○野原覺君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする
教科書法案につきましての
委員長報告に対し、文教
委員長佐藤觀次郎君に
質問をいたしまするとともに、あわせて鳩山
内閣総理
大臣及び
清瀬文部大臣に若干の
質問をいたさんとするものであります。(
拍手)
最初に私は鳩山総理
大臣にお尋ねをいたしたいと思うのでございまするが、お尋ねをいたしまする前に、一言総理に申し上げておかなければならぬことがあるのであります。それは、総理も御老体でございます。おからだも御丈夫だとは言えなかろうと思うのであります。それに、このような時刻に、まことに御苦労だとは思うのでありまするけれ
ども、これは私のせいではないということであります。(
拍手)つまり、私
どもが総理にここで申し上げておきたいことは、このような暁の
国会に持ってきたのは、あなたの属する党の
諸君が、きょうの午後一時からの本
会議でできるものを、このようなむちやをや
つておるということを、まず御了承願いたいと思うのであります。(
拍手)
そこで
質問に入りたいと思うのでありますが、まず総理にお尋ねをいたしまする第一点は、
教育の中立性と政党
内閣政治との関連をいかに
考えておるかということであります。もう一度申し上げまするが、
教育の中立性と政党
内閣政治との関係をどのように総理はお
考えであるかということであります。
御承知のように、ここに議題となっておりまする
教科書法案について見ましても、
教科書の
検定は、その
基準も、
検定そのものも、すべて
教科書検定審議会に諮問いたしまして、
文部大臣が定めることになっておるのであります。つまり、
教科書の
検定基準が
文部大臣によって勝手に作られるように今度の
法案はできておるのであります。しかも、その
検定審議会の
委員は、
文部大臣によって一方的に任命されるのであります。申すまでもなく、
文部大臣は政党人でございます。または、少くとも政党
内閣の閣僚であるはずであります。どうしても政党色を免れないと思うのであります。そのような政党色を免れることのできない
文部大臣によって、
教科書検定の
基準も、
検定審議会の
委員も、一方的に決定されるということになりますると、一体こういうことになるでございましょうか。
教育に対する政党の干渉、
教育に対する政党の支配ということが起ってこようかと思うのであります。私は、このような政党
内閣の閣僚である
文部大臣が、子供に教える
教科書の
検定基準審議会
委員の任命というものを一方的にやる限りにおいて、
教育の中立性というものは断じて守られるものではなかろうと思うのであります。(
拍手)この点について、鳩山総理
大臣はどのような御所見を持たれていらっしゃるか、承わりたいのであります。
次に私が申し上げなければなりませんことは、あなたの任命された閣僚であります
清瀬文部大臣は、
大臣就任の当初から、口を開けば、常に次のごとく私
どもに申しておるのであります。自分は党人であるから、忠実に党の方針に従って動きます。文教政策についても、私は私の属する政党の方針を忠実に実行するつもりです。私は、私の
見解がどのようなものでありましようとも、絶対に党議に拘束さるべきものだと思います。もう一度申し上げまするが、
文部大臣としての清瀬一郎さんは、
文部大臣としての
見解がどのようなものでありましようとも、絶対に党議には拘束されるというのであります。党人としては当然でございましょう。そこで、私は総理
大臣にお尋ねをいたすのでございまするが、このように忠実に党議に拘束されるということになりますると、党議に拘束されるところの
文部大臣が、
教科書検定審議会の
委員もきめる。
検定の
基準もきめる。しかも、
文部省の中には、常勤調査員というものを、一千九百万円の予算で四十五名置いておるのであります。この者によって実質的な
教科書の
検定をやらせる。こうなって参りますると、子供の
教科書というものが、政党の
考えておる
方向に持っていかれないとは、断じて保証できぬのであります。(
拍手)これを
教育の中立性という上から
考えまして、一体どのように総理
大臣はお
考えでいらっしゃるのか。もう一度申し上げまするが、
教育の中立と政党
内閣政治との関連にっいて総理の御所信を承わりたいのであります。
第二にお伺いいたしたいことは、
日本憲法と
教育との関係についてでございます。私
どもは、文教
委員会におきまして——
教育というものは、少くとも
日本の
教育というものは、
日本の憲法に立脚して行わるべきものであることは、申し上げる必要もなかろうと思うのであります。そこで、私
どもの
教育実践というもの、国の
教育実践におきましては、あくまでも憲法擁護の建前をとるべきではないか、このように
考えますがゆえに、私は過日
文部大臣にお尋ねをいたしたのであります。つまり、
学校の
教師が、教壇の上から、子供
たちに向って、
日本の憲法は大切にしなければならない、憲法擁護ということは
国民の義務だと話したとすれば、
文部大臣は、あなたはどうお
考えになるか、ということを尋ねたのであります。これに対して
文部大臣が何と
答弁をいたしたかと申しますると、速記録をごらん下さると一目瞭然でありますが、要約して申し上げますと次の通りであります。教室において、
現行憲法を守るように教えることはよいことであります。しかし、今日、
政治の問題として、
現行憲法を改正すべきであるか、改正に反対すべきであるかの
政治論が現実の課題となっておるのであります。このようになっている以上、
教師が子供に憲法を擁護せよとの
意見を出すことは、やはりこの
教師は
政治問題に関与することである、と言っておる。私が総理
大臣にお尋ねをいたしたいことは、
学校の先が教え子
たちに憲法を擁護せよと言ってなぜいけないのかということであります。あなた方のお子供さんに、あなた方の子供さんの先生が、
日本憲法を守らなければいかぬと教えて、なぜいかぬのでございましょうか。憲法を擁護せよと
教育することは慎しまなければならぬという
文部大臣の御
答弁を、総理
大臣は何とお
考えであるか、承わりたいのであります。
なお、私は、この
機会に、せっかくでございまするから、総理
大臣に次のことをお尋ねいたしたいと思うのであります。それは、国の誕生日についての総理の所信であります。
教科書法審議の過程において、あるいは
教育委員会法審議の過程において、私
どもは
清瀬文部大臣にただしました関係もございまするから、
わが国の誕生日という点について、総理
大臣はどのようなお
考えを持っていらっしゃるか、承わりたいのであります。
そこで、私は、あなたの
文部大臣清瀬一郎さんは何と申しておるかということを、御参考までに申し上げておきます。個人に誕生した日があるように、国にも誕生した日がある。これが今日の二月十一日で、ことしで二千六百十六年目であるというお話は——お話は、と逃げておる。歴史家の間に議論はあるとしても、大和の橿原の宮で神武天皇が御即位になったというのは、通常の伝説ではない。祖先が長く信じてきたのだ。客観的日付と言えば、二月十一日が間違いのある日付だと、こう言うならば、キリストもお釈迦様の誕生した日も必ずしも正確ではないだろう。(「その通り」)ここのところはその通りであります。(笑声)そこで、
国民感情、あるいは
国民の信念というものは抹殺すべきではない——聞くところによれば、その通りとお喜びの方々は、清瀬さんと一緒になって、二月十一日の紀元節復活のために全力をあげていらっしゃるように受け取るのでございまするけれ
ども、私がお尋ねをいたしておるのは総理に対してであります。あなたも、
清瀬文部大臣と同じように、昔の紀元節の復活をお
考えになっていらっしゃるのかどうかということであります。明快に御
答弁を願いたいのであります。
そこで、私は、次に
清瀬文部大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
大臣は、ここに御
提案になっておりまする
教科書法案によりますると、文教
委員会においては、私は決して
国定教科書というものを
考えてはおりません、このように申されておるのであります。しかるに、今度
提案された
法案をしさいに検討していただくならばおわかり願えますように、
検定審議会の
委員というものは、
文部大臣が一方的にきめる、これは否定することができないのであります。そうして、先ほ
ども申しましたように、
文部省の中には常勤の調査員が四十五名がんばっておりまして、これが
検定の実質的な役割をやっておるということであります。第三には、
学校の教員というものは、自分の組の子供
たちにどの国語の本を習わせるか、算術の本を習わせるかという
教科書の選択にっいて、何らの発言権も与えられていないのであります。都道府県の
教育委員会がやる。都道府県の
教育委員会というものの実権は
教育長が握るのでございます。この
教育長は、新しい
教育委員会法によりますると、
文部大臣の承認を要すると書いてある。
文部大臣が承認した、そういう
教育長に
教科書の選定をさせて、
学校の教員には何らの選定もさせないという、こういう
やり方は、これでも
国定の精神にそむいていないとお
考えであるかどうか、私は本
会議の席上で明確に承わっておきたいのであります。(
拍手)
もう一点は、こまかなことは
委員会ではございませんからお尋ねをいたしませんが、新しい
教育委員会法が
提案されましたときに、私
どもは公聴会を開きました。その公聴会の席上に、東大総長矢内原博士がお見えになりました。矢内原総長に、私が、あなたは中央
教育審議会の
委員でございまするから、
清瀬文部大臣は中央
教育審議会というものを尊重しておるか、
文部大臣は中教審というものをどのように
考えていると思うか、という
質問を発しましたところ、矢内原先生は、非常に御不満のようでありまして、最近の清瀬さんの言動は中教審を無視しておるとしか思われないという御返答であったのであります。それは、いろいろな面に具体的に現われて参っておりまするが、私はここでは申し上げません。しかし、ここでは申し上げませんけれ
ども、中央
教育審議会という、
文部大臣が最も頼みにしている
諮問機関の良識のある
委員の
諸君は、ことごとく清瀬文政に憤激しているというこの事実を、あなたは何とお
考えであるか、承わりたいのでございます。(
拍手)
そこで、私は、佐藤文教
委員長の報告に対しまして、次の大事なる点についてお尋ねいたしたいと思うのであります。これはぜひとも明らかにしなければならないものでございますので、ゆっくり、はっきり申し上げまするから、佐藤文教
委員長は詳細、明確に御
答弁下さらんことをお願い申し上げます。
まず第一に、
教科書法案についての
審議日数であります。一体何日間この
教科書法案は正味
審議されたのか、悲しいかな、文教
委員以外の
諸君は知らぬのでございまするから、教えていただきたいのである。
第二は、正味の
審議時間であります。私は議院運営
委員と文教
委員とを兼ねている関係上、十分に文教
委員会に
出席のできないことは、この壇上から告白をいたしまするが、しかし、聞くところによると、
参議院において
教育委員会法が上程になりますると、
文部大臣は
教育委員会の方にばかり参りまして、
教科書法の
審議にはさっぱり顔を出していないと言われております。これは一体
ほんとうであるかどうか、
委員長から承わりたいのであります。(
拍手)
第三に申し上げたいことは、今月の十七日に、文教
委員会におきましては、理事会の申し合せを無視いたしまして、関連
質問に名をかりて、ある理事が唐突として
質疑終了の
動議を出しておるのであります。御承知のように、
委員会の運営は理事会によってなされる。その理事会の申し合せを無視して、その辺におった代議士をみんな廊下から連れ込んで、むちゃくちゃに、関連
質問に名をかりて
質疑終了の申し入れをするというような
やり方を、文教
委員長として
佐藤觀次郎君はどのようにお
考えでございますか、これも承わりたいのであります。
第四番目には、同じく本月十七日のできごとであります。佐藤文教
委員長は、解任決議を、
与党からこの本
会議において突如出されたのでございますが、私は佐藤
委員長にお尋ねする。あなたは、わが党から出された文教
委員長である。私の知る限り、佐藤君は、きわめて公正で、正直で、温厚である。(「ノーノー」と呼び、その他発言する者多し)その佐藤
委員長が、何の罪とがあって
与党から解任決議を受けなければならぬのか。あなたに私は友人としてお尋ねをいたしますが、あなたは解任決議を受けなければならぬくらい悪いことをしたのか、不公正なことをしたのかということをお尋ねいたす次第であります。(
拍手)
第五番目には、
社会党からは
二つの
教科書に関する議員立法を出したのであります。この
二つの議員立法は、
政府から出された
教科書法案とほとんど前後して
提案いたしておるのでございますが、
与党の文教
委員の
諸君に、
ほんとうに
教科書法について
研究しようという熱意がありとするならば、たとい
社会党の
考えに反対でありましょうとも、
委員会において
質問すべきである。この
質問がなされていないと聞くのでございまするが、それは
ほんとうでございまするか、承わりたいのであります。(
拍手)
第六、今月二十一日、つい二、三日前のことでございまするが、文教
委員会は夕刻になって非常な混乱が起ったのであります。文教
委員会大混乱という見出しが夕刊にも朝刊にも出されておるのでございまするが、この混乱は、先ほど申し上げましたように、これまた理事会では、
質疑終了だけ二十一日はやって、あとは相談ということになっておった。ところが、
質疑終了の
動議が成立すると、直ちに
議事進行、討論、採決と持っていったから混乱をしたというように聞いておりまするが、これは
ほんとうであるか。知らない
与党の
諸君もおろうかと思いまするから、御
説明願いたいのであります。(
拍手)
第七、
教科書法案についてでございまするが、申し上げるまでもなく、この
法案がきわめて重要でありまするから、先ほど同僚の辻原君から御
説明申し上げましたように、私
ども社会党は、最終的には
修正案を出したのであります。ところが、
修正案を出す段階になって、皆さん、驚くべきことには、二時間以内に出せと言ってきた。
修正案を出すからと言ったら、二時間以内に出さなければ佐藤は首にしてやるという脅迫をやったのであります。地方自治法の改正は二十日間もたな上げしておって、二時間以内に
修正案を出さなければ
委員長を解任するというような脅迫がなされたのかどうか、これまた佐藤君にお聞きいたしたいのであります。(
拍手)
第八、
教育委員会に関係する
法律案は、学識経験者から十分なる
意見を聞かなければならぬというので、二日間の公聴会を開いておりますが、
教科書法案の公聴会はわずかに一日である。しかも、
教科書法案審議の状況を見ますと、
教育委員会法と同時に上程されておりながら、
教育委員会法の
審議ばかり先にやって
参議院に送り、
参議院にいったら、
文部大臣は
教育委員会法の
答弁にばかり行って、
教科書法のときに帰ってこない。こういう
やり方から見ると、
政府、
与党は
教科書法案は
教育委員会法よりも軽視しておると
国民は受け取っておるのでございますが、
委員長は、文教
委員会の
責任者として、どのようにお
考えでございますか、これまた承わりたいのであります。
私は最後に申し上げます。
日本の
民主主義に向う歴史の歯車を逆転せしめようという、今回のこの
国会に
提案されました
教育二法に対しては、過日、数百万の
国民が大会を開いて、皆さんに抗議を発しておるはずであります。
国民の識者は、ことごとくこのことに対して憤激をしておる。しかも、第二十四
国会というこの同じ
国会に、
二つの
教育重要法案が出されておる。私は、
教育の
法案は、これこそ
国民の各層、各階級の
意見を聞かなければならぬものであると思いまするがゆえに、
教育委員会法もしくは
教科書法、このような重要なものを
二つ一ぺんに出すということをやめて、
一つの
法案を出して、みつちり検討するという
方向をこそとるべきではなかろうかと思うのでありますが、これがなされていないのであります。しかも、ただいま申し上げましたように、
日本の
教科書は、NHKの放送の統制とは違います。子供の
教科書を統制するということは、
日本の学問、言論あらゆる思想、行動を取り締るということでありましょう。その重要なる
教科書法を、このような拙速的な
やり方で
審議するということに対して、最も
責任のある地位にございまする文教
委員長佐藤觀次郎君は、どのような所感を持っていらっしゃるのか、承わりたいのであります。
以上でございます。(
拍手)
〔国務
大臣鳩山一郎君
登壇〕