに対して各国が猛烈に反撃しようとするときに、金利の点において割を食っている、それであなたが言われるような国際景気に対する警告と同時に輸出になお力を入れるのだということが、この貿易の金利負担の問題からいっても一体できるかできないかというところを私は聞いているのです。電力の問題なんか聞いていないですよ。それは別でやりましょう。だからこれからは答弁をはずさないように真正面から答弁して下さい。  そこであなたは今財政資金の問題についての御答弁の中で、原資が欠乏してきた、資金源が窮迫してきたからそうなったのだ、こう言われる。私はそれは今の予算から見て一応了解いたします。けれども私から言わせれば、先ほど冒頭に申し上げましたように、本年度はやはり予算規模を極力縮小すべきである、国民経済の伸びに従って予算を膨張してはならない、本年幸いに景気がいいということであれば、国民所得は伸びるが、しかし予算規模は縮小していく、そしてその縮小したものを減税に向けるか、再生産方面に向けるかというところに、財政の切り盛りの健全さがあるのだと私は思う。今度は別な角度から私はその点をお伺いしたい。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今のお話に私は大体疑義はありません、その通り考えております。ただ程度の問題で若干相違がある、さように御了承願いたいと思います。
  93. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は、本年度は国民所得はぐっと伸びだ、それについて予算も膨張した。しかしその予算の膨張の仕方が、私から言わせれば再生産方面に膨張しないで、そのほかの補助金の増額であるとか、行政費が膨張したということが財政の方針としては不健全でははいか、それよりもそれらを圧縮して、それを再生産方面に財源をして振り向けて、あすの日本経済の建て直しをはかったらどうか、こういうわけです。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その御意見には私、異論はないのであります。従来ともそういう方面にあらゆる努力を払って、たとえば前年度の予算についてもそういう方針でできるだけ努めたわけであります。ただ、一兆円予算という緊縮予算ももうすでに二カ年を経過いたしております。従いまして経費の節減という点について余地が少くなっているということだけは御了承を願いたいのであります。しかしそれにもかかわらず国の今日の情勢から社会政策的な、あるいはその他の費用がふえているという点につきましては、私は今後国民ととむに貯蓄の増大に努力をいたしまして、これをカバーいたしたいと考えております。
  95. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 国民所得の伸びについていかずに、それ以上に行政費を節減して健全財政方針をとるということについては、大蔵大臣は異論がないとおっしゃった。おそらく財政家としては当然そういう方針をとられるだろう、ただその方針を貫徹するだけの政治力が大蔵当局になかったから不健全財政になってきた。あなたの意思はやはり健全財政にある。そこで私は具体的に提案いたしましょう。  今日の行政費は大体において四千七百億円。私はこれは一割節減できると思う。人件費を除きまして、営繕費、旅費、消耗費。私も、古いことでありますけれども、自分で予算を編成した経験上からいきまして、大体一割倹約いたしますと、行政は大へん窮屈になりますけれども、とにかくやっていける。二割の節約は、これは行政が麻痺状態になる。三割節約を欲せんとするならば、行政機構は、河野君もおられますが、これは根本的に変えなければ改革できません。けれども一割節約は、人件費を除いて行政費、営繕費、消耗費、旅費その他は大体において可能です。そこで行政費の一割は節約できないかどうか。同時に補助金に対する一割ないし一割五分を節約いたしますならば、大体八百億円から一千億円というここに財源が出てくるのでありまして、それをもって日本機械工業あるいは重化学工業の育成資金に充てまするならば、あすの成果は大したものだと思うのであります。  鳩山内閣は今二百九十九名の絶対多数を持っておられます。これだけの大きな行政費の節減というものは、不安定の内閣では困難でありますけれども、今鳩山さんが絶対的に自分の内閣が強いのだという自信をお持ちになり、大蔵大臣にこの自信が反映して、財政家としての確固不動の信念がありますならば、この絶対安定せる政権がなし得るものは二つしかない。一つは一貫せる外交政策をもって日本の国際的地位を上げること。一つはむだな経費を節約いたしまして、もって日本経済の将来の再建のために、再生産方面に使うというだけの大勇断が絶対多数の内閣に必要ではないか。私の問わんとするところはそれをおやりになるかならないかということであります。
  96. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 まことに私としてはありがたいお話でありまして、ほんとうに同志を得た感じがいたすのであります。ただ実際にしさいに従来の実情を検討いたしました結果、私もほんとうはそういう決意を一応持ったのであります。ほんとうに各省にも鉛筆一本ない、紙一枚ないところまで一ぺん持っていって、そうしてほんとうに要るなら、あとで出してやろうというところまでやってみようというので、事務当局に検討を命じたのでありますが、すでに二カ年にわたって、切るべきところは全部切ってあるのですから、無理があってどうしてもという事務的ね検討がありましたので、あまり無理をしても、過ぎたるは及ばざるがごとし、いかぬと思ってこの程度になっておりますが、御趣旨は全くありがたく私は感じております。
  97. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 これは財政を担任する者の常識でありますから、その点においてイデオロギーとかなんとかいうことはないのでありまして、そこに志はあるのであるけれども、私の言うことには同感ではあるが、現在の自由党の党内事情並びに行政の実態は、それまで勇断をふるうことは困難であるということでありますならば、私はこれはそれ以上お尋ねいたしません。  そこで私は、先ほど申しましたように、何と申しましても日本貿易を伸ばして、国民生活を固めねばならぬのでありますが、それには金が要る。金が要るといっても、今言うように行政費を節約することは困難である。しかし公債も出すわけにいかぬということでありますならば、私はここに大蔵大臣に提案したいのでありますが、今の手持ち外貨をもう少し有効に利用されてはどうか。この点です。そこでその前に、最近久しく手持ち外貨の公表がないのでありますが、大体正直なところ幾ら持っているのですか。巷間伝うるところによると、十四億七千万ドルという人もあるし、十五億ドル突破しているという人もあるし、大体これは政府が公表を秘密にしておくべき性質のものじゃありませんから、この際幾ら手持ち外貨があるかということを一つお示しを願いたい。
  98. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 手持ち外貨は、昨年末で十三億一、二千万ドルのように私聞いておりますが、数字にわたりましては政府委員にお答えいたさせます。
  99. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 昨年十二月末の外貨の手持高でございますが、合計十三億千七百万ドル・そのうちドルが八億七百万ドル、ポンドが二億六千五百万ドル、オープン・アカウントが二億四千四百万ドル、さような内訳になっております。
  100. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 これは焦げついた分は別にしてあるのですか。正味の手持ちですか。
  101. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 さようでございます。
  102. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 焦げついた分はどのくらいあるのですか。数字と各国別を知らしてもらいたい。
  103. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 非流動化いたしましたものもこの中に含まれております。大体二億二、三千万ドルぐらいのものが非流動化しておると、さように考えております。
  104. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 各国別はどうですか。
  105. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 これは程度にもよることでございまして、私どもといたしましてはできるだけこれの回収を期しておるわけでありますので、あまりこれを焦げつきと断ずるわけにもいかぬのでございますが、ややその傾向があるものとして二億二、三千万ドルと申し上げましたが、その内訳といたしましては、インドネシアの関係が一億九千万ドル見当・韓国関係が四千万ドル見当、さように承知いたしております。
  106. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 焦げつきの分については森永君は大へん政治的表現を用いられたから、その焦げつきについては私も少し責任をお尋ねしたいのですが、省略いたします。  そこで観点を変えてこの特別会計の説明の中を見ますと、手持ち外貨の預金に対しては外国に一・五%の利息を大体収入予定されておるのですが、私はこれはもう少し上らぬかしらと思うのですが、大蔵大臣どうでしょう。
  107. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは外貨の運用から見まして、大体質的に見ておるので、予算に見積っておるもので間違いないと思います。
  108. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 予算に見積ってあることが間違いがあるとかないとかいうのではなしに、私の言うのは、もう少しうまく運用ができないかどうか。たとえて申しますと、一・五%の定期預金をされた収入になっている。これはあなたも御存じの通りです。私はあなたがほかの大蔵大臣なら、こういうしちめんどくさい質問はしないのです。銀行家出身だから質問をする。こういうことはあなたも御存じの通り、戦前においては日本貿易外収入の大体一五%から一七%までは外貨の操作で上げておった。そこで私の言うのは、現在外国の公債は大体三分です。従ってこれは利息を回せば三分一厘から三分二厘ちょっと回ってくる。そうすると日本の一・五%の予定よりももう少し有利に回るのじゃないか。担保能力のあるアメリカの国債であるとか、あるいはニューヨークの市場における一流株であるとかいうものを操作する、これは戦前における日本の大蔵当局が当然やってきたことなんで、これをもとに復活すればいい、何も一・五%の低利の預金を寝かしておく必要はないじゃないか、そこにもう少し利潤を置いて、それを一つ日本産業育成資金の方に回してやれば、石橋君も大いににこにこするのじゃないかと思うのだが、どうなんですか、ざっくばらんの話が……。
  109. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 外貨の運用につきましては、できるだけ気をつけておるのでありますが、しかし単に利回りがいいというだけでもいけないのでありまして、結局この外貨をうまく運用することによって、日本輸出が増大し、それからさらに日本産業拡大していくというふうな役目も考えていかなくてはなりません。同時にこれは一外貨でありますから、堅実性も持たなければなりません。いろいろな点を考えまして、総合的に妥当なところを常に運用しておるのでありますが、御承知のような点も、なお十分今後気をつけることにいたします。
  110. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 そうすると私は露骨に聞きますが、現在の日本貿易量からいって、輸入外貨の回転にどの程度の外貨を持ったらいいのですか。けさほど松浦君がお尋ねになりましたけれども、それについての明確な御回答がなかったから、重ねて私お尋ねいたします。
  111. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはむろん貿易量の伸展の度合いにもよるのでありまして、固定的に幾らあればいいというわけにもいかない。かつまた取引形態の変化によりましても、やはりこれは外貨の所要量が違うのでありまして、一がいには申し上げられませんが、まあ普通いわれておるところでは、少くとも六億ドル前後は、これは最低どうしても持っておらなければ、今日の日本貿易のいわゆる運転資金として困るという一応の考えになっておりますが、しかしこれはまたもう少し下から積み上げていく必要もありますので、正確なところは政府委員から答弁をさせることにいたします。
  112. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 一九五三年の十月に国際通貨基金において、大体各国の手持ちドルの標準をきめております。それは輸入量の約一割、けれどもその輸入量の一割というものが最低であって、その一割で操作ができるのには、その国の輸出入のバランスが合っていなければならぬ、国内における経済が安定していなければならぬ、その二つの条件が整えば大体手持ちドルは一割でいい、これは一九五三年十月の国際通貨基金において、各国が集まって大体きめた標準であります、これは大蔵大臣御存じだと思う。しかし日本経済はその基準通りにはなかなか行きません、これは私も認めます。そこで現在ございます十三億ドル手持ち外貨は、私は遊ばせておくことはないと思うのです。ということは、現在外国から、世界銀行その他民間銀行から借財いたしておりますものは一億五千万ドル余です。この一億五千万ドル余に対して、金利は政府が保証いたしまして大体五分です。その五分に何がついてくるかと申しますと、それはその会社を調査する調査費並びに技師を派遣した給料、その他それによって、つまり外国より借款したところのその金で、外国機械を購入しなければならぬというような著しいひもがついておる。このひもがついておる金が大体一億五千万ドル余なのです、しかも五分以上の利息で借りておる、しかも日本外国の銀行に一・五%という低利で定期預金をしておる。私はこういうばかばかしい経理の仕方はないと思う。従って、十三億ドルというものを、すべて日本産業の育成資金に用いよとは言いませんけれども、そのうちの少くとも一億ドルは私は日本産業の近代設備改善のために、これはドルをもって機械を購入して設備改善に充てる、あとの二億ドルは大体輸出振興の資金的バックにする、あとの一億ドルないし三億ドルは、これは手持ちドルとして用意しておきまして、残余の七億ドルないし九億ドルは三分ないし三分一厘に回る外国公債並びにニューヨーク市場における一流の証券を保有して、担保力をそこに持っておるということになれば、抜け目のない経理ができるのじゃないか。そうすると大体において一千万ドルないし一千五百万ドルの金が浮いてくる、そうすると大体七、八十億円の金がここに操作で浮いてくるのでありますが、大蔵大臣こういうところに着目するはらば、少しは資金的なバックのみならず、金利のさやもかぜげるのだから、日本産業の育成資金にぶち込んだら、私は大へんに日本産業は立ち直ってくると思うのだが、一体いかがでしょう。
  113. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。私が今ここで申し上げるまでもありませんが、外貨保有の増加したのは実はそう前ではないのです。外貨が最近、去年あたりからすっとふえてきておるという状況であるのであります。従いましてこの情勢を見、かつ将来の大体の見通しを立てて、この情勢をうんと続かせねばならぬという案なのであります。従いまして外貨がふえた部分について、これをいかに運用するかということについては十分考慮する、特に日本産業基盤を強化するために、いい機械を入れるというようなことに十分外貨を使ってよろしい、同時にまたいたずらに金利を払って外資導入々々というのも、これは一つ考えてみてもいいのじゃないかというような考え方も、実は今いたしておるのでありまして、それらの点についてお説の点も十分頭に入れて、一ついい案を作って遺憾なきを期したいと思います。
  114. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 先ほど大蔵大臣からアジア経済外交の問題についてお話がありました。この点は私はきわめて同感であるのでありますが、しかしながらアジア経済外交を推し進める具体的な方策と施策と、そして今用意があるかどうかという点がきわめて重要であります。そこでこれは経済閣僚だけではなしに、日本の外交の基調をアジア経済の問題に置くとするならば、一体内閣全体としてどういう腹構えがあるか、鳩山首相、外務大臣並びに大蔵大臣関係閣僚から、この問題についての構想だけでなくて、具体的に承わりたい。
  115. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻一萬田君からもちょっと話がありました通りアジア諸国との問の賠償問題をできるだけすみやかに解決いたしまして、経済外交の推進をはかりたいと考えております。詳細なことは外務大臣から答弁をしてもらいます。
  116. 重光葵

    ○重光国務大臣 アジアに対する経済外交を重視いたしておりますことは、私も本会議でるる申し上げました点でございます。その点をかいつまんで申し上げますれば、アジアに対する一般的の経済発展を一般的に進めていきたい、それと同時にその一般的に進めていく一つ方法といたしましては、コロンボ計画のことも申し上げました。さような計画に基いてわが経済施策を進めていきたい、こういうことに考えております。さらに一般的の経済施策のみならず、個別的に進めていかなければならぬということはいうまでもございません。その前提として、賠償問題も片づけなければなりません。また各国との間において貿易の取りきめ、特に通商航海条約の締結というようなことは、長期的計画としてぜひ進めていかなければ相なりません。さようなことで、一般的の施策及び各国別の施策、こう相待って施策を進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  117. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 何かお話があったようですが、御答弁にはなっておりません。あなたが一つの具体的な問題として提議された、賠償を解決して個別的に親善関係を進めるというのでありますが、賠償に対しては予算がないのです。前年度を踏襲しているだけで、賠償問題を解決するほんとうの予算は、どういうかげんか削減されておるのでありまして、これもまた抽象論といわなければなりません。そこでアジア経済全般を伸展するためにコロンボ計画というものがある。このコロンボ計画に対する日本の協力の役割はほとんどない。これにあなたが期待されるならば、大きな間違いです。そういう抽象論じゃなしに、日本の外交を政治イデオロギーの立場で論ずるということも必要でありますけれども、それより、事経済に関しては経済の問題として考えてみたらどうか。それがために政府は用意する必要があるのじゃないか。と申しますことは、単にアジアの問題だけではないので、この一両年に現われてきた世界経済の動向は、一国だけの自立経済の達成というむのは困難な段階に入りました。アメリカ経済ブロック、ソビエト経済ブロック、ヨーロッパのブロック——ことに著しい一つの例は、ヨーロッパにおきましてはすでに鉄、石炭、電力、貨物列車等の交流を行いまして、ヨーロッパはすでに小さい国が孤立しているのじゃなしに、ドイツもフランスもノルウェーもオランダも一国となりまして、ヨーロッパ全体の経済単位を築き上げようとして、鉄、石炭、電力、貨物列車の交流を行なっておる。ヨーロッパ経済単位というものを確立しておる。そこで私は、日本だけが自主経済というものをいだずらに標榜いたしましても、今日の日本の資源と日本財政力では困難だと思う。そこで私は、ここにヨーロッパの決済同盟に対しまして、日本が、技術、資源並びに人との交流関係、そういうふうなものにまで乗り出していって、謙虚な気持で日本の技術を提供し、資源をもらい、同時にアジア諸国との間における交通関係もひんぱんにいたしまして、アジア全体の経済ブロックというものに日本が溶け込んで、アジアの繁栄と自主独立経済という立場において日本の独立をも完成すべきである。こういう見地に考えまして、私は、アジアの外交ということをおっしゃったから、それらの構想に対する具体的な用意があるかということを承わったので、その点において、もう少し具体的な御答弁を、経済閣僚でも外務大臣でもいいですから、承わりたいと思う。
  118. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御説はごもっとものことでありますが、これは昨年のバンドン会議から以来の問題でありまして、御承知のバンドン会議政治的の色彩をもちまして、アジアのブロックを作ろう、こういう意向が相当一部分にあったのであります。これに対しまして、わが国といたしましては、現在自由主義のブロックがあり、一方共産主義のブロックがあるときに、またアジア政治的のブロックを作るということは、おもしろくないという考えでありましたが、事経済に関する範囲におきましては、アジアにおきましては、ある種の経済決済同盟を作るとか、あるいはアジアにおきましては、経済単位を大きくして、今のヨーロッパの経済単位を大きくするごとくやっていくということが最も必要だろう。こういう感じをもちまして、またそういう意味におきまして、各国との間の折衝をいたしたのであります。それにつきましては、ただアジアの国だけがやるということになると、決済同盟をいたしましてもどれもこれもあまり持たない国ばかりでありますから、なかなか実行は困難なのであります。ただし経済単位を大きくして、ヨーロッパのシューマン・プランとか、あるいは製鉄について、あるいはそのほかの事業について、原料を供給するとかあるいは技術を提供するとか、そういうことにつきましては、ただいま西村さんの御意見通りに進んでいきたい、こういう所存でございます。
  119. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 バンドン会議のお話がありましたから、政府の反省を促しておきたいと思うのは、わが国は去年の暮れに国際連合に対する加盟のチャンスを失いました。これは過ぎ去ったことでありますから、私は追及いたしませんが、現内閣の政治的な大きな責任だとお考えになりませんか。少くとも近来における各国の動向と、性界政局に対する外交の感覚のズレが、私は国連に対する加盟の失敗となって現われてきたと思う。ということは、現在世界を支配しておるものは大国だけではありません。小国が結合して、何とか平和を守り、小国たりともみずから独立自尊の見地に立って、国際連合というものの運営について平等なる発言権を持とうとするのが国際政治の最近の動向であります。しかうして、その絶好のチャンスが昨年のバンドン会議であった。このバンドン会議においては、世界各国とも一流の政治家が出て、総理大臣並びに副総理が出て、各国の代表者たちの間において、単に政治附加問題だけではなしに、意思の疎通をはかり、もって小国たちが、一体自分の目的というものをどうして達成するか、世界の平和、自主独立の方針をどうして大国に認めさせるかという空気の一つの時期がバンドン会議であった。私は今日国際連合における加入の失敗というものは、この小国の心理——小国というとはなはだ失礼でありますが、これらの国家群の動きというものを見のがした外交の感覚のズレが失敗となって現われてきたと思うのでありますが、私は過ぎたことは申しません。  そこで私は総理大臣にお伺いしだいのでありますが、アジアの外交問題、アジア経済の問題について政府は力点を置かれておるようでありますけれども、その内容については何にもありません。同時に今経企長官が言われたように、バンドンでは政治的色彩が多かったから、日本は深入りすべき.ではなかった。私はなぜ政治的色彩が強かったらそこへ深入りしなかったかということを問わなければならぬのでありますが、それは議論の外に置きましょう。そこで今あなたの御答弁になったのは、アジアの貧乏国だけが集まって決済同盟をしても、支払い準備金も何にもない。金のないものが集まって金満家になろうとしても困難だというお話がありました。そこであなたの胸中にあるものは、アメリカのアジアに対する経済援助だということが構想に浮かぶのではないかと思うのでありまして、今度は少し話が抽象的になりますが、ことしの春ダレス氏がアジア各国の会議に出て、日本へ来られるそうでありますが、そのダレス氏が日本に来られるときには、おそらく私は三つの目的を持って総理大臣並びに関係者と懇談されるだろうと思う。一つ日本の自衛力に対する問題、一つは最近におけるソビエト共産圏のアジア、中近東に対する進出について、日本はいかなる決意といかなる用意があるかということ、同時にアメリカと日本との間における協調関係で、経済的、軍事的、政治的な密接化をどうしてはかるかということについて、私は多分ダレス氏はカバンの中にそういう要件を入れてくるものだと思う。私がなぜそのことをお尋ねするかというと、昨年の秋、重光氏はアメリカに行かれまして、その結果大きなおみやげを持って帰られた。西太平洋上における日米共同出兵問題を——打ち消されましたが、その現実は、徐々に日本の防衛の漸増計画その他になって現われ、てきておることは、これは否定し得べくもありません。そこでダレスさんが参られましたときに、一体どういう要件で日本へ来られるか、大体の想像はつく。それならそれに対する鳩山さんの受け答えは一体どうなるか。きわめて抽象的でありますが、それについての鳩山さんの御決意を承わりたい。
  120. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ダレスがどういう要件で日本へ参りますかは想像はつきません。従って、またそういう点について相談をしたことはございません。
  121. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 そのお答えも私はもっともだと思います。先走って総理大臣が、こういう要件で来るから、こういうふうにして応待するんだということは、これは言い得ないし、またあなたが言えば、これは大きな放言になりますから、私は答弁は要求しませんけれども、ダレス氏が来るについて、先ほど申しました三点以外に一つの大きな任務があると思う。そこでそれについてのあなたのお答えを私は求めようと思いませんが、今議題になっておりますアジア経済の問題について、ダレス氏が来たら、あなたはこういうふうな提案をされる意思はないかどうか。少くとも日本アジア日本です。西欧の日本ではございません。これは申すまでもない。しからばアジア日本は、アメリカやイギリスよりもアジアのことは一番よく知っておる。この日本が、アジア人であり、アジア人の感覚を持ち、地勢的にもアジアをよく知っておる日本が、アメリカに向って忠告するところは、アジアの問題における、アジア政策に対するアメリカの大きな欠点です。この欠点をアメリカに向って反省を促すだけの堂々たる識見と態度が必要ではないか。私はその点を要約いたしまして、アメリカのアジア政策の欠点というものは四つあると思う。これはイデオロギーと政治を越えまして純経済的に見て四つある。アメリカのアジア援助計画の中の四つの欠点のその一つは、アメリカのアジアに対する経済援助に長期的計画がない。第二は、複数国家を包含するところの総合的地域的計画がない。個々にひもをつけておこうというか、アジア全局の平和と繁栄をどうするかという、複数国家を包含するところの総合的、地域的計画がない。第三に、現地国家に対する政治理解が乏しい。あまりにも家庭教師的です、教訓的です。高圧的です。(「君がか」と呼ぶ者あり)よけいなことを言うな。真剣に国際問題をやっているのだ。君らの頭にはわからぬ。  私はこの第三点に取り上げました政治理解に乏しい、家庭教師的な感覚を持って、アジアの民族に向っておるということが、大きなるアジアの民族感情の反発となって現われている。たとえて申しますと、ごく最近、両三日、アフガニスタンにおいて、ソビエトにアメリカは経済援助において敗退いたしました。理由はどこにあるか。アメリカはあの国のまん中に十年、十五年たって成功するであろうところの発電所を置きまして、その発電所の建設を中心として、アフガニスタンに対する援助計画を立てた。けれども、ソビエトはアフガニスタンの国民が目前に待望しているところの道路の建設、家庭の衛生状態、そういろところに年間二分という低利資金をもって援助しようとするところに、家庭教師的な感覚とそうして身近なものを解決しようというところの、このアフガニスタン民衆の意向との関連において私は失敗したと思う。従って、アメリカに反省を促さなければならぬことは、現地国家に対する政治理解が乏しくて、あまりにも家庭教師的、理屈っぽい感情とやり方をやめなければならぬ。第四には、アメリカはなるほど国内においては資本主義の多くの欠点を是正しております。そして、資本主義それ自身が変質をしていることも私は認めます。けれども、後進国に対しては、資本主義の露骨なる専横の姿が現われてきている。これが民族感情と相いれない。同時に、資本の貪欲なる姿は、各国の経済援助に対して多くのひもがついてきている。日本に対する金の貸し方でもそうです。金は貸してやるけれども、自分のところの機械を買え、自分のところの技師を派遣するから、その調査費と旅費を払え、パテント代を払え。しかも一・五%の金利で預っておる銀行が金を貸すときには、五%という利息をつけて、おまけにみやげをどっさりつけて、自分のところの商品を売ろうとするところに貪欲なるひもがついてきている。これは援助よりも貪欲なる資本の姿だと思う。そこで私は以上の点をアメリカに向って反省を促す。そしてアジアの諸国は、アメリカが重点を置いている軍事援助よりも経済援助を求めている。第三には、経済援助よりも貿易の自主権の回復を求めている。日本と中共の今の貿易の禁止、これは世界の平等なる国家主権というものを侵害しております。私は、アジア諸国が求めているものは軍事援助よりも経済援助、経済援助よりも貿易の自主権の回復、この三つをアジア国民は求めていると思う。そこで私はダレス氏が参りましたときに、ほかのことは別といたします、外交の機密に属することは別といたしまして、このアメリカのアジア政策の欠点に対して、日本国の総理大臣として、アジアの国の総理大臣として、堂々とダレス氏に対するところの忠告を試みんとするところの識見と努力を傾注されるかどうか。
  122. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく現在は世界の平和というものに対して非常に脅威を感じている人は多いと思います。アジアにおいての治安、アジア諸国民の心持のあり方ということがこの世界の平和に非常に影響があるということも顕著な事実で、アメリカにおいてもこのことは心配をしているものと思います。従ってアジアの諸国民、アフリカ等を含めましてこれらの諸国民が平和な生活、戦争を避けたいという気分にみんなが動くようにはかるということは、これは世界の識者がみんな考えていることだろうと思う。それについてダレス氏は相当な考えを持って相談があるものと思います。どういう相談があるか知りませんけれども、そういう考えは持ってくるだろうと思います。それに対してわれわれは考えておかなくてはならないと考えております。
  123. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ダレス氏はアジアの平和を心から希望されているというあなたのお話でありますが、私はそれは事実だと思います。少くとも世界の運命を支配するアメリカの支配者として、アジアの平和を念願しないはずはありません。けれども、それ以上に、ダレスさんの構想というものがどこにあるかというと、アジアの軍事基地です。米ソ両国の軍事的バランスをアジア・ブロックにおいてとろうとする。アジアの平和、世界の平和を求める以上に、アメリカ本国の軍事的優位性を誇示していこうというところに、私はほんとうのねらいがあると思う。あなたも一つそう甘い考え方をお持ちにならずに、そういうところを、アメリカの政治家はアメリカの政治家として、ソビエトの政治家はソビエトの政治家として、日本政治家日本政治家としての立場から、確固たる見通しを持って対処していただきたい、私はそう思う。少しあなたのお考え方は、お人柄にもよりましょうが、甘いのですけれども、まあそれは失礼ですから私は申し上げませんが、そう甘く考えずに、過去においてダレスさんが来たときに、何をみやげに持っていったか、重光さんが何をみやげにもらってきたかということをよくお考えになって、今から腹をきめて対処していただきたい、こう思うのです。そこで私は、そのアジアの問題についてはこれ以上は議論にわたりますから省きます。  次に一応防衛庁長官にお尋ねしたいのですが、きのう私の方の党の伊藤さんの質問に対しまして、自衛隊が増強したからというて、アメリカ軍の撤退の見通しはないというふうに御答弁になったのでありますが、その通り解釈していてよろしいのですか。
  124. 船田中

    ○船田国務大臣 昨日答弁申し上げましたように、われわれ防衛庁の防衛責任者といたしましては、本朝も申し上げたような長期防衛計画の試案を持っております。しかし、これの完成とアメリカ軍の撤退というものとは、必ず見合うということには結論をつけられない。わが国の国情、国力に相応する自衛態勢が整備されまして、なるべく早い機会に外国駐留軍の撤退を期待する、こういうことは自由民主党が結成されましたときにも、その政綱に掲げております。その方針に従って政府もその計画を進めておるわけであります。しかし、それができるということと、アメリカの駐留軍がそれに見合って必ず撤退するということは、必ずしも直接の因果関係を持ってはいない。こういう趣旨でもって申し上げたのであります。
  125. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 そうすると、ただいまのお答えは大切ですから、もう一ぺん申し上げておきますが、アメリカ軍の撤退と日本の自衛隊の増強とは関係はない、約束においても条約においても関係はない。アメリカ軍の撤退する要素は、一部は日本軍の自衛力のいかんにもよるけれども、主として国際情勢によらなければならないというふうな、あなたの答弁は、要約すればその二点に属するように思いますが、そういうふうに解釈して差しつかえありませんか。
  126. 船田中

    ○船田国務大臣 自衛力が漸増されて参りますれば、アメリカ駐留軍の撤退の基礎は出てくるわけであります。しかしアメリカ駐留軍が、現実にいつ撤退するかということは、先ほど来申し上げておりますように、自衛隊の整備の状況——もちろんそれが基礎になりますけれども、それと、必ずこれができたからそれに応じてアメリカ軍が撤退するということは申し上げかねる、こういう趣旨でございます。
  127. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は今の船田君の答弁がきわめて、正確な答弁だと思うのです。そうしますると、きのうもちょっと出ましたけれども、鳩山総理大臣が幾たびか議場において、あるいは国民に対して、アメリカ軍の撤退を欲せんとするならば、日本の自衛力が完備しなければ不可能だ、こう御主張になっております。私はこれはやはり政治家としての国民に対する一つのゼスチュア、あるいはあなたの希望図としてそういうことをお述べになったけれども、今船田長官が御答弁になったように、日本の自衛力の漸増計画とアメリカ軍の撤退とは何ら条約上あるいは有機的な関連はないという答弁が正しいと思う。従って今までの総理大臣の御答弁、御発言は、政治家としての一つのゼスチュアだ、こう解釈してきょうは追及いたしません。どうぞ御安心いただきたい。(笑声)
  128. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 追及されないことはありがたいですけれども、自衛隊が増強せられればアメリカの駐留軍が撤退する原因にはなることは、防衛庁長官も言っておるのでございます。当然に直ちに撤退はしないということを防衛長官が答弁したのでありますから、どうかその点は誤解のないように願います。
  129. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 誤解はしておりません。私はあなたをほんとうに追及するつもりなら、あなたの速記を今持ってきておりますから、それに従ってお尋ねするのですけれども、そういうことば御健康上いたしません。(笑声)御安心下さい。  そこで私は本論についてのお尋ねをするのですが、一月の三十日に、防衛分担金について日米共同の声明が発表されております。これは外務省で発表されております。そこでこの防衛分担金の問題について、外務省では公式に発表されましたけれども、一体これはどこの大臣が担当なすったのですか。大蔵大臣が御担当なすったのだか、河野農林大臣が御担当になったのか。外務大臣は一部は御担当なすったでしょうけれども、一体これはどなたに質問したらいいのですか、政治的にお尋ねいたします。——総理大臣、どなたにこの問題は質問したらいいのですか。
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣に質問していただきます。
  131. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私ははなはだ愚問のようでありますけれども、しばしば総理大臣が外交の方針で声明を発せられる。そのあくる日いつも重光さんが音羽の屋敷までお伺いして真偽を確かめるという工合です。私は日本の国内における外交をうまくやってもらいたいと思っておるからわざわざ聞いたのであります。  そこでこの日米共同声明における分担金の減らし方一般方式についてでありますが、これと日本の自衛力の漸増計画とがからみ合っておるのですが、一体日本の自衛力の漸増計画とアメリカの防衛分担金とがからみ合わなければならぬところの根拠はどこにあるか。法制的に、政治的に、一体どこに、分担金を減らしてもらうために日本の自衛力をふやさなければならぬ、ふやしたその率、二をふやせば一を減らしてやるというからみつきは、一体法制的に条約上どこにありますか。
  132. 重光葵

    ○重光国務大臣 日米の間に共同防衛の責任がございます。そうしてそれは条約上日本が自衛力を漸増する義務を持っております。その義務の遂行に応じて、防衛分担金の減額を考慮しようということが別に了解をされておるわけでございます。それによってさように関連をいたすことに相なるのであります。
  133. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 河野農林大臣と大蔵大臣にお尋ねするのですが、その通りですか、両氏から一つ返事をしていただきたい。
  134. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今外務大臣が答えた通りであります。
  135. 河野金昇

    河野国務大臣 外務大臣のお答えになった通りと思います。
  136. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は防衛分担金と日本の自衛力の漸増計画とはどこにも関係ない、こう思っておりますが、その根拠はどこにあるか——政治論は別です。根拠はどこにあるかと申しますと、行政協定二十五条並びにアメリカ上院における報告、それからダレス氏のそれに対する声明というものと関連いたしまして、日本の自衛力と分担金とは何ら関係ない。従って分担金を減らすかふやすかということにつきましては、それはアメリカの兵力量によって決定するのであって、日本の自衛力とは何にも関係ない、こう解釈しておるのですが、河野農林大臣、あなたは大体これをおやりになったようだから、あなたが張本人のようですから、一応腹蔵ない御意見を承わりたい。   〔「河野外務大臣」「河野総理」と   呼ぶ者あり〕
  137. 三浦一雄

    ○三浦委員長 河野農林大臣から答弁はございません。重光外務大臣。
  138. 重光葵

    ○重光国務大臣 自衛力の増強に応じて防衛分担金の減額を考慮するということ、初めからそういう了解でこれは参ったのでございます。その根拠は条約について一々申し上げてもよろしゅうございますが、いずれ……。
  139. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 あなたが根拠とされる点は行政協定二十五条にあるのじゃないか。それには当時の外務大臣岡崎氏は、その中において、日本国が漸増的に、自国の防衛のために、みずから責任を負うが、それがために経費がふえる場合においては、合衆国軍隊の維持のために規定する経費を減額してくれることを考えてくれるかどうか。この質問に対しましてラスク氏は、合衆国が共同及び相互的な防衛の努力のため必要とされる合衆国の経費の増加も、またあわせてあなたの方も考慮してもらいたいということになっておりまして、わずかに自衛力の問題と防衛分担金とのからみ合いはこの交換公文二十五条、これ以外にはないのです。そこで私はあなたにお尋ねしたいと思いますることは、あなたは外務大臣就任前でございまして、これは鳩山さんにもお尋ねしたいと思います。私はくどくどしいことは申しませんが、アメリカの上院において、日米安全保障条約が締結されました後に、コナリー外交委員長が議会で報告いたしまして、この安全保障条約は、極東の平和と安寧のために、合衆国軍隊は日本国において駐留権を確保したのであるから、合衆国の負担は何もありませんということを公式に言い切っている。同時に、越えて一九五二年の一月、当時の責任者であるダレス氏はこういうふうに言っている。これは公式に言うているのです。日本の安全を保障するという条約上の義務は、合衆国軍隊にはありません。けれども合衆国軍隊は、日本において駐留権を行使している。駐留権を行使する上から付随的に日本国を防衛する義務があるのだ。その合衆国軍隊の駐兵権に伴う防衛の義務だ、こういうふうに言っておるのです。私はこれから考えてみますと、鳩山総理大臣が平素言われておる占領政策の是正ということでありますが、まず第一に前内閣が安全保障条約、行政協定を結ばれ、その後アメリカ上院において公式にその見解が発表された。同時にそれから数年たって、ダレス氏がまた公式にそういうことを発表したということになりまするならば、それは当然占領政策の是正といたしまして、私は現在安全保障条約並びに行政協定は改訂の時期がきているのではないか、こう思うのですが、総理大臣の御見解はいかがですか。
  140. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 行政協定やその他についての是正をしたいということはかって私が言った通りであります。日本の独立の保持ができ次第にだんだんと改正して参りたいという希望は持っております。
  141. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私の申し上げることは、総理大臣に少し御理解が乏しかったようでありますが、安全保障条約並びに行政協定は、アメリカにおいてはそういう見解をとっている。私はその後の事実に徴して、これはやはりアメリカの駐留権を確保するための安全保障条約だと思う。そうすると、これはことごとく日本の安全に寄与するということが副次的の問題でありまして、アメリカ軍の駐屯というものはアメリカの都合による、引き揚げるのもアメリカの都合によるのだとすると、その意味において、日本の防衛のためにこの血税の三百億円、施設費を合せまして、四百億円以上を支出する必要はどこにもない。同時に安全保障条約、行政協定というものは、きわめて当時から屈辱的でありまして、不平等条約であります。これを今あなたが言われる占領政策の是正ということでありますならば、これはサンフランシスコ条約において調印する前に調印されたということなんです。従って今独立した上からは、これを改訂する時期がきている。同時に事実において一部の人々が日本の独立自尊のために改訂すべしという主張をしてきたのでありますが、それが裏書きされている。そこでこの点と、さらに問題は、アメリカ軍の駐留の目的と任務が違って参りまして、先ほど松浦さんの質問に対して防衛庁の方ですか、政府委員が御答弁になっておりましたけれども、基地はだいぶ返される、こういうことです。基地はだいぶ返されるということは当然でありまして、アメリカがなぜ駐留の目的を変更したかと申しますと、現在においては航続力六千マイルは、時速六百キロの長距離爆撃機が米ソ両国にできた。千八百マイルの長距離誘導爆弾はすでにもはや第二流の兵器でありまして、今は五千マイルの長距離誘導爆弾ができておる。また米ソ両国において潜水艦から原水爆を発射することに成功しておる。そういう潜水艦もできている。そうすると、安全保障条約、行政協定が締結されましたときよりも世界的には兵器が大革新をしている。この兵器の大革新に伴って、日本の駐留の目的というものも、当時極東政策として日本に駐留したけれども、今度は長距離爆撃機の中継ぎ基地として、アメリカの駐兵の目的というものは違ってきた。従って今度はジェット爆撃機の発着地として基地を拡張しているのでありまして、その他の山岳の演習だとか、鉄砲かつぐ兵隊の演習地は返してくる、そのかわり基地を拡張するということになりますと、ここに駐兵の目的が変ってきているのですから、私はこういうふうなアメリカの立場における日本の駐兵権だけを確保して、それに対してわが国がこれの分担金を払っている、しかもそれは自衛力を漸増しなければ減額してやらないという協定を結ぶということは、少しどうかしていると思うのですが、総理大臣の見解はどうですか。
  142. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁を願います。
  143. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は安保条約締結の後において、いろいろな変化が社会情勢にできてきたということは、その通りだろうと思います。そこでいろいろ考えなければなりません。しかし安保条約のある間はこれによって律するわけでございます。そしてこれから生じた行政協定、先ほども御指摘の通り第二十五条の解釈によりまして、経費が増加することにかんがみて、防衛分担金の減額が考慮される、向うが、考慮する、こう言っておるのでありますから、それに関連をしていることは事実でございます。私は条約の解釈問題として申したのであります。
  144. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 それならまた条約の解釈はきわめてあやふやになっている。そこで私は、これは総理大臣でなくてもいいのですが、外務大臣にお尋ねしたいのです。防衛分担金をわが国が負担しなければならぬ義務があると仮定いたします。私はないと思っておりますが、あなたの主張通りに、それを分担する義務がわが国にあるといたしますならば、その分担する義務の金額の基準を一体外務、大臣並びに大蔵大臣はどこにお求めになっておりますか。
  145. 重光葵

    ○重光国務大臣 分担する金額の基準ということを言われましたが、基準は条約に書いてある通りでございます。それが基準でございます。
  146. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 あなたが外務大臣に御就任の前ですから、私は、追及しないのですが、昭和二十七年二月二十三日予算委員会において、その大体の基準は取りきあられております。その当時池田大蔵大臣が説明された要旨によりますと、当時駐留する兵力は、陸軍、海軍、空軍を合せて大体六個師団と推定される、それに要する費用としてわが国が負担しなければならぬものは、これは当時終戦処理費として、アメリカ軍が駐留することに要する費用が千三百億円、その中で日本国が今度新しく独立して行政協定によって負担しなければならぬものは、鉄道運賃百億円、通信費五十四億円、光熱費六十億円、需品費百七十七億円、役務費百五十四億円、設備器具等十三億円、合計五百五十八億円、施設費は九十二億円、これを二つ合せまして一億五千五百万ドル、この千三百億円の半分、一億五千五百万ドル日本国が負担しなければならぬ義務が生じましたということ、昭和二十七年予算委員会において当時の政府は説明されております。そこで私がその基準量を一体どこに求められたかということを承わりたいと思いましたことは、当時六個師団です。それから朝鮮戦争を経ましてつい最近までアメリカの兵力は第一騎兵師団兵力一万五千五百、当時の六分の一に減少しております。内容も変っております。そこで、当時の兵力の六分の一に減少しておるのにかかわらず、今なおかつ四百億円近くの分担金を負担し、しかもそれをまけてもらうことは自衛力を漸増し広ければ減額してくれないというこの一月三十日の外務省の取りきめというものは、一体こういうふうな事情をよくお考えになってやったかどうか。私は、あなたがおっしゃるように、日本の防衛のためにアメリカ軍が日本に駐兵してくれるんだ——私はそう考えておりませんが、日本の防衛のためにアメリカ軍が日本に駐兵してくれるんだ、だから、分担金を半分負担しなければならぬのだいうと根拠をかりに承認いたしまするならば、それは駐留するところの兵力量によって分担金をきめる。当時より六分の一に兵力量が減って、防衛能力は六分の一に減るが、当時の六百五十億円からわずかに減って四百億円、私はそれではそろばんに合わぬと思うが、それを漸減方式として自衛力の問題とからみ合わして協定された真意はいずこにありや、総理天臣と外務大臣にお伺いしたい。
  147. 重光葵

    ○重光国務大臣 私が今この条約上の義務によって防衛分担金がきまっておると申し上げたのは、行政協定の第二十五条、これはあなたも御承知の通りであります。この二十五条にそうきめた事情、その事情は何であるかということを当時の責任者が委員会で説明されたと思います。それはそういう事情もあったろうと思います。しかし、今日払わなければならぬのは、分担金は行政協定第二十五条にそうきめておるから払わなければならぬのでございます。そうして、その減額はどういうふうにしてこれが認められるかというと、二十五条の解釈として、先ほどあなたが指摘され、引用された岡崎・ラスク協定——しかしあなたは読まれませんでした。それはどろ書いてあるかというと、そのような防衛のための経費が増加するということにかんがみて、日本国にある云々、つまり防衛分担金の減額に考慮が払われるよう要請すると岡崎外務大臣が言っておるのに対して、ラスク氏は次の通りに回答した。合衆国はそのような考慮を払う、こう答えたのであります。そこで、日本の防衛力の漸増に従って防衛分担金の輻湊が考慮される、こういう解釈に条約上相なっておるのでございますから、それによって処理されたわけでございます。
  148. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 そうすると、六百五十億円ときめた当時よりもアメリカの兵力量がいかに減少しても、これだけの分担金は払わなければならぬ。日米共同声明によると、その方式でなければ、アメリカの兵力量いかんにかかわらず漸減方式はとられないかどうかということです。
  149. 重光葵

    ○重光国務大臣 それはまた全然別問題でございます。条約の問題としては今私が申し上げた通りでございますから、漸減方式もそれに従ってやったのでございます。しかし、米国の軍隊は地上部隊だけではございません。空軍も海軍もございまするが、これらの米国の軍隊が全然引き揚げるということになったから、分担金の問題なんかむろんこれは起るわけはございません。
  150. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 もう一ぺんごらんいただきたいと思います。私があなたに問わんとしておるところは、日米共同の声明によって、日本の自衛力を二ふやせば分担金は一減らしてやろう、こういうことになっておる。そこで、私が先ほども申し上げましたように、アメリカの防衛分担金を日本が払うのは、これは政府の説明を承認するとしても、日本を守ってくれるから、そしてわれわれは自衛力がないから、これは分担しなければならぬということを政府は声明された。そうすると、当然アメリカの防衛分担金をわが国がどれだけ払えばいいかということは兵力量による。もしも、それがなしに、何でもかんでも分担金は一定基準を払わなければならぬということになりますと、これは日本の自衛の問題とは切り離して、アメリカ軍に対して財政的な援助をするということになるのです。そういうふうに解釈していいですか。
  151. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はそうはならぬと考えます。(「理由は」と呼ぶ者あり)ならない理由は、先ほどから申し上げました通りであります。
  152. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 それなら私はそのことについて堂々めぐりする必要はありませんが、日本が今まで納めておりました防衛分担金は、日本財政法の適用も受けなければ、日本の会計経理の適用も実質的には受けていない。アメリカ軍に四半期ごとに渡しっぱなしです。従って、これはアメリカ軍に渡しておるのでありますから、アメリカ政府は一体いかなる項目によって日本から支出いたしました防衛分担金というものは受け入れておるのですか。アメリカの会計法は一体どこで受けておるのですか。
  153. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛分担金は日本政府からアメリカ政府に引き渡しております。そのアメリカ政府がこれをどういう費目に入れておるかということは、私は今存じません。
  154. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 これはアメリカの財政法あるいはアメリカの経理だというのですが、日本の金なんです。従って、自分の国の国民の税金が一体どういうふうに流れていって、どういうふうに受け取られておるかということは、日本財政当局、外務大臣として一応それは探求しておくだけの義務があるじゃないですか。
  155. 重光葵

    ○重光国務大臣 政府としましては、条約上の義務を遂行する以上のことは、措置をとるわけには参りません。
  156. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 あの分担金は、アメリカ側で日本銀行に口座を持っておりまして、この口座に日本側としては振り込めば、日本側の手を離れまして、アメリカの会計として取扱われておる、こういうふうな仕組であります。
  157. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 ただいま大蔵大臣からお答えいたしました実際の経理手続でございますが、お尋ねの点に関連して私が承知いたしておりますことを申し上げますと、途中で変遷がございましたが、現在はアメリカは、日本から出します交付金を歳入として受け入れまして、そしてそれをドルの支出権で、予算化いたしましてそれを支出いたしております。以前は円支出といたしまして、ドル予算外に使われておりましたが、今日では歳入として受け入れてドルの名前の支出権、歳出としてそれを日本で支出しておる、たしかそういうふうになっておるやに記憶いたしております。
  158. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 それで堂々めぐりしていても仕方がありませんが、これは日本から分担している金はアメリカが雑収入として受け入れているのです。アメリカの日本防衛の支出は、極東の全体の軍事費として支出している。従ってそこに問題があるということで、私はあなたに再検討をしてもらいたい、総理大臣にも再検討してもらいたい、こう思っている。要点はそこ並んです。  そこで私はその問題で堂々めぐりしても仕方がありませんから、次は外交問題で総理天臣にお尋ねいたします。先般来外務省の公式ルートでなしに、いろいろな非公式なルートをもって、戦争終了の宣言、いろんなものが提案されて参りました。そこで私が今総理大臣にお尋ねしようと思う一つは、その同じ非公式なルートをもって総理大臣に提案されたのは、南千島の中の択捉島にはすでにソ連の軍事基地がある、従ってこれはソ連軍部が反対するから日本へ返すことは困難であるが、どうしてもロンドン会議において折り合いがつかなかったならば、国後だけは返すから、大体それで早期妥結しようじゃないかという提案が、非公式ながら総理大臣の中に入っている。そうすると、総理大臣のそれに対するお答えは、それで大体私の面子も立ちますから、まあそんなところでどうでしょう、よろしくというようなところになっておると聞いておるのでありますが、私はそういうふうな話があったかどうかということを念のためにお尋ねしておきます。
  159. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは、全くそんなことはございません。そういう事実はないのです。
  160. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 河野さん、あなたのところもありませんか。念のためにお尋ねしておきます。
  161. 河野金昇

    河野国務大臣 私もそういうことは聞いたことがございません。
  162. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は対ソ外交につきまして、従来二元外交あるいは二枚舌外交といろいろいわれておりますが、鳩山さんの外交方針に対しまして、一体私ども国民が判断いたしますのに、鳩山個人の外交方針に重点を置いて判断していいのか、あるいは過ぐる日決定された自由民主党の外交方針というものを尊重して判断していいのかどうか、この点を一つ念のために承わっておきます。
  163. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日ソの交渉は松本君でロンドンにおいて一本でやっております。その以外の日ソの交渉は、全然ありません。
  164. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 ロンドンにおける松本全権の交渉以外にはルートがないという声明でありますが、そうすると、今まであなたがしばしば外交方針について述べられたことは、あれは一個の放言として解釈してよろしいか。
  165. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 松本君の交渉以外に私の発言はないはずです。
  166. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 あなたの発言があったかなかったかということは、もう天下周知の事実である。私はこれ以上時間を浪費することを避けましょう。  そこで最後に、それでは日ソ交渉についてあなたの決意のほどを承わっておきたい。あなたはしばしば横道の問題は別として、公式に声明したのは、日ソ交渉早期妥結を主張された。自由民主党は党是をもって領土問題その他抑留者の問題を決定しております。そうすると、日ソ交渉に当って早期妥結の方針と条件貫徹の方針とほ調和がなかほか時間的に困難な問題もあるのでありますが、一体その調整はあなたはどういうふうにしてつけられるか。
  167. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日ソの国交関係を正常化したい、戦争のないときの状態に持っていきたい。戦争後に生じた占領の問題であるとか、その他の問題を解決したいということを申したのでありまして、従って領土の問題、抑留者の問題、帰還の問題等は、当然に日ソ交渉解決の中に包含されているのでありまして、別々に解決しようという念慮を持ったことはございません。ただ早期妥結、抑留者の早い帰還、国交関係の正常化を早く望んでいるということは、当初と今日と変りはございません。
  168. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 大体早期妥結も希望する、条件の貫徹毛希望する。そうしますと、自由民主党でおきめに触った外交方針を条件貫徹の基本線にするということに触れば、ソビエトの全面的譲歩を要求するよりほかに妥結の方法はほいのでありますが、あなたはソビエトがあの条件で譲歩するとお考えになっておりますか。
  169. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 交渉の結果を待たなければ予言はできません。
  170. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 それは公式的にはそう言えるのです。問題は、日本が譲歩するか、ソビエトが譲歩するか、あるいは両方その問題についての面子と主張を半分ずつ譲り合って解決するかということ以外にはないのです。そこで私はあなたの公式以上の今の声明をもう一歩突っ込んで御答弁を承わろうとは思いませんが、それならば、両方の主張が出っぱり合いまして、なかなか早期妥結が実現しなかった場合に、抑留者の問題ば一体どういうふうにして解決されるつもりでありますか。
  171. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 抑留者の問題は、人道上の問題としてできるだけ早く解決してもらいたいということを、当初からソ連に申し込んであるわけであります。ただいまソ連との交渉がどうなるかということを予測して言うことを慎しみたいと思います。
  172. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 人道上の問題でありまして、これは家族の問題を考え、本人の身の上を考えると、われわれ同胞としてはまことに断腸の思いをいたします。そこで、人道上の問題であるから、早期に帰してもらいたいということは、あなたも国民もひとしく念願するところでありますが、それに対してどういうふうな努力を傾注されているか、どういうふうにあなたの希望を実現する外交上の方策をおとりになっているか、具体的な問題をお尋ねしたい。
  173. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは松本君がロンドンでやっておりますので、具体的にどういう話をしたかということは、交渉中ですから、私は申さない方がいいと思います。
  174. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は、交渉が長引いたときに、この人道上の問題をどう解決するか、問題は松本君が今努力中だとおっしゃるのですが、ロンドン会議が行き詰まったときを予測して、第二の策は一体いかんということをお尋ねしておる。  そこで、私は具体的にお尋ねしましょう。あなたが、人道上の問題として抑留者の返還を要求され、ソビエトは、条約を締結しなければ返さぬ、こう言っておる。そこで、それを解決する方法といたしまして、私どもは、やはり国連憲章第六章に従って、国連に提訴して、この不当抑留の即時釈放を国際的に運動する以外にほいのじゃないか。一体そういうふうな手配と努力を傾注されたかどうか。国連未加入の国でも、それは取り上げてくれるはずです。そういう努力をされた事実があるかどうか。将来その意思があるかどうかをお伺いしたい。
  175. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際会議において領土の問題、あるいは抑留者の問題、あるいは国際裁判において領土の問題、あるいは抑留者の問題を解決したらどうだというような意見はありました。けれども、ただいま交渉中でありまして、その両者の道をとるべき時期ではないと考えております。
  176. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 それでは別な観点から、最後に外務大臣にお尋ねいたします。これは、昨日外務委員会でも質問があったようでありますが、今度マーシャル群島において、アメリカが原水爆の実験をされる。それに対して政府は申し入れをされた。私は、この申し入れをされたということについては、外務省の一進歩だと思う。昨年この問題が起きたときには、そういう中止をしてくれというような抗議は、常識上アメリカにはできないとあなたは言明されたのですが、しかしながら、今日それに対して申し入れをされたということについては、私は一進歩だと思うのです。けれども問題は、単に被害が起きたときの日本国民の損害に対する補償だとか何だとかいうことよりも、むしろ信託統治協定第十三条の乱用として、これの中止方を申し入れることが当然だ。また日本にはそれだけの権利があると思うのですが、いかかがですか。
  177. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、要求の権利があるとは思いませんけれども、日本は、この原爆の洗礼を受けた非常な被害者でございます。さような体験を持つ日本が、そのことを根拠として、かような原水爆の使用はむろんのこと、実験等はしない方がよいから、これはできるならばしてもらいたくないと、こういうことを言うことは、私は少しも差しつかえないことだと思います。またさような方針で、国際会議にはすべて今日臨んでおるのであります。従いまして、原水爆の実験をやろうという国に対しては、さような意思表示をしておるのでありますが、しかし不幸にして、今日国際間において、原水爆の使用はむろんのこと、実験を禁止するという国際法もしくは国際慣例が成立しておりません。これは、もう立法論としては、どうしても日本はこれを禁止するように主張しなければならぬと思いますけれども、まだそういう国際法ができておりませんので、できるまでは、その被害を最小限度にとどめ得るように、外交上の措置をしなければならぬ、こう考えてやっておるわけでございます。
  178. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は、国際法においてその権利があると思っております。ということは、相手の国に重大なる影響を及ぼすときには、その国の同意を求めなければならぬということは、国際法の解釈にして、私はこれは国際的定説だと思う。それからマーシャル群島がアメリカの信託統治領になっておるということでありますならば、その信託統治協定の第十三条の適用というものは、領海三海里以内でありまして、それ以上広域なる範囲内において外国船舶の航海を禁止する、漁業を禁止する、通行を禁止するという権利はどこにもない。そこで私は、それらの条約の国際的定説に従って、日本国に対する重大なる影響を持つのでありますから、私は、これは中止方を申し入れて当然だと思う。その権利はあると思う。単にアメリカのれんびんの情にすがってやめてくれというだけでなしに、日本国に対する重大な影響があるのでありますから、やるならば、自分の国でおやりになったらよい、何も日本の隣近所でそんな騒がしいことをしてくれなくてもよいのです。それは、私は当然抗議してしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  179. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、先ほど申し上げました通りに、日本といたしましては、かような原水爆の実験等はしてもらいたくない、こういうことを言うのは、これはでき得ることだと思います。国際関係でそれはでき得る。しかしながら私の申し上げたのは、それを国際法上の権利として主張することができるか、こういう点も考慮しなければなりません。権利として主張し得るものならば、これはきわめて容易であります。しかし、そうではないということを申し上げておるのであります。アメリカが委任統治において、住民の利益も考慮しなければならぬというようなことはありますけれども、委任統治内において行政的にやることは、これは制限を受けておりませんので、その領海内においてやることは、これは国際法上禁止することができません。しかし、それが公海に及ぼす影響がある場合においては、これは、十分に影響のないように予防処置をとるということは、当然の結果と言い得るのでありますから、それを十分やっておるわけであります。そのことを向うに十分了解させることが日本の利益を擁護することだと、こう考えておるのであります。
  180. 三浦一雄

    ○三浦委員長 西村君、大体申し合せの時間も近くなりました。簡潔にお願いいたします。
  181. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 了承しました。それなら、今の問題が残っておりますが、私は総理大臣にお尋ねしたいのですが、先ほど私は、かなり遠慮してあなたに質問しておりました。財政の問題についても、これは、こまかい専門的なものは大蔵大臣にお尋ねするけれども、大綱についてあなたにお尋ねする。外交方川町についてしかり、対ソ外交、対米外交についてしかり、アジア経済外交について、防衛の問題についてもそうだ。防衛の問題については、防衛庁長官とあなたの意見が、これは何と言っても違っております。  そこで、私が先ほど来あなたから承わりたいと思う要点は、一体現在複雑をきわめる国際情勢下において、日本の運命をどう導いていくのであるか、二百九十九名の大多数を率いて、一応の安定政権の上に立って、外交政策並びに経済政策をどうしておとりになろうかというところの具体的の経綸をあなたから承わりたい。あなたからお答えがない。お答えがないということは、経綸が広いのか、しゃべることを禁じられたのか、あるいは肉体的な関係から、もうこれ以上答弁することはえらいのか、一体どちらです。   〔「どれでもない」と呼ぶ者あり〕
  182. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたのおっしゃるのは外交問題についてですか。
  183. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 国政全般についてあなたからお答えがない、先ほど来……。
  184. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は一般については、国会において施政方針演説をいたしました。それでわかっておることと思います。個々の問題については質問に答えておるのでありますから、それ以上申し上げることは差し控えておるわけです。
  185. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私のお尋ねすることはきわめて抽象的なんです。ということは、私はあなたの健康を留意いたしまして、きわめて急所をはずして遠回しにお伺いしておるのです。そこで私はきょう承わりたかったことは、この国会を通じてあなたの経綸というものを承わりたかった。財政政策、外交政策、それらについては、先ほど来何ら触れていない。本会議においてあなたはお述べになったというけれども、世人を納得せしむる言動は少しもありません。たまたまあるものは、憲法のはき違いの解釈である。外交上についての放言です。私はここであなたに一つ考えてもらいたいと思うことは、日本の権威です。私はある外国人からこういうことを質問されました。鳩山総理大臣という人は、言葉数の多い、そうして頭が少し悪いのじゃないか、弱いのじゃないかというような話を聞きました。それに対しまして私は答えておいたのは、あの人は長年の議会政治家として、言葉巧みにものを話されるが、しかしながら人のいやがることは言わない、人のいやがることはしない、そうしていやなことを言わず、いやなことをしないで、ひとり涼しいところで昼寝をしておる性格というものが鳩山さんじゃないか、頭は決してあの人は悪い人じゃないが、—————————————————私はそういうふうな人じゃないということを言明しておきました。そこで私は、なぜそのことをあなたに言わなければならぬかといいまするならば、あなたは正確なる国政上の判断力を失っています。その結果・対ソ外交において失言を繰り返している。憲法の解釈において失言を繰り返しておる。その失言が、日本の外交の二元外交、二枚舌外交となる。——従って私は、この点において日本の外交を一元化し、日本の国政、内政というものを引き締めてやらねばならぬと考えるのでありますが、それに対するあなたの信念がありますか。
  186. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は国会におきまして施政方針演説をいたしましたし、各委員会で質問に答弁をしておりますので、国民は私の考え方を了承してくれておるものと考えております。
  187. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 失礼なことでありますが、あなたの政治方針を国民理解しておりません。—————————————————私はここにおいて、これが日本の一大不幸なり、日本の一大悲劇なりと考えるのであります。私はこの国民の誤解と国民の不安とをこれから払拭するものは、あなたがきぜんたる態度をもって、自己の信念を主張する。主張したことは党を得心せしむる。主張しながら、あわてて前言を取り消すというような不定見なものでなしに、一たび主張したならば貫徹する。貫徹することの不可能な問題は、総理大臣として発言しない、これだけの確固不動たる信念をもって経綸の実を示すことが、今日国民の誤解を解くゆえんなりと思うのでありまして、私はその意味において、総理大臣の善処を促して、私の質問を終る次第であります。(拍手)
  188. 稻葉修

    ○稻葉委員 議事進行について発言を求めます。ただいまの西村君の発言には、—————————————————この公けの委員会の権威を冒涜する言辞が多々ありましたので、これらの点について取り消しを要求いたします。
  189. 三浦一雄

    ○三浦委員長 ただいまの西村君の発言中、不穏当の言辞があるとの稻葉君の要求でございましたが、西村君においてはお取り消しになりますか。
  190. 西村榮一

    ○西村(榮)委員 私は……。   〔「約束が違う」「何を言うか」と呼   び、その他発言する者、離席する   者多く、議場騒然〕
  191. 三浦一雄

    ○三浦委員長 静粛に願います。ただいまの西村君の発言中不穏当の言辞がありますれば、速記録を取調べの上適当に処置いたします。  明後日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十七分散会